橘ありす「いい加減にしてください」 (45)


書き溜めてない&見切り発車



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ありす「いい加減にしてください」

P「えっ」

ありす「だから!いい加減にしてほしいって言ってるんです!」

P「えっ、えっ?何?何が?」

ありす「とぼけても無駄です!私は怒ってるんです!」

P「全く心当たりがないんだけど……怖…キレやすい若者怖ぁ…」

ありす「本当に心当たりがないんですか!?」

P「ない…ハズ……だけど」


ありす「ではしょうがないので教えてあげます」

P「あ、はい。よろしくお願いします」

ありす「ヒント」

P「教えてくれるんじゃないのかよ」

ありす「2日前のことです」

P「2日前?」

ありす「はい。2日前です」

P「………なぁ」

ありす「はい」

P「一昨日って俺ありすに会ってないよね?」


ありす「そうですね、会ってないです」

P「会ってないのに怒らせることってある?」

ありす「会ってないからこそ怒らせることもある。って前にクラスの先生が言ってました」

P「先生の教育方針が気になる」

ありす「って先生のことはどうでもいいんです!話を逸らさないでください!」

P「先生の話題振ってきたのはそっちなんだよなぁ…」

ありす「ヒント2」

P「だから教えてくれるんじゃないのかよって」


ありす「朝です」

P「朝…?いつも通り起きて出社しただけだけど?……午前中だって至って順調というか、問題なんて起きなかったぞ?むしろ珍しいくらいだ」

ありす「その日の行動をよく振り返ってください!朝、家を出る前です!」

P「まるで2日前に俺が家出るまでにしたこと全部知ってるみたいな発言なんだけど」

ありす「だからなんですか!私は怒っているんです!」

P「うんうん。怒っているって言えばなんでも有耶無耶にできると思うなよ?」

ありす「いいからきちんと思い出してください!今はそんなことは重要じゃないんです!」

P「なんなんだよもう…別に…起きて、前の日の晩飯の残りをチンして食べて、歯磨いて、顔洗って、着替えて、家を出た……だな。別に何もないだろ」


ありす「本当にそれだけですか!?」

P「えぇ…?」

ありす「本当にそれだけですかって聞いてるんです!」

P「本当にそれだけだよ…嘘つく理由ないでしょ……あ、そういえば」

ありす「そういえば?」

P「起きて朝一でケータイを確認したな。着信とかもきてなかったから確認しただけだけど」

ありす「前提が間違っています!なんで起きたところから始まるんですか!」

P「そりゃ起きたところから始まるだろうよ」


ありす「ヒント」

P「ねぇいい加減教えて?」

ありす「プロデューサーさんが寝てる間のことです」

P「それ俺どうしようもなくね?」

ありす「心当たりは!」

P「あるハズがないよね」

ありす「はぁー…」

P「なんでそんなにデカい溜め息がつけるのか疑問なんだけども」


ありす「寝てる間にまゆさんに頬ずりされてたじゃないですか!」

P「いや知らんがな…って待って!?俺寝てる間にそんなことされてたの!?」

ありす「その日は私の番だったんですよ!?」

P「なんだよそれ!ありすの番ってなんだよ!?怖!?」

ありす「プロデューサーさんもプロデューサーさんです!順番抜かしをした人はきちんと拒絶してください!」

P「順番守ってても拒絶したいわ!」


P「え?いや、待って?俺毎日家帰った時に鍵閉めてるよね?…ってひとに聞くのもおかしいんだけどさ」

ありす「そりゃ泥棒とか変質者が入ってきたら困りますからね、戸締りはしっかりしてくださいね」

P「質問の答えになってないのですが」


ありす「これでわかりましたね!?なんで私が怒っているのかを!」

P「筋違いも甚だしいよね」

ありす「なんでですか!」

P「まゆが2日前に俺の家に忍び込んできていて、しかもその日は本来はありすの順番だったと」

ありす「だからそう言ったじゃないですか」

P「…常習なの?」

ありす「はい?」

P「いや、常習的に俺の家に忍び込んでるの?」

ありす「え?当たり前じゃないですか、何言ってるんですか?」

P「もうヤダこの子達怖い…」


ありす「さて、私が怒っている原因もきちんと理解してくれたみたいですし」

P「理解とも納得とも程遠いんだよなぁ…」

ありす「プロデューサーさんは2日前の埋め合わせをしなければいけません」

