小梅「silences」 (51)


「ここはどこだ……何故俺はこんなところにいるんだ……!?」

P「……」ジー

小梅「……」ジー

「こ、この部屋、出口がねえじゃねえか!」

「おい、誰かのイタズラか!? 出て来やがれ!」

P「……」

小梅「……」

「くそっ、何の冗談だっていうんだ……」

ポタッ

「!」

「なんだ……今、後ろから音がした気が……」

ポタッ

「なんだこれ、血だまりか……? いつのまに?」

ポタッ

「血が……降ってきて……上に何か……」

「……っ!」

『コッチヲミタナアアアアアアアア!!』

「うわっ、うわあああああああああ!?」

P「うわああああああああ!?」

小梅「……」

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…………



P「ふうううう……」

小梅「映画……面白かった……ですね……」

P「ああ、面白こわかった」

P「でも流石だな小梅、全然怖がってないように見えたぞ」

小梅「そ、そうですか?」

P「うんうん、俺なんか叫んじゃったのに……みっともない」

小梅「え、あ……」

P「本当にあんなお化けがいたらどうしようかって、今日眠れないかも……なんてな」

小梅「だ、大丈夫です……あんな幽霊は本当はいないし……み、皆あんな酷いこと……し、しないですから……!」

P「え?」

小梅「……あ」

小梅「えと、その……」

小梅「……」

小梅「……本当の幽霊がいるなら……きっと、あんなことしないんじゃないかって……お、思います」

P「はは、それもそうかもな、だいたい幽霊が人を襲うなんて勝手な想像でしかないしな」

小梅「は、はい」



…………



小梅「……ふう、今日も大変だったな……」

小梅「……」

小梅『だ、大丈夫です……あんな幽霊は本当はいないし……み、皆あんな酷いこと……し、しないですから……!』

小梅「……」

小梅「ばれてない、かな……」

小梅「……え?」

小梅「……うん、うん……そ、そうだよね……うん」

小梅「……え、でも……それは…」

小梅「確かにPさんなら……信じてくれるかも……だけど……」

小梅「も、もし……もし変なやつだって思われたら……」

小梅「それは…………いや……」

小梅「……」

小梅「言えない……言えないよ」

小梅「幽霊が見える……なんて……」

小梅「……あ」

小梅「ごめ、ごめんね……あなたが嫌いとか……そ、そういうわけじゃ……なくって……!」

小梅「……」

小梅「……うん」

小梅「そんな日が来ると……いいな……」

小梅「……」

ピロリロリン

小梅「っ!」


小梅「け、携帯……?」ゴソゴソ

小梅「……え、えと」

P『最近仕事増えてきたから、スケジュールを分かりやすくまとめてみた、内容を添付したから見といてくれ』

小梅「……」カチッ

小梅「……わっ……こんなにあるんだ……」

小梅「……」カチカチッ

小梅「……?」

P『P.S. 最近ボーッとしていたり独り言が多いみたいだけど、疲れてるのか? 調整ならいつでもするから、大変なら相談してくれ』

小梅「……ふふ」

小梅「Pさん……優しい……」

小梅「……」

小梅(……やっぱりPさんなら、もしかして)

小梅「……」

小梅「……」フルフル

小梅(今日はもう……お風呂入って……寝ようかな)



