「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part9 (1000)

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」とは
 2ちゃんねる - ニュー速VIPで生まれた
 都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたりそんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
 まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりと色々活動しているスレです。
 基本的に世界観は作者それぞれ、何でもあり。
 なお「都市伝説と…」の設定を使って、各作者たちによる【シェアード・ワールド・ノベル】やクロス企画などの活動も行っています。
 舞台の一例としては下記のまとめwikiを参照してください。
まとめwiki
 http://www29.atwiki.jp/legends/
まとめ(途中まで)
 http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html
避難所

http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/
■注意
 スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
 本スレとはあまりにもかけ離れた雑談は「避難所」を利用して下さい。
 作品によっては微エロ又は微グロ表現がなされていますので苦手な方はご容赦ください。
■書き手の皆さんへ
 書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップ推奨(どちらも非強制)
 物語の続きを投下する場合は最後に投下したレスへアンカー(>>xxx-xxx)をつけると読み易くなります。
 他作品と関わる作品を書く場合には、キャラ使用の許可をスレで呼びかけるといいかもしれません。
 ネタバレが嫌な方は「避難所」の雑談スレを利用する手もあります。どちらにせよ相手方の作品には十分配慮してあげて下さい。
 これから書こうとする人は、設定を気にせず書いちゃって下さい。
※重要事項
 この板では、一部の単語にフィルターがかかっています。  メール欄に半角で『saga』の入力推奨。
「書き込めません」と出た時は一度リロードして本当に書き込めなかったかどうか確かめてから改めて書き込みましょう。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1361373676

◆用語集
【都市伝説】→超常現象から伝説・神話、それにUMAや妖怪のたぐいまで含んでしまう“不思議な存在”の総称。厳密な意味の都市伝説ではありません。スレ設立当初は違ったんだけど忘れた
【契約】→都市伝説に心の力を与える代わりにすげえパワーを手に入れた人たち
【契約者】→都市伝説と契約を交わした人
【組織】→都市伝説を用いて犯罪を犯したり、人を襲う都市伝説をコロコロしちゃう都市伝説集団
【黒服】→組織の構成員のこと、色々な集団に分けられている。元人間も居れば純粋培養の黒服も居る
【No.0】→黒服集団の長、つおい。その気になれば世界を破壊するくらい楽勝な奴らばかり
【心の器】→人間が都市伝説と契約できる範囲。強大な都市伝説と契約したり、多重契約したりすると容量を喰う。器の大きさは人それぞれである。器から少しでも零れると…
【都市伝説に飲まれる】→器の限界を迎えた場合に起こる現象。消滅したり、人間を辞めて都市伝説や黒服になったりする。不老になることもある

立て乙
ついでに一番乗り

「良い子のみんな! こんにちわ! 倶爾食品工場に見学に来てくれてどうもありがとう
 今日はこの工場のマスコットであるこの僕、缶詰人間のダレット君が君たちにどうやってこの工場で冷凍食品を作っているかを教えるよ
 この頭の代わりにくっついている缶詰、オシャレでしょう?
 この中に実は脳が入ってるんだ……なーんて冗談冗談! 面白かった?
 それじゃあ皆僕の後に付いてきてね。まずは解体処理室だ
 あのガラスの向こうの部屋で業者さんから運ばれてきた失敗作を分解して骨なんかを取り除くんだ
 失敗作自体は国の予算がついているから一杯供給されるけど、処分の為の費用がかさむからこうやってリサイクルしてるんだよ
 これで処分費用の七割が削減されるし資源の無駄遣いも避けられるからとってもエコなんだ
 ここで分けられた骨と肉と内臓はそれぞれ別の加工室へと行くよ
 それじゃあ先に進んでみよう
 このガラスの向こうは先程バラバラになったお肉を処理する部屋さ
 ここでは失敗作の肉片を鶏肉と混ぜて専用のマシーンで細かく切り刻んでいくんだよ
 ここで使われている刃物は特注品でとっても切れ味が良いから簡単にお肉を細かくできるんだ
 原型を留めないくらいぐちゃぐちゃにしたら今度はこの長ーい管を通って型の中に流し込まれるよ
 実は途中で風味を増すために牛さんの油を混ぜているんだ
 安くても美味しいものを皆に食べてもらうために工場の人達は一生懸命工夫しているんだ
 あっ、ここから勝手に出て行っちゃダメだよ。工場のお兄さんに捕まったら怒られちゃうからね
 ……ってああ、注意したのに。お兄さん達は怖いんだよー?
 っと、さあさあ次に進もうか。今度は骨を処理する部屋だよ
 ここは熱いからガラスも特別製の熱を通しにくい素材になっているよ
 さっきのお部屋から運ばれてきた骨はお鍋の中に入れてダシをとるよ
 皆も食べたことの有る倶爾食品のインスタントタンメンのスープはここで作っているんだ
 処理に困る食材も知恵と工夫で皆を幸せにする美味しい食べ物に早変わりさ
 皆のおうちにもある圧力鍋を使って骨の内側から美味しいエキスをとっているんだ
 できたスープは急冷と加熱を繰り返して乾燥させて粉末スープにしてるんだ
 こうすれば保存も効くし風味も逃げないから今ではいろんな工場でこの方法を利用しているよ
 あっ、急に気持ち悪くなっちゃったお友達は医務室が有るからそちらへどうぞ
 最後は内蔵を加工する部屋だね
 実験体はここに入る前に食事を抜かれているから内蔵は基本的に綺麗なんだけどそれでもにん……おっと、生き物の内蔵だからね
 ちゃあんと洗浄しておかないと駄目なんだ
 内蔵は細かくすり潰してペースト状にして塗料なんかに使うよ
 多くの人が魔法陣の作成に使うんだ
 君たちの足元にも似たようなものがあるだろう?
 ああもう皆驚かないでよ、そんなに急いで走ろうとしたら捕まっちゃうよ?
 泣くことはないよ、君たちは特別に選ばれたんだからね
 失敗作をここで降ろしたトラックは帰りに君たちみたいな資料を詰めてまた研究所に戻るんだ
 そうすると燃料に無駄がないだろう? 研究も経済的な活動なんだよねえ
 それじゃあ今日は一杯勉強してもらったと思うけどこんなこと知られちゃうと僕達の会社のイメージダウンにもなっちゃうし
 君たちだってもうどうせここの品物は食べてくれないだろうから精々ここの役に立ってね?
 それじゃあ、ばいば~い!」

 

新スレ乙ですー!
もうじき二桁ですね

>>4
怖ええええええ!?ブラックってレベルじゃないぞこの食品工場wwww

なにか忘れてると思ったら投下後の長い言い訳タイムを忘れてました
今回は「失敗作」ってなんだろうな?と考えさせたかった話だったりします
運ばれてった子供達は?
捕まった子どもたちは?
選ばれたって何に?
そもそもこんな説明聞かされていた子供達はどんな顔をしてたの?
黒幕は?
いろんなことを想像してもらえるようにダレット君の語り口はテンポ良く小気味よく進めて見た次第でございます
まあ細かいことは抜きに

>>5
怖いといってもらえるのが一番嬉しいのです
ありがとうございます

【僕は小説が書けない 第三話「僕とジャックちゃんの微妙な距離感」】

 弟が家に来た翌朝のことである。

「おい悲喜、起きろ」

 時刻は朝六時、リビングのソファで寝ていた僕は生まれて初めて美少女に起こされるという経験をしていた。
 特に何が良いって若干つり目気味のツインテ黒髪美少女にやや乱暴に起こされているというシチュが良い。
 まず吊り目っていうのが良い。
 世間の皆様は吊り目というときついイメージを思い浮かべるかもしれないが、世の中というのはうまくできていてそういう娘に限ってデレると甘々なのだ。
 そのギャップにより生まれる萌えの小宇宙は普段ノンキしている僕ですら我を忘れてしまうほどのものである。
 さらに僕にしかデレないというプレミアム感が小市民たる俺の卑小な自尊心を高めさせる。
 しかもレモンちゃんは見た目は中学生くらいなので更にプレミア倍率ドンである。
 世間一般の中学生のガキというものは概ね僕のようなダメ人間には冷たいだけなのだがレモンちゃんは僕にこれだけいじめられても健気に朝起こしに来てくれる。
 こんなに俺に構ってくる女性はおかーちゃんくらいのものである。
 中学生のプレミア感とおかーちゃんの鬱陶しさをかけることで全てが好転するのだ。
 あとやや乱暴に起こされているってのもまた良い。
 乱暴にしちゃうがそれでも起こしに来ちゃうってところに既にツァンディレの萌芽を感じさせるではないか。
 男っぽい口調も萌えである。
 一人称こそ“私”だが彼女は意識して男性っぽくしゃべっている気配が有る。
 それは逆を言えば自分の女性である部分をどうしようもなく意識しているということであり、それはすなわち彼女に自分が女性であると意識させるようなことをしたくなりますねデュフフフフフフということなのだ。
 でも実際彼女をこうして家まで連れ込んできたものの僕は何もできないチキン野郎なのである。
 彼女は確かにあの女を殺していたが、それで萎えたわけではない。
 ナマの女の子にあれこれして好意を向けてもらうというのが僕にとってファンタジーなのである。
 僕は画面の向こうの女の子になら何度でも好きと言われたことはある。
 だが彼女らが見ているのは僕がかぶっているプロデューサーやクラスメイトといった皮なのであり僕自身ではない。
 それが僕に安心を与えてたわけだが今回はそうもいかない。
 そもそもレモンちゃんは僕のことをウザいとか言ってたのだ。
 あの時はとっさにナイフを投げて助けてくれたけどそれだってあくまでお互いの生存の為であって……
 とまあ考えていても仕方ないのでとりあえず返事することにした。
 
「やあレモンちゃん、どうしたんだい?」

「そのレモンちゃんというのをやめろ」

 睨まれた。
 やだ可愛い。

「だって名前無いんだろ? ならどう呼んだって僕の勝手じゃないか」

「くっ……とにかくやめろと言ったらやめろ!」

「……じゃあ良いよ、なんて呼べば良い?」

 彼女は明らかに「しまった」という表情を浮かべて僕から目をそらす。
 まだ考えてなかったのか。

「……ジャック?」

 安直である。

「解ったよジャックね、ジャックちゃんジャックちゃん」

「ふっふっふ、分かれば良いんだ」

 若干満足そうな顔をしているが哀れである。

「ジャックちゃん、昨日の俺と路樹の話聞いてた?」

「……悪いが、カレーを食べた後から記憶が」

「そうか、じゃあ仕方ないから話してやろう」

 僕は昨日弟から幽霊屋敷の探索を頼まれたことを彼女に話した。
 彼女は何故だか興味深そうにそれを聞いていて、全部聞き終わると僕が聞く前に

「私も行くぞ! 絶対行くからな!」

 と言い出した。

「なんでそんなやる気満々なのさ
 まあ僕も今日の内に急いで行こうとは思ってたけど」

「私のような都市伝説はそういう場所が好きなんだよ
 あんた達が温泉でのんびりするのと一緒だ」

 浴衣姿ではしゃぐジャックちゃんを妄想する。
 良いね……すごく良い。

「なんか変なこと考えてるだろ」

 この以心伝心っぷりに運命を感じちゃうのは僕だけでしょうか。

「本当にウザいしキモいし救いようがないな……」

 ジャックちゃん笑顔がひきつってらっしゃる。
 蔑まれてる! 今黒髪美少女に蔑まれてる!
 でもネットで煽られただけで二週間くらい根に持つ僕は少し傷ついてしまう。
 興奮するんだけど少し嫌な気分にもなるのだ。
 面倒くさい!

「…………」

「ど、どうしたなんか喋れよ」

「あー……うん」

 ジャックちゃんが明らかにうろたえ始める。
 
「わ、悪かった。言い過ぎた
 今日はお前にちょっと話が有ってきたんだけどそのなんていうか……私は口悪いからさ
 ここ、今回は本当にお前を傷つける気は無かったんだよ」

 声が震えている。
 どこか怯えた感じだ。
 もしかしたら都市伝説というのはメンタルが不安定なのかもしれない。
 情緒不安定で依存気味な殺人鬼少女…………

「きたあああああああああああああああああああああああああああ!」

 僕は思い切りベッドから飛び上がって彼女に飛びつく。
 若干膨らみかけの胸に顔をうずめていい匂いを胸いっぱい吸い込む。
 頬をスリスリしてそのまま床に押し倒す。

「ジャックちゃんかわいいよっひょおおおおおおおおおおおおおう!」

「いやああああああああああああ!? おいやめろ何してるんだ馬鹿ぁ!」

 派手に蹴り飛ばされた。
 ソファの上に逆戻りである。

「……愛が行き過ぎて悲しみを生むこともあるよね」

 天井を眺めてちょっとそれっぽい台詞を言ってみる。

「す、すこし優しくしたからって勘違いするな馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿!」

 ちょっと泣きそうになってるジャックちゃんかわいい。

「分かった。僕が悪かった。びっくりしただろう、ごめんな?」
 
 真面目な顔して謝ることもできないわけではないのだ。

「分かれば良い、分かれば……まったくもう」

「それで話って?」

「あ」

 この女、忘れていたらしい。
 
「忘れてたのか」

「うるさい、あんたのせいだあんたの」

 ちょっと怒ったような口調で言われるとまた押し倒したくなるのでやめてほしい。

「それで用事ってなんだ」

「私と契約しろ」

「嫌だ」

「えぇ……」

 これにはちゃんとした理由がある。

「お前さ、俺と契約したら人間の女性以外も殺せるようになっちゃうんだよね?」

「あ、ああ……
 契約には強化型の契約と限定解除型の契約が有り、私の場合は限定解除型なんだ
 限定解除型は心の力を注げば注ぐほど私の力の拡大解釈が容易くなるから戦闘においては便……」

「便利じゃ駄目なの!」

「はぁ!?」

 ジャックちゃんが戸惑ってらっしゃる。

「弱点の無い無敵の主人公とか今時流行らないでしょ!
 むしろ制限がある中でうまいこと戦っていくってのが格好良いとおもわないか?
 例えば君は初めて僕と会った時に僕を切り刻んでから川に浸して失血死させるって言ったじゃん
 能力の幅が広がればああいう創意工夫を忘れてしまって結果的に物語がつまらなくなるんだよ!
 パワーインフレもそれはそれで面白い
 それは僕だって認める
 だけどそんなんじゃあウダウダと引き伸ばしてぐだぐだと打ち切られる少年漫画みたいになるじゃないか!
 僕はそういう面白くないことは絶対に認めないぞ!」

 僕はテーブルを叩いて強硬に主張した。
 空の酒瓶も一緒にガタンと音を立てる。

「ばっかじゃないのか! あんたは本当に馬鹿だ!
 そんなこと言って殺されたりしたらどうするんだ!」

「面白ければ構わん!」

 所詮この世は一期の夢なのだから。

「くそっ……馬鹿だこいつ……」

「馬鹿で結構コケッコウ!」

 とまあそんな冗談はさておき本当に真面目なところを話すと、だ。
 契約すればこいつには俺が殺せるようになる。
 それはハッキリ言ってかなり怖い。
 確かに殺人鬼少女は萌えだ。
 黒髪ツインテール釣り目な美少女であれば尚更だ。
 だがそれだからといって彼女が我々人間と異なる理屈で動いていることには違いない。
 ならば出来る限りの警戒をしておくのが筋というものだ。
 幸いにもあの黒服たちから奪った光線銃はまだ手元に有る。
 今はまだ様子を見るべきだ。

「言っておくが契約すればあんたにもメリットが有る
 私に力を供給することであんたには私に対する命令権が手に入る
 私はあんたから力を受け取っている間は命令を断れない
 勿論無茶な命令をすればこっちから契約を切るけどね」

「面白い乗った!」

「やった!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねるジャックちゃん。
 可愛い。

「ただし代わりに条件がある」

「なに?」

「レモンちゃんって呼ばせろ!」

「やだ!」

「じゃあ契約しない!」

「ふぅ~!」

 猫のようにこちらを威嚇するジャックちゃん。
 この娘割りとポンコツなのかもしれない。

「しゃあー!」

 とりあえず対抗してみた。

「…………」

「…………」

 三秒くらいするとお互い恥ずかしくなってしまったりする。

「とりあえず、飯食おう」

「うん」

 すっかりこいつとも慣れ合ってしまっている気がする。


    ※    ※    ※


「いやー美味しかった! ごちそうさま!」

「お粗末さまでした」

 ジャックちゃんはお皿の前で手を合わせる。
 本日はチャーハンでした。
 部屋に鉄鍋が有るので作るのも楽ちんである。
 お互い落ち着いたところで先程の契約の話に戻る。
 ここらへんをハッキリさせないと契約するかどうかも決められない。
 結局面白さ最優先だけど。

「そういえばジャックちゃん、契約の時言ってた心の力ってなに?」

「うーん……なんていうか気合みたいな?
 ああやっぱ感情かな、強い感情ほど私たちの栄養になります
 私の場合は人を殺した時に出てくる感情エネルギーの爆発を吸収して生きている感じです」

「成程、契約はそれを人体から直接供給するパスを繋ぐ行為になるのかな?」

「うん、あんたみたいに頭オカシイやつほど心の力の量は多いし質も大抵良くなる
 更に強力な都市伝説と契約したり複数の都市伝説と契約する為のキャパシティもでかくなる」

「マジか」

「マジだって、私はあんたと違って嘘つかないから」

「ふむ……ところで僕は正直者だ」

「うるさいばか!バカバカバカ!」

「馬鹿とは心外だな、僕は理性は無いが知性は持っていると思ってたんだけど」

「知ったこっちゃないよ、只の人間のくせにさんざん私のこと馬鹿にするだろうが……!」

「分かった、それは悪かったよ。組織に喧嘩売っちゃった者同士仲良くしようや、な?」

「それには異存はないな
 だから戦力アップの為に契約しろ」

「うーん、ここまで引っ張っちゃったら何か面白い方法じゃないと嫌だなあ
 契約するって多分割りと重要なイベントだろう?
 ……ああ、そうだ。あの幽霊屋敷で契約しようぜ
 僕の知識だと君たちみたいなお化けって星の流れや場所を重要視するものだろう?」

「折衷案のつもりか?」

「僕は雰囲気が出て面白い
 君は契約してパワーアップ
 お互いに悪くない条件じゃあないかな?」

 ジャックちゃんは真剣な表情で考えこむ。
 僕はその間に手巻きタバコをベランダで吸っていた。
 五分ほどすると彼女は俺に声をかける。

「おい悲喜」

「なんだジャックちゃん」

「その提案に乗ってやる。本当にバカバカしくて付き合いきれないと思わなくも無いが……
 これから先お前の酔狂に延々付き合うことになるのだから、それに慣れておく」

 そこまで幽霊屋敷に興味津々なのか。

「良いだろう。そこまで君が乗ってくれるんならば文句はない
 これから僕のクルマで幽霊屋敷まで行く
 ついてこい」

 僕は棚から車のキーを取り出してマンションの部屋を出る。
 ジャックもどこか楽しげな様子で僕の後ろをピョコピョコ跳ねていた。
 かわいい。

【僕は小説が書けない 第三話「僕とジャックちゃんの微妙な距離感」 おしまい】

名前欄間違えた
でももう訂正のしようもないし良いや……

新スレ乙ですー
戦わないシリーズの人乙ですー
いーねーいーねー、こういうブラックなの大好きだ
僕は小説が書けないの人乙ですー
悲喜くんの論理的な変態っぷりがいいね!

前スレで俺宛てのレスがあったから返事しようとしたら1000超えてて思わずディスプレイぶん殴りそうになった
この土日に腹癒せになんか書いてやる…覚悟しろよ……

投下乙ですのン、感想は後程


前スレ>>996
>ひとまずシャドーマンの契約者の人に上記の確認のみ行いたい
俺なら勿論Okey-Dokeyですよン
wktkしておりまする

>しかし、私は現在キッコーマンしか持っていません
ならばキッコーマンをパンツに突っ込んでタイピングすれば良い
こうすれば何の問題も無い


というのはさておき
ネット障害ねぇ、大抵は数日で何事も無かったかのように回復したりするんやけど
ルータ冷やしたりしたらどうかしら
俺も偶にあるけど、冷やしたら戻ったケースがあるので

>>16
ごめんね!
ごめんね!
でも投下あるんだねヤッター!

よし読んだ、改めて乙ですの

>>4
前編台詞とはまた斬新な……
工場と聞いて「レンダリングプラント」を思い出したが、それに近しいものかしら
何にせよこの不気味な感じが良いねぇ……

>>7-13
『ツァンディレ』って遊戯王TFのツンデレキャラじゃねぇかwwww
今日もジャックちゃんが可愛いです、先生
てか膨らみかけのオパーイにすりすりとかこいつもげろ言う前にぶん殴りたい(

膨らみかけのおっぱいは良い……
若干硬くてハリがあるのが良い……
そしてその年頃の女の子のリアクションが良い……

都市伝説絡みの組織妄想

「財団B」
古代バビロニアに存在した魔術師達の後継を自任する都市伝説契約者達のサークル
建前では都市伝説の力を世界の平和や自由の為に使うことを目的としてるが最終的な目標は“英雄”と呼ばれる絶対的な力を持つ契約者を生み出し、その力を背景に管理社会を産み出そうとしてる悪の秘密結社なのである
世界中に会員が存在しており、個々に「世界をよりよくする活動」をしている
会員同士の衝突は他の会員が認める決闘によってのみ処理される
治安維持などの役目を担うこともあるが財団によって“英雄分子”と判断された場合、たとえ犯罪者でもあえて泳がせることもある
財団のメンバー同士は基本的に全員対等であるが在籍歴の長短や実力の違いから他のメンバーを配下のように使うものもいる
またそういったものは私兵を抱えてる場合も多い
財団の理事長は無数の都市伝説と契約する多重人格者で、他のメンバーに対して例外的に絶対命令権を持つ
英雄分子は理事長が多くの人格間の会議を経て決定する
英雄分子の認定を受けたからといって財団から組織的な襲撃を受けなくなるだけで個人的に狙いに来る存在は居なくならないかもしれないし居なくなるかもしれないがそれは書く人に任せる
理事長はクローン体を無数に持ってるから殺しても無駄
理事長は都市伝説スレ執筆者全員が自由に使用可能
キャラ付けも多重人格だから好きにできる
身体的特徴もいじれるが普段は40台の男性





BはバビロンのBでありバンダイではない
ではない

じゃあ財団Bの設定使うね
勝手に使うね


十年前、この街のとある大きな屋敷に猫嫌いな少年が居た。
だが彼の家族は猫が大好きで、何匹も何匹も猫を飼っていた。
猫は気まぐれで、ある日急に消えることも多かったが、すると彼の家族はすぐに次の猫を買ってきた。
そして彼らは多くの猫を飼うことに飽きたらず、何時しか野良猫にまで餌付けをするようになっていた。
そんなことをすれば当然彼の家の周りに猫は増える。
そうなると糞害や猫の悪戯などで周囲の迷惑になる筈だ。
周りから苦情が来れば家族の異常な猫好きも治まるだろうと少年は思っていた。
ところが、猫は増えなかった。
訝しんだ少年はその日から猫の観察日記をつけることにした。
家族にバレないように慎重に猫を観察し、特徴を纏め、数を数えた。
すると不可解なことに、どちらかと言えば動きの遅い太った猫や、生まれたばかりの子猫が消えている確率が高いことが解った。
この理由が分からなかった彼は調査に行き詰まってしまう。
そしてすっかり疑問を持ったことすら忘れ、猫嫌いも治りかけてきたある日、彼は用事で家に帰るのが遅れてしまう。
それは彼の誕生日で、家族が特別なごちそうを用意してくれる日だった。
ただいま、と言って家のドアを開けた時、まず彼が眼にしたものは鉈が頭に突き刺さり、四肢を切り落とされた父親の姿だった。
悲鳴をあげて彼がその場で腰を抜かしていると奥から目を爛々と輝かせた男が現れる。
そして男は言うのだ。
お前もこの家の人間か、と。
何のことかわからない少年はとにかく必死で逃げようとする。
無論他の家族のことも心配だったが、彼にとってはまず自分の命が優先だった。
だが彼は恐怖のあまり足がもつれてその場に転んでしまう。
後ろから迫る男は父親の頭部から鉈を抜き取って少年に向けて振り下ろした。
しかし、その時だった。
男は悲鳴をあげて鉈を落としてしまう。
少年が見たのは男の腕に噛み付く一匹の猫だった。
男の悲鳴を聞きつけたかのように家の奥や玄関から次々と猫が集まってくる。
猫達は怯んだ男に次から次へと襲いかかり、食らいつき、肉を引きちぎり彼をズタズタにしていく。
男は何度も猫達に向けてよくわからない恨み事のような言葉を吐いてから彼の前で皮膚を無くした肉人形となってしまった。
あまりの恐怖に少年はその場で気絶してしまった。
そして数時間後、彼が目を覚ました時には既に猫達は居なくなっていた。
残っていたのは父親と謎の男の遺体だけ。
少年は勇気を振り絞り、家族がまだ生きていないか家の奥へと探しに向かう。
彼は途中でキッチンを通った。
その時に彼は気づいてしまったのだ。
まな板の上に残る猫の毛に。

というわけで都市伝説と戦わないシリーズ猫の日記念でした
今回は神話的恐怖としてはウルタールの猫の変奏曲だと思ってください
都市伝説スレとしては……そもそも猫自体が都市伝説的生物だと思うんですよね僕
ということでお許し下さい

男は過激派動物愛護団体の構成員の類ですきっと

流石にこれは許さないよ…
関東圏在住なら今から会いに逝きます

やっぱり許されなかったよ……
お待ちしております

「HAHAHA! そこのお嬢さん! あk」
「キャー痴漢!変態!派手なマントの変質者よ!!おまわりさーん!!!」
「っちょ、警察だけは勘弁して下さい!」
「なんてね、貴方「赤マント」ね? 都市伝説だったら容赦しないわ!」
「何っ!? まさかお前は契約者……」
「ピンポーン♪ お土産に私の相棒を紹介するわ! 出ておいで!」

ゴゴゴゴゴゴ、と地面が激しく揺れ、アスファルトが罅割れる
そして罅を突き破って現れたのは、体長3.5mの

「キュピー!!!」

でっかいなんかの幼虫だった

「デカッ!キモッ!」
「あー今キモいって言ったわね! 私のシルヴィアに!」
「そんなカッコいい名前つけてんの!? いやどう見ても幼虫だし!
 てかお前気持ち悪くないのか!?」
「んな訳ないでしょ! 見なさいよこのボディ!
 ……んふふふ、ふにふにしてるぅ………可愛い♪」
「キュピー♪」
「あぁんシルヴィア可愛い♪」
「これが変態って奴か」
「貴方に言われたくないわよ!」
「キュピー、キュピー…」
「あらお腹空いたの? しょうがないわねぇ、あれ食べなさい!」
「キュピー!!」
「って俺かよッおわっ!?」

シルヴィアのようかいえき!
赤マントはよけた!

「くっ、血塗れになれ!!」

赤マントのなげナイフ!
シルヴィアのかえんほうしゃ!

「キュピー!」
「ナイフが溶けた!?」

シルヴィアのでんげきは!
赤マントはひるんだ!

「おぐっ……く、そ……」
「今よシルヴィア!」
「キュピー!」

シルヴィアのマミる攻撃!
いちげきひっさつ!
赤マントはマミられた!

「キュピッ♪ キュピッ♪ キュピッ♪」

がつっ、がつっ、と「赤マント」を頭からゆっくりと美味しそうに食べるシルヴィア
その飼い主、もとい契約者の女性は、シルヴィアの身体をふにふにしながら話かける

「んふふ、いっぱいお食べシルヴィア♪」

ふにふにふにふに
触りまくって恍惚とした表情を浮かべる女性
そんな彼女の視線を知ってか知らずか、「オルゴイコルコイ」のシルヴィアは「赤マント」を完食した



   ...end

2月22日は“ふにふに”で幼虫の日だ!
幼虫可愛いよ幼虫、幼虫ヒャッホオオオ!!
ほぅらお前等も幼虫愛でようぜ、あの幼い身体をぷにぷにすりすりしようぜ、なぁ?

モンゴリアン・デス・ワームじゃないですかやだー!
蟲苦手なんですううううううううう!
道民は巨大な蟲との接触経験少ないんですううううう!

最後に書き忘れてましたが乙です
ホノボノとしている筈の猫の日にこんな酷い話ばかりなんてこのスレの人々は悪趣味ですね……
私ちょっとまゆをひそめちゃいます><

そして乙ですのン
謎の男はただの強盗だったのか、それとも何らかの意志か…とか思わず深読みしてしまう
しかし猫の日にこれはwww俺ですら猫殺すのは避けたのにwww

>>28-29
>道民は巨大な蟲との接触経験少ないんですううううう!
笛の人は割と楽しげに「モンゴリアン・デス・ワーム」書いてたけどwww
『獣の王様』然り、「モッコリイヤン・エロ・ワーム」然り

>ホノボノとしている筈の猫の日にこんな酷い話ばかりなんてこのスレの人々は悪趣味ですね……
猫の日に猫が酷い目に遭ってる話を書いたあんたに悪趣味なんて言われたくないわwww
というか俺のはほのぼのじゃないすか!

>>30
やだなあ猫を[ピーーー]だなんてそんなコワイことしないですよぅ
あの家族の皆さんは猫が大好きだったんですから
ほんとうに本当に心から大好きだっただけなんですから
男が来たのは褐色銀髪な美人のお姉さんの導きでとある旧家の調査を偶然することになったからですよ
何故だかその途中でSAN値が削れきっていたのですけどね

笛の人は多分ムシリアリティショックの経験が少なかったからこそガッツリ突っ込んでいけたんですよ!
きっとそうに違いないです!

都市伝説とにゃんにゃんする話はなかったなと過ぎた日に思いをはせつつ乙です

財団B、オリジナル組織ってことになるんだろうか
トップが多重人格で人物を複数人でシェアできるのか

あれ、男の人もしかしてとばっちり……

>>でっかいなんかの幼虫だった
デスワームさんって何かの成虫になるのかな

書きたい人は財団関連マジ自由につかってくだせえ
大歓迎です
>>32
そんな感じです
大規模なオリジナル組織でなおかつ組織だった攻撃をフリーの契約者に仕掛けてこない理由づけに色々工夫してみました
しかし作者の希望次第では権力のあるメンバーの私兵に追いかけ回されることも可能みたいな感じです
理事長のキャラはシェアワの特性を生かして誰が書いても良いキャラを目指してます

都市伝説とにゃんにゃんはほら……投下できないスレにあるはず
きっとだれかがやってくれたはず

【僕は小説が書けない 第四話「君が生まれるその日まで」】

 僕の住む夜刀浦市の中央を横断する霧川にかかる霧大橋をポルシェの黄色いボクスターで南区に向けて軽快に飛ばしていく。
 流麗なラインが特徴のこの車に乗っていると人の注目をあびることができて大変心地良い。
 これなら女性にもうちょっとモテテも良い筈なのだが何故かこの車のおかげで女性とフラグが立つことは無いのである。
 車目当てで寄ってくる綺麗な感性の女性なんてもう都市伝説なのかもしれない。
 ジャックちゃんは何故か若干アンニュイな表情で窓の外を流れる景色を眺めている。
 会話もなく、録音していたフランス語のラジオ講座だけが流れていく。

「一つ、面白い話をしてあげよう」

「なんた悲喜、お前の話は大抵つまらないって路樹さんが言ってたぞ」

「あの弟帰ったらぶっ殺す」

 というかいつの間にあいつと話していたのだ。

「やめておけ悲喜、お前が酔っ払って眠った後布団かけてくれたのあいつなんだから
 丁度その時私が起きてたんで少し話したんだけどあいつ良い奴だな」

 ああ、自力で寝床作ったと思ったらそんなことなかったんだね……。

「だろ? 自慢の弟だよ」

「あっち誘っておけば良かったかなあ?
 でもなんていうかああいう雰囲気の人って私と相性悪かったりするしなあ……」

 なにこのNTR感。
 まあでもあいつだったらジャックちゃん任せても良い気がする。
 あいつ主人公にしたら良い話が書けそうだし。

「やめてくれ、あいつを危険に巻き込みたくはない」

「解ってるよ。ていうかあんたくらいの人間じゃないと巻き込んでも死ぬし
 死んだら私の心が痛むんだ
 だからさっさと契約してよ、今してよ」

「断る、言っておくが僕は面白く無い限り契約はしないからな
 協力はする、お互いのためにな
 だが契約して君と命を預け合う仲になっていいかはまだわからない
 それに君だって今まで一人でやってこれたんだろう?
 ならば其処まで早急に契約相手を求める必要は無い筈だ
 君にだってもう少し俺の価値を見極める必要がある
 逆にここまで急かされると気になるんだけどさ
 何故君は契約を急ぐんだい?」

「…………」

 彼女はまた黙って外を向いてしまう。

「君はたった一人で戦ってきた
 僕も弟が居るとは言え何をするにもスタンドプレイばかりの厄介者
 一人と一人で敵を共有するだけで十分じゃないか?」

「……お前には解らない
 人間のお前には解りはしないんだ」

 一歩間違えれば聴き逃してしまいそうな声で彼女はそういった。

「人間か……どうだろうな
 僕は人間なのかな」

「何を言っているんだ?」

「なあ、君は何を以て人間を人間とするんだ?」

「……そりゃあ殺せるかどうかだ」

「都市伝説だって殺せるんじゃないのか?」

「都市伝説は死なない。私が死んだところで代わりの切り裂きジャックがいくらでも居る
 私は人々の伝承が集まって一時的に形を為している切り裂きジャックのアバターの一つに過ぎない
 命の存在しない私達に死んだり殺したりなんて感覚は存在しない
 人が、人だけが私達に命の感覚を教えてくれる
 いくら私以外のジャックが居ても私が奪った命だけは私のものだから」

 彼女の心が狂おしげに悶えているのが僕には分かる。
 まるで耳元にそっと囁かれているかのように伝わってくる。
 
「そうか、契約をすれば、直接人と繋がれば、人を殺す以上に何かを手に入れられると
 君はそう思ったのかい?」

「そんなところだ。何か悪いか?」

「悪いか? と尋ねること自体が君の罪の意識の現れだよ
 君は殺人を犯す罪悪感と悦楽によって意識を揺さぶることで自我を保っているんだ
 これは精神的な食事に等しい
 君は命を無駄に奪っては居ない
 言うなれば命を頂いて、自分を手に入れているんだ
 君は君の存在に疑問を持つことはない、僕はそう思うよ」

「そっか……」

 思うに。
 都市伝説と呼ばれる存在は自然発生的に生まれてくる。
 ならばその精神は生まれたての赤ん坊のように無垢なのではないだろうか。
 そんな存在による殺戮やその他の罪をどうして人間が裁けるのだろう。

「私は、なんなんだろう」

 悲壮さも、絶望も、悔恨もなく彼女は呟く。
 ああなんて哀れなのだろう。
 こんなにもしっかりと大地に立つ足を持っているのに、肝心要の心はこんなにも空っぽだなんて。
 でもそれ故に誰も足を踏み入れぬ雪原のような美しさが彼女にはあるのだ。
 僕が彼女を助けたあの時、彼女はただ月を眺めていた。
 彼女が僕と初めて会った時、彼女は僕と話してくれた。
 この少女は世界と触れ合いたいだけなのだ。
 それを思うと僕は彼女が愛おしくてしょうがなくなる。
 僕は知り合いの女性をこの娘に殺されている。
 だからこの美しい少女がどうしようもなく危険な化け物で、それ故に脆く儚く心惹かれる存在だと認識している。
 そんな危険過ぎる存在は本当ならばあの黒服達のように敵として排除すれば良いのだろう。
 それが人間として最低限の義理というものだ。
 でも僕にはできなかった。
 彼女を助けて、黒服の男を三人殺してしまった。
 面白いからというだけで平気でこんな選択をできる僕の方がよっぽどバケモノだ。
 いいや、面白ければいくらでも聖人になれるのだからもっと質が悪い。

「ジル、と呼ぼう」

「え?」

「僕は君をジルと呼ぶ。呼ばれて恥ずかしい名前ではないだろう
 拒否されるような名前じゃあないものを選んだんだ」

「ま、まあレモンよりはマシだけど」

「君に必要なのは名前だ
 自分が自分であると認められることだ
 僕はそう思う」

「……言ってることがよく解んないぞ?」

 ハッピーバスティ、ジル。

「時が教えてくれるよ」

 僕はそう言って微笑む。

「むー……あんまり生意気言ってると切るぞ」

 ジルは僕のほっぺをつまんでムスッとした表情を浮かべる。

「やめてくれ。それより前方注意だ。車に乗ってるんだからな」

 僕はそう言って急ブレーキを踏む。
 案の定ジルはシートベルトをしていなかった為に頭を窓ガラスにぶつける。

「うぅぅぅうぅ…………!」

 悲しそうな声で唸りながら涙目で睨むな。
 メスをチラつかせるな。脇腹突くな。

「さあ着いたぞ。あれが噂のゴーストハウス、猫股邸だ」

 しかし僕はそれら一切を無視して目の前の古びた邸宅を指さした。

六条悲喜さんのビジュアルイメージが定まらない
頬に十字傷しか確定していない
ジャックちゃんは多分黒髪ツインテあざとい子
というわけで俺投下乙

ジルという名前が可愛いのは知ってる
何故なら彷徨うみさきの人がジル・ジェンキンスというロリっ娘を出してたからだ
ごめんよ、はがけないの人……名前被ってますよン

という訳ではがけないの人乙です(呼び方やめぃ
話数を重ねる毎にジャックちゃんが可愛くなっていく…素晴らしい
そして次回ゴーストハウス突入かしら、猫股邸とはまた怪しい名前だな…

>>32
>デスワームさんって何かの成虫になるのかな
「トイレの花子さん」は成人になったりしません
そゆこと

「だーいぶ、です!」
「ふにゃ!?」
ああ!にげられてしm……!……っ、?pmアwdュapみぎゅ…………!!
「痛いです……」
へいの上からのジャンプは危ないですね。もうしません。
「猫さーん?」
あ!いました!
「だっしゅ、です」
がんばって、猫さんのあとをおいかけます。めざすは猫さんの集会です。
猫さんのミミのついたボウシがあるからナカマと思ってマぜてくれるはずです。おーぐま猫という猫さんですよ!
「むむ……」
さすが猫さん。せまい道を行きますね。

「あぅ」
せまい道をなんかいも曲がっていたら、猫さんを見うしなってしまいました。
「あ、犬さん!こっちに猫さんが来ませんでしたか?」
ごみすて場をあさっていた犬さんにずねます。
「あっち行ったよ」
「ありがとうございますです」
教えてくれたほうへ走ります。
「ごみは片付けないとダメですよー」
犬さんにそう言うと、なんだかメイワクそうな顔をされました。まるで人間の男の人みたいな顔です。

「あ、おねーさん!こっちに猫さんが来ませんでしたか?」
「あっちに行ったわよ」
「ありがとうございますです」
「ねえ、私綺麗?」
「まあまあですー」
お母さんのほうがキレイです!

「おばーさん、猫さんが来ませんでしたか?」
「あっちへ行ったよ」
「ありがとうございますです」
「いえいえ、じゃあね、お嬢ちゃん」
おばーさん、あし早いです!

「猫はあっちだよ。ところで、お嬢ちゃんは赤い紙と青い紙、どっちが良い?」
「白ですー」

「あっち」
「ありがとうございますです」
おねーさん、そこせまくないですか?

「トンカラトン!」
「トンカラトン?」
「行って良し!」
んー??

「あれぇ?」
しってる道に来ました。
私の家の前です!
「あら、どうしたの?」
「あ!お母さん!」
ひさしぶりに会います。
「もう夜遅いわよ。家に帰ろう?今日はお母さんが晩御飯作ってあげる」
「ほんとですか!やったあ!」
「にゃー」
猫さんのなき声がしました。
「むむ!」
「どうしたの?」
「なんでもないですよ!」
猫さんの集会をサガすのはライシュウにエンキですね。

乙ですのン
丁寧な口調の幼女!
何回私をイかせたと思ってるんd(帰
なんか色んな怪異に巡りあってるwwwでも無事でよかった

>>39
他人のキャラと名前を被せてしまう呪いでもかけられてるのかもしれないぞ俺
でも1つだけ言わせて欲しいんだ
良い名前って既に使われてたりするよね……
>>41
そうそうこういうのを見たかったんですよ
ほのぼのとした猫と人のふれあいをですね
ふれあいを……ああ
ヒジョウニホノボノトシタヒトトトシデンセツノフレアイデスネ
自分なんかは描写過剰にしてしまって話の味を殺したりくどくしたりしてしまいがちなのですが
こういったシンプルな流れで綺麗に話を作り上げていくのに憧れます
あと優しい雰囲気のする作品ってのも書きたいんですがねえ……自分の内面がアレなようです

>>43
>良い名前って既に使われてたりするよね……
そこが怖いのよねぇ
日本名だと最近は「か、漢字さえ違えば問題ない!」という風潮こそ出てきたが、
“ジル”を始めとしたカタカナ名だとそうは問屋が卸さないってね
一応、“ジール”にしたら大丈夫!とだけ伝えておきますぜ
ジールちゃんでも可愛い

>あと優しい雰囲気のする作品ってのも書きたいんですがねえ……自分の内面がアレなようです
明日真くんの話は概ねそんな感じだったと思うけどなぁ
失礼だったら申し訳ないけど上田がニャルラトテップ過ぎるんだよきっとw

>>44
駄目だ……伸ばすとなんか駄目なんだ
また呼称変えれば良いんだ!
どうとでもなる!
>>44
彼が数多ある分体のうちの一つでないと誰が保証できるのでしょう(悪魔の証明)
本人すら周囲すら気づいていないだけで彼もまた……
と思わずには居られない程好き勝手動くキャラですよね、ええ
wikiまとめるの面倒くさいよ隊長
昔は纏め人さんが居たんやで……

>>45
>また呼称変えれば良いんだ!
敢えてレモンからとって、モネとかどうでしょう
切り裂きジャック成分皆無だけど

>と思わずには居られない程好き勝手動くキャラですよね、ええ
良い意味で最もトリックスターらしいキャラじゃないかと
明日真くんも、彼に日常を引っ掻き回されて今に至ってるし

>>45
都市伝説の名前被りはしょうがないさ

切り裂きジャック女性説の犯人通称はジルなんだし
ジャックで被っても、ジルで被ってもしょうがない

花子さん、Tさん、カシマさん、ひきこさん
メアリー(エイズ)、リカちゃん、さっちゃん、将門様

この辺は完全に被るしかないだろうし、開き直って行くべし

そういえば……
過去の例で考えると、敬称で区別がつけられるな、花子様とか……

T様、カシマちゃん、ひきこタソ、
メアリーお嬢様、リカさん、将門キュンとか……
(さっちゃん無理だったか)

敬称を変えるだけで、新たなキャラクターが生まれそうな気もするよ
面白い

>>47
>(さっちゃん無理だったか)
“さっちん”で

よし、それではジルりんにしよう
そうしよう

いいなジルりん
ジルりんハァハァ

思ったよりスピード出るねえpart9
ロムってるそこの貴方も参加してみてはいかがかしらん
>>50
そのうちマジカルテレフォンジルリン☆ジリリンみたいなノリで歌ってほしいですね
ええ

ところでやっぱりひたすら暗かったり悲惨だったりするとメリハリ無くて詰まらないじゃん
そこで戦わないシリーズの新しい方向性を考えたいわけですよ
ホラーっていうと血まみれパニックスプラッターなわけですがなんか心あたたまるホラーとかねえかなあ

>>51
>ホラーっていうと血まみれパニックスプラッターなわけですがなんか心あたたまるホラーとかねえかなあ
>心あたたまるホラー
あんまし良い例が思いつかんけども、

呪いのDVD見る→貞子出現→逃げるけど腰抜けてる→貞子追いつく→恐怖のあまり叫ぶ→よく見ると可愛い?→錯乱状態からの必死の説得&告白→貞子思わず感涙→数年後、そこには幸せなry→Happy∞enD

こんな感じのが心温まるホラーで良いのけ?

>>52
それはそれでどうなのだ……?
でもあれだよな
童貞力限界突破して貞子ちゃん押し倒すのはありだよな

あれ、どっかで見覚えが……

スプラッタでぐっとくるというと映画ハロウィンシリーズのマイケルとジェイミー
おじさんと少女萌

おじさんと少女いいよね
ハロウィンシリーズ今度全部見よう
やっぱり緩急つけないと物語は面白く無いからほんわかもちゃんと書かないと……

>ハロウィンシリーズ
どっかで聞いたなーと思ったら
シリーズ物ホラー作品の殺人鬼による犠牲者ランキングで2位だった奴かw

とりあえず今日の分の行くぜ

「……心臓の病です。既に、手のつけようが無い程進行しています」

 医師にそう宣告された日の夜、私は一人で酒を飲んでいた。
 それを止める人間は居ない。
 居ないからこそこうなったのかもしれない。
 妻に先立たれ、一人で玩具屋を切り盛りし続ける日々。
 玩具屋の仕事自体は充実感も有り、楽しい仕事ではあったが彼女の居ない寂しさは埋め難く、酒量が増えていることは自分でも分かってた。
 思えば私はこうやって緩慢な自殺を行なっていたのかもしれない。
 治療の見込みが無い時に延命行為などの医療行為を停止することを尊厳死、苦痛が耐えがたく治療の見込みが無い時に薬剤の投与などで積極的に命を止めることを安楽死というのだそうだ。
 私は安楽な死を望む。
 彼女の居ないこの世界になど未練は無い。

「ソレ、――――ハ――――本、トーか?」

 ガサガサと鼓膜をひっかくようなざらついた電子音声。
 気づくとそれはそこに居た。
 懐中時計の瞳、板バネの額、エナメル線の毛髪に歯車のコメカミ、身体のありとあらゆる箇所を機械に置換した異形。
 衣服すらも針金を編みこんで作っている。

「キ――ミ、ハ誰よ、Ri、Shiぬの――――ガ―――コワ意」

 酔っているせいでこんな幻を見ているのだろうか。
 目の前の彼は私の本心を言い当てていた。確かに私は死ぬのが怖かった。
 彼女の居ないこの世界に未練は無い。それは事実だ。
 だが私と彼女の仲すら容易く引き裂いたこの世界が恐ろしいのも私にとっては事実だった。
 でも、だからどうした。私に一体何ができるのだ。

「おもちゃTaちが――――キ――minoキミヲ待ッ―――――てる
 キミは^^彼らに、かれらの為に生きなくてはいけない」

 次第に言葉は人間味を帯びていく。だが酒に酔った私がそれを不自然に思うことはない。
 むしろ、久しぶりにこうして話せる相手が居ることが私は嬉しかった。
 私は、妻と、同じように玩具と、玩具で遊ぶ子どもたちを大切にしていた。
 私の人生にとってはそれらが最後の支えだ。
 私が病院に入れば、私の大切にしていた物を守ってくれる存在は居なくなる。
 私は酒瓶を投げ捨てて男と共に私の店のおもちゃ売り場へと向かう。
 そこにはいつまでも売れ残っていたブリキの兵隊が有った。
 男は、それにするかい?と私に尋ねる。
 私はそっと頷く。男はブリキの兵隊から心臓を取り出し、私の胸を裂いて移植する。
 彼が針金で私の傷を塞ぐと、信じられないことに私の中でブリキがそっと鼓動を始めていた。

「これで私の役目は終わりだ」

 そう言うと同時に男の瞳の時計は動きを止めてしまった。
 私はその哀れな男の亡骸を店の奥まで引きずってソファの上に寝かせてやった。
 お疲れ様と声をかけ、彼の瞳だった時計を私は首からぶら下げる。
 こうして私は、私の愛する玩具達と一緒に、また新しい時を刻み始めた。


    ※    ※    ※


 ヌイグルミの表皮、たまごっちの耳、水鉄砲の腕、キックブレードの足、フルートと小太鼓が奏でる単調で愉快なメロディーに合わせて男が一人楽しそうに歩いている。
 すっかり廃墟と化した町並みをソレは楽しそうに歩いている。
 崩れかけたアスファルトの道に何度も足をとられ、その度に転んで起き上がり、それでも楽しそうに男は歩いている。
 だって彼は大好きなものとずっと一緒なのだから。
 だってこれだけは彼の元から決していなくなりはしないんだから。
 彼は、彼だけは歩いていける。
 この道を、永遠に。

廃墟の街を一人歩く男
満足そうに、楽しそうに
鼻歌交じりで

という感じの情景をそのまま文章にしてみました
スチームパンク的な雰囲気も取り入れつつ薄気味悪く薄気味悪く
今回は死者が出ない珍しいタイプ
時計人間さんは生きてないし、死者じゃない

何だこれは……
ほのぼの何だけどほんの少しの狂気が見え隠れしてる……
でも誰も不幸になっていない分喜ばしい事この上なし
乙ですのン

すげえ致命的な事に気づいちまったぜ影の人
この話のパターンは連続でやってると流石に飽きるんだよ
というわけで明日で丁度一週間だからシリーズ人区切るね!

>>61
>この話のパターンは連続でやってると流石に飽きるんだよ
そりゃ仕方ないわなwwww

>というわけで明日で丁度一週間だからシリーズ人区切るね!
しかし区切るということはそれに変わる何かが来る可能性も無きにしも非ず
wktkしてますの

>>62
ご期待に添えるように頑張ります
しかしあれです
面白いもの書けなくて辛い
自分には才能がないのは良いとして努力したんだから少しくらい何か有ってもいい気がするんだけどねえ……

>>63
>面白いもの書けなくて辛い
ははは、何を仰るやら
このスレの底辺は他でも無い私であるのでそれ以外の人は面白くて当然なのですよ
元気を出しなさい

一週間でなく一ヶ月くらい今の勢いでやりゃいーじゃないとも思うけどままならぬものよな

>>65
そりゃあもう、創作のアイディアが際限なく溢れ出続けるならそれこそ飯食っていけるレベルでして
ある程度の休息は止むを得んでしょうよ
てゆーかここの作者って1人だけじゃねーんだし

>>66
知らない人もいるかもしれないけど
ここは複数の名義を使い分けてる作者が多いよ

しまった久々の誤爆だァァァァァッッ!!


実は存在するのは僕と君だけなんだ…愛してるよ兄さん…(真顔)

>>67-68
どう反応すりゃいいんだよwww
とりあえず

>ここは複数の名義を使い分けてる作者が多いよ
たまーに「あ、これこの人だわ」って気付く時は敢えて言わなかったりするけど
マジで分かんない人が居たりする
大体自己申告で初めて知る事になるんだけど
それがないと絶対数<作者数になっちまう……

>実は存在するのは僕と君だけなんだ…愛してるよ兄さん…(真顔)
それはねぇよwwwwwww

>>69
>たまーに「あ、これこの人だわ」って気付く時は敢えて言わなかったりするけど
>マジで分かんない人が居たりする

誤爆だったのに僕のエスパー能力すげえ…
ちょっとチラ裏に移動しようか
そして僕だけに誰が誰なのか洗いざらい教えておくれ

>それはねぇよwwwwwwwwwwwwww
今から近畿地方に行って本当の弟になればいんだね!!
よーし自重しないぞ!愛してる
                   よ
                   兄
                   さ
                   ん
                   

>>70
>そして僕だけに誰が誰なのか洗いざらい教えておくれ
それやっちゃって良いのか?www
あとでちょこっと書いてみるわ

>今から近畿地方に行って本当の弟になればいんだね!!
あ、今俺愛知在住なの

にいさん

この影の人への愛はあの方しか居ねえ……

 7月18日
 羽田から千歳まで飛行機で戻る。
 私は師であった教授の遺品の中に有ったとある書物を頂いた。
 彼は生前、文化人類学の研究者として名を馳せていたのだがとある南方の島に行って以来様子がおかしくなり、そのまま山奥に隠棲して生涯を終えている。
 愛弟子である私にすら何が有ったかを明かさなかった。
 彼の遺した本とフィールドワークのメモを解き明かすことでもしかしたら彼が何を発見したのかがわかるかも知れない。
 この日記を書いている時点で飛行機の機材の到着が遅れたというアナウンスが入った。
 やれやれ、異常気象に合わせてこれでは北海道に帰るのが遅れそうだ。

 7月19日
 見てはいけないものを見てしまった。
 私は一刻も早くここから離れなくてはいけない。
 教授の研究を狙う者がこんなに居るだなんて私は思わなかったのだ。
 どうやら家には帰れそうにない。
 私を狙う者は既に家にも手を回しているだろう。
 留守電には出てくれなかったが私の愛する妻と二人の娘が無事であることを願うばかりだ。

 7月20日
 私は今ホテルの一室でこの日記を書いている。
 ここならばしばらくは追手もかからないだろう。
 教授のメモの内容の要約については後の方に纏めて書いた。
 信じられないことだが、教授の本に載っていた魔術は本物だ。
 解読する中で私もまた使い方を理解してしまった。
 それにしても雪が酷い。
 ホテルは停電してしまったそうだ。
 今は自家発電装置で賄っているが……いつ駄目になることやら。
 先程から窓の外で何かが歩いているような気がする。
 巨人?
 いいやまさか……。
 やけに外が明るいおかげで日記を書けて幸運だったと思っておこう。
 念の為に後で確認してみよう。
 追記→巨人は居た。どうやら私は本当にわけの分からない世界に居るらしい

 7月21日
 私の携帯に妻の弟から連絡が入った。
 どうやら私の妻と子が奴らの手にかかったらしい。
 そうなるとこの状況で生きている彼ももはや信用ならない。
 私は携帯を捨てた。
 教授は、何を研究していたのだ。
 彼が自らの書物にまとめていたのは見るも悍ましい黒魔術の数々だった。
 呪殺、召喚、異形との混血、普段の私であればそれはくだらないオカルトだと一笑に付しただろう。
 だが今私が置かれているこの異常な状況からすればそれらはまだ正気にも思える。
 毒が恐ろしくて食事は缶詰ばかりになってしまった。
 私はおそらくもうすぐ死ぬ。
 だが真実を、この真実だけは確かめなくてはいけない。
 それが私にできる最後の……

 7月22日
 新聞を見ると妻の弟の家が出ていた。
 強盗が入ってきて彼らを皆殺しにしたらしい。
 するとあの時既に彼は死んでいた……?
 やはりあの電話の指示に従わなくてよかった。
 もしかしたら私の妻と娘も生きているかもしれない。
 今はそれだけが希望だ。
 教授の遺したこのメモが正しいのならば私があの場所に行きさえすれば……

 7月23日
 ついに私は私の故郷についた。
 故郷の人々は私を変わらず受け入れてくれる。
 あの玩具屋の主人も年齢を感じさせない若々しさで私に挨拶までしてくれた。
 この不況でもなくならない玩具屋とは大したものだ。
 ……少しメランコリアにとらわれてしまった。
 今の私にはやらなくてはいけないことがあるのだった。
 私が、私が世界を救わなくてはいけないのだ。
 もしこの日記を見ている人が居るならばそれは恐らく私が失敗したということである。
 願わくば私の、教授の遺志を継いで頂きたい。
 君の力になる全てはこの日記の裏に記してある。
 敵の名前は“ようぐそとほうふ”だ。
 私は明日、この本に記された聖地、月山(ツクヤマ)へと行く。
 君の健闘を祈る。





    ※    ※    ※








「――――良い夢は見れたかな?」







 私の故郷には月山という霊峰が有る。
 私の身の回りで続く異常事態を止め、異形の招来を邪魔するにはそれしか無いのだ。
 山道をひた走る私の前に真紅の外套を纏った青年が立っていた。
 
「そこをどけ、今の私にはやらねばならぬことが有る」

「どかないと言ったら? 財団の奴らを殺したみたいに俺も殺すのか?
 その本から勉強した魔術ってやつで? 面白いねえ見てみたいねえ!」

 青年は青い石のペンダントを指でいじりながら挑発的な笑みを浮かべる。

「退かないならば……」

 私の頭にビリビリと電撃が走る。
 激痛、嘔吐感、めまい、その他あらゆる不快感が腹の底からこみ上げる。
 教授の遺したメモに有った呪文を唱えると私の前に壁が現れて、そのまま壁が青年へと向かう。

「温いな」

 青年は腰から紫と金で彫刻された艶やかな短刀を取り出し、壁に向けて斬りかかる。
 ガラスの割れるような音と共に私の呼び出した壁は砕け散る。
 馬鹿な、ありえない。これは、これはあの青い炎の巨人すら退けた……
 青年は流れるような動作で銃を抜き取り、私に向けて五発ほど撃ちこむ。
 だがそれは無駄だ。私とて防護策は怠って無い。
 肉体を保護する呪文もまた教授のメモにある。
 私が世界を救う、救わねばならぬのだ。
 どんな強敵が現れようともここで倒れる訳にはいかない。
 私こそが今、英雄なのだから。
 弾丸は私の身体に当たるが弾かれて何処かへ消える。

「良いことを教えてやるよ
 あんたの手に入れた魔術書の名前は“緑の本”
 効果は妄想の実現及び外なる神との一時的な契約
 あんたが一生懸命学んだつもりの魔術は神の気まぐれで
 あんたの繰り返してきた戦いとやらはあんた自身の内に秘めていた妄想さ」

「ふん、馬鹿なことを言うな!」

 用意していた火炎瓶を投げつける。
 破壊した所で仕込んだ薬液が青年を焼く二段構えだ。
 これならば刀で切られた所で……

「馬鹿はあんただ」

 青年は手をギュッと握る。
 すると瓶がその場で何かに押しつぶされたように圧縮されて小さくなり、消えてしまう。

「その本は見る者によって内容を様々に変える
 だがそれは絶対に作者の願望を映し出し、それを作者に実現させる
 あんたは家族を奪われた悲劇の戦士にでもなりたかったのかい?
 まったく幾つだよ
 あんたはこんなもの手に入れた時点でまず真っ先に家族の元へと帰るべきだったんだ
 本当に本当に馬鹿にしてるぜ」

 青年は懐から再び拳銃を取り出して、今度は私の持っていた本を狙う。
 私は反応できない。だが何故本を?
 本の内容なら既に私の頭の中に入って……
 本は突如輝きだして銃弾を弾いた。
 当たり前だ。今度の追手はこんなことも知らないのか。

「その本が映し出す内容は千差万別
 しかし共通点はもう一つ有る
 これはあんたの願いとは無関係だ
 それはね、その願望の終着点として……ヨグ=ソトースを呼び出すのさ」

「ヨグ……? 貴様何故その名前を!」

 青年の銃口が私の額を狙う。

『お前が封じようとしていたモノをお前自身が呼び出す
 そしてそれを嘲笑する
 そのためだけに作られた悪趣味な魔導書なのさそれは』

 青年の言葉が何故だか私の耳に張り付く。
 嘘とも思えない、わけの分からない説得力がその言葉には有った。

「私は……私は信じないぞおおおおおおおおおおおおお!」

 私は全ての力を込めて再び呪文を唱えた。
 視界が白く霞み、私の意識は途絶えた。


    ※    ※    ※


「う……あ……」

「残念だったな、俺のほうが十秒ほど起き上がるのが早かった」
 
 青年は私を見下ろしている。
 どうやら相打ちになったものの彼のほうが先に目を覚ましたらしい。

「安心しろ、魔術書の担い手たるお前が死ねば、お前の妄想が起こした全てのことは無かったことになる」

 信じられない。
 私が、私の魔術書が……。

「お前は不運なことに通り魔に会って死んだ可哀想な只の人間として死ねる」

 私の信じた物が……教授の遺志が……。

「教授は気づいていたんだよ
 一度読んだらもうアウトだって
 だから山奥に籠もってたんだよ
 あんたもどうしても平和に生きたければそうするしかなかった
 俺が来た時もあの人喜んでたぜ、やっと死ねるってさ」

「お、お前が教授を……」

「ああ、悪いか?
 あんたも同じように只の人間として死ねる
 あんたの妻子も無事、親戚連中も無事
 何もかもが平和
 そして唯一欠けてしまったあんたを皆が悼む
 まあマシだぜえ死に方としてはさ」

 青年は私から奪い取った本をライターで燃やす。
 本を奪い返そうと伸ばした手は青年の足に踏み潰された。
 本の最後の一片が燃え尽きて風に消えた時、私は私の心のなかから執着のようなものが消えていくのを感じた。
 何故私は世界を救わなくてはいけないと思ってたのだ。
 その為にとてつもなく大きな物を犠牲にしてしまった。
 結局私はあの本にどうしようもなく魅せられていたのだろう。
 もう取り返しはつかない、ならばせめて……。

「……私が死ねば、妻子は助かるのか?」

「ああ」

「……せめて、楽に頼む」

 青年は深くため息をついて俯く。

「くふっ……」

 突然青年が笑い出す。
 何を考えている……?

「ははっ!」

「な、なんだ!?」

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!
 うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃあああああっはははっっはっはっはっはっは!
 ふへえはあああははははははっはあ!
 あんたも馬鹿だなあ本当に馬鹿だ!救いようがなく愚かで本当に楽しい奴だなあ!
 呪いが解けた? 妻子は助かるのか?
 あんたの見る夢はあんたが目覚めるしか無いし、一度消えた命は二度と帰らねえよ!
 そうじゃなきゃこの世に生きる意味すらねえや!
 お前一人のせいで皆死んだ! バカみてえに死んだ! 本当に笑えたよ! いいコメディだった最高だった感動した!
 本当になんでこんな簡単に俺の言うこと信じちゃうんだよ馬鹿だなあ馬鹿だねえこれだから人間ってのはやめられねえなああああああああひひひひひひっひっひっひぃ……ひうぃ……」

 青年は悪魔的な笑顔を浮かべて私を嘲り笑う。

「お、お前は……」

 嘘だ。
 嘘だ。
 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
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 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

「そうさ、これが現実だ!」

 私の首に短刀が振り下ろされた。
 この鮮やかに乱れ飛ぶ鮮血は……ああ、これは、これは本当だ。

 
【都市伝説と戦わないシリーズ第七話「This is It」 おしまい】

というわけで戦わないシリーズ一区切り
都市伝説じゃなくて人が人を殺してみるパターン
でぃ・すい・ずいっと
って呪文っぽい気がする

乙ですのン
久々のバトルシーンktkr
しかし何て空しい……無常なものよ人の世は

諸行無常
故に誰もが己の信じたことをするのです
あの男が嘘つきで、主人公の男性は本当に世界を救っていたのかもしれません
勿論あの男が正直者だった可能性もあります
もしかしたら急に神様が降りてきて「今から世界滅ぼすね」とか言い出すかもしれません
でもまあ、だからこそ、とりあえず自分が決めたことをやろう
何もしないで流されるままっていうのが一番惨めですから

みたいな話だったりするかもしれない

一週間連続とか懐かしいわ
久しぶりにこんなスピード見たけどおいてかれそうだ

>>74-79
戦わない人乙です!
戦闘シーンなのに詩的な描写が美しいですね!
あの男の方は正直者かもしれませんが人でなしですね!
戦闘シーンがあるのに戦ってるのはどういう事なのかと勘繰りましたが
人と人の戦いなので戦わないシリーズなんですね!セリフも哲学的だと思います!
僕もこんな話が書けるようになりたいです!

ところで僕の兄さんを知りませんか!?
大人しそうで無口なんですけどとっても可愛いんです!
貴方は僕の兄さんの事を知っていますよね!教えてください!

>>81
素晴らしい考えだと思います!
自分が決めた事を貫くって事は凄く大切な事だと思うんです!
だから僕も自分で決めた事をやろうと思います!

ところで貴方は僕の兄さんについて知っていますね!
隠そうったって無駄ですよ!貴方が知ってる事は僕も知ってるんです!!
もってる情報を全部教えて下さい!兄さんを何処へ隠したんですか!?
知ってるはずです!教えろ!
教えろ!教えて!教えて!教えて下さい!

こわい

つまり
兄さんを貫くということか

このスレで兄さんと言えばれっきゅん
つまりれっきゅんを……さあこっちに逃げてくるんだれっきゅん
おにいさんはいつでも君を待っている

とりあえず一週間連続投稿に成功して良かった
ちょっと速度を上げてくぜ!みたいなことしたかった反省している
>>83
とりあえずお兄さんならば待てば帰ってくるので安心してください
帰ってこなくても何時か逢えます
安心してください

>>86
>このスレで兄さんと言えばれっきゅん
待ちなさい
荒神先生とか龍一くんとか上田とか拝戸くんとか他にも色々いるだろうwww

>>87
いいかい影の人
兄というのはね
期間限定なんだ
ある程度おとなになってしまうと兄を名乗るのが難しくなってしまうんだよ

>>88
>ある程度おとなになってしまうと兄を名乗るのが難しくなってしまうんだよ
納得いかないの!

兄さん

書く速度ってやっぱり大切だよなと思いました戦わない人さんおつです
また趣向を変えた作品がくるのを楽しみにしています

>>90
人生は探求です
貴方も兄さんを探す旅などいかがですか?
何時か見つかりますよ、地球は丸いんですから
>>91
書く速度が有っても自分の作品なぞまだまだ未熟です
やはり時間をかけて素晴らしいものを書く人には敵いません……

>>89
ほら、年取ると年齢の差があんまり大きなものにならなくなってくるじゃん
弟も立派になっちゃうじゃん
しゃーないんや……

もう何も言わないでくれ…
弟と並んでて「あれ、双子?」とか言われたり
挙句に「え、お兄ちゃん?」と弟の写真を指差して言われたり
もう既に兄の威厳なんてこれっぽっちもないことは分かってるんです…ぐすっ

>>94
ええで……こんやはおっちゃんが愚痴聞いたるさかい
全部話しぃや
おっちゃんもこう見えて人の話はよう聞く方やねん

>>95
それじゃお言葉に甘えて吐いちゃおう…
俺は空港の方で仕事してて、毎朝バスに乗ってるんですが
今日倉庫で「君いつもバスに乗っとる子やよね?」と渋い兄ちゃんに話しかけられまして
「いつも気になっとってん、『なんで中学生が空港まで来とるんやろう』『若いのに何かあったんか』って」

そんなに幼いか!
よく言われるけどそんなに幼顔か!!

>>96
それは貴方が「うほっ、可愛らしい男の子……」と思われている証です
また一つフラグが立ったと思って喜びましょう
その特性を逆手にとって大きなお兄ちゃんお姉ちゃんを利用しながら生きるのもまた良しかと思われます

>>97
>その特性を逆手にとって大きなお兄ちゃんお姉ちゃんを利用しながら生きるのもまた良しかと思われます
実際、高校出てすぐ社会へ出たので“職場で最年少”が私だったりするのです
よって周りは年上だらけと
でも社会に出て改めて思ったのは、俺ってば昔から年上から受けが良かったりするんだよなぁ……

>>98
ほら
セクシーな年上のキャリアウーマン風のお姉さまとのフラグは近いですよ
良かったじゃあないですか
人生バラ色です!

>>99
>セクシーな年上のキャリアウーマン風のお姉さまとのフラグは近いですよ
セクシーボイスな年上のそんな風な人はいらっしゃる
咳払いがエロいんすよ……聴く度に息子が起きちまって困るんすよ……

>>100
じゃあピュアな魅力を全面に押し出しながらいけばフラグも近いですよ
やったねお悩み解決!

>>101
>やったねお悩み解決!
ところがですね
その人、お父様が料理人で、美味い料理を滅茶苦茶食べてらっしゃるんですよ
牛肉も国産牛のみで、外国産牛はもう食べられないとも仰ってるんですよ
あと酒豪なんすよ

どうやら今も彼氏いないそうなんですけど
こういう話聞いてると「これはハードル高いわ」と思ってしまうという

>>102
こうなったら「姉御! 今夜夜景の見える素敵な俺の家で飲もうぜ!」とでも……
冗談ですごめんなさい
ハードル高いなら背中にジェットパックつけて飛べばいいんですよ
彼女にアタックできる漢になろうと思ってると自然に漢になれます
すると今度は男前需要が生まれるわけです
どう転ぼうがお悩みは解決です

さて
書き溜めておいた分を放出しようか……


 僕は車のトランクに詰めていたジュラルミンケースを手に取る。
 この中には光線銃やスタンガン、特殊警棒が入ってたりする。
 厨二真っ盛りの頃に通販で買って改造してそのまま趣味になってしまったのだ。
 僕は助手席側のドアを開けてジルりんについてくるように促した。

「猫股邸、それはこの街では有名な幽霊屋敷だ」

 開けっ放しの大きな門を通りぬけ、誰も手入れしてない朽ちた庭園を歩きながら、僕は彼女に語る。

「この屋敷の主人、猫股冬二は大の猫好き
 彼以外の家族も、唯一人の例外を除いて皆猫が好きだったそうだ
 彼の家の周りには沢山の猫が住み着いて、そこの住民と仲良く暮らしていたそうだよ」

「私も……猫は嫌いじゃないな
 いつもは猫くらいしか私と遊んでくれなかったし」

 泣けるねえ。

「だがある日のこと、家に強盗が入ってきて彼らを皆殺しにした
 死体はそれは惨たらしいものだったそうだ
 警察も最初は怨恨の線で捜査したそうだが犯人の男と家族の繋がりは見つからなかった」

「犯人から何か聞き出せば良いんじゃないのか?」

「それがこの事件の奇妙なところでね
 運良く帰りの遅れたその家の末っ子が他の家に助けを求めた時、男は既に白骨遺体と化していたんだ」

「……え?」

「ありえないだろう、仮に殺されていたとしても数時間で死体が白骨化するなんてありえない、あってはならない
 何故犯人と思しきその男が死んだのかは不明のまま、警察も結局捜査は切り上げた」

「……それってもしかして末っ子が契約者だったとかじゃないか?
 男は罪をなすりつけられるための哀れなスケープゴート
 末っ子の方が実は……
 なあ、悲喜。さっき言っていたネコ好き家族の例外ってまさにその末っ子だったりしないか?」

「その通り、思ったより頭が働くねえジルリン」

「ジルりんってなんだそれ」

「ジルってのだと味気ないだろう。可愛い者には可愛い呼び名が要る
 君にとってのそれがジルリンだったというだけのことだ」

「可愛い……? そ、その、可愛いっていうのをやめろ! 私は怖いんだからな!」

「オーケーそれは解ってる。だがその君が恐怖を与えるべき相手は俺じゃあない
 この館に巣食っているかもしれない怖い怖いお化けだ
 推理ごっこは小休止、お化けの相手はお化けたる君に任せるよ」

 僕はそう言って屋敷のドアに手をかける。
 ノブをひねり、ドアを引く。


 ガチャッ!ガチャッ!


 鍵がかかっていた。
 考えてみれば当然だ。
 弟が知り合いから頼まれたってだけで何勇み足かましているんだ僕は。

「む、まさかトラップ!?」

「……その可能性も有る。少し下がっていろ。巻き込まれたくないだろう?」

「だがそれじゃあ悲喜が――――」

「今はまだお互いにお試し期間だ。この程度のヘマでやられるような男ならお前も契約相手にしたくないだろ?」

「…………分かった」

 訂正します。この娘やっぱお馬鹿です。
 でもいいんだ。アホの子ラブ、俺大好きだよこういう素直な子。
 僕はまるで何かを警戒するように、いや実際に周囲の様子に気を配りながらゆっくりとドアノブから手を離す。
 その時、ドアの奥からほんの僅かな物音がしたのを僕の耳は捉えた。
 粘着質の液体が這いずるような不快な音色。
 何かが来る、そう思ってしまったせいだろうか。指の先からゆっくりと寒気が登ってくる。
 でもまだ僕は否定する。
 まさか、そんな筈が無い。
 気のせいだ。気のせいに決まっている、ここで情けない声なんてあげて飛び退いたら。
 ―――――ペロリ、と首筋を何かが撫でた。

「うわあぁっ!?」

 僕は思わず情けない悲鳴を上げながら後ろに飛び跳ねた。
 
「何か有ったのか?」

 ジルりんは不思議そうに僕を見る。

「え、あ、いや……その、気のせいだったらしい」

 そう言って彼女に曖昧な笑みを向ける。

「悲喜、下がってろ」

 だがその時には既に彼女はこちらを向いていなかった。
 彼女が見ているのは今僕が飛び退いてきた扉の方向。

「……あんた、戦闘については素人だと思ってたけどそうでもないのかもな」

 扉の方を見たまま、彼女はそう続ける。
 
「ここから先は化け物同士の時間だ
 こんな良い場所、頂けるなら頂いておきたい――――」

 彼女の会話を遮るように扉が開く。

「――――行くぞ!」

 そう言って彼女は二本のナイフを振り回して扉の向こう側へ突貫する。
 中で陶器の割れる音と小さな悲鳴、そして壁の砕け散る音が聞こえた。
 僕もケースから光線銃を取り出して彼女の後に続く。

「おい、ジルリン!」

 扉を足で蹴り開けて中に入る。
 驚くべきことに、そこには誰も居なかった。
 静寂だけが屋敷の中に広がっていた。

書き忘れていたので前回のあらすじ
・切り裂きジャックちゃんの名前が決まる
・切り裂きジャックチャン生まれた意味を問う
・切り裂きジャックちゃん唸りながらメスを突きつける

差し障りにならない程度のストーリーをはさみながらジャックちゃんの可愛さを楽しんでいただく話になっております

投下されたみなさん乙。個別に感想言えないのが申し訳ない
ジルちゃん可愛いよジルちゃん
財団Bの設定使ってみたいけどすぐには思いつきそうもないな

なんだろう
ジルちゃん、悪い人にだまされそうで面倒を見てあげたくなる系女子やわぁ……

既に騙されてるんじゃないかという学会の研究データが…

前回までのあらすじ!
・ゴーストハウスに到着
・鍵をもらい忘れていたので入れないかとおもいきや突然開いた扉
・真っ先に突撃したジルりんが消えた!?

とまあこんなかんじです


「ジルリン!」

 僕はそう叫んで家の中に入る。
 家の中はホコリだらけで、朝だというのに薄暗くてどこか不気味だ。
 ピチャリという水音が背中を撫でる。
 僕の背後で水滴が落ちた。
 振り返るか?振り返らないか?いったい何がある?

「おい、何処に行った!」

 そうやって彼女を探しながら僕は一歩前に進む。
 不意に床が沈んだ。
 足元を見る。
 小さな悲鳴を上げて俺はその場にへたり込んでしまった。
 床が沈んだのではなかった。
 俺が床だと思っていたのは……人の肉体の様々な器官に今まさに分化せんとする肉塊だった。
 それは黒く、あるいは鮮やかな虹色で、そして思い出したように赤くなる。
 不気味な肉塊は今生まれたばかりの口で僕に対して何事か恨み事を呟く。
 僕には何を言っているのか解らない。
 分からないから、怖い。
 声にならない叫び声を上げて僕は玄関へと走る。
 だがその目の前で、何の前触れもなくドアは独りでに閉ざされた。
 ドアに身体を叩きつける。
 鈍い痛みが走る。

「Ah―――aaaaaaaaAAAhhhhHHHHHH!」

 肉塊は何事か呻きながら迫ってくる。
 逃げ道は無い。
 もうダメだ。
 死にたくない、僕はまだやりたいことが有る。
 やらなくちゃいけないことが有る。
 こんなトコロでこんな訳の分からない生き物に殺されたくは……

「――――やれやれ、やっぱ私が居ないと駄目っぽいな」

 声がする。
 天井を見上げる。
 其処には一人、少女が張り付いていた。
 そのスカートはめくれていて、豪快に漆黒のパンツを露出していた。
 ガンプク!
 そして彼女はヒラリと天井から舞い降りて僕の隣を駆け抜けて闇へと奔る。
 薄闇に閃く刃、それが僕の前に迫っていた肉塊を肉片へ、肉片を塵芥へと分解する。
 肉塊はうめき声を上げる間もなく活動停止した。

「一丁上がり、かな」

 刃の主はそう言いながら指でナイフをクルクル回して血振りをして、その後事も無げに肉片の残骸を踏み潰す。

「……ジルリン!」

 それは消えた筈のジルだった。
 
「何してたんだよ心配したぞ! なんで僕が入った時に居なかったんだよもう!」

「…………ウケ狙い」

 ジルがニヤリと笑った所を無言で頬をつねる。

「ふぎゃあああう! やあめえろおよぉ!」

 ピィピィ鳴くので離してやった。

「……ひどいことするな、暴力に訴えかけるのは私の役目だろ
 これじゃあ一体どっちが都市伝説かもわからない」

「うるせえ馬鹿、行くぞ」

 こいつ僕のテンションに適応し始めてやがる。
 恐るべき才能だ。しかも何の役にも立たない。
 僕はしてやったりみたいな顔をしている彼女を後ろに連れて屋敷の奥に進むことにした。


    ※    ※    ※


「ここがキッチン、噂じゃあここで強盗は被害者の肉を調理して喰ったらしい
 前に来た時は普通だったが今回は出端からあんな目に遭ったからなにか見つかるかもな」

 僕たちは廊下を抜けてすぐのところにあるキッチンに到着していた。
 やはり年数が経っているだけあってそこら中がボロボロになっている。
 ピンク色のタイルはくすみ、ステンレスにもあちこちシミのようなものができている。
 どことなく異臭がする辺り、ここには本当に血が染み付いているのかもしれない。

「ふーん……美味しいもんな」

 ジルちゃんは鼻をひくつかせる。

「……ん?」

 よし、僕は何も聞かなかった。

「え?」

「いやなんでもない、なんでもないぞ!」

「変な悲喜だなあ……
 それより今前に来た時って言っていたけど……」

「ああ、前にもここに不法侵入したことが有ってね
 心霊写真とか撮れたよ」

「撮れたの!?」

 素っ頓狂な声を上げるジルりん。

「お化けみたいな存在のくせして驚くなよ」

「いやだって私幽霊とか見たこと無いし」

「えええぇぇぇぇ……」

 久しぶりのがっかり感である。
 買っておいたお菓子をうまい棒コーンポタージュ味だけを残して弟に全部食われた時のようながっかり感だ。
 しかたがないので

「お前それでも都市伝説かよぉ!?」

 と叫びながらジルに掴みかかってみる。

「ひぃ!」

 ジルりんビビりすぎです。
 あんたその気になったら僕ボコボコにできるじゃないですか。

「オカルトそのもののくせによぉ……!」

 彼女の肩を掴みながら崩れ落ち、そのまま低く声を押し殺して静かに咽び泣く……振りをする。

「うぐっ……くそっ……俺は、何のために……」

 しばらくすると彼女が俺を抱き起こしてそっと告げた。
 
「……悲喜、ごめんな。でも、うぜえ!」

 弧を描くような美しいハイキックが飛び出る。

「ほぉう!」

 直撃、美少女の顔面キックありがとうございます!
 俺の身体は見事に宙を舞って台所の壁にたたきつけられた。

「毎度毎度良い蹴りだ、愛してるぜ」

「やっぱうぜえ!」

 そう言われても生まれつきこれなのでどうしようもない。
 僕はボロ雑巾のように地面に倒れてジャックちゃんのスカートの中を覗こうとするが今回はどうやら無理そうだ。


「それよりちゃっちゃと探索しようぜ」

 諦めの良い僕はさっさと起き上がり、探索を開始する。

「分かった」

「運が良ければ幽霊くらいは居るかもしれない」

 そこら辺の戸棚を二人で開け閉めしながらそんな事を言ってみる。
 実際、この前ここを探した時は幽霊が居た。
 除霊もした。
 生まれつき僕は霊感が強いのでお経を唱えたり塩をばら撒いてみたら意外といけちゃうのだ。

「そういえばさっき僕が逃げようとしたら急にドア閉じたよね
 アレもお前やったの?」

「あれ、そうだっけ? 私それ知らないぞ」

 ……これアカン奴や。

「ちょっと引き返そうか」

「なんだよ、調査はこれからだろ?
 まだ向こうの方に部屋やら庭やら有るみたいだし……」

「良いから、引き返そう」

 しかしこういう場合、お約束としてもう手遅れである。

「な、なんだそんな怖い顔して……解ったよ
 あんたが其処まで言うなら少し戻るくらい構わない」

 僕たちは急いで玄関の方へ戻る。
 僕はそのままドアを開けようとしたがやはりノブが戻らない。

「ジルりん、そこのドアを切り裂け。とにかくここから出るぞ」

「そんなに出たいなら窓から出れば良いじゃん」

「――――あっ」

 先に言えよ。
 
「じゃあ……」

 そう言いかけた瞬間、階段を下る音がした。
 そしてそれは少しずつ速度を上げていく。
 迫ってくる。

「な、なんだ……?」

 音が聞こえてくる廊下の奥の方を伺う。
 ジルりんはナイフを抜いて俺の前に立つ。
 廊下からゆっくりと近づいてくる。
 底冷えがするような不気味な声で、意味の通じない文言を呟きながら。
 
 廊下の向こうから、なにか来る。

 生まれたばかりの赤子のような体格の影が遠くに見えた。

というわけで本日のお話はここまで
速度だ
面白さで敵わないなら速度を上げるしか無い

ジルりんは基本アホの子だけど直感は冴えるタイプ
悲喜は基本的に考えるタイプだけど理性蒸発してたり主人公補正でうっかりするタイプ

HDD修復したら本スレ見れた記念!
小説が書けないの人、乙です
この非常事態にばっちり見る所見てるのに唖然とし
さらにその状況を僕のテンションの一言で済ませる悲喜に呆然
さすが俺、さっそく雰囲気に飲まれてやがる
ただね、この赤子の影って何だかデジャヴを感じたんだが
過去のもの読み返しても出てこないんだよね…これはいったい…


"組織"に所属しているからといって誰しもが黒服と友好的かと聞かれれば、回答はNOであろう。

これから話すのは、とあるコンビの日常である。


「今回もカラッカラにしてやんよ」

「…ビショビショになってろ」


人気のない河原で睨み合う二人、一人はスラッとした体型の黒い服の女、殺気だっているもう一人は小ぢんまりした少年。
少年はもともと無差別に無作為に無邪気に遊んでいただけだった。
少なくとも遊びの内容が食いちぎりや丸飲みでなかったら、只の可愛らしい子供だった。
そんな少年のスカウト、もとい沈静化を任された黒服は少年の全てを本気で潰した。
メンタルも肉体も大人げない程に凹ませた。

「今日こそ…お姉さんを食べる」

「ふっ、そういう口説き文句はイケメンなジェントルマンになってから言いなさいな」

「意味が分からないし、イラッとしたから…噛み千切る」

少年の手から水風船が、次々と投げ出される。
対して黒服はそれを最小限の動きで笑いながら避けていく。

「がっつきすぎる男は嫌われるんだぞー、少年」

放たれた水風船が着弾した河原の地面は無惨にも抉れている。

「丸飲む…」

眉間にシワを寄せた少年の号令に合わせて、川が急に巨大な波を作り上げ黒服を含む地面を大きく呑み込んだ。

「やった……!?」

小さな池にも相当するクレーターを見て少年の顔が緩む。

「残念、やれてないよ」

ブスブスと水の蒸発する音と共に、池に正方形の穴が空く。
枠の中心では黒服が横ピースして笑っていた。
バッ、と少年が水鉄砲を構えた瞬間…ジリリリリと大音量のタイマーが鳴り響く。

「はい、おしまい……今月も私の勝ちねー」

勤務を終えた会社員の如く、相手に背を向けて黒服はスタスタ歩き出す。

「……また、負けた」

慣れているのか少年は苦虫を噛んだような顔で、渋々と黒服に付いていく。

彼らは互いに協力しあう契約ではあるが、いかんせん馬が合わなかった。
例えるなら水と油、砂漠と海、はたまた渇きと潤い。

二人が出会った日、少年は黒服に敗北した。
少年にとって初めての敗北は耐え難い屈辱だった。
ニヤニヤ笑う勝者は敗者へ、ある提案を出した。

「君が無差別に人を食べず、私達の敵を食べるなら毎月一度は相手をしてあげる」

敗者には願ってもない取引だった…黒服と再び戦え、生き残れる。
少年の返答は直ぐに決まった。

「……分かった」

こうして少年は目の前の女を食べる為に、目の前の女と"組織"と契約した。
少年は今日もメインディッシュの為に敵を喰らう。
『乾いた場所』対『水を飼う男』
勝者が分かりきった出来レースをひっくり返すまで。

〈続かない〉

おつでした
お姉さんと少年の絡みいいよね……
連載にしても十分面白くなりそうで素敵でした
>>108>>109>>110
ジルちゃん可愛いして頂けて幸いです
これからも可愛い可愛いできることを第一に書いてまいりたいと思います
>>117
ああすまない
またクトゥルーなんだ……
といっても姿形だけ借りただけで多分幽霊のたぐいです
詳しいことは秘密ということで
テンションについては反省している

前回までのあらすじ
・パンツだけど恥ずかしくない
・悲喜くん霊感有る人
・こんにちわ赤ちゃん

「なんだよ、なんなんだよあれ!」

 僕は見てしまった。
 遠くから近づいてくる赤ん坊のような姿。
 肌が粟立つような悍ましさ、あれが、あんなものがこの世には有るのか。
 近づくに連れて姿がはっきりしてくる。
 両手両足をまっすぐに突っ張ったままゆったりと迫ってくる灰色のミイラ。
 赤ん坊のミイラ。
 落ち窪んだ瞳は何も移さず、乾ききった筈の喉から漏れてくるのは先程から続く不気味な音色。

「―――――まあ切れば一緒だ」

 ジルりんは顔色一つ変えずに数本のナイフを投げつける。
 柄頭から伸びる青白い光線で彼女の指とつながったナイフはまるでスズメバチのような奇怪な音を立てながらミイラへと殺到する。
 右から、左から、逃げ道を奪うように。
 ナイフが突き刺さり、光線がミイラの腕を焼ききる。
 彼女とナイフをつなぐ幾つもの光線にすら殺傷能力はあるらしい。
 一際高い悲鳴を上げてミイラは灰へと変わってしまった。

「……すげえ」

「言ったろ?」

「でも一体何だったんだあれ?」
 
「わかんない!」

「都市伝説だろ?」

「なんかちょっとそういうのとは違う気もしたぞ」

「気味悪いな……よし、さっさとこっから出よう」

 僕は窓に手をかける。
 当然開かない。
 ジュラルミンケースの中からハンマー取り出して窓を殴りつける。
 開かない。
 ジャックちゃんにナイフで窓を切らせてみる。
 弾かれた。

「悲喜! こいつ固いぞ!」

「なんで嬉しそうなんだよ!」

 状況は依然として変わらない。
 むしろ悪くなったとさえ言っていい。
 開かない扉、開かない窓、纏わりついてくるような気持ち悪い空気。
 ここに入ってきた時には気づかなかった屋敷全体に満ちる悪意のようなものが僕達を確かに追い詰めていた。

「やっぱり探索しようぜ、悲喜」

 ……とおもったが追い詰められてるのは僕だけらしい。
 ジルりんはあくまで呑気である。

「分かった。それじゃあキッチンの奥に行こう」

 どの道進むしか無いらしい。
 まあ僕がよくやるコールオブクトゥルフでも探索しなければ死ぬだけだし、進むしか無いのは現実も同じってことなのだろう。
 帰ったら少し良い物食おうと思いながら僕は進むことを決めたのである。


    ※    ※    ※    


「ここはリビング、惨殺死体があったのはここだと言われているな
 何かのオブジェみたいに死体が飾られていたとかいないとか」

「うへえ悪趣味だな
 私は殺人鬼キャラで売ってるけど殺して解体して並べて揃えて晒すだけだぞ
 必要以上に死体を辱めるのってなんていうかこう……もにょる」

「もにょるってなんだよもにょるって」

「もにょもにょするの! なんかこう……申し訳ないじゃん!」

 人を殺しておいて申し訳ないも何も無いだろうと思うのだがまあ言わないでおこう。
 それよりも『もにょもにょするの!』は良いなあ、可愛い。

「良いから何か無いか探すぞ。ここが何故またゴーストハウスになってるのかはっきりさせないと」

「分かってるよ」

 そして僕達はまた棚を開けたり座布団をひっくり返したりそこら辺を捜索し始める。
 都市伝説についてはジルりんにお願いして排除するしか無いが只の幽霊ならば僕が追っ払えば良い。
 幽霊の場合は溜まる法則も有るし楽なものだ。

「ッキャアアアアアアアアアアアアアア!」

 突如背後から悲鳴が響く。

「どうした!?」

 そういって振り返る僕の目の前に漆黒の物体が飛来する。

「う゛っ!?」

 全身が粟立つ。
 視界がやけにスローモーションで動いている。
 その飛翔体は必死で首をひねる僕の横をすり抜けて壁にペトと張り付いた。

「あ、う……」

 ジルりんが涙を流しながら首を横に振っている。
 なんだあれは。
 あんなものが居ていい物か。
 何故あんなにも醜く不快で脳髄を締め上げるような異様な黒色をしているんだ。
 そうだ、間違いない。
 あれは……あれは……

「「ゴキブリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」」

 僕達の悲鳴が家中に響いた。
 それと同時に椅子の下、棚の中、それらから一斉に羽音のような何かが聞こえる。
 どうやらまだまだ居るらしい。

「逃げよう! やっぱ逃げよう!」

「でもどうやって逃げるんだ悲喜!」

「窓! 窓を使う!」

 そう言って僕はすかさず窓をジュラルミンケースで破壊しようとする。

「ああ窓に! 窓に!」

 だが駄目だ。
 窓にまでなんかはいよってやがる。
 部屋中を飛び回らんと動き出す蟲達。
 絶体絶命、こうなったらこいつと契約をして事態を打開するしか無い。
 そうおもった時だった。
 ゆっくりと部屋の奥のドアが開く。
 そこに立っていたのは黒いローブを身に纏った長身の女性だった。

「――――焼き――――払え」

 女がそう呟くとあっという間に蟲達“だけ”に火がついて灰すら残らずに消失してしまう。
 彼女は僕たちを一瞥してから、重々しく口を開いた。

「先程からやかましいと思っていたが……」

 ゴホン、と女が咳払いをする。

「私の家に一体何の用だ?」

 その前に貴女は誰だ?
 僕がそう尋ねようとおもった時だった。

「―――――――――死ねぇ!」

 ジルりんが女に向けて飛びかかる。
 振り下ろされたナイフは脳天を裂き、四肢を喰らい、眼球を刳り、女の全身を瞬時に十六に分割する。
 女は悲鳴を上げる暇も疑問を持つ暇もなく、一瞬でモノ言わぬ死体になった。

「……えー」

 なってしまった。

「ジルりん……何やってるのかな?」

 もしかしたらこの館の異変の真相を知っているかもしれない人間だった訳だが。

「あいつ都市伝説の気配がしたぞ! きっと契約者だ! 見ていろすぐに死体がなくなる筈だから!」

 ああ、この感覚には覚えがある。
 クトゥルフTRPGやってたら中盤でボスキャラを当てずっぽうで殺された時の感覚だ。
 腹がたったので邪神を呼び出してデモンベインよろしくロボットバトル物に変えてやったよ。

「…………えーっと、さ」

「どうした悲喜、これで私の力がすごいのは解っただろう?
 ほら契約しようぜ契約! 待ってたんだからな!」

 ここまでデレられるのは嬉しいのだが……とか考えながら僕は死体の方を見る。
 うん、消えてない。
 この前の黒服みたいに消失する気配は一切ない。
 バラバラになって血や体液などをまき散らしているだけだ。
 僕の疑惑の目がジルりんに突き刺さる。

「……なあ、ジル。本当にこいつ都市伝説関係なの?」

「な、何言ってるんだよ。こいつ間違いなく敵だぞ悲喜!」

 僕の表情を見て動揺し始めるジル。

「本当か?」

「ほほほほほほ、本当だって!」

 嘘をついている様子は無い。

「ふむ……」

「本当……だもん」

 それでも疑念は晴れないなあと思っていると急に彼女が少し泣きだした。
 
「うっ…………ぐすっ……」

 かわいい。
 これ少し離れたところから放置してそっと見守りたいわあ。
 
「なんでにやにやしてるんだよぅ……。疑ってるんだろ?
 どうせ私が人間じゃないからってさ……」

「いや、信じよう」

「ほんと!?」

 何故顔をパッと輝かせるし。

「ああ、本当に―――――――」

 その時だった。
 バラバラになっていた女のカラダが突然空中で浮かび上がり、僕とジルりんに向けて飛びかかってくる。
 彼女はまだ気づいていない。
 気づいているのは僕だけ。
 声をだす暇は無い。
 彼女をすかさず押しのけて、僕は彼女の壁になる。

「悲喜ッ!?」

 突き刺さる牙、骨、牙?
 突き刺さった牙から感じる大量に血の抜けていくひんやりとした感触。
 これはまさか……。

「うっ……グスッ……!」

「なんだこいつ再生するのか! 待ってろ悲喜、今すぐこいつを!」

 空中で再生する目玉から溢れる涙。
 ジルりんが飛びかかるがそれもあっさりと空中に浮かぶ黒い翼で受け止められる。

「ひぃっ……ク」

 目玉を中心にゆっくりと顔が再生し始める。
 作り物みたいに生気を感じ無い青ざめた顔がくしゃくしゃになっている。
 美人も台無しというものだ。
 そして今度は顔から胴体が生えてくる。
 あと服まで一緒に再生されているのもすごく残念。

「あんまりだわ……」

 冷静に考えるとあの再生ってどこからエネルギー使ってるんだろう。

「あんまり、あんまりすぎる……」

 視界の中でジルりんが慌ててあの女に向けて攻撃している。
 だが間に合わない。
 僕は気づいてしまった。

「あんまりだわああああああああああああああああああああああうひいいいいいいいいいいいいいいいやああああああああああああああん!
 うひゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!
 ひゃああああああああああああああああああああああああああああああうええええええええええええええええええええええええええええええええええん!」

 あの女、今僕の身体に刺さってる牙から血を抜いて再生してやがる。

【僕は小説が書けない 第七話「猫股亭奇譚/参」 おわり】

クァチル・ウタウスとはまたマイナーな神格をwwww

ああwwwwwwwwwwww窓にwwwwwwwwww窓にwwww

グロ肉大丈夫でゴキブリが怖いお二人の感性がもうSAN値的にやばいwwww

>>126
気づいて頂けましたか
マイナーすぎて気に入っていたので絵だけ出してみました
>>127
冒涜的パロディですね、ええ
やはり有名なセリフは使いたくなります
>>128
グロ肉でビビる頃も有ったんです……
少なくとも悲喜には
ジルりんはもう駄目なんじゃあないかな

やっと未読分の消化完了したぜ、皆様乙ですの

>>105-106 >>112-115 >>121-126
まさかこの屋敷、戦わないシリーズの……?
とか色々妄想してましたの
しかしジルりんがどんどんポンコt(――暫くお待ち下さい――)ゲホゴホッ、どんどん萌えキャラ化してますね(血塗れ
ゴキブリ嫌いは噴いたwww
しかし悲喜さんピンチだ、どうなることやら

ところでふと思ったんだがあらすじが3文ずつなのはオーズネタですk(

>>118
カラカラ姉さん素敵
やはり時代はおねショタなのか……
そしてビショビショタが勝つ日は来るのだろうか

>>129
>やはり有名なセリフは使いたくなります
よくあるこあとる
俺の場合乱用しまくってるけどねorz

【僕は小説が書けない 第八話「猫股亭奇譚/肆」】

「いいいいいいいいいいやああああああああああなあああああああああああのおおおおおおおおおおおおおおお!
 っもううううなんでええええええいきなりいいいいいいいいいいきられるのおおおおお!」

 女は飽きもせずに泣きわめきながらも再生を続けている。

「やかましい!」

 ジルりんはそれに劣らぬ速度で切断と解体を繰り返しているが明らかに疲れが見えている。
 彼女の戦闘スタイル的に長期戦は向いてないのだろう。
 しかもあの再生には僕の血肉が使われている。
 僕の身体に刺さった牙さえ抜ければまた形勢は変わるのだが……少し試してみたが僕自身の手では抜けないらしい。
 刺さり方は浅いのに妙だ。
 恐らく何がしかの都市伝説的な力が働いているのだろう。
 ならば取る手段は限られている。

「ジル! この牙を“抉れ”!」

「分かった!」

 ジルは僕の言葉を聞くと躊躇わずにナイフで僕の肉ごと牙を抉り取る。
 すると一瞬だけ再生が停止する。
 振り返ったジルりんが喜悦をにじませた声で叫ぶ。

「これで終わりだ!」

 彼女の振り下ろすナイフが確かに女の胸を裂く。
 だが女は表情を変えずに自らの胸を裂いた相手を眺めることもせず

「あー……すっきりした」

 とだけ呟いた。
 そして次の瞬間、部屋中に大量の蝙蝠が溢れ、わけも分からぬままに僕は失神した。

    ※    ※    ※   


 今朝からの重金属酸性雨に濡れる町並みを見て青年はため息をつく。
 ここはネオサイタマにあるマルノウチスゴイタカイビルのチャミセであり、青年は今此処でサイレントヒルから直輸入されたマッティーをシバイていた。
 彼は窓の外を忙しく行き交うサラリマンを見て苦々しく笑う。
 いくらカチグミだとしてもあんな情けない人々が自分の将来の姿だと思いたくなかった。

「ヒキ=クン! 待たせてゴメンネ!」

 青年、ネオサイタマハイスクールに通うヒキ=コモゴモはガールフレンドのジル=キャニと待ち合わせをしていた。
 彼の恋人であるジルは快活な少女で、どちらかと言えば斜に構えがちなヒキとは様々な面で対照的だった。
 だが周囲の予想を裏切り彼らの仲は上手く行っており、付き合い始めてから今日で丁度一年となるのだ。

「イマキタバカリさ」

 イマキタバカリとは待ち合わせで先に来ていた人間が使うこの国特有の表現である。
 これにより彼らは相手に気を遣わせない言葉の使い方をヘイアンペリオッドから練り上げているのだ。
 ジルは海外から来た転校生であったがヒキのこのようなオクユカしいアティチュードに惹かれていた。

「それなら良かったデス!」

 彼女は待たせてしまったことを察してはいたがそれを態度には出さない。
 それは逆に相手の心遣いを無下にすることになりスゴイシツレイになるからだ。

「それで今日は一体何の用だい?」

 代わりに彼女は服のポケットから映画のチケットを取り出す。
 それはヒキの大好きな映画【ラブクラフトvsエイリアン】だった。

「上の階のシネマ・コンプレックスで今やっているそうです
 一緒に見に行きませんか?」

「それは素敵ですね。その後はスシ=レストランに行きましょう
 僕の父の友人が経営しているんだ」

 ヒキは優しいほほえみを浮かべて彼女を見つめる。
 彼女もまたヒキを見つめる。
 幸福なアトモスフィアが彼らを包んでいた。


    ※    ※    ※


「って、なんだこれ! なんだったんだこれ!」

 僕は目を覚ます。
 気を失っていたのは分かる。
 だが何だ今のサイバーパンクめいた謎の夢。
 ジッサイ意味不明だ。
 しかも恋人がジルりんだとなんかこう……恥ずかしい。

「うわっ、いきなり大声ださないでよ!」

 目覚めると同時に怒られる。
 驚くべきことに声の主は先程の吸血鬼だ。

「アッハイ」

 適当に返事しながら周りを見回す。
 気絶したジルりんがなんか可愛い服を着せられて鎖でグルグル巻にされている。
 俺も手足を皮のベルトで縛られて動けなくなっている。
 僕のジュラルミンケースは幸い近くに置いてある。
 このベルトの拘束さえ解けば取りにいける。
 しかも幸いなことに僕は服の中にナイフを仕込んでいる。
 この程度のベルトを外すなんて容易なことだ。

「まあ良いわ。これで起こす手間が省けた」

 やはりローブを脱いでいると美人だ。
 魂を腐らせる美貌。
 凍りつくような瞳。
 緋色の唇。
 好みじゃねえけど美人だ。

「貴方に聞きたいことが有るの」

「( ´Д`)なにか?」

 耳元を何かが高速で駆け抜ける。
 いつの間にか女の手には革の鞭が握られていた。

「ねえ僕、立派な傷跡がほっぺにあるけど逆のほっぺにもつけてほしくない?」

「失礼、そちらの頬は恋人の為にキープしてあるものでね」

 とまあ僕のセリフが言い終わるか否かのところで腹にパンチをされる。
 割りと痛いのだが余裕ぶって見せ……られる訳もなく、ゴホッとか言って顔をしかめる僕。

「まあ恋人って右手のことですけどね、ハハッ」

「うっざいわ……ね!」

 もう一発腹パン頂きました。

「おいあんた、人間相手なんだぞ加減しろ加減」

「ごめんなさい、なんか無性に腹立ってつい……」

「まあ我々のような人間にはご褒美ですけどね」

 思い切りいい音がしてもう片方のほっぺを鞭で叩かれる。
 皮が裂けて肉がえぐれて血が流れる。
 僕はそれを他人ごとのように感じている。
 僕の意識は逆転の糸口を探っていた。
 彼女はそれを指で掬い取って少し舐める。

「んー……美味しい」

 このまま童貞奪ってくれねえかな。
 もう人外でも良いよ穴さえ有れば。

「お姉さん、それで僕から聞きたいことってなんですか
 僕は幽霊屋敷を調べてくれってこの屋敷の権利者に頼まれてきただけですよ
 僕は何一つ悪いことしてませんよ」

「違うわよ。そうだとしても普通の人間にこの家の鍵は突破できない筈なのよ……
 少なくとも今朝の段階ではたどり着くことさえ本来できなかったの
 なのに此処へ来たってことはあなた達は何者かの協力を受けている
 それを話せばあなた達を帰してあげても良い」

 目星ロール。
 そこら辺の棚から都市伝説の気配。
 聞き耳ロール。
 ジルりんの呼吸音が変化している。
 動こうと思えば動ける可能性が高い。
 だがこれについては気づかれている可能性も高い。

「……それはつまり、僕とそこで縛られている彼女は見逃してくれると」

 ジルりんじゃあこの女を殺しきれるか分からない。

「ええ、まあ我慢してあげる
 そこの女の子は私好みだからこのまま少し弱らせてから楽しみたいところだったんだけど
 貴方が正直に洗いざらい話してくれるならここから返してあげても良いわ」

「僕達はほんとうに偶然来ただけですよ?」 

「正直は美徳だと思うわよ?」

「……解りましたよ」

 少し勝負に出ますか。

「じゃあ今からそいつが来るそうです」

「嘘ね、それならもうとっくに助けに来てるわ
 あなた達は見捨てられていると考えてるんだけど」

 それは即ち喋るだけ喋らせて殺すつもりだと言ってるようなものだ。

「――――それはどうでしょう?」

 僕は服に仕込んでいたナイフを都市伝説の気配がする棚へ投げ捨てる。
 偶然にも棚の瓶が割れて中から幽霊のような物がふわりと飛び出すがこれはどうでもいい。
 こうなれば少しマシ程度の違いだ。

「は?」

 一見意味不明な行為だ。
 僕も正直適当にやっただけだ。
 僕は吸血鬼の女の背後を見て笑う。 
 こっちが僕の狙いだ。

「しまっ―――――――――!」

 女は背後を見やる。
 “居るはずのない”救援を警戒して。
 そして彼女はジルの存在を意識から外す。

「うおおおおおおお!!」

 ジルもまた即座に自らを縛る鎖を切り裂く。
 彼女の身体のあちこちが粒子化し始めている。
 かなりの無茶をしているのだろう。
 彼女はそのままこちらに飛び込みながら僕の拘束も外す。

「悲喜!」

「ああ!」

 二人の声が重なる。
 考えていることは多分同じだ。

「「お試し期間は終了だ!」」

 瞬時に契約成立、僕の心の力が一気に彼女へと流れこむ。
 それと同時に彼女の力の一部が僕のモノへと変化する。
 脳内に浮かび上がるいくつかの情報。

 ▽データが公開されました

 都市伝説名:切り裂きジャック
 契約効果:限定解除
 契約者への恩恵:消体無名(アナザー・ジャック・ザ・リパー)
 →この都市伝説と契約した場合、互いが互いの姿に変身できます
 →ただしどちらも同じ姿で居ることはできません
 →意識は保たれますが戦闘能力は外見に依存します
 ???:?????????????
 ???:?????????????
 →???????????????????????
 →?????????????????????
 →?????????????

 ノイズが多いが気にしてられない。
 これが僕達に残された最後の武器だ。

「小賢しい真似を!」

 先程と同じように女は自らの身体を大量の蝙蝠に変化させる。
 だが今回は囲まれた所で意識を失いはしない。

「えっ?」

 戸惑う女の声。
 最初から僕達が契約してたと思っていたらしい。
 ならば隙はそこにある。
 ジルが切り開いた道を駆け、僕はジュラルミンケースを取り返す。
 中に入っていた光線銃を乱射して蝙蝠を焼き払う。

「こっちだ悲喜!」

 ジルに言われるがまま屋根裏へと走る。
 僕は彼女と部屋に滑りこんで部屋の鍵を閉める。
 蝙蝠の姿から戻るのには時間がかかるらしく女はまだ来ない。

「良いか悲喜、お前が起きる前に私が手に入れた情報をお前に伝える
 あいつは只の吸血鬼じゃない」

 只の吸血鬼じゃない?
 それは一体どういう……





「あーもういいや、面倒くさい。手加減無しね」





 ひどくなげやりな声が扉の向こうから響く。
 寒気が走る。膨大な殺気が破裂したのが素人の僕にでも解った。

「不味い、逃げ――――」

 扉が砕けて漆黒の影が僕の隣を通り過ぎる。
 そしてジルが居た筈の場所がまるっと抉れていた。
 

 ▽切り裂きジャックがロストしました

 こうなって初めて攻撃を仕掛けられたことを理解した。
 でもそれだけじゃない。
 肩口から火を注がれたような激痛が走る。
 耐え切れずに僕はその場に倒れてしまう。
 左腕がグチャグチャになってしまっている。
 その左腕で持っていたジュラルミンケースもこれでパァだ。
 終わった。
 こうなってしまって何ができる。
 これから始まるのは一方的な蹂躙だ。
 たとえ帰ってこれても日常はもう二度と帰ってこない。
 面白くもなんともない幕切れである。
 親愛なる弟に少々申し訳ないのだが僕はどうやら死ぬらしい。
 まあ男同士だ細かいことは言うな、許せ。
 それにしても人ならざる者に触れてしまって調子に乗った男の愚かな末路って意味では悪くない筋書きだ。
 僕の書く小説もだいたいこんなくだらないオチで終わるものばかりなのだ。

「あっ……」

 攻撃の衝撃で床が崩落する。
 こんな幽霊屋敷、良く考えれば構造がもろくなっていて当然だ。
 無数の瓦礫とともに僕はその破壊の渦の中に飲み込まれていった。
 この高さから落ちれば無事では済むまい。
 こんな時にでも、死にたくないと願ってしまう僕は醜い生き物なのだろうか。
 正直なところなんでもいいから助けてくれ、そう思う自分に自己嫌悪を禁じ得ない。


    ※    ※    ※


 崩落に巻き込まれて僕はなお意識を保っていた。
 この屋敷にあった地下室の瓦礫の中に落ちたせいで落下の衝撃を和らげていたらしい。
 いっそ死んだほうが楽だったというのに。
 遠くから足音が近づいてくる。
 ジルりんには済まないことをしたものだ。
 僕なんかとつるんだせいでこんな目に遭うなんてあの娘も哀れだった。
 彼女には幸せに生きて欲しかった。
 自分の目で、耳で、頭で、何が善で何が悪か、判断して生きていく姿を見たかった。
 僕はきっと彼女が好きだった。
 そっと傍に寄り添いたかったのに、そんなことも素直に言えなかった。

「おーい、生きてる? 生きてるならもう少しお姉さんと遊んでもらおうかなあ
 女の子をあれだけ泣かせたんだもんそれくらいのワガママには付き合ってもらわないと」

 あいつはきっと生まれたばかりだったのに。
 本当にあっけなく、虫けらみたいに死んでしまった。

「……心臓の音、かな。悪運が強いねえ。殺すには惜しいし、これは尚の事遊んでおきたいなあ」

 なんでだ。
 僕のせいだ。
 僕が馬鹿な事を言ってないでちゃんと彼女の言うとおりに戦う準備を、契約をしておけば。
 僕は近づいてきた吸血鬼の女に胸ぐらを掴まれる。
 そして彼女の瞳が僕の瞳を覗き込もうとしたその時、女の身体が揺れて彼女はその場に崩れ落ちた。

「う……そ?」

 長くて美しい足が、黒いパンツを遠慮無く見せびらかしながら女を蹴り飛ばす。
 見覚えのあるその姿を見て、僕は身体の何処にこんな力があったのかと思う程の声を上げる。

「ジルりん!」

「ただいま」

 ▽契約回路再度開通、データが公開されました
 ▽???によるブーストで契約回路が活性化しています

 都市伝説名:切り裂きジャック
 契約効果:限定解除
 恩恵:消体無名(アナザー・ジャック・ザ・リパー)
 →この都市伝説と契約した場合、互いが互いの姿に変身できます
 →ただしどちらも同じ姿で居ることはできません
 →意識は保たれますが戦闘能力は外見に依存します
 性質:水属性、都市伝説種、強化系
 契約活性:霧都の怪異
 →心の力を膨大に流しこむことで大量の霧を発生させます、霧の中ではナイフによる攻撃が強化されます
 →霧の中からの脱出及び霧の中への侵入には探知系の能力を必要とします
 →太陽光の量によって心の力の消費量は変わります

 そこに居たのはジルだった。

「それにしても悲喜、ピンチっぽいな」

 女は僕の腕を見ている。
 そこで僕は初めて気づいた。
 僕の左腕が毛むくじゃらの猿の腕に変わっていることに。
 そこで僕は気づいた。
 都市伝説同士は惹かれ合う。
 それは一度都市伝説に出会った人間もまた同じこと。
 ならばジルと過ごしていた僕が都市伝説と惹かれ合いやすくなるのもまた理というものだ。
 さらにここは元々旧家、それならば“猿の手”くらいのマジックアイテムは有っておかしくない。

 ▽データが更新されました
 ▽猿の手の残り使用回数一回
 ▽最後の願いを入力してください
 

というわけで第八話
前回のあらすじを忘れてたので今
・謎の館に怯える悲喜、呑気なジルりん!
・現れた怪しげな女に斬りかかるジルりん!→ゲーム中盤でラスボスと思しきものに当てずっぽうで斬りかかっちゃいけません
・しかし切りかかった相手は吸血鬼で悲喜は一瞬でやられてしまう→謎の女吸血鬼が若干柱の男っぽい

だいたいこんなんです
ジルりんの霧は身体能力強化に回したエネルギーの余剰を排気ガスとして出しているのが霧になっているイメージ
太陽光でエネルギーは分解しちゃいます

乙ですのン
契約キマシタワー
そして強いしカッコいいぞジルりん、これで今までのポンコツ加減も帳消s(切り刻まれました
最後の願いはどうなるんだろう…

投下を…もっと投下を…

elonaにハマっちまってなかなか書けないですよ隊長……
核爆弾ぶっぱしたり終末起こしたり巨人解き放ったりして大爆笑しちゃいます
>>139
いやねえ
ジルりんやられたところで切るかどうかで超迷ったんですけど
不評をいただく原因が大抵自分の好きなノーフューチャー状態

今日は天気が悪い。
轟々とした風の音が鼓膜を震わせる。
外の様子を伺おうとカーテンを開けたら窓にびっしりと雪が付いていた。
一々窓をあけるのも面倒だ。
僕はそっとカーテンを閉めて布団に潜り込んだ。
土曜日の朝は騒々しい。
街を歩く人々の甲高い声が聞こえてくる。
はてな、よく考えたらこんな街を人が歩いている訳がないじゃあないか。
僕はもう一度カーテンを開ける。
まだ雪がびっしりと窓についている。
ここは吹き溜まりになっているようだった。
窓を叩いて雪を落とすべきか?
そんなことを考えていた時、突如窓が大きく震えた。
僕は思わず後ずさった。
なんだ。
なんだったんだ、窓が震えたその刹那に見えた物は。
窓に付着した雪は斜めに、何か長いもので一度撫でられたかのように取り払われていた。
あれはなんだ?
僕はその雪が取り除かれた後の窓の隙間から外を眺める。
吹きすさぶ雪、誰もいない町。
遠く、とても遠くで男が一人楽しげに笛を吹いている。
その周りを沢山の子供達が一緒に歩いている。
あの声の正体は子どもたちの会話だったのか?
あの妙に通る声は子供の声だったからか?
……男がこちらを見たような気がする。
いやそんな馬鹿な、この距離でそんなことがある筈はない。
恐ろしくなってカーテンを閉める。
笛の音色。
単調で堕落的なフルートの音色がする。
楽しそうな会話に聞こえた先ほどの声は、よくよく聞けば何かの歌にも聞こえてきた。
それに気づいたのは声が近づいているからだ。
楽しそうな声。
楽しそうな声は僕を誘うように近づいてくる。
心の何処かで僕もまたあの集まりに心惹かれているのが恐ろしかった。
音色はジリジリジリジリ近づいてきて、消える気配は無い。
僕は布団を被り、中で耳をふさぐ。
どれほどそうしていただろう。
僕はそっと布団の外を覗く。
いつの間にか笛の音色は消えていた。

「ああ……」

もう聞こえるのは風の音色だけ。
僕は小さく安堵の溜息を漏らす。
布団から這い出て、朝食の準備を始める。
カーテンの外をサッと開ける。


大雪の中、男と子どもたちが窓の前に立っていた。
フルートの音色が、細く細く流れ始めた。

今気づいたんですけど>>141って途中送信ですねえ
ノーフューチャー状態好きなんだけどそれで終わらせると非難轟々になることが多かったので一応ピンチにしたら同じ話で逆転させたいと思ってますねえ

お疲れさまです
寒いのにひやっとさせんなよ!
筋自体はシンプルだけどそれ故に迫るものがあります

乙ですのン
これは怖いwwwwゾッとしたわw
しかしこっちは完全に春の陽気で寧ろ暑いくらいなのでいいぞもっとやれ

満月の夜
波の音だけが響き渡る人気のない埠頭に、黒尽くめの集団が現れた
彼等は寂れた倉庫へと足を踏み入れると、そこにはまた黒尽くめの男が一人、立っていた
集団の主要人物らしい男女が自らのフードを取り、前に出て男に歩み寄った
男はそれを確認すると、深々と御辞儀をして彼等を歓迎した

「「亞楼覇」の皆様ですね? お待ちしておりました」
「貴方が“売人”ね?」
「然様に御座います。真に失礼ながら、名前は伏せさせて頂きます」
「構わん。例のブツは何処だ?」
「無論、御用意させて頂いております。こちらに」

売人は何処からともなくアタッシュケースを取り出し、
それを開いてリーダー格らしき男に差し出した
男がそれを受け取り中身を見ると、表情に笑みが浮かんだ
何らかの機械のようなものが、2つ
その姿形を敢えて形容するならば、“刃の部位が無いチェーンソー”だ

「……これが……これが『エフェクター』なの?」
「御明察に御座います。御使用方法はその見た目で容易に御判断できるようになっております」
「ほう……これだけか?」
「とんでも御座いません。奥にまだ御用意させて頂いております
 御案内致しましょう、こちらへ」

天窓から差す月光しか目の頼りがない、暗黒に包まれた倉庫の奥へと、売人は手を招く
男はアタッシュケースを閉じ、女と手下を侍らせて売人について歩き始めた
その瞬間、彼等の足元に、すとん、と何かが突き刺さった
各々が下がり、手下達は男女を庇うように前へ出る
それは黒い蝙蝠の形をした物体だった
が、すぐにそれは闇に溶けるように消えていった

「その先にはもう何もない。『エフェクター』は回収させて貰った」

聞こえたのは若い声
闇の中から靴の音が響き渡る

「っ……誰? いつからいたの!?」
「お前は自分の影に同じ事が訊けるか?」

嘲るようにウヒヒと嗤う声の主は、月光の下に辿りついてようやく判明した
声の通りまだ若い、顔の右半分が髪で隠れた黒尽くめの少年だった
首に提げられた金色の木の枝のペンダントが、きらりと胸で輝いている

「ちっ、ガキか……いや、「組織」か?」
「だったらどうする?」
「分かっているだろう?……殺せ」

男の指示と共に、周りの手下数人の姿が変化する
ハイエナのような怪物となったそれは、涎を垂らして低く唸り始めた

「「グール」か…悪趣味な都市伝説だ」

少年が呟くと、「グール」達の姿が忽然と消えた
にやっ、と男が薄く笑った
直後、辺りに血飛沫が飛び散った
腹をばっさりと切り裂かれた「グール」が姿を現し、少年の周りにばたばたと倒れる
そこに立っていたのは、血に塗れた黄金の大鎌を持った少年だけだった

「っ!? 「グール」の擬態を見破ったってのか!?」
「都市伝説の力を利用する犯罪集団「亞楼覇」…
 リーダー格である生須 蹄(ナマス テイ)、及び沢 禰香(サワ デイカ)、以下数十人の組員と売人
 『エフェクター』の闇取引の容疑により、「組織」R-No.の名において拘束する」
「R-No.……『Rangers』!」
「とんだ邪魔が入ったようで……私は御暇させて頂きますよ。がっひゃっひゃ……」
「逃がすとでも思って――――」
「貴様の相手はこいつらだ」

先程の倍以上の組員が前に出、その姿が「グール」へと変化する
その中の2、3体が、先行して少年に襲い掛かった

「……俺の邪魔をするな」

鎌を下ろし、彼は右腕を伸ばし、掌を広げた
すると、彼の影から黒い塊が「グール」と同数飛び出し、蝙蝠の形に変化して、少年の右腕の周りを舞う

「『欠片蝙蝠(ブリックバット)』」

蝙蝠は忍者の投げる手裏剣の如く回転し、「グール」へと放たれる
小気味の良い音と共に突き刺さり、体液を噴き出しながら「グール」は次々と倒れていった

「面倒だ……纏めて消えろ」

さらに動きだそうとする「グール」の群れの足元の影が、ゆらりと蠢いた
小さく波打つ影の表面は、徐々に、徐々に大きくなり、激しさを増す
「グール」達は思わず、その場で立ち止まってしまった

「『欠片蝙蝠-災厄箱(パンドラ・ボックス)』」

ぶわっ!!と「グール」の足元から大量の蝙蝠の刃が溢れ出す
逃げようにも、ここは影の中
影から際限なく溢れる刃から、逃れる事は出来ない
あっという間に、「グール」達は血塗れになり、次々と倒れ伏した
その場に立っていたのは少年と、生須と沢のみとなった

「売人は逃したか……まぁいい、後はお前達だけだ。今なら痛い目を見る事は無いのだが」
「ほう? 我々に勝てると、そう言いたいのか?」
「どちらにせよ、楽にさせるつもりはない」
「随分な自信ね……じゃあ、早速使わせて貰おうかしら?」

沢が取り出したのは、先程売人から受け取った『エフェクター』と呼ばれる代物
にやりと笑って生須もそれに応え、同じく『エフェクター』を取り出した

「なっ……それを使うのか!?」
「見せてやろう、我々の力を……!」

2人は装置についたリングに指をかけ、

「「『エフェクター』、起動!!」」

リコイルスタータを勢い良く引いた
『エフェクター』は激しいエンジン音を轟かせて振動し始める
そして、2人に変化が現れた
生須の身体に包帯が何重にも巻かれ、何処からともなく現れた黄金の棺に収納されて、
黒く禍々しいオーラが棺の手足となって立ち上がる
沢の身体を業火が包み込んだかと思えば、炎が『エフェクター』へと集中し、
炎のチェーンソーを作り上げ、五月蠅く火花を散らした

【ほう……力が漲ってくる……】
「これが『エフェクター』の力……!!」

先に動いたのは沢だった
チェーンソーを振り上げ、炎の斬撃を飛ばす
少年は軽く舌を打ち、鎌を横薙ぎに振るって相殺させた
今度は生須が高く跳び上がり、少年の頭上から落ちて押し潰そうとしたが、
寸でのところで回避され、その策は無意味に終わった
が、落下点には小規模なクレーターが出来ており、その破壊力を物語っていた

【次は貴様がこうなる番だ】
「…都市伝説を歪めて手に入れたような力で…俺は倒せん」

そもそも『エフェクター』とは、原理や製造法が殆ど解明されていない謎の装置であり、
「組織」の間でも、掴んでいるのはその能力くらいのものだ
その能力とは主に2つ
一つは“都市伝説の能力の歪曲”
例えば沢の「パイロキネシス」のように、プラズマ流体である炎を実体化させ、斬撃属性を加える力
一つは“都市伝説の存在の歪曲”
例えば生須の「ツタン・カーメンの呪い」のように、本来姿無き物に形を与える、若しくは本来の姿を変える力
噂に忠実な都市伝説が無理矢理その存在意味を捻じ曲げられれば、どのような危険が及ぶか分からない
生須達のような悪しき心の持ち主が使うとなれば尚更だ
「組織」では、まるで這い寄るが如く静かに増えつつある『エフェクター』による事件にも対応している
それはR-No.においても例外ではない

「『レイヴァテイン・ブレイド』」

少年は黄金の鎌を身の丈の倍以上はあろう巨大な両刃の剣に変化させ、
再び突進してくる黄金の棺に向けて振るった
がきんっ!と火花を散らして、剣と棺がぶつかり合う
棺を纏う邪悪なオーラが無数の腕を形成して少年を捕らえようと伸びてゆく
が、少年の影からも同じく夥しい腕が伸び、それを抑えた

「っ……成程、『エフェクター』も伊達では無いという事か」
【やはりな。貴様、多重契約者か】
「一筋縄では行かずとも、お前等程度なら十分だ」
「あらそう……2対1でも同じことが言えるかしら?」

背後から忍び寄る沢
茫々と燃え盛るチェーンソーを振り上げ、口元を歪めた
その笑みは狂気に満ちているようにも見えた

「これで終わりよ!」

「それは生存フラグだ」

再び響く甲高い音
次に上がったのは、沢の驚いた声だった

「えへへ、残念でした♪」

驚くのも無理はない
沢の目の前に突然青い髪の少女が現れ、先端に大きなリング状の装飾のある長い杖で炎の刃を防いでいたのだ
そのまま少女は刃を弾き、沢はよろめきながら後退した

「なっ……一体何処から!?」
「ご主人様の後ろを奪おうなんてそうは問屋が卸しませんよ!」
「かなり意味が違って聞こえるぞ」
【ごちゃごちゃと……どういう状況か分からないのか?】
「分カッテイナイノハオ前達ノ方ダ」

突如、棺の真下の影から巨大な拳が現れて棺を押し上げる
バランスを崩した棺を、少年は飛び上がって大剣をぶつけた
火花を散らし、勢い良く棺は吹き飛んだが、無数の腕で支えてショックを和らげ態勢を整える
少年の傍に寄り添うように、黒いローブを羽織った影が出現した

【っく………使役系の都市伝説が2体……三重契約か】
「悪いがそれは正答じゃあない」
【何?】
「答え合わせの時間だ……『ギャラルフォン』、ロック解除」

少年はスマートフォンを取り出し、指で画面に“R”の字を書くと、
画面が切り替わって7つのボタンが現れる
彼はその中の4つのボタンをタッチした

《LIM》《WILL》《NAYUTA》《BI-O》
「待ちくたびれただろ? 存分に暴れろ」

腰に煌めくベルトの機械的なバックルにスマートフォンを翳すと、《Inform》という音声が流れ、
彼の周囲に、何の前触れも無く4つの影が現れた
鼻の長い白い獣、赤々と燃える人魂、紫のもやを纏う剣、ドリルや機関銃を装備した巨大な蛇型ロボット

「やぁっと俺様の出番か! 肩が凝って仕方ねぇぜ、なぁ!?」
「うおおおおおお!今日は久々に7人勢揃いでい!!」
『全く暑苦しい……子供じゃあるまいし少し静かにしたまえよ』
《動作安定異常皆無,視界良好,弾丸装填完了……戦闘準備,完了》
【ッ!? 七重契約者だと!?】
「まさか、そんなことって……」
「ウヒヒヒヒヒ…そのリアクションは疾うに聞き飽きた」

少年は黄金の剣を頭上に投げると、
黒いローブの影が変化した漆黒の鎌を右手に構え、紫のオーラを放つ剣を左手に掴んだ
そして左足を人魂が包み込んで、黄金の剣が変化して出来た鉤爪を右足に装着した

「お前等に“正義”は無い……行くぞ!」
「了解シタ」「はい、ご主人様!」「OKィ!」「がってんでい!」『仰せの儘に』《Yes,Boss》

少女が獣に飛び乗り杖を構えると、獣は沢に向かって走り出す
沢の燃えるチェーンソーと少女の杖が激しい音を立ててぶつかる

「子供だからって手加減しないわよ!」
「こちらから願い下げです! ビオさん!」

少女が沢から距離を取ると、轟音と共に地中から4基のドリルを持った蛇型ロボットが現れ、
各ユニットに配備された機関砲から弾丸を発射する
軽く舌打ちし、沢は周囲に炎を出現させた
空中に浮かぶ炎が壁となり、弾丸を弾き返す

《全弾命中……標的損害,皆無》
「あはははは! 素晴らしいわ、この力!!」
「ちっ、おいミナワ! 厄介な相手になりそうだぜ!?」
「私に考えがあります。理夢さん、ビオさん、援護をお願いします!」

ミナワと呼ばれた少女は、理夢というらしい獣から飛び降りると、
杖を横向きにしてフルートを吹くように構えた

「あら、何を始めるのか知らないけどそんなことは――――――」
「そっから先は俺様達の台詞だぜぇ!!」

理夢が前足を振り上げて爪を叩きつける
沢は燃え盛る刃でそれを防いで見せた
さらにビオと呼ばれたロボットも、ドリルで突撃を試みたが、
それもやはり炎のバリアでものの見事に弾かれてしまった
そうしている間に、ミナワは演奏を始めた

テンポの速い童謡「シャボン玉」を、エンドレスで奏でる
すると、杖の穴から無数の小さなシャボン玉が、ぽぅ、ぽぅ、と膨らみ、拡散する
まるで音色に合わせて踊るかのように

《突破不能……》
「くっ、邪魔なペットと玩具ね!」
「だからペットじゃねぇっつってんだろ!?
 テメェこそ暑苦しい上に面倒な妖術使いやがって!」
「『エフェクター』の力で生まれ変わった「パイロキネシス」よ!
 この力さえあれば…貴方達だって焼き払えるわ!」
「残念でした、科学的に考えて無理です♪ 『リムーバブル』!」

瞬間、周囲のシャボン玉がくるくると円を描いて回り始めたかと思えば、
沢の作り出した炎の勢いが徐々に弱くなっていった
と同時に、彼女の表情が歪み、喉を押さえて苦しみ始めた

「っ……こ…れって………」
「流石に酸素がないと火が点く訳ありませんよね?」

ぼごっ、と鈍い音と共に、沢の腹に重い一撃が入った
短い呻き声をあげ、膝から崩れ落ちる
そして無邪気に微笑む青い髪の少女を見たのを最後に、彼女の意識は闇に沈んだ

《任務完了,デアリマス》
「ご主人様ー、こっちは終わりましたー♪」
(危なく殺すところじゃねぇか……女って怖ぇ……)



「御仲間がやられたようだな」
【知るものか】

襲い来る黄金の棺を、黒い鎌と紫炎に包まれた剣で防御する
月光のみが届く倉庫内に、閃光が飛び散る

【この『エフェクター』さえあれば、手駒など幾らでも作れる
 今度は貴様等「組織」に捻られるような雑魚では無く、もっとマシな奴等を呼んでな】
「自分だけは強者であると言いたげな台詞だが……甘い」

ふわっと一瞬少年の身体が浮いたかと思えば、
そのまま逆上がりの要領で垂直方向に回り、黄金の爪による蹴りをぶつけた
直撃し、棺はまた勢いを失って無防備になる

「吹っ飛べ……『マキュラ』」

鎌を地面に突き立て、柄を軸に回転し、今度は燃え上がる左足による蹴りを命中させる
宣言通り、棺はサッカーボールのように蹴り飛ばされ、砂埃を撒き散らす
撒きあがった埃の中から無数の黒い腕が伸びるが、
少年の目の前に紫の炎が燃え上がり、腕の進行を妨げた

「『トータラージーク』」

紫炎が掻き消えるや否や、一筋の光条が棺へと伸びる
防御行動に移れる筈も無く、棺は大きく抉れ、中身が露出する

【っ……小僧がぁ!!】

黒い腕を巧みに操り、蜘蛛のように這い寄る生須
その大きさからは考えつかない程のスピードだが、
それでさえも、少年のたった一振りの鎌によって抑えられてしまった

【っぐぅ……何故だ………
 貴様のような若造に……『エフェクター』も持たぬ小僧に何故このような力が……!?】
「お前等には一生分からないだろうな
 機械で捻じ曲げる事でしか都市伝説の力を引き出せないような連中には…一生なぁ!!」

黄金の右足を振り上げ、踵落としを棺に叩きつける
響く轟音、そしてコンクリートにめり込んだ棺を鎌で抉じ開け、中にいる生須を包む包帯を切り裂いた
裂け目から生須が見たのは、髪で隠れた右目の大きな傷が夜風に見え隠れしている、
満月をバックに不気味に笑う少年の姿だった

「ッ!! 思い出した……七つの都市伝説、右目の大きな傷跡……
 小僧、貴様の名は確か――――」
「ウヒヒヒヒ……俺の名、か」

生須を嘲るように、少年は笑う





彼には幾つもの名前があった




“黄金の甲冑”“黒い影”“青の奏者”“白い騎士”“赤き翼”“紫の閃光”“灰元帥”




“小さき死神”“モノクローム”“火と水の魔術師”“シグナルマン”“三刀流”



“クィンテット・コンダクター”“隻眼”“邪悪な英雄”“千人殺し”“化物”“ビッグ・ディッパー”



しかし、彼に与えられた名はただ一つ



彼の真の名も、また一つ



「俺は…「組織」R-No.所属契約者集団『Rangers』が1人、コードネーム“Rainbow”……“七変化”」



ヒヒッ、と彼は鎌を振り上げて、笑った




「………黄昏 裂邪だ」










             † 夢幻泡影Re: †









   ...To be Continued

御目汚し失礼
あの生意気坊主が早くも帰って参りましたよっと
タイトルも一新、しかしその弱さは健在
裂邪とその“家族”達の新たな物語のスタートで御座います


一部失笑を買うようなネタがあるけどそこは気にしない

ここまで投下された皆さん乙ー
ジルりんのこれからに期待
そしてれっきゅんおかえりー

休憩期間1ヶ月というかなり早めの御帰宅でした
てか避難所のエロを含めたら実質殆ど休んでないという
何の為の最終回だったんだ(

一時期とは比べ物にならない量の投下が嬉しい
とにかく皆さん乙
こまい感想言えるほど上手くもの書けないから割愛

「やぁ~りぃ~すぅ~ぎぃ~でぇ~すぅ~のぉ~お!!!」

「組織」本部R-No.上位室にて
赤く長い髪を振り乱しながら、少女は深紅のスパークが走る両手を机に叩きつけながら怒鳴った
彼女――R-No.0ローゼ・ラインハルトの怒りの矛先は、目の前で冷静に立っている少年――黄昏 裂邪だった

「……死人は出していない」
「例えそうであったとしても!
 ワタクシが指示したのは“拘束”であって“殲滅”ではありませんでしたわ!
 それに「亞楼覇」のリーダー生須 蹄、他部下多数は失血死寸前、紅一点の沢 禰香は酸素欠乏!
 もう少し遅ければ殺人になり兼ねませんでしたわ!
 沢 禰香は手口からして恐らくミナワさん……
 生須 蹄達は貴方がおやりになったのでしょう? 裂―――“Rainbow”?」
「的を射ている」
「お黙り! 何度も言っておりますがワタクシ達R-No.は「組織」においては穏健派の一つですのよ!?
 罪を犯した契約者を殺す事が役目ではありません! 契約を切らせ、必要であれば記憶を消し、一からやり直させる!
 これはワタクシ達だけでなく、貴方達『Rangers』も同じですわ!」
「俺は承知の上で入った
 こちらも気をつけてはいるが、何分相手方が貧弱過ぎてね
 絹ごし豆腐のようなものだ。大して力を入れてないのに勝手に崩れていく
 ましてやそれを“拘束(つかまえる)”なんて至難の業だ、そうだろ?」

何やら言いたげに口元をぷるぷる震わせるローゼだったが、
はぁ、と溜息だけついて、椅子に腰を下ろして項垂れた

「……昔の貴方が恋しいですわ…「南極事件」から貴方は変わってしまいました……
 貴方が陰で何と呼ばれているか御存知? “千の貌を持つ男”ですのよ?
 ワタクシの与えた“Rainbow”…“七変化”の名以外に、貴方の戦う姿を見た一部の契約者達がつけた幾つもの二つ名…
 でもそれらの殆どが貴方の残虐性を端的に表したようなものばかりですわ
 その幾つも名をつけられたことからまたつけられた名が“千の貌を持つ男”…こんな忌々しいことがあるかしら?」

ローゼは拳を作り、小さく震わせる
裂邪はまだ知らぬ事だが、彼女は同じ名を持つ邪神と拳を交えた事があった
己の家族に等しい仲間達を殺め、傷つけ、他人の命を弄ぶ邪悪なる存在
彼女は怖いのだ
「南極事件」―――七つの都市伝説と融合し暴走した裂邪は、その邪神と同等の力を持っていた
そして、今彼はその邪神と同じ呼び名を持っている
いつか本当に、彼が“邪神”になってしまうのではないか
いつか、この手で彼を―――かつて自分が想いを寄せたこの少年を殺める日が来てしまうのではないか
そんな事を考えてしまい、怖くて堪らなくなる

「…何と呼ばれようが構わない……俺は俺の意志を貫くだけ」

そう言うと、裂邪はローゼに背を向けて歩き出し、
ドアノブを掴んで捻ろうとした

「っお待ちなさい! 一体何を考えてらっしゃるの?
 せめて、貴方の思惑だけでもワタクシに教えて!」
「……悪い、ローゼちゃん……こればかりは棺桶まで持って逝かせてくれ」

がちゃり、とドアは開かれ、彼は部屋から出ていった
ローゼには、退室する寸前の裂邪の背中が、何処か寂しげに見えた



   ...To be Continued

やることなくてつまんねーから酒に任せて書いてみるテスト
β-No.0が死に際に放った言葉が着々と進行していってる感じ、かな
思い出したけど裂邪×ローゼの内容ってまだ書いてなかったんだっけ?


