兵士「そこに入れ」奴隷「はい」(423)

兵士「いいか、お前の役目はそこで生きている事だ」

奴隷「わかりました」

兵士「飯は朝と晩のみ。あとは自由にしていて構わん」

奴隷「ありがとうございます」

兵士「じゃあおとなしくしていろよ。1時間毎に見回りと生死の確認に来るからな」

奴隷「わかりました」

兵士「それじゃあな」

奴隷「(ここどこだろ。目隠しされてたからわからないや)」

奴隷「(石造りの部屋で窓がなくて鉄格子…)」

奴隷「(…牢屋かな?)」

奴隷「(なにかしたのかなぁ僕。ご主人様に失礼な事したのかな)」

奴隷「(…鞭で叩かれてないから違うか)」

奴隷「(まあ、いいや)」

奴隷「(とりあえず今僕のする事は…)」キョロキョロ

奴隷「あるのは水さしと便所桶だけ…何したらいいんだろう…

兵士「おい、生きてるか奴隷」

奴隷「はい、生きてます」

兵士「よし」

奴隷「あの」

兵士「呼び止めるな」

奴隷「すいません。でも」

兵士「…なんだ」

奴隷「僕はここで何をしたらいいのでしょうか」

兵士「何もするな。前にも言ったがお前はただ生きてればいいんだよ」

奴隷「わかりました」

兵士「……」チラッ

奴隷「?」

奴隷「(『生きていればいい』)」

奴隷「(どういう事だろう)」

奴隷「(僕に何か価値があるのかな)」

奴隷「(……)」

奴隷「(出来るのは炊事洗濯掃除ぐらい。あ、荷物運びも)」

奴隷「(普通の奴隷だよね)」

奴隷「(……)」

奴隷「(あの時、兵士様はちらっとだけど隣を見てた)」

奴隷「(あの目の感じ……僕達を見る目にそっくりだった)」

奴隷「(という事は、隣にいるのは僕と同じ奴隷かな?)」

奴隷「(声、かけてみよう)」

奴隷「あの、隣の人。聞こえますか?」

……

奴隷「あのー」

……

奴隷「……」

奴隷「(返事、ないなぁ)」

兵士「おい」

奴隷「はい」

兵士「飯だ」

奴隷「ありがとうございます」

奴隷「(暖かいスープにパンだ。凄い!)」

兵士「…はぁ…」

奴隷「?」

奴隷「(兵士様の手にはもう一人分のスープ。僕と違ってパンはない)」もぐもぐ

奴隷「(やっぱり、隣にいるのは奴隷なんだ)」もぐもぐ

奴隷「(でも、なんで返事してくれないのかな)」もぐもぐ

奴隷「(言葉がわからない?口が聞けない?馴れ合う気がない?……もしかして人間じゃない?…よくわかんないや)」

奴隷「ごちそうさまでした」

奴隷「…っ(まだ今の季節はまだあったかい筈なのにここはちょっと寒いなぁ)」ぶるっ

奴隷「(風が強い日の納屋みたいだ。あの時は干し草があったからまだよかったけど…)」

奴隷「(でも、ここには何にもないから我慢しないと)」膝抱え

兵士「おい」

奴隷「はい。生きています」

兵士「よし。ならこれを使え」

奴隷「あ、ありがとうございます」

奴隷「(毛布だ…あったかいや…)」

奴隷「(結構厚いし…これなら)」横になる

奴隷「(…あったかい…)」スゥ…

兵士「起きろ」ガンガン

奴隷「…うっ…」

兵士「生きてるか?」

奴隷「…は、はい…」

兵士「よし」

奴隷「(……兵士様は1時間毎に僕の生死を確認に来るんだった…)」

奴隷「(それだとよく寝れない…)」

奴隷「……」

奴隷「(そうだ、お願いしてみよう。駄目なら叩かれるだけだし)」

兵士「おい、起き…なんだ起きてたのか」

奴隷「はい」

兵士「そうか」

奴隷「あの、兵士様」

兵士「呼び止めるなと言っ「お願いしたい事があります」…なんだ」

奴隷「ありがとうございます。あの、生死の確認なんですが」

兵士「生死の確認がどうした」

奴隷「僕の脈を診て確認してもらえないでしょうか」

兵士「…ん?」

奴隷「僕は鉄格子から腕を出して眠ります。ですから、その…」

兵士「…なるほど。1時間毎に起こされたくないから勝手に脈を診て生死の確認をしろと言いたいわけだな」

奴隷「い、いえそんな…」

兵士「……いいだろう。いちいち起こす手間も省けるというものだ。それに、寝不足で病にでもなったら敵わんしな」

奴隷「あ、ありがとうございます」

兵士「交代の兵士にも伝えておく」

奴隷「よろしくお願いします」

奴隷「(よかった。これでよく眠れる…はず)」

奴隷「(それから何日かたった)」

奴隷「(ここでの生活は思った以上に単調だ)」

奴隷「(朝起きたら1日分の水を兵士様から頂き、朝食を食べ1時間毎に生死の確認し、夕食を食べて眠る…これの繰り返し)」

奴隷「(だけど、幾つか新しい発見があった)」

奴隷「(1つ、便所桶の中身を片付けるのは兵士様がするという事)」

奴隷「(とてもじゃないが兵士様にそんな事をさせられないので自分でやると申し出たが、すぐ却下された)」

奴隷「(奴隷の便所桶を兵士様が手に取るだけでもありえないのに片付けるなんてもっとありえない…)」

奴隷「(これはつまり、少しの間でもここを離れさせない為だと思う。理由はわからないけど)」

奴隷「(そしてもう1つ。兵士様は僕より奥に近づかない)」

奴隷「(…いや、食事の時とある一定の時間は奥の牢屋?には行くみたいだけど…)」

奴隷「(…凄く、嫌そうな顔をしてるのはなんでだろう?)」

奴隷「(仮に僕と同じ奴隷だとしても多分あんな顔はしないと思う)」

奴隷「(…もしかして奴隷じゃなくて大罪人なのかな?近くのが嫌なほどの)」

奴隷「(とりあえず、以上の二つ発見と初日に言われた『生きていればいい』の三つを合わせて僕は悶々と考えていた)」

奴隷「(生きていること、僕を外に出さないこと、僕より奥にはいかないこと…この三つが意味する事は…)」

奴隷「(…多すぎてよくわかんないや)」

奴隷「(だから僕は意を決して聞いてみる事にした)」

奴隷「(…単調な日々に僅かでも変化がある事を祈って)」

兵士「よう」

奴隷「こんにちは」

奴隷「(この兵士様は僕を連れてきた人で僕の我がままを聞いてくれた優しい人だ)」

奴隷「(優しいと言っても、もう一人の兵士様と比べて、だけど)」

奴隷「あの、質問いいですか?」

兵士「手短にならいいぞ」

奴隷「(手短に、というのはここに長く居たくないのだろう。もう一人の兵士様は生死の確認を終えたらすぐ帰ってしまうぐらいだし)」

奴隷「ありがとうございます」

奴隷「あの、隣にいるのはなんなんですか?」

奴隷「(僕の言葉を聞いた兵士様の表情は少しだけ固まり、嫌そうな顔をした。…怒らせちゃったかな)」

兵士「お前には関係ない」

奴隷「で、でも…僕、隣の人に話しかけられて…それで」

奴隷「(思った通りの返事に、僕は意を決して嘘をついて返す。何度か話しかけた事はあるものの、返事はなかった。もちろん、話しかけられるなんて事は一度だってない。でもこれで何かしらアクションがあるはずだ。……鞭で打たれるのは嫌だけど…)」

兵士「……」

奴隷「(兵士様の表情が嫌そうな顔から無表情に、そして呆れたような顔になって僕を見下している。…たぶんだけど、嘘が見破られたのだろう)」

兵士「…なんて言ってたんだ?」

奴隷「えと、お互い自己紹介して早くここから出たい…と」

奴隷「(もちろん、これは口から出任せ…当たり障りのない事を言っただけ)」

兵士「ハッ!隣の奴が自己紹介して早くここから出たいって言ったのか!」

奴隷「(兵士様が鼻で笑い、僕の顔をジッと見つめてくる。怖くて少しだけ身震いした)」

兵士「……お前は今まで来た奴隷の中でも頭がいい方だ」

奴隷「……」

兵士「いいか?好奇心は猫を殺すって言葉がある。お前は黙ってそこで生きてればいいんだよ。今まで奴隷として働かされてきたんだろ?なら働かなくても飯を貰えて夜はしっかり眠れる、これで十分じゃねぇか」

奴隷「…はい、そうですね」

兵士「ならこの話はこれで終わりだ。さっさと寝るんだな」

奴隷「(兵士様が僕に背を向けて歩き出す。鞭で打たれなかった…よかった。…ってそうじゃない)」

奴隷「…あの」

兵士「…まだなんかあるのか?」

奴隷「すいません。でもあと一つだけ…」

奴隷「(隣にいる人の話を聞けなかった以上、正直意味のない質問かもしれないけど…あともう一つだけ教えて欲しいことがあるんです)」

兵士「はぁ…隣の奴に関してならもう何も言わねえぞ」

奴隷「(歩くのを止めて僕の話を聞いてくれる。やっぱりこの兵士様は優しいなぁ)」

奴隷「構いません」

兵士「…で、なんだ。言ってみろ」







奴隷「僕を隣に移す事は、可能ですか?」






兵士「……はぁ?お前何言ってるんだ?」

奴隷「えっと、たぶんですけど僕がここにいるのは何かの緩衝材として、ですよね?」

奴隷「その、兵士様が必要な時以外『僕より』奥に行かないのはここ数日兵士様達を見ていてわかりました」

奴隷「そして僕を外に出さないのは隣から距離を必要以上に離さないようにするためなら、僕が奥に行く分には構わない…と、思うの…ですが…」

上げ忘れてしまいましたすいません。

バカなのでツッコミどころがいっぱいあったらすいませんorz

兵士「……」

奴隷「……」

奴隷「(だめ、かな?)」

兵士「なんのために?」

奴隷「え?」

兵士「現状でも十分なのにそれをわざわざ変える必要は?」

奴隷「そ、それは…」

奴隷「(たしかに言われてみれば変える必要がない…。現状はまったく問題ないのだから…。しかも、兵士様にはメリットがないし…意味のない質問だ…)」

奴隷「……」

兵士「…まあ、一応上に聞いてみるけどよ。期待すんなよ?」

奴隷「!。あ、ありがとうございます!」

奴隷「(僕は慌てて頭を下げた。やっぱり兵士様は優しい!)」

兵士「じゃあまた1時間後な」

奴隷「(頭を下げた僕に兵士様はめんどくさそうに手を振って出て行った。上手くいくかなぁ…上手くいったらいいなぁ…)」

兵士「って事があったんだけどよ、お前はどう思う?」

騎士「いきなりなんだ…。……アレは我が国の機密事項…奴隷が他国の間諜である可能性は?」

兵士「まあまあ、やる事ねーしいいじゃねーか!…ん?それはないな。あの奴隷の身辺は上がしっかり洗ってるだろうし。それに」

騎士「それに?」

兵士「アレを欲しがる奴はいねーだろ。まあ、物好きは欲しがるかもしれねぇけど」

騎士「…まあ、たしかに」

兵士「そんで一番の問題は、奴隷が下手な事をしないかってことだが…」

騎士「それは貴様がよくわかってるんじゃないか?随分世話を焼いてるようだしな」

兵士「世話っつーかたまに話してるぐらいだっての」

騎士「その割には奴隷のお願いをよく聞くじゃないか。前の件にしろ今回の件にしろ」

兵士「……まあ、なぁ」

騎士「…情でも移ったか?いいか、あの奴隷は」

兵士「あーあー、みなまで言うな。わかってるよ。ただの憐れみみたいなもんだ」

騎士「ならいいがな」

兵士「また話が脱線したな…。まあ、下手な事しないよう命令すれば大丈夫だろ」

騎士「命令?」

兵士「ああ。あれはれっきとした奴隷だからな、主人の命令を守るよう教育されてるだろ」

騎士「ふむ」

兵士「それに頭も悪くない。わざわざ自分の立場を悪くするような事はしないと俺は思うね」

騎士「ほう、えらく信用しているじゃないか」

兵士「信用はしてねぇが面白い奴だとは思ってるぜ?まさか自分から奥に行きたいなんていう奴がいるとは思わなかったしな、外に出たいとかならまだしも」

騎士「たしかに。まあ、貴様がそこまで言うなら問題はないんだろう」

兵士「おう。んで、こっからは個人的な意見を聞きたいんだがアレと奴隷を一緒にする事についてお前はどう思うんだ?」

騎士「…私は賛成だな」

兵士「お、意外だな。なんでだ?」

騎士「あの牢屋に行きたくない」

兵士「はは、正直だな」

騎士「それとアレの世話をしたくない。すべて貴様に任せたいくらいだ…特に食事」

兵士「勘弁してくれよ…俺だって嫌だってのに」

騎士「だから代わりにあの奴隷にアレの世話諸々をさせる。それと行動範囲を奥だけに限定せず牢屋全体にすれば私達は牢屋に入る事なく生死の確認や色々なやりとりが楽に出来るというもの」

兵士「ほう、なるほどな…たしかにそれは楽そうだ」

騎士「そうだろう。それで貴様は?」

兵士「俺は反対だな」

騎士「…理由は?」

兵士「たしかにお前の言う通り俺たちの代わりにアレの世話云々とかすげえ魅力的だよ。だけどよ、アレと奴隷を一緒にして何か起こるかもしれねぇだろ?それを考えたらな…」

騎士「…アレと奴隷が一緒になったくらいでなにか起きるとは考え辛いが?」

兵士「そりゃ今更アレがなんかしようとは思えねーけどよぉ…万が一って事があるだろ?」

騎士「まあ、用心に越した事はないな」

兵士「つまりそういう事だ」

騎士「なるほどな…」

兵士「……ま、こんだけ話し合っといてなんだが決めるのは俺たちじゃなくて上だからな。俺たちはそれに従うまでだ」

騎士「わかっている。いい暇つぶしになった。……ん?」

兵士「ん?」

騎士「上に伝えるのか?」

兵士「ああ、一応な」

騎士「意外だな。反対しているなら黙殺してしまえばいいだろうに」

兵士「こう見えても俺は約束は守る男だからな!…さて、そろそろ時間か。俺は生死の確認してくるから飯頼むわ」

更新遅くてすいませんorz
今日は以上です

奴隷「(あれからまた何日か経った)」

奴隷「(けど、あの時の返事はまだ貰えてない…)」

奴隷「(あまりにも暇なので兵士様に何かする事がないか聞いたけど無いと言われてしまった)」

奴隷「(本を貸してやろうかと兵士様が言ってくれたけど僕は字が読めないからすごく残念だけど丁寧に断った)」

奴隷「(…本当にする事がないなぁ。この牢屋を掃除しようかと思ったけど僕しか使ってないからあまり気乗りしないし)」

奴隷「(気晴らしに身体を動かしてみたけどあんまり良くなかった。むしろ目的の無い運動は僕を虚しくさせるだけだった。よく眠れたけど)」

奴隷「(それから色々試したけど、僕は隣の人とここについて色々考える事にした。身体を動かすよりは何倍もマシに思えたから)」

奴隷「(とりあえず隣の人について、今わかっている事を一つずつ確認してみよう)」

奴隷「(まず、隣の人は話す事ができる。…なんで返事してくれないのかはわからないけど)」

奴隷「(これは兵士様への質問でわかったこと。話しかけられた事を否定しなかったっていうのはつまりそういう事なんだと思う)」

奴隷「(あと、食事は兵士様達が食べさせてるみたい)」

奴隷「(なんで見てないのにわかるのかって聞かれたら、隣に食事を持っていった時は兵士様達がすぐ帰らないから)」

奴隷「(普通なら僕みたいに渡して終わりなのに…)」

奴隷「(それと数時間おきに兵士様達が奥に行く理由は水を飲ませてあげてるからだと思う。ご飯が一人で食べれないんだから一人で水を飲めないというのは当然だよね)」

奴隷「(……ん?という事は身動きが取れないか、一人では食事が摂れないくらい衰弱してるって事…?)」

奴隷「(身動きが取れないならまだしも…衰弱してるのは…)」

奴隷「(……そうだ!隣の人は1時間毎に生死の確認をされてない!)」

奴隷「(水を飲ませる時についでに確認してるかもしれないけど…一人で食事が摂れないほど弱っている人を僕と同じ間隔で確認しないなんておかしいよね!)」

奴隷「(牢屋で拘束されるなんてきっと珍しい事じゃないと思うし…)」

奴隷「(こんな所かな?まとめると…隣の人は喋れるけど返事してくれなくて、1時間ごとの生死の確認はされない拘束されてる人…?)」

奴隷「(…良くわかんないや…。拘束されてるって事は凄く悪い人ってことかな?)」

奴隷「(だから奴隷なんかとは馴れ合わない…とか。兵士様達が奥やこの牢屋が嫌いな理由も凄く悪い人がいるからとかかなぁ)」

奴隷「(とりあえず、隣の人についてはこんなとこかな。次はここについてだけど…)」

奴隷「(……全然分かんない)」

奴隷「(ここに連れて来てもらった時、目隠しされてたから周りについて全然知らないし…鉄格子があるから奥とかもよく見えないし…)」

奴隷「(僕への対応から考えるしかないからそうすると…一番可能性がありそうなのは…)」

奴隷「(何かの実験場)」

奴隷「(外に出れない、生きてればいい、1時間毎に生死の確認、奴隷を使用、兵士様達はここに来たがらないし長居しない…これらを考えと…空気に毒を混ぜる実験っていうのが一番しっくりくる…よね?)」

兵士「おい」

奴隷「(奥の奥に毒を発生させる何かがあって近い所と遠い所で毒がどれほど効くのか実験してる…とか?)」

奴隷「(…でも変な臭いしないし…うぅ、苦しんで死ぬのは嫌だなぁ…)」

兵士「おい!!」ガンッ!

