いつもの様に、o県内屈指の進学校の中庭で、おそらく友人と呼ぶであろう人間と不毛なやりとりを続けていた。
友A「今日のあれやばかったよな」
友B「な。あれもうちょいいってたらーー
俺「(指示語が多い・・・本当に偏差値70の高校に通う生徒の会話かよ馬鹿ども)」
俺「そうだよな。あれやべえよな」
友A「な」
俺「俺用事あるから帰るわ」
友A「おう」
友B「じゃあなー」フリフリ
俺「おう(付き合ってられるか)」フリフリ
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俺「(成績ブレブレ私大狙いの馬鹿どもが・・・こんなに勉強の設備が整った学校で早慶理工狙う馬鹿がどこにいる・・・)」テクテ
俺「(俺がお前らとつるんでいるのは、ぼっちになる事で起こりうる危機的状況を被らないため、勘違いするな馬鹿ども。俺はお前らとは違う)」テクテク
心の中で、これまた不毛な作り話をポケットに手を突っ込みながら考える。ぼっちになる事で起こりうる危機的状況、と言う事だけは事実だが
俺「・・・私大にいく金なんて・・・ある訳ねぇだろ」ボソッ
人は脆い。学のない父は土木の仕事で腰を壊し、働けなくなった父の代わりに母は毎日働きづめ、俺が中学一年生の時、過労死した。その後、父は母の作る料理しか口にしないと言い張り、栄誉失調で他界した。
学のない奴に金はない、俺の様にはなるな、父の口癖だ。
俺「・・・金」
落ちていた10円をポケットに押し込む。
「みみっちいね」
隣から声が聞こえる。おそらく俺に当てられた言葉だろう。
俺「別にいいじゃないですか」
振り向くと、そこには美少女がいた。地毛ではありえない様な桃色の髪をしたボフヘアーの少女。
ああ、こう言う女の子の事を美少女と呼ぶのだ。
「いや、その10円、私のだから返してくれないかなと思って」
俺「・・・」
俺「・・・」スッ
「たかが10円を持ち主に返す事をしぶらないでよ」
俺「」ピクッ
俺「・・・たかが?」ギロ
「・・・」
俺「たかが10円だと?10円さえあれば駄菓子が買える。少し前までならもやし一袋も10円で買えた」
俺「お前にとってはたかが10円だろうが、俺にとってはされど10円だ!」
俺「お前は道端の雑草の味を知ってるか?スベリヒユは雑草の中でも癖がなく、どこにでも生えていて、雨が降った翌日なんかは水々しくて、シャキシャキしてて・・・・・・美味いと思うか?ドレッシングもかけずに、美味いと思・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
俺「・・・悪い。金落としただけで知らない人間に怒鳴られるなんて・・・思わねえよな」
「・・・私も軽率だったよ」
俺「・・・悪い事をしたな。また今度ーー
そう言いかけた時には、その少女はいなかった。あまりに唐突に、消えたとも表現できるほどに。
一週間が経った。いつもの様に、声に出していれば中二病とも取れる内容を考えながら歩いていた時
俺「・・・・・・光?」
ビルとビルの隙間、路地裏の曲がり角から、赤い光が漏れていた。
炎の赤、と言うより、神々しい、何かが降誕した様な、なんとも言えない光、火事を疑わなかったのはそのせいだろう。
俺はその光に、惹かれた。
光の漏れる路地へ足を進める。角を曲がり光を直視する。
俺「・・・は?」
光の正体は、人だった。正確には人ではないのかもしれない。
俺はその人らしき光と目が合っている。しかし、この人らしい型には見覚えがあった。
一週間前に出会った少女だ。
「・・・・・・」
俺「・・・その、その光は、なんだ?人工の光、なのか?」
ありえない、とは思いつつ、そう問うてみた。問わざるをえなかった。その光はあまりに綺麗だったからだ。
「・・・10円あげるから、助けてくれない?」
なんの可愛げもない命乞いをされた俺は、しかし結局、助けてしまった。
ここで唐突になぜ、助ける、助けた、命乞いというワードが出てきたかと言うと、それは彼女の状態につながる。
