【艦これ】 外地鎮守府管理番号 88 (343)

通貨の単位はドルを想定しております
値段は適当だったりしますのでご容赦下さい・・・

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1510926855


「ご愁傷様、残念だったね。」


ボシュボシュボシュ


背中の艤装に取り付けたボックスから飛び出た砲身、対潜迫撃砲ことスキッドの弾頭が発射されていく。

発射された弾体は40mの三角形に集束し・・・・。

ドゴン。

予め設定された水深で弾頭が爆発し圧力波で敵を完全に殴り倒す。


(これだけ爆発が酷いと助かる見込みは零だろうね。)


しばらく後に大量の油の様な物と深海棲艦の潜水艦がつけるシュノーケルの様な物が浮かび上がる。


「こちら時雨、鎮守府戦闘指揮所どうぞ。」

「こちら鎮守府指揮所不知火。どうされました?」

「潜水艦の掃討が完了したよ。エリア1~6までオールグリーン。帰投するよ。」

「こちら不知火。了解しました。」

「雪風から同じく鎮守府戦闘指揮所へ。」

「不知火です。」

「エリア7~12まで同じくオールグリーンです。帰投します!」

「了解しました、お疲れ様です。」


鎮守府ドック

不知火「お二人ともお疲れ様です。」

不知火「お疲れとは思いますが戦果確認の為カメラのデータ提出と報告書の提出をお願いします。」

不知火「それと、何か気づいた事は有りますか?」

時雨「潜水艦の数が多くなってきているね。」

雪風「後、固い敵が増えてきている気もします。」

不知火が二人の意見を手元の用箋挟みのメモ紙に書き込んでいる所に彼女がやって来た。

明石「お二人ともお帰りなさい。新型のソナーの調子はどうですか?」

時雨「流石にソナーだけで20万もしただけ有るね。」

明石「そうでしょうとも、スキャンニングソナーを入手するの大変だったんですよ!」

時雨「それにスキッド。今まで潜水艦対策として使用していた装備がガラクタに思えるよ。」

時雨「ソナーとリンクして勝手に敵のいる方向へ砲身が向くのはありがたいね。」


明石「そうでしょうとも。イギリスの高官を下ネタスキャンダルで脅して入手した甲斐がありました!」

時雨「サーチライトソナーと3種セットで40万、いい商売だね。本当。3ヶ月の稼ぎがパーだよ。」

雪風「ですが、潜水艦の撃破率が見違えるほどに上がりました。」

雪風「支払った分をペイするのも簡単ですよ。」

雪風「いちいちソナーの使用を止めたり爆雷の投射に自身の進行方向を変えなくて良いのはありがたいですね。」

時雨「雪風も買っていたのかい?」

雪風「えぇ、ですが、ソナー自体はシリーズを含めて太平洋戦争後のロールアウトのはずですが?」

明石「まっ、そこは米軍が艦娘用へ転換する為に色々やっていたのをですね。」チョイチョイ

時雨「なかなかの悪党だね。」

雪風「地獄に落ちてろくな死に方しませんよ?」

明石「お二人とも何を言ってるんですか。」

明石「ここを何処だと思ってるんです?」

明石「ここは地獄の一丁目。これ以上落ちる所なんかないですよ。」

不知火「確かにそうですね。」

明石「まっ、お二人が撃沈したら装備を剥いで使えそうなら他の方へ売るんで装備が残るような死に方してくださいよ。」

明石「棺おけ代くらいは持ちますよ。」



そういうと明石は手をひらひらとさせ伝票を眺めながら自身の工廠へと去っていったのだった。


ここは日本番外地。

所属する艦娘は何がしかの訳あり。

命令拒否なんかは可愛い物で上官殺し、味方艦隊殲滅等々。

ありとあらゆる問題児たちを突っ込んだ掃き溜め。

軍法会議で軽い者は最低でも刑期が10年。

重い者になると解体処分という名の死刑判決を受けた死刑囚。

或いは戦争以外に生きる能の無い戦争狂い。

自分の命を金に換算してまで金を稼ごうとする。

訳ありの艦娘。

なんにせよ、脛に傷持つ奴か金を敵として稼ぐ事に執着を燃やす奴か。

そんな奴らが集まる所。

それが此処、外地鎮守府管理番号88。

通称 88鎮守府。地獄の一丁目だ。


第一話 仕事と任務


摩耶「おーい、時雨―!」

時雨「なんだい?」



鎮守府内の任務カウンターに貼り出された軍令部外、簡単に言うと民間からの依頼。

請負幾らの任務が貼り出された掲示板を眺めて居た所に同じ鎮守府の仲間。

重巡摩耶が声をかけて来る。



摩耶「稼げる仕事があるんだ、時雨も一口乗らないかい?」


この鎮守府の任務の仕組みは簡単に分けて二つ。

軍令部を通して正式に作戦として受理されたものは『 任務 』と呼ばれ。

民間からの依頼の任務は『 仕事 』と呼び分けられる。

所属している艦娘で自分の任期、

詰まるところの刑期を金で縮めたい連中は『 仕事 』を受け『 任務 』以外での報酬を稼ぐ。

それ以外にも金を稼ぎたい奴等は仕事を積極的に請ける。

自分の錬度と所持している装備、受け取れる報酬金、あるいは資材。

それらを天秤にかけ割がいいか良くないか。

その計算に長けたものだけがこの鎮守府では生き残れる。


時雨「話だけなら聞こうか。」

摩耶「そうこなくっちゃ。」



摩耶が簡単に説明をする。

中東からの石油精製品、それを運ぶタンカーの護衛。

簡単な仕事に聴こえるが・・・・。



摩耶「このタンカーは外洋を突っ切るつもりだ。」



なるほど、深海棲艦に襲撃される事を恐れて沿岸に航路を取るのではなく

日数短縮重視で外洋の航路を走るということらしい。

日本政府の庇護を受けるつもりのタンカーなら護衛の交代がしやすい海岸沿いに航路をとるだろう。

だが、日本政府へ警備、護衛を頼めば協力費という圧力で結構な量の積荷を持っていかれる。

それが今や高価で売れることが確定的な石油関連製品なら?

海岸沿いに日数をかけて輸送しても襲撃にあうことがあるなら?

日本政府への多大なピンハネを払うくらいなら安く済む、

腕っこきの警備員を雇うということなのだろう。

そして他の会社を出し抜きさっさと売りさばく為の航海日数の短縮。

もっとも相手の眼鏡にかなわなければ荷主にしたって積荷を失うことよりピンハネされる方を選ぶのであろうが。


時雨「報酬金額、拘束日数、申し分ないね。乗った。」



うしっとガッツポーズを決める摩耶。

そう、僕は稼がなければならない。

稼いで稼いで稼ぎまくって。

ここにいることを定められた刑期を縮めて生き抜いてやる。

そして、僕を罠に嵌めたその理由を彼女から聞くまでは死ぬ訳にはいかない。

沈んでなんてやるもんか。



摩耶「さてと、後、もう一人か二人誘いたいんだよね。」

時雨「他に誰が来るんだい?」

摩耶「んー?いつもつるんでる川内だろ?後、雪風にも声かけておいた。」



鎮守府内での仲間同士の繋がりは重要だ。

特に金になる話は。

お互いの装備、錬度、そして、艦種の相性。

それら全てをひっくるめて仕事を請けないと沈む羽目になる。


摩耶「予定されてる航路だけどトラックの連中が下手こいた後だからさー。」

摩耶「空母か戦艦が欲しいんだよねー。」

時雨「長門は?」

摩耶「燃料は向こう持ちだけどさ、弾代がね。」



戦艦の様に高火力ともなると弾の消費も莫迦にならない。

その為、支払われる報酬によっては金になる話でも見送るのがつねなのだ。



摩耶「まぁ、殴り合いが好きな長門からしてみれば対潜哨戒が主になる護衛は退屈なんだろ。」

時雨「違いない。」

摩耶「んっ、まっ、心辺りがあるから。そっちいってみるわ。」

時雨「じゃ、1時間後に出撃ドッグで。」

摩耶「あぁ、受任の手続きもこっちでやっておくよ。」

時雨「分かった。」



伯爵は暇してるかなぁと言いながら何処かへ向かう摩耶。

それぞれが稼ぐ理由があり、稼ぐ為にこの島へやってくる。

或る者は故郷への仕送り、或る者は贖罪の為。

そして、僕は僕を裏切って此処へ売り飛ばした彼女に理由を聞く為に。

今日も金を稼ぐ。生き残る為に。


第二話 補充兵器


数ヶ月前

小型デリックが輸送船から忙しなく補充物資を下ろしている港に一人の男が佇んでいた。

不知火「司令。司令部からのメールを印刷したものです。」

不知火「正式な書類は本日の船で『 補充兵器 』と共にとの事です。」

提督「ん、あんがとね。戻っていいよ。」

不知火「了解いたしました。」



一礼し下がる不知火。

胸元に入れている煙草を探すが・・・、最近禁煙を始めたことを思い出し軽く舌打ちする。



提督「補充兵器ね・・・。」

提督「いつもの定期便に乗せずにわざわざ船を出すってことはそれだけ早く厄介払いしたいってことかね。」



罪状、艦娘のこれまでの武勲。元の所属艦隊名と鎮守府。



提督「△×鎮守府ねぇ。ぴっかぴかのエリートさんじゃねぇか。」



中身をざっと見終えたくらいにちょうどタグボートが艀に近づいてくる。


提督「お疲れ、連絡のあった『 補充兵器 』はこの船に?」

水兵「えぇ、こちらを。」



受け取りと引渡しの認証をいつも通りに端末へお互いの身分証を兼ねたICカードを翳す。



提督「どうだい。珈琲の一杯でも?陸の話を聞かせてくれないか?」

水兵「すみません、自分はこの後も仕事がありますので。」

提督「そうかい。生きているうちに稼がなきゃな。」



提督の言葉にははと笑い返す水兵。

ガチャガチャ



提督「と、これで枷は全部かな?」

提督「さてと、お嬢さん。ここが何処か分かるかね?」

提督「後ろをついて来な。着任の手続きが執務室で待ってる。」

提督「あぁそうそう、俺の命を狙っても無駄だからな。三途の川の渡し賃にすらなりゃしねぇ。」



補充兵器として来た彼女の前をべらべらと喋りながら鎮守府建屋へ向かう提督。



「僕は無実だ。」

提督「既に出た判決を覆す事は難しいな。」

提督「人権に配慮した上は艦娘にも裁判を受けさせるという有難い配慮をしているが配慮だけだ。」

提督「結果がなにか変更される事はないさ。」


「だから僕はやっていない。」

提督「お前さんは運が良い。武勲を立てていなけりゃ問答無用で銃殺だ。」

提督「武勲を立ててきたお前さんに上はまだ利用価値を認めているらしい。」



補充兵器とされた彼女の返答を一方的に無視し話し続ける提督。



提督「よろこべ、敵の弾は戦艦、空母、重巡、軽巡、駆逐。全てを区別せずに等しく死を与えてくれる。」

提督「死にたくなったらいつでも当たりに行ってくれ。自殺の弾代が安く済む。」

提督「その分だけ花篭も良いやつにしてやるよ。」

提督「まぁ、何かやりたいことが残っているなら生き抜いて稼ぐこったな。」

提督「さぁて、着いたぞ。この立派な建物がお前さんの塒であり刑務所でもある鎮守府だ。」

提督「なかなかイカス建物だろ?そして、俺がここの看守兼提督だ。」

提督「これから宜しく頼むぜ?お嬢さんよ。」



港から少し歩いた所に聳え立つその建屋には

『 外地鎮守府管理番号 88 』とだけ書かれた看板が掛かっていた。



提督「普通の法律から外れた、そうだなある種の治外法権。」

提督「ここが地獄の一丁目と呼ばれる所以だ。」

提督「今までいた世界の常識とはこの入り口でおさらばするんだな。」

提督「 『 この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ 』 ってな。」



そう言い残し提督は建屋の中へと消えていった。


第三話 時雨、着任


不知火「司令、緊急入電です。」

建物内を歩く提督が書類を一瞥しふぅーっと大きく溜息をつく。

提督「おーい、お嬢さん。着任の手続きは後だ。不知火。全体放送で全員を作戦室に集めてくれ。」

不知火「了解いたしました。」


作戦室


鎮守府内の一際大きな部屋に戦艦や空母、重巡から潜水艦まで。

そして所々に海外艦と思しき人員。

おおよそあらゆる艦種と艦娘が全体放送により集まってきたのだった。



提督「全員集まったか?司令部からの作戦で全員参加だ。命令拒否はペナルティを払ってくれ。」

摩耶「いいからさっさと話を始めてくれよ。」

提督「今しがた入電したんだが横須賀の艦隊がスエズまで行っていたのは皆知っていると思う。」

長門「この間露払いしたからな。」

提督「連中、下手打ちやがった。」

正規さまは雑魚だねぇとか使えねぇなぁ等等、どっと笑いが起きる。

川内「それで追撃食らってるのを助けてやれってこと?」

提督「まぁ、有体に言えば。」

川内「で、幾ら出るの?」

提督「横須賀のお偉いさんの艦隊とかでな。

   作戦参加で1万、作戦完遂で100万の頭割り、後は戦果事のボーナスはいつも通り。

   MVPには半減上陸に小遣いもくれてやる。」

川内 ヒュゥ

川内「休暇の買取は?」

提督「必要なら申請しとけ。」

長門「司令部の作戦なら当然、弾と油は向こう持ちなんだろうな。」

提督「あぁ、好きにしろ。派手に暴れて来い。」


摩耶「よっ、お大尽!で、そこの駆逐艦は?」

提督「あぁ、ついでだ紹介しとこう。今日来た『 補充兵器 』さんだ。」

摩耶「名前で呼ばないのかよ。」

提督「まだ着任が済んでないんでな。不知火。」

不知火「お呼びですか。」

提督「後、頼むわ。作戦の開始は2時間後。参加する奴は出撃ドッグに集合な。」

提督「俺は寝る。書類整理で完徹しててな。眠いんだよ。」



必要なことだけを述べ提督は大きく欠伸をしながら作戦室を出て行った。



不知火「早速ですがこちらの書類に目を通していただきサインをお願いしたします。」



A4のコピー用紙に文字が細かく印刷されたものが2枚


時雨「目が痛くなりそうだ。」

摩耶「よう、あんた時雨だろ?」

摩耶「何やらかした?」

長門「やめとけ。此処のルールは問わず語らずだろ。」

川内「書類の内容はよく読んだほうがいいよ。でないと後で後悔する。」

摩耶「つったってまぁ、懲役代わりにここに来たんなら2枚目一択だけどな。」

時雨「?」

長門「簡単に説明するとだな。1枚目は軍籍を維持したままここで戦う契約。」

長門「軍籍は残したままだから当然、命令拒否は通常なら軍法に基づき処罰だが・・・。」

摩耶「懲役代わりに此処にきたんならそのままズドン。」

川内「銃殺だね。」

長門「その代わり、出撃の弾薬、燃料、修理は海軍持ちでシフトに従った出撃になるな。」

長門「ただし、支払われる金は給料のみ、また、懲役分の金を払って刑期を短くする事や艤装の改造も禁止だ。」

時雨「艤装の改造?」

摩耶「そっ。まぁ、2枚目の契約書の話になってくるんだけどさ。」


摩耶「2枚目は軍籍の放棄。早い話海軍と傭兵契約を結ぶってことだね。」

摩耶「傭兵だから出撃にかかる弾代、燃料代、修理費は自己負担。」

摩耶「その代わり撃破した敵ごとに定められた金が貰える。」

川内「そのお金を溜め込むか自分の刑期分を支払うか好きにできる。」

時雨「それは刑期をお金で縮めることが出来るということかい?」

摩耶「そういうこった。艦種事に算出方式が違うから特定の艦種ほど稼げるって訳でもない。」

摩耶「それ以外にも金を稼ぐこと自体が目的の連中もこっちを選んでるね。」

摩耶「ただ修理も含めて全てに金が掛かるからなるべく被弾しない立ち回りが必要だね。」

摩耶「選ぶやつは多いけど本当に腕の有る奴等しか生き残らない。」

川内「でも自分の好きなように艤装を改造して最新鋭の装備も金次第で引っ張れるのが魅力ではある。」

川内「そして、働いた分だけ金になる。」

長門「そういう訳だから2枚目を選ぶ奴の方が多いかな。」

不知火「皆さんありがとうございます。説明の手間が省けました。」

不知火「それからこれを。」


金属質な固さと冷たさを持ったICチップが付いたカードを渡たされる。



不知火「ここにいる間の身分証明書兼電子マネーカードです。

    全ての決済がそちら1枚で出来ますので無くされない様にお願いします。」

不知火「万一紛失された際は早めの連絡を。それと、こちらの認識票も必ず身に着けて下さい。」

不知火「死亡された際の遺体の確認に使用いたしますので。後、こちらに遺品の送り先を。」

不知火「それから司令からの伝言ですが今までの武勲と給料で10万入っていますので当面の生活には困らないかと思います。」

不知火「ですが無駄遣いはなさらぬよう。後、食事は基本無料ですので御安心下さい。」


淡々とした口調で書類を差し出していく不知火。


不知火「それでは不知火はこれで失礼します。」

長門「さてと、明日の酒代を稼ぎに行くか。」

川内「10万ね。雪風以来かな。新人でこれだけ持ってここに来たのは。」

長門「確かにな。だが、死ねば皆一緒だ。ドックへ向かうぞ。」

川内「だねー、生きてる間は稼がないと。」

摩耶「で、雪風は今回の任務参加するの?」


作戦室に居た艦娘があらかた出て行った後、摩耶が後方に語りかける。


雪風「雪風は今回は遠慮します。」

摩耶「任務だから違反金だぜ?」

雪風「残敵の掃討部隊というのは決まって精強で士気が高いものです。」

雪風「駆逐艦の私では分が悪いってもんです。」

摩耶「そっか。じゃ、また後で。」

雪風「生きていれば。」ニィ

摩耶「時雨は?」

時雨「そうだね。僕も今回は遠慮しておくよ。まだここになれてないしね。」

摩耶「ふぅん。金持ちは違うねぇ。じゃ。またな。」


そういい残すと摩耶は去っていった。


雪風「よろしかったのですか?」

時雨「うん。雪風は此処が長いんだろ?それなら生き残るのが上手い娘を見習った方が良いと思ってね。」

雪風「さぁて、どうでしょうかね?」ニィ


この後、僅か30分後時雨は雪風の不敵な笑みの理由を知ることとなった。


不知火「鎮守府周辺海域に敵の艦隊の出現を確認しました。」

不知火「出撃可能な方は全員迎撃に向かってください!」


鎮守府全体放送で緊急放送がかかる。


雪風「予想通りですね。」

時雨「まさかこれを狙っていたのかい?」

雪風「作戦の決行時間は日没が近かった為、夜間作戦になるのは分かりきっています。」

雪風「雪風達駆逐艦が本領発揮するには魚雷をばら撒くのが一番ですが・・・。」

時雨「出撃する味方が多いと味方に誤射する可能性が高くなるね。それに夜だと尚更。」

雪風「その通り。それに競合する相手が少ないほど稼げるってもんです。」

時雨「流石だね。」

雪風「私は出撃して稼いできます。時雨さんも御一緒にいかがです?」

雪風「今までいた所がどれだけ微温湯だったか分かりますよ。」


ぬらりとした張り付いた笑みを見せると雪風は暗闇の中を出撃していった。


時雨「成程・・・、地獄の一丁目か。」


時雨はこの日、地獄の歩き方を少しだけ学んだ。


安価スレの末尾にて御連絡させていただいていた分のスレ立て

イベ中に更新出来れば1話分くらいは更新したいですね

まるっと同じという訳にもいかないので雰囲気が似せれたらと思う所

では、またの更新時に

ここまでお読みいただきありがとうございました

乙、ここはロアナプラかそれともフロム泊地か

3発5ドルの魚雷

エリア8 8か以前書いてた奴の修正版だよな?

外泊届けにサインしなきゃ

面白い

これ見た事があるんだけど再投稿?

雪風が燃える一角獣で時雨がプレイボーイバニー

ハリヤー乗りの王子様は清霜あたりかな?

構成文章は変わってるけどあらすじ設定全く同じの見たな
加筆修正再投稿じゃなけりゃもろパクリなのだが同じ人か?

思いっきり同じ人だね

マダー

おつ


現在進行形でやっている別の作中と前作にて加筆修正後の再掲載の旨を告知していたため

スレを立てるにあたって不要かと思い

その事を省いたためお読みいただいた方に混乱をきたす事になり申しわけありませんでした

といっても酉をつけていないため同一人物と証明も難しいのですが・・・・

とりあえず、バスクリンです、はい

本日分の更新をさせていただきます、お時間よろしければお付き合い下さい


第四話  Ghost Submarine’s


鎮守府ドック埠頭


明石「お帰りなさい。今日もがっちり稼いでいますか!」

時雨「そうだね。駆逐に軽巡に補給艦に・・・、まぁ3万は固いね。」

時雨「魚雷を30本は貰おうか。」

明石「ふふふ。毎度!」

明石「魚雷の相場が1本このくらいですから・・。」

明石「こんなとこでどうです?」

時雨「高いね。もう少し安くならないかな?輸送ルートの掃除を頼まれてあげるからさ。」

明石「仕方ないですね。こんなとこで?」


電卓を叩く明石。


時雨「うん。それで。」

明石「まいど!」


明石が持つ端末にカードを翳し決済終了。


雪風「私も同じ値段ですよね!20本いいですか?」ニタァ

明石「いつからいたんですか!?まったく、ちゃっかりしてますねぇ。」

不知火「お二人ともお疲れ様です。本日の戦果報告をお願いします。」

時雨「うん。後で報告書をまとめておくよ。」

不知火「宜しくお願いします。」


ズッズッズッ。

重そうに水を含んだ布地を引き摺りながら潜水艦娘が二人の近くを通りがかる。


時雨「ヒトミ。これを着なよ。」


つレインパーカー


伊13「・・・、ありがとう・・ございます。」

雪風「時雨さん。潜水艦の方々はあまり私達と馴れ合いませんよ。」

時雨「そうはいっても僕らと同性が上半身裸で歩いて回るってのも良くないよ。」

時雨「いくら入渠ドックまでの短い距離だっていってもよくないさ。」

時雨「ゴーヤもだよ。」


つ雪風のレインパーカー


雪風「いつのまに。」

伊58「・・・、ありがとうでち。」

伊58「ヒトミ、急ぐでち。修理が済んだら、まだ、今日のノルマが残ってるでち。」

不知火「・・・、お疲れ様です。」ペコ


ズルズルズル。

潜水艦娘の指定水着。

その上に時雨からもらったパーカーを羽織る。

破れたスクール水着を下に引きずりながら入渠ドックへと歩いていく潜水艦娘達。


川内「時雨は優しいね。」

時雨「なんだい、見てたの?」

川内「ふふ。まぁね。」

雪風「川内さんも人が悪いですね。」

川内「といっても潜水艦の娘達はあんまり馴れ合いたがらないからね。」

川内「時雨の差し出すパーカーを素直に受け取ってたのが珍しかったのさ。」

時雨「そうなの?」

雪風「そういえばそうですね。あまり潜水艦以外の娘達と馴れ合いたがらないですね。」

明石「まぁ、事情が事情ですからね。」

川内「まだいたの。」

明石「扱い酷いですねぇ。まっ聞きたいならこれ次第でお話しますよ。」


手でお金のサインをする明石。


一同「「「いや、いいです。」」」

明石「」

雪風「では、食堂で夕飯と行きましょう。」

時雨「そうだね。ご飯は大事だよ。」


食堂

食堂はいつもの様にこれから出撃する者、帰ってきた者でごったがえしていた。


川内「夜戦スペシャル1つ!」つ食券

「ほいよ!」 つスタミナカルビどっさり定食 & 果物山盛り

時雨「沢山食べるね。」

川内「夜に動くからね。この位食べておかないと朝までもたないの。」モッモッモッ

雪風「流石に見てるだけで胸焼けを起こしそうです。」


そして和やかに食事をしていた時に時雨が気づいた。


時雨「ハチたちは座るところを探しているのかい?」

時雨「よかったらここに座りなよ。」

伊8「ダンク。」

伊13「ありがとうございます。」

時雨「どういたしまして。」

雪風「川内さん詰めて詰めて。」


雪風が自分の横に座る川内を肘で横へ押しやる。


川内「ほいさっ、ほいさっ。」

川内「ほい。スペース出来たね!」


伊58「どうしてゴーヤ達にかまうでち?」

時雨「そうだね。うーん、一緒に命を賭けて戦っている仲間だから。」

時雨「これじゃ答えに不足かな?」

伊58「川内達は?」

川内「私?簡単だよ?仲間の時雨が仲良くしたがってる。それだけで理由としちゃ充分でしょ?」

川内「私はこれでも時雨に一目置いてるからね。時雨が仲良くしたいならそれを応援するよ。同じ鎮守府の仲間としてね。」

雪風「同じくです。」

伊58「仲間・・・・。」

時雨「じゃ、僕らはこれで。」

川内「ほら雪風も行くよ。」


川内に促され8個目の肉まんを片手に持ち雪風も席を立ち上がる。


時雨「じゃ、ゆっくりしなよ。」


そう言い残し食事を終えた3人は食堂を去った。


後日とある日 インド洋海上


摩耶「敵の潜水艦部隊に出会わないと楽だねぇ。」

時雨「潜水艦の対応に装備を全振りしてるから水上艦は頼むよ。」

摩耶「任しときな!そんときゃあたしの後ろに隠れるといいよ。」

摩耶「そうでないとこっちばっかりが得しちまう事になる。」

摩耶「あたしら重巡は対潜が出来ないからなぁ。」

時雨「各々向き不向きがあるさ。摩耶は水上艦、僕らは潜水艦。それでいいじゃないか。」

摩耶「潜水艦で思い出したけど時雨、最近潜水艦と仲がいいんだって?」

時雨「うん。まぁ・・・ね。何か問題でもあるのかな?」

摩耶「あいつらはちょっと特殊だからね。」

摩耶「潜水艦の連中は過去の経歴がまったく存在しないって噂だぜ。そして、何をしでかしてここに来たのか誰も知らない。」

時雨「誰も知らないの?」

摩耶「まっ、不知火なら知ってるかも知れないけどね。」

摩耶「んで、連中は終戦まで此処にいる決まりでかなりの額の賠償金も背負わされているって話だぜ?」

摩耶「経歴も何もかも存在しない、だから鎮守府の古参連中は幽霊って呼んでるんだ。」

摩耶「Ghost Submarine’s 幽霊潜水艦隊ってね。」

時雨「幽霊潜水艦隊・・・・。」

摩耶「まぁ、足はついてるけどな!」ハハハ

雪風「確かについていますね。」ハハハ


また別の日


時雨「お疲れ。」

伊58「お疲れでち。」

時雨「低気圧が近づいてるみたいだよ。荒れそうだね。」

伊58「海の中は関係ないでち。」

時雨「そっか。それもそうだね。」

伊58「可笑しなやつでち。」フフフフ

時雨 フフフフ


さらにまた別の日


時雨「ヒトミ、お疲れ。」ヒュッ

伊13「あっ、お疲れ様です。これは?」パシッ

時雨「自販機が誤作動してね。2本出てきたんだ。あげるよ。」

伊13「暖かい・・・。」

時雨「今日はあがりだろ?海中は冷えただろうし、ゆっくり飲みなよ。」

伊13「ありがとうございます。」

時雨「はちもだよ。」ヒュッ

伊8「時雨はいいの?」パシッ

時雨「僕は今から出撃でね。ゆっくり飲んでいる暇がないんだ。」

伊8「酷い話ですね。」フフ

時雨「まったくだよ。」フフ

長門「時雨、出るぞ!」

時雨「あっ、うん!すぐ行く!じゃ!」

長門「と、二人、これは私からだ。」ポイッ

伊8「カイロ?」パシッ

長門「間違えて余分に封を切ってしまってな。」

長門「勿体無いから使ってくれ。ではな!」

伊8「ダンケ!」


数日後 どこかの海中

伊13「ゴーヤさん。時雨さん達なんですが・・・。」

伊58「・・・・。」

伊8「私は仲良くしてもいいんじゃないかって思う。」

伊8「今までの、ううん。ここに来る前にいた連中とは違うと思うの。」

伊58「やつらは!イクにイムヤは・・・・・!」

伊58「ううん。今はその話をする時ではないでち。仕事の時間でち。」

伊58「今週のノルマまで後少し。本腰いれて掛かるよ!」

伊13 伊8「「はい!」」


同時刻 鎮守府廊下

不知火「時雨さん。お時間よろしいですか?」

時雨「不知火?僕に何かようかな?」

不知火「最近親しくされている潜水艦の娘達についてこちらの会議室で少し宜しいでしょうか?」

時雨「分かった。」


会議室内


不知火「そちらにどうぞ。」

時雨「ありがとう。それで、話っていうのは?」

不知火「これからお話することは他言無用で願います。」

不知火「不知火も司令から伝える様にと言われたのですがその意図が分かりかねている所です。」

不知火「初めにお話ししますが彼女達の罪状は以前いた鎮守府の殲滅を主導した事です。」

時雨「!!」

不知火「現在この鎮守府に居るゴーヤさん、ハチさん、ヒトミさん。」

不知火「そしてここにはいないイヨさんの四人で計画は実行されました。」

不知火「全てが終わった後、彼女達は出頭し、罪の自白、及び極刑を希望されたそうです。」

不知火「以上が彼女達がここに来ることになった簡単な経緯です。」


時雨「何が彼女たちをそれ程までの狂気に駆り立てたんだい?!」

不知火「私達艦娘は軍務に付く際に所属鎮守府を登録しその後は艦隊司令部の作成した艦娘運用規定に則って

    各種作戦等の任務に従事します。」

不知火「そして、各鎮守府事の最大着任数は決められておりその上限枠を超えての着任は出来ません。」

不知火「また、鎮守府の大小に関わらず資源の最大保有量は変わりません。」

不知火「時雨さんもご存知ですよね、潜水艦の艦娘で資材を効率的に確保する方法を。」

時雨「・・・・、オリョクルだね。」

不知火「オリョクルは方法として司令部も必要悪として黙認している部分もあります。」

不知火「ですが、実施する際には疲労解消の徹底等いくつもの条件を満たした場合のみとしています。」

不知火「しかし彼女達はそれが守られていませんでした。」

不知火「いえ、酷使することを目的に意図的に着任手続きはされませんでした。」

時雨「そっか、着任していなければ艦娘としての運用規定に抵触しないという事か。なんて卑劣なんだ・・・。」

時雨「でも、ヒトミは着任手続きを取っていたんだろ?」

不知火「えぇ、ヒトミさんとその妹のイヨさんは着任手続きなされていたことが司令部の記録に残っています。」

不知火「そして、ある日、オリョクル中に彼女達の仲間であったイクさんが『 事故 』により喪失しました。」

時雨「事故だって?」

不知火「 『 事故 』です。」


強調するかのように繰り返す不知火。

その表情は険しい。


不知火「艦娘としての籍が用意されていなかった為何が起きていたのかも

    証言のみでしか伺えませんがゴーヤさん達の救援要請が握り潰されたそうです。」

不知火「そしてその件もありヒトミさん姉妹は待遇の是正を求め動いていたのをより強め

    司令部監査室へ告発しようとした所を司令官に気づかれイムヤさんが『 事故 』により失われました。」

不知火「記録上は。」ギリ

時雨「なんて胸糞悪くなる話なんだ。」

不知火「告発失敗の後はヒトミさん達姉妹もオリョールの出撃へ組みこまれています。」

時雨「・・・・。」

不知火「この二件の事故で彼女達は従順になりました。いえ、正しくは演じていたですね。」

不知火「オリョクルで獲得可能な資源は燃料、弾薬とありますがその獲得資源量は一定ではありません。」

不知火「重ねてオリョール海は多島海の為彼女達が獲得した資源の一部を貯めるには隠し場所が実に豊富でした。」

時雨「その・・・・隠れて貯めた燃料や弾薬はやっぱり?」

不知火「えぇ、臥薪嘗胆の思いで貯めた資材が目標の量に達した時に彼女達は行動へ移ったそうです。」

不知火「深海棲艦が定期的に大量発生する時期に合わせて雌伏の時を過ごし、牙を研ぎ澄ませていたのですね。」


不知火「そして彼女達は同じ鎮守府の艦娘を駆逐、軽巡といった対潜行動が可能な子達から葬り最後に正規空母、

    戦艦といった対潜行動をとれない娘達を一方的に弄り殺したそうです。」

不知火「ヒトミさん姉妹が告発に向けて動いていた際も協力する者は誰一人として居らず寧ろ、

    資材を取ってくる便利な『 何か 』程度にしか認識されていなかったため

    ゴーヤさん達の調書ではイクさんやイムヤさんの仇をとったという感情しか沸かなかった。と書いてあります。」

不知火「全てが終了した後、司令官も殺害し鎮守府に火を掛け海軍特別警邏隊に出頭し身柄を拘束されました。」

不知火「その目的は世間に広く事実を知ってもらう為、自分達と同じ状況になる艦娘を二度と生み出さない為に。」


どれほどの決意を持って行われたのかを考え不意に時雨は泣いてしまう。


時雨「そのイヨは?」


そして、一人だけ居ない者が居ることに時雨は気付いていた。


不知火「イヨさんは一人海軍大津刑務所に拘留されています。」


人質か・・・・。


時雨「ここの提督の指示なのだとしたら相当な極悪人だね。」


吐き捨てるように言った時雨のこの台詞はこの瞬間においては大きな間違いであった事はこの後の不知火の様子が物語る。


不知火「あなたに司令の何が分かると言うのですか!」


怒気を存分に含ませ全身から溢れ出す殺気を押さえようともせず時雨を睨みつける不知火。

しかし、それは一瞬の事だった。


不知火「いえ、失礼しました。ただ、司令は海軍がその事実を死刑にて隠蔽しようとしたのを

    彼女達へ懲罰を与えるという口実をつけ救い出したという事実は付け加えさせていただいて宜しいですか。

    彼女達が生きている限りは事実は残りますので・・・・。」

時雨「そう、知らなかったとはいえ非礼を働いたのは僕の方だった様だね。」

時雨「不知火、ごめんよ。先の発言は取り消すよ。本当に申し訳ない。」

不知火「いえ、時雨さん、私が言えたものではないですがゴーヤさん達をお願いします。」


会議室を出て行く時雨が扉を閉めるときに見たのは深々と頭を下げる不知火の姿だった。


ゴーヤ達は逃げ回っていた。

いつものように通商破壊の為の補給艦狩を終えた後、帰投中に敵の対潜部隊に見つかったのだ。

伊58「敵がしつこいでち。」


敵は新しい玩具を与えられた幼児の如くゴーヤ達を嬲り弄んでいた。


伊8「同じ海域で補給艦狩りをやりすぎましたね・・・。」

伊58「今はそれを言っても仕方ないでち。」

伊58「それより、みんな魚雷は後何本残ってる?」

伊8「4本。」

伊13「6本です。」

伊58「二人とも1本だけ残して残りをよこすでち。」

伊58「ここはゴーヤが引き受けるでち。二人は逃げるでち。」

伊13「ゴーヤさん!?」

伊8「私も付き合うよ。ヒトミさんは逃げてください。」


伊13「お二人を残して逃げるなんて出来ません!」

伊58「ヒトミは妹が居るでち。何が何でも逃げ切るでち。」

伊58「生きて帰らなければいけない責任と理由があるでち。」

伊8「私達の境遇を変えようと動いてくれた時は嬉しかったです。」

伊58「その所為でこんな所にまで巻き込んでしまって悪かったでち。」

伊58「さぁ!いくでち!ここは二人でなんとかするでち!ヒトミだけでも生きて帰るでち!」

伊8「ただではやられないよ!」

伊58「そういう顔をするなでち。さっ!敵がこっちを探してうろついている間にいくでち!」

伊13「必ず!」

伊13「必ず!救援を連れて帰って来ますから!」



伊8「いきましたね。」

伊58「でちねぇ。」

伊8「さて、暴れますか。」

伊58「ハチも悪いでちね。黄泉路を一緒に歩くのがゴーヤで。」

伊8「敵も夜を前にこちらを沈めるべく動いてくるでしょうから増援が来るでしょうね。」

伊58「魚雷は2人で16本。一人8本ずつでち。最後の花火派手にいくでち!」

伊8「随分残してましたね。」

伊58「1本ずつを確実に当てれば少ない量でたくさん狩れる節約術でち。」フフフ

伊8「節約ですか。」フフフ



鎮守府 出撃ドック近く


時雨「雪風もランニングかい?」

雪風「時雨さんもですか?日が暮れるのも早くなりましたね。」

時雨「うん、本当に。」


二人が運動後の体を海風に晒しほてりを冷ましている時に彼女は帰ってきた。

そして、一気呵成に事情を話し懇願した。


伊13「お願いします!お願いします!」


仲間の、ゴーヤ達の命を助けて貰う為に。すがりつくように懇願をする。


時雨「雪風。」

雪風「行きますか。」

時雨「勿論。」

川内「二人とも待った。任務でも仕事でもないのに勝手に海に出るのは脱走兵扱いだよ。」

川内「私が見逃しても私と同じように金目的でここに居る連中が見逃すとは思えないけど。」

川内「それでも行くの?」

雪風と顔を見合わせる時雨。


時雨「川内は本当に神出鬼没だね。でも、僕らは脱走するわけじゃない。」

川内 ?

