少年「俺は今から隣のクラスの北山さんに告白しに行く」 (9)

友人「な?! 正気か?!」

筋肉バカ「鏡見てみろお前!」

天才「やめておいた方がいいですよ。その方が誰も傷つかずに済む」

教師「身のほどを知るんだ!」

少年「ええい止めるな!」

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少年「確かに振られるかもしれない……。だがこの身を焦がすような思いをそのまま胸の内に秘めておくことはできないんだ!」

友人「そんなもの一時の気の迷いだって! 俺と一緒にゲームでもしたら気も変わるさ!」

筋肉バカ「精力の発散には運動が一番だぞ! 腹筋しろ、腹筋!」フンッフンッ

天才「今コンピュータに計算させましたが、成功する確率は万に一つもないですね」カタカタ

教師「別に恋人が3次元でなくちゃならない理由なんかないだろ? 先生の恋人、2次元だけどキスくらい余裕だぞ?」

少年「精力を持て余してるとかじゃないんだ! 俺はただ、北山さんが好きなんだ!」

少年「あれは入学して間もない頃だった……。あの頃の俺は隣町から引っ越してきたばかりで知り合いは一人もおらず、寂しい思いをしていた……」

友人「自分語りが始まったぞ」

筋肉バカ「長くなりそうだからスクワットでもしてるか」フンッフンッ

天才「おそらくこの話の結末は、北山さんにちょっと優しくされて一目ぼれしたとかそんなところでしょう」

教師「先生、うんこしてくるな」

少年「休み時間になっても話し相手がいなかったから、俺はただ教室で本を読んでいたんだ」

教師は黙ってろ。あと仕事しろ


***

北山「何読んでるの?」

少年「え? あ、ああ……夏目漱石の『こころ』なんだけど……」

北山「夏目漱石とか読むんだー。私はね、筒井康隆が好きなんだ」

少年「へぇ……面白いの?」

北山「うん。全然かたっ苦しくないし、読みやすくて面白いよ。本が好きなら今度貸してあげるよ」

少年「ありがとう。ただ特別好きってわけでもないんだけどね……。話せる人がいないからこうして読んでるだけで……」

北山「そういえば隣町から引っ越してきたばかりなんだっけ? 知ってる人いないとなかなか話せないよねー」

少年「う、うん……」

北山「私も小学校の時に転校してきたからその気持ち分かるなー。でもとりあえずは私が友達第1号ってことで、よろしく!」ニコッ

少年「よ、よろしく……///」


***

少年「もうその時点でキュンと来たね、俺は」

友人「コロッと行きすぎだろ」

筋肉バカ「なんだ? もう終わりか? 俺の大腿筋はやっと目を覚ましたばかりだぞ?」フンッフンッ

天才「まったくもって予想通りだ」フフ

少年「ただ話しかけてくれただけじゃないんだ、北山さんは。あの人は俺のためにあんなことまでしてくれたんだ……」

スケベ「なんだ? エロい話か?」ヒョコッ


***

北山「まーた本を読んでる」

少年「あ、北山さん……///」

北山「ほら、この前言ってた筒井康隆の本。返すのはいつでもいいよ」

少年「ど、どうも……。さっそく読ませてもらうよ」

北山「ううん、これは家でじっくりと読んでよ。それより今は友達を作ることが先決」

少年「で、でも……」

北山「私が間に入ってあげるからさ。ほら、あそこで熱心にゲームの攻略本見てるやつがいるでしょ」

友人「……」モクモク

少年「うん……」

北山「あいつはゲームの話だったら何でも食いつくから。ほら! レッツゴー!」グイッ

少年「で、でも彼が知ってるゲームじゃないと話し合わないし……」

北山「そんなことないって。おーい!」

友人「ん? 俺か?」

北山「そう! ちょっと紹介したい人がいるんだけどさ。ほら、話しかけてみて」

少年「え、えっと……何のゲームが好きなの……?」

友人「……」

少年「……。あ、あの……」

