「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part9 (1000)

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」とは
 2ちゃんねる - ニュー速VIPで生まれた
 都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたりそんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
 まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりと色々活動しているスレです。
 基本的に世界観は作者それぞれ、何でもあり。
 なお「都市伝説と…」の設定を使って、各作者たちによる【シェアード・ワールド・ノベル】やクロス企画などの活動も行っています。
 舞台の一例としては下記のまとめwikiを参照してください。
まとめwiki
 http://www29.atwiki.jp/legends/
まとめ(途中まで)
 http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html
避難所

http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/
■注意
 スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
 本スレとはあまりにもかけ離れた雑談は「避難所」を利用して下さい。
 作品によっては微エロ又は微グロ表現がなされていますので苦手な方はご容赦ください。
■書き手の皆さんへ
 書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップ推奨(どちらも非強制)
 物語の続きを投下する場合は最後に投下したレスへアンカー(>>xxx-xxx)をつけると読み易くなります。
 他作品と関わる作品を書く場合には、キャラ使用の許可をスレで呼びかけるといいかもしれません。
 ネタバレが嫌な方は「避難所」の雑談スレを利用する手もあります。どちらにせよ相手方の作品には十分配慮してあげて下さい。
 これから書こうとする人は、設定を気にせず書いちゃって下さい。
※重要事項
 この板では、一部の単語にフィルターがかかっています。  メール欄に半角で『saga』の入力推奨。
「書き込めません」と出た時は一度リロードして本当に書き込めなかったかどうか確かめてから改めて書き込みましょう。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1361373676

◆用語集
【都市伝説】→超常現象から伝説・神話、それにUMAや妖怪のたぐいまで含んでしまう“不思議な存在”の総称。厳密な意味の都市伝説ではありません。スレ設立当初は違ったんだけど忘れた
【契約】→都市伝説に心の力を与える代わりにすげえパワーを手に入れた人たち
【契約者】→都市伝説と契約を交わした人
【組織】→都市伝説を用いて犯罪を犯したり、人を襲う都市伝説をコロコロしちゃう都市伝説集団
【黒服】→組織の構成員のこと、色々な集団に分けられている。元人間も居れば純粋培養の黒服も居る
【No.0】→黒服集団の長、つおい。その気になれば世界を破壊するくらい楽勝な奴らばかり
【心の器】→人間が都市伝説と契約できる範囲。強大な都市伝説と契約したり、多重契約したりすると容量を喰う。器の大きさは人それぞれである。器から少しでも零れると…
【都市伝説に飲まれる】→器の限界を迎えた場合に起こる現象。消滅したり、人間を辞めて都市伝説や黒服になったりする。不老になることもある

【僕は小説が書けない 第三話「僕とジャックちゃんの微妙な距離感」】

 弟が家に来た翌朝のことである。

「おい悲喜、起きろ」

 時刻は朝六時、リビングのソファで寝ていた僕は生まれて初めて美少女に起こされるという経験をしていた。
 特に何が良いって若干つり目気味のツインテ黒髪美少女にやや乱暴に起こされているというシチュが良い。
 まず吊り目っていうのが良い。
 世間の皆様は吊り目というときついイメージを思い浮かべるかもしれないが、世の中というのはうまくできていてそういう娘に限ってデレると甘々なのだ。
 そのギャップにより生まれる萌えの小宇宙は普段ノンキしている僕ですら我を忘れてしまうほどのものである。
 さらに僕にしかデレないというプレミアム感が小市民たる俺の卑小な自尊心を高めさせる。
 しかもレモンちゃんは見た目は中学生くらいなので更にプレミア倍率ドンである。
 世間一般の中学生のガキというものは概ね僕のようなダメ人間には冷たいだけなのだがレモンちゃんは僕にこれだけいじめられても健気に朝起こしに来てくれる。
 こんなに俺に構ってくる女性はおかーちゃんくらいのものである。
 中学生のプレミア感とおかーちゃんの鬱陶しさをかけることで全てが好転するのだ。
 あとやや乱暴に起こされているってのもまた良い。
 乱暴にしちゃうがそれでも起こしに来ちゃうってところに既にツァンディレの萌芽を感じさせるではないか。
 男っぽい口調も萌えである。
 一人称こそ“私”だが彼女は意識して男性っぽくしゃべっている気配が有る。
 それは逆を言えば自分の女性である部分をどうしようもなく意識しているということであり、それはすなわち彼女に自分が女性であると意識させるようなことをしたくなりますねデュフフフフフフということなのだ。
 でも実際彼女をこうして家まで連れ込んできたものの僕は何もできないチキン野郎なのである。
 彼女は確かにあの女を殺していたが、それで萎えたわけではない。
 ナマの女の子にあれこれして好意を向けてもらうというのが僕にとってファンタジーなのである。
 僕は画面の向こうの女の子になら何度でも好きと言われたことはある。
 だが彼女らが見ているのは僕がかぶっているプロデューサーやクラスメイトといった皮なのであり僕自身ではない。
 それが僕に安心を与えてたわけだが今回はそうもいかない。
 そもそもレモンちゃんは僕のことをウザいとか言ってたのだ。
 あの時はとっさにナイフを投げて助けてくれたけどそれだってあくまでお互いの生存の為であって……
 とまあ考えていても仕方ないのでとりあえず返事することにした。
 
「やあレモンちゃん、どうしたんだい?」

「そのレモンちゃんというのをやめろ」

 睨まれた。
 やだ可愛い。

「だって名前無いんだろ? ならどう呼んだって僕の勝手じゃないか」

「くっ……とにかくやめろと言ったらやめろ!」

「……じゃあ良いよ、なんて呼べば良い?」

 彼女は明らかに「しまった」という表情を浮かべて僕から目をそらす。
 まだ考えてなかったのか。

「……ジャック?」

 安直である。

「解ったよジャックね、ジャックちゃんジャックちゃん」

「ふっふっふ、分かれば良いんだ」

 若干満足そうな顔をしているが哀れである。

「ジャックちゃん、昨日の俺と路樹の話聞いてた?」

「……悪いが、カレーを食べた後から記憶が」

「そうか、じゃあ仕方ないから話してやろう」

 僕は昨日弟から幽霊屋敷の探索を頼まれたことを彼女に話した。
 彼女は何故だか興味深そうにそれを聞いていて、全部聞き終わると僕が聞く前に

「私も行くぞ! 絶対行くからな!」

 と言い出した。

「なんでそんなやる気満々なのさ
 まあ僕も今日の内に急いで行こうとは思ってたけど」

「私のような都市伝説はそういう場所が好きなんだよ
 あんた達が温泉でのんびりするのと一緒だ」

 浴衣姿ではしゃぐジャックちゃんを妄想する。
 良いね……すごく良い。

「なんか変なこと考えてるだろ」

 この以心伝心っぷりに運命を感じちゃうのは僕だけでしょうか。

「本当にウザいしキモいし救いようがないな……」

 ジャックちゃん笑顔がひきつってらっしゃる。
 蔑まれてる! 今黒髪美少女に蔑まれてる!
 でもネットで煽られただけで二週間くらい根に持つ僕は少し傷ついてしまう。
 興奮するんだけど少し嫌な気分にもなるのだ。
 面倒くさい!

「…………」

「ど、どうしたなんか喋れよ」

「あー……うん」

 ジャックちゃんが明らかにうろたえ始める。
 
「わ、悪かった。言い過ぎた
 今日はお前にちょっと話が有ってきたんだけどそのなんていうか……私は口悪いからさ
 ここ、今回は本当にお前を傷つける気は無かったんだよ」

 声が震えている。
 どこか怯えた感じだ。
 もしかしたら都市伝説というのはメンタルが不安定なのかもしれない。
 情緒不安定で依存気味な殺人鬼少女…………

「きたあああああああああああああああああああああああああああ!」

 僕は思い切りベッドから飛び上がって彼女に飛びつく。
 若干膨らみかけの胸に顔をうずめていい匂いを胸いっぱい吸い込む。
 頬をスリスリしてそのまま床に押し倒す。

「ジャックちゃんかわいいよっひょおおおおおおおおおおおおおう!」

「いやああああああああああああ!? おいやめろ何してるんだ馬鹿ぁ!」

 派手に蹴り飛ばされた。
 ソファの上に逆戻りである。

「……愛が行き過ぎて悲しみを生むこともあるよね」

 天井を眺めてちょっとそれっぽい台詞を言ってみる。

「す、すこし優しくしたからって勘違いするな馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿!」

 ちょっと泣きそうになってるジャックちゃんかわいい。

「分かった。僕が悪かった。びっくりしただろう、ごめんな?」
 
 真面目な顔して謝ることもできないわけではないのだ。

「分かれば良い、分かれば……まったくもう」

「それで話って?」

「あ」

 この女、忘れていたらしい。
 
「忘れてたのか」

「うるさい、あんたのせいだあんたの」

 ちょっと怒ったような口調で言われるとまた押し倒したくなるのでやめてほしい。

「それで用事ってなんだ」

「私と契約しろ」

「嫌だ」

「えぇ……」

 これにはちゃんとした理由がある。

「お前さ、俺と契約したら人間の女性以外も殺せるようになっちゃうんだよね?」

「あ、ああ……
 契約には強化型の契約と限定解除型の契約が有り、私の場合は限定解除型なんだ
 限定解除型は心の力を注げば注ぐほど私の力の拡大解釈が容易くなるから戦闘においては便……」

「便利じゃ駄目なの!」

「はぁ!?」

 ジャックちゃんが戸惑ってらっしゃる。

「弱点の無い無敵の主人公とか今時流行らないでしょ!
 むしろ制限がある中でうまいこと戦っていくってのが格好良いとおもわないか?
 例えば君は初めて僕と会った時に僕を切り刻んでから川に浸して失血死させるって言ったじゃん
 能力の幅が広がればああいう創意工夫を忘れてしまって結果的に物語がつまらなくなるんだよ!
 パワーインフレもそれはそれで面白い
 それは僕だって認める
 だけどそんなんじゃあウダウダと引き伸ばしてぐだぐだと打ち切られる少年漫画みたいになるじゃないか!
 僕はそういう面白くないことは絶対に認めないぞ!」

 僕はテーブルを叩いて強硬に主張した。
 空の酒瓶も一緒にガタンと音を立てる。

「ばっかじゃないのか! あんたは本当に馬鹿だ!
 そんなこと言って殺されたりしたらどうするんだ!」

「面白ければ構わん!」

 所詮この世は一期の夢なのだから。

「くそっ……馬鹿だこいつ……」

「馬鹿で結構コケッコウ!」

 とまあそんな冗談はさておき本当に真面目なところを話すと、だ。
 契約すればこいつには俺が殺せるようになる。
 それはハッキリ言ってかなり怖い。
 確かに殺人鬼少女は萌えだ。
 黒髪ツインテール釣り目な美少女であれば尚更だ。
 だがそれだからといって彼女が我々人間と異なる理屈で動いていることには違いない。
 ならば出来る限りの警戒をしておくのが筋というものだ。
 幸いにもあの黒服たちから奪った光線銃はまだ手元に有る。
 今はまだ様子を見るべきだ。

「言っておくが契約すればあんたにもメリットが有る
 私に力を供給することであんたには私に対する命令権が手に入る
 私はあんたから力を受け取っている間は命令を断れない
 勿論無茶な命令をすればこっちから契約を切るけどね」

「面白い乗った!」

「やった!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねるジャックちゃん。
 可愛い。

「ただし代わりに条件がある」

「なに?」

「レモンちゃんって呼ばせろ!」

「やだ!」

「じゃあ契約しない!」

「ふぅ~!」

 猫のようにこちらを威嚇するジャックちゃん。
 この娘割りとポンコツなのかもしれない。

「しゃあー!」

 とりあえず対抗してみた。

「…………」

「…………」

 三秒くらいするとお互い恥ずかしくなってしまったりする。

「とりあえず、飯食おう」

「うん」

 すっかりこいつとも慣れ合ってしまっている気がする。


    ※    ※    ※


「いやー美味しかった! ごちそうさま!」

「お粗末さまでした」

 ジャックちゃんはお皿の前で手を合わせる。
 本日はチャーハンでした。
 部屋に鉄鍋が有るので作るのも楽ちんである。
 お互い落ち着いたところで先程の契約の話に戻る。
 ここらへんをハッキリさせないと契約するかどうかも決められない。
 結局面白さ最優先だけど。

「そういえばジャックちゃん、契約の時言ってた心の力ってなに?」

「うーん……なんていうか気合みたいな?
 ああやっぱ感情かな、強い感情ほど私たちの栄養になります
 私の場合は人を殺した時に出てくる感情エネルギーの爆発を吸収して生きている感じです」

「成程、契約はそれを人体から直接供給するパスを繋ぐ行為になるのかな?」

「うん、あんたみたいに頭オカシイやつほど心の力の量は多いし質も大抵良くなる
 更に強力な都市伝説と契約したり複数の都市伝説と契約する為のキャパシティもでかくなる」

「マジか」

「マジだって、私はあんたと違って嘘つかないから」

「ふむ……ところで僕は正直者だ」

「うるさいばか!バカバカバカ!」

「馬鹿とは心外だな、僕は理性は無いが知性は持っていると思ってたんだけど」

「知ったこっちゃないよ、只の人間のくせにさんざん私のこと馬鹿にするだろうが……!」

「分かった、それは悪かったよ。組織に喧嘩売っちゃった者同士仲良くしようや、な?」

「それには異存はないな
 だから戦力アップの為に契約しろ」

「うーん、ここまで引っ張っちゃったら何か面白い方法じゃないと嫌だなあ
 契約するって多分割りと重要なイベントだろう?
 ……ああ、そうだ。あの幽霊屋敷で契約しようぜ
 僕の知識だと君たちみたいなお化けって星の流れや場所を重要視するものだろう?」

「折衷案のつもりか?」

「僕は雰囲気が出て面白い
 君は契約してパワーアップ
 お互いに悪くない条件じゃあないかな?」

 ジャックちゃんは真剣な表情で考えこむ。
 僕はその間に手巻きタバコをベランダで吸っていた。
 五分ほどすると彼女は俺に声をかける。

「おい悲喜」

「なんだジャックちゃん」

「その提案に乗ってやる。本当にバカバカしくて付き合いきれないと思わなくも無いが……
 これから先お前の酔狂に延々付き合うことになるのだから、それに慣れておく」

 そこまで幽霊屋敷に興味津々なのか。

「良いだろう。そこまで君が乗ってくれるんならば文句はない
 これから僕のクルマで幽霊屋敷まで行く
 ついてこい」

 僕は棚から車のキーを取り出してマンションの部屋を出る。
 ジャックもどこか楽しげな様子で僕の後ろをピョコピョコ跳ねていた。
 かわいい。

【僕は小説が書けない 第三話「僕とジャックちゃんの微妙な距離感」 おしまい】

名前欄間違えた
でももう訂正のしようもないし良いや……

前スレで俺宛てのレスがあったから返事しようとしたら1000超えてて思わずディスプレイぶん殴りそうになった
この土日に腹癒せになんか書いてやる…覚悟しろよ……

投下乙ですのン、感想は後程


前スレ>>996
>ひとまずシャドーマンの契約者の人に上記の確認のみ行いたい
俺なら勿論Okey-Dokeyですよン
wktkしておりまする

>しかし、私は現在キッコーマンしか持っていません
ならばキッコーマンをパンツに突っ込んでタイピングすれば良い
こうすれば何の問題も無い


というのはさておき
ネット障害ねぇ、大抵は数日で何事も無かったかのように回復したりするんやけど
ルータ冷やしたりしたらどうかしら
俺も偶にあるけど、冷やしたら戻ったケースがあるので

>>16
ごめんね!
ごめんね!
でも投下あるんだねヤッター!

「HAHAHA! そこのお嬢さん! あk」
「キャー痴漢!変態!派手なマントの変質者よ!!おまわりさーん!!!」
「っちょ、警察だけは勘弁して下さい!」
「なんてね、貴方「赤マント」ね? 都市伝説だったら容赦しないわ!」
「何っ!? まさかお前は契約者……」
「ピンポーン♪ お土産に私の相棒を紹介するわ! 出ておいで!」

ゴゴゴゴゴゴ、と地面が激しく揺れ、アスファルトが罅割れる
そして罅を突き破って現れたのは、体長3.5mの

「キュピー!!!」

でっかいなんかの幼虫だった

「デカッ!キモッ!」
「あー今キモいって言ったわね! 私のシルヴィアに!」
「そんなカッコいい名前つけてんの!? いやどう見ても幼虫だし!
 てかお前気持ち悪くないのか!?」
「んな訳ないでしょ! 見なさいよこのボディ!
 ……んふふふ、ふにふにしてるぅ………可愛い♪」
「キュピー♪」
「あぁんシルヴィア可愛い♪」
「これが変態って奴か」
「貴方に言われたくないわよ!」
「キュピー、キュピー…」
「あらお腹空いたの? しょうがないわねぇ、あれ食べなさい!」
「キュピー!!」
「って俺かよッおわっ!?」

シルヴィアのようかいえき!
赤マントはよけた!

「くっ、血塗れになれ!!」

赤マントのなげナイフ!
シルヴィアのかえんほうしゃ!

「キュピー!」
「ナイフが溶けた!?」

シルヴィアのでんげきは!
赤マントはひるんだ!

「おぐっ……く、そ……」
「今よシルヴィア!」
「キュピー!」

シルヴィアのマミる攻撃!
いちげきひっさつ!
赤マントはマミられた!

「キュピッ♪ キュピッ♪ キュピッ♪」

がつっ、がつっ、と「赤マント」を頭からゆっくりと美味しそうに食べるシルヴィア
その飼い主、もとい契約者の女性は、シルヴィアの身体をふにふにしながら話かける

「んふふ、いっぱいお食べシルヴィア♪」

ふにふにふにふに
触りまくって恍惚とした表情を浮かべる女性
そんな彼女の視線を知ってか知らずか、「オルゴイコルコイ」のシルヴィアは「赤マント」を完食した



   ...end

2月22日は“ふにふに”で幼虫の日だ!
幼虫可愛いよ幼虫、幼虫ヒャッホオオオ!!
ほぅらお前等も幼虫愛でようぜ、あの幼い身体をぷにぷにすりすりしようぜ、なぁ?

モンゴリアン・デス・ワームじゃないですかやだー!
蟲苦手なんですううううううううう!
道民は巨大な蟲との接触経験少ないんですううううう!

そして乙ですのン
謎の男はただの強盗だったのか、それとも何らかの意志か…とか思わず深読みしてしまう
しかし猫の日にこれはwww俺ですら猫殺すのは避けたのにwww

>>28-29
>道民は巨大な蟲との接触経験少ないんですううううう!
笛の人は割と楽しげに「モンゴリアン・デス・ワーム」書いてたけどwww
『獣の王様』然り、「モッコリイヤン・エロ・ワーム」然り

>ホノボノとしている筈の猫の日にこんな酷い話ばかりなんてこのスレの人々は悪趣味ですね……
猫の日に猫が酷い目に遭ってる話を書いたあんたに悪趣味なんて言われたくないわwww
というか俺のはほのぼのじゃないすか!

もう何も言わないでくれ…
弟と並んでて「あれ、双子?」とか言われたり
挙句に「え、お兄ちゃん?」と弟の写真を指差して言われたり
もう既に兄の威厳なんてこれっぽっちもないことは分かってるんです…ぐすっ

>>94
ええで……こんやはおっちゃんが愚痴聞いたるさかい
全部話しぃや
おっちゃんもこう見えて人の話はよう聞く方やねん

>>95
それじゃお言葉に甘えて吐いちゃおう…
俺は空港の方で仕事してて、毎朝バスに乗ってるんですが
今日倉庫で「君いつもバスに乗っとる子やよね?」と渋い兄ちゃんに話しかけられまして
「いつも気になっとってん、『なんで中学生が空港まで来とるんやろう』『若いのに何かあったんか』って」

そんなに幼いか!
よく言われるけどそんなに幼顔か!!

>>96
それは貴方が「うほっ、可愛らしい男の子……」と思われている証です
また一つフラグが立ったと思って喜びましょう
その特性を逆手にとって大きなお兄ちゃんお姉ちゃんを利用しながら生きるのもまた良しかと思われます

>>97
>その特性を逆手にとって大きなお兄ちゃんお姉ちゃんを利用しながら生きるのもまた良しかと思われます
実際、高校出てすぐ社会へ出たので“職場で最年少”が私だったりするのです
よって周りは年上だらけと
でも社会に出て改めて思ったのは、俺ってば昔から年上から受けが良かったりするんだよなぁ……

>>98
ほら
セクシーな年上のキャリアウーマン風のお姉さまとのフラグは近いですよ
良かったじゃあないですか
人生バラ色です!

>>99
>セクシーな年上のキャリアウーマン風のお姉さまとのフラグは近いですよ
セクシーボイスな年上のそんな風な人はいらっしゃる
咳払いがエロいんすよ……聴く度に息子が起きちまって困るんすよ……

>>100
じゃあピュアな魅力を全面に押し出しながらいけばフラグも近いですよ
やったねお悩み解決!

>>101
>やったねお悩み解決!
ところがですね
その人、お父様が料理人で、美味い料理を滅茶苦茶食べてらっしゃるんですよ
牛肉も国産牛のみで、外国産牛はもう食べられないとも仰ってるんですよ
あと酒豪なんすよ

どうやら今も彼氏いないそうなんですけど
こういう話聞いてると「これはハードル高いわ」と思ってしまうという

>>102
こうなったら「姉御! 今夜夜景の見える素敵な俺の家で飲もうぜ!」とでも……
冗談ですごめんなさい
ハードル高いなら背中にジェットパックつけて飛べばいいんですよ
彼女にアタックできる漢になろうと思ってると自然に漢になれます
すると今度は男前需要が生まれるわけです
どう転ぼうがお悩みは解決です

さて
書き溜めておいた分を放出しようか……


 僕は車のトランクに詰めていたジュラルミンケースを手に取る。
 この中には光線銃やスタンガン、特殊警棒が入ってたりする。
 厨二真っ盛りの頃に通販で買って改造してそのまま趣味になってしまったのだ。
 僕は助手席側のドアを開けてジルりんについてくるように促した。

「猫股邸、それはこの街では有名な幽霊屋敷だ」

 開けっ放しの大きな門を通りぬけ、誰も手入れしてない朽ちた庭園を歩きながら、僕は彼女に語る。

「この屋敷の主人、猫股冬二は大の猫好き
 彼以外の家族も、唯一人の例外を除いて皆猫が好きだったそうだ
 彼の家の周りには沢山の猫が住み着いて、そこの住民と仲良く暮らしていたそうだよ」

「私も……猫は嫌いじゃないな
 いつもは猫くらいしか私と遊んでくれなかったし」

 泣けるねえ。

「だがある日のこと、家に強盗が入ってきて彼らを皆殺しにした
 死体はそれは惨たらしいものだったそうだ
 警察も最初は怨恨の線で捜査したそうだが犯人の男と家族の繋がりは見つからなかった」

「犯人から何か聞き出せば良いんじゃないのか?」

「それがこの事件の奇妙なところでね
 運良く帰りの遅れたその家の末っ子が他の家に助けを求めた時、男は既に白骨遺体と化していたんだ」

「……え?」

「ありえないだろう、仮に殺されていたとしても数時間で死体が白骨化するなんてありえない、あってはならない
 何故犯人と思しきその男が死んだのかは不明のまま、警察も結局捜査は切り上げた」

「……それってもしかして末っ子が契約者だったとかじゃないか?
 男は罪をなすりつけられるための哀れなスケープゴート
 末っ子の方が実は……
 なあ、悲喜。さっき言っていたネコ好き家族の例外ってまさにその末っ子だったりしないか?」

「その通り、思ったより頭が働くねえジルリン」

「ジルりんってなんだそれ」

「ジルってのだと味気ないだろう。可愛い者には可愛い呼び名が要る
 君にとってのそれがジルリンだったというだけのことだ」

「可愛い……? そ、その、可愛いっていうのをやめろ! 私は怖いんだからな!」

「オーケーそれは解ってる。だがその君が恐怖を与えるべき相手は俺じゃあない
 この館に巣食っているかもしれない怖い怖いお化けだ
 推理ごっこは小休止、お化けの相手はお化けたる君に任せるよ」

 僕はそう言って屋敷のドアに手をかける。
 ノブをひねり、ドアを引く。


 ガチャッ!ガチャッ!


 鍵がかかっていた。
 考えてみれば当然だ。
 弟が知り合いから頼まれたってだけで何勇み足かましているんだ僕は。

「む、まさかトラップ!?」

「……その可能性も有る。少し下がっていろ。巻き込まれたくないだろう?」

「だがそれじゃあ悲喜が――――」

「今はまだお互いにお試し期間だ。この程度のヘマでやられるような男ならお前も契約相手にしたくないだろ?」

「…………分かった」

 訂正します。この娘やっぱお馬鹿です。
 でもいいんだ。アホの子ラブ、俺大好きだよこういう素直な子。
 僕はまるで何かを警戒するように、いや実際に周囲の様子に気を配りながらゆっくりとドアノブから手を離す。
 その時、ドアの奥からほんの僅かな物音がしたのを僕の耳は捉えた。
 粘着質の液体が這いずるような不快な音色。
 何かが来る、そう思ってしまったせいだろうか。指の先からゆっくりと寒気が登ってくる。
 でもまだ僕は否定する。
 まさか、そんな筈が無い。
 気のせいだ。気のせいに決まっている、ここで情けない声なんてあげて飛び退いたら。
 ―――――ペロリ、と首筋を何かが撫でた。

「うわあぁっ!?」

 僕は思わず情けない悲鳴を上げながら後ろに飛び跳ねた。
 
「何か有ったのか?」

 ジルりんは不思議そうに僕を見る。

「え、あ、いや……その、気のせいだったらしい」

 そう言って彼女に曖昧な笑みを向ける。

「悲喜、下がってろ」

 だがその時には既に彼女はこちらを向いていなかった。
 彼女が見ているのは今僕が飛び退いてきた扉の方向。

「……あんた、戦闘については素人だと思ってたけどそうでもないのかもな」

 扉の方を見たまま、彼女はそう続ける。
 
「ここから先は化け物同士の時間だ
 こんな良い場所、頂けるなら頂いておきたい――――」

 彼女の会話を遮るように扉が開く。

「――――行くぞ!」

 そう言って彼女は二本のナイフを振り回して扉の向こう側へ突貫する。
 中で陶器の割れる音と小さな悲鳴、そして壁の砕け散る音が聞こえた。
 僕もケースから光線銃を取り出して彼女の後に続く。

「おい、ジルリン!」

 扉を足で蹴り開けて中に入る。
 驚くべきことに、そこには誰も居なかった。
 静寂だけが屋敷の中に広がっていた。

書き忘れていたので前回のあらすじ
・切り裂きジャックちゃんの名前が決まる
・切り裂きジャックチャン生まれた意味を問う
・切り裂きジャックちゃん唸りながらメスを突きつける

差し障りにならない程度のストーリーをはさみながらジャックちゃんの可愛さを楽しんでいただく話になっております

投下されたみなさん乙。個別に感想言えないのが申し訳ない
ジルちゃん可愛いよジルちゃん
財団Bの設定使ってみたいけどすぐには思いつきそうもないな

なんだろう
ジルちゃん、悪い人にだまされそうで面倒を見てあげたくなる系女子やわぁ……

既に騙されてるんじゃないかという学会の研究データが…

HDD修復したら本スレ見れた記念!
小説が書けないの人、乙です
この非常事態にばっちり見る所見てるのに唖然とし
さらにその状況を僕のテンションの一言で済ませる悲喜に呆然
さすが俺、さっそく雰囲気に飲まれてやがる
ただね、この赤子の影って何だかデジャヴを感じたんだが
過去のもの読み返しても出てこないんだよね…これはいったい…

おつでした
お姉さんと少年の絡みいいよね……
連載にしても十分面白くなりそうで素敵でした
>>108>>109>>110
ジルちゃん可愛いして頂けて幸いです
これからも可愛い可愛いできることを第一に書いてまいりたいと思います
>>117
ああすまない
またクトゥルーなんだ……
といっても姿形だけ借りただけで多分幽霊のたぐいです
詳しいことは秘密ということで
テンションについては反省している

前回までのあらすじ
・パンツだけど恥ずかしくない
・悲喜くん霊感有る人
・こんにちわ赤ちゃん

「なんだよ、なんなんだよあれ!」

 僕は見てしまった。
 遠くから近づいてくる赤ん坊のような姿。
 肌が粟立つような悍ましさ、あれが、あんなものがこの世には有るのか。
 近づくに連れて姿がはっきりしてくる。
 両手両足をまっすぐに突っ張ったままゆったりと迫ってくる灰色のミイラ。
 赤ん坊のミイラ。
 落ち窪んだ瞳は何も移さず、乾ききった筈の喉から漏れてくるのは先程から続く不気味な音色。

「―――――まあ切れば一緒だ」

 ジルりんは顔色一つ変えずに数本のナイフを投げつける。
 柄頭から伸びる青白い光線で彼女の指とつながったナイフはまるでスズメバチのような奇怪な音を立てながらミイラへと殺到する。
 右から、左から、逃げ道を奪うように。
 ナイフが突き刺さり、光線がミイラの腕を焼ききる。
 彼女とナイフをつなぐ幾つもの光線にすら殺傷能力はあるらしい。
 一際高い悲鳴を上げてミイラは灰へと変わってしまった。

「……すげえ」

「言ったろ?」

「でも一体何だったんだあれ?」
 
「わかんない!」

「都市伝説だろ?」

「なんかちょっとそういうのとは違う気もしたぞ」

「気味悪いな……よし、さっさとこっから出よう」

 僕は窓に手をかける。
 当然開かない。
 ジュラルミンケースの中からハンマー取り出して窓を殴りつける。
 開かない。
 ジャックちゃんにナイフで窓を切らせてみる。
 弾かれた。

「悲喜! こいつ固いぞ!」

「なんで嬉しそうなんだよ!」

 状況は依然として変わらない。
 むしろ悪くなったとさえ言っていい。
 開かない扉、開かない窓、纏わりついてくるような気持ち悪い空気。
 ここに入ってきた時には気づかなかった屋敷全体に満ちる悪意のようなものが僕達を確かに追い詰めていた。

「やっぱり探索しようぜ、悲喜」

 ……とおもったが追い詰められてるのは僕だけらしい。
 ジルりんはあくまで呑気である。

「分かった。それじゃあキッチンの奥に行こう」

 どの道進むしか無いらしい。
 まあ僕がよくやるコールオブクトゥルフでも探索しなければ死ぬだけだし、進むしか無いのは現実も同じってことなのだろう。
 帰ったら少し良い物食おうと思いながら僕は進むことを決めたのである。


    ※    ※    ※    


「ここはリビング、惨殺死体があったのはここだと言われているな
 何かのオブジェみたいに死体が飾られていたとかいないとか」

「うへえ悪趣味だな
 私は殺人鬼キャラで売ってるけど殺して解体して並べて揃えて晒すだけだぞ
 必要以上に死体を辱めるのってなんていうかこう……もにょる」

「もにょるってなんだよもにょるって」

「もにょもにょするの! なんかこう……申し訳ないじゃん!」

 人を殺しておいて申し訳ないも何も無いだろうと思うのだがまあ言わないでおこう。
 それよりも『もにょもにょするの!』は良いなあ、可愛い。

「良いから何か無いか探すぞ。ここが何故またゴーストハウスになってるのかはっきりさせないと」

「分かってるよ」

 そして僕達はまた棚を開けたり座布団をひっくり返したりそこら辺を捜索し始める。
 都市伝説についてはジルりんにお願いして排除するしか無いが只の幽霊ならば僕が追っ払えば良い。
 幽霊の場合は溜まる法則も有るし楽なものだ。

