ミカサ「タイムループ」(44)
――はじめに――
もしも本当に進撃の巨人のタイムループ説があったとしたら……
を描いた短編です
異次元的な内容だと思います
アニメ未放送分のネタバレはありません
書き溜めからなので、校正をしながら一気に投下します
―――
――
エレン(ここは……どこだ?)
エレン(周り一面に真っ白なモヤがかかって……何も見えねぇ……)
エレン(……霧なのか…………?)
ミカサ「……ここは時の狭間」
エレン「ミカサ!?」
エレン「……どこから現れたんだ?」
ミカサ「ここは世界の理の外だから」
エレン「せかいの……ことわり……?」
ミカサ「時の歯車が廻っている……私たちは今……時をさかのぼっている」
エレン「何を言っているんだ……?」
ミカサ「エレン……どうか落ち着いて聞いてほしい」
エレン「……?」
ミカサ「私たちは皆……死んだ」
エレン「な……に……?」
ミカサ「壁はウォール・シーナまで陥落」
ミカサ「あなたも死んで……人類は負けた」
エレン「何言ってんだよ! 現にいまオレはここに……」
エレン「…………」
エレン「……体の感覚が……おかしい」
ミカサ「…………」
エレン「じゃあ……ここにいるオレたちは幽霊か魂か?」
ミカサ「どちらも当てはまる。私たちは意識体」
エレン「意識体……」
エレン「!」
エレン「そうだ! アルミンは!? 調査兵団……みんなの意識はどこだ!?」
ミカサ「……それぞれ個別に時をもどっている」
ミカサ「心配しなくていい。みんなちゃんといる」
ミカサ「二人でいて特別なのは私たちだけ」
エレン「そう……か」
エレン「なぁ、ミカサ」
ミカサ「うん」
エレン「なんでオレたちは特別なんだ?」
エレン「どうしてお前はこんなことを知っている?」
ミカサ「…………」
エレン「ミカサ……お前は何だ」
ミカサ「…………」
ミカサ「……わからない」
エレン「なに?」
ミカサ「私もわからない」
ミカサ「ただ……右腕に刻まれた紋章が教えてくれた」
エレン「……それか」
エレン「ミカサの……母さんに刻まれたんだっけ?」
ミカサ「…………」コク
エレン「青く光っているな」
ミカサ「これが私の心に直接語りかけてくる」
エレン「そうか……」
ミカサ「私の祖先から代々受け継いできたこの紋章……」
ミカサ「これがここの場をつくっている」
ミカサ「そしてこの紋章には時間を戻す力がある」
ミカサ「私もそんなことは……こうなるまでちっとも知らなかった」
エレン「……」
ミカサ「私たちが特別なのは」
ミカサ「エレン……あなたが紋章の発動に関わったから」
エレン「オレが?」
ミカサ「そう」
エレン「何かしたのか」
ミカサ「……」
ミカサ「あなたの魂の断末魔が……私をとおして紋章を動かした」
エレン「なんでだ」
ミカサ「エレンが……私の失われた半身だから……」
ミカサ「私の両親が死んだとき、私の心の半分も死んだ」
ミカサ「そんな私の心を埋めたのがエレン」
ミカサ「私の心の中にはずっとエレンがいる」
ミカサ「だからあなたの魂の叫びが……私を揺さぶった」
エレン「そうか…………」
エレン「なぁ。そしたら教えてくれないか」
エレン「オレたちはこれからどうなるんだ」
ミカサ「……過去の世界に戻る」
ミカサ「いま私たちの意識は、ゆっくりと時をさかのぼっているところ」
ミカサ「この感じだと、たぶん私たちが出会う前になる」
ミカサ「次に気づいたときはお互い子供になって、その頃に暮らしていた自分になっているはず」
エレン「つまり人生を途中からやりなおすのか」
ミカサ「……同じにはならないと思う」
エレン「?」
ミカサ「意識の中に少しだけ……今までの記憶が残る」
エレン「! ……じゃあ!」
ミカサ「同じ失敗を繰り返すことが減るはず」
エレン「そうか!」
エレン「……」
ミカサ「……?」
エレン「…………」
ミカサ「どうしたの?」
エレン「……なぁ」
ミカサ「?」
エレン「オレたちは……またちゃんと出会えるのか?」
ミカサ「…………ッ!」
ミカサ「……心配ない」
ミカサ「私たちは必ずまた出会う……それは決まっている」
エレン「そうか……ならいいんだ」
ミカサ「……」
ミカサ「…………」
エレン「……なに泣いてんだよ」
ミカサ「今のエレンの言葉が……嬉しかった……から」
エレン「……お前のいない人生なんて……ねぇよ…………」
ミカサ「…………ぁ」
ミカサ「……ぅん…………うん……私もそぅ……」
ミカサ「エレン」
エレン「ん」
ミカサ「時の狭間にいるここでの記憶は絶対に残らないけど」
ミカサ「現実に戻されるまでの間……」
ミカサ「……二人でちょっと世界を見てみたい」
エレン「世界を見る?」
ミカサ「今この場でだけ、紋章の力で私たちのいた世界を飛び回ることができる」
エレン「なんだって……じゃあ」
ミカサ「壁の外も自由にいける」
エレン「まてよ……ということは」
エレン「アルミンから聞いた海……塩の水がたくさん溜まっている海も見れるのか?」
ミカサ「たぶん……見れる」
エレン「……見てみたいな。それは……記憶に残らなくても」
ミカサ「うん」
――
ミカサ「エレン……少し待って」
――サァァァァ
エレン(白いもやが晴れていく……)
エレン(…………)
エレン(ここは……空?)
