ヘソミン職人の朝は早い。
― こんなに早くからお仕事ですか? ―
日が昇り始めたころに職人は目覚める。現在午前四時半。窓からは薄っすらと日が差している。
訓練兵の中には早朝トレーニングをし始める時間だ。しかし職人は日課である走り込みの予定をずらしてまで仕事に取り掛かる。
エレン「この時間帯が、最もヘソミンが美しく映える時間帯なんです」
ヘソミンの為ならば緻密な時間調整が欠かせないのだ。
穏やかな微笑を浮かべた職人は、手馴れた手つきで毛布を退かし寝巻きをちらりと捲る。
ぽっこりと丸みを帯びたお腹の輪郭に直径1.2cmほどの窪みが現れた。ヘソミンだ。
巷の若い雌共はセサミンに疲労回復や美肌効果があるなどとの情報に踊らされのたまっているようだが、ヘソミンに敵う道理などないのだ。
― 辛くはないんですか? ―
エレン「はは、これが俺の仕事ですから(笑)。それにヘソミンに変えてからより快適に過ごせるようになったんです」
普段の悪人面はどこへやら。終始笑顔を絶やさず手早く土を掃いシロツメクサを自身の毛布に並べてしまった。
小鳥のさえずりが聞こえる。今まさに職人の朝が始まろうとしているのだ。
チクミンの続きか
期待
素晴らしいセンスの人か期待
チクミンやめちゃったんだ
職人の目が鋭く光る。先程までの柔和な表情が嘘のようだ。
これから素材の入念なチェックが始まるのだ。職人は人差し指を立て窪みへ挿入する。
奥深くまで行き届いたのを確認すると窪みの淵に沿ってゆっくり丹念に指をこねくりまわす。その様はまるで窓際の埃を気にする人類最強のようだ。
― いつからこの仕事に変えられたんですか? ―
エレン「……静かに」
糸よりも細い囁きに思わず息を飲んでしまう。職人はそれだけ集中しているということがわかる。
およそ十二周半したところで指が止まりそのまま掬い上げられる。誰かの喉がごくりと鳴った。
エレン「4日前です。前の仕事は問題があると友人に言われてしまって(笑)」
苦笑する職人の眉が下がりそのまま指を口に含む。舐める。しゃぶる。存分に。
― 今の行為にはどんな意味が? ―
エレン「清潔にしなければならないでしょう? だからですよ」
当然の事のように答えた職人は並べて置いたシロツメクサに手を伸ばす。
ゴリラのさえずりが聞こえる。職人は微笑みそっと眉間にシロツメクサを添え、突いた。
このシリーズのエレンは常に穏やかな笑みを浮かべていそうだ
期待
ゴリラのさえずりてwwww
― 報告書通りの容赦なさですね ―
エレン「これでも減った方なんです。本当は穏便に済ませたいのですがアルミンが襲われてしまうので」
ふっ、と職人から表情が消え拳を握る。しかし直ぐにその拳を解き作業に取り掛かる。
あくまでも今は仕事中。公私混同など実際には許されていないのだ。
毛布へと鎮座させられたシロツメクサが丁寧に摘まれ、窪みの中心からおよそ2~3cm程離れた位置に添えられた。
職人はそのままグルリと円を描くように白い軌跡を走らせる。手の早さはぐんぐんと増しその勢いはまさに一夜壁。
ウォール・ヘソミンの完成である。
あまりの出来映えに驚嘆の声をあげることすら敵わなかった。
しかし、全体の構図を確認していた職人は溜め息を漏らし納得がいかなそうに呟いた。
エレン「……足りませんね」
そういうと職人はアルミンの寝巻きを更に捲くりパンツをもずらし下腹部全体を曝け出させた。
― あの、それはよろしいのでしょうか? ―
突然すぎる事態に気恥ずかしくなってしまい質問を投げかけてしまった。
エレン「いつもしていることですよ(笑)」
レンズ訓練兵が他の訓練兵に気遣いをしていることと同じことのように職人は語る。
しかしこの仕事を始めてまだ四日目であることを忘れないでいただきたい。
職人は視線をアルミンへと戻し、壁城から5cm程離れた位置に新たなシロツメクサを置いた。
あまりにも離れすぎているのではないかという心配は余所に肌を白に染めてゆく。
微かにゴリラの嬌声が聞こえる。しかし職人は目もくれず駆け抜ける。走れ。走れエレン。
エレン「俺には政治はわからない」
無事第二の城壁を建築し終えた職人はゴリラの下へ駆け寄り頭を撫でながら口にシロツメクサを詰め込んだ。
クリスタの気遣いと一緒にするなwww
― これはシーナ、ローゼ、マリアを表そうとしているのですか? ―
エレン「ははっ、バレちゃいましたか。そうなんです」
そういうと悲しげな表情を浮かべたまま職人は第三の壁へと取り掛かる。
エレン「正直辛いですよ。でも俺はこんなところで負けていられない。戦わなければ…勝てないから」
そういいきったものの職人から先程までの熱情は感じられなくなってしまった。
シロツメクサはふわりふわりと一輪ずつ風に揺られている。壁はまばらに崩れ震える手が覚束ない。
何か大切なものを職人は失ってしまったのだろうか。
まるで母親に叱られた子供が許しを請い、家事を手伝っているような雰囲気だ。
