モバP「アイドルをオモチャにするクスリ 三船美優編」 (20)

●まえがき

※P×三船美優 R18

※三船美優
https://i.imgur.com/pqgQXjk.jpg



●0-01


――ねぇ、プロデューサー。


――アイドルをオモチャにするクスリ、欲しくない?




●1-01


フロアに人がほとんど居なくなった遅い時間の事務所で、
プロデューサーさんは小さな無銘の容器に入りの、透明でサラサラした液体を私に見せてきました。

「美優さんに宣伝を頼みたいのですって。コンセプトは、男女の仲を深める魔法のオイルです」
「プロデューサーさん、それって私にできるお仕事なんですか……?」
「これは女性が買って、意中の男性に『塗って』って頼んで、自然にボディタッチをすることで、
 急接近させる――と使えってシロモノなんですよ」

プロデューサーさんは「本当に私にできるのだろうか……」という仕事も、平然と獲ってきます。
アイドルになったとはいえ、華があるとは言えない私に、こんな仕事を……。



「というわけで、俺が実験台になります。さぁ頼んでみてください。塗って、って」
「え、今、ここでですか……?」

男性に自分の体を触れさせるよう誘導する――
そんな商品なんて、OL時代の私であったらとても買えないでしょう。

「ほら、今日も遅くまでお仕事でお疲れでしょう? 疲労回復、血行促進効果もあるんですよコレ」
「じゃ、じゃあ、せっかくなんで、お願いします……プロデューサーさん」

私はプロデューサーさんに押されて、提案に首肯していました。



空調と蛍光灯の響きだけがちらつく静かなフロアで、
私は手すりのないビジネスチェアに腰掛けていました。

水のようなオイルを湯煎で少し温めて、手のひらいっぱいに垂らしたプロデューサーさん。
大きく広げられた手を見ると、ふと初めて出会った日のことを思い出します。
少し背伸びするつもりで買ったヒールが折れて、それと同時に私の心も折れかけていたところ。
そこにプロデューサーさんが声をかけてきてくれて……。

「美優さんも、手を軽く広げてください……まずは、指先からいきましょう」

手のひらを重ね、指と指が絡まると、体温と、筋肉と、骨やら関節やら、
私よりゴツゴツとたくましい手の感触が頭に流れ込んできて、なんだかドキドキします。
手が触れ合ったのは、出会った日の、うずくまっていた私を起こしてくださったとき以来でしょうか。

指の間のわずかな水かき同士が食い込むと、プロデューサーさんに体を包み込まれてる気がします。
でも、手のひらと手のひらが着いたり離れたりでくちゅくちゅ水音がして、ちょっといやらしい……なんて、
お仕事でやってくださっているプロデューサーさんの前では、言えるわけもありません。
それとも、そこまでがこの商品の狙いなのでしょうか? まるで恋人同士のようです。

「んんっ……」

今度は手首を外側に曲げて、柔軟運動のように伸ばします。
オイルが垂れるから、と私は袖をまくってもらいました。
垂れて透明な筋がついた前腕の部分から、さっき指で感じた感触がじりじり延びてきます。

そのままプロデューサーさんは親指で私の手のひらをグリグリと刺激します。
ツボ押しマッサージされている気分ですが、それよりも余韻が熱くちりちりと残って、
刺激が積み重なると、つい声が出てしまいます。


●1-02

「美優さん、髪、アップにしてもらえます? 首にも使いますので」

首にも使う、とはなんのことでしょうか。まさか、このオイル?