奴隷「!?。は、はい!」

兵士「ったく。呼んだらすぐ返事しろよ…」

奴隷「申し訳ありません…」

奴隷「(集中しすぎた…反省しないと…)」

兵士「まあ、生きてるようだからいいけどな」

奴隷「はい、生きてます」

兵士「よし。……あ、そうそう。あの件で上から返事が来たぜ?」

奴隷「!!。ほ、本当ですか!?」

兵士「ああ。返事の内容は…『貴様らの判断に任せる』…だとよ」

なんとか今日に投下できた…よかった。

奴隷なのになんで難しい単語知ってるの?というツッコミは許してくださいorz

奴隷「え?」

兵士「意味、わかるか?」

奴隷「え、えっと…ここにいる兵士様達の判断に任せる…って事ですよね?」

兵士「ま、そういう事だ」

奴隷「…あの、兵士様…」

兵士「ん?どうした。媚でも売るのか?」

奴隷「ち、違います。…それで、僕は奥に行けるのでしょうか?」

兵士「まあそう慌てるな。結論から言えばお前は奥に行ける」

奴隷「本当ですか!?」

奴隷「(やった!!)」

兵士「テストとして、だがな」

奴隷「…え?」

兵士「お前が奥に行くのを反対してる奴がいるんだよ。ま、俺だけど」

奴隷「ええ!?」

奴隷「(そ、そんな…兵士様が…?)」

兵士「なに裏切られたような顔してんだよ。前に言ったろ?わざわざ変える必要があるんのかって」

奴隷「(そ、そういえば…確かに兵士様は質問してた時言ってた…)」

兵士「だからテストする」

奴隷「…それはつまり、奥に行っても問題ないかのテストという事でしょうか?」

兵士「ああ。それともう一つテストをする意味があるんだがわかるか?」

奴隷「もう一つ…ですか?」

奴隷「(奥に行っても問題を起こさないかのテストとあと一つ…あ!)」

奴隷「ええと…僕が奥に行く事によるメリットの提示…でしょうか?」

兵士「あたりだ。奥に入っても問題ない程度なら現状を保ったままでも構わないからな。現状を変えてでもお前が奥に行くメリットがあるならそれを俺に提示してみろって事だ」

奴隷「(僕が奥に行く事によるメリットって…お世話ぐらいしか、ないよね…。いや、もしかしたらそれ以外にも行けば見つかるかも?それを期待してるのかな…?)」

奴隷「…わかりました」

兵士「よし。じゃあ内容の説明をするぞ?テスト期間は一週間。その間に俺に現状を変えてもいいと思わせれば合格だ。期限なしで奥に行き来する許可をやる。不合格ならお前をここに戻して今まで通りの生活をさせる。チャンスは一度きりだ」

奴隷「はい」

奴隷「(…一週間以内に合格しなきゃ…ずっとあの退屈な生活に…)」

兵士「内容は把握したな?じゃあ今から禁止事項について説明する…前に確認だがテストを受けるか?自分の意思で」

奴隷「…はい。僕は多少でも…その、今の生活の変化を求めていますので…」

兵士「そうか、なら大丈夫だな」

奴隷「(いろいろあったけど…とりあえずはこの牢屋から出て奥に行けるんだ!もしかしたら隣にいる人と仲良くなって話し相手になってくれるかもしれない…!)」

兵士「禁止事項その1。隣にいる奴の拘束器具及び猿轡を外さないこと」

奴隷「(あ、やっぱり拘束されてたんだ……猿轡?)」

兵士「禁止事項その2。隣にいる奴に暴力行為や殺害はしないこと」

奴隷「しませんよ!?」

兵士「わかってるよ。でも一応…な?」

奴隷「そ、そうですか…」

兵士「ま、こんなとこだ」

奴隷「あまり多くないんですね」

奴隷「(もっといろいろあるかと思ったのに…ちょっとだけ拍子抜けだな)」

兵士「だろ?だから気楽にやんな。ただし絶対に禁止事項は守れ。破ったら殺す」

奴隷「はい、わかりました!」

兵士「よし、じゃあ奥に行くか」

奴隷「はい!」

奴隷「(僕は近くに畳んで置いていた毛布をとって出入り口のそばに立った。やっと、やっと出れるんだ…!)」

兵士「出てこい。あ、一応言っとくが逃げるなよ?」

奴隷「逃げませんよ…。…っ!」

奴隷「(僕は生唾を飲み込み一歩外に踏み出す。…体が震えた。ついに、出れたんだ!)」

奴隷「…え?」

兵士「どした?」

奴隷「す、すいません…その、思った以上に…」

奴隷「狭いな、と思いまして…」

奴隷「(考えていた実験なんてとても出来そうにない…牢屋だって僕がいた所を合わせても二つしかない…一体ここは…?)」

兵士「狭いんじゃなくてこれで十分なんだよ。ほら、こっちにこい」

奴隷「(いつの間にか兵士様は隣の牢屋の出入り口に立って手招きをしていた。僕は頭をぶんぶん振って切り替える)」

奴隷「(…時間はあるんだ、あとで考えればいい…それよりも今は…!)」

奴隷「(慌てて兵士様の元に駆け寄った僕はついに、初めて隣にいる人と出会う事が出来た!……けど)」

今日は以上です。
牢屋の形はFを横にしたような感じだと思っていただければ…

奴隷「……子供?」

奴隷「(牢屋の中にいたのは両手両足を壁と鎖で繋がれ、椅子に座って俯いている子供だった)」

奴隷「(…想像してたのだいぶ違うなぁ…)」

兵士「ああ、子供だ。仲良くやれよ?」

奴隷「あ、はい!」

奴隷「(兵士様が鍵を開けてくれたので、僕は扉を開けて中に一歩入った)」

兵士「じゃあまた1時間後に来るからやめたくなったらその時言うこと。すぐ隣に戻してやるよ」

奴隷「わかりました」

奴隷「(僕は兵士様に頭を下げて見送った。よし、じゃあ今からする事は…)」

奴隷「あの、こんにちは」

奴隷「(とりあえず笑顔で挨拶だ。コミニュケーションの第一歩は挨拶だって聞いたことがあるし嫌な顔をする人は……お、同じ奴隷なら嫌な顔なんてしないよね…?)」

「……」

奴隷「(……暫く待っても挨拶は返ってこなかった。想定内だけどちょっと悲しいな。だけどここで慌てちゃいけない、変な事して嫌われないようにしなきゃ…)」

奴隷「近づいてもいいですか?あ、嫌ならここに居ますから」

「……」

奴隷「……」

奴隷「(…反応がない。というか、牢屋の前で兵士様と話してる時からこちらを見るような反応は一切なかったから仕方ない…のかな?)」

奴隷「今から近づきますよ?いいですか?」

「……」

奴隷「(…予想通り無反応。嫌なら反応するだろうし近づいても問題ないって事だよね)」

奴隷「では近づきます。止まれって言ってくれれば止まりますから」

奴隷「(そうして僕は隣の人の真正面に立ち、一歩一歩反応を確認しながらゆっくり近づいていった)」

奴隷「……」

奴隷「(…目の前に立っても反応が一切ない。こちらを伺うような素振りどころか、身じろぎ一つさえもしなかった)」

奴隷「(……もしかして、耳が聞こえないのかな?)」

奴隷「(そう思って肩を触ろうとしたけど、いきなり身体を触ったらびっくりするだろうから鎖を揺らす事にした)」ガチャ

「……」

奴隷「…えぇ」

奴隷「(鎖に合わせて腕も揺れたのに反応がない…流石に気付くと思ったのになぁ…)」

奴隷「(死んでるんじゃないかと思ったけど流石にそんな訳ないよね…無視されてるのかな?それなら…!)」

奴隷「(僕は意を決してしゃがみ込んでで隣の人の顔を覗き込んだ。驚かれるかもしれないけど仕方ない)」

「……」

奴隷「(そして、なぜ反応がないのか僕は理解した)」

奴隷「(虚ろな目をして口から涎を垂らしていた。もちろん、表情なんて浮かべていない)」





奴隷「(これなら納得だ、と僕はうんうんと頷く)」

奴隷「(ご主人様に連れられ、戻ってきた女奴隷さんや、奴隷になりたての人がよくこんな顔をしていた)」

奴隷「(僕は立ち上がり、昔お世話した人達を思い出して懐かしんだ。…みんな返事がなくてどうしていいかわかんなかったなぁ)」

奴隷「(無視されていない安心感からか、余分な事を考え始めていた事に気付いた僕は頭をぶんぶん振って頭を切り替る)」

奴隷「(とりあえず、現状の確認をしよう)」

奴隷「(まず部屋の中。僕の部屋と違うのは水さしが無くて椅子がある事くらい)」

奴隷「(椅子の座る所には穴が空いていてその下には便所桶が置いてある)」

奴隷「(次に隣の人の状態だけど…騎士様が言っていた通り猿轡をされていた。この状態の人は舌を噛み切る気力なんてないものだけど…念のためかな?)」

奴隷「(手首と足首についてる鎖は太くて大きい…わっか?は新しいし、とてもじゃないけど外したりするのは無理だろうなぁ)」

奴隷「(一応服は着てるけど正直僕が着ているものよりボロボロだ…何年ぐらい変えてないのかな…?)」

奴隷「(下は…履いてない。当然だよね、身動きとれないし椅子には穴が空いてるんだから)」

奴隷「(……というか女の子なんだ…小さいからよくわかんなかったけど)」

奴隷「(…だいたいこんな所かなぁ?とりあえず悪人じゃないみたいでよかった!現状確認はこれ位にして、次は仲良くなれるように行動をしよう!)」

奴隷「初めまして、僕は奴隷です。とりあえず一週間よろしくね?」

「……」

奴隷「…まあ、反応は期待してないけどね…。えと、名前とかどうしようか…隣の人じゃ呼びにくいし…」

奴隷「次、兵士様が来たら聞いていい?」

「……」

奴隷「あ、いきなりだけど身体触っていいかな?多分ご飯を食べさせるの僕になると思うし!」

奴隷「ご飯と言えば、いつもスープだけだけどパンも食べたくならない?」

奴隷「…ここは凄いよね、何もしなくても暖かいスープとパンを貰えるんだもん…暖かいスープなんて生まれて初めて食べたよ!」

奴隷「美味しかったなぁ…。今夜も楽しみだね!」

「……」

奴隷「(……た、楽しい!!凄く楽しい!!!)」

兵士「おい」

奴隷「あ、はい!」

兵士「随分楽しそうだな?」

奴隷「はい!すっごく楽しいです!!」

兵士「……返事も反応もないのにか?」

奴隷「慣れてますから平気です!」

兵士「…そ、そうか」

奴隷「あ、兵士様。質問が…」

兵士「なんだ?」

奴隷「あの、あの子の名前は…?」

兵士「化け物」

奴隷「え?」

奴隷「(化け…物…?)」

兵士「あ、やべ。今のは忘れろ。いいな?」

奴隷「は、はい」

兵士「名前はない。まあ、適当に呼んでやればいいんじゃないか?」

奴隷「わかりました。あ、それと良ければ一つお願いが…」

兵士「ん?」

奴隷「兵士様に聞いても名前はわからなかったよ」

「……」

奴隷「だから、僕が付けることにしたんだけど…いいかな?あまり自信はないんだけど」

奴隷「…少女、っていうのはどうかな?そのまんまだけど」

少女「……」

奴隷「嫌なら言ってね?すぐやめるから」

少女「……」

奴隷「(…仮に付けた名前より本物の名前で呼んだ方がいいと思うけど…仕方ないよね…。それよりも今は、あの兵士様が口走った化け物って言葉…もし言葉通りなら、この人間にしか見えない少女は…魔物?)」

奴隷「(でも魔物なら魔物って言うよね…。あ、でも魔族っていうのがいるって聞いたことがある。たしか…魔王?が、凄いって)」

奴隷「(たしかあの魔物より魔族のが凄くて…その中でも魔王は一番だって…)」

奴隷「(それなら魔物なんて呼ばずに化け物って呼ぶかも!…じゃあ、この子は魔王…なのかな…?)」

奴隷「(僕は少女を見る。…正直、この子があの魔物より凄いなんて思えない)」

奴隷「(…でも、兵士様達は化け物って呼んでるみたいだし…よくわかんない…)」

奴隷「……ねえ、君は化け物なの?人間なの?」

少女「……」

奴隷「……」

更新は以上です。
語彙が貧困+表現力の無さに泣けますorz

時を遡ること数日前、とある部屋にて

「おお…これはこれは…儂の見立ては間違っていなかった。よく似合っておるぞ」

「ありがとうございます伯爵様。まさかこのような素晴らしい服を贈られるとは思いもしませんでした」

伯爵「なぁに、お前はもう儂の息子だ。それなりの物を着んとな!はっはっはっ!」

息子「ありがとうございます。それで、この度私をお呼びになった理由は何でしょうか?」

伯爵「うむ、お前ももう伯爵家の跡取りになる。そろそろ儂の仕事を少しずつ覚えさせていこうと思ってな」

息子「仕事…ですか?」

伯爵「なに、身構えずともいい。簡単なものから教えていくつもりだ。それに…」

伯爵「才知に溢れ、勇名を馳せたお前には問題なぞなかろう?」

息子「そんな事は決して…」

伯爵「なに、謙遜なぞせんでいい。そうでなければ婿になど迎えんからな。さて、何から教えたものか…」

コンコン

伯爵「入れ」

執事「失礼いたします。旦那様、旧国境砦の兵から手紙が届いております」差し出し

伯爵「旧国境砦…?……ああ、あそこか…どれ」

伯爵「『奴隷を奥に行かせるかどうかの判断をしてほしい』だと?くだらん…」

伯爵「執事、そのくらい現場で判断するように指示を出せ」

執事「かしこまりました」

伯爵「まったく…」

息子「あの、伯爵様」

伯爵「おお、息子よ。話の途中ですまんな」

息子「いえ、構いませんが…旧国境砦とは?」

伯爵「知らんのか?まあ、無理もないか。…たしか…何百年も前に建てられた国境の砦の一つだ」

息子「ああ、国土が広がると同時に廃棄された砦の事でしたか…しかし…」

伯爵「どうした、珍しくもないだろう?」

息子「はい、私も実際に幾つか見た事があります。…が、その殆どが打ち捨てられていました。なぜ、そのようなものを伯爵様が管理しているのですか?」

伯爵「ああ、それは…そうだ!この旧国境砦の管理をお前に任せよう!」

息子「砦の管理を、ですか?」

伯爵「なに、管理といっても人間が3人と使えない化け物が1匹いるだけだからな、簡単なものだ」

息子「ちょっと待ってください伯爵様」

伯爵「む?」

息子「砦にいるのは人間が3人と『化け物』…ですか?」

伯爵「そうだ」

息子「…なるほど、何か訳ありのようですね」

伯爵「難しく考える必要はない。我が公爵家が代々化け物の管理をしているだけだ」

息子「いっそその化け物を始末してはどうでしょうか?」

伯爵「それが出来たら苦労はせん。あの勇者ですら始末出来なかったんだからな」

息子「ほう…」

伯爵「なんだ、気になるのか?」

息子「正直に言えば気になります。ですが、今は引き継ぎの話を優先したいと思っております」

伯爵「良い心がけだ。それでこそこの伯爵家の跡取りというものだ…。なに、話が終わったら執事に資料のある部屋に案内させよう」

息子「ありがとうございます」

伯爵「よし。では、砦の管理だが…」




執事「資料はこちらになります。なお、持ち出しは国王陛下の許可がなければ出来ませんのでご容赦ください」

息子「ありがとう、もう下がっていいよ」

執事「はい、では失礼します」

息子「これか…」

息子「(随分と分厚いな…目を通すだけで2日はかかりそうだ…)」

息子「(仕方ない、仕事の合間に読むとしようかな。…今度こそ魔王様の探してる奴の情報だといいんだけど)」ペラッ

更新は以上です。
ネーミングセンスがなくて息子になってしまいましたorz

時は戻り牢屋

兵士「おい、持ってきてやったぞ」

奴隷「あ、ありがとうございます」

兵士「様子はどうだ?まあ、聞かんでも分かるがな」

奴隷「そうですね、やっぱり反応はないです」

奴隷「(僕は兵士様から水が入った桶と手ぬぐいを受け取って少女を見る。この1時間、話しかけ続けたけど反応はなかった)」

兵士「お前もよくやるよな…。それもあいつの為だろう?」

奴隷「(兵士様が少女から僕の持っている桶と手ぬぐいに視線を移す。1時間前に僕が兵士様にお願いして用意してもらったものだ)」

奴隷「ええ、身体でも拭いてあげようと思いまして。さっぱりすれば多少は気分が良くなりますからね」

兵士「…言っとくが、性行為は暴力行為と見なすからな?」

奴隷「しませんよ…」

兵士「冗談だっての。んじゃ、がんばんな」

奴隷「はい」

奴隷「さて、と」

奴隷「(僕は水に手ぬぐいをひたして絞る。ちょっと冷たいけどお湯なんてお願い出来ないし…)」

奴隷「今から身体を拭くから…嫌だったら言ってね?」

奴隷「(驚かせないように、濡らした手ぬぐいをそっと腕にあて丁寧に拭き始める)」

奴隷「(…拘束されて長いのかな?筋肉があまりついてない…いや、元からないのか。変な筋肉の落ち方してないし、手のひらだってぷにぷにですごく柔らかい…)」

奴隷「ごめんね、ちょっと顔をあげるよ…」

奴隷「(顔は…うん、やっぱり可愛い。目が死んでるけど。…それでも、猿轡を外して化粧したら高く売れそう!)」

奴隷「(顔も丁寧に拭いていく。猿轡がちょっと邪魔だったけどなんとかなった)」

奴隷「気持ちいい?そうなら嬉しいんだけどなぁ」

奴隷「(さて、顔は拭き終わった。手ぬぐいを洗ってっと…)」

奴隷「背中と前を拭くよー」

奴隷「(僕はボロボロになった服を捲り上げて背中を露わにする)」

奴隷「(歳相応の小さな背中だ、昔を思い出すなぁ。……翼とか変な文字とかはないな…傷も全くないし…)」

奴隷「よし、じゃあ次は前だ」

奴隷「(背中を拭き終わり、服を戻して今度は前を捲り上げて肌を露わにさせる)

奴隷「(うん、こっちも歳相応。…じゃなくて、前にも傷とか変な文字はないなぁ。ちょっと肋骨が浮き出てるけど、それ以外に変な所はないや)」

奴隷「(…まあ、兵士様達の様子じゃそういう事されていないのはわかってたけど)」

奴隷「(よし、終わった。それで次の場所…なんだけど…)」

奴隷「あの、出来れば許可が欲しいんだけど…」

少女「……」

奴隷「まあ、仕方ないよね…」

奴隷「(僕はしゃがみそこを見る。やはり、というべきか拭けないせいで少しかぶれていたり、汚物がついていたりしていた)」

奴隷「じゃあ、拭いていくよ」

奴隷「(一応、一言声をかけて拭いていく。一度では拭き取れないので何度も手ぬぐいを洗い、拭くという一連の動作を続けていく)」

奴隷「(……あ、床ずれだ。でも良かった、大した事ない)」

奴隷「どう?気持ちいい?」

奴隷「(綺麗になっていくそこを見ながら僕は少女に問いかける。…なんか、ちょっとえっちな意味にも聞こえるなぁ…)」

少女「……」

奴隷「(これで良し…っと。床ずれに気付けたのは良かった。これ以上悪化させないように何か手を打たないとなぁ…)」

奴隷「よし、次で最後っと」

奴隷「(太ももから足首へ、足首けら足の裏まで拭いていく。さっきの場所と比べれば遥かに楽だ、あっと言う間に終わった)」

奴隷「ふぅ…終わりっと。どう、すっきりした?」

奴隷「(しゃがんで顔を覗き込む。うん。気のせいかもしれないけど、顔色が良くなった気が)」

奴隷「ッ!?」

奴隷「(い、今…『目が合った』!?)」

奴隷「(びっくりして尻餅をついちゃった。慌ててもう一度顔を覗き込むけど目はどこか遠くを見ているようで、僕を見ていない…)」

奴隷「あ、あの…」

少女「……」

奴隷「……」

奴隷「(反応も、返事もない…。僕の気のせい…かな?いや、でも…)」

兵士「おい、飯だぞ」ガンガン

奴隷「あ、はい!」

更新は以上です。

気分を害したらすいませんorz

奴隷「少女、夜ご飯だよ」

少女「……」

奴隷「今から食べさせるからね?」

少女「……」

奴隷「(僕のスープとパンが乗った盆を床に置いて、少女のスープを手に取る)」

奴隷「(あまり、具が入ってないなぁ…。これじゃ……そうだ!)」

奴隷「ごめん、ちょっと待ってて」

奴隷「(無いなら入れてあげればいいんだ。僕の分がちょっと減るけど、前居たところのご飯よりは全然マシだし!)」

奴隷「(幾つか入ってるジャガイモと玉ねぎを分けつつ、パンを半分にしてスープにひたす。それが終わったらスプーンで細かくする。こうすれば噛まなくても食べられるし、喉に詰まらせる事もない)」

