桃「朝起きたらシャミ子になってた」 (37)
代理
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ぱんだ壮 吉田家
良「お姉、起きてっ。朝だよっ。学校遅れちゃう」
シャミ子「……? あれ、良ちゃん、昨日うちに泊まったっけ?」
良「寝ぼけてる? はやく起きて。今日の朝ごはんは……」
清子「小麦粉を水に溶いて焼いた奴ですよ~。冷めると噛み千切るの大変です。優子は早く顔を洗っていらっしゃい」
シャミ子「清子さんまで……というか、な、なんでそんな飢饉みたいなご飯を……?」
清子「だってお米は昨日の時点でもう……あら、誰かが外の階段を凄い勢いで……」
ばたーん!
桃「桃ーーー! これはいったいどうなってますか!? 朝起きたら桃になってたんですけど!? 新手の精神攻撃ですか!?」
良「あっ、桃さん」
シャミ子「んん!? 私!? え、あ! 私がシャミ子になってる!」
桃「気づくの遅すぎかきさま! さすが私の身体! 朝からお寝ぼけのようだな!?」
良「つまり、お姉と桃さんの中身が入れ替わってるってこと?」
シャミ子「みたいだね……何でこんなことになったのか……」
良「お姉、心当たりはある? 昨日、何か変わったことはなかった?」
桃「うーん……いえ、桃の夢に遊びに行きはしましたが、そのくらいですね」
シャミ子「ここのところ毎晩来るよねシャミ子は……」
桃「気づいたんですけど、夢の中ならどれだけお菓子を食べてもタダだし太らないんですよ」
良「え、なにそれすごい! お姉、今度は良の夢にも来て!」
シャミ子「良ちゃん、シャミ子はそっちだよ」
桃「ややこしいですね、この状態……」
シャミ子「シャミ子にも心当たりがないならリリスさんに聞こうか……リリスさんは?」
桃「えーと、確か昨日は寝る前に枕元に……ああっ、ごせんぞ!?」
ごせん像「」
桃「ご、ごせんぞが壁にめり込んでます! どうしてこんなことに!?」
ごせん像「うう、シャミ子や……そこにおるのか……? なぜ余が起こそうとしたら思いっきり裏拳を……?」
シャミ子「そういえば良ちゃんが起こしてくれる前に、目覚まし時計を叩いて止めた記憶が……」
桃「きさまの仕業か!? うわーーん! ごせんぞが魔法少女にやられた!」
清子「し、敷金がっ!?」
※穴の開いた壁は魔法少女(眷属予定)が弁償しました
ごせん像「数千年ぶりに死を覚悟した……」
シャミ子「すみませんでした。で、私達の現状について何か心当たりは?」
ごせん像「おぬし、本当にごめんなさいって思ってる? なんか軽くない?」
シャミ子「ちっ……反省してまーす」
ごせん像「貴様ぁ~! シャミ子の顔で舌打ちされると心にくるのでやめてくださいお願いします!」
桃「まあまあ、ごせんぞ……時間もありませんから。あ、ほら、良はもう行ってください。遅刻しちゃいます」
良「うん。行ってきまーす。お姉、帰ってきたらどうなったか教えてね」
清子「私もゴミだしに行ってこないと……優子、戸締りだけお願いしますね」
桃「あ、うん……いいんですけど、おかーさん、娘の一大事にちょっと冷静過ぎでは?」
清子「このくらいで驚いていてはまぞくの妻も母も務まりませんよ。じゃ、ちょっと行ってきます」
ごせん像「全く……それで、入れ替わりだったか。そういえば昔、似たようなことがあったような……」
桃「本当ですか!? どうすれば元に戻れます!?」
ごせん像「お前たち、元の身体に戻りたいのか?」
桃「当たり前じゃないですか! ねえ、桃?」
シャミ子「うん。目が覚めてきて気づいたけど、シャミ子の角がこんなに重いなんて……支える筋肉も足りないし」
ごせん像「そうかそうか、ククク……ならば魔法少女よ、余のよりしろを量産するが良い! とりあえず10体くらいだ!」
桃「! ごせんぞがまぞくっぽいムーブを! でもさすがにちょっとズルじゃ……」
ごせん像「ズルぅ? 余にとっては最高の褒め言葉よ! もっと崇めよ讃えよ調子に乗らせよっ! 余のネゴシエートパワーにひれ伏すがよいわぁ~!」
シャミ子「あっ、角の質量でヘッドバットはかなり威力が出るな……どっかのうるさい像くらいなら砕けるかもだ」ブンッ ブンッ
ごせん像「すみませんでした!」
桃「ごせんぞネゴシエートが桃色バイオレンスに負けた! そして桃、私の身体でヘッドバットはやめてください! ちょーいたそうです!」
シャミ子「どの道、この状態じゃ無理ですよ。あのよりしろ作るのにも、それなりに魔力は必要ですし」
ごせん像「ぬう……よりしろを造ってもらうには元の身体に戻らねばならんのか。あちらが立てばこちらが立たず……」
桃「よく分からないんですけど、魔力も入れ替わってるんですか?」
シャミ子「……そういえば、変だね。魔力は精神由来のものだし、精神が入れ替わってるなら魔力は自分のものを使える筈だけど」
ごせん像「ああ、それな。正確に言えば、お主らは入れ替わっておるわけではないのだ」
シャミ子「どういうことですか?」
ごせん像「簡単に言うと、現在は出力と入力だけが入れ替わっておる状態でな」
