風野灯織「息抜き……ですか?」 (11)
P「ああ。W.I.N.G.も終わって一段落したし、たまにはいいかと思ってな」
灯織「いいですよ」
P「そうか。だがな、灯織。あまり根を詰め過ぎても……ん? 灯織、今、なんて言った?」
灯織「いい、と言いました。……意外でしたか?」
P「……正直、意外だった。W.I.N.G.が終わったとは言え、トップアイドルになるためにはまだまだ頑張らないといけないからな。灯織のことだから、てっきり断られると」
灯織「否定はしません。以前の私なら、きっと、そう言っていたと思います。……いえ、今も、そう思っているところはあります。もっともっと、今まで以上に頑張らないと、トップアイドルにはなれないから」
P「灯織……」
灯織「……そんな顔、しないでください。そう思っていることは事実です。でも、プロデューサーがそう言ってくれるなら……私は、その言葉に甘えたい。今は、そう思えるようにもなりましたから」
P「……」
灯織「……プロデューサー?」
P「……すまん。ちょっと泣きそうだ」
灯織「えっ。ど、どうしてですか」
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P「いや、だってなぁ……灯織が……灯織が……そりゃ、泣くって……」
灯織「泣くほど、ですか。……昔の私、そんなにひどかったかな」
P「いや、あの頃はあの頃でかわいかった。ひどくはないぞ。昔の灯織があっての今の灯織だからな」
灯織「いきなり復活しないでください。……あと、かわいいとか、そんな気軽に言わないでください」
P「気軽じゃない。本気だ」
灯織「……プロデューサーって、そういうことばかり言いますよね」
P「灯織が魅力的なアイドルだからな」
灯織「……もう。本当に調子が良いですね。それで、どうするんですか? 息抜きと言っても、いったい何を……私ひとりだと、家で休むくらいしかできませんが」
P「ん? ああ、いや……俺もいっしょに付き合うつもりだったんだが……邪魔かな」
灯織「……! い、いえ。邪魔なんてことは、ありません。むしろ、ありがたい、です。せっかくの休日なのに、私の息抜きに付き合ってくださるなんて……本当に、ありがとうございます」
P「そうか。それなら、良かったんだが」
灯織「はい。そうです。大丈夫です。……そっか。プロデューサーも、いっしょに、なんだ。……そっか。そう、なんだ」
P「……灯織?」
灯織「……なんでもありません。それより、どうやって息抜きするつもりなんですか? 準備が必要なものでしょうか。それなら、今から準備をしないと……」
P「待て待て。息抜きなんだからもっと気軽に。な?」
灯織「それは、そうですが……息抜きだからこそ、準備をしっかりすることは必要だと思います」
P「ん。……それもそうだな。灯織の言う通りだ。でも、今回は灯織に準備が必要なことじゃないから……いや、一応、歩きやすい服装で来てもらった方がいいかな」
灯織「わかりました。それで、いったい何をするんですか?」
P「それはだな――」
――数日後・車内
灯織「ドライブ、ですか」
P「ああ。移動も多いから、車なんて乗り慣れているだろうけどな」
灯織「いえ。単なる移動とドライブでは違う……ですよね?」
P「それはそうなんだが……灯織は特にドライブが好きってわけでもないだろ?」
灯織「大丈夫です。そもそも、私は何も好きではありませんから」
P「……それ、さらっと言われると冗談かどっちかわからなくて反応に困るんだが」
灯織「冗談……では、ないかもしれませんね」
P「反応に困るな!」
灯織「……ふふっ。大丈夫ですよ、プロデューサー。私も、思いつめているわけではありませんから」
P「それならよかったんだが……灯織、本当に変わったな」
灯織「自分でも、そう思います。……そんなに、変わりましたか?」
P「ああ。何と言うか、やわらかくなった。余裕が出てきた、とも言えるかな」
灯織「……確かに、あの頃の私には余裕がありませんでしたね。今でも、余裕があるわけではありませんが」
P「ファンのおかげだな」
灯織「はい。ファンの皆さんと、プロデューサーのおかげです」
P「……そう言ってもらえると、プロデューサー冥利に尽きるよ」
灯織「……冥利に尽きるのは、私がトップアイドルになった時、じゃないんですか?」
P「トップアイドル……そうだな。確かにそうだ。そのためにも、頑張らないとな」
灯織「はい」
P「と言っても、今日はあくまで息抜きなんだが……音楽でもかけるか?」
灯織「私はこのままでも構いませんが……いえ、そうですね。お願いします」
P「よし。それじゃ、この曲を」
灯織「この曲? ……私たちの、曲ですか」
P「ああ。違う曲の方が良かったならそうするが」
灯織「いえ。このままで。……今になって聴くと、改善点も浮かんできますね」
P「改善点、か。これを録った時から、結構経つもんなぁ……」
灯織「あの時は、私の全力……いえ、全力以上のものを出してもらえた、と思います。でも、今なら、もっと」
P「それなら、次のステージは期待だな。……って、息抜きって言ってるのに、どうしても仕事の話に繋がってしまうな」
灯織「そう、ですね。……でも、それでいいと思います。私とプロデューサーですから」
P「俺と灯織だから、か。……そうだな。まあ、関係ない話をしないわけでもないからな。これくらいで、いいのか」
灯織「いいと思います。少なくとも、私は」
P「……目的地まではまだかかるから、灯織は寝ていてもいいぞ。疲れているだろうしな」
灯織「疲れているのはプロデューサーも、でしょう? 大丈夫です。……ご迷惑でなければ、プロデューサーと、話していたいです」
P「迷惑どころかありがたいよ。助かる。ありがとう、灯織」
灯織「こちらこそ。ありがとうございます、プロデューサー」