奴隷「よし、出来た!」

奴隷「(そうして出来たパン粥もどきを持って少女の前に立つ)」

奴隷「…あれ?」

奴隷「(うん、相変わらず目が死んでる。じゃなくて…顔を、上げてる…?)」

奴隷「(さっきまで俯いてたはずなのに…どうして?)」

きゅるる…

奴隷「……」

少女「……」

奴隷「ぷっ。あはは!そうだよね、お腹空いたよね!」

奴隷「(つい笑っちゃった。だって、あまりに可愛いお腹の音だったから)」

奴隷「ふふ、今食べさせあげるからね」

奴隷「(僕は膝をついて少女と目線を合わせる。相変わらず僕を見てくれないけど、口を開けてくれた)」

奴隷「はい、あーん」

奴隷「(猿轡と口の隙間にスプーンを入れて舌に粥を乗せる。パンがスープを吸い込んでるおかげで、あまり口の中からスープが溢れ落ちない)」

奴隷「本当は噛んだ方がいいんだけど、それは出来ないから…飲み込んで?柔らかいから大丈夫だよ」

少女「……」

奴隷「……」

ゴクッ

奴隷「(飲んで…くれた!)」

少女「……」

奴隷「美味しい…?」

少女「……」

奴隷「(また、口を開けてくれた!きっと満足してくれてるんだ…!)」

奴隷「まだまだあるからね、沢山食べてね!」

少女「……」

奴隷「あっと言う間に食べ終わったちゃったね…ふふ、お腹いっぱいになった?」

少女「……」

奴隷「(溢れたスープを拭ってあげるとまた俯いちゃった…。けど、さっきの事といい、良い方向に向かってるようだ。よし、僕もご飯食べよう!)」

奴隷「(…にしても、ちょっと早すぎる気がする…。昔お世話した人は回復するのに最短でも一週間位はかかったのに…)」

奴隷「(…どういう事なんだろ…?本当はひどい事をされてない…とか?身体に傷とかもなかったし)」

奴隷「(…いや、でもあの目は生きるのがどうでもよくなった人の目だ…何十人と見てきたから間違いないはず…)」

奴隷「(う、うーん…魔法を使った…とか?うう、そうなると僕にはさっぱり…どうしようもなくなるんだよなぁ)」チラッ

少女「……」

奴隷「(……お話、出来たら二人で楽しくここで過ごせると思うんだけどなぁ…)」

兵士「おい、食器引き取りに来たぞ」

奴隷「あ!!ちょ、ちょっと待ってください!」ガツガツ

奴隷「よいしょっと」

少女「……」

奴隷「(床ずれしないように1時間に2、3回少女を持ち上げる。鎖に少しだけ余裕があるからなんとか腰を浮かせる事が出来た)」

奴隷「(鎖がもっと長ければ寝かせたり立たせてあげたり出来るのに…)」

奴隷「ちょっと態勢がキツイと思うけど…我慢してね」

少女「……」

兵士「おい、生きてるか?…って何やってんだ」

奴隷「あ、兵士様。床ずれが悪化しないように腰を浮かせてあげてるんです」

兵士「床ずれ…?するのか?」

奴隷「え?…今まで床ずれ対策はしてなかったんですか?」

兵士「なんで俺達がそこまでしてそいつの世話をしなきゃいけねぇんだよ」

奴隷「あ、いえ!決して兵士様達を責めている訳じゃないんです!ただ、ちょっと驚いてしまって…僕みたいな世話をする奴隷は…?」

兵士「ふん。いるわきゃねーだろ。今までいた奴らであそこを出た奴は俺が知る限りお前だけだ」

奴隷「そうですか…。…因みに、少女はどこからか連れてきたんですか?」

兵士「…さあな。ただ、お前が来るずっと前から居たみたいだぜ?それがどうかしたか?」

奴隷「いえ…何でもありません」

兵士「そうか、んじゃ頑張れよ」

奴隷「はい、ありがとうございます」

奴隷「(おかしい)」

奴隷「(僕が来るずっと前から居て、床ずれ対策をしてないのにあの程度?…ありえない)」

奴隷「(普通ならもっと酷い状態になるはずだけど…なってない)」

奴隷「(…なんで?)」

奴隷「(人間じゃないから?でも、床ずれ自体にはなるみたいだし…重症になってもおかしくないはずだけど…)」

奴隷「(最近連れてきた、ならわかるけど僕来るずっと前から居るらしいし…)」

奴隷「(自分で、動いたのかな?…いや、それはないよね…)」

奴隷「(うぅぅ…わかんない、というか考えられる事が多すぎるよぉ…)」

奴隷「……」

奴隷「(うん、この件は今は忘れよう。また新しい事が分かった時にでも考えればいいよね)」

奴隷「んー…今日は久しぶりに身体を動かしたからよく寝れそうだなぁ」

奴隷「(ぐっと伸びをしてあくびを一つ。少し涙目になった眼で少女を見る)」

奴隷「初日からいろいろあったけど、とても楽しかったよ。また明日からよろしくね?」

奴隷「(そう言って彼女の身体に毛布を優しく巻きつける。肩に掛けれないから仕方ない)」

奴隷「(…横になる前に顔を覗いておく。特に変化はない。…いや)」

奴隷「あの、少女?多分、もう遅いから寝た方がいいと思うんだけど…」

少女「……」

奴隷「もしかして眠くない?けど、規則正しい生活しないと体調崩したりするから…」

少女「……」

奴隷「……」

奴隷「そ、そうだ!子守唄歌ってあげるよ!こう見えて僕、昔よく子供の面倒を見てあげてたから子守唄だけは歌えるんだ!」

奴隷「(もちろん、奴隷の子供だけど…まあ、今は関係ないよね)」

奴隷「寝れない時、よく一人で歌ってるんだ。なんだか歌うと落ち着くんだよね…気に入ってくれると、嬉しいな」

奴隷「(そうして僕は歌う。鞭で打たれた痛みで寝れない子、親と引き離されて泣いている子やお腹が空いてぐずる子を寝かせるために何度も繰り返し歌った子守唄を)」

奴隷「(母代わりになってくれた年上のあの子が僕によく歌って聞かせてくれた子守唄を)」

奴隷「……ふぅ。どうかな、気に入ってくれたかな?」

少女「…もう一度」

奴隷「え!?」

奴隷「(しゃ、喋った!?しかも、こっち見てる!?)」

少女「…歌って」

奴隷「(たじろぐ僕をしっかりと見据え、もう一度歌うようにお願いしてくる)」

奴隷「(……何が少女の心に触れたのかわからない。けど)」

奴隷「うん、いいよ」

奴隷「(僕の言葉を聞いた少女はゆっくりと瞼を閉じる。それに合わせ、僕はもう一度歌う)」

少女「……」

奴隷「……」

少女「…おかあ…さん…」

奴隷「(それだけを呟くと少女は俯いた。眠ったかどうかは、わからない。でも、確認する気は起きなかった)」

奴隷「…おやすみ、少女」

今日の更新は以上です。

米は全て読ませてもらっています。本当にありがとうございます、励みになります!

奴隷商人『おい、そこのお前』

奴隷『はい』

奴隷商人『これ、処分しとけ』

子供の死体『』

奴隷『はい、わかりました』


女奴隷『殺して…お願いぃ…』

奴隷『ごめんなさい、それは出来ません。ではご主人様が呼んでますので行きましょうか』

女奴隷『いやぁぁぁぁ…』ズルズル



男奴隷『た、頼む!やめてくれ、助けてくれぇぇぇぇ!!』

貴族『やれ』

奴隷『はい』ザシュッ

男奴隷『ぎゃぁぁぁぁぁ!!』

年上奴隷『奴隷』

奴隷『あ、お姉ちゃん』

年上奴隷『高く買われたそうね』

奴隷『うん』

年上奴隷『なんで?』

年上奴隷『なんで私より高いの?ふざけないでよ』

奴隷『ごめんなさい』

年上奴隷『誰のおかげだと思ってるの?』

奴隷『お姉ちゃんのおかげ』

年上奴隷『何がお姉ちゃんよ。もう私は奴隷のお姉ちゃんなんかじゃないわ』

奴隷『……』

年上奴隷『奴隷なんて飽きられて殺されちゃえばいいのに』

奴隷『年上奴隷…』

年上奴隷『さよなら』

奴隷『……』

騎士「起きろ」

奴隷「う、うーん…」

騎士「1時間後に飯を持ってくる」

奴隷「…おはようございます…ってもういない…」

奴隷「(昔の夢か…久しぶりに見たなぁ。昨日子守唄歌ったからかな?)」

奴隷「んー…ん!さて、と」

奴隷「(大きく伸びをして少女を見る。ちょっと距離があるから起きているかどうかは分からなかった)」

奴隷「(毛布を牢屋の隅に置いてから少女に近づき、ちょっとしゃがんで声をかける)」

奴隷「おはよう。よく眠れた?」

少女「……」

奴隷「(挨拶や返事を返してはくれないけど、顔を上げて僕を見てくれた。うん、一晩たったら元通りってわけじゃなくてよかった)」

奴隷「それじゃ、また抱き上げるね」

奴隷「(少女に合わせてしゃがみ、真正面から優しく抱きしめゆっくり持ち上げる。自分の体重と僕の力で苦しいと思うけど我慢してもらうしかない)」



奴隷「ごめんね、苦しかった?」

少女「……」

奴隷「あと1時間したらご飯だって。あ、その時に水と手ぬぐいもお願いするから気持ち悪いと思うけど我慢してね?」

少女「……」

奴隷「……」

奴隷「(まあ、いきなり饒舌に話し出す訳ないよね…焦っちゃだめだ…ゆっくりと少しずつ打ち解けられればいいんだ…)」

少女「…賛美歌」

奴隷「え?」

少女「賛美歌、歌って…」

奴隷「え、えと…」

奴隷「(い、いきなり話しかけてきたと思ったら賛美歌を歌ってって…どういうこと…?)」

奴隷「ご、ごめん…僕、子守唄しか歌えなくて…」

少女「…昨日、歌ってくれた」

奴隷「(昨日?昨日歌ったのは賛美歌じゃなくて子守唄なんだけど…あ、もしかしてリズムとかが似てて勘違いしたのかな?)」

奴隷「…わかった。じゃあ歌うよ?」

少女「……」

奴隷「~~♪」



奴隷「ふぅ…」

少女「…ありがとう」

奴隷「ううん、どういたしまして…」

少女「……」

奴隷「(俯かずどこか遠くを見てる…けど、その目は死んでない。なら、話しかけるなら今!)」

奴隷「あ、あの!」

少女「…?」

奴隷「(よし!こっちを見てくれた!)」

奴隷「えと、改めて自己紹介するね。僕は奴隷って言うんだけど…君は?」

少女「……」

奴隷「……」

少女「…わかんない」

奴隷「わかん…ない?」

少女「…うん」

奴隷「(無いとかじゃなくてわからない…?…幾つも名前があったって事かな?それとも記憶が…?)」

奴隷「えと…兵士様は化け物って呼んでたけど…?」

少女「…そう呼ぶ人もいた。けど、名前じゃない…」

奴隷「そ、そうなんだ…じゃあ、どうしようか…」

少女「…好きに呼んで」

奴隷「(…僕が少女って呼んでた事、覚えてないのかぁ…)」

奴隷「なら、少女でいいかな?」

少女「…うん」

奴隷「じゃ、これからよろしくね?…あと6日で終わっちゃうかもしれないけど…」

少女「……」

奴隷「……」

奴隷「(ど、どうしよう…話題が…さすがにいきなり化け物って呼ばれてる理由を聞くのは…)」

少女「…名前」

奴隷「な、名前?…やっぱり気に入らなかった…?」

少女「…あなたの、名前」

奴隷「(僕の名前…?あれ、さっき言ったよね?)」

奴隷「奴隷だよ?」

少女「…奴隷が、名前?」

奴隷「……ああ、そういう事か!うん、奴隷が名前だよ。奴隷生まれの奴隷育ちだからね、名前をつけるなんて事はしないんだ。いっぱい奴隷がいる場合は名前は番号になるし」

少女「……そう」

奴隷「……」

少女「……」

奴隷「(か、会話が終わっちゃった…!!)」

奴隷「ご飯美味しかったねー」

少女「……」

奴隷「(口の周りを拭いてあげながら話しかける。…けど)」

奴隷「少女は嫌いな食べ物ある?僕はないなぁ、食べれるものは何でも食べてたし!」

少女「……」

奴隷「……あ、あの…」

少女「……」

奴隷「(なんでだろう、前話しかけてた時は辛くなかったのに今は辛い…いや、理由はわかってるけど)」

奴隷「…あ!水と手ぬぐい貸してもらったから拭いちゃうね!?」

奴隷「(沈黙に耐えきれなくなった僕は、逃げるように近くに置いておいた水桶を引き寄せ少女の前に座って目の前にあるそれを見る。……あ゛)」

少女「……」

奴隷「……い、今更だけど…見ながら拭くけど…いいかな?」

奴隷「(高低差でどうしても見下されてるように感じる…。うん、前の状態ならまだしも意識がある今はしっかりと許可を得ればよかった…)」

少女「……」

奴隷「(…とりあえず、いきなり暴れ出さなくてよかった)」

少女「…うん」

奴隷「!。あ、ありがとう。辛かったら、すぐ止めるから言ってね?」

少女「……?」

奴隷「(よかった…機嫌も損ねてないみたい…それよりもここからだ)」

奴隷「じゃあ、触るよ…」

奴隷「(濡れた手ぬぐいでゆっくり拭いていく。意識がある今、他者に触られるのがきっかけで過去を思い出して暴れる可能性がある)」

奴隷「(猿轡があるから舌を噛む可能性だけはないけど…出来る丁寧に…慎重に…)」

少女「……」

奴隷「……」フキ…フキ…

少女「……」

奴隷「(よし、全部拭き終わった!あまり汚れてなかったのが幸いだった…!)」フー…

少女「……」ピクッ

奴隷「ッ!?」

奴隷「(し、しまった!つい吐息を…)」

奴隷「ご、ごめん!吹きかけるつもりはなかったんだ!」

奴隷「(急いで離れて頭を下げる。最後の最後で失敗しちゃった…)」

少女「…いい」

奴隷「あ、ありがとう!次は失敗しないように気をつけるね!」

少女「……」

奴隷「……」

奴隷「(あれから気まずくて話せない…怒ってる雰囲気はないけど…)」

少女「……」

奴隷「(話しかけたいけど、話題がない…。…どうしよう、現状について聞いてみようかな?)」

奴隷「(でも、聞いちゃいけない事を聞いたらもっと怒らせるかも…最悪、戻っちゃうかもしれないし…。…そうだ、さりげなく…遠回しに…ほんの少し触れる程度に聞いて反応を見る…これだ!)」

奴隷「え、えっと、ここって何のためにあるんだろうね?」

奴隷「(よし!少女本人の事じゃないし、本人に関係する場所で聞かれたくない事ならこの時点で嫌な顔をする筈だ!)」

少女「……」

奴隷「……」

奴隷「(…だめ、かな?)」

少女「…私を閉じ込める場所」

奴隷「(よし!少女は俯いててよくわかんないけど嫌そうな雰囲気はない…なら、もう少しだけ…!)」

奴隷「そうなんだ…僕、いきなり連れてこられたからさっぱりわからなくて」

少女「知りたい?」

奴隷「え」

少女「どうして、私が閉じ込められているのか知りたい?」

奴隷「」

奴隷「(少女はこちらを向いて猿轡をされてるにもかかわらず、口角を吊り上げて僕に笑いかける。それは、貴族様が僕達をいたぶる時に浮かべてる表情にそっくりだった。…でも、目だけは違う。あんな目は、今まで見た事がない)」

奴隷「(……直視、出来ない。少女が初めて見せる笑顔だというのに、僕は見る事が出来ず目をそらしてしまう)」

少女「知りたいなら、教えてあげる」

奴隷「…ッ」

奴隷「(嫌な予感しかしない。踏み込み過ぎたかもしれない)」

奴隷「……」

奴隷「(でも)」

奴隷「うん、教えて欲しい」

奴隷「(僕は知りたいんだ。例え、この好奇心が僕自身を殺したとしても)」

更新は以上です。

猿轡されてるのに喋れているのはあれです。顔がぱんぱんに腫れた奴隷仲間の看病してるうちに手に入れた特技かなんかだと思ってくださいorz

あ、間違えました。聞き取れているのはでした…orz

少女「じゃあ、教えてあげる」

奴隷「う、うん」

奴隷「(自然と生唾を飲み込んでしまう。ついに、少女の事が分かるんだ…!)」

奴隷「(少女は僕の雰囲気が変わった事を感じて、さらに笑みを深めながら告げた)」

少女「私は、不老不死なの」

奴隷「不老…不死?」

少女「そう、不老不死。老いる事も死ぬ事も出来ない化け物」

少女「それが、閉じ込められている理由」

奴隷「そう、なんだ」

奴隷「(老いる事も、死ぬ事もない…か。…いまいちピンとこないや…)」

少女「わかった?」

奴隷「うん。ありがとう、話してくれて」

少女「……」

奴隷「(笑みを消して無表情で僕を見つめてくる少女。さっきの笑みと異様な瞳が消えた事に僕はホッとする)」

奴隷「(そっか、不老不死の化け物だから閉じ込められてるんだ…)」

奴隷「(僕は曖昧な笑みを浮かべながら少女を見る。見た目からは想像出来ないけど少女がそう言うならそうなんだろう)」

奴隷「(…歳をとらず、死ぬ事もない…か。たしかに、異質だけど…そんなに気になる事かなぁ?)」

奴隷「(もし、そんな奴隷がいたら引くて数多だと思うけどなぁ…)」

奴隷「(そんな事を考えていた時、ふと頭にとある事がよぎる)」

奴隷「…ん?」

少女「…?」

奴隷「(じゃあ、なんで僕がいるの?)」

奴隷「(少女の事はわかった。けど、僕の事がわからない)」

奴隷「(少女の世話を目的なら、最初から少女のいる牢屋に入れられるよね…というか、不老不死の少女を世話する必要はあるの?)」

奴隷「(死なないなら餓死だってしないと思うし…それでも兵士様は少女のご飯を用意してる…)」

奴隷「(なんのために僕はここにいるの?)」

奴隷「(生きている事が僕の役目だって言われてるけど…)