P「ねぇ」

ありす「はい」

P「それまゆに怒るべきでは?」

ありす「何言ってるんですか?」

P「キョトンとした顔するのやめてくれる?」

ありす「それだと私はまゆさんをkissをしなくちゃいけなくなるじゃないですか」

P「俺とするつもりだったのも驚きなんだけど」


ありす「いや…でもまゆさんとか…それはそれで興味がありますね」

P「あ、その時は是非俺もギャラリーとして観戦させてください」

ありす「まぁそれはそれとしてですね」

P「はい」

ありす「プロデューサーさんは2日前の埋め合わせをしなければいけないのです」

P「だからおかしいよねって言ってるよね」

ありす「しかも本来なら昨日のうちにプロデューサーさんから埋め合わせをしたいって言ってくるべき所なのに心当たりがないとまで言われたんですよ」

P「ねぇもしかして常識ないの俺の方なの?ありすが当たり前のように話進めてくるから自信なくなってくるんだけど」


ありす「なのでまゆさんが行った頬ずりなんかよりももっといいことをして埋め合わせをしてもらう権利が私にはあるはずなんです」

P「まゆの頬ずりに関しても許容してないけどね」

ありす「なので私はプロデューサーさんとkissをするんです」

P「色々とおかしいよね。なんかキスじゃなくkissって言ってるのがちょい気持ち悪い」

ありす「LiPPSの皆さんの教育の賜物です」

P「美嘉ー!出てこぉーい!!LiPPSの保護者担当だろー!仕事しろぉー!」

ありす「さて、プロデューサーさん…むちゅ~」

P「顔がタコみたいになってるぞ、アイドルの自覚持て」

ありす「むちゅ~」

P「しかしアイドルとキスをするわけにはいかないので俺は逃げる!」


ダッ!


P「バイバァーイ!残念だったな!」


ありす「むちゅ~…」

ありす「…………」

ありす「……あれ?プロデューサーさん?」

ありす「しかたない人ですねぇ…」パンパン (←手を叩く音)


早苗「探し物はこれかなー?」ガチャ

P「おいやめろ簀巻きはヤバいっていつもは手錠じゃんなんで今日に限って簀巻きなの」

早苗「はぁ~い、大人しくしててねぇ~」

ありす「ありがとうございます、早苗さん」

早苗「いいっていいって!それじゃあ約束のアレ、貰ってもいいかしら?」

ありす「約束ですからね。どうぞ、プロデューサーの合鍵3日間レンタル券です。……本当は私が使うつもりだったのですが」

P「看過できない発言ばかりなんだが」


ありす「さて、簀巻きのプロデューサーさんとkissをするのもいいかもしれないですね…」

P「ねぇ合鍵レンタルってどういうことなの」

ありす「レンタルというのは何かを貸したり、何かを借りることをいいます。合鍵というのは、家の鍵などを複製したものですね。スペアキーなんて言う人もいます」

P「単語の意味を聞いてるんじゃないんだよ」

ありす「じゃあなんなんですか」

P「なんで俺の家の合鍵が出回ってて、しかも貸出がなされてるんだよ」

ありす「なんだっていいじゃないですか、そんな些細なこと」

P「カケラも些細なんかじゃないんですが!?」

ありす「それよりプロデューサーさん。むちゅ~…」

P「うわぁタコ顔ありすが迫ってくる!今度は逃げたときにすぐ分かるように目を開けている!怖い!キモい!怖い!」


???「うふふ。そうはいきませんよぉ?」

P「うわっ!」グイッ

ありす「あっ!プロデューサーさんを持っていかないでください!まゆさん!また横取りですか!?」

まゆ「うふふ。簀巻きのプロデューサーさんなんてまさに毛を刈られた羊そのもの…恨むなら、他の狼に横取りされる前に仕留めきれなかった自分の無力さを恨んでくださいねぇ?」

P「ねぇまゆ」

まゆ「なんですかぁ?」

P「あの話って本当なの?」

まゆ「どの話ですか?まゆとプロデューサーさんが明日発売のゴシップ誌にすっぱ抜かれることですかぁ?」

P「なにやってんだ馬鹿野郎!俺聞いてないぞ!あれだけ気をつけろって言ったじゃないか!」

まゆ「大丈夫ですよぉ。インタビューにはしっかり『結婚を前提で』って言っておきましたから♪」

P「なにを基準に大丈夫って言ってるのこの子」


ありす「まゆさん!どうして順番抜かしなんてしたんですか!」

P「あ、そうそうそれそれ。それが聞きたかった」

まゆ「なんでって…それは勿論、その前日の夜にプロデューサーさんがまゆの名前を呼んだからですよぉ♪」キャー!