回想
俺「・・・どう言う意味だ」
「・・・正直時間が惜しいから、とりあえず今から話すことは全て鵜呑みにしなさい」
俺「・・・了解」
「・・・あら、意外ね。もっと頭固いと思ってた」
俺「俺はオツムの出来はいいと自負している。続けろ」
「私は不死鳥、あの伝説の獣なの」
俺「中二病乙」
不死鳥「なんなのよ!」プンスカ
俺「嘘嘘。鵜呑みにした。丸ごと飲み込んだ」
不死鳥「・・・本当に?」
俺「証拠みせろー」
不死鳥「・・・この光が証拠と言いたいけど、足りないわね」ボワァァァァァァァ
言葉と同時に、彼女へ光が集まっていく。その光は靄へと姿を変え、炎となり、彼女の両肩甲骨辺りから羽の様に形を留めた。
俺「・・・・・・・・・信じた」
不死鳥「ピュアなのね」
俺「うるせえ。俺の見た所、助ける要素がないんだが」
不死鳥「さっき、光が漏れてたでしょ。あれはいわば、ウルトラマンのカラータイマーの様なもの、あの光は、私の寿命の様なものなの」
俺「ウルトラマンのカラータイマーて・・・あれ?不死鳥って死なねえんじゃねえの?」
不死鳥「・・・あなた、本当に今の話を鵜呑みにしたのね」
俺「そりゃあ鳥じゃねえじゃんとか言いたい事はあるけど、取り敢えずは置いとく」
不死鳥「・・・不死鳥というのは、人の作った、それこそ幻、不死鳥の正体はこの光そのものなの」
不死鳥「この光は、賢い生物に灯る。この炎は不死の火と呼ばれていて、それがたまたま鳥に灯ったのを人が見ていただけ」
不死鳥「そして、この光はつがいに光を譲渡して、光の消えた死体に譲渡した光をもう一度灯し、不死性を保つ」
不死鳥「・・・私にはそのつがいがいないの」
不死鳥「正直、あなたに話しているのも助けて欲しいわけじゃないわ。もう歳を忘れるほど生きた。むしろ死にたいと思っていた」プルプル
不死鳥「なのに・・・」プルプル
不死鳥「いざこの光が漏れだすと、足の震えが止まらない」ガクガク
不死鳥「死ぬのが・・・怖い・・・」
俺「・・・・・・助けてやるよ」
不死鳥「・・・私と結婚してくれるの?」
俺「ああ、お前可愛いしな。勉強にも飽き飽きしていた頃だ。なってやるよ、不死鳥」
俺「俺は何をすればいい」
不死鳥「・・・と・・して・・・」
俺「ん?」
不死鳥「私とキスして!」
俺「・・・なんで?」
不死鳥「・・・不死の火を譲渡する前に、貴方に不死の火を灯す必要がある。不死鳥が他の生物に火を灯すには、不死鳥のDNAを取り込み、貴方を不死の火で焼く必要がある」
俺「ディープキス?」
不死鳥「・・・/////」コク
俺「じゃあキスするか」
不死鳥「・・・本当にいいの?貴方は人間ではなくなる。なぜそんなにスパッと物事を判断できるの?」
俺「俺には両親も友人もいないからな。なにせ、不死鳥は頭がいいんだろ?馬鹿は嫌いだが頭のいい奴は好きだ。それに」
不死鳥「それに?」
俺「お前可愛いし」
不死鳥「・・・ばか」ボソッ
俺「じゃあ」カベドン!
不死鳥「きゃっ!」
俺「・・・いくぞ」ドキドキ
不死鳥「・・・うん」ドキドキ
唇と唇が触れ合う。前歯と前歯が当たる、なんて事はなかった。互いの唾液を送り込む。
唇が離れ、その間を唾液の糸が引く。その瞬間、体の内部からぽかぽかと温まっていく。
俺「すげえ・・・」ボワァァァ
俺「ん?」
不死鳥「私とキスして!」
俺「・・・なんで?」
不死鳥「・・・不死の火を譲渡する前に、貴方に不死の火を灯す必要がある。不死鳥が他の生物に火を灯すには、不死鳥のDNAを取り込み、貴方を不死の火で焼く必要がある」
俺「ディープキス?」
不死鳥「・・・/////」コク
俺「じゃあキスするか」
不死鳥「・・・本当にいいの?貴方は人間ではなくなる。なぜそんなにスパッと物事を判断できるの?」
俺「俺には両親も友人もいないからな。なにせ、不死鳥は頭がいいんだろ?馬鹿は嫌いだが頭のいい奴は好きだ。それに」
不死鳥「それに?」
俺「お前可愛いし」
不死鳥「・・・ばか」ボソッ
俺「じゃあ」カベドン!
