高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「のんびり気分のカフェで」 (35)

――おしゃれなカフェ――


<かれんちゃーん


高森藍子「こっち、こっちっ」テマネキ

北条加蓮「いたいたっ。やっほー、藍子。今日は暖炉の前なんだね」

藍子「そういう気分の日ですから♪ こんにちは、加蓮ちゃんっ」

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レンアイカフェテラスシリーズ第95話です。

<過去作一覧>
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「もどかしい日のカフェで」

~中略~

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「思い浮かべるカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「冬の始まりのカフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「お互いを待つカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「ちょっぴりもどかしい日のカフェで」

加蓮「今年もまた出てきたね。暖炉」

藍子「はい。今年もまた、出てきましたね」

加蓮「ストーブの周りをインテリアショップの煉瓦ブロックで囲って、ちょっとだけデコって」

藍子「ただのストーブも、こうするとお屋敷にある暖炉っぽくなって、素敵に見えます」

加蓮「なんか上品だよねー」

藍子「大人って感じがしますよね~」

加蓮「こう、大きい椅子とかあったらよさそうじゃない? かっこんかっこん揺れるあれ」

藍子「よく、ドラマでおじいさんやおばあさんが座って、本を読んだり、編み物をしたりしている椅子ですよね」

加蓮「そんな感じのヤツ。で、膝の上にはやっぱり猫!」

藍子「ふふ。猫もいたらいいなって思いますけれど……このカフェでは難しいかもしれませんね」

加蓮「あー、そっかあ」

加蓮「藍子、どうする? いつも通りに来てみたら、ここが突然猫カフェになっていた! ってなったら」

藍子「そうですね~……」

藍子「まずは、カメラを用意して」

加蓮「うんうん」

藍子「店員さんに、おすすめの猫ちゃんを教えてもらったり、食べるものをあげられないか聞いてみて!」

加蓮「うんうん」

藍子「人懐っこくて、おとなしくて、抱き上げても逃げちゃわない猫ちゃんを選んでもらって」

藍子「それから、その子を加蓮ちゃんに抱いてもらってもらいます♪ 写真、いっぱい撮りますね」

加蓮「……あはは。言うと思った。やらないよ?」

藍子「え~」

加蓮「っていうかさ、藍子。最近ちょっと加蓮ちゃんの写真を気軽に撮りすぎじゃない? 一応これでもアイドルなんですけどー?」

藍子「うっ」

加蓮「ただで撮りまくって、あまつさえ友達に横流ししようなんて……ねー? ちょっと事務所を通してもらわないと困るんだけどー?」

藍子「ううっ」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……あの、何か突っ込んで来ないと茶番にならないんだけど」

