穂乃果「バトル・ロワイヤル」 (52)

※別の所で書いてたやつの続きです

前スレ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1723643381

海未ははっとした。にこの声がかすかに震えていることに気づいたからだ。

私は何を馬鹿なことを……この光景を見て冷静でいられる人間など─

海未が自分の浅慮を悔いた時、にこが来た方向から複数の足音が近づいてきている事に気づいた。

今度はにこがはっとする番だった。


にこ「馬鹿っ! いいって言うまで出て来るなって……!」


待ってはいられなかったのだろう。凛と真姫が、左右から絵里を支えつつ姿を現した。

凛も真姫も絵里も、誰も声をあげなかった。ただただ呆然と、目の前の光景を見つめている。

絵里がふらふらとした足取りで歩き出し、希だった物の側へ膝をついた。飛び散った血液が脚に付着しても気にした様子はない。

絵里「──」

絵里は何かを呟いているようだった。ぶつぶつと、言葉にならない音が周囲に広がる。

上半身のほとんどが血まみれの包帯で覆われた絵里の姿を見て、海未が息を呑んだ。


にこ「リエラの唐可可よ。絵里が助けようとしたところを襲ってきたそうよ」

海未「そんな……」

にこ「それで、穂乃果」

穂乃果「……」

にこ「希をやったのは?」

ぼんやりと座り込んだままでいた穂乃果が、にこの方へと視線を持ち上げた。

にこ「もう充分に分かったでしょ? 海未が言ったように、他のグループと協力するなんて絶対に無理だって」

穂乃果「……」

にこ「まだ私に人殺しなんてして欲しくないなんて甘い事言うなら─」

にこ「あんたの考えなんてどうでもいい。私は─アクアもリエラも皆殺しにしてやる」


穂乃果「……」

穂乃果「……アクアの……」

穂乃果「黒澤…ダイヤさん……」

ラ板で読んでた人来ないね。

にこ「……分かった」


ぽつりと呟いた穂乃果の言葉に対して、にこはそれだけ言った。一拍置かれた沈黙が、海未には恐ろしかった。


にこ「もう一つだけ。そいつは…黒澤ダイヤは、何か付けてなかった? 多分だけど、ゴーグルみたいな何かを」


穂乃果が小さく頷いたのを確認すると、にこは穂乃果から目を外した。聞きたいことは全て済んだようだった。

「ぅぇっ…」とむせ込むような声がして、凛の背中が丸まった。続いて、ぱしゃぱしゃという音とともに、足元に黄色っぽい液体が飛び散った。真姫が両手で包み込むように、凛の背中を抱きしめる。

一同の様子を見回した後、にこは再び海未に向かって言った。


にこ「海未、この子達の事はあんたに任せるわ。探知機の反応にだけ注意して、逃げることだけ考えなさい」

海未「……」

にこ「あんたと穂乃果がこの集落まで来た理由は聞かない。けど、今度は私の言う事を守れるわね?」


『にこは─?』その言葉を海未は呑み込んだ。分かりきった事を聞き返そうとする自分が愚かに思えた。にこはとっくに心を決めている。この益体もないゲームで生き残るために。

