千歌「一番可愛い二人」 (65)

1作目 梨子「曜ちゃん、怒らないで聞いてね」
2作目 曜「梨子ちゃん、怒るわけないよ」

上記の続編。勢いのまま。
最初、千歌視点。


千歌の歩もうとした道のスタート地点に、一番可愛い二人がいた。
二人以上に二人の事を知っているのは千歌だけ。
そうだといいなって、思ってる。
そうあって欲しいって、思ってくれてるなら嬉しいかも。
恋や友情がその輝きを鈍くさせちゃっても、私たちは終わらないよね。
大人になっても、この道は続いていくんだよね。
そうだよね。

「ずっと……友達……」

そうだ。
そう決めたんだ。
辛くたって、何も解決していなくたって、決めたんだ。
自分でやっといて後悔するなら、はじめからするなってんだよ、ねえ。
曜ちゃんのいなくなったベッドの上に頭をこてんと置いた。
しばらく、息をしていない死人のようにそうしていた。

「曜ちゃんの顔……おかしかった……ぷっ」

唐突に思い出した記憶に息を吹く。
もぞもぞと、枕元に置かれたCDプレーヤーに手を伸ばす。
手さぐりに再生ボタンを押した。
イヤホンを耳にかける。

「……良い曲だ~」

そんな言葉が言える自分は、きっとどこか狂ってるのかもしんない。


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アンチスレ

すっごく眠いので、また明日

期待

>>2
そうとも言えますね
千歌ちゃんの心境を書いていくので、前回よりも辛い人は辛いかも

ようりこ厨のこういうところ嫌い

終わったと思ったら死体蹴り始まってワロタ

続いてた。楽しみにしてる
あまり荒らされるようなら、したらばも考えてみてもいいかも

荒らされても仕方ないのなら擁護はせん

1です。
前作まではみんながハッピーエンドに終わらない辛い内容だったかと思います。
特に千歌ちゃんも辛い状態で救いなく終わってしまいました。
今回の話は、2年生のバランスをとっているものをテーマにしていきます。
二人のやりたいことを後押しした千歌ちゃんにとってのハッピーエンド、千歌ちゃんにとっての曜ちゃんと梨子ちゃん、ようりこにとっての千歌ちゃんの必要性、ようりこちかの可能性について模索していく感じになります。

アンチ、カプ厨などのくくりで、これからのお話を閉じて欲しくないなと思うので、良ければお付き合いください。


荒らしに負けずに頑張れ、って擁護して欲しい?
荒らしの意見は無視して期待してる人間だけの意見さえ聞けばいいと思ってます?

嫌なら見なければ良いのになんで荒らすのか理解出来ない。
暇潰しに荒らしてるのだろうか?

なんや本文しか読んでなかったけど荒らされちゃってたの?
文章うまいのにもったいないな

前作から思ってたけどあまり作者がでしゃばらない方がいいと思う
いい作品な分そこが残念
個人的な意見だからスルーしてくれていいけど

荒らしより擁護の方が害悪ってパターンかな

1です。
周りにラブライブを見る人がいなくて、荒しだとしても、
色々な意見のレスがついて嬉しくて楽しみに感じてはいるのですが、
静かに書くのが良さそうなので、静かに書いていきますね。

曜ちゃんにこのCDプレーヤーを渡す前に、私は一回だけ中身を聞いてしまった。
梨子ちゃんは知らないから、バレたら何か言われてしまうかもしれない。

『曜ちゃん、怒らないで聞いてね……』

『私、曜ちゃんが好きだよ』

巻き戻し。
耳触りのあんまり良くない音が聞こえる。

『私』

止める。
早送り。
再生。

『好きだよ』

「なーんちゃって……」

欲しかった言葉が、こうもあっさりと手に入ってしまうなんて。
便利な世の中だなあ。

このCD焼き増しできないかな。
でも借りないといけないよね。
あー、そんなことできるわけないもん。

巻き戻し。
停止。
早送り。
再生。
無限ループ。

梨子ちゃんの声が好き。
優しい眼差しによく似た、温かな声が。
その声が聞けて、笑顔が見れたら良かっただけなのに。
告白なんてしなければ、私たちの仲は何一つ変わることもなかったかもしれない。
そう、あの日の前に戻ることができれば。

