拝啓 初冬の候、お母様はいかがお過ごしでしょうか。
さて、失礼ながら本題に入らせていただきます。
以前からご提案をお受けしていた帰省の件ですが、遅ばせながら長い休暇が取れそうですのでそちらへ向かおうと思います。
具体的な日時は11月の6日から8日まで滞在したいと思います。
ご迷惑でしょうが準備の程をよろしくお願いいたします。
敬具
2016年10月25日
中野涼
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寒い日だった。
俺はお気に入りの旅行かばんをガラガラと引きながら新幹線へ向かった。
目の前に新幹線が音を大げさにたてながらあらわれるのを見ると、俺は恨めしそうに新幹線に向かって睨みつけた。
……正直、故郷に帰るのは気乗りしなかったのだ。
俺の故郷は富山県の山奥にある村と言っていいほど小さな町で、封鎖的なその空気が全くと言って気に入らず、飛び出してしまったのはもう古い記憶である。
村で父親は医者をやっていた。
当然俺も跡継ぎとして医師免許を取り、故郷で老人たちの治療を行っていたわけである。
全く俺の意思の存在しない規定通りの人生設計も、俺が飛び出した原因の一つなのかもしれなかった。
しかし、医者になった事は後悔はしていない。
田舎から都会に出ていっても、今こうして食っていけているし、それしかできない俺にはその選択肢しかないわけだが……まぁそれはそれだ。
そして俺がなぜ帰省したくなかったのか、それは父親に会いたくないというごく一般的かつ、なんらかの物語にはありがちな理由である。
父親の眼光が怖い。
父親の視線が怖い。
俺は村を飛び出した事に負い目を感じているのだ。
そして飛び出して14年間村を訪れなかった事も。
新幹線が大きく揺れた。
去年開通したばかりの最新鋭の技術が使われていると言っても過言ではないこの新幹線が揺れるなど、俺は正直信じられなかった。
しかしだからと言ってなんだろうか、声を大にして運転手に揺れたことを抗議すればいいのか。
そんなバカな事はしない。
一般的な社会人ならばああそうか、と我慢して記憶の奥底にしまうか、そもそもなんの気にもならないだろう。
「おい!!! ふざけんな!!! 揺れたぞ!!!!」
甲高い声が無機質な車内に響いた。
突然だが、俺が座っている場所は所謂進行方面の一番先で、抗議するならばここに来るだろうと真っ先に思いつく場所であった。
ドンドン!
甲高い声の持ち主が操縦席へ通じるドアを叩いた。
「おい!! 揺れたって言ってんだろうがクソ運転手!!!!」
髪の短い少女であった。
活発そうな格好をしている少女で、100人中99人が美少女だと判を押せるほどの美少女であることは間違いない。
残り一人はホモだろう。
歳はいくつくらいだろうか、14、15くらいに見える。
しかしそんなことはどうでもいい。
俺は立ち上がった。
別にここから美少女との恋愛物語が始まるとか、あるいはこの少女がなにか世界を揺らがすほどの大きな秘密を持っていて、俺はそれに巻き込まれて非日常へのダイビングを決めるなどと、そういった物語の主人公になりたいという願望は無かったとは言えなくもないが正直そんなことはどうでも良かった。
「おい、お前。迷惑だぞ」
少女が俺を睨んだ。
「はぁ!? おっさんには関係ないでしょ!? 息臭いから黙っててくんない!?」
俺は座り、頭を抱えた。
おっさんと言われるのはまだいい、しかし息が臭いとは少々どころか大々酷いではないか。
俺のガラスのハートはもはやひび割れを起こしていた。
美少女と接触してなんらかの物語的主人公的役目が訪れる予感がしていたのだがそれはハズレだったのだろうか。
ならば俺が家を出た時に脳内で自作OPを流したのは間違いであったのだろうか。
様々なことが脳内に駆け巡る。
少女は俺に一通り罵倒を浴びせると、怒りが収まったようで俺の近くの自分の席に戻っていったようだ。
俺はとりあえず落ち着く為にトイレへ向かった。
トイレの開閉が開になっていることを確認すると、俺は勢い良くドアを開けた。
「え……」
そこには死体が横たわっていた。
職業柄、死体を見ることはあまり抵抗はないが、一般的な死体を見ることなどないこの場所で死体を見ることが俺には明らかに不自然に思えた。
俺は頭から血を流している儚げな少女の顔を一瞥すると、脈を図るために腕をとった。
俺も医者だ。気が動転していようと人命救助にはなんら異論がない。
ドクン……
脈はあった。
俺はほっと息をつくと、儚げな少女の事を誰かに伝えるべくトイレを出ようとしてーーー
「ドッキリ大成功!!!」
死体であった儚げな少女が笑顔で立ち上がり、俺に告げた。
「驚きました~~!? 驚きました~~~!?」
少女は一通り俺に感想を聞くと、俺をトイレから追い出した。
俺は手持ち無沙汰で自分の席に座り込んだ。
正直、俺はがっかりしていた。
ここであの少女が死んでいたら、あるいは推理小説さながらの奇妙な殺人事件に巻き込まれていたのではないだろうか。
そしたら俺は主人公とは行かないまでも重要登場人物になって、あるいは犯人の濡れ衣を着せられたり、あるいは実は犯人だったりしてかなり面白い立ち位置にいたのではないだろうか。
さっきのドア叩き少女といい、俺は惜しい所まで行ってはいないだろうか。物語の主人公たる一歩手前まで踏み込んでいるような、そんな気がするのだ。
「はぁ……」
俺はため息をついた。
正直な所を言うと、面白くない人生を歩んできた俺は、物語の主人公になりたいのだ。
ハーレム系でも、シリアス系でも、恋愛系でも、俺TUEEEEEEE系でも、とにかく俺はアニメや漫画、小説などの、物語の主人公のになりたかった。
主人公にならないでも脇役でもいいからなんだか奇妙な、非現実的な事を見たかったのだ。
しかし現実は厳しい。
俺は腹を掻っ捌いて臓物を見る現実があるだけだ。
