小学3年生
幼馴染「だれと喧嘩したの?」
男「幼ちゃんには関係ないよ」
幼馴染「そ、そうかもしれないけど……」ウルウル
男「……どうして、幼ちゃんが泣くのさ」
幼馴染「だって……」
男「ぼくが関係ないって言ったから?」
幼馴染「違う……ううん。確かにそれもあるけど」
男「あるんだ……。ごめんね?」
幼馴染「大丈夫。……それよりも、男くんが傷ついてるのが悲しいの」
男「僕は平気だよ。これくらいたいしたことない」
幼馴染「だけど、血が……」
男「こんなの寝れば治るよ」
幼馴染「でもぉ……」グスッ
男「まったく。幼ちゃんは本当に泣き虫なんだから」ナデナデ
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幼馴染「男くんを殴ったのは誰なの……」
男「そんなこと聞いてどうするのさ」
幼馴染「わたしがその子にやり返してくる!」
男「幼ちゃんが?」
幼馴染「うん。ポカポカ叩いてやるの!」
男「幼ちゃんには無理だよ」
幼馴染「できるもん! わたし、意外と強いんだから!」
男「なに言ってるのさ。泣き虫の癖に」ナデナデ
幼馴染「な、泣き虫じゃないもん!」ウルウル
男「ほら、もう泣きそうになってる」
幼馴染「これは違うんだから。男くんの前だと、涙もろくなるだけなんだから……」
男「じゃあ、俺が近くにいないほうがいい?」
幼馴染「っ! そんなのやだよぉ……」グスッ
男「ほら、どっちにしろ泣くんじゃないか」ナデナデ
幼馴染「……」ギュウ
男「幼ちゃん?」
幼馴染「もう喧嘩しないって約束して」
男「それは……あいつ次第かな」
幼馴染「なにがあったのかわからないけど、そんな子なんて無視してればいいの」
男「……無視なんてできないよ」
幼馴染「お願い……男くんに傷ついてほしくないの……」
男「僕だって……」
男「僕だって、幼ちゃんが悲しむところは見たくないんだよぅ……」グスッ
幼馴染「お、男くん……?」
男「あいつら、幼ちゃんの悪口を言ったんだ」
幼馴染「わたしの? どんなこと言ってたの?」
男「……言いたくない」
幼馴染「ちゃんと教えて」
男「……幼ちゃんのことブスだって。そんな酷いことをみんなの前で言ったんだ。幼ちゃんはブスじゃないのに……」
幼馴染「わたし、そんなの気にしないよ?」
男「えっ……?」
幼馴染「だって、男くんは、わたしのことをそんな風に思ってないでしょう?」
男「う、うん。可愛いと思う……」
幼馴染「なら、その子がどんなこと言ってもいいよ」
男「でも……」
幼馴染「男くんが可愛いって思ってくれるなら、わたしはそれでいいの」
幼馴染「私がそんな悪口で泣いちゃうような弱い子だと思ってるの?」
男「……うん」
幼馴染「じゃあ、わたしは強くなる。そんなことで動じないような女の子になる。だから、男くんは私のために喧嘩なんてしないで」
男「わかった。約束する」
中学3年
幼友「また、喧嘩したの? 飽きないねえ」
幼馴染「うるさいわね」
幼友「で、今回は何が理由なわけ? 男くんの部屋が汚いとか? それとも、洗濯物を男くんが溜めてるとか?」
幼馴染「その内容で既に喧嘩をしているわよ」
幼友「そうだったね。ごめんごめん」
幼友「で、結局、何が原因なのよ」
幼馴染「これよ」ビラッ
幼友「……ラブレター? あんた、またラブレター貰ったの?」
幼馴染「いいえ。私ではないわ」
幼友「幼じゃない? ま、まさか、男くん!?」
幼馴染「ええ。昨日、あの男の制服をハンガーにかけようとしたら、ポケットからこの愛文が出てきたのよ」
幼友「まさか、男くんにラブレターを送るような猛者がいたとはねえ……」
幼馴染「本当に物好きな子よね」
幼友「まあ、あんたと張り合おうなんて、いい度胸してるわね」
