エレン「かっけぇ…」(14)
エレン「かっけぇ…」
ベルトルト「ん?あぁ、このギターのことかな?」
エレン「おぉ…それギターっていうのか。初めて見る楽器だな」
ベルトルト「僕の故郷ではみんなもってるよ。ほら、こうして弾くんだ」
エレン「すげぇぇ!いい音色だな」
ライナー「お、ギターじゃないか。ベルトルト持ってきてたのか」
ベルトルト「なんだか手放したくなくてね。」
ベルトルト「エレン、良かったら弾いてみるかい?」
エレン「いいのか?ならありがたく弾かせてもらうよ」
エレン「なにこれ!めちゃくちゃ楽しい!」
エレン「ははっ、ベルトルトみたいにうまく曲弾けねえや!」
ライナー「筋はいいぞ。もっと指を柔らかくするんだ」
エレン「こ、こうか?」
ライナー「さっきよりうまくなってる」
ベルトルト「初めてにしては上手いよ」
エレン「ありがとな。また明日貸してくれよ」
ベルトルト「うん。いいよ。」
エレン「ならまた明日な。おやすみ」
ベルトルト「おやすみ。エレン」
翌日 ~朝食~
エレン「でさ、昨日ギターっていう楽器を弾いたんだよ。これがすげぇ楽しくてさ!なんか、こう。心にくる?みたいな!楽しいんだよ」
ミカサ「良かったね。エレン」
エレン「また上手くなったら演奏してやるよ」
アルミン「うん。楽しみにしとくね」
エレン「おう!」
ミカサ「ちょっと、席はずすね」
エレン「ん?どこいくんだ?」
アルミン「ちょ、エレン…ミカサも女の子なんだからさ…」
エレン「お、そうか悪りぃ悪りぃ」
ミカサ「ううん。アルミンありがとう。」
ミカサ「ベルトルト…」
ベルトルト「や、やぁミカサ」
ライナー(ベルトルトお前なんかしたのか?)
ベルトルト(知らないよ…)
ミカサ「ベルトルト…ありがとう」
ベルトルト「僕はお礼をされる事なんかしてないけど…」
ミカサ「エレンにギターを貸してくれた」
ベルトルト「あぁ、そんな事だったら別に構わないよ。エレンは僕の大切な仲間だからね」
ミカサ「ありがとう……エレンがあんな風に嬉しそうに話をするのは久しぶりだから…」
ミカサ「昔のエレンに戻ったみたい。昔はよく嬉しそうにカブト虫をとったりとかして遊んでた。けど…カルラおばさんが死んでからエレンはあんな風に笑わなくなった」
ライナー「……」
ベルトルト「……」
ミカサ「巨人を駆逐するために目標を持つことはいいこと。だけどそれでエレンは自分を犠牲にしすぎてる。エレンの目標に口はださないけど、エレンだってまだ子供。なにか心から楽しまなくてはいけない。だから…久しぶりにエレンの笑顔を見れて良かった…ありがとう」
ベルトルト「うん…いいよ」
ミカサ「じゃあ私はエレンの所に戻る。早く戻らないとエレンが心配するから」
ベルトルト「……」
ライナー「ベルトルト…お前はなにも間違っていない。そう考え込むな。俺たちは戦士なんだ」
ベルトルト「うん…分かってるよライナー。僕は大丈夫だ」
ライナー「なら良かった」
ベルトルト「……」
エレン「ベルトルト!」
ベルトルト「やぁ。エレン」
ベルトルト「はい。このギターあげるよ」
エレン「え!いいのか?お前の大切な物だろ」
ベルトルト「ううん。いいんだ。2つあるからね。」
ベルトルト「それにほら。エレンの名を彫ったんだ。」
ベルトルト「だからこれは君の物だよ」
エレン「本当だ。ベルトルトありがとうな!」
ベルトルト「うん。喜んで貰えて良かった」
ベルトルト「ほら、一緒に簡単な曲なら弾こうよ」
エレン「よし、だいぶできるようになった」
エレン「ありがとなベルトルト!ちょっとアルミンに聴かせてくる。」
ベルトルト「うん。いってらっしゃい」
ベルトルト「……」
ライナー「……」
ライナー「おい、ベルトルト。あまり自分を責めるな」
ベルトルト「エレンってさ…良く笑う人だったんだね。僕がギターを弾いたらね。エレンすごい無邪気な目で笑顔で僕に言うんだよ。「ベルトルトすげぇ!」「ベルトルトかっこいい!」って。」