桃「しゅつりょくとにゅーりょく?」
ごせん像「うむ。つまり自分の身体を動かそうとすると相手の身体を動かしてしまうし、相手の見ているのものが見えているわけだな」
ごせん像「魔力に関しても同じだ。自分の魔力を使おうとしても、相手の魔力を使ってしまう」
桃「……?」プシュー
ごせん像「ククク、余の話についてこれない魔法少女のアホ面を見るのは実に気分が良い!」
シャミ子「リリスさん。それ、あなたの子孫ですよ」
ごせん像「そうだった! シャミ子よ、もどってこーい!」
桃「……まあつまり、実質的には入れ替わってるってことでいいんですよね」
シャミ子「意味のない時間だった……」
ごせん像「そんなことはないぞ。何故ならいま余がした説明は、この現象の解消方法と深い関係があるのだ」
シャミ子「そうなんですか?」
ごせん像「うむ。まず理屈の方だが、一言でいうとシャミ子が原因だな」
桃「へっ!? ごせんぞ、私、何かやっちゃいましたか!?」
シャミ子「やっぱりシャミ子か……わるまぞく……シャミ悪……」
桃「いやいや、心当たりないですよ!?」
ごせん像「意識的にやってるわけではないからな。シャミ子よ、このところ桃の夢に入り浸っておっただろう」
桃「あ、はい……ついついお菓子が美味しくて……」
ごせん像「……まあいい。前にちょろっと言ったが、シャミ子の能力は夢に入るというよりは深層意識に介入するものでな」
ごせん像「要は桃の深層意識に出入りを繰り返したせいで、意識が混線しておるのだ」
桃「どりーむお菓子ぱーりぃにそんな弊害が……ごめんなさい、桃」
シャミ子「……まあ、わざとじゃないなら。拒まなかった私にも責任はあるし」
シャミ子「というか、凶悪な能力過ぎる……使うのがシャミ子でよかった」
桃「凶悪ですか……? 迷惑ではあるでしょうけど」
シャミ子「だって魔法少女と入れ替わって相手の魔力を全部消費させれば、抵抗も許さず勝つことが……」
桃「えっぐ! 考えることがえぐいですよ桃! なんだその悪魔戦術は! 魔法少女の考えることか!?」
シャミ子「!? い、いや、このくらい普通だよ。誰だって思いつくよ。ねえリリスさん」
ごせん像「余、考えたこともなかった……怖……あとその顔で言われると違和感が凄い」
ごせん像「シャミ子よ、桃を眷属にするならきちんと手綱は握っておくのだぞ……奴が闇の力を手に入れた時、何をするか分からん……」
桃「わ、わかりました、ごせんぞ。どこまでできるか分かりませんが……桃の悪逆は私が防いで見せます!」
シャミ子「何で大魔王みたいな扱いなのかな!? 闇の陣営はそっちだよね!?」
シャミ子「ああもう! 今はそれどころじゃないでしょ! 戻る方法! 戻る方法は!?」
桃「ごせんぞっ、捲きで! 捲きでお願いしますっ! そろそろ学校に遅刻しそうです!」
ごせん像「うむ、それはな……」
桃・シャミ子「それは?」
ごせん像「……覚えてないって言ったら怒る?」
シャミ子「シャミ子、お湯を沸かしてきて」
桃「えっ、なんでです?」
ごせん像「茹でる気か!? 茹でる気だな!? 駄目だぞシャミ子、魔法少女の拷問を手伝っては!」
ごせん像「っていうか仕方なかろう! 2000年以上前だぞ!? そりゃ覚えとらんわ!」
シャミ子「それじゃ困るんですよ……」
ごせん像「いや、ここまでは出てきておるのだがなー……」
ごせん像「何だったかなー。割とどうでもいい方法だったのは覚えておるのだが。いや、どうでも良かったから覚えていないのか?」
桃「ごせんぞ、思い出せませんか? 私達、一生このままですか?」
ごせん像「ああ、その辺は心配せんでもいいと思うぞ。覚えてないなら大したことではないということだ。たぶん、2、3日もすれば勝手に戻るであろう」
桃「たぶんですか……?」
シャミ子「はあ……まあ、具体的な解決策がないなら様子見も手ではあるか」スッ
桃「? 桃、どこに?」
シャミ子「お手洗い借りるね。あっちで良かったっけ?」
桃「そうです、玄関前の……ちょっと待ったぁ!」ガシッ
シャミ子「え、どうしたの?」
桃「どうしたのはこっちの台詞です! 入れ替わってるんですよ!?」
シャミ子「ああ……でも仕方ないでしょ。それに健康ランドにも一緒に行ったし、いまさらじゃ」
桃「それとこれとは全然ちがう! そもそも一緒には入らなかったし! やめて! 行こうとしないで!」
シャミ子「じゃあどうするの? このままだとおもらしまぞくになるよ? シャミ子の身体と下着だし、私にはダメージないけど」
桃「きさま思いきりがよすぎるぞ!? ああああもぉおおおおおおおお!」
学校
杏里「昼休みだーい! シャミ子、ご飯食べよーぜー」
シャミ子「あっ、杏里。ごめん、ちょっと行くとこあるから先食べてて」ガタッ
杏里「え? 飲みもんとかなら一緒に……行っちゃった。どうも今日のシャミ子は変だな……シャミ先もいないっぽいし。後つけてみるか」
◇
シャミ子「……」
杏里(どこ行くんだ? 昼休みに特殊教室棟なんて……ん? あそこにいるのはちよもも?)
