大尉 「ボンクラどもと戦地に向かうことになった」 (25)


陸軍大尉 「暇だ」

大尉(軍大学を卒業してはや5年)

大尉(配属されたのは東の僻地、隣の帝国との国境線)

大尉(国境と言えども、有刺鉄線があったり巨大な壁があったりするわけじゃない)

大尉(目の前にあるのはただ広大な森、森、森!)

大尉(こんな手柄も昇進も糞もない土地……なはずなのだが、俺の階級だけはどんどん上がっていった)

大尉(少尉から始まり、中尉、そして去年の秋には大尉)

大尉(特に何の苦労もなく、トントン拍子で昇進)

大尉(それもこれも、俺の父親が『中将殿』であるから……)

大尉(つまり、親の七光り)



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大尉(俺自身には、親に頼ろうとかいう考えはない……一応)

大尉(事実、士官学校の入学権も自力で勝ち取ったし、軍大学だって次席で卒業した)

大尉(だが)


少尉「隊長!これ!この服マジヤバくねーすっか?」←貴族の息子

准尉「少尉殿、その本僕の私物なんですが」←コネ入隊

曹長「おぉ……俺の腰が」←慢性ヘルニアマン

伍長「……」←何考えてるかわからない女


大尉(俺の中隊に集められたのは役立たずばかり)

大尉(どうしてこうなった)ジーザス!


大尉(幸いなのは、今が戦時中ではないってことだ)

大尉(東の帝国……我が国はほんの30年前まで、奴らと戦争していた)

大尉(俺が生まれたのは、戦争が終わった少しあと)

大尉(これが一昔前の戦争末期時代なら、俺はまず間違いなく死んでいただろう)

大尉(それくらい、帝国は圧倒的で……そして、我が国はあらゆる手を使い、辛勝した)

大尉(ってことを、親父から耳が腐るほど聞いた……平和でよかったぜ)

大尉「もっとも、いつ戦争が始まるともわからん状況だがな」

副官「なに一人でぼそぼそ言ってるんですか、隊長」


大尉「中尉!いたんなら声かけてよ」

副官(中尉)「最初からいましたよ……ていうかそれより、少佐殿がおよびです。何でも火急の要件だとか」

大尉「ンー了解、今日もかわいいよ、中尉」

副官「……はやく行ってください」フイッ

大尉「うぇ、つめてぇなぁ……あー少尉!俺の机の上の書類、見といてくれ」

少尉「了解っす!ちなみにこれは?」

大尉「前言ってたお前の小隊の再編成案だよ。通しといたから」

少尉「マジっすか!たいちょおぉぉぉ!」ダキツキー

大尉「暑苦しいから離れろ」ペッペッ


中尉「かわいい……かわいい……」ウフ


准尉「た、隊長……」モジモジ

大尉「お前、何で女性用の制服着てんの……?」オトコダロ?

准尉「ぐ、曹長さんが……」

大尉「曹長ォ!」

曹長「はっ!」

大尉「よくやったぁ!」

曹長「ありがとうございます!」

伍長「……変態が二人」

大&曹「変態ちゃうわ!紳士と言え!」

中尉「隊長。時間」サメタメー

大尉「はっ!?」


大尉(中尉……彼女もまた、大臣のご令嬢とかいう金持ちだ)スタスタ

大尉(だが、彼女はほかのボンクラ(皆いい奴ではあるのだが)どもとは少し、いやだいぶ違う)テクテク

タイチョウ!オハヨウゴザイマス オウ、オハヨーウ

大尉(端的に言えば、非常に有能なのだ)スタスタ

大尉(まぁ、この部隊に送られてきた以上、何かしら問題があるのだろうが)ウィーン

ピタッ

大尉 コンコン

少佐「入れ」

大尉「失礼します」

大尉「部隊番号223-34中隊隊長 大尉、只今参りました」

少佐「うむ、まぁかけてくれ」

大尉「はっ」


少佐「……君の中隊は確か、少々変わっている子が多かったかね?」

大尉「は、はぁ……。確かに特徴のある部下も数名在籍しておりますが」

少佐「ふむ、そうか」

大尉「……」

少佐「……」

大尉「……大隊長殿?」

少佐「あー、上からのお達しでね。ちかじか東の帝国さんと平和条約を結ぶらしい」

大尉「あの軍事強国とですか?にわかには信じがたい話ですが」

少佐「わかっている。上も彼らが何を考えているのかをしりたいようだ」

少佐「そこでだ。君の中隊は帝国さんの動向を探ってきてほしい」


大尉「中隊規模でですか!? しかし、それでは侵攻と何ら変わりがないのでは」

少佐「帝国は、条約を結ぶといって相手を油断させ、その後奇襲をかけるのがお得意のようでね」

少佐「我が国もそれをやられてはかなわんだろう?」

大尉「それは……我が国は彼らとまさか」

少佐「大尉、口を慎みたまえ。これは特級の軍事機密だ」

大尉「ですが! あまりにもリスクが大きすぎます! これでは……死にに行くようなものです!」

少佐「大尉!」

大尉「ッ!」

少佐「すでに、先行偵察隊が帝国に入国している。賽は投げられたのだよ、大尉」

大尉(それはつまり、俺らに戦争の先駆けになれという事)

