武内P「起きたらひどい事になっていました」 (1000)

武内P「確かに、仕事中に寝てしまった私も悪いです」

アイドル達「……」

武内P「しかし、この仕打はあまりにも酷いとは思いませんか」

アイドル達「……」

武内P「私は今……とても、悲しいです」

アイドル達「……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1510316855

武内P「皆さん、目を瞑ってください」

アイドル達「……」

武内P「寝ている私に何かした人は、手を挙げてください」

アイドル達「……」

武内P「ありがとうございます。目を開けてください」

アイドル達「……」

武内P「誰も、手を挙げませんでしたね」

アイドル達「……」

武内P「事務所には……」

アイドル達「?」

武内P「監視カメラがついています」

アイドル達「!?」

武内P「それでは、もう一度目を瞑ってください」

アイドル達「……」

武内P「寝ている私に何かした人は、手を挙げてください」

アイドル達「……」スッ

武内P「ありがとうございます」

アイドル達「……」

武内P「まさか、全員とは思いませんでした」

武内P「監視カメラの話は、本当の事ではありません」

アイドル達「!?」

武内P「申し訳ありません。嘘をつかせていただきました」

アイドル達「……」ムッ

武内P「しかし、貴女達が憤るのは違うと思うのです」

アイドル達「……」

武内P「わかって頂けたようで幸いです」

武内P「本田さん」

未央「……」

武内P「事の発端は貴女の発言からだ、というのは本当でしょうか」

未央「……」フルフル

武内P「もう一度だけ聞きます」

未央「……」

武内P「『第一回チキチキ! プロデューサー危機一髪!』の開催はしましたか?」

未央「……」コクリ

武内P「お答え頂き、ありがとうございます」

武内P「……それでは、順番に話を聞いていこうと思います」

アイドル達「……」

武内P「アタスタシアさん」

アーニャ「……」

武内P「貴女が手に持っている、それは何でしょうか?」

アーニャ「リミェーニ、アー、ベルト、です」

武内P「お答え頂き、ありがとうございます」

武内P「新田さん」

美波「……」

武内P「貴女が手に持っている、それは何でしょうか?」

美波「スラックスです」

武内P「お答え頂き、ありがとうございます」

武内P「そうですね、どちらも私が着用していたものです」

武内P「ラブライカで、流れるように脱がせていますね」

美波「アーニャちゃん!」

アーニャ「美波!」

パシンッ!

武内P「ハイタッチをしないでください」

美波・アーニャ「ア~ア~ア~♪」

武内P「『Memories』を歌い出さないでください」

美波・アーニャ「♪」スイスイッ

武内P「お二人とも、踊り出さないでください」

蘭子「ひ~と~り~よがりの~♪」

武内P「神崎さんなら歌って踊っていい、という意味ではありません」

蘭子「……」

武内P「神崎さん」

蘭子「……」

武内P「貴女が羽織っている、それは何でしょうか?」

蘭子「我が友を包む漆黒の衣」

武内P「お答え頂き、ありがとうございます」

武内P「そうですね、私が着用していた上着ですね」

蘭子「……」

武内P「とりあえず、それらの返却をお願いします」

美波・アーニャ・蘭子「……」モタモタ

武内P「返すのを渋らないでください」

武内P「多田さん」

李衣菜「……」

武内P「今日は、随分とTシャツがゴワついていますね」

李衣菜「……」

武内P「ちょっとしたワンピースの様になっていますよ」

李衣菜「……」

武内P「返さないのがロックと思っていませんか?」

李衣菜「……」モタモタ

武内P「話が早くて助かります」

武内P「さて」

楓「……」

武内P「何故、貴女まで参加したのでしょうか」

楓「……」

武内P「ワイシャツを、ワーイシャッと脱がせましたね?」

楓「!?」

バシバシ!

武内P「素肌を叩かれると痛いのでやめてください」

楓「……」ムスッ

武内P「その表情には釈然としませんが、返して頂きありがとうございます」

武内P「さて、それでは」

凛「……」

武内P「渋谷さん、私のパンツを帽子のように着こなすのはやめてください」

凛「悪くないかな」

武内P「悪いです。返して頂けませんか」

凛「逃げないでよ!」

武内P「大声を出したら私がいつもひるむと思ったら大間違いですよ」

凛「ふーん! ふーん!」ペタン

武内P「座り込んで駄々をこねないでください」

アイドル達「……かわいそう」

凛「ふーん! ふーん!」イヤイヤ

武内P「……後で必ず返してください」

(まさかパンツまで脱がされているとは)思わなかった

武内P「前川さん」

みく「……」

武内P「この猫耳、似合っていますか?」

みく「あんまり」

武内P「そうですね、私もそう思います」

みく「……」

武内P「しかし、比較的軽い行動ですね」

みく「!」

アイドル達「え……ズルい」

武内P「しかし、ギリギリアウトとします」

みく「……」

まさか靴下ネクタイのみなのか?

武内P「このままでは私の心が折れそうなので、一つだけ褒めます」

アイドル達「……」

武内P「見かねた私に、布をかけてくれた方がいますね」

アイドル達「……」スッ

武内P「全員、手を挙げないでください」

アイドル達「……」

武内P「諸星さん」

きらり「……」

武内P「私の服が、パンツ以外戻ってきたので、これはお返しします」

きらり「……」

武内P「しかし、自分のスカートを脱いで私にかけるという判断は如何なものかと」

きらり「……」

武内P「自分のパンツを丸見えにする必要は無かった、そう、私は思います」

アイドル達「……いやらしい」

武内P「すみません。ありがとうございました、これはお返しします」

きらり「……」

やっぱりきらりは天使だったんや…

武内P「三村さん」

かな子「……」

武内P「私の乳首をクリームでコーティングしましたね?」

かな子「……」

武内P「これは何クリームですか? 取れないのですが」

かな子「美味しいから大丈夫です」

武内P「味の話はしていません」

かな子「……」

ちっひは守護神なんだってはっきりわかんだね

武内P「緒方さん」

智絵里「……」

武内P「クリームに、四葉のクローバーでトッピングをしましたね?」

智絵里「……」

武内P「とても、可愛らしく配置されていると思います」

智絵里「……見捨てないで、くださいね」

武内P「このタイミングで言われると、返答に困るのでやめましょう」

智絵里「……」

果たして武内Pは服が戻るまでスカートを持って前を隠してたのかそれともスカートを履いて隠してたのか

武内P「双葉さん」

杏「……」

武内P「四葉のクローバーでトッピングされたクリームの頂点が見えますか?」

杏「……」コクリ

武内P「飴ですね」

杏「……」

武内P「左右で違う色なのは、何か意味があるのですか?」

杏「きらりが右で、杏が左につけた」

武内P「諸星さん、私の感動を返してください」

武内P「キャンディアイランドの皆さんと諸星さんは、私の乳首に恨みがあるのでしょうか」

武内P「島村さん」

卯月「……」

武内P「島村さんの『頑張ります』の声で起きる事が出来ました」

卯月「……」

武内P「何を頑張るつもりだったかはわかりませんが、ありがとうございます」

卯月「何にもない……! 私だけ、何にもない……!」

武内P「何をする気だったんですか」

卯月「笑顔なんて、誰にだって出来るもん……!」

武内P「今の私に、笑顔が出来ると思いますか?」

ごもっとも

武内P「城ヶ崎さん、赤城さん」

莉嘉・みりあ「……」ムスッ

武内P「貴女達が参加出来なかったのは、私にとっては幸運でした」

莉嘉・みりあ「……」

武内P「大量のシールはまだ良いです、大丈夫です」

莉嘉・みりあ「……」

武内P「その、大量のカブトムシをどうするつもりだったのですか?」

莉嘉・みりあ「……」

武内P「やめておきましょう。心が折れてしまいそうです」

武内P「千川さん」

ちひろ「……」

武内P「盛りましたね?」

ちひろ「……」フルフル

武内P「もう一度だけ聞きます」

ちひろ「……」

武内P「盛りましたね?」

ちひろ「……」コクリ

武内P「どうしてすぐバラすのに嘘をつくのか、私にはわかりません」

武内P「なにをしているんですか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442925474/)
このスレ思い出した

武内P「さて、皆さん」

アイドル達「……」

武内P「どうして、こんな真似をしたのですか?」

アイドル達「……」

武内P「私は今、とても悲しい気持ちでいっぱいです」

アイドル達「……」

武内P「私は、皆さんに嫌われていたのでしょうか?」

ちひろ「それは違います、プロデューサーさん」

武内P「千川さん?」

ちひろ「皆、プロデューサーさんに怒ってほしくてやったんです」

武内P「そう、なのですか?」

アイドル達「……」コクリ

武内P「意味が、わかりません」

事務員がいない間に犯行に及んだと思ってたのに…

ちひろ「悪いことをしたら叱って欲しい」

武内P「……」

ちひろ「でも、プロデューサーさんはいつも怒りませんよね」

武内P「……そう、ですね」

ちひろ「自分達が大切じゃないから、怒ってはくれないのかと、皆不安なんです」

アイドル達「……」

武内P「そう、だったのですね」

アイドル達「……」

武内P「皆さん、私は今まで皆さんを怒ったことがありませんでした」

アイドル達「……」

武内P「ですが、皆さんは私の大切なアイドル達です」

アイドル達「……プロデューサー……!」

武内P「それだけは、覚えていてください」

アイドル達「はいっ!」

武内P「良い、笑顔です」


武内P「それではお望み通り、今から本気で怒ります」




おわり

綺麗に落ちたな
おつおつ

HTML化依頼出してきます

面白かった

>>27
これ滅茶苦茶面白いな!
酉ついてるから他のも漁って見る!

おつ

本気で怒ったら阿鼻叫喚の地獄絵図になりそうな乙

、              f∧
 ` 、             i. ∧
     i          i. ∧
    |           i  ∧
    |          i   ∧
___ j!          i    ∧__
     ≧=- _      i     ∧
     ___ ∧       ir‐ 、   ∧
  /      ∧    i   \   ∧ ___   - ―― 、
./      >‐┴―‐- .{    i>' ´> ―― v'  _  -  _ \

      /           ! >'´   〔    ・ /‐       ‐`   \
     /          i'´      }  ≧==≦      , 、       {_
    /_       //        .{            /ニニニ≧=ァ‐‐′
   ,    ‐--- ァ'´  ,        i       _ ィ≦ニニニニニニニ/
   i       /   ./       /   /二二ニニニニニニニニニニ/
   |        ,   /       /   /ニニニニニニニニニニニ>‐┘
ー―∨       i   ト、 __ /\  /ニニニニニニニニニニ /
    ∨    ∧   V       |    /ニニニニニニニニニニ /
     V >'´   、  ∨_   !  /\ニニニニニニニニニ{
      `<     \  __ } ̄ ̄       ヽニニニニニニニニ、
          <_>'´  i         `<ニニニニニニ≧ __

                 ` <        >‐‐ ´   /
                        <           



まぁこれで怒らない方がおかしいわなwww



アイドルなのにニンジャリアリティショックで失禁!

おつ
R板的行動や結果になってない辺り、恐らく全員生娘か…

これはひどい(褒め言葉)

武内Pの本気の怒りを見て股座を濡らすアイドルたち

>>44
それは怖くて漏らしたのか
それとも性的興奮を覚えて濡れたのかどっちなんだ…

ゲームしてて何も考えてないので0時までにスレタイっぽいレスがあればそれで書きます

早耶「好きと嫌い」

すまない、そこまで詳しくないのです
武内Pでオネシャス

武内P「高垣さんが私への好意を世間に晒しすぎて困る」

把握

武内P「高垣さん、お話があります」

楓「はい、改まってどうしたんでしょう?」

武内P「話がある……という切り出し方でおわかりになりませんか?」

楓「いいえ」

武内P「……」

楓「?」

武内P「高垣さんは、アイドルとしてとても活躍されていますね」

楓「はい、おかげさまで」

武内P「しかし、貴女の行動はアイドルのとる行動ではありません」

楓「どこが……でしょうか?」

武内P「言わなければ……わかってはもらえませんか?」

楓「勿体ぶらずに仰ってください」

武内P「今、貴女の着ているシャツにプリントされているのは、私の顔ですね」

楓「はい、それが何か?」

武内P「……」

武内P「高垣さん」

楓「このシャツ、とっても着心地がシャッとしてて良いんですよ」

武内P「……そう、ですか」

楓「ふふっ、似合いますか?」

武内P「我ながら怖いです」

楓「? 似合いますか、とお聞きしたんですが……?」

武内P「……」

武内P「少し、似合っています。残念ですが」

武内P「高垣さん、貴女は最近ほとんどの場合そのシャツを着用していますね」

楓「そうですが……何か、問題がありますか?」

武内P「男性の顔がプリントされたシャツは――」

楓「――普通、ですよね?」

武内P「!?」

楓「もう一度お聞きしますね」

武内P「……!」

楓「何か、問題がありますか?」

武内P「……」

武内P「……そうですね、男性の顔がプリントされたシャツは、普通にありますね」

楓「ふふっ、でしょう?」

武内P「……」

マッテクダサイ!マッテクダサイ!

武内P「!? 今のは……私の声ですか……?」

楓「あ、すみません、電話が」

マッテクダサイ!マッテクダサイ!

武内P「!?」

武内P「それは着信音なのですか!?」

楓「はい、そうですけど……もしもし?」

武内P「待ってください! いつ録音したんですか!?」

楓「しーっ、電話の声が聞こえません」

武内P「……すみません」

楓「はい……はい……わかりました、では、失礼します」

武内P「……」

楓「はい、お待たせしました」

武内P「……」

武内P「高垣さん、率直にお聞きします」

楓「もう、質問ばっかりですね」

武内P「申し訳ありません。ですが、確認しておきたいので」

楓「はい、何でしょう」

武内P「……今の声は、どこで録音したのですか?」

キカク、ケントウチュウデス

武内P「!?」

楓「あ、すみません、LINEなので気にしないでください」

武内P「気になりますよ!」

武内P「他にも……何か録音しているのでしょうか?」

楓「そんな疲れた顔を……ふふっ、ロックオン♪」

ゼンショシマス

武内P「!? 今、撮りましたね!?」

楓「貴重な顔を撮る時は、緊張しますね」

武内P「シャッター音まで……!?」

武内P「……事態は、私が思っていた以上に深刻だったようですね」

楓「あの……何か、まずかったでしょうか?」オロオロ

武内P「とても、まずいです」

楓「まあ、随分な言い草ですね!」プンプン

武内P「……」

楓「知り合いの声を使うのは、おかしな事では無いと思うんです」

武内P「……まあ、それは確かにありますが」

楓「でしょう♪」

武内P「……」

楓「それを言うなら、貴方の行動もまずいと思うんです」

武内P「私が……ですか?」

楓「……」

オーネガイーシーンデレラー♪

武内P「すみません、着信が……と、高垣さんですか」

楓「はい」

武内P「何が……問題なのでしょうか」

楓「その歳にもなって、10代の女の子の歌が着信音はどうなんです?」

武内P「!?」

武内P「待ってください! 私は、担当アイドル達の歌を……!」

楓「そんな事、知らない人からしたらわからないですよ」

武内P「それは……確かにそうですが……!」

楓「考えてもみてください」

武内P「……」

楓「貴方のようないい大人が、まだ10代前半の女の子が居るグループのファン」

武内P「……」

楓「はい、着信音を『こいかぜ』に変えてください」

武内P「……はい、わかりました」

武内P「……着信音を『こいかぜ』に変えました」

楓「よろしい」ムフー

武内P「……」

楓「まだ、何か問題がありますか?」

武内P「……いえ、やはり私の顔がプリントされているシャツは、どう考えても――」

ゼンショシマス

武内P「シャッター音で返事をしないでください! そして撮らないでください!」

楓「ふふっ、本日二枚目ですね♪」

武内P「……」

武内P「……まさかとは思いますが」

楓「?」

武内P「他にも、何か私に関する事をしていますか?」

楓「それは、ええと……あまり、大きな声では言えないのですが」

武内P「お願いします。必要なことなので」

楓「その……下着にも、プリントがしてあります」

武内P「っ! し、失礼しました! 女性の下着に関する事を聞くとは……!」

楓「……///」

武内P「……」

武内P「いや、待ってください! そんな所までですか!?」

太もも内側に「武内P専用」とか彫ってそう…

武内P「高垣さん、すぐに、やめていただけますか」

楓「えっ?」

武内P「プロデューサーとして、私は貴女の行動を看過する事は出来ません」

楓「……」

マッテクダサイ!マッテクダサイ!

武内P「……そのですね、有名人でも無い私の顔や声を用いるのは、その」

楓「……」

マッテクダサイ!マッテクダサイ!

武内P「……話に集中出来ないので、電話に出ていただけますか」

楓「電話に出んわ」

マッテクダサイ!マッテクダサイ!

武内P「いえ、出てください。お願いします」

楓「……お話は、わかりました」

武内P「わかってくれたのですか!」

楓「ですが――」

武内P「?」

楓「――その話、お受け出来ません」

武内P「……わかった上で、断ると?」

楓「私は、一緒に階段を登っていきたいんです」

楓「ファンの人達と、笑顔で」

武内P「っ!」

武内P「……」

武内P「あの……物凄く良い事を言われたのですが、今、それは関係ありましたか?」

楓「貴方は、私のファンでは無い……のでしょうか?」

武内P「!? い、いいえ! そんな事はありません!」

楓「けれど……ファンの人は、私のグッズを沢山買ってくださいます」

武内P「そう……ですね」

楓「私の写真がプリントされたグッズや、着信音、着ボイスも」

武内P「……はい」

楓「これは……ファンの人と一緒に階段を上るという事では無いのでしょうか?」

武内P「はい……その通りだと思います」

楓「だから、私もせめて身近なファンの人と一緒に居たい」

楓「身近なファンの人のグッズを使っていたい」

楓「……そう、思っただけなんです」

武内P「……高垣さん、ですが」

楓「本当はわかってたんです。こうしたら、貴方を困らせてしまう、って」

武内P「……」

楓「けれど、どうしても不安になります」

楓「……貴方が私のファンなのか、が」

武内P「……」

武内P「……高垣さんのお話は、よくわかりました」

楓「……」

武内P「確かに、私にも至らない点がありました。それは認めます」

キカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデス

武内P「ですが、やはりアイドルである貴女が私のグッズを使用するのは認められません」

キカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデス

武内P「今の貴女はトップアイドルで、私はプロデューサーですから」

キカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデス

武内P「あの、一回携帯を切ってもらっていいですか?」

キカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデスキカク、ケントウチュウデス

武内P「というか、スタンプ爆撃を受けてませんか!?」

楓「……」

ゼンショシマス

武内P「携帯の電源を落としてください、今すぐに」

楓「では……やはり、駄目だとおっしゃるんですね」

武内P「……しかし、ただ禁止するだけでは、貴女は笑顔になれない……のですよね」

楓「……」コクリ

武内P「その、これは代案として認めてもらえるかわからないのですが……」

楓「……」

武内P「私が、貴女のグッズを使用する、というのではいけませんか?」

楓「……もう一声」

武内P「……」

武内P「……全く、貴女は本当に仕方ない人ですね」

楓「うふふっ♪」

  ・  ・  ・

美城専務「やはり、君は優秀だな」

武内P「いえ、そんな事はありません。当然の事をしたまでです」

オチョコデ、チョコット♪

専務「問題になっていた、高垣楓の件は解決したと言って良いだろう」

武内P「はい。私も、彼女のファンの一人として安心しました」

デンワニデンワ♪デンワニデンワ♪デンワニデンワ♪

専務「……だが、新たな問題が生まれた。今も、その最中に居る」

武内P「っ!? 一体、今度は何が……!?」



専務「君が、高垣楓への好意を世間に晒しすぎて困る」




おわり

HTML化依頼は出してあるから放置でいいのかしらね

おつ

猫パンツみたいにPの顔が正面にプリントされてんのかなw

乙乙

おいおい(特定のアイドルに偏ったら)戦争でしょ

正面ならともかく裏側なら目も当てられん

爆笑しちゃたよセンスあるね

新しい話がきてたのであげ

前半最後の落ちがほんと良かったww

スタンプ爆撃で腹筋やられた

どっちも面白かった!特に武Pの冷静なツッコミがおもろかったわ。もし作品をまとめているところがあったら教えて欲しい

武内P「コミュニケーション不足の解消のため、という名目でしたね」

アイドル達「……」

武内P「皆さんの意見、とても参考になりました」

アイドル達「……」

武内P「皆さん、キレるのは十代の特権では無い、という事を知っておいてください」

アイドル達「……」

ごばく

楓さん大勝利モノを一つ

手のスタミナが余ってしょうがないので書きます


「……」


 もう、明日はオフだって言うのに、どうして誰も捕まらないのかしら。
 今日は、お猪口でちょこっとだけで良いから、飲みたい日なのに。
 お酒は一人で飲んでも美味しいけれど、誰かと飲むともっと美味しい。
 せっかくなら、美味しくいただきたいじゃありませんか。


「あら……?」


 と、事務所の中をうろついていたら、思いもよらない光景。


「キミは優秀だが、少し頭がかたいところがあるようだな」
「それこそが、彼女達を笑顔にするために必要な事だと、私は考えます」


 最近、346プロダクションの名物になりつつある、えーと、何て言ったかしら?
 ああ、そうそう! ポエムバトル!
 うふふっ、詩的に戦うだなんて、素敵、ですね!


「それは傲慢と言うものだ。キミは、魔法使いにでもなったつもりか?」
「魔法を使うのは、彼女達自身です。私は、あくまでもそのサポートにすぎません」
「まあ! それじゃあ、素敵なステッキ、という事ですね!」


 とっても自然に話に入り込めたわ。
 あとは、この二人を居酒屋に誘導すれば……完璧ね!


「……高垣くん?」
「……高垣さん?」
「はい、高垣楓でーす♪」


 二人共、私に注目してる今がチャンスよね。


「続きは、居酒屋で……というのが良いと、私は思います♪」

  ・  ・  ・

「……まさか、キミが私を酒の席に誘うとは思ってもみなかった」


 常務――今は専務でしたね――が、何度目かわからない言葉を口にした。
 とっても強そうに見えるのに、意外とお酒に弱かったなんて。
 だけど、見た目に変化は無いから、体質的には平気なのかも知れないわね。


「あら、どうしてそう思ったんですか?」
「キミと私の意見は対立している。同じ卓を囲まない理由が、他に必要か?」


 専務は、どうやらあの日のやり取りがひっかかっているらしい。
 けれど、それは私の中では一緒にお酒を飲まない理由にはならない。


「ですが……それは、お仕事の話でしょう?」
「何?」
「仕事とプライベートは分けて考えるべきだと思うんです」
「……」
「もう、専務ったら、アメリカに研修に行ったんでしょう?」


 と、笑いかけたら、とっても呆れた顔をされちゃった。
 私、何か間違ったことを言ったかしら?
 とても、当たり前の話をしただけだと思うのだけれど……。


「……高垣さんは、こういう人ですから」


 そんな、呆れとも諦めともつかない言葉を口にすると、
彼はビールをグイと煽り、箸の背で串焼きから丁寧に串を外している。
 大柄だから、こういう所も大雑把かと思いきや、意外に細かな作業も似合うのね。


「……成る程。少し、理解した」


 専務は、彼の用意した砂肝を一つ箸でつまみ上げ、ひょいと口に放り込んだ。
 少し塩が強かったのかしら、複雑そうな表情をしてるけど。


「もう、二人して馬鹿にしてます?」


 二人に、そんな意図が無いのはわかっている。
 けれど、お酒の席なんだもの、ちょっとふざけても良いじゃありませんか。
 そう、思いません?


「いっ、いえ! そんなつもりは……!?」


 そんな私のおふざけに、真面目に反応するのが彼だ。
 とっても不器用で真っすぐな人。
 だからこそ、からかうととっても楽しいし、可愛らしい反応が見られる。


「あら、じゃあ私はどんな人なんですか?」
「高垣さんは、その……とても素晴らしい方です」


 少し、すねた風を装っただけでこの慌てよう。
 うふふっ、これなら、女優としてもやっていけるかも?


「……どんな所が、ですか?」
「どっ、どんな……!?」
「……」
「え、笑顔がとても素敵で、神秘的な雰囲気があり……」
「……それから?」
「それから!? その、美しい容姿や歌声なども魅力的で……!」
「……それから?」
「!?」


 思わずクスクスと笑ってしまいそうになる。


「上司の前でアイドルを口説くとは、関心しないな」


「せっ、専務!?」


 ああ、駄目、おかしい!
 私達は、右手を首筋にやって困る彼を見て、笑い合った。


「……勘弁してください」


 自分がからかわれたとわかったのか、彼の声は弱々しい。
 それがまた可愛らしくて、我慢しようとしても笑みが零れてしまう。
 専務も私と同じ気持ちらしく、口の端を釣り上げている。


「まさか、キミにこんな愉快な一面があったとはな」
「……私も、貴女にからかわれるとは思ってもみませんでした」


 まだ笑いの余韻が残る中、二人は言った。


「ふむ……まだ、からかわれ足りないのかな?」
「……お気持ちだけ、いただいておきます」


 彼がそう言うと、また専務がクックッと声を上げる。


「――これはもう、乾杯するしかありませんね♪」


 やっぱり、お酒はこうでなくてはいけない。
 私の言葉を聞いた二人は、無言でジョッキとグラスを手に持ち、掲げた。


「新たな発見に――」


 そして、新しい飲み友達に――


「「「乾杯っ」」」

  ・  ・  ・

「美城さ~ん♪ はい、かんぱ~い♪」
「か……乾杯……!」


 お猪口とグラスをカチリと合わせ、読んで字のごとく杯を乾す。
 ああ、今日のお酒はとっても美味しいわ。
 こんなに美味しかったら、いくらでも飲めてしまいそう。


「そう、思いません?」
「はい、笑顔です」
「うふふっ! 笑顔に、かんぱ~い♪」
「かんぱーい」


 日本酒がスルリと喉を通り抜けていく。
 口当たりがとっても優しくて、鼻に抜ける香りもとても良い。
 だけど、お銚子を振ってみると残りがもう少なくなってるの。
 調子よく、お銚子の追加を頼まないといけないわ。


「すみませーん、お銚子2本追加、お願いしま~す♪」


 丁度、通りがかった店員さんに声をかける。
 でもどうしてかしら、こっちを見て一瞬ビックリした顔をしてたけど。


「まだ……飲むのか……!?」


 まあ、どうして美城さんもビックリしてるのかしら。
 ……あっ、そうよね!
 すみません、私ったらうっかりしてました。


「お猪口も、二つ持ってきてくださ~い♪」


 三人で、笑顔で、乾杯しましょう♪



おわり

酒豪怖い

常務も脱糞させられるのかと…

あのスレの>>1かしら
おつおつ

>>93
そういや常務はまだでしたね

織田non「えぇ…」

では、それで


武内P「待ってください、今の音は?」

専務「音? キミは、何を言っている」キョドキョド

武内P「……いえ、何でもありません」

専務「よろしい。先程の音の事は、忘れ給え」

武内P「は――」


ブブリュッ!


武内P「!?」

専務「……」

武内P「……今」

専務「何がだね」

武内P「……あの、今」

専務「何がだね」

武内P「今、響いてはならないおt」

専務「シンデレラプロジェクトを解散する」

武内P「何も聞こえませんでした」

専務「よろしい」

武内P「……あの」

専務「これ以上キミと話す事は無い」

武内P「……これをお使いください」

スッ…

専務「上着を差し出して、どう使えと?」

武内P「安物ですので、お気になさらず」

専務「ありがたく使わせてもらう」

武内P「……では、私はこれで」

専務「待ちたまえ」

武内P「……この事は、誰にも言いません」

専務「キミは優秀だな」

武内P「いえ……では」


コンコン!


武内P・専務「!?」

奏『速水です。クローネの今後の事で、お話があると聞いて』


武内P「……!?」

専務「……!」

くいっ

武内P「私が相手を、ですか……!?」

専務「……!」コクコク

武内P「……!」コクリ

ガチャ…バタンッ

武内P「おはようございます、速水さん」

奏「おはようございます、って……CPの、プロデューサーさんじゃない」

武内P「はい。少し、専務に用事があったものですから」

奏「そうなの。入れ違いになるなんて、タイミングが悪かったわね」

武内P「……」

奏「それじゃあ、またね。私は専務に用事が――」

武内P「居ません。中には、誰も居ません」

奏「……は?」

奏「けれど、さっき中で話し声が……」

武内P「私の独り言です」

奏「私が相手をとか、どうとか……」

武内P「困った癖だとは思うのですが……」

奏「それに、いつもの上着はどうしたの?」

武内P「追い剥ぎに、やられました」

奏「追い剥ぎ? こんな所で?」

武内P「はい」

奏「……」

奏「……なんだか、とっても怪しいんだけど」

武内P「そうですね。よく、警察の方に捕まってしまいます」

奏「……何か、隠そうとしてない?」

武内P「いえ、そんな事はありません」

奏「ふふっ、それじゃあ……嘘じゃないって、誓いのキスは出来る?」

武内P「わかりました」

奏「そうよね、貴方はそういう所、とってもチャーミングだと思うわ」

奏「……」

奏「わかりました!?」

武内P「では、目をつぶって頂けますか」

奏「えっ、ちょっと……本気!?」

武内P「信じて頂ける方法が、それしかないようなので」

奏「……!?」

武内P「目をつぶって頂けますか」

奏「わ、わかった! わかったわ! 信じる、信じるから!」

武内P「出直された方が、よろしいかと」

奏「……そうするわ」

ガチャ…バタンッ

武内P「……」

武内P「……――ぶはーっ! はーっ!」

武内P「速水さんに不審に思われてしまったが……何とか……!」

武内P「……嫌な、汗をかいてしまった」

シュルッ

武内P「……まさか、この部屋でネクタイを外す事になろうとは」

武内P「――専務、首尾はいかがでしょうか!?」


プリュリュッ!


武内P「せめて! せめて、声で返事してください!」

武内P「専務……デスクの裏で、一体何を……!?」


専務「聞かないで貰おうか。私にも、恥ずかしいという感情はある」

プリュッ!


武内P「……ご自愛ください」

武内P「そっ、それでは、私はこれで――」


コンコン!


武内P・専務「!?」

フレデリカ『はいはーい、フレちゃんがー、会いに来たよー♪』


武内P「……!?」

専務「……!」

くいっ

武内P「もう、限界です……専務……!」

専務「……!」

プッ!

武内P「……!」

ガチャ…バタンッ

武内P「おはようございます宮本さん」

フレ「うわお、本当にCPのプロデューサーが出てきた!」

武内P「専務はいませんよ今日はとてもいい天気ですね」

フレ「あれー? どうして、シャツ一枚で、そんなに汗かいてるのかなー?」

武内P「企画検討中です」

フレ「けんとーちゅうなら、仕方ないね! いえーい!」

武内P「……」

フレ「そっかー、中には誰も居ないんだー」

武内P「はい。ですので、出直されたほうが宜しいかと」

フレ「うんうん。フレちゃんも、それが良いと思うな―」

武内P「わかっていただけて、何よりです」


フレ「それじゃあ、お邪魔しまーす♪」


武内P「にょわー!?」


ドンッ!


武内P「……宮本さん、中には、誰も居ないですよ」

フレ「……わーお、壁ドンなんて……やーん、大胆♪」

武内P「宮本さん、中には、誰も居ないので」

フレ「……ちゅー」

武内P「あの……何を?」

フレ「シチュエーション的に、アタシ、ちゅーされちゃうのかなー、って」

武内P「いえ、私はプロデューサーで、貴女はアイドルですので……」

フレ「それじゃあ、相手がアイドルじゃなかったら?」

武内P「……それは、どうでしょうか」

フレ「おっけー♪ それじゃあ、アタシは行くねー、ばいばーい♪」

武内P「……」

ガチャ…バタンッ

武内P「……」

武内P「……――ぶはーっ! はーっ!」

武内P「何故、立て続けに人が……!?」


専務「よく、やってくれました」


武内P「専務……終わったの、ですか?」

専務「不測の事態にキミが居て良かったと、そう思いましたよ」

武内P「……いえ、お気になさらず」

武内P「……」

武内P「……いえ、気になさってください」

  ・  ・  ・

武内P「部長、私にお話とは?」

部長「……まあ、座り給え」

武内P「はい。失礼します」

部長「……」

武内P「それで、あの……お話とは、一体?」

部長「……キミは、彼女の事をどう思う?」

武内P「彼女……専務の事、でしょうか?」

部長「そうだ」

武内P「……」

武内P「以前と、私の思いは変わりません」

部長「そうか……憎からず思っている、か」

武内P「? あの、少し、ニュアンスが……」

部長「しかしだね、もう少し、時と場所を考えなさい」

武内P「はぁ……?」

部長「キミ達のオフィス・ラブ、噂になっているよ」

武内P「……」

武内P「はい!?」

部長「私が相手を……それに、もう限界です、か」

武内P「あの、何故、そんな話に……!?」

部長「キミにしては珍しい、ラフな上に乱れた服装に汗……」

武内P「待ってください!」

部長「アイドルの唇を奪ってても、決して執務室に入れようとしない……」

武内P「誤解です! それには、訳が!」

部長「ほう? 一体、どんな訳が?」

武内P「そ、それは……!?」

部長「聞かせて貰おうか。その、訳とやらを」

武内P「それは、専務が――」


専務「――待ちたまえ」


武内P「!?」

部長「……おや、噂のもう一人のおでましかい?」

専務「キミは、私の顔に泥を塗るつもりか?」

武内P「ですが、現状ではあまりにも……!?」

専務「キミと私は平行線だ。だが、ちょちょいと交わる時もある」

部長「……やはり、そうなのかね?」

武内P「違います!」

専務「彼は、とても頼もしいと思います」

部長「やはり……!?」

武内P「……」


武内P「――専務。真実とは、決して嘘の中には無い、輝いているものです」

専務「――ほう? ならば、キミは私が脱糞した真実が輝いているとでも?」

武内P「――たとえそれが汚い物に塗れていたとしても……私は、そう考えます」

専務「――理解出来ないな。やはり、私達は平行線のようだ」


部長「……」

武内P「――いえ、私は、そうは思いません」

専務「――何?」

武内P「――少なくとも、あの時の私と貴女は、同じ思いだった筈です」

専務「――決して、この事を知られてはならないと……か」


武内P「……と、言う訳なのです、部長!」

部長「これはまた……驚きの真実だ」


専務「――フッ、キミはやはり変わっているな」


武内P「信じて、頂けましたか!?」

部長「……信じざるを得ない、だろうねぇ」


専務「――だが、やはり脱糞というのは美城のイメージに相応しくない」


武内P・部長「……」


専務「――私は、私のやり方でやらせて貰う」キリッ



おわり

皆さん、ウンコへの抵抗が薄れてきて、とてもいい傾向だと思います
おやすみなさい

ひっでえあとがきだ
おつ

常務の脱糞を戦略的に利用していくスタイル嫌いじゃない

書きます


武内P「アイドルの方は、名前で呼べません」

夏樹「――って、言ってたよな?」

武内P「はい。申し訳、ありません」

夏樹「ああ、良いんだ謝らなくて」

武内P「? では、何故、その話を……?」

夏樹「――アナスタシアさん、ってのは名前じゃないのかい?」

武内P「!?」

武内P「それは……そう、ですが」

夏樹「つまり、名前で呼べないってのは嘘だった、って訳だ」

武内P「! ですが、アナスタシアさんの場合は……!?」

夏樹「……フッ、悲しいな」

武内P「……木村さん?」

夏樹「アタシを名前で呼ぶのは、あんなに嫌がったってのに……」

武内P「……」


みく「夏樹チャン、ものすっごく楽しそうにゃ」

李衣菜「うっすら笑ってるもんね」

夏樹「そりゃ、そうだよな」

武内P「……木村さん」

夏樹「アタシは担当でもない、ただのアイドルさ」

武内P「……」

夏樹「それに、あの子に比べたら可愛げも無いしな、ははっ!」

武内P「……木村さんには、木村さんの良さがあります」

夏樹「……そうだね、木村さんには、ね」

武内P「……」


みく「これは……さすがのPチャンも折れるんじゃない!?」

李衣菜「さっすがなつきち! やっぱり違うよなー!」

夏樹「悪かったね、変なこと言って」

武内P「……いえ」

夏樹「なんだか、寂しくなってさ……っく……く」

武内P「……木村さん……まさか、泣いて……!?」

夏樹「っく……ああ、いや、なんでも……うっく、ないよ……っ!」

武内P「……!?」


みく「あー、やっぱり笑いを我慢出来なかったにゃ」

李衣菜「プロデューサーの困り顔、慣れてきたら笑えちゃうもんねぇ」

夏樹「……く……うっくく」

武内P「……」

夏樹「あー、もう駄目d」


武内P「夏樹さん」


夏樹「!?」

夏樹「へっ、あ……はい///」


みく「夏樹チャン、完全に虚を突かれてやられたにゃ!」

李衣菜「うっ、嘘でしょ!? なつきち……なつきちー!」

夏樹「きゅ、急に名前で呼ぶから、お、驚いたよ///」

武内P「申し訳、ありません」

夏樹「い、良いって……謝らないでくれよ」

くしゃくしゃっ

武内P「まさか、貴女にそんな思いをさせていたとは……思いませんでした」

夏樹「そ、それよりさ……もう一回、名前で呼んでみてよ」

ジーッ

武内P「もう一回、ですか……?」

夏樹「う……うん」


みく「髪を下ろして、革ジャンも閉じて露出を減らしたにゃ……!?」

李衣菜「駄目だよなつきち! その口調は全然ロックじゃないよ!」

夏樹「ほ、ほら……早く」

武内P「……」


武内P「夏樹さん」


夏樹「……はい///」ジュンジュワー


李衣菜「なつきち!!」


夏樹「! だ、だりー!? いつからそこに!?」

李衣菜「最初から居たよ! 何、今の!?」

夏樹「ああ……名前で呼ばせる事に、成功したぜ!」グッ!

李衣菜「かもしれないけど、明らかに負けてたよ!」


みく「……ふっふっふ!」

みく「やっぱり、ロックなんてそんなもんにゃ!」

夏樹「おいおい、それは聞き捨てならないな」

李衣菜「なつきちは、今ちょっと黙ってて」

みく「やっぱり時代はネコミミ! キュートなアイドルが勝つにゃ!」


ガチャッ


菜々「キャハッ! 皆さん、ここに居たんですね!」


みく「菜々チャン! みく達の、大勝利にゃー!」

菜々「へっ!? 大勝利!?」

みく「いえーい!」

菜々「な、なんだかわからないですが……い、いえーい!」


夏樹・李衣菜「……」

夏樹「みく、一方的な勝利宣言はロックじゃないぜ」

李衣菜「そうだね、なつきちの言う通りだよ」

みく「……つまり、二人は、菜々チャンも名前で呼ばれてみろ、って?」

夏樹・李衣菜「……」コクリ

みく「良いよ! その勝負、受けて立つにゃ!」

菜々「えっと……どういう事なんでしょうか?」


みく「菜々ちゃんが、Pチャンに名前で呼ばれて平気だったら勝ちだよ!」


菜々「ふえっ!? な、ナナがやるんですか!?」

みく・夏樹・李衣菜「勿論!」

菜々「……!?」


武内P「……」

菜々「えーっと……なんだかそういう話らしいので、お願いします」

武内P「あの……安部さんを名前で呼ぶのは、さすがに」

菜々「そ、そうですよねー」


夏樹「……これは、アタシの不戦勝かな」

李衣菜「うん、ステージに立ててすらいないんだもん」

みく「菜々ちゃーん! 頑張ってー!」


菜々「がっ、頑張る!?」

菜々「これが若い子のノリ……!? うぅ、キツいです……!」ボソボソ


菜々「と、とにかく! ナナを名前で呼んでください!」

武内P「……申し訳、ありません」

菜々「……!? ど、どうすれば……!?」

みく「菜々チャン……!」

夏樹「……フッ、見てられないな」

李衣菜「……なつきち、見てるだけって、ロックじゃないよね?」

みく「二人共……?」

夏樹「――行くぜ、お前達! 菜々に、熱い想いを届けてやるんだ!」

みく・李衣菜「!」


みく・李衣菜・夏樹「――ミンミンミン、ミンミンミン、ウーサミン!」


みく・李衣菜・夏樹「ミンミンミン、ミンミンミン、ウーサミン!」


菜々「これは……ド級のありがた迷惑ですよ……!?」

武内P「……」

菜々「あの……名前で、呼んでくれませんか?」

武内P「ですが、それは……」


みく・李衣菜・夏樹「ミンミンミン、ミンミンミン、ウーサミン!」


菜々「もうホント! ホントあの……キツいので、はい」

武内P「……」


みく・李衣菜・夏樹「ミンミンミン、ミンミンミン、ウーサミン!」


菜々「えっと、土下座とかします?」

武内P「!? いけません、土下座は! それは、あまりにも!」


みく・李衣菜・夏樹「ミンミンミン、ミンミンミン、ウーサミン!」


菜々・武内P「……」

菜々「それじゃあ、どうすれば? メルヘンチェンジしますか?」

武内P「……いえ、名前で呼びますので、ご安心を」


みく・李衣菜・夏樹「! やった!」


菜々・武内P「……」

菜々「えっと……じゃあ、お願いします」

武内P「……はい」


武内P「菜々」


菜々「……」


みく・李衣菜・夏樹「呼び捨て!?」

菜々「……はい」

武内P「これで……よろしかったでしょうか?」


夏樹「……さすが、菜々さんだ。動じてない」

李衣菜「菜々、さん?」

みく「菜々ちゃーん! みくは……菜々ちゃんを信じてたにゃ!」


菜々「あの……ちょっと、ウサミン星から電波が来てたので」

くいっ

武内P「あの……何故、上着の裾を引っ張って……」

菜々「もう一回、呼んでくれないと駄目かもです……///」


夏樹・李衣菜「……あちゃー」

みく「菜々ちゃーん!? キュートだけど、負けてるよ!?」

菜々「……」

武内P「……菜々」

菜々「……頑張ったね、菜々……で、お願いします」

武内P「いえ、それは……」

菜々「お願いします」

武内P「……」


武内P「頑張ったね、菜々」


菜々「……えうっ……!」ポロッ

武内P「!?」

菜々「……うっ、ひっ……! ううぅ……!」ポロポロッ


みく・李衣菜・夏樹「泣いた!?」


武内P「……!?」オロオロ

  ・  ・  ・

ちひろ「……それで、その後はどうなったんですか?」

武内P「何とか、必死で安部さんをなだめました……」

ちひろ「あら、もう名前では呼ばないんですか?」

武内P「……はい」

ちひろ「でも、その方がプロデューサーさんらしいかも知れませんね」

武内P「ええ……やはり、慣れない事は、するものではありませんでした」

ちひろ「それじゃあ、慣らしていけばいいのでは?」

武内P「……」

武内P「はい?」

ちひろ「今回の事は、普段とギャップがあったから起こったと思うんです」

武内P「ギャップ……ですか」

ちひろ「いつもと違って、親しげに名前で呼ばれたから、ですね」

武内P「だから……普段から、名前で呼んで私も慣れろ、と?」

ちひろ「はい♪」

武内P「しかし……やはり、アイドルの方を名前で呼ぶのは……」

ちひろ「あら、ここに良い練習相手が居るじゃありませんか」

武内P「千川さんを名前で……ですか」

ちひろ「はい♪」

武内P「……」

武内P「ち……」

ちひろ「……」

武内P「ちひろ、さん」

ちひろ「さん、は無しで」

武内P「ちっ……ちひろ」

ちひろ「はい、もう一回」

武内P「……ちひろ」

ちひろ「はい、もう一回」

武内P「ちひろ」

ちひろ「……」


ちひろ「……!」ムフー!


武内P「……」

ちひろ「……ゴホン! 中々、良いと思います」

武内P「そう……でしょうか? 自分では、よく……」

ちひろ「だけど、やっぱり練習が必要ですね」

武内P「……口調は、結局なおりませんでしたからね」

ちひろ「なので、私が良いと言うまで、他の子を名前で呼んじゃ駄目ですよ?」

武内P「はい……わかりました」

ちひろ「よろしい」

武内P「元々……アイドルの方を名前で呼ぶのは、抵抗がありましたから」

ちひろ「それをなくすため、二人っきりの時、私は名前で呼びましょうね♪」

武内P「これからよろしくお願いします、千川さん」

ちひろ「んー? 千川さんー?」

武内P「……すみません」

ちひろ「はい、もう一回」

武内P「……これからよろしくお願いします、ちひろ」

ちひろ「……!」ムフー!

武内P「……」

武内P「……では、質問なのですが」

ちひろ「はい、何ですか?」

武内P「呼び方で距離感が変わるならば……」

ちひろ「?」

武内P「私の呼ばれ方も、名前にした方が良いのでしょうか?」

ちひろ「え、っと……それは……その」

武内P「? どうか、されましたか?」

ちひろ「……」


ちひろ「プロデューサーの方は、名前で呼べません」



おわり

寝ます
おやすみなさい

役得かな

武夏良いな

書きます


武内P「人妻が溢れそう?」

美波「はい……! もう、限界です……!」

アーニャ「美波! しっかりしてください!」

武内P「あの……人妻が溢れそう、とは……?」

美波「落ち着くのよ美波……! 私、まだ独身……独身……?」

アーニャ「ダー! 美波は、まだ結婚してない、です!」

武内P「……!?」

武内P「あの、新田さん……?」

美波「新田さんだなんて、もう! 昔の呼び方ですか?」

アーニャ「ニェート! いけません、美波!」

武内P「昔も何も……私は、いつも通りに……」

美波「美波、って呼ぶ約束でしょう?」

武内P「!?」

アーニャ「いけません……! アー、人妻が、溢れてしまいました!」

武内P「人妻が、溢れた……?」

アーニャ「ダー。今の美波は、アー、貞淑な人妻、です」

美波「優しい夫。だけど、刺激が無く、物足りない日常……」

武内P「待ってください! 不穏なモノローグを語りだしています!」

アーニャ「ダー。所詮は、人妻です」

美波「今は、とても幸せ。そう、そのはずなのに……」

武内P「新田さん! 戻ってきてください、新田さーん!」

アーニャ「このままでは、美波が!」

美波「私は、何を求めているのかしら?」

武内P「これは……一体、どうすれば!?」

アーニャ「このままでは……寝取られ? て、しまいます!」

武内P「アナスタシアさん、そんな言葉をどこで!?」

美波「わからない……誰でも良い……教えてちょうだい」

アーニャ「美波に教わりました♪」

武内P「新田さーん!?」

ガチャッ

今西部長「――おお、ここに居たのかい」

武内P「! 部長! 新田さんの様子が、おかしいのです!」

部長「何?」

美波「お義父さん……あっ、駄目です……!」

アーニャ「ニェート! 部長は、お義父さんではない、です!」

部長「ふむ……何が、駄目だと言うのかね?」

武内P「部長も乗らないでください!」

美波「駄目……いけません、こんなの……!」

部長「だから、何が、駄目だと言うのかね?」

美波「駄目よ美波……! 夫を裏切れないわ……!」

アーニャ「プロデューサー! 夫として、美波を止めてください!」

武内P「何故、私が!?」

アーニャ「はやくしないと、取り返しがつかなくなります!」

美波「夫もアーニャちゃんも見てます……! いけません……!」

武内P「どんなシチュエーションですか、一体!?」

美波「でも、もう……駄目ぇ……!」

武内P「! 待ってください!」

美波「!? あ、アナタ……これは、違うの!」

武内P「新田さんは、私の大切な担当アイドルです」

美波「アナタ……いえ、プロデューサーさん……」

部長「ほう……ならば、目を離すべきではなかったねぇ」ニヤリ

武内P「部長、少し黙っていてください」

武内P「申し訳ありません、新田さん」

美波「……いえ、そんな」

武内P「貴女の人妻が溢れるのを止めることが出来ませんでした」

部長「何を言っとるんだねキミは」

武内P「……私も、何を言っているかわかりません」

美波「でも……おかげで、人妻が溢れるのを抑えられました」

アーニャ「ハラショー! プロデューサー、すごいです!」

武内P「はぁ……そう、でしょうか」

武内P「しかし……これは、困りましたね」

美波「はい……私も、困ってたんです」

アーニャ「いつもは、私が、アー、当て身をして止めていました」

武内P「気絶させて止めていたのですか!?」

アーニャ「ダー。そうでないと、止められなかった、です」

武内P「……!?」

部長「ふむ……これは、キミのお手並みを拝見するとしようか」

武内P「待ってください! これは、かなりの大問題では!?」

武内P「なんとか、人妻を溢れるのを止めなくては……!」

美波「頼りにしてます……アナタ♡」

武内P「もう早速溢れているじゃないですか!」

アーニャ「美波、とっても幸せそう! 美波、可愛い、です!」

美波「ふふっ、アーニャちゃんも祝福してくれてますね♪」

武内P「助けてください、部長!」

部長「すまない、ちょっと煙草吸ってきても良いかい?」

武内P「はい!? よりによって、今ですか!?」

部長「ちょっと吸ってくる間に、何とかしておきなさい」

武内P「待ってください! それは、あまりにも!」

部長「キミに、一つだけ忠告しておこう」

武内P「っ……忠告、ですか?」

部長「……」

ガチャ…バタンッ

武内P「――何も言わないのですか、部長!」

美波「ふふっ……二人っきり、ですね♡」

武内P「違いますから! アナスタシアさんがいらっしゃいます!」

三船さんも呼んでこよう

武内P「アナスタシアさん! 新田さんを止めてください!」

アーニャ「ニェート。それは、出来ません」

武内P「!? 何故、ですか!?」

アーニャ「アーニャと呼んでくれないと、駄目、です」

武内P「……!?」

アーニャ「夫婦だから、アー、愛称も無しはいけませんよ♡」

武内P「溢れた人妻の影響を受けてるじゃないですか!?」

美波「ねぇアナタ……♡」

アーニャ「マーマでも良い、です……パーパ♡」

武内P「……!?」

武内P「お二人とも、いけません!」

武内P「私達は、プロデューサーとアイドルです!」

武内P「それに、まだお昼ですよ!」

武内P「嬉しいですけど……夜まで我慢なさってください♡」

武内P「……」

武内P「――私にも人妻の影響が!?」

武内P「いけない……! 気をしっかりもたなくては……!」

武内P「私はプロデューサーだ……! 決して、人妻ではない!」

武内P「人妻には、決して負けない!」

美波「もう……意地悪言わないでください♡」

アーニャ「ロシアでは……普通、です♡」

武内P「ダーメ! ゴハンとお風呂を済ませてから、ね♡」

武内P「……」

武内P「んあああああ!?」

武内P(どうすれば……どうすれば、人妻から逃れられる!?)

武内P(助けを……いや、駄目だ。人妻が増えるだけだ)

武内P「……」

武内P「!」

武内P「――そう言えば、お二人ともそろそろお子さんは?」

美波・アーニャ「えっ?」

武内P「……」

武内P(私だけ、人妻で無いから夫にされてしまうのだ……)

武内P(ならば……私も人妻になってしまえば良い!)

美波「子供……ですか」

アーニャ「それは……アー」

武内P「子供って、良いですよね」

美波・アーニャ「……」

武内P「お二人の子供だから、やっぱりアイドルになったり」

美波・アーニャ「……」

武内P「あっ、もうこんな時間。それじゃあ、私はこれで……」

ガチャッ…バタン

武内P「……」

武内P「……なんとか、脱出する事が出来た……!」

武内P「部屋の外までは、人妻の影響は無いようですね……」

武内P「新田さんと、アナスタシアさんには申し訳ないですが……」

武内P「……落ち着くまで、中に居て貰うしかありません」

ドンッ!

武内P「!? いけません、今、外に出ては!」


美波『開けてください! どうして、閉じ込めるんですか!?』

アーニャ『ひどい、です! これは、アー、家庭内暴力、です!』

ドンドンッ!


武内P「違います! これは、そういうのではないですから!」

美波『閉じ込めておきたいほど、愛してるって事ですか!?』

アーニャ『ハラショー! そこまで、私を愛して!?』

ドンドンッ!


武内P「なんてパワーだ!? ドアが悲鳴を上げている……!?」

武内P「落ち着いてください! お二人とも、落ち着いてください!」


美波『「さよならだね」って、さ~い~ご~のこ~とば♪』

アーニャ『耳に、残る、から、い~たいよ今も♪』

美波・アーニャ『愛し~ているから♪』

ドンドンドンドンドンドンドンドンッ!


武内P「うおおおおおおっ!?」

武内P「何故『Memories』を歌うとパワーが急激に上がるんですか!?」

武内P「これが……パワーオブスマイル……!?」


未央「ねえ……何、やってるの?」

卯月「中に……誰か、閉じ込めてるんですか?」

凛「ねえ、どういうこと? 説明して」


武内P「! 皆さん、これには、事情が……!」


美波『!? 今、女の人の声がしたわ!』

アーニャ『ニェ――ット! どういう事、です!?』


武内P「それはしますよ! アイドル事務所ですから!」

蘭子「我が友よ! この狂乱の宴は、一体何事ぞ!?」

智絵里「閉じ込めるのは……可哀想、です」

かな子「クレープ美味しい~♪」

杏「良いなー、杏も引きこもって楽したいよー」


武内P「これには、事情が!」


美波『事情って何ですか!? ひどい……ひどすぎるわ!』

アーニャ『泣かないでください、美波。償いは、きっちりとさせましょう』


みく「うっわ……Pチャン、最低にゃ」

李衣菜「見損ないましたよ、プロデューサー」


武内P「待ってください! 本当に、事情があるのです!」

莉嘉「とにかく、二人を出してあげようよ!」

みりあ「うんうん! さんせー!」


武内P「待ってください! そんな事をしては!」


きらり「閉じ込めたりしないで、皆でハピハピするにぃ☆」

ガチャッ!


武内P「……ああ、なんてことだ」


CPアイドル達「……さあ、説明してください」

CPアイドル達「ねっ、アナタ♡」



武内P「人妻が溢れてしまった」



おわり

人妻と夜の生活編はよ

では、夜をドタバタ書きます


「……」


 夜、寝苦しくて目が覚めた。
 季節は夏――シンデレラプロジェクトの、恒例の合宿中だ。
 普段と枕が違うと眠れない、という細やかな神経では無いつもりだったのだが、
蒸すような気温と、寝相で乱れたシーツのシワが気になる。


「……」


 聞こえるのは、虫の鳴き声。
 田舎の虫は大きく、数も多いためその鳴き声は都会の比ではない。
 だが、今はその鳴き声も夜のBGMとしては相応しい。


「……」


 モゾモゾと体を動かし、少しだけ体勢を変える。
 それだけで、また安らかな眠りの世界に戻れる。
 そう、思ったのだが、


「グッスリ寝てる」
「プロデューサーさんの寝顔、可愛いです♪」
「ふーん。まあ、悪くないかな」


 私の部屋に、侵入者が居た。


「!?」


 今の声は、ニュージェネレーションズの三人。
 何故、私の部屋に居るのですか、という疑問は一先ず置いておこう。
 今は、一刻も早く体を起こし、彼女達に注意をしなければいけない。
 よし、体を起こ――


「……!?……!?」


 ――まさか、ここで、金縛り……!?


 体が、動かない。


「……!……!」


 声が、出ない。


「……!?」


 金縛りは、疲れている時になるものだと聞いたことがある。
 しかし、まさか今、この状況でなるとは最悪の一言に尽きる。
 ニュージェネレーションズの彼女達の意図はわからないが、
このままでは、為す術無く思い通りに事が運んでしまう。


「さあ、宴の始まりぞ」


 神崎さん!?
 まさか、貴女まで居たのですか!?


「しーっ、蘭子ちゃん。あんまり大きな声を出しちゃ駄目よ」
「ダー。美波の言う通り、です」


 ラブライカのお二人まで!?


「プロデューサー……気持ちよさそうに寝てますね」
「まな板の上の鯉、だね~」
「どうせなら、一緒に飴玉も欲しいかなー」


 キャンディアイランドの方達も!?


「……!?」


 どれだけ、この部屋に集まっているのですか!?


「にょわー☆ Pちゃん、お酒飲んでたもんねぇ」


 諸星さん……!


「でも、莉嘉チャンとみりあチャンは良かったの?」
「寝ちゃってたもん。しょうがないって」


 アスタリスクのお二人まで……!?
 しかし、城ヶ崎さんと赤城さんが居ないのは……不幸中の幸いか。


「……!」


 体の自由がきかないため、耳に神経を集中する。
 私の耳に届かないように話しているつもりなのかもしれないが、
今の私は、押し殺した彼女達の息遣いさえ聞こえる気がする。


 彼女達は、一体何をしようと言うのか?


「それじゃあ、寝起きドッキリの練習開始だね」


 ……成る程、そういう訳だったのか。
 彼女達には、そういった仕事を入れた事はないが、今後に備えて、という事だろう。
 だとすればまあ、合点がいかないでもない。
 しかし、プロデューサーである私で練習とは……皆さん、今回限りにしてください。


「はいっ♪ まず、ぬるま湯を股間にかけるんですよね?」
「うん。そうすると、漏らしちゃうって話だけど……確かめないと」


 練習にしては、内容がハードすぎませんか!?


「……!」


 待ってください! それは、あまりに危険すぎます!


「……!?」


 金縛り!
 何故、こんな重要な時に私は金縛りにあっているのだ!


「聖杯より、我が友へ降り注げ」


 ちゃぷん、という音が聞こえる。
 彼女達は、本気で私の股間にぬるま湯をたらすつもりでいるらしい。
 何故、後先を考えないのか。
 もし、本当に私が漏らしたらどうするつもりなのか。


「布団はもう剥ぎ取ったわ」


 いつの間に!?


「浴衣は、アー、はだけさせますか?」


 いけません! 貴方達は、アイドルなのですよ!?


「それは……寝てても、寒そうだからやめてあげよう?」
「だねー。それは、さすがに気が引けるよ」
「うんうん、パンケーキ美味しい~♪」


 皆さんの優しさの基準が、私にはわかりません!
 そして三村さん、パンケーキの匂いが尋常でなく鼻につきます!
 この時間に、他人の部屋で焼きたてパンケーキを食べないでください!


「それじゃあ~、Pちゃんの股間に~……」


 まさか、もう!?
 待ってください、心の準備が!