時雨「夜の散歩にいくだけさ。」フフ

雪風「その通りです。」ニヤリ

川内「散歩ね・・・。なら私が付き合わない道理はないね。付き合うよ!」

摩耶「なんだい?散歩かい?奇遇だねぇ。あたし達もこれから散歩なんだ。」

長門「夜の散歩は危ないぞ。照明弾も持ったか?」

摩耶「川内なら夜偵も持ってるよな。なっ。」

パンッと胸前に握った拳で音を立てる長門。

テキパキと散歩の準備を済ませる一同。

長門「さぁて、花火大会会場に案内してもらおうか。」

伊13「みなさん、みなさん!ありがとうございます!」



伊58「動けるのが不思議なくらいの状態でちねぇ・・・。」

伊8「ヒトミちゃん逃げ切れたかなぁ。」

伊58「ヒトミなら大丈夫でち。ゴーヤ達が沈めば全部元に戻るだけでち。」

伊8「思えば結構長い付き合いだったね。」

伊58「ヒトミ達姉妹には感謝でち。二人がゴーヤ達の境遇改善に動いてくれたのはうれしかったでち。」

伊8「うん。はっちゃんもそうだよ。」

伊58「さぁて、残りの魚雷は1本だけだけど一隻でも敵を沈めて華々しく散ってやるでち!」

伊8「一隻でも多く沈めるよ!」


二人が最期を覚悟した時だった。


ドン!

水中にいるゴーヤ達からも分かる頭上の明かり。


長門「明石の在庫整理の大安売りでな!期限切れ寸前の照明弾のバーゲンだ!」

摩耶「軽空4、軽巡3、駆逐6!ついでにお守りの戦艦が1だ!」

時雨「いいね。いい運動になりそうだ。」

川内「私はねぇ、夜戦が大好き。」

川内「なぜかって?嫌いな夜に寝る気にならないから。」ニタァ


照明弾の残光が残る中でそれぞれが思い思いに敵と対峙する。


雪風「あなた達は幸せですよ。」

雪風「なにせ、痛みを感じることなく黄泉路を逝けるのですから。」


主砲の砲撃に注意を引き付け魚雷で止めをさす雪風。


川内「あぁ、今日も生き残った。」ペロリ


顔に付いたオイルとも血とも分からないものを舐めとり

手に握る軽巡だった物の艤装の断片を海へ放り投げ一息入れる川内。

敵は死んだことすら分からないのか捥ぎ取られた部位以外はぴくぴくと蠢く。

しかし、それはすぐに活動を止めた。


長門「さぁ!殴り合いを楽しもうか!」


対潜部隊の軽空母陣から少し離れた所では

戦艦同士の主砲の撃ち合いをする音が続きその砲煙は日の落ちた闇夜を赤黒く照らす。


長門「さぁ!さぁ!まだだ!まだ楽しませてくれるよなぁ!」

摩耶「ありゃスイッチ入っちまったなー。」

時雨「近づかないほうがよさそうだ。」


数瞬、まさしくほんの少しの時間、ゴーヤ達が最期と覚悟を決めてほんの少しの後。

その海域には深海棲艦で動くものはいなかった。


長門「他愛ない。」

摩耶「まったく。長門の姐さんはやり過ぎ。」

時雨「ゴーヤ達は大丈夫かな?」

伊13「なんとか!自力で帰れそうです!」

摩耶「食後のいい運動になったよ。」

摩耶「時雨、あたし達は先に帰ってるから雪風と援護してゆっくり散歩を楽しんで来るといいよ。」ニヤリ

川内「そうそう。じゃ、また後で。」バイバイ


台風の様に圧倒的暴力を吹き散らかし大破したゴーヤ達を護衛するような形で時雨と雪風は帰途についたのだった。


伊58「時雨、雪風、助かったでち・・・・。」

伊58「でも、なぜ?」

時雨「簡単だよ。前にも言ったけどゴーヤ達は仲間だろ?」

時雨「助けるのに理由なんて必要かい?」

雪風「じゃ、みなさん帰りましょう!」



鎮守府ドック付近


川内「お帰りー。」

不知火「お帰りなさい。」

摩耶「不知火が話があるってさ。」

伊58「不知火!時雨達は見逃して欲しいでち!ゴーヤが全て責めを負うでち。」

伊58「ノルマの増加でもなんでも受けるでち!」

伊58「だから、だから、二人の無許可出撃は見逃して欲しいでち!」


土下座をし額をドックのコンクリートで擦り切らんばかりの勢いで拝み倒す伊58。


摩耶「まーまー。落ち着きなって。」

不知火「司令から二人に伝言です。『 外出許可届けを出し忘れているぞ。 』と。」

不知火「こちらに氏名と登録番号を記入の上、明日昼までに提出をお願いします。」


二人に渡されたのは受領時刻が出撃した2時間前で記入された外出届。


不知火「尚、『 外泊許可届けとは違うから安心しろ。 』とも言われていました。」

不知火「意味は分かりかねますが。では。」

川内「提督も味な真似するよねー。」

長門「まっ、根っこまで腐っているようなら私はここに居ないがな。」

摩耶「頭の毛根は腐ってるみたいだけどなー。」

不知火「司令は禿げていません。薄いだけです。」キリッ

一同 爆笑

不知火「では、提出の期限は皆さん守っていただきますようお願いします。」


そして、不知火は書類を渡し終えると仕事が残っているからと去っていった。


伊58「みんな、本当にありがとうでち。」

伊58「仲間なんてハチやヒトミ達以外に居ないものだと思っていたでち。」

伊8「助けていただきありがとうございました。」

摩耶「気にすんなって。仲間だろ?あたしらは散歩に出たらたまたま敵に出くわしただけなんだから。」

川内「そーそー。じゃ、私らはこれで。」

時雨「ゴーヤ、またね。」

伊58「また。」ズビッ

伊58「またでち!」

それぞれの部屋へ帰り行く一同、その後ろ姿を見送る潜水艦娘達。

その姿が小さくなってもゴーヤ達は手を振り続けていた。


雪風「ところで時雨さん。」

時雨「なんだい?」

雪風「魚雷に弾薬、任務や仕事ではないので大赤字です。」

雪風「これは散歩にお誘いいただいた時雨さんに請求するべきでしょうか?」

時雨「ちょっとやだなぁ。せっかくいい話で終われそうだったのに。」

雪風「もしかして、雪風、空気を読んでいませんでしたか。」フフフ

時雨「本当だよ。」フフフ


こんな感じで進行していきたいと思います

本日はお読みいただきましたありがとうございました

ボツネタとして掲載させていただいた時は需要があるんかいなという部分が大きかったので

続きは?というレスが多かった事に驚きました

さて、E4のゲージ削らなきゃ・・・、Z6マスで心折れ、乙にて絶賛攻略中です

E4のラスボスはたぶんZ6のS勝利だと思いますです

乙レス、感想レス、いつもありがとうございます

ではでは、また次回の更新で

おつかれさま

元ネタの基地司令官は長髪だったのに…

始まったのか良かったな
ただバスクリンが薄毛に効果無いのはちょっとショック

おつおつ
こんだけ荒んでる環境もなかなか面白いなw

ここだと髭もじゃの大淀が対地攻撃でヒャッハーしてるのか(困惑)

STGのエリア88やたら難しいんだよな…SFC版しか知らないけど

乙、面白い

前のエリ8はエタってたから、期待


1です、本日分の更新をさせていただきます

乙レス、感想レス、いつもありがとうございます

>72様

自分以外に同じネタで書いていた方がいらしたのでしょうか?

前々作での末尾に掲載していたものはボツネタとしての物の為、続きをやる予定すらなかったのですが

その為、ちょっと心当たりがないので申し訳ないです

他の方が書かれていてエタっていたのであればこちらで楽しんでいただければ幸いです


第五話 川内という女


ジジジジジ。


「ん。」


もぞりと寝床から起き出し枕もとの目覚ましを止める。


「主砲よし。」

「魚雷よし。」

「電探よし。」

「そして最後にダメコンよしっと。」


装備の一つ一つを指差し確認。

首に襟巻を巻き気合をひとつ。


時雨「川内も今から朝食かい?」


日課のランニングを終えストレッチをこなし体を冷やしているところに同じように運動を終えた時雨が声をかけてくる。

普通の鎮守府と違いトレーニングや訓練を一切強要されることは無い。

しかし、ここに所属している艦娘でそれを怠るものは一人としていない。

ここが激戦地で他より危険度の高い敵がうろついていたり

他の鎮守府で手に負えない敵を倒すために存在しているから。

例えるなら始まりの町を一歩出たらいきなり魔王城の大広間で魔王とこんにちは、みたいな。

それ程の危険な海域の中に存在しているのがこの鎮守府なのだ。

出撃した際に死なない確率を少しでも上げる為にみな自分が最適と思うトレーニングをこなす。


食堂


川内「今日の朝食は何にしようかな?」

時雨「食事が楽しみってのはあるよね。」


朝食は食堂の入り口で券販機から食券を出しそれを受付に置き受け取り口で受け取る。


時雨「何と言うか養成学校時代を思い出すね。」

川内「時雨は養成学校に行ってたんだ。」

時雨「川内は違うの?」

川内「私は志願、即、戦場だったからなぁ。こうして生きてるのが不思議なくらいだよ。」

雪風「川内さんの昔話は珍しいですね。」

雪風「来たときに比べれば随分丸くなったもんですよ。」

時雨「そんなに酷かったの?」

雪風「そうですね。幽鬼の如き有様でした。」

川内「ちょっと雪風。」

雪風「と、おしゃべりが過ぎました。」


普段、飄々とした態度を見せる川内の過去の話に華が咲きそうだった時に不知火がやって来る。


不知火「おはようございます。」

時雨「おはよう。」

不知火「急ぎでは無いのですが頼まれごとをお願いしてもよろしいですか。」


返事をする前から3人の前に書類を並べ始める不知火。


雪風「捜索に出るだけなのに結構いい稼ぎですね。」ズルズル


その小さな体のどこに入るのか6杯目のラーメンを食べながら雪風が書類の内容に感想を漏らす。


時雨「何か訳有りなのかな。」

不知火「察しがよくて助かります。」

不知火「技研が新型兵装の実験を行っていたようで

    その新型兵装を積んだ艦娘が行方不明の為兵装の回収をお願いしたいと。」

川内「なんたってこんな危険海域で。」

不知火「馬鹿だったのではないでしょうか?」

雪風「辛辣ですね。」

時雨「兵装の回収だけなのかい?」

不知火「・・・・、おっしゃりたいことは分かりますが艦娘に関しては生死を問わずです・・・。」


苦々しい、そう表現するしかない渋い顔で不知火が答える。


不知火「とりあえず、お暇な時で結構ですので。」


そういい残し不知火は去っていった。


時雨「皆、どうする?」

雪風「悪くないと思います。」

川内「多少派手に交戦しても黒字が出る金額ではあるかな。」

長門「ん?なんだ、お前達も頼まれたのか。」

時雨「長門達も?」

長門「あぁ、この後行こうと伯爵達と話していた所だ。

   時雨達も行くなら艦隊としての受任手続きはこの長門がしておこう。」

時雨「じゃぁ、お願いするね。」

長門「任された。」


鎮守府 出撃ドック近く


川内「おっ、提督暇してる?」

川内「釣りなんかして何か釣れるの?」

提督「釣れるさ。お前と言う話し相手がな。」

川内「そう。・・・、横、座るよ。」

提督「ん。これを下に敷くといい。尻が冷えなくていいぞ。」

川内「煙草。」


そう言い提督の口に咥えていた物を取り上げ口に咥える。


川内「やっぱりまっずい。禁煙しなよ。」

提督「してるさ。少なくとも30回は成功している。」

川内「じゃぁ、もう吸えないようにライター没収!」

提督「おいおい、ダンヒルのライターで頂きものなんだぞそれ。返してくれ。」

川内「べ――――だ。」


舌を出しあっかんべーをする川内。


提督「まったく・・・ところで川内、そろそろ契約更新の時期だが。」

川内「するよ。今回も契約延長。」

提督「・・・・、まぁ、お前さんの勝手だ。仕送りはまだやってるのか?」

川内「・・・、うん。」

提督「ここで働く理由は聞かないが安全な仕事場なら紹介してやれるぞ?」

川内「でも、儲からないよね。」

川内「ねぇ、提督はなんで煙草をすうの?」

提督「口寂しい時に乳吸わせてくれてた女が死んだからさ・・・・。」


ふいと煙を吐く提督。

その横顔はどこか物悲しさを感じさせる。


時雨「あっ川内、ここに居たのかい?先程の任務だけど手続き終わったって。出るよ。」

川内「うん、分かった!すぐ行く。」

川内「提督!」

提督「ん?」

川内「行って来ます!」

提督 フン。

提督「いってらっしゃい。」フフ


何処かの海上


時雨「今日の任務は顔見知りでの出撃だね。」

川内「雪風と時雨、私に摩耶に長門と伯爵か。」

川内(気の許せる仲間って所かな。お互いの実力をきちんと把握出来ている。いいね。)

長門「こちら『 巨乳 』リーダー長門だ、

   現在行方不明になったとされる海域に到着。敵艦隊見当たらず。」



「こちら不知火、了解です。目標を発見できましたら回収をお願いします。」ザリザリ



摩耶「長門の姐さんに任せると、めちゃくちゃ恥ずかしい艦隊名で受任申請するよね。」

グラ「まぁ、理由は分からないではないがな。」

時雨「分かるの!?」

グラ「私達が万一沈んだ際に書かれる死亡届けの艦隊名は受任した時の艦隊名だ。」

グラ「流石に『 巨乳 』などと恥ずかしい名前が記載されたくはないだろう?」

グラ「なればこそ。生き残ろうと頑張るものさ。」

雪風 ペタペタ

雪風「長門さん。」

長門「ん?」

雪風「後で謝罪を要求します。」

長門「?」


川内「あー、まぁ仕方ないよねー。」

グラ「哨戒機に艦影なしだ。潜水艦はどうだろうか?」

時雨「感無し。」

雪風「同じくです。」

摩耶「・・・・・。妙だな。」

長門「哨戒範囲を広げるか。」

グラ「むっ。艤装と思しき浮遊物と艦娘かな?哨戒機が浮遊物を発見したぞ。」

哨戒に出した艦載機からの連絡を受け全員に伝達するグラーフ。

時雨「どっちの方角?」

グラ「ここから北東方向に200だ。」

長門「ふむ。行って見るか。」

川内「・・・・・。皆待った。」

時雨「どうしたの?」

川内「何か臭う。」

雪風「臭うですか?」

川内「うん、私とした事が仕事を請ける前に気がつくべきだった。」

摩耶「川内、どうしたってんだよ。」

川内「昔ね、私が志願したての頃に居た鎮守府がやられたやり方を思い出してね。」


川内は話す。

自身が所属していた鎮守府が敵にいかに潰されたかを。

敵の深海棲艦は実に狡猾かつ卑劣な手段をとっていた。

駆逐艦の娘達を捕まえ救援要請を出させ機雷原に放置し、

助けに来た味方を救援対象事吹き飛ばす。

救援要請を拒んだ娘については

徹底的に『 壊した 』後に海面に打ち捨てその確認に来る者を殺す撒餌にした。

艦娘の仲間意識を利用した卑怯だが非常に有効なやり方。


川内「餌に使う娘はとにかく口だけ利ければいいって感じで状態にされててね。」

川内「一番酷いので達磨だったかなぁ。」

川内「そんな状態だから助けに行っても結局死んじゃう事が多かったかな。」

川内「それで戦艦とか空母の娘とか。

   自分に絶対の自信を持っている娘程助けに生きたがるものだからその娘達から先に消えていったんだ。」

長門「ふむ。ならば行かずに帰投するのが正解か。」

グラ「むぅ。しかし、哨戒機からの連絡によると浮遊物は艦娘らしくどうも生きているようだが?」

川内「それが敵の狙い目でね。助けても花火を大量に持たされていて敵は一発でも当てれば救援に来た艦隊事ドカン。

   外そうとしても仕掛けが働いてドカンなんだ・・・。」


時雨「川内?」

川内「・・・・、妹達がね。自分の部下だった娘達を助けようとして、ね。」

時雨「ごめん。つらいことを聞いたね。」

川内「いいよ。別に。昔の事だし。」

雪風「空撮した写真の提出でいいでしょう。火薬庫に裸で突っ込ませた技研が問題です。」

雪風「私達の命を手札に載せてまで連れて帰る価値は無いと思います。」


哨戒機からの情報を受け取ったグラーフが何かに気付く。


グラ「ほぅ。成程、どうやら敵はこちらが罠と気付くのも見越していたようだ。」

グラ「水雷戦隊の一編成がこっちに急襲をかけようと向かってきている。」

グラ「どうする?やれなくはないと思うが。」

川内「全力で逃げよう。」

川内「本隊が来るまでの時間稼ぎの捨て駒だよ。」

長門「だろうな。君子危うきになんとやらだ。」


全員が反転して海域離脱を図ろうとした時だった。

遠くで一際大きな砲声がしたかと思った後、川内が横に大きく吹き飛ぶ。


川内「おおぅふぅ。」

時雨「川内!」

川内「機関への直撃はしていないよ。まだ動ける。」


腹部への直撃弾を受け口から吐瀉物を漏らしながら時雨の問いかけに答える川内。


川内「くっそぉ・・・、スナイパーが居やがるかぁ。」

グラ「スナイパー?」

川内「連中の戦艦の中で特別に長距離射撃に長けた奴でね。

   私が居た所が潰された原因のひとつがこっちの電探感知範囲外から一方的にやられたからなんだ・・・。」

川内「あの糞連中めぇ・・・ここにも出張って来てたかぁ。」

摩耶「おい。川内?」

普段の戦場においても余裕を見せていた川内の豹変に摩耶が驚き声をかける。

川内「奴らは一人ずつ仕留めるのが好きなサディストでね。私がここを引き受ける。

   みんな、急いで逃げて。絶対に後で合流するから。」

時雨「川内、死ぬつもりじゃないよね?」

川内「私には生きてやることがあるんだ。時雨、あんたと同じくね。」

川内「それにもうすぐ日も暮れる。夜の闇に紛れるにはいい頃あいだよ。」

長門「夜の闇に溶け込むか。」


川内「うん、盆じゃないけどね。送り火をつければ派手に明るく見えるでしょ?」

長門「・・・・、送り火か。」

川内「生者の魂をあの世に送るには必要でしょ?」

長門「成る程な。ではな。」


そう言葉をかわし握りこぶしをこんとぶつけ挨拶。


川内「さぁ!さっさと後ろを見ずに退け!ここは私に任せて退けぇ!」


首に巻いていた襟巻を腹部の出血を止める為に腹部へ巻きなおす川内。


長門「生きて帰えるぞ。」

摩耶「帰ったら一杯奢らせて貰うぜ。だから帰ろうな!」

雪風「どうぞ御武運を!」

時雨「また後で!」

グラ「Viel Glück!」


川内以外の全員が全力で海域離脱に動く。


川内「いい仲間に恵まれたね。やるだけやらなきゃだね。」


全員の後ろ姿を目に焼きつけ、くるりと敵の向かってくる方向へ向き直る川内。


川内「さぁ、命が惜しくないならかかっておいで!」

―――――

―――――――――――

―――――――――――――――――――――



川内は耐えていたある種の野生の感じみた物で敵の狙撃をかわしていた。

しかし、敵の執拗な攻撃には贖えずついに膝をついた。

川内「スナイパーの糞さえいなければねぇ・・・。」

遠距離からの狙撃はすでに相当な数が川内に命中している。

その命中弾は狙撃手の性格を現しているのか御丁寧に全て致命傷を外していた。

川内「ちぃ!」

一人で奮戦して通算で15隻目、一度の出撃で撃沈した敵の最多数記録を更新するものの奮戦むなしく膝を折った。


―――――――――――――――――

――――――――――――

――――――


レ級「今回の獲物はもったなぁ。」キシシ

ル級「そうですね。遠距離からのスナイプお見事でした。」

レ級「全部で20発超えたから賭けはル級の勝ちだねー。」

ル級「致命傷をわざと狙わずにちまちま当ててただけですからね。」

ル級「腰、足、手、の順番でまぁまぁ当てやすくもちのいい方から順番に。」

レ級「でも同じ軽巡でも前のは20発も持たなかったけど?」ニタニタ

レ級「しかも最初にどてっ腹に当てておいてよく言うわ。」

ル級「そこは敵にガッツがあったという事でしょう。」

レ級「最初に弾が当たった時の驚いた表情といったら傑作だったな。」グヒ

ル級「えぇ、なかなか。」クフフ


ル級「ところで一緒にいた仲間は逃がして本当に宜しかったのですか?」

レ級「ル級は美味しい食べ物は一気に食べてしまう方?」

ル級「はぁ。」

レ級「私はね。美味しいものは複数回に分けて食べるほう。」

レ級「楽しみは多いほうがいい。」

レ級「特に極上な獲物はよく味わって絶望って味がよーく廻っている方が美味なの。」

レ級「そして復讐という調味料を加えて立ち向かってきた塵を踏み潰すのってもう最高。」

レ級「濡れるわ。」

ル級「ドドMですねぇ。」

レ級「それはそうと獲物を倒したトロフィーになりそうなものなにかないかねぇ。」ギヒ

レ級「夜になって暗い所為か見にくいねぇ。」


ル級「・・・、襟巻が浮いてますね。」

レ級「おっ、本当だ。あぁ、狙撃するときの目標にしてた奴だ。」

ル級「明るい色で目立ちましたからね。」

レ級「制服もオレンジ色で撃ってくださいと言わんばかりの色。」

ル級「やられない自信でもあったのでしょうか?」

レ級「それで殺されてたんじゃ世話ないでしょ。」ハハハ

ル級「確かにそうですね。」ハハハ

レ級「んー、いい感じの長さ。首に巻いて帰りますか。」

レ級「どう?似合ってる?」

ル級「今日の夕飯はレ級様のおごりという事で。」

レ級「沈めた貨物船から拾ったカップ麵でいい?」

ル級「もう少しましなものを・・・。」


戦艦の2人が川内の襟巻きをトロフィーとして持ち帰ろうと踵を返した時だった。

本日はここまでです

書き溜め分が終了です、明日にでも続きを更新できればと思います

お読みいただきありがとうございました

元ネタがハードボイルドっぽい?少なくとも1はハードボイルドっぽいと思っていますが

その雰囲気を出すのが難しいですね、はい

では、また明日の更新時に・・・、頑張りますです

イベも終了している為、遠征コレクション状態

再開いたします

お時間よろしければお読みください


ザバァッ!


レ級の背中にしがみ付く人影。



川内「あんたらが食う飯は黄泉戸喫だよ。」



海中から踊り出てレ級を羽交い絞めにする川内。



川内「あんたが首に巻いてる襟巻はあの世への餞別代りにくれてやる。しっかりと暖まるといいさ。」ニタァ



カチン!

金属特有の擦り合わさる音が夜の海に冷たく響き、ライターに火が燈された。

ゴゥ



レ級 あぁぁあああぁああ!!!

ル級「レ級さま!?」



川内が手に持ったライターからの火が襟巻に燃え移りレ級の顔面を焼き視界と顔面周囲の酸素を奪い赤々と闇夜を紅に染めゆく。


川内「あぁ、綺麗だねぇ。」


レ級「息が出来ない!あつい!あついぃ!!」

ル級「くそ!この死にぞこないが!レ級様から離れろ!」



レ級に密着しているため主砲を撃ち川内を撃沈させる事も叶わず必死に素手で川内を引き離そうとするル級。



川内「離れる訳にはいかないねぇ。この火があんた達の黄泉路を照らす灯火になるんだからねぇ。」ニヤリ

ル級「はぁ?」

川内「理解する必要な無い。ここで死ねぇ!」



泰山鳴動。

いや、海上なだけに海峡鳴動といった所か。

川内達のいる辺りの空気を震わしその音、雷の如くと行進曲に謳われる程の砲声が響く。

鉄の城。

仇なす敵を攻め滅ぼす、その単純なまでの殺意と暴力がル級、レ級

そして川内のいる辺りに降り注ぐ。

砲弾、砲弾、砲弾。

そしてありったけの魚雷。

それはさながら真夏のスコールの如く。


川内「この篝火はあんた達をあの世へ送るためのもんだ。」

川内「遠慮するなよ?私の仲間の砲弾と魚雷、たっぷりとくらいな!」

ル級「馬鹿な!?貴様、自分もろともだと!?」

レ級「離せぇまだまだ死にたくない!」



襟巻の火がまだ燃え盛る中必死の懇願を始めるレ級。



川内「あんたもそう言って懇願して来た相手を今まで殺して来たんだろ?」

川内「今度は自分の番だ。最期くらい笑えよ。」



なおも砲声は続き、雨霰と砲弾は降り注ぎ魚雷は隙間無く走ってくる。



川内「さぁ、共に黄泉路を逝こうじゃないか。」



すでにル級は沈んだようである。

川内が自分の艤装の砲身をレ級に向ける間も絶え間なく砲弾は降り続く。


川内「あんたは流石に硬いねぇ。」



口唇を吊り上げニタニタと笑いながら川内が言葉を続ける。



川内「それにしても、砲弾、魚雷のバーゲンセールじゃないか。」

川内「私の砲弾は安くしてあげられないけどねぇ。」ニタァ



レ級の顔に砲口をピタリと付けての接射。



川内「砲弾の領収、宛名は閻魔で宜しく。お代はあんたの命で勘弁しといてあげるよ。」



満面の笑みを浮かべ主砲を撃つ。

ドンと鈍い砲声一つ。



レ級「あぁああああ!」



声にもならない呻きをあげ終わったかと同時か。

レ級の頭が砲撃による衝撃で大きく後ろに仰け反った。



川内「漫画みたいに弾け飛ばないんだね。まぁ、戦艦に軽巡の主砲じゃねぇ。」

川内「戦車に豆鉄砲みたいなもんか。」

川内「あんたが今まで殺して来た私の仲間達に宜しく。」


ブスブスブス。ボフッ。

海中に身を潜め、長門や摩耶といった重量級の砲撃を受け。

駆逐艦達の魚雷を受け。

青息吐息の状態だった機関も完全に停止した。



川内「無茶しすぎたか。」



沈降していく体。

脳裏に浮かぶは嘗ての僚艦。

妹達の懐かしい顔ぶれ。



川内「んー、これが噂に聞くあの世という奴?」

川内「聞きしに勝る殺風景だねぇ。」

神通「姉さん。まだ、こちらに来るときではないかと?」

那珂「もー、川内ちゃんはまだこっちに来る時じゃないんだからね!」

川内「えー。」

川内「ウエルカムティーとかないの?」

那珂「ウエルカムしないよ?」

神通「応急修理要員を積んでいるのでしょう?さぁ、みんなが待っていますよ。」

那珂「そうそう。早く帰らなきゃ!」

那珂「川内ちゃんは向こう!回れ右!」


トンと記憶の中の二人に背中を押され・・・。


コポコポコポ。

コポコポ。


目を開けると、服を引っ張る者の姿と水上への浮揚感。


ザバァ。


伊58「時雨!見つけたでち!」

伊58「ダメコンのお陰で一命を取り留めてるでち!」

時雨「ありがとうゴーヤ!」

伊58「べっ別に時雨の為にやった訳じゃないでち。」

伊58「この間の借りを返しただけでち。かっ、勘違いしないで欲しいでち!」

伊8「ツンデレ?」

長門「むぅ。意識が戻ってないな。よし。ここは一発。」



腰を落とし正拳突きの構えを取る長門。



グラ「待て待て止めを刺す気か?」

川内「痛そうだからやめて。」

摩耶「おっ。戻ってきたか。」

雪風「川内さん。こういうのはこれっきりにして下さい。」

雪風「味方に弾を撃つのは例え必要であったとしても後味が良くありません。」

雪風「撃つ側の気持ちをしっかりと考えて下さい。」

時雨「・・・、そうだね。川内は目印となる明かりを点けた後は逃げたとばかり思っていたよ。」



周囲を見回せば死線を共に潜り抜けた仲間の顔。


長門「まったく。相手を羽交い絞めにして動きを止めるとは無茶をする。」

時雨「じゃ、みんな今日のMVPを曳航して帰ろう!」

長門「そうだな!」



めいめいが自身の艤装から曳航索を取り出し川内にかけて行く。



川内「まってまって、長門。首にロープ掛かってる。」

川内「時雨はなんで右腕なのさ。雪風は左腕だし。」

川内「ちょっと、足も右と左でなんで分かれるのよ。」

川内「摩耶はなんてとこに引っ掛けてるのさ。」

伊58「あっ、これ古代中国の処刑方法で見たことあるでち。」

伊13「・・・、車裂きの刑でしょうか・・・。」

伊8「川内さんが自分の命を軽んじた行動をとったことに対する無言の怒りという奴なのでしょうね。」

長門「よし!せーので引っ張るぞ!」

一同「「「「「「せーの!」」」」」」

川内「いやぁ―――――!」





スッポ――――――ン!