とりあえず友人と飯食ってくる
え? 酒飲んでるんじゃないのかって? 気にしたら負けだ

「まず花子さんと契約しようと決めてからはイメージ修業だな
最初は花子さんの事を一日中考えてたな。とにかく四六時中だよ
目をつぶって容姿を想像したり、何百回何千回と花子さんのイラストを書いたり
ずーっとその絵をながめてみたり、噂を広めてみたり、噂を集めたり、噂を実行したり
花子さんの事を考える以外何もするなと師匠に言われたからな
しばらくしたら毎晩花子さんの夢を見るようになって、その時点で花子さんが出るというトイレに閉じ込められた
そうすると今度は幻覚で花子さんが見えてくるんだ
さらに日が経つと幻覚の花子さんがリアルに感じられるんだ
重さも冷たさも可愛らしい声も聞こえてくる
いつのまにか幻覚じゃなく自然と具現化したゴリラが出ていたんだ」

結局ゴリラかよwwwwww

おつおつお
戦いは数ですぜ兄貴ぃ!
れっきゅんかっこよくておにいちゃんきゅんきゅんしたお

>>159
>戦いは数ですぜ兄貴ぃ!
最初の内は裂邪vs手下軍団と見せかけて、
忘れがちだけどシェイドは数百の群体だから、
裂邪を相手にするんだったらスーパードレッドノートクラスの軍艦10隻引き摺ってこいと言わんばかりのry

>れっきゅんかっこよくておにいちゃんきゅんきゅんしたお
そう言って頂けたら幸いですの
でもあくまで“正義”と“悪”の境界にいる存在として書きますの

大好きだよ兄さん

そういや遅レスだけど

>>143
>ノーフューチャー状態好きなんだけどそれで終わらせると非難轟々になることが多かったので
分かるわ
どっかの馬鹿を半殺しにする話書いたらあっちこっちから何かしら言われたり
でももう気にしなくて良いじゃない、俺もノーフューチャー大好きよ
あの絶望感が最高過ぎて堪んないの、ガタノゾーア様との戦いでティガが石化した時とかもうイキそうなくらい
いっそ「非難こそが我の糧!」と言わんばかりの勢いで行っちゃいましょうや


小説の人、乙です
表現と設定が鋭い刃物みたい
説明の部分を情報系のアプローチに落とし込んだのね
なんか戦闘シーンだけあって冷水にブチ込まれた読後感がある
猿の手って言えば破滅的な結末を招くイメージしかなく
読み手を安心させる気が全くないね!


そして表現が熱く感じるシャドーマンの人、乙です
一口に戦闘を描くって言っても、ここまで違うものなのかよ、と思いました
その速度は同じだと思うのに

超人と化しつつある主人公はどこへ行くんだろうか
自分の立ち位置をどこまで守れるのだろうか…



 脱皮できない蛇は滅びる
  見解の刷新を妨げられた精神も同じだ
   それは、精神であろうとすることを、やめる――フリードリヒ



男 「う……う……」





男 「がが…………」





男 「が」








男 「ふがっ がっ がぎゅっ」


気づけば俺は風呂場にいた
浴槽に浸かってる
そして冷たい


男 「うおっ 冷でっ!」


どうも冷水に浸かってたっぽい
この時期に水風呂に入る習慣はもちろん無い
そういう趣味もありません


男 「とりあえず、出るか」 ザバァァ

男 「痛ッ!……、あ゛ーなんだよ畜生」


頭がガンガンするんですけど
水風呂に浸かってた所為か?


男 「めっちゃ頭痛いんですけど……」

男 「……」 ペチ

男 (なにこれ、すごい熱い……)


あまりにもガンガンするんで
デコに手を当ててみれば
すごく熱いです、先生


男 (すっげえ熱……、風邪ひいたかな)

男 「……」


ザプッ


男 (あ゛ーきもちー)

男 「ぎぼぢい゛い゛い゛い゛」 ブクブクブクブクブクブク


浴槽に頭だけ突っ込んだら、冷たくていい塩梅だ
と思ったら、再び頭がガンガンと痛み出した


ザパッ


男 「と、とりあえず、風呂上がろう……」 ガタガタ

男 「……」

男 「なんか暗いと思ったら……」


男 「俺、電気つけないで風呂に入ってたのね」


浴室の曇りガラス越しに明かりが差し込んでるんで
そんなに暗いわけじゃない


男 「タオルタオル」

ゴシゴシ

男 「あだっ!!」

男 「痛えな、涙出そう」

男 「……頭ふくだけで頭痛かよ……」


頭はデリケートに撫でて
体の水気を手早くふき取る

あーマジで体も重い
こんな日にはとっとと休んでしまうに限る


男 「おかん! おかん!!」

男 「おかん、いないのーん!?」


男 (そういや、シフト交代したから今日は遅いとか言ってたっけ)


着替えて台所に行くとテーブルの上に伝言が乗ってた
チラ裏にマジックで走り書きした奴だ


「ボケナスへ

 おかずは冷ぞう庫
 ウインナーはぜんぶ食べた
 帰りは何時なるか分からん

                   母より」


息子をボケナス呼ばわりとは
全く、悲しくなるよね


男 「ウインナー全部食ったのかよ、結構茹でてあったろ」


そこまで口にして
ようやく俺は真っ当な疑問が浮かんだ

俺って、今まで何してたんだっけ


男 「たしか、水風呂入って……」


違う、そうじゃない
その前、水風呂に入る前だ

学校から帰ってきたんだよ
今日は平日だからな
そこはいい


男 「思い出せん……」


問題なのは
帰ってくるまでの記憶が無いことだ


男 「たしか……」

男 「誰かと一緒に帰ってきたような……」

男 「いや……」

男 「……」


水風呂に入る前からの記憶が
ごっそり抜けおちてる感覚だ

すごくマズい


決して人に自慢できるわけではないけど
自分だけに起こるようなこととか、性質とかって、誰にでもあるよね

俺の場合、こんなことが何度かあった

つまり、覚えてないうちに家に帰ってることが
これまでの人生に何度かあったんだ


服を全部脱いだまま帰ってきて
親に叱られてる途中で気づいたこともあった

靴だけ無くなって
でも靴下は綺麗なまま、いつの間にか帰ってて
机の下で体育座りしたまま、一人で泣いてたのに気づいたこともあった


状況は毎回違ったけど、そんなことがあったときは
悪寒だか発熱だか、とにかく、必ず気分が悪くなってる


自分が知らないうちに


何があったのかも知れないまま


気味が悪いよ


男 「痛てー……」


男 (……)


男 「痛てーなー……」


男 (……)


何だ、この落ち着かない感じは


男 「とりあえず、携帯、みるか」


ところで、俺、カバンとか携帯をどこに置いたっけ
いや、心当たりがあるにはある

こんな風に帰ってきたとき
持ち物は玄関に投げ出されてたりするもんだ


男 (やっぱり投げられてる……)

男 (あ、でも携帯だけは靴箱の上に置いてあるぜ)


男 (確か、最後にこんな風に帰ってきたのって中3のときっけ)

男 (あの頃に比べちゃ、俺の行儀も少しは良くなったってか?)

男 (まあ、記憶はまったく無いんだけどな……)


そんなどうでもいいことを考えながら
携帯を開いた


男 「なにこれ……」


思わず、声が出る


男 「委員長から、メールが19も……?」


とりあえず、一番新しいのを開いた


「件名:(non title)

 鈴木君、すぐに連絡ください
 もうそろそろ警察に連絡しようかと思ってます」


待て

待て待て

いやいやいやいや

何だこれは

一体、何があった

何なんですか、まったく

いやいや

警察ってなんだよ

なんかヤバいことになってるのか?

だけど俺、別に国家権力に対して後ろめたいことなんて、何もしてないんですけど


男 「とりあえず、委員長に電話しよ」


着信が30も入ってる

もちろん、相手は委員長からだ


いやあ委員長、俺のことが好きになったのぉ?
じゃあチュウでもしてみよっかぁ?

なんてふざける余裕もあるかもしれない

警察なんて言葉さえ無ければな


プルルルルル プルルルルルル


男 「委員長、俺ですけど」

委員長『鈴木くんですか!?』


委員長の声を聞いただけで分かる
かなり焦ってる


委員長『大丈夫ですか!? 今まで何してたんですか!?』

男 「悪い、まったく思い出せない、頭がすごく痛いんだ」

委員長『何ですかそれ!?』


そんなのこっちが聞きたいよ


男 「どうも気絶してたっぽい」


とりあえずこう言っておこう


委員長『……大丈夫なんですか?』


委員長は優しいなあ
あー、涙でそう


男 「それより俺に電話とメール入れてたみたいだけど、何があった?」

委員長『鈴木くん、今日、モモちゃんと一緒に帰ってましたよね?』

男 「俺が? 朝場と?」

委員長『覚えてないんですか!?』

男 「いや、今思い出した」

委員長『はい!?』


そうだ
俺は、クラスメイトの女子と教室を出たんだ


頭がズキズキと痛み出した
さっきとは違う
突き刺すような鋭い痛みだ

忘れてたことを思い出した
でも、その後、どうしたっけ?


男 「委員長、朝場がどうしたって?」

委員長『モモちゃん、まだお家に帰って無いんですよ!! モモちゃんがどこに行ったか、心当たり無いんですか!?』

男 「ごめん、委員長、分からないや」


委員長の息を飲む声が聞こえた
受話器越しにかすかなうめき声も聞こえた


委員長『どうしよう……』

男 「委員長、今、どこいる?」

委員長『……一丁目の丘の上公園です、モモちゃん、お気に入りって言ってたから』

男 「じゃ、近くにファミレスあるだろ? そこで待ち合わせしよう。今から行くから」

委員長『来てくれるの!? お、お願いします!!』


じゃ後で、と短く言って
携帯を切った


整理しよう

俺は放課後、クラスメイトの女子と教室を出た
そいつは、ちっこくて、怖がりな奴だ

確か、ホラー系のチェンメが届いたとかで
怖いから誰かと一緒に帰ろうと言ってた

クラスの委員同士ってことで俺が仕方なく付きそうことにしたんだ
正直言えば、デート気分だった
委員長はまだ仕事があるからって、ひとりで残った
教室を出たときは、たしか、5時前だったはずだ、ここまでは思い出した

その後、俺は何があったかも記憶に無いまま
気づけば風呂場にいた
発熱と頭痛のなかで気づいた


この間に、朝場は行方が分からなくなったのか


今の時間を確認する――夜の10時半だ
俺はようやく
Tシャツがじっとり汗ばんでるのに気づいた


ジャージに着替えて飛び出した
ファミレスは俺の住んでるアパートから目と鼻の先だ

財布と携帯を引っ掴んで、本気で走る
頭痛は相変わらずだが、気合いで我慢だ

一応、申し訳程度にデコに冷えピタを貼っておいた
頭痛薬も水で流し込んでおいた
お水、あんなに美味しいと思ったのは久しぶりです、先生

大通りに出て、歩道を走っていると
見えた
委員長が背を向けて立っている
制服のままってことは、家に帰らなかったんだろうか


男 「委員長!」


大声で呼ぶ
ビクッと委員長はこっちに振り返った


委員長「すず、……! 鈴木くん!!」


目が赤いぞ委員長
泣いてたのか


男 「おい、大丈夫かよ委員長」

委員長「……何があったんですか?」


眼鏡越しに彼女の眼が大きく見開かれてる


男 「悪い、実はさっきの電話まで、自分が何してたのか――」

委員長「……ち」

男「ん? 委員長? どうかした?」

委員長「ち!!」

委員長「頭から血が出てますよ!! 怪我してるんですか!?」


え? 血?

委員長の言葉に、俺は思わず手を頭へやっていた

髪の毛がものっそいパリパリしてるんですけど

その手を目の前にもってくる

鉄の臭いと一緒に、手のひら全体に濡れた、血の赤が目に飛び込んできた


男 「え、いや、これ……」

委員長「何があったんですか、鈴木くん……」

男 「ごめん、分からない……」

委員長「とにかく、止血、しなきゃ」


そう言う委員長の唇は小さく震えていた
そりゃそうだよね
頭が血まみれの男が走ってくるんだもん
俺だって怖いよ

てか、俺、頭怪我してたのかよ
てか、頭痛の正体は頭の怪我かよ


委員長「どうしよう」

俺 「え」

委員長「鈴木くんは、頭に怪我してる、思い出せないって、言ってる」

俺 「……」

委員長「モモちゃんは、どこに行ったのか、分からなく、なっちゃってる、どうしよう、私が、どうしよう」


俺 「お、おい」

委員長「モモちゃんの、お父さんも、心配して、るのに、私が、私が、しっかり、しないと、いけないのに
      鈴木くん、頭、怪我してるのに、私が、無理させて、どうしよう、どうしよう
      モモちゃん、探さないと、私が、私が、しっかり、しなくちゃ」

俺 「おい、委員長!」


眼を見開いたまま、委員長は泣いていた
いや、パニクってる


委員長「私が、しっかり、しないと、いけないのに、皆に、迷惑、かけて、どうしよう
     モモちゃんが、いなくなっちゃったの、私の、所為だ、私が、しっかり、してれば
     どうしよう、どうしよう、鈴木くん、私、私」


俺 「しっかりしろ! 委員長!!」


肩を掴んで、怒鳴った
ビクッと、小さく震えたのが手から伝ってくる


俺 「落ち着けって! お前の所為なんかじゃない!!」

委員長「でも」


俺 「朝場と一緒に帰ったのは俺だ! 朝場の行方が分からなくなったのは、俺の責任だ!」

委員長「でも、でも……!」

俺 「朝場は、俺が何とかする。必ず、連れて帰るから」

委員長「う、ひっく、うう、ぐすっ、うん……!」

俺 「委員長は、朝場の親に連絡入れてくれ
   それと、クラスの奴らに、メールで心当たりないか、確認してくれ」

委員長「ぐすっ、うん……!!」


しゃくりあげながら、委員長は携帯を取り出した
普段は冷静なコイツがこれだけ取り乱してると
こっちも精神的にヤバくなる
正直、俺も泣きそうです

今、確実なこと
それは、俺の記憶が抜けてる間に
朝場の行方が分からなくなったことだ

そして、俺は、頭に怪我している

一体、何処で、何故、怪我したんだ

思い出せない


覚えてないうちに家に帰ってることが
これまでの人生に何度かあった

一番ヤバかったのは、小5のときだった

今みたいに、頭に怪我して帰ってきてた

おかんが後から教えてくれたが、庭先に座り込んでいたらしい

俺は友達と遊んでいたらしいのだが、そのときの記憶がまったく無い

そして

その友達は、行方知れずになった

警察やPTAが血眼になって捜したそうだが、ダメだったらしい

ただ、そいつの靴の片方が、山奥の神社で見つかったとか何とか、聞いた覚えがある

当時の俺には、ただ怖かった

何があったのか、覚えていない

ただ、感覚として、ずっと心にこびりついてたことがある



  俺 だ け 、 助かったのだ、と


中学の頃、ダチ公に、俺の体質について
それとなく、話してみたことがある

ダチ公いわく、そういった都市伝説があるんだそうだ

茶化す風に言われたさ

お前、都市伝説に憑りつかれてんじゃねーの、って


そして、現在

委員長がしゃくりあげながら
それでも頑張って携帯弄ってるのを
俺は見ている

委員長の肩が血で汚れてるのは、俺が血まみれの手で引っ掴んだからだ
申し訳ない、と思った

心臓がバクバク言ってる

記憶が無い間に、朝場が行方不明になったこと
記憶が無い間に、頭を怪我していたこと

何があったかは思い出せない
だが、俺の感覚が、俺に告げていた

朝場が危ない、と


 誰であれ、怪物と戦う奴は、自分が怪物にならないように気を付けるんだよ
  あんたが長いあいだ奈落を見つめるとき、奈落もまたあんたを見つめているんだからね――フリードリヒ








           RaDikal PaRaNO-mal そのぜろ




今日はここまで

アパートの庭先っておかしいな
アパートの芝生前だわ

あとで直そう…

蛇革の人乙でした
続きを期待させる導入に心惹かれます
謎というのは人の心を躍らせるものです
これから先の展開に期待しております

細かい誤字とか表現違うな―ってよくあるよね
書いてから気づいてきゃー><ってなる

乙ですのン
心理描写が凄いリアルだな…読んでて俺が泣きたくなった(ぇ
差し迫った不安とか恐怖とかがこっちにまで伝わってくるような
こういうの好きだわ
そしてどんな都市伝説なんだろ、頭の中漁ってもまるで見当がつかない
鈴木くんの友達が言ってた“そういった都市伝説”か、モモちゃんが恐れたチェーンメールか…
分かったぞ、これは推理物だな(違
続きが楽しみです

>>163
>そして表現が熱く感じるシャドーマンの人、乙です
いい加減冷たい、というかクールな表現がしてみたい
八尺様の人の戦闘シーンとかそうなんですよ
笛の人みたいに激しい戦闘シーンお書きになるけど、笛の人とはベクトルが違う感じ
笛の人を“熱い”と表現するならば、八尺様の人は色んな意味を内包した“クール”だと思うんです
そんなシーンが書きたい、あわよくば使い分けたい

>一口に戦闘を描くって言っても、ここまで違うものなのかよ、と思いました
なんか大袈裟というか照れちゃうの///
前に『技名って意味あるのけ?』的なこと言われたけど、
俺としては「はぁ!」「てやっ!」「うおおおお!」「消えろ!」とかを延々繰り返すのが嫌だったんすよね
その結果次々と新技が出るけど作者にすら忘れ去られる技がこれからどんどん(

>自分の立ち位置をどこまで守れるのだろうか…
うふふ、奴は動かしやすい駒だから敢えて再び主人公にしたに過ぎませんの
これから奴には頑張って貰わないと

>>189
>蛇革の人
読み直して気付いて納得したと同時に噴いた
そんなところからかよwwww

>書いてから気づいてきゃー><ってなる
俺はあれだ
wikiにあげて翌年になって誤字に気付いたりするorz

ピーヒャララピーヒャララ
トントコトントコ
ピーヒャララピーヒャララピーヒャララ
トントコトントコトントコトントコ
ピーヒャララピーヒャララピーヒャララピーヒャララピーヒャララ
トントコトントコトントコトントコ

前回までのあらすじ
・ついにジルりんと契約した悲喜、吸血鬼に対して一転攻勢
・とおもいきやあっさりやられる。そしてそのまま片腕をもっていかれる
・持っていかれた左腕に猿の手が宿って……?
・人間性が低ければ低いほど契約容量が上がる選択ルールはこの主人公にも適用されてます





――――――かの御方は、比べようもなく尊かった

――――――――かの御方はこの広い大地に種を巻いた

――――――――――かの御方は広い海から人をとる術を授けた

――――――――――――かの御方は誰も手出しできぬ天に財をば積み重ねた


【詩篇“ドオルの賛美歌”より】

「なんで、なんで貴女が生きているのよ!」

 吸血鬼は絶叫する。

「確かに、間違いなく殺したのに!」

 僕は挑発的に笑う。

「やれるかジルりん?」

「Sir yes sir!」

 カンカンとナイフを打ち鳴らして彼女は高らかに歌う。

「さて今宵ご覧頂くは、切り裂き少女の殺人奇術!
 種も無ければ仕掛けも無し、霧の都を騒がせた、奇怪奇々怪白刃技巧!
 切って驚け見て嘆け、此度の私は一味違う!」

「もう朝だぜ」

「うるちゃい!」

 駄犬である。
 いや犬なんて忠実なもんではない。
 駄猫だ、猫とは概ね賢いがこいつはそうとしか形容できない。

「あなた達よくそこまで遊んでいられる余裕が有るわね」

 吸血鬼の燃える瞳が僕達を射すくめる。
 どうやらしばらく無視して会話を進めてたのがお気に召さなかったようだ。

「だってこうなった以上、あんたに勝ち目は無いからね」

 ジルりんは涼しい顔である。
 僕は今すぐにでもとんずらかましたい気分だ。

「勝ち目は無い? そんな馬鹿な……」

「ところがどっこいお前の負けだよ」

 僕は左腕を吸血鬼に見せつける。

「それは――――なんでそれを貴方が持っているの!
 それは貴方のような只の人間が持っていて良い代物じゃあない!」

 彼女の顔はサッと青ざめる。

「いや目的を果たせてラッキーだったよ
 冥土の土産に僕たちはこれを回収するためにここに来たんだからね」

「やめなさい! 貴方は、いいや貴方たちはそれがどれだけ尊い物なのか理解してないのよ!」

 やっべー……なんだこれ。
 なんなんだこれ。

「……最後の願いをここに」

 僕はわざとらしく左手を掲げる。
 彼女はそれを阻止すべくこちらへ真っ直ぐ駆けてくる。
 
「ギャルのパンティおーくれ」

 転んだ。
 頭から地面に滑っていった。

 ▽その願いは受理いたしかねます

 つかえねええええええええええええええええ!
 というのはさておき契約効果発動。

「消体無名(アナザー・ジャック・ザ・リパー)」

 僕の姿が一時的にジルりんのものに。
 ジルりんの姿が一時的に僕のものに。
 これは切り裂きジャックの正体が不定であることから生まれた能力だ。
 直感的に理解できる。

「これで終わりだ」

 ナイフをポケットから取り出して、頭に突き立てる。
 頭蓋を割って脳髄を裂いて、壊す。
 そして互いの姿を再び交換してジルりんが次のナイフを一瞬で四肢に突き立てる。
 いくら再生するといっても挿しっぱなしにされた場所ならば再生はできない。
 ところで挿しっぱなしってエロいよね。

「まだこの程度……」

 吸血鬼の女はそう言ってまだ動こうとする。
 だがもう遅い。
 ほぼ無限の再生能力故に、攻撃を喰らうことを厭わないお前では既に詰んでいる。
 契約回路を最大限まで活性化させる。
 心のなかにある意思が、感情が、急速にジルりんへと流れこんでいく。
 自分の中の熱が彼女の中へと吸い込まれている、と書くとエロい。
 それと同時にジルりんの身体から漆黒の濃霧が漂い始める。
 オーバーフローした感情エネルギーが彼女の周囲に漂いはじめたのだ。
 それは傷口の隙間から吸血鬼に入り込んで再生を阻み、逆に彼女の組織を不可逆的に病変させる。
 霧の街の猛毒、いいや呪いだ。

「とどめを刺せ、ジルりん」

「さーいえすさー」

「こんなの、こんなの嘘よぉ!」

 それはそれはあっけなく、僕達の戦いには決着が着いた。
 何気なく左腕を見ると元の人間の腕に戻っている。

 ▽願いを使用なさる際には再びお呼び出しください

 使うときだけ猿の腕になるのか。
 それは便利で良い。


    ※    ※    ※


「……つう訳で建物見てきたらいきなり崩れてあぶねえところだったわ
 じゃあな弟よ、その旨依頼主に伝えるなりもみ消すなりしておけ」

 適当に脚色した話を弟に電話で伝え終えてから携帯を充電器に差し込む。

「結局何なんだろうなこの腕」

 猫屋敷からの帰り道。
 車を運転しながら僕はジルりんにぼやいていた。

「そんな事言われても知らないよ
 隠せるだけラッキーじゃないか?」

 街はすっかり朝の風景で、人々は忙しく行き交っている。
 
「だな、ジルりんカラオケ行かねえ?
 どうせ今回の依頼は駄目っぽさそうだし」

「カラオケ? 私は歌ったこと無いぞ」

「音痴も音痴でキャラが立つのよ」

「そういう問題かなあ……?」

「ちなみに僕は歌が上手い」

「ハードル上げるなよぉ……」

 ジルとこうして笑っていても、僕の心はどこか晴れなかった。
 あの屋敷に何故あいつが居たのか。
 今回の屋敷の幽霊騒ぎはあいつが起こしたものなのか。
 そもそもこの腕はなんだ。
 使ってしまったからどうしようもないが不安要素が多すぎる。
 この腕が、願いの対価に何を求めるのか、それはまだ説明されてないのだから。

 ▽その情報は秘匿されています

 謎は謎を呼ぶ。

    ※    ※    ※




――――――かの御方は世界を巡り、最後にたどり着いた地で人々に告げた

――――――――運命の仔等よ、もし貴方達が父を疑うことが有るのならば私を思い出しなさい

――――――――――私はこうして世界をめぐりはるばる貴方達の為に父から遣わされてきたのだ

――――――――――――私を遣わしたことが貴方達への何よりの愛情の証しだということを忘れないでほしい

――――――――――――――貴方達が何も忘れない為に私はここで人としての生を終え、魂を天に帰した後も身体だけは貴方達と寄り添うことを誓おう


【詩篇“ドオルの賛美歌”より】



【僕は小説が書けない 第九話「猫股亭奇譚/伍」 おわり】


投下が増えて何よりです
しかも面白い投下で非常に嬉しい限りです
そろそろウィキにこの話まとめ内といけないなあとおもうんですが
どうにもテンションが上がらねえ
纏め人さん助けてくだち

僕こそが噂のまとめ人さ☆
お前の望みを言え! どんな話もまとめてヤる!


それはさておき乙ですのン
皆なんか偉人の名言とか詩とかから引用しちゃってカッコいいじゃない!
僕もやりたいけど教科書で習ったようなのしか知らないもん!orz
吸血鬼に猿の腕、謎は残ったが今後にどう影響するやら
ところでジルりん契約したら強くなったけどよりポンkゲフンゲフン、可愛さが増した気がwww

いえ纏め人さん
この量を他人にやらせるのは気がとがめますよ!
今回は若干伝奇モノっぽい一昔前の怪しげロマンティックにKAWAII!の風味を添えるって寸法でさあ!

>>201
>この量を他人にやらせるのは気がとがめますよ!
あらそうなの? ワタクシはいつでも使って頂いて結構ですのよ?

>今回は若干伝奇モノっぽい一昔前の怪しげロマンティックにKAWAII!の風味を添えるって寸法でさあ!
なんかもうとにかくカオスだよwww

>>202
あと普通に書いててもえげつなかったりブラックになりやすいんじゃないか俺
とおもったのでギャグは入れる
こまめに入れる
おちゃらける
ってことは重視ですね

ならば話のまとめだけやっていただこうかしら
キャラの紹介は自分でなんとかするとして

>>203
>ってことは重視ですね
あー、俺もこの間書いた話で似たようなことを感じたなぁ
打開策(?)でミナワに猥談スレ行き一歩手前な台詞を吐かせてみた
これでミナワはエロとギャグ担当に決定した(

>ならば話のまとめだけやっていただこうかしら
了解ですのン♪

運命の歯車は既に回り始めている
                               偶
                   全ての出逢いは必然だった

                               か
                               ら
                               生
     そこに意思の絡む余地は?         ま
                               れ
運                              た
命                             も

と              契約者が人間という存在の進化の一つの到達地点では?


名の都市伝説



              「さあ我が主よ、契約を」


【劇場版「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 coming soon】

人形遣いキャラとかお洒落だとおもうんすよ


>>206
本当に人形なんだろうなあ?

花子さんとかの人のやる夫は人形系中心の契約者だったような
はないちもんめの人の希ちゃんは「バラバラキューピー」の元契約者(※飲まれた
あとTさんの人も「リカちゃん電話」使っていらしたな
三面鏡の人の繰ちゃんも「髪が伸びる日本人形」の元契約者だった(※契約解除
「メリーさんの電話」のメリーさんは作者によって人形か幼女か分かれる(因みに俺は後者

こうやって列挙していてふと
人形系都市伝説の契約者って、人形が自発的に動くか契約者に力が備わるかだな
>>206の真意はどうなのか分からないが、これは俺の“人形遣い”のイメージと程遠いと思う
やっぱりマリオネット的な方が“らしい”と思うのですよ
そういう意味では、はないちもんめの人自ら「ドフラミンゴに近い」と仰ってた望ちゃんが一番それっぽい


やっぱりからくりサーカスくらいのレベルが要るんじゃね

>>207
やだなあどこぞの魔王軍の幹部じゃあないんですからぁ

はああ
ニーソタイマーを抱きしめてチュッチュしたい
つらい

>>211
突然何を言い出すんだ…?

前回までのあらすじ
・猿の手により蘇ったジルりん、壮絶な戦闘開始
・吸血鬼を再生できなくなるように傷口にナイフぶち込み続けて大勝利
・ジルりんのあまりの美声にカラオケ名人としての自信を失う悲喜

の三本です
それでは今回の話


 僕は小説が書けない。
 面白い小説が書けない。
 何時も自己満足の鬱展開とかやって一味違う話書いちゃう俺KOOOOOOOOOOOL!とかやってなんか残念なことになる。
 ちなみに今回のKOOLはわざとKOOLにしただけなので気にしないように。
 まあそんな感じで只でさえ小説が書けなかった僕なのだがジルりんと出会った一昨日から更に書けなくなってる。
 純粋に忙しいのだ。
 これでは彼女をネタに何か書くというのは無理なのではないだろうか?
 まあマスをかくことなら……ああ、安易な下ねたは駄目ですかそうですか。
 ところで最近行きつけのコーヒー屋さんが扉のところにセール中の豆の銘柄を書くようになったんだけどさ。
 そこのセールって文字がsaleじゃなくてseleになってるんだよね。
 これ言うべきか言わざるべきかすごい迷っちゃって丁度ジルりんと遭う直前もそのことをずっと考えてたんですよ。
 これ下手に言うと厭味な感じがするし、かといって知っていて言わないのもまた意地が悪いじゃあないですか。
 こうやって細々考えて何もしないってのが結局一番駄目なんじゃあないかなって自己嫌悪とかしてみたり。
 面倒くさい系男子っていうんですか?
 まあこれだもの女性人気もありませんよねえ。
 男性人気も無いんじゃないですかねえ。
 しかしいつだって考え悩み矛盾し惑うことが、生きることなんじゃないかとも思ってしまったり。
 どうでもいいけどこんなふうに「●●ってのが生きることだよね」って言うと格好いいよね。
 それにしてもこんなことを考えながら現実の僕がやっていることと言えば……

「ツインテールぐりぐりー、ライドザウインドー」

「やめろよけっこう痛いんだぞそれ」

「あっ、ごめん……」

「わかればいいぞ」

 これである。
 見た目年下の少女相手に小学生男子みたいなちょっかいをかけているのだ。
 あの忌まわしい事件の翌日、ジルりんと僕はわりと呑気な昼の時間を過ごしていた。
 ジルりんのツインテをハンドル代わりにしてバイクに乗るごっこをしているくらい呑気なお昼だ。
 決して小説が書けないから現実逃避をしていたのではない。
 
「だが昨日から始めようとおもっただけの習慣だったりする」

「迷惑極まりないぞ」

「そっか……」

「それでこれからどうするんだ?」

「どうするんだって?」

「これから何かをする予定は有るの?」

「予定ね、特に無いんだよな
 分からないことばかりで動きようが無いんだよ
 僕の腕、組織、僕は何も知らない」

 ピンポン。
 チャイムの音が鳴り響く。

「ジルりん行ける?」

「味噌汁作るからちょっと行ってきてよ」
 
「はーい」

 僕はドアを開ける。

「こんにちわー」

 ドアの隙間からこちらを伺う美女の姿。
 不思議なことに僕はこの美女に見覚えがある。
 人の心を腐らすようなこの美貌の持ち主を僕は知っている。

「さようならー」

 僕はそっとドアを閉じた。
 鍵を閉める。
 もう一つ鍵を閉める。
 よし。

「っそぉい!」

 バキっと音がして扉が壊れた。

「お久しぶりです、私ナージャ、ナージャ・グラトニカって言います
 ちょっと感情の起伏が激しかったり行動が乱暴かもしれないけれども何処にでも居る普通の乙女二十三才です!」

 昨日とは打って変わって楽しそうな笑顔を向けていらっしゃる。
 これは困ったぞ、気持ち悪いぞ。

「ヘルプミー!」

 僕は助けを呼んだ!

「どうした悲喜……ってそいつは!」

「お久しぶりです、元気にしてた?」

 こいつ自らが手をかけた相手に元気にしてた?とか言い出したよ。
 っていうかマーシャって名前だったのか覚えておこう。

「貴様何を企んでるかは知らんが殺す!」

 ジルりんが懐から大量のナイフを取り出してマーシャに向けて投げつける。
 背後にワイヤーが繋がれたナイフ達はまるで生きているかのような軌道をとって……包丁混じってる!?

「待って」

 ナイフの一つをデコピンするマーシャ。
 それが近くのナイフにぶつかり、別のナイフにぶつかり、まるでビリヤードのようにして……

「今回はお話しにきたの」

「俺の部屋ァ!?」

 玄関の内装をすべてぶち破ってくれた。

「悪いけど、前回と違って油断していない以上、こっちもそう簡単には負けないわよ?」

「なん……だと? やばいぞ悲喜、こいつ強い!」

 マーシャちゃん余裕のスマイル。
 ジルりんも少し嬉しそうな獰猛なスマイルです。
 だがどうでもいい。

「良いからこの壁弁償しろよ!」

「ハッ!」

 ジルりんが何かに気づいたらしい。

「そーだそーだ! 都市伝説ならお金なんて持ってないだろ! 弁償できなきゃお前の負けだぞ!」

 ジル、何故そこで勝ち負けを判断する。

「するわ」

「金有るの?」

「負けた……」

 落ち込むジルりん、訳がわからないよ。

「お金は財団からもらってるの、まあお父さんからも……あっお父さんはホテルの経営者なんだけどね、お小遣いもらってるわ」

 まあこいつの家族事情は放っとくとして……。

「財団? なんだそれ……」

「良いわ、説明してあげる
 財団Bは古代バビロニアに存在した魔術師達の後継を自任する都市伝説契約者達のサークル
 建前では都市伝説の力を世界の平和や自由の為に使うことを目的としてるが最終的な目標は“英雄”と呼ばれる絶対的な力を持つ契約者を生み出し、その力を背景に管理社会を産み出そうとしてる悪の秘密結社なの
 世界中に会員が存在しており、個々に「世界をよりよくする活動」をしているわ
 治安維持などの役目を担うこともあるが財団によって“英雄分子”と判断された場合、たとえ犯罪者でもあえて泳がせることもあるの
 財団のメンバー同士は基本的に全員対等であるが在籍歴の長短や実力の違いから他のメンバーを配下のように使うものもいるけど私は基本フリーね
 またそういったものは私兵を抱えてる場合も多いわ
 財団の理事長は無数の都市伝説と契約する多重人格者で、他のメンバーに対して例外的に絶対命令権を持つ
 まあこの絶対命令権はあんまり出るもんじゃないし気に入らなきゃ抜けてもいいんだから気にしなくて良いわ
 英雄分子は理事長が多くの人格間の会議を経て決定するの
 ちなみに理事長はクローン体を無数に持ってるから殺しても無駄
 身体的特徴もいじれるけど普段は四十代の男性の姿よ」

「あー……なるほどね。面倒な説明ありがとう」

「ぐーすかー」

 いつの間にやらジルりん眠ってらっしゃる。

「おい」

 ちょっと小突くと直ぐに目を開ける。

「話聞いてた?」

「も、勿論だ! 財団Bがお金を集めないとどんな英雄も戦えないんだろ!」

 何か違う。

「ああああああああ! お味噌汁に火かけっぱなし!」

 キッチンの方からちらりと見える黄色い炎。
 ナトリウムの炎色反応ですねわかります。
 ジルりんは慌てて味噌汁の火を止めに行った。

「あらあら、タイミングが悪かったみたいね
 急いで来たつもりだったけど再生に時間かけすぎたかしら」

「どうしてここが解ったんですか」

 一応年上なので敬語。

「え、親切な男性の方が……」

 彼女は廊下の方を見る。

「あら」

「兄ちゃん飯食わせてー……ってさっきのお姉さん!」

 大柄の男がのそのそと向こうからやってくる。

「あの方です」

 あれは我が弟の六条路樹である。

「……いい、お前ら二人共家入れ」

 僕の平穏は遠い。

【僕は小説が書けない 第十話「僕には小説を書く時間が無い」 おしまい】

何、だと……もう十話目……抜かれた、完全にorz
しかも作品のクオリティ高い、俺の書き貯めが改行しまくりの駄文に見えるレベルorz

しかし 背 に 腹 は 代 え ら れ ぬ

>>215-217
というわけで、書けないの人乙ですー!
悲喜君って行動が一貫してて格好いいですよね、何ていうかこう、まっすぐに歪んでますよね
ジルりん可愛いよジルりん、回を追うごとにアホの子っぽく見ててきたけど気のせい(ry
そしてついに出たか財団B……BってバビロニアのBだったんだ……世界最古の蛇の抜け殻とかないですよね?

>財団のメンバー同士は基本的に全員対等である
「組織」が縦に繋がってる集団を複数のトップが動かしているとするなら
財団Bは横に繋がってる集団を一人のトップが纏め上げているんでしょうか
レインボーブリッジ思い出した、トップに理事長いるけど

>財団の理事長は無数の都市伝説と契約する多重人格者
>ちなみに理事長はクローン体を無数に持ってるから殺しても無駄
都市伝説と契約してる個体が死んだ場合、クローンに契約内容が引き継がれる……のかな?

>身体的特徴もいじれるけど
某アサシンみたいに女性の見た目と人格持ちがいる可能性が微レ存

あ、23:30辺りに投下予定です

前スレ>>720-721のあらすじ:遁殻恋、中央高校入学決定

―――――――――――――――――――――――――――――回想―――――――――――――――――――――――――――――――――

『prrrr!prrrr!』

「(ピッ)はい、古田です……た、大尉!?じゃなかった、おはようございます、R-No.3313さん!」

「え?恋ちゃん……ですか?えっと……元気、です?え、違う?」

「……はい。……あ……確かに、学校に行ってる間は、難しいです……」

「……ぇ……えぇっ!?あの、えっと……それって犯罪じゃ……い、いえ!何でもありません!」

「……はい、……はい……わかりました、恋ちゃんや有間君にも伝えておきます……はい、失礼します(ピッ)」


「…………どうしよう…………」


―――――――――――――――――――――――――――――終了―――――――――――――――――――――――――――――――――

「―――というわけで、今恋ちゃんに勉強を教えている真っ最中なんです。……後、殺人鬼さんが暴走してしちゃってごめんなさい」

「……いや、こいつが暴走するのはいつもの事だけどさ……」


レンガを片づけながら、頭のてっぺんまで簀巻きにされた殺人鬼を見て呟く。
あの後、鈍い音がして玄関が開き、俺を出迎えてくれたのは……フライパンを片手に謝る紫亜と、頭を押さえてうずくまる殺人鬼だった。
呼びだした事情を説明しながらも殺人鬼を縛り上げる手を休めない紫亜をみて、何故か遠い所へ行ってしまったかのような錯覚を受ける。


「(こいつ……殺人鬼に対して、だいぶ容赦が無くなってきたな)」


ついでに、用心としてヘルメットを被っていく事に慣れてしまった自分にも自己嫌悪。

まあ、殺人鬼がどうなろうと俺には関係ない。大好きな紫亜に止めを刺されるならアイツも本望だろう、多分。
今はとりあえず、紫亜から聞いた内容をまとめてみようか。

①現在の恋は(形だけとはいえ)紫亜の属する穏健派R-No.の保護下に入っている。紫亜が恋と同居しているのは、監視役という名目の為だ。
②が、俺と紫亜は高校生。四月から学校が始まれば、恋と共にいる事が困難になる。かと言って、彼女を連れて登校するわけにもいかない。
③そこでR-No.のトップの力で“合法的”に戸籍や入学許可を取り付け、俺達と同じ高校へ恋を入学させるらしい。
ちなみに俺と紫亜は、今年で三年生だ。
④高校の勉強に置いて行かれないように、現在恋は猛勉強中。

……以上。“合法的”の前に(非)が付いてる気もするが、気にしない方がいいんだろうな。うん。


「そもそも学年違う、というか入学試験どうするんだよ。俺の記憶が正しければもうとっくに試験日過ぎてると思うんだが」

「恋ちゃんと同じクラスに、黄昏先輩が入ってくれるそうです……後、入学試験は免除させたって」

「……学校側が『免除してくれた』んじゃなくて『免除させた』ってのが地味に怖い」


恐るべし、R-No.。まるでドラマやアニメに出てくる秘密組織のようである。あ、秘密組織だった。
そして黄昏先輩って誰だ。組織では先輩、学校では後輩ってややこしくないか。


「それでつまり、俺は勉強の手伝いや採点をすればいいのか?」

「はい……あの、有間君の時間が空いてる限りで、いいですから……」

「時間なら有り余ってるし、何より紫亜の頼みだしな」

「…………ぇっ?」

「いや、何でそんなに首を傾げる。友達の頼みは結構、素直に聞くタイプだぞ俺。パシリは御免だけど」


何故か肩を落とした紫亜と共に、俺は恋のいる部屋へと歩いて行った。
尚、簀巻きにされた殺人鬼は玄関先に放置する。
……頭の上まで縄まみれな上に、何か変なお札まで貼られてるんだが。


「あの、ところで……それ、何のプラモなんですか?」

「お、よくぞ聞いてくれました!聞いて驚け見て笑え、何とこいつは―――」



―――で。この時の俺は、すっかり忘れていたわけだ。
この女友達が普段から、どのような勉強方法をとっていたのかを。
そして他人に対して、どのような教え方をしていたのかを。


「……紫亜」

「あ、あのですね、試験がなくなったとはいえ、恋ちゃんにはまだ基盤となる学力が」

「紫亜」

「だ、だだだ大丈夫です!恋ちゃんの覚えも結構良かったし……ほら、今だって寝言で」


そう言って紫亜が指を向ける先から聞こえてきた言葉は、

「………アイ、マイ、ミー=3x………1192作ろう、ロバートフッ………きゅぅ」

いろんな意味で理解不能だった。


「紫亜」

「はい」

「正座」

「……はい」


仁王立ちする俺を前に、大人しくその場に座る紫亜。
その後ろのベッドでは、全身に包帯を巻きつけた少女―――恋がうなされている。
時折漏れる寝言から察するに、“詰め込まれた知識”がごちゃ混ぜになっているのだろう。

そう、“詰め込み”。テストや日々の勉強でわからない点を、基本の方式や類似問題の“丸暗記”によって克服する。
理解できなかった物は後で勉強しなおすとしても、教科書に書かれた内容自体を理解できないままに詰め込み覚える。
色々とツッコミどころが満載だが、これが古田紫亜の勉強方法。
彼女曰く、テストの最中に脳内で教科書を読みながら回答するのと同義らしい。
……お前ぐらいだよ、そんな事しようと考えた結果出来るのは。

事実、都市伝説という人外である恋でさえも、この勉強法には頭が付いていかなかったらしい。
彼女が勉強しているという紫亜の自室で俺達が見た物は、教科書とプリントの山の中で目を回す恋の姿だった。
そして、現在に至る。


「前から言ってるだろ?お前の勉強のやり方は、お前以外には無理だって。何だよ『1192作ろうロバートフック』って、まだ産まれてすらないよロバート・フックさん。完全に日本史と生物が混ざってるじゃねえか」

「うぅ……」

「……まぁ、お前に悪気が無いのは判ってるけどさ」


そう、恐らく紫亜に悪気は無い。こいつは、あまりに自分を過小評価する悪癖があって、
『自分なんかが出来るんだから他の人も当たり前のように出来る』と思ってしまうらしいのだ。
一歩間違えば『え、こんな事も出来ないの?』という嫌味に取れなくもないが、紫亜に限ってそれは無い。
彼女の友人の一人として、それだけは保障する。


「(さてどうしようか。このまま帰るのもアリなんだけど、そのためにはあの殺人鬼がいる玄関を―――ん?)」


待て。何かおかしい。
あの紫亜一筋な殺人鬼が、いつまでも縛られたままというのは考えられない。
以前は鉄の鎖や手錠の山からさえも脱出したほどだ、あんな細い縄やお札(あれ、何なんだ本当に)程度が障害になるとは……つまり。
非常に考えたくないのだが―――


―――あ い つ 、待 ち 伏 せ て や が る っ !


「……紫亜、俺モ翌恋ノ看病ニ残ルヨ。後スマナイケド、ココデぷらも作ッテモイイ?」

「え、え?……わ、私は構いませんけど……じゃあ、タオル代えてきますね?


こうして、俺のある意味最も長い一日が、始まりを告げたのだった―――。

(7話 終)

お二方乙ですのン

>>215-217
まさかあの吸血鬼からそう来るとは……ド肝を抜かれたぜ
だが財団Bの説明、口調を合わせただけでまんま誰かが前スレに上げてった説明じゃねぇかwww
最後の理事長の説明2行は要らんだろwwwww
ジルりんの萌えポンコツぶりといい、先程マクドナルドでシェイク噴きかけました

>>220-221
上の後でこれだと流石にポテト噴いたよwww
ほぼ拷問じゃないか紫亜ちゃんwww
そして出井くんの華麗なツッコミにやられたわwww
恋ちゃん……どうか安らかな眠りを(殺すな

オマケ:『遁殻恋、受難の時』

「………?」

「よい、しょっ……と(ドサッ)」


つ プリントの山&小・中学生用の教科書


「……とりあえず、中学生までの内容を“覚える”には……これぐらいかな?で、後は」


つ プリントの山+テキストの山


「………何?」

「恋ちゃん、まずは右側にあるプリントを、全部解いて下さい。教科書読みながらで、いいですから」

「………ん(コクリ)」

「そうしたら、左側のプリントやテキストの内容が分かると思うので……基本的な文系や公式を、全部覚えて下さい」

「………………ぜん、ぶ?」

「……全部、です」

「………分かった………恋、頑張る」

「はい、頑張りましょう。あ、私、お茶を入れてきますね。分からない所があったら、いつでも聞きに来て下さい」




「えっと………アイ、マイ、ミー………『私』?ヒー、ヒム、ヒズ………」

「2x+3y=x-8y………(2+1)エック………じゃない、(2-1)x=………」

「………ロバート・フック………………植物細胞を、コルク?………から………」


『紫亜は私が護るっ!くたばれえええええええええええええ!!』


「………頭、痛い………でも、覚え、なきゃ………ぁ………きゅぅ~(バタッ)」




「(……よろしい、ならば戦争だ。覚悟せよ紫亜ちゃん……!)」


【お茶入れてくる→向かう途中で有間がインターホン→殺人鬼暴走→縛りあげてる内にお茶を忘れる(その頃の紫亜)】


(7.5話:『遁殻恋、受難の時』 終 )

乙ですのン
こwwwwwwれwwwwwwwはwwwwwwwww
もはや可哀想だよwwwww
学校ではれっきゅんが教えてくれるからね
ただあいつ、国語は漢に、数学と物理はミナワに投げるけどね(

>>222
>>224
>ほぼ拷問じゃないか紫亜ちゃんwwwwww
>もはや可哀想だよwwwwwwwwww
……一応、言い訳という名の弁明をさせて頂くと、紫亜にも色々あったんですよ
小学生のころに父親が死に、母親はそのころから遠出&転勤が多くなって
彼女ののめり込めるものと言えば、ガンダムと勉強ぐらいしか無かったんですよ、そりゃ歪みますよ
でも転校するたびに教科書や授業内容も微妙に変わるでしょ、なら「大体の個所を貰った日に全部覚えてしまえばいい」というね
勿論最初は本編の恋みたいに倒れる事もありましたよ、休み時間に教科書開いてブツブツ言ってるもんだから友達も出来ないし
それでも続けて行った結果、内容の理解は別として一定量の文章の“丸暗記が可能となりました
そしてこの勉強スタイルは小学校卒業時にはほぼ確立、出井達とであった後もあまり変化しませんでしたとさ
めでたしめでたし

……いや、全然めでたくも何ともないんですけどね、はいorz

>恋ちゃん……どうか安らかな眠りを([ピーーー]な
仇は【彼女】がが討とうとしている、今は静かに眠れ……(ぉぃ

>学校ではれっきゅんが教えてくれるからね
勝手なお願いで申し訳ありませんが、どうか宜しくお願い致しますorz

>>225
>……一応、言い訳という名の弁明をさせて頂くと、紫亜にも色々あったんですよ
思い出さないようにしてたのに貴方は鬼だ!(

>勝手なお願いで申し訳ありませんが、どうか宜しくお願い致しますorz
中学時代は「分からない事があったら裂邪に聞け」がクラスメイトの合言葉だったりする(
忘れられがちな“お勉強は上の中程度”設定

プラモの人乙でした
これはひどいwwwww
色々ひどいwwww
天才型だと人に教えるのが大変だって言うけどある意味そんな感じですよね
暗記が得意っていうのは羨ましいよなあ
れんちゃんが平和に暮らしているだけでおいちゃんうれちいよ

がけないの人乙ですー
ナージャちゃんに期待超期待

そして悲喜
>僕の平穏は遠い。
平穏なんか望んでないくせに☆

プラモデルの人乙ですー
紫亜ちゃん天才スゲェ

>>226
>思い出さないようにしてたのに貴方は鬼だ!(
えーww

>忘れられがちな“お勉強は上の中程度”設定
……そういえばどこかで読んだような気も
ちなみにウチの出井は中間あたりをふらふら、紫亜は上の下辺り

>>227
>これはひどいwwwwwwwwww
>色々ひどいwwwwwwww
冷静になって読み返してみると……うん、これは酷いww(ぉぃ
久々に他人に教える立場になって、少々浮かれてしまったのでしょう
……出井と友人達は中学の段階で「これ」を経験してますし

>天才型だと人に教えるのが大変だって言うけどある意味そんな感じですよね
>暗記が得意っていうのは羨ましいよなあ
>>228
>紫亜ちゃん天才スゲェ
どちらかと言うと、紫亜は努力型に入ります
暗鬼も得意というよりは頑張って出来るようになったと言うのが近いです、実際>>225で書いたとおり最初は倒れる事もありましたし
というか内容を“理解”出来てるわけじゃないんですよね、分からない文章や記号を“模様として丸暗記”して、後から脳内で読む感じ
当然記憶はどんどん薄れて行くので後から再度勉強し直す必要もあります

努力の方向が間違っているのは見ないであげて下さい

>れんちゃんが平和に暮らしているだけでおいちゃんうれちいよ
平和……へい、わ……?wwww

再度だ

恋ちゃんが言ってた式についてなんですが
どうやって解けばいいのか誰か教えておくれ
2x+3y=x-8yを展開しまくってたら-19y=-19yになったんだえけそぢ

x=y=0じゃね?


x=-11yになって
解は不定じゃないのか?

2x+3y=x-8y
   x=-3y-8y
   x=-11y

もうやめにしようか…


恋ちゃんに問題を出そう
そして出井に検算してもらおう

9÷3×(2+1)

2x+3y=x-8y
3y+8y=x-2x
 11y=-x
   y=-x/11

俺が悪かったです…
不定解って名前があるのか
まったく習った記憶がない

何を言っているのだね君達は
恋ちゃんが解いていた問題が

問:この方程式を解け

ではなく、

問:以下の〈ア〉~〈オ〉の中で解がx=3、y=4となる方程式を1つ答えよ

だったかも知れない
つまりその解を探している途中だったと推測できるんだよ!(どんっ

2012年2月14日―――――

「うふふ、今日も華麗に任務完了でしたね♪」
「ま、これを没収するだけの簡単なお仕事だったしな」

「組織」本部の廊下にて
裂邪はシェイド、ミナワ、ビオの3人を侍らせて歩いていた
すれ違う男性黒服が憎々しげな視線を送っている事も知らず、
彼はその手にある小さな瓶を見つめていた
どうやら、液体が入っているようだ

「「イシュタルの惚れ薬」……確かに、一般人に持たせておくのは危険だな」
「少し塗るだけで異性の注目の的になる代物だ
 たったこれだけでも、一度塗れば次の金曜日まで効力が持続される」
「恋愛、理解不能、であります」
「でもどうしてそんなものを契約者でも無い人が持っていたんでしょう?」
「いや、実はこの「イシュタルの惚れ薬」は手順さえ知っていれば誰でも作れるんだ」
「金曜日の深夜、沸騰させた湯にバニラビーンズ6本、赤バラの花弁6枚を入れ、
 “サチュロス・ヴォルグ・ギルブ”と呪文を唱えながらシナモンスティックでかき混ぜる
 煮詰まったら材料を濾し取り、液体を瓶詰めれば完成だ」
「い、意外ですね……カエルの目玉とか、ネズミの心臓とかが必要なのかと思ってました」
「そりゃ悪趣味な漫画の見過ぎだ;
 尤も「ゾンビパウダー」のような命に関係するものには入手困難な物を必要とする事があるが、
 これはあくまで惚れ薬…とは言え、薬に頼って手に入れた愛なんて俺は願い下げだが」
「ご主人様かっこいい♪」
「そういえば今日はバレンタインデーか…恐らくこれに賭けていたのだろう」
「益々理解不能、であります」
「ビオも何れ分かるさ……ん、そういえばどんな香りがするんだろうな
 どれ、一度嗅いで見るか」
「へ!?」
「止せ、何か起きたらどうする?」
「「イシュタルの惚れ薬」は塗らなきゃ発動しない、大丈夫だよ
 どうせ処分されるんだし、最期くらい看取ってやろうぜ」

そう言って、裂邪は瓶の蓋を開け、
瓶の口にゆっくりと鼻を近づけながら、曲がり角を曲がった
その直後だった

「いやああああああああああ退いてえええええええええええ!?」

そんな少女の声も空しく、彼女は裂邪と正面衝突してしまった
互いに仰け反り、盛大に尻餅をつく

「ご主人様っ!?」
「ボス、無事でありますか?」
「俺は大丈夫だ……それより」
「痛ててて…」
「ロビィちゃーん!?」
「大丈夫かいな!?」

チューブトップにミニスカという外見にそぐわない格好をした茶髪の少女――R-No.6ロベルタ・リベラが起き上がると、
その後ろからオレンジ色の髪をツインテールにした少女――R-No.7ラピーナ・レスピーギと、
黒髪のポニーテールの少女――R-No.8乱堂凛々が慌てて駆け寄ってきた

「えへへ、あたしは平気。ごめんねれっきゅん、痛かった?」
「あぁ、子供は元気で何より……いや、中身は子供じゃないんだったか」
「しかしそんなに急いでどうしたんだ?」
「あ、そうそう!今日はバレンタっ…………」
「…ロビィちゃん、急にどうしt――――」

突如言葉を止めたと思えば、
今度は突然、ロベルタは裂邪の両手を掴んだ

「なっ、ロビィちゃん?」
「聞いてれっきゅん……あたし、キミの事がずっと前から好きだったの!」
「はぁ!?」
「ちょっ、ロビィさん!?」
「い、いきなり何を……ラピーナちゃん、凛々ちゃんも何とか言ってやってくr」
「裂邪はん!ホンマはウチも出会た時から好きやってん!」
「凛々ちゃんズルいよー! ラピーナだって裂邪くんのこと大好きだよ!」
「…愛の告白、でありますか?」
「ま、さ、か……」

恐る恐る、裂邪は己の衣服に触れた
しっとり濡れているのが、はっきりと分かった
運が悪い事に、股間部である
「イシュタルの惚れ薬」の効力が、最も良く働くとされる部位だ
ごろごろと音を立て、空っぽの小瓶が空しく廊下を転がる

「あー! 待ってよれっきゅん!」
「だから余計な事はするなと言ったんだ!」
「すまん!」
「ボス、何処へ逃げる、でありますか?」
「とりあえずロビィちゃん達を止めないと……あ!」

声を上げた裂邪の視線の先には、2つの影
緑の髪の少女――R-No.1六条 蓮華と、白い髪の少女――R-No.4レクイエム・リッケンバッカー

「蓮華ちゃん!レクイエムちゃん!」
「っれ、裂邪さん!?」
「どどどどうした血相変えて!?」
「頼む!ロベルタちゃん達を止めてくr」
「裂邪さぁん♪」

裂邪が言い終えるや否や、蓮華は彼に飛びつき、抱きしめた
思わず足を止めて見下ろすと、彼女は恍惚とした目で裂邪を見上げていた

「れ、蓮華、ちゃん?」
「私を迎えに来てくれたんですね? これはきっと運命です…クスッ
 何処にでも連れ去って下さい、私は貴方の……裂邪さんのものなんですかrふにゃっ!?」

蓮華が無理矢理剥ぎ取られて投げ出されると、
入れ替わるように今度はレクイエムが裂邪を抱きしめた
むにゅ、と2つの柔らかい物が彼の身体に押しつけられる

「あんな貧乳の何が良い?私の方が良い物を持っている……違うか?」
「……あの、レクイエムちゃん?」
「私は貴様を連れて行くぞ。好きな場所を選ぶと良い
 そこが私と貴様の……愛の巣になr」
「愛のミナワパァーンチ!!」

レクイエムがミナワに殴り飛ばされると、
シェイドが裂邪の手を引いて、その後をミナワとビオが護るようにして再び走り出す

「何故寄りにも寄って女に助けを求めた!? 今度は男にしろ!!」
「わ、悪い……」
「…任務遂行前、理夢大佐、ウィル中佐、ナユタ少佐の3名が、
 休憩所にて待機中、だったであります」
「そういえば…! シェイドさん!休憩所はそこを右です!」
「了解した!」

十字路を右折し、一同は休憩所を目指した
と、そこへ偶然にも

「ッ! 理夢さん!ウィルさん!ナユタさん!」
「お、主にシェイド達じゃねぇか」
「随分早かったね」
「そんなに急いで何があったでござんすか?」
「良かった、理夢!悪いが助けてくれないk――――」

その時、理夢達の目の色が変わった
嫌な予感がする――――裂邪の勘は、見事に当たってしまった

「おぉ? 今日の旦那は随分艶めかしくございやすねぇ?」
「何だ何だ主ィ!? 俺様を誘ってんのかぁ!?」
「僕の想い人はこの世にただ一人……だと思っていたけど、どうやら違ったようだね」
「裂邪! 我々を解放しろ!」
「え、お、おう!? 『ギャラルフォン』!」

彼はスマートフォンを早々と操作し、背面を腰のベルトのバックルに翳す
《SHADE》《MINAWA》《BI-O》の音声が流れると同時に、
シェイドは黒いローブを纏った影となり、ミナワは丸いリング状の装飾がなされた杖を構え、
ビオは77のユニットが連なった、人間大の蛇型ロボットへと姿を変える

「『シャドーパンチ』!」
「『ラバブル』!」
「『PARAKLEETOS(パラクレートス)』」

黒い拳はナユタの腹部にクリーンヒットし、その小さな身体は容易く宙を舞う
長い身体を鞭のように使った一撃がウィルを襲い、壁に叩きつけられる
杖による洗礼は理夢の絶対に攻撃してはいけないところに命中し、呻き声をあげて蹲る

《目標、沈黙》
「……な、何もそこまでしなくても……」
「男モ駄目カ……一旦外ニ出ヨウ」
「ご主人様、シェイドさんもビオさんもこちらへ!…『ジャンパブル』!」

ミナワの作り出した小さなシャボン玉が彼女の手の中でくるくると円を描いて回り始め、
それに触れた瞬間、4人はその場から忽然と消えてしまった

     †     †     †     †     †     †     †







「……流石に、ここなら誰も来ないだろう」

学校町の北にある山の奥
人気のない少し開けたところで、4人は小休憩を取っていた
とは言え、休む暇などある筈も無く
今置かれた状況を打開すべく、各々が頭を捻って考えていた

「「イシュタルの惚れ薬」の効力は、作製した日から次の金曜日まで……
 今日は火曜だから、4日間静かに待つという手もあるが」
「でもそれじゃ流石に精神が持ちませんよ…」
「清水による洗浄は如何、でありますか?」
「恐らく無意味だろう…都市伝説である以上、そう簡単に解除出来るとは思えない」
「確かに…だが他に最善の手は………」

唸り、暫し静寂が生まれる
そよ風で波立つ木々の音は、事態の収束を見守っているのか
それともくすくすと彼等を哂っているのだろうか
ふと、何かを思いついたのか「ん、」と裂邪が喉を振るわせ、頭を起こす

「ほえ? な、何か分かったんですか?」
「いや、単純な疑問なんだが……何故お前等は平気なんだ?」

その疑問は正しかった
ロベルタを始めとしたR-No.の女性陣が所謂メロメロ状態になっていたにも関わらず、
シェイド達は正気を保って裂邪の保護に当たっていた
何か掴めるかも知れん――――――裂邪はそう踏んだ
ちらちらと表情を窺うように互いの顔を見合わせる3人
暫し、唸って黙りこくった後、彼女達はほぼ同時に彼の顔を見て、答えた

「「「さあ?」」」
「ま、そうだよな……」

そう簡単に答えが見つかる訳も無く
駒は再び振り出しに戻ってしまう

「ん~…ただ単に契約都市伝説だから、とかですかね?」
「それなら理夢達はどうなんだ?」
「…そう、ですねぇ……えーと、他に共通点は……」
「共通点…か……言われてみると案外思いつかないな」
「そうだな。女性型の契約都市伝説くらいじゃないか?
 都市伝説のタイプも、外見年齢も、その出自も全く異なる……」
「………あ」
「どうかしたんですか、ビオさん?」
「何か思い当たる事でもあったか?」
「…性交、であります」
「「あぁ~!」」
「へ?」
「成程、確かに裂邪と交わった者はここにいる者達のみ……!」
「そもそも惚れる惚れないの問題じゃなかったんですよ、何だそんなことだったんですね~
 お手柄ですよビオさん♪」
「光栄、であります」

納得したように頷き、笑う女性陣
一応、裂邪も彼女達が言わんとしていることは理解した
が、心の何処かでは腑に落ちなかった

「……だが現状ではそれしか導き出せそうにないk」
「あー、でもシェイドさんはシてませんでしたよね」
「「あ゙」」
「見当違い、でありますか?」
「そうですね、惜しいところまで来てたんですけれど…」

裂邪とシェイドが互いに視線を合わせた
冷や汗が流れているのがはっきりと分かる
ミナワもビオも知らなかったのだ
2人が彼女達の知らぬ間に抱き合っていた事を

(と、言うか……本スレ用の話にこんなディープな話を持ち込んで良いのか?)
(メタ発言は控えろシェイド……
 それより原因らしきものは突き止めたが、やはり肝心の解決法が…)
「裂邪さん!」

聞こえたのは少女の声
咄嗟に裂邪を庇うように身構えるシェイド達
彼等の前に降り立ったのは、赤い長髪の少女だった
R-No.0――ローゼ・ラインハルトだ

「随分探しましたわ……こんなところにいらっしゃったのね」
「…ローゼちゃん? どうして……」
「そうそう、本部に戻った筈の貴方がなかなか来なくて、
 代わりにマタタビを与えたネコのような蓮華ちゃん達を見かけたので、
 もしかしたらと思って……気配を辿ってこちらに参りましたの
 魔法を解く方法がなかなか見つからなかったので、「破魔の矢」をお持ち致しましたわ
 恐らく、これで大丈夫だと思うのだけれど」
「助かった、有難う――――」
「あれ? ローゼさんもですか?」
「……ほえ? 何がですの?」
「影響皆無、であります」
「実は、「イシュタルの惚れ薬」の効力が我々には影響しないようでな
 魔法解除の手がかりになるかも知れんと模索したが、結局思いつかなかった…」
「ローゼさんは心当たりありますか? 私達の共通点とか…」
「ん~………分かりませんの」
「そう、か…(ローゼも聞いてないという事は性交説は却下だな)」
(やっぱ性交だこれ……確定だ……なんでそんなのが影響してくるんだよ畜生)

裂邪とシェイドが交わった事をミナワとビオは知らない
そのシェイドは裂邪とローゼがその行為に及んだ事を知らない
さらにいうとローゼは裂邪がミナワと自分以外に手を出した事を知らない
全てを知っているのはただ1人、裂邪のみ

「……まぁいいや、「破魔の矢」なら魔法も打ち消せるだろう
 ありがとうローゼちゃん」

微笑んで彼はそう言ったが、心の底では怯えていた
――――頼むからバレないでくれ、と






 


     †     †     †     †     †     †     †







「うーん、なーんかすっごく恥ずかしいコト言っちゃった気がするのよねー?」
「ラピーナもなんだよー」
「せやけど、忘れとるっちゅーことはそない大したもんでも無かったっちゅーことやろ、多分」
「あらロビィちゃん、ラピーナちゃん、凛々ちゃん、ごきげんよう」
「ローゼさん! れっきゅんも久しぶりだねー」
「…ん?」
「あの、覚えてらっしゃらないんですか?」
「何を?」
「あ、い、いえ、何でもないです」
「効果覿面、であります」
「記憶が消えているのは予想外だったが」
「覚えられてても今後に支障が出るし、好都合だ」
「大変! すっかり忘れてましたわ!」

突然大声を上げたローゼに、裂邪は理由を聞く間も与えられず腕を引かれて何処かへ連れて行かれる
能力を発揮しているらしく並々ならぬ速さで、シェイド達もついていくのがやっとであった
辿りついた扉には、“医療室”の文字
ローゼは勢い良くその扉を開けた

「あ、ローゼお姉様、お帰りなさい! お兄ちゃん達もお疲れ様♪」
「おう、ライサちゃんも元気そうで――――――」
「何処ほっつき歩いてやがったんだ馬鹿主!!ぁ痛つつ……」

病室に響く怒鳴り声
真っ白なベッドには、見知った顔が3人横になっていた
理夢とウィル、そしてナユタである
涙を目に溜めて痛がる理夢を、灰色の髪の少女――R-No.√2ルート・ライフアイゼンが無理矢理寝かせた

「もぉ、バカはテメェじゃないのぉ……一応怪我人なんだから無理しないでってばぁ」
「馬鹿じゃなくて獏だっつーの!」
「「「あ、」」」
「……と言う訳で、この3人だけ何故か大怪我して倒れてらっしゃったの」
「お、お前等……その怪我……」
「いやー、気がついたらこんな事になってやしてね? こりゃあ参りやした」
「直前の記憶が全く無くてね…理夢君やウィル君と決闘してマスターの帰還を聞いた後が曖昧なんだけど」
「こ、こいつらはまだ軽いが、俺様は大事なところがッあ痛つつつ……畜生!誰の仕業だ!?」
「…ボスを襲撃した為止むを得z」
「「わー!?」」
「あ? 何か言ったか?」
「い、いや何でもない、ビオもどうやら不調らしくてな?」
「そうですそうです、み、皆さんお大事に~!」

逃げるようにその場を立ち去るシェイド、ミナワ、ビオ
その後ろ姿を見てローゼは首を傾げ、裂邪は大きく溜息を吐いた



   ...To be continued

やっべ、丸々抜けてる部分があるorz

>>236
>~ごろごろと音を立て、空っぽの小瓶が空しく廊下を転がる


↓追加

「ご、ご主人様、どうしまsy」
「逃げるぞ」

恐ろしい速さで立ち上がったと思えばその場を走り去る裂邪
それにシェイド達が続き、さらにロベルタ達が追いかける


>>237
>「あー! 待ってよれっきゅん!」~

あとレクイエムも怪我してるな……wiki版では修正しておこう

シャードマンコペロペロの人、お憑かれ様です
裂邪もげろの極みな話だと思いました
メタ発言の部分で吹き出しかけて
裂邪だけ真相が分かった所でとうとう吹いた


まあなんだ、その



        *'``・* 。

        |     `*。
       ,。∩      *    れっきゅんのちんちんがバブロッドでSHPOOOOOOOONNN!!するといーな♪
      + (´・ω・`) *。+゚

      `*。 ヽ、  つ *゚*
       `・+。*・' ゚⊃ +゚

       ☆   ∪~ 。*゚
        `・+。*・ ゚


>>234
普通、変数が二つある時は方程式が二つ必要
よってこの問題は解くことができず、不適切問題である

「「「「ごちそうさまでした」」」」

 四人で手を合わせて空になった器へ頭を下げる。

「ちなみに今日の料理はジルりんが作ったんだ
 お前ら感謝しろ」

「貴女料理上手なのね、毎日食べさせてほしいわ」

「いや兄ちゃんにこんな料理の上手な彼女が居て良かったよ」

「何言ってんだ路樹、俺だって料理は上手いぞ」

「片付けねえだろ」

「うっうー……」

「いやあそれにしてもあれだね」

 ジルりんが笑顔を崩さないまま言い放つ。

「何故お前は其処にいる」

「あら、ナージャって呼んでもらって結構よ」

 やべえこいつ図々しい。

「そういう問題じゃあ無くてだな……」

「外国の方だったんですか」

 弟は何故か割って入るし。

「ええ、生まれも育ちもトランシルヴァニア」

「良いですねえ、一度行ってみたかったんですよ」

「でしょうね、何時も言われるわ。父がホテルを経営してるの
 ぜひとも遊びにいらして?
 まあホテルと言ってもこちらでいうところの民宿みたいなものですが……
 ああでも古いお城を改装して使っているから結構広いのよ?」

 あかん、それあかん奴や。
 ホラーの定番やないか。

「それは素敵ですね。今度ご一緒して頂けませんか?」

 兄の心配も知らずに路樹は人良さげに笑う。
 やっべえパンチしたいけど負けちゃうぞ僕。
 僕とそれほど変わらない顔つきのくせにモテやがって腹立つ奴だ。
 吸血鬼にでも何にでも捕まって食われればいいのだ。

「あら、そういうのも悪く……」

「ところでナージャ=サン、ジルの質問に答えて貰いたいね
 あんたは昨日あの屋敷で俺達と戦った筈なのにこうやって俺の部屋で呑気されると気持ちが悪いぜ?」

 もおおおおおおおおやってられるか!
 カット! カットします!
 

「まったく、ジルりんも悲喜くんもそこまでピリピリしないでほしいわ」

「勝手にジルりんって呼ぶなぁ!」

「あらあら、一度戦った仲じゃない
 それならばもう強敵(とも)よ」

「もうそんなの今時流行りませんよ」

 先祖代々SATSUMAとかBANZOKUとかNOUMINとかSAIYAとかじゃないと今時ありえねえよ。

「疑ってるわね? でも私のママがそう言っていたわ
 ママンの故郷では本気で死合ったならばそれはすでに強敵(とも)なんですって」

「なんだよ兄ちゃん、この美人さんと何してたんだよ
 事情次第じゃあ俺はちょっと許せないぜ
 つうか屋敷は壊れたって聞いたぞ?
 戦いってのも気になるし……」

「あら、弟さんの方は何も知らないの?」

「当たり前だ」

「なんだ、兄ちゃんの電波な知り合いなのか?」

 当たりだ弟よ。

「ふぅん……」

 ナージャは値踏みするような目で弟をジロジロと見る。
 でも若干嬉しそうな弟の顔を見ると少々情けない。

「私的にはこういうタイプの方が一緒に戦いやすいかもしれないなあ
 それに既に二つの都市伝説と契約している悲喜くんを狙うよりは見込み有りか……」

「何言ってるんだ?」

「ナージャお前、路樹を契約者にしようとしてるのか?」

「あーら、ジルりん鋭いわねえ。本当は私を倒した方を狙ってたけど兄弟じゃあ資質も変わらないし、これから先路樹くんも組織やら財団に目をつけられると思うの
 そうなる前に私と契約して自分の身を守る力をつけちゃったほうがお得よねーって説得しやすいから路樹くん口説いた方が私にも得だなあって
 路樹くんは空から降って湧いてくる系のヒロイン好き?」

「綺麗なお姉さんは好きですね
 だけど訳の分からない状況は苦手です」

「お前さんざん俺のせいで訳の分からない状況にシュートされてるよね」

 弟のSAN値を零(ゴール)にシュー!

「わりと冗談じゃなく死ねっておもったけど許してくれるよね兄ちゃん」

 超! エキサイティン!

「それを言ったら俺こそ」

 コホンと咳払い。

「―――――――すまぬ」

 ( ・´ー・`)どや
 有無をいわさずジャンプの角でジルりんに後ろから殴られた。
 おかしい、何故だ。すげえOSRに言ってみせたのに。

「路樹さん、こいつ一遍やっちまったほうが良いんじゃあないですか」

「前向きに検討する」

 弟も肩を竦めている。
 ああ解ったぞ、つまり僕の誠意が足りてなかったのか。
 そうだ、不十分だったのは……

「―――――――心か」

 ( ・´ー・`)どや
 今度はナージャさんに殴られました。
 生きてる所を見ると手加減してもらったようです。

「なんか無性に腹たった、反省してる」

「よくやったナージャさん」

 兄ですが弟からの扱いが最悪です。

「とりあえず僕が責任持ってお前らのことを弟に説明して良いかな?」

「まあ構いませんけど」

「悲喜、お前適当に説明するなよ」

「解ってる解ってる
 それじゃあ弟よ、良く聞け
 昨日のお化け屋敷にはガチでお化けが居た
 それがナージャさん、それでちょいと失礼」

「ああどうぞ、自分でやろうかとおもってたけど良いわ」

 手近にあったナイフでナージャさんの腕を突き刺す。
 フォークを引き抜くと即座に自己再生が始まる。
 弟はもう何かを諦めた表情である。

「それと一昨日本物のゴーストハンターぶっ殺して拾ってきたのがジルりん
 相手は組織らしいので俺もお前も狙われるかもしれません」

「あ、なんか巻き込んじゃってごめんなさい路樹さん」

 弟はいつもどおりのため息を吐いた。
 ……クソ兄貴ですまない。

「一つ確認したいことがある」

「なんだ弟よ」

「やっぱレモンちゃんはねえなという結論が出たの?」

「うん」

【to be continued……】

なんか面白いキャラの強化案ねえかなあ
良い子の皆アイディア出し合おうぜ
とりあえず俺は一度死んだら器が大きくなるとかどうよってマンキンのパクリでお茶濁します

乙ですのン
「勝手にジルりんって呼ぶなぁ!」ってことは悲喜くんにだけ許してるってことか、もげろ
弟くんも契約か、しかも相手は吸血鬼のお姉さんか、果たしてどうなる事やら
しかし確認したかった所そこかよwwwwww
そしてバトルドーム噴いたwww最近ニコニコでそのCM使ってる動画見てたから超タイムリーwww

>>248
>なんか面白いキャラの強化案ねえかなあ
したくもないのに勝手に強化されていくキャラがいてだな……主に裂邪
冗談はさておき、どっち方面で強化していくかよね
攻撃だったり防御だったり、近距離だったり遠距離だったり、味方の補助なんかも強化と言えるし
ミスカトニック大学付属図書館に突撃して「ナコト写本」奪おうぜ! 時間逆行や精神操作ができるよ!
もしくは紅い装甲と翼を持った巨大ロボットを召喚できる


葉賀家内の人乙です
何だかんだ言ってこの状況悲喜が一番楽しんでそうなんだが
路樹くんかわいそう…この後吸血鬼とラブイチャがあるなら話は別だ

>>248
ま、待ってくれ
死んだら器が大きくなるって蘇生すること前提だよな!?
江良井のじいさんとか上田の先祖がその強化案でよみがえったら
大乱闘スマッシュブラザーズレベルの話じゃなくなる…はやまるんじゃない!!

>>250
>死んだら器が大きくなるって蘇生すること前提だよな!?
さらに何度も殺しまくって何度も蘇生させれば器は無限に膨らみ続ける……
神話レベルの都市伝説60億体分と契約する器を持つ元「組織」首領と同等レベルの契約者の完成だ!

あーやばい面白事考えた

全ての人間は生と死を繰り返しているとすれば既に全ての人間は器の限界に至っている
つまり繰り返される生と死を受け入れた存在が自らの可能性を伸ばすんだ!
上田家は戦闘民族だからきっと親子間で戦闘を繰り返すことにより擬似的な輪廻転生を再現して云々かんぬん


そもそも死んだらただの肉塊だし
何も無しに生き返ったらただの都市伝説じゃん

大事なのはソウルだソウル
冥府を見て帰ってくることで巫力も上がる
器も上がる
契約時の能力の進化の方向性にある程度契約者の心象風景が関わってたら面白いよね

>>251>>253>>254>>255
なるほど…
ああこれ考えれば考えるほどいい案だわ
転生繰り返してる奴ならより強い都市伝説も操れるようになるな
「組織」でぼろ雑巾のように扱われて死んだ契約者が復讐するのも可能ということか
滾ってきたぜ

>>256
身を引き裂く苦痛に耐えながら転生を繰り返すわけですよ
そして少しずつ人の心を失って自らが復讐する側と同じように……

>>257
いやまあそこの所のドラマは個々人の腕の見せ所っすよ
重要なのはみなぎる程の中二病ソウルなわけなのですよ奥さん

そんな時期もありましたがある時悟って輪廻の輪っかから外れて今では立川でデップ似のロン毛と現代を満喫しています

>>254
甘い、甘いよ城之内君
ルーモアのマスターは童貞魔術師の術で蘇ったし
B-No001こといーちゃんは文字通り転生して再度能力者になったのだよ
ああ、今つながった。説明つくじゃん、これすごいわ。本当にいけるよこれ

想像力の無くなった人類は滅びの運命を辿るって加藤さんが言ってたろうが
ムカついてきた、ちと書いてくる

ぽちゃん、と滴の落ちる音が響き渡る闇
陽の光が一切届かぬ洞窟の奥へと、人為的な光がゆっくりと進んでゆく
人間、にしては足音が重々しい
それもその筈、光を灯し暗闇を歩いていたのは人型のロボットだった
2、3m程の高さのそのロボットは、目的地に辿りついたらしく、ようやく歩を止めた

《迎えに来たぞ、嵩久》

女性の声で、ロボットは誰かにそう呼びかけた
ライトに照らされた先には、岩に座っていた半裸の青年が眩しそうに目を覆っていた

「随分早かったじゃないか」

《27回も同じ工程を繰り返したんだ、当然だろう?》

「もうそんなに“死んだ”か。大分期待が出来そうだな」

《早く出るぞ。もうこの景色は見飽きた》

ロボットは早々と今来た道を歩いてゆく
やれやれ、とでも言うように青年――嵩久は立ち上がり、それを追って歩き出した

「次の都市伝説の用意は?」

《既に黒の商人から封印石を55個預かっている》

「流石に鼻が利くな、あの商人……石の中身の詳細は?」

《またしても契約してからのお楽しみだそうだ。あいつは私達を舐めているのか?》

「フフ、まぁいい。強ければそれで良し、だが弱ければそれでも良し
 死ねばまた、俺の心の器が大きくなり、都市伝説の容量も多くなる
 その内、あの「首塚」の平将門や、「組織」の黒服全員とでさえも単独で契約できるようになる…!」

《その度にまた私がこうしてお前を迎えに来なければならない
 私としてはさっさと強力な都市伝説を寄越して1日でも長く生きて欲しいものだが》

「…相変わらず怠惰な奴だな」

《お前の過労ぶりこそ心底呆れるよ
 幾度となく生と死を繰り返して……よく“死”を恐れないな》

「その先の“生”に恐怖を打ち消す程の希望を見出せるからな
 ある意味では、お前が俺の希望なんだ」

《……馬鹿》

ふふっ、とロボットは小さく笑った
その時、嵩久は不意にまたも目を覆う
外の光が、闇を打ち消していた

「…成程、帰りも早いな」
《お帰りなさい、嘉藤嵩久
 28回目の御帰還だ》

そう言って、彼等は洞窟を―――「黄泉比良坂」を出た



   ...end

導入はこんな感じかしらン?
実は『UX』で『鉄のラインバレル』が恐ろしく強い上に面白かったので大きく影響されてる
ペインキラーの話で「黄泉比良坂」が登場してて、
且つこの話の主役である嘉藤嵩久の名前は加藤機関の総帥である加藤久嵩から

今更名前被ってたらどうしようと思い始めた

本当に書きやがった…乙です
28回も死んだということは既に達観してるな
蘇りの根拠は黄泉比良坂なのね…タブーを回避するためにロボで迎えに来たと
そして封印石というワードが出てきてるということはつまり…これはもう決定だな
連載での登場が楽しみだ

余談。避難所でも良いんだけどこっちに書いておこう

ロボットは遠隔操作で動いてる。操縦者こそが「黄泉比良坂」の契約者
何故ロボットかっつうと、「黄泉比良坂」でのイザナギ・イザナミの伝承は、
幾つもあるが一番多い共通点は“イザナギが振り返ったから失敗した”こと
振り返っても問題ないようにロボットに代行させていた、と
因みに契約者本人が直接会ったりしてもアウトなので、
本人は機械かなんかでおねんねしつつ脳でコントロールしてる感じ

え? ロボットとかの技術?
這い寄る混沌が一枚噛んでる時点で察しろ

封印石については連載『EXIA』第1話参照

>>264
早っ!? もうレスがつくとは…

>蘇りの根拠は黄泉比良坂なのね…タブーを回避するためにロボで迎えに来たと
>そして封印石というワードが出てきてるということはつまり…これはもう決定だな
呑み込みも早い、貴様一体何者だ……!?

>連載での登場が楽しみだ
一応、連載用にタイトルを4文字で合わせてみたけど、今後どうしようか考え中
そのまま連載にするか、他の連載で敵として出すか…むぅ


死を経験して強くなるのはわかるけど
結局何で[ピーーー]ば死ぬ度に強くなるの?

あと上昇量は比例なのか反比例なのか

答えを求めず想像しろ想像
俺だって分かんねぇんだ(ぁ


いくつか候補はあるが言う必要もあるまい
というかそもそもSFなんだし現実的で科学的な根拠をつらつら並べたてる必要は皆無

そうか……現代文明における最強の一角が絡んでいるのか……
チクタクマンは地味に人気な題材だと思うんですよ
「牛頭(ごづ)草をなめて病者を悲しみ
 断し車をあやつって迷方をあわれむ
 三界の狂人は狂せることを知らず
 四生の盲者は盲なることをしらず
 生まれ生まれ生まれ生まれ生の始めに暗く
 死に死に死に死んで死の終わりに冥(くら)し」

そうか……現代文明における最強の一角が絡んでいるのか……
チクタクマンは地味に人気な題材だと思うんですよ
「牛頭(ごづ)草をなめて病者を悲しみ
 断し車をあやつって迷方をあわれむ
 三界の狂人は狂せることを知らず
 四生の盲者は盲なることをしらず
 生まれ生まれ生まれ生まれ生の始めに暗く
 死に死に死に死んで死の終わりに冥(くら)し」


>>268
だから現実的な説明じゃなくてSFてきな説明を聞いてるの
死者蘇生してる地点で現実じゃないから

[ピーーー]という行動とその結果としての死というのも死のあり方のひとつなわけだから
死を経験して強くなるという部分に同意している時点で何の問題もない…はずだ、多分

遅くなりました、お二方とも乙ですー!

>>230-235、>>244
言えない、適当に書いた部分なので>>244さんの言うようにここだけでは解けないなんて(ぉぃ
>>233さんの出題についてはキャラスレの方で恋に解答させます

>>236-242
影の人乙ですー
モブ黒服達の様子からして、裂邪はあまり好意的には受け入れられていないようで……少し心配でもありましたが
次の瞬間には完全に吹き飛んでましたwwwwうん、やっぱりもげていいwwww

それにしても異性どころか同性にも効いてしまうとは、恐るべし【イシュタルの惚れ薬】
…………ο-No.2やο-No.9辺りが狙ってたら面白いかも……
あ、でもο-No.=《感染系・及び殲滅担当部署》だから、伝染性のない薬は管轄外なんですよねww

>>245-248
書けないの人乙ですー!……何か皆さん、微妙に違う呼び方してますよね
そして勘違いしててすみません!ナージャさん、てっきり契約者だとばかり思ってたんですが、
まさかの【吸血鬼】そのものだったとは……読みが浅かったorz

そして重大な読み間違いがもう一つ、財団がいるこの話では組織が出ない物と勝手に勘違いしていましたorz
そういや第一話から黒服いたけど、普通に財団の人員だと思い込んでたよ!本当にごめんなさい書けないの人!

……気を取り直して本編の感想です
訳の分からない状況が苦手と言う割には弟/路樹君、意外と受け入れるの速いですね
そしてナージャさんと契約か……契約前から結構強かった気もするけど、これ以上強くなるのか……!?
よく考えたら、この世界組織と財団が存在するんですよね。例えるならゼネバス帝国とガイロス帝国、もしくは大ショッカーと財団Xが一緒にいるような物で。ナージャさんは財団側、ジルりんも組織とは敵対状態……あれ?もしかしなくても、路樹君が契約したら自動的に財団側?
後、ナイフとフォークで容赦なく腕を刺す悲喜君は、総統ジルりんの影響を受けていると思いましたwwww

>>262ー263
改めて影の人乙ですー!
EXAMでしたっけ?一話目の周りからジワジワと話が始まりつつある緊張感
「首塚」の将門公や「組織」をも手中に収めんとする嘉藤嵩久の野望、しかもその手には【黒い男】が集めていた都市伝説を封じた石
更に[ピーーー]ば器が大きくなる→黄泉比良坂まで迎えに来てもらえば蘇生可能という無限ループ……これは強敵になりそうな
連載楽しみにしています!

そういえば彼の様な不滅の存在はともかく、不老/不死と言った存在は器が大きくなる事は無いんでしょうか
うちのNo.0は【天界の桃】と契約していますが、効果って『死なない』というより『一歩手前で[ピーーー]ない』だし……

うわぁぁぁぁぁぁとんでもない凡ミスを!?
ごめんなさい影の人、EXAMじゃなくてEXIAでしたorz

>>269
「チクタクマン」は超便利よ
機械の身体だから兵器だらけで戦闘シーンにも困らないし、
作者次第でどんなものにも化けるでしょう
このスレで使ってたのは、八尺様の人とプラモの人と俺と……他にいたかしら

>>271
つっても話の根幹に関わるんで、申し訳ないけどはっきりとした回答は控えさせて頂きますね
今言えるのは似たような境遇のキャラがいらっしゃるってことくらい

>>273
>モブ黒服達の様子からして、裂邪はあまり好意的には受け入れられていないようで……少し心配でもありましたが
いや、多分綺麗&可愛い女の子に囲まれてた所為
しまったな、“憎々しげな視線”から“「リア充もげろ」と言わんばかりの視線”に訂正しようかしら

>それにしても異性どころか同性にも効いてしまうとは、恐るべし【イシュタルの惚れ薬】
契約しなくても簡単に作れるってのがまた厄介なところ
因みに作成方法はグループSKIT編著『本当に怖い世界の呪文』より引用

>書けないの人乙ですー!……何か皆さん、微妙に違う呼び方してますよね
本来そもそも違う名前で活動してたから問題ないz(切り刻まれました

>EXAMでしたっけ?一話目の周りからジワジワと話が始まりつつある緊張感
もしかして『EXIA』かしらン?

>「首塚」の将門公や「組織」をも手中に収めんとする嘉藤嵩久の野望、しかもその手には【黒い男】が集めていた都市伝説を封じた石
「黒い男」も性質の悪い奴でね
嵩久のような者に都市伝説を売ったり、また前回裂邪に殲滅された「亞楼覇」のような連中に『エフェクター』を売って、
儲けた金で『EXIA』のゼノビアが都市伝説を封印した「要石」を買い取る
金は天下の回り物です

>そういえば彼の様な不滅の存在はともかく、不老/不死と言った存在は器が大きくなる事は無いんでしょうか
俺的見解だけど、一度“死”を通した方が良いと思うの
「ゾンビ」みたいな元から死んでるのとか、「テュポン」みたいなそもそも死なない奴じゃなくて、
どちらかと言えば「不死鳥」や「輪廻転生」のような生と死を繰り返す感じの
どっちも使われてたからどうせならってことで「黄泉比良坂」使ったけどね

>>274
>ごめんなさい影の人、EXAMじゃなくてEXIAでしたorz
お気になさらずですよン
そろそろそっちの方とかも動かしたいんだけどなぁ……脳と手が動かない(※主にスパロボの所為です

シャドーメェンの人乙でした
良いなあ
胸が踊るなあこういうのは
実はかくいう私もとある邪悪な儀式によって子孫の肉体に乗り移ったとある契約者の話を一度考えていてね
そういった泰山府君な感じのノリをやってみたいとおもってるんすよ
>>273
ククククク
人によって違う呼び方をさせることで派閥抗争を起こし
その隙を突いてこのスレを征服せんとする目論見なのですよ
悲喜くんの容赦の無さはもう本当になんなんだろうねこのキ●ガイ
まあどうせ大丈夫だろうってのも分かってたんでしょうけど
財団と組織は対立してるのかしてないのか
そこら辺謎ですねえ
ぶっちゃけ財団Xイメージして書いているのでまだどうなるかは分かりませんが
組織と違って正義が勝たない集団にしたいなあと
だからといって悪がはびこるかといえば違うけど
良くも悪くも目的に素直みたいな

>>277
組織と違って正義が勝たない集団にしたいなあと
単発に出てくる組織はバッドエンド上等の集団じゃないですかあ
というかむしろ
>良くも悪くも目的に素直みたいな
そのまんまこっちだと思うんですよお


勝手に設定絞殺
文末に…!を付けるだけで暑く語ってるぽい

>>275
[ピーーー]ば死ぬほどなんて、ありえない……!
練れば練るほど色が変わってテーレッテレるのは最初だけ……!
5分も練れば色も変わらなくなるし、飽きるし、何かまわりに付けるラムネの粒は余計だし……!

そんな方法で器をでかくするなんて無茶だろう…!
人間性を削って、非人性を高めて器を大きくしてるから……!
需要曲線と供給曲線の図は知っているか……!
あの図のように最適な強化限界があるんだ…!

ドラクエみたいに経験値を貯めて強くなってるわけじゃない……!
最大HPを減らして最大MPを増やしているようなものだ……!

もう憑かれた…!

>>277
>実はかくいう私もとある邪悪な儀式によって子孫の肉体に乗り移ったとある契約者の話を一度考えていてね
憑依系は楽しいよね
『那由多斬』では大いに楽しませて頂いたわ、最終話書いた直後に「もっと良いストーリーあったわ…」と後悔もしたが

>その隙を突いてこのスレを征服せんとする目論見なのですよ
素晴らしい。我々は私によって貴方に深く賛同する

>>279
あ、暑苦しいぜ…!
でも訳あってノーコメントでお願いします
納得いかない時は這い寄る混沌の基本概念を思い出して頂ければ幸せになれると思う

ほいほい死んで簡単に生き返ったりするとありがたみがないのだ……!
だからこそ仙豆は当初あんなにあったのに後々数が減ったのだ……!
困った結果ポルンガが出てくるけど……

生死の話でドラゴンボール挙げたら反則だよ!
いや作品自体は好きなんだけど、セル編辺りから悟空を始めとしたレギュラーキャラが命を軽視し始めて魔人ブウ編は特に酷かった印象が
中学生くらいまでは何度も読み返したりしてたけど年取るとホントに物の見方って変わるよね…
まぁ最後までタイトルでもあるドラゴンボールが活躍(?)してたって意味では良いんだろうけど

引越しの為に投下できない日が続いてますが明日辺りはなんとかなりそうです

此処まで投下された皆さん乙ですー
はがけないの人、お引っ越し乙ですー
続き楽しみにしております

ぴーひゃら♪
ぴーひゃら♪
本気になったら→ぴーひゃら!

>>285
くっそこんな奴にwwwwwwww


>>285
やられた完全に不意打ちだった

>>285
寝る前に覗くんじゃなかったww

>>288
おはようwww

「はいカットぉ! 一旦昼休憩入ります!」

そんな声と共に、緊張から解放された撮影スタッフやボクを含めた出演者達は、
身体を伸ばしたり談笑したり、一気に休憩ムードに入った
今日はとある学校の校舎でのドラマの撮影
聞いた事もない漫画が原作らしいけど大丈夫なのかな

「倖子ちゃん、お疲れ」

「あ、マネージャーさん、有難う御座います」

ボクはマネージャーからドリンクを受け取った
そうそう紹介がまだだったね
ボクは岩清水 倖子(イワシミズ・ユキコ)
歌も女優業もトークもバラエティもそつなくこなす現役中学生の超売れっ子アイドル
…っていうのはちょっと古いかな
このドラマの主演女優でもある、まぁ可愛いから仕方ないね
最近じゃ何とかミサっていう電子アイドルが流行ってるみたいだけどあんなのに負けるもんですか

「撮影開始は何時頃ですか?」

「14時って言ってたから、外に出る時間もあると思うよ」

「ふーん、じゃあボクはちょっと失礼しようかな」

「え、何処へ?」

「女の子が何も言わずに立ち去るって事は一つしかないじゃないですか
 そんな事も分からないから何時まで経っても彼女が出来ないんですよ」

「うぐ……ひ、酷いな倖子ちゃん……」

「というかもうすぐ高校生になるんですから、いい加減“ちゃん”付けで呼ぶのやめて下さい」

マネージャーさん罵るの愉しい
一通り遊んだらボクは撮影現場だった教室を出てお手洗いに向かった
といっても、それはただの口実に過ぎない
ボクの真の目的は――――

「……やっぱり。困るんですよね、撮影現場でうろつかれると」

ここは校舎の4階
廊下に這い蹲る、スーツを着た男の人
下半身が無いその人は、内臓を引き摺りながら腕を足代わりにして歩いていた

「足……足、を、よこせ………」

「残念ですね、ボクの美脚はボクだけの物だからそう簡単に譲れません」

「よ、こ、せ……!!」

男の人―――「テケテケ」は猛スピードでボクの方へ近付いてくる
「テケテケ」と呼ばれるこの都市伝説は腕だけのクセに最高時速150kmで走れるという
でも運動神経抜群のボクならこれくらい簡単に避けられる

「というかこんな可愛い女の子に下半身もないのに襲い掛かるなんて一体何がしたいんですか?」

ボクはスマートフォンを取り出した
こんな状況なのにどうしてか、って?
都市伝説を目の前にこうして平然としてるのに分からないなんて鈍感ですね、だから誰も寄りつかないんですよ
―――戦う為に決まってるじゃないですか!

「『エフェクター』、スタートアップ♪」

スマホのディスプレイ上で『EFFECTOR』のアプリが起動して、3分からカウントダウンを始める
ここからがボクの裏の顔という訳です

「足……足………!!!」

「テケテケ」がまた襲い掛かってくる
執念深い男は嫌われるってことを身体で思い知らせてあげましょう
すーっ、とボクは大きく息を吸って、

「魂ィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」

呂布トールギスさん大好きです
それはさておき、ボクが腕を突き出すと、掌から光が飛んでいって「テケテケ」を弾いた

「ッ………!?!?」

ボクは「アイドルは排泄しない」の契約者
本当は戦う能力すらなかったけれど、偶然手に入れた『エフェクター』のお陰でそれができるようになった
前に会った同い年くらいの男の子(ボクを知らないと言ったどうしようもない世間知らず)によれば、
「都市伝説の解釈を歪めて力を得られるが、その代償が必ずある筈だ」ということらしい
事実、ボクは“老廃物を排泄しない代わりに、エネルギーとして体外に放出する”力を得る事が出来る
それも3分という極短い時間だけなんだけど
“代償”が何なのかはボクには分からない
でも、可愛いボクの活躍を見て、歌を聞いて、笑顔になってくれる人がいるのに、
それを壊す奴等がいるのなら、アイドルとして放ってはおけない
だからボクはあの男の子の忠告を振り払った

「アイドルパァーンチ!!」

漲る力を拳に集めて「テケテケ」の脳天にぶつける
「テケテケ」は床に叩きつけられて、光の粒になって消えていった

「ふぅ、これで良し、っと。お昼食べに行こうかな」

表は老若男女皆を笑顔にする超可愛いアイドル
裏は都市伝説をやっつけて皆の笑顔を守る超可愛いヒロイン
スタジオでも現場でもお茶の間でも、学校でも路地裏でも戦いの場でも
何処でだってボクは強く輝き続ける
ボクの名前は“Ruby”―――“宝石”の岩清水 倖子


   ...CUT!

前に大王っちが避難所で言ってたことを覆してやるテスト
前々からアイドルキャラ出してみたかったからこれはこれで満足
ガノタ…と呼べるのかは知らんが『SDガンダム三国伝』が好き、プラモも作ってる(誰にも言えない趣味だったり
名前は避難所でも好みだって書いたモバマスの俺の妹・輿水幸子ちゃん
ボクっ娘にする予定は無かったが、“私”で書いたら「これ蓮華とモロ被りだ……」ということで変更
俺のキャラだとボクっ娘は新鮮だから結果オーライ?

携帯アプリ型『エフェクター』は頒布しやすい代わりに発動時間が短い欠点がある(必要なデータをスマホに送るだけで、スマホ自体が『エフェクター』ではないから。要はスマホを簡易『エフェクター』にしてる
偶然ってのがどういう経緯かはお察し下さい
同年代の男の子は言わずもがな
あと何故か脳内で作中時間が2012年1月辺りになってたようで
高校は中央高校に行かせる予定、れっきゅんや恋ちゃんと同じクラス
とりあえず誰かれっきゅんもいでこい

>>290-292
暗部ラルの人乙ですー!
……成程、こういう風に歪m……もとい解釈の方向を広げられるのがエフェクターなんですね
“Ruby”って事はR-No.所属か、だったら新学期を待たずとも裂邪には会えそうですね
しかし最近の裂邪は本当に暗躍してるなぁ……まるで這い寄、おっと誰かが玄関のチャイムを(ry

>ガノタ…と呼べるのかは知らんが『SDガンダム三国伝』が好き、プラモも作ってる(誰にも言えない趣味だったり
紫亜がSDシナンジュを片手に目をキラキラとさせているようです

>高校は中央高校に行かせる予定、れっきゅんや恋ちゃんと同じクラス
何気に遠距離相手をさせて無いので、勘違いで恋と戦わせてみたい(ぉぃ

>とりあえず誰かれっきゅんもいでこい
またかwwwwまた奴の餌食がwwww

あ、一つ忘れてた

>必要なデータをスマホに送るだけで
どう見てもチクタクマンフラグです、本当に(ry

連投何度もすみません、『SDガンダム』全般じゃなくて『SDガンダム三国伝』が好きなんですか?

♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪




朝起きるのヤじゃないの?


お勉強するのヤじゃないの?


出張・残業ヤじゃないの?


掃除に炊事に洗濯ヤじゃないの??



“ナンもカンも面倒な世界(コンナトコ)から逃げ出して


 死ぬまで、いや死んでもずぅーっとだらけられたら良いのにな”


そんなアナタ達のワガママ・ユメ・キボー


叶えられるトコ知ってるよ



「ワタシと一緒にハッピーになろう♪」



Welcome to the Cyber World!!


争い・苦しみ・痛み無いセカイ


Welcome to the Cyber World!!


↑↓←→無し無しなセカイ


もう怯えなくても頑張らなくても祈らなくても平気だから


皆もおいでよ、電脳世界(サイバーワールド)へ!



♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪

《皆ー! いつもワタシの歌を聴いてくれて有難う!
 今日も1日、ワタシと一緒にハッピーになろうねー♪》

「いつ見ても聞いても可愛いなー、終音(オワリネ)ミサたん…」

真っ暗な部屋、煌々としているパソコンのディスプレイに映し出された動画を視聴しながら、男性は1人呟く
動画には、腰まで届きそうなクィンタプルテールの少女のCGが歌って踊っていた
その動画のタイトルは、『【終音ミサ】Welcome to the Cyber World【混ジリナル】』

「今まで色んなボカロ曲聴いてきたけど、ミサたんの声は本物の人間みたいに透き通ってて、
 耳じゃなくて心で聞いてる感覚になるんだよなー
 でも何処からも発売されてないってのもミステリアスで良いよなー
 あぁ、ホントにあるなら行ってみたいな、電脳世界…」

「ある訳ないよな」と溜息を吐き、男性は何気なしに己のメールフォルダを開いた
直後、彼は「ん?」と驚いたような声を上げた

「……差出人が終音ミサたんの公式メールアドレス!?
 こっ、これはまさか!?」

早速開かれたメールの内容はこうだ
『こんにちは☆ 今日もハッピーしてる??
 毎日ワタシの歌を聴いてくれてホントに有難う!
 今日はアナタに感謝の気持ちを込めて、ワタシからのプレゼント!です♪
 中身が何かは…下のアドレスをクリックしてからの、お・た・の・し・み☆
 これからずぅーっと、ワタシと一緒にハッピーになろうね♪』

「うおおおおおおおおおおおおマジだったああああああああああああああ!!!
 ミサたんの歌を通算240時間聴くとミサたんのプレゼントメールが届くって噂はモノホンだった!!
 ネット上の都市伝説かと思ってたけど…てか10日もぶっ続けで聞いてたのか、感慨深いな
 違う違う、そんなことはどうでも良いんだ」

男性は気を取り直すと、
マウスを操作してポインタをアドレスの上に配置する
構えた人差し指が、ぷるぷると震え始めた

「し、新曲かな……コンサートの招待とか?……エロCGも良いなぁ…
 何にせよ、ミサたんのプレゼント…頂きます!!」

カチッ、とアドレスがクリックされた
瞬間、パッと画面が真っ黒になる

「ハァ!? ここでフリーズ!? マジかよクソッ、この低スペPCが!」

パソコンに八つ当たりする男性
顔を歪めて痛むを手を振りながら、真っ暗な部屋で明かりを求めた
その、直後だった

「あ母は母はハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハはっはハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハはっは母はっはハハハハはっはハハハハハハハハはっは母ははっはハハハハはっは母はっは母はっは母はっは母はっは母ははっは母はっは破はっは破はっは破はっは破はっは母はっは母ははっは母ハハハハハハハハはっは母はハハッハハハハハハハハはっははははははっはははっハハハハ母はっはははははっハハハハははっははははははははははははっははははははははははっはははははははっハハハハハハハハっハハハはっはははははは」

笑い声
耳を劈く様な、心を貫く様な、不気味な少女の笑い声
思わず耳を押さえたが、声は途切れる事なく彼の耳に届いた
振り返り、パソコンに視線を向けると、
ディスプレイに映っていたのは、楽しそうに笑うクィンタプルテールの少女だった

「み………ミ、サ……たん…………?」
「ねぇ、一緒に来てくれる?
 ワタシと一緒に、皆がハッピーになれるところへ」

少女は―――ミサは男性に向かって手を伸ばした
男性は徐々に耳を塞いでいた手を放すと、
その手を、ミサの方へと伸ばしていった
そして、ミサはがっしりと、彼の手を掴んだ









翌日、男性は遺体となって自室で倒れているのを家族に発見された
その表情は、今まで遺族が見た事がないという程とても幸せそうなものだったという
そして、傍にあったパソコンは“ようこそ、ハッピーなアナタ”と表示されたまま使用できなくなっていたらしい



   ...forced termination

勘の良い人なら正体がモロバレルっていう
昨夜書いた単発の倖子ちゃんがライバル視してる電脳世界の歌姫・終音ミサちゃんです
1レス目の歌詞は即興で書きました(キリッ

>>293-295
>……成程、こういう風に歪m……もとい解釈の方向を広げられるのがエフェクターなんですね
まぁ“歪ませる”って表現の方が正しいのかもね
反対派が多い所為か見事に俺しか使ってないという罠

>“Ruby”って事はR-No.所属か、だったら新学期を待たずとも裂邪には会えそうですね
実は『Rangers』に誘ったのが裂邪だという

>しかし最近の裂邪は本当に暗躍してるなぁ……まるで這い寄、おっと誰かが玄関のチャイムを(ry
『幼星の懐刀』とも『幼星の側近』とも、はたまた『影武者』とも呼ばれてたり

>紫亜がSDシナンジュを片手に目をキラキラとさせているようです
>連投何度もすみません、『SDガンダム』全般じゃなくて『SDガンダム三国伝』が好きなんですか?
どうだろうね
『三国伝』からの『SDガンダム』全般っていう経緯で好きになってたりするかも知れん
メインはあくまで『三国伝』かしらン
魂ィィィィィィィィィ!!!

>何気に遠距離相手をさせて無いので、勘違いで恋と戦わせてみたい(ぉぃ
戦闘の制止なられっきゅんに任せられるね!(やめろ

>またかwwwwまた奴の餌食がwwww
倖子はれっきゅんには恋愛感情抱いてないけど、知り合いがいないからとりあえず絡んでくる感じ
れっきゅんを通して友達増やしたりもあるし、あとれっきゅんがボディガード的な役割を担ってる
誰か奴を殺せ(

>どう見てもチクタクマンフラグです、本当に(ry
何故バレたし
俺のニャルの「チクタクマン」は2形態用意してたり
1つは『赤い幼星』で日天を撃った時の人型ロボットみたいな
もう1つを今後主に使っていく予定

避難所を覗いた際に、自分の決定的な計算ミスに気付いた
……………………畜生orz

>>296-298
暗部ラルもとい、影ッポイドの人乙ですー!
まさかの二日続けてのアイドル短編、もしやこのまま連載か
……しかし何故だ、曲名や前の話から終音ミサ=チクタクとしか(ry
久々に元となった都市伝説が本気で分かりません、流石は影の暗部の人

でも10日間ぶっ続けで音楽聴いてたら、普通に餓死とかあり得そうな気もしますし……そこがヒントかな?

>勘の良い人なら正体がモロバレルっていう
つ  ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm822968

>反対派が多い所為か見事に俺しか使ってないという罠
でも2012年1月の時点では、もうアプリが配布されているんですよね……使ってみようかな、噛ませ役でも

>『幼星の懐刀』とも『幼星の側近』とも、はたまた『影武者』とも呼ばれてたり
>実は『Rangers』に誘ったのが裂邪だという
そして自らも、R-No.とは別の契約者集団を集めていると……これ何て裏切りフラグ
まあ裂邪に限ってはそんな事ないでしょうが……“裂邪”に限っては

>『三国伝』からの『SDガンダム』全般っていう経緯で好きになってたりするかも知れん
ならば三国伝からSDガンダムへと引きずり込んだのが先輩である紫亜と言うのはどうでしょう(ぇ
というか、紫亜もファンでいていいですか

>戦闘の制止なられっきゅんに任せられるね!(やめろ
……まあそうですよね、よく考えたら今の出井の能力じゃ止めるのは難しいし……

>倖子はれっきゅんには恋愛感情抱いてないけど、知り合いがいないからとりあえず絡んでくる感じ
>れっきゅんを通して友達増やしたりもあるし、あとれっきゅんがボディガード的な役割を担ってる
>誰か奴を殺せ(
何故そんなに死に急ぐwwwwww組織内にも彼女のファンとかいるだろうにwwwwww

>何故バレたし
何となくや

>俺のニャルの「チクタクマン」は2形態用意してたり
うちの【チクタクマン】はガイノイドに近い形態
未来のとある場所に存在していて、身体の半分が崩れ落ち腹から歯車やワイヤーがのぞいている
両腕で身体を支えつつ「ファァァァァイヴヴヴヴ」と鳴いて(?)いる
言葉は喋らないけど、相手の脳内に意味がそのまま伝わる感じですね

>>299
>久々に元となった都市伝説が本気で分かりません、流石は影の暗部の人
実は『夢幻泡影』でちょこっと出てるんだぜ
終音ミサの名前はその都市伝説から来てたりする
残念ながらミサ=「チクタクマン」では無いのですよン

>つ  ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm822968
懐かしいwwwww
そういやこれもシャドーマンだったなw

>でも2012年1月の時点では、もうアプリが配布されているんですよね……使ってみようかな、噛ませ役でも
あー、配布というか試作品が“偶然(真相は混沌の中)”に倖子ちゃんのスマホへメール添付で転送された感じなの
まぁ大っぴらじゃないけど裏サイト的なところで出回ってるかも知れない、法外な値段で(チャリーン

>まあ裂邪に限ってはそんな事ないでしょうが……“裂邪”に限っては
今のところは裏切り展開は無い感じですにゃー
うん、今のところは

>ならば三国伝からSDガンダムへと引きずり込んだのが先輩である紫亜と言うのはどうでしょう(ぇ
>というか、紫亜もファンでいていいですか
構わん、やれ(ゲンドウポーズ
宜しくお願いしますの

>……まあそうですよね、よく考えたら今の出井の能力じゃ止めるのは難しいし……
れっきゅんが止めるなら一番安全なのはシャボン玉でぽよんぽよんかな

>何故そんなに死に急ぐwwwwww組織内にも彼女のファンとかいるだろうにwwwwww
…考えて無かったな、「組織」メンバーの反応どうしよう
切り札組(ローゼ・蓮華・レクイエム・日天・ルート)は知らない設定で
それ以外(ロール・レジーヌ・ロベルタ・ラピーナ・凛々・羅菜・ライサ)はファンで
ライサが一番熱心、レジーヌは性の対象としか見ていない(

>うちの【チクタクマン】はガイノイドに近い形態
そういや俺、初めて「チクタクマン」の説明見た時、何故か脳に浮かんだのが電脳植物バイオス(ウルトラマングレート参照)だったのよね
あれの植物を配線とかに変換したらそれっぽいなーと

書き忘れ

>>299
>まさかの二日続けてのアイドル短編、もしやこのまま連載か
終音ミサは敵キャラ決定なので他の連載で準レギュラーとして登場致しますの
岩清水倖子ちゃんは今も悩んでる、連載にしたところでストーリーが浮かばない気がするんだ……

>>290-291
>>296->>297
シャドーメェンの人乙ですー
アイドル対決期待してるよ!
エフェクターアプリとか発想がいいな、なんか使ってみたくなる

歪みねえな!
投下した皆さんおつでした
アイドルキャラか……そうか……
私も考えざるをえないな……

さちことボカロが殴り合いの死闘を演じると聞いて
何?さっちゃんじゃなくてゆきこちゃん?

前回までのあらすじ
・左腕やら財団やら契約やらの説明回
・ナージャ「僕と契約して契約者になってよ」
・路樹「えー?」



「……という訳だ。都市伝説については理解したか?」

 僕は都市伝説について大体のこと(※このスレの>>2辺りに書いてそうなこと)を路樹に説明し終えた。
 弟も最初は戸惑っていたがもうこれ以上否定するのも不可能と悟ったらしい、結局深くため息を吐いて了解の代わりとした。

「それで路樹くん、君の素質を見込んで私からお願いがあるの」

「なんでしょうナージャさん」

「私と契約して契約者になってよ!」

「断りますね」

「それじゃあお互いの合意も有ったし契約を……にゅう?」

「ですよねー」

「当たり前だよ兄ちゃん、俺の契約の適正だって分かってない
 ナージャさんが強化型か限定解除型かも分からない
 そんな訳の分からない状態で契約するなんて馬鹿なことを言うと思ったの?」

 ぐうの音も出ない正論ぶりである。
 さすが僕の弟である。

「やはりあんた達兄弟なんだな」

「えーなに、ジルりんのところもそうなの?」

「ジルりんって呼ぶな!
 私はお前と戦ってた最中にやっとこさ契約したんだぞ
 それまでこいつだってうんともすんとも言わなくてさあ」

「あー、キツイわよねえ。追いかけても追いかけても届かないこの心」

「いやそういう問題じゃあないですからね
 何の情報も開示せずに契約してよ!とか言われても困りますし
 俺にだって心の準備やら損得勘定が有るんですから」

「まあそれもその通りね」

「そういうわけだ。今開示できる限りの情報を開示してください」

「解ったわ。それくらいじゃないと命を預けられないわよねえ
 じゃあまずは私の情報を貴方達に開示しましょうか
 私は半人半魔の清く正しい吸血鬼
 人間としては半端な心の器と、維持に経費のかからない都市伝説としての再生能力を持つ半端者
 父は真祖の流れを汲む由緒正しいルーマニアのドラキュラ
 母は日本の……確か薩摩から来たフリーランスの都市伝説狩り
 あの館に来ていたのは猿の手の発掘の為
 猿の手なんて言うけれども、それはもともと“とある尊い御方”の遺体の一部なのよ
 その“とある尊い御方”は死体がバラバラになってしまっててね
 そのバラバラになった死体のそれぞれが別の都市伝説と化して現在世界中で怪現象を起こしているの
 我々財団はそれを集めて死体を復元する計画だったんだけど……どうしてこうなったって感じ
 遺体がそれぞれに意思を持つことは知られていたけれども、その遺体がまさか悲喜くんを選ぶなんてね」

「……zzz」

 寝る子は育つというが、寝る都市伝説は育つのか?
 ジルりんはいつの間にかぐっすり眠ってる。

「つまり俺がナージャさんと契約すると俺は自動的に財団側に所属となるわけか」

「まあそうなるわね、あくまで財団のメンバーである私の協力者って扱いだけど」

「成程、成程、理解した
 ならば尚の事協力には積極的にはなれないな」

「あら、不思議ね何故かしら」

「俺には財団が正義とは思えません
 ナージャさんは直感で良い人だと分かる、しかも美人だしね」

 そいつお前の優しいお兄様を殺しかけたんですけお!!!111!!!!1!
 いい加減にしてくだち!!!!1!1111!!

「うふふ」

 そしてナージャさんはそんな照れないでください。

「だけども組織である以上、そこに与すれば自らの意思に反する行いを強いられたりするかもしれない
 それに自らと関係のない因縁が降り注いでくるかもしれない
 それを思うと素直にナージャさんと契約するわけにはいきません」

「そう……」

 僕はジルりんに臨戦態勢に移るようにさり気なく指示を出す。
 って、駄目だ寝てる。
 ナージャは確かに善良な人格だ。
 だがしかし、それ以上にこいつは自らの欲望を優先する。
 今この状況で何をしでかすかは分からない。

「兄ちゃん、悪いか?」

「構わん好きにしろ、そのせいで死ぬかもしれないけどその時は俺のせいだから好きに恨んでくれ」

 そしてこの状況で何をしでかすのか分からないのは弟も一緒だ。
 こいつはこいつで僕によって降り注ぐ迷惑を意に介さない化け物じみた精神と肉体の持ち主だ。
 僕に散々振り回されている男ではあるが、自らが納得しない限りこいつは絶対に何にも従わない。
 僕に振り回されているのも結局はこの弟の優しさなのだ。

「まあ、路樹くんの危惧する事態が無いとは言わないわ
 拒否権が有ると言っても理事長には逆らえない
 それは事実なんだからね
 でもね、私は貴方が欲しいのよ
 私の大好きな強い身体と、それに心。そして貴方と契約すれば“左腕”に選ばれた悲喜くんを間違いなく私たちの側に加えられる
 路樹くんだって財団の力を使えるというのはとっても便利よ?
 互いにとってメリットは大きいわ」

「そうでしょうね、メリットは大きい
 ですがそこに正義は?
 財団が真っ白な団体じゃあ無いのは貴方自身が言ったことです
 俺と契約したいならばナージャさんは財団を抜けてもらいます」

「ふぅん……解ったわ。じゃあこうしましょう
 財団の団員権を私が悲喜くんに渡す
 そして私は貴方と契約する
 どうかしら悲喜くん?」

 考えてみる。
 財団の一員になれば取材のネタが増えるかもしれない。
 あとコネで著作を出版とかもあるよなあ……?
 
「喜んで!」

「え、ちょ、兄ちゃん……」

「いいだろ路樹! こんどこそ面白い話書けるぞ!」

「いや俺は別に構わないけど……
 別に兄ちゃんが勝手する分には気に入らなきゃ見捨てれば良いし」

 確かに偶に見捨てられるのだ。

「じゃあ決まりね。ただし条件が一つ。来なさい不知火」

 ナージャは指を弾く。
 すると突然僕とジルりんを包み込むように火柱が登る。

「はわわわ!? 燃える! 燃えちゃう!
 …………と思ったら熱くない!
 路樹、これなにが起きてるの?」

 ジルりんの言うとおり熱くない所を見ると閉じ込めるためだけの炎だろう。
 
「只の人間が其処までいうからには力を見せてもらうわ
 お兄様と同じようにね」

「ナージャさん、契約を誘ってきたのはそっちだろう?」

 僕は軽口を叩くような口調で彼女を咎める。

「そうね、でも今の時点で私は只の人間相手に結構譲歩してるつもりなのよ
 なのに路樹くんったらそれ以上に無茶言うんだから腹も立つじゃない
 理想を語る人間は大好き、でもそれに力の伴わない人間は腹が立つ
 私は現時点では路樹くんのことを優れた契約相手としか認識していない
 だから契約条件も譲歩してイーブン
 だけどそれに加えて共に戦うに値する人間と認められるならば更に譲歩してあげようって話よ」

「でも……」

「兄ちゃん、別に構わないよ
 確かに男が口だけってのは情けないからな
 ナージャさんが人間を越えた存在で、俺みたいな普通の人間が好き勝手言える力関係じゃあないのも分かる
 独善的で自分勝手なりに譲歩してくれているのは分かる」

「バカやめろ路樹、ここは兄ちゃんに……」

「だがいくら譲歩されようが心配されようが男として譲れない部分を譲ってくれなきゃ意味が無い」

「ふふ、言うことだけは素敵な殿方」

 ナージャはあの時と同じ心を腐らせる微笑を浮かべる。
 これは不味いかもしれない。
 なのにジルりんの方を見るとまた眠たげな顔だ。
 ……何故だ?

「おいジルりん」

「私めんどいからパス、放っといてやれよ“お兄ちゃん”」

「え?」

 どういうことだ。

「先手は譲るわ」 

「ナージャさん、例え試験でも貴女が化け物でも女性に自分から殴りかかるのは好きじゃない
 こっちこそ先手は譲らせてもらうよ」

 二人は同時に椅子から立ち上がって向かい合う。

「じゃあ遠慮無く」

 そう言ったと同時に弟はナージャの至近距離まで詰め寄る。
 そしてその間に彼女は服の中から拳銃を取り出していた。
 弟はナージャの拳銃を持った手首を拳銃ごと殴り抜けた。
 弾き飛ばされる拳銃、驚愕するナージャ。

「不知―――――――」

 成程、すぐに手段を切り替えるのは正しい、だがそれでも遅い。
 不知火を呼びだす途中にその言葉は途切れる。
 弟は既に拳打から肘打ちを決めていた。
 
「ああもう!」

 ナージャが乱暴に腕を振り回すが弟はボクシングのフットワークでスルリと射程の外に出る。
 そしてそのギリギリの距離から掠るように弟の拳がナージャの指先や関節を抉る。
 蹴り足を回避してローキック、拳を繰り出す為の前に確実にめり込むジャブ。
 ナージャという魔人は確かに強い。
 だがその強さとは圧倒的な基礎スペックに支えられた強さだ。
 故に油断する。
 出端を潰され、一撃をいなされ、翻弄される。
 キックボクシングをやっている路樹からすればむしろ戦ってて楽しい相手だろう。
 だが、だからこそ両者がエキサイトしそうで戦わせたくなかった。
 業を煮やしたナージャが自らの身体能力を生かして弟の背後を一瞬でとる。
 しかしそれに合わせて弟が真後ろに向けて回し蹴りを放っていた。
 足を取られて転ぶナージャ、路樹が馬乗りになってそのまま額に正拳突きを叩きこむ。
 ゴキッとか嫌な音が部屋に響いた。

「むきゅー……」

 目をグルグル回してナージャさんは気絶した。
 それと同時に僕達を包む炎が消える。

「なんてこったナージャが殺されちゃった!」
 
 ジルりんに目配せをする。
 彼女はコクリと頷く。

「「このひとでなし!」」

 僕とジルりんは息を合わせて叫ぶ。
 地味にサウスパーク版である。

「……兄ちゃんこれ持って帰って良い?」

「どうぞお好きに」

 弟はそのままナージャさんを担いで部屋を出て行ってしまった。
 ちなみに部屋は荒れ放題のままである。
 あのひとでなし共め。

【僕は小説が書けない 第十二話「You bastard!」 終わり】

「なんてこった、ケニーの殺害シーンまとめ動画にハマっちゃった!」
「このひとでなし!」

乙ですのン
悲喜くんと息ピッタリなジルりんハァハァ
しかしロッキーやりすぎだwwwwww
最終的にもはや物扱いだしwww
持って帰った後はどうなっちゃうのかしら、投下できないスレで待ってて良い?(

>>302
>アイドル対決期待してるよ!
この2人がそもそも出会うかどうかも予定してないというorz

>エフェクターアプリとか発想がいいな、なんか使ってみたくなる
そんなこと言われたら照れすぎて脳内構想まとめちゃう

●音声起動システム搭載
 メイン画面で「『エフェクター』起動!」みたいなことを言うと勝手に起動します
 “みたいな”っつぅのは各々で勝手に決められるって感じ
 最初に声と合言葉を設定しておくのね

●起動時間は3分間
 一度使用すると1時間は再起動不可能
 だからといって1時間経ってすぐ使うと何らかの悪影響が出るかも知れないので2~3時間置く事を勧める

●“悪影響”についてはまだ決めてない
 ただ、『エフェクター』を考案した本人によると、
 “『エフェクター』と他の都市伝説を制御する道具を併用すると契約者の器に負荷がかかって破壊される”そうなので、
 乱用=同化現象と判断して良いでしょう
 スパロボの所為でラインバレルとファフナーが気に入った私としては、
 “都市伝説との同化”と“想像力の低下による脳機能障害”の二択で揺れてる

>>303
>私も考えざるをえないな……
皆もアイドル書こうぜ
つってもアイドル量産されても困るけどな☆
『GKC48』(※Gak-Ko-Cho 48)とかマジ勘弁

>>304
>何?さっちゃんじゃなくてゆきこちゃん?
ゆきこちゃんなの、ユッキーなの
流石に“さちこ”はモロ過ぎるwww


わたしの学校の女子トイレにはトイレの太郎さんが出たそうです

今はいないそうです

あるとき、ひとりの女の子が放課後トイレの太郎さんを呼び出しました

女子トイレの4番目の個室を4回叩いて、「太郎さん」と呼ぶと、返事がありました

扉が開くと、中から白のシャツに黒の半ズボンの太郎さんが出てきました

太郎さんは女の子にボタンの付いた箱を見せて、「ボタンを押してね」と言いました

女の子は気味が悪くなりましたが、言われた通りボタンを押しました

すると太郎さんは

「これでぼくは自由になれた。お礼にぼくが花子さんにやりたくてたまらないことを、君にもやってあげるよ」

と言いました

次の日の朝、その女の子がトイレの中でおしりから血を流して死んでいるのを用務員のおじさんが見つけたそうです

おしりの中には電球が13個もつめ込まれて、全部われて、それが突き刺さって死んでしまったそうです

その日から、学校の女子トイレに太郎さんがあらわれることは無くなったそうです



これが、友達の友達から聞いた、わたしの学校に伝わるトイレの太郎さんの話です

今朝方乾燥書いたと思ったら書いてなかった笑えない

はがけないの人、乙です
ナージャさんの誘導的な臭いがしないでもない勧誘に
なんとなくあの人臭さを感じつつ
そのナージャさんを数秒でボコにした路樹くんに謎の爽快感を感じました
このやり取りを傍観してたジルは何だか生あったかい目をしてそう

そして影音シャドの人も乙です
エフェクターはプログラムのタイプもあるのか、なるほど
アイドルは排泄しないと言うことは富江良知緒さんと同じステージの人間というわけですね
しかし何かな、れっきゅんはやっぱり捥がれる運命にありそうですね
これって絶対アイドルvsボカロvsローソンクルーの三つ巴合戦に発展しますよ、うん
そして終音ミサについてなんですけどね
元ネタはたしか夢幻泡影にも出てきましたよね、それも南極事件あたりに
あれねえ、何か気になるんですけどねえ
いやその前にもしそうだとしたら
あの蓮華さんが見逃しますか?おかしいと思いませんか、あなた
これは絶対裏がありますよ、ねえ

乙ですのン
太郎くん怖ぇ!? てか花子さんに何しようとしてやがったこのクソガキ!?
バッドエンドなのに色々謎とツッコミどころが多くて何故か噴く

>>312
>これって絶対アイドルvsボカロvsローソンクルーの三つ巴合戦に発展しますよ、うん
何故ローソンwww

>あの蓮華さんが見逃しますか?おかしいと思いませんか、あなた
(蓮華ちゃんそんな万能キャラだっけ)

>これは絶対裏がありますよ、ねえ
(視線反らし

>>306-309
はがけないの人乙ですー
ナージャさんがナージャさんなら路樹くんもあれだな…きっと良いコンビになるだろう

>>311
トイレの太郎さんの人乙ですー
太郎さんは花子さんにいったい何を…いや言うまい

たろうくんの人乙でした
後ろの方に電球とは新しい!(英雄並の感想)
わからないところだらけで色々きになったにゃー

度々SATSUMAの流れを汲むバーサーカーを書いてますが
筆者はSATSUMAの血を引いてもなければSATSUMAに行ったこともありません
勝手にSATSUMA=サイヤ人みたいなあれにしてるだけです

>>305-310
書けないの人乙ですー!
戦闘潮流かと思ったらSBRだと!?
あ、でも財団の目的は“英雄”を作る事だったはず。かつての偉人や英雄の復活を目論んでても、不思議じゃないか
……ただ、その【猿の手】って後一回分の願いしか叶えられないんですよね?後の2回分はどこで……?

そして、ナージャさんの油断もあったとはいえ半魔人を一方的にwwww路樹くん強ぇwwww
悲喜くんとジルりんはもう付き合っちゃえば良いと思うよ!

>>311
太郎さんの人乙ですー!
太郎くん……いや、太郎さん怖wwww
「自由になれた」って事は、封印でもされていたんだろうか……
とするとあの女の子のせいで、こいつが世に解き放たれた事に!?

間違えた、>>310は影暗部の人だww

>実は『夢幻泡影』でちょこっと出てるんだぜ
なん、ですと……!?

>そういやこれもシャドーマンだったなww
実は、擬人化するまでシェイドのイメージがこれでした
……でも今考えると、『ライトの色で能力が変わる』って面白いですよね

>あー、配布というか試作品が“偶然(真相は混沌の中)”に倖子ちゃんのスマホへメール添付で転送された感じなの
>まぁ大っぴらじゃないけど裏サイト的なところで出回ってるかも知れない、法外な値段で(チャリーン
うわぁ、真っ黒だーwwww
>(チャリーン
しかしこの音、どこかで見たような……?

>構わん、やれ(ゲンドウポーズ
>宜しくお願いしますの
こちらこそありがとうございますー

>れっきゅんが止めるなら一番安全なのはシャボン玉でぽよんぽよんかな
それ、事実上ミナワが止めてません?

>切り札組(ローゼ・蓮華・レクイエム・日天・ルート)は知らない設定で
裂邪に惚れてるorもう相手がいるグループですねわかり(ry

>レジーヌは性の対象としか見ていない(
ぶれないwwwwそして恐らく、ο-No.2にとっては軽い嫉妬の対象wwww

>あれの植物を配線とかに変換したらそれっぽいなーと
あー成程、しかしグレートとはまた渋い所から……


俺が風呂から上がると、姉貴が居間でパソコンやってた


弟「何やってんの」

姉「ウイルス探してんの、ウイルス」

弟「…は?」


どうしよう、テロでも始める気なのか


弟「ウイルスっておま」

姉「都市伝説よ、ウイルスの都市伝説、コンピュータウイルスの」

弟「なんだ、また都市伝説か」

姉「パソコンに感染すると夜中に女の笑い声が鳴って
   それ聞いた人は魂抜かれてパソコンに取り込まれるんだって
   しかも、魂抜かれた人が今度はそのウイルスになってしまうってやつ」

弟「あほくさいな」

姉「ネットで調べてるんだけどさー、これが中々でてこなくてねー」

弟「は? じゃあどこで知ったの、その都市伝説」

姉「クラスの佐々木から」

弟「…ああそう」


テレビを付けてチャンネルをざっと見る

見ようとしたら、姉貴のケータイが鳴った


姉「もしもし、はい、お花ちゃん? どしたの?」

姉「ええと、分かった! 今すぐ行くから!」


姉「弟よ、今から第2小学校に行くよ! 20秒で支度しな!」

弟「は?」

姉「用事よ、しかも緊急事態! 二人で行くわよ!」

弟「いや、俺、風呂入ったし、姉貴ひとりで行ってくれば…」

姉「何? 口答え? おーよしよし、口答えなわけね? んん!?」


コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ


弟「ちょっ姉貴っやめっふぐっふぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっ」


60秒後


俺は姉貴の拷問に屈服した、俺としてはよく持った方だと思う

こうして俺は姉貴の突拍子な用事に巻き込まれることになった

第2小学校に急行しないといけないらしい

こんな時間に? なぜ?


20分後


俺は姉貴の自転車に乗って第2小学校の裏門に来ていた

第2小学校といえば、姉貴が卒業した学校だ

俺の通う学校とは反対方向にある


弟「大体こんな時間に何の用なんだよ、もう9時回ってんぞ」

姉「校舎裏に回るわよ」


俺の言葉を無視して堂々と裏門から入っていく

姉は俺を振り回すとき、基本的に俺の話を聞かない

そしてそういうときは大抵俺が碌な目に合わない

早速いやな予感だよ畜生


姉「ここの窓って立て付けが甘いのよねー」 ガチャガチャガチャガチャ

弟「おいよせって、セコムのおっちゃんに見つかるぞ!」

姉「警備入ってるのって書類とかある職員室だけよ、それ以外はザルだから」


いいのか、第2小学校


姉「よし、ここから中に入るわよ!」


何だか犯罪の片棒を担がされている気分だぜ


結局、俺たちはめでたく校舎の中へと侵入していた


姉「懐かしいわねー、この埃っぽい空気とか」

弟「それで? 夜の小学校に何の用だよ」

姉「さっき電話してきた子は女子トイレで待ってるから急ぐわよ!」


はあ、何だそれ

ああやっぱり学校の怪談絡みですか畜生

そうなるともう確実にヤバいイベントとかち合うことになる

だから姉貴ひとりで行けって言ったんだ


姉は何だか楽しそうにずんずん怪談を登っていく

パンツ見せそうだぞと嫌味のひとつでも言っとくべきか

いや、もう、いい。もう、どうにでもなれってんだ畜生


3階まで上がった所で、姉貴は廊下へと出た

そういえば、3階女子トイレに出る花子さんって話を聞いた覚えがあるな


?「みーちゃん!」


前方の闇から小さい子どもの声が響いた

廊下の窓から入ってくる幽かな光のおかげで、おぼろげながら姿が分かった

白のシャツ、赤いスカート

そのイメージは、そのまんま「トイレの花子さん」だった


花「みーちゃん! たすけて!」


細っこい声でそいつは姉貴に抱き付いた

声が震えているような気もする


姉「どうしたのお花ちゃん? 何があったの?」

花「あのね、えっとね
   おとといね、人体もけいのお兄ちゃんがね、太郎さんが来るからにげろって
   そしたらね、人体もけいのお兄ちゃん、きのうの朝に、理科室の前でね
   バラバラになっててね、おしりに…おしりに…キュウリとか、ニンジンとか、いっぱいささっててね
   わたしがお声かけても、何も返事しなくなっちゃって、うう、ぐすっ」

姉「よく分かんないけど、ひどいことする悪ガキがいるのね!」

花「た、たぶん、太郎さんがやったんだと思うの
   それでね、わたし、こわくなって、きのうの夜は、音楽室にかくれてたの、そしたらね
   そしたらね、……ううううう!」


なんか花子さん、泣きそうになってるんだけど

姉貴はよしよしして落ち着かせている


花「わたしがいた、トイレに…トイレに…うううう!」

姉「弟、ちょっと女子トイレに入って見てきなさい」

弟「俺がかよ!」


チッ、仕方ねえな

決して怖いとかそんなじゃないからな

おい、勘違いすんなよ! 俺は怖いとかそんなんじゃないからな!


姉貴が俺に向かってライトを突き出した

これを使えということらしい

ったく、姉貴はこういうときはヤケに準備がいいよな


女子トイレはすぐそこだ

ライトを付けるが、なんだこの不気味さは

富士急ハイランドの子供だましなアトラクションじゃ、決して出せない凄味がワンワンと


姉「ちょっとアンタ、早く調べて来なさいってば」

弟「うう、うるせえ、い、今さくっと調べてだな…」


確か、3番目の個室だっけか

他は扉が開いたままになってるのに、そこだけ閉まったままになっている

手で押して開けろってか


ギッギィィィィィィィ


嫌な音を立てて開いた扉の向こうには


弟「ヒッヒィィ」


白のブロックタイルに赤い目の落書きがびっしりと書かれていた


姉「弟! どうしたの!」

弟「アバッバババババイ、目が、目がたくさん落書きされてる…」


おい、マジでビビったぞ、どうすんだコラ

やんのかコラ、ああん!?


弟「それと、何か、『何でいないの』とか、『花子ちゃん、一緒に遊ぼう』とかって書いてあるんだけど」

花「う、うら…」

姉「どうしたのお花ちゃん?」

花「とびらの…うらにも…」


扉の裏? 見てみると


弟「ヒィッ」


扉の裏にも赤いペンキか何かで目がびっしりと書かれていた

しかも中心には「お医者さんごっこしよう」とも書かれていた

ヤバい、なんか知らんが、これはかなりヤバいんじゃないかと思うよ


花「わたし、太郎さんにころされちゃう、たすけて、みーちゃん」

姉「あれっ、でも確か、ウチの学校って太郎さんの噂は聞いたことがないわ」


花「たぶん、第1小学校の太郎さんだとおもうの…ぐすっ」

姉「第1小の太郎?」


第1小学校は、第2小学校のさらに奥にある

この町にある中で、一番古い小学校だ

ああ、そう言えば聞いたことがあるな

トイレの太郎さんって怪談だ

なんでも女子トイレに出るらしく、別名「変態の太郎さん」と呼ばれてたはずだ


弟「とまあ、かくかくしかじかな話があってだな」

姉「何それ、危なさそうなんだけど…」

花「さいきんね、おばあちゃんが教えてくれたんだけどね
   その太郎さん、女の子のおしりにランプをつめこんで、つめこまれた女の子はしんじゃったって…
   どうしようみーちゃん…わたしも、おしりにランプつめこまれちゃうのかな…しんじゃうのかなあ…」


花子さん、涙声だ

姉貴がよしよししている

女子のケツにランプを詰め込む? それははじめて聞くパターンだな…


姉「その変態太郎がお花ちゃんを狙ってるのね! 許せないわね!
   とにかく、この学校は危ないから、私たちと一緒に逃げるわよ!」

花「え、でも…」

姉「大丈夫! 何だか変な予感がして、アレ持ってきて正解だったわ、女のカンってやつね!」


姉「弟、ライトこっちに向けなさい」


姉貴は鞄の中をしばらく引っ掻き回して、何かを取り出した

プラスチックっぽいカチューシャと、箱のようなものだった


姉「おじい様から貰ったものよ、お花ちゃん、このカチューシャを頭につけて」

弟「姉貴、なんだよその箱みたいなやつ」

姉「『エフェクター』よ、自縛系の存在をその場所から切り離すことができる代物」


姉貴は俺に箱を突き出した

なんか、De-Place-sserとか書いてあって、ボタンがひとつだけ付いていた


姉「んじゃ、行くわよ!」


姉貴は箱を床に置くと、思いっ切りそれを踏ん付けた

カチッと音がした


姉「お花ちゃん、気分はどう?」

花「ちょっと、頭が、へんなかんじです」


うっわあ、何だこれ、花子さんがつけてるカチューシャが何だか光ってるぽいぞ


姉「これでよし、とりあえずお花ちゃんを連れて家に帰るわよ!」


ああうん、そうだね

変態の太郎なんかとかち合ったら、俺たちももれなくケツに詰め込まれるわけだろ?