ーーーーーー



「ねえねえ、小梅ちゃん、何してるのー?」

「え、えと、友達と喋って……」

「……? そこ、誰もいないよー?」

「い、いないけど、いる……いるの……」

「変なのー、何がいるの?」

「ゆ、幽霊さん」

「……幽霊? 幽霊って……あの……こわーいの?」

「怖くないよ……優しいよ?」

「で、でも、絵本で読んだよ、幽霊さんは子供を食べちゃうんだよ!」

「そんなこと……な、ない……私、幽霊さんと……仲良いもん……」

「……ひっ」

「うわああああああん! 小梅ちゃん変なこと言わないでよー!」

「え……ど、どうして……な、泣くの……!?」



…………



「お、おはよう」

「……」

「……?」

「……」

「お、おはよ…?」

「……ふん」

「ど、どこ行くの?」

「小梅ちゃんには教えないよ」

「なっ、なん……で……?」

「小梅ちゃん、変なこと言うし、たまに一人でぶつぶつ喋ってるし……」

「私、そんな気持ち悪い人とは遊びたくないもん」

「……気持ち、悪……」

「もう話かけてこないでね」

「……」



…………



「なぁあいつ知ってるか?」

「ん、あいつって……あいつか?」

「そうそう、あいつさ、昔からなんか変なこと言ってるみたいで……なんでも、幽霊が見えるとか」

「マジ? うわぁー、馬鹿みてぇ……なぁ、本当に見えるかからかってみねえ?」

「やめとけよ、あいついつも一人でぶつぶつ言ったり気持ち悪いし、関わりたくねえよ」

「それもそうかぁ……」

「……ねぇ、ちょっと」

「ああ?」

「そういうのやめなよ……そんな陰口みたいなことしてみっともないじゃん! 言いたいことがあるなら面と向かって聞けばいいじゃない!」

「急になんだお前……正義ぶりやがって……それじゃあお前がアイツに聞いてみてくれよ、本当に幽霊見えんのかーってよ!」

「なんで私が聴くのよ、私、あんたが面と向かって聞けっていう注意したんじゃないあんた馬鹿なの」

「はっ、陰口がどうこういう割にはお前もあいつとは関わりたくねえんじゃねえの?」

「どういう論理でそういう結果得られんのよやっぱあんた馬鹿なの」

「馬鹿馬鹿うるせえよ! やっぱお前も…」


「……ふん、言いわよ、聞けばいいんでしょ?」

「え」

「……ねぇ、小梅さん、あなた幽霊が見えるの?」

「……私、ですか?」

「そう、貴方よ貴方……どうなの?」

「私、は……」

「……」

「私には……見えません……」

「……幽霊は、見えません」

「……だ、そーよ?」

「ちぇっ、つまんねーな……せっかく良いネタになりそうなやつだったのによ」

「……馬鹿馬鹿しい、幽霊がみえるなんて嘘を言う人もくだらないとは思うけど……それよりずっと貴方達みたいな人間の方がくだらないわよ!」

「くだら、ない……」

「んだとこの野郎!?」

「野郎って私女なんだけどあんた馬鹿なの」



ーーーーーー



小梅「……!」ガバッ

小梅「……あ、ゆ、夢……そうか、そうだよね……」

小梅「……」

小梅(あの時、あの人はそういうつもりで言ったんじゃないって、わかってるけど)

小梅(……幽霊が見えるなんて言う人は……くだらない……)