「時間よぉ、巻き戻れー……ふんっ」

曜ちゃんの部屋の置き時計に両手をかざす。
長針が我関せずと、進んでいく。

「ですよね……あはは」

バカチカ。
なんて、みとねえの呆れた声が聞こえた気がした。

それか、これを海に投げ捨てる。
数秒位、脳内で審議して、

「だめだ~、それは人としてやっちゃいけないよ~」

と一人頭を抱えて、床に転がった。
それがバタバタとうるさかったのだと思う。
階下から、

「千歌ちゃーん? どうしたの? おやつ食べない?」

曜ちゃんママのお呼びがかかった。

「食べるー!」

ドアの方に向かって転がりながら、そう返事した。

下に降りると、ハーブティーの良い香りがした。
そして、机の上にはみかん。
曜ちゃんママに手招きされて、ソファのお隣に座った。
すごく似てるから、大人になった曜ちゃんの隣にいる気分。

「クッキーじゃなくて、ごめんね。曜が、千歌ちゃんにはみかんだからって。さすがにね、いくら千歌ちゃんがみかん好きだからってハーブティーにみかんはって言ったんだけど」

「ええっと、みかんで大丈夫です、はい」

「あら、そうなの?」

ややびっくりして、

「じゃあ、いっか」

「わーい」

みかんを受け取って、さっそく皮を剥く。

「千歌ちゃん一人にして、血相変えて、曜はどこに行ったのかしら」

「え、えっとごほごほ」

みかんを喉に詰まらせてしまった。

「大丈夫? 何か知ってるの?」

心配しつつも、私の反応にしっかり食いついてくる。

食いつかれても、千歌も困るんだけどな。

「大切な用があって、それで、行っちゃいました」

「千歌ちゃんをおいてまで?」

「おいていったと言いますか、私が背中を押しちゃったと言いますか」

「ふーん……風邪引いてるのに何やってるのかしら」

曜ちゃんママは少しいじけた声を出す。
どうしたのだろう。

「千歌ちゃんは知ってるんだ、いいな」

「あ、あのお?」

「自分から親に色々話す子じゃないから、ちょっと羨ましいなって。何でも一人で解決しちゃうし」

「そうですね……」

「手がかからなくていいけど」

「あはは」

ここまで

ゴミ展開


続きが読みたかったけど凄く怖い

ようりこ厨のこういうクズさが心底嫌い
例のようりこ絵師を筆頭にね

叩かれたらようちかりことか言ってごまかすの、完全にりんまき厨が言うまきりんぱなと同じやつじゃん
やっぱりりんまき厨を引き継ぐのはようりこ厨だったな

「昔からね、負けず嫌いなの。人に頼るのが嫌いな子。プライドだけは高いのよ」

「え、曜ちゃんが?」

おばさんを見上げた。

「親の前でも泣き言はほとんど言わないの。でも、態度には出ちゃうから、面倒臭い子なの。きっと、自分の情けない所見せるのが嫌なんだわ。特に、千歌ちゃんの前ではそうだったんだから。そうそう、お掃除してたら、曜のこと書いてた昔の日記が見つかってね。見たい? ちょっとだけだけど」

「いいんですか?」

「うーんと小さい頃だし、ノーカンじゃない?」

ノーカンなのかな。
でも、おばさんが日記を誰かと共有したいんだろうなということは分かった。
曜ちゃんには悪いけど、見せてももらうことに。

「ちょっと待ってね、全部は恥ずかしいから、数枚コピーしたのがあるの」

恥ずかしいのは、曜ちゃんだとは思うけど。
おばさんは立ち上がって、キッチンの引き戸を開けた。
そんな所に入れてるんだ。

「これこれ」

ガサガサと机の上でA4の用紙を広げた。

ようりこ推しってなんでこんな話ばっか書くんだろ
千歌を踏み台にしないと死んじゃう病気にかかってんのか

3月5日(2歳11ヶ月)――。
ボールペンで、一文字一文字丁寧に書いてあった。

『曜は、船が好きだ。今日は私の母を歯医者に連れて行かなければならなかったので、
留守番の為、「七つの海」というアニメのビデオを借りてきた。これを見ているうちは、
曜は絶対に家から出ない。しかも、パパが主題歌を全部歌えるのが悔しいのか、
アニメを見ながら必死に歌を歌う。大きな声で歌う。なかなか力強い声をしている。
「曜は、歌が上手いね」と言ってやると、ますます声を張り上げて歌う。面白い子。
なんにでも一生懸命な子に育ってほしい』