藍子「茶番って言ってしまいましたね……」

加蓮「っていうかさ。アンタモバP(以下「P」)さんのみならず色んな子に私の写真を見せて回ってない?」

藍子「ぎくっ」

加蓮「絡んでくるだけならまだしも……いやそれもちょっとなんだけどさ……」

加蓮「最近なんか未央がすっごい"分かってる分かってる♪"みたいな暖かい目ぇ向けてくるし、茜なんて犬を見る目で私を見てくるんだけど?」

加蓮「犬は茜の方でしょ! いつの間に立場が逆転してんのよ!」

藍子「あ、茜ちゃんは茜ちゃんで、犬さんではありませんよ~……?」

加蓮「あの2人だけじゃなくて、なんか事務所の色んな子が私のことに詳しくなってるっていうか、話してないことまで知られてるんだけど?」

藍子「それは……。ほら、今の加蓮ちゃんは事務所の代表アイドルみたいなところがありますから!」

藍子「きっとみなさん、加蓮ちゃんを参考にしているんだと思います」

加蓮「ほー。そう返すか」

藍子「例えば、加蓮ちゃんのファッションを真似してみたり。あと、レッスンを参考にしてみたり、加蓮ちゃんの気合や根性に影響されちゃったり!」

加蓮「……私そういうキャラじゃなかった筈なんだけどなぁ」

藍子「ふふっ。加蓮ちゃんの負けず嫌いなところ、一生懸命なところ、私も……みなさんも、きっと知っていますから」

加蓮「まぁいいんだけどさ……」

加蓮「あったかー……」

藍子「……♪」

加蓮「ここでは猫は無理だけど、なんか膝の上に置きたくなるっていうか、抱っこしてあげたくなっちゃうよね」

藍子「…………」ジー

加蓮「?」

藍子「……ちらっ、ちらっ」

加蓮「…………それ口で言うことじゃないよね?」

藍子「こっちの方が、気付いてもらいやすいかなって。ちらっ、ちらっ」

加蓮「言わなくても気付けるから。……何? 膝枕してほしいの?」

藍子「さ、されてあげても、いいんですよ~?」

加蓮「アホ」ベシ

藍子「いたいっ」

加蓮「あのね、そーいう露骨なのは逆にウケが悪いって前にも――」

加蓮「……藍子なら通じるかぁ」ハァ

藍子「?」

加蓮「やだ。今日はそういう気分じゃないから」

藍子「残念。また今度、してくださいね?」

加蓮「はいはい」

藍子「本物の猫ちゃんは難しいですけれど、代わりに、猫のぬいぐるみを置いてみるというのはどうでしょうか? 子どもにも喜ばれますよ」

加蓮「ここそんなに子供が来る場所でもなくない?」

藍子「そうでしたね。では……子どもではなく、大人が喜びそうなぬいぐるみ。何があるでしょうか?」

加蓮「デフォルメ系のとか、ゆるキャラ系のを何か置いてみるのもいいかもね。ああいうのみんな好きだし」

藍子「ですねっ」

加蓮「……って。藍子、私達は別にここの店員さんじゃないんだよ?」

藍子「ふふ、つい」

加蓮「今言った内容、店員さんに話してみる?」

藍子「もしかしたら、採用してもらえるかも……?」

加蓮「その時はpresents by 藍子ちゃんってしないとね」

藍子「加蓮ちゃんの名前は?」

加蓮「presents by カフェマスター藍子ちゃん」

藍子「そ、それはなんだか恥ずかしいので、なしでっ。それよりも加蓮ちゃんの名前――」

加蓮「いやいや、私みたいなカフェ初心者の名前を藍子ちゃん……いや、藍子さんの隣に並べるなんてそんなそんな」

藍子「どういうことですか!? あっ、どうして急に距離を取り始めるんですかっ」

加蓮「カフェクイーン藍子様」

藍子「さま!?」

加蓮「ふふっ。なんて」

藍子「……もう。私が今加蓮ちゃんが言ったようなことを言ったら、加蓮ちゃん、すぐ怒るのに」

加蓮「それは藍子が悪いから」

藍子「どういうことですか……。それに、加蓮ちゃんはもう、カフェ初心者じゃありませんよ~」

藍子「加蓮ちゃんだって、色々なカフェに行って。ここでも、いっぱいの時間を過ごしたんですから」

藍子「もうすっかり、カフェの常連さんっ。カフェマスターさんです!」

加蓮「ありがと。でも、さすがに今回は相手が悪いかな」