幼馴染「えっ?」
幼友「あれ?」
男「……」ズーン
男友「まーた、嫁さんと喧嘩したのか?」
男「嫁じゃねえし!」
男友「んじゃ、婚約者? まあ、なんでもいいけど、幼さんと何かあったんだろ」
男「……まあ、そうだけどよ」
男友「さっさと謝ってこいよ」
男「俺が悪いの前提かよ!」
男友「えっ、違うの?」
男「そうだけどさあ……」
男友「ラブレター? お前に?」
男「ああ。昨日の朝、下駄箱に入ってたんだよ」
男友「うっわー。そいつすげえな」
男「確かに物好きな女だよな」
男友「幼さんから寝取ろうなんて、相当自分に自信があるんだろうな」
男「はっ?」
男友「あれ?」
男友「そのラブレターは誰からなんだよ」
男「さあ?」
男友「さあ、って……お前なあ」
男「だって、差出人が書かれてねえんだよ。ただ、昼休みに屋上に来てください、とだけ書いてあった」
男友「行ったのか?」
男「いいや。誰かもわからないのに行けねえよ。美人局かもしれないし」
男友「幼さん以外の女は眼中にないってだけだろ」
男「まあ、端的に言えば、そうだな」
男友「お前って、本当にめんどくせえな」
幼友「それで、男くんはなんて?」
幼馴染「誰ともわからぬ女のところになんて行かないそうよ」
幼友「なーんだ。なら、良かったじゃん」
幼馴染「良くないわよ」
幼友「どうして? その子のところに行かなかったんでしょう?」
幼馴染「いいえ。行くべきだったのよ」
幼馴染「この愛文は私がしたためたものなのだから」
幼友「!!???」
男友「で、なんで喧嘩するんだよ。お前は行かなかったんだろ?」
男「よくわかんねえんだよな。『ちゃんと受け取っていたの!?』とか『なぜ、来なかったの!?』とか言っていたけど、なんで怒ってるのかハッキリ言わないんだよな」
男友(そういや、昨日の昼休みに幼さんが屋上に向かっていたような……)
男「ああ、もう! わけわかんねえ!」
男友(まさか……)
幼友「幼の字だ……」
幼馴染「あの男は私の字すら判別できないのよ。生まれてからずっと一緒にいるというのに」
幼友「でもさあ、これくらいの内容なら、直接言えばよかったじゃない」
幼馴染「だって、その……恥ずかしいじゃない」
幼友「君たちは、もっと恥ずかしいことを言い合っていると思うけどね」
男友「……なあ、男」
男「あんだよ」
男友「やっぱり、お前が悪いと思う」
男「なんでだよ!?」
男友「なんでもだよ。いいから、幼さんに告白してこいよ」
男「こ、告白!?」
男友「きっと、幼さんは不安なんだよ。お前が中途半端な態度を取り続けるから」
男「……」
男友「ちゃんと気持ちを伝えてこい」
男「ああ、そうするよ」
幼友「ちゃんと告白しなさいよ。いくらでもチャンスはあるんだからさ。そうだ、私が男くんを呼び出してあげようか? 幼が屋上で呼んでるって」
幼馴染「よ、余計なお世話よ!」
幼友「じゃあ、行ってらっしゃい」
幼馴染「いますぐ!?」
幼友「善は急げって言うじゃない」
幼馴染「で、でも……」
ブッブー
幼友「ん? 友くんからラインだ」
男友『男がそっちの教室で公開プロポーズするそうだから、動画撮っといて』
幼友「……」
幼馴染「ねえ、友……。私、どうしたらいいかな……?」
幼友「吉報は黙って待てってね。動かず、じっとしてなさい」
幼馴染「どっちなのよ……」
幼友「いやー。ほら、もしかしたら、男くんが謝りにくるかもしれないじゃない?」
幼馴染「男が?」
幼友「うん。もしかしたら、告白してくれるかも!」
幼馴染「な、なにを言っているの!?」
幼馴染「どうして男が私に告白をするのよ!?」
幼友「そりゃあ、好きだからでしょ?」
幼馴染「なっ……!」
