少年「勇者とか絶対なりたくねえ」 (13)
少女「どうして?世界の為に戦うなんて素敵じゃない」
少年「自分の身を危険に晒してまで救いたいと思えない」
少女「仲間との出会い、共闘、芽生える絆も憧れちゃうわ」
少年「いやぁ、赤の他人との共同生活とか耐えられない」
少女「立ちはだかる強敵!それを乗り越え成長していく日々!」
少年「別に強さとかいらないんですよ」
少女「……とか言いながら」
モンスター達の屍「」チーン
少女「その握った木の棒一本で作ったこの屍の山は何?」
少年「なんか絡まれて不愉快だったから」
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少女「勿体ない。こんなに強いのに勇者にならないなんて」
少年「別に。大人達の方がもっと強いし」
少女「大人達なんていい武器を装備してるだけよ。貴方が成長したら誰も歯が立たなくなるわ」
少年「なら自堕落に落ちきってるだろう俺なんかより強くなった奴が現れるよ」
少女「そんなこと無いわ。貴方より強い人物なんて現れないわ」
少年「それは俺が『君より美しい女性なんてこの世に存在しない』って言うようなものだ」
少女「あら、じゃあ私って世界一の美女なのね」
少年「君は自分に相当自信があるのか、僕に崇拝と言って差し支えないほどの信頼を寄せているみたいだね」
少女「どちらだと思う?」
少年「その質問には答えたくないね」
少女「とにかく、貴方は勇者になるべきよ。勇者になって邪悪な魔王を倒し、世界を救うべきだわ」
少年「とにかく、棒は勇者になりたくない。農夫にでもなって野菜を育てて、自分の生活を守れたらいい」
少女「うーん、困ったわね。貴方が勇者になってくれないと大変な事になるわ」
少年「なんだい?世界が魔王に支配されてしまうってかい?」
少女「それもあるけれど、貴方が勇者になってくれないと私が貴方と結婚出来ないわ」
少年「さっきから終始何を言っているか分からないけれど、今の発言は群を抜いて分からないね」
少女「貴方は勇者として旅に出て、私は魔法使いとして貴方にお供するの。険しい冒険を共にする二人は次第に恋に落ち、そして魔王を倒した後に結婚するのよ」
少年「君の夢物語の為に俺を勇者にしないでもらいたいね。大体なんだ、それじゃまるで君が俺の事を好きみたいじゃないか」
少女「何言ってるの。好きに決まってるじゃない。愛してるわよ」
少年「当たり前みたいに言わないでくれよ。ただでさえ俺は初めて知らされた事実に少なからず動揺しているんだから。」
少女「それで、貴方は一体どうしたら勇者になってくれるの?」
少年「よくも愛の告白をしたばかりだってのに話題を変えられるね。普通そう言うのって返事を待つものじゃないのかい?」
少女「返事はまだ言わなくていいわ。少なくとも、私はいくらでも待っているから」
少年「なら残念だ。君は一生落ちからの返事を聴く事は出来ず、俺がその辺の娼婦と営みを交わしている間も健気に待ち続け、最後まで俺に縛られ続けながら生涯を終えることになるよ」
少女「そうなる前に魔王が世界を支配して終わりよ。第一、こんな子供の口約束を健気に守り続けるほど、私は間抜けじゃないわ」
少年「俺も子供だけど絶対に子供が言う事じゃないし、ましてや君が言う事じゃないね」
少女「それじゃあこうしましょう。私の告白に答えるか、勇者になるか、今すぐに決めてちょうだい」
少年「また随分と挑戦的かつ一方的な二択を押しつけて来たね」
少女「ちなみに答えない限り私は貴方の側を離れないわ。例え貴方がどこに行こうと、そこが地獄の果てだろうと着いていくわ」
少年「もはや狂気すら感じる執念だよ」
少女「ほら、早く選びなさい。ちなみに愛の告白を選んだとしてその場しのぎの適当な回答は許さないわ。私が適当だと感じた瞬間に貴方は勇者になってもらうわ」
少年「君の匙加減で強制的に勇者じゃないか。てかほぼ勇者じゃないか」
少女「ほら!早く勇者になりなさい!さぁ!早く!手遅れになる前に!」
少年「もう君と会話を初めた瞬間から手遅れじゃないか」
少女「なれ!勇者!貴方!なる!」