加蓮「私と会う前からずっとカフェに通ってる子が相手なんだし? 今も、たまにカフェ探しとかしてるんでしょ」

藍子「コラムはもう書いていませんけれど、たまに探したくなっちゃって」

加蓮「別に連れてけーなんて言わないけどさ。ほら、藍子の話を聞くのって結構好きだし」

加蓮「だけどたまにさ。あれ? これどこのカフェの話だろ? ってなって」

加蓮「思い当たるのがない時のあの悔しさ。どうにか藍子にも味わわせてやりたいなー」

藍子「じゃあ、次のカフェ探しは一緒に行きますか?」

加蓮「別に連れてけーなんて思ってないけどー?」

藍子「……加蓮ちゃんはいったいどうしたんですか」

加蓮「わかんない」

藍子「…………」ジトー

加蓮「ふふっ。日常の中で、藍子にちょっとした嫉妬心とか寂しさを覚えたってだけだよ。それを埋めたいとも思わないし」

加蓮「なんか、そういう気持ちも大事に……大事にはしたくないや。でも、あってもいいかな、なんて」

藍子「……マイナスの気持ちなのに?」

加蓮「女心ってそういうものだし?」

藍子「……………………」ジトー

加蓮「たははっ。藍子ちゃんにはまだ早かったね」

加蓮「今日はこのままここでのんびりしてく?」

藍子「……今日は、ここで足を伸ばして、ゆっくりしたいなって。加蓮ちゃんは、いつもの席がいいですか?」

加蓮「んーん。じゃー私も藍子を真似して足伸ばそー」グイー

藍子「加蓮ちゃん。はい、これ」スッ

藍子「ぬいぐるみはありませんけれど、端の方にクッションが積まれていました。ご自由にお使いください、だそうですよ」

加蓮「相変わらず気の利いてるねー。藍子も、カフェも。……ん、さんきゅ」ポフン

加蓮「はー、あったかー♪」

藍子「外、すっかり寒くなってしまいましたよね」

加蓮「冬だね」

藍子「冬です」

加蓮「12月だねー」

藍子「12月です」

加蓮「今年はあと1ヶ月しかなくて。やっぱり年末はすごく忙しいし」

藍子「年始の番組の収録も始まっています。私、もうあけましておめでとうって言ってしまいました」

加蓮「私もー。気が早いよね」

藍子「ねっ」

加蓮「年始の番組とか、ぜんぶ生放送にしちゃえばいいのに」

藍子「ぜんぶ生放送に?」

加蓮「それなら年が変わる前にあけましておめでとうって言う必要もないかなって」

藍子「なるほど~。それは面白いアイディアです」

藍子「あ……でも、それだとテレビに出ている方は、年越しの瞬間を家族のみんなで迎えることができなくなってしまいますね。それは、ちょっぴり寂しいかな?」

加蓮「えー、いいじゃん」

藍子「え~」

加蓮「ねえ、藍子」

藍子「はい、加蓮ちゃん」

加蓮「……」

藍子「?」

加蓮「……ううん。藍子。今年もありがとね」

藍子「加蓮ちゃん……」

藍子「私の方こそ、ありがとう。加蓮ちゃん♪」

加蓮「……やっぱこういうの私らしくないなぁ」

藍子「そんなこと、ありませ……」

加蓮「……」ジー

藍子「……。ほんのちょっぴり?」

加蓮「だよねー」グニャー

藍子「でも、私は今、加蓮ちゃんにお礼を言ってもらえて、とっても嬉しかったですよ」

加蓮「それはどーも」

加蓮「はー……あったかー……♪」

藍子「……♪」

加蓮「勝手に今年が終わったみたいな空気になっちゃったけど、別に終わった訳じゃないよね」

藍子「まだまだ、あと1ヶ月ありますから」

加蓮「そうそう。っていうかクリスマスあるじゃん! クリスマスっ」

藍子「クリスマス」

加蓮「パーティー、事務所でやるでしょ? ふふふ……。ネタの仕込みがいがあるね……!」

藍子「加蓮ちゃん、すっごく悪そうな顔してる……。お話、聞きたいような聞きたくないような」

加蓮「ん? 何? 巻き込む方と巻き込まれる方どっちになりたいかって?」

藍子「そんなこと言ってないっ」

加蓮「藍子はやっぱり巻き込まれた時のリアクションの方が映えると思うけど、そっかそっか。たまには巻き込む方に回りたくもなるよね♪」