幼友「……あんた、まさか自分の片思いだと思ってたわけ? あれだけ一緒に居て、男くんの気持ちがわからなかったの?」
幼友「男くんは幼に惚れてるよ」
幼馴染「そ、そんなの嘘よ……」
幼友「まあ、本人に聞いてみればいいんじゃない」
男「おーい。幼」
幼馴染「!!?」
男「お前に話が……」
幼馴染「どうしてここに来たの!?」
男「えっ? いや、どうしてって言われても……」
幼馴染「お、お断りよ!」ベシッ
男「○△□×……!!?」
幼友「……えっ」
幼馴染「~~~~~~っ!」ダッ
男「 」
幼友「えっ」
男友「なるほど。それでこいつは廃人になっちまったわけか」
幼友「ごめんね。私が余計なことをいったから……」
男「……いや、一番悪いのは俺だ」フラッ
幼友「男くん……?」
男「行ってくる。後は頼む」
土手
男「やっぱりここにいたんだ」
幼馴染「な、なんで……」
男「さあ、さっきの話の続きをしよう」
幼馴染「いやよ! 聞きたくないわ!」
男「……」ナデナデ
幼馴染「っ……!」
男「幼ちゃん」
幼馴染「……何もわかってなかった。ずっと傍にいたのに、気持ちに気付いてあげられなかった」
男「距離が近いと気付けないことってあるんだよ。だからこそ、俺はちゃんと言葉で伝えなきゃいけなかったんだ」
男「幼ちゃん、好きだよ。俺と付き合ってください」
幼馴染「……」ギュ
男「えっーと、抱きしめてくれたってことは、OKっていう認識でいいのかな?」
幼馴染「わかってるくせに……」
男「まあね。幼ちゃんのことはなんでも知ってるよ。小学生の頃にここで約束したことを守る為に必死に強い女を演じていることも、俺に告白されてしまったらその仮面が剥がれてしまうから逃げだしたことも、ちゃんとわかってる」
幼馴染「……」ギュウ
男「今だって、必死に演技しようとしてることさえもバレバレだよ」
幼馴染「男くん、男くん……」ギュウウウウウ
男「本当に幼ちゃんは甘えん坊さんだなあ」ナデナデ
幼馴染「わたし、男くんに酷いことたくさん言った……」
男「俺が好きな漫画の毒舌キャラの真似してるんだよね」
幼馴染「男くんが誰かに取られるんじゃないかってずっと不安だった……」
男「だから、学校では俺の傍にいて、他の女が寄りつかないようにしたんだよね」
幼馴染「……そんな女なのに、いいの?」
男「そんな幼ちゃんが好きなの」
幼馴染「ばか……」
男「幼ちゃんだって一緒でしょ。性格も口も悪い俺のことが?」
幼馴染「……好きです」
男「はい。よくできました」ナデナデ
幼馴染「本当に意地悪なんだから……」ギュウウウウウウウウウ
高校3年
男妹「また喧嘩したの? ほんっと飽きないねー」
男「うるせえな……」
男妹「どうせ、すぐ仲直りするんだから喧嘩なんかしなきゃいいのに」
男「……いや、今回はそうはいかないかもしれない」
男妹「その台詞、前回も聞いたんだけど……。まあ、いいや。今回は何があったの? どうせ、お兄ちゃんが悪いだろうけど」
男「……」
男妹「物忘れの激しい痴呆だと思ってたけど、言語すら忘れちゃったわけ?」
男「お前、口悪すぎんだろ」
男妹「そりゃあ、あんたの妹ですからねえ」
幼妹「男さんの進学先? 確か、地方の大学でしょ?」
幼馴染「知っていたのね……」
幼妹「うん。妹ちゃんから訊いた。……もしかして、今回の喧嘩の原因はそれ?」
幼馴染「……どうして、私たちが喧嘩しているのを知っているの」
幼友「妹ちゃんから訊いたんだよ」
幼馴染「貴女たち、仲良すぎないかしら……?」
幼友「そりゃあ、お姉ちゃんたちの妹ですからね」
男妹「それはお兄ちゃんが悪いよ」
男「……一応、俺なりに考えたんだけどな」
男妹「そのかぼちゃ頭の思考力なんてたかが知れてるって」
男「そうかもしれんが……」