バラされた人体模型みたいに

そんなのゴメンだし


姉「運悪く変態太郎と遭遇したら、アンタ、戦って、私たちを逃がしなさいよ!?」

弟「おまっ! 俺を捨て石にするつもりか!?」

姉「あんた、『座敷わらし』ちゃんと契約してんだから、何とかなるでしょ? おじ様から格闘技も習ったんだし」


おい、それを言うのは反則だろうが

とにかく厄介事に巻き込まれるのはゴメンだぜ


弟「速攻でここから逃げるぞ」

花「太郎さんは夜中にくるから、今からにげたら、見つからない、かも、です」

姉「よし、んじゃ行くわよ!」


そのときだった


?「はぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁぁこぉちゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああんんんん!!」


その声は、階段の方から響いて来た

階段の下からだ


?「はぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁこぉちゃああああああああんんんんん!あぁそびぃぃましょおおおおおおおお!!
   ポォゴwwwwwwwwwwポゴッwwwwwwwwwwポゴォッwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!!!」




 もくひょう

    「はなこちゃん」をつれて 「だい2しょうがっこう」から だっしゅつしましょう


 to be...?

新設定とか言いながら
エフェクター出しちゃったし(ゝω・) テヘペロ
ひとまずがんばゆ

変態太郎さんの人乙ですの(マテコラ
まさかあの話からこうなるとはwwww
人体模型のお兄ちゃんカワイソスだけどやっぱりなんか噴いてしまうこのブラックジョーク感
そして『エフェクター』キター! カチューシャ装備とは御主やりおるな
このお姉ちゃん僕に下さい

>>318
>なん、ですと……!?
先の方でちょろっと言及されてたけどβ-No.編ですの

>実は、擬人化するまでシェイドのイメージがこれでした
そうだったのかwwwww
参考までに、昔描いたシェイドのイラスト↓
http://ux.getuploader.com/shadow_people/download/25/%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%BB%E6%96%B0.jpg

>しかしこの音、どこかで見たような……?
ただのお金の音ですよ、うふふふ

>それ、事実上ミナワが止めてません?
あれ、シャボン玉生み出すだけなら裂邪でも出来るってまだ言ってなかったかしら

>裂邪に惚れてるorもう相手がいるグループですねわかり(ry
訂正したいんだ
切り札組の中でもレクイエムは知ってる可能性大だった
何故ならライサが大ファンだから、ライサを膝の上に座らせて一緒にテレビを見てる構図が……
やっぱり良いなロリ巨乳×幼女……なんかもうぞくぞくする

>ぶれないwwwwそして恐らく、ο-No.2にとっては軽い嫉妬の対象wwww
こうして始まる不毛な百合戦争(ヤメロ

>あー成程、しかしグレートとはまた渋い所から……
あの作品の怪獣のデザインも結構好き、ゴーデスとかゲルカドンとかマジャバとかUF-0とか
一番好きなのはシラリーだな! 幼少期に初めて見た時から好きだった! あれは反則級のカッコよさ

>>319-328
投下乙ですー
続き楽しみにしております
あとこの花子ちゃんを下さい(おい)

>>319-328
太郎さんの人乙ですー!
まさか、>>311の短編がプロローグだったとは……姉弟と花子ちゃんがどう立ち向かうのか今後も楽しみです
というか花子ちゃんのお婆さん(二代前の花子?)からいるのか、そして他校の怪談だったのか太郎さん

…………まさか、第1小学校の花子はすでに太郎さんの餌食に……!?

>>330
>先の方でちょろっと言及されてたけどβ-No.編ですの
おk、見直してきます

>ただのお金の音ですよ、うふふふ
いえ、確かにどこかで見たような……あ、アレです!大王の人(多分)の作品に出てきた、【こっくりさん】のメカ!

>あれ、シャボン玉生み出すだけなら裂邪でも出来るってまだ言ってなかったかしら
そうでしたか、失礼しました

>何故ならライサが大ファンだから、ライサを膝の上に座らせて一緒にテレビを見てる構図が……
想像すると微笑ましい、姉妹の仲良き光景も
>やっぱり良いなロリ巨乳×幼女……なんかもうぞくぞくする
影の人にかかればこの通り(ry

>こうして始まる不毛な百合戦争(ヤメロ
廻女ちゃんを加えるともはやカオス(乗るな

>一番好きなのはシラリーだな! 幼少期に初めて見た時から好きだった! あれは反則級のカッコよさ
シラリーとコダラーはいいですよね……そして「第3の存在」には痺れました
要するにあの2体は地球の掃除屋=地球を守る為の存在であり、ガイアやアグルと似た側面も持ってるんですよね

>>332-333
>というか花子ちゃんのお婆さん(二代前の花子?)からいるのか、そして他校の怪談だったのか太郎さん
人体模型を“お兄ちゃん”と呼んでいるから、お婆ちゃんも他の都市伝説という推測も出来る
同じ学校の怪談系で老婆と言えば「鏡の中の四次元婆」とか?

>…………まさか、第1小学校の花子はすでに太郎さんの餌食に……!?
“してあげたかった”と言ってるから多分出来なかったんじゃなかろうか
やる前に消されたか、契約して離れたか、エトセトラ

>いえ、確かにどこかで見たような……あ、アレです!大王の人(多分)の作品に出てきた、【こっくりさん】のメカ!
バレた! 俺は逃げるぞ!

>そうでしたか、失礼しました
調べてみたらまだ言ってなかったぜ、へけっ(ハム太郎

>影の人にかかればこの通り(ry
てへっ♪

(ライサ>姉妹?
(裂邪>血が繋がってなくても、友達以上に強い絆で結ばれていたりすると互いに兄弟と呼ぶようになるだろ?
    それと似たようなもんさ、ライサちゃんもレクイエムちゃんと仲良いし
(ライサ>あ、えっと、逆立ちを躱すんだよね!
(裂邪>“杯を交わす”な;

>廻女ちゃんを加えるともはやカオス(乗るな
もう、誰にも止められない―――『Lily Wars』、近日公開否定!

>シラリーとコダラーはいいですよね……そして「第3の存在」には痺れました
第3…? やばい知らないorz

たろうさんのひとおつでした
てんぽがよくてあっという間によんでしまいました
続きを楽しみにしております

とある少女の日記より抜粋

201X年 2月28日

新しい日記帳を買った、これで四冊め。
最近、弟が日記を盗み見るので奮発して鍵付きにしてみた。
今日は特に何もなかったが、近くで変死や殺人が多発してるらしい。
夜道や不審者には気を付けよう。

201X年 3月15日

母から聞いたのだが、小さい頃友達だった久美ちゃんが行方不明になってるらしい
心配だ、警察は役に立たないみたいだし
心配といえば最近、目眩が多い。
疲れてでもいるのかな?

201X年 3月29日

帰り道に黒い服の人達をよく見かける。
きっと葬儀なのだろう可哀想に。
警察は早く原因を突き止めて解決してくれないのかな?

201X年 4月2日

朝、目が覚めると部屋が黒いもやに覆われていた。
異質すぎる状況に驚いた私は、直ぐに気絶した。
意識が途切れる途中に変な札が眼に写ったのを、何故か鮮明に覚えている。
夕方に目が覚め、母に聞くと熱で長い間うなされてたらしい。
只の悪夢だったようだ。

201X年 6月2日

1ヶ月前のあの日から悪夢ばかり見る。
友人や家族が死ぬ内容の夢ばかりだ。
それだけでも辛いのに殺しているのは私なのである。

201X年 8月15日

もう、頭がどうにかなりそう
寝ても覚めても頭の中で惨状が映し出される。
いっその事、気でも狂った方が楽なのではとも思いもした。
些細だが気付いたことは、夢の中の私はカルタらしき札を持っている事だけだ。
いったい何なんだろう…

201X年 12月13日

夜、急に意識が途切れたりするようになった。
これも夢のせいなのだろうか?
心配した親に病院へ連れていかれた。
だが、私には病とは違う何かのように感じる。

****年 **月**日

しぶといな…早く沈んじゃいなよ"私"

201X年 12月4日

鍵付きのこの日記に書き込まれてる一文。
赤いペンで書かれたその文は一字一句違わず私の字体だ。
自分の癖ぐらい分かるし鍵も私が所持している…だが書いた覚えがない。
怖いから今日はもう寝ることにする。

****年**月**日

うーんとねー、これは貴女であり私が書いてるの。
因みに私は"アリス"だから宜しくー。

201X年 1月19日

赤字で返答が書き込まれてる…二重人格と考えたが違うのだろうか?
こんなことばかり書いていては自分で滅入るし違うことも書こうと思う。
最近、野良犬が家の近くにいて私になついている。
とても可愛く、悪夢なんか忘れさせてくれる。

"""""年""月""日

分からずに終わるのも可愛そうだから教えてやるよ
"私"は全部で七人いるんだ。
そして、媒体となる最初の私…つまりお前には消えてもらう。
自分の意識の底に沈んでさ。

201X年 2月7日

また文章が書かれている。
字体は同じだが今回は文体が荒くなっている…アリスと名乗る者とは違うようだ。
だが、そんなことよりも媒体?消える?

""""年 ""月""日

実におバカさんね……まぁ、わかる頃には手遅れなのだけれど。

久しぶり私、アリスちゃんだよ。
お家の裏にプレゼントを用意したから見てね。

201X年 3月8日

プレゼントなんて気にしなければ良かった。
好奇心で家の裏を見に行くと、可愛がっていた犬が冷たくなって転がっていた。
それを庭に埋めながら私は泣いた。

****年**月**日

どうだった、ワタシ達から私へのプレゼント?
ねえ、綺麗だったでしょ?
今度は一周年の記念日だから楽しみにしててね!

201X年 4月2日

早く感づいて自殺でもすれば良かった…
思えば去年のあの日から悪夢は始まっていたんだ。
もう、この日記は書けないかもしれない。
今では気をぬくと意識が奪われそうになる。

****年**月**日

母さんも父さんも友達も皆、死んだ。
アイツ等がやった、私がやった…
意識ははっきりとしているのに身体が止まらなかった。
夢とは違って血は生暖かくて、死体は冷たくて、妙な感覚が私を包んだ。
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
私はワタシ?私はアイツ?
私は誰?

わた―――――――

――担当者 F.No032――
・捜索、討伐、捕獲を命ずる。

「いやー部署が変わっての初仕事が電波娘を探すとは…」
紙の束と共に渡された日記をペラペラと捲りながらポツリと彼女は呟いた。

「食べるのか…?」
「あはは、そういう発言は危険だよ少年」

口に指を当てながら笑みを浮かべる黒服

「なんでだ?」
「食べないし…発言によっては、ここの人達に食われかねないからだよ」

クシャクシャと少年の髪を撫でながら黒服は日記を閉じた。

という訳で代理終了ですのン
気付くの遅くてごめんなさい、ここで謝罪致しますorz



 もくひょう

    「はなこちゃん」をつれて 「だい2しょうがっこう」から だっしゅつしましょう




?「はぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁこぉちゃああああああああんんんんん!あぁそびぃぃましょおおおおおおおお!!
   ポォゴwwwwwwwwwwポゴwwwwwwwwwwポゴォwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!!!」


 階段の方から響く不気味な声を聞くだけで鳥肌立った

 確認しなくても分かるぞ

 こいつが変態太郎だ


姉「まさか…今のが…変態太郎…?」

花「うそ…くるのはやい…!?」

弟「ここにいたら見つかるぞ! どこか隠れるところは!?」


ガチャガチャガチャ


弟「駄目だ、教室はしっかり鍵掛かってやがる…!」


?「あぁなごぉぉおぢゃあああああああんんんん!!」


姉「時間が無いわ! 男子トイレに隠れるわよ!!」


目と鼻の先にある男子トイレの、奥の個室に逃げ込む

女子が男子トイレに入って~だとか、3人でひとつの個室に入って~だとか、そんな話はナッシング

ふぉーがっちゃ、ふぉーがっちゃ、ふぉーがっちゃ、うおおおおおおおおう!

花子さんと姉貴を押し込み、俺も入りながら、音を立てないように扉を閉めて、鍵を差す


ガチャリ


弟(間に合ったか!?)

姉(変態太郎は!?)


ペタリ


今の音は、間違いない

やつだ

変態太郎が、3階の廊下にたどり着いたんだ、間違いない


ペタペタペタ ペタペタ ペタペタ


息を[ピーーー]

外からの足音が、いやでも耳に入る


?「はぁぁぁぁぁぁぁ、はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


足音が響くが、すぐ近くで聞こえるわけじゃない

まさか、女子トイレに入ったのか


コンコン コンコン コンコン


ノックの音が、聞こえてくる


?「はなこさん、ぼくだよ、たろうだよ、あそぼおぅよおぉ」


トイレで大声を出すときの、独特の響きがあって、怖い


?「はなこさん、あそぼう、あそぼうよ、たろうですよ、あそぼう?」


ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ


さっきの不気味な声に比べて、まるで友達を遊びに誘うかのような明るい声だ

これがかえって、余計に怖い

しかも、何か揺すってる音まで聞こえてくるんだが

これはあれか

扉を無理矢理引っ張ったり押したりしてるのか


花「――――っっ、――――っっっ!」


俺のすぐ横では、花子さんが姉貴に抱き付いていた

めっちゃ震えてる


?「はなこさん、あそぼう、おいしゃさんごっこしよう?」


そんな中、やつの声だけが俺たちの耳に突き刺さる

静かすぎて花子さんの震えてる息が分かるくらいだ


?「ぼくね、はなこさんと、おいしゃさんごっこ、ずうっと、ずううううっと、やりたかったんだよ?」

?「あのね、はなこさんのね、おしりにね、でんきゅうを、ぎゅっ、ぎゅっ、って、やってみたいんだ」

?「それでね、はなこさんがね、うんうんしてね、でんきゅうをね、ぽこぽこ、だすの、おもしろいよ?」

?「はなこさんもね、すっごく、たのしくなるとおもうんだ、いっしょにあそぼ? ぼくといっしょに、あそぼ?」

?「でもね、ほんとうにやりたいのはね、それだけじゃあないんだよ?」

?「ぼくね、おきにいりのね、コーラびんを、もってきたんだあ!」

?「これをね、はなこさんのオ××にね、ぼくが、ぬっぷぬっぷして、×れてあげるの!」

?「それでね、それでねポゴォwwwwwwwwwwww」

?「はなこさんがね、うんうんしてねwwwwwwwwはなこちゃんがね、コーラびんを、×むんだよwwwwwwwwwwww」

?「そしたらね、ぽこんてねwwwwwwwwwwwwwwぽこんてwwwwwwwwwwwwwwwwポゴォwwwwwwwwwwwwwwwwww」

?「はなこちゃんのかわいいオ××、ピンクのオ××、まっかになって、ホオオオンwwwwwwwwwwオホオオンwwwwwwwwwwwwww」

?「はなこちゃん、なみだめで、ぷるぷるして、ウォww、ゥヲwwww、ヲwwwwww、ヲオオオオオオオオオオンンンwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

?「はなこちゃああああああああああああああんんん!
   いっしょにおいしゃさんごっこしよおおよおおおおおおおおwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!!!!」


俺の横で花子さんのガタガタ震えるのが、一気にひどくなった

俺も、今にも叫び出してしまいそうだ


はっきり分かった

こいつはマジもんだ

ヤバいなんてもんじゃない


?「はなこちゃん、いないのかなああああああ!?」

?「じゃああああああ、はなこちゃんとおお、かっくれんぼだあああああああ!!」

?「どぉこぉかぁなあああああああああんんん!!」


誰かが大きく息を飲んだ

誰だ、姉貴か?

まずいぞ

太郎がトイレを探し始めたら

それで男子トイレまで探し出したら

俺たちがいるとバレたら


逃げられん


?「はなこぢゃあああああんは、どこかなああああああああ?

   トイレにかくれてるのかなああああああああああああ??

   ああああ、わかったぞおおおお!! おんがくしつだなあああああああんんん!!」


ペタ ペタペタペタ ペタペタペッタペッタペッタペッタ


急に足音が遠ざかっていく

女子トイレを抜けて、どこかへ行くってわけか

つまり

つまり、助かった、のか?

思わずため息が漏れた

自分の吐く音が震えてるのを、はっきり感じた


姉(あいつ、行ったの…?)

弟(多分…)

姉(弟、確認してきなさい)


なるだけ、音を立てないよう鍵を外す

指が震えやがる


ガチャ


意外にも大きな音に、心臓が飛び出そうになる


姉(アンタ何やってんのよ!?)


そのセリフ、自分で自分に言ってやりたい

だが幸いか、足音は遠くの方でペタペタ聞こえてる

戻ってくる気配はない

忍び歩きでトイレの出口に近づいていく

一応、確認だ

ゆっくり顔を出し、左右を見る

廊下の先は闇一色だが、あいつの姿は見えない

足音は聞こえるが、階段の方からではない

多分、階段とは反対側の、廊下の先に進んでいったんだろう


弟「姉貴、大丈夫だ、あいつの姿は見えない、今のうちに逃げるぞ」


押し殺した声で姉貴に声を掛ける

逃げるなら、今しかない


俺たちは、急ぎ足で、しかし、音を立てないように、階段を下りていた

向かう先は決まってる

1階まで下りて、俺たちが侵入した窓から脱出する

これだ

先頭をきって俺が進み、花子さんは姉貴に半ば抱きかかえられるように後に続いた


弟「姉貴、たしかあいつ、音楽室がどうとか言ってたよな?」

姉「音楽室はこっちの階段とは反対側の階段の奥に
   旧校舎の渡り廊下があるんだけど
   音楽室はその旧校舎の3階、だから多分急げば見つからない!」


小声の怒鳴り声でやりあってるうちに、もう1階だ

だが


弟「姉貴ストップ!」

姉「なによ!?」


姉を制し、ポケットに突っこんだままのライトを取り出した

変だ

1階に着いたなら、廊下側の窓から外の電灯の光が少しでも入ってくるはずだ

それに1階には児童玄関もある

じゃあ、なんでこんなに暗いんだ?

ライトを点けて、前を照らす


弟「ウグゥッ」


思わず変な声が漏れた

あの野郎、やりやがったな


防災扉が閉められていた

それだけじゃ無かった

防災扉には大きな目が書かれていた

赤い字で「に が さ な」とも書かれている

階段の手すりに赤いペンキ缶が吊り下げられている

ペンキくささと、まだ文字が濡れてるっぽいから、さっき書かれたんだろう

俺たちが来たときは普通にこの階段から来たんだ

間違いない

やったのはあいつだ


姉「何よ、これ…、あ、お花ちゃんは見ちゃダメ!」

弟「多分、太郎のやつがやったんだ…俺たちを逃がさないつもりだ」

姉「馬鹿なこと言わないでよ! 弟、小さい方の扉あるでしょ、とっとと開けなさいよ!」


防災扉の緊急口を開けということらしい

言われなくれもやるさ

ただね、さっきの文字の最後が不自然なまでに引き伸ばされて

扉のノブの部分までペンキで濡れてるんだよね

まあ、汚れ仕事は俺がするんだよね

グズグズしてる暇はない、ペンキまみれのノブをつかむ


弟「ダメだ、反対側からロックされてるのか…開かねえ」

姉「ちょっと、もっとしっかり押しなさいよ!…ったく!」


ノブを回しながら体重をかけるが、ビクともしない

姉貴も扉押すのを手伝ってきたが、ダメだった


弟「姉貴ダメだ、太郎の奴がロックしたんだ、ここから出るのは無理だ」

姉「じゃあどうするのよ!」

弟「何かないか…! 反対側の階段まで行くってのは?」

姉「アンタ! 反対側の階段って太郎が行った方向じゃない! 見つかったらどうするのよ!?」


良かった、安心したよ姉貴

てっきり俺を戦わせてその隙に逃げるとか言い出すかと思ったぜ

などとは口が裂けても俺は絶対に言わない


弟「じゃあ、廊下の反対側には?」

姉「突き当たりに決まってるじゃない!」

弟「そうじゃなくて、ほら」

姉「あ…非常階段…!」


そう、非常階段

小学校の校舎の脇には必ずあるはずだ


姉「朝になったら、誰かが小学校に入ってきたの、確実にバレちゃうけど…仕方ないわね」


姉貴、そんなのはどっかの誰かさんが防災扉にペンキで落書きしてる時点でバレるから


姉「そうと決まればさっそく」

?「はぁああああなぁぁぁああこ、ぢゃああああああああああんんんん!!!」




いきなりだった、心臓が飛び出そうになった

取り落としそうになったライトをあわててつかみ直す

ライトを自分の腹に当てた

スイッチ切らないと、ヤバい、なのに、手がヌルヌルすべる

さっきつかんだ、ノブのペンキのせいだ、ヤバい、マズい


声は、すぐ、近くで、聞こえた



?「ううううううう!!!
   こっちから、はなこぢゃ゛ん゛の゛に゛お゛い゛が゛す゛る゛よ゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


声はすぐそこだ

変態太郎は2階の階段にいるんだ

階段に向かって叫んでるんだ

ぐわんぐわんと太郎の叫び声が怪談に響いている



もし

このまま

あいつが1階に下りてきたら



?「あは、あは、あはは、ははははwwwwwwwwはははははっははははははああああwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!!!」


?「にがさないよ゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんんんんんんんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!!!」



ダンッ ダンダンッ ダンダンダンダンダンダンダンッッ







足音が

遠くなる


ようやく理解した

太郎は、階段を上がっていったんだ



見つからなかったんだ



急に力が抜けそうになるのを、こらえる


姉「行ったのよね…あいつ、行ったわよね…!?」


姉貴の声もいつもより上ずって、震えていた


弟「姉貴」


粘っこい唾を、喉の奥へと押しやった


弟「姉貴、にげるぞ」


姉貴はバタバタと音を立てて走り出した

俺は後ろを気にしながら走る

花子さんは俺が負ぶっている

姉貴には先導を頼んだ

自慢じゃないが、俺は姉貴より脚が速い


俺たちは2階に上がり、非常階段を抜けて、校舎の外へと飛び出した

非常階段から、裏門へはすぐだった

外の空気に触れて分かる

汗びっしょりじゃねえか


姉「と、とにかくっ、逃げるわよ! お花ちゃんは、後ろに乗って!」

弟「俺は走って後ろからついてくるからな!」

姉「当たり前でしょそんなの!!」

花「ヒッ…ヒッ…ヒッ…」


花子さんはさっきからしゃくり上げるような声を出している

そりゃ当たり前だ

あんなのが自分を狙ってるなんて知ったら、そりゃあ怖いとかいうレベルをかるく通り越す

俺だって怖かった

俺が花子さんなら堪え切れずに大声で泣き出してたかもしんない


花「ヒッ…ヒック…ううう、ヒック…」

姉「お花ちゃん怖かったね、もう大丈夫だよ、私たちがいるからね、一緒に逃げようね、うん」


ピィィィィガガガガガガッッ キ----------------------------―ン


弟「ヒィィッ」

姉「キャッ」

花「」ビクゥッ


『ザザッ... はなこちゃん、どこにいるの、でておいでええええ... はあなあこちゃああああん... ザザザッ』


心臓が潰れたかと思ったぞこの野郎!?


この学校のスピーカーからだと分かったのは、一瞬後だ

さっきの音はハウリングかノイズかだ、多分


『ザザッ... とおおいれの かあああわいいいい はあああなああこおおおおちゃああああんんんんん...
 かあああああくれんんんぼで どおおおおおおおこおおおおおおにい いいいいちゃあああああああああったあああああああああああああ...』


さっきのアイツの声だ、間違いない


『ザァァァァザザッ... はなこちゃああんんん おおおおおなかにいいいいいい ぬうううういいいいいいぐううううるうううみいいいいいいいい...
 つうううううめこんんんんんでええええええええ てえええええええおおおおおおおおおおせっかああいいいい しいいいいいてえええええみいいいたああああああいいいいいい...』


調子っぱずれの歌を歌い出してやがる

どっかで聞いたことのあるメロディだ


姉「これって、『赤い靴』の替え歌…?」

花「うええええん、もうやだあっ、やだよおおおおおっ、いやあああっ、ああああああん」


とうとう花子さんが泣き出してしまった


姉「あ、あ、あいつは、多分、4階の放送室にいると思うわ…! い、今逃げ出せば、見つからない!!」

弟「とっとと逃げるぞ、ヤベえ、鳥肌立ってきた!」

姉「弟! お花ちゃんを、自転車の後ろに乗せてあげて!」

花「ぐすっ、うあああああああん、ああああああああん」


俺は、泣き出した花子さんを抱え、姉貴の後ろに乗せた

姉貴は疾走を始める

俺も全速力で走り出す



こうして

姉貴の突拍子もない用事に巻き込まれた俺は

変態太郎の恐怖を嫌というほど味わいながらも

姉貴と花子さんと一緒に、第2小学校からの脱走した




 ひょうか

    よくできました


 to be continued...







 昨夜、××県廿束市内の小学校で校内の設備を損壊されていたことが分かり
 警察では何者かが侵入したものと見て捜査している

 昨夜10時頃、同市内の第2小学校で、電気の消えた校舎から放送で誰かが歌っているという110番通報があった
 警察が駆け付けた所、職員玄関の鍵が外されており、また、校舎内には1階階段付近にペンキによる落書きがされており
 同校舎4階にある放送室のガラスが割られているのが分かった

 また、同校舎に隣接する旧校舎の3階にある音楽室の窓ガラスが全て割られている状態だったことが判明した
 警察では何者かが校舎内に侵入し校内の設備を破壊したものと見て、不法侵入と器物損壊の容疑で調べを進めている








みなさん、おつです

誤字もあるが…まあいい
今回ので色々と見えてきたぞ

乙ですの
今まさに投下してるところをリアルタイムで読んでた訳だが
1レス1レス追加されるごとに展開にゾッとしつつも、その次の展開が気になってしょうがなかった
ガキの頃にホラー映画を見た感覚と似てる、てかこれホラーだわ、紛う事無きジャパニーズホラーだわ
お礼を言いたい、有難う

乙ですー
やばい変態太郎マジ怖い
こんなに怖いなんて思ってなかった

「なあ新田、ノート写させてくれね?」
 俺の必死かつ丁寧な頼みを、あいつは「嫌です」の一言で却下しやがった。ムカつく野郎だ。
 あ、俺は「キスすると顔が似てくる」の契約者だ。知ってる奴は知ってると思う。
 時は期末テスト3日前。アイツにノートを借りられないとなると、3学期の単位が危うくなる。高校入学一発目からそれは避けたいってもんだ。
 別にあいつと違って彼女が居ないだけのリア充であるところの俺には、友達なんて沢山居るが新田の奴ほど点取れる奴は居ないからな。
「こーゆー時だけ利用してやるぜ!ざまーみろ!」
 と、けっせせせー!と高笑いを上げる俺の目の前に。
「・・・あの、どいて・・・もらえます?」
 あの子の姿が。
 ・・・泣かねえったら、泣かねえ。

「うー、ノート、ノートー」
 信じらんねえ。普通高校生にもなったらノートやら教科書なんか学校に置いて帰るだろ!
 あのヤロー、きっちりプリントの一枚も残さず持ち帰ってやがって机もロッカーも空っぽだ。
「ちっきしょー」
 いっそ誰かに化けて、あいつん家までノートやなんか取りに行くか?
 神崎に化けりゃ新田のヤローはノートぐらい喜んで差し出すだろ。いやその前に黄昏に殺されそうな気がするが。
 じゃ先公の誰かか?いやそこまでするぐらいだったら、職員室に忍び込んで問題用紙盗んだ方が早いような・・・
 そんな事をぐるぐる考えて立ち往生する俺の前に、ひらりと落ちた一枚の紙。
「なんだこれ?」
 眺めてみるとそこには
「 都市伝説 仮契約書 美味しいカレーの作り方 」
 とある。
 細かいその仮契約書の中の一文だけが、まるで天啓のように俺には浮かび上がって見えた。

「当該都市伝説との契約効果:各種試験答案に『美味しいカレーの作り方』を書き込むと、いかなる試験にも合格する」

 ・・・天国への片道キップゲットおぉぉぉぉ!
 新田のヤローざまぁ見ろ!これでテメーに頭なんか下げなくたって俺も今日から成績優秀!吠え面かかせてやるぜー!

 その辺の机でテキトーに契約書にサインする・・・と、下の方に小さく但し書きが。

「※なお、これはあくまで仮契約であり、一度試験に於いて使用すると自動的に消滅します」

 まーいーか。重要なのは期末試験だ。
 かくして俺は意気揚々と仮契約書を携え、図書館で料理の本を借りて家路につくと、カレーの作り方を一晩かけて暗記した。なんせただのカレーじゃねえ、「美味しいカレー」の作り方だからな。
 これで俺に恐いもんはねー!ウェルカム期末試験!
 

「な、ナゼだ・・・」
 返ってきた答案用紙には、でかでかと
「0点」
 なんでだよ!ちゃんとカレーの作り方書いたぜ!?スパイスの調合から隠し味の細けー分量やら微妙なタイミングまで・・・
「なのに・・・なのに、なんでだあぁぁ!!」
「それはだな」
 声に振り向けば、そこにはテストを採点した先公が。

「お前のカレーには、ジャガイモが入っていないからだ」

 ・・・ジャガ・・・イモ?
 ああ、確かに俺ジャガイモ嫌いだから、レシピからハブいたっけ。
「ジャガイモの入ってないカレーなんぞカレーじゃない!ジャガイモ好きな俺に対する挑戦と受け取って、粛々と点数を付けさせて貰った」
 な・・・俺の・・・俺の一晩の努力が・・・

「こんなオチありかあああああ!!!!」

―そして。
「なあ新田ー。明後日追試・・・」
「全てお断りです」



END

乙ですの
まさかの再登場wwwwwwww
そして駄目だった場合の再現と来たかwww
名前だけでもうちのキャラの御利用有難うございますのン

>そして駄目だった場合の再現と来たかwwwwww
成功の2文字がとことん似合わない仕様になっておりますwwww

>名前だけでもうちのキャラの御利用有難うございますのン
いえいえ、無断拝借大変失礼を致しましたー

~~~黄泉への道~~~







死にゆくもののための、たった一つの理。

ギリシャ神話が死の神・タナトスと会話している少年、黄昏正義は、この道の果てへと歩もうとしていた。

正義「タナトス、外で何があったの!?」
タナトス「違う、外ではない!何者かがこの空間に干渉しようとしている……!?」

改めて集中してみるが、正義は何も感じ取れない。

正義「……。」
タナトス「これほどの力に、少年が気付かないのか……?」
正義「うん、あ……。」



その時、空間が歪み、裂け目が生まれた。
裂け目の向こう側には、見慣れた景色が広がっている。

地上の景色だ。

この瞬間、黄泉は、現世と繋がっている状態になった。これは許されない事態である。
命の理に背く、それは禁忌と言ってもいい。だがそれ以上に困難なことである。
黄泉への出入りが可能なものは、【タナトス】や【鬼】のような一部の都市伝説のみ。
そしてそれらの都市伝説のほぼ全ては、黄泉の世界に監視されているか、なんらかのポストに就いている。

つまり、これほどの力を持つものが、黄泉の世界の監視を潜り抜けていたことになる。

そこまでして生者と死者をひっくり返すような事をする。
その理由は大方悪事と決まっている。
そうでなくとも、現状は危険だ。

タナトス「少年、逃げ―――」

そう言う間もなく、正義は謎の光に包まれていた。
その光の中で、正義は気を失っているようだった。
タナトスは正義を助けようと近づくと、光に弾き飛ばされて、裂け目へと叩き出されてしまった。







―――正義が気を取り戻すと、辺りは真っ暗だった。



光に包まれる瞬間の記憶はあったので、現状に疑問というよりも不安が湧いた。
思わずタナトスを呼ぼうとしたが、どうも声が出ている心地がしない。

正義「(ここはいったい……?)」

ふと、目の前に見慣れた姿が現れた。
自分の倍近くある背丈、鋭い目つき、何よりも特徴的なたなびく真っ黒なマント……。

正義「(大王!)」

奇怪な状況にも関わらず、正義は大王の登場に安心してしまう。
今まで共に戦い、助け合ってきた仲。また助けに来てくれたのだと信じていた。
大王の第一声を聞くまで……。



大王「始めまして。」
正義「(……え?)」

大王「私は【恐怖の大王】。今まであなたを探しておりました。
   本来なら、とうにお会いできている予定でしたが……。」
正義「(ど、どういう事?大王、どうしたの!?」

ただ、機械のように淡々と話しかける大王。
事情を聞こうにも、正義の声は大王には届かない。

大王「私はある使命の下、あなたを迎えにきたのです。
   ある物語の、来るべきときのため。」
正義「(大王!使命って、あ……。)」



その時、正義の頭に、何かが過ぎった。









大王「少年……。」









―――契約を果たそう―――





.

~~~世界~~~






勇弥「あれ……。」

楓「……あれは……!?」

麻夜「………やひゃっ……。」



真っ赤なマント、きらびやかな装飾の王冠、王のような風貌。

誰とも分からない人間の登場に、全員が呆然と立ち尽くす。

唯一、その正体が分かったのは、奈海だけだった。


奈海「……正義くん……?」

正義「奈海……。」

ふと、正義らしき人物がその場から消える。
そう思ったら、勇弥達のそばへと瞬間移動していた。

正義「勇弥くん、奈海を頼む。」
勇弥「ほ、本当に正義なのか……!?」

ゆっくりと、静かに正義は頷いた。

勇弥「よかった……でも、なんでだ?」
楓「もしかして大王様が……そうだ、大王様は?」

楓の言葉を聞き、正義の表情が変わる。
なにか、遠くを見ているような目をしていた。

正義「ッ……!」

正義は、麻夜の精神を支配した【太陽の暦石】を睨みつけると、【太陽の暦石】の近くに白雲が生成される。
そして正義が消えたかと思うと、その白雲から正義が降ってきた。



あまりの展開に、全員状況が呑み込めていなかった。
勇弥達は、現状を確認するように話し合っていた。

勇弥「正義は……生きていた、って訳ではないよな?」
楓「タナトスが居たんだ。間違えるはずがない。……生き返った事になるな。」
勇弥「でも、タナトスは『死人が生き返るのは禁忌』と言ってたよな?
   大王さんが何かしてくれたのか?」
楓「……大王様について聞いた時のあの表情。そしてあの服装はなんだ?
  十中八九、大王様が関係しているに違いない。何があったんだ……?」

その時、コインシューターからコインが飛び出す。
何故か、青ざめた顔をしていた。

コイン「……そんな……。」
勇弥「コインちゃん、どうかしたのか?」
コイン「正義くんから、都市伝説の気配がする……。」
楓「何ッ!?そうか、あの衣服が黄昏を……!」
勇弥「大王さんかタナトスか、そんな隠し玉を持っていたのか!」
コイン「違う……。」



コイン「正義くん『から』、都市伝説の気配がするの……。」



勇弥&楓「「 え……? 」」


.





麻夜「何故生きている?」
正義「……。」
麻夜「……貴様、飲まれたな?」
正義「だったら、どうする?」



麻夜「なら……また滅ぼすのみ!」



麻夜「第三の破滅……『トロメア』。」

【太陽の暦石】の掌から火球が生まれ、それを正義に向けて弾き飛ばす。

正義「……たあああぁぁぁ!」

正義は火球に剣を振り下ろす。火球は真っ二つになり、爆散した。

麻夜「なんだと……!?」

一瞬驚いたのものの、【太陽の暦石】は改めて掌に水の弾を集める。

麻夜「第四の破滅……『ジュデッカ』!」

正義に向けて、水の弾丸が飛び散る。
しかし正義は、それを全て振り払ってしまった。

麻夜「……第二の破滅……『アンティノラ』!」

麻夜の拳に風を纏い、正義に殴りかかる。
しかしそれさえも、容易に剣で受け止める。

麻夜「お前……黄昏正義だろ……?違うのか……!?」

正義は麻夜を払いのけ、睨みつける。



正義「ボクは……。」












正義「【アンゴルモアの大王】だ……!」





.

勇弥「そ、そうか……!そういう事だったのか!?」
奈海「え……?」
勇弥「【ノストラダムスの大予言】……覚えているか?」
奈海「え、あれは『1999年に何かが降ってくる』って話でしょ?」

勇弥が大きく首を振る。

勇弥「違うぜ、あの原本にはこう書かれているんだ……。」



―――1999年、七か月―――



―――空から恐怖の大王が来るだろう―――



―――アンゴルモアの大王を蘇らせるために―――



勇弥「この予言そのものの読み方自体、諸説あるんだが……この3行は概ねあっていると言われている。
   4行目は最もブレやすくて、2行目の目的語が変わっちまう訳し方もある。」


この予言で示されているのは『アンゴルモアの大王の復活と、その後起こる何か』であった。
しかし人々は『恐怖の大王』に目を引かれてしまい、【恐怖の大王】の方が有名となった。
それでも、『アンゴルモアの大王』の意味や正しい訳について考えるものも少なからずいた。
……そこから導き出される答えは、たった1つ。


コイン「つまり、大王は『何かを降らせる都市伝説』じゃなくて、
    本当は『アンゴルモアの大王を蘇らせる都市伝説』だったって事?」
勇弥「それが何かの拍子で、今までの大王さんが誕生したんだ。
   ……そうでなかったとしても、大王さんの力に違いない。」

今ある情報を統合しても、【恐怖の大王】という都市伝説が関与している事しか分からない。
ふと、楓の胸に一抹の不安が過ぎる。

楓「では、大王様は!?」
勇弥「……分からねぇ。4行目の解釈にもよるが、おそらく……。」
楓「大王様……。」
奈海「正義、くん……。」

正義「たあああぁぁぁ!」

正義は【太陽の暦石】に剣を振り下ろす。
しかしその鎧には全く歯が立たず、剣は弾かれてしまった。

【太陽の暦石】も風を纏って反撃するが、正義は剣で受け止める。
そのまま正義は【太陽の暦石】を弾き飛ばすが、【太陽の暦石】は耐性を崩さず、火球や水の弾丸を飛ばす。
しかし正義は、それらを軽く薙ぎ払ってみせた。

勝負は互角、いや、若干【太陽の暦石】が押しているように感じられた。
事実、【太陽の暦石】の表情には余裕が見えるが、正義の表情からは余裕が見られない。






勇弥「くっそ!正義でも、【アンゴルモアの大王】でもダメなのかよ!」
楓「やはり元人間では限度があるのか……!?」

二人が心配していると、コインが震えた声で話し出す。

コイン「能力は大王よりもはるかに上よ。でも中身は正義くん。
    あいつも鎧や人格は【太陽の暦石】だけど、中身は麻夜ちゃんでしょ?
    そもそも倒せるはずなんてないの……正義くんが手加減しちゃうから……。」

それを聞いて、奈海はただ、祈るように目を瞑る。






【太陽の暦石】と正義のぶつかり合いの果て、正義の剣が宙を舞い、風を纏う拳が正義を殴り飛ばす。
正義は地面に叩きつけられ、剣は地面に突き刺さった。

麻夜「やっひゃひゃひゃひゃひゃ……。
   飲まれて間もない状態で負担が大きかったようだな。今のお前では勝てまい!」

【太陽の暦石】は掌に火球を浮かべる。
正義は地面に大の字に伏せたまま、呟く。



正義「うん、勝てないね。」



【太陽の暦石】が、一瞬制止する。そして全員が、正義の方を注目する。

正義「お前と戦って分かったよ……。ボクの、ボク1人の力は弱いんだ。
   今まで色々な人と戦って、勝ってきた。でも、それはボクの強さを証明するものなんかじゃない。
   勇弥くんがサポートしてくれて……十文字さんが情報をまとめてくれて……
   コインちゃんが皆を導いてくれて……奈海が見守ってくれて……。」

正義の頭の中で、今までの戦いが回想される。
その中で、「自分1人の力で勝った」と言えるものは、確かに1つとして無いだろう。



正義「そして、誰よりもボクと一緒にいて、一緒に成長して、一緒に戦った……。」





.






~~~覚醒の時~~~



―――俺は、暗闇の中で生まれた―――



ぽつり、正義の脳内に言葉が流れ込んでくる。その声は、大王の声のようだった。

最後に記憶しているのは、タナトスと共に黄泉への道を歩いていたことと、それを大王に妨害されたこと。



―――俺には親がいた。親、と言っても、漠然とした概念のようなものだった―――



―――何故かは分からないが、俺は『それ』を『親』と認識した―――



正義の脳内に映像が映る。淡く光る煙の塊が、膨らんだり縮んだりを繰り返していた。



―――親は、俺に2つの選択肢を与えた―――



―――1つは、自らを隕石に変えて、地球を破壊すること―――



―――もう1つは、アンゴルモアの大王を探し、蘇らせること―――



―――どちらでも、結果は同じだと俺は予想した―――



映像は、隕石の方にクローズアップした。



―――仮に、隕石になる道を選んだ場合―――



映像では、首尾よく地球を破壊し、人類が絶滅する様が映されている。



―――それは、俺が忘れられるということを意味している―――



都市伝説は、人間の噂を元に生きている。人間がいなければ、食料を失った生き物のように、餓死するだろう。
人類滅亡系の都市伝説というのは、言ってしまえば自殺するだけの哀れな存在なのだ。



―――仮に、王とやらを蘇らせる道を選んだ場合―――



映像では、首尾よく男を蘇らせ……傍にいた、淡く光る煙の塊が消えていく様が映されている。



―――俺は持てる全ての力を使い、消え失せるだろう―――


.







―――しかしある時……ある言葉が俺の人生を大きく変えた―――






世界征服。






―――世界を己が手に納めれば、人間は嫌でも俺を忘れないだろう―――



―――そうすれば、俺は―――



すると、淡く光る煙の塊は形を変え……1人の人間が誕生した。

その姿は、正義には見慣れたものだった。



―――俺は親への反逆を誓った―――



―――俺は力と知識を蓄え、ある日、地上に降りた―――



映像では、見慣れた街並みが上空から映し出されていた。



映像はゆっくりと下降し……1人の子どもの前で止まる。









―――降り立ったところに、1人の少年がいた―――









その後、少年はそれと契約を交わす。正義はその時の光景をしっかりと記憶していた。
なのに、少しだけ、何故か忘れていたことがあったのを、今やっと思い出した。

少年「ねぇ、なんって言ってるの?」

大王「黙ってろ、契約のための儀式だ。―――よし。
   おい、次の質問に『はい』か『いいえ』で答えろ。ちなみに『いいえ』だったら帰る。」

少年「じゃあ『はい』でいいよ。」

大王「質問がまだだ。……。」



『汝、我と共に、王の亡骸を見つけ出し、その眠りを覚ますことを誓うか?』



少年「……???えっと……はい。」

大王「……契約完了。」

少年「えっと……なんだったの、さっきの?」

大王「ん?あぁ、要は『一緒に人を探してくれ』ということだ。が、気にするな。
   とりあえず言えという取決めであって、実行する必要はない。」

少年「……ふぇ、学校があるから、ボクもそのほうがいいけど、いいの?」

大王「(こいつ、知恵熱出してるのか……?発言レベルを落とすべきか?)
   あぁ。どうせ塵一つと残っていないだろうからな。だいたい、俺はどんな奴で、何処に居るかも知らん。
   俺の目の前に適当な人間が現れたら、そいつって事にするさ。」

少年「それでいいの……?」

大王「そんなものだ。まぁしばらくは関係のない事だ。
   どうであれ、契約は成立だ。良かったな。」



少年「やったー!よろしくね。」
大王「(何も知らずに喜びやがって……。)」







―――それが俺の、物語の始まりだった―――



その後、今まで出会った人が映し出されていく。
そして最後に、タナトスの姿が映された。



―――最初は後悔したが……今なら断言できる―――



―――彼が契約者でよかった、と―――






―――タナトスとの戦いで気付いたんだ―――



―――手段と目的が逆転していたことと、『目的を果たしていた』ことを―――



―――俺にはもう、掛け替えのない仲間がいる―――



―――そして、俺の『記憶』がある―――






―――もういいだろう、【恐怖の大王】よ―――



―――今まさに、恩人の物語が終わろうとしているんだ―――



―――今こそ、契約を果たすときだろう―――



―――彼こそが、【アンゴルモアの大王】だ―――





.




これは―――間違いなく大王の記憶だろう。

彼がこんなものを抱えていたことは、正義さえも知らなかった。

きっと心の奥底に押し込めて、正義に見せなかったのであろう。

……それが、何故今更聞こえてきたのか?

そう考えるより先に、正義は意識を取り戻した。






―――目を開けると、そこは森の中だった。

周りにタナトスの気配はなく、大王の姿は見えなかった。

……ただ、大王の気配だけは、かすかに感じられた。






自分の中に。






そして、自分の姿を見て、全てを理解した。

大王の思いと、力と、『やるべき事』を―――





.




~~~今~~~



正義「ボクに戦うきっかけを、戦う力をくれた……。
   個々の力じゃない……『繋がり』こそが力の源だと教えてくれた……。」
麻夜「下らん。そんなものに何の価値がある?」

正義は立ち上がり、【太陽の暦石】を睨みつける。

正義「『偽りの繋がり』しか持たないお前には絶対に分からない。
   仲間や、麻夜ちゃんを道具としか思っていないお前なんかには……!」
麻夜「仲間?あれは我が生み出したものだ。そしてこれは我の力を発揮するための器。
   どうせ全て、滅びゆくもの。ゴミを、我が使ってやっているだけだ。貴様とて同じだろう?」
正義「違う!この『繋がり』さえあれば、ボク達は何とだって戦える!どんな困難にだって立向かえる!
   お前も……ボクも、『独り』じゃ絶対に勝てない!」

【太陽の暦石】は痺れを切らしたのか、改めて正義に狙いを定める。

麻夜「そこまで言うなら、その力、我の前に示してみろ。
   第三の破滅……『トロメア』。」

【太陽の暦石】は正義に向けて、火球を放った。
しかし正義は微動だにしない。



正義「ボクは絶対にお前を倒す!お前なんかに未来を奪わせはしない!」



正義「だからお願い……力を貸して!」






―――正義に命中する寸前で、火球は真っ二つに切り裂かれた。






そこに立っていたのは―――











.











正義「 大 王 ! 」









大王「まったく、人使いの荒い奴だ。」







2人は無言のまま、同時に頷く。
お互いの思いを、確認し合ったように。



正義「……行くよ、大王!」



大王「終わらせるぞ、正義!」






マヤの予言編第X4話「ヒトリ」―完―

正直すまんかったorz

誕生日には間に合いませんでしたが、正義復活回です。
次回やっと【太陽の暦石】を倒します。遅いですね。   o... rz

まず、兄に謝罪。夢幻泡影の最終回で弟が足を引っ張るとか……申し訳なかったです。
しかもまだ1話ほど必要な予感ががが……完全版(あるのかな?)までもう少しお待ちください。

その他言われそうな事は、避難所のチラ裏にでも書いておく予定です。
それでは、お粗末さまでした。

乙なのン
いよいよ最終決戦か…
トドメまで行くんだったら、漢とかローゼとかの台詞はいつでも提供するから言ってねン

大王の人乙ですー
正義くんが帰ってきてよかったよかった
最初大王消えちゃうのかと思って焦ったけど彼もいてよかったよー
お見事でした!

ヘンタイ太郎の人乙でした
恐怖と狂気と乱痴気の世界をめぐり貴方の瞳は何を見ているのだ
そこまではっちゃけられる感性を持ちたい

カレーの人乙でした
成功パターンじゃなくて失敗パターンってのが乙ですね
道民としてはじゃがいも無しなんてありえませんよええ
お家ごとのマイナーメニューの話でしばらくいけそう

大王の人乙でした
最後が近いのですね
楽しみにしております

>>375
>道民としてはじゃがいも無しなんてありえませんよええ
そういや、俺の寮は毎週土曜の晩飯がカレーなんだが、
何故か具が牛肉とジャガイモだけなんだよな…
俺としては人参と玉葱だけは入れて欲しい

>お家ごとのマイナーメニューの話でしばらくいけそう
毎回じゃないけど、実家にいた頃「松阪牛使って何作ろう?」って話になって、
「カレーにぶち込もうぜ!」という俺の無謀な案が通った結果、カレーから肉が消えた

すき焼き用だから溶けちまったという
そもそもはすき焼きばかりってのもあれだから肉じゃがだの冷しゃぶだのとレパートリーを増やそうという考えだったんだが
やっぱりすき焼きは美味しいです

肉は消えたのではない……
肉はカレーそのものとなって皆の側に……

前回までのあらすじ!
・路樹を自らの契約相手として誘うナージャ
・そんなナージャに不遜な態度を見せる路樹に対して怒ったナージャが勝負を挑む
・ナージャをボコボコにして部屋を壊したまま兄の部屋を去る路樹であった


「それでどうするのさ」

 路樹がナージャを連れてどこかに行った後、僕はジルりんにそう言われた。

「うん……まあこの後は本屋でも行こうかと思ってたよ
 これでも大学に通う勤勉な大学生なんでね」

 薬学関係の本を数冊欲しいと思っていたのだ。

「勤勉? お前がか?」

「無礼だな、だが実際そうなんだから仕方ないだろう
 天下の飯綱大学だぞ、エリートだぞ?」

「え、あ、おう……でも悲喜ってちゃらんぽらーんだろ?」

 そう思われているならば僕は若干ショックだ。
 僕は真面目にはならないが、真面目にやるタイプの人間なのだから。
 まあ人間同士ですら誤解が多いのに人と都市伝説で何か言った所で無駄といえば無駄なのだが。
 というか、こいつ飯綱大学知らないのか。
 普通はこの名前を聞いた瞬間「え、飯綱大学ですか? すごいですね」といわれる程度には名前の売れた大学なのだが。

「…………あんまりだ」

 普段の行為なぞ忘れて僕は嘆く。

「分かった、信じるよ」

 彼女もそんな僕が哀れになったのかやや呆れ気味ながらも同意してくれた。

「さてそれじゃあ家に居る? ついてくる?」

「ついていこうかな」

「オッケー」

 そんな訳で僕は先日頑張ってくれたボクスターを走らせる。
 シトシト降る雨や陰気な空の色が気に食わない。
 窓にぶつかる雨の音色が嫌で車のオーディオでイナズマのベストアルバムを流す。
 軽快なリズムと小気味良い韻の踏み方が陽気にさせてくれる。

「そういえばジルりん」

「なんだ?」

「さっき、なんで路樹はナージャをボコボコにできてたんだ?」

「……そんな話か、それなら簡単だ
 ナージャが手加減してたからな
 いやそれは分かるか」

「まあね、油断も手加減も有った
 でもそれじゃあ済まないだろう
 人間と都市伝説にはそれだけの差が有った筈だ」

「路樹さんは常にあいつの攻撃の出端を潰していた
 出端を潰さなかったのは回避できる攻撃、当たるかどうか攻撃した本人すら分からない当てずっぽうの一撃だけ
 一定以上の実力を持っている者同士ならスペックの差はあまり意味を持たないんだ
 それ以上にテクニックの差で攻撃のチャンスが手に入るか否かが決まるから
 あと路樹さんはナージャの慢心がちな性格を見ぬいて速攻かけてた」

「なんで分かるの?」

「呼吸だよ、人間は呼吸に大きなエネルギーを使うんだけどその呼吸をあんまりしてなかったのさ
 多分あの戦闘終わった後は路樹さんもヘトヘトだったろうね
 だけどまあ、あれは勝ちだ。実戦ならば死んでいたって奴?
 あの動きをぶっつけでさっくりできるのは完全に戦闘者だよなあ
 本当に素人、いや只の人間なのか路樹さんって?」

「僕の知る限りでは、あいつは僕と同じ家に生まれ育ってる
 間違っても拾われてきた子で戦闘民族の末裔とかじゃあない」

「ふぅん……兄弟だから器としてはどちらもそこそこ優秀だろうことは分かる
 でも路樹さんは悲喜ほどの容量は無い……と踏んでいたけど、違うのかもね」

 戦闘に関してはあまり自信が無いので解らないがそういうことらしい。
 車を駐車場に停めてトランクから傘を出す。
 ジルと二人で傘に入って本屋までの近道を歩き出した。
 

「おや……」

「どうした?」

「新しく本屋ができていたみたいだからさ」

 路地裏の狭いスペースに、一件の古本屋がなんとか詰め込まれた引越しの荷物みたいにして建っていた。
 なんとなく不吉な感じがする。
 面白そうだ。

「ちょっと見てみるか」

 扉を開けて中に入る。
 本屋の中は老婆が一人カウンターで居眠りしているだけだった。
 今までは無かったのに、昔から有るような感じだ。
 周りの本を何気なく見回しているとどれもこれも見たことないような本ばかりだ。
 只の一冊として名前を知る本はない。

「めが……ぐるぐるすりゅ」

 ジルりんが文字相手に怯んでいる。
 活字アレルギーかこいつ。
 何故ついてきた。

「あらお客さんでしたか、これはこれは失礼しました」

「いえお構いなく、珍しかったもので」

「そうでしたか……私もお客さんなんて珍しいですよ。久しぶりです」

 久しぶり?
 少し変だな。

「何時からお店を?」

「そうですねえ、もう数えるのも忘れました」

「ずいぶん珍しい本ばかり揃えてらっしゃるようですが大変だったでしょう」

「私が集めた物ではないんですよ
 私はただ店番を頼まれているだけでして……」

 何気なく手にとった本をパラパラとめくる。
 江戸時代の本らしく、非常に読むのが大変な崩し字で書かれている。
 本草学について纏めてある。
 薬学研究を志す身としては悪くない本だ。
 だが高そうだ。
 薬の製作に必要な合言葉だろうか?
 随分古い走り書きが薬の調合についての頁に書いてあった。

「いぁいぁ……」

 何やら妖怪の体を薬に使うらしい。
 なかなか面白い読み物だ。
 その走り書きだけを何気なく声に出してみる。
 すると老婆が血相を変えて叫ぶ。

「お静かに!」

「ひぅっ!?」

 文字に溺れて曖昧な状態だったジルりんが怯えて僕の後ろに隠れる。

「ああ、すいません」

 僕は相変わらず空っとぼけた面であやまってみせた。

「口に出して読むのはおやめください」

「はい」

 柔和な笑みを作ってみせる。
 これは面白い。
 
「良いですか、そもそも、ほ――――」

 老婆の言葉が続くことはなかった。
 老婆の口から砂がこぼれる。
 四肢も砂になってゆっくりと消失していく。
 上半身が転がり、それすら消えながらも首がコロコロと転がり、そして最後には目だけになって僕の足元へと転がってくる。

「おばあちゃん? おばあちゃん、どこなの?」

 僕が声もなく足元の目玉を見つめていると奥から愛らしい少女の声が聞こえてくる。 
 ジルりんがそれを聞くと同時に駈け出した。

「待てジルりん!」

 奥から。
 そう、この声は奥から聞こえた。
 路地裏の狭苦しい店に、外から見ればそんな“奥”が存在できる筈が無いのだ。

「そちらへ行くな! 喰われるぞ!」

「でも悲喜!」

 なんとなく理解した。ここは都市伝説の墓場だ。
 かつて存在して、今はもう語られなくなった神々の為の最後の場所だ。
 彼らは恐らく本という形で情報を残し、人々に知られることで力を取り戻す。
 だから再び語られるために必要な人間に、この“場所”が飢えている。
 都市伝説とはいえ人間と契約している――繋がっている――以上、今のジルりんが安全という保証は無い。
 
「おばあちゃん、おばあちゃん!」

 ジルを引っ張って店の入口にダッシュする。
 ドアをぶち破るような勢いで店の外に転がり出た。
 その時、店の奥から出てきたそれを一瞬だけ見てしまった。
 僕は恐怖から咄嗟に目を背けてそのままみっともなくゴロゴロ転がった。

「一人にしないで……」

 店を出る瞬間、耳元でいとけない声が僕に縋りつくように響いた。
 僕は怖いもの見たさからか狂気からか転がって倒れた姿勢のまま店の中を振り返ろうとした。
 だがそれをもう一度見ることはできなかった。

「やめろ、悲喜。お前が見るもんじゃない」

 ジルりんは僕の目を抑える。

「良いか、目を開けるな。絶対に開けるな、傘は諦めろ
 目をつぶったままそっと立ち上がってそのまま路地を抜けよう
 それでもうこの道は使わない、そういうことにしよう
 絶対に、絶対にまっすぐだぞ。私の手を掴め、手は離すなよ」

 ジルりんの口調が只ならぬ雰囲気を醸し出している。
 いつの間にやら蹄の音、電車の音、粘着質の何かが這いずる音、色んな音、雨の書店街で聞こえない筈の沢山の音が耳に入ってくる。
 僕はジルりんの手をしっかり握って歩き続ける。
 ずっとずっと歩き続ける。
 路地裏と思えない長い距離、視界の外で何が起きているんだ。
 見たい。見て、書いてみたい。
 ジルりんが恐れるような情景を、見事書き起こしてみたい。
 

「――――悲喜、もういいよ」

 不意に声がする。
 それと同時にジルりんの絶叫。
 僕はいきなり顔から地面にたたきつけられた。
 誰かが背後から馬乗りになって僕を押さえつける。
 ものすごい力で、抵抗はできない。
 苦しくて必死にもがくが動くことが全くできないのだ。
 背中に冷たいものが当たってもうダメかと思った時、突然僕はなにかに投げ飛ばされた。
 
「……大丈夫か悲喜?」

 眼前にあるのはいつものジルりんと、見慣れた町並みだった。
 ただジルりんは心なし青ざめているようにも見える。

「すまない、名前を聞かれていたみたいだ」

「お、おいどういう……」

「出口まで後少しのところで、お前を呼んだんだよ。私の声を真似て」

 店を出る刹那、一瞬だけ見えてしまった。
 麦わら帽子に白いワンピース姿で、眼球だけがポッカリと黒く落ち窪んだ少女の姿。
 あれが僕を呼んでいたのか。
 只々虚ろで、只々おぞましいだけの……

「…………あぁ」

「見たのか?」

「あいつは、あいつは追いかけてきたのか」

「……そうだよ、ずっとお前の後ろに居た」 

 最後に地面にたたきつけられた時、僕を押さえつけてたのは誰だったのか。
 僕をここまで投げつけたのは誰だったのか。
 中途半端にも僕はそこだけは聞けなかった。
 だから今日も僕には小説が書けない。 

【僕は小説が書けない 第十三話「最後の希望」 おわりんりん><】

この世界の飯綱大学は某漫画で有名なH大学に影響を受けているので駅前に広大なキャンパスが広がってるかもしれません
中には原生林や水源などが有って冒涜的な生き物が居るのかもしれません

ところでついに二郎が札幌にも店を出しますよ
インスパイアだけじゃなくなりますよ
やりましたね……と言いたいけどインスパイアのほうが旨いとかなるとまたもにょっとしそうだなあ
次回はこいつらが二郎食いに行く話を書く予定です


そうです、ぼくです

>>336-337
短髪の人、乙です
Fナンバーの彼女は部署変わる前はどこにいたのかが気になりますね
そして日記の主を飲んだ都市伝説は某うぃきぺでぃあでしか確認がとれないという
某メルヘンカルタなのでしょうか、これもすごく気になります
(メルヘンカルタって独語のmärchenkarteなんじゃないかなあ…どうなんだろ)
そしてこの少年と黒服は>>118に登場する二人組でしょうか
ここまでくるとぼくの第六感がこれを書いた人はあの人だと囁くのですが
まず当たってはいないでしょうね
もしあの人が書いたのだとしたら少年と黒服のロマンスがあると見せかけて
実は黒服さんは別のイケメンと出来てました、というぼくのガラスのハートを打ち砕く展開に持っていく
可能性もあるかもしれませんが、まあそれはそれ、これはこれ、です
頑張ってください


>>355-356
死神の中の人、乙でーす
新田くんにチューしたタフガイ再び、ですね
ぼくはこういうのが書きたいんだよおおおおん!!という熱意を掻き立てられました
ありがとうございます
そして、カレーには生クリーム!とうっかり発言したために
小馬鹿にされたあの日を思い出しました
カレーの具 なにいれたって いいじゃない…
本編ともに応援してます、ノイさんによろしくお伝えください


>>359-371
大王の人乙でした
そうか暦石の戦いだったのか
夢幻泡影のエピソードが先行していたためもう完結したと思っていたのだ、すまない
もっというとパズルピースのように繋がりの分からない部分がいくつかあって
てっきりぼくが読み落としたのかと思っていたのだ、本当にすまない
これからは正義&大王ではなく大王&大王なのだろうか…何かすごこそう、色々


>>378
ちょっと向こうでお話…なんでもないです、僕は小説が書けないの人、続きを楽しみにしています
夜刀浦が舞台なことを忘れていたので
?、?となっていましたが何とかついて来ています!
何だかんだやってて、やっぱりジルりんは頼もしいですね
ところであのおばあさんや女の子は都市伝説的なものではなく、もっと根本的に別の…すいません、何でもないです
そのせいか、コメントレスのインスパイアがインスマスに見えてしまったぼくの正気度は果たして大丈夫なのだろうか


本当はアレとかコレとか書かないといけないんですけど
そうですね、泣き言いわずに書けという話ですよね、正論!
ところでいつもよりちょっと精神不安定な気のぼくですが
シャドーマンの人とかノイちゃんの人とか笛さんはぼくの正体に気づいているはずです
でも知らないふりしててくださいね、わかるよね?
あと、夢幻泡影の完結おめでとうございます…

アレは確実に書かなくちゃいけない…かーかなくちゃー、かーかなくちゃー…

>>384
やはりあなたでしたか……でも空気読むよ!
あのおばあさんや女の子はかつては人間だったんですよ
かつては

舞台が夜刀浦なのは作中でちゃんと明言してたか記憶が無いレベルなのでゴメンネ><

皆様乙ですー!
俺も頑張らないと……

>>336-337
こちらでも、改めて単発の人乙ですー!
今更気付いた、この黒服って以前の単発の二人だったんだ

>>339-351
変態太郎さんの人乙ですー!
…………うん、予想をはるかに超えた既知っぷりでした。
冗談抜きで読んでる最中、背筋がゾッとします……深夜にホラー映画見てるような気分でした。
そして痕跡がきちんと残っていると言うのがもう怖すぎて……

>>355-356
カレーの人乙ですー!
この彼も、かなり以前に単発で出てきたような気が……内容うろ覚えで申し訳ありませんorz
しかしジャガイモを入れ忘れただけで効果無しとは、やはり仮契約では拡大解釈が難しいんでしょうね

>>359-372
大王の人乙ですー!
そうだった!こっちサイドの話は完結してなかった!(ぉぃ
まさか【恐怖の大王】と【アンゴルモアの大王】をこう繋げてくるとは……
そして正義君TUEEEEEEEEEEEEEEEEEE!
裂邪とは違って完全に都市伝説と化してしまいましたが、その分戦闘力は【太陽の暦石】の攻撃を全く寄せ付けない程
大王も復活しましたし、クライマックスは目前!最後まで見届けたいと思います!

>>378-383
書けないの人乙ですー!
都市伝説の墓場……語り継ぐ者のいなくなった物語や神話、迷信達の逝きつく先か
あの本をもし読んでたら契約させられていたのか、それとも飲まれていたのか……あるいは……
今回は悲喜の好奇心が危機感を上回らなくて良かったです

>>334
>人体模型を“お兄ちゃん”と呼んでいるから、お婆ちゃんも他の都市伝説という推測も出来る
>同じ学校の怪談系で老婆と言えば「鏡の中の四次元婆」とか?
成程、言われてみればそういう意味の方が近そうですね

>“してあげたかった”と言ってるから多分出来なかったんじゃなかろうか
セェェェェェェェェェフ!

>バレた! 俺は逃げるぞ!
あ、やっぱりか!まさか大王の人との兄弟合作パートⅡですか!?

>へけっ(ハム太郎
懐かしい、何故かゴジラと同時上映されてたハム太郎君じゃないかww
……いや本当に、アレどういう意図によってコラボしてたんでしょうね
片やシリアスな怪獣特撮、片や子供向けほのぼのアニメですよ

>第3…? やばい知らないorz
※ウルトラマングレートのネタバレ注意


『海からコダラー、宇宙(そら)からシラリー……更に目覚める第3の存在とは!?』
てっきり地面から3体目が現れるのかと思いきや、

何とその正体は“ 太 陽 系 第 三 惑 星  ”

つまりコダラーとシラリーは分かりやすく言えば「ウルトラマンガイアにおける初期アグル」のような物
第3の存在に危害を加える存在=発達しすぎた文明をリセットするための掃除屋だったと言うとんでもないオチ

ククク……投下が増えて何よりでござるよ

はがけないの人乙ですのン
本屋が出てきた時点で
「お、これは店の人がニャルな展開か!?」
と思ってしまったのはスパロボUXでデモンベイン使ってる俺ですorz
これはまたSAN値が削られそうな……お陰でジルりんが名誉挽回に成功してるだと…?

>>384
>シャドーマンの人とかノイちゃんの人とか笛さんはぼくの正体に気づいているはずです
例えば敵であるとある女の子が過去にあんなことやこんなことをされていた事実を知っていたとするならば
俺は頭と身体で思い出させてあげちゃうような紳士さんです
つまり貴方の正体は(ここから先は影に飲まれて読めない

>夢幻泡影のエピソードが先行していたためもう完結したと思っていたのだ、すまない
申し訳ない、こっちで色々端折った話をあげちゃったの
wikiのは何れディレクターズカット版に仕上げる予定なのでお楽しみに

>>386-387
>裂邪とは違って完全に都市伝説と化してしまいましたが、その分戦闘力は【太陽の暦石】の攻撃を全く寄せ付けない程
ローゼの「フォトンベルト」同様、世界破滅系ですからねー
「太陽の暦石」には「マヤの予言」による滅びの日までの出来事が全て記されていますが、それ以外の破滅なんて記されている筈も無く
正義とローゼの行動を先読み出来ないのですよン

>あ、やっぱりか!まさか大王の人との兄弟合作パートⅡですか!?
「そういや合作ってどんだけやったっけ?」と思って数えたら
「マヤの予言」編を一括りにまとめたら4回しかしてなかったという…
時間軸的には、間に「沖縄」編もやるから5回なんだけどね

>……いや本当に、アレどういう意図によってコラボしてたんでしょうね
あれはマジで謎だったwwww
因みにシャドーマンの人はねてるくんが好きです(訊いてません

>第3の存在に危害を加える存在=発達しすぎた文明をリセットするための掃除屋だったと言うとんでもないオチ
あぁそういうことだったのか! そりゃ面白いな
掃除屋か、似たような感じのキャラをいい加減顔だけでも出したいんだよなぁ

ウロボロス、ヨルムンガンド、ケツァルコアトル
これらの円環を体現する蛇達は地球の存続を危険にする進化をした存在を滅し、そこから新たなる進化の可能性を生命に模索させるための地球の意思の体現なのかもしれない
古代人はその恐怖を後世に伝えるために神話の中にその存在を織り込んだんだよ!

>>390
なぁー↑んだぁー↑ってぇー↓!?

「ウロボロス」だけは未だ使ってないな(「ケツァルコアトル」=「ククルカン」と同一視、「ヨルムンガンド」=「ミドガルドシュランゲ」の由来
あれはどっちかというと都市伝説とは程遠いのかも知れんけど…いやどうなんだろう

都市伝説っていうか只の伝説だよねー
良いんだ
もう都市伝説なんてレベルじゃなくてもいいんだ
昔は「都市伝説くらいなら人間が契約できるし人間とも相互に干渉できるけど神話やらの存在は実在しても人間たちとはレベル違いすぎて契約なんて無理」とか言われてた気がしないでもないけど詳しく覚えてないし徐々に「やっぱそういうのもいいよね!」ってなったから別に気にする必要はないんだ

>>384
>てっきりぼくが読み落としたのかと思っていたのだ、本当にすまない

こちらこそ、申し訳ないです。自分が遅筆なばかりに
投下完了した暁には、Wikiで完全版をお読みいただけたら幸いです

>>392
>昔は「都市伝説くらいなら人間が契約できるし人間とも相互に干渉できるけど神話やらの存在は実在しても人間たちとはレベル違いすぎて契約なんて無理」とか言われてた気がしないでもないけど詳しく覚えてないし徐々に「やっぱそういうのもいいよね!」ってなったから別に気にする必要はないんだ

若者の人間離れが進んでいるようです(
うちのギリシャの神々は隠居の身になりましたけど、契約者がいた神が1柱だけいたり

>>389
>と思ってしまったのはスパロボUXでデモンベイン使ってる俺ですorz
デモンベイン、だと……!?ついに時代が追いついたのか

>因みにシャドーマンの人はねてるくんが好きです(訊いてません
実はあまり詳しくないんです……でも確かアレ、一匹だけ明らかにハムスターじゃない奴混ざってましたよね

>あぁそういうことだったのか! そりゃ面白いな
>掃除屋か、似たような感じのキャラをいい加減顔だけでも出したいんだよなぁ
ええ、アレは良い意味で裏切られました
そして新キャラの予告にwktk

>>392
>昔は「都市伝説くらいなら人間が契約できるし人間とも相互に干渉できるけど神話やらの存在は実在しても人間たちとはレベル違いすぎて契約なんて無理」とか
>言われてた気がしないでもないけど詳しく覚えてないし徐々に「やっぱそういうのもいいよね!」ってなったから別に気にする必要はないんだ
ウチの主人公なんか、邪神が体内に居ますもんね(ry
さて、いつ頃再登場させようか……

>>394
>デモンベイン、だと……!?ついに時代が追いついたのか
きっと緑川光さん(※)も狂喜乱舞してらっしゃることでしょう(※マスターテリオンの中の人です(※自分の声当てたキャラの機体を溺愛しちゃう人です(※スパロボを影で仕切ってるって話は都市伝説
ただ、あれの所為でラスボスがとんでもないことになってしまったという
まぁデモベがクトゥルフ神話モチーフだから仕方ないよね

>実はあまり詳しくないんです……でも確かアレ、一匹だけ明らかにハムスターじゃない奴混ざってましたよね
タイショーくんかサブさんかしら?
そういやタイショーくんの中の人はデモベの大十字九郎くん

>そして新キャラの予告にwktk
ただし設定上、易々と出せないのが……
あぁ、投下できないスレに上げようかな、エロくないの上げるのは初めてだ

【小学生の安否を予知しだすと大きな猫君は夜も寝れなくなっちゃうの。】

�・住宅街�・

とある家のリビングで巨大な猫の都市伝説は、器用に頭を抱え唸っていた。

『あー……今日は外はヤベェな……ってか予知とはいえ、何でこんなとこになんだよ…』

「ねこねこー…ねーこねーこー」

猫じゃらしを振りながら話し掛ける少女
学校町に住む小学生、竹峰まこは暇をもて余していた。
本分である学業は流行り風邪による学級閉鎖で絶賛休止中なのだ。

「ねこねこー…遊んでよー…ねーねー」

そんな少女の執拗な攻撃を受けているのは、ひょんなことから彼女と契約をするはめになった都市伝説エイリアン・ビッグ・キャット(以下ABC)その人、いやその猫である。

『忙しいから後でだ、後で…』

彼の能力は様々な超能力…今は毎日の日課である契約者の危険予知をしている所なのだが。

「むー……今がいいのー!!」

やんちゃざかりなお姫さまが…はい、そうですかと引くわけもなく

『イダダダッ!!ヒゲ取れっ、止めねぇかガキんちょ』

テレパシーからそんな声が聞こえてもお構い無しにグイグイ顔を引っ張るのである。

『だー、スーパーな俺様の予知画像がブレただろうが…このっ』

「わわわ………」

柔らかな尻尾が少女の顔にボフッと当りコテンと尻餅をつく少女

『フンッ、しつこいお前が悪いんだ……ぞ?』

「……う、うぅ」

振り向けばマジで泣き出す五秒前な少女。

『ま、待て!!、俺が悪かったから泣くのは止せって』

「構ってくれない…ねこねこ何か……嫌いっ!」

もう、どうにも止まらない。
玄関から走って家を出ていくマコを追いかけるべき飼い猫は

『嫌い……嫌いって……そんな』

割りと地味に凹んでいた。


(何処かへと始まる)

代理投下終了ですのン

とある高層マンションの一室。
青年は、幼馴染の少女を自室へと通した。

「冬馬、いつもごめんね…」
「気にするなよ。何かあったら連絡しろっていつも言ってるのは俺なんだし…むしろ、頼って貰えて嬉しいよ。

…でもその顔じゃ、ケーキ食べに行こうとか、映画観に行こうって話じゃないんだろ?
話しづらいようなら、無理には聞かないから」


この部屋の主である、シンプルなデザインのチョーカーを付けた黒髪の青年は黒崎 冬馬。
彼に促されて座る、腰辺りまで伸ばした黒髪を一房だけ結んだ少女は、久瀬 春奈。

言えないって程のことじゃないんだけど、とためらいがちに春奈が口を開く。
「……同じクラスの男の子に、告白されたの」
僅かに冬馬の表情が強張ったが、春奈は気付かない。

「…返事は?」
「明日まで、待って貰ってる…」

「春奈はそいつの事…どう思ってるんだ?」
「……クラスでも人気者だし、いい人だとは思うけど…急に、付き合おうなんて…」

幼い頃から冬馬以外の男の子との交流があまり無かった春奈にとって、いくらか改善したとはいえ、男子と話すことは変に身構えてしまってあまり居心地の良いものではなかった。
それに、その男子のファンの女生徒達から目をつけられるのも怖かった。

一緒に出かけるのだって、冬馬と一緒に行くほうが、ずっとずっといい。
…ただ、冬馬と出かけると時間がすぐに過ぎて行ってしまうのが、寂しいといえば寂しかった。

「その場で安易に返事を返さなかったのはいい判断だと思うよ。
一晩ゆっくり考えて答えを出しなさい」

俯いてしまった春奈の
頭をわしゃわしゃと撫でて、冬馬が立ちあがる。

「コーヒー淹れてくるな。その辺にある漫画とか、適当に読んで待ってなさい
 ……くれぐれも、お兄さんのベッドの下は覗かないように」
「のぞっ…、そんなことしないよ!冬馬の意地悪!」
「悪い悪い…砂糖とミルク、少し多めにしておくから」


横を向いたまま、ありがとう、と呟いた幼馴染に小さく苦笑する。
拗ねるくらいの元気が出たことに安堵しつつ、キッチンに向かい、準備をする。
湯が沸く間、テレビの置かれたラックにいくつかある小さな鉢植えの一つ――木香薔薇の花を見つめ、目を細める。

「なんで素直にあいつの幸せを願ってやれないんだろうな…」
そんな奴なんて止めておけ、俺がいるだろう――
喉まで出かかった独りよがりな言葉の数々。
子供の頃から変わらない、俺の心は汚いままだ。

春奈は、小さい頃からことあるごとにお兄ちゃん、お兄ちゃんと後ろをついて回っていた。
周りからは、まるで仲の良い兄妹のようだと言われてきたし、冬馬も兄のように接していた。

危なっかしくて目の離せない妹みたいな存在が、守らなければならない大事な女の子へと変わったのはいつからだっただろうか。
その頃には、無条件で向けられる信頼と、一番近くで彼女を見守れる権利を得た代償として、自分の気持ちを伝えることが出来なくなった。
今まで築いてきた全てを壊すくらいなら、このままの関係を続けていけばいいじゃないかと、臆病な自分が顔を出すのだ。
成長するにつれて彼女への想いは大きくなっていき、あの笑顔を独り占めしたい、華奢な身体をこの腕の中に閉じ込めてしまいたいと、何度も思った――その度に、理性を流し込んで押さえつけてきたが。
このままだといつか彼女を傷つけてしまうような気がして、通学の利便性を考えて、という表向きの理由もあり、大学進学にあたって家を出た。

それなのに、彼女が家に来るのを強く拒めず、それどころか嬉しく思ってしまう始末だ。本当に情けない。


「ワタシに任せておけば、あの娘の時間を永遠に美しいまま留めておくことも、契約者の従順な人形にすることも造作も無いというのに」
声がした先に視線を向けると、リビングの椅子に腰かけた、白衣を纏った包帯だらけの男――注射男がいた。


「俺が欲しいのは、薬なんかで曲げられたものじゃない、あいつの本心からの言葉だ。
 お前の存在を広める手伝いはしてやるから……あいつには手を出すなよ」


「おや、怖い怖い…ですが、そうやって自分の願望を抑え込んでいると、どんどんあの娘が遠ざかっていってしまうのではないのですか?
 気が付いた時にはもうアナタの手が届かない、ということにもなりかねないのでは?」

契約してから数日、そう告げた瞬間の契約者の表情にこれからの明るい未来を想像して、注射男の心は歓喜で満ち溢れた。

「――ん…」
砂糖とミルクの入った甘いコーヒーを飲んで、いつの間にか眠っていたらしい。
「ああ、起きた?」
覚醒したばかりでぼんやりとする中、声がかけられた。
「とうま、―――!?」
起き上がろうとして、思うように体が動かせない事に気がついた。

掛けられていた毛布の下にその答えがあった。
両手には手錠がかけられていた。
右足に鎖の付いた枷が嵌められていて、その先はベッドの脚へと続いていた。

テーブルの上に置かれたノートパソコンと資料から目を離し、冬馬が立ちあがる。

「色々あって疲れてたのかも知れないな、よく寝てたよ。
 寝顔も昔と変わらないな…腹減ってない?何か作るよ」

傍に来た冬馬が体を起こすのを手伝ってくれたが、手足の戒めを気にする様子はない。

「とう、ま……わ、私、なにか、怒らせるようなこと、した…?」
「春奈は何もしてないよ。悪いのは俺なんだ…お前を離したくない、俺の我儘なんだ」

気がついた事が、もう一つ――外が、真っ暗だった。
いつも夕方には家まで送り届けられるから、こんな時間まで彼の部屋に居ること自体初めてだった。


「やだ、やだよ、これ、外して…!」
「ごめんな。春奈のお願いはなんでも聞いてやりたいんだけど…それは叶えてやるわけには行かないんだ。
外したら、お前ここから出ていくだろ?
それに、最近物騒だろう?変質者に注意って看板も見かけるし…心配しないで、叔母さん達には連絡しておいたから」
小さく震える春奈をあやすように、背中に手を回してとんとんと優しく叩く。


「大丈夫だよ、お前に怖い思いなんてさせたりしない。
身の程も弁えずにお前に――ああ、口に出すのも虫唾が走るな、
お前に告白してきた奴も、もう二度と近付けさせたりしないから。
怖かっただろう、可哀想に。
軽々しくお前に話しかけるだけじゃなく、くだらないことで思い悩ませたりして――後で少し、怒っておくからな?
お前とずっと一緒に居たのも、お前を一番よく知っているのも、お前を誰より想っているのも俺なんだからさ…

外は怖いけれど、ここにいれば大丈夫だから。春奈のことは、俺が守るからな。
話し相手にもなるし、美味しい食事も作るよ。お風呂にも入れてあげるから、安心しなさい。


春奈はただ、ここに――俺の傍にいて、俺の事を考えていてくれるだけでいいんだよ」

わかった?と有無を言わさない様な声に春奈が小さく頷くと、冬馬は、いい子だ、と満足気に笑みを浮かべた。

「春奈には俺がいるし、俺には春奈がいる…幸せ過ぎて、どうにかなっちゃいそうだ」

髪を撫でる手つきも、声も、酷く優しい。

「絶対に離したりしない…これからは、ずっと一緒だからな」

髪を撫でていた手が頬に添えられて、唇に、彼のそれが重なった。

終わる

皆様投下乙ですー

>>339
変態太郎さん怖いですガクブル
あんな恐ろしいものに追いかけられたら誰だって泣きます…

>>355
ああ、ジャガイモが入っていなかったばかりに…強く生きてください!

>>359
大王の過去回想に涙腺をやられつつ、正義くんが都市伝説になってどうなる事かとハラハラしましたが、最後に大王も帰ってきてくれて安堵しました…

>>378
都市伝説の墓場…
おばあさんにもびっくりしましたが、それ以上に麦わら帽子のお嬢さんのインパクトが強すぎてあわわわ…

>>396
心配症でまこちゃんを守るために頑張って予知しているエイリアン・ビッグ・キャットさんも、エイリアン・ビッグ・キャットさんに構ってもらいたいまこちゃんも可愛いです!

おねーちゃん乙なの
わーい見事なヤンデレだーwww
そういや男×女で男がヤンデレってそうそう見ないな、何か新鮮

>>375
>道民としてはじゃがいも無しなんてありえませんよええ
30過ぎたらジャガイモ好きになった。今じゃジャガイモなしのカレー(家庭風)はないな!

>>379-382
はがけないの人乙ですー
悲喜って飯綱大生だったんだ
都市伝説の墓場か…これまたぞくっとするお話でした。ホラーテイスト万歳!

>>384
>そして、カレーには生クリーム!とうっかり発言したために
>小馬鹿にされたあの日を思い出しました
ちょっとまったりめのカレーだな
カレーではないが、貴兄の発言でシチューってご飯にかけて食べるよな!って言ったときに生暖かい視線を浴びた事を思い出した

>>386
>しかしジャガイモを入れ忘れただけで効果無しとは、やはり仮契約では拡大解釈が難しいんでしょうね
それどころか下手をしたら採点者の好みで合否が決まる可能性が

>>392
>「やっぱそういうのもいいよね!」ってなったから別に気にする必要はないんだ
「最近の若者は人使いが荒い」と神様方が嘆いているでしょう

>>396
ねこねこの人乙ですー
まこちゃんかぁいいまこちゃん
猫と少女って最高の組み合わせ
代理投下された方も乙でしたー

>>398-399
おお、犬神憑きと怪人アンサーの人乙ですー
ヤンデレは男女問わずよいものです
俺がヤンデレ書こうとしてもなんか中途半端なんだよなー

>>402
>俺がヤンデレ書こうとしてもなんか中途半端なんだよなー
と言われて気付いた
俺ってヤンデレ書いた事ないかも……


夕暮れ時の十字路で男は噂に出会った。

「赤がいいか…それとも青か…さぁ、青年よ選ぶんだ」

目の前にはナイフを手の上で遊ばせる不審者。
派手なマントに白い仮面"赤マント"に違いないであろう。

「生憎だが俺は原色が嫌いでな…どちらも選ぶ気は無いぜ。
それに、残念ながら死ぬのはアンタの方だ…赤マント」

男は都市伝説に驚きもせず赤マントを挑発する。
それに対して赤マントは怒りもせずケタケタと笑いだす。

「その冷静さ…貴方は契約者かそれに近い何かですねェ。
さて、それで私が死ぬとか仰いましたか……
クハハハハハ、私は契約なんて軟弱な事をせずに人々の恐怖の中に生きてきました」

いつの間にか赤マントの持つナイフが手品のように増えていく。

「その私が…消えるのを恐れ、脆弱な人間と契約した都市伝説に敗れる訳が無いのですッ!」

鋭い刃がが幾重も光り、男に向かって飛んで行く。
長年の経験からか赤マントのナイフは肺、心臓、頸動脈、脳と的確に急所を狙って投げられている。

「さぁさぁ…赤き血の花が咲き乱れ、青く染まって散り行きて、白く虚しく枯れなさい」

愉しげな笑い声と共に赤いマントが風によって豪快に揺れる。

「残念だかそんな筋書きは"理解できない"な…」

しかし、ナイフは男の身体に突き刺さりはしなかった。
ナイフは男の前に突如現れた"ナニカ"に叩き落とされたのだ。

「何っ……な、なんだソレは…見えるのに居るのに分からない、ソレは何だ!?」

赤マントの目の前には自ら身長の二倍を越える大きな"ナニカ"が見えている。
赤マントにはソレが何であるか理解が出来なかった、認識が出来なかった。

「人は理解できない物に恐怖する……さぁ、恐怖したまま消え去りな」

"ナニカ"が軽やかなステップで飛び跳ねながら赤マントへ近付いていく。

「来、来るな!?……ヒィィッ」

錯乱しながらも赤マントはありったけのナイフを敵へ投げつける。
だが、巨体からは想像出来ない機敏な跳躍により"ナニカ"はナイフを避け、そのまま赤マントに飛び掛かったのだ。

「お前が分かることはただ一つ…何も分からないという事だけだ」

馬乗りになった"ナニカ"が赤マントを何度も何度も殴り付ける。
初めは聞こえていた悲鳴も徐々に無くなっていき。
暫くして何かが折れる鈍い音ともに赤マントは光となり消え失せた。

「よーしよし、ご苦労様だ…帰ったらご褒美にリンゴを剥いてやるからなー」

男が"ナニカ"に笑いかけ撫でてやるると、嬉しそうに"ナニカ"は跳ねた。

誰にも理解されなくても、何も分かって貰えなくとも、契約者と居るだけど"ナニカ"は幸せなのである。

(終る)

代理投下終了なの

執筆乙
そして代理乙

大好きなんですよ
こういうの大好きなんですよ
妖怪とかってのは恐怖に名前をつけてキャラクタ化されたものだって話はよくありますけど
その名前を付ける前の存在も定かではないナニカにこそ荒々しい純然たる恐怖が残ってると思うんですよ
まあ名前がないんで存在もはかないですがそこがいいんですよ
これは多分正体がしっかり決まった上で書いたと思うんですけど“ナニカ”って表現は素敵だと思うんですよ


 黴臭い古書店。
 俺がその店に入った時、そこでは一人の少女が泣いていた。

「おばあちゃん……おばあちゃんどこ?
 ねえおじさん、おばあちゃんを……」

「邪魔だ、どきな」

「きゃあっ!」

 まとわりつく少女を蹴り飛ばす。
 目玉さえ有れば少しは見れる顔だったかもしれないが、落ち窪んだ眼窩から涙をこぼされたところで只のB級ホラーだ。
 俺は足元に転がった目玉を見つめる。
 ナージャの報告であの方の“左腕”の持ち主を見つけただけではなく、“眼球”まで見つけられるとは思わなかった。
 “左腕”に選ばれた男が三回の願い事の内、自分と都市伝説の生命の為だけに既に二回も願いを使ったというのが癪に障るがまあ良しだ。
 そんなバカが左腕に選ばれたお陰で“眼球”は俺のものになるんだ。
 そうだ、遺体同士は惹かれ合う。
 この数百年間発見の報告が無かった“眼球”に、“左腕”の保持者が偶然出くわしたのだ。
 しかも“左腕”の保持者はそれに気づかずに逃げ出した。
 俺は与えられた任務をこなすだけのあのお気楽娘とは違う。
 あの方の遺体が持つ力を知っている。
 目の前に転がった千載一遇のチャンスを逃しはしない。

「“眼球”は……俺が頂く!」

「待って、おばあちゃんはそこにいるの?
 ねえ私のおばあちゃんを返してよ!」

「っるせえなあ、ガキ!」

 腰のホルスターから拳銃を抜き放って化け物の眉間に突きつける。
 俺が引き金を引こうとした時だった。

「其処までだ、財団」

 発砲音、俺がそれに反応した時には手元の拳銃が弾き飛ばされる。
 銃声の方向を振り向くとスーツ姿の男が拳銃を構えていた。
 顔立ちこそまだ若々しいが髪が真っ白になっていてまるで老人のようだ。
 肌もどこか土気色で、契約の反動に蝕まれた体であることは誰が見ても明らかだった。
 少女は泣きながら男の方へと駆け寄る。
 少女の姿に怯えること無く男は少女を抱き寄せる。

「大丈夫だったかい? もう怖い思いをすることは無い」

「ねえ、おばあちゃんは?」

「君のおばあちゃんはもう死んだ。だが君がその役割を引き継ぐことはない
 君はもう頼まれていたように遺体を守る必要は無い」

「え……?」

「とにかく俺の後ろに隠れていなさい。俺は君の味方だ」

 男は俺のことなど見えていないように少女に語りかける。
 分かった、こいつはアマちゃんだ。
 今ここがとっくに戦場だってことを理解しちゃいない。

「夜刀浦市警察だ。我々に付与された独立執行権限と都市伝説犯罪対策法の下に貴様を逮捕する
 罪は都市伝説を用いた傷害及び窃盗だ」

「グッド、それは素晴らしい。日本の警察は優秀らしい
 こっそりこの国に入った筈の俺の足取りをどうやって追いかけたのかはこの際聞かずにおきましょう
 だが私のような小悪党よりもそこの化け物を始末した方がいいんじゃあないですかね
 私みたいな雑魚はさておき、普通の人間にとっちゃあこのガキは居るだけで害だと思うのですが」

「ああ、だから保護する
 その眼球も、そこの少女も、両方共だ
 今ならばまだ牢屋に入れるぞ
 日本の監獄はお前の故国よりきっと少しはマシだ」

「これだからポリってのは困る
 あんたらが偉そうなのは万国共通なのかな?
 この“眼球”は俺が見つけた、俺のもんだ」

「取得物は警官に届けるのがこの国の決まりだ
 そしてお前にとって幸運なことに目の前に警官が居る
 素直に渡して帰すならば警官としての仕事以上のことはしない
 財団について何か話す気が有るならば司法取引の準備も有る」

「取引? 何を取引するっていうんだ?
 財団に居れば金も地位も手に入る
 それ以外にお前ら日本警察が何を俺にくれる?」

「君の身の安全だろう」

 俺は思わず笑ってしまった。
 何を馬鹿なことを言っているのだこの警察官は。
 仮にも財団の正規メンバーたる俺に、安全を保証?
 安全とは他者から与えられるものではなく、他者から奪うもの。
 誰かを脅かさねば安らぐ場所などありえなかった。
 日本人とはかくも温いのか、いいやそれは偏見だ、訂正する。
 警察官を名乗るくせにこの男はそこまで温いのか。

「Winner takes all!」
 
 俺は自らの心のスイッチを切り替えるように絶叫し、自らの都市伝説を顕現させる。

「出てこいガンダルヴ――――――」

 声が出ない。

「抵抗したと見做し、無力化する」

 喉を、気道だけを何かに食いちぎられている。
 痛みはまだ無い。ならばまだ戦える。
 そして反撃に移ろうとした、今度は足がない。
 今更だが宙を落下していることに気がつく。
 腕も無い。
 いや最初から全て奪われていたのか?

「投降するならば二回、拒否するならば一回瞬きをしろ」

 見える。
 警官を名乗った男の背後に黒いボロ布を纏って鎌を持った何かが。
 
「3」

 生き残ったところで意味などあるまい。

「2」

 この愚かな警官も理事長に始末される。

「1」

 俺に止めを刺す刹那、何故か警官はとても悲しそうな顔をしていた。 
 最後まで理解できない奴だった。



    ※    ※    ※


「こちら市警、眼球は我々が回収した。こちらの警察組織で管理する」

 目の前で冷たくなった外国人の男の死体を念入りに処理してから『組織』の人々に連絡する。
 組織とも随分距離をとるようになってしまった。
 だからといって一部の警察上層部には未だに警戒されている。
 ままならない。
 それにしても何故この男は素直に投降してくれなかったのだろうか、悪いようにはしなかったのに。

「お嬢さん、君はこれから二つの選択肢が有る」

 俺は背中で震えている少女に声をかける。
 なんで俺はこんな役回りばかりなのだろう?
 役どころに不満があるわけではないが少しばかり妙な気分だ。

「我々と一緒に警察組織に来るか、それともここから出て君のしたいようにするか
 俺ならば警察の力を借りて君を保護できると思う
 恐らく君のお祖母ちゃんはもう居ない
 君に行く当てが無いなら俺に君を守らせてくれ」

 初めて都市伝説と契約をしたのは高校生の頃だった。
 でかい都市伝説事件に巻き込まれて、その時に偶然。
 あの時からずっと、俺は正義の味方になる為に身と心を砕いてきた。
 多分、今もそうだ。

「駄目かな?」

 できる限りの笑顔を作ってみせる。
 笑顔が下手になったと最近言われる。
 上手に笑って見せるためには切り捨てたものが多すぎる。
 何を捨てても、何を壊しても、自らを通し、自らのままに生きて、我儘を通せるような人間だったら。
 そういう人間だったら今も心から笑っていられたかもしれない。
 少女は静かに頷いてくれた。
 俺は彼女にアイマスクをかけてその場から連れ出す。
 古書店の外では霊子構成の乱れた空間が続いている。
 非契約者がこれを見れば狂気に囚われて帰ってこれないだろう。
 偉人の遺体とは聞いていたがこれは一体何者の眼球なのだろうか。

「それを貴方が知る必要はありません、夜刀浦市警察署長」

 闇が眼前で凝集する。
 それは人の形を作り、瞬きする間に初老の男性へと変化した。

「財団か?」

 少女を庇うようにして前に立つ。

「ええ、財団Bの理事長です」

 懐から契約発動体に加工した仮面を取り出す。

「我々警察は“眼球”を危険物だと判断した。どのような組織にも渡す気は無い」

 そう言って理事長なる男を睨みつける。

「ほーぅ、水晶ドクロを加工した仮面ですか
 よほど腕の良い職人の作でしょうねえ?」

 次の瞬間には理事長は消えて俺の隣に現れる。

「手品ならまたの機会にしてくれ」

「彼我の力の差を理解しているのですか?
 そもそも貴方の言い分では警察がまるで正義の味方みたいではないですか
 警察なぞそもそも権力の為に作られた暴力装置
 どこまでいこうとその性質が変えられない以上、貴方ごときがいくら頑張っても無意味では?
 我々には政治的手段を通じてこれを奪い取ることも可能なのですから」

「何が正義で何が悪か、とかくこの世は複雑だよ
 でもね、この夜刀浦市警は俺がそういう組織に育て上げた
 そして貴様の“政治力”とやらに屈せぬ正義たる為に、権力の世界で力を尽くしている人を俺は知っている
 力を誇ることしか能のない貴様等のような団体は何一つ怖くない」

「言いますね。じゃあ私も言わせてもらいましょう」

 理事長は煙のようにして消える。
 そして今度は俺の眼と鼻の先へ。

「ソレが欲しい。心から欲しい。だから譲ってくれたまえ」

 爛々と輝く瞳。
 そこからは何の悪意も善意も感じられない。
 子供が玩具をねだるのと何一つ変わらない。
 だからこそ恐ろしい。
 本当に恐怖すべき悪とは無垢で、眩しい。

「訂正する。やはり貴方は怖い」

 遠くからバイクのエンジン音が響く。
 俺は少女を抱きかかえたままふわりと3m程後ろへとジャンプする。

「え?」

「だからこっちが手品を使わせてもらおう」

 空中で俺がそう呟くと路地裏の外から無人のバイクが疾走してくる。
 俺の着地する先はそのバイクの運転席。
 少女を抱きかかえたままバイクに乗り、片手でハンドルを切って理事長なる男に最高速度の突撃をかました。
 嫌な音を立てて派手に吹き飛ばされる理事長。
 だがすれ違う刹那、何故か奴は笑っていた。
 知っている。
 何故あいつが笑ったか。
 今俺の懐に有る眼球はたった一つ。
 あの突撃の刹那、いかなる方法によってか眼球を奪われたのだ。

「お嬢さん、捕まってろよ」

 だが今回は諦めるしかない。
 俺はバイクを更に加速させてそのままその場を逃げ去った。



    ※    ※    ※


「ろ、路樹いいいいいいいいいいいいいい!」

 書店街で宇宙的恐怖に遭遇した僕はマンションに帰るや否や弟の部屋に合鍵を使って突入した。
 確実に迷惑だろうけど構うことはない。
 ジルりんは確実に僕がしばかれると予想してドアの外で待機している。
 それほどにあの恐怖の現場は僕の繊細なハートを切り裂いたのだ。

「あ」

「う」

 弟がナージャさんの看病をしてました。
 でも構わずに進む僕。
 前進制圧型お兄ちゃんとは僕のことである。
 
「っべえよ! 今本屋さんに行ったら路地裏に古本屋があってそこが人外魔境でえっとうんとあああああああ!」

 やや涙声で弟に縋りつく駄目な兄の図。

「うるせえ、こいつやっと寝付いたところだったんだぞ!」

 げんこつ喰らいました。

「ん? どうしたの路樹くんお客さん……?」

「たった数時間でどんだけ馴染んでるの!?」

「こいつに聞けよ!」

「あー悲喜くんか」

「なんであんた弟の部屋に馴染んでいるんですか」

「いやだって私の寝泊まりするところが我が家だし」

「ひどいな」

「ひどいだろ?」

 ガチャとドアが開いてジルりんが上がり込んでくる。

「あーでもその感覚分かるよ
 私も基本的に寝るところとかは橋の下だったりしたから何処で寝ようともある意味寛いでたから」

「ちょいちょい悲しい野良暮らしネタ挟むなよ!」

「ジルちゃん……温かい物食うかい?」

「私寝るね」

「おやすみ」

「終始マイペースだなそいつ!」

「兄ちゃんには負けるんだなあこれが」

「すげえだろお前の兄ちゃん」

「自慢の兄だよ」

「ところで路樹さん暖かいものって?」

「今丁度出前を頼んだんだよ、鷲山飯店のラーメン」

「マジで!?」

 鷲山飯店は地元で有名な中華料理店である。
 主人の九郎さんと奥さんのマイさんの二人で切り盛りするそこまで大きくない店なのだが旨いと評判で連日満員である。
 店が彼の代になってから出来たマシマシラーメンはコアなファンを各地で生み出している。
 ちなみにマイさんは外国の方だとかで、僕のような彼女居ない大学生にとっては刺激が強すぎる美人である。
 偶に妙に老けた喋り方をするのも含めて非常にツボだ。


「あ、兄ちゃんの分はないぞ」

「このひとでなし!」

 弟の部屋の電話をひったくってピザを注文する。
 弟が電話の側に置いていたクーポンを勝手に使ってやった。
 ざまあみろ。

「僕の財布が死んだぞこのひとでなし!」

 クーポンを置かれたら正直使うしかないじゃないか……。
 クーポンには勝てなかったよ……。

「ちゃんと自分で払おうと思う辺り兄ちゃんは憎みきれないよなあ」

「訓練されてるね路樹さん」

「これからは私が訓練する予定なの」

「これ以上進化したら仏になっちゃいますよあの人」

「そうねえ、困ったわ。私の家キリスト教徒なの」

 和んでるんじゃねえよ女子二名!
 チャイムが鳴る。

「あ、今行きまーす」

 弟が立ち上がる。

「ごめんなさいそれ私の携帯」

 ナージャがポケットから携帯を取り出す。

「あー理事長さんですかー?
 バイクに撥ねられた? 超受けますねそれ」

 ナージャさん大爆笑しすぎです。

「今からこっち来い? ああそういえば左腕の人こっち居るんですよ
 ピザとラーメン取ってくれたんで理事長も一緒に食べましょうよ
 寿司とか持ってきてくださいよ、じゃないと入れませんから」

 さらっと滅茶苦茶言ってるぞこの女。

「そういえば契約者見つけたんで財団抜けて良いですか?
 私の後任は左腕の人でお願いします」

 僕か、僕のことか。

「え、契約相手? 左腕の人の弟さんなんですけど超イケメンなんですよ
 もう出会い頭にノックアウトされましてね、パパンとママンには適当言っててください
 大丈夫ですってあの人ら親ばかですし」

「おい兄ちゃん、やべえわ外堀から埋められてるわこれ」

「でも外見は好みなんだろ?」

「ドストライクなんだなあうぇっへへへへへ」

「うぇっひひひひひひひ」

「男ってのはどうしてどいつもこいつもこうなんだろ」

 ジルりんが呆れた顔でぼやく。
 ま、まさかジルりんも実は僕達みたいなエロ男子を手球にとって……?
 つまりもしかしなくても非処女の可能性有り?
 いや待て待て何を言っているんだ僕。
 そんなことになったら今すぐ人生というゲームのディスクを割ってネットにアップしてやるぞ。
 メーカーには抗議文を送りつけてやる。
 住所はきっと天の上、あるいは僕の親元だ。

「え、まさかジルりん……」

「どうした悲喜?」

 多分僕の取り越し苦労だろう。
 
「はいじゃあそういうことで。警察に奪われた残りの遺体の回収ですね
 私と路樹くんで?
 無理無理、路樹くんトーシロですよ?
 つーか悲喜くんで良いじゃないですか
 え? 遺体を奪われるリスク? あーはいはい分かりました分かりました
 とりあえず会って話しましょう。寿司絶対に買ってきてくださいよお願いですから」
 
「……ねえナージャさん、今さらっとすごい事言ってなかった?」

 そこで玄関のチャイムが鳴る。
 どうやら出前が来たらしい。

「あ、俺降りるね。警察に喧嘩売るとか嫌だし」

 弟は当たり前のようにそう言って玄関に行ってしまった。

「あーうんうん、そうかそうか流石マイハニー地獄まで付いてきてくれるわけか
 さっすが私と契約してくれただけは……え?」

「諦めろナージャさん。あいつは僕の弟だ」

 ナージャさんが今にも泣きそうな兎のヌイグルミみたいな顔していた。
 正直僕は爆笑したかったのだが……思わず吹き出したジルりんが玩具にされかけてるのを見て必死でこらえた。
 はて……ところで僕は何をしに弟のところに来たんだったっけか。


【僕は小説が書けない 第十四話「這い寄る財団」 おわり】
 


ここまで来たらもう言っちゃって良いんじゃないかしらwww
でも念の為伏せちゃう

はがけないの人乙ですの
九郎くんとマイちゃん元気そうで何よりだ、そして彼はもう署長にまでなったのか
しかし財団理事長はやっぱりヤバそうだな……“本気”が気になるところ
そしてほのぼの後半パートwwww当初の面影何処行ったんだヒロイン2匹wwwwwww
理事長も出てそうそう舐められまくってるしwwwww

>>404
投下乙ですー
認識できないってなにげに強いね…でもナニカちゃんはきっと可愛いと思う

はがけないの人乙ですー
なつかすぃ顔ぶれがたくさん!
マシマシラーメンウマそう食いたい
みんなそれぞれの未来にちょっとじーんと来た

【血の水も滴る良い子供の食卓】

~学校町 某所~

…ヤーキイ……イーシヤー…イモ…オイモ

――はっ、この声は!?……ちょっと待ってて少年!!

…と担当の黒服が目を輝かせて少年の元を離れてから三十分。
申し訳程度の監視カメラがあるだけの寂れた路地裏は、多少暖かい表通りとは違い風が吹き抜けて寒さが顕著に現れている。
はぁ…と白い吐息を立てながら"水を飼う男"と契約した少年は、そんな路地裏の壁にもたれ掛かっていた。

「あいつ、芋買うだけで、何分かけてる」

ポケットからメモを出して、割りと整った字で怨み言を綴り出す少年。

「次、置き去りにしたら噛む…と」

他に書かれているのは"死んだ水の処理法~"や"もう三食、水ようかんで良い"等
謎の言葉が書いてあるメモである。
書き終ると同時に、再びテープ録音の焼き芋宣伝が路地裏に響いた。

「……オイ、遅すぎる……ぞ?」

近づく物音に向かってムスッとした顔で振り返った少年は首を傾げた。

「えひゃ、ふひ、ひゃ……うひゃひ」

居たのは担当の黒服ではなく、血走った眼や息遣いから正気ではないことが伺える小肥りな男。
派手な衣装で顔にはカラフルなメイクを施し、鼻には真っ赤な玉が一つ付いている。
俗に言う道化、馴染みがある呼び方としたらピエロという奴だ。

「都市伝説…それとも、変質者?」
「サぁーかスぅ、イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒャヒヒヒヒヒッ」

ニタァと笑いながらキコキコと一輪車を漕ぐピエロ。
壊れた笑い袋のように笑い続ける姿は不気味さを漂わせる。

「脂身ばっかりで、不味そうな奴」

そんな不気味さも気にせずに少年が近付くと、いきなりナイフやボールをピエロが少年へ投げ付ける。

「イヒャヒヒハハーッ…さぁ、さァ…笑ってオクれぇ子供達ぃ
楽しい楽しい殺人ショーっ お金ナンカは要リマセン。
欲シイのは笑顔と涙と脈打つリンゴォーッ!!」

しかし焦点の合っていないピエロが乱雑に投げた演目は少年の体にかすりもしない。

「アヒャ、カナ、悲しぃ…フヒヒハハ、外れたヨォー」

泣きながら笑い狂うピエロの片手にはぐにゃぐにゃと曲がる小さな何かが見えている。
かろうじて原型を留めているランドセルが、肉塊が何だったのか伝えている。

「"サーカスは人さらい"か…子どもの方はビネガーが染みて柔らかそう」

少年は直ぐ様リュックサックから水風船を取り出して迷いなくピエロに向かって投げつける。
勿論、付け合わせのピクルスも含めてだ。

パパッ、パンッ

幾つかの味気無い破裂音と共に割れ出た水が、薄い膜のように伸び広がりピエロ達を包んでゆく。

「あはっ、ビショビショ…ビショビショだぁー」
「…頂きます」

手を合わせた少年の一言を合図にピエロの体についばまれた様な穴が次々と開き出した。
身を包み込む水には赤い血が滲んでは消え、肉が千切れては消え、仕舞いには白い骨もガリガリという音ともに消えていく。

「ガボバ、痛イ、イヒひヒ、やっと…ヒハヒッ、し、アハハハ、ねる、ゴボボッ」

脂の乗ったステーキ肉と付け合わせの酢漬けの肉が、水の塊に呑まれて徐々に消滅していく。
心なしかピエロが泣いているように見えたが、それが果たして演技なのかを知るものはこの世にはもう居ない。

「けぷっ………」

そして、少年は再び気だるそうに何事も無かった様に壁にもたれ掛かった。

(何処へと続く)

狗神・・?・・?・??
8‥???・・
・・??・???・・・?・?
?・・?・・??・?
再‥?嫉・・???・・?
単発・・?乙?・?・・少年・?格好良・??・????
??黒服??・?・・?乳・・
ピ‥??捻・??・・?死????
・・???・??人乙・?
悲喜・・?消・???・???・・???
警擦・??・?・・?・?殺?・・??・?殺

>>416
執筆と代理乙でした
この能力応用が利いて良い能力だよなあ
これ生かしたバトルをもっと見たいぜ
サーカスに呑まれたおっちゃんの切なさも有って素敵でした
>>417
文字が化けて怖い(´・ω・)

乙ですの
ショタ可愛い(
そしてピエロの最期に思わず泣いた…

>>417
スマホのクソ仕様の所為かと思ったらPCでも化けてたでござる
こわい

はがけないの人乙ですー
過去に出てきたあの人とかこの人とか出てきますね
悲喜の独白がいつも通りで何よりでした
次あたりでナージャさんの回収に巻き込まれるんですね、わかります
単発の人も乙ですー
投下の間隔が早くなっててこれは期待
少年の初めての戦闘シーンが凄かったです
ただここまで強いと逆に生き残れるか不安なのです…

単発の人乙ですー
お芋が好きな黒服さん可愛い
そしてピエロの最後のセリフに泣いた

前回までのあらすじ

視点を変えて紡がれる恐怖の裏側
悲しい怪物、正義の味方、我欲を求める悪党、そして現れる財団Bの理事長
しかし水面下で始まる夜刀浦市を巻き込む戦いの気配なんてガン無視して路樹は弟とだべっているのであった



 ラーメンをお盆に載せて弟が扉を開ける。
 出前のラーメンは二つ。

「ほらジルちゃんさん、食べていいぞ」

「ありがとうございます!」

「ナージャさんもどうぞ」

「え、あ、ありがとう
 ねえそれより……」

「まあまずは食べてください」

「……はい」

「なあ路樹、その遺体の回収とやらに付き合わなくて良いの?」

 二人がラーメンを食べておとなしくなっている間に僕は尋ねる。

「なんかすげえ違法な香りがするからパスだわ」

「でも契約してくれたなら一緒に来たって良いでしょ!?」

「食いながら喋るな」

「はーい……」

 見事な調教ぶりである。

「実は僕としてもその遺体の奪還って反対なんだよねえ」

「ほう、兄ちゃんにしては珍しいな。常識的なことを言うこともあるんだね」

「なんかこうね……主人公っぽくない」

「ん?」

「吸血鬼と少年が突然出会ってそこから冒険活劇が始まるのは良い
 だがその後のストーリーがグレーな団体の下働きってのがつまらないわけだよ
 そこは少年がグレーな団体から吸血鬼の美女を救い出してハッピーエンドとかそういうのが良い」

「少年って歳じゃねえわ」

「そうか、まあそこはどうでもいい」

「財団はグレーな団体じゃないし私は自分の趣味で所属してるもん」

「だから理想って言ってるじゃないですか
 財団はどう見てもブラックだし、ナージャさんは思ったよりポンコツで助けたいって感じがしないし
 女子(ヒロイン)力低すぎるんですよねナージャさん
 むしろボスキャラっぽい」

「絶対に許さない」

「その点ジルりんはヒロイン力は高い
 あざといキャラクターしてますよ
 でもメインヒロインというにはちょっとアクが強すぎる」

 ジルりんはラーメンタイムの為僕の話を聞いてないらしい。
 最初はもう少ししっかりした娘だと思ってたんだけどそんなことなかったぜ。

「悲喜、後で殺す」

 ラーメン>僕
 なだけだったみたいです。

「まあとにかくだ、理が通らないことはやる気にならないわ
 やりたい奴らを止める気もしないけどね
 他人の趣味に一々何か言うのも無粋だし」

「だよなあ」

 そこでドアのベルが鳴る。
 
「今度はピザかな?」

 僕は財布を持ってドアを開ける。
 若い男、予想通りにピザの配達員だった。
 お金とクーポンを渡してドアを閉める。

「申し訳ありません六条様」

 金を払い間違えただろうか?
 僕はドアを開ける。
 今度はそのピザ屋の男が寿司を持っていた。

「少々お宅に上がらせていただいても?」

「貴方が理事長ですか?」

「ええ」

「どうぞどうぞ」

 そう言うと男は当たり前のように家に上がり込む。
 まるで覇気を感じない。
 本当に財団なんて大組織の長なのか疑わしくなる。

「お邪魔いたします」

 礼儀正しく一礼してから彼はドアを開けて部屋に入る。
 彼の背後で僕は当然のように組織の黒服から奪っていた光線銃を懐に忍ばせる。
 面倒だったら殺そう。
 僕と路樹がやる気になればそれほど難しい話じゃない。
 ナージャさんにも悪いがもう一度死んでもらおう。
 ついでに猿の腕の能力の実験体になってもらってもいいかもしれない。
 お前には殺気がない、とジルりんに言われた事がある。
 僕は戦闘態勢に移ってもそうと思われないところがあるのだそうだ。
 それは多分“殺しても殺さなくても良い”と思っているからだろう。
 どっちでもいい。
 そうなったならやる。ならないならやらない。
 全ては流転し変化する。
 なのに何故思いを定めなければならないのだ。
 人など反応の集合体であって、意思など幻想にすぎないのだ。
 なんて考えながら理事長の背後から引き金を二回引く。
 光線銃が理事長の胸と頭を貫いて、彼はそのまま呆気無く倒れた。

「理事長!?」

 ナージャが悲鳴をあげる。
 ラーメンを食べ終わっていたジルりんが彼女の首筋にそっとナイフを当てる。
 
「ナージャさん、動かないでください」

 ジルりんと目を合わせて頷く。
 ポカンとする弟。

「理事長さん、勝手に弟を巻き込まれると困るんですよ」

 僕は理事長の死体に光線銃を突きつける。

「遺体の回収でしたっけ?
 この左腕、どこの聖者の遺体なのかは知りませんが勘弁して下さい
 僕としては聖者の遺体みたいなものが有るならばそれを回収するのはイケメンな主人公と可憐なヒロインって決まってるんですよ
 得体のしれない魔術師結社がはるか昔の聖者の遺体を集めているなんてちょー悪役っぽくて気に入りません」

 早口に捲し立てる。
 光線銃では殺せてないのは解ってる。
 目の前の死体も仮のものだろう。
 だがこいつが僕に対して反撃に移る瞬間、僕とジルりんが場所を入れ替えてジルりんにカウンターをさせる。
 ジルりんの方を見ると彼女はウインクしていた。

「……すばらしい、そのエゴは非常に素晴らしい」

 部屋中に声が響く。
 どこから聞こえているかは解らない。
 辺りを見回している間に目の前の死体が光の粒となって消失し始めた。

「その寿司は皆さんで分けてください
 私は仕事を思い出しました
 ちょうど財団のメンバーに一人空きが出たので埋めなくてはいけません
 六条悲喜、ナージャとの入れ替わりなどではなく貴方をその空きを埋めるメンバーとして財団に迎えます」

「り、理事長!?」

 ナージャさんは驚いたような声をあげる。

「貴方のご両親に言い訳が面倒なのでね、申し訳ありません」 

「お待ちください理事長殿、僕が財団に入るのやだーって言った場合はどうするんですか?」

 僕はおどけた振りで尋ねてみる。

「左腕の使い方を知りたくないですか?」

「これからよろしくおねがいしますね理事長さん」

 これに乗らない手は無い。

「お、おい待て兄ちゃん!」

「それから路樹くん、君にも一つ耳寄りニュースだ
 “遺体”は正式な方法で保管しないとすぐに怪異を生み出す
 そして我々はその方法を知っている
 我々から遺体を奪った警察は……その方法を知っているだろうかねえ?
 いや知っていることを切に願うよ、これは本当だ。心から“遺体”が正しく取り扱われていることを願っている」

 それを聞いて路樹の顔が青ざめる。
 今のでこいつは迷った。
 僕と違って正義感の塊であるこいつは今この言葉で確実に迷いを持った。
 
「まあ我々の方で遺体はどうにかしよう
 遺体の回収任務を希望するメンバーは多いしね
 だが君は遺体のことについて知ってしまった
 後は君の自由意志に任せるだけだ
 君は財団とは関係の無い一般契約者にすぎないんだからね」

 理事長は笑っている。
 姿は見えないがそう感じる。
 結局、こいつの思うとおりに事態は動いている。
 こいつはまったく戦わずに、勝つことも負けることすらもなく目的だけを完璧に成し遂げた。
 僕には知識を、弟には正義感を、それぞれの求めるものを提示しただけなのに。
 

「それでは私は帰るよ。悲喜くん、君は飯綱大学の薬学部の学生だったね?
 実は奇遇にも私も同じ大学の出身なんだ。学部は違うし院は別の場所だったけれどもね
 だから一人の先輩としてまた会える日を楽しみにしている。それじゃあさよなら」

 再び静寂が広がる。
 面白い。ああいう奴はすげえ面白い。
 ラスボスにしても良い。実は善人で更に巨大な敵と戦ってるのかもしれない。
 どう転ぼうとああいうキャラの居る物語は大好きだ。

「路樹、どうする?」

「決まってるだろ、あの理事長とやらの誘いに乗るさ」

「警察に喧嘩ふっかけるの?」

「まさか、その逆だ」

 こいつ、何考えてるんだ?
 いや分かるといえば分かるけど……それはあまりにも非現実的すぎる。
 だからきっとありえない筈、だけど怖い。
 まあ良い、迷うのは後だ。

「じゃあ僕達は僕達の部屋に戻る。課題も溜まってるんでね
 お前もしっかり勉強しろよ」

「分かってるよ」

「なんか有ったら呼ぶ」

「任せろ、行くぞジルりん」

 ジルりんはナージャを離してすっと立ち上がる。

「ごめんねナージャさん」

「いやまあ……良いわ、全部丸く収まったし」

「着せ替え食らった時の借りは返したってことで」

「解ったわ」

 僕はジルりんを連れて弟の部屋を出る。
 そして自分の部屋に戻って僕はのんびり大学の勉強、ジルりんは最近買い与えた携帯のワンセグでテレビを見始めた。


【僕は小説が書けない 第十五話「我儘な人々」 つづく】


ここで恒例の全レスタイム
>>414
きっと平行世界だから直接の関係は無いかもしれないしもしかしたらあるかもしれない
ただまあ正義の味方なんてろくなもんじゃない
それを貫くから好きなんですけどね
九郎くん達はわりと幸せだと思う
子供欲しいねえきゃっきゃうふふ若夫婦みたいな感じ
多分いちばん幸せカップルなんじゃないかなこいつら
>>415
マシマシラーメンは東京に修行に行った九郎くんが余り物で適当に作ったラーメンが原型だったりします
コストがあんまりかからないのでのでかなり儲かる設定だったりします
妖神グルメ的なSAN値の吹き飛ぶ調理は厨房の奥にて行われてます
未来の人々はちょっと設定変えたりなんだりしながら物語の本筋とはあまり絡まずに出る予定です
今回出た二人は活躍回有りそうですけどね
現在の登場キャラの強さはきっと九郎さんが頭ひとつ抜きん出てる感じで最強です
才能が有ってなおかつ努力してて都市伝説との相性も完璧で守るものまで有るって感じで
次点で理事長かなあ
署長はもう只の人間としては限界なんだけど、所詮妥協しないだけの只の人間だし
>>420
悲喜くんは常にマイペースなんです
昔からこれじゃあなかったんだけど……みたいな話をこれからする予定です
昔はもっと熱い感じの子だったんですよ
良きにつけ悪しきにつけ
色々有ったんですよ
過去キャラゲストシリーズはこれからも有る予定……かな?

「あのさ」

「……何?」

「知り合ってから結構経つじゃん?」

「んー、そう言われれば長いかもね」

「そろそろさ」

「契約はやだ」

「なんでさ、そろそろいい頃合じゃない」

「下手したら飲まれるんだよ? 全然良くないよ」

「大丈夫だって、これだけ長くいるんだしさ」

「い・や・だ」

「じゃあいつ契約するのさ?」

「しない」

「そこは今でしょ! ってところじゃんか」

「そんなノリはイヤ。て言うか契約がやだ」

「大丈夫だと思うんだけどなー」

「失敗したらご飯作る人いなくなるよ? ひとり鍋は寂しいよー」

「あ、なに。今日鍋なの?」

「うん。今日は石狩鍋」

「おー、いいねいいね。鍋はあったまるからいいよねえ」

「コンロ出して」

「おーけー。鍋、鍋、石狩鍋ー♪ 味噌と鮭との絶妙なハーモニー♪ いーしーかーりーなーべー♪」

「……単純で助かるわあ」

おしまい

リハビリがてらに投下。
反省も後悔もしない。なぜなら石狩鍋は旨いから。

どっちがどっちかはあなたの心の中に。

「ほ、ホントに大丈夫?」
「おう、ちょっと疲れただけで、ちゃんと歩ける」
「無理しないでね、光陽……肩を貸すくらいなら、私も平気だから…」

サンキュー、と笑顔で返し、歩き続ける光陽
しかし少しふらついている事は、美菜季にも分かっていた



2011年10月28日―――「マヤの予言」に記されたXデー
平凡な中学生だった仲橋 光陽は、幼馴染の松葉 美菜季と帰宅している途中で、
二足歩行をするジャガーの化物に襲われ、彼女を守る為に死亡した
だが彼は蘇り、それどころかジャガー怪人を撃退してみせたのだ
架空のキャラクターである筈の、『ゲンガー』に姿を変えて……




「…ふぅ、やっとついたぜ」

既に日付が変わっている事を携帯電話で確認しつつ、
光陽はある喫茶店の前で立ち止まった
『メシヤ』という看板を掲げたこの店は、美菜季の父親が経営している店
すなわち光陽と美菜季の家である
既に扉には「CLOSE」と書かれているが、明かりが点いていた
恐らく、2人の帰りを待っていたのだろう
光陽が勢い良く扉を押すと、からんからん、と鐘が鳴った

「おやっさん、ただいま!」
「おう! 遅かったな、ホテルにでも行ってきたか? ヒューヒュー♪」
「ちょ、ちょっとお父さん!」

片づけをしながら陽気に笑うこの男こそ、
喫茶店『メシヤ』の店長にして美菜季と光陽の父、松葉 円樹(マツバ エンジュ)
左目に大きな古い切り傷がある為に少々強面ではあるが、
見ての通り気さくな人物で、学生を中心に店共々好評である
尚、美菜季がまだ幼かった頃に妻を亡くしてから男手一つで美菜季、そして光陽を育てている為、
料理は得意であり、特にカレーは店の看板メニューにもなっている

「ハハ、ごめんよおやっさん、俺は先に寝るから」
「おっと、晩飯まだだろ? 食ってけ」
「いや、腹減ってn」
「食ってけって」

ことん、と皿一杯に盛られたカレーライスがテーブルの上に置かれる
円樹の真剣な目つきも相まって、光陽は席に着きスプーンを持って渋々食べ始めた

「……あれ?」

一口食べた瞬間、彼は違和感に気付いた
歩くのがやっとな程に疲労していた身体が、突然軽くなった

「ッヘヘ、疲れがとれたろ?
 このカレーにゃ、俺のダチから貰った「竜血」ってぇ代物を使ってある」
「リューケツ?」
「世間じゃ都市伝説と呼ばれてるモンだ……お前さん等が戦ったのと同じ、な?」

かちゃっ、と思わずスプーンを落とす光陽
立ち上がり、美菜季を庇うように咄嗟に身構える


「お、おやっさん……何か知ってんのか?」
「はっはっは、そう硬くなるなよ、俺もまだやんちゃしてた時に似たようなことをやってたもんだ
 まぁ、流石に“人間じゃなくなる”なんてことは無かったけどな?」
「っ……お父、さん?」
「そんな訳で……俺もお前達の親だ
 親には、子供がどんな事件に巻き込まれたのか知る権利がある
 勿論、言いにくい事なら強制はしない……話してくれるか?」

ちら、と2人は顔を見合わせた
互いに頷き、光陽は円樹を見据えて、先程起こった出来事を話し始めた

数分後

「っははははははははwwwww
 都市伝説になっちまったのか光陽wwwwwwwそりゃ良いやwwww」

円樹は涙を流しながらテーブルを叩いて爆笑していた
無論、一度命を落とした光陽も、息を吹き返したとはいえ一度想い人を亡くした美菜季も、
今回の事は笑い飛ばせるものではない
尤も、互いの想いについては話してはいなかったのだが

「わ、笑うなよおやっさん!」
「こっちも大変だったんだからね!?」
「ははは、わ、悪い悪いw そうかそういうことだったのかw
 嫌な思いもしただろうが、無事に帰ってきてくれてよかったよ」
「でも分からない事だらけだ
 都市伝説って何なんだ? この漫画みたいな力は、一体……?」
「そいつぁ、俺なんかよりも詳しい奴が身近にいる筈だぜ?」
「え?」
「身近って…どういうこと?」
「ま、今日は疲れたろ、運良く土曜日だしゆっくり休め
 慌てなくとも近い内に分かるさ」

そう言って円樹は立ち上がり、空っぽになった皿を下げる
光陽も美菜季もさっぱりといった表情だが、大きな欠伸を一つすると、
それぞれ寝る支度をする為に自室へと向かった







――――――――――――――――







あれから1週間が過ぎた

「まさか神崎が都市伝説の関係者だったとは……」

テーブルの上に突っ伏すようにして座りながら、光陽は呟いた
他に客が来ていないから良いものの、傍から見れば行儀の悪い客にしか見えない

「確か、契約者っていうんだっけ?」
「神崎だけじゃない……極も、担任の未央先生も……あと2年と1年にも何人か……」
「本当に身近にいるんだね…」
「ははは、特にこの町は多いぞ
 理由は知らんが、都市伝説が寄りつきやすいみたいでな」
「へぇ……後は、あいつが怪しいんだよな」
「うん、黄昏くんね……」
「ん? まだ会ってなかったのか?」
「インフルエンザで1週間お休みで、ずっと学校に来てなかったの」
「てか、おやっさん、もしかして裂邪が――――――――」
「今晩もー 働くぞー 平和を守るためー
 そいつが俺等の仕事だよー ヤムダムヤムダムヘーイ」
「あれ、黄昏くんかな?ナンノウタナンダロ…」

からんころん、と鐘が鳴った
扉の向こうにいたのは、右目が髪で隠れた黒尽くめの少年と、青い髪の少女だった

「おやっさん、久しぶり!」
「おう裂邪! 元気そうだな! 髪が伸びたんじゃないか?」
「ずっと寝てたもんでね」
「黄昏くん、ミナワちゃん、いらっしゃい」
「こんにちは。御心配をおかけしてすみませんでした」
「ううん、元気みたいで良かった。どうぞ」

美菜季に案内され、少年と少女―――黄昏 裂邪とミナワは席に着いた

「いやー病み上がりで腹減っててなー
 それに体力もつけなきゃなんないしさ
 だったらここでおやっさんのカレー食うしかないだろってことで来た訳で」
「嬉しいねこの野郎、今日はサービスだ! 大盛りでも普通の値段で良いぞ!」
「激辛円樹カレー大盛りで! あと胡麻ドレサラダとメロンクリームソーダ!」

「もう! 調子に乗っちゃダメよお父さん!
 黄昏くんも、この店潰す気!?」
「「えー」」
「文句言わない! 定価でお支払い願います!」
「ウヒヒヒ、まぁいいや、さっきの注文で」
「わ、私はジャスミンティーをお願いします」
「んーまぁこんな美味い飯、10%OFFでも勿体ないけどな。罰が当たりそうだ」
「料理には特に力を入れてるからな
 腹が減った人に元気になって貰いたい!助けたい!そんな願いを込めてんのさ」
「店名も凝ってるしな、“飯屋”と“Messiah”をかけて『メシヤ』
 確かにおやっさんの飯は俺達の救世主だよ」
「はっはっは、今日も言ってくれるなぁお前は
 今日は特別サービスd」
「ダメ!」
「「けち!」」

等と冗談か本気か分からない会話が続いた中で、
唯一言葉を発していなかった光陽がようやく口を開いた

「……悪い、おやっさん。ちょっとだけ店を貸切にして貰って良いかな?」
「ん、構わねぇよ」
「どうしたの? 顔色悪いけど…」
「いや、大丈夫だ」

店の前に『現在貸切です』の表示を出し、
光陽は改めて、裂邪へと言葉を投げかけた

「……裂邪、お前……」
「ウヒヒヒヒヒ…暫く会わない内に何かあったみたいだな、ゲンガー……いや、光陽」

にやり、と笑みを浮かべて裂邪は光陽に視線を向けた
彼の見せた怪しい笑顔は、光陽に異様な威圧感を与える

「どうやら聞きたい事が山ほどあるみたいだが
 先にお前の身に何があったか……聞かせてくれないか?」

ことん、と裂邪の前に大盛りのカレーとサラダが置かれた






数分後

「ヒハハハハハハハハハハwwwwwwww
 都市伝説になったってマジかよwwwこれ知り合いに言いふらして良い?www
 あ、おやっさんカレーお代わり」
「な? やっぱ笑うだろ?wwwwほい、一丁あり」
「だから笑うなっての!」
「そ、そうですよ、2人とも大変な事に巻き込まれていたんですから…」
「ぐすっ……ミナワちゃん有難う……そういってくれるのは貴方だけよ……」
「す、すまん、悪かったw
 …まぁ、原因の一つは俺だと言っても過言じゃないからな」
「え?」
「あぁいや、何でも無い」
「それで早速なんだが……都市伝説って何なんだ?」
「知っての通り、「口裂け女」とか「トイレの花子さん」、「ギザ十」やら「恐怖の大王」、
 果ては民間伝承やネットロアや神話まで、この世に跋扈する荒唐無稽な物語が具現化されたもの
 それが都市伝説だ
 例えば、お前がなっちまったその都市伝説は「GENGA HA NAKAHASHIKOYO」って都市伝説だな」
「あ、それで“ゲンガー”って呼んでたのか!?」
「他にも理由あるけどまぁいいや
 都市伝説の誕生理由は諸説あるようだが、一番大きいのは多くの人に信じられている事だろうな
 人がその存在を信じるが故に、本当に世に出てしまう…願い事が叶ったようにな」
「へ、へぇ……あ、そうだ、神崎に聞いたんだが、契約ってのは?」
「そもそも都市伝説が存在する為には、誰かの記憶に強く刻まれていなければならない
 それ故に多くの都市伝説は、自身が語られた噂に忠実に行動を起こす事がある
 「口裂け女」なら、子供を切り刻んで殺したりしてな」

「っ……」
「だが一方で、平和的な方法で己の存在を保とうと考える賢い都市伝説も存在する
 その方法こそが“契約”だ
 大勢の人間では無く、たった1人の契約者に記憶して貰う事で己の存在を確立させる
 さらに、契約するとその都市伝説が持つ力をより強力にする事が出来る」
「聞く分には凄ぇけど…何かデメリットとかないのか?」

「あるんだなそれが
 人間にはそれぞれ“心の器”ってのがある
 これは人によって大きく、また小さくもある
 1個契約するのが限界だったりするし、俺みたいに2個以上契約できる事もある」
「に、2個以上……」
「ち、ちょっと待て、それって1個も契約できない程小さかったらどうなるんだよ?」
「その答えは目の前にいるこいつだ」
「えへへ…」

裂邪が腕を回して抱くと、ミナワが照れながら笑った
が、聞いている2人にとっては笑い事では済まされなかった

「み、ミナワちゃん……都市伝説、だったの?」
「はい、元々は人間だったみたいなんですけど、その頃の記憶がなくて…」
「てことは…都市伝説との契約が失敗したら…」
「都市伝説と同化して、人間じゃ無くなるって訳だ」
「都市伝説に“飲まれる”っていう言い方が一般的なんですけど、
 作者さんが『蒼穹のファフナー』にハマっちゃって、どうしても『同化』という言葉を取り入れたいそうです」
「さくしゃ?」
「うん、メタ発言はやめような
 おやっさん、カレーお代わり」
「あいよ!」
「喋ってんのに早いな!? もう3杯目だぞ!?」
「恐らくここの売り上げの3割は俺が担ってると思う」
「大体お父さんおだてて値切ってるよね」
「でも“おやっさん割”は人気だろ?」
「そんなサービスやってないから!?」
「おやっさんと呼んでくれ(キリッ」
「お父さんは黙る!」
「はい( ´・ω・` )」
「…あ、そう言えばおやっさん、裂邪が契約者なのを知ってたみたいだけど、いつから?」
「何だお前知らなかったのか
 おやっさんは俺の親父と幼馴染で、昔から友人と集まって都市伝説やっつけたりしてたんだよ
 それから今のお前みたいに都市伝説の気配とかが分かるようになったんだ」
「え、お父さんホント!?」
「言ってなかったが、この傷…都市伝説絡みでやんちゃしてた時に出来たんだ」
「それも驚いたがおやっさんと裂邪の親父さんが幼馴染だった事に驚いたよ」
「ヒヒヒ、世界は思ったより狭いからな
 都市伝説と関わりを持った以上、それは嫌でも経験させられるさ」
「…? それってどういう……」

「都市伝説同士、そして契約者同士は互いに引き付け合う
 それは友好関係を築くチャンスでもあるが、多くは大体戦闘だ
 時には、人間と戦う場合もあるってことを頭に入れとけ」

思わず美菜季が両手で口を覆って声を押し殺した
光陽も思わず息を飲んだが、同時に疑問も湧いた

「…お前は……裂邪は、人間とも戦ったのか?」
「ウヒヒヒ、まぁな。結果はまぁ、この元気な姿を見れば予想はつくだろ
 勿論、その代償も……大きかったが」

裂邪は長く伸びた前髪を右手で退けてみせた
今まで見えなかった右目の大きな傷が、戦いの痛々しさを物語っているようだ

「きゃっ……」
「これくらいで済んで寧ろ運が良かったんだ
 戦いの中で命を散らした奴等も、俺は見てきた
 俺自身、何度か死にかけたりしたけど
 そういう意味では、お前等も嫌な思いはしただろうが、運は良かったんだ
 大切にしろよ、その命
 おやっさん御愛想ー」
「毎度ありー」
「やっぱ食うの早ッ!」

ミナワを連れ、早々と会計を済ませると、
裂邪は扉を開けて、足を止めて振り返った

「次会う時は戦場で……なんて事が無いよう祈ってるよ
 んじゃ、明日学校で」
「ご馳走様でした♪」

からん、と鐘が鳴り、店内が静まり返った
不吉なこと言って帰んなよ……、と項垂れながら、光陽は店の前の『貸切中』の表示を外した



   ...Next Story

もはや皆忘れたであろう連載『俺は幻牙』第2話
第1話はこちら→ ttp://www29.atwiki.jp/legends/pages/4737.html

説明回、の筈が何言ってんのか自分でもさっぱり分からん……話を詰め込みすぎた
やはり裂邪なんて出すんじゃなかった…
因みにれっきゅんが途中で歌ってるみょうちくりんな歌はアニメ『サウスパーク』参照

風呂から帰還、改めて感想をば

>>423-426
僕は笛が吹けない…じゃねぇや、僕は小説が書けないの人乙でしたの
理事長さんカッケェ……ラスボス感がやべぇ
今後の活躍に超期待ね
路樹くんも何やらかす気なんだろう……不安だがそこが良い

>>428
誰かと思えばぼくの物語の人だったのか……お久しぶりですのン
イチャラブにしか見えないけどカップルで妄想しても良いよね答えは聞いてない
末永く爆発しろ(

ぼくものの人乙でした
大変な事に気づいてしまいました
これ男同士だって妄想したらすげえ興奮する
女同士って妄想したらもっと興奮する
ストレートでも(ry
いかんわ、恋愛脳ですわ

カゲオの人おっつんつん
良いんだ……説明会が多少長くなるのは仕方ないんだ
犠牲の犠牲の犠牲になったのだ……

大魔女 ☆8 At 3200 Df 2100 闇属性 魔女族
絶望 ☆8 At 3000 Df 2500 光属性 悪魔族
プロト・ペルソナ ☆8 At 2900 Df 2800 光属性 悪魔族
炎細胞量0確定にも 常に∞のなくない者 即ちこの世に存在すべからざる者に
深淵の皇神 解放たれて 冥府魔道を突進まん ロード・オブ・ナイトメア ☆14 At 4000 Df 4200 風属性 創造神族
しろいいのり 通常罠 ねこちゃんしか つかわなくする。

>>437
>いかんわ、恋愛脳ですわ
いいえ、変態脳です(

>良いんだ……説明会が多少長くなるのは仕方ないんだ
ですよね!
というか第2話=説明回ってのが俺の中で定着してる気がしてならない…どうしよう

>>423-426
はがけないの人乙ですー
悲喜、ナージャさんdisったら俺が許さん
そして路樹くんの意図が読めるようで読めない

>>427
>署長はもう只の人間としては限界なんだけど、所詮妥協しないだけの只の人間だし
それこそが彼の強みなんだと思う俺。あきらめない奴が最終的に笑うのが好きなんだよ

>>428
乙ですー
なんだかノリがゆるいプロポーズみたいでいいね
そして石狩鍋美味いよ石狩鍋

>>430-
シャドーマンの人乙ですー
おお!極の名前が!使っていただきありがとうございます!
れっきゅんかっこいいもげろ
あと光陽ももげろ
あとその大盛りカレーライスとクリームソーダくれ下さい(

やらかした
極くんの名前お借りしました有難うございます(遅ぇ

>>440
>れっきゅんかっこいいもげろ
食って喋ってただけなのにカッコいい……だと……!?wwww

>あと光陽ももげろ
(光陽>何で俺まで!?