藍子「まだ何も言ってないですっ、真面目にお話を進めないで~」

加蓮「そっかそっか♪ 事務所のいい子のみんなを引っ掛けて騙そうなんて、藍子ちゃんは悪い子だなー?」

藍子「だからまだ何も~っ!」

藍子「ネタって、誰かをひっかけてダマすつもりなんですか?」

加蓮「せっかくのクリスマスなんだし、ちょっぴり刺激的なのもね」

藍子「ちいさい子のみんなには、あまり過激なことはしないであげてくださいね?」

加蓮「はーい。じゃ本命のヤバめなヤツは未央にぶつけるってことで」

藍子「未央ちゃんにもやめてあげて……」

加蓮「最近私のことをやらかした中学生を見るような目で見てくる罰」

藍子「…………」メソラシ

加蓮「今、自分が標的になったって気付いたでしょ」

藍子「それは、その……わ、私はっ」

加蓮「藍子は?」

藍子「……もっと、未央ちゃんや茜ちゃん達と加蓮ちゃんが、仲良くなったり、お話するきっかけ……話題が増えればいいなぁ、って思って――」

加蓮「それで私が未央のこと語ったら、藍子は未央に嫉妬するのに?」

藍子「あれはあの時だけですから~~~っ」

加蓮「ね? これが女心なの。藍子ちゃん、また1つ勉強したねー」

藍子「…………。加蓮ちゃん」

加蓮「?」

藍子「私のスマートフォン……それに、家のパソコンには、加蓮ちゃんの写真がまだいっぱいあります」

加蓮「藍子」

藍子「はい」

加蓮「特別に藍子のことは許してあげる」

藍子「ありがとう、加蓮ちゃん」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……藍子ちゃんはなんでこんな子になったんだか」

藍子「……たぶん加蓮ちゃんの影響だと思いますよ?」

加蓮「ちぇ」

加蓮「クリスマスプレゼント、何が欲しい?」

藍子「プレゼント?」

加蓮「プレゼント。ものによっては今から準備しないといけないかもだし」

藍子「プレゼント……。加蓮ちゃんからもらった物なら、なんでも――なんて言ったら加蓮ちゃん、怒っちゃいますよね」

加蓮「うん。怒る怒る」

藍子「う~ん。そうですね……。加蓮ちゃんは、何かほしいものありますか?」

加蓮「こら。今私が聞いてる方なんだけど」

藍子「まあまあ。ちょっと考えてみて?」

加蓮「んー……。私の方こそ、改めてって言われたら困っちゃうなぁ。ほしいもの、いつももらっちゃってるもん」

藍子「ね?」

加蓮「あー」

藍子「私も。アイドルをやり続けられて、こうして加蓮ちゃんとここでのんびりできて……。それでもう、いっぱいですもん」

藍子「さらにほしいものだなんて、なかなか思いつきませんよ」

加蓮「じゃあテキトーにお菓子でも食べて終わりってことにする?」

藍子「たまには、そういうのもいいかも? ……そうだっ。せっかくなら、色々なお店や場所に行ってみませんか? クリスマス探しですっ」

加蓮「クリスマス探し?」

藍子「はい。クリスマス探し。街を歩いて、あっ、ここでクリスマスをやってる♪ って場所を、探して行くんです」

加蓮「ふふっ。面白そう。新しいお散歩?」

藍子「新しいお散歩ですよ~」

加蓮「でもさ、クリスマス探しってなんかそれ、探さなくても向こうから目に入ってくるんじゃない?」

藍子「そうかもしれませんね。でも、表通りのにぎやかな場所をちょっと離れてみたら、けっこうあるんですよ。気付いていないクリスマスが」

加蓮「へえ?」

藍子「例えば……そう。このカフェの暖炉と、入り口のちいさなクリスマスツリーも。ここに来てみないと、気付けないじゃないですか」

加蓮「おー……。じゃあ私達は今日、もうクリスマス探しをしてたのかな」

藍子「はい♪」

藍子「他には、私の家の3つ隣の家では、毎年、すてきなイルミネーションを飾っているんです」

加蓮「イルミネーション」

藍子「イルミネーションって普通、ツリーの形や、雪だるまさんの形、あとは……Merry Christmasっていう文字の形や、星、雪の結晶……そんな感じですよね?」