「どうなるのか……ぷくく、楽しみにゃ」
「ちょっと、笑ったら起きちゃうって……うくく」


 後で、アスタリスクのお二人には個別で話をします。


「行くわよ、皆」


 新田さん……貴女をシンデレラプロジェクトのリーダーに指名したのは、
最初の合宿の時でしたね。
 それがまさか、こんな事になるとは思ってもみませんでした。
 彼女達の、統率の取れた動きは……恐らく、貴女によるものなのでしょうね。


「シンデレラプロジェクト、ファイトぉぉぉ……」


 おーっ、という、いつもの彼女達の掛け声は聞こえない。
 代わりに部屋に響いたのは、バシャリと、勢い良く私の股間に降り注いだ、


「んああああああああっ!?」


 熱湯、そして、私の叫び声だった。
 ぬるま湯とは明らかに違う、生易しい温度でないそれに、
私の体は危険信号を発し、金縛りを彼方へ吹き飛ばした。


「……!?」


 私の叫びを聞いた彼女達は、あまりの驚きに絶句している。


「うわあああああっ!? あっ、ああああっ!?」


 図らずも、逆ドッキリが成功した。

  ・  ・  ・

「……」


 私の前で、城ヶ崎さんと、赤城さんを除く、シンデレラプロジェクトメンバー12人が正座している。
 事情はわかっているので、特に聞くことはない。
 聞くことはないが……説教だ。


「皆さんの今回の行動は、行き過ぎています」


 いつもよりも低い私の声に、メンバー達は体をビクリと震わせる。
 彼女達を憎いとは思わない。
 だが、ここでしっかりと話をしておかなければ、私が今後もたない。


「今後は、絶対にこのような事は無いように、お願いします」


 はい、と、全員が揃って返事。
 その肩は震えていて、泣くのをこらえているのだろうか。
 しかし、泣いても今回ばかりは簡単に許す訳にはいかない。


「……あの」
「はい、何ですか本田さん」


 本田さんが、おずおずと挙手をした。
 何か、言いたいことでもあるのだろうか。


「ドッキリした?」


 彼女の言葉に対する私の返事をメンバー達はワクワクとした顔で待っている。
 此処に来てその質問が出来るとは、恐れ入ります。


「そうですね……はい、とても驚きました」


 私の答えを聞き、メンバー達は顔を見合わせ、笑った。
 それは、とても良い笑顔で、思わず見とれそうになるもの。


 しかし、心底腹が立った。


「では、イタズラのお仕置きとして、一発尻を叩こうと思います」


 メンバーがざわつく。
 私の表情を伺おうとしているが、恐らく、何の表情もしていないだろう。
 反省を促すためとは言え、体罰はしたくはない。
 だが、それが彼女達にとって必要な事ならば、私は鬼になろう。


「それじゃあ……リーダーの私から、お願いします」


 新田さんが手を上げた。
 その顔は、仕方ないという諦めの色が強い。
 まずは、彼女に反省してもらう事にしよう。


「では、両手を壁について、尻をこちらに向けてください」


 聞きようによっては、とても艶めいた言い回し。
 彼女もそう思ったのか、他のメンバーを安心させるためか、少しおどけた口調で、


「んっ……プロデューサーさん、優しくしてくださいね?」


 と、のたまった。
 さすがはリーダーですね……今の言葉を聞いて、メンバー達の緊張が少しほぐれたようです。


「いえ、駄目です」


 私は、それを無慈悲に打ち砕いた。


「……!」


 天を貫くように、右手を高く振り上げる。
 イメージするのは、鞭。
 硬さだけでなく、しなやかさも併せ持つ鋼の鞭だ。


「ぷ、プロデューサーさん……?」


 呼吸を整え、心を落ち着かせて、全身に回る血液を意識する。
 細胞の一つ一つを掌握し、全身の、髪の毛一本に至るまでの全てを連動させる。
 今の私は、プロデューサーではない。
 ただ一個の、尻を叩くためだけに存在する、兵器だ。


「あのっ!? や、優しく! 優しくお願いします!」


 筋肉が、爆発の時を待ち、今か今かと叫び声を上げている。
 骨が、寸分の狂いも無く尻を打ち据えるため、残忍な笑い声を上げている。
 一瞬で、何十、何百回と、理想の尻叩きをイメージしては、最高のものに近づけていく。


「……」


 果たして、それは成った。


「や、やめ……おねが」


「プロデュゥゥゥ――スッ!!」


 円運動の軌跡を描き、鋼と化した私の右手が、
新田さん……いや、イタズラをした少女の尻に叩き込まれた。
 破裂音にも似た打撃音。
 衝撃は尻だけでは止まらずに、彼女の体を一直線に突き抜け、パプリと鼻水を噴出させた。


「はああああっ!? ほっ、ほあああああ!?」


 辺りに、アイドルらしからぬ叫び声が響いた。

虎眼流並の張り手になりそう


「……」


 お仕置きとは言え、彼女はアイドル。
 その体に痕が残るような打ち方はしていない。


「んんんんん! これやば、んんんんん!」


 だが、私のプロデューサーとしての全てを用いて、尻を叩いた。
 その結果が、これだ。
 新田さんは、その場で尻を押さえてのたうち回っている。


「では、次は誰にしますか?」


 私が視線を向けると、残されたメンバーがビクリと肩を震わせた。
 彼女達に、こんな顔をさせるのはとても心苦しい。
 しかし、やらなければならないのだ。


「皆あああああ! 逃げてえええええ!」


 新田さんが、残された力を振り絞り懸命に他のメンバーを逃がそうとする。
 鼻水を垂らしながらにも関わらず、仲間を思いやるその姿勢には胸を打たれる。


「では、次も新田さんという事で、宜しいですか?」


 その思いには、応えなければならないだろう。


「アーニャちゃああああん! ファイトおおおおお!」
「ミナアアアアミ!? なんで、私ですかあああ!?」


 わかりました、次はアナスタシアさんですね。

流石プロデューサーともなると鞭打も出来るのか

  ・  ・  ・

「ねえねえ、昨日の夜何かあったの?」


 赤城さんが、不思議そうに首を傾げている。


「なんか皆、お尻を気にしてるみたいなんだよねー?☆」


 城ヶ崎さんの、お尻、という言葉を聞いて昨夜のメンバー達がビクリと動きを止める。
 休憩時間中だと言うのに、他のメンバーは全員立ったままだ。
 いや、双葉さんはうつぶせの状態で寝転がっているか。


「いえ……私には、よくわかりません」


 右手を首筋にやろうと動かした途端、メンバー12人が身構えた。
 何故か、数名ほど壁に手をついて尻をこちらに向けているが、放置する。


「あっ! そういえば、昨日の夜のドッキリどうだった?」
「そうそう! アタシとみりあちゃん、寝ちゃったんだよねー☆」


 お二人の言葉を聞いて、少し考える。


「そうですね……成功、だったと思います」


 確かに、かけられたのが熱湯でなければギリギリセーフだったかもしれない。
 ドッキリ自体は私の金縛りがあったにせよ、成功だったとも言える。


「あーん! みりあも参加したかったー!」
「それじゃあそれじゃあ、今晩はアタシ達がドッキリしにいくねっ☆」
「……あらかじめ言ってしまっては、駄目なのでは」


 そう、言ってみたものの、赤城さんと城ヶ崎さんはやる気になっているようだ。


「皆さん……赤城さんと城ヶ崎さんを止めてください」


 私の言葉を聞いて、数名ほどが必死で彼女達の説得に回ってくれた。
 残ったメンバーが軒並み壁に手をついて尻をこちらに向けているのを見て、私は頭を抱えた。



おわり

回線の調子が悪いので、今日は寝ます
おやすみなさい

ハマったな

大人アイドル組って脱糞してたっけ

総受けと見せかけてカウンターがデカいのはいい事だ

癖になってるメンバーが居ますね…

性獣ミナミィはドMかと思ってたんだけど、尻打ちには目覚めなかったのかな…?

トラプリ見たい

>>187
覚えてないので書きます


「……」


 キャハハ、と、女性達の明るい笑い声が響き渡る。
 アルコールが回っているのだろう、全員顔が赤く、とても良い笑顔だ。
 会話に流れなどなく、ただ、起こった事、起こりうる事を話しているだけ。
 にも関わらず、彼女達は必ず笑顔で話を続けている。


「……」


 此処、シンデレラプロジェクトの、プロジェクトルームで。


「いえーい! 飲んでる~!?」


 飲んでいません。


「飲んでないわ」


 また、笑い声が響き渡った。
 本当に、どうして彼女達はここで酒盛りをするのだろう。
 確かに、広さ的には丁度良いし、ソファーもあって居心地は良いだろう。
 しかし、誰が後片付けをすると思って……ああ、だから此処に来るのですね。


「かんぱーい!」


 何度目かの乾杯を尻目に、巻き込まれないようにパソコンの画面を見つめる。
 さすがに、仕事中の私の邪魔を直接的にする程、非常識ではないらしい。
 間接的には尋常でない程の邪魔をしているのだが、それを抗議する勇気は、無い。


「……」


 早く、帰ってくれないだろうか。
 でないと、後片付けが出来ず、私も帰れない。


「はーい! 一番バッター、オナラしまーす!」


 本当に、酔っぱらいというのは最悪だ。
 自分も酔ってしまえば気にならなくなるのだろうが、その選択肢は私には無い。
 私まで酔ってしまっては、後始末をする者が居なくなるからだ。


「Fight! Fight! Let's Go~! Fight! Fight! 頑張って!」


 自らのソロ曲に合わせてオナラをする事の、何が楽しいのか。
 私にはわからないが、彼女達は大いに盛り上がっている。


「Fight! Fight! Let's Go~! Fight! Fight! 負けないで!」


 お腹が千切れちゃう、と言いながら笑っている人も居る。
 さすがは酔っていてもアイドル、パフォーマンスはとても素晴らしい。


「フレーフレー、みんなでLet's Go! フレーフレー大きな声で!」


 この時のためだけの、オリジナルの振り付けだろう。
 彼女のダンスは、チアーを模したものというよりも、バッターのスイングのようだ。
 それを見られたのは喜ぶべきか、彼女がこれから放つアーチを悲しむべきか。


「フレーフレー気持ちを込めて!」


 渾身のスイング。


「Go~!」


 ブボッ!


 ――特大の、ホームランだ。


 ボッ、ボブリッ、ブッ、ブブッ!


「!?」


 ――場外ホームランじゃないですか!?


「……!?……!?」


 スイングで、お腹をひねった瞬間にオナラを出そうとした。
 恐らく、それが彼女の放ったアーチを場外まで運んでしまったのだろう。


「……」


 しん、と静まり返る室内。
 アーチストは、スイングを終えた体勢のまま微動だにしない。
 目線の先を追ってみるが、そこはただの壁だ。
 彼女には見えているのだろうか……青空に吸い込まれていく、白球が。


「……」


 さて、ここから、私はどう行動すべきなのだろう。
 思考を巡らせてみるが、これが最善だ、というものは浮かばない。
 目の前で歌いながら脱糞したアイドルにどう対処するかなど、研修では習わない。
 どうすれば……どう――


「チャッチャッチャッチャッ、チャララ♪ チャッチャッチャッチャッチャ♪」


 ……この、軽快な前奏は――


「チャッチャッチャッチャッ、チャララ♪」

 待ってください!
 何故、貴女まで歌って踊り始めるのですか!?


「ズン、ズン、ズン!」


 う、うわあ、あああああっ!?


「バキューン!」


 ボブリッ!

ブボボ(`;ω;´)モワッ


「……!」


 モコリ、モコリと彼女の体のラインを強調するような服の臀部が膨らんでいく。
 しかし、それを気にする事無く、元婦警はバッターに歩み寄る。
 そして、両手を高くあげ、


「いえーい! 2ランホームラン、ね!」


 ハイタッチを要求した。
 そして、パシンと打ち鳴らされる、友情の架け橋。


「今のだと、連続ソロホームランですよー!」
「あたし、野球そんなに詳しくないのよ!」


 こんな状況にも関わらず、彼女達の微笑み合う姿は、とても美しい。
 出来る事なら、腰から下を視界に映したくないと思える程に。
 いや……ああなったからこそ、彼女達の笑顔が輝いて見えるのか。


「……」
「……」


 残った二人が、すっくと立ち上がった。
 いやいや、もう十分です!
 もう、綺麗にまとまった感じがするではないですか!


「四番は任せるわ」


 よく通る、美しい声。


「トゥントゥントゥルトゥトゥーントゥトゥーン♪」


 ……そうですよね、口でやるとそんな感じになってしまいますよね。


「ムゥーンムゥムゥムゥーン、ムゥーンムゥムゥーン♪ ムゥ~ン♪」


 沸き起こる、爆笑の嵐。
 完璧な振り付けに対して、あまりにも卑怯な言葉と表情。


「ティーンッ♪ ティーンティティーンティンティッティンッ♪」


 この元アナウンサーアイドル、完全に笑わせに来ている。
 既にバッターボックスから降りた二人は涙が出る程笑っている。
 そして、控える四番も肩を震わせ、ヒーヒーと呼吸困難に陥っているではないか。


「プゥープゥープゥッ♪ プゥープゥプゥプゥープゥプゥー♪」


 アナウンサー時代のボキャブラリーを活かしているのだろうか。
 擬音が全て違うものになっているのが、彼女のこだわりを感じさせる。


「これ……無理……!」


 ビチュッ!


 たまらず、四番が先にスイング。


「テトリテトリトン♪ テトリテトテテ♪」


 バブンッ!


 順番は逆になってしまったが、三番バッターも特大のアーチを見せてくれた。


「臭いわ」


 彼女達は、笑った。


「……」


 笑いの後に訪れたのは、不気味なほどの静寂。
 誰一人言葉を発しようとせず、何一つ行動に起こそうとしない。
 プロジェクトルームに立ち込める異臭。
 あの……後片付けは私がやるので、本当にもう、帰ってください。


「「「「……」」」」


 そう、思った瞬間、四対八つの瞳が、ギョロリと私に向けられた。


「……!?」


 思わず息を呑む……臭い。
 彼女達は、何故私に視線を向けているのだろう。
 他言するつもりは毛頭ないし、言ったとしても誰も信じはしないだろう。
 なのに、どうして私を見て――


「アッ、ハイーヤーアーアーアアアーアー」
「ちゃちゃりりちゃらららちゃちゃりりちゃらら」


 何故、四番の前奏を!?


「待ってください! 私にも、しろと!?」


 抗議の声は、儚くもシンデレラ達の歌声にかき消される。
 彼女達の歌声は、止まらない。
 そして、私には理解出来る……出来てしまう。


 出さなければ、殺される。

  ・  ・  ・

「……」


 プロジェクトルームの片付けが終わった。
 臭いはまだ残っているが、それはこの際仕方ないだろう。


「……」


 部屋の隅にあるビニール袋に目を向ける。
 あの中には、友情の結果と、恐怖の結果が詰まっている。


「……」


 結論だけ言わせてもらうならば、私は脱糞した。
 情けなく、悲鳴を上げながら。
 あの時の恐怖は決して忘れることは出来ないだろう。


 ――ティロン♪


「……」


 携帯に、LINEが入る。
 シャワーを浴び終えた、という連絡だろう。
 彼女達が戻ってくる前に片付けを終わらせた自分を褒めても良いと、そう、思います。


「……!?」


 確認のために、携帯を開き……――愕然とした。
 カツリと、携帯が床に落ち、転がる。


「何故……私の家で飲み直すという話になったのですか……!?」


 この時の私は、まだ知らない。


 これから先、何度も繰り返される悪夢を。



おわり

非武内P書きます、申し訳ない


オレP「早苗さんの尻にしかれたい」

ちひろ「それは、姉さん女房的な意味ですか?」

オレP「いいえ、物理的な意味ですよ?」

ちひろ「……えっと」

オレP「こう、ですね? 顔の上に、バフッと座る感じで」

ちひろ「……警察、呼びますね?」

オレP「何故!?」

ちひろ「何故!?」

オレP「急に警察だなんて、頭おかしいでしょう!?」

ちひろ「アナタに頭おかしいとは言われたくないですよ!」

オレP「あっ、もしかして」

ちひろ「?」

オレP「エッチな意味にとらえちゃいました?」

ちひろ「……それ意外、何があるって言うんですか?」

オレP「いやー、参ったなー! ちひろさん、やーらしー!」

ちひろ「は……腹立つ……!」

オレP「良いですか、血液は酸素を全身に運んでるんです」

ちひろ「急に、何を」

オレP「つまりですね、早苗さんの尻にしかれるでしょう?」

ちひろ「……はあ」

オレP「そこで呼吸をしたら、早苗さんの尻が全身を巡ると言っても――」

オレP「――過言では、無いッ!」カッ

ちひろ「はい、通報しますねー」

オレP「待って待って、落ち着いて!」

オレP「オレだってね、無理矢理座ってもらおうとは思いませんよ」

ちひろ「安心しました。早苗さんは、無事なんですね」

オレP「だから、皆にも相談したんです」

ちひろ「……皆?」

オレP「ええ。人に夢を与えるのがアイドル……でしょう?」

ちひろ「アイドルの子達に相談したんですか!?」

オレP「そう! LiPPSと、炎陣にね!」

ちひろ「なんですかその人選は!?」

オレP「彼女達は、とても素晴らしいアイドルですから」

ちひろ「……アイドルにする話ではないと思います」

オレP「拓海にも同じことを言われ、ブン殴られましたよ」

ちひろ「それは、良い鉄拳制裁ですね」

オレP「でもね――守りに入るのが正しいと言えるのか?」

オレP「――危険を知りつつも向かっていくのが、自分を通すって事じゃないのか?」

オレP「――お前はどう思うよ、特攻隊長さんよぉ!」

オレP「……って煽ったら、協力を取り付けられましたよ、ハハッ!」

ちひろ「もう! なんでそんなに単純なんですか!?」

ちひろ「美嘉ちゃんなんか、軽蔑してきたんじゃないですか?」

オレP「ええ、ゴミを見るような目で見られましたよ」

ちひろ「そうですよね、当然の反応です」

オレP「だから――あっ、出口はそっちだから」

オレP「――一応さ、声だけはかけなきゃと思っただけだから」

オレP「――ゴメンな? なんか呼び出しちゃって」

オレP「……って正直に言ったら、協力してくれるって。別に良いのに」

ちひろ「別に良いのにとか、思ってても言わないでくださいよ!」

ちひろ「夏樹ちゃんとか、反応が読めませんね」

オレP「アイツ、面白そうじゃんって笑ってましたよ」

ちひろ「……あー、なんとなくわかります」

オレP「でもね――悪い、オレは真剣なんだ」

オレP「――遊び気分で、こんな事を話したりはしない」

オレP「――この熱い気持ちに名前をつけるなら、ロックになるのかね」

オレP「……ってそれっぽく言ったら、協力するぜと、真剣に」

ちひろ「それっぽくで、人の気持ちを弄ばないでください!」

ちひろ「奏ちゃんは……」

オレP「ご褒美のキスは要らないって言ってましたよ」

ちひろ「そりゃそうですよね」

オレP「だから――ああ、オレの唇はもう先約があるんだ」

オレP「――喋るためじゃなく、早苗さんの尻のために」

オレP「――ケツにキスするために、咲いている」

オレP「……って本音を語ったら、協力するわと、オーラを放って」

ちひろ「『Tulip』の歌詞っぽく欲望を語らないでくださいよ!」

ちひろ「里奈ちゃんは、ああ見えて常識がありますから……」

オレP「そうですね、アタシバカだけど良くないと思うよー、って」

ちひろ「見た目はチャラっとしてるけど、良い子ですよね」

オレP「だから――オレはバカだから、正直にしか行動出来ない」

オレP「――自分に正直に生きるってのは、とっても難しいよな」

オレP「――だけど、バカ正直に生きるのは、悪い事じゃないさ」

オレP「……って誤魔化したら、協力するぽよー! ぽよぽよー!」

ちひろ「良い子なのを利用しないでくださいよ!」

まだ絡んだことのないアイドルと武内Pの話を読んでみたい

ちひろ「志希ちゃんも……反応が読めませんね」

オレP「アイツ、お尻の匂いが嗅ぎたいのかにゃ~って」

ちひろ「ああ、あの子だったらそういう反応ですよね」

オレP「だから――わかってるんだろ、そんな単純な話じゃないって」

オレP「――オレは、お前のギフテットとしての力に期待してる」

オレP「――天才のお前なら、こんな事もあろうかと、って言うはずだ」

オレP「――顔面騎乗! カオニスワリタクナール、だよ!」

ちひろ「ストーップ! アナタ、本当に怒られますよ!?」

オレP「まだ出来てないらしいので、開発、待ってます」

ちひろ「やろめっつってんでしょうが!」

ちひろ「涼ちゃんは……普通に説教されたんじゃないですか?」

オレP「はい。ガチで凹みました」

ちひろ「だけど、諦めないんですね」

オレP「当然――お前の言う事も一理ある」

オレP「――だけど、理屈だけじゃ片付かない、感情ってもんがある」

オレP「――お前は、その熱い思いを歌に乗せてるんだろう?」

オレP「――オレは、言葉に乗せてみたんだが……届いたか?」

オレP「……って聞いたら、協力するよ、って渋々承諾してくれました」

ちひろ「なんでそこで物分りが良くなっちゃったの!」

ちひろ「フレデリカちゃんは……もう! LiPPSって反応が読めない!」

オレP「その個性のぶつかり合いが、彼女達の良い所ですよ」

ちひろ「急にプロデューサーぶらないでください」

オレP「だから――BGMは、どんなのが良いかな?」

オレP「――あんまり壮大すぎても良くないと思うんだよね」

オレP「――ちょっとポップな……あ、ヒップホップで!」

オレP「――頼んだぞ、新曲、楽しみにしてる」

オレP「……って言ったら、協力するするー、って二つ返事でした」

ちひろ「相談の形がちょっと違ってるじゃないですか!」

ちひろ「亜季ちゃんは成人してますから、きっと!」

オレP「ところがどっこい、そうでもない」

ちひろ「……乗せられやすそうですもんね」

オレP「そりゃ――大和! 貴様に、特殊任務を言い渡す!」

オレP「――対象、片桐早苗の尻にしかれるための工作任務だ!」

オレP「――彼女に気付かれる事なく、オレの印象を操作しろ!」

オレP「――尻にしいても良いと思えるようにだ! わかったか!」

オレP「……って命令したら、サーイエッサー! って、チョロチョロでしたよ」

ちひろ「その任務、難易度が高すぎませんか!?」

ちひろ「周子ちゃんには、何の相談をしたんですか?」

オレP「おっ、彼女も相談の質が違うのがわかりますか」

ちひろ「はい、悲しいですけど」

オレP「ははは――なあ、渡す菓子折りはどんなのが良いと思う?」

オレP「――ビール詰め合わせも良いんだけどさ、違うのも良いじゃん?」

オレP「――可愛いお菓子とか、似合うと思うんだよね」

オレP「――桃の和菓子とか……って、これじゃ桃尻か!」

オレP「……って聞いたら、協力するよー、って実家に聞いてみてくれるって」

ちひろ「あの、菓子折り持って行く気ですか!?」

オレP「……とまぁ、こんな感じで相談した訳です」

ちひろ「……見事に協力を取り付けてますね」

オレP「オレはプロデューサー、一人では何も出来ません」

オレP「アイドルが居るからこそ、力を発揮する事が出来る」

オレP「お互いが支え合い、協力して高め合える」

オレP「それが、理想的な関係だと、思いませんか?」

ちひろ「詐欺師に向いてますよ、プロデューサーさん」

オレP「よく言われます」

ちひろ「その調子で、本人に言ったら良いんじゃないですか?」

オレP「なっ、何言ってるんですか!?」

ちひろ「あの、何故慌てる必要が?」

オレP「そんな……ちょ、直接言うだなんて……」

ちひろ「?」

オレP「恥ずかしくて……出来ないよぅ///」イヤイヤン

ちひろ「アナタのこれまでの行動の方が恥ずかしいですよ」

オレP「良いんです、オレは果報は寝て待つタイプなんです」

ごろんっ

ちひろ「ソファーに寝転がって、何を?」

オレP「早苗さんがオレの上に座るのを待ってるんです」

ちひろ「聞かなきゃ良かったです」

オレP「あっ、ちひろさんは座らないでくださいね?」

ちひろ「座りませんよ!」

オレP「良かった、オレの上に座るちひろさんは居ないんだ」

ちひろ「そんなつもりは全然無いのに、無性に腹が立ちますね!」

  ・  ・  ・

オレP「はっは、結局顔面をボコボコに殴られて終わりでしたよ」

ちひろ「あの、ジャガイモみたいな顔になってますよ?」

オレP「早苗さんお手製の、ポテトボーイです」

ちひろ「……物は言いようですね」

オレP「……ま、この結果には物言いを付けたいですけどね」

ちひろ「まだ、諦めないんですか?」

オレP「女のケツを追いかけるのは、男の性ですからね」

ちひろ「悲しい習性ですね、それって」

オレP「ハハッ……あー……」


オレP「早苗さんの尻にしかれたい」



おわり

思いついたら書かないと次が書けないので、非武内Pの時があります申し訳ない

絡んだことのないアイドル、明日以降やってみます
TPとか新曲良かったですし、上にも出てましたから

では、おやすみなさい

書きます


武内P「トライアドの皆さんと、ですか」

凛「うん、収録について来て欲しい」

加蓮「って、奈緒がどうしてもって」

奈緒「あたし!?」

武内P「そう、なのですか?」

奈緒「違うから! ああいや、違うけどそうじゃなくて……!?」

凛・加蓮「……」ニヤニヤ

奈緒「お前らなー!」

凛「まあ、奈緒をからかうのはこのくらいにして」

加蓮「居てくれると助かるなー、って思って」

奈緒「あたし達、こういう収録って初めてでさ……」

凛「私はニュージェネでやった事ある仕事だけど、ね」

加蓮「お願い、出来ますか?」

奈緒「お願いしますっ! どうしても、成功させたいんだ!」

武内P「……わかりました。スケジュールを調整してみます」

武内P「収録は、歌番組でしたね」

凛「うん。だから、プロデューサーが鼻をかんでくれないと困る」

加蓮・奈緒「……ん?」

武内P「確かに、その通りです」

凛「でないと、歌声がネバネバになっちゃうから」

加蓮「あの……凛?」

奈緒「なんか……おかしくないか?」

凛「? 何が?」

加蓮・奈緒「……!?」

加蓮「あのさ……いつも鼻をかんでもらってるの?」

凛「そんなわけないでしょ」

奈緒「だ、だよな! あたし達の聞き間違いだよな!」

凛「歌う前だけ。そこまで迷惑かけられないし」

加蓮・奈緒「!?」

武内P「私は、迷惑だと思ったことはありませんが……」

凛「……そう?」

武内P「はい」

加蓮・奈緒「……」

加蓮「鼻をかむって……えっと、何かの例え?」

凛「例え?」

奈緒「ほ、ほら! 鼻の通りを良くするための、何かとか!」

凛「? 普通に、こう、チーンってかんでもらってるけど?」

加蓮「……冗談じゃ」

凛「無いってば。もう、しつこいよ二人共」

奈緒「なんでそんなに当たり前の事みたいに振る舞えるんだよ!?」

凛「えっ? だって、普通の事でしょ」

加蓮・奈緒「……!?」

加蓮「あの……本当にやってるんですか?」

武内P「はい。渋谷さんが歌う前は、いつも」

奈緒「いつもあたしをからかう割に、そんな事してたのかー!」

凛「当たり前でしょ。アイドルなんだから」

加蓮・奈緒「……は?」

武内P「ファンの前でアイドルが輝けるようにするのが、プロデューサーですから」

加蓮・奈緒「……」

加蓮・奈緒「……はい?」

加蓮「もしかして、シンデレラプロジェクトでは……」

奈緒「そんなのが、当たり前に行われてる……?」

武内P「はい、勿論です」

加蓮・奈緒「勿論です!?」

凛「二人も、何かしてもらったら?」

加蓮「えっと……何かって、何?」

奈緒「あたしも鼻をかんでもらえって!? ヤだよ!」

武内P「そうですね……お二人の場合でしたら……」

加蓮・奈緒「!?」

武内P「まず、北条さんの場合ですが――」

加蓮「えっ……ええっ?」

武内P「あまり、体が強くない方だと聞いています」

加蓮「そ、そう……だけど」

武内P「なので、当日までの体調管理は勿論ですが」

加蓮「……」

武内P「当日も、すぐに支えられるように控えていようと思います」

加蓮「それは……うん、ちょっと良いかも」

凛「でしょ?」

奈緒「……」

奈緒「そ、それじゃあ、あたしの場合は?」

武内P「そうですね、神谷さんの場合ですが――」

奈緒「……」

武内P「髪の毛のセットが乱れやすそうなので、その点のケアを」

奈緒「おお……それはちょっと嬉しいな」

武内P「当日は、より一層キリリと力強い眉毛になるようサポートしたいと思います」

奈緒「なんだそのサポート!?」

凛「ふーん。悪くないかな」

加蓮「やったじゃん、奈緒」

奈緒「やってないからな!?」

奈緒「眉毛のサポートって、何!?」

武内P「それは……言葉で説明するのは、難しいですね」

凛「今、実際にやってあげたら良いんじゃない?」

奈緒「は!?」

加蓮「あー、それは先に見ておいた方がいいかもね」

奈緒「おい! 他人事だと思ってテキトーな事言うなよな!?」

武内P「……わかりました。お二人が、そう仰るのでしたら」

奈緒「あたしの意見を聞いてなくない!?」

武内P「それでは神谷さん、目をつぶっていただけますか?」

奈緒「目をつぶるって……な、何する気だよ!?」

武内P「眉を触るので、目を開けていては危険ですから」

奈緒「ま、眉を触るって……」

凛「奈緒、言う通りにした方が良いよ」

奈緒「で、でも……!?」

加蓮「ほら、早く」

奈緒「……くっそー! 覚えてろよな!?」

奈緒「……は、はい。目、つぶったけど」

武内P「では、失礼します」

さわさわっ…

奈緒「う……うぅ……///」

凛「奈緒、顔が真っ赤だよ」

加蓮「大丈夫、キスされる訳じゃないんだし」

奈緒「余計な事言うなって!///」

武内P「――では、行きます」

奈緒「……へっ?」


武内P「プロデュゥゥゥス!」


シャランラ~

加蓮「えっと……今の掛け声、何?」

凛「大丈夫、いつもの事だから」

加蓮「……」


武内P「……どうですか、神谷さん」

武内P「……いえ、」


神谷13「……どう、って言われても」キリリッ


武内P「神谷13(サーティーン)さん」


凛「凄いね奈緒……いや、神谷13。これなら、仕事は失敗しなさそう」

加蓮「……」

加蓮「!?」

神谷13「そ、そうか? 自分では、よくわからないんだけど……」キリリッ

加蓮「髪型をセットって言うか、角刈りにセットされてるよ!?」

神谷13「? 何言ってるんだよ、前からだろ?」キリリッ

加蓮「!?」

神谷13「お礼は……スイス銀行に振り込めばいいのかな?」

武内P「いえ、お気持ちだけ頂いておきます」

神谷13「そっか……じゃあ、一回だけ後ろに立っても見逃す事にするよ!」

武内P「はい、ありがとうございます」

加蓮「……!?」

凛「……ついでだから、私も鼻をかんでもらおうかな」

武内P「渋谷さん?」

神谷13「おいおい凛~? まさか、独占欲か~?」

凛「違うから。そんなんじゃないって」

加蓮「待って凛! 鼻をかむのは、普通なんだよね……!?」

凛「普通じゃない鼻の噛み方って、何それ」ケラケラ

加蓮「そう、だよね……」

武内P「――では、失礼します」

凛「……んっ」


武内P「プロデュゥゥゥス!」


シャランラ~

加蓮「また……あの掛け声……!?」

凛「……」

加蓮「凛、大丈夫なの……!?」

凛「……あ」


凛「あ~~~……!」ガクガクッ!

ズルリッ!…ボトッ!


加蓮「い、いい、いやあああ!? 何それ!? 何それ!?」

武内P「鼻水です」

加蓮「量がおかしい! なんか体が痙攣してるし!?」

武内P「しかし、これで彼女の歌声はより美しくなります」

加蓮「……!?」

凛「……うん、スッキリした」

加蓮「ほっ、本当にちょっと声が綺麗になってる……!?」

凛「でしょ?」

奈緒「……あれ? あたし、何でここに居るんだっけ?」

加蓮「! 奈緒、正気に戻ったの!?」

武内P「今回は試し、という事で時間は短めにしておきましたから」

加蓮「……!?」

凛「奈緒、どうだった?」

奈緒「なんだかよくわからないけど……調子が良い気がする!」

加蓮「……!?」

奈緒「おい、どうしたんだよ加蓮!? 顔が真っ青だぞ!?」

加蓮「いや、これは……」

武内P「!? いけません! すぐ、ソファーに横に!」

凛「プロデューサー! 膝枕して!」

加蓮「それはいらない! って……ああ、大声出したら……」

武内P「どうぞ、北条さん!」

加蓮「……はい、失礼します」

奈緒「大丈夫か、加蓮……」

加蓮「……悔しいけど、案外悪くない」

凛「……プロデューサー、お願いがあるんだけど」

武内P「はい、何でしょうか」

奈緒「加蓮にも、さっきあたし達みたいにした風に!」

加蓮「……やめて……! 本当にやめて……!」

武内P「ですが……」

凛「逃げないでよ! アンタ、プロデューサーでしょ!?」

武内P「!」

奈緒「お願いします!」

武内P「……わかりました。お二人が、そう仰るのでしたら」

加蓮「……いや……! やめ――」


武内P「プロデュゥゥゥス!」


シャランラ~

  ・  ・  ・

専務「先日の収録の付き添い、ご苦労だった」

武内P「いえ、当然のことをしたまでです」

専務「結果的には、成功だったと言えるでしょう」

武内P「何か、ご不満が?」

専務「神谷奈緒くんが、報酬はスイス銀行に振り込むよう言ってきました」

武内P「良い、狙撃です」

専務「北条加蓮くんが、報酬は全てプロテインでと言ってきました」

武内P「良い、筋肉です」

専務「彼女達の個性を伸ばし、欠点を補った、と言う事ですね」

武内P「はい。皆さん、とても良い笑顔でした」

専務「……」


専務「優秀過ぎるのも考えものだな」



おわり

休憩


人妻というか未亡人が漏れそうな三船さんとかどうすか

プロデューサーって凄い、ぼくは色んな意味でそう思った

346プロのTさんか、やってみます


 私には、悩みがあります。
 結婚をしていた事も無いのに、未亡人の様に扱われるのです。
 プロデューサーさんには、「儚げな色気がある」と言われます。
 けれど、初めて出会った大切だと思える人にそう思われるのは、とても、複雑です。


「あっ、あそこに居るの、アイドルの三船美優さんじゃない?」
「ホントだ。まるで、ここまで未亡人の儚げな色気が漂ってくるみたいだ」


 街を歩くと、いつもこう言われてしまいます。
 褒められているのはわかっているし、悪気は無いともわかるんです。
 ……それでも、未亡人扱いされるのは、悲しいです。
 だって、私の大切な人は、今も生きて、私に笑いかけてくれているのに……!


「笑顔です!!」


 唇を噛み締め俯いていた私は、突然かけられた低い男性の声にハッと顔をあげました。
 この方は、確かシンデレラプロジェクトの、プロデューサーの……。
 それに、今の言葉は、一体?


「貴女の大切な方に……そして、ファンの方達に向けるのは、その表情で良いのでしょうか?」


 私は、ハッとなりました。
 確かに、私は未亡人の色気があるとも言われますが、あの人にいつも褒められるのは、笑顔。
 あの人と一緒に居ると自然に出る、笑顔を褒められていたと、思い出しました。
 そんな大切な事を思い出させてくれた男性は、警察の方から職務質問を受けています。
 私はまず、その男性に向けて、思い出させてくれた笑顔を向けました。


「良い、未亡人の様な笑顔です」


 やっぱりプロデューサーって凄い、私は改めてそう思いました。


「はぁ……」


 いつになったら、スプーン曲げ以外の超能力が身につくんだろう。
 サイキックアイドルとして売り出しているのに、このままじゃ駄目だ。
 今の状態が続けば、エスパーユッコじゃなく、スプーンユッコと呼ばれてしまう。


「ムムム……!」


 離れた所にあるスプーンに向けてサイキックを飛ばしてみる。
 だけど、何度練習してもスプーンが浮き上がる事はない。
 今度こそは、今度こそはと思っているのに。


「これが成功しなかったら……」


 もう、サイキックアイドルは卒業しよう。
 これからは、スプーン曲げアイドルとしてやっていこう。
 そう思い、サイキックを飛ばした瞬間、ドアが物凄い勢いで開き、大柄な男性が!
 あの人は、シンデレラプロジェクトの、プロデューサーさん!


「笑顔です!!」


 プロデューサーさんはそう叫ぶと、スプーンを手に取り、真っ二つに引きちぎりました。


「堀さん。私は、貴女のサイキックアイドルとしての輝きは素晴らしいと、そう考えます」


 私の目の前に、コトリ、コトリと二つに分かれたスプーンが置かれました。
 これは……私の超能力が、この超筋力を呼び寄せたという事ですね!?


「良い、さいきっく笑顔です」


 やっぱりプロデューサーは凄い、サイキックそう思いました。

寝ていたので、寝ます
おやすみなさい

サイキックパワー(物理)

薄々気付いてはいたけどプロデューサーが笑顔とプロデュースさえ言えば何でも出来る存在になっとる…

そのうち変身でもしそうだ

変身、書きます


「渋谷さん、お疲れ様でした」


 LIVEが終わってステージ裏に戻ると、真っ先にプロデューサーが声をかけてきた。
 まだ会場は興奮冷めやらぬようで、ざわめきがこちらまで届いてくる。


「どうだった?」


 こうやってプロデューサーに感想を聞くのは、いつものこと。
 だけど、この人はいつも決まってこう言う。


「はい。とても素晴らしい、良いLIVEでした」
「……ん」


 今回のLIVEは、私だけのソロLIVE。
 少し緊張したけど、プロデューサーが見ていてくれたから、不安は無かった。
 だって、私が見ていてって言ったのに、かっこ悪い所は見せられないし、ね。



「きゃあああああっ!?」
「うわあああああっ!? なんだ、このバケモノは!?」



 そんな私達の耳に、明らかに、普通とは思えない叫び声が飛び込んできた。
 何か、あったのかな?
 それに、バケモノって……一体、何のこと?


「――渋谷さん。すぐに、避難を」


 プロデューサーは、真っすぐにステージに向かいながら、背中越しに言った。
 その歩みには一切の淀みが無く、まるで、何かを察しているかのよう。


「避難って……アンタ、どこへ行く気!?」


 避難するなら、そっちじゃないでしょ!?


「私は……プロデューサーですから」


 何それ……全然答えになってない!


「意味がわからない! プロデューサーだから、何なの!?」


 必死でプロデューサーに追いすがり、スーツの上着を掴んだ。
 すると、プロデューサーはこちらを見ることなく、首筋に手をやり、言った。


「今回のLIVEは、とても素晴らしいものでした」


 そんなの、関係無い。
 だって、わからないけど……会場では、絶対に変なことが起きてる。
 それなのに、アンタがそこに向かう理由は何なの?


「ちゃんと説明して!」
「その、素晴らしいLIVEを最後まで見届けるのが、私の役目です」


 プロデューサーは、ゆるんだ私の手を振りほどき、また歩みを進めた。



「助けて! 誰か、誰かあああああ!」
「うわあああああ! 来るなっ、来るなあああああっ!」



 待って。
 待って、待って、待って、待って!


「……渋谷さんは、避難を早く」


 低い、いつもの声がより一層低くなった。


「……逃げないでよ!」


 逃げようよ、一緒に!
 アンタ、私のプロデューサーでしょ!?


「逃げるのでは、ありません」


 プロデューサーは、上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。


「戦うのが、プロデューサーの務めです」


 その腰元では、大きな銀色のベルトが、輝きを放っていた。

  ・  ・  ・

「助けて……! 誰か……誰か……」
「うああ……力が……力が入らない……」


 LIVE会場は、ひどい有様だった。
 会場の一角を中心に張り巡らされた、白い巨大な糸。
 それに捕らえられた人達は身動きすら出来ず、助けを求め続けている。


「――アナタが、これを?」


 プロデューサーが、白い巨大な糸の中心に立つ影に問いかけた。
 その影は人の形をしているが、シルエットが似ているというだけで、明らかに違う。


「SYAAAAAAAAAA!!」


 影――クモの異形の怪人は、此処は自分の巣だと言うように、咆哮した。
 耳をつんざくようなその咆哮は、ビリビリと会場を震わせる。
 それを聞いた、捕まった人達の上げた悲鳴が、絶望をより加速させていく。


「申し訳、ありません。今すぐに、お引き取り願います」


 しかし、プロデューサーはそれを何一つ意に介さず、平坦な口調で言い放った。
 クモの怪人は、ひるまなかったその様子が気に食わなかったのか、
シュルシュル、獲物を前に舌なめずりするかの様な音を上げた。


「聞き入れては、貰えませんか?」


 プロデューサーの、再度の問いかけ。


「SYAAAAAAAAAA!!」


 クモの怪人は、それに咆哮で応えた。


「……」


 プロデューサーは、右手を首筋にやると、少し困ったような顔をした。


「――それでは、少し強引な手段をとらせていただきます」


 強引な手段?
 こんな、異形のバケモノを相手に、一体何が出来るというのか。
 悪夢の宴を終わらせられるような何かが、彼に出来るというのか。


「……」


 プロデューサーは、右のポケットからスマートフォンを取り出した。
 そして、ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
 流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。


 ――3――4――6!



『LIVE――』



 スマートフォンから、どこかで聞いたことのある女性の声が聞こえた。
 プロデューサーは、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、



「変身ッ!」



 言った。



『――START!』



 彼の体を光が包み込んでいく。
 光の粒子はやがて形を成していき、プロデューサーに鎧を纏わせた。


 鎧は黒を基調としたもので、所々白い箇所もあり、まるでスーツのよう。
 すっぽりと全身を覆うその鎧の胸元では、
ピンクと、ブルーと、イエローの宝石のような物が輝きを放っている。
 プロデューサーが今、どんな顔をしているのかは、
目付きの悪いぴにゃこら太のようなフルフェイスに覆われ、見ることは出来ない。


「……」


 だけど、きっと、いつもの無表情に違いない。

ぴにゃぴっぴ


「SYAAAAAAAAAA!!」


 明らかに、クモの怪人の空気が変わった。
 圧倒的捕食者の立場だと思っていたが、目の前の男は違う。
 この男は、ただ逃げ惑い、食われるだけのウサミン星人では、無い。


「SYAAAA!!」


 クモの怪人は、人間では……いや、生物ではあり得ない跳躍を見せた。
 数メートル程高く跳び上がったクモの怪人は、
放物線の軌道を描き、プロデューサーへ向けて異形の右腕を振り下ろそうとした。
 が、


「善処します!」


 プロデューサーは腰を落とし、真正面からそれを拳で迎撃。
 ぶつかり合う右腕と右腕。
 しかし、両者にもたらされたのは、あまりにも違いすぎる結果。


「GYAAAAAAA!?」


 クモの怪人の右腕は有り得ない方向に折れ曲がり、


「……」


 一方、プロデューサーの纏う鎧には傷一つなく、拳を放った体勢から微動だにしていない。


「GURYUUUUU……!」


 クモの怪人は、折れた自分の右腕に糸を巻きつけ、固定。
 しかし、先程までの勢いは完全に削がれていて、ジリジリとその足を後退させている。


「……勝てる」


 プロデューサーなら、あのクモの怪人に勝てる。
 そう思った瞬間、私の口から思わず言葉が漏れた。


「!?」
「!」


 私の声に、反応が二つ。
 一方は、鎧を纏ったプロデューサー。
 そしてもう一方は、


「SYAAAAAAAAAAA!!」


 クモの怪人だった。


「っ!?」


 クモの怪人の8つの目全てが、私を捉える。
 本能的な恐怖から足がすくみ、逃げようと思っても足に力が入らない。
 それでも逃げなければと思い足を動かそうとしてみたものの、その場で尻もちをついてしまう。


「SYAAAAAAAAAAA!!」


 クモの怪人は、咆哮と共に口から液体を私に飛ばしてきた。
 あれは、消化液だ。
 吐き出した時に散った飛沫が落ちた床が、ジュウジュウと音を立てて溶け出している。
 それをスローモーションの様に確認出来るのは、私に消化液が――死が迫っているからか。


「――っ!」


 理由が何にせよ、私は、あれを体に浴びて、終わる。
 万に一つ命が助かったとしても、アイドルを続けるのは絶望的だろう。
 ……ごめんね、皆。
 私、アイドル続けられなくなっちゃうよ。


「――ぐおおおおおっ!?」


 だけど、そんな私を守る、一つの影があった。


「――渋谷さん、お怪我はありませんか?」


 なんで。


「アンタ……私をかばって……?」


 なんで。


「見たところ、異常は無いようです。ですが、この後、医務室に――」
「私じゃなくて! 今、大変なのはアンタでしょ!?」
「……」


 プロデューサーの背中から、ジュウジュウと何かが溶ける音が聞こえてくる。
 この人は、私をあの消化液からかばって、こうなった。
 それなのに、いつもみたいに右手を首筋にやって、私を見て困っている。


「……渋谷さん」


 そして、


「笑顔です」


 いつもの台詞を口にする。


「笑顔って……そんなの、出来っこない!」


 自分を庇って傷ついた人に向けて笑顔なんて、出来ない!
 この状況で笑ってられるのが、アイドルだって言うの!?


「……私は、貴女の笑顔を見続けて行こうと思っています」


 プロデューサーは、立ち上がり、私に背を向けた。


「今までも――」


 振り返らず、


「――そして、これからも」


 前を向いて。


「ふっ――!」


 プロデューサーが、クモの怪人に向かって駆け出す。
 背中からあがる煙を置き去りにするかの様な速度に、クモの怪人は反応出来ない。


「――企画!」
「GYAAAAAA!?」


『Cute!!』


 ピンク色の光を纏ったプロデューサーの拳が、クモの怪人の腹部に突き刺さった。
 よろめくクモの怪人の頭部に、


「――検討中です!」
「GYUUUUUU!?」


『Passion!!』


 今度は、イエローの光を纏った拳が突き刺さる。


「GUUU……OOOOOOOOOO!!!」


 クモの怪人はひるみながらも、両手を振り上げ、プロデューサーに襲いかかった。
 その攻撃は、正に命を賭したもの。


「……」


『CoooooooooooL!!!』


 ブルーの光を纏った、プロデューサーの右足。
 その右足が高く振り上げられ、クモの怪人に叩き込まれた。


「せめて!」


 断末魔の叫びを上げながら、クモの怪人は光の粒子となって消えていく。


「……名刺だけでも」


『LIVE SUCCESS!!』

休憩

  ・  ・  ・

「……なんかさ、最近しぶりん」
「?」


 プロジェクトルームでゆっくりしていたら、未央にしては珍しく歯切れ悪く切り出してきた。
 視線を向けてみるものの、続く言葉が来ない。
 もう、一体何? 途中でやめられると、気になるんだけど。


「凛ちゃん……その、ですね」
「卯月までどうしたの」


 二人共、なんでそんなに言いにくそうにしてるの。
 もしかして、気付かない内に何か二人にしてた?


「ぷっ、プロデューサーと……!」
「……みょ、妙に仲が良くないですか!?」


 二人の予想外の言葉に、驚く。
 冗談やお巫山戯でない、二人の真剣な様子がおかしくて、クスリと笑いが溢れる。


「そう?」
「そうだよ! 何か、この前のソロLIVEの後から何か違うもん!」
「はい! 明らかに、こう、距離が近くなったように見えます!」
「そうかな。自分では、よくわからないけど」


 距離が近くなった、とは少し違うかもしれない。
 私は、二人の知らない、プロデューサーの秘密を知っているだけだ。
 もしかしたら、この二人もいつかはそれを知る事になるのかもしれない。
 だけど、口止めされてるし、変に怖がらせる必要は無いよね。


「白状しなさい、しぶりんや! ソロLIVEの時、何があったのか!」
「教えてください、凛ちゃん! まっま、ま、まさか……!?」


 ごめんね、未央、卯月。
 今は、まだ――


「内緒」



おわり

ゴハンいてきます


やっぱりしぶりんがヒロインだってはっきりわかんだね

これ書いてて楽しいので続けます


「「「私達、ピンクチェックスクールを――」」」


 大勢の記者さんに向けて、三人でせーのと掛け声を合わせ、


「「「よろしくお願いしますっ♪」」」


 精一杯の笑顔で、挨拶しました。
 練習通り、いえ、練習以上にうまくいったので、とっても嬉しいです。
 降り注ぐフラッシュとシャッター音の中、私は美穂ちゃん、響子ちゃんに笑いかけました。


「「「……エヘヘ」」」


 二人共同じ様に感じていたのか、自然と三人で笑い合う形に。
 私は今、階段を駆け上がっている最中です。
 皆と……そして、この二人とも一緒に。


「……」


 そして、私をアイドルにしてくれた、プロデューサーさんと一緒に。
 そう思うと、会場の隅で控えているプロデューサーさんに自然と目が行きます。
 いつも通りの黒いスーツに、無表情。
 背が高いから、探さなくてもすぐにわかりました。
 プロデューサーさん、私、今、とっても楽しいで――



「うわあああああっ!?」
「なんだ!? コウモリが急に……あっ、あああああっ!?」



 ――会場に響く、大きな悲鳴。
 明らかに普通ではないその様子に、私達は顔を強張らせました。


 記者さん達の居る所から、キーキーという鳴き声が聞こえてきます。
 その鳴き声はどんどん増え、一瞬の静寂の後……ブワリと、コウモリが飛び立ちました。
 会場中を埋め尽くす程の大量のコウモリの群れに、沢山の悲鳴。
 全員、パニックに陥っていました。


「なっ、ななな、何あれ……!?」


 当然、私達も平気ではいられませんでした。
 何か、とんでもない事が起こっているのはわかります。
 だけど、どうしたら良いか、わかりません。
 美穂ちゃんも響子ちゃんも、ガタガタと体を震わせています。


「――皆さん、すぐに避難を」


 だけど、私は怖くありませんでした。


「プロデューサーさんっ!」


 だって、こちらに向かってくる、プロデューサーさんが見えていたから。
 私はプロデューサーさんの元に駆け寄り、聞きました。


「あ、あのっ! 何か、出来ることはありませんか!?」


 私の口を突いて出たのは、そんな言葉でした。
 こんな状況で、私達に出来る事なんて無いのはわかってます。
 だけど、記者さん達は、私達のために集まってくれたんです。
 だから、せめて、何か……!


「……」


 プロデューサーさんは、困ったように笑いながら、右手を首筋にやりました。
 呆れてます、よね。
 でも、だけど、私は……プロデューサーさんが選んでくれた、アイドルだから――!


「笑顔です」


 プロデューサーさんは、上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻し言いました。
 その腰元では、大きな銀色のベルトが、輝きを放っています。

  ・  ・  ・

「あ……うあ……!」
「……誰か……助け……」


 コウモリに襲われた記者さん達が倒れています。
 よく見ると、その体にはコウモリに噛まれた痕があり、とても痛そうです。
 その中心に、一つだけ立つ、大きな影。


「――申し訳ありません。今は、会見の最中です」


 プロデューサーさんの靴音が、カツリカツリと聞こえます。
 他にも音がするのに、何故か、プロデューサーさんの声がハッキリと聞こえるんです。


「KYUUUUUUUAAAA!!」


 大きな影――コウモリのような姿をした怪人が、その両手を大きく広げました。
 そうしただけなのに、腕と体を繋ぐような形の翼が、その怪人の姿をとても大きく見せます。
 プロデューサーさんも大柄だけど、それよりももっと大きく。
 実際、コウモリの怪人はプロデューサーさんよりも大きいから、余計に大きく感じます。


「今すぐに、お引き取りを」


 表情を変えず、プロデューサーさんが言い放ちました。
 私は、その背中をただ遠くから見ているだけ。
 ただそれだけなのに、その背中が、とても頼もしく見えました。


「KYUUUUUOOOO!!」


 コウモリの怪人が、そんなプロデューサーさんを威嚇するように吠えました。


「……」


 話の通じる相手ではないと、プロデューサーさんもわかっていたようです。
 それでも声をかけたのは、何か理由があったのかもしれません。
 プロデューサーさんは、右手を首筋にやり、少し困った顔をしていました。


「――それでは、少し強引な手段をとらせていただきます」


「……」


 プロデューサーさんは、右のポケットからスマートフォンを取り出しました。
 そして、ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
 流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいきます。


 ――3――4――6!


『LIVE――』


 スマートフォンから、どこかで聞いたことのある女性の声が聞こえました。
 こういうの、ええと、複合音声って言うんでしたっけ。
 プロデューサーさんは、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、



「変身ッ!」



 言いました。



『――START!』



 その体を光が包み込んでいきます。
 光の粒子はやがて形を成していき、プロデューサーさんに鎧を纏わせました。


 鎧は黒を基調としたもので、所々白い箇所もあって、まるでいつものスーツ姿のようです。
 すっぽりと全身を覆うその鎧の胸元では、
ピンクと、ブルーと、イエローの宝石のような物が輝きを放っています。
 プロデューサーさんが今、どんな顔をしているのかは、
目付きの悪いぴにゃこら太のようなフルフェイスに覆われ、見ることは出来ません。


「……」


 だけど、きっと、いつもの無表情に違いありません。


「KYUUUUUUOOOOOO!!」


 コウモリの怪人が、変身したプロデューサーさんを威嚇しています。
 だけど、プロデューサーさんはそれを気にせず、カツカツと歩みを進めます。


「KYUUUU!!」


 コウモリの怪人の叫び声に命令されたかのように、
大量のコウモリが一斉にプロデューサーさんに襲いかかりました。
 危ない! と、そう思った次の瞬間、


「善処します!」


 プロデューサーさんは体を翻し、
襲い来るコウモリ達をチョップで全て叩き落としました。
 叩き落とされたコウモリ達は、
地面に落ちると同時に、光の粒子となって消えてしまいました。


「KYUUUOOOO……!」


 コウモリの怪人がそれに驚いたのが、私にもわかりました。


「……」


 プロデューサーさんは、また、カツカツとコウモリ怪人へ向かって歩みを進めます。


「KYUAAAAAAA……!」


 まるで、来るなと言うようなコウモリ怪人の鳴き声。
 けれど、それを聞いてもプロデューサーさんの歩みは止まりません。


 


「……凄い……あれ、あれ、あのまま倒せちゃいそう!」
「シンデレラプロジェクトの、プロデューサーさん……凄いです!」


 美穂ちゃんも響子ちゃんも、目を輝かせています。
 勿論、私もプロデューサーさんから目が離せません。


「KYUUUUUUOOOOOO!!」


 だけど、そんな私達にコウモリ怪人が目を付けたようです。
 今までよりもひときわ大きな声で鳴くと、
コウモリの大群が、一斉にこちらに向かってきます。


「「ひっ!?」」


 それを見て、二人共悲鳴を上げました。
 だけど、私は表情を変えません。
 だって、プロデューサーさんは私に言ったんです。


 ――私に出来るのは笑顔だ、って。



「――皆さん、お怪我はありませんか?」



 いつの間にか私達の前に立ちふさがった、大きな背中。
 その背中越しに聞こえるのは、いつもより優しい口調の声。


「はいっ♪」


 島村卯月、笑顔で頑張りました!
 この笑顔……背中越しでも、届いてますか?


「プロデューサーさんが、守ってくれるって信じてました」


 プロデューサーさんの足元から、キラキラと光の粒子が舞い上がっています。
 こんな状況でちょっと不謹慎かも知れません。
 だけど、それがとっても綺麗で、私はドキドキしちゃいました。


「……」


 右手を首筋にやると、プロデューサーさんはコウモリ怪人に向かって駆け出しました。
 それがなんだか照れて逃げ出す子供みたいに見えたのは、気のせいでしょうか。


「KYUUUOOOOOO!!」


 コウモリの怪人が叫びながら、その手をプロデューサーさんに叩きつけます。
 だけど、鎧には傷一つつく事なく、二つの影の距離はゼロになり、重なりました。


「アイドルには手を触れないでください!」


 プロデューサーさんが叫びました。
 その声は、今まで聞いたことのない、怒った声です。


「――企画!」
「KYUUUUOOO!?」


『Cute!!』


 ピンク色の光を纏ったプロデューサーさんのパンチが、コウモリ怪人のお腹に突き刺さります。


「――検討中です!」
「KYUUUAAAA!?」


『Cute!!』


 そして、続けざまに、またピンク色の光が軌跡を描き、同じ箇所に叩き込まれます。

漫画で読みたい


「KYUUUOOOOO……!」


 コウモリの怪人は、その体を大きくよろけさせました。
 そして、プロデューサーさんからは見えないように、でしょうか。
 背中から、小さなコウモリが飛び立ちました。


「……」


『Cuuuuuuuuuute!!!』


 今までよりも、一際大きなピンクの光を纏った、プロデューサーさんの右手。


『Groove!!!』


 その右手が真っ直ぐに突き出され、コウモリ怪人のお腹にパンチ。


「せめて!」


 コウモリ怪人は何一つ言葉を発する事無く、光の粒子になって消えていきます。


「……名刺だけでも」


『LIVE SUCCESS!!』

  ・  ・  ・

「おかしい!」


 未央ちゃんが、テーブルをダンッと叩き叫びました。
 それにビックリして変な声が出ちゃいました……うぅ、恥ずかしいです。


「どうしたの未央、急に大声出して」
「ごっ、ごめん」
「気をつけてよね」
「うん、気をつける……じゃなくって!」


 凛ちゃんが注意してくれましたけど、未央ちゃんの興奮は収まりません。
 一体、何が原因なんでしょう?


「しぶりんがプロデューサーに最近お熱だったじゃん?」
「何言ってるの。そんなんじゃないから」
「それに続いて、しまむーまで!」
「わ、わわっ、そんなんじゃないですよー!?」


 私がプロデューサーさんにお熱だなんて……はうぅ、顔が熱くなっちゃいました。
 確かに、あの事があってからプロデューサーさんとはよく話しますけど、
お、お熱とかそういうんじゃなくて……その、あ、あははは。


「そこまではまだ良いよ!? でも、なんで、みほちーやきょーちゃんまで!?」


 あの一件以来、美穂ちゃんと響子ちゃんもプロジェクトルームに顔を出すようになりました。
 私は二人とお話する機会が増えて嬉しいし、良い事だと思うんです。
 ……なんだか、ちょっとモヤモヤしますけど。


「ねえ、二人共、私に何か隠してない!?」
「あー……あははは」


 ごめん、未央ちゃん!
 あの時の事は誰にも言っちゃいけないって、口止めされてるんです!
 だから――


「この前も言ったでしょ、未央」
「――内緒です♪」



おわり

休憩

>>278の最初のセリフだけ読んで一瞬未央が黒幕なのかと思ってしまったww
おつ


「ねえ、私に隠し事してるでしょ!?」


 喫茶店の奥、私はプロデューサーに詰め寄った。
 思いの外大声が出てしまい、慌てて回りのお客さん達に頭を下げる。


「……」


 目の前に座るプロデューサーは、右手を首筋にやって困り果てている。
 だけど、この困り方は説明に困っている訳ではない。
 どうやって誤魔化せば良いのかと思案する困り方だ。


「……しまむーも、しぶりんも何か知ってるみたいだし」


 私だけ、仲間はずれにされている。
 あの二人の事だし、このプロデューサーだ。
 話せない事情があるのはなんとなくわかるし、それが悪意の無いものだともわかる。
 ……でも、やっぱり寂しいじゃん。


「本田さん……申し訳、ありません」


 プロデューサーの答えは、私の望むものではなかった。
 思わず俯いてしまったが、顔を上げた時、どんな表情をすればいいのだろう。
 わかんない……全然、わかんないよ。



「きゃああああああっ!?」
「なんだこのバケモノは!? やめ、くっ、くるなあああ!!」



 外から聞こえる、大きな悲鳴。
 それにハッとなって顔を上げた時、プロデューサーはいつになく険しい表情をしていた。


 悲鳴は、どんどんこの喫茶店に近づいてくる。
 何かが、ここへ向かってきている?
 私達以外の人もそれに気づいたのか、一目散に喫茶店から逃げ出していった。
 そして、中に居るのは私と、プロデューサーだけ。


「ねえ……何が、起こってるの……!?」


 プロデューサーに聞いても、わからないかもしれない。
 だけど、私には妙な確信があった。
 プロデューサーだったら、私の疑問に答えてくれるんじゃないか、って。
 自分でも変だと思うけどさ、そう、思ったんだよね。


「――本田さん。少し、隠れていてください」


 険しい表情から一転、穏やかな表情。


「プロデューサー……?」


 隠れてろって、プロデューサーはどうするの?
 ねえ、ちょっ、ちょっと待って、どこに行く気!?


「隠し事……というつもりは、ありませんでした」


 プロデューサーは、上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。


「申し訳ありません。貴女に、寂しい思いをさせてしまっていたと、気付かず」


 その腰元では、大きな銀色のベルトが、輝きを放っていた。

「……しかし、可能な限り、知られたくはありませんでした」


 プロデューサーは、右のポケットからスマートフォンを取り出した。
 そして、ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
 流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。


 ――3――4――6!



『LIVE――』



 スマートフォンから、どこかで聞いたことのある女性の声が聞こえた。
 あの二人分の声、なんだか、どこかで聞いたことある気が……。
 プロデューサーは、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、



「変身ッ!」



 言った。



『――START!』



 プロデューサーの体を光が包み込んでいく。
 光の粒子はやがて形を成していき、プロデューサーに鎧を纏わせた。


 鎧は黒を基調としたもので、所々白い箇所もあり、まるでスーツのよう。
 すっぽりと全身を覆うその鎧の胸元では、
ピンクと、ブルーと、イエローの宝石のような物が輝きを放っている。
 プロデューサーが今、どんな顔をしているのかは、
目付きの悪いぴにゃこら太のようなフルフェイスに覆われ、見ることは出来ない。


「……」


 だけど、私には、フルフェイスの向こうでプロデューサーが悲しげに微笑んでいる気がした。

  ・  ・  ・

「助けて……痛い……痛いよぉ……!」
「母さん……母さん……!」


 喫茶店の外は、惨憺たる光景が広がっていた。
 背中や腕から血を流す人たちが地面に倒れ伏し、苦痛に喘いでいる。
 倒れ伏す母親に泣き縋る、小さな子供も居る。


「――これは、アナタがやった事ですね」


 プロデューサーが、その光景を作り出した張本人と思わしき人影に言い放った。
 確信を持って言えるのは、その人影の頭部と手から、赤い血が滴っていたから。


「GRRRRRRRRR!!」


 その人影の頭部は肉食獣――ヒョウのような怪人で、獰猛な唸り声を上げている。
 それに対するプロデューサーに一切の動揺は無く、あるのはただ、


「……」


 黒い鎧越しにもビリビリと伝わってくる、怒りのみ。
 直接顔を見ている訳ではないのに、
初めて触れるプロデューサーの怒りに、私は、ほんの少し恐怖した。


「私は、誰かを憎いと思った事はありません」


 プロデューサーの声が、低く、低くなった。


「――ですが、アナタと共に歩む事は、不可能なようです」


 それは、問答無用の、敵対宣言。
 プロデューサーが、ヒョウの怪人に向けて、駆け出した。


「ふっ――!」


 鎧を纏っているとは思えない程の、高速の踏み込み。
 けれど、ヒョウの怪人はそれに反応し、大きく後ろに跳躍した。


「GURRRRRRRR……!」


 ヒョウの怪人は警戒してか、プロデューサーの周囲を回るように足を動かしている。
 それはまるで、本物の猛獣が獲物に飛びかかる前の動作。
 いまのやりとりを見た限りでは、ヒョウの怪人の方が動きが速い。


 ――プロデューサー、逃げて!