っと小気味良い音と表現するに相応しいような、そんな音がして皆が括った曳航索がすっぽ抜ける。



長門「あっはっは!見ろ、川内のあの間抜け顔!」

時雨「ふふふ。」

雪風「実にいい顔です!」

グラ「まっ、これに懲りたら自分の命をもっと大事に扱うんだな。」ハハハ

伊8「そうでち、命は大事に使えば一生使えるでち。」

摩耶「じゃっ。帰るとしますか。」



ひとしきり笑った後に帰るべく鎮守府へと進行方向を向ける一同。



川内「あれ、ちょっと。私、動けないんだけど。」

川内「誰か引っ張ってよ―――!」

川内「ひっぱってよぉ―――――!」


いつの間に不知火がと思ったらめいめいでした


鎮守府修理ドック


明石「お疲れさまです。川内さん、派手に壊しましたねー。」

川内「んなぁ―――――!!!」

明石「まぁ、ねぇ?改造がっつりしてましたからね。」

明石「普通の娘の艤装と同じ機能でよければ桁が一つ減りますけど。」



修理の見積書を持ってきた明石に本当なのこれ?と目で訴えかける川内。



明石「残念ながら。」

川内「超赤字だぁ・・・。」



修理用入渠ドック内で項垂れぷかぷかと浮かぶ。



明石「ご愁傷様です。」(合掌)

明石「で、見積もり通りでいいんですかね?」

川内「お願いします・・・・・。」



コツコツコツ。

靴音を立てながら一人の男が明石と入れ替えでやってくる。


提督「川内。お疲れだったな。」

川内「傷心のあたしに話しかけないで・・・・。」プカプカ

提督「お金の必要な川内に朗報を持って来たんだが?」

川内「えっ!?何?!」

提督「お前が倒した国際コードネーム『 レ級 』な。

   あれの残骸をゴーヤ達が持って帰ってきて、それを検分した結果。名前付、ネームド個体だったんだ。」

川内「ネームド。」

提督「あぁ、お前なら知ってるだろ。スナイパー連中の頭。ホークアイと呼ばれていた奴でな賞金首だ。」

提督「昔に日本近海でえぐいやり方で鎮守府潰しをやって海軍に懸賞金、

   まぁ普通の鎮守府だと特別戦果みたいな扱いになるわけだが、まぁ、それはいい。」

提督「そんな訳であいつを倒した奴に多額の金が支払われる。米軍側からの懸賞金もかけられていてな、かなりの額だ。」

川内「なんで米軍?」

提督「日本から離れてほとぼり冷ましてる間に大西洋側で暴れていたらしい。」

提督「そのおかげか撃沈したって連絡したら喜んだ向こうの海軍総司令官からの祝電も来てるぞ。」

川内「鼻紙にもなりゃしない。それに懐も暖まらない紙なんていらない。」

提督「酷いいいようだな。」

提督「言わんとすることは分かるがな。ここじゃ名誉や名声は意味の無いものだからな・・・。」


川内「ていうか今気付いたけど提督、私、裸なんだけど?」

提督「服着たまま入渠(風呂)入る奴っているのか?」

川内「いやそういう意味じゃなくて。」

提督「川内がいい女なのは認めるが俺が男として役勃起ずなのは知ってるだろ。」

川内「まぁ・・・。」

提督「まっ、恥じらいがあることはいい事だ。

   女は恥じらいのある方がより色気がある。」

提督「恥じらいの忘れた女なんぞひでぇもんだ。まったく。」

提督「でだ、懸賞金はどうするよ。一緒に出撃していた連中にも聞いて回ったが全員川内にくれてやるってよ。」

川内「本当!?」

提督「あぁ、艤装の修理代金でスカンピンになってるだろうからだとさ。」

提督「日米双方合計で150万だ。大事に使え。」

川内「じゃぁ、当面の生活費と弾薬とかの購入費で10万残して

   後はいつも通りに振込みを不知火にお願いして貰っていい?」

提督「・・・・、遺族への仕送りでいいんだな?」

川内「なんだ知ってたの。」

提督「俺が決済の処理してんだぞ?」

川内「それもそうか。知ってて当たり前だよね。」

川内「初めに所属した鎮守府でさ。姉妹って事で一緒に戦った娘達にもやっぱり家族はいるわけでさ。」

川内「食っていく為に志願して、あっさりおっ死んでさ。遺族年金なんか雀の涙。」

提督「・・・・。」

川内「それ以外にもさ、みーんな、みーんな食っていくのが厳しくて志願したのに

   あっさりとあの世に先に行くしさ。家族が待っているってのにさ――。」

提督「・・・・。」

川内「提督。後は宜しくね。」

提督「ん。」

提督「でだ、川内。お前、ライター返せや。」

川内「ごめん。海で失くした。」

提督 ハァー・・・・

提督「仕方ねぇ。本気で禁煙考えるか。」

提督「じゃ、まっ、そういう事だからゆっくり風呂に入ってろ。」



そういい残し立ち去ろうとする提督。



川内「提督待った!」

提督「ん?」

川内「ただいま、提督!」

提督 フン。

提督「おかえり、川内。」ニヤリ


以上で本日分の更新と第五話が終了です

イチャコラでもなければギャグコメディでもない、最近のSS需要に真逆をいっています

そんなSSですがよろしければこれからもお付き合いよろしくお願いいたします

いただいている乙レス、感想は目を通しております

いつもありがとうございます、では、また次回の更新時に

おつ
150万ドルか
当然とはいえ相当恨み買ってる個体だったんだな

ゼロ距離射撃じゃなく、接射って書いてくれたことに
喜びを感じてしまふけふこの頃

おつおつ
いい女だなあw

>>111
そんな貴方に私の主砲で接射ならぬ顔射をしてあげよう

88だけじゃないな。
プリズンレディとかも紛れてる。

読み返しとくか・・・

だいぶ間が空きましたことをお詫びいたします

7割くらい書いててちゃぶ台返し、はい、アホです

>114 新谷先生の割と最近?かな?

ご指摘の様に『 RAISE~レイズ 』が結構含まれてます

おっさんがおっさんしてていい漫画です、打ち切りっぽい最後ながらきれいにまとまってました

では、更新させていただきます、お時間よろしければお付き合いください


第六話 英雄の条件 前編


横須賀 海軍艦隊司令部

「あぁ、良く来たね。まぁ、座ってくれ。」

提督「長官からの呼び出しとあれば応じない訳にもいきませんので。」

長官「大佐。どうだね。また司令部に戻って来ないか?」

提督「長官。自分は司令部を追い出された身です。椅子磨きの話しでしたら他の方が宜しいかと。」

提督「便宜上、提督を名乗っていますが実質は88鎮守府の守衛みたいなもんです。」

長官「君は変わらんな。」

長官「例の時だって私に頼めばどうとでも出来ていた物を。」

提督「自分のした事に責任を持つことくらいは社会に出たての洟垂れでもやる事ですよ。」

提督「長官のお手を煩わせる事ではありません。」

提督「それより、本日呼び出した本題に移っていただきたいのですが。」

長官「あぁ、そうだな。年を取るとどうにもな。すまない。」

長官「今度大規模掃討作戦が行われる。そこに君の所から護衛を出してもらいたいんだ。」

提督「護衛・・・・、ですか。」

長官「あぁ。護衛だ。」

重々しく提督の言葉を繰り返す長官。

やや間が空き、提督が質問を切り出す。


提督「英雄でも作るおつもりですか?」

長官「君は察しが良くて助かるよ。」

長官「長きに渡る深海棲艦との戦いで国家は疲弊している。さらに戦況は一進一退。」

長官「明るいニュースが欲しくなるというものでね。」

提督「高度な政治判断という奴ですか。」

長官「戦果を水増しして大戦果などどやるよりはましだろう?」

提督「それはまぁ、そうですね。」

長官「今度の掃討作戦に出撃予定の娘達の中に大規模作戦参加20回になる娘がいるんだ。」

提督「ほう。叙勲ものですな。」

長官「あぁ。大規模作戦に複数回参加ともなると多くの艦娘が沈むか復帰不能な怪我による退役がざらだ。」

長官「軍に入って5回も参加し生還できればベテランと呼ばれる有様。」

長官「内規で20回参加して生還すれば多額の恩給を手にし

   除隊する権利を与えるとされるが今まで手にした者などおらんしな。」

提督「画餅ですな。」

長官「だけに久しぶりの明るいニュースという奴だ。」

長官「政治屋のつらい所は国民に夢を見させてやらないといけないという奴でね。」

長官「国民に夢を見させる事が出来ない政治は先が無いからな。」

提督「 『 夢 』ですか・・・。」

長官「あぁ。夢だよ。」

提督「・・・・、政治屋が絡む話しですか。」

長官「我が国は文民統制を謳っているからね。」

長官「今の政権は良くやってくれてるよ。」

長官「英雄の誕生は首相閣下のお望みだよ。」


提督「この作戦の立案は。」

長官「お飾り元帥殿の腰巾着連中だ。だけに参加して欲しくはなかったのだがね。」

長官「軍令部の無能な働き者達の立案だ。」

提督「長官の心中お察しします・・・・。」

長官「君には苦労をかける。」

ガチャッ。

大淀「司令長官。御指示いただいていました分の資料を持ってまいりました。」

大淀「と。これは大佐。お久しぶりです。」

提督「今はただの牢番ですよ。敬語を使っていただかなくても結構ですよ。」

大淀「そういう訳には・・・。」

やれやれと肩をすくめる提督。

大淀「こちらが護衛対象の資料になります。」

提督「拝見させていただきます。」

パラパラと資料を捲る提督。


提督「・・・・・、失礼ですが長官。これは?」

長官「君に隠せるものではないと思っていたがやはり分かるかね。」

長官「所属鎮守府が極小規模ならではのイタズラといえなくないかね?」

提督「実に幸運を持っていると言えますが・・・。」

長官「実力がな。」

長官「なればこそ君の所の精鋭に護衛を頼みたいのだよ。」

提督「仕事、ですか。」

長官「あぁ、一応報酬として100万。服役囚の娘には10年分の刑期短縮を用意している。」

提督「あー・・・、支払いは円ではなくドルで願いたいですね。」

提督「後、刑期短縮の書類については海軍大臣の署名入りでお願いしたいです。」

長官「そうだったな。君の鎮守府のある所は円の威光が弱かったな。」

提督「紙くずとまではいきませんがやはり通用するのはドルですね。」

長官「国力の差は如何ともし難いな。」

提督「地力が違いますから。」

長官「全てにおいて乏しい我が国が体裁を保てるのも御威光のお陰だからな。」


皮肉とも自嘲ともとれる言葉を紡ぐ長官。


長官「では頼む。」

提督「了解しました。」

提督「では、私は鎮守府へ戻ります。」


バタム。

艦隊司令長官室の重厚なドアを閉め提督は帰っていった。


大淀「随分と安上がりですね。」

長官「嫌味を言ってくれる。」

大淀「大佐に随分な無茶振りと思いますが。」

長官「大佐は仕事といっていただろ?」

大淀「ええ。」

長官「任務と言わずに仕事と言い切る。真面目な奴だよ。」

長官「彼がもう少し出世や名声に興味を持っていたならあの地には居なかっただろうに。」

長官「つくづく惜しい男だよ。」


88鎮守府執務室


長門「それで私に旗艦をやってくれと?」

提督「あぁ。旗艦経験、鎮守府内での人望、艦種、戦闘経験。」

提督「それらを考慮して任せられる人材は長門しかいないと思ってね。」

長門「まったく実に貧乏籤を引いてくれる。」

提督「敵を殺す事に長けた奴なら味方を生かすための心得にも長けているだろ?」

提督「私が長門に用意してやれるのは刑期の短縮だ。

   後はそうだな、必要な物が有れば明石に言ってくれ。代金に関しては海軍が持とう。」

長門「ほう。そういう気前の良いことを言っていいのか?」

長門「私が関係ないものまで買い込むかも知れんぞ?」

提督 フン。

提督「お前がそういう事はしないと分かっているから自由にさせるんだ。」

提督「メンバーについては不知火に連絡をしておいてくれ。」

提督「頼んだぞ。長門。」

長門「提督の頼みとあればな。仕方ないか。」フン

提督「すまん。」

長門「いいさ。この作戦が終わったら付き合ってくれ。」

長門「いっぱい奢れ。」

手で酒を飲むしぐさをする長門。

提督「俺は弱いぞ?」

長門「いいさ、とにかく付き合え。酌くらいは出来るだろ?」


頭をかき。


提督「分かったよ。」


鎮守府会議室


時雨「それで僕等に用っていうのは?」

長門「これを見て貰えないだろうか?」


いつものメンバーに渡すのは提督から預かった資料。


長門「必要な物については海軍がその費用を負担してくれるそうだ。」

摩耶「えらくまぁ、幸運?と言っていいのかこれ?」

摩耶「ひよっこの引率はちょっとなぁ・・・。」

川内「私は降りるよ。割りに合わなさ過ぎる。」

川内「報酬だって1万じゃ命を賭けるには安すぎる。」

長門「時雨は?」

時雨「刑期短縮っていうのは魅力的だね。」

時雨「でも、僕の普段の稼ぎから考えればわざわざ危ない橋を渡る必要性なんてないかな。」

雪風「幾らなんでもここの相場を知らない人間が設定したとしか思えませんね。」

グラ「検討に値しない物だな。」


三者三様、十人十色、全員がそれぞれに色々と意見を述べる。

しかし、その結論は。

受けるに値しない仕事。


時雨「長門はどうしてこれを受けようと思ったんだい?」

長門「そうだな。提督から言われた『 英雄 』と言う言葉に思う所があったからかな。」

摩耶「『 英雄 』ねぇ。」

長門「あぁ、昔に私がなれなかったものさ。」

長門「いや、なることを拒否したが正しいかな。」

摩耶「へぇ、姐さんにそんな過去がねぇ。」

長門「フッ。つまらん話しさ。気心の知れた仲間達と、と思ったが、他をあたろう。」


そう言い長門が会議室を出て行こうとする。


川内「長門。」

長門「ん?どうした川内?」

川内「長門がこだわる理由が其処にはあるんだね?」

長門「あぁ、まぁな。」

川内「ちょっと、屈んで。」

長門「?」

長門「!?」

長門「せっせんだい!?」(裏声)

川内「ふふ。まぁ、この間の借りもあるし報酬で足りない分についてはこれで勘弁してあげる。」

川内「慌てふためく顔。可愛いよ。」フフ

川内「じゃ、明石に必要な物を注文に行って来る。」


摩耶「姐さんもそんな顔するんだねぇ。」

摩耶「顔を真っ赤にしちゃって。乙女だねぇ。」ハハ

摩耶「この仕事が終わったら一杯奢ってくれよ。」

摩耶「あたしはそれでいいさ。」


川内の後に摩耶が続く。


グラ「シュタインベルガーだ。」

長門「・・・・・ワインのか?」

グラ「トロッケン以外は認めん。」

長門「分かった。」

グラ「Sehr gut では、私も明石の所に必要装備を注文に行くとしよう。」

時雨「長門。」

時雨「差し支えのない範囲でいいけど話してもらえるかい?」

長門「そうだな。仕事が終わってからでもいいか?」

時雨「勿論だよ。引き換えに受けようじゃないか。」

長門「分かった。約束しよう。」

雪風「艦隊名は『 雪風さんと愉快な仲間達 』で頼みます。」

長門「あぁ。その名前で届けておこう。」

雪風「では雪風も買い物へ行って来ます。」


明石の工廠兼酒保


明石「毎度ありがとうございますぅ。」ホクホク

明石「なんでしたらもっと買って下さっていいんですよ?」ニコニコ

長門「他人の財布だからといって無茶をするような奴は非常識だと思うぞ。」

長門「提督に無茶は言えんさ。」

明石「にしても皆さん色々特殊な物を注文してますよ。」

明石「川内さんは焼き討ちでもするつもりですかね。」

長門「織田信長じゃあるまいに。」

明石「アーチーチーアーチー。」

長門「燃えてるんだ廊下?」

明石「まぁ、それは置いといて。取り扱いは何でもありなのが明石商店なんですけどね。」

グラ「私の注文も頼む。」

長門「伯爵は何を頼むつもりだ?」

グラ「艦載機に積む煙幕弾だ。」

長門「また随分特殊な物だな。明石、取り寄せ可能なのか?」

明石「もっちろん。お金さえいただければクレムリン宮殿だって引っ張ってきてみせますよ。」

長門「そいつは頼もしい。」

長門「間に合うかな?」

明石「えぇ、問題なく。」

長門「そうか。では、お願いする。」

明石「でも、本当にいいんですかね?結構な金額いってますけど。」

長門「あぁ、必要な物だ。全てな。」

明石「まっ、何にどう使うかは深く聞かない事にしますよ。」

明石「経過がどうあれ最終的には敵を殺す事に違いはないですから。」

明石「皆さんが必要という以上は私は全力で揃えるだけですよ。」


そういい残し明石は山と形容した方がいいであろう注文伝票の束を抱え去っていった。


作戦決行前日

摩耶「一旦横須賀に集合してそこからよそ様の艦隊と組んで出撃ねぇ――。」

摩耶「提督から横須賀で1泊してくれとホテルのクーポン渡されたよ。」ッタク

長門「海軍関係者の泊まる所だからな。夜遊びは駄目だぞ。」

川内「何?摩耶は遠足のしおりに目を通してなかったの?」

時雨「おやつは5ドルまでだよ?」

雪風「バナナはおやつに入りますでしょうか?」

グラ「ふむ。バナナは主食だな。つまりお弁当の扱いだ。」

グラ「だが、揚げてしまうとバナナチップになるからお菓子、つまりおやつになるな。」

グラ「雪風、注意が必要だぞ。」

長門「こらこら。皆ふざけて無いでしっかりしてくれ。」

長門「横須賀についてからの事もあるから話しを先にしておくぞ。」


そして、作戦決行日を迎える。


横須賀艦隊司令部 出撃ドック近く海上


長門「我々はここで待機だ。」

川内「まぁ、こういう扱いは分かってたけどなんというかねぇ。」

摩耶「日陰者だから仕方ないさねぇ。」


一行は各鎮守府から集められた『 精鋭 』達とは別場所で待機させられていた。


時雨「出陣式か。」

雪風「打ち、勝つ、喜ぶ。で、打鮑、かち栗、昆布を食べるんですよ。」

グラ「日本の伝統的風習という奴か。」

長門「司令長官の話が終わったようだな。後は全員が出撃ドックからの出撃と言う奴だ。」

グラ「色々面倒なのだな。」

長門「日本人は形式に拘る民族だからな。験担ぎには拘るのさ。」

グラ「ふむ。」




「では、最後に音楽隊の音楽で盛大に見送りましょう!」

「音楽隊が演奏する曲はこの曲。」

「行進曲『 軍艦 』!」




トランペットの音に始まる金管楽器特有の甲高い音声にあわせ

太鼓やクラリネットといった各種楽器が一斉に演奏を始める。

聞きなれた行進曲。

その歌詞は国を守ることを誓い、国を守る為に殉ずる。

武人として防人としての心である。


長門「さてと、仕事の時間だ。」


旗艦である長門がそう呟くと彼女の仲間達はそれに同意するかのように頷くのだった。


何処かの海上


「日本近海に展開中の潜水艦部隊による哨戒網に敵艦娘の艦隊がかかりました。」

「向かっている方向と艦隊の規模は連絡来ているかしら?」

「連絡によると一旦大規模艦隊が北へ進路をとったそうです。戦艦棲姫様、如何しましょう。」

「そうね。十中八九、偽の進路でしょうね。途中で進路変更を行うに決まっているわ。」

「といっても艦娘の艦隊を差し向けるにあたって戦略的に重要な拠点は今、私達がいる場所が一番でしょうね。」

「ここがですか。」

「えぇ、現状を正しく分析するのであれば此処は敵にとって取っておきたい拠点となるわ。」

「あなたがこっちに遊びに来たのもその辺りをかぎつけたからでしょ?重巡棲姫。」

「まぁね。」

「私の旗下で動くのなら補給その他は保障するけど?」

「姫の名を冠する者は艦種の違いは有れど同格。」

「だったわね。いいわ。お互いに干渉なく自由に動きましょう?」

「じゃぁ、お互いに恨みっこ無しという事で。」

「えぇ、せいぜい私に戦功をとられないようにがんばることね。」

「その言葉、熨斗付けて返すよ。」

「それにしても・・・・。」



戦艦棲姫は一人胸中で考える。


(作戦参謀でも変わったのかしらね?無理をしてとるには敵に犠牲が多くなると思うのだけど。)

(私達からすれば失ったところで再度の奪還も容易いのに。)

(まぁ、愚かしくも攻めてくるというなら相手してあげるだけだわ。)

(他の姫達との会合でも一時的に失っても問題ないとされているし・・・・。気楽な防衛戦ね。)



戦艦棲姫は楽な防衛戦と考える、必要とあらば放棄も認められている。

適当に相手して敵を痛めつける、そして旗色が悪くなれば逃げればいい。

めんどうは重巡棲姫に押し付けて。

それを考えると鼻歌が出て海上でスキップすらしたくなる程であった。

こうして二人の姫が敵を迎え撃つべく動き始めていた。

今回の更新はこれにて終了です、イチャコラも無ければエロもなし

最近のSS需要の真逆を行き、1ことバスクリンが好きに書いてるこの作品をお読みいただいありがとうございます

乙レス、感想レス、励みになっています、本当に感謝です

このSSまとめに載ると中二とかつまらんとか言われるんだろうなぁと考えながら書いております

えぇ、中二なんて自覚してます、はい、次回も宜しければお付き合いください・・・・

おつおつ
十分面白いし、ああいう論評気取りは気にせず思う存分書けばいいかとw

RAISEベースの方がメインキャストに犠牲者が少ないからいいな。

88ベースになってしまうと時雨以外轟沈するしかないww

ただ、シュタインベルガーはよくない、絶対ww


次回で長門のお話しは終われると思います。

第七話 英雄の条件 中編




「司令官~。助けてぇ くだっ ヒック うェエ――――ん。」

川内「泣くな!泣く暇あれば回避行動をしろ!」



ちっちゃなちっちゃな鎮守府。

与えられる任務といえば本土近海の哨戒任務。

「司令官!一緒に頑張っていきましょう!」

初期艦として配属され鎮守府の最高責任者である司令官と二人三脚で。

戦功を挙げていけば当然の様に更なる戦果を求められる。

無情な戦時体制化の常というのを理解していた司令官は

『 ほどほど 』と言う言葉をしっかりと理解していた。

だから鎮守府の規模が大きくなることはなかったが最前線に叩き込まれるという事はなかった。

そしてその『 ほどほど 』を体現する為に大規模作戦にも一応の参加はさせられていた。

鎮守府の規模に合わせて行われる強制徴募。

自己の鎮守府では最先任かつ錬度最高という事で自分が参加していた。

重量艦隊、横綱級、煌びやかとか豪壮華麗とか。

とにかくそういった美辞麗句が似合う精鋭達が道を作り舗装された安全な道を通って。

効率性と言うものを良く理解したパッケージサイズに纏められた物資を運ぶ輸送部隊に参加。

これが彼女、吹雪が今まで参加して見知った大規模作戦なのだ。


敵はまず出てくることもなく哨戒も主に通商破壊目当ての潜水艦相手。

大型艦は味方の先行部隊や警戒部隊の戦艦や空母、重巡といった艦娘が始末してくれている。

だから、吹雪にとって本当の意味での戦場と言うのを味わうのは今回の大規模作戦が最初だった。。



吹雪「あっ、あぁっ、あぁああ!!」



簡単な輸送作戦に参加して予め決められた回数、それも今まで達成した者等いなかった大規模作戦参加20回。

それを達成して多額の恩給を貰って軍を退役して後は余生を過ごす。

いや、実家のある故郷へ帰って畑仕事や、早い話、家業の農家を継いでいい人見つけて、幸せな家庭を。

もしよければ司令官と。それは甘酸っぱい、少女の描く夢。

そんな夢を描いていたのに。


目の前に広がっているのは一緒に作戦参加した他の鎮守府艦娘達の凄惨な光景だった。

有る物は腕を失い、有る物は既に形がない。

多くはフレッシュミートパイになり海上を漂っている。

『 者 』が『 物 』へ変わる。

剣林弾雨、山屍血湖。

白が三に赤が七。

激しい砲戦の後、見渡す限りの周囲は敵味方双方の死体が浮かんでいる状況だった。

それでも自分が生きている事が出来るのは自分の存在を広告的に利用しようとした

艦隊司令部の偉い人が手配をしてくれた頼もしいボディガードのお陰だろう。



長門「吹雪。ほうけている暇はないぞ。」



ポンと肩を叩かれ顔を向ければ頼もしい戦艦の艦娘の姿。



摩耶「姐さん。やっぱまずった感じ?」

長門「まずるもなにも、なぁ。」



顎をしゃくるその方向には奮戦空しく骸と成り果てた自分以外の輸送任務に付いていた艦娘。



長門「襲撃して橋頭堡の確保と同時に揚陸作戦と言うのはまぁ、分からないではないのだがな。」

雪風「いかんせん敵の砲台に足が生えている事を失念でもしていたのかと問いただしたいですね。」



憤懣遣る方なし、雪風が憮然とした表情で告げる。

そうなのだ敵の陸上砲台には足があり何処へでも移動できる。



長門「上陸時までこちらへの砲撃が無いのを怪しまないのがそもそも危機感の欠如であろうよ。」

時雨「とは言っても敵の主力は引きつけて先行した艦隊が叩いてはいるんだろうけど。」

長門「そういえば。提督曰くここは戦略的に見れば重要拠点ではあるが

   現在構築できてる本土防衛線を崩してまで本来取りに来るべき地ではないそうだ。」

時雨「ここの重要性についての話しかな?」

長門「あぁ。作戦要綱の説明時にメリット、デメリットを教えてくれた。」

長門「付け加えるならデメリットが勝ると言っていたぞ。」

長門「はっきり言って状況は良くないな。」

吹雪「そっ、そんなにですか!?」

長門「そうだな。負け戦だ。」



凡そ躊躇われるであろう負けということをあっさりと認める長門。



時雨「じゃぁ、どうするかい?」

長門「尻に帆をかけて逃げるとしようか。」

摩耶「マラソンかい?」

長門「そうだなどちらかと言うなら鬼ごっこだな。」

雪風「捕まったが最後、罰ゲームが酷そうですね。」

長門「あぁ、その前にだ。伯爵、周囲の索敵状況を聞けるか。」

グラ「そうだな。悪い情報ならグロス単位で店開き出来るほどあるな。」

川内「あら、奥様聞きました?」

摩耶「えぇ。聞きましてよ?悪い情報のバーゲンセールですってよ?」

長門「それで、どんな状況なんだ?」

誰の目にもして負け戦と判じれるほどの危機的状況であるにも関わらずふざける余裕のある一同。

グラ「まぁ、その前に珈琲でも飲むことにしよう。」

吹雪「コっコーヒーィブレイクゥ?!」

吹雪が天を仰ぎ、あきれる様な頓狂な声をあげるのを余所にグラーフから珈琲を受け取る一同。


時雨「あぁ、流石だね。いい豆だ。」

吹雪「コーヒーなんて飲んでる場合じゃないでしょぉ!?」

長門「吹雪よ。戦闘経験が浅いのは分かるが鉄火場では冷静さを失ったものから命を落とすぞ。」

摩耶「そうそう。海底で魚の餌になりたくなければ少しは落ち着きなって。」



ほれと出される自分の分。

そのカップから立ち上る香りはとても芳醇で芳しく。



吹雪「美味しい。」

グラ「うむ。で、あろうな。」

満足げにうなずくグラーフ。

長門「さてと、落ち着いたところで状況整理だ。」

長門「幸いにして揚陸予定であった島側からの攻撃は現在沈黙している。」

雪風「陸からの砲撃が現状ない事を考えればを先行部隊が砲台を潰してくれてはいるようですね。」

長門「楽観は良くないがな。さて、伯爵、周囲の索敵状況、それから残存味方艦隊の状況を頼む。」

グラ「物資揚陸地点と決められた場所を中心として三方向から敵の艦隊が此方を包囲すべく進撃中。」

グラ「重ねていうならば進撃中の艦隊はバランスよく戦艦と空母が混ざっている。」

長門「ふむ。なかなか酷い状況だな。」

グラ「といっても最悪ではないな。周囲で統制を立て直しつつある味方艦隊と連絡を取ることは出来た。」

グラ「重傷者を抱えている艦隊とは連絡をとっていない。」

長門「成る程。いい知らせだ。」

吹雪「あの傷病者がいるのを放っていくんですか?」

川内「義理がない。」

摩耶「吹雪。気持ちは分かるけどあたしらには余裕が無いんだ。」

雪風「そうですね。現在の状況は既に撤退戦。敵は追撃、それも包囲殲滅戦になっています。」

雪風「傷病者。特に重傷者というのはここを抜けて帰り着いても再度の戦線復帰は厳しいでしょう。」

雪風「高速修復財が治せると言っても無いものを復活させる能力があるとは雪風は聞いた事が有りません。」

雪風「非常に遺憾ではありますが・・・・。」



臓腑から搾り出す。そんな表情を見せながら雪風が説明をする。

後方の輸送任務で安寧を浴してきた自分と比べその駆逐艦は、

陽炎型、その8番艦雪風はどれほどの修羅場を潜り抜けてきたのだろうか?