小梅「……」

小梅「……!」

小梅「も、もうこんな時間……い、急がなきゃ……!」



…………



小梅「ご、ごめんなさい……! 寝坊……しちゃって……!」

凛「あれ、小梅ちゃん?」

小梅「……え、あ、Pさん……は……?」

凛「プロデューサーは今まゆの付き添いだよ……ところで小梅ちゃん、どうしたの?」

小梅「ど……どうしたって……?」

凛「今日休みじゃなかったっけ?」

小梅「……え」

ガチャ

凛「!」

小梅「!」

まゆ「ぴ、Pさん……返して、返してください……」

P「だ、ダメだっつーの」

まゆ「でも、まゆは、まゆはそれがないと……だめなんですよぉ……」

P「知るか! なんとかしろ!」

まゆ「そんなぁ……」


小梅「……」

凛「……」

小梅「な、何があったん……でしょうか……?」

凛「知らない……でもまぁどうせ……」



P「だいたい男の写真を財布に入れて持ち運んでるって……お前アイドルの自覚ないだろ!?」

まゆ「そんなことないです……まゆにとってアイドルは大切です……Pさんとの繋がりでもありますからぁ……」

P「俺との繋がりって……ファンのことを考えろよ! そういうのがアイドル舐めてんだって言うんだ! 」

P「だいたいお前が不注意で財布落として誰かに見られたりしてみろ! 苦情が半端ないぞ!」

まゆ「……うふふ」

P「な、何笑ってんだ……反省してんのかお前」

まゆ「まゆのファンはもう皆知ってますよぉ? まゆには大好きな運命の人がいるって……」

P「なにそれ初耳」

まゆ「だから返してください……まゆ、定期的にPさん見ないと死んじゃうので……それが無いと……」

P「その前に運命の人云々の話だ……ちょっと来いお前、ファンに何吹き込んだ!」ズルズル

まゆ「あっ、あっ……ひ、引っ張らないでください……!」

ガチャ

凛「……」

小梅「……」

凛「まぁ、想像通りだね」

小梅「あ、あはは……」


凛「……だけどやっぱり凄いね、まゆ」

小梅「はい……凄い、ですよね……好きな人がいるって皆に言ってるのに……そ、それでもファンの人が……」

凛「あ、うん……それもだけど……そこじゃなくて」

凛「……」

小梅「……凛、さん?」

凛「……その、小梅ちゃんってさ、恋とか……したことある?」

小梅「鯉……ですか?」

小梅「鯉……カープ……」

小梅「私……や、野球のことはあんまり……」

凛「……それは冗談なの?」

小梅「……?」

凛「魚じゃなくて、恋愛の恋だよ、恋愛」

小梅「恋愛……」

凛「そう、好きな人とかいたことないかな」

小梅「……わ、わからない、ですけど」

小梅「……」

凛「……ふふ」

凛「私は、いるんだ……好きな人」

小梅「え」

凛「でも私はその人に好きだなんて言う勇気がなくてさ」

凛「……まゆが、羨ましいな」

小梅「……」


小梅「あ、あの、凛さん」

凛「なに?」

小梅「どうして……ですか?」

凛「どうしてって……んと、どういう質問なの?」

小梅「わ、私……」

小梅「……私、好きかどうかはわかんないけど……なんだか……き、気になる人ならいる……と、思います」

凛「……」

小梅「……でも、私は……恋とか、分からなくて……だから……」

小梅「私は……」

凛「……」

凛「うんと……そうだね、私が言えるようなことがあるとするなら」

小梅「は、はい」

凛「私がその人のことを好きだって確信したのは……一緒に恋愛映画を見たときだった」

凛「……その人ね、私の隣で、ありがちなストーリーの映画にすっごい感動して大泣きしちゃったんだよ」

凛「普通の人は引いちゃうくらい泣いたんじゃないかな……ふふ、本当にうるさいぐらいの泣き方だったし」

小梅「……」

凛「……でも、私はなんだか、そんなちょっとした映画で大泣きするその人が可愛く見えたの」

凛「そしたら急に……急にね、分かったんだ……私、この人が好きだったんだって……」

凛「……」

凛「……とっても、とっても些細なことだったけど」

凛「大きいことか小さいことかなんて関係なくて……あるきっかけで、その人が急にたまらなく愛しくなる」

凛「……いや、きっと私はその人が好きだった……だけど好きだったのに気づいてなかっただけかな」

小梅「……」

凛「……」

凛「な、なんだか恥ずかしいこと言っちゃったかも……ごめん、こんな感じで」

小梅「い、いや……そんなこと……そんなことないです」

小梅「……私は、素敵だなって……思いました」



…………



P「んー、今日の業務もおわりー!」

小梅「お、お疲れ様……です……」

P「……」

P「……なんで小梅がいるんだ?」

小梅「……え、えっと……今日はその……間違えちゃって……」

P「間違えてって……あれ、どうすんのお前、お前の家遠いけど……」

P「……んー、なんなら俺が送ってやってもいいぞ」

小梅「あ、大丈夫です……き、今日もお父さんが仕事帰りに迎えに来てくれるって……」

P「ん、そっか……」

小梅「……」

P「……」

P「それじゃ迎え来るまで暇だな」

小梅「そうです……ね……」

小梅「……」

P「……」

P「今日もその間……映画でも見るか……!?」

小梅「え、は、はい……」

小梅(……本当に映画、好きだなぁ)

P「ふふ、暇だもんなー……そうだ、小梅と是非見ようと思ってた新作ホラーが……」ゴソゴソ

小梅(映画……そ、そうだ……!)