奴隷「(…なんで?)」

奴隷「(そもそも、生きている事が役目ってなに?何かの実験かと思ったら違うみたいだし…)」

奴隷「(…わからない…わからない事が多すぎる…本当の事を知りたい…)」

奴隷「(でも、兵士様は本当のこと教えてくれないだろうし…。それなら、少女に聞いてみようかな…少女なら何か知ってるかもしれないし…)」

奴隷「ね、ねぇ…少女」

少女「…?」

奴隷「また聞きたい事があるんだけど、いいかな?僕がここにいる理由なんだけど…」

「俺が教えてやろうか?」

奴隷「え?」

兵士「よっ。元気そうだな」

少女「……」

奴隷「へ、兵士様…!?」

奴隷「(い、いつのまに…!?いや、僕が気付かなかっただけ…?)」

兵士「悪いが立ち聞きさせてもらったぜ。いや、まさか化け物と話してるとは思わなかったがな?」

奴隷「(話に集中しすぎて足音に気づかなかったなんて…。…殺されておしまいかなぁ…せっかく少女と話せたのに…まあ、仕方ないよね)」

奴隷「……」

兵士「で、お前がここにいる理由を知りたいか?」

奴隷「え?お、教えてくれるんですか…?殺すんじゃなくて…?」

兵士「なんで殺すんだよ…。ああ、あとこの件はテストに関係ないから安心しな」

奴隷「(あ、テストとは関係ないんだ、よかった。…じゃなくて)」

奴隷「…なんで、ですか?」

兵士「なんで、とは?」

奴隷「(兵士様は不思議そうな顔をして僕を見る。いや、むしろ不思議そうな顔するのは僕だと思うんですけど…)」

奴隷「兵士様は少女について一切教えてくれませんでした。つまり知ってはいけない事だと思っていたんですが…」

兵士「ああ、化け物の情報は国家機密だ。俺達だって一部しか知らされていない」

奴隷「こ、国家機密…ですか。…だから、少女にいろいろ聞いてた僕は殺されて当然だと思って…」

兵士「まあ、普通ならな。でも、お前は死ぬまでここから出れない。なら別に教えてやってもいいかって思ってな」

奴隷「(…頑なに少女について教えてくれなかったのに、いきなり教えてやってもいいと思った?なぜ?なにか違う目的がある…?)」

兵士「…お前、いま余計な事考えてるだろ」

奴隷「え」

兵士「どーせなんか裏があるんじゃないかとか考えてるんだろ?」

奴隷「うっ」

奴隷「(その通りです兵士様…)」

兵士「…はあ、お前面倒くせえなぁ…いやまあ、裏があると思うのは当然だろうけど…」

奴隷「うぅ…」

兵士「じゃあ教えなかった理由を教えてやるよ。それで納得しろ」

奴隷「は、はい!」

兵士「お前が自殺するかもしれねぇから」

奴隷「え?」

兵士「ここにいる理由を知ったら、お前が自殺するかもしれないから教えなかった」

奴隷「…自殺するような、理由なんですか?」

兵士「多分な。実際何人か自殺したらしいし」

奴隷「……」

兵士「で、どうする?聞くか?」

奴隷「(…このやりとり、さっきもやったなぁ…)」

奴隷「もちろん聞きます」

兵士「だろうな。じゃあ教えてやるよ」

上げ忘れました。今日は以上です。

とりあえず三分のニくらいは進んだかなぁ…多分あとちょっとしたら終わります

兵士「…の前に、お前アレについてどこまで知ってる?」

奴隷「…?不老不死だと聞きましたけど…?」

兵士「そうか。いや、正直立ち聞きしてはいたが化け物がなに喋ってるかわからなくてな」

奴隷「ああ、猿轡のせいでくぐもってたりしてたり聞こえにくいですものね」

奴隷「(僕は近くにいるし、顔が腫れたり、歯がなくなった奴隷の世話をしていたからなんとか聞き取れてるけど)」

兵士「不老不死以外になんか聞いたか?」

奴隷「いえ、聞いていません」

兵士「ん。なら簡潔に教えてやろう。お前はな、そこにいる化け物の生贄なんだよ」

奴隷「生贄…ですか?」

兵士「ああ。生贄だ」

奴隷「……」

奴隷「(生贄ってたしか…魔物の餌になる事だっけ…?)」

奴隷「あの、じゃあ僕は少女に食べられるんですか?」

兵士「は?」

奴隷「え?」

兵士「…ああ…そういやお前は奴隷だったな…ちょっと忘れてたわ」

奴隷「…?」

兵士「まあ、食べられるってのはあながち間違いじゃあない」

奴隷「はい」

兵士「そこにいる化け物はな、死んだら一番近くにいる知性を持つ生き物の命を奪って蘇るんだよ」

奴隷「え…」

奴隷「(一番近くにいる…?あ、僕か!)」

兵士「ここまで言えばもうわかるだろ?」

奴隷「(えっと、一番近くにいる知性を持つ生き物の命を奪う…から、僕がいる)」

奴隷「(…ああ、だから僕より奥に行かないようにしてたんだ。自分達が一番近くにならないように)」

奴隷「…はい。僕がここに連れてこられた理由はわかりました。でも…」

奴隷「(けど、まだわからない事が沢山ある…)」

兵士「なんだ?良い機会だからいろいろ教えてやるよ。まあ、ほとんど俺が前任者から聞いた話と俺の考えになるだろうがな」

奴隷「え、本当ですか…?ありがとうございます!」

兵士「おう、中途半端じゃ気持ち悪いだろうしな」

奴隷「(兵士様が僕の顔を見つめる。…これは色んな事を知るチャンスだ。頭を使うんだ、僕)」

奴隷「じゃ、じゃあ…あの…」

兵士「ん?」

奴隷「不老不死なのに…死ぬのっておかしくないですか?」

兵士「」

奴隷「(兵士様が呆気にとられたような表情を浮かべてる…変な事、聞いちゃったかな?)」

兵士「…いやまあ、言いたい事はわかる。わかるけどよ…なんかもっと違う事はなかったのかよ?」

奴隷「え、えと…一番最初に気になった事なので…だめ、でしたか?」

兵士「あー…だめじゃねぇよ。けど俺だって頭がいいほうじゃねぇ。そっち方面の事は詳しくないから多分お前の満足いく返事は出来ないがそれでもいいか?」

奴隷「は、はい!」

兵士「たしか…個性の宿る個体が滅びた時が死…らしい。本に書いてあった」

奴隷「……」

兵士「だから、どんな手を使ってもあの化け物は滅びないから不死なんじゃねぇか?」

奴隷「……」

兵士「……」

奴隷「(…よくわかんない)」

兵士「ま、まあ深く考えるな!な?」

奴隷「は、はい」

兵士「よし。知りたい事はそれだけか?」

奴隷「あ、いえ、まだあります」

兵士「おう、なんだ?」

奴隷「なんで少女は閉じ込められてるんですか?」

兵士「…ん?」

奴隷「不老不死なんて凄い能力があったらいろいろ出来そうなんですが…その、周りの命を奪ったとしても」

奴隷「(周りの命を奪うと言っても、死ななければ問題はないよね?なら、閉じ込めるより働いて貰えばいいんじゃないかな…?)」

兵士「あの化け物を利用する、か。ああ、確かにそういう提案はあったみたいだな。全て却下されたらしいが」

奴隷「なんでですか?」

兵士「わざわざ化け物を使う理由がないからだ」

奴隷「…?」

兵士「逆に聞くけどよ、お前ならあの化け物をどう利用する?」

奴隷「利用…」

奴隷「(少女が一番働けそうな所は…)」

奴隷「…売春婦、とか?」

兵士「……」

奴隷「少女は可愛いですし、いつまでも幼いなら人気になると思います。たぶん、殺されもしないでしょうし」

兵士「…お前、本当はあいつの事嫌いなのか…?」

奴隷「え?人気売春婦になれば大事にされるし多少は裕福に暮らせると思ったんですが…」

兵士「いや、なんかもういい…。そういえばお前にまだ教えてなかったな」

奴隷「…?何がですか?」

兵士「あの化け物、老いるぞ」

奴隷「……」

奴隷「(…不老不死って…なんなんだろ…)」

奴隷「不老なのに老いるんですか…」

兵士「いやまあ、言いたいことはわかる。なんていうか、歳をとっても死んだら今ぐらいに歳の身体に戻るんだよ」

兵士「だから結果として不老…みたいな」

奴隷「戻る…ですか?」

兵士「ああ。なんでとか聞くなよ?俺だってなんでそうなるかはわかんねぇんだから」

奴隷「…若さを維持できないなら売春婦は厳しそうですね」

兵士「…まだ他にもあるが、それについてはあとで教えてやる。どうだ、売春婦以外で有効活用出来そうか?」

奴隷「(売春婦以外となると後は…)」

奴隷「活躍出来そうなのは、戦場ぐらいでしょうか?」

奴隷「(不老不死の兵。死なない兵士と聞けばそれだけで凄そう。しかも敵陣なら周りの命を奪っても問題ないだろうから、一方的に敵を倒せそうだし!)」

兵士「よしよし、まともなのが来たな。だが、却下されたらしいぜ」

奴隷「なんでですか?不老不死も周りの命を奪う事も戦いでは役に立つと思ったんですが…」

兵士「俺も化け物の話を前任者に聞いた時そう思ったよ。最悪、兵士としてではなく兵器として使えるじゃねぇかって」

兵士「自殺し続ければあっと言うに敵に大打撃を与えられる…ってな。でも現実はそう上手くいかないもんだ」

奴隷「…?」

兵士「蘇る時に命を奪われるのは一人だけらしい」

奴隷「十分じゃないですか?」

兵士「そりゃ、1対1とかならな」

兵士「想像してみろ。目の前に現れた奴に斬りかかった仲間が何故か死んで斬られた奴は生きてる。しかもそいつは何故か自殺し始めたと思ったら近くの仲間が死ぬ。俺だったらとりあえず捕まえて猿轡させるぜ?」

奴隷「(…たしかに、目の前の不審者が自分を傷付けるたびに仲間が死んでいったら取り押えるだろうなぁ…でも)」

奴隷「なら、敵陣近くに隠れて自殺し続ければ良いのでは?」

奴隷「(見つかって捕まらなければ問題はないよね?)」

兵士「…俺ならそんな事を強要する味方を裏切って逃げるがな?」

奴隷「逃げないように監視を…あ」

兵士「監視出来るような位置にいたら巻き込まれるだろうし、逃げないよう包囲するのだって現実的じゃあないな」

奴隷「…そ、それなら…」

兵士「洗脳や魔法で操ればいいって意見も出たらしいが、死んだ時全て解除されちまうらしいぜ?なんでかは知らんがな」

奴隷「……」

兵士「それに万が一、敵に捕まったら逆に利用されるだろうしな」

兵士「ちなみに暗殺者も同じような理由で却下されたみたいだぜ?暗殺に失敗しても自決出来ないからな、薬漬けにされて情報が漏れる事を考えたら普通の奴を使った方がマシだ」

奴隷「…なら、実験に使うとかは?僕たち奴隷もよく使用されてますし」

奴隷「(死なない実験体…なんか魅力的な気がするし)」

兵士「容体が急変して死んだらどうするんだよ…。万が一の為に奴隷を用意すれば大丈夫だろうが、それなら最初から奴隷を使った方が確実に安全だろ?」

奴隷「……」

奴隷「(…たしかに、わざわざ少女を使わなくてもいい気がする…でもなんか、勿体無い気がするなぁ…)」

兵士「ま、こんなとこだろうな。他にも色んな提案がされたが全部却下されたらしい。魔物の駆除に使うとかな」

奴隷「なるほど…」

奴隷「(知性のない魔物が多いって聞いた事あるなぁ…見たことないからよくわからないけど)」

兵士「んで、化け物を監禁してる一番の理由は」

兵士「魔王軍に奪われないようにする為だ」

奴隷「魔王…」

奴隷「(えっと…たしか、魔物より凄い魔族がいて、それより凄いのが魔王…だっけ?)」

兵士「名前ぐらいは知ってるだろ?」

奴隷「はい。…一応ですが」

兵士「俺たち人間の敵だ。魔族の比じゃねぇくらい強くて残酷な奴らしいからな、そんな奴の手に渡ったらと思うとゾッとするぜ」

奴隷「(よくわかんないけど凄いんだなぁ…ん?)」

奴隷「……」

兵士「利用価値はないが自由にさせる訳にもいかない。だからあの化け物はここに監禁して魔王から隠すしかねぇんだよ」

兵士「これが化け物をここに監禁してる理由だ。わかったか?」

奴隷「あの」

兵士「なんだ?まだわからない事でもあったか?」

奴隷「いえ、少女が閉じ込められてる理由はわかりました。ただ、ちょっと気になることがありまして」

兵士「…気になること?」

奴隷「はい。魔族より凄いなら魔王にはきっと知性がありますよね?なら、少女は魔王を殺せるんじゃ…?」

奴隷「(知性のある生き物の命を奪う。なら知性のある魔王の命も奪えるはず…)」

兵士「…はぁ…お前なぁ…」

奴隷「(兵士様が呆れた顔をして僕を見る。現実的じゃないのはわかってる…けど…)」

奴隷「たぶん、誰も試した事ないと思うんです」

兵士「試せるかバカ。なんの為に監禁してると思ってるんだよ…魔王にプレゼントするようなもんだぞ」

奴隷「ひ、一人で行かせたら多分そうなると思いますが…討伐隊とかと一緒に行けば…」

兵士「勇者のパーティーに入れろってか?アホかお前は。もし万が一旅の途中であの化け物が殺されて勇者の命を奪ったらどうすんだよ」

奴隷「(ゆ、勇者?えと、たしか魔王を倒す為に旅をしてる人…だっけ?)」

奴隷「でも、魔王倒す可能性が高くなると思うんですが…」

兵士「魔王に捕まって利用される可能性のが高いだろうが!…ったく、もうちょっと考えてから話せよ…」

奴隷「す、すいません…」

奴隷「(うぅ…怒らせちゃった…僕がバカだから…)」

兵士「…俺が知ってて思い出せるのはこんぐらいだ。満足したか?」

奴隷「あ、はい!いろいろ教えていただきありがとうございます!」

奴隷「(僕は勢いよく頭を下げてお礼を言う。まさかこんなに細かく教えてもらえるなんて思ってなかった)」

兵士「んじゃ、俺は戻るぜ?騎士になに言われるかわかんねぇしな」

奴隷「はい!……あ、ちょっと待ってください!」

奴隷「(騎士って誰だろ…?きっと外には色んな人がいるんだろうなぁ…って今は違う違う!)

奴隷「(呼び止められた兵士様はめんどくさそうな表情を浮かべて僕を見る)」

兵士「なんだよ、まだなんかあるのか?」

奴隷「あ、あと一つだけ質問させてくれませんか…?ダメなら、諦めます…」

兵士「……まだあるのかよ…。はぁ…ほら、聞いてやるからちゃっちゃっと言え」

奴隷「本当にすいません…どうしても気になって…。あの、兵士様は現状を変える事をとても嫌がっていたと思うんですが…どうして僕に現状が変わるような事をいろいろ教えてくれたんですか?」

今日の更新は以上です。

変なとこやツッコミ所があると思いますがバカにはこれが限界ですorz

奴隷「(あんなに現状が変わる事を嫌がってた兵士様が教えてくれるなんてちょっとおかしいよね…?)」

兵士「…俺が知ってる事話したってどうせ何も変わらねえよ。今だってアレが話せるくらいに回復してるのになんも変わってねえだろ?」

奴隷「たしかにそうですが…」

奴隷「(僕と少女の関係は変わったと思うけど、多分そういうのとは違うんだろうなぁ)」

兵士「…それによ、出来るならお前に隠し事はしたくねぇんだ。あの化け物が話すようになって、いつかバレるなら俺から話をしたいんだ。」

奴隷「(こっちに振り向いた兵士様の顔は何というか、疲れきった老人のようだった)」

奴隷「(…隠し事をしたくない?なんで?)」

兵士「今まで隠しといて何言ってんだって話だけどよ…」

奴隷「は、はぁ…でも僕は奴隷ですし別に隠し事をしたって良いと思うんですが?」

兵士「…なあ、奴隷奴隷っていうけどよ。…俺とお前、何が違うって言うんだ…?」

奴隷「(先ほどまで僕の質問にハキハキと答えていた兵士様が嘘のように、弱々しい声で僕に問いかけてくる)」

奴隷「…全然違うと思います。身分の違いはもちろん、僕は閉じ込められて生贄にされる立場ですが、兵士様はそれを管理する立場ですから」

兵士「はは、管理する立場…か」

奴隷「?えと、違いますか…?」

兵士「…ああ、違うな。俺もお前と同じ、閉じ込められてる生贄なんだよ」

奴隷「…兵士様が生贄…?」

兵士「考えても見ろよ。お前が死んだら新しい奴隷が来るまでの間、一番近くにいる奴は誰だ?」

奴隷「それは…兵士様達、ですか?」

兵士「そうだ。…次の奴隷が来るまで逃げることも死ぬことも許されない…情報が漏れたり、他に被害を出さない為にな」

兵士「…ほら、お前と一緒だ。俺達も国を守るために死ぬまで閉じ込められてる生贄なんだよ」

奴隷「…なんで逃げないんですか?」

奴隷「(そんなに嫌なら逃げればいいと思うんだけどなぁ…僕なら逃げないけど)」

兵士「…俺が逃げれば故郷の村が滅ぼされる。俺の家族や友人が殺されるんだよ…」

奴隷「…人質、ですか」

兵士「まあ、それ以外にもいろいろあるがな…。だから、俺達とお前の違いなんてねぇんだよ…身分の違い?生贄に兵士も奴隷も関係ないだろ…?」

奴隷「…それが、いろいろ教えてくれた理由ですか?」

兵士「……世界中で同じ境遇の奴はお前と騎士しかいないんだ。出来るなら仲良くやっていきたいと思うだろ?」

奴隷「え、3人しかいないんですか?」

兵士「…食いつくのそこかよ…」

奴隷「す、すいません…てっきりもっと人がいると思っていたので…」

奴隷「(てっきり100人位いるかと思ってた…)」

兵士「…ここにいる人間は俺を入れて3人だけだ。いろんな事情があるんだよ」

奴隷「は、はぁ…」

兵士「…もう質問はないか?」

奴隷「あ、はい!引き止めてしまってすいません…」

兵士「気にすんな。言ったろ?仲良くしたいって」

奴隷「…はい」

奴隷「(そう言って僕に笑いかける兵士様。でもその表情には元気がない…何か、僕に出来る事は…そうだ!)」

奴隷「へ、兵士様!元気出してください!上手く言えませんが…希望を捨てればきっと大丈夫ですよ!」

兵士「」

奴隷「(兵士様、呆然としてたけど…これで元気になってくれたらいいなぁ…)」

奴隷「(でも、おかげでいろいろ分かった。僕がこれからすべき事もはっきりした)」

奴隷「(僕は振り返って少女を見る。俯いていて表情はわからない)」

奴隷「(…そういえば、僕と兵士様が話してる間ずっと黙ってたけど…どうしたのかな?)」

奴隷「少女?どうしたの?」

少女「……」

奴隷「(話しかけても返事がない。こっちを見てくれない。…もしかして、怒ってる?)」

奴隷「あ、あの…?」

奴隷「(…まあ、本人に目の前で本人の話をしたんだから仕方ない…のかな?でも、僕にはやらなくちゃいけない事がある)」

奴隷「…ごめんね、少女。触られたくないと思うけど…」

奴隷「(僕は少女に声をかけてゆっくりと優しく抱き上げる)」

奴隷「(嫌われてもいい。無視されてもいい。けど、少女の世話をする。これが僕のすべき事だ)」

少女「……」

奴隷「……」

少女「…私は、周りの命を喰らう不老不死の化け物」

奴隷「ッ!」ビクッ

奴隷「(み、耳に吐息が…!)」

少女「…怯えてるのね」

奴隷「ち、違っ」ビクッ

奴隷「(話しかけてくれるのは嬉しいけど耳元だと…凄くくすぐったい!一回下ろした方がいいのかな!?)」

少女「…震えてる」

少女「…無理、しなくていい」

奴隷「震えてるんじゃなくて…耳元で喋られるとくすぐったいんだ…」

少女「……」

奴隷「ごめんね…」

少女「…そ、そう」

奴隷「」ビクッ

少女「……」

奴隷「……」

奴隷「(僕が怯えてると勘違いしていた少女は、あれから喋りかけてくれなかった。けど、俯かず僕を見つめている。…気まずいけど、慣れてしまった僕がいる)」

少女「…ねえ」

奴隷「なに?」

少女「…怖く、ないの?」

奴隷「怖い…?何が?」

少女「…私の、こと」

奴隷「(少女が怖い?なんで?)」

奴隷「(僕の顔を見て悟ったのか、少女は言葉を続ける)」

少女「…私が死んだら、貴方の命を喰らうわ」

奴隷「うん。そうみたいだね」

少女「…貴方は、死ぬわ」

奴隷「うん」

少女「…私は、貴方を殺す化け物」

奴隷「まだ殺されてないけどね」

少女「…怖く、ないの?」

奴隷「…えっと…ご、ごめん、何が怖いのかわかんないや…」

少女「……」

奴隷「(うぅ…せっかく少女が僕の事を聞いてくれたのに答えられなかった…)」

少女「…死ぬのは」

少女「…死ぬのは怖くないの?」

奴隷「(やった、また質問してくれた!しかも今度の質問はさっきのと違ってわかりやすい。僕は安堵して一つ頷いて答える)」

奴隷「うん、怖くないよ。死ぬのが怖い奴隷は良い奴隷になれないんだ」

奴隷「(ちょっと自慢げに説明する。死ぬのが怖くて命令を守れない奴隷がいっぱいいるけど僕は違う)」

奴隷「(胸を張って答える僕の顔を見た少女は納得したように頷く。…なんだか照れるなぁ)」

少女「…そう。だから」

少女「そんな目をしてるのね」

更新は以上です。

兵士がシュレディンガーの猫状態になっとる…

奴隷「…目?」

奴隷「(少女に言われて思わずまぶたに触れてしまう。触ったところでどんな目をしているかなんてわかるはずがないけど)」

少女「…感情も、意思も感じない目」

奴隷「(…つまり、目が死んでるって言いたいのかな…?)」

少女「……」

奴隷「(そっか、目が死んでるのか僕…今まで言われた事なかったからわからなかったや…)」

少女「…奴隷」

奴隷「な、なに?」

少女「……」

奴隷「…?」

少女「……」

奴隷「え、えっと…少女?」

奴隷「(今まで僕を見ていた瞳を伏せ、ゆっくりと俯く少女に僕は首を傾げる)」

少女「……そばに……」

少女「……私の、そばに……」

少女「……い、いて……」

少女「……いて、下さい……」

奴隷「(なんとか必死に絞り出したようなか細い声で僕に嘆願する少女。…急に、どうしたんだろ?)」

奴隷「うん。ご主人様の命令があるかぎり、そばにいるよ」

少女「…うん」

奴隷「(僕の返事を聞いて顔を上げ微笑む少女。初めて見た少女の微笑みに、僕もついつい微笑んじゃったけど…ほんと、どうしたんだろう?)」

奴隷「(…僕がいろいろ知った日から三日が経った)」

奴隷「(あんな返事をしたせいか、少女は僕に少しだけ甘えるようになりよく喋るようになった。具体的に言うなら、子守唄をねだる回数が増えたり、身体にもっと触るようにお願いしてきたりだ)」