>あとその大盛りカレーライスとクリームソーダくれ下さい(
因みに創業以来激辛円樹カレーを完食したのは裂邪のみ……
と言いつつ、実はスパイスの配分とか材料を間違えて滅茶苦茶辛いカレーが出来て処分に困ってたら、
裂邪が「俺が食う」とか言い出して食べ始めた結果
「これ売れるぞ!」「いやお前しか食わねぇよ!」
『メシヤ』の裏メニューになったとさ

グレイブエンカウンターズ見ましたか奥さん?
ホラー映画見るたびにここのスレの住人なら楽勝突破して悠々帰るんだろうなあって思っちゃってつらい
>>440
やっぱヒーローってのはそうじゃなくちゃねえ
何かできるからヒーローじゃなくて何かし続けるからヒーローみたいな

そうだ書き忘れ

>>440
>あきらめない奴が最終的に笑うのが好きなんだよ
ごめんなさい
どんな状況でも最後まで諦めない奴をどん底に叩き落とすのが好きでごめんなさいorz
這い上がらせない! 零れ落ちろ!(←最低

>>441
>グレイブエンカウンターズ見ましたか奥さん?
何か聞いた事あるな
廃墟に突入するっていうドキュメンタリー風の海外ホラーでしたっけ?
ポスターが怖すぎて修正版を作ったとか



3時33分33秒――

学校のトイレは牙をむく――!!



ガチャ ギーーーーーー

「3時ババアじゃあああ」ニタァ



そして、4時44分44秒――

学校のトイレは牙をむく――!!



ガチャ ギーーーーーー

「ヨジババじゃあああああ」ギャーーース



さらに、5時55分55秒――

学校のトイレは牙をむく――!!!



ガチャ ギーーーーーー

「五時ババアじゃあ!ひゃっひゃああああ」ミャッミャッ♥




かくして、6時6分6秒――

学校のトイレは牙をむいた――!!!!



ガチャ ギーーーーーー

「えーどうも、ワタクシ思考盗聴警察の神田でございまーす」

「一人だけ契約者枠でありまーす」

「婆さんズがおっかないものでありますですねー」        ナンジャトッ!? トッテクウゾッ!!! ミャッミャッ♥>

「という訳で、今後も思考盗聴警察、いい子いい子の思考盗聴警察を、よろしくお願いしまーす」

「では、午前零時くらいをお伝えしまーす、サザエでございまーす」





――学校のトイレに巣食う魑魅魍魎は、今日も元気である



【糸冬】

職場で噴いたじゃねぇか畜生wwwwww乙wwwwwww

>>444
ワラタwwwwww

やはり人間が一番恐ろしいってことか……(違います)
脳内では地の文があの木曜洋画劇場の予告みたいな声で脳内再生されてます

何が一番恐ろしいってなんか読んだら腹筋が変な感じになるのが恐ろしい

単発の人様、はがけないの人様、シャドーマンの人様投下乙ですー

赤マントの口調が好みすぎてやばい…ナニカさん強くて可愛いなー
おお、懐かしい人達が…悲喜さんの取り乱しっぷりにクスッと来てしまった
水ようかん食べたい…そしてピエロの最期が切ない…
理事長は一体何を企んでいるんだ…
とりあえず爆発しろーと言っておきます
円樹さん、いいお父さんだなー
れっきゅんは今日もかっこいい…
笑いすぎてお腹痛い…五時ババア恐るべし…

>>401-402
>そういや男×女で男がヤンデレってそうそう見ないな、何か新鮮
>ヤンデレは男女問わずよいものです
毎回そうですが、欲望に忠実になってみました
自分の行いに苦悩・葛藤したり、正気と狂気の間でもがき苦しむヤンデレおいしいですww

>>403
ぴゃ!?
今まで花鳥風月の青樹月夜ちゃん(「月の光を浴びると気が狂う」の契約者)はヤンデレだと信じて疑っていませんでした…すみませんでしたorz

>>443
>どんな状況でも最後まで諦めない奴をどん底に叩き落とすのが好きでごめんなさいorz
>這い上がらせない! 零れ落ちろ!(←最低
…諦める奴をどん底に蹴り落とすのが趣味でごめんなさい…
サダメに屈しろ!跪け!絶望の中で朽ち果てろ!(

前回のあらすじ
・前回のあらすじは今回はお休みです


「行きますよナージャさん、貴方の力が必要です」

 俺の部屋から兄が消えたところで俺は立ち上がる。

「どこへ?」

 わざとらしく嫌らしく、どこか淫靡な気配すら漂わせ、彼女は微笑む。
 兄ならばここでジョークを飛ばして彼女をおちょくる程度のことはするだろう。
 俺はそういうのは苦手だから単刀直入に話す。

「警察、遺体が保管されているならその保管方法を調べたり、警察関係者に警告します
 まあ聞いても聞かなくてもその辺りはどうでもいい
 警察が不手際で何人の人を傷つけようがそれはそいつらの不手際であり、責任者が腹を切れば良い
 奪いたいなら財団なり……さっきあんたから聞いた組織なり勝手にやれってね
 遺体が双方の管理下を離れて何も知らない人々を傷つけるような事態が起きたら俺と貴方で蹴りをつけます」

 それで満足だ。
 知っていて何もしないのは気に食わないだけなのだから。
 
「……蹴りをつけるって?」

「俺が遺体を盗ります。財団や警察の裏をかいて。遺体はひとまず貴方に預けますよ
 それが俺と貴方との契約の条件に入っているわけですし」

「…………ふぅん、それは嬉しいわ。でも貴方は遺体にあまり関心が無いんじゃないの?」

「警察と財団が争って、決着がつかない混迷した状況になるならば絶対に兄ちゃんの介入がある
 無かったとしても嬉々として乗り込んできて更に引っ掻き回す
 そうなったら、兄ちゃんがまだそんなことをする元気を持ってたなら、兄ちゃんを止めるために力が必要だ
 そうならずに兄ちゃんがおとなしくしているならば俺だって動く必要はない」

「随分お兄さんが好きなのね」

「仲良し兄弟なんです、深夜まで糞映画一緒に見て突っ込みいれながら大爆笑しあうくらいにね」

「あら素敵、仲の良い兄弟って憧れるわ」

「まあ雑談はここまでだ。さっさと行きますよ」

 俺はそう言って部屋を飛び出した。


    ※    ※    ※


 弟の部屋から帰ってきてから僕はすぐに勉強を始めた。
 勤勉な大学生に与えられる時間は少ない。
 そうでない学生は知らない。

「おー悲喜悲喜! テレビでなんかすごいことになってる!
 生中継してるよ! 警察署の周りだって!」

 勉強を始めてからしばらくして、聞いている音楽を飛び越えてジルの声が届く。

「すごいのはテレビじゃないよ、事件は現場で起きているんだ」

「良いから見ろよ悲喜、絶対面白いから」

「今ドイツ語の予習してるから勘弁してくれ」

「もーしかたないにゃー、私がニュース実況してあげようか?」

 猫耳つけたジルりんっていいと思うんだよねえ。

「勝手にしな」

「じゃあ続けるよ、んーっとね……警察署が消えたって」

「マジか」

「マジだ」

「マジか」

 ショータイム!

\   \\   \  \\  , ェェェェェェ、\  \\ \
\\   \\   \  \,ィ三三三三三三ヽ.  \\ \
\\\   \\, -‐≦三三三三三三三三三ヽ   \\

  \\\    /   ィエミ ヾ三三三ツ" ̄`ヾ三ヲ\   \\
\  \\\  l     !三リ  ヾ三ヲ'   ヽ、  \  \   \ 「――――予習している場合じゃねえ」
  \  \ f三ミ        /三三     `ヽ.、 \  \
\  \  ` ヾ三        ヾ三三    ,ィ全、 \ \  \
\\  \  \.゛l    f≧  ノ三三  ./三三、   ヽ. \
  \\  \    、 fn,  ~   /三三".  ,'三三三、.  l  \
\  \\  \  .i≧ュ __,、 /三三"  ,'三三三三、 ノ
  \  \\  \ |三ミ≧≠三彡"    l三三三三三「\\
   \  \\  `!三三三リー - 、._ !三三三三三   \\
\   \  \\ }三三彡 \\\  ヾ三三三彡"≧,   \
  \   \  \.ノ三三リ\  \\\     ヾ三三ミ、
━━━━━━━{三三彡━━━━━━━━━━ ̄━━


「少し待て馬鹿」

 そう言われて素直に着席する僕であった。

>>448
>円樹さん、いいお父さんだなー
逆に悪いお父さんを書けないのが悔しいです、先生
……強いて言うなら裂邪か?(※ベクトルが違います

>れっきゅんは今日もかっこいい…
だから食って喋ってるだけなのに何故なんだwwwwww

>自分の行いに苦悩・葛藤したり、正気と狂気の間でもがき苦しむヤンデレおいしいですww
>サダメに屈しろ!跪け!絶望の中で朽ち果てろ!(
流石おねーちゃんぶれない歪みない、そこが愛しい(

>今まで花鳥風月の青樹月夜ちゃん(「月の光を浴びると気が狂う」の契約者)はヤンデレだと信じて疑っていませんでした…すみませんでしたorz


わ す れ て た !(おい作者


そんな連載あったなそういや(存在自体かい


>ぴゃ!?
かわいい

「今回はやけにおとなしいな」

「今行っても路樹とナージャが先回りしているからね
 痛くもない腹探られちゃあかなわない
 今回の僕は呑気に静観の構えですよー」

「は?」

「路樹の家にこっそり忍び込んでみろ、居ない筈だ」

「わ、わかった……」

 ジルりんの姿が薄くなって見えなくなっていく。
 気配遮断を行なっているのだろう。
 マンションの辺りも急激に霧が濃くなりだした。
 隠蔽能力の一端なのだろうが効率悪すぎるし後で調整しなくては駄目かな。
 予習の続きを少しやっているとジルりんが僕の背後に現れてこう告げた。

「確かに居なかった」

「だろうねえ」

「でもそれなら路樹さんが危ない可能性だって……」

「だろうねえ」

「まさかとは思うが路樹さんを見捨てるってことは」

「無いねえ、世界で一人の弟だからさ
 1時間以内に警察署がこの世に戻ってきたなら僕は黙ってる
 1時間が過ぎたら僕も動く、ナージャさんもいるけどあいつが心配だしね
 今回はそれでいい……あの理事長とやらのお手並み拝見もしたいしね
 もし路樹の身に何かあったとしても……」

 猿の手の使用回数はまだ後一回残ってる。
 そしてあの事件以来猿の手はピクリとも反応しない。
 恐らく僕に願いが無いからだ。
 当たり前だ、話の顛末からして遊び半分で猿の手に人の生き死に以外を願うのは恐ろしい。
 でも僕はもっと猿の手のことを知りたい。
 だからもしそうなってしまったならば僕はこれの使用を躊躇わない。
 そんなことを考える程度には僕は弟のことを憎み、また愛している。

「悲喜に考えが有るなら私は信じるよ」

「ありがとう、僕達にはまだ情報が少なすぎるからね
 ……ただまあ差し当たってはここを一端離れようか
 恐らくは組織の黒服の記憶操作か情報操作が始まる
 後者なら良いが前者ならば僕たちは相当面倒なことになるぞ」

 僕はそう言ってジルりんを伴って部屋を出た。



    ※    ※    ※


 都市伝説によって起きたと思われる殺人事件の捜査。
 これが俺の都市伝説犯罪対策課――略して都犯課――に入っての初仕事である。
 死んだのは六条靖菜、大学生になったばかりの二人の息子を持つ主婦だ。
 死因は鋭利な刃物で瞬時に全身を切り刻まれたことによるショック死。
 世間的には死体を修復後、心臓麻痺とされている。
 上の判断によれば犯人は切り裂きジャックとのことだがそれらしき都市伝説は現在夜刀浦市で確認されていない。
 そこで先行した組織の探索班は財団と思しき何者かの妨害により全滅。
 しかしそのことによって財団がこの街で何がしかの活動をしていることが突き止められた。
 先輩方は皆そちらの調査にかかりきりである。
 殺人事件より大規模な事件である以上仕方ないかもしれないがどうにも釈然としない。

「巡査部長ただいま戻りました」

 俺は夜刀浦市警察署の都市伝説犯罪対策課本部へと戻ってきたところだった。
 本日大捕り物が有ったらしく、確保された容疑者か証拠物件かよくわからないが何やら都市伝説特有の淀んだ気配がする。
 
「お兄さん」

「んあ? 俺のことか?」

 子供の声だ。
 呼ばれたらしいので振り返る。

「っぎゃああああああああ!?」

 情けなく悲鳴を上げて腰を抜かしてしまった。
 青白い肌、落ち窪んだ眼窩、赤いワンピースの少女がこちらを見ていた。
 何故だ。ビジュアルだけならばもっと恐ろしいものを見ているのに……この子が怖い。

「飯田くん、その子は只の人間だ。都市伝説による災害の被害者だよ
 そこまで怯えているのは失礼だ」

 肩をぽんと叩かれる。
 見上げるとこの警察署の署長がいた。

「私も丁度外回りから戻ってきたところさ
 どうしても私がやらなくてはいけない仕事でね
 ……さて静香ちゃん、これを巻いていなさい」

 署長は何喰わぬ顔で彼女の両目に包帯を巻く。
 この人は大丈夫なのだろうか?

「ねえ署長さん、そういえば、おばあちゃんが大事にしていた目はどこにやったの?」

「ああそれね」

 それにしてもこの役職のみで呼び合うというやり方はまだ慣れない。
 都市伝説に関わる以上、できるだけ名前は漏らすなという署長の指示らしいが一地方の警察署員のやることではない気がする。
 悪に名乗る名前はない!を組織単位でやってるだけじゃないかという噂も有ったりする。
 

「今は俺の部屋に置いてあるから静香ちゃんは心配しなくて良い
 巡査部長、外回りお疲れ様です。何か成果はありましたか?」

「組織の黒服が消えたところで気配が無くなってますね
 俺の霊視ではここが限界です
 視覚に依存した探知だと霧のようなものに阻まれてシャットアウトされるんです」

「そうか……探知系の能力者は少ない、君はこれ以上深入りせずに別の事件を頼む
 君の役目はまず死なないことだ。探知系能力者が居なければ我々も捜査ができん」

「……わかりました」

 せめて戦闘系の契約ができていれば、と思わずにはいられない。

「署長さん、おばあちゃんの目はちゃんとしまわないと駄目なんだよ?」

「え? ちょっとまってくれ静香ちゃん、それは聞いてな……」

 署長がそう言いかけた瞬間、俺の目の前の視界がグチャグチャにねじれる。
 
「なんだこれ!?」

 ねじれはあっという間に収まった。
 だが俺のいる場所がおかしい。
 先程まで居た本部ではない。
 無数のガラスケースを置いている部屋。
 ここは恐らく地下にある証拠物件保管室だ。
 空間を歪める都市伝説か?
 ならば何故俺を……いや待て、狙いは俺じゃない。
 署長とあの子供か?

「やあ其処の君」

 背中をなぞられるような寒気がして俺は振り向く。
 全身を白で固めた中年の紳士が俺のすぐ後ろに立っていた。
 
「少し、道を聞かせてくれないか?」

「え、あ……」

 ギョロリとした眼、それは一つではない。
 二つ、三つ、沢山。
 その男は数えきれない多くの眼球を全身に貼りつけている。
 
「ここの警察署の署長とお話がしたくってね」

 男の凍てついた眼が一斉に俺を射すくめた。
 遠くで、誰かの悲鳴が、幾つも幾つも聞こえる。



    ※    ※    ※


 どんよりと曇る空。
 何時も霧がかかる海辺の街。
 ここは夜刀浦。
 今宵の霧は少し、むせる。
 なんて前置きは抜きにして俺とナージャさんは警察署に無事到着していた。
 警察署の前で車から降りると更に霧が濃くなってきていることに気づく。
 これは急いだほうが良いかもしれない。

「ここが警察署です、ナージャさん」

「ふーん、思ったよりちっちゃいのねえ」

 警察署と病院はあまり好きじゃない。
 街で喧嘩してここに連れて来られた時に、妙に不健康そうな警官に延々と説教を食らったのだ。
 まあ弱い者いじめってのは良くなかったと思うが八人相手だったのだから過剰防衛気味でも許してほしい。
 病院は、母さんが死んだ時――まあつい最近なのだが――以来苦手だ。
 兄ちゃんは来なかった。
 父さんも来なかった。
 まあ俺も正直行きたくなかった。
 周りからどう思われてたかは別としてあの女はひどい女なのだ。
 何故俺を生んだ、と口癖のように兄ちゃんは呟いていた。

「なーにアンニューイな顔してるのよ
 このナージャさまがついているんだから大船に乗ったような気持ちでいなさい
 私達が遺体の力を手に入れて世界の王となるんだからね!」

「えっ、なんすかそれ」

「あの聖人の遺体はそれはそれは尊いものだからねえ
 集めたらなんでも願いが叶うって私は聞いてるわ」

「誰からですか」

「理事長から?」

 嘘だな、分かる。

「え、ええそうだけど」

「そうですか……」

 まあ黙っておこう。

「なによ、なんかあるの?」

「いえ別に、それより行きましょう。警察に話を……」

 俺は彼女から少し離れた状態で早歩きをする。

「わーすげえ外人の姉ちゃんだ!」

 声を聞いて振り返る。

「背たけえ!」

「え、私?」

 田舎の小学生が(沢山)現れた!
 男子女子共に珍しい外人さんを見て騒いでいる。
 流石夜刀浦、田舎である。
 東京に卒業旅行に行ってきた都会人たる俺としては情けない限りだ。

「こら田村くん! 精舎くん! やめなさい!
 すいませんウチの生徒が……」

 そして先生も現れた。
 若い女性でいかにもクラスの生徒に振り回されているという感じだ。
 ナージャに謝ってる。

「オー、ワタシこどもダイスキデース!
 むしろ恐がらないでくれてベリーベリーハッピーデス!」

 ナージャさん新境地開拓っすか。
 立派ですね。

「ワタシ小学校のセンセイになりたかったんデース!
 小学校の頃はワタシも日本で暮らしてたんデスガその時のセンセイが立派な人だったんデース」

「まあそうだったんですか……」

「ハイ、そうでし――――」

 べチャリ。
 肉塊の爆ぜる奇怪な音。
 小学校の教師だったものの破片が俺の顔に降り注ぐ。
 そして次の瞬間俺の真横を槍がすり抜けて壁に突き刺さった。
 子どもたちは笑ってしまう程静かで、それがまた逆にリアルだった。

「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!」

「ゲラゲラゲラゲラゲラ?」

「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!」

 三体程の顔が触手になった蛙のような化け物が少し離れた所で吠えている。
 二体は槍を持っていて、一体は槍を持っていないことからすると今の先生を殺したのがあいつか。
 俺は兄貴とは違う。力にロマンは求めない。
 さっきの車の中で契約は済ませている。

「初の実戦ねえ、滾るわ」

「あいつら、笑ってやがる」

「え?」

「笑ってやがる。人を殺して、笑ってやがる」

「ちょ、待ちなさい路樹。一人で前に出ないでよ!」

 顔についた血を拭う。
 全身が、毛細血管の一本に至るまで熱を帯びているのが分かる。
 俺は怒っている。

「楽しそうに、楽しそうに、本当に楽しそうにしやがってよ
 俺は嫌いなんだ
 自分の娯楽を最優先にして他人を踏みにじるような奴らが
 兄ちゃんみたいな奴らが嫌いなんだ」

「路樹聞いてるの?」
 
 まあでもあの兄はそこそこ好きだ。
 兄ちゃんも恐らく同じ事を考えている。

「ゲラゲラ?」

 蛙共が不思議そうな顔をしてこちらを見ている。

「其処のチビども、下がって物陰にでも隠れてろ」

 俺がそう言うと子どもたちは悲鳴をあげながら警察署の中に入って玄関の辺りへと逃げる。
 
「こいつらは俺が許さねえ」

「ああもう人の話くらい聞きなさい! 良いわこっちはこっちで勝手にやるから!」

 ナージャの体が赤い液体へと変わって俺の体の中に入っていく。
 俺の全身の血液を彼女で置換することによって彼女は心の力を最高効率で得ながら俺に治癒と怪力を提供する。
 これが俺達の契約の形だ。
 活性化された肉体の影響で髪が腰まで伸び、白く染まる。

「カァァァアアアアアアアアァァァァッ!」

 雄叫びを上げながら蛙の化け物へと直進する。
 奴らの反応速度をはるかに上回る動きで接近、一匹目の触手を掴んで首を引きちぎる。
 次の瞬間、俺の意思を無視して髪が蠢き周りの敵を一度に貫く。
 髪はいつの間にか赤く染まっていた。

「なんだこれ?」

「私の血液を染み込ませた、これで一瞬だけ自在に動くのよ
 精密性は無いけどパワーは折り紙付きよ
 一人の時は操作している暇無かったけどね」

 肌がビリビリと震える。
 分かる、これは殺気だ。
 同じ姿の化け物が八体、俺を遠巻きに囲んでいた。
 化け物はそれぞれ槍を構え、絶妙にタイミングをズラして槍を投擲する。
 ―――――――ああ、なんて温い攻撃だ
 タイミングがずれているならば一個一個対処するだけだ。
 吸血鬼の怪力と高速、そして俺の戦闘経験、単純な格闘戦に特化させたこのスタイルを小手先で破れると思ったのか。
 最初の槍を受け流し、体を捻って第二の槍を躱し、第三の槍を掴んで第四の槍を弾き返し、第三の槍を投げつけてビリヤードのように第五の槍の軌道を変えて、第六第七の槍をキャッチしながら高く飛び上がって最後の槍を躱す。
 真上から二本のやりを投げ返せば敵はもう全滅していた。

「路樹、真下に一匹潜んでるわ」

「構わん、潰せ」

「ああ……貴方って本当に素敵な男性ね
 蹂躙の美学ってのを分かっているわ。先手は譲ってあげないとねえ」

 美学ね、お前の油断があの先生を殺したんだがこの女は気づいているのだろうか。
 母さんみたいな性格した女である。
 まあ……嫌いじゃない。
 少なくとも俺はそういうのをできるだけ尊重したい。
 これからの話し合いが重要かな。

「キシャア!」

 落下する足元から怪物が飛びかかってくる。
 俺の体は足元から貫かれ……ない。
 吸血鬼の体にそんな貧相な槍は通らない。
 
「キキィ!?」

 化け物は初めて困惑したような声を上げる。
 俺は空中で槍をひったくって化け物の体に掌を押し当てる。

「行くわよ!」

 掌の先から破裂音がする。
 大量の血液を放射することで化け物の体を破壊したらしい。
 化け物に大きな穴が開いている。
 俺の掌に痛みも怪我もない。
 化け物の上に着地してじっと手を見る。

「再生させたわ。借り物の体なんだから気も使うわよ」

「ありがとう」

「お、お礼はまだ早いんだからね!」

 あたりを見回す。
 まだまだ化け物は多い。
 種類も数も限りない。
 だがまあ……どいつもこいつも弱そうだ。

「行くぞ」

 俺の体の中でナージャが笑っている気がした。




    ※    ※    ※


「最悪の状況だな」

 多数の民間人を巻き込みながらの異空間への転移。
 各所から悲鳴が聞こえることからして様々な場所に人間を襲う何かが居るってところか。
 完全に俺のミスである。
 とはいえここに来るまでに少女に話を聞くチャンスは無かったのだが。
 まあ何を言おうと俺の責任だ。
 俺が収集をつけよう。

「署長さん怖い顔してどうしたの?」

「……見えてるのかい?」

「うん、だって目が見えるのは当たり前でしょう?」

「そうか、そうだったね」
 
 静香を先に恋路に預けなかったのは今思えば良い判断だった。
 恐らくはこの娘こそが眼球の保管について鍵を握っている。
 皆を助ける為にはこの娘が欠かせない役割を果すのだろう。

「ここは恐らく“五階の”受付か」

 俺達が居るのは署の受付だ。
 だがしかし、外に広がる光景――霧に覆われた瓦礫の街――を見ればここが警察署の五階くらいの高さだとは分かる。
 一階にある筈の受付が五階に有る。
 フィラデルフィア計画の発動も疑うが、それにしては準備していたらしい話も聞かない。
 
「さてと、署長殿」

 聞き覚えの有る声が辺りに響き渡る。
 静香を庇いながら辺りの気配を探る。
 彼女は不安そうに俺にしがみつく。

「貴方の持っているもう片方の眼球を渡していただければ、現世にあなた方をお返ししますが?」

「俺に嘘は通じない。さしずめあんた達も遺体の起こした異変に巻き込まれたんだろう?」

 部屋中の影という影が凝集して形を成す。

「やれやれ、困った人だ」

「あいにく仕事柄嘘つき共の相手をしすぎててな。俺に嘘をつける人間はそう居ない」

 この男、嘘つきとしては二流だな。
 契約者としても精々一流止まり。
 ならば何故、俺は先ほどからこの男を恐れていたのだろう。
 
「ですが良いのですか? このままでは警察に被害が増える一方ですよ」

 外からは確かに悲鳴が聞こえる。
 
「遺体を渡してください。私ならばこの状況を収める手立てを知っている」

 この男は本当のことを言っている。
 だがそれはどうでもいい、どうでも良いのだ。

「人間を守るのは人間だ」

 背後の少女の手を強く握る。

「バケモノを殺すのも人間だ」

 俺が指を鳴らすと、呼応して狂骨が地面の中から理事長に襲いかかる。
 歯を鳴らし、虚ろな目を憎悪に燃やして狂う巨大なしゃれこうべに足を噛み付かれた理事長は動きを止める。
 俺はその隙に静香を抱えて窓ガラスを割り、地上五階からダイブした。


「――――変身!」

 叫び声と共に周囲の瓦礫が形を変えて白骨のような装甲へと変化し、俺と静香の体を守る。
 先ほど見た外の景色の中で、俺は見つけていた。
 契約者がたった一人で、この警察署の扉の前に立ち、建物の外に居た無数の怪物と戦っていたのだ。
 俺には分かる。
 あの男は俺の同族だ。
 ならば共に戦わねばならない。
 五階からでは見えなかったが、恐らくあの男のすぐ近くに守るべき人々が多く居るのだ。

「とぉぅっ!」

 静香を抱えたまま轟音を立てて地面に着地する。
 背後から上がる悲鳴、社会科見学で署に来る予定だった子供か?
 これは済まないことをしたものだ。
 だがこの警察署のマスコットキャラクターと同じデザインなのにあんまりだ。

「私が来たからにはもう大丈夫だ!」

 そう言って静香を地面に下ろしてからマスコットキャラクターと同じポーズをとる。
 子どもたちもどうやら納得してくれたらしい。
 安堵の空気が広がる。
 普段の広報活動の甲斐が有ったようだ。

「あ、あんた誰だ!?」

 全身血まみれな長髪の大男が驚いた顔でこっちを見る。
 彼はきっと気づいていない。
 ならば名乗らねばなるまい。
 この男には名乗るべきだ。
 名乗ることで、正義の作法を教えねばなるまい。

「明日真」

 他の何者でもない。
 たった一人の人間として。

「この街の警察署の署長だ。普段は署長とだけ呼んでくれ」

 そして正義の味方として。 

「孤軍奮闘ご苦労だった。私も助太刀する」

「……俺は六条路樹。頼んだぜ署長さん」

 互いに頷き、雲霞の如き敵の群れを睨む。
 これは久しぶりにやり甲斐がある仕事だ。


【僕は小説が書けない 第十六話「何時も見ている」 オシマイ】

あとがき代わりに

心通じ合い過ぎな悲喜組←→お互い好き勝手な路樹組
その場のノリで動く悲喜組←→大きな目標や指針が有る路樹組

みたいな感じで意識的に対照的にしてます
あと正義の味方の名乗りはスペシャルでなくてはいけない
というのが個人的なジャスティス

読む前に改めて
被って申し訳ないですorz

>>451-
はがけないの人乙ですー
路樹くんのターン来たぜ!

> 悪に名乗る名前はない!を組織単位でやってるだけじゃないかという噂も有ったりする。
この噂正しいだろww
しかし戦闘や駆け引きの表現が逸品ですな

>>461
>あと正義の味方の名乗りはスペシャルでなくてはいけない
>というのが個人的なジャスティス
そんな名乗り俺もさせたいわあ

笛の人の戦闘シーン見てるとこっちまで戦闘シーン書きたくなるんだよなぁ
読んでて血が滾るというか興奮するというか
という訳で乙ですのン
路樹くん初戦闘! 吸血鬼をそう使うか……この発想は無かった
明日真くんとの共闘も楽しみね
しかし悲喜組が自由すぎるwwwwwwあとパンダ噴いたwwwwww

ちょくちょく明日くんの磨耗が見られてつらい…

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         /:::::ヽ::ヽヽ>! ===    === |: : :|,ィ‐:/:::ヽ
         !:::`l::::|:::|:::|=ヽ xxx  ,    xxx /::l´|::::|:::|::l/∧    悲喜くんを女性にしてればイメージAAにこれ使えたんだと思うとうわあああああああってなるんすよ
        _ノ:::::ムム:ムノ`∧   __   /: :|フ:l::::l::::ソ::::::∧
       /:/:::::::::::::::_,イ: : :\ 丶__ノ /: :/: >マ:マ:マ::::::::::::::\

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>>463
無駄に名前隠してたからどこで名乗らせようか困ってた
ジルりんの契約並に扱いかねてた
正直なところ……反省している
同じ正義の魂に呼応して改めて高らかに名乗るのがベターだろうと判断しました
>>464
高速再生+身体能力+ダブルパイロット状態
シンプル過ぎて無敵な筈……
亜空間に隔離とかされると脆いかもわからない
>>465
あと寿命が百年くらいあれば明日くんも自分の選択後悔するかもだけど
多分後悔する前に死ぬんだよなあ
惜しいなあ
でもまあそこら辺ずるいのは彼らしいというか

教室を出て、少しの間歩き、ある程度離れた場所で向かい合う二人。

教授「で、何か用かい?」

康平「……退席の理由が嘘ってのはバレてるようですね」

教授「ああ。この僕の昏き混沌より深い叡知に見通せないことはないからね」

出来の悪いアメリカ映画の主役のように手を広げ、愉快そうに笑う。

康平「……へえ、じゃあ、これから僕が教授に話す内容も分かってるんですか?」

教授「ああ、もっともそっちは12通りほどの可能性があって断定できないが」

康平「そうですか……じゃあ、言っちゃっていいですね?」

教授「うむ。君が生き別れの弟だろうが禁断の愛の告白だろうが、受け止めてあげよう」

そういって手を広げ、あいも変わらず楽しげに笑う教授。
それを見て一瞬俯き、それから康平は叫んだ。

康平「なんで!!!!!普通に!!!!!都市伝説の話をしてるんだよォォォォォォォォォォォ!!!!!」

教授「……おいおい、時間を考えてくれ。そんな大音声、他の講義に迷惑だろう?」

耳を塞ぎ、辺りを見回しながら顔をしかめる教授。
だが康平は構わず続ける。

康平「だいたい!都市伝説や契約のことを人に知られないようにしろって言ったのは教授でしょーが!
それをあんな大勢の前で……!何がしたいんですか!貴方って人は!」

教授「大丈夫だ、あの程度の会話で全てを理解できる人間はいない。」

康平「そりゃそーでしょうけど!大体なんであんな話をするんです!?」

ハアハア、と所々息を継ぎながら康平は糾弾を続ける。が、教授はどこ吹く風だ。

教授「何故かって?決まってるじゃないか。僕の可愛い生徒達が危ない目にあった時、問題ないよう
    戦い方をレクチャーしていたのさ。特に君なんか非常に危ない。いつも危険に首をつっこんでばかりじゃないか。」

誰のせいで、という言葉を飲み込み、言葉を探す康平。

康平「……さいですか、そりゃどうも。でも、それなら講義じゃなくても空き時間に呼んでくれれば……」

教授「それができればそうしてるさ」

教授「でも、君たちは呼んでも来てくれないだろう?芹沢さんはいつでもツーリング中だし、清川君は自由な時間も少ない。
   虎君はほとんど一年中病欠だし、いつでも呼べば捕まるのは君だけさ。」

なるほど、それがこき使われる理由か、と納得する康平の前で教授は天を仰ぐ。

教授「だから、考えたのさ。講義ならこっちから連絡しなくても、勝手にみんな集まってくると!
   集める手間も省けて、ついでに講義の時間を使って用事を済ませられる!まさに一石二鳥!」

康平「なるほど……、でも今日講義に来てるの俺だけですけど」

教授「えっ!?」

グハァ、と大仰なリアクションを取り崩れ落ちる。
かと思えばすぐに立ち直る辺り、忙しい人だ。

教授「そっ、そんな馬鹿な!康平君、嘘はいけないよ!」

康平「本当ですって。芹沢先輩は集会、清川は雑誌の撮影、上田先輩は入院中です。……確認してなかったんですか?」

ぬう、と唸り額に手を当て困っている教授だったが、やがてどうでもよくなったように顔を上げると
その場で無意味にクルリと一回転した。まったく意味が分からないし、実際意味もないのだろう。

教授「まあ、いいか。よく考えたら芹沢さんと清川君なら襲われてもなんとかなるだろうし虎君はそもそも外に出ないし。
   結局、頻繁に揉め事に巻き込まれるのに戦闘向きでもない君ぐらいじゃないか、特別講義が必要なのは」

だから誰のせいだ、という言葉を飲み込み、康平は溜息をついた。

康平「……そうですか、でもそれなら危ないことはその‘頼もしい’二人に頼めばいいんじゃないんですかねぇ?」

教授「いやいや、君のことを高く評価しているからこそ僕は君を頼りにしているんだ。なんせ握手しただけで
   趣味や性癖、来歴から黒子の数まで丸裸にしてしまう君の力は非常に便r……じゃない、強力だからね」

康平「……」(今、便利って言おうとしたよな?)

教授「それに、芹沢さんに聞き込みを任せたり清川君に尾行を頼んだらどうなると思う?」

康平「まあ、たしかにゾッとしませんね……特に芹沢先輩は」

教授「うむうむ、分かればよろしい」

康平「……で、戦闘レクチャーってのはどんな内容なんです?」

教授「ああ、それは……」

少女「……三秒以内に答えなさい。あなたの目的は、何?」

ヒリヒリと痛む頬。普段なら耐えられないほどの痛みを、アドレナリンが押さえつける。

康平「……じゃない」

少女「え?」

小声を聞き取れなかったのだろう、少女が訝しげな顔をする。
その一瞬、康平は息を最大限吸い込み、吐き出した。

康平「冗談じゃない!!!なんでそんなこと答えなくちゃならないんだ!!!」

突然の大音声に、一瞬少女が怯む。その隙を逃さず、康平は……

踵を返し、後ろに向かって全力で駆けだした。

教授「いいかい、戦いになったらさっさと逃げるべきだね。君の力は、戦い向きじゃない。
   どうしても戦う必要があるなら、こっそり持ち物を奪って情報を得てからにすべきだな」

康平「……悔しいが、言うとおりにした方がよさそうだ」

教授のアドバイスを思い返しつつ、康平は駆ける。
一方、少女は初めは驚いたようだったが、すぐにこちらも駆け出す。

少女「三秒……経過!」

手をのばし、パチンと指を鳴らす。
直後、康平の右腕を激痛が襲った。

康平の右手が服の袖口から消え、、袖口が赤黒く染まっていく。
だが、康平は身じろぎ一つせず、ただ走り続ける!

康平(どんな傷を受けても、命さえあれば上田先輩に治してもらえる!今はこの場を……切り抜ける!)

だが、その康平の目の前に、突如謎の物体が現れる。
それを言葉にするなら、まさしく……宙に浮いた、銀色に輝く握り拳だった。

康平「なっ!?」

あまりにも荒唐無稽な光景に硬直する康平の顔面を、衝撃が襲う。
地面に叩きつけられ、勢いのまま転がる康平の目の前で跡形もなく拳は消え去った。

康平「クソッ……空飛ぶ拳骨に殴られるなんて、狂ってるよ全く!」

背後から距離を詰める少女から逃れるべく、康平は両の手を地面につき立ち上がる。が、
頭を殴られたせいか手首からの大量出血のせいか視界がぼやけ、足元もおぼつかない。
しかし、それ以上の驚きが康平をふらつかせた。

康平「手が……治っている!?」

手だけではない。頬の傷も、完全に消え去っていた。

康平「一体……なんなんだよ!?」

混乱する康平の目の前に、少女が到着する。

少女「逃げても無駄。私からは逃げられないわ。さあ、答えなさい。あなたは何者?」

康平「くっ……うああああああああっ!」

再び叫び、今度はヤケクソ気味に少女に飛びかかる。が、これは見透かされていた。少女が半歩下がるだけで
康平の腕は宙を掴む。さらに、そのまま少女が指を鳴らすと今度は康平の左足が消失する。

康平「痛っ!……それでも!」

バランスを失いながらも右足だけで跳躍し、少女に掴みかかろうとする。だが、康平の体を何者かが蹴りつけた。

康平「グハッ……これは……!?」

宙に吹き飛ばされつつ、必死に顔を上げる康平の視界が消失しゆく銀色の足を捉えた。
どこかの教室のドアに叩きつけられ、衝撃でドアを破る。
そのまま‘両足’で立ち上がると、教室を見渡す。

康平「ハアハア……分かってきたぞ、あの娘の力が……」

そう呟きながら、康平は再び教授の話を思い出していた。

康平「逃げろってそんな無責任な。大体、逃げられるとは限らないじゃないですか。」

教授「そうだな……その場合は、逃げつつ相手の持ち物を奪えばいい」

ハア?と怪訝な顔をする康平に、教授が尋ねる。

教授「どうした?君の‘運転免許証のNo’は、体に触れるほかに身の回りのものでも発動するんだろう?」

康平「……先生。俺が呆れてるのは、そこじゃないですよ。
   どうやって戦う力の無い俺が敵の持ち物を奪えるんです?」

教授「そんなもの、相手の隙を狙えばいい」

康平「隙なんて、見つかりませんよ!」

教授「そんなことはない。いいかい、制限の多い‘都市伝説の力’で戦えば、必ず行動に一見無意味な
   隙が生まれる。よく相手を観察して、相手の‘致命的な隙’さえ見つかれば持ち物ぐらい奪えるさ」

康平「……そんなものですかね?」

教授「ああ。もっとも、冷静になる必要はあるがね」

それができたら苦労しない、とため息をつく康平の前で教授は実に楽しげに笑っていた。

康平「落ち着け……冷静に思い出すんだ……」

心を落ち着かせ、これまでのことを回想する。
謎の問いかけ、消失する体、銀色の拳と足。
そして、相手の行動。それらを組み合わせ、推理する。そして……

康平「見つけたぞ……‘致命的な隙’を!」

そうと決まれば、あとはその隙を造ればいい。
その為の道具を探し辺りを見回す康平の目に、‘あるもの’が留まった。

壊れたドアを跨ぎ、少女が教室に入ってくる。辺りを見回すが、隠れた康平を見つけられない。

康平(一見して見つからないが、この部屋にいるのは確実。となればする事は一つ……)

少女「……3秒以内に答えなさい。どこに隠れている!」

予想通り。だからこそ、康平は何も答えず、心の中で3秒数える。

3……静かに、‘仕掛け’を微調整する。

2……少女が指を重ねる。

1……少女が指を鳴らすために力を込め、そして康平は‘仕掛け’を作動させる

そして、0。瞬間、少女の指の音が教室になり響き、教卓の下隠れていた康平が消失した。
そして、床に固定され無理矢理歪められた箒が一斉に解放され、
箒の先端に仕掛けてあったバケツの群が少女めがけて宙を舞う。

少女「!?くっ……お願い!」

無数のバケツ、しかも不意をついたものを、避けられるはずがない。
だが、先頭のバケツは銀色の拳の乱打により叩き落された。
少女と教卓の間に立ちふさがった、銀色の大男。
発光してよく見えないが、タキシードを着て、頭には妙な帽子をつけているらしい。
その帽子は、一昔前の「アメリカに行きたいか!」が合い言葉のクイズ番組のトレードマークそっくりだ。

男「久々に全身を出せたと思えば、この状況ですかい!」

そう叫びながら、男は全てのバケツに正確無比な打撃を加え、迎撃。
そして男は霧のように消える……刹那!
虚空から現れた康平が、少女のポケットに手を突っ込む

少女「なっ!?」

康平「まさか全身を消されるとは思わなかったが……狙い通りだ!」

そのままポケットから携帯電話を抜き取ると、握り込む!

康平「やはり、あの銀の男を呼ぶためには誰かの肉体が必要だったか……それが君の‘致命的な隙’だ!」

康平の気迫に押され、少女は思わず叫ぶ。

少女「なんなの……貴方、何者なのよ!?」

その問いかけに、免許証のNoを読みとり全てを理解した康平が答える。

康平「俺は、夢見咲康平……君の、味方だ!」

          大亜教授の事件簿 第二話『夢見咲康平の受難』終 第三話に続く

ようやくパソコンが直ったので投稿
前の投稿から久々過ぎて色々めちゃくたゃだー

第三話は近いうちにする予定

やっと都市伝説が分かった!
乙ですの乙ですの
康平くんも一旦はお憑かれ様、かな?
このまま解決か、それとももう一段階何かあるか……むぅ
しかし教授可愛いwwwwww(

大亜教授の人乙です!
な!な!シャの人見たか!前の投下分と合わせて一話分なんよオラの言った通りだべ!
教授が完全に夢見咲のキャラを食ってる…しかし後半の展開で夢見咲の底の強さを拝めたのは清々しい
というかこれはもしやあの人ではないかと思うと心臓がバクバク言ってきた!続きまってます!

小説の人も乙です!
しょ、署長がアスマと来たもんだから一瞬あれ?と思ったオラを許してほしい…
信念に生きる彼は素晴らしいけど、どことなく寂しさを感じるのは気のせいか
多分これは次か次あたりに悲喜も参戦すると見せかけて、テレビ中継見ながら美味しいもの食べてそうな予感が

裂邪もげろ!じゃなくてシャの人乙ですたい
光陽かわいそうに、ほぼ巻き込まれじゃないか…幼馴染とくっつくと見せかけて
あの邪悪な作者のことだ、今度こそ黒鬱展開を盛り込んで画面の前の良い子の皆を恐怖に陥れるつもりに違いない!><
ハァハァ…光陽、乙です。れっちゃん大爆発しろ…じゃなくてれっちゃんも乙でした

>>479
>な!な!シャの人見たか!前の投下分と合わせて一話分なんよオラの言った通りだべ!
俺も度肝を抜かれたところだ
だが何故俺なんだwwwwwww
可愛いから許すけど

>光陽かわいそうに、ほぼ巻き込まれじゃないか…幼馴染とくっつくと見せかけて
そもそもね
未だに友達関係なカップル→男が死にかける→女が告白→男も告白→男が死ぬ→何らかの理由で男復活
っていう展開の単発が書きたかったんだけど思いつかんくて
偶然連載に持ってこれたからこうしただけなのね(完全に無駄口

>あの邪悪な作者のことだ、今度こそ黒鬱展開を盛り込んで画面の前の良い子の皆を恐怖に陥れるつもりに違いない!><
そっ!そそそそそそっそんなこここここことtっととと無いな無いもんんもん!

>ハァハァ…光陽、乙です。れっちゃん大爆発しろ…じゃなくてれっちゃんも乙でした
しかし何で裂邪もなんだよwwwwそんなにイチャイチャしてなかろうてwwww

【正体不明≒正体不定】

赤マントを撃退し帰宅した俺がキッチンでリンゴを剥いていると、リビングからガタガタと物音がした。

「どうしたー、ナニカ?」

①ナニカが跳ねてでもいるのかと思ったが…ナニカはちゃんと躾たので選択肢から排除。

②強盗や空き巣と考えたが、ナニカとエンカウントしてたら物音程度じゃ済まないので却下。

③新手の都市伝説か!?…そうだとしたらナニカが危険かもしれないので俺はリビングへ向かう。

後、考えたく無かったが選択肢があるんだが…

「いやっふー、ナニカちゃーん…研究させてー!!触診させてー!!」

「キューっ、キュイー!?」

④幼馴染みのマッドサイエンティスト 掛合 調 が我が家に不法侵入してる場合だ。

「おー、あっくん!…どったの、その眉間に出来てるシワは?」

正解は④…現実は非情だ。
リビングに着くと調がウリウリとナニカを無理矢理に密着して撫で回していた。

「シワが出来てる…か……それは人様の家に勝手に上がって、同居人をまさぐる奴のせいなんだろうなぁ」

「あはは、眉間に青筋まで増えてるぞー…牛乳ちゃんと飲んでるかー?」

キレないように出来るだけ善処はしているんだが
首根っこ掴んで持ち上げた調を相手に、いつまで拳を奮わずにいられるか俺自身でも分からん。

「んで、何か用があったんだろ調?」

「そうだった…フフッ、これを見て驚くなよーあっくん」

「……てか、あっくん言うな」

む、気を付けてても無意識にチョップしてしまった。
ウザさランキングを付けるとしたら調はきっと堂々の1位だろう。


「むう、か弱い美少女に手を上げるなんて最低だぞー」

調が自分の頭を擦りながら俺を睨んでいる。
仕方ないし取り敢えず床に下ろしてやるか…

「とにかく夜に怪人引き連れてたり、人面犬ver.ケルベロスとか造る女を俺は女として認めねぇよ」

「むー、あっくんの癖に好き勝手に言いおってー…大体昔から」

ぐ、長ったるい話が始まったので別の事を考えよう。
調は普段、富豪である親の脛をかじりながら別荘で研究生活をしている。
ついでにその研究の内容は都市伝説についてだそうだ。

「キュフー……キューン」

ナニカが退屈そうにシャリシャリとリンゴをかじりながら此方をチラチラと見ている。
後で遊んでやるから、そんな顔するなよナニカ。

「ゴホン、とにかく…これを見たまえ!!」

お、終わったみたいだな。
俺の前に突き付けられたのは、何かの機械がついた革製品と手のひらに収まるサイズのボタンスイッチ。

「んだ、こりゃ……ベルト…いや、首輪か」

「正解……但し単なる首輪じゃないわ、巷のナウいヤングに流行してるって噂の¨エフェクター¨って代物よ」

調の持ってきたものは見た目からして八割方危険物なのだが…まぁ、今回は比較的に安全そうなので話ぐらいは聞いてやろう。

「¨エフェクター¨ねぇ…それは一体何に使う物なんだ?」

「よくぞ聞いてくれました…実はこの¨エフェクター¨は都市伝説の存在や能力を付与したり、改変することが可能な装置なんだ!」

調はまるで自分の自慢話のように目を輝かせて首輪の説明をしている。
だが、果たしてこんな安っぽい首輪にそんな力があるんだろうか?

「まぁ、聞いた限りには便利そうだな…」

「多少の副作用もあるものの、取り扱いも簡単!
因みにこのタイプの使い方は首輪を対象に着けてー」

得意気に¨エフェクター¨について語りながら、調がガチャガチャと手探りでナニカに首輪を着けている……ん?

「キュキュー?」

「おい、何でナニカに首輪を着け「そしてスイッチをオーンっ!!」

――おや、ナニカの様子が…?

スイッチが押されるや否やナニカと首輪が光り始め。
首輪からはデレレレン、デッ、デッ、デッryーと国民的進化音が流れている。

「……Bボタン何処だオイッ!」

俺が叫んだ時には、手遅れだと言わんばかりの光がリビングを覆い尽くした。

「……おー?」

「ナニカは幼女に進化した!」

目を開くとリビングには首をかしげる幼女と、成功だー…とはしゃぐ調。

「こ……こんな……こんな筋書は理解不能だぁぁっ!?」


謎の現象が連発したお陰で、脳内が絶賛オーバーフロー状態だ。
そんな俺に向かって調がドヤ顔でべらべらと語り出す。

「今回はナニカちゃんの¨正体不明¨って能力を弄って¨何でも無い故に何でもある¨という解釈にして実験みたの!
そして見事に大成功、因みに幼女なのは私の趣味だよー」

「うん…理解が追い付かないが、お前が元凶なのが再確認出来たぜ」

俺は考えるのを止めて拳を握り締める…さぁ、ショータイムだ。

「いや、あっくん落ち付こうって…流石にグ、グーは痛いから、ね?」

「勘弁ならないな……意味も分からず成敗してや…ゴハッ!?」

しかし、俺の拳が真っ赤に燃える前に脇腹に強い衝撃が走り、俺の体はリビングの壁まで吹き飛んだ。

「助かった…のかな?」

「契約者…もっとリンゴ食べたい
リンゴ、リンゴちょーだい……契約者?」

幼女な見た目を無視したナニカの破壊力抜群のおねだり(物理)により俺の意識はフェードアウトするのであった。

――――――

―――――

――――

――

「いってて……えーと、調は……居ないか」

「キュキュキュ、キュー?」

暫くして俺が目を覚ますと、いつも通りのモヤに覆われたナニカが居るだけだった。
もしかして夢かと希望的観測をしようとしたが…冷蔵庫に貼られたメモに

『今回の件のお詫びにその首輪は上げます、やましいことには使っちゃ駄目だぞ☆ byしらべ』

…と書かれているのを見て俺は思わず壁を殴った。


(続かない…と思う)

とある人乙です
かくしてエフェクターの登場回
この俺さんと調さんの運命やいかに(寿命的な意味で)…!
って感じですかね

とある人、乙です
ナニカがナニカちゃんになってしまった
衝撃のポイントは幼女化を促したエフェクターが首輪型だという点だ

逆攻撃翌力377,000Lp 悪魔限界は皆無である 私は精兵であれば誰でも良い エンカウント・モンスターを募集する
守備力が高ければそれで良い Fe銃で良い 1殺兵で良い 武器はすぐに壊れて良い 屍を耕す鍬だけでも良い
無限の絶対悪に一矢報いるだけで良い 炎細胞量0確定から この私を攻撃した罪 思い知らせてやる!

ナニカちゃんが本当にナニカちゃんだったとは…
投下と代理乙ですの
これは素晴らしい三角関係、どうなることやら恋の道
ところで怪力幼女って素晴らしいよね(確認

ほっほーこんなことできるのか
ついでに応用してみるテスト

ふむ、赤だけか…連レス失礼っと

ナニカの人とだいりとうかのれっきゅんちゃんおっちゃんちゃん
おにいちゃんは皆さんのがんばりをずっと側でビーウィズユーしてるものです
なにかちゃんが幼女化なんて認めませんよおにいちゃん
幼女化じゃなくてショタ化を求めますよおにいちゃん

>>490
>ナニカの人とだいりとうかのれっきゅんちゃんおっちゃんちゃん
代理投下したのれっきゅんでも俺でもないぞ!w

大亜教授の人乙ですー
なんか教授のまわりは生徒達も曲者揃いとお見受けした
そして康平くんかっこよす

とある人乙ですー
避難所にも書いたけど幼女ナニカちゃんをもっと!
代理投下した方も乙ですー

>>491
間違えたことは反省するし謝る!
TSUGUNAIに私をあ・げ・る><

>>493
>TSUGUNAIに私をあ・げ・る><
10~14のロリか30前後のお姉さんか俺の実妹か答えろ
それ以外なら影の世界に御招待だ!(

【迷子の迷子の子猫ちゃん】

「構ってくれない……ねこねこ何か……嫌いっ!!」

家を出ていった少女は行く宛もなく走り続けた。
しかし、わんわんと泣きながら走ったせいで困ったことが起きていた。

「ぐすっ………ここ、どこだろ?」

少し落ち着いたマコが辺りを見渡すとあるのは…見たこともない道、見たこともない街並み、見たこともない人々。
泣きながら突っ走った道筋など少女が覚えてる筈もなく。
子供達に帰るように訴え掛ける夕方のメロディや、遠くの寺から響く鐘の音、それに加えバサバサと飛び立つカラス達。
どれもこれも今のマコにとっては不安を煽るものに他ないであろう。

「おうち…どっちだっけ…」

だが、小さな子供が不安そうに一人で辺りを見渡していると優しい大人が気に掛けてくれるもので

「あのー、お嬢さん……もしかしてもしかすると迷子なのではないでしょうか。
お母さんとお父さんとはぐれてしまいましたか?
失礼、自分の自己紹介を忘れていました…自分はNo.96s
おっと……こっちは業務用でした。
えー、皆から呼ばれている訳ではないのですが取り敢えず私のことは゛目薬さん゛とお呼びください。
それでですね、この町の夜は子供には危険ですから…」

マコの前に現れたの優しい大人代表は、黒い服の上に何かの店のエプロンを着用した男であった。
急激にべらべらとマシンガントークを始めるこの男の手には大量のビラが見える。
そこから考えるに客引きか何かの仕事の途中なのだろう。

「えと、マコね…帰り道が分からなっ…ひゃぅ!?」

渡りに船、藁にもすがる気持ちで顔を上げたマコだったが、その顔はすぐさま恐怖の色に染まった。

「どうかしましたか…あのー?」

マコの小さな二つの瞳に映るのは
一つ眼の怪人…のような被り物。
落ち着いて見れば形や中心の目玉の絵から目薬をモチーフにしているのが分からなくもないのだが、小学生のマコには少々刺激が強かったようで。

「うぅ、ねこねこ…
目のオバケが出だぁぁ~っ!!」

「え、えぇ…オバケって結構私ショックなんですが…」

泣きじゃくる女児と肩を落とす謎の被り物男のコンビは良く目立ち
ひそひそと周りから「イヤねー変態かしら」「警察呼ぶか…?」「ママー「見ちゃ駄目っ!」とか呟かれる始末である。

「むむむ……どうしたものですかねぇ」

周りの旗色がみるみる変わっていき、それに連動して男の顔色(?)も悪くなる。


――PRRRRRRR

その時、男のエプロンが振動しポケットの携帯電話が着信を伝える。
サッと開かれた携帯の画面にはデフォルメされた牛の絵が映っている。

「もしもし――――ですか――!?」

「あぁ、件さん丁度良い時に!!
実は業務中に迷子に会ったのですが、泣くばかりで話が聞けず困っていまして…」

「――して――る―――ん――」

「あのぅ、件さん息が荒く思えるのですが?」

「変態――が――――駅――」

「え、ちょっ、待ってくだ」

――ブツン

中途半端に電話から聞こえた声から、話し相手は若い女性だと分かる。
切れた電話を耳(?)から離し、携帯とマコを見比べる男。

「マコは美味しくないから……食べないでっ…こっち来ないでよぉ…ひっぐ」

じりじりと男がマコに詰め寄っていき、それに気付いたマコが震えながら後ずさる。

「迷子のお嬢さん……貴女をお家まで責任を持って届けます。
しかしながら、私は急用が出来てしまい……今は場所を変えなければならないのです。
ですからして、少しお付き合いください!」

じたばたと暴れながら叫ぶマコを抱き上げた男が、駅のある方向へと走り出す。

「はなして、はーなーしーてー……助けて、助けてよ…ねこねこーっ!」

「人目につくので、ちょっと寝てて下さいね…っと」

男の袖口からパッと現れた水鉄砲でマコの目に水を掛けると、あれだけ騒いでいたマコが急に静かになった。

「う…ぅ…ねこ…ね…こ……」

どうやら何らかの作用で眠らされてしまっているだけなようである。


――――そして、その頃ABCは

「…嫌い、嫌いだなんて…俺様マコに嫌われちまったぁぁぁーっ」

依然としてリビングでビックにヘコんでいた。


(続く)

超能力猫の人乙ですー
この黒服さんは前に出てきた目薬の人ですねー
続きが楽しみですー

>>495-496
ねこねこの人乙ですー
マコたんピンチ!?
でも目薬さんからは何故か善人のオーラを感じる

ねこねこかわいい!
黒伏さんはいいひとですよ
そういうアトモスフィア出てるのわかっちゃう

【僕は小説が書けない 第十七話「始動」】

「まさかこの建物が役に立つなんてね」

 あいも変わらず黴臭い。
 僕とジルりんはマンションから少し離れたところにある廃屋の中に来ていた。
 以前、たまたま取材に来て特に幽霊も何も居ないことがわかったので隠れ家に使っているのだ。
 ジルりんは面白そうに周りをきょろきょろ見回したり壁に触れたりしている。

「なんだここ」

「廃屋だよ、縁があって悪用させてもらってるのさ
 不良払いの為のトラップがあるから気をつけるといい」

「これか」

 見ると彼女はワイヤーとシュールストレミングで作ったトラップを器用に解除していた。
 
「かんべんしてくれ」

「えへへ、うまいだろ?」

 彼女は無邪気に笑う。

「だから止めてくれって言ったんだよ!
 作るの大変だったんだからさあ!」

「分かったよ、つまらんなあ」

 本当につまらなさそうな顔してやがる。
 とんでもねえ女だ。
 女なのか……?

「この奥だ、緊急用の避難設備が整ってる」

 そういって目の前の扉を開く。

「路樹には秘密だぞ?」

「これはすごい……」

 ジルりんはそういって目を見開く。
 そこには立派な生活空間が広がっていた。
 自家発電機、貯水施設、エトセトラ。
 おそらく一か月は保つ仕組みになっている。

「これだけの金を一体どこから?」

「親の金、後はこの前みたいな除霊依頼をこなしてるから金はあんまり困らない
 この前の屋敷はダメかと思ったけどあの弟が金にしてくれたみたいだし」

「なるほどね……」

「まあそこに座れよ、今日は一つ話をしてやろうかと思ってね
 大したことのない茶飲み話さ
 君の昔ばなしはたまに聞かせてもらってたし、今日くらいは僕の過去を話そうかなって」

「興味無いぞ」

 えー……

「でも話したいならいくらでも聞いてやる」

「愛してるぜジルりん」

「うざいにゃあ」

 ジルりんはソファーに腰かけてテーブルに置いてあったズブロッカを飲み始める。
 都市伝説に飲ませるには過ぎた酒だがまあ許してやるとしよう。
 と思ったら俺の顔面に向けて吹き出した。
 ご褒美だ!

「なにこれジュースじゃないの!? まずい! 薬臭い!」

「飲むなよ馬鹿!」

「こっちからお断りだ馬鹿!」

「馬鹿って言った方が馬鹿なんだアホ!」

「今更言い逃れしようったって無駄だぞ悲喜! もうお前最初の時点で馬鹿って言ってるからな!」

「うるちゃいうるちゃいうるちゃい! それ高かったんだぞ!
 もう良い! 冷蔵庫の中の水でも飲んでなさい!」

「ちぇっ……話の腰が折れちゃったよ」
 
 棚から自家製のフルーティーな香りのする葉っぱを巻いた特製の煙草を取り出して吸い始める。
 波立っていた気持ちが少し落ち着いてきた。
 僕はコップにお水を入れて飲んでいる行儀良いジルりんに向けて話を始める。

「僕はね、昔医者を目指していた
 理由はくだらない、本当にくだらない理由
 それがいくつも集まってなんとか形を為していた程度の本当にひどい理由
 金、女、知識欲、周囲への同調、ちっぽけな憧れ、名誉と地位、そして間違いなく誰かの為になる仕事
 くだらなく見えるかもしれないけれどそれでも僕はまじめに夢を追いかけた」
 
 ジルりんはボトルを抱えてぐいぐい水を煽ってる。
 あの綺麗な目をしていた。
 こんな生き物が邪悪であるはずが無い。
 例え僕と出会う前に何をしていたとしても。

「でもその途中で気づいてしまった
 その夢を叶えたところで僕が何時か絶望することに
 苛烈な勤務体系だとか、救いきれぬ人々との直面だとか
 僕は自分を削ってまで他人を救うことができないし
 僕はそんなことの為に必死になれない
 僕は驚くほど自分勝手な人間だった
 それでも自分がどうにかならない範囲で誰かの為になろうと
 夜中に叩き起こされて病院に呼ばれないけど医療に関わることをしようと薬学部に来たわけさ
 だから名門とか言われるけどあの大学に入ったことによる感慨は実はあんまり無い
 必死で勉強して僕と同じところに入った人々に本当に申し訳ないんだが……あの入試は楽勝すぎた
 プレッシャーが無かったからね
 ……っと脱線しちゃったか
 まあとにかくだ。そんな経緯が有って僕は今みたいなちゃらんぽらんになった訳だ
 昔から自分勝手だったが、今じゃあその性格もちゃらんぽらんのせいで割りと治った
 希望もなく、夢もなく、挫折が大して辛くない辛さと、挫折したものの大して辛くない故にほんの少しだけ劣等感を抱く日々
 花が咲くように僕は当たり前のこととして学生として学び、月に劣らないくらい輝ける日々を満喫していた
 鳥のように自由で、風の様に虚しい日々
 そんな日々を送っていた僕の前に君が現れたんだ」

「そうだったのか……」

 興味深そうな表情を浮かべるジルりん。 
 珍しいことにジルりんがまじめに話を聞いている。
 びっくり仰天だ。
 

「面白くもない話だ」

「いいや、今までで一番面白かったよ
 お前が本気で話していたからな」

「え?」

「お前はいつもどこかバカにしたような面して物を語っていた
 そしてそれが大抵正しかったことがどうにも私は気に入らなかった
 でも今のでお前が色々あってひねくれちゃって、自分でも悩んでいるのかもしれないなって思った
 お前の辛さも苦悩も私は解らないけど、お前が腹の中で抱え込んでいたってことは理解したよ
 そしてそれが私と出会って何かが変わりそうってことも」

 物事の本質が見えている。
 彼女の操るナイフのように、急所を間違い無く突く洞察力だ。

「素晴らしい」

 久しぶりに、僕の痛みを分かってくれる人が居た。

「ただ分からないのが、お前はなぜ夢やぶれたのにそんなまじめに努力を続けるんだ?」

「学ばぬ人間は生きている意味が無い……ってわけじゃないが
 目の前にある課題についてとにかく努力するってことは楽しく生きるために欠かせないのさ
 能力のある人間はどこでも重宝されるし、その能力を得るには努力が一番簡単だ」

「そうなのか……」

「そういうこと」

「正直羨ましいよ、語れるほどの過去があることが」

「だろうな
 ジルりん、君はある日気づけば生まれていて訳も分からぬまま殺し突然僕と出会ったのだろう」

「……うん」

「話を聞いていればそれはわかる
 だから僕は聞きたいんだ、ジルりん
 僕と過ごしていてどう思ったのかをね」

「私か?」

「どうだ?」

「私はね、楽しいよ」

 ジルりんはそう言って笑った。
 
「ならば良し」

 誰も不幸になってないならばそれはきっと間違いないことだ。
 時計を見る。
 まだ異常事態から三十分ほどしか経っていない。
 
「すぐに動けるように休憩しておこう
 あの可愛い弟が三十分で片付けられないなら面倒な事態になってることだろうさ」

「それなら今から動いてもいいんじゃないのか?」

「いいや、今はまだ下手な動きをして妙な奴らと鉢合わせしたくない」

「でも時間が経てば経つほど場所は囲まれるんじゃない?」

「囲まれたとして気づかれずに接近するのは簡単だ
 偶然の遭遇戦が僕達にとっては怖いんだ」

「確かに、そうだな」

 僕は近くにあるベッドにごろりと寝そべる。
 お手製の葉巻の火を消して灰皿に押し付ける。
 まだ、僕の動くべきタイミングじゃない。 



    ※    ※    ※

 
 警察署前での戦闘が始まってからもう三十分は経った。
 だが不思議と疲労は感じない。

「おいナージャさん、こいつら多いぞ」

 拳を振るうその度に化け物共は粉微塵になっていく。

「路樹くん、後ろだ!」

 振り返ると片翼の大蛇が大口を開けて俺に襲い掛かろうとしていた。
 髪が俺の意思と無関係に動き化け物を串刺しにして動きを止める。

「署長さん!」

「応!」

 骸骨の仮面を被った男性がその隙に飛びかかって大蛇を拳の一撃で叩き潰した。
 互いに背中を預けてあたりを見回す。
 敵の数は未だに減らない。
 範囲攻撃ができる味方が居れば局面も変わるかもしれないが無いものをねだっても仕方がない。
 いずれも名状しがたき異形の群れ、警察署のあちこちから散発的な戦闘音が聞こえているがまだ俺達はここに釘付けにされていた。

「しかし幸いなのはこいつらの親玉がまだ動いていないことだな」

「親玉?」

「財団Bの理事長って男だ。魔術師を名乗る連中はどいつもこいつもろくなもんじゃない
 ついさっきもやつから逃げてきたつもりだったんだが追ってくる気配がまるでしない」

 署長さんは敵をなぎ倒しながら状況を説明する。

「やっぱり理事長も来てらっしゃったのね……
 ということは署の中では他のメンバーも活動中かしら?」

 ナージャが俺の中で呟く。

「分かりました。署長は眼球をとってきてください
 ここの子どもたちは俺がなんとかします」

 原形質の異形を不知火でやき払いながら叫ぶ。

「二重契約か……!」

「俺にはまだ打つ手はあります、手遅れになる前に急いでください」

「信じるよ」

「任せてください」

「……皆を頼む」

 署長はそう言うと子どもたちに何かを言い含めて警察署の奥へと向かった。
 
「ナージャ、後退しながら炎の壁で防御戦線を構築する」

「了解したわ。半人半魔のみに許された無尽蔵の力を見せてあげるとしましょう」

 俺の体からナージャがぬるりと抜けだして腕を天に掲げる。
 次の瞬間、曇っていた霧の空が赤く染まる。

「―――――――――誰可知天津光(タレカシルアマツヒカリ)」

 何をする気だ。

「滅ぼせ」

 契約者の心の器から注ぎ込まれる力で都市伝説は無限に強くなる。
 でもだからといって――――

「キャアアアアアアア!」

 子どもたちから悲鳴が上がっている。
 無理もない。
 ――――ただの不知火で空から無数の火の玉を降らせるのはあんまりだ。



    ※    ※    ※


「大学生には随分もったいない住まいじゃないか」

 異変が起きてからきっかり一時間後。
 葉巻が決まって最高にハイな僕のところに一人の男がやってきた。
 全体に目の紋章をあしらった白い服を着た中年の紳士だ。

「……あんた誰?」

「名前かい? いいだろう教えてあげよう
 私の名前はアルゴス、財団の一員にして十二の眼球系都市伝説と契約した契約者さ
 君の隠れ家も私の能力の一つ、“霊視”で見つけさせてもらった」

 ジルりんがソファから気だるそうにゆらりと起き上がる。
 男はジルりんが目に入ってない。
 やはり精神が高揚していると都市伝説も強化されるらしい。

「いやいやあんたじゃなくてそこのボロボロの人に今は聞いたんだ」

 普通ならその愉快な中年に興味が移るものだが僕の興味の対象は違った。
 その男に首元を掴まれて引きずられている警官らしい男が僕は気になった
 らしい、というのはだいぶ痛めつけられていてその辺りがよくわかんないからだ。

「あなたは何者だ?」

 ジルりんが音もなく男の後ろに忍び寄る。
 男は気づいていない。
 
「変わったものに興味を示すね
 こいつは警官だ。私の十二分の一の能力しか無いが偶然警察署で見つけたので道案内に使ってたんだ
 それで途中までは進めたんだが最後がうまく行かなくて困ってねえ
 その左腕みたいに同じ遺体を持っている人間が居ないと眼球の暴走している部屋まで辿りつけないんだよ
 分前はもちろん弾むから、同じ財団の人間として協力してくれないかね?」

「おっちゃん、それ多分そこの警察のにーさんが嘘吐いてるせいだぜ
 遺体をおっちゃんみたいな人に渡さない為にな」

 死にかけていた警察官の顔に動揺の色が浮かぶ。 

「……馬鹿な、あれだけ痛めつけられて嘘をつけるはずが!」

 僕が親指を立てるとジルりんがアルゴスの両目を切り裂く。

「ぐあああああああああ! 何だ!? 貴様何か隠していたな!
 おい新人の悲喜とやら私を手伝……」

 次に全身を滅多突きにし始める。

「この程度で私を殺せるとでも――――」

 両手に持ったナイフで合計二十二回、何かを狙って突いているようにも見える。

「な、なぜ私の全身の瞳を的確に……」

「お前の能力は目に集約している
 ならばその目を全部叩き潰せばお前は何もできない
 それだけのことだ」

「貴様は誰だ小娘! いつの間にこの私の……」

「うざいにゃあ」

 ナイフが一閃、それで男はモノ言わぬ骸となっていた。
 とりあえず見事な三下ぶりに敬意を表すとしよう。
 僕は警察官の側に近寄って手を伸ばす。

「大丈夫か警察のお兄さん」

「君は一体……いや、それより何故俺を助けた」

「その男に理由を求めても無駄だよ」

 ジルりんが割って入る。
 ポンコツ化していないところを見るとそろそろシリアスなシーンなのか。

「その男がお前を助けた理由なんてきっと面白そうだから
 知っても腹立たしいし知らなくても問題ない
 それだけのことなんだよ」

「……敵じゃないなら構わない。あんたたちのおかげで俺は助かった」

 男はボロボロのままで立ち上がって歩き始める。

「どこに行くんだ?」

 僕は尋ねる。

「警察署だ」

「あなたにできることはあるんですか?」

「やるよ、体を張って……少なくとも誰かの盾になるくらいはできる
 それに俺にはめちゃくちゃになった警察署の内部の間取りがわかる
 元々の警察署の内部の情報と俺の契約した能力で手に入れた情報
 この2つと今の男がペラペラしゃべった会話の内容を合わせれば警察署の異変を元に戻せるかもしれない」
 
「…………ふむ」

「悲喜、もう一時間だぞ」

「やれやれ、わかってるよ。僕ももうそろそろ行こうと思ってたところだ
 警察官さん、道に迷った市民がいるので道案内を頼みたいのですが良いでしょうか?」

「分かった、俺に……」

「肩くらい貸します」

 警察官の肩を支える。

「あの男が乗ってきた車がある。それを使って警察署まで行こう」

「わかりました」

 面白い。
 本当にこの男が自らの正義を通すために命がけの嘘をついていたなんて。
 口からでまかせで言ったことが本当にそうだったなんて。
 やはり人生は面白くできている。
 この男についていけばもっと面白いものが見られそうだ。

「悲喜」

 そんなことを考える僕をたしなめるようにジルりんは僕に目配せをする。
 軽くウインクして返すと彼女は呆れたようにため息を吐いた。

【僕は小説が書けない 第十七話「始動」 おしまい】

書きたいのに暇がない
忙しい日々でつらい

東区の路地から三丁目へと突き切るようにして進み橋を渡る
男は小さな食堂に入ると店員である中年の女の冷めたまなざしを直視する
雑音にまみれたアナログ波のテレビは凶悪犯が脱走したという臨時ニュースを告げていた
麺を啜る作業服のひとりが物騒な世の中になったもんだとぼやく声がまざる
男は店員にカレーライスを頼むと中年の女は目を逸らし厨房へと入っていく
店の片隅の薄汚れたテーブルに身を縮めるようにして座ると棚に飾られた文化人形が視線に入る
あれは確かに死んでいた少女の躯であり男にはそれをどうすることもできなかったという呵責がある
あの少女は男達の欲望を一身に受け
と言ってしまえばまるであの少女が自ら望んで精液を浴びることを甘んじたと取られてしまう
否、あの少女は状況に追い込まれてしまったのであり誰もそれに目を向けようとしなかっただけだ
男は少女の声を聞いていたのだしそしてそれが男に決して安息を与えない動機のひとつになっていることを
男はおぼろげながら理解しているのだ、そう今はまだ
乱暴に置かれたカレーライスを前に男はあの少女の血と汚物と泪に塗れの顔面を見ていた
事切れた少女はなおも告げる、おじさん助けて下さい、痛いです、死にたくないよ
男は半ば絶叫に近い少女の顔に金属の匙を叩きつける
作業服のひとりが何事かとこちらを見ると男と目が合ったが男は奴の胡乱げな目を睨みながらカレーライスを口に運ぶ
福神漬けと豚肉とスパイスと米飯の匂いと味覚と感触が口の中を汚染していく
肉を奥歯で咀嚼すると少女はその年齢と童顔には似合わない嬌声を上げだした
おじさん、もっと噛んで、強く、わたしのこと、壊して、滅茶苦茶にして、引きちぎって、そして
頬の内側をカレーと共に強く噛みしめると血の味が滲み出す、これでいいのだ
少女の嬌声は遠くに追いやられ、ただ彼女は泣いている、すすり泣く湿った声が男の鼓膜を叩く
おじさんみたいな男の人が良かった、あんな奴らは嫌だったよ、おじさん
馬鹿が、俺もあいつらと同じだ、薄汚い野郎なんだよ
カレーが口の中の傷に沁みるがしかしその痛みは物語を祓ってはくれない
男は嗤った、己を嗤った、行動の結果を、責任をすべて受け入れるのではなかったのか
愚鈍さ加減が自嘲から怒りを変わるのを胸の内に感じながら男はカレーをかき込んでいく
ご馳走
男は短く告げて店を出た
時間を17時10分を示していた

食堂から更に北へ進むと叫び声が響いた
この叫び声に聞き覚えがある、速足がさらに速足になる
再び叫び声が上がる、男は誰かが殺されたことを直感する
恐らく今回は正しいだろう、その前はそうだった、その前の前はそうだった
これは類推ではない、受け取れるか、取れないか、勝負師の感覚に近いのだろうか
確かに受け取れなければその時の危険性は否が応にも高まる、そしてそれは男に死ねと告げるのだろう
角を曲がると制服の女子学生が泣き喚きながら血に濡れて動かない女子学生を引きずっていた
道の前には子どもが座り込んでおりその子どもはアスファルトの一点を凝視して震えていた
ああ、あの子は花子さんか、なぜここにいる
子どもは地を見たまま動かなくなっていたがそれは男が知らない数分前に都市伝説かさもなくば黒服が子どもの目の前で殺され
その様をこの子はただ見ていたのだろう、いや、見ることしかできないだけだったのだ
その子の前に立つように詰襟の男子学生が哄笑している
女子学生が男に掴みかかり声にならない声で泣き喚いていた
警察と救急を呼べ
男は女子学生に告げた
その声を聞いて知ったか男子学生がこちらを向いた
誰かの悲鳴が一瞬響く
男子学生は手に持っていた血濡れのナイフを掲げ笑う
俺は何故ここにいる
男の問いに他ならぬ男が答える
逃げ損ねた結果を受け止める、ただそれだけのことだろう
俺にはそれすら出来なかったんだ
男は激昂する
男子学生との距離を一気に詰めて拳を腹へと叩き込む
男の能力が発動し暴風が男子学生の内臓の内側を叩き、叩き、叩き、叩き、殺した
男子学生は白目をむいて吐瀉物をまき散らしアスファルトに倒れ込むように接吻した
男子学生はまだ生きている、だがもう死んだ、彼は死んだ
何事かと大人たちが集まり始めている、騒ぎが大きくなり始める
男は女子学生の方を振り向くと携帯を握りしめて助けを叫ぶ女子学生の傍らで
エプロン姿の女が血塗れの女子学生に人工呼吸をおこなっていた
助かるかどうか、男はそう考えながら、件の少女の顔を見た
寂しそうに笑っている、腹立たしさを覚える
誰ですか
足元から声がするので見やれば子どもが男を見詰めていた
あなたは誰ですか
男は迷うがもうあの少女はいない
息を吐く、彼方からカレーの記憶がよみがえる、途端に口の中の傷が痛みだす
俺は入間××だ
男が子どもに答えたとき時刻は17時10分を告げていた

【掛相 調のスタイリッシュ調査書】

音声回線、モニターの接続は良好、記録装置オン、付近に組織の影なし。
対象とオマケの姿を再確認…室内状況、バイタルに異常なし!

「じゃっ、きちんと留守番してるんだぞー」
「きゅ!」

あっくんが私にはあまり見せないにへらとした表情で家から出ていく。
幼馴染みとして、そういう所はナニカちゃんに嫉妬(?)しちゃってるかもしれないなぁ…
さて、気持ちを切り替えて

――「あっくんが買い物に出掛けたので……これより機密実験を開始します」

パソコンを弄くるとナニカちゃんの首輪に付いた小型の機械から私の声が響く。
私があの首輪を手に入れ解析した時に付けた666の秘密機能の一つだ。

――「えー、今回の実験の実況や解説を担当する調ちゃんでーす!
そしてそして今回の実験の主役であるナニカちゃーん…やっほー!!」

「きゅるるる?」

いえー、どんどんパフパフー…ナニカちゃんが現状に困惑してるけど気にしないで進めるわ。
あっくんがなんだかんだ文句を言いながら、首輪をナニカちゃんに着けてくれてるみたいで手間が省けてるし。

――「この度はあっくん私生活隠し撮りカメラとこの予備作動スイッチを使って、エフェクターの干渉性実験をしようと思います!」

「きゅう?……くぅーん」

ナニカちゃんが鳴きながら首を傾げている。
そういえばナニカちゃんの知能っていかほどなのかしら…

――「今の説明だと分かりづらかったかな?
えー、つまりはナニカちゃんは現在どれぐらいの変身が可能かを調べるの……分かったかい?」

「わぅー………わん!」

うっすらとだが分かってくれた……気がするので早速スイッチをオーン!!


―――おや、ナニカのry

ピカピカと輝きだしたナニカちゃんのシルエットがだんだんと人型へと変わっていく。
光りが収まり現れた姿は男の子のようだ。

〈記述〉
特出した外見は茶色の尾や獣の耳が揺れている事ぐらいだ。
前回の例も踏まえて推測すると、不定である姿には性別の縛りはないが完全なる変化は難しいようだ。

「わー、見て見て…また契約者と一緒の形!」

うん、知性や声帯の方も問題なく稼働しているみたいだ。
そして実験には関係ないが男の子も男の子でなかなか…良いわね!
良すぎて思わず画面に向けて親指を立ていた。

「調ちゃん、なんでハァハァ言ってるの?」
――「気にしないでいいよー…分からない方が人生幸せなこともあるのだから」
「そっか、分からないけど分かった!」

ピョコピョコ世話しなく跳ねているナニカ君(仮)
ダボダボなセーターの袖が揺れ、見てて飽きない可愛さだ。

〈記述〉
後程気付いたが身に付けている衣服はどこから現れたのだろうか?
もしや、皮膚や毛並みが服の形状に姿を変えたのか…それとも何らかの力が及んだとか?

(流石に全裸はいかんだろ全裸は…byと)

――「なんだ、このメモ?…ゴミゴミっと」

空から降ってきたメモをゴミ箱に捨てて私は再び実験を再開する。

――「うーん…しっかし私は虎になるように念じてスイッチを押したんだけどなぁ?」

<記述>
やはり契約者本人である小門 安月(略称あっくん)ではないのが原因か¨エフェクター¨は上手く作動してくれない。

私が首を傾げながら唸っていると、ナニカ君(仮)が不安げな顔をしてカメラを見詰めていた。

「調ちゃん…ボク、駄目だった…?」

カメラをあっくんにバレないように戸棚の上に隠していたせいで、ナニカちゃんの視線は心なしか上目遣いになっている。

―勿論、こうかはばつぐんだ!―

――「うっ、駄目じゃないから…そんな潤んだ瞳で私を見ないでね」

いかん、このままじゃ私は真理どころか変な扉を開きかねないぞ。
理性が保たれてる内にスイッチを再びオーン!!

――おや、ナry

再び光が瞬き、シルエットが今度は心なしか大きくなっている。

〈記述〉
体格や体の凹凸からみて女性体であろう。
それにしても質量の保存法則はどうなっているのだろうか。
現場に立って詳しく測量調査が出来ないのが悔やまれる。

「むぅ、体が重たいよ…調ちゃん」
――「いやはや圧巻たるセクスィーボディ、見てるこっちが哀しくなるほどの大迫力の胸だね…」

今回は口裂け女を念じていたのだが、口裂けてないお姉さんが現れてしまった。
しかも、私のデモンズウォールを遥かに超える胸や抜群のプロポーション……ナニカちゃん恐ろしい子っ!!

「跳ねにくくて、ナニカはこの体嫌だー」

不機嫌そうな顔でナニカさん(仮)が跳ねると連動して胸部の脂肪も揺れ動く
仮に効果音を付けるとしたらバインバインが相応しい光景だ

「ブフッ、その姿でジャンプしたら色々と駄目だよナニカちゃんっ!?」

私の鼻から研究心が溢れでて出血大サービスで大変危険なので次に移ろう
先程から人型ばかり…この際あえて人間になるように念じてみようかな。

何が出でるかな……スイッチオーンッ

――おry

私はお決まりの発光が始まると思い目を閉じていたのだが、逆にモニターの映像は真っ黒な闇を映し出した。

「ん…バッテリー切れかしら…?」

目を開けて機器の確認をしてみたが異常な事は何もない。
私が不思議に思いながら「ナニカちゃん?」とマイクで問い掛けると

「tk、調、r、ちゃん、r」

グニャリど画面の闇が蠢き言葉を発した。
モニターが映らなくなったのでは無かった
寧ろ逆に、モニター目一杯にナニカちゃんが映っていたのだ。

――「何これ……あぁ、画面にヒビが!?」

急激な吐き気と恐怖に私の意識が揺さぶられる、あんな生き物私は知らな――――――

�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・

今日は血気盛んなオバサン達に負けずに特売品を多く買えた。
ナニカの食費もあるから特売品を手に入れることは俺にとってかなり重要なのだ。

「留守番してるナニカの為にフルーツの詰め合わせを奮発して買ったが…ナニカ喜ぶかなー……っ!?」

ルンルン気分な俺の目に映るのは、黒い触手のような物があちこちから突き出た我が家

「いやいやいや…意味が分からなすぎるぞっ!?」

俺が慌てて家に入ると出迎えてくれたのは首輪が付けた謎の触手軍団

「契約、r、者ー、リ、t、ンゴー、k」
「く、来るなぁーっ!?」

それから、どつき回されながらリビングで暴走しているナニカを抑えたのは三十分後の話だ。

「全く、死ぬかと思ったぞ…はぁはぁ」
「キューゥ…」

�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・

その後の話だがグッドタイミングに帰宅したあっくんが、暴れるナニカちゃんを鎮めて元に戻してくれたらしい。
今は隠し撮りカメラには「後で、説教しに行くからな」とあっくんが赤字で書いた紙しか映っていない。

「何よ…失敗は成功のもとって言うし、成功には多少の犠牲は付き物じゃない」

だが、残念ながらあっくん…私の辞書に

「次こそは調整して上手くやって見せるんだから!」

反省という言葉は無いっ!


(たまに)

「かはっ……」

男が血を吐きながら、呻き声をあげて倒れ伏す
震える腕で己の身を起こそうとするが、目の前に漆黒の刃が向けられた
目を見開き、諦めたように男は俯く

「……ま、まいった…」
「フン、面白味の無い」

黒い鎌を下げ、彼は――顔の無い仮面を被った少年は男を背に立ち去った
そして、湧き起こる歓声
観客席にある巨大モニターには、“SEMIFINAL Winner Noface”と表示されていた

《決まったぁ!!
 決勝戦への切符を勝ち取ったのは、顔の無い仮面を被った謎の少年ノーフェイス!!
 平均5分で勝利を手にしてきた彼を、『エフェクター』が導いているとでもいうのかぁ!?》

実況が響き、また歓声が湧き上がる
ハァ、と少年は誰にも届く事の無い溜息を吐き、武舞台を後にする

「…もっとマシな奴はいないのか
 俺は目隠しをしているんだぞ? これ以上のハンデは無いだろ?」
「仕方無イ。コレモ任務ダ」

少年の持った鎌が、黒いローブを羽織った人影に変わる
それを見て、少年も口を開いた

「確かにそうだが…こんな下らん催し物に付き合わされる俺の身にもなって欲しい」
「普段カラ戦イバカリ求メテイルオ前ニハ好都合ジャナイカ」
「ただ戦うだけなら何時だってできる…俺が求めるのは、俺に本気を出させるような奴との戦いだ
 5分程度で降参するような弱者ではなく…全身の血が煮えたぎらせるような強者との…」
「言ッテオクガ、オ前ノ任務ハコノ大会ノ優勝賞品デアル『エフェクター』ノ回収ナノダゾ?
 頼ムカラ、本来ノ目的ヲ忘レルナ」
「分かってるよ、シェイド」

そう答えると、一度無貌の仮面を取り外して、
少年―――黄昏裂邪はまた、深い溜息を吐いた



     †     †     †     †     †     †     †





それは昨日の事だった

「“闇のコロシアム”だと?」
「ええ、どうやらそういった催し物が存在するそうですの」

ノートパソコンのディスプレイに映し出されたのは、
件の“闇のコロシアム”についての詳しい情報
場所や日程、参加資格などが細かく記されていた

「いつからこんなものが始まったのかは分かりませんけど…問題はもう一つ、」
「……優勝賞品が『エフェクター』…か」

資料の一部を裂邪が読み上げると、
御明察、と言うようにローゼは大きく頷き、話し始めた

「貴方もご存じかと思うけれど、近年『エフェクター』の使用者が増えつつありますわ
 確かに中には無害な物も存在しますわ
 それは、100ある内の半分だと言っても差し支えありません
 けど、そのもう半分は……」
「都市伝説との同化を促進させ、最悪の場合……使用者は破滅の運命を辿る
 俺は1度、その瞬間をこの目で見ている」
「そのような悲劇をこれ以上起こす訳にはゆきませんわ
 そこで……貴方にはこの“闇のコロシアム”に参加し、『エフェクター』を獲得して頂きたいの」
「面白そうだな。というか、ローゼちゃんなら大会参加なんてまどろっこしい事しないで、
 適当に潜入して『エフェクター』の奪取だけ指示するもんだと思ってたが」
「それも考えに入れておりましたけれど、リスクが大き過ぎますわ
 参加者としてなら、疑われるようなことは少ないし安全に任務に臨めますの
 まぁ、貴方でしたら心配無用だとは思ったけれど…万が一の場合に備えて、ね?」
「確かにその方が賢明だな…」
「あら、珍しくノリ気じゃありませんのね?」
「参加者は『エフェクター』を狙ってる訳だろ?
 『エフェクター』を使えば、都市伝説の情報を歪曲させて新たな力を引き出せる
 だが実際、そこまでしなくても殆どの都市伝説は応用すればある程度の戦闘は可能だ」
「正直、貴方の場合はナントカ補正が入ってると思いますけれど」
「メタっぽいからスルーするぞ
 それでも大した力を引き出せない奴が『エフェクター』なんて物に縋る
 つまり、この大会ははっきり言って雑魚ばっかりな訳だ
 俺に言わせれば、俺じゃなくとも“Rapidity”や“Reflector”、最悪“Reader”でも良い筈だろ?
 なのに俺を呼んだって事は……他に何かあるな?」
「おほほほほ、本当に察しがよろしいですわね
 『Rangers』はその立場上、R-No.の構成員以上に顔が知れやすいですわ
 貴方が挙げた様な主力メンバーの皆さんは特に、ですの
 中でもトップクラスで有名なのは“Rainbow”……貴方なのだけれどね」
「そんな奴が参加すりゃ、主催者側も黙ってない筈だ」
「その通り。だからこそ貴方が“Rainbow”だとバレないように変装して頂きたいの」
「やっぱりそういうことか…」
「別に女装しろ、という訳ではありませんわ
 仮面を被って頂くだけでも立派な変装ですし」
「こういう時が来ると思って蓮華ちゃんに作って貰ったんだ」

そう言って、裂邪が取り出したのは、金色に眩く輝く仮面だった
いや、目も鼻も口もないそれは、仮面と言うには程遠く、寧ろ円盤と言った方が近いだろう

「…それは?」
「少し殴られたくらいじゃ壊れない素材で出来てる
 南極の一件以来、「ジャック・オ・ランタン」の力が強化されて余所見してても戦えるようになったからな
 良い機会だし、ハンデして戦ってやろうと」

す、と彼は仮面を被り、軽く御辞儀をするような素振りを見せた
その瞬間、ローゼの背筋が凍てつきそうになったことを、誰が予感しただろうか

「……あの、裂邪さん? それだけはちょっと……」
「ん? 安心しろ、バレそうになったらそれなりの対処はする
 この大会は殺しOKらしいが、不殺を貫くことも約束するよ」
「いえ、そうではなくて―――」
「それじゃ、皆と作戦練ってくる」
「あ、ちょっ、裂邪さん!」

早々に部屋を出て行くその背を見て、深い溜息を吐くローゼ
彼女が抱くは、たった1つの不安

「……また一つ、近付いてゆく……
 ねぇ、貴方は何処まで行ってしまうの? 裂邪さん…」

《お待たせ致しました! 決・勝・戦です!
 遂に『エフェクター』に相応しい最強の契約者が決まります!》

熱い歓声の中、武舞台にスポットライトが照らされる
輝く鮮血の痕が、ここで繰り広げられた数多の戦いを物語っているようだった

《まずはAブロック代表! 貌の無い仮面を被りながらもたった5分で、それも殺人OKのこの大会で1人の死者も出さなかった強者!
 謎多き無貌の少年、ノーフェイス!!》

紹介が終わると、彼は―――裂邪は通路から出て、スポットライトと歓声を浴びる武舞台に上がる
「だっせぇ前振りだな」という呟きは、巻き起こる声に飲まれて消えた

「……ま、今までの連中は寒気がする程弱い奴等ばかりだったからな
 俺に半殺しにされる為にここまで勝ち上がってきた雑魚か、俺と対等に渡り合えるようなそこそこ出来た馬鹿か……
 どちらにせよ、この長過ぎる茶番劇がようやく終わる訳だ」
《そしてBブロック代表! 奇しくもノーフェイスと同じく不殺を貫いて勝ち上がってきた、烏の仮面を被った少年!
 燃え盛る漆黒の翼、紅(クレナイ)グレン!》

「うおおおおおおおおお!!」という雄叫びと共に、翼の生えた火球が裂邪とは反対側の選手入場口から飛び出した
ばさっ!と羽ばたかせてスピードを殺し、火球はゆっくりと武舞台に舞い降りて、気合を込めた一声と共に炎が弾け飛んだ
先程の紹介通り、烏をモデルにしたらしい仮面で目と鼻を覆った少年
背格好から見るに裂邪と同年代くらいだろうか

「じゃじゃああああああああああああああん!!」
「…は?」
「カーッカッカッカ、お前がノーフェイスだな? 俺様は紅グレン!
 お前の試合は観客席で見させて貰ったが、相当に出来る奴だと見た!」
「あぁ、そう」
「しかぁーし!! お前の命運はここまで!
 あの『エフェクター』は俺様が頂く!」

―――何だこの暑苦しい奴は
呆れた裂邪は小さく溜息を吐いた
その直後、試合開始を告げるゴングが響いた

「行くぞ! 『戦天必焼』ォ!!」

先に動いたのはグレンだった
彼の背から黒い翼が生え、羽ばたいて裂邪に急接近すると同時に、燃え盛る炎の拳を振りかぶる

「『シャドーサイス』」

裂邪は己の影から現れた漆黒の鎌を手に取り、グレンを押さえるべく振り下ろした
グレンは空中で身体を捻って脚を烏のそれに変化させ、鋭い爪と鎌の刃をぶつけて火花を散らした

「ひゅー、危ねぇ危ねぇ、今終わっちゃ烏の行水も良いところだぜ」
「……ほう、少しは楽しめるか」

裂邪は爪を弾いてグレンを遠ざけると、
影から2個3個と、黒いスパークを放つ球体がふわりと飛び出し、浮き上がる

「…『シャドーボール』」

球体は真っ直ぐに、グレンへ目掛けて放たれる
対するグレンは大きく飛び上がり回避を試みたが、球体は彼を追尾し続ける
ばちっ、と黒い雷光が邪悪に煌めいた

「本当に少しだけだったな…これで最後(レッツト)だ―――」
「『昇天霹靂』ィ!!」

一瞬の雷光の後、場内に轟くは雷鳴
その刹那の間にグレンを追っていた球体は跡形も無く消滅していた
ただ、漆黒の翼を織りなすグレンが、炎と雷を纏って悠然と降り立とうとしていただけだった

「カッカッカ! お前やっぱすげぇな!
 久しぶりだぜ、こんなにワクワクするような戦いはよぉ!
 ……だが、目隠しなんてしてないで、そろそろ見せてくれねぇか? お前の“本気”を」
「…ウヒヒヒヒヒ……前言撤回、だな
 この戦い……大いに楽しめそうだ!!」

裂邪は俯いて仮面を外し、何処かに投げ捨てた
瞬間、彼の影から夥しい数の黒い腕が伸び、その身体を包み込む
昆虫のような4枚の翅と長い触角、鋭い爪
その両目は、闇に浮かぶ光の如く紅く輝いた

「……影、推参」



   ...To be Continued

(やっべー、まーた『前編』って書くの忘れてた……まいっか)



紅グレンは安直過ぎるって? ハハッ、偽名に決まってんじゃないすか(ぁ
都市伝説は、とりあえず“烏”がヒントになるでしょう
イメージCVは関智一
ぶっちゃけるとウルトラゼロファイトのグレンファイヤー見て思いついた
でもキャラ的には、遊戯王ZEXALⅡのアリトみたいな、
自分の使命とか関係なく、ただ純粋に、強い奴と戦いたいっていう信念の下に動いてるような、そんなキャラ
詳細の半分は後半で発表、かな?

そんな戯言はさておき皆様乙ですの
後々感想書きます

ぐすっ……白目のシャドちゃん可愛くない……

>>495-496
マコマコちゃんマジマコマコ
それより何やら不穏な影が……
黒服さんが無事にマコマコを届けられると良いんだけど
ところで“ABC”と聞くとアンチビームコーティングの方を思い出す(

>>500-505
ジルりんの「うざいにゃあ」が可愛い
そして路樹くんも強ぇ…明日真くんも大した衰えもなさそうで何より
目玉のおっちゃんが一番かわいそう(
そして悲喜、地味にメタ発言www

>>507-508
数少ない硬派な作風の作者現るか!
重苦しい雰囲気とか素敵ですわン
入間さんの今後に超期待かも
時間のシーンが気になるな……

>>509-513
調ちゃん何さらっと犯罪ギリギリの大暴露しちゃってんのwww盗撮ダメゼッタイ!
そしてショタコンだったとは…結婚して下さい(
触手の化物www『エフェクター』恐るべし…否、ナニカちゃん恐るべし
ホントは反省するべきだけど、調ちゃんは可愛いから許しちゃう(

>>500-505
はがけないの人乙ですー
シューストの罠とはwwww
しかしあのやられた警官さん、下っ端で終わらすには勿体ないな

>>507-508
乙ですー
こういう語り口もかっこいいな

>>509-512
とある人乙ですー
調ちゃん危機一髪!美少女マッドサイエンティスト萌えすなぁ
これからの彼女の研究に期待だ

>>513-515
影の人乙ですー
グレンには…なにか秘密がある!!

ああ…書きたい…続きが一杯たまってるのに…
環境の変化で頭が着いていかにゃいのよ

>>518
>グレンには…なにか秘密がある!!
何故グレンの笑い方がカラスの鳴き声だとバレたんだ!?(絶対そこじゃねぇ

“烏”に関する慣用句を頻繁に口にしたりする
好みの女性は“濡れ烏の髪の女性”

>環境の変化で頭が着いていかにゃいのよ
ヨクアルコアトル

投下した皆様お疲れ様です
個別に感想書きたいんだけど忙しい日々の中で言語野が摩耗して何も言えねえ

前回までのあらすじ
・眼球の遺体をめぐって始まった暗闘は警察署に舞台を移す
・路樹は主人公に有るまじき「俺に構わず先にいけ」をやらかし株を急降下
・果たして主人公の座を奪い返せるのか? 悲喜の戦いはこれから始まる!

それはそれとしてやっぱり招待を隠して戦うとかロマンですよねれっきゅんのお話
とある人もついに少年の良さに目覚めてくれたみたいですし
>>507->>508の人の重たい文体も味わい深いですし
エンジョイアンドエキサイティング
そろそろ単発書きたくなってきちゃうですぅ

【僕は小説が書けない 第十八話「左手に灯す火」】

「さて、署長室はこの奥の筈なんだよな……」

 俺は変身を解除したまま非ユークリッド幾何学的にねじれ曲がる廊下を一人歩く。
 普段の俺ならばありえないことだった。
 初めて会った筈の相手に守るべき民間人を任せて一人奥に向かっている。
 こんなめちゃくちゃはまるで……いや、やめておこう。

「しょ、署長……」

「ん?」

 か細い声が足元から響く。
 女性署員が一人、歪んだ建物の壁に挟まれてる。
 とりあえず思い切り壁を殴る。
 粉々になった壁から女性署員が転がり出てきた。

「あ、ありがとうご……」

 まだ若い署員にこんな事を任せるのは大変申し訳無いが他に手は無い。

「喋れるなら働けるな、入り口の方に民間人と一般の契約者が居る
 契約者は強化系、吸血鬼と契約している
 契約者は民間人を守るために戦闘を続けていた
 民間人を戦闘に巻き込まれない距離まで避難させろ」

「え、でも……私一人ですよ!? それにまだ建物の中にも変な奴らが!」

「ここまでに見つけた奴らは皆殺した。心配するな、行け」

 血に濡れた拳を彼女の前に見せる。
 彼女は怯えたような目をしていたがそれでも次第に落ち着きを取り戻し、最後には

「…………分かりました」

 と言ってくれた。

「すまない」

「もう、そもそもそんな顔されたら断れないじゃあないですか
 それに偉い人が率先して働いていると下もそうせざるを得なくてやり辛いんですから働き過ぎもほどほどにしてくださいね!
 ほんとうにもう人の気も知らないで!」

 彼女はどこかイライラしたような口ぶりで行ってしまった。

「……すまない」

 俺は繰り返すように呟く。
 歩き始める。
 視線の先は闇。
 闇から生まれて、闇の中を歩き、闇の中へ消えていく。
 今まで会ってきた悪党も、俺自身も。
 俺と悪人の間に何の違いがあるというのだろうか。
 あのクラブの暗闇の中で契約者になった。
 街の夜、人のために何度も駆け抜けた。
 そして今、自らの名前を捨てて戦っている。
 曲がり角を曲がる。この先が署長室だ。
 

「ああ…………」

 ため息をつく。
 目の前の闇が凝集する。

「なんと……」

 闇が嘆く。

「――――虚しい」

「――――素晴らしい」

 闇の中から現れた財団の理事長。
 非常に俺好みの悪党だ。
 叩き潰し甲斐がある。

「そんな人生、あなたの幸福が存在しない人生に、何の意味があるのですか?」

「我が生に意味は無し、我が志に意味は無し、我が行動に意味は無し
 無論、誰かを助けてその労働に見合う何かを得られたこともない
 助けた子供が悪人になったこともあった
 救った人々に怨嗟の声だって浴びせられた
 裁いた悪人の家族に、俺の家族が襲われて、守るためにその人達を捕まえたことだってある」

「私があなたの心を読んだことには言及は無いんですか?」

「そういう奴の相手も慣れた」

「はぁ……」

「俺の行動で救った人間の数だけ、その行為が原因で誰かが傷つく
 知ってる。そんなこと、とっくの昔から知っている」

「それなら何故止めないのですか
 あなたのような精神力の持ち主ならば財団としても歓迎しますよ
 お給料も貴方の国よりは多く出せますしねえ」

「その代わりに遺体を寄越せというのか?
 馬鹿げている」

「いいえ、貴方に遺体を差し出します」

 理事長はそう言って懐から先ほど俺から奪った眼球を差し出す。
 この先の署長室にあるものと合わせれば2つ揃う。

「は?」

「貴方はもう常人として人間の側に居てはならないレベルまで至ってしまっているんだ
 才能でもなく、肉体でもなく、ただひとつ心だけでね
 人を超えた心に、人の身体はあまりに狭すぎる
 貴方もまた“あのお方”の遺体を持つに相応しい人間だ」

「誰の遺体だか知らないが俺に死体をコレクションする趣味は無い
 死体のコレクションなんて楽しむのは頭のおかしい悪党と相場が決まっているんだ」

「そういう輩とも相手したことがあるのですか、まあそういうのも居たのでしょうね」

 そういうの、なんて言葉で済ますな。
 気に入らない奴だ。

「聞かせてください。自分の正義の味方としての働きを無意味に思っているならば何故それを続けるんですか」

「目の前に困ってる人が居る」

 善人でも悪人でも、困ってる人が居るならば自分の力の範囲で助ける。
 助けてきた。助けられなかった人も見殺しにせざるを得なかった人もたくさん居たけど。
 でもそれでも。

「俺は最善を尽くしてきた。これからも尽くす。何もしないって選択だけはまっぴらごめんだ」

 死神が背後で笑う。
 俺もまた、奴らと同じ人殺しに過ぎないと、改めて思い知る。
 だがそれでも俺は進む。

「―――――――――――変身!」

 周囲の瓦礫を原子レベルに分解・再構成。
 その際に都市伝説の力を注入して強度を自在に操り、剛性を保ちながらも軽快な動きを可能とするアーマーへと変化させる。

「やれやれ、困った人だ」

 俺は理事長に向けて跳びかかる。

「いくら素晴らしい精神の持ち主でも所詮身体は平凡」

 理事長が俺の目の前から消える。
 多分背後に消えたな、そういう性格だ。
 背後に向けて蹴りを放つ。
 手応え有り、何かを止めることができた。
 これだけの速度を持つならば一度止められたところから押し返すことはできない筈だ。

「どんなに戦闘経験を積んだ所で地力の差は埋まらない」

 急に、俺が足で止めた何かが重たくなる。

「口裂け女の速度、テケテケの腕力、それらを同時に相手にすることができますか?」

 蹴り足を素早く戻して前に飛ぶ。
 背後で何かが風を切る。
 まともに当たれば消し飛ぶ威力の攻撃だ。
 こいつ肉弾戦もできたのか?

「できないでしょう。貴方の能力は確かに殺傷能力は高い
 死神というだけはある。でもそれだけ、戦闘能力は惨めの一語」

 振り返ると空中に幾つもの氷弾が浮かんでいる。

「射出」

 すべての弾丸が同時に俺へと飛ぶ。
 躱すか? いいや、ああいうのは着弾直前に分裂する。
 ならば分裂前に突っ込む。
 正面から突撃をかまし、あえて弾丸に当たる。
 装甲ごと右肩の肉を持っていかれた。
 あとで医者行こう。
 でもその前に全力であの男を殴る!

「玄武の防御を砕くことが……」

 理事長の表皮が緑色に変色して一気に硬質化する。
 でも殴る!
 当たった!
 怪我した腕でも殴り抜く。
 拳から血が出ているけど構わずに殴り抜く。
 表皮を砕けなくても衝撃を伝導させれば良いのだから。

「そぉ……れっ!」

 掌底を叩きこんで理事長を廊下の奥まで吹き飛ばした。
 そしてそのまま目の前の署長室に入り込む。
 扉は電子ロックが為されていて、こういった緊急時には俺の網膜認証以外では入れない。

「この勝負、俺の勝ちだな」

 そう言うと同時に扉が開く。

「えっ」

「やれやれ、私の能力の中にスーパーハカーが有って何がおかしいのですか?」

 ああ、しまった。



    ※    ※    ※


「お姉さん、道に迷ってらっしゃるようですが宜しければ僕みたいな年下のイケメンと恋の迷宮に迷ってはくれないでしょうか
 とまあこんなこといきなり言っても変な奴にしか思われないかもしれないので自己紹介をしておきますね
 僕の名前は六条悲喜と申します
 飯綱大学の薬学部で普段は世の為人の為に仕事できる人間になる為の勉強をしてるんですが趣味でこういう変な場所を歩き回ってるんですよ
 だから将来性ばっちりですしこういう非常事態にも強い
 もうお買い得、超お買い得
 今のうちに捕まえておけばもーう株価うなぎのぼりですよ
 さあどうでしょうお姉さんよろしければ一緒に……」

「うわうざっ」

「グワー!」

 警察官のお兄さんとジルりんの三人で警察署までは辿りつけた。
 お兄さんの霊視で組織や財団の見張りを躱しつつ霧の中の警察署まで車を寄せることはできた。
 そこまでは良かったのだがなぜか霧に阻まれて警察署の入り口が見つからない。
 仕方がないので三人で窓から入った直後に美人な婦警さんに出会ったのでナンパしたらこのザマである。

「警察官のおにーさん、こいつ変なやつだけど逮捕しないでくれよ」

「ああわかってるよジルちゃん。もう十分思い知った」

 後ろで二人が頭を抱えている。
 もうやだこんな扱い。

「飯田さんじゃない! 貴方無事だったの?
 姿が見えないからもうてっきりダメとばかり思ってたのに!」

「え、どちら様!?」

 婦警さんが警察官のお兄さんに駆け寄る。

「傷だらけね、何があったの?」

 くそっ……結局望むものは得られぬ定めか。
 あんな美人のお姉さんを忘れるなんて警察官のお兄さん見捨てりゃよかった。

「そこの二人に助けてもらわなきゃやばかった
 ここを襲撃している悪党の一味に捕まってたんだよ」

 婦警さんがこちらを見るのでどや顔しておく。
 ジルりんに背中からどつかれた。

「まったく、調子に乗るな」

「はぁい……」

「あ、もしかして一般人守るために戦っている契約者って貴方……じゃないわね、吸血鬼と契約してないし」

「多分それは僕の弟です」

「弟?」

「ええ、きっと無報酬で見知らぬ人の為に戦ってるんでしょう
 あいつらしい……」

「なあ悲喜、それなら路樹のところに行った方が良いんじゃないか?」

「ああ、そうだろうな
 婦警さん、貴方弟の居場所知ってます?」

「えーあー……多分貴方の弟っぽい人なら向こうに居るってうちの署長が」

「なるほど、じゃあ路樹は向こう側か」

 よし、まずは冷やかしに行こう。

「……待ってくれ、今更だけど聞かせてくれ
 君たち兄弟なんだね? そして君がお兄さんの悲喜で弟が路樹なら……」

 そう思ったところで警察官のお兄さん――飯田さん――が声を上げる。

「それが一体?」

 そう言いかけて、しまったと思う。だがもう遅い。

「君たちはもしかして六条靖菜さんの息子さんじゃあないかい?」

 …………嫌な名前を聞いた。
 もう聞かなくて済むと思った名前だったのに。

「たとえ知っていても知りませんね。僕の人生の唯一の汚点なので忘れました
 可能な限り関わり合いたくないので話はすべて弟にお願いします」

「何か事情が有るみたいだね」

「…………」

 図々しいポリ公め。

「悲喜、顔が怖いぞ」

 ジルりんの言葉に慌てて顔に手を触れる。
 確かに歪んでいる。
 無理やり整えた。

「…………いかんな。こんなんじゃあ俺……僕もまだ修行が足りない
 この話は後にしてください。僕は死人よりもまだ生きているかもしれない弟の方が大事なので
 道すがらの護衛くらいはできる筈ですから連れてってくれませんか?」

「分かったわ路樹くん」

「さすが婦警さんは話が解る。ありがとうございます」

 婦警さんは僕達を連れてグネグネと曲がる奇妙な廊下を歩き始める。
 捻じれ狂う重力の方向や、光の屈折に、正気がジリジリ削られていきそうだ。
 窓の外から差し込む赤い光で目が痛くなる。
 赤い光……?
 なんだあれ、燃えてる。
 霧を吹き飛ばしそうな勢いで周りの廃墟が炎上している。

「うそ、炎に囲まれてるのこれ? 飯田くん何か見える?」

「俺の霊視はそこまで詳細では……この先に強烈な契約の気配と子どもたちが沢山
 あとは死体、人じゃない何かの―――――――ッ!!」

 突然飯田さんが目を押さえる。
 何か妙な物を見たらしい。

「大丈夫か警察官のお兄さん」

 ジルりんが心配そうな声で尋ねる。
 随分人間らしくなったものだ。

「なに、心配いらないよ。ちょっと目が疲れただけだ」

「無茶しないでくださいよ。助けた意味がなくなる」

 僕はそんなことを言いながらも「ひどいハズレ能力だな」とか思ってた。
 強烈すぎる相手を見ると反動が有るなんて本当に使いづらい。

「……あれかな」

 遠くに見える子どもたち。
 皆恐怖に震えている。
 そしてその子どもたちを一生懸命に世話している女性……ナージャさんだ。
 あんな顔することもあるのか、面白い。
 人間の二面性ってのは古来より面白い題材だ。
 でもまあ今一番面白いのは子どもたちから少し離れて悔しそうに地面に拳を叩きつける男だ。
 可愛い可愛い僕の弟じゃないか。
 警官共を無視して僕は弟の側に立つ。
 後ろでジルりんとナージャと警官共が何か話しているみたいだが気にすることはない。

「随分元気が無いな」

 僕はそう言って笑った。



    ※    ※    ※


 勝った所で守れなければ意味が無い。
 奪った所で奪われたものは帰ってこない。
 命を救った所で心は救えない。
 俺とナージャが化け物を倒してからすでにだいぶ時間は過ぎていた。
 大好きだった先生を奪われた子どもたちは怪物の脅威から逃れて尚怯えている。
 ナージャは子どもたちを一生懸命宥めていたが、俺は何もできずにただ彼らの先生の死体の目の前で絶望することしかできなかった。
 俺はこれだけの力を持っていたのだ。
 だったらこの人だって救えた。
 皆、皆、もっと、もっと救えた。
 誰も傷つけずに戦えた。
 有ると知ってしまった以上、俺は欲しい。
 理不尽をねじ伏せる理不尽な力が。
 今はまだ足りない。
 最初に契約で得た力は本当に始まりに過ぎなかったんだ。
 俺自身が、そしてナージャが、強くならなければ悲しみの渦を止めることはできない。
 悲惨な世界への対応者でいることしかできないのだ。

「随分元気が無いな」

 背後から声がする。
 振り向くと兄が居た。

「兄ちゃん、俺ダメだわ」

「いや、ダメじゃねえよ」

「ダメついでにお願いしても良いか」

「なんだ」

「この人生き返らせてくれねえか。たまには俺のミスの尻拭いってのも悪く無いだろ」

「ハハッ、馬鹿言うなよ
 お前この先毎回毎回そんなお願いして回る気か?
 僕の左腕はあと一回しか使えないんだ
 こんな死人なんてこのさき沢山見る
 この人を救えばお前はこの先出会うそういう人達が救われるチャンスを摘み取るんだぞ」

「……そうだな、分かってはいたんだ
 そんなむしの良い話は無いよな」

「見ず知らずの為の人間のために使う力なんて無いね
 お前の兄が見ず知らずの人間を助けるなんて無意味なことをする人間だと、思え」

「え?」

「最後の一回だ」

 兄が、左腕をそのめちゃくちゃになった死体にかざした。



    ※    ※    ※

「最後の一回だ」

 僕はそう言って左腕を女性にかざし、願う。

「生き返れ」

 その瞬間、僕の周りに突風が吹いた。
 周囲の人はそれに気づかないかのように……いや、止まってる。動きを止めている。
 時間が止まっているのか?
 どういうことだ。何故時間が止まる。
 
 ▽迷ったのならば使ってはいけない

 脳裏に誰かの言葉が浮かぶ。
 僕は迷ってなどいない。

 ▽見知らぬ誰かの為に、与えられた奇跡を無駄撃ちする必要はない

 僕は構わない。

 ▽弟の為に、使ってはいけない

 僕は僕のためにこれを使う。
 
 ▽迷ったのならばこれを使ってはいけない

 僕は、迷わない。

「ならば、使いなさい」

 はっきりと声が聞こえた。
 いつの間にか僕は建物の中ではなく、どこともしれぬ広い野原の真ん中に居た。

「貴方の迷いが無いのならば、それを使うと良い」

 目の前の男がそう語っていた。
 ボロボロの着物を纏い、黄金の肌と青瑠璃色の体毛を持った男が僕にそう言った。

「あ、貴方は―――――」

 貴方はもしかして、と叫んだ瞬間。僕はまた警察署の中に戻っていた。
 子どもたちの声が聞こえる。
 そちらの方を向くと子どもたちと先ほどまでボロボロの死体だった筈の教師が綺麗な姿で抱き合っていた。

「ごめんな兄ちゃん」

「構わねえよ」

 物語のオチはこうでなくては面白く無い。
 ご都合主義だったとしても、つまらなくても、最後はきっちりハッピーエンドだ。
 僕は立ち上がる。

「ジルりん」

「行くのか?」

「ああ、最後は僕が締めなきゃつまらないからね
 路樹、お疲れ様。後は元気の残っている僕達に任せとけ」

「任せた」

「それじゃあ感動の再会に水を差す前にさっさと行かせてもらうぜ」

 僕はジルりんと彼女の能力を使って気配もなくその場から姿を消す。
 目指す先は決まっている。
 
「聖母の左側の少し高い所に、火の剣を左手に持った一人の天使を見ました
 しかしその炎は、聖母が天使に向かって差し伸べておられた右手から発する輝かしい光に触れると消えるのでした
 天使は、右手で地を指しながら大声で叫びました
 悔い改めよ、悔い改めよ、悔い改めよ、と」

「何を言っているんだ悲喜」

「ジルりん、悔い改めよと言われてさ」

「ん?」

「悔い改めようが無い時って困るよね」

 僕は歩き続ける。

 ▽猿の手との契約条件を満たしました
 ▽これより仮契約から本契約に移行します


【僕は小説が書けない 第十八話「左手に灯す火」 おしまい】

趣味に走りすぎてないか?
読んでる人に優しくないんじゃないか?
とふと思う
昔は質や量にこだわれる程慣れてなかったからこそストレートにやれてた気がする
周りの人の勢いに乗っからせてもらっていた気もする
今はナマジ長々書けてしまうが故にテンポ配分考えられてない気がする
自分の満足はまあ当然不可欠だ
でも形にする以上は上手に加工しなくちゃいけねえしなあ

とまあそんなことは表面的なことなんですよ
なまじ忙しい生活なもんだから腹の中に溜める為のドス黒い燃料が足りてない
それを燃やさないと人を引きずり込む話なんて書けません

金の肌に青瑠璃の毛………遺体の正体ってまさか……!?
そうだとしたらこの力も納得だな
悲喜くんが初めてカッコよく見えたぜ、ナイス悲喜くん
そして路樹くんの台詞が後の伏線とも取れるな、善悪は問わず強化フラグ
理事長さんも初戦闘だけど、それじゃ能力はまだ氷山の一角にも満たないだろうねぇ
全貌が明かされるのを待ちますか…色々候補を探しつつ

>>522
>それはそれとしてやっぱり招待を隠して戦うとかロマンですよねれっきゅんのお話
一生に一度は書きたかったネタだったけど早くも消費(ぁ
ついでに目隠し戦闘も今回が初か(※設定自体は『夢幻泡影』の頃から存在

【都市伝説童話「泣いた口裂け女」】

昔々、あるところに口裂け女が居ました。
口裂け女は人間が大好きで、本当は人間と一緒に人間として暮らしたいとずっと思っていました。
ですが彼女の醜い姿を見れば人々が彼女を拒絶することを彼女だって分かってました。
だから彼女はいつも人間に気づかれないように遠くから大好きな人間を見つめていたのです。
そんなある日のことでした。
彼女が塾帰りの子供達を遠くからじっと眺めていると、その子供達をつけ回す刃物を持った男がいることに気づいてしまったのです。
彼女は人間が、特に子供が、大好きでした。
子供は見た目で人を判断しないという話を聞いていたからです。
彼女には子どもたちを放っておけません。
一人、また一人と子どもたちは集団から別れて家に帰っていきます。
彼女も心配しながらこっそりとつけていきます。
集団が最後の一人になっても男はまだ子供の後ろからこっそりと追いかけているようです。
彼女はその子供を守るため、意を決して姿を表しました。
「ねえ、私キレイ?」
なんということでしょう!
彼女はそれ以外に話す言葉を持っていなかったのです。
どんなに優しい心を持っていても都市伝説である彼女は自分の有り様には逆らえなかったのです。
天使のように愛らしかった子供の顔は恐怖で歪み、悲鳴を上げながら彼女から逃げていきます。
彼女はとっても悲しくなりました。
でもこれで子供が逃げてくれた。
彼女はとっても満足していました。
と、その時です。
「現れたな化け物め!」
そう言って今まで子どもたちから距離をとっていた男が急に近づいてきて刃物を口裂け女の喉に突き立てました。
そう、男はほかならぬ口裂け女の気配を感じ取って子どもたちをつけていたのです。
ああなんということでしょう。
そんなことも知らない口裂け女は本当のことを話そうとしても喉に刺さる刃物のせいで何も話せません。
涙をポロポロと零す口裂け女のことなんかお構いなしで男はそのまま刃物をグリグリと口裂け女にねじ込みます。
そして哀れにも彼女はそのまま男に殺されてしまいました。
でもそんな姿を神様は見ていました。
彼女の優しさに感動した神様は彼女の魂を拾い上げてその少年の妹に生まれ変わらせてくれたそうです。
めでたしめでたし。

どこぞのアンデルセンに影響を受けて童話風
オチをこんな風にしちゃう辺りがまだ突き抜けられない証

>童話風
ガタッ


乙ですの
口裂けさん健気、でも可哀想
妹欲しい(

童話風ってのも良いかもね
だが女の子の喉にナイフ突き刺す描写のある童話なんて見たくないよ!子供泣くよ!wwww
いっそ近親相姦や幼女性愛、拷問虐待などをふんだんに描写したグリム童話風の話をですね(帰


脳が半分寝てたのか>>532の文章が色々おかし過ぎて泣きたい
とりあえず
>理事長さんも初戦闘だけど、それじゃ能力はまだ氷山の一角にも満たないだろうねぇ
これは理事長さんがまだ全力の内の1割も発揮して無いんだろうなって意味…だと思う、そうだろう過去の俺

やめて! 不用意に人間を襲って、契約者に反撃されたら、噛ませ犬とかやられ役なんて言われてる口裂け女は一瞬で負けちゃう!
お願い、死なないで口裂け女! あんたが今ここで倒れたら、花子さんや人面犬との約束はどうなっちゃうの?
体力はまだ残ってる。これを耐えれば、契約者に勝てるんだから!

次回、「口裂け女死す」。デュエルスタンバイ!

はがけないの人、口裂け童話の人乙ですー
明日こそ…明日こそは投下する…

「ここどこ? うっそー! 風景とかチョーきれいだし信じらんなーい!」
「ミサキもそう思う? 俺もそうなんだよなあ、絶対お前喜ぶと思ってさ」
「ああでもちょっとちょっと怖いかなあ……ここの崖とか落ちたら死んじゃいそうだし」
「大丈夫だって、ミサキには俺がついているぜ!」
「もうひろ君ったらぁ!」
K県のU市には昔から伝えられている不思議な話があります。
それは町の南端にある夜景の綺麗な岬には七人組の幽霊が出るというものです。
地元の老人は恐れてここに近寄りたがりませんがそれ故に普段から人が近寄りがたく、ある種のデートスポットになっています。
「へへ……まあ惚れた女を守るのは男の役目だからな」
「ひろ君……」
今この場所に来たカップルもそういった人々です。
「寒くなってきちゃったね、車の中入ろっか」
女のほうがそう言うと男のほうも何か察したのか、鼻の下を伸ばして
「ああ、そうすっか」
などと言って女の肩を抱き寄せたりするものですからもうたまったものじゃあござんせん。
まあ絵に描いたような腹の立つDQNカップルではございませんか。
これは幽霊でなくても祟りたくなるというものです。
かくいう“私たち”も何と言いますかこう腹が立ちましてですね。
彼らの車をこう……ゴンッと蹴り飛ばす。
ああ申し遅れました私たちが“七人岬”、片田舎でしがない悪霊なぞやっております。
さて話を戻しましょう。私たちが車を蹴ってもこいつら車の中でドタバタしているものだから気づかない。
業を煮やした私たちはもう安直に姿を現してですね、窓に顔なんかべったり貼り付けまして言ってやるわけです。
「ここから……出ていけ……!」
とまあそんな感じ。
わたくしたちの言葉を聞ける人間も近頃めっきり少なくなってきまして、どうにも彼らにも言葉は通じなかったようなのですがまあ目的は達成できたようで男のほうはもう下半身丸出しで泡を食って逃げていきます。
あとに残された女の方の呆けた面といえばいやはや笑いが止まりません。
我々の手で死ぬ者と我々の恐怖を語り継ぐものが同時に生まれたのですから本当にカップルってのは美味しい獲物でございます。
とまあこんな感じで今日の私たちのお話はおしまい。
お後がよろしい……

「待て待てまてぇい!」

少し小高くなった岬の最奥から響く声、見ればそこには赤いマントの男が立っている。

「アベックの嬌声に咽び泣く男! 赤マント!」
我々の縄張りに入ってくる命知らずが居たようです。
これは少し痛い目を見ていただかねばならんかもしれません。
「たった一人で来るとは命知らずなやつも居たものだ」
仲間の一人がそう叫びます。
「これを見ても同じ事が言えるかな?」
「エフェクターオン!」
赤マントの腕の時計のようなものが光り始めます。
「愛の絆がブレイクして若干喜ぶ男! 青マント!」
なに? まだ居たのか。
まあ良いでしょうこちらは七人、二人くらい捻り潰して……
「都市伝説退治の専門家! 緑マント!」
えっ
「赤は血の色命の色、生命のために血を流す男! イエローマント!」
いやおまえ色違うから。
「男なんてシャボン玉、バスルームから愛を込める男! ピンクマント!」
お前女性だろどう見ても。

「「「「「五人揃って都市レンジャイ!」」」」」

チュドーン!
何故か五色の煙をあげて彼らの背後が大爆発しております。
こうなってくると若干私たちも乗ってくるものです。
「都市レンジャイ! 一体何をしにきた!」
「司令の命令だ、貴様を倒し、街に平和を取り戻す!」
「司令? まあいい、我々は七人、お前たちは五人。これで勝てるわけなど無いのだからな!」
そう、なにせ人数が違います。
「おっと、もうおっぱじめてたのか」
「気の早い奴らだぜ」
まさかと思って辺りを見回すと空から二枚の紙がひらひらと舞い降りてきます。
「都市伝説キラー赤い紙!」
「都市伝説キラー青い紙!」
「「二人合わせて!」」
ビュウ!
その時海の方から一陣の風が吹きまして、二枚の紙は吹き飛ばされてしまいました。
「隙ありだぜ! 七人岬!」
しかし敵もさるもの、その間に既に五人集まって巨大なマントを構えています。
「「「「「タイダルマントウェーブ!」」」」」
大きく波打つマントが私たちを飲み込んでいき、私たちを押しつぶし、意識が……


―――――――――――


T都S区
そこでは七人の女性らしき都市伝説が集まり怪しげな会議が始まっていた。
「どうやら七人岬がやられたらしいな」
「ふん、奴らは態度だけ大きくて実力が伴ってなかったからな」
「だがどうする、このまま都市レンジャイに舐められっぱなしでは困るだろう」
「知れたこと」
「その通り、我々『渋谷七人ミサキ』が奴らを八つ裂きにすればいいのだ!」
「七人なのに八つ裂きとはこれいかに?」
「むむう……」
会議場が一瞬の沈黙に支配されたその時、ドアを開けながら会場に乱入する男が居た!

「切り裂く場所が7つなら8つに裂けると指摘する男! 赤マント!」

都市レンジャイは今日も戦う、頑張れ都市レンジャイ! 続く!



              ※続かねえよこんなもん

これは続けるべきwww噴いたwww
ギャグ専連載やろうぜ!
最近そういうのが無いと思ってたんだ

これ読んでなんとなく思いついたネタがあるんだが
昨日の酒が抜けてないのでもうちょっと経ってからにするね

そうそうこういう話だよこういう話
こういう話を読みたかった

そうそうこういう話だよこういう話
こういう話を読みたかった

赤マントまでは耐えたんですよ。赤マントまでは。
なぜかですね、青マントのところで吹いてしまいましたよ。
ダーマからのゴレンジャイに繋ぐのはズルいぞっ、許せるッ!

「これが今度の仏さんか・・・。えらく小さいな、かわいそうに。まだ小学校も出ていないんじゃないか?」
「ええ、まだ小学3年生。死因は暴行だったそうです。」

とある病院の霊安室。
二人の男性医師は、苦い顔で遺体を見ていた。
多くの人の死に対面する仕事に就く二人にとって、人生折り返しかどうかという自分よりも若い人間の死は珍しいものではない。
かといって、慣れてしまえるものでもなく、医師になったことを後悔する時間であった。

それに、この遺体の少女には、二人を悩ます要因が、その幼さ以外にあった。

「札持ちか・・・」
「はい。もともと拒否を希望していたようなのですが、死ぬ間際に書いたのでしょう。NLカードに血で『はい』の方に丸がついていました。おそらく復讐のためかと思われます。」

NLカード。主に都市伝説が多い地域において、都市伝説化する可能性が高い特徴を有する人物に配られるカード。
死後に都市伝説として新しい人生を得るか、そのまま死ぬかの意思表示カードで、ドナーカードの都市伝説バージョンのようなものと言える。
ただしその存在はカード所有者と一部の医師、組織の人間しか知らず、所有者はこれを口外してはいけないとされている。
そしてその所有者を担当医師の間では札持ち、札付き等と呼ぶケースが少なくない。

「しかも、脈アリなわけか」
「名前が花子で、検査項目の陽性の数も札持ちの中でもかなり多い部類。おまけに死に場所がトイレですからね。やるとなれば少なく見積もっても8割方成功するでしょうね。」
「名前が花子でさえなければ、普通に逝けたものを・・・。まあ、理不尽に命を奪われた子供の復讐を応援したい気持ちは無くは無いが・・・」

札持ちの死者を都市伝説に仕立てる作業に従事する者の中でも考えが別れる。
この二人の知り合いには、都市伝説化して幸せにしてる者やその契約者も数名いたが、やはりどうしても気乗りはしなかった。
それでも、作業はやらなければならないのだが。

「仕方ない、金のためと割り切って処置に入ろうか。」
「相性の良い契約者と巡り合って、幸せに人生やり直せることを願いましょう。」


この病院での処置で、多少の美容整形や身体のいくつかの部位の摘出や置換等を行われた少女は、その後いくつかの組織で別の処置を受けて、数ヶ月後にはトイレの花子さんとして再び目覚めを迎えることに成功した。

つづぬ

>>538-539
乙ですー。わろたwwwwwwゴレンジャイで連載見たいよ!

>>544
乙ですー
NLカードって面白いアイデアですね。

>>545
どもです。
実際のところ、都市伝説化は絶命した現場で起こる気がするのであんまり意味なさそうですが、まあ単発なので。
ちなみに安直にネクストライフの略です。セカンドライフだと略がSLで蒸気機関車っぽく、桃鉄かトーマスっぽいからNLです。

「切り裂きジャックを殺さないで、か・・・」
「無理だろ」
 何か憂うようなアルの呟きをエディはさらりと流した。
 生きて捕らえる事が出来たとして、どのみち死刑は免れないだろう。すでに数えるのも困難なほど殺しを重ねているのだから。
「あの子どもは何らかの事情を知っている、そういう事だな」
「そのあたりはお前さんが探ってくれよ」
 俺は良い身なりしてやがる連中には、口もきいて貰えねぇからな、と皮肉っぽく言い放ち、ジャケットを引っかけて出て行くエディの背に、アルの誰にともない呟きは届かなかった。
「奴に何か理由があるとして・・・誰もを救う事は出来ないのだろうか・・・」

 夕刻、再びホワイトチャペル地区。
「なー、俺こーゆーモンなんだけど」
 町のそこここに立ち客を待つ娼婦に、臨時に支給された警察手帳を持ったエディが軽い調子で声を掛ける。
 娼婦たちはいぶかしみながらも、若くそこそこ見栄えのする容姿を持つエディにさしたる悪い印象は抱かなかったようで、誘いには事欠かなかった。
「悪いな、“そっち”はまた今度にしてくれ」
 もとより今更聞き込みで新しい情報が入るとは思っていない。
 犯人は現場に戻る、とはよく言ったもので、彼自身はあまりそれを信じてはいないものの犯人が他で“獲物”を調達出来る当てがあるかと言えば―
「ねえよな、やっぱり」
 眼前には、黒いドレス姿の少女。手には牛でも解体するような大振りのナイフを携えている。
「殺さないでって、言ったのに」
「切り裂きジャックを殺さないで、か。・・・命乞いは自分の為か、他の誰かの為か?引っかかる物言いじゃねえか」
 少女は何も言わず、ナイフを構えた。
「ガキが相手じゃ気が進まねえが…悪く思うなよ」
 呟くと、エディは銃を取り出した。
 彼の契約する〈伝説〉・・・「魔法の弾丸」
 旧くドイツに伝わる〈伝説〉悪魔から与えられたその弾丸は、射手の望みのままに命中するが、最後の一発、それだけは、必ず悪魔の望むところに当たるという。
「お前に俺が殺せるか?」
 〈伝説〉は自らを造り上げるそれによってしか動けない。
 仮にこの子どもが娼婦たちの惨殺犯であったとして、女しか殺さない、殺せない・・・だろうか?

(それとも、罠か)
 あえて女の死体しか残さず、男の死体は何らかの方法で始末する。あるいは殺し方を変え、犯人が同一である事を悟らせない。
 「犯人は女しか殺さない」と錯覚させて、捕縛者は返り討ちにする。あり得そうなことではある。
(やってみなきゃ、わかんねぇか)
 先ずは動きを止める意図で足に狙いを定めた。「魔法の弾丸」は何者をも逃さない。
 がちゃりと音がして、回転式の拳銃の弾倉が回った。
 そのまま引き金に掛けた指に力が入った、その時。

「待てーっ!!」

 大声と共に、息せききって駆けつけたのは。

「アル・・・!?」

 思わぬ闖入者に驚いたエディだったが、今更引き金を引く指を止められるものでもない。

 ぱんっ

 乾いた破裂音が響き、少女のドレスを易々と貫いた弾丸はその細い足を撃ち抜いた。

「・・・・・・!」

 片足を撃ち抜かれバランスを失った少女がその場にくずおれる。
 すかさずエディが走り寄り少女の手首を掴んだ瞬間・・・

「こんな子供を撃つなんて!」

 アルがエディと少女の間に割って入った。

「てめえ状況見ろ!」
 子供とはいえ大振りのナイフを振り回して襲ってくる相手にどう手加減しろというのか。
 エディが少女の前に立ちはだかるアルを押し退けようとした時、少女の手元で銀色の刃がひらめいた。

「・・・邪魔」

 布が裂ける嫌な音がして、膝をついたアルの背中をエディが覗き込むとスーツの背中が真一文字に裂けていた。
 そこからみるみる広がっていく深紅。一目で軽くない傷を悟ったエディはこの場は撤退する事を決めた。

「逃げるのは趣味じゃねえ、なんて格好つける気もねえけどな・・・それにしても、足引っ張りやがって」
 アルが膝をついたまま痛みにうつ伏せるのを苦々しく見ていたエディの表情に、不審の色が横切る。
 スーツ越しに触れる、人肌にしては堅い感触。
「ちょっと傷見せろ」
 スーツとその下のシャツをさっとめくると、更に布地が見えた。リボンも華やかな柄もない、けれど高価そうな黒絹に、幾筋かの鯨髭の骨が通っている。
 間違いない。これは―

(コルセット・・・だと!?まさか、こいつ・・・女!?)