 そう、心の中で思う。
 だけど、肝心の言葉が口から出てこない。
 私は怖い。
 ヒョウの怪人だけじゃなく、それに立ち向かっている、プロデューサーも。


「GURRRRRRR……!」


 ヒョウの怪人の唸り声が、どんどん大きくなる。
 その声でもって、相手を威嚇し、萎縮させようとしているのだろう。
 現に、その声を向けられたわけではないのに、私の足は震えが止まらない。
 だけど、プロデューサーは違った。


「歌は、得意のようですが――」


 ポツリと、ヒョウ怪人に向けて、


「――ダンスの方は、苦手なのでしょうか?」


 かかって来ないのかと、そう言わんばかりの挑発をした。


「GRUUUUUUUOOOOOOOO!!」


 それを聞いたヒョウ怪人は、大きく咆哮した。


「GRRRRRROOOO!!」


 ヒョウの怪人が、高速でプロデューサーの周囲を円を描くように高速で移動する。
 そして、プロデューサーの視線が外れた一瞬を狙い、


「GRRRRRRR!!」


 飛び出し、その両手の大きな爪でプロデューサーに斬りかかる。


「ぐおっ!?」


 爪で切りつけられた場所からは火花が飛び散り、苦痛の声があがる。
 幾度となく繰り返されるその攻撃に、段々とプロデューサーの鎧にヒビが入っていく。


 このままじゃ、プロデューサーが殺されちゃう!
 なんで逃げないの!?
 そんなの投げ出して、早くそこから逃げてよ、プロデューサー!


「GUUUURRRRRROOOOOOO!!」


 ヒョウの怪人が、トドメと言わんばかりに、
大きく腕を振り上げプロデューサーに斬りかかった。
 あんなのを受けたら、ひとたまりもない。


「プロデューサー!!」


 私は、思わず声を上げた。



「――本田さん」



 ……しかし、ヒョウ怪人のツメはプロデューサーの体を捉える事は無く、
ガシリと、イエローに輝くプロデューサーの左腕によって拘束されていた。


「笑顔です」


 いつもの、プロデューサーの台詞。
 それを聞いて、私は頬を伝う涙に初めて気づいた。


「――おおおっ!」


 プロデューサーが、ヒョウ怪人を左腕で捕らえたまま叫び声を上げた。
 いかに素早く動けるとは言え、こうなってしまっては、為す術がない。


「――企画!」
「GYAAAAAA!?」


『Cute!!』


 ピンクの光を纏ったプロデューサーの右拳が、ヒョウ怪人の腹部に突き刺さった。
 くの字に折れ曲がるヒョウ怪人の体が、


「――検討中です!」
「GYAAAAAAAAA――!?」


『CooL!!』


 ブルーの光を纏った右足によって、天高く蹴り上げられた。


「AAAAAAAAOOOOOOOO!!?」


 暴れるものの、ヒョウ怪人の手足は空を切るだけ。
 その上昇が頂点に達しようとした時、


「……」


『Passioooooooon!!』


 イエローの光を纏った、プロデューサーの左手。
 その手は親指と人差し指を立て、銃を模したような形をしていた。


「せめて!」


 プロデューサーの左手から、流星の様にイエローの光が放たれた。
 それに撃ち抜かれたヒョウ怪人の体は光の粒子となり、地上に降り注いだ。


「……名刺だけでも」


『LIVE SUCCESS!!』

  ・  ・  ・

「ちょっと未央」
「未央ちゃん、説明してください」


 しぶりんとしまむーが、二人して詰め寄ってくる。
 いやー、この前は逆の立場だったのに、不思議なもんだねー!


「説明って、何の?」
「とぼけないで」
「プロデューサーさんに、お弁当作ってきたんですよね!?」
「うんうん。我ながら、だし巻き卵が絶品だったと思うんだよね!」


 あの後、プロデューサーからこれまでの事を全部聞いた。
 そしたらさ、何ていうか、頑張ってるプロデューサーに何かしてあげたいな、って。
 最初は断られたんだけど、そこは未央ちゃんって事ですよ!


「「……!」」


 私の答えを聞いて、二人は言葉を失ったようだ。
 はっはっは、キミ達! 行動に移したもん勝ちだよー?


「明日は、私が作ってくるから」
「凛ちゃん、ずるいです! じゃ、じゃあ私は明後日!」
「それじゃあ、私はまた卯月の次の日ね」
「ちょいちょーい!? そこは私じゃないの!?」


 私は、今でもプロデューサーがちょっと怖い。
 あんな怪物に立ち向かうのなんて、誰にでも出来る事じゃない。
 理由を聞いてみたんだけど、プロデューサーだから、とした答えてくれなかったんだよね。


「もー! 二人共、順番決めるよ!」


 だから、これからプロデューサーの事をもっと知っていこうと思う。
 それが、私の出した結論だ。
 そして、もし怖くなくなった時、その時は……あれ?
 そしたら、そうなったら……


「未央ちゃん、なんだか顔が赤いですよ?」


 何でもない! と、思わず大きな声が出た。



おわり

趣味全開、最高ですね!
おやすみなさい

かっこいい
ファイズ思い出した懐かしい

数字入力して変身するのはファイズっぽいよね

555良いすな、書きます


「私を置いて……早く逃げてください……!」


 私達は、森の中を逃げている。
 道は無く、ガサリガサリと生い茂る葉が肌に刺さる。
 だけど、止まる訳にはいかない。


「いいえ……! それは出来ません……!」


 こんな風になるとは思って無かったけど、スニーカーを履いてて良かったわ。
 それに、スカートじゃなくてパンツスタイルなのも。
 ふふっ、不幸中の幸いっていうのは、こう言う事よね。


「高垣さんだけでも、早く……!」


 苦痛に喘ぐ声が、すぐ側から聞こえる。
 それは当たり前よね、だって、私がこの人を支えながら歩いてるんですもの。
 だけど、まだ歩ける程の怪我で良かった。
 そうでなかったら、私の細い手足じゃこの人を引きずるなんて出来ないし。


「しつこいですよ……! 見つからないよう、しーっ、ついてこい……!」


 本当、弱音を吐くだなんてらしくないじゃないですか。
 おかげで、私の駄洒落もちょっとイマイチな出来になっちゃいますよ。
 ……って、そんな状況じゃないのは、わかってるんです。



「SYAAAAAAAAAAA!!」
「GRRRRROOOOOOO!!」
「KYUUUUOOOOOOO!!」



 遠くから、とっても大きな鳴き声が、3つ。
 さっきよりも、どんどん近づいてきてるのが、わかる。
 だから、急いで逃げなくちゃ。
 そうしないと、私だけでなく、この人まで殺されてしまう。


「……あっ!?」


 急ぐ気持ちが足元を疎かにしていたのか、木の根に足を取られてしまった。
 披露で棒のようになってしまった足では、こらえきれない。


「っ……!」


 傾く私の体を支えたのは、支えられていたはずの彼。
 しかし、急に無理な動きをしたためか、その顔は盛大にしかめられた。
 だけど、倒れそうになった私の体の前に差し出された腕は、
私の体重がかかっているにも関わらず、微動だにする事は無い。


「……お怪我は、ありませんか?」


 そういう自分の方は、どうなんですか?
 私を逃がすために、怪人たち三体と戦って、ボロボロじゃないですか。
 スーツの袖は片方取れかかってるし、あちこち、傷だらけ。
 私を心配そうに見る顔の頬からは、未だに血が滴り落ちている。


「はい、おかげ様で」


 だけど、この人はそれを指摘しても無駄なのだ。
 この人は、プロデューサーとして、アイドルを一番に考える。
 アイドルのためならば、自分はどうなっても良いと……そう、本気で考えているのだ。


「……――私が、奴らを食い止めます」


 彼は、そっと体を離すと、来た道を戻るべく、私に背を向けた。


「私だけ逃げろと……本気で仰ってるんですか?」


 そんな彼の背中に、問いかける。


「貴方を犠牲にして、私だけ生き残れと……そう、言うつもりですか?」


 再度、彼の背中に、問いかける。


「……高垣さん?」


 彼が振り向いた時、私は、今まで誰にも見せたことのない表情をしていたと思う。

誤)>披露で棒のようになってしまった足では、こらえきれない。

正)>疲労で棒のようになってしまった足では、こらえきれない。


「残念ですが……そのお話、お受け出来ません」


 私は、彼の提案を完全に突っぱねた。
 驚いたわ、この人は私がその提案を受けると思ってるのかしら。


「ですが……!?」


 だとしたら、


「貴方は――」


 それは、アイドル、高垣楓の事をわかっていなさすぎる。


「――プロデューサー、でしょう?」
「……」


 この人は、私が誰かを犠牲にして生き残っても、笑っていられると思うのかしら。
 そうだとしたら、飲み屋でお酒を飲みながらお説教をしないといけないわ。
 お猪口でちょこっとだなんて、とんでもない。
 ビールを浴びーる程飲みながら、叱ってやらなくっちゃ。


「アイドルから笑顔を奪うのは、プロデューサーの仕事ですか?」
「しかし……!」


 ペチリ。
 ……人のほっぺたを叩いたのなんて初めてだから、手加減しすぎちゃった。


「……」


 だけど、彼は叩かれた頬に手を当てて、呆然とこちらを見ている。
 うふふっ! どうやら、思った以上に効果があったみたい!


「しゃんとしてください」


 貴方がプロデューサーとしての使命を全うしようと言うのなら、


「貴方の前に居るのは、アイドル、高垣楓ですよ」


 私も、笑顔のために命を賭けようじゃありませんか。
 案外、ビギナーズラックでなんとかなると思うんです。


「……申し訳、ありませんでした」


 彼の顔に、生気が漲った。
 傷だらけで、疲れ果てているはずなのに、とても綺麗なお辞儀。
 もう、今はそんな事してる場合じゃないでしょう?


「いいえ。こちらこそ、叩いてしまってすみませんでした」


 だけど、私も彼のほっぺたを叩いてしまった。
 だから、その事はちゃんと謝っておかないと、ね。
 後で飲んでいる時に、グチグチ言われたら嫌だもの。


「……」


 彼は、上着を翻し、大きな銀色のベルトを露出させた。



「……私は、笑顔が得意ではありません」


 右のポケットからスマートフォンを。
 そして、ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
 流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。


 ――3――4――6!



『LIVE――』



「――しかし、笑顔を守る事は出来る。そう、考えます」



 そう宣言すると、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、



「変身ッ!」



 言った。



『――START!』

  ・  ・  ・

「SYAAAAAAAAAAA!!」
「GRRRRROOOOOOO!!」
「KYUUUUOOOOOOO!!」


 クモの怪人と、ヒョウの怪人が、コウモリの怪人を守るような位置取り。
 見れば、先の二人の怪人の体はボロボロで、まるでゾンビのよう。
 けれど、その動きはまるで生きている時そのまま。


「……先程は、お世話になりました」


 ズシャリと、彼が一歩前に踏み出す。
 此処は、工事が途中で中止になった採石場だろうか。
 彼は――いえ、私達は、追い詰められてここまで逃げてきたのではない。


「うふふっ♪ コテンパンに、やられちゃってましたものね」


 戦うために、此処に来たのだ。


「……」


 ……あっ、すみません。
 せっかく挨拶をしていたのに、余計な事を言ってしまいましたか?
 もう、首筋に手をやって困らないでください!
 顔が見えて無くても、その仕草をしたら困ってるって丸わかりなんですからね。


「高垣さん、避難を――」
「最前列で見るのが、最善です」
「……」


 さっき、あれだけ話したじゃないですか。


「うふふっ、頑張ってくださいね」


 ペチリ、と彼の背中を叩く。
 鎧に覆われた背中なのに、何故かあたたかく……そして、頼もしい背中を。


「はい……頑張ります」


「SYAAAAAAAAAAA!!」
「GRRRRROOOOOOO!!」
「KYUUUUOOOOOOO!!」


 大きく咆哮する、三人の怪人。
 一度、手ひどくやられた相手だと言うのに、彼のどこにも不安は感じられない。
 ズシャリ、ズシャリと地を踏みしめるその足には、一切の淀みがない。


「このスーツには……私が、今まで起動出来なかった機能があります」


 ズシャリ、ズシャリ。


「何が欠けていたのか……それは、今でもわかりません」


 ズシャリ、ズシャリ。


「しかし、今の私ならば起動出来ると……そう、思います」


 ズシャリッ!



「笑顔を守るため――」



『……――Please!』



「――そのためならばッ!」



『Cinderella!!!』

映画の撮影かよ


「……!」


 彼の体を包んでいた黒い鎧が、その形を変えていく。
 スライドした装甲の下は、金色に輝いている。
 その輝きは、まるで血液のように鎧を縁取り、白い箇所も金色に染めていく。
 胸に輝くのは、ピンクと、ブルーと、イエローの宝石。
 そして、その中心には、一際多きな輝きを放つ虹色の宝石が現れていた。


「……綺麗」


 思わず、こんな状況なのにその姿を美しいと思った。
 可愛らしいぴにゃこら太のようなフルフェイスの下で、彼はどんな顔をしてるのだろう。
 もしかしたら……うふふっ、苦手な笑顔をしてるかもしれないわね。



「SYAAAAAAAAAAA!!」


 そんな彼に、クモの怪人が大きく跳躍し、飛びかかった。
 けれど、


「――企画!!」


『CoooooooooooL!!!』


 ブルーの眩しい程の光を纏った右足が、叩き込まれた。
 ただそれだけで、さっきは彼をあんなに苦しめたクモの怪人が、
光の粒子となって消えていく。


『Full Combo!』


「GRUUUUUUUOOOOOOOO!!」


 その隙をつこうと、ヒョウの怪人が恐ろしいスピードで駆けてくる。
 それでも、


「――進行中です!!」


『Cuuuuuuuuuute!!!』


 ピンクの眩しい程の光を纏った右拳が、そのお腹に突き刺さる。
 ヒョウの怪人も、クモの怪人と同じように光の粒子となって消える。


『Full Combo!』


「KYUUUUOOOOOOO!?」


 彼の、圧倒的な強さにコウモリ怪人は本能的に恐怖したのだろう。
 分が悪いと見るや、その大きな翼を広げ、羽ばたいた。


「――待ってください!」


 彼はそれを逃さず、銃の形にした左手から、イエローの眩い程の光を放った。


『Passioooooooon!!』


「KYUUU!? KYUUUOOOO!?」


『Perfect Combo!』


 イエローの光の直撃を受けたコウモリ怪人。
 ピンク、ブルー、イエローの光がコウモリ怪人を捕らえ、身動きをとれなくしている。
 何かをしようとしているように見えるけど、それも上手くいかないみたい。


「アンコールが残っています。まだ、席を離れぬよう、お願いします」


 彼はそう言うと、


「――ふっ!」


 大きく跳躍し、左足を前に突き出した。
 その左足は、今までよりも一際大きく――虹色に輝いている。
 彼の背中から、虹色の光が溢れ出し、一直線にコウモリ怪人に向かっていく。
 そして、まるで虹色の穂先の大きな槍の様に、


「せめて!」


 彼のキック、はコウモリ怪人の体に大きな穴を開けた。
 コウモリ怪人の体は、爆発したかのように、光の粒子となって消えていく。


「……名刺だけでも」


『LIVE SUCCESS!!』

  ・  ・  ・

「ええと……こういう挨拶って、あまり得意じゃないのだけど」


 今日は、待ちに待った快気祝いの飲み会だ。
 誰のって、それは勿論決まっている。


「……」


 神妙な顔つきで、ビールのジョッキを手に持っているこの人の、だ。
 大体、どうして私が乾杯の挨拶をしなきゃいけないんです?
 誰の快気祝いだと思ってるんですか、全くもう!


「楓さん! いっちょ、カッコイイ所見せてください!」
「ちょっと未央、静かにしなって」
「そ、そうですよ!」


 未成年の後輩達は、ジュースで乾杯。
 お祝い事だもの、こういう時はパーッとやらないと駄目よね。


「……今日は、とっても沢山の人が来てくれました」


 チラリと視線を向けると、彼は部屋を見渡した。
 此処に居るのは、事情を知った人間だけ。
 皆、彼にとても感謝している……勿論、私も。


「と、言うわけで、何か一言お願いしま~す♪」


 そう言って、私はペタンと腰を座布団に下ろし、挨拶の役目をバトンタッチ。


「は……!? あ、いえ、その……!?」


 自分にふられると思っていなかったのか、彼はとっても慌ててる。
 うふふっ、こういう所は、本当に可愛げがありますよね。
 ニコニコと笑う私に向かって、彼は言った。


「……その笑顔には、完敗ですね」


 乾杯と、皆が一斉にグラスを合わせた。
 私は、一人悔しい思いをしたのだけど、どうしてくれましょう。



おわり

ここ2日、非常に楽しゅうございました
おやすみなさい

おつ
終わりか?いつもオチつけるのうまくて感心するわ

ライダーは終わりですね
気が向いたらまた書こうかと思う程度には楽しめました


書きます


武内P「変身ヒロイン、ですか」

武内P「ラブライカのお二人に、そういう趣味があったとは……」

ガチャッ!


アーニャ「ミニャー ザヴート シンデレラ・ホワイト!」ビシッ!


武内P「白をモチーフにした、変身ヒロインですね」


美波「溢れる痴性の泉! シンデレラ・全裸!」ビシッ!


武内P「絶対にツッコミませんよ」

アーニャ「ドーブラエ ウートラ、おはようございます、プロデューサー」

武内P「おはようございます、アナスタシアさん」


美波「溢れる痴性の泉! シンデレラ・全裸!」シャキーン!


アーニャ「どう、ですか? 似合っている、でしょうか?」

武内P「はい。アナスタシアさんの魅力が引き出されているかと」


美波「溢れる痴性の泉! シンデレラ・全裸!」パカッ


武内P「ゴリ押しはやめてください。そして、脚を閉じてください」

美波「どうですか? この格好、似合ってますか?」

武内P「私に聞かないでください」

アーニャ「美波、とっても似合ってます!」

美波「うふふっ、ありがとアーニャちゃん♪」

武内P「アナスタシアさん、新田さんを甘やかさないでください」

アーニャ「イズヴィニーチェ……すみません」

美波「アーニャちゃん……アーニャちゃんが謝ることないわ!」

武内P「ええ、本当に」

美波「聞いてください、プロデューサーさん!」

武内P「聞きましょう、言い訳を」

美波「まだ、変身の途中だったんです!」

武内P「本当ですか?」

アーニャ「ダー。途中も見てもらった方が良いと、そう、思いました」

武内P「……なるほど。まだ、変身の途中だったのですね」

美波「どうしてアーニャちゃんに確認を取ったんですか?」

武内P「当然の結果です」

武内P「しかし……申し訳ありません、新田さん」

美波「? どうして謝るんですか?」

武内P「私は、てっきり別の趣味に付き合わされたと、辟易してしまいました」

美波「もうっ! ひどいですよ、それ!」

アーニャ「途中を見せたがったのは、美波では……?」

美波「プロデューサーさんでも、許しませんよ?」

武内P「何を許さないのか、仰ってください」

武内P「では、今度はちゃんと変身を終えてからにしてください」

美波「待ってください。まだ、この格好について何も聞いてません」

武内P「聞かないでください」

アーニャ「お願いします、プロデューサー。美波が、可哀想です」

武内P「……」


美波「溢れる痴性の泉! シンデレラ・全裸!」ビシッ!


武内P「クレイジーだと、そう、思います」

  ・  ・  ・

武内P「また全裸だったら、ひっぱたく。そう、考えています」

ガチャッ!


アーニャ「ミニャー ザヴート シンデレラ・ホワイト!」ビシッ!


武内P「先程よりも、アクセサリー等が増えていますね」


美波「くるくると回る一輪の花! シンデレラ・クリア!」シャキーン!


武内P「体にサランラップを巻いたら、叩かれないと思いましたか?」

アーニャ「変身、アー、完了、です!」ムフー

武内P「とても可愛らしく、また、凛々しい姿だと思います」

アーニャ「……スパシーバ!///」


美波「くるくると回る一輪の花! シンデレラ・クリア!」シャキーン!


武内P「変化している前口上が、イラッときます」


美波「くるくると回る一輪の花! シンデレラァァァ……クリア!」ズギャーン!


武内P「何故、名乗りをためたのですか?」

美波「どうですか? 私も、変身完了です!」

武内P「変身というか、変態です」

アーニャ「美波は、とっても可愛いです!」

美波「うふふっ、ありがとアーニャちゃん♪」

武内P「本当の感想を言えば、プラネタリウムに連れて行きましょう」

アーニャ「美波は、頭がおかしいです」

美波「アーニャちゃん!?」

武内P「何故、ショックを受けられるのか、私にはわかりません」

美波「聞いてください、プロデューサーさん!」

武内P「聞く価値があるのか、疑問ですが」

美波「サランラップじゃないんです!」

武内P「本当ですか?」

アーニャ「ダー。サランラップではなく、アー、クレラップ、です」

武内P「……なるほど。サランラップでは、無かったと」

美波「やっぱり、私にはサランラップより、クレラップの方が合うかな、って」

武内P「謎のこだわりを見せないでください」

武内P「ですが……申し訳ありません、新田さん」

美波「? どうして謝るんですか?」

武内P「ラップ一枚程度では、全裸と変わりません」

美波「ええっ!? そ、そうでしょうか?」

アーニャ「何回も巻いたら見えなくなると、言っていたような……?」

美波「ごめんなさい、これならいけるって思ったんですけど」

武内P「どこへいこうと言うんですか、貴女は」

武内P「良いですか。次が、最後のチャンスです」

美波「待ってください。まだ、この格好について何も聞いてません」

武内P「ひっぱたきますよ」

アーニャ「お願いします、プロデューサー。美波が、可哀想です」

武内P「……」


美波「くるくると回る一輪の花! シンデレラ・クリア!」シャキーン!

…はらっ

美波「キャアッ!?/// ら、ラップが……!///」


武内P「さっきは全裸でも平気だったのに、何故!?」

  ・  ・  ・

武内P「新田さんは、服を着てくると思いますか?」

アーニャ「ニェート。私は、美波を信じています」ニコッ

武内P「良い笑顔です。ですが、嫌な答えです」

ガチャッ!


美波「オークに捕らわれた騎士のプリンセス! シンデレラ・プリンセス!」ビシッ!


武内P「! 新田さんが、服を!?」


美波「くっ、殺せ!」


武内P「何故!?」

美波「私は、アナタ達になんか屈しないわ!」

武内P「今までで、一番変身ヒロインをしています、新田さん!」

アーニャ「スパシーバ! 美波、とてもカッコイイです!」

美波「くうっ! 駄目よ美波、負けちゃ駄目!」

武内P「頑張ってください!」

アーニャ「ファイトです、美波!」

美波「ああっ、だ、駄目ええええっ♡ 美波、いきますっ♡」

武内P「はい、そこに正座してください」

誤)>アーニャ「スパシーバ! 美波、とてもカッコイイです!」

正)>アーニャ「ハラショー! 美波、とてもカッコイイです!」

武内P「新田さん」

美波「ごめんなさい、プロデューサーさん♡ 私、負けちゃいました♡」

武内P「アナスタシアさん、新田さんのちょっと良い話を」

アーニャ「美波は、私に日本語を教えるため、ロシア語を勉強してます」

美波「あ、アーニャちゃん?」

武内P「成る程。新田さんは、とても優しいですね」

美波「や、やめてください……/// は、恥ずかしいですから///」

武内P「はい、正気に戻られたようですね」

武内P「新田さん、服を着た事は、とても素晴らしいと思いました」

美波「本当ですか?」

武内P「しかし、その後が今日一番で最悪でした」

美波「そ、そんな……!?」

武内P「まず、名乗っている時点で捕まっています」

アーニャ「プロデューサー、美波を責めないでください!」

美波「いいえ、もっと責めてください! もっと!」

武内P「何故、服を着たら言動がひどくなるのですか?」

この世界でミナミィはどんな立ち位置のアイドルなのか非常に気になる

武内P「……やはり、お二人には変身ヒロインは難しいかと」

アーニャ「……イズヴィニーチェ、すみません、時間、とらせてしまって」

美波「気にすることないわ。アーニャちゃん、頑張ったもの!」

武内P「新田さん、貴女は気にしてください」

美波「それに、アーニャちゃんは、いつでも私のヒロインよ♪」ニコッ

アーニャ「美波……スパシーバ!」ニコッ

武内P「……良い、笑顔です」

武内P「それでは、ひっぱたこうと思います」

  ・  ・  ・

武内P「……というわけで、昨日は大変でした」

ちひろ「うふふっ、お疲れ様です」

武内P「もう、二度とあの様な事が無いよう、願っています」

ちひろ「あら? 知らないんですか、プロデューサーさん」

武内P「? 何を……でしょうか?」

ちひろ「プロジェクトの子達が、変身ヒロインの話で盛り上がってる、って」

武内P「!?」

武内P「待ってください、その話は――」


?「ちょっと、本当に私からなの?」

??「大丈夫! しぶりんならいけるって!」

??「凛ちゃん、ファイトです!」

????「リン、応援、しています」

??「一番乗りは任せるわ!」


武内P「……」

ちひろ「五人組……美少女戦士、ですかね?」

武内P「……あのドアが開いて欲しくないと、本気で思います」

ちひろさんのキツイようでキツくない少しだけキツイ美少女ヒロインコスプレみたい…見たくない?

武内P「……」

ガチャッ!


凛「か、駆け抜ける蒼い風! ぷっ、プリンセス・ブルー!」ビシッ!


武内P「……」

凛「……」

武内P「……」

凛「……は、早く次の人――」


バタンッ!


凛「!?」

凛「なんで!? ねえ、どうしてドアを閉めたの!?」

武内P「……」

凛「……!?」

イジメかっ!

凛「……な、何!?」

武内P「いえ……別に」

凛「もう! この状況は何なの!?」

武内P「……」


武内P「――お前一人で立ち向かうつもりか、プリンセス・ブルー」


一同(乗った――!?)


凛「アンタまでふざけないで! バカにしてるの!?」


ガチャッ!

一同「台無しじゃねーか!」

凛「! 皆、来てくれたの!?」

一同「今、乗る!?」


武内P「……やはり、皆さんにはアイドルが一番向いています」



おわり

>>328
見たいので書きます


「えーいっ!」


 今日は、事務所の近くに出たから助かったわ。
 遠い所に出ると、移動が大変で困っちゃうものね。


「悪い心にさようならっ♪ 綺麗な心に、な~れ~♪」


 ステッキを振って、ガシャットモンスターに魔法をかける。
 そうする事によって、悪い心に取り憑かれた物は、元の姿に戻る。
 今回悪い心に取り憑かれていたのは、古い、ぴにゃこら太のぬいぐるみ。
 きっと、元の持ち主に捨てられて、悲しい思いをしていたのだろう。


「アナタも、寂しい思いをしてたのよね」


 私は、ぴにゃこら太のぬいぐるみを抱え上げた。
 少し古くなっているけど、きらりちゃんだったら綺麗に直せるかも。
 事務所に持って帰ってあげよう。


「……」


 かかえあげたぴにゃこら太のぬいぐるみを撫でる。
 私は普段、アイドル事務所で働く、普通の事務員だ。
 名前は、



「……千川さん?」



 千川ちひろ。



「……プロデューサーさん?」



 25歳、魔法少女も、兼業しています。


「あの……」


 まさか、こんな路地裏に誰かが来るとは思わなかった。
 それも、知っている人が現れるだなんて、なんて偶然。


「その、格好は……」


 この人は、私が働く事務所のプロデューサーさんだ。
 大柄で、無表情で、とにかく不器用だけど……凄く、真面目な人。
 そんなプロデューサーさんの、初めて見る表情。
 困惑の上から困惑を塗り固めて、ピクリとも動かなくなるほどメイクしたみたい。



「……」


 その理由は、今の私の格好にある。
 アイドルの子達の衣装よりもフリフリなスカートは、とっても短い。
 ノースリーブで二の腕は見せているのに、胴体はガッチリガード。
 髪型だって、普段のおさげじゃなく、フワフワと不思議な感じに纏まっている。


「……申し訳、ありませんでした」


 プロデューサーさんは、ペコリとお辞儀をすると、私に背を向けて歩き出した。
 心なしか、いや、明らかにその歩調は速い、速すぎる。


「ま、待って! ちょっと待ってください、プロデューサーさん!」


 慌ててその後を追う。
 声に反応して振り返ったプロデューサーさんは、本当に申し訳なさそうに、


「あの、本当に……はい、私は何も見ませんでしたから……」


 私から目を逸らしながら、言った。 

  ・  ・  ・

「私、魔法少女なんです」


 一日の仕事を終え、事務所で二人きりになったタイミングを見計らい、言った。
 今日はこの後誰も此処を訪れる予定は無い。
 鍵もバッチリ締めてある、ぬかりは無い。


「そう……ですか」


 プロデューサーさんは、私の言葉を正面から受け止め、華麗に流した。
 そんな器用な真似、出来るんですね!


「プロデューサーさんも、見たでしょう?」


 私の、魔法少女としての姿を。


「いえ……私は何も、見ませんでした」
「っ……!?」


 頑なすぎる!
 別に、趣味でああいう格好をしてるんじゃないんですからね!?
 変身すると、ああいう格好になっちゃうだけなんですから!


「そんなに、私のあの格好はキツかったですか!? 記憶から消したい程!?」
「いっ、いえ! 少しだけ、その、キツいかなとは思いましたが――」
「いやああああああ! キツいって! ひどすぎるううううう!」
「!? ま、待ってください! ギリ! ギリセーフだと、私は思います!」
「ギリって何ですか! ギリってええええええ!?」
「……!?」


 こんな辱めを受けるだなんて!

ちひろさん×魔法少女=田中ぷにえ
という単細胞な計算式が浮かんでしまった

  ・  ・  ・

「私、魔法女なんです」


 良いわよ、別に。
 私だってね、魔法少女にカテゴリーされるかなー、
と思って魔法少女って言ってただけなんですから。
 少女じゃないなんて、とっくにわかってますよ。


「そう……ですか」


 プロデューサーさんは、私の言葉を正面から受け止め、頷いた。
 それが、少女って言ったことに納得してなかったみたいで、余計に腹が立つ。


「プロデューサーさんも、見たでしょう?」


 私の、魔法女としての滑稽な姿を。


「……はい、見ました」


 初めから、正直に見たって言えば済んだのに。
 気を遣ってくれたのはわかるんですけどね?
 明らかに私に優しくしてましたよ、プロデューサーさん。
 あんな、危険物を扱うような態度って、無いと思います。


「コスプレとかじゃ、ありませんから」
「……」
「アイドルの衣装を着たいとかじゃ、無いですから」
「……」


 バンバン、と机を叩く。


「はっ、はい! 仕方のない事なの、です……よね?」
「はいっ、そうなんです♪」
「……」


 プロデューサーさん、右手を首筋にやって困らないでください。


「変身すると、あの格好になっちゃうんです」


 変身しないと、ガシャットモンスターを綺麗な心に出来ないんです。
 編み込みもほどけるけど、変身を解いたら綺麗に元通りです。


「そう……ですか」
「はい」


 訪れる、沈黙。
 プロデューサーさんは、その沈黙を打ち消すべく、言った。


「それでは……私は帰ります、ね」


 そそくさと立ち上がり、カバンを掴むと早足でドアに向かう。
 一刻も早くこの場を離れたい気持ちが伝わってくる。


「待ってください! なんか……その態度、なんかなんかですよ!」
「千川さん!? あの、仰っている、意味が……!?」


 私は、プロデューサーさんの上着を両手で掴み、その場に引き止めた。
 けれど、プロデューサーさんは上着を引っ張って、それに抵抗する。
 男の人だけあって凄い力で、私はズルズルと引きずられてしまいそうになる。
 だけど、決して、この手を離すわけにはいかない。


「んぐぎぎぎぎ……!」
「千川さん……!? あの、離していただけますか……?」
「待ってくれたら離します!」
「……」


 突然、上着が私の胸に飛び込んできた。
 飛び込んできたのが上着だけという事は……、


「上着を脱ぎ捨ててまで、逃げることないじゃないですか!」
「帰してください! 私を帰してください、千川さん!」


 逃しませんよ、プロデューサーさん!

  ・  ・  ・

「ふーっ……! ふーっ……!」


 この部屋の唯一の出入り口であるドアに背中をつけ、死守。
 ここから一歩も出さないぞ、と睨みつける。


「……わかりました。もう、逃げませんから」


 プロデューサーさんは、観念したようだ。
 さすがに力づくで来られたら勝ち目はないけど、
私に怪我をさせないように気を遣ってくれている。


「一度、座って落ち着きましょう」
「……わかりました」


 一方私は、大暴れをしたから座りたくてたまらなかった。
 だから、プロデューサーさんの提案を受け入れ――


「……っ!」


 ――た、フリをした途端、この人は懲りずに部屋からの脱出を試みた。
 だけど、貴方はそんな器用な演技が出来る人じゃないです。
 お見通しなんですよ、そんな魂胆は!


「かーっ!」


 私は、再度ドアに背中をつけ、今度こそ此処から離れないと誓った。


「……」


 プロデューサーさんは、諦めてトボトボと自分のデスクへ戻っていく。
 その背中が、やけに小さく見えた。


「……千川さんは、どうすれば納得していただけるのですか?」


 椅子に腰掛けながら、プロデューサーさんはため息混じりに言った。


「実際に、私が変身する所を見てもらおうと思います」


 目の前で変身すれば、この人もきちんと理解するだろう。
 好きで、あの格好をしているわけではない、と。


「……わかりました」


 良しっ!
 今、わかりました、って言いましたよね!?
 やっぱり今の無しって、駄目ですからね!?


「それじゃあ、耳を塞いでください」
「はい? あの……何故、耳を?」


 そんなの、決まってるじゃないですか。


「さすがに、変身する時の言葉を聞かれるのは……恥ずかしいですから」


 あれを聞かれたら、私は生きていけない。
 どうして魔法少女が変身する時は、ああなのだろう。
 本気で仕事している時の、菜々さんよりもキツいと思う。


「……わかりました」


 私のそんな思いを感じ取ったのか、プロデューサーさんは素直に耳を塞いだ。
 一刻も早く帰りたい、という願いが、この人の行動を迅速にさせている。


「それじゃあ……いきますね」


 魔法のステッキを取り出し、天にかざした。


「リリカル♪ マジカル♪ シンデレラ♪」


 キラキラと、魔法のステッキから光が溢れ私の体に降り注ぐ。
 その光はやがて全身を包み込み、事務員の私を魔法少女に変えていく。
 あっ、魔法女でしたね、すみませんね。


「輝く世界の魔法で~♪」


 そう言えば、私が変身してる姿を見られるのって初めて。
 人から見たら、どんな風に映ってるのかしら。
 あとで、プロデューサーさんに聞いてみよう、っと。


「プリンセスにな~れ~♪」


 あっ、今、髪型が変わった。
 今までそんなに意識してなかったけど、
一回髪がほどけてセットしなおされるまでほとんど一瞬なのね。
 こう、しゃらら~ん、ぽんっ、って感じ。
 ……あ、終わった。


「魔法少女、マジカルチッヒ♪」


 これも、今まで言ってた癖で、変身した後は言わないと気持ち悪い。
 本当、耳を塞いでるように言って、良かった。


「アナタのハートに、ログインボーナスっ♪」


 気合で、変身後の決めポーズを省略。
 いつもの、キャルンとしたポーズを見られたら、私は死ぬ。


「……――さあ、どうでした!? 本当に変身したでしょう!?」


 どうでしたか!? 見ましたよね!? 私が変身したのを!


「……!」


 あらあら、まあまあ。


「……なんで目をつぶってるんですかああああああ!?」

高垣さんはアルコールを消防車のようにぶっ放つ魔法少女になってそう


「プロデューサーさああああああん!?」


 耳を塞ぎ、目を瞑るプロデューサーさんの体をガクガクと揺する。
 すると、プロデューサーさんはうっすらと警戒しながら目を開けた。


「……終わりましたか?」
「じゃ、ないですよ! なんで目をつぶっちゃったんですか!?」


 目をつぶってたら、変身してるかわからないじゃないですか!
 見てくださいよ、この格好!
 完全に変身し損じゃないですか! 何だ、変身し損って!


「……手に、持たれていたステッキから光が溢れ……」
「眩しかった、とでも!? そんなに強い光じゃなかったでしょう!?」
「その……」


 プロデューサーさんが、言いにくそうに口ごもった。
 ハッキリ仰ってください!
 見るって約束したのに、男らしくありませんよ!



「突然……千川さんが、全裸になったので……」



 私は、掴んでいたプロデューサーさんの服から手を離した。


「……」


 そして、ツカツカと入り口のドアへ向かう。


「あの……千川さん?」


 ドアの前にたどり着いたら、振り返り、ペコリとお辞儀。


「お先に失礼します」


 それだけ言って、ドアを壊さんばかりに勢い良く開け、部屋から脱出。
 ドアを閉める時間すら惜しんで、


「……見られた――!」


 私は逃げ出した。

かわいい

  ・  ・  ・

「うーっ!」


 夜の闇に紛れ、私はビルの谷間を飛び、すり抜けていく。
 一刻も早く事務所から離れたい、そんな思いを抱きながら。
 誰かに見つかる心配はない。
 だって、これでも魔法少女ですから。


「……見られたぁ……!」


 路地裏に着地し、一人呟いた。
 まさか、変身する瞬間、他の人から見たら裸になっているとは思わなかった。
 知らなかったけど……裸の私を見て、って言ってたようなものじゃない!


「明日……どんな顔で出社すれば良いの……」


 トボトボと、路地裏をあてもなく歩く。
 当然、答えが返ってくる筈もない。


「……」


 あの曲がり角を曲がったら、変身を解こう。
 変身を解いたら、魔法も解けてしまう。
 だから、見つからない所で、元の姿に戻らないと――



「変身~♪」



 ――と、思い、曲がった先で、光が溢れた。


「……」


 ああ……あんな感じで、一回全裸になるんですね。
 ポンッ、ポンッって感じに服が変わって……はー、キャルリンッって髪型が。
 これは……確かに、突然見せられたらビックリしちゃいますよね、わかります。


「魔法少女――……っ!?」



 本当……見なかった事にして帰りたいです……。



おわり

寝ます
おやすみなさい

最後は誰なんだ……武内P?(適当)
おつ


25歳児か安部菜々さんじゅうななさいかもしれない

書きます


武内P「結構願望、ですか」

未央「うんうん、プロデューサーにもあるのかなー、って」

武内P「あの……結婚願望ではなく、ですか?」

卯月「あるんですか?」

武内P「いえ、今は仕事が恋人という感じですので……」

凛「そう言うと思った」

武内P「……」

未央「だからさ、ああしたいー、とか、こうしたいー、とか」

卯月「そういう、願望みたいなものは無いのかなぁ、って」

武内P「結構、というのは?」

凛「程度を表してるんだよ。結構なレベルの、って意味」

武内P「はぁ……」

武内P「私の、結構なレベルの願望……」

未央・卯月・凛「……」

未央「あっ、そうだ。アイドル関係は言わなくていいから」

武内P「何故、でしょうか?」

卯月「どういう答えが返ってくるか、なんとなくわかりますから」

武内P「……」

凛「だから、それ以外を言ってみてよ」

武内P「……」

武内P「アイドルに関する以外の、私の結構な願望……」

未央・卯月・凛「……」

武内P「……」

未央「さあさあ、恥ずかしがらずに言ってみなってー!」

武内P「……」

卯月「いくつでも良いですよ! 夢は多いほうが素敵ですし♪」

武内P「……」

凛「ほら、早く言いなよ」

武内P「……」

武内P「無い、ですね」

未央・卯月・凛「!?」

未央「な、無いって事は無いんじゃない!?」

武内P「結構なレベル、と限定した場合……思い当たりませんでした」

卯月「じゃ、じゃあ! 結構よりちょっと下レベルなら!?」

武内P「晩御飯は、カレーが良いな……ですかね」

凛「結構のレベルも低すぎる!」

武内P「そ、そうですか? では……ビーフカレー、で」

未央「好きなカレー食べなよ!」

武内P「はい。そうしようと、思います」ニコリ

未央・卯月・凛「良い笑顔!」

未央「プロデューサーって、欲は無いの!?」

武内P「いえ、人並みにあると思いますが……」

卯月「その人並みのレベルがおかしいですよ!?」

武内P「私には、人並みの幸せは……難しいかもしれませんね」

凛「そういう事を言ってるんじゃないから!」

武内P「私は、皆さんの笑顔が見られるだけで、十分です」

未央・卯月・凛「……!」ジーン!

未央「……って、なんか感動してる場合じゃないよこれ!」

卯月・凛「!」コクコク

未央「えーっと、じゃあほら! 彼女欲しいとかは!?」

武内P「今は、仕事が恋人ですから」

卯月「いつか! 今じゃなくても、いつか欲しいとか!」

武内P「そう、ですね……はい、いつかは」

凛「駄目。なんか、全然欲しそうじゃない」

武内P「……」

未央・卯月・凛「……」

未央「結婚! 結婚願望は!?」

武内P「今は、仕事が恋人ですから」

卯月「それは聞きました! お見合いとか、どうです!?」

武内P「そう、ですね……はい、いつかは」

凛「駄目。絶対しない時の言い方してる」

武内P「……」

未央・卯月・凛「……」

未央「出世! 今よりも、偉くなりたいとか!」

武内P「それは……考えたこともありませんでした」

卯月「大きなプロジェクトも担当してるし、すぐ出世しそうです!」

武内P「そう、ですね……はい、いつかは」

凛「駄目。私には現場が一番です、って断りそう」

武内P「……」

未央・卯月・凛「……」

未央「家が欲しい!」

武内P「帰る機会が、あまり無いので……」

卯月「車が欲しい!」

武内P「私用で使う機会が、あまり無いので……」

凛「休みが欲しい!」

武内P「皆さんの笑顔を見る機会が、減ってしまうので……」

未央・卯月・凛「……!」

武内P「……」

未央「御両親に、親孝行!」

武内P「孫の顔を見せるのが、一番の親孝行だと……」

卯月「じゃ、じゃあ、おじいちゃんおばあちゃん孝行!」

武内P「ひ孫の顔を見せるのが、一番の孝行だと……」

凛「駄目。親族からも、なんだか諦められてる感じがする」

武内P「……」

未央・卯月・凛「……!」

未央「じゃ、じゃあ……アイドル関係以外で、一番の願望は!?」

卯月「それです、未央ちゃん!」

凛「うん、それなら個人的な、一番の願望が聞ける」

武内P「晩御飯は、ビーフカレーが良い、ですね」

卯月「未央ちゃん! 時間を無駄にしないでください!」

凛「見損なったよ、未央。しっかりしてよね」

未央「なんで私が悪い感じになるの!?」

武内P「……」

未央「じゃ、じゃあ……お酒!」

武内P「飲みすぎては仕事に差し支えますから、たしなむ程度で……」

卯月「それなら……アイドル関係以外の趣味、とか」

武内P「ありません」

凛「即答しないで。……待って、考えるから」

武内P「あの……あまり、無理はなさらず」

凛「何か……そう、欲しいものとかないの!?」

武内P「欲しいもの……ですか?」

未央・卯月・凛「!」

未央「そう! 欲しいもの! それも、結構なレベルの!」

武内P「欲しいもの……」

卯月「アイドル関連は駄目ですからね!?」

武内P「私の、結構なレベルのほしいもの……」

凛「兎に角言ってみて。でないと、先に進めない」

武内P「……平和で、穏やかな日常、ですね」

未央・卯月・凛「そういうのじゃない!」

武内P「……!?」

未央「何!? そんなのを欲しがる程の日常なの!?」

武内P「い、いえ……ですが、とても大事な事だと思うのですが」

卯月「それが結構なレベルって、戦場にでも住んでるんですか!?」

武内P「芸能界は、戦場とも言いますし……!」

凛「上手いこと言って、誤魔化さないで」

武内P「しかし……思い当たるものが、平和で、穏やかな日常しか……!」

未央・卯月・凛「……!」

未央「大体さ、プロデューサーは欲が無さ過ぎ!」

武内P「……自分では、よくわかりません」

卯月「もっと、素直になってください!」

武内P「素直に……ですか?」

凛「一番ほしいものが平和で穏やかな日常って、おかしいから!」

武内P「……」

未央・卯月・凛「……!」

未央「今は悪魔が微笑む時代だよ!? 笑っていこう!?」ニヤァ

武内P「その笑顔は、アイドルのものとしては不適切です!」

卯月「ありますよね? 人には言えない願望とか」

武内P「ありません。私は、プロデューサーですから」

凛「誤魔化さないで。あるでしょ、そういうのの一つや二つ」

未央・卯月・凛「言って」

武内P「……」


武内P「仕事に集中したいので、邪魔しないでください」




おわり

>>349レスした後誤字に気付いたので、やり直します


武内P「結婚願望、ですか」

武内P「そう、でうね……」

CPアイドル達「……」

武内P「無くは、無いですね」

CPアイドル達「!」

…ガチャッ

武内P「あの……何故、鍵を?」

CPアイドル達「なんとなく」

武内P「……」

未央「したいと、思ってるんだ?」

武内P「はい、いずれは」

卯月「お相手は、居るんですか?」

武内P「今は、仕事が恋人ですから」

凛「ふーん。まあ、そうだと思ったけど」

武内P「……?」

CPアイドル達「……」

美波「体の相性って、大事ですよね」スルスルッ

武内P「新田さん、服を脱がないでください」

蘭子「我が友よ、その……お嫁さんの実家が、遠くても……?」

武内P「問題無いと、そう思います」

アーニャ「ダヴァイッッ!!」

武内P「何故、両手を広げているのですか、アナスタシアさん?」

武内P「……あの……皆さん……?」

CPアイドル達「……」

智絵里「見捨てたりは……」

武内P「私の方が、見捨てられそうかと……」

かな子「甘い物、好きですよね―?」

武内P「はい。食には関心があります」

杏「家事とかさ、分担するのが良いよねー」

武内P「それに関しては、はい、問題ないと思います」

CPアイドル達「……」

武内P「……?」

きらり「Pちゃんは~、おっきぃ子はダメダメ……?」

武内P「いえ、特に気にはしません」

莉嘉「はーい! 歳の差とか、オッケーなカンジ?☆」

武内P「はい、お相手の方が気にしないようでしたら」

みりあ「ねえねえ、子供はいっぱいがいい?」

武内P「それは、話し合いで決めるでしょうね」

CPアイドル達「……」

武内P「……」

みく「ネコチャンを飼ったりは、どう思うにゃ?」

武内P「そうですね、それも、良いと思います」

李衣菜「ギターの練習とかしても、大丈夫ですか?」

武内P「そういう趣味がおありでしたら、防音室も検討します」

CPアイドル達「……!」

武内P「あの……皆さん?」


ドンドンッ! ドンドンッ!


武内P「!?」

ドンドンッ! ドンドンッ!


武内P「鍵がかかっていて、入れないようですが……」

未央「入れない? 何のこと?」

武内P「物凄い勢いでドアが叩かれていますよ!?」

卯月「そうですか? 私、何も聞こえないですよ?」

武内P「!?」


ドンドンッ! ドンドンッ!

「カリスマ―!★ カリスマ―!★」


凛「うぶっふ! 鳴き声じゃないんだから……!」

武内P「やはり、聞こえていますよね!?」

ドンドンッ! ドンドンッ!

「あー、アタシ結婚願望チョーあるわー!★ つれーわー!★」


美波「でも、プロデューサーさんも結婚願望あったんですね」

武内P「それは、まあ……あの、開けてあげては……」


ドンドンッ! ドンドンッ!

「こう見えて、家事とか得意だし★ カリスマ主婦とか、良くない?★」


蘭子「封印を解いてはならない!」

武内P「ですが、あの……ドアが壊れてしまいそうで……」


「あの……混ぜて?」


アーニャ「ズヴィズダ、無くなりました。もう、大丈夫です」

武内P「そう……ですか」

武内P「しかし……何故、私の結婚願望の話を?」

コンコン


智絵里「その……な、なんとなくです……///」

武内P「はぁ……なんとなく、ですか」


コンコン


かな子「和食って、結構お砂糖使うんですよねー」

武内P「……そうですね。気をつけないと、いけないと思います」


コンコン


杏「杏、ゴハンはテキトーでいいよー」

武内P「いえ、栄養バランスを考え、しっかりと食事は……」


コンコン


武内P「あの……開けてあげませんか!?」

CPアイドル達「……」フルフル

きらり「うゅ……やっぱり、美嘉ちゃんみたいな子が良いにぃ……?」

武内P「いえ、諸星さんも、魅力的な方だと思います」


コンコン


莉嘉「あっ、でもそれだと、お義兄ちゃん☆ ってPくんの事呼べるねっ☆」

武内P「あの……何の、話でしょうか?」


コンコン


みりあ「あのねあのね、そういうプレイでも、みりあは平気だよ?」

武内P「あの! 本当に何の話をしているんですか!?」


コンコンコンコンコンコンコン


武内P「皆さん、開けてあげましょう!?」

CPアイドル達「……」フルフル

武内P「ですが、あまりに不憫すぎます!」


コンコンコンコンコンコンコンコン


みく「Pチャン、ネコチャンの名前はどういう風にきめる?」

武内P「大事な家族の一員ですから、慎重に……スルーですか!?」


コンコンコンコンコンコンコンコン


李衣菜「友達とか呼んでも、良いですか!?」

武内P「その時は、おもてなしをしないといけませんね……あの、ですから!」


コンコンコンコンコンコンコンコン


武内P「っ……! 今、開けますから!」

CPアイドル達「!?」

ガチャリ!

武内P「鍵を開けたので、もうドアを叩くのはおやめ――」


ガチャッ


楓「おはようございま――」

武内P「……」


バタンッ…ガチャリ!


武内P「誰も、居ませんでした」

CPアイドル達「……」


コンコンコンコンコンコンコンコン


「ドアがおーぷんしなくて、もぉーぷんぷんです」


武内P「帰ってください! お願いしますから!」

武内P「あの……何故、皆さんそこまで……!?」

CPアイドル達「……」

武内P「私に結婚願望があるのが、皆さんに関係があるとは……」

CPアイドル達「……」

ちひろ「優良物件なんです」

武内P「……千川さん?」

CPアイドル達「……」コクコク

武内P「……皆さん?」

ちひろ「プロデューサーさんは、自分がどう思われると考えてますか?」

武内P「その……女性から見て、でしょうか?」

ちひろ「はい」

武内P「……仕事人間の、つまらない男、かと」

CPアイドル達「そんな事ありません!」

武内P「!?」

ちひろ「そんな事ないですよ、プロデューサーさん」

武内P「……そう、でしょうか」

未央「プロデューサー、一生懸命でカッコイイよ!」

武内P「それは……必死なだけです」

卯月「頑張ってる姿を見て、こっちも頑張らなきゃ、って!」

武内P「それは……皆さん自身の、力です」

凛「目を離さないでくれるって、言ったよね」

武内P「それは……はい、確かにお約束しました」

美波「夜も、とっても頑張ってくれそうです♡」

武内P「それは……はい、私に出来る限り――」

CPアイドル達「……///」

武内P「――いえ! あの、何を言わせるんですか!?」

蘭子「言の葉を理解する、魂の同胞!」

武内P「それは……はい、とても大事で、必要でしたので」

アーニャ「ハラショー! ロシア語も、その調子です!」

武内P「それは……待ってください、あの、そこまでは!?」

智絵里「浮気しなさそうで……もう、会話の無い食卓は……」

武内P「それは……あの、何と言って良いか、わかりません」

杏「五分だ五分だと言うけどさ、キューイチでやってくれそうだよね~」

武内P「それは……して、しまいそうです」

かな子「ケーキ美味しい~♪」

武内P「好きなだけ食べていて欲しいと、そう思います」

きらり「Pちゃんおっきぃから、きらりも普通の女の子みたいだにぃ~☆」

武内P「それは……他にも、背の高い男性はいます」

莉嘉「Pくん、なんだかんだでチョー優しいもん!☆」

武内P「それは……そう、でしょうか?」

みりあ「うんうん! あのねあのね、それって、とっても素敵だと思うな~!」

武内P「それは……いえ、それこそ、大勢居ると思います」

みく「違うにゃ! ストライキしたみく達を許すなんて、普通は出来ないよ!」

武内P「それは……仏の顔も三度まで、と言いますから」

みく「待って、あと二回何かやったらまずいの!?」

武内P「……」

李衣菜「何にせよ、プロデューサーはロックなんですよ!」

武内P「それは……自分では、よくわかりません」

ちひろ「アイドルの子達を見てばっかりですからね」

武内P「……千川さん?」

ちひろ「もっと、自分にも目を向けたら良いと思いますよ」

CPアイドル達「……」ウンウン

武内P「皆さん……」

ちひろ「そんな、自分に目を向けないプロデューサーさんだからこそ……」

武内P「千川さん」

ちひろ「滅茶苦茶お金溜め込んでそうだな、って思うんです」

武内P「千川さん?」

CPアイドル達「……」ウンウン

武内P「皆さん?」

ちひろ「年収、おいくらですか?」

CPアイドル達「……」

武内P「……」

武内P「……皆さんの思い、伝わってきました」

CPアイドル達「……」

武内P「確かに、私は今まで自分には目を向けてきませんでした」

ちひろ「貯金、おいくらですか?」

武内P「これからは、身の振り方を考えようと……そう、思いました」

CPアイドル達「はいっ!」

武内P「良い、笑顔です」


武内P「恋人である仕事と、このまま結婚します」



おわり

次は、ロボ、SF、魔法少女、VSのどれか書きます
寝ます
おやすみなさい


カリスマー!★カリスマー!★でふふってなった

前も書いたけど毎度オチが素晴らしい

前降りからのオチが毎度きれい

割合大人なこと言うみりあちゃんに興奮した


「魔法少女、マジカルチッヒ♪」


 変身後の、決め台詞。
 言わなければなんとなく気持ち悪くなっちゃうのよね。
 それに……言わないと、怒られちゃうもの。



「魔法少女、プリティーミッシー♪」



 専務に。



「アナタのハートに、ログインボーナスっ♪」
「課金もしないと、解散させちゃうんだからっ♪」 


 二人揃っての、決めポーズがビシリと決まった。
 今までは一人でやっていたから綺麗に出来るかわからなかったけど、
こういうのって案外ノリで出来るものなのね。
 身長差があるから背中合わせにはしなかったけど、それが良かった。
 私がちょっと前、専務がそのすぐ後ろに控える配置。


「さあ、覚悟しなさい! ガシャットモンスター!」


 魔法のステッキをビシリと突きつけ、言ってやる。
 それにグルルと唸り声をあげて抵抗しようとするガシャットモンスター。


「歯向かうつもりか? 理解出来ないな」


 専務が……いや、ミッシーがツインテールを揺らしながら言った。
 その姿は正に魔法少女、いや、


「行くわよ、ミッシー!」
「当然だ、チッヒ」


 美少女戦士……でもなく、


「三分で片を付ける。私は、あまり気が長い方ではない」


 歴戦の勇士。

織田nonかよwww

  ・  ・  ・

「……ふん、他愛ない」


 ミッシーがツインテールを一房かき上げ、言った。
 ガシャットモンスターは既に元に戻っており、路地裏にポテリと転がっている。
 今日のモンスターの元の姿は、ちいさな女の子用の人形。
 髪はグシャグシャで、お洋服も汚れてしまっている。


「……」


 ミッシーはその人形にツカツカと歩み寄ると、両手で優しく抱き上げた。
 その姿は、戦っている時の姿とはまるで別人。


「無様だな。見るに耐えないとはこの事か」


 とても乱暴な言い方だけど、私はそれに口を挟まない。
 だって、ミッシーは――魔法少女だから。


「キミには、以前よりももっと輝いてもらう。成功は私が保証しよう」


 そう言ったミッシーの姿は、自愛に満ちていた。


「うふふ、専務ったら、お優しいんですね♪」


 職場では、こんな軽口を言ったら怒られてしまう。
 だけど、今の私達は大切なパートナーだ。


「チッヒ。今の私の事は、ミッシーと呼びなさいと言ったでしょう」
「あっ、そうでした……ごめんね、ミッシー」


 ついうっかり、専務とよんでしまう事もあるけれど。
 舌をペロリと出し、両手を合わせてミッシーに謝る。



「……・!?」



 その視線の先に……また、プロデューサーさんが居た。

誤)>そう言ったミッシーの姿は、自愛に満ちていた。

正)>そう言ったミッシーの姿は、慈愛に満ちていた。


「? どうしたチッヒ、顔色が悪いぞ」
「……!?」


 ミッシーに指摘されたが、今はそれどころではない。
 前回は、何も無かったかのように振る舞い、事なきを得た。
 だけど、今回は二度目。
 それも……私だけでなく、ミッシーの姿も見られた。


「!? まさか、今の戦いで怪我を!?」


 ハッキリ言おう。
 ミッシーの見た目は、ガチでキツい。
 薄桃色に染まったツインテール、可愛らしいフリフリのドレス。
 手に持っている魔法のステッキの先端には、大きな星。
 それを妙齢の、高身長のきつい顔立ちの女性がしているのだ。


「……!?」


 そうですよね、驚いて目を見開きますよね。
 今は大分慣れましたけど……私も、最初は驚きました。


「チッヒ、見せてみなさい」
「……」


 心配そうに私に歩み寄る専務の背面を指差し、告げた。


「ミッシー、見られてるわ」
「? 何にだ」


 ガシャットモンスターは倒したはずだ……と、つぶやきながらミッシーが振り向く。
 そして、問題の人物の姿を確認し、全身をビクリと震わせた。


「……」
「……」
「……」


 流れる、沈黙。

中の人は新妻魔女のシャイニールミナスだぞ


 誰かが、口を開かなければならない。
 けれど、誰もが言葉を失っている。
 こういう時にパパッと魔法で解決出来れば、と思う。
 そんなに便利じゃないんですよ、魔法って。


「……ふむ、見られてしまったか」


 ミッシーが、思いの外冷静につぶやく。
 さすがの人生経験か、前にもこういった事があったのかしら?


「その……申し訳、ありません」


 プロデューサーさんが、理由無く謝罪する。
 この人が謝る必要は無いのに、とても綺麗なお辞儀。
 その声が少し震えていたのは、気のせいじゃないと思う。


「気にする事はない。だが、私も初めての経験に戸惑っている」


 凄いです、専務!
 初めて変身中の姿を見られた時の私とは、落ち着き方が違います!
 やっぱり、偉くなる人っていうのはこういう所が違うのかしら。


「専務――」


「プリティイイイッ、バインドッ!!」


 路地裏に、プリティーとはかけ離れた裂帛の気合が響いた。


「うおおおおっ!?」


 ミッシーの魔法のステッキの先端から放たれた光が、
プロデューサーさんの体に絡みつき、その体を拘束する。
 突然の事に戸惑い、プロデューサーさんは叫び声を上げるが、


「静かにしなさい。今の私は、何をするかわからない」


 顔を真っ赤にし、頬をヒクヒクと引きつらせるミッシーが、
魔法のステッキを首筋に突きつけ、強引に中断させた。

  ・  ・  ・

「……」


 専務の執務室。
 私達三人は、それぞれが居心地の悪さを感じながら座っていた。
 専務は、自分のデスクに。
 私とプロデューサーさんは、その前にあるソファーに対面で。


「……」


 コチリ、コチリと、部屋に置かれていた時計の針の音が響く。
 この空間は、なんというか……とても心臓に悪い。


「……!」


 主に、プロデューサーさんの。


「――さて、私の言いたい事は、わかるな?」


 専務が、口火を切る。
 話をするために、魔法で彼を拘束し、ここまで連れてきたのだ。


「……何の、話でしょうか?」


 大根役者にも程がある。
 けれど、プロデューサーさんは、専務の望む選択を選んだ。
 それに満足したのか、専務は満足そうに頷く。


「よろしい。私がプリティーミッシーだと言う事は、忘れたまえ」
「……プリティーミッシー、ですか?」
「何だ。何か、問題でも?」
「いえ、なんでも……そうですか、プリティーですか……」


 プリティーという単語に釈然としなさそうなプロデューサーさんの様子を見て、


「うっふふ!」


 私は、笑ってしまった。


「どうした、何か可笑しいことでも?」


 すかさず、専務が私の笑いの理由を問うてくる。


「いっ、いえ! 何でもないです!」


 そうは言ったものの、彼女の視線が私から外れる事は無い。


「……」
「……」


 絡み合う視線。
 私達魔法少女ユニットは、今までで最大のピンチを迎えていた。


「……」


 そんな視界の端で、プロデューサーさんが体を小さくしているのが見えた。
 中腰の姿勢で、ゆっくりと、しかし一歩一歩確実に出入り口であるドアに向かっている。


「――んー! んー!」
「!? 離してください! 離してください、千川さん!」


 私は、そんなプロデューサーさんに駆け寄り、腰に抱きついた。
 上着を掴むだけでは逃げられてしまう。


「痛っ!? あの、爪が! 爪が突き立てられて!」
「んー! んー!」


 今の私に出来る、マジカルでも、プリティーでもない、全力の拘束。
 と言うか、普通、今のタイミングで逃げようとします!?


「……」


 専務は、そんな暴れる私達の様子を冷静に見つめていた。
 その目尻にうっすら涙が浮かんでいるのは、見なかったことにしよう。

  ・  ・  ・

「……兎に角、今日は何も無かった。良いですね?」


 絞り出すような声。


「「……はい」」


 疲れきった声。
 暴れたせいで私の髪は乱れ、プロデューサーさんはシャツのボタンが二つ程飛んだ。
 痛み分けというには、痛みが大きすぎた。


「……」


 私は、魔法少女マジカルチッヒという事が知られ、変身中の全裸も見られた。


「……」


 専務は、魔法少女プティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。


「……」


 プロデューサーさんは、大きな秘密を二つ抱える事となった。
 魔法少女二人の正体を知るのは、どんな気持ちなのだろう。
 気にはなるが、それを聞く勇気は私にはない。


「それでは……私は、これで失礼します」


 今度は、誰もプロデューサーさんを止めない。
 そして、私もそれに続こうと、ソファーから立ち上がり――


「待ちたまえ。チッヒ、キミにはまだ話がある」
「……!?」


 ――かけた時、専務……いや、ミッシーがそれを止めた。
 多分、いや、絶対……プリティーで笑ったことを根に持ってるんだわ。
 ああ……今日中に帰れるかしら、私。

もっちー辺りがやらかしてもおかしくないネタだなぁ

誤)> 専務は、魔法少女プティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。

正)> 専務は、魔法少女プリティーミッシーの姿を見られただけで、大ダメージだ。

  ・  ・  ・

「……」


 私は、二人の魔法……少女、はい、魔法少女の正体を知ってしまった。
 それは、不幸な事故であり、タイミングが悪かったとしか言いようがない。
 今後は、迂闊に路地裏に入るのは避けるべきだろう。


「……」


 上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。
 シャツのボタンが二つ外れているので、風が服と少し寒い。


「……」


 彼女達は、平和を守るために戦っているのだ。
 ……そう、


「――笑顔のために」


 右のポケットからスマートフォンを取り出す。
 そして、ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
 流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。


 ――3――4――6!