4月3日(2歳11ヶ月)――。
もうすぐ3歳と走り書きがしてある。

『お風呂に入る時、昨日ケガした足を指さして、「おフロ入ったら、痛いの。すごく痛いの」と言うので、
「痛くない魔法かけてあげる。1、2、3、はい」と指を振ってやると、「痛くない」と言って、
お風呂の中に足をつける。顔を見ると本当は痛がっているのが分かった。「大丈夫?」と聞くと、「大丈夫」と返す。
お風呂からは逃げないけど、泣いている。目をつむって痛いのをこらえている。
「もういいのよ。痛いんでしょ?」と声をかけてやると、首を振ってそれきり黙っていた。
誰に似たのか分からないけれど、我慢しすぎない子になって欲しい』

4月17日(3歳)――。
おめでとう、曜ちゃん。
この一文だけ赤色で書かれてあった。

『誕生日は千歌ちゃんも来てくれた。曜は千歌ちゃんの前では恰好をつけたがる。男の子みたい。
千歌ちゃんが褒めると、すぐに天狗になって、はしゃぎまわる。単純な子。
曜の誕生日だったのだけれど、私がうっかりみかんの大粒が入ったケーキを千歌ちゃんのお皿に乗せてしまった。
すぐに気づいたけれど、千歌ちゃんが嬉しそうにしていて、言い難かった。曜は恐らく気づいていたのだけど、
曜も千歌ちゃんの嬉しそうな顔を見て、満足そうにしていた。パパに似たのかしら』

おばさんが白い歯を見せて微笑んだ。

「可笑しいでしょ。今と全然変わらないの」

「ほんと」

私も顔を見合わせて笑った。
曜ちゃんが大事な事をはぐらかしちゃうのって、もしかして。
ううん、それはちょっと思い上がりかな。

「二人ともこの位が一番可愛かったわ~」

「それって、今は?」

「……ふふ」

意味深な笑い。
あえてスルーした。
不気味だ。

「あ、これはね、小学校2年生の時」

紙を重ねて、折り目を伸ばす。

「この頃には、高飛び込みに興味持っちゃって、千歌ちゃんにも付き合わせちゃったわよね」

「千歌は、曜ちゃん見てるだけで楽しかったし、そんな」

楽しそうに、何かに打ち込む曜ちゃんを見て、私も何かしたいって思ったんだ。
その何かを見つけるのは、本当に難しかった。
ソフトボールは一応してたけど、胸を張って終われたわけじゃなかったから。
誰も続けなさいとか言わなかったし、止めなさいとも言わなかった。
ある程度上手くなった時に、途端に電池が切れたようにモチベーションが下がった。
どうしてか。ただ、曜ちゃんの真似をしただけだったから。
周りの子達がやるって言ってたから、面白そうだから。
やりたかったんじゃないんだ。
曜ちゃんに追いつきたかったんだよ。

「千歌ちゃん?」

「あ、えっと」

眠いのでまた明日

私は小さく息を吐いた。

「曜ちゃんて、昔から凄く要領良くて、みんなの憧れだったんですよね~。曜ちゃんの友達ってだけで、すっごく自慢だったんです。私、曜ちゃんの後ろばっかり着いて歩いてて……」

「そう言えば、どこに行くのもいつも一緒だったわよね。あひるの親子みたいで、可愛かったなあ」

おばさんは日記を閉じる。

「泳ぐのも同じくらいの時期に始めたのに、曜ちゃんがぐんぐん速くなって、どんどん上達して……すごいなあって」

学校の水泳の授業では、同じコースで泳ぐと、後からスタートした曜ちゃんがいつの間にか後ろにいて。
私は全然速く泳げなくて、励ましてくれる曜ちゃんに急かされて、焦ったりもした。
フォームが違うよって、指摘されてもよく分かんなくて、何度も教えてもらうのも悔しかったから、結局それっきりなこともあった。