奴隷「(僕としては別に苦じゃないからいいんだけど、ちょっと不思議に思う)」

奴隷「(何故、少女は僕に歩み寄るのか?)」

奴隷「(…まあ、いくら考えても分からなかったからもう考えないようにしてるんだけど)」

少女「…奴隷、手が止まってる」

奴隷「あ、ごめん!ちょっと考えごとしてた」

奴隷「(少女の頭を撫でていた手が止まった事で、下から抗議の視線を僕に向ける。…これって、もしかして怒ってる?)」

少女「…いい。けど、何を考えてた?」

奴隷「あー…いや…その…」

少女「……」

奴隷「(ああ、凄く睨んでる…。教えなきゃ、しばらく無視されるんだろうなぁ…)」

奴隷「…少女が変わったなぁ…って」

少女「…私が?」

奴隷「(僕が観念して言うと、少女は不思議そうな顔をして僕を見つめる。そういう顔が出来てる時点で変わってると思うんだ)」

奴隷「うん。前は無表情でどこ見てるかわからなかったし、喋らなかったからね」

少女「……」

奴隷「それがこんなにも変わったんだから、やっぱり思うところがあるよ」

少女「…私、変わってない」

奴隷「…そう?」

少女「…起きた、だけ」

奴隷「起きた?寝てたの?」

奴隷「(どういう事だろう。会った時しっかり目が開いてたし…)」

少女「…そんな、感じ」

奴隷「…よくわかんないけど、少女がそういうならそうなんだね」

少女「…うん。奴隷の、おかげ」

奴隷「え、僕?僕なにかしたっけ?」

少女「…賛美歌、歌ってくれた」

奴隷「賛美歌…ああ、子守唄ね」

少女「賛美歌。子守唄じゃないわ」

奴隷「(少女は何故か子守唄を賛美歌と言って譲らない。まあ、僕としてはどっちでも構わないんだけど)」

少女「…精神が、壊れる前だったから」

少女「…思い、出せた」

少女「…お母さんの、こと」

奴隷「え、壊れてなかったの!?」

奴隷「(あんな目をしてたから、てっきりもうすでに壊れてるものだと思ってたんだけど…)」

少女「……」

奴隷「ご、ごめん…だから、そんな目で見ないで…」

少女「…壊れて、ないもん」

奴隷「本当にごめんね?」

少女「…別に、いい」

奴隷「…でも、意外だなぁ…。こんな所に閉じ込められたら、普通は壊れちゃうと思うんだけど…」

奴隷「(僕ももし少女と出会わなかったら恐らく壊れてたと思うし…)」

少女「…私は、普通じゃない」

少女「…慣れてる」

奴隷「ああ、なるほど。慣れてるなら大丈夫だよね。でも慣れてるなんて凄いなぁ…!」

奴隷「(僕も精神が壊れないようになりたいなぁ…コツとか後で聞いてみようかな?)」

少女「…嘘。本当はタイミングが良かった、だけ」

奴隷「……えぇ…。…タイミング?」

少女「…奴隷が来る前は、壊れてた…」

奴隷「来る前は壊れてたの…?ならどうやって治したの?」

少女「…死んだから、戻った」

奴隷「え、肉体だけじゃなくて精神も戻るの?」

少女「…うん」

奴隷「(壊れた精神も死んだら戻るんだ…便利でいいなぁ…)」

奴隷「…ちなみに、何で死んだの?」

少女「…床ずれとか」

奴隷「ああ、僕が来るまでその辺りの対処をしてなかったみたいだね」

少女「…拷問並み、だった」

奴隷「あはは…だろうね」

少女「…ねえ、奴隷」

奴隷「ん、なに?」

少女「…私のお願い、聞いて?」

奴隷「うん、いいよ」

少女「私を完全に殺して欲しいの」

奴隷「(僕の顔を真っ直ぐ見つめてお願いしてくる少女。でも僕は即答する)」

奴隷「ダメだよ。兵士様から殺すなって言われてるし」

少女「…私、もう生きたくない…」

少女「…死にたいの…」

奴隷「諦めてよぉ。だいたい、僕じゃ少女を完全に殺すなんて出来ないし」

奴隷「(普通になら殺せるんだけどなぁ…)」

少女「…冗談。だけど本当に、死にたいの」

奴隷「うーん…なら、殺せそうな人に頼んで見るのは?」

少女「…誰か、いるの?」

奴隷「(僕の知ってる人で少女を完全に殺せそうな人は…)」

奴隷「えと、勇者って人が居るんだけど…魔族より凄い魔王と戦う為に旅をしてるんだって。魔王と戦うぐらいなんだから凄いと思うんだけど…どうかな?」

少女「…前に魔王を倒した勇者が、私を殺した」

奴隷「……」

少女「…蘇った時、勇者が泣きながら女を抱いてた」

奴隷「…まあ、少女が今生きてる時点でだいたい結果はわかってけどね…」

少女「…死にたい」

今日の更新は以上です。

あとちょっとで完結ですので良ければお付き合い下さい

奴隷「(そんな事を少女と話していたら、いつの間にかテスト最終日になっていた)」

少女「……」

奴隷「…よく動いてないのに寝れるなぁ…」

奴隷「(お昼寝する、と言って少女は寝てしまった。こうなってしまうと僕は暇を持て余してしまう)」

奴隷「(どうしたもんかと悩んでいると、ふと数日前に少女が放った言葉を思い出す)」

奴隷「(…勇者でも、少女を完全に殺せなかった…か。じゃあ、魔王ならとも思ったけど、魔王を倒した勇者が無理なら多分無理なんだろうなぁ…)」

奴隷「(なら、少女はどうすれば死ねるのか?)」

兵士「……」

奴隷「(そんな事を考えてると、ある事に気付く)」

奴隷「(…いや、これ以上考えるのは止めよう。命令は少女を完全に殺す事じゃなく、僕が生きて世話をする事なんだから)」

兵士「……」

奴隷「(さて、今からどうやって暇をつぶ……!?)」

奴隷「へ、兵士様!?」

兵士「お、考え事は終わったか?」

奴隷「声をかけてくだされば良かったのに…」

兵士「はっはっ、邪魔したくなくてな。何を考えてたんだ?」

奴隷「…どうしたら少女を完全に殺せるかな、と」

兵士「……」

奴隷「(笑っていた兵士様が険しい顔をして僕を見る。誤解されないように僕は慌てて付け加える)」

奴隷「もちろん少女を殺すなんて事はしません!」

兵士「わかってるよ。つか無理だしな」

奴隷「(険しい顔からまた笑顔に戻って兵士様を見て、僕はホッとする)」

兵士「んじゃ、俺は今からテストの結果について騎士と話をしてくるからよ。大人しく待ってろよ?」

奴隷「…はい」

奴隷「(…忘れていた訳じゃないけど…もし、テストに合格しなければ僕は…)」

兵士「そんな顔をすんなよ。贔屓は出来ねぇけど大丈夫だと思うぜ?」

奴隷「…はい。どんな結果でも僕は命令を守ります」

兵士「…ほれ、差し入れだ。これでも食って元気出せ」

奴隷「(兵士様が懐から何かを取り出し、鉄格子の隙間から手を入れて僕に差し出した)」

奴隷「い、いいんですか?」

奴隷「(それは真っ赤に熟れた林檎だった。ここに来る前に一度だけ食べた事がある果物だ)」

兵士「ろくなもん食わせてやれてねぇからな」

奴隷「す、凄い…!」

奴隷「(震える手で受け取れば、僕はゴクリと生唾を飲み込む。見た目も鮮やかで美しく、甘い香りがこの牢屋いっぱいに充満していくような気さえする)」

兵士「じゃ、またあとで報告に来るからな」

奴隷「……」

兵士「……」

兵士「…まあ、そっとしとくか」






奴隷「…うぅ…」

奴隷「(林檎の事で頭がいっぱいになってたらいつの間にか兵士様がいなかった…奴隷失格だな、僕…)」

奴隷「でも…凄い…こんな肉厚な林檎を貰えるなんて…」

少女「……」

奴隷「(昔、ご主人様からのご褒美で貰った林檎の芯も凄かったけど…これはもっと凄い…!)」

少女「……」

奴隷「(差し入れだから…た、食べてい、いいんだよね?)」

少女「…ねえ」

奴隷「!?」

奴隷「(驚いた拍子に林檎を落としてしまいそうになる。…危なかったけど、なんとか落とさないで済んだ。僕は安堵のため息を漏らすと、林檎をしっかりと手に持つ)」

奴隷「起きてたの?」

少女「…今、さっき。それよりも」

少女「…テストって、なに?」

奴隷「…ああ、そういえば少女はテストの事知らなかったね」

少女「……」

奴隷「(少女がじっと僕の顔を見つめてくる。そういえば、話してなかったなぁ)」

奴隷「試しに一週間、僕と少女が一緒に過ごしても問題を起こさないか、僕が少女と一緒にいる事で兵士様達にどんなメリットがあるか確認する為にやってるテストの事だよ」

少女「…合格したら?」

奴隷「問題が発生したり、違う命令があるまで一緒に居られると思う」

少女「…不合格なら?」

奴隷「僕が隣の牢屋に戻されるだけだね」

少女「……」

奴隷「そうなったら、寂しい?」

奴隷「(僕の言葉を聞いた少女はふるふると首を振る)」

少女「…そしたら、また眠るだけ」

奴隷「だよねー」

少女「……」

奴隷「…あ、林檎貰ったんだけど一緒に食べる?」

奴隷「(少女に近づき、しっかりと僕の手に握られた林檎を見せる)」

奴隷「(いきなり見せられた林檎に少女は疑いの目を僕に向ける。多分偽物だと思っているんだろう。仕方ないよね、あの果物の林檎を僕が持っているなんて普通ありえないんだから)」

奴隷「(でも、林檎から放たれている甘い香りに気付いた少女は目を見開く)」

少女「…本物?」

奴隷「うん!凄いよね!!」

奴隷「(僕の興奮が伝わったのか、少女も少しだけ鼻息を荒くしていた)」

少女「…食べたい」

奴隷「じゃあ、食べよっか!」

少女「…けど、食べられない」

奴隷「え?」

奴隷「(いきなりどうしたんだろう?林檎を食べられるなんて人生でこれっきりかもしれないのに)」

少女「…これ、あるから」

奴隷「(そう言って少女は僕に猿轡を見せるように顔を上げる。確かに、猿轡があったら林檎にかじりつくなんて出来ないだろう)」

奴隷「ああ、大丈夫だよ」

少女「…?」

奴隷「(そう言って僕は林檎にかじりつく)」

奴隷「…凄い!!」

奴隷「(あまりの美味しさに僕はついつい思った事を言ってしまう。今まで食べた物の中で一番美味しいと断言出来るほどだった)」

奴隷「(夢中で咀嚼していると、少女が恨めしそうな目で僕を見ている事に気付く。でも僕は視線を無視してもう一度林檎に齧り付く。何度も咀嚼したところで僕は少女に近づく)」

奴隷「(なんで僕が近づいてきたのかわかっていない少女は、不思議そうな目で僕を見上げてきた。身長差があってよかったと思う)」

奴隷「(そして、僕は少女の顔に手を添え猿轡の上から口を重ねて咀嚼した林檎を舌で少女の口内に押し込んでいく)」

奴隷「…ん」

少女「…んっ…んぅ…」

奴隷「(最初は驚いていた少女も僕のしたい事を理解すると、猿轡を避けるように舌を必死に伸ばして僕の舌から咀嚼された林檎を受け取って飲み込んいく)」

奴隷「…ぶはぁ」

少女「はぁ…んちゅ…ん…」

奴隷「(口を離した後も少女は、猿轡や唇に着いた林檎を舌でなんとか舐めとろうとしていた)」

奴隷「どう?凄いよね!?」

少女「…うん、凄い…」

奴隷「(あらかた取り終えたのか、少女は満足そうな目をしていた)」

奴隷「昔、弱った人によくこうやって硬いジャガイモとかを食べさせてたんだ。これなら、喉に詰まらせる事ないからね」

奴隷「(そんな事を少女に説明しながら少女の口の端に垂れているよだれとも果汁とも言える液体を拭ってあげる)」

少女「…ねえ、もっと…」

奴隷「(少女は上目遣いでお願いしてくる。けど、僕だって林檎が食べたい)」

奴隷「うん、僕が食べたらね」

奴隷「(少女は納得したのか視線を外してくれた。よし、じゃあ早速食べよう!)」

奴隷「(林檎に齧り付こうとした時、背後から知らない声が聞こえた)」

??「やっと見つけた」

奴隷「(林檎に齧り付くのを止めて慌てて振り返る)」

奴隷「(そこに居たのは兵士様達ではなく、知らない人だった)」

奴隷「(知らない人だけど…雰囲気や着てる鎧で偉い人だと分かる)」

??「…ん?なんで人間がいる…?」

奴隷「僕は奴隷です。少女のお世話をしています」

奴隷「(深くお辞儀をして自己紹介をする。この人が何者かわからないけど、失礼な態度を取るわけにはいかない)」

??「ああ、生贄の奴隷か」

奴隷「はい。失礼ですが貴方様は?」

??「王国軍第六師団師団長で、この旧国境砦を管理する伯爵家の長男であるむす…いや、今は違うな」

側近「私は魔王様に仕える忠僕が一人、側近だ」

ーーー側近が現れる少し前ーーー


兵士「…以上がテスト結果だな」

騎士「あ、あの化け物が…しゃ、喋りだしただと!?」

兵士「(俺の話を半ば呆然と聞いていた騎士が椅子から勢いよく立ち上がる。まあ、気持ちはわかるがな)」

兵士「まあ、喋ってるのを聞いた訳じゃないがな。喋っていると奴隷から聞いただけだ」

騎士「……聞いていないのか?なら、奴隷の妄想ではないのか?」

兵士「俺も最初は奴隷の頭がおかしくなったと思っていた。が、かまをかけたらあっさり化け物から不老不死だと聞いたとか言うんだぜ?不老不死の事なんて話しちゃいねぇんだ。妄想とかの類じゃあねぇな」

兵士「(肩を竦めた俺を見ると大きなため息を吐いて椅子に座り直す)」

騎士「…まさか、あの化け物が喋るとはな」

兵士「それに関しては俺も驚いてる」

兵士「(…そういや、あいつにバレバレな嘘をつかれた時に笑ってやった事があったが…まさか嘘が真になるとはなぁ…)」

兵士「(つい昔を思い出し、苦笑いに似た笑みを浮かべた俺を騎士が睨む)」

騎士「…それで、どうするんだ?これ以上化け物に変化が無いように、あの奴隷と化け物を引き離すか?」

兵士「…別にいいんじゃないか?このままで」

兵士「(化け物は確かに変わったが、これ以上なにか変わるとも思えなかった。まあ、奴隷が世話してくれるもんで楽になったしな)」

騎士「はあ!?本気で言っているのか貴様!?」

兵士「うっせぇ。いきなりでかい声出すんじゃねぇよ」

騎士「万が一、この事が上にバレたらどうする!?裏切り行為だと見なされて私達が殺されるんだぞ!最悪、私の家にまで…!!」

兵士「(…まあ、こいつも何かあるとは思ってたけどよ…今は)」

兵士「…静かにしろ」

騎士「…そうか、貴様もついに狂ったか…」チャキッ

兵士「(騎士が柄に手をかけ何時でも俺に斬りかかれる体勢に入る。…こいつ、こんなに頭が固かったか?)」

兵士「ちげーよ。客だ」

騎士「客?そんな者が来る訳ないだろう」

兵士「(確かに、廃墟となった砦に客が来るわけがない。せいぜい来るのは食料と必要な物資を補給しにくる軍の下っ端ぐらいだ)」

兵士「じゃあ、ちょっとでいいから静かにしてみな」

騎士「……」

兵士「(騎士は怪訝な表情を浮かべつつ、目を瞑って周りに意識を集中させている)」

コツッ…コツッ…

騎士「これは…足音?…どうやら本当に客らしいな」

兵士「(やっと柄から手を離してくれたか。やれやれ)」

兵士「伯爵から何か手紙は?」

騎士「来ていない」

兵士「そうか。…んじゃ、浮浪者か…はたまた盗賊か…」

兵士「(いや、浮浪者が来るには厳しい道のりだから宿代わりにしようとやってきた旅人か?…盗賊に至っては何しに来るかわかったもんじゃねぇ)」

騎士「なんにせよ、始末しなければな」

兵士「(立ち上がり、部屋から出て行こうとする騎士を片手で制する)」

兵士「落ち着け、まだそうと決まった訳じゃない。それに足音はこっちに近づいて来やがる…」

騎士「…奥には牢屋しかない。ならアレが目当てではないか?」

兵士「ここかも知れねぇだろうが…。とりあえず、お前はドアの横で気配を消して待機しろ。足音がこの部屋を過ぎたら…分かってるな?」

騎士「…ああ」

兵士「(騎士は俺の指示通り、ドアの横に移動し、すぐ斬りかかれる体勢になる)」

騎士「……」

コツッ…コツッ…

兵士「……」

コツッ……

兵士・騎士『(足音が、止まった!!)』

コンコン

兵士「(ドアがノックされたのを聞いた俺は騎士に目配せをし、騎士はそれに頷いて答える)」

兵士「どうぞ、開いていますよ」

??「失礼します」

兵士「(入ってきたのは俺よりもひと回り下ぐらいの優男って感じのガキだ。だが、そんな事はどうでもいい。問題は着ている鎧だ。あれは…)」

兵士「一応、名前と所属している師団の名前をお聞きしてもよろしいですか?」

息子「ああ、これは失礼しました。私は王国軍第六師団師団長の息子と申します」

更新は以上です。

兵士「やはり、そうでしたか」

兵士「(息子を名乗る男が着ている鎧は、王国軍の師団長にのみ着用が許されている特別な鎧だ。それを着ているという事は、身分を証明しているという事になるが…)」

息子「この方は?」

兵士「(息子は騎士に不快そうな視線を向ける。そんな視線を受けても騎士は息子から視線を逸らさず、柄に手をかけたまま微動だにしない)」

兵士「そいつはここに勤めている騎士です」

息子「…身分の証明はこの鎧でわかると思ったのですが?」

兵士「申し訳ございません。ですが、師団長の様な方が事前の連絡もなく、従者も連れずにこのような所に来るとは考えにくいので。…もしかしたら、師団長を殺して奪った可能性もありますから」

息子「私はアレを一目見ようと思って来たのに人殺し扱いですか…まあ、いいでしょう。この際、私が師団長という事は忘れてください。…ああ、従者を連れていないのは関係のない者にここの事を知られるのは良くないと判断したからです」

兵士「…何故ですか?ここは重要な任務に失敗するような奴が送られる廃墟ですよ?軍属はみんな知っていると思うんですが…」

騎士「……」

息子「はあ、疑り深いんですね。元第六師団長の兵士殿は」

兵士「…はっはっはっ、怪しむのは当然でしょう?それに、今は普通の兵士ですよ」

兵士「(ぶっ殺すぞこの糞ガキ)」

息子「…私は伯爵家に婿入りしました。そしてアレの管理も任される事になったんです」

兵士「(息子は肩を竦めて懐から懐から一通の手紙を取り出す)」

息子「近づいても、構いませんか?」

兵士「ええ、もちろん良いですよ。テーブルの前まで、ですが」

兵士「(息子は両手を上げておどける様な仕草をしながらテーブルまで歩み寄り、手紙を置いて一歩後ろに下がった)」

兵士「……」

兵士「(息子が離れた事を確認し手紙を手に取る。…封蝋には伯爵家のシンボルが刻まれている)」

兵士「(息子を見ると顎をしゃくって開封をするように促してくる)」

兵士「…なるほど、わかりました。騎士、もういい。下がれ」

兵士「(封を切り手紙の内容を確認する。確かに、伯爵の筆跡とサインだ。しかもご丁寧に国王のサインまである)」

騎士「失礼致しました」

兵士「数々の暴言、非礼な態度をお許しください」

兵士「(騎士は柄から手を離し、椅子から立ち上がった俺と共に深く頭を下げようとするも、それを見た息子は笑みを浮かべてどうという事はないと手で制す)」

息子「いえ、ここを守護するのですから当然でしょう。気にしないでください。」

兵士・騎士『寛大な御心に感謝致します』

息子「いえいえ、では奥のアレを見に行っても構いませんか?」

兵士「では、私が案内しましょう。万が一の場合がありますので、アレを見る際は私もご一緒させていただきます」

息子「いえ、それには及びません。すぐ終わりますから」

兵士「ですが…」

息子「アレは自殺出来ないのでしょう?なら問題ないと思いますが。それに、いざとなったらすぐに逃げますよ」

兵士「(逃げ切れるわけねぇだろバカかこいつ。まあ、いいか)」

兵士「…わかりました。地下牢は突き当たりを左に曲がり、階段を降りた先です」

息子「ありがとうございます。では、また後で寄らせてもらいますね」

兵士「わかりました。…あ、息子様」

息子「なんですか?」

兵士「この手紙、預からせていただいても?」

息子「ええ、もちろん構いませんよ」

兵士「(そういって、息子は出て行った。静寂に包まれた部屋に、遠ざかる足音がいやに大きく聞こえた)」

騎士「……」

兵士「……」

騎士「なあ、兵士よ」

兵士「ん?」

騎士「あの者は本物の師団長なのだろうか?」

兵士「多分な。あの鎧、師団長以外は着れないように魔法が掛けられてるし」

騎士「ほう…流石は元師団長だな」

兵士「うっせ、殺すぞ」

騎士「……」

兵士「それに、あいつの潔白はこの手紙が証明してんだ。俺達にはどうしようもねえよ」

騎士「…そう、だな」

兵士「ま、なんか問題を起こしたら上に責任を押し付けるさ。その為に手紙を貰っといたんだからな」

兵士「(騎士に手紙を見せると懐にしっかりとしまう。…まあ、有っても無くても変わらんかも知れんがな)」

更新は以上です。

上げ忘れました…すいません

ーー時は戻り牢屋ーー

奴隷「(伯爵家の長男?という事は…凄く偉い人だ!)」

奴隷「(…でも魔王の側近ってどういう事だろう?いや、今はそんなことよりも!)」

奴隷「お教えいただきありがとうございます!側近様に名乗らせるような事をしてしまい申し訳ありません!」

奴隷「(急いで少女の前から退き、跪いて頭を地に擦り付ける。偉い人に名前を尋ねるなど許されない事だ。殺されるかもしれない。…いや、それだけで済むならまだいい。もし、兵士様達の教育不足だと思われたら…)」