まさしく、無念。味方を見捨てざるを得ない状況に陥っていることへの怒り。

その双方が言葉に込められていた。



長門「無能な味方、特に上層部にそれが存在することは実に腹立たしいな。」

長門「とぼやいた所で始まらん。伯爵が接触してくれている味方と合流を急ごう。」

一同「了解。」


日向「いやぁ、敵包囲網の中にありながら

   コーヒーブレイクのお誘いを受けてどんな奴かと顔を拝みにくれば。」

日向「君か。」

長門「何処かで逢っていたかな?」

日向「一文字三星の毛利紋と白兎のファンネルマーク。」

長門の煙突に書かれる固有識別マークを指差しながら返答する日向。

日向「『火車曳兎』『業火雷槌』その武勇を称える二つ名に事欠かない有名人だ。」

日向「総じて共通するは万夫不倒、敵を殺す悪鬼羅刹の伝説。」

日向「昔の新人艦娘時代に聞いた英雄譚だが

   余りにむちゃくちゃな話過ぎてフーファイターか何かと思っていたよ。」


摩耶「ヒュウー。姉さんそんなにやばい伝説持ちなの?」

日向「あぁ、鉄底海峡作戦では探照灯で自身の位置をあえて知らせ

   敵を大量に引きつけ全滅させた戦闘狂と聞いている。」

長門「そうするしかなかったんだ。昔の話だ。」

日向「とはいえその後の活躍はまったく音沙汰無しだったのでね。

   流石に沈んだのかと思ったものだ。」

日向「それが、まさか、まさか。生きていたとは地獄に仏と言う奴だな。」

日向「呉軍管区第三鎮守府所属だ。私と空母が1名、駆逐が4名。世話になる。」

長門「外地鎮守府管理番号88所属だ。まぁ、よろしく頼む。」


握手をする二人。


日向「我々はそちらに対して経験が乏しい。総旗艦としての指揮はそちらにお願いしたい。」

長門「いいのか?我々が行く道は冥府魔道だぞ?」

日向「ここも地獄、そっちも地獄、なれば見知った顔がある方のがましだろ?」ニヤリ

長門「違いない。」ニヤリ



こうして長門達は合流した。


ル級「重巡棲姫様。まもなく包囲が完了します。」

重巡「戦艦は何て言ってる?」

ル級「島の裏側で万一に備えているので御自由にとの通信です。」

重巡「ふーん。戦果はこっちに譲ってくれるって訳か。ありがたいね。」

ル級「一気に攻め滅ぼしますか?」

重巡「悪くはないな。」

ル級「はぁ。」

重巡「今回、敵がこの地に突出してきてくれた御陰でね。

   敵がきっちりと敷いてた敵本土防御警戒線に穴が開いてるのよ。」


ル級「あぁ、増援が見込めないのですか。」

重巡「理解の早い部下は何にもまして有難いわね。」

重巡「敵がわざわざ親切にもあけてくれた穴を利用しない手はない訳でね。

   敵の本土進攻に向けていくつもの艦隊が動き始めている状態。」

ル級「終わった所には余力が有っても向けてはくれませんですよね。」

重巡「そういう事。なので残った手駒で追撃、戦果拡張をしないといけない。」

ル級「他所で火遊びをされるとこっちの薪が足りないという事ですか。」

重巡「そういう事。とりあえず、ここは私達が攻め勝ったと言えるかな。」

ル級「物量のごり押しでしたが・・・。」

重巡「まぁね。質的優勢は艦娘側だけど我々深海側は数量的優位に立てるからね。」

重巡「勝っている点で勝負をするのは自明の理でしょ?」

重巡「相手とのキルレシオが1対5で負けていても物量で押せるなら1の敵に10ぶつけてやればいい。」

重巡「単純に物量ですりつぶしてやればいい。」


ル級「次はどう動きます?」

重巡「そうだね。現状包囲網は完成しつつある。

   そして敵が取ろうとした島を囲むように三方向から包囲する形。」

重巡「敵が教科書通りに動くなら島へ上陸して防御拠点を作りストロングホールドかな。」

ル級「上陸ですか。」

重巡「対艦という事なら陸地から砲撃する方が命中率はいいんだ。」

重巡「海の上は波が有って揺れるから陸上の拠点は狙いにくくなる。

   対艦娘ということで海上ならお互いに直接射撃で狙えるけれど・・・。」

重巡「島に防御拠点でも作って遮蔽物に身を隠しながらこちらを砲撃という事になれば

   間接射撃になる分こちらからの命中率は落ちる。

   さらに敵からしてみれば救助が望めるならそうしたほうが生存率が高い。」

重巡「塹壕でも掘って砲身だけ此方に向ければ簡易トーチカみたいなものだな。」

ル級「上陸前に叩きますか?」

重巡「それが望ましいけれどこちらも敵の本土襲撃に向かわないといけないから

   あんまり手勢を減らすわけにはいかないのよ。」

ル級「では、敵を島に追いやって適当に艦砲射撃で戦果拡張して撤収ということですか。」

重巡「敵の救援部隊が来るまで敵を包囲、攻撃しましたという実績を作った後に撤収

   で、やることはやった言い訳は立つかな。」

重巡「追撃という意味ではバラバラの状態がやりやすいけど

   纏まってくれているほうが包囲はやりやすいから敵が島に上陸するまで放置でいい。」

ル級「島の砲台小鬼が沈黙させられたのが痛いですね。」

重巡「しょせんは使い捨てだから気にすることはないさね。

   残っていたところで上陸されれば瞬殺だろうしな。」

ル級「では全体に包囲の間隔を詰めて行きます。」

重巡「宜しく。」

重巡「包囲が完了したら適当に艦砲射撃で弾ばら撒いて撤収するよ。

   ヲ級の艦載機に攻撃させようにも茂みが多いようじゃ難しいだろうし。」

ル級「茂みを焼き払えるだけの弾薬も残ってませんしね。」

重巡「次のパーティーへのお誘いも来てるしな。」

ル級「了解です!」


島の裏側

タ級「撤収準備完了しました。」

戦艦「お疲れ様。最低限の艦隊だけ残して撤収するわよ。」

タ級「よろしいのですか?」

戦艦「救援が来るまで敵も島に篭るでしょう。」

戦艦「当然こちらとしても島に篭られるのが一番厄介よ。」

戦艦「だから、あなたが敵に上陸して篭らせてもいいのかと聞くのも分かるわ。」

戦艦「でも、今は島に篭ってくれた方がこちらもありがたいの。」

タ級「?」

戦艦「敵が島に篭って救援を待つというのが大事。」

戦艦「敵の大艦隊を今回ほぼ壊滅まで持っていったわね?」

タ級「そうなりますね。大戦果です。」

戦艦「えぇ、そうね。そして敵は今回ここへ進撃した為に本来の防御線に穴を開けてしまっているほど。」

タ級「救援の為に戦力を割けばより厳しくなることは分かりますが・・・。」

戦艦「そうね。助けにくるのか?と言いたいのでしょ?」

戦艦「救援に来ずに見捨てるのではないか。って。」

タ級「はい。」

戦艦「その考えは私達から見れば至極当然よ。

   でもね。軍隊という組織の中でそれをやっちゃまずいのよ。」

タ級「不味いのですか。」


自分達との考え方の違いに驚きつつも返答するタ級。


戦艦「えぇ、最低限、救援に向かったくらいのポーズはとっておかないとまずいわ?」

戦艦「ここに進撃して来た娘達は上の命令で向かってきたの。

   馬鹿の独断専行や勝手な進軍とかではなく。

   上が立案した勝ち目が薄い戦いを忠実に実行する為にね。」

タ級「結果はご覧の有様ですが。」

戦艦「だけにね、上が見捨てると他で同じような事になったときに

   今度は自分達が見捨てられるんじゃないかって思う兵士が出るわ。」

タ級「恐怖の伝染ですか。」

戦艦「上が信用ならないと思われた軍組織というのは脆いものよ。」

戦艦「だけに形だけでも救援のポーズは必要なの。

   今回の様に上の指示を忠実に守った兵士を相手にした場合はね。」

タ級「救援に来る様な事になりますと敵の防衛線の穴が広がりますね。」

戦艦「そう、それが狙い目な訳よ。重巡もそのギリギリラインまで包囲をして相手することでしょう。」

戦艦「私達にも召集がかかっているからこの地にあまり長く留まれないし。」

戦艦「敵がくれたチャンスは生かさないと。」

タ級「残していく戦力は最低限で宜しいのですか?」

戦艦「よっぽどの馬鹿でなければ島に篭るのが正解よ。」

戦艦「島の裏側に抜けて脱出を図るかもしれないけれど敵もそれなりに消耗しているに間違いないわ。」

戦艦「だから島で救援を待つのが正しい状況よ。」

タ級「それもそうですね。」

戦艦「さ、ここは残留部隊に任せて私達は敵の本土攻撃部隊として移動するわよ?」

タ級「補給艦の要請をしておきます。」

戦艦「お願いね。」


戦艦「あっ、そうそう・・・。」

タ級「はい?」

戦艦「いえ、やっぱりいいわ。補給艦の要請の連絡だけお願いね。」

タ級「了解。」


何かを言いかけ止める戦艦棲姫。



(敵の方が質的には優位なのは今も変わらずなのよね。)

(熟練の艦娘の中には私達姫級に匹敵する強さをもつ者達も偶にいるけれど・・・。)

(質的優勢で数的劣勢を跳ね返せるものかしら?)

(私達の方が数的優位にあるとは言え勝負は最後の時まで分からないものよね・・・。)

(いえ、流石に無いわね。)



何かに思い至り頭を振る。



(そんな狂人な真似をするとは思えないわ。)

(敵は島に篭って救援を待つでしょう。きっと。)



戦艦棲姫はそう考え一抹の不安を否定し本土進攻へ向けて移動を開始したのだった。

本日分はこれにて終了です

次回は包囲網からの脱出編で長門のお話は終了です

どうやって包囲網を抜けるのか?

勘のいい方はまさかなと思われているのではないでしょうか?

たぶん、正解です。それについては自分が次回どれだけ格好よく書けるかの問題です

乙レス、感想レスいつもありがとうございます、励みになっております

また、前回の更新時に暖かいお言葉を掛けていただき本当に感謝しております

では、また次回の更新もご都合宜しければお付き合い下さい

まだ作品中にバスクリン出てきてないな

包囲網が完成されていたらアウトだが、まだ完成されていないなら自身の全戦力を特に敵の数が少ない一点に投入し、数で押しきる、のを繰り返す
というのは銀英伝であったけども・・・

おつおつ
フラグ建設への余念の無さよw

皆様、新年明けましておめでとうございます

大晦日にふと思い立ち二人目武蔵を狙うべく4/7/7/2/20で3連

えぇ、着てくれましたよ

大和が

未着任だったので嬉しさもひとしお、と、ともにあぁ、そういえばこの娘達、資源馬鹿食いだったなぁと

育成の為に演習に出したりで改めて再認識しております

とはいえコスト分だけ仕事してくれるんで文句は言えません

今回の更新はかなり長めですがお付き合いいただけると幸いです


第八話 英雄の条件 後編


温故知新。

その意味は古い昔の事象から新しき知識を得ること。

昔に起きた現象や事件といったものを研究、見直すことで今に役立つ新しい発見を得るといった意味合いである。

特に戦争という物はお互いの戦力や地理的要因等が複雑に絡み合うため戦史研究、

特に敗者の立場から勝利するための条件を考える事は参謀等の作戦立案に携わるものには必須である。

つまり負けない為にはどうするべきか?

軍神とか名将とか名軍師、そう言った誉れを得ている者達も常勝無敗だった訳ではない。

彼らとて負けたことはあるのだ。だからこそ、負けた戦から学ぶことは多いのである。

そんな中、戦後の深海棲艦達との海戦史研究において一つ、『 常人には理解不能 』とまで言わしめた海戦がある。

どれだけ当時の状況がつまびらかになろうと情報が増えるほどに

『 狂人集団の所業也 』と言われ深海棲艦との海戦史において参考にならないとされる。

それは負けていた戦。決着が既についていた海戦を最後の最後にちゃぶ台返し。

いや、どんでん返し、とにかく力技でひっくり返した、海戦なのだ。

戦術や戦略、そんなものは糞食らえの動きでもって勝利をもぎ取ったのである。

その稀有な、まったくもって有り得ない海戦の火蓋が今、まさに切って落とされる所であった。


長門「とりあえず周囲に残っている揚陸物資や

   浮かんでいる艦娘達の艤装から回収できる分の弾薬、燃料は回収しよう。」

吹雪「み、皆さん、本当にそんな事されるのですか!?」

時雨「・・・、環境に優しく有効活用・・・かな?」

雪風「リサイクルです。」



周囲には味方が揚陸作戦時に襲撃を受けたため放棄された燃料や弾薬がドラム缶、或いは木箱に入ったまま浮かんでいる。

また、当たり前ながらその活動を止めた艦娘達の死体も当然ながら波間に漂っている。



摩耶「沈んで魚の餌になる前に生きてる仲間の役に立てた方がこの娘達への手向けになるってもんだろ。」

川内「吹雪も集めてきなよ。後、これ、回収したら一人に付き3枚ずつ持たせてね。」



川内が投げてよこすは50円玉の棒金。



川内「一文は現代価値で約20円だってさ。150円持って行けば渡し賃には困らないでしょ。」



そして、敵の包囲網が完成しつつある中、一同は手早く手近な艦娘の残骸等から回収できる限りの弾薬と燃料を回収する。


日向「作戦の内容は聞いたがなんと言うか。」

摩耶「気にすんなって。これがあたしらの日常だからさ。」



こともなげに言う摩耶。



グラ「さぁて、こういうのは日本語でなんと言うのであったか?」

長門「あれだ、細工は流々。」

川内「仕上げはゆっくり。」

時雨「御覧じろ。だね。」

雪風「滾りますねぇ。」

日向「本当にいいのか?」

長門「後々を考えればこれが最適だ。」

日向「流石に踏んだ場数が違うか。」

日向「外地の鎮守府は猛者揃いと聞いていたが百聞は一見にしかず。」

日向「お手並み拝見と行こう。」



長門の提案に恭順する日向。


吹雪「あの、私はどうしましょうか・・・。」



おずおずと、声を掛けて来る吹雪。



雪風「腹を下すと分かっていながら泥水を啜った事はありますか?」

雪風「艦娘として生まれたにも関わらず塹壕の中で泥濘に沈んだことがありますか?」

雪風「砲撃能力しか残っておらず簡易砲台として海岸線を敵の上陸から塹壕の中で守ったことがありますか?」

時雨「雪風。」

雪風「目の前で死んでいく仲間に楽にする為だけに砲弾をくれてやったことがありますか?」

時雨「雪風!」



自分にも何か出来る事はないか。

そうためらいがちに聞く吹雪にきつい言葉を返す雪風。



時雨「ごめんよ。雪風の言葉に悪気はないんだ。」

時雨「ただ、雪風は未熟な艦娘が激戦地に放り込まれ何も出来ずに死ぬのを見送ってきた事が多いから・・・・。」



時雨はこれまでの付き合いで雪風が外地鎮守府に流れ着いた経緯を本人から聞いている。

それは筆舌に尽くしがたく。

そして、まさしく敵、味方、双方の血が川と成程の激戦地を渡り歩いてきたことも知っている。

だけに戦力として不安な吹雪が自分達の艦隊と同じような行動を取れないことは理解しているし

させることへの危険性も理解していた。

厳しい言葉で突き放しているがその本質は自分達と来る事は危険であるとの警告と優しさ。

吹雪「いえ、分かりました。」

時雨「ごめんよ。」


そして、彼女達は動き出した。

生き残る、そのたった一つの目的へ向けて。


深海棲艦サイド



ル級「まもなく包囲網が完成します。」

重巡「敵の動きは?」

ル級「残存艦隊の再編成と周囲の味方だった者達の遺品の回収を完了したようです。」

重巡「こっちがわざとに時間を与えた甲斐はあったかな?」

ル級「お優しすぎやしませんか?」

重巡「はは。まぁ、確かにね。だがまぁ、あれだよ。」

重巡「これからあの世に行く事が決まっている相手に最期の情けを掛けてやった所で罰は当たらないだろ?」

ル級「はぁ・・・。」

重巡「生きている間に功徳を積まないと。」



既に勝っている事から生まれた余裕。

そして重巡棲姫はここから戦局が万に一つもひっくり返される事が無いと確信していた。

だからこそ、彼女は包囲対象である長門達を敢えて好きに動かせたのだ。

さながら、象が蟻を踏み潰すように簡単に潰せる。そう考えたために。

そして、これが彼女の深海棲艦としての生を終わらせる事となるとは彼女はつゆとも思わなかっただろう。

いや、考える事が出来る者が居たとしたらそれは『 神 』と呼ばれる者くらいだろう。

これから彼女の身に降り掛かった事はそれ程の事だったのだ。


ル級「敵が動き出しました!」

重巡「おっ、バルサン炊き始めたな。」



もくもくと広がり始めるのは灰色の煙。



重巡「艦載機も使用しての煙幕展開か念のいったことだ。」

ル級「やはり上陸の瞬間が無防備になりますからね。」



そう、上陸というのはその瞬間が最も無防備になりやすい。

人類史上最大の上陸作戦と言われるかのノルマンディー上陸作戦でもその死亡者が集中したのは上陸時だったと言われる。



重巡「上陸時の隙を無くす為に煙幕たいてこっちからの砲撃時に目標を定めさせない積りなんだろ。」

重巡「基本に則った戦術だよ。」

ル級「にしては煙の量が多すぎやしませんか?」

重巡「けちって的になるよりかはましでしょ。」

ル級「こちらにも煙が流れてきていますが。」

重巡「包囲している艦隊全体が煙に覆われそうだな。」

重巡「一応全員に警戒の連絡をしておいて。」

ル級「了解です。」



包囲を行った艦隊が煙に包まれる。



重巡「さぁて、煙が晴れれば」

ル級「仕事ですね。」

重巡「あぁ、島に隠れた相手に砲弾を撃ち込むだけのお仕事だ。」ニタァ



敗北の危険とは勝利を確信したときが最も高いと言われる。

そう、重巡棲姫達はまさにこの瞬間、油断をしていたのだ。

それはこの包囲殲滅戦の前の戦闘で大勝をしていたから生まれた慢心でもあった。

その為、次の瞬間に入ってきた凶報への対応が一瞬遅れた。


ル級「右翼に敵襲!?」

重巡「はぁ?」



間の抜けた返事。

数で言っても倍と言わない、いや、7倍、8倍にもなる艦隊の数で包囲しているのだ。

いくら煙幕で視界を奪ったと言っても解囲目的で突っ込むのは自殺行為。



重巡「敵の艦娘共は気でも触れたか?!」



錯乱による突撃かと思うのも無理は無く。



重巡「いや、今は襲撃を受けた右翼の包囲網の建て直しが重要か・・。」

重巡「ル級。私達のいる中央から右翼へ部隊を回して敵襲撃部隊の殲滅を急げ!」



下される命令は至って教本通り。

襲撃を受けた方へ増援を回し包囲している敵が抜け出るのを防ぐ。

至って標準的かつ当たり前の対応である。

但し、敵が並みであれば・・・・・である。



重巡「煙幕の範囲から出て対応したほうがいいのだろうか?」



そんな事を考えている間にも情勢は一気に変化する。


ル級「敵の突入した艦隊が中央へ進行方向を変えてきています!」



混乱を伝える無線の中で敵の進行方向が変わった事を伝える知らせ。



重巡「はぁ?」



一瞬の間、そして敵の意図を理解する。



重巡「しまったぁ!!」



敵の襲撃にあった右翼へ支援艦隊を差し向けた矢先。

この瞬間で敵が進行方向を変える。

そうするとどうなるか?右翼への支援に向かわせた艦隊が完全に無駄になってしまうのだ。

そして、こちら中央の守りは当然減った部隊の分だけ薄くなる。



重巡「くそ!敵の位置が煙幕の所為で分からんぞ!」

ル級「電探が利きません!」

重巡「はぁ!?」



煙幕内を縦横無尽、それこそ荒野を駆けるようにこっちへ向かってきている敵がいるのだ。

視界が不良でも電探で味方を含めた艦の位置は調べられるはず。

お互いの位置が分かれば敵を迎え撃つための陣形を取れる。

そう思い周囲の仲間含めて電探の出力を最大にして位置の把握を行おうと指示をだしたのだが。

返ってきた返事は電探が故障でもしたのかと思うような台詞。


ヒュウゥゥ。  ペタ。



重巡「ちぃ!」



風が運んできた何かが顔にへばりつく。



重巡「たく!何が起きているっていうんだ!」



顔についたそれを鬱陶しいと毒づきながら剥がした時に彼女は気がついた。



重巡「これは!!」

重巡「ちくしょう!ちくしょう!奴ら!煙幕はこれを撒くための布石かよ!」

ル級「どうされました!?」

重巡「奴ら、煙幕に紛れて電波欺瞞紙(チャフ)をばら撒いてやがった!」



大戦中に日本海軍が実際に使用した大き目の模造紙に錫を塗り細かく刻んだ物ではなく、それは純粋にアルミの細片。

だけにその効果は非常に高く。



グラ「明石が深海連中の電探を解析して周波数に合わせたサイズにしてあるからな。」

グラ「敵の電探は真っ白であろうよ。」



そう、電探が利かなくなったのは煙幕をはった後にグラーフが艦載機で用意していたチャフをばら撒いた為である。


ル級「ですが、敵も電探が使えないのでは?」

重巡「馬鹿!敵は使う必要がないんだよ!」

重巡「敵がチャフを使うと分かってればヲ級の艦載機くらいは・・・、

   いや、煙幕の中じゃ結局意味がない。えぇい、くそぉ!!」



理解が早いと評したさっきまでの自分を殴りたい、重巡は本気でそう思った。



重巡「敵の方が数が少ないんだ!」



そう、敵の意図は明白。煙幕で直接的な視界を奪い、電波欺瞞紙で間接的な目を奪う。

更にそこに襲撃をかければどうなるか、その答えあわせを今まさに日向が行おうとしていた。



日向「吹雪、艦隊の中央へ寄ってくれ。長門からの預かり者だからな。」

日向「君に何かあれば長門に全てが終わった後に私が沈められてしまう。」

朝潮「日向さん!お預かりした発火装置のセット完了しました!」

大潮「もう少ししたら通って来た所に置いてきた燃料がドーンと行きます!」

荒潮「まったく持って大胆ねぇ。」

日向「まったくな。」

加賀「ですがこの作戦は考え付いても実行に移すには余程の酔狂か軍事の天才で無いと躊躇われるかと。」

日向「まったくだ。」

満潮「そろそろよ!全速全進!」



日向を旗艦に長門達が突っ込み空けた右翼の穴を脇目も振らずに前進する一同。

使用する武器は機銃と日向の刀。

そして煙幕を張る前に発艦させ唯真っ直ぐに飛ばし、艦隊に先行する加賀の艦載機による機銃支援である。

なるべく音を立てず、出くわす敵は切り伏せる。

逃げる敵は追わずただ突破を目指すのみ。


川内が朝潮達に渡したのは時限発火装置。それの目的は何か?

ドン!

ドラム缶に満杯にされた燃料が爆発する。その音はまるで砲撃音の如くである。



イ級1「!」

イ級2「!」



電波欺瞞紙でお互いの位置が分からない状態の中、敵が自分達包囲網の中に突っ込んで来ている。

そんな中で砲撃音がすれば?

敵が自分達の包囲網を抜けるために『 自分達に向けて砲撃を行った 』と誰しもが判断するだろう。

もしくは『 味方が敵を見つけ交戦に入った 』と。

朝潮達が仕掛けて爆発した燃料の爆発音を皮切りに始まったのは

お互いの姿と位置が確認できない状況下での深海棲艦同士の同士討ちである。

悲惨な事に右翼へは中央から増援が向けられていた。

その増援はこの様な状況にあっては『 突撃してきた敵の第二陣 』と思われても無理からぬ事である。

当然の如く交戦中の中に増援部隊も砲撃を行いながら突っ込んだため同士討ちは更に拡大していく。


重巡「くそぉ!奴ら数が少ないことを逆手に取りやがった!」



今だ、回復しない電探に毒づきつつ周囲の警戒を固めるべく動く重巡棲姫。

嘗てローマ帝国を手玉に取り幾度も勝利を収めた名将ハンニバルはこう格言を残している。

曰く『 視点を変えれば不可能が可能になる 』

絶対的に数が少ない不利な状況。

しかし、見方を変え強引に言ってしまえば一点突破を最も少ない被害で出来るとも言える。

歴史を紐解けばそれなりに例はあるが日本で最も有名な物はこれであろう。

戦国時代を終焉へと導いた決定的な戦い。その合戦名は『 関ヶ原 』。

徳川時代の到来を決定付けたあの戦いにて少数で行われた敵包囲網の一点突破。

一見して不可能のようだがそれをやってのけた武人の集団が居る。

そう、関ヶ原の戦いの鬼島津の退き口である。

その戦力差、敵8000に対し自軍300(軍勢の人数については諸説あり)

