裕子「プロデューサーさんが戻ってくることを信じています」 (30)

(病院)

タッタッタッ...!
パタン!!

裕子「はぁはぁ…ぷ、プロデューサーさんは…!?」

ちひろ「ユッコちゃん…」

裕子「い、生きてますよね…?」

ちひろ「ええ…一命はとりとめました…ですが、意識不明でいつ目覚めるかもわからないそうです」

ちひろ「舞台のセッティング中に足場が…老朽化していたみたいで…」

P「…」

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裕子「目が覚めない…プロデューサーさん…が…?」

P「…」

裕子「…プロデューサーさん…酷いですよ…明日もライブがあるのに…お仕事休むつもりなんですか…?」

P「…」

裕子「ライブが終わったら焼肉連れて行ってくれるって約束しましたよね…? ねぇ…!」ユサユサ

ちひろ「ユッコちゃん…」

裕子「…」グズッ

フキフキ...

裕子「…」

裕子「…ええいっ! プロデューサーさんのばーかっ!!」カッ!!

ちひろ「…ユッコちゃん?」

裕子「いいですよ! そんなに休んでいたいなら休んでいてくださいっ! しばらく働きすぎでしたから丁度いい機会ですよっ! ばーか! ばかばかばーか! おたんこなすの働き鬼!」ガ-ッ!!

ちひろ「…」

裕子「ふんっ! 私は落ち込んだりなんかしませんよっ! サイキックですべてわかってるんですからっ! 寝てるだけです、寝てるだけっ! 休みたいから寝てるんですっ! プロデューサーさんは!!」ビシッ!

P「…」

裕子「また明後日来ます! ライブのが終わったら焼肉ですよ! 焼肉! 最・高・級! の焼いたお肉です! 約束です! では、また!」

バタンッ!!
タッタッタッ...!

ちひろ「…ですって。プロデューサーさん」

P「…」

ちひろ「ふふっ。お仕事だけじゃなく約束も溜まっちゃいますから…早く起きてくださいね?」

P「…」

(次の日)

裕子「ムムムーン! サイキーック・テレパシー!!! さあさあさあ! 会場のレディースエンドジェントルメーン! 私の気持ち! 届いてますよねーーーー! では、行きますよー! 1、2、3! さいきーっく!!!」

ウォォォォォォ!!

裕子「声が小さいですよー!? 聴こえません! 聴こえません! 寝ている人を起こすように! 日本中の誰もが私の存在に気付くように! 放って置けないくらい魅力的だと思えるように! 盛り上がってくださーーーーい!!!」

ウォォォォォォ!!
ユッコ----!!

裕子「ンンッ! いいですねーーー!! 皆さんっ!!! では歌いますっ!!! ミラクルテレパシーです!!!!!」

(次の日)

裕子「ライブは大成功でした! プロデューサーさん! 約束通り焼肉です!」カッ!

P「…」

裕子「起きませんねぇ…」

P「…」

裕子「ふん。起きたら鼻の穴にわさび入れますから」プンスカ

P「…」

裕子「カルビ…ロース…牛タン…ホルモン…」ボソボソボソ

P「…」

裕子「耳元で囁いても起きませんか…いいんですかプロデューサーさん? 私が働いて稼いだお金で食べに行っちゃいますよ?」

P「…」

裕子「ふーんだ! いいです! 私は優しいので待っていてあげますよ! 今日はみんなで大戸屋にでも行ってご飯食べてきますっ!」

P「…」

裕子「では、面会時間が終わるのでまた!!」

タッタッタ...バタン!!

P「…」

(後日)

裕子「ひぃぃぃん! 雨でビショビショになってしまいましたー!!」グシャ-

P「…」

裕子「靴まで濡れてます…あーもー! 朝は晴れるって言ってたのに…! サイキック・アングリーをこの大空に向かってぶつけますっ!」

裕子「ムムッ…ムムムーン!!!」カッ!!

P「…」

サァァァァァァ...

裕子「…」チラッ

裕子「止みませんね…さいきっく実力不足です…」

P「…」

裕子「まあでも! すぐに私の超能力は覚醒して! どんな悪いことでも跳ね返してみせますから! チョチョイのチョイです!!」カッ!

P「…」

裕子「…大丈夫ですよ! プロデューサーさんにもサイキックです! ムムムーン! ほら、1発で治すことは出来ませんけど、こうやってちょっとずつ私のパワーを注入して、それからお医者さんの治療で回復していきましょう!」

裕子「ほーら! ムム…ムムムーン!!」サイキ-ック!