続く

皆様乙です
NLカードは良いアイディアですね
これでいくつも短編が書けそうだ
色々試してみたくなります
切り裂きジャックと魔弾の方は前回のあらすじを……前回のあらすじを要求します

 ランニングの後、俺は公園で道行く人を眺めながら一個の赤いリンゴを食べていた。
「お嬢さん、何しているの?」
 戯れに一人で寂しそうな顔をしている少女に声をかけた。
「何もしないをしているの」
「そいつは洒落ているな、寂しくないのかい?」
「うん。だって花子はいっつもそうやってるもん」」
 透明で、綺麗な瞳は見ているだけで吸い込まれそうだった。
 俺はこれでもこども好きだ。
 彼らは白いキャンバスに似ている。
「食うかい?」
 そう言って俺は少女にリンゴを差し出す。
「くれるの?」
「ああ」
「でも知らない人に物をもらっちゃダメだってお母さんが言ってたからもらえないよ」
「そう、それは残念だ」
 と言って彼女の頭をしっかりと掴む。
「じゃあ最後の晩餐は無しだなおちびさん」
 すると少女の隠し持っていたらしい防犯ブザーが突然鳴り響く。
 周囲の人々の視線がこちらに向かう、そのタイミングを見計らって俺は宙に向けてリンゴを投げあげた。
「ファンタゴールデンアップル」
 そう呟くと投げあげたリンゴが黄金色に輝いて周囲の時間が凍りつく。
 これから彼らは存在しない筈の時間を存在しない筈の認識と共に生きる。
 “ファンタゴールデンアップル”の能力は至ってシンプルな「記憶操作」だ
 発動条件はたったの2つ。
 一つは操作対象が俺が能力の媒介にしている黄金の林檎を見ること。
 そしてもう一つは能力の使用直前に媒介にするリンゴを食べておくこと。
「ゴールデンスランバー、総て偽りの時を生きろ」
 そう宣言すると同時にそこら中の人々が何もなかったかのように日常生活へと戻り始める。
 目の前の少女はといえば俺の手を掴んで嬉しそうにこちらを見ている。
「お兄ちゃん何しているの? 早くお家帰ろうよ!」
「……」
「どうしたの? お兄ちゃん」
「いや、なんでもない」
「そうだお兄ちゃん、頭なでてよ。花子ね、お兄ちゃんに頭撫でてもらうの大好きなんだ!」
 俺は何も言わずに少女の頭を撫でた。
 こうして俺は今日も飯と寝床を手に入れるのであったとさ。
 めでたしめでたし。

>>549
ここの>>539-541の間
何か知らんが絞り込めんかったんで申し訳ないが、探せ!この世の全てをそこにry

>>>551
ありがとう!
なるほどそういう話だったか
別の時代の話ってのは良いですね
霧の街と都市伝説ってのが相性いいし

 花子に連れて来られた家はどこか寂れた雰囲気の公営住宅だった。
 まあ一晩の宿に贅沢を言うのも無粋か。
 少女は家のドアを開けて大声でただいまを告げる。
「ただいまお母さん!」
 奥から少し草臥れた感じの美人がやってきた。
 何か事情は分からないが心労でやられていると見える。
「あらおかえりなさい花子ちゃん、あら……」
 はいはいゴールデンアップルゴールデンアップル。
「あら邦洋くんも来てたのね」
「お兄ちゃんと公園で遊んだんだよ!」
「まあそれは良かったわねえ」
「花子ちゃんも随分と大きくなりましたよね」
 俺はまるで親戚のお兄さんみたいな面をして微笑む。
「邦洋くんも大きくなったわよ……あの人そっくりになって」
「お兄ちゃんがパパになってくれればいいのに」
「あはは……」
「こらこら花子、お兄ちゃんを困らせちゃダメよ
 邦洋さん、お夕飯の準備ができてるからあがってちょうだい」
「ありがとうございます」
 俺は座敷に上がってテーブルに座る。
 ここで俺は違和感を覚えた。
 何故三人分の飯が用意されている?
「あらいけない!」
「どうしたんです?」
「なんで私三人分しか用意してないのかしら! やだわもううっかりしてて……」
 後一人この家に居るのか?
 でもその後一人はどこに……
「あんた、どちらさまだったかいねえ」
 俺の背後から声がする。
 振り返るとしわくちゃの老人が居た。
「お、おじいちゃんだれ!?」
 花子さんがわけの分からないといった目で老人を見る。
 老人は花子さんの方を見てにこりと微笑んだ。 
 すると花子さんは突然優しい顔になって
「おじいちゃん、お父さんの弟の邦洋おにーちゃんだよ!」
「おおそうじゃったそうじゃった。邦洋くんか、すっかり大きくなったのう」
「お久しぶりです。ご無沙汰しておりました」
「いやはやお兄さんに良く似て礼儀正しい青年になったもんじゃ
 どうじゃ今晩一杯、酒も飲めるじゃろう」
「あはは、それなら喜んで」
「三人とも、ご飯ができたわよ」
 質素ながらも心のこもった夕食が食卓に並んでいる。
 俺の好物はこういうものなのだ。
 人の心がこもった手作りの料理こそが、こんな生活をしている俺の心の乾きを少しだけ癒してくれる。
 俺達は皆で仲良くいただきますと言ってご飯を食べ始めた。
 楽しい家族の会話の中でこの家の事情がわかってきた。
 この家の亭主は教師だったのが何かの事故で死んだらしく、彼女はこの老人と俺が来るまでこの花子という少女とふたり暮らしだったらしい。
 老人はどうやら俺と同種の契約者、あるいは都市伝説らしくお互いに紳士協定を結ぼうとアイコンタクトで合意に至った。
 現在老人はこの家の女性の父親という設定らしい。
 晩飯が終わった後、俺は老人と酒を呑むことになった。

「まあ自己紹介からいこうか、わしはぬらりひょんじゃ」
 女性二人が寝静まった頃、老人はそういった。
「俺は契約者です。ファンタゴールデンアップルっていう記憶を操る都市伝説の」
「なるほどなあ……たまたまこの家に来たのかい?」
「ええ、何やら誰かに似てるとのことですが偶然です」
「そうか、そうかそうか……」
「ぬらりひょんさんはいつ頃までここにいらっしゃる予定ですか?
 まあ同業者みたいなもんですし、それに合わせて私もここを発った方が良いでしょうし聞かせてください」
「そうじゃな、組織の邪魔が来ない限りはいようかのう
 まあ、あんたはいつ出てっても後処理くらいはしておいてやるぞい」
「そうですか、そりゃあすいません」
「お互い様じゃよ。こういう生活をしていればこそ助け合いが大事じゃろうて」
 そうですよねえ、とため息をつく。
 俺とぬらりひょんの間にどことなく物悲しい沈黙が流れた。
「ふたりとも何しているの?」
 そんな時だった。
 花子が起きてきたのか俺たちの飲んでいる居間にやってきた。
「お酒を飲んでいたのさ」
「花子も飲むかい?」
 老人はいかにも酔っ払った老人という顔をして花子に酒を勧める。
「ダメですよ善次郎さん」
 俺はいかにも親戚のお兄さんといった面でそれをたしなめる。
「二人共、演技はそれくらいでいいんだよ?」
 花子は唐突に言い放つ。
「「え」」
 俺とぬらりひょんは同時に素っ頓狂な声をあげた。
「人間のふりしてた私がいうのもあれだけどさ」
「は、花子ちゃん……?」
「お兄ちゃん、ちゃんじゃなくてさんと呼びなさい。私のほうが年上なんだから」
「ご、ごめんなさい」
「わしはこんなの聞いとらんぞ……」
「これから説明するからきっちり聞きなさい」
「わ、わかった」
「じゃああなた達二人共正座ね」
 俺と老人は正座する。花子さんは咳払いをして話を始める。

「昔一人の哀れな女が居ました
 旦那と娘を都市伝説に奪われ復讐を誓った女性です
 最初の時点で彼女はすでに狂気に陥ってました
 幼い少女が全て娘に見えて仕方なかったのです
 女性はある日、娘にそっくりな女の子に、偶然襲われます
 その女の子も凶暴な都市伝説でしたが女の様子に興味を持ち、彼女と契約します
 都市伝説は女の狂気が増す昼間は娘として、落ち着く夜は彼女の復讐を手伝う怪異として
 女の傍にそっと寄り添っておりました
 そんな暮らしを続けていて、女はついに家族の仇を討ちました
 しかしその仇にも大切な家族が居た
 憎しみが限界を迎えていた彼女は仇の家族や友達すら殺し、殺し、皆殺しにしてしまったのです
 そして憎しみが燃え尽きて、一瞬だけ完全に正気に戻った彼女は気づきます
 娘が奪われたのならば何故娘はここにいるのだ
 自分は一体何を娘と呼んできたのだ
 こうして女は完全に壊れてしまいました
 都市伝説は自分が完全に壊してしまった女性を守るために娘みたいな面をしていまだ彼女と暮らしているそうです
 二人は貧しくとも末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
 
 彼女は皮肉げに微笑む。
 俺達はといえば当然頭を抱えていた。
「それで、わしらにどうしろと言うんじゃ?」
 ぬらりひょんが尋ねる。
「かんたんなことよ。私と一緒にあの人と暮らして欲しいの
 逆らうなんて考えないことね。心を壊したあの人の心の容量は無尽蔵
 使えるパワーが違うんだからネタのバレてる洗脳系の都市伝説くらい始末するのなんて造作も無いわ」
「わ、わかった……」
 ぬらりひょんは素直に頷く。
「俺は嫌だね」
 そう言うと花子さんの顔が驚愕でゆがむ。

「少し痛い目見ないとわからないみたいね」
 花子さんはそう言ってチューリップのワッペンを取り出す。
 ……花子さんってそっち!?
「なんで嫌だと思う?」
「知らないわ」
「それはお前の頼み方が気に入らないからさ
 お前は彼女の為彼女の為と言って結局いつだって自分の為に動いている
 自分が寂しいから、誰かが側に居て欲しいから、お前は今まで行動しているだけなんだ
 それは悪いことじゃない
 人の心を持つものが人の絆を求めるのは自然なことさ
 だがお前はそれに恥じらいを持って、自分の欲望を彼女に押し付けている
 俺にはそれが、それだけが気に入らない
 お兄ちゃん大好きずっと側に居て!とか言われたらそりゃあ俺だって考えるさ
 でも自分のやりたいことを押し隠して居丈高に振舞っているうちはお断りだぜ」
「あんたに私の何が解るっていうのよ!」
「寂しかったんだろう?」
「う……」
「トイレは冷たいもんな、暗いもんな
 暖かな場所に居たいと思ってもおかしくない
 でも花子さんである以上それを素直に受け入れられない
 だからそういう態度に出ても仕方ないんじゃないか?
 お前のやってることは悪いことじゃあない
 むしろたった一人でよくそこまで頑張ったよ
 その気になればお前はあの女性を見捨ててどこかに行くこともできた
 それをしなかったのはお前が優しかったからさ
 俺はその優しさを尊いものだと思うよ」
 そう言って俺は花子の頭に優しく手を置く。
 最初に、周囲の人々の視線をこちらに向ける為にやったのとは違う優しいやりかたで。
「よく頑張った」
「な、なにしてるのよ……」
「好きなんだろ、頭撫でられるの」
「……何よ、悪いの」
 花子は小さい声でボソリと呟いた。
「まあ俺は態度の悪いロリ年増から影を背負う未亡人までオッケーの最低野郎だから長く滞在するつもりだったので安心しな」
 何か照れくさくてこんな事言ってしまうのは俺が未熟だからだろうか。
「やれやれ、うまく収まって一件落着じゃな」
「そうだな、これからしばらくは頼むぜおじいちゃん」
「こんな面倒な子どもたちの世話は大変そうじゃな」
 ぬらりひょんはそう言って笑う。
 偽物かもしれないけど、偽物だったとしても、俺はこうして幸せに暮らしましたとさ。
 めでたしめでたし。

思いついたから待ち合わせ前の時間で即興で書いてみた
どうも無駄に長くしてしまう癖が抜けなくて困る

>>549
>切り裂きジャックと魔弾の方は前回のあらすじを……前回のあらすじを要求します
おひゃあああ!申し訳ない!

>>551
シャドーマンの人フォローありがとうございますー

Bad Apple!!の人乙ですー
いたいけな少女の家に上がり込んで何しやがるとか思ってたらこの展開は予想外
ツンツンな花子ちゃんかわゆすぎ

ケモノツキさんへ
君のことが好きだったんだ
でも君はずっと別の方を見ていたんだね
今度こそひとつになろうね
絶対に約束だよ



「ふんす、ふんす、ふんす、ふんす」
 顔面にブリーフを被ったいかにも変態って風情のムキムキマッチョマンが往来を歩いている。
 随行者はない。
 ふんどしを揺らし、自分の肉体美とブリーフ越しに雄々しくそそり立つお稲荷さんを誇らしく見せつけながら彼は孤独な行進を続けているのだ。
「きゃ、きゃああああああああああ!変態よ!変態が居るわ!」
 当然健全な一般市民達は悲鳴をあげる。
 そしてあるものは嫌悪を、あるものは恐怖を、あるものは羨望を、それぞれに込めた眼差しで彼を見つめるのだ。
「お、おまわりさん――――」
 ついに、一人の市民が警察官を連れてきて男を指さす。
「――――私です」
 市民の言葉が終わる前に男は目にも留まらぬ速さで市民の前に現れて
「―――――――そしてこいつがマイ・フレンド」
 ふんどしを市民の顔面にたらりと垂らす。
 ほとばしる汗とその他もろもろの香りを放つそれに触れた市民は男を突き飛ばして逃走する。
 ……かに見えた。
 チーッチチッチッオッパーイボインボイーン(ボインボイーン)
 と、市民の携帯が着信音を鳴らす。
「こ、これは病気の妻から電話がかかった時にしか鳴らない着信音!?
 いったいなにがあったんだ!?」
 市民はわざとらしく驚いてから電話に応える。
「え、なんだって……君の病気が治った?
 そんなバカな医者から不治の病と言われていたのに!」
 泣き崩れる市民の背後から男はそっと手を置く。
「……良かったな」
「ま、まさかあんたが何かしたのか……」
「俺のふんどしは佐川急便の飛脚のふんどし、触れたものに幸運をもたらすのさ」
「なんてことだ……なにかお礼をさせてくれ、名前を、名前を教えてくれ!」
「名前など無い……通りすがりの変態だ。彼のように困ったことや悩んだことがある人は、私の尻なりふんどしなりマイ・フレンドなり好きな場所に触るといい。きっと幸運が訪れるだろうからな」
 ブリーフの向こうの瞳がかすかにほほえむ。
 それと同時に多くの人びとが男に殺到する。
「ウェルカム!」
 股間を強調したポーズで人々に撫で回される男。
 五分もすれば男のお稲荷さんを触るために老若男女が男の前に行列を作る混沌絵巻が展開されていた。
 しかし騒ぎを聞きつけて警官の応援がやってきた時にはすでに男の姿は消えていた。
 彼はどこに消えたのだろう?
 もし貴方の街にブリーフをかぶってふんどしを履いたムキムキマッチョマンの変態が居たら声をかけてみてほしい。
 きっと彼は貴方に触られることを喜ぶだろう。
 だって彼は変態なのだから。

     ※この作品に登場する固有名詞は現実に存在する実在の人物・団体に関係ございません。ご了承下さい

                 「これは正当防衛です」
こんにちははじめまして。私は武器蔵鞘花(ぶきくらさやか)です。高校一年です。小柄ですが本当です
あ、このゴスロリは私の趣味です。私服なんです
鞘花「ふぅ、この町は都市伝説が多いですからね。気をつけないと。私も契約者であるとはいえ油断大敵です」
しかも有名どころだと倒してもまた現れるそうですから厄介です。特に口裂け女。あれは倒したと思ったら同じ日にまた別の場所で現れたとかいうほどですから要注意です
口裂け女ブームなんてもうとっくに去ったかと思ったのですが…。しかしここは学校町。都市伝説の町ではそんな常識通用しないのでしょう
『やぁそこのお嬢さん』
誰かが紳士的に話しかけてきた。…包帯だらけですけど
鞘花「何です?」
『注射をしてもいいかな?』
そう言って紳士的な包帯男は注射器を私の首筋に突きつけました
鞘花「…か」
『ん?』
鞘花「いったい何を注射してどうするつもりなんですか? 麻薬を注射して生き人形にするつもりですか?
毒薬を注射して[ピーーー]つもりですか? 睡眠薬や媚薬を注射して強姦でもするとか?
増強剤でも使って私を戦闘マシーンに改造するつもりですか? コカインを注射して奴隷にするつもりですか…?
ああ、怖い、怖い怖い怖い怖いですね。何をされるか分かりませんけど、このままでは私は何かをされる…。
首筋に注射器を突きつけられて、注射をしても良いかと脅されて…ああ怖い怖い怖い怖い。怖くて怖くて堪らない! だから―」
『何を言っているのかな?』
鞘花「―――だから、これは正当防衛です」
そう言って私はどこからともなく刀を取り出し注射男を斬ろうとします
『なっ!?』
避けられました。残念です
鞘花「あーあ、日本刀(これ)では駄目でしたか」
『君、何のつもりだ!?』
鞘花「何のつもりって…ああ! どこから日本刀を取り出したかが不思議なんですね? 大丈夫ですよ、心配しなくてもちゃんと種明かししますから!」
私はゴスロリ服の隙間から様々な武器を覗かせます。刀、斧、槍、鎖鎌エトセトラエトセトラ…
鞘花「見ての通り私は暗器使いでして。体中に様々な武器を隠し持っているんですよ」
『暗器使い…? いや、そんなことはどうでもいい! 私が聞きたいのはなぜいきなり刀で斬りつけて来たかだ!』
鞘花「いきなり人の首に注射器を突きつけてきた人が何を言いますか――しかしどちらにしても刀じゃ駄目みたいですね。じゃ、多刀(たくさん)ならどうでしょうかね?
名付けて『一紋多刀(アンサータワー)』!!」
私は袖口から大量の刀剣を出し、注射男に斬りかかります
『ッ! 「注射針千本(サウザンドクター)」ッ!』
なんと、あちらも大量の注射器で迎撃してきました
鞘花「あらあら、これでも駄目ですか。じゃ、槌(これ)ならどうですか? 軽い刃物ならともかく、重くて硬い鈍器なら貴方の注射器ごと頭を叩き潰せますよ…?
食らいなさい、『土竜叩き潰し(ショッキングモール)』!」
私は両腕に巨大ハンマーを抱え叩き潰しにかかります
鞘花「なっ――」
私がハンマーを振りかぶると、いつの間にか目の前に注射男が――
『隙だらけだ』
ぶすり。がら空きだった私の首に注射針が刺さります
鞘花「くっ……!」
『だが上手いな。私としては頚動脈を狙ったつもりなのだが――ギリギリで急所を外したか』
しかし、我慢できない痛みではない。このままハンマーを振り下ろせば……あら?
何故だろう。力が入らない。振りかぶったハンマーを、重量に任せ前方に振り下ろすだけなのに、力が入らない。
身体が言うことを聞かない――否。筋肉が言うことを聞かない!
そのまま私はハンマーの重さに引っ張られ、後ろに倒れてしまいました
鞘花「かららが……あらた、いったい何を……」
舌にまで力が入らない。上手く話すことができません
『何って……注射したのさ。そう、筋弛緩剤をな。さて、これでもう動けないな……
確かにハンマーの破壊力なら私の注射器による防御を貫通できるだろうが……あんな隙が大きい攻撃、
懐ににもぐりこんで素早く打ち込めば怖くない。愚策だったな』
こいつ……意外と強いです! 野良っぽいのに…!
鋭い攻撃は強固な防御に防がれ、動かない防御は力を溜めた破壊の一撃によって崩れ、出が遅い破壊の一撃は素早い攻撃に隙をつかれる。
分かりやすい三竦みですけど(fate/extraを参照です)、それがここまで顕著に現れるなんて!
『さて、と。これで君は抵抗できない。つまり――注射し放題というわけだ!』
注射男が両手に大量の注射器を持ち、向かってくる。普段なら簡単に避けられる速さなのに、身体が動いてくれない!
注射男はどんどん近づいてきます。迫ってきます。這い寄ってきます。どんどん、どんどん、どんどん、どんどん。
『さぁ、薬漬けにしてやろう。これで終わりだ――』
鞘花「ええ、そうれ。……あらたが」
上手く喋れないせいで締まりませんが、注射男が私に止めを刺そうとしたとき、私のゴスロリスカートから88mm機関砲(アハトアハト)が顔を出します
そして、なぜか私のスカートの下にある手が、88㎜を発砲します!
『なっ―――』
勝負は一瞬でした。いくら都市伝説といえども、至近距離からの砲撃には敵いません。(敵うやつもいるかもしれませんが)
『危なかったなぁ、ご主人様。あたしがいなけりゃどうなっていたことか……』
さっき88mmを撃った張本人、私の契約都市伝説のひとつ、『ベッドの下の殺人鬼』が言います
鞘花「ありがろう、これれまら殺られずにすんだわ」
『け、契約者様はいつもこうなんですよ。殺られる前に[ピーーー]と言っておきながら、何かをされるまで攻撃しないし……。
せ、戦闘でも一撃必殺のほうが得意なはずなのに、結構まともに戦っちゃうし……。わ、私たちいつも冷や冷やしてるんですよ……?』
隙間に隠れて影ながら戦いを補佐していた私の契約都市伝説、『隙間女』が言います
鞘花「ごめんらさい。れもわらし、あらたたちのこと信じてるんらから」
『くくく、だったらあたしたちはその信頼に応えないとねぇ』
『ま、まったく……調子いいんですから』
このまま私は二人に体を支えながら、家に帰って養生しました。筋弛緩剤の効果が切れるまで結構かかりました……
ちなみに私はもう一つ、『悪魔の密輸』とも契約しているんですけれど、それはまた別のお話ということで。


                          続く…

sagaし忘れた…ピーーーの部分

『け、契約者様はいつもこうなんですよ。殺られる前に殺ると言っておきながら、何かをされるまで攻撃しないし……。
せ、戦闘でも一撃必殺のほうが得意なはずなのに、結構まともに戦っちゃうし……。わ、私たちいつも冷や冷やしてるんですよ……?』

HKの人乙ですー

HKの人乙ですー
みんな幸せになったからこれでいい…のか?

ソニータイマーの人乙ですー
鞘花ちゃん可愛いよ鞘花ちゃん
武器たくさん持ってるゴスロリとか萌える超萌える
彼女の再登場を望みます



赤ん坊の泣き声。


立ち止まり、辺りを見回すが人影はない。
街灯は点いているが、決して明るいとは言えない街路で
ぽつりと一人。
残響は自分の履いたヒールの音のみである。

確かに聞こえた気がしたのだ。

どこかの家で泣いているのだろうか……。
目を閉じ、耳を澄ますが、聞こえてはこない。

顔を上げると……
暗闇に浮かび上がる腐敗した顔
それは確かに赤ん坊の顔。

「……ヒッ」

自分でも、悲鳴なのか呼吸なのか判らない音を上げ
引きつった顔で仰け反る。

気がつくと転んでいた。
恐らく、ほんの一瞬、気を失っていたのだろう。
ヒールを踏み外したであろう左足首とお尻が、ジンジンと痛む。


もう一度、前を向くと……
やはり、赤ん坊の顔が暗闇に浮かんでいる。
いや、違う。
浮かんでいるのではない。
棚の様なものの上に、うつ伏せになり、こちらを見ているのだ。

目を凝らし、暗闇に目を馴染ませる。

「……ロッカー?」

間違いない、駅などで見られるコインロッカーだ。

だがそれは、現代ではどこの博物館でも所有していないであろう
随分とレトロな風合いのものである。

前だけではない。
右にも、左にも、コインロッカーはあった。

「何で?!」

振り向くと、それらはまるで迷路の様に並んでいる。

「え?!」

赤ん坊の泣き声が、もう一度響き
ガチャン!ガチャン!とロッカーの扉が開閉し
頭が割れそうな程の騒音になっていく。


「止めてッ!」

制止の嘆願が聞き入れられたのかは判らないが
急に鎮まり、静寂が辺りを支配する。

赤ん坊は、腐り落ちそうな目で自分を見ていた。
嗤っている。

怒りが恐怖を超え、自分を突き動かして行くのが判る。

「アンタがやってんの?!」

掴み掛かろうとすると
赤ん坊の入っているロッカーの扉が、バタンと閉じた。

「ムっ……」

眉間にシワが寄る。

「……」

ガチャッ!
思い切って、開けてみたが
赤ん坊はそこには無く、ただの空洞が有るのみ。

「そう……そういう事……」

───かくれんぼ。

そう感じた。
そして、それは正しい直感。

「ヤッてやるわよ!」


             (続く……はずなんだけど)


ギギ……ギギギ……

軋む音を立てる扉を開けるが、何もない空のロッカー。

キィイーーイーィー……

甲高い金属の擦れる音を立てる扉を開けるが、何も入れられていないロッカー。

ガチャン! ガチャン! ガチャン!

連続して3つ、次々に開けていくが、赤ん坊はいない。

「ここかしら?……それとも……ここ?」

指を指しながら軽い気持ちで開けていく。
だが、やはりロッカー内に赤ん坊はいない。

「じゃあ、ここ!」

今度は大きめの扉に狙いを定め

ギ……ギィーイーー!


少し引っかかる感じのある扉を勢い良く開け
ロッカーを覗きこむが、真っ暗でよく見えない。
否、真っ黒な何かがロッカー内を埋め尽くしていた。

真っ黒なそれは、蠢き、聞こえないはずのカサカサという擬音を
自分の脳へと送り込んでくる。

「ゴ……キ……」

言いかけて止まる。

ゆらゆらと揺れる黒く長い触角は
自分の存在に気付いた為かピタリと止まり、一斉にこちらを向く。
ヤバイと直感した時には既に遅く
虫達は黒い風となって飛び立ち始めていた。

目を、口を、キュッと閉じ
何かを押し退ける様な体制に、顔の前方へと両手を出す。

何百、何千もの虫達が
手に、顔に、髪に、首筋にスカートから覗く太腿に
ぶつかり。
瞼を、唇を、耳を、首筋を、内股を
這い回る。

背筋が凍り付き、悪寒が走って止まない。
息を止め、なすがままに、蹂躙されるがままに、ただ通り過ぎてくれる事を待つ。

暴風となったソレが止むと、服のうちに潜り込んでいたはずの虫達も消えていた。


止めていた息を、恐る恐る吐き出し、藻掻くように吸う。
口を大きく開けば、口に入って来るのではないかと
いなくなった筈の虫達に怯えた。

知らず息は浅くなり、指先がジンジンと痺れた。
冷たく、青白くなった指先が、酸欠を訴えてくるが
脳を満たすのは恐怖、息が整えられないでいる。

「……何よ……何なのよ」

なんとか言葉を吐き出して、恐怖を和らげようとするも
震えた体が、その失敗を告げる。

「どうしたら良いのよ……こんなの……」

切れ切れの言葉を漏らしながら頭を振るが、何も解決はしない。

これは、かくれんぼ。

あの赤ん坊が見つかるまでロッカーを開け続ければ良いと……
単純に考えていた。
だが、1度でもロッカーの中身に恐怖を覚えてしまえば話は別だ。

想像を絶する数の虫の群れ。
それも古代からしぶとく生き残っているあの虫だ。
大抵の人が、あの虫を嫌う様に、自分もまたあの虫の動きや形に嫌悪感を抱く。
あの虫に体中を這い回られた感触が呼び起こされて
また悪寒が、背筋を何度も走り抜けていく。


「……嫌よ……もう、嫌」

家に帰りたかった。
お風呂に入りたかった。
温かい飲み物を飲みたかった。
嫌なことは全て忘れて、柔らかい布団に包まって眠ってしまいたかった。
その予定だった。

職場の先輩のことも
先輩を好きだったことも
先輩に妻子がいたことも
先輩と不倫をしたことも
アタシのことを大切に思ってくれていると信じたかったことも
妻子を捨ててくれるワケがないと判っていたことも
捨てられて傷つく前に別れてしまおうと思ったことも
別れを切り出すと一言だけで簡単に事が済んでしまったことも
本気だったのは自分だけだったと気付いたことも

全部、嫌なことは全部、忘れてしまいたかった。

ずっと前の事だったのに、たまに思い出してしまう。
今はもう強い自分でいられると思っていたのに。
何年も経ったのに、未だに古傷を抉られる様な嫌な感覚が、思考を支配する時がある。

今日もそんな日だった。
仕事が終わった帰り道、繁華街を過ぎて住宅地へと歩を進めていた時
急に暗い気持ちになる。
不安になる。


暗い帰路で、何処からか赤ん坊の泣き声がする。
最初は幻聴だと思った。

腐敗した赤ん坊の顔。
沈んだ気持ちが見せる幻視だと思った。

嗤う赤ん坊。
馬鹿にされているのだと思った。

惨めなアタシを、惨めな姿の赤ん坊が
お前も捨てられたのだろうと、嗤っているのだと思った。

全てぶち壊してやろう。
アタシを嗤った赤ん坊の首根っこを掴んで、床へ叩きつけてやろう。
どうせ誰かに捨てられ、腐った赤ん坊なのだから。

なのに。

これでは、アタシが壊れてしまう。

唐突に、耳に入る音。
足音だ。
近づいてくる。
子供の足音だ。
キュッ、キュッ、キュッと歩く度に音の鳴る、子供の履く靴の音。

怖かった。どうしようもなく怖かった。


                 (続く……予定)

むかーし昔、ある所に黒魔術を信仰するカルト教団がありました
その教団は夜な夜な若い少女を攫うとロクでもねぇ儀式の生贄にしていました

ある日、カルト教団が何時もの様に淫猥な儀式に精を出していると、一人の青年が乱入し、その場にいた教徒達を片っ端から血祭りに上げました

青年は捕らえられていた少女達を解放し、教団を壊滅させましたがここで一つ問題が発生します

少女の一人に身寄りが無く帰る場所も無いと言うのです
青年は迷いましたが考えた末、仕方なくその少女を連れて行く事にしました

これはそんな彼らのお話です


コドクの契約者


「蒼花、まだ起きてるの?」
「陸が貸してくれた本が面白くて」
」「君は変わってるね、普通なら見たくも無いんじゃない?そんな本」
「確かに、でもこれを読むことであの変態達が何をしようとしてたのかわかるし、理解できればちょっとは怖く無くなる気がするんです」

私は青山蒼花
2年ほど前、とある変態集団に捕らえられていた所を彼、羽佐間陸に助けられた者です

「蒼花がそれで良いなら構わないけど、明日も仕事だから、体調管理には気をつけてね?」
「はーい」

彼、陸はフリーランスの霊能者
人に仇なす存在を裏で狩る正義の味方
私は彼に救われ、今は彼の役に立つ為に勉強しています
私自身は契約者じゃないんですけどね
さ、明日もお仕事だし私もそろそろ寝ますか

「陸、今日のお仕事は何ですか?」
「悪魔払い、多分悪魔の囁きとかその程度の雑魚だとは思うけど」

悪魔の囁き、人に取り付いて悪意を増幅させる存在だったかな
最近異常に増えてるらしい

「どうやって祓うんですか?」
「悪魔憑を殴って落として、悪魔を引っ張り出す」
「いつも通りですね」
「物理が正義だよ」

陸は契約者と呼ばれるタイプでは無く霊能者、霊的な物に触れられるだけで契約等はしていません
そんな脳筋の所も素敵です




結果から言うと、悪魔祓いは簡単に終わりました
いつも通り、殴って落として出てきたのを処理
一つ誤算があるとすれば悪魔の囁きが私に取り付こうとした所
幸い、取り付かれる前に陸が殲滅したので大事にはなりませんでしたが

「大丈夫か!?」
「たすかりました」
「スマン、俺が付いていながら」
「いえ、大事にならなくて良かったです」

この時は、私も陸もまだ気づいていませんでした
この一件が私たちのその後を大きく変えてしまう事に…

あれから数ヶ月が経ちました

「今日の依頼は…これは、酷い」
「依頼主は…学校?」
「あぁ、最近校内で怪奇現象が多発してるらしい、放っておくと良くないな」

怪異は怪異を呼ぶ
確かに学校なんて怪異が育つにはこの上ない場所だ

「なるべく急ごう、手遅れになるとヤバイ、下手をすれば第二の学校町になりかねない」

学校町とは日本有数の怪異だらけの町だ
世界を単独で滅ぼせるレベルの人材がゴロゴロしてるらしい

「とりあえず現地調査だな」
「はい!」


学校に入った私たちは校長から事のあらましを聞きました
何でもここ最近あり得ない位怪談が生徒の間で流行り、その結果異常な数の都市伝説が発生するようになったのだとか

「最初はテケテケや花子さん等、学校に居ても不思議では無い物程度だったんですが日に日に悪化して最近ではあり得ないレベルの物まで発生しているんです」
「確かに妙だ」

通常怪異は怪談として語られ育った噂の成れの果てです
それが短期間に大量発生なんてまずあり得ない

「何かしら外的要因があるな…蒼花、調べるぞ」
「はい!」

調べると原因はすぐにわかりました
何者かがこの学校に都市伝説が発生しやすくなる細工をしていたのです

「これならすぐに片付くな」

陸がその細工を破壊しようとした時、何かが割れた様な音と共に風景が切り替わりました

「これは」
「罠か…細工を破壊した奴を異界に強制的に移動させる」

周囲には見渡す限りの都市伝説

「陸、どうするんですか?」
「蒼花は下がってて、とりあえずこいつら片っ端から殴り倒して、それから外へ出る方法を探す」

そう言うと陸は都市伝説の群に向かって行きました
そして、最初の一体を倒した所で異変は起こりました

「!?」

陸が倒した口裂け女が肉塊へと崩れ、その肉塊が陸の体へと吸い込まれて行ったのです

「今のは…くっ」

戸惑いながらも陸は次に向かってきたテケテケを殴ります
しかしテケテケも同じように陸に吸い込まれて行きます

「何だ、これ…」

陸が倒せば倒す程、強力な都市伝説が現れ、倒せば倒す程陸の体にそれらは取り込まれて行きます
陸の意思とは関係無しに

気付いた頃には陸の姿は無く、陸だった肉体は、醜悪な肉の塊、化け物へと変化していました

あの日、悪魔祓いを行ったあの日
悪魔の囁きは私に言いました

『テメェミテェナ薄汚レタ餓鬼ヲアノ男ガ選ブト思ウカ!?得体ノ知レネェ男共二犯サレマクッテタ中古ヲヨ!!』

なら私はどうすれば良いの?

想い人が自分に不釣合いだと、自分なんかじゃ手の届かない存在だと言うのなら…

諦める?
自分を磨いて想い人に相応しい存在になろうとする?
それとも………

『簡単サァ!テメェト同ジドン底ノ化ケ物ニシテヤリャア良イ!!』

あぁ、そうか…

手が届かないなら

手が届く様に

引きずり落とせば良いんだ



「グッ、ォ…ソ、ウカ」

陸だった物が呻く
大丈夫、貴方がどうなっても私は貴方の側にいるよ

愛おしい私だけの化け物


「ハッピーバースデー、陸だった化け物、私は蟲毒の契約者……よろしくね」

~一先ず了~

ソウルメイトの人とコドクの人乙です

乙です
おお、ソウルメイトとコドクのお話を見ていたらこう、何か書きたい気持ちが盛り上がってきました

それは、まだ彼女が【カレ】と出会う前の事


いつも通りの学校での部活を終えて、彼女はいつもと同じ帰り道を歩く

時刻はそろそろ午後7時
辺りは薄暗くなっている

彼女は自分の身長よりもなお長い棒のような物が入った袋を担ぎ、口笛を吹きながら自宅までの道を歩いていた

その足取りは軽く、口笛のリズムと共にステップを踏みながら

彼女は探していた。

この〔学校町〕にいるはずのその存在を


だからこうしていつも夜の暗い道にさしかかると
いつも必ず口笛を吹いている

絶対いるはずなのだ。

この町に

都市伝説と呼ばれる存在が

インターネットで日々増え続ける学校町での都市伝説の目撃情報

いつか絶対見つけてやろうと決意した彼女は
とある都市伝説を探して、いつも夜になると口笛を吹きながら家まで帰っている


暗い夜道を歩く少女
もちろん、少女以外道には誰もいない

「もしもし、お嬢さん」

しかし、突然後ろから少女に話し掛ける声がする

「……なんでしょうか?」

少女は立ち止まり後ろを振り返らずに答える

「危ないですよ?夜に口笛を吹くと、よくないモノが来ますよ?」

少女の後ろから聞こえる声は随分と低い位置から聞こえてくる

「………よくないモノとは?」

恐る恐る答える少女

「私みたいなモノ、とかかな?」
その言葉で少女は後ろを振り返りそして、確信した
とうとう自分は都市伝説に遭遇したのだと

「…〔夜に口笛を吹くと蛇が出る〕ですね?」

「おや、知ってたんですか?」

少女の問いかけに答えるのは
道の上にとぐろを巻いてじっとしている一匹の白い蛇だった

「調べましたから、色々と」

少女は喋る蛇に驚く事なくじっと蛇を見つめている

「調べた……か…こんな弱く小さな都市伝説も少しは有名になったんですね」

白い蛇は小さな赤い目でじっと少女を睨みながら小さく笑う

そして蛇は、灰色のパーカーを纏った女性へと姿を変えた

「まぁ、最期にこうしてヒトと話が出来るのも何かの縁です…お嬢さん、こんな都市伝説に何か用ですか?」

「最後とは?」

少女は首をかしげる

「そのままの意味ですよ」

「よく…解りませんが?」


「ヒトに語られなくなった都市伝説はいずれ存在出来なくなるのよ、今の私のようにね」

灰色のパーカーを着た女性の姿は薄れ、夕闇の中に徐々に消えかかっている

「それは…もうじきアナタは消滅するって事ですか?」

そういう事だ、と女性は答えて少女に近づく

「ここで会えたのも何かの縁だ、お嬢さん…ちょっと私のお願いを聞いてくれません?」

「お願い…ですか?」

女性は、少女の目の前まで近づくとこう告げた

「簡単な事ですよ嬢さん……私と契約して、都市伝説契約者になりませんか?」

(私を魔〇少女にでもさせる気ですかこの都市伝説は)
どこかで聞いたようなベタベタなフレーズに、少女は少し不安になってきた

【夜中に口笛を吹くと】という都市伝説が口にした契約という言葉
都市伝説と契約なんて初めて聞いた少女はしばらく悩む

「契約するとどうなるんですか?…」
恐る恐る聞いてみる少女
契約によって人間を捨てるとか言われたらたまったもんじゃない

「ちょっとばかり都市伝説関係の騒ぎに巻き込まれるだk…
「あぁ、そうなんですか。なら是非ともしましょう!」

「軽っ!」
いきなりの少女の即答に女性は驚き、薄くなった姿もハッキリと戻っていた

「色々な都市伝説と出会えるなんて完全に私の望んでいた状況ですよ!」

興奮しているのか少女の声は次第に大きくなる

「少なからず危険も隣り合わせだけど?」

女性は突然興奮しだした少女に若干引いている

「覚悟の上です、さぁすぐに契約しましょう!」

……こうして、学校町に新たな都市伝説の契約者が誕生した。

都市伝説紹介
【夜に口笛吹くと】

夜に口笛を吹くと蛇が来るという都市伝説だが、様々な場所で話が広がり
【夜に口笛を吹くと蛇を呼ぶ】
【夜に口笛を吹くと幽霊を呼ぶ】
【夜に口笛を吹くと泥棒を呼ぶ】
の三種類に変化出来るようになった

契約者の口笛により変化出来る


ちなみに、この契約者は後々とある都市伝説と契約する事になる



えらい昔に物語を書いていた、とある都市伝説の物語の作者です
相変わらず文章力は皆無ですが
ゆっくりとやってきます

○○さんの人乙ですー
なかなか精神的にタフなお嬢さんですね。期待してますの


足音が近づく、一歩一歩、また一歩と。

怖くて確認したくない。
けれども、このまま待つのはもっと怖かった。
近付かれてからよりは、遠くにいるうちに確認すべきだ。

震える体を起こし、音の方へと顔を向ける。
まだ誰も見えないが、確かに聞こえる足音。
キュッ、キュッ、キュッと馬鹿みたいに脳天気な足音。

こちらから見てロッカーの迷路の突き当り、丁字路になっている部分を通り過ぎようとする人影。

「……子供?」

小さな人影だった。
音から想像していたものの
実際この場に子供が現れると、信じられないという思いがある。

いや、身長が低いからといって、子供とは限らない。
可愛い足音を立てたとしても、可愛い子供とは限らない。

立ち止まる。
こちらの気配を察した結果の動きだろう。

互いに無言。出方を待つ。

しばしの静寂の後、再びキュッ、キュッと響き始める足音。
先に動いたのは向こう。
自分は、ただ待つことしか出来ない。


近付いて来て、判ったことがいくつかある。

最初は
相手が間違いなく人間の子供の姿形をしていると判る。

近付いて
相手が小さな男の子の姿であると判る。

更に近付いて
相手の身長が自分の腰よりも上、胸よりも下、恐らく100cm程度であると判る。
そして、その身長から考えられる年齢は3歳程度。

最後に
その男の子の年齢に相応しくない、穏やかで理知的な相貌を持っていると判る。

「アナタ……誰なの?」

目の前に無言で立ち止まった少年に、堪らず問い掛ける。

「ボク?……ボクは……ん~、どこから説明すれば……」

子供らしい声で言を返し、説明に悩むように首をかしげた。
その姿や仕草から、真面目に考えてくれている事が伝わってくる。
引き締めておかなければならないはずの心が緩んでしまうのを自覚していた。


「じゃあ、質問を変えるわ……このロッカーとアナタは関係ないの?」

彼は顔を上げて、まっすぐに自分の瞳を見つめてくる。

「うん、関係ないよ」

淀みのない応え、信じられる気がした。
油断してはいけないと解りつつも、信じたいという気持ちが強い。

「キミのお名前は?」

疑う気持ちも残しつつ、おかしな事がなければ信じていくと、基本方針を固める。
すると気持ちも自然に落ち着いてくる。

しゃがんで、少年と目線を合わせ

「名前は……特に決まってないよ」
「決まっていない?」
「うん、その時々で出会った人が付けてくれる時もあるし、そうでない時もある」
「……よく……意味が分からないんだけど?」
「ん~……まあ、そうだよね……簡単に言うとボク、人間じゃないんだ」
「……」


沈黙に、困った様な顔で少年が言葉を続ける。

「ひとことで、信じてもらうには無茶な話だとは思うけどね」

ため息混じりに少年が話し

「キミがただの子供じゃないって事は分かるわ……だって、賢すぎるもの」

自分も、ため息混じりに応える。

「ありがとう」

少年の浮かべる静かな笑みが、どこか悲しげに映り、心に沁みる。

「それで?」
「うん、ボクは都市伝説なんだよ」
「都市伝説?……ごめん、やっぱり意味が分からない」

また、大きな壁にぶち当たった気がする。

「人間たちの心の在り方次第で、存在したり存在しなかったりする。
 そんな曖昧な、現象であり、無機物であり、有機物であり、生物であり、虚構の存在」
「心の在り方?」
「信じるか信じないかは、あなた次第……
 人々の思いが漠然としたものであったとしても
 信じる人が多ければ、共通の認識が生まれ、都市伝説が形成されていく」


少年はこちらをじっと見て、考える間を与えてくれる。

「……存在を信じる人達によって、生み出された虚構の存在……都市伝説」

目を閉じて、含めて噛むように、言う。

「そう、ボクはそういう存在なんだ」
「分かんない」

間髪入れずに応え

「……じゃあ、この話はやめよう」
「そうね、やめましょ」

キッパリと言い切るが、悲しい程の静寂が辺りを支配した為、堪えられそうにない。

「……え~と、それじゃあ……取り敢えず、キミはアタシと敵対するつもりは無いのね?」
「うん、お姉さんの話を聞いてみないと分からないけれど……たぶん、協力する事になると思う」
「そう……ならいいわ、ここから抜け出す方法を考えましょう」
「ボクはここへ来たばかりで、このロッカーがずっと続いている事くらいしか知らないんだけど」
「アタシの方は散々よ」
「聞かせてくれる?」
「ええ、まず……家に帰る途中の道で……」

腐った赤ん坊のこと、ロッカーを開けると何も無い時と、虫が出てくる事があること。
これまでに起こったことを全て話していく。
もちろん、個人的な感想は省き、事実のみをだ。



            (続く)

ソウルメイトの人乙ー
遂に出会った、のかな?

わけがわからない空間で会話できる相手がいる安心感は半端ないと思うのです
さて彼は何者だろう

久しぶりにきたのよね
何だかいっぱい投下されてるのよね
わけが分からないのよね


「市内の高校によ、オート可動するフルスクのプラモを作ってる奴がいるんだとよ」
「オート可動って何か仕込んでんのかよ」
「分からん、とにかくやばい奴らしい」

廊下からの話し声がドップラー効果
それでようやく俺は目を覚ました

もう夕焼け小焼けじゃん
そう言えば何時から寝てたっけか
ホームルームを聞いた覚えはないし
6限でやってた内容もさっぱり思い出せない

まあいいか
よくない気もするが

「帰るか…」

周りを見なくてもクラスに俺一人しかいない事くらい分かるさ
しかし遠藤もひどい奴だな、終わったら終わったで起こしてくれればいいのに

そう思いながら隣の席、遠藤の机のなかに手を突っ込んだ
幾つかケースがあるが一番上のブツを引き出した

 “黒タイツ女子校生をヌルリンベチョベチョ2 「もうやめて…」 眼鏡の奥には優等生の淫らな欲望…”

これは俺を起こさなかった罰として没収じゃ
明日返せばいいだろ
自分の鞄のなかにディスクを投げ込んで、立ち上がる


「凄いんだって、中央高のさー、れっきゅんって子がさー」
「嘘ーそれマジー??」

廊下を行けば大声で話している女子二人とすれ違う
こいつらって同期の美術科の連中だっけ
横目で見やりながら止まらず進む

「そー言えばさー、聞いたー? あの都市伝説のチェンメのー」
「知ってる、あれヤバいんでしょ? 送った子って東高の1年らしいけど、今、行方不明でってんでしょ??」
「東高に友達いるんだけどーその子まだ見つかってないってー、警察にも捜索届出したけどまだだってー」
「マジで? チョーやばくない??」

そんな話が耳に入る
都市伝説はやばいらしい
その話自体はこれまでにも何度か聞いた
何も珍しいことじゃない

下宿先の安アパートの一階は定食屋でしょっちゅう行くんだが
そこのおばちゃんが言うには、この町は元々曰くありの場所だったらしい
実際、変な事件も多い
そんな気がする

変な事件が起きたとき、大抵それはテレビのニュースになることはない
あくまで噂のレベルで耳に入ってくるだけだが、人はこの手の話が大好きらしい
変な事件があったという話を聞くたび、おばちゃんは口癖のように「この町はそろそろ吹っ飛ぶんじゃないかねえ」とか言う
おばちゃんの中だと幾度ともなくこの町は崩壊の危機を迎えているのだ
おばちゃんの中ではな


いつだったか、こんな話を聞いたことがある

この町では都市伝説が実体を持つ
この町では人が都市伝説に巻き込まれる
この町では都市伝説が人に契約を持ち掛けてくる
この町では都市伝説と契約した人が都市伝説と戦っている

そして

都市伝説と戦うたびに強くなる
戦い続けて、一番強くなったそのとき、自分の願いを叶えることができる

そんな話だ
誰から聞いたのかも覚えていない
そんなファンタジーがあってたまるかという話だ

ところで
かくいう俺も都市伝説と契約していたりする
そんなことを言えば、誰もが俺が中二病患者だと見なすだろう

契約の経緯は忘れた
ごめん嘘、本当は大体覚えている
だがあまり話したくない内容だ
契約した都市伝説は「円や図形をフリーハンドで描ける数学教師は教えるのが上手い」という話だ
言っておくが俺は数学教師じゃないし、そもそも数学は得意じゃない
じゃあなんで工業の電気科に進学したんだ、というツッコミは無しで頼む
とにかく俺はこのことを人に話さない
話す必要がなさすぎる

あ、ただ、フリーハンドで描く図形が妙に上手くなった、気はする
ちょっと便利である




プラモデルの人、夢幻泡影の人に土下座orz
内容と実態のずれはあくまで作中の噂レベルでのずれということでorz
お仕置きなら受けるわorz

乙ー!!
確かにそろそろ吹っ飛んでもおかしくないなww


「ちょっとぉ、いっちゃぁん!」

前から何かが走ってきた
ああ、環希だ
ドタドタ走ってくる環希の頭にはふわふわの猫耳がセットされていた

「こんな時間まで居るんならメールくらいしてよぉ!」
「いや居ねーし、もう帰るし、メールしねーし」
「それより聞いて聞いてー」

環希はいつもこんな感じだ
まず俺の話を聞かない
そして自分の話を始める
大体いつもこんな感じだ

「今日実習で作ったの! 可愛いでしょ! すごいでしょ!」

そう言いながら両手で殴り掛かってきた
モフモフする何かで顔を覆われてしまった

「おいやめろ! [ピーーー]気か!」

両手のそれはまるで猫の手の形
そうか、猫のコスプレ衣装でも作ったか
良かったな

「可愛いでしょー! ンフフ、可愛いでしょー!」


環希はそう言いながら俺の頬を猫の手グローブでボンボン叩く
俺、もう帰っていいかな? お腹も空いたし

「あ、これさ爪も出るんだよ! 見てて見ててー」

猫の手グローブが凶悪な金属音を立てた
すぐ目の前でスチール製と思しき爪がグローブの先から伸び出ていた

「ウルヴァリンか! 俺を[ピーーー]気か!!」
「これ作るの、すっごく大変だったんだよー」

そのドヤ顔がむかつく
俺が怪我したらどうするつもりだ

「本当はねー、声を認識して動くねこちゃんしっぽも作りたかったんだけど無理だったー」

ああそうですか

「だから、今度一緒に作ろうよー、回路とか組んでよいっちゃん、おねがーい!」

気安く俺を巻き込んでるんじゃねえ!!
悪いが環希、俺には家に帰ってアダルティーなドラマを鑑賞するという崇高な宿題があるのだ
お子様のお前には分かるまい

とは言え、環希のことだ
俺がはいと言うまでしつこくまとわりつくだろう
大方、こうして俺の所に来たのも、ねこしっぽとやらを俺に作らせる腹づもりだったんだな?
悪いが俺もそこまで暇じゃないんだ
よって逃げさせてもらう

俺は素早く踵を返し、ダッシュしようとした


その瞬間だ

袖を引っ張られるようにして俺はホールドされてしまった

「おいこら環希離せ!」
「わっわっわっ!」

首だけ捻って睨むと環希は珍妙な顔をしていた

「いっちゃん動かないで!」
「いやお前が俺を離せ」
「猫ちゃんグローブの爪が…いっちゃんの袖に絡んじゃった! このままじゃ制服破けちゃう!」
「は?」
「いっちゃん! 制服脱いで!!」
「は!? やだし! もう帰るし!」

逃げようと身体を動かそうにも
袖が引っ張られる格好になってるので
無理な体勢になって身体が動かせんのだ

「いっちゃん、爪がすっごく絡みこんじゃっててちょっと取れない! ちょっと実習室いこ!」
「おい、なあ、ちょっと…」

無理な体勢になってる俺は環希に腕を引かれる
もうこの状態ではされるがままに歩くしかない

「あの、環希さんちょっと…」
「実習室で爪取ったげるから! あと今日は一緒に帰ろーよ!」

俺はずるずると環希に引っ張られていった



(以下未完)

乙ー
日常的に命の危険に晒されてるのかww

考えもせずに書いちゃったのよね
環希に「にゃん❤」ってやらせるの忘れたけどしゃーなしなのよね

考えなし
見切り発車
実に良いとおもいます

夜10時頃
辺りは暗く僅かな月の明りのみ、静まり返った森で一人の少年が窮地に立たされていた
人影は無し、助けは期待できず

「ぁ…」

呆然とする少年
見た目は中学生、幼げな顔立ち
へたれ込んだ少年を見下ろす何か
筋肉質な体、赤銅色の皮膚、鋭い目と牙の生え揃った口、額から生える一本の角
まさしく鬼

「ちと悪いが…死んでくれるか?」

鬼が振り上げたのは金棒、ではなく鉄パイプ
容赦なく振り下ろされるソレを避ける事も受け止める事もできずに眼を閉じる

「あん?」

キンッと金属同士がぶつかる音
戸惑う鬼の声
目を開く少年
目に映ったのは鉄パイプを受け止めている一人の女性

「まーた、お前か」
「お前も懲りないな」

交わされる言葉から鬼と女性には面識があるのだとわかる

「キミ、ここはアタシが何とかするから逃げろ!!」
「させるかよぉ!」

叫ぶ女性、再び振り上げられる鉄パイプ
しかしそれは振り下ろされるより先に鬼の手から落ちる

「熱!?」

鬼の手から上がる煙、口を吊り上げる女性

「人体発火現象、相変らず面倒臭ぇな!」
「これ以上殺らせないよ」

睨み合う二人、両者動かず
我に返った少年は何とか立ち上がり逃げる

「逃がすか!」
「こっちの台詞だ!」

背後から聞こえる鬼と女性のやり取りを振り切り全力でダッシュ






何とか振り切ったかと腰を落とし息を整える
思い返すのは先ほどの事
にわかには信じがたい絵に描いたような鬼の存在

「何なんだ…」

思わず出る愚痴
何とか息も整ってきた所で耳が何かの音を拾う
ピチャン、ピチャンと湿り気を帯びた跳ねる音
音はドンドン近づいてくる

「今度はな…に…?」

こちらを睨みつける影
大きなギョロっとした目
湿り気のある皮膚
水かきのある手
二本足、大きさは人間とほぼ同等
半魚人

「ひっ…」

飛び掛ってくる半魚人
頭を埋め尽くす恐怖
その中で見えるただ一つの本音

『死にたくない』

そして、風が吹いた

「魚野郎に殺されちまったか…あん?」

木を掻き分けて出て来た鬼
鬼の目に映ったのは、肉塊になった半魚人と
キーキーと金切り声を上げ少年の側を飛んでいる怪物

「てめ、契約者か!?」
「へ!?」

鬼の言葉に戸惑う少年

「成り立て…?襲われて覚醒した!?
 ご都合主義にも程があんぞ!?」

鬼が鉄パイプを構える
怪物が少年を庇う様に前に出る

「……ヤメだ、割りにあわねぇ」

鬼が鉄パイプを下ろす

「命拾いしたな、ボウズ」

そのまま少年の前を素通り
見えなくなる鬼の背中
同時に消える怪物
再度抜ける少年の腰

「な、何なんだよぉ…」

思わず項垂れる

「生きてるか!?」

鬼が来たのと同じ方から女性の声
腕から血を流しながら女性が近づいてくる

「無事…鬼はどうした?」

事の顛末を説明
逃げた先で半魚人に襲われた事
突然怪物が現れて半魚人を擂り身にした事
怪物を見た鬼が引いた事

「って事なんですけど…」

女性、深刻な顔

「まさか…君、契約者?」
「はい?」

首をかしげる少年


この日、少年の人生は一変した

【続く】

定食屋のおばちゃんから醸し出される
  こいつ……できる……!
感がすごいwwwwwwww

見切り発車いいじゃないの!
勢いって重要さ!



少年が契約した何かが何なのかきになってしかたないので
続きを期待です


東区に出没していた露出狂がだんだんここ、西区に近づいてきているらしい
今週の頭にも目撃情報があったとか何とか
被害に遭うのは決まって男子学生だ
そっちの気がある露出狂
勘弁してくれよ

そんな話を聞いたのはアパート一階の定食屋で夕食を取っていたときだ
結局あの後は環希にひっつかれたまんまだった
奴の妙技によって俺の制服は袖ぐりと襟ぐりに大穴が開く程度で済んだ
ってかどんな絡ませ方をしやがったんだあの女は
そして帰り道、何故か俺が環希に山崎ロールとファミチキを奢る羽目になった
何故だ

もう9時を回ってる
俺は隣室の山田の部屋に来ていた
理由はひとつ、遠藤から没収したAVを見るためだ
ブルーレイとかいうものらしくて俺の所では再生できないらしい
というわけで山田と仲良く肩を並べて鑑賞会ということに相なったわけよ

「けどアレだろ? お前、タマキちゃんと付き合ってるわけじゃねーんだろ?」

山田が烏龍茶の缶を差し出しながら寝言をほざく
あんなのと付き合うだって?
破滅まっしぐらじゃねーか

「なんだ山田お前、あんなのがいいのか?」
「いやあまあ、確かにタマキちゃん可愛いけど、俺には二次元嫁がいるしな!」

HAHAHAと笑う山田は今夜もいつも通りらしい
ちなみにこいつは二次も三次も同時にいける奴だ
俺の知ってる限りではオナネタにせよ趣味の対象にせよ
二次と三次のバイオリズム的なものがどんな人間にも少なからず存在する
いや、存在すると思い込んでる節があった
こいつと出会うまではな


「というわけで、そろそろ遠藤の性癖分析会でも始めるか」

山田がディスクを呑ませて機器を弄り始める
畳の上でくつろぎながら俺は缶のプルタブを起こした

「ところでAVの最初の方の女優にインタビューする所って、お前飛ばす派?」
「場合による。見た方がより興奮するってこともあるだろ?」

たとえそれが脚本なぞってるだけだとしても、だ
それに全力でノる、それがAV視聴者の義務ってもんじゃないのではなかろうか

「あ、わり」

俺に背を向けたまま山田がうめく
直後、大音量で再生され始めた

『いいんちょおおお、こんなのがいいいいんでしょおおおおおお』
『やだっ、やだやだやだっ、ぬるぬるするよお』
『いいんちょお、いいんちょおおのめがねもぬるぬるだあああ、レロッレロレロ』

制服のままローションに塗れた女優と男優が映し出される
山田はスピーカーのボリュームを下げた

「今の、外に聞かれたかな」
「いや、問題ない。万一のことを考えてこの部屋は防音仕様に改造してある」

さすが山田
そんなことを言ってのけるこいつには謎のカッコよさがある


『なんでこんなことするの…やめてっ』
『ゆる…ぜっ…ゆる…』
『いいんちょおお、いいんちょおのせーふく、すけちゃってるよおおお』
『やだっ、みないでっ』

違和感を覚えた
いや、映像ではことは進行している
しているのだが
妙な音が聞こえてくるのは気のせいか?

『わああああああ、いいんちょおおってくろのぱんつだったんだあああ』
『やーだーっ みないでーっ めくらないでーっ』
『ゆる…ゆる、ゆるっ…』
『いいんちょおおって、だいたん、だったんだねえええええ』
『やだあっ みるなあっ はなしてよおっ』

山田も眉をひそめてこっちを見た
違いない
音声に妙な音が混じってるのだ

おもむろに山田がオーディオを切った
AVの音声が消える

『ゆるっ! ゆるっ!』


その瞬間、理解した

その音はスピーカーから発せられたものではない

この部屋からだ

横へ首を向けた

箪笥と書棚の隙間

白い女が影の中からこっちを見ていた

>>606-608
夜の森に契約者と魑魅魍魎がいるという時点で胸ザワ
このお姉ちゃんの素性によっては少年の行く末は変わるッ(`・ω・´)


『許せないっ…! これは許されないっ…!!』

喋っていたのは白い女だった

『年頃の男の子だから…エッチなものは仕方ない…そう思ってた…』

『絵とか…漫画とか…アニメとかだから…まだ…我慢もできた…』

『でもっ…でもっ…まさか、あ、ア、アダルトビデオだなんて…』

『許せないっ…!』

思わず喉がなった
耳鳴りが聞こえる
状況がよく分からん
が、危ないかほりがする

『ところが…そんな私にもチャンスが…!』

『そう…わたしは実体化してしまったのです…!』

『つまり…わたしにも…ついに…ついに…ご奉仕ができるという…』

『これはっ…燃える展開なのですっ…』


白い女が隙間から、ゆっくりと体を現わし始めた
本当に白い服を着た、いや、貞子のような服と言った方が正確か
その顔も白いが、これはまるでサイコなパフォーマンスで茶の間を戦慄させたお笑い芸人を下方修正したような出来映えだ

女は俺を見てはいない
山田の方を見ているのだ

俺は振り返った
山田もまた女を凝視している
驚愕の表情のまま口を半開きにして固まっていた


『フフフ…さあ…悪い子…こっちへいらっしゃい…』

再び女の方を見やる
目を大きく剥いて山田を睨んでいた
舌を突き出し非常に気持ち悪くうごめかしている

『わたしが ご・ほ・う・し してやるわっ!!』

「うわああああああああああっっ」

山田が大声で絶叫しだした
そしてドアへと突進していった

一瞬のことで頭が真っ白になる

つまり、部屋にいるのは俺と、この女


『たとえあなたが逃げても 追いかけて けなげに奉仕を迫るわ・た・し…』

「うわあああああああああああああああっっ」

まさか自分の喉からあんな大声が出るとは思わなかった
気づけば裸足で部屋を飛び出していた
ドアを掴んで乱暴に戸を閉めた

「何だったんだ今の」

山田が口を開いた
俺が知りたい

「山田お前、今携帯持ってるか」
「…部屋だ」

息を吐く

「おばちゃんに言って、警察呼んでくれ、部屋に不審者が出たって」

山田は頷いて階段めがけて駆け出した
俺は閉じたドアに全体重をかける
あの女が部屋から逃げ出さないように
あんなのとかち合ったらSAN値が下がるだけだ


アパートの管理人兼定食屋のおばちゃんは動くのが速い
山田を引き連れてすぐにやって来た

「不審者が部屋に出たって? 戸締りをしっかりやってなかったんじゃないのかい?」
「いえそれはないっす、防犯対策はバッチシっす」

店のロゴが入った黒のTシャツが妙に様になってる
いつものおばちゃんの雰囲気だ
しかしだ
その手に握られた得物はなんだ?

「ん? これかい? 先代が遺した軍刀だよ!」

おばちゃん、まさかそれであの女を斬[ピーーー]るつもりじゃないよな?
流石に過剰防衛どころじゃ済まんぞ

「いいかい? アタシの合図でドアを少し開けるんだよ!」

そう言っておばちゃんは缶詰のようなものを取り出した
導火線が生えてる、と思ったら、チャッカマンで火をつけやがった
何をするつもりだ

「よし、開けな!」

ドアの隙間から缶詰を投げ入れた
直後、すぐ横で凶悪な金属音が上がった
目を向けるとおばちゃんは既に抜刀している

 出し抜けに、室内から爆音が響いた

ドアに手ごたえがあった
さっき投げ込んだのは爆発物か!?

「逃がさないよ! 覚悟しな!!」

おばちゃんは俺を制し、ドアを開け放って中に突入した


一拍遅れて俺たちも後に続く


が、しかし


「逃げられたようだね…」

おばちゃんは俺たちに背を向けて吐き捨てるように言った
おばちゃんの視線の先には、開け放たれたベランダの窓ガラス

まさか飛び降りて逃げたってか

「さっきまでは閉めてたっす…まさか、飛び降りてまで逃げた、とか?」
「ありえない話じゃないね、普通は二階から飛び降りたって平気なもんさ」

平気なものだろうか

『ひょーひょっひょっひょっ』

夜の闇に染まったベランダの向こう側、遠くから哄笑が響く

『わたしは諦めないっ! また戻って来るからなあっ! ひょーひょっひょっひょっ』
「人ん家に踏み込んだからにはタダで済むと思うんじゃないよ! 小娘だろうが落とし前つけてもらうからね!!」

おばちゃんの怒声が大気を叩いた

『ひっひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっお助けぇぇぇぇぇぇぇっっ』

あの女の声がさらに遠くなる

「ま、そろそろ警察が来るから、後は任せるかい…ルーモアのお兄さんにも連絡しといた方がいいかねえ」

おばちゃんはそう言いながら振り向いた
山田の方をまじまじと見ている

「何だい、アンタ女癖が悪い方だったかい。その年で火遊びしてると、今に大火傷するよ」
「あ、いえ、俺はその…生身の女には興味ないんで、バーチャルで十分っす、はい」
「それも大問題なんだがねえ」

おばちゃんは呆れたようにテレビに目をやっていた
音声は切られたまま、AVは再生され続けていた
まさに今、ぶっかけシーンが終わった所だった




喫茶ルーモア・隻腕のカシマの人に土下座orz
西区的なそういうorz


ねぇ、殺人ネットって知ってる?
其処に憎い相手の名前を書き込むとね、そいつは死んじゃうんだって

…何時からだろう、そんな噂が流れるようになったのは

何時からだろう、この町で不可解な死が増えたのは



「殺人ネット?」
「そう、殺人ネット
 そこに昨晩キミの名前が書き込まれた」
「だから狙われた?」
「あいつらと殺人ネットの関係は良くわかってないけどな」

深夜のファミレス、客は少年と女性だけ

「殺人ネットに名前を書き込まれた人間はゴマンと居る
 けど、実際に死んでるのはこの町の人間だけだ
 何でだとおもう?」
「彼等が実行してるから?」
「そ、理由はわかんないけど、あいつ等が殺して回ってるのは確かだ
 学校街の中なら"組織"もデカイ顔して調査に乗り出せたんだろうけど、生憎こんな所じゃあんまり派手な事はできなくてね
 アタシみたいなのを派遣するので精一杯って訳
 で、何でアタシがこんな話をキミにしてるかわかる?」
「え?」
「あいつ等に襲われて自力で撃退できたのはキミが始めて…学校街と違って契約者なんて殆どいないからね
 大体は襲われたら殺されて終わり、だけどキミは運良く契約者になって生き延びた
 キミには戦えるだけの力がある、アタシは戦力が欲しい、協力してくれれば報酬も出す」

女性、値踏みする様な視線
少年、僅かにたじろぐ

「キミの都市伝説、あれはバイアクヘーだね」
「ばいあ…なんです?」
「バイアクヘー…クトゥルフ神話の怪物さ
 大方キミを襲った深き者どもに反応して出て来たんだろうさ
 キミはアレを自由に呼べない、違う?」

大当たり
そもそもやり方がわからない

「アタシ等はそれを知ってる、必要な道具もある
 キミはアタシを手伝う
 アタシはキミに力を使う為の手段と金銭を出す
 悪い取引じゃないと思うけど、まぁ命の保障は出来かねるけどね
 さぁ、キミはどうする?」

ほぼ同時刻
深夜の公園
フードを深く被った少女がベンチでだらけている

「よ」
「ヨ」

少女の前に現れる鬼

「魚野郎がやられたぜ
 組織の放火魔女の邪魔は入るわ、獲物が契約者になるわで散々だ」
「アチャー、魚君やられたノ?
 まぁ、都市伝説がやられただけで契約者が死んでないならセフセフヨ
 これでライバルが一人減ったしネ」
「まーな、俺はその辺どうでも良いけどよ」
「シロ君は組織に喧嘩売りたいだけだものネ
 でもこれで成功率TOPはワタシ、ボーナス確定でウハウハネ」

少女、財布の中を確認
大量の札

「なら奢れよ」
「イヤヨ」
「俺、成功率低すぎてヤバイんだって」
「そりゃオメーが真正面から殺りに行くからでネーカ
 [ピーーー]にしても方法がチャチィからそうなるのヨ」
「そーかい」
「放火女にやられたのが3人、魚君脱落で1人…4人欠けて残り半分
 面白くなってきたヨ」

【続ける?】
 

>>617
AV垂れ流しなままとか想像すると結構酷い絵面だww


昨日は色々なことがあり過ぎた
一言で表せば散々って奴だ

あの後、山田と俺は警察から取り調べを受けた
おばちゃんは一応鍵を取り換えるつもりらしい
とりあえず山田は俺の部屋に泊まった
俺も戸締りに気を付けないと

ていうか、部屋のなかに不審者現るってどんだけだ?
あの女はずっとあの隙間に入り込んで様子を窺ってたってか?

そもそも

あの隙間に人が入れるだけのスペースがあるだろうか
あれ、何だか気になると頭から離れなくなってきた
帰ったら検証してみよう

今日は少し遅く学校に到着した
昨日の余波が心身ともに染み入ってる
俺としては没収したAVを謹んで返却する予定だったんだが
既に遠藤は机に突っ伏して眠りこけていた

「よう、昨日は大丈夫だったか」

後ろから話しかけられた
振り向くと鳥頭だった


「昨日、ああアレか。なんで誰も起こしてくれなかったんだよ」
「いや、6限の途中から意識を失うようにして倒れたお前を周囲は心配したのだがな、
 教諭がお前を保健室に運ぶ必要はないから机に座らせておけと命令してきたのだ
 もっとも保健室は機械科の連中が荒らぶっている最中で、それ故に教諭は危険だと判断したらしいのだが」

意識を失うようにして倒れた?
まるっきり覚えがない

「アネゴは心配しておったぞ、保健室に運べないのならせめて膝枕で介抱してやりたいと申し出てな
 それを聞いた教諭は鼻血を噴いて倒れてしまったため、以降は授業続行不能、自習となった
 担任は機械科の連中を鎮圧すべく乱闘の渦中に飛び込んでいったためHRもなくなった」

アネゴが俺のことを心配していた、だと?
そうか…つまり、つまり俺にも春がやって来たというわけか!

俺たちクラスは電気科だが、察しの通り女子生徒が三人しかいない
一人は浮世絵顔の苦労人
一人は頭から麻袋を被った無口
そして無表情で有名な我らがアネゴだ
将来の夢は立派なエンジニア兼立派なお嫁さんというのだから
常時異性に飢えた思春期の狼である俺たちにとっての天使のような存在なのは言うまでもない

「そ、そ、それで、アネゴは俺のことを…ひ、膝枕」
「当然と言えば当然の話だが、我々が全力で阻止した」

鳥頭は俺の肩を掴んでくる

「お前だけがいい思いをできると思うなよ? 俺たちはアネゴが帰るまで付きっ切りで貴様のことを介抱してやったわ
 無論アネゴが心配そうに貴様のことを気遣いながらも校門から出ていくその時をしっかり確認するまでな、貴様一人だけにいい思いはさせん…!」


鳥頭の血走った眼で睨まれたからには黙って頷くより他はない
お、おのれ…俺の春が…

「安心しろ、俺たちも放課と共にお前を放置して早々に帰宅したわ」
「せめて起こしてくれよ…!」

「おーい席に着け! ホームルームを始めるぞー」

担任が入ってきた
気づけばそんな時間か

鳥頭から解放され席に座ると、アネゴがこっちを見てるのに気づいた
口パクで大丈夫?と聞いてきやがる…! アネゴ、大好きだ!
大丈夫だと親指を立てるとアネゴは小さく頷いた
いかん、可愛い。可愛すぎる
しかしそれと同時に野郎どもの舌打ちが複数箇所から聞こえたのは言うまでもない

「せんせー! 昨日の乱闘って大丈夫だったんすかー」

前の席の奴がそんなことを聞く

「これが大丈夫に見えるか!?」

担任は頭に巻かれた包帯を指さして若干興奮気味の声で返事した

担任、前原いその。二六歳独身。彼女いない歴と年齢が同じ。腕力はありかなしかで言えばからっきし駄目
担当は国語。実は四月の時点で「あ~あ、教頭早く死んでくれないかな~」とうっかり発言したため
このクラスの全員から弱みを握られているという類稀にみるエキセントリック高校教師である


鳥頭の血走った眼で睨まれたからには黙って頷くより他はない
お、おのれ…俺の春が…

「安心しろ、俺たちも放課と共にお前を放置して早々に帰宅したわ」
「せめて起こしてくれよ…!」

「おーい席に着け! ホームルームを始めるぞー」

担任が入ってきた
気づけばそんな時間か

鳥頭から解放され席に座ると、アネゴがこっちを見てるのに気づいた
口パクで大丈夫?と聞いてきやがる…! アネゴ、大好きだ!
大丈夫だと親指を立てるとアネゴは小さく頷いた
いかん、可愛い。可愛すぎる
しかしそれと同時に野郎どもの舌打ちが複数箇所から聞こえたのは言うまでもない

「せんせー! 昨日の乱闘って大丈夫だったんすかー」

前の席の奴がそんなことを聞く

「これが大丈夫に見えるか!?」

担任は頭に巻かれた包帯を指さして若干興奮気味の声で返事した

担任、前原いその。二六歳独身。彼女いない歴と年齢が同じ。腕力はありかなしかで言えばからっきし駄目
担当は国語。実は四月の時点で「あ~あ、教頭早く死んでくれないかな~」とうっかり発言したため
このクラスの全員から弱みを握られているという類稀にみるエキセントリック高校教師である


「あー、実はホームの前に皆に言っておくことがある」

ううん、と咳払いとして担任は背筋を正した

「教頭先生が明け方に暴行を受け、病院に運ばれたらしい」

それは大ニュースだ
担任はポーカーフェイスを気取っているが相当嬉しいに違いない

「話によると、教頭先生は早朝のランニングで西区から東区に向けて走っていたらしいが
 白い女に抱き付かれ、そこから振りほどいて逃げようとしたのだが
 抱き付かれたまま投げ飛ばされ、また抱き付かれて投げ飛ばされたらしい」

へえ、白い女ね
おっかない話だ
最近は露出狂も出没しているというから気を付けないと

「教頭の証言によれば、その女は白パジャマに熊のぬいぐるみを持ってサイコなコントを持ち味にする女性芸人に似ていたらしい
 もし心当たりがあるなら遠慮なく教えてくれ。あと警察以外のマスコミが何か聞いてきても応じないように」

あれ、それってひょっとして
ちょっと、何だか心当たりがあるんですけど
いや、心当たりじゃなくて隣の部屋にそんな感じの不審者が出たんだが

言うべきか?
やめておこう、嫌な予感しかしねえ


「工業高校始まったな」

前の方の席からそんな声が響く

「これが世界の選択か…!」

隣で眠り込んでいたはずの遠藤は上体を起こして携帯を取り出した

「……俺だ、機関の連中はどうやら俺たちとやる気らしい」

「ああ、分かってる。あいつなりの考えだな、ラ・ヨダソウ・スティアーナ」

通話の相手は鳥頭の野郎だったらしい

唐突にターミネーターのテーマが教室に響き始める
音の源はアネゴの携帯からだ
アネゴ、ノリいいな

そんななか担任も大声を上げた

「全員、気を付け! 教頭に黙祷!」

なんなんだこのノリは
後ろの方から間髪入れず
「教頭まだ死んでねーから!」とツッコミが飛来したのは言うまでもない


(以下、未完)


時間は戻って、in 病院


「教頭、それで、お体の方は大丈夫なんですか?」
「わかんない、やばいかもしんない」
「一体、何をされたんですか?」
「あの鳥居み●きみたいな女にね
 こうね、ギューッて締め上げられてね
 チューされちゃったのよ…されちゃったのよ…」
「きょ、教頭、大丈夫ですか!? めっちゃ震えてますよ!!」
「あのときのことを思い出すと、お、お…」

「そう言えば今日はキッスの日だったわね」
「看護師さん!? 何言ってんの!?」
「オエー! ゲロゲロ、オエー!!」
「教頭! ヤベエ教頭がゲロった!」
「まあ、ばっちいわねえ」
「ウチのボケたお父さんもねえ、こんなふうにゲロっちゃうのよねえ」
「看護師さん戯言はいいから! ゲロ袋と拭くもの! あとサンポール! あとイソジン持ってきて! 早く!!」
「オ、オ、オエー!!」






誰だいキスの日なんて決めたのはorz

あの蝙蝠さんくとぅるふ出身とは……
どこまで味方でいてくれるのかが不安になるww


アネゴの意中の人が誰なのか
それによって罪状が変わるんじゃないかと思いつつ気になるのはAVは返してやれよということだ
若干マニアックなあれだがこれ実はアネゴをイメージして所持しているんじゃないかとか考えると泣ける

皆さん、語り口が軽妙洒脱で読みやすい、続きが気になるところ

にしても毎度のエキセントリックな情景描写が笑える
隙間女(?)に狙われる(?)山田の運命や如何に?!

殺人ネットの詳細求む!
残りは4人で、フード少女と鬼さんで2人、他の2人は何者か!?
そして鬼さんからそこはかとなく醸し出される、4人中最弱の雰囲気(イヤ、まだ判らんだろうが)
頑張れ鬼さん!!


さて、自分の方はというと
湿気た文章でジメジメと陰気に進めて行きます


「聞かせてくれてありがとう……大変だったね」

少年から掛けられた言葉が嬉しかった。
会話が通じるという安心感だけではなく
この少年の持つ、柔らかくも澄んだ雰囲気が、自分を落ち着かせてくれる。

「まあ……そうね、大変だったわね」

体が震えるほど怯えていた自分は消え
今では、自分で話した内容が他人事のように感じていた。

「今の話で、何か……分かるかしら?」
「そうだね……まず」

3歳程度の男の子が、口元に拳を引き寄せて真面目に考える姿は微笑ましく感じられる。

「ロッカーと赤ん坊の組み合わせなら、偽装していない限りはコインロッカーベイビーだとは思う」
「コインロッカーベイビー?」
「うん、コインロッカーベイビーというのはね、たぶんすごく昔の事になるのだと思うけれど……」

それは数千年……もしかしたら数万年前に起きた事件の話。
それを元に語られたコインロッカーベイビーという都市伝説があったという。
何となくだが、聞いたことがあった。

自分がはっきりとは知らないだけで、こうやって存在しているのだから
今でもどこかで、誰かに語られているのだろう。


「偽装というのは?」
「うん、例えばロッカーと赤ん坊は、それぞれ別の都市伝説により形成されている……とか」
「2種類の都市伝説が協力しているということ?」
「そういうこと、例えばの話だけれどね」
「それは厄介な事になりそうな話だけど、何でそんな事をする必要があるの?」
「なんの都市伝説かがはっきりしてしまうと、弱点が分かる場合もあるからね」

弱点が分かれば、解決も近付く。
だが、これが偽装であればミスリードされ、解決は遠ざかるかもしれない。

「弱点……なるほど……」
「そう、弱点……また例えの話になってしまうけれど……」
「いいわ、聞かせて」

少年の話を聞いていると、朧気ではあるが都市伝説という存在が
自分の心の中に形作られていくのを感じる。

この現実に、実体……いや、実態をもった都市伝説も、都市伝説で語られている通りの弱点を持ってしまう。
実に単純な話だ。

「分かったわ、ありがとう」
「うん」
「それで、コインロッカーベイビーだった場合、弱点は?」
「特に無いね」

肩をすくめて言う少年の、愛らしくも滑稽な仕草に思わず微笑が漏れる。

「ん?……なに?」
「いいえ、何でもないわ」

怪訝な顔もまた、年に不相応な表情であったが、それはそれで可愛らしかった。


「少し話を変えるけれど、お姉さんはこの都市伝説をどう思う?」
「どう思うと言われても……」
「そうだね……じゃあ、この都市伝説はコインロッカーベイビーだと思う?」
「……アタシは都市伝説の事は分からないわよ?……でも、そうね……」

考える自分に、彼は時間をくれる。
間を作るのが上手い、相手の表情を読むのが上手いからだろう。
やはり、ただの人間ではない。
彼の言う通り、彼は何かの都市伝説なのだろうか。

「コインロッカーベイビーだと、アタシは思う」

理由は特にない。

「理由は?」
「特に無いわ」
「そう……うん、でもボクもそう思うよ」

彼にはそう思う理由があるのだろうか?

「何故?」
「なんとなくだよ」

言って、はにかむ顔もまた愛らしい。
いつの間にか、彼の好ましい部分を探している自分に気付き、頭を冷やす。


「そうね、考えても分からなそうだし、まずはコインロッカーベイビーだという前提で進めましょう」
「うん」
「それで、アタシ達がやるべき事は何?」

単刀直入に聞く。

「コインロッカーベイビーの本体は、必ずこのロッカーの何処かに居ると思う」
「そうね、アタシも同意見よ……そして、この幾つもあるロッカーの中の、たった一つが正解」
「うん」

───かくれんぼ。

これは最初に感じた事でもある。

「でも、探すにしても多過ぎるわ……外れた場合のリスクも有るのよ」
「そうだね……何かヒントになるものがあれば……」
「ヒント……ねえ……」

皆目見当もつかない。

「ひとつ……考えていたことがあるんだけれど……」
「何?」
「ロッカーの番号なんだ」
「番号?」

改めてロッカーを見てみると、確かにそれぞれ違う番号が振り分けられている。
だが、コインロッカーであれば当然の事であり、全くヒントになりそうにない。


「この番号なんだけれど、“0101”から始まっているんだよ」
「“0101”?……“0000”とか“0001”からじゃなくて?」
「うん、ざっと眺めながらここまで来たんだけれど“0000”や“0001”は無かったんだよ」
「“0101”から始まる……」
「それだけじゃなくて、“1231”で終わっているんだ」
「“1231”で終わり……ん?終わり?」

終りがある?
こんなに、数え切れない程のロッカーがあるのに?
終りがある?

「終わりと言って良いか分からないけれど、少なくともそれ以上の番号はないんだ」
「ロッカーがこんなに有るのに?」
「うん、ループしているんだ」
「ループ……え?……じゃあ、番号が同じなら同じロッカーかもしれない?」
「……多分だけどね」
「“0101”から“1231”……どうしてかしら……」
「それの理由も何となく見当がついているんだ」
「理由は?」
「この数字、ずっと連番で続いているわけじゃなくて、途中で途切れて、また連番が続いているんだ」

途切れ途切れの連番という事なのだろうか。

「……どういう事なの?」

言われた事をイメージ出来ずに聞く。

「“0101”から連番で“0131”……次は“0201”から“0229”……」

挙げられた数字を、ゆっくりと頭に浮かべていく。


「この数字……ひょっとして……」
「分かる?」
「ええ……“0101”から始まり“1231”で終わるこの数字……暦日……カレンダーと同じだわ!」
「うん」

同じ答えに辿り着いた事に対してか、満足気に頷く少年。
だが、巧みに誘導されている気もして、心の片隅に陰が産まれつつあるのを感じる。

「じゃあ、このロッカーは実質的には365個しかないのね?」
「“0229”があって、閏年も含めるから、正確には366日分だね」

大きく前進した気がするのと同時に、本当に賢い子供だと感心させられた。
少なくとも、片っ端から開けようとしていた自分よりも、スマートな思考で冷静にこの状況に対処できている。

「あら?……でも、ループしているという数字が、それぞれ別の年の日付と捉えた場合……」

無限に続いてしまう。

「それは多分無いよ」
「どうして?」
「“0229”だよ」
「閏年にだけある日?」
「うん“0229”も必ずあるんだよ、ループしていないとしたら“0229”は4年毎にしか出てこないはず」
「……なるほど」
「ボクはループしているカレンダーだと考えているんだけれど……どうかな?」

意見を求められて、もう一度考える。
直感に頼る部分が多い。
それでも、論理自体には筋が通っている様に思う。
だが、心の片隅に産まれた陰が、信じても本当に良いのかと囁いてくる。


───感じる
───思う
───信じる

どれも根拠が無い事を表しているに過ぎない。

それの何が悪い。
この子の考えを信じたとして、何が悪いというのだ。
再び心が熱くなるのを感じて、頭を冷やそうとする。

どうしてこんなにも強く、彼に心を惹かれるのだろうか。

───根拠が無い
───可能性がある
───疑いが残る

言葉を変えて、思考がループし始め、息が詰まる。

さん……おねえ……お姉……

「お姉さん!」

ハッとして顔を上げると、少年が手を握って不安そうに呼びかけていた。

「はぁ……は……あ……あ……」

苦しい、息ができない、どうして?
必死に空気を求めているのに、吸えない。


「落ち着いて!聞こえてる?!」

ワケが分からなかったが、頷く。

「息を吐いて!」

息を吐く?
こんなにも苦しいのに?
息を吐く?!

「吐いた分だけ、息を吸えるんだよ!」

吐いたら吸える?

「これ以上は吸えないんだ!吐いて!」

そうか……息を吸い続けていたんだ……

「ふぅぅうぅぅ……すぅぅぅ……ふぅぅうぅ……」
「そう、落ち着いて……ゆっくりでいいよ、ゆっくり息を吐いて……自然に任せて吸うんだ」
「はぁ……すぅ……」
「息を吸えないと思って体に力が入ってしまうから、余計に苦しいんだ。
 力を抜いて息を吐けば、自然に吸える……後は静かに繰り返せば良いんだよ」

そんなやり取りが2~3分も続くと、状況が理解できるまで回復していた。

「過換気、症候群……だったのね」


まだ、脈は早い。
だが、温かいものをギュッと握っていると、それも自然と落ち着いていく。
マジマジと見つめると、握っていたそれは少年の手だった。

「あ……ごめん……」

急に恥ずかしくなって、手を離す。
名残惜しかった。

こんな感覚を以前どこかで……強い既視感が脳を叩く。

「謝られるよりも感謝される方が、ボクは好きだよ」

そう言って、小さく笑う。
ズルい。

「ありがとう」
「うん」

お互いにホッとして、笑う。


「あ~、もう駄目……もう無理」
「え?」
「あのさ……アタシね」
「なに?」
「キミの事、ちゃんと信じてみようと思うの」

どういう意味だろう?そんな表情を浮かべていたが
賢い彼は、すぐに真意を汲み取ってくれた様で
───疑われていた事も同時に理解出来たはずなのに
満面の笑みを浮かべてから、でも静かに

「ありがとう、嬉しいよ」

そう言って差し伸べる手を

「よろしくね」

精一杯の笑顔で迎え、握り返した。

また強い既視感を得る。

既視感にある彼の手は、もう少し大きくて
自分の手は、もしかしたら、もう少し小さかったかもしれない。

懐かしく、温かく、優しい手。
記憶の彼方にある、魂に刻み込まれた何かが反応する。

───ソウルメイト

ふと……そんな言葉が浮かんだ。




            (続く)

おつです

この少年の正体になんとなく思いを馳せてみます
自分の中ではいくつかあったりなかったり
コインロッカーの番号とこの空間の意図も気になります

とある喫茶店

「………」

向けられるのは疑惑、あるいは戸惑いの目

「な、何ですか」
「いや、まさか協力してくれるとは思わなかったからさ」

女性の言葉に少年はあぁと相槌を打つ

「大した理由じゃないですよ
 一つはアレを自由に使える様になりたかったから
 後は、貴女を手伝えば学校に行かずに済みますからね」
「サボりたいだけ?」

「まぁ」と答えながら頭に浮かぶのは学校での出来事

「あんまり回りに溶け込むの得意じゃないんですよ」
「イジメ?」
「似た様な物です
 僕、見た目がコレですし…空気って言うんですか、人の考え察すの苦手なんで」

少年の見た目
低身長、一見女の子の様な顔立ち

「キミも大変なんだな」
「それと同性から熱っぽい視線送られたりもしましたし、正直尻の辺りがむず痒くなるんで学校には近づきたくないです」
「………きみもたいへんなんだな」

棒読みで同情されても全く嬉しくない

「とりあえず仕事の話にしません?」
「そうだな、今キミのケータイにメール送ったろ」

見れば新着メールが一件
中身は

「URL?」
「殺人ネットのね、見てみろ」

少しの待ち時間
繋がる
画面全体が真っ黒
ただ殺人ネットの文字と、入力欄
過去に入力された名前の履歴

「…何か凄い書き込まれてません?」
「冗談半分での書き込みもあるだろうけど
 ここに憎い奴の名前を書きこむだろ、するとソイツが殺される
 一種の殺人依頼サイト……って事になってるが真に受けてる奴は殆ど居ないだろうな」
「イタズラ扱い…って事ですか?」
「そりゃそうだろ、依頼を実行しても旨みも無いんだから」

なるほど、画面をスクロールして名前を眺める

「あ、僕の名前……あれ、コレもしかして書き込まれても何処の誰かわからないんじゃ・・・」
「良い所に気付いたな」
「いや、これ、名前見れても殺されるのはこの街に住んでる人だけなんでしょう?
 どれがこの街の人間か・・・なんて」
「そこは組織の方に頼んで調べてもらってる
 あたし等は組織から連絡が来たら動くだけで良い
 連中がどうやって判断してるのかはわからん」

動くだけで良い、つまり

「事前に防ぐのが仕事だと」
「基本は犯人が事を起こす前に始末だな」
「[ピーーー]んですか?」
「必要なら」

少年、嫌な顔

「嫌か?」
「そりゃそうですよ」
「何で?」
「殺人でしょう」
「相手も殺人犯だ」
「それでも人間です」
「契約者だぞ?」
「契約者は人間じゃないと?」
「法で裁ける相手じゃない」
「何の為の"組織"ですか?」
「事実を隠蔽する為の、だよ」

少年、ますます嫌な顔

「不服?」
「コレは僕の我侭ですか?」
「先日まで一般人だったんだから、妥当な所だと思うよ?」
「このままゴネたらクビですか?」
「まさか、アタシだって死にたく無いもの
 それでキミの協力が得られるなら頷くしかないさ」
「それじゃあ」
「極力、捕らえる方向で行こうか
 面倒だけど、捕らえた奴は組織にブン投げよう
 あぁ、もちろん優先するのはアタシ達の命だけどね」

ではそれで、と納得

「改めて名乗っておこうか
 人体発火現象の契約者 此花焔だ」
「えっと…バイアクヘー?の契約者 和泉雪雄です」

互いの手が握られた

町外れの廃工場

中には人影が4つ
巨大な体躯の鬼
目深にフードを被った少女
仮面○イダーのお面を被った男性
マスクにサングラスにニット帽の不審者っぽいの
中央のラジオを囲む様に立っている

『ちゅ~かん☆はっぴょー!!』

ラジオから流れる声

『ゲームを始めてぇ、そろそろ3ヶ月だけどねー
 コレまでにぃ、来た依頼は22けぇん!
 その内せいこーしたのが18件!失敗は4件!』
「4件失敗で4人リタイアかよ」
「その失敗した4件って全部組織の介入だよね」

お面の男と不審者、呆れた様に

『成功率のランキングはぁ!
 フードちゃんが5件
 虫くんが4件
 不審者くんが3件
 鬼さんが1件
 後の5件はリタイア組の仕事だったからカウントしません!』 
「鬼さん1回しか成功してねぇの?ヤバくね?」
「ぶっちゃけヤバイ…オレとしては組織の連中と戦えてるからまぁ良いかと思わないでもないけどよ」

鬼、嫌な顔

『ダメダメな鬼さんの為に一応ルール確認しとくけど、このゲームは
 殺人ネットに依頼が入るとキミ達のケータイにソレが表示されます
 後は誰が殺ろうと自由…だけどぉ制限時間として書き込まれてから24時間以内にしてね
 その間にできなかったらその依頼はお流れ
 一人[ピーーー]度に1ポイント☆と報奨金を贈呈
 半年間の間に一番ポイント稼いだ人には賞品として、主催者であるワタシに叶えられる範囲で願いを一つかなえたげる
 何か質問わぁ?』
「ヨ」

フードの少女挙手

『はい、フードちゃん』
「組織からの介入入ってるけどルール変更は無シ?
 かなりキツいヨ?」
「確かにな、こっちも三人殺されて魚野郎は都市伝説亡くしてリタイアだろ?」
「命あっての物種だ、三人みたいに焼死とかオレは御免だぜ?」
「だな、割りにあわねぇ」

お面と不審者から不満

「鬼さんはどうよ?」
「俺は元々組織に喧嘩売るのがメインだ
 この位じゃ退かねぇよ」
「組織に喧嘩とか正気じゃねぇな
 フードのは?」
「このバカ鬼置いてけないからネ
 それに折角のランキングTOPだシ?
 もう少し付き合っても良いと思ってるヨ」

考え込む4人
同時に携帯の着信音

『まぁリタイアは自由だけどねぇー
 依頼が入りマシター!
 みんなの携帯にターゲットの情報送ったらからヨロピクー!
 じゃ』

ブツッと切れるラジオ

「どうでも良いけどさぁ」
「どうした」
「主催者のア○ゴさん声であのテンションは付いてけ無いよね…」
「皆ツッコミたいの我慢してたのに何で言っちゃうかナ、お前」





再び喫茶店

「和泉」
「仕事、ですね」
「よくわかったな?」
「えぇ、今殺人ネットに…」

少年、険しい顔

「クラスメイトの名前が表示されたので」

【続く?】

ソウルメイトの人と殺人ネットの人と数字の人乙です!

ここまで投下されたみなさん乙ですー
精神的に危機的状況で感想どころかよむのもままならない
でも必ず読むよ!応援してますです

願いを叶えるという主催者の正体はいったい何者なんだろう
そしてどこまでが叶えられる許容範囲なのかも気になるところです

このスレまだ続いてたのかww
昔、参加してた頃からだいたい3年くらいか、いや懐かしい

最近はスランプ続きだったり多忙が重なったりで作者不足なのですにょ…
確かスレ自体は来月で4周年だったかな(移転してからは2年くらい?
ともあれお帰りなさいませ

逆にVIPに立たなくなって自然に足が遠のいたって人もいるんだろうか…

そうさねぇ、確かにVIP時代は人の出入りが多かったし、人目にもつき易かったかも
でも今のVIPの現状を聞く限りだと、このスレは現環境を生き残るのは難しかったのではと
移転して正解だったと思うところもあるのですよ
実際、こっちでも何人か参入して下さった方もいらっしゃいますし


シトシトと音もなく振り続ける細雨。
赤い傘を差しながら、彼女は鬱陶しそうに胸元に垂れた自分の三つ編みを片手で払った。
その日、いつものように担当の黒服によってもたらされた任務は。
やはり、いつものように、そう代わり映えない内容だった。

町中に現れ人を襲う野良都市伝説の捕獲、あるいは駆除。

その対象の姿が変わるだけ。
いつもの様に現場に行き、いつもの様に自分の契約都市伝説の力によって排除する。
組織の中でも上位に入る実力を持つ嘱託契約者である彼女には毎日のように仕事が舞い込んでくる。

学生の本分、学業を終えた放課後、メールの着信とともに手に入る組織からの任務。
それを終えれば、自宅へと帰り、まずシャワーで一日の汗を流す。
その後、家族団欒の中、何気ないありふれた会話を舌で繰りながら食事。
仲の良い両親に作り笑いを贈り、自室へと戻ると明日の授業の予習復習。
壁に掛かった、古いアニメのイラストが描かれた時計が0時の知らせを刻む頃に就寝。
それが彼女のいつもの日課である。

毎日毎日グルグルグルグル。
止まることのない色あせたメリーゴーランドのような人生。

いつからだろうか、この世界が窮屈だと思い始めたのは。
いつからだろうか、この現実が苦痛だと思い始めたのは。

都市伝説との契約という、凡そ平凡とは言いがたい事象を体験した後もそれは変わらない。

小一時間の探索後、住宅街の狭い裏路地の奥で発見した醜悪な顔をした小柄な子鬼。
相手がこちらに気づく前に小さく腕を振るう、数瞬後、不可視の衝撃に晒され宙を舞う子鬼の身体。
小汚い悲鳴、千切れ飛ぶ四肢、人とは違う青い血液を撒き散らし。
しかし、その毒々しく汚らしい飛沫は、彼女の眼前で何かに遮られたかのように地に落ちる。

これで――終わり。
昨日の人面の鳥よりかは時間がかかったかも、一昨日の動く骸骨よりかは手早く終わらせられた気がする。

どんな相手だろうと、どんな化け物だろうと、変わらず同じようにいつもの様に私の前に倒れ伏す。
いつものようにいつものようにいつものように。

「あぁ、退屈…だなぁ…」

こんな、退屈で退屈で退屈な人生なら……

「――死んじゃいたい、かな」

そう、いつものように、呟く。
いつからか、口癖になったその言葉は、いつものように誰にも届かず、私の唇を離れ消えていく――

「へえ、そいつは良いですなぁ、なら一度死んでみますか?」

――はずだった。

ゾクリッ、と、今まで生きてきた中で感じたことのない程の最悪に最低な悪寒が走る。
慌てて振り返った先には、着物姿の男が一人。
差した和傘をクルクルと回しながら、こちらに向けて糸のように細い目を向けてくる。
格好以外は、ありふれた何処にでもいそうな男。
だが、その中身は、ドロドロとした汚物によって満たされているような――。

「あ、あなた……なに?」

無理やり声を出した、掠れて聞き取りづらい自分の声。
身の内から這い出るかのように膿まれる不安。
今すぐ逃げださないと、大変な事になりそうな、そんな理屈なき予感。
ただ声を掛けられただけ、相手はただこちらを見ているだけ。
なのに、それだけで体中に恐怖が駆け巡り、四肢が動かなくなる。

――逃げられない。

「なに? と言われましてもなぁ、本名はあまり明かしたくないわけでして?
 そうですなぁ、人形師とでも呼んでくれればそれで、まあ昔も誰かにそう呼ばれてましたし僕」

そう軽い調子で語りかけてくる細めの男――人形師。

「あ、その、人形師さんが、いったい私に何の……」

「死んで、みたいんですやろ? それを手伝ってあげようか思いまし――」

――瞬転。

その言葉を聞き終える前に、無音の衝撃が振り続ける雨を吹き散らす。


脳で考えるよりも早く、腕が、脚が、身体が、自らの全ての能力が、彼から感じる尋常ではない瘴気に反応した。
乾いた炸裂音と共に、目の前の男の身体が暴風に巻かれる木の葉の如く翻弄される。

一つ、二つ、三つ、四つ、五つ!

数を数える毎に、彼の身体が嫌な音を立てる。
人間の肉と骨が潰れる破砕音。
ブチブチ、ゴリゴリと、擦り潰すように、丹念に丹念に丹念にっ!

「ひっ……ひっ……はぁっ…」

ひき肉となった、元・人間、現・生ゴミを視界から外しながら、しかし未だ消えぬ恐怖心に胸を掻きむしる。

「あーぁ、酷いことしますなぁ」

前方から聞こえてくる、ありえない声に悲鳴を上げる。
自らの喉から漏れたその声は花も恥らう乙女として恥るべき汚さで。
喩えるならば轢き潰された蛙の断末魔のような――。
だが、そんな事を気にする事もできずに、半狂乱に顔を上げる。

「なんで! なんで生きてるの! 今、死んだのに! 殺したのに!」

全身全霊を込められた彼女の言葉に、目の前の糸目の男が楽しげに微笑みかける。

「いやいや、一切合切の躊躇も感じられない良い一撃でしたなぁ
 なんでっしゃろね、その都市伝説? うーん、異能型の――うん、超能力か何か?」

その男の言葉は正鵠を射ていた。
もっと正確に言うならば彼女の契約する都市伝説は、異能型の中でも比較的ポピュラーな能力である観念動力。
所謂、サイコキネシスと呼ばれるものである、もっとも彼女にとっては、そんな問答はどうだって良かった。

「違う、そんなの聞いてないよ! なんで生きてるのっ、あなたなんで生きてるのっ! なんでよぉっ!」

訳がわからない、殺したはずの相手が生き返る、こんなことは初めてだ、絶望的なまでの不可思議怪奇。
ああ、なんでこんな事に? なんでこんな事に? なんでこんな事に?

「そらもちろん僕の都市伝説のお陰ですわな、君が自分の契約する都市伝説を使って僕の身体をミンチにしたみたいに
 僕は僕で、自分の都市伝説を使って生き返ったんですわ、簡単でっしゃろ?」

事も無げに言う彼の細い目は、狂気に彩られた愉悦によって濁っていた。

「そんなの、ありえない……」

「ははっ、ありえないなんてありえない、都市伝説ってのは理不尽の塊なんですわ、お嬢さん
 そして、人生ってのも理不尽の塊なんですなぁこれが……さて、覚悟は決まりました?」

何の覚悟?

一瞬そう聞き返そうとした彼女は、目前の男の細く濁った視線に中てられ思い出す。

『死んで、みたいんですやろ?』

数分前の彼の言葉だ。

『――死んじゃいたい、かな』

さらに数分前の私の言葉だ。


「や……やだ……死に、たくないよぅ……」

「あはっ、そんな心にもないこと言っちゃ駄目ですわお嬢さん、いつも思ってましたんやろ
 こんな窮屈な世界から消えてしまいたい、こんな退屈な現実から逃げ出したいって、だから、あんなこと言ったんでしょ?」

ニマリと、細い目を、なお細く、不吉な笑みを、なお暗く。

「どっ、うじて……わっ、わた、がこんなっめ、にっ…」

雨と涙と鼻水でグシャグシャになった表情で彼女が慟哭する。

「どうして、どうしてかぁ、まあぶっちゃけ君の願いをたまたま運良く、運悪く、僕が聞きつけた、それだけの話しなんですけどね?
 僕はねぇ、他人の願いを叶えるのが好きなんですわ、ほら、願いを叶えるなんて神様になったような気分になれるでしょ?」

そんな彼の言葉に、無言で首を横に振るう。
そんな彼女の様子を華麗に無視すると、男はまるで舞台上の役者のように、腕を振り上げ声を張り上げる。

「ではでは、神ならざる人の身ですが、僕が不詳ながら精一杯に君の死を叶えましょう、さあさ、お立会い
 今宵、彼女の退屈で窮屈でまるで詰まらなかった人生の幕が下りようとしております、皆様、盛大な歓待を、歓迎を、歓祭をっ――」


びちゃり、と背後で湿った何かが、地面を叩く音が聞こえた。

「……やっ…」

びちゃり、ばちゃり、びちゃっ、べちゃっ
複数の背後から聞こえる何者かの気配、死の予感。
増えていく増えていく増えていく増えていく増えていく増えていく。
やだ、やだ、振り向きたくない、振り向きたくない、振り向きたくないっ!

「やあ、ここが君の世界の終着点――」

ふと気がつくと、いつの間に焚いたのか、男は紫煙を揺らす香炉を手にして。

「――助けっ」

藁にも縋るかのように伸ばされた彼女の手は、彼の掌の上から立ち上る煙を掻き乱すのみ。

「ご照覧あれ、ここは死者の脇道横道夜道………黄泉平坂へ、ようこそ」

カランッ

彼女の持つ傘が渇いた音を立てて、アスファルトの上を転がった。





「行ってきます」

顔に張り付いたいつもの笑顔を母親に向け、彼女は家を出た。

いつもの学生服姿で、いつもの道を歩く。
いつものように三つ編みを揺らし、いつものように道で会ったクラスメートに挨拶をし。
いつものように優等生を演じ、いつものように日常を過ごす。
その彼女の日常はいつもと何ら変わりなく――

だが彼女の姿は、中身は、いつもとは少しばかり変わり果て。

いつもより土気色の肌、いつもより生気のない表情、いつもより落ち窪んだ隈。
いつもより髪は潤い無く、いつもより関節が固く、いつもより声が枯れている。

そして、何よりも、あぁ、何よりも、いつもよりも白く濁った死体のような、その瞳。

「あぁ、退屈…だなぁ…」

こんな、退屈で退屈で退屈な人生なら……

「――みんな、みんな、私みたいに殺しちゃおうか」


fin.

乙です
これはいわゆるゾンビ的なあれなのか、ちょいと気になりますぜ、だんな

乙ですぜー
こういうオチは好きだ

【首なしライダー】

アニメにも登場するようになった都市伝説の中では有名な話。

失った首を求めて夜な夜なさ迷う悲しい都市伝説。

これはそんな都市伝説のお話。



彼は暗い夜道を家へ向け、バイクを走らせていた。
時刻はそろそろ20時。


その事故の瞬間、彼は何を考えていたのだろう。
今となっては思い出す事は出来ない。

何もない、見馴れたはず道。
家までもう少し。
スピードを上げて走行していると。
突然ナニカに引っ掛かり彼とバイクは吹っ飛んだ。


突然、何が起こったのかも分からずに彼の意識はそこで途切れた。

――――――――――――

…ジワジワくる全身の痛みで目が覚めた。

目の前に広がるのは硬いアスファルトと長く続いている道。

何が起こった?事故ったのか?
普通に家までの道を帰る途中だったはずだ。

起き上がりまず自分の体を見る。
思い切り転倒したはずだが、着ていた衣服は特に破れたりはしていない。

辺りを見回し、少し離れた所にある倒れたままのバイクを起こす。
車などと事故を起こしたようではないらしい。道には俺しかいない。

どうやらバイクは奇跡的に無傷なようだ。
「体の痛みだけか………ん?」

そういえば頭に違和感がある気がする。

頭を打ったかもしれないなと思い、ヘルメットを外して頭の状態を確認しようとしたんだが…どういう事なのだろうかこの状況は。


ヘルメットがない


ついでに俺の頭もない


「なんじゃこりゃあぁぁぁぁ」

夜だという事を忘れて、俺は絶叫した。

どういう事だ?

頭がない

普通この状態になったら人間って死ぬはずだろ?
というか頭どこ行った?

一人慌てている最中に


「あなた…首なしライダーですか?」
いきなり後ろから声をかけられた。

「ぎゃああ!」

突然の事で思わず叫んでしまったが、普通は逆な気がする
慌てて後ろを振り向くとそこには、灰色のパーカーを着た女性が立っていた。


「首なしライダー…」

どこかでそんなような話を聞いた気がする
ああ、この間都市伝説を取り上げた番組でやっていた。
たしか首がないバイクのライダーが自分の首を捜して彷徨うという都市伝説だ。

「貴方の事ですよ?」
「俺?」
灰色のパーカーを着た女性は俺の頭があったはずの場所を見ながら言った。

「まてまて、俺が首なしライダーだと?そんなわけないだろ…都市伝説なんて信じていないし、そもそも俺は人間だぞ」

そう言ってはみるが、たしかに今の俺は首がない
そして何故か生きている

明らかに人間というジャンルではない。

「とぼけないでくださいよ?首がないプラスバイクを持っているなんて一目で丸分かりの格好しているのですから………ね、お嬢?」


女性の後ろにいたお嬢と呼ばれた女性が近づいてくる

その姿が街灯に照らされた瞬間、俺は驚きの声を上げた。


「朝野さん!?」

お嬢と呼ばれた女性は俺が高校の時の部活の後輩[朝野 青子]だった

「は?誰ですか貴方?」

しかし朝野さんは俺が誰だか気づいていない

「俺だよ俺!この顔に見覚えない?」
「いや貴方顔もなにも首ないですからっ!」

朝野さんの的確なツッコミで俺は首が無いことを思い出す

「俺だよ、弓道部で一緒だった神山 将悟だよ」

その言葉に驚いたのか朝野さんの動きが止まる
しかし、しばらくの沈黙の後

「………ハァ?」
疑うような朝野さんの目

「お嬢、首なしライダーに知り合いがいたのですか?」
「まっさかー?」
当たり前だが、全く信じてもらえていないようだ

「貴方が先輩だと証明出来る物はあります?」

「証明…?そうだ、携帯とか免許証見れば信じてもらえ………は?」
携帯をポケットから取り出そうとして初めて気が付いた。


なんと携帯電話と財布がない


「ないんですね?」
朝野さんの冷たい目線

「…オトシタミタイデス」
たしか運転する前にはあったはずなのに

「アウトー!ゆかりん、殺さない程度にゴー!」
「了解、お嬢」
「じょ、冗談じゃ…」
灰色のパーカーを着たゆかりんと呼ばれた女性に襲われ、何が何だか解らないまま俺は気を失った。

――――――――――――

「お嬢、どうやら彼は気絶したみたいですよ?」
「ゆかりんおつかれー」

朝野はゆかりに声をかけると、倒れていた首なしライダーの体を調べ始める

「お嬢、何を?」
「いやぁ、なんでコイツ先輩の名前出したんだろうかなーと」

首なしライダーの言っていた通り、携帯電話や財布等は持っていないようだ。

「お嬢を油断させる作戦、とか?」
「それだったらもっと親しい人、たとえば家族とかの名前出すんじゃないですか?」

近くに有ったバイクも調べてみるが、特に変わった物はない

「まあ、とりあえずお嬢はコイツを家に運んでもらっていい?」
「言うと思いましたよ…殺さない程度に、って調べる気満々じゃないですか」

溜息を吐きながら、ゆかりは首なしライダーを軽々と担ぎ上げる

「バイクは…押して行きましょうかね」
朝野はバイクを押しながらゆっくりと帰路についた。

――――――――――――

朝野さんと主人公の出会い編でしたー

昔の話と全く展開が違いますが、何卒よろしくお願いします

おお、懐かしい人たちではないですか
以前の続きではなく展開を改めたリメイク版ですかね?
続き楽しみにしてます

「・・・軽い肺炎ですね」
 熱でぼうっとした極と、その極をそっと支えるリジー、心配そうにはらはら見守るノイに、それほど大きくないクリニックの老医師は告げた。
「大した事はありませんが、大事をとって、2、3日入院しましょう」
 少し学校を休んだとて、勉強が遅れる心配も要らない極は、こくっと赤い顔で頷いたのだった。

 その日の夜中。極が目を覚ましたのは熱の為か、喉が渇いたせい。
 枕元の水差しは空になっている。
「知らないうちに、そんなに飲んだのかな」
 点滴のおかげでいくぶん頭がはっきりしてきた。たしか待合室のロビーには給水機があったはず。
 よっこらしょと体を起こし、病室を出た極の背を、ひとりの女が見つめていたが、もちろん彼は気づかなかった。

「ふー」
 喉が中からひんやりするような冷たい水を飲み、病室に戻ろうと踵を返した、その時。
「注射は、いらんかね~」
 目の前には、注射器を持ち、力の抜けたような様相で佇む男。

(ち、注射男・・・!)

 悟った瞬間、極はダッシュで走り出した。嫌だと言ってもどのみち注射される。
(別に僕は、注射が怖いんじゃないぞ。何を打たれるかわからないから逃げるんだ!)

 心の中でつぶやきながら逃げ込んだ場所は、トイレの一番奥の個室。

(何をやってるんだ僕は!)

 後がない最悪のシチュエーションに、自ら窮地に飛び込んでしまったことを悟った極は舌打ちする。
 ホラー映画や小説なんかによくある。
 主人公やヒロイン達がそれはどうみても危険フラグだろうとしか思えない方向に飛び込んでいく。
 読者であるところの極は、「バカだな」と思いながら予想通り主人公達が絶叫しながら逃げ回る様に、自らの予測の正しさに悦に入るのだ。男子高生としては可愛くないこと極まりない。

「結局、僕も愚かな人類のひとりだったって事か・・・」

 人類全体の業にすり替えながら極が己のバカさ加減を悔やむと同時に。

「みぃ~つけ・・・ぐげっ!」

 個室の扉の上から顔を出した注射男は、一瞬でその姿を消した。まるで下から見えない何かに引きずり降ろされるように。
「この不審者!イタル様に何をするつもりだったああああ!」
 続いて、続けざまに鈍い音が狭いトイレに反響する。

「り、リジー・・・?」
 リジー・ボーデン。
 彼女こそは両親殺しの嫌疑を掛けられた故に童謡「マザー・グース」に歌い継がれるようになり。生きながら、都市伝説と化した女性。
 彼女は歌の通りに、哀れな注射男を斧で殴りつけて行く。かつて、両親をそうしたと歌う西洋の童歌のように。

「答えろと言っているのだこの不審者!」
「いやちょまっ!待ってぎゃああああ!」

 そして注射男は。
 意味のある言葉を一言すら発さないうちに、光となって四散した。

「さあ、イタル様。もう大丈夫です。またあの様な輩が現れぬよう、入院の間は、私が付き添いと看護を致します」
(看護は、看護師さんの仕事じゃないのかなあ・・・)

 その後、極が入院していた間にしばしば目撃された
「入院患者のベッドの下の斧女」
 について、新しい都市伝説が生まれたか否かは、また別のお話。



END

あーしまった
どうせなら歌詞入れた方が雰囲気出たかな

>>596->>598
お疲れ様です
都市伝説がただ有るだけの日常って路線もありよのう
最近クロスが減ってきていたような気がするしこういうのっていいと思います
>>600->>602
未完なのか
未完なのですか
猫娘ダイスキな私になんて酷い真似を……
>>606->>608
上手に引いてくるじゃないか!
これでは続きが気になってしかたがないぞ!
>>610->>617
物語の緩急の妙が味わい深い
ちょいちょい懐かしいキャラが出たりしてにやりと出来たりするし
とにかく上手いなあ……
>>618>>619
チャイナな喋り方の少女とかいいよね
あのチャイナな喋り方って満州で日本人が向こうの人に教えた簡易版日本語が元になってるらしいのですがこっちで中国キャラがそうなるのってそういう理由かねえ
>>621-627
いそのというとどこぞのアンデルセンのことを思い出すなんていうと都市がばれますかね
教頭不憫だwwwwwwwwwwww彼が何をしたwwwwwwwwwwwwwwwwww
教頭には俺がキスしておくね
>>630->>639
湿った文章が好きな人はあまり口に出さない人が多い(友人調べ)
なので私がいいましょう
こういうの好きなんですよ
心にねっとりとくるやつが
>>641->>645
敵キャラがいきいき描かれている物語はいい
若本さんは最近ネタ寄りすぎて勿体無いと思うんですよ
普段格好良い人がネタやるから面白いんであって普段からあんな感じだとですね
>>653->>655
こういう暗いというより黒い話も好きです
続きも見たいけど此処でスパっと終わらせるから面白いかもしれない
とか考えるとうわああああってなります
>>658->>662
昔の話のリメイクって良いよね
自分もリメイクしたい気もするんですがスレとは合わない話だったりしてうーん……ってなったり
楽しみに待っております
>>665>>666
歌詞?著作権的に面倒だから入れないで参考URL貼るとかしてもいいんだよ!
歌詞だけが妙に面倒な扱いになってるからね!
俺内妄想(主にエロス)が熱くなるのでもっとやってください

俺の仕事は殺し屋だ。
組織にとって邪魔だが正々堂々排除できないフリーの契約者を始末することで日々糊口を凌いでいる。
フリーの契約者といっても色々居る。

「あんたがマキア…マキ……マキアマ? まあ良い、牧天喜かな?」

俺の目の前に居る男。
牧天喜、この男は正義感が度を過ぎている。
こういう手合いはどんな組織にとっても煙たいものだ。
こういう手合いはどこかの組織に飼われでもしなければ俺のような人間に殺される。

「誰だお前?」

「否定から入らないなら本人だな」

男の瞳を覗き込む。
俺の契約した「錬金術」の効果は至ってシンプルで、俺の知る限りの化学物質を素材さえ有れば合成させられるというものだ。
目に刻印された魔法陣を相手の脳内に作用させることでそこに神経伝達に用いる化学物質を錬成して相手の思考を変性させる。
理屈にすればそれだけの至ってシンプルな能力だ。
俺の指示をどう解釈したのか男はキッチンのコンロに火をつけてそこに顔面を突っ込む。
データによればこいつは火が弱点の都市伝説と契約しているらしいので、こうすればオシマイの筈だ。
少々焦げ臭くてかなわないが、ここから早々に退散すれば構わないだろう。
俺はそそくさと部屋を出て、そのまま用意してあった車に乗り込む。

「お疲れ様です」

黒服の少女が無機質な表情で車を走らせる。
彼女の名前は天城真希。
俺は彼女の所属する部署を知らないし彼女がどの程度偉いのかも知らない。
ただ俺も彼女も間違いなく、秩序を守るための影に徹している存在だ。

「仕事だしね、気にしないでよマキちゃん」

流れる車外の風景を見てため息をつく。

「憂鬱なのですか?」

「いいや、ただ少し飽きただけだ」

「そうですか……ところで聞きたいのですが貴方は今の仕事に満足していますか?
 僕は組織の汚れ役なんてもうそろそろ勘弁願いたいのですが
 善良な市民も、糞みたいな悪党も、一切の区別なく差別なく殺すなんて僕はやってられません
 自分が組織の道具になっているみたいで、第一私も今誰の指示を聞いて動いているんだか分からないっていうんですからお笑いです」

「俺は気にしてない。俺の興味対象はむしろ今の君の発言かな」

「仕事の愚痴くらい別に構わないでしょうに」

「俺は善人を殺した。悪人も殺した
 能力だけあって権力の無い奴を
 組織のトップとコネを作れなかった運の悪いやつを
 制御しきれない奴らをこれでもかと殺してきた 
 それは俺の殺人であって、君の殺人ではない
 君が気に病む必要はない」

不味い煙草を吸って吐き出す。

「そもそもだ」

「そもそも?」

「俺は人を殺したのかな」

「何を馬鹿なことを言っているのですか
 貴方もついにガタが来てしまったみたいですね
 僕としてはとってもとっても残念ですよ
 貴方にもそろそろ愛着が沸いてきたころだったんですがねえ
 貴方も処分されちゃうんですか?」

「いいや違うよ、考えても見ろ
 俺は確かにあの男の脳内に化学物質を錬成した
 だが奴が死を選んだのは俺の言葉のせいじゃあない
 自らの内部に発生した化学物質と、それによって引き起こされる電流の作用で奴は死を選んだんだ
 俺が関わったことは確かだが、奴の死は奴の脳が決定したことの筈なんだよ」

「いやいや、彼に死の命令を与えたのは貴方でしょう」

「フロイトはタナトスという概念について言及している
 これは誰ものうちに眠る死への願望だ
 俺は結局それを後押ししているに過ぎない
 日常に眠る僅かな不満、不平、怒り、そういったものは攻撃衝動へと繋がり、抑制を失えば自らすら破壊する
 俺がしているのはあくまでタガを外す行いだけ
 タガが最初から外れている人間は相手しきれない
 俺とおまえの仕事が糞みたいな悪党や善良な市民や「行き過ぎた奴ら」ばっかり殺すことになるのも宜なるかなって奴だ
 そもそも俺が操っていたとして他人の心は他人の心だ。それは決して俺のものではない、そいつだけのものだ」
 
「それは言い訳ですね。人間の生命や意思の尊厳を踏みにじっています」

「そうかな?
 人間の生命とはすなわち機械的な有機構造群同士の連鎖的な反応であって
 人間の意志とは超膨大なアルゴリズムの集積だ
 自律的に情報同士を連結して新しいアルゴリズムを形成する点は見事だがそれとて多くは誰かの模倣
 すごい人間は居ても、人間がすごいわけじゃない。戯言だけどね」

「戯言であって欲しいと願います」

「そうか、君はやっぱり良い子だな」

「僕が、ですか?」

「ああ、その通り。ちょっと車を停めて。煙草を買いたいから」

「いいですけど……」

「良い子で待っててくれよ」

と言って俺は彼女の脳を少しだけ操る。
そして車の背後に立つ何人かの黒服と対峙した。

「俺の制御から抜けてくる奴がまだ居たなんてね
 確かあの子に頼んで組織の情報も改ざんしてある筈なんだが」

現在車中で俺の帰りを待つ少女はスーパーハカーと契約している。
彼女の「俺に協力したい気持ち」を少し開放してあげた後に「自らの行いを忘れたい気持ち」を刺激することで俺は組織に別の人間として所属していた。

「都市伝説に対するずば抜けた応用力、冷徹に決断を続ける判断力、戦況を見極めて強者に擦り寄る観察眼
 どれをとってもお前は準一流で、一山いくらの我々のような只の黒服では敵わんよ
 だが組織の情報源が単一だと思うなよ、マキアマキ
 お前のことについてはこちらでも独自に調べている」

黒服達は俺の能力の対策のつもりか、なにか特殊なサングラスをかけているようだ。
だがそんなものは何ら意味を持たない。

「やめてくれ。その名前は嫌いなんだ。勝手に覚えられやすい名前だからね
 そしてまあそのなんだ……お前ら、もう詰みなんだ」

黒服達の顔が真っ赤になっていく。
それぞれ都市伝説持ちらしく何やら頑張っているみたいだがまあ無駄だ。
この辺りには既に高密度の光化学スモッグを合成している。
オゾンでも良かったのだが匂いが気に入らないのでやめた。

「ば、馬鹿な……お前の魔眼の対策はこれで……」

勘違いだよ、馬鹿。
魔眼なんてたいそうなもんじゃあない。
そしてこの後は放っておけば毒殺済みの死体が一丁上がりになる。
だが、それでは面白くない。俺は動けない黒服達と目を合わせて一人一人の神経を変性させていく。
これでまた便利な駒ができた。

「全ての存在は情報無くして動けない
 人も、機械も、つまりその情報を操った者こそが真の勝者だ
 そして人間が情報を操る手段とは……」

俺は彼らの前でにやりと笑う。
そう、それは至ってシンプルな答えだ。
人間にとっての情報、それは電気反応と化学物質。
これを操る力とはすなわち神の力だ。
俺はこの力で趣味に生きるゆとりに満ちた人生を送る予定だ。

「まあ良い。君等に話すことは何もない。職務に励み給え」

俺はそう言って車の中に戻る。
黒服たちは俺に頭を垂れたまま動かない。
邪魔くさかったので指を鳴らすと、彼らはどこかに行ってしまった。

「煙草はどうしたんですか?」

「お気に入りの銘柄が無かった。車出してくれる?」

「はい」

車内に戻るとマキちゃんが待っていた。

「ところで次の仕事のリストは?」

「これですね」

俺は渡されたリストを眺める。
彼女の上司の振りをして作らせたリストだ。
組織の中でも戦闘力に絞って作らせた構成員のリスト。
不明要素が多すぎるが読んでいるだけで胸が高まる。
この瞬間だけは俺が単純な機械じゃないと間違い無く確信できる数少ない瞬間だった。
趣味ってのは人間に尊厳を与える活動なのだ。

「えーびーしーでぃーいーえふじーえいちあいじぇいけいえるえむえぬ
 おーぴーきゅーあーるえすてぃーゆー」

「いきなり歌い出さないでくださいよ、僕の気が散ります」

「影遣い、筋肉ダルマ、神に愛された子、正体不明、悪意の天才、異常者、正義の味方、面白いキャラクターには事欠かない
 俺の情報を嗅ぎつけた奴ってのも気になるねえ、そいつは強いのかな」

強い奴との戦いは本当に心躍る。
さてさて次どいつをターゲットにしてやろうか。
本当に本当に楽しみだ。
待っててくれよディアマイベイビー。

勢いで書いた
そしてそれとなく名前を使った方々に土下座
世界観交流キテル……
とおもったけど上手く出来なかったよ

乙でしたー

歌詞はマザーグースのリジーボーデンでしょうか
あれはあれで淡々と狂的でキャラ的にいいスパイスかと思います

ピーキーな能力値の相手に対して強いとか面白いぜこの能力者!
当人に対する評価が準一流ってのもまたそそる要素です

>>673
コメントありがとうございます
ピーキーな能力値というかピーキーな心というか
とにかく極端な相手の方が殺し慣れている変な奴です
準一流は高二病の症状です

メガネをかけて普段より気取った様子のマキちゃんが俺の前に大量のプリントを広げる。

「本田さん、お仕事です」

ちなみに本日の俺の名前は本田書物だ。
マキアマキも好きな名前だったんだが、やはり他人に覚えられやすいのが気に入らなかったのでこの前捨てた。

「今回の討伐対象はテケテケ
 テケテケとは冬の北海道の踏み切りで女性が列車に撥ねられ、上半身と下半身とに切断されたが、あまりの寒さに血管が収縮したために出血が止まり、即死できずに数分間もがき苦しんで死んでいったという。もがき苦しんだ後即死にいたる場合もある。
 この話を聞いた人の所には3日以内に下半身の無い女性の霊が現れる。逃げても、時速100-150キロの高速で追いかけてくるので、追い払う呪文を言えないと恐ろしい目にあうという。またその異様なスピードと動きとは裏腹に、顔は童顔でかわいらしい笑顔を浮かべながら追いかけてくるためその恐ろしさをさらに助長するという。
 多くの場合「女性」とされるが、稀に男性で描写されることもある。
 遺体の下半身だけが見つからなかったため、自分の足を捜しているとのこと。
 以上、wikipedia「テケテケ」の項より抜粋」

そんだけ気取っておいてwikipediaかよ、という言葉を喉のあたりで止める。

「テケテケね、俺みたいな暗部街道まっしぐらの汚れ役な殺し屋を使ってまで仕留めるようなものか?
 土壇場でいかにも主人公体質な男の子と契約して反撃でもされたら致命的な主人公補正の不足により瞬殺されるぞ」

俺はボクっ娘には優しいのでこれくらいにしておいてやろう。

「まあまあこのテケテケは特殊なのです
 組織内部のとある実験の為に使用されていて、通常の個体を遥かに超える戦闘力を有しています」

「ほう、そいつは面白そうだ」

「ふっふっふ、僕がバトルマニアのホンダさんの為にわざわざ取ってきたお仕事なんですからね」

「お駄賃は?」

「すげえ金持ちな部署なので準備費用だけでポンと二十万円くれましたよ」

「パーフェクト、それで美味しいものでも食べに行こう」

「わぁ! 良いんですか?」

「普段迷惑をかけているからお詫びの代わりさ。確か君はステーキが好きだったろう
 中々美味しいステーキハウスを見つけてね」

「ありがとうございます。じゃあ楽しみに待ってますからね」

「ああ、それじゃあ書類をよこしてくれ」

俺はマキちゃんの頭をくしゃくしゃと撫でると情報の整理を開始した。

――――――――――――

「さて、目撃証言によればここだな」

数日後、俺とマキちゃんは旭川市郊外の線路沿いの空き地に車を止めて、テケテケの出現を待っていた。

「はい、今までも列車を転覆させるなどの事故を起こしています
 僕のスーパーハカーによれば既にこの辺りの地方コミュニティでも噂になっているのでさっさと始末しましょう」

「了解だ」

突然マキちゃんが突然咳き込みはじめる。

「おいおい、風邪か?」

「ライノウイルスだかだそうですがまあ僕なら大丈夫ですよ
 どうせ風邪で死ぬ身体でもないし」

「ウイルスねえ……そういや組織の上層部にはウイルス遣いが居るそうだな
 あれもなかなか興味深い、俺の能力って多分ウイルスに通じねえんだよな」

「あぁー、私も暗部専門なので表の方とはあまり交流がありませんが居るとは聞いてますね
 本田さんの錬金術って見えなきゃ使えませんから、見えない敵とかには弱そうですよね」
 
「見えないっていうか、イメージできねえ
 見えないだけなら周りの空気を少しいじれば酸欠にしてやれるんだがウイルスに酸欠なんて無意味だしな
 細菌でも正直きついわ
 サイトカインやインターロイキン、それにウイルスならインターフェロンを合成して免疫系を強烈に働かせてやっとなんとか……かな
 それだって時間稼ぎだし」

ウイルス。
思えば俺の在り方はそれに少し似ている。
組織という巨大な生命体に忍び込み、その遺伝子をいじり、自らの生存のために役立てている。
だがウイルスと違うのは宿主の存続を重視していることだ。
そもそも有名所の致死性ウイルスは進化の生み出した欠陥品だ。
宿主を殺してそこから飛散なんて繰り返していたら自らの存続が危うくなる。
そこまで真剣に対策されずにのんきに生き残るライノウイルスさんを見習うべきだ。
俺みたいな弱者は敵として認識されたならばお終いなのだ。
そうなれば俺じゃあ勝てない一流や超一流どもが俺を始末しに来る。
そういうシステムだ。機械のように、その流れは決して変わらない。
 
「ところで本田さん、来ましたよ」

そう言われて窓の外を眺めると確かにいる。

「あれだな」

「あれですね」

キュラキュラと音を立てて進むセーラー服の少女。
果たしてその下半身はと言えばキャタピラである。
立派な戦車砲まで備え付けてなんというかこう……エロい。
その姿、正しく夜の戦車。

「本田さん、お仕事なんですからあんまり興奮しないでくださいね?」

「こここここここここ、興奮なんてしてないんだからね!」

「もーう、本当にバトル大好きなんですから……」

ごめんなさいお父さんお母さん、俺は汚れてしまったようです。
俺は車から降りて少女のほうまでゆっくりと歩み寄る。
少女も、いやテケテケも俺に気づいたらしく俺の方にゆっくりと近づいてくる。

「ねえお兄ちゃん、私の足はどこ?」

テケテケは俺にそう尋ねる。

「んなもんねえよ」

「……そうなんだ」

テケテケは悲しそうな顔をして俺の方を見つめる。

「じゃあ……」

瞳に殺意が篭る。

「私に、足を頂戴! 奪われた私の大切な足の代わりを!」

砲塔がキュルキュルと音を立てて俺の顔の方を向く。
トップクラスの契約者ならば反応してカウンターをかませる時間が有るのだが悲しいかな俺は戦闘の天才でも達人でもない。

「邪魔な場所は吹き飛ばしてあげる!」

無情の火砲が放たれる……ワケがない。
プスン、と音を立てて砲塔は沈黙する。

「え?」

「お前が下半身に戦闘用小型戦車を取り付けられたテケテケなのは知っている
 だからその小型戦車に使われている金属の一部を酸素と反応させてみた
 ついでに砲弾内部の酸化剤も組成を弄って分解してみたよ
 これで君の酸欠状態の砲塔内部では
 ろくに整備も受けてねえんだから設備も劣化していると踏んでいたがその通りで助かったよ
 じゃなきゃあ君みたいな英雄的な素養の有るキャラクターには負けてたからね」

「う……」

「さよならだ」

下半身の戦車が派手に音を立てる。
さすがに物は丈夫らしく、少女の方だけが黒ひげ危機一発みたいにこちらへ吹き飛んできた。
脳内物質を大量に創りだして反応速度を極限まで上げ、彼女の捨て身の一撃を躱す。
そしてすれ違いざまに瞳を見る。
術式を彼女の脳内に確実に叩きこむ。
俺が身を躱したせいで無様に地面に激突したテケテケに言葉をかける。

「君は憎い、だが何を憎んでいる?
 君が本当に憎んでいるのは君を改造した奴じゃなくて今の醜い君自身じゃないか?
 君が本当に見たくなかったのは君自身、でも君はそれを認めたくなくて、その製造者たる実験者どもを憎んだ
 それも間違ってはいないが逃避にすぎない
 君にはほら、もっと根本的な解決方法が有るはずだ」

テケテケは沈黙する。
そしてしばらくすると自ら手を振り上げ……

「私って本当に馬鹿だったんですね」

「うん、君は本当に愚かだよ」

自らの頭部に振り下ろした。
スイカみたいに爆ぜた頭が夏の夜空へと溶けていく。
幻想的でも儚くも無い風景。
面白くもない仕事である。
俺は車に戻って一息をつく。

「憂鬱なのですか?」

マキちゃんはこちらの顔を心配そうに覗き込む。

「いいや、ただ少し飽きただけだ」

「そういうこと言うと、裏切りを疑われて処分されるのでやめたほうがいいですよ」

「まるでそういう奴が居たみたいな口ぶりだね」

「それはお互いの為に言わないで……あ」

「どうした?」

「本田さん、そういえば貴方なんで僕がステーキ好きだって知っているんですか?
 前に担当した契約者しかそれは知らない筈なのですが……」

それは俺だ。

「ああ、悪いこの前日記読んじゃった。あんな目立つ所においているから勝手に交換日記にしてやろうかと」

「位置変わってると思ったらそういうことだったんですか!?
 女の子の日記覗くなんて最低ですよ!」

「わりいわりい、好きなだけ頼んでいいから許してくれ」

「まあ僕は優しいから許してあげますよ! 僕は天使のようにやさしいですから!」

本当に相手していて飽きない娘だ。
まあそれじゃなきゃわざわざ俺の側に置いたりはしていないのだが。


おつでした
このテケテケ俺の知ってるテケテケとはきっと住んでる世界が違うwwww

ここは何処とも知れぬ洋館の中。
ここでは十人の少女がいつまでも終わらない日常を過ごしている。


「怪人アンサー?」

赤毛の少女が首をかしげる。

「なぁに、それ」

瞳のパッチリした少女が興味深そうに尋ね返す。

「十人がぐるりと円形に並んで同時に隣の人に携帯電話をかけると全てが通話中になるでしょう?
 その時に一人だけ違う相手に繋がる電話があるの
 ……あるのよね、お姉さま?」

ゴシックドレスを着た幼げな少女が似た姿をした大人びた少女に尋ねる。

「その通りよ。だからこれから私たち十人でその儀式をやってみない?」

猫みたいな笑顔で大人びた少女は笑う。

「僕は嫌だなあ、変なところにつながったら嫌だもの」

黒い服を着た銀髪のボーイッシュな少女は苦笑いだ。

「あら、貴方怖いのかしら?」

「こ、怖いわけ無いだろう! 僕がお化けを怖がるなんてことがあるわけないって!」

「うにゅぅ? 姉ちゃん声震えてるねえ」

ニンジャみたいな格好をした少女が黒い服の少女

「あらあらあら、それは言わないであげなさいな」

糸みたいな細い目をした少女は紅茶を飲みながらクスリと笑う。

「それでやるの? やらないの?」

そう言って部屋の隅にあるベッドから眠たげな顔した少女が皆の方へと顔を出す。
次の瞬間にはドアが盛大に開け放たれてペンギンのきぐるみを着た少女が声高らかに宣言する。

「やりましょう、長姉の権限において貴方達に命じます
 これから私たち十人で怪人アンサーを呼び出しましょう」

全ての少女が声を揃えて彼女に賛成する。
そして彼女たちは車座になり、隣の少女の携帯電話に向けて電話をかける。

「もし通じたらどうしましょうね?」

「それは決まってるでしょう?」

「だよねえ、僕達のやることと言ったら一つでしょう?」

ガチャリという音が鳴って全ての電話が通話状態に変わる。
少女たちは声を合わせてこう告げる。

「「「「「「「「「「私メリーさん、今から貴方のおうちに遊びに行って良い?」」」」」」」」」」

「あっ、僕のやつだけ通話切れた!」

「良いなあ、貴方の当たりだったんじゃないの?」

「やだよもう気持ち悪いなぁ!」

少女たちの笑い声が洋館の一室に木霊する。
今日も彼女たちの遊びは続く。

ルルルの人乙ですー
本田さん…ウイルスに弱いのか。じゃR-Noの出番だな
そしてボクっ子に優しいだと!?よし俺に任せろ(何を)

少女展覧会の人乙ですー
実はみんなメリーさんだったのかww
沢山の少女が和気藹々としてるのって萌えるよね!

ルルルの人乙ですー
本田さん…ウイルスに弱いのか。じゃR-Noの出番だな
そしてボクっ子に優しいだと!?よし俺に任せろ(何を)

少女展覧会の人乙ですー
実はみんなメリーさんだったのかww
沢山の少女が和気藹々としてるのって萌えるよね!

ぎゃあ連投すまん

このメリーさんたちは生身なのか、それとも人形ボデーなのか
どちらでも私は一向に構わない!!

このメリーさん達は球体関節にしたいな……作者の趣味的に!