海未はにこが抱えているマシンガンに目をやり、自分に問いかける。

私には──出来ない。

希が亡くなっても、考えは変わっていない。自分にそんなことが出来るなど到底思えない。しかし──自分にはもう、にこに掛ける言葉が何も思い浮かばかった。


海未「分かり…ました」

にこ「頼んだからね」


鋭い、射抜くような目で海未に念を押し、にこは続ける。


にこ「まずは─夜明けまで待つ。黒澤ダイヤは間違いなく、夜目が効くようになる武器を持ってる。今すぐにでも殺してやりたいけど、視界が効かない中で襲われたら分が悪い」

にこ「朝が来たら私はここを出る。で、あんた達は制限時間が来るまでひたすら逃げる。それだけでいい。そうすれば─」

にこ「最期に生き残るのは私達よ」

にこが言葉を切ると、聞こえてくるのは絵里が繰り返す呟きだけとなった。最初は理解出来なかった音が意味を持った言葉になって海未の耳に飛び込んできた。

『殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる──』


海未はすがるように穂乃果を見た。

いつだって自分を勇気づけ、希望を見せてくれる幼馴染の姿を求めて。


穂乃果は希の亡き骸を見つめたまま、何も言葉を発しなかった。

02:05 黒澤ダイヤ






体が  熱い

しかし まだ倒れるわけにはいかない

一人でも多く

撃つ [ピーーー] 勝つ 生き残る

鞠莉さん

Aqoursを 

熱い

ルビィ    ルビィ   ルビィ──

糸が切れた人形のように、ダイヤの体からふっと力が抜け、手放すまいと必死に保ってきた意識がふいに遠くなり、消えた。

誰も読んでないよ。

02:15 渡辺曜





「千歌ちゃん」

小さく寝息を立てている千歌へ、曜が小声で声をかけた。

布団代わりの、申し訳程度に敷かれた落ち葉の上に横たわり、中身を取り出して大きさを調節したバックパックを枕にしている。

いつもの千歌なら起きるまでに少々時間を要したろうが、状況が状況だけに、曜の声にすぐに身を起こした。

「また…何かあったの?」

こわばった顔で自分を見つめる千歌に対して、曜は首を横に振った。

「ううん。交代の時間だよ」

「! もうそんなに経ったんだ……」

千歌が手元の端末に目を落とし、呟いた。


果南達と別れてから、二人は曜と鞠莉が身を隠していた場所へ戻っていた。曜は闇雲に動き回るより、朝を待ってから行動を開始するべきだと判断し、自分が見張りを買って出た。

曜は朝が来るまで自分一人で見張るつもりだったが、千歌がそれに対して強硬に反対し、仕方なく交代で見張りをすることになったのだった。

曜としては当然、千歌一人で見張りをさせる訳にはいかないと思った。それでも押し切られてしまったのは、正直、休まないと保たないと思ったからだ。

日付が変わって数時間、曜は体に鈍い疲れを感じていた。ライブが終わった時の心地良い疲れではなく、まとわりつくような不快な疲労感。

誘拐され、聖良を目の前で殺されて、今もまだ殺し合いのゲームに巻き込まれている最中なのだ。神経が参ってしまっても仕方がないと言える。


「音に注意して見張ってたけど、あれからは何も聞こえてこなかったよ」

千歌が頷き、不安そうに曜を見た。

「果南ちゃんと鞠莉ちゃん、大丈夫かな…?」


少し前に(それもそう離れてはいないと思われる距離から)聞こえた爆発音。何が起きたのかは千歌も曜も想像したくなかった。ここを離れようとも考えたが、下手に移動するよりここに留まっている方がまだ安全だと判断した。

「考えても仕方ないよ。無事でいてくれる事を祈ろう」

曜が諭すように言う。

言いながら、自分が妙に落ち着いていることに気づいた。あの音で誰かが死んだかもしれない。それでも、ゲームが始まったばかりの頃と比べて、それほど動揺はなかった。

時間が経つにつれて、今の状況に適応していっているらしい。

そう思うと、自分の中身が別の誰かに入れ替わってしまったような、不思議な感覚がした。

「うん……」

千歌の表情は晴れない。誰にも無事でいられる保証などないことは、千歌にもよく分かっているようだった。


「千歌ちゃん、とにかく今は朝を待とう。何をするにも話はそれからだよ」

朝──

ルール通りならば朝の6時に、死亡した人間が伝えられる。全てはそこからだ。死んだメンバーの数によって、殺さなければならない人間の数も決まる。

Aqoursの誰かが一人だけ死んでいたなら、他のグループから二人ずつ殺す。いや、違う。南ことりはもうダイヤさんが殺したんだった。その場合は最低でもμ’sから一人、Liella!から二人だ。いずれにしても、朝になればはっきりする。他のグループがどれだけやる気か、Aqoursの中でダイヤさんと私以外に戦える子は─

「曜ちゃん」

曜の思考は千歌の呼びかけによって中断された。千歌はじっと曜の目を見つめている。曜が今何を考えているのか、そこを見れば見透かせるかのように。

「ちょっと前に言った通りだからね。私も……私もやるからね。曜ちゃんにだけ押しつけたりしないからね」

千歌が曜の右手を取り、両手でぎゅっと包み込んだ。曜の右手には女子高生には不似合いな黒い銃が握られている。

その銃が小刻みに揺れ始める。千歌の両手の震えが、そのまま伝わっているらしかった。

こんなところで書いてたのか
続き見れて嬉しい

>>19
こんなところまで見に来て頂けるとは……!

