リコ「イアンと結婚した」(36)


トントントントン

パラパラ

グツグツ

リコ「……うん、いい感じだ」

リコ「そろそろ帰ってくるかな?」

コンコン

リコ「おっ、丁度良いね」

期待


ガチャッ

イアン「ただいま、リコ」

リコ「お帰り。今日もお疲れさま」

イアン「ありがとう」

リコ「座って。今盛り付けるところだから」


カチャカチャ

リコ「今期の訓練兵の様子はどう?」

イアン「素質のあるやつが多くて感心するよ。まぁ、たいていは個性が強いんだがな」

リコ「へぇー、例えば?」

イアン「異常に食欲旺盛な奴とか、いつも無口なのに対人格闘の時間は饒舌な奴とか、頭悪いのに勘だけはいい奴とか」

リコ「楽しそうだね、イアン」

イアン「ん? 俺がか?」

リコ「うん。訓練兵の話し始めてから、ずっと顔が緩んでるよ」

イアンさんは神


イアン「ははっ。でも実際楽しいからしょうがないな」

イアン「俺はもう戦地には立てない。だから代わりに、俺の意思を継いでくれる若い戦士たちを育てるのは、本当にやりがいのある仕事だよ」

リコ「……もう三年になるんだな」

イアン「あぁ」

リコ「肩の調子はどう?」

イアン「大分良い。ただ、やはりもうブレードを握る力は出ないな」


リコ「そっか」

イアン「リコの方こそ、最近はどうだ?」

リコ「もう杖もサポーターも必要ないけど、まだ転びそうになることはたまにある」

イアン「おいおい、気をつけてくれよ」

リコ「わかってる。やっばり動かしにくいのは左足の方かな」

教官になったのか……俺も教わりたい

俺もリコとマンツーマンで保健体育の授業したい

怪我のおかげで幸せだな


イアン「あの奪還作戦からもう三年か……時間が経つのは早いな」

リコ「前線を退いてからしばらくは、お互い治療とリハビリで手一杯だったしね」

イアン「俺の職探しもな」

リコ「ピクシス司令に感謝しないとね」

イアン「お前の居る前で『リコの職場はお前の家でいいんじゃろ?』って言われたときは本当に焦ったが」

リコ「あわてふためくイアンを見るのは面白かったよ」


イアン「まぁそんな感じで、なんだかんだで結婚して」

リコ「しばらくはローゼの外の事情に疎かったよね」

イアン「まだ俺も仕事慣れてなくて、他の兵団の奴の話とか聞き出していられなかったからな」

リコ「たまに顔出してくるミタビからの情報が頼りだった」

イアン「あいつも出世したよな。あの若さでもう隊長とは」

リコ「働きが認められてよかったよ」


イアン「ミタビといえば、そろそろ来るころじゃないか?」

リコ「だろうね。丁度、私たちが夕食を食べ終える頃に――」

タッタッタッタッタッ

コンコンコン!

「お~い! イアン! リコ!」

イアン「来たな」

リコ「来たね」

良いなぁ…………(´;ω;`)