桃「あっ、ようやくきた! 遅いぞ、呼んだのは桃でしょうに!」
シャミ子「呼ばなきゃいけない原因はシャミ子のワガママでしょ……」
桃「ち~が~う~! まぞくの尊厳の問題だ!」
シャミ子「はいはい、ほら、早く済ませるよ」
桃「ま、待って! 目隠し! あと耳栓もほら!」
杏里「二人が入って行ったのは……トイレ? ん? 目隠し? 耳栓? 人気のないトイレで?」
シャミ子「出した気がしない……」
桃「出すとか言うなぁ! 私だって自分がするところなんか……」
杏里「……」
桃「へ? 杏里ちゃん!? なんでこんなところに」
杏里「シャミ子とちよももが一緒の個室から出てきた……や、やっぱり……」
シャミ子「どうやら後をつけられていたみたいだね」
桃「ちっ、違うんです杏里ちゃん! これにはよんどころない事情があってですね!」
杏里「シャミ子とちよもも、今日は中身が入れ替わってたのかー!」
桃「はい、そうなんで……へ?」
杏里「あれだろ? 一緒に階段を落ちたら脳みそだけ入れ替わったとかそういう系だろ?」
桃「スプラッタ! いえ、確かに入れ替わってるのはそうなんですけど……」
杏里「で、シャミ子が自分の身体でトイレに行ってほしくないって駄々こねて、ちよももはそれに付き合わされてる感じか」
桃「杏里ちゃん察し良すぎじゃありません!?」
杏里「この街は変わった人多いからなー」
桃「それで納得すべきなんでしょうか……」
杏里「まあシャミ子……ああ、ちよももの入ったシャミ子ね。朝から様子が変だったからさ」
シャミ子「変だったかな?」
杏里「そりゃーねー。朝から一言も喋らないし、なんか圧が凄いし、クラスのみんなも『今日のシャミ子ちゃんはまるで闇の女帝みたい』って言ってたよ」
桃「闇の女帝ですよ!? アイムミストレス! むしろ今は入れ替わってるのでノーミストレス!」
シャミ子「こっちも複雑な気分だよ。一応魔法少女なんだけど」
桃「桃はやっぱり闇堕ちが似合うんですよ」
杏里「ってか何で隠してたのさ? みんなあんまり気にしないと思うよ。シャミ子に角が生えてきたときもそうだったし」
桃「それは、その……」
シャミ子「こうやってトイレで拭いたりするする時に、少しでも注目されるのを避けたかったんだって」
桃「だから拭くとかいうな!」
杏里「トイレくらい好きにさせてあげなよ……っていうか、シャミ子がする時もちよももに拭いてもらってるの?」
桃「だから! ……もういいです。私、というか桃の身体ですが、そもそも魔法少女はトイレにいかないそうで」
杏里「マジで!? 入れ替わりよりもそっちの方が驚きなんだけど」
シャミ子「エーテル体だからね。食べたものは魔力に還元されるし、代謝の仕組みも違うんだ」
杏里「じゃあシャミ子の身体に入ったちよももだけが一方的に可哀想じゃん。シャミ子、トイレくらい行かせてあげな」
桃「で、でも! やっぱりその、乙女的にですね!?」
杏里「乙女とかいうなら、同級生と一緒にトイレの個室に入ることの方がやばいと思うなぁ……目隠しと耳栓付きだし」
桃「ううっ、言われてみれば確かに……」
シャミ子「まあトイレのことはおいおい考えればいいよ。いましたから余裕はあるし」
桃「私、ああいえ、桃の身体はいかなくてもいいですからね……」
杏里「……なんだかややこしいな。どっちがどっちかは見れば分かるけど……」
シャミ子「そんなに分かりやすいかな? これでもシャミ子っぽく行動してるつもりなんだけど」
杏里「いやいや。さっき私のこと思いっきり呼び捨てにしてたし、そもそも休み時間中唐突に空気椅子始めるし」
桃「桃そんなことしてたんですか!? やめて! もとに戻っても変な目で見られちゃう!? 演技下手過ぎかきさま!?」
シャミ子「む……そんなに言うなら、もちろんシャミ子の方は私のふりを完璧にこなせてたんだよね?」
桃「あ……」
シャミ子「んん? どうしたのかな、その反応は? なにか失敗しちゃったのかな? 怒らないから言ってみて」
桃「いや、あの……そもそも今日一日、クラスの誰からも話しかけられなくて……」
シャミ子「……」
杏里「……誰からも? 一度も?」
桃「はい。誰からも、一度も」
シャミ子「まあそんな日もあるよ。ところで話は変わるんだけど、来週の天気について」
杏里「……そういやシャミ子さ、このところちよももを毎日独占してたけど、ちよももの友達に会ったりした?」
桃「……あ」
シャミ子「よし、この話はやめよう。はい、やめやめ」
桃「ごめんなさい、ももぉ……私、桃を傷つけるつもりは」ジワッ
シャミ子「やめようって言ってるんだよ!? っていうかべ、別に友達がいないわけじゃ……」
杏里「……ごめんね、桃さん。ほら、商店街でやってるたまさくらちゃんのイベントチケットあげるから、シャミ子と行っといで」
シャミ子「憐れんだ目で見るな! 貰うけど! ありがとう!」