敵軍の主力包囲網に突っ込み、退却の為に単純に最短ルートであったからという理由で敵本陣のある中央への『 撤退 』

本来、安全地帯へと逃げる事を意味する『 撤退 』を

敵の主力へ本陣へ向け『 撤退 』し逃走に成功させるという無茶である。


重巡「あぁあああ!くそっ!くそっ!どうしてこうなった!」

ル級「右翼の状況がまったく不明です!」



未だ混乱の続く右翼。



重巡「ちくしょう!味方の被害を抑えるのが優先だ!敵の逃走は完全に無視しろ!敵に逃げられてもいい!」

重巡「右翼の砲撃を直ちに止めさせろ!」

ル級「はっ!直ちに連絡いたします!」



右翼の敵突破は完全無視。自軍の損耗を減らす、この時点では最良とまではいかなくとも最善の手。

しかし、重巡は失念していた、それだけ敵によってもたらされた混乱が大きかったとも言えるのだが。

そしてこれがこの艦娘達の解囲撤退戦に対する深海側の唯一の汚点にして最大の損失をもたらしたのだった。



重巡「敵にはなんて馬鹿げた作戦を立てる奴がいるんだ・・・。」

重巡「理屈でいけるかもしれないと思ってもそれを実行に移すほうも移すほうだ。」

重巡「正気の沙汰じゃない。」



自軍の建て直しの指示を出し状況整理の為に考え始めた重巡棲姫は失念していたある事を思い出し戦慄する。



重巡「中央へ突撃してきた敵艦隊はどこへ消えた?」



自身の頭の隅にはあった敵突撃部隊の突入という事象。

電探の無効化、それによる敵部隊の位置の把握が出来ていない。

考えるだけでこれ以上無い最悪の事態。

重巡棲姫は背中に冷たい物が流れるのを感じえずにはいられない。


長門「こういう時の挨拶はこんにちは?かな?」

ル級「!!」



ドズン。

煙の中からぬらりと現れる一団。一撃で沈められるル級。

そう、長門達はしたたかに狙っていたのだ。



雪風「さようなら?でしょうか?」

時雨「いや、僕が思うにやっぱりここは初めましてだよ。」

摩耶「あぁ、確かに初対面だもんな。」

川内「でも、まさか本当に敵の本陣にぶち当たるとはねぇ。」

グラ「大将がいる周囲というのは自然と守りの人数が多くなるものだ。」

グラ「まして無線の発信量が多ければそこに指揮官がいると

   名刺を配っているようなものであろうよ。」

川内「事前に大まかな位置は予測できてたしね。」

グラ「さてと。まぁ、あれだ。挨拶はさておき次に紡ぐべき言祝ぎは決まっているだろ?」

長門「そうだな。では、重巡よ。」

長門 時雨 雪風 川内 摩耶 グラ 「「「「「「 死ねぇ!!!!!!」」」」」」



相手に死ねと言うのを祝うとは性質の悪い冗談だがこの場面で言えば長門達にとっては祝福以外の何物でもない。

目の前の相手に対して行われる仰俯角が零の水平射撃。

撃てば目を瞑っていても当たる距離。



重巡「あぁああぁぁあああぁああぁ!!!!」



大音声での絶叫による断末魔と轟音。

ここに重巡棲姫はその艦生の幕を閉じた。


長門「行きがけの駄賃にしては上出来だ。さて、仕事は終わった。煙幕を更に炊きながら逃げるぞ!」



指揮官を失った軍隊というのはさながら女王蜂を殺された蜜蜂の様な物で

統制だった動きを取れる訳もなく長門達は煙幕が効いている中、

一気に脱出を図り出会う敵は淡々と叩き潰していた。

彼女達は砲撃で敵を叩き潰しながらの撤退である。

その音は暗中模索で敵の位置を知ろうとしている敵に位置を教えることとなるがこれが更に敵に混乱を齎す。

何せ右翼で敵と交戦中と思いきや中央からも交戦中の音が聞こえ

更には指揮官である重巡棲姫と連絡が一切取れない。

まさかの挟撃かと思う深海棲艦達もいたことだろう。

ともなれば組織だった抵抗を出来る者もいる訳がなく、

かくして長門を含む生き残りの艦隊は文字通り悠々と包囲網からの脱出に成功したのだ。


横須賀近海


長門「さてと、ここまで帰ってくれば後は問題ないだろう。」

日向「あぁ、実に鮮やかな退き口だったよ。」

長門「何、古典に倣っただけだ。褒められるような事ではないさ。」

日向「預かっていた吹雪にも怪我は無いし敵の指揮官を沈めての大殊勲だ。」

日向「流石に始めの負け戦を無かった事には出来ないだろうが

   それを踏まえても君達の戦功は勲一等物だろ。」

日向「武人の誉れだな。」

長門「・・・、日向。我々はその栄誉にあずかる事はない。」

吹雪「そんな!私達は長門さん達がいなかったらあの地で死んでいました!」

長門「日向。我々の外地鎮守府の存在を知っているならそこに居る者達の素性を聞いたことはあるだろ?」

日向「無い訳ではないが。」

長門「我々は金が目的か自分たちが犯した犯罪の刑期分だけ働くことを強制させられた、いわば傭兵だ。」

加賀「そんな。」

長門「我々があの場に居たのもそこに居た吹雪を護衛して横須賀へ無事に帰還させる任務を受けていたからだ。」

摩耶「そそ。あたしらは仕事をしただけ。」

川内「重巡棲姫を潰した戦功はそっちが貰ってかまわないよ。」

雪風「というよりも仕事の内になってしまいますからね。」

時雨「そうだね。吹雪の護衛だから吹雪に危害を加える者の排除が主任務になるもの。」

グラ「まぁ、そういう事だ。」

長門「では、我々は日陰者らしく此処でおさらばすることにする。」

長門「縁あればまた何処かで。」


日向「長門!」

長門「?」

日向「もし、もしも、何か困った事が起きたなら連絡をくれ!必ず駆けつける!」

長門「いいのか?そんなに安請け合いして。」

日向「共に三途の河辺を歩いた仲じゃないか。戦友の危機とあらば何を置いても駆けつけるさ。」

長門「戦友か。いい響きだな。日向が女で無ければ惚れていただろうな。」

日向「そっくりそのまま返そうか。」



かわされる握手。



長門「では今度こそ本当にさよならだ。」



そう言い長門達は去っていった。



吹雪「あんなに凄い人達がお金目的とか犯罪者とかだなんて。」

朝潮「本当なんでしょうか?」

日向「それについては我々が判じる事が出来ないな。

   我々が見たのは彼女達の一面に過ぎないのだからな。」

日向「ただ、犯罪を犯したり、お金が目的であったりというのは

   そうせざるを得なかったやむにやまれぬ事情が有るんだろう。」

加賀「せざるを得なかったですか。」

日向「あぁ。そうで無ければあれ程の武勇を振るう艦娘が日陰者として裏道を歩む事などある訳がないだろう。」

日向「今回にしても味方の我々を逃がす為に自分たちは陽動、さらには敵指揮官の斬首まで実行しているんだ。」

日向「英雄と呼ばれてもおかしくないんだ。」

日向「それ程の功績なんだ。」



いい終わり水平線の向こうまで長門達の姿が消えるのを見送る日向は唇をぎゅっと噛み締める。



大潮「英雄ですか?」

日向「あぁ、味方の為に自分の命を顧みず勇猛果敢に戦う者の事を古来より英雄と呼ぶ。」

日向「彼女達はまさしく英雄だよ。」


数日後



朝目新聞 一面見出し

『 敵泊地を襲撃し我が国の艦隊は犠牲を出しつつも敵棲姫を撃破! 』



提督「敵重要拠点を襲撃し、敵旗艦の重巡棲姫を撃破。」

提督「撃破したのは呉所属の艦娘でその英雄的行為により逆転勝利が齎された。」

不知火「随分とあれな新聞ですね。」


不知火の辛辣なコメントを他所に更に読み上げる提督。



提督「また、本作戦には参加20回にもなる古参の駆逐艦が参加していた為その知識が大いに役立てられた。」

不知火「長門さん達からあがっている報告から随分とかけ離れています。」

提督「だが全てが嘘ではない。」

不知火「・・・。」

提督「不知火。プロパガンダってのは如何に1の事象を大きくするかを競うもんだ。」

提督「今回は本来なら歴史にその名を残すほどの大敗といっていいくらいの負け戦だったんだ。」

提督「それを長門達の奇策で逆転ホームランだ。」

提督「庶民ってのは英雄のような、早い話チートキャラが無双するなんて話が大好きでね。」

提督「本当に見るべきはどの様にして流れを押さえ、

   その抑えた流れを勝ち筋にどうやって持って行ったか。

   そして、それに至るまでにどうやって流れを作ったかなんだ。

   誰がどんな戦功を上げたかとかの個人の動きなんて物は重要ではないんだがね。」

不知火「竹中重治ですね。」

提督「不知火は物知りだな。」


提督「司令長官にその辺りの説明が面倒だな。」

不知火「司令、長官へ報告に行かれるのですか?」

提督「あぁ、書類をPDFで送っただけじゃ駄目らしい。」

不知火「せめて持参くらいはした方がいいかと思いますが。」

提督「この間仕事の話を伺いに行った時に椅子磨きの話しをされてね。

   今度は机磨きの話をされるんじゃないかと思うと足も遠のくさ。」

不知火「ではお手数ですがこちらの書類もお願い出来ますでしょうか?」

提督「長門達が購入した物品の決済関連か。うん。よく纏めてある。手間かけたな。」

不知火「褒めてくださりありがとうございます。ですが・・・・。」

提督「ん?」

不知火「最後のページの物は流石に決裁が降りないのではないかと思います。」


そう言われ最終ページの内容を確認する。

そこには大量の酒類が購入された事か記載されていた。


なんだこれは?と思い言葉に出しかけ、ふと、長門との会話を思い出す提督。



『 いっぱい奢れ 』



提督「あっ!あぁあぁ。成る程、そう来たか。」

提督「これは一本取られたな。」

不知火「?」

提督「いや、これの代金は私が持とう。まったく。大したもんだよ。」



一人何かを合点したように笑う提督。

コンコン



長門「提督よ。酒宴の用意が出来たぞ。不知火もどうだ?」

提督「まったく。長門、お前に一杯食わされたよ。」ニヤリ

長門「いっぱい食らうのはこれからだろ?」ニカッ

提督「あぁ、今夜は飲む。とことんな。不知火。飲むぞ!」

不知火「ぬい!?」

提督「俺の奢りだ遠慮はいらん。」

不知火「了解です。」



束の間の平和。

鎮守府の仲間が立てた武勲を酒の肴にこの日、宴会は大層な盛り上がりだったそうである。

これにて長門編は一応終了です、長門が任務に拘った理由は次回にやります

今回の更新に収められませんでした、申し訳ないです

戦闘描写が入ると文字量が多くなるなと考えつつ他の方はどんな感じなんだろうかと考えてしまう今日この頃

皆様、ここまでお読みいただきありがとうございました

乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、ではまた次回の更新もお読みいただけると幸いです

おつ
島津の退き口しかないだろうとは思ったけど初手煙幕しか予想できなかった
誰を残すのかって方向に頭がいってしまったw

おつんこ

大晦日に大和を引いて大型卒業したのですが武蔵の建造Up中という事で

折角なので2人目武蔵を狙うべく建造挑戦

ありがとうございます、2人目来ました、年始からすでに今年の運がストップ安な気配の1です

更新をさせていただきます、お時間よろしければお付き合い下さい


第八話と九話の間の話 長門の過去と提督の同期と戦艦棲姫の知り合いと



長門「時雨、ここに居たのか。」

時雨「あぁ、長門。上手いことやったね。提督が笑っていたよ。」

長門「まぁな。奢れと言っておいたからな。あいつは奢ると言った以上言葉は曲げんさ。」

時雨「そっか。それで、僕に何か用かな?」

長門「あぁ。作戦の前に話していた私が作戦の実行にこだわっていた理由について話をしなければと思ってな。」

時雨「そう言えば約束していたね。」

時雨「僕としてはもういいよと言いたいけれど、長門がそれで自分を許せそうにないからちゃんと聴こうか。」

長門「理解してくれて助かるよ。」

長門「さてと、それではまず、何をどう話したものか・・・・。」



酒が注がれたコップを片手に虚空を見つめる長門。


長門「そうだな私がここに来る前の話しからしようか。」

長門「私のな、艦娘としての人生はな、この戦争の長さとほぼ同じだ。」

時雨「・・・・、それは。長門はそんなに初期から艦娘として戦っていたのかい?」

長門「たまたま適正があったというのもだが。

   もともとは女性自衛官だったんだ。」

長門「だけに艦娘へと志願するのになにも躊躇はなかったさ。」

長門「それから訓練や戦闘に明け暮れる日々を過ごし

   気付いたときには教導をやるようになっていた。」

時雨「エリートじゃないか。」

長門「新任のひよっこを激戦地に連れて行って実戦のやり方を叩き込むことを

   エリートと呼べるならそうなんだろうな。」

長門「来る日も来る日も新規に着任した艦娘達を前線に連れて行き実戦での行き残り方を教える日々。」

長門「戦場と言うものは非情だ。最前線に新米を連れて行けば必ず一人、二人と轟沈が出る。」

長門「そんな事が続いて次第に私の心は何も感じなくなってしまった。」

長門「毎日のように誰が死んだ、

   いや、死ぬならせめて味方の盾になって死ねぐらいに毒づいていたかな。」

時雨「初期の深海達との戦いは今よりずっと酷かったと聞いているから・・・、

   それは長門の責任ではないと思うけど。」

長門「あぁ、すまんな。そう言って貰えるとありがたいが、

   味方の骸を積み上げそれにより自己の武勲を積み上げる、

   当時の私はそれを是としていたんだ。」


長門「そんな生活に何も疑問を思わなかったんだ。

   そんな生活を続けていくうちに戦場に出れば

   敵を地獄に連れて行く火車だの雷槌だのありがたくもない二つ名が増えていった。」

長門「そんな渾名に反発するように戦闘を繰り返していたら、

   いつしか英雄なんて言われていたよ。実に傍迷惑な話だった。」

時雨「ははは・・・。」

長門「そんなある日にな。

   補充兵として来た駆逐艦の一人が吹雪だったんだ。」

長門「もちろん今回の護衛対象だった吹雪とは何も関係がない。」

長門「初めは他の娘達と同じようにすぐに沈むもんだと思っていた。」

長門「だが、私の戦い方の中から何か得るものがあったらしい。存外しぶとくてな。

   いつしか私の副官的な役割をするようになっていたよ。」



昔を懐かしむように楽しく話す長門。



時雨「へぇ、それは随分な猛者じゃないか。今は何処の鎮守府に居るのかな?」

時雨「僕ももしかしたら何処かで会っていたかもしれない。」

長門「それは無いな。」

長門「私が最期を看取ったからな・・・・。」

時雨「あぁ・・・、ごめんよ。」

長門「最後に吹雪と出撃したのが鉄底海峡作戦なんだ。」

時雨「・・・・。そっか、あの地獄の釜底か。」



敵味方ともに大損害をだし勝者も無ければ敗者も無いとまで言われた海戦。

夜戦に次ぐ夜戦で敵味方入り乱れての同士討ちが発生した悲惨な海戦である。

一応、人類が辛勝したとは言われるがそこで採られた戦法は未だ賛否両論である。



長門「捨て艦というのは実に気分がよくないもんだ。」

時雨「長門の艦隊もさせられたのかい?」

長門「いや、私が知る限りでは命令は来ていなかった。」

長門「そして、我々が指揮する艦隊は捨て艦などと言う非道をすることなく任務を遂行できたはずだったんだ。」

時雨「長門?」

長門「吹雪は近くで助けを求めてきた友軍艦隊の、

   そう、捨て艦として連れてこられていた駆逐艦娘を助けに行って沈んだんだ。」

長門「無線で助けを求めてくるその娘達を私は助けるのは無理だと判断した。」

長門「なにせ夜戦で周囲は砲火が入り乱れていて敵味方の区別が既についていなかったからな。」

長門「それを吹雪は助けにいってな。

   私は暗闇の中を駆けていった吹雪の後姿を未だに夢に見ることがある。」

長門「どんなに機関の出力を上げても追いつけないんだ。」

長門「なんとか見つけた時には既に息絶えていてな。

   吹雪が必死の思いで救った駆逐艦の娘達に謝られたよ。」

長門「その後については日向が語ったようなまぁ、狂人の所業だ。」

長門「探照灯で敵に自分の位置をさらして誘蛾灯の如く集まってきた敵を殲滅。」

長門「敵を沈めまくって撃沈記録なんてものを打ち立てたのもこの海戦だったか。」

時雨「昔に聞いた事がある英雄的行為で勝利を齎した艦娘がいたって。」

時雨「長門のことだったんだね。」

長門「必死だっただけさ。

   勝利を収め帰り着いた私を英雄として祭り上げようとした動きはあったが全て断ったよ。」

長門「吹雪を見殺しにしておきながら何が英雄だとな。

   今まで散々見殺しにしてきておいて何をか言わんやというやつかもしれんがな・・・・。」


時雨「それで長門はその後どうしたの?」

長門「吹雪の家族にせめて通常以上の遺族年金が出るように色々手をつくしたのだが全て拒否されてね。」

長門「吹雪は私に捨て艦作戦の命令が来ていることを敢えて上げていなかったようで

   其れを命令違反とされた事が原因だったらしい。」

長門「私が指揮官だが武勲を挙げていたから処罰をする事が出来ず

   結果的に死人に口無しと言うことだったのだろう。」

長門「軍令部の連中曰く、命令に基づき捨て艦をしなかった者達が

   処罰されなかっただけでもありがたいと思えとね。

   その後の私は参謀共が集まる軍令部に自然と向かっていた。」

時雨「まさか!?」

長門「そう、そのまさかだ。

   鉄底海峡作戦の後に軍令部が敵の襲撃に遭ったとされているあの事件は私がやったものだ。」

長門「糞食らえ。正しくそう思ったな。

   それで、捨て艦なんて物を考えた参謀共を皆ミートパイに転職させてやったのさ。」

長門「後は解体死刑宣告後に牢屋で提督にまだ戦う意思があるならここに来いと誘われ今に至るだ。」

時雨「今回の任務は長門にとって贖罪だったんだね。」

長門「あぁ。まぁ、自己満足だ。すまんな付き合わせて。」

時雨「いいさ。戦友でしょ?」

長門「ふ、はははは。確かに戦友だな。」

長門「死線を共に潜り抜けた戦友だ。」

長門「時雨、これからもよろしく頼む。」



急に畏まり頭を下げる長門。



時雨「もちろんだよ。長門。」



握りこぶしを前に出し。

長門はコンと時雨の作ったグーとぶつける。



長門「摩耶や川内は私がしでかした事件については知ってはいるがその原因については知らない。」

長門「時雨の気が向いたら話してやってくれ。」



そういい長門は川内達が宴会を続ける会場へと戻っていった。


後日 横須賀艦隊司令部


提督「以上が先の撤退戦の詳細です。」

長官「戦略的敗北を戦術的力技でひっくり返すとはな。」

長官「実に痛快だな。」

長官「惜しむらくは非正規な事だな。」

提督「戦功の事ですか?」

長官「うむ。流石にブリキのバッジなんぞ君の所の艦娘は喜ばんだろ?」

提督「えぇ。腹の足しにもならないと言われてしまうでしょうね。」

長官「まぁ、とにかくよくやってくれたよ。」

提督「うちの鎮守府以外の被害は甚大だったようですが?」

長官「それについては責任を取ってもらったさ。」

長官「お飾りの元帥殿は勇退、これで元帥が3人になった。意見統一もしやすかろう。」

提督「かなりの思い切った形ですね。」

長官「それだけ失った兵の人数が多いという事だ。」

長官「言葉は悪いが艦娘そのものは補充をしやすい、が、熟練が頭につくと人的資源の損失は計り知れんよ。」

長官「作戦を立案した連中はもれなく『 栄転 』して貰った。」

長官「配属先へ移動する間に不幸な事故に遭わないといいのだがな。」ニタリ

提督(事故ね・・・。恐ろしいお方だ。)


長官「おかげでずいぶんと風通しがよくなったぞ。」

提督「それはめでたい事ですね。では、私はこれにて。」

長官「やれやれ、内地勤務への誘いもさせてくれんとは。まったく。」

提督「机磨きはお断りしますよ。」

長官「そうか。では、礼代わりといってはなんだが

   君が秘書官に纏めさせた書類については私の権限で全て決裁をしておこう。」

提督「ありがとうございます。では。」

長官「あぁ、そうそう。君の同期で男君という人物を知っているかね?」

提督「あぁ。よく知っていますよ。民間からのなかなか面白い経歴で入った人物ですよ。」

提督「彼がどうかしました?」

長官「あぁ、いや。その男君がたまたま君が来ているのを聞いて友好を暖めたいといっていたのでな。」

長官「暇が有れば会ってやってくれ。帰るのは明日だろ?」

提督「了解いたしました。」



そう言い提督は長官室を退出した。

そして、廊下を歩いている所で同期の男性に会う。


提督「ん、おっ。」

男「いよう!久しいな。元気か?」

男「中央に出勤とは珍しいな。今日の夜は暇か?」

提督「あぁ、今しがた長官に会ってやれと言われた所だよ。」

男「そうか、じゃ、今晩の飯。付き合え。」ニカ

提督「分かったよ。」ヤレヤレ



居酒屋 竜飛



女将「あら、男さん。いらっしゃい。」ウフフ

提督「なかなか落ち着いたいい店だな。」

男「女将が美人で繁盛しているが売りは料理でね。」コンバンハ

女将「あら、美人だなんて。まずはお通しどうぞ。」

提督「店の名前なんだが。」モグモグ

男「まぁ、そういう事だ。俺の仕事絡みで艦娘を辞められた方が切り盛りされてる。」

男「他にも社会復帰の一環で艦娘を辞めた娘を預かっていただいたりする事があるんだ。」

提督「しかし女将さんに面影がないな。」マジマジ

男「証人保護の関係もあってな、艦娘を辞める際に整形で顔は変えているからなんだ。

  骨格から変える妖精さんの謎技術で、ベテランの整形外科医ですら分からん。」ナイショナ?

提督「すごいもんだ。」マジマジ

女将「あら恥ずかしいですね。」ウフフ

男「あんまりジロジロ見ていると失礼だぞ?」

提督「あっ、あぁ、そうだな。」

男「久しぶりに会ったんだ。まぁ、飲もうじゃないか。」


30分後

提督「それで、偶然を装って俺に何のようだ?」(小声)

男「気付いていたのか。」

提督「監査室で剃刀だの狂犬だの言われるお前が

   俺みたいな窓際の地位の提督に声をかけるってのは何かあると思うだろ。」

男「同期の友好を暖めたいとは思わないのかねぇ。お前と言う奴は。」マッタク

提督「まぁ思わないでもないがお前が親切にする時は何か裏がある。」

男「酷い言われようだな。例の件のとき俺が色々動いたのを忘れたのか?」

提督「その件については感謝している。」

男「あの時は俺の直属の上司である元帥にかなり骨を折っていただいたぞ。」

提督「その代わりに問題児を押し付けられたがな。」

男「提督の適正者が少ないんだ。問題児とはいえその実力は折り紙つきの連中だ。」

男「限られた資源は有効に使うもんだろ?」

提督「その通りではあるが実に灰汁の強い連中ばかりよこしてくれる。」

男「お前さんなら上手く使いこなせると思っているさ。」

提督「よしてくれ。まったく・・・・。」

男「あぁ、そうそう。」

提督「ん?」



つ バスクリン



男「お前の所は風呂の事情がよくないと聞いてるぞ。

  風呂でのリラックスタイムは重要だ。良い物をあげよう。」

提督「入浴剤か。ふむん。ゆずの香りかぁ。」



提督が差し出された入浴剤の缶を手に取る。





カロン。



提督「!」

男(お前の所に以前送った時雨なんだが、あれの調査をしたのは俺なんだ。)

提督(ほう。)

男(あまりにも証拠が綺麗に整いすぎてて逆に怪しくてね。)

提督(それで再調査でもしているのか?)

男(あぁ、再調査も正式にやれないから個人でやっているんだがあまりにも何もないんだ。)

提督(何もない?)

男(あぁ、全てが綺麗に消されてしまっている。再調査が出来ないようにな。)

男(残っている証拠も全て不自然なまでに時雨が犯人になるように作為的に仕向けられてる。)

提督(それはなんとも不自然だな。)

男(元帥直属の監査室の人間である俺を直ぐにどうこう出来るとは思わないが。)

提督(とんだ爆弾だな・・・。)

男「まぁ、入浴剤を使うなら鎮守府に帰ってゆっくりと使ってくれ。」

男「外地は人の交流が少ないと聞くからこういうのも手に入りにくいだろ?」

提督「あぁ、なかなか手に入りにくい。帰ってゆっくりと楽しむよ。」

男「では、今日の再会に。改めて乾杯。」

提督「乾杯。」



提督は同期の男から入浴剤の缶に入った何かを受け取る。

それの中身は後程知ることになるのだが。




北極海 座標不明


ヒュゴゥウゥ


北方水姫「外気温-34度。実にいい気温ね・・・・。」

戦艦棲姫「私にとっては寒いわ。」

水姫「私の艤装はパワータイプだから。」

戦艦「そういえばプロトモデルだったわね。」

水姫「えぇ、その所為で排熱が酷いのよ。制御系のオーバーヒートを防げるから外気温は低いほど調子が良いいの。」

水姫「それに排熱が酷いおかげもあって普段が薄着ですむというメリットも無くも無いわ?」

戦艦「出力重視ですものね。私の艤装が機動性重視のと比べると対極にあると言えなくもないかしら?」

水姫「それで今日はどういった用かしら?」

戦艦「先日の逆転敗北で重巡が沈んだでしょ?あれの責任を取らされて今は伝書鳩をやっているの。」

水姫「あら、ずいぶんね。でも、あなたの事だから世界の海を回れて楽しい位に思っているのじゃないかしら?」

戦艦「あら、ばれるのね。」

水姫「中枢棲姫もその辺り分かっててやってるわよ。それで、何を伝えに来たのかしら?」


戦艦「かねてからの予定通りに再度の侵攻、上陸作戦を決行せよ。との事よ。」

水姫「重巡が沈んだとはいえ敵の数を減らすには成功したものね。」

水姫「再度の侵攻作戦をするには確かに今がチャンスではあるわね。」

水姫「了解したと伝えておいてもらえるかしら?」

戦艦「えぇ。分かったわ。」

戦艦「そうそう。先の作戦で重巡を沈めた連中だけど、もしかしたら此方にも来るかもしれない。」

戦艦「連中は超がつく熟練揃いだから万に一つも油断しないようにね。」

水姫「そうね。慢心が危険な事は重巡が身を持って教えてくれたしね。」

水姫「他山の石として気をつけるわ。」

戦艦「では。作戦の成功を祈っているわ。」

水姫「До свидания」

戦艦「えぇ、さようなら。」



ヒュゥゥゥ



戦艦(この吹雪は視界を悪くするわね・・・・。)

戦艦(視界不良の中で戦うなら戦いなれている彼女の方が有利でしょうね・・・。)



戦艦棲姫は北極海を超え何処かへ向かおうとしてた。

そして、また、先の作戦で開いた防御網の穴をつくべく北からの風とともに動き始める艦隊が居た。

本日分は以上で終了です

次回から1の事前設定の中で一番軽い伯爵のお話の予定、後、少しだけ鎮守府に居る他の娘達に触れられたらなぁと思っています

イチャコラ?そんなもの知るか!な荒んだ設定でゆっくり進行しています

乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、励みになります

いただいたレスは参考にさせて頂くこともあります(150様!バスクリン出てきたよ!←やっとかと怒られそう)

では、次回もよろしければお読みいただけると幸いです

無理やりバスクリンw

キタ!バスクリン出た!これでかつる!

おつおつ
適材適所・有効な駒も活かしきれないと大変だな…
失敗しても元をサックり処分するだけ代謝も修正も早そうだけどw

龍田改二、なかなか尖った性能ですね
AKIRAのピーキーすぎてお前には無理だよを思い出しました
使用場面が嵌れば面白そうな設定(現状ちょっと強い駆逐艦みたいな感じです)
村雨は文句無いです、グラが変わっただけでも大勝利です

では、本日の更新をさせていただきます


第九話 ラッパが鳴って壁は崩れた 前編


明石の工廠


時雨「うーん。」

雪風「いいものなんですが・・・・。」

明石「買ってくださいよぉ。」

時雨「Bofors 40mm 6連装。」

雪風「まさかの英国面。MkⅥ。」

明石「歴史上最後の戦艦、ヴァンガードの兵装だったのを!」

時雨「日本お得意の小型化に成功。そして艦娘の兵装に?」

雪風「でも、これ戦艦アイオワ級初期兵装の4連装より増えてますから。」

時雨「僕らが積むと艤装の電探とか火器管制のリソースをかなり食うんじゃないかな?」

雪風「更に、絶対重いです。」

雪風「そして是を使おうと思ったら射撃管制システムセットで運用しないと本来の性能を発揮できないでしょうね。」

時雨「だろうね。そうなると電探から全て入れ替えないといけなくなっちゃう。」

雪風「つまり、お高いんでしょ?」

明石「今ならコミコミで何と大サービス450万!」

時雨 雪風「「高すぎだね(です)」」


明石「駄目ですか・・・、それならこんなのはどうです?」ショボン

明石「超お買い得酸素魚雷!50本1000ドル!どうです!?」キラキラ

時雨「1本当たり20ドル?!」

雪風「ちゃんと進むんですか?!」

???「進むには進むけど爆発しないのが多いんだよね。」

時雨「初月それは本当かい?」

明石「いや。まぁ、中には不良品もありますよ。」

初月「確かに1、2本なら僕も何も言わないさ。

   ただそれが10本中8本にもなるとさすがにね。」

時雨「不良品率80%・・・・。」

雪風「流石に何処の国製品かと聞きたくなりますね。」

明石「ちょっと初月さん!商売の邪魔しないで下さいよ!」

初月「僕らは命が掛かってるんだ。

   不良品が原因で命を落としたなんてなったら笑い話にもなりゃしない。

   それとも明石の所は代えの命まで売ってるって言うのかい!?」

時雨「じゃ、そういう事だから。」

雪風「またの機会に、です。」

明石「あぁ・・・。もうぅ・・・。」


時雨「ありがとう初月。おかげでお金を無駄にせずに済んだよ。」

初月「それは良かった。」

初月「ところでグラーフを見なかったか?先ほどから探しているんだが。」

雪風「この時間なら食堂で珈琲道を窮めているんじゃないでしょうか?」

時雨「伯爵がどうかしたのかい?」

初月「あぁ、いや。新しく手に入れた艦載機の対艦性能を試したいという事で

   昼食を報酬に演習に付き合う約束をしていたんだ。」

雪風「伯爵は艦載機マニアですよね。」

時雨「そうだね。この間はハウニブが手に入らないのかって明石に詰め寄っていた気がする。」

雪風「流石に空想科学の部類は無理なんじゃないでしょうか?」

初月「うーん、深海棲艦の艦載機はそれに近い気がしなくもないかな。」



そんな話を和気藹々としながら食堂についた一同。


食堂

提督「うーん。これはコロンビアかな?」

不知火「キリマンジャロですね。いい豆を使用されています。」

グラ「ふふ。実にいい味だろう。」ムフー

提督「というか南米産の豆なんてどうやって?」

不知火「先日の物品購入書の購入明細一覧に入っていましたが。」

提督「?」

不知火「?」



どうやら先の決裁書類内での連絡の不備があったようである。



初月「グラーフ!」

グラ「あぁ。初月。と、もうそんな時間だったかな。」

初月「いや、まだ時間は大丈夫だ。」

グラ「そうか、それだったらコーヒーはどうだ?時雨達の分も淹れよう。」

グラ「時雨はエスプレッソ。砂糖たっぷり。」

グラ「雪風はラテ。上のラテアートは雪だるまをサービスだ。」

グラ「初月は・・・・。」

初月「カフェモカを。」

グラ「承知した。」

時雨 雪風 初月「「「美味しい~。」」」ホフゥ

グラ「この戦争が終わったらコーヒーショップを開くんだ。」

雪風「分かりやすいフラグですね。」

時雨「伯爵は分かっててやってるから性質が悪いや。」フフ

初月「その、2人はグラーフの事を伯爵と呼んでいるけど。」

グラ「あぁ。私の艦娘としての名前がグラーフ・ツエッペリン伯由来という事もあるのだが、

   そもそもの私の出自がフォンの称号を頂くシュペー家でもあるからなんだ。」


提督「そういえば由緒正しいライン貴族だったな。」

グラ「あぁ。」

時雨「初月、それ以上は聞くべきではないよ。」

何かを尋ねようと口を開きかけた初月を制する時雨。

グラ「何、大した話ではない。

   前に居た鎮守府のクズが空母の仲間や駆逐艦の娘達を強姦しようとしたのでな。

   男性器を捻じ切って口に突っ込んでやっただけだ。」

グラ「後悔など微塵もないよ。」

グラ「そも、ポークビッツ程度のサイズだったんでな?

   捻じ切った後に果たしてきちんと捻り取れたのかどうか2度ほど確認したくらいだ。」

提督「本来は海外艦の派遣協定に基づき本国へ即時送還だったんだがな。」

グラ「その節はAdmiralに実に迷惑をかけたな。」

グラ「だが、あのような問題のある奴を指揮官に据えるこの国もどうかと思うぞ。」

提督「それについては弁解の仕様がないな。」

グラ「まぁ、そんな訳もあって技術士官として派遣されていて何も得ずに帰国する訳にもいかなくてな。」

グラ「Admiralに骨を折ってもらってこの鎮守府所属として色々技術士官としての役目を果たしているという訳だ。」

提督「まぁ、そういう事だ。といってもグラーフの場合契約が特殊でな。」

提督「ここを出て行こうと思えばいつでも出て行けるはずなんだがな。」

グラ「ふふん。ここにいれば日本はおろかアメリカやイギリスの最新、

   それも艦娘の兵装としては開発段階の物まで使えるのだ。」

グラ「情報という宝の山を前に帰国する等あり得ん。」キリッ

グラ「それに、かけがえのない友も出来たしな。」(不知火達へウインク)

提督「まぁ、好きにすると良い。ここにいる限りは俺の庇護下だ。」

提督「引渡し要求には応じんよ。・・・、時雨や他の者達についてもだ。」

提督「コーヒー、実に美味かった。ありがとうな。さてと、不知火。紙の整理に戻ろうか。」

不知火「了解しました。」


演習場付近


グラ「さてと初月よ。演習に付き合ってもらおうか。」

グラ「見てくれこれを!」



ババーン! Fw-109 G-3改



時雨「伯爵の改造時装備のフォッケウルフと違うの?」

グラ「うむ。これは長距離爆撃型でな?私の装備のフォッケウルフより航続距離が長い!」

グラ「更に懸吊架も改良され搭載可能爆弾も1t爆弾と1.8t爆弾が可能になっているのだ!」ムフ―

時雨「スツーカの後継みたいなものかな?」

グラ「Nein!Nein !Nein !スツーカとは違うのだよ!スツーカとは!」

時雨「おっ、おぅ。」ヤヤヒキ

グラ「戦闘爆撃機という点では相違ないがスツーカは対地目標に特化している機体に対し

   こっちは爆撃後に空戦も出来る。そうだな零62型爆戦の仲間と思ってくれていいぞ!」

雪風「これ、長くなるやつです?」

初月「複座なんだね。」マジマジ

グラ「そこに気づくとは流石だな初月。」

グラ「そう!旧型となりつつあったJu87が複座であったのにならい複座に改造したのだ!

   だから形式名の後に改がついているのだよ!」

グラ「なので搭乗員妖精の機種転換が楽になった!」

グラ「さらにエンジンも高高度作戦が可能なD型の物を無理やり使用している!」

グラ「つまり高高度を長距離移動して爆撃が出来るというロマン機なのだ!」

時雨(最早艦載機じゃなくてもいいんじゃないかな?)

初月(僕もそう思うがそれは言わないのがやさしさなんじゃなかろうか?)


雪風「あの。単純な疑問なんですが、

   爆装重量等の関係で空母艦載機として飛ばせるのですか?」

グラ「フハハハ!問題ない!そこは私の艤装を色々と改造した。」

グラ「もともと派生元のFw109を発艦させていたのだ、カタパルトを改造する事によりそれも無事解決だ。」

グラ「見てくれこれを!」



ババーン! 蒸気カタパルト



時雨「どこから手に入れたのさ。」

グラ「大戦後の技術などという事はさておきこれを使えばだな?」



バシュ!  メキャラ! バキッ! ←カタパルトフックが折れてバランス崩した音。



時雨 雪風「「あっ。」」



パッ! パッ! ←搭乗員妖精が落下傘にて脱出しました。



時雨「脱出は上手くいったみたいだね。」



グワーン ←海に向かって落ちていってます。



ドガーン!



初月「ふむ。木っ端微塵だな。」

時雨「カタパルトの打ち出す力が強すぎたみたいだね・・・・。」

グラ「あぁあああああ!!??」

グラ「あぁあああぁぁぁ・・・・・。」

初月「グラーフ、その、訓練をするのかい?」

グラ「あぁぁ・・・・。」

時雨「無理じゃないかな・・・。」


雪風「今はそっとしておいてあげましょう。」

グラ「あぁあ・・・・。」

時雨「初月はこれから後の予定は?」

初月「瑞鶴と今度の空母狩りについて打ち合わせがあるくらいだ。」

時雨「そう。じゃぁ、伯爵が約束していた昼御飯は僕が御馳走するよ。」

時雨「食堂へ戻ろうか。」フフ

初月「いいのか?僕は結構食べるぞ?」

時雨「雪風ほどじゃないでしょ?」

雪風「雪風はそんなに食べませんよ?」

時雨「この間、炒飯空母盛完食してもう1杯食べてたよね?」

雪風「雪風、忘れました!」テヘッ

川内「にしても本当、どこに消えてるんだろうね?」シュタッ

初月「川内か。何処に潜んでいたんだ?」

時雨「それは気にしちゃ負けだよ。」


雪風「忍者ですから。」

川内「明石の所に寄ったら三人で食堂に行ったって聞いたから探してたんだよ?」プクー

川内「私を除け者にするなんて、No―なんだからね?」

初月「金剛?」

川内「正解!じゃ、みんな!ご飯にしよ!」

雪風「ごっはん~♪、ごっはん~♪」

こうして四人は食堂へ再度向かったのだった。

千島列島 付近海上

戦艦棲姫との会談後、1ヶ月後のある日


水姫「再度の上陸作戦ね。」

リ級「吹雪は後、1週間程は続くかと思われます。」

水姫「吹雪が強いとレーダーの効きが悪いから攻める側には有利ねぇ。」ウフフ

水姫「気象条件が侵攻作戦へいい日を待った甲斐があったわね。」

リ級「千島を落とした後は単冠湾の敵泊地を落すと形ですか?」

水姫「可能なら。敵にしてみれば千島を落されるだけでもかなりの脅威。」

水姫「といっても単冠湾には大した戦力は残っていないでしょう。」

リ級「ソ級やイ級による強行偵察でもあまり有力な戦力は残っていないようです。」

水姫「先日の敵による反攻作戦でこちらが沈めた敵艦娘の所属を調べていった中で

   北方方面の艦隊がそれなりに居たみたいよ。」

リ級「穴が大きく開いているという事ですね。」

リ級「ですが、攻めに行くには空母の数が少ない気もしますが。」

水姫「そうね。本当はもっと連れてきたかったのだけど私達の滑走路は海の上。」

水姫「敵の滑走路は陸上。ここが大きな違いね。」


リ級「?」

水姫「今の冬時期、この海域は吹雪がきつい。攻める側の私達は発着艦が困難なのよ。」

水姫「ただでさえ視界不良に加え上下の感覚も狂わせる吹雪。おまけの強風。」

水姫「敵との交戦によるもの以外の喪失が増えるだけよ。」

リ級「敵も同じ状況だから空母は少なくて良いという事ですね。」

水姫「敵は陸の滑走路が使える分こちらよりマシでしょうけど、そうね。それほど変わりはないでしょうね。」

水姫「だけに島を取って拠点を作る必要性が高いのよ。」

水姫「今度の上陸作戦は成功させるわよ。」

リ級「了解です。」


水姫「さぁ、敵には存分に踊ってもらいましょう?」

水姫「私達を北の海に閉じ込めた敵を打ち倒す。」

水姫「そう、冬から春を迎えるが如く。私達の時代を謳歌するわよ。」

リ級「さながら祭りですね。春を迎える事を喜び歓迎する祭り。」

水姫「そうね、『 春の祭典 』と言ったところかしら?」

リ級「北の海から艦娘、人間共を追い落としてやりましょう!」

水姫「えぇ。そうね。」ウフフフ

北の魔女。

かの一団は再びの侵攻を開始した。

タイトル、グラーフ、敵は北方水姫
今回もフラグ建設に頑張っています
初月と名前のみ登場の瑞鶴の話は需要があればその内にでもやりたいなと
現状はあんまり細かく設定は考えてないです、ごめんなさい
ではでは本日はお読みいただきましてありがとうございます
乙レス、感想レスいつもありがとうございます
いつも読んでくださっている読者のあなたに感謝いたします

おつ
龍田は無条件で先制爆雷、大発系乗る司令部積めるで輸送連合マップで重宝しそう
美人でおっぱいおっぱいだから旗艦に据えたい

おつ

おつです
流石の建築能力だw

88とプリズンレディがいい感じでブレンドされてるなぁ……



ミッションとして薔薇関連が入ってくると新谷ファンとしては狂喜せざるをえない

グラーフさんのお話なかなか筆が進まんです
色々調べ物したりしている所為ですね、うん
このSSを始める前に海外艦を誰にしようと考えていたときに書いて一旦ボツにした話を代わりにあげときます
上げるために若干加筆、修正
性格としてはブラックラグーンのエダと艦これ漫画でわりと有名なビリー提督の所のビスマルクを足して割らない感じ
色々頭の螺子がいっちゃってますのでキャラ崩壊も大丈夫よという方はお読みください……


番外編  She is Killer Queen


不知火「まもなくですが・・・・。」

提督「正直勘弁願いたいな。」

提督「放火して火消しをよそ任せにする所は英国らしいといやぁ英国らしいが・・・。」

不知火「何をしたんですか?」

提督「着任関連の書類には適当に暈されてたが多分虐殺・・・じゃねぇのかね。」

不知火「」

提督「記憶にあるなかで最近起きた英国絡みの事件はバージン諸島砲撃事件しか知らん。」

提督「といっても漏れ聞こえた話を大まかに統合しての話だからどこまで本当かどうか。」

不知火「その、どのような事件なのでしょうか?」

提督「英国が初めて開発した戦艦って事で米軍に任せてたバージン諸島の守りに就かせようとしたら何を考えたか島を砲撃。」

提督「僚艦も全て沈めて島の形を変えんばかりに艦砲射撃しちまったらしい。」

不知火「なぜ解体処分されなかったのでしょうか?」

提督「高貴な出自の御方が高貴な役目の為に艦娘になられたらしくてな・・・。」

不知火「政治的判断という事ですか。」

提督「あぁ、英国政府に貸しを作っていい顔したい政治屋の尻拭きだ。」ハァ

不知火「頭が痛いですね。」

提督「あぁ、いらん火種を抱えたくない。」



そして二人が待ち構えているところにいつものように船はやって来た。


水兵「お疲れ様です。今回の荷物ですが・・・・。」

提督「事前に聞いてはいるが。」

水兵「梱包の開梱は我々の船が出てから1時間後にお願いします。」

水兵「後、こっちの荷物はそれの私物です。」

提督「そんなに劇物なのか?」

水兵「厳守で願います。」ガクブル



青い顔をした水兵といつも通りに受け渡しの手続きを済ませる。

そして降ろされた荷物は艦娘と表現するには程遠い程に拘束がなされていた。



不知火「映画で見たことがあります。」



ガチャガチャ フーッ! フーッ!