ありがとうございます、相変わらず亀みたいな更新速度ですがよろしくお願いします

「千歌ちゃん」

曜が空いていた左手を千歌の手に重ね合わせる。

「私も言ったよ、千歌ちゃんには人は殺せないって」

「そんなことっ……!」

「いいんだよ、千歌ちゃんはそんなこと考えなくていい。見張りを代わってくれるだけでも充分助かってる。私が──Aqoursを勝たせるから」

曜はそこで言葉を切り、その話はそれでおしまいと言わんばかりに、すくっと立ち上がった。

「銃は私が持ってるから。何かあったらすぐに起こして」

眠りにつくつもりは全くなかった。ただ千歌を納得させるために、体を横たえるだけにするつもりだった。

「……っ」

曜が千歌の横を通り過ぎる間、千歌は唇を噛み締めていた。

千歌を守る。曜はそれだけを考えていたため、当の千歌がどんな思いでいるのかまでは考えが至らずにいた。

02:27 松浦果南





東側の拠点エリアから北へおよそ百数十メートル。端末の表示上では東側の拠点エリアから一コマ分上の位置の森の中で。

草木が揺れる音の後に、微かな光線が踊っている。

「はっ……はっ……………っっ…」

果南は涙で滲む視界を必死に凝らして、懐中電灯の光の先を追い続けていた。

鞠莉の最期の姿は目に焼きつき、最期の言葉は頭の中に響き続けている。

鞠莉は逃げろと言った。言葉の通り、一度は集落を離れかけた果南を連れ戻したのは、突如聞こえた爆発音だった。

瞬間、果南の頭に浮かんだのは─ダイヤの姿だった。

鞠莉はもう……いない。

その上ダイヤまで失ってしまったら、私はきっとどうにかなってしまう。曜が言っていた通り、私がダイヤの側にいても何も変わらないどころか、邪魔になるだけかもしれない。それでも……

「嫌だよ……見捨てられないよ……逃げてなんかいられないよ…!」


果南は爆発音があった場所を中心に、集落から距離を取って円を描くように捜索を続けていた。

爆発音の後には何も音は聞こえてこなかった。ダイヤの武器は銃だけだ。μ’sのメンバーが使った武器が爆弾なら、そこで一度戦闘は途切れたはずだ。戦闘が継続しているなら、銃声が聞こえてくるはずだから──

果南はそこまで考えて動いていた訳ではなかった。ただ、ダイヤに会いたいという気持ちだけが彼女を突き動かしていた。

「……!!」

捜索を続ける果南の動きが突然止まった。

視界が悪い事で鋭敏になった嗅覚が、不快な臭いを嗅ぎ取った。

微かに漂ってくるそれは、ここ数時間で何度も経験した─血の臭いだった。

果南は驚きを感じつつも、臭いのする方向へ脚を踏み出していた。それほど恐怖を感じなくなっている自分には気づいていないようだった。

歩を進める度に血の臭いはどんどん増していく。別の誰かである可能性も頭をよぎったが、確かめずにはいられなかった。


数分の後─果南の持つ懐中電灯の光が地面に倒れ伏したそれを暗闇の中に浮かび上がらせた。

「…………ダイヤ……?」

発した声が疑問形になったのは、それがダイヤである確信が持てなかったからだった。それほどまでにその人物の身体の傷は深く─

「ダイヤっ!!」

果南はすぐさまその人物の傍らに膝をつき、顔を確認した。見知った顔だった。顔の半分ほどが赤黒い血に覆われていても、見間違えるはずがない。ダイヤだった。

果南がもう一度名前を呼ぶ前に、誰かを呼ぼうとするかのように、ぴくりとダイヤの口元が動いた。


生きてる──ダイヤは…まだ生きてる……!

果南は溢れ出しそうになった涙をぬぐい、言った。

「たすける……絶対助けるからっ!」

02:30 桜内梨子






島の西側、波打ち際に程近い林の中。

そこでは微かに波の音が聞こえ、潮の香りが漂ってくる。今そこにいる人物にはそんな事を気に留める余裕はなかったけれど。

Aqoursの桜内梨子は膝を折ってうずくまり、両手で耳を塞いでいた。ゲーム開始から唯一、敵にも味方にも遭遇していないのは彼女だけだった。

最初の内は他のメンバーを探そうと動いていた彼女だったが、時間を置いて聞こえてくる不吉な音が、一人で行動する勇気を奪っていった。

今はただ、暗闇の中に一人、震えている事しかできない。禁止エリアの確認も、周囲への警戒も、自分がしなければならない以上、眠りにつく事も出来ない。


(光が欲しい……)