少佐「やってくれるね?大尉?」

大尉(俺ら掃きだめ中隊は、死をもって先制攻撃の矢を放て、という事)


大尉(なんてこった)

大尉(平和だ平和だ、なんて思ってたら一寸先は地獄だったでござる)

大尉(てか、出発は明日って何だよ!準備もさせねぇきかあのハゲチャピンめ!)


曹長「隊長、どうしたんだろうな」

准尉「大隊長殿の部屋から戻ってきて以来、かれこれ2時間くらいぼーっとしてるますね」

少尉「ここは一発、俺が発破かけてやりましょう!」

准尉「葉っぱ?焼き芋焼くの?」

曹長「お!いいねぇ。みんなで食うか」

少尉「じゃ、曹長のおごりで」

伍長「……芋、食べる」


大尉「はぁ……死んだなこりゃ」


ほのぼの戦記ssです。 書きためではないのでゆっくり進みます。

どうぞ最後までお付き合いください。


今日はここまで

ほのぼのだったのか
皇国の守護者みたいなものかと思ってた

とりあえず乙

何人生き残るか


なかなか面白そう


~中隊詰所~
ザッ

大尉「えー、というわけで諸君」

大尉「我が第三連隊所属第34中隊は、帝国との国境付近に広がるアルヌの森に偵察に出ることになった」

大尉「繰り返すが、これは偵察任務だ。各自隠密行動を心掛けるように」

大尉(さすがに、「これは奇襲先制攻撃(死亡率100%)任務でぇーす」なんては言えんからな)

少尉「でも隊長ぉ、偵察任務なのにこんな大勢……200人も連れて行って大丈夫なんですかぁ?」

大尉(無駄に鋭いなこいつ)

大尉「確かに、今回の任務は異例だ。人数が多すぎる……。」

大尉「だが、これには訳があるんだ」

准尉「先行偵察がすでに行われているのでは?」

大尉「その通りだ、准尉」


大尉「先行の部隊より、当該地域に敵影なし、との報告が来ている」

大尉「つまり我々の任務は」

曹長「散開して帝国さんがやらかしてないか徹底的に確認、ってことですかい」

大尉「そういうことだ」

大尉(実際は、散開する前に遭遇戦になる可能性が高い)

大尉(もし敵さんがこっちに奇襲攻撃を考えてるなら……おそらくこちらの反攻を防ぐために工作隊を送っているだろう)

大尉(問題は、いつ、どこで会敵するかなのだが)

大尉「では今回の編成だが、いつも通り4小隊4分隊だ」

大尉「各小隊内の分隊編成、及び分隊長任命はそれぞれの小隊長に任せる」

大尉「決まったらいつも通り俺のところに報告に来てくれ」

大尉「じゃ中尉、後は頼むわ」

中尉「了解しました」ハッ


~第二小隊詰所~

中尉「……」ハァ

軍曹1「中尉殿、なんか難しい顔してんな」

軍曹2「隊長殿のところから帰ってきてからずっとああだぜ……またセクハラか?」

軍曹1「そんなまさk……隊長ならやりかねんな」

軍曹2「中尉殿もいじはってないで素直になりゃいいのになぁ」

軍曹1「バッカお前、いじはって顔を赤くしてるのが可愛いんだろう?それなのに……それなのに……」

軍曹3「ちくわ大明神」

軍曹2「中尉殿は隊長に、大尉殿に恋してるときた……」

中&軍12「「「はぁ……」」」




軍曹3「つっこめや」


中尉(中隊が集まる1時間ほど前、私は隊長に呼ばれた)

中尉(とうとうプロポーズか、と思ってたら違った)

中尉(隊長は、到底信じられないような話を私に語った)

中尉(私たちは明日、死にに行くのだ、と)

中尉(隊長はいつものように、なんでもなさそうに言った)

中尉(それが隊長の優しさであることも私は知っていた)

中尉(だから……だからこそ私は)