「てめー、待てですよ」

 生地は光の加減で艶やかな薔薇が浮き上がる繊細なジャンパースカートにシフォンのブラウス。
 ピンク色の頭には総レース張りのつば広のボンネット。その全てが深淵の黒・・・いわゆる、ゴスロリとか云うやつか。
 その珍妙な出で立ちの少女から声を掛けられて、彼、田中書物は黙って立ち止まった。
「てめーと、取引をしたいのですよ」
 取引だと?心当たりのない彼は沈黙する。
「さっき、てめーがそこの店で入手したものですよ」
 ・・・思い出した。
 マキちゃんにたまには何か買ってやろうとした「黒いパピヨン」とやらいう変わった店で、どうした訳か店主の若い女に気に入られて
「貰ってちょうだいな」
 と半ば押しつけられた、石膏像のような噴水のオブジェ。水もきちんと出るそうだ。
 これだけ聞くとなんだか西洋のお屋敷にあるような瀟洒な噴水を思い浮かべそうだが、その水を噴きだしているのがゾウで、そこに蝶々が戯れているという全く意味不明な代物だった。
「対価は払うのですよ。ボクにそれをよこせですよ」
 彼は僕っ娘には優しいと自称している。よってこの訳の分からない少女の申し出を、話だけは聞く気に・・・
「ならねーようですね、プレゼントじゃとーぜんですか」
 そこそこ歴戦の彼には、少女が人の内心を知る能力を持つことを、その台詞が無くても推し量れた。その媒体が、手にしている鏡である事も。
「何が目的だ?」
「おっと」
 少女は彼から瞳を逸らす。既にお見通しと云うわけか。
「もう一度聞くですよ。取引する気は・・・」
 そこまで言い掛けた少女がはっと身を引く。
 彼の忠実な下僕と化した黒服の、光線銃の一撃を避けたのだ。
 ただの小娘にしては反射神経が優れている。もしかして、人間ではない・・・か。結論づければ、彼の行動は早い。
「何が目的でこいつを欲しがる?」
「欲しいからなのですよ!」
 そんな理屈があるか。・・・いや、あるかも知れない。世の中は広いのだ。
 しかし、この噴水に何か・・・もっと言えば、好奇心をそそるようなモノがないとも限らない。
「店から付けてたですよ!」
 怒鳴ってから、少女ははっと口を押さえるが、もう遅い。既に体も硬直したように棒立ちになった。
「それボクが欲しくて狙ってたのに、てめーにはどーせ価値なんて判らねーから、取り引きの振りして持ち逃げしてやるつもりなのですよ!」

 もはや少女の意志とは関係なく次から次へ言葉を紡ぎ出していく。
 脳内物質を変成させて、自白剤に近い成分を作り出すことなど、思いのまま。
 ついでに体も動かないはずだ。随意筋肉への神経伝達は声帯を除き一時的に麻痺している。
 目的を聞きだし、これが興味をそそるようなモノでなければ、対価次第でくれてやってもいい。
 なんたって彼は、自称僕っ娘には優しい男なのだ。
「一見アンティークっぽいけど、実は中国製だって、オーナーさん言ってたですよ!都市伝説なんか欠片も関係ねーですよ!」
 よし、もう一押し。
「対価は、今ボクが持ってる一番可愛い物をくれてやるですよ!」
 ・・・これを言わせた事で、彼は勝ちを確信した。
 少女は顔の筋肉すら動かすことがままならず、操られるままに首から紅水晶で作られた、繊細な薔薇の意匠のネックレスを外して男に手渡す。
 ネックレスを受け取った男は、そっと少女の前に悪趣味な噴水を置く。取引成立だ。
 本当はジャンパースカートでも良かったのだが、マキちゃんに着古しを着せるのも躊躇われたし、ブラウス一枚で放り出すのも何だと思ったので、ネックレスで妥協した。
 ネックレスが彼の手に渡った途端少女は解放され、地面にへたり込む。
「なんで・・・僕を操れたですか」
 目は見てない筈なのに、と納得のいかない様子に、男は黙って少女を指さす。正確には、少女の手鏡を。
「鏡って、ガラスに銀やらなにやら吹き付けたりして作るって、知ってるか」
 鏡を構成する金属に少々悪戯をして、マジックミラーに変えたのだ。ほんの一瞬だったから、気づく暇すら与えなかった。
「くっ・・・完敗なのですよどちくしょー!」
「じゃあな。これに懲りたら持ち逃げなんて企むんじゃないぞ」
 ちょっといい人っぽく締めて、田中書物はその場を去った。
 マキちゃんはネックレスを喜んで受け取り、出所については突っ込まれなかった。物々交換だから、別に後ろ暗いところもなかったが。


幻「ひでー話じゃねーですか!」
貴也「いや、一番酷いのはアナタだから!」



END

以上。ルルルの人に土下座進呈!

本田さん!
本田さんだよおおお!
「本だ、書物」だから本田さんなんだよおおおおお!
とまあそれはさておき乙でした
わざわざ拙作にクロスしていただけるとは光栄であります
ネタが割れないようにしつつ一撃必殺をかますことに全身全霊をかける暗殺者さんのキャラクターを再現していただけるとは嬉しい
そこまでセクハラかまさない辺りも再現度高くて嬉しいです
今度明かすかもしれなかった弱点を今のうちに明かしておきますね
実は錬金術は消耗が激しいんですよ
限界超えると指先から少しずつ金に変わってしまってですね……
というわけで組織への反逆心を抱きながらも組織無しでは戦えないという微妙な立ち位置のキャラだったりします

とまあそれはさておきやはりクロスってのはいいものですね
お互いのキャラの魅力が交差しあうことで何倍にもキャラが輝けると思うんですよ
幻ちゃんの可愛さをスイカに例えるなら本田さんの曲者が塩のようにスゥーッと効いてですねえ……

とある大国の政府官庁。
その暗い会議室の中央で、スーツ姿の男が演説をしている。

「皆さん、新しい時代には新しい武器が必要だと思いませんか?
 長引く戦争、分散化する戦場、憎悪は連鎖して炎上を続け、それを収める術は無い
 こんな時代だからこそ絶対的な力が、絶対的な武器が必要なのです
 そしてその絶対的な武器というのがわれわれの提供する商品です
 あるものはこれを天使と呼び、あるものはこれを悪魔と呼ぶ
 ですがその正体は一つ、それは都市伝説と呼ばれている情報生命体に過ぎません」

男が指を鳴らすと、プロジェクターが起動して一つの動画が映し出される。
白い髪の少女に向けて男たちが銃を突きつけている動画だ。
男たちはそのまま少女に向けて引き金を引く。
銃口が光を放つ。
耳を裂く音に続き、無機質な弾丸が少女の柔らかな肌を肉を冒して行く。
会議室の男たちは眉を顰め、ヒソヒソと隣同士会話を始める。

「貴族の皆様には少々刺激が強かったと見えますね。まあご安心を」

スーツの男がそんなことを言っている間に少女の体は、いいや肉片は見る見るうちに再集合して行き、再生を果たす。

「銃も、爆撃も通じない、無敵の兵士ですよ。あなたたちには喉から出るほど欲しい筈だ。
 文字通り戦争は変わりますよ。銃が騎士の時代を終わらせたように。
 ミサイルが銃の時代を終わらせたように。
 テロがミサイルの時代を終わらせたように。
 今度は都市伝説がテロの時代を終わらせます。
 そして都市伝説の時代という言葉が意味するところはすなわち、一人の絶対的強者の存在による絶対王政。
 われわれは再び騎士の時代に帰ってきたのですよ。
 そう、あなた達の先祖と同じ時代にです」

スーツ姿の男は満足げな顔で辺りを見回す。
居並ぶ貴族の人々は皆退屈そうな顔で男を見ていた。

「そんなこと、とうの昔に知っておったよ」

「いまさらそんな物の売り込みとは、ご苦労だな」

「秘密兵器と聞いていたんだが面白くも無いな」

「えっ?」

「我々と、陛下の答えはノーだよ。そんなもの数十年前に我々が通った道だ
 兵器として都市伝説を使えばその分知れ渡る
 知れ渡れば都市伝説は力を増す……とも限らんのだよ
 日本のことわざに『幽霊の正体見たり枯れ尾花』というものがある
 都市伝説は正体不明でなおかつ存在すると思われて始めて力を得る
 慣れられてしまったり、合理的に説明されれば力は減衰するのだよ
 愚か者め、その程度のことも分からないとは本当に期待はずれじゃったわ
 疾く去ね、貴様の話は聞き飽きた」

「そ、そんな……」

「ああ待て、一つ忘れてた
 そんなしたり顔で都市伝説を世界中にばら撒かれてはわしらも困る」

会議室の男たちはうなずく。

「それにだな、この世界の運営が今まで民衆の手に委ねられたことはない
 この国も、他の国も、はるか昔から存在する我々のような人間が合議にて決めてきたものだ
 時代は何一つ変わってない
 たった一人の英雄が戦場のすべてを決するのは古今東西の古き良き伝統で、それは何も変わってない
 ここまでの話を理解してもらった所でだ。貴様とその親玉には消えてもらうとしよう」

この世のものと思えぬ断末魔が室内に響く。
しばらくして静寂を取り戻した官邸に、再び老人の声が響く。

「まったくつまらない会議だ。次の議題は?」

「はい、次は……」

かくてこの国の政は進むのであった。

とにかくクロスして頂いた以上、お返しせずにはいられないので急いで書いてくるね
とぅっ

黒いパピヨンという看板の出ている小さな洋品店。
俺のお気に入りの店である。
おしゃれな雰囲気で、店主もなかなか美人だ。
客の少女を眺めていれば目の保養もできるという完璧な仕様となっている。

「貴方が他人にプレゼント? 意外ね」

「まあそうかもね。相手の名前は天城真希、双子座の14歳、誕生日は6月17日
 普段から仕事で世話になってる以上、祝ってやるのも悪くない、なんて俺らしくもなく思ったりするわけですよ
 まあ女性におしゃれな小物を送るのは男の嗜みってやつでしょう
 飽きたらポイと捨てられますからね」

「そういえば仕事のことを聞いたこと無かったわね」

「……実は俺、マフィアの殺し屋なんですよ」

真顔で言ってみる。

「あらあら、それは怖いわね
 ある日血まみれで店の中に転がり込んだりしないでね」

ジョークと思ってもらえたらしい。
お互いにラッキーだった。

「分かってますよ。ところで何かおすすめの小物はありませんか? 時計とか」

「いや、それ捨て辛いじゃない」

「いやぁ、側で時を刻んでいきたいなあと」

「本田さんあなたそういう趣味だったの?」

「ジョークですよ。ただまあ無難かなと」

「はぁ……さっき自分の言っていたこと覚えてる?」

「まあ捨てづらいのは良くないですね
 そういえば彼女が最近お金が無いって言ってました」

「お金?」

「ええ、安月給でこき使われているって」

「じゃあ金運関係のお守りでもどうかしら?」

「は?」

「今回はこの金運爆発象のオブジェに瑪瑙のシルバーリングをつけてお値段据え置き6000円」

「わーい、在庫一掃セールみたいなお得感!」

「この象、水も出るわ」

「すっげー……ってなるか!」

「すごいでしょ? 貰ってちょうだいな」

正直俺の少年ハートが動き出したのは否めない。
そしてこの人、貰ってちょうだいなって隠す気もないのか。

「いやまあすごいですけど……結局捨てづらいじゃないですか」

「何言ってるの、捨てられないように頑張ったらいいじゃない」

「いやいやいや、あくまで兄妹みたいな関係であってそういう仲では……」

「さーてどうでしょうね?」

「……もう、いいですよ」

俺は代金を支払って商品を受け取り、店の外へ出る。
俺の住むマンションに向けてテクテクテケテケ歩く帰り道。

「てめー、待てですよ」

新手の都市伝説使いか!?
と、思わず叫びそうになるほど奇抜なファッションの少女がそこに居た。
黒いパピヨンには稀によく居るゴスロリというやつである。

「てめーと、取引をしたいのですよ」

はてさて、取引か。
俺と取引ってのはどういうことだ?

「さっき、てめーがそこの店で入手したものですよ」

あっ、あれか。

「対価は払うのですよ。ボクにそれをよこせですよ」

まあ俺もボクっ娘には優しい男No.1としては話くらい聞いても……待て。
ここで俺が金運爆発象さんオブジェを渡さねばマキちゃんが安月給で組織にこき使われる定めからは抜け出せない。
つまりここで俺が頑張らなければ彼女がかわいそうなことに……。
と、ここで都市伝説の気配が急激に濃くなる。
どうやらこの女、本当に新手の都市伝説使いらしい。

「ならねーようですね、プレゼントじゃとーぜんですか」

それなら対応を変えよう。
どうもこちらから攻めることが多くて、受け身に回ると対応が一歩遅れるのは良くない点だ。
以後反省改善していこう。

「何が目的だ?」

相手にまだ攻撃の意志がない以上、軽く視線を当てて様子見だ。

「おっと」

目を逸らして躱されたか。
俺の暗殺の表向きのネタを知っている相手か。

「もう一度聞くですよ。取引する気は…」

全力で消す振りだけはすべきか。
普段から操っている黒服に銃撃を行わせる。
少女は見事に躱す。
これで確定である。

「何が目的でこいつを欲しがる?」

よくある話だ。
ぬいぐるみの中に小型ICチップとか、子供部屋のおもちゃのロボットに財宝の在り処とか、そういう話は。
なればこそ、そう簡単には渡せない。

「欲しいからなのですよ!」

何が彼女をそうさせるのか。
俺は他人の激しい情熱をあまり理解できない。
だって、今まで何をやってもそこそこ上手にできて、でも一番にはなれなかったから。
情熱の味を俺は忘れてしまった。
成分は容易だ。
自らの言葉を脳内で結びつけている理性。
その理性を若干緩める調合が要る。
仕込みは十分、ネタはシンプルに行こう。

「店から付けてたですよ!」

それは薄々感づいてた。
殺意が無いから確信できなかったけど。

「それボクが欲しくて狙ってたのに、てめーにはどーせ価値なんて判らねーから、取り引きの振りして持ち逃げしてやるつもりなのですよ!」

あれ、俺ってもしかして巻き込まれただけ?
まあ良い、精密かつ高速の操作は辛いが、一撃で決めるべき勝負だ。
俺は先程から操っていた黒服の瞳を見つめる。
俺の錬金術の術式は光の形をとっている。
それは目から目へ、光の姿で反射を続ける。
そして、最後には鏡を無視して彼女へのルートを形成した。

「一見アンティークっぽいけど、実は中国製だって、オーナーさん言ってたですよ!都市伝説なんか欠片も関係ねーですよ!」

なんだよ~メイドインチャイナ馬鹿にするなよ~。
まあいい、我が術中に落ちた哀れな少女の話を聞くとしよう。

「対価は、今ボクが持ってる一番可愛い物をくれてやるですよ!」

うーん、勝った。第三部完。
彼女は恐らくきっと多分メイビー自分からネックレスを親切にも俺に差し出してくれた。
でも君が持っている一番可愛いものって言うならそれは恐らく君自身だぜ、キャッホウ!
というわけで俺はこの金運爆発噴水を彼女に差し出した。
操作を解除すると少女は地面にへたり込む。

「なんで…僕を操れたですか」

「鏡って、ガラスに銀やらなにやら吹き付けたりして作るって、知ってるか」

と、言っている(しかもこの説明も実は真実半分ウソ半分)が彼女にはおそらくまったく別の言葉で聞こえているだろう。
そういう暗示をかけている。
その上、この会話を誰かに盗み聞きされていたとしても真実と虚構の入り混じった嘘なのでトリックが漏れる心配は無い。
むしろ見当違いの予想をしてくれる可能性すら有る。

「くっ…乾杯なのですよどちくしょー!」

「俺の眼のことを知っているみたいだが、あと少しだったな……って聞いてないな
 じゃあな、これに懲りたら持ち逃げなんて企むんじゃないぞ」

暗殺者たるもの、自分の秘密を守ろうとするのが常というものだ。
表向きの秘密が知られてしまっている以上、暗殺者らしく口封じにかかるべきなのかもしれない。
だが今日はまあいい。この少女との戦いは楽しかった。
それに暗殺者たるもの、仕事の外でみだりに敵意をむき出しにするのも良くない。
今日はマキちゃん家に遊びに行くことにしよう。
そんなことを考えながら俺はタバコを蒸すのであった。

無駄に手の込んだ無駄のない無駄な嘘
情熱なんて分からないといっておきながらバトルマニアな矛盾した子
妙な奴である

>>688
>本田さん!
>本田さんだよおおお!
>「本だ、書物」だから本田さんなんだよおおおおお!
ぎゃあああ!
すんません!マジですんません!
どこで本田さんと田中さんが入れ替わっちゃったんだ!?
wikiでは訂正します!

>そこまでセクハラかまさない辺りも再現度高くて嬉しいです お褒めに与り光栄です
本田さんはリビドーがバトルに向かってるタイプと見た

短編の人乙ですー
これは貴族GJと言いたい

そしてルルルの人乙&ありがとうございますー
「黒いパピヨン」店主のせせりを素敵に書いて下さりありがとうございます!
多分彼女なら本当に本田さんが血塗れで転がり込んできてもそんなに驚かないよ!
しかしバトルシーンの本田さんの情報量はやはり圧巻
悔しい…でも、燃えちゃう!
ごちそうさまでしたー

>>695
せせりさんは描写的に大人の女性かなあと思ったらわりと少女で驚きました
そういうギャップがまたなかなか味かなあと
どちらかといえば女性向けの洋品店にふらりと立ち寄るお兄さん
なんておしゃれなシチュエーションだと思ったのであんな感じになりました
クロスありがとうございます
機械仕掛けのル・ル・ルシリーズはクロス相手を募集しています
ケミカルな殺し屋さんと心温まる交流をしたいそこの貴方はぜひともどうぞー


「じゃあ母さん、今日は帰るから」

「身体に気をつけるんだよ、お茶買いすぎちゃってたから持って行って」

「じゃあ一本もらおうかな。身体には気をつけるよ、来週また来るよ」

病室の白いドアを締める。
茜さす廊下をゆっくりと歩いて行く。
病院の外に出ると、通りすがりの子供が目の前で転んだ。
助け起こして傷口を貰ったペットボトルのお茶で洗って、それから手を当てる。
怪我した部分の周りの細胞を素材にして、とりあえず傷口を塞ぐ生体絆創膏を錬成する。
人体は有機物質の集合体に過ぎないのだからこの程度は簡単だ。
こうしておけば通常より早く、また安全に自己再生が起きる。

「大丈夫か?」

頭に手を当てて能力を使う。
人体の機能の一部も利用してエンドルフィンの合成を加速させる。

「…………うん」

子供は自分の身体に起こっていることが理解できずに曖昧に頷く。

「たっくん!」

遅れて母親が駆けてくる。

「たっくん大丈夫だった? 申し訳ありませんうちの子が迷惑を……」

「いえいえ、怪我も浅そうで何よりです
 たっくんって言うのかい? お母さんにあんまり心配かけちゃ駄目だぞ」

「はぁい……」

俺はその場をそそくさと立ち去る。

「あ、待って下さい!」

後ろから母親が俺を呼び止める。
そんな時、丁度良く目の前に車が停まる。

「すいません、これから少し用事が有りまして」

俺はすかさずその見慣れた車に飛び乗った。
運転席にはいつもの彼女。
今日は首からおしゃれなネックレスをぶら下げている。

「病院って……身体でもわるいんですか?」

「禁煙外来に行ってるのさ」

そう言いながら煙草に火をつけようとして、やめる。
煙草の匂いが車に染み付くのはあまりよろしくないだろうから。

「……嘘つき」

「悪かったね」

「お母さんは元気でしたか」

「ああ、まあなんとかね」

「もうこんな仕事辞めたらどうです?」

「そうなると、君に会えなくなるんじゃないかな」

マキちゃんは悲しげな顔をして俺を見る。
やめてくれ、俺はただ自分の性分にあった仕事をしているだけなのに。

「ところでそのおしゃれなネックレスは誰から貰ったんだい?」

「話をはぐらかさないで下さい」

「……今日は随分からむね」

「悪いですか、絡んで」

「理由くらいは教えてほしいな」

「私の担当する契約者の方って、こういう仕事をするだけ有って割合お金に困ってたり、事情が有ったりするんですよ」

「もしくは人殺しの好きなイカれた変態とかね」

「からかわないで下さい」

「悪い」

車は高速道路を進む。

「そういう人たちって辛い辛い言いながらも一生懸命仕事をするんです
 死のうが、転属が許されようが、この仕事から開放されるとすごい嬉しそうな顔をするんです
 でも貴方は違います
 それって単純に貴方が我慢しているだけなんじゃないかって私はすごく心配なんですよ」

「そんなこたあ無いよ。ただ俺は……俺はねえ」

俺は死にたくない。
でも、もっとギリギリの戦いをしたい。
普通なら敵わない強敵に、知恵と勇気を振り絞って戦ってみたい。
そんな状況にただ只管に焦がれているだけなのだ。

「じゃあ君に気持ちをぶつけても良いのかい?」

「え……?」

「冗談だよ。それより前に言っていた依頼はどうした?」

マキちゃんは俺に一枚の写真を取り出す。
その男の顔に俺は見覚えが有った。

「タコ妊娠の契約者です。元々組織に所属していたのですが逃走、凶悪犯罪者を男も女も片っ端から妊娠させてるとか」

「訳がわからないよ」

この仕事をやっていて辛いのはこういうガチなキチガイの相手をさせられるときだ。

「えぇと、何やら彼らは愛を学ぶべきだと主張しているそうな」

「解った。何一つ分からない」

「その言葉を聞いて安心しましたよ。依頼されたもの、今のうちに渡しておきますね」

「サンキュー」

マキちゃんは俺に一丁の拳銃を渡す。
俺はそれを受け取ってスーツの下のホルスターにしまう。

「撃ったことあるんですか?」

「親父とハワイで」

「誤射しないでくださいね」

「おいおい、これでも上手だったんだぞ」

「まあそういうことにしましょう。あと五分で予定のポイントまで着きます。対象が現在潜伏中の建物です。奴はこの中に拉致した凶悪犯を閉じ込めている模様です」

しばらくすると山奥の洋館の前に車が停まる。
車から降りてトランクからRPG7を取り出し、洋館に向けてぶっぱなした。
派手に砕け散る洋館。
すぐに中から男が慌てて飛び出してくる。

「貴様! い、い、一体何を……」

気が動転している男に胸元から取り出した拳銃から弾丸を数発叩きこむ。

「人の話を聞け!」

撃たれながらも男は元気そうだ。弾丸を柔らかい体で受け止めたらしい。

「うわっ、死なねえのか。やっぱり化け物だな」

「まさかお前、組織の……」

まあ組織の殺し屋だが名乗る訳にはいかない。
返事代わりにありったけの弾丸を放り込む。
弾倉が空になったらホルスターに閉まって男の目を見つめる。
男の身体はすぐに動かなくなり、何やらわけのわからないことを喚きながら地面に頭を打ち付け始める。
しばらくすると男は動かなくなり、周囲に静寂が訪れる。

「終わりましたか?」

マキちゃんが車から顔を出す。

「来るな!」

俺がそう叫んだ次の瞬間、男の遺骸の中からタコのような気持ち悪い生き物が現れて俺に向けて飛びかかってくる。
紙一重で俺は飛んできたそれを躱すが、そいつはアホ面ぶら下げたマキちゃんに向けてそのまま襲い掛かる。
少女の悲鳴。
マキちゃんの顔にタコが張り付いている。

「くっくっく、驚いただろう!」

タコの頭に人の顔が浮かぶ。

「これが本当のタコ妊娠
 この都市伝説の能力の秘奥とは……俺自身が妊娠することだ
 予想もつかなかっただろう!」

はい、すごいきもいです。
でもその能力については予想がついていました。

「本田さん! 助けて……」

「おぉっと動くなよ本田とやら! お前が下手なことをすればこいつもママになってもらうぜ!」

セリフが一々卑猥なのはもう突っ込むまい。

「待て、少し話をしよう」

「話? 貴様とする話などない! 貴様を孕ませてから次はこの女だああああああ!」

そう叫びながらタコ人間は人の顔の部分から派手に喀血する。
マキちゃんはとっさにタコを振り払って地面に叩きつける。

「な、なんだこれは……身体がおかしい
 ええい、次の身体に……」

タコ人間の身体から新しいタコ人間が生まれる。
だがそいつの身体もまた、明らかにおかしい。
足の数は欠け、色も真っ白だ。

「な、なんだこれは……!」

劣化ウラン弾だ。
微量な放射性しか持たないが、それでも身体の小さな胎児には深刻な致命傷となっただろう。
しかもあれだけの速度で細胞の分裂などを行なっていたのだから、そのぶん傷ついた遺伝子も滅茶苦茶に複製された筈。

「呪いだよ、俺の瞳からは逃れられない」

そう、これはいわば人の生み出した呪いだ。
そして俺に狙われて生き残った者も居ない。
嘘は吐いてない。
マキちゃんの運転する車がゆっくりとタコ人間を踏み潰す。

「俺の仕事とるなよ」

そう言いながら車に乗り込み、とりあえず彼女のベトベトになってた顔を拭いてあげた。
さすがのマキちゃんもちょっと泣きそうになってた。可愛い。





というわけで名前欄間違えたけど今回の話も終わり
せっかく考えた弱点を描写するチャンスがねえ
する時は負ける時なんじゃねえの?ってのは無しで

乙でした!

同一シーンを複数の作者が違う視点から描写する
クロス系の醍醐味ですな!
幻ちゃんも本田さんも互いに普段みれない一面を見れてよかったです

短編さん
この世界観なら貴族とかの古臭い血のひとたちが今も政治の実権を握ってたりしそう

男を……に、妊娠……? だと……? き、器官はどこを使うのでしょうか!!??(迫真)

  ┏━━━━ふっかつのじゅもんを いれてください ━━━━┓
  ┃                                   ┃
  ┃                                   ┃
  ┃http://www29.atwiki.jp/legends/pages/4797.htmlのつづき┃
  ┃                                   ┃
  ┃                                   ┃
  ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 始まりは早かった。
 全くの偶然。たまたま出会った江良井と錨野。
 顔を合わせた瞬間に、それが当たり前であり至極当然ともいうように、お互いに場所も時間も指定したわけでもなく――始まった。
 走り出したのは両者とも同じタイミング。
 勢いを殺さずにそのままぶつかりあう両者。
 二度、三度、四度。肉が肉を打つ音が聞こえ、五度目の音が鳴ってからようやく距離を取るふたり。

「さすが江良井くんだ。あの頃よりも強い」
「……お前もな」
「やれること考えられること全てやった結果さ。『ゲーム脳』奪還に敗れたままで終わるのを由とするほど諦めがいいわけではない。
 いつか、君に会うため、君と戦うため、君を[ピーーー]ため、君を見下ろすため、君に勝つために鍛えたのさ」
「俺ごときのためによくもそこまで無駄な労力をかけることだ」
「君だからこそ、ぼくがこれだけの労力をかけるのさ」

 離れた距離を一足でゼロにし、打ち込む掌底。
 反射的に出した手から伝わる衝撃を感じるや否や衝撃が向かう方向へと身体を流す。
 掌底のダメージは逃がした。だが、わずかに遅れて放たれていた蹴りが錨野の右肩を強く打った。
 賞賛すべきはあえて遅らせた攻撃を放った江良井ではなく、攻撃を受けても眉ひとつ動かさずに反撃を試みた錨野の方であろう。今の江良井の攻撃を食らえば下手な都市伝説であれば再起不能になっていたはずだ。
 都市伝説の力で強化された江良井同様、錨野もまた都市伝説の力で何らかの強化をされているのだろうか。

「〈地獄の帝王〉は呼ばないのかい?」
「お前の敵は俺だ。奴の力を借りる必要はない」
「へえ、ぼくはてっきり呼べないのかと思ってたよ。
 呼べば呼ぶほど寿命を縮める都市伝説――君が己に課した制約は都市伝説の力を十全に使うためではなく、君への身体の負担を減らすためのものだろう?」
「……」
「君の心の器――常人よりも少ないからこそ、常人よりも小さいからこそ、制約を課しているんだろう? 都市伝説に飲まれないために」

 数多の拳を放ち、防ぎながら錨野は笑う。
 江良井は何も答えない。

「あの当時、君の制約は拡大解釈をするために必要なのかと思っていた。雁字搦めに縛りつけ、より強固な力を出せるようにとね。
 君を知る多くの人間は〈組織〉の連中も含めてそう思ってるはずだ。でもね、制約をつけることで契約者の負担も減ることを知ったのさ。
 ぼくの都市伝説の場合はそれほどでもないが、君のような次々と新作が出る類のゲーム系都市伝説なら常に最新版も取り入れなければならないだろう?」
「取り入れる必要はないがな」
「だが君は取り入れている。常に最新版にバージョンアップしている。ナンバリング、外伝問わずに新作が出る度に、だ。
 常人なら、もしくはぼくらなら平気かもしれない。制約をつけざるを得ないにしろ、そこまで強固な――死を絡めるような制約は必要ではないのかもしれない。
 この『学校町』には多重契約者がごまんといるそうだ。彼らなら余裕だろう。何事もなく、君のようにひとつの都市伝説で多くの能力が使えるだろう。
 生命力や寿命を削らずに、心の器にヒビひとつ入れることすらなく、特化した能力をね」
「……」
「さて、君はどうだい? エスタークの契約者、江良井卓くん。エスタークを呼び出す度に君の寿命は――生命は、削られていってるんじゃないのか?」

 一、召喚前に二十面体ダイスを投げ、出た目を「ターン数」として敵に宣言
 一、上記の行動を行なわない場合、契約は強制解除
 一、×ターン以内に斃された場合、契約は強制解除
 一、契約が強制解除された場合、契約者は死亡

 彼がエスタークを呼ぶ際にかけた制約。
 自らの生命を賭けることで「飲まれる」ことを防いでいる。
 ただ、これはあくまでも都市伝説を使う際の制約であり、拡大解釈のものとは違う。
 一般的な契約者はエスタークを召喚する――契約者にとって当たり前のたったそれだけのことだが、江良井にとっては制約が必要なのだ。

 一、ゲーム中で捨てられない物は使用不可
 一、同一の道具装備の複数所持は不可
 一、攻撃系の呪文特技は最大で三メートルの範囲内限定
 一、回復系の呪文特技は最大で一メートルの範囲内限定
 一、補助系の呪文特技は最大で二メートルの範囲内限定

 江良井が拡大解釈をした場合、召喚時ほど制限はないが制約が存在する。
 契約者が都市伝説の能力を使用する場合、多くは拡大解釈という形を取る。
 程度の差はあるが、多くの契約者は拡大解釈の時に身体への負担は少ない。――ただ、江良井卓は数少ない悪い意味での例外であった。
 都市伝説の能力を使用するだけで限界を超えている江良井には当然のごとく拡大解釈の場合でも制約が必要になった。
 唯一の救いは都市伝説の使用であるエスタークの召喚に際して生命をかけた制約をかけたおかげで拡大解釈にはそこまで強固な制約は必要なかったことだ。

「君が能力を使用するのは一対多の時くらいかと思うんだがどうかな? ま、君なら数人相手にひとりで戦いそうな気もするけど」
「……この状況は一対一だ」
「その通り、君が都市伝説にかける制約の意味を解説したからといってどうということはない。――でもね」

 錨野が両掌を合わせる。拝むように。

「以前、君との戦いで制約というものを知ったからこそ、ぼくは知れた。ぼくにもできる、とね」

 合わせた掌をゆっくりと開いていく。
 その中心にくるくると回転しながら板状の何かが現れた。
 鉛色に鈍い輝きを放つそれは、江良井にとっては見慣れたものであり、かつて苦戦したものであった。

「バキュラか……」
「ご名答」

 かつてのシューティングゲームで敵キャラとして登場する『バキュラは256発撃ち込むと撃破できる』と噂が流れた。
 縦回転を繰り返し直進する敵キャラはどう足掻いても破壊不可能ではあるのだが、二百五十五発を越える二百五十六発目を撃ち込めば破壊できるとの噂である。
 当時発刊されていた雑誌にも記載されていたために全国的に広まり、挑戦する者が後を絶たなかった。
 公式で否定されるのみならず、インターネット上に実際に挑戦した人々の動画も数多く出回り、実際に不可能との認識は広まってはいるのだが、ゲーム系の都市伝説として広く流布している。
 二百五十六発撃ち込むと撃破できるとは、二百五十五発撃ち込まれても大丈夫ということ。

「前は出して飛ばすだけだった。でも、君の制約を知ったおかげで様々なバリエーションを生み出すことができた」

 合わさっていた掌が離れるにつれ、バキュラも大きくなり回転も激しさを増す。
 肩幅よりも広く開かれた掌の中で回転するそれは、錨野が軽く押し出すと回転をしながら宙に浮いた。

「大きさも自由自在。こんな風に連続で出すことも」

 ぱん、と掌を閉じて軽く開くと大きさの異なるバキュラが最初に出されたものと同じように宙に浮かび、その回転が止まることはない。
 錨野が手を叩くたびに次々にバキュラが形成されていく。
 数はわずか十前後だが、ひとつひとつの大きさが大きく、江良井の姿がほぼ隠れてしまう。

「勿論、射出も速度も自由自在さ!」

 くるくると回転しつつ高速で飛来するバキュラに、江良井はわずかに後方に下がり、助走をつけて走り出す。
 バキュラと地面のわずかな隙間を滑り込むように疾走。

「甘い!」

 その程度のことは当たり前とでもいうように、江良井の疾走にあわせてバキュラを隙間に飛ばす。

「――メラ」

 指先から放たれた火炎の弾丸がバキュラに命中するも飛散する。
 その都市伝説通りだとすると、二百五十六発を撃ち込まねば砕くことはできない。
 新作が出るたびに増える呪文や特技。全てのシリーズを紐解いても二百五十六発を打ち出す特技は存在しない。

「何だ?」

 錨野の位置からは無数のバキュラに隠れてしまい見えないが、江良井の放った火炎の弾丸がバキュラに当たり飛散したことは江良井の唱えた呪文とわずかに散った炎とバキュラに当たった衝撃音で想像がつく。
 だが、一度撃たれて散った炎はすぐに消える。音も一度きりのはずだ。
 それがどうして二度も三度も――否、それ以上に聞こえてくる?

「江良井くん、何をしている?」

 江良井は答えない。
 ただ、放たれては飛散する火炎の揺らめきと衝撃音が答えるのみだ。
 江良井の放つ魔法はゲームの通り、「呪文を唱える」という行為なしでは決して発動しない――はずだ。
 連続で唱えることはできるかもしれない。だが、それもそう長く続くはずがない。都市伝説で強化された心肺機能があったとしてもだ。

「何をしている!」

 ぱん、と掌を強く叩くと火炎が撃ち込まれているバキュラを除き、無数のバキュラが消えた。
 江良井の指先からは炎の弾が絶え間なく撃ち出されている。
 小声で唱えている様子も新たな能力を使っている様子もない。
 二百五十六発撃ち込まれたのだろう、残っていたバキュラが消滅して初めて江良井は右手を下ろした。

「……何をした?」
「使う、エルフの飲み薬」

 きらきらと身体が光り、呪文によって失われた魔法力の補充が終えた江良井は懐からひとつの機器――mp3プレイヤーを取り出した。

「まさか……」
「そのまさかだ」

 パソコンに自らの声――呪文を取り込み、呪文と呪文のわずかな空白を消す作業を行なった上でリピート再生。
 もしかしたら二百五十六発分、呪文を繋げたのかもしれない。
 声は江良井のもの。使う魔翌力も江良井のもの。魔法が発動しない道理はない。

「お前と対するにあたって、一番の難関はバキュラだった。知っての通り、苦汁を舐めさせられたもんだ」

 だから用意した。
 錨野蝶助が敵対した日に。

「そんな破り方が……?」

 錨野からしてみればわずかな間。
 しかし、江良井にしてみればその間は隙以外の何物でもなかった。
 まさに一瞬で間合いを詰め、がら空きの胸元に一撃。

「……くっ……」

 わずかに後方へそれたおかげで致命傷とはならなかったが、次の行動に反応できる余裕はない。
 それを見逃すほど江良井も甘くはなかった。
 次々に打ち込まれる連撃。
 骨は折られ、肉が抉られる。
 錨野が死を覚悟した瞬間、江良井の追撃が止まった。

「……?」

 かつて、錨野は江良井に言った。
 敵と認識した時点で、老若男女問わず言葉通り赤子でも長年付き合ってきた無二の親友でもこの世にたったひとりの親兄弟でも一切躊躇せず懊悩せず顔色ひとつ変えずに殺せる、と。
 とどめを刺すのに躊躇うはずもない。はっきりと敵対宣言をした以上なおさらだ。
 無論、江良井もとどめを刺すつもりだったし仮に錨野が土下座をしても殺していただろう。
 江良井の視線は錨野を越え、背後に注がれていた。
 錨野の背後――そこには土管が生えていた。

「イイイイイイイイヤヤヤヤッフウウウウウウウウウ!!」

 何の前触れもなく突如生えてきた土管。
 奇声と共に現れたのは――否、飛び出てきたのは。

「イツミー! メールィオオゥ!! マンマミーヤ! イヤッハー!」

 ――バカだった。


避難所にはたまに顔出してましたが。
初めての人はじめまして、お久しぶりの人おひさしぶりです。
前回からどれだけ経ったんだろう?

時間が経ったことには反省。
内容には反省も後悔もしない。
そんなわけで続きでした。

>>701
クロスの何が良いって相手方の作品を丹念に読むことになるってことですよ
色々先方の作品を読み込んでさりげない工夫とか描写に「おお」とか「ああ!」ってなったりできるのが素敵です

男を妊娠させるだなんてそんなのやおい穴作るに決まってるじゃないですか
この世界の住人はきっとやおい穴を標準搭載ですよ
嘘ですごめんなさい言ってみただけです
なんかそういうこと言ってみたくなる時ってあるじゃあないですか
というわけでクロス相手まだまだ募集中です
許可が出たら即座に暗殺者が乗り込みます――――――って書くと物騒だ

>>702->>706
乙でした
しっかりとした文章に、読みこまされるテンポの良さ
グイグイ引きこまれていきます
電子機器を使った多重詠唱とかそういうネタが本当に大好きなのでニヤニヤしてしまいました
そんな感じで引きこまれていたところでマンマ・ミーアだったので続きがまた気になってしまいます
次の更新をお待ちしております

乙です!
緊迫した空気の中でこのwwwwwwマリオwwwwwwww
この一旦ぶっとんじゃった空気、いったいこの後どうなるんだろうか……


「時間がない、時間がない、時間がない、jkn ¥^o^¥ アババッバババ」

「いっちゃーん、山崎ロールおごってー」

「黙れ環希! 俺は忙しいんだ!!!」

「いっちゃーん、エルチキおごってー」

「黙れ遠藤!! あと気安くいっちゃんゆーな!!! キモいんだよ[ピーーー]!!!!」

「そんな事よりよ、お前、俺の黒タイツJK2知らねぇ?」

「しっ…知らん、知らんぞそんなの!」

「黒タイツJK? 2ってなに?」

「知らん、知らんからな! 俺は何も知らん!!」

「えー、ほんとは知ってるんでしょー? 教えてよー、ねえねえ」(グイグイ

「知らんってば…! おい遠藤!! 自分だけ避難してにやついてんじゃねぇ[ピーーー]ぞ!!」




 今週中に書くのは無理だったよ… アヘッ ¥^θ^¥ アヘッ

>>696
>どちらかといえば女性向けの洋品店にふらりと立ち寄るお兄さん
>なんておしゃれなシチュエーションだと思ったのであんな感じになりました
本田さんのような渋い殿方が常連になって下さいますと店が華やぎます
何が言いたいかというと、せせりと共闘という名目でまたお借りするかもよ!ということでございます

>クロスありがとうございます
こちらこそ、どうもありがとうございましたー

というわけで>>697-699乙でしたー
マキちゃんと本田さんのビジネス以上友情未満な関係良いね!マキちゃんみたいな優しい子に迫られたら堕ちちゃう!

>>702-706
葬儀屋の人お久しぶりですー
緊迫した戦いの筈がwwwwww
このマリオ、敵か味方か気になるぜ!

>>710
がんばれーがんばれー
時間本当に足りないよねー
>>711
店が華やぐってなんか違うwwwwww
そして本田は普段世話になっている相手ならわりと躊躇いなく助けるのでわりとさくさく出していただいて構いません
まあ自分の能力のことについては意図的に歪めた説明を行う可能性が高いですけど


 特に仕事のない日は昼間からダーツバーに入り浸るのが俺の習慣だ。
 黒いパピヨンという洋品店でのショッピングや、ピエロ印のバーガーレストランでのグルメも悪くないがやはりここが一番心が落ち着くのだ。
 前回の仕事から数日後、オフを満喫していた俺の目の前にマキちゃんが現れた。
 今日は私服らしく、普段の黒いスーツと対照的にピンクやホワイトをあしらった女性らしくてポップな服装である。
 ダーツバーには不似合いだが、それを気にする客もこの時間には居ない。
 彼女は俺の使っていたテーブルに座る。

「この前のタコ妊娠の被害者はどうなったんだ?」

 世間話程度のつもりで彼女にそう尋ねた。
 俺の投げたダーツが的に刺さる。

「さあ? 恐らくは『コーラで洗えば大丈夫』と『コーラは骨を溶かす』の多重契約者辺りが処理したのではないかと」

 乾いた口をバーボンで濡らし、次のダーツを的に投げつける。

「ふむ、そんな契約者が組織に居たのか」

 我ながら上手く刺さった。満足だ。

「さあ? 案外今時流行りのアウトソーシングって奴かもしれません」

「ふむふむ、しかし良いのか?」

 近くの椅子に腰掛ける。
 マキちゃんもそれに合わせて腰掛けた。

「何がです?」

「胎児をサンプルとして保存しなくて良いのかって聞いてるんだ
 偶に居るらしいじゃないか、そういう存在に興味を示す研究者が」

 マキちゃんは頬をひきつらせる。
 彼女が頭を手で抑えた後に錠剤のような物を口に含んだので、チェイサーにしようと思っていた水を差し出してやると、彼女はそれを一気に飲み干した。

「……あのですね」

「からかって悪かった」

「分かってるならいいんです。でもわかってるなら私に頭痛薬を飲ませないで下さい」

「済まないね、次からはなるべく注意するよ」

「偉いですね本田さん、お姉さんはとってもうれしいです」

「あんた幾つだ」

「レディーに年を聞くもんじゃないですよ」

「おやおや、ガールに歳を聞いちゃいけないのか」

「子供扱いしないで下さい」

「オーケー、少なくとも難なくレーザーディスク使いこなしてたから俺よりは年上だもんな」

 マキちゃんの瞳がこちらを睨む。

「…………おい」

 地獄よりなお深い場所から搾り出される声。
 俺はおもわず腰を抜かした。
 そのままわずかに後退り、頭を深く下ろした。
 要するに怖かったのだ。

致命的なミスを発見した為、修正作業を行います

修正完了再投稿

 特に仕事のない日は昼間からダーツバーに入り浸るのが俺の習慣だ。
 黒いパピヨンという洋品店でのショッピングや、ピエロ印のバーガーレストランでのグルメも悪くないがやはりここが一番心が落ち着くのだ。
 前回の仕事から数日後、オフを満喫していた俺の目の前にマキちゃんが現れた。
 今日は私服らしく、普段の黒いスーツと対照的にピンクやホワイトをあしらった女性らしくてポップな服装である。
 ダーツバーには不似合いだが、それを気にする客もこの時間には居ない。
 彼女は俺の使っていたテーブルに座る。

「この前のタコ妊娠の被害者はどうなったんだ?」

 世間話程度のつもりで彼女にそう尋ねた。
 俺の投げたダーツが的に刺さる。

「さあ? 恐らくは『コーラで洗えば大丈夫』と『コーラは骨を溶かす』の多重契約者辺りが処理したのではないかと」

 乾いた口をバーボンで濡らし、次のダーツを的に投げつける。

「ふむ、そんな契約者が組織に居たのか」

 我ながら上手く刺さった。満足だ。

「さあ? 案外今時流行りのアウトソーシングって奴かもしれません」

「ふむふむ、しかし良いのか?」

 近くの椅子に腰掛ける。
 マキちゃんもそれに合わせて腰掛けた。

「何がです?」

「胎児をサンプルとして保存しなくて良いのかって聞いてるんだ
 偶に居るらしいじゃないか、そういう存在に興味を示す研究者が」

 マキちゃんは気まずそうに頬をひきつらせる。
 彼女が頭を手で抑えた後に錠剤のような物を口に含んだので、チェイサーにしようと思っていた水を差し出してやると、彼女はそれを一気に飲み干した。

「……あのですね」

「からかって悪かった」

「分かってるならいいんです。でもわかってるなら僕に頭痛薬を飲ませないで下さい」

「済まないね、次からはなるべく注意するよ」

「偉いですね本田さん、お姉さんはとってもうれしいです」

「あんた幾つだ」

「レディーに年を聞くもんじゃないですよ」

「おやおや、ガールに歳を聞いちゃいけないのか」

「子供扱いしないで下さい」

「オーケー、少なくとも難なくレーザーディスク使いこなしてたから俺よりは年上だもんな」

 マキちゃんの瞳がこちらを睨む。

「…………おい」

 地獄よりなお深い場所から搾り出される声。
 俺はおもわず腰を抜かした。
 そのままわずかに後退り、頭を深く下ろした。
 要するに怖かったのだ。

「申し訳ございませんでした」

 ここのマスターが言っていた。
 女の子相手にはとりあえず謝っておくと面倒が少ないと。

「面をあげよ」

 おずおずと面を上げるとそこでは菩薩のように微笑む少女の顔があった。

「オフの日に何故私が貴方に会いに来たか分かりますか?」

「友だちが居ないからだろ?」

「えっ…………」

 気まずい沈黙。
 え、あれ、もしかして図星だったのか。
 やばい、マキちゃん涙流しながらプルプルしてる。

「や、や、やだなあ僕だって茶飲み友達くらい居ますよ
 別に僕は特別仕事熱心だから担当契約者の様子を見に来ていただけであって特に予定がなかったから普段から貴方が居そうな場所を巡っていただけですし
 そう、本当の本当に心配だったってだけなんですからね?」

 ここのマスターが言っていた。
 できる大人は失敗しない大人ではなく自分の失敗をカバーできる大人である。

「解った。どうやら俺はお前に心配かけっぱなしの駄目な男らしい
 迷惑かけているお詫びに一杯奢るよ
 マスター、彼女にダイキリの甘くした奴を」

 店の奥で静かに新聞を眺めていたマスターに一声かける。
 彼の名前は柊賢。物静かな老人で、こちらにあまり干渉してこないのが良いところだ。
 そして、何も言わずとも俺の飲みたいものを出してくれるのもまた彼の素敵なところである。

「マキちゃん。俺は君の茶飲み友達の代わりにはなれないが、酒飲み友達くらいにならなれるかもしれない」

「……わざわざ甘いのを頼む辺りやっぱり子供扱いしてるじゃないですか」

「おいおい、甘い奴のほうが美味いんだぜ。マスター、俺の分の普通のダイキリも頼むよ」

 注文してすぐにカクテルが二つ運ばれてきた。

「こちらが甘い方になっています」

 甘い方をマキちゃんに差し出す。

「そしてこちらが普通のダイキリです」

 俺には普通のダイキリを差し出す。
 
「ありがとうございます。さてマキちゃん、乾杯とでもいこうか?」

 マキちゃんは俺のグラスをじっと見ている。
 俺は自分のグラスをじっと見る。

「……交換するか?」

「べ、べつに甘い奴にされたからって文句言ったりはしませんよ」

 面倒くさい奴である。

「俺の気分が変わってな、甘いのが飲みたくなった」

「やれやれわがままですね、じゃあ替えてあげますよ」

 俺とマキちゃんはグラスを交換する。
 二人で軽く乾杯した後、グラスに口をつける。

「甘くて爽やかで美味しいですね。これなら甘くしなくても良かったじゃないですか
 それにアルコールっぽいのって好きじゃなかったですけどこれならすっきりしてて飲みやすいです」

「それは重畳」

 カクテルのアルコールを合成して糖分にしたのだから当たり前だ。
 錬金術のちょっとした応用である。

「まだ日も高い、街は静かだし、この後何処かに遊びに行かないか?」

「良いんですか?」

「まあ偶には付き合ってやるさ。どこに行く?」

「そうですね、貴方とだったら……」

 こうやって休日は何事も無く時間は過ぎていく。
 でも、そんな日が有るというのも悪くない。
 俺はそう思うのだ。

暗殺者の休日
わりと優雅な日々を過ごしています
ダーツとか拳銃射撃とかは趣味だから多分長期休暇はハワイかどこかで拳銃をパンパカパンパカ撃ってる

乙です
一人称にこだわる! そんな姿に痺れて憧れます!
意外にノーブルな生活してるよこの暗殺者!
暮らし向きはいいんだな

ルルルの人乙ですー
本田さん洗練された生活してますなあ渋いなあ
そしてマキちゃんに対する心配りが憎い。渋い

「なぁ、金貸してくんねえ?」
 そう言っている目の前のヤンキーに、金を返す気なんてさらさら無い事はわかっていたから、もちろん従う気はなかった。
 とはいえ、彼は喧嘩に弱い。真っ向から殴り合ったら、多分秒殺されるだろう。
「君、僕の存在を認識したね?」
 言うやいなや彼の姿が消え、次の瞬間ヤンキーの背後に現れた。
「なっ!何時の間に」
 ヤンキーが怯んだ隙にダッシュで駆け出す。何度も言うようだが、彼は喧嘩に弱い。背後を取ったからといって下手に反撃に出てはかえってこの状況から逃れるチャンスを失ってしまう。
 彼の名は木島現(きじま うつつ)。
「最近、物騒だよなあ」
 質の悪い人間もそうだが、このところ都市伝説に絡まれる事も増えたような気がする。いつも無事に逃げおおせてはいるが、いつまでも好運も続くわけではないだろう。
「本格的に都市伝説を使った兵器でも研究してみようかなー。それかリフレクターの開発を急がなくちゃ」
 独り言を言っている間にも新たに都市伝説が現れる。
「注射は・・・あれ?」
「さよーならー」
 声を掛けてきた注射男もさっくり無視して背後を取り、そのまま逃げ出す。次の角を曲がればもう自宅兼研究室のマンションだ。

 どしんっ
「!!」
「いっ・・・!」

 角を曲がった途端、何かにぶつかってひっくり返った。倒れた拍子に眼鏡が弾き飛ばされる。
「いたたた」
 幸い大したダメージはなくて、直ぐに体を起こすことが出来たが。
「あれ?眼鏡、眼鏡どこだろ?」
「ここ」
 涼やかな声が響いて、現の見える距離まで眼鏡が差し出される。色白のほっそりした、小さな手だ。
「あ、ありがと・・・あれ!?」
 眼鏡を差し出した相手を確認して、現はびっくりした。
 腰まで届く癖のない黒髪。ぱっちりしたセピア色の瞳と、それを縁取る長い睫毛。見たところ10代半ば。
 ふんわり広がる姫袖の白いブラウスに、前見頃に幾つものリボンが並び、花弁の様に縁取られたスカートの裾から更にアンダースカートが覗いた黒いジャンパースカート。
 左の袖口からちらちら覗く包帯と、右目を隠す包帯が痛々しくも可憐なアクセサリーのよう。
(うわー、ゴスロリだ)
 だが現が驚いたのは彼女の容姿でも服装でもなく。
「・・・や、薮野さん?」

 彼女は現の通う高校に来た転校生、薮野鈴々花(やぶの りりか)。見た目は愛らしく、頭脳明晰でもあるようだが。
「怖いんだよなー、この子」
「聞こえてる」
 笑わない、最低限しか話さない、喋り方が紋切り調。
 愛想がまるっきりない上に、何時も左腕と右目を包帯で隠している彼女はどこか気味悪がられていて、非リア充極まりない高校ライフをマイペースに満喫している・・・ようだ。
「あ、あのところで、薮野さん、そんな格好でどうしたの」
「私服」
「はぁ、私服」
「可笑しい?」
「あぁいっいや!あの、家、近いの?」
 彼女はすっと現の住むマンションを指さし
「ここに住んでる」
 しばしの沈黙が二人を包み。
「ぅええええ!?」
(どうしよう僕!?可愛い転校生と曲がり角でぶつかってしかも住んでるマンションが同じとか何のフラグ!?でもこの子とのフラグってかえって怖い!)
 期待半分、恐怖半分の現の耳に次に届いた声は、涼やかな少女の声ではなかった。
「注射させろおおおおお!!」
 砂煙をけたてる勢いで迫ってくるのは、先程かわした注射男。
「!」
「わ、まだ追ってくる」
 注射男が注射器を構える。中身は毒物。
(三十六計、逃げるに如かず!)
「薮野さんも逃げて!」
 言うが早いか、注射男の背後にぱっと現れ、そのまま逃げようとしたが、つい気になって振り返ってしまった。
 薮野鈴々花は未だ動かない。
「や、薮野さん!」
「注射ああああ!」
「!」

 ぱきんっ

 目の前の光景に、現は目を疑った。
 鈴々花のハイキックが、注射男が振り上げた注射器を蹴り割っていた。
「ふん」
 注射男をどこか小馬鹿にしたように笑い飛ばし、今度は鈴々花がどこからともなく注射器を取り出した。
「同族の面汚し」
 もう一発、注射男の鳩尾にミドルキックを入れ、うずくまった所を首筋に注射する。
 注射男はみるみるその顔が赤く染まり、暫く喉をかきむしると、光となって四散していった。
「薮野さん、強い・・・ていうか・・・同族?」

「へー、それじゃ鈴々花さん、人間と都市伝説のハーフなの」
「両親は都市伝説と人間のハーフ同士。父さんは注射男と人間のハーフで、母さんは『ウェパル』と人間のハーフ」
「へー。興味深いね」
「都市伝説とのハーフだから、少なからぬ疎外されてた。傷の舐めあいから恋愛に発展したって。私には理解できない」

「僕が理解させてあげるよ!」
「A定食が?」
「A定食って。なんでそれ知ってるの」
 数日前、弁当を持ったまま派手にすっ転び、ご飯は死守したもののおかずを頭から被る破目に陥った現についたあだ名が「A定食」
 まあそのうち廃れるだろうとは思っていたが、まさか彼女の耳にまで入っているとは。
「僕はA定食ではありません!木島現という何の変哲もない、たった今貴女に惚れた『きじまさん』の契約者です!という訳で、僕と付き合って下さい!」
「いや」
「じゃあお友達から!」
 食い下がりながらマンションのエントランスに入ろうとすると。
「わっ!」
 鈴々花に気を取られて居たからか、階段で蹴つまづいて派手に転倒してしまう。
「痛った!」
「見せてみて。・・・大したこと無い。捻挫以下。そんなに痛いならひと思いにモルヒネ打つけど」
「いきなしモルヒネはダメやめて!普通の鎮痛剤を!」
 鈴々花の手に注射器が現れ、足首に針が刺さる。
「・・・治った」
「なんなら、患者と主治医ぐらいからなら初めてあげてもいい」
「それって、友達より親密なんじゃない?友達以上恋人未満かー。それもいいねー」
「私専用の検体になってくれるなら。ところでさっき同族の背後を取ったの都市伝説?」
「『きじまさん』の力だよ。『自分の存在を認識した者の背後に現れる』事ができるんだ。『きじまさん』が話を聞いた人の所に現れるようにね」
都市伝説「きじまさん」の力を使い
『自分の存在を認識した者の背後に現れる』
 彼はこれまで、自らの能力でなにを成し遂げるつもりがあるわけでもなかった。これからもない。
「あーあ。僕は平穏が好きなのにな」
 まあ、恋愛も充分非日常だし、まぁ、いっか。
 そんな事を考えながら、ちょうど降りてきたエレベーターに二人で乗り込んだ。
「鈴々花さんち、何号室?」
「1012」
「よろしくお願いします、お隣さん」



END

>>720
一人称は日本語でお話書くときの重要なポイントですからねえ
僕と俺と私とで与える印象も何もかも違ってくるしこれを無視して話は語れないと思ったわけですよ
汚れ仕事やってる分金はきっと貰ってます
まあそれだけじゃなくて何か副業でもやってるんじゃあないかとも思うんですがそんな都合の良い副業が有るのかと
錬金術は金作れる程の大規模行使はできないし謎いんですよね
貴重な資格系の何かをやってたりコネが有るのかもしれません
マキちゃんは元々半ひきこもり気味だったり、汚れ仕事担当の黒服自体があまり美味しくないポジション設定なので金欠気味ですねえ
要領良いやつだと上手いこと金稼ぐんですがまあそんなの出来ない子ですし

>>721
渋い兄さんキャラっていいと思ったんですよ、ありがとうございます
人間的に破綻しているからこそ、人間の冷静な観察ができるって感じですかねえ
戦闘でもない普段の時から観察結果を活かせる程度には人間性が残ってるから契約者としては準一流程度
あと人間見なきゃいけないお仕事なので意外と気が利くかもなあと
一見黒服と見間違えるようなダークスーツを着てバー行ったりダーツ投げたりしてるのをイメージして一人でニヤニヤです
きっとマイケルジャクソンとかクイーンとかが好きで、家にはアンディ・ウォーホルの絵が飾ってあります。

>>722->>724
きじまさんの人乙でした
恐らく研究者系のキャラなのでしょうね
戦闘能力が無い感じの主人公もまた良いものです
自分はどうもPC1で殴り合うかPC5でニヒルに決めるかしたくなるので非戦闘系が書けなくなってしまいますので、こういうのを書けるのは羨ましいです。
リリカさんが生まれの複雑さ的に色々物語が展開していきそうで面白いですね。
キャラクターも固い感じですから貫くにしても変わるにしてももうきっちり立ったキャラなので色々おいしそうです

ところで今更気づいたけど避難所の方の本スレにシュートできないスレに
エロスに満ちたきじまさんの人の作品が上がってたんですね
あのお題を見た瞬間暗いノリでダークで鬱で気が滅入るような話を思いついていた私としては
自らの穢れを再確認させられてヴぁあああああでした
おつでした

月光の照らすオフィス街。
時間から忘れられたみたいに静かなその街を一人歩く影。
とびきりのオシャレをした背の高い女性が一人。
彼女は静かに列を為すタクシーの一つに乗り込む。

「どちらまで?」

「ちょっと外苑前駅まで」

「待ち合わせで?」

「ええ」

「ドア閉めますね」

バタリとドアが閉まる。

「不景気で困りますね」

タクシーは静かに夜の街を走る。
空いている道をスイスイと駆けていく。

「まあ私みたいなOLとしても正直困るんですよ
 入社したての頃は晩御飯奢ってもらえることも多かったんですけどね」

「あぁー、そうなんですか

「はい、今の彼もデートを割り勘にするんですよぉ?
 本当に信じられない」

「人の心も財布も寒くなったもんですね」

外苑前がゆっくりと近づいていく。
タクシーは駅の前でスピードを緩めること無くそこを通り過ぎる。

「あれ、ここですよ?」

女性は咎めるような声をあげる。

「ええ、そうですね」

運転手は邪悪な笑みを浮かべる。

「ところでお客さん、『臓器盗難タクシー』って知っているかい?
 この国のおとなりで流行り始めた都市伝説なんだが……っ!?」

彼は振り返って驚く。
そこには誰もいない。
彼は車を停めて辺りをキョロキョロと見回す。

「そんな……一体何処に?」

彼の頭上には青山霊園が近くにあることを示す看板が立てられている。
しかしそんなことには気づかずに、彼はまたタクシーに乗って被害者を求めどこかへと向かうのであった。

>>725
>きっとマイケルジャクソンとかクイーンとかが好きで、家にはアンディ・ウォーホルの絵が飾ってあります。
なぜかウイスキー傾けながらスリラーとかまったり聴いてる本田さんが思い浮かんだんだぜ!

>戦闘能力が無い感じの主人公もまた良いものです
主人公は科学系のマッドさん、ヒロインは医療系のマッドさんという布陣を敷きたくて!

>自分はどうもPC1で殴り合うかPC5でニヒルに決めるかしたくなるので非戦闘系が書けなくなってしまいますので、こういうのを書けるのは羨ましいです。
むしろしょぼいバトルしか書けないのでそっちのが羨ましいです

>キャラクターも固い感じですから貫くにしても変わるにしてももうきっちり立ったキャラなので色々おいしそうです
ハーフ同士の子、という設定なので人間味を薄くしたくてああいう感じになりました。
包帯は注射男の血筋だから付けてみたと言うより、包帯キャラにしたくて注射男の血筋にしてみたという後付け。

昼休みに急いで書いたので書き忘れ
単発の人乙ですー
こういう化かし合い好きだ。女性の方が上手だったか


「相場に告るなら今だよう!!」

「で、でも…」

「今朝も相場の靴箱にラブレター入れてる女子いたんだよ!?
 グズグズしてたら他の女子に取られちゃうよう!! 今しかないよう!!」

「…わかった……」




放課後になってクラスから生徒が出て行きます
その中にだらだらと帰り支度をしている男子がいました    そう 彼が相場です
おやおや 今日の相場は気力がありません  さっきからため息ばかり吐いています

「わふぃーちゃん……」

わふぃー というのは彼の家にいる子猫ちゃんのことです
文字通りの子猫ちゃんです  他意はありませんので誤解なきように

「わふぃーちゃんが手をぐっぱぐっぱしていたあれは…
 やっぱりわふぃーちゃんは俺の事が嫌いなんだろか……」

先日諸事情でわふぃーちゃんを知人から預かり 相場が面倒を見ることとなったのですが
まあ 先日の話ですし どうでもいい内容です

「どしたの? 元気なさそだね」

そう相場に声を掛けてくる女子がいました

「…なんだ紀子か」

「なんだとはなによ なんだとはー」

いかにもボーイッシュな彼女は 紀子さんです
上の名前 すなわち姓については忘れました ド忘れです
姓もあったと思うのですが ま 本筋とは何も関係ありませんね

「アンタなんか朝からそんな感じだったよね? 何かあったん?」

「実はカクカクしかじかで…俺はわふぃーちゃんに嫌われるような事を
 うっ うおおおおおおおおおおおっっ わふぃいいいいいいいいいいいいいいいぢゃあああああああああああああああ」

いきなり興奮し始めた相場に紀子さんは引いています

「あっあう…で でもさ 猫が手を握ったり閉じたりしてるのって 安心して 満たされてる時って テレビで見た覚えが「マジで!!??」

相場のテンションから一気にLowからHighになりました
さあこれは大変です

「よし!! 俺帰る!! 帰ってわふぃーちゃんの傍にいるんだ!!」

言うが早いか 相場は鞄を掴んでクラスから飛び出しました

「あっ…」

そのまま残されたのは紀子さんです

「あ あは ははは」

そう笑う紀子さんの目はすごく悲しそうです
一体なぜなのでしょうね

「決心してきたのになー…ははは…めっちゃドキドキしてたのになー…」


相場は学校から飛び出すと猫屋さんに駆け込み そこで猫缶を一掴み買って店を飛び出しました

「ん待っててねえええん!! わふぃいいいいちゃあああんん!!」

相場は走り抜けます
全てを追い越して走ります

「ワタシ キレイ!?」

道をふさぐようにして 長い黒髪の 赤いコートを着た 大きなマスクの女の人が立っていました
もう夏だというのに よくもまあ こんなオシャレができるものです

「どけえええええ!!」

相場は疾走しながら鞄に手をやると そこから鉄パイプを抜き取りました
その鉄パイプには丁寧にも 「えくすかりばあ」 という文字が刻印された逸品です
さあ 大変です
これを手にした相場は もう誰にも止められません

「ねえ ワタシ キレイ!? 答えろ!!」

「黙れ厚化粧の年増があああああああ!! [ピーーー]ええええええええ!!!」

そう叫びながら鉄パイプを 女の人の顔面に おもっきし 突き刺しました

「ぐおおおおおおおおおううううう!!」

刺突攻撃をモロに貰ってしまった彼女は 非常に野太い悲鳴を上げながら七転八倒しました

「あっはあああ!! これで少しは見れるようになったんじゃないかあああ!!???」

相場はHighな気分のまま捨て台詞を絶叫し そのまま走り去ります


たとえ目の前に

「注射させろおおおおお!!」

注射男が現れようが

「間に合ってんだよ!! [ピーーー]カスが!!!」  「ぐおおおおおおおおおううう!!」


たとえ目の前に

「足はいらんかああ??」

足売り婆が現れようが

「悪いなばあちゃん!! [んでんでんでwww]」  「ほげえええええええええ!!!」


たとえ目の前に

「今日はカレーだよー」

カレーおじさんが現れようが

「自分で食ってクソでもしてろ!! この[ピザ]公が!!!」  「あべし」


相場は障害物を殴り飛ばして帰路を急ぐのです


相場がマンションの階段を駆け上がり 自室のドアを開いたとき
わふぃーちゃんは仰向けに寝転がりながら 子豚さんのぬいぐるみを抱きしめていました

「ウナーォ」

「帰ったよわふぃーちゃんん…」

靴を蹴り飛ばし 顔面を涎で濡らしながら 相場はわふぃーちゃんに歩み寄ります
その姿は 何かを間違えると それはホラーさながらの絵面なのです

「今日はね 猫缶なんだよ わふぃーちゃん… いいこ いいこ しようね わふぃーちゃん…」

「ンナーォ」

相場はシンクへ行くと手を洗い始めます
汚い手でわふぃーちゃんに触れるわけにはいかないのです
相場は消毒薬を両手にぶっかけると 金たわしで腕を磨きはじめました
彼は 今や 恍惚とした表情を浮かべています

すると どうでしょう
相場やわふぃーちゃんは全く見ていませんが
玄関に投げ捨てたままの鉄パイプが 金色の光を放っています

『ふっふっふ… 我はケサランパサラン…』

何か白いモフモフしたものが鉄パイプの穴から現れます

『猫がお前を好いているのは 純粋にお前の人徳であるが
 異形からお前を護ったのは 紛れもなく この 我の力であるぞ
 感謝せよ 感謝せよ ふっふっふ はっはっは……』

この物体はケサランパサランと呼ばれるものです
相場と契約しているのですが 本筋とは何も関係ないので省きます

「わふぃーちゃん 猫缶だよ…」

「ンナーォ」

お皿に移した猫缶をペロペロするわふぃーちゃんを見て
相場は既に陶酔の表情となっていました

「かわかわ… わふぃーちゃん かわかわ」

「ンナーォ ゴロゴロゴロ ンナー」

『我に感謝するのだ はっはっは はっはっはっは…』


こんな感じで一日は終わりました
相場はゴロゴロ喉を鳴らすわふぃーちゃんを見て
その度に悶絶していました

<了>



はああ幻様かわいいい
汚らわしいものを見る眼差しを向けられたい
汚物を見る眼差しを受けながら幻様に踏まれたい
葬儀屋もかわゆすぎる…
頭皮に脱毛剤をたっぷり擦りこんで頬ずりしたい
陰毛を口でむしり取ってしっかり噛んで飲み込みたい
はああん生きるのが辛い

お、おつですだ
足売りBBAに対してちょっと優しい気がしないでもない

ああ、今日はストーカーが幸せになる映画があったのか

わふぃーちゃんの人乙です
まさかわふぃーちゃんもケサランパサランさんが…いつからわふぃーちゃんが存在すると錯覚していた的な事にはならんでしょうな?
そして
>はああ幻様かわいいい
>汚らわしいものを見る眼差しを向けられたい
>汚物を見る眼差しを受けながら幻様に踏まれたい
きっと幻ならヒールのある靴で〔ピー〕を踏みつけにすることでしょう

投下乙

        |\           /|
        |\\       //|
       :  ,> `´ ̄`´ <  ′
.       V            V
.       i{ ●      ● }i 訳がわからないよ
       八    、_,_,     八
.       / 个 . _  _ . 个 ',
   _/   il   ,'    '.  li  ',__

 朝からやかましく響く電話。
 のっそりと起きて受話器を取ると向こう側からマキちゃんの声が響く。

「おはようございます、僕です、天城真希です。朝からいきなりですがお仕事ですよ本田さん」

「おやこれはこれは天城真希さんではありませんか、こんな早朝からお電話とは珍しい
 早朝五時から人の家に電話をかけるとはさぞや重要な用件があるに違いないんでしょうねえ」

 こんな時間に電話をかけられては嫌味の一つも言いたくなるというものだ。

「はい、大事な用件です。ここでは盗聴の危険性が有りお話できないので今からそちらに向かいます」

 彼女はそんなこと気にする様子もない。
 だいぶ焦っている。
 よほど急だったのか、やばいのか、いいや両方か。

「困るな、今は家に女性が居てね」

「えっ?」

「嘘だ。早く来い」

 簡単に洗面と歯磨きを済ませ、コーヒーを淹れ終えた所でマキちゃんは現れた。
 ドアを決められたリズムで鳴らしてから鍵のかかってない俺の部屋に入ってくる。
 だがその日は彼女以外にも俺の空間への侵入者が居た。

「おはようございます本田さん、朝早くから申し訳ありません」
 しかし何時見ても高そうなマンションですね」

「ああ、全くもってそのとおりだな
 それよりお前が連れているそのちびすけは何者だ
 あれか、お前の隠し子か」

 マキちゃんの後ろに隠れるようにしてこちらの様子を伺う白いワンピースの少女。
 俺の空間にこんな子供が入ってこられても困る。 
 子供というのは秩序を乱す性質が有る。俺の空間の秩序を乱されてはかなわない。
 ちなみにマキちゃんは子供じゃないので構わない。

「むぅはむぅだよ! かくしごじゃないよ!」

 朝からマンションで大声を出すな。
 まあここは防音加工がされているがご近所迷惑だ。

「今回本田さんに依頼したいのはこの子の護衛です
 この子が何者であるかについては現在詳細をお伝えすることが出来ませんが戦略的学術的価値については我々が保証します
 これから本田さんの家でこの少女を匿って欲しいのです」

「解せないな」

 コーヒーを用意していたマグカップに注ぎ、マキちゃんに差し出す。
 二つしか用意してなかったが子供がコーヒーを飲むわけもないし構うまい。

「何故、護衛任務など俺のような組織暗部の人間に頼む
 この組織には哀れな少女の為に命を平然と賭ける正義の味方がごまんと居る筈だ」

「たしかにそうです。ですがそれと同じだけ悪党だって居ます
 そしてそういう悪党は普段から巧妙に正義の味方を操って自らの野望を成就させようとするものです」

「なるほど、だから他所と繋がりの薄い俺みたいな裏方に任せる気になったと」

「ええ、組織の汚点を数多く見てきた貴方ならば何が危険で何が安全かも見えるでしょう」

 むぅと名乗った少女の方をちらりと見る。
 彼女は興味深げにマグカップの方を見てる。
 仕方ないのでミルクをマグカップに入れて差し出した。

「飲みなんせ、たーんと飲みなんせ」

「ありがとうおじちゃん!」

「構わんよ」

 次の瞬間、彼女はマグカップごとミルクを飲んだ。
 腹の中から咀嚼音が響く。
 陶器が割れてすり潰される恐ろしい音が朝の室内に響く。

「マキちゃん、俺は何が危険で何が安全か分かると言っていたな
 俺は自分の身近に寄る者は全て危険だと思って生きているぞ」

「正解じゃあないですか」

「俺達の認識が一致していたようでなによりだ
 ところでこの娘が危険じゃないという保証はどこにある?」

「安心して下さい。人間は食べないように教育されています」

「教育? 調教の間違いじゃあ無いのか」

「おじちゃんごちそうさま」

「お粗末さまでした」

 とりあえず笑顔だけは見せておこう。

「子供相手にろくでもないことやってるみたいじゃないか」

「そんなことはどうでもいいことです。大事なことじゃあない」

「それ自体はまあいい、俺やマキちゃんがどうこう言える立場じゃない
 でもマキちゃんの態度がそんなんじゃ俺……得体のしれない少女を守る気が無くなっちゃうよ」

「僕と貴方にこんな意識の差が有ったなんて信じられませんね
 貴方はもっと任務に忠実な人間だと思ってました」

「仕事には忠実だ。組織から依頼として金を積まれたならその娘だって守る」

「そうですか、それでは今回も……」

 マキちゃんのセリフに割りこむように爆音が轟く。
 恐らくは何かの爆発であろうそれに吹き飛ばされながら、いつの間にか粉々になっていた方の壁の逆側の壁にたたきつけられた。
 不意を突かれた。
 全身に走る痛みを堪えながらそう思う。
 普段の戦いはこちらが常に仕掛ける側だった故に戦闘に全ての集中力を割くことができた。
 しかしこのように対応者の側に回ってしまえば俺という人間は脆い。
 幼少の頃から常在戦場を叩きこまれたエリートでも、戦うために生まれた天才でも無い。
 そんな俺は至って普通の人間と同じように至って普通に不意打ちを食らう。
 ああ、お気に入りのリチャード・ダッドの絵が燃えている。
 畜生、畜生。

「マキちゃん!」

「つけられていたようです。申し訳ありません」

 まあ二人共死ななかっただけ良しとしよう。
 次いで護衛対象予定の少女の安否を確認する。
 あかん、腕がありえない方にねじれてる。
 諦めよう。

「チッ……今回のは任務失敗カウントじゃねえからな」

 全身が痛い。
 痛みを麻痺するための化学物質の精製が追いつかない。

「ええそりゃあまあこの程度じゃ死にませんし
 それより早く刺客を撃退して下さい」

 それはどういうことだ。

「ひ、う……」

 少女のすすり泣く声。

「びえええええええええええええええええ!」

 少女の泣き喚く声。
 俺の目の前であの子供の腕が青く透き通ったかと思うとぐにゃりとうねって先ほどまでと同じように再生する。

「なるほど理解した」

 理解したが、立つのがやっとだ。
 マキちゃんも服が破けてあられもない姿を晒している。

「はい、ですから次の手段を」

 そして立ち上がった俺は視界に絶望を捉える。

「残念だが、お前達に次は無い」

 地上8階のマンションの一室を爆破して空いた風穴から、白髪の男が乗り込んでくる。
 老人と思えぬ程鋭い目をした三つ揃えのスーツの男だ。
 なかなか洒落ているが俺の空間を爆砕した罪は重いぞ。

「組織の隠蔽能力も大したことは無いようだな」

「あんたは一体……」

 と言いながら男を見つめようとした所で男は指を鳴らす。
 目の前で閃光が弾け、のけぞった俺は壁に頭をぶつけてその場に崩れ落ちる。
 今度こそうまく立てない。

「経験が浅いよ、坊主」

 全くだ。そこだけはこの老人に同意しよう。

「運が悪かっ……」

 老人の言葉はそこで止まる。

「おじいちゃん!」

 少女は声を弾ませる。
 だが老人の少女を見る顔は渋い。
 少なくとも孫に向ける祖父の顔には思えない。

「やれやれ……」

 老人が少女に向けて腕を伸ばす。普通なら微笑ましいがありゃどう見ても攻撃の姿勢だ。 

「僕の目の前でその娘をやらせはしません!」

 マキちゃんが光線銃で老人に向けて撃つがその一撃も老人の肌に吸い込まれて消える。

「私のサラマンダーにその程度の攻撃が通じると思ったかな?
 ならば愚かとしか言えないな」

 そうか、サラマンダーか。 

「マキちゃん飛べぇ!」

「了解!」

 そう叫ぶと同時に錬金術の力を全力で開放する。
 壁が、床が、俺の触れている全てが黄金へと変わっていく。
 流石というべきかその老人も靴を脱ぎ捨てて飛び上がっていた。
 しかも腕からの炎の噴射で滞空時間を稼いでいる。
 しかし、それこそが俺の狙いだ。
 再び起きる爆発。
 既に床の木材の素材である炭水化物を分解してガスは精製していた。
 確かに爆発の熱では老人を傷つけることは出来ない。
 だがその爆風はどうだろう?
 爆発で煽られて老人は床にたたきつけられる。
 爆発とともに登場できなかったのはつまりそういうことだと俺は推測していた。
 そして床にたたきつけられさえすれば、俺の能力の範囲だ。
 瞬く間に老人は黄金の彫像へと姿を変える。

「その能力使わされたのって二度目ですね」

 飛べという俺の言葉を無視して食器棚に篭っていたマキちゃんが顔を出す。

「御託は良い。今の爆発で気絶しているそこの子供を連れて行け」

 下半身が黄金になってしまっている少女の両脇を持ってマキちゃんが思い切り引っ張る。
 まるでセミの抜け殻のように少女は黄金になった自分の体の一部を抜け出す。

「本田さん、見ないでくださいよ女の子なんですから
 むぅちゃん起きて下さい。お着替えしますよ」

 まあ当然ながらすっぽんぽんである。
 彼女はぼやっとした眼のむぅの着替えを手伝っている。

「悪いな」

 そう言って俺は何気なく自分の手元に目を落とす。
 指先が鉛になっている。
 錬金術の過度の使用による反動だ。
 続いて金にした筈の周囲の床も鉛へと変わっていき、最後には塩となって砕け消える。
 所詮俺の力ではこんなものだ。
 黄金を作り出す力など人には過ぎたものなのだ。

「おじいちゃんどこ?」

 着替えを終えたむぅが辺りをきょろきょろと見回し始める。
 彼女の足元で、先程まで人だったものの残滓が風に流れる。

「おじいちゃんならもうこの前バイバイしたでしょう?」

 あの老人は、何故むぅを殺したがったのだろう。

「でもおじいちゃんがさっきまで居たよ?」

「それは夢じゃあないでしょうかね?」

「そっか……おじちゃん大丈夫?」

 むぅはテクテクと俺の側まで近寄ってきて俺の顔を覗き込む。

「むぅちゃん、おじちゃんじゃなくておにい……」

 マキちゃんが訂正しようとするが構いやしない。

「いや、おじちゃんで良い。むぅちゃん、怪我はなかったか?」

「怪我したけど治ったよ!」

「ならば良し。マキちゃん、早くここから離れるぞ。都市伝説の侵食が始まった
 心臓まで届いたら俺は死ぬ」

「ええ、ですが移動手段の手配に少し時間がかかります」

「とにかく急いでくれ」

 こういう仕事をしているとこんなピンチもよくある話だ。
 だがきっと、死ぬまでこんな生活が続くのだろう。
 困った話だ。

おおう、ルルルの人乙ですー
むぅちゃんかわゆすhshs
あられもないマキちゃんもみてみたす
そして本田さんピンチいぃ!組織で直せるんですかこれ!

乙です
幼女きたああああ
幼女がいったいなんなのかとかじいさんの目的がなんだったのかとか
気になる点がいろいろあって展開が楽しみです
本田さん、けっこうリスキーな能力なのね

感想有難う御座います
>>742
むぅはスライム娘を書きたくなった結果です
反省しています
マキちゃんのあられもない姿は一騎当千とか見ると分かりやすいかなあと
組織の施設行けば薬か何かで一時的に侵食を抑えて自然治癒を早くできる感じですね
錬金術に侵食されて自らも金になった後にそれを維持できなくて現在は鉛へと劣化している状態なので、侵食さえ抑えれば普通に元に戻ります
>>742
幼女の正体とじいさんの目的は次の話に期待ということでお願いします
本田の能力はリスキーなものを戦術でカバーして強い部分だけを上手に使っている感じです
本当に制限なくあの能力を使えるなら既存の物質の変換や合成なぞせずに黄金錬成ぶっぱしていれば最強なんですがそうもいかないわけでして
きっちり想定外の自体も織り込み済みの作戦を立てられる暗殺時は強いですけどこういうふうに不意に襲撃されたり遭遇戦になったりすると意外ともろかったりします

避難所、緊急メンテか……

もう復活してるよー

>>746
ありがとうございます、と言うかお久しぶりですorz

僕も久しぶりに来ました
書けるように頑張るます

ようやっと追い付きました
皆様投下乙です

だいぶ前に避難所で話した「コーラで洗えば大丈夫」「骨を溶かすコーラ」の契約者の話題が回収されててびっくりしました
ありがとうございます

お盆も近いですし、階段話とかに花を咲かせたいですね

階段の下から上を見上げた時、そこにはスカートの下の浪漫が花開いているのだ

階段といえば今週のクレヨンしんちゃんは中々に面白かった

ぶつかり合う黒と白
輝く刃
鳴響く金属音
激しく散る火花

ただ見入ってしまった
それまでの日常を、常識を、遥か彼方に追い遣るような死合いに目を奪われた

黒が振り上げたナイフが白の持っていた包丁を弾き上げ
その瞬間に生まれた僅かな隙を突き、黒が白の喉を切り裂いた

普通に生活していれば凡そ見る事の無いであろう光景に俺の視線は釘付けになり
弾かれた包丁がこちらに飛んできている事に気付く事ができなかった



ザシュッ


それは俺の胸へと深く突き刺さり…赤が、噴出した


薄れ行く意識の中、声が聞こえる

“すまない、君を巻き込んでしまった”
“この状況では君を治療する事もできない”
“少年、君は生きたいか?”
“例えどんな姿になっても、人間を止める事になっても”
“許してくれとは言えない、運が無かったなんて言える筈も無い”
“今私にできるのは君に選択を問う事だけだ”

酷く思いつめた男の声

んな物、聞くまでも無い筈だ

俺は・・・生きていたい!

目を開くとそこは光が差し込む部屋
見るからにボロアパートの一室と言った風

「目が覚めた様だな」
「ここ、は・・・・・・・・・」

声がした方を見ると
夏だと言うのに黒のスーツを着込み、顔を包帯で包みサングラスをかけた・・・・・・・・・不審者

「・・・・・・・・・・・・」
「どうしたのかね、鳩がガトリングガンを食らった様な顔をして」

跡形も残らないと思うんですが、それは・・・

「いや・・・あー、・・・えー・・・アンタ誰?」
「うむ、名乗れる程の名は無いのだ、黒服と呼んでくれ」
「黒、服?」
「大抵の者はそう呼ぶ」
「・・・・・・・・・」

胡散臭ぇ・・・

「胡散臭いとか考えてないかね?」
「胡散臭いよ!!」
「うむ、元気でよろしい
 君は今、自分の状況を理解できているか?」

あー・・・そう言えば分からん

「全然」
「だろうな・・・・・・詳しい説明は省こう、分からん単語があれば>>2の用語集をチェックだ」

何を言ってるんだ、コイツ

「私は組織の黒服なのだよ」
「黒服って皆そんな格好してんの?」
「凡そはな、顔を包帯で覆ってるのは私位だが」
「何で?」
「私に顔等必要ないからだ
 説明を続けるぞ、私は上に命令されて都市伝説の討伐に向かった
 そこでたまたま迷いこんだ君にたまたま流れ弾が当たりたまたま君を死なせてしまった」

・・・待て

「俺、生きてるぞ?」
「死に掛けた・・・が正しいか
 いずれにせよ君は何らかの処置を施さねば死ぬ状態だった
 そこで私は強攻策をとった」

強攻策?

「契約書を使い君を契約者にする事で、君を都市伝説に取り込ませ延命させたのだ」
「は!?」
「そして気を失った君をここまで運んだ・・・」

「君はもう人間ではない、都市伝説なのだよ」


ショックだった、ってかショックだったんだと思う
少し頭が働かなくなった
俺が、もう人間じゃない?

「一寸信じらんないな」
「だろうな」
「・・・・・・・・・」

だって、体とか特に違和感ねぇし、手とか足とか普通にあるし・・・

「・・・・・・何の都市伝説?」
「言えない・・・いや、言わない方が良いだろう」
「・・・・・・・・・」

嫌な予感しかしねぇ・・・・・・

「悪い、少しトイレ借りて良いか」
「あぁ、ここは私の家だ、自由に使ってくれ」

言われた通りの場所にあったトイレに入り
あの男が着せたのであろうパジャマのズボンを下ろす
多分元々着ていた服は血で使い物にならなくなったんだろう

「ハァ・・・俺はこれからどうすれば・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ?」

ドアを蹴破る
奴の首をつかむ

「黒服!!」
「落ち着きたまえよ」
「落ち着いてられるかぁぁぁっ!!
 何だこれ!?何だこれ!?もう一回言うぞ何だこれ!?」
「何だといわれても・・・」
「何で”無い”の?!」

そう、無かったのだ
パンツを下ろした自分の体に
男になら付いている筈のアレが

「あー、少年」
「何だ!?」
「とりあえずパンツを上げたまえ」
「・・・・・・・・・~~~ッ!?」

急いでズボンごとあげる

「・・・・・・見た?」
「ご馳走さまでした」
「[ピーーー]よ!!!」

結局―――

「どういう事だ・・・?」
「私は君に問うた」

“例えどんな姿になっても、人間を止める事になっても”
生きていたいかと

「君は生きていたいと答えた、だから・・・仕方なくその時私が持っていた唯一の契約書を使った」
「・・・・・・・・・何なんだ」

アレが無くなる様な都市伝説って・・・

「”上杉謙信女性説”」
「は?」
「君を取り込んだ都市伝説の名だ」

いやいやいやいや!?

「都市伝説かそれ!?」
「都市伝説なのだよ、困った事に」
「え、じゃあ何か?!俺、今女!?」
「あぁ、君の体は生物学的には女性の物になってるな」
「いや、だって・・・・・・アレ、は無い・・・けど」

自分で言っててスゲェ凹む

「胸、も・・・無い、ぞ?」
「・・・・・・・・・胸の大きさが戦力の決定的な差では無いのだよ」
「[ピーーー]ぇ!!」

こうして、帰れる場所も、以前の生活にも戻れなくなった俺は
組織で黒服として生きて行く事となり・・・俺の都市伝説生活が幕を開けたのです

>>752-757
乙ですー
ワロタ。女になる位ですむんだったらむしろ幸せだろう
そして貧乳はステータスぅ!

投下乙です

男を捨てて命を取るか
命を懸けて男を貫くか

こう書くとなんだか深いことを言ってるような気がするのですが気のせいですかそうですか



ところで上の文、最初は「男を守る」って書いたけれど、騎士(♂)と姫(♂)を想像してしまったので表現を変えたんですよ
そしたら今度は「男を貫く(♂)」って想像してしまって、私の脳はもう駄目だと悟りました

乙です
メンタルの部分での女体化がすでに始まっているかのような引き……これの意味するところとはつまり……!
ええ、何も考えてませんとも

しかしこの黒服さんの持ってた契約書。なんてニッチなwwww

乙でした
女性説は自分もどうやって話に組み込めるか考えてたことがあったんですがその使い方があったか!


「殺したいヤツがいます――」

なんか違うな…

「好きな人が、できました――」

ううん、これもなんか違う…

「殺したいヒトが、できました――」

うーん…


とにかく皆さん乙です
何かで見た四コマのオマージュですが
オマージュ元を忘れてしまったので
心当たりのある人は教えてくださいね


電話さんのメリーと誰でもニコニコ割の契約をして、早二ヵ月

食費がかさんだのは別にいいけど、メリーは僕にイタ電をしてくるようになった

通話もしてないのにいきなり繋がって、「わたしメリー!今アナタの後ろにいるの!」で背後を取られる

そうして僕の脇腹をくすぐってはなさないんだ。一体どこで俺の弱点が脇腹だと知ったんだ…

この名案が浮かんだのはほんの最近だ。メリーがイタ電してきたら早速やってみようと思う



と、こんなことを考えると、僕の携帯が創●のアクエ●オンを歌い始めた

前にカラオケで歌ったヘタクソな奴を着信に設定したのだ

僕に電話かけてくるのなんて家族と宗教勧誘を除けばメリーしかいない

僕は相手を確認した


                 「メリー」


きたこれ! 僕は走りだす! なめんなよメリー!

強制通話になる前にアレを仕掛けるんだ!!

僕はアパートのベランダを乗り越え、アスファルトめがけてダイブした


 「んごっ!! …痛ぅぅぅっ」


着地の衝撃が頭に刺さって鼻に抜け、めっちゃ痛い

だがそんなのは問題じゃない! 空を仰げばいかにも夏真っ盛りって感じだ

入道雲がいい感じに広がってる蒸し暑い昼の午後

計画実行には絶好のお天気じゃねえか!


ブツッ「もしもし、わたしメリー!――」


! つながった!! もはや一刻の猶予もない

僕はそのまま地面に這いつくばった


 「――今、アナタの後ろにいるの――」


今だ!

僕は腰からひねるように空を見上げた

メリーが空から振ってくる


「わーーーーーーっ!! 見ないでよぉーーーーーーーっ!!!」


メリーの聖域、スカートの中身が…見える、見えるぞ!!

アレは黒の紐パンだな!? とんだ淫乱子猫ちゃんだぜ!!


「どいてーーーー! 踏んじゃうよぉ! どいてよぉ!」


メリーがもうすぐそこまで迫ってるけど、僕ぁ満足さ

ブーツの硬いヒールが顔面にめり込む衝撃に意識を持っていかれながら、僕は心の中でシャウトした


               ((我が人生に一片の悔いナシっ!!))


          ニッポンの夏、

                        単発の夏


                 _, -─ァへr-t 、
              ,. ''´ ,/':::':::::::::::::└'´|、
            , "  ,}`::::::,;:'';;'';;';;'';:;,::::.´ス

             /    }:::::::,:''-‐゙:;;:::''゙::::::,ノ 'i,
           i'    >-く(・)゙.ゝ Y'''''''"   ',

             {    `刀リヾ゚´, ; ;、       }
           ',   ,.::';':';::':::::'レ-‐ヘ     . ,!
            'i,  {:;';:'゙::::,;:''゙::::::゙:;;::::゙::.、  /
.              ヽ. ヽ;;,::''::;゙´上 ゙;:::::'':::::,ン′
              ヽ(:::;:::::゙、 山 ,'::::゙,.イ
                  ``''ー-ニ‐''"´

┌┐   ,r‐ゥ ┌┐┌┐  ┌┐ ,r──‐i ┌┐  ┌┐  ,.-─- 、
││ /,/ │<. |  `'ー、_,! │r' ,r‐─┘│ L.......」 | / ,r‐-、 ヽ
││ヽ、ヽ、 │││..r‐、   | {  {.     │ .........  | .{. {    }. }
││. ヽ ヽ. |..│││ ゙ヽ │!、 `‐─┐││  ││ ゙、 `‐-‐' ,ノ
└┘  `ー‐'└┘└┘  └┘ `'''ー─┘└┘  └┘ `'ー--‐''′




乙です

お前は本当にそれでいいのか?
まだ、その聖域の中に踏み込むという所業を行っていないではないか
もう一度問うぞ
お前は、それで人生に悔いはないのか?

だが、そんなピュアなお前も嫌いじゃあないぜb

八尺様の外見的特徴に麦わら帽子が含まれる前の、ある夏のできごと

夏休みに突入して、いつにも増して外遊びに熱が入る少年。
その最中に出会った女性はやたらと大きかったが、恐怖は感じなかった。
何度も会うようになり、仲良くなった。
といっても、彼女は言葉が達者ではなく、少年が捕まえた虫や魚の話を聞いたりしては、ぽ、ぽ、と相づちを打ち、笑顔を見せたりするくらいか。たまに少年を肩車してセミを取りにいったりもした。

だが、そんな関係もついには終わりを迎えた。
彼女と少年の談笑に乱入し、無理矢理に少年を引き剥がしていった。
その騒ぎで少年の麦わら帽子が落ちた。
彼女はそれを返そうと少年の家を訪ねても会えず、ついに少年はどこかにいってしまった。

彼女の時間はその夏で止まってしまった。
何回夏が巡ろうとも、少年の有名大進学も、出世も、結婚も、父親になったことも、あの夏を覚えてるかも知らず、少年の再来を、麦わら帽子を返す機会を待っている。

並外れた体躯に白いワンピースをまとい、夏の日差しに黒髪を輝かせ、麦わら帽子をかぶりながら。

乙です
なんと切ない系八尺様……

単発の人乙ですー
パンツ見た後避けりゃよかったのにとか言っちゃいけないのか?踏まれるまでが1プレイなのか?
夏休みの人乙ですー
なんという清楚系八尺様

清楚系がいるということはつまり淫乱系もいるということでは……ん、こんな時間に窓から女の声が……ここ4階なのに……?

「はぁぁぁあっ!!」

横に払った刀が女の首を斬り飛ばす
「上杉謙信女性説」に取り込まれ、この体になってから早2週間
元の生活に戻ろうにも以前の面影も残ってない顔ではそうも行かず
仕方なく都市伝説として組織で働いてる

「ふぅ・・・」

力を抜くと共に手に握られていた刀が消える
黒服のセクハラにキレた時に偶々出せる様になったのだけども
力を込めれば刀が何処からとも無く出てくるのを見て「あぁ、本当に人間止めたんだな」と実感したのももう半月前
そろそろこの体にも慣れて来た

慣 れ た く は 無 か っ た が

「今日のお仕事おーわり」

朝起きて、飯食って、出社して、書類仕事して、昼飯食って、都市伝説討伐して帰宅
最近の生活サイクルはこんな感じ
以前学業に使っていた時間がそのまま仕事にシフトした様なもんだ
以前は学校なんて面倒だとしか思わなかったけど、こうも離れると少しさびしい感じもする
友人達は元気にやっているんだろうか、両親は心配してるんじゃないだろうか・・・

「・・・・・・ハァ」
「ごめんね素直じゃなくって夢の中なら言える黒服参上!!」

感傷に浸ってたら馬鹿が出た

「お前の所為で思考回路はショート寸前ですよ」
「今すぐ会いたいのとは繋げてくれないのかね?」
「冗談でも言うか」

ミイラの如く包帯まみれの顔にサングラスに黒スーツの不審者
(凡その)諸悪の根源こと同居人にして保護者扱いの黒服だ
結局、住む場所にも困る状態だったのでこの黒服の所に転がりこんだ

「で、何でここに?仕事は?」
「うむ、思ったより早く終わったのでな、迎えに来た」
「暇なんだな」
「窓際族なのでね」

実際この黒服が組織でどの程度の地位に居るのかはわからないが、本人が言うほど無能では無い気がする
初めて見た時の戦いっぷりは中々の物だったし、少なくとも契約書を持ち出せる時点で下っ端の末席では無いはずだ

「・・・・・・」
「どうかしたのかね?」
「いや、二週間になるけど黒服の事全然知らないなと」

とり合えず黒服の中でもおかしな格好をしている事と変態っぽい事位しかわからない

「二週間位ならそんな物だと思うがね
 私も少年のことは良く知らない」
「にしたってさ、その包帯で顔も見た事ないし、名前も黒服としか教えてくれないし、何の都市伝説と契約してたのかすら聞いてない」
「語るほどの内容では無いからな」
「大した事無いなら教えてくれても良くない?」

黒服がこちらに目を向ける
表情は読めない

「・・・・・・切り裂きジャック等の都市伝説と契約していた、元々は医者だった」
「・・・・・・・・・・・・」
「何だね、その怪訝な顔は」
「絶望的に似合わねぇ」

ジャックはともかく医者ってのはねぇよ
ねぇよ

「そう言われそうな気がしたから教えなかったのだよ、納得してくれたかね?」
「何か無理やり畳もうとしてる気がしないでは無いけど」
「・・・・・・・・・余り過去の事は話したく無いのだよ」
「あんまりしつこく聞いたら追い出すか?」
「そうだな・・・」

黒服が少し考えるような動作を取る
表情は読めない

「私には君を殺し、その体にした責任がある・・・と考えている
 だから、まぁ・・・」

「その責任を果たすまでは面倒を見るさ」

そう言った黒服の声は何時に無く真剣で・・・

何と言うか、こう・・・・・・胸の辺りが きゅん と――――――

「ねぇよ!?」
「?!」
「いや、ごめんそういう意味じゃなくてな!」

・・・一寸、早いこと男に戻らないとヤバイんじゃないか?

続く

これはヤバいwwwwww
もう男に戻れないパターンですわ

目覚めてしまったか……
もう女の子のままでいいじゃない
下手に男に戻ろうとしたらふたなりになりかねないし、もう女の子のままでいいじゃない

皆さん投下乙です!
『上杉謙信女性説』は私も使う予定だったけど、まさかそんな使い方があったとは…

そういえば避難所の雑談スレ過疎ってないか…?

皆さん乙ですー

>メンタルの部分での女体化がすでに始まっているかのような引き……これの意味するところとはつまり……!
>もう男に戻れないパターンですわ
この物語は一人の少年が大事な物を失って行くお話です

嘘です

>下手に男に戻ろうとしたらふたなりになりかねないし、もう女の子のままでいいじゃない
中途半端は良くないものね!

「あー・・・・・・」
「次はどれにしよっか?」
「・・・・・・」

休ませてくれ・・・・・・



事の起こりは遡る事10時間前―――

「仮面ライダー 黒いボディー♪」
「仮面ライダー 真っ赤な目―♪」
「仮面ライダーブラァッ!」
「アーエ”ッっくしょいッ!!」
「・・・・・・少年、風邪でも引いたのかね?」
「うーん、朝から目がしぱしぱして鼻が一寸な・・・多分花粉症だと思う」

人間だった時は随分悩まされた物だけど・・・

「都市伝説も花粉症ってなるのか?」
「普通はならんが元人間だと偶にな、人間の頃に花粉症だった場合そのまま引き継ぐ事がある」

自分でも自分だと思えないような体になってる癖にそういう所だけは引き継ぐのな
なんて厄介な

「キツイか?」
「うーん、仕事はできると思うけど戦闘関係はやだなぁ」
「ならば、今日は休め
 鼻炎関係の薬なら薬箱に入ってるから自由に使ってくれて構わない」
「え、でも仕事・・・」
「君の分位は私がやっておく、なるべく早く帰る」

こうして今日一日が休日となった訳だが

「やる事もねぇしなぁ・・・」

そして視点は変わり―――

【その頃の黒服】

「うむ」

こんな所だろうか
元々少年に任せていた仕事も新人用と言う事でそう複雑な物では無い
この程度の事務仕事のみなら私なら一瞬で終えられる

「うわー、室長が珍しく仕事してるよ・・・」
「明日は槍でも降るのか?」
「君達、聞こえてるぞ」

何故私の部下達はこうも揃いも揃って失礼なんだろう

「室長が普段仕事もせずに職場でゲームするかアニメ見るか特撮見てるかしかしてないからだと思いまーす」
「って言うか今日謙信ちゃん何で休みー?」
「あの娘いないとやる気がでませーん」

お前ら仕事しろ

「「「アンタが言うな」」」

仕事はしたぞ
少年の事は伝えるべきだろうか・・・しかし黙っていると追求が面倒だ

「少年なら今日は体調不良で休んでいる、以上だ」

これがミスだった

「あ、じゃあ私お邪魔して良いですか!?」

勢いある挙手と共に声を上げたのは女性型の黒服

「・・・・・・何故そうなる?」
「女手いりますよね?謙信ちゃん女の子だし!」
「一応少年は男”だった”のだが」
「わかってます!あんな可愛い子が女の子の筈ないですよね!」

果てしなく不安でしか無い・・・

「・・・・・・・・・・・帰れ」
「大丈夫です、役に立ちますから!!」

そして再び場面は移り

【自宅の謙信女性説】
「おっ邪魔しまーす!!」

・・・・・・勢い良く開けられたドアを潜って、黒服・・・ではなく
職場の先輩が入ってきた
何故だ

「あ、あの・・・・・・黒服?」
「・・・・・・どうしても君が心配らしくてな」

その割には・・・

「速攻俺の箪笥漁ってるんだけど・・・」
「・・・・・・・・・」

何か言えよ!?もしくは止めろよ!?

「うわっ!?黒スーツしかない?!」
「服買いに行く暇も無かったんですよ!ついでに俺も黒服なんだから良いでしょ?!」
「謙信ちゃん、女の子が俺とか言ったら・・・・・・これはこれで有りよね」

俺は男だぁぁぁぁぁぁ!!

「え、一寸待って・・・謙信ちゃん、下着は?」
「・・・入ってるでしょ?」
「室長さん?」
「少年の衣類まで口は挟めんよ・・・・・・」

そりゃ、男物か女物かも判断できんからな・・・・・・お互い

「いや、パンツ3枚とかどんなヘビーローテーションよ?!しかもブラ一つしか入ってないし!!」
「それだってこっちがどんな思いで買ったと思ってんですか!?本当ならトランクスだけでやり過ごしたいんですよ、こっちは!!」

女物の下着とかおぞましくて履けるか!!

「いや、パンツともかくブラは!?普段してないの?!」
「そう言われましても・・・・・・」

違和感と言うか何と言うか

「窮屈なんですもん、あれ・・・」
「何巨乳ぶってんの!?貧乳キャラにその台詞の使用権はねぇ!!」
「おい、黒服、この先輩摘み出してくれ」

身体ネタで非難されるのは流石に納得いかん

「・・・ONE P○ECE面白いな・・・尾田さん天才じゃね?」
「現実逃避するなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「そうは言うがな少年、いくら私でも流石に女性の下着談義には付いて行けん、故にジャンプ読む位しかやる事が・・・」
「アンタの部下だろうが!!」
「少年の先輩だろう」

前回の責任発言何処行ったぁぁぁぁぁっ!?

「分かったわ!謙信ちゃん!!」
「こっちはなにもわからないわ」
「一寸謙信ちゃん用の服買って来ます!室長、経費で落ちますよね!?」
「落ちませんから!落ちないよな?!」
「・・・・・・私しーらない」
「黒服ぅぅぅぅぅぅぅぅぅうっ?!」
「言質盗ったぁぁぁぁ!!」

すごい勢いで部屋を飛び出ていく先輩

「じゃ、私はネカフェかなんかで時間潰してくるから終わったら連絡くれ」
「逃げんなよ!?」
「逃げてねーし!戦略的撤退だし!!」

どっちも同じじゃねーか!!


こうして、黒服は逃げ、先輩は大量の衣類と共に帰還し――冒頭に戻る

「あー・・・・・・」
「次はどれにしよっか?」
「・・・・・・」

休ませてくれ・・・・・・

「やっぱ素材が良いと何でも似合うよね!」
「何一つうれしくない・・・」
「この際だから言葉使いとかも矯正しちゃおうか!」
「え?」

オイバカヤメロ

「大丈夫、身も心も女の子にしてあげるから」
「先輩、目が怖いですよ?ついでにそれは最近ガチで悩んでる部分なんで洒落になりませんから!!」
「任せて!一人前の女の子にしてあげる!」
「話聞けよ!!」

拝啓、父上殿
貴方の息子は・・・女を知る前に、女になりそうです

【続く】

そして女であることを知るのですね!

乙です
このあと徐々に毘沙門天使謙信ちゃんとして開花していく彼(彼女)が見えるようですな!

乙です!謙信ちゃんが身も心もステキなおにゃのこになる日を待ってる…と言いたいが
おにゃのこの体に心は男、というギャップがまた萌える



 暗闇の中を、一人の男が走っていた。
 まだ少年と呼べるような彼は、繁華街の路地裏にあたる道を駆ける。
 彼の衣服は暑いこの季節にはつらいのではないかと思われる長袖で、その手には携帯電話が握られていた。
 路地の曲がり角に手をついて勢いよく角を曲がり切った彼は、走りながら腰のあたりを気にするように何度か手を這わせた。
 腰にはロープが巻かれており、やや前傾気味に走る彼の様子からして、どうも背中に何らかの荷物を背負っているようだった。
――確かに何かを背負っているように見える。
しかし、ロープは腰の後ろに回ったあたりからだまし絵のように見えなくなっており、
ロープで結びつけられているであろう背の荷物も、路地裏の貧弱な灯りには照らし出されなかった。
「……っ、やっぱりむちゃくちゃに走り回ってるだけだと撒けないか」
 息を荒げる少年の背後からは何人分かの足音を引き連れて何かが追って来ていた。
 うまいこと隠れられると思ったんだけど、やっぱり甘くない。
 内心で吐き捨てて彼、小野久信は次の角を曲がる。そして、路地の先に別の追っ手の姿を見た。
「げ……」
 思わず声を漏らす。追っ手の方も久信に気付いたようで、「あ」の形に口を開いた。
 一呼吸おいて、追っ手が声を上げる。
「待て!」
 追っ手が持っている小型の灯光器の光が久信の体を浮かび上がらせた。
 久信はとっさに身をひるがえし、先程曲がった路地を引き返して、別のルートで逃亡を続けようとする。
しかし、進もうとしている方向からも聞こえてくる追っ手の声に足を止めた。
 囲まれた?!
 疑問する間にも追っ手は近付いてくる。久信は再び身をひるがえして、自分を発見して追いかけてくる男たちに自ら近づいて行った。

 近付く追跡対象に警戒を示した相手を、久信は値踏みする。
 特にこれといった特徴は無し。まいったな。
 目の前にいる男の見た目からは黒服がどこの所属かは全く分からない。
黒服といえばその構成員の大多数を黒服で賄っている〝組織〟と呼ばれる超大型の集団が有名だが、
MIB自体は都市伝説に近しい組織であるならば多くの組織が揃えている存在だ。彼らの存在だけではバックの組織までは測れない。
 どうするかな……。下手に倒してしまうとどこかも知らない組織が面子をかけて俺たちを追ってくるかもしれないな。
 大きな組織が本気で捜索を行ったら久信が逃げ切ることは不可能だ。
 ならばできるだけ相手を傷つけないように切り抜けるしかない。
 そう覚悟を決めた久信の眼前にはもう、小さい拳銃のようなものを構えた男の姿が見えた。
 久信は前に傾け気味だった体を更に低くし、地面を舐めるように走る。
 突然姿勢を低くした久信を薄暗闇の中で見失ったのか、黒服からは息を詰める音が聞こえた。
その顔に向けて、久信の袖から細長い何かが飛び出した。
「――?!」
 顔に叩きつけられた何かを引きはがそうと黒服がもがく。すると、黒服の顔面に張り付いたそれは黒服から逃れるようにくねくねと蠢く。
「なんだ?!」
 黒服が顔面に絡んでくる何かと戦っている間に久信は黒服の横をすり抜けた。
 せわしなく姿勢を変える久信の腰にあるロープが、背後に背負うものを離すまいとするかのように、ひとりでにきつく締まる。
「数が多いなあちくしょう!」
 上がった息で呟いていくつも角を曲がる。すると、路地の向こうに人通りの多い繁華街の大通りが見えた。
 久信は大通りを突っ切って、向井の路地に飛び込む。
 スナックの看板から投げかけられる光を頼りに路地の奥まで潜り込む。
 これからあの黒服たちをどうやって撒いたものかと考えていると、進行方向の隅に小柄な影を見つけた。
 犬だ。
 ゴミ箱でもあさっていたのだろう、清潔とは到底言えない外見の犬は、近づく久信の足音に反応して、のっそりと顔を巡らせた。
 目があった犬は、伸びを一つした後、おもむろに口を開いた。
『こっち こい あんぜんなみち おしえる』
「助かる」
 人の言葉を口にする犬という存在を特に気にした様子もなく、久信は人に対してするかのように気軽な、そして慣れた返事をする。
 犬は久信の応答を待つまでもなく、既に路地の一隅にある飲食店の裏扉を鼻先で示しており、「開けろ」と言うかのように久信に視線を向けた。

 示されるままに入ったのは、既に潰れた店だったのか、荒れ果てている。
そこを通り抜けて今度は別のビルを通り抜けて次の路地を通過する。
そんなことを何本かの通り分繰り返していると、いつの間にか久信は繁華街から離れたところにある古びたアパートの前に辿り着いていた。
 アパートを鼻先で示すと、最初の一言以外何事も話さなかった犬は、行儀よくお座りをして、じっと久信を見上げた。
 その時、タイミングを計ったように久信の携帯電話が鳴った。
「もしもし?」
『無事に逃げ切れたな?』
 開口一番に確認をとってきた若い男の声に苦笑して、久信は応じる。
「おかげさまで、追っ手もうまいこと撒けたみたいだ。ありがとう」
 電話の声は頷く気配の後、うかがうように訊ねた。
『修実さんも……居るのか?』
「居るよ。もう修実姉を一人で孤独にさせないて決めたから、一緒にいるさ。
 この犬は昌夫の遣いだろ? 見えないのか?」
 言ってから久信は気付いた。
「そう言えば隠形してもらってるままだった」
『ああ、におい自体は感知しているけど姿は見えない』
「ごめんごめん」
 犬に向かって片手刀を切って謝ると、久信は腰の縄に手を触れた。
 触れられたロープはひとりでに蠢めき、先端を久信の手が触れている辺りに現した。
それは舌を出して手の主を確認するようにギョロギョロと目玉を動かす一匹の蛇だった。
「ごくろうさん」
 久信が言うと、腰のあたりで何かを巻き付けるように絡まっていた蛇がほどけていった。縛りが緩み切る前に久信は背後に手を回す。
 地面に落ちた蛇は、すぐ傍らにある犬の目を気にするように道の端へ移動すると、塀に空いた穴から素早く回りの家の敷地内へと消えて行った。
 蛇を見送った蛇は、犬に見せつけるように、背のものを背負い直す。
「この通り、修実姉はちゃんと一緒にいるよ」
 そう言う彼の背には、先程繁華街を逃げている時には姿を見ることができなかった同行者の姿があった。
 彼女は久信の腰あたりまである長い黒髪を揺らし、肩越しに犬と目を合わせる。
「こんばんは」
 挨拶の言葉に、犬が応じて短く鳴く。
 1人と一匹の挨拶が終わるのを待ち、久信は皮肉げに口元を曲げる。
「まあ、こんな状態だから、あんまり無事……とは言いづらいものがあるけどな」
 彼の背で犬と視線の交流をしている女性は、両手両足が、その付け根からなくなっていた。

ちょいとお邪魔いたします
しゃっきりとスピーディーに締めるのを目標に学校町の
片隅での物語を書かせていただきます
よろしくお願いしますです

乙ですー
この都市伝説は何だ?
表面だけ見るとあれっぽいが、そんな簡単なもんじゃなさそうだしな

>>790
正確には都市伝説そのものではなく、もう少し曖昧な存在となる予定です
そこら辺も予想しながら読んでいただいてもいいかなと思います

では続きを投下します



 姿を現した両手足が無い、まるでダルマのようにも見える女性に、久信は親しげに話しかけた。
「修実姉、どこかに体ぶつけてない?」
「ありがとう久くん。大丈夫よ」
 修実(よしみ) というらしい女性からはあまり大きくはないが、よく通る声で返事がくる。
 犬はしばらく不具の女性を見つめ、やがて携帯からはほっとしたような調子で言葉を寄越した。
『よし、二人とも無事だな。じゃあしばらくはこのアパートの部屋を使ってくれ。警察のほうで手を回して手に入れた物件だ。
見た目はぼろいし曰く付きの幽霊アパートだが、探知にも引っかからないような細工をしてある。その点は安心しろ』
「ひどい宣伝文句だな」
 外から見上げるアパートから住人の気配が感じられないのはその曰くのせいなのだろうか。
 ともあれ、どんな曰くのある物件だろうと、追っ手を気にすることなく身を隠すことができる場所というのは今の久信たち姉弟にはありがたい。
「ありがとう昌夫」
『いいさ。事情が事情だしな』
 昌夫が明るく応えると、それまでじっと話を訊いていた犬が、やおら立ち上がって背を向けた。
 野良生活に回帰するのか、そのまま振り返らずに去っていく犬を見送る久信の耳に昌夫の声が届く。
『ここにあの町の生き残りが逃げてきてるのは確かなようだ。捜索は俺の部署と、あとは俺の犬たちが担当するからお前たちはあまり動くなよ?
 またさっきみたいなことがあってお前たちがどっかの組織に捕まっちまうと、俺みたいなぺーぺーには口出しもできなくなるからな』
「分かってるよ」
 久信の即答に、電話の声は数秒沈黙した。やがて、
『修実のことで必死なのは分かるがな……あんまり無茶をするなよ?』
「ああ、善処する」
『……また連絡いれるから、今日はさっさと休んでおけ』
 呆れたように言葉を残して切れた携帯をしまい、久信は修実を背負い直してアパートの敷地に入った。
 事前に逃亡生活の用意がされる手はずになっていると聞いた部屋は一階の一番端の部屋だ。
そこに行き着くまでに通る一階の外の部屋にはやはり他の住人の気配がない。
 よくこれで潰れずにアパート経営を続けていられるな。

 お互いに傷つけあわずに存在できるということは実にいいことだ。
 鍵を開けると、古アパ―トらしい、軋んだ音を立てて扉は開いた。
 1Kの部屋の内部にはほとんど荷物がなかった。
 作りつけになっている空の本棚を素通りして居間に行くと、中央にはいまどき珍しいちゃぶ台が一つ置いてあった。
その上にはダンボール箱が一つ放り出してあり、それらの他には荷物らしきものはない。
 久信はダンボールの中に薬缶などの小物と、簡単に食べられる食料が詰め込まれているのを確認する。
「昌夫が警察に手を回して逃亡生活に必要そうな最低限のものは用意してもらったらしいから、
とりあえず今日は飢えることはなさそうだ。持つべきものは犬のおまわりさんだ」
「あまり悪口を言ってはだめよ」
 背中から窘めてくる姉の言葉に、けど、と久信は返す。
「実際昌夫は俺たと似た憑き物筋で、犬神憑きの契約者じゃないか。しかも警察で仕事中も犬を使う。
 こう、まさに犬のおまわりさんって感じがしない?」
「そうだけど、でもやっぱり褒め言葉には聞こえないもの。あまりそういうもの言いはよくないわ」
「そういうもんかな」
 久信は修実部屋の内部を見せるように一通り棚や冷蔵庫を開ける。
電気や水が届いていることに少し感動しつつ、久信は今に戻ってちゃぶ台の横に配置されていた新品と思しき布団を片手で広げ、その上に修実を下ろした。
 修実が付け根から無くなっている手足を動かして布団の上で落ち着くのを待ってから、
久信は警察内に非公式に存在する対都市伝説課に中学卒業後すぐ勤め始めた友人のことを思いつつ、話しの続きを口にする。
「アイツの話だと、最近は警察組織の表の方でも上の地位につく契約者がいるらしいよ」
「そうなんだ。ちょうど警察組織ができあがった頃に回帰してきている気がするわね」
 たしかに、この国に警察機構が初めて作られた時、一度崩した秩序を再編するまでの時間稼ぎとして、
現在都市伝説と呼ばれるような妖物と契約した者たちが多く活躍していたという話は聞いたことがある。
 社会がある程度安定してからは、逆に社会を不安定にさせる要因になり得る都市伝説の存在は公の場から消失していたが、
どうもここ最近そういう状況にも変化が見られるようだ。
「もしかしたら、そのうち都市伝説課が公然と設置されるのかもしれないな」
 もしそうなれば、姉のような特殊な存在も、少しは生きやすくなるだろう。
「そうなったらそうなったで、混乱は起こると思うわよ。そうしたら犠牲は出ずにはいられない。それならこれまで通り、
専門家は専門家で別の組織として在ったほうがいいのかもしれないわね」
 そうかもしれないし、違うのかもしれない。
自分たちのように生まれた時から都市伝説との関わりを続けている者には世の中の大多数の立場になった考えかたはできないことは承知のことだ。


 あるいは、このアパートを潰すことができないような加護か呪いがかかっているのかもしれない。
 こんな物件の存在を認める代わりに、有事の際はこうして隠れ家として使えるように契約してるのかもな。
 お互いに傷つけあわずに存在できるということは実にいいことだ。
 鍵を開けると、古アパ―トらしい、軋んだ音を立てて扉は開いた。
 1Kの部屋の内部にはほとんど荷物がなかった。
 作りつけになっている空の本棚を素通りして居間に行くと、中央にはいまどき珍しいちゃぶ台が一つ置いてあった。
その上にはダンボール箱が一つ放り出してあり、それらの他には荷物らしきものはない。
 久信はダンボールの中に薬缶などの小物と、簡単に食べられる食料が詰め込まれているのを確認する。
「昌夫が警察に手を回して逃亡生活に必要そうな最低限のものは用意してもらったらしいから、
とりあえず今日は飢えることはなさそうだ。持つべきものは犬のおまわりさんだ」
「あまり悪口を言ってはだめよ」
 背中から窘めてくる姉の言葉に、けど、と久信は返す。
「実際昌夫は俺たと似た憑き物筋で、犬神憑きの契約者じゃないか。しかも警察で仕事中も犬を使う。
 こう、まさに犬のおまわりさんって感じがしない?」
「そうだけど、でもやっぱり褒め言葉には聞こえないもの。あまりそういうもの言いはよくないわ」
「そういうもんかな」
 久信は修実部屋の内部を見せるように一通り棚や冷蔵庫を開ける。
電気や水が届いていることに少し感動しつつ、久信は今に戻ってちゃぶ台の横に配置されていた新品と思しき布団を片手で広げ、その上に修実を下ろした。
 修実が付け根から無くなっている手足を動かして布団の上で落ち着くのを待ってから、
久信は警察内に非公式に存在する対都市伝説課に中学卒業後すぐ勤め始めた友人のことを思いつつ、話しの続きを口にする。
「アイツの話だと、最近は警察組織の表の方でも上の地位につく契約者がいるらしいよ」
「そうなんだ。ちょうど警察組織ができあがった頃に回帰してきている気がするわね」
 たしかに、この国に警察機構が初めて作られた時、一度崩した秩序を再編するまでの時間稼ぎとして、
現在都市伝説と呼ばれるような妖物と契約した者たちが多く活躍していたという話は聞いたことがある。
 社会がある程度安定してからは、逆に社会を不安定にさせる要因になり得る都市伝説の存在は公の場から消失していたが、
どうもここ最近そういう状況にも変化が見られるようだ。
「もしかしたら、そのうち都市伝説課が公然と設置されるのかもしれないな」
 もしそうなれば、姉のような特殊な存在も、少しは生きやすくなるだろう。
「そうなったらそうなったで、混乱は起こると思うわよ。そうしたら犠牲は出ずにはいられない。それならこれまで通り、
専門家は専門家で別の組織として在ったほうがいいのかもしれないわね」
 そうかもしれないし、違うのかもしれない。
自分たちのように生まれた時から都市伝説との関わりを続けている者には世の中の大多数の立場になった考えかたはできないことは承知のことだ。


「ともかく、警察もこの程度には都市伝説に対する対処法や協力関係を作れているってことで、いいんだろうな」
 おかげで追われている立場のはずの自分たちはこうして力を抜いて休んでいられるのだ。
それでいい。それに、久信たちにはそれ以外のことについて考えられるような余裕は今のところない。
 あまり悩んでいてもしかたないと言えばしかたないんだけど……。
 思いながら部屋に改めて視線を巡らせる。
 最低限の掃除をされているだけの部屋は家具もほとんどない。
部屋の真ん中に置かれているちゃぶ台とダンボールなどは、余計に寂しさを印象付けている気がした。
 目を楽しませて心に癒しをくれるのは修実姉だけだな。
 しみじみと修実に目をやっていると、修実は布団の上で傷を隠すように丈が余っている衣服の袖を揺らした。
「あんまり見ないで……ね?」
 ほんのり赤く染めた顔で彼女は、こちらもまた付け根から無くなっている足をもぞもぞと動かす。
 修実の言葉に弾かれるように、久信は目を逸らした。
「ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ」
「……ん、分かってる」
 修実は微笑して、傷口が隠れるような位置を確保する。
「ごめんね久くん。お姉ちゃんに付きあわせちゃって。おかげでいろんな組織の人たちに追われることになっちゃって」
「俺は自分で行動するって決めたんだからいいんだ。
それに今の状況はほとんどあの事件のせいなんだから修実姉が謝ることなんて何もない」
 強めに言って、ダンボールの中からカップラーメンと、湯を沸かすための薬缶を引っ張り出した。
 ダンボールの中に詰め込まれていた食料は、
その全体量や彩りを考えていない同じ種類のカップ麺を雑多に詰め込んだラインナップから考えて、久信1人用のものだろう。

 事前に食料は一人分でいいなんて言っておいたのは間違いだったか。
 今更悔んでも後の祭りだ。少し危険ではあるが、明日あたりに周囲を気にしながら追加の食事を見繕うのもありだろう。
 修実は今の状態になってから、食事も排泄も不要になっていた。
それは一般的な生物とは活動のための燃料からして全く別のモノに変わってしまったということを端的に示しているように久信には思われる。
 その変化がいいものなのかどうなのかは分からない。
ただ、日常生活を送ることも難しい状態の姉にとっては、煩わしさから少しでも解放されることは悪いことではないだろう。
追われる立場にある今となっては買い出しに走らなくてもいいという状態は便利であるともいえる。
 楽観的に考えすぎか。
 自嘲気味に内心呟く。そう、久信たちは現在、様々な都市伝説系組織に追われる立場にあり、
この部屋に辿り着く前に追ってきた黒服のような者たちから危険人物としてマークされ、今は逃げ隠れる身である。
 友人である見塚昌夫(みつかあきお)と、彼が勤める警察内の対都市伝説専門の部署の協力がなければ、
今頃どこかの組織に捕まっているか、討伐されていたのかもしれない。
「そりゃ面倒な状況になったもんだな、とは思うけどさ。だからって謝らないでよ。それなら俺なんか何度謝ったって足りないんだから」
「……ごめんね、ありがとう」
 小さい謝罪と感謝の言葉に頷くだけで応えて、久信は湯気を上げた薬缶の火を止めた。
「何にせよ、気を付けないとな。警察も大っぴらに俺たちを庇えるってわけじゃないんだし」
 その理由は久信たち姉弟が追われている理由と同じものだ。
「面倒なことに、追われる理由については何も言い訳できないから」
 そう、
「修実姉のせいで町一つが壊滅したっていうのは、結局のところ否定できないってのが性質が悪い」
 修実はダルマのような体を小さく震わせて、もの悲しげに眉を曇らせた。


愛玩するのに都合のいいダルマ娘設定!

警察関係の描写は明日君たちが上の立場に立つ前の話ってことで


あくまで聞いた話だが……


辺湖の高校に通う少女が恋人の住んでいる南区のアパートを訪ねた

「ごろーちゃん、来たよー」

夏休みに入って以来、彼に連絡を取ろうとしても一向に返事が無かったのだそうだ

合鍵を使って部屋へと入った時、少女は部屋の異様さに気づいた
ベランダ側のガラス戸はカーテンが閉められており、隙間から光が漏れないようにガムテープで目張りされていた
カーテンの無い窓は新聞紙や布で覆われ、テープで幾重にも塞がれていた

「ごろーちゃん? ……?」

あまりの暗さに照明をつけ、少女は恋人の部屋をうかがった

部屋の四方の壁には大量の写真が貼り付けてあったという
それらは恋人だけが写っているもの、少女と恋人が写っているもの、恋人と同じ高校のクラスメイトと思われる人達が写されたもの
夕暮れの河川敷や、校内の廊下、車の全く通っていない道路といった、人の写っていない風景だけ撮影されたもの
といった様に写真の内容は雑多だった

しかし、ある一点において共通していた

どの写真にも、赤い服を着て赤い帽子を目深に被った背の高い女性が写り込んでいたのだ
女性の顔はよく分からないが、長い髪が印象的な女性だ

少女はひどく驚いたが、そんな中、恋人の机の上に彼によるものと思われる手書きの紙を見つけた

「私は ******と契約する」

紙にはそう記されていたが、肝心の契約した対象と思われる部分が血と思われる褐色で塗り潰されていた

少女は不気味なものを感じて、彼の部屋から飛び出した
後に少女が語った所によると、その時、背後から何かの視線を感じたのだそうだ
また、少女と恋人が写っていた写真は、以前デートで行ったことのある場所だったというが
赤い女性には見覚えが無いし、デートの時にその女性がいたという記憶も無く
そもそも、あの写真は誰が撮影したものなのか分からないのだという

その後、警察が立ち入り捜査をおこなった所
浴室の排水口内部から、女性のものと思われる大量の頭髪とともに
恋人の筆跡で「契約は失敗した 連れて行かれる」と書かれた紙片が発見された

結局、彼がいつから居なくなったのかは不明のままだった
失踪届が出されたものの、その行方は未だ分かっていない

男は一体、何と契約したのだろうか


あくまで聞いた話だが……

コドクの人乙でーす
警察関係者には各組織と繋がってる人もいると思われるので網の目を掻い潜って逃げる算段ですか
そしてとうとう(記憶が正しければ)誰も手を付けなかったアレに話が及ぶのかと妄想が止まりません

女性黒服化した少年の人も乙でーす
精神は肉体に影響を受けると聞く…ご愁傷様です
組織の黒服の女性構成員は何かこう肉食系のイメージがあるんですが直球どストレートな印象です(特に最後に出てきた女子黒服)
都市伝説を狩る黒服たちにもこんな日常があるのかと思うと事が単純でないのが明確になるですね

単発八尺様の人も乙です
こう読むと切ない系の印象が強いのですが少年に八尺様からの悪影響はなかったのか
そもそも八尺様の心霊的特徴は少年と生き別れてから発現すたのではないかと考えると
この話はほんのり系の香りを漂わせながらも背中がうすら寒くなるものを感じます

メリーの人…ああこれは俺のだ

ルルルの人も乙です
この本田さんのシニカルながらもウィットの効いた語り口といい
独特のテンポといい、いい仕事をしてくれますね

       _({})
      ノノノ小ヽ  
    川`;ω;´)  < シャア! シャアなのね!! お前なんでしょう!!

    ,ノ゙゙゙゙゙ハヽ、
    `~ェ-ェー'′

本田さんのどこか気だるげな雰囲気(失礼)は人形師特有の憂鬱なのだろうかと色々想像膨らみますね

あくまで聞いた話だが……の人乙です
何と契約したのか
そして何を条件に契約することに決めたのか
そんなところが気になりました。


>>799
>>誰も手を付けなかったアレ
が何なのかいまいちわからない察しの悪い頭で申し訳ない。
でも、おそらくそのアレには手を付けることはなくぬるりとお話は進んでいくものと思います


 湯を淹れたカップラーメンを持ってちゃぶ台に引き返しながら、久信が軽く袖を振ると、振られた服の袖からは細長い生き物――蛇が飛びだした。
 いい勢いで飛び出した蛇は、その勢いのままダンボールの中へ飛び込んだ。
 蛇は久信がちゃぶ台に辿り着くまで箱の中でゴソゴソ動いていたが、久信が腰を下ろすと同時に、箱の中から折り畳まれた一枚の紙を咥えて出てくる。
「よし、よくやったぞ」
「久くん? あまり下品な使い方は感心しないわよ」
「これも蛇使いとしての訓練だって」
 姉に適当な返事を返して久信は蛇から紙を受け取る。
 この蛇は今日追っ手から逃れるために使った蛇や修実を背に縛っていたものと同じで、蛇神憑きとして、久信が使役しているものだ。
 久信たち小野家は、友人である昌夫の見塚家と似たような系統の家で、血筋そのものに都市伝説が契約されている。憑かれているといってもいい。
 主に動物に類するモノが付いているその家系群を総称して憑き物筋といい、見塚家には犬が、そして小野家には蛇が憑いている。
 縄とびの縄ほどの太さの蛇は、髪を渡し終わると、床へと降りて行った。
 それを目の端で見送りながら久能は折り畳まれていた紙を広げた。
 ちゃぶ台の上に広げられたそれは、この町の地図だ。
 さて……。
 地図上北にある山のあたりにカップラーメンを置いて、ラーメンが食べごろになるだけの時間をかけながら町の地図の内容をおおざっぱに頭の中へ入れていく。
 今日どこかの組織の黒服に追いかけられて逃げ回っていたのは駅の周囲、地図においては南の方面にあたる。
 地図記号からみても、一番この町の中で賑やかなのはこのあたりだろう。
 ……この町の中で逃げ隠れしている奴を探すとしたら。
 考えながら、まだ少し硬さが残るラーメンをすする。

「どう? どこか怪しそうな所はあった?」
「……新幹線を使ってさっさと遠くに逃げずにわざわざこの町で下りたってことは、
この町からどこか遠くに行くことができる手段を用意しているってこと
……だと思うんだけど、転移系の能力ならわざわざこの町まで来る意味もないし、
修実姉もあの組織にはそういう能力の契約者はいないって言ってたよね。
だとしたら、移動系の能力と考える、と……そうだな、ちょっと考えがあるから明日あたり少し調べてみよう」
 昌夫にばれたら怒られそうだけど。
 内心でそうつぶやいて、地図から目を話し、修実に目をやる。
 先程ちゃぶだいを降りた蛇はいつの間にか修実のところへ移動していた。
 じゃれつくように姉の胸元を這い回っている蛇は、使役者である久信の動きにも気付いていないように見える。
「やっぱり蛇は修実姉によく懐くな」
「この子たち、久くんと同じで優しいし、それに私が久くんを好きなのを分かってるから安心してるんだよ。それと、ほら、私は力が少し強いから……ね」
 蛇を慈しむように眺めていた修実は、力を抜いた笑みを浮かべた。
 たしかに、蛇神憑きが使役する蛇はその使役者の性格を多少なりとも反映する。
 ならば蛇が修実に懐くのも道理だ。加えて、修実の場合はそういう性格上の問題以上に純粋な力関係がかかわってくる。
 同じ蛇神憑きでも、久信と修実とでは大きな力の差がある。
 修実は小野家の歴代の誰よりも大きな力があった。
その飛び抜けた力は保持者である修実自身でも制御できなかったほどのものであり、そのせいで修実はずっと家族と離れて暮らすことになった。
 あんなことになると知ってたら、離れて暮らすようなことは絶対にしなかったのに。
 久信は何故姉、小野修実が町一つを壊滅させたモノとして追われるに至ったのかについて思いを馳せた。


     @

 今でこそ両腕両足を無くした不具の状態だが、元々の小野修実は生まれた家は代々蛇神憑きであり、
生まれた子はその瞬間から契約者であるという、そういう家系であることだけが特殊ではあったが、それ以外については五体満足な普通の人間だった。
 小野家に生まれる子は皆蛇神憑きの契約者ではあるが、その能力自体には個人差がある。
久信は家系的に見れば、歴代の中でもごくごく平凡な力を持って生まれた。その一方で、姉は規格外の力を持って生まれていた。
 それが彼女にとっての悲劇だったと言っていい。
 生まれたその時から家族の誰よりも大きな力を持っていた修実の力は、成長すると共にその力を段々と強力なものにしていった。
 自分自身でも力の制御がままならなくなるほどに。
 ――当時八歳。そのままでは、修実は蛇神憑きの力に飲まれてしまう。そういう運命にあった。
 修実自身のことは大事にしてはいても、彼女が持つ力をもてあまし気味にしていた両親は、
小野の家が蛇神憑きの家系として何度か仕事の協力をしたことがある、封印技術に長けている都市伝説系組織へと修実を預け、
その組織が持つ技術をもって、修実の大きすぎる力を封印、あるいは安定化させてもらえるよう頼んだ。
 寂しくはあったが、姉がこの咲も生きていくためだと思って久信は姉が里子に出されるのを見送ったのを覚えている。
 家を出て行った後も、里子に出された先の組織で厳しい修練を積んで、力を制御できるようになっていった姉を月に一度あるかないかの帰郷の折に久信は見てきた。
 月日が流れ、久信の方が修実より背が高くなる頃には、もうよっぽどのことが無い限りは修実は自分の蛇神憑きの力に飲まれるようなことはないだろうほどに、力を安定させていた。
 ただ、その代わりとでもいうように、修実の心と身体の安定は崩れていっているように久信には見えた。
 あの頃は全部うまくいっていると思ったんだ。
 しかしそれは勘違いだったと、全てが終わった今になら分かる。両親も、他、組織と懇意にしていた者たちも知らなかったことだが、
修実が里子に出されていた組織は、あまりまっとうな組織というわけではなく、裏では都市伝説の力を使って密売や殺しを請け負っていた。
 修実も、争い事を好まない修実自身の性格は無視され、あるいは全てが嘘というわけではなかったようだが、殺人を行うことによって誰かが救われる。
というように言いくるめられて利用されていた。
 力の制御を行えるようになるまでは外の世界には出すことができないという名目で、
組織と、そのお膝元の町、そして実家の間を往復する事しか許されない閉鎖された環境の中、
普通の義務教育を終えた者ならば誰もが持つような現代の常識に触れる機会もなかなか与えられないまま、組織はお膝元の町を守る警備役として、そして暗殺のための道具として修実に力を振るわせた。
 蛇神憑きの力で蛇を使役して行う殺人は、見た目がただの咬傷に見えるため、都市伝説絡みの殺人として扱われることも少なく、
暗殺に向いた能力だったことも、彼女の人生に災いしたのだろう。暗殺を繰り返すうちに、修実は心の方が参ってしまったのか、里帰りの度に、やつれていった。

 久信が何かあったのかと尋ねても修実は何も話してはくれなかった。
久信は姉は自分のような凡俗には分からないようなストレスのかかる生活を送っているんだろうと考えて一人ひねくれもしたものだ。
 しかし、そんな妬みも収まってきた高校生活も終わろうという頃、
姉の疲弊が見た目にも顕著になり、久信も、そして幼少の頃はどう扱ったものか困って、まるで腫物を扱うように関係して里子に出してからはほとんど我関せずだった両親も、実家に帰ってくるよう勧めた。
 そして、そのついでとばかりに修実に対して久信は告白をしたのだ。
 離れたくない。そんな顔をしなきゃいけない生活からは離れて、帰って来てくれ。
 我ながら赤面ものの女々しい告白だが、そう言われた時の姉の嬉しそうな顔を、久信は覚えている。そしておそらく、一生忘れない。
 十数年も実家から放り出されて、やっと家族にかけてもらえた、帰ってきて欲しいという言葉。二十歳になろうかという姉が童女のように喜んでいた。
それほど、姉は帰りたがっていたのだと、その時になってようやく解った。
 もっと早くに気付けていたなら、と今でも思う。もっと早くに気付いていたのなら、あるいは結末は変わっていたのかもしれない、と。
 姉は、実家に戻るようにという誘いに頷いて、これまで組織から受けてきた恩を、最後に組織を長年苦しめているという都市伝説を退治することで返したら戻ってくると言った。
 これが最後の往復だと言って、組織の監視役と一緒に実家を出て行った姿。それが、久信が知っている五体満足な姉の最後の姿だった。
 いつまで経っても帰ってこない修実を心配して探しに行った際、壊滅した町のありさまと、ようやく発見した変わり果てた姉自身から聞かされたことだが、
修実が離脱すると知った組織は、内部の情報を知りすぎている修実を危険と判断して、罠にかけ、殺害しようとしたらしかった。
 この組織は山奥の町の中にあり、長い年月をかけてお膝元の町に根差していた。
裏で行っていた様々な犯罪行為も表沙汰になることがなかったのは、町全てが組織の一部として彼らが行うことを黙認し、
彼らにとって有益であるように組織の噂を歪曲して周囲の町へと伝えていたという、そのような下地があったためだった。
 修実という、いわば組織の後ろ暗い仕事の代表格になりつつあった者の離脱は組織にとっても、そしてその組織と共犯関係にあった町の人々にとっても脅威となることだったのだ。
 自分たちの悪事が露見することを恐れた彼らは、結局、町ぐるみで修実を殺しにかかった。
 組織が手こずっていたという討伐対象の都市伝説は組織側が用意した都市伝説であり、
これの討伐に向かっていた修実は、その都市伝説と、そしてともに討伐に向かった仲間だったはずの組織の構成員の手によって攻撃された。
 何とか抗って町まで逃げた姉はこれまで警備役として町を守ってくる過程で決して知らない仲でもないという程度には関係を重ねてきたはずの町の人々に騙され、
捕えられてしまい、逃亡ができないように修実の両手足は切断され、その上で組織の契約者たちが攻撃を仕掛けた。
 裏切りに対してショックを受けて両手足まで落とされた状態で尚、修実は組織の契約者たちを退けたが、
最後には疲弊したところに封印を受けてしまい、あとは衰弱して死ぬのを待つばかりにされてしまった。
 その封印の中で、修実は否応なく自分が全てに裏切られてしまったのだということを納得させられ、ついに力を暴れさせた。
 封印の中で荒れ狂った力は封印を綻ばせ、その綻びからは瘴気が溢れだした。
 毒と瘴気は町ごと組織を壊滅させ、修実を探しに行った久信が封印を見つけた時には、
町は元々人間だったと思われるものたちの残骸を残してゴーストタウン化しており、修実は半ば都市伝説のような存在となって、意識も朧な状態だった。


     @

 修実姉に正気を取り戻してもらって、一体何があったのかを訊いて……。
 数週間の時間が経ってもなお、鮮明に思い返すことができる町の惨状とひどい状態だった姉を思い浮かべていると、横から当の姉の声が飛んできた。
「久くん?」
 呼びかけに顔を上げると、彼女は眉を寄せ、
「難しそうな顔してたよ?」
「なんでもないよ」
 修実の過去のことを考えていたとも言えず、久信はあたりさわりのない言葉を返す。修実は何かを察したように、力なく言葉を零した。
「……ごめんね」
「……」
 何か言葉を返した方がよかったのだろうが、久信は応じる言葉を持たなかった。たとえ何か言ったとしても、
この姉には気遣いであると瞬時に察されてしまうだろう。昔からそうだった。
里子にだされてからは月に一度、会えるか会えないかという関係だったのに、姉は久信が昌夫とケンカした時や、
言いづらい悩みを抱えていた時、見事に見抜いてきた。
 裏切られようとしていることには気づかなかったくせに。
 妙なところで鋭いことのある姉だ。こういう時、姉弟というのは一緒に過ごした時間の量ではないのだろうと思いもする。
 ああ、もう可愛いなぁ。
 そんなことを思っていると、口元ににやついた笑みが出かかる。
 修実に見咎められて今の考えを話すことになるのは照れ臭い。
久信は少し麺が伸びたラーメンを、カップにのめり込むようにして食べながら、先程までの物思いに思考を引き戻す。
 壊滅した町。毒と瘴気でひどい有様になったそこで、修実以外にただひとり、生き残った男がいる。
その男こそ、久信たちが自分たちが追われる立場にありながら、こうして危険を冒してまで探している相手であり、修実を封印した男であり、組織の主に黒い部分を統括していた重鎮だった。
 壊滅した町から力を使い果たして仮死状態で封印されていた修実を助けた後、実家に姉を連れ帰ろうとしていた久信は、
修実にことのあらましを聞きながらの道中で、修実は都市伝説に飲み込まれて町を滅ぼした化け物として、
久信は封印処理されていたはずの化け物を解放した極悪人として、それぞれ捕獲対象に指定されているという事実を昌夫に聞かされた。
この情報の発生源は、当時都市伝説界隈で話題になっていた事件の町から唯一生き残った男として噂になっていた男。姉の殺害指示を出した張本人。
 名は、郭正吾(くるわ せいご)という。

 おかげで今や俺たちがお尋ね者だ。
 とは言っても、町を滅ぼしたのは姉であるというのは確かだ。そう見ると町を壊滅させた化け物、という姉弟が追われる理由は正しい。だが、それでも彼女は被害者である。
 いや被害者は修実姉1人で、他のは皆まとめて自業自得だ。
 憤りながらそう言った時は、さすがに姉にも昌夫にも苦笑された。
 それでも全ての責任を修実に押し付けて自分はのうのうと逃げている郭正吾を許せないというのは共通した思いだった。
 郭正吾も追っ手がかかっているということは気付いているらしく、町が壊滅した情報とその犯人について広めた後は、
この町に雲隠れしているようだ。隠れている彼を追って捕え、実家を通し〝組織〟と呼ばれる超巨大な都市伝説集団に連絡を取って読唇系の能力者を使って真相を明らかにすることが久信たち姉弟の目的だった。
「逃げられる前に、絶対に郭正吾を捕まえて、俺たちの濡れ衣を全部とっぱらう」
「うん」
 修実が頷く。彼女の足元ではいつの間にか蛇が掛布団を広げていた。布団の中に半ば埋もれるようになりながら修実は言う。
「いつまでも難しいことばかり考えていてもしかたないわ。今日はもう疲れたでしょう」
「ああ、まあ」
「うん、だから、ね? もう寝ましょう?」
 そう言って、修実は自分の体の下にある、部屋に一つしかない布団に誘ってきた。
 いくらダルマ状態になって食事が要らなくなったとはいえど、睡眠が必要なくなったわけではない。
布団が一つということは、一緒に寝ることを前提にしているのだろう。
 昌夫の奴……。
 部屋の手配をした友人に口の中でぶつぶつ言いながらも、実は少し嬉しいのは秘密だ。
 小さく咳払いをして、
「あーうん。そうだな。今日は追われて疲れたし、寝ようか」
 蛇を部屋の外に追い払い、姉を抱き上げる。外からは蛇と犬が戯れる鳴き声が聞こえてくる。
デバガメ役の犬でも用意していたんだろうか。今更隠すような関係でもないし、気にすることでもないだろう。
 そう割り切って、久信は昔には抱きしめられた記憶のある姉を、今は久信が抱きしめる。
 修実は悲しくなるくらいに軽く、だが、泣きたくなるほど温かい。
 危うく失ってしまいそうになった温もり。絶対にこれを失わない。布団を頭まで引き上げ、修実の温もりを感じながら、その胸に頬を押しあてる。
 肉付きがよくなって、顔が埋まってしまう胸の奥で、確かに心臓の鼓動が聞こえる。
優しい匂いも昔と変わらない。この人は確かに生きている。その事に暗視して、久信は一日中張りつめていた気を緩めた。
 頭を、ほとんどない腕が軽く叩く感触がある。
 深く呼吸するように、大きく息をする音が修実の肺から聞こえる。
 今、彼女はどんな顔をしているのだろうか。
「おやすみ」
 優しくかけられた声に促されるように、久信は眠りに落ちた。

急いで書きたいとおもいつつ、なかなか進まない事に悶々としますのう
暑さが悪いんや!