「ッキャアアアアアアアアアアアアアア!」

 突如背後から悲鳴が響く。

「どうした!?」

 そういって振り返る僕の目の前に漆黒の物体が飛来する。

「う゛っ!?」

 全身が粟立つ。
 視界がやけにスローモーションで動いている。
 その飛翔体は必死で首をひねる僕の横をすり抜けて壁にペトと張り付いた。

「あ、う……」

 ジルりんが涙を流しながら首を横に振っている。
 なんだあれは。
 あんなものが居ていい物か。
 何故あんなにも醜く不快で脳髄を締め上げるような異様な黒色をしているんだ。
 そうだ、間違いない。
 あれは……あれは……

「「ゴキブリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」」

 僕達の悲鳴が家中に響いた。
 それと同時に椅子の下、棚の中、それらから一斉に羽音のような何かが聞こえる。
 どうやらまだまだ居るらしい。

「逃げよう! やっぱ逃げよう!」

「でもどうやって逃げるんだ悲喜!」

「窓! 窓を使う!」

 そう言って僕はすかさず窓をジュラルミンケースで破壊しようとする。

「ああ窓に! 窓に!」

 だが駄目だ。
 窓にまでなんかはいよってやがる。
 部屋中を飛び回らんと動き出す蟲達。
 絶体絶命、こうなったらこいつと契約をして事態を打開するしか無い。
 そうおもった時だった。
 ゆっくりと部屋の奥のドアが開く。
 そこに立っていたのは黒いローブを身に纏った長身の女性だった。

「――――焼き――――払え」

 女がそう呟くとあっという間に蟲達“だけ”に火がついて灰すら残らずに消失してしまう。
 彼女は僕たちを一瞥してから、重々しく口を開いた。

「先程からやかましいと思っていたが……」

 ゴホン、と女が咳払いをする。

「私の家に一体何の用だ?」

 その前に貴女は誰だ?
 僕がそう尋ねようとおもった時だった。

「―――――――――死ねぇ!」

 ジルりんが女に向けて飛びかかる。
 振り下ろされたナイフは脳天を裂き、四肢を喰らい、眼球を刳り、女の全身を瞬時に十六に分割する。
 女は悲鳴を上げる暇も疑問を持つ暇もなく、一瞬でモノ言わぬ死体になった。

「……えー」

 なってしまった。

「ジルりん……何やってるのかな?」

 もしかしたらこの館の異変の真相を知っているかもしれない人間だった訳だが。

「あいつ都市伝説の気配がしたぞ! きっと契約者だ! 見ていろすぐに死体がなくなる筈だから!」

 ああ、この感覚には覚えがある。
 クトゥルフTRPGやってたら中盤でボスキャラを当てずっぽうで殺された時の感覚だ。
 腹がたったので邪神を呼び出してデモンベインよろしくロボットバトル物に変えてやったよ。

「…………えーっと、さ」

「どうした悲喜、これで私の力がすごいのは解っただろう?
 ほら契約しようぜ契約! 待ってたんだからな!」

 ここまでデレられるのは嬉しいのだが……とか考えながら僕は死体の方を見る。
 うん、消えてない。
 この前の黒服みたいに消失する気配は一切ない。
 バラバラになって血や体液などをまき散らしているだけだ。
 僕の疑惑の目がジルりんに突き刺さる。

「……なあ、ジル。本当にこいつ都市伝説関係なの?」

「な、何言ってるんだよ。こいつ間違いなく敵だぞ悲喜!」

 僕の表情を見て動揺し始めるジル。

「本当か?」

「ほほほほほほ、本当だって!」

 嘘をついている様子は無い。

「ふむ……」

「本当……だもん」

 それでも疑念は晴れないなあと思っていると急に彼女が少し泣きだした。
 
「うっ…………ぐすっ……」

 かわいい。
 これ少し離れたところから放置してそっと見守りたいわあ。
 
「なんでにやにやしてるんだよぅ……。疑ってるんだろ?
 どうせ私が人間じゃないからってさ……」

「いや、信じよう」

「ほんと!?」

 何故顔をパッと輝かせるし。

「ああ、本当に―――――――」

 その時だった。
 バラバラになっていた女のカラダが突然空中で浮かび上がり、僕とジルりんに向けて飛びかかってくる。
 彼女はまだ気づいていない。
 気づいているのは僕だけ。
 声をだす暇は無い。
 彼女をすかさず押しのけて、僕は彼女の壁になる。

「悲喜ッ!?」

 突き刺さる牙、骨、牙?
 突き刺さった牙から感じる大量に血の抜けていくひんやりとした感触。
 これはまさか……。

「うっ……グスッ……!」

「なんだこいつ再生するのか! 待ってろ悲喜、今すぐこいつを!」

 空中で再生する目玉から溢れる涙。
 ジルりんが飛びかかるがそれもあっさりと空中に浮かぶ黒い翼で受け止められる。

「ひぃっ……ク」

 目玉を中心にゆっくりと顔が再生し始める。
 作り物みたいに生気を感じ無い青ざめた顔がくしゃくしゃになっている。
 美人も台無しというものだ。
 そして今度は顔から胴体が生えてくる。
 あと服まで一緒に再生されているのもすごく残念。

「あんまりだわ……」

 冷静に考えるとあの再生ってどこからエネルギー使ってるんだろう。

「あんまり、あんまりすぎる……」

 視界の中でジルりんが慌ててあの女に向けて攻撃している。
 だが間に合わない。
 僕は気づいてしまった。

「あんまりだわああああああああああああああああああああああうひいいいいいいいいいいいいいいいやああああああああああああああん!
 うひゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!
 ひゃああああああああああああああああああああああああああああああうええええええええええええええええええええええええええええええええええん!」

 あの女、今僕の身体に刺さってる牙から血を抜いて再生してやがる。

【僕は小説が書けない 第七話「猫股亭奇譚/参」 おわり】

満月の夜
波の音だけが響き渡る人気のない埠頭に、黒尽くめの集団が現れた
彼等は寂れた倉庫へと足を踏み入れると、そこにはまた黒尽くめの男が一人、立っていた
集団の主要人物らしい男女が自らのフードを取り、前に出て男に歩み寄った
男はそれを確認すると、深々と御辞儀をして彼等を歓迎した

「「亞楼覇」の皆様ですね? お待ちしておりました」
「貴方が“売人”ね?」
「然様に御座います。真に失礼ながら、名前は伏せさせて頂きます」
「構わん。例のブツは何処だ?」
「無論、御用意させて頂いております。こちらに」

売人は何処からともなくアタッシュケースを取り出し、
それを開いてリーダー格らしき男に差し出した
男がそれを受け取り中身を見ると、表情に笑みが浮かんだ
何らかの機械のようなものが、2つ
その姿形を敢えて形容するならば、“刃の部位が無いチェーンソー”だ

「……これが……これが『エフェクター』なの?」
「御明察に御座います。御使用方法はその見た目で容易に御判断できるようになっております」
「ほう……これだけか?」
「とんでも御座いません。奥にまだ御用意させて頂いております
 御案内致しましょう、こちらへ」

天窓から差す月光しか目の頼りがない、暗黒に包まれた倉庫の奥へと、売人は手を招く
男はアタッシュケースを閉じ、女と手下を侍らせて売人について歩き始めた
その瞬間、彼等の足元に、すとん、と何かが突き刺さった
各々が下がり、手下達は男女を庇うように前へ出る
それは黒い蝙蝠の形をした物体だった
が、すぐにそれは闇に溶けるように消えていった

「その先にはもう何もない。『エフェクター』は回収させて貰った」

聞こえたのは若い声
闇の中から靴の音が響き渡る

「っ……誰? いつからいたの!?」
「お前は自分の影に同じ事が訊けるか?」

嘲るようにウヒヒと嗤う声の主は、月光の下に辿りついてようやく判明した
声の通りまだ若い、顔の右半分が髪で隠れた黒尽くめの少年だった
首に提げられた金色の木の枝のペンダントが、きらりと胸で輝いている

「ちっ、ガキか……いや、「組織」か?」
「だったらどうする?」
「分かっているだろう?……殺せ」

男の指示と共に、周りの手下数人の姿が変化する
ハイエナのような怪物となったそれは、涎を垂らして低く唸り始めた

「「グール」か…悪趣味な都市伝説だ」

少年が呟くと、「グール」達の姿が忽然と消えた
にやっ、と男が薄く笑った
直後、辺りに血飛沫が飛び散った
腹をばっさりと切り裂かれた「グール」が姿を現し、少年の周りにばたばたと倒れる
そこに立っていたのは、血に塗れた黄金の大鎌を持った少年だけだった

「っ!? 「グール」の擬態を見破ったってのか!?」
「都市伝説の力を利用する犯罪集団「亞楼覇」…
 リーダー格である生須 蹄(ナマス テイ)、及び沢 禰香(サワ デイカ)、以下数十人の組員と売人
 『エフェクター』の闇取引の容疑により、「組織」R-No.の名において拘束する」
「R-No.……『Rangers』!」
「とんだ邪魔が入ったようで……私は御暇させて頂きますよ。がっひゃっひゃ……」
「逃がすとでも思って――――」
「貴様の相手はこいつらだ」

先程の倍以上の組員が前に出、その姿が「グール」へと変化する
その中の2、3体が、先行して少年に襲い掛かった

「……俺の邪魔をするな」

鎌を下ろし、彼は右腕を伸ばし、掌を広げた
すると、彼の影から黒い塊が「グール」と同数飛び出し、蝙蝠の形に変化して、少年の右腕の周りを舞う

「『欠片蝙蝠(ブリックバット)』」

蝙蝠は忍者の投げる手裏剣の如く回転し、「グール」へと放たれる
小気味の良い音と共に突き刺さり、体液を噴き出しながら「グール」は次々と倒れていった

「面倒だ……纏めて消えろ」

さらに動きだそうとする「グール」の群れの足元の影が、ゆらりと蠢いた
小さく波打つ影の表面は、徐々に、徐々に大きくなり、激しさを増す
「グール」達は思わず、その場で立ち止まってしまった

「『欠片蝙蝠-災厄箱(パンドラ・ボックス)』」

ぶわっ!!と「グール」の足元から大量の蝙蝠の刃が溢れ出す
逃げようにも、ここは影の中
影から際限なく溢れる刃から、逃れる事は出来ない
あっという間に、「グール」達は血塗れになり、次々と倒れ伏した
その場に立っていたのは少年と、生須と沢のみとなった

「売人は逃したか……まぁいい、後はお前達だけだ。今なら痛い目を見る事は無いのだが」
「ほう? 我々に勝てると、そう言いたいのか?」
「どちらにせよ、楽にさせるつもりはない」
「随分な自信ね……じゃあ、早速使わせて貰おうかしら?」

沢が取り出したのは、先程売人から受け取った『エフェクター』と呼ばれる代物
にやりと笑って生須もそれに応え、同じく『エフェクター』を取り出した

「なっ……それを使うのか!?」
「見せてやろう、我々の力を……!」

2人は装置についたリングに指をかけ、

「「『エフェクター』、起動!!」」

リコイルスタータを勢い良く引いた
『エフェクター』は激しいエンジン音を轟かせて振動し始める
そして、2人に変化が現れた
生須の身体に包帯が何重にも巻かれ、何処からともなく現れた黄金の棺に収納されて、
黒く禍々しいオーラが棺の手足となって立ち上がる
沢の身体を業火が包み込んだかと思えば、炎が『エフェクター』へと集中し、
炎のチェーンソーを作り上げ、五月蠅く火花を散らした

【ほう……力が漲ってくる……】
「これが『エフェクター』の力……!!」

先に動いたのは沢だった
チェーンソーを振り上げ、炎の斬撃を飛ばす
少年は軽く舌を打ち、鎌を横薙ぎに振るって相殺させた
今度は生須が高く跳び上がり、少年の頭上から落ちて押し潰そうとしたが、
寸でのところで回避され、その策は無意味に終わった
が、落下点には小規模なクレーターが出来ており、その破壊力を物語っていた

【次は貴様がこうなる番だ】
「…都市伝説を歪めて手に入れたような力で…俺は倒せん」

そもそも『エフェクター』とは、原理や製造法が殆ど解明されていない謎の装置であり、
「組織」の間でも、掴んでいるのはその能力くらいのものだ
その能力とは主に2つ
一つは“都市伝説の能力の歪曲”
例えば沢の「パイロキネシス」のように、プラズマ流体である炎を実体化させ、斬撃属性を加える力
一つは“都市伝説の存在の歪曲”
例えば生須の「ツタン・カーメンの呪い」のように、本来姿無き物に形を与える、若しくは本来の姿を変える力
噂に忠実な都市伝説が無理矢理その存在意味を捻じ曲げられれば、どのような危険が及ぶか分からない
生須達のような悪しき心の持ち主が使うとなれば尚更だ
「組織」では、まるで這い寄るが如く静かに増えつつある『エフェクター』による事件にも対応している
それはR-No.においても例外ではない

「『レイヴァテイン・ブレイド』」

少年は黄金の鎌を身の丈の倍以上はあろう巨大な両刃の剣に変化させ、
再び突進してくる黄金の棺に向けて振るった
がきんっ!と火花を散らして、剣と棺がぶつかり合う
棺を纏う邪悪なオーラが無数の腕を形成して少年を捕らえようと伸びてゆく
が、少年の影からも同じく夥しい腕が伸び、それを抑えた

「っ……成程、『エフェクター』も伊達では無いという事か」
【やはりな。貴様、多重契約者か】
「一筋縄では行かずとも、お前等程度なら十分だ」
「あらそう……2対1でも同じことが言えるかしら?」

背後から忍び寄る沢
茫々と燃え盛るチェーンソーを振り上げ、口元を歪めた
その笑みは狂気に満ちているようにも見えた

「これで終わりよ!」

「それは生存フラグだ」

再び響く甲高い音
次に上がったのは、沢の驚いた声だった

「えへへ、残念でした♪」

驚くのも無理はない
沢の目の前に突然青い髪の少女が現れ、先端に大きなリング状の装飾のある長い杖で炎の刃を防いでいたのだ
そのまま少女は刃を弾き、沢はよろめきながら後退した

「なっ……一体何処から!?」
「ご主人様の後ろを奪おうなんてそうは問屋が卸しませんよ!」
「かなり意味が違って聞こえるぞ」
【ごちゃごちゃと……どういう状況か分からないのか?】
「分カッテイナイノハオ前達ノ方ダ」

突如、棺の真下の影から巨大な拳が現れて棺を押し上げる
バランスを崩した棺を、少年は飛び上がって大剣をぶつけた
火花を散らし、勢い良く棺は吹き飛んだが、無数の腕で支えてショックを和らげ態勢を整える
少年の傍に寄り添うように、黒いローブを羽織った影が出現した

【っく………使役系の都市伝説が2体……三重契約か】
「悪いがそれは正答じゃあない」
【何?】
「答え合わせの時間だ……『ギャラルフォン』、ロック解除」

少年はスマートフォンを取り出し、指で画面に“R”の字を書くと、
画面が切り替わって7つのボタンが現れる
彼はその中の4つのボタンをタッチした

《LIM》《WILL》《NAYUTA》《BI-O》
「待ちくたびれただろ? 存分に暴れろ」

腰に煌めくベルトの機械的なバックルにスマートフォンを翳すと、《Inform》という音声が流れ、
彼の周囲に、何の前触れも無く4つの影が現れた
鼻の長い白い獣、赤々と燃える人魂、紫のもやを纏う剣、ドリルや機関銃を装備した巨大な蛇型ロボット

「やぁっと俺様の出番か! 肩が凝って仕方ねぇぜ、なぁ!?」
「うおおおおおお!今日は久々に7人勢揃いでい!!」
『全く暑苦しい……子供じゃあるまいし少し静かにしたまえよ』
《動作安定異常皆無,視界良好,弾丸装填完了……戦闘準備,完了》
【ッ!? 七重契約者だと!?】
「まさか、そんなことって……」
「ウヒヒヒヒヒ…そのリアクションは疾うに聞き飽きた」

少年は黄金の剣を頭上に投げると、
黒いローブの影が変化した漆黒の鎌を右手に構え、紫のオーラを放つ剣を左手に掴んだ
そして左足を人魂が包み込んで、黄金の剣が変化して出来た鉤爪を右足に装着した

「お前等に“正義”は無い……行くぞ!」
「了解シタ」「はい、ご主人様!」「OKィ!」「がってんでい!」『仰せの儘に』《Yes,Boss》

少女が獣に飛び乗り杖を構えると、獣は沢に向かって走り出す
沢の燃えるチェーンソーと少女の杖が激しい音を立ててぶつかる

「子供だからって手加減しないわよ!」
「こちらから願い下げです! ビオさん!」

少女が沢から距離を取ると、轟音と共に地中から4基のドリルを持った蛇型ロボットが現れ、
各ユニットに配備された機関砲から弾丸を発射する
軽く舌打ちし、沢は周囲に炎を出現させた
空中に浮かぶ炎が壁となり、弾丸を弾き返す

《全弾命中……標的損害,皆無》
「あはははは! 素晴らしいわ、この力!!」
「ちっ、おいミナワ! 厄介な相手になりそうだぜ!?」
「私に考えがあります。理夢さん、ビオさん、援護をお願いします!」

ミナワと呼ばれた少女は、理夢というらしい獣から飛び降りると、
杖を横向きにしてフルートを吹くように構えた

「あら、何を始めるのか知らないけどそんなことは――――――」
「そっから先は俺様達の台詞だぜぇ!!」

理夢が前足を振り上げて爪を叩きつける
沢は燃え盛る刃でそれを防いで見せた
さらにビオと呼ばれたロボットも、ドリルで突撃を試みたが、
それもやはり炎のバリアでものの見事に弾かれてしまった
そうしている間に、ミナワは演奏を始めた

テンポの速い童謡「シャボン玉」を、エンドレスで奏でる
すると、杖の穴から無数の小さなシャボン玉が、ぽぅ、ぽぅ、と膨らみ、拡散する
まるで音色に合わせて踊るかのように

《突破不能……》
「くっ、邪魔なペットと玩具ね!」
「だからペットじゃねぇっつってんだろ!?
 テメェこそ暑苦しい上に面倒な妖術使いやがって!」
「『エフェクター』の力で生まれ変わった「パイロキネシス」よ!
 この力さえあれば…貴方達だって焼き払えるわ!」
「残念でした、科学的に考えて無理です♪ 『リムーバブル』!」

瞬間、周囲のシャボン玉がくるくると円を描いて回り始めたかと思えば、
沢の作り出した炎の勢いが徐々に弱くなっていった
と同時に、彼女の表情が歪み、喉を押さえて苦しみ始めた

「っ……こ…れって………」
「流石に酸素がないと火が点く訳ありませんよね?」

ぼごっ、と鈍い音と共に、沢の腹に重い一撃が入った
短い呻き声をあげ、膝から崩れ落ちる
そして無邪気に微笑む青い髪の少女を見たのを最後に、彼女の意識は闇に沈んだ

《任務完了,デアリマス》
「ご主人様ー、こっちは終わりましたー♪」
(危なく殺すところじゃねぇか……女って怖ぇ……)



「御仲間がやられたようだな」
【知るものか】

襲い来る黄金の棺を、黒い鎌と紫炎に包まれた剣で防御する
月光のみが届く倉庫内に、閃光が飛び散る

【この『エフェクター』さえあれば、手駒など幾らでも作れる
 今度は貴様等「組織」に捻られるような雑魚では無く、もっとマシな奴等を呼んでな】
「自分だけは強者であると言いたげな台詞だが……甘い」

ふわっと一瞬少年の身体が浮いたかと思えば、
そのまま逆上がりの要領で垂直方向に回り、黄金の爪による蹴りをぶつけた
直撃し、棺はまた勢いを失って無防備になる

「吹っ飛べ……『マキュラ』」

鎌を地面に突き立て、柄を軸に回転し、今度は燃え上がる左足による蹴りを命中させる
宣言通り、棺はサッカーボールのように蹴り飛ばされ、砂埃を撒き散らす
撒きあがった埃の中から無数の黒い腕が伸びるが、
少年の目の前に紫の炎が燃え上がり、腕の進行を妨げた

「『トータラージーク』」

紫炎が掻き消えるや否や、一筋の光条が棺へと伸びる
防御行動に移れる筈も無く、棺は大きく抉れ、中身が露出する

【っ……小僧がぁ!!】

黒い腕を巧みに操り、蜘蛛のように這い寄る生須
その大きさからは考えつかない程のスピードだが、
それでさえも、少年のたった一振りの鎌によって抑えられてしまった

【っぐぅ……何故だ………
 貴様のような若造に……『エフェクター』も持たぬ小僧に何故このような力が……!?】
「お前等には一生分からないだろうな
 機械で捻じ曲げる事でしか都市伝説の力を引き出せないような連中には…一生なぁ!!」

黄金の右足を振り上げ、踵落としを棺に叩きつける
響く轟音、そしてコンクリートにめり込んだ棺を鎌で抉じ開け、中にいる生須を包む包帯を切り裂いた
裂け目から生須が見たのは、髪で隠れた右目の大きな傷が夜風に見え隠れしている、
満月をバックに不気味に笑う少年の姿だった

「ッ!! 思い出した……七つの都市伝説、右目の大きな傷跡……
 小僧、貴様の名は確か――――」
「ウヒヒヒヒ……俺の名、か」

生須を嘲るように、少年は笑う





彼には幾つもの名前があった




“黄金の甲冑”“黒い影”“青の奏者”“白い騎士”“赤き翼”“紫の閃光”“灰元帥”




“小さき死神”“モノクローム”“火と水の魔術師”“シグナルマン”“三刀流”



“クィンテット・コンダクター”“隻眼”“邪悪な英雄”“千人殺し”“化物”“ビッグ・ディッパー”



しかし、彼に与えられた名はただ一つ



彼の真の名も、また一つ



「俺は…「組織」R-No.所属契約者集団『Rangers』が1人、コードネーム“Rainbow”……“七変化”」



ヒヒッ、と彼は鎌を振り上げて、笑った




「………黄昏 裂邪だ」










             † 夢幻泡影Re: †









   ...To be Continued

御目汚し失礼
あの生意気坊主が早くも帰って参りましたよっと
タイトルも一新、しかしその弱さは健在
裂邪とその“家族”達の新たな物語のスタートで御座います


一部失笑を買うようなネタがあるけどそこは気にしない

休憩期間1ヶ月というかなり早めの御帰宅でした
てか避難所のエロを含めたら実質殆ど休んでないという
何の為の最終回だったんだ(

「やぁ~りぃ~すぅ~ぎぃ~でぇ~すぅ~のぉ~お!!!」

「組織」本部R-No.上位室にて
赤く長い髪を振り乱しながら、少女は深紅のスパークが走る両手を机に叩きつけながら怒鳴った
彼女――R-No.0ローゼ・ラインハルトの怒りの矛先は、目の前で冷静に立っている少年――黄昏 裂邪だった

「……死人は出していない」
「例えそうであったとしても!
 ワタクシが指示したのは“拘束”であって“殲滅”ではありませんでしたわ!
 それに「亞楼覇」のリーダー生須 蹄、他部下多数は失血死寸前、紅一点の沢 禰香は酸素欠乏!
 もう少し遅ければ殺人になり兼ねませんでしたわ!
 沢 禰香は手口からして恐らくミナワさん……
 生須 蹄達は貴方がおやりになったのでしょう? 裂―――“Rainbow”?」
「的を射ている」
「お黙り! 何度も言っておりますがワタクシ達R-No.は「組織」においては穏健派の一つですのよ!?
 罪を犯した契約者を殺す事が役目ではありません! 契約を切らせ、必要であれば記憶を消し、一からやり直させる!
 これはワタクシ達だけでなく、貴方達『Rangers』も同じですわ!」
「俺は承知の上で入った
 こちらも気をつけてはいるが、何分相手方が貧弱過ぎてね
 絹ごし豆腐のようなものだ。大して力を入れてないのに勝手に崩れていく
 ましてやそれを“拘束(つかまえる)”なんて至難の業だ、そうだろ?」

何やら言いたげに口元をぷるぷる震わせるローゼだったが、
はぁ、と溜息だけついて、椅子に腰を下ろして項垂れた

「……昔の貴方が恋しいですわ…「南極事件」から貴方は変わってしまいました……
 貴方が陰で何と呼ばれているか御存知? “千の貌を持つ男”ですのよ?
 ワタクシの与えた“Rainbow”…“七変化”の名以外に、貴方の戦う姿を見た一部の契約者達がつけた幾つもの二つ名…
 でもそれらの殆どが貴方の残虐性を端的に表したようなものばかりですわ
 その幾つも名をつけられたことからまたつけられた名が“千の貌を持つ男”…こんな忌々しいことがあるかしら?」

ローゼは拳を作り、小さく震わせる
裂邪はまだ知らぬ事だが、彼女は同じ名を持つ邪神と拳を交えた事があった
己の家族に等しい仲間達を殺め、傷つけ、他人の命を弄ぶ邪悪なる存在
彼女は怖いのだ
「南極事件」―――七つの都市伝説と融合し暴走した裂邪は、その邪神と同等の力を持っていた
そして、今彼はその邪神と同じ呼び名を持っている
いつか本当に、彼が“邪神”になってしまうのではないか
いつか、この手で彼を―――かつて自分が想いを寄せたこの少年を殺める日が来てしまうのではないか
そんな事を考えてしまい、怖くて堪らなくなる

「…何と呼ばれようが構わない……俺は俺の意志を貫くだけ」

そう言うと、裂邪はローゼに背を向けて歩き出し、
ドアノブを掴んで捻ろうとした

「っお待ちなさい! 一体何を考えてらっしゃるの?
 せめて、貴方の思惑だけでもワタクシに教えて!」
「……悪い、ローゼちゃん……こればかりは棺桶まで持って逝かせてくれ」

がちゃり、とドアは開かれ、彼は部屋から出ていった
ローゼには、退室する寸前の裂邪の背中が、何処か寂しげに見えた



   ...To be Continued

やることなくてつまんねーから酒に任せて書いてみるテスト
β-No.0が死に際に放った言葉が着々と進行していってる感じ、かな
思い出したけど裂邪×ローゼの内容ってまだ書いてなかったんだっけ?


とりあえず友人と飯食ってくる
え? 酒飲んでるんじゃないのかって? 気にしたら負けだ


小説の人、乙です
表現と設定が鋭い刃物みたい
説明の部分を情報系のアプローチに落とし込んだのね
なんか戦闘シーンだけあって冷水にブチ込まれた読後感がある
猿の手って言えば破滅的な結末を招くイメージしかなく
読み手を安心させる気が全くないね!


そして表現が熱く感じるシャドーマンの人、乙です
一口に戦闘を描くって言っても、ここまで違うものなのかよ、と思いました
その速度は同じだと思うのに

超人と化しつつある主人公はどこへ行くんだろうか
自分の立ち位置をどこまで守れるのだろうか…



 脱皮できない蛇は滅びる
  見解の刷新を妨げられた精神も同じだ
   それは、精神であろうとすることを、やめる――フリードリヒ



男 「う……う……」





男 「がが…………」





男 「が」








男 「ふがっ がっ がぎゅっ」


気づけば俺は風呂場にいた
浴槽に浸かってる
そして冷たい


男 「うおっ 冷でっ!」


どうも冷水に浸かってたっぽい
この時期に水風呂に入る習慣はもちろん無い
そういう趣味もありません


男 「とりあえず、出るか」 ザバァァ

男 「痛ッ!……、あ゛ーなんだよ畜生」


頭がガンガンするんですけど
水風呂に浸かってた所為か?


男 「めっちゃ頭痛いんですけど……」

男 「……」 ペチ

男 (なにこれ、すごい熱い……)


あまりにもガンガンするんで
デコに手を当ててみれば
すごく熱いです、先生


男 (すっげえ熱……、風邪ひいたかな)

男 「……」


ザプッ


男 (あ゛ーきもちー)

男 「ぎぼぢい゛い゛い゛い゛」 ブクブクブクブクブクブク


浴槽に頭だけ突っ込んだら、冷たくていい塩梅だ
と思ったら、再び頭がガンガンと痛み出した


ザパッ


男 「と、とりあえず、風呂上がろう……」 ガタガタ

男 「……」

男 「なんか暗いと思ったら……」


男 「俺、電気つけないで風呂に入ってたのね」


浴室の曇りガラス越しに明かりが差し込んでるんで
そんなに暗いわけじゃない


男 「タオルタオル」

ゴシゴシ

男 「あだっ!!」

男 「痛えな、涙出そう」

男 「……頭ふくだけで頭痛かよ……」


頭はデリケートに撫でて
体の水気を手早くふき取る

あーマジで体も重い
こんな日にはとっとと休んでしまうに限る


男 「おかん! おかん!!」

男 「おかん、いないのーん!?」


男 (そういや、シフト交代したから今日は遅いとか言ってたっけ)


着替えて台所に行くとテーブルの上に伝言が乗ってた
チラ裏にマジックで走り書きした奴だ


「ボケナスへ

 おかずは冷ぞう庫
 ウインナーはぜんぶ食べた
 帰りは何時なるか分からん

                   母より」


息子をボケナス呼ばわりとは
全く、悲しくなるよね


男 「ウインナー全部食ったのかよ、結構茹でてあったろ」


そこまで口にして
ようやく俺は真っ当な疑問が浮かんだ

俺って、今まで何してたんだっけ


男 「たしか、水風呂入って……」


違う、そうじゃない
その前、水風呂に入る前だ

学校から帰ってきたんだよ
今日は平日だからな
そこはいい


男 「思い出せん……」


問題なのは
帰ってくるまでの記憶が無いことだ


男 「たしか……」

男 「誰かと一緒に帰ってきたような……」

男 「いや……」

男 「……」


水風呂に入る前からの記憶が
ごっそり抜けおちてる感覚だ

すごくマズい


決して人に自慢できるわけではないけど
自分だけに起こるようなこととか、性質とかって、誰にでもあるよね

俺の場合、こんなことが何度かあった

つまり、覚えてないうちに家に帰ってることが
これまでの人生に何度かあったんだ


服を全部脱いだまま帰ってきて
親に叱られてる途中で気づいたこともあった

靴だけ無くなって
でも靴下は綺麗なまま、いつの間にか帰ってて
机の下で体育座りしたまま、一人で泣いてたのに気づいたこともあった


状況は毎回違ったけど、そんなことがあったときは
悪寒だか発熱だか、とにかく、必ず気分が悪くなってる


自分が知らないうちに


何があったのかも知れないまま


気味が悪いよ


男 「痛てー……」


男 (……)


男 「痛てーなー……」


男 (……)


何だ、この落ち着かない感じは


男 「とりあえず、携帯、みるか」


ところで、俺、カバンとか携帯をどこに置いたっけ
いや、心当たりがあるにはある

こんな風に帰ってきたとき
持ち物は玄関に投げ出されてたりするもんだ


男 (やっぱり投げられてる……)

男 (あ、でも携帯だけは靴箱の上に置いてあるぜ)


男 (確か、最後にこんな風に帰ってきたのって中3のときっけ)

男 (あの頃に比べちゃ、俺の行儀も少しは良くなったってか?)