このたまらないほのぼの感
期待


ガチャッ

ミタビ「よぉ、元気そうだな」

リコ「おかげさまで」

イアン「久しぶりだな。ミタビ」

ミタビ「ん? おいイアン、お前ちょっと痩せたんじゃないか? ちゃんとリコの飯食ってるのか?」

イアン「当たり前だろ。多分筋力が戻ってきたんだ」


リコ「夕飯どうせまだなんでしょ? 座って」

ミタビ「おっ、いいのか。悪いなぁ」

イアン「いつも食っていくくせに何言ってるんだ」

リコ「少し多めに作るのも、暖めなおすのにももう慣れたよ」

ミタビ「いいことじゃないか。なぁ?」

イアン「調子のいい奴だ」


リコ「はい」コトッ

ミタビ「おおっ、うまそう」

イアン「うまそうじゃない。うまいんだ」

ミタビ「おーおー、ごちそうさま」

リコ「まだ食べてないでしょ」

ミタビ「いやー、もうなんかお腹いっぱいで」

リコ「なら片付けるよ」

ミタビ「いただきます」ガツガツ

良いね


イアン「最近はどうだ? ミタビ」

ミタビ「ん? あぁ、ふぉえがは」

リコ「飲み込んでから話しなよ」

ミタビ「んぐ……それがな、やっとトロスト区の扉の補強作業がすべて完了したんだ」

イアン「おぉ、やっとか。おめでとう」

リコ「お疲れ様。いろいろ大変だったね」


ミタビ「あぁ、全くだ。イェーガーは扉をふさいだはいいが、派手にやりすぎだ。ヒビだらけだったからな」

イアン「あのままの状態でまた百年単位でもつとは思えないな、確かに」

ミタビ「ヒビを埋めて、岩と穴の継ぎ目を丈夫にするのにも、あのデカさだからな。割ける人員にも限りがあるし」

リコ「それにしたって、壁教の連中が余計なこと言わなければ、もっと早く完了してただろうに……」ギリッ

イアン「リコ、イライラしない」

リコ「ごめん」

うわあああ・・・
期待

イアン「エレンは今、どうしているんだろうな」

ミタビ「調査兵団か」

イアン「カラネス区からの遠回りってことは、今まで以上に大部隊の行路開拓には時間がかかるんだろう?」

ミタビ「おまけに妙な知性型巨人もいるらしいからな」

リコ「知性型巨人?」

ミタビ「あぁ。詳しいことは明かされていないが、未だ捕獲にまでは至っていないらしい」

ミタビ「調査兵団の精鋭班も、そいつとそいつが引き連れる巨人のせいで、被害を抑えるのに精一杯みたいでな。防戦一方だ」


イアン「それでも、いずれは勝ってもらわねばならないな。我々人類のために」

リコ「もう私たちには、祈ることしか出来ないけどね」

ミタビ「人類勝利のために、か。こればっかりは流石に、俺にはどうしようもないな」

イアン「何言ってる。ミタビだって人類を勝利に導いているじゃないか」

ミタビ「トロスト区奪還作戦のことか?」

イアン「いや、それだけじゃないさ」


イアン「俺はな、ミタビ。兵士だったころからずっと思っていたんだ」

イアン「調査兵団は壁外で巨人と戦う。勝てばそのまま人類の勝利に繋がる。それは言うなれば、目に見える形の勝利だ」

イアン「一方で駐屯兵団の職務は、他の兵団と比べたら決して派手さはない」

イアン「だが、『壁を守る』ということは、そのまま『人類を守る』ということだ。だとしたら駐屯兵団は、どこよりも人類の勝利に貢献しているはずだ」

イアン「人類が生き永らえることこそが、人類の勝利なのだからな」

イアン「駐屯兵団の働きは、目に見えない形の勝利に繋がっているんだ」


リコ「そうだね。イアンの言う通りだ」

ミタビ「イアン……ありがとうな」

イアン「あぁ」

リコ「えっ、もうこんな時間なのか」

ミタビ「ん? おぉ、本当だ。俺はそろそろ戻るよ。明日も仕事だしな」

イアン「頑張れよ、ミタビ」

ミタビ「お前もな、イアン」


ミタビ「今日はありがとうな。ご馳走さま、リコ」

リコ「お粗末さま。またおいでよ」

ミタビ「もちろんそのつもりだ。リコの飯はやっぱりうまいな。毎日食べられるイアンが羨ましいよ」

イアン「まぁな。リコには本当に感謝している」

リコ「いきなり二人がかりで褒めるのやめてくれないかな」

ミタビ「ははっ、悪かったな」


ミタビ「じゃあな、イアン。元気でな」

イアン「またな、ミタビ」

ミタビ「リコ、体に気をつけろよ」

リコ「わかってる」

ミタビ「もうすぐだよな。連絡待ってるからな」

イアン「あぁ」

ガチャッ パタン…


リコ「さて、食器片づけるか」カチャッ

リコ「っと」フラッ

イアン「リコ!」バッ!

リコ「ありがとう。大丈夫だよ」

イアン「あまり心配かけさせないでくれ。もうお前一人の体じゃないんだから」

リコ「わかってる」


イアン「やっと家族が増えるんだな」

リコ「あぁ」

イアン「……」

リコ「楽しみで仕方ないって顔してるね」

イアン「当たり前だろ」

リコ「ふふっ」

ほお……銀髪の骨っぽい子供が生まれるのか……それだとなんか死神っぽいが


リコ「もうすぐイアンもお父さんか」

イアン「それを言うなら、リコだってお母さんだろ」

リコ「そうだね。早く会いたいな」

イアン「リコ」

リコ「何?」

イアン「本当にありがとう」


リコ「私もうれしいよ。イアンの子どもが産めて」

リコ「男の子かな。女の子かな」

イアン「男の子だったら、兵士になるって言い出したら、鍛えてやろう」

リコ「女の子だったら、お嫁に行くなんて言い出したら、イアンどうする?」

イアン「……泣くだろうな」

リコ「きっとね」


イアン「なぁ、リコ」

リコ「うん?」

イアン「……」

ギュッ

イアン「愛してる」

リコ「私も」




終わり

終わりです。久々の駐屯兵団組。イアンさんは絶対いいパパになる(断言)
読んでくださった方、支援してくださった方、ありがとうございました。

ほわほわってなった
面白かったよ

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