放課後 校門前
シャミ子「よし、それじゃあ早くたまさくらちゃんのイベントに行こう」
桃「はあ……あれ、杏里ちゃんは?」
シャミ子「バイトがあるんだって。だからたまさくらちゃんのイベントに行こう」
桃「うーん。それならしょうがないですか……」
シャミ子「そう、しょうがないんだよ。ほら、早くたまさくらちゃんに会いに行こうシャミ子」
桃「桃がすごくそわそわしてる……たまさくらちゃんの何がそこまで桃を駆り立てるのか……あれ?」
シャミ子「ん? どうしたのシャミ子。たまさくらちゃんのイベントに……」
桃「いえ、校門のところに人だかりが……」
「うわー! 空から大量の真鰯がー!」「地面からファンタが湧き出した!」「助けて! シマリスの大群が道一杯に! 踏んじゃう!」
桃「……桃、あれって」
シャミ子「うん。私も同じこと考えてた」
ミカン「あっ、桃いた! もう、朝気づいたらいなくなってるし! スマホに何度も連絡いれても既読すらつかないし! 心配したんだからね!?」
シャミ子「うん……身に染みて理解した……」
桃「あっ、動かないでください。まだツノに鰯が……」
シャミ子「ありがとう……っていうか、シャミ子。スマホ忘れてきたの?」
桃「すみません。持って出る習慣が無くて……」
シャミ子「……まあ、私もリリスさんを家に忘れてきちゃったしね」
ミカン「……? なんか変ね。桃が甲斐甲斐しくシャミ子の世話を焼くなんて……トレーニングを課すならともかく」
桃「実はかくかくしかじかで……私がシャミ子なんです」
ミカン「入れ替わったですって!? じゃあこっちの桃みたいに愛想が無いシャミ子の中身が桃なの!?」
シャミ子「一言余計だよ。あとややこしすぎる」
ミカン「……なるほど、意識が混線して……」
桃「ミカンさん、何かわかりますか?」
ミカン「ごめん、全然分からない。何よ、出力と入力が入れ替わるって」
シャミ子「正直、リリスさんの言うことはあてにならないしね……」
桃「んなぁ!? そんなことないです! ごせんぞは頑張ってくれてます!」ポガー
ミカン「……ねえ、桃。じゃなかった、シャミ子」
桃「ん? 何ですか?」
ミカン「ちょっとこう……ピースしてみてくれない?」
桃「? こうです?」ニパー
ミカン「……! か、かわいい! こんな素直に笑ってくれるなんて、昔のきゃわわ系桃を思い出すわ!」
シャミ子「ちょっと、ミカン」
桃「昔の桃ですか! いいな、いいな! 私も見たいです! 鏡ないですか、鏡!」
ミカン「スマホで撮るわ! だから次は横ピースで片足をぴょこんって跳ねさせるアイドルチックなポーズお願い!」
シャミ子「ミカン? 今日のご飯は私が作るのでいいんだね?」
ミカン「えっ? シャミ子が作ってくれるなら大歓迎……違うわ!? 桃ご飯だわ!? うう、シャミ子、残念だけど……」
桃「……ふははは! 魔法少女め、そういつもいつも我らが屈すると思ったか!」
ミカン「え? シャミ子?」
桃「大丈夫です、ミカンさん。元の身体に戻るまで、何かあるといけないから一緒に居ようと決めています」
桃「そして私の家で4人寝泊まりはちょっと厳しいです。ミカンさんをひとりにするわけにもいきません。つまり! 桃の家に泊らせて貰うので料理も私がお作りしますよ!」
ミカン「で、でも桃がそれを許すとは思えないわ」
シャミ子「……そうだね」
ミカン(あ、かなり悩んだわ……シャミ子の手料理、美味しいものね)
桃「ふふふ……果たしてそう上手くいきますか? 今日の体育の時間で気づきました! 桃フィジカルの半端なさを!」
桃「その肉体の貧弱パワーでは勝つことができまい! さあミカンさん、写真撮って! だぶるぴーす!」
ミカン「シャミ子、あれ貴女の身体よ? 言ってて空しくならない?」
桃「大事の前の小事です!」
シャミ子「……なるほど。まさかシャミ子に手を噛まれるとはね」
桃「飼い犬みたいに言わないでください!」
シャミ子「確かにこの体は筋肉が足りない……魔力で補っても、勝つのはちょっと難しそうだ」
桃「ふふふ、分ったか魔法少女よ。では撮影会を指をくわえて――」
シャミ子「――危機管理」 パァァァ
桃「んなぁ!? 桃が危機管理フォームを!? なにいきなり使いこなしてるんですか! 私がどれだけ苦労したと思ってるんだ!」
ミカン「魔力の扱いなら桃の方が一段も二段も上手だものね……特に服装を変えるのは桃の十八番だし」
桃「ふ、ふふふ。だが所詮は私の肉体。桃筋の敵ではありません!」
桃「と、というか、傍から見ると本当にはれんちな服装です! はやく元に戻して!」
ミカン「あっ……これは不味いわね」
桃「不味い? なにがです?」
シャミ子「そうだね。多少は魔力と筋力が上がったけど、まだ勝てない……そう、まだね」
シャミ子「危機管理フォーム」
シャミ子「Act.2」 パァァァァ!
桃「!? アクトツー!? なんですそのカッコいい響き!? ずるい! ずーるーいー! 新技なら私が出したい!」
桃「……あれ? でもどこか変わりましたか?」
ミカン「シャミ子、よく見て。袖が無くなってるわ」
桃「あ、本当だ……あ、そういえば肌を晒すほど強くなるってごせんぞが言ってましたっけ」
桃「……待って。桃、ちょっと話し合いましょう?」
シャミ子「腕力に訴えたのはシャミ子が先だよねAct.3」 パァァァァァ!
桃「片手間にさらに変身した!? ああっ、腰の布が消えました!」
ミカン「ほとんどビキニじゃない……えぐいことするわね……」
シャミ子「さて、筋力が足りないへなちょこボディだしね。これで町内をランニングしてこようかな」
シャミ子「それとも最終形態、メソポタミアフォームに挑戦してみようか?」
桃「それ裸ですよね!? 全裸ですよね!? ご、ごめんなさい! ごめんなさい桃! 調子乗ってました! 私が悪かったです!」
商店街 イベント会場
桃「ひ、酷い目に遭いました……人通りが無くて良かった……」
ミカン「思いついても即座に実行するかしら……普通は躊躇うわよ」
シャミ子「言っておくけど、先に人の身体で遊ぼうとしたのはそっちだからね?」
桃「……ごめんなさいでした。まだ怒ってます?」
シャミ子「はぁ……もういいよ、それよりたまさくらちゃんに会いに行こう」
桃「ほっ……チケットをくれた杏里ちゃんに感謝です……」
ミカン「いまさらだけど、私もついてきちゃって良かったのかしら? チケットの人数制限とかあるんじゃない?」
シャミ子「問題ないよ。これはイベント後にたまさくらちゃんとツーショットが撮れる券だから」
ミカン「わざわざチケット制にするほど需要があるの!?」
大きな帽子を被った司会のお姉さん「集まってくれた良い子のみんな。こんにちわぁ」
子供たち「こーんにちわー!」
シャミ子「こーんにちわぁー!」
ミカン「あからさまに対象年齢小学生って感じね……シャミ子ボディが混じっててもあんまり違和感ないけど」
桃「も、桃……恥ずかしいんで、あんまり大声は」
シャミ子「何言ってるの。大声で応援しないとたまさくらちゃんが出てこないでしょ」
ミカン「いや、イベントなんだから出てくるでしょ……っていうか、これどういうイベントなの?」
司会「うんうん、元気がいいねぇ。それじゃあ早速、たまさくらちゃんを呼んで……」
二足歩行する獏の着ぐるみ「待てぃ! この会場は俺様、怪人獏男が乗っ取ったァ!」
司会「きゃぁー。怪人獏男だわぁー」
獏男「ふふふ、たまさくらなど呼ばせるものかよ。貴様らは俺の人質になるのだぁ!」
ミカン「え、ヒーローショーなの!?」
桃「この前アルバイトした時はそんな設定欠片もありませんでしたよ!?」
シャミ子「たまさくらちゃんは仕事を選ばないことに定評があるんだ」
ミカン「選ばな過ぎでしょ!?」
獏男「さあ司会のお姉さんよ、子供たちの中から人質を選ぶのだ!」
司会「仕方ないよねぇ……誰かー、人質になってくれる人ー」
子供たち「は――」
シャミ子「はいはいはいはいはい!」 ピョンコピョンコ
桃「も、桃が凄い小刻みに跳ねてる……」
ミカン「まあ、セオリーだとこのあとたまさくらちゃんに助けて貰えるんでしょうしね……」
司会「じゃあそこの角が生えてる子で。舞台にあがってきてねぇ?」
シャミ子「! 嘘、選ばれた……初めてだよ、シャミ子」
桃「元の身体でもあんなことやってたんですか!?」
シャミ子「努力し続ければ夢は叶うんだね……じゃあ行って来るよ。鞄お願いね」
桃「あんなにはしゃぎ倒してる桃は初めてみました……できればもとの身体で見たかったですが」
ミカン「もとの身体だったら選ばれてないと思うわ……あと、司会の人妙にテンション低くない?」
司会「はい、それじゃあ自己紹介して貰うね。名前といまいくつか言えるかな?」
シャミ子「シャミ子10歳です」
桃「何もかも違う!」
シャミ子「それより、たまさくらちゃんはまだですか?」
獏男「物怖じしない人質だな……ふふふ、たまさくらは来ぬ! 貴様らの声が届かぬ限りなぁ!」
獏男(確かこの後、司会の人が一瞬の隙をついて会場の子供たちに呼びかけることになってたよな……)
司会「そうだよぉ? 助けなんかこないんだよ」
シャミ子・獏男「えっ?」
司会「ふふふふ、きたか、ボディ……飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのこと……」
ばさあ!
しおん「まさかシャミ子ちゃんが自ら人質になりに来てくれるなんて……!」
桃「あっ、小倉さん!」
ミカン「ん、シャミ子たちの知り合い?」
シャミ子「お、小倉!? どうしてここに……」
しおん「バイト。研究費が足りなくって、杏里ちゃんに紹介して貰ったの……」
しおん「ふふふ、けれどバイト代よりも素敵なモノ、みつけたぁ」 グールグール
シャミ子「は、離して……あっ、いつの間にか縄でぐるぐる巻きに!?」
しおん「ああ、そういえば今は千代田さんが入ってるんだよね。まあ、私が興味あるのは体の方だから……」
しおん「とりあえず採血して電気流して……あ、あと粘膜ちょうだい? 私も辛いけど、獏男に命令されて仕方なく……」
獏男「ええ!? いや、俺様はそんなこと……」
しおん「てや」 プシュッ
獏男「うっ……司会のお姉さん、人体実験の限りを尽くすのダ」
シャミ子「なにやったの!?」
しおん「何もやってないよぉ?」
シャミ子「いま明らかに何か吹き掛けたでしょ!?」
スタッフ「ちょっとちょっと困るよ、段取りってものが――」
獏男「トゥ!」
スタッフ「ぐわぁ!?」
獏男「しおん様の邪魔をするものは、この怪人獏男が許さぬ!」
桃「あわわ、桃と私の身体がピンチです! イベントも滅茶苦茶に!」
子供たち「おおー! すげー!」「新しいパターンだ!」「司会のお姉さん、がんばれー!」
ミカン「子供たちは喜んでるみたいだけど」
桃「ええい、最近のお子様たちめ! とにかくミカンさん、変身して獏男を倒してください!」
ミカン「倒すべきはあの小倉って人だと思うけど……無理よ、この距離じゃ」
桃「もっと近づかないといけませんか?」
ミカン「そうじゃなくて、近すぎると緊張して射った矢がどこに飛ぶか分からないの」
桃「物騒!」
ミカン「1kmくらい離れればいけると思うから、15分くらい待っててくれる?」
桃「絶対間に合いませんよ!?」
ミカン「あ、じゃあシャミ子が戦えばいいじゃない。桃パワーを使えば一撃でしょ?」
桃「一撃だとは思いますが、舞台に乱入してキグルミの人を殴り倒す女子高生の烙印を押されちゃいません?」
ミカン「背負って生きるにはなかなか深い業ね……」
桃「あと、たまさくらちゃんイベントを出禁にされたら桃がきっと落ち込みますし……」
ミカン「うーん……あ、そうだ。シャミ子、ほら、私達が初めてであった時――」
しおん「はぁ、はぁ……ほら、上着をぬぎぬぎしましょうねぇ?」
シャミ子「や、やめ……お、小倉! 小倉ぁ!」
シャミ子「いい加減に……こうなったら、危機管理フォー――」
しおん「あれぇ、いいのかなぁ? こんな衆人環視の前で、あんなにえっちな格好になっちゃうなんて……」
しおん「シャミ子ちゃん、きっと傷つくと思うな……最近はネットに流出すると二度と消えないし……」
シャミ子「ぬ、ぐぐぐ……」
しおん「ふふふ、千代田さんが正義の味方で良かったよ……」
シャミ子「な、なんで急にこんな強硬手段を……いままでは注意すれば思いとどまってたのに」
しおん「ふふふ、シャミ子ちゃんが悪いんだよ……? あと千代田さんも」
シャミ子「私達が……?」
しおん「出力と入力が入れ替わる、っていうのがよくないよねぇ……よく分からないもの」
シャミ子「……?」
しおん「ま、それはともかく。ほら、次はワイシャツの袖をまくろうねぇ?」
シャミ子「あああああああ」
すっ
獏男「……ぬ? 何奴――ぐわあ!?」 ドサッ
しおん「? どうしたの、獏男さ……!?」
シャミ子「あ……あれは……!」
たまさくらちゃん「……」
子供たち「たまさくらちゃんだ!」「たまさらくちゃんが来てくれた!」「飴……美味しい飴を……」
しおん「獏男さんを一撃でなんて……キグルミで防御力は上がってるし、催眠ガスと暗示で痛みに強くなってた筈なのに」
シャミ子「なんて?」
しおん「おかしいな……元のスーツアクターさんは眠って貰ってる筈なのに、誰が入ってるんだろう?」
シャミ子「……まさか」
たまさらくちゃんin桃(まさか再びこのキグルミを着ることになるなんて……ヒーローショー用に頭身が高くなってて助かりましたが)
たま桃(さすが桃のフィジカル。軽い軽い。おまけにキグルミがクッションになるので、相手に怪我もさせません)
ミカン「さあみんな! たまさくらちゃんが来てくれたわ!」
シャミ子「ミカン? なんで変身して……」
ミカン「私こそ本物の司会のお姉さん! あっちの奴は偽物よ!」
しおん「あー、そういう……」
ミカン「さあみんな! たまさくらちゃんを応援して! 皆の声が、たまさくらちゃんのパワーになるの!」
子供たち「がんばれー! たまさらくちゃーん!」「ぬんちゃく! ぬんちゃくを使うんだ!」「忍者刀で刺せ!」「飴、飴で洗脳する」
たま桃「攻撃方法が多彩! ごめんなさい、今日はパンチしかありません!」
たま桃「ともあれ小倉さん! 桃とその身体、返して貰いますよ!」
しおん「んー、キグルミ越しで声じゃ判別できないけど……まあシャミ子ちゃんだよねぇ」
シャミ子「シャミ子……私の為に……」
しおん「でも、まだ足りないかな。ほら、立って、獏男さん」
獏男「……ぬおおおおお!」
たま桃「!? 復活した!」
しおん「ふふふ、こんなこともあろうかと仕込んでおいた遅行性強化カプセルが効いたねぇ」
シャミ子「一応聞いておくけど、後遺症はないんだよね?」
しおん「大丈夫、天然由来の成分だから……」
獏男「バクバクバクバク!」 ズガガガガ!
ミカン「凄いラッシュだわ!? 完璧に使いこなせていないとはいえ、桃力とやり合えるなんて……シャミ子、大丈夫!?」
たま桃「い、痛くはありませんけど、キグルミの中で身体が弾みます! わわわわ!」
シャミ子「シャミ子……! もういい、もういいよ! 小倉だってなんだかんだ言ってもそんなに無茶しないと思うから!」
ごとっ
しおん「あ、落としちゃった」
ミカン「なんでやっとこなんて持ってるの?」
シャミ子「……たぶん」
桃「……ふははは! 見くびるなよ、魔法少女め! こんなの全然ピンチでも何でもないわ!」
桃「私はいずれきさまを眷属にする至高系まぞく! いまから華麗に大逆転するところだ!」
シャミ子「シャミ子……分かったよ。頑張って、シャミ子!」
桃「それでよい! うおおおおお! 行きます! スーパー桃色まぞくパンチャー!」
ぱあああああ
シャミ子「おりゃおりゃおりゃーーー!」
しおん「わっ、千代田さん、急に暴れないでぇ……いくら抵抗しても無駄だよぉ?」
シャミ子「……あれ? 小倉さん? なんでいきなり私を抱えてるんですか?」
しおん「……んん?」
たま桃「これって……」
獏男「ぐおおおおおおおお! バクバクゥ!」
たま桃「うざい。詠春拳!」
ばきぃ!