奴隷「(身体から冷や汗が噴き出すのを感じる。僕のせいで兵士様達に罰が与えられたら、どうやって償えばいいのかわからない)」

奴隷「兵士様達は悪くありません!どうか、どうか僕の命だけでお許しを…!」

側近「実験体。魔王様の命により今から貴様を魔王城に連れて行く」

奴隷「(しかし予想に反して側近様は僕の事を無視して少女に話しかけている)」

少女「……」

側近「…おい、実験体。魔王様の命を受けた俺が話しかけているんだぞ?」

少女「……」

側近「…返事がないな。精神崩壊でもしてるのか?」

奴隷「(…どうやら、少女に用があるみたいだ。まあ、それしかないだろうけど。…じゃあ、僕に出来る事は…)」

奴隷「……」

奴隷「(このまま動かず黙って、側近様の用事が終わるまで待つだけだ)」

側近「まあいい。精神が壊れていようといまいと、連れて行くまでだ。…だが、確認はさせてもらう。来い」

奴隷「(来いと言われ慌てて顔を上げる。しかし、側近様は僕を見ていない)」

奴隷「…え?」

奴隷「(側近様の後ろに黒い霧が立ち込めている…あんなの、ここに来てから一度も見た事がない)」

吸血鬼「吸血鬼、参りました」

奴隷「(黒い霧が晴れたと思ったらまた知らない人が現れた!)」

側近「あの女を素手で殺してこい。魔法は使うな」

吸血鬼「畏まりました」

奴隷「(側近様の命令を聞いた吸血鬼様がこちらに歩いて来たので僕は慌てて頭をさげる。その際、吸血鬼様が鉄格子をすり抜けて牢屋に入って来たのが見えた。魔法って凄い)」

少女「あ゛」

奴隷「(僕の…いや、少女の目の前まで来た吸血鬼様が少女に何かしたようだ。少女はなんとも言えない声を出したと同時に、僕の頭に生暖かい液体がかかる)」

奴隷「(それは頭から僕の頬に流れ、地面に垂れた。…匂いと色からして血だろう。吸血鬼様に殴られたのかな?)」

奴隷「(頭を少しだけ動かし周りの様子を確認すると、少女の胸の辺りが真っ赤に染まっていた。が、それ以外変わったところはなく少女はつまらなそうな表情を浮かべていた。…あれ、少女の前に吸血鬼様の死体がない?あるのは山盛りになった灰だけだ)」

側近「本物のようだな。では魔王様が待っていらっしゃる。すぐに行くぞ」

奴隷「(なんで灰がこんなにあるのか考えていると、側近様も牢屋の中に入ってくる。…魔王様が待っている?ちょっと待って!)」

奴隷「側近様!聞きたい事があります!」

側近「…なんだ。私の邪魔をする気か?」

奴隷「(僕は顔を上げて質問するも、苛立ちと怒りを含んだ言葉をぶつけられ震えてしまう。でも、どうしても確認しなければならない)」

奴隷「そ、そんな気持ちは一切ありません!!で、ですが以前兵士様が、少女は魔王軍に奪われないように監禁していると言っていました!それでも魔王様の元へ連れていくのですか?」

側近「……」

奴隷「(少女が監禁されている一番の理由は、魔王に奪われない事だ。少女を魔王の元に連れて行ったら監禁している意味がなくなってしまうのでは…?)」

側近「私は私の主である魔王様の命令に従うまでだ。貴様らの都合なぞ知らん」

奴隷「え?…側近様のご主人様は魔王様…なんですか?」

側近「そうだ。最初にそう言っただろうが」

奴隷「…あの、側近様は兵士様達のご主人様なんですよね?」

側近「…それがどうした」

奴隷「(…という事は…えーと…魔王様は側近様のご主人様で…側近様は兵士様達のご主人様…そして兵士様達は僕のご主人様…つまり、魔王様は僕のご主人様なんだ!!)」

奴隷「(気付けて良かった…危うくご主人様の命令を邪魔するとこだった…)」

奴隷「お引き留めして申し訳ありません!では、兵士様達には僕から伝えおきます!」

側近「…?そうか、ではよろしく頼む」

奴隷「はい!お任せてください!」

奴隷「(僕は笑顔を浮かべながら頭をまた下げる。最初の失敗を挽回できたみたいだ…良かった)」

側近「さて、では行こ…魔王様!?」

奴隷「(牢屋に響いた側近様の言葉に僕は慌てて顔を上げ周りを見渡す。しかし、牢屋には僕と少女、側近様しかいない)」

奴隷「(それでも側近様は頷いて返事をしている。魔王様がいるのだろうか?)」

側近「…わかりました。では連れていきます」

奴隷「(僕が惚けていると、誰もいない方に頭を下げた側近様が僕の方を見る)」

側近「魔王様からの命令だ。お前も来い」

奴隷「わかりました!」

奴隷「(勢いよく立ち上がり少女のそばに立つ。…あ)」

奴隷「側近様、少女の鎖はどうしましょう?」

奴隷「(少女の手足は鎖に繋がれている。このままでは魔王様の元へ連れて行く事ができない)」

奴隷「鍵をお持ちではありませんか?このままですと少女を連れてい」

側近「ふん」

奴隷「(僕が言い終える前に側近様が指を鳴らした。すると、視界が揺)」

奴隷「」

「起きて」ユサユサ

奴隷「……」

「起きて、奴隷」ペチペチ

奴隷「…う、うーん…」

奴隷「(…誰かに…叩かれてる…?…誰?……!?)」

少女「…起きた?」

奴隷「ぼ、僕気絶してた!?どうして…あれ?」

奴隷「(慌てて身体を起こして少女を見る。少女も不思議そうな顔で僕を見ている)」

少女「…大丈夫?」

奴隷「…うん、大丈夫。だけど…」

少女「…?」

奴隷「ここ、どこ?」

奴隷「(キョロキョロと辺りを見渡す。床は石じゃなくて絨毯だし、鉄格子もない。どこかの廊下みたいだけど…)」

少女「…魔王の部屋の前」

奴隷「えっ?」

少女「…もうすぐ魔王と会う」

奴隷「えぇ!?」

奴隷「どうやってここまで来たんだろ…」

奴隷「(僕はなんとか落ち着きを取り戻し、服で顔に着いた血を拭いながら隣に座ってる少女に話しかける)」

少女「…たぶん、空間移動の、魔法」

奴隷「…魔法って凄いね」

少女「…うん」

奴隷「あ、側近様は?」

少女「…中に、入っていった」

奴隷「そっか。…魔王様って、どんな人なのかなぁ…」

少女「……」

奴隷「どうしたの?」

奴隷「(少女は僕の顔をジッと見ている。何かあったのかな?)」

少女「…魔王、怖くないの?」

奴隷「…ちょっと怖いけど、僕のご主人様だから大丈夫!」

少女「…そう」

奴隷「(少女は何故か笑みを浮かべて僕の手に触れた。どうしたんだろ?)」

奴隷「…ところで、猿轡はつけたままなの?」

少女「…外して、くれなかった」

奴隷「じゃあ外して…っ!?」

奴隷「(少女の頭に手を伸ばし、猿轡を外そうとしたら目の前にあるドアがゆっくりと開き始めた)」

奴隷「(慌てて立ち上がり、少女に手を貸して立たせていると側近様が現れた)」

側近「お前らは光栄にも魔王様に会うことが出来る。くれぐれも失礼の無いようにしろ。わかったか?」

奴隷「はい!」

少女「……」

奴隷「(側近様が少女と僕を睨むとふんと鼻を鳴らした。…大丈夫かな、僕…)」

側近「奴隷、貴様は俺達の後ろからついて来い。…では行くぞ」

奴隷「わかりました」

少女「……」

奴隷「(少女は歩いて側近様の横に立ち、一緒に歩き始めた。僕もそれに合わせ後ろからついていく)」

側近「魔王様、ご所望の実験体を連れて参りました」

奴隷「(あまりキョロキョロと周りを見ていると失礼だと思い、側近様の背中だけを見て歩いていると側近様が歩くを止め跪いた。僕もそれに合わせて跪く)」

魔王「うん、ご苦労様♪やっと見つけてくれたんだねー!」

奴隷「(頭上から嬉しそうな声が聞こえる。…何というか、男の子と女の子を合わせた不思議な声だなぁ)」

側近「お、お待たせ、し、してしまい!大変も、申し訳ありません!」

奴隷「(側近様の声が震えてる。どうしたんだろ?)」

魔王「あはは、気にしてないよ?それよりも…本物だよね?」

奴隷「(魔王様の声が近づいてくる…ど、どうしようこんな汚い格好なのに…失礼にならないかな…)」

側近「もちろんでございます!!」

魔王「そ♪じゃあ…えいっ」

パンッ

奴隷「(乾いた音が部屋に響いたと思ったら、視界の端で側近様が倒れたのが見えた)」

奴隷「「何が起こったんだろうと思っていたら、血の水溜りが広がって僕の目の前まできた。…ああ、また少女が殺されたんだなぁ)」

少女「……」

魔王「わぁ!本当に本物だぁ!やっと手に入れれたよぉ!」

少女「……」

魔王「ありがとね、側近♪…あれ、側近?…あ゛」

??「魔王様、側近はどうやら死んでいるようです」

魔王「あ、メイド!ごめんね、僕に実験体ちゃんの力が効かないの忘れてたよぉ」

メイド「お気になさらずに。この死体はいかがなさいますか?」

魔王「片付けといてー」

メイド「畏まりました」

魔王「んふー♪…っと、君は人間だよね?」

奴隷「(視界の端にあった側近様の身体が消えて新しい人が来たかと思ったら、魔王様から声をかけられた!あ、慌てないで落ち着いて失礼のないようにしなきゃ…)」

奴隷「はい!人間の奴隷といいます!」

魔王「奴隷?ふーん…ね、顔を見せてよ」

奴隷「はい!」

奴隷「(顔を上げると、少女の陰から顔を出している魔王様と目が合った)」

奴隷「(女の…子?いや、男の子なのかな?よくわかんないけど…予想以上に幼い魔王様だなぁ)」

魔王「…空っぽな目。面白くない人間だね」

奴隷「も、申し訳ありません…」

魔王「ね、実験体ちゃん♪今日から君は僕のものだからね♪」

奴隷「(あ、僕無視されてる…そういえば少女にも同じような事言われたっけなぁ…)」

少女「実験体じゃない。今の名前は少女」

奴隷「(あ、少女の声が普通に聞こえる…猿轡が取れたみたいでよかった)」

魔王「あ、ごめんね少女ちゃん♪」

少女「…それよりもなんで私の事、知ってる?なんで、死なない?」

魔王「教えてほしいー?どうしよっかなぁ♪」

少女「……」

魔王「そんな顔しちゃやだよー。大丈夫大丈夫、ちゃんと全部教えてあげるから♪」

奴隷「(そういって魔王様は高いところにある椅子に飛んでいって座った。すごい!空を飛んでる!!)」

魔王「それで、何から知りたいのかな?」

奴隷「(魔王様は肘掛けに肘をついて楽しそうに少女を見ている)」

少女「…私は、なに?」

魔王「あれ、知らないの?」

少女「…知らない」

魔王「そうなんだ。ふふ、自分の事も知らないなんて本当に面白いね♪」

少女「……」

魔王「少女ちゃんはね、人間が作った勇者なんだよ♪」

少女・奴隷『えっ』

奴隷「(あまりの驚きに、僕と少女は思わず声が出てしまった)」

魔王「詳しく知りたい?知りたいー?」

少女「…うん」

奴隷「少女が、勇者…?」

魔王「じゃ、教えてあげる♪」

奴隷「(そうして、魔王様は少女について語り始めた)」

魔王「1000年くらい…前だったかな?勇者がいない国があってね、そこを暇つぶしに攻めたら君が出来たのの!わかった?」

少女「…?」

奴隷「(…んん?)」

メイド「…魔王様。それでは少女様は納得しませんよ」

魔王「えー、そうかなぁ?」

メイド「はい。私が代わりにお話をさせていただいても?」

魔王「むぅー…わかった。ちゃんと説明してあげてね」

メイド「畏まりました。では今より魔王様に代わりに、メイドの私が説明させて頂きます」

少女「……」

奴隷「(少女は頷き、メイドの顔を凝視する。…あ、魔王様がほっぺた膨らませてる)」

メイド「1000年ほど前、とある国に我々は攻め入りました。当時、勇者はすでに魔王様の手で滅ぼされていたので、我々の侵攻を食い止めるので精一杯だったようです。そんな時、当時の王は国にいる賢者と神官を集めてとある命令を出しました」

メイド「『勇者を創り出せ』…勇者がいなければ創り出せばいい。そう考えたようですね。そうして数多の実験をし、犠牲を出してついに創り出す事に唯一成功したのが少女様でございます」

少女「…私は、人間の手で創り出された存在で、勇者…?」

奴隷「(少女が、勇者…?なら今いる勇者は一体…?)」

メイド「はい。厳密に言えば人間に様々な魔法や神の奇跡、加護などを施して創られたのが今の少女様です」

少女「…そう」

メイド「そして少女様は勇者ではございません」

奴隷「え?」

メイド「ここからのお話は魔王様、よろしくお願いします」

魔王「うん!任せて!…ねえ少女、勇者を決めるのは誰だと思う?」

少女「…知らない」

魔王「じゃあ教えてあげる!それはね、神なんだよ♪」

魔王「だから、少女ちゃんは勇者じゃないんだよー♪少女ちゃんじゃ私を殺せないし♪」

少女「……」

メイド「…補足説明させていただきます。勇者とは魔王様を滅ぼす事ができ、魔王様以外には滅ぼされない者の事を言います」

メイド「なので人間の手で創られた少女様は決して勇者ではありません」

魔王「うん、そういう事!」

少女「…勇者かどうか、なんてどうでも、いい」

魔王「えー…他にも色々知ってるんだよ?少女ちゃんの力の事とか!」

魔王「あ、あと僕の事も教えたいなーって」

少女「…興味、ない」

魔王「……」

奴隷「(ああ…魔王様が目に見えて落ち込んでる…)」

少女「魔王。あなたは私を殺せる?」

魔王「殺せるよ?」

少女「さっき殺せてなかった」

魔王「本気じゃないもーん♪それにいろいろ準備しなきゃだし!」

少女「準備したら、殺せる?」

魔王「うん♪だからそこにいる人間を連れてきたんだよ?」

奴隷「え、僕ですか!?」

奴隷「(魔王様と少女の視線が突き刺さる)」

少女「奴隷に、何か特別な力があるの?」

魔王「少女を孕ませてもらうの!」

少女・奴隷『えっ』

魔王「どうしたの?」

メイド「…補足説明させていただきます」

メイド「どうにか勇者を魔王様以外の者で滅せないものかと思った魔王様は、当代の勇者より三代ほど前の勇者にとある実験をしました」

メイド「わざと滅びたふりをし、凱旋した勇者に子供が出来るまで待ったのです」

メイド「人間に限らず生物は親の優秀な力を受け継ぎます。故に、魔王様は勇者の力を持った子供が生まれると考えられたのです」

メイド「少女様はご存知ないでしょうが、本物の勇者というものはこの世に一人しか現れません」

メイド「つまり、勇者の力を持った子供が生まれれば親の勇者は勇者の力を失い、魔王様以外の者でも勇者を滅ぼせると判断されたのです」

奴隷「(…ん?でもそれって…)」

メイド「魔王様の考えが的中し、勇者の力を持った子供が生まれ、勇者の力を失った勇者を魔王様以外の者でも滅ぼす事が出来ました」

奴隷「(…勇者を魔王様以外の者が滅ぼしたんじゃなくて、元勇者の人間を魔王様以外の者が滅ぼしただけじゃないの…?)」

メイド「長々と説明しましたが、要するに魔王様は少女様に子供ができれば少女様の力は子供に移り、滅ぼす事ができると魔王様は言いたいのです」

少女「私は、今まで何度も何度も妊娠した。けど、死ねなかった」

メイド「それは恐らく妊娠したものの、出産する前に死んでしまったからでは?」

少女「…そう、かも…」

魔王「だから、その人間に孕ませて貰えば死ねるよ?僕も少女ちゃんの子供が欲しいし!」

魔王「あ、もしその人間が嫌なら別の人間を見繕ってくるよ?」

少女「……」

奴隷「(また魔王様と少女の視線が突き刺さる。…こればかりは、僕にはどうしようもないよね…)」

少女「他の人間は嫌。奴隷がいい」

奴隷「え?」

奴隷「(まさか、少女が奴隷である僕を選ぶなんて思わなかった)」

魔王「そう?ならメイドに部屋まで案内させるから早めに孕んでね♪」

少女「…任せて」

メイド「では少女様にゴミ、こちらです」

奴隷「(メイド様が少女の後ろに立ち、先導してくれる。僕は慌てて少女の後ろからついていく)」

奴隷「(しかし、まさか少女の完全に殺す方法が子供を産ませるだなんてなぁ…)」

メイド「こちらが少女様とゴミの部屋になります。中の物は全て少女様のものですので遠慮なくご使用下さい。では、私は失礼しますので何かありましたは廊下を巡回している兵士がメイドにお声掛けしてください」