何度思ったことだろう。

光が欲しかった。この暗闇を切り裂き、救いをもたらしてくれる眩い光が。

02:30 桜内梨子島の西側、波打ち際に程近い林の中。そこでは微かに波の音が聞こえ、潮の香りが漂ってくる。今そこにいる人物にはそんな事を気に留める余裕はなかったけれど。Aqoursの桜内梨子は膝を折ってうずくまり、両手で耳を塞いでいた。ゲーム開始から唯一、敵にも味方にも遭遇していないのは彼女だけだった。最初の内は他のメンバーを探そうと動いていた彼女だったが、時間を置いて聞こえてくる不吉な音が、一人で行動する勇気を奪っていった。今はただ、暗闇の中に一人、震えている事しかできない。禁止エリアの確認も、周囲への警戒も、自分がしなければならない以上、眠りにつく事も出来ない。(光が欲しい……)何度思ったことだろう。光が欲しかった。この暗闇を切り裂き、救いをもたらしてくれる眩い光が。

(誰か……誰か……!)

梨子は心の中で思い続ける。自分をここから救い出してくれる誰かの存在を。

「光をもたらすのはあなたですよ、リリー」

梨子はぱっと顔を上げた。今、確かに聞こえた。私に語りかける声が。

「あなたがこの戦いに終止符を打ち、世に光をもたらすのです。それこそがあなたの役割、あなたの使命です。光の戦士リリー」

(光の戦士…? あなたは…? あなたは誰なんですか?)

「リリー、リリー。勇気を奮い立たせて悪を打ち砕くのです。あなたこそが…あなたこそが…」


梨子は一人、ぶつぶつと呟き続けている。

極度の緊張と疲労が少しずつ、確実に梨子の精神を蝕んでいた。

ひぇっ……

02:48 平安名すみれ






「ねぇ、花陽はLiella!の中だと誰推しなの?」

すみれは前方に向けていた目をぱっと横に移した。突然問われた花陽は面食らったのか、目を丸くし、困ったように少しだけ眉を下げた。

「え、えっと……」

「遠慮しなくていいのよ、正直に言ってみなさい。あ、もしかして私?」

すみれはふふっと笑い、肩を揺らした。すみれの笑顔につられたのか、花陽は少しだけ笑顔を浮かべると、ぽつぽつと話しだす。

「……選べないです、皆さん好きなので。箱推しってことになるんでしょうか」

「何よもう、当たり障りのない回答ねー」

すみれが大げさに唇を尖らせると、花陽はまた困ったように眉を下げた。

二人の間に、僅かな沈黙が訪れる。


「……ああそうだ。私さ、妹がいるんだけど─」


すみれは無理やりにでもその沈黙を埋めようと、再び話しだした。花陽と二人で見張りに入ってから、何度も繰り返していることだった。

四季とルビィが北の灯台へ来てから、二人ずつ見張りに立とうと提案したのはすみれだった。異論を唱える者はなかった。四季の姿を見て、誰もが一人で見張りに立つ事が恐ろしくなっていた。

何があったのか。それはまだ四季から聞き出せてはいない。話が出来るような状態ではなかったからだ。今、四季の事はメイに任せている。


「妹がいるって言うと、羨ましがられたりする事もあるんだけどね。姉っていう立場、たまに重かったりするのよね」


すみれは花陽と会話をしようと言葉を紡いでいる訳ではなかった。ただただ、何となく思いついた言葉をそのまま吐き出しているだけだ。

そうしていないと、すぐに四季のこぼした言葉に考えが向かってしまうから。

『恋先輩が──』

血に染まった四季の両脚が頭に浮かぶ。

あの血は……恋は、まさか……

「昔は親からお姉ちゃんなんだから、とか言われて欲しい物我慢させられた事もあるし、損な役回りだったりするのよね」

すみれは上の空でつらつらと言葉を並べていく。頭の中には恋の姿が浮かんでは消えていく。

「まぁそんな事言っても、やっぱり妹の事は可愛いもんだから。あの子に何かあったら私が飛んでいくけどね」

独り言なのか何なのか、喋っている本人にもよく分かっていない。ただ、恋の事を考えないようにするために脈絡もなく話を続けているだけだ。

「……すみれさん」

ずっと黙って話を聞いていた花陽が、そこで初めて口を挟んだ。

花陽はすみれの手を取り、勇気づけるように両手で包み込んだ。

「私も……怖いです、すごく不安です。でも、ここにいる皆さんのおかげで何とか耐えられてます」

花陽はすみれの目をまっすぐに見つめて言った。

「すみれさん、言ってくれました。ここにいる人達は絶対に、殺……争い合ったりなんてしないようにしようって。協力してここから出る方法を考えようって。すごく─勇気づけられました」