『LIVE――』



 スマートフォンから、二人分の女性の声が聴こえる。
 そして、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、



「変身ッ!」



 私も、私の戦いに身を投じるため、変身した。



『――START!』



おわり

誤)> シャツのボタンが二つ外れているので、風が服と少し寒い。

正)> シャツのボタンが二つ外れているので、風が吹くと少し寒い。

眠気で誤字が多すぎるので寝ます
おやすみなさい

同じ世界線だったかw

繋がった

子供向け映画の抱きあわせみたいだ

>>410
戦隊のメンバーが決まったらやる予定です


申し訳ない
昔、自分の書いたものを読んだら止まらなくなりました
結構な長編なので、今日は書くかわからないです

上様期待

甘いの書きます


「……」


 シンデレラプロジェクトの、プロジェクトルーム。
 彼は、自分のデスクに座りながら眠っている。
 きっと、ちひろさんがかけてくれたのよね、あの毛布。


「……」


 起こさないように、そっとドアを閉める。
 だって、この人が居眠りをするだなんて、本当に珍しいんですもの。
 ドアの開け閉めの音で起こしちゃうだなんて、勿体無いわよね。


「……うふふっ」


 どうやって驚かせちゃおうかしら。
 無難に、大きな声でワッと?
 それとも、毛布をバサッと取って?
 ああ、ダメ……考えただけで、ワクワクしちゃうわ!


「……」


 すぅすぅと寝息を立てる彼に、忍び足で近寄る。
 ぐるりと回り込んで、すぐ、手を触れられる所までたどり着いた。


「……」


 彼は、まだ起きない。
 


「……」


 本当に、よく眠ってるわね。
 もしかして、アナタの目付きが良くないのって、
そうやって寝ててちゃんとベッドで寝てないから?
 だとしたら、ちゃんと寝たらどんな顔になるのかしら。
 目が、キラキラしちゃったりするの?


「……」


 つい、と顔を近づけて、彼の寝顔を間近で観察する。
 いつもの、眉間により気味な皺は無く、まるで子供みたいな寝顔。
 それがとっても可愛らしくて、母性本能をくすぐられてしまう。
 あっ、くすぐって起こすのも面白そう!


「……」


 くすぐったら、どういう顔で笑うのかしら。
 アナタの大笑いする姿なんて、見たことがないもの。
 穏やかな笑みか、噛み殺すような笑みだけ。
 大口を開けて笑ったら……低い声も相まって、悪役みたいになっちゃうかしら?


「……」


 彼が、自分では気付いてないだろう頭頂部の寝癖。
 それを、人差し指でピコピコと揺らしてみる。
 それでも、彼は起きない。


「……」


 いつもだったら、この段階で起きるんですけど、ね。
 これはもう、もっとイタズラする他に無いと思うんです。


「……」


 デスクの横にしゃがみこんで、寝ている彼を目線を合わせる。
 と言っても、目を開けてるのは私だけ。
 一方的に、私がこの人を観察している。


「……」


 じい、と睨みつけてみる。
 ぷん、と怒った顔をしてみる。
 しゅん、と悲しい顔をしてみる。


「……」


 だけど、彼は目を開けない。
 それは当然よね、だって、寝てるんですもの。
 だから、ふにゃっ、と変な顔をしてみる。


「……」


 ――が、すぐにやめた。
 寝たふりをしているんじゃないかと思ったけど、そうじゃないみたい。
 私のあんな顔を見たら、この人は絶対に反応を示す。
 すぐにやめたのは……もし、あの顔をしている時に目を覚まされたら、
それこそどんな顔をしていいかわからなくなっちゃうから。


「……」


 高垣楓の、貴重な変顔を見逃しちゃいましたね。
 ちょっとアレな、レアな顔でしたよ。


「……」


 どうしたら、この人は驚くかしら。
 せっかくだから、この状況じゃないと出来ない驚かせ方をしたいわ。
 ワッと驚かせるのは、いつだって出来るものね。
 ……やった事は、無いけれど。


「……」


 そっと、彼の肩にかかっている毛布をはいでいく。
 思いもよらず、その毛布の手触りが良くて、ホゥ、となった。
 大柄な彼のためか、毛布は大きく、かなりの余裕があった。


「……」


 お邪魔しま~す。
 と、私は言葉に出さずに彼に断りを入れた。
 口の動きはちゃんと「お邪魔します」としてたんだし、見てないこの人が悪い。
 アイドルを見るのがプロデューサーの仕事でしょう?
 居眠りしてないで、仕事してください!


「……」


 座る彼の隣にしゃがみ、同じ毛布にくるまっている。
 だけど、離れていてはせっかくの毛布が台無しだ。
 だって、私と貴方の距離が空いてたら、冷たい空気が入り込んじゃうから。


「……」


 そうならない様、彼に体を密着させる。
 スーツ越しに感じる、体温。
 近づく事で、より鮮明に聞こえるようになった彼の寝息。


「……」


 まだ、彼は目を覚まさない。


「……」


 こんなに無防備で、この人は大丈夫なのかしら。
 もしも私が悪い人だったら、大変な事になってましたよ。
 わかってますか?


「……」


 間近で睨みつけても、彼の反応は無い。
 その事が、ちょっぴり寂しい。
 だって、この人は私が何かしたら、必ず反応してくれるから。
 心からの賞賛や、諦めたようなため息。
 そして、極々稀にだけど……お説教も。


「……」


 つん、と人差し指で彼の鼻をつついてみる。
 だけど、本当によく眠っているのか、反応は無い。
 つんつん、と二回つつく。
 それでも、彼は眠ったまま。


「……」


 鼻をつまむのは……それは、ちょっと可哀想よね。
 絶対驚くとは思うんだけど、まだ、もうちょっと彼を眺めていよう。
 不器用で、真っすぐで、とっても可愛らしい寝顔の彼を。


「……」


 カチリ、コチリと時計の針が時間が進んでいるのを告げている。
 それなのに、何故かこの穏やかな時間は、止まっているように思える。


「……」


 だけど、そろそろ彼を起こしてあげなくっちゃ。
 こんな体勢で寝てたら体が痛くなっちゃうし、風邪を引いちゃうもの。
 それに、イタズラをして起こすと決めてたし、ね。


「うふふっ」


 思わず零れた笑い声。
 それが、零れ落ちないように口を両手で塞いだ。
 あっ、良い事を思いついちゃった。


「……」


 そっと、彼の横顔に顔を近づけていく。
 普通は立場が逆だけど、私はしゃがんで、座ってるから逆でも良いですよね。
 ……ん? なんだかおかしいような、そうでもないような?


「……」


 居眠りをしちゃうような王子様には、お仕置きです。
 そう思う私は、今、どんな顔をしているのだろうか。
 わからないけれど、彼が起きた時に言う言葉はもう、決めてある。


「……」


 ゆっくりと、彼の頬に唇を近づけていく。


「……起きてくださ~い」


 こうすると目覚めるのが、掟、でしょう?



おわり

お察しの方もいらっしゃいましたが、あの絵師さんの絵が大好きなのです



武内P「台風、ですね」

楓「はい、とても風が強くて……」

武内P「タクシーを呼ばれては?」

楓「貴方はどうするんですか?」

武内P「いえ、私は電車で……」

楓「だったら、私も負けていられません」

武内P「……あの、何故張り合う必要が?」

楓「私は、共に歩んでいこうと思います」

武内P「あの、駅は逆方向では」

楓「……」

バシバシ!

武内P「……すみません」

楓「私は、共に歩んでいこうと思います」

武内P「……」

楓「ファンの方達と、笑顔で!」

武内P「通行人の方は、ほとんど居ませんが……」

武内P「しかし……風邪を引いてしまいます」

楓「大丈夫です。傘が、私を守ってくれます」

武内P「あの、物凄い横殴りの雨なのですが」

楓「……」

バシバシ!

武内P「……すみません」

楓「此処は、ライトが暗すぎるわね」

武内P「……台風、ですから」

武内P「! すみません、携帯が……」

楓「はい、どうぞ」

武内P「……部長が、車で送ってくださると」

楓「!?」

武内P「……」

楓「!!?」

武内P「……お断り、しておきます」

楓「まあ、せっかくでしたのに……」

武内P「……」

武内P「……それでは、行きましょうか」

楓「ええ」

武内P・楓「……」


ズバンッ!


武内P「……一瞬、でしたね」

楓「……傘、壊れちゃいまいたね」

武内P・楓「……」

武内P「……やはり、タクシーを呼びましょう」

楓「それしか、無さそうですね」

武内P「料金は、私が出しますので……」

楓「まあ、送ってくださるんですか?」

武内P「いえ、あの、逆方向なので……」

楓「まあ、送ってくださるんですか?」

武内P「……」

武内P「それに、私の利用する駅は近いですし……」

楓「駅? え、聞こえません」

武内P「……」

楓「料金は、私がおもちします」

武内P「私は、駅まで歩いてすぐなので……」

楓「駅? え、聞こえません」

武内P「……」

楓「風が強くて、よく聞こえません」

  ・  ・  ・

武内P「タクシーを呼びました。すぐ、来るかと」

楓「お手数をおかけしました」

武内P「……」

楓「……?」


武内P「っ……!」

ダッ!


楓「!? 待ってください!」

ダッ!


武内P「何故、追ってくるんですか!?」

楓「逃げるからです!」

  ・  ・  ・

楓「……ふぅ……ふぅ……!」

武内P「……高垣さん、タオルを」

楓「ありがとう……ふぅ……ございます」

武内P「あの、私は電車で帰りますから」

楓「……ああ、誰かさんのせいで濡れてしまったわ」

武内P「私のせい、ですか!?」

楓「それに、急に走って疲れちゃいました」

武内P「……!?」

楓「……」ジッ

武内P「……わかりました。タクシーが来るまで、此処に」

楓「?」

武内P「私は電車で帰りますからね?」

楓「タクシーが来るのに、ですか?」

武内P「はい」

楓「もう、ワガママを言って私を困らせて、楽しいですか?」

武内P「!? 待ってください! その発想はおかしいです!」

楓「雨に濡れて、一人で帰れだなんて……」

武内P「いえ、それは――」

楓「くしゃみ!」

武内P「? あの、今のは?」

楓「あっ、間違えちゃった」

武内P「?」

楓「はっくしょん!」

武内P「高垣さん、酔ってるんですか!?」

武内P「……わかりました。私も、タクシーで帰ります」

楓「うふふっ、最初から素直になれば良いんです」

武内P「……最初から、素直だったつもりです」

楓「あっ、タクシーが来ましたよ」

武内P「……」

楓「これで、やっと帰れますね」

武内P「……そう、ですね」

楓「それじゃあ、先に乗ってください」

武内P「……」

楓「私が乗りこんだ瞬間、走りだすつもりでしたよね」

武内P「……」

楓「……」

武内P「いえ、そんな事はありません」

楓「はい、先に乗ってください」

武内P「……」

武内P「……」

楓「反対側のドアから降りても、無駄ですよ」

武内P「……何故、でしょうか」

楓「私、一度やってみたかったんです」

武内P「……何をですか」

楓「前の男を追ってください、って」

武内P「……!」

楓「うふふっ♪」

ガチャッ

楓「はい、乗ってください」

武内P「……」

楓「……!」

ぐいぐい!

武内P「乗ります。乗りますから、押し込まないでください!」

楓「よろしい」

武内P「……」

バタンッ

武内P「……では、先に高垣さんの自宅に向かいましょう」

楓「あっ、少し寄る所が」

武内P「構いませんよ。まだ、時間も早いですし」

楓「ありがとうございます」


楓「運転手さん、この住所にお願いします」


武内P「スマートフォンに表示しておくとは、準備が良いですね」

楓「はい。台風ですし、せっかくの機会ですから」

武内P「? どこに行くつもりで――」


武内P「――近くの居酒屋の住所じゃないですか!」


楓「タイ風、ですよ」



おわり

忘れてたので書きます


「っ……!?」


 ガン、ガンとバスの車体にまた衝撃が加えられた。
 その衝撃を与えてくる影の正体は――怪人。
 頭部がウサギ、と言えば可愛らしいが、
その顔は醜く、残忍な性格を隠すことなくこれでもかと表している。


「……」


 プロデューサーさんが、ゆっくりと立ち上がった。
 揺れる車内を悠然と歩く姿に、私達は息を飲んだ。


「新田さん」


 唐突にかけられた、声。
 その声はいつものように低く、落ち着いている。
 私達が何かした時の方が、焦ってるんじゃないかしら。


「は、はいっ!」


 思考して、返事をするのが遅れてしまった。
 きっと、プロデューサーさんは大事な事を言う。
 プロジェクトのリーダーとして、聞き逃す訳にはいかない事を。


「私は、此処を離れます」
「離れるって……何を言ってるんですか?」


 今も、バスは高速で走り続けている。
 止まったら、ウサギの怪人によって私達は終わりだ。
 だから、離れるなんて、出来ないはずなのに……。


「皆さんをお願いします」


 そう言うと、プロデューサーさんは上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。


「……」


 プロデューサーさんの腰元では、大きな銀色のベルトが、輝きを放っていた。
 

「私が、奴を倒します」


 右のポケットからスマートフォンを取り出した。
 ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
 流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。


 ――3――4――6!



『LIVE――』



 スマートフォンから、どこかで聞いたことのある女性の声が聞こえた。
 あの声は、確か……。
 プロデューサーさんは、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、



「変身ッ!」



 言った。



『――START!』



 プロデューサーさんの体を光が包み込んでいく。
 光の粒子はやがて形を成していき、鎧を纏わせた。


 鎧は黒を基調としたもので、所々白い箇所もあり、まるでスーツのよう。
 すっぽりと全身を覆うその鎧の胸元では、
ピンクと、ブルーと、イエローの宝石のような物が輝きを放っている。
 プロデューサーさんが今、どんな顔をしているのかは、
目付きの悪いぴにゃこら太のようなフルフェイスに覆われ、見ることは出来ない。


「……」


 だけど私は、確かにその向こう側に希望を見た。


「だ、だけど……相手は物凄い速さで走ってるんですよ!?」


 今のプロデューサーさんは、とても強そうに見える。
 けれど、あのウサギの怪人よりも早く走れるというのか。
 あんな、高速で動く相手をどうやって……。


「はい。ですが――」


 カツン、カツンと歩く音が車内に響く。
 私達は、息を飲んで続くプロデューサーさんの言葉を待った。


「――私一人では、ありませんので」


 プシュウ、と音を立ててバス前方の出入り口が開いた。
 ウサギの怪人から逃げるため、景色が物凄い速さで流れていく。
 プロデューサーさんは、



「ピニャコラッター!」



 そう言うと、バスの車外へ躍り出た。
 いくら鎧を着ているとは言え、この速さで車外に出たらただでは済まない。
 そう思った私達の耳に届いた、低い、低い音声。



『ぴにゃぴっぴ』



 大きな、黒い影。
 その、巨大な黒い影はプロデューサーさんと地面の間に潜り込むと、
プロデューサーさんの体を乗せ、疾風のように走り出した。



『Unit debut!!』

  ・  ・  ・

「……」


 吹き付ける風も、スーツのおかげでほとんど影響は無い。
 ピニャコラッターも、今か今かと暴れる時を待っている。
 エンジンのあげる唸り声が、今はとても頼もしい。


「さあ、行きましょう」
『ぴにゃー』


 私が声をかけると、ピニャコラッターが返事をした。
 このマシンは、ただの大型のバイクではない。
 人工知能を搭載した、正に、相棒とも呼ぶべき存在だ。


「……!」
『ぴ~――……』


 速度を落として左足を地面に付き、少々強引にUターン。
 スーツを纏った私の脚は、彼の重量を支えきる。
 それに、こんな所で倒れる訳にはいかない。


「ふっ!」
『――にゃ~!』


 彼も、私も。
 ターン終了と同時に、急加速。
 地面についていた左足が、アスファルトに擦れ火花を上げた。
 高速道路を逆走し、すぐに目標を捉えた。



「UUUUKYUUUUUUU!!」



 私達は、バスに体当たりをせんとしていたウサギの怪人に、



「善処します!」
『ぴにゃっぴ!』



 速度を緩めること無く、全力で突撃した。


「おおおおっ!」
『ぴにゃ~っ!』


 高速で走る二つの物体の、正面衝突。
 勝ったのは、



「GYUUUUUUUU!?」



 私達だ。
 当然の結果です。
 何故なら、私達は一人ではないのだから。


「……!」
『ぴにゃっぴ!』
「GYUUUU!? GYUUUUUOO!?」


 ピニャコラッターは、ウサギの怪人をその前方に乗せ、バスから引き離していく。
 ウサギの怪人が暴れて脱出しようともがくが、それは叶わない。


「少し、お時間を頂けますか」
「GYUUUUU!? GYUUAAAA!?」


 私の両手が、ウサギの怪人を捕らえて離さないからだ。


『ぴにゃっ!』


 運転をピニャコラッターに任せ、距離を稼ぐ。
 ここまで来れば、もう心配は無いだろうか。



「ピニャコラッター!」
『ぴにゃぴっぴ』



 私の声を聞いたピニャコラッターは、壁を駆け登る。
 私達は一塊となり、高速道路の外へと飛び出した。


 一塊だった私達の影が、空中で二つに分かれる。
 それは当然、私達と、ウサギの怪人にだ。


「……」


 ピニャコラッターの上に立ち、彼を足場にして跳び、


「――企画!」
「GYUUUAAA!?」


『CooL!!』


 ブルーの光を纏った右の脚をウサギ怪人の頭部に見舞う。
 やはり、不安定な体勢で放った一撃では、あまり効果は望めない。


「――検討中です!」
「UUUKYUUAAA!?」


『Cute!!』


 しかし、それでも私は追撃の手を緩める事はない。
 ピンクの光を纏った拳をウサギ怪人の腹部に突き刺しつつ、地面に叩きつける。
 落下の衝撃が合わさったそれでも、仕留めるには至らなかった。


「KYUUUUUUUUU!!」
「ぐおっ!?」


 私の下で、ウサギ怪人が力を振り絞り、暴れた。
 あの速度が出せるだけの脚だ。
 その脚力は相当なもので、蹴り上げられた拍子に距離を空けられてしまう。


「――待ってください!」


 しかし、ここで逃がすわけにはいかない。
 ここで逃したら、いつ、またアイドル達にその牙を向けるかわからないのだから。


『Passion!!』


 私に背を向けて逃走を図ろうとしたウサギ怪人の脚を
銃の形にしていた私の左手から放たれたイエローの光が撃ち抜いた。


「KYUUU……KYUUUUU!!」


 それでも、奴は諦めなかった。
 最初の時の速さは見る影もないが、それでも、走り出す。
 一瞬、このまま逃してやろうと、そんな思いに駆られた。


「……」


 だが、それは出来ない。
 彼は怪人で、アイドルから笑顔を……その生命を奪おうとする者。
 そして私は、そんな彼女達を守る……プロデューサーなのだから。


「ピニャコラッター!」
『ぴにゃぴっぴ』


 呼ぶのが遅い、と言わんばかりに、ピニャコラッターが横に走り寄る。
 その背に跨り、私達は一つとなる。
 怪人を――倒すために。


『Tricoloooooor!!』


 ピンク、ブルー、イエローの3つの光を纏った‘私’は、ウサギの怪人に突撃した。
 3つの光の尾を引きながら、私はウサギの怪人を粒子にした感触を味わっていた。


『ぴにゃ~……』


 そんな私に、ピニャコラッターが声をかけてくる。
 彼のボディーを労るように撫でると、彼の鳴き声は止んだ。


 なくのはやめろ、ピニャコラッター。


 私達は、笑顔を守ったのだから。

  ・  ・  ・

「新田さん、ありがとうございました」


 合流したプロデューサーさんが、頭を下げてきた。
 それは、いつものとても丁寧なお辞儀。
 だけど、その表情はなんだか……。


「いっ、いえ……」
「……」


 プロデューサーさんがこんな表情をする理由が、私にはわからない。
 それなのに、今は、この人を放っておいては駄目な気がする。


「こちらこそ、ありがとうございました!」


 でも、こんな時にどんな顔をしたらいいかわからない。
 アイドルとして、リーダーとして、一人の人間として。
 こんな顔をしている人に、どんな表情を向ければ良いの?


「……」


 顔を上げて、プロデューサーさんを見る。
 私のそんな思いを察したのか、プロデューサーさんは右手を首筋にやって、困った顔をした。


「……新田さん」
「……」


 教えてください、プロデューサーさん。


「笑顔です」
「っ!?」


 思っていた事をズバリ言い当てられ、ビックリしちゃった。


「皆さんの笑顔のため、私はプロデューサーになったのです」


 だから、笑っていてください。
 そう言って笑ったプロデューサーさんの笑顔は、とても下手で、泣いている様に見えた。



おわり 


猫っぽいフルフェイススーツとなるとこんなんだろうか

https://i.imgur.com/79MzDuy.jpg

ライダー意識なので、目がこれのでっかい感じかなー、と!
ってかこの画像クッソカッコイイすなw

https://i.imgur.com/SwKssIa.jpg
https://i.imgur.com/kXw6wEd.jpg
フルフェイススーツっていいよね

あの魔法少女たちを千佳が見たらどうなるんだろうね

書きます


武内P「そろそろ、寂しさが限界です」

美嘉「は? アンタ、何言ってんの?」

凛「寂しさが限界って、意味わからないんだけど」

ちひろ「あの……どういう事でしょうか?」

武内P「千川さん、お願いがあるのですが」

ちひろ「? はい、何ですか?」

武内P「こう、頭を抱きしめていただけませんか」

ちひろ「!?」


美嘉・凛「!?」

ちひろ「なっ、何言ってるんですか!?」

武内P「30分程度で、大丈夫だと思いますので……」

ちひろ「あの、一体どうしちゃったんですか……?」

武内P「寂しさが限界に――」


武内P「――ああ……うあああ……!」ブルブル


ちひろ「!!?」


美嘉・凛「!!?」

武内P「さ、寂しい……寂しくて、たまらない……!」ブルブル

ちひろ「ぷっ、プロデューサーさん!? 凄く震えてますよ!?」

武内P「お願いします……! お願いします、千川さん……!」ブルブル

ちひろ「そっ、そんな事言われても……」

武内P「ひぅ……うぅっ……! 寂しくてたまらない……!」ブルブル

ちひろ「あ……ううっ……!?」


美嘉・凛「……」

武内P「ああ……! もう……!」ブルブル

ちひろ「……っ! もう!」

ぎゅっ

ちひろ「こっ、これで良いんですか!?///」

武内P「……ありがとうございます……あぁ、寂しさが消えていく……」

ちひろ「そ、そうですか……///」


美嘉・凛「……」

武内P「……ありがとうございます、千川さん」

ちひろ「っ、はい! もう終わりです!」

パッ!

武内P「!?」

ちひろ「プロデューサーさん、寂しさが限界って――」


武内P「あっあっあっあっ!」オブオブ


ちひろ「――まっ、まだだったんですか!?」


美嘉・凛「……」

武内P「あっあっあっあっ」オブオブ

ちひろ「す、すみません! 急に離れて!」

ぎゅっ

武内P「……いえ」

ぎゅううっ!

ちひろ「……」

ちひろ「……」キュウンッ!


美嘉「アタシ、今のちひろさんの気持ちがわかった」

凛「うん。明らかに母性本能を刺激されたよね」

武内P「……申し訳、ありません」

ぎゅううっ!

ちひろ「だ、大丈夫ですよ。もう、急に離れませんから!」

武内P「……はい」

ぎゅっ

ちひろ「……」キュウンッ!

ぎゅうっ!


美嘉「ちひろさんの抱きしめる力、強くなった」

凛「あんなに不安そうな顔されたら、仕方ないかな」

武内P「皆さんに、不甲斐ない所をお見せしてしまいました……」

ちひろ「……良いんですよ、プロデューサーさん」

武内P「……千川さん?」

ちひろ「プロデューサーさん、いつも頑張ってますから」

なでなで…

武内P「……そう、でしょうか」

ちひろ「だから、たまには誰かに甘えても良いんです」

なでなで…


美嘉「頭! 頭を撫でだした! ねえ、凛!?」

凛「見ればわかるから! 落ち着いて美嘉んあああああ!」

美嘉「凛!? 落ち着いて、凛!?」

武内P「情けない話ですが……とても、落ち着きます」

ちひろ「うふふっ、そうですか?」

なでなで…

武内P「はい、とても」

ちひろ「……」キュウンッ!

なでなで…


凛「知ってる? 朝顔の種って、食べちゃいけないんだよ」

美嘉「初めて聞いたケド……なんで、急にその話を?」

凛「食べたら幻覚を見ると言う朝顔の種が、ここに」

美嘉「ヤバーイ★」

凛「ちひろさん、喉、渇いてない?」


ちひろ「いつも頑張ってて偉いですよー」

なでなで…

武内P「……心が、洗われるようです」ホッコリ

ちひろ「私が、ついてますからねー」

なでなで…

武内P「……私は、此処に居ても良いのですね」ホッコリ


美嘉「聞いちゃいないね」

凛「……引き剥がすのは無理、かな」

美嘉「こうなったら、アタシ達も――」

凛「――行くよ。蒼い風が、駆け抜けるように」


ぎゅっ!


武内P「!?」

ちひろ「凛ちゃん、美嘉ちゃん!?」

美嘉「べっ、別に? いつもお世話になってるお礼っていうか?」

凛「うん。ちひろさんだけに面倒をかけるのは、良くないかなって」


武内P「うわあああああっ!?」ブルブル!


ちひろ・凛・美嘉「!?」

ちひろ「プロデューサーさん!? どうしたんですか!?」

美嘉「えっ、なんでアタシ達が抱きしめたら!?」

凛「ちょっと、どういう事!? 説明して!」


武内P「ああああ! うわあああ!」ブルブル!


ちひろ「っ! ウチの子に触らないで!」

ぐいっ!


美嘉・凛「!?」


ちひろ「もう大丈夫ですよー、怖いお姉ちゃん達は居ないですよ―」

なでなで…

武内P「はい……ありがとう、ございます」

ちひろ「……」キュウウンッ


美嘉・凛「……」

美嘉「……ねえ、なんでアタシ達じゃ駄目なの?」

凛「美嘉が抱きしめたら、急に騒ぎ出した……?」

美嘉「は?」

凛「そういう怖い所が駄目だったんじゃない?」

美嘉「……怖かったのは凛の方じゃない?」

凛「あ?」


ちひろ「私がついてますから、安心してくださいねー」ニッコリ

なでなで…

武内P「……良い、笑顔です」ホッコリ

ちひろ「……」キュキュウンッ!


美嘉・凛「……」

ちひろ「良い子良い子~」

なでなで…

武内P「あの……先程の、ウチの子、というのは……」

ちひろ「あっ……もしかして、嫌でしたか?」

なでなで…

武内P「いえ……悪くないものだと、そう、思いました」

ちひろ「……」キュキュキュウウンッ!


美嘉・凛「……」

武内P「――ありがとうございます。寂しさが、落ち着きました」

ちひろ「……」

なでなで…

武内P「あの、千川さん? もう、大丈夫ですので……」

ちひろ「そう、ですか? 本当に?」

なでなで…

武内P「はい。ご迷惑をおかけしました」

ちひろ「……」


美嘉・凛「……」

ちひろ「……」

なでなで…

武内P「……」

ぐいっ!

ちひろ「あっ……」ションボリ

武内P「……申し訳ありません、これ以上は」

ちひろ「そう……ですよね」ションボリ

武内P「ですが……また、お願いするかもしれません」

ちひろ「! も、もうっ! プロデューサーさんはしょうがないですね!」パアッ


美嘉・凛「……」

武内P「申し訳ありません、お二人にも――」

美嘉・凛「ねえ」

武内P「? はい、何でしょうか?」

美嘉「アタシ達の――」

凛「――どっちが怖かったの?」

武内P「……すみません、寂しさが限界だったので、よく覚えていなくて」

美嘉・凛「……」

武内P「ですが、次の機会があっても、お気持ちだけ受け取っておきます」

美嘉・凛「……」

美嘉「じゃあさ、今、抱きしめて確かめてみない?★」

武内P「いえ、アイドルの方がそのような事は……」

凛「アンタ、私のプロデューサーでしょ?」

武内P「渋谷さん。だからこそ、です」

美嘉・凛「……」

武内P「絶対に、いけませんよ」

美嘉・凛「……」

  ・  ・  ・

美嘉「……うん、チョー安心する★」

凛「……私も。美嘉って、やっぱりお姉ちゃんなんだね」

美嘉「そうだよー★ 年上だし、ね!」

凛「でも、お姉ちゃんも甘えたい時、あるよね」

美嘉「……うん。だから、甘える」

凛「……私も、今は甘えさせて」

ぎゅっ!


未央「……何? アレ」


武内P「寂しさが、限界だったようです」



おわり

ゲームしてきます

やち天


「はぁ……んっ……はぁっ……!」


 千川さんの、美しい桃色の唇から艶めかしい吐息が漏れる。
 本来ならば聞くことはない、普段とは全く違う彼女の声。
 悶える姿から発せられる色気は、まるで極上の娼婦のよう。


「千川さん……!」


 千川さんに、声をかける。


「プロデューサー……さぁん……!」


 彼女も、息を切らしながらそれに応える。


「っ……!」


 私はプロデューサーであり、彼女は事務員だ。
 アイドル達よりも、近い関係。


「もう……! もう、私……!」


 彼女の、限界が近い。
 爪を立ててもがく千川さんが、苦しげな声を出している。
 私は、そんな彼女にかける言葉は一つしか思いつかない。


「……頑張ってください!」


 此処は、346プロダクションの社用車内。
 運転するのは私で、


「ぐっ……こ、こきゃっ、こ……!」


 千川さんは、助手席で腹痛に悶えていた。


「っ……!」


 千川さんは、今日は午後からの出勤だった。
 プロジェクトメンバーを仕事先に送る、帰り道。
 その道程で、千川さんの自宅が近い事を知ってしまっていた。


「あっあっ……!」


 故に、事務所に戻る途中で千川さんを拾って帰る。
 そんな結論に至ったのは、至極当然の事だろう。
 仕事上の付き合いとは言え、人間関係は円滑にすべきだ。


「ひぃーっ! はっ、ほひぃーっ!」


 千川さんは、最初はその申し出を固辞していた。
 その事に彼女との距離を感じたものの、そのまま引き下がった。
 あくまでも、彼女の意思を尊重するべきだ、と。
 しかし、プロジェクトメンバー達が「せっかくだから」と強引に彼女を説得したのだ。


「……ふぅ……ふぅ……!」


 私達だけ、いつもプロデューサーさんに送迎をしてもらったりしている。
 だから、せっかくだからちひろさんもお願いしちゃいなよ、と。
 その時のプロジェクトメンバー達の、輝く笑顔が今は懐かしい。


「あっ……また波が……!」


 そんなメンバー達に説得された時の千川さんは、少し困った顔をしていた。
 しかし、上目遣いで茶目っ気を出しながら、はにかんだ千川さんの笑顔。
 ほんの少しの間だけど、ドライブデートですね……と、冗談交じりで。
 ああ、その台詞を聞いたメンバー達は、盛り上がっていましたね。


「ぐっ……おおお……!」


 千川さんは、今、何を思っているのだろう。
 出来ることならば、メンバー達を恨むような事は、しないで欲しい。


「うん……うん……うっ……!?」


 波をやりすごそうとして、失敗したのだろう。
 チラリと横目で見た千川さんの顔は、普段の彼女とは似つかない。
 腹筋に力が入らないよう、顔の筋肉を全て弛緩。
 口はパカリと開き、視線は定まることなく宙を彷徨っている。


「はぁー……ほぉー……」


 最早、人の発する言葉ではない。
 壊れる寸前の蓄音機が奏でる、断末魔の音色。
 それを断続的に響かせる千川さんは、一体、何なのだろう。


「千川さん、もう着きます!」


 そんな事は、決まっている。
 プロデューサーの私を支えてくれる、大事な仲間だ。


「あっあっあっあっ!」


 千川さんが、一際大きな声をあげた。
 虚ろな目に飛び込んだ、城。
 私達が共に働く、346プロダクションの事務所だ。


「間に、合いましたね!」


 チラリと、横目で千川さんの様子を確認する。
 私の口元には、笑みが浮かんでいた。


「いいえ」


 だが、その笑みは続くこと無く、一瞬で掻き消えた。
 いつも、朗らかな笑みを浮かべる千川さん。
 彼女が一切の表情をなくしているというのに、どうして私が笑顔でいられようか。


「プロデューサーさん」


 先程までとは違う、とても落ち着いた声。
 まるで、いつもの、優しい笑みを浮かべている時の彼女の声のようだ。
 しかし、


「私ね、今日はちょっと楽しみだったんです」


 無。
 今の彼女からは、何も感じない。
 そこに確かに存在するのに、その存在が虚空に飲み込まれているようだ。
 それは、彼女が消えて無くなりたいと、そう願っているからだろうか。


「お待たせしちゃいけないな、って準備もバッチリして」


 彼女の声を聞きながら、私は事務所の前に停車した。
 運転の片手間に聞くような、そんな話ではない。
 千川さんは今、とても大事な話をしているのだから。


「でも、こんな事になっちゃいました」


 彼女が目尻に涙を浮かべているのは、己の不甲斐なさからか。
 それとも、打ち寄せる後悔からか。


「……すみません、千川さん」


 私も、右手を首筋にやり、左手で自らの目元を軽く拭う。


「プロデューサーさんが、泣く必要は無いですよ」


 そう言って、千川さんは女神のような笑顔を私に向けた。


「……申し訳、ありません」


 違うんです、千川さん。
 あまりの臭さで、目がシパシパしてきただけなのです。


「プロデューサーさんは、悪くありません」


 窓を開けても、良いだろうか。
 このままの状態が続くのは、非常にまずい。
 しかし、此処は事務所の前だ。
 いつ、誰が通って、窓から流れ出る悪臭を浴びるともわからない。


「全部、私が悪いんです」


 嗚呼、何故、私はこんな所に車を停めてしまったのだろう。
 前進し、社用車専用の駐車場に車を停め、脱出。
 後退し、どこか適当な所に車を停め、脱出。
 進むことも戻ることも、今となっては出来そうにない。


「……全部、私が」


 そう、全ては千川さんの許可を取ってからだ。
 この場に留まっていても、何も解決はしない。


「千川さん」


 可能な限り、優しく千川さんに話しかける。
 今の彼女は、とても傷ついている。
 自らを責め、全てを背負い込もうとしている。
 仲間として……断じて、見過ごすわけにはいかない。


「はい……何ですか?」


 気丈にも、彼女は涙を流していなかった。
 その強さは、私も見習いたいと、そう、考えます。
 しかし、私はこうも思うのです。
 その強さをお腹にも、少しだけ分けてあげて欲しい、と。


「……すみません。少し、待ってください」


 彼女が首を傾げた時に香った、シャンプーの香り。
 それが合わさった異臭が私の鼻を直撃し、意識が飛びそうになった。
 手を口元にやり、考え事をするフリをする。
 そうすれば、自然と鼻の穴を手で塞げるから。


「……」


 千川さんが、私の言葉を待っている。
 次に発する言葉が、彼女のこれからに大きく関わってくるのは明白だ。
 出来ることならば、最善を。
 私と、千川さんのためになる、最も良い選択をしなければならない。


「……千川さん」
「……はい」


 だが、私はどの選択肢も選ばなかった。


「兎に角、この場を移動しましょう」


 選ばないという選択を選んだのだ。
 問題の先送りでしかない提案だが、今は、それで良い。
 私は今、一刻も早く窓を開けて新鮮な空気を肺に送り込みたい。
 申し訳ありません、千川さん。
 このままこの状態が続けば、私は地上で溺れてしまいそうなのです。


「そう、ですね」


 千川さんは、薄々だが私の様子を見て察していたのだろう。
 自分の生み出してしまったものが、とんでもない代物だという事に。
 自分だとわからないけれど、他人は鮮明に感じるという、アレです。


「では発車します」


 千川さんの同意を得た私は、すぐさま行動に移った。
 普段よりも口調が早くなってしまったのは気付いていたが、それは許して欲しい。
 この場を離れられるという事は、遂に、窓を開けられるのだから――!


「……!」


 しかし、焦った私は発車する前に窓を開けてしまった。



「あっ、ちひろさんにプロデュー……うえっ!? げほっ、ごほっ!」



 それが、さらなる悲劇を産んだ。


「は、鼻が……!? それに、目が……!?」


 窓から解き放たれた悪臭の直撃。
 不意を付かれる形のそれは、彼女から嗅覚だけでなく、視覚まで奪ったようだ。
 突然の事に驚き、その両手は何かを探すように前に突き出されている。


「っ……!」


 彼女には申し訳ないが、時間とともに回復して貰うしか無い。
 今は、一刻も早く臭いの原因を取り除かなければならない。
 しかし、本当に申し訳ありません。
 外の世界を知ってしまった今、また、窓を閉めるのはとても難しいのです。


「どこ……!? どこ……!?」


 だが、このままでは発車出来ないのも事実。
 彼女の両の手が、車体に触れてしまう可能性がある。
 それだけは、なんとしても避けなければ。
 だから――



「Let’s go~♪ あのヒ~カリっ目指して~♪」



 ――私は、歌った。
 闇の中を彷徨う彼女を導くように、高々と、大声で。


「!」


 私の声は、彼女に届いた。
 その結果、彼女は『Star!!』の振り付けの通り、人差し指を天に向けていく。
 はい、これで安全に発車出来ますね。


「では、発車します」


 私は、感情を殺してつぶやいた。
 千川さんも涙と鼻水によって、視覚と嗅覚を奪われていた。
 だが、きっと私の声は届いただろう。
 その証拠に、千川さんの泣き声が一際大きくなったのだから。


おわり

寝ます
おやすみなさい

予告なくウンコ
だがそれがいい

このスレはキワモノ多めでやろうと思っていました

キョン「ッ……仕方がない、変身ッ!」
http://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-760.html

8年前に書いた二次創作とのクロスオーバー三次創作を書きます
諸々やるので遅くからになります
面倒な人は飛ばしちゃってください

このスレは?このスレもの間違いだろ…


 宇宙人、未来人、異世界人、超能力者。
 そんなもん居るわけねぇ! なんて思ってたのは、もう随分と昔のような気がするな。
 今の俺を取り囲む日常とやらは、そんな非日常的な人間達に囲まれるものになっている。
 
 宇宙人――長門有希。
 未来人――朝比奈みくる。
 超能力者――古泉一樹。
 そして、我らがSOS団の団長――涼宮ハルヒ。

 異世界人は残念ながら所属してないが、その代わりに神様が団長をやっている。
 そう考えると、お釣りが来る所かそれだけで大金持ちだ。
 そうは思わないか?


『異世界人と神の価値の違いとは』


 そんなもん知るわけねぇ!
 そもそも、異世界人とやらには会ったことすら無いんだぞ。
 もしかしたら、とんでもなく不細工な奴だったら、見た目が良い分ハルヒの方がマシだ。


『そう』
「そうだとも」


 なんて、他愛の無いやり取りをするのはいつもの事だ。
 俺がくだらない事を言って、律儀に長門がそれに答える。
 まあ、大抵は今みたいにグダグダになって終わっちまうんだけどな。
 それもまた、‘らしく’て良い。


『目標まで、あと20メートル』


 ああ、そうかい。
 この路地を曲がった先に――怪人が居るって訳だな。
 やれやれ、嫌になるぜ、本当。


「……変身」


 そう、俺は人知れずつぶやいた。


 体中の細胞の一つ一つが、別のものに置き換わっていく。
 俺自身は、至って平凡な男子高校生だ。
 けど、変身をした後の俺は、違う。


「っ……!」


 腕が、脚が、体が、頭が、人間のそれとはかけ離れていく。


 ――化物!


 なんて、言われた事もあったっけな。
 ……そう、強がってみても、今でもハッキリと思い出せる。
 俺の今のこの姿を見た、ハルヒの怯えた表情を。


「…………」


 ああ、いかんいかん!
 アイツのあんな顔を思い出したら、余計に滅入っちまう。
 今はただ、いつもの、俺が愛する日常を守る事だけ考えよう。
 平凡で、たまに平凡とはかけ離れた刺激のある、あの日常を。


 ズシャリ、ズシャリ。


 地面を踏みしめる音が、ハッキリと聞こえる。
 強化された今の俺の聴覚は、ほんのささいな音すらも拾い上げる。
 普通だったら、まともじゃいられないんだろうな。


 だが、今の俺は普通ではないし、まともでもない。


 異形の――化物だ。


 そんな俺の耳に、いつもとは違う、電子音混じりの二人分の女の声が響いた。


『LIVE SUCCESS!!』


 ……やれやれ、一体何だってんだ?


 あんな奇っ怪な音を聞かされて、はーいこんにちはー、
なんてヒョッコリと顔を出す程俺は間抜けじゃない。
 今はこんな見た目をしちゃいるが、本当は平和を愛する凡人だからな。
 ……なんて言っちゃみたが、どっちの姿が本当なんだろうな。
 わからんし、わかった所でやる事は変わらないが。


「…………」


 路地裏の突き当り、行き止まりの所に、男は居た。
 大柄で、無表情な男。
 黒いスーツの上下を着ちゃいるが、その顔つきはどう見ても一般人じゃない。
 現に、その男の足元からは、虹色の粒子が立ち上っている。
 ……仲間割れでもしたのか?
 だとしたら、アイツは‘どっち側’なんだ?


「――新手、ですか」


 低い声が、路地裏に響く。
 地の底から聞こえてくるようなそれは、隠れていても無駄だと、そう言っているようだ。
 やれやれ。
 どうやら、やるしかないみたいだな。


「…………」


 男は、姿を見せた俺の姿を見て、一瞬目を見開いた。
 おいおい、何を驚く必要があるんだ?
 アンタも、俺と似たようなもんだと思ったんだが。


「言葉を話す相手は、初めてだったものですから」


 顔に似合わず、随分と丁寧な口調だな。
 だけどな、油断させようと思ってしているなら、そいつは無駄だぞ。


「話し合いで終わるとは、思ってないだろ?」
「はい。そして、それは貴方も、でしょう?」
「違いない」


 男は、バサリと上着を翻し、銀色に光るベルトを露出させた。


「…………」


 男は、右のポケットからスマートフォンを取り出した。
 見たことの無い機種だな。
 ホームボタンを三回押し、画面を起動。
 流れるように、暗証番号を画面を見ずに……って、器用だなオイ。


 ――3――4――6!


『LIVE――』


 スマートフォンから、さっきと同じ二人分の声が聞こえる。
 そして、男はスマートフォンを銀色のベルトにかざし、


「変身ッ!」


 言った。


『――START!』


 光に包み込まれた男の体に、黒い鎧が纏われていく。
 その胸元には、ピンク、ブルー、イエローの宝石のような物が輝きを放っている。
 目付きの悪い……なんだったっけか、あのキャラ。
 なあ、アンタのそのフルフェイス、どっかで見たことがあるんだ。
 こういうのって、すぐに思い出さないとボケるって言うだろ?
 戦う前に、教えてくれないか。


「……ぴにゃこら太、です」


 ああ、そうかい。


「不細工で、殴りやすそうな顔で助かったぜ!」


 可愛い顔だったら、殴ると心が痛むからな。
 今のアンタの顔なら、そんな心配はしなくて済む。
 変身前の顔だったら……おっかなくて、逃げ出してたかもな。


「おおっ――」


 地を蹴り、一瞬で相手との間合いを詰める。
 その拍子にアスファルトがボゴリと凹んだが、後で長門に言わきゃならん。
 でないと、あの穴に躓く人が出ちまう。
 ……なんて、そんな考え事をしながらのパンチは、


「――らあっ!」
「善処します!」


 黒い不細工面の放った拳で、容易く迎撃された。


「っ……!?」


 速い。
 コイツ、直線で放った俺のパンチを‘横から’撃ち落としやがった!
 想定外の出来事に、あっけなく体勢を崩す。
 間違いない。
 コイツは、今まで戦ってきたどの怪人よりも、強い!


「くっ――!」


 慌てて後ろに飛び退こうとするが、奴の左手が銃を模した握りになっているのが見えた。
 ……おいおい、マジか。


「――企画!」
「う、おおおっ!?」


 夜の闇を照らすような、イエローの光が俺の体を貫いた。


『Passion!!』


 うるせえ!
 パッションだかファッションだか知らないが、飛び道具なんて聞いてねえぞ!


「――検討中です!」


『Cute!!』


 そんな俺の抗議の声は、輝くピンクの拳が腹に打ち込まれた事で中断させられた。


「ぐ、あっ……!」


 強い。
 イエローの光が打ち込まれてから、全身が痺れる。
 ピンクのパンチをもらった腹は、まるで爆発したみたいだ。
 相手を舐めていた。
 そう、言わざるを得ない。


「…………」


 ズシャリ、ズシャリと、重量を感じさせる足音。
 それが近づいてくる事に、俺は恐怖を――……覚えない。
 例えコイツが何だろうと、俺は負けるわけにはいかない。
 負けは、俺の愛すべき日常が壊れる事と、同じなのだから。
 それに比べれば、どんな敵だろうと恐れる必要は無い。


「なあ……アンタの戦う理由は、何だ?」


 呼吸を整え、腰を落とした状態で、男に問いかける。
 悪いな、この技はちょいとばかし溜めが必要なんだ。
 卑怯だと思うかい? 必死なんだよ、俺だって。


「……笑顔です」


 その笑顔ってのは、アイツを殺して、って事か。
 だったら、こっちも全力でいかせて貰う。
 さっきと同じと思ったら、大間違いだぜ。


「アイツを殺して? あの、仰っている意味が、よく――」


 初めて見せた、大きな隙。
 それを見逃してやる程、俺はお人好しじゃあない。
 最も、今の俺が人と言えるかは微妙な所だけどな。


「ライダー――」


 両足に溜めた力を――


「――キック!」


 ――爆発させた。


「っ!?」


『Cooooo――』


 ブルーの光を纏った右足で迎撃しようとしたようだが――遅い。
 悪いな、これは俺の必殺技なんだ。
 相手を必ず殺す技――ライダーキック。


「ぐおおおおっ!?」


 俺の脚が、男の体の中心を捉えた。
 すさまじく硬いが、確かな手応え。
 激突時に発生した衝撃波が、ビリビリと空気を揺らす。


「あ――ぐ、あっ!」


 吹き飛んだ男は背後の壁に叩きつけられ、磔になった。
 凄いな、壁にめり込む程硬いのか、アンタ。


『LIVE Failed……』


 響く二人の女の声と共に、変身が解けていく。
 だが、その姿はズタボロで、体中は傷だらけ。
 シャツには血が滲んでいるし、口からは血を流している。
 悪いな、上着の袖、取れちまいそうだ。


「貴方は……」


 男は、そんな姿になりながらも、倒れる事は無かった。
 歯を食いしばり、手で膝を掴み、必死の形相でこちらを見ている。
 良いぜ、最期の言葉くらい聞いてやるさ。


「アイドル達を狙う怪人、では……無いのですか?」


 ……は?


「……アイドル?」

  ・  ・  ・

「…………」


 不幸な事故や、争いごとが無くならないのには、理由がある。
 その時は最善だと思った行動や、自分が正しいと信じて取った行動。
 そいつが、何の因果かおかしな形で噛み合って起こっちまう。
 神様の気まぐれだってんなら、俺はハルヒの頭にチョップをくらわさにゃいかん。

prrrr!prrrr!

 携帯が音を立てる。
 着信音の変更はしてなかったが、この機会だから着歌とやらを
ダウンロードしてみるのも悪くないかもしれないな。


「――はい、もしもし」


 通話ボタンを押して、日本人が電話に出たらよく言う台詞を口にする。
 電話の向こう側で、ハァハァと疲れたような息遣いがした。


『あの……すみません。道に……迷ってしまって……!』


 いや、説明しましたよね?
 さっき、イチゴとティラミスのクレープを買ってきたって聞いたばかりなんですが。
 あの、迎えに行った方が良いですか?


『! 申し訳ありません。少々お待ちを』


 電話口の向こうで、息を飲む声がした。
 やれやれ。
 年上だってのに、こんな高校生相手にも真面目なんですね、アンタって人は。


『すみません。アイドルに、興味はありませんか?』


 通話はそのままに、胸のポケットにスマートフォンを入れているのだろう。
 スカウトしようと、誰かに声をかけている様子が伝わってくる。


『あたし、アイドルには興味無いの。不思議探索の邪魔しないで』


 おい、今の声は……!?


『待ってください! せめて、名刺だけでも――!』



おわり

OPっぽいの書いてスッキリしました
休憩

男を口説くのが早いキョン

申し訳ない、何故か下ネタ銀英しか浮かばないので寝ます
おやすみなさい

朝倉さん消えたままなのかしら……?
おつ

武内Pって山田孝之ばりの便利さがあるな

それで思ったのが勇者タケウチの語感の良さ

キョンの方単体は気が向いたら続き書きます

>>495
やってみよう


専務「起きなさい、起きなさい勇者」

武内P「……」

専務「今日は、まずは王様にご挨拶しに行く予定の筈です」

専務「誕生日を迎えた貴方は、魔王を倒す旅に出るのでしょう」

武内P「あの……母親役、ですか?」

専務「早く行きなさい。私は、あまり気が長い方ではない」

武内P「……」

武内P「はい。行ってまいります」

  ・  ・  ・

武内P「すみません。王様と、会う約束があるのですが」

兵士A「なんだ貴様は! 怪しい奴め!」

武内P「勇者と、そう言えば良いと聞いています」

兵士B「勇者だと? ならば、何故黒のスーツ上下なのだ!」

武内P「クライアントが最初に会うのは私です」

武内P「身だしなみには気をつけろと、そう、言われました」

兵士A「ええい、何を言っている!」

兵士B「捕らえろ! 牢にぶち込んでやる!」

武内P「!? 待ってください! せめて、話を!」

  ・  ・  ・

部長「おお、勇者よ! 捕まってしまうとは情けない!」

武内P「……申し訳、ありません」

部長「さて、気を取り直して、キミには旅立ってもらう」

武内P「……」

部長「魔王、蘭子くんの影は世界中に広がっている」

部長「なんとかできるのは、勇者アカバネの息子のキミしかいない」

部長「やって、くれるね?」

武内P「それが……はい、必要な事でしたら」

部長「……ふっ、キミならそう言うと思っていたよ」

部長「キミには、これを贈ろう」

チャ~ラ~ラ~リ~ラッチャッラ~ン♪

武内P「……カバンと、名刺ですか」

部長「必要な書類はカバンに入れ、スカウトする時はその名刺を使い給え」

武内P「……モンスターにはどう対処すれば」

部長「行け、勇者よ! 世界を頼んだぞ!」

武内P「あの! モンスターには、どう対処すれば!?」

部長「行け、勇者よ! 世界を頼んだぞ!」

武内P「……」

武内P「行って、まいります」

部長「おっと、重要な事を忘れていた」

武内P「! まさか……やはり何か武器が!」

部長「旅に出る前に、事務所……ではなく、ちひろの酒場に寄りなさい」

武内P「……旅に出る前に、アルコールは」

部長「話は最後まで聞きなさい。そこで、仲間を探すのだ」

武内P「あの、仲間よりも先に武器を」

部長「行け、勇者よ! 世界を頼んだぞ!」

武内P「……」

部長「行け、勇者よ! 世界を頼んだぞ!」

  ・  ・  ・

武内P「……酒場、ですか」

武内P「……」

武内P「一人旅も悪くない。そう、思います」


武内P『上司の指示には、従わなければいけませんね』


武内P「!? 街を出ようとしたら、足が止まり、勝手に声が!?」

武内P「くっ……ですが、酒場は嫌な予感しかしない……!」


武内P『上司の指示には、従わなければいけませんね』


武内P「……!」

  ・  ・  ・

ちひろ「あら、遅かったじゃないですか」

武内P「……」

ちひろ「それじゃあ早速ですが、仲間は誰を連れていきますか?」

ちひろ「今は、この三人が在籍してますよ」


魔法使い

高垣




武内P「魔法使いさんで! 魔法使いさんで、お願いします!」

楓「うふふっ、とっても情熱的なお誘いですね」

武内P「待ってください! 実質一人しか居ないではないですか!?」

武内P「他に、他には誰が……!?」

ちひろ「すみません。スケジュールの関係上、高垣さんしか……」

楓「はーい♪ 輝く世界の魔法使いでーす♪」

武内P「……では、誰も連れていかないを選びます」

楓「うふふっ、めらめら燃えるから、メラ」

ボッ!

武内P「熱い!」

ちひろ「こんな感じで仕事にならないので、連れて行ってください」

武内P「いえ、しかし……!?」

ちひろ「お願いします、プロデュー……勇者様、助けてください」

武内P「……」

  ・  ・  ・

楓「世界を救うのが、正解です」

武内P「……出発は、酔いを覚ましてからの方が良さそうですね」

楓「大丈夫ですよ。酔ってなんかいません」

武内P「宿屋に……」

楓「二人で、ですか?」

武内P「実家に……」

楓「ご挨拶、ですか?」

武内P「旅の支度を整えようと、そう、思います」

楓「素敵なステッキがあると良いのだけど……」

武内P「……」

  ・  ・  ・

武内P「……こんぼうを購入したら、職務質問を受けるように」

楓「うふふっ、とっても強そうですよ」

武内P「……ありがとう、ございます」

楓「けれど、薬草はあまり買えませんでしたね」

武内P「そうですね。日本酒を買わなければ、もっと買えたのですが」

楓「ええ……ですけど、日本酒も大事ですから」

武内P「……」

武内P「兎に角、酔いも覚めたようですし、出発しましょう」

  ・  ・  ・

凛「……」


武内P「……」

楓「街から出るのを、待ち構えていますね」


凛「ふーん。アンタが私のプロデューサー?」


楓「どう、なさるつもりですか?」

武内P「街の、反対から出ようと思います」


凛「逃げないでよ! アンタ、私のプロデューサーでしょ!?」


武内P「反対から出れば、時間がかかって回り込めないと思います」

凛「ふーん! 私、悪いアイドルじゃないよ!」


楓「それは……少し、可哀想な気がします」

武内P「ですが……」


凛「しぶりんが、仲間になりたそうに見ている!」


武内P「あの、ご自分で言うのは、流石にどうかと……」


凛「しぶりんが、仲間になりたそうに見ている!」

凛「ちゃんと見ててよね! でないと、許さないから!」


武内P「……」

  ・  ・  ・

凛「私は戦士? まあ、悪くないかな」

楓「旅は道連れ、世は情け、ですね♪」

武内P「……バランスは、整ってきましたね」

凛「それで、これからどうするの?」

武内P「はい。ユニットも組んだことですし、街を出ようと思います」

楓「マーチに合わせて、街を出ましょう」

凛「モタモタしてると、置いてっちゃうから」

武内P「……」

  ・  ・  ・

美嘉「ヤッホー★」


武内P「……」

楓「街から出るのを、待ち構えていますね」

凛「あの格好、僧侶みたいだね」


美嘉「どう? アタシ流にアレンジしてみたんだ★」


武内P「……よく、似合っていると思います」

楓「けれど、どうして美嘉ちゃんが僧侶なのかしら?」

凛「ああ見えて、もの凄く奥手だからだと思う」


美嘉「は、はあっ!? そ、そんな事ないケド!?」


武内P「……」

美嘉「カリスマJK僧侶が奥手って、あり得ないっしょ!★」


凛「Vジャンプの攻略本にすら書いてあるよ」

楓「どうなさるつもりですか?」

武内P「今日は一旦出直し、明日出発しましょう」


美嘉「アタシめっちゃ役に立つと思うなー!?」

美嘉「勇者、戦士、魔法使いと来たら!?」

美嘉「アンタもわかるでしょ? ほらほら、正直に言いなって!★」


武内P「武闘家は、可能な限り中野さんをスカウトしたいですね」

武内P「片桐さんの場合ですと、酒場から移動出来なくなりそうです」

楓「?」キョトン


美嘉「ちょいちょーい!?」

  ・  ・  ・

美嘉「ホント、素直じゃないんだから★」

凛「美嘉、まだちょっと涙の痕が残ってるよ」

楓「涙の数だけ、レベルアップね」

凛「経験は無いだろうけど」

美嘉「は、はぁ!? チョーあるし!」

武内P「……」

武内P「メンバーも揃ったことですし、出発しましょう」

武内P「今から出発すれば、明日には次の町に到着出来ます」

凛「明日には、って……野宿?」

武内P「そう、なりますね」

美嘉「キャンプかー、えへへっ、ちょっと楽しみじゃん★」

楓「焚き火を囲みながらのお酒……これは、避けられませんね」

武内P「街の外は危険なので、飲酒は控えてください」

楓「めらめら燃えるから、メラ」

ボッ!

武内P「熱い!」

武内P「……お猪口で、ちょこっとだけですよ」

武内P「……お二人に、質問があるのですが」

凛「何?」

美嘉「エロい質問だったら、怒るかんねー?」

凛「そんな訳ないでしょ」

武内P「……親御さんの許可は、取っていますか?」

凛・美嘉「は?」

武内P「18歳未満の22時以降の外出は、親御さんの許可が無いと……」

凛・美嘉「……」

武内P「すみません。規則、ですので」

凛・美嘉「……」

  ・  ・  ・

専務「どうした。もう戻ってきたのか?」

武内P「仲間は集まったのですが、今日は遅いので一旦解散しました」

専務「ほう、もう仲間を集め終えたのか」

武内P「集まってしまった、という方が正しいですね」

専務「やはり、キミは優秀なようだ」

武内P「……そんな事はありません」

専務「それでは、明日に備えて今日はもう休みなさい」

武内P「……」

武内P「いえ、それは出来ません」

専務「? 何故だ」

武内P「自宅に帰らせるフリをし、パーティーを解散しました」

武内P「なので、気付かれる前に一人で旅立とうと思います」

専務「何を言っている? 解散した、だと?」

武内P「いえ、ですから……」


専務『勇者は逃げ出した!』


武内P「専務? あの、急に何を――」


楓『しかし! 後ろに回り込まれてしまった!』


武内P「高垣さん!? いつの間に後ろに!?」


楓『アイドルからは、逃げられない!』



おわり

意外! 楽しい!

言うべきか迷ったけど今回の楓さんはめんどくさい暴力ヒロインにしか見えなかった(小声)
一読者の戯言だから気にしないでね

結構いけるなこのパーティー

ちょっと

https://shindanmaker.com/303040

こいつを使って三題話して遊びます
アイドルの名前を入力してやろうと思うので、人居たら名前くださいな

三船美優

ユッキ

美穂

三船美優は『こうい、くらげ、電源』を組み合わせてお話を書いてください。


書きます


「……ふぅ」


 更衣室で着替えている最中、私はため息をついた。
 その姿を他の子に見られているとはわかっていたが、止められなかった。
 こんなため息なんてついたら、心配されるってわかってるのに。


「……これは、どうなのかしら」


 アニマルパークのお仕事がきっかけで、コスプレ……をするお仕事も増えた。
 そのおかげで、市原仁奈ちゃんとも一緒する機会が増え、仲良くもなれた。
 ……けれど。


「……」


 スマートフォンには、今度私が着る予定の衣装が表示されている。
 それは、くらげがモチーフになったキグルミだと聞いていたけど……。


「……スケスケじゃないですか」


 それは、キグルミと呼ぶには体のラインを強調するもので、
その上さすがモチーフがクラゲだけあってか大事な所意外は透明な素材で出来ていた。
 でも、これってちょっとエッチすぎませんか、プロデューサーさん?


「……」


 だけど、これもプロデューサーさんが取ってきてくれた大切なお仕事
 頑張らなくちゃと思う反面、あの人もこういった格好が好きなのかな、とも思う。
 だったら、普段からもっと大胆な格好をすれば……。


「……ふぅ」


 もう、何度目になるかわからない思考のループ。
 考えていても始まらないのは、もうわかった。
 せめて、プロデューサーさんにこの衣装を着た感想をじっくり語ってもらおう。
 そんな事を考えていたら、開きっぱなしになっていたスマートフォンの電池が切れたのか、
画面は真っ暗になっていて、電源が落ちていた。



おわり

姫川友紀は『め、音楽、風邪』を組み合わせてお話を書いてください。


書きます


「う~……」


 ベッドに横になり布団にくるまりながら、あたしは暇を謳歌していた。
 予報ではわかってたんだけど、あんなに雪が降るとは思ってなかったんだよね。
 ゆっきーが雪にやられて風邪を引くなんて、不覚だよ。
 ……やばい、一緒に飲みに行く事が増えたから、伝染ってる。


「ぅえっくしょん!」


 今、部屋にはあたし一人しかいない。
 だから、こんな豪快にクシャミをしても、アイドルなんだからと咎める人は誰も居ない。
 その事に自由を感じもするんだけど、


「……寂しいなぁ」


 なんて、口に出してみる。
 そう、今、あたしは風邪を引いて部屋に一人で、寂しいと感じてしまっている。
 普段だったらこんな事は無いのに、体の調子が狂うと、心の調子も狂う。
 ……これじゃあ二軍落ちだよ、トホホ。


「……なんて、こういう時こそ」


 そんなあたしを支えてくれるのは、今はキャッツしか居ない。
 本当は録画した試合を見たい所だけど、画面を見ると頭が痛くなりそうだから我慢。
 野球の試合を見ると頭が痛くなりそうだなんて、本当に不覚だよ!