男 (まあ、記憶はまったく無いんだけどな……)


そんなどうでもいいことを考えながら
携帯を開いた


男 「なにこれ……」


思わず、声が出る


男 「委員長から、メールが19も……?」


とりあえず、一番新しいのを開いた


「件名:(non title)

 鈴木君、すぐに連絡ください
 もうそろそろ警察に連絡しようかと思ってます」


待て

待て待て

いやいやいやいや

何だこれは

一体、何があった

何なんですか、まったく

いやいや

警察ってなんだよ

なんかヤバいことになってるのか?

だけど俺、別に国家権力に対して後ろめたいことなんて、何もしてないんですけど


男 「とりあえず、委員長に電話しよ」


着信が30も入ってる

もちろん、相手は委員長からだ


いやあ委員長、俺のことが好きになったのぉ?
じゃあチュウでもしてみよっかぁ?

なんてふざける余裕もあるかもしれない

警察なんて言葉さえ無ければな


プルルルルル プルルルルルル


男 「委員長、俺ですけど」

委員長『鈴木くんですか!?』


委員長の声を聞いただけで分かる
かなり焦ってる


委員長『大丈夫ですか!? 今まで何してたんですか!?』

男 「悪い、まったく思い出せない、頭がすごく痛いんだ」

委員長『何ですかそれ!?』


そんなのこっちが聞きたいよ


男 「どうも気絶してたっぽい」


とりあえずこう言っておこう


委員長『……大丈夫なんですか?』


委員長は優しいなあ
あー、涙でそう


男 「それより俺に電話とメール入れてたみたいだけど、何があった?」

委員長『鈴木くん、今日、モモちゃんと一緒に帰ってましたよね?』

男 「俺が? 朝場と?」

委員長『覚えてないんですか!?』

男 「いや、今思い出した」

委員長『はい!?』


そうだ
俺は、クラスメイトの女子と教室を出たんだ


頭がズキズキと痛み出した
さっきとは違う
突き刺すような鋭い痛みだ

忘れてたことを思い出した
でも、その後、どうしたっけ?


男 「委員長、朝場がどうしたって?」

委員長『モモちゃん、まだお家に帰って無いんですよ!! モモちゃんがどこに行ったか、心当たり無いんですか!?』

男 「ごめん、委員長、分からないや」


委員長の息を飲む声が聞こえた
受話器越しにかすかなうめき声も聞こえた


委員長『どうしよう……』

男 「委員長、今、どこいる?」

委員長『……一丁目の丘の上公園です、モモちゃん、お気に入りって言ってたから』

男 「じゃ、近くにファミレスあるだろ? そこで待ち合わせしよう。今から行くから」

委員長『来てくれるの!? お、お願いします!!』


じゃ後で、と短く言って
携帯を切った


整理しよう

俺は放課後、クラスメイトの女子と教室を出た
そいつは、ちっこくて、怖がりな奴だ

確か、ホラー系のチェンメが届いたとかで
怖いから誰かと一緒に帰ろうと言ってた

クラスの委員同士ってことで俺が仕方なく付きそうことにしたんだ
正直言えば、デート気分だった
委員長はまだ仕事があるからって、ひとりで残った
教室を出たときは、たしか、5時前だったはずだ、ここまでは思い出した

その後、俺は何があったかも記憶に無いまま
気づけば風呂場にいた
発熱と頭痛のなかで気づいた


この間に、朝場は行方が分からなくなったのか


今の時間を確認する――夜の10時半だ
俺はようやく
Tシャツがじっとり汗ばんでるのに気づいた


ジャージに着替えて飛び出した
ファミレスは俺の住んでるアパートから目と鼻の先だ

財布と携帯を引っ掴んで、本気で走る
頭痛は相変わらずだが、気合いで我慢だ

一応、申し訳程度にデコに冷えピタを貼っておいた
頭痛薬も水で流し込んでおいた
お水、あんなに美味しいと思ったのは久しぶりです、先生

大通りに出て、歩道を走っていると
見えた
委員長が背を向けて立っている
制服のままってことは、家に帰らなかったんだろうか


男 「委員長!」


大声で呼ぶ
ビクッと委員長はこっちに振り返った


委員長「すず、……! 鈴木くん!!」


目が赤いぞ委員長
泣いてたのか


男 「おい、大丈夫かよ委員長」

委員長「……何があったんですか?」


眼鏡越しに彼女の眼が大きく見開かれてる


男 「悪い、実はさっきの電話まで、自分が何してたのか――」

委員長「……ち」

男「ん? 委員長? どうかした?」

委員長「ち!!」

委員長「頭から血が出てますよ!! 怪我してるんですか!?」


え? 血?

委員長の言葉に、俺は思わず手を頭へやっていた

髪の毛がものっそいパリパリしてるんですけど

その手を目の前にもってくる

鉄の臭いと一緒に、手のひら全体に濡れた、血の赤が目に飛び込んできた


男 「え、いや、これ……」

委員長「何があったんですか、鈴木くん……」

男 「ごめん、分からない……」

委員長「とにかく、止血、しなきゃ」


そう言う委員長の唇は小さく震えていた
そりゃそうだよね
頭が血まみれの男が走ってくるんだもん
俺だって怖いよ

てか、俺、頭怪我してたのかよ
てか、頭痛の正体は頭の怪我かよ


委員長「どうしよう」

俺 「え」

委員長「鈴木くんは、頭に怪我してる、思い出せないって、言ってる」

俺 「……」

委員長「モモちゃんは、どこに行ったのか、分からなく、なっちゃってる、どうしよう、私が、どうしよう」


俺 「お、おい」

委員長「モモちゃんの、お父さんも、心配して、るのに、私が、私が、しっかり、しないと、いけないのに
      鈴木くん、頭、怪我してるのに、私が、無理させて、どうしよう、どうしよう
      モモちゃん、探さないと、私が、私が、しっかり、しなくちゃ」

俺 「おい、委員長!」


眼を見開いたまま、委員長は泣いていた
いや、パニクってる


委員長「私が、しっかり、しないと、いけないのに、皆に、迷惑、かけて、どうしよう
     モモちゃんが、いなくなっちゃったの、私の、所為だ、私が、しっかり、してれば
     どうしよう、どうしよう、鈴木くん、私、私」


俺 「しっかりしろ! 委員長!!」


肩を掴んで、怒鳴った
ビクッと、小さく震えたのが手から伝ってくる


俺 「落ち着けって! お前の所為なんかじゃない!!」

委員長「でも」


俺 「朝場と一緒に帰ったのは俺だ! 朝場の行方が分からなくなったのは、俺の責任だ!」

委員長「でも、でも……!」

俺 「朝場は、俺が何とかする。必ず、連れて帰るから」

委員長「う、ひっく、うう、ぐすっ、うん……!」

俺 「委員長は、朝場の親に連絡入れてくれ
   それと、クラスの奴らに、メールで心当たりないか、確認してくれ」

委員長「ぐすっ、うん……!!」


しゃくりあげながら、委員長は携帯を取り出した
普段は冷静なコイツがこれだけ取り乱してると
こっちも精神的にヤバくなる
正直、俺も泣きそうです

今、確実なこと
それは、俺の記憶が抜けてる間に
朝場の行方が分からなくなったことだ

そして、俺は、頭に怪我している

一体、何処で、何故、怪我したんだ

思い出せない


覚えてないうちに家に帰ってることが
これまでの人生に何度かあった

一番ヤバかったのは、小5のときだった

今みたいに、頭に怪我して帰ってきてた

おかんが後から教えてくれたが、庭先に座り込んでいたらしい

俺は友達と遊んでいたらしいのだが、そのときの記憶がまったく無い

そして

その友達は、行方知れずになった

警察やPTAが血眼になって捜したそうだが、ダメだったらしい

ただ、そいつの靴の片方が、山奥の神社で見つかったとか何とか、聞いた覚えがある

当時の俺には、ただ怖かった

何があったのか、覚えていない

ただ、感覚として、ずっと心にこびりついてたことがある



  俺 だ け 、 助かったのだ、と


中学の頃、ダチ公に、俺の体質について
それとなく、話してみたことがある

ダチ公いわく、そういった都市伝説があるんだそうだ

茶化す風に言われたさ

お前、都市伝説に憑りつかれてんじゃねーの、って


そして、現在

委員長がしゃくりあげながら
それでも頑張って携帯弄ってるのを
俺は見ている

委員長の肩が血で汚れてるのは、俺が血まみれの手で引っ掴んだからだ
申し訳ない、と思った

心臓がバクバク言ってる

記憶が無い間に、朝場が行方不明になったこと
記憶が無い間に、頭を怪我していたこと

何があったかは思い出せない
だが、俺の感覚が、俺に告げていた

朝場が危ない、と


 誰であれ、怪物と戦う奴は、自分が怪物にならないように気を付けるんだよ
  あんたが長いあいだ奈落を見つめるとき、奈落もまたあんたを見つめているんだからね――フリードリヒ








           RaDikal PaRaNO-mal そのぜろ




今日はここまで

アパートの庭先っておかしいな
アパートの芝生前だわ

あとで直そう…

蛇革の人乙でした
続きを期待させる導入に心惹かれます
謎というのは人の心を躍らせるものです
これから先の展開に期待しております

細かい誤字とか表現違うな―ってよくあるよね
書いてから気づいてきゃー><ってなる

乙ですのン
心理描写が凄いリアルだな…読んでて俺が泣きたくなった(ぇ
差し迫った不安とか恐怖とかがこっちにまで伝わってくるような
こういうの好きだわ
そしてどんな都市伝説なんだろ、頭の中漁ってもまるで見当がつかない
鈴木くんの友達が言ってた“そういった都市伝説”か、モモちゃんが恐れたチェーンメールか…
分かったぞ、これは推理物だな(違
続きが楽しみです

>>163
>そして表現が熱く感じるシャドーマンの人、乙です
いい加減冷たい、というかクールな表現がしてみたい
八尺様の人の戦闘シーンとかそうなんですよ
笛の人みたいに激しい戦闘シーンお書きになるけど、笛の人とはベクトルが違う感じ
笛の人を“熱い”と表現するならば、八尺様の人は色んな意味を内包した“クール”だと思うんです
そんなシーンが書きたい、あわよくば使い分けたい

>一口に戦闘を描くって言っても、ここまで違うものなのかよ、と思いました
なんか大袈裟というか照れちゃうの///
前に『技名って意味あるのけ?』的なこと言われたけど、
俺としては「はぁ!」「てやっ!」「うおおおお!」「消えろ!」とかを延々繰り返すのが嫌だったんすよね
その結果次々と新技が出るけど作者にすら忘れ去られる技がこれからどんどん(

>自分の立ち位置をどこまで守れるのだろうか…
うふふ、奴は動かしやすい駒だから敢えて再び主人公にしたに過ぎませんの
これから奴には頑張って貰わないと

>>189
>蛇革の人
読み直して気付いて納得したと同時に噴いた
そんなところからかよwwww

>書いてから気づいてきゃー><ってなる
俺はあれだ
wikiにあげて翌年になって誤字に気付いたりするorz

人形遣いキャラとかお洒落だとおもうんすよ

花子さんとかの人のやる夫は人形系中心の契約者だったような
はないちもんめの人の希ちゃんは「バラバラキューピー」の元契約者(※飲まれた
あとTさんの人も「リカちゃん電話」使っていらしたな
三面鏡の人の繰ちゃんも「髪が伸びる日本人形」の元契約者だった(※契約解除
「メリーさんの電話」のメリーさんは作者によって人形か幼女か分かれる(因みに俺は後者

こうやって列挙していてふと
人形系都市伝説の契約者って、人形が自発的に動くか契約者に力が備わるかだな
>>206の真意はどうなのか分からないが、これは俺の“人形遣い”のイメージと程遠いと思う
やっぱりマリオネット的な方が“らしい”と思うのですよ
そういう意味では、はないちもんめの人自ら「ドフラミンゴに近い」と仰ってた望ちゃんが一番それっぽい


 僕は小説が書けない。
 面白い小説が書けない。
 何時も自己満足の鬱展開とかやって一味違う話書いちゃう俺KOOOOOOOOOOOL!とかやってなんか残念なことになる。
 ちなみに今回のKOOLはわざとKOOLにしただけなので気にしないように。
 まあそんな感じで只でさえ小説が書けなかった僕なのだがジルりんと出会った一昨日から更に書けなくなってる。
 純粋に忙しいのだ。
 これでは彼女をネタに何か書くというのは無理なのではないだろうか?
 まあマスをかくことなら……ああ、安易な下ねたは駄目ですかそうですか。
 ところで最近行きつけのコーヒー屋さんが扉のところにセール中の豆の銘柄を書くようになったんだけどさ。
 そこのセールって文字がsaleじゃなくてseleになってるんだよね。
 これ言うべきか言わざるべきかすごい迷っちゃって丁度ジルりんと遭う直前もそのことをずっと考えてたんですよ。
 これ下手に言うと厭味な感じがするし、かといって知っていて言わないのもまた意地が悪いじゃあないですか。
 こうやって細々考えて何もしないってのが結局一番駄目なんじゃあないかなって自己嫌悪とかしてみたり。
 面倒くさい系男子っていうんですか?
 まあこれだもの女性人気もありませんよねえ。
 男性人気も無いんじゃないですかねえ。
 しかしいつだって考え悩み矛盾し惑うことが、生きることなんじゃないかとも思ってしまったり。
 どうでもいいけどこんなふうに「●●ってのが生きることだよね」って言うと格好いいよね。
 それにしてもこんなことを考えながら現実の僕がやっていることと言えば……

「ツインテールぐりぐりー、ライドザウインドー」

「やめろよけっこう痛いんだぞそれ」

「あっ、ごめん……」

「わかればいいぞ」

 これである。
 見た目年下の少女相手に小学生男子みたいなちょっかいをかけているのだ。
 あの忌まわしい事件の翌日、ジルりんと僕はわりと呑気な昼の時間を過ごしていた。
 ジルりんのツインテをハンドル代わりにしてバイクに乗るごっこをしているくらい呑気なお昼だ。
 決して小説が書けないから現実逃避をしていたのではない。
 
「だが昨日から始めようとおもっただけの習慣だったりする」

「迷惑極まりないぞ」

「そっか……」

「それでこれからどうするんだ?」

「どうするんだって?」

「これから何かをする予定は有るの?」

「予定ね、特に無いんだよな
 分からないことばかりで動きようが無いんだよ
 僕の腕、組織、僕は何も知らない」

 ピンポン。
 チャイムの音が鳴り響く。

「ジルりん行ける?」

「味噌汁作るからちょっと行ってきてよ」
 
「はーい」

 僕はドアを開ける。

「こんにちわー」

 ドアの隙間からこちらを伺う美女の姿。
 不思議なことに僕はこの美女に見覚えがある。
 人の心を腐らすようなこの美貌の持ち主を僕は知っている。

「さようならー」

 僕はそっとドアを閉じた。
 鍵を閉める。
 もう一つ鍵を閉める。
 よし。

何、だと……もう十話目……抜かれた、完全にorz
しかも作品のクオリティ高い、俺の書き貯めが改行しまくりの駄文に見えるレベルorz

しかし 背 に 腹 は 代 え ら れ ぬ

>>215-217
というわけで、書けないの人乙ですー!
悲喜君って行動が一貫してて格好いいですよね、何ていうかこう、まっすぐに歪んでますよね
ジルりん可愛いよジルりん、回を追うごとにアホの子っぽく見ててきたけど気のせい(ry
そしてついに出たか財団B……BってバビロニアのBだったんだ……世界最古の蛇の抜け殻とかないですよね?

>財団のメンバー同士は基本的に全員対等である
「組織」が縦に繋がってる集団を複数のトップが動かしているとするなら
財団Bは横に繋がってる集団を一人のトップが纏め上げているんでしょうか
レインボーブリッジ思い出した、トップに理事長いるけど

>財団の理事長は無数の都市伝説と契約する多重人格者
>ちなみに理事長はクローン体を無数に持ってるから殺しても無駄
都市伝説と契約してる個体が死んだ場合、クローンに契約内容が引き継がれる……のかな?

>身体的特徴もいじれるけど
某アサシンみたいに女性の見た目と人格持ちがいる可能性が微レ存

あ、23:30辺りに投下予定です

前スレ>>720-721のあらすじ:遁殻恋、中央高校入学決定

―――――――――――――――――――――――――――――回想―――――――――――――――――――――――――――――――――

『prrrr!prrrr!』

「(ピッ)はい、古田です……た、大尉!?じゃなかった、おはようございます、R-No.3313さん!」

「え?恋ちゃん……ですか?えっと……元気、です?え、違う?」

「……はい。……あ……確かに、学校に行ってる間は、難しいです……」

「……ぇ……えぇっ!?あの、えっと……それって犯罪じゃ……い、いえ!何でもありません!」

「……はい、……はい……わかりました、恋ちゃんや有間君にも伝えておきます……はい、失礼します(ピッ)」


「…………どうしよう…………」


―――――――――――――――――――――――――――――終了―――――――――――――――――――――――――――――――――

「―――というわけで、今恋ちゃんに勉強を教えている真っ最中なんです。……後、殺人鬼さんが暴走してしちゃってごめんなさい」

「……いや、こいつが暴走するのはいつもの事だけどさ……」


レンガを片づけながら、頭のてっぺんまで簀巻きにされた殺人鬼を見て呟く。
あの後、鈍い音がして玄関が開き、俺を出迎えてくれたのは……フライパンを片手に謝る紫亜と、頭を押さえてうずくまる殺人鬼だった。
呼びだした事情を説明しながらも殺人鬼を縛り上げる手を休めない紫亜をみて、何故か遠い所へ行ってしまったかのような錯覚を受ける。


「(こいつ……殺人鬼に対して、だいぶ容赦が無くなってきたな)」


ついでに、用心としてヘルメットを被っていく事に慣れてしまった自分にも自己嫌悪。

まあ、殺人鬼がどうなろうと俺には関係ない。大好きな紫亜に止めを刺されるならアイツも本望だろう、多分。
今はとりあえず、紫亜から聞いた内容をまとめてみようか。

①現在の恋は(形だけとはいえ)紫亜の属する穏健派R-No.の保護下に入っている。紫亜が恋と同居しているのは、監視役という名目の為だ。
②が、俺と紫亜は高校生。四月から学校が始まれば、恋と共にいる事が困難になる。かと言って、彼女を連れて登校するわけにもいかない。
③そこでR-No.のトップの力で“合法的”に戸籍や入学許可を取り付け、俺達と同じ高校へ恋を入学させるらしい。
ちなみに俺と紫亜は、今年で三年生だ。
④高校の勉強に置いて行かれないように、現在恋は猛勉強中。

……以上。“合法的”の前に(非)が付いてる気もするが、気にしない方がいいんだろうな。うん。


「そもそも学年違う、というか入学試験どうするんだよ。俺の記憶が正しければもうとっくに試験日過ぎてると思うんだが」

「恋ちゃんと同じクラスに、黄昏先輩が入ってくれるそうです……後、入学試験は免除させたって」

「……学校側が『免除してくれた』んじゃなくて『免除させた』ってのが地味に怖い」


恐るべし、R-No.。まるでドラマやアニメに出てくる秘密組織のようである。あ、秘密組織だった。
そして黄昏先輩って誰だ。組織では先輩、学校では後輩ってややこしくないか。


「それでつまり、俺は勉強の手伝いや採点をすればいいのか?」

「はい……あの、有間君の時間が空いてる限りで、いいですから……」

「時間なら有り余ってるし、何より紫亜の頼みだしな」

「…………ぇっ?」

「いや、何でそんなに首を傾げる。友達の頼みは結構、素直に聞くタイプだぞ俺。パシリは御免だけど」


何故か肩を落とした紫亜と共に、俺は恋のいる部屋へと歩いて行った。
尚、簀巻きにされた殺人鬼は玄関先に放置する。
……頭の上まで縄まみれな上に、何か変なお札まで貼られてるんだが。


「あの、ところで……それ、何のプラモなんですか?」

「お、よくぞ聞いてくれました!聞いて驚け見て笑え、何とこいつは―――」



―――で。この時の俺は、すっかり忘れていたわけだ。
この女友達が普段から、どのような勉強方法をとっていたのかを。
そして他人に対して、どのような教え方をしていたのかを。


「……紫亜」

「あ、あのですね、試験がなくなったとはいえ、恋ちゃんにはまだ基盤となる学力が」

「紫亜」

「だ、だだだ大丈夫です!恋ちゃんの覚えも結構良かったし……ほら、今だって寝言で」


そう言って紫亜が指を向ける先から聞こえてきた言葉は、

「………アイ、マイ、ミー=3x………1192作ろう、ロバートフッ………きゅぅ」

いろんな意味で理解不能だった。


「紫亜」

「はい」

「正座」

「……はい」


仁王立ちする俺を前に、大人しくその場に座る紫亜。
その後ろのベッドでは、全身に包帯を巻きつけた少女―――恋がうなされている。
時折漏れる寝言から察するに、“詰め込まれた知識”がごちゃ混ぜになっているのだろう。

そう、“詰め込み”。テストや日々の勉強でわからない点を、基本の方式や類似問題の“丸暗記”によって克服する。
理解できなかった物は後で勉強しなおすとしても、教科書に書かれた内容自体を理解できないままに詰め込み覚える。
色々とツッコミどころが満載だが、これが古田紫亜の勉強方法。
彼女曰く、テストの最中に脳内で教科書を読みながら回答するのと同義らしい。
……お前ぐらいだよ、そんな事しようと考えた結果出来るのは。

事実、都市伝説という人外である恋でさえも、この勉強法には頭が付いていかなかったらしい。
彼女が勉強しているという紫亜の自室で俺達が見た物は、教科書とプリントの山の中で目を回す恋の姿だった。
そして、現在に至る。


「前から言ってるだろ?お前の勉強のやり方は、お前以外には無理だって。何だよ『1192作ろうロバートフック』って、まだ産まれてすらないよロバート・フックさん。完全に日本史と生物が混ざってるじゃねえか」

「うぅ……」

「……まぁ、お前に悪気が無いのは判ってるけどさ」


そう、恐らく紫亜に悪気は無い。こいつは、あまりに自分を過小評価する悪癖があって、
『自分なんかが出来るんだから他の人も当たり前のように出来る』と思ってしまうらしいのだ。
一歩間違えば『え、こんな事も出来ないの?』という嫌味に取れなくもないが、紫亜に限ってそれは無い。
彼女の友人の一人として、それだけは保障する。


「(さてどうしようか。このまま帰るのもアリなんだけど、そのためにはあの殺人鬼がいる玄関を―――ん?)」


待て。何かおかしい。
あの紫亜一筋な殺人鬼が、いつまでも縛られたままというのは考えられない。
以前は鉄の鎖や手錠の山からさえも脱出したほどだ、あんな細い縄やお札(あれ、何なんだ本当に)程度が障害になるとは……つまり。
非常に考えたくないのだが―――


―――あ い つ 、待 ち 伏 せ て や が る っ !


「……紫亜、俺モ翌恋ノ看病ニ残ルヨ。後スマナイケド、ココデぷらも作ッテモイイ?」

「え、え?……わ、私は構いませんけど……じゃあ、タオル代えてきますね?


こうして、俺のある意味最も長い一日が、始まりを告げたのだった―――。

(7話 終)

お二方乙ですのン

>>215-217
まさかあの吸血鬼からそう来るとは……ド肝を抜かれたぜ
だが財団Bの説明、口調を合わせただけでまんま誰かが前スレに上げてった説明じゃねぇかwww
最後の理事長の説明2行は要らんだろwwwww
ジルりんの萌えポンコツぶりといい、先程マクドナルドでシェイク噴きかけました

>>220-221
上の後でこれだと流石にポテト噴いたよwww
ほぼ拷問じゃないか紫亜ちゃんwww
そして出井くんの華麗なツッコミにやられたわwww
恋ちゃん……どうか安らかな眠りを(殺すな

オマケ:『遁殻恋、受難の時』

「………?」

「よい、しょっ……と(ドサッ)」


つ プリントの山&小・中学生用の教科書


「……とりあえず、中学生までの内容を“覚える”には……これぐらいかな?で、後は」


つ プリントの山+テキストの山


「………何?」

「恋ちゃん、まずは右側にあるプリントを、全部解いて下さい。教科書読みながらで、いいですから」

「………ん(コクリ)」

「そうしたら、左側のプリントやテキストの内容が分かると思うので……基本的な文系や公式を、全部覚えて下さい」

「………………ぜん、ぶ?」

「……全部、です」

「………分かった………恋、頑張る」

「はい、頑張りましょう。あ、私、お茶を入れてきますね。分からない所があったら、いつでも聞きに来て下さい」




「えっと………アイ、マイ、ミー………『私』?ヒー、ヒム、ヒズ………」

「2x+3y=x-8y………(2+1)エック………じゃない、(2-1)x=………」

「………ロバート・フック………………植物細胞を、コルク?………から………」


『紫亜は私が護るっ!くたばれえええええええええええええ!!』


「………頭、痛い………でも、覚え、なきゃ………ぁ………きゅぅ~(バタッ)」




「(……よろしい、ならば戦争だ。覚悟せよ紫亜ちゃん……!)」


【お茶入れてくる→向かう途中で有間がインターホン→殺人鬼暴走→縛りあげてる内にお茶を忘れる(その頃の紫亜)】


(7.5話:『遁殻恋、受難の時』 終 )

乙ですのン
こwwwwwwれwwwwwwwはwwwwwwwww
もはや可哀想だよwwwww
学校ではれっきゅんが教えてくれるからね
ただあいつ、国語は漢に、数学と物理はミナワに投げるけどね(

>>222
>>224
>ほぼ拷問じゃないか紫亜ちゃんwwwwww
>もはや可哀想だよwwwwwwwwww
……一応、言い訳という名の弁明をさせて頂くと、紫亜にも色々あったんですよ
小学生のころに父親が死に、母親はそのころから遠出&転勤が多くなって
彼女ののめり込めるものと言えば、ガンダムと勉強ぐらいしか無かったんですよ、そりゃ歪みますよ
でも転校するたびに教科書や授業内容も微妙に変わるでしょ、なら「大体の個所を貰った日に全部覚えてしまえばいい」というね
勿論最初は本編の恋みたいに倒れる事もありましたよ、休み時間に教科書開いてブツブツ言ってるもんだから友達も出来ないし
それでも続けて行った結果、内容の理解は別として一定量の文章の“丸暗記が可能となりました
そしてこの勉強スタイルは小学校卒業時にはほぼ確立、出井達とであった後もあまり変化しませんでしたとさ
めでたしめでたし

……いや、全然めでたくも何ともないんですけどね、はいorz

>恋ちゃん……どうか安らかな眠りを([ピーーー]な
仇は【彼女】がが討とうとしている、今は静かに眠れ……(ぉぃ

>学校ではれっきゅんが教えてくれるからね
勝手なお願いで申し訳ありませんが、どうか宜しくお願い致しますorz

>>225
>……一応、言い訳という名の弁明をさせて頂くと、紫亜にも色々あったんですよ
思い出さないようにしてたのに貴方は鬼だ!(

>勝手なお願いで申し訳ありませんが、どうか宜しくお願い致しますorz
中学時代は「分からない事があったら裂邪に聞け」がクラスメイトの合言葉だったりする(
忘れられがちな“お勉強は上の中程度”設定

プラモの人乙でした
これはひどいwwwww
色々ひどいwwww
天才型だと人に教えるのが大変だって言うけどある意味そんな感じですよね
暗記が得意っていうのは羨ましいよなあ
れんちゃんが平和に暮らしているだけでおいちゃんうれちいよ

がけないの人乙ですー
ナージャちゃんに期待超期待

そして悲喜
>僕の平穏は遠い。
平穏なんか望んでないくせに☆

プラモデルの人乙ですー
紫亜ちゃん天才スゲェ

>>226
>思い出さないようにしてたのに貴方は鬼だ!(
えーww

>忘れられがちな“お勉強は上の中程度”設定
……そういえばどこかで読んだような気も
ちなみにウチの出井は中間あたりをふらふら、紫亜は上の下辺り

>>227
>これはひどいwwwwwwwwww
>色々ひどいwwwwwwww
冷静になって読み返してみると……うん、これは酷いww(ぉぃ
久々に他人に教える立場になって、少々浮かれてしまったのでしょう
……出井と友人達は中学の段階で「これ」を経験してますし

>天才型だと人に教えるのが大変だって言うけどある意味そんな感じですよね
>暗記が得意っていうのは羨ましいよなあ
>>228
>紫亜ちゃん天才スゲェ
どちらかと言うと、紫亜は努力型に入ります
暗鬼も得意というよりは頑張って出来るようになったと言うのが近いです、実際>>225で書いたとおり最初は倒れる事もありましたし
というか内容を“理解”出来てるわけじゃないんですよね、分からない文章や記号を“模様として丸暗記”して、後から脳内で読む感じ
当然記憶はどんどん薄れて行くので後から再度勉強し直す必要もあります

努力の方向が間違っているのは見ないであげて下さい

>れんちゃんが平和に暮らしているだけでおいちゃんうれちいよ
平和……へい、わ……?wwww

何を言っているのだね君達は
恋ちゃんが解いていた問題が

問:この方程式を解け

ではなく、

問:以下の〈ア〉~〈オ〉の中で解がx=3、y=4となる方程式を1つ答えよ

だったかも知れない
つまりその解を探している途中だったと推測できるんだよ!(どんっ

2012年2月14日―――――

「うふふ、今日も華麗に任務完了でしたね♪」
「ま、これを没収するだけの簡単なお仕事だったしな」

「組織」本部の廊下にて
裂邪はシェイド、ミナワ、ビオの3人を侍らせて歩いていた
すれ違う男性黒服が憎々しげな視線を送っている事も知らず、
彼はその手にある小さな瓶を見つめていた
どうやら、液体が入っているようだ

「「イシュタルの惚れ薬」……確かに、一般人に持たせておくのは危険だな」
「少し塗るだけで異性の注目の的になる代物だ
 たったこれだけでも、一度塗れば次の金曜日まで効力が持続される」
「恋愛、理解不能、であります」
「でもどうしてそんなものを契約者でも無い人が持っていたんでしょう?」
「いや、実はこの「イシュタルの惚れ薬」は手順さえ知っていれば誰でも作れるんだ」
「金曜日の深夜、沸騰させた湯にバニラビーンズ6本、赤バラの花弁6枚を入れ、
 “サチュロス・ヴォルグ・ギルブ”と呪文を唱えながらシナモンスティックでかき混ぜる
 煮詰まったら材料を濾し取り、液体を瓶詰めれば完成だ」
「い、意外ですね……カエルの目玉とか、ネズミの心臓とかが必要なのかと思ってました」
「そりゃ悪趣味な漫画の見過ぎだ;
 尤も「ゾンビパウダー」のような命に関係するものには入手困難な物を必要とする事があるが、
 これはあくまで惚れ薬…とは言え、薬に頼って手に入れた愛なんて俺は願い下げだが」
「ご主人様かっこいい♪」
「そういえば今日はバレンタインデーか…恐らくこれに賭けていたのだろう」
「益々理解不能、であります」
「ビオも何れ分かるさ……ん、そういえばどんな香りがするんだろうな
 どれ、一度嗅いで見るか」
「へ!?」
「止せ、何か起きたらどうする?」
「「イシュタルの惚れ薬」は塗らなきゃ発動しない、大丈夫だよ
 どうせ処分されるんだし、最期くらい看取ってやろうぜ」