提督「あぁ、そうだな。まるでハンニバル・レクターみたいだな。」

水兵「くれぐれも。」

提督「あぁ、分かった分かった。」ヤレヤレ


1時間後


ガチャガチャ


不知火「これで拘束は全部でしょうか?」

「Fucking Shit ! 」

提督「おっ、おぅ。」

「お前が時間をきっちり守ってくれやがった所為で沈めそこねたじゃねぇか!」

不知火「・・・・、やんごとなき御身分?」

提督「間違いはないと思うんだがな。」

「あぁ、自己紹介がまだだったわね。私は戦艦Warspite 日本語は大学で勉強してたから一通り出来るわ。」

スパ「意味は分かるでしょ?」

不知火(日本語だけの会話でも分かるぞという事ですかね。)

提督(まぁ、そう言う事だろ。)

スパ「Don’t give a fuck with me

   だから小声で話をしてても分かるっていってんだよ。ん? Understood ?」

提督「随分と口汚い女王も居たもんだ。まぁいい。ここはお前さんみたいな曰く付きが流れ着くところだ。」

提督「ここから先は無いからな。そこだけ肝に銘じておけ。」

不知火「長生きをされたいのでしたら態度を改められる事をお勧めします。」

不知火「では。」

スパ「What the fuck 何だってんだいここの連中は。ったく。」


工廠付近


明石「あっ新しい艦娘さんですか?」

スパ「ここは何?」

明石「見ての通りお店ですけど?金があるなら客として扱いますが無いならどいて貰えませんかね?」

スパ「店?」

明石「えぇ、出撃に使う油に弾薬、ボーキ、装備関連に修理に整備、一切がうちの取り扱い商品ですけど?」

スパ「あぁ、そういう。ふぅん。PXみたいなものか。」

スパ「ここを出て行きたいんだけど燃料を売ってもらえる?」

明石「お金は?」

スパ「これで。」

明石「ポンドねぇ。うちの取り扱いはドル決済なんですけど?」

明石「こんなおもちゃのお金を出されてもねぇ?」

スパ「あぁ?」


自国通貨をおもちゃと呼ばれ怒り明石に迫るが。


明石「睨んでんじゃねぇよ、股が小便臭え餓鬼が粋がった所で飴玉一つこの明石は売らんよ。」

明石「物が欲しけりゃドルだ。鐚1セントまける気はないね。」



何処から取り出したか大型重機の整備用レンチを肩に担ぎ今にも解体すんぞと凄む明石。

ただの工作艦とは思えない殺気に気圧され怯むウォースパイト。



明石「燃料19弾薬28鋼材46ボーキ12に変えてやろうか?」アァン?

雪風「明石さん。お取り込み中失礼しますがお相手して貰えますか?」

明石「これはこれはお客様。」



普段より恭しく。


雪風「そちらの方はいいんですか?」

明石「お金が無いのはお客様じゃないです。」

雪風「ぶれませんねぇ。」

明石「注文はいつも通りでいいですか?」

雪風「えぇ、魚雷30の燃料、弾薬セットで。」

明石「毎度!」



雪風は駆逐艦である。そう、駆逐艦なのだ。

ゆえにウォースパイトは侮ってしまった。



スパ「あんた駆逐艦?」

雪風「はい、そうですが。」

スパ「私、今お金が無いのよ。代わりにここの支払い持って頂戴。」



明石は思った。こいつ馬鹿だろと。

よりにもよって鎮守府内の歩く火薬庫とまで言われる雪風に集るのかと。


雪風「どうして雪風が払わないといけないのですか?」

スパ「駆逐艦は戦艦の下でしょ?」

明石(あーあ。)



刹那。

ウォースパイトの体は天地が逆転し、

ウォースパイトが次に目を開けたときは医務室の天井をその目で見ることとなる。



不知火「気がつきましたか?」

不知火「忠告が役に立たなかったようですね。」

不知火「身を持ってここのルールを知っていただいたようでなによりです。」

スパ「一つ聞きたいのだけど?」

不知火「何でしょうか?」

スパ「ここの駆逐艦は皆あんななの?」

不知火「全てが、とは言いませんがあなた程度でしたら余裕を持って沈められる。」

不知火「その程度の錬度には皆、達しています。」

不知火「また、ここは他所の鎮守府の様に艦種による上下は有りません。」

不知火「寧ろ駆逐艦を軽んずる艦娘はまっさきに鬼籍に入っていますね。」

不知火「魚雷は敵、味方の区別はありませんので。」


スパ「それは脅しかしら?」

不知火「処世術ととっていただきたいですね。」

不知火「とりあえず、戦艦では長門さん、空母ではグラーフさんを始めとする数名。

    重巡では摩耶さん他同じく数名。

    軽巡では川内さんが最も危険ですね。

    駆逐艦では時雨さん、雪風さんに初月さんと後数名でしたでしょうか?」

不知火「報酬金ランキング上位常連には喧嘩を売るべきではないと教えておきます。」

不知火「後、潜水艦の方々も居ますが彼女らには特に注意してください。」

不知火「証拠を残さないやり方をよく心得ていますので。」ニッコリ

スパ「よく分かったわ。」

不知火「では。」

不知火「あぁ、言い忘れる所でした。

    お持ちになられたポンドですが両替が必要でしたら司令の所に行かれて下さい。

    手数料は掛かりますがドルへの両替を受けますので。」

不知火「無法地帯のように見えても無法故のルールと言う物があります。」

不知火「長生きしたいならゆめゆめお忘れなきよう。」

不知火「死にたいならお知らせください。魚雷はサービスします。」



そういい残し不知火は医務室を去っていった。



スパ「とんだ地獄に迷い込んでしまったようね・・・・。」



ウオースパイトは自分の置かれた状況をその聡明な頭脳で理解したのだった。

こうしてこの地獄の掃き溜めに女王は着任した。

キャラが強烈過ぎたためお蔵入り仕掛けたお話
番外編だから好き放題にやっています、雪風に喧嘩うればそうなりますねぇ
ではでは次回こそはグラさんのお話更新したい……
乙レス、感想レスいつもありがとうございます
ここまでお読みいただきありがとうございました

なんか明石編が読みたくなったな

火薬庫ワロタ
郷に行っては…が体現されてる場所じゃ、選択肢一つ間違えるだけでバッドエンドなのかw

あぁ…こういうの良いなぁ…

ここじゃ身の程を理解する能力すらない狂犬と組まされた日には自分が死ぬしな
もし弁えられなかったら不発魚雷よりも気軽に処分されただろうなあ、ブリーフィングから出撃までの僅かな時間に運(70)悪く事故死

モデルのキャラを考えてしまうとラグーン程度では薄っぺらいな。

大尉かトライアド持ってこないと太刀打ちできない感じ

そう考えると88は名作だわ

明石も結構な過去ありそうやなぁ...

>104誤 伊8「そうでち、命は大事に使えば一生使えるでち。」 → 正 伊58「そうでち、命は大事に使えば一生使えるでち。」

>219誤 番外編  She is Killer Queen → 正 番外編  She is a Killer Queen

1です、読み返して一部間違えに気づいた部分がありましたので訂正をさせていただきます

>233様 三合会は超サイコー!

本日の更新をさせていただきます  


第十話 ラッパが鳴って壁が崩れた 中編


鎮守府 工廠付近埠頭


秋津洲「明石さん!すごいかも!」オホー!



普段は明石商店の配送要員として二式大艇のオペレータを務める秋津洲が遠くを見つめる。



秋津洲「あんまり見分けがつかないかも!」オホー!

時雨「何をやってるんだい?」

秋津洲「あっ、時雨かも!今ね、新しいデコイを試していたかも!」

秋津洲「今日は荷物も運び終わったから新商品の開発を手伝ってたの。」



そういい秋津洲が指差す先には。



時雨「あれは、失敗ペンギンと失敗綿なのかな?」

明石「そうですよ――。開発に失敗した時に出てくるあれの再利用です。」

時雨「開発とかしてたんだ。」

明石「時雨さんは稼ぎが良いからあれですけど普通は装備を改修して上位装備へ換装するものですよ?」

明石「それに改修の状況によっては無改修の上位装備よりいい働きする事もありますしね。」


秋津洲「改修の素材を全部よそから買ってたら高くつくから偶にうちの商会で開発してるかも!」

明石「開発して出る素材は出したほうが完成品を用意するよりお安く提供できますしね。」

時雨「そっか。営業努力の結果があれって事か。」



時雨が指差す方向に浮かぶのは失敗ペンギン達で作られた案山子。



明石「何かのデコイみたいなものに使えればなぁと思ったんですけどね。」

秋津洲「ぱっと見で駆逐艦サイズだから状況によってはありかも!」

明石「といっても動かずに浮いてるだけじゃバレバレですよねぇ……。」

明石「やっぱり捨てるしかないのか……。」

提督「アイデアは悪くないと思うぞ。」



明石が名残惜しそうに案山子を見つめる所に声をかける提督。


提督「空から見た感じどうなんだ?電探に影は映ったりするか?」

明石「あ――――。空からはまだですね。電探も後で試しておきます。」

時雨「提督、あんなのをどうするんだい?」

提督「時雨。兵器に限らず世の中の多くは全てアイデア次第だ。」

提督「本来の使い方ではない使い方が便利すぎて

   イレギュラーな使い方がレギュラーになってしまった商品なんてものはいくらでもある。」

提督「あの案山子だって何かもう一工夫してやれば化けるかもしれんぞ。」

提督「それに材料が失敗の綿?とかだから持ち運びも容易だろうしな。」

明石「ですね。こう。ぎゅっと圧縮して使おうと思った時に一気に元の形に戻せるって感じが可能です。」

提督「面白いな。後は使う側のアイデア次第って気もするぞ。」

明石「じゃぁ、提督。買って下さいます?」ニコニコ

提督「そうだな。値段しだいだな。開発の失敗作なんだろ?」ニヤリ

そんな二人の会話の後に明石の実験的新商品の値段交渉が始まった時だった。


ボコボコボコ

ザバァツ!

埠頭の岸壁に手を掛け3人の潜水艦娘達が鎮守府埠頭に姿を現す。



伊58「帰ってきたでちぃ・・・。」ベチィ

時雨「あっ、ゴーヤじゃないか!久しぶりに姿を見たけど特殊作戦行動にでも出てたのかい?」

伊13「時雨さん、お久しぶりです。」ヨッ

伊8「欧州から帰って来たところなんです。」フゥ

提督「お疲れ。帰投の連絡があってから待ってたぞ。」

明石「何だ散歩じゃなかったんですか。」

伊58「これが荷物でち。」ゴト



つ 防水耐圧処理済トランクケース



提督「確かに。これが報酬だ。無くすなよ。再発行は出来んからな。」



そう言って差し出すは複数の茶封筒。



伊58「1週間の休暇許可と報酬金一人5000ドルに刑期短縮の海軍大臣署名入りの確約書。」

伊58「それからノルマ軽減についての軍令部総長署名入りの確約書。」

伊58「全部間違いないでち。」



封筒の封を乱雑に破り中を確認したゴーヤが顔を上げる。


提督「後な、これは伊13に特別ボーナスだ。

   特警の監視付になるが面接権だ。妹に会いに行ってやれ。」

伊13「・・・、ありがとうございます!」

提督「仕事に対する正当な報酬に過ぎんよ。助かった。」

時雨「提督、ゴーヤ達に何を頼んでいたんだい?」

提督「軍機につきと言いたい所だが、俺が話さなかったらゴーヤ達から聞き出すんだろうな。」

提督「グラーフを呼び出しついででコーヒーを執務室まで頼めるか?」

提督「ここで話をするには向いていないからな。後、明石も来てくれ。」

明石「了解です!」

提督「後、伊58は道中の報告も聞きたいから同行してくれ。」

提督「そんな訳だから時雨、コーヒーを人数分だ。」

時雨「了解。」


執務室



グラ「Admiral、注文のコーヒーだ。」

提督「ありがとう。そして手間を掛けるがドイツ語の翻訳を頼めるか?」

グラ「了解した。」

時雨「提督はドイツ語出来ないの?」

提督「嗜む程度だ。その程度だから技術的な専門用語が入ってくるとお手上げだ。」

提督「よしんば出来たとして母国語の違いという奴でな微妙なニュアンスの違いって奴は理解出来ん。」

提督「それなら出来る奴に任せるのが一番だ。」



そう言いながら先ほどのトランクケースに付いている鍵に番号を打ち込む提督。



提督「と、開いたな。グラーフ、すまないがこれらを一つ一つ頼む。」



明石とグラーフに書類の束を渡す提督。


提督「凡その内容は聞いているが儀術的な部分もあるからな。」

グラ「ふむ。祀事的な部分という事か。」

提督「シャーマンの部分は本当によく分からん。」

時雨「シャーマン?」

提督「あぁ、嘗ての英霊。戦闘機なんかのネームドパイロット連中を

   こっちの世界に降ろす為にはどうしても宗教的な手続きがいるわけなんだよ。」

提督「欧州の艦娘運用国の中では特にドイツが先進国でね。」

提督「なんだかんだでドイツが艦娘に関する技術では欧州では一番進んでいる。」

提督「そんな訳で、伊58達には最先端の技術交換目的で北極回りでドイツに行ってもらってたんだ。」

時雨「北極回り。」

提督「そうだ。スエズは通れない中で喜望峰回りと北極回りは危険度がそう変わらない。」

提督「それなら少ない日数でいける北極回りの選択になるという事だ。」

グラ「潜水艦ならではだな。」


時雨「その、ロシアのシベリア鉄道とか空路で行くとかも出来ないのかな?それとか無線通信とか。」

提督「ロシアね。」フフン

提督「北方四島返還と千島の信託統治を認める代わりに艦娘を要求したロシアがね。」

グラ「響だったな。」

提督「あぁ、連中は貸与された響を徹底解析した挙句に

   名前を付け替えその解析で得た技術で戦艦を組み立てやがったからな。」

提督「連中からしてみれば深海連中に海を抑えられてる現状、北方四島を含む千島列島は穴の開いたバケツだ。」

不知火「防衛の為にお金が湯水の如く消える割にその意義が皆無ですね。」

提督「早い話、厄介払いだな。」

グラ「ロシアの戦艦は見たことはあるが・・・。」

明石「あれの実態は酷いもんですよ。

   駆逐艦の技術で戦艦を動かしてるから魂の受け皿になってる艦娘と船魂のシンクロ率が恐ろしく低いんです。

   技研の連中も流石恐ロシアって苦笑してましたよ。」

明石「そして艦種違いの低シンクロ率を誤魔化す為に薬物を使用してる状態ですもん。」


グラ「ガングートが加えているパイプはやはり薬物の類だったのか。」

明石「えぇ、表向きには依存性のない綺麗な薬物って言ってますけど薬物に綺麗も汚いもないです。」

明石「あれに火をつけて吸引すると軽いトランス状態になるんです。」

明石「シャーマンがトランス状態になって体に精霊を降ろす。

   その状態を擬似的に作りだしてシンクロ率を無理やり上げてるそうですよ。」

グラ「ろくでもないな。」

提督「流石ドーピング大国と言いたくなるな。

   連中は俺達も艦娘作れるぞって誇示の為に派遣という形をとって

   更なる技術提供を要求してくる厚顔っぷりだから驚くほどでもないがな。」

提督「そんな国を艦娘に関する技術資料を持った人間が通りまぁ―――――――すぅ!なんてやってみろ。」

伊58「あっという間に拘束されるでちね。」


提督「後な、もう一つの赤い国、深海棲艦が出てくる前から

   いろんな国にちょっかい掛けては海洋進出をしてきた国だからな。」

提督「艦娘に関する技術は喉から手が出るほど欲しい、そして実際誘拐まがいの事だってやってる。」

提督「そいつら大国以外の国も何処も似たり寄ったりだ。

   深海との戦いが終わった後の艦娘の運用方法、海洋の覇権を含めて艦娘ってのは好奇の対象なんだ。」

提督「だから陸路やそれらの国を通過する空路なんかでいったら行方不明者がダース単位で出てしまう。」

提督「秘匿通信なんて使っても傍受、解析なんてされたら漏れているのかどうかが分かりにくい。

   だから原始的だが情報員の派遣が一番確実なんだよ。」

時雨「ごめんよ。そこまで深くは考えていなかったよ。」

提督「世の中の政治ってのはめんどくさいもんさ。

   アメリカにしたって日本を支援しているのは終わった後の海洋での覇権を見据えてのもんだしな。」

提督「内心、軍事同盟を結んでて良かったくらいの事は考えてるだろうよ。」

提督「適度に漏らしていい情報は垂れ流して何処から漏れているかを諜報部は探ったりはしているようだがね。」


時雨「でもどうしてゴーヤ達なんだい?」

提督「身内も信頼できる連中が少ないってこったろ。」

提督「下がゆるい連中が多いと特警も憲兵も忙しいからな。」

提督「その点、ここなら金と刑期、どちらかに忠実に働く分ましって計算なんだろう。」

提督「俺の職務に忠実な友人曰く女ばかりの職場で働く提督なんぞ去勢してしまえ、だからな。」

提督「鎮守府内で満たせない以上、外で欲求解消をしようとして後はそういう事だ。」

明石「嵌めたつもりが嵌められたとかしまらない話ですねぇ。」

提督「上手いこと言ってんじゃねえよ、まったく。」

グラ「身に覚えのある話だけにアホばかりという気がしないでもないな。」

提督「特警曰く『 刑務所は敷金、礼金無料!1Rだったらトイレ付き!あなたの入居をお待ちします! 』だそうだ。」

明石「皮肉が効いてますねぇ・・・。」

提督「話がだいぶ横道にそれてしまったが肝心の中身はどうだろうか?」

提督「事前に聞いた概要としてはネームド艦載機に関する技術的な話らしいんだが。」

明石「そうですね。間違ってないですね。」


明石「海外機のネームドに関する研究レポートとかですね。」

時雨「僕らにはあまり関係ないかな。」

伊58「でち。」

提督「ざっと目を通した後で大まかでいいから説明を頼む。」

提督「でだ、伊58、北極方面の敵の動きはどうだった?」

伊58「無線の通信量が増えていたのとスクリューの音が多かったでち。」

提督「・・・・、スクリュー音が多かったか。」

提督「大型艦船のスクリュー音だったか?」

伊58「どちらかと言えば小型艦船が多かったでち。」



ゴーヤの報告を聞いて頭を抱える提督。


提督「はぁ―――――。

   まいったね、この間の作戦で艦娘を大量に失ったのを敵さんは見逃してくれないか。」

時雨「どういうことだい?」

提督「小型艦船の動きが活発になってるってことは

   上陸作戦に向けて補給船や揚陸艇を動かしてるってことだろうな。」

提督「戦艦や空母だけじゃ上陸作戦は出来ないからな。

   大型のみなら別場所への移動かとも思えるんだがな。」

提督「さらにこの間、艦隊司令部に顔見せに行った際に貰った資料によれば

   例の作戦は北方方面から軍の人員をそれなりに抜いていたらしいからな。」

提督「今までの経験から一度大規模の掃討戦を行った後は敵もすぐには動かないという経験則から判断したんだろうな。」

グラ「よくある、だろう、かもしれない、という奴か。」

不知火「それを敵が理解していれば動かす方面軍は自明の理ですね。」

提督「そして伊58がここへ帰ってくるまでのタイムラグを考えれば。」


不知火「敵は既に動いていますね。」

提督「あぁ、今頃どこかの島を落しているだろうよ。」

グラ「ふむ。まぁ、我々には関係があまりない話かな。」

提督「ここから北の千島列島までは日数が掛かる。

   それに単冠湾、幌筵にはまがりなりに泊地と名前が付くだけあって最低限の戦力はあるだろうしな。」

提督「幌筵はロシアのカムチャッカが近いし

   ロシアに義理立てする理由も薄いから攻められたら早々に放棄するだろう。」

提督「寧ろ放棄する理由が欲しいくらいじゃないのかな。」

不知火「あそこは日本にとって盲腸みたいなものですから。」

提督「そうだな。無くていい。有れば金も人手も掛かる無駄飯食らいだ。」

提督「とはいえ、先ほどの話じゃないが出撃については想定くらいはしておいた方がいいだろ。」

提督「何事も想定外を想定しておいたほうがいい。」

提督「矛盾を含んじゃいるがな。」ハァ

提督「伊58、状況は理解した。コーヒーを飲んだら自室で休んでくれ。」アリガトナ

伊58「分かったでち。」スズー


提督「それで、艦載機の話なんだが。」

明石「ざっと目を通した感じでは宗教的な魂の取り扱いがネックみたいですね。」

提督「宗教か。」

明石「えぇ。死ねば神として祀られる日本の場合は艦載機を神社に見立てて神を降ろす。」

明石「弓道型の娘は矢の一部に榊の木を使ってますから

   あれが神籬(ひもろぎ)として依り代になります。陰陽型は言わずもがなですね。」

明石「どちらも黄泉の国におわす御霊を神として召還して依り代に降ろす事で名前持ちを降ろしているわけです。」

明石「なわけなので分霊(わけみたま)で一部のネームドは増やせているでしょ?」

明石「まぁ、艦娘の魂に紐付けされてる所為で一部の艦娘の協力がないとネームドが現世に降ろせなかったりしますが。」

明石「ところが海外の場合、死なれた後の魂の行き場がめちゃくちゃみたいですね。」


グラ「うむ。われらゲルマン民族の場合は戦場で死ねばヴァルハラだ。

   そうでない場合はニヴルヘイムだな。」

提督「北欧神話の類だな。」

グラ「うむ。北欧神話だ。だけにキリスト教徒はヴァルハラに行っていなかったりする。」

時雨「死んだ後の魂の行き先に縄張りがあるのかい?」

グラ「あぁ。」

明石「日本の場合は仏教徒だろうが戦中、戦後に関わらず死んだ方はみな英霊で同じ場所に祀られているんですけどね・・・。」

明石「さらにドイツの場合は。」

提督「空母艦載機に乗っていたエースパイロットがいないと。」

明石「そうですね。大元の召還が困難な原因はそこに行き着きますね。」

グラ「とは言え資料を読む限りは技術的にはなんとかなりそうだがな。」

明石「そうですね。後は魂の定着をどうするかの問題みたいですね。」

グラ「現状でも依り代となるものを用意できれば1週間程度はこの世に顕現させる事は出来るようだ。」

提督「1週間か。」

明石「長いとも短いとも。」

不知火「まさしく切り札的な感じですね。」

時雨「切り札?」

提督「あぁ、ドイツのエースパイロットはその名の通り切り札(エース)揃いだからな。」

時雨「へぇ。」

グラ「日本のネームド達に負けず劣らずの猛者揃いだ。」

グラ「一例をあげるならウクライナの黒い悪魔に極北のエース、アフリカの星といった戦闘機乗りの強兵達だ。」

明石「彼らが使えるようになると相当に戦力強化にはなるでしょうね。」

グラ「時限だがな。」

提督「現状はそれを降ろすための機材その他で金が馬鹿みたいに掛かるが不可能ではないということか。」

明石「まっ、物好きがやるかぁ、くらいのレベルみたいですね。割りに合わない感じです。」

提督「大戦時の装備でも技術的に現代の物に置き換えられるものは

   置き換えて行っているがそれでもそんな状況なのか。」

明石「置き換えても妖精さん抜きでは艤装も含めて装備は動きませんから。」

グラ「理論だけが先行しているような形らしい。」

グラ「だけに実証実験の例が少ない。」

提督「そうか。全部の翻訳が終わったら教えてくれ。また司令部に持って行かないといけないからな。」

明石「司令長官も提督を中央に戻したいんですかね。」

提督「面倒はもう沢山だからお断りしたいんだがな、椅子磨きも机磨きも面倒なんだよ。」

提督「俺が抱えきれる仕事はこの両手の範囲内だよ。」



ぐっと手を広げる仕草をする提督。



時雨「そっか。意外に小さいんだね」

提督「あぁ、そうだ。小さいんだ。」


軍令部内 海軍戦争指導会議 



参謀達が壁に掛かった海図と机上に展開させている図表を前に激論を交わしている中

少しだけ離れたところでそれを冷めた様子で見つめる一団が居た。



Y元帥「千島列島に敵の襲撃とはね。」ヤレヤレ

I元帥「先の作戦で戦力を北からだいぶ抜いていたからな。」

Y元帥「先立っての作戦より半年程前に北の連中は叩いたばかりと言うのに。

    まったく敵の戦力は畑か何かから生えてきているのかね?」

K元帥「こっちは無能が多いのに対し敵が優秀というのは困ったものだな。」

K元帥「まぁ、先の大掃除でだいぶ片付きはしたがね。」

Y元帥「それについては同意だな。しかし、北の守りは正直それ程の重要性はないだろ?」

I元帥「そうだな。国民感情では北方四島を含む千島、まぁ、北千島は信託統治だから

    還ってきたというにはあれだが全体としては喜ばしい事ではあったんだろうがな。」

K元帥「実質は深海連中どもから守るのが困難になって金を掛けたくない、

    掛けられない露助どもに押し付けられたに過ぎないからな。戦略的重要性は薄いなあの地は。」

Y元帥「補給線の維持に拠点維持。毎年少なくない金が掛かる。」

I元帥「幌筵などカムチャッカの方が北海道本島より近い事も考えると死に金だよ。」マッタク

K元帥「対露助と言う事なら戦略的な意味もあろうが人外相手ではな。」ヤレヤレ

I元帥「金食い虫も良いとこだ。無駄に戦力を遊ばせる事になるがロシアの手前な。実に困ったもんだよ。」

Y元帥「でだ、司令長官よ。君はどうみるね?」


海軍の最高権力者である三人の元帥の話に耳を傾けているところに話を振られ

ややもあって口を開き自身の意見を述べ始める。


長官「そうですね。北海道の本島まで戦線の後退の後、防衛線の再構築が最善かと。」

I元帥「幌筵、単冠湾泊地は捨てるか。」

Y元帥「捨てる選択を逡巡せずに進言してくる辺りうちの参謀と比べてやはりなと言うべきかね。」

長官「幌筵の戦略的価値は現状皆無、

   単冠湾については太平洋側とは言え現状冬季の利用が困難な泊地に利用価値は高くありません。」

長官「先ほどのK元帥の話にもありましたが対ロシアという事であれば人員等を割くに値するでしょうが

   深海棲艦が海上封鎖を行っている現状ではわざわざ島嶼防衛に人員を裂くのは限られたリソースの無駄と考えられます。」

K元帥「深海連中が島を攻略したところで奪還作戦をやれる兵力を持っているのは我々くらいなものだからな。」

I元帥「露助の連中も一度こちらに返した以上深海の連中に渡したからと言って領有権に文句も言えないだろう。」

Y元帥「とはいえな。」

長官「はっ。」

Y元帥「始めにも言ったが国民がそれを許してくれんのだよ。」

Y元帥「大衆意見という奴は利用しやすいが制御がし難くてね。」

Y元帥「北方四島の返還は我が国の悲願だった部分もある。

    それを相手が深海棲艦という得体の知れん相手に再度渡す。

    なんて事になったらどうなると思う?」

I元帥「幌筵はともかく択捉の単冠湾まで落ちると今の政権が持たん。」

I元帥「今の政権が倒れると中共どもを抑えるだけの手腕を持った後釜が居らんのだよ。」

K元帥「我々作戦畑の人間からしてみればさっさと渡して出血は少なくしておきたいものなんだがね。」

Y元帥「Kの言う事も最もだが時に最善手が最良手とは限らんよ。

    毒と分かっていながら食らわないといけない場合もある。」


I元帥「たればこそ、単冠湾は落される訳には行かんのだよ。」

I元帥「幌筵を生贄にすることになったとしてもだ。」

長官「ですが、あそこは。」

Y元帥「必要なものは用意しようじゃないか。」

Y元帥「兵站部の連中の尻を叩けと言うなら幾らでも叩こう。」

Y元帥「先の作戦で風通しを良くしたおかげもあってだいぶ動かしやすくなった。」

I元帥「確かにな。」

I元帥「ただ、今の我々は限界まで減量したボクサーみたいなものだ。」

I元帥「無駄を削ぎ落とし必殺の一撃を放つ。」

I元帥「その一撃は有効な場面で打たないと此方がカウンターを食らってしまう。

    無能な指揮官や事務職どもは一掃したがこれ以上は失えないのだよ。」

長官「はっ。」

K元帥「君も大将として長いから我々の置かれている現状は分かっているだろ。」

長官「はっ。」

K元帥「そして、私は知っているぞ。」

長官「はっ?」

K元帥「君が実践的な即応部隊を持っていることをな。


長官「・・・・・。」

K元帥「懲罰部隊的な扱いで集めた精鋭を君の子飼いの部下に指揮させているだろ。」

K元帥「それを出してくれ。」

長官「しかし、あれは。」

K元帥「二度は言わんよ。」

長官「了解しました・・・・。」

I元帥「では、会議もこれで。」

K元帥「あぁ、やらねばならぬことが多いからな。」

Y元帥「長官。必要な物があれば言うように。」

Y元帥「君の部下を動かすのに椅子が必要なら用意するぞ。」

Y元帥「作戦の立案に関してもそちらの裁量でやってくれてかまわない。」

I元帥「単冠湾が守れれば幌筵はくれてやっていい。」

I元帥「千日手に持ち込めれば十分だ。」

I元帥「頼んだよ。」



三元帥はそういい会議室を去っていった。

後には元帥達首脳部の、無能は要らないと暗に言った言葉に青ざめた参謀達と困ったなといった顔をした長官が残された。



長官「地位や物で動く奴ならどんなに楽なことか。」

長官「実に面倒な事になった。」



長官は一人ごちる。

子飼いの部下とはいったものの猟犬ではなく狼。

その首に首輪と手綱をつけることは難しい。

さらに首輪と手綱をつければ間違いなく動きが鈍くなる。



長官「獲物を良く狩る狂犬なれば繋いで忠犬にした結果獲物を獲らなくなるよりかはましか。」



どうしたものかと切れる手札の少なさを嘆かずにはいられない長官だった。


千島列島  幌筵島


リ級「敵の施設は破壊完了です。」

リ級「上陸姫様が施設設営を開始しています。」

水姫「幌筵はあっさりと落ちたわね。」

リ級「設営後は上陸姫様は撤収されるそうです。」

水姫「集積地に引き継ぐのでしょ?妥当だわ。」

水姫「それぞれがそれぞれの仕事をきちんとこなす。理想的じゃない。」

水姫「名は体を表すではないけれど上陸作戦が主任務ですもの。」

水姫「それで設営にどれくらい掛かるのかしら?」

リ級「拠点としての要塞化に2日程、とりあえずの使用で有れば後1時間ほどとの連絡です。」

水姫「物資の揚陸は時間が掛かるものね。それに破壊するより作るほうが大変だし。」

水姫「仕方の無い事ね。ただ、もう少し早くなるといいのだけど。」

リ級「天候が気になりますか?」

水姫「えぇそうね。単冠湾の連中を逃がさず沈めるには天候は悪いままのほうがいいもの。」

水姫「普通なら天候は良い方がいいのでしょうけれど私達は逆よ。」

水姫「・・・・・、私の部隊全員に通信を繋いでもらえるかしら?」

リ級「了解いたしました。」


ブッ ブゥウゥン ザリザリザリ



リ級「部隊の全深海棲艦、通信のチャンネルが繋がりました。」



ブゥゥゥウン



水姫「勇敢なりし我が同胞諸君!貴官らの働きにより幌筵を陥落せしめることが出来た!」

水姫「諸君らの働きは全深海棲艦同胞に勇気を齎した!」

水姫「我が同胞、北の精鋭諸君!我等の悲願達成の時は近い!」

水姫「先だっての侵攻作戦時に我等は実に多くの血を流した。」

水姫「それは実に壮絶な戦いの末の物であった。」

水姫「敵は先の作戦で我等を退けた事により再度の侵攻作戦まで時があると油断した。」

水姫「そう、愚かしくも油断をしてしまったのだ。その結果がどうだ!?」

水姫「今!我等は敵の拠点幌筵を落し更に単冠湾へと手を伸ばそうとしている!」

水姫「諸君らが流した血は決して無駄では無かったのだ!」

水姫「我等が敵の拠点を落し、北の海から艦娘共を追い出すのだ!」

水姫「我等が北の海を掌中に納め北の海に我等有りと大いに喧伝してやろうではないか!」

水姫「我等が深海棲艦の未来を示し道を照らすのだ!」

水姫「我等深海棲艦に栄光あれ!」

ブツン

リ級「お見事な演説でした。」

水姫「これから敵の泊地を更に攻めないといけないのですもの。」

水姫「演説一つで士気が上がるのなら安いものよ。」



北方水姫の演説が終わった後、何処かから誰とも無く鬨の声が上がる。

幌筵を落した凱歌を歌う深海棲艦達の士気は高く。

その鬨の声は吹雪の音に掻き消される事無く海域に響き渡るのであった。

本日分は以上で終了です

幌筵、ぱらむしる、初見で読めた方いらっしゃいますでしょうか?私は読めませんでした

次回でたぶんグラ編は終われます、いや終わらせます……

1話が長い事が多くもう少しうまく纏めれたらなぁと思っています、申し訳ありません

水姫の演説は共産っぽくなるようしてみました、同胞とか栄光とか入れて多用したらそれっぽくなりますね

いただいている感想レスは参考にさせていただいたりもしています、いつもありがとうございます

では、次回もお時間よろしければおよみいただきますようお願いいたします

そう言えばゴーヤ達は提督には最初から心許していたんか?