白い花冠はアルミンの胸やふとももあたりまで侵入している。
最後の一輪が添えられる。職人の瞳からは一筋の光が零れていた。
きたか…
― 完成、ですね ―
静まりかえった部屋には絞り出すような呼吸と震える声が響いた。
職人はかぶりを振り、決して壁を崩さぬように窪みへと顔を近づけてゆく。
― どうしまし――っ!? ―
エレン「ヘソ…アルミン…ヘソミン…」
職人はブツブツと独り言を吐きながら人差し指で窪みをなぞっている。
― あ、あのー… ―
エレン「一緒に…見ような…」
中指でなぞる。薬指でなぞる。爪を立て淵を引っ掻いてみる。アルミンが起きてくれない。
職人は頬の水滴を袖で拭うと、窪みに舌を這わせ思いのままに蹂躙した。
この発想に勝てる気がしない
やっぱりそうなっちゃうのかwww
変態(誉め言葉)
窪みのヘリ、淵の裏側、穴の奥深くへと舌で穿り回される。
― そ、それは職務規定違反に… ―
と、その時。部屋の扉が静かにしかし勢いよく開けられた。
ミカサ「エレン…何をしているの?」
なんとアッカーマン訓練兵が戦場へと参入してきたのだ。
エレン「んむっ……ちゅるっ……ん、ふっ……」
しかし職人は聞く耳を持たず窪みを丹精込めて舐め取り唾液を流し込む。
ミカサ「エ、エレン。わたしはアルミンに甘えたらいいとは言ったけれど何もそこまでしろとは言っていない」
アッカーマン訓練兵にもこの状況が理解できていないのか珍しく冷や汗をかいている。
― あの、これはいったい…? ―
ミカサ「話は後。今はエレンをアルミンから引き剥がす」
夜叉の如く震える彼女は職人へと手を伸ばそうとした。が、それが叶うことはなかった。
職人は泣いていたのだ。
己の行為を悔いているのかそれとも余韻に浸っているのかはわからない。
しかし我々が感じ取ったのは”ここで止めてはいけない”という直感のみであった。
舐め取ってはまた流し注がれる。そんな光景を見ているしかなかったのだ
そして時は来た。現在午前五時。朝日が昇り窓から一筋の光が差し込む。
エレン「っ……はぁ。完成だ…」
窪みへと溜められた液体が朝日によって照らされ眩く光る。
キラキラと輝くウォール・ヘソミンに新たな一日が訪れたのだ。
それは、とても小さな小さな海のようであった。
職人は満足げな表情を浮かべ。
エレン「アルミン、海はあったよ」
そう、微笑んだ。
アッカーマン訓練兵の両頬を生温い塩水が伝っていった。
アルミン「ん……。え、なに……?」
と、ようやくアルミンが目を覚ました。よく今まで熟睡していたものだと褒め称えたいところである。
虚ろげな瞼をこすり、自らの痴態を確認すると窪みへ指先を浸しゆっくりと掬い上げた。
ツーっと透明な糸が垂らされ千切れる。紅潮した表情でそれを見つめるアルミンはほんのりと溜め息を吐きながらこう述べた。
アルミン「エレン、またなの? ほら、おいで」
そういって職人を抱き寄せ優しく包み込む。瞬く間に職人は親友の世界へと旅立っていった。
アルミン「あ、ミカサ…ごめんね。僕が甘やかしたせいで…」
アッカーマン訓練兵はそっとアルミンの頭を撫で、私の分までエレンを甘えさせてあげてねと優しく告げた。
― ふぅ、親友って色々あるのね… ―
調査書をまとめ部屋から出ようとしたところで、ゴリラが激しくドラミングを起こし始めた。
視界の端で見えたのは、ゴリラが職人の家族に蹴り飛ばされたその勢いのまま、覚醒した超大型巨人にバックドロップされている光景だった。
同日
ミーナ「……」ニッコリ
アニ「……」
ミーナ「おはよう、アニ」
アニ「……なんで上に乗ってるの?」
ミーナ「アニって」ペラッ
アニ「あっ、ちょっと!?」
ミーナ「おへそ、綺麗だよね……」ワキワキ
アニ「……は?」
― 終 ―
― ミカサの日記 ―
○月▽日
今日は珍しいことにエレンから相談された。
どうやら最近寝不足のようで、昔お父さんから教わった方法を教えてあげた。
エレンが喜んでくれた。嬉しい。
○月▲日
どうやら教えた方法では効き目がなかったらしい…。
なのでアルミンに聞いてみたら?と聞くと、どうやらもう既に試していたみたい。
アルミンでダメなら私では力になれなさそうだ…。悔しい。
×月☆日
寝不足はどう?と聞くまでもなくエレンが辛そうだ。
せっかく上り調子だった成績も下がりつつある…。
どうにかしてあげたいけれど私の案は全て失策に終わった。
×月○日
アルミンも根気よく調べてくれている。ありがたい。
…でも、このごろアルミンまで寝不足になってしまっている気がする。どうしよう。
私に出来ることはないのだろうか…。
変態だ(褒め言葉
×月□日
エレンがアルミンのチクミンをこうっ!アルミンのチクミンをこうっ!と呟きながら雑草を駆逐していた。
言っている意味はわからなかったけれど、目の下は酷いクマができていた。
私はとにかく急いでエレンを寮に連れ戻し強引に寝かしつけた。
△月◎日
あれから一向に不眠症が治らなかったエレンが、ぐっすり眠れたと言ってきた!