小梅「あ、あのっ、Pさん、その……」

P「ん?」

小梅「私……ホラーじゃなくて恋愛映画……み、見てみたい……です……」

P「え、いいけど……珍しいな」

小梅「……珍しい、ですか?」

P「いやまぁ、別にいいんだ……待ってろ、恋愛映画も確かいい奴があるから……凛と見ようかなと思ってたやつだけど……いいだろ、もう先に見ちゃえ」ゴソゴソ



…………


「僕は、貴方を一目見た時から好きになってしまったんだ」

P「……」ジー

小梅「……」ジー

「あの日、あの時、君が僕の目の前に現れたのは奇跡だったんです!」

「……嬉しいです、でも……私は貴方に嘘をついていて……」

「実は私は、目が見えないんです」

「貴方が、盲目で自分の部屋から出ることも出来ないこんな私に沢山お話を聞かせてくれて嬉しかった」

「でも、私にはこの目と同じで光がありません……優しい貴方に甘え、秘密を隠し続けてきた私は嘘つきです」

「言うべき真実を貴方に言えなかった……そんな私が貴方に愛される資格など……」

「それがどうしたというのですか!」

「……!」

「私は、もう貴方を好きになってしまった」

「貴方の目が見えないというのなら私が貴方の目に、光がないというのなら私が貴方の光になります」

「……こんな私を、嘘つきの私を貴方は受け止めてくれるというのですか?」

「何が嘘でありましょうか……あなたは全てを語ってくれた……そんな貴方を信じ、受け止めることこそが、私が貴方を愛しているという証拠になりはしませんか」

「……」

「ありがとう、私を……受け止めてくれて……私も貴方が、大好きです……!」

P「……うっ……うぐっ……良かった、良かったなぁ……!」

小梅「……」

P「うおおおおおおおおん……!!」



…………



P「ふぐっ……うう……うああ……ひぐっ……」

小梅「ぴ、Pさん……ハンカチ、です……」

P「す、すまん……ありがとう」

P「……いい話だった」グスッ

小梅「感動……しました……」

P「俺も、大切な人の全てを受け入れてあげれる人になりたい……」

小梅(……受け入れてあげれる人)

小梅(私にとっては……全てを受け入れてくれる人……なのかな)

小梅「……」

小梅(……Pさんは、私の全てを信じて……受け止めて……)

小梅「……」チラッ

P「……それが、愛ってもんだよなぁ」

小梅「……」

『私は嘘つきです、言うべき真実を貴方に言えなかった』

小梅「……」

小梅(もう、嘘は……)

小梅(大丈夫……大丈夫だよ、きっと……Pさんなら……)

小梅「……あの、Pさん」

P「ん?」

小梅「私……私、その、あの……」


小梅「……あの」

小梅「……」

P「……小梅?」

小梅「……私は……その……私は!」

小梅「……」

小梅「……あ……う……」

小梅「……っ」

小梅(なんで……声が、でない……出ないよ……)

P「……」

小梅「私は……Pさんに……言いたい……い、言いたいことが……」

小梅(言いたい……言いたいのに……言いたく、ないことが……!)