ミカサ「落ちる心配はないから足元を見て」
エレン「……!」
エレン「下に小さく見えるのは……町と壁か?」
ミカサ「うん」
ミカサ「私たちは今……ウォール・マリアの上空にいる」
エレン「ウォール・マリアだって!?」
エレン「最外郭じゃないか……」
エレン「ならあの廃墟はもしかして」
ミカサ「私たちの故郷」
エレン「やっぱりそうか……」
ミカサ「大丈夫……全部戻るから」
エレン「そうだったな」
エレン「しかしこうして見るとさ……」
エレン「壁の外って……こんなに広かったんだな」
ミカサ「果てが見えない」
エレン「……すげぇ」
ミカサ「そろそろ行こう……私の手をとって」
エレン「ああ」
――
エレン「飛んでいる……んだよな? ……オレたち」
ミカサ「うん」
エレン(ミカサに引かれてどんどん進む……)
エレン(……壁がもうあんな後ろに)
エレン「立体機動とはずいぶん違う」
エレン「空を飛ぶって……こんなに気持ちがいいのか」
ミカサ「私も今すごく自由を感じる」
エレン(眼下に巨人の姿がちらほら見える)
エレン(なのに……)
エレン「なぁ、ミカサ」
ミカサ「?」
エレン「飛んでいるせいかな……心がすごく……晴れやかなんだ」
エレン「この爽やかな気分……」
エレン「なんだか……懐かしいんだ」
ミカサ「……」
ミカサ「ちょっと前に……カルラおばさんが生きていた時まで戻った」
エレン「母さん!?」
ミカサ「うん」
ミカサ「だから今のエレンの心からは……憎しみが消えている」
エレン「そうだったのか」
ミカサ「じきに私の両親も戻る……時間がない……急ごう」
――
ミカサ「エレン……あれは……ひょっとして」
エレン「ぁぁ……ああ!」
ミカサ「すごい広さの湖……」
エレン「きっと……あれが海だ!」
ミカサ「……うん」
エレン「対岸もまったく見えない」
エレン「見ろよ……地平線が真っ平らだぜ」
ミカサ「太陽が……海の向こうに沈む」
エレン「すごい夕焼けだ」
エレン「ミカサ! もっと上にあがろう!」
ミカサ「うん!」
――
エレン「すげぇ……どこまで昇れるんだ、これ」
ミカサ「きっと世界の外まで……」
エレン「海を見てみろよ……地平線が丸いぞ!?」
ミカサ「これが私たちの世界……私たちの星……」
エレン「オレたちの世界は……」
エレン「……こんなにも美しかったんだな」
ミカサ「ええ……本当に……」
エレン「なっ……ミカサ!? ……お前」
ミカサ「いま……私のお父さんとお母さんが……この世界に戻ったの」
エレン「ミカサ……」
ミカサ「私の心も戻ってきた……」
ミカサ「……戻ってきた……あったかい……」
ミカサ「すごく嬉しいの……お父さん……お母さん……」
ミカサ「涙が……とまらないよぅ…………エレン」
ミカサ「…………ぅう」
エレン「ミカサ!!」
ミカサ「えへへ……」
エレン「ミカサ……お前……そんなに笑って…………」
エレン「そんなに笑えるやつだったのか……」
ミカサ「うん!!」
エレン「あの無表情が嘘みたいだ……」
エレン「……かわいい……」
ミカサ「ほんと?」
エレン「ああ!」
エレン「夕焼けに照られた笑顔がすごく……いいぞ!」
ミカサ「エレンもすごく格好いい!」
エレン「そ、そうか」
ミカサ「エレン……そろそろ時の終わりの刻が近い」
エレン「もうお別れか」
ミカサ「うん……」
エレン「オレ今さ……なんだかすっごく素直な気分なんだ」
ミカサ「……私も」
エレン「別れる前にさ……」
ミカサ「……うん」
エレン「ミカサ……お前を思いっきり抱きしめて……いいかな……」
ミカサ「…………ッ!」
ミカサ「私も……エレンに思いっきり抱きつきたい……」
エレン「同じ気持ちだったんだな!」
ミカサ「うん!!」
エレン「ミカサ……」ギュウ
ミカサ「……エレン」ギュウ
エレン「きっと……また会おうな」
ミカサ「うん。絶対」
エレン「太陽が……海の向こうに沈む」
ミカサ「……綺麗」
エレン(……お前のいるこの世界は)
ミカサ(……エレンのいるこの星は)
――――なんて美しいんだろう
――
エレン「……!」
ミカサ「……ぁ」
エレン「ミカサの体が……消えていく……?」
ミカサ「エレンの体も……」
エレン「そうか。時間なんだな」
ミカサ「うん……」
エレン「じゃあ……ちょっといってくるよ」
ミカサ「……」
エレン「またな」
ミカサ「うん」
―――いってらっしゃい
―――――――エレン
―――またいつか
―――――――もどってきてね
ミカサ「私もお父さんとお母さんに会いにいこう」
おわり
以上です
読んでくださった方がいらっしゃったら感謝します
そしてこの場を作ってくれた管理人さん
良い板をありがとう
いずれ別板にこのSSを転載する事があるかもしれませんが
その時までここに置かせてください
――追記――
スレでこの手の話題を出すと臭くて嫌われがちですが
何か短編を書きたかった気分のときに音楽を聴いていたら思い立ちました
ネタ明かしをすると
ボズ・スキャッグスの「We're all alone」がこの話の元になっています
よかったらみなさんも聴いてみてください
http://www.youtube.com/watch?v=XCxa03KOS7c
―――それでは良い進撃ライフを
ノシ
よかった
いろいろ議論されてる進撃最終話ですが、
こういう結末も私的にはありだな、と思いました。
素敵なお話を、ありがとう。
>>1
面白かったです! また書いてきて下さい!!
おもしろかった
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