奴隷「ここは奴隷の楽園」 (14)

~牢屋~


少女「出して下さい!ここから出してください!」

奴隷「新人さん、ちょっとうるさいよ」

少女「こ、ここは何処なんですか!私はどうしてこんな所に!」

奴隷「ここは販売前の奴隷を閉じ込めておく牢屋」

奴隷「貴女は奴隷商人に捕まったんでしょ、良くある話よ」

少女「そ、そんな……」

奴隷「貴女の家が余程裕福で大規模な捜索隊とか組んでくれるなら助けが来るかもしれないけど」

奴隷「その風体だと、期待できそうにないね」

少女「う、ううう……」

奴隷「ま、捕まって一カ月くらいは教育期間だから、すぐに売られることにはならないよ、安心して」

少女「教育って、何の?」

奴隷「そりゃあ、奴隷として相応しい価値観を育む為の教育だよ」

少女「い、いやですそんなの!」

奴隷「そんな事言われてもなあ……」


商人「おい、そこの女!お前の番だ!」


少女「ひっ!」

奴隷「はいはーい、じゃあ私もちょっと行ってくるよ」

少女「い、行くって、何処に?」

奴隷「売られに」

少女「え」

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奴隷「さーて、誰が私を買ってくれるかなあ」

奴隷「出来れば優しい人がいいなあ、別に厳しい人でもいいけど」

奴隷「真っ当な性的欲求持ってる人なら別に何でも」

奴隷「一番怖いのが殺人衝動を奴隷にぶつけてくる人かなあ、その辺はちょっと避けたい」


商人「はーい、新商品追加しましたよ~、展示してある5人の奴隷と同等品だよ~」

商人「安くしておくから買って行きな~」


奴隷「まあ、私に選択権はないんだけどね~」

奴隷「あ、誰かこっち見てる……」

奴隷「何か場馴れしてなさそうな人だな」

奴隷「よし、ちょっと気弱にふるまっておこう……」

奴隷「……」

奴隷「……こ、こわいよお、だれか、たすけてよぉ」ガクガクガク

奴隷「ううう、ひっく……」

奴隷「さーて、誰が私を買ってくれるかなあ」

奴隷「出来れば優しい人がいいなあ、別に厳しい人でもいいけど」

奴隷「真っ当な性的欲求持ってる人なら別に何でも」

奴隷「一番怖いのが殺人衝動を奴隷にぶつけてくる人かなあ、その辺はちょっと避けたい」


商人「はーい、新商品追加しましたよ~、展示してある5人の奴隷と同等品だよ~」

商人「安くしておくから買って行きな~」


奴隷「まあ、私に選択権はないんだけどね~」

奴隷「あ、誰かこっち見てる……」

奴隷「何か場馴れしてなさそうな人だな」

奴隷「よし、ちょっと気弱にふるまっておこう……」

奴隷「……」

奴隷「……こ、こわいよお、だれか、たすけてよぉ」ガクガクガク

奴隷「ううう、ひっく……」

男「こんな小さな子が奴隷に……何て世の中だ」

奴隷「たすけてー、たすけてー」

男「商人!君はこんな仕事をして心が痛まないのか!」

商人「仕事ですし」

男「こんな仕事に誇りを持てるのか!」

商人「そりゃあ、持ってますよ」

商人「この子供達だってそりゃあ丁重に扱ってます」

商人「だって商品ですからね」

商人「ただ……誰もこの子達を買わなかった場合は、話が変わります」

商人「奴隷ではなく、娼婦として売り出すしかなくなるでしょうな」

商人「けど、私もそんなことはしたくないんです」

商人「ああ、優しい人に買われたらこの子達も幸せになれるんだろうけどなあ」

商人「こんな奴隷に手を差し伸べてくれる人はいないかなあ」

商人「誰か買ってくれないかなあ」

男「……」

奴隷「たすけてー」

男「……判った、この子を買おう」

商人「まいどあり」

奴隷「やったー」

男「君、大丈夫かい、もう怯えなくてもいいからね」

奴隷「あ、はい」

男「こんなに汚れて、可哀想に……」フキフキ

奴隷「ありがとうございます、貴方は優しいご主人様なんですね」

男「ご主人様なんて言う必要はないんだ、君はもう自由なんだから」