少女「…わかった」

奴隷「わかりました」

奴隷「(メイド様は少女に一礼をすると部屋から出て行った)」

奴隷「…すごい、部屋ですね」

奴隷「(部屋の中は僕が今まで見たどの部屋より広くて豪華で凄かった)」

少女「…奴隷、早く」

奴隷「えっ」

奴隷「(僕が驚いてる間、少女はベットに向かい大の字で寝転がって僕を呼ぶ)」

少女「…孕ませて」

奴隷「ちょ、ちょっと待って下さい少女様!本当に僕でいいんですか…?」

少女「…奴隷は、嫌?」

奴隷「僕は嫌じゃないですよ。…ですが、僕は奴隷ですよ?男なら他にも…」

奴隷「(魔王様に気に入られてる少女様なら、男なんてより取り見取りのはずなのに)」

少女「…奴隷じゃなきゃ、嫌」

奴隷「(少女は上体を起こし、僕を見つめてくる)」

奴隷「…理由を聞いてもいいですが?」

少女「奴隷は本当の奴隷だから」

奴隷「…え?」

少女「奴隷、命令と命、どっちが大事?」

奴隷「もちろん、命令です」

少女「奴隷、私と魔王、どっちが大事?」

奴隷「もちろん、魔王様です」

少女「この世で、一番大切なのは?」

奴隷「ご主人様の命令です」

少女「…それが、選んだ理由」

奴隷「…?」

奴隷「(少女様が何を言いたいかわからない…)」

少女「私の側に欲しいのは、ただ一つ。絶対に変わらないもの

少女「命令の為なら全てを犠牲にする奴隷」

少女「死ぬ為なら全てを犠牲にする私」

少女「だから奴隷は、信用できる。それに私と奴隷は、似た者同士だと、思うから…」

少女「…だめ?」

奴隷「(…ああ、なんとなくだけど、少女様が言いたいことがわかった気がする)」

奴隷「…そこまで言ったのなら、返事はわかっているでしょう?」

少女「…うん」

少女「奴隷」

奴隷「はい、少女様」

少女「私のそばにいて下さい」

奴隷「わかりました。ご主人様の命令があるかぎり、そばにいます」

ーーーーーーーーー

メイド「魔王様、少女様とゴミを部屋に案内してきました」

魔王「うん、ご苦労様」

メイド「……」

魔王「~♪」

メイド「魔王様」

魔王「あ、少女ちゃんのいた王国あとで滅ぼしといて。面白そうなのは側近が全部回収してくれたし」

メイド「畏まりました。大将軍に指示しておきます」

魔王「うん、よろしく。それでなに?」

メイド「はい。なぜあの様な嘘を少女様に教えたのですか?…後天的な性質は子に受け継がれないはずですが」

魔王「別に嘘じゃないよー?少女ちゃんは奇跡の塊みたいな存在だからね、充分あり得る話だよ」

メイド「…一つ歯車が狂えば何が起きるかわからない危険な存在です。魔王様の異次元魔法で即処分されるのがよろしいかと」

魔王「そんなのつまんないよ!それに、なにが起きるかわからないのが、最っ高に面白いじゃん!!」

メイド「…はあ、全く魔王様は…」

魔王「えへへ。飽きたらすぐ処分するから安心してよメイド♪」

メイド「わかりました」

魔王「それで、何か面白そうなもの見つけた?」

メイド「はい、法国の法王が神を顕現させたようです」

魔王「本当!?」

メイド「はい、調査に向かった精鋭揃いの小隊が全員滅ぼされたようです」

魔王「おお!凄く面白そう!久しぶりに一緒に行こっかメイド♪」

メイド「はい、魔王様」

魔王「本当、人間は面白い事してくれるから大好きー♪」







終わりです。山無し谷無しオチ無しですいません。

ここまで読んでいただきありがとうございました!もしかしたら後日談を書くかもしれません

大量投下失礼しました。

でんでんでん ぺっ
でんでんでん ぺっ
てーれれ てーれーれれ てれれーれれー

今読んだらこれ完全に打ち切りエンドですねorz

後日談書かせていただきます

すいません、どうしても>>284様のコメントの意味がわからないんですがどなたか教えてくれませんか?ネタか何かだとはわかるんですが…

すいません、一応上げておきます

お二人ともありがとうございます!特に深い意味がないようで安心しました。

後日談は明日から投下しますね。出来るだけ蛇足にならないよう気をつけます

奴隷「(…魔王様の元に来て半年。少女様を孕ませろと命令をされたけど…)」

少女「……」

奴隷「(少女様のお腹が大きくなってない…!)」

少女「……」

奴隷「あの、少女様」

少女「…なに?」

奴隷「ご確認をさせていただきたいのですが…月のものは来ていないんですよね?」

奴隷「(半年前にした質問をもう一度する。あの時は孕んだと思いみんな喜んだけど…)」

少女「…うん」

奴隷「……」

少女「……」

奴隷「(でも、少女様のお腹は一向に変化がない。普通なら半年も経てば目に見えて変化があるというのに)」

奴隷「あの、お腹を見せてもらっても?」

少女「…いいよ」

奴隷「(そう言って、少女様は服を捲り上げお腹を僕に見せてくれる)」

奴隷「……」

奴隷「(傷や痣のない綺麗なお腹…でも、半年前と何も変わっていない)」

奴隷「…やはり、孕んではいないようですね…」

少女「…うん」

奴隷「(少女様はがっかりした表情を浮かべながら自分のお腹を撫でている)」

奴隷「(あれほど種付けしたのになんで…?しかも、月のものも来ていないのに…)」

奴隷「(僕は必死に考える。何故少女様は孕まないのかと)」

奴隷「(まず第一に考えられるのは、少女は人間じゃないから人間の子種では孕めないということ)」

奴隷「(…いや、少女は昔孕んだ事があると言っていた。なら違う)」

奴隷「(次に考えられるのは僕の方に問題があるって事だけど…いや、僕も何人か孕ませた事があるから違うと思う)」

奴隷「(…これら以外になにか問題が…?)」

奴隷「(もしや、場所が問題なのかと考え始めた時、少女が僕に聞こえるように呟いた)」

少女「…暇」

奴隷「…!?それだ!」

少女「…?」

奴隷「(嬉しそうな表情を浮かべた僕を少女様は不思議そうな顔で見る。やっと、少女様が孕まない理由がわかった!)」

メイド「……」カツカツ

奴隷「あ、あの!」

メイド「……」カツカツ

奴隷「お話したい事が…」

メイド「……」カツカツ

奴隷「あぁ…行っちゃった…」

奴隷「(廊下を歩いていたメイド様に声をかけるも、僕の横を素通りして行ってしまった…)」

奴隷「(『少女様を孕ませれない人間など必要ない』…そう言ってメイド様は僕を処分し他の男を用意しようとした)」

奴隷「(当然だよね、孕ませるのが僕の仕事なんだから。…だけど、少女様はそれに反対した)」

奴隷「『奴隷じゃないと嫌』…それを聞いたメイド様はすぐ了承し僕の処分はなくなった。けど、その代わり僕はメイド様から無視…いや、いないものとして扱われた」

奴隷「(一応、食事などは必要最低限は頂けている。それに不満なんて一切ないけど…今回みたいな時はちょっと困ってしまう。相談したい事があるのに…)」

奴隷「(少女様にお願いするかと考えていると、背後から声をかけられる)」

??「やっほい。どしたの奴隷」

奴隷「(振り返ると、黄金に輝く鎧を着た女性が立っていた)」

奴隷「あ、女様!」

女「…その、女様ってのやめてくれない?前から言ってるよね?」

奴隷「で、ですが…」

女「んー?」

奴隷「(僕が戸惑っていると、女様の鋭い視線が突き刺さる。うぅ…メイド様並みに怖い…)」

奴隷「で、では…女さんで…いいですか?」

女「本当は呼び捨てがいいんだけどなー…。まあそれでいいよ。それで、こんな所に突っ立ってどしたん?」

奴隷「(女さんの視線が柔らかいものに変わり、笑顔を浮かべてる事に僕はホッとする。…正直、女さんはちょっと苦手だ)」

奴隷「(あれは魔王様の元に来てすぐの時だった。『遊びに来たぞ不老不死!』とか言いながらドアを蹴破って女さんが現れたのは…」

女「おーい?」

奴隷「(同じ化け物同士、仲良くしたいって事だったけど…少女様はあんまり乗り気じゃなかったなぁ…だから代わりに僕が相手してたら気に入られて…)」

奴隷「(たしか、人類最強…とか言ってたっけ…?よくわかんないけど、それでここにいるとか…)」

女「またなんか考えてんのか?んー?…無視すんじゃねーよー!」

奴隷「うわ!?あっ!す、すいませんすいません!!」

奴隷「(頭を掴まれて左右に揺らされる。しまった、またやっちゃった…)」

女「ったくー。で、何してんだ?」

奴隷「えっと、メイド様に相談したい事があったんですが…」

女「おう、それで?」

奴隷「…その、無視されてしまいまして」

女「ふーん?メイドじゃなきゃダメなのか?魔王は?」

奴隷「ま、魔王様になんてそんな!」

女「ん、わかった」

奴隷「え?うあ゛!?」

奴隷「(いきなりとんでもない風が吹いて壁に思いっきり叩きつけられた。…凄く、痛い…)」

奴隷「(四つん這いになって咳き込んでいると頭の上から女さんに声をかけられる)」

女「ん?なにしてんだ?」

奴隷「す、すいません風に飛ばされて…って…」

女「おいおい、あれぐらい耐えろよー。っと、ほら。メイド連れて来たぞー」

奴隷「(顔を上げると、女さんがメイド様を脇に抱えていた。…メイド様が物凄い形相で僕を睨んでる…)」

メイド「女様。これは一体どういう事ですか?それと、早く離してください」

女「男がメイドに相談したい事があるって言うから連れて来たんだけど?んー、男の話が終わったら離してあげる」

奴隷「(女様が楽しそうに笑うとメイド様の額に大きな青筋が…。うぅ…ここに居たくない…居たくないけどけど、少女様を孕ませないといけないから…)」

メイド「では、無理やりにでも離してもらいます」

女「お?おお!?久しぶりにやっちゃう!?いいねえ、最近魔王が相手してくれないから退屈してたんだよ!!」

男「(あ゛ぁぁぁ…空気が凄くビリビリしてる…窓も割れちゃったし壁にひびが…ど、どうにかして止めなきゃ…!!)」

男「あ、あの!!」

メイド「…はあ。まあいいでしょう。それに今の貴女は魔王様のもの。傷付ける訳にはいきません」

女「えー!?やろうよ!!あ、もしかしてボコボコにした事根に持ってる!?」

メイド「…それで、ゴミ。私に何の相談?」

奴隷「あ、はい!実は少女様を孕ませる事についてなんですが…」

女「ちょっと無視しないでよ!」

メイド「あら、言い訳でもするのかしら」

奴隷「ち、違います!その、少女様が孕まないのはおそらくストレスのせいなんじゃないかと…」

メイド「ストレス?…不自由のない暮らしをさせてるつもりなのだけど?」

奴隷「(確かに、美味しいご飯は食べられるし柔らかいベッドには眠れる。服だって用意してもらった凄く良いものを少女様は着せてもらっている…けど)」

奴隷「いいえ。自由がないんです」

女「あー…」

メイド「…解放しろと?」

奴隷「(女様は同じ境遇なのか納得したように頷いている。…メイド様はまた物凄い形相で僕を睨んでるけど…違います、そうじゃないんです)」

奴隷「ち、違います!!決してそんな事は…!」

メイド「……」

女「そんな睨むなよメイド。奴隷がビビって話せねーだろ」

メイド「…チッ。それで、自由がないとは?」

奴隷「ぼ、僕の言い方が悪かったみたいです…。その、自由というか…外に出してあげてほしいなって…」

奴隷「(そう。少女はこの半年の間一切魔王城どころか部屋から出ていないのだ)」

メイド「それでストレスが無くなると?」

奴隷「そ、それはわかりませんが…」

奴隷「(部屋から出ないのは禁止されている訳じゃない。少女様が自分から出ないのだ。だからストレスになってるかどうかは正直わからない)」

メイド「わからない?わからないのに私を呼び止めて相談しようとしたのかしら?」

奴隷「あ、う、そ、その…」

メイド「そもそも、ストレスと少女様が孕まない事になんの関係があるのかしら?」

奴隷「そ、それはその…」

メイド「…はあ、孕ませる事も出来なければ学もない。やはり処分した方がいいわね」

奴隷「(ゴクリと生唾を飲み込む。ああ、やっぱり僕は処分されるんだ…)」

女「ちょっと待てよメイド。お前は人間の事についてあんまり知らないだろ?ならどうして奴隷がそう思ったのか聞いといた方がいいんじゃねーか?」

メイド「…随分ゴミの肩を持ちますね、女様は」

女「そりゃこの城に唯一いる普通の人間だし、こいつは私のお気に入りだからな!」

メイド「…はぁ」

奴隷「女さん…」

女「で、どうしてそう思ったんだ?ん?」

奴隷「あ、はい!」

奴隷「(女さんが優しい声で聞いてくれる。僕は姿勢を正して自分の考えをお二人に説明する)」

奴隷「怪我一つないのに孕まないし月のものがこない、そういう奴隷がたまにいるんです。大概処分されるんですが、どうしても孕ませたい奴隷がいる場合はある事をすると孕む事があるんです」

女「あること?」

メイド「……」

奴隷「(ちらりとメイド様を見る。相変わらず険しい表情をしてるけど続けろという視線を送ってくる)」

奴隷「はい。それは、外に出してしばらく自由に暮らさせるんです。もちろん、監視したりしますが」

奴隷「そうすると、月のものが来て孕む奴隷が多いんです。…原因は閉じ込められてるストレスだと聞いたんですが僕にはよくわからなくて…。あ、もしかしたら女さんは知っていますか?」

女「へー…。ん?私は元々孕まないからわかんないなー」

奴隷「そ、そうですか…」

メイド「…それをしたら少女様は孕むんですか?」

奴隷「絶対では…その、ありませんが…」

メイド「…いいでしょう。孕む可能性が少しでも上がるのなら試してみるべきです」

奴隷「あ、ありがとうございます!」

奴隷「(よかった…これでもしかしたら少女様を孕ませる事が出来るかも…!)」

メイド「では、魔王様に相談しに行かなければならないので離してくれませんか女様」

女「ず…」

メイド「ず?」

女「ズルい!!私だって外に行きたい!!魔王にお願いする!!」

メイド「ちょっとま」

奴隷「」

奴隷「(また発生した爆風に身体を吹き飛ばされた僕は、頭と背中を強くぶつけて気絶した。…出来るだけ、女様には近寄らないようにしよう)」

更新は以上です

奴隷「うぅ…酷い目にあった…」

奴隷「(目を覚ました僕は、力の入らない身体を引きずってなんとか少女様の部屋に辿り着けた)」

奴隷「(…なんでか知らないけど、なにかが爆発するような音がしてる…地鳴りも凄いし…何かあったのかな?)」

少女「…おかえり」

奴隷「た、ただいま戻りました…」

少女「…なにか、あったの?」

奴隷「(少女様はガラスの水さしに入ってる水を見ながら僕に尋ねる)」

奴隷「わかりません…もしかしたらまた勇者が攻めてきたのかも…」

少女「…そう」

奴隷「(また窓の外を見てる…やっぱり外に行きたいのかな…)」

奴隷「あの、少女様…実はお話したい事が…」

少女「…なに?」

奴隷「(外から僕に視線を移してくれたことを確認し、メイド様にお願いした事を告げる)」

奴隷「…というわけで、上手く行けば外に行けるかもかもしれません」

少女「…別に、行きたくない」

奴隷「そ、そんな事言わずに…きっと気晴らしになりますよ。もしかしたら孕めるかもしれませんし…」

奴隷「(もしこれが上手く行けば少女様を孕ませれるんだ…なんとか説得しないと)」

少女「…孕めるの?」

奴隷「あ、はい。奴隷を孕ませる為によく使う手なんですよ」

奴隷「(少女様は椅子の上で膝を抱える。何かを考える時によくとる姿勢だ)」

少女「…なら、いく」

奴隷「!。本当ですか!よかった…あ、でもまだ外に行けるどうかわからないんでした…」

少女「……」

奴隷「き、きっと大丈夫ですよ!魔王様は少女様が孕む事を望んでいますし…!」

少女「…そう」

奴隷「はい!」

少女「…止んだ」

奴隷「あ、本当ですね」

奴隷「(先ほどまで鳴っていた音や地鳴りが止んだ。勇者が負けたのかな?)」

「オ゛ルァ!!」

奴隷「うわっ!?」

奴隷「(いきなりドアどころか壁一面全てが吹き飛ぶ。何が起こったのかわからなかったけど、咄嗟に少女様を庇う)」

魔王「おい人間、お前が女をけしかけたのか!?」

奴隷「えっ!?ち、違います魔王様!」

奴隷「(現れたのは魔王様だ。いつもの幼げな雰囲気はなく、全身から目に見えるほどの何かよくわからないオーラを出している。よく見れば、服は所々破けて髪はあちこち縮れている)」

魔王「じゃあなんで奴隷達ばっかりズルいとかわけのわかんねぇ事口走ってたんだ!?あ゛あ!?」

奴隷「し、知らなっ」

奴隷「(瓦礫を蹴散らしながら僕の元に来て胸倉を掴まれる。…身長が僕より低いから自然と下に引っ張られるんだけど、凄く苦しい…なんか肌が焼けるように痛いし…っ!)」

少女「…魔王。奴隷をいじめないで」

奴隷「(すぐ横から少女様の声が聞こえる。横目で見ると先ほどまで椅子に座っていた少女様がいた)」

魔王「あ、少女ちゃん!…うえーん!聞いてよ少女ちゃーん!」

奴隷「っ!…かっ!…あ゛…」

奴隷「(あの、魔王様出来れば手を…そろそろ息が…!)」

少女「…どうしたの?」

奴隷「!?」

魔王「あのね、おやつを食べてたらいきなり女が殴り掛かってきたの!」

少女「…おやつ、なんだった?」

魔王「アップルパイ!でも、女のせいで吹き飛んじゃった…」

少女「…アップルパイ、美味しかった」

魔王「え!?少女ちゃんは食べたの!?ずるいずるいずるいー!」

少女「…あとで、メイドに作って貰えばいい」

魔王「うぅ…そうする…」

少女「…それで、何か用?」

魔王「あ、うん!人間に用があって来たんだけど…あれ?」

奴隷「」

少女「…気絶、してる」

魔王「それで、どうして少女ちゃんを外に出したいの?」

奴隷「え、えっと…メイド様にお伝えしたのですが…」

魔王「女のせいでメイドの上半身が吹っ飛んでて話が聞けねぇんだよ。女は今氷漬けにしてるし」

奴隷「ごめんなさい…」

少女「…すごい」

魔王「でしょ!?凄いでしょー♪」

奴隷「(…少女様と一緒にいる時に魔王様が来てよかった…)」

奴隷「ではご説明させていただきます」

奴隷「(今日で三度目になる少女様を外に出す理由を説明をする。…今度からは魔王様に直接お願いした方がいいのかなぁ…でも僕なんかが気軽に会いに行ける方じゃないし…)」

魔王「うん、いいじゃない?」

奴隷「え、よろしいんですか?メイド様はあまり良い顔をなさいませんでしたが…」

奴隷「(まさか、即決とは…)」

魔王「だって少女ちゃんが孕むかも知れないんだよね?なら別にいいよ」

奴隷「あ、ありがとうございます!」

魔王「じゃ、場所決めたら教えてね。転送してあげるから」

奴隷「(そう言って魔王様は少女様を軽く抱きしめて部屋から出て行った。…壁とドア、またメイド様に頼まなきゃなぁ…)」

更新は以上です。

男はただの間違いですすいませんorz

後日談と言いましたが、長さ的に後編みたいな扱いになると思います多分…。

ラストしっかりさせますので良ければまたお付き合いください。

奴隷「と、とりあえず許可が出ましたね少女様!」

少女「…うん」

奴隷「えっと…行きたい所ありますか?」

少女「…ない」

奴隷「そうですか…」

奴隷「(少女様が行きたい所に行くのが一番だと思うんだけど…そうじゃないなら…うーん…)」

少女「…奴隷は?」

奴隷「え、僕ですか?」

少女「…うん。行きたいとこ、ある?」

奴隷「ないですね…あまり興味がないので…」

少女「…そう」

奴隷「……」

少女「……」

奴隷「(ど、どうしよう…このままだと場所が決まらない…!)」

奴隷「あ、じゃあ逆に行きたくない所はありますか…?」

少女「…ない」

奴隷「……」

少女「……」

奴隷「(うぅ…気分転換になりそうな所気分転換になりそうな所…あっ!)」

奴隷「少女様が生まれた場所なんてどうでしょうか?」

少女「……」

奴隷「(少女様が立ち上がりベッドに倒れこむと顔をシーツに埋めて横目で僕を見てくる)」

奴隷「恐らく、魔王様に滅ぼされてるとは思いますが…」

少女「…奴隷は」

奴隷「はい?」

少女「…生まれた場所に、行きたい?」

奴隷「行けと命令されればもちろん行きます!」

少女「…そうじゃなくて」

奴隷「?」

少女「奴隷は命令無しで、自分の生まれた場所に行きたい?」

奴隷「は、はぁ…そうですね…」

奴隷「(少し考える。僕が生まれた場所…商人様の奴隷小屋…うーん…改めて行きたいとは思わないなぁ…特に何もないし…)」

奴隷「…改めて行きたいとは、思いませんね…」

少女「…私も、そんな感じ」

奴隷「そうなんですか?」

少女「…うん」

少女「……お母さんも、死んじゃってる…だろうし…」

奴隷「(シーツを掴んで顔を埋める少女様。…でも、そうするとどうしよう…僕が知ってる所なんて貴族様のお家と市場ぐらいだし…)」

少女「……」

奴隷「そ、そうだ。メイド様に聞いてみませんか?」

少女「…メイド?」

奴隷「はい。メイド様は魔王様と一緒に出かける事が多いらしいので!…あと、壁とか直してもらわないといけないですし…」

奴隷「(改めて破壊された壁を見る。廊下から部屋の中が丸見えだ…。時折、魔族の皆様が通るけど全員不思議そうな顔をしてる…)」

少女「…そう。じゃあ、任せる」

奴隷「はい!任せてください!では、行ってきます!」

奴隷「とは言ったものの…」

奴隷「(そういえば、魔王様がメイド様は上半身が吹き飛んだって言ってたよね…)」

奴隷「どうしよう、他に知り合いなんていないし…」

奴隷「(女様に聞く?いや、女様も長い間ここにいるって聞いたし…それに今は氷漬けらしいし…)」

奴隷「(他の魔族の方やメイドの方はメイド様みたいに無視されるし…)」

奴隷「…うーん…魔王様に聞きに行くしかないのかな…でも…」

??「なにをしているのですか」

奴隷「(階段前で悩んでいると、後ろから声をかけられる。あ、邪魔だったかな?)」

奴隷「あ、すいま!?」

奴隷「(振り返り、頭を深く下げると目の前に顔が!)」

奴隷「うわっ、あっ!」

??「なにをしているのですか?と、きいているのです」

奴隷「(僕がびっくりして後ろに下がったのに、見知らぬメイド様は気にせず詰め寄ってくる)」

奴隷「あ、えっと…その…」

??「まおうさまからがいしゅつのきょかをえて、しょうじょさまとそうだんしているのでは?」

奴隷「(下から凄い睨まれてる…。こんなちっさなメイドの方っていたっけ?というか、目が凄く怖い…)」

奴隷「ちょ、ちょっと魔王様に相談したい事がありまして…」

??「…なにをそうだんするかはしりませんが、それはまおうさまでないとだめなのですか?」

奴隷「いえ、メイド様でも良いんですが…」

??「そうですか。では、ききましょう」

奴隷「…?」

奴隷「(下から見上げていたメイド様は一歩身を引いて僕を見ている)」

奴隷「あの、メイド様か魔王様に相談をしたいのですが…」

??「はぁ…なにをいっているのですか。わたくしはメイドです」

奴隷「…え?」

奴隷「(目の前にいるのは少女様と同じくらいのメイド服を着た女の子だ。とてもあのメイド様には見えない。…いや、表情とか目はメイド様並みに怖いけど…)」

メイド「みためでしかはんだんできないなんてほんとうにごみですね」

奴隷「…え、本当にメイド様ですか?でも、どうしてそんな姿に…?」

メイド「たいそしきがはんぶんほどなくなったので。それよりも、そうだんとはなんですか」

奴隷「(たいそしき?…よくわかんないけど、無視しないで話を聞いてくれそうだし相談してみようかな)」

奴隷「実は…」

メイド「ほんとうにつかえないですね」

奴隷「すいません…」

メイド「ようするに、そとのじょうほうをしりたいと」

奴隷「はい。出来れば沢山教えていただければと…」

奴隷「(少女様の興味が何かわからない今、出来るだけ沢山選択肢が欲しいんだよなぁ)」

メイド「…わかりました。それでしたらわたくしよりもにんじゃがいいでしょう」

奴隷「にんじゃ?」

メイド「きなさい、にんじゃ」

忍者「……」

奴隷「うわっ!?」

奴隷「(音もなくメイド様の影から人?が現れると、膝を着いてメイド様に頭を垂れている)」

メイド「そとのじょうほうしゅうしゅうのにんむをあたえているにんじゃです。このものにきくといいでしょう。…にんじゃ、このごみとしょうじょさまにおまえのしりうるそとのじょうほうをおしえるように」