おつおつ
覇権を握る鍵をちらつかせればどこだって強欲になるのが当然とは言え、日本だけはボケてるんだろうな…と納得できるのが笑える所w

乙です
毎回面白いっす
続き期待っす

1です、最近寒いですが皆様体調にお気をつけ下さい

最初にお詫びをいたします、今回でグラーフ編終わってません、本当にすみません

色々話が長くなってしまっています、次回には戦闘パートでけりを………

ぐだぐだ進行で本当にすみません


第十一話 ラッパが鳴って壁が崩れた 後編


執務室


不知火「どうぞ。」

提督「ん。」

提督「上手くなったな。」

不知火「ありがとうございます。」

提督(コーヒー豆の件は不問にしておくか。不知火が淹れる技術が向上したので有れば安い買い物と言えなくは無い。)

不知火「司令。」

提督「ん?」

不知火「失礼な事を考えていませんか?」

提督「いや。」



司令部へ持参する書類の作成に二人が夜の時間を過ごしている時だった。

ジリリリリン。

司令部直通の古めかしい黒電話。それも、滅多に鳴らない電話である。

にも拘らず不知火が特に気合を入れて磨いているため艶々の電話が鳴る。

すぅっと一息、息を吸い。

見る者がいれば嫌々といった態度で。提督は電話に出た。


ガチャリ。


提督「仕事ですか。」

長官「あぁ。」

提督「北が落ちましたか。」

長官「潜水艦娘から聞いたかね。」

提督「えぇ、大まかに敵の艦船の量を。」

長官「君からドイツとの情報員派遣交流に関する報告書をお持ちしますと連絡を受けていたからね、

   言わずとも分かっては居るだろうと思っていたよ。」

提督「理解しているのと受けるかどうかは別ですよ。」

長官「距離のことかね。」

提督「うちから出すにはちと遠いかと?」

長官「君らしくないな。」

提督「………。はぁ、航空輸送の手配まで済んでいらっしゃると言う事ですか。」

長官「分かっているなら無駄な話は省きたいな。」


提督「いえいえ。楊修の様にはなりたくありませんので。

   しっかりと説明と作戦の発令を待ちませんと。」

長官「分かった。文書としての発令自体は明後日になるが君を指揮官として北の防衛戦を任せたい。」

提督「………、奪還ではなく防衛なんですね。」

長官「まさしく鶏肋だよ。」

提督「長官より上が関わっていらっしゃる。」

長官「あぁ、それもお三方、皆が君の指揮を御所望だよ。」

提督「ですと捨てるに惜しいというより捨てられない。」

長官「政治が絡むからな。」

提督「これは武者震いしますね。」

長官「はっはっは、戯言を。君がそんな玉かね?」

長官「謙遜を知っていることは君の美徳だが今は冗談にしか聞こえんよ。」

提督「どれくらいお出しいただけるんですか?」

長官「先の報告書の最後に付けてあった『 意見書 』。

   あれを参考に出撃参加の者には30万を最低限で保障しよう。守りの為の留守には10万。」

長官「後はそこの基準に沿った報酬の支払い。

   他も燃料に弾薬、修理に掛かる費用も持とうじゃないか。」

提督「至れり尽くせりですね。」

長官「こちらの手の内は見せた。そして切れるカードもこれだけだ。後は何も出んよ。」


提督「いえいえ、十分過ぎる援護射撃。ありがたく。」

提督「あぁ、申し訳ないのですがいくつかお骨折りいただいても宜しいですか?」

長官「君が要求をするかね。」



言外には珍しいという気持ちと無欲のように見えて欲が有るのだなと言う感想。



提督「早急に御用意いただきたいのですが何せ戦争は艦娘を含め様々な犠牲者が出ます。」

長官「うむ。」

提督「その為、既に落された泊地から撤退してきた部隊を再編するにあたって所属の問題が有ると思われます。」

長官「成る程。君は指揮系統を統一する為の権限を望むと。」

提督「はい。指揮系統が一本化されていない部隊を指揮するのは御免蒙りたいですね。」

長官「いいだろう。用意しよう。」


提督「それからもう一つ。」

長官「ふむ。続けたまえ。」

提督「落された泊地を守る為に散った者もいるかと思います。」

提督「私が現地入りした際にはそれらを調べ直ぐにそちらへ御報告したいと思います。

   ですので特進と恩給の手配を願いたく思います。」

長官「成る程。君は優しいな。」

提督「いえ。私ほどの悪党は自分でも知りませんよ。」

長官「そうかね。ふむ。そうか。」

長官「故人になってしまったが私の古い友人は君の事を高く買っていたことを改めて思い出したよ。」

提督「教授にはお世話になりました。

   ですが落ちこぼれとして弟子の末席を汚していたに過ぎません。」

長官「彼は勝つ為の手段を選ばないという点において割り切り方がいいと言っていた。」

長官「そういう意味で正しく戦争を理解しているとも言っていたな。」

長官「正式な発令書は輸送時の飛行機の中で渡すことになるかと思うが

   発令自体はこの電話でされたと受け取ってくれ。」


長官「他にはもう無いな。」

提督「では、最後に一つ………。」



そう言い提督は長官に話をする。



長官「ふむ。管轄が違うがまぁ、何とかなるだろう。ふん。宜しい。」

長官「手配をしておこう。では、頼んだよ。」

提督「了解いたしました。直ぐに行動へ移ります。」

長官「あぁ。機材の都合が付くまで1日かかる、明後日、XXX飛行場に行ってくれ。」

長官「時間の指定も改めて連絡しよう。ではな。」

提督「はっ。」



こうして深夜の電話で88鎮守府の人員が北の魔女達を迎え撃つ事が正式に決まった。



提督「不知火。まだまだ残業だ。すまんが手伝ってもらっていいか?」

不知火「朝まで二人でと言う事ですか。」ヌイ?

提督「ん。」

不知火「下着を替えてきます。」ヌイ!

提督「ん?」



情報収集は翌朝近くまで続いた。


翌日 早朝


召集の全体放送が流れ鎮守府に所属しているゴロツキ共全員が押し合い圧し合い会議室になんとか納まる。



提督「皆集まったな。デカイ山だ。」

摩耶「儲け話は嬉しいねぇ。」

川内「他人の不幸は黄金の蜜味。」

時雨「エバラかな?」

雪風「焼肉のタレみたいな表現ですね。」

雪風の返しに一同が沸く。

長門「で、幌筵か?」フフン

提督「何で知ってるんだ?」アレ?

長門「明石がいい儲け話が有るって皆に10ドルで情報を売って廻っていたからな。」

川内「北で敵の大規模進軍が起きていて幌筵が落ちただろうからその救援に動くかもしれないってね。」



まったくと言う表情で顔を覆う提督。


提督「明石の前じゃ迂闊に話も出来んな。」

提督「だが手間は省けた。そういう訳だ、留守当番の奴以外は全員遠征だ。」

川内「で、幾らなの?」

提督「出る奴は30万保障だ。」

川内「おっおぉ!!」

摩耶「こいつは久しぶりにでけぇな。」

提督「更に燃料、弾薬全部持ち。」

雪風「お代わりもいいですか!?」

提督「毒ガス訓練なんかしないから遠慮なくしとけよ。」



他人の財布で暴れられるとだけあって沸き立つ一同。



「Fucking Shit! どうして来月まで待てないんだ深海どもめぇ……。」



そして、不幸にも?留守の当番だった者達からは悔しがる声多数。


瑞鶴「私は寒いところ苦手だからパース。」



しかし、儲け話にまったく興味を示さない者も居た。



川内「やったぁ!大儲け確定だぁ!」



空母組みの稼ぎ頭それが出ない。

それだけで撃沈報酬が増えることは確定的なので川内が喜びの声を上げる……。

が。



提督「青目だ。」



会議室の長卓にだらし無く足を上げていた瑞鶴の目つきが変わる。



瑞鶴「間違いないの?」

提督「情報収集してる段階だが何隻か見たんだそうだ。」

提督「現地は今時期吹雪が強い。

   それを考えれば艦載機を扱うのに長けてる奴が出張っていてもおかしくないだろ?」

瑞鶴「始めに言え禿げ。いいわ。あんたの指示に従ってやるわ。」

瑞鶴「でも、青目の連中は私の獲物よ。好きにやらせて貰うわよ?」

提督「あぁ、存分にやれ。」


瑞鶴「初月。」

初月「あぁ、君の背中は僕が守ろう。」

提督「そういう訳だから皆、ヲ級フラッグシップには気をつけろよ。」

提督「間違えて口説きに行くと旦那の艦攻からバイブ(魚雷)を尻に食らう羽目になるからな。」

川内「やだ、提督、表現が卑猥!」イヤン!

摩耶「アナルにバイブかよ。」エロオヤジ!

瑞鶴「他の撃沈報酬は欲しい奴が持ってけばいいわ。ただ青目だけは私の獲物よ。」

時雨「心得たよ。」

提督「現在確認されている敵の総旗艦は北方水姫だ。心しておいてくれ。」

提督「現地までの移動だが北海道まで輸送機で行きその後根室から単冠湾まで航行だ。」

長門「ファーストクラスかな?」

提督「エコノミーだ。」



輸送機が人員輸送用ではなく貨物輸送用というやり取りにやれやれとかケチだのといった反応が返ってくる。



提督「遠足のしおりは無いが各自必要なものはきちんと準備しておけよ。」

提督「出発は明日だ。」

提督「必要な買い物がある奴は今日中にしておけ。」

提督「以上。解散!」


明石の工廠



グラ「私の口座に入っている金を全部渡そうじゃないか。」

グラ「こいつを頼む。」

明石「いや、これは……。」

グラ「金さえ出せばクレムリンだって引っ張ってくるんだろ?」

明石「いえ、そのですね?」

グラ「足りないと言うなら今度の出撃で貰える稼ぎも全て渡そうじゃないか。」

明石「………、グラーフさん。何がそこまであなたを駆り立てるっていうんです?」

グラ「私のな。」

グラ「私の艦娘としての。」

グラ「Graf Zeppelin の魂が囁くんだ。」

グラ「奴を倒せとな。」

明石「最期はバルト海でソ連の標的艦でしたっけ。」

グラ「たまには血と魂が囁くままに戦うもよしであろうよ。」


明石「剣呑ですね。」

明石「とはいえ。よござんす。

   納得いく理由があるならこの明石。腕を奮いましょう。」

グラ「頼んだ。」

明石「秋津洲さん!店番おねがいしますよ!今日は稼ぎ時ですからね!」

明石「私は今からとっておきのヤバイ奴らを用意しなきゃいけなくなりましたんで宜しくお願いしますよ!」

秋津洲「まかされたかも!」



出撃に向け必要な物を買いに集まってくる艦娘達の相手を秋津洲に任せ

明石は工廠の奥へ引っ込んでいったのだった。


執務室



提督「第一種軍装の全着用品を引っ張り出すのは久しぶりだな。」

不知火「似合っています。」



不知火から白色の皮手袋を受け取り手に嵌めその感触を確かめる。



提督「あぁ、ありがとう。手入れが十分行き届いていたみたいだな。」

提督「染み一つ無く綺麗なものだ。」



肩から参謀飾緒を下げ軍帽を被り確認する。



提督「不知火。北海道土産は何がいい?」

不知火「観光気分ですか?」

提督「そんな所だ。」



提督が久しぶりに出す着用品の確認をしている所に長門がやって来る。



長門「提督がきっちりとした服装をするのは珍しい。」

提督「司令部に挨拶に行くとき意外は堅苦しい服装していたところで意味がないのでな。」


長門「成る程、一休禅師の真似事でもする気か。」

提督「人は見た目が九割だからな。」

提督「この格好で突っかかってくるアホは、まぁ、そういう事だ。」

長門「ぶれないな。」

提督「なに、権限は貰ってる。後は解釈の仕方の問題だ。」

提督「状況に応じて拡大解釈もするのが士官の仕事だ。」

提督「掃除機で部屋を円く掃除すると隅っこに埃が残るだろ?」

長門「あぁ、そうだな。」

提督「そういう事だ。」



提督もまた出撃に備えていた。

提督が発令の電話を受けて2日後

提督達は単冠湾のある択捉島へ現地入りしていた。


単冠湾泊地 鎮守府建屋内執務室


A大佐「君が中央から派遣された者かね?」

提督「えぇ、これが人事発令書です。そしてこちらが作戦命令書です。」

B中佐「我々がここの指揮を執る。大佐が連れてきた部隊は我々が預かろう。」

提督「こちらの泊地はC少佐が指揮を執っていると伺っていたのですが

   お二人はどちらの所属でしたのでしょうか?」



同じ大佐の階級でも所謂先任という奴が軍隊という組織では幅を利かせるものだったりする事がままある。

自分より年若そうなといっても壮年というより中年といった提督を、じろりと見やるA大佐。



A大佐「幌筵の守備隊として守っていたが?」

提督(成る程、敗残の将か。資料と間違いないようだな。とすれば中佐は太鼓持ちか。)

提督(作戦命令書に目を通すことすらしないか。やれやれ。)

提督「これは失礼しました。私が連れてきた部下は外におりますれば。」

提督「御足労をお掛けして申し訳ありませんが、挨拶させますので外へ宜しいでしょうか?」



提督が案内するは鎮守府外埠頭。


A大佐「いったい何処に……。」



げしと大佐の背中を一蹴り。



B中佐「貴様!な……。」



二の句を告げさせず同じく中佐も一蹴り。

どぶんと豪快な水音が二つした後に長門が近づいてくる。



長門「提督。幌筵から逃げてきた艦娘達を食堂へ集合させたぞ。」

提督「C少佐は?」

長門「あぁ、捕まえておいた。」

長門「で、提督は?」



胡乱な者を見る目つきで見る長門。その目は始末をしたのかと言いたげである。



提督「言っただろ?権限は貰っていると。」

提督「指揮系統の簡略化。無駄な嘴を減らしただけだ。権限の範囲内だよ。」

長門「………。」

提督「言いたい事は分かるがな。

   これから一致団結して事に当たらないといけないのに指揮官を減らしてどうすると言いたいんだろ?」

提督「俺が借りられるだけの虎の威を突っ張ってんのにそれが分からん奴は後々癌にしかならん。」

長門「そうか。」

提督「昔から言うだろ小人閑居、不善を為すってな。」



袖を通さず肩口に掛けたトレンチから煙草を取り出し火をつける提督。



提督「これ一本を吸いきるまでに浮かんでこなければ名誉の戦死だ。」

提督「司令部に特進と恩給の申請をしてやらんとな。」

長門「そうか。遺族が居ればありがたくて涙が出るだろうな。」

提督「居なけりゃ恩給は国庫行きだ。居ないで貰いたいもんだよ。」



じじっとフィルター付近まで煙草が燃えきるまでしばし。



提督「万に一つも生きちゃ居まい。さてと、食堂へ行くか。」

長門「確認しなくていいのか?」

提督「生きて戻ってくるガッツがあるなら愚痴の一つくらいは聞いてやるさ。」

提督「聞くだけは只だからな。今は生きている方が大事だ。」

長門「違いない。」


食堂

食堂には幌筵から逃げてきた艦娘達が集められていた。

単冠湾の施設でもって負傷した者達は傷を治している。

その順番は提督の指示で軽症者、つまりドックの占拠時間が短いものからの入渠が優先されている。

食堂には修理を終えた者、まだ修理を待っている者達、その双方が集まっている。

食堂前方に現れた提督に艦娘達の視線が集まる。



提督「まず、海軍を代表して君達に謝罪をさせてもらいたい。」



頭を下げる提督。



提督「君達が幌筵から撤退するに当たって死守を命じ、

   のうのうと自分達は生き延びた愚か者二名は不幸な事故によって戦死した。」



広がる動揺。ざわざわと騒ぎ出す室内。

ここで提督の目から涙が一筋、頬を伝う。



提督「君達の様な熟達した艦娘を失う事の愚かさを上層部は何も考えていない。」



提督は単冠湾に着いた後、撤退してきていた彼女達一人ひとりに労いの言葉を掛けて回っていた。


提督「私は君達が粗末に扱われた事に実に強い怒りを感じている!」



怒りのままに提督が食堂の長卓を叩くとざわめく艦娘達が水を打ったように静まり返る。

そして一斉に提督の方を向きその次に紡がれるであろう言葉に耳を傾ける。



提督「私は私の権限において君達に約束しよう。

   今後、君達がこの北の地で過ごすにあたって十分な物資の支援が受けられることを。」

提督「そして、これは君達の散っていった仲間の命を金に変える様で心苦しいが

   死んだ艦娘の子の遺族へは手厚い保障を。

   またここで生きている君達へもきちんとした保障が払われる事を上へ働きかけよう。」

提督「そして、実に伏してお願いしたい。

   幌筵を落した敵は今も此方へ向け進撃してきている。

   今、この地で敵を押し留めなければ北海道、本州と敵は侵攻してゆくだろう。」

提督「身勝手なお願いかもしれない。しかし、ここに今、戦える戦力として居るのは君達しかいないのだ。」

提督「すまないが、力を貸して貰えないだろうか。」



食堂に集まった艦娘達へ向け演説を行った後、頭を下げ力を貸してくれと頼む提督。

しばしの沈黙の後、代表格の艦娘がゆっくりと立ち上がり口を開く。


龍驤「なんや本営から応援に来たとか聞いとったから

   どんな偉ぶった奴が来るんかと思うとったけど随分腰の低い司令やなぁ。」

龍驤「幌筵から逃げてきたうちらに文句を言うでなく労いを一人一人に掛けて回っとったし。」

龍驤「さっきまでうだうだ言ってたうちんとこの司令に爪の垢でも飲ませたいくらいやわ。」

龍驤「あんたん所の艦娘は大事にして貰っとるんやろなぁ。」

提督「………。」

龍驤「うちらに死守せえ言うたアホんだらが生きとったなら出撃する振りして逃げようかと思ってたんやけどなぁ。」

龍驤「あんたの言うように逃げたら本土にまで侵攻してくるわなぁ。」



そして、また沈黙。


龍驤「しゃぁないわ。あんたに力貸したるわ。」

提督「すまない。感謝する。」

龍驤「感謝は敵を倒してからにしときぃ。しっかりとした指示。頼むで。」



ぱんっと提督の背中を叩く龍驤。



提督「では、敵からこの単冠湾を守る為C少佐との話し合いがあるので

   今暫く待っていて貰えるだろうか?」

龍驤「ええで、行ってき、待ってるで。うちらん命(タマ)あんたに預けるわ。」

提督「ありがとう。」



提督から自然と差し出された手に龍驤は握り返す。



龍驤(なんや分厚い手やな。苦労を知ってる手や。叩き上げなんやなぁ。)



しげしげと眺め感想をしばし。



提督「そろそろ手を離して貰っても?」

龍驤「ん。あぁすまんな/// 待ってるで!」



執務室前廊下


川内「持ってきた寒冷地迷彩服、全員に配布終わったよ。」

提督「幌筵の娘達にもか?」

川内「うん!」

提督「ありがとう、助かる。」

川内「にしても食堂の演説聞いてたけど。提督はアカデミー賞でも狙う気なのかな?」ニシシ



その笑顔は悪戯っぽく。



提督「お前にばれるようじゃオスカーは無理だな。」

川内「役者だねぇ。」

提督「役者にもなるさ。お前らと違って、涙も下げる頭も只だ。」

提督「東郷元帥じゃねぇが皇国の興廃この一戦にあり。だ。」

提督「負けると色々国が持たねぇ。つまり後がないんだ。」

川内「戦力的な問題?後、それ秋山真之だよ?」

提督「誰の発言かはこの際いいだろ。後、戦力より政治的な問題だ、上が絡んでるならな。」

提督「とりあえず今は説明する時間が惜しい。うちのごろつき共は?」

川内「舌なめずりして待ってるよ。」


提督「よし。後は少佐に英雄として起って貰うだけだな。」

川内「悪党だねぇ。でも、楽しそうだね、提督。」

川内「私ね、楽しそうにしてる提督、これで結構好きだよ。」ニュフフ

提督「ふん。惚れたか?」

川内「あっ、それは無いかな。禿げはちょっとね。」

提督「つれない奴だなぁ。まぁ、いい。動かせるうちの総力だ。敵は殲滅だよ。」

提督「連中にこの地で春の陽を拝ませる訳にはいかんのでな。」

川内「春はいいよね。太陽の日差しが暖かくてさ。」

提督「そうだな。太陽の陽は等しく暖かいが連中に向いてもらっちゃ困る。」

提督「太陽の神様、イアリロだったか?」

川内「なにそれ?」

提督「北の魔女だったか?北方水姫の別名。スラブの方の神様でな男性神だ。」

提督「男の神ならいい女が揃ってるこっちの味方をしてくれるだろうさ。」

提督「なんせ幌筵を生贄にしてるんだ。見返りは貰わんと。」

川内「悪党っぽい台詞だね―――。」

提督「さて、時間だ。敵の艦隊には袖幕へ御退場願おうか。」



そう言い提督は執務室の中へ入って行った。

本日分の更新は以上でございます、話があんまり進まない

提督の人となりはだいたい分かっていただけたかなぁと

自分で書いていてなんですがおっさんが提督しているSSって滅多に見ないですね、まぁ、需要が無いですもんね………

自分で言ってて凹んでしまった……、はい、お読みいただいている奇特なあなたに感謝です

新谷先生の漫画は台詞回しも作品の肝だったりするので真似するのが難しいです、毎度の苦労

次回こそは終われると思います、後、グラ編の後は予定は未定です

こいつの過去話とかどんななの?とか有りましたらレスいただきますとネタとして使わせていただくかもです!

ではでは、ここまでお読みいただき本当にありがとうございました!

おつおつ
難しい部分を活かしきる技量とか表現力が大変だからなあ…
まあ好き放題暴れまわるギャグ路線な提督やら、ガチで世界の存亡を賭けて戦う世界線もあったりで様々かとw

明石とぬいぬいとかもかもが見たいな

お世話になります最後の更新に来ました
これでグラーフ編終了です、また、今回の更新も長い事を先にお詫びいたします
更新の度に頂いているレスがだんだん減ってきているので
長いのが不興を買ってしまっているのか申し訳ありません
お時間よろしければお付き合い下さい


食堂では提督が連れてきた88鎮守府の面子が出撃の命をいまかいまかと待っている。

「長っちー。煙草の火貸してくんない?」

長門「私は煙草を吸わないから持って無いぞ。」

「あー、そうだった。ポーちゃん火貸して。」

「え~。と言いたいところですが。よく持っているの分かりましたね~。」

「いや、ポーちゃんカクテルパーティすんでしょー?」

川内「ライターなら私の貸したげるよ!」

「あれ?川ちゃん煙草吸うようになったの?」

川内「ううん。違うけど。お守り……、かな?」フフ



川内のライターから火を貰い煙草を吸い始める重雷巡。



摩耶「あんたは酒は酒でも飲めない酒パーティすんの好きだよね。」

「燃えるのがですねぇ~。すっごく綺麗なんですよぉ~。」

「モロトフカクテルっていいですよねぇ~。」

「アルコール度数が高いほどいい色になりますよねぇ~。」イヒヒヒ



わいわいと食堂で賑やかにかつにこやかに談笑する一同。

ともすればこれからちょっと飲み会にとでもいいだしそうな気楽さがただよう雰囲気である。

だが、龍驤にはまったく別の物に見えていた。


龍驤(なんやのこの集団。今まで色々な鎮守府の娘達と演習で会った事あるけど……。)

龍驤(あの重雷巡、煙草の火を魚雷に押し付けて消しおった……。

   頭の螺子が飛んでるんちゃうか?あかんやろ、自殺する気かいな……。)

龍驤(なんかヤバイ。)



パッと見で見てもバラバラな装備に見たことのない兵装。

どうにか自分が知っている兵装でも当たり前かのように改修終了済み。

中でも龍驤の生存本能が全力で警戒警報、それも最大級の、

例えるなら姫級複数に出会ったのと同じくらいの危険を告げる一団が居た。

相手が同じ艦娘で無ければ全力で逃げるか死を覚悟するか、

そんな雰囲気を漂わせているのが……。


時雨「雪風、ほら上着のボタンはしっかり留めないと。」プチプチ

雪風「あっ、ありがとうございます。」タスカリマス

初月「暖かそうだな。」イイナァ

時雨「カイロあげようか?」ハイ

初月「本当かい!?ありがとう!助かる!」ワーイ!

龍驤(あの駆逐連中は絶対敵にまわしちゃあかん奴や。)

龍驤(閻魔庁にピンポンダッシュするどころの冗談じゃすまんであれ……。)

雪風「あっ、あなたがこちらの艦娘を代表される方ですか?」

龍驤「あっ、うん。せやで。よろしゅうな。」ヒキツッタエガオ



握手を促すように手を差し出してくる雪風。

身長がやや高いくらいの龍驤の耳元で周囲に聞こえないくらいの声量で囁く。



雪風(身の程を弁えてる方は大好きですよ。)フフフ

龍驤(ヒエッ)

雪風「宜しくお願いしますね。」

龍驤「」コクコク

龍驤(こんな荒くれを束ねてるあの司令は一体何者やねん……。)

龍驤(うち、もしかしたら悪魔と命のやりとりしてしもた……?)



龍驤が後悔をし始めた時、提督は戻ってきた。


ゴッゴッゴツ。

グッドイヤーの重厚な革靴の印象とは間逆の軽やかな、

それも今にも踊りだしそうな高揚した雰囲気がその靴音からは感じ取れる。

提督「総員、傾注!」



一言、提督が述べると先程までの和やかな雰囲気が一転、全員の顔が引き締まる。



提督「少佐の説得に手間取った。が、まぁ、なんとかなった。」

提督「輸送機の中で簡単な説明は行ったと思うが精鋭部隊による敵指揮官斬首の後、全員で殲滅だ。

   部隊は事前の打ち合わせ通りに2つに分ける。」

雪風「しれぇ!あれ!やって下さい!」

提督「ん?」

雪風「久しぶりの全力出撃です。」

提督「……そうだな。分かった。」

時雨「提督は雪風に甘いね。」

提督「そうか?俺はお前達全員に信頼を置いている。」

提督「いいか?信用じゃなくて信頼だ。その信頼にお前らは応えてくれるんだ。」

提督「出来る限りの事はやるべきだろう?」



手袋を嵌めた手をぽんと一打ち。



提督「さっ、全員並んでくれ、やるぞ。」



ざっと荒くれ連中が整列。



提督「多くは言わん。」

提督「俺はお前達に生きて帰って来いなんぞ甘っちょろい事は言わん。」

提督「なぜならお前達が生きて帰って来ることは俺の中で確定事項だからだ。」

提督「だから俺からお前達に命令する事はただ一つ。」

提督「敵は皆殺し、見敵必殺、殲滅だ。」



提督が話し終わり手をさっと上に上げる。

握りこぶしをつくり前へ振り下ろす。



提督「88鎮守府、総員出撃!」

一同「応!」



血に飢えた狼達が野に放たれた。


中部千島 新知島(しむしるとう)近海


長門「さてとそろそろ敵の哨戒網に引っかかる頃合か?」

時雨「瑞鶴達の部隊は無線封鎖を開始したみたい。」

川内「敵も律儀に島伝いに南下してきているみたいだしね。」

摩耶「千島列島のそれぞれの島に設置されている早期警戒用レーダーを潰しながらだからね。」

長門「教本通りではあるが潰さないでいると進撃方向その他丸分かりだからな。」

長門「潰さなければならないというのは敵からしてみれば嫌なものだろうな。」

雪風「余計な手間が増える分進撃が遅れるからですね。」

長門「そうだ、しかも部隊に先行して潰さないと意味が無いからな。

   敵の先行部隊にぶつかるのはそろそろだろう。」

グラ「ならばそろそろ細工を始めるとしようか。」

グラ「艦爆隊は全機発艦!Vorwärts !」

長門「というわけで我々は。」

川内「案山子になるんだね。」

長門「あぁ、なかなか面白い発想をするものだよ提督は。」



雪風、時雨、川内、摩耶といった魚雷を搭載可能な娘達が取り出したのは………。


雪風「弾頭は外してしまっているそうです。」

時雨「後はこのボタンを押せば……。」



ポンッと小気味よい音がして膨らむのは例の失敗ペンギン案山子。

案山子 シレェ!シレェ!



川内 ブホッ

摩耶「ちょっ、いつの間に雪風の声を……。」ブホホッ

雪風「悪意を感じます……。」

時雨「明石さんを小一時間程問い詰めないといけないようだね。」フフフ



大きさは実に様々な案山子がゆっくりと海面に投下される。

それらの魚雷のスピードは強速程に落してありそれに並走し長門たちは進む。

シレェ!シレェ!シレェ!シレェ!


川内「不要品の組み合わせだからお安い罠だね。」

長門「あぁ、これで、即席の大艦隊の出来上がりという訳だ。」クックックッ

摩耶「でも、罠ってバレバレだよな。」

時雨「提督は罠ってバレて良いって言っていたけど。」

長門「あぁ、むしろ罠と意識してくれないと始まらないんだ。」


深海棲艦 先遣斥候部隊

ネ級「急に敵が増えた!?」

ル級「電探の艦影がいきなり増えたわね。」

ネ級「罠とは思うけれど北方水姫様へ報告を。」


深海棲艦 単冠湾泊地攻略部隊本隊

水姫「明らかに罠でしょうね。」

リ級「如何しましょう?」

水姫「意図が気になるわ。」

リ級「意図ですか?」

水姫「私達が南下していることは幌筵から撤退した娘達や敵の警戒施設を潰して行っている事から

   分かるだろうし、いちいち小手先の策を弄せずとも規模の把握は出来ているはず。」

リ級「現在進攻して来ている敵部隊は罠と思しき部隊と同数以上の部隊がもう一隊だそうです。」

水姫「急に数が増えた部隊をA、もう一隊をBとした時に本隊はBでしょうね。」

リ級「それは間違いないかと思います。」

水姫「だからこそ尚更ここまでバレバレの罠を仕掛ける意図が分からないの。」

水姫「自分に自信があれば戦力を分けることなく集中するべき。」

水姫「にも関わらず、直ぐに見破られる罠を仕掛ける為に部隊を分散する意図は何なのかしら?」

リ級「敵Aから6隻ほどがBへ向けて移動、合流したそうです。」



6隻といえば敵の艦隊において最小戦術単位。

罠を仕掛けて本隊に合流という事か………。

脳裏によぎるは戦艦棲姫の言葉。



「敵には超がつく熟練の強兵(つわもの)が居る。」



水姫(超がつく熟練の強兵。であれば小手先の罠など不要のはず。)



否応無く増す疑念と違和感。

仮に罠だとしてそれを放置するのはどうか?