ありす「そ…そんな…!?」

P「…………全く心当たりがないんだが」

まゆ「そんなこと言っても無駄ですよぉ。きちんとデータはあるんですからねぇ?」

P「ねぇ待って。それってつまり録音したってこと?家にいる俺の声を録音したってこと?」

まゆ「はい♪」

ありす「今日のプロデューサーさんは察しが悪いですね…体調でも悪いんですか?」

P「なんで俺の体調を心配されてんの…おかしいのは君たちの心の調子でしょう…?」


ありす「だいたい!その夜はプロデューサーはまゆさんの名前なんて呼んでいません!」

P「なんでありすがそんな自信満々に否定できるの…もしかして」

まゆ「いいえ、プロデューサーさんはまゆの名前を呼びましたよぉ♪なんなら聞いてみますか?」

ありす「はい。デタラメじゃないっていうなら証拠をみせてほしいです」

P「なんでさっきから俺のことなのに俺が一番蚊帳の外なの」

まゆ「それでは再生しますね~」カチッ


音声プレイヤー『あんたがったどこさ~ ひーごさ~ ひーごどーこさ~ くーまもとさ~ くーまもとどこさ~ せんばさ』

音声プレイヤー『せんーば山にはたーぬきがおってさ~ それーを猟師が鉄砲で撃ってさ 煮てさ~ 焼いてさ~ 食ってさ~』

音声プレイヤー『それーを木の葉でチョッとかーぶーせ』


まゆ「ね?」


P「ね? じゃないが」

ありす「どこにまゆさんの名前があったんですか」

P「確かに俺は風呂場で『あんたがたどこさ』を歌ったけども」

ありす「まゆさんの名前なんてどこにも入ってないじゃないですか!」

まゆ「鈍いですねぇ。では分かりやすいように再生しますね」カチッ


プレイヤー『あんたがったどこさ~ ひーごさ~ ひーごどーこさ~ くーまもとさ~ くーまもとどこさ~』

プレイヤー『ひーごどーこさ~ くーまもとさ~ くーまもとどこさ~』

プレイヤー『どーこさ~ くーまもとさ』

プレイヤー『さ~ くーま』


まゆ「ね?」

P「嘘だろぉ!?」


P「いやそれはおかしいだろどう考えても」

ありす「くぅ…!確かに言ってます…!佐久間って言ってます……!」

P「なんでやねん。言ってねーよ」

まゆ「しかもプロデューサーさんがこれを言っていたのはお風呂場…つまりその夜プロデューサーさんは全裸でまゆのことを求めたんです!」

P「んなわけがあってたまるかよ」

まゆ「もし仮にありすちゃんが逆の立場だったらどうしますか?」

ありす「私が逆の立場だったら…」

P「相手の立場で物事を考えられるなら俺にも配慮してよ」

ありす「私がまゆさんの立場だったら…!行きます!行くに決まってるじゃないですか!だって裸のプロデューサーさんに求められたんですよ!?行くに…決まってるじゃないですか…!」

P「来るなよ」

まゆ「分かってくれたようですね…あれは仕方のないことだったんですよ」

P「分からないで。仕方ないことじゃないよね?なんで風呂場の発言すべて筒抜けって前提が疑問視されないの」


まゆ「それではまゆはこの簀巻きデューサーさんとよろしくやりますね」

ありす「ダメです!プロデューサーさんとよろしくするのは私です!」

P「なにやめてとりあえず盗聴とかやめてくれるまでは君達の誰ともよろしくしたくないんだけど」

まゆ「よいしょ…よいしょ……プロデューサーさん、ズボンが脱がせられないのですが」

P「簀巻きにされてるからね!無理でしょ!」

まゆ「ズボン脱いでください」

P「人の話聞いてた?簀巻きを解かない限り無理よ」

まゆ「でも簀巻き解いたらプロデューサーさん逃げるじゃないですか」

P「そらそうよ」

まゆ「じゃあ解きません」

ありす「プロデューサーさん!」

P「なんだ」

ありす「今日もまゆさんを選ぶんですか!?」

P「今日『も』ってなんやねん。っていうかこれどう見ても俺がまゆを選んでる風景じゃないでしょ。簀巻きにされてるんだぞ俺。そしてまゆは俺を縛ってる縄を持ってるんだぞ」