加蓮「まあだいたいその辺り?」

藍子「でも、その家のイルミネーションは、なんとっ」

加蓮「なんと?」

藍子「……気になるなら、一緒に見に行きましょう!」

加蓮「っ」ガクッ

加蓮「や、やるようになったねー藍子……」

藍子「私、加蓮ちゃんに影響されちゃってるみたいですから♪」

加蓮「さっきもだけど、それ自分で言うかなぁ」

加蓮「えー、どうしよっかなー。クリスマスにお散歩デートかー」

藍子「はい。お散歩デート、しましょ?」

加蓮「ふふっ。否定しないんだ」

藍子「♪」

加蓮「しょうがないなぁ。藍子がそこまで言うなら」

藍子「やった♪」

加蓮「と言っても当日空けれる保証はないよ? Pさんがお仕事持ってきてくれたらさすがにそっち優先するし……」

藍子「大丈夫です。もしかしたら私もそうなるかもしれませんし……。その時は、お互い協力して、合わせるってことで」

加蓮「ん。それ以外のどこかで1日とって、のんびり歩こっか」

藍子「イルミネーションを見るのなら、時間が少し遅くなってしまいますね。お母さんかお父さんについてもらっていた方が、安心なのかな?」

加蓮「親同伴のデート? 子供じゃないんだから」

藍子「私たち、まだ子どもじゃないですか~」

加蓮「せっかく保護者をっていうなら、そこはPさんにしときなさいよ」

藍子「ふぇっ!? そ、それはほら~……。Pさんも、お仕事で忙しいかもしれませんから。ねっ?」

加蓮「藍子が頼めば余裕で時間作ってくれると思うけどね」

藍子「だったら加蓮ちゃんの方から頼んでくださいっ。私は……その、……ね?」

加蓮「いくら私でもクリスマスにデートに誘うの無理だって。色々とっ」

藍子「……Pさんをお誘いするのは、また別の機会ということで」

加蓮「その時になったら藍子の背中を思いっきり蹴っ飛ばすからね、私」


□ ■ □ ■ □


加蓮「あったかー♪」

藍子「……♪」

加蓮「……ふわ」

藍子「……ふわぁ」

加蓮「……うつった?」

藍子「かも?」

加蓮「藍子のがうつった」

藍子「加蓮ちゃんの方が先でしたよ?」

加蓮「藍子があくびしようって思ったのがうつってきた」

藍子「私の思ったことが、加蓮ちゃんに伝わったってことですか?」

加蓮「そうそう。だから藍子が先。私が眠くなったのは藍子のせい」

藍子「じゃあ……加蓮ちゃん。私が今、考えていることも、加蓮ちゃんに伝わっていますよね?」

加蓮「え」

藍子「じ~」

加蓮「……ほら、さっきはたまたま分かっただけだし? いつだって分かる訳じゃないから」

藍子「なるほど~」

加蓮「ちなみに藍子は分かる?」

藍子「私?」

加蓮「うん。私の考えてること。当ててみて?」

藍子「ちょっとやってみますね。じ~」

加蓮「……」

藍子「じぃ~」

加蓮「……」

藍子「……じいっと見られて恥ずかしい?」

加蓮「……それはちょっとズルじゃない?」

藍子「あはは……。別のなら……。暖炉ストーブ、暖かいなぁ……とか?」

加蓮「ふふっ。暖かいよねー」

藍子「暖かいですよね……」

加蓮「……ふわ……」

藍子「あふ……。少しだけ、眠っちゃいますか?」

加蓮「まだ大丈夫」

藍子「は~い」

加蓮「……あ。そういえば来てから何も注文してないじゃん。私達」

藍子「そういえば……? ずっとお話したままでしたよね」