そう言って、裂邪は瓶の蓋を開け、
瓶の口にゆっくりと鼻を近づけながら、曲がり角を曲がった
その直後だった

「いやああああああああああ退いてえええええええええええ!?」

そんな少女の声も空しく、彼女は裂邪と正面衝突してしまった
互いに仰け反り、盛大に尻餅をつく

「ご主人様っ!?」
「ボス、無事でありますか?」
「俺は大丈夫だ……それより」
「痛ててて…」
「ロビィちゃーん!?」
「大丈夫かいな!?」

チューブトップにミニスカという外見にそぐわない格好をした茶髪の少女――R-No.6ロベルタ・リベラが起き上がると、
その後ろからオレンジ色の髪をツインテールにした少女――R-No.7ラピーナ・レスピーギと、
黒髪のポニーテールの少女――R-No.8乱堂凛々が慌てて駆け寄ってきた

「えへへ、あたしは平気。ごめんねれっきゅん、痛かった?」
「あぁ、子供は元気で何より……いや、中身は子供じゃないんだったか」
「しかしそんなに急いでどうしたんだ?」
「あ、そうそう!今日はバレンタっ…………」
「…ロビィちゃん、急にどうしt――――」

突如言葉を止めたと思えば、
今度は突然、ロベルタは裂邪の両手を掴んだ

「なっ、ロビィちゃん?」
「聞いてれっきゅん……あたし、キミの事がずっと前から好きだったの!」
「はぁ!?」
「ちょっ、ロビィさん!?」
「い、いきなり何を……ラピーナちゃん、凛々ちゃんも何とか言ってやってくr」
「裂邪はん!ホンマはウチも出会た時から好きやってん!」
「凛々ちゃんズルいよー! ラピーナだって裂邪くんのこと大好きだよ!」
「…愛の告白、でありますか?」
「ま、さ、か……」

恐る恐る、裂邪は己の衣服に触れた
しっとり濡れているのが、はっきりと分かった
運が悪い事に、股間部である
「イシュタルの惚れ薬」の効力が、最も良く働くとされる部位だ
ごろごろと音を立て、空っぽの小瓶が空しく廊下を転がる

「あー! 待ってよれっきゅん!」
「だから余計な事はするなと言ったんだ!」
「すまん!」
「ボス、何処へ逃げる、でありますか?」
「とりあえずロビィちゃん達を止めないと……あ!」

声を上げた裂邪の視線の先には、2つの影
緑の髪の少女――R-No.1六条 蓮華と、白い髪の少女――R-No.4レクイエム・リッケンバッカー

「蓮華ちゃん!レクイエムちゃん!」
「っれ、裂邪さん!?」
「どどどどうした血相変えて!?」
「頼む!ロベルタちゃん達を止めてくr」
「裂邪さぁん♪」

裂邪が言い終えるや否や、蓮華は彼に飛びつき、抱きしめた
思わず足を止めて見下ろすと、彼女は恍惚とした目で裂邪を見上げていた

「れ、蓮華、ちゃん?」
「私を迎えに来てくれたんですね? これはきっと運命です…クスッ
 何処にでも連れ去って下さい、私は貴方の……裂邪さんのものなんですかrふにゃっ!?」

蓮華が無理矢理剥ぎ取られて投げ出されると、
入れ替わるように今度はレクイエムが裂邪を抱きしめた
むにゅ、と2つの柔らかい物が彼の身体に押しつけられる

「あんな貧乳の何が良い?私の方が良い物を持っている……違うか?」
「……あの、レクイエムちゃん?」
「私は貴様を連れて行くぞ。好きな場所を選ぶと良い
 そこが私と貴様の……愛の巣になr」
「愛のミナワパァーンチ!!」

レクイエムがミナワに殴り飛ばされると、
シェイドが裂邪の手を引いて、その後をミナワとビオが護るようにして再び走り出す

「何故寄りにも寄って女に助けを求めた!? 今度は男にしろ!!」
「わ、悪い……」
「…任務遂行前、理夢大佐、ウィル中佐、ナユタ少佐の3名が、
 休憩所にて待機中、だったであります」
「そういえば…! シェイドさん!休憩所はそこを右です!」
「了解した!」

十字路を右折し、一同は休憩所を目指した
と、そこへ偶然にも

「ッ! 理夢さん!ウィルさん!ナユタさん!」
「お、主にシェイド達じゃねぇか」
「随分早かったね」
「そんなに急いで何があったでござんすか?」
「良かった、理夢!悪いが助けてくれないk――――」

その時、理夢達の目の色が変わった
嫌な予感がする――――裂邪の勘は、見事に当たってしまった

「おぉ? 今日の旦那は随分艶めかしくございやすねぇ?」
「何だ何だ主ィ!? 俺様を誘ってんのかぁ!?」
「僕の想い人はこの世にただ一人……だと思っていたけど、どうやら違ったようだね」
「裂邪! 我々を解放しろ!」
「え、お、おう!? 『ギャラルフォン』!」

彼はスマートフォンを早々と操作し、背面を腰のベルトのバックルに翳す
《SHADE》《MINAWA》《BI-O》の音声が流れると同時に、
シェイドは黒いローブを纏った影となり、ミナワは丸いリング状の装飾がなされた杖を構え、
ビオは77のユニットが連なった、人間大の蛇型ロボットへと姿を変える

「『シャドーパンチ』!」
「『ラバブル』!」
「『PARAKLEETOS(パラクレートス)』」

黒い拳はナユタの腹部にクリーンヒットし、その小さな身体は容易く宙を舞う
長い身体を鞭のように使った一撃がウィルを襲い、壁に叩きつけられる
杖による洗礼は理夢の絶対に攻撃してはいけないところに命中し、呻き声をあげて蹲る

《目標、沈黙》
「……な、何もそこまでしなくても……」
「男モ駄目カ……一旦外ニ出ヨウ」
「ご主人様、シェイドさんもビオさんもこちらへ!…『ジャンパブル』!」

ミナワの作り出した小さなシャボン玉が彼女の手の中でくるくると円を描いて回り始め、
それに触れた瞬間、4人はその場から忽然と消えてしまった

     †     †     †     †     †     †     †







「……流石に、ここなら誰も来ないだろう」

学校町の北にある山の奥
人気のない少し開けたところで、4人は小休憩を取っていた
とは言え、休む暇などある筈も無く
今置かれた状況を打開すべく、各々が頭を捻って考えていた

「「イシュタルの惚れ薬」の効力は、作製した日から次の金曜日まで……
 今日は火曜だから、4日間静かに待つという手もあるが」
「でもそれじゃ流石に精神が持ちませんよ…」
「清水による洗浄は如何、でありますか?」
「恐らく無意味だろう…都市伝説である以上、そう簡単に解除出来るとは思えない」
「確かに…だが他に最善の手は………」

唸り、暫し静寂が生まれる
そよ風で波立つ木々の音は、事態の収束を見守っているのか
それともくすくすと彼等を哂っているのだろうか
ふと、何かを思いついたのか「ん、」と裂邪が喉を振るわせ、頭を起こす

「ほえ? な、何か分かったんですか?」
「いや、単純な疑問なんだが……何故お前等は平気なんだ?」

その疑問は正しかった
ロベルタを始めとしたR-No.の女性陣が所謂メロメロ状態になっていたにも関わらず、
シェイド達は正気を保って裂邪の保護に当たっていた
何か掴めるかも知れん――――――裂邪はそう踏んだ
ちらちらと表情を窺うように互いの顔を見合わせる3人
暫し、唸って黙りこくった後、彼女達はほぼ同時に彼の顔を見て、答えた

「「「さあ?」」」
「ま、そうだよな……」

そう簡単に答えが見つかる訳も無く
駒は再び振り出しに戻ってしまう

「ん~…ただ単に契約都市伝説だから、とかですかね?」
「それなら理夢達はどうなんだ?」
「…そう、ですねぇ……えーと、他に共通点は……」
「共通点…か……言われてみると案外思いつかないな」
「そうだな。女性型の契約都市伝説くらいじゃないか?
 都市伝説のタイプも、外見年齢も、その出自も全く異なる……」
「………あ」
「どうかしたんですか、ビオさん?」
「何か思い当たる事でもあったか?」
「…性交、であります」
「「あぁ~!」」
「へ?」
「成程、確かに裂邪と交わった者はここにいる者達のみ……!」
「そもそも惚れる惚れないの問題じゃなかったんですよ、何だそんなことだったんですね~
 お手柄ですよビオさん♪」
「光栄、であります」

納得したように頷き、笑う女性陣
一応、裂邪も彼女達が言わんとしていることは理解した
が、心の何処かでは腑に落ちなかった

「……だが現状ではそれしか導き出せそうにないk」
「あー、でもシェイドさんはシてませんでしたよね」
「「あ゙」」
「見当違い、でありますか?」
「そうですね、惜しいところまで来てたんですけれど…」

裂邪とシェイドが互いに視線を合わせた
冷や汗が流れているのがはっきりと分かる
ミナワもビオも知らなかったのだ
2人が彼女達の知らぬ間に抱き合っていた事を

(と、言うか……本スレ用の話にこんなディープな話を持ち込んで良いのか?)
(メタ発言は控えろシェイド……
 それより原因らしきものは突き止めたが、やはり肝心の解決法が…)
「裂邪さん!」

聞こえたのは少女の声
咄嗟に裂邪を庇うように身構えるシェイド達
彼等の前に降り立ったのは、赤い長髪の少女だった
R-No.0――ローゼ・ラインハルトだ

「随分探しましたわ……こんなところにいらっしゃったのね」
「…ローゼちゃん? どうして……」
「そうそう、本部に戻った筈の貴方がなかなか来なくて、
 代わりにマタタビを与えたネコのような蓮華ちゃん達を見かけたので、
 もしかしたらと思って……気配を辿ってこちらに参りましたの
 魔法を解く方法がなかなか見つからなかったので、「破魔の矢」をお持ち致しましたわ
 恐らく、これで大丈夫だと思うのだけれど」
「助かった、有難う――――」
「あれ? ローゼさんもですか?」
「……ほえ? 何がですの?」
「影響皆無、であります」
「実は、「イシュタルの惚れ薬」の効力が我々には影響しないようでな
 魔法解除の手がかりになるかも知れんと模索したが、結局思いつかなかった…」
「ローゼさんは心当たりありますか? 私達の共通点とか…」
「ん~………分かりませんの」
「そう、か…(ローゼも聞いてないという事は性交説は却下だな)」
(やっぱ性交だこれ……確定だ……なんでそんなのが影響してくるんだよ畜生)

裂邪とシェイドが交わった事をミナワとビオは知らない
そのシェイドは裂邪とローゼがその行為に及んだ事を知らない
さらにいうとローゼは裂邪がミナワと自分以外に手を出した事を知らない
全てを知っているのはただ1人、裂邪のみ

「……まぁいいや、「破魔の矢」なら魔法も打ち消せるだろう
 ありがとうローゼちゃん」

微笑んで彼はそう言ったが、心の底では怯えていた
――――頼むからバレないでくれ、と






 


     †     †     †     †     †     †     †







「うーん、なーんかすっごく恥ずかしいコト言っちゃった気がするのよねー?」
「ラピーナもなんだよー」
「せやけど、忘れとるっちゅーことはそない大したもんでも無かったっちゅーことやろ、多分」
「あらロビィちゃん、ラピーナちゃん、凛々ちゃん、ごきげんよう」
「ローゼさん! れっきゅんも久しぶりだねー」
「…ん?」
「あの、覚えてらっしゃらないんですか?」
「何を?」
「あ、い、いえ、何でもないです」
「効果覿面、であります」
「記憶が消えているのは予想外だったが」
「覚えられてても今後に支障が出るし、好都合だ」
「大変! すっかり忘れてましたわ!」

突然大声を上げたローゼに、裂邪は理由を聞く間も与えられず腕を引かれて何処かへ連れて行かれる
能力を発揮しているらしく並々ならぬ速さで、シェイド達もついていくのがやっとであった
辿りついた扉には、“医療室”の文字
ローゼは勢い良くその扉を開けた

「あ、ローゼお姉様、お帰りなさい! お兄ちゃん達もお疲れ様♪」
「おう、ライサちゃんも元気そうで――――――」
「何処ほっつき歩いてやがったんだ馬鹿主!!ぁ痛つつ……」

病室に響く怒鳴り声
真っ白なベッドには、見知った顔が3人横になっていた
理夢とウィル、そしてナユタである
涙を目に溜めて痛がる理夢を、灰色の髪の少女――R-No.√2ルート・ライフアイゼンが無理矢理寝かせた

「もぉ、バカはテメェじゃないのぉ……一応怪我人なんだから無理しないでってばぁ」
「馬鹿じゃなくて獏だっつーの!」
「「「あ、」」」
「……と言う訳で、この3人だけ何故か大怪我して倒れてらっしゃったの」
「お、お前等……その怪我……」
「いやー、気がついたらこんな事になってやしてね? こりゃあ参りやした」
「直前の記憶が全く無くてね…理夢君やウィル君と決闘してマスターの帰還を聞いた後が曖昧なんだけど」
「こ、こいつらはまだ軽いが、俺様は大事なところがッあ痛つつつ……畜生!誰の仕業だ!?」
「…ボスを襲撃した為止むを得z」
「「わー!?」」
「あ? 何か言ったか?」
「い、いや何でもない、ビオもどうやら不調らしくてな?」
「そうですそうです、み、皆さんお大事に~!」

逃げるようにその場を立ち去るシェイド、ミナワ、ビオ
その後ろ姿を見てローゼは首を傾げ、裂邪は大きく溜息を吐いた



   ...To be continued

やっべ、丸々抜けてる部分があるorz

>>236
>~ごろごろと音を立て、空っぽの小瓶が空しく廊下を転がる


↓追加

「ご、ご主人様、どうしまsy」
「逃げるぞ」

恐ろしい速さで立ち上がったと思えばその場を走り去る裂邪
それにシェイド達が続き、さらにロベルタ達が追いかける


>>237
>「あー! 待ってよれっきゅん!」~

あとレクイエムも怪我してるな……wiki版では修正しておこう

なんか面白いキャラの強化案ねえかなあ
良い子の皆アイディア出し合おうぜ
とりあえず俺は一度死んだら器が大きくなるとかどうよってマンキンのパクリでお茶濁します

乙ですのン
「勝手にジルりんって呼ぶなぁ!」ってことは悲喜くんにだけ許してるってことか、もげろ
弟くんも契約か、しかも相手は吸血鬼のお姉さんか、果たしてどうなる事やら
しかし確認したかった所そこかよwwwwww
そしてバトルドーム噴いたwww最近ニコニコでそのCM使ってる動画見てたから超タイムリーwww

>>248
>なんか面白いキャラの強化案ねえかなあ
したくもないのに勝手に強化されていくキャラがいてだな……主に裂邪
冗談はさておき、どっち方面で強化していくかよね
攻撃だったり防御だったり、近距離だったり遠距離だったり、味方の補助なんかも強化と言えるし
ミスカトニック大学付属図書館に突撃して「ナコト写本」奪おうぜ! 時間逆行や精神操作ができるよ!
もしくは紅い装甲と翼を持った巨大ロボットを召喚できる


葉賀家内の人乙です
何だかんだ言ってこの状況悲喜が一番楽しんでそうなんだが
路樹くんかわいそう…この後吸血鬼とラブイチャがあるなら話は別だ

>>248
ま、待ってくれ
死んだら器が大きくなるって蘇生すること前提だよな!?
江良井のじいさんとか上田の先祖がその強化案でよみがえったら
大乱闘スマッシュブラザーズレベルの話じゃなくなる…はやまるんじゃない!!

>>250
>死んだら器が大きくなるって蘇生すること前提だよな!?
さらに何度も殺しまくって何度も蘇生させれば器は無限に膨らみ続ける……
神話レベルの都市伝説60億体分と契約する器を持つ元「組織」首領と同等レベルの契約者の完成だ!

あーやばい面白事考えた

想像力の無くなった人類は滅びの運命を辿るって加藤さんが言ってたろうが
ムカついてきた、ちと書いてくる

ぽちゃん、と滴の落ちる音が響き渡る闇
陽の光が一切届かぬ洞窟の奥へと、人為的な光がゆっくりと進んでゆく
人間、にしては足音が重々しい
それもその筈、光を灯し暗闇を歩いていたのは人型のロボットだった
2、3m程の高さのそのロボットは、目的地に辿りついたらしく、ようやく歩を止めた

《迎えに来たぞ、嵩久》

女性の声で、ロボットは誰かにそう呼びかけた
ライトに照らされた先には、岩に座っていた半裸の青年が眩しそうに目を覆っていた

「随分早かったじゃないか」

《27回も同じ工程を繰り返したんだ、当然だろう?》

「もうそんなに“死んだ”か。大分期待が出来そうだな」

《早く出るぞ。もうこの景色は見飽きた》

ロボットは早々と今来た道を歩いてゆく
やれやれ、とでも言うように青年――嵩久は立ち上がり、それを追って歩き出した

「次の都市伝説の用意は?」

《既に黒の商人から封印石を55個預かっている》

「流石に鼻が利くな、あの商人……石の中身の詳細は?」

《またしても契約してからのお楽しみだそうだ。あいつは私達を舐めているのか?》

「フフ、まぁいい。強ければそれで良し、だが弱ければそれでも良し
 死ねばまた、俺の心の器が大きくなり、都市伝説の容量も多くなる
 その内、あの「首塚」の平将門や、「組織」の黒服全員とでさえも単独で契約できるようになる…!」

《その度にまた私がこうしてお前を迎えに来なければならない
 私としてはさっさと強力な都市伝説を寄越して1日でも長く生きて欲しいものだが》

「…相変わらず怠惰な奴だな」

《お前の過労ぶりこそ心底呆れるよ
 幾度となく生と死を繰り返して……よく“死”を恐れないな》

「その先の“生”に恐怖を打ち消す程の希望を見出せるからな
 ある意味では、お前が俺の希望なんだ」

《……馬鹿》

ふふっ、とロボットは小さく笑った
その時、嵩久は不意にまたも目を覆う
外の光が、闇を打ち消していた

「…成程、帰りも早いな」
《お帰りなさい、嘉藤嵩久
 28回目の御帰還だ》

そう言って、彼等は洞窟を―――「黄泉比良坂」を出た



   ...end

導入はこんな感じかしらン?
実は『UX』で『鉄のラインバレル』が恐ろしく強い上に面白かったので大きく影響されてる
ペインキラーの話で「黄泉比良坂」が登場してて、
且つこの話の主役である嘉藤嵩久の名前は加藤機関の総帥である加藤久嵩から

今更名前被ってたらどうしようと思い始めた

本当に書きやがった…乙です
28回も死んだということは既に達観してるな
蘇りの根拠は黄泉比良坂なのね…タブーを回避するためにロボで迎えに来たと
そして封印石というワードが出てきてるということはつまり…これはもう決定だな
連載での登場が楽しみだ

余談。避難所でも良いんだけどこっちに書いておこう

ロボットは遠隔操作で動いてる。操縦者こそが「黄泉比良坂」の契約者
何故ロボットかっつうと、「黄泉比良坂」でのイザナギ・イザナミの伝承は、
幾つもあるが一番多い共通点は“イザナギが振り返ったから失敗した”こと
振り返っても問題ないようにロボットに代行させていた、と
因みに契約者本人が直接会ったりしてもアウトなので、
本人は機械かなんかでおねんねしつつ脳でコントロールしてる感じ

え? ロボットとかの技術?
這い寄る混沌が一枚噛んでる時点で察しろ

封印石については連載『EXIA』第1話参照

>>264
早っ!? もうレスがつくとは…

>蘇りの根拠は黄泉比良坂なのね…タブーを回避するためにロボで迎えに来たと
>そして封印石というワードが出てきてるということはつまり…これはもう決定だな
呑み込みも早い、貴様一体何者だ……!?

>連載での登場が楽しみだ
一応、連載用にタイトルを4文字で合わせてみたけど、今後どうしようか考え中
そのまま連載にするか、他の連載で敵として出すか…むぅ

そうか……現代文明における最強の一角が絡んでいるのか……
チクタクマンは地味に人気な題材だと思うんですよ
「牛頭(ごづ)草をなめて病者を悲しみ
 断し車をあやつって迷方をあわれむ
 三界の狂人は狂せることを知らず
 四生の盲者は盲なることをしらず
 生まれ生まれ生まれ生まれ生の始めに暗く
 死に死に死に死んで死の終わりに冥(くら)し」


>>268
だから現実的な説明じゃなくてSFてきな説明を聞いてるの
死者蘇生してる地点で現実じゃないから

遅くなりました、お二方とも乙ですー!

>>230-235、>>244
言えない、適当に書いた部分なので>>244さんの言うようにここだけでは解けないなんて(ぉぃ
>>233さんの出題についてはキャラスレの方で恋に解答させます

>>236-242
影の人乙ですー
モブ黒服達の様子からして、裂邪はあまり好意的には受け入れられていないようで……少し心配でもありましたが
次の瞬間には完全に吹き飛んでましたwwwwうん、やっぱりもげていいwwww

それにしても異性どころか同性にも効いてしまうとは、恐るべし【イシュタルの惚れ薬】
…………ο-No.2やο-No.9辺りが狙ってたら面白いかも……
あ、でもο-No.=《感染系・及び殲滅担当部署》だから、伝染性のない薬は管轄外なんですよねww

>>245-248
書けないの人乙ですー!……何か皆さん、微妙に違う呼び方してますよね
そして勘違いしててすみません!ナージャさん、てっきり契約者だとばかり思ってたんですが、
まさかの【吸血鬼】そのものだったとは……読みが浅かったorz

そして重大な読み間違いがもう一つ、財団がいるこの話では組織が出ない物と勝手に勘違いしていましたorz
そういや第一話から黒服いたけど、普通に財団の人員だと思い込んでたよ!本当にごめんなさい書けないの人!

……気を取り直して本編の感想です
訳の分からない状況が苦手と言う割には弟/路樹君、意外と受け入れるの速いですね
そしてナージャさんと契約か……契約前から結構強かった気もするけど、これ以上強くなるのか……!?
よく考えたら、この世界組織と財団が存在するんですよね。例えるならゼネバス帝国とガイロス帝国、もしくは大ショッカーと財団Xが一緒にいるような物で。ナージャさんは財団側、ジルりんも組織とは敵対状態……あれ?もしかしなくても、路樹君が契約したら自動的に財団側?
後、ナイフとフォークで容赦なく腕を刺す悲喜君は、総統ジルりんの影響を受けていると思いましたwwww

>>262ー263
改めて影の人乙ですー!
EXAMでしたっけ?一話目の周りからジワジワと話が始まりつつある緊張感
「首塚」の将門公や「組織」をも手中に収めんとする嘉藤嵩久の野望、しかもその手には【黒い男】が集めていた都市伝説を封じた石
更に[ピーーー]ば器が大きくなる→黄泉比良坂まで迎えに来てもらえば蘇生可能という無限ループ……これは強敵になりそうな
連載楽しみにしています!

そういえば彼の様な不滅の存在はともかく、不老/不死と言った存在は器が大きくなる事は無いんでしょうか
うちのNo.0は【天界の桃】と契約していますが、効果って『死なない』というより『一歩手前で[ピーーー]ない』だし……

うわぁぁぁぁぁぁとんでもない凡ミスを!?
ごめんなさい影の人、EXAMじゃなくてEXIAでしたorz

>>269
「チクタクマン」は超便利よ
機械の身体だから兵器だらけで戦闘シーンにも困らないし、
作者次第でどんなものにも化けるでしょう
このスレで使ってたのは、八尺様の人とプラモの人と俺と……他にいたかしら

>>271
つっても話の根幹に関わるんで、申し訳ないけどはっきりとした回答は控えさせて頂きますね
今言えるのは似たような境遇のキャラがいらっしゃるってことくらい

>>273
>モブ黒服達の様子からして、裂邪はあまり好意的には受け入れられていないようで……少し心配でもありましたが
いや、多分綺麗&可愛い女の子に囲まれてた所為
しまったな、“憎々しげな視線”から“「リア充もげろ」と言わんばかりの視線”に訂正しようかしら

>それにしても異性どころか同性にも効いてしまうとは、恐るべし【イシュタルの惚れ薬】
契約しなくても簡単に作れるってのがまた厄介なところ
因みに作成方法はグループSKIT編著『本当に怖い世界の呪文』より引用

>書けないの人乙ですー!……何か皆さん、微妙に違う呼び方してますよね
本来そもそも違う名前で活動してたから問題ないz(切り刻まれました

>EXAMでしたっけ?一話目の周りからジワジワと話が始まりつつある緊張感
もしかして『EXIA』かしらン?

>「首塚」の将門公や「組織」をも手中に収めんとする嘉藤嵩久の野望、しかもその手には【黒い男】が集めていた都市伝説を封じた石
「黒い男」も性質の悪い奴でね
嵩久のような者に都市伝説を売ったり、また前回裂邪に殲滅された「亞楼覇」のような連中に『エフェクター』を売って、
儲けた金で『EXIA』のゼノビアが都市伝説を封印した「要石」を買い取る
金は天下の回り物です

>そういえば彼の様な不滅の存在はともかく、不老/不死と言った存在は器が大きくなる事は無いんでしょうか
俺的見解だけど、一度“死”を通した方が良いと思うの
「ゾンビ」みたいな元から死んでるのとか、「テュポン」みたいなそもそも死なない奴じゃなくて、
どちらかと言えば「不死鳥」や「輪廻転生」のような生と死を繰り返す感じの
どっちも使われてたからどうせならってことで「黄泉比良坂」使ったけどね

>>274
>ごめんなさい影の人、EXAMじゃなくてEXIAでしたorz
お気になさらずですよン
そろそろそっちの方とかも動かしたいんだけどなぁ……脳と手が動かない(※主にスパロボの所為です

>>285
寝る前に覗くんじゃなかったww

>>288
おはようwww

「はいカットぉ! 一旦昼休憩入ります!」

そんな声と共に、緊張から解放された撮影スタッフやボクを含めた出演者達は、
身体を伸ばしたり談笑したり、一気に休憩ムードに入った
今日はとある学校の校舎でのドラマの撮影
聞いた事もない漫画が原作らしいけど大丈夫なのかな

「倖子ちゃん、お疲れ」

「あ、マネージャーさん、有難う御座います」

ボクはマネージャーからドリンクを受け取った
そうそう紹介がまだだったね
ボクは岩清水 倖子(イワシミズ・ユキコ)
歌も女優業もトークもバラエティもそつなくこなす現役中学生の超売れっ子アイドル
…っていうのはちょっと古いかな
このドラマの主演女優でもある、まぁ可愛いから仕方ないね
最近じゃ何とかミサっていう電子アイドルが流行ってるみたいだけどあんなのに負けるもんですか

「撮影開始は何時頃ですか?」

「14時って言ってたから、外に出る時間もあると思うよ」

「ふーん、じゃあボクはちょっと失礼しようかな」

「え、何処へ?」

「女の子が何も言わずに立ち去るって事は一つしかないじゃないですか
 そんな事も分からないから何時まで経っても彼女が出来ないんですよ」

「うぐ……ひ、酷いな倖子ちゃん……」

「というかもうすぐ高校生になるんですから、いい加減“ちゃん”付けで呼ぶのやめて下さい」

マネージャーさん罵るの愉しい
一通り遊んだらボクは撮影現場だった教室を出てお手洗いに向かった
といっても、それはただの口実に過ぎない
ボクの真の目的は――――

「……やっぱり。困るんですよね、撮影現場でうろつかれると」

ここは校舎の4階
廊下に這い蹲る、スーツを着た男の人
下半身が無いその人は、内臓を引き摺りながら腕を足代わりにして歩いていた

「足……足、を、よこせ………」

「残念ですね、ボクの美脚はボクだけの物だからそう簡単に譲れません」

「よ、こ、せ……!!」

男の人―――「テケテケ」は猛スピードでボクの方へ近付いてくる
「テケテケ」と呼ばれるこの都市伝説は腕だけのクセに最高時速150kmで走れるという
でも運動神経抜群のボクならこれくらい簡単に避けられる

「というかこんな可愛い女の子に下半身もないのに襲い掛かるなんて一体何がしたいんですか?」

ボクはスマートフォンを取り出した
こんな状況なのにどうしてか、って?
都市伝説を目の前にこうして平然としてるのに分からないなんて鈍感ですね、だから誰も寄りつかないんですよ
―――戦う為に決まってるじゃないですか!

「『エフェクター』、スタートアップ♪」

スマホのディスプレイ上で『EFFECTOR』のアプリが起動して、3分からカウントダウンを始める
ここからがボクの裏の顔という訳です

「足……足………!!!」

「テケテケ」がまた襲い掛かってくる
執念深い男は嫌われるってことを身体で思い知らせてあげましょう
すーっ、とボクは大きく息を吸って、

「魂ィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」

呂布トールギスさん大好きです
それはさておき、ボクが腕を突き出すと、掌から光が飛んでいって「テケテケ」を弾いた

「ッ………!?!?」

ボクは「アイドルは排泄しない」の契約者
本当は戦う能力すらなかったけれど、偶然手に入れた『エフェクター』のお陰でそれができるようになった
前に会った同い年くらいの男の子(ボクを知らないと言ったどうしようもない世間知らず)によれば、
「都市伝説の解釈を歪めて力を得られるが、その代償が必ずある筈だ」ということらしい
事実、ボクは“老廃物を排泄しない代わりに、エネルギーとして体外に放出する”力を得る事が出来る
それも3分という極短い時間だけなんだけど
“代償”が何なのかはボクには分からない
でも、可愛いボクの活躍を見て、歌を聞いて、笑顔になってくれる人がいるのに、
それを壊す奴等がいるのなら、アイドルとして放ってはおけない
だからボクはあの男の子の忠告を振り払った

「アイドルパァーンチ!!」

漲る力を拳に集めて「テケテケ」の脳天にぶつける
「テケテケ」は床に叩きつけられて、光の粒になって消えていった

「ふぅ、これで良し、っと。お昼食べに行こうかな」

表は老若男女皆を笑顔にする超可愛いアイドル
裏は都市伝説をやっつけて皆の笑顔を守る超可愛いヒロイン
スタジオでも現場でもお茶の間でも、学校でも路地裏でも戦いの場でも
何処でだってボクは強く輝き続ける
ボクの名前は“Ruby”―――“宝石”の岩清水 倖子


   ...CUT!

前に大王っちが避難所で言ってたことを覆してやるテスト
前々からアイドルキャラ出してみたかったからこれはこれで満足
ガノタ…と呼べるのかは知らんが『SDガンダム三国伝』が好き、プラモも作ってる(誰にも言えない趣味だったり
名前は避難所でも好みだって書いたモバマスの俺の妹・輿水幸子ちゃん
ボクっ娘にする予定は無かったが、“私”で書いたら「これ蓮華とモロ被りだ……」ということで変更
俺のキャラだとボクっ娘は新鮮だから結果オーライ?

