【最上最愛カップルの1日】有栖川夏葉 (76)
【One day ーMaybe I love youー】
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『……カット! オッケーです! 以上をもちまして有栖川夏葉さんオールアップです!』
夏葉『ありがとうございました!』
……………………
P『夏葉、撮影お疲れ様』
夏葉『プロデューサー。お疲れ様』
P『今回のCMのスポンサーさんも喜んでいたぞ。「旦那さんの後ろからついていくのではなく、旦那さんと共に、時には前を歩いて旦那さんを支えるこれからの時代のお嫁さんの在り方がよく表現できてた」って』
夏葉『あら…ふふ、とっても嬉しいわ。お嫁さん役なんて、少し不安もあったから』
P『花嫁衣装は着たことあるのに?』
夏葉『それとはまた違うのよ。今回は旦那さんの役者さんもいたし、演じるのは結婚後の生活でしょう? 既に強いものになったふたりの絆とか、そういうものを表現しなければならなかったから』
P『まあ…確かにな。でも、まるで本当のお嫁さんみたいに見えたよ』
夏葉『そう?』
P『ああ。旦那さんとジムで汗を流したり、お嫁さんが車を運転したり…アテ書きなのもあって「夏葉がお嫁さんになったらこんな感じなんだろうな」って思った。夏葉の顔を見てたらこっちまで旦那さんが羨ましくなっちゃったよ』
夏葉『…』
P『夏葉をお嫁さんにできたら幸せなんだろうなって……はは、ちょっと感情移入しすぎて気持ち悪いかな?』
夏葉『…そう』
P『…夏葉?』
夏葉『……そう、思う?』
P『え?』
夏葉『私がお嫁さんになったらアナタは、幸せだろうなって…』
P『え。あ、ああ…』
夏葉『…そう、そうなのね…』
P『……あ、いや別に、夏葉をそんな目でー』
夏葉『プロデューサー』
P『う、うん?』
夏葉『私この前、有名な監督のワークショップを受けてきたって話したでしょう?』
P『あ、ああ』
夏葉『その時ね、今回のCMの話の相談をしたの。「結婚どころか恋愛すらまともにしたことのない私が、どうしたら役者の演じる旦那さんを本当に愛しているように見えるか」って』
P『…』
夏葉『そしたらね、こう言われたの「演じるからといって役者本人に恋人や旦那さんがいる必要はない。君にとって旦那さんのような存在…一緒にいるだけで信頼できて安心する、パートナーのような存在は誰か思い浮かべてみてごらん」』
P『……ああ』
夏葉『その言葉を聞いて真っ先に思い浮かんだのが、プロデューサー、アナタよ』
P『…!』
夏葉『私がもし、いつか、誰かと一緒になった時。私の隣にいるのがアナタだったら……どんなに私は幸せだろう。心から笑顔になれるだろう。そう思ったの。さっきまでの撮影で私が見せた表情も、目線も、声も…全部、アナタに向けたものよ』
P『夏葉…』
夏葉『だから、その、つまりね?』
夏葉『ー多分私、アナタのことが好きなのよ!』
【Morning ーHere Comes The Sunー】
ピピピピッ…ピピピピッ…
P「ん……」カチッ
P「ふぁ…」ノビー
P「あ…台風行ったのか…ん?」
カトレア「……」ジー
P「お、カトレア、おはよう。起こしに来てくれたのか」ナデナデ
カトレア「…」フリフリ
P「夏葉は…久しぶりの休日だし、もう少し寝かせてあげよう。な?」
カトレア「…」コク
P「よし、じゃあ朝ごはん用意しよう。先にリビングに行って待っててくれ」
カトレア「ワンッ」トテトテ
夏葉「すぅ…」
P(…)
P(…こうして寝顔を見ると、夏葉もまだまだ女の子って感じだな。…頬っぺた柔らかい)ツンツン
夏葉「ふぁ…」
P(…キス、したいな)
P「…おはよう、夏葉。ん…」
夏葉「ん……ふぁ、ぷろでゅーさー…?」
P「え、あ、ごめん。起こしちゃったか?」