「あの頃は、パパもよく家にいたからね。家で秘密の特訓して、千歌ちゃんを驚かせてやろうって二人して企んでたのよ?」

「えー、いいなあ」

「負けず嫌いだから。パパも曜も。パパはね、子どもの勝負に首をつっこむ大人気ない残念な人だったの」

「そんなことないですよ。曜ちゃん、実際、今じゃ高飛び込みで右に出る者はナシ! みたいな感じですし」

「あれでも、千歌ちゃんと一緒に高飛び込みできない自分は嫌われてるって、泣いてたし、記録が伸び悩んだ時期もあってやめたくなった時もあったんだから」

「ええっ、それ、色々と初耳」

「千歌ちゃんには言わないでって。そうやって、マイナスな面があるって知られたくなかったみたい。子どもだったけど、一人っ子のせいだからか、周りの子よりうんと甘えん坊に育ってたの……そのくせ、プライドは高い。ちょっと、ちやほやされ過ぎちゃったのね。良くなかったなって思う……って、私、育児の愚痴みたいおほほほ」

誤魔化すように、高い声で笑う。


「ねえ、千歌ちゃん。これ、千歌ちゃんだから聞くんだけどね、曜、学校でどう?」

「えっと」

「一緒にいて、迷惑かけてない?」

迷惑だなんて。
そんな。
私は、

「そんな、こと」

言葉を選ぼうとして、詰まってしまう。

「……この間の事件から、曜のこと、よく分からなくて……」

おばさんが不安げにこぼす。
そんな顔、しないで欲しい。

「もし、曜のことで直した方がいい事があったら遠慮なく言って欲しいの」

ない。
そう言いきれる程、私は大人じゃなかった。
でも、曜ちゃんの事を大事に思う母親の気持ちが痛くて、刺さるように理解できた。
曜ちゃんは、事件の事ちゃんと話してないんだね。
それは、曜ちゃんなりの気の遣い方なのかもしれない。
でも、もし、私が曜ちゃんのお母さんだったら、どうだろう。
自分を責めてしまうかも。

でも、でも、私に聞かないで欲しい。
私は曜ちゃんの保護者じゃない。
友達なんだもん。
言いたいこともある。
言えないこともある。
私だって、分からない。
分かんないけど、曜ちゃんが苦しそうなのは嫌なんだ。

「ずっと一緒にいたから、分かんないかも……」

「そっか……ごめんね。変な事聞いて」

「いえ……」

私は紅茶を飲んで場を誤魔化す。
きっと、おばさんは私の嘘なんて見抜いてる。
乾燥した喉にハーブティーが流れていった。

曜ちゃんママは、私達の気持ちを察して、わざと日記の話をしてくれたのかも。
高校に入ってから、スクールアイドルのこと以外で、曜ちゃんと絡むことが少なくなっていたし。
曜ちゃんママは、私に対してもいつも優しくて、これくらい離れた所からなら、私はもっと曜ちゃんの事を見ることができていたのかな。
私がずっとコンプレックスを抱いていた曜ちゃんと、梨子ちゃんの好きになった曜ちゃんは同一人物で。
なら、私だって曜ちゃんのことを好きになっていてもおかしくないんだけど。
私が気付いていない何かを、梨子ちゃんは気づいてて。
きっと、それに惹かれたんだよね。

それは――、自分でもびっくりするけど、悔しい。
しかも、それをさ、梨子ちゃんに対して思ってるんだから。
好きになったからって、何もかもを譲れるわけじゃないんだなって、分かった。
それって、普通のことだとは思う。
そういう普通が、本当は千歌と曜ちゃんの間に数えきれないほどあった。
でも、それを直視しなかった。
普通が嫌だ。
そうやって、一番大切な事から逃げちゃっていたんだ。

バスの時間が迫っていて、曜ちゃんの帰りは待たずに私は帰宅した。
自室のカーテンを開けて、向こう側を見やる。
梨子ちゃんはまだ帰っていないみたい。
確認して、カーテンを閉めた。