「頼りにならないと思いますけど、私も一緒ですから。何があっても、皆で…何とかしましょう」

花陽の言葉を聞いて、すみれは自分が宣言した事を思い出した。

そうだ─何があっても、私達は殺し合いなんてしない。協力してここから出ると、そう誓ったんだ。


「……ありがとう、花陽」


しっかりしなさい、平安名すみれ。私が動揺していたら、周りの子達まで不安になる。

諦める訳にはいかない。何があっても。何が起きていたとしても。

02:55 米女メイ






灯台の中には花陽達が食事を取った部屋の他に幾つかの小部屋が存在し、綺麗とは言えないまでも、必要最低限の調度類が備えつけられていた。

その一室、木製のベッドの縁に腰掛けた四季は、暗く、生気が削がれた目を向いに座るメイへ向けた。

「……『これ』が始まってから私が経験してきた事は、今ので全部」

四季は全てをメイに話した。μ’sのメンバーと出会ってから起きた事の全て。大怪我を負った絢瀬絵里に血液を提供した事。その怪我を負わせたのが可可である事を知った事。それを知ったμ’sのメンバーに殺されかけた事。逃げ出した先で、恋が何者かに撃たれた事。思い出せる事の全てを。

聞き終えたメイはしばし沈黙した後、ぽつりと呟いた。

「なんだよ………それ……」

ずっと探してたSSがこんなところで見つかるとは。
続き読みたいです!
更新まってます!

こっちでやってるの知らんかった
続き期待ったら期待よ!

光の戦士枠で不覚にも草

初投稿の頃から見てたから続き嬉しい

>>34-37
レス感謝です、励みになります!

『協力し合おうとしているのは私達だけじゃないはずだ』

数時間前の自分の言葉がメイの頭に浮かぶ。

続いてμ’sとAqoursのメンバー全員の顔、顔、顔、そこに、合同ライブの知らせを受けて可可と手を取り合って喜んだ時の記憶が混ざり込み、次に浮かんできたのはピアノの鍵盤に向かう自分と恋の姿、メイの隣にいる恋が目を細めてこちらに笑いかけ─


「……っ」

メイはぐちゃぐちゃになった思考を振り払うようにぎゅっと目を閉じた。一呼吸置いて再び目を開けて、四季を見つめる。

「四季は…大丈夫なんだよな。そこ以外、怪我してないんだよな?」

メイは包帯が巻かれた四季の左腕に目をやった。話にあった、絵里に輸血するために使った左腕。

四季はメイが言及した事について少し驚いたのか、僅かに目を見開いた後、おずおずと頷いた。

「……そっか」

メイは立ち上がり、四季の方へ歩き出した。戸惑っている本人をよそに、そのまま四季の顔を自分の胸へと抱き寄せる。

「怖かったよな。辛かったよな」

メイの胸に顔をうずめたまま、四季の両手がメイの背へ回った。くぐもった声が聞こえ、やがてそれが嗚咽に変わっていく。

「可可先輩も、恋先輩も、まだ会えていない皆も─今、どうしているかは分からないけど」

四季を抱きしめながら、メイが呟いた。

「私はここにいるよ。私も四季も、まだ生きてるよ」

四季の泣き声が徐々に大きくなっていく。それが止むまで、メイは四季の事を抱きしめ続けた。

(そうだ、まだ生きてる。私たちはまだ──)



部屋の外、扉の前から僅かに床が軋む音が響いた。メイも四季もそれには気がつくことはなかった。

03:04 黒澤ルビィ




ルビィは出来るだけ音を立てないようその場から離れるつもりだったが、年季を感じさせる変色した木製の床はルビィの思いを裏切った。

ぎしっ、という音が響き、飛び上がりそうになるのを何とか堪える。

そのまま数秒間、じっと身を縮こまらせていたが、幸い、中の二人が扉の外を確認しに来る事はなく、ほっと胸を撫で下ろした。

今度こそ音を立てないよう、慎重に脚を移動させる。目指すのは通路の突き当たり、扉が開け放たれた部屋だ。

足を忍ばせて歩くうち、ルビィの脳裏に姉のアイスを盗み食いした記憶が蘇った。あの時も見つからないよう夜中にこっそり起き出して、こうして歩いたものだった。緊張感は比べものにならないけれど。