「首には血管やリンパ管がありますから、これで熱を与えると全身の代謝が上がるんですよ。
 まぁ、敏感なところですから、触らせたくないというのであれば……」
「……で、でも、そういうコンセプトの商品なのですよね……?」
「商品をきちんと使ったほうが、宣伝でも効果的な演技ができると思いますよ」
「う、ううっ」

私は演技に自信がありません……ちゃんと使わなければ、このお仕事はまともにできないでしょう。
そしてプロデューサーさん以外に、首を触らせてもいい男性のアテはありません。



「服が濡れたらいけませんからね、少しおとなしめにしますよ」
「……わかりました。どうぞ」

髪をいつもより上でまとめて、サイドに流して、うなじを出します。
首は体温の溜まるところなので熱っぽいのは平常通りですが、少し汗が出ているかもしれません。

男性の方は女性のうなじに色気を感じることがあるようです。
私からすれば、性的な示唆を感じる余地はないように思えますが、プロデューサーさんは……?

そんなことをぼうっと考えていると、
後ろ髪の生え際に、濡れた感触が添えられました。

「……んんぅうっ……」

熱というよりも、ゾクゾクとしたしびれが、首や顔の表情筋を伝って、変な声が出てしまいます。

「リラックスしてください。もう誰もいませんから……」

耳元でささやかれると、その言葉がふわふわと頭蓋のアーチに響きます。
首を指先で沈み込むようにされると、しびれが肩口や目や口まで染み込んできて、
そのまま生え際から後頭部にかけて撫でられます。まるで子供をあやすみたいに。

「美優さんには、俺の持って来る仕事をいつも不平ひとつ言わずにやってくださって、とても感謝してます」
「私ができることなんて、それぐらいですから……」

プロデューサーさんが私の背中側に回っていましたが、私はリラックスしきっていて目を閉じていました。
瞼の裏に、青緑の影送りがフラフラと揺らめいて拡散し、頭の中がそのまま染まりそうです。

「そんな美優さんだから頼めることというのも、ありましてね、いろいろと。
 だから、美優さんには体も心もいたわってもらいたくて」

こんな息のかかりそうな近さで話したのは、いつぶりでしょうか。
プロデューサーさんも、この商品の意図を伝えるためか、かなり親しげに触ってくださいます。
いや、宣伝のためでしょうか。本当に――だとしたら?

「んっ、そ、そこは……」
「美優さんは二の腕もきれいですね。日頃のレッスンの賜物でしょうか」

そこは二の腕の付け根、肩と脇の下に近い際どい場所で、
今日一日の自分の匂いを嗅がれてる気がしたり、
ぎゅっとされた感触が胸まで伝わったりで、私は顔が熱くなってしまいます。

「プロデューサー、さん……このオイル、こういう使い方をするんですか……?」
「恋人同士がスキンシップをする名目としても使えるんですよ。
 まぁ、美優さんがお嫌であれば、このあたりで止めておきますが」

プロデューサーさんに、つうっとひと撫でされてから指を離されると、
そのあとの肌が物悲しいぐらいに寂しくて、私はとても「ここまで」とは言えませんでした。

「い、いえ……続けて、ください」

いきなり感触がなくなってしまうと、冬場のお風呂上がりの湯冷めのように、
かえって寒気がして、つい長湯してしまうのと似ていました。


●1-03

「ううぅん……ふぁ、ぷ、プロデューサーさん……そこ、は」

プロデューサーさんは私の背中から、私の胸元をくつろげさせてきます。
アイドル活動で露出度の高い衣装を着たときと同じくらい、肌を顕にされて、
そこにもとろとろした熱を染み込まされます。

「服、脱いで楽にしましょう。大丈夫、誰も来ませんから……」

プロデューサーさんに見られてながら服を――身震いと火照りが頭から腰まで反射し合って、
わけがわからなくなります。

「オイルに濡れないよう……はだけさせますよ」

オイルの塗られたところは、プロデューサーさんの手の感触と温度がぴったりと残って、
塗られたところが広がっていくと、いくつもの手で抱きしめられている錯覚がします。
温かさと、恥ずかしさとが折り重なって、心臓がどきどきしているのに、
このままでいたい――矛盾が私の中に食い込んでいきます。