ありす「でもプロデューサーさん抵抗しないじゃないですか!」

P「できないだけなんだよなぁ…できたらとっくにしてるんだよなぁ…」

まゆ「お話は終わりましたか?ではまゆはプロデューサーさんをいただいていきますねぇ!」バッ!

ありす「あぁ!まゆさんが窓を突き破って脱出を!」


バン!
ドサッ


まゆ「割れなかった…痛い…」

P「…そういえばこの前ちひろさんが窓ガラスの素材を水族館の水槽と同じ素材にしてたな…防犯がどうのって言って」

ありす「…………」

まゆ「…………」

P「どうすんのこの空気」

まゆ「お、オホン…」

ありす「…………」

P「…………」

まゆ「ではまゆはプロデューサーさんをいただいていきますねぇ!!」バッ!

P「おい馬鹿やめろ無かったことにしてTake2するんじゃない!」


ありす「あぁ!まゆさんが窓を突き破って脱出を!」

P「律儀にTake2付き合ってあげなくていいから!くそぅ簀巻きにされてるから止めにも行けない!」


バン!
ドサッ


まゆ「いたい……」

P「なんでもう一回やったの」

まゆ「一回失敗したくらいで落ち込むな、諦めるなってプロデューサーさんが」

P「うん。まぁそんなことを言った気もするけどこれは違うよね?気持ちの強さじゃなくて物理的な強さが必要だったよね?」

ありす「…………」

P「ほら、ありすもどう対処していいか困ってるじゃん。小学生に気を遣わせるなよ…」

まゆ「はい……」

ありす「まゆさん…」

まゆ「…ありすちゃん!」

ありす「は、はい!」


まゆ「まゆはプロデューサーさんをいただいていきます!」ダッ!

ありす「あぁ!まゆさんが窓を…って今度は入口のドアから出て行きました!?」

まゆ「さようならありすちゃん!」タタタタッ

P「簀巻きにされた成人男性を引きずりながらこの速度で走れるっておかしいだろ」ズルズル

ありす「プロデューサーさぁん!…くっ!こうなったらやむを得ませんね!」パンパン (←手を叩く音)

乃々「装填済みなんですけど…」


P「おいまゆやばいぞ、猟銃持ってる乃々さんのおでましだ」

まゆ「障害が大きいほど燃えますねぇ♪」

P「いいから俺を置いて逃げろ!俺を置いてだぞ!簀巻きを解い状態の俺を置いて逃げるんだまゆ!」


ありす「やっちゃってください!まゆさんの持ってる縄を!」

乃々「そんな難しい狙撃なんて、無ぅ~理ぃ~」ダァン!!


ダン!

P「痛って~~~!!!!」


まゆ「ほらほら乃々ちゃん!どこを狙ってるんですかぁ?まゆにはかすりもしてないですよぉ~?」

P「俺にはガッツリ命中してるんだよなぁ…」


ありす「乃々さん!まゆさんの持ってる縄を撃ってプロデューサーさんを開放するんです!プロデューサーさんの体を撃ってどうするんですか!」

乃々「そんなこと言われても…」

ありす「報酬下げますよ!」

乃々「それは嫌なんですけどぉ…」


P「うわヤバい、乃々がまた銃を構えたぞ。情け容赦がないなぁ」

まゆ「うふ。望むところです♪」

P「俺は望んでないんで離してくれますか?」

まゆ「いやですよぉ」


乃々「森久保は狩人…今日の森久保は狩る側の人間!」ダァン!!


ダン!

P「痛って~~~!!!!!」

まゆ「当たってないですよぉ~?うふふふ。」

P(ん…?撃たれたところの縄が切れてる…これなら力を入れれば解けるぞ!ありがとう乃々!)


