ベルトルト「また雪が降る」(42)
・現代転生
・12巻までの内容をほのかに含みます。
・ベルトルトとリヴァイしか出てきません。
※初スレ立て、キャラ崩壊
合わない方はそっとじで...
生温い目でお願いします。
この世界に壁はない。
一時間も電車に揺られれば彼らが憧れた『海』が見える。
ここにはライナーもアニも居ない。
僕の記憶にあった人は誰も居ない。
何かに怯えることもなく、任務や決意に縛られることもなく、
ただ、平和な日常を過ごす穏やかな顔の人たちがいる。
僕は一度死んだ。
そしてこの世界で今、生きている。
おそらく、一度死んで違う人生を生きていて、
記憶があるなんて普通じゃないんだろう。
何度もそれとなく人にほのめかしてみたけど、
大抵笑われて終わりだった。
それに『巨人』なんて言葉は野球以外で聞かない。
それこそ、純粋に人類より大きい人間の話は小学校以降してないと思う。
でも僕はあの世界では巨人だった。
一番大きく、一番人から恨まれていた巨人だった。
自分が怖くなって、夜中に海に行き、手を噛んで確かめる。
でも今の僕はちゃんと人間だ。
今のところ、ちゃんと人間だ。
今後は...わからない。
でも僕は人間として生きていきたい。
今度こそ、この世界の優しい人たちを誰も傷つけたくない。
このまま、この世界を生きたいと思っている。
そんな資格はないのに...
_______
_____
___
「お疲れさまです。お先に失礼します。」
「おう、今日はこの天気だから早く帰らせてやりたかったんだけど、悪いな。
電車、停まんなきゃいいな...」
申し訳なさそうに先輩が振り向く
「いや、気にしないでください。
僕の仕事ですから」
「気を付けて帰れよ」
「はい、○○さんもあんまり遅くならないように...」
「あぁ、あと少しだ。じゃあ、お疲れ!」
「失礼します」
僕は笑顔で会社を後にした。
僕はよく笑うようになったと自分でも思う。
あの頃に比べれば、はるかに。
「…電車、動いてるかな」
不安は的中した。
どうも都心は雪に弱い。
仕方なく、違う路線を乗り継いで帰ることになった。
ホームは同じような人で混雑していた。
ポケットから携帯を取り出し、Twitterを覗くと、
友達の愚痴や、お昼に食べたお弁当が美味しい!などが綴られていた。
いつもと同じ日常だ。
どうでもいいことが僕にはうれしい。
口元が少し緩んだ。
「まだかな…」
顔を上げて辺りを見回したその時、
人ごみの中の、そこだけがはっきりと僕の目に飛び込んできた。
目が離せない。見覚えのある後ろ姿
でもそこには自由の翼はない。
小さいのに大きな背中
あれは...
...
心拍数が一気に上がった。
体が動かない。
ただただ、僕はその場に立ち尽くして見つめていた。
そうこうしている内に、その背中は僕と違う方向の電車に乗り込んで行ってしまった。
居たのか?僕の他にも
でも確信はない。むしろそうじゃない可能性の方が高い。
でも、僕は確かにその時、居てくれる事を願った。
この平和な世界で生きていてくれる事を願った。
大雪が降った夜だった。
とりあえず、ここまでにします。
全部できているので、完結はさせます。
見ていただいてる方が居たら、おやすみなさい。
乙です!
序盤から切ない優しい雰囲気に引き込まれるな…
これからどうなるか楽しみ!
乙、楽しみにしてる
ライナーもアニもいないのか…
切ないな
少し更新します。
僕の毎日の通勤路が変わった。
携帯もいじっていない。
探している。
そんなことを僕がしちゃいけないのはわかっている。
会って、話しかけるつもりもない。
記憶があるかもわからないのに、記憶があったら余計に...
なのに僕は探している。
この世界で生きていきたい。
この日常が好きだ。笑顔が増えた。
でも、僕は幸せになっちゃいけない。
罪の意識をこの世界でも抱えて生きていく。
それがあの世界で出来なかった罪滅ぼしだから...
なのに…
なにをあの人に期待しているんだろう...
自分でもわからないけど、今日もあの背中を探す。
そんな日がどのくらい続いたんだろう
また雪が降った夜、
見つけた。
そして確信した。
兵長だ...
自分の記憶より少しくたびれた感じだったけど...
でも、眉間の皺はあの頃より薄かった。
時が止まったみたいだった
向こうの電車が到着し、列が動き出し、兵長もその流れに従った。
乗り込むその瞬間、一瞬、目が合った気がした。
あぁ...良かった
居たんだ...
電車が止まった。
僕はあの時から毎日天気予報を確認するのが日課になっていた。
今回も会えるだろうか...
限りなく低い可能性を信じ、今日も雪の中、ホームに足早に向かう。
辺りを見回す。
こういう時だけ、今でも大嫌いなこの身長は役に立つ。
何本か電車を見送った。
「まぁ、そんな都合よくないか...」
自分に言い聞かせるように歩き出したその時、どこからか視線を感じた。
振り向いた時にはもう視線はなかった。
次は早かった。
また雪が降った。
電車は止まっていなかった。
でも通勤路はあの日から変わらない。
ホームへの階段を上がる。
電車が止まってるわけじゃないんだ。
期待はしていなかった。
階段を上がりきり、数歩歩いたところで顔を上げると、
ベンチの横で寒そうに立つ兵長がいた。
シワのないコートに妙に納得した。
そんなことを考えていると、兵長の目線がこちらに向いた。
目が合う。
ヤバイ!逃げなきゃ!