奴隷「けど、私は奴隷以外で生きていく方法を知りません、自由なんて私には過ぎたるものなのです」

男「ああ、可哀想に……なら行く先が決まるまで私の家で働くといいよ」

男「大丈夫、酷い事はしないから」

奴隷「わーい」

~一ヶ月後~

~お屋敷~


奴隷「おはよ、メイド、仕事手伝うよ」

メイド「あー……おはようございます……奴隷さん」

奴隷「どうしたの?また何か失敗した?」

メイド「はい……また料理を焦がしてしまって……」

メイド「はあ、どうして私ってこうなんでしょう……」

メイド「奴隷さんの方がメイドの仕事ちゃんと出来てますよね……」

奴隷「メイドは掃除が得意じゃない、私より上手いよ」

奴隷「人それぞれ得意な事は違うんだから、卑下する事ないって」

メイド「そうですかね……」

奴隷「それより、ちょっと相談に乗ってほしい事があるんだけど」

メイド「はい、なんです?」

奴隷「実は……」

メイド「ご主人様から求婚された!?」

奴隷「声が大きいって」

メイド「そ、そ、そ、それって凄い事じゃないですか!」

奴隷「うん、まあねえ……」

メイド「勿論、受けるんですよね奴隷さん!」

奴隷「買い取ってもらった恩もあるから受けてもいいんだけど……」

メイド「何か気乗りしない感じです?」

奴隷「……」

メイド「えっと、ひょっとして、私が知らない所でご主人様から酷い事されてたり?」

奴隷「いや、それはないよ、あの人は根っからの善人だから」

奴隷「手を出された事はないし、寧ろ気を使って貰ってる」

奴隷「けど……」

メイド「けど?」

期待

奴隷「けど、正直、価値観はあわないと思うんだ」

メイド「価値観?」

奴隷「あの人は、奴隷である私を買い取る事で助けてくれた」

奴隷「けど、それだけなんだよね、それで満足しちゃってる」

奴隷「けど、私は違うの」

奴隷「それだけでは満足できない」

奴隷「私はね、元々は隣の国の農家の娘だったの」

奴隷「ある日、私の家を誰かが襲撃して来て、私と姉と妹はそいつらに捕まってあの奴隷市場に売られたの」

奴隷「私達三人は、奴隷としてそれぞれ別の所に売られていったわ」

奴隷「私は取引上の問題が発生して、奴隷市場に戻されたけど」

奴隷「姉と妹は戻ってこなかった」

奴隷「聞いた話では、売られて先で死んでしまったらしいの」

奴隷「そんな事ってある?」

奴隷「それまで、普通に生活してたのよ?なのに」

奴隷「次の日にいきなり奴隷にされて、更にその翌日には死んじゃってるって」

奴隷「あり得ないでしょ」

奴隷「私は、そんなの認めない」

奴隷「我慢できない」

奴隷「だから」

奴隷「だから」

奴隷「私は、あの奴隷市場を許せない」

奴隷「極端に言うと、ぶち壊したいの」

奴隷「多分、この欲求は、あの奴隷市場が消えるまで無くなる事はないと思う」

メイド「……なんというか、ごめんなさい」

奴隷「何でメイドがあやまるの?」

メイド「い、いや、こんな所でのほほんとメイドやってる自分に対する嫌悪感と言うか……」

奴隷「あー、いや、メイドを責めたりするつもりはないよ、うん」

奴隷「それで話は戻るけどさ」

メイド「うん」

奴隷「あの人は私を助けてくれた、それは感謝してる」

メイド「だよね、ご主人様はいい人だよね」

奴隷「けど、奴隷商人にお金を払う事の意味を、多分あの人は理解してないと思う」

奴隷「払われたお金で、奴隷商人は人を雇って、また隣の国とかで人間狩りをするんだよ」

奴隷「奴隷商人の勢力拡大に手を貸してしまってる」

メイド「それは……確かにそうだけど……」

奴隷「だから、あの人に対する感情は色々と複雑なのよ」

奴隷「感謝はしてるけど憎悪もしてる」

奴隷「結婚を躊躇してる理由は、こんな感じかな」

メイド「……」

奴隷「やっぱり断るべきかなあ、求婚」

メイド「私は、ご主人様を信じたいかな」

奴隷「信じる?」

メイド「うん、ご主人様は奴隷さんを助けてくれたんだよね」

