【モバマス】あの子「妹へ」 (8)

モバマスのSSです。

「あの子」について、独自解釈をしております。ご了承ください。

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私の、唯一人の大切な妹、小梅へ。

貴方がこの手紙を読んでいる時、私は貴方の傍にいないかも知れません。

貴方に、私のことを告げておきたくて、こうして手紙を書いております。

もし、私のことについて確かめたければ、両親に尋ねてみると良いでしょう。


私は、貴方がこの世に生を受ける3年前、貴方の母の胎に宿りました。

そして、母を通じて聴こえてくる外界の音に、生まれ出ずる日を心待ちにしておりました。

しかし、私が母の胎に宿ってから3か月半が過ぎた時、それは起こりました。

形成されるはずの心臓が、私の体を作る設計図のミスから、形成されなかったのです。

そうして、私は母の胎内から流れ落ちてしまいました。

あの時の父と母の悲しみに満ちた顔は、今でも忘れることはできません。

「短い間だけど、あなたの子供でいられて幸せだったよ」と伝えたくても、

満足な体を持たない私には、どうすることもできませんでした。

二人は私を丁寧に弔ってくださいました。

しかし、私はもう少し、母のそばにいたくて、この世を離れられずにいました。

さて、私が流れ出てから2年後、新たな命が再び母の胎に宿りました。それが貴方、小梅です。

貴方は両親の愛を一身に受けて、すくすくと育っていきました。

2度目の子なので、父も母もある程度慣れていたようで、私の時よりは落ち着いているように思えました。

私も、その時はまだ弟か妹かわからなかったものの、兄弟ができることをとても楽しみにしていました。

不思議なものですね。一方的に見守ることしかできないのに、とても楽しみだったのです。

そして13週を迎え、妹であることが判明。私もますます楽しみになってきました。

しかし、その時、母の胎内では再び悲劇が起きようとしていました。

貴方を育むはずのチューブが、うまく母とつながっていなかったのです。

そのことに気付いた私は、本来であれば許されない行動にでました。

母の体に入り込み、そのチューブを押さえつけ、貴方と母をつなげたのです。

その結果、貴方は流れ落ちることなく、母の胎に留まることができました。

しかし、私の行為は後に、貴方に思いもよらぬ後遺症を残しました。

見えないはずの私が、見えるようになってしまったのです。

無事に母の胎に留まった貴方ですが、私達の母の体は我が子を留めておくことが難しかったようで、

貴方は30週目にして、まだ体の未熟な状態でこの世に生を受けました。

私は貴方が気掛かりで、いつも傍にいました。

新生児集中治療室のカプセルの中で眠る貴方を見ながら、どうか元気に育ってほしいと祈り続けました。

その甲斐もあってか、貴方は無事にカプセルから出ることができました。

その頃からでしょうか。時々私の方を見ることがありました。



その後も無事に育っていった貴方ですが、言葉を話すようになり、はっきりとした意思表示を行うようになると、

人には見えぬはずのものが見えていることが明らかになりました。

それでも、まだ小さいうちのことなので、「少し変わった子」ですんでいました。

しかし、小学校に上がると、それではすまなくなりました。

「気持ち悪い」「妖怪」などと言われていじめの対象にもなりましたね。

友達もできず、一人で遊んでいるあなたを、私はいつも見ていました。

そんなある日、あなたは私に話しかけてきました。

「ねぇ・・・そこで、何をしているの?」と。

その時から、私と貴方の、今のような付き合いが始まりました。それからは、本当に楽しかったです。

あなたをいじめた相手に二人で仕返しをしたり、クラスの皆を怖がらせたり。

けれど、私はいつも、気にしていました。

貴方に同じ人間の友達が、人間の理解者ができてくれることを、願っていました。

やはり、人間は人間同士で一緒にいる方が良いに決まっていますから。

しかし、そうした願いは小学生のうちにかなうことはありませんでした。

中学に上がってからも、貴方はいつも独りぼっちでした。

人は基本的に自分達の集団と異なるものは排除する性質があると知っていても、

やはり貴方がその対象となるのは、とても胸が痛むことでした。



中学に上がった夏のことでしたね。貴女が、彼に出会ったのは。

貴方をアイドルにしようという彼のことを、私は疑っていました。

珍しい貴方を見世物にしようという魂胆ではないかと疑ったのです。

そして、アイドルになるという貴方に、猛反対しました。

おそらく、あの時のケンカが、人生最大のものだったのではないでしょうか。



しかし、私の考えは間違っていました。

彼は貴方を見世物にするのではなく、そのままでは排除される対象であるマイノリティーである貴方に、

アイドルのステージという、「表現」の場を与えることで周囲に認めさせようとしていました。

そして、貴方にも友達が出来て、それまでの日々が嘘のように、賑やかな毎日が続きました。



私の大切な、唯一人の最愛の妹よ。

私がいなくなったとしても、決して悲しまないでください。私はもともと、いないはずの存在だったのですから。

貴方の周りには、貴方を心から愛し、大切にしてくれる仲間がいます。貴方を導き、助けてくれる人がいます。

私は安心して、貴方の元を離れることができます。

もし、私がいなくなっても、貴方は強く、生きていってください。

そして、いつの日か必ず、幸せを手に入れてください。私の分も、幸せになってください。

体を持って生まれることのかなわなかった姉からの、これが最後の願いです。


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小梅「・・・あれ?こんなところにいたんだ。」

小梅「・・・うん。出掛けるよ。今日は142’sのみんなとショッピングに行くんだ。」

小梅「・・・うん。一緒に行こう。ふふふ・・・。」

小梅「え?また幸子ちゃんをからかうこと考えてるのかって?」

小梅「まぁ、ね。・・・うん。やりすぎないようにするよ。」

小梅「でも、君も楽しそうだよ。・・・ふふふ・・・やっぱり?」

小梅「・・・ね。こんなの、どう?」




幸子「あ、来ました!もー!カワイイボクを待たせるなんて!」・・・

以上です。ありがとうございました。

おつー

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