夏葉「……おはよう」
P「うつらうつらって感じだな。まだ朝早いし寝てたらどうだ?」
夏葉「うん……あら?」
P「どうした?」
夏葉「天気が…!」
P「ああ。台風、夜のうちに行ったらしいな」
夏葉「わぁ…! プロデューサー、ベランダに出てみましょうよ!」グイグイ
P「え、あ、おい」
ガララッ
夏葉「見てプロデューサー! すごく晴れてるわ!」
P「…ああ。台風一過ってやつだな。空気が澄んでて気持ちがいいな」
夏葉「これなら洗濯物もすぐ乾くだろうし、絶好の散歩日和ね! 久しぶりにカトレアを遠くの公園まで連れて行こうかしら」
P「ああ、そうだな。……改めて夏葉、ありがとうな。泊めてくれて」
夏葉「ふふ、アナタは私の大切な「パートナー」なのよ? ずぶ濡れで帰すわけにはいかないわ」
P「俺の為のジャージが用意されてたのはびっくりしたよ」
夏葉「本当はアナタのトレーニング用に買っておいたのだけど…備えあればってヤツね。サイズもピッタリで、似合ってるわよ!」
P「ああ、ありがとう。…いい天気だな、本当」
夏葉「ええ…! んーっ! 最高ね!」バッ
P「…」
夏葉「ふふ、ここ最近ずっと雨だったから。太陽の光を思いっきり浴びたの。少し子どもっぽいかしら」
P「…いや、素敵だ、すごく。清々しくて…綺麗だ」
夏葉「ふふ…ありがとう」
P「うん…」
夏葉「…♪」
P「…台風一過と言えばさ」
夏葉「え?」
P「子どもの頃、台風一過の「いっか」を家族の「一家」だと思っててさ、台風の家族が移動してるんだねって…」
夏葉「…くすっ、可愛いじゃない。でも、どうして急にそんな話を?」
P「いや、ふと思い出してな…そういう話、お互いあまりしたことあまりないだろ? だから…」
夏葉「ええ、そうね。…もっと聞かせて欲しいわ」
P「ああ…ん?」
カトレア「…」ジー
P・夏葉「!?」ビクッ
P「ご、ごめんカトレア! お腹減ったよな! すぐに用意するから!」
夏葉「ごめんなさいカトレア! アナタのことを忘れてたワケじゃなくて…すぐ行くわ!」
カトレア「ワンッ!」
P「あはは、カトレアに悪いことしたな…行こう、夏葉」
夏葉「あ、その前に…プロデューサー、こっちを向いて?」
P「え?」クルッ
chu♪
P「!」
夏葉「…ふふ。おはよう、プロデューサー!」
【Daytime ーHey Cattleyaー】
P「な、夏葉…」
夏葉「…あら? どうかしたのプロデューサー?」
P「少し、休ませてくれ…!」
夏葉「もうギブ? まだまだやれるでしょう?」
P「いや、ちょっと、限界…!」
夏葉「久しぶりだから、まだまだ物足りないのだけど…」
P「少し休んだら、また付き合うから…!」
夏葉「…約束よ?」
P「ああ、約束…!」
夏葉「…わかったわ」
P「あ、ありがとう…」
夏葉「ーねえ、カトレア!」
カトレア「ワンッ!」
夏葉「プロデューサーが疲れてしまったから、少し木陰で休憩しましょう? おいで、カトレア!」
カトレア「ワンッ!」ダッ
P「っふー…疲れた…」バタン
夏葉「あら、大丈夫?」
P「ああ。最近夏葉とトレーニングしてるし体力ついたと思ってたんだけどなあ…」
夏葉「ええ、アナタは確かに体力ついてきてるわよ。でも、私の方こそ、久しぶりにカトレアと遊べるのが楽しくて…」
P「え? いやいや、夏葉とカトレアは悪くないよ。きっと、ふたりに負けないくらい体力つけてみせるから…!」
夏葉「…ふふ。ええ、楽しみにしてるわ! …さ、プロデューサー」ポンポン
P「…?」
夏葉「鈍いわね、膝枕してあげるわ」
P「いやでも、外だし…」
夏葉「今はあまり人もいないようだし私も変装しているから大丈夫よ」
P「うーん…」
夏葉「…プロデューサーは私の膝枕、嫌なのかしら…?」
P「……では、よろしくお願いします