ありす「あぁ!またプロデューサーさんに当てた!」

乃々「ひぃっ!ごめんなさい…やっぱり森久保は…ダメ久保でした…」

ありす「もう…じゃあ次頼む時はダメ久保じゃない乃々さんを見せてくださいね」

乃々「ありすちゃん…」

ありす「では、はいこれ。今回の報酬です。2回外したので2本減らしていますが」

乃々「これで森久保はしばらくは生きていけますぅ…」

ありす「まったく…貴重なプロデューサーさんの髪の毛をこんなに要求するなんて…切れ毛も抜け毛も無限にあるわけじゃないんですよ…」


P「フフフ…まゆ…フフフ」

まゆ「うふふ。プロデューサーさんもこれから行うまゆとの夜の個人レッスンのことに思いを馳せてるんですねぇ。分かりますよぉ」

P「まだ午前だけどな」

まゆ「まゆの部屋に着いたらすぐにでも始めましょうねぇ。夜の個人レッスン」

P「女子寮なら今から歩いて行ってもまだ昼ころだけどな…っていうか女子寮でするつもりなのかよ!?」

まゆ「うふふ…勿論ですよぉ♪」

P「……まゆ」

まゆ「なんですかぁ?」

P「さっきから簀巻きにされてない俺が隣で並走してるんだけど不思議に思わないのな」

まゆ「え?」

まゆ「………………」



まゆ「!?」


P「そら!簀巻き状態でいいようにやられていたお礼だぁ!」グルグルグル!!

まゆ「あ~れ~」

P「どうだ!まゆを簀巻きにしてやったぞ!」

まゆ「プロデューサーさんに縛り付けられてしまいましたぁ♪」

P「なんで嬉しそうなの」

まゆ「まるで『まゆは俺のものだ』『誰にも渡すものか』と言わんばかりの荒々しい束縛……」

P「どういう受け取り方だよ…」

まゆ「束縛の激しい人は独占欲の強い人だってこの前読んだ雑誌に書いてありました…あぁ♪まゆはプロデューサーさんに独占されてしまうんですねぇ♪」

P「やけに物理的な束縛だな」


P「さて、じゃあ簀巻きまゆはあの部屋においておくか」

まゆ「放置ですか…?最初からそういうアブノーマルなのは………って待ってください!この部屋はデレステルームじゃないですか!部屋の中なのに海と砂浜と照りつける太陽がすごい所がないですか!」

P「そうだが?」

まゆ「今日焼け止め塗ってないんですよぉ!?服も着たまま身動き取れないしこの部屋じゃ暑くて死んじゃいます!っていうかこの部屋数ヶ月前からずっと常夏なんですけど!」

P「大丈夫大丈夫。何ヶ月も同じアイドルが部屋の中にいるけど日焼けしてないから。この部屋じゃ日焼けしないから」

まゆ「暑いことに変わりないのですが…」

P「バァーイまゆぅ~ お元気で!」ダッ!

まゆ「あっ!待ってくださいプロデューサーさん!プロデューサーさぁーーん!!」


P「自由だー!!俺は今自由になったぞぉ!!」

P「このまま逃げる!逃げ切る!!今日という日さえ乗り越えられれば奴らも少しは落ち着くだろう」

P「事情を話したら事態の解決に向けて尽力してくれるって言ってたし、あとはヘレンさん任せて俺は収まるまで逃げる!」

P「ヘイタクシィー!」

アンガールズ田中「ちょww急に呼ぶなよ~~wwビックリするだろぉ~?」

P「おっとこれは失礼しました」

P「Hey! TAXY!TAXY!」


キキーッ!


運転手「まいど!どこまで行きますか?」

P「とりあえずここではないどこかへ……よろしくお願いします……」

運転手(なんか事情がありそうだな………)

運転手「分かったよ、あんちゃん。……シートベルト締めな。念の為に…な」


P「はい」ガチャガチャ

運転手「それじゃぁ行くぜ」ブゥーン


ブロロロロロ!


P「…?何やら後ろからバイクの音が……って道路を走ってたらバイクの音くらいするわなーww」チラッ


里奈「フンフフフーン」ブロロロロロ!