扉が開け放たれた部屋に、滑り込ませるように身体を入れる。開閉の際に音が出る事を危惧して開けたままにしておいたのはやはり正解だったようだ。何事もなかったように、ゆっくりと扉を閉める。

中では善子がベッドに身を横たえて、小さく寝息を立てていた。

血塗れの四季の姿を見た衝撃よりルビィに会えた安心感が勝ったのか、善子は眠りにつく事が出来たようだった。つまりは─ルビィとは正反対だった。

ルビィはそっと善子の側に腰を下ろした。目を閉じて、先ほど盗み聞いた話を思い返す。

μ’s、Liella!……話に出てくる人達は姉と何度も語り合った名前だった。怪我をしたという絢瀬絵里は姉が大好きなスクールアイドルだ。その怪我を負わせたという唐可可の事だってルビィは知っている。四季達を殺そうとしたμ’sのメンバーの事も─


「……ぅゅっ…」


ルビィは声を上げて泣き出しそうになるのを何とか堪えた。

どうしても信じられなかった。自分の大好きなスクールアイドルがそんな事をするはずはないと。

「………ん…………ルビィ…?」

善子が僅かに身じろぎをした後ルビィの姿を認め、ゆっくりと身体を起こした。

「……泣いてるの?」

善子は俯いたままのルビィを抱き寄せて頭を撫でる。

「大丈夫、大丈夫よ。きっと何とかなるから…」

善子の体温を意識しながら、ルビィは自分の頭の中にある恐ろしい考えが形作られていくのを感じた。

さっきの話は─本当に…本当なんだろうか?

もしもあの血が、誰かを襲って付いた物だとしたら──?

03:26 嵐千砂都





千砂都はイメージトレーニングは得意だった。ダンスを踊る前、身体が思い通りに動くイメージを固めるのは大切だと教わっていたからだ。

今、自分が行なっているイメージトレーニングも非常に大切なものだと断言出来る。もしも想像通りにこなせなければ、そこで全てが終わりになってしまうかもしれないのだから。


もう一度、最初からやってみよう。

呼吸を整える、目の前の目標をよく見る、両手でしっかりと構える、無心で、右手の指先に力を込める──


「千砂都先輩…」

何百回目かのイメージトレーニングは途中で終わり、千砂都は声のした方へ顔を向けた。夏美が怖いものでも見るかのような引き攣った顔でこちらを見ている。

「交代、の時間ですの…」

夏美はほとんど卑屈といってもいいくらいの表情で千砂都に告げた。

もうそんな時間か、と千砂都は思った。イメージトレーニングに没頭しすぎて時間の感覚が狂っていたようだった。

「じゃあお願いしようかな。大丈夫だと思うけど、逃げ出そうとしたらすぐ撃つんだよ?」

千砂都がクロスボウを手渡すと、夏美は「ひっ」と声を上げた後、こくこくと頷いた。

無理だろうな、と千砂都は思った。しかし、人質(人生でこんな単語を使う事になるとは夢にも思わなかった)は逃げないだろうという確信があったので、気にはしなかった。

念のため──仮眠を取る前に、もう一度釘を刺しておく事にしよう。

千砂都は腰からダガーナイフを抜き出し、冷たく光る抜き身の刃を地面に横たわる人質の首筋にぴたりと当てた。

死んだように身動き一つしていなかった花丸の身体が、びくっと反応した。

「花丸ちゃん、もう一回言うね。勝手に動いたり、声を上げたりしたらダメだからね?」


ささやくように伝えると、かたかたと奥歯が触れ合う音が聞こえてきた。返答としてはそれで充分だった。

千砂都は満足そうに微笑むと、ナイフを鞘に収めた。その様子を見る夏美は、千砂都の姿がどんどん遠くに離れていくような錯覚を覚えていた。

文体が原作っぽくてイイネ

>>48
めっちゃ嬉しいお言葉です、ありがとうございます!

03:38 桜小路きな子




ここに来てどれくらい経ったろう?

きな子はふと作業をする手を止めた。左手で握っていた細長い枝と、右手に持ったナタ(可可の武器だ、付着していた血は洗い流した)を傍らに置いた。周囲には細かい木屑と木片が散らばり、まるで彫刻家が傑作を生み出そうと苦心した後のようだった。

可可と出会い、ここ─南側の拠点エリアに着いてから現在に至るまでの事を、きな子は思い返した。

期待

まだかな

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