瞬間的にそう思った。
それが記憶からなのか、それとも単に反射的になのかはわからないけど、
僕は逃げ出した。
「おい、待て」
僕のことだろう。
けど、そのまま下を向いて歩く
が、次の瞬間、僕の思考は停止した。
「待てと言ったんだ。……ベルトルト」
振り向く
あの『目』だ
あの時と同じ
僕が最期に見た『目』だ......
でも、あの時とは違う目だ
「…ぁ...お久しぶりです......リヴァイ兵長...」
僕は逆に冷静だった。
兵長は相変わらず冷静だった。
「あぁ...」
「俺を憎んでいるか?」
ベンチに座ってどのくらい僕は自分の足元を見ていたのだろう。
唐突に、隣に座っていた兵長が前を見たまま尋ねてきた。
「…いえ、そんなこと...思ったことありません」
それは紛れもない本心だ。
この人がやっと終わらせてくれたから...
「そうか...」
兵長は表情を変えずに入ってきた電車を見ていた。
………。
「あ、ぁの…!」
「その…ライナーとアニは…あの、、、その、、楽に------
「あぁ。二人とも俺が削いだ」
僕が言い終わる前に兵長が答えてくれた。
唯一どうしても気になっていたことだった。
僕の記憶は壁の中にアニを助けに行き、三人で巨人化して僕に真っ先に向かってきた兵長に削がれたところで終わっている。
三人の中じゃ一番弱いからね、僕は
「…そうですか」
ため息がもれた。
安心した。
どうやら僕たちの最後の願いは叶ったようだ。
三人とも口には出してなかったけど、誰も成功させようなんて思ってなかったんだ。
ただ、三人で一緒の死に場所を探していたんだ...
そして、ここに兵長が居るってことはきっとどこかで......
「......お前らが正しかったのかもな」
兵長がぽつりと漏らすように話し出した。
「あの世界に先はなかった...」
「...そうですか...」
兵長はそれ以上のことは話さないし、僕も聞かなかった。
-―――――…
「お前はもう巨人じゃねえんだろ?」
ちらりと横目で僕の顔を見た兵長が静かに切り出した。
「え...?」
思わず兵長の方を向く。
兵長はまた前を見ていた。
…あぁ
そうだった、そうだよ......
何を期待したんだ僕は...
そんなの当たり前だ。
僕が巨人じゃないなんて...
今はあなたと同じ人間ですなんて...
何食わぬ顔して生きてますなんて...
そんなこと...僕が...
才能は数字だけじゃ表せない良い例
ベルも兵長の距離感がまた絶妙だな
続き期待!乙乙!
>>26
昨日からほんとに感謝です。
漢文の書き下し文をどうやって日本語にするんですか?って聞いた時の「もう日本語ですよ。」と言った先生の優しい眼差しが忘れられない自分には、とても励みになります。
今夜中に終わらせたいと思っています。
再開します。
「...はい。」
「何回やっても巨人化...しないんで、違うと、、思いま...す...」
自分でも自信がなかった。
兵長には最後まで聞こえなかったかもしれない。
「チッ...
そんな分かりきってること聞いてんじゃねぇ」
「お前は人間だ。
超大型巨人でもなんでもない。
俺たちと同じ、ただの人間だ。」
「…なのにあの頃と同じ顔してやがる」
「俺はお前をもう憎んでいない」
「だから生きろ」
「今度は自分の人生を生きろ」
「もし、巨人になってもまた俺が削いでやるから心配するな」
「ここにも俺がいる。」
...
その時の感情はわからない。
けど、涙が溢れた。
止まらなかった。
声が漏れた。
止まらなかった。
あぁそうか...
僕はあの世界の人に見つけて欲しかったんだ。
もういいって言ってもらいたかったんだ...
そんなこと、願っちゃいけないのに
でも...
でもこの人は許してくれた。
この世界でやり直すことを
仲間が逝くのを誰よりも多く見送り続けたこの人は許してくれた
この世界で僕でいることを...
またこの人に救われるのか...僕は...
やっぱり強いなぁ...
人類最強は...
__________
_______
____
__...... ...
___
__
_
どのくらい二人で雪を眺めていたんだろう。
なにかアナウンスもしていた気がする。
でも、そんな事僕にはどうでもよかった。
ずっと思い出さないようにしていた、あの頃のみんなとの思い出が、辛かった思い出が、やっと大事な思い出に変わっていた。
勝手に自分の思い出に入り込んでいたら、兵長が静かに立ち上がり、僕の前に手を差し出してきた。
「おい...そろそろ行くぞ...」
「立て」
見上げた僕は兵長の顔を見て呆気にとられてしまった。
だって...
兵長は……―――――――
雪が降っていた。
電車がとまっていた。
完
これにて初ss完結です。
稚拙な文章を読んでくださった方、本当にありがとうございました。
ssってエネルギーものすごく使うんですね。
文章打ち込んでたら自分も暗くなってきたのと、豆腐メンタルで緊張しすぎて食欲がなくなりました。
12巻読んでベルトルトの告白に泣いてしまい、妄想が膨らんで書いてしまいました。
こんな自己満足なssにお付き合い頂き、ありがとうございました。
キャラのイメージが崩れてしまっていたらごめんなさい。
あと、少し捏造が入ってしまいました。
後書きですみません。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません