プロデューサーとアインフェリアと壁ドンと (30)




※BAD END



――事務所

相葉夕美「う~ん……」

モバP(以下P)「どうした夕美。悩み事か?」

夕美「あ、Pさん、おはよ。これね、この前貰ったドラマの台本なの」

P「ああ、準ヒロインだから出番も多いだろ」

夕美「うん、だからしっかりやりたいんだけど……ちょっと分からないところがあって」

P「なんだ、台本の解釈的な?」

夕美「ちょっと違う、かな……主人公の友人のプレイボーイに迫られるシーンがあるんだよね」

P「ああ」

夕美「それを、軟派な人になんか興味ないって断るの。それ自体は分かるんだけど……」

P「けど?」

夕美「私そんな経験ないから、実際に迫られたときの気持ちって、よく分からないなって」

P「ナンパされたことってないのか」

夕美「あー、無いこともないんだけど……台本みたいな強引なやり方じゃないんだよね。しつこくすると嫌がられるってわかってるんだと思う」

P「へぇ」


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P「その台本のって、そんなに強引なのか」

夕美「2度目に会った時に壁ドンして俺の女になれ、だよ」

P「笑っちゃうくらいの奴だな。むしろお前がおもしれー男だよ」

夕美「あはは、それは台本だから仕方ないし、素に戻って笑っちゃったりはしないけど……実際のところはやってみないと分からないよねって」

P「まぁ、そこまでの経験なんて早々ないだろうな」

夕美「うーん、やっぱり……」

P「……」

夕美「ねえ、Pさん」

P「え、やだ、あんまり聞きたくない」

夕美「ちょっと読み合わせとかお願いできないかな?」

P「聞きたくないって言ったのに……」

夕美「Pさんが良ければなんだけど、ちょっと実際に練習させてもらったり!」

P「良くないからパスしていい?」

夕美「男性とやればもっとうまくできると思うから!」

P「あっ、これこっちの話聞く気ないやつだ!」

夕美「……お願い。ね?」チラ

P「う、上目遣いは反則だろ! ……はぁ、わかったよ」

夕美「わぁい♪」


ペラ ペラ

P「……」

P「……これ読むの?」

夕美「もちろんだよ、練習は本番のように、本番は練習のように!」

P「……よむ。やむ」

夕美「新人のアイデンティティ奪わないであげて」

P「さらっとアイデンティティにしないであげて」

夕美「じゃあ行くね、よーい」パンッ

P「……『お前さ、俺のものになれよ』」

夕美「『そんな軟派な人に、落とされるわけないじゃない』」キッ

P「……」

夕美「はい」パンッ

P「……台詞は真面目に言ったよな?」

夕美「確かに真面目だったけど……台詞だけじゃなくて、できれば動きも付けてくれるといいかな……」

P「やっぱり?」

夕美「お願いっ、大事なことなのっ」

P「う、うーん……」

夕美「それとも…… 私じゃ、本気の練習はしてもらえないってこと……?」ウルッ

P「いやっ、そんなことは無い! 分かった、やる、本気でやるから!」


夕美「よーい」パンッ

P「……」グイッ

夕美「きゃ……」

ドン

P「『お前さ、俺のものになれよ』」

夕美「……」トクン

夕美「……あ、あのっ、私、そういうのは……もちろんねっ、Pさんのこと嫌いってわけじゃないし、その、どっちかっt」

P「おい台本台本」

夕美「ああっ、ご、ごめん!」

P「それで本番大丈夫か? もっとイケメンが迫ってくるんだぞ?」

夕美「あ、それは大丈夫」キッパリ

P「え、あ、そう……」

夕美「……ふぅ……で、でもいいね、かなりドキドキした」

P「それでいいのか? きっぱり断って言い返すんだろ」

夕美「うーん、それは……でも意外とこの反応は正しいのかも……」

P「ほう?」

夕美「相手だって一応は顔がいいという設定なんだから、急にこんなに距離を詰められたら、平静でいられる方がおかしいよね?」

P「あー、まぁ、そんな感じの役ならそうかも?」

夕美「だからここは、言葉では跳ねのけているけど、内心どぎまぎもしているんだと思うの」

P「なるほど? いまのは内心どころじゃなくどぎまぎしていたと思うけど……」

夕美「それは私の覚悟が足りなかったせい! あの、台本通りにできなかったんで、もう一回って……お願いしていいかな?」


P「……」

夕美「む、無理にとは言わないよ。Pさんだって忙しいだろうから……」

P「……じゃ、これ最後な」

P(これは仕事の一環だし……演じ手が必要というんだから、必要なんだろう……)