男妹「だいたい、幼さんに相談の一つもしないとか、思考回路がショートしまくってるとしか思えないわ。なんなら、思考回路そのものが存在していないレベル」
男「……相談しただけで幼は取り乱すだろうし、まともに話なんかできないだろう」
男妹「そう決めつけて相談しなかったことで、余計に幼さんを傷つけたんだよ? マジ最低」
男「……」
男妹「あたしだったら、絶対に相談してもらいたいね。それで、自分が悲しむことになるとしても」
幼妹「私は男さんの気持ち、ちょっとわかるな……」
幼馴染「えっ……?」
幼妹「男さんは悩んだと思う。相当悩んで、悩みぬいて、その結論に至ったんだよ」
幼馴染「……でも、相談の一つくらいしてくれてもいいじゃない」
幼妹「じゃあ訊くけど、相談されたとして、取り乱さずに話し合うことできるの?」
幼馴染「……」
幼妹「男さんは自分一人で責任を負うっていう覚悟を決めて、それを貫き通したんだよ。……それは難しいことだと思うし、お姉ちゃんのことを愛してるってことなんだと思うよ」
男妹「幼さんにちゃんと説明してきな」
男「……」
・
幼妹「男さんの気持ちを汲んであげて」
幼馴染「……」
・
男&幼馴染「頭冷やしてくる……」
土手
男「……」
幼馴染「……」
男&幼馴染「ごめんなさい!」
男「へっ?」
幼馴染「えっ?」
幼馴染「そう……二人とも自分の妹に諭されたのね」
男「なんか、情けねえな」
幼馴染「まったくね……」
男「……幼ちゃん」
幼馴染「今、その呼び方をするのは卑怯だわ……」
男「この場所で話をするのなら、お互いに仮面を外して、素の自分で話をしよう」
幼馴染「……」
男「高校を卒業したら、俺はこの町を出ていくよ」
幼馴染「……どうして、わたしをひとりにするの?」
男「それは……」
幼馴染「わたしを置いていかないで……」グスッ
幼馴染「……この町から通える大学でいいじゃない」
男「遠い場所がいいんだ」
幼馴染「わたしもついて行っちゃダメなの……?」
男「それだと意味がないんだ」
幼馴染「やだ、やだよう……男くんと離れるなんて耐えられないよ……」
男「……わかってる」
幼馴染「なら、行かないで……わたしの傍に居て……」ギュ
男「……っ」
幼馴染「男くん……?」
男「……俺だって、離れたくねえよ」ギュウ
男「俺たち、生まれてからずっと一緒に居ただろう……?」
幼馴染「うん……」
男「だから、一度距離をとったほうがいいと思うんだ。それで別れてしまうような関係なら、それまでなんだよ」
男「でも、4年間距離をとっていても、お互いに想いが変わらないのなら、それは本物なんだと思う。たとえ、どんなことがあっても、支え合って生きていけるはず」
男「だから、大学を卒業して再会した時、まだ心が変わっていなかったら……」
男「……俺と結婚してください」
幼馴染「……やっぱり男くんは意地悪だよ。わたしに4年間待ち続けろってことだよね?」
男「できれば、そうしてほしいな……もちろん、強制はしないけど」
幼馴染「ううん。強制して? 4年間、男くんのことを想って生きるように、わたしを縛りつけて」
男「……いいのか?」
幼馴染「どんなに離れていても、心の中に貴方いるのなら耐えられるわ」
男「……幼ちゃん。必ず迎えにくるよ」ギュウ
幼馴染「うん。待ってる」ナデナデ
男「きっと幸せにするから」
幼馴染「わたしも、男くんを幸せにするから」
男「……好きだよ」
幼馴染「うん。大好き……」チュ
・
・
・
20年後
男「……」
幼馴染「……」
娘「……また喧嘩したのですか? 飽きないですね」
End
以上です。ありがとうございました。
おつ
砂糖吐きそう
末永く爆発しろ
ブラックコーヒーを入れたはずなのにくそ甘いんだが
このSSまとめへのコメント
なんだこの男 寝取られればいいのに