「はあ~」

ベッドに横たわる。
頬っぺたがなんだか痛い。
表情筋が固くなって突っ張ってる感じ。
指で頬を解す。

「上手く、笑えてたかな」

仰向けになり、クッションをお腹の上に置く。
部屋の扉が、スーッと開いた。

「なに、みとねえ」

見なくても誰か分かる。

「しまねえが、プリン買ってきたけど食べる?」

「……うー、後で」

「あんた、熱でもあるの」

「なにそれぇ」

「べっつにー、あ、残ってる保証はないからね」

「え~」

ここまで
また明日

重い

千歌ちゃん…

みとねえからこんな意地悪なことを言われても、家族だからどうってことない。

「みとねえ最低ー」

「この間、ホタル祭送ってやったのは誰だったかなー?」

「お姉様でございますー」

なんて、やりとりをして、

「じゃあ、あんたの分を私に献上しても問題ないわよねー?」

「あるよ!」

私は飛び起きた。

「はいはい」

見るからに残念そうな顔で言われた。
ベッドから立ち上がり、去っていくみとねえに、

「ねえ、みとねえさ、親しい友だちと話せなくなった事とかある?」

と聞いた。

「なに、急に」

すでに廊下に出ていて、扉の後ろから声だけが聞こえた。

「なんとなく」

「あんた」

と、言いかけてみとねえがため息を吐いた。

「それくらいのこと何回もあるわよ。ずっと仲良しの方が、私からしたら気持ち悪いけどね」

「そうなの?」

「そうでしょ。嫌なことは嫌って言ってくんなきゃ私は嫌だし、でも、言われたらむかつくし、その後普通に喋ろうって気にならないじゃん。理屈じゃない。そういうことの繰り返しがあるだけよ。あんた達は八方美人な所あるから、まあ苦労しそうね」

「よ、曜ちゃんの事じゃなくて」

「誰も言ってないけど」

と、階段を降りていった。

あれは、バレたよね。しょうがないか。
こめかみをこすり、私もプリンを食べに向かった。

みとねえと話した後、ふいにAqoursのメンバーの顔が浮かんだ。
みんなそれぞれに、なりたい自分を持っていて、そんな自分と向き合っていて。
諦めて欲しくなくてどんどん前に進んで欲しくて、一緒にスクールアイドルをしてる。
曜ちゃんは、どうだったんだろう。
結局、本当の奥の部分に触れずに終わってしまった。
それでいいと思った。そうまでして、曜ちゃんがそうしたいなら。
これが、他のみんなの事なら、どうにかしないとって思ったかもしれない。
でも、曜ちゃんは、自分で前に進んでいける人だから。

そもそも、曜ちゃんはスクールアイドルをするために入ったんじゃないし。
最初から、それは、分かっていた。
片手間でも、曜ちゃんならきっとできるとも思ったよ。
水泳の授業の時みたいに、私たちをリードしてくれるって。
なんだっけ、トップランナーってやつかな。

上手いんだよね。
ダンスも歌も、梨子ちゃんの代わりになってくれた時も。
仮に、個人競技の部活になんか曜ちゃんと一緒に入ったりなんかしたら、もしかしたらもっとギスギスしてたのかな。
そういうの、苦手なんだけど、避けたいところなんだけど、私と曜ちゃんに足りなかったのは――。

――想いをぶつけ合えたら、良かったのに。

食べ終わって、家の外に出た。
遠くの方で、お客さんかな、笑い声が聞こえた。
逃げるように、街灯を背にして、海へ向かう。
胸が重い。
深呼吸して潮の匂いを嗅いだ。
すると、だいぶラク。

「……ふんふん♪」

鼻歌交じりに砂浜へ。
どこまでいっても真っ暗な海。
失恋しても、みかんは美味しいし、プリンだって食べれる。
鼻歌だって歌えてしまう。
お姉ちゃんからはいつも通りいじられるし、
ぐるぐるぐるぐる悩んでいる。

「ふんふふ……♪」

失恋しても、梨子ちゃんの事は好きだ。
失恋しても、曜ちゃんは友だちだ。
それで、全部。
湿気た空気だ。
嫌らしくまとわりついてる。
だから、何をしたって憂鬱なんだ。
明日からもそうだと思う。
夜になると頬っぺたが痛くなるのかもしれない。
明日にならないと分からないけど。

「ふん……ふん♪」

悔しいな。
靴を脱ぐ。
梨子ちゃんをとられたし。
私の事大好きって言ってたのにさ。
勘違いさせないでよね、まったくもー。
ほんと、悔しい。
曜ちゃんは、私の親友なのに。
もっと相談とかあってもいいじゃん。
私と一緒に何かしたいって言ってくれて嬉しかったんだよ。

悔しいよ。
これも、理屈じゃないのかな。
何度も何度も、これからこんな気持ちがやってくるなら、嫌だな。
感じないように、鈍くなってしまいたい。

二人の手の温もりが、確かにここにあった。
今は、でも、何も感じない。
千歌は誰とも手を繋いでいない。
繋ぎたかった手は、一体どちらに対してなのか。
よく分からなくなっていた。
梨子ちゃん。
曜ちゃん。
鈍くなっているのかな。
ああ、やっぱり辛いな。
辛いし、
悔しいし、
寂しいんだって。