夕美「じゃあ……よーい」パンッ

ガチャ

橘ありす「それでですね、その時に文香さんが――」

高森藍子「ああ、その本なら私も――」

P「『俺のものになれよ』」ドン

ありす「……」

藍子「……」

P「……」

夕美「はいっ!」

ありす「!?」

藍子「!?」

P「!!??」


ありす「え、ちょちょちょ、なっ」

藍子「……夕美さん……?」

夕美「ごめんね! そういうことだから、ごめんね!」

P「状況かき混ぜないで!!」

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

P「――というわけで、夕美の台本に付き合っていただけなんだ」

夕美「そうそう、なんかテンパって返事しちゃったけど」

藍子「それにしてはしっかり間を置いた『はいっ』だったような」

ありす「本当にそんな台本だったんですか?」

夕美「そ、そうだゆぉ……?」

ありす「口調がきらりさんみたいになってますけど……」

夕美「は、はぴはぴ……」

藍子「そっか、ちょっと舞い上がっちゃっただけなんですね」

ありす「なんで分かるんですか……」

藍子「パッションの子はパッション語で会話できますから♪」


ありす「……と、ともかく、事情は分かりました。演技には、経験したことから感情や行動を引き出して表現する技法がありますからね、夕美さんがそのような経験を必要としたのはわかりました」

P「分かってもらえて何よりだ……」

ありす「ですが……つまりそれは」

ありす「プロデューサーさんには、いまここで私たちにも壁ドンをする義務がある、ということではないですか?」カッ

夕美「!」

藍子「!」

P「それは、どういう……?」

ありす「いずれ私たちにもそのような機会が訪れます! その度にプロデューサーさんの元に行って経験することは手間です。ならば今のうちに経験しておく方が効率的です」フンス

P「なんか納得させられそう……」

藍子「ありすちゃん、こっちこっち」

ありす「はい? あ……」

トテテ

藍子「うん、私の隣でね。で私もこっちに立って」

P「何で壁際に張り付いた?」

藍子ありす「「さあ!」」ビシッ


藍子ありす「「……」」ドキドキワクワク

P「ちょっとまった、まだやるとは……」

ありす「私は最初に義務といいました。私たちのプロデューサーである以上、やって頂かないと困るのは私たちです!」

P「ううむ……」チラ

夕美「あ、あー……えへへ、やってあげようよ」<抜け駆けしようとした罪悪感に負けた

P「一人1回な、やるのも恥ずかしいんだぞ……」

藍子ありす((っしゃっ……!))

ありす「台本の台詞はどんなですか?」

夕美「こんな感じ」ペラペラ

ありす「ふんふん……いまどきこんな男性もいないと思いますが」

藍子「一周して逆に新しいかもしれませんね」

P「その評価を下されて練習台になる俺の身にもなってみろぉ」


藍子「じゃあはい、ありすちゃん」

ありす「いえ、先に藍子さんどうぞ」

藍子「後でいいの?」

ありす「ええ、構いません。どうぞ」

藍子「じゃあ、先にしてもらうね」

P「台詞いいか?」

藍子「一言なんで大丈夫ですよ」

ありす「……」

ありす(これは意義ある時間稼ぎです……)

ありす(夕美さんと藍子さんでは、身長差はあまりありません。ですが、私となると10cm以上の差が出てきます。プロデューサーさんとの身長差はそれ以上です。となれば、壁ドンのために身を屈める必要が出てくる……この身長差は、プロデューサーさんを素に戻してしまいかねません)

ありす(そこを藍子さんのゆるふわオーラで、プロデューサーさんの緊張をほぐしてもらえば、堂々と壁ドンを……あわよくば手で壁を支えるのではなく、腕で、より距離の短い壁ドンすることまであり得ます!)

ありす(藍子さんが言ったことですからね……私と藍子さん、藍子さんと夕美さんたちの差は同じようなものだと……!)


ドン

ありす(はっ)

P「『お前さ、俺のものになれよ』」

藍子「……」

P「……あの?」

夕美(これは……藍子ちゃん、素に戻った? いや、違う、演技は続いている!)

ありす(藍子さんの目には驚きの表情が浮かんでいます! 来るのが分かっていて、なおもあんな表情ができるなんて!)

藍子「あ、あの……私……」ズル…

夕美ありす「「!?」」

夕美(顔を赤らめた……だけじゃなく、壁に沿ってずるずると座り込んでいく……!?)

ありす(驚愕、口元を隠して緊張、そして弛緩で座り込んでいく。なんというスムーズな流れ……これは……)

夕美ありす((少女漫画メソッド……!!))

夕美「Pさん、藍子ちゃんを追って座るんだよ!」

P「え、えっ?」

ありす「何やってるんですか、目線を合わせて! プロデューサーさんの役割は、相手を落とすことなんですよ!」

P「お、おう……」

ググッ

藍子「『そ、そんな……』」

藍子「『そんな軟派な人に落とされるわけ……いきません』」プルプル

ありす(決まった……!)

夕美(高森藍子……恐ろしい子……!)


P「……これでいいのか?」

藍子「良かったですよ」

ありす「今度は素に戻らず、ちゃんと目的を遂行しようとしてくださいね」

P「おかしい、俺プロデューサーなのに」

藍子「どうでしたか?」

P「え? あ、ああ。凄いな今の」

藍子「それだけですか?」

P「あ、いやー……」

藍子「……」ジー

P「思わずドキッとするくらい可愛かったぞ」

藍子「えへへ」

P(かわいい)

夕美「藍子ちゃん、迫真だったね」

藍子「ありがとうございます」

ありす「最初からあの演技プランだったんですか?」

藍子「プランなんて大層なことは無いんだけど……つい楽しんじゃったっていうのかな?」

P(え、『つい』であんな演技できるの? 怖)

夕美「なるほど、つい、ね」

藍子「つい、です」

夕美「ふふふふ」

藍子「うふふふ」


ありす(台本の対応はきっぱり断ること……ですが独自の解釈で、もう一押しもすれば落ちるかもと思わせる演技力……! すごいです藍子さん!)

ありす(私も負けられません!)

ありす「さ、さぁプロデューサーさん! 私の番ですよ!」

P「え、あ、おう……」

ありす「何ですかその気の抜けた返事は! 言っておきますが、手を抜かれては困りますからねっ」

P「いや、うん……そうだな」

P(落とす……女性を口説く。彼女たちがこの緊張感でやっている以上、俺が中途半端になるわけにはいかないよな)

P(俺はありすを本気で口説くようにしなければならない。集中だ、集中……!)

P「よし。いつでもいいぞ」…スッ

ありす「受けて立ちましょう」ザッ

P「……」ゴクリ

夕美「……いくよ……よーい」

パンッ


P「ありす……」

ありす「!」ドキッ

スッ

藍子(!? 壁ドンの前に……膝をついて……!)

夕美(目線を合わせるだけじゃない……あんなにまっすぐに見つめられたら、私でも動揺しちゃう……!)

ありす(こ、これは演技……! 私の役は、きっぱり断ること、です! そのオーダーに応えることなど、私には簡単な……)

ドン

ありす「あ……」

P「『なぁ』」

ありす(かんたん、な……)

P「『俺のものになれよ』」

ありす「あ、あう、あ……」パクパク

P「ん? ちゃんと聞いてるか?」

ズイッ

ありす「!!」

ありす(腕で壁ドン! もも目標の達成です……!?)

ありす(ですが、ここここれからどどどうすれば……!)グルグル


ガチャ

鷺沢文香「おはようござ……」

ありす「……」

P「……」

ありす「あっ、ふ、ふふふ文香さん!? こ、これは!」

P「あー、これは……」

文香「……何をしていらっしゃるのですか……?」

ありす「こ、これは、ですね。あのっ、決してプロデューサーさんが犯罪者になったわけではなく……!」

P「うおおおい、変な言い方するな!」

ありす「うう……なんですかこの気まずさは……」

夕美(ありすちゃん……齢12にして修羅場の片鱗を味わう……)

文香「一見……プロデューサーさんがありすちゃんに迫っているように見えますが……」

P「いや、それはな……」

文香「後ろのお二方がただ見守っているだけですので……真に迫っているわけではないと窺えます……であれば、何かの練習と受け取るのが妥当……でしょうか」

夕美「さ、さっすが! よかったぁ、相手が悪かったらPさんが職を失うところだったよ!」

P「さらっと失職の危機?」


夕美「OK、ありすちゃんは断るの失敗しちゃったけど、Pさんは良かったよ」

P「お、そうか」

夕美「ありすちゃんはもうちょっと練習が要りそうだね」

ありす「うぅ~、回数をこなせば私にだってちゃんとできましたから!」

夕美「うんうん、あれはPさんが……あ」

ありす「え? ……あ、回数……?」

P「ん?」

ありす「プロデューサーさんっ、今日のところは潔く負けを認めます。ですが、次こそはきちんと断りますので、また練習に付き合ってもらいますからね」

P「えー……時間あるときな」

ありす「ええっ」ドヤッ

夕美藍子((くっ……))

藍子「ぴ、Pさん、私も……」

P「え? 藍子はもう練習いらないくらいの演技だったろ」

藍子「……」

夕美「じゃあじゃあ、私は?」

P「最後って言ったんだけどなぁ」

夕美「そこをなんとかー!」


ありす「待ってください!」

P「?」

ありす「夕美さんの台本ですので、夕美さんの練習が必要なのは確かでしょう」

夕美「おっ、いいよありすちゃん」

ありす「ですが、ここに最も練習の必要そうな方がいます!」

夕美「なにーっ!」ガーン

P「それは?」

ありす「それは……文香さんです!」

文香「……?」

P夕美藍子「「「あー」」」

文香「皆さん?」

ありす「文香さん」

文香「はい……」

ありす「壁ドンされた経験はありますか?」

文香「壁ドン……男性が女性を壁に追い詰め、手を壁に付き迫る行為……でしょうか。アパートメント等の集合住宅において隣人の部屋の壁を叩き、抗議の意を示す行為もありますが……」

P「ああ、そんな意味もあったな」

文香「面白いことに両方の言葉が成り立った時期に大きな差はなく……言葉の成り立ちとしては珍しい事例であるかと……」

P「ちょっと待って、話長くなる」


ありす「とーもーかーくーっ。男の人に壁に追い詰められたこと、文香さんもまだ経験されてないですよね?」

文香「えぇ、そのような経験は……」

ありす「やはりやるべきです、理由はさっき言った通りです! 以下略です!」

P「んなこと言っても、文香に伝わらないだろ」

文香「……演技の練習、であれば…… ……夕美さんのドラマの台本が発端、ということでしょうか…… 先程ありすちゃんにしていたような行為のシーンがあるなら……納得できます」

P「読書ってすげぇや」

ありす「それに、いいんですか! 練習としてだけじゃなく、文香さんが押しの強いどこぞの馬の骨なんかに迫られてしまったら!」

P「そ、それは確かに……」

文香「私に迫るような物好きな男性がいるかはさておいて……いささか私に……失礼な気もしますが……」

文香「ともあれ……そのようなことが断れないほど……私も弱くはないです……よね?」

藍子「……えーと…… うふふ」

文香「笑って誤魔化しました……?」

夕美「私も男だったら文香さんに迫りたいかも」

文香「夕美さん?」

P「大学生だもんなぁ……勘違いしたバカ男がやってこないといいけど」

ありす「でしょう。というわけで! プロデューサーさんは文香さんに壁ドンをするべきです!」

文香「なるほど……断る練習を…… ……致し方ありません、皆さんがそうも心配されるのであれば……そのようなことはないと証明するため、受けて立ちましょう……」

P「やるのか……」

文香「壁ドンなんかに……負けません……」

P「フラグやめよう」


P「じゃあ、いいか」

文香「しばしお待ちを……」ササッ

夕美「あ、前髪ガードした」

藍子「確かに、普段はそうですよね」

P「よし、いくぞ……」

夕美「よーい」パンッ

ドン

P「……む……」

P(眼が見えない……もっと本気で文香に迫らないと!)