P「…」

裕子「…」

裕子「…ま、また来ますっ! 落ち込まない! 諦めない! 前を向いて信じ続けるのが私です!」

裕子「たかだか数日目が覚めないくらいで!」

裕子「たかだか回復の目処が何も立っていないくらいで!」

裕子「たかだか反応が一切ないくらいで!」

裕子「私が諦めるだなんて思わないでくださいっ! ばーかっ!」

P「…」

裕子「では! 明日!」

タッタッタ...パタン

P「…」

P「…」ピクッ

(後日)

裕子「ふっふっふ…! 時々、反応が出るようになったみたいですね! プロデューサーさん!」カッ!

P「…」

裕子「やはり私のサイキック・オイノーリが炸裂したようです! よかったよかった!」

P「…」

裕子「ほーら、その調子でガバッと起き上がり! ガバッと財布に手を伸ばし! 叫ぶのです! 『焼肉行くぞ!』と!」


裕子「さすれば私は大喜び! プロデューサーさんも元気モリモリ! っと、お店に行く前に伸びたヒゲは剃ってもらいますけどね! 身なりには気を使えといっつもうるさいですからね! 自分で言ったら自分で実行しなければダメです!」

P「…」

裕子「とにかく回復です。私はプロデューサーさんが意識を取り戻すと信じてますからね。みんながサイキックなんてないと言ってもプロデューサーさんだけは信じてくれてました」

P「…」

裕子「だから今度は私の番です! 私はプロデューサーさんが回復すると信じてます! さあさあ! 起きて! 食べて! 立ち上がり! また美少女さいきっくアイドルである私! 堀裕子のプロデュースを再開してくださいっ!!」バ-ン!!

P「…」

裕子「…」

裕子「…今日のところは勘弁しておきましょう! それではまた明日きますっ! 私のことを待たないで、起きてていいですからねー!」

裕子「…じゃあ、また」

パタン...タッタッタッ...


(後日)

裕子「ふむ。枕元に私の新作水着姿の写真を忍ばせておいても起きない、ですか」

P「…」

裕子「あーあ、もったいないですねー! 超悩殺ビキニなのにっ! 見たら鼻血ブー間違いなしの逸品ですよ! 逸品!」

P「…」

裕子「…って、鼻血ブーしたらますます体調が悪くなっちゃいますね。あははは!」

P「…」

裕子「ああ、そうだ。一応、報告しておきます」

裕子「…プロデューサーさんが倒れてから1ヶ月。私の担当に別の方が付きましたよ…」

P「…」

裕子「も、もちろん仮ですし! プロデューサーさんが起きたら即元通りです! それまでだけですよ! ま、まあ! 新しい担当の人は優しいですし! 私のことを雑に扱いませんし! どんなに私が失敗しても髪の毛わしゃわしゃしたりしませんしっ! それに…っ…!」

P「…」

裕子「…プロデューサーさん。起きてくださいよ」ボツリ

P「…」

裕子「…」グズッ

フキフキ...

裕子「…信じてますからっ! プロデューサーさんが起きるのを信じてますからっ!!!」

P「…」

裕子「また来ますね!」

(後日)

裕子「最近、ヨガを始めたんです! ほらほら! 身体が柔らかくなりましたよ!」グイ-ン

P「…」

裕子「自分の才能が恐ろしい…! 超能力だけでなく、柔軟性まで身に付けてしまうとは…!」

P「…」

裕子「プロデューサーさんも寝たままだと身体硬くなっちゃいますよ?」

P「…」

裕子「あーあ、これはストレッチを念入りにやらないといけませんね。今度、トレーナーさんに頼んで一緒にレッスンを受けましょう! そうです! それがいいです!」

P「…」

裕子「ふっふっふ…トレーナーさんは厳しいですよ! 覚悟してくださいっ!」キラ-ン

P「…」ピクッ

裕子「!」

P「…」

裕子「ほ、本当は起きて私のことをからかってるんですか?」

P「…」

裕子「…」

裕子「そろそろ起きてもいいんですよ?」

スッ...サスサス...

裕子「さいきーっく…パワー注入です!」グッ

P「…」

裕子「…」

P「…」

裕子「…寂しいですよ」ポツリ

P「…」

裕子「っ…それでも…私は絶対回復するって信じてますからっ!!!」

裕子「必ず焼肉! 食べに行きますよ!」カッ!

(後日)

裕子「プロデューサーさん。明日、大きな会場でライブがあるんですよ」

P「…」

裕子「ふっふっふっ! ここまで伸びたのはやはりサイキックパワー! そして私のたゆまない努力によるものなのです! 褒めていいんですよっ!」バ-ン!