「……」


 動くのが億劫なので、スマフォに入れてある音楽を流す。
 勿論、キャッツの応援歌だ。
 今のあたしを応援してくれるかのようなその歌声に、自然と勇気づけられる。
 ああ、早く元気になって、ビールを飲みながらキャッツの応援をしたいなぁ。


「……」


 応援歌に合わせて、あたしの体が勝手に動く。
 これも、ファンとしての……アイドルとしての習性? わかんないな。
 だけど、今は風邪を治すのが先決だ。
 こんな調子じゃ、三者凡退間違い無しだから、ね。
 だから、あたしは大人しくしない、風邪に負けてる体に喝を入れた。


「め!」



おわり

小日向美穂は『みち、はさみ、冷凍』を組み合わせてお話を書いてください。


書きます


「う、くくくっ……!」


 晩御飯は、冷凍食品のパスタ。
 今日のお仕事は帰りが遅くなってしまったため、食堂には私一人しかいない。
 なので、備え付けの電子レンジで温めようとしてるんだけど……。


「あ、開かない……!?」


 パッケージの表面についた水滴が、私の指をつるつると滑らせる。
 力が強いとは思ってなかったけど、こんな所で躓くだなんて。
 お腹が空いて力が出ない、とは言わないですよ?
 でも、せめてこれくらいはパッと手で開けたいじゃないですか!


「ふおおお……!」


 と、気合を入れてみても、開かない。


「ふううう……!」


 と、自然体でやっても、開かない。


「……」


 くう、と小さくお腹が鳴った。
 食堂で一人、冷凍食品の袋と格闘しながら、お腹を空かせる。
 それが、とても情けなくて、ははは、と渇いた笑いが零れた。
 そんな、下を向く私に、


「フヒヒ……使う、か?」


 と、声と共にハサミが差し出された。
 それに驚いて声をあげそうになったら、


「一人の食事は寂しいでしょうから、カワイイボクが居てあげましょう!」


 と、また反対側から声がかけられ、その声を飲み込む事となった。


「皆なら……美味しい、よね……」


 更に、また後ろからも。
 結局、その冷凍食品は袋ごと電子レンジに入れるタイプのもので、ハサミは必要なかった。
 けれど、私は、とても満ち満ちていた。


おわり

>>521-523
ありがとうございました!


明日早いので、今日は寝ます
また、気が向いたらこういう変な事しようと思います
おやすみなさい


「考え直す気は、無いのかい?」
「はい。申し訳、ありません」


 何度目の問いかけになるだろう。
 全く、この男の真面目さは評価していたが、ここまで頑固だったとは。


「……」


 ソファーに腰掛け、デスクの前に座りまっすぐこちらを見る彼と目を合わせる。
 彼の表情が最後に変わったのを見たのは、いつだろうか。
 私が覚えている限りでは、彼の元からアイドルの卵達が去っていった時、か。


 気にするな、とは言わない。
 だが、同時に珍しい事でもないのだ。
 アイドルを志した者が道半ばで力尽き、諦めるなど。
 大なり小なり、この世の中はそんな話で溢れかえっているのだから。


「部長には、大変お世話になりました」


 そう言って下げた頭の頂点では、いつもの寝癖がチョロリと立っている。
 それを見てか、この厳つい見た目にそぐわない繊細さに辟易してか、
私は右手を首筋にやり、ため息をついた。
 そして、無駄だとは思っていても、彼を引き止めるために声を発する。


「そう思っているのなら、続けてくれると助かるんだがね」


 彼は、とても優秀だ。
 少々コミュニケーション能力に欠ける部分はあるが、熱意は人一倍。
 考えてもみたまえ。
 輝くアイドルの手助けがしたいから、というポエミーな台詞を真顔で言う男だよ?
 そんな男が、たった一度の挫折で道を諦めてしまおうとしている。


「いえ……もう、決めたことですから」


 彼の目に、迷いは無い。
 しかし、私はとても欲深く、この男よりも遥かに意地が悪いのだ。
 さて、この不器用で、頑固で、真面目な男を……どうやって迷わせてやろうか。


「ふむ……そうか……」


 と、物分りの良い年寄りを装い、思考を巡らせる。
 自然と胸ポケットの煙草に手が行ってしまったが、
そうと彼に気付かれないよう、自然に元の場所に帰還させる。
 一服なんて、話を終わらせるための、良いタイミングだからね。
 それをわざわざ提供してやるわけにはいくまいよ。


「はい」


 まずいな。
 煙草の事を考えていたら、真っすぐなこの男の方が先にゴールに着いてしまいそうだ。
 気を引き締めなければならんな、うん。
 この男を崩すには……やはり、アイドルだろう。


「プロデューサー業に、本当に未練は無いのかい?」


 無い訳が、無い。
 彼の目には、未だに燻るものが、ハッキリと見える。
 それに少しでも、ほんの少しでも火が着けば、私の勝ちだ。
 さあ、どう答える?


「無いと言えば……嘘になります」


 違うよ、キミ。
 そうじゃあないだろう?
 私はね、そんな湿っぽい表情の男なんかは見たくはない。
 夢でも、希望でも、野心でもなんでも良い。
 燻らせているのなんて、何とも勿体無い話じゃあないか、ええ?


「ですが……もう、決めたことですから」


 燻らせる程の物があるなら、最後まで、燃え尽きるまでやってみよう、と。
 ……そう、思って欲しい。
 自分にはもう、やりたい事、できる事などもう残っていない、と。
 そこまでやってみようと、そう、思って欲しい。


 そんな私の耳に、コンコンと、ノックの音が届いた。


 コンコン。


「……」


 とても控えめな、ノックの音。
 しかし、今はその主に構っている場合では無い。
 私は今、目の前の頑固者を説き伏せるために――


「……どうぞ。開いているよ」


 ――と、思ったが、中に入る事を許可した。
 何とも不思議な感覚なのだが、これと言った理由は無い。
 本当になんとなく……そう、なんとなくだが、ドアの向こうに居る人物が、
流れを変えるような気がしたのだ。


 ガチャリ、という音。
 ドアがゆっくりと開かれ、ノックの主が姿を現した。
 ……ほほう、これは……中々どうして。


「失礼します」


 中に入ってきたとびきりの美人は、その容姿によく合う、とても美しい声で言った。
 そして、男が、ほんの少し目を見開いた。
 ……いやはや、こいつは驚いた。


「あの……アイドル部門の面接会場は、ここでしょうか?」


 私の勘も、捨てたものじゃあないね!


「キミは?」


 流れが変わったのを感じる。
 さあて、こいつは思わぬカードが手札に入ってきたかもしれないぞ。
 彼女が、この男を切り崩すためのエースか、はたまたジョーカーか。
 それを考えるのは……うん、名前を聞いてからでも、遅くはないな。


「モデル部門の、高垣楓と申します……」


 キミ、知ってるかね?
 男を迷わすのは、いつも女だ。


 私は、二人には見えないように、ニヤリと口の端を釣り上げた。


「モデル部門の君が、どうして?」


 そうだ、確か見た事がある。
 モデル部門で人気の高垣楓くん。
 いやはや、入室して来た時にすぐわからないとは、
私も随分と視野が狭くなっていたらしい。


「その……アイドルの面接を受けさせていただこうと思って」


 視線が泳ぎ気味だ。
 成る程、確かにここは面接会場では無いし、いるのはむさ苦しい男が二人だけ。
 その内の一人は、今は無表情に戻っている大男だ。
 しかし、モデルからアイドルになろうという行動力の割に、腹が座っていない印象。
 人見知りの気でもあるのかな、この子は。


「残念だが、此処は面接会場では無いよ」


 それに、面接があるのは午後からだからね、と付け加える。
 それを聞いた高垣くんは、まあと上品に驚きながら、少し顔を赤くした。
 うんうん、美しいだけでなく、可愛げもあるじゃあないか。


「念のため聞いておくが、異動の許可は取っているのかね?」


 大事な事だ。
 許可も無しに勝手に部門を異動するというのがまかり通ってしまっては、
我がプロダクションは無法地帯になってしまうからね。


「ええと、許可はとくに取っていません」


 ……何だって?
 お嬢さん、君はまさか、思いつきでアイドルの面接を受けようと思ったのかな?


「この事を話すのも初めてで、なんとなく受けてみたくなって……」


 そうか、なんとなくか。
 なんとなくだったら、仕方ないね。
 そういう、なんとなくに流されて良いようになるというのを私も体験したばかりさ。


「なるほど、そういう事なら話は早い」


 私の言葉を聞いて、高垣くんは「え?」と首を傾げた。
 そんな何気ない仕草も華があるとは、恐れ入るね。


「今から、私が直接面接をしようじゃないか」


 なあに、少し予定が一人分早まっただけさ。
 ニコニコと笑う私に、高垣くんが愛想笑いを返した。


「面接に一人では不足だな……よし、君も参加しなさい」


 と、他人事のように私達のやり取りを見ていた男に声をかける。
 突然話を振られて戸惑っているようだが、そういう時こそ、隙が出来る。
 私はね、そんな隙を見逃してやる程お人好しじゃあない。


「なあに、歌を……聞かせて貰うだけさ」


 すぐに済むだろう? と、肩をすくめておどけた調子で言う。
 何も言わない彼に、高垣くんが不安そうな視線を向けている。


「……聞いて貰えますか? 私の、歌」


 意を決したように、高垣くんが彼に話しかけた。
 おずおずと話しかけるその様子は、まるで迷子の子供のようだ。
 君、女性に――アイドルになろうとしている者に、こんな顔をさせて良いのかい?


「……はい、わかりました。私で、良ければ」


 状況が状況で無かったら、今の言葉を聞いて大笑いしていただろう。
 アイドルから離れようとしていた男が、アイドルに釣られたのだから。
 迷子の女に連れられて、道を真っすぐ進む男が迷う。
 こんな、愉快痛快、奇妙奇天烈な話があるかね!


「ははは! そうと決まれば、聞こうじゃあないか!」


 おっとと、我慢できずに笑ってしまったよ!

  ・  ・  ・

「……――さて、キミは彼女をどう見る?」


 響いてくる、美しい歌声。
 それを聞く邪魔になってしまうとは思ったが、これはあくまでも面接だ。
 もう一人の面接官の意見も、聞いておくべきだろう。


「……逸材、かと。それも、トップアイドルになれる程の」


 彼の言葉に私は満足し、頷いた。
 そう、彼女は逸材だ。
 惜しむらくは年齢……もっと早く、彼女をアイドル部門に引き抜いておけば良かった。
 だが、それを差し引いても、私の高垣くんへの評価は彼と同じ。
 それに、今までのモデルとしての経験が、今の彼女を形作っているのもまた事実。


「だが、難しい問題もある」


 それは、彼女が現在既にモデル部門で活躍しているという事だ。
 道すがら話を聞いてみたが、私が知っている以上に。
 そんな彼女をモデル部門の人間が簡単に手放すとは思い難い。


「そう……ですね」


 彼も、その事には気付いている。
 今の我が社に所属するプロデューサー達は、彼も含めて若い者が多い。
 アイドル事業部自体が、プロダクション内でもまだまだ新設の部門なのもある。
 そんな、先のわからない所、経験の浅い者に、彼女を任せようとは、
私だったらば絶対に思わないだろう。


「さて……どうしたものかねぇ」


 もっと早く引き抜いておけば、というのは、年齢だけの問題ではない。
 彼女がモデルとして成功し、モデル部門の人間が手放すのを渋るようになる前に、という意味もある。


 モデルとして、既に成功している高垣くんを任せるに足る人物。
 だが、その人物は一人で彼女をプロデュースするには足りない。


「何か、良い考えは無いものか……」


 さて、優秀なキミの事だ。
 わかっているんだろう?


「……」


 顎に手を当て、考えるフリをしながら、考える時間を与える。
 その間にも、高垣くんの歌声は私達の耳に届けられている。
 うむ、これならば文句無しに合格だ。
 文句などつけようものなら、今後のオーディションの敷居が高くなりすぎてしまう。


「困ったねぇ……本当に、困った」


 さて、彼女の歌声は、君の燻った心にも届いたのかね。
 そろそろ、彼女の歌が終わってしまう。
 私としては、それまでに君の答えが聞きたい所なんだが。


「……」


 しかし、それでもこの頑固者は動かない。
 いや、そんなに簡単に決意を翻しても良いものかと、そう思っているのかな。
 やれやれ、どうしようもない程、不器用な男だ。


「残念だが、彼女の申し出を断るしかない、か」


 だから、私のような男に簡単に転がされてしまうのだよ。


「待ってください!」


 思わず出てしまった大声に彼自身も驚いたようで、口に手をやっていた。
 はっは、私も驚いたよ。
 キミ、意外と大きな声が出るんだねぇ!


「しかし……それしか無いのではないかね?」


 それでも、私は追撃の手を緩めない。
 恐れるキミが迷った末、階段を登る一歩を踏み出すその時まで。
 踏み出す力はもう、彼女の歌声から貰っているはずだ。
 ――さあ!


「……部長が彼女を担当し、私がその補佐をする。それならば――」


 その手があったかとポンと手を叩き、続く彼の言葉を聞き続けた。
 それは、高垣くんの歌声と重なり、私は最高のデュエットを聞いている気分になった。

  ・  ・  ・

「あの、どうでしたか?」


 素晴らしかった。
 高垣くん、キミの歌声は、私に笑顔を届けてくれたよ。
 ああ、そこに居る、苦虫を噛み潰したような顔の男は放っておきたまえ。
 自分がしてやられたとわかり、悔しい思いをしている真っ最中だからね。


「アイドルとしてやっていける資質は、ありそうでしょうか」


 しかし、あまりいじめるのも可哀想だ。
 右手を首筋にやっている彼の肩をポンと叩き、意識を彼女に向けさせる。
 そんな彼の顔は、やはり無表情で、厳しい。


「十分あります」


 まるで無口な車輪。
 だが、十分にプロデューサーの顔をしていた。


「……良かった」


 彼の返答を聞き、高垣くんは安心したようなホッと息をついた。
 しかし、それも束の間、


「では、来週から、アイドル部門へ異動といいうことで良いでしょうか」


 さっきまでの私達のやり取りを聞いていなかった彼女は、実にサラリと言った。


「それは、少し……」
「そうだね、それは少し――」


 ああ、今日はなんて愉快な日なんだろうね!


「――悠長すぎる。今から、モデル部門に行って話をつけよう」


 私の言葉を聞いて、とても低い声と、とても美しい声が「えっ?」と重なった。
 呆けた顔をしている場合ではないよ、キミ達。
 特に高垣くんはアイドルなんだから、笑顔でいなきゃあいけないな。
 あー……キミは笑顔が下手だから、今はまだ無口な車輪で十分だ。
 なあに、私が本気を出そうと言うんだ。
 前途ある若者の笑顔一人分位は、補ってみせようじゃあないかね。


おわり

寝ます
おやすみなさい

すき
おつ

書きます


武内P「……ポ、ポコチン?」

未央「? どうしたの?」

武内P「あ、いえ……聞き間違いをしてしまったようです」

卯月「珍しいですね、ポコチンさん」

武内P「!?」

凛「ポコチン、疲れてるの?」

武内P「!?」

武内P「……」

武内P「!!?」

武内P「あ……あの、皆さん?」

未央「どうしたの、ポコチン?」

卯月「ポコチンさん……顔が真っ青ですよ」

凛「ポコチン……最近、無理しすぎじゃない?」

武内P「あの……それは、ゲームか何かでしょうか?」

未央・卯月・凛「?」

武内P「……!?」

武内P「からかっている、訳では……」

未央「ポコチン……大丈夫? 少し、休んだほうが良いんじゃない?」

武内P「なさそう、ですね……」

卯月「ポコチンさん、ソファーに横になってください!」

武内P「……申し訳ありません。少し、そうさせていただきます」

凛「ポコチン、私達に何か出来る事ある?」

武内P「……」

武内P「少し……一人にして頂けると、助かります」

未央「一人にって……そんなポコチン、放っておけないよ!」

卯月「ポコチンさん、何か欲しいものがあったら遠慮なく言ってください!」

武内P「いえ……お気遣いなく」

凛「遠慮しないで良いから……アンタ、私のポコチンでしょ」

武内P「いえ……渋谷さんのでは――」

凛「――えっ?」

武内P「あっ、いえ……今のは……!」

凛「ポコチン……?」

武内P「……!」

凛「え……何? えっ……え?」

未央「し、しぶりん! ポコチン、疲れてただけだって!」

卯月「そ、そうですよ! ねっ、ポコチンさん!?」

武内P「は……はい」

凛「そう、だよね。ポコチン、疲れてただけだよね」

凛「ポコチンは……私のポコチンだよね」

武内P「……はい。私は、貴女のプロデューサーです」

凛「!? ふっ、ふざけないでよ!」

武内P「!?」

武内P「あの……渋谷さん!?」

凛「きゅ、急に私のポコチンじゃないって言ったり……!」

武内P「あ、いえ、それは――!」

凛「そう思ったら、突然ぷっ、ぷ、プロデューサーだなんて!」ウルウルッ

武内P「! 渋谷さん、泣いて……?」

凛「っ! ポコチンの馬鹿っ!」ポロポロ

武内P「渋谷さん! まっ、待ってください! 渋谷さん!」


ガチャッ!…バタンッ!


武内P「……どうして……こんな事に……!?」

未央・卯月「……」

未央「……今のは、ポコチンが悪いと思う」

武内P「本田さん……?」

卯月「ポコチンさん、私達は凛ちゃんを追いかけます」

武内P「島村さん……」

未央「そう、だね。うん、そうしよう、しまむー」

卯月「……戻ってきたら、いつものポコチンさんに戻っててください」

未央「……ポコチン。私達、ポコチンの事信じてるから」


ガチャッ…バタン


武内P「……」

武内P「……本当に……何が何やら……!」

武内P「皆さんには、ポコチンという単語がプロデューサーと認識されている……?」

武内P「……」

武内P「では、プロデューサーという単語は……?」

武内P「……!」

武内P「……私の考えが正しいのなら、渋谷さんに謝らなくては」

武内P「しかし、一体何故こんな事に……!?」


ガチャッ


アーニャ「おはようございます、ポコチン」

美波「おはようございます、プロデューサーさん」

武内P「おはようございます。はい、なんとなくわかりました」

武内P「新田さん。少し、お話が」

美波「話、ですか?」

アーニャ「ポコチン、アー、私が居ては駄目、ですか?」

武内P「……そうですね、申し訳ありませんが」

アーニャ「ニェート、構いません」

アーニャ「ポコチンには、アー、いつもお世話になっています」

アーニャ「ポコチンの言う事は、出来る限り聞きたい、です」

武内P「……はい、ありがとうございます」

アーニャ「ポコチン、美波。失礼します」


バタンッ


武内P「……」

武内P「……さて、それではお話を」

美波「はい。でも、急に改まって……何かあったんですか?」

武内P「そう、ですね。はい、早急に解決しなければなりません」

美波「……そんな」


美波「ポコチンさん! 一体、何があったんですか!?」


武内P「!?」

美波「……ポコチンさん? あの、ポコチンさん?」

武内P「あ、ああ、いえ……申し訳ありません」

美波「ポコチンさん……?」

武内P「……」

武内P「……すみません。一つ、質問が」

美波「? はい、何ですか?」


武内P「プロデューサー」


美波「え、ええっ!? きゅ、急にどうしたんですか!?///」

武内P「新田さんは、今の単語を聞いてどう思いましたか?」

美波「そ、そんな事聞かれても……///」

武内P「お願いします、新田さん。これはとても大事な事なのです」

美波「……ポコチンさん」

武内P「……」

美波「……その、本当に……言わないと駄目ですか?」

武内P「はい、お願いします」

美波「……え、えっと……その///」

武内P「……」

美波「ポコチンさんのにだったら……良い、ですよ///」

美波「や、ヤダ、私ったら!///何言ってるんだろう!///」

美波「すっ、す、すみません!///失礼します!///」


ガチャッ!…バタンッ!


武内P「……」

武内P「……意味がわからない……!」

武内P「プロデューサーは、ポコチンという意味ではない?」

武内P「……新田さんが、ポコチンと言っただけで顔を赤らめる筈がない」

武内P「ならば……プロデューサーとは、一体どんな意味に……?」

武内P「……」


ガチャッ


みりあ「おはようございます! ポコチン!」

武内P「……おはよう、ございます」

みりあ「? どうしたの? ポコチン、なんだか元気無い?」

武内P「……いえ、そんな事は」

みりあ「むー! ポコチン、何か隠してるでしょ」

武内P「……」

みりあ「ねぇねぇ、ポコチン。何かあったの?」

武内P「いえ……特に、何も」

みりあ「でも、ポコチン元気無いよ。みりあ、わかるもん」

みりあ「! そうだ! 良い事思いついた!」

武内P「……赤城さん?」


みりあ「ポコチン、いい子いい子」

ナデナデ…


みりあ「……えへへ! ポコチン、これで元気でた?」

武内P「……」

武内P「はい、ありがとうございます」

  ・  ・  ・

武内P「……」

武内P「……一刻も早く解決しなくては――!」

武内P「……」

武内P「しかし、一体何が原因で……?」

武内P「千川さんと相談して……いや、彼女は無事なのか?」

武内P「……」


ガチャッ


ちひろ「おはようございます」

武内P「……おはよう、ございます」

武内P「……千川さん」

ちひろ「? はい、何ですか?」

武内P「……私の職業は、何ですか?」

ちひろ「え? あの、急に何を?」

武内P「申し訳ありません。とても、大事なことなのです」

ちひろ「えっ? ええと……」


ちひろ「プロデューサー……ですよ?」


武内P「! 千川さん! 今日ほど、貴女を頼もしいと思ったことはありません!」

ちひろ「職業を言っただけなのに!?」

  ・  ・  ・

ちひろ「……なるほど、そんな事が」

武内P「恐らく、彼女達は……私に異常があると感じています」

ちひろ「それは……困りましたね」

武内P「……ええ」

ちひろ「思い当たる原因は、無いんですか?」

武内P「新田さんでは、ありませんでしたから……」

ちひろ「美波ちゃんが原因でないとすると……」

武内P・ちひろ「……」

ちひろ「……兎に角、原因がわからない以上は――」

武内P「――これ以上の被害を防ぐ、ですね」

ちひろ「はい。なので、今日はアイドルの子達への対応は私がします」

武内P「……宜しいのですか?」

ちひろ「ええ、任せてください!」


ちひろ「ポコチンって、言わなければ良いんですよね?」


武内P「……!?」

ちひろ「ポコチンさん? あの、ポコチンさん?」

ちひろ「えっ、えっ、ちょっと嘘、ヤダ! 私もですか!?」

武内P「……はい……!」

美波トラブルメーカーすぎやろ!

ちひろ「そんな……なんで……!?」

武内P「……もう、何もわかりません」

ちひろ「そ、それじゃあ……ポコチンさんには……」

ちひろ「わ、私が……ぷっ、プロ、デューサーって言ってるように!?///」

武内P「……」

武内P「待ってください。今、何と?」

ちひろ「で、ですから……ぷ、プロデューサー……です///」

武内P「……」

武内P「3つの単語が関係していたと思ったのですが、一つは元に戻った……?」

武内P「渋谷さんが怒り、新田さんが顔を赤らめる……」

武内P「その単語とは……一体……?」

ちひろ「……ポコチンさん?」

武内P「……」

ちひろ「あっ、違……プロデュー……サー……さん///」

武内P「! すみません、少し、考え事をしていたので」

ちひろ「……プロデューサーさん」

武内P「……はい。私には、それで普段と同じ呼び方に聞こえます」

ちひろ「……うぅ、そうとはわかってても、さすがに恥ずかしいですよ!///」

ガチャッ

凛「……ポコチン」

美波「……ポコチンさん///」


武内P「……お二人とも」


凛「ポコチン、さっきはゴメン。急に言われて、驚いちゃって」

美波「ポコチンさん……私、良いです……よ///」


武内P「……あの、仰っている意味が、よく……」

ちひろ「……ぷ、プロデューサーさん」


凛・美波「えっ!?」


ちひろ「今のは忘れてください!」

凛「だけど……ポコチン、急にあんな事はもう言わないで」

美波「ポコチンさん、美波、頑張ります!」

武内P「……お二人に、質問があります」

凛・美波「?」

武内P「私は、貴女達にどんな言葉をかけたのでしょうか?」

凛・美波「えっ?」

武内P「お願いします。答えてください」

凛・美波「……」

凛・美波「……あ、アイドル///」

ちひろ「ええっ!? そんな事を!?」

武内P「……混線している単語は4つだった……!?」

武内P「お、教えてください! アイドルとは、一体何ですか!?」

凛「そ、そんなの……い、言えないから!」

美波「そ、そうです! 女の子に何を言わせるつもりですか、もう!///」

武内P「……!?」

ちひろ「ポコチンさん……あの、さすがに……」

武内P「……」

凛「ポコチン、次に言ったら……本当に怒るからね」

美波「ポコチンさん、私は心の準備は出来てますから///」

武内P「……申し訳、ありません」

武内P「今の私は、少しおかしいようです」

美波「えっと……どういう意味、ですか?」

凛「……でも、言われてみれば……確かに今日は変かも」

武内P「私には、皆さんの仰る言葉が、違う言葉に聞こえるのです」

凛・美波「えっ?」

武内P「……ポコチンという言葉が、プロデューサーと聞こえます」

凛「わ、私そんな事言ってない!」

武内P「……」

武内P「どうしてこのタイミングで戻るんですか……!?」

武内P「……千川さん、事情説明をお願いします」

ちひろ「そう、ですね。余計に混乱しそうですから」

凛「ねえ、アンタは私の……プロデューサー?」

武内P「! はい、考えている事が同じなら、間違いなく!」

凛「……うん。それなら、良い」

美波「私は……プロデューサーさんの、アイドルですよね?」

武内P「! は、はい! その通りです!」

凛・ちひろ「……」

武内P「あっ、いえ! 今のは違います! その……」


武内P「……ポ、ポコチン?」



おわり

寝ます
おやすみなさい

なにがなにやら
ただ美波は確信犯

>>549
ミナミ、プロデューサー言うてるやん

>>549
ここの美波さん切れ味よすぎる

ギャグに振り切った美波さんも良いですけど僕は一次創作の本家本元の美波さんのやつが読みたいです!

ミナミィ…女でもセクハラは罪になると思います。

新田さんはヴィーナスシンドロームが格好良くて大好きなので、真面目に書くならGガンにぶち込みます
三村さんはもう本当ドストライクな上に衣装もエッチすぎるので、真面目に書くならエロパロ行きです

ネオドイツの女になるのか……

杏ちゃんがきらりんとPちゃんをくっつけようと画策してたら勘違いしたきらりんが杏ちゃんをPちゃんとくっつけようと
電気の止まったエレベーター
密室で男女3人
何も起きない筈はなく

勇者武内の続編読みたい

勇者が行けるんだから346アンダーザブリッジも行けるんじゃなかろうか

今西部長Pと勇者武内Pはまた書きます
が、先にこれ書きます


https://www.youtube.com/watch?v=odBK6h_mNX8

ドモン「何? アイドルが来るだって?」

レイン「ええ、そうなの。だから、今日はどこにも行っちゃ駄目よ!」
ドモン「おいおい、何だってまたそんなもんが来るんだ」
レイン「本国が、決勝戦のバトルロイヤルを前に――」
ドモン「歌で応援、ってか? はっ! 冗談はよしてくれ!」
レイン「しょうがないでしょ! 私が決めたんじゃないんだから!」

ドモン「ふん、そんな事は俺は知らん。勝手にやっててくれ」

レイン「あっ!? ちょっと、どこ行くのよドモン!?」

ドモン「良いかレイン。俺たちファイターは魂をかけて戦ってるんだ」

ドモン「アイドルなんてもん、お呼びじゃあないのさ」

レイン「そりゃあ……アナタならそう言うと思ったけど……」

ドモン「だったら話は早いな。じいさんの所に行ってくる」

レイン「あっ……もう!」

レイン「ドモンのバカ!」

ストーカー「――さて、皆様。今日は、ドモン・カッシュの元に一風変わったお客様が」

  ・  ・  ・

美波「……!」

  ・  ・  ・

ストーカー「それは彼女、シンデレラプロジェクトのリーダー、新田美波嬢です」

ストーカー「アイドルの彼女は、ネオ・ジャパンの代表の応援に駆けつけたのですが……」

ストーカー「……街中に一人、とてもお困りの様子」

ストーカー「果たして、ドモン・カッシュは彼女にどう関わっていくのか?」

ストーカー「そして、新田美波嬢はその時に何を思うのか?」

ストーカー「……――それでは!」

ストーカー「ガンダムファイト! レディー~……ゴー!」




    魂へ響け! ヴィーナスの歌声


ドモン「……全く、歌なんてもんが何の役に立つって言うんだ」

ドモン「そんなもんを聞いてる暇があったら修行してた方が遥かに良い」


ガヤガヤ……!


ドモン「――ん? なんだか騒がしいな」


チャラ男A「良いじゃんお姉ちゃん、ちょっとだけだから」
チャラ男B「そうそう! 固い事言うなって、なぁ?」

美波「あの……こ、困ります!」

チャラ男A・B「へへへへへへ!」


ドモン「……丁度良い。ムシャクシャしてた所だ」

ドモン「――おい! そこのお前達!」

チャラ男A・B「ああん?」

美波「……!?」

ドモン「こんな真っ昼間っから、随分と元気が良いじゃないか」

チャラ男A「あぁ? なんだテメェ、とっとと失せろ」
チャラ男B「!? お、おい……コイツ……いや、この人は!」
チャラ男A「は? 何ビビってんだよ、お前」

ドモン「俺も丁度元気が有り余っててね、良ければ相手になるぜ」

コキッ…! コキッ…!

チャラ男A「!? ね、ネオ・ジャパン代表の……ど、ドモン・カッシュ!?」

ドモン「いきなり呼び捨てか?」

チャラ男A・B「~~~っ!?」
チャラ男A・B「す、すすすす、すみませんでした~~~っ!」

ドモン「……ふん!」

美波「……あ、あの!」

ドモン「気にするな。別に、アンタのためにしたことじゃ無い」

美波「そうじゃなくて! 今みたいに、脅すのは良くないと思います!」

ドモン「……な、何だって?」

ドモン「おいおい! 俺は、仮にもアンタを助けたんだぞ!?」

美波「でも、アナタだったらもっと他に方法があったはずだわ!」

ドモン「ふん! それこそ、アンタには関係ないな!」

美波「……! 思った通り、ファイターの人って野蛮なんですね!」

ドモン「ああ、そうかい! 野蛮で悪かったな!」

美波「やっぱり、来なければ良かった! そうでなければ――」


ガヤガヤ……!

「おい、何だ? 何の騒ぎだ?」

「痴話喧嘩? というか、どこかで見たことがある……」


美波「っ……! と、とにかく場所を移しましょう!」

がしっ!

ドモン「!? お、おい!?」

ドモン「わかった! わかったから、マントを引っ張るな!」

  ・  ・  ・

美波「……ふぅ。ここまで来れば、もう安心ね」

ドモン「ったく、一体何だってんだ……!」
美波「アナタが、あんな人混みで大声を出すからでしょう?」
ドモン「それはお前もだろう!」
美波「もう、また大声を出して。そんなに注目されたいの?」
ドモン「……兎に角、その手を離してくれ」
美波「手?……あっ!」

ぱっ

ドモン「おい、俺はもう行くぞ」
美波「ねえ、その『おい』って言うの、やめて欲しいんだけど」
ドモン「しょうがないだろう。俺は、アンタの名前を知らないんだから」
美波「えっ?」
ドモン「何を驚いてるんだ。まさか、有名人だとでも言うつもりか?」
美波「あの……本当に、知らないの?」
ドモン「ああ、知らんな」
美波「……」

美波「……ミナミです。ミナミ、って呼んでください」

ドモン「すぐに別れるのに自己紹介か? 変わった奴だな……まあ良い」

ドモン「俺はドモン・カッシュ。知ってるとは思うが、ネオ・ジャパンのガンダムファイターだ」

ミナミ「ええ……よく、知ってます」

ドモン「おい」
ミナミ「ミナミ、です」
ドモン「……ミナミ、何で急に敬語を使うんだ?」
ミナミ「だって、アナタはネオ・ジャパンの代表ですもの」

ドモン「はっ! 急に敬語なんて気味が悪いぜ!」

ミナミ「きっ、気味が悪い!?」

ドモン「ああ、そうさ。この俺に食って掛かる奴だぞ?」
ドモン「見た目の割に気が強いって、もうわかってるんだ」
ドモン「そんな奴に敬語を遣われるなんて、気味が悪くってしょうがない」

ミナミ「……」
ドモン「どうした、言い返さないのか?」
ミナミ「いえ……アナタ、私に気を遣ってそう言ってるんでしょう?」
ドモン「どうしてそうなる!? 俺は、別に……!」
ミナミ「私、弟が居るんだけど……なんだかちょっとアナタと似てるな、って」
ドモン「っ~~~!」

ドモン「……お前も、その、『アナタ』ってのはよしてくれ」

ミナミ「……」

ドモン「――ドモンだ! 俺のことはそう呼べ、ミナミ!」

ミナミ「うふふっ! ええ、わかったわドモン」

ドモン「……自己紹介をしたって事は、何かあるんだろう?」
ミナミ「あら、どうしてそう思うの?」
ドモン「……」

ドモン「……昔、似たような手でよく誤魔化されてたからだ」

ミナミ「ふぅん?」
ドモン「良いから話してみろ。こうなったらもうヤケだ」
ミナミ「あのね、ドモン。私、困ってるの」
ドモン「どうしてだ」
ミナミ「お仕事で此処に来たんだけど、他の人とはぐれちゃって……」

ドモン「はぐれた? だったら、連絡をすれば良いだろう」
ミナミ「ねえ、今の私、何も持ってないと思わない?」

ドモン「盗られたのか? 集合場所は決めてないのか」
ミナミ「私、この街の土地勘が無いの。きっと、迷っちゃうわ」

ドモン「……おい、まさか」
ミナミ「そんな時に、助けてくれる親切な人は居ないかな、って思うんだけど」

ドモン「……」

ぐーっ…

ミナミ「まあ、凄いお腹の音! そういえば、私、朝から何も食べてないの」
ドモン「……」
ミナミ「ありがとう、ドモン♪ アナタって、優しい所もあるのね」
ドモン「……」

ドモン「……まだ何も言っちゃいないだろう!」

https://www.youtube.com/watch?v=6xIwvAvdVzs

  ・  ・  ・

ミナミ「うわぁ、ファイターの人ってすっごく良く食べるのね」
ドモン「ガツガツ……ああ、でないと……ガツガツ……力が入らないからな」
ミナミ「あっ、ほっぺの所、ついてるわよ」
ドモン「ガツガツ……後で取るから良い……ガツガツ……!」
ミナミ「もう! 歳上なのに、子供みたいなんだから!」

ちょんっ

ミナミ「――はい、取れた」
ドモン「ガツガツ……ああ、悪いな……ガツガツ……!」
ミナミ「……ふふっ♪」

  ・  ・  ・

露天商「よーう、そこのお兄ちゃん! 彼女にプレゼントはどうだい!」

ドモン「か、彼女!? 待て、コイツはそんなんじゃ――!?」
ミナミ「む、コイツ?」
ドモン「むぐ、み、ミナミはそんなんじゃあない!」
ミナミ「あーあ、そういう言い方って無いと思うんだけど。それに、またコイツ、って」
ドモン「だったらどうすりゃ良いってんだ!?」
ミナミ「それじゃあ……コレください♪」

露天商「毎度ありぃ!」

ドモン「……ちゃっかりしてるぜ!」


  ・  ・  ・

ミナミ「ねえ、ドモン。次はどこへ連れて行ってくれるの?」
ドモン「そうだな、次は――って、まだどこかへ行くつもりか!?」

ミナミ「ええ。だって、お仕事にも役立つかもしれないもの」

ドモン「こんな、街を散策することがか?」
ミナミ「そうよ。だから、もうちょっとだけ……ね、お願い♪」
ドモン「……やれやれ。なんだかどうにも、俺はミナミのお願いに弱いらしい」
ミナミ「うふふ、これでもお姉ちゃんなのよ、私」
ドモン「……これでも、俺の方が歳上なんだがな」

ミナミ「……」ニコニコ
ドモン「そんな笑顔を向けられちゃ、返す言葉もなくなっちまうぜ」
ミナミ「これが、パワーオブスマイルよ、ドモン」
ドモン「とんでもないな。ミナミがファイターでなくて助かったよ」
ミナミ「ちょっと、それはどういう意味?」
ドモン「さあね」

ドモン・ミナミ「……」

ドモン「ははははっ!」
ミナミ「うふふっ」


チャラ男A「あっ、あの二人は……!」
チャラ男B「チクショー! イチャイチャしやがって……!」


???「……はっ! 随分と腑抜けた顔をしてるじゃねえか、ドモン・カッシュ」


チャラ男A・B「あ、アンタは――!?」

  ・  ・  ・

ドモン「なあ、いい加減ミナミの仕事ってのを教えてくれないか?」
ミナミ「内緒。もう、しつこい男の子は嫌われちゃうわよ?」
ドモン「男の子って……俺はもうそんな歳じゃない」
ミナミ「ほっぺにごはん粒をつけるなんて、まだ男の子の証拠よ」
ドモン「おい、もうその話はよして――」


チャラ男A・B「ふ、二人共止まれー!」


ミナミ「っ!?」
ドモン「お前達……さっきの」


チャラ男A「み、見せつけやがって!」
チャラ男B「い、いい気になるなよー!」


ドモン「へっ……下ってろ、ミナミ」
ミナミ「ドモン! 暴力は駄目よ!?」
ドモン「暴力? そいつは違うね」

ドモン「いい気になってるのはどっちか、拳で教えてやるだけさ……!」

コキッ…! コキッ…!

チャラ男A・B「ひ、ひ、ひいいい~~~っ!?」

ドモン「さあ、お前達。覚悟し――」


ミナミ「きゃあっ!?」


ドモン「!?」

仮面ライダーもガンダムも知らないからよくわからん

???「はーっはっはっは! 女連れでいい気になってたのは、どっちかなぁ!?」
ミナミ「は、離して! 離してください!」


ドモン「この声は――!?」


ミケロ「なぁ……ドモン・カッシュ!」


ドモン「ミケロっ!」

チャラ男A・B「ひいい~~~っ!」

だだだっ……!

ドモン「あっ、待て! お前達!」


ミケロ「おっとぉ、余所見をしてる場合かぁ!?」

ミケロ「――銀色の脚っ!」

ひゅばっ!


ドモン「しまっ――!?」

ドモン「ぐあああああっ!?」


ミナミ「ドモン! ドモーンっ!」
ミケロ「おっとぉ、女! 大人しくしてなぁ……ヘヒャハハハハ!」
ミナミ「っ……!?」

ドモン「うぐっ……! ミケロ、その汚い手を離しやがれ……!」


ミケロ「ああん? 聞こえねえなぁ」
ミナミ「う……ぐっ」


ドモン「ミケロォォォオオオ!」


ミケロ「そうだ! その目が見たかったんだよぉ!」


ドモン「貴様ぁっ! それでもファイターか!」


ミケロ「はっ! 俺は、お前に復讐するために悪魔に魂を売ったのさ!」
ミナミ「……アナタ、最低ね!」
ミケロ「ああ、そうさ。だが――俺に舐めた口をきくんじゃねえっ!」
ミナミ「痛っ!?」


ドモン「や、やめろっ! ミナミに手を出すな!」


ミケロ「――舞台は整えてやる。街外れの廃屋に一人で来い」

ミケロ「誰にも言うんじゃねえぞ? わかってるとは思うがな!」


ドモン「ま――待てっ、ミケロ!」

ドモン「……くそおおっ!」

ドカッ!

(Gガン、アイキャッチ)


https://www.youtube.com/watch?v=SjP3672mNHA


(Gガン、アイキャッチ)

ドモン「……」


チャラ男A「ほ……本当に来やがった!」
チャラ男B「ど……どうすんだよ、やるのか!?」

ミケロ「ビビってんじゃあねえ!」

チャラ男A・B「ひいっ!?」
ミケロ「こっちには人質も居る、焦る事はねえさ」
チャラ男A「で、でも……マシンガンで撃てだなんて」
チャラ男B「お、俺たち……そこまでしたい訳じゃ……!」
ミケロ「そうか?」

ミケロ「ドモン・カッシュを撃つのと、俺に殺されるの……どっちが良い?」

チャラ男A・B「……!」

ミナミ「むーっ!むーっ!」

ミケロ「お前も、そこでよ~く見ときな」
ミナミ「むーっ!」
ミケロ「自分の国の代表が、無様にやられる所をなぁ……!」
ミナミ「……!」


ミケロ「――さあ、撃てっ!」


チャラ男A・B「うひいいいいっ!」

ドドドドドドドドドンッ!


ミナミ「むーっ!?」

ドモン「……」


チャラ男A「……や、やっちまった……!?」
チャラ男B「……ひ、人を殺しちまった……!」
ミナミ「むーっ! むーっ!」
ミケロ「……ふ……フヒヒヒッ!」


ミケロ「ヒャーッハッハッハァ!」


ドモン「……あの時の再現のつもりか? ミケロ!」

ぱらぱらぱらぱらぱらっ…


チャラ男A「じゅ、銃弾を素手で――」
チャラ男B「――全部掴み取ってる!?」
ミナミ「むーっ!」


ミケロ「だとしたらどうする、ドモン・カッシュ!」


ドモン「……ミケロ・チャリオット! ミナミという女に、見覚えがないか!」


ミケロ「知らねぇなぁ! 知りたければ――」


ドモン「――ああ……力づくで取り戻すまでだッ!」


ドモン「出ろおおおッ! ガンダアアアムッ!」


パチィィィンッ!

  ・  ・  ・

ドモン『……ふん! てっきり人質を盾にすると思ったぜ』

ミケロ『馬鹿言うなよ……盾にする? それじゃあ楽しめねえだろうが』

ドモン『その言葉、後悔させてやるぜ!』


ドモン「行くぞ、ミケロ! ガンダムファイトォォォ!」

ミケロ「盾なんかにゃあしねえさ」


ミケロ『だが、俺の脚が悪さをしちまうかもしれねえけどなぁ!』

ドモン『何っ!?』


ミケロ『レディー・ゴオオオッ!』


ドモン「まっ、待て! そっちは――!」


ミケロ『ヒャーッハッハ! ほらほら急げ、ドモン・カッシュ!』

ミケロ『でないと、お目当てのものがペシャンコになっちまうぜぇ!』


ミナミ・チャラ男A・B「!?」

ミケロ「そう――」

ミケロ『らあああっ!』

グワッ――


ミナミ・チャラ男A・B「っ~~~!?」


ガキィィン!

ドモン『ぐううううっ!?』


ミナミ・チャラ男A・B「!」


ミケロ「……良いねぇ、ドモン・カッシュ」

ミケロ『その調子で頑張れよ! ヒャーッハッハッハァ!』

ガキィィン! ガキィィン! ガキィィン!

ドモン『うっ!? ぐぁっ!? がっ!?』

ドモン「み、ミケロ……! お前は、ファイターとして恥ずかしくないのか……!?」

ミケロ『もう忘れたのか? 俺は悪魔に魂を売ったんだよ!』

ガキィィン! ガキィィン! ガキィィン!

ドモン『ぐあああああっ!?』

ドモン「ま……まずい……! このままじゃ機体が保たない……!」



「――フフフフフ! フハハハハッ!」

ミケロ『っ!? 誰だ!』

ドモン「! この声は――」


シュバルツ「人質を取られていながら無策で飛び込むとは――この愚か者がぁっ!」


ドモン『シュバルツ!』


シュバルツ「……だが、お前の行動が結果的に敵に隙を作り――」

ミナミ「ドモンっ!」

シュバルツ「――彼女を助けるに至った」


ミケロ『……ちいっ! 使えねえ奴らだ!』


シュバルツ「あの二人か? あの二人なら――」

チャラ男A・B「……きゅう」

シュバルツ「――私が灸を据えておいた」


ドモン「……ふっ!」

ドモン『思惑が外れたようだな、ミケロッ!』

ミケロ『……なあに、こっからは普通にお前をぶちのめすだけよ!』

ドモン『はいいいいっ!』

ドモン「――つっ!?」ズキンッ!

ミケロ『はっはぁ! 技にキレがないぜ、ドモン・カッシュ!』

ガキィィン!

ドモン『うぐううっ!?……まだまだあっ!』


ミナミ「駄目……! さっきまでのダメージで……!」
シュバルツ「ああ、確かにこのままでは勝目はないだろう」
ミナミ「アナタだったら、助けてあげられるんじゃないですか!?」
シュバルツ「いいや、それは出来ない相談だ」
ミナミ「どうして!?」

シュバルツ「奴らがしているのが――ガンダムファイトだからだ」


ミケロ『そらそらぁ! どうした!』
ドモン『ぐおおおおっ!?』


シュバルツ「ガンダムファイトとは、武闘家の拳と拳――魂のぶつけ合い」

シュバルツ「それに横槍を入れるなど、相手が誰だろうと同じファイターである私には出来ん」

ミナミ「でも……このままじゃ!」

シュバルツ「精々出来るのは……応援くらいのもの」

シュバルツ「貴女はそれをしに来たのでは?――新田美波さん」

美波「!」

https://www.youtube.com/watch?v=ccpHvu2D1lE

ドモン(なんだ……!? 歌が聞こえてくる……!)

ドモン(やられすぎて頭がイカれちまったってのか……!?)

ドモン(……いいや、違う)


美波「~♪」


ドモン「……ふっ、こんな時に歌うだなんて、どうかしてるぜ」

ドモン「応援歌、ってやつか?」

ドモン「……歌なんかで、何かが変わるわけが無い」


ミケロ『そろそろ終わりだ! ドモン・カッシュ!』

ヒュッ――ガシイッ!

ドモン『……そう思ってたんだが――』

ミケロ『何っ!? 受け止めただと!?』


ドモン「不思議と力が沸いてきやがるぜ!」

ドモン『行くぞおおおっ!』

ミケロ「な、なんだ!? なんだこのパワーは!?」

ドモン「肘打ち! 裏拳! 正拳!」

ドモン『てええりゃああっ!』

ガガガガガガガガッ!

ミケロ『ぐおおおおっ!?』

ミケロ「なんだ……!? 奴に、一体何が起こってやがる!?」


美波「~♪」


ミケロ「ちいいっ! その耳障りな歌をやめやがれっ!」

ミケロ『銀色の脚いっ!』

ヒュパッ!

ドモン「させるかッ!」

ドモン『分身殺法! ゴォォッド・シャドー!』

ガシィィッ!


ドモン「……ミケロ。お前は悪魔に魂を売ったと、そう言ったな」

ドモン「――だがッ!」

ドモン『今の俺には、勝利の女神がついている!』

ドモン『悪魔如きに、遅れを取るはずがないッ!』

美波「……ドモン……!」

ドモン『確かに届いたぜ、ミナミの歌声が。だから――』

ドモン「――今度は俺が見せる番だ!」

ドモン「お前が女神の歌ならば!」

ドモン『俺は戦神の指いいいっ!』

https://www.youtube.com/watch?v=BvKWpyGQCK0

ドモン「俺のこの手が真っ赤に燃えるぅ!」

ドモン「勝利をつかめと轟き叫ぶっ!」


ミケロ『くたばれ! ドモン・カァァァッシュ!』


ドモン『ばぁぁぁく熱ッ!』


ミケロ『虹色の脚ィィィッ!!』


ドモン『ゴッドッ! フィンガァァァ――ッ!!』


ガシィィィンッ!


ドモン・ミケロ『おおおおおおおおおッ!』

ミケロ「そうだ! 俺はこれを求めていた!」

ミケロ「ガンダムファイトは、こうでなくちゃ――」

ピッ!


ウォン『困りますね、勝手なことをされては』


ミケロ「うるせぇ! 邪魔するんじゃねえ!」


ウォン『いいえ。今すぐに引きなさい』


ミケロ「……ちいいっ!」

ミケロ『――とあっ!』

ヒュッ――

ミケロ『ドモン・カッシュ! 今日の所は見逃しておいてやる!』

ドモン『ミケロ! 逃げるつもりか!?』

ミケロ『はっ! 次に会う時までに、首を洗って待ってやがれ!』

ドモン『待てッ!』


ドモン「……ちいっ、逃げられたか」

  ・  ・  ・

美波「ドモンッ!」

ドモン「助かったぜ。あの歌がなけりゃ……やられてたかもしれない」

美波「もう、助けてくれたのはアナタと――」

シュバルツ「ドモン、彼女には大きな借りが出来たな」

美波「シュバルツさん、でしょ!」

ドモン「お説教はよしてくれ、シュバルツ。もうヘトヘトなんだ」
シュバルツ「ふん、それはお前が未熟な証拠よ」
ドモン「……勘弁してくれ!」
美波「ふふふっ!……本当、二人にはなんとお礼を言ったら良いか……」
シュバルツ「そうだな……それでは、サインを一枚いただこうかな」パチッ
美波「そんな……それだけだなんて……」

ドモン「おいおい、サイン? 有名人じゃああるまいし」

美波・シュバルツ「……」
シュバルツ「ドモン……お前、まさかまだ……?」

ドモン「何がだ? しかし、あの歌はすごいもんだったぜ」

https://www.youtube.com/watch?v=sXvyQotkrRc

ドモン「何なら、アイドルになったら良いんじゃないか?」

シュバルツ「……もう良い……もう喋るな、ドモン」
美波「……ふふっ……あはははっ!」
ドモン「? おい、どうして笑ってるんだ」

ドモン「あんな歌だったら、聞けば力が沸いて――」
シュバルツ「喋るなと言っているだろう、ドモン!」
ドモン「……?」


美波「あははははっ!」


おわり

真面目な新田さんはこれでクリアーですね!
寝ます
おやすみなさい

書きます



武内P「もうすぐ、次の街ですね」

凛「うん、かなりの強行軍だったけど」

武内P「皆さんに野宿をさせるわけには、いきませんから」

美嘉「だからって、一日で次の街に行くとはねー★」

武内P「本来ならば車を出したかったのですが……申し訳ありません」

楓「車が、来る間は無かったみたいですね」

武内P「……」

武内P「あの……縦一列で歩くと、そういう話だった筈ですが」

凛・美嘉・楓「?」

武内P「いえ……何でもありません」

  ・  ・  ・

みく「ちょっと待つにゃ! ここから先は行かせないよ!」

武内P「野盗、ですか」

みく「その通り! 水と食料を置いてくにゃ!」

美嘉「お金はいいの?」

みく「? お給料は、自分で稼ぐものでしょ?」

楓「まあ、しっかりしてるのね。偉いわ」

みく「みくも、もう子供じゃないからね! そういう所は――」


凛「ふーん! 隙あり!」

ヒュンッ!


みく「にゃあっ!? あっぶな!? 今、ガチで斬りかかってきたでしょ!?」

凛「外れちゃったけど……どうたったかな」

武内P「渋谷さんらしい、真っすぐで、良い『こうげき』でした」

みく「凛チャン!? ちょっとは躊躇いを持って!?」

美嘉「そうだよ凛。いくら野盗が相手でも――」


美嘉「カリスマ!★」

ブンッ!


みく「ひええっ!? そんな棒で殴られたら死んじゃうにゃ!?」

美嘉「あ、アタシも外れちゃったけど……ど、どうだった?」

武内P「城ヶ崎さんらしい、躍動感ある、良い『こうげき』でした」

みく「褒められるためにみくを攻撃するのやめてくれない!?」

楓「それじゃあ、次は私が……」

みく「待って! 魔法は、魔法は本当にまずいから!」

武内P「申し訳ありません。順番に行動する、決まりですので」

みく「みくのターンは!?」

武内P「最初の台詞で……はい、使われていますね」

みく「ターンが使われる程喋ってたの!?」


楓「めらめら燃えるから、メラ」

ボッ!


武内P「熱い!」

武内P「……あの、高垣さんの職業、実は遊び人ではないでしょうか!?」

  ・  ・  ・

みく「」


武内P「激しい、戦いでした」

凛「まさか、ネコミミが取れたら死ぬとは思わなかった」

美嘉「普段慣れてない衣装だと、気をつけないとだよねー★」

テレレテッテッテー♪

楓「あら? 今の音は?」

武内P「おめでとうございます。高垣さんの、レベルが上がったようですね」


楓のレベルが 1上がった! とくぎ 『利き酒』を覚えた!


武内P「何も覚えなかったようですね、先を急ぎましょう」

楓「新しい特技……これは、試してみる必要があると思います」

武内P「何も覚えなかったようですね! 先を急ぎましょう!」

  ・  ・  ・

武内P「日が暮れる前に、次の街に辿り着けましたね」

凛「ねえ、泊まる所はもう決まってるの?」

武内P「はい。既に予約は取ってあります」

美嘉「へー、さっすが準備が良いじゃん★」

楓「温泉は、ありますか?」

武内P「あの……普通の街ですので、温泉はありません」


飛鳥「やあ、君達が勇者一行かい。セカイを救うため、戦いの旅をする者達、か」


凛「! 魔王の影響が、こんな所にまで!?」

武内P「いえ、彼女は普段からああいう感じです」

  ・  ・  ・

武内P「それでは、私は野宿をしようと思います」

美嘉「いい加減観念しなって! 野宿じゃHPもMPも回復しないでしょ!」

武内P「ですが、部屋が一つだけというのは、あまりにも!」

凛「ふ、ふーん……わ、私は別に気にしないけど?」

武内P「渋谷さん。貴女はアイドル、そして、私はプロデューサーです」

美嘉「おーい、戦士と勇者でしょ」

楓「えっと……とりあえず先頭が私で、凛ちゃん、美嘉ちゃんの……」

武内P「!? 何をしているんですか、高垣さん!?」


楓・凛・美嘉・武内P「……」

スタスタスタスタ…


武内P「勝手に『並び替え』をしないでください!」

武内P「うおおっ!? 足が! 足が勝手に!」

楓・凛・美嘉・武内P「……」

スタスタスタスタ…


武内P「……ベッドが一つしか無い!?」

美嘉「ヤバ……ど、どうしよっか///」

凛「これは……『ゆうべはおたのしみでしたね』って事なのかな///」

武内P「いけません! 落ち着いてください!」


楓・凛・美嘉・武内P「……」

スタスタスタスタ…


武内P「無言でベッドに向かわないでください高垣さーん!」

楓「その話、お受け出来ません」

武内P「……!?」

楓「はい、一番乗りでーす♪」

ぼふっ!

凛「ふーん、ま、まあ戦士の私は、怖くなんて無いけど///」

ぼふっ!

美嘉「アタシ……僧侶じゃいられなくなくなっちゃう……///」

ぼふっ!


武内P「! ベッドの下に――!」

ズザァァァッ!


楓・凛・美嘉「潜り込んだ!?」


武内P「チャーラーラーリーラッチャッラーン♪」

楓・凛・美嘉「……zzz」コテンッ

武内P「……危ない……所でした」

  ・  ・  ・

宿屋「おはようございます」

宿屋「『ゆうべはおたのし』――って、ええっ!?」


武内P「……」ゲッソリ


宿屋「お楽しみすぎじゃあありませんか!?」

武内P「いえ、ベッドの下で寝たら何も回復しなかっただけです」

宿屋「ベッドの下!? それに、あの……」


楓・凛・美嘉「……」ションボリ


武内P「朝からお説教をしただけです。MPが減っているのは、はい、そのせいかと」

宿屋「そ、そうですか……」

  ・  ・  ・

武内P「昨日の移動の疲れもあり、準備もあります」

武内P「なので、二日間はこの街に滞在しようと思います」

凛「そんなにゆっくりして良いの?」

武内P「焦って行動して、皆さんに何かあっては困りますから」

美嘉「あっ、じゃあさ……で、デートでもする?」

武内P「いえ、私は昨日処理出来なかった書類を片付けようと思います」

凛・美嘉「……」

楓「けれど……準備と言っても、装備を選ぶのは一人では……」

武内P「そうですね……その時は仰って頂ければ、お付き合い致します」

凛・美嘉・楓「……!」グッ!

武内P「?」

  ・  ・  ・

凛「悪いね、付き合ってもらっちゃって」

武内P「いえ、装備を新調するのは、大事な事ですから」

凛「……あのさ、ちょっと聞きたかったんだけど」

武内P「? はい、何でしょうか」

凛「私って戦士、でしょ? てっきり、ビキニアーマーかと思ってた」

武内P「そう、ですね。その案もあったのですが……」

凛「ふ、ふーん、そうだったんだ」

武内P「……渋谷さんでは、その、はい……あの、すみません」

凛「? 何、ハッキリ言って」

武内P「……あの、そこまでサービスにならないと、会議で……はい」

凛「!?」

凛「待って、納得いかない」

武内P「し、渋谷さんには、渋谷さんの魅力があります!」

凛「そんな事聞いてない。私、ビキニアーマー着るから」

武内P「! 待ってください! それは、あまりに危険すぎます!」

凛「私がビキニアーマー着たら駄目って言うの!?」

武内P「そ、そうではなく! 『ぼうぎょ』的な問題が!」


防具屋「『ここで装備していくかい?』」


凛「はい!」

武内P「まだ買っていませんから!」

   ・  ・  ・

美嘉「アハハ、なんだか大変だったらしいじゃん★」

武内P「はい。なんとか説得して、ビキニアーマーはやめていただきました」

美嘉「アタシだったら、似合うと思わない?」

武内P「そう……ですね。城ヶ崎さんなら、似合うと思います」

美嘉「そ、そう? てっ、転職とか、してみようかなー」

武内P「いえ、城ヶ崎さんは僧侶から転職出来ません」

美嘉「へっ? なんで?」

武内P「……申し訳、ありません」

美嘉「いや、理由を聞いてるんだケド」

武内P「……申し訳、ありません」

美嘉「っていうか、何で謝ってるの!?」

美嘉「……まあ良いや、とりあえず薬草買って戻ろ」

武内P「はい、薬草はとても重要ですから」

美嘉「MPにも限りがあるからねー」

武内P「他に、何か必要なものはありませんか?」

美嘉「うーん……メイク道具も欲しいけど……」

武内P「? どうか、されましたか?」

美嘉「今は旅の最中だしね★ ナチュラルメイクで節約っしょ★」

武内P「城ヶ崎さん……」

テレレテッテッテー♪

美嘉「へ? 何で今レベルアップしたの?」


美嘉の計画性が 1上がった! 女子力が 3下がった!


美嘉「待って!? 下がりすぎじゃない!?」

  ・  ・  ・

楓「うふふっ、昼間は大変だったみたいですね」

武内P「そう、ですね……ですが、必要な事だったと思います」

楓「疲れは、酒場で飲んで忘れちゃいましょう」

武内P「しかし、アイドルとプロデューサーが……」

楓「あら、今は勇者と魔法使いだから、問題は無いと思います」

武内P「……たか」


みりあ「ねぇねぇ、そこのプロデュー……じゃなくて」


武内P・楓「?」

みりあ「ゆう……でもなくて、お兄さん!」

武内P「? はい、何でしょうか」


みりあ「ぱふぱふしていかない?」


武内P・楓「!?」

武内P「あの、赤城さん? 何を仰って……」

楓「見損ないました」

ぽこぽこっ!

武内P「痛っ、あ痛っ、あの、まだ何もしていませんから!」

楓「まだ?」

ぽこぽこっ!

武内P「何もしませんから!」

みりあ「えへへ、仲間のみ……僧侶さんは、とーっても喜んでくれたよ!」

みりあ「ぱふぱふしながらナデナデしたら、泣いて喜んでた! えへへ!」

武内P「アニメのあのシーンはそういうのではありませんから!」

楓「……貴方も、ぱふぱふに興味がおありなんですか?」

武内P「……」


勇者は逃げ出した!

  ・  ・  ・

凛「それで? ぱふぱふに興味はあるの?」

武内P「ありません。というかそうですよね、同じ宿ですものね」

美嘉「アタシは、その……アンタにされるのもアリかなー★」

武内P「しません。しませんから、皆さんチラチラ見ないでください」

楓「私、ショックでした。まさか逃げるなんて」

武内P「……申し訳ありません。ですが、あの場合は……」


楓「ずばり、毒針」

ふっ!


武内P「あ、チクッと……って、何をするんですか!?」

楓「また逃げられたら、今度はショックで死んでしまうかもしれないので……」

武内P「その逃がさない方法は、私が死ぬやつじゃないですか!」

楓「HPが赤くなれば、動きも鈍るかと思うんです」

武内P「毒針は、確率で即死しますから!」


凛「ふーん! 隙あり!」

ヒュンッ!


武内P「危ない!? 渋谷さん、乗せられないでください!」


美嘉「いザキにしてみると、アンタってザ・キ持ちが分からない奴だよねー★」

ポワンッ! ポワンッ!