こんな状況になっている理由とか軽く説明しつつダルマの愛し方について深い考察を続けます
怒ると阿鼻叫喚おっとり系ダルマお姉ちゃん(蛇憑きヤンデる風味)
ちょっと要素多すぎないかしらね、これ

ぼく知ってるよ!
こういう秀逸な描写って黒の軍勢「上げて落とす」式の上げてパートに似てる!
続きが気になるけどこれからどうなるのか怖いよお!

コドクの人乙ですー
切な系姉弟泣けるやばい涙腺緩む
組織が敵に回るというなら俺は

乙でしたー

すまない。確認させてくれ
修実さんをダルマにした外道はいわゆるNo.持ちの皆さんがいる組織とは別の組織という認識でいいのでしょうか?

>>808
そ、そんなことないよ?!

>>809-810
この話の中で修実が暮らしていた組織は複数の作者さんが使ってる組織とはまったく別の組織です
固有名詞決めておけばよかったんですが、もう滅びた舞台背景程度にしか考えてなかったので名無しのままで書きはじめちゃいました。
複数の作者さんが使ってる組織を出す場合は〝〟で囲って普通名詞と差別化します

皆さん乙なのよね
コドクの人のお話読んだのよね
しっとりした伝奇小説を読んでる気分だったのよね
でも>>808を見て印象ががらりと変わってしまったのよね


そういえば近所のスーパーで山崎ロールが売られなくなったのよね
悪夢なのよね…


(推奨BGM ttp://goo.gl/aWXn4z



    あなたを ずうっと見てたー

    あなただけを ずっと思ってたー

    わたし の この思いよ 燃え上がれー

    貴様のー もとへとー とどけー


   (以下、いびきのような不明瞭な台詞が続く)





真田初実、22歳、独身
都市伝説「隙間女」である彼女は、生活費を稼ぐため東区のスーパーでパートに勤しむ
日々のルーチンに埋没していきながらも、どこか満たされないものを感じていた彼女はある日、衝撃的な出逢いを果たす

彼は東区にある高校生…
会話したわけではない
そう、それは一目ぼれだった
初実の心は激しく燃え上がった
どうしても少年の後を追ってしまう
でもこの胸の高鳴りをどうする事も出来ない
そして気づけば、彼の私生活の覗き見が彼女の日課になっていた

『許せない…! 許せないよ、山田くん…』

きっかけは彼が隣の部屋の友人と見始めたAV
初実の胸中に少しの怒りと大きな悲しみ、そして爆発寸前の嫉妬心が渦巻いた

そして、彼女は

『許せないっ…! これは許されないっ…!!』

不覚にも実体化し、飛び出してしまったのだ
そして、その結果…

『人ん家に踏み込んだからにはタダで済むと思うんじゃないよ! 小娘だろうが落とし前つけてもらうからね!!』

彼の住むアパートの大家に目を付けられてしまった
あの場を逃げなければ、彼女は真っ二つに斬られていただろう

「わたし、諦めないから…だから、待っててね、山田くん…」

しかし
大家にも初実の恋を止めることはできない
彼女はお月様を見上げながら誓いを新たにするのだった



(推奨BGM フェードアウト)


高校から逃げるように帰ってきた
もう環希に捕まるわけにはいかんのだ
昨日の騒動の片づけをする必要もあるしな

と思ってもいるが、今俺がいるのは山田の部屋だ
俺達が高校に行っている間に業者が入ったようで、既に鍵は取り替えられた後だった

「どう考えても…」

人は入らない

俺は今、あの白い女が出てきた箪笥と書棚の隙間の前に立っている
昨日、たしかに女はここから出てきたんだ

だが
どう見てもその隙間は5cmにも満たない
人が入るスペースなんか、あるはずがない
あの女がここから出てきた時には不思議にも思わなかったが
時間がたって、改めてこうやって調べてみると何だか鳥肌が立ってくる

ちなみに今、山田はいない
あいつは用事があるといって、少し遠い場所にある喫茶店へ行ってしまった
東区の高校に通う奴のダチ公関係はあまり知らないが
何かの噂で、最近彼女が出来たと聞いた
もちろん本人に確認するつもりはない
もし本当だったとしたら、俺の繊細なハートに傷がついて嫉妬の炎が燃え上がるからな



とにもかくにも俺は今、独りだ
隙間からゆっくりと後ずさる

あの女は人間じゃなかったのか?
いや…しかし、幽霊とかそういうのではないだろうな
俺は担任が今朝のホームで言っていたことを思い出していた

教頭は白い女に抱き付かれて投げ飛ばされた
おまけに女の姿は、昨日この部屋に出た白い女の容姿と共通点が多い

俺は結局、昨日の夜の出来事を誰にも話さなかった
案外それで正解かもしれないな、あんな事件がそうそう何度もあってたまるかってんだ

ベランダに歩み寄る
ベランダのガラス戸は枠ごと替えられていた
普通こういう工事って数時間で終わるものなんだろうか
戸を開けると夕焼けに染まった田畠が広がっている
ここは西区なんだが、かなり北区に近い
工業地帯の区画とは違って、本当に静かだ


畠の向こうで何か白いのが踊っているような…

いや、気のせいだ、こういうのは気にしちゃいけない

俺はガラス戸を閉め、足早に山田の部屋を抜け、玄関のドアを預かってた鍵で施錠する
そして自分の部屋にまっすぐ戻って鍵をしっかりかけた
気にし過ぎが一番よくないのだ


ひつじさんたちをこちょこちょすると ひつじさんはくすぐったそうにわらうんだもんなあ

『えぬえぬえぬりんじほーそーでえええっす いえーい だれかみてるー!?』

ひつじさんのなかからかわいいくろいやぎさんがでてきたぞ
やぎさんったらなんかもぐもぐしてる
あ わかったぞお
それはしろやぎさんのおてがみだなあ
くろやぎさんはくいしんぼうだなあ

『えぬえぬえぬ りんじほーそー ああん❤ やだあ もうっ きゅんきゅんしちゃう❤』

おい、なんかうるさいぞ
ひとがせっかくひつじさんとあそんでるってのに

『こちらは ああんっ❤ えぬえぬ やんっ❤ えぬのお りんじほーそー んっ❤ でーすう❤』


「うるっしゃいわっ!!」

あまりの雑音に飛び起きた
一体何が起きたってんだ!?

眩しい

何だこれ
テレビの光か?
点けっぱなしで寝てたのか?


『NNN臨時放送でーっす❤ 今日はぁ、なんと! 犠牲者がゼロなのでーす ぱんぱかぱーん♪』

うるさい
なんでテレビが点けっぱなしなんだ
リモコンはどこだ

『というわけなのでぇ 今夜はナレーターのお姉さんもお仕事ありませーん いえーい!』

リモコンがない
くそが、なんでリモコンがないんだ[ピーーー]
あ、そうだ
コンセント引っこ抜けばいいんだ
俺ってアタマいい

『そんなわけでぇ 今夜はぁ、特別に はぁん❤ お姉さんのひとりエッチを放送しちゃいまーす❤❤』

なんでコンセント抜いたのにテレビ消えないんだ
ねえどうして
ああ、うるさいうるさい

そうか
簡単なことだ

テレビぶっこわしちゃえばいーんだ

俺はテレビを掴むとそのまま持ってげんかんに行った
玄関に置いてあるごしんように買った金属バットをもった
そのままはだしでドアからでた

ろうかをあるいて、かいだんを下りた

『それじゃあ まずぅ お姉さんの 大事なところに いっぽんめ 入れちゃいまーす❤』

かいだんを下りて、どうろに出た

『あっはあん❤ 結構カンタンに入っちゃったぁ❤』

アスファルトがひんやりしてて気持ちいーな
おれはテレビを地面にたたきつけた
まだ壊れないや

『やだっ 先っぽつまんじゃやーだぁ❤ あんっ❤ だめだってばー❤❤』

「ふぬぅあぅるぅおりあじうぅじゃいぃ…」

金属バットを振り上げて、テレビを叩く、叩く、叩く、叩く

『じゃあ にほんめ いっちゃいまーす❤ にほんめめめめめめめめめめめめめめ』

「ぬうわらはうんぐりぃぃぃ」

たたく、たたく、たたく、たたく、たたく、たたく、たたく

『おい やめろ! [ピーーー]ぞ! 今すぐそれをやめろ さもなくば お前の』

「ぬっふぬっふぬっふぬっふ」

ずっとたたいてると、やっとテレビは何もいわなくなった


「お、おい、大丈夫か…?」

後ろから声がした
ふりむくとスーツの男の人が立ってた

「うんん、らいじょおぶう」

きちんと、おこたえしたよ

「いや、しかし…君は何をしていたんだ…?」

「知らないおじさんについてっちゃだめって、おかーさんが言ってた」

「は?」

「おかあさんがぁ、言ってたもぉん…」

このおじさん、なんでぼくがおこたえしたのに こわいかおするの?
おかあさん、ぼくがなにかわるいことしたの?
よこを見ると、おかあさんはいなくなってた
おとうさんもいなくなってた

きゅうにこわくなった
こわくなって走って逃げた
じぶんの部屋に走って逃げた
布団をかぶって震えていた
何が怖いのかも分からないまま

アラームの電子音に起こされた
何と言うべきか、寝ざめは最悪だった
まるっきり覚えてないが、悪夢でも見てたんだろうか

身支度をしながら気づいた
部屋からテレビがなくなっている
岸田さんに譲ってもらった液晶の奴だ

まさか
昨日の今日だ
ついでに言うと一昨日の昨日の今日でもある
ついに俺が寝ている間にあの白い女でも化けて出たんだろうか
それとも泥棒が入ったとか?
一応確認したが書棚に隠してある貴重品袋は無事だったし、見た限り盗まれたものは何もない
なぜテレビだけがなくなっているんだ?
薄気味悪いな

ひとまず一階の食堂に朝食を取りに下りる
いつもの質素な納豆定食を取り、既に来ていた山田の横に座った
思いの外山田はげっそりした顔でオムライスをつついていた

「よお、眠れたか?」
「あまり…」

山田の夢にあの白い女が出てきたのか聞くつもりはない

「アンタ、昨日テレビを放り捨てたりしなかったかい?」

そうこうしてると、おばちゃんが俺に声を掛けてきた


「え、テレビ?」

思わず聞き返した

「どうもねえ、アパートの前にテレビが打ち捨てられてたんだよ
 しかも何度も叩き壊したみたいで、破片が飛び散ってねえ
 片づけがすごく大変だったんだよ」

「いや、覚えがないな…」

やば、声が上ずってる
記憶はないが、どうも心当たりがある感じがする

どうしような
俺が夢遊病のように自分のテレビを叩き壊したってのか?
それが本当だとしたら、ちょっとこれはメンタル的にやばいってことになるのかな?

おばちゃんが機嫌悪そうに頭に手をやってるのを見ながら昨日の事に思いを巡らす
記憶がないのは本当だ
ただ、その捨てられていたテレビを確認する勇気は今の俺ににはない
勘弁してくれよ、もう


(以下、未完)



わが町のハンバーグの人に感謝orz




前原いそのからの一言 (※工業高校国語教諭、26歳独身、彼女いない歴と年齢が同じ)

 「夏バテだとお!? マック行ってクォーターパウンダー買って喰えっ! オラッ!!」



おつでーす
夜中の壊れっぷりが日中のギャップといい感じ

R-18指定書くの忘れてた
もう遅い、後の祭り

この手の臨時放送のアナウンサーは男っていうイメージがあるんですよ……
すげえ女声でしゃべってるアナウンサー(男)を想像しちゃったんですよ……
そりゃテレビだって壊したくなりますって

R-18指定書くの忘れてた
もう遅い、後の祭り

かつて、世界を二分する戦争が有った。
原因は、一部の人間が都市伝説の存在を公表し、その圧倒的暴力を背景に世界制服に動き出したことからである。
当然、その事件で起きた情報の流出はすぐに揉み消され、あとはその一部の人間も鎮圧されるだけと思われていた。
しかし、彼らは都市伝説を兵器として世界中のあらゆる場所に売り飛ばしていた。
そうして混乱は連鎖し、世界中に燻っていた火種に着火していく。
考えても見てほしい。
都市伝説の力は入手が容易で、安価で、使用した証拠も見つかりづらく、持ち運びが簡単な超高火力兵器だ。しかも操作に必要な資質を持つ人間は探せばどこにだって居る。兵器として見るなら、都市伝説は使用の為に特別の教育が要らないという利点もある。
これを求めたのは当然ながら今まで都市伝説の恩恵を秘密裏に享受していた大国ばかりではない。
たとえば自治を求める少数民族。
たとえば性急な革新を求める革命家。
たとえば反乱に怯える独裁国家。

そして

世界中に戦乱の嵐が巻き起こった。

近代兵器が通用しなかったかと聞かれれば答えは否だ。
確かにミサイルやマシンガンは都市伝説や契約者に有効だった。
しかしそれでも、無限に湧き上がる心の力を前にして、近代兵器を運用し続ける為に必要な資源は瞬く間に尽きていった。
長きに渡る戦争やテロで地球は荒廃し、一部の契約者の力で大陸の形さえ大きく変わってしまった。
現在西暦3500年。人類は衰退していた。

「名前は?」

抜けるように青い空と海から吹く涼しい風。
活気あふれる街の喧騒の中心では、椅子に座った男の前に長い行列ができていた。
ここは都市伝説国家『ソドム』の傭兵募集所である。
この国はかつて地中海と呼ばれた場所のすぐ近くに有り、契約者の国王が治める封建国家だ。
隣国である人間国家『ヤベシュ・ギレアド』と長く小競り合いが続いており、そのために現在は傭兵を募集している。

「雷堂エル」

そう答えた者はまだ表情に幼さを色濃く残している少年だった。
艶やかな黒い眼と髪、そして黄色の肌はこの辺りでは珍しい東洋系であることを示している。
背中には羽の彫刻が入った剣をぶら下げている。

「解った。とりあえず支度金だ」

テーブルに座った男がリストにエルの名前を書いて金貨の入った袋を彼に渡す。
彼はそれを受け取って中身を確かめる。

「次のやつ!」

「へへっ、オレだオレだ」

エルの後ろに並んでいた男が前に出る。
彼はすれ違いざまにエルの顔を見てニタリと笑った。

「可愛い顔してるじゃねえか。その背中の剣を握るより俺の槍を握ってもらえねえかな」

エルは男の持っていた槍を掴むとその腕に力を込める。
次の瞬間、槍から火花が散り、男は白目を剥いて倒れる。
周囲の人間が小さく悲鳴を上げる。

「ありゃあ契約者か……」

「おっかねえな、あんなガキが契約者かよ」

「お前知らないのか? あのガキここいらじゃあわりと有名だぜ?」

「こちとら流れてきたばかりの傭兵だ。知るわけねえだろ」

「じゃあ教えてやるよ、あいつは……」

人間国家と異なり、都市伝説国家に於いては契約者は迫害の対象にはならない。むしろある種の畏怖や崇敬の対象とさえなっている。多重契約や、神話級の都市伝説との契約が貴族のステータスとして持て囃されている位だ。
当然この国の王も神話級都市伝説『バール』の契約者である。

「エル様、ここに長居しても余計な混乱を招くだけです。帰りましょう」

エルの剣が突然声を発する。
周りの人間はぎょっとした瞳で背中の剣を見つめるがエルはどこ吹く風だ。

「分かっているよ」

剣の忠告通り、エルは彼らには目もくれずに宿屋へと戻る。
ここを経営している老夫婦は行儀にはうるさいが細かいことまで良くしてくれていて、彼はこの宿が気に入っていた。

「お帰りなさい、今日はどこまで?」

店の女将さんが愛想よくエルに尋ねる。

「傭兵の募集をしていたから行ってきた」

「ふぅん、エルちゃんならそんな血なまぐさい仕事なんてしてないで冒険者でもやったら良いのに」

「冒険者は……嫌だ。自分で見つけたものを独り占めにできないから」

「そうかい、うちの宿から有名な冒険者が出てくれれば助かるんだがねえ」

この世界には様々な場所に人類が衰退する以前の機械文明の遺跡が点在している。
戦乱によって破壊される以前に存在した機械文明の品々が残っていて、それらは高値で取引されるのだ。
冒険者はこの遺跡に潜り込んで発掘した品々を売りさばくことで生活している。
勿論、野生化した都市伝説との戦いも有るが、発見した品の一部を上納することと引き換えに身分を国によって保証されており、少なくとも傭兵よりはまともな仕事と見なされる。
冒険者は国の指定した『冒険者の宿』で生活を送ることを定められ、有名な冒険者を泊めている宿には補助金が出る仕組みだ。

「確かに……そうだよね。でも……うん」

冒険者になった自分を思い浮かべ、エルは困ったような表情を浮かべる。
すると彼の背負っていた剣が光に包まれて女性の姿へと変化する。

「女将さん、困ります。エル様は女将さんに恩義を感じているんですからそのようなことを頼まれては断りきれません」

彼女こそがエルの背負っている剣の正体、都市伝説『サンダーバード』である。

「あら何時の間に」

女性は人間にはあり得ない青い髪をしていた。
雪のように白い肌を幾重にも薄布を重ね着して覆っている。
彼女はその赤い大きな瞳で宿屋の女将を見つめた。
唇を若干尖らせて不機嫌そうではあるが、本当に怒っているようにも見えなかった。
人間で言えば二十歳前後、エルと並べば姉弟に見えなくもない。

「サライ、止めろ。僕の道は僕が決める」

「申し訳ありませんエル様」

「サライちゃんったら本当に過保護ねえ」

女将さんはカラカラと笑う。

「も、申し訳ありません……」

サライも恥ずかしげに俯いてまた剣の姿に戻ってしまった。

「じゃあ部屋で休ませてもらうよ」

「ええ、綺麗にしておいたからゆっくり休んでね」

「ありがとうございます」

エルは部屋に篭って横になり、ゆっくりと眼を閉じた。

翌日、彼は傭兵たちの列の先頭に立っていた。
はるか向こうには人間国家の小城が立っている。
手にあるのは剣ではなく、投石紐。
内側に金属糸を織り込んだ特別製である。

「かかれ!」

攻城兵器を伴って傭兵たちで組織された先鋒が鬨の声と共に城門へと殺到する。
対する城の方は不気味なほど静かだ。
エルが見上げると城壁の上に、自動小銃で武装した兵士が立っていた。
彼は危機を察知して後ろに下がり、即座に能力を発動させ、電磁バリアを貼る。
次の瞬間には彼の居る周囲に大量の銃弾が降り注いだ。
エルの隣に居る兵士は次々チーズのような穴ぼこだらけの姿へと変えられる。
戦意において劣る傭兵たちは他の兵が次々に倒れる様を見てすぐさま逃亡を始めた。
当然、エルも自らに迫る弾丸を逸らしながら迅速に撤退を行う。
そしてすぐに戦場に静寂が訪れる。

「誰か、あの城の門とあの面倒な機械文明の兵器を突破できるものは居らんか。褒美は金貨10。協力して山分けしても良いぞ」

艶やかな緋色の鎧に身を包んだ貴族の女が傭兵たちを見る。
エルは女の目の前に出て、片手を広げた。

「15」

「む?」

いきなり現れた子供に女は困惑する。

「金貨15だ」

「……ああ、お前が噂の子供か
 それは困る。私の晩酌代が無くなるからな。12でどうだ。豪勢に晩飯もつけるぞ」

「じゃあそれでいい」

「では、後はお手並み拝見だ」

エルは静かに頷く。投石紐にバチバチと電流が走った。

「電磁投射!」

エルは投石紐を用いて美しいフォームで鉄球を投げつける。
サンダーバードの力で帯電した投石紐と鉄球が互いに磁力で反発し、単なる投石を超えた勢いで遥か彼方の城門へと、その上の兵士へと、そしてその閂へと突き刺さる。
一撃、また一撃、稲妻を帯びた鉄球が城を揺るがす。
そして十分もしない内に轟音をあげて城壁の一部が崩れ落ちていた。

「随分、風通しが良くなったな」

貴族の女はカラカラと笑う。

「こんなものでいかがでしょうか」

「うむ、悪くない。雷堂と言ったな、今日は休め、これ以上働かれると出す金が無くなる」

一陣の風が吹いて既に意味を失った門が力無く開く。

「さてと、諸君。諸君らの中にこの少年並みの武功を立てようと思う者は?」

その問に応える者は居ない。
既に皆が皆、がら空きとなった城壁に殺到していたのだ。
女は満足そうに笑うと指を鳴らす。
すると男の背後にワイバーンに乗った契約者が三人並ぶ。

「征け、敵の契約者はお前たちに任せた」

三人の契約者達は傭兵たちの後ろに続いて空から城を襲う。

「雷堂エル、約束の金だ」

女は袋をエルに手渡す。
最低限の金は稼いだ。
これ以上戦う理由の無いエルはその様を只々見送った。
その日の内に戦には決着がつき、小城は占拠された。
だが占領軍の中にエル達の姿はない。
彼らは既に川沿いに新しい国へと旅を始めていた。

「このまま川を下っていけば穀倉地帯です。貿易の中心地ですから」

剣状態のサライの言葉はどこか浮かれた調子だ。

「そうか、この辺りまで来ると野生の都市伝説も居ないな。平和なもんだ」

「野生の都市伝説は、街には入れない契約ですからね。近づいても意味が無ければ近づかないでしょう」

人類が大きく衰退した時、一部の知恵を持たない都市伝説は人を絶滅させかけた。
人の感情が都市伝説の力の源であるにも関わらずだ。
そこで、当時の力ある契約者と都市伝説は、人間と都市伝説の間に一つの契約を結んでいる。
これを大契約と呼ぶ。
大契約は人が作った街の中で、都市伝説が人を襲うことを禁止している。
神の名を持つその都市伝説によって規定された契約は、未だに都市伝説全体を縛っている。
人と契約すればその人間を通して町中で暴れることもできるが、契約者の指示に従わなくてはいけない契約を、町中で好き勝手したがる都市伝説がやろうとするわけもない。
無論、契約者が都市伝説を使って町中で乱暴狼藉を働いたことも多々有ったがそれは同じ人間の契約者によって鎮圧されることで秩序を保っていた。

「お腹減ったなあ」

「昨日の晩、ご飯をごちそうになれば良かったじゃないですか」

「そんなことしてみろ、僕は今頃軍の仲間入りだ。こうやって旅をすることもできなくなる」

「別に十年くらい腰を落ち着けてもいいじゃ無いですか。エル様はまだ子供なのですから」

「すぐに大人になる。そして何時か老人にもね。その前に僕は行かなくちゃいけない
 お前の言うアメリカって所にね。そこに行かなきゃ父さんの言っていたことが本当かどうか確かめられない。アメリカ大陸が本当に存在するかどうかを僕は調べるんだ」

「そう言っていただけると私としてはありがたいです。私もアメリカに戻って私の部族の人を救わなくては行けないものですから……」

一人と一振りは今日も旅を続ける。
その先に何が有るかは分からない。
只西へ、その先に互いの目指すものが有ることを信じて。

思い切ってファンタジー世界で話書いてみれば良いんじゃね?
とおもった結果これである
剣が契約機か何かじゃないかなって今思いついた
多分続きはない

「ねー、鈴々花さん」
「何」
「なんで僕、鈴々花さんのお部屋で血を抜かれてるんでしょう、しかも200ccも」
「検体」
「何の?」
「契約が人体に及ぼす影響、特にお前の場合、実体が瞬間移動するプロセス。私は実体が一旦素粒子レベルで分解され、目標地点で再構成されると踏んでいるが、その場合・・・」
「待った!それだと、目標が移動しても正確に座標を特定できる説明がつかないよ。僕はやはり空間歪曲型ワープ航法を挙げたいね!メカニズムを解明したあかつきには、機械化してきじまさん型(タイプ)簡易ワープ装置を開発・・・」
「それは勝手にやれ。ああ、契約者の力の源泉はやはり脳か!ああ、解剖したい、頭部を綺麗に切り開いて、神経細胞の1ミクロンまで残らず解明してみたい!」
「あ、脳と言えば」
 噛み合わない会話を別方向に展開させたのは、鈴々花の黒と青で纏められた部屋には不似合いなようでマッチしている、脳のホルマリン漬け。
 大きさからいって人間か、少なくとも類人猿のものであるそれは、ガラスケースに取り付けられたブルーライトのせいで怪しさ100万倍だが、ふたりともそんな事は気にならない。
「あの脳、人間の?普通の人の部屋にあったらドン引きだけど、鈴々花さんにはよく似合うね」
 墓穴を掘りかねないような褒め方だが、鈴々花は褒められようが貶されようが気にしなかった。
「両親からの預かりもの。大事な脳だから、万難を排しても護れと言われている」
「へー、歴史上の偉人か何か?」
 その時、ぴくりと鈴々花が聞き耳を立てる。
「・・・来た」
「へ?」
 直後、派手な音を立てて窓ガラスが砕け、ひとりの女のシルエットが浮かび上がる。
「おーっほっほっほ!」
 女は黒いスーツを着ていたが、それは所謂「組織の黒服」が纏うようなスーツとは少し違うようだった。
 胸元は派手に開き、そこから覗く豊かな谷間にはプラチナのネックレスが覗いている。
「あれだけ警告してあげてるのに、まだ懲りないの?つるぺたのおじょーちゃん」
 女は挑発するようにことさら胸を揺らして見せた。長いウェーブのかかった金髪とサングラスが相まって、さながらアメリカ映画の女悪役といった雰囲気だ。
「・・・うるさい」
 かすかに鈴々花が気色ばむのがわかる。
(あれ、鈴々花さん、もしかしてコンプレックス?)

「今日こそその『脳』は貰ったわ!」
 叫んで女がベランダから部屋に踏み込み―
 床に長く裾を引いていたカーテンで足を滑らせた。

「ぷぎゃっ!!」

 がつん、という地味だが痛そうな音をたてて、女が動かなくなる。

「これで二十二回目」
 鈴々花が女を引きずってベランダから外へ放り出す。
「これでよし、と」
「いや、よくないでしょ、あの人が死んじゃったら鈴々花さん、犯罪者だよ」
「大丈夫。あの女、青酸カリを打っても、致死量のモルヒネでも死なない。10階から落ちた程度で死ぬものか」
「そういうもんなのかなあ」
 なんだか更に、日常からかけ離れていく気がするなあ。
 現はそんな気分で、女が落ちていった窓の外を眺めた。



投下しましたー。
こっそり「財団B」と僕は小説が書けないの人の設定に相乗りしてしまいましたすみません。
何か不都合等ございましたら遠慮なく罵声を浴びせて下さい

ファンタジーワールドの人ときじまさんの人乙です

ファンタジーの人の世界はRPG的な世界をしていて各国の状況とかが面白そうです

きじまさん……おおう、脳かぁ……猟奇的な彼女やで……

「一難去ってまた一難・・・」
「ぶっちゃけありえなーいと・・・少年、声が沈んでるがどうかしたのかね?」
「ネカフェに逃げてた奴がそれを言うのか・・・・・・」
「あぁ、彼女か」

前回のあの後、わ・・・俺は彼女に着せ替え人形にされるわ、口調を矯正されるわ酷い目にあったのだ・・・

「わ・・・俺がどんな思いをしたか、お前にわかるか?!」
「・・・わかりたくないから逃げたのだ」

最低だ!コイツ最低だ!!

「今度私を放って逃げてみろ、ぶった切るぞ」
「少年、一人称一人称」

うわ、私って言っちまった畜生!!

「あー、こんな所にいたー」
「げぇっ!先輩!?」

悪魔が来た

「謙信ちゃん、女の子がそんな言葉使いしちゃ駄目って私言わなかったかなぁ?」
「男ですから!私男ですから!!」
「フフフ、それ以上抵抗するなら本格的に女にしてやろうかしら・・・・・・ッ!」
「やめてぇぇぇぇっ!!」
「話が進まんぞ、二人とも」

いや、ホント

「仕事?」
「はい、保護してほしい少年が居るみたいで」
「子供ですか?」
「謙信ちゃんと同じ位の男の子よ
 スリーピーホロウに狙われてるみたいね」

すりーぴーほろう?

「海外の首なし騎士の都市伝説だ」
「デュラハンみたいな?」
「イメージとしてはまぁ、それで良いだろう
狙われてるというのは?」
「契約を迫られたみたいですね・・・偶々通りかかった黒服が保護したみたいですけど、ホロウには逃げられたみたいで」

契約を迫る?都市伝説が?

「あー、こんな所にいたー」
「げぇっ!先輩!?」

悪魔が来た

「謙信ちゃん、女の子がそんな言葉使いしちゃ駄目って私言わなかったかなぁ?」
「男ですから!私男ですから!!」
「フフフ、それ以上抵抗するなら本格的に女にしてやろうかしら・・・・・・ッ!」
「やめてぇぇぇぇっ!!」
「話が進まんぞ、二人とも」

いや、ホント

「仕事?」
「はい、保護してほしい少年が居るみたいで」
「子供ですか?」
「謙信ちゃんと同じ位の男の子よ
 スリーピーホロウに狙われてるみたいね」

すりーぴーほろう?

「海外の首なし騎士の都市伝説だ」
「デュラハンみたいな?」
「イメージとしてはまぁ、それで良いだろう
狙われてるというのは?」
「契約を迫られたみたいですね・・・偶々通りかかった黒服が保護したみたいですけど、ホロウには逃げられたみたいで」

契約を迫る?都市伝説が?

「そんな事あるの?」
「無いとは言えんな、都市伝説にしてみれば契約とは自身の強化に繋がる手軽な手段だ
 とは言え、自分に合う契約者が居るとも限らん
 故に無理やり契約を結び契約者を飼い殺そうとする輩も居る」
「・・・・・・・・・都市伝説も苦労してるんだな」
「就職難は人も都市伝説も変わらんと言った所か
 で、何故我々の部署に話が回ってきた、保護した黒服がそのまま担当すれば良いではないか」
「記憶を消して返してもホロウに狙われたらそれまでですし、なるべく付きっ切りで守る必要があるって判断みたいですねー、で私達(暇人)に回ってきたと」

上からの評価が見て取れるな・・・

「アテにされていると考えよう」
「わーお、ポジティブ」
「で、護衛ですけど、一応私が付きますけど・・・年齢的には謙信ちゃんが付いた方が確実だと思うのよね、見た目的に違和感ないし、戦闘力高いし」
「わた・・・俺ですか!?」
「まぁ、適任だな」
「黒服!?」
「じゃあ決定でー」
「先輩!?」

そんなこんなで
「これが今回の護衛対象・・・ホロウさえ退治すれば記憶は弄って良しって事です」
「わた・・・俺、記憶なんて弄れませんよ?」
「あ、それは私か室長がやるから大丈夫よー」

そう言われて護衛対象とやらの載ってる書類を手にして見れば

「・・・マジ?」

其処には人間だった頃の友達の顔が載ってたりした訳で・・・

「・・・・・・・・・」

どうした物かな?
【続く】

二重投稿になってました、申し訳ない

乙です
新生活が友人ばれする危機!
しかも若干精神の女化が進行しているせいで誤解がはかどりそうwwww

 久信たちが隠れ家に辿り着いた翌日、久信はまだ日が昇らないうちから目を覚ました。
 寝ている修実を起こさないようにそっと彼女から離れ、ちゃぶ台に置かれたダンボールからカンパンの缶を取り出す。
 湯を沸かしてインスタントコーヒーを作り、カンパンを胃に流し込みながら、久信は町の地図を広げた。
「ん……」
 地図を広げる音に気付いたのか、修実が目を覚ます気配がした。
 彼女は布団の中でしばらくモゾモゾと動いた後、長い髪を揺らしながら布団から這い出て、まだ少し眠そうな顔で言葉をこぼす。
「おはよう……久くん」
「おはよう、修実姉」
「何をしているの?」
「昨日のうちに目星をつけておいたところを今日は見てみようと思って、今日のコースを確認中」
「郭さんを探すのね?」
「……うん、そうだよ」
 修実の言葉には見知った人間に対するある種の親しさのようなものがある。実際、修実にとって郭正吾は知らない人間ではない。
 修実が組織のお膝元にある町で暮らしていた間に、主に殺しに関わる任務を統括していたのが郭正吾という人間らしい。
修実が言うには、自分1人を集団でリンチにかけるような人間には見えなかったということだが、
それを言えば、修実だって何人もの人間を殺して、果ては町一つを滅ぼしたような存在には見えない。この業界、外見なんて大してアテにはならないものだ。
 愚にもつかないことを考えながら久信は修実を眺める。
 こうして見る修実からは郭正吾や、彼女を裏切った町の人々についての明確な負の感情は伝わってこない。
 修実姉も、一回は裏切ったもの全てを殺しつくしてやりたいと思うほどの怨嗟を抱いたはずなんだよな。
 その結果があの町と組織の末路なのだから、それは間違いないはずだ。だが、その時の怨嗟を今でも抱き続けているのかと言えば、答えはNOなのだろう。
 封印から解放されてから数日の間、修実は町の人々に対して黙祷を捧げていた。
 自力で制御することができなかった都市伝説の力を制御する術を教え、自分を生かしてくれた組織と、ほとんどの時間を過ごしてきた町を、
どのような理由があろうと自らの手で滅ぼしてしまったというのが悲しいのではないのかと思う。
 そんな彼女を、人生のほとんどをまっとうな世界で過ごしてきた久信ですら甘い、と思う。
 しかし、実家に帰りたいと思っていた修実の気持ちにずっと気付かなかった駄目な弟である自分も彼女のその甘さと優しさによって赦されている。
姉はそういう性格なのだと諦めて認めるしかないのだろう。
「郭正吾を探すのってのは、たしかにそうだけど、どっちかっていうと今回は本格的に奴を探すための準備かな」
 そう言いながら地図のある部分を示すと、修実は納得の表情を浮かべた。
「今日もおでかけだね」
 苦笑して、
「昌夫くんに怒られちゃうかな」


     @

 隠れ家から出てタクシーを呼んだ久信は、町の北の方面、人家もまばらな山の麓のあたりにまで移動する。
 車内では膝の上に抱えていた隠形のままの修実を、昨夜と同じように蛇で背中にくくりつけた。
「さて、ここから川伝いに町の方まで辿ってみようか」
「海まで行くの?」
 修実の質問に久信はいや、と首を振る。
「この町の中に郭はいるはずだから、だいたい昨日駆けずり回った駅のあたりまでを回ってみようと思ってる。
で、帰り際に食卓に彩りを添える何かを買おうと思う」
「分かったわ。駅前までね……それでも今日一日は使ってしまうわね」
「そうだな」
 まだ日も出ていない時刻だが、駅のあたりまでたどり着く頃には夕刻を過ぎているだろう。
「ちょっと重労働だ」
 周りの景色を見ながら久信は溜息を吐く。
 町の北の方面は、特に自然が多い地域のようだ。
 久信や修実が契約する蛇神憑きの気配に惹かれたのだろう。川の土手から蛇が一匹顔を覗かせている。見事なアオダイショウだ。
 久信が手を伸ばすと蛇は大人しく手にすり寄ってくる。何度か鱗を撫でた久信は、持参したビニール袋にアオダイショウを捕獲した。
「よし。来て早々いいのが手に入った」
 袋に入れたアオダイショウを嬉しそうに覗き込んでいた久信は、背中の姉が非常に静かなことに気付いた。
「修実姉……?」
 訊ねてみても返答がない。
 背を揺さぶってみると、しぶしぶといった体で修実が口を開いた。
「私はお荷物だった?」
「え? な、なんで……?」
「だって、久くん、さっき重労働って言ってた……」
 拗ねた声で修実は続ける。
「どうせ、私は、こんなになってもまだ重いですよ……」
「いや、重労働ってのはそういう意味じゃなくて……」
 あわててフォローに入る。
 お互い本気ではない事は分かっているが、このようなやり取りも最近まではなかなか得られなかった機会だ。やり取りにも熱がこもる。
 機嫌を直してもらうのに、というよりもからかっている姉が満足するまでに多少の時間を使いつつ、二人は川に沿って歩きはじめた。
 川伝いに四時間ほど下ると、登る途中にある朝陽に照らされながら学生たちが、ある程度陽が高くなると主婦や老人、出勤途中のサラリーマンとすれ違う。

 人々の邪魔にならないよう、そして目立たないように隅の方を歩いていくと、人間以外にも野良猫や野良犬の姿をいくらか見かけた。
 彼らを見つけるたびに、久信は手を挙げて彼らとあいさつをかわし、人目につかない所で話を持ち掛けた。
「やあ、悪いけど、ちょっと話を聞かせてくれない?」
 道中何匹めかになる犬に久信はそう話をする。別に冗談で言っているわけではない。
ある程度の知性がある生き物とは簡単な意思の疎通ができる。憑き物筋としてはそう珍しくはない特技だ。
 住処はこの数年ほどはこのあたりだという野良犬に対して、久信は問いかけた。
「この川の近くで最近、普段は見ないような大きな船や、その他にも何か変なものを見かけたりはしなかった?」
 人よりも。こういう獣の方が日常の移動範囲が狭く、また種々の誘惑も少ないため、生活の中で訪れる細々とした変化に敏感だ。
 そんな彼らの気付きに期待して、朝から地道な聞き込み活動を続けているが、なかなか芳しい答えは得られなかった。
 それは今回も同じで、野良犬は知らん。という意味の鳴き声を一つ残してさっさと久信たちの前から去ってしまった。
 知らないものは仕方ない。と久信は落胆の溜息をついて、去っていく犬を見送る。
 動物たちが異変に気付いていないという事実は、このあたりでは何も都市伝説による影響がなかったということでもある。
「このあたりには郭の影は見えなさそうだし、そろそろ次に行ってみようか」
「そうね」
 姉弟は頷き合って川を南下していった。
 そのまま十数時間ほどかけて、陽が暮れようという頃。
結局なんの手がかりも得られないまま、久信は昨日必死に逃げ回っていた駅周辺の路地までたどり着いた。
 夕方になると、往来には人々が溢れていた。
 人々に修実を触れさせないように、そして昨日と同じような追っ手に見つかってしまわないように気を付けながら、
人通りが賑やかになりつつある辺りから一本横に逸れ、狭い路地に侵入して、路地の壁を見て、呟いた。
「あ」
 手を伸ばして路地の壁際にいた細長い生き物を掴む。
「ご当地蛇だ」
 そのまま摘み上げられた蛇は体を捻って目を久信に向ける。爬虫類独特な無表情な視線を受けながら、久信は蛇に挨拶をして、本題を切り出す。
「ちょっと訊きたいことがあるんだけど」
 鎌首をもたげた蛇に久信はこれまでの生き物に対するよりも詳しく事情を訊く。
 蛇に対する意思の疎通は、久信自身が蛇神憑きということもあって、他の動物に対して行うよりもよりスムーズに、そして詳細な点まで確実に行うことができる。

 そのため久信は郭の容姿について、修実から聞いたことを真剣に話した。
 郭は中肉中背で、普段は健康状態が悪そうな表情をしているが、たまに目付きが鋭くなるらしい。
 こんなものは主観の印象で、蛇相手に人が感じた印象を伝えたところであまり意味はない。
 しかし、
「そして、その男には右目がない。ちょうどお前と同じくらいの大きさの蛇に呑まれたらしくてな」
 郭正吾の現在の右目は、両手両足を切断された修実が痛みに狂いそうになりながら、蛇を使って抉り出したらしい。
 この特徴ならば人だろうと蛇だろうと目に付きやすい特徴だ。もし久信たちが接触するより前に郭を見ていたとしても、証言することができるだろう。
「どうだろう? 見たことある?」
 問いかけに対して、蛇は首を左右に振って応えた。
 蛇が語るには、少なくとも、中年男性で片目を失っているような人間はこの数日の間は見ていないということだった。
「そうか……」
「簡単には見つけられないね」
 これで朝からこれまで、目撃や何か役に立ちそうな情報は一つとして手に入らなかったということになる。
 少なくとも川沿いで自然に動物が行くようなところにはいないってことか。
「ありがとうな」
 久信は蛇に礼を言って、狭い路地から往来とは別の大通りへ抜けようとして、路地の出入り口の方に五人ばかりの人影があることに気付いた。
「……どうも」
 男たちに向き直って正面からむっつりと挨拶をする。
 夕暮れの灯りにうっすらと照らされた男たちの服装は、特に怪しいところもない。
 修実と二人、無言で相手の出方をうかがっていると、男たちはあまり好意的ではない絡み口調で久信に言った。
「何蛇相手にしゃべってんの?」
「そんな相手にしゃべってるよりもさぁ、俺たちとお話しない?」
「あ、金とか持ってる? 俺たち今金もってなくてさぁ」
 言っていることは無茶苦茶だが、言わんとしていることは分かる。つまり路地裏で1人蛇に話しかけているかわいそうな男から金をせびろうということだろう。
 相手からは敵意のようなものも感じない。少なくとも、どこかの組織の構成員ということはないだろう。

 路地いっぱいに広がって、通せんぼするようにして距離を詰めてくる。
 着の身着のままで逃げてきたからお金なんてほとんど持ってないなんて言っても……だめだよな。
「ねーそこのお兄さーん」
 やけに馴れ馴れしい態度で1人の男が方を掴もうとするように両手を伸ばしてくる。
 相手をするのも面倒くさい。蛇でも使って追っ払おうかと久信が考えていると、久信に触ろうとしていた男の動きが止まった。
「?」
 足元にいた蛇に指示を出そうとしていた久信は、動きを止めた男の顔が引きつるのを見た。
 他の四人の男たちも次々に顔が引きつっていく。彼らの目が久信の肩のあたりに向けられているのを見て、久信は事態を察した。
 あー……。
 内心で納得の声を漏らす。同時に、久信の肩でくすくすという笑い声が聞こえた。
「う、うわあああああああ!」
 その笑い声が聞こえると同時に、男たちは弾かれるように逃げ去っていった。
 それらを見送ってから、久信は背中にずっと感じている体温の主に話しかけた。
「修実姉、隠形を解いた?」
「だって、久くん、困ってたし」
 先程の笑い声と同じ、どこか楽しそうな雰囲気と共に、修実が答える。
「まあ、たしかに困ってはいたけれどね」
 それに、おかげであの五人組が組織の構成員ではないという確証も得られた。
都市伝説と関係するような人間ならば、両手両足がなく、蛇を身体にまとわりつかせた女性が男の背後にへばりついて笑っている姿を見ただけではあんな過剰な反応はしないだろう。
 いや、状況だけ見るとちょっと引くくらいはするかもしれない。
 よくよく考えてみればその光景はかなり不気味だ。いきなりそれを見る羽目になった男たちにはかわいそうなことをしたかもしれない。
 じっくり見てみればどれだけ可憐な女性か分かると思うけど、こんな薄暗い路地裏でそんな観察眼を期待するのも酷というものだろう。
「迷惑だった?」
 隠形に戻った修実が訊いてくる。
「ぜんぜん」
 軽い口調で答えて、久信は路地裏を通り抜けた。


   @

 夕方。人通りの多い往来を歩きながら、久信は内心穏やかではなかった。
 もちろん郭正吾の足取りが掴めなかったことに対する焦りのようなものもあるにはあるが、それ以上に、久信の目と気を惹くものが通りのあちらこちらでみられるのが原因だ。
 まただ……。
 たった今すれ違った高校生くらいの詰襟の学生と、その横にいる存在に今日何度目になるか分からない鳥肌を立てる。
 また都市伝説か……。いくらなんでも多すぎじゃないか?
 朝からずっと縦断する形でこの町を歩いてきたが、その間に久信が蛇の狩猟本能にも似た直感で感じ取れた都市伝説の数は両手の指ではとうに足りない。
 この町は、学校町は驚くほど都市伝説の気配が多かった。
「すごいね。私が居た町はあの組織のお膝元という事情があったから、組織所属の契約者がけっこういたんだけれど
……この町はそういう、一つの組織が実質支配している町ともまた違うんでしょう?」
「そうみたいだよ」
 この町に来る前、久信はこの町のことについて、昌夫を通して調べてあるので一通りのことは知っている。
 学校町は都市伝説関連のあらゆる勢力が集まって奇跡的な均衡状態を築いているという話も聞いたことがある。
また、実際に昨日この町に来て早々。どこの組織とも知れない連中に追われたことからも、ある程度の実感を持って分かっていたつもりだが
、日常生活の中にこれほどまで都市伝説が入り込んでいる光景を見るに、自分の認識は甘かったと認めざるを得ない。
 都市伝説が異物としてではなく、共生相手のようになっている。
そうすることによって、この町は他の町では到底あり得ない形の秩序が形成されていて、実際その秩序は強固に守られ、
普通ならば大混乱が起きるような事件を経ても現状を維持してきた。
 夢の国が侵攻したり、町全体の規模で男女の性別逆転現象が発生したり、
教会のタカ派が天使を持ち出して暴れて、
果ては星辰の化け物やら古代の神格やらドラゴンやらが出てきたってんだから、いったいどこの神話の世界だよって感じなんだが、
 改めて周囲を見回してみる。とてもそんな事件を経験した町だとは思えない。
雑踏の合間合間に都市伝説の気配があるだけの、見た目には普通の町だ。
 いったいどれだけの住人がこの町の大剣した事件を知っているのだろう。
 この町の人たちは、自分たちが現在進行形で曰くが次々付加されているとんでもない土地で生きていることを自覚しているのかねえ。
 考えている間に、まだ年端もいかない女の子が横を通る。
久信には彼女の気配が雑踏からどこか浮き上がって感じられる。彼女も契約者なのだろう。

 人波の奥に女の子の姿が消えるのを見送って、久信は呟く。
「こんな状況を皆が知ってたらこんなのんきな逢う魔が時にはならないか」
 あるいは、この町の人間は異常に対して麻痺しているのかもしれない。
 つくづく特殊な土地だ。こういう土地だからこそ、郭正吾はこの町を隠れ場所に選んだのだろう。
 木を隠すなら森の中ってわけだ。だけど、蛇の執念はそんなものでは止められないって分からせてやる。
 物思いを町の様子から自分のことに引き戻す。そろそろ隠れ家だ。一日歩き回って疲れた体をようやく休めることができる。
 少し速足になった久信の耳に姉の声が届いた。
「久くん、今日の晩御飯は買わなくていいの?」
「あ」
 久信の足が止まった。そして手にしたビニール袋の中には朝方から数匹とってきた蛇たちしか入っていないのを確認して、
「忘れてた」
 町の様子に心を奪われていたせいで、夕食を彩るおかずを購入するの忘れてしまった。
「まあいいや。味気ないけど食事自体はあるから飢えることはないし、気が向いたら買いに行こうと思ってただけだし。
それに、この袋持って食糧品店行くのはアウトだろうしね」
「不摂生……」
 修実が後ろから責めるような口調で言う。
 久信は歩きを再開しながら適当に答える。
「明日からは気を付けるよ」
「……お姉ちゃんは心配です」
 不満そうに言って、修実はぼそりと付け加える。
「私が作って上げられたら――」
「いいんだよ」
 修実の言葉を遮って、久信は言う。
「このままでいいさ。俺は修実姉と触れ合っていられる今が結構好きだから」
 修実はしばらく黙った後、久信のうなじに頭を擦り付けた。
「……うん」

 彼らの立ち位置は町のよそ者ですよっというわけで、よそ者が見た学校町的な感じです
 都市伝説契約者たちからも都市伝説扱いされるような事件が頻発する中、この町の一般人全員護身完成してるんじゃないかとたまに思うんだ……。
 事件の側面からみると紛争地帯だけど、それ以外にも特殊なコミュニティーがあったりして一般人を守る力もそれなりにある……よね? この町

謙信ちゃんの人乙ですー
僕って名乗れば男の子でも女の子でも通用すると思うんだ!
コドクの人乙ですー
すっかり慣れきってるけど学校町って異常な町だよなあ
そして修実お姉ちゃん健気可愛い

「僕」は男の子でも女の子でも通用するが、
実は「私」でも男女問わず通用する

「流石に身内バレは避けたい」
「・・・・・・顔でばれる可能性は」
「自分で言ってて悲しくなるけどソレは無い」

面影すら残ってないからな・・・自分で言ってて悲しくなる

「じゃあ、仕草とかでバレなきゃセーフですねー」
「そうだな・・・」
「取り合えず護衛対象相手に体面的に名乗る名前必要じゃないですか?」
「え?」

謙信じゃ駄目ですか?

「・・・自分で上杉謙信とか名乗って恥ずかしく無いの?」
「基が自分で毘沙門天の生まれ変わりドヤァ とか言う様な奴だからなぁ・・・」
「痛い物を見る様な目で見るな!!」

ってか半分は黒服の所為だろうが!!

「じゃ、対外的に使う名前考えますか」
「えー・・・」

そんなこんなでその翌日から任務が始まった

「あの・・・千代、さん?」
「何だ」
「いえ・・・」

どうしてこうなった!どうしてこうなった!

「一寸千代ちゃーん、護衛対象睨んじゃ駄目よ?」
「先輩、私がすこぶる機嫌悪いのは4割は(こんな名前をつけた)あなたの所為なのですが・・・」
「後の6割は?」

同行しなかった黒服に4割、正体を隠して友人を護衛しなきゃならないこの状況に2割

「ごめんね、友治君
 千代ちゃんったら歳の近い男の子相手で緊張してるみたいで」
「刀の錆になりたいんですか?」
「・・・・・・」

ほら、友治の奴対応に困ってるじゃねーか!

「この子ったらまだ新入りで日が浅いから「マジで首落とすぞ!」ちょ!?千代ちゃん冗談!冗談ですからね!?」
「しっかりしてくれませんか、先輩・・・これ一応仕事なんですよ?」

そう、黒服発案の護衛と討伐を同時に進行させる為の策

前日 名前騒動の後

「つまり、この任務を終わらせる最短の方法は護衛対象を狙うホロウを討伐すれば良い訳だ」
「でも、そんな簡単にいけますかね?」
「護衛対象を連れて町を歩いていれば勝手に向こうから吸い寄せられてくるだろう」

オイオイ

「人のダチを餌にする気か」
「君が守りきれば解決するだろう」

コイツわ・・・!

「でも、この子も運ないですよねー、都市伝説に契約迫られるなんて」
「その契約って仕組みが今一つわからないんだけど」
「ふむ・・・・・・では少し講義をしてやろう」

黒服がホワイトボードにペンを走らせる

「都市伝説と人間が相互に力を与え合う関係を結ぶ行為、これが契約だ
 言葉で言うのは簡単だが、相応にリスクも付いて回る・・・・・・一つは容量だな
 都市伝説の容量が人間の心の器の容量を超えた場合、人間側が都市伝説に飲まれる等だな」

飲まれるって言うと・・・

「お前確か私をこの身体にした時に・・・」
「死にかけで弱っていた所に大容量の都市伝説を契約させ(ぶち込んで)意図的に飲み込ませた」
「その場合人格は?」
「都市伝説側に意識があった場合は混ざったり、人間側が消えたり・・・だな、君の場合は意思の無い概念的な都市伝説だったので君の意思が残った」

成る程なぁ

「人間が都市伝説を使えるってのは判るけど、都市伝説側のメリットってのは?」
「拡大解釈だな」

拡大解釈?

「都市伝説は噂に左右される、縛られてると言っても良い存在だ
 噂によっていくらでも変質する・・・外的要因で変質する事はあっても内的要因で変化する事は無い
 ただ、契約した場合契約者との繋がりにより、契約者のイメージが反映される
 ここで契約者が意図的に拡大解釈すればそれも反映される訳だ
 つまり、都市伝説から見た契約者の質の判断基準は、心の器、扱いやすさ、契約者のイメージ力という事になる」
「イメージねぇ?」
「君が刀を召還できるのも謙信=武将=刀のイメージからだろう」
「へえ・・・」

よくよく考えると詰まらん話だった

「チッ・・・・・・」
「あの、何か俺気に障る事しました?」
「いいえ」
「・・・・・・・・・」
「友治君を危険にさらしてる状況が気に食わないのよ、この子」
「え?」
「余計な・・・・・・!」

事言ってる場合じゃなくなったみたいだ

カシャン カシャンと金属音と共に現れるのは西洋風の鎧に身を包んだ首なし騎士

「スリーピーホロウ・・・」
「先輩は彼を連れて逃げて下さい
 私はここで迎撃します」
「じゃあ、任せますね」
「え?!」

迷わず手をとる先輩に友治が声を上げるが

「最初からこういう手はずなので、気にしないでください」

・・・・・・友人に敬語ってのも妙な気分だな

「じゃ、任せますねー!」

先輩達が走り出したのと同時に右手に刀を召還

「先手必勝!!」

左下から切り上げ・・・・・・キィンッと甲高い音と共に、刀が折れた

「え?」

見れば刀を折ったのは相手の剣
重量で叩き斬るタイプの大剣
そりゃ、刀位折るわな・・・・・・

「やべぇ!」

即座に後ろに下がり距離をとりながらもう一度刀を召還
思い切り斬りかかるがやはり弾かれる
 
(そりゃ鎧着てんだもんなぁ・・・・・・)

コイツを倒すには鎧ごと斬るしかない・・・・・・鉄を斬れと?

(無理!!)

それでも時間を稼ぐために切りかかり続ける
キンッ キンッ キンッ
その全てを受けて尚騎士は微動だにしない

「くそ・・・」

一度息を整える為に距離を取ろうと下がった時、騎士が動いた
下がるこちらにあわせ距離を詰めて来た
ご丁寧に右腕に握っていた大剣は振り上げられている
脳裏に浮かぶのは真っ二つにされた自分
避ける、よりも振り下ろされる方が早い

(死ぬ・・・ッ!!)

そう覚悟した瞬間
何かが騎士の背後から鎧を引っ張り
騎士は派手に後ろに転倒した

「え・・・っと?」

騎士の背後に立っていたのは

「思ったより苦戦してるな、少年」
「黒服!!」

【続く】

謙信ちゃんの人乙ですー
新手の黒服ですかー。いったい何者?

この流れでアカリール様が出てきたらどうしよう

ここで黒服さんが出てくるとは
もしかしたらこれは黒服さんができる男フラグ……!
武器が素直に刀なあたり、戦闘経験はインストールされてないんですかね


 学校町を歩き回ってこの町の異常性を肌で感じ取った久信は、肉体的というよりも精神的な疲れを感じつつ、隠れ家を目指していた。
 今日はシャワーだけではなく、ゆっくりと風呂にでも浸かろうかと考えていると、隠れ家の敷地内に犬が一匹いるのを見つけた。
 久信たちが隠れているこのボロアパートには他の住人はいない。他の住人のペットという線は無いだろう。
かといって、行儀よくお座りして、まるで誰かを待っているかのように佇んでいる犬の態度はとても野良のそれではない。
 だとしたら……。
「昌夫くんにばれちゃってる……よね?」
「だろうな」
 誰の遣いであるのか察して、姉弟は気まずそうに言葉を交わす。
 犬は二人に気付いたようで、顔を向け、二人が近づいてくるのをじっと見つめて待っている。
「諦めて小言を聞くしかないか」
「うん……そうだね」
 犬からの視線を感じながら、久信たちはいたずらがバレた子供のような心境で隠れ家の敷地内に入る。
 久信の体が敷地の中へと入るのを確認して、犬がおもむろに口を開いた。
「きのう の きょう で がいしゅつ とは いいどきょうだ」
 わざわざ二人が敷地内に入るまで待っていたということは、
この建物の敷地内には犬がしゃべっても周りには気づかれないような、幽霊アパートらしい結界の類でも張ってあるのだろう。
久信と修実が察してそれぞれ隠形や蛇の縄を露わにする。
 そんな二人に対して犬は真面目くさった顔で説教を垂れる。
「あまり はで な こうどう は ひかえろ と いった はずだが」
「分かってる。ごめん」
「ごめんね、昌夫くん」
 第一声としては二人共比較的に殊勝な態度を見せるが、それだけでは止まらず、言葉を繋げる。
「でもね昌夫くん。私たちにはあんまり時間がないの」
「郭正吾に完全に逃げられたら、俺と修実姉は詰む」
「たしかに くるわ に にげられたら おまえたち の しゃくめい は むずかしい
 しかし おまえたち なんで こう いつも とっぴなことを するのだ」
 眉間に皺を寄せる犬に見せつけるように、久信は手に持ったビニール袋を揺らして見せた。
「まあそう言うな。外を歩き回るのは今日だけだ。何となくこの町が人外魔境ってことが分かったからな。
あんまり歩き回って下手なトラブルを拾いたくもない」

 犬はビニール袋の中で蠢いている蛇をしばらく眺めた後、妙に慣れた仕草の溜息と共に言った。
「そうしてくれ こちらも びこうを けいかいして いぬ しか つかえん」
 つまり本心では自分でこっちまで出向いてきて文句の一つでも言ってやりたいといった気分なのだろう。
その場でしばらく唸っていた犬は、やがてやけに人間くさい動きでやれやれというように首を左右に振った。
「あせる きもちも わかる が このまちでは けいさつより ほかの そしき の ほうが ちからが ある わすれないで くれよ」
「この町の異常さは身に染みたよ」
「ならいい」
 これまでも二人に振り回されることが多かった昌夫は、最後には諦めたように嘆息すると、久信たちが隠れている部屋の前に行った。
 ドアのノブにはスーパーのビニール袋がかけられている。それを鼻先で示して犬は言う。
「ひと が おおくて まるで せんそう じょうたい だった すーぱーから そうざい かって きた
 さすがに かっぷらーめん だけというのは あわれでな」
「おお! 助かる! マジで!」
 久信は力強く感謝の言葉を口にする。帰りに食べ物を買い忘れたのは、食べ物を余らせる結果にならなくて済んだということになる。
 これで今晩の夕食に彩りが得られた。
 上機嫌になった久信は、犬の頭を撫でてやりながら、
「じゃあこっちは飯の礼にこの犬には手厚いもてなしをしてやろう」
 鍵を開けて室内に犬を案内すると、犬は「よろしくたのむ」と言って、部屋の中に入った。
「おお――と言っても、逃亡生活中の身では今日の晩ご飯のおこぼれをやるくらいしかできないけどな」
「本当ならそのワンちゃん、一度綺麗に洗ってブラシをかけてあげたいんだけど」
 修実が呟く。
 犬はたしかに野良犬のように薄汚れてはいるが、これは昌夫が密偵役としてこの犬を放ったがための、
計算された汚れだろう。わざと汚して町の中に溶け込んでいる彼を洗うわけにもいかない。
「まだ仕事中だもんね」
「そういうことだ」
 残念そうに言う修実に言葉を返して、犬は部屋の中に入った。
「では おれは しごと に もどるから こいつを ねぎらって やってくれ いいか がいしゅつは つつしめよ じゃあな」
 最後に念を押して、犬の向こうに居た昌夫は席を立ったようだ。
「了解」
 苦笑しながら、久信は犬を追って部屋の中へ入る。
「また心配かけちゃったね」
「なんでか、いつもこうなっちゃうんだよな」

 姉弟で不思議だ不思議だと言い合いながら靴を脱ぐ。
「ともあれ、これが終わったら、俺はあいつの仕事に協力するよ。
まだ警察内に都市伝説契約者や意を汲んで動いてくれる仲間とかが少ないだろうしさ」
「そうね、そうしましょう」
「修実姉も付きあうことはないよ」
 言うと、修実が首を左右に振ったのか、久信のうなじに髪が擦れる感触がきた。
「私も昌夫くんの手伝いをしたいわ」
「……いい友達もったよな、あいつ」
「ふふ、そうね」
 修実の声を聞きながら、久信は親に半ば厄介払いされ、
人生の大半の時間を費やしてきた組織にも裏切られてあんな姿にされてもまっとうな人間と同じように友人の協力を信じることができたり、
恩義の感情などを持つとことができる姉はやはり尊敬できると思う。
 俺だったらきっとそのまま恨みに呑み込まれて怨念垂れ流すだけの現象になってたな。
 そもそも修実は自我が残っているということ自体が奇跡的なほどに手ひどい仕打ちを受けていたのだ。
 修実姉は強い人だな……。
 羨望交じりの物思いにふけっていると、部屋の奥から甲高い鳴き声が聞こえた。
「ああ、いけない。忘れかけてた」
 鳴き声の方へと行くと、先に部屋に入っていた犬が尻尾を振って久信を見ていた。
昌夫からの干渉が外れたためか、久信を見上げ目には先程までのような険がない。
「久信、この子エサが欲しいって」
「みたいだね、じゃああげようか」
 昌夫の調教のおかげか、犬はエサがもらえることを理解したように嬉しそうに尾を振る。
「よーしよしよし。ちょっと待ってくれよ。俺も自分のエサが欲しいからな」
 久信は、ちゃぶ台の上に置かれているビニール袋を漁って、若鳥の唐翌揚げや焼き鳥を取り出す。
 惣菜のチョイスがおっさん臭いのは、若い身空で警察なんていうおっさん臭いイメージが染みついた組織に所属した弊害だろうか。
 それはそれとして、白い米に即席の味噌汁までついているのは実にサービスがいい。
「こりゃ豪華だ」
「この偏りかたは……」
「まあまあ、そんなに厳しく批評しなくてもいいじゃないか――なあ? ワン公」
 自分の臭いを気にしてか、器用にも自分で開けた窓から外に出てじっとしていた犬は、いきなり振られた話に困惑したように首を傾げた。
 自分が食べるわけでもないんだからいいじゃないかと修実を説得して、久信は修実を布団の上に降ろして夕餉の準備として場を沸かす。
 湯が沸くまでの間、薬缶の前で待ちながら、久信は一息つく。

「焦るな……か」
 昌夫が言うように、焦っているのは確かだ。
 修実をあんなにした事件の後で生き残った郭正吾は、
町の状態から自分がかけた封印が解かれたのを知ったのか、事件のことを歪めて公表した後、早々に行方をくらませている。
 足取りをなんとかこの町まで追うことができたのは、警察の都市伝説事件対策課が事件のことを知っていて、
以後、同じような事件が起こらないため町を壊滅させた都市伝説――修実の正体などについて詳しく訊こうとして彼の足取りを追っていたというのと、
郭正吾本人が自分の組織を失って単身逃亡を図っているという状況で行動がばたついていることが重なったためだ。
 修実にここまでの反撃を受けたことで郭正吾も足跡を消せていないのだ。
 ただし、警察も郭正吾がこの町に入ったところで、この町の特殊性から派手な調査もできなくなって行方は密かに探さざるを得ない状況だ。
警察が見ている限りでは郭正吾は町の外には出ていないようだ。郭としても、この町の特殊性を隠れ蓑にしているのだろう。
 でも、事情聴取に応じずに行方をくらませたせいで、警察から追われているってことは知ってるはずだ。
それに修実が封印から脱出したことを把握しているのなら、閉じ込められていた修実がなんらかの報復行動に出るという想像はたやすいだろうし、
いつまでも隠れられるものではないということは郭正吾の方でもわかっているはずだ。
にもかかわらず、いつか必ず見つかるこの町に潜伏し続けているということは、郭正吾にはこの町からどこかに移動する手段があるということだろう。
 少なくとも、修実から聞いた話では、例の組織には高跳びに使えそうな能力を持った契約者はいなかったらしい。
 だが、組織と繋がっていたという暗殺や密売を斡旋する集団には商売柄、何か移動能力に秀でた都市伝説や契約者を保持しているのではないかと久信は考えていた。
 わざわざこの町で郭正吾が電車を降りたのは、この町ならばその都市伝説を目立たずに侵入させることができるからだろうと考える。
 また、使うのが空路であるならばわざわざこの町で降りなくても他のどこかで拾ってもらうことができるはずだ。
それをわざわざこの町まで出てきたと言うことは、他の道を使うためだろう。
 山奥にあったあの組織の土地にはなかった水路……。

 使うのはおそらくそれだろうと思う。
 修実も、組織にいたころ、密売相手が持つ船の監視や防衛をさせられたことがあるという話をしていた。
 水路なら、郭にはアテがある。
 都市伝説製の船ならば、見えなくなった状態で町の中に入り込むことも可能だろう。
 以前にも、どこかの町で行われた都市伝説組織同士の戦争の際、
いくつかの都市伝説で外装を固めた名のある幽霊船が町を流れる川を逆走していったという、都市伝説の存在を知っている久信をして都市伝説じみた、と思わせる話を聞いたこともある。
 そんな前例があるため、久信は郭正吾が逃亡に使うのは川を下るルートではないかと思い、一日をかけて川を辿ってきた。
 だが、一通り川とその周辺の動物相手に確認して、今日のところは収穫が全くなかった。
 そのせいで、少し焦っている。急いで郭正吾を見つけないと彼を取り逃がしてしまい、自分たちの身の潔白を証明できなくなってしまう。
 期限は郭正吾がこの町から消えて完全に姿を隠してしまうまで。
 猶予はあまりないだろう。ならばこそ、いくら自分たちが追われていても、多少は大胆な行動をとって相手を探すことも必要だと、久信は思っている。
「でも、無茶ばっかりしていてもしょうがないか。結局修実姉も思いっきり付きあわせてるし、昌夫にもいろいろ言われるし」
 同学年であり、また似たような憑き物筋の家系の長男同士、昔から常々苦労を掛け通しの友人に更に重ねて苦労をかけるのも忍びない。
 明日からはまた、別の動き方で郭正吾の居場所を突き止めることにしよう。
 そのための手段は用意してある。
「あとは少し、仕込みをするだけ」
 沸騰した薬缶の火を止めて、久信はひとまず自供の夕食を手早く済ませることにした。

犬の話し方書くのめんどくさいことに気付いた
ひらがな分かち書きでしゃべらせるのはモチベーション的に考えて幼女か外人系少女か人外系少女くらいだなぁ

謙信ちゃんが何故かエロい…
黒服さんの登場タイミングが絶妙だ

コドクノオリは次回以降大きく動くかな
姉弟がどう打って出るかが楽しみ
あと今回の空目セリフは「修実も、組織にいたころ、水商売で~」でした
水路って単語とこんがらがったんだ…ごめんなさい…


 学校町を流れる川を縦断した次の日、町が動きだす少し前の時間帯に、久信は目を覚ました。
 朝食にインスタントの味噌汁を流し込み、食パンを、耳を切り取ってから食べる。
 多少モソモソしているが、昨日の乾パンと比べたら、まだ日常の食料としての趣がある。
「さあ、お前も食え」
 そう言って窓を開け、久信は食パンの耳を窓の外に放り投げた。
 昨日軒下に泊めた犬は、パンの耳が自分に与えられた食料であると察して起き上がると、それを粛々と食べ始めた。
 尻尾を振っているところを見ると、喜んでくれているのだろう。
「おはよう久くん。わんちゃんも、おはよう」
「おはよう、修実姉」
 犬は、久信がさもしい朝食を終え、起き上がった姉と挨拶をしているところを見ると一つあくびをして、敷地の外に向かって歩きだした。
「もう行くのか?」
「二食もお世話になったし、あと昌夫くんに指示された仕事の時間もあるからもう行くんだって」
「そうなのか……」
 心なしか、犬の方が自分よりまっとうに人間社会に適合した生活をしている。
そんなことを思って少し切ない思いをしながら、久信は去っていこうとする犬を呼び止めた。
「ちょっと待ってくれ」
 呼びかけに足を止めた犬へ近寄って、久信は昨日から持ち歩いていたビニール袋から細長いものを取り出した。
 一匹の蛇だ。
 無抵抗にびろんと伸びている蛇を数秒見つめた後、犬は、食べてもいいの? と言わんばかりの目を久信に向けた。
 蛇は伸びたまま硬直している。諦めの境地に達しているようだ。
 部屋の中から修実がくすくすと笑っている声が聞こえる。
「食べちゃだめだ。悪いがこいつを一緒に連れて行ってくれ」
 久信は苦笑すると、犬の首に蛇を巻き付けた。
「お前も、首を絞めるとかしちゃだめだぞ。今日からしばらく、お前は首輪だ。
そして協力して調査をしてきてほしい。俺も警察の方の情報が欲しいからな」
 言い聞かせると、犬は首に巻かれた蛇を気にしたような若干奇妙な歩き方で隠れ家から去って行った。

 二匹を見送りながら、久信は呟く。
「お互いに対して少しかわいそうだったかな」
 あの犬も、久信が首輪にした蛇も、自然界に元々居た普通の動物を使役している。
そのため、あまり無謀なことを頼むと、犬がしていた奇妙な歩き方のように、命令の遂行にどうしても無理が出てきてしまう。動物としての本能があの二匹に居心地の悪さを与えてしまっているのだ。
 そこは悪いけど……我慢してもらうしかないな。
 都市伝説で生み出した特殊な蛇を使役したほうがいろいろと無理が利いていいのだが――
 この町の中ではなあ……。
 普通の町の中ならばいざ知らず、この町の中で特殊な出自を持った蛇を大量にばらまいたりなどしたら、どこで誰にかぎつけられるか分かったものではない。
 自分たちもまた追われる立場にあることを考えたら、できるだけ目立つ行動は避けなければならないだろう。
 あまり勝手をすると昌夫に怒られるしな。
 そのようなわけで、久信は自分の指示を下した蛇を町の中に数十匹放っていた。先程の一匹は警察の調査状況を知るためにくっつけた最後の一匹だった。
 もちろん数を揃えたところでただの蛇では人による捜索には遠く及ばない。
 それでも、誰にも怪しまれずに町の中を調べてもらえるというのは大きなアドバンテージだ。
広い範囲や、しっかりとした組織だった捜索は警察の方がやってくれるだろう。彼らがやってくれることを久信が無理してやることはない。
久信が蛇に任せていたのはより絞った、狭い範囲での捜索だった。
 そう、捜させるのは川の周囲。
 その場所は、昨日、久信と修実が歩いてざっと見てきた範囲だった。
 郭正吾は川を伝って脱出を図るだろうという考えを、久信は捨てていなかった。
 昨日は普通の動物が行動する範囲では郭正吾の影が見つからなかったというだけだ。
だから、というわけではないが、今日からは特に野生の動物が行きたがることがなさそうな、騒音や強烈な臭いがあるだろう、町の地図でいう川に面した西方面。工業地帯のあたりを探してもらっている。
 目標は工場の周辺にある、今は人の出入りの無いような建物や使われていない地下施設などだ。
 そこで見つかればいいし、この捜索が的外れだったとしたら、後は昌夫たちの行う広い範囲への捜索にかけるしかない。
 こればっかりは答えが出るまでは何ともいえない。気持ちは焦るが、焦ってもどうしようもない。
 また、下手に動いて自分だちが、見つかっても話にならない。だからこそ、今は、
「ドンと構えて待つことにしようか」
「そうね」
 修実が静かに同意した。


おかしい。
ここまでさくさくっといくつもりだったのに気が付けばなんか増えてる
生産速度がもう少し上がらないものかなと思う今日この頃です
>>866さんじゃないですが、
ちょっと次回過去回とかやってみて
で、そろそろ話をですね……うごかしたい。でないとずっと隠れ家生活を楽しんでいそうですこのインモラル姉弟


 修実と久信が逃亡を開始することになる日から数年前。
 久信がまだ中学三年だったある日、久信は実家の庭の掃除をしていた。
 当時、久信は地元の公立高校へ行くために受験の準備をしている、そんな時期だった。
 この頃になると、都市伝説と人間の違いや、都市伝説契約者が一般の人々の間で生きていくことの難しさなどもなんとなく分かってきて、
自分と同じように、家系そのものが都市伝説と契約している友人の昌夫が中学卒業と同時に警察の裏部署へ行こうとしていることなどを含めて、
自分の将来、などという曖昧模糊としたものもぼんやりと形を成してきたような気がする。そんな時期だった。
 とは言っても、久信が将来やることはここ数代前と変わらずに、どこぞの企業相手の拝み屋や、便利屋なのだろうと本人も、そして周囲の一族も考えていた。
 憑き物筋は血筋に憑く都市伝説の能力を使って長い間、この世界の中でそれなりに良い地位を得てきた。
家系に憑く都市伝説の能力を利用した貢献と、各業界に食い込んでいる他家の憑き物筋同士の付き合いによる特殊な人脈の構築。
このような流れがあるため、憑き物筋の人間は、仕事も世襲になっていることが多い。
昌夫の見塚家は警察内で、自分たち小野家は民間企業相手に働きかけて、日々の糧を得てきた。
 それはこれまでも変わらない。これが都市伝説、蛇神憑きの契約者である小野家の人間の生き方だと、久信自身もそれに不服などなかった。
高校に行くのも、世間一般の生活を体験しておくことによって普通の人間社会というものを理解し、企業を相手にした時のコンセンサスを取りやすくするためだ。
 自分たちは人の社会においては異物かもしれないが、決して毒物ではない。
久信は自分たちをそのように考えていたし、事実、これまでの小野家もそうして生きてきた。
 便利に使われるのだとしても、何かしら求められる人材であるというのは決して悪い気分ではない。
このまま無難に生きていけば、そこそこの幸せを掴むことができるだろう。そんな自分の人生の中に不満があるとすれば、
 修実姉……。
 めったに会うことができない姉のことをちらりと考える。
 いつの間にか掃除の手が止まって、目は家の門の方を向いていた。
「そろそろかな」
 独り言を呟いた数分後。小野家の前に黒塗りの高級車が一台停まった。

「来た」
 呟く声は僅かに弾んでいる。
 今日は、二か月ぶりに姉が実家に帰ってくる日だった。
 車から姉と、1人の目つきがあまりよくはない黒服の男が降りてくる。
実家に帰る修実に付くお目付け役だ。
久信はこれまで何人かのお目付け役の姿を見てきたが、その誰もがまっとうな職業に就いていなさそうな雰囲気をしていた。
 両親の後についていろんな企業の人間に会ったことがある久信は、
お目付け役と名乗る監視役の男たちから得るあまりよくはない印象を危険、と判断していた。
 男に社交辞令的に挨拶すると、男は慇懃に会釈を返してくる。
それらの動作がいちいち信用できず、そんな者たちに姉を任せていることに対して、不安を抱く。
「ただいま、久くん」
 後部座席から降りてきた修実は、久信が男に、ひいては姉が預けられている組織全体に対して抱いている不信感を吹き飛ばすように、
向こうでの暮らしも悪いものではないのではないかと思わせる笑顔で、帰郷の言葉を久信にくれた。
 二か月ぶりに見る姉は、また少しと細くなり、また、疲労しているように見える。
「おかえり。……修実姉、疲れてない?」
 久信にはこの一年程の間、姉が実家に帰ってくるたびに少しずつやつれていくように思われた。
 いや、実際に会うたびに目に見えて弱っていく修実は、何か問題を抱えているのだろうかと思うのだが、
久信がいくら訊ねても、修実は何も話してはくれなかった。
「私は疲れてなんかないわよ、久くん。それより、また蛇に家の掃除をさせているの? あんまり下品な使い方をしてはいけないって前から言っているのに」
 久信は眉を上げた。
「分かるんだ」
「ふふ、私も少し、力が上がっているからね」
 いたずらっぽく答える修実に吐息交じりに久信は言う。
「おみそれしました。でも、蛇に手伝わせるくらいはいいでしょ。俺自身も掃除はしてるんだし、それにこれも一つの訓練だよ」
「あまり楽ばかりしようとしてはだめよ」
「あーはいはい」
 ぞんざいに答えながら久信は質問をはぐらかされた、と内心で思う。
 修実は最近、蛇神憑きとしての能力がまた一段と強くなったようだ。
 時間が経てば経つほどに力を強めているように思われ、
いつかはその力に追いつきたいと思って力を欲している久信には、目標が遠ざかっているようで、あまり面白くはない。

「力は強くなっても体が変化できても、本体の方はあくまで生身の人間なんだから。体は大事にしてくれよ」
「うん……分かってる」
 微笑んで返す修実。
絶対に分かっていないと久信は思うが、あの微笑を浮かべる修実にはこれ以上何をつっこんでも望んだ返答を得ることはできないだろう。
 それにしても……。
 姉は年をとるごとにどんどん綺麗になっている。
疲労が浮かんでいる今ですら、むしろそのやつれた感じが彼女の美しさを引き立たせているようにすら感じる。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
 久信は、自分の中で、自分自身の内心がはっきりと把握できてきていた。
姉のことが気になってしかたないのだ。彼女が持っている力に嫉妬しているというのともまた違う。
 純粋に相手を心配していてもつい思考が別にずれてしまい、不必要と分かっていても、
相手の全てに関心を向けないではいられない気持ちや、徐々に変わっていく相手に対するわずかな苛立ち。
 自分があずかり知らないところで姉が変化していくのを見るのが悔しいと思っているということなのだろう。
 そういう風に姉を認識していると認めるのは照れを感じる。
 これ以降、高校を卒業してあの事件が起こるまでの間、嫉妬や羨望を感じたこともあるが、
結局のところ、久信は幼い頃からずっと変わることなく、ずっと姉のことを好いていた。
 姉を好いているというのも、普通の学校に通っていた当時の久信には常識的におかしいということは分かってはいた。
が、それも高校生活も半分を過ぎて、自分の中のもやもやした気持ちの正体を認められるようになるころには、
憑き物筋の家は血を濃く保つことを推奨されていることもあって、好意を素直に姉へと向けられるようになりつつある、
この当時はそんなふうに気持ちが移行していく途中だった。
「じゃあ、私、お父さんとお母さんに挨拶してくるね」
 ただじっと見つめて何か言いたそうにしている弟の様子に首を傾げながら、修実は母屋に向かって歩き出した。
この後の家族の情景を想像して、久信は複雑な気分になる。
 久信と修実の両親は一族の中で抜きんでた力を持った娘にどのように接したらよいのかわからないようで、
彼女の事を都市伝説に愛された子と呼んでは基本的に接触を避け、仮に接触の機会を得たとしても、ぎこちない対応になってしまうことが常だった。

 邪険にしているとかではなく、ただ単にぎこちないとしか言いようのない状態になってしまうのは、
両親の根底に自分たちで娘の力を制御することができずに、里子に出して家の中から追放する形をとる事でしか彼女を生き延びさせることができなかった事に対する負い目もあるのだろう。
 大きすぎる、そして制御が利かない力を持っていて、それが家族にとっていつ爆発するとも分からない爆弾であり、
そしてまた、里子に出されて訓練の機会に恵まれなければ自分の命が危なかったということを理解している修実は折に触れて「気にしなくてもいいのに」と漏らしている。
 それでも両親はぎこちないままだ。
 姉も両親も互いに負い目を感じていて、そしてお互いが相手を慮ることができるからこそ、
ここまでこじれてしまえば、もう普通の親子の関係を再構成することはできないのではないのかと諦め交じりに久信は思っていた。
 全部、一人だけ飛び抜けてしまった力のせいだ。
 大きな力を持ちすぎた姉は、家族の中で生きていくことができずに孤立して、
今も家に居ることができない。里子の先での生活を、姉は多くを語ってはくれない。
 山奥の組織で訓練を受けているということ。
そしてその組織の中で仕事ももらっているらしいことは聞いたことがあるが、詳しいことはいくら訊いてもやはり微笑ってはぐらかされるだけだ。
 少しずつ疲弊していく姉を見るに、もしかしたら危ないことをさせられているのかもしれない。
 言ってくれれば手伝いにだって行くのに。
 姉が自分のことを久信に話してくれないのは、久信の力が足りないからだろう。
 久信に姉が信頼して厄介ごとを押し付ける事ができるだけの力があれば、きっと姉は久信を頼ってくれて、
 そして独りにならずにすんだんだ……。
 久信が自分自身に対して不満があるとしたら、力がないこと。その一点だった。
 力を付けて、いつか姉を独りにしないでよくなるようになりたい。
 母屋に向かう姉を追いかけながら、久信は強く思った。


   @

 久信は窓から差し込む光を顔に浴びて、目を覚ました。
 ああ、昔の夢を見たな……。
 体を起こしながら思う。あの日以降、姉が実家に帰ってくる頻度は更に下がってしまった。
おそらく、組織から回される仕事に忙殺されていたのだろう。
暗殺を行う一方で、組織のお膝元の町を守る任務もあったという話だから、優しい修実はうかつに町を離れることができなかったのだ。
町に拘束することで、組織の秘密が外部に漏れないよう、体よく利用されていたのだろう。
「今なら、分かるんだ」
 組織が修実にやらせていた仕事も、それをこなしていくうちに姉が肉体的にも精神的にも参っていたことも、
姉が向こうでの生活を詳しく語れなかったのは、あの監視役に強く言い含められていたからだということも、終わってしまった今ならば、分かる。
 そして、それらは全て、久信に修実から頼られるだけの力があれば、何とかなったかもしれないことだった。
「力が欲しい」
 全てを失う寸前で、何とか拾い集めることができた大切なものを今度こそ離してしまわないように、
「さしあたってはこのピンチを乗り越えたいんだけど……」
 窓からコンコン、と小さな音がする。
 窓を開けると、一匹の蛇と犬がいた。
「お、どうだ? 何か見つかった?」
 訊ねると、犬と蛇のコンビは仲良く首を左右に振った。犬の首から伸びている蛇がシュールだ。
「わ、かわいい」
 いつの間にか起きていた修実が歓声を上げる。犬と蛇のとりあわせは修実には受けがいいようで、なによりだ。
 そんなことを思っていると、敷地内にもう一匹、蛇がやってきた。
 町の西方面にある工場の辺りを探してもらっている蛇の内の一匹だ。
「どう? 見つかった?」
 訊ねると、蛇はこちらもまた首を左右に振った。
「駄目か……」
「でも、この仔たちの捜索範囲は少しずつ狭めているんだよね?」
「蛇の皆で全体を囲んで少しずつ包囲の輪を狭めていく感じで探してもらってるよ」
 こちらは久信の本命ということもありかなり力を入れて探してもらっている。
時間はかかるんだろうが、一度完成された包囲網は蛇を殺せばそれだけで判明するし、
抜けようとしても圧倒的な数がそれを許さない。悟られずに崩すのは不可能だ。故に、
 あと少し……かな。
 犬と蛇を相手に戯れている姉を見る。今はこんなところで、いつ破局を迎えるかわからない生活しかできない。しかし、
 そう遠くない未来に修実が本当に安心して笑って生活できるようにしてやる。
 日が昇って来た。今日も、ひたすら耐える日になりそうだった。


そろそろお話を回していこうと思います!
と自分に言わないと俺は動かさないに違いない

コドクの人乙ですー
今も昔も修実ちゃんは健気で可愛いなあ
よし久信もげろ
俺もそろそろあれやこれや書かないと

>>876
久信は修実以外では勃たない業が深い子なので少し多めにみてやってください

あれやこれやの進展があることに期待していいということですかね!?
まだ暑い。脱ぐにはいい季節ですぞ?!


 郭正吾捜索のために蛇を放ってから三日が経過していた。
 その間、警察でも久信たちの方でも、郭正吾発見に繋がりそうな有力な情報は一切入ってこなかった。
 昌夫が犬を通して話してくれる情報が警察が得ている情報全てというわけではないだろうが、
町一つを結界に閉じ込めるだけの力を持つ者について、追加の情報も得ようとしていない所を見ると、
少なくとも郭正吾本人を見つけてはいないことは確かだろう。
 久信が蛇に包囲捜索させている範囲は、この三日の間にその範囲を三分の一ほどにまで狭めている。
その間に成果が何もでないことに、これはアテが外れただろうかと久信は半ば諦めかけていた。
 でも、だとしたら、郭正吾はほかにどうやって脱出するつもりなんだ?
 学校町という曰く付きの町にまで逃げてきたのだ。
都市伝説が隠れるのに適している反面、一度目を付けられたら町から脱出することは難しいという町の特徴については、郭正吾も理解しているはずだ。
 だからこそ、姿を隠すことができる幽霊船での脱出の可能性を考えていたんだけど。
 その考えが見当違いであり、郭正吾は他の方法で既に町を脱出してしまっているという可能性も否定はできない。
 結果が出ない引きこもり生活に焦らされ、久信が自分の考えに自信が持てなくなってきた頃、窓の向こうに犬が姿を現した。
「あら……?」
 犬がやってきたことにいち早く気付いた修実が、犬を見ながら怪訝そうに呟いた。
「どうしちゃったのかしら……?」
「どうかした?」
「久くん。ほら、この仔……」
 修実に示されて久信が犬に目をやると、犬の口に蛇が一匹咥えられている。
 異種族を一緒の行動させていたせいで、ついに喧嘩でも勃発したのだろうか。久信は蛇を救うために手を伸ばしかけ、止めた。
 犬の首には咥えられている蛇とは違う蛇が、首輪のようにしっかりと巻き付いていた。
 犬と、そして首輪になっている蛇は確かに三日前、警察との連絡役にした犬と蛇のコンビだ。
「お前……あれ? じゃあこっちの蛇は……?」
 改めて、犬から咥えていた蛇を受け取る。
「この仔、工場が集まっている地域を探してもらっていた仔じゃない?」
 言われてみればそうだと気付く。毎日の報告を任せていた蛇とは別の個体だったため、気付くのが遅れてしまった。
「なんでこんな運ばれ方をしてこっちまで?」
 問いかけると、蛇は身をくねらせて、重大な報せがあることをほのめかす。
その蛇の必死な様子に、久信は勢い込んで訊ねた。
「見つかったのか?!」
 蛇は肯定の意志を伝えてくる。
「ど、どこだ?!」
 久信は詳しく訊ねようと勇んで顔を寄せた。
 内容を蛇が詳しく説明しだす前に犬が昌夫の言葉を伝えてきた。
「おい へび が みつけた と いってるそうだが」
「ああ、これから詳しく訊くからちょっと待て」
 言うと、久信は昌夫と修実と共に静かに蛇を注視した。いくつもの注目の中。蛇は捜索の結果見つかったものについて伝える。
 それを読み取る久信の口元には、ようやく目的のものに辿り着くという、期待の笑みが浮かんでいた。


   @

 数十分後。夕陽が沈もうかという頃。
 学校町の北から流れている川沿いの一画、工場が立ち並んでいる区域から少し離れたあたりに周囲を廃棄物の集積場や廃工場に囲まれた、
破産か事故かで潰れたという曰く付きの廃墟化したクラブ跡がある。所々ひび割れた二階建ての建物を臨める位置。
そこに久信と修実が居た。
「この町、曰くありの物件がいくつあんだよ」
「蛇の仔が言うには、この建物の奥に郭さんが居るという話ね」
 愚痴をぼしながら、久信は背中からの修実の声に頷く。
「みたいだな」
「あの建物の中に都市伝説の気配を感じるわ」
「なら かのうせい は たかい な」
 二人の足元についてきた犬が重々しく言う。
「きほんてき には おれたち の とうちゃく まで たいき だぞ」
「警察が来るまでは蛇たちを這わせて周囲を包囲するだけにしていろって事だろ。分かってるよ」
 久信はでも、と続ける。
「また逃げられたら今度こそ完全に逃げられるかもしれない。これが最後のチャンスになってしまうかもしれないから、逃げられそうだったら俺は勝手に動くぞ」
 ここで姿をくらまされたら追いかけるのは困難になってしまう。
その上郭正吾に海外にでも逃げられたら、自分たちではおいそれと追いかけることができない。なんとしても相手を捕まえる必要がある。
 その点は昌夫も理解している。
 だから、彼は犬を通してこう言い置くだけにとどめる。
「もっとも ゆうせん する こうどう は たいき だからな」
「味方が多いにこしたことはないからな。できるだけ俺も待つさ」
「そうね。郭さんに逃げられないために確実にいきたいわ」
 久信の背に負われた修実も、何者も彼女の視線をかいくぐることはできないであろうと思わせる気迫で、郭正吾の潜伏場所とおぼしき場所を凝視している。
 現在。昌夫の呼びかけで町全体を探していた警察の半数ほどがこの場所に集結している。
可能ならば、この町の警察の力も借りるらしく、全ての準備が整うのに約一時間はかかるということだった。
 その間の時間を使って、久信は蛇神憑きの力で生み出した蛇を何匹も何匹もクラブ跡の周囲に配置していた。
 その作業を二十分ほど続けているうちに陽が落ちた。
 とたんに悪くなった視界に、郭正吾が姿をあらわした時に絶対に見落とさないようにと特に神経を研ぎ澄ませていると、
久信たちの居る位置のすぐ横にある川を異様な気配が通過していった。

「――!?」
 目に見えないそれは、川を遡っているようだ。気配だけがそよ、と吹く程度の風を残して通り過ぎていく。
「気のせい……じゃないよな?」
「うん、これは何かが通ってるよ」
 何かが川を通過するかもしれないと予想していなければ見過ごしてしまいそうなほど静かに、音もなく、ゆっくりと離れていく気配に対して姉弟は感想を述べ合う。
「ゆうれいせん か?」
「ええ……」
 修実が呟いて舌を出す。
 蛇と同じように振動感覚器を体内に作り出すことができる彼女は川の上、一見虚空に見える位置を見据えて、やがて断言した。
「この気配。組織と取引があった幽霊船のものだわ」
「みつばい そしき の か?」
「隠していはいるけれど、水面に伝わっているこのエンジンの振動、間違いないわ」
 昌夫の問いにしかと頷く。
 川を遡っていた気配は完全に停止したのか、それとも遠くに離れすぎてしまったのか、まったく感じられなくなってしまった。
「これで奴の逃亡手段は確定か」
「の ようだな よくやってくれた ひさ」
「あとは捕まえるだけだな」
 ようやく捉えた敵の尻尾を逃がさないというように久信は力を込めて言う。
 それとタイミングを合わせるように、クラブ跡の二階屋上に1人の男が現れた。
 中肉中背。黒いスーツを着て、片目を眼帯で隠している。
布に巻かれた四つの長物を持っている男の姿に、修実が押し殺した声で名前を呟く。
「郭さん……」
 彼が、姉弟の探していた人物、郭正吾だった。
 屋上に出てきた郭正吾は周囲を一度見回した後、川に面した一角に向かって行った。
 屋上の端のあたりに至ると、郭の姿は久信たちの視界から霞んで、溶け込むようにして消えてしまった。

「何だ?!」
「ゆうれい せん の けっかい に とりこまれたんだ」
 昌夫の言葉を受けて、久信は隠れ場所から立ち上がった。
「まて! いま むかってる もうすこしだ」
 犬の口が急いだ口調で待ったをかけてくるが、このまま待てばみすみす郭正吾を逃がすことに繋がってしまう。
 言葉を無視して、久信は背後の姉に声を掛ける。
「修実姉!」
「うん!」
 応じる声がして、久信の背で禍々しい気配が凝り始めた。
「……よしみ さん ……?」
 犬を通して姉弟を見守る昌夫が修実の様子に驚きの声を上げる。
 幽霊船があるだろう場所を見据えている修実。
彼女の体からは滲みだすようにして、空気中へと毒気と呪詛が黒い靄のようになって溢れ出していた。
それらは彼女の眼前にて黒い、瘴気の塊として結実する。
黒々と存在を主張するそれは、物理的な破壊力よりも、その呪力によって結界や加護のような霊的な防備に属するものを浸食して破壊する。
そのような用途に特化した呪物としてそこに在った。
「おい なんだ それは?」
 犬が昌夫の能力の恩恵を介してすらおびえを見せ、数歩を後退しながら言葉を寄越す。
 修実が現在作り上げている瘴気の塊。それは蛇神憑きという都市伝説からは乖離している力だ。
あるいは蛇神憑きの呪詛としての部分を磨き上げれば扱えるようになるかもしれないが、
少なくとも昌夫が知っている小野家は諜報を基本としており、邪魔者の排除は蛇を使って物理的にやる。
修実もまた、このような方面への力の特化はさせてはいないはずだった。
「おい ひさ このちからは なんだ?」
「俺も見るのは初めてだよ」
 久信が唸るように言う。
「なんだと?」
 どういうことだ。と昌夫が問う前に、修実の眼前に凝っていた瘴気の塊が放たれた。
 まっすぐに飛んだ黒塊は、数秒の後、視認できない幽霊船に着弾した。
 分厚い氷を力づくで割り砕くような破壊的な音を立てて結界が消し飛ぶ。
 取り払われた結界の向こうから現れた幽霊船は、十数人が乗れそうな、
組織も何もかもを失った男1人を逃がすために来たにしては意外にも大きさのある船だった。
 船一つを覆い隠していた結界が吹き飛んだ余波で吹き荒れる突風に目をすがめながらも、
久信は視線を逸らすことなく、目標となる人物を視界に捉えていた。
 景色の中に、唐突に浮かび上がるようにして再び姿を現した郭正吾を。


   @

 幽霊船を覆っていた結界が拭き取んだことで、
クラブ跡の二階屋上から接岸した船に飛び乗ろうとしていた郭正吾は動きを止めた。
 つい先ほどもしたように、周囲に視線をやる。
 結界を破壊したあの黒い塊はどこから飛来したのだろうかと考えながら、
憶測で黒い塊の発射地点を目で探っていた彼は、船の乗組員がようやく状況を理解してざわつき出すのを見た。
 手土産を持った自分を迎えるために甲板に出て来ていた乗組員が慌てて離脱の指示を出し始める。もたもたしていると、自分も置いて行かれてしまうだろう。
 彼は急ぎ、持って来ていた四つの長物を次々と投げ渡していき、自分も船へと飛び移ろうとする。
 最後の四つ目を放り投げようとした時、クラブ跡の壁を這い登ってきた蛇が襲い掛かってきた。
「蛇だと……?!」
 叫び、その意味を考えるより早く、咄嗟の動きで靴に絡みついてきた蛇を振り払う。
 その拍子に最後の荷物が屋上から落下してしまったが、彼に荷物の行く先を気にする余裕はなかった。
 次々に這い登ってくる蛇が彼に殺到してきたのだ。
 郭正吾は船に飛び乗ることを一旦諦め、クラブ跡の中に戻っていった。



   @

 郭正吾をクラブの中に押し込むことに成功した久信は、姉と共に、ダメ押しとばかりに蛇を何十何百という数量でクラブ跡と、浮き足立っている幽霊船に向けて放った。
 船の甲板上に現れた戦闘要員と思しき者たちが次々と這い寄る蛇の群れに接敵した。
 ただの蛇と侮ってい軽くあしらおうとしていた数名が、ものの数秒で蛇の神経毒を受けて無力化させられる。
 事ここに至って、ようやく彼らの間に明確な危機感が芽生えたようで、船から聞こえてくる叫び声に必死の色が混ざりはじめる。
 しかしすでに数十匹の蛇が侵入した現状では――
「遅い。迎撃態勢を整えられる前に一気に叩く」
 パニック映画のような様相を呈してきた船を置いて、久信はクラブ跡の方へと近づいてく。
 それに付き従うようにしながら、制止することは諦めたらしい。犬が、次々と這い登っていく蛇の間を抜けて、クラブと船の間に落ちた長物の一つを咥えてきた。
 郭正吾が持ってきていた荷物の一つだ。
何か重要な荷物の可能性もある。中身は何なのか気になって、久信が問おうとすると、それよりも早く、犬が荷物を地面に置いて急ぎ包装を外しにかかった。
 事前ににおいで正体に気付いていたのか、犬は出てきた中身について特に驚くことはなく、淡々と二人にそれを見せた。
「おい これ みろ」
 犬の足元。そこには鱗のようなものが浮かび上がった人間の腕があった。
「これ……」
 修実が絶句する。一瞬理解が追いつかなかった久信に、犬ははっきりと告げた。
「あいつが もってた にもつ たぶん よしみさんの うで と あし だ」
 蛇の鱗を体に浮かせて硬化させる力を持っていた修実の腕。
修実が町ぐるみのリンチを受けた際に切断されたそれが、今ここにどうしようもないくらい生々しく存在していた。

昌夫には幸せになってもらいたいと最近思い始めました
そんなところでそろそろ姉の正体ばらしも近いかなといった塩梅です
まずは郭から都市伝説ばらしですかねー

コドクの人乙ですー
修実ちゃんの手足だと…
リンチした奴許さん、絶対にだ

「よし、3番行くぞ。まずは尻尾を集中攻撃だ」

「了解した」

「はい、ご主人様♪」

「テメェら飽きねぇのか? 俺様はもう見飽きたぞ黒蝕竜」

「今度の緊急はわざわざ自分で受注しないとHR上がらないから仕方ないだろ
 文句言わずに早く支給品持て」

「へいへい、OKィOKィ」

「しっかしますます面白くなりやしたねー、MH4は」

「新モンスターがことごとく面倒になった気はするけどね
 無駄に長いだとか、無駄に硬いだとか、無駄に速いだとか」

「看板モンスターのゴア・マガラは狂竜ウィルスをバラまいて第2形態に変化するしな
 ティガよりデカいから真面目に面倒臭い
 とはいえ、狂竜症は克服すりゃメリットになるんだけどな」

「ペイント投げたぞ」

「頭はハンマーにお任せしますね」

「操虫棍も打撃だろうが! ハンマー任せにしてねぇでテメェもやれ!」

「俺の嫁に命令すんな」

「余裕、であります」

「んー緊張感がないとも言うね」

「あ゙ー畜生キレやがった!」

「俺のこの手が真っ赤に燃える」

「ゴア相手にゴア装備で来てんじゃねぇ!? 武器までゴア使いやがって自慢かテメェ!?」

「使いなれてるからな。形的に」

「そういえばスラックスで鎌タイプは今回が初か」

「もっと早く欲しかった。出して貰っただけ満足だけどな……あ、第2形態」

「ご主人様! 乗りました!」

「流石は俺の嫁、愛してる
 お前等邪魔するなよ、乗りダウン成功させろ」

「と言ってる間に倒れたな」

「ヘルズファキナウェイ!」

「お、角破壊成功でい!」

「これで触角ゲットですね♪」

「スルーしてんじゃねぇよ! 何だよ今の珍妙奇天烈な必殺技っぽいの!?」

「バルムンク=フェザリオンの必殺技だね」

「アニメ『銀魂』第221話参照、であります」

「誰か日焼けマシンの契約者連れてこい! ツッコミが足りねぇ!」

「何をボーっと突っ立ってる、7番に来い」

「尻尾斬ったぞ」

「良くやった」

「この騒がしいのに淡々とやってるねぇ」

「新武器のチャージアックスも馴染んできやしたし」

「基本は片手剣だからな。コツさえ掴めばどうとでもなる」

「お見事、であります」

「サブターゲットも達成ですぅ♪」

「着いた頃には既に瀕死状態じゃねぇか!」

「遅過ぎだ」

「テメェ等が早ぇんだよ!」

「足引き摺ってるな、捕獲するのか?」

「えっと、9番で寝るんでしたっけ」

「あぁ、罠は眠ったのを見計らって俺が張る
 麻酔玉は何もしてない理夢がやれ」

「俺様が寄生やってるみてぇに聞こえるからやめろ!?」

「でも殆ど寄生みたいなものですよねー」

「マジで毒吐くようになったよなテメェ!?」

「さてと、今の内に僕も準備しておこうかな」

「何を持ってきゃ良いんでござんしょ?」

「強いて言えばウチケシの実だな
 狂竜ウィルスに感染した時に使えば、発症までのゲージを減らしてくれる
 とは言え、絶え間なく攻撃する技術があるのであれば別に持って行かなくても良い
 後、角を折りたい場合は大タル爆弾Gだな
 シビレ罠にかけて顔面で2つ起爆すれば大体折れる」

「因みに弱点属性は火だ。序盤だとクルペッコの武器が作れるから助かる」

「ケチャワチャの耳が大量に要るんですよね;」

「狩猟数がゴアとケチャワチャだけ異常に多くなるんだよな」

「オラァ! 捕獲完了したぜ!」

「これで4人のHRが3になったな
 次はウィルとナユタ、ビオの番だ」

「イエス、ボス」

「てかマジでよく飽きねぇよな、主」

「純粋に狩りが楽しいだけだ」

「裂邪、ローゼから着信が来てるぞ」

「今忙しいからパス」



   ...To be Continued?

皆様投下乙ですの
お久しぶりですの
いつの間にやら新しい連載が始まっててテンション高いですの

【~直立二足歩行動物園~】

血生臭い研究室から久々に地上に出た私は、煤のついたお気に入りの白衣をはためかせながらのんびり歩いていた。

頬を撫でる涼しい風、晴れ渡る空、囀ずる小鳥達、今日は絶好の散歩日和だ。
全くもって関係はないが途中で買った缶コーヒーも美味しいし。

「お仕事ですよ、動物園さん」

「……………はぁ」

やっぱり訂正、今日は厄日だ。
草むらから苛立たしい黒服君が顔を出したからには、厄日確定だ。

「そんな物凄く不機嫌な顔になってないで、ちょっと聞いてくださいよ」

今日も今日とて現れたこの青年は、私の友人とその都市伝説の存在を組織に告げないと言う約束の下に手を貸してあげている黒服だ。

「相も変わらず調ちゃんとか、掛相博士とかって呼べないのかなぁ…黒服君?」

「いやぁ、動物園さんの方可愛げがあっていいじゃないですかー」

張り付けたような笑顔と棒読み…本当にそう思ってるかも疑わしいのよね。

「とにかく仕事ですよ、仕事」

「……………………………」

面倒くさいので私は無視して歩き出す。
聞きたくもないし、さっさとお帰りいただきたい。

「聞いてますかー、英語で言うとワークですよー、ワクワクしますでしょー」

ウザい……ただウザいの一言に尽きる。

……台所の油汚れより頑固な彼の対処法は別段無いようで、仕方がないので歩きながら全容を聞くことにした。

「はいはい、分かったから…で、相手は?」

ペラペラとお手製ビンゴノートをめくる黒服君。
これで普通な口裂け女とかなら直ぐ様帰ろう。

「今回の目標は人面犬の集団です」
「全力で潰すよ!!」
「いきなり殺る気満々ですね」

黒服君がちょっと引いてるけど気にしないわ。
顔が人間で体が動物なんて神が認めようと私が認めはしないの。


「で、何処に居るのかしらその犬共は?」
「えー……そろそろ追いかけてくるかと」

キョロキョロと辺りを見渡す黒服君
よく見ると彼は所々傷だらけだ。
くたびれた制服が破れた制服にランクアップされていていたたまれない。

「追いかけてって……追われてるの?」
「あはは、事前調査中に奇襲を受けてしまいまry」

笑いながら話していた黒服君が急に宙を舞った。
無論イラついた私が無意識に蹴り飛ばした可能性も否めないが、目撃したまんまに考えると、黒服君へ何かが突っ込んできたと判断するべきだろう。

「へへへ……お嬢さん、組織の契約者か」

ぶつかった何かが蠢いて此方を見ている。
顔はオッサン、体は犬…人面犬以外の何者ではないだろう。

「そうよ、イヌモドキ…ほねっこでも食べる?」

とりあえずは人面犬に付いてた血の量から察するに黒服君は大丈夫だろう。
あの手の奴はそうそう死なないのが相場と言うものであろうし。

「ほっといてくれよ、生憎ペディグリーチャムが好きでな」
「人肉でもいいぜ…柔らかい胸の脂肪とかなぁ」
「アンタのは絶壁みてーだがよ、ヌヘヘ」

そうこうしてる間にゲスいワンちゃん大集合、101匹は流石に居ないが20匹でも圧巻のブサ顔集団だ。
それから最後の絶壁言った奴は…気に入った、殺すのは最期にしてやる。

「さて、さようならだお嬢さん」

一斉に飛び掛かってくるオッサン犬等……来んなオヤジ臭い。

「…みんなーご飯だよー」

私は手を鳴らして皆を呼ぶ、皆とは私の可愛い可愛いペット達の事だ
あと、あの発言した奴は最後にしてやると言ったな……あれは嘘だ。

「ぎゃぁぁぁっ!!」
「どうしたポチ!?…なんじゃこりゃぁぁっ!」

人面犬のリーダー格が振り向いた先に見えたのは、道や屋根づたいに次々と獣人が現れ各々が人面犬に襲い掛かかっている景色だ。

「ベエェェェッ!!」

うん、今日も山羊くんの斧は切れ味抜群ね。
一刀両断にぶった切ってご機嫌な山羊くんは高らかに雄叫びを上げていた。

「気、気持ち悪いぞコイツら」
「グルルルルッ」

人面犬をドックマンが空中へ投げ飛ばし、器用に喉笛に喰らい付く。
血飛沫と共に悲鳴をあげながら人面犬の体が、光になって空中に散ってゆく。
うんうん、人面犬より顔が犬のこの子の方が百倍可愛いわ。
特に犬君は敵を仕留めると嬉しそうに尾をブンブン振ってキュートなのよねー。

「なんなんだ手前、ドックマンにゴートマン、果てはピッグマンまで
まさか、多重契約者か!?」

最後のオッサンが豚くんと蜥蜴くんになぶられながら問い掛けてきたので、せっかくだから答えてあげるとしよう。

「私はね"遺伝子組み合わせ陰謀説"と契約してるの」
「な、そんなの滅茶苦「ゲコォ」

はいはいオシマイっと……カエルくんの丸呑みはいつ見ても鮮やかだなぁ。
さて、黒服君を路傍に捨て……寄せておいてと…

あっくんの家にでも遊びに行くかな―。

〈了〉

とある人と代理の人乙ですー
絶壁はステータスやん!怒る必要ないやん!
んでも遺伝子組み替えいいですねー、うちも使ってみたいわあ

前回のあらすじ>>547-548

「どーゆー事だか説明しろ」
「どうもこうも、見たままだ」
 裂けたシャツの間からのぞく、簡素だが上質な絹のコルセット。
「マジかよ・・・」
 小うるさく理想主義者の“老紳士”は実は淑女だった・・・アルバート・ルイスの名も、偽名に決まっている。
 女がズボンを穿くことすら有り得ない、女性はか弱く、憂愁に沈み良妻賢母であるべき、このヴィクトリア朝のご時世で!
「婆さんが男装して刑事とか有りなのか」
 まあ、普通なら有り得ない。
 その“有り得ない”を実行できる後ろ盾が彼、いや、彼女にはあるのだろう。
「婆さんとか言うな」
「婆さんだろうが。どこのご婦人だか知らねえが、女が力持ってハバきかすのは〈教会〉だけで充分だぜ、鬱陶しい」
「女だって王にもなれるんだ。刑事になって何が悪い・・・孫がな、今回の事で嫌疑を掛けられていて。私は彼を信じているが、世間は口さがない。放っておけなくなったのだ」
「身分を偽造できるほどの権力者のご婦人なんだから、旦那に任せとけよ」
 エディが白けた瞳を向けると、彼女の表情が沈んだのを見て取れた。
「私は既に未亡人だ・・・「アルバート」は、亡くなった夫の名だ」
 夫の生前はさぞおしどり夫婦だったのだろうその表情に、エディは自らの発言の拙さを少しだけ悔やむ。
「それで、あの子供に心当たりは」
「ない」
「じゃ、あんたの孫はシロか」
「そう思いたい」
 彼女がそう思いたくても、捜査は結局何も進んでいない。
 切り裂きジャックと少女の関連は不明。
「あのガキが犯人なら、あんたの孫は即ちシロ・・・ともいかねえな。何らかの理由で協力してる可能性もある」
「馬鹿な!」
 彼女が叫んだ理由は、エディの想像からは少々ずれていた。
「あんな子供が、殺人!?馬鹿も休み休み―」
「バカはあんただ!」
「男装して刑事の真似事なんかする割に世の中しらねーな!路頭に迷ったあげくに、食うために小銭で何でもするガキなんかごまんと居るんだよ!」
 無性に苛立つ。この女の無知に。
 この女も、きっと家に帰れば女中がいて、上流階級の奥様としての生活を満喫するのだろう。
 そして慈善と称して、貧にあえぐ労働者や小作人達のために寄付やら何やら善人ぶって・・・

(くだらねえ、誰のお陰で、こいつらは!)

 誰のお陰で、こいつらは何不自由ない生活を満喫しているというのか。

「・・・見つけた」

 かすかに潜めたような、ちいさなソプラノの呟きに、エディは我に返る。
「追って来やがったか、畜生」
 背後を振り返り、一瞬言葉を失った。
 銃撃のせいか、裂けたドレスの裾から覗く左足―膝から下が無くなり、片足だけの覚束ない足取りで近づいてくる。
 それでも少女は顔色ひとつ変えるでなく、千切れた足からも血の一滴すら零れない。

「人間じゃねえ・・・」
 人間ではあり得ない。即ち、それは。
「〈伝説〉か!」
 吐き捨てるように呟くと、再び銃を構える。
 とりあえず何の〈伝説〉かはどうでもいい。とにかく動きを止めなくては。残った片方の足をやれば、少なくとも歩くことは出来なくなるだろう。
「エディ・・・」
「ご覧の通りだ。こいつは人間じゃねえ。鉛玉もう一発くらいじゃどうこうならねえ。黙って見てろ」
 「自称アルバート」に背を向けたまま、エディが引き金に指を掛けた。
「その足・・・白磁(ビスク)か。人形が動くたぁどういう〈伝説〉だ?」
「・・・わたしは、わたし。お父さんの子供のエリザベス。それだけ」
「まあいい。お前の身柄、〈教会〉が貰い受ける」
「わたしの・・・お父さんの邪魔をするなら、あなたも[ピーーー]」
「お父さん・・・?」
「親父とやら、もしかしなくても『切り裂きジャック』か・・・そりゃ、捕まえようとする俺達はさぞ邪魔だろうよ、俺達を殺せとでも言われたか」
「あなたが悪いの。お父さんを、捕まえて[ピーーー]んでしょ」
 少女の人形はナイフを振り上げる。

「やめるんだ!」

 次の瞬間。
「・・・・・・?」
 「自称アルバート」が、少女の人形を庇うように抱きすくめていた。
「もう、いい・・・エリザベス・・・と言ったか。もう、やめなさい」
「・・・なあに、あなた」
「エリザベス、君の父親のしていることは、人殺しだ。」
「・・・・・・」
「罪なことなんだ。協力してはいけない。そして、君のお父さんは、罪に見合う罰を受けなければならない」
「・・・・・・」
「・・・私は、君も、君のお父さんも、出来るだけ救いたい。難しいかもしれないが、出来る限り力を貸すから、私を信じて一緒に来てくれないか」
「わたしを・・・お父さんを、救う・・・?」
「ああ」
「いいのかよ、それで」
「ああ」
「・・・お父さん」
 人形の無表情な瞳が、何故か葛藤と闘っているようにエディには見えた。

「エリザベス!」

 俄に響いた声に、一同がはっと振り向く。
 そこに立っていたのは中年の男。生活というより生きること自体に疲れているようにやつれてはいたが、瞳だけはぎらぎらと殺意に光っていた。
「お父さん・・・」



続く

九三式エビフ雷を満載、片舷20門・全40門のエビフ雷発射管を誇る重雷装艦へと改装されたスーパー思考盗聴警察の神田です
その威力は圧倒的と言われていたけれどー、活躍する機会が微妙になかったんだよねー。ちぇーっ

コドクノオリの人のストーリーもいよいよ佳境に差し掛かってまいりましたね
郭は逃亡中に修実さんの腕と脚をナニに使っていたのかと思うと頭に血が昇りますね
靄のかかっていた伏線がとうとう明らかにされていく展開を想うと沸騰しそうになりますね
ええ興奮しています
そして、ありがとうございました
今回の展開と文体でとうとう把握しました
前回まで40%の憶測でしかありませんでしたが、今回は70%の確信に変わりました
おお、なんということだ…
続きを楽しみにしています

誰だと思えばあの人でしたか
乙です
RangersのRainbowの日常回がこうだと知ると
卒倒してしまう人に何人か心当たりがありますが
そうそう、そういえば清太や藍那さんとか
仲橋光陽や美菜季さんはこれからどうなるんでしょうか
とっても楽しみです
富野由悠季曰く、悪役の条件は周囲に美女を侍らせていることだそうですが
黄昏裂邪はやはり周囲の女性を手当たり次第…

…これ以上は思考盗聴警察のイメージが悪くなるので止めます
何?もう遅い?
そうですか
そう…

御二方ともお久しぶりです
とある人も今思えばかなり長いですね
人面犬にはシンパシーを感じます
そしてこの黒服が黒幕ですね
ブラックなだけに!
…はい
失礼しました

◆12zUSOBYLQさんも久しいですね
果して本当にジャック=親父なのか
親父は本当に自分の意志で動いているのか
親父の鼻先に骨付き肉をぶら下げているのは誰なのか
その肉を操っているのはいったい何なのか
そしてアルバートは本当に老女なのか
気になりますね
そして鳥居の人はこういうの書くと活き活きしますね


ところで私は本当の神田ではありません
スーパー神田さまと呼んでください
ノイちゃんライサちゃん出ておいで一緒にいいことしよう

皆さま乙ですー

モンハンやったことないからいまいち分からんのですなー
モンスター倒して材料集めて武器作ってまた狩りに行くって感じなんですかね?

遺伝子を組み合わせることによって理想の女性を作り上げることができる
のではないかという天才的な結論に達したので誰か作ってくれるとお兄さん超喜ぶよ!
それはさておき
人面犬さん……オヤジ臭い上にきっと獣臭いんですよね……ちょっと、その、なんというか、飼いたくはないなぁ

エリザベスちゃん。ビスクドールなリビングドールってことになるんだろうか
お父様のいろんな意味での正体が楽しみです
あと、切り裂きジャックを殺さないでという言葉の真意も気になりますぜ

スーパー神田さま
どこらへんの文体とか展開が判断材料になったのかちょっとお兄さんに教えてみ?
自分のくせとか分かりそうなので是非に……!

さあて、サクっと逝くよー!


 郭正吾が持っていた長物は、修実の腕だった。
 他の三つの長物も全て修実の腕と脚だろう。
 地面に転がっている腕を見せつけられ、理解が及ぶに至って、久信は組織も何もかも失った郭正吾に対して何故体裁を整えた船が迎えに来たのかが理解できた。
 ……奴らにとってあの野郎はまだ上客なわけだ。
 郭正吾は自分の迎えの代価として、修実の腕と脚を売り渡すつもりだったのだろう。
 今目の前にある修実の腕には蛇の鱗が浮かんでいる。
おそらく、能力を発動している時に切断され、そのまま持っていかれたものだ。
 この腕は、元々が強力な契約者である修実の能力で変化させた人体の一部であり、また、修実は代々蛇神憑きという都市伝説を受け継ぐ一族の末裔だ。
 個人ではなく、血筋として契約が継続している都市伝説とその能力者の貴重なサンプルとしての価値も持っている。
「船賃どころかその後の生活の支度金にはなるんじゃないか? 腹が立つ」
「私の腕……こんなところにあったんだね」
 毒づく久信の背で修実がしょうがない、といった口調で呟く。
 腕も脚も、既に修実とは完全に切り離されてしまっている。
それに、事件から数週間経っているにもかかわらず、転がっている腕には傷みが見られない。
その様子からすると、都市伝説か薬品かでなんらかの防腐処理が施されている可能性が高い。
 このような状態になってしまっては、再びくっつけてはいおしまい。というわけにはいかない。
 もう二度とこの四肢は修実の体の一部として機能することはなくなった。
「……あとで だび に ふそう」
「そうね。しっかり焼いてくれると私は嬉しいわ」
 犬の提案に頷き、今はこれ以上この腕の感傷に時間を割くわけにはいかないとばかりに、修実は久信を促す。
「さあ、行きましょう。ここで郭さんを捕まえないと、昌夫くんとの連携が取れているところ以外の警察も呼んでしまった以上、もう私たちも後はないのだから」
「そうだな」

 船からは叫び声が聞こえてくる。完全な奇襲を仕掛けた形だ。
密輸船ならば多少の装備はあるだろうが、こちら側の攻撃が相手の不意をついた形であること。
そして船の狭い通路で相手は蛇の対処しなければならないという状況は次々と侵入していく蛇たちにとって有利に働くだろう。
久信の気持ちが荒れているため這い進んで行く蛇たちも攻撃的だ。このまま放っておけば足止めくらいは十分出来る。
止めは警察なり幽霊船を見つけた他の組織の奴にでも任せておけばいい。
 一方で、郭正吾が居るクラブからは不気味な沈黙しか返ってこなかった。
「先に行ってもらってた仔たちはもう全滅してる……」
「あれだけ おくりこんだ へび がか?」
 周囲の状況を確認していた修実が険のある表情で言う。
「郭さん本人も契約者で、相当強いわ。硬化した私の腕を切ったのはあの人だから」
「もっと くわしく やつ の のうりょく は わからないのか?」
 久信も依然した問いだ。吉井は当時と同じように首を横に振って、
「その時、私は手足を切られたばかりで頭の中がぐちゃぐちゃになってたから分からないの」
「……すまない」
 犬が失言を認めて俯いた。
「ごめんね。肝心なところが分からなくて」
 苦笑気味に言う修実の後を引き継ぐ形で久信が続ける。
「それでも分かってることはある」
 それは、
「郭の主な武器は、硬化した修実の手足を切断するだけの力。それに強力な結界を張ることができる能力。
能力の規模自体も大きいから、たぶん蛇を送り込むだけじゃ――」
 口にする間に新たに送り込んだ蛇が殺されたのだろう。修実が小さく「蛇が……」と呟く。
「やっぱり、蛇だけじゃ形成は不利か」
 クラブ跡の、暗く狭い場所で蛇の群れによるほぼ全方位からの攻撃を受けても対処できるということは、たいていの状況では、蛇を送り込んだだけでは郭正吾は倒せないということだ。
 ……せめて郭正吾をこのまま建物の中に押し込めることができればいいんだけど。
 郭正吾は結界を張る事ができる。
このままでは蛇が途切れた隙をついて自分と蛇たちを分断する結界を張って、あのクラブ跡から脱出してしまうのかもしれない。
 建物の壁。という障害物は修実の手足を切断できるだけの膂力があるのならば障害物たりえない。

「やっぱり、直接行って足止めかけるしかないか」
 気合を入れるように言って、久信はクラブ跡の窓枠に足をかけた。
「ひさ」
 犬が半ば分かっている口調で咎めてきた。
 だから、久信も分かれ。という口調で言う。
「蛇じゃ郭正吾は止められない」
「だからって おまえ が ちょくせつ いって なにが できる」
 犬が言うように久信の能力は直に相手に向き合って行う戦闘には向いていない。
「おれたち が つく まで もうすこし だ それまで」
「だめだ。このままだと逃げられる。俺が足を止めてくる」
 蛇製造器である自分が近づけば、量で郭正吾を足止めできるだろうと判断して、久信は窓枠の奥、建物内に侵入した。
 クラブ跡の中に侵入した久信は窓の外に向き直ると、地面に蛇を絨毯のように敷き詰めた。その上に修実を置こうと背に声をかける。
「修実姉、少しの間、ここで待っててくれ」
「嫌よ。久くん」
 即答で拒否し、修実は続ける。
「久くんが行くなら、私も一緒に連れて行って」
「でも……」
「私は足手まといにはならないわ。それに、郭さんには私も言いたいことがあるの」
 相手の能力がわからない以上、姉を連れて危険地帯に行くのは出来るだけ避けたい。
 だが、と打消しの言葉を思い、久信は頷いた。
「……わかった」
 今の修実は集団で襲われて敗北した時とは状況が大いに違う。
 おそらく、今の姉ならば町ぐるみで襲われたところで退けることもできるだろうし、彼女を伴えば、久信1人で行くよりもはるかに生存確率は上がる。
 足止めだけじゃなく、捕縛もできるかもしれない。
「行こう、修実姉」
「ええ」
 頷き合って、窓枠の向こうに消えていく姉弟に、犬が声を投げる。
「おまえら! すぐに つくからな! いいか あぶない と おもった ときは すぐに もどってこいよ!」
 犬は背を向け、蛇の間を抜けて走っていく。仲間を迎えに行くんだろう。
「また、心配ばっかりかけてるね」
 どうしてこうなってしまうのかと困惑した調子で修実が言い、久信は心に浮かんだ言葉をそのまま口にした。
「苦労性の星の下に生まれたとしか思えないな」
「たしかにそうかもしれないわ……」
 言う間にも、蛇を這わせ続け、久信はクラブの奥に侵入する。部屋の中は光源もなく、打ち捨てられた椅子やテーブルの向こうが廊下に続いていた。
 蛇に先導を任せ、久信は郭に逃げられないうちに姿を見つけ出そうと急いた調子で足を踏み出して、廊下へ抜ける。
 その瞬間。
 ――クラブ跡全体が結界に包み込まれた。

ちょっと長くなりそうなので追走戦導入を先に投下。
続きは今週中に書きたいです


 黒服さんの車で揺られて学校町に帰ってきた。

 今日は色々と疲れた。僕の知り合いに同人作家をやってる都市伝説がいるんだけど、
 その人にお願いされて今日はイベントの売り子をすることになっていた。コスプレも込みで。
 そしたら今度はコスプレ会場に引っ張り出されて、色んな人に写真を撮られる羽目になった。
 撮られるのって、意外とメンタルをごっそりやられるんだな、と気づいた頃には時遅く、膝が笑うほどくたくたになっていた。
 なんなんだよ、もう。
 ちなみにそのコスプレというのは、何かのキャラクターらしく、セーラー服っぽい衣装に黄色のカツラを被せられた。
 売り子をさせた同人作家曰く、パソコンに歌わせるためのソフトのキャラって話だったけど、よく分からない。
 確かだったのは、僕を取り囲んで写真に撮ってたのが年上のお姉さん達だったってことと、
 みんな目をギラギラさせてとにかく怖かったってことだ。
 正直、ああいうのは本当に苦手だよ。

 何より一番ひどかったのが黒服さんだ。
 いつもは元気いっぱいって感じだけど、無理強いとかはしなさそうな人なんだ。
 だけど今日はイベント会場にまで来て、武器としか思えないようなゴツいカメラを僕に向けてはバッスンバッスン写真を撮ってた。
 黒服さんも目をギンギラさせながら、「視線ください!」とか、「もうちょっと胸張って!」とか、「もっと見下す感じで!」とか、
 とにかくはしゃいでた。
 ちょっと引いちゃったけど、普段の仕事が忙しそうで、休む暇も無いのかな、と思うとちょっと可哀想になったから、
 黒服さんのガス抜きに付き合うつもりで、なるべくリクエストに応えられるように頑張ったみたつもりだ。

 あ、僕は「ミルキーはパパの味が存在する」という都市伝説と契約している。
 いわば、都市伝説と契約した能力者だ。大して役に立ってないけどね。
 覚えてるかな? 大体1年くらい前に「組織」のせいで夏休みの宿題が出来なかったって愚痴をこぼしたんだけど。
 結局あの後、知り合いの協力もあって何とか宿題を終わらせることができた。
 持つべきものは友達だね。
 ちなみに僕を担当していた当時の黒服さんだけど、かなり問題がある人だったということを後から知った。
 裏では結構ブラックなことをしてたみたいで、僕への仕打ちはまだまだ可愛いレベルだったらしい。
 どうやら予算と貴重な物品の使い込みが発覚したらしくて処罰対象になったみたいだけど、
 その時には既に行方を晦ませていたようだ。あいつはバックレたんだ。
 その後、僕の担当は中立派の黒服さんに変更になった。おかっぱ頭のお姉さんだ。
 今までデスクワーク一筋だったみたいで、契約者を受け持つのは僕が始めてらしいけど、
 顔合わせの時に両手を握られて「私生活まで全部サポートしてあげます!!」なんてことを大声で宣言されてしまった。
 かなり恥ずかしかったけど、ちょっぴり、本当にちょっぴり嬉しかったのは秘密だ。

「もう少しで着きますからね!」
 黒服さんの声で我に返った。
 黒服さんはまだ興奮してるっぽい。
 気づけば雨が降り出していた。結構強いな。また台風が発生したとか?

「今、なんか凄い音しなかった?」
「多分、雷ですよ。近くに落ちたのかな? 怖いですね」

 この時の僕は知らなかった。
 家に着いたら、黒服さんが「雷怖い」と言い出して強硬的にお泊りしようとすることを。
 そして、僕と一緒にお風呂に入ってしまうことを。

 いや、本当に知らなかったんだってば。

 終

皆さん乙なのよね
コドクの人は次回クライマックス!という感じだけど非常に怖い予感が…
魔弾の話も久しぶりなのよね、次回2on2か

山崎ロールがどこにも売っていない
大変だ

というわけで急ぐのよね
>>902より少し前の出来事なの


気づけば南区のラブホ街を走っていた
空模様からやばいんじゃないかと思っていたが、やっぱり降り出してきた
しかも土砂降りときた。雨水をたっぷり呑んだ靴が重い

「何なんだよ畜生」

俺を追いかけてくる奴の顔はばっちり覚えた
覚えられないわけがない
体は人間だが顔が羊だ
忘れられるか馬鹿

あいつは体中から放電してきた
静電気とかそういうレベルじゃない
あれは雷かなにかだ

間違いない
あいつは俺を殺しに来ているんだ

「き、来やがった」

路地の闇を突き抜けるようにして、羊人間がダッシュで追ってきた

「クソが!!」

俺は咄嗟に右手をかざした




今、俺の右手はやばい状況だ
今朝方気づけば痣のようなものが出来ていたがその時は気に留めなかった
バイトが終わった頃には手のひら全体を覆うようにどす黒くなっていたんだ

そして信じがたいことに
この右手が今の俺にとって身を守る唯一の手段だった

「来んじゃねぇっ!!」

ダッシュしてくる羊人間に右手を向ける
手のひらから何かが飛び出す手応えとほぼ同時に反動で右手がぶれる
なにか焼ける音と共に香ばしい匂いがただよった
それも一瞬だ、何もかも雨音が掻き消していく

だが、右手から撃ち出されたブツは、羊人間に激突したようだ
頭に当たったらしい、奴は盛大にぶっ転んだ

「っしゃあっ!!」

俺は踵を返して走り出す

何がどうなってるか知らねえが、今はとにかく奴を撒くしかない

正直、今の状況に酷く混乱しているのは、この俺だ

羊人間に追われる理由も分からんが

それ以前にだな、どうして俺の右手から唐翌揚げが飛び出すんだよ!?



以下、続く


チラ裏の葬儀屋の人に愛をこめてorz

なるほど
手から飛び出すのは唐揚げではなく唐翌揚げだったのか

コドクの人乙ですー
いよいよ次回クライマックスですか?
郭との直接対決楽しみにしてます
ミルキーの人乙ですー
コスプレいいよね!
そして一緒にお風呂だと!?
山崎ロールの人乙ですー
手から唐翌揚げだと…その手くれ!
そしてジャックの話については読者さんにあまりに不親切なような気がするので近日中に前日譚含めwikiにまとめる。

皆さん乙っす

>>906-907
まさかの唐翌揚げ(≠唐揚げ)吹いたw


右手を見る
今朝よりも大きくなってる気がする

朝起きたらこうなってたと言うべきなのか
とにかくどす黒い痣のようなものが手のひらに出来ていた

寝てる間にぶつけたのか?
内出血かと思って触ってみたが特に痛みはなかった

「気味悪いな」

今日はバイトがある
バイト先では手袋をするのでお客さんに見られることはないが
とはいえ、この手をバイト先に気にされても困る
コンビニで手袋を買ってから行こう



俺の通う工業高校は西区にある
俺ん家は東区だ。どっちかというと北区に近い
それでバイト先も東区にある
学校から東区までかなり距離があるんだよな
まあいつもの道だから遠いとも感じないが

ただ今日はやばそうだ
予報じゃ晴だったのだが午後から急に曇り空が広がり始めた
あの黒さは絶対に降るよな、今日は傘なんか持ってきてねえよ
ちょっと走った方がいいかもしれない


高校から少し行ったところにコンビニがある
そこで白手袋を買うことにした
なんか高級そうなイメージなんだけど意外と安いんだよな

コンビニで目当ての物を買うとすぐに出た
とっととバイトに行った方がいいよな
冷たい風も吹いてきてるし

外のベンチにはバカップルがいた
両方ともうちの高校の制服だ
男の方は見たことあるな

「いっちゃーん、ファミチキあげるから山崎ロール半分ちょーだーい」
「お前ファミチキとロール一緒に食うのかよ!?」

なんて奴らだ
俺が見てるというのにイチャコラしやがってからに

「はーいいっちゃーん、あーんしてー」
「は!? し、しねーし!!」

見てるこっちが恥ずくなってきた

「リアル爆発しろ」

思わずそんな一人言がもれつつ
俺はバイト先へ走り出す

山崎ロールの人乙ですー
え?ロールとチキンで一食なるじゃんね?
いっちゃんとは食の意見が合わん

そして
ttp://www29.atwiki.jp/legends/pages/4948.html

「赦しは少女仕掛けの…」前半が前スレになってるのでまとめてみました。単発で出した前日譚が入っているのでジャックの正体まるわかり。これに関しては隠してはいないので。
あと2~3話で完結しますが、そこまであとどれくらいかかるやら。





バイトは喫茶店のウェイターだ
といっても最初思ってたよりお堅い感じの場所じゃなかった
というわけで俺の仕事に関して話すことは特になにも

いや、ある

バイト仲間、まあ向こうの方が先輩なんだが
フルミさんって娘がすごく可愛いんだ
東区の高校に通ってて俺と同じ学年らしい
可憐って言葉はフルミさんのためにあるんじゃないだろうか

彼女と出会えたってことに関して
本当にこのバイトして良かったと思ってます、はい


そして今日もつつがなく仕事は終了した
22時も過ぎた、いつも通り閉店してお疲れ様って感じで更衣室に行こうとした

「住屋くん」

なんとフルミさんから声を掛けられた

「えっあっ、どうかした?」

やべ、どもった


「住屋くん、右手、大丈夫ですか?」

うん?
右手?