P「……小梅」

小梅「……う、うう…」

P「……深呼吸してみろ」

小梅「!」

小梅「……」

小梅「……すぅ……はぁ……」

P「よし、いいぞ……深呼吸して落ち着くんだ」

P「そして、喋れると思ったら……ゆっくりでいい……話してくれ」

P「小梅の言いたいことってのが何かは分からないけど……約束する、どんなことだって俺はお前を絶対、受け止めてみせるから」

小梅「……」

小梅「……受け、とめて……受けとめてくれますか?」

P「……ああ」

小梅「……」

小梅「……ある……ある女の子の、話……です」



ーーーーーー



その子は昔から、普通の人には見えない人達がみえてました

親にも友達にも見えないけど、その子だけに見える人達がいて

それが普通じゃないことだと分からないまま彼女は育ちました

もちろんそんな異様な彼女を見る普通の人達は彼女のことを疑い、嫌悪し、離れていきます

そのことに気付いた彼女は、普通の人達の前では、彼女にだけ見える人達のことをまるで見えていないように振る舞いました

……彼女にだけ見える人達の中には彼女の友人達だっているのに、その人達のことも見えない振りをしました

彼女はそうして普通の人達と沢山友達を作り、彼女にしか見えない友達とも付き合いを続けてきました

でも、そうやって彼女が得たものは

嘘の演技のせいで、決して他人には開くことが出来ないままの心だけでした



ーーーーーー



小梅「……その子のことを……誰も、誰も……し、信じてくれなくて」

小梅「もう、もう皆が離れていくの……やだったから……その子は誰にも……言えなくて……」

小梅「それに、幽霊さんの中には、友達もいたのに……その子のファンだって……応援してくれる人もいたのに……その子は……み、皆の前じゃその人達も見えない振りをしたりして……!」

P「……」

小梅「その子は……私はっ……!」

小梅「私は……そのことを言える人が欲しかった……信じてくれる人が欲しかった……!」

P「……」

P「辛かったんだな……」ギュッ

小梅「……!」

小梅「……っ」

小梅「うぅ……わああああああん!!」


…………



P「……」

小梅「……」グスッ

P「落ち着いたか?」

小梅「……はい」

P「……」

小梅「……変な奴だって……お、思いましたか?」

P「そんなことあるわけ……!」

ピロロロ、ピロロロ

P「!」

P「……」

小梅「……」

小梅「……で、電話……出ないんですか?」

P「いや……今はそれよりもだな……」


ピロロロ、ピロロロ

小梅「……」

小梅「それ、き、きっとお父さんが迎えに来てくれた……電話です」

P「……」

小梅「……私、もう……帰りますね」

P「お、おい……俺はお前をまだ帰すわけには…」

小梅「また明日も……よろしくお願いします」

P「……」

P「明日、ちゃんと来るんだな?」

小梅「……はい」

P「また明日……絶対、絶対来いよ」

小梅「……」

小梅「……私の話、聞いてくれてありがとう……ございました……」









P(……その日に送ったメールに、小梅から返事はなく)

P(レッスンがある日も、定期ライブがある日も)

P(小梅は……彼女が大声で泣いた日以来、プロダクションに顔を出すことはなかった)



…………



杏「ね、最近さ」

P「……ん、なんだ妖怪」

杏「よ、妖怪とはなにさ……」

P「……はぁ」

杏「……」

杏「最近、小梅ちゃん、来てないね」

P「……」

杏「んでなんかプロデューサーは暗黒面に落ちてるね」

P「……」

杏「またなんかセクハラでもしたんでしょ?」

P「お前っ……! ふざけんなよ……!」

杏「おわっ、こ、こわっ……そんな睨まないでよ」

P「これは、そんな簡単な話じゃ…」

杏「簡単な話じゃない?」

P「……そうだよ」

杏「まぁそうなんだろーね、ずっと落ち込んでるし」

杏「……でもなぁ、なんだかなー」

P「なんだよ」

杏「プロデューサーなんか、らしくないじゃんか」

P「……何処がだ」

杏「えー、だって……」

杏「杏の知ってるプロデューサーってのはさ、杏が家で居留守使ってた時は鍵ぶち壊して入ってきたり、ここから動かないって言ったら杏にセクハラしてきたり、車で遠くに逃げようとしてもジェット機で追跡してきたりしたりする奴なんだけど」