武内P「あの、城ヶ崎さん? それも死にますからね、城ヶ崎さん!?」

武内P「……わかりました。この中で、一人だけ望みを叶えようと思います」

凛・美嘉・楓「!」

武内P「誰が望みを叶えるかは、皆さんで決めてください」

凛・美嘉・楓「……」

  ・  ・  ・

神父「凛さんを生き返らすには……150ゴールド」

武内P「なるほど」

神父「美嘉さんを生き返らすには……150ゴールド」

武内P「お二人とも、同じ金額なのですね」

神父「楓さんを生き返らすには……3000ゴールド」

武内P「高い!」

神父「じゃあタダで良いよ」

武内P「!? 宜しいのですか?」

神父「初回サービス。全員、タダで生き返らせるよ」

武内P「それはとてもお得だと、そう思います」


武内P「誰も生き返らせません」



おわり

比較的まともだったのに巻き込まれた美嘉ェ……
おつ

今西部長Pコミュ2書きます


「どうだね、高垣くん。ボイスレッスンの調子の方は」


 と、聞いてはみたものの、こりゃあただの世間話のきっかけにすぎない。
 彼女の歌声を聞いたのならば、そっちの方が順調というのはわかる。
 話をするには、まずは順序ってものが大事なのさ。


「はい……トレーナーの方も、褒めてくださいます」


 うんうん、そうだろうとも。
 さあて、ここからが問題だ。
 何せ、私が今から手を入れようとしているのは……人間関係に関してなのだから。
 彼女と――……あの、不器用な男との、ね。


「ふむ……あの男は、何か言っていたかい?」


 あの男、で通じる程度の期間は高垣くんと向き合ってきたつもりだ。
 現に、今の私の言葉を聞いて、目の前の美しい女性が顔を曇らせている。
 こりゃあいかん、いかんよキミ。


「ええと……特に、何も」
「何もかい? 一言も?」


 驚いた。
 あの男は、本当に自分が無口な車輪にでもなったつもりなのだろうか。
 車輪でも回ればゴトゴトと音を鳴らすというのに、何も……とは。


「……はい」


 高垣くんは、モデルの世界からアイドルの世界に飛び込んできた人間だ。
 不慣れなことに戸惑うだろうし、そのために彼を付き添わせたりもしたのだが。
 ……どうやら、あの男は、言葉を発するのを恐れているらしい。
 自分の言葉が、輝かしい未来が待っている彼女へ悪い影響を与えてしまうのではないか、と。


「ふうむ、そうか……」


 だがね、彼は思い違いをしている。
 言葉によって起こるすれ違いや、衝突もあるだろう。
 それを恐れて何も喋らず、無言で居続ける……それは、大きな間違いだ。
 無言も、‘言’という文字が入っているだろう?
 無言も、一種の言葉として相手は受け取る場合もあるのだよ。


「率直に聞くが、キミは彼が苦手かい?」


 高垣くんが話しやすいように、少しおどけた調子で。
 悪巧みをここだけの話で、というように、ニヤリと笑いかけてやる。
 内緒話というのは、人の口を時に硬く、そして軽くもするのだよ。


「あの……私、思い出したんです」


 黙って、続く彼女の言葉を待つ。
 こういうのは、焦っちゃあいけない。
 柔和な笑みを浮かべて、相手が飛び込んでくるのを待つ。
 飛び込んできた所をガブリ、だ。


「実は……人見知りだった、って」


 カツンッ、と私の張った意地悪な罠がマヌケな音を立てて不発に終わった。
 だが、それを表情に出すわけにもいかない。
 それにしても、高垣くんが人見知り?
 そりゃあ、一体何の冗談だい、ええ?


「今更ですよね……でも、何故か、今まであまり気にならなくて」


 続けて、と先を促す。
 しかし、ふむ……そうか、人見知りが気にならなかった、ねぇ。
 彼女にとっては一大告白なのかもしれないが、私の思考は別の所にあった。


「でも、こうして意識した途端に……」


 高垣くんは、彼に付き添われてレッスンを受ける事が多い。
 それで人見知りを感じる事が無かったというのは、果たしてどういう意味だろう。
 案外、あの男が無口を貫いていたのは、正解の一つだったのかも知れないね。
 その証拠に、不安を抱えもしたが、ボイスレッスンでは着実な成果を上げている。
 ……と、言うことは、だ。


「もっと相談したいんですけれど、うまく……言葉が……」


 ここからは、私の出番という訳だね。


「キミの様な美しい女性に意識されるとは、私もまだまだ捨てたもんじゃないねぇ!」


 はっはっは、と笑いながら言う。
 今はこの話は終わり、というサインだ。
 高垣くんもそれを察してか、うふふと上品に笑っている。


「――さて、この後の予定はわかっているかな?」


 笑いを上着のポケットにしまい込み、仕事の顔に。
 人間関係の事も大事だが、彼女のスキルアップも必要不可欠だ。
 彼女も、はい、と頷いた。


「ダンスレッスン、ですね」


 ビジュアル面も、歌の面も文句のつけようが無い。
 だが、彼女が目指しているのはモデルでも、歌手でもない。
 高垣楓が目指しているのは、アイドルなのだ。
 何故、その道を選んだのかはわからないが……。
 彼女の言葉を信じるに、なんとなく、の割にはやる気に満ち溢れているね、良い事だ。


「ポーズを決めるセンスは、多少あると思います」
「そうだね、元モデルだから、そこは心配していない」


 問題は、その先。


「でも……踊ったことはありません」


 彼女の年齢で、踊ったことが無い人間がアイドルとして大成した事があっただろうか。
 動きや筋力などは、若い内、十代の内に培われた物が大きく作用する。
 経験のない彼女が、果たしてどこまでやれるのだろう。


「……」


 高垣くんも、それを不安に思っているのだろう。


「まあまあ、まずは踊ってみてから考えようじゃあないか」


 そんな不安を取り除いてやるのも、今の私の役目だ。
 さあて、ちょいとばかり頑張ろうかね。

  ・  ・  ・

「……とりあえず、軽く音楽に乗ってみますね」


 ダンスレッスンをするホールには、私と、高垣くんと、


「はい。お願いします」


 必要な事以外は喋ろうとしない、この男だけ。
 本当ならば初日からトレーナーを付ける予定だったのだが、断った。
 踊ったことが無い人間に、いきなりトレーニングをさせるのは酷というもの。
 急がば回れ、と言うだろう?
 クルリクルリと回ろうじゃないか、なあ、キミ達!


「はぁっ……! はぁっ……!」


 真剣な顔で取り組む高垣くん。
 そのステップはとても拙く、見ていてこちらが不安になる。
 まるで、今にも折れてしまいそうな細い脚を懸命に動かしている。


「――はい、ストップ!」


 パンと手を叩き、彼女の動きを止める。
 流れ続ける音楽の中、高垣くんは不安そうな顔でこちらを見ている。
 問題点を自分でもわかっている‘つもり’なのだろう。


「踊ってみた感想は?」
「足が……フラフラします」
「うんうん」
「こうなってしまうのは、何が原因でしょう?」


 真剣な顔で質問してくる彼女に、思わず笑みを返しそうになる。
 だが、私が今からしようとしているのに、それは、まだ早い。
 せっかくの機会だ、より良いタイミングで、最高のものを。


「――キミは、どう思う?」
「わ、私……ですか?」

 隣に立っている男の顔を見上げ、問うた。
 話を振られると思っていなかったのか、驚いたようだ。
 右手を首筋にやって困っている場合ではないよ、キミ。
 キミにはアイドルのために、人働きしてもらわにゃいかんのだからね。


「ああ、まずはキミの意見を聞こうじゃないか」


 まずは、と付ける事で彼の本音を引き出しやすくする。
 次に私が発言するとなれば、言いにくい事も、言い易くなるだろう。
 大丈夫、フォローは私に任せ給えよ。
 ……なんて、そんな視線を彼に向けると、


「筋力不足かと、そう、思います」


 迷いなく、キッパリとそう言った。
 高垣くんを真っすぐ見た彼の顔は、プロデューサーの顔をしている。
 そうそう、それだよ。
 私はキミのそんな顔が見たくて、必死に引き止めたんだ。


「筋力不足……ですか」


 それに対し、高垣くんも彼と視線を合わせた。


「確かにそうかも知れません。私、脚が細いので大きな動きに耐えきれなくて……」
「ですが、それも高垣さんの魅力の一つだと、私は思います」
「そう、でしょうか? 何せ、ダンスの経験が無くて……」
「はい。なので、トレーニングの内容やステップの練習等は、よく考える必要があるかと」
「経験があるのは……精々踊り食いくらい、なんて」
「……高垣さん?」


 おっと、真面目な彼では、不思議な彼女の手綱はまだまだ握れないらしい。
 まだまだと言っても、今後も手綱を引けるようになるかはわからないが、ね。


「筋力不足、か。うん、確かにそれもある」


 脱線しそうな彼らの話を無理矢理本線に引き戻す。
 私の言葉を聞いて、二人はハッとなってこちらを見た。
 その顔は、真剣そのもの。
 うんうん、実に素晴らしい、やる気に満ち溢れている。


「よし、それじゃあ筋力がありそうなキミ、踊ってみたまえ」


 だがね、それだけじゃあ駄目だ。
 私は、男の肩にポンと手を置き、言った。


「わ、私がですか……!?」


 そんな事を言われるとは思ってもみなかったのだろう。
 この男がこんなにも面白く、慌てふためく様を初めてみたよ。


「キミはダンスの経験はあるかい?」
「あ、ありません」
「ならば、丁度良いじゃあないかね」
「何がですか!?」
「筋力のある、ダンスの素人が踊ったらどうなるのか、見せてもらおうじゃないか」
「……!?」


 優秀なこの男の事だ。
 私が冗談や酔狂でなく、本気で踊ってみろと言っているのがわかるだろう。
 だからこんなにも驚き、抵抗している。
 はっは、愉快愉快!


「まあ……それは、私も少し興味があります」
「だろう?」


 クスクスと笑いながら、高垣くんが言った。
 それに合わせて、私も少年の様にニヒヒと笑いながら相槌をうつ。
 大きな子供達を前に、大きな男はただただ困るばかり。


「いえ、しかし……私は……!」


 全く、キミも頑固で融通がきかないな。
 仕方がない……あまり話し込んでいては、レッスンの時間が無駄になってしまう。
 特別に、私の手の平の上で、


「私も一緒に踊ってやろうじゃないか、ほら!」
「ぶ、部長!?」


 強引に男の手を取り、簡単なステップを踏む。
 どうせ手を取って踊るなら、キミみたいな大男じゃあなく美しい女性が良かったよ。
 ん? 美しい女性が、この場に一人居るじゃあないかって?


「~♪」


 残念だが、彼女は今、笑顔で我々のダンスに歌を乗せている真っ最中なのさ。

  ・  ・  ・

「どうだい? ダンスレッスンは?」


 ダンスレッスンの終わり際、フラフラな様子の高垣くんに聞いた。


「――ええ、とても……楽しかったです」


 そう言った彼女の笑顔は、とても輝いていた。
 それはアイドルに相応しい、唯一無二の表情。
 真剣な顔も良いが……やはり、こうでなくてはいけない。
 その一方で、


「キミは楽しかったかい?」


 レッスンホールの壁にもたれかかって座る男が、息を切らしていた。
 上着はとうに脱ぎ捨てられ、ネクタイもとうに無い。
 シャツのボタンは二つ程外されているし、袖も思い切りまくっているね。


「そう……です、ね……はい」


 途中からパートナーを交代し、私は彼と彼女が踊るのを見ていた。
 そりゃあそうだろう。
 何が悲しくて、男なんかと踊り続けなければならないんだね。
 キミも本望だろう? とびきりの美人と踊る機会なんて、早々無いよ。
 しかしアレだね……彼女はまだ立って歩けるというのに、


「体力不足かと、そう、思うよ」


 私の言葉を聞いて、男はがっくりとうなだれた。
 それを見て、鈴の音を転がすような笑い声が響いた。


「――よし! 飲みに行こうか!」


 キミ達も、今日の仕事はもう終わりだろう。
 汗をかいた後のビールは、染み渡るように美味いからねぇ!
 きっと、今日の酒はとびきり美味いに違いない!


 弾むような声と、諦めたような声。
 二つの声が、同じ言葉で、重なって私に届いた。
 パート分けとは、洒落たことをしてくれるじゃあないか。


おわり

三ヶ月ほぼ毎日書くとは、俺が思っていた以上に俺はデレマスが好きなようです
手と集中力はかなり取り戻せましたが、お察しの通りネタが尽き気味です
ので、いつ終わるかわかりません
おやすみなさい

毎日おつ 楽しく読ませてもらってます
P含めみんな自由で頭Paになってるのと、まじめな話のギャップが好き 特に楓さん
ネタとしては、頭Paのメンバーがステージ上がるとに急にまじめになって終わったら元に戻るとか面白そう

毎日乙

こうなったらもうどこまで行けるか試してみたくなりますね!

>>638
書きます


武内P「皆さん、あと五分でLIVEが始まります」

CPアイドル達「はいっ!」

武内P「良い、返事です」

CPアイドル達「えへへ」

武内P「しかし、早急に解決しなければならない問題があります」

CPアイドル達「?」

武内P「時間が無いので、手短に行こうと思います」

武内P「まず、本田さん」

未央「?」

武内P「欲しいものリストは置いていきましょう」

未央「でも、これがないと何を買うか迷っちゃうから……」

武内P「本田さんが今から行うのは、ショッピングではなく、LIVEです」

未央「……はい」ムスッ

スッ…

武内P「リストと一緒に笑顔も置いていかないよう、気をつけてください」

武内P「島村さん」

卯月「頑張ります」

武内P「はい、頑張ってください」

卯月「頑張ります。私、一生懸命頑張ります。精一杯頑張ります」

卯月「頑張って頑張って、頑張った先に何があるんだろう? でも、頑張らないと」

武内P「島村さーん!」

卯月「はいっ♪ 島村卯月、頑張りますっ♪」

武内P「良い、笑顔です」

武内P「渋谷さん」

凛「?」

武内P「私から、手を離してください」

凛「ちゃんと見ててよね」

武内P「後ろに回られているので、見えません」

凛「……ふーん!」ムスッ

スッ…

武内P「はい、ムスッとしない。笑顔で、お願いします」

武内P「新田さん」

美波「はい、何ですか?」

武内P「衣装を着てください」

美波「でも、この方がファンの人が喜ぶかな、って」

武内P「もう一度だけ言います」

武内P「衣装を着てください」

美波「……」ムー

ごそごそ…

武内P「ちゃんと着てくださいね」

武内P「アナスタシアさん」

アーニャ「?」

武内P「私から、手を離してください」

アーニャ「セクハラショー!」

武内P「色々言葉を混ぜないでください」

アーニャ「……イズヴィニーチェ、すみません」シュン

スッ…

武内P「はい、偉いですよ」

凛「ふーん!」

武内P「はい、渋谷さんも偉かったですよー」

武内P「神崎さん」

蘭子「宴を前に、我が魔力は存分に高まっている!」ガクブル

武内P「はい、とても頼もしいです」

蘭子「我が友よ! 魂の饗宴、しかと見届けよ!」ガクブル

武内P「はい、必ず。頑張ってください」

蘭子「……私、頑張ります!」

武内P「貴女の、開放された真の姿を存分に見せてください」

CPアイドル達「……やさしい」ヒソヒソ

武内P「ヒソヒソ話はやめましょうね、皆さん」

武内P「緒方さん」

智絵里「失敗したら、きっと見捨てられちゃう……」ボソボソ

武内P「緒方さん」

智絵里「きっと、私一人だけ見捨てられちゃう……」ボソボソ

武内P「絶対に、見捨てません」

智絵里「……智絵里、行きます!」

武内P「帰りをお待ちしています」

CPアイドル達「……贔屓……ツインテ優遇?」ヒソヒソ

武内P「違います。はいそこ、勝手に髪型を変えないでください」

武内P「三村さん」

かな子「マシュマロ美味しい~♪」

武内P「そのマシュマロをこちらに渡せば――」

かな子「?」

武内P「LIVE後、スイーツパラダイスに連れていきます」

かな子「……預けて置きます」

武内P「良い、判断です」

CPアイドル達「……」スッ

武内P「……わかりました。全員で行きましょう」

武内P「双葉さん」

杏「……」

武内P「双葉、杏さん」

杏「……」

武内P「緒方さん、三村さん」

智絵里・かな子「はいっ」

武内P「どんな手を使っても、起こしておいてください」

武内P「諸星さん」

きらり「にょっわー☆☆☆Pちゃん、どうしたの~☆☆☆」

武内P「少し、テンションを抑えていきましょう」

きらり「抑えるってぇ?☆☆☆☆☆きらりはぁ、いつもこうだゆ☆☆☆☆☆」

武内P「はい。いつも、とても可愛らしいと思います」

きらり「……うぇへへ、急にどうしたの?/// は、恥ずかすぃー///」

CPアイドル達「……ツインテ優遇!」ゴソゴソッ

武内P「髪型は! 髪型はそのままで!」

美波「でも……私達も、褒められたいなぁ、って」

武内P「新田さんは、早く衣装を着てください」

武内P「城ヶ崎さん」

莉嘉「はいはーい!☆」

美嘉「何ー?★ ってか、どっちかわかんないって★」

莉嘉「お姉ちゃんの言う通りだよ、Pくん!☆」

美嘉「ほらほら、照れてないで名前で呼んでみなって★」

莉嘉「カリスマJCとぉ」

美嘉「カリスマJKのぉ」

美嘉・莉嘉「☆オ・ネ・ガ・イ★」

武内P「……ステージには、上がらないでくださいね」

みりあ「ねぇねぇ、プロデューサー」

武内P「? どうしましたか、赤城さん」

みりあ「ぱふぱふって、何?」

武内P「……誰から聞きましたか?」

みりあ「美嘉ちゃん」

武内P「そうですか、わかりました」

武内P「……逃げた、ようですね。後で、対応しておきます」

みりあ「何?」

武内P「……LIVEが終わったら、千川さんに聞いてください」

武内P「前川さん」

前川「? どうしたんですか、プロデューサーさん?」

武内P「緊張されているようですが、眼鏡は外しましょう」

春菜「それを外すなんてとんでもない!」

武内P「! あんな所に、空飛ぶ眼鏡が!」

春菜「!?」

みく「……ちょっ、ちょっとウッカリしただけにゃ!」

みく「これでバッチリ! キュートなネコミミモードのみくにゃ!」

武内P「はい。しかしLIVE後、前川さん状態でのプロデュースも検討しようと思います」

武内P「多田さん」

李衣菜「はい! 今日も、ロックにかましてやりますよ!」

武内P「そうですね、ギターを置いてください」

李衣菜「見ててくださいね、私のギターソロ!」

武内P「それは、予定にありません」

李衣菜「そして終わったらピックを客席に……くうーっ、燃える!」

武内P「……エアギターというのも、最高にロックだと思いませんか?」

李衣菜「ギター、預かってて貰えますか?」

武内P「はい、おまかせください」

武内P「そろそろ時間ですね」

CPアイドル達「はいっ」

武内P「皆さん、笑顔で楽しんできてください」

CPアイドル達「はいっ!」

美波「皆、プロデューサーさんを囲んで円陣を組みましょう!」

CPアイドル達「おーっ!」

武内P「皆さん?」

――ザッ!

武内P「……一瞬で、囲まれた……!?」

美波「シンデレラプロジェクト!」

武内P「あの、何を……?」

美波「ファイトォォォ……――」


CPアイドル達「おーっ!」

つんつんつんつんつんつんつんつんっ!

武内P「!? や、やめてください! つっつかないでください!」ビクンビクンッ


美波「声が小さいわよ! もう一回! ファイトォォォ……――」

CPアイドル達「おーっ!!」

つんつんつんつんつんつんつんつんっ!

武内P「意味がわかりません! 意味がわかりません!」

  ・  ・  ・

「SAY☆いっぱい、輝く~♪ か~がや~く~星に、な~れ~♪」


 LIVEも、もう終盤に差し掛かっている。
 プロジェクトメンバー達の額には汗が見える。
 疲労もあるだろうに、彼女達の笑顔には一点の曇りもない。
 心からこのステージ、LIVEを楽しんでいるのだろう。


「……」


 プロジェクトが始動した時は、彼女達がここまで成長するとは思っていなかった。
 彼女達は、プロデューサーの私の予想を遥かに上回り、羽ばたこうとしている。
 その事が嬉しくもあり、また、私自身も遅れぬよう努力せねばと身が引き締まる思いだ。


「運命~のドア、開けよう~♪」


 しかし、今は少しだけ、私がプロデューサーという事を忘れてしまおう。
 何故ならば、私は、彼女達のファン第一号なのだから。
 彼女達の輝く姿を仕事を通してだけ見るというのは、余りにも勿体無い。
 せめて、この最後の一曲だけは、ただのファンとして彼女達を見守りたい。


「今~未来、だけっ、見上げて~♪」


 シンデレラプロジェクトのメンバー達の素晴らしい歌声が、耳に届く。
 躍動感に溢れ、新鮮で、そして、様々な個性が折り重なって紡がれる奇跡。
 ブルリ、と体が震えるのを止められない。
 出来ることならば、観客席に行きファンの一人としてコールに参加したいとすら思わされる。


「……良い、笑顔です」


 だが、私はそうは出来ないし、しない。
 私がプロデューサーで、彼女達はアイドルなのだから。
 全てを出し尽くし、彼女達が戻ってきた時に、最初に出迎える。
 その役目だけは、誰にも譲れはしない。

  ・  ・  ・

美波「どうでしたか、プロデューサーさん!」

武内P「良いLIVEでしたが、服を脱ぐのが早すぎます!」

凛「ふーん! ふーん!」

アーニャ「ダヴァイ! ダヴァイ!」

武内P「私の回りをグルグル回らないでください!」

卯月「頑張りましたよね? 頑張りましたよね、私?」

智絵里「見捨てませんよね? 見捨てないでくださいね?」

武内P「はい! はい!」

  ・  ・  ・
翌日

武内P「昨日のLIVE、お疲れ様でした」

CPアイドル達「……」

武内P「LIVE自体は、とても素晴らしい、良いLIVEでした」

CPアイドル達「はいっ!」

武内P「しかし、その前後が、私には問題に思えます」

CPアイドル達「?」キョトン

武内P「おわかり頂けなくて、残念です」

武内P「皆さんは……少し、スイッチのオンオフが極端すぎると考えます」

ちひろ「待ってください。それは違います」

武内P「千川さん?」

ちひろ「皆、いつだって本気なんです」

武内P「本気……ですか?」

ちひろ「プロデューサーさんにも、アイドルのお仕事にも」

ちひろ「本気で、真剣に向き合ってるだけなんです」

CPアイドル達「……」コクリ

武内P「皆さん……」

最早CPと言う名の動物園みたいになっとる…

武内P「本気で、真剣に向き合った結果が……ああ、だと」

CPアイドル達「はいっ!」

武内P「私に対してああする事で、素晴らしいLIVEが出来る、と」

CPアイドル達「いいえ!」

武内P「それならば、仕方がないのかも――」

武内P「――……いいえ?」

CPアイドル達「……あっ、ヤバ★」

武内P「待ってください。一人、紛れ込んでいます」

武内P「……しかし、皆さんの思いは伝わりました」

武内P「LIVEを成功させる事と、私にちょっかいを出す事」

武内P「この二つに関係が無いとわかり、安心しました」

CPアイドル達「……いいえ」

武内P「皆さん、今から私がやろうとしている事が、わかりますか?」

CPアイドル達「はいっ!……いいえ!」


武内P「皆さん、あと五分でLIVEが終わります」



おわり

回線の調子が悪いので寝ます
おやすみなさい

死刑宣告か…

今西部長Pコミュ3書きます


「はい、行っておいで」


 今日は、高垣くんの宣材写真の撮影に来ている。
 さすがは元モデル、慌てることなく、落ち着いた様子だ。
 そんな彼女を送り出し、私は隣に立つ無口な男に声をかける。


「……さて、どうなると思う?」
「何も、問題は無いと思います」


 無表情に、カメラに向けてポーズを取る高垣くんを見ながら言った。
 ふむ、問題は無い、か。
 キミも、私と同じ事を考えていたようだね。


「あっさりOKを貰えてしまいました……」


 確かに、元モデルの高垣くんの魅力が引き出された、最高の一枚が撮れた。
 だが、


「あの……今ので良かったんでしょうか?」


 それじゃあ駄目だ。
 その事を彼女も自然とわかっていたのだろう。
 一発でOKが出たと言うのに、問いかける声には不安が混じっている。


「せっかくアイドルになったのに、モデル時代と変わらない、無表情な写真……」
「ふむ、OKは出たんだよ?」


 さあて、彼女は自分自身で気付けるかな?
 確かに、ここで私が答えを言うのは簡単だ。


「少し、何と言うか……心残りです」


 しかし……それでは面白くない。
 こちらだよと手を引いて辿り着けるのは、所詮手を引ける所までなのだから。
 今は、彼女自身の歩く力を養う場面。
 そうでなければ、この先もアイドルとしてやっていく事は出来ても、先細りになってしまう。
 目指す場所は同じでも、辿り着き方というのは非常に重要なのだ。


「……高垣さんは、いつも無表情なのでしょうか?」


 ほう、ここで助け舟を出すか。
 しかし……キミがそれを言うかね?


「はい。雰囲気が良いから、そのまま……って」


 高垣くんは、モデル時代との違いに戸惑っている。
 カメラマンも、彼女の堂々とした姿にやられてしまっても仕方ない、か。
 しかし、忘れてはいけないのは、宣材写真の主役はあくまでアイドル。
 アイドル、高垣楓自身の魅力を最大限に伝えなければならない。


「普段から感情も出さない方ですし……」


 成る程、彼女は自分自身をそう評しているのか。
 それならば、撮影時にモデル時代のように振る舞ってしまうのもわかる。
 だがね、此処にはキミ以上に感情を表に出さない男が居るのだよ。


「そう、でしょうか? 私には、貴女がとても表情豊かに見えます」
「えっ?」


 ふうむ、今は少し感情的になっているようだね。
 そうなってしまうのは、キミがやはり根っからのプロデューサーだからだろう。
 よしよし、中々にいい傾向じゃあないか。


「アイドルらしく無い、と……思っていたんですけど」
「高垣さんの考える、アイドルらしさとは何ですか?」


 男の問いかけに対し、高垣くんは頬に手を当てて少し考え、言った。


「……試しに、表情を作ってみてもいいでしょうか」


 このままでは手応えがありませんから、と。
 はっは! 言うに事欠いて手応えがないとは、こりゃあ大物だ!
 さあて、キミは、一体どんな表情を見せてくれるのかな?


「こんな感じ?」


 それは、小さな微笑み。
 しかし、私にはそれが、先程の最高の一枚を軽く超えるものに見えた。
 小さな微笑みだが……これは、大きな一歩だ。


「もう少し、笑って頂けますか」


 おいおい、キミは誠実で不器用なだけかと思っていたが、案外欲張りだね!?


「小さい……ですか?」


 私は、先程の小さな微笑みで満足してしまった。
 あれだけでも十分に彼女の魅力は伝わると思ってしまった。
 だが、隣に立つこの男はそうではなかったらしい。
 無言で頷く彼の横顔を見ながら、あの時引き止めて良かったと、心の底から思った。


「難しいですね……何か楽しい事でも思い出せれば……」


 だが、若造にやられっぱなしというのも癪だ。
 年寄りならではの、経験からくる老獪さというのも見せてやろうじゃあないかね。


「ふむ、楽しい思い出ねぇ」


 と、顎に手を当てて隣に立つ男を見る。
 私の視線に二人は気付き、それぞれが違う反応を示す。
 一方は、無言で右手を首筋にやり、


「……」


 そしてもう一方は、手を顔の前でパンと合わせ、


「ありました。あの思い出……ふ、ふふふふふっ」


 そのまま手を口元にやって、コロコロと笑いだした。
 彼女が何を思い出しているのかまではわからない。
 わからないが、男にチラリと視線をやる度に、その笑みが深くなっていく。


「思い出すと止まらなくなっちゃうから、忘れようとしてたのに……!」
「……」


 ううむ、こりゃあちょいとばかり笑いすぎじゃあないかな。
 確かにとても魅力的な表情ではあるが、体がカタカタ震えているよ。
 それじゃあ写真を撮ってもブレにブレてしまう。


「高垣さん……あの、もう」
「ああ、すみません……うふふっ! もう、こっちを見ないでください、ふふふっ!」
「……仕方ない人ですね」


 成る程、キミが苦笑いをするとそういう顔になるのか。

お見合いの仲人か!!!!!!

  ・  ・  ・

「……ふふっ、あぁ、楽しい!」


 ひとしきり笑って満足したのか、高垣くんはふぅと息をついた。
 いつの間にか、撮影ブースに居るスタッフが全員彼女に注目していた。
 人を引きつける魅力。
 アイドルに欠かせない資質を彼女は持っている。


「もう一度、撮り直しをなさいますか?」


 それを引き出すきっかけを作った男は、無表情に言った。
 質問をしているが、彼女が返す答えはわかっているのだろう。
 勿論、私もわかっているとも。
 彼女ならば、こう言うに決まっている。


「はい、お願いします」


 ……とね。
 幸い、一枚目を撮るのに時間が殆どかからなかったので、まだ余裕はある。
 むしろ、最初の撮影時間よりも、彼女が笑っている時間の方が長かったくらいだ。
 ……おやおや、こちらが何も言わなくても、もう撮影の準備を始めているとは。
 撮影スタッフもリベンジ、といった所かな?


「――それでは、行ってきます」


 高垣くんの、綺麗なお辞儀。
 その、顔を上げた時の表情を見られたのは、幸運だった。
 それは、今まで見たことのない、とてもキラキラしたものだったから。


「良い、笑顔です」


 笑顔。
 それは、アイドルには欠かせないもの。
 それを最大限に引き出すのが、プロデューサーの役目だ。
 遠くなっていく高垣くんの背中を見ながら、隣に立つ男に問いかける。


「プロデューサー、またやろうとは思わないのかね?」


 返事は無い。
 だが、彼女に出会う前まで、彼はそれを頑なに拒否してきた。
 私は、無口な車輪に、昔と変わらない一本の軸が通ったのを感じていた。



おわり

ちょっとこのネタ続きます
寝ます
おやすみなさい

おつ
部長はとてもいいキャラをしていらっしゃる

今西部長Pコミュ4書きます


「待ってください! まだ、早すぎます!」


 部屋に、大きな声が響き渡った。
 予想はしていたが、これほどまでに大きな反応を見せるとは。
 いつもの無表情は鳴りを潜め、焦燥と困惑がその顔で陣取っている。
 だが、私は自分の意見を変え気は無い。


「いいや、彼女にはLIVEを行って貰う」


 彼女――高垣楓くんの、デビューLIVE。
 少々強引な形になってしまったが、なんとか取り付けた。
 プロダクションの規模からすれば、とても小さな小屋だ。
 だが、今はそれで十分。


「高垣さんには、まずは握手会等で経験を積んでもらい――」
「――場に慣れ、自信がついた時には……いくつになっているのだろうねぇ」
「それ……は……!」


 彼は、高垣くんが無理なく、一歩一歩階段を上れる道を示している。
 しかし、それではあまりにも時間がかかりすぎてしまう。
 彼女がまだ年若い、それこそ十代の少女だったならばそれでも良いだろう。
 着実に、踏み外さないようにゆっくりと階段を上る……結構な事だ。


「それにね、キミ」


 私自身も、これが必ずしも彼女にとって最善だと思っていない。
 だが、彼女を取り巻く環境等を考慮すると、今しか無いのだ。
 アイドルの寿命というのは、短い。
 一瞬でも輝ければそれで十分、とは、私の立場ではとても言えない。


「彼女……高垣くんのプロデューサーは私だよ」


 高垣くんには、駆け足で階段を昇ってもらう。
 当然、無理をさせてしまう事にもなるだろう。
 今回のように、次の段に足がかからないかもしれない場面も出てくるだろう。


「……!」


 そんな時のために、我々が居る。
 不器用で、誠実で、何よりも情熱を持った男よ。
 己の無力感に苛まれる前に、早く思い出せ。

  ・  ・  ・

「やあやあ、バッチリ決まっているじゃあないか!」


 控室に入り、目に飛び込んできた高垣くんの姿に目を奪われた。
 緑を基調とした衣装が、
アイドルらしい華やかさと、彼女の持つ神秘的な雰囲気を見事に調和させている。


「部長さん……」


 しかし、その表情はすぐれない。
 昨日は緊張でよく眠れなかったのだろうか、少し、目が充血している。
 人前で歌う、という事自体が初めての経験だ、無理もない。
 ぎこちなく上がった口角は、笑顔とはとても呼べるものではない。


「初めてのLIVE、緊張するかね?」


 わかりきっている事をあえて聞く。


「……はい、とても」


 言葉に出すことで、更にそれを自覚し、深みにはまっていく。
 いいや、今のは私がそうさせたのだったね。


「そうか……緊張するか」


 残念だが、キミのプロデューサーはとても意地悪なのだよ。
 キミがそうなってしまうのは、わかっていた。


「そりゃまた、どうしてだね?」


 しかし、この程度の苦難は乗り越えてもらわなければ。
 私はね、キミの姿を見て、歌声を聞いた時に確信したんだ。
 高垣くん、キミはトップアイドルになる、とね。


「どうして……ですか?」


 そのためならば、私も手を尽くそうじゃあないか。
 なあに、階段が高く、目の前にそびえる壁のように見えたとしても、何てことはない。
 軽いステップで、ひょいと次に進めると思わせてしまえば良いだけのこと。


「沢山の人の前で、歌を披露するのは初めてで……」


 彼女の言う事はもっともだ。


「遅かれ早かれ、経験する事さ。確かに、今回はちょいとばかり早いけどね」


 しかし、アイドルならば、やって当然。


「けれど、失敗をしてしまったら、お客さんをガッカリさせてしまいますし……」


 素晴らしいプロ意識だ。
 相手を――ファンを楽しませるのがアイドルだと、理解している。
 そのせいで身動きが取れなくなっているのなら、話は早い。


「はっはっは! デビューLIVEに完璧を期待する人間はいないよ!」


 元モデルという事の弊害、か。
 写真を撮り直し、完璧を求めていくのが今までの彼女の仕事だったのだろう。
 だが、アイドルは違う。


「高垣くん、キミは新人アイドルだ」


 完璧な歌を求めるのならば、レコーディングされたものを聞けば良い。
 完璧なダンスを求めるのならば、それこそその道の人間のものを見るのが一番だ。
 だが、LIVEは必ずしもそうではない。
 ましてや、新人アイドルのデビューライブなら言わずもがな。


「新人アイドルが皆完璧だったら、ベテラン達の立つ瀬が無くなってしまうよ」


 両手を上げて肩をすくめ、おどけた調子で言う。
 それを見て、高垣くんが小さくクスリと笑った。
 よしよし、まずは第一関門突破、と言った所かな。


「なあ、キミもそう思うだろう?」


 と、隣に立ち、空気に徹していた男に話をふった。
 彼は、右手を首筋にやり、無言。
 他人事ではないよ、キミ。
 キミにはこれから、アイドルのために大いに働いてもらうのだからね。


「高垣くん、キミは、アイドルだ」


 ゆっくりと、染み込ませるように。


「心細さも、わかる。不安も、わかる」


 それでも、キミならば大丈夫だと確信している。


「だが、キミは一人ではない」


 私も居るし、この男も居る。
 それに、何より――



「――キミには、応援してくれるファンが居るんだからね」



 新人アイドルの、デビューLIVEの、小さな箱。
 そこにわざわざ足を運び、彼女の姿を見、歌を聞こうとする人々。
 ハッキリ言ってしまえば、変わり者の集団さ。
 だが、変わり者のキミに相応しく……とても頼もしいファン。


「だろう?」


 と、ウインクをしようと思ったのだが、出来なかった。
 何故ならば、目の前のアイドルの卵のカラにヒビが入り、
中から溢れてくる光から目が離せなかったから。


「――はい」


 そこには、先程までの心細さと不安に押しつぶされそうな少女は居なかった。
 アイドル、高垣楓がそこに居た。

  ・  ・  ・

「初めてのLIVE、緊張するかね?」


 今日、二回目となる質問を高垣くんにする。
 此処はステージ脇。
 本番まで、時間は残されていない。


「ええ、少しだけ」


 だが、大丈夫だと、彼女の表情が物語っている。
 はっは、実に良い顔をしているじゃあないか。


「うん。実に、良い笑顔だ」


 彼女がこれから踏み出すステージは、最初の一歩。
 これから駆け登っていく階段の、一段目。
 だが、彼女はこの一歩目をとても大切にしてくれるアイドルになるだろう。
 その事で何か大きな機会を逃す事になるかもしれない。
 しかし、私は彼女の選んだ道が、素晴らしいものになると思っている。


「……うん?」


 そんな中、高垣くんが、両手をこすり合わせているのが目に入った。
 手が、冷えているのだろうか。
 LIVE前の緊張や、彼女の体型、空調等も考慮すると無くは無いが……。
 こりゃあ困ったな。


「キミ、彼女の手を握って温めてやりなさい」


 男に言うと、狼狽えたような様子を見せた。
 何を恥ずかしがってるんだね!
 思春期でもあるまいし、この程度で慌てるなど情けない!


「いえ、それは部長が……!」
「馬鹿を言っちゃいかん。私の手は冷たいんだよ?」


 手先どこじゃない、足先だって冷え切っている。
 ああ、これは別に緊張しているからとかじゃなく、普段からさ。
 だからと言って、煙草を辞める気が微塵も無いがね。


「それに、キミは私に言ったじゃあないか」
「あの……何をですか……?」


 やれやれ、もう忘れてしまったのかい?
 自分が言ったことには、責任を持ちたまえ。


「高垣くんには、まずは握手会等で経験を……とだよ」


 良かったじゃないか、図らずもキミの方針の通りになった。
 もしかしたら、これを想定していたのかい? なんてね。


「握手会……それなら、口下手な私でも出来そうですね」


 高垣くんが、クスクスと笑いながら、男に手を差し出す。
 男はチラリと時計を確認すると、観念したように手を差し出し、彼女の手を包み込んだ。
 じんわりと伝わる手の平の熱を感じてか、彼女の表情が和らぐ。


「握手会ならば、会話をしなければいけないね」
「会話するものなんですか? いきなりハードルが上がりましたね……」


 口下手を自称する彼女には、無茶な振りだったか。
 ならば、無口とは言え、キミがきっかけを作るべきだろう?


「アイドル、高垣楓のファン第一号として、何か言う事は?」


 後ろから、男の背中をポンと叩いてやる。
 LIVE直前の彼女に、キミは一体何を言うのか楽しみだ。
 男は、彼女の手を包み込んだまま、ふと考えた。


「笑顔で……楽しんできてください」


 その言葉は、アイドルである彼女を応援する、ファンとしての言葉だったのだろう。
 記憶を思い返してみても、今の彼の顔は初めて見る。


「……」


 男は、笑顔で言った。
 高垣くん……驚くのはわかるが、LIVE前だというのに表情が吹き飛んでいるよ。


「あの……高垣さん?」


 男は彼女からそっと手を離すと、呆けている彼女に声をかけた。
 すぐにハッとなって、すみません、と言いはしたが……。
 ううむ、別の困ったことにならなければ良いが。
 彼女には、これからアイドルとして活躍してもらわなきゃならんのだから。


「大丈夫、ですか?」
「えっと……ちょっと、ビックリしちゃって」
「ビックリ……ですか?」


 自分が何をしたかわかっていない男は狼狽えている。
 そんな男に、


「前から思ってたんですけど……可愛らしい所がありますよね」


 高垣くんは、これまた見たことの無い笑みを浮かべた。
 いたずらっぽく言うその仕草は、まるで子供の様に無邪気なもの。
 からかわれているのがわかっていないのか、男は右手を首筋にやって困惑するばかり。
 全く、女心――この場合は子供心か――が、わからない男だね、キミも。


「……さて、そろそろ出番だ」


 もう、十分に緊張もほぐれたことだろう。
 声をかけると、高垣くんの表情はアイドルのものになった。
 さて……プロデューサーとして、彼女に何と声をかけようか。
 初々しいものを見せられたから……うん、バランスでも取ろうかね。


「ここは、ライトがく、ライト思うんだよ。だから――」


 オヤジギャグ?
 ダジャレと言ってくれたまえ!


「――キミが輝いて、照らしてくれるかい?」


 返事は、正に輝くような笑顔だった。


 

  ・  ・  ・

「……」


 ステージの脇で、歌う高垣くんを見守る。
 見守るのは、私一人だ。
 彼かい? 彼なら、私の隣でアイドルに見入っているよ。


「良い、LIVEだねぇ」


 だが、私は仕事で此処に来ているんだ。
 一人のファンとして、彼女のLIVEに参加したい気持ちもある。
 しかし、今私に出来る仕事は彼女を見守る事だけではない。


「今度、新しく立ち上がるプロジェクトがある」


 十代の新人だけを集め、大きなグループを結成。
 さらに、その中で小さなグループを組み、それぞれが個別に活動する。
 346プロダクションでもやったことのない、新たな取り組みだ。


「だがね、プロデューサーが誰になるか決まっていない」


 非常に挑戦的な企画だ。
 今、担当しているアイドルが居るプロデューサーでは手がまわらないだろう。
 それに、有能さも求められる。
 十代の少女の集団をプロデュースするなど、私だったらゴメンだね。
 それこそ、とても大きな情熱でも無ければ、上手くいきはしないだろう。


「いやぁ……実に困った」


 当然、衝突は起こるだろう。
 プロデューサーとアイドルだけでなく、アイドル同士の衝突も。
 私が据えようとしている人間は、誠実だが不器用で無口なので、確実に起こる。
 だがね、それすらも糧として輝くアイドル達が居たとしたら?
 その輝きはきっと、とても素晴らしいものに違いない。


「……申し訳ありません」


 何度も聞いた、拒絶の言葉。
 だが、その言葉の響きは、それまでと違っていた。


「……高垣さんのLIVEが終わった後、詳しくお聞きしますので」


 燻っていた心に、風が吹き込み、火が燃え上がった。
 私は響く歌声に耳を傾けながら、二つの光に目を細めた。



おわり

この後3名欠員が出るんだよな~

今西部長Pコミュじゃないの書きます


「とても素晴らしい、良い、LIVEでした」


 彼が、あの時と同じように、同じ言葉を言った。
 その表情は、昔に比べて穏やかで、無表情とはとても言えない。
 知らない人からすればわかりにくい、とは思うのだけど、ね。


「えへへ!」


 あの時と違うのは、私の周囲には沢山のアイドルの子達が居ること。


 今日のLIVEは、346プロダクションに所属するアイドル達が集う、舞踏会。
 私達のような、所謂ベテランと言われる組。
 美城専務が直接指揮する、プロジェクトクローネ。
 そして、彼が大事に育ててきた、シンデレラプロジェクトのメンバー達。
 他にも、沢山の子達が舞踏会に参加した。


「プロデューサーって、いっつもそれだよね!」


 後輩の一人が彼をからかうと、笑い声が上がった。
 そうなの、彼ったら、いっつもあの台詞なのよ。
 右手を首筋にやって困った顔をしてるけど、たまには違う言葉が聞きたいわ。


「いえ、その……正直に、言っただけですので……」


 ええ、そうよね。
 いつだって、貴方は不器用だけど、とても真っすぐ。
 それが危なっかしくて、けれど、頼もしくて……ちょっぴり可愛らしい。
 皆もそう思っているのか、彼に向ける視線はとても優しい。


「今日は、ありがとうございました」


 彼を取り囲む列の中から、声をかける。
 すると、自然と皆の視線が私と彼に集まった。
 こういう時は、


「そんなに注目されたら、チューもください、って言いたくなっちゃうわ」


 と、ダジャレを言うタイミングだ。
 ねえ? と、振った子が、困ったような笑みを浮かべている。
 あら……いつも、貴女が言ってる台詞を真似てみたんだけど、失敗しちゃった? 


「お陰様で、笑顔で……とても、楽しめました」


 呆れたような皆に構わず、話を続ける。
 こういう時は、こだわってちゃ駄目なのよね。
 次に言うタイミングを探すのが良いって、教わったもの。


「それは、貴女達自身の力によるものです」


 貴方ならそう言うと、わかってました。
 だけどね、此処に居る皆はそれだけじゃないって思ってるんですよ。
 貴方が諦めず、シンデレラプロジェクトを存続させた。
 それだけじゃなく、他の多くの子達もすくい上げた。


「何謙遜してるの。褒められてるんだから、素直に喜べば良いのに」


 だからこそ、今日が。
 今日のこの日、このLIVEが最高のものになったんです。
 もっと、自分に自信を持ってください。


「はあ……」


 もう、十代の女の子にお説教されるだなんて。
 けれど、それは彼とこの子達との距離が近い事の証明。
 それがとっても嬉しくて、ちょっとだけ、寂しい。


「プロデューサーさんは、とっても頼もしいです♪」


 彼に自信をつけさせるためか、声が上がった。
 そこかしこから同じ様な声が上がる。
 それは当然だろう。
 だって、こんなに輝くアイドルをプロデュースする人が自信なさげで居るのは、違う。


「皆はこう言ってるんですが……信じられませんか?」


 意地悪な問いかけ。
 私は、彼がこう言われたら信じざるを得ないのを知っている。
 だって、彼はアイドルを信じているから。


「……」


 けれど、彼ったら無言で右手を首筋にやって困るばかり。
 もう! なんて頑固なのかしら!


「もう! 本当に、仕方のない人ね」


 私達がここまで言っているのに、自分を曲げないのは立派だと思います。
 それが、プロデューサーとしての貴方だとするなら。
 それならば、私がアイドルとして、魔法をかけてあげます。
 魔法だったら、頑張れば貴方を曲げられると思うの。


「あの……た、高垣さん……?」


 彼にツカツカと歩み寄り、首筋に行っていない、
手持ち無沙汰な左手を掴んで、強引に握手する。
 その手は温かく、昔あった光景が思い出される。
 あの時とは包み込んでいる側が逆だけれど、ね。


「今から、貴方に魔法をかけます」


 真っすぐに彼の目をみつめる。
 困惑しているけれど、彼は、私から視線を逸らすことはしなかった。
 だって、この人がアイドルから目を離すなんて事、出来る訳ないもの。


「……」


 続く言葉を待っている彼の左手に、少し力が込められた。
 何を言われるのかと、待ち構えているのね。
 緊張……しているとしたら、本当にあの時と立場が逆。
 首筋にやっていた彼の手が、ゆっくりと降ろされる。


「……」


 でも、どうしたら良いのかしら。
 つい、勢いで行動したけど……何を言うか、考えてなかったわ。


「……うふふっ」


 その事がおかしくて、笑いだしてしまった。


「ふふっ……うふふっ」


 魔法をかけるだなんて言ったけど、どうしましょう。
 ああ、けれど、楽しくなっちゃって、笑うのが止められない。
 きっと、皆も、彼も戸惑って呆れてるに違いないわ。


「ふふっ……うふふふっ!」


 そんな、笑う私の左手に、そっと添えられる手。
 わかったからもう離しなさい、という事かしら。
 そうでしょう?


「高垣さん」


 低い声に釣られ、顔を上げる。
 目に飛び込んできたのは、無表情……と言うより、夢遊病ね。
 彼のこんな顔、初めて見たわ。



「結婚してください」



 まあ、自信をもてと言われたら、すぐそんな話を?
 それはちょっと、急な話すぎると思うんです。
 結構、結婚――


「……」


 ――……待って?
 今、この人は何と言ったの?
 冗談……よね?


「……」


 彼の真意がわからなくて、ジッと視線を送り続ける。
 私も、彼も、回りに居る子達の誰も言葉を発しない。
 嵐の前の静けさ、というのは、正にこの事。


「……」


 誰でも良いから、何か言って欲しい。
 そうじゃないと、バクバクと鳴る心臓の音がうるさくてしょうがない。
 誰でも良いから、この状況を何とかして欲しい。
 そうじゃないと、彼から視線が逸らせないし、手の平の温もりを感じてしまう。


「……」


 お願いします、誰か。
 私が、アイドル、高垣楓でいる内に。


「――あっ」


 その誰かとは……目の前に立つ、彼だった。
 夢遊病のようだった顔が、波が引くように一気に青ざめた。
 目は口程にものを言う。
 彼の目は、とんでもない事を口走ってしまったと、雄弁に語っていた。


「……!」


 唇を引き締め、私の手を包んでいた右手をバッと離す。
 だけど、残った左手は私の手に捕まっているため、二人の距離はそのまま。
 私は、驚きのあまり彼の手を両手で思い切り握りしめていた。


「たっ、高垣さん!」


 慌てる彼が、この先言う言葉がわかる。
 きっと、プロデューサーとして相応しくない言葉を発した事を。
 そして、そんな言葉を放ってしまった私に対して謝罪する。


 それで、彼はプロデューサーで。
 私は、アイドルのままでいられる。


「――あっ」


 私の口から、間抜けな声が飛び出た。
 ……ねえ、今、私の背中を押したのは誰?
 おかげで、私が彼の胸に飛び込む形になって、彼の言葉が中断されてしまった。


「……あの」


 彼の胸の中で、顔を上げられないでいる、私。
 そんな私を見ながら、彼は何を思っているのだろう。
 そして、どんな思いで、あの言葉を放ったのだろう。


 ――知りたい。


「どうして、あんな事を……?」


 結婚に興味はあるけれど、今、貴方に求婚されるだなんて。
 そんな事露ほども考えてもいなかったし、本当に驚きました。
 ねえ、どうしてなんですか?


「……すみません」
「質問してるんです。謝らないで……答えてください」
「……」


 教えてくれるまで、逃しません。
 私は、貴方を立派なプロデューサーさんだと思っていたんですよ。
 理由によっては、絶対に許しません。
 だって、これは裏切り行為みたいなものなんですもの。


「……笑顔です」


 笑顔? と、問い返す。
 私の声が小さいのは、きっと彼の胸に顔をうずめているせい。
 決して、恥ずかしいとか、そんな乙女な感情からでは、無い。


「貴女の笑顔をずっと見ていたいと、そう、思いました」
「……だったら、プロデューサーと、アイドルで良いじゃないですか」


 そんな理由じゃ……今のお話、お受け出来ません。
 そもそも、私達はそういった関係じゃないでしょう?
 なのに、貴方はどうして――


「貴女の笑顔だけは譲れない、と……そうも思ったので」


 ――そんなに、真っすぐ私を見ているの?


「そう……ですか」


 我ながら、何て気が利かない台詞だろう。
 彼の視線が、私を捉えて離さない。
 けれど、私の両手もまた、彼の手を掴んで離さない。
 離れようと思えば離れられるのに、お互い、そうしない……そうさせない。


「はい」


 普段の彼だったら、絶対にこんな事はしないだろう。
 ……ああ、そうだったわ。
 私は、彼に魔法をかけると言ったんだった。


「お願いを……聞いてもらっていいですか?」


 でも、シンデレラは魔法を使えないはずよね。
 シンデレラは、かけられる側だもの。
 現に……今の私は、魔法にかけられている。


「はい。私に、出来ることでしたら」


 なのに、彼は本当に魔法にかかったように突き動かされたみたい。
 もしかしたら、私はシンデレラではなく、魔法使いだったのかしら。
 そして、魔法使いでも、魔法にかけられてしまうものなの?
 ……聞いてみないと。



「幸せにしてください」



 私達は今から少しの間だけお話が出来なくなるから……後で、ね。


 宙を彷徨っていた彼の右手が、私の背中に添えられた。
 皆が見ているというのに、なんて大胆なのかしら。
 ……でも、もうお願いを叶えてくれるなんて、とっても優秀な魔法使いさんね。


 最初のダジャレのお願いと、今のお願い。


 不器用だと思ってたのに、一度に叶えちゃうなんて。



おわり

書けてびっくりしました
途中でギャグって逃げるかと思いきやいけました
寝ます
おやすみなさい

武内Pがホモ疑惑だって!?
おやすみ

この二人は恋愛飛び越えて急に結婚しそうってのはわかる

感覚的には、前作の主人公と裏ボスの激闘を書いた感じです
武内Pを倒すのに三ヶ月以上かかりました


書きます


武内P「ホモ疑惑、ですか」

未央「うん。だから、ちょっと静かにしててね」

卯月「とっても大事な事ですから……すみません」

凛「卯月は謝ることないよ」

美嘉「だね。そんな疑惑が立つアイツが悪いんだしさ★」


武内P「……」

武内P「あの、ここで検討するのでしょうか?」

未央「ごめんね、プロデューサー。仕事の邪魔かな」

卯月「でも……他に、こんな話を出来る場所が」

凛「うん。担当プロデューサーがホモかなんて、話しにくい」

美嘉「アタシは担当じゃないけどさ、長い付き合いだしね★」


武内P「……」

武内P「いや……おかしいとは、思いませんか?」

未央「おかしい、か……確かにおかしいよね」

卯月「はい。プロデューサーさんって、その……」

凛「私達の事、異性として全く意識してないよね」

美嘉「それ、わかる! いくら相手がアイドルだからって、変だよね!」


武内P「……」

武内P「あの、皆さん?」

未央「うんうん。確かに、プロデューサーとアイドルって問題があるよ?」

卯月「はい……でも、プロデューサーさんも男の人ですし……」

凛「少しくらいは、意識するはずだよね」

美嘉「……やっぱり、ホモなのかなぁ」

未央・卯月・凛・美嘉「うーん……」


武内P「皆さーん!?」

未央「あっ、でもそうだ。聞いて」

卯月「はい、何ですか未央ちゃん?」

未央「私が辞めるって言った時、プロデューサー来てくれたじゃん?」

凛「その時、何かあったの?」

未央「私、すっごい部屋着でさ」

美嘉「へー、それで?」

未央「プロデューサー、おっぱい見てた気がする」


武内P「!? 誤解です!」

卯月「あっ、そういえば……私も」

未央「おっ、しまむーも何かあるの?」

卯月「はい。あの、私が風邪を引いて御見舞に来てくれた時……」

凛「ああ、髪がボサボサで大変だったって言ってたよね」

卯月「あの……その時、パジャマで会ったんですけど」

美嘉「パジャマで? えっ、それってどうなの?」

卯月「プロデューサーさん、お尻見てた気がするんです」


武内P「!? 誤解です!」

凛「そういうのなら、私もあるかな」

未央「ねえ、美嘉ねぇは何か無いの?」

凛「卯月と一緒に、スカウトに来てくれた時」

卯月「あっ、そうです。美嘉ちゃん、プロデューサーさんと仲良いですし」

凛「私、店番してて……エプロンしてたんだよね」

美嘉「アタシ? うーん……ちょっと待ってね」

凛「プロデューサー、店の花をすっごい見てた」


武内P「あの……はい、すみません」

美嘉「あっ、そういえばあったあった!」

未央「おおっ、なんだか期待出来そう!」

美嘉「前に、髪型とか変えて遊んでみようってなってさ」

卯月「美嘉ちゃんのを……ですか?」

美嘉「違うよー、アイツの髪型を★」

凛「ふーん。ちょっと気になるかも」

美嘉「一回前髪を上げてみたんだけどさ、かなりエロかった!」


武内P「……」

武内P「話の趣旨が違っていると、そう、思います」

未央「でもさ、男の人の恋愛感情と性欲は別らしいじゃん?」

卯月「ホモでも、生物学的には男性ですからね」

凛「うん。女性に反応するように、体と本能がそうなってる」

美嘉「って事は……話は結局振り出しかぁ」

未央・卯月・凛・美嘉「……はぁ」


武内P「……」

武内P「あの……皆さん、詳しいですね!?」

未央「もうさ、プロデューサーがホモでも良いような気がしてきた」

卯月「恋愛は自由ですし……プロデューサーさん、良い人ですしね」

凛「アイツが私達を応援してくれるように、私達も応援しようか」

美嘉「凛、それすっごくいい考えだよ★ アタシも応援するっ★」

未央・凛・卯月・美嘉「おー!」


武内P「諦めないでー! 諦めないでくださーい!」

未央「あれ? でもさ……ホモなら、SideMに行くんじゃない?」

卯月「未央ちゃんのそういう所、凄いです!」

凛「でも、確かにそうかも」

美嘉「うん。この事務所、男性アイドル部門は無いしね―」


武内P「……」

武内P「危険な方向でしたが、危険は回避されましたね」

未央「でも……どうなんだろうなぁ、わかんないや」

卯月「……こうなったら、直接確かめるしか無いと思います」

凛「待って。デリケートな問題だから、いくらアイツでも、その……」

美嘉「傷つくカモ、って? へー、優しい所あるじゃん★」

凛「もう、からかわないで!」


武内P「……」

武内P「この状況は間接的ですが、最早直接と言って差し支えないと思います」

武内P「皆さん、お話中の所申し訳ありませんが……」

武内P「私は、ノーマルです」

武内P「皆さんの疑惑は、完全な誤解です」


未央「……って、言ってるけど」

卯月「嘘を付いてる……感じはしないですよ、ね」

凛「待って。上の口は素直じゃないだけかも」

美嘉「あー、素直になれない感じ、わかるなー」


武内P「……」

未央「――くくくっ、プロデューサー、下の口は正直だなぁ!」

卯月「! 凄いです……思わず引き込まれちゃう演技でした……!」

凛「うん……私、ちょっと感動した」

美嘉「ヤバーイ★ それからそれから!?」

未央「嫌だと言いながら……もうスタドリを10本も咥えこんでるぞ!」

卯月・凛・美嘉「わー!?///」


武内P「わー、ではないです! あの、やめていただけますか!?」

未央「っ!? おい、なんだ……逆らう気か!?」

卯月「! プロデューサーさんの逆襲が始まりました!」

凛「ふーん。まあ、悪くないかな」

美嘉「アイツが反撃かぁ……まぁ、無くはない、のかな?」

未央「や、やめろっ! や、やめ……ああっ!」

卯月・凛・美嘉「ああーっ!?///」


武内P「皆さん、一回! 一回、落ち着きましょう!」

未央「……と、未央ちゃんショーでしたー! いえーい!」

卯月「いえーい!……どっちもアリですね!」

凛「私は、攻められてるプロデューサーが良いかなぁ」

美嘉「アタシは、攻めてる方が好み、かな★」

未央「ねえ、プロデューサーはどっちが良い?」


武内P「助けてください千川さーん!」

  ・  ・  ・

武内P「落ち着いて……いただけましたか」

未央・卯月・凛・美嘉「……はい、すみませんでした」

ちひろ「もう、あんまりプロデューサーさんを困らせちゃ駄目ですよ」

未央・卯月・凛・美嘉「……はーい」

武内P「しかし、何故私にホモ疑惑が……」

ちひろ「それは、プロデューサーさんのせいですよ」

武内P「……」

武内P「えっ?」

武内P「私のせい……ですか?」

ちひろ「はい」

武内P「待ってください! あの、理由を聞かせてください!」

ちひろ「プロデューサーさんが、女性に興味がなさすぎるからです」

武内P「いえ、私は……」

ちひろ「私も、もしかしたら……って思いますし」

武内P「!? 千川さんも、ですか!?」

ちひろ「……はい」

武内P「……」

武内P「……確かに、私は貴女達を異性と意識した事はありません」

未央・卯月・凛・美嘉「! やっぱり!」

武内P「ですが、それは貴女達がアイドルであるから」

武内P「そして、それ以前にまだ年若い、十代の少女だからです」

武内P「……申し訳ありません」

武内P「守備範囲外、と、そう考えます」

未央・卯月・凛・美嘉「……なるほど」

ちひろ「待ってください。それじゃあ、私は?」

武内P「千川さん……?」

ちひろ「私も意識された事は無いです! 疑惑は晴れませんよ!」


武内P「それは、単にタイプでは無いからです」



おわり

ここの武内Pが電話相談とかでこのアレなアイドル達の相談したら担当者もさぞや困惑するんだろうなぁ

電話相談はよくわからないので、お悩みボックスでやってみますか



武内P「346ボックス、ですか?」

専務「そうだ。この度、私のオフィスの前に設置することとなった」

武内P「あの……目的は、何でしょうか?」

専務「そうだな。我が社の人間との距離を縮めるため、と言った所だ」

武内P「なるほど。良い、試みだと思います」

専務「……何故か、社内の人間は私に距離を取っているからな」

武内P「はい。私が言うのも何ですが、見た目が怖いので」

専務「何か言ったかね?」

武内P「いえ、何も」

  ・  ・  ・

専務「さて、投書はあるかね?」

武内P「そう、ですね……匿名ですが、はい」

専務「匿名か。まあ、始めは仕方ないだろう」

武内P「ですが、投書はあった。これは、大きな一歩だと、そう、思います」

専務「名もなき者による大きな一歩、か」

武内P「新境地を開いて行く者は、常に名も無き者です」

専務「切り開いた後に、名が残る……良いでしょう」

武内P「……」コクリ

専務「キミに、一つ頼みがある」

武内P「私に出来る事でしたら、はい」

専務「投書の内容は、包み隠さず読み上げなさい」

武内P「……宜しいのですか?」

専務「構いません。目を逸らしては、ボックスを設置した意味がない」

武内P「専務……はい、わかりました」

専務「私にも、覚悟くらいはある」

武内P「……」コクリ

武内P「では、まず一枚目から、読み上げます」

専務「……」


武内P「『死ね!!』」


専務「ふむ、なるほど」

武内P「……と、それだけ書いてありますね」

専務「キミに、私を抱きしめて頭を撫でる許可を出します」

武内P「気を取り直して、次に行きましょう」

専務「私は、あまり心の耐久値が高い方ではない」

武内P「ガンバ、と、そう思います」

武内P「では、二枚目を読み上げます」

専務「……」


武内P「『担当アイドルが、乳首を狙って困っている』」


専務「ふむ、なるほど」

武内P「どうやら、プロデューサーの悩みのようですね」

専務「マリア・シャラポワが使用していたのと同じ付け乳首をP全員に配布しなさい」

武内P「! よろしいのですか!?」

専務「私は城を守る。そして、そこで働く者達もまた同様です」

武内P「専務……!」

武内P「では! 三枚目を読み上げます!」

専務「フッ、どうした? 妙に機嫌が良いようだが」


武内P「『お年玉って、何でごぜーますか?』」

武内P「……あっ」


専務「ふむ、なるほど」

武内P「申し訳ありません……その、三枚目にも関わらず、闇を……」

専務「キミ、売店にダッシュで行き、スティックノリを買ってきなさい」

武内P「待ってください! まさか、ポチ袋を自作するおつもりですか!?」

専務「必要ならば、私はそうします」

武内P「専務……!」

  ・  ・  ・

武内P「では、四枚目を読み上げます」

専務「やはりキミは優秀だ。30秒でお使いを済ませるとは」


武内P「『くたばれ!!』」


専務「ふむ、なるほど」

武内P「……と、それだけ書いてありますね」

専務「キミに、私を膝枕し頑張ったと褒める許可を出します」

武内P「! 待ってください、まだ、続きが!」

専務「ほう?」


武内P「『二度くたばれ!!』」


専務「二度、か。難しい注文だな」ジワッ…

武内P「では、五枚目を読み上げます」

専務「346ボックス、中々盛況ではないか」


武内P「『周囲の人間が、よく脱糞します』」


専務「ふむ、なるほど」

武内P「どうやら、プロデューサーの悩みのようですね」

専務「待ちたまえ。何故、プロデューサーのものだと?」

武内P「イタズラか何かかと。脱糞など、有り得ませんから」

専務「ふむ……それもそうですね」

武内P「……セーフ、ですね」ボソッ

武内P「では、六枚目を読み上げます」

専務「もう、死ね系統は勘弁して貰いたいものだな」


武内P「『家族が揃っても会話が無く、とても静かです』」

武内P「『私は、居ても居なくても変わらないのかと思います』」

武内P「『いつか、誰からも見捨てられないかと、不安です』」


専務「ふむ、なるほど」

武内P「申し訳ありません……また、闇が……」

専務「社内の全員に、マカビンビンを1ダース支給しなさい」

武内P「待ってください! それは、あまりに強引すぎる解決方法です!」

専務「心開けば股開く。ならば、その逆もまた然りです」

武内P「専務……!」

武内P「では、七枚目を読み上げます」

専務「験を担ぐ方ではないが……ラッキーセブン、期待しています」


武内P「『専務は変わった! 専務が一番格好良いよ!』」


専務「!……!?……!?」ダバダバ!