P「ゲーッ!里奈!?里奈が追いかけてきてるぅ!?そんなことする子じゃあないと思っていたのに!思っていたのに!あいつもありすに雇われたのか!?」

P「運転手さん!速度上げて!」

運転手「あいよぉ!任せろ!法定速度ギリギリまであげるぜぇ!」ブォーン!!

P「…よし!これで少しは距離が……って運転手さん?なんか減速していくように見えるのですが?」

運転手「ごめんよあんちゃん…赤信号だ……俺はこいつには逆らえない…そういう体にされちまってるのさ……力になれずごめんよ…」

P「そんな!?まずいぞ!里奈がすぐ後ろまできてしまう!」


ブロロロロ! チッカッチッカッチッカ(←ウィンカーの音)
ブロロロロ…


P「左折していった…ってあいつ午前中からカラオケかよ!今日午後からレンッスンだろ!今度会ったら説教だな」


ブウオォーン!

P「うわぁ!運転手さん!急発進はやめてくれよ!」

運転手「ごめんよあんちゃん!でも速度上げて欲しいんだろ!?」

P「あ、もう解決したんでいいです」

運転手「」


-海-


ザザーン……
ザザァーン……


P「はぁ……」

運転手「こんなところに座ってどうしたよ、あんちゃん」

P「運転手さん……」

運転手「ほらよ」スッ

P「…いいんですか?」

運転手「長い距離乗ってくれたからな…俺からの奢りだ」

P「…ありがとうございます」カシュッ グイッ

P「ぷはっ……やっぱり辛い時はブラックが沁みますね…」

運転手「まぁ、な…」カシュッ


P「……………………」

運転手「……………………」


ザザーン…


P「……………………」

運転手「……………………」


ザザァーン…


P「何があったか…とか、聞かないんですか…?」

運転手「聞いて欲しいのかい?」

P「…いえ」

運転手「なら聞かねぇさ。誰にだって話したくないことのひとつやふたつはあるもんだ…しかし、話したくはないが、誰かにそばにいてほしい…そう思ってしまうことも、あるもんさ」

