宇宙飛行士「地球は……すごく青いです!」 (15)
リポーター「それではスペースシャトルの宇宙飛行士さん達と中継が繋がっています!」
リポーター「こんにちは~!」
宇宙飛行士『こんにちは!』
後輩『こんにちは~!』
リポーター「宇宙はいかがですか?」
宇宙飛行士『無重力で体がふわふわして……とても気持ちいいです!』
後輩『まるで自分の体が自分のものじゃなくなったみたいでーっす!』
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リポーター「……なるほど、宇宙空間ではそのような不便もあるんですね!」
リポーター「では、最後に質問させて下さい」
宇宙飛行士『はい!』
リポーター「宇宙飛行士さんは船外活動もされたそうですが」
リポーター「宇宙から見た地球はいかがですか?」
宇宙飛行士『そうですね……』
宇宙飛行士『地球は……すごく青いです!』
リポーター「なるほど~!」
リポーター「素晴らしい名言を頂きました!」
リポーター「ではここでいったん、中継を切らせて頂きます! ありがとうございました!」
宇宙飛行士『さようなら~!』
宇宙飛行士「ふぅ、やっと終わったぜ」
後輩「お疲れーっす!」
宇宙飛行士「ったく、くだらねー質問ばかりしてきやがってめんどくさいったらねえ」
宇宙飛行士「どれもネットで検索すりゃ、すぐ答え分かるような質問ばかりじゃねえか」
宇宙飛行士「特に最後のやつ、宇宙から見た地球なんて聞いてどうすんだよ?」
宇宙飛行士「地球が青いなんて、今時幼稚園児だって知ってるぜ」
後輩「まあ、しょうがないっすよ。これも仕事のうちっすよ」
宇宙飛行士「まぁな」
後輩「しっかし、“素晴らしい名言”には笑ったっすね」
宇宙飛行士「ああ、ぶっちゃけめんどいからガガーリンの言葉をパクっただけなのに」
宇宙飛行士「まぁ俺がなにを言おうと、“素晴らしい名言”にするつもりだったんだろうがよ」
宇宙飛行士「それがマスコミってもんだ」
後輩「ガガーリン、実際には言ってないらしいって説もあるっすけどね」
宇宙飛行士「まぁな」
宇宙飛行士「ま、んなことはどうでもいいさ」
後輩「お、噂をすれば窓の外に地球が見えるっすよ」
宇宙飛行士「ホントだ」
後輩「手でも振ってやりますか」
宇宙飛行士「おう」
宇宙飛行士「お~い、下々の奴ら~! 見てるか~!」ヒラヒラ
宇宙飛行士「お前らの殆どは、一生宇宙になんて来れないんだろうなぁ~、ざまあみろ~!」ヒラヒラ
宇宙飛行士「せいぜい地上ではいつくばって生きていけよ~!」ヒラヒラ
後輩「ギャハハハハハッ!」
宇宙飛行士「お前もなんかいってやれよ」
後輩「はいっす!」
後輩「オレたちは厳しい訓練を耐え抜いた超エリートっすよ~!」
後輩「お前らなんかとは住む世界が違うっすよ~!」
宇宙飛行士「アハハッ! いいね、いいね!」
宇宙飛行士「もしこのシャトルに爆弾が積んであったら、何発か地上に落としてやりてえわ」
宇宙飛行士「“天罰!”とかいって!」
後輩「あの国とかあの国あたりに落としたいっすね!」
宇宙飛行士「そしたら、少しは世界も平和になるんじゃねえか」
宇宙飛行士「だけど、投げキッスも落としておいてやろう」チュパッ
後輩「誰にっすか? もしかして、奥さんと息子さん?」
宇宙飛行士「ンなわけあるかよ。愛人だよ、愛人」ニヤッ
宇宙飛行士「あんなブスな嫁にも、俺に似ずバカな息子にも、とっくに愛想が尽きたわ」
宇宙飛行士「家族には中指でも立てといてやるさ」ビッ
後輩「ギャハハハッ、ひでぇ~!」
宇宙飛行士「お前こそ、資産家の娘だっていう彼女とはどうなんだよ?」
後輩「いやぁ~、あっちはオレに惚れ込んでますけど、オレはもう冷めてますね」
宇宙飛行士「ん? じゃあ別れるつもり?」
後輩「いやいや、だけどあいつ、金だけは持ってますからね」
後輩「こうして、宇宙飛行士の夢が叶ったのも、あいつのスネをかじったからってとこあるし」
後輩「なるべく、金を引き出してから、別れ話に持ち込みたいと思ってます」
宇宙飛行士「おぬしもワルよのぉ~!」
後輩「先輩にいわれたくないっすよ~」
宇宙飛行士「なんつうか、あれだな」
宇宙飛行士「人間、無重力になると、体だけでなく心も軽くなって」
宇宙飛行士「こうして気軽になんでも話せちゃうな」
後輩「そうっすね」
後輩「地上にいる時は、オレたちあんまり打ち解けてなかったっすからね」
後輩「地球ももうちょい重力が低けりゃ、もっと平和だったんじゃないっすか?」
宇宙飛行士「かもな~! アハハハッ!」
宇宙飛行士「さぁって、しばらくは自由時間だから暇だな……」
宇宙飛行士「気晴らしにAVでも見るか? とっておきのを持ち込んであるんだよ」
後輩「いいっすね~! 見ましょ、見ましょ!」
宇宙飛行士「無重力でAV上映会ってのもまた格別ってもんだ」
アアーン… アンッ イヤァーン… アァン… ギシギシ…
宇宙飛行士「やっべ、ムラムラしてきた! 何度も見てるやつなのに!」
後輩「早いっすね! 先輩!」
『あのー……』
宇宙飛行士「ん? お前、今なんかいったか?」
後輩「なにもいってないっすよ?」
リポーター『こちら、地上のリポーターなんですけれど……』
宇宙飛行士「!? ……な、なんであんたが!?」
後輩「中継はさっき終わったじゃないっすか!」
リポーター『じ、実は……こちら側の機器の不手際で、中継が切れてなくてですね……』
宇宙飛行士「え!?」
後輩「え!?」
宇宙飛行士「ってことは、今までの映像と会話……全部……?」
リポーター『は、はい……放送されて、しまって……。す、すみません……』
後輩「マジっすか?」
リポーター『マジ……です……』
宇宙飛行士「…………」
後輩「…………」
宇宙飛行士「あのー……リポーターさん」
リポーター『……なんでしょう?』
宇宙飛行士「今の僕たちの顔色、いかがですか?」
リポーター『すごく……青いです……』
おわり
乙
うーん、座布団一枚!
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