俺は気づく、一般的な人間にある「俺は特別ではない」と成長する過程が、俺にはすっぽりと抜けているのだ。
新幹線の停車音が響いた。
どうやら、故郷に着いたようだ。
「はぁ……」
俺はまたため息をついた。
旅行かばんをしっかりと持ち、俺はホームへ降り立った。
ここから故郷の村へはかなりある。
しかしゆっくりはしてられないので急ぐことにして、俺はタクシーを止めた。
「○○まで」
俺が告げると、タクシーの運転手は
「……わかりました」
そう言ってタクシーを進めた。
俺は気づいた。
このタクシーの運転手、かなり美人だ。
歳は20代半ばだろうか、どこか気品をおもわせるブロンドの髪が日本人離れした彼女の美しさを際立たせた。
空は暗くなり始めていた。
故郷の町並みは全くもって変わってしまい、俺には面影を探ることはできなかった。
窓の外で流れ行く景観を眺めながら、俺は景観が段々と緑に囲まれつつあることに気がついた。
俺の村は山奥にあるのだから間違いないだろうが、しかし、何故か嫌な予感がした。
そしてやがて、タクシーは止まった。
ここは……学校の廃墟だろうか。
俺はこんなところに案内を頼んだのではない。俺は村へ帰りたかったのだ。
まさか、俺は嵌められたのか。
俺は既に非日常に飲み込まれているのか、俺は……俺は……!
「おい! ここは○○じゃないぞ!」
俺は叫んだ。
ブロンドの少女はーーー
「すいませんでした」
そう言い、カーナビに○○と打ち込んだ。
『この先、300m先~』
ナビの指示通りに車は進んだ。
やがて見慣れた村へ着くと、俺は料金を払い、タクシーは帰っていった。
俺は路上の間に立ち、がっかりしていた。
あの場面、あの光景は完全に物語の始まりだろう。
俺はあそこで殺され、そしてOPが始まる、そして物語の主人公達は旅行でここに来る、そして俺が行方不明になった事を聞き、捜査を開始するーーーそういった物語が始まるのではなかったのか。
あるいはあそこでブロンドの少女が
「あなたとーーー二人っきりになりたかったの!」
などと言って、奇妙奇天烈なタクシー運転手の美女との恋愛物語が始まるのではなかったのか、それが王道だろう。あの展開ならそれだろう。違うのか。
俺は肩を落としながら故郷の村を歩いた。
「なにも、変わっていないな……」
そう、新幹線から降りてきて周りを見た時の町並みは変わっていたのに、俺の故郷の村は全く、何一つ変わっていなかった。
うんざりした。
まるでそれが当然であるかのように佇んでいる実家にも心底うんざりした。
ガラッ。
鍵がかかっていない扉を開ける。
「ただいま」
実家の空気は全く変わっていなかった。
俺は……
俺は……
うんざりした。
そうだ。そうなのだ。
物語の主人公は何らかの行動を起こしているから物語の主人公足るのではないだろうか。
あるいは、奇想天外な事をすれば、俺は物語の主人公になれるのではないだろうか。
ーーー俺は物語の主人公になりたかった。
「おちんちんびろびろーんんんwwwwwwwwww」
俺は叫んだ。
そして約3秒で服を脱ぎ、全裸になった。
「おぴへろんだすwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
俺は叫びながら家の奥に進んだ。
「はなげもらどぴゅんだすwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
途中の廊下で母とすれ違ったようだが、そんなことはどうでも良かった。
俺は湧き上がる力を感じていた。
陰茎は固く勃起し、空気に触れて射精した。
射精しながら俺は走った。
「ほげええええええええええwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
部屋の奥で父が固まっていた。
新聞を片手に持ち、全裸で射精しながら叫ぶ息子を見て彼は何を思ったのか、そんな考えが頭によぎった。
しかしそんなことはどうでもいい。
俺は自らの金玉袋を広げ
「おちんちんちんちんびろびろびろーーーーんんんんんwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
そう言いながら父に顔射した。
父は力を失ったように気絶した。
なぜだろうか? なんで気を失っているのか?
俺にはもはや理解できなかった。
しかし俺にはやるべきことがある。
そう決意し、俺は父の服を脱がせ、ケツ穴に固く起立した己の息子を差し挿れた。
「ほげほげぱらだいすwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン
大体10分弱俺は父のケツ穴でピストン運動を繰り返すと、盛大に射精した。
「はらめええええええええええええええええwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」ドピュドピュドピュ
どうだろうか? 父は俺の赤ちゃんを妊娠しただろうか?
俺は父のけむくじゃらな腹を撫でた。
「にょにょにょにょきにょきwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
俺は叫びながら家から出た。
こうして俺は主人公になった。
俺は言いたい、美少女と戯れるだけが物語の主人公だろうか。
強く、かっこいいのが主人公だろうか。
違う。違うのだ。
主人公になれないなら、主人公になりたいなら、それは主人公になれないことはないことを意味する。
主人公足るもの、異常でなければならない。
そんなこと誰が決めたのか。
俺は言いたい。
たった一つ、たった一つの事を言うだけで、俺は、君は主人公になれるのだ。
さぁ、君も言おう。
「おちんちんびろびろーんんんwwwwwwwwww」
完
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頭おかしい(誉め言葉)