夏葉「ふふ、よろしい。……どう、プロデューサー? 気持ちいい?」
P「ああ。夏葉、あったかいな。ジャージ越しでもわかるよ」
夏葉「鍛えてるから、あまり柔らかくはないと思うけど…」
P「それがいいんだよ。夏葉が頑張ってるんだなって身をもって感じられるというかさ」
夏葉「…アナタはいつも優しいのね。ありがとう」
P「こちらこそ……ありがとう」
夏葉「ふふ…」
カトレア「…」ジー
P「カトレアも、俺に合わせてくれてありがとうな…この後また遊ぼう」ナデナデ
カトレア「…」ペロペロ
P「あ…カトレアが、俺の手を…!」
夏葉「ええ、カトレアなりに感謝を伝えてるのよ。「一緒に遊んでくれてありがとう」って」
P「カトレア…こちらこそ、ありがとうな」
カトレア「ワンッ」ポフッ
P「おっと…はは、カトレアはふわふわだ…」
夏葉「…ふふ、すっかりふたりも仲良しね?」
P「そう…なのかな。そうだと嬉しいな…」ナデナデ
夏葉「ええ、そうよ。カトレアがそんな風に身体を預けて甘えるの、私と私の家族にしかしないもの」
P「カトレア…」
夏葉「…はじめの頃は少し警戒されていたものね」
P「そうなんだよ。付き合う前に夏葉の部屋に行った時はそんな感じじゃなかったのに」
夏葉「私を取られてしまうんじゃないかって心配だったのかもしれないわね。ずっと一緒だったから…」
P「そんな…カトレアは夏葉の大切な家族だろ。俺にとっても大切な存在だよ」
夏葉「…ええ。アナタのそういうところ、カトレアもわかってくれたのよ。ね、カトレア?」
カトレア「ワンッ」
夏葉「ふふ…」
P「…カトレアと夏葉、本当に仲がいいよな。たまに少し…」
夏葉「少し?」
P「…妬く時があるよ」
夏葉「ふふ、アナタも可愛いわね…」ナデナデ
P「ちょ…汗でベトベトしてるから…」
夏葉「いいえ、気にならないわ。ただ、そうね、もっといいリンスを使った方がいいとは思うけど…」
P「あはは、夏葉らしいな…」
夏葉「よかったら今度一緒に選んであげるわ」
P「ああ、お願いするよ……さてと、それじゃあ再開しようか!」
夏葉「あら、もう大丈夫?」
P「ああ、久しぶりの天気なんだ。いつまでも休んでられないしな!」
夏葉「ふふ、それじゃあボール遊びはさっきしたから…一緒に走りましょうか! カトレアも思いっきり走りたいでしょうしね! まずはそうね、10キロを目標にしましょう!」
P「え、それはいきなりハードすぎじゃあ…」
夏葉「当然ペース配分は考えるし、私がそばにいるから大丈夫よ。それに、カトレアもね。…あんまりだらしないと、カトレアが私とアナタの交際を認めるのを考え直してしまうかもしれないわよ?」
カトレア「…」ジー
P「……ふたりに負けないくらい体力つけてみせるって言ったしな。あんまりだらけてもいられないか。…よし!」ガバッ
夏葉「それでこそよ! プロデューサー!」
P「ああ! 夏葉にふさわしい男だって思ってもらえるように頑張るぞ! なあ、カトレア!」
カトレア「ワンッ!!」
【Evening ーDrive My Carー】
P「あー、さっぱりした!」
夏葉「はい、スーツ乾いてたわよ」
P「ありがとう。久しぶりに思いっきり運動した気がするよ」
夏葉「ふふ、身体を動かすとストレス解消になるでしょう? カトレアも大満足よ。ぐっすり寝てるわ」
P「ああ、それにシャワーがいつも以上に気持ちいいな」
夏葉「水、飲む?」
P「いただくよ。ありがとう」
夏葉「…」ジー
P「…? どうした夏葉」
夏葉「…プロデューサー、なかなかいい身体になったわね」
P「え、そうか?」
夏葉「ええ! 出会った時より身体も引き締まって筋肉がついているのがワイシャツ越しでもわかるわ」
P「言われてみれば…最近少しシャツがキツい気がするんだ」
夏葉「ふふ、努力の証ね! 素晴らしいわ!」
P「夏葉にそこまで言われると嬉しいよ。でも、夏葉の身体も本当に綺麗だよなあ」
夏葉「あら、そう思ってくれる?」
P「ああ。しなやかで、まるで彫刻みたいで…」
夏葉「ふふ…♪」
P「腹筋も、見るだけだとあまりわからないけど触ると…」
夏葉「……どうしたの?」
P「……ごめん。その、夏葉の腹筋触った時の反応思い出して…」
夏葉「っ! ………もう! は、恥ずかしいから、忘れてちょうだいっ」
P「あんな可愛い夏葉、忘れられるわけないだろ。その後のことも…」
夏葉「〜〜もうっ!」ポカポカ
P「いててっ、ごめん、ごめん!」
夏葉「……もう」
P「ごめんなさい…」
夏葉「…お詫びとして、今日は私の晩酌に付き合ってもらうわ!」
P「え、夏葉ってお酒飲むのか?」
夏葉「普段はあまり飲まないのだけどね。たまにはそういう日もあるのよ。ワインが飲みたい気分ね! プロデューサーは?」
P「さすがにいつまでもお邪魔するのも悪いしお暇しようと思ってたんだけど…」
夏葉「えっ」
P「明日お互い朝早いしさ、晩御飯までいただいちゃったらそのままもう一泊しちゃいそうだし…」
夏葉「……」
P「…夏葉?」
夏葉「…オムライス、好きだって」
P「え? あ、ああ。そんな話もしたっけ」
夏葉「…アナタにオムライス食べて欲しくて練習したのだけれど…」
P「うっ…」
P「うっ…」
P(夏葉のシュンとした顔、弱いんだよな…。そんな顔されたら…)
P「…や、やっぱり、もう少しいようかな!」
夏葉「!」
P「俺のために練習してくれたんだろ? そんなこと言われたら食べないわけにはいかないよ。夏葉の作ったオムライス、ぜひ食べたいな」
夏葉「プロデューサー…! わかったわ! 最高のオムライスを食べさせてあげる! お酒もせっかくだもの。いいものを飲みましょう!」
P「よし! お付き合いするよ。それならスーパーに買い物に行かなくちゃだな。夏葉、車の運転頼んでいいか?」
夏葉「あら、今、免許持ってないの?」
P「事務所に置いてきちゃったみたいだ」
夏葉「…そう。残念ね。アナタに運転して欲しかったのだけれど。それならそうね、今度のお休みにとっておこうかしら」
P「それはいいけど…あれ? 前に確か、ご両親に大学進学祝いに買ってもらった大切な車だから誰にも運転させられないって」
夏葉「ああ、そんなことも言ったわね。…でも今はアナタに運転して欲しいわ。そして、連れて行って欲しい場所があるの」
P「…どこへだって連れて行くよ。でも、いったいどんな風の吹き回しだ?」
夏葉「そうね……多分、私がアナタを好きだから、よ。さ、行きましょう!」
夏葉(…Beep beep’m beep beep yeah♪)
【Night ーTell Me Whyー】
P「…ごちそうさまでした!」
夏葉「ふふ、お粗末さまでした。お味の方はどうだったかしら」
P「ああ、すっごく美味しかったよ! 夏葉、本当に上達したな。合宿の頃は…」
夏葉「もう、そんな昔のことは忘れてちょうだい。特訓したのよ。努力でできないことはないものね」
P「夏葉のそういうところ、本当にすごいよ。ありがとうな」
夏葉「いいのよ。アナタに喜んでもらえてとっても嬉しいわ♪ …隠し味も、効いてたみたいだしね」
P「え、隠し味?」
夏葉「ええ! 何だかわかるかしら?」
P「……まさか、プロテ」
夏葉「…」プクー
P「ごめん、冗談だよ」
夏葉「…もう。私、料理のこと勉強したのよ。プロテインが何にでも合うわけじゃないって知ってるわ」
P「むしろ合うものの方が少ないと思うけど…それなら何だろうな?」
夏葉「ふふ、何かしら?」
P「もしかして……愛情、とか?」
夏葉「ーっ!?」
P「え?」
夏葉「あ…」
P「え、まさか、正解…?」
夏葉「い、いえ、厳密には、うん。違うわ。ウイスキーよ。ただ…」
P「ただ…?」
夏葉「料理を作っている時に、ずっとアナタの顔が浮かんだの。そうしたら、「絶対に美味しいオムライスを作ってみせる」って思えて。だから……正解と言えなくも、ないかも、知れないわね…」
P「…」
夏葉「…」
P「…夏葉、顔、赤い」
夏葉「ワインのせいよ。…それを言うなら、アナタだって」
P「…ワインのせいだよ」
夏葉「そ、そう…」
P「……愛情、か」
夏葉「も、もう! 掘り返さないでったら!」
P「ご、ごめん。でも、夏葉に愛されてるんだなって思って……嬉しかったんだ。すごく」
夏葉「…当たり前じゃない。そんなの」
P「そっか。……愛情、か」
夏葉「…? プロデューサー?」
P「……なあ、夏葉」
夏葉「…何?」
P「ひとつ、聞いてもいいか?」
夏葉「隠し味の話ならもう話さないわよ」
P「いや、そうじゃなくて。……夏葉は、俺のことなんでー」
夏葉「「なんで俺のこと好きになったのか」って話なら、答えは前と同じよ。覚えてないわ」
P「…そっか」
夏葉「…そんなに気になるの? 私が、アナタを愛してるということに、疑問がある?」
P「それは疑っていない……と、思う。ただ…わからなくて」
夏葉「わからない?」
P「……ああ。俺、夏葉と付き合えて本当に幸せだよ。こんなにひとりの女性としても人間としても尊敬できて信頼できる人と結ばれるなんて、夢みたいだ」
夏葉「…」
P「…だからこそ、かな。やっぱり思っちゃうんだよな。「なんで俺を好きになってくれたんだろう」って」
夏葉「……そんなに真剣に考えてたのね」
P「…ああ。女々しくてごめんな。でも、幸せであればあるほどっていうか…」
夏葉「……ごめんなさい」
P「え?」
夏葉「わからないの。だから、どうしてアナタのことを好きになったのかは答えられないわ。でも、アナタのことは心から愛しているし好きなところは何個も言える。これじゃダメ、かしら?」
P「…」
夏葉「…アナタは明確に答えられる? 「あの日、あの時、こういう理由でアナタを好きになりました」って」
P「……いや、できないかもしれない」
夏葉「でしょう? …私、「好き」ってそういうものだと思うのよ。恋の終わりには理由はあっても、恋のはじまりには理由なんて必要ないの。理由を答えられる人は、後から辻褄を合わせてるだけって思うわ。少なくとも、私はね」
P「…」
夏葉「前にも話したけど……アナタが初恋の相手なの、私。気づいたら、いつの間にか、アナタのことしか考えられなくなって、アナタの顔が見たくて、声が聞きたくて…そしてある時、「ああ、これが恋なんだ」って思ったの。恋を知った喜びと、未知の感覚へのほんの少しの恐れの混じったこの感情…これが「誰かを好きになる」ってことなんだって思ったわ」
P「…夏葉」
夏葉「あの言葉にできない巨大な感情にあれこれ理由をつけてスケールを矮小化させたくないのよ」
P「…そっか」
夏葉「でも、これだけは言えるわ。「有栖川夏葉は、アナタのことを心から愛している」ってね。アナタと結ばれる為なら、アイドルとプロデューサーという一線を越えてしまいたい。そして、そのことで降りかかる全ての障害もアナタとふたりなら乗り越えられる自信と覚悟があるって。そう思ったから、私は、あの時ー」
P「……ぐすっ」
夏葉「……プロデューサー?」
P「…そっか、そうだよな…夏葉は、俺を選んでくれたんだもんな…」
夏葉「……ええ」
P「…俺も、おんなじだ。いつの間にか、夏葉に俺のことをひとりの男性として愛して欲しいって思うようになって…いつも、夏葉が頭の片隅にいて…」
夏葉「…うん」
P「…夏葉に告白された時、信じられなかったし、信じられないくらい嬉しくて…それで、決めたんだ。「何があっても俺が夏葉を守るんだ」って…」
夏葉「プロデューサー…」
P「だけど…あー…恥ずかしい話なんだけど…今の俺が夏葉にふさわしい男になれてると思えなくて、努力して、それでもまだ夏葉は、有栖川夏葉の背中は遠い気がして…。だから、夏葉がこんなに俺のこと想ってくれるのも知らずに、夏葉の俺への想いに疑問を持ったりして、自分の弱さをごまかそうとして……ごめん。本当に、ごめん」
夏葉「…プロデューサー」
P「…」
夏葉「…Pさん」
P「…!」
夏葉「…顔、上げて?」
P「…ああ」
夏葉「ん……」
P「!……」
夏葉「……ぷはっ。ふふ、少し、お酒くさいわ」
P「夏葉…」
夏葉「教えてあげる。……アナタって、すごいのよ?」
P「…」
夏葉「「目指すならトップだけ」なんて開口一番に言う、荒唐無稽な夢を持つ私を信じてくれて、支えてくれて、導いてくれて…そうして今もまだ、トップを目指して共に走り続けてくれている。アナタは私をすごい人だと思っているのかもしれないけど、そんな私が私でいられるのは、そばにアナタがいるからなのよ。Pさん」
P「……ありがとう」
夏葉「それはこっちのセリフよ。私を選んでくれて、ありがとう。私を愛してくれて、私に相応しい男になろうとしてくれて、ありがとう…Pさん」
P「…こっちこそ、本当にありがとう、夏葉。夏葉みたいなすごい人にそう言ってもらえて、幸せだ」
夏葉「…ふふ、アナタの方がすごいのよ。アナタが私に相応しい男になろうとしている努力の、私はさらにその上をいく努力をしてるのよ? 私にそこまでさせるなんて、やっぱり、アナタはすごいのよ」
P「お…」
夏葉「お?」
P「…俺は、そのさらに上の努力をー」
夏葉「なら、私はそのもっともっと上を!」
P「…」
夏葉「…」
P「…はは」
夏葉「…くすっ、これじゃあ、キリがないわね?」
P「…ああ、ずっと言い合ってそうだ」
夏葉「…いつだったか、こんなやり取りしたわね」
P「そういえば、そうだな…」
夏葉「…ふふ、私たち、似た者同士なのかしらね。お互い、負けず嫌いで、意外と繊細で…」
P「…そうかもな」
夏葉「これからも負けず嫌い同士、共に高め合って頑張りましょうね? 目指すなら、世界一のカップルよ!」
P「世界一のカップル、か……はは、よくわからないけど、なんだかすごいな」
夏葉「ええ、すごいのよ!」
P「……ありがとう、夏葉」
夏葉「ふふ、どういたしまして。…アナタ、意外と泣き上戸なのね?」
P「実は…うん。だからあんまりお酒飲まないようにしてるんだ」
夏葉「あら、そうなの…」
P「…夏葉も顔、赤いぞ」
夏葉「これはお酒のせいよ。赤くなりやすいの。……さっきはともかく今は、ね」
P「…可愛いなあ」
夏葉「…アナタもね?」
P「…夏葉」
夏葉「…なあに?」
P「…愛してるよ。どうして好きになったのかわからないけど、この気持ちは本当だ。好きなところも、たくさん言える」
夏葉「…私こそ、愛してるわ。どうして好きになったのかわからないけれど、この気持ちは本当よ。好きなところ、アナタより多く言えるわ」
P「なっ…いや、俺の方がたくさん」
夏葉「そう? じゃあ勝負してみる?」
P「の、望むところだ」
夏葉「じゃあ、そうね…あ。ふふっ…」
P「浮かんだか?」
夏葉「ええ! 意外とお酒に弱くて、泣き虫だけれど、そんなところも可愛くて好きよ」
P「からかうなよ…」
夏葉「ふふっ♪ ……ねえ、Pさん」
P「ん」
夏葉「もし、また弱音を吐きそうなことがあったら遠慮せず言ってね。私が全部受け止めてあげるから」
P「…ああ」
夏葉「そしてその時は、あの言葉を言ってあげるわ」
夏葉「「頑張れ」って!」
【True End ーTwo Of Us ー】
夏葉「……プロデューサー、もう寝ちゃった?」
P「……いや、起きてるよ」
夏葉「そう…」
P「…どうした?」
夏葉「いえ、何でもないの。呼んでみただけ」
P「…そっか」
夏葉「ええ…」