忍者「……」コクリ

奴隷「わ、わかりました」

メイド「では、わたくしはこれで」

奴隷「はい、ありがとうございました!」

奴隷「(背を向けて歩き出すメイド様に頭を下げる。よかった、これで少女様の行きたい所が決まるかも…)」

忍者「……」

奴隷「よろしくお願いしますね、忍者様」

奴隷「(メイド様を共に見送った忍者様にも頭を下げる。忍者様は一つ頷くと僕の目の前に移動して顔を見つめてきた)」

奴隷「あ、自己紹介がまだでしたね。僕は魔王様より少女様を孕ませろと命令された奴隷といいます」

忍者「……」

奴隷「…?」

忍者「……」

奴隷「え、えっと…?」

奴隷「(む、無視されてる?なにか失礼な事言ったかな…?)」

忍者「……」

奴隷「(何かを察したのか、忍者様は顔を覆っている布をずらし口元を見せてくれた。…口が、縫い合わされている…)」

奴隷「え、えっと…喋れないんですか?」

忍者「……」コクリ

忍者つ[筆談は出来る。問題ない]

奴隷「(忍者が懐から羊皮紙を取り出し、何かを書いて僕に見せてくれる…けど)」

奴隷「す、すいません…僕、字が読めなくて…」

忍者「!?」

更新は以上です

奴隷「……」

忍者「……」

奴隷「(ど、どうしよう…少女様が読めるならいいんだけど…。…いや、多分読めないと思う…ずっと監禁されてた訳だし)」

忍者「…!」

奴隷「(忍者様が何かを思いついたように手を叩くと、懐から何かを取り出して僕の目の前に差し出してくれた)」

奴隷「…?」

奴隷「(ガラスの…玉?)」

忍者「ーーー」

奴隷「…?」

奴隷「(忍者様が中指と人差し指を立て目を瞑ると、ガラスの玉がぼんやりと光ると少女様の部屋が中に現れた)」

奴隷「これは…」

奴隷「(中にいる少女様はこちらに気付いた様子もなく、ベッドの足をパタパタさせている)」

奴隷「遠くの事がわかる魔法ですか?」

忍者「……」コクコク

奴隷「す、すごい…」

奴隷「(これなら、言葉もいらないし言葉で説明するよりもわかりやすいよね)」

忍者「…♪」

奴隷「じゃあ、早速少女様の部屋に行きましょう!」

忍者「……」コクリ

奴隷「少女様、外の事について教えてくださる忍者様をお連れしました」

奴隷「(瓦礫を踏み越えながら忍者様と少女様の部屋に入る。すると、ベッドでうつ伏せになって寝ていた少女様は気怠げに顔を上げるとまず僕を見て、後ろにいる忍者様に視線を移す)」

少女「……」

忍者「……」

少女「…黒い」

忍者「……」コクリ

奴隷「あ、あはは…そうですね…」

忍者「……」

少女「…ん」

奴隷「(少女様は欠伸をしてベッドの端に移動して腰掛ける)」

奴隷「…あ、忍者様は喋れないんです。なので自己紹介は僕がさせていただきました」

忍者「……」コクリ

少女「…そう」

奴隷「で、では早速ですが外について教えていただけますか?」

忍者「……」コクリ

奴隷「(そう言って忍者様は懐からガラスの玉を出し、少女様の目の前に差し出す)」

少女「…?」

奴隷「いかがですか?」

少女「……」

奴隷「(少女様は目の前に出されたガラスの玉を不思議そうな顔を浮かべて中を覗きこんでいる。驚いたりしないんだ、と少しだけ思いながら僕も中を覗く)」

奴隷「……」

少女「……」

忍者「……」

奴隷「…あ、あの…忍者様?これは…?」

忍者「…?」

奴隷「(中に現れたのはどこかの兵士が違う兵士を斬り倒し、トドメをさしている場面だ。…あ、矢が何本も当たって倒れた)」

少女「……」

奴隷「そ、外の情報と言いましたが…その、戦の様子とかではなくてですね…」

忍者「…?」

奴隷「なんて言えばいいんでしょう…楽しそうな場所、とか綺麗な場所を教えて欲しいんです」

奴隷「(あぁ…少女様がもう窓の外を見始めてる…なんとかしないと…!)」

忍者「……」

奴隷「し、知ってますか?」

奴隷「(忍者様は僕から視線を外して何やら考えていた)」

忍者「…!」

奴隷「(何かを思い出したのか、人差し指と中指でガラスの玉を叩くと兵士達が殺し合っていた場面が揺らぎ、沢山の人が一つの台に群がっている場面が映る)」

奴隷「(…?。男の人が台の中央にある何かに玉を軽く投げ入れて転がしてるだけだけど…みんな楽しそう!)」

奴隷「少女様、ここはどうですか?」

少女「…よくわかんない。行きたくない」

忍者「……」

奴隷「そうですか…では、次お願いします忍者様」

忍者「……」コクリ

奴隷「(次に現れたのは…これは、山の頂上…?)」

奴隷「す、すごい…お城があんなに小さく見える…!」

奴隷「(市場からお城を見たことあるけど…あんなに大っきいお城が…)」

奴隷「ここなんてどうですか?きっと凄い風景が見られますよ」

少女「……」

奴隷「(少女様がじっと見てる…ここなら…!)」

少女「…寒そう」

奴隷「え?」

少女「…寒いの、いや」

奴隷「……」

奴隷「(たしかに、山頂には雪が積もってる…風も強そうだし…)」

奴隷「す、すいません忍者様…違う場所を…」

忍者「……」

奴隷「(ああ、忍者様が露骨に肩を落としてる…)」

忍者「……」

奴隷「(次に映し出されたのは…これは、池?)」

少女「…?」

奴隷「(でも、凄く広い…たしか…)」

奴隷「湖…ですか?」

少女「…湖」

忍者「……」フルフル

奴隷「え、違うんですか?」

忍者「……」コクリ

奴隷「(こんなに大きいのに…違うんだ…)」

少女「…町が、ある」

奴隷「あ、本当ですね」

忍者「……」

奴隷「(池の側には大きな町があった。僕達の反応を見て忍者様が町の様子を映してくれる)」

奴隷「市場…ですね。かなり賑わってるみたいです」

少女「……」

奴隷「(僕が見た市場よりも遥かに大きく、活気が凄い。見たこともない物や食べ物が沢山あるなぁ…)」

少女「行く」

奴隷「…え?」

忍者「!」

少女「ここに行きたい」

奴隷「(少女様が食い入るようにガラス玉を見ている。…なにがそんなに気に入ったのかな?よくわからないけど、少女様の行きたい所が決まってよかった!)」

奴隷「では、ここに行くという事でよろしいですか?」

少女「うん」

奴隷「わかりました。では、早速魔王様に報告してきま」

忍者「……」ジー

奴隷「…こほん。してきていただけませんか?忍者様」

忍者「…!」コクコク!

奴隷「(凄く嬉しそう…魔王様に会いたかったのかなぁ…)」

奴隷「では、よろしくお願いしますね。今日はご協力ありがとうございました!」

忍者「…♪」

奴隷「(忍者様に頭をさげると、ガラス玉を懐にしまいながら頷いてくれた。…少女様が名残惜しそうにガラス玉を見てる)」

忍者「……」

奴隷「(忍者様がベッドの影に立つと、ゆっくりと水に沈んでいくように影の中に入り姿を消した)」

奴隷「…凄いなぁ…」

少女「…楽しみ」

奴隷「(少女様はあの町に想いを馳せてるのか、少しだけ微笑みながら足をぷらぷらさせている)」

奴隷「(そんな様子を見て、僕もつい笑顔になってしまう。さて、じゃあ僕はっと…)」

奴隷「行く前にいろいろ準備しないといけませんね」

奴隷「(少女様に必要な物を纏めないと…。あ、魔王様にお願いしてお金も頂かないとマズイよね)」

少女「…うん、お願い」

奴隷「はい、任せてください!」

少女「…ところで、奴隷」

奴隷「なんですか?」

少女「…壁、直さないの?」

奴隷「あ゛」

更新は以上ですー

忍者「……」

魔王「ふーん…それであの港町に行きたいんだー♪」

忍者「……」コクリ

魔王「あそこの海は綺麗だもんねー…うん、わかった。いいよ♪」

忍者「…♪」

メイド「お待ちください魔王様」

魔王「あ、メイド。治ったみたいだね♪」

メイド「見苦し姿をお見せしてしまい申し訳ありませんでした」

魔王「で?」

メイド「少女様の外出する際の監視と護衛はいかがいたしましょう?」

魔王「あの人間は?少女ちゃん気に入ってるみたいだし」

メイド「…あのゴミは戦闘能力は皆無です。魔力すら有しておりませんし」

魔王「そうなんだー…じゃあ誰かに命令しなきゃねー…誰がいいかな?」

忍者「!!」

メイド「…でしたら大将軍などはいかがでしょう?実力は申し分ありませんし」

忍者「……」

魔王「えー…大将軍連れて行ったらあの海が潰れちゃうよー。あそこ私も気に入ってるだよ?」

メイド「たしかに大将軍の大きさではあの美しい海が踏み荒らされてしまいますね。失念しておりました」

魔王「もー!…じゃあ他に誰かいいのいる?」

忍者「!!」

メイド「…女様の気分転換も兼ねて護衛と監視をお願いしてはいかがでしょう?」

魔王「……」

メイド「……」

忍者「……」

メイド「…失礼しました。女様では人間を滅ぼしかねませんね…」

魔王「…はぁ…」

忍者「…!…!」

魔王「…?忍者、行きたいの?」

メイド「お待ちください。それでしたら私が」

忍者「!!」コクコク!

魔王「それじゃ、忍者にお願いしようかなぁ♪」

忍者「~♪!!♪」コクコク!

メイド「…畏まりました」

魔王「じゃ、あとは任せるねー♪私は疲れたからちょっと寝るねー…」

忍者「~♪」コク

メイド「はい、お任せください。おやすみなさいませ、魔王様」

メイド「……」

忍者「~♪」

メイド「…でしゃばり過ぎでは?」

忍者「…?」ニヤニヤ

メイド「魔王様のご命令を頂けたからといって調子に乗らないでください」

忍者「~♪」

メイド「…ずるい」

メイド「というわけで少女様とゴミを港町に連れて行きます」

奴隷「ありがとうございます。よかったですね、少女様」

少女「…うん」

奴隷「(心なしか、嬉しそうな表情を浮かべてる…。よし、これで僕の目的も果たせそうだ)」

メイド「では、今からお送りしますが準備はよろしいでしょうか?」

奴隷「(窓の外に目を向ければ陽が沈み始めている。今から行くとなるといろいろ大変だなぁ)」

少女「…奴隷、大丈夫?」

奴隷「はい、もちろんです。…あ、メイド様」

メイド「なんですか?」

奴隷「大変心苦しいのですが…その」

奴隷「滞在費を、いただけないでしょうか?」

奴隷「(人はいるだけでお金がかかる。それに、今回の目的は少女様のストレス発散だ。出来るならある程度のお金が欲しい…)」

メイド「…お金、ですか。わかりました、ではどうぞ」

奴隷「(メイド様が空中に手を伸ばすと黒い渦が現れ僕の顔ほどはありそうな皮袋がメイド様の手に落ちた)

メイド「どうぞ?」

奴隷「え?」

メイド「滞在費です。少なすぎますか?」

奴隷「(差し出された皮袋を見る。…メイド様は軽々と持っているけど、皮袋は今にも弾けんばかりに膨らんでいる。もし、仮に中身が全てお金だとすると…)

奴隷「え、えと…」

メイド「一応、中身は全て金貨ですが…足りないようですね」

奴隷「き、金貨!?これ全部ですか!?」

メイド「ええ。今追加で出しますので少々お待ちください」

奴隷「大丈夫!こ、この位で大丈夫です!足ります!!」

奴隷「(両手に皮袋を持ったメイド様は不思議そうに首を傾げる)

奴隷「(…皮袋一杯に詰まった金貨なんて見たことがない。銅貨…いや、銀貨だと思っていた。まさか、金貨なんて…しかも、こんな簡単に頂けるなんて…)

奴隷「(ちなみに、僕の値段は金貨10枚だったりする。数少ない僕が自慢できる事だ)」

少女「…奴隷」クイクイ

奴隷「は、はい!なんでしょうか少女様?」

少女「…早く、行きたい」

奴隷「…申し訳ありません。では、行きましょうか少女様」

奴隷「(メイド様に一礼し、皮袋を一つ受け取り纏めた荷物を持つ)

メイド「準備はよろしいですね?期限は設けませんのでしっかり孕めるようストレスを発散してきてくださいね」

少女「…頑張る」

奴隷「はい、おまかせください」

メイド「では、行ってらっしゃいませ」

更新遅い&内容少なくてすいません。
出来るだけ定期的に更新出来るように頑張ります

奴隷「(初めて魔王様のお城に来たような感覚に僕はまた意識が遠くなる)」

奴隷「(耐性がついたと思ったんだけどなぁ…まだ二回目だし仕方ないか)」

奴隷「(身体から力を抜き、意識を手放そうとしてーーー)」

少女「起きて」

奴隷「(身体を揺さぶられて吐き気が催すけど、少女様に声をかけられたので手放そうとした意識をしっかり持ち直してゆっくりと目を開ける)」

奴隷「……っ。す…すいません」

奴隷「(目を開ければ少女様が僕を見つめていた)」

少女「大丈夫?」

奴隷「はい、なんとか…ですが。少女様は平気なのですか?」

奴隷「(無意識の内に倒れていたであろう僕と違って、少女様は平気そうな顔をしている)」

少女「うん。慣れてるから」

奴隷「…なるほど」

奴隷「(僕だって苦痛には慣れてるんだけどなぁ…ちょっと悔しい)」

少女「…まだ、休む?」

奴隷「あ、いえ。もう大丈夫です!それに…」

奴隷「(慌てて身体を起こして周りを見渡す。陽が落ち始めているからか薄暗い、けど何があるかくらいはわかる)」

少女「…ここ、どこ?」

奴隷「(少女様は辺りを見渡して僕に問いかけてくる。僕はゆっくりと立ち上がり少女様の質問に答える)」

奴隷「僕もはっきりとはわかりませんが…おそらくあの街の中だと思います」

奴隷「(どこかの路地裏だろう。人の気配は一切なく埃っぽい。だけど耳には陽気な笑い声や話し声が聞こえる)」

少女「…なら、行こう」

奴隷「わかりました。しかし少女様、最初はどこから行きますか?」

少女「市場」

奴隷「市場、ですか」

少女「うん」

奴隷「…多分、もう市場はやっていないです」

奴隷「(市場が開いてるのは午前中だけのはず。午後からもやっているところはほとんどない…よね)」

少女「え」

奴隷「もう直ぐ陽が沈みますからね、おそらくは…」

少女「……」

奴隷「(ああ、そんなに落ち込まなくても…)」

奴隷「大丈夫ですよ。また明日になれば市場は開きますから」

少女「…なら、明日行く」

奴隷「そうしましょう。とりあえず、今日は宿に泊まって休みましょうか」

少女「うん」

奴隷「(懐に入れた財布を手で確認してから少女様と手を繋ぐ。とにかく今は日が落ちる前に急いで宿を探さなきゃ)」

奴隷「じゃあ、僕の手を離さないでくださいね」

少女「わかった」

奴隷「(少女様は僕の手を強く握り一緒に歩き出す。…久しぶりの外の世界、楽しんでくれたらいいんだけど…)」

…がやがや…がや…


酒場店主「今から一泊だあ?」

奴隷「はい。一人部屋でも構わないのですが…」

奴隷「(あれから何軒宿屋を回っただろう…だけど、言われる事は全部一緒…)」

店主「あほか。こんな時間に空き部屋があるわけねーだろ」

奴隷「…そう、ですよね…」

少女「……」クイクイ

奴隷「…少女様、申し訳ありません。僕の失敗です」

奴隷「(少女様に裾を引っ張られ僕は頭をさげる。事を急ぎすぎた僕の失敗だ…。こんな活気あふれる街なら宿の一つ簡単にとれると思っていた僕が間違っていた)」

少女「別に、いい」

奴隷「ありがとうございます…しかし…」

奴隷「(頭を下げたままちらりと横目で宿の出入り口を見る。もう外は真っ暗だ。これ以上宿を探しても結果は同じだろう)」

店主「あー…目の前でそんな事されっとなぁ…」

奴隷「(僕が頭を下げていると、頭上から乱暴に頭を掻く音と困ったような声で店主さんが声をかけてくれた)」

店主「なあお前さん。この御令嬢の付き人なんだろ?立派な身なりしてるしなんか伝手とかねーのかよ」

奴隷「…この街に来るのは初めてでして…」

店主「……」

少女「馬小屋でも、いいよ…?」

奴隷「そんな!僕だけならまだしも少女様を馬小屋なんかに泊めさせられませんよ!」

店主「……なあ、お前さんら金はあるのか?」

奴隷「…多少は」

奴隷「(僕は顔を上げて胸元に収めている財布に触れる。多少どころか、はち切れんばかりに金貨が詰まっている。だけどこれは魔王様に頂いた大切なお金。むやみやたらに使うべきじゃない。…それに)」

店主「ならよ、この街の中心に馬鹿でかい宿屋があるからそこに行ったらどうだ?」

奴隷「!そ、そこなら泊まれるでしょうか?」

店主「部屋なら空いてると思うぜ?なにせ貴族達御用達の宿だしな。ただ、一泊するだけでアホみたいな金がいるがな」

奴隷「…アホみたいな金…」

奴隷「(魔王様から頂いた大切なお金…無駄遣いはするべきじゃないけど…)」チラッ

少女「…?」

奴隷「(悩む必要なんてないよね。今回の外出は少女様のストレス発散なんだし)」

奴隷「…ありがとうございます。そちらに当たってみます」

店主「おいおいまじかよ…いや、泊めなかった俺が言うのもあれだけどよ…」

なんとかお盆休み中に終わらせたいと思います。今日の更新は以上です

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年10月29日 (日) 17:11:53   ID: HPL69FRU

ただひたすら不快になるのに完結すらしないとか…まさにゴミだな

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