少年「なり振り構わなすぎて片言じゃないか。分かった、なるよ。勇者になる。だから早く君は帰りな。そろそろ辺りも暗くなってきたから」
少女「言ったわね?なら今日の所は帰ってあげるけど、たかが子供の口約束だと思って甘く見ないことね」
少年「君さっき子供の口約束なんか守らない的な事言ってたよね?」
少女「さぁ?なんの事だか。それじゃあ明日ね」
少年「あぁ、うん。明日こそ見つからないように気をつけるよ。バイバイ」
少女「ありがとう、気をつけて帰るわね」
少年「発言の切り抜き方と解釈の仕方が酷いな」
少女「おはよう、気持ちの良い朝ね」
少年「おはよう。まさか逃げるどころか対象の声かけで起きる事になるとは流石に思わなかったよ」
少女「あら、そんな。照れるわね」
少年「褒められたかのように受け取らないで欲しい」
少女「さて、それじゃあ早速今日から勇者になるための修行を初めましょう。私は魔法使いになるための修行をするわ」
少年「何故君は昨日から俺に拒否権が無いかのような物言いで話すんだい」
少女「あら、私の旦那様はそんな心の狭い男だなんて思っても無かったわ」
少年「付いてたとて不服なんだけど、せめて未来の、って言って欲しいな」
少女「今のは貴方なりの愛の告白の返事と解釈して良いかしら?」
少年「抗議と解釈していただきたいね」
少女「さて、手始めに森に行って魔物を倒して行きましょう」
少年「そんな近くに買い物に行くみたいな軽さで言う事では無いね」
少女「これって、いわゆる初デートってやつなのかしら」
少年「そんな大事な機会によくもこんな血生臭いコースを選択したね」
少女「恐怖を共にした二人は結ばれやすいと言われているわ」
少年「さっきの問いに答えるけど結ばれてないのならデートとは言わないと思うよ」
少女「冗談よ、あくまで本題は修行よ」
少年「副題があるかのような発言」
少女「ふふ、私はそんなこと考えてないのに。ひょっとして意識してるのは私だけじゃないのかしら」
少年「矛盾を力業で押し通そうとしないでくれないかな」
少女「ハァ……ハァ……やっぱり、貴方の……凄かったわ。もう私、ヘトヘトよ……」
少年「さも違うことをしたみたいに言うのもやめてほしいのだが」
少女「でも、やっぱり貴方は凄いわ。襲いかかる魔物達を次々と斬っていって」
少年「襲いかかるばかりで警戒していないのだから、いくらでも倒せるよ」
少女「……それに比べて私は、怯えてばかりで、なんだか、足引っ張っていたみたいね」
少年「…………」
少女「貴方と共に、だなんて言っておきながら、実際は足手纏いになってしまうだなんて……」
少年「……これは修行、なんでしょ」
少女「……え?」
少年「最初から強ければ誰も苦労しない。強くなるために鍛錬や修行をするんだ。だからこれから強くなっていけばいい」
少女「……そうね。そうだわ。これから強くなっていけばいいのね」
少年「そうなりたいから修行するんだろ?」
少女「うん。そしていつか、貴方が背中を預けられるような、頼もしいパートナーになってみせるわ」
少年「そうだね。これから頑張って行こう」
少女「ところで」
少年「ん?なんだい?どこか怪我でもしたのかい?」
少女「私は、貴方に『勇者になって』とは言ったけど『私を連れて行って』とは一言も言ってないわよ?」
少年「…………へ?」
少女「確かに『貴方にお供したい』とは言ったけど、貴方ったら最初から私を連れて行ってくれるつもりだったのね」
少年「…………えー」
少女「『これから頑張って行こう』なんて、これからも一緒に修行してくれるみたいだし。もう、貴方ったら気持ちの表現の仕方が不器用なのね」
少年「………」
少女「まぁそんなところも大好きなんだけど……って、あら?どうしたの?何か言いたげじゃない」
少年「勇者とか絶対なりたくねえ」
少女「そうやって、意地っ張りなところも好きよ」
気が向いたら続く
台詞回しがウザイ
俺はこういう台詞回しも好きだよ続きはよ!
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