加蓮「店員さんも裏で怒ってるよ。あいつらいつ注文するんだ! みたいに」

藍子「うう。そう考えると、呼ぶのが少し怖くなってきたかも……」

藍子「……ううんっ。もし本当に怒っていたら……注文してほしいって思っているなら、店員さんだって、話しかけに来てくれますよね」

加蓮「あははっ。真面目に怯えさせるつもりはなかったんだけど……。ごめんね?」

藍子「もうっ。分かって言ってたんですか?」

加蓮「すみませーんっ」

藍子「あっ……もうっ」

藍子「こんにちは、店員さん。……ずっと注文しないで居座っちゃってごめんなさいっ」

加蓮「……あー、これは怒ってたっていうより待ち遠しかったって顔かな? 藍子、ここにも犬がいたよ」

藍子「こら、加蓮ちゃんっ」

藍子「ええとっ、サンドイッチを2人分と、その後でコーヒー。お願いします」

加蓮「お願いね。……店員さん、注文を聞く時にわざわざ膝を折って屈んでくれたね」

藍子「目線を合わせてくれましたね。私たちが座っているから」

加蓮「サンドイッチなんだ」

藍子「はい。もこもこのシートとふわふわのクッションに、サンドイッチ。暖炉の前ですけれど、なんだかピクニックみたいじゃありませんか?」

加蓮「……カフェでピクニック?」

藍子「カフェでピクニック!」

加蓮「カフェって、ピクニックもできる場所なんだ」

藍子「ピクニックもできる場所ですよ~」

加蓮「逆に何ならカフェでできないのよ」

藍子「……、……?」

加蓮「LIVEは前に別の場所でしたし」

藍子「撮影も、公式な撮影会ではありませんけれど、ここで似たことをしましたよね」

加蓮「やったやった。他のお客さんから撮影会って思われちゃったヤツっ」

加蓮「他はなんだろ。……討論会とか? そんなのいっつもやってるよね、私達」

藍子「学校の宿題も、よくやります。それにテスト勉強も」

加蓮「あ、待って藍子。あるよ。できないこと。身体を動かす、運動とかレッスンとか!」

藍子「ふふふ――」

加蓮「えっ」

藍子「加蓮ちゃん。実は……最近、それができるカフェも増えてきているんですよ」

加蓮「……マジで?」

藍子「と言っても、もちろん店内で体を動かすことはできませんけれど……」

藍子「最近は、カフェの敷地内、お店の外の庭や道が、遊歩道になっていたり、体を動かすスペースになっている……そんなカフェが増えてきているんです」

藍子「ほら、カフェのメニューって、場所によりますけれど量が結構ありますよね?」

加蓮「確かに……。ファミレスみたいな定食を出す場所って結構あるよね」

藍子「はい。それを食べた後に、体を動かしたい方もいらっしゃるみたいで」

加蓮「それで運動スペース?」

藍子「さすがに、アイドルのレッスンをされている方は見たことありませんけれど……やろうと思えば、できると思いますよ?」

加蓮「へぇー……」

藍子「……くすっ♪」

加蓮「?」

藍子「加蓮ちゃん。今、加蓮ちゃんが考えていること、当ててみますね」

藍子「"そのカフェに行ってみたいなぁ"、ですよねっ?」

加蓮「いや別に?」

藍子「えっ」

加蓮「藍子が行ったカフェの話は面白いけど、行きたいって思うかどうかはまた別だよ。それに、今はここでのんびりしたいから……。どこかに行きたいって気持ちとか、全然浮かばないんだよね」