今日は、潜っても呼んでくれる人はいないね。
指先に触れた海水のぬるさが気持ち悪い。
今日の海は、潜ったって、憂鬱そうだ。

いったんここまで

ラブライブのことだけ、考えていたい。
その方がラクだもんね。
そうすればいいだけの話しなのに。
千歌の脳みそはもっと単純な構造だと思ってた。
意外と、色々考え込めるんだ。

曜ちゃんのために作った歌詞を口ずさむ。
曜ちゃんのために作られた曲に乗せて。
よくも、まあ、こんな歌ができたもんだよ。
二人の繋がりを強くするきっかけになり、私の悔しさを押し上げる。
なんじゃそりゃ。
千歌はピエロかなんかなの。

梨子ちゃんの脇腹にできた傷のことを思い出した。
あれもあの二人の繋がりを強くした。
小指に拳大位の石が当たる。
拾い上げた。
海水が腕を滴り落ちていく。
その石を、

「せーの」

思いっきり脇腹に叩きつけた。

痛覚は当たり前だけど、鈍くなっているはずもなく、痛みと衝撃でえずくような咳が出た。
しゃがみ込んで痛みに耐える。
梨子ちゃんは、もっと痛かったのかな。
そうじゃないかな。
だって、気絶しちゃうくらいだよ。
じゃあ、もっと、やってもいいんじゃない。

もう一度、石でお腹を殴りつけた。
もう一度。
繰り返す。
同じ所に。

「い……っ」

手が止まる。
痛い。
頭の中にはそれだけ。
余計な事はぼんやりしてきて。
お腹の横が重く、衝撃が波のように広がって、内臓が震えているみたい。
熱くなって、じーんとしていた。
きっと、痣になった。
違いない。
これで、同じだ。

「っ……あはは」

同じ、だって。
何言っちゃってるの。
もう一度ダメ押しのように打ち付けた。

「ぐっ……」

いつの間にか汗が額と首筋に滲んでいた。
吹いた風に、ぞくりとする。
ぐちゃっとうずくまった。

最後。
もはや刺さったんじゃないかという程の衝撃。
灯台の光のようなものが、視界に走った。

「はあっ……はあっ……」

息を必死で吸う。
吸うと、痛みを酷く感じられた。

「ふっ……ぅ」

右手を脇腹に当てた。
熱い。
何か、そこから生まれてくるみたいに。

「……っん」

突然、光が私を照らした。
目の前に影ができた。

「千歌ちゃん!?」

「どうしたの!」

痛くて返事ができなかった。
背後から聞こえたのは、曜ちゃんと、千歌ちゃんの声だった。
恐くてふり返れることもできなかった。
見られた?
握りしめていた石から手を離した。
ころんと砂の上に落ちた。

「石……?」

梨子ちゃんが呟いた。

どうして二人が。

「千歌ちゃん、お腹痛いのっ?」

曜ちゃんが私の体を抱き起す。
風邪を引いていたから、鼻の詰まったような声だった。

「だい、じょうぶだよ~」

わざと軽く言うと、

「なわけないじゃんっ」

と叱られた。

「梨子ちゃん、旅館に行って……」

曜ちゃんが指示を出そうとしたので、制止した。

「違うの……ごめん……だめ」

二人は困惑している。

「自分で、石を、お腹に叩きつけたんだよ」

呆れられる、と思った。
気持ち悪がられる、と思った。
曜ちゃんは、けど、そのどちらでもなかった。

「千歌ちゃん……っ」

名前を呼びながら、泣いていた。



泣き始めて喋れなくなった曜ちゃんの代わりに、梨子ちゃんが言った。

「どうして、そんなことしたのか、教えてくれる?」

梨子ちゃんは、怒っていた。
喉が鳴った。

「い、言わない」

「千歌ちゃん」

「や、やだ」

恐い。
こんな梨子ちゃん初めて見た。
持っていたライトを自分の膝に乗せて、梨子ちゃんは泣いている曜ちゃんの頬を掴んだ。

「泣いてる場合じゃないよ」

「ご、ごめっ」

「千歌ちゃん、立てる?」

梨子ちゃんに言われて、私は頷いた。
痛みはさっきより引いていた。
やっぱり、あれくらいじゃダメだ。
もっと、鋭利な何かでやらないと。
到底、及ばない。
二人から、どんどん離されちゃうよ。