携帯アプリ型『エフェクター』は頒布しやすい代わりに発動時間が短い欠点がある(必要なデータをスマホに送るだけで、スマホ自体が『エフェクター』ではないから。要はスマホを簡易『エフェクター』にしてる
偶然ってのがどういう経緯かはお察し下さい
同年代の男の子は言わずもがな
あと何故か脳内で作中時間が2012年1月辺りになってたようで
高校は中央高校に行かせる予定、れっきゅんや恋ちゃんと同じクラス
とりあえず誰かれっきゅんもいでこい

>>290-292
暗部ラルの人乙ですー!
……成程、こういう風に歪m……もとい解釈の方向を広げられるのがエフェクターなんですね
“Ruby”って事はR-No.所属か、だったら新学期を待たずとも裂邪には会えそうですね
しかし最近の裂邪は本当に暗躍してるなぁ……まるで這い寄、おっと誰かが玄関のチャイムを(ry

>ガノタ…と呼べるのかは知らんが『SDガンダム三国伝』が好き、プラモも作ってる(誰にも言えない趣味だったり
紫亜がSDシナンジュを片手に目をキラキラとさせているようです

>高校は中央高校に行かせる予定、れっきゅんや恋ちゃんと同じクラス
何気に遠距離相手をさせて無いので、勘違いで恋と戦わせてみたい(ぉぃ

>とりあえず誰かれっきゅんもいでこい
またかwwwwまた奴の餌食がwwww

♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪




朝起きるのヤじゃないの?


お勉強するのヤじゃないの?


出張・残業ヤじゃないの?


掃除に炊事に洗濯ヤじゃないの??



“ナンもカンも面倒な世界(コンナトコ)から逃げ出して


 死ぬまで、いや死んでもずぅーっとだらけられたら良いのにな”


そんなアナタ達のワガママ・ユメ・キボー


叶えられるトコ知ってるよ



「ワタシと一緒にハッピーになろう♪」



Welcome to the Cyber World!!


争い・苦しみ・痛み無いセカイ


Welcome to the Cyber World!!


↑↓←→無し無しなセカイ


もう怯えなくても頑張らなくても祈らなくても平気だから


皆もおいでよ、電脳世界(サイバーワールド)へ!



♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪

《皆ー! いつもワタシの歌を聴いてくれて有難う!
 今日も1日、ワタシと一緒にハッピーになろうねー♪》

「いつ見ても聞いても可愛いなー、終音(オワリネ)ミサたん…」

真っ暗な部屋、煌々としているパソコンのディスプレイに映し出された動画を視聴しながら、男性は1人呟く
動画には、腰まで届きそうなクィンタプルテールの少女のCGが歌って踊っていた
その動画のタイトルは、『【終音ミサ】Welcome to the Cyber World【混ジリナル】』

「今まで色んなボカロ曲聴いてきたけど、ミサたんの声は本物の人間みたいに透き通ってて、
 耳じゃなくて心で聞いてる感覚になるんだよなー
 でも何処からも発売されてないってのもミステリアスで良いよなー
 あぁ、ホントにあるなら行ってみたいな、電脳世界…」

「ある訳ないよな」と溜息を吐き、男性は何気なしに己のメールフォルダを開いた
直後、彼は「ん?」と驚いたような声を上げた

「……差出人が終音ミサたんの公式メールアドレス!?
 こっ、これはまさか!?」

早速開かれたメールの内容はこうだ
『こんにちは☆ 今日もハッピーしてる??
 毎日ワタシの歌を聴いてくれてホントに有難う!
 今日はアナタに感謝の気持ちを込めて、ワタシからのプレゼント!です♪
 中身が何かは…下のアドレスをクリックしてからの、お・た・の・し・み☆
 これからずぅーっと、ワタシと一緒にハッピーになろうね♪』

「うおおおおおおおおおおおおマジだったああああああああああああああ!!!
 ミサたんの歌を通算240時間聴くとミサたんのプレゼントメールが届くって噂はモノホンだった!!
 ネット上の都市伝説かと思ってたけど…てか10日もぶっ続けで聞いてたのか、感慨深いな
 違う違う、そんなことはどうでも良いんだ」

男性は気を取り直すと、
マウスを操作してポインタをアドレスの上に配置する
構えた人差し指が、ぷるぷると震え始めた

「し、新曲かな……コンサートの招待とか?……エロCGも良いなぁ…
 何にせよ、ミサたんのプレゼント…頂きます!!」

カチッ、とアドレスがクリックされた
瞬間、パッと画面が真っ黒になる

「ハァ!? ここでフリーズ!? マジかよクソッ、この低スペPCが!」

パソコンに八つ当たりする男性
顔を歪めて痛むを手を振りながら、真っ暗な部屋で明かりを求めた
その、直後だった

「あ母は母はハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハはっはハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハはっは母はっはハハハハはっはハハハハハハハハはっは母ははっはハハハハはっは母はっは母はっは母はっは母はっは母ははっは母はっは破はっは破はっは破はっは破はっは母はっは母ははっは母ハハハハハハハハはっは母はハハッハハハハハハハハはっははははははっはははっハハハハ母はっはははははっハハハハははっははははははははははははっははははははははははっはははははははっハハハハハハハハっハハハはっはははははは」

笑い声
耳を劈く様な、心を貫く様な、不気味な少女の笑い声
思わず耳を押さえたが、声は途切れる事なく彼の耳に届いた
振り返り、パソコンに視線を向けると、
ディスプレイに映っていたのは、楽しそうに笑うクィンタプルテールの少女だった

「み………ミ、サ……たん…………?」
「ねぇ、一緒に来てくれる?
 ワタシと一緒に、皆がハッピーになれるところへ」

少女は―――ミサは男性に向かって手を伸ばした
男性は徐々に耳を塞いでいた手を放すと、
その手を、ミサの方へと伸ばしていった
そして、ミサはがっしりと、彼の手を掴んだ









翌日、男性は遺体となって自室で倒れているのを家族に発見された
その表情は、今まで遺族が見た事がないという程とても幸せそうなものだったという
そして、傍にあったパソコンは“ようこそ、ハッピーなアナタ”と表示されたまま使用できなくなっていたらしい



   ...forced termination

勘の良い人なら正体がモロバレルっていう
昨夜書いた単発の倖子ちゃんがライバル視してる電脳世界の歌姫・終音ミサちゃんです
1レス目の歌詞は即興で書きました(キリッ

>>293-295
>……成程、こういう風に歪m……もとい解釈の方向を広げられるのがエフェクターなんですね
まぁ“歪ませる”って表現の方が正しいのかもね
反対派が多い所為か見事に俺しか使ってないという罠

>“Ruby”って事はR-No.所属か、だったら新学期を待たずとも裂邪には会えそうですね
実は『Rangers』に誘ったのが裂邪だという

>しかし最近の裂邪は本当に暗躍してるなぁ……まるで這い寄、おっと誰かが玄関のチャイムを(ry
『幼星の懐刀』とも『幼星の側近』とも、はたまた『影武者』とも呼ばれてたり

>紫亜がSDシナンジュを片手に目をキラキラとさせているようです
>連投何度もすみません、『SDガンダム』全般じゃなくて『SDガンダム三国伝』が好きなんですか?
どうだろうね
『三国伝』からの『SDガンダム』全般っていう経緯で好きになってたりするかも知れん
メインはあくまで『三国伝』かしらン
魂ィィィィィィィィィ!!!

>何気に遠距離相手をさせて無いので、勘違いで恋と戦わせてみたい(ぉぃ
戦闘の制止なられっきゅんに任せられるね!(やめろ

>またかwwwwまた奴の餌食がwwww
倖子はれっきゅんには恋愛感情抱いてないけど、知り合いがいないからとりあえず絡んでくる感じ
れっきゅんを通して友達増やしたりもあるし、あとれっきゅんがボディガード的な役割を担ってる
誰か奴を殺せ(

>どう見てもチクタクマンフラグです、本当に(ry
何故バレたし
俺のニャルの「チクタクマン」は2形態用意してたり
1つは『赤い幼星』で日天を撃った時の人型ロボットみたいな
もう1つを今後主に使っていく予定

避難所を覗いた際に、自分の決定的な計算ミスに気付いた
……………………畜生orz

>>296-298
暗部ラルもとい、影ッポイドの人乙ですー!
まさかの二日続けてのアイドル短編、もしやこのまま連載か
……しかし何故だ、曲名や前の話から終音ミサ=チクタクとしか(ry
久々に元となった都市伝説が本気で分かりません、流石は影の暗部の人

でも10日間ぶっ続けで音楽聴いてたら、普通に餓死とかあり得そうな気もしますし……そこがヒントかな?

>勘の良い人なら正体がモロバレルっていう
つ  ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm822968

>反対派が多い所為か見事に俺しか使ってないという罠
でも2012年1月の時点では、もうアプリが配布されているんですよね……使ってみようかな、噛ませ役でも

>『幼星の懐刀』とも『幼星の側近』とも、はたまた『影武者』とも呼ばれてたり
>実は『Rangers』に誘ったのが裂邪だという
そして自らも、R-No.とは別の契約者集団を集めていると……これ何て裏切りフラグ
まあ裂邪に限ってはそんな事ないでしょうが……“裂邪”に限っては

>『三国伝』からの『SDガンダム』全般っていう経緯で好きになってたりするかも知れん
ならば三国伝からSDガンダムへと引きずり込んだのが先輩である紫亜と言うのはどうでしょう(ぇ
というか、紫亜もファンでいていいですか

>戦闘の制止なられっきゅんに任せられるね!(やめろ
……まあそうですよね、よく考えたら今の出井の能力じゃ止めるのは難しいし……

>倖子はれっきゅんには恋愛感情抱いてないけど、知り合いがいないからとりあえず絡んでくる感じ
>れっきゅんを通して友達増やしたりもあるし、あとれっきゅんがボディガード的な役割を担ってる
>誰か奴を殺せ(
何故そんなに死に急ぐwwwwww組織内にも彼女のファンとかいるだろうにwwwwww

>何故バレたし
何となくや

>俺のニャルの「チクタクマン」は2形態用意してたり
うちの【チクタクマン】はガイノイドに近い形態
未来のとある場所に存在していて、身体の半分が崩れ落ち腹から歯車やワイヤーがのぞいている
両腕で身体を支えつつ「ファァァァァイヴヴヴヴ」と鳴いて(?)いる
言葉は喋らないけど、相手の脳内に意味がそのまま伝わる感じですね

>>299
>久々に元となった都市伝説が本気で分かりません、流石は影の暗部の人
実は『夢幻泡影』でちょこっと出てるんだぜ
終音ミサの名前はその都市伝説から来てたりする
残念ながらミサ=「チクタクマン」では無いのですよン

>つ  ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm822968
懐かしいwwwww
そういやこれもシャドーマンだったなw

>でも2012年1月の時点では、もうアプリが配布されているんですよね……使ってみようかな、噛ませ役でも
あー、配布というか試作品が“偶然(真相は混沌の中)”に倖子ちゃんのスマホへメール添付で転送された感じなの
まぁ大っぴらじゃないけど裏サイト的なところで出回ってるかも知れない、法外な値段で(チャリーン

>まあ裂邪に限ってはそんな事ないでしょうが……“裂邪”に限っては
今のところは裏切り展開は無い感じですにゃー
うん、今のところは

>ならば三国伝からSDガンダムへと引きずり込んだのが先輩である紫亜と言うのはどうでしょう(ぇ
>というか、紫亜もファンでいていいですか
構わん、やれ(ゲンドウポーズ
宜しくお願いしますの

>……まあそうですよね、よく考えたら今の出井の能力じゃ止めるのは難しいし……
れっきゅんが止めるなら一番安全なのはシャボン玉でぽよんぽよんかな

>何故そんなに死に急ぐwwwwww組織内にも彼女のファンとかいるだろうにwwwwww
…考えて無かったな、「組織」メンバーの反応どうしよう
切り札組(ローゼ・蓮華・レクイエム・日天・ルート)は知らない設定で
それ以外(ロール・レジーヌ・ロベルタ・ラピーナ・凛々・羅菜・ライサ)はファンで
ライサが一番熱心、レジーヌは性の対象としか見ていない(

>うちの【チクタクマン】はガイノイドに近い形態
そういや俺、初めて「チクタクマン」の説明見た時、何故か脳に浮かんだのが電脳植物バイオス(ウルトラマングレート参照)だったのよね
あれの植物を配線とかに変換したらそれっぽいなーと

書き忘れ

>>299
>まさかの二日続けてのアイドル短編、もしやこのまま連載か
終音ミサは敵キャラ決定なので他の連載で準レギュラーとして登場致しますの
岩清水倖子ちゃんは今も悩んでる、連載にしたところでストーリーが浮かばない気がするんだ……

>>290-291
>>296->>297
シャドーメェンの人乙ですー
アイドル対決期待してるよ!
エフェクターアプリとか発想がいいな、なんか使ってみたくなる

歪みねえな!
投下した皆さんおつでした
アイドルキャラか……そうか……
私も考えざるをえないな……

さちことボカロが殴り合いの死闘を演じると聞いて
何?さっちゃんじゃなくてゆきこちゃん?

前回までのあらすじ
・左腕やら財団やら契約やらの説明回
・ナージャ「僕と契約して契約者になってよ」
・路樹「えー?」



「……という訳だ。都市伝説については理解したか?」

 僕は都市伝説について大体のこと(※このスレの>>2辺りに書いてそうなこと)を路樹に説明し終えた。
 弟も最初は戸惑っていたがもうこれ以上否定するのも不可能と悟ったらしい、結局深くため息を吐いて了解の代わりとした。

「それで路樹くん、君の素質を見込んで私からお願いがあるの」

「なんでしょうナージャさん」

「私と契約して契約者になってよ!」

「断りますね」

「それじゃあお互いの合意も有ったし契約を……にゅう?」

「ですよねー」

「当たり前だよ兄ちゃん、俺の契約の適正だって分かってない
 ナージャさんが強化型か限定解除型かも分からない
 そんな訳の分からない状態で契約するなんて馬鹿なことを言うと思ったの?」

 ぐうの音も出ない正論ぶりである。
 さすが僕の弟である。

「やはりあんた達兄弟なんだな」

「えーなに、ジルりんのところもそうなの?」

「ジルりんって呼ぶな!
 私はお前と戦ってた最中にやっとこさ契約したんだぞ
 それまでこいつだってうんともすんとも言わなくてさあ」

「あー、キツイわよねえ。追いかけても追いかけても届かないこの心」

「いやそういう問題じゃあないですからね
 何の情報も開示せずに契約してよ!とか言われても困りますし
 俺にだって心の準備やら損得勘定が有るんですから」

「まあそれもその通りね」

「そういうわけだ。今開示できる限りの情報を開示してください」

「解ったわ。それくらいじゃないと命を預けられないわよねえ
 じゃあまずは私の情報を貴方達に開示しましょうか
 私は半人半魔の清く正しい吸血鬼
 人間としては半端な心の器と、維持に経費のかからない都市伝説としての再生能力を持つ半端者
 父は真祖の流れを汲む由緒正しいルーマニアのドラキュラ
 母は日本の……確か薩摩から来たフリーランスの都市伝説狩り
 あの館に来ていたのは猿の手の発掘の為
 猿の手なんて言うけれども、それはもともと“とある尊い御方”の遺体の一部なのよ
 その“とある尊い御方”は死体がバラバラになってしまっててね
 そのバラバラになった死体のそれぞれが別の都市伝説と化して現在世界中で怪現象を起こしているの
 我々財団はそれを集めて死体を復元する計画だったんだけど……どうしてこうなったって感じ
 遺体がそれぞれに意思を持つことは知られていたけれども、その遺体がまさか悲喜くんを選ぶなんてね」

「……zzz」

 寝る子は育つというが、寝る都市伝説は育つのか?
 ジルりんはいつの間にかぐっすり眠ってる。

「つまり俺がナージャさんと契約すると俺は自動的に財団側に所属となるわけか」

「まあそうなるわね、あくまで財団のメンバーである私の協力者って扱いだけど」

「成程、成程、理解した
 ならば尚の事協力には積極的にはなれないな」

「あら、不思議ね何故かしら」

「俺には財団が正義とは思えません
 ナージャさんは直感で良い人だと分かる、しかも美人だしね」

 そいつお前の優しいお兄様を殺しかけたんですけお!!!111!!!!1!
 いい加減にしてくだち!!!!1!1111!!

「うふふ」

 そしてナージャさんはそんな照れないでください。

「だけども組織である以上、そこに与すれば自らの意思に反する行いを強いられたりするかもしれない
 それに自らと関係のない因縁が降り注いでくるかもしれない
 それを思うと素直にナージャさんと契約するわけにはいきません」

「そう……」

 僕はジルりんに臨戦態勢に移るようにさり気なく指示を出す。
 って、駄目だ寝てる。
 ナージャは確かに善良な人格だ。
 だがしかし、それ以上にこいつは自らの欲望を優先する。
 今この状況で何をしでかすかは分からない。

「兄ちゃん、悪いか?」

「構わん好きにしろ、そのせいで死ぬかもしれないけどその時は俺のせいだから好きに恨んでくれ」

 そしてこの状況で何をしでかすのか分からないのは弟も一緒だ。
 こいつはこいつで僕によって降り注ぐ迷惑を意に介さない化け物じみた精神と肉体の持ち主だ。
 僕に散々振り回されている男ではあるが、自らが納得しない限りこいつは絶対に何にも従わない。
 僕に振り回されているのも結局はこの弟の優しさなのだ。

「まあ、路樹くんの危惧する事態が無いとは言わないわ
 拒否権が有ると言っても理事長には逆らえない
 それは事実なんだからね
 でもね、私は貴方が欲しいのよ
 私の大好きな強い身体と、それに心。そして貴方と契約すれば“左腕”に選ばれた悲喜くんを間違いなく私たちの側に加えられる
 路樹くんだって財団の力を使えるというのはとっても便利よ?
 互いにとってメリットは大きいわ」

「そうでしょうね、メリットは大きい
 ですがそこに正義は?
 財団が真っ白な団体じゃあ無いのは貴方自身が言ったことです
 俺と契約したいならばナージャさんは財団を抜けてもらいます」

「ふぅん……解ったわ。じゃあこうしましょう
 財団の団員権を私が悲喜くんに渡す
 そして私は貴方と契約する
 どうかしら悲喜くん?」

 考えてみる。
 財団の一員になれば取材のネタが増えるかもしれない。
 あとコネで著作を出版とかもあるよなあ……?
 
「喜んで!」

「え、ちょ、兄ちゃん……」

「いいだろ路樹! こんどこそ面白い話書けるぞ!」

「いや俺は別に構わないけど……
 別に兄ちゃんが勝手する分には気に入らなきゃ見捨てれば良いし」

 確かに偶に見捨てられるのだ。

「じゃあ決まりね。ただし条件が一つ。来なさい不知火」

 ナージャは指を弾く。
 すると突然僕とジルりんを包み込むように火柱が登る。

「はわわわ!? 燃える! 燃えちゃう!
 …………と思ったら熱くない!
 路樹、これなにが起きてるの?」

 ジルりんの言うとおり熱くない所を見ると閉じ込めるためだけの炎だろう。
 
「只の人間が其処までいうからには力を見せてもらうわ
 お兄様と同じようにね」

「ナージャさん、契約を誘ってきたのはそっちだろう?」

 僕は軽口を叩くような口調で彼女を咎める。

「そうね、でも今の時点で私は只の人間相手に結構譲歩してるつもりなのよ
 なのに路樹くんったらそれ以上に無茶言うんだから腹も立つじゃない
 理想を語る人間は大好き、でもそれに力の伴わない人間は腹が立つ
 私は現時点では路樹くんのことを優れた契約相手としか認識していない
 だから契約条件も譲歩してイーブン
 だけどそれに加えて共に戦うに値する人間と認められるならば更に譲歩してあげようって話よ」

「でも……」

「兄ちゃん、別に構わないよ
 確かに男が口だけってのは情けないからな
 ナージャさんが人間を越えた存在で、俺みたいな普通の人間が好き勝手言える力関係じゃあないのも分かる
 独善的で自分勝手なりに譲歩してくれているのは分かる」

「バカやめろ路樹、ここは兄ちゃんに……」

「だがいくら譲歩されようが心配されようが男として譲れない部分を譲ってくれなきゃ意味が無い」

「ふふ、言うことだけは素敵な殿方」

 ナージャはあの時と同じ心を腐らせる微笑を浮かべる。
 これは不味いかもしれない。
 なのにジルりんの方を見るとまた眠たげな顔だ。
 ……何故だ?

「おいジルりん」

「私めんどいからパス、放っといてやれよ“お兄ちゃん”」

「え?」

 どういうことだ。

「先手は譲るわ」 

「ナージャさん、例え試験でも貴女が化け物でも女性に自分から殴りかかるのは好きじゃない
 こっちこそ先手は譲らせてもらうよ」

 二人は同時に椅子から立ち上がって向かい合う。

「じゃあ遠慮無く」

 そう言ったと同時に弟はナージャの至近距離まで詰め寄る。
 そしてその間に彼女は服の中から拳銃を取り出していた。
 弟はナージャの拳銃を持った手首を拳銃ごと殴り抜けた。
 弾き飛ばされる拳銃、驚愕するナージャ。

「不知―――――――」

 成程、すぐに手段を切り替えるのは正しい、だがそれでも遅い。
 不知火を呼びだす途中にその言葉は途切れる。
 弟は既に拳打から肘打ちを決めていた。
 
「ああもう!」

 ナージャが乱暴に腕を振り回すが弟はボクシングのフットワークでスルリと射程の外に出る。
 そしてそのギリギリの距離から掠るように弟の拳がナージャの指先や関節を抉る。
 蹴り足を回避してローキック、拳を繰り出す為の前に確実にめり込むジャブ。
 ナージャという魔人は確かに強い。
 だがその強さとは圧倒的な基礎スペックに支えられた強さだ。
 故に油断する。
 出端を潰され、一撃をいなされ、翻弄される。
 キックボクシングをやっている路樹からすればむしろ戦ってて楽しい相手だろう。
 だが、だからこそ両者がエキサイトしそうで戦わせたくなかった。
 業を煮やしたナージャが自らの身体能力を生かして弟の背後を一瞬でとる。
 しかしそれに合わせて弟が真後ろに向けて回し蹴りを放っていた。
 足を取られて転ぶナージャ、路樹が馬乗りになってそのまま額に正拳突きを叩きこむ。
 ゴキッとか嫌な音が部屋に響いた。

「むきゅー……」

 目をグルグル回してナージャさんは気絶した。
 それと同時に僕達を包む炎が消える。

「なんてこったナージャが殺されちゃった!」
 
 ジルりんに目配せをする。
 彼女はコクリと頷く。

「「このひとでなし!」」

 僕とジルりんは息を合わせて叫ぶ。
 地味にサウスパーク版である。

「……兄ちゃんこれ持って帰って良い?」

「どうぞお好きに」

 弟はそのままナージャさんを担いで部屋を出て行ってしまった。
 ちなみに部屋は荒れ放題のままである。
 あのひとでなし共め。

【僕は小説が書けない 第十二話「You bastard!」 終わり】

「なんてこった、ケニーの殺害シーンまとめ動画にハマっちゃった!」
「このひとでなし!」

乙ですのン
悲喜くんと息ピッタリなジルりんハァハァ
しかしロッキーやりすぎだwwwwww
最終的にもはや物扱いだしwww
持って帰った後はどうなっちゃうのかしら、投下できないスレで待ってて良い?(

>>302
>アイドル対決期待してるよ!
この2人がそもそも出会うかどうかも予定してないというorz

>エフェクターアプリとか発想がいいな、なんか使ってみたくなる
そんなこと言われたら照れすぎて脳内構想まとめちゃう

●音声起動システム搭載
 メイン画面で「『エフェクター』起動!」みたいなことを言うと勝手に起動します
 “みたいな”っつぅのは各々で勝手に決められるって感じ
 最初に声と合言葉を設定しておくのね

●起動時間は3分間
 一度使用すると1時間は再起動不可能
 だからといって1時間経ってすぐ使うと何らかの悪影響が出るかも知れないので2~3時間置く事を勧める

●“悪影響”についてはまだ決めてない
 ただ、『エフェクター』を考案した本人によると、
 “『エフェクター』と他の都市伝説を制御する道具を併用すると契約者の器に負荷がかかって破壊される”そうなので、
 乱用=同化現象と判断して良いでしょう
 スパロボの所為でラインバレルとファフナーが気に入った私としては、
 “都市伝説との同化”と“想像力の低下による脳機能障害”の二択で揺れてる

>>303
>私も考えざるをえないな……
皆もアイドル書こうぜ
つってもアイドル量産されても困るけどな☆
『GKC48』(※Gak-Ko-Cho 48)とかマジ勘弁

>>304
>何?さっちゃんじゃなくてゆきこちゃん?
ゆきこちゃんなの、ユッキーなの
流石に“さちこ”はモロ過ぎるwww


わたしの学校の女子トイレにはトイレの太郎さんが出たそうです

今はいないそうです

あるとき、ひとりの女の子が放課後トイレの太郎さんを呼び出しました

女子トイレの4番目の個室を4回叩いて、「太郎さん」と呼ぶと、返事がありました

扉が開くと、中から白のシャツに黒の半ズボンの太郎さんが出てきました

太郎さんは女の子にボタンの付いた箱を見せて、「ボタンを押してね」と言いました

女の子は気味が悪くなりましたが、言われた通りボタンを押しました

すると太郎さんは

「これでぼくは自由になれた。お礼にぼくが花子さんにやりたくてたまらないことを、君にもやってあげるよ」

と言いました

次の日の朝、その女の子がトイレの中でおしりから血を流して死んでいるのを用務員のおじさんが見つけたそうです

おしりの中には電球が13個もつめ込まれて、全部われて、それが突き刺さって死んでしまったそうです

その日から、学校の女子トイレに太郎さんがあらわれることは無くなったそうです



これが、友達の友達から聞いた、わたしの学校に伝わるトイレの太郎さんの話です

今朝方乾燥書いたと思ったら書いてなかった笑えない

はがけないの人、乙です
ナージャさんの誘導的な臭いがしないでもない勧誘に
なんとなくあの人臭さを感じつつ
そのナージャさんを数秒でボコにした路樹くんに謎の爽快感を感じました
このやり取りを傍観してたジルは何だか生あったかい目をしてそう

そして影音シャドの人も乙です
エフェクターはプログラムのタイプもあるのか、なるほど
アイドルは排泄しないと言うことは富江良知緒さんと同じステージの人間というわけですね
しかし何かな、れっきゅんはやっぱり捥がれる運命にありそうですね
これって絶対アイドルvsボカロvsローソンクルーの三つ巴合戦に発展しますよ、うん
そして終音ミサについてなんですけどね
元ネタはたしか夢幻泡影にも出てきましたよね、それも南極事件あたりに
あれねえ、何か気になるんですけどねえ
いやその前にもしそうだとしたら
あの蓮華さんが見逃しますか?おかしいと思いませんか、あなた
これは絶対裏がありますよ、ねえ

乙ですのン
太郎くん怖ぇ!? てか花子さんに何しようとしてやがったこのクソガキ!?
バッドエンドなのに色々謎とツッコミどころが多くて何故か噴く

>>312
>これって絶対アイドルvsボカロvsローソンクルーの三つ巴合戦に発展しますよ、うん
何故ローソンwww

>あの蓮華さんが見逃しますか?おかしいと思いませんか、あなた
(蓮華ちゃんそんな万能キャラだっけ)

>これは絶対裏がありますよ、ねえ
(視線反らし

>>305-310
書けないの人乙ですー!
戦闘潮流かと思ったらSBRだと!?
あ、でも財団の目的は“英雄”を作る事だったはず。かつての偉人や英雄の復活を目論んでても、不思議じゃないか
……ただ、その【猿の手】って後一回分の願いしか叶えられないんですよね?後の2回分はどこで……?

そして、ナージャさんの油断もあったとはいえ半魔人を一方的にwwww路樹くん強ぇwwww
悲喜くんとジルりんはもう付き合っちゃえば良いと思うよ!

>>311
太郎さんの人乙ですー!
太郎くん……いや、太郎さん怖wwww
「自由になれた」って事は、封印でもされていたんだろうか……
とするとあの女の子のせいで、こいつが世に解き放たれた事に!?

間違えた、>>310は影暗部の人だww

>実は『夢幻泡影』でちょこっと出てるんだぜ
なん、ですと……!?

>そういやこれもシャドーマンだったなww
実は、擬人化するまでシェイドのイメージがこれでした
……でも今考えると、『ライトの色で能力が変わる』って面白いですよね

>あー、配布というか試作品が“偶然(真相は混沌の中)”に倖子ちゃんのスマホへメール添付で転送された感じなの
>まぁ大っぴらじゃないけど裏サイト的なところで出回ってるかも知れない、法外な値段で(チャリーン
うわぁ、真っ黒だーwwww
>(チャリーン
しかしこの音、どこかで見たような……?

>構わん、やれ(ゲンドウポーズ
>宜しくお願いしますの
こちらこそありがとうございますー

>れっきゅんが止めるなら一番安全なのはシャボン玉でぽよんぽよんかな
それ、事実上ミナワが止めてません?

>切り札組(ローゼ・蓮華・レクイエム・日天・ルート)は知らない設定で
裂邪に惚れてるorもう相手がいるグループですねわかり(ry

>レジーヌは性の対象としか見ていない(
ぶれないwwwwそして恐らく、ο-No.2にとっては軽い嫉妬の対象wwww

>あれの植物を配線とかに変換したらそれっぽいなーと
あー成程、しかしグレートとはまた渋い所から……


俺が風呂から上がると、姉貴が居間でパソコンやってた


弟「何やってんの」

姉「ウイルス探してんの、ウイルス」

弟「…は?」


どうしよう、テロでも始める気なのか


弟「ウイルスっておま」

姉「都市伝説よ、ウイルスの都市伝説、コンピュータウイルスの」

弟「なんだ、また都市伝説か」

姉「パソコンに感染すると夜中に女の笑い声が鳴って
   それ聞いた人は魂抜かれてパソコンに取り込まれるんだって
   しかも、魂抜かれた人が今度はそのウイルスになってしまうってやつ」

弟「あほくさいな」

姉「ネットで調べてるんだけどさー、これが中々でてこなくてねー」

弟「は? じゃあどこで知ったの、その都市伝説」

姉「クラスの佐々木から」

弟「…ああそう」


テレビを付けてチャンネルをざっと見る

見ようとしたら、姉貴のケータイが鳴った


姉「もしもし、はい、お花ちゃん? どしたの?」

姉「ええと、分かった! 今すぐ行くから!」


姉「弟よ、今から第2小学校に行くよ! 20秒で支度しな!」

弟「は?」

姉「用事よ、しかも緊急事態! 二人で行くわよ!」

弟「いや、俺、風呂入ったし、姉貴ひとりで行ってくれば…」

姉「何? 口答え? おーよしよし、口答えなわけね? んん!?」


コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ


弟「ちょっ姉貴っやめっふぐっふぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっ」


60秒後


俺は姉貴の拷問に屈服した、俺としてはよく持った方だと思う

こうして俺は姉貴の突拍子な用事に巻き込まれることになった

第2小学校に急行しないといけないらしい

こんな時間に? なぜ?