メイド「だったら、奴隷さんの願いも判ってくれると思う」

メイド「きっと、手を貸してくれるんじゃないかな」

メイド「ご主人様はこの国でも有数のお金持ちだし」

メイド「ご主人様が奴隷市場をぶっ壊しちゃえば、奴隷さんも安心して求婚を受けられるよね?」

メイド「それってハッピーエンドじゃない?」

奴隷「……」

メイド「ど、どうかな?」

奴隷「メイドって、すっごいねー」

メイド「え、そ、そう?凄い?私凄い?かしこい事言っちゃった?」

奴隷「……うん、まあ、そうだね、このまま悩んでても仕方ないし」

奴隷「ちょっと相談してみようか、あの人に」

奴隷「私の共犯者になってくれるかどうかを」

~数日後~

~奴隷市場~


奴隷「たっだいまー」

少女「……」ブツブツ

奴隷「お久しぶり、元気にしてた?」

少女「……」ブツブツブツ

奴隷「おーい、聞いてる~?」

少女「あ、は、はい、聞いてます、聞いてますよ勿論、勿論です」

少女「ちゃんと、覚えました、呼ばれたら、這いつくばって、返事をする」

少女「ご飯は不味くても、残さない」

少女「顔に傷は作らない」

少女「ちゃんと、覚えてます、当たり前です、私は頭は悪くないですから」

少女「ふ、ふふふふ……あれ」

少女「貴女は……確か私がここに来た時に売られて行った……」

奴隷「いやあ、返品されちゃってね~」

少女「へんぴん……」

奴隷「まあ、また暫くこの牢屋に居る事になるだろうから、宜しくね」

少女「……よ、よろしくおねがいします」

奴隷商人「おい、もう1人新入りだ、面倒見てやれ」


メイド「ふぇぇぇぇ……」

奴隷「あれ、メイドじゃない、どうしたのこんな所で」

メイド「え、あ、あれ、奴隷さん」

奴隷「うん、私だよ」

メイド「あ、あ、あ、良かった、知ってる顔が居て良かったぁぁぁ、うわああああんっ!」

奴隷「まあまあ、落ち着いて……お水でも飲む?」

メイド「は、はい……」ゴクゴク

奴隷「それで、メイドはなんでこんな所に?」

メイド「ど、どうしてもこうしてもないですよ!お屋敷が!お屋敷が火事で!」

メイド「ご主人様もその家族も使用人もみんな死んじゃって!」

メイド「お使いに出ていた私だけは助かりましたけど……」

メイド「私、身寄りもなくてあの屋敷で暮らさせてもらってましたから……」

メイド「路頭に迷って、借金作って、最終的に奴隷市場に売られて……ううぅぅ……」

奴隷「ふーん、大変だったねえ、可哀想にねえ」

メイド「奴隷さんが火事で死んでなくて、本当に良かったですよぉ……」

奴隷「……まあ、私が火をつけたんだけどね」

メイド「え?何か言いました?」

奴隷「お腹空いたねって言ったんだよ」

メイド「そ、それは確かに……もう何日もまともにご飯食べてません」

少女「ごはん、ごはん、不味くても、文句言いません、大丈夫です、覚えてます」

メイド「うわあ、何ですかこの人」

奴隷「私達の仲間だよ」

奴隷(はあ、結局ここに戻ってくるしかないのか)

奴隷(あのご主人様は、わりといい感じだったんだけどなあ)

奴隷(けど、共犯者にはなってくれそうになかったし)

奴隷(それどころか、私を危険思想の持ち主として警察に引き渡そうとしてたし)

奴隷(ああなっちゃうともう、私の事を知ってる人を全て始末して逃げるしかなくなっちゃうよね)

奴隷(メイドを始末できなかったのは予想外だったけど)

奴隷(まあ、奴隷仲間になったみたいだし、私に害する事はないでしょ)

少女「メイド、貴女はメイドなの、じゃあ美味しいご飯作って」

メイド「む、無理ですよ、材料ないですし、あったとしても料理得意じゃないですし……」

少女「やくたたず!やくたたず!」

メイド「い、いたい、頭を叩かないでください!」

メイド「馬鹿になっちゃいます!頭叩かれると馬鹿になっちゃいます!」

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