獏男「」 バタッ
子供たち「すげえ! 一撃だ!」「たまさらくちゃん、拳法も使えるんだ!」「葉問派……!」
ミカン「あの技のキレ……間違いなく桃だわ!」
たま桃「どうやらもとに戻ったみたいだね……リリスさん曰く2、3日って話だったけど、まあリリスさん情報だしね」
シャミ子「も、桃! 助けてください! いざこの状況になるとすっごく怖いです! 小倉さんのポケットにドリルっぽいものが入ってます!」
たま桃「……ふぅ。まったく、あと一歩ってところで様にならないね、シャミ子は」 クスッ
たま桃「まあ、いつもらしくていいか……さて、そこを動かないでね、小倉」
しおん「あ、あははは……お手柔らかにねぇ……?」
スタッフ「――というわけで、見事たまさくらちゃんが獏男と黒幕である魔女をやっつました! はい、拍手ー!」
ぱちぱちぱち……
しおん「きゅう……」
シャミ子「やりましたね、桃! 元の身体にも戻れましたし……」
たま桃「うん。けど、結局原因はなんだったんだろう……?」
たま桃「それに、小倉が言ってたことも気になるな……今回は不自然に強引だったし」
たま桃「……ねえ、小倉。さっき言ってた事って……あれ? いない!」
シャミ子「え? あ、ほんとだ! さっきまでそこに倒れたてのに」
たま桃「狸寝入りだったか! 手加減しすぎた……! 探すんだ、シャミ子!」
シャミ子「え、あ、はい!」
たま桃「よし、私はあっちを――」
スタッフ「あ、ちょっと困りますよ。キグルミは置いていって貰わないと」
たま桃「……どうしてもダメですか?」
シャミ子「なんでちょっと交渉しようとしてるんですか!? 急ぐんでしょ!?」
路地裏
しおん「ふう、なんとか逃げ出せた……ほとぼりが冷めるまで隠れてようっと」
ミカン「そうはいかないわ」
しおん「あ、さっきの子……何の用? 私を捕まえに来たのかな?」
ミカン「別に捕まえる気はないけど……ちょっと気になったことがあって」
しおん「なにかな?」
ミカン「……なんであんなことしたの?」
しおん「シャミ子ちゃんのデータが欲しかったんだよ?」
ミカン「私とシャミ子が舞台に上がるまでに結構時間があったし、本当に実験やら何やらがしたかったんならするタイミングはいくらでもあったでしょ?」
ミカン「なら、目的は何か別にあったんじゃないかしら?」
しおん「あー、鋭いねぇ……でも、結局は私自身のためだよ。二人が入れ替わってると困っちゃうから」
ミカン「元に戻すのが目的だったってこと?」
しおん「そんなところかな。放っておいても、三日もあれば元に戻ったろうけど」
しおん「魔法少女でもあり、まぞくでもある。そんな人が歩き回ってたら、結界に影響が出るかもだしねぇ……」
しおん「あとついでに体液とか貰えれば一番良かったんだけど」
ミカン「なら、最初から素直にそう言えば良かったのに……」
しおん「善行って言うのは、人知れずにやるものだよ?」
ミカン「ところで結界について知ってるってことは、貴女って……」
しおん「あ。ところで、ちょっとこれ見てくれる?」
ミカン「ん? なにこれ、香水瓶?」
しおん「てや」 プシュッ
ミカン「わぷっ! なによいきなり……え、なんだか眠く……」
ばたっ
しおん「魔法少女無力化薬。まだ試作品だから、精々私に関する記憶が混濁するくらいだと思うけど」
しおん「ごめんね? けれど善行って言うのは人知れずにやるものだから……」
ぱんだ壮 吉田家前
桃「結局小倉は見つからなかった……ミカンはいなくなったっと思ったら路地裏で居眠りしてるし」
シャミ子「ミカンさん、きちんと帰れたでしょうか……」
桃「大丈夫でしょ。さて、ようやくシャミ子の家に着いたね」
シャミ子「今更ですけど、桃。わざわざ私の家までこなくても……元に戻ったってごせんぞへ報告するのは私がしておきますよ?」
桃「リリスさんはどうでもいいけど、良ちゃんは安心させてあげたいから……」
シャミ子「またそういう……はい、鍵が開きました――生臭っ!」
ごせん像「クチャイクチャイクチャイクチャイクチャイ......」
シャミ子「ああ! ごせんぞが大量の鰯に埋もれてる! これミカンさんの呪いですか?」
桃「どうやら学校に来る前、この近くを通ったらしいね。ミカンは魔力を辿るの得意だし、それで私を探そうとしたのかも」
シャミ子「冷静に分析してる場合ですか! ご、ごせんぞ、大丈夫です?」
ごせん像「う、うう……そこにおるのか、シャミ子……いや、いまは桃だったか……」
シャミ子「いやあの、実はもう元に……」
ごせん像「頼む、役に立つから置いてけぼりはやめてくれぇ……暇だし病むし何故か鰯が降ってくるのだぁ……」
ごせん像「余、頑張って思い出したぞ……入れ替わりの原因と、元に戻る方法」
シャミ子「いえ、ですから」
ごせん像「今回の現象はな、そもそもおぬしら二人の仲が良すぎるのが原因なのだ……」
シャミ子・桃「へ?」
ごせん像「仲が良すぎて、互いにずっと一緒にいたいという欲求が高まった上で未熟な夢魔が能力を使うと……精神が混線するのだ……」
ごせん像「余が覚えてないのも当然のこと……理由が馬鹿馬鹿しい上に、互いに想いあっておらんと入れ替われんから戦術としては全く使えんし……」
ごせん像「あ、戻るのは簡単だぞ。互いに満足するまで一緒に居ればよいだけだ」
ごせん像「その辺へ遊びに出かけたりするなり何なり、適当にイベント消化すれば1時間もせず元に戻るであろう」
シャミ子「……」
桃「……」
ごせん像「つまり、お前と桃はあっちっち――ん? どうした、桃。いや、今はシャミ子か。余をそんな風に掴んで――」
桃「……ふんっ!」 ブンッ
ごせん像「頑張ったのに――!?」 ヒューン
シャミ子「ご、ごせんぞぉーーーーー!」
頑張れシャミ子! 能力をきちんと使いこなせるようになるんだ!
それと桃さん、照れ隠しにリリスさんを投げるのは良くないぞ!
おわり。依頼して来ます
乙
おつおつ
再現度すごいたかい
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