スッ

文香「!」

P「文香……」サラ…

夕美(前髪をかき分けた……!)

藍子(あれ、文香さん墓穴ですね)


P「『お前さ』」ススッ

夕美(あっ、Pさん、髪を払ったその手で!)

ありす(頬に手を……!?)

藍子(いいなぁ、あれ)

ありす(とどめです……!)

P「『俺のものになれよ』」

文香「……」

文香「……」ボンッ

藍子(一気に赤くなっちゃっいましたね)

夕美(あれはマジに受け取ったね……)

ありす(これがネットで言うところの即落ち2コマでしょうか)

文香「あ、あの……わ、私、なんかでは……」

P「文香、もっとよく顔を見せて」

文香「あっ……」

P「……」

文香「……」ギュッ… プルプルプル

P「いや、眼閉じないで断らないと」

文香「あううう……」


夕美「結局まともにかわせたの藍子ちゃんだけか」

藍子「私も毅然と断れたわけじゃないですよぉ」

ありす「私は目標達成……いえ、やはり負けでしょうか……」

文香「お恥ずかしい限り……ですが、これはプロデューサーさんサイドにも問題があるのでは……」

P「俺悪くなくない?」

文香「男性免疫の少ない私たちにとって……最も身近な異性であるのですから……その方が迫ってくるようなことがあれば……このような反応も当然かと……」

P「企画の時点でデッドロックじゃん」

文香「つまり……私が慣れるまでお手伝いいただくというのも……必要かもしれません」

夕美「文香さん……」ジトー

文香「こほん」

  「あらあら」

全員「「「「!!」」」」


新田美並「なにか、楽しそうなことしてますね、ふふっ」

P「み、美波……いつから……」

美波「文香さんの頬に手を添えたところから、ですね」

P「あのな、これは」

美波「……ねぇ、夕美ちゃんの台本、見せてもらっていい?」

夕美「えっ……」

美波「ダメなの?」

夕美「……ううん……」スッ

パラパラ

美波「ふぅん…… なるほど、このシーンの練習だったのね」

夕美「そ、そうなの、それで」

美波「それを、文香さんがやっていたのは?」

文香「……それは…… 私も経験の一環として、必要と……言われまして……」

夕美「えっ、付き合わされた感だしてない?」

文香「そのような……ことなど……」


P「ま、まぁ美波、単なる練習だったから……」

美波「そうですね……思うに、Pさんが無理矢理付き合わされたんですね。もう……みんな、迷惑かけたらダメですよ」

夕美「は、はひっ」

P「いや、迷惑とか思ってはいなかったけど」

美波「あら……それなら……」

美波「私もお願いしたら、練習、してくれるんですか?」

P「えっ」

美波「ダメなんですか……?」

P「い、いや……しかし……」

美波「そうですね……確かに迷惑かけちゃダメといった手前、私が練習をお願いしてはいけませんよね」

P「あ、ああ……」

美波「でも、そうですねぇ。つい、うっかり、未央ちゃんとフレデリカさんと李衣菜ちゃんに愚痴をこぼしちゃいそうです」

P「OKわかったおちつけ美波」

藍子(未央ちゃんからだとニュージェネ、ひいてはポジパ、ピンチェに)

文香(フレデリカさんからは奏さんをはじめ、LiPPSメンバーに……)

夕美(李衣菜ちゃんからだとマスカレ……まゆちゃんか)

ありす(えぐい)


P「そのっ、な、皆1回はやったんだ、美波もやっておかないと不公平だよなっ」

美波「練習させていただけるんですか?」

P「あ、ああ」

美波「わあっ、ありがとうございます」

P「……俺、間違ってないよな……」

夕美「ベストの回答だったと思うゆ……」

藍子「うきゃー」

ありす「藍子さん、考えるの放棄しないでください」

P「じゃあ美波、壁を背に」

美波「ああ……プロデューサーさんが壁の方に立っていただけますか?」

P「え? え、こっち?」

美波「そうです、背中をぴったりつけて」

P「あ、ああ……え?」

文香「……!」

夕美「み、美波ちゃん、それって……!」

美波「夕美ちゃん……この練習のテーマは、やったことないことをやってみよう、だったよね?」

夕美「う、うん」

美波「それこそ、こっちの方をやった方が経験になると思うの」

P「こっち……?」

美波「つまり、その主人公の友人役を」

P「なん……だと……」

ざわ… ざわ…


美波「ふふっ」

夕美(まさかそんな手段が……!)