20分後


俺は姉貴の自転車に乗って第2小学校の裏門に来ていた

第2小学校といえば、姉貴が卒業した学校だ

俺の通う学校とは反対方向にある


弟「大体こんな時間に何の用なんだよ、もう9時回ってんぞ」

姉「校舎裏に回るわよ」


俺の言葉を無視して堂々と裏門から入っていく

姉は俺を振り回すとき、基本的に俺の話を聞かない

そしてそういうときは大抵俺が碌な目に合わない

早速いやな予感だよ畜生


姉「ここの窓って立て付けが甘いのよねー」 ガチャガチャガチャガチャ

弟「おいよせって、セコムのおっちゃんに見つかるぞ!」

姉「警備入ってるのって書類とかある職員室だけよ、それ以外はザルだから」


いいのか、第2小学校


姉「よし、ここから中に入るわよ!」


何だか犯罪の片棒を担がされている気分だぜ


結局、俺たちはめでたく校舎の中へと侵入していた


姉「懐かしいわねー、この埃っぽい空気とか」

弟「それで? 夜の小学校に何の用だよ」

姉「さっき電話してきた子は女子トイレで待ってるから急ぐわよ!」


はあ、何だそれ

ああやっぱり学校の怪談絡みですか畜生

そうなるともう確実にヤバいイベントとかち合うことになる

だから姉貴ひとりで行けって言ったんだ


姉は何だか楽しそうにずんずん怪談を登っていく

パンツ見せそうだぞと嫌味のひとつでも言っとくべきか

いや、もう、いい。もう、どうにでもなれってんだ畜生


3階まで上がった所で、姉貴は廊下へと出た

そういえば、3階女子トイレに出る花子さんって話を聞いた覚えがあるな


?「みーちゃん!」


前方の闇から小さい子どもの声が響いた

廊下の窓から入ってくる幽かな光のおかげで、おぼろげながら姿が分かった

白のシャツ、赤いスカート

そのイメージは、そのまんま「トイレの花子さん」だった


花「みーちゃん! たすけて!」


細っこい声でそいつは姉貴に抱き付いた

声が震えているような気もする


姉「どうしたのお花ちゃん? 何があったの?」

花「あのね、えっとね
   おとといね、人体もけいのお兄ちゃんがね、太郎さんが来るからにげろって
   そしたらね、人体もけいのお兄ちゃん、きのうの朝に、理科室の前でね
   バラバラになっててね、おしりに…おしりに…キュウリとか、ニンジンとか、いっぱいささっててね
   わたしがお声かけても、何も返事しなくなっちゃって、うう、ぐすっ」

姉「よく分かんないけど、ひどいことする悪ガキがいるのね!」

花「た、たぶん、太郎さんがやったんだと思うの
   それでね、わたし、こわくなって、きのうの夜は、音楽室にかくれてたの、そしたらね
   そしたらね、……ううううう!」


なんか花子さん、泣きそうになってるんだけど

姉貴はよしよしして落ち着かせている


花「わたしがいた、トイレに…トイレに…うううう!」

姉「弟、ちょっと女子トイレに入って見てきなさい」

弟「俺がかよ!」


チッ、仕方ねえな

決して怖いとかそんなじゃないからな

おい、勘違いすんなよ! 俺は怖いとかそんなんじゃないからな!


姉貴が俺に向かってライトを突き出した

これを使えということらしい

ったく、姉貴はこういうときはヤケに準備がいいよな


女子トイレはすぐそこだ

ライトを付けるが、なんだこの不気味さは

富士急ハイランドの子供だましなアトラクションじゃ、決して出せない凄味がワンワンと


姉「ちょっとアンタ、早く調べて来なさいってば」

弟「うう、うるせえ、い、今さくっと調べてだな…」


確か、3番目の個室だっけか

他は扉が開いたままになってるのに、そこだけ閉まったままになっている

手で押して開けろってか


ギッギィィィィィィィ


嫌な音を立てて開いた扉の向こうには


弟「ヒッヒィィ」


白のブロックタイルに赤い目の落書きがびっしりと書かれていた


姉「弟! どうしたの!」

弟「アバッバババババイ、目が、目がたくさん落書きされてる…」


おい、マジでビビったぞ、どうすんだコラ

やんのかコラ、ああん!?


弟「それと、何か、『何でいないの』とか、『花子ちゃん、一緒に遊ぼう』とかって書いてあるんだけど」

花「う、うら…」

姉「どうしたのお花ちゃん?」

花「とびらの…うらにも…」


扉の裏? 見てみると


弟「ヒィッ」


扉の裏にも赤いペンキか何かで目がびっしりと書かれていた

しかも中心には「お医者さんごっこしよう」とも書かれていた

ヤバい、なんか知らんが、これはかなりヤバいんじゃないかと思うよ


花「わたし、太郎さんにころされちゃう、たすけて、みーちゃん」

姉「あれっ、でも確か、ウチの学校って太郎さんの噂は聞いたことがないわ」


花「たぶん、第1小学校の太郎さんだとおもうの…ぐすっ」

姉「第1小の太郎?」


第1小学校は、第2小学校のさらに奥にある

この町にある中で、一番古い小学校だ

ああ、そう言えば聞いたことがあるな

トイレの太郎さんって怪談だ

なんでも女子トイレに出るらしく、別名「変態の太郎さん」と呼ばれてたはずだ


弟「とまあ、かくかくしかじかな話があってだな」

姉「何それ、危なさそうなんだけど…」

花「さいきんね、おばあちゃんが教えてくれたんだけどね
   その太郎さん、女の子のおしりにランプをつめこんで、つめこまれた女の子はしんじゃったって…
   どうしようみーちゃん…わたしも、おしりにランプつめこまれちゃうのかな…しんじゃうのかなあ…」


花子さん、涙声だ

姉貴がよしよししている

女子のケツにランプを詰め込む? それははじめて聞くパターンだな…


姉「その変態太郎がお花ちゃんを狙ってるのね! 許せないわね!
   とにかく、この学校は危ないから、私たちと一緒に逃げるわよ!」

花「え、でも…」

姉「大丈夫! 何だか変な予感がして、アレ持ってきて正解だったわ、女のカンってやつね!」


姉「弟、ライトこっちに向けなさい」


姉貴は鞄の中をしばらく引っ掻き回して、何かを取り出した

プラスチックっぽいカチューシャと、箱のようなものだった


姉「おじい様から貰ったものよ、お花ちゃん、このカチューシャを頭につけて」

弟「姉貴、なんだよその箱みたいなやつ」

姉「『エフェクター』よ、自縛系の存在をその場所から切り離すことができる代物」


姉貴は俺に箱を突き出した

なんか、De-Place-sserとか書いてあって、ボタンがひとつだけ付いていた


姉「んじゃ、行くわよ!」


姉貴は箱を床に置くと、思いっ切りそれを踏ん付けた

カチッと音がした


姉「お花ちゃん、気分はどう?」

花「ちょっと、頭が、へんなかんじです」


うっわあ、何だこれ、花子さんがつけてるカチューシャが何だか光ってるぽいぞ


姉「これでよし、とりあえずお花ちゃんを連れて家に帰るわよ!」


ああうん、そうだね

変態の太郎なんかとかち合ったら、俺たちももれなくケツに詰め込まれるわけだろ?

バラされた人体模型みたいに

そんなのゴメンだし


姉「運悪く変態太郎と遭遇したら、アンタ、戦って、私たちを逃がしなさいよ!?」

弟「おまっ! 俺を捨て石にするつもりか!?」

姉「あんた、『座敷わらし』ちゃんと契約してんだから、何とかなるでしょ? おじ様から格闘技も習ったんだし」


おい、それを言うのは反則だろうが

とにかく厄介事に巻き込まれるのはゴメンだぜ


弟「速攻でここから逃げるぞ」

花「太郎さんは夜中にくるから、今からにげたら、見つからない、かも、です」

姉「よし、んじゃ行くわよ!」


そのときだった


?「はぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁぁこぉちゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああんんんん!!」


その声は、階段の方から響いて来た

階段の下からだ


?「はぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁこぉちゃああああああああんんんんん!あぁそびぃぃましょおおおおおおおお!!
   ポォゴwwwwwwwwwwポゴッwwwwwwwwwwポゴォッwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!!!」




 もくひょう

    「はなこちゃん」をつれて 「だい2しょうがっこう」から だっしゅつしましょう


 to be...?



 もくひょう

    「はなこちゃん」をつれて 「だい2しょうがっこう」から だっしゅつしましょう




?「はぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁこぉちゃああああああああんんんんん!あぁそびぃぃましょおおおおおおおお!!
   ポォゴwwwwwwwwwwポゴwwwwwwwwwwポゴォwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!!!」


 階段の方から響く不気味な声を聞くだけで鳥肌立った

 確認しなくても分かるぞ

 こいつが変態太郎だ


姉「まさか…今のが…変態太郎…?」

花「うそ…くるのはやい…!?」

弟「ここにいたら見つかるぞ! どこか隠れるところは!?」


ガチャガチャガチャ


弟「駄目だ、教室はしっかり鍵掛かってやがる…!」


?「あぁなごぉぉおぢゃあああああああんんんん!!」


姉「時間が無いわ! 男子トイレに隠れるわよ!!」


目と鼻の先にある男子トイレの、奥の個室に逃げ込む

女子が男子トイレに入って~だとか、3人でひとつの個室に入って~だとか、そんな話はナッシング

ふぉーがっちゃ、ふぉーがっちゃ、ふぉーがっちゃ、うおおおおおおおおう!

花子さんと姉貴を押し込み、俺も入りながら、音を立てないように扉を閉めて、鍵を差す


ガチャリ


弟(間に合ったか!?)

姉(変態太郎は!?)


ペタリ


今の音は、間違いない

やつだ

変態太郎が、3階の廊下にたどり着いたんだ、間違いない


ペタペタペタ ペタペタ ペタペタ


息を[ピーーー]

外からの足音が、いやでも耳に入る


?「はぁぁぁぁぁぁぁ、はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


足音が響くが、すぐ近くで聞こえるわけじゃない

まさか、女子トイレに入ったのか


コンコン コンコン コンコン


ノックの音が、聞こえてくる


?「はなこさん、ぼくだよ、たろうだよ、あそぼおぅよおぉ」


トイレで大声を出すときの、独特の響きがあって、怖い


?「はなこさん、あそぼう、あそぼうよ、たろうですよ、あそぼう?」


ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ


さっきの不気味な声に比べて、まるで友達を遊びに誘うかのような明るい声だ

これがかえって、余計に怖い

しかも、何か揺すってる音まで聞こえてくるんだが

これはあれか

扉を無理矢理引っ張ったり押したりしてるのか


花「――――っっ、――――っっっ!」


俺のすぐ横では、花子さんが姉貴に抱き付いていた

めっちゃ震えてる


?「はなこさん、あそぼう、おいしゃさんごっこしよう?」


そんな中、やつの声だけが俺たちの耳に突き刺さる

静かすぎて花子さんの震えてる息が分かるくらいだ


?「ぼくね、はなこさんと、おいしゃさんごっこ、ずうっと、ずううううっと、やりたかったんだよ?」

?「あのね、はなこさんのね、おしりにね、でんきゅうを、ぎゅっ、ぎゅっ、って、やってみたいんだ」

?「それでね、はなこさんがね、うんうんしてね、でんきゅうをね、ぽこぽこ、だすの、おもしろいよ?」

?「はなこさんもね、すっごく、たのしくなるとおもうんだ、いっしょにあそぼ? ぼくといっしょに、あそぼ?」

?「でもね、ほんとうにやりたいのはね、それだけじゃあないんだよ?」

?「ぼくね、おきにいりのね、コーラびんを、もってきたんだあ!」

?「これをね、はなこさんのオ××にね、ぼくが、ぬっぷぬっぷして、×れてあげるの!」

?「それでね、それでねポゴォwwwwwwwwwwww」

?「はなこさんがね、うんうんしてねwwwwwwwwはなこちゃんがね、コーラびんを、×むんだよwwwwwwwwwwww」

?「そしたらね、ぽこんてねwwwwwwwwwwwwwwぽこんてwwwwwwwwwwwwwwwwポゴォwwwwwwwwwwwwwwwwww」

?「はなこちゃんのかわいいオ××、ピンクのオ××、まっかになって、ホオオオンwwwwwwwwwwオホオオンwwwwwwwwwwwwww」

?「はなこちゃん、なみだめで、ぷるぷるして、ウォww、ゥヲwwww、ヲwwwwww、ヲオオオオオオオオオオンンンwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

?「はなこちゃああああああああああああああんんん!
   いっしょにおいしゃさんごっこしよおおよおおおおおおおおwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!!!!」


俺の横で花子さんのガタガタ震えるのが、一気にひどくなった

俺も、今にも叫び出してしまいそうだ


はっきり分かった

こいつはマジもんだ

ヤバいなんてもんじゃない


?「はなこちゃん、いないのかなああああああ!?」

?「じゃああああああ、はなこちゃんとおお、かっくれんぼだあああああああ!!」

?「どぉこぉかぁなあああああああああんんん!!」


誰かが大きく息を飲んだ

誰だ、姉貴か?

まずいぞ

太郎がトイレを探し始めたら

それで男子トイレまで探し出したら

俺たちがいるとバレたら


逃げられん


?「はなこぢゃあああああんは、どこかなああああああああ?

   トイレにかくれてるのかなああああああああああああ??

   ああああ、わかったぞおおおお!! おんがくしつだなあああああああんんん!!」


ペタ ペタペタペタ ペタペタペッタペッタペッタペッタ


急に足音が遠ざかっていく

女子トイレを抜けて、どこかへ行くってわけか

つまり

つまり、助かった、のか?

思わずため息が漏れた

自分の吐く音が震えてるのを、はっきり感じた


姉(あいつ、行ったの…?)

弟(多分…)

姉(弟、確認してきなさい)


なるだけ、音を立てないよう鍵を外す

指が震えやがる


ガチャ


意外にも大きな音に、心臓が飛び出そうになる


姉(アンタ何やってんのよ!?)


そのセリフ、自分で自分に言ってやりたい

だが幸いか、足音は遠くの方でペタペタ聞こえてる

戻ってくる気配はない

忍び歩きでトイレの出口に近づいていく

一応、確認だ

ゆっくり顔を出し、左右を見る

廊下の先は闇一色だが、あいつの姿は見えない

足音は聞こえるが、階段の方からではない

多分、階段とは反対側の、廊下の先に進んでいったんだろう


弟「姉貴、大丈夫だ、あいつの姿は見えない、今のうちに逃げるぞ」


押し殺した声で姉貴に声を掛ける

逃げるなら、今しかない


俺たちは、急ぎ足で、しかし、音を立てないように、階段を下りていた

向かう先は決まってる

1階まで下りて、俺たちが侵入した窓から脱出する

これだ

先頭をきって俺が進み、花子さんは姉貴に半ば抱きかかえられるように後に続いた


弟「姉貴、たしかあいつ、音楽室がどうとか言ってたよな?」

姉「音楽室はこっちの階段とは反対側の階段の奥に
   旧校舎の渡り廊下があるんだけど
   音楽室はその旧校舎の3階、だから多分急げば見つからない!」


小声の怒鳴り声でやりあってるうちに、もう1階だ

だが


弟「姉貴ストップ!」

姉「なによ!?」


姉を制し、ポケットに突っこんだままのライトを取り出した

変だ

1階に着いたなら、廊下側の窓から外の電灯の光が少しでも入ってくるはずだ

それに1階には児童玄関もある

じゃあ、なんでこんなに暗いんだ?

ライトを点けて、前を照らす


弟「ウグゥッ」


思わず変な声が漏れた

あの野郎、やりやがったな


防災扉が閉められていた

それだけじゃ無かった

防災扉には大きな目が書かれていた

赤い字で「に が さ な」とも書かれている

階段の手すりに赤いペンキ缶が吊り下げられている

ペンキくささと、まだ文字が濡れてるっぽいから、さっき書かれたんだろう

俺たちが来たときは普通にこの階段から来たんだ

間違いない

やったのはあいつだ


姉「何よ、これ…、あ、お花ちゃんは見ちゃダメ!」

弟「多分、太郎のやつがやったんだ…俺たちを逃がさないつもりだ」

姉「馬鹿なこと言わないでよ! 弟、小さい方の扉あるでしょ、とっとと開けなさいよ!」


防災扉の緊急口を開けということらしい

言われなくれもやるさ

ただね、さっきの文字の最後が不自然なまでに引き伸ばされて

扉のノブの部分までペンキで濡れてるんだよね

まあ、汚れ仕事は俺がするんだよね

グズグズしてる暇はない、ペンキまみれのノブをつかむ


弟「ダメだ、反対側からロックされてるのか…開かねえ」

姉「ちょっと、もっとしっかり押しなさいよ!…ったく!」


ノブを回しながら体重をかけるが、ビクともしない

姉貴も扉押すのを手伝ってきたが、ダメだった


弟「姉貴ダメだ、太郎の奴がロックしたんだ、ここから出るのは無理だ」

姉「じゃあどうするのよ!」

弟「何かないか…! 反対側の階段まで行くってのは?」

姉「アンタ! 反対側の階段って太郎が行った方向じゃない! 見つかったらどうするのよ!?」


良かった、安心したよ姉貴

てっきり俺を戦わせてその隙に逃げるとか言い出すかと思ったぜ

などとは口が裂けても俺は絶対に言わない


弟「じゃあ、廊下の反対側には?」

姉「突き当たりに決まってるじゃない!」

弟「そうじゃなくて、ほら」

姉「あ…非常階段…!」


そう、非常階段

小学校の校舎の脇には必ずあるはずだ


姉「朝になったら、誰かが小学校に入ってきたの、確実にバレちゃうけど…仕方ないわね」


姉貴、そんなのはどっかの誰かさんが防災扉にペンキで落書きしてる時点でバレるから


姉「そうと決まればさっそく」

?「はぁああああなぁぁぁああこ、ぢゃああああああああああんんんん!!!」




いきなりだった、心臓が飛び出そうになった

取り落としそうになったライトをあわててつかみ直す

ライトを自分の腹に当てた

スイッチ切らないと、ヤバい、なのに、手がヌルヌルすべる

さっきつかんだ、ノブのペンキのせいだ、ヤバい、マズい


声は、すぐ、近くで、聞こえた



?「ううううううう!!!
   こっちから、はなこぢゃ゛ん゛の゛に゛お゛い゛が゛す゛る゛よ゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


声はすぐそこだ

変態太郎は2階の階段にいるんだ

階段に向かって叫んでるんだ

ぐわんぐわんと太郎の叫び声が怪談に響いている



もし

このまま

あいつが1階に下りてきたら



?「あは、あは、あはは、ははははwwwwwwwwはははははっははははははああああwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!!!」


?「にがさないよ゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんんんんんんんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!!!」



ダンッ ダンダンッ ダンダンダンダンダンダンダンッッ







足音が

遠くなる


ようやく理解した

太郎は、階段を上がっていったんだ



見つからなかったんだ



急に力が抜けそうになるのを、こらえる


姉「行ったのよね…あいつ、行ったわよね…!?」


姉貴の声もいつもより上ずって、震えていた


弟「姉貴」


粘っこい唾を、喉の奥へと押しやった


弟「姉貴、にげるぞ」


姉貴はバタバタと音を立てて走り出した

俺は後ろを気にしながら走る

花子さんは俺が負ぶっている

姉貴には先導を頼んだ

自慢じゃないが、俺は姉貴より脚が速い


俺たちは2階に上がり、非常階段を抜けて、校舎の外へと飛び出した

非常階段から、裏門へはすぐだった

外の空気に触れて分かる

汗びっしょりじゃねえか


姉「と、とにかくっ、逃げるわよ! お花ちゃんは、後ろに乗って!」

弟「俺は走って後ろからついてくるからな!」

姉「当たり前でしょそんなの!!」

花「ヒッ…ヒッ…ヒッ…」


花子さんはさっきからしゃくり上げるような声を出している

そりゃ当たり前だ

あんなのが自分を狙ってるなんて知ったら、そりゃあ怖いとかいうレベルをかるく通り越す

俺だって怖かった

俺が花子さんなら堪え切れずに大声で泣き出してたかもしんない


花「ヒッ…ヒック…ううう、ヒック…」

姉「お花ちゃん怖かったね、もう大丈夫だよ、私たちがいるからね、一緒に逃げようね、うん」


ピィィィィガガガガガガッッ キ----------------------------―ン


弟「ヒィィッ」

姉「キャッ」

花「」ビクゥッ


『ザザッ... はなこちゃん、どこにいるの、でておいでええええ... はあなあこちゃああああん... ザザザッ』


心臓が潰れたかと思ったぞこの野郎!?


この学校のスピーカーからだと分かったのは、一瞬後だ

さっきの音はハウリングかノイズかだ、多分


『ザザッ... とおおいれの かあああわいいいい はあああなああこおおおおちゃああああんんんんん...
 かあああああくれんんんぼで どおおおおおおおこおおおおおおにい いいいいちゃあああああああああったあああああああああああああ...』


さっきのアイツの声だ、間違いない


『ザァァァァザザッ... はなこちゃああんんん おおおおおなかにいいいいいい ぬうううういいいいいいぐううううるうううみいいいいいいいい...
 つうううううめこんんんんんでええええええええ てえええええええおおおおおおおおおおせっかああいいいい しいいいいいてえええええみいいいたああああああいいいいいい...』


調子っぱずれの歌を歌い出してやがる

どっかで聞いたことのあるメロディだ


姉「これって、『赤い靴』の替え歌…?」

花「うええええん、もうやだあっ、やだよおおおおおっ、いやあああっ、ああああああん」


とうとう花子さんが泣き出してしまった


姉「あ、あ、あいつは、多分、4階の放送室にいると思うわ…! い、今逃げ出せば、見つからない!!」

弟「とっとと逃げるぞ、ヤベえ、鳥肌立ってきた!」

姉「弟! お花ちゃんを、自転車の後ろに乗せてあげて!」

花「ぐすっ、うあああああああん、ああああああああん」


俺は、泣き出した花子さんを抱え、姉貴の後ろに乗せた

姉貴は疾走を始める

俺も全速力で走り出す



こうして

姉貴の突拍子もない用事に巻き込まれた俺は

変態太郎の恐怖を嫌というほど味わいながらも

姉貴と花子さんと一緒に、第2小学校からの脱走した




 ひょうか

    よくできました


 to be continued...







 昨夜、××県廿束市内の小学校で校内の設備を損壊されていたことが分かり
 警察では何者かが侵入したものと見て捜査している

 昨夜10時頃、同市内の第2小学校で、電気の消えた校舎から放送で誰かが歌っているという110番通報があった
 警察が駆け付けた所、職員玄関の鍵が外されており、また、校舎内には1階階段付近にペンキによる落書きがされており
 同校舎4階にある放送室のガラスが割られているのが分かった

 また、同校舎に隣接する旧校舎の3階にある音楽室の窓ガラスが全て割られている状態だったことが判明した
 警察では何者かが校舎内に侵入し校内の設備を破壊したものと見て、不法侵入と器物損壊の容疑で調べを進めている








みなさん、おつです

誤字もあるが…まあいい
今回ので色々と見えてきたぞ

~~~黄泉への道~~~







死にゆくもののための、たった一つの理。

ギリシャ神話が死の神・タナトスと会話している少年、黄昏正義は、この道の果てへと歩もうとしていた。

正義「タナトス、外で何があったの!?」
タナトス「違う、外ではない!何者かがこの空間に干渉しようとしている……!?」

改めて集中してみるが、正義は何も感じ取れない。

正義「……。」
タナトス「これほどの力に、少年が気付かないのか……?」
正義「うん、あ……。」



その時、空間が歪み、裂け目が生まれた。
裂け目の向こう側には、見慣れた景色が広がっている。

地上の景色だ。

この瞬間、黄泉は、現世と繋がっている状態になった。これは許されない事態である。
命の理に背く、それは禁忌と言ってもいい。だがそれ以上に困難なことである。
黄泉への出入りが可能なものは、【タナトス】や【鬼】のような一部の都市伝説のみ。
そしてそれらの都市伝説のほぼ全ては、黄泉の世界に監視されているか、なんらかのポストに就いている。

つまり、これほどの力を持つものが、黄泉の世界の監視を潜り抜けていたことになる。

そこまでして生者と死者をひっくり返すような事をする。
その理由は大方悪事と決まっている。
そうでなくとも、現状は危険だ。

タナトス「少年、逃げ―――」

そう言う間もなく、正義は謎の光に包まれていた。
その光の中で、正義は気を失っているようだった。
タナトスは正義を助けようと近づくと、光に弾き飛ばされて、裂け目へと叩き出されてしまった。







―――正義が気を取り戻すと、辺りは真っ暗だった。



光に包まれる瞬間の記憶はあったので、現状に疑問というよりも不安が湧いた。
思わずタナトスを呼ぼうとしたが、どうも声が出ている心地がしない。

正義「(ここはいったい……?)」

ふと、目の前に見慣れた姿が現れた。
自分の倍近くある背丈、鋭い目つき、何よりも特徴的なたなびく真っ黒なマント……。

正義「(大王!)」

奇怪な状況にも関わらず、正義は大王の登場に安心してしまう。
今まで共に戦い、助け合ってきた仲。また助けに来てくれたのだと信じていた。
大王の第一声を聞くまで……。



大王「始めまして。」
正義「(……え?)」

大王「私は【恐怖の大王】。今まであなたを探しておりました。
   本来なら、とうにお会いできている予定でしたが……。」
正義「(ど、どういう事?大王、どうしたの!?」

ただ、機械のように淡々と話しかける大王。
事情を聞こうにも、正義の声は大王には届かない。

大王「私はある使命の下、あなたを迎えにきたのです。
   ある物語の、来るべきときのため。」
正義「(大王!使命って、あ……。)」



その時、正義の頭に、何かが過ぎった。









大王「少年……。」









―――契約を果たそう―――





.

~~~世界~~~






勇弥「あれ……。」

楓「……あれは……!?」

麻夜「………やひゃっ……。」



真っ赤なマント、きらびやかな装飾の王冠、王のような風貌。

誰とも分からない人間の登場に、全員が呆然と立ち尽くす。

唯一、その正体が分かったのは、奈海だけだった。


奈海「……正義くん……?」

正義「奈海……。」

ふと、正義らしき人物がその場から消える。
そう思ったら、勇弥達のそばへと瞬間移動していた。

正義「勇弥くん、奈海を頼む。」
勇弥「ほ、本当に正義なのか……!?」

ゆっくりと、静かに正義は頷いた。

勇弥「よかった……でも、なんでだ?」
楓「もしかして大王様が……そうだ、大王様は?」

楓の言葉を聞き、正義の表情が変わる。
なにか、遠くを見ているような目をしていた。

正義「ッ……!」

正義は、麻夜の精神を支配した【太陽の暦石】を睨みつけると、【太陽の暦石】の近くに白雲が生成される。
そして正義が消えたかと思うと、その白雲から正義が降ってきた。



あまりの展開に、全員状況が呑み込めていなかった。
勇弥達は、現状を確認するように話し合っていた。

勇弥「正義は……生きていた、って訳ではないよな?」
楓「タナトスが居たんだ。間違えるはずがない。……生き返った事になるな。」
勇弥「でも、タナトスは『死人が生き返るのは禁忌』と言ってたよな?
   大王さんが何かしてくれたのか?」
楓「……大王様について聞いた時のあの表情。そしてあの服装はなんだ?
  十中八九、大王様が関係しているに違いない。何があったんだ……?」

その時、コインシューターからコインが飛び出す。
何故か、青ざめた顔をしていた。

コイン「……そんな……。」
勇弥「コインちゃん、どうかしたのか?」
コイン「正義くんから、都市伝説の気配がする……。」
楓「何ッ!?そうか、あの衣服が黄昏を……!」
勇弥「大王さんかタナトスか、そんな隠し玉を持っていたのか!」
コイン「違う……。」



コイン「正義くん『から』、都市伝説の気配がするの……。」



勇弥&楓「「 え……? 」」


.





麻夜「何故生きている?」
正義「……。」
麻夜「……貴様、飲まれたな?」
正義「だったら、どうする?」



麻夜「なら……また滅ぼすのみ!」



麻夜「第三の破滅……『トロメア』。」

【太陽の暦石】の掌から火球が生まれ、それを正義に向けて弾き飛ばす。

正義「……たあああぁぁぁ!」

正義は火球に剣を振り下ろす。火球は真っ二つになり、爆散した。

麻夜「なんだと……!?」

一瞬驚いたのものの、【太陽の暦石】は改めて掌に水の弾を集める。

麻夜「第四の破滅……『ジュデッカ』!」

正義に向けて、水の弾丸が飛び散る。
しかし正義は、それを全て振り払ってしまった。

麻夜「……第二の破滅……『アンティノラ』!」

麻夜の拳に風を纏い、正義に殴りかかる。
しかしそれさえも、容易に剣で受け止める。

麻夜「お前……黄昏正義だろ……?違うのか……!?」

正義は麻夜を払いのけ、睨みつける。



正義「ボクは……。」












正義「【アンゴルモアの大王】だ……!」





.