「美優さんは背中も綺麗です……俺と同じ人間とは、思えないぐらい」

手でポンポンと前屈するようにうながされて、私はストレッチの時よりもスムーズに背を丸めました。
そうして延びた皮膚に浮き上がる肋骨と背骨を、プロデューサーさんの指が撫でてくると、
くすぐったいやら、それでいて触られたあとがポカポカするやらで、
私はすっかりマッサージに身を委ねていました。

「美優さんとこうしてると、なんだか俺まで温かい気分になりますよ」
「ふあっ……」

気づけばプロデューサーさんは、私のウエストに両腕を回して、首筋から囁いてきました。
あの、私を変えてくれた声を優しく流し込まれ、私を変えてくれた手で本当に抱きしめられると、
こんな近くで――という赤い羞恥が、自分があるべき場所に収まっていく――そんな白い安心感に滲んでぼやけていきます。

「いい匂いがしますね、オイルじゃなくて、美優さんの匂い」
「そんな、私……」

プロデューサーさんの呼吸が、吐息や肺の膨らむ様まで感じ取れて、
呼気に混じって自分の大切な何かが吸い込まれていく気がします。
でも、そうされると、頭も体も軽やかになって、ふわふわとして、
このまま続けられたら、三船美優が溶けてしまいそうです。

「ずっとこうしてられたら、いいのに」
「プロデューサー、さんっ……」

すでに名前を呼ぶのが精一杯でした。
このまま続けられたら、私は何でも許してしまう――何でも?

「ひぁああんっ……! む、むね……今、いじっちゃ……っ!」

それを想像した瞬間、プロデューサーさんが蠢いて、私の熱を捉えにきます。

「あっ……うぅっ、プロ、デューサー……」

熱は水彩絵の具のようにじわじわと私の肌を、私の神経を溶かして、
溢れ出したぶんが口から漏れ出てしまいます。

「美優さんは素敵な方です……だから、それをみんなに知ってもらいたい。
 ……だから、俺だけのモノにしたい。おかしいですよね」
「あ……うぁ……わ、たし……」

私がプロデューサーさんのモノにされる――その意味は私の脳裏でボヤボヤとしていましたが、
なんだかとても安らぐ思いがして、背を委ねています。

●1-04

「美優さん……」

プロデューサーさんの手は、ついに下着と肌との間まで滑り込んできました。

「や、ぁっ……!」

私は脇を締めてプロデューサーさんの手を押さえつけてしまい、胸への愛撫をせがむ形になってしまいます。
そうと気づいて……それでも、私の舌は言い訳一つ出てきません。

「む、ねっ……プロデューサーさん、恥ずかしい、です……っ」

私の手は、プロデューサーさんの手を上から重ねて、
押し付けて――これでは、本当に私がねだっているようです。

「触っても、いいですよね?」

プロデューサーさんの指に、ほんのわずかな力が入っただけで、
私の胸はそれを感じ取って、体温が膨らんで、また私は吐息をこぼしてしまいます。

「触るって……どんな……」

私とプロデューサーさんのやり取りは矛盾していました。
プロデューサーさんの指は既に私の膨らみに半ば食い込んでいました。

私はその先の“触る”を想像して、息を荒げてしまいます。
オイルでじんわりと広がった温みで肌の下まで濡らされたように、
もっと奥の戻れないところまで触れられてしまう期待感がありました。

「プロデューサー、さん……」

それは確かに期待感でした。はっきりと覚えています。
私は出会ったとき、プロデューサーさんの誘いで、戻れない選択をしていました。
そのときと違って、迷いはありませんでした。

「もっと……美優さんを、俺のモノに、したいんです」
「はぁ……うっ――ああっ!」

ぎゅう、っと痛みさえ覚えるほど掴まれて、痛みが心臓を取り巻いて、きりきりと私を縛っていきます。
痛みで縛られて――今この瞬間に縫い留められて、
言い訳の仕様がなく三船美優はプロデューサーの手に握られています。