アルミンにどうしたのと聞いたら、実は寝ている僕に寄り添ってきたんだと言っていた。
エレンは寂しかったのだろうか。…無理もない。私だって両親を失うのは辛かった。
あの時はエレンがいてくれたから良かった。
だから同じように私もと思ったけれど、今私がエレンと一緒に寝てあげることはできない…。
規則を破ってもし営倉行きにでもなったら…。
これ以上二人と離れ離れになるなんて、私が耐えられない。
このことはアルミンに任せよう。
アルミンに、できる限りエレンの好きにさせてあげてと伝えておいた。
△月■日
おかしい。エレンの不眠症が治っていない…。
アルミンに聞くと、どうやらエレンは一緒に寝ようとしても嫌がるらしい…。
でも、朝になるとアルミンに寄り添うように寝ているそうだ。
△月×日
エレンに、アルミンに甘えてみたらどうだと直接言ってみた。
最初は拒否していたけれど、アルミンにも許可は取ってあると告げると
わかったと一言残し部屋に戻ってしまった。
一応納得してくれたのだろうか?
…アルミンにもう一度伝えておこう。
☆月●日
よかった!エレンが元気を取り戻した!
それどころか以前よりも調子が良い!
こんなに嬉しいことはない!アルミンも喜んでいる!
◆月◎日
エレンがまたアルミンのチクミンと呟きながらたんぽぽを毟っていた。
チクミンってどういう意味なのと聞くと、チクミンはチクミンだ。それ以上でもそれ以下でもない。
と、返されてしまった。アルミンに聞いてもよくわからなさそうだった。
◆月■日
ジャンが期限不定の厩舎行きになった。何かしらの違反行為をしてしまったのだろうか。
最近はエレンとも衝突が減り、仲良くしてくれていただけに残念だ。
なぜ厩舎なのか意味がわからなかったけれど、とりあえず納得しておいた。
それとマルコが数日程医務室で過ごすことになった。ジャンが厩舎行きになってしまいショックなのだろう。
私だってエレンが営倉行きになったら悲しいから…。
ジャン…とうとう馬小屋の住人に…
ジャン…チクボットをやっちまったのか…
◆月◇日
エレンが今度はシロツメクサを毟っていた。ヘソ…?とか言っていた。
なんだか不安になってしまうが、それ以外は普段と変わらないので気にしないでおこう。
……気にしないでおこう。
ガツ ニチ
罰則覚悟で男子寮へと忍び込んだ
よくわからなかった わからなかったけれど理解はできたつもり
エレンが安心して眠れているのなら私はそれでいい
ただ アルミン一人に押し付けてしまう形になって本当に 申し訳ない
でも安心して、必ず私が二人を守ってみせる
――日記はここで終わっている
― 完 ―
シロツメクサの花言葉 …… 約束、復讐心
たんぽぽの花言葉 …… 楽しい思い出、別離
よし、寝る。心残りなのはスレタイの白詰草が文字数制限でカタカナにできなかったこと
鬼才乙
乙
泣いた
乙乙
アホや
乙
最後の花言葉がまた…もう何て言えばいいのか…
盛大に乙
これは卑怯 なぜ俺は泣いているんだ
この時間に投下って事は、>>1もこれから作業にうつるのかな?
乙!
これは天才ですわ
乙
乙
驚異的なまでの文才
次回作があったら楽しみにしてる!
乙
素晴らしかった
乙、何だろうこの中毒性
そしてジャン…素直に信じすぎたばかりに…
おお乙
チクミンも見てたけどすごく面白かった
乙
次はシリミンかな?
チクミンから下がって行っているところを見ると、次はアルチンか
アルミンの尿道に野ばらを指すだけの簡単な
職人は優しいから痛そうな事はしないよ
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