ベルトルト「僕がエレンも練習したらこれぐらい弾けるようになるよ。って言ったらさ、また笑顔になって俺、やってみるよ。って。
それでアルミンとミカサに聴かせてさ。天国にいる母さんに自慢するって…」
ベルトルト「なにも覚悟をしてなかったわけじゃない。ただ、ただ、僕の中で何かが音をたて崩れ始めたんだよ」
ライナー「……」
ベルトルト「僕はなにをしたんだろうって。夢の中でも自分に問いかけ始めるんだ。 僕がしたことは正しかったのって。」
ベルトルト「こんなに苦しむなら…産まれたくなかった」
ベルトルト「…ん…ぐ!……ヒック ヒック…」
ライナー「泣くなベルトルト。それがお前の戦士として受けた運命なんだ」
ベルトルト「そうだね…ライナー」
エレン「なぁベルトルト!…ってお前泣いてんのか?」
ベルトルト「ん。違うよ。目にゴミが入っちゃってさ。ほらライナーが騒いだから」
エレン「なんだ。泣いてんじゃないんだな。良かった」
エレン「それより聞いてくれよ!さっき教わった曲アルミンに聴かせてやったらさ!うまいって!あとミカサも呼んでないのに来てよ!ちょっとしてライブみたいになったんだ」
ベルトルト「そう。良かったね」
エレン「ベルトルトのおかげだよ!ありがとうな!」
ベルトルト「どういたしましてエレン。」
ベルトルト「ほら。もう消灯時間だから寝なくちゃねエレン。おやすみ」
エレン「おやすみベルトルト。また明日な」
ベルトルト「!うん…また明日ね」
ベルトルト「ライナーも寝なよ。明日もキツイ訓練なんだからさ。」
ライナー「あぁ。そうするよ。おやすみ」
ベルトルト「うん。おやすみ」
ベルトルト「……」
ベルトルト「外にでよ」
ベルトルト「風ってこんなに気持ちいいんだね…」
ベルトルト「ギターでも弾こうかな…」
ベルトルト「……」
静かな空間の中でギターの音色だけが鳴り響く。
音は風にのり兵舎にも届いた。
人々はそれを確認しにいかず、安らかな眠りへの足しにして静かに耳を傾ける。
ライナー(それでもお前は戦士なんだ。戦士として受けた運命は全うしなくてはいけない。)
ベルトルト「あぁ分かってるよライナー。」
ベルトルト「けどもう僕」
ベルトルト「疲れちゃったよ」
翌朝、彼の姿を見た物は誰もいない。
皆の間では彼は開拓地に戻っていったと噂されている。
ある者は知っている。
彼には開拓地という逃げ場所がないことを。
戦士として失格した彼に帰る故郷がないことを。
彼は人しれずいなくなった。
エレン「ベルトルトに教えてもらった歌…一緒に歌いたかったんだけどな…」
ライナー「……ちとした興味で聞くがどんな歌なんだ?」
エレン「歌ってやろうか?」
ライナー「あぁ…頼む…」
エレン「よし。いくぜ」
カントリーロード
この道 ずっとゆけば
あの街に つづいてる
きがする カントリーロード
ひとりぼっち おそれずに
生きようと 夢みてた
さみしさ 押し込めて
強い自分を 守っていこ
歩き疲れ たたずむと
浮かんで来る 故郷の街
丘をまく 坂の道
そんな僕を 叱っている
カントリーロード
この道 ずっとゆけば
あの街に つづいてる
きがする カントリーロード
どんな挫けそうな時だって
決して 涙は見せないで
心なしか 歩調が速くなっていく
思い出 消すため
カントリーロード
この道 故郷へつづいても
僕は 行かないさ
行けない カントリーロード
カントリーロード
明日は いつもの僕さ
帰りたい 帰れない
さよなら カントリーロード
おしまい
ベルトルトェ…うっうっ
すばらしいSSでした。乙
せつねえな…
乙
ベルトルトー(泣)
やべええええ短いのに泣ける。これぞSSの醍醐味。
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