P「…」

裕子「って、これじゃあ幸子ちゃんみたいですね。あははは」

P「…」

裕子「…」

P「…」

裕子「大舞台…緊張してるんです」

P「…」

裕子「…」ハッ!

裕子「で、でも…もちろん頑張りますからっ! 決して弱気になってるわけじゃありませんっ! 安心していてください!」グッ

P「…」

裕子「…観にきてくれませんか?」

P「…」

裕子「私。プロデューサーさんが倒れてからずっと…ずっと…今まで以上に頑張ってきたんですよ…」ポロポロ

P「…」

裕子「へこたれないで…諦めないで…手を抜かないで…プロデューサーさんが戻ってくるって信じて…ここまで来たのに…どうしてプロデューサーさんはまだ起きないんですか…ひどいですよ…」ポロポロ

P「…」

裕子「…」グズッ

裕子「…ワガママですよね」

P「…」

裕子「チケット、置いておきます。来れなくてもいいんです。私が大きな会場でライブをやったことが嘘じゃないんだって後で確認してください」

P「…」

裕子「えへへ、明日はすごいライブにしてみせますよ! 『もっと早く起きればよかった!』って思わせるようなライブにします! 悔しがらせてみせます!」

P「…」

裕子「プロデューサーさん! また!」

パタンッ!

P「…」


裕子「…うぅ…あぁぁ…っ…!」ポロポロ

(当日)

裕子「さあさあ! 今日は私の晴れ舞台! 空前絶後の! 最高のライブにしてみせますよー!」

裕子「私のサイキックと! スタッフの皆さんのお力があれば余裕です! 頑張りましょう!」グッ!

オ-ッ!!

裕子「ふぅ…」

ちひろ「お疲れ様です。ユッコちゃん」

裕子「あ、お疲れ様です。ちひろさん」

ちひろ「…緊張してます?」

裕子「す、少しだけ。でも、後でプロデューサーさんにDVDも観てもらいますからみっともない姿はノーです! 全力を出します!」カッ!

ちひろ「ふふふ。ユッコちゃんは強いですね」

裕子「…」

裕子「強くなんか、ないですよ」

ちひろ「?」

裕子「…プロデューサーさんが倒れてから…何度もくじけそうになりましたし…諦めたくなりましたし…アイドルだって辞めたくなりました…」

ちひろ「…」

裕子「でも、その度に思い出すんです。プロデューサーさんが私のサイキックを信じてくれたことを。私自身のことを信じてくれたことを」

裕子「だから…その…私は私を信じるんです。辛くなっても信じることはやめません。くじけない! 信じ続ける! 前を向く! それが私にできる唯一のことですから!」

新しい担当ちょっと可哀想やな

スタッフ「本場5分前です。用意してくださーい」

裕子「では…行って来ますね!」

タッタッタ...

ちひろ「…ですって。本当に幸せですね。プロデューサーさんは」

(会場)

裕子「お待たせしました! エスパーアイドル堀裕子のライブに来ていただきありがとうございます!!!」

ウォォォォォォ!!!

裕子「いいですねー! 私の気持ち! 私の熱意! サイキックによって皆さんに広がってますっ!!!! では! もーっとボルテージを上げるためにも! 早速歌っちゃいましょう! 一曲目は…」

裕子「…え」

裕子「(な、なんで…なんでいるんですか…)」

P「…」

裕子「(遅いです…遅すぎですよ…!)」

裕子「…」ポロポロ

ザワザワザワ...ド-シタン?
キュウニナキハジメタゾ?

裕子「…」グスッ

裕子「えー、すみません。あまりの大舞台に感極まって泣いてしまいました!」

裕子「皆さんにひと言! どんなことでも信じれば叶います! 私がこんな大舞台にも立てたように! 信じ続けることはすごい力を持っているんです!」

裕子「…ですから! 私はこう信じます! このライブの後! 半年以上前に約束をすっぽかしたあんぽんたんが! 私に謝りながら! 感謝しながら! 焼肉をおごってくれるでしょう! と!」

裕子「きっと叶うでしょう! 叶わないわけがありません! だって、信じればきっと叶うから!」

裕子「では! 行きますよー! 一曲目は『絶対特権主張します!』です!!!!」

ウォォォォォォ!!

終わり

起きて良かった…乙
だけどノックアウトされそうですね

Pが一度も喋ってない……
ライブ後どこにも居なくて病院に行ったら冷たくなってる可能性が

幻覚説

小梅「プロデューサーさん…?そう、最期に見に来たんだね…」

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