P「最後のやつは覚えがないぞ」


杏「まぁまぁ、そんなどうでもいいことは気にするところじゃなくて……」

杏「……ね、プロデューサーはそういのって小梅ちゃんにはしないの?」

P「……」

杏「……」

杏「今小梅ちゃん、何に悩んでるとかは杏は知らないけど」

杏「……でもさ、家に引きこもって、レッスンサボって、ライブまでサボってるんだよね?」

杏「そんなニートみたいなアイドルにプロデューサーがすることって、分かりきってるじゃん」

P「……」

杏「なんで何もしないのさ……もし、小梅ちゃんだからって何にもしてないなら……」

杏「杏、それは差別だと訴えてやるぞ! 小梅ちゃんが家にこもってていいなら杏もそうさせろ!」

P「……お前」

杏「……くひひ」

杏「プロデューサーは杏を働かせてるんだからさ、もうちょっと自信もっていいんじゃない?」

P「……」

P「……ちっ」

杏「し、舌打ち……だと……」

P「……」

P「ま……そうだな、チクショウ……そうだよな、うん」

P「……ていうかよくよく考えれば……あいつ、俺のこと信じて話してくれたんじゃないかよ……それなのに話聞かせるだけ聞かせて逃げやがってなぁ……」

杏「……ん? プロデューサー……?」

P「……杏」

杏「ん?」

P「飴をくれてやろう、おらっ、受け取れっ!」

杏「わっ、ちょ、投げるなーっ!」



…………



小梅「……Pさん、怒ってるかな」

小梅「……うん、きっと、そうだよね……へ、変なこと言って……ずっとアイドル、サボっちゃってるし……」

小梅「……」

P『俺はお前を絶対、受け止めてみせるから』

小梅「……」

小梅(……Pさんはきっと、私のこと信じてくれてる……)

小梅(……でも)

小梅(でも……どうしても……怖い、怖いよ……)

小梅(今までもそう……私は変な奴だって思われたり……嘘つきだって思われたり……)

小梅「……」

小梅「……この部屋……ちょっと……寒いな……」


小梅「……」

小梅「……?」

小梅(あれ……なんだろう、誰かの声が聞こえて……)

「Pさ……ちょっ……これ……です……!」

「ええいっ……そんなこと……部屋から………ですよ……」

「……無理やりは……親として……きません!」

小梅「……え」

「ええ……さいっ……北斗……奥義! ……虚無指弾!」

「ぐげっ……あああああああああああああああああ!!」

小梅「……!?」

小梅「え……なに、なにが……」

ガチャ

小梅「」ビクッ

P「……よう、小梅……迎えに来たぞ」

小梅「え、え……Pさ……?」

P「ライブの準備だ」



…………



P「……」ブロロロロロ

小梅「……あの」

P「喋るな、曲のリストちゃんと見てろ、そろそろ目的地に着くぞ」

小梅「……」

小梅(……急に、ライブなんて)

小梅(私のこと怒ったりして……ないのかな?)

P「……」キキッ

小梅「わ、わわっ!」グラッ

P「……着いたぞ」

小梅「え……」

小梅「これ……ですか?」

P「そうだ」

小梅「……こんな、こんな大きなライブハウス……」

P「行くぞ、時間がない……曲順は覚えたな?」

小梅「あ、ま、待って……」

P「……俺は先に行っておく、準備ができたらお前もこい」スタスタ

小梅「……あ」

小梅(Pさん……ライブ前はいつも優しく話してくれて、開始まで一緒にいてくれるのに……)

小梅「……」

小梅(やっぱり……そうだよね)