「嫌だ、って言うなら、今のうちですからね」
「は……いっ……、もっと、しても、私は……大丈夫、です、から……」

指先の食い込みで、その痛みで、プロデューサーさんの欲望を感じます。
不思議と――ここに居て、この人のそばに居ていいんだ、という高揚感が湧いてきます。

「美優さん、泣いて、ます?」
「あ、ちが……イヤじゃなんか、ないです……」

何だか目頭が熱くなって、とろけそうなほど目が潤んで、視界もぼやけて、涙がこぼれていました。
涙と同時に、重苦しさのようなものが剥がれ落ちて、肩や胸が浮つきます。

「もっと、しても、いいです、から……」
「……本気に、しますよ」

プロデューサーの声音は、単語を出してないだけで、あからさまにセックスを迫っていました。
仕事場で、アイドルなのに、こんな無体な――

「ねぇ、美優さん」

プロデューサーさんが、あの手で、私の頭を撫でてきます。
すると、頭蓋骨の裏を舐められたように、脳漿がくらくらと沸騰するように、私が温かさで柔らかく濁っていきます。
指で髪を一回梳かれるたびに、プロデューサーさんが私に入り込んできます。

「あっ――わ、わたし――」
「美優さん」

名前を一回呼ばれるたびに、プロデューサーさんが私に色を落としていきます。

「プロデューサーとアイドルだから、いけないと思っていましたけど……
 でも、ダメなんです。あなたが、どんどん綺麗になるから。なってしまうから」

綺麗だと一回褒められるたびに、プロデューサーさんが私を蕩かせていきます。

「俺、美優さんを抱きたいです」

そして、私はその言葉を聞いてしまいました。

●1-05

プロデューサーさんは、返事を待たずに私を押し倒してきました。
私を弄ぶような余裕がいつの間にか失せていて、唇を貪られ、唾液を流し込まれます。
舌の熱さとぎこちなさは、私もプロデューサーさんも同じくらいで、不格好な絡み合いのせいか、
べちゃべちゃと下品な音とともにおとがいに雫が垂れていきます。

セックス、したいんですか――明確に、体を重ねると意識すると、
急にお腹の下がきゅうっと緊張して、どろどろになった胸から上とチグハグになってしまいます。

「緊張、してます……? もしかして、はじめて、とか」
「いやぁ……言わないで、ください……」

26にもなって処女呼ばわり――それも憎からず思う相手から、こんなときに――顔をそむけてしまいます。
けれどプロデューサーさんは、それさえも許してくれなくて、
頭を手でがっしりと掴まれ、目を覗き込んできます。

「初めてなら、優しくしなきゃなぁ、って。それだけです」

プロデューサーさんの目に灯る熱は、あの人自身のものか、それとも私が火照っているのが映って混ざっているものか、
そう考えるだけで、プロデューサーさんの中に落ちていって、一緒に地獄の釜で煮込まれている気がして、
苦しいはずなのに、そのまま一緒くたに煮崩れてしまいたくなります。

