エレン「ちょっと本気出すわ」 (27)
いつものように、エレンとアニが対人格闘訓練で一緒に組んでいる時だった。
アニ「本気?」
アニに足を蹴られ、エレンが力無く倒れ、そしてまた足を蹴られ。そんな堂々巡りを繰り返す対人格闘での訓練。
そんな日常で、いつもとは違う。規定事項から外れた、ある出来事が起こった。
エレン「ああ、そろそろやられ役にも飽きたし……もういいよな」
アニ「別に構わないけど……じゃあ、今までは本気じゃなかったのかい?」
だとしたら心外だけど、とアニが続けて言う。
エレン「いや、なんつーかな……その、アニも女の子だろ。だから手加減してたっていうか」
アニ「……は?」
予想外の言葉に、一瞬言葉を失う。
――あのぶっきら棒で無鉄砲なエレン・イェーガーが、女子だからという理由で手加減をしていた?
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えー
手加減できるエレンすかー、やだー
エレンとアニが対人格闘訓練で組む様になってから、既に2年半は経っている。
勿論、一緒に組む様になってからはそれなりに会話する仲になったし、訓練ではいつもアニが優勢だった。
そんな彼から、何故か今日突然に「本気出す」「女の子だから手加減していた」等と明言されたのだ。
アニが思い悩むのも無理はない。
エレン「そんじゃ始めてもいいか?」
そんな彼女を差し置いて、お構いなしに始めようとするエレン。
そうやって無鉄砲なところはいつも通りだ。
アニ「……まあ、いいや。取り敢えず来なよ」
アニは考えても無駄だと断念し、渋々とエレンの問い掛けに応じる。
エレン「そうか、なら遠慮なく行くぞアニ」
声を上げ、木剣を構えながら驀進する。
アニ「……隙だらけだよ」
そんな彼を見て、余裕の表情をするアニ。
結局、さっきのは戯言だったのだろうか。
このままいけば、いつもの様に蹴りを咬まして終わりだ。
そう思案しながら、彼女は撃攘する為の即応態勢をとる。接触するまであと1メートルだ。
エレン「喰らえ!」
――喰らうのはアンタだ。
そう確信して足を振り上げる。
が、その瞬間。
目の前から、エレンが消失した。
アニ「ッ……!?」
一瞬の出来事だった為、脳から命令を受けたばかりの脚はそのまま動作を継続させる。
誰も居なくなった場所に対し、アニは風切音を起こしながら風を蹴り上げた。
アニ「――は?」
そして、理解が追いつかずに佇む刹那。
突如背後から何者かによって首を持っていかれ、そのまま締め上げられる。
アニ「ぐっ……!?」
エレン「どうだ、アニ。降参するか?」
アニ「エレン……!? い、一体……どうやって……」
もう訳が分からなかった。
今現在、自分の首を締めているのは唐突にして目の前から消えたエレン本人なのだ。
エレン「ほら、どうするんだ?」
アニ「わ、分かった……降参する……!」
勝ち負けや対抗心を通り越して、アニの中では驚愕だけが渦巻いていた。
どうしたエレン...
エレンはきっとわたs・・ミカサを守るために強くなったに違いない///
>>8
アッカーマン、配置に戻れ。
そんなことよりパァンはどこですか?
エレンtueeeeは好きなので期待!!
アニ「……アンタ、一体どんな手品を使ったんだい?」
エレンから解放された後、一息入れてからアニが尋ねた。
エレン「おいおい、種明かしなんてしたらつまんないだろ」
それに対し、エレンはどこか小馬鹿にした口振りで答える。
アニ「……私は大真面目に質問してるんだ。茶化すんじゃないよ」
エレン「そ、そんな怖い顔すんなって……」
アニ「アンタに格闘術を教えてた私が馬鹿みたいじゃないか」
今度はさっきよりも一層低い声で言い放つ。無論、睨みを利かせながらだ。
エレン「……分かったよ。できれば言いたくなかったんだけどな」
アニの剣幕な表情に観念したのか、名残惜しそうにエレンはポツポツと語り始めた。
期待
エレンの原作での勝率の低さは異常だからな…期待
エレン「方法は至って簡単。お前の癖と、俺の瞬発力を利用しただけだ」
アニ「私の癖……?」
エレン「いや、厳密には癖かどうか分かんねーけど。お前って俺が突っ込んでくる時に限って、殆ど同じ蹴り技使うだろ?」
アニ「……まあ、あれは基本的な技だからね。ああいう場面では効果覿面なんだよ」
エレン「そんでもって、その蹴り技を使う時、絶対に左腕を頭に構えながら蹴ってくるよな」
アニ「うん、そうだけど」
エレン「その時、左腕を構えるのと一緒に左目も閉じるだろ? それが癖なのか故意なのかは知らんが」
アニ「……! 言われて見れば、確かに無意識の内に目を閉じてたな」
エレン「だよな。さて、前置きはこれぐらいにしてこっからは肝要を説明するぞ」
アニ「ま、まだ本気出してないし」
エレン「お前って、蹴る時の振動で右目が半分前髪で隠れちゃうだろ」
アニ「それがどうしたってのさ? 前置きは終わったんだから、さっさと肝要を話してくれよ」
エレン「まあそう急かすな。つまりだ、片目を瞑ってる且つ、目視できる方は前髪が邪魔で視界が狭い」
アニ「……」
エレン「しかも、左腕を左耳にくっ付けるように固定させてる所為で、お前の右目視野左方は肘が遮ってるはずだ」
アニ「……つまり、何が言いたい?」
エレン「すまん、分かりやすく趣意を噛み砕くとだな」
エレン「アニは左目を瞑っていて、視覚として機能させてるのは右目だけ」
エレン「しかし悪条件な事に、その右目の視界は前髪で半分隠れ、もう半分は肘で遮られている」
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
キルアさんかよ
顔の中心にパーツがよってるキルアか
地獄のエレン
エレン「前述のことを集約すると、お前は蹴る瞬間の間だけはほぼ盲目状態になるって訳だ」
アニ「……!」
エレン「でも飽くまでほぼ。辛うじて俺を視認できる程度にはまだ見えている」
エレン「だから、そこで俺はお前の瞬きを利用した」
アニ「………は?」
エレン「お前が目を閉じた一瞬を隙を突いて死角に移動、そして背後へ回り込んだんだ」
エレン「視界が悪く、視野範囲が狭くなっていたからこそ出来た荒技だよ」
アニ「いや、ちょっと待ってくれよ……今何て言った……? 瞬き?」
あのエレンがドヤ顔でアニに語ってると思うと笑えるなwwwwww
クスッときた
エレン「ああ、お前が瞬きした瞬間に瞬発力を活かして死角に入ったんだ」
アニ「馬鹿言わないでくれよ……アンタの瞬発力は瞬きにも劣らぬ速さだって言いたいの?」
エレン「……」
アニ「人間の瞬きの速さは平均で100ミリから150ミリ秒だ。そんな速さで掻い潜るなんて、あのミカサですら不可能だよ」
エレン「……いや、それが出来るんだよ。視界が狭くなってたその時のお前なら」
アニ「ッ……」
エレン「……はぁ、俺とした事が。つい意気揚々と得意げに語っちまったな……」
エレン「まあ、その、なんだ。今まで手を抜いてて悪かったなアニ」
ダメだ ドヤ顔想像して笑っちまう
ドヤ顔以外どんな顔で喋れと?真顔で語ってたら笑うわ。
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