敵の罠にまんまと掛かり戦線の崩壊、指揮官である自らの命を差し出したのが重巡棲姫。

それを考えれば分かりやすいまでに罠と分かる罠を放置することは危険だ。



長門「今頃、罠の意図を必死に考えているだろうな。」

長門「敵の指揮官、北方水姫が優秀であればあるほど答えの見えない袋小路に嵌りこむ。」

摩耶「そんなもんなのかね?」

長門「策を弄して戦うタイプの知将は敵の策や罠に意味を見出したがるものなんだ。」

長門「結局のところ、戦争は戦っている相手との心理の読み合いなんだよ。」

長門「騙し騙され如何に相手を欺くか。戦局が均衡状態では特にだ。」

川内「敵が深く考えすぎて自滅してくれるって事か。」

時雨「まさに策士、策に溺れるって事だね。」

雪風「と言っても偽装の為に電探や無線全てをオフにするのはいささか不安を覚えます。」

グラ「後は、誰が罠を確認しに来るかが問題だな。」

長門「釣り上げれる獲物は何にしてもある程度以上の大物には違いないだろう。」

時雨「そうだね。僕も敵の副官クラスは固いと思うよ。」

長門「罠と分かっていても罠を確認せずには要られない。」

摩耶「まるで禁断の果実だねぇ。」


深海棲艦 単冠湾泊地攻略部隊本隊

水姫「敵の艦隊Aは明らかに罠。

   そしてどんな仕掛けが待ち受けているか分からない以上ある程度の状況判断、

   対応能力に長けた者を向かわせなければならない……。」

水姫「そうか、くそ。敵の狙いは指揮官能力の分散か。」

リ級「罠を無視して後ろを突かれるのも痛いですし。」

水姫「罠を罠とあからさまに分かるように細工する事でこちらの行動に制限を加える気ね。」

水姫「敵の指揮官が幌筵に居たのと変わったようね。一筋縄ではいかなさそうねぇ…。」



愚鈍でさっさと幌筵を明け渡したような指揮官であれば楽であったろうに。

罠を罠と分かりやすく見せる事で罠を無視できない状況を作り出しこちらの行動に制限を加える。

急に数が増えたと言う事は囮的な何かで間違いない。

呼称Aから最小艦隊数の6隻が途中で離脱したというのもその証。

何事も無い只の虚仮脅しの様な物かも知れないが吹雪が艦載機による遠方からの目視を阻む。

電探に艦影が映ると言う事は実体があると言う事、そしてそれが向かってきている。

仮にそれが時限爆弾の様に時間が来ると海上で爆発などと言う事になれば退路を制限される事になる。

仕掛けた部隊が離れたのも爆発した際に巻き込まれないようにする為のものだろう。

こちらが緊急避難の為に海面下へ潜るときは無防備だし敵も流石に見逃してはくれないだろう。

無視したとしてその罠が本当に罠だったとしたら後ろを突かれるのは自分達。


水姫「リ級。あなたに部隊を2隊任せるわ。

   敵の呼称Aを見極めてきて頂戴。」

水姫「敵が私達の急襲の報を受けて向かってくるまでの時間の短さを考えれば錬度の高さを疑う余地はない。」

水姫「その中で指揮官能力の分散を狙っている以上艦隊Aの方が自爆能力を持っている可能性が有るわ。」

水姫「艦隊Aはこのまま行けば私達の後方部隊へと当たる。

   万一自爆能力を持った囮だった場合は退路を制限される恐れがあるわ。」

リ級「敵の艦隊Aがただの案山子か腹に爆弾を抱えた案山子か見て来いということですね。」

水姫「えぇ。そうよ。こちらは指揮能力を分散させる事になるから出来る限り早く処理をして頂戴。」

リ級「先頭と中程の案山子を撃ってみて案山子か偽装した爆弾かを確認した後は

   そのまま水姫様の殿として後方警戒に当たります。」

リ級「万一の為に軽母を何名か連れて行って宜しいでしょうか?」

水姫「許可するわ。宜しくね。私はこのまま進撃して艦隊Bへ攻撃を行うわ。」

リ級「了解!」



呼称艦隊Aこと案山子部隊



敵艦隊Aに警戒しながら近づくも迎撃される事もなく。

ヌ級に警戒用にあげさせた艦載機が落されると言う事も無かった。

その為、不審に思いつつリ級が進む敵の先頭に近づいてみれば。



リ級「なんだこれは……。実に良く出来た案山子じゃないか。」



シレェ!シレェ!シレェ!



ヌ級「艦隊全体を偵察し何隻か攻撃をしてみましたが

   特に爆発や反撃も確認されませんでした。」

リ級「となると本当に陽動目的なだけか。敵は策士だな。まんまと乗せられた。」

リ級「それも無視できない形で。可能なら敵指揮官の顔を拝みたいものだな。」

リ級「となると無駄足であった事を喜ぶべきか。」

リ級「にしてもこの腹立つ顔は……。」



その恨み、富士山より高きあんちくしょう。

水面に揺らめくその影は蘇る悪夢。

案山子の首を捥ぎ八つ当たり。



リ級「少しスッキリした。」ニコニコ



敵の罠はこちらの戦力を一時的に分散させる霍乱目的であると

リ級は断定し水姫の殿へ付くべく離れてしまった本隊を追うような形で戻っていった。


その頃の呼称艦隊B


瑞鶴を旗艦とし外周へ88メンバー、

その内側に幌筵、単冠湾の艦娘達が輪形陣で布陣し北方水姫の本隊を撃つべく進撃していた。

先立って接触した敵偵察部隊は瞬殺されていた。



龍驤(あほみたいに強い。文字通りに鎧袖一触やで。)

龍驤(蹂躙とかそんな生易しいもんやないわ。)

龍驤(なんでこんな精鋭艦隊が秘匿部隊みたいな扱いなんやろ?)

瑞鶴 !

瑞鶴「龍驤!面舵20、取り舵10、面舵10の後、取り舵40!」



出された指示通りに回避をすれば。



龍驤「ひえぇ。魚雷が綺麗に間をすり抜けていきおったわ。」



魚雷の進路を予測しての回避行動を指示してくるかと思えば。



「Fuoco!」ブン!

「おーっ。良く燃えるねぇ。いやぁ綺麗だわぁ。」

「炎の匂いが染み付きそうですねぇ~。」



吹雪で視界が悪い中、敵のル級へ火炎瓶を投げつける重巡、そしてその明かりを目印にどんどん魚雷を投げる重雷巡。



「いやぁー。冬の花火も乙だねぇ。この香り、むせそう。」ゴソゴソ

ジユッ。ボッ。

「ん―――。敵が燃える火で付けた煙草の味は格別だわぁ―――。」ウメェ

龍驤(頭の螺子が足りんどころか元々無いんちゃうかと思うくらいおかしいわ、こいつら。)

龍驤(せやけどこん中でとびっきりあれなんは……。)

瑞鶴「あぁはっはっはっ!!!」



狂喜の笑い声を上げる空母。

艦戦は積んでおらず艦載機全て艦功へ極振り、制空の概念は忘却の彼方の様である。



龍驤(当たらなければどうと言う事はないっちゅう奴やろか………。)

初月「やらせはしない!やらせる訳にはいかないんだ!」ドンドンドンドン!

龍驤(なんちゅう正確な対空射撃。さっきから瑞鶴に敵機をまったく近づけさせてない。)



龍驤がこの艦隊の中で見る光景は自分の艦娘としての常識を根底から覆すくらいに衝撃的な光景。



龍驤(せやけど、こいつらとなら勝てる気がしてきたで!)


水姫「並の熟練なんてものじゃないわね。」



指揮能力が一時的に分散した結果、かなりの勢いで押される自軍の状況に認識を改め始める水姫。



リ級「水姫様。只今戻りました。このまま後詰に入ります。」



無線に聞こえてくるのは副官の声。



水姫「了解したわ。敵と接触した前面で戦闘が始まっているわ。

   かなり押されていて混乱気味の前面右翼の指揮をお願いするわ。」



自身が出す指示で敵に対応しきれなくなって来ていた所にほっと安堵する。

押され気味ながら現状はよつに組む横綱相撲状態。

リ級から敵の罠は案山子でありこちらの戦力分散を目的とした物であったことの報告を受け

とりあえずの後方警戒のレベルを下げ前面の敵に集中する決断を下す北方水姫。

その判断は冷静そのものであり、敵が策を巡らせた理由に思いを馳せる。


水姫(奇策を使ってでも稼ぎたい時間があった。)

水姫(時間稼ぎをする理由は?

   単冠湾を捨てる準備が整ったと言う事かしら?違うわね。)

水姫(一時的であれどこちらの戦力を分散させてその間にある程度の戦力を敵に削ぐ事に成功した。)

水姫(となると次に敵が取りうる策は……。)

リ級「水姫様!敵が退却していきます!」

水姫「やはりか。」

リ級「如何しましょうか!?」

水姫「全軍戦闘は継続しつつ待機!深追いはするな!」

リ級「は?」

水姫「敵は私達に精強な部隊を印象付けさせて撤退していったわね?」

リ級「はい。」

水姫「案山子部隊を用意してまで時間を稼ぐ必要性があった。」

リ級「はい。」

水姫「つまり、ここではなく、敵は単冠湾で決着をつけるつもりなのよ。」

水姫「こちらに混乱を齎して時間を稼ぐことにより本拠で迎撃する為の準備をしていたのでしょうね。」

水姫「精鋭を差し向けてきたのもその時間稼ぎのためでしょう。

   こちらの進軍が早かった為に防衛の為の準備が間に合わなかったに違いないわ。」

水姫「実力と数で勝てると判断するならあんな小細工をする必要性が無いもの。」

水姫「一時的に戦力を分散させこちらの数を削り

   さらに撤退して見せることにより此方をおびき寄せ本当の罠に嵌める。」

水姫「今頃単冠湾で舌なめずりして敵の本隊が待っているはずよ。

   その為の遅滞戦術だったに違いないわ。」

リ級「敵は多段の罠を仕掛けたということですか。」

水姫「兵は神速を尊ぶという言葉が有るけど敵の指揮官が変わって策を弄するやり難い相手に代わったわ。」

水姫「部下を預かる指揮官として敵の罠へ突っ込ませる事は出来ないわ。」

水姫「一旦拠点として構築した幌筵へ引き上げるわよ。」

水姫「敵の作戦の立て方から言って長期戦になると困るのは相手側。」

水姫「私達はゆっくりと幌筵で春を待てばいいわ。」



踵を返し幌筵へ向け転進を決意する北方水姫。

後方で指揮を取っていたためその艦首を幌筵へと向け転進という事になれば

自然、艦隊の先頭は北方水姫となる。


グォォォオオオォォォ!

そのエンジン音は狼の雄叫びの様であった。

ユンカース製エンジン。

フォッケウルフ本来の空冷からドイツ機の中で最も採用が多い液冷エンジンへ積み変え

過給機まで搭載し馬力を向上させ高高度作戦まで可能にした機体。

Fw109Dシリーズ。戦場の狼である。



グラ「Meister明石による改造だ。その性能、通常にあらず。重要だから繰り返すが通常にあらずだ。」ニヤリ



疾風迅雷。

ヌ級の艦載機と一合の切り結びを演じたかと思えばヌ級の艦載機は全て消えていた。



水姫「ばかな!?あんな少数の艦戦で!?」



目を疑うのも無理は無い。

なんせ敵は電探の反応、遠目で見ても正規空母ただ一隻。

翻ってこちらは軽母だけでも6隻はいるのだ。積んでる艦載機の数が違う。

だが、その戦況はまるでこどもと大人の相撲のように次々と落される始末なのだ。



グラ「モルヒネデブが土の下のお陰で私が指揮できる。感謝せねばならぬな。」



グオォォォオオ!

エンジンが唸りを上げドイツ空軍伝統のロッテ戦術で次々と敵を屠る。

その隊長機は。


グラ「583度の攻撃に出撃し総撃墜数は267機。」

グラ「東部戦線においてソ連のIl-2を最も多く壊した事から

   シュトゥルモヴィークの壊し屋と渾名される。」

グラ「驚ろく事にこれでまだスコアは総合四位だ。」



グラーフの横を一機の艦戦が甲高いエンジンを唸らせ駆け抜ける。



グラ「その漢の名はオットー・キッテル!」



ドドドドド!

瞬く間に敵艦隊直掩機が火を噴く。


ヲ級「ヲォォォォ!!!」



ヲ級が激昂し艦載機を全機発艦させるが。

ズドドドド! ドゥン!

続く機体に全て墜とされる。



グラ「その撃墜数は158だが、熟練の戦闘機乗りが多い対英戦線でのトップエース。」

グラ「しかも最新鋭機が投入されることの多かったアフリカ戦線で敵を苦しめ。」

グラ「撃墜した敵機は全て西側連合国機だ。」

グラ「アフリカ戦線という戦闘機乗りにとっても戦闘機にとっても過酷な状況で戦い抜き。」

グラ「ついた渾名はアフリカの星。」

グラ「ハンス・ヨアヒム・マルセイユ。その名、胸に刻み沈め!」



ヲ級の艦載機は瞬殺された。


グラ「まだまだ居るぞ!

   我がドイツ空軍のエースパイロットが迫り来る恐怖、その身を持って知るがいい!」

グラ「その総撃墜数275。」

グラ「戦後、新設されたドイツ連邦空軍総監を務め最終階級は中将。」

グラ「撃墜数は歴代3位だが恐るべきはそのスコアを達成したのが1位と2位の半分の出撃数で達成したという事だ。」

グラ「どれ程の修羅場を潜り抜けたかを伺いしれるな。」ニヤリ

グラ「その漢、見越し射撃の達人!ギュンター・ラル!」



グラーフがドイツ空軍所属のエースパイロット達の名を呼べば

それに呼応する様に艦載機が顕現し敵機を撃墜していく。



グラ「ハハッ!痛快だなぁ。」



次々と撃墜されていく深海の艦載機達。


グラ「まだまだここで絶望してくれては困る。」

グラ「我が友軍、Luftwaffe所属の戦闘機乗りの中で

   史上2人しか居ないエースオブエースをまだ紹介していないからな。」



グラーフの表情は実に愉快で仕方ないという表情で口元は完全に緩みきっている。



グラ「大戦を生き抜き最終階級は少将。実に1104回という出撃をこなしその総撃墜数は301機。」

グラ「彼自身はFw109Dシリーズにも機種転換をしていてな。当時は完熟訓練が不十分だったが……。」

グラ「英霊として帰ってきて乗る機体はどうであろうなぁ?」



そうつぶやくグラーフの横を乗りこなしているとアピールするかのようにバレルロールですり抜ける一機の戦闘機。

そして、ついでとばかりに敵機を撃墜。



グラ「無用な心配だったようだな。ジェットよりは乗りやすいようだ。」

グラ「紹介させて貰おうか、かの漢の名、ゲルハルト・バルクホルン!」


そしてグラーフが紹介するのを待ちきれなかったのか勝手に発艦する艦載機が一機。

そのノーズアートは黒いチューリップ。



グラ「あぁ、紹介が遅れたために不興を買ってしまったようだな。」

グラ「その名を知らない者などいないと断言する。」

グラ「総出撃数1405回、総撃墜数352機。」

グラ「乗っていた機体が我がドイツが誇る傑作機Bf109で有った事もあるが……。」

グラ「彼が歴史上、最も敵機を撃墜した男という名誉を得ることが出来たのは

   その卓越した操縦技術によるものだ。」

グラ「東部戦線というソ連の未熟な戦闘機乗りが相手だから

   その数字は落しやすい敵を落したからだなどと言う者も居る様だが……。」

グラ「実に唾棄すべき愚か者の言葉と言う他ない。」

グラ「戦闘機乗りとして彼がこれほどの偉業を成し遂げたのは一撃離脱。これを徹底していたからだ。」

グラ「彼についた渾名は黒い悪魔。」

グラ「Luftwaffeの戦闘機乗りの頂点に立つ漢だ。」

グラ「紹介しようじゃないか。Luftwaffeの撃墜王エーリヒ・ハルトマン!」


リ級「なっなにが……。起きているっていうんだ?」



グラーフが全エースパイロットを紹介し終えてものの数分。

深海棲艦の艦載機は空を飛んでいなかった。

そして、制空権を失った深海棲艦達後方へ退却と見せかけた瑞鶴達が

反転し攻撃を開始していると北方水姫へ後方から連絡が入る。



水姫「………。」



ブチッ。



水姫「だから、どうしたってんだぁ!?」

リ級「!?」

水姫「しょせんは戦闘機だろうがぁ!機銃しか積んでいない艦載機に戦艦の私が倒せると思ってやがんのかぁ!!」

水姫「ふっざけんじゃねぇ!!」

水姫「豆鉄砲に戦艦の装甲が抜けると思ってやがんのかぁ!!馬鹿にしてんじゃねぇ!!」

水姫「引き下がるわけにはいかねぇんだよぉ!!かかってこいよぉ!!」


グラ「確かに、まったくもってその認識は正しい。」

グラ「だが、私が戦闘機しか積んでこなかったという事についての答えは。」

グラ「 Nein だ。」ニヤリ

グラ「フフフ。時に北方水姫よ。」

グラ「貴様、珈琲は好きか?」ンフフフ



グラーフからの問い。その問いはこの状況にはまったく似つかわしくない問いであり。



水姫「あぁああ!?手前は何をいってやがるんだぁ!?」



水姫がより怒るのは当然であるがその怒りを我関せずと話を続けるグラーフ。



グラ「珈琲には色々な楽しみ方があってだな、エスプレッソやモカ、カフェオレ。」

グラ「実にどの楽しみ方も珈琲の味を楽しむのに良い物だ。」

グラ「そして、私のAdmiralの珈琲の好みはブラックだ。」

グラ「ブラックは珈琲の豆本来の味を味わうのにとてもよく、

   その苦味は豆の産地によって実に変わってくるので私のお薦めでもある。」



語るグラーフに迫ってくる北方棲姫直掩のイ級やホ級、ト級を沈める長門達。



グラ「北方水姫よ。遠慮はいらん。貴様にはとびっきりの珈琲を馳走しよう。」

グラ「苦渋がたっぷり効いた敗北(ブラック)をなぁ!!」


ウワァァァァァアアァアァン!

その音はサイレンの音。

一度聴けば頭からその音が離れることはなく。

旧約聖書において難攻不落と言われたジェリコの壁を破壊したラッパになぞらえ。

ジェリコのラッパと呼ばれる音。

その音が鳴れば地面にあるものは跡形も無く破壊され。

動くものは全て息絶える。

明石工廠のMeister、明石の魔改造により現代素材と技術をふんだんに突っ込まれ。

機体の強度、馬力と性能が大幅に向上したワンオフ機。

後部銃座には彼とペアを組んだ中で最も信頼厚い漢が乗る。

その漢、エルヴィン・ヘンシエル。

高空から急降下爆撃をしてゆくその機体はその急降下に耐えられるように改造を施され、

急降下爆撃機の名機、スツーカに倣い副座式に改造、更にエンジンを大馬力へ変更し

ガンポッド式で積む機関砲はBK5を2門(75mm機関砲)という有り得ないサイズと数を妖精さんの協力により搭載。

さらにトレードマークとも言えるサイレンも取り付けられている。

その機体の名は。

Fw109G9改四型 

そして、それを操縦するのは一人の漢。


その出撃回数、公式記録で2530回。

破壊した戦車、519輌。

装甲車、トラック800台以上。

100mm口径以上の火砲 150門以上。

空中戦による敵機撃墜数。

戦闘機2機。

爆撃機5機。

その他1機。

(この計9機のうち1機はスツーカの37mm砲で撃墜している。)

上陸用舟艇 70隻以上。

戦時中、幾人もの英雄に贈られた勲章だが、ドイツ第三帝国史上に於いてたった一人。

彼一人だけが受勲をしている勲章がある。

黄金柏葉剣付ダイヤモンド騎士鉄十字勲章。

この勲章はこの一つ下の勲章を受けた後も尚、武功をあげ続けた為、

彼に授与する勲章が無くなったので制定されたという冗談のような経緯がある。

そして、驚く事にあくまでこの戦績は『 公式 』なのである。

彼は自身の仲間の評価を上げる為かなりの戦果を仲間達へ譲り、

撃墜され負傷した際にも病院を抜け出し出撃するなど。

実に未確認の戦果が公式以上に多くあると言われている。

彼についてフェルディナント・シェルナー陸軍元帥は「彼一人で一個師団の価値がある。」と評価。

そして、戦闘機乗りのトップエースであったエーリヒ・ハルトマンが彼の戦績について語って曰く。



「自分は複数のチームで戦っているからそれで真似をする事はできる。

 だが、彼個人の真似は出来ない。誰も出来やしない。」



と、評価した言葉を残している。

そして、嘘ばかりを書き連ねていることでも有名なアンサイクロペディアにおいて

『こんな嘘臭い事実に対してこれ以上の嘘を重ねるなんて出来る訳が無い。不可能だ!』

と、白旗を揚げさせた。

また、あまりにも多くの戦車を潰した為、

スターリンに「ソ連人民最大の敵」と言わしめ約1億円の賞金がその首に掛けられた。

その漢の名は。

ハンス・ウルリッヒ・ルーデル

人呼んで。




               空の魔王。




グラ「彼が魔王と呼ばれたのはその戦績の異常さ故だが……。」

グラ「今日、新たに加算されその伝説は更に輝くものとなるだろう。」

グラ「艦艇に対するスコアは戦艦1、教導駆逐艦1、駆逐艦1が今までのスコアだ。」

グラ「このスコアは彼単独ではなくチームによる共同戦果扱いだが……。」

グラ「今日、この時、戦艦のスコアは2へ書き換えだな。」ニヤリ

「Loooooooooooooooos!!!!」



突撃号令と共に魔王に率いられた悪魔達が次々と深海棲艦達へ急降下爆撃を仕掛ける。

魔王の放った1.8t爆弾は北方水姫の艤装煙突へ着弾。

ガボン。

大轟音の後に水姫の艤装から続く爆発音。



グラ「フム、流石だな。」



爆弾を降ろし一気に軽くなった機体を操りその規格外の攻撃能力を持った機銃で敵イ級達を正面から沈めていく魔王。



雪風「機関砲の反動で速度が低下しているようですがどんな操縦を行っているのでしょうか?」

グラ「並の腕では無理だろうな。まさしく魔王だ。」

摩耶「それはいいんだけどさぁ。あたしの仕事ないんだけど?」



防空ましましで艦隊の防空援護に備えていたものの

エースパイロット達の活躍により手持ち無沙汰の摩耶が不服そうにグラーフへ話しかける。



長門「まぁ、そうなるな。」

時雨「あっ、帰ってきてるよ。」

グラ「うむ!補給を急ぎ再度の出撃だ!」



手早く着艦させ補給の後、次々と再出撃してゆく悪魔達。

制空を失った状態で敵艦爆編隊に襲い掛かられれば勝てる訳も無く。


水姫「排気筒からの攻撃は艤装の重要防御区画も破壊して機関まで達しているようね。」



ボズン。ゴゥ。



水姫「もはやこれまでか………。」

リ級「水姫様、せめて水姫様だけでも!」



必死に対空砲火にて上空の敵機を減らそうと足掻くがまったく効果は無く。



水姫「もういいのよ。先程はみっともない所を見せたわね……。」

リ級「水姫様。」

水姫「……、よく、私達が死ぬと魂は地獄へ行くと言われるけど。」

水姫「あの世の支配者である魔王に嫌われたなら地獄へは逝けないわね。」ウフフ

水姫「行くなら……、きっと、天国でしょうね……。」

水姫「暖かい世界へ……。」

グラ「還るがいい、暖かき世界。ヴァルハラへ。」

水姫「……、ありが……とう……。」



一際大きな爆発音と炎上の炎が上がり北方水姫は水底へ還って行った。



グラ「さて、後は残党狩りだが。」

グラ「瑞鶴達へも仕事は残しておかねばな。」

雪風「今回は楽な仕事でした。」

時雨「あっけないくらいに……ね。」

川内「伯爵の独壇場だったねぇー。」

グラ「ふふ。護衛として付いて来てくれた皆には悪かったな。」

グラ「侘びに酒を一杯御馳走しようではないか。」

長門「ほう、伯爵が奢る酒か。」

摩耶「と、言う事は?」

一同「「「「「シュタインベルガー(笑)」」」」」

グラ「分かっているじゃないか。」ンフー



ルーデル隊の急降下爆撃を始めとする攻撃により指揮官が馘首され北方水姫の部隊は各個撃破されていっている。


リ級「くそぉ!せめて、一太刀……!」

瑞鶴「和んでる所を邪魔するんじゃないよ。無粋ねぇ。」



ズン!

瑞鶴麾下の航空隊。流星改村田隊が長門達へ砲撃をしようとしていた敵副官を沈めた。



長門「…、瑞鶴が沈めたか。」

川内「みたいだね。」

時雨「やっぱり皆気づいてたんだね。」

雪風「常在戦場ですから。」

摩耶「まぁ、ねぇ。」

グラ「最後まで気を抜く奴など居やしないさ。」

瑞鶴「私にも奢りなさいよ!」(無線)

グラ「あぁ、奢らせて貰おうか。」(無線)

時雨「地獄耳かな?」

グラ「違いない。」

長門「さて、後は幌筵の敵拠点の徹底破壊だな。」

雪風「しれぇから石器時代に戻してやれ!って言われています!」



そして、暴風が吹き荒れるが如く、本来の仕事、

対地攻撃を主任務としてきた魔王率いる悪魔達が幌筵の敵拠点を徹底的に破壊し帰投した。


単冠湾泊地 埠頭


提督「お疲れ。みんな無事だったようだな。」

川内「なに~?提督待っていてくれたのぉ~?」ニシシ

提督「帰投の連絡を受けたからな。今しがた出てきた所だ。」

時雨「提督。帽子に雪が積もってるよ。」クスクス

提督「………。」バババババッ

提督「全員、塒に帰るぞ!」

長門(あれは、照れ隠しだな。)フフフフ

雪風(ですね。)ウフフ

摩耶(いい大人がねぇ。)クスクス



こうして、88鎮守府一同の活躍により北方海域に進行してきていた敵部隊は全滅となった。


数日後 単冠湾泊地



少佐「お疲れ様です。」

龍驤「あぁ、司令かぁ。にしても凄いなぁ。」

少佐「ですね。」

龍驤「こないだ指揮とってた大佐はかなりの実力者なんやろか……。」



龍驤の視線の先には大量の物資。

それは全て大佐の手配で単冠湾へ送られてきている補給物資である。



龍驤「こんだけの量はうちも始めてみるわ。」



嘗て所属した幌筵では拝むことなんかなかった物資の量である。



少佐「大佐からここがこれから北の守りで重要拠点になるだろうから

   強化の為に必要な物が送られるだろうとは聞いていたけど。」

龍驤「すごいなぁ。」

龍驤「それにしてもあの大佐はなんちゅうか、色々凄かったわ。

   全部終わった後に作戦の概要を説明してもろたけど詐欺師やで。」

少佐「それを言うなら策士だよ。」

少佐「罠をあえてばらして敵の思考誘導を行うっていうのには驚いたよ。」

龍驤「精鋭艦隊に擬装用の案山子付き無弾頭魚雷を展開させて

   敵に小細工をして時間稼ぎをさせたかったと勘違いをさせる。」

龍驤「そして、その精鋭艦隊は案山子と一緒に敵の背後に回りこんだ。

   しかも、敵に罠を仕掛けた艦隊が案山子部隊から離脱したと思わせる為に

   6人分の案山子を別働隊方向へ出す念のいれよう。」

少佐「幌筵を落した敵の手際の良さから手練れの指揮官がいるだろうから

   その指揮官能力の高さを利用するって言ってたかな。」

龍驤「せやねん。精鋭連中が背後に着く前にこっちが敵本隊とやりあって

   一旦引いて誘い込むようにして見せた事で単冠湾に罠を仕掛けていると見せる。」

少佐「優れた指揮官であれば兵の無駄な消耗を避けるという読み。」

龍驤「そんで敵の背後に回ったら当然指揮官が後方に控えとる訳で。」

龍驤「撤退を始めている敵を正面からどつく形に持っていってるからな。」

少佐「精鋭艦隊で指揮官を潰して後は挟撃して各個撃破。」

龍驤「鮮やかに決まり過ぎてて怖いわ。」

龍驤「ほんで同じ空母としてな驚いたんが積んでた機材やな。」

龍驤「敵正面で離陸させる事になるから

   爆装してるせいで機動性が落ちる艦爆を予め発艦させといて

   敵に攻撃を始めると同時に自分の艤装についてる位置連絡用ビーコンで艦爆隊に目標の位置を連絡。」

龍驤「艦戦が100%で制空を取れると確信しとかんとうちはしきらんな。」

龍驤「更に言うなら撃退した手柄はうちら幌筵とここ単冠湾の混成部隊での手柄にしてる。」

少佐「大佐はあくまでオブザーバーとして参加って形になってるんだよね。」

龍驤「ほんまありえへんで。」

少佐「大佐がここを離れる時に言われたんだけど『 我々は実を貰う、君は名を取りなさい 』だったからね。」

少佐「表向きに戦果を誇れない事情が有るんだろうね。」

少佐「その所為というかお陰というか私は来月から中佐だよ……。」

龍驤「なんや昇進したんか。」

龍驤「まぁ、あの大佐からここを盛り立てて北の守りを頼むってうちは頭下げられたからな。」

龍驤「力を貸したるわ。ここに始めから所属しとった娘達に聞けばあんたの評判はいいみたいやしな。」

龍驤「幌筵でうちらの指揮をとってた奴らと違うことを期待してるで!」



そう言い手を差し出す龍驤。

にぎにぎ。

単冠湾は新しい体制でこれからの海防にあたって行く事になる。


88鎮守府 埠頭付近



グラ「ふふふ。海を見ながらのワインと言うのはいいものであろう。」ンフー

時雨「お高いワインの味だ。」

雪風「はい!美味しいです!」

長門「にしても、これは。」

瑞鶴「当たり年なんじゃないの?これ。」

摩耶「瑞鶴は分かるんだ。」

初月「これで瑞鶴はワインに結構煩いんだ。」

川内「へーぇ。」



作戦に参加した者達でささやかながらに祝勝会が行われていた。



川内「あっ、おつまみ作ってきた!」

時雨「僕もだよ。」

瑞鶴「私も!」


女子力の高い者達は手作りのつまみを、そうでない者達は……。



初月「牛缶を持ってきた。」

長門「北の地での作戦だったからなキャビアを土産に買っておいた。」ドヤァ

摩耶「あたしはクラッカー!」

雪風「チーズ持って来ました!」



と、それぞれ色々と持ち合い楽しむ。


明石「あっ、グラーフさん!こんな所にいたんですか!」

グラ「あぁ!明石!先日は大変世話になったな。実にすばらしい機体だった。」

明石「あっ、その件なんですが。これ、支払いお願いしますね!」



差し出される請求書。



グラ「これは……?」

明石「いやぁー、流石無断出撃王にして被撃墜王。

   勝手に出撃して高価なワンオフ機をえぇ、ボカスカ落してきてましてね。」


※ルーデルの被撃墜回数は30回と出撃数も多ければ撃墜された回数も多いです。


明石「提督に請求したら『 所有者に請求するのが筋だろ 』と。」

明石「お支払い、宜しくお願いしますね!」



その請求書を横から覗き込む一同。



時雨「うわぁ………。」

瑞鶴「橘花改を使った時の数倍だわこれ……。」

川内「ひぇっ…。」

グラ「………。」

グラ「うわぁあぁぁ~ん。アトミラァ~ルゥ~。」

摩耶「あっ、泣いちゃった……。」

長門「これは提督が悪いな。」ウム

初月「でも、出撃して戦果を稼いでいるなら撃沈報酬が貰えるんじゃないかな?」

明石「海に敵の死体が浮いているが誰が沈めたか不明。」

明石「そも、任務でも仕事でも無い戦果に報酬は払われませんよ?」

グラ「うわぁあぁぁ~ん!」

一同「御愁傷様……。」

英霊の呼び出しと御利用は計画的に。

以上で終了です。
後、数時間で1期最後のイベが始まります……
楽しんでいけるといいなぁと思っています。
乙レス、感想レス、本当に感謝です。それでは皆様、またの機会に。
ここまでお読みいただきありがとうございました。

おつ
つぎも待ってるぞ

>>291
いや 文が長いからじゃなく更新間隔が長いから反応が鈍いんだと思うぞw
板自体が寂れてきてるせいかエタるスレ激増してるんで俺も巡回頻度週一くらいだし

ともあれ次回も期待

おつ
レス減るのはタイミングもあるしなぁ
1レス見たら10人居るなんて言われるくらいだし

乙でした。
伯爵素敵でしたわ

おつ
88はACでやりこんだなぁ

おつおつ、面白いからレスポンスなんて後からついてきますよ
それにしても歴史が歴史とは言え変態しかいねえ(賞賛
相手を填め潰す知略と、圧倒的な殲滅力とか怖すぎるw

このスレ埋めるまで書けばレスも増えるさ

知らんけど

ええぞ

グラーフさん楽しそう
でも誰を呼び出すのも勝手だけどあの悪魔だけは反則だと思う

1からのお知らせ

前回の終了でこれにて終了と書いてしまったのがまずかったのか
意図せずまとめサイトにてまとめられてしまったようです
まとめサイト管理人さまに対しては大変御迷惑をお掛けしました
また、現在のんびりとイベをやっている事もあり暫く更新に間が空くような感じです
御迷惑をお掛けする事も心苦しいのと、まとめられたのもいい機会ととらえ一旦このスレを落させていただきたく思います
前回の更新時にレスが減ってきているとぼやいた所為だと思うのですが沢山のレスありがとうございました
おっさん提督のSSは需要が無いのかと本気で考えていた所でしたのでちょっと目頭が……
また新しく続編という形でスレ立てをする事がございましたそちらもお読みいただけると幸いです
次スレの第一話予告としましては明石と秋津洲の過去、88鎮守府合流前の話を予定しております
それではまた、次スレでお会いできればと思います

乙です。とても面白かったからまた書いてくれるの待ってます

まとめに上がって あれ?ってなったけどやっぱ早とちりですよねw
色々とあるようですしまったり待ってますよ~


面白かったから次も楽しみに待ってます

まとめ気にせずこのまま続ければ良いのに

他人様の書いたもの勝手に纏めて銭稼いでる連中に気を使わんでも

もう見てないと思うけど、まとめ気にしてスレ落とすとかするから調子乗らせるんだと思うよ
依頼出してないみたいだし、このまま続ければ良かったのに

活動していてくれてうれし

このSSまとめへのコメント

1 :     2018年01月26日 (金) 21:15:13   ID: wZqitJpX

戦闘の描写が上手い、話の流し方が上手い。

羨ましい。

2 :  SS好きの774さん   2018年02月10日 (土) 21:26:01   ID: CD1OqlJV

この提督も凄い人なんだろうなぁ…

3 :  SS好きの774さん   2018年02月21日 (水) 02:55:33   ID: YcXybYXk

是非是非続編が読みたい

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