「……プロデューサーさんの思うままに、してください」

口から出たのは煽りの言葉。
プロデューサーさんの息は荒く、浴びる吐息は焚き火のよう。

「撤回させませんからね。そのセリフ」

プロデューサーさんの手が、私の首に念を押すように巻き付けられ、
私の心臓は脈拍を通してその手に繋がれてしまいました。


●1-06


プロデューサーさんは、私のスカートを乱暴に捲りあげます。
腿を引っかきながら足を開かされて、パンストの伝線する音が聞こえました。

「乱暴に、しちゃ……プロデューサー、さんっ……」
「してくれって言ったのは美優さんでしょう?」

そのまま下着を強引にずらして、私の中に強引にねじ込まれます――手、でしょうか。
中で鍵のように曲げられ引っかかれて、それが指だと気づきます。

「ここも、俺のモノにしてしまいますよ」

痛みがしゅっと走って、後からきりきりとした疼きが散り散りにばらまかれます。
また指でこじ開けられて、こすられて、ひりつく熱が粘膜に押し広げられます。

「あっ――んん゛っ、う、ぁあっ、プロデューサー、さんっ……」

痛覚は細い細い針となって私を突き刺し、プロデューサーさんの欲望を縫い付けられていく心地です。
モノにされる、という言葉を聞かされて、どうしてもそう連想してしまいます。
そう思うと、痛みが甘痒くなって、中がひゅく、ひゅく、とよじれて爪痕をねだってしまいます。

「本当は乱暴に扱われるの、好きなんじゃないんですか?」
「そんなこと……私、されたこと、ありません……っ」

指が抜かれて、私はようやく足を閉じられました。
甘痒さが私の中で結び付けられ、束ねられたまま、閉じた腿の間でしくしくと残ります。

「ほら……こんなに濡れてますよ? 俺としては、嬉しいですけど」

放心していた私に指が突っ込まれ――それが私の、その……ある種の体液でふやけていたと気づくと、
私は今度こそ顔から火が出てしまいました。
私の体が、本当にプロデューサーの思いのままになってしまったようです。

「準備もできたようなんで……入れますよ。美優さん」

閉じた内腿にプロデューサーの手が差し込まれ、するすると擦られると、
私の足腰はゆるゆると抵抗力を失くし、女としての大事な場所を、プロデューサーさんの前に曝してしまいます。
仰向けにされて、プロデューサーさんの背中には蛍光灯が眩しく映っていました。

腰骨をがっちりと掴まれました。私は一切の抵抗を放棄していました。

「あっ……くあぁっ――ひあぁあっぅ……!」

腰を掴まれながらプロデューサーさんを受け入れた瞬間、何かとても重いものが、私の中から霧散しました。

「美優さんは……俺のものになってもらいます」

私の体は、見えない糸に釣り上げられたように跳ねたり、
プロデューサーさんの律動に絡みついたりして、勝手に動き回りました。
けれど私の意識も、ここが事務所であることも忘れて、泣いて、呻いて、
線香花火のようにパチパチと体温を撒き散らしながら、夜を落ちていきました。



そうして私とプロデューサーは、仕事の合間をぬって肉体関係を持つようになりました。


●2-01


――キミがソレを使いさえしなければ、美優ちゃんはちゃんとしたアイドルになれたかもしれない。

――キミがそんなコト気に病むタマかどうかは、知らにゃいけど♪


●2-02


『だから、あの人を許せなかったんですよ』

冬去りきらず、まだ春遠い東尋坊を背景に、対馬海流を波打たす潮風に髪を乱されて、
私は太陽の光半分、陰半分となる角度で顔を伏せていました。

セリフと裏腹に、私の顔はある種の晴れやかさに満ちていました。



『許されることではありませんね……でも、私の始末は、私自身でつけさせてください』

そう言った私は、海の青にも空の青にも染まりきれない一つの影となり、
消え入りそうな足取りで、ゴツゴツと切り立つ断崖から身を投げました。




●2-02


「今回はいかがでしたか? プロデューサーさん」

プロデューサーさんがモニタの電源を切ると、光を失った液晶に二人分の影が、
グリザイユの私とプロデューサーさんが映り込んでいました。

「向こうから、お褒めの言葉をいただきましたよ。やはり悲劇は三船美優だ、って」
「私はプロデューサーさんの感想が聞きたいんです」
「……俺でも、一瞬やばい、って思うぐらいハマってますね」
「陰、ありますからね。私は」

刑事ドラマ――私は、崖に追い詰められた犯人役でした――の映像の感想を求めると、
プロデューサーさんは曖昧な笑みを返してきました。



私は名目こそアイドルでしたが、今や活動のほとんどがドラマで、実質的には女優になっていました。

一人でステージをもたせるほど、私には華がなかったのです。
プロデューサーさんもいろいろ試行錯誤してくれましたが、どうも私がソロでやっていくのは厳しく、
何曲かシングルを出しても奮わずじまいで、アイドルとして引退寸前まで追い込まれました。