目に付いたのは、割れたビンの破片だった。
あまり角が丸くなっていない。
あれなら――。
伸ばした手が、曜ちゃんに掴まれる。

「千歌ちゃん……何しようとしたのっ」

「え」

梨子ちゃんが破片を拾い上げて、海の方へ放り投げた。
ちゃぽんと落ちた。
私は曜ちゃんに羽交い絞めにされたような姿で立ち上がった。
何。
何って。
二人と同じになりたかったから。
それだけだよ。
ほんのちょっと近づけたらなって。
でも、そうだね。

「おかしいね……」

私は言った。

「二人のそばにいたかっただけなんだ……」

ややあって、曜ちゃんに抱きしめられた。

「曜ちゃん、くすぐったい」

「千歌ちゃん……一緒にいるよ」

耳元で鼻水をすする音。

「うん、わかってる。わかってるから」

ほら、梨子ちゃんに悪いよ。

「ごめんなさい。千歌ちゃん」

梨子ちゃんが、今度は前から私を抱きしめた。
サンドウィッチみたい、と思った。

「……二人とも、苦しいよ」

「ね、千歌ちゃん。想いは伝えないと、意味がないと思うよ」

梨子ちゃんは言った。

「私たち、千歌ちゃんにやりたいことを応援してもらったから、今度は千歌ちゃんの番だよ」

「何言ってるの」

おかしなことを言ってる。
変だよ。
私たちの関係は、もう決まったじゃんか。
梨子ちゃんと曜ちゃんは、進んでいったじゃんか。

「曜ちゃんがね、私の事好きって言ってくれたの」

「うん……」

そうでしょ。
知ってるよ。

「でもね、曜ちゃんは、たくさん悩んで悩んで、一度はけじめをつけようとしたけれど、どうしても切り離せない事があったのよ」

今日はここまで
また明日

鬱い

千歌ちゃんが二人を前にして心から笑える日が来てほしい

「それは、なにかな」

俯いて、私は言った。

「私からは言わない。曜ちゃん」

曜ちゃんが少し身じろぎした。
私の背中から離れていく。

「千歌ちゃん」

呼ばれて、曜ちゃんの方を見た。
私に言いたいこと?
いつまでも未練がましいとか。
劣等感が鬱陶しいとか。
頭をよぎったのは、そんな卑屈なことばっかりだった。
曜ちゃん。
私に何を聞いて欲しいの。

「曜ちゃん」

分かったんだよ。
私、曜ちゃんが眩しかったんだ。
眩しくて、目が潰れてしまいそうだったんだ。
私は曜ちゃんに惹かれていた。
私の幼馴染は、こんなにもすごいんだって。
だから、怖かった。
梨子ちゃんがその眩しさに気付いてしまわないかってことが。
だって、そうなったら、結局私たちの関係は変わらない。
私は曜ちゃんを追いかけ続けないといけない。
曜ちゃんは私に気を遣わないといけない。

続きは夕方に

だから、私は、曜ちゃんが嫌い。

「私ね、千歌ちゃんのことが好きなんだ」

耳を疑った。

「聞こえた?」

曜ちゃんが言った。
私は、首を振ってしまった。
曜ちゃんが繰り返す。

「千歌ちゃんと友達のままでいれたらいいって思った、でも、それじゃあ、私たちいつまでも変わらないんだ」

「なんで、そんな」

どうしてかな。
私はもう、曜ちゃんに好きになってもらえるような所、残ってなんていないのに。

「千歌ちゃんと戦わないといけないって思ったから。みんなで楽しくは難しいって分かった。しんどいこととか辛いこととか、そういうのと向き合わないといけない歳になっちゃったなって感じかな……梨子ちゃんの事は好きだよ。でも、自分に嘘をついて、梨子ちゃんと付き合う事もできなかった」