勇弥「そ、そうか……!そういう事だったのか!?」
奈海「え……?」
勇弥「【ノストラダムスの大予言】……覚えているか?」
奈海「え、あれは『1999年に何かが降ってくる』って話でしょ?」

勇弥が大きく首を振る。

勇弥「違うぜ、あの原本にはこう書かれているんだ……。」



―――1999年、七か月―――



―――空から恐怖の大王が来るだろう―――



―――アンゴルモアの大王を蘇らせるために―――



勇弥「この予言そのものの読み方自体、諸説あるんだが……この3行は概ねあっていると言われている。
   4行目は最もブレやすくて、2行目の目的語が変わっちまう訳し方もある。」


この予言で示されているのは『アンゴルモアの大王の復活と、その後起こる何か』であった。
しかし人々は『恐怖の大王』に目を引かれてしまい、【恐怖の大王】の方が有名となった。
それでも、『アンゴルモアの大王』の意味や正しい訳について考えるものも少なからずいた。
……そこから導き出される答えは、たった1つ。


コイン「つまり、大王は『何かを降らせる都市伝説』じゃなくて、
    本当は『アンゴルモアの大王を蘇らせる都市伝説』だったって事?」
勇弥「それが何かの拍子で、今までの大王さんが誕生したんだ。
   ……そうでなかったとしても、大王さんの力に違いない。」

今ある情報を統合しても、【恐怖の大王】という都市伝説が関与している事しか分からない。
ふと、楓の胸に一抹の不安が過ぎる。

楓「では、大王様は!?」
勇弥「……分からねぇ。4行目の解釈にもよるが、おそらく……。」
楓「大王様……。」
奈海「正義、くん……。」

正義「たあああぁぁぁ!」

正義は【太陽の暦石】に剣を振り下ろす。
しかしその鎧には全く歯が立たず、剣は弾かれてしまった。

【太陽の暦石】も風を纏って反撃するが、正義は剣で受け止める。
そのまま正義は【太陽の暦石】を弾き飛ばすが、【太陽の暦石】は耐性を崩さず、火球や水の弾丸を飛ばす。
しかし正義は、それらを軽く薙ぎ払ってみせた。

勝負は互角、いや、若干【太陽の暦石】が押しているように感じられた。
事実、【太陽の暦石】の表情には余裕が見えるが、正義の表情からは余裕が見られない。






勇弥「くっそ!正義でも、【アンゴルモアの大王】でもダメなのかよ!」
楓「やはり元人間では限度があるのか……!?」

二人が心配していると、コインが震えた声で話し出す。

コイン「能力は大王よりもはるかに上よ。でも中身は正義くん。
    あいつも鎧や人格は【太陽の暦石】だけど、中身は麻夜ちゃんでしょ?
    そもそも倒せるはずなんてないの……正義くんが手加減しちゃうから……。」

それを聞いて、奈海はただ、祈るように目を瞑る。






【太陽の暦石】と正義のぶつかり合いの果て、正義の剣が宙を舞い、風を纏う拳が正義を殴り飛ばす。
正義は地面に叩きつけられ、剣は地面に突き刺さった。

麻夜「やっひゃひゃひゃひゃひゃ……。
   飲まれて間もない状態で負担が大きかったようだな。今のお前では勝てまい!」

【太陽の暦石】は掌に火球を浮かべる。
正義は地面に大の字に伏せたまま、呟く。



正義「うん、勝てないね。」



【太陽の暦石】が、一瞬制止する。そして全員が、正義の方を注目する。

正義「お前と戦って分かったよ……。ボクの、ボク1人の力は弱いんだ。
   今まで色々な人と戦って、勝ってきた。でも、それはボクの強さを証明するものなんかじゃない。
   勇弥くんがサポートしてくれて……十文字さんが情報をまとめてくれて……
   コインちゃんが皆を導いてくれて……奈海が見守ってくれて……。」

正義の頭の中で、今までの戦いが回想される。
その中で、「自分1人の力で勝った」と言えるものは、確かに1つとして無いだろう。



正義「そして、誰よりもボクと一緒にいて、一緒に成長して、一緒に戦った……。」





.






~~~覚醒の時~~~



―――俺は、暗闇の中で生まれた―――



ぽつり、正義の脳内に言葉が流れ込んでくる。その声は、大王の声のようだった。

最後に記憶しているのは、タナトスと共に黄泉への道を歩いていたことと、それを大王に妨害されたこと。



―――俺には親がいた。親、と言っても、漠然とした概念のようなものだった―――



―――何故かは分からないが、俺は『それ』を『親』と認識した―――



正義の脳内に映像が映る。淡く光る煙の塊が、膨らんだり縮んだりを繰り返していた。



―――親は、俺に2つの選択肢を与えた―――



―――1つは、自らを隕石に変えて、地球を破壊すること―――



―――もう1つは、アンゴルモアの大王を探し、蘇らせること―――



―――どちらでも、結果は同じだと俺は予想した―――



映像は、隕石の方にクローズアップした。



―――仮に、隕石になる道を選んだ場合―――



映像では、首尾よく地球を破壊し、人類が絶滅する様が映されている。



―――それは、俺が忘れられるということを意味している―――



都市伝説は、人間の噂を元に生きている。人間がいなければ、食料を失った生き物のように、餓死するだろう。
人類滅亡系の都市伝説というのは、言ってしまえば自殺するだけの哀れな存在なのだ。



―――仮に、王とやらを蘇らせる道を選んだ場合―――



映像では、首尾よく男を蘇らせ……傍にいた、淡く光る煙の塊が消えていく様が映されている。



―――俺は持てる全ての力を使い、消え失せるだろう―――


.







―――しかしある時……ある言葉が俺の人生を大きく変えた―――






世界征服。






―――世界を己が手に納めれば、人間は嫌でも俺を忘れないだろう―――



―――そうすれば、俺は―――



すると、淡く光る煙の塊は形を変え……1人の人間が誕生した。

その姿は、正義には見慣れたものだった。



―――俺は親への反逆を誓った―――



―――俺は力と知識を蓄え、ある日、地上に降りた―――



映像では、見慣れた街並みが上空から映し出されていた。



映像はゆっくりと下降し……1人の子どもの前で止まる。









―――降り立ったところに、1人の少年がいた―――









その後、少年はそれと契約を交わす。正義はその時の光景をしっかりと記憶していた。
なのに、少しだけ、何故か忘れていたことがあったのを、今やっと思い出した。

少年「ねぇ、なんって言ってるの?」

大王「黙ってろ、契約のための儀式だ。―――よし。
   おい、次の質問に『はい』か『いいえ』で答えろ。ちなみに『いいえ』だったら帰る。」

少年「じゃあ『はい』でいいよ。」

大王「質問がまだだ。……。」



『汝、我と共に、王の亡骸を見つけ出し、その眠りを覚ますことを誓うか?』



少年「……???えっと……はい。」

大王「……契約完了。」

少年「えっと……なんだったの、さっきの?」

大王「ん?あぁ、要は『一緒に人を探してくれ』ということだ。が、気にするな。
   とりあえず言えという取決めであって、実行する必要はない。」

少年「……ふぇ、学校があるから、ボクもそのほうがいいけど、いいの?」

大王「(こいつ、知恵熱出してるのか……?発言レベルを落とすべきか?)
   あぁ。どうせ塵一つと残っていないだろうからな。だいたい、俺はどんな奴で、何処に居るかも知らん。
   俺の目の前に適当な人間が現れたら、そいつって事にするさ。」

少年「それでいいの……?」

大王「そんなものだ。まぁしばらくは関係のない事だ。
   どうであれ、契約は成立だ。良かったな。」



少年「やったー!よろしくね。」
大王「(何も知らずに喜びやがって……。)」







―――それが俺の、物語の始まりだった―――



その後、今まで出会った人が映し出されていく。
そして最後に、タナトスの姿が映された。



―――最初は後悔したが……今なら断言できる―――



―――彼が契約者でよかった、と―――






―――タナトスとの戦いで気付いたんだ―――



―――手段と目的が逆転していたことと、『目的を果たしていた』ことを―――



―――俺にはもう、掛け替えのない仲間がいる―――



―――そして、俺の『記憶』がある―――






―――もういいだろう、【恐怖の大王】よ―――



―――今まさに、恩人の物語が終わろうとしているんだ―――



―――今こそ、契約を果たすときだろう―――



―――彼こそが、【アンゴルモアの大王】だ―――





.




これは―――間違いなく大王の記憶だろう。

彼がこんなものを抱えていたことは、正義さえも知らなかった。

きっと心の奥底に押し込めて、正義に見せなかったのであろう。

……それが、何故今更聞こえてきたのか?

そう考えるより先に、正義は意識を取り戻した。






―――目を開けると、そこは森の中だった。

周りにタナトスの気配はなく、大王の姿は見えなかった。

……ただ、大王の気配だけは、かすかに感じられた。






自分の中に。






そして、自分の姿を見て、全てを理解した。

大王の思いと、力と、『やるべき事』を―――





.




~~~今~~~



正義「ボクに戦うきっかけを、戦う力をくれた……。
   個々の力じゃない……『繋がり』こそが力の源だと教えてくれた……。」
麻夜「下らん。そんなものに何の価値がある?」

正義は立ち上がり、【太陽の暦石】を睨みつける。

正義「『偽りの繋がり』しか持たないお前には絶対に分からない。
   仲間や、麻夜ちゃんを道具としか思っていないお前なんかには……!」
麻夜「仲間?あれは我が生み出したものだ。そしてこれは我の力を発揮するための器。
   どうせ全て、滅びゆくもの。ゴミを、我が使ってやっているだけだ。貴様とて同じだろう?」
正義「違う!この『繋がり』さえあれば、ボク達は何とだって戦える!どんな困難にだって立向かえる!
   お前も……ボクも、『独り』じゃ絶対に勝てない!」

【太陽の暦石】は痺れを切らしたのか、改めて正義に狙いを定める。

麻夜「そこまで言うなら、その力、我の前に示してみろ。
   第三の破滅……『トロメア』。」

【太陽の暦石】は正義に向けて、火球を放った。
しかし正義は微動だにしない。



正義「ボクは絶対にお前を倒す!お前なんかに未来を奪わせはしない!」



正義「だからお願い……力を貸して!」






―――正義に命中する寸前で、火球は真っ二つに切り裂かれた。






そこに立っていたのは―――











.











正義「 大 王 ! 」









大王「まったく、人使いの荒い奴だ。」







2人は無言のまま、同時に頷く。
お互いの思いを、確認し合ったように。



正義「……行くよ、大王!」



大王「終わらせるぞ、正義!」






マヤの予言編第X4話「ヒトリ」―完―


そうです、ぼくです

>>336-337
短髪の人、乙です
Fナンバーの彼女は部署変わる前はどこにいたのかが気になりますね
そして日記の主を飲んだ都市伝説は某うぃきぺでぃあでしか確認がとれないという
某メルヘンカルタなのでしょうか、これもすごく気になります
(メルヘンカルタって独語のmärchenkarteなんじゃないかなあ…どうなんだろ)
そしてこの少年と黒服は>>118に登場する二人組でしょうか
ここまでくるとぼくの第六感がこれを書いた人はあの人だと囁くのですが
まず当たってはいないでしょうね
もしあの人が書いたのだとしたら少年と黒服のロマンスがあると見せかけて
実は黒服さんは別のイケメンと出来てました、というぼくのガラスのハートを打ち砕く展開に持っていく
可能性もあるかもしれませんが、まあそれはそれ、これはこれ、です
頑張ってください


>>355-356
死神の中の人、乙でーす
新田くんにチューしたタフガイ再び、ですね
ぼくはこういうのが書きたいんだよおおおおん!!という熱意を掻き立てられました
ありがとうございます
そして、カレーには生クリーム!とうっかり発言したために
小馬鹿にされたあの日を思い出しました
カレーの具 なにいれたって いいじゃない…
本編ともに応援してます、ノイさんによろしくお伝えください


>>359-371
大王の人乙でした
そうか暦石の戦いだったのか
夢幻泡影のエピソードが先行していたためもう完結したと思っていたのだ、すまない
もっというとパズルピースのように繋がりの分からない部分がいくつかあって
てっきりぼくが読み落としたのかと思っていたのだ、本当にすまない
これからは正義&大王ではなく大王&大王なのだろうか…何かすごこそう、色々


>>378
ちょっと向こうでお話…なんでもないです、僕は小説が書けないの人、続きを楽しみにしています
夜刀浦が舞台なことを忘れていたので
?、?となっていましたが何とかついて来ています!
何だかんだやってて、やっぱりジルりんは頼もしいですね
ところであのおばあさんや女の子は都市伝説的なものではなく、もっと根本的に別の…すいません、何でもないです
そのせいか、コメントレスのインスパイアがインスマスに見えてしまったぼくの正気度は果たして大丈夫なのだろうか


本当はアレとかコレとか書かないといけないんですけど
そうですね、泣き言いわずに書けという話ですよね、正論!
ところでいつもよりちょっと精神不安定な気のぼくですが
シャドーマンの人とかノイちゃんの人とか笛さんはぼくの正体に気づいているはずです
でも知らないふりしててくださいね、わかるよね?
あと、夢幻泡影の完結おめでとうございます…

アレは確実に書かなくちゃいけない…かーかなくちゃー、かーかなくちゃー…

皆様乙ですー!
俺も頑張らないと……

>>336-337
こちらでも、改めて単発の人乙ですー!
今更気付いた、この黒服って以前の単発の二人だったんだ

>>339-351
変態太郎さんの人乙ですー!
…………うん、予想をはるかに超えた既知っぷりでした。
冗談抜きで読んでる最中、背筋がゾッとします……深夜にホラー映画見てるような気分でした。
そして痕跡がきちんと残っていると言うのがもう怖すぎて……

>>355-356
カレーの人乙ですー!
この彼も、かなり以前に単発で出てきたような気が……内容うろ覚えで申し訳ありませんorz
しかしジャガイモを入れ忘れただけで効果無しとは、やはり仮契約では拡大解釈が難しいんでしょうね

>>359-372
大王の人乙ですー!
そうだった!こっちサイドの話は完結してなかった!(ぉぃ
まさか【恐怖の大王】と【アンゴルモアの大王】をこう繋げてくるとは……
そして正義君TUEEEEEEEEEEEEEEEEEE!
裂邪とは違って完全に都市伝説と化してしまいましたが、その分戦闘力は【太陽の暦石】の攻撃を全く寄せ付けない程
大王も復活しましたし、クライマックスは目前!最後まで見届けたいと思います!

>>378-383
書けないの人乙ですー!
都市伝説の墓場……語り継ぐ者のいなくなった物語や神話、迷信達の逝きつく先か
あの本をもし読んでたら契約させられていたのか、それとも飲まれていたのか……あるいは……
今回は悲喜の好奇心が危機感を上回らなくて良かったです

はがけないの人乙ですのン
本屋が出てきた時点で
「お、これは店の人がニャルな展開か!?」
と思ってしまったのはスパロボUXでデモンベイン使ってる俺ですorz
これはまたSAN値が削られそうな……お陰でジルりんが名誉挽回に成功してるだと…?

>>384
>シャドーマンの人とかノイちゃんの人とか笛さんはぼくの正体に気づいているはずです
例えば敵であるとある女の子が過去にあんなことやこんなことをされていた事実を知っていたとするならば
俺は頭と身体で思い出させてあげちゃうような紳士さんです
つまり貴方の正体は(ここから先は影に飲まれて読めない

>夢幻泡影のエピソードが先行していたためもう完結したと思っていたのだ、すまない
申し訳ない、こっちで色々端折った話をあげちゃったの
wikiのは何れディレクターズカット版に仕上げる予定なのでお楽しみに

>>386-387
>裂邪とは違って完全に都市伝説と化してしまいましたが、その分戦闘力は【太陽の暦石】の攻撃を全く寄せ付けない程
ローゼの「フォトンベルト」同様、世界破滅系ですからねー
「太陽の暦石」には「マヤの予言」による滅びの日までの出来事が全て記されていますが、それ以外の破滅なんて記されている筈も無く
正義とローゼの行動を先読み出来ないのですよン

>あ、やっぱりか!まさか大王の人との兄弟合作パートⅡですか!?
「そういや合作ってどんだけやったっけ?」と思って数えたら
「マヤの予言」編を一括りにまとめたら4回しかしてなかったという…
時間軸的には、間に「沖縄」編もやるから5回なんだけどね

>……いや本当に、アレどういう意図によってコラボしてたんでしょうね
あれはマジで謎だったwwww
因みにシャドーマンの人はねてるくんが好きです(訊いてません

>第3の存在に危害を加える存在=発達しすぎた文明をリセットするための掃除屋だったと言うとんでもないオチ
あぁそういうことだったのか! そりゃ面白いな
掃除屋か、似たような感じのキャラをいい加減顔だけでも出したいんだよなぁ

ウロボロス、ヨルムンガンド、ケツァルコアトル
これらの円環を体現する蛇達は地球の存続を危険にする進化をした存在を滅し、そこから新たなる進化の可能性を生命に模索させるための地球の意思の体現なのかもしれない
古代人はその恐怖を後世に伝えるために神話の中にその存在を織り込んだんだよ!

>>390
なぁー↑んだぁー↑ってぇー↓!?

「ウロボロス」だけは未だ使ってないな(「ケツァルコアトル」=「ククルカン」と同一視、「ヨルムンガンド」=「ミドガルドシュランゲ」の由来
あれはどっちかというと都市伝説とは程遠いのかも知れんけど…いやどうなんだろう

「ほ、ホントに大丈夫?」
「おう、ちょっと疲れただけで、ちゃんと歩ける」
「無理しないでね、光陽……肩を貸すくらいなら、私も平気だから…」

サンキュー、と笑顔で返し、歩き続ける光陽
しかし少しふらついている事は、美菜季にも分かっていた



2011年10月28日―――「マヤの予言」に記されたXデー
平凡な中学生だった仲橋 光陽は、幼馴染の松葉 美菜季と帰宅している途中で、
二足歩行をするジャガーの化物に襲われ、彼女を守る為に死亡した
だが彼は蘇り、それどころかジャガー怪人を撃退してみせたのだ
架空のキャラクターである筈の、『ゲンガー』に姿を変えて……




「…ふぅ、やっとついたぜ」

既に日付が変わっている事を携帯電話で確認しつつ、
光陽はある喫茶店の前で立ち止まった
『メシヤ』という看板を掲げたこの店は、美菜季の父親が経営している店
すなわち光陽と美菜季の家である
既に扉には「CLOSE」と書かれているが、明かりが点いていた
恐らく、2人の帰りを待っていたのだろう
光陽が勢い良く扉を押すと、からんからん、と鐘が鳴った

「おやっさん、ただいま!」
「おう! 遅かったな、ホテルにでも行ってきたか? ヒューヒュー♪」
「ちょ、ちょっとお父さん!」

片づけをしながら陽気に笑うこの男こそ、
喫茶店『メシヤ』の店長にして美菜季と光陽の父、松葉 円樹(マツバ エンジュ)
左目に大きな古い切り傷がある為に少々強面ではあるが、
見ての通り気さくな人物で、学生を中心に店共々好評である
尚、美菜季がまだ幼かった頃に妻を亡くしてから男手一つで美菜季、そして光陽を育てている為、
料理は得意であり、特にカレーは店の看板メニューにもなっている

「ハハ、ごめんよおやっさん、俺は先に寝るから」
「おっと、晩飯まだだろ? 食ってけ」
「いや、腹減ってn」
「食ってけって」

ことん、と皿一杯に盛られたカレーライスがテーブルの上に置かれる
円樹の真剣な目つきも相まって、光陽は席に着きスプーンを持って渋々食べ始めた

「……あれ?」

一口食べた瞬間、彼は違和感に気付いた
歩くのがやっとな程に疲労していた身体が、突然軽くなった

「ッヘヘ、疲れがとれたろ?
 このカレーにゃ、俺のダチから貰った「竜血」ってぇ代物を使ってある」
「リューケツ?」
「世間じゃ都市伝説と呼ばれてるモンだ……お前さん等が戦ったのと同じ、な?」

かちゃっ、と思わずスプーンを落とす光陽
立ち上がり、美菜季を庇うように咄嗟に身構える


「お、おやっさん……何か知ってんのか?」
「はっはっは、そう硬くなるなよ、俺もまだやんちゃしてた時に似たようなことをやってたもんだ
 まぁ、流石に“人間じゃなくなる”なんてことは無かったけどな?」
「っ……お父、さん?」
「そんな訳で……俺もお前達の親だ
 親には、子供がどんな事件に巻き込まれたのか知る権利がある
 勿論、言いにくい事なら強制はしない……話してくれるか?」

ちら、と2人は顔を見合わせた
互いに頷き、光陽は円樹を見据えて、先程起こった出来事を話し始めた

数分後

「っははははははははwwwww
 都市伝説になっちまったのか光陽wwwwwwwそりゃ良いやwwww」

円樹は涙を流しながらテーブルを叩いて爆笑していた
無論、一度命を落とした光陽も、息を吹き返したとはいえ一度想い人を亡くした美菜季も、
今回の事は笑い飛ばせるものではない
尤も、互いの想いについては話してはいなかったのだが

「わ、笑うなよおやっさん!」
「こっちも大変だったんだからね!?」
「ははは、わ、悪い悪いw そうかそういうことだったのかw
 嫌な思いもしただろうが、無事に帰ってきてくれてよかったよ」
「でも分からない事だらけだ
 都市伝説って何なんだ? この漫画みたいな力は、一体……?」
「そいつぁ、俺なんかよりも詳しい奴が身近にいる筈だぜ?」
「え?」
「身近って…どういうこと?」
「ま、今日は疲れたろ、運良く土曜日だしゆっくり休め
 慌てなくとも近い内に分かるさ」

そう言って円樹は立ち上がり、空っぽになった皿を下げる
光陽も美菜季もさっぱりといった表情だが、大きな欠伸を一つすると、
それぞれ寝る支度をする為に自室へと向かった







――――――――――――――――







あれから1週間が過ぎた

「まさか神崎が都市伝説の関係者だったとは……」

テーブルの上に突っ伏すようにして座りながら、光陽は呟いた
他に客が来ていないから良いものの、傍から見れば行儀の悪い客にしか見えない

「確か、契約者っていうんだっけ?」
「神崎だけじゃない……極も、担任の未央先生も……あと2年と1年にも何人か……」
「本当に身近にいるんだね…」
「ははは、特にこの町は多いぞ
 理由は知らんが、都市伝説が寄りつきやすいみたいでな」
「へぇ……後は、あいつが怪しいんだよな」
「うん、黄昏くんね……」
「ん? まだ会ってなかったのか?」
「インフルエンザで1週間お休みで、ずっと学校に来てなかったの」
「てか、おやっさん、もしかして裂邪が――――――――」
「今晩もー 働くぞー 平和を守るためー
 そいつが俺等の仕事だよー ヤムダムヤムダムヘーイ」
「あれ、黄昏くんかな?ナンノウタナンダロ…」

からんころん、と鐘が鳴った
扉の向こうにいたのは、右目が髪で隠れた黒尽くめの少年と、青い髪の少女だった

「おやっさん、久しぶり!」
「おう裂邪! 元気そうだな! 髪が伸びたんじゃないか?」
「ずっと寝てたもんでね」
「黄昏くん、ミナワちゃん、いらっしゃい」
「こんにちは。御心配をおかけしてすみませんでした」
「ううん、元気みたいで良かった。どうぞ」

美菜季に案内され、少年と少女―――黄昏 裂邪とミナワは席に着いた

「いやー病み上がりで腹減っててなー
 それに体力もつけなきゃなんないしさ
 だったらここでおやっさんのカレー食うしかないだろってことで来た訳で」
「嬉しいねこの野郎、今日はサービスだ! 大盛りでも普通の値段で良いぞ!」
「激辛円樹カレー大盛りで! あと胡麻ドレサラダとメロンクリームソーダ!」

「もう! 調子に乗っちゃダメよお父さん!
 黄昏くんも、この店潰す気!?」
「「えー」」
「文句言わない! 定価でお支払い願います!」
「ウヒヒヒ、まぁいいや、さっきの注文で」
「わ、私はジャスミンティーをお願いします」
「んーまぁこんな美味い飯、10%OFFでも勿体ないけどな。罰が当たりそうだ」
「料理には特に力を入れてるからな
 腹が減った人に元気になって貰いたい!助けたい!そんな願いを込めてんのさ」
「店名も凝ってるしな、“飯屋”と“Messiah”をかけて『メシヤ』
 確かにおやっさんの飯は俺達の救世主だよ」
「はっはっは、今日も言ってくれるなぁお前は
 今日は特別サービスd」
「ダメ!」
「「けち!」」

等と冗談か本気か分からない会話が続いた中で、
唯一言葉を発していなかった光陽がようやく口を開いた

「……悪い、おやっさん。ちょっとだけ店を貸切にして貰って良いかな?」
「ん、構わねぇよ」
「どうしたの? 顔色悪いけど…」
「いや、大丈夫だ」

店の前に『現在貸切です』の表示を出し、
光陽は改めて、裂邪へと言葉を投げかけた

「……裂邪、お前……」
「ウヒヒヒヒヒ…暫く会わない内に何かあったみたいだな、ゲンガー……いや、光陽」

にやり、と笑みを浮かべて裂邪は光陽に視線を向けた
彼の見せた怪しい笑顔は、光陽に異様な威圧感を与える

「どうやら聞きたい事が山ほどあるみたいだが
 先にお前の身に何があったか……聞かせてくれないか?」

ことん、と裂邪の前に大盛りのカレーとサラダが置かれた






数分後

「ヒハハハハハハハハハハwwwwwwww
 都市伝説になったってマジかよwwwこれ知り合いに言いふらして良い?www
 あ、おやっさんカレーお代わり」
「な? やっぱ笑うだろ?wwwwほい、一丁あり」
「だから笑うなっての!」
「そ、そうですよ、2人とも大変な事に巻き込まれていたんですから…」
「ぐすっ……ミナワちゃん有難う……そういってくれるのは貴方だけよ……」
「す、すまん、悪かったw
 …まぁ、原因の一つは俺だと言っても過言じゃないからな」
「え?」
「あぁいや、何でも無い」
「それで早速なんだが……都市伝説って何なんだ?」
「知っての通り、「口裂け女」とか「トイレの花子さん」、「ギザ十」やら「恐怖の大王」、
 果ては民間伝承やネットロアや神話まで、この世に跋扈する荒唐無稽な物語が具現化されたもの
 それが都市伝説だ
 例えば、お前がなっちまったその都市伝説は「GENGA HA NAKAHASHIKOYO」って都市伝説だな」
「あ、それで“ゲンガー”って呼んでたのか!?」
「他にも理由あるけどまぁいいや
 都市伝説の誕生理由は諸説あるようだが、一番大きいのは多くの人に信じられている事だろうな
 人がその存在を信じるが故に、本当に世に出てしまう…願い事が叶ったようにな」
「へ、へぇ……あ、そうだ、神崎に聞いたんだが、契約ってのは?」
「そもそも都市伝説が存在する為には、誰かの記憶に強く刻まれていなければならない
 それ故に多くの都市伝説は、自身が語られた噂に忠実に行動を起こす事がある
 「口裂け女」なら、子供を切り刻んで殺したりしてな」

「っ……」
「だが一方で、平和的な方法で己の存在を保とうと考える賢い都市伝説も存在する
 その方法こそが“契約”だ
 大勢の人間では無く、たった1人の契約者に記憶して貰う事で己の存在を確立させる
 さらに、契約するとその都市伝説が持つ力をより強力にする事が出来る」
「聞く分には凄ぇけど…何かデメリットとかないのか?」

「あるんだなそれが
 人間にはそれぞれ“心の器”ってのがある
 これは人によって大きく、また小さくもある
 1個契約するのが限界だったりするし、俺みたいに2個以上契約できる事もある」
「に、2個以上……」
「ち、ちょっと待て、それって1個も契約できない程小さかったらどうなるんだよ?」
「その答えは目の前にいるこいつだ」
「えへへ…」

裂邪が腕を回して抱くと、ミナワが照れながら笑った
が、聞いている2人にとっては笑い事では済まされなかった

「み、ミナワちゃん……都市伝説、だったの?」
「はい、元々は人間だったみたいなんですけど、その頃の記憶がなくて…」
「てことは…都市伝説との契約が失敗したら…」
「都市伝説と同化して、人間じゃ無くなるって訳だ」
「都市伝説に“飲まれる”っていう言い方が一般的なんですけど、
 作者さんが『蒼穹のファフナー』にハマっちゃって、どうしても『同化』という言葉を取り入れたいそうです」
「さくしゃ?」
「うん、メタ発言はやめような
 おやっさん、カレーお代わり」
「あいよ!」
「喋ってんのに早いな!? もう3杯目だぞ!?」
「恐らくここの売り上げの3割は俺が担ってると思う」
「大体お父さんおだてて値切ってるよね」
「でも“おやっさん割”は人気だろ?」
「そんなサービスやってないから!?」
「おやっさんと呼んでくれ(キリッ」
「お父さんは黙る!」
「はい( ´・ω・` )」
「…あ、そう言えばおやっさん、裂邪が契約者なのを知ってたみたいだけど、いつから?」
「何だお前知らなかったのか
 おやっさんは俺の親父と幼馴染で、昔から友人と集まって都市伝説やっつけたりしてたんだよ
 それから今のお前みたいに都市伝説の気配とかが分かるようになったんだ」
「え、お父さんホント!?」
「言ってなかったが、この傷…都市伝説絡みでやんちゃしてた時に出来たんだ」
「それも驚いたがおやっさんと裂邪の親父さんが幼馴染だった事に驚いたよ」
「ヒヒヒ、世界は思ったより狭いからな
 都市伝説と関わりを持った以上、それは嫌でも経験させられるさ」
「…? それってどういう……」

「都市伝説同士、そして契約者同士は互いに引き付け合う
 それは友好関係を築くチャンスでもあるが、多くは大体戦闘だ
 時には、人間と戦う場合もあるってことを頭に入れとけ」

思わず美菜季が両手で口を覆って声を押し殺した
光陽も思わず息を飲んだが、同時に疑問も湧いた

「…お前は……裂邪は、人間とも戦ったのか?」
「ウヒヒヒ、まぁな。結果はまぁ、この元気な姿を見れば予想はつくだろ
 勿論、その代償も……大きかったが」

裂邪は長く伸びた前髪を右手で退けてみせた
今まで見えなかった右目の大きな傷が、戦いの痛々しさを物語っているようだ

「きゃっ……」
「これくらいで済んで寧ろ運が良かったんだ
 戦いの中で命を散らした奴等も、俺は見てきた
 俺自身、何度か死にかけたりしたけど
 そういう意味では、お前等も嫌な思いはしただろうが、運は良かったんだ
 大切にしろよ、その命
 おやっさん御愛想ー」
「毎度ありー」
「やっぱ食うの早ッ!」

ミナワを連れ、早々と会計を済ませると、
裂邪は扉を開けて、足を止めて振り返った

「次会う時は戦場で……なんて事が無いよう祈ってるよ
 んじゃ、明日学校で」
「ご馳走様でした♪」

からん、と鐘が鳴り、店内が静まり返った
不吉なこと言って帰んなよ……、と項垂れながら、光陽は店の前の『貸切中』の表示を外した



   ...Next Story

もはや皆忘れたであろう連載『俺は幻牙』第2話
第1話はこちら→ ttp://www29.atwiki.jp/legends/pages/4737.html

説明回、の筈が何言ってんのか自分でもさっぱり分からん……話を詰め込みすぎた
やはり裂邪なんて出すんじゃなかった…
因みにれっきゅんが途中で歌ってるみょうちくりんな歌はアニメ『サウスパーク』参照

>>423-426
はがけないの人乙ですー
悲喜、ナージャさんdisったら俺が許さん
そして路樹くんの意図が読めるようで読めない

>>427
>署長はもう只の人間としては限界なんだけど、所詮妥協しないだけの只の人間だし
それこそが彼の強みなんだと思う俺。あきらめない奴が最終的に笑うのが好きなんだよ

>>428
乙ですー
なんだかノリがゆるいプロポーズみたいでいいね
そして石狩鍋美味いよ石狩鍋

>>430-
シャドーマンの人乙ですー
おお!極の名前が!使っていただきありがとうございます!
れっきゅんかっこいいもげろ
あと光陽ももげろ
あとその大盛りカレーライスとクリームソーダくれ下さい(

やらかした
極くんの名前お借りしました有難うございます(遅ぇ

>>440
>れっきゅんかっこいいもげろ
食って喋ってただけなのにカッコいい……だと……!?wwww

>あと光陽ももげろ
(光陽>何で俺まで!?