友人「他人に尋ねるときは、まず自分から言うんだぜ……」

少年「あ、俺の名前は……」

友人「違う。お前の名前はもう知ってる」

少年「じゃ、じゃあ……」

友人「好きなゲームはなんなのかって話だろ?」

少年「う、うん……。俺が好きなのは『機動戦士ガンダム 連邦VSジオンDX』ってゲームなんだけど……」

友人「俺はギャン使いだ。よろしく」ニヤッ


***

少年「こうして俺はこいつと友達になることができたんだ」

友人「なんてフレンドリーで良い奴なんだ、俺……」

天才「いや、ここは二人を引き合わせた北山さんの功績と言った方がいいでしょうね」クイッ

筋肉バカ「本の貸し借りなんかしてないで筋トレしろ、筋トレ」フンッフンッ

スケベ「北山って胸小さいけど顔はかわいいよな。胸小さいけど」

少年「しかし友達がゲームの話しかできないこいつだけでは不味いということも、北山さんはちゃんと分かってくれていたんだ」

友人「何が不味いんだ?」

少年「ライトゲーマーな俺にとって、コアゲーマーから聞かされる知らないゲームのうんちくはすぐに苦痛へと変わっていった……」


***

友人「それで強化チップってのがいくつかのステージにあってだな。フットパーツとかアームパーツにつけて強化できるわけなんだけどな」

少年「うん……」

友人「その強化チップ、どれか一つのパーツしか強化できないんだわ」

少年「へえ……」

友人「でも実はな、ドップラーステージにはすべてのパーツを強化するチップがあってだな」

少年「なるほど……」

北山「あ、やっぱりうんちく聞かされてた」

少年「北山さん……///」パアア

友人「おお、北山か。この前教えてやったBLゲー、濃いシーンが多くて良おぶぅっ?!」ドシャッ

少年「BL……?」

北山「あはは! 何でもない! それより話せる相手は他にできた?」

少年「い、いや……こいつだけ……」

北山「あー……。じゃあひたすらゲームの話しかできないでしょ?」

少年「うん。スポーツの話とかしててもいつの間にかパワプロくんの必勝法に切り替わってるんだ」

北山「それは良くないね。スポーツの話したいんだったら打ってつけの奴がいるよ」

少年「と言っても俺もそんなにスポーツに詳しいわけでもなくて……」

北山「大丈夫大丈夫! 相手が全部、手取り足取り教えてくれるから」

少年「手取り足取りって……」

北山「ほら、あそこで腕立てしてる奴がいるでしょ?」

筋肉バカ「フンッフンッ!」

少年「うん……。でもなんか怖くて近寄れないんだ」

北山「あいつも友達少ないからいい機会だよ。おーい!」

筋肉バカ「呼んだか?」ピタッ

北山「うん。ちょっと紹介したい人がいるんだけど」

少年「ちょ、北山さん……!」

筋肉バカ「? なんだそいつは? 初めて見る顔だな……」

少年「初めてって……。同じクラスになってもう2週間くらい経つんだけど……」

筋肉バカ「……」ジロジロ

少年「え、えっと……」

筋肉バカ「お前、卓球部だな?」

少年「う、うん……。名前知らないのに部活は知ってるんだ……」

筋肉バカ「筋肉の付き方を見れば分かる。あまり日焼けもしてないようだしな」

少年「そういうもんなのかな……」

筋肉バカ「ただ上腕二頭筋が少し貧弱だな。鍛えないのか?」

少年「腕立てならしてるけど……」

筋肉バカ「甘い! 腕立てはプッシュアップといって、その名の通り押す力を使うときの筋肉を鍛えるものだ! 具体的には大胸筋とか上腕三頭筋とかな!」

少年「は、はい……!」

筋肉バカ「卓球で高速スピンをかけたければ、上腕二頭筋は必須! その他にも様々な筋肉がバランスよく必要なんだ! ちょっと俺と来い! 一緒に筋トレするぞ!」グイッ

少年「うわああああああ!」

北山「頑張ってねー」ヒラヒラ

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