そこでプロデューサーさんは、苦肉の策として、私を女優として売り込むことにしました。
それも主演ではなく、脇役を獲りに行くタイプの女優です。

陰気な空気を醸してしまう私は――その原因が元からなのか、
プロデューサーとの後ろ暗い関係のせいかはわかりませんが――
主演を張ると、どうしても画面全体を沈ませてしまうようです。

しかし主役と対比される陰に配置されれば、引き立て役としてうまく機能する……という目論見でした。



「そういう役がスムーズに取りに行けるので、ついそればっかりになってしまって、
 たまにメインキャストになったかと思えば殺人犯だったり、当て馬ヒロインだったりで……食傷、しませんか」
「私は、プロデューサーさんが取ってきてくださるお仕事なら、どれでも嬉しいですよ」

やむを得ずの路線変更は、プロデューサーや事務所の方の予想以上に皆さんから評価を得て、
おかげさまで私はドラマのお仕事をいただき、それなりの――ドラマ好きの方には、
私の名前だけで役柄の見当をつけられてしまうぐらいの――知名度を得ることができました。

「美優さんがそうなったのは、俺のせいなんじゃないか……って。俺、プロデューサーですからね」
「らしくないことをおっしゃって……最初の最初、アイドルになったところからあなたのせいじゃありませんか」

プロデューサーさんは、自分を責めるような言葉と裏腹に、ぜんぜん悪気を感じていない声音でした。

「美優さんの陰が深くなって、それがファンや業界人を引きずり込むようなほどになって、
 それが俺のせいだと思えば……ね。プロデューサーとしては、喜んでしまいますけど」

むしろ、プロデューサーさんは私が悲惨な場面を迎えるたびに、それを喜んでくださる――
そんな気がしていたからこそ、私はためらいなく役に没入できました。

「プロデューサーのせいで、私の陰が深くなる……どうして、ですか」
「そりゃあ、俺がそういうことをさせてますからね」

プロデューサーの手が、私の頭を撫でてくれる――さり気なく、しかし偶然ではありえない動作。

「表に出せないようなことしますよ、美優さん」

それが、私とプロデューサーの符牒でした。


●2-03


二人きりであるとはいえ、事務所の一室でプロデューサーさんとセックスするのは、
いつも緊張してゾクゾクします。露見したら、私達は一巻の終わりです。

「でも、そうじゃないと興奮できないんですよね。あんなに奥ゆかしい人だったのに……」

プロデューサーさんのなじる通りでした。
一緒に、もう二度と表舞台に立てない闇と紙一重のところでグラグラするのは、
ステージよりもドラマよりも、私を陶酔させます。

「出して、舐めてください」

椅子に座ったプロデューサーさんの前に跪きます。
いやらしい指図を受けるたびに、私の中で期待感がふつふつと膨らんでいきます。
OL時代と同じ、言われたことをやっているだけなのに、どうしてこんなに違うんでしょうか。

「もう、大きい……です、ね」
「美優さんが物欲しそうな顔してるから、煽られちゃって」

スラックスは既にテントを張っていて、ファスナーと下着を下ろすと、
半ばほど固くなったペニスが私の顔に押し付けられました。
頬張りたいのをこらえて、まずはあいさつのキスを落とします。
そうすると、プロデューサーさんが頭を撫でてくれます。

「よーし、いい子だ……」

プロデューサーさんの手で優しく撫でてもらうと、それだけで幸福感が溢れ出てきて、
それと鼻の前に漂っている性臭と、倒錯的なシチュエーションが混ざり合って、
入れ代わり立ち代わりに脳をいたぶられ、思考能力が麻痺していきます。