P「…結局、もう一泊することになっちゃったな」
夏葉「ふふ、泣き虫のPさんをなだめなくちゃいけなかったもの」
P「泣き虫って…あれは、ワインのせいで…」
夏葉「はいはい、そういうことにしておいてあげるわ」
P「…夏葉だってあの後、酔って少し泣きそうになってたじゃないか。肩に頭乗せて甘えてきてさ」
夏葉「な、泣きそうにはなってないわよっ。少し、色々思い出してたら、その、涙腺が緩みそうになっただけで……でも、泣いてないわ! き、鍛えてるもの」
P「涙腺を?」
夏葉「え、ええ」
P「夏葉はストイックだなあ」
夏葉「もうっ、そんなからかい方…アナタだってあの後、私に頭を撫でられてたら」
P「は、恥ずかしいから忘れてくれっ」
夏葉「アナタが言うなら私も忘れてあげないっ」
P「…」
夏葉「…」
P「…ははっ!」
夏葉「ふふ…!」
P「夏葉、そんな子どもっぽいところあったんだなあ」
夏葉「アナタだって…」
P「似た者同士、なのかもなやっぱり」
夏葉「ええ、本当に! ……ねえ、プロデューサー?」
P「ん?」
夏葉「手、貸してくれないかしら」
P「いいけど…」
夏葉「ありがとう……ん」ピトッ
P「…夏葉?」
夏葉「ふふ、アナタの手、暖かいわ」
P「…夏葉の頬っぺたは、すべすべしてて気持ちいいよ。朝も触ったけど」
夏葉「あら…いたずらっ子ね」
P「ごめんごめん」
夏葉「ふふ…♪」スリスリ
P「夏葉…」ナデナデ
夏葉「プロデューサー…♪」
P「…あれ、そういえば、俺の名前…」
夏葉「…ああ、さっきのは特別よ。私がアイドルである限りは「プロデューサー」と呼ばせてもらうわ」
P「えー…」
夏葉「えーじゃないわ」
P「こうしてふたりきり…あ、いや、カトレアもいるけど…の時はさ…」
夏葉「ダメよ。そうしたら普段プロデューサーと呼ぶのがなんだか距離が遠くなったと感じてしまうじゃない」
P「……ふーん」
夏葉「…な、何よニヤニヤして」
P「いや、夏葉は可愛いなって」ワシャワシャ
夏葉「ちょ、髪型が崩れるでしょ! やめなさいったら!」
P「夏葉が可愛いのが悪い!」
夏葉「もう! もう! ……さっきまであんなに弱気だったのに。急に元気になって」
P「夏葉のおかげだよ」
夏葉「もう。調子いいんだから……ともかく、当分はプロデューサー呼びを改める気はないわ」
P「えー…当分って、いつまで?」
夏葉「そ、それは……私とアナタが、いつかアイドルとプロデューサーじゃなくなって、その……」
P「あ…」
夏葉「…わ、わかってたでしょそう答えるって。聞いといて照れないでよ…」
P「いや、いざ冷静に考えるとそうなんだなって…」
夏葉「…もう」
P「あー…ごめんごめん」
夏葉「…もっとアナタは堅い人だと思ってたわ」
P「…がっかりしたか?」
夏葉「…そんなワケないって、知ってるクセに」
P「…ありがとう、夏葉」
夏葉「…こちらこそ、よ。……プロデューサー?」
P「何だ?」
夏葉「いつか、同じことを言ったけど。この先、どんな未来になってもー」
夏葉「ーそばにいて……?」
夏葉「私の、有栖川夏葉の人生は、アナタとふたりのものなんだから。出会ってからの思い出も、まだ見ぬ未来も」
P「…ああ。約束だ。ずっとそばにいるよ。俺の人生も、夏葉とふたりのものなんだから。ずっと、ずっと、一緒だ」
夏葉「…約束よ。誰よりも大切な、私のプロデューサー…」
夏葉「…ふふ♪」
途中で夏葉が歌っていた曲は個人的夏葉のイメージソングでビートルズの『Drive My Car』です。
有栖川夏葉は最高です!
それでは、またの機会に。
乙乙。
俺もこんな良い女が欲しいなあ。釣り合いが取れる男になるのが先だが…
このSSまとめへのコメント
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