P「運転手さん……」

運転手「人間ってのはまったく、身勝手な生き物だよな」ニッ


P「身勝手……そうですね……身勝手……かぁ…」

運転手「あぁ。人間は身勝手が服着て歩いてるのさ」

P「…俺は……身勝手にできてるでしょうか…?」

運転手「あん?」

P「…………」

運転手「…………」


ザザァー…ン


P「あ…お、俺は……」

運転手「………話したくなったタイミングでいいさ」

P「…え?」

運転手「中途半端な言葉だけ溢れちまったんで、それじゃ失礼だと思って多少無理してでも全部話そうとしてる。違うか?」

P「…………」


運転手「いいんだよ、別に」

P「運転手さん……」

運転手「俺は今日知り合ったばかりの、お互い顔も名前も職業も知らない仲だ…おっと、俺の職業だけは知った仲か!ハッハッハ!」

P「…………」

運転手「そんな相手にそこまで気を遣わなくてもいいんじゃないか?」

P「…………」

運転手「辛いことがあった。それだけが分かれば、少なくともこうやって隣に座ってやることはできる」

P「…………」

運転手「話したくなったら話せばいい。こういうと無責任だが、俺にとっちゃ他人事だ。例えあんたが脱獄囚でも石油王でも、俺は態度は変えないぜ」

P「運転手さん………ありがとうございます…」

運転手「おう」

P「もう少し…もう少しこのまま…隣に座って頂いても、よろしいでしょうか」

運転手「おう」


ザザーン…


P「……………………」

運転手「……………………」


ザザァーン……


P「……………………」


運転手「……………………」



ザザー…ン

ザザァー…ン


P「……………………人間は…………身勝手」

運転手「おう」

P「身勝手が服を着て歩いてる……」

運転手「そうだな、その通りだ」

P「俺は…身勝手に………」

運転手「…………」

P「…………」


ザザーン…


P「…………決めました…俺、身勝手になります」

運転手「そっか。なれなれ!身勝手に!」

P「はい!俺は身勝手になってほしいものを手に入れる!」

運転手「おぉ!いいぞ!その意気だ!」

P「はい!なので運転手さん!」

運転手「おう!なんだ?」





P「アイドルに、なりませんか?」





ザザーン…


運転手「…………へ?」

運転手「…今なんて?」

P「いえですから、アイドルになりませんか?」

運転手「…………急に何言ってるんだこいつは」

P「今日気づいたんです。俺の人生にはあなたが必要だ。そして俺はアイドルプロデュースをしている者…」

運転手「はぁ…?」

P「そしてあなたがアイドルになれば!俺はあなたと毎日会うことができる!」

運転手「はぁ!?」


運転手「あんた急にどうした!?頭イカれてんのか?」

P「俺は至って冷静ですよ」

運転手「どう考えたってイカれてるだろ!俺だってもうオッサンだぞ!アイドルなんてできると思ってんのか!?」

P「思ってなければこんなこと口走っていません!あなたなら出来ると思ったからこそお話をしているんです!」

運転手「だからってお前なぁ…だいたいお前は俺の何を知ってアイドルだなんだって言ってるんだよ」

P「名前も知らない仲…そうかもしれません…ですが、俺はあなたと話をして、あなたの名前でも職業でも立場でもなく、『人』としてのあなたに魅力を感じました」

運転手「『人』としてってお前なぁ…」

P「たとえあなたが脱獄囚でも石油王でも、俺はアイドルの話を持ちかけたと思います」ニッ

運転手「………へっ!それがあんたのいう『身勝手』か」

P「はい」


運転手「しかし人間には立場ってモンがある。そうやすやすと物事は動いたりしないぜ? 現に俺には少なくとも『タクシー運転手』と『夫』『父親』…3つの立場がある」

P「はい」

運転手「それに関してはどうするつもりだ?」

P「俺は…俺はあなたに教えて貰った『人間らしさ』でなんとかします!」

運転手「ハッハッハ!ようするにまだ無計画ってことかよ!」

P「はい。…ですが、希望はあります」

運転手「希望?」

P「はい。俺の勤めるプロダクションでは、男性アイドルの枠がありません」

運転手「それは希望っていうんじゃなくて絶望っていうんだよ」

P「しかし、俺の知り合いに男性アイドルのプロデュースに長けた人物がいます。彼なら必ずあなたを成功に導いてくれるでしょう」

運転手「大事なところは他人任せかよ!話になんねぇぞ!」

P「なんと言われようと構いません。俺はあなたをアイドルにしたい。その『身勝手』だけは貫きたい。それが俺の『人間らしさ』になるんだ」


運転手「いや話がぐっちゃんぐっちゃんで意味わからんぞお前」

P「…自分でも整理のついていない部分があります。ですが!俺は俺のすべてをかけてあなたを一流のアイドルにする!」

運転手「でもプロデュースは他人任せなんだろ?」

P「うっ…」

運転手「……どうなんだ?」

P「それは…そうですが……でも!」

運転手「フ…仕方ねぇな…」

P「えっ?」

運転手「1回だけだ。1回だけ。あんたに付き合ってやる。『身勝手こそが人間らしさ』なんて言っちまった俺にも責任はあるかもしれないしな」

P「運転手さん………」

運転手「会社に休職届けを出す。その期間中に俺の満足のいく結果がでないようなら俺は元の生活に戻らせてもらうぜ」

P「運転手さん……」

運転手「アイドルってのを舐めてるワケじゃねぇ。だが俺にも俺の生活がある。もっというと俺の生活は俺だけのための生活じゃねぇ。妻も子供も俺もいる。3人の生活だ」

P「はい」

運転手「3人の人生が狂うかもしれないって考えたらそれが精一杯の俺の譲歩だ」

P「ありがとうございます」

運転手「ま、休職期間中に結果を出すなんざ到底無理だろうがな」


P「…分かりました!俺のコネも何もかも、全てを使ってあなたをのし上がらせる。こういっちゃなんですが顔は広いんですよ?俺」

運転手「…ハハッ!せいぜい頑張んな!あんちゃん!」

P「はい!」


ザザーン…
ザザァーン……


--- 数ヵ月後 ---


運転手「皆さんどうも!運転手です!元タクシードライバーだったけど、理由(ワケ)あってアイドルになりました!」




運転手(これがアイドルか……案外悪くないかも…な?)









--- fin ---

え?終わり?なんだコレ…

taxiの綴りが一瞬分からなくなった

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