「曜ちゃん、わかんないよ。どうしたいの?」

「私は梨子ちゃんも千歌ちゃんも好きなんだよ。同じ意味で」

同じ意味。
そこで、はたと気が付いた。

「え、ええっ!?」

小さく、叫んでしまった。




「ね、呆れるよね」

梨子ちゃんが言った。
笑っている。

「わ、私は、曜ちゃんのこと嫌い」

半ば、やけくそだった。
曜ちゃんが好きとか言うから。
たぶん照れ隠しもあったんだけど、思いの他、曜ちゃんにしっかりと刺さっていた。

「ち、千歌ちゃん……やっぱり、そうだよね。ど、どこが嫌なの?」

「……」

「はっきり言って、千歌ちゃん」

「言うよ?」

「うん」

「本当に、言うよ?」

「いいってば」

「打たれ弱い癖に、無謀なことするとことか、要領良くて私のできないこと簡単にやってのけちゃうとことか、梨子ちゃんに好かれてるとことか、私のこと相手にもしてくれてないとことか……」

「……一緒にいるのも嫌?」

それには答えれなかった。
私は、項垂れる。

「それは、嫌じゃない……よ」

「そっか、良かった」

嬉しそうな顔をする。
さっきまでの、酷い言葉の数々聞いてたのかな?

「あー、でも、一瞬で振られちゃった……あはは」

「どんまい、曜ちゃん」

梨子ちゃんが曜ちゃんの肩に手を置く。

「変だよ、梨子ちゃんも」

二人とも、おかしいよ。

「私は……悔しくて、悔しくて、死んじゃいそうで。でも、死ぬのは怖いし、せめて曜ちゃんに近づきたい。梨子ちゃんにも近づきたい……二人が私を置いて幸せになるのは嫌だ。嫌で、嫌で、嫌で……そんなこと思ってて……だから、二人は、怒るべきなんだよっ、私の事。そうじゃなきゃ、ダメだよっ」




「いいのよ、千歌ちゃん。だって、それが千歌ちゃんの本音なんだから」

梨子ちゃんが、私の手を握る。

「そうだよ、千歌ちゃん。それに、私は嫌われてるのにはなれてるから、大丈夫」

「曜ちゃん、何言ってるの」

梨子ちゃんが曜ちゃんの額にデコピンする。

「あいたっ」

曜ちゃんは頭をふらつかせつつも、私の手を握った。
二人の手が、繋がっていた。
二人が目を合わせた。
ゆっくりと口を開く。

「嫌いでもいい。一緒にいよう」

曜ちゃんが言った。

「好きにはなれないかもしれない、でも一緒にいようよ」

梨子ちゃんが言った。
とても、残酷だと思った。
きっと、第三者が聞いたら、非難されるかもしれない。

「悔しくてもいいの?」

曜ちゃんが頷いた。

「梨子ちゃんが好きでもいいの?」

梨子ちゃんが頷いた。

どうして?
それは、成り立つものなの?
心は、どこにあるの?
どこに向かっているのか、分からないよ。
向かう先はあるの?
それでも、一緒にいられるなんて、そんな奇跡みたいなこと――。

「みんなを傷つけるかもしれないよ?」

「千歌ちゃんが、優しい事知ってるよ」

曜ちゃんの手に力がこもる。

「でも、優しいだけじゃ、結局、誰かが傷を負うことになるから、それならみんなで痛い思いしようよ」

「みんな……」

口が震えて、上手く喋れない。

「だからね、痛い時は痛いって言い合おう」

梨子ちゃんが、私の頬にキスをした。
その反対側から、曜ちゃんが。

「「ね」」

二人の声が、重なった。

「本当に、それで、いいの」

胸が高鳴っている。
不安と抵抗と興奮と。
二人を交互に見た。

「楽しいだけ嬉しいだけが繋がりじゃないし、輝いてるんじゃないよね」

と、梨子ちゃん。

「今、この瞬間の千歌ちゃんも、私には輝いて見える」

と、曜ちゃん。

私が輝いてる?
そうかな。
ただ、輝きたいって、いつも思っていた。
輝き方なんて、知らなかった。
今も、輝いてるなんて思ってない。
けど、少し分かったんだ。
輝いていなくても、輝いているか分からなくても、いい。
それでいいって、言ってくれる人がいる。
全部、真っ直ぐ受け止めてくれる人がいる。

だから、それで、いいんだ。

上手く泣けなくて、
言葉にもできなくて、
鼻水をすすった。

「……一緒に、いたい」

二人は、まだ、スタートで待っていた。

読んでくれてありがとう。
これで、本当に終わりです。


あっさり終わってしまって
もっと読みたい気持ちもあるがよかったよ

闇千歌すき

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