――
灯織「……ここ、ですか?」
P「ああ。ここからちょっと歩いたところが目的地だな」
灯織「それで、歩きやすい服装ですか。……どれくらい歩くんですか?」
P「んー……そこそこだな。息抜きって言っといてそこそこ歩かせるのも申し訳ないんだが」
灯織「いえ、大丈夫です。休みと言うよりは気分転換の意味合いの方が強い……ですよね?」
P「ああ。そもそも、灯織は『休め』と言ったら素直に休んでくれるだろ? 昔から、休息の重要性は理解してくれていたからな。……まったく無理をしなかったわけでもないが」
灯織「それは……すみません」
P「いや、謝ってほしいわけじゃなくてな? 今ならそういうことも……いや、まあ、うん。たぶんしないだろうし。しない……しない、よな?」
灯織「しない、と思います。その時は、きちんとプロデューサーに相談しますから」
P「ああ。なんでも相談してくれ。で、そこそこ歩くって話だが、そこそこって言ってもそこまで歩くわけじゃない。俺はどうかわからないが、灯織ならまったく問題ないはずだ」
灯織「プロデューサーは問題あるんですか……」
P「自慢することじゃないが、運動不足だからな。灯織の体力と比べると半分もないかもしれない」
灯織「本当に自慢することではありませんね。……プロデューサーも、日頃から運動した方がいいと思います」
P「……気をつける」
灯織「……本当に、自分のことも大切にしてくださいね。私が言えることではないかもしれませんけど」
P「灯織……。ありがとう。ちゃんとするよ」
灯織「……はい」
――
P「……もうすぐ、だな」
灯織「大丈夫ですか? プロデューサー」
P「大丈夫だ。ちょっと疲れているような気はするが……運動不足が祟っているだけだからな。実際、灯織はなんともないだろ?」
灯織「はい。まったくなんともありません」
P「……それはそれで傷つくな」
灯織「どうしろって言うんですか」
P「いや、自分が情けないだけだからな……うん。やっぱり、本当に頑張らないとな。運動、できる時にやっておくよ」
灯織「そうしてください。……あ。あそこ、ですか?」
P「ん? ……ああ。そうみたいだな。時間も……うん、ちょうどいい。天気も良いし……それじゃ、行くか」
灯織「はい。……私は、結局、何のためにここまで歩いているのか知らされていませんけどね」
P「でも、なんとなく察してるだろ? ただ歩いているわけじゃない、ってことは」
灯織「それは……まあ。先程の発言から考えてもプロデューサーが歩くことを気分転換だと考える人じゃないことはわかっていますから」
P「その察され方は自分でもちょっと情けないな……まあ、とにかく」
灯織「……ここ、ですか」
P「ああ。前に灯織が見ていた海外の観光地……ほどじゃないかもしれないが、なかなか綺麗な景色だろ?」
灯織「……そんなこと、覚えていたんですか」
P「大切なアイドルの言葉だからな。当然だろ?」
灯織「当然では、ないと思います。でも……本当に、すごく素敵な景色です」
P「ああ。下調べはしていたが……やっぱり、実際に目で見ると違うな。綺麗な景色だ」
灯織「はい。本当に。……ありがとうございます、プロデューサー。私に気を遣ってくれたんですよね?」
P「それは……そうだな。だから、なんとかして連れてきたかったんだ。色々と説得は考えていたんだが……思ったよりあっさり受け入れられて、ちょっと拍子抜けしたよ」
灯織「ただ単に休むのならまだしも、こういったことには付き合わない、と?」
P「……まあ、まったくないと思っていたわけじゃないけどな。W.I.N.G.が終わった直後で、灯織も気合入ってたから。休日は休日でしっかり休んで、こういったことをする暇があるならレッスンを……とか、言われるかと思って」
灯織「休日は休む以外のことをしない、と。……プロデューサーも、休日はただ寝ているだけ、と言ってましたよね?」
P「んっ……覚えてたのか」
灯織「はい。覚えていました。それで、プロデューサーは他人のことを言えるんですか?」
P「……言えません」
灯織「でしょう?」
P「……はい」
灯織「……それで、プロデューサー」
P「ん?」
灯織「プロデューサーも……その。この景色で……気分転換は、できましたか? ……息抜き、できたでしょうか」
P「……」
灯織「プロデューサー?」
P「……いや、うん、そうだな。俺も、か。俺も……できたよ。しっかりと。ありがとう、灯織」
灯織「私が感謝されることではないと思いますが……それなら、よかったです」
P「……灯織は、やっぱり優しいな」
灯織「プロデューサーに言われたくありません。……今日は、誘ってくれてありがとうございました。明日から、また頑張れると思います」
P「灯織はいつも頑張ってるけどな。……まあ、今度は前に灯織が見ていた場所で撮影できるように頑張ろうか」
灯織「はい。……難しいかもしれませんが、実現できるように頑張ります」
P「無理、とは言わないんだな」
灯織「……言いません。まだ難しくても……トップアイドルに、なるんですから」
P「……ああ! 一緒に頑張ろうな、灯織」
灯織「はい。これからもよろしくお願いします、プロデューサー」
終
灯織かわいい。不器用なところもありますが、素直で優しい子ですよね。
終わりです。ありがとうございました。TRUEはまだなので頑張りたい……。
下は三峰ちゃん→白瀬ちゃんの呼称を読み違えていた前作。
三峰結華「プロデューサーはもっと三峰のことを頼りにしてもいいと思うなー?」
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かわ
素晴らしい
シャニマスSS増えて欲しいね
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