藍子「そんなぁ……。暖炉ストーブのぬくもりに負けちゃいました」

加蓮「藍子の負けー」

加蓮「身体も動かせるってなると……どうしよ藍子。マジで思いつかないよ。カフェでできないこと」

藍子「それだけカフェは、すてきな場所だってことです♪」

加蓮「いや、絶対見つけてやる……! カフェにできないことを……!」

藍子「どういう意地の張り方ですか……。――あっ、店員さんっ」

加蓮「ありがとー。わ。バスケットに入れてきてくれたんだ」

藍子「ここに座っているお客さまへのサービス、ですか? そうだったんですね♪」

加蓮「ホントにピクニック気分じゃん。いただきます」パン

藍子「いただきますっ」パン

加蓮「あむっ」

藍子「あむあむ……」

加蓮「……ん、美味し」

藍子「はい。とっても美味しいです♪」

加蓮「いつものサンドイッチだけど、暖炉の前で座って食べると……なんか、ほっとする。ぬくもりを感じるね」

藍子「ほら、加蓮ちゃん。暖炉を見ると、かっこん、かっこん、って揺れる椅子に座った、おじいさんやおばあさんが思い浮かぶから……ってお話、したじゃないですか」

藍子「あれが残っていて、おばあちゃんの味が、みたいな感じではないでしょうか?」

加蓮「……、」メヲオトス

加蓮「そこまでは考えてなかったな……。でも、そうかも?」

藍子「いろいろ思い浮かべると、いつものサンドイッチも味が変わって……また、違う楽しみ方が増えますから」

加蓮「そっか。……あむ……」

藍子「あむ、あむ……♪」

加蓮「……あったかい」

藍子「うん。とっても、あったかい」

加蓮「あむ……」

藍子「あむ、あむ……」

……。

…………。

「「ごちそうさまでした。」」

加蓮「ずず……」

藍子「ずず……♪」

加蓮「ふー」

藍子「ふうっ」

加蓮「……何か食べてコーヒーも飲んだら目が覚めるかなって思ったけど、逆にもっと眠くなってきちゃった」

藍子「うつらうつら……」

加蓮「うたたねするならさすがにいつもの場所に移ろっか」

藍子「……ううん。ここで横になっても大丈夫だって、店員さんが」

加蓮「さすがにそれは遠慮しとくよ? 横になって寝てるとこ、来た人に見られるの恥ずかしいし」

藍子「それは……。確かに」

加蓮「でしょ? ……ふわ……でも、もうちょっと起きていたいかな……」

藍子「寝たくなったらいつでも言ってくださいね。膝、お貸しします♪」ポンポン

加蓮「藍子がやってほしい側じゃなかったの?」

藍子「やってほしくて、やりたくもありますからっ」

加蓮「なるほどね。でも駄目。今日は甘えたい気分じゃないから」

藍子「残念」

加蓮「最近、LIVEとか色々あって忙しくて、事務所でも喋ってばっかりなんだけど……」

加蓮「ここに来たら、また喋りたくなることが増えるんだよね。眠るなんてもったいないっ」

藍子「もう、加蓮ちゃん……。そんなことを言われたら、私も起きていたくなっちゃうじゃないですか。ふふ」

加蓮「あははっ。あ、でも気遣ってくれなくていいよ? 藍子が寝たら寝たで……別の楽しみがあるし?」ククッ

藍子「……ぜ、ぜったい寝ません。もし私が眠りそうならたたいてでも起こしてくださいっ」

加蓮「いつまで持つかなー? ……ほら、暖炉のパチパチって音が流れ出した」

藍子「…………」ウツラウツラ

>>33 申し訳ございません。2行目の加蓮のセリフを一部修正させてください。
誤:加蓮「藍子がやってほしい側じゃなかったの?」
正:加蓮「藍子がやってほしいんじゃなかったの?」



加蓮「今は他のお客さんもぜんぜんいないね。ここ、すっごく暖かいね?」

藍子「……はっ」

加蓮「ね? 藍子。眠っても大丈夫だよ。ほら、目を瞑って……?」

藍子「…………」ウツラウツラ

藍子「……はっ」

藍子「私っ、私だって加蓮ちゃんと喋りたいこといっぱいあるもんっ――あ、ありますから」

藍子「やっぱりいつもの席に行きましょうっ。ほら、ほらっ!」グイグイ

加蓮「……ふふっ。しょうがないなぁ。今日は私の負け。藍子についてってあげる」

藍子「靴をちゃんと履いて、……うぅ、体がちょっぴり寒く……」チラ

藍子「ううん。ほらほら、加蓮ちゃんも。あっ、クッションはそこに置いてあったので戻してくださいね」

藍子「サンドイッチの入っていたバスケットは店員さんにお渡しするので持っていきましょうっ」パタパタ


<店員さ~んっ。バスケット、ありがとうございますっ


加蓮「藍子がてきぱき動いてる。珍しー。そんなに焦らなくてもいいのにね」

加蓮「甘えたい気分じゃないけど……甘やかしたい気分はあった、かな?」

加蓮「やり方間違っちゃったみたい。残念。でも、悪戯させたくなる藍子が悪いんだからねー?」テクテク


<それと店員さん、すっごく苦くて眠ってしまっても起きられるようなコーヒーをもう1杯お願いしますっ
<藍子? それ、飲めないってなって私が押し付けられるの目に見えてるんだけど?



【おしまい】

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