~第三小隊詰所~

少尉「というわけで、俺がこの隊の新しい隊長だ」ヨロシク


兵長A「なんだあいつ……例のボンボンかよ」キゾクキモー

兵長B「前の隊長も大概だったが……あいつもなぁ」ナイワー

兵長C「いつもチャラいしねぇ……信頼できへんわ」アリエナイッショ


少尉「……」

少尉(こマ?俺の隊バラバラじゃねえか)

少尉(前任の中尉がとんでもない無能だったから追い出したんだが……こりゃ隊の内部も相当荒れそうだなぁ)

少尉(……まずは俺自身だ。隊のみんなに認めてもらわないとな)

少尉(まぁ、言うて隊長は偵察任務っつてたし、これから少しずつ打ち解ければ大丈夫だろ)

少尉(この任務で、俺が無能じゃねぇってことを見せつけるんだ……見てろよクソ親父)


~第四小隊詰所~

曹長「どう思う?」

准尉「どうって……なにがです?」

曹長「さっきの隊長の話だ。おかしく思わないか?」

准尉「確かに、疑問に思うところはありますが……だからと言って、我々がどうこうできる話でもないでしょう」

曹長「そういうことじゃねぇんだ……俺は……前の戦争と同じ匂いがするっつってんだ」

准尉「曹長さんはたしか、先の帝国との戦争に参加されたんでしたっけ?」

曹長「あの時の俺は招集されたばかりの一兵卒だったがな。戦争末期は本当にひどかった……血で血を洗う戦争よ」

曹長「その時と……あの地獄と同じ感じがするんだ」

伍長「……気のせいでは?」

准尉「気のせいだとしても、歴戦の曹長さんの言う事です。私が小隊長殿に進言しておきましょう」

曹長「よろしく頼む。……ところで小隊長は?」

伍長「……あそこで酒を飲んでいる」

オラーゴチョードコイッター! サケノカワリヲモッテコーイ!

准尉「……チッ、あの無能め」

伍長「……准尉?」


=翌日=

大尉「おはよう諸君」

大尉(結局大した準備もできないまま出撃か……)

中尉「……」

少尉「ファ~」ネム

准尉「結局小隊長殿には会えずじまいだった……」ハァ

曹長「」キッ

伍長「」ダラーン


大尉「では、出発しようか」

大尉(俺たちの地獄へ)


~アルヌの森(帝国側)~

准尉「中尉殿ぉ~お腹減りましたよぉ~」ザッザ

中尉「我慢してください、っていうか2時間前にたらふく食べたでしょう……」ザッ

准尉「あれじゃ足りませんよぅ」ザッザ

少尉「どんだけ食うんすか……」スタスタ

曹長「俺の飯の2倍は軽く食ってたぞこいつ」ザッ


大尉(今のところ隊は順調)ザッザ

大尉(無論、油断はできない)ザッザッ

大尉(というより俺の予想では、おそらくもう)ザ

キラッ

大尉「!! 全軍伏せろォ!」

中尉「!」

ババババババババッ タタタタタタタ

曹長「軽機関銃だと……隊長!」バッ

大尉「全軍停止!直ちに迎撃態勢に入れ!」

少尉「敵影なしなんじゃなかったのかよぉ!」フセッ

大尉「落ち着け!敵の数は?」

伍長「およそ大隊規模」サッ

大尉(大隊規模だと!? 連中の頭はイカれてやがんのか!)

大尉「各隊散開!地形を生かしてゲリラ戦闘に努めつつ、ポイントαまで走れ!」

大尉(ここで……こんなところで死ぬわけにはいかない!)


帝国少佐「あちらさんの規模は?」

帝国大尉「中隊規模です。おそらく偵察任務中かと」

帝国少佐「中隊規模で偵察だと? 野郎、喧嘩を売りに来たって訳か」ヤレヤレ

帝国少佐「全軍に通達。これは敵の先制奇襲攻撃である」

帝国少佐「完膚なきまでに叩きのめせ」ニヤ




大尉(数の上ではあちらのほうが圧倒的に上)タタタタタッ

大尉(囲まれては終わりだ)トマルナ!ハシレ!

大尉(幸いにもここは森の中……少数でのゲリラ戦が有効)バババババッ

大尉(となると)フム

大尉「第一小隊、行くぞ」

大尉(犬死にする様な犬でも噛まれりゃ痛いもんだぜ)ニヤ


今日はここまで

平日は更新速度落ちると思います

平日は仕事だからね
仕方ないね

言わば日本のサラリーマンもまた、高度経済成長期以来続く「経済戦争」を戦い抜く兵士なのだ

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