武内P「落ち着いてください! あの、小躍りはやめてください!」

専務「……!……!」ダバダバ!

武内P「あの……まだ、続きが……」

専務「!?」


武内P「『ハハハハ! ウーソーだーよー!』」

武内P「『専務なんていらないよー! いらないいらない!』」

武内P「『帰ってプレステやろ!』」


専務「……プレステ相手なら、仕方無いか」

武内P「では、八枚目を読み上げます」

専務「八は再生を意味する数字でもある」


武内P「『担当アイドルからのアプローチがきつすぎる』」


専務「ふむ、なるほど」

武内P「殴り書き、ですね。何かに追われながら書いたようです」

専務「佐久間まゆ君には、私が直接説教をしよう」

武内P「それで……彼女が止まるとは思わないのですが」

専務「押して駄目なら引いてみろ。駆け引きが重要だ」

武内P「専務の口からでは、説得力に欠けると、そう、思います」

専務「何か?」

武内P「いえ、何も」

武内P「では、九枚目を読み上げます」

専務「本当に盛況だな。皆、悩みを抱えているということか」


武内P「『物心付く前から芸能界に居ました』」

武内P「『なので、本当に自分がこの仕事をやりたいのかわかりません』」

武内P「『いつか、わかる時がきますか?』」


専務「ふむ、なるほど」

武内P「これは……芸能界に潜む闇、ですね」

専務「こういった問題は、大先輩に聞くのが一番だ」

武内P「待ってください! 真の闇に触れるには、まだ!」

専務「ふむ……今回は、キミの意見を尊重しよう」

武内P「では、十枚目を読み上げます……これで最後ですね」

専務「十枚か。始めにしては、上出来だろう」


武内P「『妖怪七光りポエムババァ』」


専務「ふむ、なるほど」

武内P「……と、それだけ書いてありますね」

専務「キミに、飲み屋で私の愚痴に付き合う許可を出します」

武内P「待ってください。続きが」

専務「……続き?」


武内P「『私を付き合わせるのはやめてください』」

武内P「申し訳ありません。今、書き足させて頂きました」



おわり

書きます


武内P「プロデューサー?」

アーニャ「イズヴィニーチェ、間違えてしまいました」

武内P「今日の私は休日出勤。仕事中では、ありません」

アーニャ「ダー。パーパは、とっても頑張りやさん、です」

武内P「はい。娘の貴女のためならば」

アーニャ「パーパ……!」

武内P「アーニャスタシアさん……」


凛「待って。この状況は何なの?」

武内P「! すみません、渋谷さん」

凛「良いから、説明して」

アーニャ「リン。パーパは悪くない、です」

凛「ねえ、その呼び方、何?」

武内P「アーニャスタシアさんの呼び方に、何か問題でも?」

凛「アーニャスタシアさん、って明らかに変だから!」

武内P「?」


凛「……ちょっと、詳しく聞かせて貰うから」

アーニャ「シトー?」

そう言えば岡崎さんと武内Pのネタってあんま見ないな

  ・  ・  ・

凛「ねえ、さっきのプロデューサーは何?」

アーニャ「? リンは、何もしてないのですか?」

凛「何もするわけないでしょ」

アーニャ「ニェート。そうではない、です」

凛「?」


アーニャ「シンデレラパワー・オブ・スマイルを使ってないのです、か?」


凛「……」

凛「は?」

凛「ねえ……誤魔化そうとしてない?」

アーニャ「そんな事は無い、です!」

凛「というか……何? それ」

アーニャ「アー、口で説明するのは、とても、難しい」

凛「……私をからかおうとしてる?」

アーニャ「……私は、リンをとても大切な仲間だと思っています」

アーニャ「そんな事は、しない、です!」

凛「……ごめん」

アーニャ「ダー。わかってくれて、私も嬉しい♪」

凛「その、シンデレラパワー・オブ・スマイルって……何なの?」

アーニャ「リンは、アー、当然知ってると思ってました」

凛「ねえ、教えて。それを使えば、プロデューサーを――」


蘭子「煩わしい太陽ね」


アーニャ「蘭子!」

蘭子・アーニャ「闇に飲まれよ!」

凛「仲いいね……おはよう」

アーニャ「! そうです、蘭子のを見れば、すぐわかります!」

凛・蘭子「?」

  ・  ・  ・

蘭子「わ、我が力を開放した姿を見せよ、と……!?」

アーニャ「ダー。蘭子は、力の使い方がとても、アー、上手♪」

アーニャ「やっぱり、シンデレラガールの力は凄い、です!」

蘭子「……ふっふっふ! 我が友よ、汝も十分な魔力を秘めている!」

蘭子「内より漏れ出るその輝きは、冠こそ無いが我に迫るが如し!」

凛「えっと……シンデレラガールの蘭子なら、もっと凄い、って事?」

アーニャ「ダー♪ 蘭子が、私に教えてくれました♪」

蘭子「友に翼を授けるのも、堕天使の私の務め……」ビシッ!

  ・  ・  ・

蘭子「――しかと見るが良い! 我が魂の輝きを!」

アーニャ「リン、まずは見て、アー、感覚を掴みましょう」

凛「でも……その、蘭子の言の葉? のが、参考になるかな……?」

アーニャ「ニェート、違います」

凛「?」


ガチャッ!

蘭子「おとう(↑)さ(↑)ーん(↑)!」


凛「イントネーション、おかしくない!?」

アーニャ「熊本弁、です」

凛「!?」

武内P「おかえりなさい、蘭子」

蘭子「ただーいまっ♪」

ぎゅっ!

武内P「っ、こらこら」

蘭子「私、お仕事頑張ったと! 偉い? ねえ、偉い?」

武内P「ええ……とても」

蘭子「えへへっ♪ おとうさーん♪」

ぎゅ~っ!


凛「何あれ!? 何あれ!?」

アーニャ「あれが、シンデレラの放つ、シンデレラパワー・オブ・スマイル、です」

凛「……!?」

  ・  ・  ・

蘭子「……うぅ、見られてるのに、ついいつもの感じで……///」

アーニャ「蘭子。自分に素直になるのが、一番でしょう?」

蘭子「そう……でなければ、力の影響が薄れてしまう」

アーニャ「プロデューサーは、意思が強い、です」

蘭子「我が友を、我が父とするのにどれだけの時間を要したか……!」

アーニャ「私も、かなりパーパに出来てきました♪」

凛「……」


凛「ねえ、とりあえず土下座すれば良い?」

アーニャ「リン!? どうして、アー、土下座を!?」

凛「土下座すれば、詳しく教えてくれるかな、って」

蘭子「そ、そんな事しなくても教えるから!」

凛「……ありがとう。それじゃあ、土下座するね」

アーニャ「ニェート! いけません、リン!」

凛「感謝の気持ちを表すには、これが一番かな、って」

蘭子「そ、其の想い、然と受け取った! 面を上げよ!」

凛「うん、わかった」

蘭子・アーニャ「……ホッ」

  ・  ・  ・

蘭子「まず、始めに忠告しておくわ」

凛「……」

蘭子「これは秘儀……大勢の目に触れてはならない!」

凛「どうして?」

アーニャ「アー、取り分が、減ってしまいます」

凛「わかった。誰にも言わない」

蘭子「もしも! この秘儀が他に漏れてしまった時は――」

凛「うん、始末する」

アーニャ「リン? 仲間に引き入れる、ですよ?」

凛「でも……取り分が!」

蘭子「力の効果はそう長くは保たない……」

蘭子「これも、我が友の魂の強さによるもの」

アーニャ「一回、五分程度なので、アー、もう少しだけ仲間を増やせます」

凛「だけど、増やしすぎるわけにはいかない……か」

アーニャ「ダー♪ だから、内緒ですよ?」

凛「うん、約束する」

凛「でも……どうやったこんなのに気付いたの?」

蘭子「……あれは、正に運命であった」

蘭子「我が魂が無防備な、その一瞬!」

蘭子「その一瞬、我が友と、我が父の名を違えてしまった!」

蘭子「灼熱の業火に焼かれる思い……しかし!」

蘭子「炎の中から、大いなる翼持つ不死鳥が飛び立った!」

アーニャ「呼び間違ったら、アー、偶然見つけた、です」

凛「解説、ありがとう」

蘭子「不死鳥となった我が友が、舞い降り、告げた……」

蘭子「な、なな、なん……なんだい、蘭子……って///」

蘭子「優しい感じで、おとうさんみたいに……///」

アーニャ「笑顔で、アー、パーパを呼ぶようにすれば良い、です」

凛「それだけで良いの?」

蘭子「いっぱい甘えても、ぜ~んぶ受け止めてくれるとよ!?///」

アーニャ「私も、早くそうなりたい、です」

アーニャ「シンデレラのリンなら、私より早いかも、です♪」

凛「……ふーん、そう……かな」

  ・  ・  ・

凛「……スーッ……ハーッ」

アーニャ「リン、頑張ってください!」

蘭子「此処で見守っているわ……貴女の魂の輝きを!」

凛「二人共……うん、ありがとう」

蘭子「儀式が成功した暁には……私達は、門を閉じるわ」

アーニャ「せっかく、です。最初は二人っきりで」

蘭子「門には、結界を張ろう。そう! 我々こそが、守護結界となる!」

アーニャ「誰も入らないよう、アー、見張っておきます」

凛「何から何まで……本当に、ありがとう」

凛「行くよ――蒼い風が、駆け抜けるように!」

ガチャッ!


凛「お――」


未央「あっ! おはよー、しぶりん!」


凛(なんで未央がここに!?)

凛「――っさん!」


未央「……」

凛「……」

未央「……おっさん?」


武内P「……」

未央「えっと……今のって、プロデューサーの事……?」

凛「いや、今のは違――!?」


武内P「おっさん、ですか……」ショボン


未央・凛「……!?」

武内P「あ、いえ……確かに、そう呼ばれてもおかしくないな、と」ショボン

未央「そっ、そんな事無いって!」

武内P「いえ……大丈夫です」ショボン

凛「プロデューサー! い、今のは間違いだから!」

武内P「……」ショボン

未央「し、しぶりん頑張って!」

凛「頑張ってって言われても……!?」


武内P「……」ショボン


凛「い……今のは、その、未央が居たから……」

未央「私!?」

凛「は、恥ずかしくて……お、おっさんって言っちゃっただけで」

未央「私が居ると恥ずかしくて!?」

凛「未央! ちょっと静かにしてて!」


武内P「……」ショボン

  ・  ・  ・

武内P「……」ショボン

武内P「……」

武内P「……? 何故だろう……とても、悲しい事があったような」

武内P「まるで、娘におっさんと呼ばれ、職業名でしか呼ばれない……」

武内P「……そんな、悲しい出来事があった気が」

武内P「……」

武内P「いえ……そんな事が、ある筈は無いですね」


ガチャッ!


楓「お父さーん♪」


武内P「高垣さんは、流石に無理があります」



おわり

寝ます
おやすみなさい

起きたら縛られていましたお休み

相変わらず素晴らしいSSをありがとう・・・

シンデレラガールが本気を出せば言霊だけでPをある程度自由に操れるのか

忘れそうなので途中だけど貼り

C.C.「復活したくない、だと?」
C.C.「復活したくない、だと?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517661443/)

ドモン「シコる? 一体何の話だ」
ドモン「シコる? 一体何の話だ」 - SSまとめ速報
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書きます


武内P「皆さん、この縄を解いてください」

CPアイドル達「あーいこーでしょ!!」

武内P「何のジャンケンですか?」

CPアイドル達「あーいこーでしょ!」

武内P「あの、縄を……皆さん?」

CPアイドル達「あーいこーでしょ!」

武内P「もうずっとアイコ続きじゃないですか、皆さん!」

未央「だって……順番を決めないと」

武内P「ですから、何の順番なんですか!?」

卯月「そ、そんなの言えませんよー!///」

武内P「何故、顔を赤らめて……!?」

凛「ふーん。プロデューサーもそういう事考えるんだ」

武内P「私には、皆さんが何を考えているのかわかりません!」

CPアイドル達「……///」

武内P「どうして、全員顔を赤く……!?」

美波「も、もう! 女の子にそんな事言わせないでください!///」

武内P「えっ、あ、その……すみません?」

アーニャ「ダー。私、ドキッとしてしまいました///」

武内P「私は……皆さんの反応にゾクッとします」

蘭子「我が友よ! や、優しくしてくだしぁ……///」

武内P「兎に角、この縄を……!」

CPアイドル達「……///」

武内P「まずは私に優しくしてください、皆さん!」

智絵里「み、見捨てないでくださいね……///」

武内P「……縄を解いてくれたら、考えます」

かな子「マカロン美味しい~///」

武内P「三村さんは何故顔を赤く?」

杏「もうさ、とりあえずひん剥いちゃおうよ///」

武内P「!? ひん剥く!? あの、何をですか!?」

CPアイドル達「……///」

武内P「話を! 話をしましょう、皆さん!」

きらり「きらりはぁ~、お話よりもしたい事があるにぃ///」

武内P「したい事……!?」

莉嘉「うんっ☆ アタシ達、階段を登りたいんだ!///」

武内P「そ、それは……アイドルとしての、ですよね!?」

みりあ「ううん? 大人の階段だよ?」

武内P「はいっ!?……あの、赤城さんは冷静ですね!?」

CPアイドル達「……///」

武内P「他の方も冷静になってください! お願いします!」

みく「今日のみくは、えっちなネコチャンにゃ///」

武内P「っ……!? いけません、前川さん!」

李衣菜「わ、私も17歳の女子、ロック以外にも興味が……///」

武内P「ロックにかける熱い想いを忘れないでください!」

CPアイドル達「……///」

武内P「くっ……こうなったら、仕方がない……!」

CPアイドル達「……?///」


武内P「縄を解いてくれた方は、今後優遇しようと思います」


CPアイドル達「!?」

ざわっ……!

未央「優遇って……まさか、差をつけるって事!?」

武内P「はい。その、まさかです」

卯月「じょ、冗談ですよね!? 他と差を付けるなんて……」

武内P「いえ、私は本気です」

凛「ふーん。さっ、差をつけるなんて、して良いとお、思ってるの?」

武内P「ですが、私も人間ですから」

CPアイドル達「……!?」

武内P「助けてくれた人を優遇するのは仕方ないと、そう、思います」

美波「ぷっ、プロジェクトのリーダーとして認められません!」

武内P「ですが、プロデューサーは私です」

アーニャ「優遇……アー、一緒にご飯を食べに行ったり、です?」

武内P「ええ、それも当然あるでしょうね」

蘭子「おっおおお、お泊りデート!」

武内P「……は、流石に難しいです」

CPアイドル達「……ホッ」

武内P「が、休日にどこかへ出かけるのも、良いかも知れません」

CPアイドル達「!!?」

智絵里「優遇されない子は、見捨てるんですか……!?」

武内P「そんな事はありません。が、接する時間は、はい、減りますね」

かな子「カロリー制限は解除されますか!?」

武内P「……出先で、何か甘い物が欲しくなる時もあるでしょうね」

杏「働かなくても良くなったり?」

武内P「は、しませんが……ハードな仕事は入れなくなる可能性が」

CPアイドル達「……!?」

武内P「さあ、誰でも構わないので、縄を解いてくれませんか?」

きらり「き、きらり……縄を解いちゃおうかにぃ~……?」

武内P「優遇するのは、先着一名ですのでお早めに」

莉嘉「一人だけってコト!? ズルい、そんなの聞いてないよー!」

武内P「申し訳ありません、今、言いました」

みりあ「ねえねえ、本当に優遇してくれるの?」

武内P「はい、縄を解いてくれた先着一名だけ、優遇します」

CPアイドル達「……!」

ざわっ…!

武内P「……こんな事で牽制し合う皆さんが見られて、私は悲しいです」

みく「Pチャン、縛られて痛い所ない? みくがさすってあげるにゃ」

武内P「そうですね……強いて言えば、心が痛いです」

李衣菜「こ、これは……早く縄を解かないといけませんね!」

武内P「はい、一刻も早く、お願いします」

CPアイドル達「……」

武内P「どなたか、私を助けてください」

CPアイドル達「――じゃーんけーんぽんっ!」

武内P「あの、皆さん?」

CPアイドル達「あーいこーでしょ!」

武内P「さっき、それでずっと決着がつかなかったじゃないですか!」

CPアイドル達「あーいこーでしょ!」

武内P「話し合いをする事は、出来ないのですか!?」

CPアイドル達「あーいこーでしょ!」

武内P「……残り、一分以内に決めてください」

CPアイドル達「!?」

CPアイドル達「あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ!」

武内P「ジャンケンを早くしろという意味ではありません、皆さん!」

CPアイドル達「あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ!」グスッ…!

武内P「焦って泣かないでください、皆さーん!」

CPアイドル達「あいこでしょっ!」

凛「!? え、やだ、嘘でしょ!?」

凛「か、勝った! 勝った勝った! あ、あははっ!」ニコニコッ

凛「プロデューサー、見て! グー! グーで勝った!」ニコニコッ

武内P「……今まで見たことの無い程の、良い笑顔です」

凛「ふーん♪ ふーん♪」

CPアイドル達「……」

CPアイドル達「――あっち向いてぇぇ……」

凛「!? えっ、えっ!? 何!? はっ!?」

くっそ泥沼wwwwwwww

凛「ず、ずるい! そんなの決めて無かった!」

凛「……何なの、もうっ!」

ピッ!

CPアイドル達「――ほいっ!」

凛「……!」

CPアイドル達「……!」

武内P「……」

武内P「まさか……全員上を向いて、勝負が決まるとは思いませんでした」

凛「……勝った……勝った!」

CPアイドル達「……」

未央「……さすが、しぶりん! まずは1ポイント、だね!」

凛「……えっ?」

卯月「凛ちゃん凄いです! あと2ポイントですね!」

凛「……あ、あと2ポイント?」

美波「よーし、私達も負けてられないわね!」

アーニャ「ダー! リン、勝負は、アー、ここから、です!」

蘭子「願いを叶える聖杯に美酒を最初に満たすのは、この私!」

凛「待ちなよ! いつからポイント制になったの!?」

CPアイドル達「じゃーんけーん!」

武内P「……渋谷さんを除いて、皆さんが一丸となっていますね」

凛「……!?」

CPアイドル達「――ぽんっ!」

凛「納得行かない! 私、勝ったでしょ!?」

智絵里「あ……出してない」

かな子「これは、ポイント没収だねー」

杏「しょうがないよね、何も出さなかったんだもん」

CPアイドル達「うん、しょうがない」

凛「プロデューサー! 皆に言って! 私が勝った、って!」

武内P「すみません……私が何を言っても、皆さんは止まらないかと」

凛「……!?」

きらり「ポイントが無くなっても、ハピハピするにぃ☆」

莉嘉「アタシも、これから負けないぞー☆」

みりあ「ねえねえ、今どんな気持ち?」

凛「……」ギロッ!

みく「にゃっ!? ど、どうしてみくを睨んでるの!?」

李衣菜「ちょっ、ちょっとみくちゃん! こっち来ないで!」

凛「……ふーん、そう。そういう事するんだ、皆」ギロッ!

CPアイドル達「……!」

武内P「あ、あの! その眼光は! その眼光はやめてあげてください!」

凛「……プロデューサーも見てたよね、私が勝った所」ギロッ!

武内P「それは……は、はい」

凛「って、プロデューサが言ってる」ギロッ!

CPアイドル達「……!」プルプル

凛「私が縄を解くから」ギロッ!

みく「……み、みくは自分を曲げないよっ!」

凛「は?」ギロッ!

みく「」

じょぱっ!

武内P「前川さーん!」

凛「……うん、私が縄を解くので、良いみたい」ギロッ!

武内P「あ、あの……とりあえず、眼光を収めてください……!」

凛「それは駄目。だって、邪魔が入るかもしれないし」ギロッ!

武内P「ですが……こ、怖……」

凛「は? 私は、縄を解いてあげようとしてるんだよ?」ギロッ!

武内P「す、すみませ……」

武内P「……――誰か! 誰か助けてください!」

武内P「助けてくれた方を優遇しますので! 誰か!」

CPアイドル達「!」


CPアイドル達「――じゃーんけーん!」


武内P「どうしてジャンケンで決めようとするんですか、皆さん!?」

CPアイドル達「――ぽんっ!」

凛「!? か、勝った! また! 今度は一発で勝った!」ニコニコッ

武内P「あの……何故、渋谷さんも参加しているんですか!?」

凛「今度はチョキ! チョキで! ぶいっ! ぶいっ!」ニコニコッ

武内P「……良い、笑顔です」

凛「ふーん♪ ふーん♪ ゆ・う・ぐうっ♪ ゆ・う・ぐうっ♪」ニコニコッ

CPアイドル達「……」

CPアイドル達「――あっち向いてぇぇ……」

凛「!? また!?……良いよ! また勝てば良いんでしょ!」


武内P「いい加減に縄を解いてくださーい!」



おわり

デレマス以外のネタもポコポコ浮かぶ状態になりました
別作品単体の時は他にスレ立てる事にしました
あとで自分で見返すためにここに貼ります、見難くて申し訳ない

おつ
復活したくないのもあなただったのかw

>>780
昔ギアス系はクソ程書いたんですが、スレタイが全然思い出せないんですよ
見返そうと思っても見返せないのが無数にあるので色々と後悔してます
なので、このスレにまとめちゃえば覚えるスレタイ少なくて済むな、とw

あの二つもお前かよ
速筆だな

毎日書いてる成果ですね!
考えて書いてないので当たり外れが大きい俺に付き合って頂き有り難いです
書きます


武内P「もうすぐ、ダーマ寺ですね」

凛「ダーマ寺? 神殿とか、神社じゃなくて?」

武内P「はい。そのあたりは、大人の事情です」

美嘉「ふーん? でも、転職とかは出来るんだよね?★」

武内P「そのはずです」

楓「今の職が天職だと思ってるので、転職はショックです」

武内P「あの……高垣さんは、本当に何の職なんですか!?」

  ・  ・  ・

仁奈「ここは通さねーでごぜーますよ!」


武内P「野盗、ですね」

凛「だけど、あれならすぐ倒せそう」

美嘉「ちょっと!? 容赦なさすぎない!?」

楓「もしかしたら、野盗じゃないかもしれないですし……」


仁奈「さんぞくの気持ちになるでごぜーます!」


楓「ほら、やっぱり♪」

武内P「あまり、変わりがないと思うのですが」

凛「まずいね……山賊は、ちょっと厄介かな」

美嘉「えっ!? 野盗とそんなに変わらなくない!?」

仁奈「水と食料を置いてってくだせー!」


武内P「申し訳ありません。旅を続けるため、それは出来ません」

凛「どうしてもどかないなら、倒してでも通して貰うから」

美嘉「まぁ、しょうがないか。ホラホラ、さっさと通して―」

楓「野盗なんて、やっとると駄目ですよ」


仁奈「もう、コンビニのオニギリは飽きてきたでごぜーます……」


武内P「ぐっ!? まずい、気をしっかり保ってください!」

武内P「あの野盗は、精神攻撃を仕掛けてきています!」


棺桶×3


武内P「三人揃って即死じゃないですか!」

  ・  ・  ・

武内P「……何とか、1000円で見逃して貰いました」

武内P「しかし、これからどうすれば……」


棺桶×3


武内P「……私が一人で運ぶしか、なさそうですね」

武内P「よっこい……せっ!」

武内P「……くっ、さすがに重い……!」


ドンドンドンドンッ!


武内P「ひいっ!? あ、あの、申し訳ありませんでした!」

武内P「棺桶の内側から叩かないでください! お願いします!」

武内P「か、軽い軽ーい!」

  ・  ・  ・

武内P「途中で、野良クラリスさんに会えて助かりました」

凛「凄いね。タダで復活させてくれたんでしょ?」

武内P「ええ。お代は頂けないと、とても、良い笑顔でした」

楓「仲間になってくれたら、とっても頼もしい僧侶さんですね」

武内P「はい。そう、思いました」

美嘉「ま、まあでも!? このパーティーにはアタシがいるし!?」

一同「……」

美嘉「やっぱりカリスマって大事だし!?★」


楓「――と、このタイミングで、新しい呪文を閃いた私です」


武内P「! 高垣さんは……やはり、魔法使いだったのですね!?」

楓「? あの……どうして、そう思ったんですか?」

武内P「……いえ、何でもありません」

楓「新しい呪文の名前は……」

武内P・凛・美嘉「……!」ゴクリ

楓「こ……ここ……こっ」

武内P・凛・美嘉「……!」ゴクリッ

楓「……ふふっ! 見つめられると、うふふっ、照れちゃいます」

バシバシ!

武内P「痛い、痛い! す、すみません……」

楓「……新しい呪文の名前は――」


楓「――『こいかぜ』」


武内P・凛・美嘉「『こいかぜ』……!?」

美嘉「それってさ、楓さんのソロ曲だよね?★」

楓「ええ、そうよ」

凛「ふーん。でも、戦闘の役には立た無さそう」


楓「そんな凛ちゃんに――『こいかぜ』っ!」

ぽわぽわ~ん!


凛「? 別に何も変わった事は無いけど……っ!? く、苦しい!」


武内P「!? 渋谷さん!? だ、大丈夫ですか!?」

凛「だ、駄目っ! 満ちては欠ける想いが今、苦しくて溢れ出しそう!」

武内P「意味がわかりません!」

凛「舞い踊る風の中でえええっ! プロデューサ――ッ!」

ガバッ!

武内P「!? は、離れて! 離れてください渋谷さん!」

凛「巡り会えた! この奇跡が!」

武内P「や、やめっ、やめてください! いけません!」

凛「幻の大地を越えてえええっ!」

武内P「ドラクエ6ネタを絡めても許されないですから!」

凛「あなたと未来へええっ! 歩きた」


楓「――『こいかぜ』っ!」

ぽわぽわ~ん!


凛「……」

武内P「と、止まった……!」


楓「『こいかぜ』は、恋する気持ちを最大限に高める呪文です」

楓「恋する少女は……ふふっ、無敵ですね♪」


凛「――楓さん! 私に、もう一度『こいかぜ』を!」

武内P「絶対にやめてください!」

  ・  ・  ・

武内P「小ネタで、もう半分も過ぎてしまいました」

武内P「ですが……ダーマ寺には辿り着けましたね」

美嘉「……アタシ、転職しようかなー」

武内P「城ヶ崎さん?」

美嘉「結構レベルも上がってきたしさ、賢者とかどう?★」

武内P「成る程。それは、戦力アップになりそうですね」

美嘉「でしょ!★ そうすればほら……アンタも嬉しいだろうし///」

武内P「はい、とても」

美嘉「そ、そっか……///」


凛・楓「……」

美嘉「ねえ、アンタは転職とかしないの?」

武内P「いえ、私はプロデュ……勇者ですので」

美嘉「勇者と賢者……うん、お似合いだよね★」

武内P「はい?」

美嘉「うっ、ううん!? な、何でもないよ!?」

武内P「……?」

美嘉「……///」


凛「――それじゃあ」

楓「――天職に、転職してきます」


武内P「お二人も、ですか?」


凛「うん。待ってて」ニコリ

楓「はい。待ってます」ニコリ


武内P「?……良い、笑顔ですが……」

武内P「……何か、嫌な予感が……」

  ・  ・  ・

凛(王女)「――お待たせ」


武内P「どうして転職出来たんですか!?」

凛(王女)「これはもう、勇者と結婚するしか無いかな」

武内P「戦闘力がガタ落ちじゃないですか!」

凛(王女)「大丈夫。夜の戦闘力は、上がってるはずだから」

武内P「何を言ってるんですか渋谷さーん!」


楓(幼馴染)「――私、帰りを待ってますから」


武内P「あの、そんなのにも転職出来るんですか!?」

楓(幼馴染)「アナタは、きっと帰ってきてくれる……信じてます」

武内P「せめて、一緒に旅に出られる職にしてください!」

楓(幼馴染)「そうしたら……一生、一緒ですよ♪」

武内P「何てことだ……! 二人も戦力外に……!」


武内P「! 城ヶ崎さんは!? 城ヶ崎さんは無事でしょうか!?」

美嘉(僧侶)「……」


武内P「! 城ヶ崎さん!」

美嘉(僧侶)「ヤッホー★ お待たせっ★」

武内P「転職は……しなかったのですか?」

美嘉(僧侶)「うーん、もうちょっと僧侶で経験を積んだ後の方が良いかな、って」

武内P「成る程。もう少しで呪文を覚える、という事もありますしね」

美嘉(僧侶)「そうそう! やっぱり、呪文って大事だからさ★」


美嘉(僧侶)「――南無阿弥陀仏」


武内P「僧侶違いじゃないですか!」

凛(王女)「さあ、行くよ。『ゆうべはおたのしみでしたね』」

武内P「それは、王女ではなく宿屋の台詞です」

楓(幼馴染)「ぬわーーっっ!!」

武内P「それは、幼馴染ではなく父親の台詞です」

美嘉(僧侶)「南無大慈大悲救苦救難……」

武内P「あの……鬼の手でも、使うつもりですか?」


武内P「……皆さん、今すぐ、元の職に戻してきてください」

武内P「そうでなければ……私が、寺に駆け込んでしまいそうです」

  ・  ・  ・

凛「うん、やっぱり戦士が一番向いてるかな」

武内P「はい。とても頼もしいと、そう、思います」

美嘉「アタシも、なんだかんだで僧侶に愛着わいたかも★」

武内P「ええ。普段とは違った魅力に溢れています」

楓「私も……やっぱり、これが天職だと思います」

武内P「あの……結局、高垣さんの職業は何なのでしょうか?」


楓「――『こいかぜ』っ!」

ぽわぽわ~ん!


武内P「!? ぐっ、数え切れない涙と、言えない思いを抱きしめている気分が!?」


凛「……なんだか、困ってるけどハッキリ言い出せない人みたいだね」

美嘉「……やっぱり? アタシもそう思った」

武内P「くっ……わ、私はプロデュ……勇者!」

凛「! 凄い、『こいかぜ』に抵抗してる!」

武内P「揺れる思い、惑わされている訳には……いかない!」

美嘉「いや、これ抵抗しきれてなくない!?」

楓「うふふっ、素直になるのが一番ですよ♪」


ピシャーン! ゴロゴロゴロ!


凛・美嘉・楓「!?」


???「……ふっふっふ!」


凛・美嘉・楓「この声は……!」


魔王蘭子「煩わしい太陽ね」


凛「蘭子か」

美嘉「アタシ、てっきり仏が来るかと思った」

楓「どうしたの、蘭子ちゃーん?」


魔王蘭子「あの……ちょっと親しげなのは、控えめで……」

もうプロデュースなんてどうでもいい!!!!

魔王蘭子「……ゴホンッ!」

魔王蘭子「勇者よ! 魔王たる我を倒さんとする愚か者よ!」

魔王蘭子「我のこの姿……しかとその目に焼き付けよ!」ビシッ!


凛「凄い……あの衣装、もの凄く豪華」

美嘉「衣装さん、めっちゃ気合入れて作ったらしいよ★」

楓「まあ、そうなの? 素敵よ、蘭子ちゃーん」


魔王蘭子「……あの、親しげなのは……あの、本当」


武内P「魔王神崎さん……! よく、似合っています……!」

武内P「そして……ずっと、君を探している!」


魔王蘭子「ふっ! 放浪の果てに、汝は我の元に辿り着けるかな?」

魔王蘭子「我が魂の輝きは、今にも世界を覆い尽くさんと脈動し」


武内P「ただ君に会いたい! only you!!」


魔王蘭子「ぴっ!?///」

魔王蘭子「あ、会いたいってあ、あの、あっ、あ……///」

魔王蘭子「きゅ、急にそんな事言われても、えっと……///」

魔王蘭子「そんな、勇者……ぷっ、ぷぷぷ……///」


凛「……『こいかぜ』、きいてるね」

美嘉「……アタシ、魔王やればよかったカモ」


魔王蘭子「ぷっぷプロプロ……プロヴァンスの風!」

武内P「巡る……こいかぜ!」

魔王蘭子「恋!?///」


魔王蘭子「あ……う……///」

ピシャーン! ゴロゴロゴロ!


凛・美嘉「『まおうは にげだした!』」

  ・  ・  ・

武内P「魔王神崎さん……とても、強大な相手のようです」


凛・美嘉「どこが?」


武内P「……しかし」

武内P「『こいかぜ』をフルで歌う羽目になるとは……思ってもみませんでした」

凛「悪くなかったよ。ううん、かなり良かったと思う」

美嘉「アンタ、プロデュ……勇者よりも、そっちの方が向いてるんじゃない?★」

武内P「いえ、そんな事はありません」

武内P「私には、アイドルの皆さんを笑顔にする、プロデュ……勇者が一番です」

楓「天職なので、転職する気は無い、と?」

武内P「はい。転職する――」


楓「『こいかぜ』っ♪」

ぽわぽわ~ん!


武内P「――踏み出す力下さい!」

武内P「……やめてください!」



おわり

寝ます
おやすみなさい


タケウチシリーズ面白いな

絶対に武内Pから引き離そうとする専務(もしくは部長)VS絶対に引き離されない楓さん
見たいな!!!

武内くんをアイドルからNTRしようとする専務さんVS部長さんの仁義なき戦い?

サンダ対ガイラが何だって?

>>805
書きます


「キミ達の距離感について話したい」


 彼女専用の執務室に、押し殺したような声が響いた。
 震える彼女の肩から察するに、そうとうお冠のようだ。
 だが、大声を張り上げないだけ、彼女も成長したのだろう。
 年若い頃から知っている身からすれば、なんとも嬉しいものだ。


「私達の……距離感ですか?」


 自分が、何を言われているかわからないといった様子の男。
 不器用なこの男は、事態の深刻さを理解していないようだ。
 己が誠実だからと言って、他もそうとは限らないのだよ、キミ。


「……」


 私は、男の横に立つ高垣くんに目を向けた。
 真剣な表情の男とは対照的に、その顔には押し殺したような笑みが。
 ……そう、高垣くんは、笑いをこらえながら、


「……」


 彼の後頭部にいつも在る、チョロリと立った寝癖を人差し指で弄んでいる。
 まるで、じゃれつく猫のような高垣くんは、彼女の方を一度も見ていない。
 それが、ことさらに怒りを刺激するのだろう。

「……!」


 鋭い目から放たれる眼光は凄みを増し、哀れな男はその余波に晒されている。


 青ざめる男と、怒る女に、微笑む女。


「……やれやれ」


 そして、巻き込まれた、哀れな私。


「そうだ。キミ達は、プロデューサーと……」


 彼女が、男に視線を向ける。
 その視線を受け、男は居住まいを正し直立不動。
 背筋を伸ばした彼は、元から長身なのも相まってより、大きく見える。


「……アイドルだろう……!?」


 彼女が、高垣くんに視線を向ける。


「……♪」


 が、高垣くんはそれを無視。
 寝癖を弄ぶ指の動きは激しさを増し、そしてリズミカルに。
 パンチングボールを叩くボクサーのようなその姿は、無邪気な子供そのもの。


「……?」


 先程から何も言葉を発しない高垣くんを不審に思ったのか、
男はチラリと横目で彼女の方を見た。


「――はい、その通りです」


 早い。
 そして、速い。
 今の高垣くんは、両手を前で組み、とても美しい姿勢で専務に目を向けている。
 凛としたその表情には、先程の無邪気さはどこにも見当たらない。


「……」


 男が、少し高垣くんに見惚れたのがわかった。
 が、それはプロデューサーとして正しいことではないと思ったのか、
かぶりをふって、また専務の方に視線を戻す。


「……♪」


 そして、また寝癖弄りが再開された。


「……!」


 彼女の額に、青筋がクッキリと浮かび上がった。
 眉間に寄せられた皺、引き締められた唇。
 瞳の奥に見える炎は、正に怒りの化身。


「……!?」


 普段の彼女だったならば、詩的な表現で男と会話していただろう。
 だが、今の彼女は明らかに冷静さを欠いている。
 原因は、言うまでもなく、


「……♪」


 高垣くんだ。
 ……しかし、彼の寝癖を弄ぶのはそこまで楽しいのかね?
 なんだか、私もやってみたくなってしまったじゃあないか。


「……」


 厳しい視線に晒され、男は右手を首筋にやり、困った顔をした。
 彼も、随分と表情が豊かになったものだ。
 これもアイドルの――プロジェクトの、彼女達の影響かね?


「~♪」


 はっはっは、高垣くん。
 彼の右腕が作った空間は、キミの手をスポスポと通すための場所じゃあないよ。
 いやはや、あまり大きな空間では無いのに、器用に手を通すじゃないか。
 うんうん、やめようね? 本当に。


「……!」


 電流は通っていないが、それはイライラ棒だよ、高垣くん!


「……いい加減にしなさい……!」


 人が感情だけで他者を害せる生き物だったならば、
恐らく私達は今頃物言わぬ躯になっていた事だろう。
 その怒りを高垣くんも察したのか、手をスポスポするのをやめた。
 が、


「……」


 左の手を首筋にやり、男と鏡の様に対象な姿勢を取った。


「っぶふっ!?」


 それはずるいよ、高垣くん!
 そんなの、笑うに決まってるじゃあないか、ええ!?


「……部長?」


 男が、不審げに私を見る。


「……」


 高垣くんが、ニッコリとドヤ顔で私を見る。


「笑っている場合ですか……!?」


 ハハハ、そうだろうね。
 こんな時に笑ったら、いくらキミでも爆ギレするというものだろう。


「いや、すまなかった」


 ゴホンと咳払いをし、今のは笑ったのでは無いとアピールする。
 それを信じたのは……悲しいかな、不器用な男だけだった。

誤)対象

正)対称


「……私は、専務の仰っている事が、よくわかりません」


 そりゃそうだろう。
 だって、キミは気付いていないんだから。


「はい……私も、ビックリしています」


 私はね、キミがビックリした事にビックリしたよ?


「ですが……誤解を招くような事があったのならば、今後は気をつけます」
「はい。私も、彼と同じ気持ちです」
「ほう……!」


 二人の真剣な表情とぶつかり合う、専務の怒り。


「……!」


 勝ったのは、


「……良いでしょう。今後は気をつけたまえ」


 不器用だが、誠実な男と、美しく、神秘的な女だった。
 専務のその言葉を聞き、


「――はい」


 男は、深々とお辞儀をした。


「――はいっ」


 高垣くんは、そんな男の背中に両手を付き、馬跳びの要領で跳んだ。


 フワリ、と、そう表現するのが的確だろう。
 高垣くんは、女性にしては身長が高い方だが、とても軽い。
 長い手足も相まって、それは跳ぶと言うよりも、飛んでいるように見えた。


「……」


 カツンッ、と、高垣くんが履いていたサンダルが音を立てた。


「……」


 誰も、言葉を発さない。
 高垣くんは、やり遂げた顔をしている。
 専務は、あまりの怒りで絶句している。
 男は……さすがに気付いたのか、顔を上げられずにいる。


「……」


 全く、彼女は本当に仕方ない子だね。
 こんな状況じゃ、私が尻拭いをせざるを得ないじゃないか。



「――いやぁ、懐かしいね! 私も子供の頃はよくやったものだよ!」



 張り詰める場の空気を切り裂くように、努めて明るく、大声で。
 一斉に私に視線が集中するが、それを受け流して男の元へと向かう。


「ぶ、部長……?」


 何をする気ですか? と、男が視線で問いかけてくる。
 良いから合わせろ! と、私は視線で彼に命令する。


「――どうぞ」


 男は、両手を膝にやり、馬跳びの馬の体勢を取った。


「……♪」


 ワクワクと、動向を見守る高垣くん。


「……!」


 イライラと、動向を睨んでいる専務。


「……」


 ハラハラと、流されるがままの男。


 正に、三者三様。
 そんな彼らを前にして、私が出来る事などほんのちっぽけなものだ。


「ふむ……これは、少し助走が必要だな」


 手を膝にやって腰を曲げている男を見ながら、つぶやく。
 そして、距離を測るように少しずつ後ろ歩きを。
 あと少し……もう少しで――


 ――ドアに辿り着く!


「……!」


 ドキドキと、逃げるチャンスを伺う私!


 ……すまない、出来る事なら彼女の怒りを和らげてやりたかった。
 だけどほら、見てみたまえ。


「……!」


 専務の顔、とても人間とは思えない程歪んでいるよ。
 無理だよ、私には。
 尻拭いをしようと思ったけれど、出来ないものは出来ない。
 だってね、彼女の視線を浴びただけで思考が停止してしまったんだ。


「……!」


 ――よし、ドアまで辿り着いた。
 あとは、後ろ手でノブを回し、ドアを開けて――


 ガチャリッ。


「……!?」


 ――開かない!?
 何故!? どうしてだ!


「……♪」


 高垣くん?
 なんだい、その笑みは?
 とても、良い笑顔じゃないか。
 ふむ……何をしたかわからないが、キミが何かしたんだね。


「……」


 良いだろう、私も腹をくくった。
 本気を……出そうじゃないか!



 結局、あの後専務の怒りが爆発する事は無かった。
 何故かって?
 馬跳びに失敗した私の足が、彼の側頭部にモロに入ってそれ所じゃなくなったからさ。



おわり

これ違うな!?
明日>>805もう一回書きます
寝ます
おやすみなさい

アイドルが陰無営業し始めましたお休み

ありがてぇ!

>>805
書きます



武内P「この手は離せません」

専務「いいえ、今すぐ離しなさい」

武内P「私も、そうしたいのは山々なのですが……」

楓「その話、お受け出来ません」

ぎゅうう!

武内P「……離してくれないのです」

楓「お話することは、ありません」

専務「……」

専務「キミ達は、プロデューサーとアイドルだろう」

武内P「はい、その通りです」

楓「それが、何か?」

専務「手を繋ぎ続けるというのは、許されない」

武内P「はい、私もそう思います」

楓「……腕を組めと、そう、仰るんですか?」

専務「違う。そうではありません」

専務「イメージに傷がつくだろう」

武内P「本当に、その通りだと思います」

楓「まあ……私、傷物にされてしまうんですか?」

専務「そういう意味では無い」

武内P「アイドルが男性と手を繋ぎ続けるのは良い事ではありません」

楓「そんな……握手会も、やってはいけないんですか?」

武内P「そういう意味ではありません」

専務「そもそも……何故、キミ達が手を繋いでいる?」

武内P「私にも、よくわかりません」

楓「とても大きい手で、握っていると安心出来ます」

専務「彼の手の感想を聞いているのではない」

武内P「高垣さんの手は……とても柔らかいと、そう思います」

楓「……///」

専務「イチャつくのはやめなさい」

専務「いつからだ?」

楓「わかりません……気付いていたら、でしょうか」

専務「高垣くんは黙っていたまえ」

武内P「お互い専務に用があると話していて、気付いたら……」

専務「手を繋がれていた、と」

楓「貴女のおかげです」

専務「私のせいにするのはやめなさい」

専務「まあ良い、強引にでも引き離しなさい」

武内P「待ってください! それは――!」

専務「キミの意見は聞いていない」

楓「貴女とは、目指す場所が違う」

専務「キミの意見はもっと聞いていない」

武内P「……わかりました。努力は、してみます」

楓「!?」

専務「よろしい」

武内P「高垣さん、手を離してください」

楓「その話、お受け出来ません」

武内P「……!」

ぐいぐいっ!

楓「一緒に階段を登っていきたいんです!」

バシバシッ!

武内P「ぶっ!? へぶっ!? 顔は! 顔は叩かないでください!」

楓「笑顔で!」

武内P「……と、このようになるのです」

専務「笑顔どころか、涙目ではないか」

専務「なるほど……事態は、理解できた」

武内P「わかって、いただけましたか」

専務「顔を叩かれても我慢しなさい」

武内P「待ってください! それでも――」

専務「キミの意見は聞いていない」

楓「お仕事に、大きいも小さいもありません」

専務「今、その話は全く関係が無い」

武内P「高垣さん、手を離してください……!」

ぐいぐいっ!

楓「笑顔! 笑顔!」

バシバシッ!

武内P「うぐぐっ……!」

…ぱっ!

専務「よし、手は離れましたね」

楓「一緒に!」

ぎゅううっ!

武内P「い、いけません! 抱きつかないでください! いけません!」

専務「ふむ、状況が悪化するとは思わなかった」

  ・  ・  ・

武内P「……おわかり、いただけましたか」

専務「よくわかった。彼女は、キミから離れる気がないらしい」

楓「おわかり、いただけましたか」

専務「ぶっとばすぞ」

武内P「手を繋いだ状態が一番マシと、そう、考えます」

専務「……そのようですね」


ガチャッ

凛「――待って」


専務「渋谷凛くん、ノックぐらいしなさい」

凛「この状況は何なの? 説明して」

専務「今は大事な話をしている。出ていきなさい」

武内P「渋谷さん、今は……」

凛「アンタが私のプロデューサー」

ぎゅっ!

武内P「あの……何故、手を握ってくるのですか?」

凛「ふーん。悪くないかな」

専務「良くありません」

専務「キミ達は何だ? 仲良し三人組か?」

武内P「誤解です!」

楓「はい、それは誤解です」

凛「うん。仲良し二人組が二つあるだけ」

楓・凛「ねー」

専務「私は、あまり気が長い方ではない」ギロッ!

武内P「あの、私を睨むのは何故ですか!?」

専務「三人で、ユニットデビューでもするつもりか?」

武内P「待ってください! それは、あまりにも!」

楓「私と貴女の進む道は違う」

凛「だけど……分かり合えることは出来る」

楓「共に、歩んでいこうと思います」

凛「私達三人から、目を離さないでよね」

武内P「乗り気にならないでください!」

専務「しかし、キミ達も理解しているはずだ」

楓・凛「?」

専務「彼は、両手が塞がってしまっている」

武内P「途轍もなく不便だと、そう、思います」

専務「キミ達は、彼を困らせたいのか?」

楓・凛「……」

専務「ようやく、話が通じるようになりましたね」

専務「選びなさい」

専務「彼を困らせ続けるか……」

楓・凛「……」

専務「自らその手を離し、困らせるのを辞めるか」

楓・凛「……どっち?」

武内P「私が、選ぶのですか……!?」

楓・凛「どっちを選ぶ?」

武内P「これは……どっちの手を離すか選ばせていますね!?」

楓・凛「……」

武内P「……!」

武内P「……とりあえず、利き手が自由になった方が」

凛「ふ、ふーん?」

武内P「……申し訳ありません、手を離して頂けますか」

凛「アンタ……私と手を繋ぐの、嫌なんだ」

武内P「あっ、いえ! そういう訳では!」

凛「そういう事でしょ? それ以外考えられない」

武内P「そ、そうではなく……!」

凛「良いよ、わかった。手、手を……は、離せば、い、良いんでしょ!」グスッ!

武内P「……!?」

武内P「あ、あの……渋谷さん、話を!」

凛「話すことなんかない!」

楓「――そうよ、離すことなんかないわ」

凛「楓さん……?」

楓「自分に正直に、しっかりと握らないと」

楓「うふふっ、手を離すのは、悪手だと思うの♪」

凛「……うん、そうだね」

ぎゅううっ!

武内P「……申し訳ありません、恋人繋ぎにされました」

専務「まさか、状況が悪化するとは私も思っていなかった」

専務「……仕方がない」

武内P「この状況を見過ごす、と?」

楓・凛「……」

ぎゅううっ!

専務「そうではない。だが、時間が解決してくれるだろう」

武内P「そう、でしょうか?」

専務「考えてもみたまえ」

武内P・楓・凛「?」

専務「トイレに行く時は、どうする?」

武内P・楓・凛「!」

武内P「成る程……それなら、手を離さざるを得ないですね」

専務「手を離した瞬間、その場から離れなさい」

武内P「わかりました。専務の、仰る通りにします」

楓・凛「……」


凛「ちゃんと見ててよね。手を離したら、承知しないから」


武内P「何を言ってるんですか!?」


楓「一緒に……笑顔で!」


武内P「あの、さすがにそれは! 落ち着いて下さい、お二人とも!」

武内P「わかりました! 逃げませんから!」


武内P「離れませんから、手を離してください!」



おわり

変態っぽそうで変態っぽくない、ちょっと変態なしぶりん

凛凛蝉
主にプロデューサーにくっつき、匂いを嗅ぎながら「ふーん。ふーん。」と鳴いて求愛行動をとる

>>841-842
書きます


武内P「渋谷さんの様子がおかしい?」

未央「そうなんだよ!」

武内P「様子がおかしいとは……どのように、ですか?」

卯月「なんと言うか……とにかくおかしいんです!」

武内P「!……まさか」

未央「! 何か、心当たりがるの、プロデューサー!?」

武内P「いえ……凛凛蝉は、時期外れなので……」

未央・卯月「……」

未央・卯月「は?」

未央「待って……今、何て?」

武内P「時期外れ、ですか?」

卯月「その前です!」

武内P「凛凛蝉、ですか?」

未央・卯月「そう、それ!」

武内P「凛凛蝉は夏の風物詩ですか……それが、何か?」

未央・卯月「……」

未央・卯月「は?」

未央「夏の風物詩って、あの、どゆこと?」

武内P「毎年、夏になると渋谷さんがなる症状ですね」

卯月「症状って……凛ちゃん、病気なんですか!?」

武内P「似たようなもの、でしょうか」

未央・卯月「……!?」


ガチャッ!


凛「ふーん」


武内P「! 渋谷さん……まさか、本当に凛凛蝉に!?」

未央・卯月「……」

凛「ふーん、ふーん」

武内P「待ってください! 渋谷さん、今は冬です!」

凛「ふーん、ふーん」

ぷぃぃぃん!

武内P「凛凛蝉の季節ではありません! 渋谷さん!」

凛「ふーん、ふーん」

ぴとっ

武内P「くっ……! 本当に、凛凛蝉のようですね……!」

未央「ねえ……緊迫した空気を出されても、その」

卯月「はい……ちょっと、困っちゃいます」

武内P「まさか……冬にも凛凛蝉の症状が出るとは……!」

凛「ふーん、ふーん」

すりすりっ

武内P「これは……今日の予定をキャンセルするしか、ありませんね」

未央「あの……引き剥がせばよくない?」

武内P「いえ、それは出来ません」

卯月「えっと……どうしてですか?」

武内P「以前そうした所、オシッコを撒き散らしてギャン泣きしたからです」

未央・卯月「!?」

凛「ふーん、ふーん」

武内P「恐らく、今も引き剥がしたら同じ事をすると、そう、思います」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

未央「しぶりん、プロデューサーの匂い嗅いでない?」

武内P「はい。それも、凛凛蝉の症状の一つですね」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

すりすりっ

卯月「ああ、あのっ! ほっぺたスリスリしてますよ!?」

武内P「はい。それも、凛凛蝉の症状の一つですね」

未央・卯月「……!?」

凛「ふーん、ふーん」

>>842で充分なのにこの上>>841まで混ぜ込んでるとか意味があるのか無いのか分からんな

武内P「恐らくですが、この症状はすぐ収まるでしょう」

未央「……なんでわかるの?」

武内P「蝉は、夏の生き物ですから」

卯月「冬の今はだと……」

武内P「長くは……保たないと、そう、思います」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

すりすりっ

未央「しぶりん……」

卯月「凛ちゃん……」

武内P「あの、別に死ぬわけではないので、深刻にならないでください」

武内P「お二人とも、この事は、渋谷さんには黙っていてください」

未央「えっ、どうして?」

武内P「渋谷さんには、凛凛蝉の時の記憶が無いのです」

卯月「それじゃあ……無意識でやってるってことですか?」

武内P「はい、恐らくは」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

すりすりっ

武内P「普段の渋谷さんと違いすぎるのも、納得がいくと思いませんか?」

未央・卯月「……確かに」

武内P「最近、忙しかったのが原因かもしれませんね」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

すりすりっ

武内P「ストレスが原因で、彼女は凛凛蝉になってしまうのです」

未央「待って。なんで、それがわかったの?」

武内P「それは……」

卯月「教えてください! プロデューサーさん!」

武内P「本田さん……島村さん……」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

すりすりっ

武内P「……わかりました。お二人には、話しておきます」

未央・卯月「……」

武内P「夏は、水着の仕事が多いですね」

未央「しぶりん……水着の仕事が嫌で、ストレスで!?」

卯月「そんな……凛ちゃん、そんなに嫌だったなんて!」

武内P「いえ、水着になる事自体ではなく……」

未央・卯月「?」

武内P「お二人と、胸のサイズを比べられるのが、はい、ストレスだと」

未央・卯月「……」

未央・卯月「はい?」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

すりすりっ

未央「ま、待って? そんなので……?」

卯月「こう、なっちゃうんですか……?」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

すりすりっ

武内P「色々な検査をしてみた結果、はい、恐らくは」

未央・卯月「……」

未央・卯月「器小さい!」

凛「ふーん! ふーん!」クンクンッ

すりすりすりすりっ!

武内P「! お、落ち着いてください! 胸のサイズの話ではありませんから!」

未央「しぶりん!? そんなの気にしてたの!?」

凛「ふーん! ふーん!」

卯月「まだ15歳なんだから、気にする必要ないですよ!」

凛「ふーん! ふーん!」

未央「しぶりんがそんなの気にしてたら、あーちゃんの立場が無いよ!」

凛「確かに」

卯月「! 凛ちゃん……正気に戻ったんですか!?」

武内P「これは……初めての現象です!」

凛「……」

凛「ふーん、ふーん」

武内P「くっ……駄目ですね、また凛凛蝉に……!」

未央「でも……一瞬だけど、正気になったね」

卯月「それまで激しく鳴いてたのに、落ち着きましたもんね」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

すりすりっ

武内P「しかし……高森さんに、失礼な方法かと」

未央「しぶりん、あーちゃんと比べて、自分の胸のサイズをどう思う?」

凛「まあ、悪くないかな」

卯月「! やっぱり! 藍子ちゃんの話をすると落ち着くみたいです!」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

武内P「! 頬をすりつけるのを……やめた……!?」

未央「これは、治し方がわかっちゃったね」

卯月「はいっ♪ 未央ちゃん、凄いです!」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

武内P「ですが……本当に、失礼な方法だと、そう、思います」

未央「大丈夫だって! バレなきゃオッケー!」

卯月「凛ちゃーん、藍子ちゃんよりも大きいし、全然平気ですよー」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

未央「……あれ? 効果が無い?」

武内P「凛凛蝉には、同じ口撃は二度通じないようですね……」

未央・卯月「……うーん」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

未央「別の、胸があまり無い人……かぁ」

卯月「うーん……難しいですね」

武内P「しかし……それにしても、何故、凛凛蝉に……?」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ


ガチャッ!


みく「大変にゃPチャン! 凛チャンの様子が、急におかしくなったの!」


凛「ふーん! ふーん! ふーん! ふーん!」クンクンクンッ

すりすりすりすりすりっ!

武内P「はい、原因はわかりました」

みく「……」

みく「こっ、この状況は何!?」

  ・  ・  ・

武内P「……成る程、一緒に着替えていたら、急に」

みく「うん……突然、『ふーん』しか言わなくなって……」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

すりすりっ

みく「凛チャン……みくのせいで、そんな姿に……」

武内P「お気になさらないでください。前川さんのせいではありません」

凛「ふーん、タマンネェ、ふーん」クンクンッ

すりすりっ


未央「あれ? 今、なんか」

卯月「はい、たまんねぇ、って」

武内P「これも、一時的なものですから」

みく「だと良いんだけど……ちょっと、責任を感じるにゃ」

凛「ふーん、ヤメラレネェ、ふーん」クンクンッ

すりすりっ


未央・卯月「……」


未央「……みーおみおみおみおみおっ!」


武内P「!? 本田さん!?」

みく「!? 未央チャンも、蝉になっちゃったの!? なんで!?」


卯月「……むーらむらむらむらむらっ!」


武内P「!? 島村さんまで!?」

みく「……なんとなくだけど、理由はわかったにゃ」

未央「みーお、みーお」

卯月「むーら、むーら」

じりじりっ…!


武内P「い、いけません! 落ち着いて下さい!」

凛「ふーん、ふーん」クンクンッ

すりすりっ


未央「しぶりんだけ、ズルくない?」

卯月「はいっ、三人で、ニュージェネレーションズです」

じりじりっ…!


武内P「完全に正気じゃないですか!」


みく「……」

みく「にゃー」


武内P「!?」

  ・  ・  ・

ちひろ「それで、結局どうなったんですか?」

武内P「皆さんが蝉になった事で、前川さんも刺激されて猫になり……」

武内P「……本田さんと、島村さんを捕まえてくれました」

ちひろ「ああ、猫って、蝉とか捕まえるの得意ですもんね!」

武内P「前川さんが居てくれて助かったと、そう、思いました」

ちひろ「あれ? でも、凛ちゃんはどうやって治したんですか?」

武内P「あ、いえ、それは……」

ちひろ「?」

武内P「……」

武内P「……アイドルに必要なのは、胸だけでは無い、と」

武内P「トップアイドルにも、あまり胸の大きく無い人も居る、と」

武内P「そう、説得しました」

ちひろ「……成る程、そういう事ですか」

武内P「渋谷さんは15歳……まだ、未来があります」

ちひろ「そ、そうですね……は、はい」

武内P「彼女はこれからも成長し、大きくなっていく事でしょう」

ちひろ「あの……も、もうこの話はやめましょう!」

武内P「?」

ふんふん鳴くなら糞糞蝉やないか!

武内P「千川さん? あの、顔色が……」

ちひろ「いっ、いえいえ! お気になさらず!」

武内P「そう、ですか」

ちひろ「あ、アイドルに必要なのは、胸だけじゃないですもんね!」

武内P「はい、その通りです」

ちひろ「ですよね! ねっ!」

武内P「そういう意味では、高垣さんは、とても参考になる存在ですね」

ちひろ「あっ」

武内P「……?」

武内P「……千川さん?」

ちひろ「……」

武内P「?」

ちひろ「その……後ろ、に」

武内P「後ろ?」


楓「……」


武内P「……あっ」

ちひろ「プロデューサーさん、早く! ごめんなさいしてください!」


武内P「」


ちひろ「抜け殻になっても何にもなりませんから!」



おわり

ゲーム落ちです
おやすみなさい

ドラクエの次はモンハンだ!

モンハンなんてやったらモンスターの前に武内Pのpが狩られちゃうだろ

そろそろ美嘉ァが正妻戦争に勝ってもいいんじゃないでしょうか!

タカガンキンと戦うハンター武内
乱入するキ凛

ガン♂ランス♂をモンスター♀に突っ込んで爆発させる武内Pだって!?

文香ちゃんで何かネタを読んでみたいですね

文香ちゃんのマスカキネタが欲しいって?

たまには武内Pに攻めに回って欲しいな

見慣れないお守り拾ったら「オートガード」付いた武内P

ゴッドイーター武内P?