藍子(私以上の離れ業……)

文香(その流れは……盲点でした……)

美波(みんな甘いなぁ……これはPさんに壁ドンされて、ドキドキさせられたら負け、とかそういうゲームじゃないのよ?)

美波(これは……Pさんをどうドキドキさせるか、というゲーム)

美波「美波、がんばりまぁす」ペロッ

文香「……」サッ

ありす「? 文香さん、前が見えないのですが」

ガシッ

P「な、なんで肩を……」

美波「あー……やっぱり私でも、身長差があって難しいですね……」

ぎゅっ ふにゅん

P「み、美波……」

美波「あら、Pさんどうかしました?」

P「いやその、ちょっと近いかなって」

美波「それはそうですよ、こう言う行動は距離を強引に近づけるものですから」

P「だからそうじゃ……」

ドンッ

P「!」

美波「ほら……これで、逃げられませんね……?」

P(あ、脚、俺の脚の間に、美波の膝が……!)

ありす「なにを、なにをしてるんですかっ? 文香さん、あのっ」


P「さ、さすがにこれは……」モゾモゾ

美波「あら、まだ逃げたいんですか? でも、もうダメです……」

ぐにっ ふにふに

P(なんか当たる! 柔らかいのがいろいろ! 当たる!)

美波「さぁ……『私のものになってくださぁい』」ボソッ

P「うぁ……」ゾクゾクゾク

P(い、いかん……理性が負け……る……)

夕美「ちょっとまって! こ、これはやりすぎだよっ!」

P「夕美……!」

美波「あら……そうなの?」

夕美「そうなの、って……こんなの……!」

美波「あ、そっか」

美波「皆もこっちの役をやってみないといけないですよね」

P「え」

夕美文香藍子「「「!!」」」

ありす「?」


P「い、いや……ちょ……」

夕美文香藍子「「「……」」」ゴクリ

P「あのっ、さすがにこれ以上は問題が……いやそうだ、時間がなっ!」

夕美「……文香さん」

文香「はい……ありすちゃん、ちょっと向こうの部屋で本を読みに行きましょう……」

ありす「えっ、えっ、でもなんか大事なコトが……!」

藍子「文香さんの分は後でちゃんと用意しておきますね」

文香「痛み入ります…… では、ありすちゃん……」

ありす「あのっ、私も気になって……えっ、文香さん力強っ!」

ズルズル

P「あ、ありす……」

P(いかん、ここでありすを逃したら俺は、俺は……!)


P「待ってくれ、ありす、文香! このまもがっ」

夕美「はぁい、事務所で大声出しちゃいけませんよー」

藍子「ちょっとだけ、練習にお付き合いしてもらうだけですからぁ」

美波「ネクタイ外して、後ろ手にしちゃいましょうか」

夕美「私は緩めるだけの方が好きかなっ。シャツのボタンは外したいよね」

藍子「後ろ手に拘束するなら、親指を結束バンドで……」

P「むーっ、んーっ!」

美波「Pさん、あんまり暴れちゃ、めっ、ですよ」

P「ぷはっ……」

ありす「ぷ、プロデューサーさん……!」ズルズル

P「ありすーっ!」

ありす「橘ですーっ!」

バタン…

藍子「さて、それでは……」

P「ヒッ……」ガタガタ

夕美「プロデューサーさん♡」

美波「ちゃんと断ってくださいね♡」



――Pが最後に見たものは

――扉の鍵を閉めようとする美波の姿だった





ガチッ





おわり





思いついたけど結局出番の無かったPの台詞を置いておきます。
「この生殖本能ヴァルキュリアどもめ」

いままでのこんな感じのSS。よければこちらもどうぞ。

塩見周子「どっちがいーい?」
塩見周子「どっちがいーい?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1559372967/)

卯月「プロデューサーさんの」凛「膝の」未央「うえ」
卯月「プロデューサーさんの」凛「膝の」未央「うえ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573210279/)



やはり、歩くセクロスさんは生娘だったな

この続き見たい
早くしろ下さい

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