…………



衣装「小梅ちゃん! 久し振りぃ!」

小梅「あ……衣装さん……お、お久し振り……です……ご、ごめんなさい……」

衣装「謝ることなんかないわよぅ……でもさみしかったぁ……小梅ちゃんにずっとあえなかったんだもの」

衣装「……ね、あのプロデューサーにセクハラされたからお仕事行かなかったんでしょ?」

小梅「えっ、そ、そんなこと……されてないです……!」

衣装「あら? そうなのぉ? 私はあいつが小梅ちゃんにセクハラしたから小梅ちゃんが引きこもっちゃったって聞いたけどぉ」

小梅「ち、ちが……Pさんじゃなくて私、私が……!」

衣装「……ふふ、じょーだんよ、小梅ちゃんがあんまり暗い顔してるからちょっとからかってみたかったの、ごめんね?」

小梅「え……あ……」

衣装「何があったかは私は知らないけど、そんな顔じゃお客さんに失礼よ? もっと笑顔にならなきゃ!」

小梅「は……はい……」

衣装「……まぁ、でも今日はお客さんいないみたいなんだけどねぇ」

小梅「お客さんが……い、いない?」

衣装「そうそう……プロデューサー、小梅ちゃんの練習とかのためにこのステージを作ったんじゃないのかしら、お客さん一人もいないんだもの」

衣装「でも流石にそれでこんな大きなライブハウス使って、こんな大掛かりな準備までしてって……正気の沙汰じゃないけどね」

小梅「……」

衣装「しかも私には新しい衣装作れって言ってねぇ……ええと、これ! どうかしら?」

小梅「……! これ……か、可愛い……!」

衣装「もうちょっとお話したいけど時間もないし……それじゃほら、あっちでちょっと着替えてみてくれるかしら?」

小梅「わ、分かりました……!」タタタッ

衣装「……」

衣装「……やっぱり小梅ちゃんは笑顔の方が可愛いわねぇ」



…………



P「準備できたか?」

小梅「は、はい」

P「この幕が上がったらまずは最初の曲、『Coral reaf』から入る、そんで終わったらすぐに『Cosmic shoes』に……」

小梅「あ、あの……」

P「ん? なんだ?」

小梅「き、今日……お客さんいないって……」

P「……」

小梅「私、Pさんが何をしたいのか……わ、わからなくて……」

小梅「……Pさんが……私を今どんな風に見てるのかも……わかんなくて……」

P「……なぁ、小梅」

小梅「……?」

P「俺にはな、この目で見えるものが沢山ある」

P「……だけど、見えないものだって沢山ある」

P「いや、むしろそんなものだらけだ、俺は預言者じゃないから未来は見えないし、超能力者じゃないから人の気持ちも見えやしない」

P「……そして、幽霊も、俺の目じゃ見ることはできない」

小梅「……」

P「でも、でもな……」

P「俺、小梅のことは見てやれることができるんだ」

小梅「……え」

P「見えないものが沢山ある俺でも、小梅は見える」

P「……それなら、俺はお前が心から笑うような笑顔が見たいって思う」

小梅「……」

P「……さ、幕が上がるぞ……行ってこい!」

小梅「幕、が……」

小梅「……!!」



…………



P「……」

P(幕が上がったその瞬間)

P(小梅はまるで、とても沢山の客に圧倒されてしまったような、そんな顔をしていた)

P(……俺には誰一人客なんて見えなかったけれど)

P(泣いて、笑って……そして歌う彼女の姿は見えている)

P「……」

P「あっ、やべ、見てる場合じゃねえや……俺は俺でライブ中やっときゃならんことたくさん…」

P「ええと……まずはこの資料を見て……」ペラッ

ワアアアアアアアアアアッ!