舌を震えるほどのばし、竿の裏筋をなぞります。
汗の味。粘膜の味。塩辛くて、舌がぴりぴりして、もう頬裏に涎がじわついてきます。
それをたっぷりなめらかになるほど溜めてから、亀頭をくちびるではさみ吸い付きます。

「……して欲しいことがあったら、なんでも言ってください」

プロデューサーさんは受けに回るときは寡黙になります。
愛撫を受けているのはプロデューサーさんなのに、せがんでいるのは私の方でした。
黙っていられると、私に興味を失ったかと不安になってしまいます。

それを察したのか、プロデューサーさんは口を噛み締めたまま、私を撫でて先を促してくれました。

「たまには、声、聞かせてくださっても……手も、すき、なんですけどね……」


●2-04

ぴちゃ、ぴちゃと唾液をまぶし、滑りよく舐められるように下準備します。
赤黒い粘膜の形を舌で縁取っていると、それを中に迎え入れた前の夜が思い出されて、
早くも下腹が切なくなってしまいますが、まだ早い――これから、です。

「じゅる……ちゅっ、じる……ちゅっ」

急ぐ必要はありません。舐めて、吸って、甘噛みして、
確かめていくと、いいところはプロデューサーさんが手で教えてくださいます。

いいところにあたりをつけたら、そこをぎゅっと頬をすぼめて音を立てて吸い付くと、
プロデューサーさんの手が快感をこらえるように力んで、あたまを手で押さえつけられると、
快感が手を通しておかえしされたようにあたまがまっしろになっちゃいます。

プロデューサーさんの手は、ほんとうに、だめです。わたしは、これによわい――



なでられて、しょっぱくて、なまぐさくて、
ふーっふーってうめきごえもきこえて、ぜんぶ、まざりあって、きもちよくなります。
だっておぼえちゃってるもの。

おちんちんをなめてるだけでばかになっちゃう。
このままずっと、なめなめしてるだけでいたい、じゅるじゅるってしていたい。

ぷろでゅーさーのてが、わたしのあたまをつかんで、ごりごりって、のどのおくまで、いきなり――
いきぐるしくて、もっといきぐるしくなりたくて、てをのばす。

こえが、でちゃう、もれて、おちんちんにつぶされて、よだれがべちゃべちゃして、
それでどうじにナカをずんずんされてるきがして――しちゃってて、きゅうってなって、ほんとに、だめに。

「舐めてるだけで、濡らすほどですか――いやらしいですね、美優さん!」

どんなにいじめられて、ひどくされても、
わたしは、そのてになでられたら、しあわせになっちゃうんです。
なでられちゃったところ、あつくなって、ぼうっとして、とけてっちゃうんです。

いや、なでられたところだけじゃなくて、なでられたことがあるばしょは、
ぜんぶが、それをおもいだして、ジンジンして、ほんとになでられたくって、せつなくて――

「出しますよ、飲んで、くださいっ」

あたまをがっとつかまれたまま、のどにざーめんをながしこまれて、
べとべとのしょくどうでむせながら、わたしはおなかをがくがくさせてイッてしまいました。
くるしいのに、これでイクことを、からだでおぼえてしまいました。

「よく、頑張りましたね、美優さん……素敵、ですよ」

そうしてなでられて、また、おぼえてしまうんです。
わたしにもっともっときもちいいのを、おぼえさせられちゃうんです。
ずっと、なんどでも、わたしが、もっとおかしくなるまで……おかしく、させてほしい。

●2-06


――男の子って、みーんな、オモチャの扱いが荒っぽいよねぇ。
――壊れちゃっても、知らないよ?