不死鳥「きゃっ!」
俺「・・・いくぞ」ドキドキ
不死鳥「・・・うん」ドキドキ
唇と唇が触れ合う。前歯と前歯が当たる、なんて事はなかった。互いの唾液を送り込む。
唇が離れ、その間を唾液の糸が引く。その瞬間、体の内部からぽかぽかと温まっていく。
俺「すげえ・・・」ボワァァァ
俺「燃えてるのに・・・熱くない・・・」ボワァン!!
不死鳥「これで貴方は不死鳥よ」フイ
紅潮した顔はそっぽを向いていた。
俺「でも、これで終わりじゃないんだろ?」
不死鳥「え、ええ。その、言いにくいけど、も、もう一度キスをします!」カァァァ
俺「・・・なんで?」
不死鳥「不死鳥同士がつがいになるには“誓いの接吻”を行わなければなりません。誓いの接吻をする事で、火を譲渡します。火がなくなれば、私は死にます。火の灯し方は、わかりますね?」
俺「なんで敬語?ああ、わかる。まるで、火が教えてくれる様だ」
不死鳥「で、では」ガクガク
俺「大丈夫か・・・?」
不死鳥「だって・・・こ、怖いもの」ガクガク
俺「・・・」ギュ
不死鳥「へ?」
俺「大丈夫、俺を信じろ」
不死鳥「・・・うん」ギュウ
再び唇が触れ合う。今度は軽いキスで良かったはずだが、なぜかお互いに舌を入れ合い、がっつりディープなキスをしてしまった。
不死鳥「じゃあ・・・頼んだよ・・・」サァァァ
目の前の美少女はみるみるうちにやせこけ、桃色の髪は真っ白になっていた。
俺「・・・ふぅ」ボワァァ
手のひらからは神々しい光が盛っている。
その光に息を吹きかけると、木乃伊の様な死体の方に進む。火が灯る。
肉が膨らみ、水が生成され、髪の毛は薄い桃色に染まる。
不死鳥「成功したみたいね」
俺「そうだな」
不死鳥「このお礼は必ずするわ」
俺「じゃあ」スッ
不死鳥「?」
俺「その10円を」
不死鳥「もう・・・ばか」
そうして俺たちは、もう一度口付けをした。
回想終了
俺「なぁ」
不死鳥「ん?どうしたの?」
俺「もしあそこで通りかかったのが俺みたいなイケメンじゃなくてアンガーズルの田仲みたいな人だったらどうしてた?」
不死鳥「さすがにちょっと・・・でも」
俺「ん?」
不死鳥「私は通りすがったのがあなたで良かったよ」
俺「バッカじゃねえの」トン
不死鳥「いたっ!」
俺「そういえばその髪、地毛なのな」
不死鳥「不死の火を灯した頃から、ね」
目の前の少女は、俺の前髪に触れ、微笑んだ。
俺「・・・あ」
俺の髪も少女と同じものになっていた。
俺「マジかよ。俺ピンク色の髪似合う?」
不死鳥「様になってるよ」
俺「そうか」
不死鳥「・・・」トン
俺「・・・」
無言で肩を預けられている今、ようやく今の現状に目を当ててみることにする。
俺「なぁ」
不死鳥「ん?」
俺「自己紹介まだだったな」
不死鳥「そうだね」
俺「俺は俺だ」
俺「お前は?」
不死鳥「・・・名前忘れちゃった」
不死鳥「俺に決めてほしい」
俺「んーじゃあ朱雀とか?」
朱雀「不死鳥と朱雀は違うよ・・・でも、良い。朱雀・・・うん。なんか良い」
俺「そうか・・・思ったんだけど、不死鳥的な幻獣ってまだいるの?」
朱雀「いるにはいるけど、聞く?」
俺「いや、興味ない」
俺「お前にしか・・・興味ない」
朱雀「もう・・・バカ」
終わり
くっさ
現実を見ろよ
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