P「……え」

P「……!!」

P「……」

P「はは……」

P「今、俺にも一瞬、一瞬だけ見えたぞ……」

P「……最高のお客さんと……最高のライブだな、小梅」





おわり

見返してみたら何これ恥ずかしい、童貞じゃなかったら死ぬところだった


小梅ちゃん誕生日おめでとおおおおおおおお

白坂小梅(13)
http://i.imgur.com/eb8o5lr.jpg
http://i.imgur.com/MGpFlPE.jpg

渋谷凛(15)
http://i.imgur.com/5TL4Wko.jpg
http://i.imgur.com/beyGOj7.jpg

佐久間まゆ(16)
http://i.imgur.com/b8IT0AT.jpg
http://i.imgur.com/0g3mlek.jpg

双葉杏(17)
http://i.imgur.com/WumjMTv.jpg
http://i.imgur.com/tieYAv0.jpg

>>1童貞で良かったなw
でもいい話だったぞー。

>>39
ありがとうございます!

>>40
良かった...?


おまけ1



小梅「ぴ、Pさんっ!」

P「おう、お疲れさん、ライブどうだった?」

小梅「私……楽しかった……今までで一番のライブ……でした……!」

P「……ん、良かった」

小梅「……」

小梅「わ、私……気付いたことがあります……」

小梅「私にはPさんには見えない人達が見えるけど……私にも見えてなかったものが……あ、あったんだって……」

小梅「わ、私……」

P「……言わなくていいよ、小梅、俺にも分かっ…」

小梅「私の運命の人が……み、見えてませんでした……!」

P「ちょっとまて誰だそいつ」

小梅「あ……運命の人は……い、言い過ぎかも……です……えへへ…」

P「俺の想像してた感じの言葉と違うぞふざけんな……なんでだ、なんでそんな急に乙女チック全開なんだお前……」

小梅「……あるきっかけで……急に、たまらなく……い、愛おしく……」

小梅(私にとってそのきっかけは……あるプロデューサーが、端から見たらとってもヘンテコなライブを企画してくれたこと)

小梅(それが……私のことを信じているという何よりのメッセージだったこと)

P「これはどうする……とりあえずそいつを八つ裂きにして……コンクリで海に沈めて……」

小梅「……」ジー

P「……お、おい、なに見てんだ」

P「……」

小梅「……」ジー

P「まさ、か……え、お前、運命の人って……」

小梅「……え、えへへ」


おまけ2



ちひろ「請求書です」

P「え」

ちひろ「あんな大きなライブをしたんですし、物凄い額になりましたよ?」

P「これ……桁数が一つ多いんじゃ……」

ちひろ「というかですね……なんなんですか、ライブをして儲けが一円もなくて、損しかしてないなんて……!」

ちひろ「だいたいこのチラシも、このサイトも……入場者は幽霊限定って……なめてんですか」

小梅「あの……あの、ちひろさん……それは……」オロオロ

ちひろ「……」

P「……」

小梅「……」オロオロ

ちひろ「あと、一つ聞きたいんですが……なんで小梅ちゃんがPさんの膝の上に装備されてるんですか」

P「俺も……それはよくわからなくて……」

ちひろ「はぁ、小梅ちゃん……ちょっと私Pさんと二人で話があるから少しどいてもらって……」

小梅「い、いや……です……」ギュッ

P「おわっ」

小梅「……」ギュー

P「……」

ちひろ「……何したんですかあんた」

P「俺が聞きたいです」

ちひろ「ええいっ、ラチがあかない……小梅ちゃん、どいて…」ガシッ

小梅「……!…!!」ギュー

P「いてっ、いてえっ、ひ、引っ張られてる……やめ、やめて!」

ちひろ「こ、この……なにこれ……凄い力……」

小梅「わ、私……呪いの装備なんです……い、一度装備したら離れないんです……!」

ちひろ「っ! こ、小梅ちゃんはこんな頭の悪い発言する子じゃなったのに……いい加減にして下さいよプロデューサーさん!」

P「い、いいから引っ張らないでくれ……し、しぬっ……ちぎれるからああああ!」

小梅可愛いからまた小梅でなんか書くと思います、書いたらよろしくです

でも杏も書きます、杏は書きます

見てくれてありがとうございました
駄文失礼しました―

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