●2-05

放心状態から我に返ると、私はべちゃべちゃな床に座り込んでいて、
プロデューサーに腰を抱え上げられていました。

「ちょっと気を失ってました?」

私の秘所に突きつけられたペニスは、パステルピンクの薄いゴムがかぶさっています。
それは猛々しい赤黒さを少し隠す一方で、これからの行為が、
『快楽のためだけの子作りもどき』であることを否応なしに意識させます。

「まぁ、でも、大丈夫ですよね、美優さんなら」

それは文字通りの『大丈夫』なのか、『大丈夫じゃなくなっても構わない』なのか。

私はかろうじてうなずいていました。もう逃げられません、逃げる気も起きません。
だって、きっとどちらに転んでも、私は壊れるほど幸せになれるはずですから。

ペニスは、私が口でくわえていた時よりももっと大きく感じられて、
こんなものを体に差し込まれたら、それこそ内臓がぐちゃぐちゃになってしまいそうです。
それを想像するだけで――あるいは思い返すだけで――勝手におまんこがむずかります。
くちばっかり、ずるいって。べつべつになってしまったみたい。



「んあぁ、はあぁあ――ああっあっ」

それらがひとつに串刺しにされて、ナカの奥から脳の裏側までがんがん揺らされて、
一つになったかと思ったら、宙に浮いてバラバラになって、細胞の一つ一つの膜が弾けそうです。

「はぁあっ、お、おく、ぐりぐりって、して――んんはあぁああっ!」

どろどろになったカラダに、手を突っ込まれて、くらくらかき回されて、
わたしのあたまが、また、すぐに、おかしくなっていきます――。

ばちゅん、ばちゅんと水音が立って、あれ――これ、わたし、こんなおと、だして、こわれちゃったみたい、です。
あついのも、ぞくぞくするのも、まざって、おくも、そとも、いっしょに、まきこんで――。

「くぁあっ、ああぁあっ――ふぁあ、んくっ、ぅうううう……っ」

ぷろでゅーさーが、わたしにおおいかぶさって、ぐい、ぐいっておもくのしかかってきます。

このまま、ぺしゃんこになって、あのひとのかげみたいに、あしもとにへばりついていたい。

手も、足も、首も、胸も、骨と肉の一本一本も、頭の中まで、ぐしゃぐしゃにされたい。
何度でも、なんどでも、延々と、わたしが、わたしでいられなくなるまで。
もっと、もっとして、めちゃくちゃに、こわして――なにも、かんがえられなくして。

わたしをあなただけでうめつくして。

「美優、さん……だし、ますっ……」

そのてで、ぎゅってして、なでて、つねって、ひっかいて――そのまま、だして。

また、わたしに、おぼえさせて。おもいだすだけで、じゅんとするぐらい。

「い――い、くっ……わらし、も――あ、んっ――ぉお――っ……」



●2-06

そうして、私に最後まで焼き付いてるのは、いつもプロデューサーの手の感触でした。

あるいは、意識を飛ばした後、子供を寝かしつけるように、私の頭を撫でてくれているのかもしれません。
それは、手荒い扱いへの労りでしょうか。それさえも、私には甘い毒になっていましたが。



気づけば、プロデューサーの手を目で追ってしまうようになってしまいました。
自分でも、それに意識が向くのを抑えられません。

そうして、その指先が少し曲がるだけで、それが視界に入るだけで、
見えない糸に引かれたように、私はそれを思い出してしまいます。
澄まし顔をしていても、心はぐしゃぐしゃにされるのを期待してしまいます。

プロデューサーがそばにいるだけで、すべてが上の空です。

そうして、壊して、壊してと願う私は、
実はもう、とっくに壊れてしまっているのかもしれません……。



(おしまい)


※このスレと同じコンセプトの過去作

志希「アイドルをオモチャにするクスリ」【R-18】 ※片桐早苗、的場梨沙、堀裕子
志希「アイドルをオモチャにするクスリ」【R-18】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437361049/)

モバP「アイドルをオモチャにするクスリ 心・響子編」
モバP「アイドルをオモチャにするクスリ 心・響子編」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1500106544/)


待ってました。

ブピュれる

大変すばらしかった

おつおつおつ

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