安価つけるの面倒なのでテキトーに書きます


武内P「ひと狩りいきます」

楓「ひと狩り……スカウト、でしょうか?」

武内P「いえ、モンスターを狩りに、ですね」

楓「モンスター……なるほど」

武内P「高垣さん、私からも質問して宜しいでしょうか?」

楓「はい」

武内P「何故、居るんですか?」

楓「この拠点は、ライトがく、らいと思うわ」

武内P「……」

楓「お話はわかりました」

武内P「いえ、あの、何故ここに……」

楓「ですが……そのお話、お受け出来ません」

武内P「ですから、あの……」

楓「モンスターに、大きいも小さいもありません」

武内P「あの……一緒に行こうと誘っては、いないのですが」

楓「!」

バシバシ!

武内P「叩かないでください、叩かないでください」

武内P「しかし……高垣さんの、その背中の大鎌は?」

楓「これは、ファンの方に頂いたんです」

武内P「太刀、ですか」

楓「いいえ、笛です」

武内P「笛?……その、ファンの方は黒尽くめの、ピエロでしたか?」

楓「はい。それに、とっても立派な閃光弾も頂きました」

武内P「……」

武内P「キルバーンじゃないですか! 閃光のようになりますよ!?」

武内P「……兎に角、私は狩りに行こうと、そう、思います」

楓「何のために、ですか?」

武内P「いえ、それは……プロデュ……ハンターですから」

楓「……」

武内P「申し訳ありません。そこを通して下さい」

楓「……そんなに、モンスターが好きなんですか?」

武内P「あの、何を言ってるんですか?」

武内P「私の仕事は、プロデュ……ハンターです」

武内P「このガンランスでモンスターを倒し、剥ぎ取ります」

武内P「取れるのは、良い素材と、良い肉です」

楓「倒して、剥ぎ取って……」

武内P「はい」

楓「素材と、肉を堪能するんですね……」

武内P「あの、申し訳ありません。他意があるように聞こえます」

楓「貴方の、そのガンランスで!」

武内P「待ってください! 非常に聞こえが悪いです!」

武内P「高垣さん、落ち着いて下さい」

楓「私、ビックリしちゃいました」

武内P「……私の方がビックリしたと、そう、思います」

楓「あ、モンスターの役は誰がやっているんですか?」

武内P「諸星さんですね。大きなキグルミがハピハピだと仰っていました」

楓「きらりちゃんを倒して、剥ぎ取って、肉とその素材を堪能するんですね?」

武内P「あの、本当に聞こえが悪いので……」

楓「けれど……それが、ハンターなんでしょう?」

武内P「……」

武内P「私は……アイドルの方に、不埒な事は絶対にしません」

楓「その言葉を信用しろ、と?」

武内P「はい。このガンランスに誓って」

楓「信用できません」

武内P「待ってください、即答は傷つきます」

楓「ですから……ご一緒しても、良いですか?」

武内P「……本当に、仕方のない人ですね」

楓「ふふっ♪」

武内P「……良い、笑顔です」

凛「話は終わった? それじゃ、行こうか」

武内P「はい、お待たせしました」

楓「こういう時は何て言うんだったかしら……ええと」

武内P「ひと狩りいこうぜ、ですね」

凛「楓さんって、イメージと違うけど親しみやすいよね」

楓「あら、どんなイメージかしら?」

凛「最初の頃は、もっと神秘的な感じだと思ってた」

武内P「ええ、仰っていましたね」

武内P「……」

武内P「渋谷さん、いつの間に!?」

凛「ねえ……この蒼い双剣、似合うかな?」

武内P「はい、とても……ではなく!」

楓「蒼剣の、双剣ね♪」

凛「プロデュ……ハンターのガンランスも、凄く立派」

…ぽろっ

武内P「あの、誤解を招くので……と、何か、落とされましたよ」

凛「うん。試し斬りで、ちょっと部位破壊してきた」

武内P「これは……髪の毛、ですか? 結構な束ですが……」

凛「卯月の、ね」

武内P「……」

武内P「島村さんの個性の一つを試しで破壊して来ないで下さい!」

ガチャッ

美嘉「ヤッホー★ お待たせー★」

武内P「……城ヶ崎さん? あの、お待たせ、とは?」

楓「おはようございます、美嘉ちゃん」

美嘉「おはようございます、楓さん、凛」

凛「おはよ」

武内P「あの、皆さん?」

凛「あっ、美嘉はボウガンなんだ……うん、バランス良いね」

美嘉「アタシって、最近こうやってバランス取る役回り多いんだよねー★」

楓「ふふっ、カリスマの、力を借りて、狩ります……うふふっ!」

武内P「あのっ、皆さん!?」

凛「どうしたの、大声出して」

美嘉「あっ、もしかしてハーレムパーティーで緊張してたり?★」

武内P「いえ、違います」

凛「ふーん。まあ、本当はどうだか」

美嘉「も、もー!/// エロいのはダメだからねっ!///」

楓「いやらしいハンター、はんたーい♪」

武内P「……!?」

楓・凛・美嘉「それじゃあ――ひと狩りいこうぜ」グッ

武内P「良い、笑顔です」

武内P「……いや、待ってください!」

凛「待ってくださいって……準備が出来てないの?」

美嘉「へー、アンタって、そういうのキッチリしてると思ってた」

武内P「心の準備が、まるで出来ていません」

楓「もう、草むらからモンスターが出たらビックリしちゃいますよ?」

武内P「いえ、それは……草むら?」

楓「はい。草むらから、野生のモンスターが」

武内P「……」

武内P「待ってください! ポケモンの話をしていませんか!?」

凛「もう、良いから行くよ。――蒼い風が、駆け抜けるように」

武内P「なし崩しでクエストを開始しないでください!」

美嘉「楽しみにしてるから、アンタの……が、ガンランス///」

武内P「城ヶ崎さん、何故顔を赤くしているのですか!」

楓「ふふっ、ピカチュウ、楽しみですね♪」

武内P「やっぱりポケモンだと思っているじゃないですか!」

武内P「……皆さん、一回! 一回、落ち着きましょう!」

凛・美嘉・楓「……」

凛・美嘉・楓「……ふぅ」ヤレヤレ

武内P「あの……何故、私が悪い感じに……!?」

  ・  ・  ・

武内P「皆さん……皆さんの職業は、何ですか?」

凛「アイドルハンター」

武内P「アイドル超人感がある回答ですが、良いでしょう」

美嘉「カリスマ★ハンター」

武内P「真ん中の黒い星が気になりますが、はい、良いでしょう」

楓「ポケモントレーナー」

武内P「明らかにおかしいです。ハンターのハの字もありませんよ?」

楓「ですが……一緒に階段を登っていきたいんです」

武内P「高垣さん……?」

楓「ピカチュウと――笑顔で!」

武内P「高垣さーん!?」

楓「駄目……でしょうか?」

武内P「いけません」

楓「!? そんな……」ショボン

凛「……!」ギロッ!

武内P「あの、渋谷さん? 何故、睨んでいるのですか?」

美嘉「アンタなら、任せられると思ったのに!」

武内P「あの、城ヶ崎さん? 何を任せると?」

楓・凛・美嘉「……ピカチュウ」ショボン

武内P「……!?」

武内P「……皆さんのお気持ちは、よくわかりました」

楓・凛・美嘉「……」ショボン

武内P「モンハンも良い、ポケモンも良い……私も、同じ気持ちです」

楓・凛・美嘉「……」ショボン

武内P「……アイルーの代わりに、ピカチュウを」

楓・凛・美嘉「!」

武内P「大手メーカー同士のコラボ、可能な限り、努力してみます」

楓・凛・美嘉「プロデュ……ハンター!」ニコッ

武内P「……良い、笑顔です」


武内P「皆さんは、本当にモンスターハンターですね」

  ・  ・  ・

ちひろ「それで、この前は来られなかったんですか?」

武内P「……申し訳ありません」

ちひろ「本当、しっかりしてください」

武内P「その……クエストの方は、成功しましたか?」

ちひろ「ええ、お陰様で」

武内P「それは……はい、安心しました」

ちひろ「……せっかく、二人でのクエストだと思ってたのに」ボソッ

武内P「? 千川さん?」

ちひろ「いいえ、何でもありませんよ!」


ちひろ「上手に妬けました!」



おわり

ゲームしてきます

ちひろの討伐?
できらぁ!

タケトラマンが怪獣モバカネゴンを必殺のエガオビームでやっつける


「……!」


 コンコンと、控えめな音。
 意を決し叩いたドアは、シンデレラプロジェクトの、プロジェクトルームのもの。
 私は、此処に居るであろう人に、会いに来ました。
 その人には……はい、とても言葉では言い表せない程の、恩があります。


「……」


 その人は、私が秋のLIVEで体調を崩した時、現場で指揮を執り、
私のせいで混乱してしまった現場を収めてくれたそうなのです。
 結果、プロジェクトクローネのお披露目とも言える初舞台は成功に終わり、
今も、クローネとして順調に活動し続けられています。
 正に、アイドルとしての命の恩人……と、言った所でしょうか。


「……」


 そんな、命の恩人には、直接謝罪をするのが道理と言うもの。
 あまり、人と話すのが得意では無いですが……今回は、
得意、不得意に関係なく、謝らなくてはいけません。


 迷惑をかけて、申し訳ありませんでした。


 此処に来る前に、何度も練習した謝罪の言葉を心の中で繰り返します。
 もっと、気の利いた事が言えれば良いのですが、生憎、上手く言葉が浮かびません。
 言葉自体は思い浮かぶのですが、それと、私が言えるかは別問題。
 出せない台詞を浮かべた所で、それは、相手には届きませんから。


「……」


 返事を待っているのですが、中からは何も聞こえてきません。
 居ない……と、言うわけではない、はずです。
 此処へ向かう途中に、美波さんが「今ならプロデューサーさんは居るわよ」と、
教えてくれたのですから。
 ノックをして、返答が無い場合は……声を出す、べきですよね。


「……」


 嗚呼……どうして、こんなにも……緊張、するのでしょう。


「……!……!」


 失礼します。
 ……その、たった一言が言えずに、私は愕然としてしまいました。
 アイドルとして、沢山のファンの方の前で、LIVEをした。
 それに比べれば、相手は男性とは言え、たった一人なのです。
 にも関わらず、レッスンで少しは鍛えられたであろう私の喉は、
声を発してはくれないのです。


「……」


 アイドルになれば、こんな自分を変えられると思っていたのに。
 いえ、変われると……思っていただけなのかもしれません。
 私の本質は、やはり、書の世界に篭っている姿、なのでしょう。
 そんな人間が、迷惑をかけた相手に会うのを躊躇うのは、極自然なこと。
 だから、私の体が無意識に声を発するのを拒絶するのは、仕方の無い事です。


「……!」


 けれど、それを受け入れてしまう事は……逃げる事は、出来ません。
 私の本質は、他者との交流を望まないものなのかも知れません。
 それでも私は、ありすちゃんや、クローネの皆と関わり、
そして、あの人のお陰で、アイドルとしての道を歩み始めました。
 ここで逃げるのは、その道からも逃げてしまうような、そんな気がするのです。


「……すぅ……はぁ……」


 トレーナーの方に教えてもらった、心を落ち着かせるための呼吸法。
 これもまた、アイドルの道に足を踏み入れなければ、知ることはないものでした。
 それを自然に実践しているのに気付き、私は、少し驚きました。
 自分の中で……アイドル、鷺沢文香という存在が、当たり前のものとなっている事に。


「……」


 誰も見ていないのが、本当に助かります。
 その、今の私の表情は、決意……そうですね、決意とは裏腹に、
緊張でとても強張っているのが、自分でもわかりますから。


「……失礼……します……!」


 ドアを隔てた相手に向けるには、あまりにも小さい声です。
 だけど、この向こうに居る人ならば、きっと気付いてくれる……。
 そんな、根拠のない自信のようなものが、私の中には確かに存在していました。


「……!」


 バクリ、バクリと、心臓の鼓動の音が耳に届いてきます。
 まるで、耳元に私の心臓が置かれているかのように錯覚する程、
その心音はとても大きく……大きく響いているのです。
 口から心臓が飛び出そう、という緊張を表現する言い回しがありますが、
今の私はそれすらも越えて、緊張していると言う事なのでしょうね。


『――はい、どうぞ』


 部屋の中から、とても低い男性の声が聞こえてきました。
 直接会ってお話した事は無いのですが、
奏さんが「彼はチャーミングだし、低い声がとってもセクシーだわ」と、聞いています。
 きっと、今の声が……‘そう’なのでしょう。
 セクシー、という感覚は私にはわかりませんが、それは、
会う以前にお世話になっている、という事実があるからかも知れません。


「……っ」


 ……などと、思考している場合では無い、ですよね。
 入室を促されているのに、いつまで経ってもこの場に留まり続ける事は出来ません。
 手を伸ばし、ドアノブに手をかけます。
 緊張のため握りしめていたのか、その手はいつもより白く、そして、小さく震えていました。
 これは武者震いだ、と自分に言い聞かせる強さがあれば、どんなに楽か。
 ドア一つ開けるのが、これほどまでに困難だとは、思いも寄りませんでした。


「っ……!」


 ガチャリ、と、ドアが開きました。
 部屋の中と外。
 ドア一枚ではありますが、その隔てられた二つの空間は、
私にとっては完全に別のものに思えます。
 ゆっくりと開いていくドア。
 目に入ってくる、シンデレラプロジェクトの、プロジェクトルーム。


「――おはようございます……鷺沢さん」


 そして、デスクに腰掛け、こちらに視線を向ける、プロデューサーさん。
 来訪者が私だとは思っていなかったのか、その目が少し見開かれています。
 ……いけない、私も、挨拶を返さなければ。


「おはっ、よう……ございます……」


 私の第一声は、上ずった大声から、消え入るようなものへと流れるように変化しました。
 謝罪の言葉の練習はしていたのですが……まさか、挨拶の練習も必要だったとは。


「……」


 何事も、始めが肝心だと人は言います。
 ならば、挨拶をした時点で失敗してしまったなら、どうすれば良いのでしょう。
 考えてはみるのですが、緊張からか、思考がうまく纏まりません


「――申し訳ありません」


 と、何故か、プロデューサーさんが謝罪の言葉を述べてきました。
 私が此処に来た目的、言うべき言葉を先に言われてしまい、
また、どうして謝られているのか見当が付かず、余計に混乱してしまいます。
 その混乱は、私の表情や態度にも表れていたのでしょう。
 プロデューサーさんは、右手を首筋にやり、少し困った顔をしながら言いました。


「……最初のノックは、気の所為だと思っていました」


 ……嗚呼、この人は、最初のノックの時点で反応しなかった事を謝っているのですね。
 けれど、貴方は私が声を出した時に気づいてくれましたから……。
 それに、その、あのノックの音では気付かない方も居ると思いますので。


「あ……その……」


 そう、頭では思っているのに、口が上手く動いてくれません。
 謝りに来たというのに、逆に謝らせる事になってしまうのは、不甲斐ないにも程があります。


「……」


 それに、突然来訪して、両手を前で組み俯いて立ち尽くす私を、この人はどう思うでしょうか。
 考えただけで、今すぐにでも私をこの場から消し去ってしまう魔法が存在すればいいのに、と、
そんな思いが溢れてきて止まりませんでした。



「――ノックをされるのは、はい、久しぶりだったもので」



 なんて、とても不器用な苦笑いを見るまでは。


「プロジェクトのメンバーは……最近は、すぐにドアを開けてしまいますから」


 私もそれに慣れてしまって、と、プロデューサーさんが言葉を続けます。
 これは、恐らく……この人なりの、冗談なのでしょう。
 明らかに緊張する私をリラックスさせようと……してくれて居るのかも知れません。
 いえ、きっと、そうに違い無いのでしょうね。
 私が聞いていた貴方の人物像は、こういった冗談を言うものではなかったですから。


「そう……なのですね」


 今、私がするべきことは、それを申し訳なく思う事ではありません。
 この人の気遣いを無駄にしないためにも、早く、普段の調子を取り戻さなくては。
 そうでなければ、不慣れな事をさせているという自責の念で潰れてしまいます。
 そして、きっとそれは私も、この人も望む所では無いでしょうから。


「ええ……少し、困り物です」


 冗談で言っていらしたつもりだったのが、少し、本気で困っている調子に。
 私の想像では、とても頼もしい方だったのですが……不思議と、
男の方にこう思うのは失礼かも知れませんが、可愛らしい、と思ってしまいました。


「……」


 なんて、そんな事は口には出せませんね。
 けれど、今だったら奏さんがこの人の事を「チャーミング」と評していたのがわかります。
 背がとても高く、顔は……知らない人だったならば、避けて、しまうかもしれません。
 だからこそ、ギャップ、と言うもので、余計に可愛らしく思えてしまうのでしょう。



「――良い、笑顔です」



 言われて、初めて私が笑っていた事に気付きました。
 そして、先程までは意識していなかった心臓の鼓動の音が、より大きな音で鳴り響いています。
 ドクリ、ドクリと流れる血液が、私の顔を朱に染め上げているのがわかります。


 このままでは、此処に来た目的を果たせなくなってしまいます。
 また、倒れるような事になってしまっては、今度はもっと緊張してしまいます。
 お願いします……だからどうか、今は、私に微笑まないで下さい。



おわり

寝ます
おやすみなさい

つづけ

この鷺沢さんは新田さんの壊れぶりを知っているのだろうか

アイドルの カリスマ関わり 狩り済まず

そろそろ下品なやつのターンかな

ありす「せいりってなに?」
これは下品ですか><;

いい話の後に下品な作品書く宣言してたのが懐かしい

武内Pがアイドル達の初対面の印象と最近思い知らされてる本性とをレポートでまとめたらさぞやおぞましい文章が出来上がるんだろうな

書きます


武内P「オナラ税を導入します」

武内P「皆さん、プロジェクトルームを我が家の様に思っていますね」

CPアイドル達「……」コクリ

武内P「ですが、我が家感覚でいすぎだと、そう、思います」

CPアイドル達「……」

ぷぅ

武内P「はい、今のように、ですね」

武内P「皆さんは、アイドルです」

CPアイドル達「……」コクリ

武内P「プロジェクトルームでくつろぐのは、大切だとも思います」

CPアイドル達「……」ウンウン

武内P「ですが、皆さんはアイ」

ぷぅ

武内P「……ドル、なのです」

CPアイドル達「……」

武内P「私が居るにも関わらず、平気でオナラをする」

CPアイドル達「……」

武内P「これはひどいと、そう、思います」

CPアイドル達「……」

武内P「皆さんは、オナラを我慢は出来ませんか?」

CPアイドル達「……」

ぷぅ

武内P「せめて、オナラではなく言葉で返事を頂きたかったです」

武内P「本田さん」

未央「……」

武内P「何故、皆さんはこんなにもオナラを?」

未央「……んんっ」

武内P「頑張ってオナラで返事をしようとしないでください」

未央「……」ショボン

武内P「落ち込む理由が、私にはわかりません」

武内P「島村さん」

卯月「……」

武内P「島村さんは、とても笑顔が素敵だと、そう、思います」

卯月「ふえっ!?///」

武内P「お願いします。オナラは、やめてください」

卯月「……///」

ぷぅ~っ

武内P「……照れる湯気の代わりに放屁ですか」

武内P「渋谷さん」

凛「……ふーん!」

ぶっ、ぴ!

凛「あっ!?」

武内P「えっ!?」

凛「……!」グスッ

武内P「本田さん、島村さん」

未央・卯月「はいっ」

武内P「渋谷さんを……お願いします」

武内P「新田s――と、見せかけて」

美波「!?……うっ、く……!」プルプル

武内P「そうです、新田さん。その調子で我慢してください」

美波「……フェイントなんて、ちょっとズルいです」プルプル

武内P「いえ、プロデューサーとして当然の行動です」

アーニャ「ダヴァイ!」

ぶぅっ!

武内P「アナスタシアさん、奇襲は本当にやめてください」

美波「アーニャちゃん!」

アーニャ「美波!」

パンッ!

武内P「『Memories』に乗せてオナラはやめてください」

美波・アーニャ「ハ~ア~ア~♪」スイスイッ

ぶぶぶっ、ぶぶ、ぶっ、ぶ、ぷぅ、ぷぅ、ぷぷぴっ!

武内P「!?」

美波・アーニャ「……!」ドヤァ

武内P「心底驚きましたが、二度とやらないでください」

武内P「神崎さん」

蘭子「ふっふっふ! 我が友よ、闇の瘴気を受けよ!」

武内P「……」

蘭子「……」

武内P「あの……何も、聞こえなかったのですが」

蘭子「……瘴気は我が衣に阻まれ、届くことは無かったというのか」

武内P「届かなくて、助かりました」

武内P「皆さんは、オナラを止める気は無いようですね」

CPアイドル達「……」

武内P「では、最初に言った通り……税を導入します」

CPアイドル達「……」

武内P「非常に重い税にしようと、そう、考えています」

CPアイドル達「……」

ぷぅ

武内P「重税に決定しました」

武内P「緒方さん」

智絵里「……!」ビクッ

武内P「大丈夫です、見捨てはしません」

智絵里「……」ホッ

武内P「ですが、ほんのり冷たくなります」

智絵里「!?」

武内P「具体的には……すみません、これ以上は言えません」

智絵里「……」

武内P「はい、オナラをしないでくれて、ありがとうございます」

武内P「三村さん」

かな子「……」

どんっ!

武内P「一週間、オヤツ抜きです」

かな子「い、今のはわざとじゃ!」

武内P「二週間、オヤツ抜きです」

かな子「……!?」

ぷぅ~…

武内P「皆さん、オナラで気持ちを表現する癖がついていませんか?」

武内P「双葉さん」

杏「……」

武内P「スカせばセーフではありません」

杏「!?」

武内P「双葉さんは、オナラの数だけ輿水さんと一緒の現場です」

杏「……し、してないからセーフだね」

武内P「双葉さんは、オナラをする時眉間に皺が寄りますよ」

杏「!?」

武内P「はい、後で正しい回数を申告してください」

武内P「諸星さん」

きらり「Pちゃん、きらりはオナラなんてしないゆ!」

武内P「本当、でしょうか?」

きらり「うんっ☆ オナラは楽すぃーけど、ハピ」ぶぅ「ハピはしないにぃ☆」

武内P「あの、今、間に……」

きらり「……」スッ

武内P「自首するのは、いい心がけだと思います」

莉嘉・みりあ「……!」グスッ

武内P「あの……お二人は、何故泣いているのでしょうか?」

莉嘉「Pくん……アタシ、もうオナラでない……!」グスッ

武内P「とても、良い事だと思います」

みりあ「ねえねえ……どうやったらオナラ出るの……?」グスッ

武内P「知らなくて、良い事だと思います」

莉嘉・みりあ「オナラしたいー!」ピー!

武内P「お願いします、泣かないで下さい」

武内P「気を抜くと、私が泣いてしまいそうになります」

武内P「前川さん、多田さん」

みく・李衣菜「……」

武内P「お二人は、連帯責任でいこうと思います」

みく・李衣菜「!?」

武内P「片方がしたら、もう片方の好む仕事を減らします」

みく・李衣菜「!?」

武内P「この意味が……わかりますか?」

みく・李衣菜「……?」

武内P「わかりませんか……そうですか」

武内P「皆さんが、何故オナラをここまでするのかわかりません」

CPアイドル達「……」

武内P「皆さんは、アイドルであり……年頃の女の子のはずです」

CPアイドル達「……」

武内P「どうしてこんな真似を――」

ちひろ「違うんd」

武内P「――と、以前の私ならば疑問に思っていたでしょう」

ちひろ「!?」

CPアイドル達「!?」

武内P「……」

武内P「恐らく、皆さんはこう思ったのでしょう」

武内P「――自分達に比べて、プロデューサーはくつろいでいない」

武内P「――もっと、自宅のようにリラックスして欲しい」

武内P「――だから、私達がオナラをして心をほぐしてあげよう」

CPアイドル達「……!」

武内P「……違いますか、皆さん?」

ちひろ「……わかっちゃいましたか?」

武内P「ええ、とても残念ですが、わかりました」

武内P「皆さんの心遣い、それ自体はとても嬉しく思います」

CPアイドル達「……」

武内P「ですが、方法は完全に間違っていると言わざるを得ません」

CPアイドル達「……!?」

ざわっ…!

武内P「お願いします、驚かないで下さい」

ちひろ「でも、皆のプロデューサーさんを想う気持ちは本物なんです」

武内P「千川さん……」

CPアイドル達「……!」コクコク

武内P「皆さん……」

武内P「……わかりました」

ちひろ「プロデューサーさん!」

武内P「私も、もっとプロジェクトルームを自宅の様に思うよう、努力します」

CPアイドル達「はいっ!」ニコニコッ

武内P「良い、笑顔です」

武内P「……そうですね、ここが自宅だとしたら」

CPアイドル達「はいっ!」

ぶっ!

武内P「凄い、オナラです」


武内P「……オナラし続ける人間は到底許せませんね」



おわり

Gガンで下品ゲージ3本分位使っちゃってますね
スレまたぐと訳わからなくなるので、残りは勇者書きます

一体何スレぶっ続けで武内するつもりなんだこいつは
すげーな

そら死ぬまでよ

書きます



武内P「魔王城、ですか」

凛「弱点もわかったし、勝てると思う」

美嘉「だねー★ 世界、救っちゃおうよ★」

楓「世界を救うのが、正解だと思います」

武内P「いえ……ですが……」

楓「? 何か、問題でもあるんですか?」

武内P「……」

武内P「……予算の関係上、魔王城が出来ませんでした」

  ・  ・  ・

卯月「こっこ、ここはー通しませーん!」

未央「命が惜しくば、水と食料を置いていって貰おうか!」


武内P「野盗、ですね」

凛「待って、二人共……制服なんだけど」

武内P「……このあたりの野盗は、組織で活動しているようですね」

美嘉「いや、学校の制服だし、二人共違う制服だし」

武内P「……ふ、二つの組織が手を結んだのだと、そう、思います」

楓「組織が、正式に手を結び、制服で、征服ですね」

武内P「……」


卯月「み、未央ちゃーん! 演技のコツ、もう一度教えてくださーい!」

未央「大丈夫だよ、しまむー! もっと自信を持って!」

卯月「か、観念しろー! 逃げ場はない、ゾー!」

未央「大人しく従うか、命も一緒に置いていくか選べ!」


武内P「まずいですね……相手は二人、今までの倍です」

凛「確かにそうかも。二人に大して――」

美嘉「――こっちは……四人だもんね……!」

楓「四対ニだなんて……私、勝てるか不安です」

武内P・凛・美嘉・楓「……」


卯月「は、はーっはっはー! どうしたー怖気づいたかー!」

未央「……ちょっとストップ」

卯月「えっ? どうしたんですか、未央ちゃん?」

未央「……これ、私らの方が圧倒的に不利じゃない?」


武内P・凛・美嘉・楓「……」

  ・  ・  ・

武内P「アッサリ返り討ちでしたね」

凛「あの野盗達、コッソリお菓子持ってた」

美嘉「アハハ★ これじゃ、どっちが野盗なんだー、って感じ★」

武内P「カロリーには、気をつけて下さい」

凛・美嘉「はーい」

楓「魔王城は、もうすぐ着くんですか?」

武内P「そうですね。ここから、車であまりかからない距離です」

凛「それじゃあ、この現場は撤収?」

美嘉「結構長いロケだけど、楽しかったねー★」

楓「うふふっ、二人共、まだお仕事は終わってないわよ?」

武内P「はい。魔王を倒すまでが、冒険です」


武内P「それでは、移動しましょう」

  ・  ・  ・

武内P「これが魔王城……立派な建物ですね……!」

凛・美嘉・楓「……」

武内P「皆さん、突入の準備はよろしいですか?」

凛「……ねえ」

武内P「? 渋谷さん、どうかされましたか?」

美嘉「……魔王城、っていうか、さ」

武内P「? 城ヶ崎さんまで……?」


早苗「あっ、楓ちゃんおはよー」


楓「おはようございます、早苗さん」


凛・美嘉「事務所じゃん!」

武内P「申し訳ありません! 本当に、申し訳ありません!」

瑞樹「違うわ」


凛「……川島さん?」

美嘉「……えっと、その衣装凄いですね」


瑞樹「どう? 可愛いでしょう♪」


武内P「はい。可愛らしく、とても魅力的だと、そう、思います」

凛・美嘉「……はぁ」


瑞樹「やーだもう! そんなにおだてたって何も出ないんだから!」ニコニコッ

早苗「なーに喜んでるの! ほら、台詞台詞!」


凛「……それに……」

美嘉「……早苗さんも、衣装の豪華さ、ヤバくない?」


早苗「あ、あたし達は魔王城の門番だからね!」


凛・美嘉「……」

武内P「片桐さんも、とても華やかだと、そう、思います」


早苗「は、華やか!? ま、まあ、知ってたけどね!」ニコニコッ


凛「ねえ、プロデュ……勇者、聞きたい事があるんだけど」

美嘉「魔王城が用意出来なかった原因って……アレ?」

武内P「あ、いえ……それは……」


早苗「あたし達、セクシー門番!」ビシッ!

瑞樹「魔王様の所へは、行かせないわ!」ビシッ!


武内P「……良い、笑顔です」

楓「メラメラ燃えるから、メラ」

武内P「熱い! あの、高垣さん!? 敵はあちらですよ!?」

楓「ごめんなさい、私、ビックリしちゃってメラ」

武内P「熱い! あの、怒っているんですか!? 何故!?」

  ・  ・  ・

武内P「……激しい、戦いでした」

楓「はい……まさか、混乱の呪文を使ってくるだなんて」

武内P「……」

凛「うん、四人がかかりで止めないといけかったからね」

美嘉「あたし、あの二人があんなに焦ってるの初めて見た」

武内P「……片桐さんと川島さんには、後日お礼をしなくてはいけません」

楓「それじゃあ、居酒屋までお願いしまーす♪」

武内P・凛・美嘉「……」


武内P「――兎に角、なんとか城には潜入出来ました」

武内P「ここからは、敵に見つからないように慎重に進みましょう」

  ・  ・  ・

武内P「即、捕まりました」

凛「美嘉が、Lippsのメンバーに絡まれるから……!」

美嘉「凛が、加蓮の奈緒いじりに参加するから……!」

武内P「! お二人とも、仲間割れはやめましょう!」

凛「……そうだね」

美嘉「うん……そんな事言ってる場合じゃないもんね」


楓「――と、このピンチで、新しい呪文を閃いた私です」


武内P・凛・美嘉「!」

武内P「凄い……! これで、脱出出来ますね……!」

凛「……いや、それはどうだろう」

美嘉「縄を解くのに都合の良い呪文なんて浮かぶ?」

楓「うふふっ……新しい呪文、それは……」


楓「い……い、いいっ……い……!」


凛「……か、楓さん……その……///」

美嘉「な、なんか……ちょっとエッチかも///」

楓「!?」

げしげしっ!

武内P「痛い! 蹴らないでください! あっ、痛い!」

楓「……ゴホンッ」


楓「――『命燃やして恋せよ乙女』」


武内P・凛・美嘉「……!」

凛「美嘉、お願い」

美嘉「えっ、アタシ!?」

武内P「乙女という事なので、私は……はい」

美嘉「待って待って! 凛でも良くない!?」

凛「ほら、私は『こいかぜ』使われた事あるから」

美嘉「でも、絶対ヤバい呪文じゃん! 恋って入ってるし! それに、」


楓「『命燃やして恋せよ乙女』」

ぽわぽわ~ん!


美嘉「命って――うわあああああお!!」

ぶちぶちっ!


凛「! 凄い、縄を強引に引きちぎった!」

武内P「城ヶ崎さん! 顔が少年漫画になっています! 城ヶ崎さん!」

楓「この呪文は、命を燃やし……力を高める呪文です」

楓「恋する気持ちが強い程、その力は強くなります」


美嘉「大和撫子、此処に在りッ!」

ドォォーン!


武内P「城ヶ崎さん! 私達の、縄を解いて下さい!」

美嘉「……」ジィッ

武内P「あの……城ヶ崎さん?」

美嘉「……」ジィッ


凛「なんだか……美嘉が、いつもより大人っぽく見える」

楓「あれは、大人の風情(かお)で見つめてる、命燃えてる恋する乙女、ね」


美嘉「あなたは、どうする?」ジィッ


武内P「縛られているので、はい……どうも出来ません」

  ・  ・  ・

武内P「……この扉の向こうに、魔王が居ますね」

楓「ええ……長いようで、短い道のりでした」

凛「そうだね、心は駆け足だったと思う」

美嘉「……凛、やめて」

武内P「はい、あの時の事は……忘れましょう」

凛「プロデュ……勇者」

楓「美嘉ちゃんって、ふふっ、とっても恥ずかしがり屋さんなのね」

美嘉「……っ///」



凛「兎に角――魔王を倒さないと……帰れやしない、このまゝじゃ」

美嘉「んああああ! ザキザキザキザキザキ!」

凛「ちょっと!? からかっただけでしょ!?」

武内P「!? 渋谷さん! 城ヶ崎さん!?」

  ・  ・  ・

魔王蘭子「はっはっは! よくぞ来た、勇者よ!」

魔王蘭子「仲間が何人居ようと、この私の前では無力!」


武内P「魔王神崎さん……!」

武内P「……確かに、私達は一人では無力かも知れません」


魔王蘭子「そう! 抗うのは無駄と言うもの!」


武内P「いえ……二人程、無力かも知れません」


魔王蘭子「は?」


武内P「ですが、必ず世界に笑顔を取り戻すと、そう、思います」

楓「一緒に、笑顔で!」

棺桶×2


魔王「えっ!?」

魔王蘭子「……ふっ! 仲間二人は、既に闇に飲まれたか!」


武内P「その話は……今、やめていただけますか」

楓「喧嘩する程仲が良い、とも言いますから……」

棺桶×2


魔王蘭子「汝ら二人で、この我に歯向かうとは、笑止!」

魔王蘭子「我が闇の魔力の前で、絶望に打ちひしがれるが良い!」


武内P「……高垣さん、私に『こいかぜ』を!」

楓「……」

武内P「『こいかぜ』が無ければ、魔王神崎さんに為す術無くやられてしまいます」

楓「……」

武内P「高垣さん? あの……『こいかぜ』をお願いしたいのですが……」

楓「……」


楓「その話、お受け出来ません」

楓「プロデュ……勇者が、アイド……魔王にだなんて、そんな……」

武内P「高垣さん……」

楓「なので、その話、お受け出来ません」

武内P「……」


魔王蘭子「そこな魔を使う者よ! 余計な気遣いは無用ぞ!」

魔王蘭子「今の私は、更なる漆黒の力を得た!」

魔王蘭子「……で、でも、『こいかぜ』中の勇者は効くかもしれない!」ワクワク


武内P「私を……信じて下さい」

楓「プロデュ……勇者」

武内P「……少し、耳を貸して頂けますか」

楓「内緒話、ですか?」

武内P「はい」


魔王蘭子「さあ、どうした! 怖気づいたか!」ワクワク

武内P「――」ゴニョゴニョ

楓「……なるほど」

武内P「この段取りで、お願いします」

楓「その……もう一度、確認を」

武内P「――」ゴニョゴニョ

楓「……な、なるほど///」

武内P「……段取りは、わかりましたか?」

楓「わかりましたが……もう一声」

武内P「すみません、もう、尺が残っていないので……」

楓「……わかりました。我慢します」

武内P「?」


魔王蘭子「話は済んだようだな! さあ、来るが良い、勇者よ!」ワクワク

楓「――『こいかぜ』っ」

ぽわぽわ~ん!


武内P「ぐうっ!? すべて壊れてしまう前に……愛が欲しい!」


魔王蘭子「あ、愛っ!?///」

魔王蘭子「ま、魔王は愛の力で白き天使へと覚醒を果たす!///」


武内P「く、苦しくて……溢れ出す前に!」


楓「――『命燃やして恋せよ乙女』」

ぽわぽわ~ん!


武内P「……」ジイッ


魔王蘭子「な、何!?/// こん大人の風情(かお)!?///」

魔王蘭子「あっ、見、見ないで……///」

魔王蘭子「た、ったた、たっ、たまら~~~ん!!///」

  ・  ・  ・

武内P「世界に、平和が訪れました」

部長「うむ、よくやってくれた勇者よ!」


凛「ねえ、蘭子に熱い視線を向けたって、本当?」

美嘉「アタシさ、そういう所で差をつけるの良くないと思う」

蘭子「我が友よ! 白き天使となった我は、あの視線を望む!」

楓「輝く世界の魔法を使わないと、いけませんか?」


武内P「……『じゅもんつかうな』」

部長「世界は救ったが、キミはこれから大変そうだねぇ」

武内P「はい……なので、今後の相談をしたいのですが」

部長「『いのちだいじに』」

武内P「!? 待ってください! その指示は、あまりにも!」


凛・美嘉・蘭子・楓「『ガンガンいこうぜ』」


武内P「『めいれいさせろ』! 待ってください!」


凛・美嘉・蘭子・楓「『いろいろやろうぜ』」


武内P「……!?」



そして伝説へ…

残り50切りましたね
いつまで書くかはわかりませんが、次は、


武内P「結婚するなら、ですか」
武内P「結婚するなら、ですか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510232193/)


ここを埋め立てようと思います
このスレは他作品とか色々出して申し訳ない
おやすみなさい

乙 
すごいモチベーションだ

毎日楽しみにしてるゾ

>>871
書きます


 手を繋ぎたい。


「……!」


 今、アタシの頭の中はそんな思いでいっぱいになっていた。
 隣を歩くコイツは、何食わぬ顔で歩いている。
 その横顔が、ホントにいつも通りで……いつも通りすぎて、ちょっと憎らしい。


「? 城ヶ崎さん?」


 ヤバ、睨んでる顔、見られちゃったカモ。
 だけど、アタシはカリスマJKアイドル、城ヶ崎美嘉。
 とっさに笑顔を作るなんて、チョー余裕だし★


「んー? どしたの?★」


 逆に、急に声をかけてきてどうしたのー、なんて調子で言ってやる。
 そうしたらコイツは、いえ、なんて言いながら、小首を傾げてまた前を向いた。
 前を向き直してすぐは、コッチを向かないよね。


「……」


 じい、と、大きな手を見つめる。
 その左手にはカバンが握られていて、前後の動きはほとんどない。
 これって、チャンスじゃない?
 そのカバン重そうだねー、とか言いながら、手を添えちゃうの★


「……」


 その時、コイツはどんな反応をするんだろ。
 やっぱり、アイドルとプロデューサーのスキンシップは~、とか言うのかな。
 それとも、仕事に必要なものが入っているので~、とか?
 案外……案外、顔を赤くしたり……なんか、して。


「……」


 ……って、想像しただけで、アタシが顔を赤くしてどうするの!
 万が一にもこんな顔を見せるわけにはいかないから、帽子を深く被り直した。
 だって……ハズい、じゃん。


 前から、若い男の子達の集団が歩いてくる。
 もうすぐ事務所に着くのに、見つかったらちょっと大変カモ。


「……」


 だけど、アタシの隣を歩く大男に目が行ったみたい。
 何事も無くすれ違ったら、後ろの方から男の子達のはしゃぐ声が聞こえた。
 あー、うん、キミ達ー? メッチャ聞こえてるよー?


「アンタ、アイドルのアタシより目立つってどうなの?」
「……」


 さっきの人めっちゃデカかったなー、なんて、まだ聞こえてくる。
 コイツが見た目とは裏腹に温厚でなかったら、マジでヤバいっしょ。
 っていうか、むしろアンタが怒った所って見たコト無いカモ。


「申し訳、ありません」
「べっ、別に謝らなくて良いってば!」


 ちょっとからかったつもりなのに、コイツは謝ってくる。
 そんなんじゃ、プロジェクトでもまだ困ったりするんじゃない?
 ホント、アンタって不器用にも程があると思う。


「ちょっとからかっただけ★」


 ホラ、ありがたく受取りな!
 カリスマJKアイドル、城ヶ崎美嘉がアンタのためだけに笑ってウインクしてるんだからさ★


「はい……良い、笑顔です」
「うん、サンキュ★」


 そんな短いやり取りをして、また、無言で歩みを進める。
 ニへへ、良い笑顔だって、知ってるケド……こんなにハッキリ言われると、ちょっと照れる。


「……」


 カツカツ、と、革靴立てる音。
 コツコツ、と、ブーツが立てる音。
 その二つの音を聞きながら、アタシはまた、最初の思考に帰った。


 手を繋ぎたい、って。


「……」


 ケド、アタシは手を出しては引っ込めてを繰り返すコトしか出来ない。
 ちょっと伸ばせば届く距離なのに、ただ、ちょっと手に触れるだけなのに。
 ……こんな臆病なアタシを見たら、莉嘉はどう思うかな。
 動かない手を相手に、手が出ないだなんて……きっと、幻滅する、よね。


「……!」


 ――よし、決めた!
 あの角を曲がったら、手を繋ぐ!
 別に……手を繋ぐなんて、普通のコトだし!★
 変に意識する方がオカシイっていうか、なんか、そんなカンジ!


「……!……!」


 カツカツ、コツコツ。
 二つの音をメトロノーム代わりに、アタシはタイミングを図る。
 あと少し、もう少しで曲がり角。
 あっ、でも、角を曲がってすぐ手を繋ぐのって変!?
 曲がって、ちょっと歩いてからの方が良い!?


「……!?」


 ヤバい、どうしよう!
 ヤバいヤバい、もう、角を曲がっちゃうじゃん!
 っと、とりあえず――曲がってから考えよう!


「……!」


 曲がった……曲がったから、今度は手を――


「!?」


 ――って、いつの間に立ち位置が逆になってるワケ!?
 右……右手じゃん! 何も持ってない、右手じゃん!
 えっ、え、なんで!? どうして!?


「……!?」


 カバンをきっかけにするアタシの計画は、脆くも崩れ去った。
 もうすぐ、事務所に着いてしまう。
 ただ、手を握りたいだけなのに……本当に、うまくいかない。


「……」


 少し前を歩く、大きな後ろ姿を見る。
 その頭には寝癖がチョロッと立っていて、やっぱり抜けてる所あるなー、と思う。
 今だって、歩く位置が変わってなかったら、アタシと手を繋げてたのに。
 残念だったね、ホント!


「……」


 シャーッと、凄い速さの自転車が走り抜けていく。
 オフィス街だけあって、ああいうメール便の人はよく見かける。
 十分に距離は離れてるケド、その勢いは見ただけでわかる。


「……!」


 うん……やっぱり、勢いって大事だよね!
 それに、ちょっと相手が揺れる右手に変わっただけで諦めるなんて、アタシらしくない!
 最初に決めたコトをやり遂げるのが、アタシのやり方!★


「……」


 カツカツ、コツコツ……ドクドク。
 二つの靴の音に、心臓の音も加わってきた。
 LIVEの前の緊張感に勝るとも劣らない緊張に、アタシの手が震えている。


「……!」


 ――ダメ! ちょっとタンマ!
 マジで心臓が爆発しそうなんだケド!?
 ちょっと深呼吸……深呼吸させて!


「すぅ……」


 ゆっくりと、大きく息を吸い込んだ。



「――着きましたね」



「……はぁぁ」


 吸い込んだ空気は、力なくプヒュルルと抜けていった。

  ・  ・  ・

「……」


 プロダクションの敷地内のカフェで、アタシは突っ伏していた。
 行儀が悪いとは思ってるんだケドさ、仕方ないじゃん。
 アタシは、アタシがこんなにも臆病だとは思わなかったんだから。


「……」


 八つ当たりだとはわかってるよ。
 だけど、なんでアイツも急に立ち位置を変えるかなー!
 それが無ければ……もう! もう!


「……」


 明らかにおかしい様子のアタシに、からかうような声がかけられた。
 悪いケド、今のアタシは機嫌が悪いから。
 アンタ達の、オモチャになってる余裕なんか無いですよー。


「……」


 それに、今の情けない顔を見せるのは癪だ。
 こんな顔を見せたら、どんなからかわれ方をするかわかったものじゃないしね。
 アタシにも、カリスマJKアイドルとしてのプライドってものがある。
 ……ま、そのプライドも今はズタボロなんですケドね!


「……」


 何かあったのかと聞いてくるから、仕方なく答える。
 その時も突っ伏したまま、顔は上げない。
 ……そんなアタシに降りかかる、笑い声。
 良いですよー、笑えば良いジャン!


「……」


 は? アイツはどう思ってたか、って?
 立ち位置を変える理由なんて、考えたって、わかるワケ――



「っ!?」



 アタシが考えて辿り着いたのが、本当にアイツのそれと合ってるかはわからない。
 もしかしたら、考え過ぎかとも思うけど……正解であって欲しい。
 そうでなきゃ――この赤くなった顔を笑われた、割に合わない!



おわり

書くのは本当に楽しい遊びだと思うのです
そして、皆さんの発想が最初に比べて明らかにぶっ飛び壊れてきた
とても、いい傾向だと思います
おやすみなさい

おやすみー
アイドルに興味はありませんか?貴方は今、夢中になれる疲れからか、黒塗りの高級車に追突してしまう。

おやすみ
次は推理ものとかどうでしょう
下着盗難事件とかの

乙カレー
時事的にアイドル、ちっひ、常務にチョコ責めされるPとかどうだろ

ん?武内Pの下着が盗難だって?

玄関がチョコの山に埋もれて出勤出来ずに遅刻寸膳で必死に活路を見出そうとする武内Pの行く手を阻むうんたら

御猪口にチョコをちょこっとだけ、お願いします

締めになるぽいので、書きます


「もうすぐバレンタイデーだねー」


 プロジェクトルームで、誰かが言った。
 今日居るのは、ひの、ふの……、


「ねえ、皆はバレンタイデー、どうする?」


 ああ、数えてる途中だったのにわからなくなっちゃったよー。
 でも、バレンタインデーかぁ。
 バレンタインって、色々な会社が、色んなチョコを出すから楽しみなんだよね!
 でも、あんまり食べすぎるとプロデューサーさんに叱られちゃう。
 うう……でもでも、あのいい匂いには逆らえる気がしないよー!
 でも、そういえば――


「――プロデューサーさんって、甘い物は好きなのかなぁ」


 体は大きいから沢山食べそうだけど、甘い物はどうなんだろう。
 男の人って、甘いものは苦手だー、っていう人も居るよね。
 もったいないなぁ、甘い物って、あんなに美味しいのに!


「チョコって、食べるととろけて幸せな気分になるよねぇ」


 ただ甘いだけじゃなくて、ちょっとだけ苦味がある。
 だけど、それは苦いんじゃなくて、甘さを引き立たせてくれてるの。
 プロデューサーさんも、チョコを食べたら幸せな気分になると思う。
 えへへ、そしたら、今までの恩返しにもなっちゃうかも!


「いっぱいチョコを食べて、いっぱい幸せになって――」


 もしもチョコをあげたら、喜んでくれるかな?
 でも……ううん、きっと大丈夫!
 プロデューサーさんは甘い物は大好きだと思うの!
 美味しいから大丈夫!


「――笑顔で、喜んでくれるかなぁ」


 そう一人で呟く私に、視線が集まっていた。
 ええっ!? ど、どうしたの皆!?
 私、何か変なこと言ってたかな!?

かな子「ど、どうしたの皆……?」

未央「もしかして……今、無意識で言ってた?」

かな子「無意識って……ええっ、声に出ちゃってた!?」

杏「そりゃもう、ガッツリ出てたよー」

かな子「うぅ……さすがにちょっと恥ずかしいかも///」


智絵里「わ、わたしっ!」


かな子「ち、智絵里ちゃん? どうしたの、急に大声出して……」

智絵里「あ、えっと……」

CPアイドル達「……」


智絵里「今……かな子ちゃんが言ったの――」


智絵里「――とっても、素敵だと思う!」


かな子「……」

かな子「……えっ?」

https://www.youtube.com/watch?v=1w5URVEx_t0

かな子「私が言った事、って……」

杏「なーにトボけてるのさー」

かな子「えっ、えっ?」


智絵里「チョコだよ、かな子ちゃん!」


かな子「チョコ? もしかして……プロデューサーさん、に?」


智絵里「うんっ! 皆で、贈るの!」


かな子「ええーっ!?」

杏「もー、かな子ちゃんが言い出したんじゃんかー」

かな子「あれは、む、無意識だったんだよー!」

未央「ほうほう、無意識にチョコを贈ろうとした、と」

かな子「わ、私はただ、チョコを贈ったら喜んでくれるかなー、って」


蘭子「我が友よ! 汝の想い、我が魂を貫いた!」


かな子「らっ、蘭子ちゃん?」

蘭子「……しかし、壮大な曲を奏でるには、私はあまりに無力」

かな子「だ、大丈夫だよー。そんなに難しくないから」

蘭子「まことか!?」

かな子「うんっ♪」

蘭子「――ならば! 我に闇の饗宴をする力を!」

かな子「調理室が借りられると良いんだけど……」


卯月「す、凄いです! えと、蘭子ちゃんは何て言ってたんですか?」

美波「ええと……一緒に頑張ろう、かな?」

きらり「にょわー☆ きらりもぉ、Pちゃんにチョコを贈りたいゆ!」

莉嘉「アタシもアタシもー☆ あまーいチョコで、Pくんをメロメロに!☆」

みりあ「みりあもみりあもー! ねえねえ、一緒に良い?」

かな子「勿論だよー!」

きらり「み~んなで贈って、Pちゃんをハピハピさせるにぃ☆」

未央「おおっと! その皆には、私も入れて貰おうか!」

卯月「はいっ! 私も、プロデューサーさんにチョコを贈りたいです!」

かな子「うんうんっ、きっと……絶対、喜んでくれるよー!」


智絵里「かな子ちゃん……一緒に、頑張ろうね♪」

かな子「智絵里ちゃん……うんっ!」

杏「杏は面倒だから、試食係としてついて行こうかなー」


美波「――はいはーい! 皆ストーップ!」


CPアイドル達「えっ?」

美波「盛り上がるのも良いけど、一回落ち着こう?」

莉嘉「えーっ!? 良いじゃん!」

みりあ「うんうんっ! だって、すっごく楽しいんだもん!」

未央「みなみんリーダー! 盛り上がる許可を!」


美波「ダメです」


CPアイドル達「えー!」

美波「もう! もうすぐプロデューサーさんが戻ってきちゃうでしょ?」

CPアイドル達「……?」


美波「内緒にしておいて、ビックリさせたいと思わない?」


CPアイドル達「! それだ!」

美波「それに、今此処に居ないメンバーの子もいるし、ね」

卯月「確かに……凛ちゃんもアーニャちゃんも、クローネのお仕事ですし」

美波「みくちゃんも李衣菜ちゃんも……なつきちゃん、菜々ちゃんとお仕事中」

美波「……今、私達だけでやったら、後で怒られちゃうと思わない?」

CPアイドル達「確かに!」

美波「だから、プロデューサーさんには内緒にして――」


美波「――皆で、バレンタインのチョコを作りましょう♪」


CPアイドル達「おーっ!」

美波「も、もう! 皆、声が大きいったら!」

未央「いやー! しっかし、さすがみなみんリーダー!」

美波「あら? 今回のリーダーは私じゃないと思うな」

CPアイドル達「……」


CPアイドル達「……」ジッ


かな子「えっ? えっ?」

かな子「わっ……私がリーダー!?」

美波「うふふっ……ご指導お願いします、リーダー!」

CPアイドル達「お願いしまーす!」


かな子「むっ、無理だよ~! 私、リーダーなんて……」


杏「そんな事無いって。むしろ、これ以上の適任は居ないと思うよ」

かな子「あっ、杏ちゃ~ん!?」

智絵里「かな子ちゃん、わたしも、一緒に頑張るから!」

かな子「智絵里ちゃん……でも……」

智絵里「かな子ちゃんなら、絶対大丈夫だよ」

杏「そうそう。いつも言ってるじゃんか~」

かな子「えっ?」


智絵里・杏「美味しいから、大丈夫だよ!」グッ!


かな子「智絵里ちゃん……杏ちゃん……」

CPアイドル達「……」ジッ

かな子「……」


かな子「……うん! そうだよね、美味しいから大丈夫だよね!」

かな子「私、バレンタインのリーダー、やりますっ!」


CPアイドル達「いえーい!」

かな子「それじゃあ……」

CPアイドル達「……」ゴクリ

かな子「……」

CPアイドル達「……?」


かな子「とりあえず、お菓子を食べながら考えよう~♪」


CPアイドル達「……あはははっ!」

かな子「えっ? 私、何かへんな事言っちゃった!?」

  ・  ・  ・

凛「――ん、グループLINEが盛り上がってる」

加蓮「グループLINEって、シンデレラプロジェクトの?」

奈緒「それで? 何だって?」

凛「プロデューサーに、皆でチョコを贈ろう、ってさ」

加蓮「あの人……チョコとか食べるの?」

奈緒「確かに! むしろ、ハンバーグとか好きそうだよな!」

凛「まあ、食べるんじゃない」

凛「……へぇ、調理室が借りられたんだ」

加蓮「ねえ、凛。それって、私達が参加しても大丈夫かな?」

凛「? どうして、加蓮達が?」

奈緒「ほら、いつも凛がお世話になってますー、ってね!」

凛「ふーん……まあ、聞いてみるけど」


加蓮「大丈夫、凛のプロデューサーさんを取ったりしないから」

奈緒「そりゃそうだろ。そんな事したら、何されるかわからない!」


凛「ちょっと、二人共!?」

  ・  ・  ・

みく「にゃああ!? グループLINE、すっごく盛り上がってる!」

李衣菜「いやいやそんな……ってうわ、凄いねコレは」

夏樹「へー、何かあったのか?」

菜々「何か、盛り上がるような行事でもありましたっけ?」

みく「菜々ちゃん? もうすぐ、バレンタインデーだよ?」

菜々「はっ、そうでした!? い、いや、覚えてましたよ!?」

菜々「覚えてましたけど、縁遠いイベントだ――た、楽しみですねー!」

李衣菜「皆で、プロデューサーにチョコを渡すみたいだね」

みく「調理室も借りて……って、参加者多いにゃ!?」

夏樹「ハハッ! そりゃまた、お前達ってホントロックな事するな!」

菜々「ナナも……青春時代を思い出しますねぇ」


夏樹「――なあ、アタシも参加して良いかい?」

菜々「はいはーい! ナナも、参加したいです!」


みく・李衣菜「!?」

李衣菜「なつきちがチョコを作るの!?」

夏樹「だりー、よーく聞きな」

李衣菜「えっ、何?」

夏樹「人が、やらないと思う事をやる……」

李衣菜「! それは――」


李衣菜・夏樹「――ロックだ!」


みく「……菜々チャン?」

菜々「ぎくっ!? ナナは、17歳のジェイケー! JKですよ!?」

みく「でも……それなら、確かにチョコ作りは楽しみだよね!」

菜々「そ、そうですよ! 他意なんかありませんってば!」

みく「なんだー、菜々チャンがPチャンの事好きなのかと思ったにゃ!」


菜々「危なああい! それは、とっても危険な発言ですよ!?」

  ・  ・  ・

アーニャ「――ハラショー!」

奏・文香・ありす「!?」

アーニャ「……イズヴィニーチェ、すみません」

奏「それは構わないけど……どうしたの、珍しいじゃない」

ありす「はい。急に大声を出すなんて、普段は無いのに」

アーニャ「理由は、アー、もうすぐバレンタイデー、ですね?」

ありす「そうですね。最近、いっぱいお店にチョコが並んでます」

アーニャ「なので、プロデューサーに、皆でチョコを贈ります!」

アーニャ「とっても沢山……きっと、凄く、喜んでくれる♪」

奏「ふぅん? ちょっと、その話、詳しく聞かせてもらえる?」

アーニャ「ダー♪ プロジェクトだけじゃない、です」

ありす「凄いですね……でも、わかる気がします」

奏「ええ。だって、彼ってばとってもチャーミングだもの」

アーニャ「良ければ、皆も、アー、一緒にどうですか?」

ありす「でも……私がチョコを贈って、喜んでくれるでしょうか」

アーニャ「ダー! 絶対、喜んでくれます!」

ありす「ぜ、絶対ですか?」

アーニャ「アリスは、可愛い♪ だから嬉しいのは当たり前、ね?」

ありす「は、はい……///」

奏「ふふっ、ホワイトデーには、甘いキスのお返しを期待出来るかしらね」

奏「……ところで」


奏「文香? さっきから、持ってる本が上下逆さまよ?」


文香「!?」ビクゥッ!

奏「嘘よ」

ありす「文香さんも、一緒にチョコを贈りましょう!」

文香「あ、ありすちゃん……ですが……」

アーニャ「フミカは、可愛い♪ きっと、喜んでくれます♪」


奏「……また、さっきと同じ流れをやるつもり?」

  ・  ・  ・

美嘉「……はっ? えっ?」

美嘉「シンデレラプロジェクトに、クローネ……」

美嘉「他にも……ええっ!? こんなにいっぱい!?」

美嘉「……っていうか」


美嘉「完全にお祭り騒ぎになってるじゃん!」


美嘉「……はぁ、アイツも大変だねー」

美嘉「まっ、バレンタインデーだし、しょうがないか★」

美嘉「……うわっ、また参加者が増えたし!」

美嘉「こりゃ、アタシも参加しなきゃカリスマJKアイドルの名が廃るっしょ!」

美嘉「だ、だから別に、特に意味はないんだからね!?」


唯「……おーい、ゆいに言い訳されても困っちゃうんだけどなー」

  ・  ・  ・

「かな子ちゃーん! どうすれば良いのー!?」


 また、助けを呼ぶ声。
 調理室に充満するチョコの香りを楽しみながら、そこへ向かう。
 ああ、今のチョコ美味しそうだなぁ!


「これはね、こうすると綺麗な形になるんだよー」


 一個だけ、お手本をやって見せてあげる。
 すると、キラキラした目が私に向けられる。
 えへへ、ちょっと照れちゃうなぁ。


「やばいわ! 焦げるわ! やばいわ!」
「だからあたしは言ったのに! 絶対無理だって!」
「チョコに、ちょこっとだけだから大丈夫かと……」


 ああ、大変! すぐに行かなきゃ!
 そう思った矢先、待って、と呼び止められる。
 振り返ると、私が作ったお手本を参考にした、綺麗な形のチョコが鼻先にあった。
 う~ん、とっても甘い香り!


「はい、お礼! ちょっと早いけど……ハッピーバレンタイン!」


 ハッピーバレンタインと返し、パクリとそのチョコを口に入れる。
 口に入れた瞬間から溶け出すそれは、幸せが凝縮されていたかのよう。
 それが‘さっきから何度も続いていて’私は、今幸せそのものになったみたい!


「食べ過ぎかも?……ううん、美味しいから大丈夫だよね♪」


 それに――とっても、楽しい!
 皆でお菓子作りをするのが、こんなに楽しいと思わなかった!
 誰かが――プロデューサーさんが幸せになるのを願っての、皆でのチョコ作り。
 バレンタインデーだけじゃなく、他の機会にも出来たら良いなぁ。


「かな子ちゃん……とっても、幸せそうだね♪」


 うんっ! 私、いまとっても幸せだよ~♪

  ・  ・  ・

「ハッピーバレンタイーン!」


 プロダクションのエントランスホールに、大勢の声が響き渡った。
 ズラリと並ぶアイドル達が、それぞれ手にチョコを携えている。


「み、皆さん……!? これは、一体……!?」


 そのあまりの光景に、プロデューサーさんはすっごく驚いてるみたい!
 うふふっ、頑張った甲斐があったなぁ。


「ショコラリーダー!」


 誰かが、私の背中をトンと押した。
 って、待って待って!? 何も言うこと考えてなかったー!


「三村さん……?」
「あの、えっと……ハッピーバレンタイン、プロデューサーさん!」


 とりあえず、私の分のチョコを渡そう!
 ……と、言っても、私の分のチョコは小さい。
 とっても上手に、美味しく出来たと思って味見してて……気付いたら残り二つになっていた。


「……ありがとう、ございます」


 その、小さな二つをプロデューサーさんは優しい手つきで受け取る。
 二つだけど……ラッピングした方が良かったかなぁ。
 あっ、今食べてくれるんだ! えへへ、数は少ないけど、自信作なんですよ!


「どうですか?」
「はい。とても美味しいです」
「良かったー♪」


 残りの一つもどうぞ!
 と、思ってジッと見てたら……えっ、プロデューサーさん?
 皆が見てる前で、あーん、はさすがに恥ずかしいんですけど……。


「美味しいから、大丈夫です」


 ――そうですよね! それじゃあ、いただきま~す♪


 口の中いっぱいに広がる、幸せの味。
 なんだか、皆がすっごく大騒ぎしてるけど……それは、きっと幸せの前触れ。


 皆、ハッピーバレンタイン♪



おわり

ギリセーフでしたね!
寝ます
おやすみなさい

おー、綺麗にまとまった
お疲れ様でしたおやすみなさい


初めて綺麗な三村さんを読んだ気がする


汚い成分チャージはもう少しかな?

こんなくだらないもん最後まで読んでくれてありがとう


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武内P「大人の魅力、ですか」
武内P「大人の魅力、ですか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510490903/)

武内P「便秘、ですか」
武内P「便秘、ですか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1513243315/)


次埋め立て先

武内P「結婚するなら、ですか」
武内P「結婚するなら、ですか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510232193/)

把握
埋め立て先のその後の話とか読んでみたいです

次も色々遊んでみたいですね!
残り少なかったから書けませんでしたが面白そうなのがいくつもあったので

埋めちゃおう

埋め

1000!

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