「火傷してたみたいですけど」

火傷?
きちんと手袋装着済みの右手を見ても特に変わった所はなく

「ごめんなさい、見間違いかも」

や、待てよ
手袋を外してみる

「何だこれ…!?」

うわあどうなってやがる
手のひらにあったはずの黒い痣が
いつの間にか手首や指先にまで広がっていた

真っ黒じゃねえかよ

「住屋くん…」

その声に気づけばフルミさんが目を見開いている

「…大丈夫ですか?」
「え、あ、ごめん、変なの見せて」

あ、あれ。フルミさんが俺の右手を手に取ったぞ

「…痛く、ないですか?」
「え、痛くはないんだけど。なんか今朝気づいたら、こんなになってたって言うか
 あ、今朝はもうちょっと小さかった気がするって言うか」

フルミさんがもう一方の手で痣を触れてきた
指先で軽く手のひらを撫でられる


「内出血、でしょうか…?」
「多分違うと思うんだけど」

フルミさんが黒ずんだ俺の右手のひらを撫でている
指先で優しく撫でられるのが結構くすぐったい

てか何だこれ
背中までぞくぞくするんですけど!?
ちょっと待て
俺、あのフルミさんに手のひらを撫でられてる?
何だこのシチュエーションは!?

とうとうそこに思い至るとなぜか俺の股間のビーストが、こう、むくむくとですね
耐えろ! 耐えるんだ俺の理性!!

「あ、あの、フルミさん」

声が裏返ってしまった

「え、あっ、ごめんなさい!」

フルミさんも察したらしく、俺の右手をぱっと放した

「本当にごめんなさい! 私ったら…失礼します!」

更衣室へ行ってしまった
何だったんだ、今の
俺は生唾を呑み込まずにはいられなかった



店を出た頃にはもう23時前だった
どうやら雨が降っていたらしく、アスファルトが濡れて所々水たまりになっていた
今もややぱらついているな、急いで帰るか

にしても今日はすごかったな
フルミさんのあんな反応初めて見たぞ
てか俺、フルミさんに手を握られたのよね
あの素敵な感触、二度と忘れん

「あのっ、住屋くんっ!」

後ろから掛かるこの声
急いで振り返る

「フルミさん!?」

彼女は小走りでこっちへやって来た

「あの、さっきは本当にごめんなさい」
「え、あ、気にしなくていいよ。というか、あの、ありがとう」

今日はなんというかツキが回ってるかな!?

「明日病院に行こうと思う。痛くないけど、気味悪いしね」
「それがいいと思います…。それじゃ、あの、お大事に。私は、こっちの道なので。お休みなさい」

隣町方面へと彼女は小走りで行ってしまった。やばい、めっちゃ可愛い


フルミさんが行ってしまった後も、俺はその場に佇んでいた
あんなにフルミさんと近くで話したのは、もしかするとこれが初めてかもしれない

手のひらまで触られてしまった、あの感触を思い出すとたまらない
股間のビーストが再び身をもたげようとしていた
俺の理性よ! 耐える…今はその必要ないか

今は手袋もしていない
街灯のぼんやりした光の下、右手を見てみる
小降りの雨粒が黒くなってしまった手のひらにぱらついた

正直気味悪いが、これのお陰でフルミさんとお話できたと思うと痣に感謝だな
とはいえ、そのままにしておくわけにもいかんだろう
なんだ、時間経過とともに痣が広がってるってことか?

皮膚病か何かだろうか?
触ったらうつる系とか?

いや、それはないだろう、と思いたい
今朝も左手で何度も触ったから、もしそうだったら今頃左手にも何か起きておかしくはないはずだ
今の所、異常なのは右手だけだ

よってフルミさんに感染する危険性はない、と信じたい…

「明日、午前中に病院行こう…」

それが一番だ



「…?」

今、何か聞こえたような

気のせいか?

いや、確かに何か聞こえる

辺りを見回した
職場の喫茶店の灯りは既に消えてるし、周囲に人影は見当たらない
違う、もっと近くから聞こえる
携帯を見てみるがマナーモードのままだ。通話状態とかではない

ふと右手を見てみた
相変わらず広がりまくった痣は黒い

まさかそんな
ゆっくりと顔へ近づけてみる
何か聞こえるぞ

そんな馬鹿な

右手を、耳に、押し付けてみた

【さぁぁぁぁぁて、今回の】

「うわああ!!」


何だ今の!?
俺の、俺の右手が喋っただと!?
そんな馬鹿な話が!?

確かに右手か?
今の声は右手からなのか?
辺りを見回しても、さっきと同じだ。誰もいない


もう一度、右手を耳へ当ててみた

【なんと当社独自開発の技術なのです!
 フィラデルフィア実験によって得られた空間転送技術を改良し、
 画期的な転送方式へとブラッシュアップすることに成功しました!
 これによりいつでもどこでも出来立てアツアツの美味しい唐.揚げをお求め頂けます!
 ※この技術、現在特許出願中の新方式であります!!】

やばい、右手が喋ってる
なんだ、俺は狂ってしまったのか?

【さーらーにー、転送ポートに各種センサーを設置してありまして、
 転送先の状況に応じて温度・速度・食材の種類・部位・その他様々な要素を目的に沿った形で実現し、
 お客様がお求めの唐.揚げをまさに至高のコンディションで食卓へお届けできるのであります!!
 
 『まぁぁぁぁ、すっごぉぉぉぉぉい♪ でもでもぉ、万が一、転送し間違えちゃったり、食べきれない量を転送しちゃったりしたら、どうしましょぉぉぉう??』
 
 ご安心ください!! そういった場合には、勿論! 唐.揚げを取っておいて後で食べるという手もありますが!!
 なんと!! あらかじめ設定して頂ければ、食べ残し・余りの唐.揚げを妖精さんが後処理してくれる処分機能までお付けしました!!】


どういうことだ?
右手が、まるで通販番組のような口調で喋っているのだが
俺は何か悪い電波でも受信しているのだろうか

【さあ、この新製品! 『唐.揚げくん転送ポート』!! 今季イチオシの製品です!!!
 製品に関するお問い合わせは、皆様ご存知の! スロヴェニアン・マニュファクトリーまで!! お気軽に  ポー ポー ポー ポー 】

通販の売り文句的な声を遮るように大きな電子音が鳴った
今度はなんだ?

【キンキューケーホーです。 セーヒンの 50 ヤードイナイに、テキタイセイジッタイのソンザイをカクニンしました
 ホクホクトウに 1 、ゴウケイ 1 です。 スミやかにタイヒされることを、カンコクします。リューイしてください ポー ポー ポー ポー】

右手から手を離した
何だ今のは?
通販口調とは全く違っていた。自動音声っぽかったぞ

もう一度、右手を耳に押し付けてみた
もう右手からは何も聞こえない
手を離した

気のせいか?
いや、はっきりと聞こえたぞ?
幻聴とか?
そうかもしれない、疲れてるだけかも


本当に幻聴なのか?


何か今日は変だぞ
痣は出来てるし、広がるし、その痣から音は聞こえるし

フルミさんとお話できたこと…は、変なことではない、はずだ
バカップルを目撃したのは変なことだ。おう

しっかし何なんだろうな、もう
狂ってしまったのは俺の右手か、俺自身か

もう一度、痣まみれの右手を見た
なんだ?
なにか「来てる」感じがする

気のせいか?
いや、違う。確実になにかが「来て」いる
右手の「奥」、「痣の中」だ。なんだこれ?

思わず左手で右の手首をつかんだ

「うっ」

何かが、右手から弾き出された。反動で右手がぶれる
それは高く空中を飛んだ後、目の前の地面に叩きつけられた
雨によって冷えた空気のなか、揚げ物の匂いが漂う

地面に落ちたそれは、ジュウジュウと音を立てて煙を噴いていた
相当熱いのか、アスファルトを濡らした雨水が湯気を上げている
その物体は…唐揚げのように見えた


「唐揚げ…」

地面に落ちたそれに、顔を近づけてみる

見た目といい、香ばしい匂いといい、これは確かに唐揚げだ

腹の虫が鳴った
そう言えば、昼から何も食ってなかったな
今頃そんなことを思い出す

しかしなんだ、右手から唐揚げが飛び出した、だと?
しかも今回は幻覚でもない。現に、俺の足元には生まれたばかりの唐揚げが転がっている

「は、ははは…」

もう笑うしかない
そうだ、俺は腹が空いてるんだ
もう家に帰ろう
軽く食べて寝るんだ
寝て起きれば、万事元通りだ

俺は歩き出した
腹が減ってるといいことないって言うしな
コンビニにでも寄って何か買い食いでもするかな

不意に立ち止まる
道の前方。何かが立っていた



雨が強くなってきた

前方に立っている奴の姿は、街灯の光のお陰でよく見える

体は人間、頭が羊。あれは被り物だろうか
上半身は裸だった。雨の中で寒くないのか

そう言えば、昔、この町に半裸の筋肉野郎が出没するって話があったな
いや、全裸だったかな

「バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

いきなりだった
唐突に羊野郎が叫び出した
考えてみれば、この時間にこんな格好の奴がいることがおかしい

目の前のこいつは変質者か何かなんじゃないか
俺はびびりながら、とりあえずどっちに逃げようか、なんて考えていると

「バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

二度目の絶叫を上げた
上半身がばちばちと火花を散らしている
土曜洋画劇場のアクション映画に出てくるようなサイボーグみたいだ

頭のどこかが麻痺していた
この状況、アブノーマルだ。そして、危ない


「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」

羊人間がさらに大声で吼えた
俺の方をめっちゃ睨んでる
狙いは俺だよな、だって他に人いないし

羊人間の体から電流が迸っている
これはやばい
反射的に逆方向へ逃げようとした、その時だった

羊人間が爆発した

「うわああああっ!」

気づけば俺は大声を上げて地面に倒れていた
閃光と爆音が俺の目と耳を潰していた
手で顔を庇いながら立ち上がる

何が起きたってんだ?

後ずさって、何かにつまづき、盛大にすっ転んだ

「なんだこれ!?」

脇のブロック塀が破壊されていた
俺は破壊されたブロックの欠片の所為で転んだようだ


何が起きてやがる
この塀はあの羊野郎がやったのか!?

羊野郎の方を見た

羊野郎は体から放電していた
雷のような光が電線を走り、電柱の上部に当たっている

急に電柱が爆発した
コンデンサーを破壊したのか?
羊野郎のあの電流でか!?

「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」

こいつ、キレてるんだろうか
顔はこっちを見ていた

「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」

  敵対性実体の存在を確認しました
  北北東に一、合計一です
  速やかに退避されることを勧告します

「あばっ、ばばっ、ばっばばっ」

変な声が出た
やばい逃げろ

俺は家と逆方向へ逃げ出した


以下、続く
長いな


今回出せなかったけど今後出したい物件
チラ裏に書き込めなかったからここで!
葬儀屋の意見を聞きたいのよね
使ってくれる御仁がいたら是非に


Rendezvous

学校町南区のラブホテル街、「ローペロペコンマ」の近くにある店舗
少女趣味を想起させるメルヒェンチックな外観となっているが、内容は本格的なSM設備が用意された特化型ラブホテル
日頃溜め込んだ欲望を解放するためのマニアックな趣向の淑女紳士御用達の場となっている
一応、他のラブホテルと同じく自動精算・プライバシー配慮を謳っているが
一階にクッキー屋さんが入っているので時間帯によっては非常に気まずい思いをする可能性も大
逆にクッキーを買いに来たお客さんが間違ってラブホテルに迷い込むこともあるとかないとか
ご利用は計画的に

山崎ロールの人乙ですー
唐翌揚げ屋さんでもはじめればいいよと思ってたら何このカオス
そして股間のビーストはねじ切れろ

山崎ロールが早く見つかるといいですねと思いつつ乙
黒服さん、カメ子だったかぁ……。
そして一緒にお風呂か! なんてけしからんもっともっと

唐翌翌翌揚げって、え? 唐翌揚げじゃないのか?
なにが違うんだ……
しかしこの主人公、股間がビーストだったり右腕が騒がしかったりで楽しそうだwwwwwwww
しかしこやつ、おにゃのこに手をさわさわされてちょっとリア充になりそうじゃないか
爆発するか? おう

このカオス具合がたまらん。
これから股間のビーストウォーズがトランスフォームする展開?
それともアンドロイドが夢を見ちゃう展開?
どちらにせよ期待。

 廊下に出た瞬間、周りの空気がガラリとかわったことで、久信と修実は自分たちが郭の術中に囚われたことに気付いた。
「結界!?」
「閉じ込められたわね」
 壁に触れてみると、壁のほんの数ミリ手前で何か淡く光るものに指が触れる。
壁のような結界がこの廃墟のかべを内側からコーティングするようにして囲んでいるようだ。
 汚れ、所々壊れている廃墟の通路には、今のところ久信が放った蛇しか動くものは見当たらない。
 修実が周囲に注意を向けながら呟く。
「この結界の中の空気のにおいは知ってる……あの時私が閉じ込められたものと同じだわ」
「このやけに甘いにおいか」
 久信は廃墟の埃っぽいにおいをものの数秒で塗り変えてしまった甘い、香を焚いたようなにおいを嗅ぐ。
 淡く発光する壁に囲まれた瞬間に、においは建物の中に充満した。
 郭が扱うこの結界は、普通の空間を塗り替える、異界化に近い種類の結界なのだろう。
 ……異界の中に隔離されたのだとしたら、この結界を壊すのは相当難しいな。
 この規模の壁を壊そうとするならば、壁に対して集中しなければならない。
そんなことをすれば、間違いなくその隙を郭に狙われてしまう。壁を壊しての脱出は控えるべきだろう。
 術者である郭を倒すことができれば、外と空間を切り取っているこの壁も消えて結界も解除されるはず。
 出会う傍から倒されているとはいえ、郭追跡を指示された蛇たちが一匹として外への脱出を試みていない点から考えて、彼はまだこの建物の中にいるはずだ。
「郭正吾! 居ることは分かっている! この蛇たちを見て思い出す者が居るはずだ! 答えろ!」
 薄暗がりの中に声を投げかけると、大して期待をしていなかった応じる声が来た。
「小野家が封印を解いてきたか。余計な事をしてくれる」
 殺気立った声。その声に続いて、建物のどこかで、重い金属が叩きつけられる音がした。
 修実が小さく言う。
「蛇が、また殺されたわ」
 再び訪れた無音に嫌なものを感じていると、修実が背中から言う。
「久くん。ここはいったん退いた方がいいかもしれないわ」
「でもこの結界を破ることだけに集中するのはかなり危ないんじゃないか?」
「私がこの結界を破るようにするから、久くんは周りを警戒して」
「そうだね。そうすればいくらか安全だね」
 一度結界に囚われて悲惨な目にあった修実が言うのだから、脱出はできるだけ早い方がいい。
とにかく、郭正吾が居る場所さえ分かっていれば問題はないのだ。すでに数多の蛇が郭正吾の位置を捉えている。
ひとまずは彼をとり逃がすこともないだろう。
「分かった」
 久信はこの建物に侵入した時に入った部屋へと引き返そうと通路の奥を見据えたまま後退りして、
 修実を背負った背中が壁に触れた。

「え……?」
 慌てて振り返ると、、結界の光が部屋と廊下の間を隔てていた通路を区切っていた。
 つい先ほどまで壁に沿って展開されていた結界の範囲がより狭められている。その事実に、腹の底に冷たいものを感じる。
「くそっ」
 壁をけりつけるが、その程度では結界はびくともしない。
「急いだ方がいいわね」
 修実が言い、同時に久信の背後で瘴気が凝る気配がする。
 久信は蛇を放って警戒を強めて郭の接近に備える。そんな久信の耳に、1つの唄が聞こえてきた。
「かーごめ かーごーめ――――」
「かごめかごめ!?」
 廃墟に響き始めたのは、日本人ならば大抵の人間が知っているであろう、有名な童謡だ。
 その唄がこのタイミングで聞こえてきたという、その意味を分からない久信ではない。
「郭の契約してる都市伝説はかごめかごめか!」
 童謡、かごめかごめには、その歌詞や唄を用いた遊びに対して都市伝説がいくつか存在している。
郭はそのうちのどれかと契約しているのだろう。
 ……かごめかごめで結界を形成できるような都市伝説……何があった?
 相手の都市伝説の正体が分かれば対処法も考えやすい。
記憶の中からかごめかごめに関する都市伝説について思い出していると、修実が鋭い声で警告した。
「久くん! 左横!」
 同時に久信の左横から蛇たちとは明らかに異質な気配が風切り音と共にやってきた。
「――!」
 咄嗟に地面に身を投げた久信の上を、風切り音を上げる何かが通り過ぎた。
「……くっ」
「うしろのしょめん だーれっと……」
 倒れ込みながら首を捻って頭上を見上げる。
 そこには中肉中背に眼帯、郭正吾が居た。
 先程久信の首があった位置を薙ぎ払ったのは、彼が手にしている手斧のようだ。
 追撃が来る前に転がって郭から距離をはなそうとして、久信は自分が動けないことに気付いた。
 修実に転がる際の衝撃を与えることを覚悟して、体を横転させかけ、体が仰向けになる手前、ちょうど横臥の形になった時、背が壁にぶつかってしまったようだ。
倒れ込んだ際に壁際まで行ってしまったらしい。

 ならばと腕をついて体を跳ねさせようとして、それもできない程近くで結界の光が久信の体の動きを止めた。
 ……なんだ?
 目の前にいつの間にか結界があった。
 ……こんな所にまで結界があるのかよ!
 完全に狭い箱に閉じ込められる形になって、体はどうやっても動かない。
 ……さっきかごめかごめの結界が完成した時か……!
 修実が息を呑んだ音を聞きながら、久信は言う。
「――ッ、かごめかごめは籠、つまり牢屋にいる囚人についての唄っていう都市伝説があったな」
「はずれ」
 横に振り抜いた手斧を引き戻して、郭は答える。
「これは遊郭という名の籠に囚われて延々抜け出せない鳥。
つまりは売女共を憐れんで歌ったとされる都市伝説だ。女相手には特に強力な籠を宛がえるからな。人身売買には相応の役にたった」
「そっちか。ならこの甘ったるい香のにおいにも納得だ」
 久信は自分を閉じ込めている籠を叩く。結界内に充満しているのは遊郭で焚かれる扇情的な香のにおいだったということだ。
「1人用の籠じゃあ遊郭なんて言えないんじゃないか?」
「多くの遊女を囲う籠はもうこの建物全体を覆っている。お前を閉じ込めているそれは個室だ。
小野家の追っ手。よくもこのギリギリのタイミングで見つけてくれたものだな」
 忌々しそうに郭の声が聞こえてくるが、久信も同じような気分だ。
 蛇を出し続けて結界を内圧で破壊しようとしても、結界を破る前に溢れた蛇に自分が埋められるだけだろう。
 現状、久信が頼る事ができるのは、背中で凝る修実の瘴気のみだ。
 ……修実姉に頼るしかないのか。
 自分の無力さに忸怩たる思いを抱える久信の眼前で、郭が手斧を振り上げた。

「後ろの正面――」
「――!」
 あと1フレーズもなく、郭が手にした斧が降ってくる。
 結界の破壊は間に合わない。
 修実が陥った状況もこのようなものだったことから、元より、彼はこうして閉じ込めた相手を刻むのが主な戦い方なのだろうと分かる。
 完全に相手のペースにはまってしまった。
 ろくに身動きができない棺と化した結界の中で、とにかく郭の攻撃を防ごうと、腕を斧の着地点に合わせて、
少しでも被害を食い止めようとした久信は、背中からの強いゆさぶりで体が狭い棺の中でうつ伏せに近い状態に半転させられた。
「修実姉?!」
「……ッ」
 背で全体重を使って強い揺り動かしたのは修実だった。
 そして、
「――だあれ?」
 久信の視線が届かない所で、郭の攻撃が振り下ろされた。
 郭がふるった手斧は彼自身が作ったかごめかごめの結界をどういう原理かすり抜けて、
反転して郭と向かい合うことになった修実ごと久信を断ち切りにかかった。
 思い金属がぶつかる鈍い音と共に、久信の体に丸太で殴打されたかのような衝撃が叩きつけられた。
「――ぐっ!」
 骨がきしむ一撃に、杯の中の空気が強制的に吐き出され、肺が酸素を求めて熱くなる。
何かと思考が回るようになるまでにかかったのはほんの数秒程度だろう。
 それだけの時間をかけて、ようやく久信は自分が手斧を振り下ろされたにもかかわらず生きている、ということを疑問に思う余裕を得た。
「え? 生きて……?」
「久くんを、私と同じにはしませんよ……郭さん」
 そう告げる修実の声で、久信は修実が攻撃を受けてくれたのだと理解した。
 体を蛇の鱗で効果する能力を使ったのだろう。彼女が盾になってくれたおかげで久信は衝撃に苦しむだけで済んだのだ。
「……修実姉」
 呟いて首を捻るが、郭の顔が見えるだけで、今の一撃を受けた修実がどうなているのかは分からない。
 郭は手斧を三度、振りかぶっていた。
 その目は久信ではなく、修実を見ている。
「やっぱり生きてたのか! あの町を潰したんだって? さすがに町や組織に裏切られたことは理解したんだな」

 修実は先の一撃の影響の見られない、しっかりとした声で応答した。
「信じたくはありませんでした。皆が私を殺そうとするなんて」
「お前が悪いんだ。実家に帰ろうなんてな。
あれだけ共犯意識が根付いていた町でそんなことを宣言するから、事実の発覚を恐れた連中がよってたかって襲い掛かるんだ」
「それは、貴方もですね」
「当然だ。あそこで俺がどれだけ儲けてきたと思う」
「――郭! お前はそんな理由で、お前たちは修実姉を!」
 郭はせせら笑いを浮かべた。
「お前はこいつの封印を解いた奴……ああ、お前はこの女の弟だな?」
 郭は合点がいったというように嗤う。
「そうだ、監視役から見聞きした。たしか、姉と違って凡才の能力者なんだってな」
 嘲るように言って、郭は続ける。
「それでもまあ、お前も血筋と契約する都市伝説っていう珍しいモンの契約者だからな。高く売れる」
「そのような事を私が赦すわけがないでしょう」
「おお怖い怖い」
 郭が大仰に手斧をぶらぶらと振った。
「勇ましく言うじゃないか。両手両足切り落とされて血と小便と小うるさい悲鳴垂れ流してたメスの台詞とは思えないな」
 言葉と共に、郭は手斧を振り下ろして、久信の口から出かかった非難を潰した。
「結局お前があの後半狂乱で反撃してきたせいで町1つ丸ごと結界で包まなけりゃならなくなった。
蛇に片目をこうして喰われちまったしな。ああ、あれは痛かった。
 おかげで逃げる手はずを整えるのにこんなに苦労する羽目になったよ!」
 手斧がまた叩きつけられる。
「あの封印の中でダルマ女の都市伝説にでもなって失血から持ち直して生き延びたってところか?
 まだ蛇神憑きの能力を使えてるってことは、完全には都市伝説化はしてないってことか? ああ、町は弟くんと一緒に仲良く潰したのか?」
 手斧が次々と振り下ろされる。
 一発一発が十分な重みを持った攻撃は、久信の骨に悲鳴を上げさせる。何本か、もう折れているかもしれない。
 クッション役の自分でこれなのだ。郭に向き合って直接攻撃を受けている修実はもっとひどい状況なのではないだろうか。
 ……チクショウ!
 結界の床面を爪でひっかいて、久信は満足に動くことも叶わない自分を歯がゆく思う。
 こんな体たらくで足止めくらいにはなると思っていた自分が情けない。
「血と契約する都市伝説との契約者。体の構成を変化させる能力の持ち主の体の一部。
更に都市伝説化した契約者そのもの。これだけあれば、俺は一生遊んで暮らせるかもな」
 大振りの一撃が振り下ろされ、久信の意識が途切れかかった。
「ぐう……ッ!」
「――あ、ッく!」
 修実の切羽詰まった悲鳴を聞きながら、久信は自分に力があったなら、と強く思う。

 修実姉をこんなに苦しめるなんてこともなかったのに。
 飛びそうになる意識を怒りで繋ぎ止める久信に、郭の言葉が入り込む。
「修実ちゃんは小さいころからずっと便利な道具として使わせてもらって、こんなになったあとも商品として役にたってくれるんだから、本当に馬鹿な子だなあ」
 久信の怒りに燃料を雪ぐ一言と共に送られてきた一撃は、これまでとは違う、横殴りの一撃だった。
 修実が体を捻ってなんとか手斧を久信に当てられることは防いだものの、
修実と久信を繋いでいた蛇が切断され、横殴りの衝撃によって修実の体が久信の背中からほんのわずかに離れてしまった。
 そして、
「かーごめかーごーめー」
 かごめかごめの童謡が唄われ、修実の体を掴み直そうとしていた久信の手が、新たに出来上がった結界の壁に阻まれてしまった。
 郭のかごめかごめの結界は、大きな籠の中をいくつかの小部屋に分けて、多くの者を別々に捕える事ができるようになっているようだ。
 一度に大量の人さらいをする際に、捕まえた対象の逃亡を防ぐ上で役に立ちそうな能力だ。
 姉と分断されたという事実が久信の中で受け入れられるまでの短い時間の中で、頭が現実逃避気味にそんな事を考える。
「じゃあ、まあ先に何もできない弟君の方から死んでもらおうか」
 背の上から聞こえる宣告に、久信は今度こそ、死を覚悟した。
「うしろのしょーめん――」
「久くん!」
 唄のフレーズに重なって修実の声が聞こえる。
 ……ああ、
「だーれ?」
 この下種を倒せるだけの力が……。
 唄の終わりと共に、手斧が空気を切る音が聞こえる。結界の外、久信が首を捻っても見ることができない位置から処刑の刃が迫り、
 それから数秒の間を置いてもまだ、久信の命は続いていた。
「……?」
 今回は、先程修実が盾になってくれた時のような衝撃すらも久信には伝わってこない。
何がどうなってしまったのか確認しようと限界まで首を捻ろうとして、肩が何の妨げもなく動くことに気付いた。
「え……?」
 いつの間にか結界がなくなっていた。
 まさか結界がなくなっていると思っていなかった久信の体は勢い余って廃墟の汚れた床の上を転がる。
 回転して天井の方を見ることができるようになった久信の視界は、自分を狙っていたはずの郭の手斧がどうなったのかを捉えた。
 手斧は、止められていた。
 分厚い刃の部分を、二つの手が、しっかりとつかんでいる。
その手は、それが繋がる腕は、刃に触れている指先は、白くて、たおやかで、優美で、その線の細さは女性の腕のそれで――
 確かに蛇のものと思しき鱗が浮かんでいた。





修実の悲鳴はその筋の人が聞けばエレクチオンせざるを得ない代物と思ってくだされば

郭がいた組織とそのお膝元の町は、きっとB級映画とかでよくある
 アメリカの郊外の村とかマジホラー
 的な町だったんだろうなと想像して頂ければと思います

コドクの人乙ですー
郭悪よのう。嫌いじゃないぞ

>>937
どうもです。
所詮は御山の大将なので諸々の魅力に欠けますがこんなのもそれはそれで
悪い意味で人間っぽくて嫌いじゃないです

さて続きをば

 久信を切断しようとしていた手斧の一撃が、鱗が浮かんだ女性の手によって止められた。
「なんだと?!」
 一方的に攻撃を加えていた郭は、自分の一撃が止められるとは予期していなかったのだろう。
驚いた顔で止められた手斧を眺めている。そして、そんな彼を更に驚愕させる事態が起きた。
 斧を押しとどめている二本の腕、それに続いて更に二本の腕が伸びて、手斧の柄の部分を掴んだのだ。
 それだけではなかった。
 追加で、更にもう二本の腕が、今度は未だ手斧に狙われている久信の体を掴んで、彼の体を腕の主の元へと引き寄せた。
 郭の結界を破壊し、また彼の武器を封じて久信を引き寄せた腕の数は都合三対、六本だった。
 そして、それらの腕の主は、
「なんだ、それは……?」
「一体何だと思います?……郭さん?」
 小野修実だった。


   @

 修実のもとに引き寄せられた久信は、驚きで動きを止めている郭を見て、まあ、そういう反応になるだろうと内心で頷く。
 今、郭の前には、先程までダルマ状態で失われていたはずの腕を肩から六本も生やした修実の姿があるはずなのだから。
 郭の口が再び「何だ?」と動く。それに被せるように、修実が告げる。
「郭さん。私、あの封印の中で、たくさんの呪いを受けたんです」
「呪いだと?」
 郭は何を言っているのかいまいち分からない、といった様子で掴まれている手斧から手を離して、新たな手斧を抜いた。
「町の連中の中には呪いに関する都市伝説の契約者はいなかったはずだ!」
 修実をにらみつけて声を荒げる郭を見て、久信は確信した。
 ……あいつは修実姉がどうやってあの封印の中で生き残って、結果的に町を叩き潰したのかを分かっていない。
 先程、郭は弟、つまり久信と一緒になって町を潰したのだろうといった感じの事を言っていた。
 修実がたった1人の手で結界の中の生き物を皆殺しにしたということも、その方法も分かっていないのだ。
それは同時に、今の修実の身に起こっている劇的な変化がどのような原理で起こっているのかも分かっていないということでもある。
 修実は自分がどのような状況にあるのかを説明するように、言葉を連ねていく。
「郭さん。貴方が私を封印した時、貴方は私と一緒にあの時あの町にいた契約者も都市伝説も、それ以外の生き物も、それ以外の生き物も、まとめて封印しましたよね」
「それがどうした」
 郭は手斧を振りかぶって、もう一度唄を口にした。
かごめかごめの唄に合わせて結界が形成され、久信を二本の腕で背からしっかりと抱きしめている修実ごと閉じ込める形で、籠の結界が出現していく。
「後ろの正面――」
「あの時、あの封印の中で生きていた人も、封印が完成する前に死んでしまっていた人も、皆あの籠の中で恨みを抱いて、
その矛先はまず彼らが封印されるきっかけになった半狂乱の私に対して様々な形での攻撃として集中しました」
 語りながら、修実は下半身をもぞりと動かした。
その動きによって、彼女の失われていたはずの下半身が――いつの間にか新たに生えた、蛇そのものの下半身が、結界を殴打して、割り砕いた。
 頼みの結界を砕かれた郭は、上ずった声で修実に詰問する。
「その体はなんだ?! 女相手にはより強力になるはずのかごめかごめの結界を何故そんなに簡単に砕ける?!」
「それは、この体に呪詛が染みついているから、ですよ」

 修実は退こうとしていた郭に、蛇の下半身で這いずって近づいた。
地面を滑るような動きに対して郭が何らかの反応をするよりも早く、修実は郭が持つ手斧を、両腕を、両足を、胴体を。六本の腕でそれぞれ握り、そして絞める。
 割れ砕けて散った結界の代わりに、外からの月の光が窓枠だけとなった窓から入ってくる。
 月光に照らされてはっきりと浮かび上がった修実の姿は、人の上半身に六臂を備え、蛇の下半身を持つ異形のそれだった。
「なんだこれは! 蛇の能力は体に鱗を生やして硬化するのが精一杯だったはずだ。こんな異形の体……都市伝説に呑まれたか!?」
「いいえ」
 修実は冷厳な眼差しで郭を見据え、己の罪業を詠み上げる。
「恨みと怨嗟と呪いと毒気が充満するあの閉じられた籠の中で、私は発狂しかけた頭で向かってくる全てを、生き残るために殺し尽くしたんです。
 そうして私の手によって殺し尽くされた生き物の怨念は、唯一の生者であり、彼らの攻撃の標的だった私に集中して、この身を喰らおうとしました。
 ですが、瀕死だった私は、これらも全て生き残るために喰らい返して利用し、失った血や体の欠損を繋ぎ止めました」
 無理やり口端を曲げたような、痛々しい微笑みを浮かべて、修実は言葉を重ねる。
「そうやって、私は見苦しく、生きようとしたんです」
 絞り出すように言葉を吐き出した修実の腕を久信は強く握りしめる。
 力が入りすぎていた修実の体から少し力が抜け、一息と共に、彼女の言葉が続く。
「感謝します。私にはそれだけのことを為してでも、もう一度会いたいと想って、執着できる人がいたことに気付くことができたのですから」
 一息。
「そして、赦しません。私の大事な人を、久くんを傷つけようとしたことを、私たちに全てを押し付けて逃げようとしたことを」
「殺した者を利用しただと……蛇神憑きに何故そんなことができる……化け物め」
「貴方の封印に巻き込まれて囚われた人たちは皆貴方のこともそう言っていましたよ」
「私が封印をしなくても、あの町の人間は独り残らずお前に殺されていただろう!」
「そうですね。あの時の私は自分の命が尽きるまで、目に映る全てを殺そうとしたでしょう。
あの場で死なずにこうしてまた郭さん、貴方に相まみえることができたのは貴方の封印のおかげでもあります。
その点でも私は貴方に感謝するべき、なのかもしれませんね」
「私の封印が……?」
「ええ、私がこんな体になって生き延びることができたのは貴方が形作った籠の中に出来上がった異界のおかげです」
「異界……?」

 合点がいかない、といった風の郭に修実が応じる。
「蠱毒、という呪術をご存知ですか?」
「巫蠱の類だな。それがいったいなんの関係がある」
「そうですね……では蠱毒を作る方法をご存じでしょうか?」
「作り方だと……?」
 呟く郭。
 久信は蠱毒という呪法について簡単に概要を思い出す。
 毒虫や、動物を箱に閉じ込めて、狭い空間で喰らい合わせ、最後に生き残ったモノを使って呪いを行使する呪術を蠱毒という。
「生き物を一つの閉鎖された空間に詰め込んで、殺し合わせることで作る呪詛。それが蠱毒です。
 まるで私が置かされた状況のようではないですか?」
「まさか……っ」
 半狂乱で蛇を這い回らせた修実と町中にはびこる蛇をまるごと封印するために展開された巨大な結界の内部は、
害意を持つモノたちがひしめきあう悪意の坩堝と化していた。
 その閉鎖された特殊な空間は、蠱毒というある種の異界を、町一つの規模に拡大したものとして機能した。
それが、瀕死の状態であった修実を生かした絡繰りだった。

「状況を元にしてあの場で都市伝説が生まれたのか、町の住人の誰かが蠱毒の都市伝説と契約していたのかは分かりません。
ですが、私は、その呪術の最後の生き残りの生物になったのです」
 蠱毒によって生まれる呪いの中核は、それが犬を使ったものならば犬蠱、蛇を使ったものならば蛇蠱といい、
仮に、もしも仮に人を蠱毒の呪術に使ったのであるのならば、それは人蠱といわれるものとなる。
 蛇蠱として、そして人蠱として、蠱毒化した異界の内部で結実した異形の怪物。
 それが、現在の小野修実の正体だった。
 幽霊船の結界を吹き飛ばすことができたのも、蠱毒の強力な呪詛を利用したからに他ならない。
 今の修実は、それだけの事ができる新たな力を抱えていた。

「これが今の私。
 なんとしても生き残ろうと足掻いて、足掻いて、足掻いた末に全ての毒を平らげて異形と化した化け物。
 蛇蠱にして人蠱でもある、蠱毒の澱――」

 修実は「そうですね」と呟き、自身の今の姿をこう定義した。

「姦姦蛇螺。そう呼んでください」

というわけでこれが修実の正体というか、なれの果てでした。
姦姦蛇螺の扱いは蠱毒で作られた産物といった感じ、都市伝説とは若干出自が違うナニか。という扱いです。
もう少し詳しくはまた次回

検索すれば姦姦蛇螺の怪談は出てくるのでそちらを見てもらうのもまたよしです。
 修実と怪談の内容を比べてもらうのも一興かと

コドクの人乙ですー
タイトルそういう意味だったのか

彼女が歩くと、俺も歩く
彼女が止まると、俺も止まる
彼女が歩き出す・・・が、俺は止まったまま

「何してるのよ、紫鏡」

彼女・・・俺の契約者は訝しげに俺を振り返る
俺は「紫鏡」20歳まで俺の名を覚えている者は、20歳の誕生日に死ぬ呪い

なんだってそんな俺と契約する奴がいるかって?
契約者・・・宮野シオリは複雑な家庭に育ち、そこでまあ色々あったらしく、二言目には

「オトナは汚い。あたしは汚いオトナになりたくないから、その前に死ぬ」

これが口癖。つまり、俺に間接的に自殺の手伝いをしろって事
人死にが避けられない特性の俺だけど、契約者が死んだら俺もどうなるかわからない

ああ、もうこのまま逃げちゃおうか

「紫鏡」

契約者が俺を上目遣いで睨みつける
勘が鋭いんだよなあ

「あ、いや、別に」

「よかった」

契約者がにっこりする。笑うと可愛い

「紫鏡に逃げられたら、あたしすぐ自[ピーーー]るから。来月死ぬか、今死ぬかの違いしかないし」

待て
冷や汗が流れる

待てよ
俺、お前に死なれたくないんだよ

ああもう、どうすりゃいいんだ!



END

乙です
切羽詰まった状態から紫鏡さんがうまい回避方法を発見する事に希望を託すしかないですな!
幼児退行とか(手段? 知らぬ!

 姦姦蛇螺という怪談がある。
 あるところに、呪術師の一族があり、一族の中でも特に強力な力を持っていた呪術師の女性がいた。
彼女は、あまりに強すぎる力をもつがゆえに、親族にもねたまれていた。
そんな呪術師は、ある時、山の神を討伐してくれという依頼を受けた。
 依頼をしてきた村の住人は、呪術師の親族の手引きもあって、討伐に来た呪術師の女性の手足を切断して、弱った女性の身を山の神に捧げた。
 その捧げものを以って神を鎮めようとしたのだ。
 呪術師は山の神に食われながらも逆に山の神を乗っ取り、六臂に蛇の下半身を持つ異形、姦姦蛇螺として、自らを裏切った一族も、騙した村の住人たちも祟り殺した。
 これが姦姦蛇螺の怪談。
 修実の姿はまさに、村も親族も祟り殺した姦姦蛇螺そのものだった。



   @

 何故修実はこうも、都市伝説になりきっていないような怪談に語られる化け物と似た姿になったのか。
その疑問に対して、久信は二つの理由があるのでは、という見解を持っている。
 まず一つ目は、一族の中で異常ともいえるほどの力を持ち、それが元となって組織や町の人々に殺されかけ、
その過程で両手足を失ったという、修実が辿った人生が、かの怪談で語られる呪術師のそれと似ていたこと。
 もう1つが、かごめかごめの童謡には、1人の子どもを何人もの子供で囲んで歌を口ずさみながら回り、
真ん中で目をつぶる子供が最後に自分の真後ろにいる人物の正体を当てる。という遊びがあり、この遊び自体に語られている都市伝説に曰く、
この遊びは真ん中の子供に神霊を降ろす呪術であるというものだ。
 修実は、かごめかごめが作り出す結界の中、その場にいる全てのモノに取り囲まれて悪意を向けられ、襲われた。
 まるで、裏切りにあって袋叩きに遭う呪術師のように。
 まるで、唄を口ずさみながら、それと知らず降霊術の手順をなぞる子供のように。
 奇跡のように状況が整い、その上で蠱毒という都市伝説が自然発生したか、
あるいは結界の中に閉じ込められていたモノのうちの誰かの都市伝説が暴走して、この異形は形成されたのではないだろうか。
 また、都市伝説という存在が人々の思いの力に依って存在を確立、もしくは補強する情報生命体であると仮定できるのならば、
両手足を失っても尚生きる意志を捨てずに蛇を使役し続ける修実の姿に、結界の中の全員が姦姦蛇螺を想起したのではないかとも思われる。
 その場に居た皆の総意によって、蠱毒呪法という明確な形を保たない力は、失われた修実の手足としての形を持ったのではないだろうか。
 確信はないが、蠱毒という都市伝説と、その呪法に巻き込まれた者たちの状況を勘案するに、
 怪談と似通っていたこと。
 修実が怨念の溜まるアンテナ役になりやすかったこと。
 修実が蛇を使役する能力者であったため、化け物のイメージを姦姦蛇螺に統一しやすかったこと。
 これらの要素が互いに影響し合って、今の修実の姿に結晶した。というのが当たらずとも遠からずな答えだろう。

 ならば、郭に今こうして対峙する修実は、郭が偶然にも作り上げた呪術の被害者たちの恨みそのものでもある。
 恨みの対象である郭は、修実から逃げる算段をつけようとするように、視線をあちらこちらにさ迷わせている。
 対する修実は郭を見据えたまま、目線を動かす気配がない。
 無慈悲ともいえる表情を浮かべる修実の姿は、久信も間近でまじまじと見るのは初めてだった。
 以前この姿になった吉井を見たのは、姉が居た町へ彼女の安否を確認に居た時だった。
 封印を破壊したばかりで意識も朧だった彼女。
久信はこの状態の姉を、姉と認識するところから始まって、修実が落ち着いて意思の疎通ができるようになり、
怨念によって膨れ上がった彼女の力を抑えこむために修実の中に根付いた新たな力を極力封印し、
蠱毒の影響で生成された手足も全て封じてダルマ状態になってもらうまでの間、一連の綱渡りのような事態がせわしなく続いたせいで、じっくりと彼女の姿を眺める余裕はなかった。
 月光の下、改めて見る修実の姿は、美しかった。
 長い髪が足代わりの蛇身と人の体の継ぎ目でさらさらと揺れて、六本の腕が、いずれも劣らぬたおやかさと、相手を逃す隙の無い力強さで郭を締め上げる。
「郭さん。私と、久くんの濡れ衣を晴らすために、捕まえさせていただきます」
 自分たちの目的を突き付ける修実の体からは、周囲に向けて重苦しい瘴気が放出されている。
 蠱毒の中を満たしていた、町一つを滅ぼした毒の発現だ。
「……くっ、!」
 先程まで優位に立っていた郭が、蛇ににらまれた蛙のように為す術もない状態だ。
あとは捕まるだけに見えた郭だが、彼は止めず、今一度起死回生を狙ってか、唄を口ずさみ始めた。
「かごめ かごめ 」
「無駄です」
 周囲を包もうとする結界を、もはや視線一つで打ち砕いて、修実は蛇身で都市伝説の体を絡め取った。
 六つの腕で郭の東部を包み込むように締め上げて、指で喉を押えこむ修実に、郭が必死に声を絞り出す。
「ば、化け物……!」
「幼い頃からずっとあの町に居たのに、ご存じなかったのですか?
 私は、ずっとそうでしたよ」
 隻眼を見開いて叫ぶ郭へ、無理のない笑みで修実は言う。
「町の皆の仕打ちを非難なんてできませんね。今では逆に私があの人たちを皆殺しにしてしまったのですから。
そう、きっと、あの事件に関わった人は、誰にも誰かを非難することはできないのでしょう。
皆が被害者であり、そして、本人が意識しているのかしていないのかに関係なく、皆が加害者でもあるのですから。
当然主犯である貴方には、全うすべき責任があると、私は思いますよ?」
 それなりの数はいたであろう、子供や、町の実態を知らなかった人間を無視した暴論を告げ、修実は軽く身じろぎした。
 蛇身の下から骨が砕ける乾いた音がする。その音を背景に、彼女は続ける。
「そう、ですから。その残りの目も抉り出してしまいましょうか」

 締め上げを徐々に強めながらそう口にする修実から本気の殺意を感じ取って、床に置いておかれた久信は慌てて止めに入った。
「待った修実姉! そいつからは証言を引き出さなくちゃいけないから、そこまでだ」
「多少痛めつけるくらいならばかまわないでしょう。証言ができるように、こうして喉だって潰さずに残してあるのよ?」
「修実姉!」
 修実の蛇身を殴ると、修実はそれで初めて久信の存在に気が付いたように目を瞠った。
「――ぁ」
 背をビクッと震わせ、瘴気を徐々に収めていく。
 全てを収めた後、修実は久信に目を合わせて、眉尻を下げた。
「ごめんなさい」
「いいんだよ」
 久信は正気を取り戻したらし姉の姿にほっとした。
 クラブ跡全体を内側からコーティングしていた結界が砕けていく、ガラスをくだいたような音がする。
結界が砕かれたのを確認してから、修実が解放した郭は、気を失っているようだった。
「……これで、一件、落着か……」
 郭を蛇でしっかりと縛り上げた久信の耳に、犬の吠え声と、よく知る男の声が聞こえる。
「おい、生きてるか!?」
「おかげさまで……」
 警察が到着したようだった。



   @

 昌夫が、かれが使役する犬と共に結界を取り払われたクラブ跡の内部に侵入した時、捕獲目標であた郭正吾は、大量の蛇に縛り上げられて気を失っていた。
 目立った外傷は見受けられないことから、毒か何かで無効化したのだろう。
 精根尽き果てたように床に座り込んでいる友人と、それに寄り添うようにして心配そうな顔をしている、多少外見が変化した友人の姉に、労いの言葉をかけた。
「おつかれさん。結界がいきなり出てきた時はどうなるかと思ったが、どうやら決着はついたみたいだな」
「おかげさまでね。幽霊船のほうはどうなった?」
「あっちはとっくに占領されてるよ」
 相応の装備を整えていた幽霊船も、動物による奇襲に脆くも破れてしまったようで、
現在は昌夫が読んできた警察の人間が、幽霊船内で無力化されている乗船員たちを運び出している最中だ。
「しばらくはあの船にかかりきりだろうな」
 昌夫は警察に対して、この建物の中に今回の最重要捕縛対象が要る事については伝えていない。
協力を要請した他の部署所属の人間に手柄が渡るのを避ける、というのが世知辛い理由の一つ。
もう1つの理由としては、昌夫も、友人姉弟を窮地に立たせた郭正吾という人物を一度直接見て起きたかったというのがある。
そして、これは今この場に踏み入って思い浮かんだ理由だが、修実の今の姿を大勢の人間に見せずに済んでよかった、というものがある。
 いったい何の都市伝説の力で失った手足を補填したのかは昌夫には分からないが、何も知らない状態で見るには蛇身六臂の異形という姿は多少刺激の強い外見をしているのだ。
 修実をこんな姿に変えた原因が、目の前で転がっている男だという。
「これが、郭正吾か」
「そう、修実姉を媒介にして、偶然だろうけど蠱毒を作り出した原因だ」
「んでもって、例の組織がやらかしていた人身売買やら密輸やらの元締めなんだな?」
「ああ……」
 久信は、やけに疲れた調子で応じた。
 戦闘を行っていたのなら、体もそれなりに疲労もしているだろう。
動作を見る限りでは、昌夫の目にはどうも久信はいくっつか骨を折っているようだ。
後で久信は医務室に放り込んでおこうと考えながら、昌夫は修実を改めて見る。
 異形の姿は、確かに初見でこそ思わず身構えてしまいそうな威圧感のあるものだが、
相手が意思の疎通が可能なほぼ人間のような存在であるということを念頭に置いて、落ち着いた目で見てみれば、
「きれいなもんじゃないか。修実さん」
「そんなことないわ」
 恥じ入るように修実は六本の腕で自分の体を抱いた。

 ダルマのようだった時とのギャップが純粋に衝撃だ。
今の状態の方が、ダルマの時よりも、より人間らしい恰好と言えなくもない辺りもまた、出来の悪いジョークのようでもある。
「なあ、なんでずっとその姿で行動しなかったんだ? 修実さんも自分の意思で動ける分、そっちの方が何かと便利じゃないか?」
 確かに高圧的な姿をしているので。この姿の修実が敵意を持っているのを見たら化け物の来襲に見えなくもないだろう。
普段から今の姿をオープンにするわけにもいかないだろうが、修実は、昌夫が知る限り、壊滅した町からここまで、一度も今の姿をとったことはない。
 今の姿をとるためには、何かの条件が必要なのか、あるいは、ただ単に目立ちすぎるのを避けようとしたのだろうか。
 修実の姦姦蛇螺状態がどのような経過を経て存在しているのかをしらない昌夫の純粋な疑問の言葉を切るように、久信が早口に言った。
「それよりも、早いところこの男をしかるべきところに連れて行って洗いざらい吐いてもらおう……。それまで安心はできない」
「おっと、そうだな。とは言ってもこいつが捕まればもうお前たちは隠れる必要もなくなるからな。
これで少しは楽な生活が送れるようになるだろう。完全に容疑が晴れるまでは俺が直接身柄を預かるように計らっておく」
「ああ……よろしく……」
 応じる久信は疲れ顔だ。戦いの怪我以外にも、ここ数週間の心労が一気に出てきたのだろうか。
時間が経つごとに目に見えて久信の疲労の度合いは強くなっているようにも見える。
「おい、俺の息のかかった医者がもうすぐ来る。それまで寝るな。……おい、聞こえてるか?」
「久くん……?」
 昌夫と修実の言葉にもあまり反応を示さなくなった久信は、苦しそうに数回呼吸をした後、
「任せた」
 小さく言って、ほっとしたように息を長く吐いた。
 今にも眠りに落ちてしまいそうな久信に、昌夫は言い聞かせるように言葉をかける。
「おい、お前はよくやったよ。だからもう少しがんばれ」
「俺は……結局何もできなかった……でも、これで、追われることもなく、修実姉と、一緒に帰れる」
「そうよ久くん。一緒に帰りましょう」
「うん……」
 久信は修実の手に触れた。
「一緒に帰りたいな……」
 そう呟いた久信は、糸が切れた人形のようにその場に倒れてしまった。
「おい、久?」
 慌てて久信の体を抱き上げた昌夫は、久信の体がありえない程に冷たくなっていることに初めて気付いた。
「おい?! 久、お前どうした?!」
 呼びかける昌夫の横で、うめき声があがった。
「あ……あ……ッ」
「修実さん?!」
 何事かと慌てる昌夫の傍で、修実は取り乱した上ずった声で言う。
「ど、どうしよう……私の……私のせいだ。ああ、どうしよう。私の、私の、わたしのせいだ……!」
 呻きながら、修実は久信に取りすがる。
「久くん? 久くん!? ねえ、久くん、起きてよ、ねえ?!」
 危うく震える声で何度も呼びかけられるが、久信は反応する気配を見せない。
 かろうじて息をしている、というのは分かる状態で、昌夫は医者の早い到着を祈りながら、半ば茫然と、友人姉弟を眺めていた。




中ボス戦が終了したところで、そろそろ本当のボスが真価を発揮しましたね?!
そんな感じで

>>945
タイトルにはいくつか意味がありますのでそちらも考えていただければ幸いです

コドクの人乙ですー
真のボスって何!?修実ちゃんはなんか知ってそうだけど

>>545
>タイトルにはいくつか意味がありますのでそちらも考えていただければ幸いです 俺が思ってたのは「孤独の檻」だったけどそれもあり?

>>955
>>タイトルにはいくつか意味がありますのでそちらも考えていただければ幸いです 俺が思ってたのは「孤独の檻」だったけどそれもあり?
ありです! むしろサブタイでいつか使います!

 どこかで誰かが泣く声が聞こえた。
 その声は、ただただ、何度もごめんねと謝り続けている。
 久信は、その声を知っていた。その声の主がいつだって独りで泣いていたこともだ。
その人が他人に自分が開いている姿を見せることがなくても、彼女はずっと泣いていたということを、久信は知っていた。
 ……泣かないで。
 そう思うことも、もう何度もしていた。
ただそう思うだけでは無意味で、言葉にすればするほど、
彼女は完璧な微笑を身に付けてしまって久信にもやがてその真偽を見抜くのが難しくなってしまったから、いつしかそれを口にすることをやめていた。
 ただ、泣かないでと、泣かせたくないと、泣かせなくても済むようにしたいと、そう思うことはずっとずっとやめることはなかった。
 そして、それを実現するために努力を重ねてきた。
 だが、そうやって一つ一つ出来ることを増やしていくうちに、その人もまた、出来ることが増えていく。
 一向に近付くことのない背中。
 近付くどころか、時間が経つごとに遠く離れて行ってしまうとすら感じていたその背中を、
それでも追うことを諦めきれず、久信はその人に追いつくための努力を続けた。
 優しいあの人が壊れてしまう前に、その隣に居て、涙を拭って止めることができる家族になれればいいと、そう思った。

   @

 目を覚ました久信は、仰向けの姿勢のまま、白い天井で煌々と輝く蛍光灯の光をぼやけた視界でしばし見つめた。
後をひくような、ねっとりとした疲れを感じる。その不快感に眉をしかめながら、久信は体を起こした。胸の辺りに走る痛みに小さく呻く。
「ここは……?」
「おはようさん」
 声に続いて椅子を動かす音がした。
 ぼうっと前方を眺めていた視線を音がした方に動かすと、そこには一仕事してきた後なのか、
薄汚れた白いシャツを着た、短髪の、久信と同じ年のはずなのに妙に老け込んで見える男、昌夫がいた。

「おや、目が覚めたかね。肋骨数本にヒビが入っているのに五時間で起床とは、若いのう」
昌夫に気付いて、声をかけてきたのは、白衣を着た初老の男だ。こちらとは面識がない。
 久信は自分の体が特に拘束されていないことを確認してから、昌夫に問いかけた。
「ここはどこだ?」
「ここは医務室。お前は郭をひっとらえた後でいきなりぶっ倒れたからな。
勝手で悪いが、ここに連れてこさせてもらった。今はもう深夜だな」
「ずいぶんと体温が下がっておったが、君の体に今のところは肋骨のヒビ以外の後遺症らしきものは見られない。
元々毒に耐性がある都市伝説とでも契約しておるのかな?」
 医者が昌夫の言葉を引き継ぐ形で現状の久信の体の状態を説明する。
さしあたって、今のところは体に危険はないようだ。この体の疲れも危険なものではないらしい。
「こいつは爬虫類系だからな。体温が下がったくらいじゃ死なねえよ」
「なるほど、とはいえ、体力のほうがずいぶん下がっておるし、数日はゆっくりしておくことじゃな」
 医者の発言からすると、どうやらこの疲れは体力を使い果たしてしまったためらしい。
 と、そこまで考えて、久信は一つの疑問を感じた。
 ……毒?
 医者は元々毒性がある都市伝説と契約しているのかと言った。
ということは久信は毒に冒されていたということであるが、肋骨についてはともかく、何かの毒を郭に盛られたという記憶がない。
 だとしたら、俺はいつ毒を盛られたんだ……?
 頭の中で疑問を転がしながら、久信は、こうして自分たちの事情をよく知らない第三者が居ても自由を拘束されていないところを見ると、
自分たちに対する討伐手配が取り下げられたということでいいのだろうと考える。
 ならば、と確認をとるつもりで問う。
「昌夫、討伐命令はどうなった?」
「おう、郭をとっ捕まえて〝組織〟に送り付けてやったからな。事情はもう報告してあるから、お前たちは討伐対象から監視処分に格下げだ」
 昌夫は笑い、
「ちなみに、監視役は俺な。そうなるようにあの場にいた密輸組織を一網打尽にした功績とか、代々続く憑き物筋の家系の権力ってのを利用してやった」
「ああ、なるほど」
 町一つを滅ぼした者に対する処分としてはやけに甘い決定だと思ったら、そういう裏があったようだ。
 また盛大に動いてもらったわけだ。
 その事も込みで、今回の件に対するお礼をしなければなるまい。もとより昌夫の仕事を手伝うつもりではあったので、監視役が昌夫というのは好都合だ。
 ああ、これで、ひとまずなんとかなった。
 自分たちの処遇が決まったことで、久信はようやく人心地ついた。
「何とかなったね、修実姉――」
 言いかけて、自分が今いる医務室の中に修実の姿がないことに気付く。
「昌夫、修実姉はどこに行ったんだ?」
「修実さんはな……」
 昌夫は質問に対して少し考える素振りを見せ、やがて伺うように質問を返してきた。
「なあ久信。お前、自分がなんで倒れたかってこと、分かるか?」

「は?」
 返された質問に怪訝な顔をしながら久信は正直に答えた。
「いや、いまいち分からない。さっき、そっちの医者は俺が毒にやられた。みたいなことを言ってたけど、俺はいつの間に郭に毒を盛られたのか覚えがないんだ」
 怪しいとしたら、彼が持っていたあの手斧だ。刃に毒を塗ってあったのではないかと考えるが、その斧の攻撃は全て修実が盾になって受けていたため、これが原因で毒を盛られたということはありえない。
 だとしたら、次に怪しいものは、
「そうだな。心当たりといえば、毒をあの結界の中に撒かれていたのかもしれないなってことくらいか」
 郭が展開していたかごめかごめの結界の中に充満していたあの甘ったるい、香のようなもの。あの香の中に紛れて、あるいはあの香自体が毒だったのかもしれない。
 能力の行使のし過ぎで体力が尽きてしまったために、毒が一気に体に回ってしまったのではないか。実際、体力を削られすぎたせいで現在も体が引きずるように重い。
「どう? 正解?」
 訊ねると、昌夫は「いいや」と首を横に振った。
「お前、瘴気に中てられたんだよ」
「瘴気?」
「ああ、修実さんの中から溢れた毒に、だ」
「――え?」
 頭が、真っ白になった。
「どういうことだ? 瘴気はもう修実姉が収めたはずだぞ?」
 昌夫に詰め寄ると、医者が横から久信を落ち着けるためにか、ゆっくりとした、落ち着いた口調で話す。
「君のお姉さん、だったかな? 彼女は強力な毒を持っている。
おそらくは君の方がより詳しいのだろうが、呪詛、という毒だよ。そして、弟の君にまで被害が及んでいるということは、
どうやら君のお姉さんはその毒を自分の思う通りに制御できていないとみて、まず間違いないだろう。
 制御の利かない毒は君が言った通り、収められはしたようだけれど、結局のところ、一度は毒は漏れ出していた。
それは収められたからといって何もなかった事にできる類の事象ではない。そして、その溢れた毒はしっかりと影響を周囲に与えていた。
今回の場合は、お姉さんの近くに居たという君と、君や昌夫君が捕まえたという郭正吾という男。
それと、あの場においてお姉さんに敵意を向けられていた、密輸船に乗っていた船員たち。これら全員が瘴気に中てられておったよ」
「……抑えきれない……毒……?」
 真っ白になった頭の中で、その言葉が頭の中で引っかかった。
 そのキーワードで想起されるのは、修実の中にある都市伝説のことだ。
「……毒って、修実姉の中の蠱毒のことか?」
「ああ、お前が倒れた時、修実さんがものすごく取り乱していてな。
どうも、修実さんは自分の中にある抑えきれない毒についてはある程度気付いていたみたいだ。
だからこそ、ずっとダルマ女のような状態でいたらしいな。全部、修実さん本人が話してくれたよ」
 あの場で倒れた後、事の顛末を見た昌夫が言うには、姦姦蛇螺としての正体を現した修実から漏れ出ていた瘴気は、
修実が抱いた敵意に反応してある程度の指向性をもって周囲に広がったらしい。
「指向性はあったとはいえ、まず瘴気が襲い掛かったのは近くに居た生き物だな。お前、蛇がほどんど死んでいたのには気づいたか?」
「そういえば、郭と戦ってる時、蛇の気配が周りから消えてたな……」
 戦闘に集中していて蛇のことが意識から外れていたせいで蛇たちの気配を感じなかったわけではないらしい。
 壊滅した町の中で修実を見つけてお互いを認識できた時あの姦姦蛇螺の状態からすぐに両手足を失った姿になって、
久信に自分の体を運んで欲しいと彼女が頼んできたことを思い出す。
 姦姦蛇螺の姿はどうしても目立つのと、蠱毒の内で行ったことを喧伝しているかのようなこの姿をあまり晒したくないからと修実は説明していたが、
それ以外にも、制御の利かない蠱毒の瘴気の件が理由としてあったのだろう。
 修実は蠱毒と契約しているわけではない。誰も意図しないままに生まれた毒を暴走させないように修実が自分の身の内に収めて抑え込んでいただけだ。
そうやって何とか抑え込んでいた毒を、修実はあのクラブ跡に侵入した時に久信や自身を守るために開放することになってしまった。

 極限状態で解放された蠱毒の力を制御しきることは修実にはできず、蠱毒から溢れた瘴気は近くにいた生き物に襲い掛かった。
当然、それは最も近くで修実の戦闘を見ていた久信をも蝕んだ。
 そして久信は倒れたのだ。
 ……なるほどな。
 自分がなぜあそこで倒れる結果になったのかはこれではっきりとわかった。
驚きはしたが、今の修実の状況を鑑みればそのようなことが起こっても不思議はない。
それに、その蠱毒の力によって久信は今こうして生きていられるし、目を覚ました久信は特に後遺症のようなものもない。
 ……早く会って、俺は元気だと言ってやらなくちゃな。修実姉はきっと心配してる。
 早く姉に元気な姿を見せて気にすることはないと言いたい。
「なあ、昌夫、いい加減教えろ。修実姉はどこに居る?」
 訊ねると、昌夫は悲しそうな顔をした。
「今、修実さんはどっかに姿を消そうとしている」
「え?」
「今回の件で自分が周囲、特にお前を害する危険があることを知って、思うところがあったらしい」
「な――」
 久信の表情が凍り付く。
 でも、と呟いて、久信は言う。
「それならまた両手足を無くした状態にもう一度なれば……」
「だめだ。そうも今回、一度溢れてしまったせいで蠱毒が活性化しているらしい。
もう制御がほとんど効かなくなっているみたいだ。気を抜くと毒が溢れてしまいそうで、
もう半分くらいは自分のものになってるあの腕を抑えることによって修実さん自身の力が抑えられると、蠱毒の制御どころか、蠱毒に自分の全てを乗っ取られるかもって話だ」
「そんな……」
「お前も、あと郭も、幽霊船の奴らもだな。どんな毒でも解毒できるユニコーンの角の粉末でなんとか命は繋いだけどな。
あのままだったらお前もあの男も死んでたし、結界を挟んでいたのに修実さんに敵意を向けられただけで瘴気に冒された密輸船の奴らもやばかった。
だからこそ、修実さんは自分の危険性を悟っていなくなったんだろうよ」
 昌夫は諦めたように言葉を投げた。
「昔と同じだよ。制御できない力を自分の中に持っちまった修実さんの傍に居ることは、誰であろうとできない」



さて、ここからラスボスはお姉ちゃんな展開です

 修実を諦めろと言わんばかりの昌夫の言葉を受けて、久信は押し黙った。
 制御することができない程の大きな力を不安定なままで自分の中に収めている修実の傍にいるのは、誰であろうと危険。
 たしかに、蠱毒を制御できない修実は、毒を再現なく吐き出す危険な存在だ。
また、気を抜くと瘴気が漏れ出すというのも、程度によるが、久信が目覚めるまでの時間すら待っていなかったことを考えると
、一時たりとも気を抜くことができない――つまり、睡眠も急速すらもとれなくない程切迫しているということだろう。
 そうなれば、そう遠くない未来。遅くとも数日後には、修実は蠱毒の制御どころか自分の生命の維持すらも難しくなる。
 そして、修実が衰弱すれば、蠱毒は修実を飲む込みにかかる。
 蠱毒に飲み込まれて瘴気ををまき散らすだけの化け物になれば、
修実は――修実であっただけのモノになったそれは、討伐対象として滅されるしかなく、蠱毒に乗っ取られずに修実が修実であることを貫くには、自分で自分を決着するしかない。
 結局のところ、修実には生き残る道はない。そして、選べる数少ない道の中からならば、修実は迷わず自決する道を選ぶ。
その程度には久信は修実を理解している。今こうして彼女が出て行ったのも、自分の死に場所を見定めるためだろう。
 それが分かるから、久信は奥歯を強く噛んだ。
 また同じだ、と久信は思う。
 諦めろ。
 過去、修実が実家から里子に出される時、小野の一族は、久信と、そして彼らの両親を納得させるためにあらゆる理由を付けて、諦めを強要してきた。
 結果として、家族では誰も修実を救うことはできず、修実は生まれ持った力のせいで実家を追放されることになった。
 新しい居場所でやっと自分の力を御せるようになっても、その場所で裏切りを受けて独りを体験する羽目になって、
そんなボロボロの修実がやっと再開できた久信に対しても、今度は体内に憑りついた蠱毒が彼女の居場所を奪い去る。
 ……また同じだ。
 姉が遠くに離れて行ってしまう。
 何とかしようにも、今の久信では修実の体内にある蠱毒をどうこうすることはできないし、修実から溢れる瘴気は、久信を毒するには十分すぎる。
 ……あの毒を凌駕できるだけの力が欲しい。
 もう二度と、修実を独りにしないで済むだけの力が。
 ……そうしないと、修実は死んで、きっと俺も朽ちる。
 修実が里子に出された組織が、それが所在していた町ごと消滅してしまったと聞いた時、
久信は姉を喪ってしまったのかもしれないと思い、発狂してしまうのではないかというほどの喪失感を感じた。
 じっとしていられなくなった久信は、事の真偽を確かめるために、矢も楯もたまらずに家を飛び出してきたのだ。
 喪うかもしれない。そう思っただけでこれなのだ。本当に死に別れてしまえば、久信は自分がまともでいられる自信がない。
 異常だと自分でも思う。ここまで執拗なのは蛇神憑きという都市伝説を継いできた蛇の一族の性なのかもしれない。
 ……じゃあ、これも性なんだろう。
 半ば吹っ切る思いで、久信は内心で呟いた。


   @

 しばらくの間黙り込んで何事かを考えていた久信は、やおらベッドを降りると、医務室の扉に向かって歩き出した。
 ベッドから降りて自分の足で立ってみてようやく気付いたが、体が驚く程に重い。
瘴気自体はユニコーンの角の粉末で抜けてはいても、体の疲労が抜けているわけではないようだ。
 ふらつく体を引きずっていく久信の肩を、昌夫が掴んで止めた。
「まだ安静にしていたまえ。体中が瘴気に蝕まれていたのだぞ」
「そうだ! それに、お前、そんな体で何をしに行くつもりだ?」
 諭す医者と怒鳴る昌夫を押しのけ、久信は医務室の扉に手をかけた。
 扉を開けると、廊下に一匹の蛇がいた。
 主である久信の護衛についていた、おそらくは密輸船に放っていた蛇の生き残りだ。
昌夫から離れていたために、瘴気の影響を受けずに生き残れた一体だろう。蛇は、人語とは異なる言語を通して久信に一つの情報を伝えてきた。
「……そうか」
 それを受けて小さく頷く久信に、昌夫が問う。
「なんだ? その蛇、いったい何を言った?」
「修実の近くに、俺がやった蛇の生き残りがいる。居場所は、何とか掴めてる」
 蛇の報告では、修実は周囲を気にしながら移動しいているらしい。そのためか、彼女が進むペースは随分と遅いようだ。
 ……今なら、まだ追いつける。
 これで人気のない場所、この町の北にあった山の中にでも入られたら人目を気にする必要もなくなり、山を抜けて一気に遠くまで行かれてしまうだろう。
 本気で修実が移動すれば、蛇たちでは見失ってしまい、久信ではもう追いつけなくなってしまう。時間はあまり残されていない。
「修実にたどり着くには、今追いかけるしかない」
 蛇を拾い上げた久信は、そのまま外に出て行こうとする。その背へ昌夫が言葉を浴びせた。
「そのまま修実さんを行かせてやれ! あの人は元々都市伝説に好かれた人なんだ」
 周りの人々が久信に言い聞かせてきた常套句を、昌夫は並べてきた。
「だから――」
「だから、もし都市伝説に呑まれたり、それが原因で死んでしまうようなことがあったとしても、
それは修実姉が都市伝説に愛されて連れて行かれた結果だから諦めろって?」
 久信はいつもそう言われ続け、いつ姉がいなくなっても傷が浅くて済むようにと覚悟を決めさせられてきた。
「昔は、俺もその言葉に納得してたんだけどさ。今はもうだめなんだ。
どんなに覚悟を決めたつもりになっても、修実姉を亡くす人生なんて俺にはもう考えられない」
 それに、
「修実姉に対する執着心は、都市伝説なんかに負けやしない」
 蠱毒の呪詛に愛された姉を奪い返すことくらいできないわけがないと思う。
 蛇の愛は執拗なのだから。仮に負けるとしても、挑まずに諦めることだけは嫌だった。
「都市伝説に俺の修実姉を奪われてたまるか」
 姉が養子に出される時も似たようなことを言っていたような気がする。
まるで聞き分けのない子供の意見だ。だが、それは何ら飾る事のない本心でもある。
 言葉を聞かされた昌夫は、一つ盛大な溜息をついた。
「あーやっぱりそうなんだな」

 吹っ切れたようにそう言う。長い付き合いでもある。久信が言うようなことにはもう気付いていたのだろう。
「でもな、そんな気持ちだけで修実を追いかけても結局毒に殺されるだけだぞ? そうだろ? 爺さん」
 話を振られた医者が頷く。
「あの瘴気は呪詛と毒気の集合じゃ。
あの都市伝説自身がそれを制御しきれていないということは、近づくだけであの娘は自分の周りの全てを祟ることになる。
 封印されていた荒御魂を解放するからこうなる。触らぬ神に祟り無しというのに」
 医者は昌夫から深い事情までは知らされていないのか。修実をどこかで鎮められたいた蛇神か何かと勘違いしたような一言を付け加えた。
 昌夫が医者を手で止めて久信をうかがう。
 久信は特に気にした様子もなく、口元を緩めた。
「うん、確かに、修実姉は俺の女神だ」
 昌夫の目が点になる。次いで壮絶な呆れ顔になって、最後は自分で自分を扇ぎだした。
「おーあついあつい。しかし、お前その態度ってことは、姉弟仲良く心中するってのよりは上等な結末を用意してるんだろうな?」
「ああ、もしかしたら、なんとかなるかもしれない」
 そう答えて、久信は振り返り、昌夫に頭を下げた。
「だから、頼む。もう少し力を貸してくれ」
「……ああ、まったく」
 付き合いの良い友人はしぶしぶと頷いてくれた。
「しょうがねえな。乗りかかった船だし、修実についてはお前から嫌ってほど聞かされてたから、家族よりも身近に感じてるし、それに、まあ友人の頼みだ。
 犬はコミュニティーを大事にする。だから、もう少し、お前たちの決着がつくまで見送ってやるよ」

   @

 修実は、隠形で姿を隠しながら、学校町の北にある山を目指していた。
 山伝いに人が通常踏み込んでくることがない場所まで行こうとしていたのだ。
 蛇の下半身で這い進むにしてはペースは随分と遅めだ。
それは修実の体内にある蠱毒の瘴気を全力で抑え込んでいる上に、可能な限り、生物に近付くのを避けているためだった。
 修実が細心の注意を払って抑え込んでいる瘴気も、何の拍子に外へと漏れ出てしまうのか分からない。それだけ不安定な状態なのだ。
生き物を避けようとする修実の行動は正解だろう。
また、隠形も、修実が瘴気の抑え込みに集中するあまりに若干おろそかになっており、
敏い生物には修実の存在を気取られるような有様で、人目を避けようとするのは姿を隠す的な意味でも正しい。
 ……せっかく郭を捕まえて疑いが晴れたのに、私がうっかり通りすがりの誰かを殺してしまったら元も子もなくなってしまうものね。
 内心の呟きに、修実は自嘲の吐息をついた。

 ……結局、こういう結果になっちゃった。
 結界に閉じ込められた後、郭が張った結界を破壊して弟に再び会えた時、あの時は奇跡的に蠱毒を抑えこむことができた。
あの時、今度こそ、最愛の弟と一緒に暮らすことができるようになるのだと期待した。
しかし、期待は裏切られた。久信は修実が解放してしまった瘴気に中てられてしまって、一時は生命が危うかった。
彼が命をとりとめたのは本当によかったと、そう思う。あの場で助けてくれた昌夫には、また一つ借りができてしまった。
 ……もし何かの形で恩を返すことができれば、そうしたいのだけど。
 今生において自分が恩を返すことはできないだろうことが、修実にとっては弟のこと以外での数少ない心残りだ。
 ……あの封印から出られた時、この姿になることは二度とないって思ったんだけどな……。
 あのクラブ跡に展開された結界の中、久信が殺されるかもしれないと思った時、修実はどうしても……そう、
周りにどれほどの被害が出ることになろうとも、久信が居なくなってしまうのは嫌だと、そう思い、力を解放してしまった。
 ……私は――
 人外になっても変わることなく修実を好きだと言ってくれる弟のことを、1人の男性として愛している。
 それこそ、久信が自分の気持ちに気付く遥か以前から、修実は久信の事が好きだった。
 きっかけは単純なもので、生まれつき大きすぎる力を持つ修実を周りが腫物を触るように揺する中にあって、
久信だけは、何も知らない子供ならではの恐れの無さで接してきてくれたという、ただそれだけのことだった。
彼は、成長した後も、修実に対して腫物を触るように接することもなく、やがては好意を寄せてもくれるようになった。
 その好意は修実の中の好意を素直に表出させる呼び水となって、心も体も久信にだけは許すようになった。
 インセスト・タブーを犯すことは初めから気にならなかった。
 そもそも、憑き物筋の家は血に憑いた都市伝説との共生関係で生きてきた歴史からか、憑き物が発現しやすいように、血の濃さを保つ近親婚が推奨されている。
 修実たちの両親も異母兄妹の関係だ。その意味では姉弟が離れて暮らすのは肉親意識を遠ざけるのに役立ったのかもしれない。
 こうして修実の中で欠かすことができない程大きな存在となった、彼女の人生において無二の愛する人は、まっすぐな彼は、
いつも修実のことを守れるくらいに強くなろうと考えていて、無茶をしてきた。
今回のクラブ跡への侵入も、もっと彼が普段通り冷静に行動を起こしていれば、あそこで命を危険にさらすことはなかったのではないだろうかと、今更ながらに思う。
 彼の行う無茶や、今回の一連の騒ぎについても、瘴気が久信を冒した時のように直接的ではないが、
これもやはり、修実の持つ強すぎる力が原因となって周囲をおかしくしているということだろう。
 ……だから、私は久くんとこれ以上関わりを持ってはいけない。
 郭正吾を捕える時、姦姦蛇螺と名乗るにふさわしい異形と化した彼女が自身の力を暴走させたあの時。
修実は蠱毒に自分の全てを乗っ取られかけた。自分の中で暴れる害意のままに、危うく生け捕りにする必要があった郭を殺してしまうところだった。
それだけではない。修実の中の害意は、制御も利かないままに、何にも優先して護るべき対象であった久信をも殺してしまうところだった。
 修実自身では制御の利かない毒。その力は最愛の弟を殺してしまう。それが、修実には何よりも恐ろしい。だから、修実は最愛の人から離れなくてはならなかった。
 ……ここまでこの身の力に翻弄されていると、もうこれが私の業だと思ってあきらめるしかないわね。
 かつての修実は、久信を愛しているからこそ、実家に戻ることをよしとせず、完璧に自分を制御できるようになるまで家から離れた。
今も似たようなものだ。
以前は自分ならば時間をかければ力の制御ができるようになるだろうという目算をもって家を離れていたが、今度は修実が自分自身に見切りをつけている。
違う点といえばそれくらいだろう。
 自分自身に見切りをつけた彼女が選ぶ道は一つきり。
 ……私の存在が久信や、まっとうに生きている人たちの脅威になるくらいなら、私は独りでひっそりと死のう。
 異形のこの身が人に害をなす前に消えるという道だった。
 それを人生最後の望みとして、修実は急いでこの町からも、そして最愛の弟の前からも永遠に姿を消そうとしていた。
 郭を捕えたことで、修実たち姉弟にかかっていた濡れ衣も剥がれるだろう。後のことは昌夫に頼んである。彼ならば良いように取り計らってくれる。
 これで、後は修実が消えさえすれば、久信は平穏な生活を取り戻すことができる。
 近い未来に、久信に平穏な生活が戻ることに、修実は安堵の息をもらす。
 ……久くんの人生は、私が抱える問題に常に巻き込まれるようなものだったから、謝っても謝りきれないけど……。
 自分のことは忘れて、彼は彼の人生を生きてくれればいい。
 ……また、独りだな。
 いつの間にか、周囲には人口の建造物がなくなっていた。
 山が近い。あとは入山して、力尽きるまで人の気配のない奥地まで侵入して、体が衰弱していよいよ自分が乗っ取られそうになったら、その時は体を奪われる前に自決する。
 ……それで、全部終わる。
 その工程を何度も何度も繰り返し反芻することで、頭の中に浮かんでくる人の顔を胸の奥底に封印する。
 いつの間にか、雨が降ってきていた。
 頬を伝う滴を隠すように。


連日投下失礼します
三日休みがなかった分今休みなんだなぁ

私が自分の乙女回路をぶん回してキャラを考えるとなぜかヤンデレか依存体質に近くなる
 ゆゆしき事態だ
 こう、女性が強くて一切ぶれないような女性強権的な作品を読んで均衡をとらねば。
 ヤプーとか

コドクの人乙ですー
もげろとは言わん、幸せになれ

「まったく、近頃の若いもんときたら・・・」
 御年80を越える老婆、金子金子(かねこ かねこ)は不機嫌だった。
 「金子」というさして珍しくもない名字の男に嫁いだばかりに珍名になってしまい、昔はずいぶん親を恨んだものだったが、この歳になるともう気になどならない。
 黙って郵便局の自動ドアをくぐり、ATMで現金振り込みの手続きをする。
 孫が無免許運転で妊婦をはねてしまった。運悪くヤクザの情婦で、多額の治療費と慰謝料と示談金を要求された。払わなければ警察に通報すると脅されている。
 電話の向こうの声が力なく語る。金子は、
「うるさいよ」
 と一言言い捨て、電話を切るとこの郵便局にやってきた。
 金なら、ある。
 一昨年死んだ夫は事業に成功し、巨億とは呼べずとも、十分すぎるほどの遺産を遺してくれた。
 何も心配はない。金は天下の回りものなのだから。

「へっへ、振り込まれてるぜ」
「バカなババァだよな」
 ある都会の片隅で、若者達が顔を寄せ合い、記帳された通帳を眺めていた。
 彼等は言わずと知れた「オレオレ詐欺」の常習犯。
 悪銭はとっとと使うに限るとばかりに金を全て引き出し、ほくほく顔で銀行を出る。
 と、そのとき。

 俄に強風が吹き、彼等の手元から金の入った封筒を舞い上がらせた!

「うわ!」
「やっべ、金!」
「まてよ、オイ!ちきしょー!」

 彼等の叫びなど無視して、紙袋から金は全て飛び出し、風に吹きさらわれていった。

「ふん」
 金子は不機嫌そうに風に吹かれて舞い戻ってきた金を数えていた。
 「金は天下の回りもの」
 金子家に嫁ぎ、「金子 金子」となった彼女にこの都市伝説が近づいてきてからというもの、夫が事業で損失を出しても不思議にそれを上回る収入が入り、夫は成功した。
 その代わりと言うべきか、二人に子供は授からず、金子にはもはや身寄りもない。
 この金も、自分が死んだらどこぞにでも寄付してしまおう。
「騙す相手の下調べくらい、きっちりせんかい、青二才が・・・ああ、まったく。最近の若いもんときたら」
 彼女は名前通り、その名を付けた両親の願い通り、金に困らない生涯を送った。



END

婆ちゃんwww
こういうの好きだわ

乙です
金がどうなるか分かってても振り込むばあちゃんにちょっと切なさを感じました

 北区にある山の麓に辿り着いた修実は隠形を解いた。
 周りに人が居る気配は一切ない。
 ……あとは、この山の中に入れば、全て終わる。
 思わず、といった調子で溜息を吐いた修実は、不意に背後を振り返った。
「これは……」
 修実を振り返らせた原因は、彼女めがけて急速に近づいてくる気配だった。
 早い。
 ほぼ一直線に突き進んで来るらしいその気配は、どうやら建造物の屋根を足場として跳ね飛んできているらしい。
 未だ遠くにある気配。その気配に修実が気付ことができたのは、その気配を彼女自身が知っていたからだ。
 育てられた組織と、そのお膝元の町くらいしか世間を知らず、その狭い世間の中で築き上げた人間関係も全て壊してしまった修実だが、
そんな彼女にも、数少ない友人と呼べるような存在が居る。彼は自分たち姉弟に付き合ってくれる良い人だ。
 彼は良い人だから、今の修実に近付くことが危険であると分かっていても追って来てくれたのだろう。
「もう、ばかなんだから……」
 修実は目元をぬぐって、気配に対して視線を向ける。
 蠱毒が漏れ出ることがないように、特に意識を集中する。
 気配は迷う素振りを毛ほども見せることなく、一直線に向かってくる。
どうやら、発信機か、あるいは犬か蛇の尾行でもつけられていたようだ。
人間を集中的に探っていたため、追跡は修実の知覚から逃れていたのだろう。
「やられたなぁ……」
 視線は向かってくる気配の主を捉えた。やってくるのは友人と、そして、友人を焚き付けたのだろう。修実の最愛の弟だった。
 ……久くん……。
 切なく微笑んで、修実はその名前を呟いた。

   @

「修実さんが見えた! おい久。とっつかまえるからお前下りろ!」
 屋根の上を跳躍し、民家がなくなってからは深夜の夜気を突っ切って地面を猛スピードで走っている昌夫の言葉に、
彼の背に捕まっている久信は耳元を通り抜ける雨音と風切音に負けないように、大声で叫び返す。
「じゃあスピード下げろよ!」
「スピード降ろしたらその間に逃げられるかもしれんだろうが。大丈夫だ。この程度じゃお前は死なん!」
「ああもうちくしょう!」
 久信は昌夫の肩越しに修実がこちらを向いていて、その顔にはあの微笑が浮かんでいるのを確認して、昌夫の背から手を離した。
 蛇を放って地面に敷き詰め、それらをクッションにしながら、地面を転がって何とか着地する。
「あの犬っころ。人が拒否できない理由つけやがって」
 悪態を吐く間にも、昌夫は修実に接近する。


  @

 久信を置いてきた昌夫は、これまでよりも更に早い速度で修実との距離を詰めた。
 背に人がいたのではなかなか出すことができない、手を地面に付けて体を前に倒した獣の走法だ。
 一駆けごとに雨が盛大に跳ね、地面が確かな手ごたえを返してくる。
 一歩が百メートルを駆ける力を生み出す現在の昌夫の姿は、犬の頭部に獣の腕と脚とを持つ、まさに人狼のような代物だった。
 彼の憑き物筋としての能力。本人が犬懸りと呼んでいる状態だ。
「おい! 俺を置いて、もうお前帰っていいんだぞ!」
 遠く背後から、大声が聞こえてくる。
「病み上がりのお前じゃどうせ逃げられるだろうが!」
 友人に聞こえるように大声を放り返してやる。
どうせ自分たちのことに巻き込むのに最後の最後で躊躇いを感じたのだろう。
そういう優しさは嫌いではないが、昌夫としては、ここで仲間はずれになる気はない。
 ……いや、あいつは修実さんに自分より早く俺が接触するのが嫌なだけか……?
 ありうる。そう内心で思い、昌夫は地を蹴りつけた。
 久信に返した言葉への返答が来る前に、昌夫は修実が居る場所にまで辿り着く。
「悪いな。修実さん」
 修実まで一歩の位置にまで辿り着いた昌夫は、速度を落とすことなく姿勢を上げ、腕を振りかぶった。
 雨に濡れた修実の顔を鷲掴みにする動きだ。
 直撃を受ければただでは済まないだろうが、あの状態の修実ならば死ぬことはないだろう。
そのような判断のもとに打ち込まれる一撃は、だからこそ容赦のない勢いで振り抜かれ、修実の右側に生えている三本の腕に止められた。
 足が地面から離れ、修実を中心に半円に滑る。わずかにバランスを崩した昌夫に修実は言う。
「危ないよ、昌夫くん」
「……っ」
 左側の手が動く前に、昌夫は体を倒した獣の動きで修実の背後に回った。
 ゆっくりと振り返った修実に、昌夫は苦笑で言う。
「これでも俺の居る部署の中じゃ一番威力がある一発と同じ速度でぶつけてんだけどな」
「ごめんね。それじゃあ私には届かないの」
 申し訳なさそうに言われる言葉に、昌夫は苦笑を濃くする。
 あの速度で振るわれる腕を正確に追う目は尋常のものではない。
修実は何度か暗殺に利用されていたという話だったが、暗殺では敵を仕留める訓練はしても、敵と戦う訓練はしないだろう。
少なくとも、自分に向かって高速で突入してくる物体を見極め受け止めるというのは暗殺の技術ではない。しかし、彼女にはそれができる。
それも、おそらくは何の訓練もなく自然にだ。
 ……これが天才ってやつか。
 彼女の場合はその天与の才が彼女自身を傷付けているわけだが、戦う者としては、その才能は羨ましくもある。
 ……いや、まあ勝手な話だが。
 一つ呼吸をして息を整え、昌夫は改めて修実に要件を告げた。
「修実さん。俺の親友が大好きなお姉ちゃんと離れたくないんだそうだ」
「姉離れができない子でごめんね」
「いやいや、昔っからぶれないおかげで付き合いやすい友人だよ」

 それに、
「修実さんも、本心では弟離れなんてする気ないくせに」
「そんなことないわよ。私は久くんのためなら、久くんから一生離れているって決めてるもの」
「それ、弟離れできてないことをカミングアウトしてるみたいなもんだろ」
「……そうね」
 困ったような笑みを浮かべて、修実はでも、と続ける。
「だからこそ、私は私の中の想いにかけてこの道を譲ることはできないわ。昌夫くん。行かせてちょうだい」
「無論、却下だ」
 昌夫は姿勢を倒して修実に向けて踏み込み、修実からの応撃がくるより早く、
一番手近にあった修実の体。その長大な蛇身を抱え上げる。
「仕方なく選ぶしかない道以外の何かを見せてやるからちょっと捕まってくれや!」
 蛇身を中心して修実を振り回そうと、昌夫は地面を踏みしめて体に回転の動きを加えようとして、
逆に自身の体が宙に振り回されていることに気付き、
 次の瞬間には地面に叩きつけられた。
「昌夫くん!」
 修実の心配する声が聞こえた。
 どうやら、昌夫が振り回そうとするより早く、修実の蛇身が昌夫を振り払ったようだ。
 ……どんな反応速度だよ。
「あ、ああ……だいじょーぶ……」
 応じて立ち上がろうとした昌夫は、体全体にのしかかるような重みと、体の芯から力を抜き取られるかのような虚脱感を得て、膝をついた。
「あ……いや、くそ。この毒はやっぱりちょっときついかもしんねえ」
 そう口にする昌夫の体にまとわりつくように黒い靄がある。蠱毒の呪詛だ。
「……あ」
 修実の小さな叫びと共に黒い靄が消失する。数秒の間を置いて、昌夫は立ち上がった。
体は犬懸りの人狼状態から普通の人間のものに戻っている。
 荒い息を繰り返しながら、昌夫は言う。
「集中して、なんとか押さえつけてるって感じなんだ……体のほうもか?」
「……油断をすると、私の意思とは無関係に動いてしまうの」
 修実は六臂で自分を押さえつけるように抱きしめながら答える。
「ごめん……ごめんなさい。蠱毒の瘴気は、大丈夫?」
「ああ、すぐにあの靄がなくなったからな。それに、これが俺の目的でもあるから」
 昌夫の言葉に、修実は疑問の言葉を返した。
「……え?」
「俺じゃ修実さんを抑えこめないことくらい、さすがに分かってるからな」
 昌夫は自分を必死に抑えている修実をしっかりと見据えた。
「なるほど。このままじゃ一緒に生きていくってのは難しそうだな」
 うん、と頷き、昌夫は言葉を続けた。
「でも、それでも何とかしてみたいって奴がいるんだよ。なあ、久?」



   @

「そうだよ、修実姉」
 昌夫が時間を稼いでいる間に、久信は修実のもとへとたどり着いた。
 修実は今、蠱毒の瘴気が溢れることを恐れてせいいっぱい集中しているため、ろくに動くこともできない。
 修実の逃亡を防いだ上で、姉弟は向き合い、もしかしたら最後になるかもしれない会話の機会を得た。
「修実姉」
「久くん……」
 言葉が返ってくることに安堵しながら、久信は続ける。
「俺の前から消えるのか?」
「うん、もう一緒に入ることはできないから」
「聞いたよ。蠱毒の瘴気だろ? 今はほら、抑え込めてるじゃないか」
「だめよ。ほんの少しの刺激で瘴気が溢れ出てしまう、とても不安定な状態なんだから」
 そう言って顔に微笑みを張り付ける修実に、久信は強い語調で言った。
「それで、また自分が持ってるものを全部捨てて独りになるのか」
 いつだってそうだった。家族も居場所も全部放り出して、自分から引きはがすことができない力を抱えたまま、修実は独りになって、それでも自分が生まれ持った力で何かができるのではないかと、彼女は周りに尽くしてきた。
 力が強すぎる修実は、人の姿をしている人とは別の何かとして扱われ、根本的な部分で人としての生活を送らせてもらえていなかったから、そうやって周囲に尽くすことによって、異質な自分でも人の間に居てもいいんだろうかと、そういう許しを乞うてきたのだろう。
 そして、尽くしてきた事に対しては裏切りで報われ、それを清算した果てに、彼女は新たに自分とは切り離すことができないコドクを抱えてしまった。
 そしてそれはまた彼女を人の間から遠ざける。
「あと少しで、人並みの生活が送れるようになるってところじゃないか」
「それでも、もういいんだよ」
 修実はゆっくりと首を横に振った。
「私は人として生まれて、人を、久くんを愛して、そして、ここまで生きてくることができたのも、やっぱり人のおかげで、人は好きだから……できればこの力を使って人の間で生きていくことができればって思ったこともあるけど、しょうがないね。
 愛した人も、それ以外の人も、できることなら私は害したくないから、そこにいるだけで誰かを呪わずにはいられないどうしようもない私は、どこか、人のいない場所にのんびり隠れ住もうと思うの」
 修実の最後の発言は嘘だと分かっている。これだけ力が不安定な状態でのんびりもくそもありはしない。あるのは、衰弱による死か、全てを力に乗っ取られるか、その前に自分を終わらせるか、その三択だけだ。
 どれをとっても修実は死ぬ。そんな最悪の選択肢しかない状況で、修実はそんなことを微塵も感じさせない笑顔で言った。
「ねえ、久くん。私ね、私がこうなる前に家に帰って来いって、家族皆に言われた時、すごくうれしかった。でも、ねえ。知ってた?
 私、あの時、久信に帰ってこいって言ってもらえたことが、何よりも嬉しかったんだよ。
 小さいころは何も知らなったから、私を受け入れてくれていた。でも、中学生から高校生になる頃には、昌夫くんと一緒に普通の学校に通って友達を作ってた久くんがまるで私から離れていってしまうみたいで、ちょっと寂しかったんだよ」
「あれは――」
「ううん、いいの」
 修実は、だけど、と自分の言葉を続ける。
「そんな時期の少し後、久くんは里帰りした私に好きだって言ってくれたよね。私もね、ずっと言いたかったんだよ。
 私は、その思いでだけで十分だから。だから、久くんと離れても大丈夫。
 むしろね。もしかしたら私が私の中の蠱毒を抑えきれずに久くんを殺してしまうかもしれない。それが怖いの」
 修実の声がわずかに震え、六本の腕が一層強く濡れた体を抱きしめる。
「もし私のせいで久くんが死んじゃったら、私……いきていけない。だから……」

 ――――さようなら。

この姉弟はジェネティック・セクシャルアトラクションな感じで考えて書いています

コドクの人乙ですー
ここからどうハッピーエンドに持って行くか期待して読んでおります

>>976
がんばりますとも!
次スレはどのくらいでたてればいいのだろう?
1000になってから立てるのですかね?
意見を聞きたいのです


 さようならという修実の言葉を、久信は正面から受け止めた。
 喪ってしまうのは怖い。出来ることならば一緒に居たいと言いながら、彼女は離別の言葉を口にしている。
 周囲から言い聞かされていた昔とは違い、今回は自分の意思で発された別れのための言葉であり、
その理由は久信を殺してしまうかもしれない自分に耐え切れないというものだ。
 ……まただ。
 また、弱い者として扱われている。
 自分が修実と比較して弱いということは昌夫からも指摘されていたし、久信自身でも分かっていた。
だが、修実本人にそう指摘されたようなものである今の状況は、意外なほどに久信に衝撃を与えていた。
 久信が弱いせいで、姉弟はお互いの最愛の人と一緒にいることができず、修実の方は自分から孤独の檻の中へと閉じこもってしまう。
 そしてコドクに殺されるまで坐して待つってのか。
 人として生を受けながら、人の間にいることもできずに独りであることを我慢して享受するという。精一杯の努力をしてもそんな生き方しか選べない修実の状況を久信は許せなかった。
 許せなかったから
久信は修実の両肩を掴んだ。
「――え?」
 六臂で自分を覆い隠すように体を抱いていた修実は、その上から触れてくる久信の体温に一瞬呆けた顔になり、
それによって心に虚が生まれたのか、修実の体からにじみ出るようにして瘴気が漏れ出た。
 修実の至近距離にいた久信の体に呪詛が響いてくる。
「……っ」
「あ、や、だめ――」
 久信が苦悶の声を上げ、修実が慌てて距離を置こうと、肩にある久信の手をどけようと力を込めると、それに連動するように、呪詛が目に見える形で溢れてくる。
 靄から黒い塊となって呪詛が久信をがんじがらめにしようとする。
 修実は久信を外そうとするのをやめて、体を強く絞るように六臂で掻き抱いた。
 なんとか瘴気の流出を収めた修実は、荒い息で久信に言う。
「だめよ久くん! 早く私から離れて」
 そう訴えてくる表情には余裕が一切ない。ほんの少しであろうとも気を抜くことができないほど、修実の中の蠱毒は活性化しているということだろう。
それほど際どい状況に、彼女は今立たされている。いつ修実が蠱毒を抑えきることができなくなるのか分からない。
そんな状態で彼女の周囲から彼女が気に掛ける人間が居なくなってしまえば、修実はそこを死地と定めてあっさりと死んでしまうだろう。
 ここで修実を行かせてしまうということは、彼女を死に場所へと行かせるようなものだ。
 久信は、蠱毒の影響を我慢して、修実に言う。
「俺だって、修実姉が死んだら生きていけない。だから、一つ試そう」


 修実はゆっくりと呼吸を整えるように呼吸を繰り返しながら問う。
「何、を……?」
 久信は雨に濡れて垂れてきた修実の髪を掻き上げて、瞳を見つめて言った。
「俺がその毒を食って支配する」
 再び修実の顔に驚きの虚が浮かぶ。
今度は瘴気が漏れ出ないように早々に復帰した修実は、久信になんらかの反応を返そうとして、それよりも早く昌夫が声を荒げた。
「ば――ッ、馬鹿野郎! 方法ってのはそれか?!
 お前、瘴気に中てられただけでぶっ倒れただろうが! 毒の大元を飲んだりなんかしたら死ぬだけだぞ?!」
 久信の背後から重ねられる怒声に、修実が頷く。
 修実が体内に収めている蠱毒という毒は、特殊な容器を用いて、忌まわしい特殊な手法を重ねて作り出されるものであり、
人がその身の内に収めておくような類の代物ではない。毒としての蠱毒は、容器に厳重な封を重ねて秘蔵しておくことでようやく安全を確保できる劇物だ。
 しかし、この蠱毒という存在は単純に毒である以前に、都市伝説でもある。故に、
「もし、この蠱毒と契約することができれば、蠱毒は制御される。そうなれば瘴気が無差別にまき散らされることはなくなって、修実姉も独りでいる必要もなくなる。
 俺がこの毒を平らげることさえできれば、修実姉はコドクから解放される。だから、蠱毒を俺が飲み干す」
 そう宣言する久信に、修実は首を横に振ってみせた。
「無茶よ。久くんが蠱毒に飲み込まれるだけだわ!」
 久信はいや、と首を横に振った。
「修実姉の体の中に在って修実姉を害さない毒なら、同じ血が流れていて、
なおかつ契約している都市伝説も同じ、同族の俺に対しても多少は毒性が低いかもしれないだろ」
 とはいっても、一度瘴気に冒された身としては、素直に蠱毒を飲めばその毒性に耐え切れずに死んでしまうだろうことは理解している。
 だが、蠱毒は単なる毒ではない。それが都市伝説である以上、蠱毒という都市伝説が持つルールに則って制圧する方法もある。
「蠱毒に入って、中にいる全ての生き物の上に立てば蠱毒を制することができるかもしれない」
 そうすることができれば、蠱毒をシステム面から制圧することができる。
 しかし、それを成功させるためには蠱毒というシステムに正面から挑まなければならないということを意味している。
「そんなことをして、もし失敗してしまったら久くんが死んじゃう!
 私、久くんがいない世界で生きているなんて、たとえ短い間だけだったとしても嫌……!」
 拒否を示す修実に、久信は穏やかともいえる表情で言った。
「その時は、蠱毒の中で死んだ俺は蠱毒の中の毒の一片として、修実姉と一緒に居られるよ。
 そうなったら、一緒に[ピーーー]る」
 修実が息を呑む。
「修実姉を独りにはしないよ。その時は一緒に死のう?」
 ゆっくりと伺うように訊ねる久信に、修実も恐る恐る訊ねた。
「……いいの?」
「当然」
 久信は晴れやかな笑顔で頷いた。
「修実姉がいない世界なんて生きていてもしょうがないし、修実姉と一緒に逝けるならそれもまたよし、だ」
 修実はその告白に首を横に振って、自身を更にきつく、爪が肉に食い込むほどに抱いて戒める。
 そんな抵抗を数秒行い、しかし最後には涙をこぼしながら呟いた。
「……ごめんなさい、ありがとう。久くん」
 久信は修実から得られた返事に、ほっと胸を撫で下ろした。
「よかった。こっちこそ、ありがとう」
 これで修実からの了承はとれた。久信としてはどう転んでも修実の傍にいられる形になり、最悪の結果にはならない。
 自分たちが取るべき道を決めた二人の様子を見て、昌夫が「ああもうわかった!」と半ば自棄で言う。
「決まったんならさっさとやれよもう。墓ぐらいは作ってやる。お前ら憑き物筋の中でも相当ぶっ飛んでるな、くそ、もう付き合うのも疲れる」

「言葉を選んでくれてありがとうね」
 修実がどうしたものかという表情で応じた。
「蛇の性だ。これで終わりにするからもう少しだけ付き合ってくれ」
 久信が臆面もなく言い切る。それを聞いた修実の表情に、ようやく笑みに近い表情が浮かんだ。
「ああもう勝手にやれ」
 渋面で言って、昌夫は山の中の手近な木の下に入った。
「でもな、お前らの監視役として言わせてもらうが、勝手に命投げ捨てんなよ? 特に久、お前だ。
どう転んだって自分は損しないからいいやなんて考えてやがったら切れるぞ」
「お、おう……」
 久信が目を逸らしつつ頷く。
 昌夫は念押しするように一言添えた。
「やるなら、成功する心積もりで、やれ」
「分かったよ」
 一回ぞんざいに答えて、久信はもう一度、今度はいくらか真剣に答えた。
「毒を、飲み干してやるさ」
 ……そう、そのために、修実姉を助け出すだけの力が欲しい。
 修実を縛り、煩わせるものを払うだけの力が。
 力を望む久信の眼前、修実が自分を締め上げる力を抜いた。
 彼女の身から瘴気が立ち上り、久信を冒し始める。
「…………っ」
 修実の肩を掴む両手から握力が抜けて、雨が当たる微細な衝撃だけで膝を屈しそうになる。
 崩れそうになる久信の体に温かいものが巻きついた。
 修実の六つの腕が、自身ではなく、久信を包んで優しい力で抱きとめていた。
 温もりの正体に久信が気付くと、更にもう一本、温もりが追加された。
 現在の修実の下半身。姦姦蛇螺としての、特徴的な蛇身だった。
 新たに加わった蛇身は、人だったころにはなかった器官のため力加減に慣れていないのか、久信を締め付ける力が若干強い。
 感じる痛みに苦笑の形に口元を曲げる久信の視界が黒く染まった。
 蠱毒の瘴気が修実と久信の周りに充満しているのだ。昌夫の位置から見た二人は黒い渦の中に閉じ込められている形になっているだろう。
 瘴気が凝りすぎたのか、やがて雨が二人の体に届かなくなった。
 それでもなお雨に打たれているかのように大量の脂汗を流しながら、消えゆく意識で久信はこれから挑むモノに宣戦を布告した。
 ――さあ、新しい生き物だぞ。勝負しようか。
   お前にとっての宿主と、俺にとっての最愛の人を賭けて。

死ねるが引っかかったあああああ!
見逃してたな。ちょっとくやしい
ともあれ、そろそろ終わりも近いですね

>>969
>こういうの好きだわ
ありがとうございますー

>>970
>金がどうなるか分かってても振り込むばあちゃんにちょっと切なさを感じました
ある意味「偽者かも」と思っててもつい振り込んでしまう被害者の心理と似通っているかも知れません。実は淋しいのかもね。

これだと新スレ990越えてからでも大丈夫そうか?

ではまあ使い終わったらスレ変えましょうかね
コレ入れて後二回で私のは終わりですし


 意識が一瞬の暗転から覚めた時、久信は町のど真ん中に立っていた。
「……雨も止んでる……修実姉? 昌夫?」
 近くに居たはずの姉と友人の名を呼んでみるが、二人とも近くには居ないようで、返事の声は来ない。
 ……ああくそ。ってかここどこだよ?
 人造の建造物がほとんどなくなっていた、先程までの場所とは明らかに違う。
大都市とまではいえないが、人が生活するための施設を集めた、地方都市の中心部のような場所であるということが分かる。
 ただ、違和感があるとしたら、これだけ町の施設を集めているにもかかわらず、肝心の人間の気配が周りからは一切しないということ。
そしてもう一つ、景色が、まるでそういう色の霧でも出ているかのように、赤錆色に染まっているということだ。
 赤錆色の町を改めて眺め、久信は首を傾げた。
 ……どこかで見たことがある?
 その景色はなんとなく既視感を感じるようなものだった。とはいっても、似たような景色はどこの地方都市でも見ることができる。
どこかの町の風景と目の前の景色の記憶が混同してしまっているのだろうと自分の中で結論し、
久信は手近なところから自分が今いる場所について情報を収集しようと、目の前のビルに入ろうとした。
その過程で、自分の体の感覚が先程までと大きく違うことに気付く。
 ……お、体が軽い。
 目が覚めてからずっと久信の体にこびりついていた、瘴気に中てられた後遺症の、あの引きずるような体の重さがなくなっている。
 よく確認してみれば、雨が止んでいるだけではなく、その雨で濡れていたはずの久信自身も全く濡れていない。
 周囲の状況ががらりと変化したことや、自分の体が先程までの所々疲労していた状態から普段の状態にまで戻っていることを受けて、
久信は自分が今、どのような状態にあるのか当たりを付けた。
「そうか、一瞬気を失ったと思った瞬間に精神の方だけこの異界に引きずり込まれたんだな。
精神だけ移動したから、肉体的な疲れは全部消えたってところか……精神だけでこんなところまで引きずりこまれたってことは、
実際の俺の体の方は……たぶんもう蠱毒の瘴気で瀕死にまで追い込まれてるってとこだろうな」
 で、あるならば、久信が居るこの異界は蠱毒という都市伝説そのものの中。ということになる。
 そう考えると、この空間も、蠱毒とその宿主である修実の精神を媒介にして形作られたものであると予想できる。
 久信はそこまで考えて、先程この町を見た時に感じた既視感の正体に気付いた。
「そうか、この町は……」
 この赤錆色の町は、修実を探しに訪れた時に見た、結界に包まれて蠱毒が生まれて、
それらの結果として荒廃した町を荒廃する以前に戻したような光景なのだ。
 ここは、修実が滅ぼした町の再現だった。
 ならば、この町を覆っている赤い霧のようなものの正体も察しがつく。

 ……これは瘴気か。
 蠱毒の壺の中なのだ。中の空気が瘴気に染まっていてもなんの不思議もない。
 全ての生き物にとって有毒であるはずの空気の中で呼吸していても久信自身に瘴気に中てられている感じがしないのは、
久信が蠱毒の毒気に対する耐性を得たから、というわけではないだろう。久信もそこまで楽観視はしていない。
 ……この空気の中で特に害を感じていないということは、たぶん、俺自身が蠱毒になりかけているってことだろうな。
 修実と向き合い、彼女の体から溢れる瘴気を体に受けたため、肉体はすでに蠱毒に冒されている。
精神のほうも蠱毒の瘴気に飲み込まれしてまうのは時間の問題だ。
「あんまりのんびりしている暇はないな」
 蠱毒に飲み込まれてしまったら、修実と一緒に人の間で暮らすことはできなくなってしまう。
 久信は蛇を生み出して周囲に侍らせる。
 こうして蛇神憑きとしての能力を精神だけ引っ張られてきているような状況でも扱えるということは、この能力は血だけではなく、
その血が流れる久信の精神とも結びついているということだろう。都市伝説が結ぶ契約というのは精神――魂で結ぶものなのかもしれない。
 ……だとしたら、この蠱毒は町の生き物の恨みの魂と結びついてるってことになるのか。
 修実の体を異形化している蠱毒は、この町の住人や都市伝説を糧にして形成された。
 彼らの魂の記憶を材料にして作られたものがあの町を模したこの空間だとしたら、ここは肉体が滅びた後の残骸によって作られた毒の坩堝であり――
「そしてコドクに放り込まれて死ぬに[ピーーー]ない亡者が仲間を引き込もうとしている巣穴でもあるってわけだ」
 呟く久信の周りには、いくつもの人の残骸の姿があった。
 久信は先ほど入ろうとしていたビルから出てきた、一番近くにいる亡者を見た。
 死に際がそのような状況だったのか、体がただれている人間が足を引きづりながら、虚ろな目で歩いて来る。
それと同じような状態になっている亡者が周囲の建物から次々と這い出してくる。まともな人間の形を保っているものはどこにも居ない。
皆、どこかに欠損やあるいは増殖を抱えた異様な体をしている。
「蠱毒の中で生存競争に負けるとこうなるってことだな」
 久信は生み出しておいた蛇を手近の一体に集らせた。
 機械的な動きで久信に向かって手を振り上げていた亡者は十匹からなる蛇に集られ、地面に引き倒された。
 もがくように手足を動かす亡者の首に蛇の一匹が絡みつき、そのまま絞め殺しにかかる。
 亡者は苦しむような素振りで首に指を突き立てて蛇を払おうとして、それが成功する前に虚ろな目を澱ませて事切れた。
「生きた人間を模したおかげか、元々人間を材料に使ってるからか……ともかく、絞め[ピーーー]という方法が有効なのは助かるな」
 周囲に放った蛇が次々に亡者へと集る。
 幾匹かは毒の牙を突き立てているが、それによって亡者の動きが止まる気配はない。
どうやら蠱毒の中では蛇の毒などは大した効き目をもたないらしい。
 周囲からは、蠱毒の中に放り込また異物に気付いたのか、追加で次々と亡者が現れる。
 蛇が次々と放たれていくが、亡者には恐怖心というものが存在しないのか、歩みを止める気配を見せずに久信に向かって突き進んで来る。
このままでは久信は数に押されて亡者の波に飲み込まれてしまうだろう。
 ここからどう動いたものだろうかと考える久信の傍らで、変化が起こった。
 最初に倒した亡者が徐々に赤い光に包まれて分解されていくのだ。
 十秒ほどで完全に分解された亡者は、赤錆色の砂塵のようになって、空に飛んでいった。

 それに続くような形で、倒した亡者たちが順番に分解されて、同じように空に飛んでいく。
 分解された亡者たちが飛んでいく方向は一定だ。
そこでは建物越しでよく見えないが、どうも赤錆色の空気の色が濃霧のようにより濃くなっているようだ。
 赤錆色の瘴気が濃くなっているということは、それだけ毒気が強く集中しているということでもある。
この町の中、特に行く当てがない久信としては、これは初めて見つけることができた指標だ。
 ……分解された亡者が回収されるように飛んで行ったということは、あの瘴気が集まっている場所は、亡者の巣ないし、この亡者を操るモノが居るはず……。
 そしてそれはイコール蠱毒の本体そのものである可能性が高い。
 それを確認しに行くのは当然危険を伴う行為ではあるが、このままここで止まっていてもやがては蠱毒に飲まれるか、亡者に押し切られるだけだ。
 行けば、少なくとも分解された亡者がその後どのように処理されているのかを確認することができる。
 ……なら、行った方が得だな。
 久信は、次々と迫る亡者を避けるようにビルに侵入し、建物を利用しながら町中での移動を開始した。
 奇怪な状態になった人間や都市伝説を幾人か絞め殺し、瘴気の霧が特に集中している場所を目指して移動する。
 進むごとに瘴気は濃くなり、途中からはどこが瘴気が集中している部分なのかがよく分からなくなったが、
亡者を倒し、それが分解されてどこかに飛んでいくのを見失うまで追う、という流れを何度か繰り返す。
 そうやって無理やり進んで行くと、やがて亡者が多く湧いてくる方向が掴めるようになった。
 それは、分解された亡者たちが飛んでいく方向と同じだった。
 ……縊った亡者がよみがえって来てるのか……?
 もしそうだとしたら、下手をしたらこの空間の中では亡者は無尽蔵に湧き出てくるということになる。
そうなれば亡者と戦い続けるだけでは勝ち目は無い。
 大元を叩かない限りは久信に勝ちはないということだ。
 ……気付くのが下手に体力を削った後じゃなくてよかった。
 亡者がやってくる方向は掴めている。そこまで行けば何らかの情報が手に入るだろう。
 久信は一抹の焦りを感じながら、この町で一番瘴気が濃く立ち込めている場所に辿り着いた。
 そこは、地方都市の駅前にあるロータリーだった。
 バスやタクシーのような乗り物は一切ない。ただ亡者の群れがのそのそと蠢いている空き地となっている空間。その中央に、久信は亡者以外の影を見た。
 目を凝らしてみると、久信の足元に侍る蛇たちにまとわりつかれて縊り殺された亡者は分解された後、
赤い砂礫のような瘴気の断片になってロータリーの中央に据え置かれた壺の中に吸い込まれている。
 それと交換するように、壺の中からは瘴気が塊となって溢れ出して滞空し、
数秒空中でこねまわされるように蠢いた後に、亡者としての歪な人型を手に入れてのそりのそりと歩きはじめた。
 遠目なため若干見づらいが、壺はおそらく成人男性の膝くらいまでの高さがある。
口が広くなっており、梅干しでも入っていそうな壺だ。それこそが蠱毒の本体だろう。
 そう判断する材料は亡者の動きだけではない。その場には亡者以外の影がもう1つあったのだ。
 それは壺を包むようにしている女性だった。

 包む、と言っても、実際に腕や脚でしっかりと抱え込まれているわけではない。その女性には壺を包み込むための腕や脚が無かったのだ。
 彼女の肩は、仮に彼女に腕がまだあったなら、その腕でしっかりと壺を抱いていただろうと思わせる動きをしていた。
 久信は彼女と壺の位置関係を見て舌打ちする。
「遠くからあの壺を割ってみるってこともできないか」
 物を投げつけるには、女性の位置が拙い。
 直接近づくしか方法はないと腹を括って、久信は近くに寄っていた亡者を蛇で締め上げた。
 亡者の姿は、当初襲って来ていたものからその傾向を若干変化させていた。
 これまでは人間を材料にしているためか、人間の造形から大きく離れた亡者はほとんど現れなかった。
しかし、今久信を襲って来ている亡者は、足をクモのように八本持ち、腕はなく、胴体から頭にかけて無数の目玉を生やした異形だった。
 完全に人の造形を無視しており、これまで通り首を締め上げても首周辺の目玉から涙のように黒い汚物が垂れ流されるだけで、[ピーーー]ことができない。
 牙を突き立てて毒を回そうとすると、逆に蛇の方が毒殺されてしまう。
一体の異形に対して蛇を十数匹けしかけて全ての目を潰して体を引きちぎらせることでようやく異形を[ピーーー]ことに成功する。
 蠱毒が差し向けてくる亡者が、久信の戦い方に対応してきていた。
 ……おいおい、この亡者ども、自由に形をいじれたりするのかよ。
 久信の攻撃パターンを解析して、攻撃がききづらいような亡者を作り出しているのかもしれない。
 時間をかければかけるだけ、久信自身が蠱毒に飲みこまれる危険が増え、また亡者もより殺しづらくなる仕組みだ。
 ならばこれ以上手をこまねいているわけにはいかない。目標はもう目に見えているのだ。
 久信は急ぎ、壺に向かって駆け出した。
 ロータリーは壁にするような建物もなく、寄ってくる亡者は力づくでどうにかするしかない。
 蛇を常に生み出し続けながら、なかなか近付けないことに業を煮やしていると、
それまで一心に壺を抱える動作をしていた女性が、久信の接近にやっと気付いたかのように顔を上げた。
 彼女は久信の姿を目で確認すると、壺の蓋を塞ぐように、体を前に倒した。
 一応は蓋をされた壺だが、分解された亡者は彼女の背をすり抜けて壺に戻り、壺から溢れる瘴気もその量を変化させることはない。
 意味は無くても諦めきれないかのように蓋を体で塞ぐ彼女に、久信は声をかけた。
「修実姉!」
 名を呼ばれた彼女――修実は首だけを動かして久信に顔を向ける。
「久くん。こんな所にまで来てくれたのね」
 答えた瞬間。壺の中から、赤錆色をした瘴気とは色合いが違う、黒い瘴気が流れ出た。
「――え?」
 修実が目を見開いてその瘴気を眺める。黒い瘴気は赤い空気の中で細長い、
十数匹の蛇の形になって亡者の隙間を縫うようにして、機敏な動きで久信に這い寄った。
「――っ、人型よりもこっちの方が俺を[ピーーー]のに都合がいいってか?!」
 久信は自分の蛇で瘴気の蛇を喰らい合わせた。
 蛇の動きを参考にしたのか、捻じ切った亡者の体がその部位だけで這い寄る動きを見せ始める。
「ずいぶんと自由に動くじゃねえか!」
 それらを食い止めるために蛇を使役する。ここで亡者の波が久信の処理能力の限界に達した。
「今、そっちに行くからな! 修実姉!」
 新たに生み出した蛇を絡み合わせ、一本のロープのようにして、久信はロータリー中央近くの街灯に巻き付けた。
 蛇に引っ張られることによって体を宙に浮かせ、振り子のような動きで亡者の頭越しに壺と修実がいる所まで強引に移動する。
 転がるようにして着地した久信は、修実の体を掴んで壺から引きはがした。

「久くん……」
 脚や腕で体を支えることができず、地面に転がる状態になった修実に悪いと思いながらも、手を貸すよりも先に、久信にはやる事があった。
「修実姉、これからこの壺ぶっ壊す。危ないから離れててくれ」
 そう言いながら、久信は壺を修実から遠くへと蹴り飛ばそうと足を思いっきり振りかぶって蹴りをぶつけようとする。
 蹴り脚が壺に激突する瞬間、壺の中から白い腕が飛びだしてきて脚を掴み止めた。
 まとわりついた壺は足が振り抜かれた後もそのまま脚に纏わりついている。
「そんなにがっつかなくてもこっちから行ってやるよ」
 久信は脚にまとわりついている腕に爪を立てて強引に引きはがして、壺本体を自分の手で抱えた。
 壺の中をのぞき込むようにして、壺の奥へと声を張り上げる。
「さあ! ここまで来たぞ! 蠱毒の澱を俺に見せろ!」
 久信の声に応じて、見た目からはそんなに深いはずがないのに上から覗いただけでは底がいっこうに見透かせない、
不気味な深さを持つ壺から黒い蛇が間欠泉のような勢いで湧き出した。
 湧き出した蛇は久信の全身にとびかかって巻き付いては締め付ける。
 まるで久信をなにがなんでも離さないとでもいいたげな膨大で強力な締め付けに、
体をバラバラに捻じ切られそうなになりながらも久信は吠えた。
「修実姉は渡さない。勝負だ蠱毒!」
 次の瞬間。
 久信は壺の外の肉体も、そして今、ここにある精神すらも、蠱毒の壺に捕えられた。


修実は久信の無鉄砲なところにキュンとくるだめんず症候群
そのような感じで、後一話、おつきあいくださいませ

コドクの人乙ですー
いよいよクライマックスですな
そしてイイ女がだめんずなのはよくあることだ

コドクの人乙ですー
いよいよクライマックスですな
そしてイイ女がだめんずなのはよくあることだ

>>992
ありがとうございます。
では、最後一話、行かせていただきます


 自分の体がある、という感覚すら曖昧なまま、久信は粘性の水の中を漂っているような感覚をおぼろげに得ていた。
意識はかろうじて、湧き出した蠱毒の毒によって今のような状態に追い込まれてしまったということを覚えている。
 ……くそ、毒そのものよりも、この纏わりついてくる呪いが邪魔くさい。
 ともすると、ものを考えることすらできなくなりそうな異常な不快感が体にまとわりついて離れない。
 蠱毒は新たに放り込まれた蠱毒の礎を逃さないように、次々と体に腕や蛇が絡みついては爪や牙を突き立てるように久信の中に侵入してくる。
 久信が思っていた以上に、蠱毒の呪詛が強力に久信を侵しているのを感じる。
蠱毒の本質が毒ではなく、呪詛にあるということを身をもって思い知らされる気分で、
自分の意識を蠱毒に塗りつぶされるのを防ぐために、ひたすら思考を回転させる。
 纏わりついてくる腕や蛇は時間が経つごとに増加していき、久信にはもう自分が立っているはずの地面や手に持っているはずの壺の感触すらもなくなってしまった。
 五感はほとんどが使い物にならなくなっており、何とか死守していた自分の内側に対する感覚も怪しくなってくる。
 徐々に茫洋としてくる意識は、何故自分がわざわざ蠱毒の澱を体内に入れてまで力を欲するのかを考える。
 ……俺は、なんでこんなにしてまでこの毒を、力を欲しがったんだっけ……?
 そもそも、久信が力を欲したのは、力によって周囲から孤立してしまった姉を独りにしないため――彼女を捕える力という名の孤独の檻へと一緒に入るためだった。
 既に持ってしまっている力はどうしようもない。だから、同じだけの力を持って、姉と同じ所に行けるようになろうとしたのだ。
 そして、久信は力を欲し、自身の力を磨き、それでも届くことのない姉の力に焦り、挙句勝てる見込みもなさそうな相手にも立ち向かった。
 地力が違うのだということを郭から身をもって教えられた久信は、自分が持つ力の底上げをしようとして、今はこうして毒と喰らい合いをしている。
 ここで毒を喰らってその毒を自分の力の足しにすることができれば、修実と離れることもなくて済むのだ。
 だから久信はこの毒の力を身に着けることだけに全力を傾け、成功すれば、彼の望むものが手に入る。
 この方法だけが、彼の悲願を叶える唯一の――
 ……いや、違う。
 全ての感覚が曖昧になった中、自分自身を見つめてひたすら思考を回転させることによって自分自身をかろうじて保っていた久信は、
自問をひたすら深め、初めてこれまでたどり着いたことのない疑問にたどり着いた。
 ……ああ、そうだ。俺にとって、力は手段であって、目的じゃ、ない。
 それは決まり切っていた思考の順路に初めて疑問点を付けた。そんな瞬間だった。
 久信にとって最大の目的は最愛の人と一緒に居ること、ただそれだけだ。
 彼は修実とずっと一緒に居たかったのだ。彼女が離れて行こうとするどの時も。
 そしてその目的は久信に力さえあれば叶えられるような、そんな目的だったから、
だから隣にいることができるだけの、孤独の檻に入ることができるだけの力を欲した。
 力、というのは目的を達成するために絶対に必要なものではない。修実を追う立場にあった久信にはその事が見えなくなっていた。
 ……修実姉は、ずっと別の方法で一緒に居られるようにしていてくれたのに。
 修実は溢れる力を完全に支配下に置くという手段で人の間に居られるように行動していたのに、そのことすら見えなくなっていたのだ。

 姉は、結局自分が放り込まれていた組織の中でその手段をほぼ完ぺきに完成させた。
最後には暴走してしまったが、その後も久信のところまで戻ってきてくれた。
 ただ、今はコドクの中で溜まった毒が修実に彼女が望まない力を与えて、その力が彼女を苦しめている。
 現在修実を苦しめているコドクを横合いからかっさらって食いつぶそうとした久信は、情けなくも取り込まれる寸前にまできている。
 いつの間にか手段が目的にすり替わってしまい、身の丈に合わない力を求めることに固執した結果がこれだ。
 一緒に居るために必要な選択は、久信が蠱毒を喰らって強くなることでも、心中をすることでもない。
 ……今思えば、家の両親は修実姉が自分で力を制御できるようになるって信じてたんだろうな。
だから俺が自分の力を磨くことに必死になってる事に気付いていても、目的と手段を取り違えてるなんて教えなかったんだ。
世継ぎが自分の力を磨く事自体は好ましいことだからって。
 だとしたら文句の一つでも言ってやらなければならない。苦笑気味にそう思い、久信はここにきてもう1つの手段に辿り着いた。
 かつて両親が修実に出来るように望んだことと、修実が成すことができる寸前にまで漕ぎつけていたことと同じことをすればいい。
 すなわち、彼女の中にある大きな力を制御する、ということだ。
 それを行うために取れる手段は、力の源を奪い取って他の誰かに肩代わりさせることではない。
 暴れる毒は1人の身にはあまりにも重すぎる。
 だから、
 二人で分かち合えばいい。
 制御が利かない力を持て余す者はいつか必ず破綻を迎える。
 一時は強引に力を抑えこんだ修実が今こうして死の道しか選べなくなっているようにだ。
 人の間で生きていこうとするのなら、力を管理し、自分が不用意に他人を傷つけないようにしなければならない。
 久信のやりかたでは力を持て余す者が別に1人できるだけ、閉じた関係の中でやがて朽ちるしかなかった。
一方、修実が選択するしかなかった方法は最低でも本人が死ぬしかない方法だった。
 久信は視野が狭くなっていて、修実は長い間独りであったせいで他の誰かを考慮に入れた思考ができなかった。
 ……それじゃあだめなんだ。もう一度、修実姉と会って話をしないと。このまま間違ってしまう。
 これまでの自分たちの考えに否定を突き付ける。
 それに反応するように、久信を侵す毒がより勢いを増して襲い掛かってきた。
 そのせいだろうか、久信はこの毒のもう一つの本質に気付いた。
 蠱毒は契約者もおらず、制御もできてはいないが、この毒の頂点に立っているのは間違いなく修実なのだ。
蠱毒の本質とは呪詛にあり、呪いとは人の想いによってその力を発揮する。
 この蠱毒は、修実本人が意識しないところで、彼女の願望に従って毒を溢れさせているのではないだろうか。
 そう考えることができる要素はいくらかある。
 こうして蠱毒の中に飛び込んだ久信を捕えて引き込み取り込もうとする蠱毒は、言い換えれば久信を逃がさないように、離さないようにしているということだ。
 この毒の頂点にある者は、久信に離れて欲しくないと思ってくれているということでもあるのだ。
 ならば、久信がすべきなのはこの纏わりついてくる毒を引き剥がそうともがくのでも、屈服させてやろうと真っ向から力をふるうことでもない。

 抱きしめて、離れることはないと伝えてやること。
 これは修実の無意識が抱く執着心の表れだ。
 孤独であることを受け容れていたかのように見えた修実が、
唯一手放すことを拒んで自分の中に取り込んでしまいたいと思うほどに執着を見せる他人。それが久信だ。
 蠱毒は、自分たちの頂点が無意識に下した指令に従い、近くに寄って来た格好の標的である久信を取り込もうとして、
まるで誘うかのように亡者の群れをばらまいて壺の場所を教えたのだ。
 久信には、毒を通して修実が縋ってくるのが分かるようだった。
 あんなに力を持っている修実が、彼女と比べて大した力を持っていない久信に縋り付いていることに、
内心驚きのような、こそばゆいような感情を覚える。
 修実が言っていた、久信が居なければ生きていけないという言葉が本心からのものであったと、ようやく実感として理解できた。
 これまで、彼女にとって自分などは家族として傍に置いておければいい嗜好品のようなものだと心のどこかで冷めた考えを持っていたのだ。
それだけ、彼女の圧倒的な力は他の一切を必用としないように見えていたのだ。
 ……理解できた気になっていたのに、俺は修実姉の孤独を本当のところは理解できてなかったってわけだ。
 修実の心の深層に蠱毒越しに触れた今。久信は違えることなく、彼女の孤独を理解した。
 自分を、あるいは執着するそれ自体を壊してでも一緒に居たいという想い。
 どこか破綻しているその考えに、しかし彼女は身を委ねるしかなかったのだ。
 それ以外の方法は、ずっと独りであることを強要され続けた彼女には思い付けもしなかったのだろう。
 一緒に人の間で生きていくためには、これまでとは別の方法をとらなければならない。
 その方法については、久信にはもう半ば分かっている。
 そして、それを行うためには修実の協力が必要不可欠だ。
 久信はその方法を示しに行った。


    @

 久信は、壺の中から転がり出ていた。
 どう考えても自分の頭すら入りそうにない、横倒しになった壺の入り口に、あの中にどうやって入っていたのかは分からない。
ただ、確かにそこから転がり出てきたのだということは、久信の脚に一匹だけ絡みついている黒い蛇の尾の先が壺の中に伸びているのを見ればわかる。
 手で外すと、蛇は底を見透かすことができない壺の奥へと消えた。
 顔を上げると、四肢を無くした修実が、意外なものを見るような目で久信を見上げていた。
「毒に飲まれなかったんだね」
 事実を確認するように呟く修実に、久信は頷きを返した。
「そうだよ。自分と修実姉の間違いに気付いたからね。それを今から教えるよ」
 修実は薄く笑う。
「これまでと違う方法……。それはね、私に言ってもだめだよ」
 久信の背後で壺がひとりでに直立し直した。
 その物音に気付いた久信が振り返ると、壺の中からは久信の身の丈を遥かに上回る巨大な蛇が這いだしてきた。
 蛇は滑るような動きで口を開いて修実を丸呑みにしようとする。
 久信は修実を抱きしめると、蛇の進路からかろうじて逃れた。
 地面に転がりつつ、蛇の動向に目を光らせている久信に、腕の中の修実が囁く。
「久くん。もう逃げられないよ。ねえ、私を放さないで、私の中で一緒に居よう?」
 どこか甘い響きを持つ囁きに、しかし久信は首を横に振って応えた。
「そうはいかない。俺たちはこの檻をぶち壊すんだから。このコドクの檻の外で俺たちは生きていくんだから」
「毒を取り込んでくれるの? でも、久くんには無理だよ。この蠱毒に、ほら、もう呑まれそうじゃない」
 修実の視線が向く先。大蛇は長大な体をUターンして正面に久信を捉えていた。
 正面にある爬虫類の目を直視して、久信は自嘲気味に笑った。
「ああ、俺はどうあがいても弱いから。だから、このコドクを全て引き受けるなんて大それたことはとてもできない」
 久信よりもはるかに都市伝説を扱う能力が高い修実でも収めきれない呪詛だ。久信1人で抱え込む事は逆立ちしたってできはしない。
「でも、独りで抱え込むには重すぎるこのコドクの荷物を一緒に持つことくらいは、俺でもできるんだ」
 蛇はその全身から怨念をまき散らしながら久信に迫った。口を開く蛇から目を逸らさないまま、彼は呼びかけた。
「一緒にこの毒を喰らっていこう。大丈夫。俺だって少しは強くなったから。修実姉を支えられる!
 だから、独りで毒を抱え込んで居なくなってしまおうなんて絶対に許さない! 心中だって却下だ! 俺たちは生きてずっと一緒にいるんだから!」
 言葉が吐き出された先。巨大な口を開けて迫っていた蛇が、久信の目と鼻の先で止まり、黒い瘴気を全身から流しだすように放出し始めた。
 瘴気が流れ出すごとに蛇の全身は縮んでいく。その光景を見守る久信の前で、やがて頭があった部分だけを残して瘴気が流れきった。
 最後に残された部分は、蛇の形をしてはいなかった。先程の大蛇から考えれば目玉一個分の大きさしか残らなかったそれは、まるでダルマのようだった。
「久くん……」
 それは、四肢を失った修実だった。


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 地面に落ちてこちらを見上げる修実に、久信は笑みで頷いた。
「なんていうか、さっきぶり、修実姉」
 その言葉を聞いて、久信の腕の中に抱えられていた修実が口を開く。
「あーあ、せっかくあと少しでこの人を私の物にできたのに」
 久信の腕の中の修実からは、先程の大蛇と同じように、黒い瘴気が流れ出していた。
 久信の腕の中の修実からは数秒足らずで人の形が失われ、久信と、
地面に居る修実から逃れるように少し離れた位置で再び瘴気の塊として凝り出した。
「残念。あなたは私の正体に気付いていたの? 久くん?」
 凝り、再び形を成した瘴気の塊は、修実の顔に六臂を備えていた。
 姦姦蛇螺の上半身だ。
 下半身にあたる蛇身の部分は、上半身が形を成した今も、周囲から瘴気を集めては形作っている。
 この蠱毒の中にある全ての瘴気を集める気なのだろう。
 徐々に大きくなっていく姦姦蛇螺の体を見ながら、久信は首を傾げた。
「さあ、なんとなく、あの壺の中に捕まった時の蛇や腕の感じに亡者とは違う明らかな感情の動きを感じて、そこでまず違和感を感じて。
で、壺から這い出し後、あの大蛇がまず一番最初に修実姉に擬態したお前を狙ったあたりで確信したかな」
「惜しいなあ。あと少しだったのに。その子か私の毒に冒されれば楽になれたのに。
 私が欲を出して獲物を奪うような真似をしなければよかったのかしら? その子はどうせ取り込むなら自分こそが――って気だったらしいから」
「そんなこと言って。さっき自分が修実姉じゃないって知らせるようなこと言ってたじゃないか」
 久信が壺から出てきた時の台詞もそうだが、何より自分たちの間違いに気付いた久信の言葉に対して私に言ってもだめ、
と言ったことは、彼女が自分の正体――すなわち蠱毒の澱であることを明かしているようなものだ。
「私に言っても無意味っていう事実をただ伝えただけよ」
 姦姦蛇螺はそっけなく言って先程の大蛇をしのぐほどの大きさになった体をくねらせる。
 久信は地面から全てを受け容れた表情で成り行きを見守っていた本物の修実を正面から抱き上げた。

 久信と目を合わせるのを避けるように俯き加減になった修実に、久信は優しく言う。
「修実姉の精神……でいいんだよね? 俺に付き合って修実姉もここに来てくれてたんだね」
「ごめんなさい。この毒に挑んだら久くんは飲まれて、久くんであることができなくなると思ったから、私が自分でできるだけ久くんを壊さないように取り込もうって、そう思ったの」
 何度か苦しそうに呼吸を繰り返し、修実は顔を上げた。
「私の毒は、私の罪は。私が独りで飲み込んで消えていくって決めていたのに……っ。
 久くんが、あんまり私なんかに優しいから。私独りで逝く決心が揺らいでしまったの……。ずっと独りでいられると思ってたのに……」
 言葉に詰まりながら修実は言う。その手の付け根がおずおずとこちらに差し出されるように動く。
 無自覚の動きだ。彼女は誰かに助けを求めるという、当たり前のことをする権利が自分にもあるということが未だに定着していない。
 だが、人として生まれた彼女の本能は誰かに助けを求め続けていたはずなのだ。
 久信は、かつてはその手が伸ばされている可能性があることすら、考えもしなかった。
 そして、生活の補助などを任されて、少しは頼られていると感じ、それによって少しは姉のことを理解できたと思っていた自分が自惚れていたことに改めて思い知らされる。
 再会できてからも、修実の手は伸ばされ続けていたのだろう。助けて、と。
 久信はまた気付くことができなかった。
 修実が無意識に求めた救いは与えられず、追い込まれた修実は結局独りで果てる道を選んだ。
 ……今からじゃ、遅いかもしれないけど。
 久信は、修実が求める助けを、今度こそはという思いで差し伸べにいく。
「独り独りって、そんな悲しいことを言わないでくれ」
 抱えた姉を胸元に抱き寄せる。
「家族じゃないか。一緒に暮らすって言ってたじゃないか」
 今度こそ、助けを求める見えない手を掴んで引き寄せる。そんな意志を込めて、
「何があっても、俺は、修実姉の傍に居て、二度と孤独を味わわなくていいようにするから」
 蠱毒の中にある全ての瘴気を吸収しきった姦姦蛇螺が、久信を試すように、容赦のない勢いで正面から迫る。
 迫りくるコドクノオリを見据えつつ、久信は修実に彼女のコドクを終わらせるための答えを告げた。
「一緒に契約しよう」
「いっしょ……?」
「そう。この毒を、呪詛を、怨念を、二人で飲んで、二人で背負って……そうやってこのコドクを俺たち二人で鎮めよう」
 そして、
「これからは二人で生きて行こう。
 もう二度と寂しさなんて感じなくてすむように。多くの人の間で、人間として」
 怨念の塊となった姦姦蛇螺の全身が怒涛の勢いで二人の眼前に至る。
 人と蛇をベースに、様々な生き物の呪いが集まったそれは、修実という要があって完成した、確かに修実が抱くコドクの容だった。
 それを前にして、最愛の弟と一緒に彼女は、
「私には、弱い私では独りは耐えきれないから……だから助けて、久くん。弱い私を寂しい私を、助けてください」
「うん。――遅くなってごめん」
 盤石の心を固めた二人の身に、膨大な量の怨念が、猛り狂う呪いを治め鎮める先を求めて襲い掛かった。

と、いったところで新スレの季節です


「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part10

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