>あとその大盛りカレーライスとクリームソーダくれ下さい(
因みに創業以来激辛円樹カレーを完食したのは裂邪のみ……
と言いつつ、実はスパイスの配分とか材料を間違えて滅茶苦茶辛いカレーが出来て処分に困ってたら、
裂邪が「俺が食う」とか言い出して食べ始めた結果
「これ売れるぞ!」「いやお前しか食わねぇよ!」
『メシヤ』の裏メニューになったとさ

そうだ書き忘れ

>>440
>あきらめない奴が最終的に笑うのが好きなんだよ
ごめんなさい
どんな状況でも最後まで諦めない奴をどん底に叩き落とすのが好きでごめんなさいorz
這い上がらせない! 零れ落ちろ!(←最低

>>441
>グレイブエンカウンターズ見ましたか奥さん?
何か聞いた事あるな
廃墟に突入するっていうドキュメンタリー風の海外ホラーでしたっけ?
ポスターが怖すぎて修正版を作ったとか

教室を出て、少しの間歩き、ある程度離れた場所で向かい合う二人。

教授「で、何か用かい?」

康平「……退席の理由が嘘ってのはバレてるようですね」

教授「ああ。この僕の昏き混沌より深い叡知に見通せないことはないからね」

出来の悪いアメリカ映画の主役のように手を広げ、愉快そうに笑う。

康平「……へえ、じゃあ、これから僕が教授に話す内容も分かってるんですか?」

教授「ああ、もっともそっちは12通りほどの可能性があって断定できないが」

康平「そうですか……じゃあ、言っちゃっていいですね?」

教授「うむ。君が生き別れの弟だろうが禁断の愛の告白だろうが、受け止めてあげよう」

そういって手を広げ、あいも変わらず楽しげに笑う教授。
それを見て一瞬俯き、それから康平は叫んだ。

康平「なんで!!!!!普通に!!!!!都市伝説の話をしてるんだよォォォォォォォォォォォ!!!!!」

教授「……おいおい、時間を考えてくれ。そんな大音声、他の講義に迷惑だろう?」

耳を塞ぎ、辺りを見回しながら顔をしかめる教授。
だが康平は構わず続ける。

康平「だいたい!都市伝説や契約のことを人に知られないようにしろって言ったのは教授でしょーが!
それをあんな大勢の前で……!何がしたいんですか!貴方って人は!」

教授「大丈夫だ、あの程度の会話で全てを理解できる人間はいない。」

康平「そりゃそーでしょうけど!大体なんであんな話をするんです!?」

ハアハア、と所々息を継ぎながら康平は糾弾を続ける。が、教授はどこ吹く風だ。

教授「何故かって?決まってるじゃないか。僕の可愛い生徒達が危ない目にあった時、問題ないよう
    戦い方をレクチャーしていたのさ。特に君なんか非常に危ない。いつも危険に首をつっこんでばかりじゃないか。」

誰のせいで、という言葉を飲み込み、言葉を探す康平。

康平「……さいですか、そりゃどうも。でも、それなら講義じゃなくても空き時間に呼んでくれれば……」

教授「それができればそうしてるさ」

教授「でも、君たちは呼んでも来てくれないだろう?芹沢さんはいつでもツーリング中だし、清川君は自由な時間も少ない。
   虎君はほとんど一年中病欠だし、いつでも呼べば捕まるのは君だけさ。」

なるほど、それがこき使われる理由か、と納得する康平の前で教授は天を仰ぐ。

教授「だから、考えたのさ。講義ならこっちから連絡しなくても、勝手にみんな集まってくると!
   集める手間も省けて、ついでに講義の時間を使って用事を済ませられる!まさに一石二鳥!」

康平「なるほど……、でも今日講義に来てるの俺だけですけど」

教授「えっ!?」

グハァ、と大仰なリアクションを取り崩れ落ちる。
かと思えばすぐに立ち直る辺り、忙しい人だ。

教授「そっ、そんな馬鹿な!康平君、嘘はいけないよ!」

康平「本当ですって。芹沢先輩は集会、清川は雑誌の撮影、上田先輩は入院中です。……確認してなかったんですか?」

ぬう、と唸り額に手を当て困っている教授だったが、やがてどうでもよくなったように顔を上げると
その場で無意味にクルリと一回転した。まったく意味が分からないし、実際意味もないのだろう。

教授「まあ、いいか。よく考えたら芹沢さんと清川君なら襲われてもなんとかなるだろうし虎君はそもそも外に出ないし。
   結局、頻繁に揉め事に巻き込まれるのに戦闘向きでもない君ぐらいじゃないか、特別講義が必要なのは」

だから誰のせいだ、という言葉を飲み込み、康平は溜息をついた。

康平「……そうですか、でもそれなら危ないことはその‘頼もしい’二人に頼めばいいんじゃないんですかねぇ?」

教授「いやいや、君のことを高く評価しているからこそ僕は君を頼りにしているんだ。なんせ握手しただけで
   趣味や性癖、来歴から黒子の数まで丸裸にしてしまう君の力は非常に便r……じゃない、強力だからね」

康平「……」(今、便利って言おうとしたよな?)

教授「それに、芹沢さんに聞き込みを任せたり清川君に尾行を頼んだらどうなると思う?」

康平「まあ、たしかにゾッとしませんね……特に芹沢先輩は」

教授「うむうむ、分かればよろしい」

康平「……で、戦闘レクチャーってのはどんな内容なんです?」

教授「ああ、それは……」

少女「……三秒以内に答えなさい。あなたの目的は、何?」

ヒリヒリと痛む頬。普段なら耐えられないほどの痛みを、アドレナリンが押さえつける。

康平「……じゃない」

少女「え?」

小声を聞き取れなかったのだろう、少女が訝しげな顔をする。
その一瞬、康平は息を最大限吸い込み、吐き出した。

康平「冗談じゃない!!!なんでそんなこと答えなくちゃならないんだ!!!」

突然の大音声に、一瞬少女が怯む。その隙を逃さず、康平は……

踵を返し、後ろに向かって全力で駆けだした。

教授「いいかい、戦いになったらさっさと逃げるべきだね。君の力は、戦い向きじゃない。
   どうしても戦う必要があるなら、こっそり持ち物を奪って情報を得てからにすべきだな」

康平「……悔しいが、言うとおりにした方がよさそうだ」

教授のアドバイスを思い返しつつ、康平は駆ける。
一方、少女は初めは驚いたようだったが、すぐにこちらも駆け出す。

少女「三秒……経過!」

手をのばし、パチンと指を鳴らす。
直後、康平の右腕を激痛が襲った。

康平の右手が服の袖口から消え、、袖口が赤黒く染まっていく。
だが、康平は身じろぎ一つせず、ただ走り続ける!

康平(どんな傷を受けても、命さえあれば上田先輩に治してもらえる!今はこの場を……切り抜ける!)

だが、その康平の目の前に、突如謎の物体が現れる。
それを言葉にするなら、まさしく……宙に浮いた、銀色に輝く握り拳だった。

康平「なっ!?」

あまりにも荒唐無稽な光景に硬直する康平の顔面を、衝撃が襲う。
地面に叩きつけられ、勢いのまま転がる康平の目の前で跡形もなく拳は消え去った。

康平「クソッ……空飛ぶ拳骨に殴られるなんて、狂ってるよ全く!」

背後から距離を詰める少女から逃れるべく、康平は両の手を地面につき立ち上がる。が、
頭を殴られたせいか手首からの大量出血のせいか視界がぼやけ、足元もおぼつかない。
しかし、それ以上の驚きが康平をふらつかせた。

康平「手が……治っている!?」

手だけではない。頬の傷も、完全に消え去っていた。

康平「一体……なんなんだよ!?」

混乱する康平の目の前に、少女が到着する。

少女「逃げても無駄。私からは逃げられないわ。さあ、答えなさい。あなたは何者?」

康平「くっ……うああああああああっ!」

再び叫び、今度はヤケクソ気味に少女に飛びかかる。が、これは見透かされていた。少女が半歩下がるだけで
康平の腕は宙を掴む。さらに、そのまま少女が指を鳴らすと今度は康平の左足が消失する。

康平「痛っ!……それでも!」

バランスを失いながらも右足だけで跳躍し、少女に掴みかかろうとする。だが、康平の体を何者かが蹴りつけた。

康平「グハッ……これは……!?」

宙に吹き飛ばされつつ、必死に顔を上げる康平の視界が消失しゆく銀色の足を捉えた。
どこかの教室のドアに叩きつけられ、衝撃でドアを破る。
そのまま‘両足’で立ち上がると、教室を見渡す。

康平「ハアハア……分かってきたぞ、あの娘の力が……」

そう呟きながら、康平は再び教授の話を思い出していた。

康平「逃げろってそんな無責任な。大体、逃げられるとは限らないじゃないですか。」

教授「そうだな……その場合は、逃げつつ相手の持ち物を奪えばいい」

ハア?と怪訝な顔をする康平に、教授が尋ねる。

教授「どうした?君の‘運転免許証のNo’は、体に触れるほかに身の回りのものでも発動するんだろう?」

康平「……先生。俺が呆れてるのは、そこじゃないですよ。
   どうやって戦う力の無い俺が敵の持ち物を奪えるんです?」

教授「そんなもの、相手の隙を狙えばいい」

康平「隙なんて、見つかりませんよ!」

教授「そんなことはない。いいかい、制限の多い‘都市伝説の力’で戦えば、必ず行動に一見無意味な
   隙が生まれる。よく相手を観察して、相手の‘致命的な隙’さえ見つかれば持ち物ぐらい奪えるさ」

康平「……そんなものですかね?」

教授「ああ。もっとも、冷静になる必要はあるがね」

それができたら苦労しない、とため息をつく康平の前で教授は実に楽しげに笑っていた。

康平「落ち着け……冷静に思い出すんだ……」

心を落ち着かせ、これまでのことを回想する。
謎の問いかけ、消失する体、銀色の拳と足。
そして、相手の行動。それらを組み合わせ、推理する。そして……

康平「見つけたぞ……‘致命的な隙’を!」

そうと決まれば、あとはその隙を造ればいい。
その為の道具を探し辺りを見回す康平の目に、‘あるもの’が留まった。

壊れたドアを跨ぎ、少女が教室に入ってくる。辺りを見回すが、隠れた康平を見つけられない。

康平(一見して見つからないが、この部屋にいるのは確実。となればする事は一つ……)

少女「……3秒以内に答えなさい。どこに隠れている!」

予想通り。だからこそ、康平は何も答えず、心の中で3秒数える。

3……静かに、‘仕掛け’を微調整する。

2……少女が指を重ねる。

1……少女が指を鳴らすために力を込め、そして康平は‘仕掛け’を作動させる

そして、0。瞬間、少女の指の音が教室になり響き、教卓の下隠れていた康平が消失した。
そして、床に固定され無理矢理歪められた箒が一斉に解放され、
箒の先端に仕掛けてあったバケツの群が少女めがけて宙を舞う。

少女「!?くっ……お願い!」

無数のバケツ、しかも不意をついたものを、避けられるはずがない。
だが、先頭のバケツは銀色の拳の乱打により叩き落された。
少女と教卓の間に立ちふさがった、銀色の大男。
発光してよく見えないが、タキシードを着て、頭には妙な帽子をつけているらしい。
その帽子は、一昔前の「アメリカに行きたいか!」が合い言葉のクイズ番組のトレードマークそっくりだ。

男「久々に全身を出せたと思えば、この状況ですかい!」

そう叫びながら、男は全てのバケツに正確無比な打撃を加え、迎撃。
そして男は霧のように消える……刹那!
虚空から現れた康平が、少女のポケットに手を突っ込む

少女「なっ!?」

康平「まさか全身を消されるとは思わなかったが……狙い通りだ!」

そのままポケットから携帯電話を抜き取ると、握り込む!

康平「やはり、あの銀の男を呼ぶためには誰かの肉体が必要だったか……それが君の‘致命的な隙’だ!」

康平の気迫に押され、少女は思わず叫ぶ。

少女「なんなの……貴方、何者なのよ!?」

その問いかけに、免許証のNoを読みとり全てを理解した康平が答える。

康平「俺は、夢見咲康平……君の、味方だ!」

          大亜教授の事件簿 第二話『夢見咲康平の受難』終 第三話に続く

ようやくパソコンが直ったので投稿
前の投稿から久々過ぎて色々めちゃくたゃだー

第三話は近いうちにする予定

【迷子の迷子の子猫ちゃん】

「構ってくれない……ねこねこ何か……嫌いっ!!」

家を出ていった少女は行く宛もなく走り続けた。
しかし、わんわんと泣きながら走ったせいで困ったことが起きていた。

「ぐすっ………ここ、どこだろ?」

少し落ち着いたマコが辺りを見渡すとあるのは…見たこともない道、見たこともない街並み、見たこともない人々。
泣きながら突っ走った道筋など少女が覚えてる筈もなく。
子供達に帰るように訴え掛ける夕方のメロディや、遠くの寺から響く鐘の音、それに加えバサバサと飛び立つカラス達。
どれもこれも今のマコにとっては不安を煽るものに他ないであろう。

「おうち…どっちだっけ…」

だが、小さな子供が不安そうに一人で辺りを見渡していると優しい大人が気に掛けてくれるもので

「あのー、お嬢さん……もしかしてもしかすると迷子なのではないでしょうか。
お母さんとお父さんとはぐれてしまいましたか?
失礼、自分の自己紹介を忘れていました…自分はNo.96s
おっと……こっちは業務用でした。
えー、皆から呼ばれている訳ではないのですが取り敢えず私のことは゛目薬さん゛とお呼びください。
それでですね、この町の夜は子供には危険ですから…」

マコの前に現れたの優しい大人代表は、黒い服の上に何かの店のエプロンを着用した男であった。
急激にべらべらとマシンガントークを始めるこの男の手には大量のビラが見える。
そこから考えるに客引きか何かの仕事の途中なのだろう。

「えと、マコね…帰り道が分からなっ…ひゃぅ!?」

渡りに船、藁にもすがる気持ちで顔を上げたマコだったが、その顔はすぐさま恐怖の色に染まった。

「どうかしましたか…あのー?」

マコの小さな二つの瞳に映るのは
一つ眼の怪人…のような被り物。
落ち着いて見れば形や中心の目玉の絵から目薬をモチーフにしているのが分からなくもないのだが、小学生のマコには少々刺激が強かったようで。

「うぅ、ねこねこ…
目のオバケが出だぁぁ~っ!!」

「え、えぇ…オバケって結構私ショックなんですが…」

泣きじゃくる女児と肩を落とす謎の被り物男のコンビは良く目立ち
ひそひそと周りから「イヤねー変態かしら」「警察呼ぶか…?」「ママー「見ちゃ駄目っ!」とか呟かれる始末である。

「むむむ……どうしたものですかねぇ」

周りの旗色がみるみる変わっていき、それに連動して男の顔色(?)も悪くなる。


――PRRRRRRR

その時、男のエプロンが振動しポケットの携帯電話が着信を伝える。
サッと開かれた携帯の画面にはデフォルメされた牛の絵が映っている。

「もしもし――――ですか――!?」

「あぁ、件さん丁度良い時に!!
実は業務中に迷子に会ったのですが、泣くばかりで話が聞けず困っていまして…」

「――して――る―――ん――」

「あのぅ、件さん息が荒く思えるのですが?」

「変態――が――――駅――」

「え、ちょっ、待ってくだ」

――ブツン

中途半端に電話から聞こえた声から、話し相手は若い女性だと分かる。
切れた電話を耳(?)から離し、携帯とマコを見比べる男。

「マコは美味しくないから……食べないでっ…こっち来ないでよぉ…ひっぐ」

じりじりと男がマコに詰め寄っていき、それに気付いたマコが震えながら後ずさる。

「迷子のお嬢さん……貴女をお家まで責任を持って届けます。
しかしながら、私は急用が出来てしまい……今は場所を変えなければならないのです。
ですからして、少しお付き合いください!」

じたばたと暴れながら叫ぶマコを抱き上げた男が、駅のある方向へと走り出す。

「はなして、はーなーしーてー……助けて、助けてよ…ねこねこーっ!」

「人目につくので、ちょっと寝てて下さいね…っと」

男の袖口からパッと現れた水鉄砲でマコの目に水を掛けると、あれだけ騒いでいたマコが急に静かになった。

「う…ぅ…ねこ…ね…こ……」

どうやら何らかの作用で眠らされてしまっているだけなようである。


――――そして、その頃ABCは

「…嫌い、嫌いだなんて…俺様マコに嫌われちまったぁぁぁーっ」

依然としてリビングでビックにヘコんでいた。


(続く)

超能力猫の人乙ですー
この黒服さんは前に出てきた目薬の人ですねー
続きが楽しみですー

【僕は小説が書けない 第十七話「始動」】

「まさかこの建物が役に立つなんてね」

 あいも変わらず黴臭い。
 僕とジルりんはマンションから少し離れたところにある廃屋の中に来ていた。
 以前、たまたま取材に来て特に幽霊も何も居ないことがわかったので隠れ家に使っているのだ。
 ジルりんは面白そうに周りをきょろきょろ見回したり壁に触れたりしている。

「なんだここ」

「廃屋だよ、縁があって悪用させてもらってるのさ
 不良払いの為のトラップがあるから気をつけるといい」

「これか」

 見ると彼女はワイヤーとシュールストレミングで作ったトラップを器用に解除していた。
 
「かんべんしてくれ」

「えへへ、うまいだろ?」

 彼女は無邪気に笑う。

「だから止めてくれって言ったんだよ!
 作るの大変だったんだからさあ!」

「分かったよ、つまらんなあ」

 本当につまらなさそうな顔してやがる。
 とんでもねえ女だ。
 女なのか……?

「この奥だ、緊急用の避難設備が整ってる」

 そういって目の前の扉を開く。

「路樹には秘密だぞ?」

「これはすごい……」

 ジルりんはそういって目を見開く。
 そこには立派な生活空間が広がっていた。
 自家発電機、貯水施設、エトセトラ。
 おそらく一か月は保つ仕組みになっている。

「これだけの金を一体どこから?」

「親の金、後はこの前みたいな除霊依頼をこなしてるから金はあんまり困らない
 この前の屋敷はダメかと思ったけどあの弟が金にしてくれたみたいだし」

「なるほどね……」

「まあそこに座れよ、今日は一つ話をしてやろうかと思ってね
 大したことのない茶飲み話さ
 君の昔ばなしはたまに聞かせてもらってたし、今日くらいは僕の過去を話そうかなって」

「興味無いぞ」

 えー……

「でも話したいならいくらでも聞いてやる」

「愛してるぜジルりん」

「うざいにゃあ」

 ジルりんはソファーに腰かけてテーブルに置いてあったズブロッカを飲み始める。
 都市伝説に飲ませるには過ぎた酒だがまあ許してやるとしよう。
 と思ったら俺の顔面に向けて吹き出した。
 ご褒美だ!

東区の路地から三丁目へと突き切るようにして進み橋を渡る
男は小さな食堂に入ると店員である中年の女の冷めたまなざしを直視する
雑音にまみれたアナログ波のテレビは凶悪犯が脱走したという臨時ニュースを告げていた
麺を啜る作業服のひとりが物騒な世の中になったもんだとぼやく声がまざる
男は店員にカレーライスを頼むと中年の女は目を逸らし厨房へと入っていく
店の片隅の薄汚れたテーブルに身を縮めるようにして座ると棚に飾られた文化人形が視線に入る
あれは確かに死んでいた少女の躯であり男にはそれをどうすることもできなかったという呵責がある
あの少女は男達の欲望を一身に受け
と言ってしまえばまるであの少女が自ら望んで精液を浴びることを甘んじたと取られてしまう
否、あの少女は状況に追い込まれてしまったのであり誰もそれに目を向けようとしなかっただけだ
男は少女の声を聞いていたのだしそしてそれが男に決して安息を与えない動機のひとつになっていることを
男はおぼろげながら理解しているのだ、そう今はまだ
乱暴に置かれたカレーライスを前に男はあの少女の血と汚物と泪に塗れの顔面を見ていた
事切れた少女はなおも告げる、おじさん助けて下さい、痛いです、死にたくないよ
男は半ば絶叫に近い少女の顔に金属の匙を叩きつける
作業服のひとりが何事かとこちらを見ると男と目が合ったが男は奴の胡乱げな目を睨みながらカレーライスを口に運ぶ
福神漬けと豚肉とスパイスと米飯の匂いと味覚と感触が口の中を汚染していく
肉を奥歯で咀嚼すると少女はその年齢と童顔には似合わない嬌声を上げだした
おじさん、もっと噛んで、強く、わたしのこと、壊して、滅茶苦茶にして、引きちぎって、そして
頬の内側をカレーと共に強く噛みしめると血の味が滲み出す、これでいいのだ
少女の嬌声は遠くに追いやられ、ただ彼女は泣いている、すすり泣く湿った声が男の鼓膜を叩く
おじさんみたいな男の人が良かった、あんな奴らは嫌だったよ、おじさん
馬鹿が、俺もあいつらと同じだ、薄汚い野郎なんだよ
カレーが口の中の傷に沁みるがしかしその痛みは物語を祓ってはくれない
男は嗤った、己を嗤った、行動の結果を、責任をすべて受け入れるのではなかったのか
愚鈍さ加減が自嘲から怒りを変わるのを胸の内に感じながら男はカレーをかき込んでいく
ご馳走
男は短く告げて店を出た
時間を17時10分を示していた

【掛相 調のスタイリッシュ調査書】

音声回線、モニターの接続は良好、記録装置オン、付近に組織の影なし。
対象とオマケの姿を再確認…室内状況、バイタルに異常なし!

「じゃっ、きちんと留守番してるんだぞー」
「きゅ!」

あっくんが私にはあまり見せないにへらとした表情で家から出ていく。
幼馴染みとして、そういう所はナニカちゃんに嫉妬(?)しちゃってるかもしれないなぁ…
さて、気持ちを切り替えて

――「あっくんが買い物に出掛けたので……これより機密実験を開始します」

パソコンを弄くるとナニカちゃんの首輪に付いた小型の機械から私の声が響く。
私があの首輪を手に入れ解析した時に付けた666の秘密機能の一つだ。

――「えー、今回の実験の実況や解説を担当する調ちゃんでーす!
そしてそして今回の実験の主役であるナニカちゃーん…やっほー!!」

「きゅるるる?」

いえー、どんどんパフパフー…ナニカちゃんが現状に困惑してるけど気にしないで進めるわ。
あっくんがなんだかんだ文句を言いながら、首輪をナニカちゃんに着けてくれてるみたいで手間が省けてるし。

――「この度はあっくん私生活隠し撮りカメラとこの予備作動スイッチを使って、エフェクターの干渉性実験をしようと思います!」

「きゅう?……くぅーん」

ナニカちゃんが鳴きながら首を傾げている。
そういえばナニカちゃんの知能っていかほどなのかしら…

――「今の説明だと分かりづらかったかな?
えー、つまりはナニカちゃんは現在どれぐらいの変身が可能かを調べるの……分かったかい?」

「わぅー………わん!」

うっすらとだが分かってくれた……気がするので早速スイッチをオーン!!


―――おや、ナニカのry

ピカピカと輝きだしたナニカちゃんのシルエットがだんだんと人型へと変わっていく。
光りが収まり現れた姿は男の子のようだ。

〈記述〉
特出した外見は茶色の尾や獣の耳が揺れている事ぐらいだ。
前回の例も踏まえて推測すると、不定である姿には性別の縛りはないが完全なる変化は難しいようだ。

「わー、見て見て…また契約者と一緒の形!」

うん、知性や声帯の方も問題なく稼働しているみたいだ。
そして実験には関係ないが男の子も男の子でなかなか…良いわね!
良すぎて思わず画面に向けて親指を立ていた。

「調ちゃん、なんでハァハァ言ってるの?」
――「気にしないでいいよー…分からない方が人生幸せなこともあるのだから」
「そっか、分からないけど分かった!」

ピョコピョコ世話しなく跳ねているナニカ君(仮)
ダボダボなセーターの袖が揺れ、見てて飽きない可愛さだ。

〈記述〉
後程気付いたが身に付けている衣服はどこから現れたのだろうか?
もしや、皮膚や毛並みが服の形状に姿を変えたのか…それとも何らかの力が及んだとか?

(流石に全裸はいかんだろ全裸は…byと)

――「なんだ、このメモ?…ゴミゴミっと」

空から降ってきたメモをゴミ箱に捨てて私は再び実験を再開する。

――「うーん…しっかし私は虎になるように念じてスイッチを押したんだけどなぁ?」

<記述>
やはり契約者本人である小門 安月(略称あっくん)ではないのが原因か¨エフェクター¨は上手く作動してくれない。

私が首を傾げながら唸っていると、ナニカ君(仮)が不安げな顔をしてカメラを見詰めていた。

「調ちゃん…ボク、駄目だった…?」

カメラをあっくんにバレないように戸棚の上に隠していたせいで、ナニカちゃんの視線は心なしか上目遣いになっている。

―勿論、こうかはばつぐんだ!―

――「うっ、駄目じゃないから…そんな潤んだ瞳で私を見ないでね」

いかん、このままじゃ私は真理どころか変な扉を開きかねないぞ。
理性が保たれてる内にスイッチを再びオーン!!

――おや、ナry

再び光が瞬き、シルエットが今度は心なしか大きくなっている。

〈記述〉
体格や体の凹凸からみて女性体であろう。
それにしても質量の保存法則はどうなっているのだろうか。
現場に立って詳しく測量調査が出来ないのが悔やまれる。

「むぅ、体が重たいよ…調ちゃん」
――「いやはや圧巻たるセクスィーボディ、見てるこっちが哀しくなるほどの大迫力の胸だね…」

今回は口裂け女を念じていたのだが、口裂けてないお姉さんが現れてしまった。
しかも、私のデモンズウォールを遥かに超える胸や抜群のプロポーション……ナニカちゃん恐ろしい子っ!!

「跳ねにくくて、ナニカはこの体嫌だー」

不機嫌そうな顔でナニカさん(仮)が跳ねると連動して胸部の脂肪も揺れ動く
仮に効果音を付けるとしたらバインバインが相応しい光景だ

「ブフッ、その姿でジャンプしたら色々と駄目だよナニカちゃんっ!?」

私の鼻から研究心が溢れでて出血大サービスで大変危険なので次に移ろう
先程から人型ばかり…この際あえて人間になるように念じてみようかな。

何が出でるかな……スイッチオーンッ

――おry

私はお決まりの発光が始まると思い目を閉じていたのだが、逆にモニターの映像は真っ黒な闇を映し出した。

「ん…バッテリー切れかしら…?」

目を開けて機器の確認をしてみたが異常な事は何もない。
私が不思議に思いながら「ナニカちゃん?」とマイクで問い掛けると

「tk、調、r、ちゃん、r」

グニャリど画面の闇が蠢き言葉を発した。
モニターが映らなくなったのでは無かった
寧ろ逆に、モニター目一杯にナニカちゃんが映っていたのだ。

――「何これ……あぁ、画面にヒビが!?」

急激な吐き気と恐怖に私の意識が揺さぶられる、あんな生き物私は知らな――――――

�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・

今日は血気盛んなオバサン達に負けずに特売品を多く買えた。
ナニカの食費もあるから特売品を手に入れることは俺にとってかなり重要なのだ。

「留守番してるナニカの為にフルーツの詰め合わせを奮発して買ったが…ナニカ喜ぶかなー……っ!?」

ルンルン気分な俺の目に映るのは、黒い触手のような物があちこちから突き出た我が家

「いやいやいや…意味が分からなすぎるぞっ!?」

俺が慌てて家に入ると出迎えてくれたのは首輪が付けた謎の触手軍団

「契約、r、者ー、リ、t、ンゴー、k」
「く、来るなぁーっ!?」

それから、どつき回されながらリビングで暴走しているナニカを抑えたのは三十分後の話だ。

「全く、死ぬかと思ったぞ…はぁはぁ」
「キューゥ…」

�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・�・

その後の話だがグッドタイミングに帰宅したあっくんが、暴れるナニカちゃんを鎮めて元に戻してくれたらしい。
今は隠し撮りカメラには「後で、説教しに行くからな」とあっくんが赤字で書いた紙しか映っていない。

「何よ…失敗は成功のもとって言うし、成功には多少の犠牲は付き物じゃない」

だが、残念ながらあっくん…私の辞書に

「次こそは調整して上手くやって見せるんだから!」

反省という言葉は無いっ!


(たまに)

「かはっ……」

男が血を吐きながら、呻き声をあげて倒れ伏す
震える腕で己の身を起こそうとするが、目の前に漆黒の刃が向けられた
目を見開き、諦めたように男は俯く

「……ま、まいった…」
「フン、面白味の無い」

黒い鎌を下げ、彼は――顔の無い仮面を被った少年は男を背に立ち去った
そして、湧き起こる歓声
観客席にある巨大モニターには、“SEMIFINAL Winner Noface”と表示されていた

《決まったぁ!!
 決勝戦への切符を勝ち取ったのは、顔の無い仮面を被った謎の少年ノーフェイス!!
 平均5分で勝利を手にしてきた彼を、『エフェクター』が導いているとでもいうのかぁ!?》

実況が響き、また歓声が湧き上がる
ハァ、と少年は誰にも届く事の無い溜息を吐き、武舞台を後にする

「…もっとマシな奴はいないのか
 俺は目隠しをしているんだぞ? これ以上のハンデは無いだろ?」
「仕方無イ。コレモ任務ダ」

少年の持った鎌が、黒いローブを羽織った人影に変わる
それを見て、少年も口を開いた

「確かにそうだが…こんな下らん催し物に付き合わされる俺の身にもなって欲しい」
「普段カラ戦イバカリ求メテイルオ前ニハ好都合ジャナイカ」
「ただ戦うだけなら何時だってできる…俺が求めるのは、俺に本気を出させるような奴との戦いだ
 5分程度で降参するような弱者ではなく…全身の血が煮えたぎらせるような強者との…」
「言ッテオクガ、オ前ノ任務ハコノ大会ノ優勝賞品デアル『エフェクター』ノ回収ナノダゾ?
 頼ムカラ、本来ノ目的ヲ忘レルナ」
「分かってるよ、シェイド」

そう答えると、一度無貌の仮面を取り外して、
少年―――黄昏裂邪はまた、深い溜息を吐いた



     †     †     †     †     †     †     †





それは昨日の事だった

「“闇のコロシアム”だと?」
「ええ、どうやらそういった催し物が存在するそうですの」

ノートパソコンのディスプレイに映し出されたのは、
件の“闇のコロシアム”についての詳しい情報
場所や日程、参加資格などが細かく記されていた

「いつからこんなものが始まったのかは分かりませんけど…問題はもう一つ、」
「……優勝賞品が『エフェクター』…か」

資料の一部を裂邪が読み上げると、
御明察、と言うようにローゼは大きく頷き、話し始めた

「貴方もご存じかと思うけれど、近年『エフェクター』の使用者が増えつつありますわ
 確かに中には無害な物も存在しますわ
 それは、100ある内の半分だと言っても差し支えありません
 けど、そのもう半分は……」
「都市伝説との同化を促進させ、最悪の場合……使用者は破滅の運命を辿る
 俺は1度、その瞬間をこの目で見ている」
「そのような悲劇をこれ以上起こす訳にはゆきませんわ
 そこで……貴方にはこの“闇のコロシアム”に参加し、『エフェクター』を獲得して頂きたいの」
「面白そうだな。というか、ローゼちゃんなら大会参加なんてまどろっこしい事しないで、
 適当に潜入して『エフェクター』の奪取だけ指示するもんだと思ってたが」
「それも考えに入れておりましたけれど、リスクが大き過ぎますわ
 参加者としてなら、疑われるようなことは少ないし安全に任務に臨めますの
 まぁ、貴方でしたら心配無用だとは思ったけれど…万が一の場合に備えて、ね?」
「確かにその方が賢明だな…」
「あら、珍しくノリ気じゃありませんのね?」
「参加者は『エフェクター』を狙ってる訳だろ?
 『エフェクター』を使えば、都市伝説の情報を歪曲させて新たな力を引き出せる
 だが実際、そこまでしなくても殆どの都市伝説は応用すればある程度の戦闘は可能だ」
「正直、貴方の場合はナントカ補正が入ってると思いますけれど」
「メタっぽいからスルーするぞ
 それでも大した力を引き出せない奴が『エフェクター』なんて物に縋る
 つまり、この大会ははっきり言って雑魚ばっかりな訳だ
 俺に言わせれば、俺じゃなくとも“Rapidity”や“Reflector”、最悪“Reader”でも良い筈だろ?
 なのに俺を呼んだって事は……他に何かあるな?」
「おほほほほ、本当に察しがよろしいですわね
 『Rangers』はその立場上、R-No.の構成員以上に顔が知れやすいですわ
 貴方が挙げた様な主力メンバーの皆さんは特に、ですの
 中でもトップクラスで有名なのは“Rainbow”……貴方なのだけれどね」
「そんな奴が参加すりゃ、主催者側も黙ってない筈だ」
「その通り。だからこそ貴方が“Rainbow”だとバレないように変装して頂きたいの」
「やっぱりそういうことか…」
「別に女装しろ、という訳ではありませんわ
 仮面を被って頂くだけでも立派な変装ですし」
「こういう時が来ると思って蓮華ちゃんに作って貰ったんだ」

そう言って、裂邪が取り出したのは、金色に眩く輝く仮面だった
いや、目も鼻も口もないそれは、仮面と言うには程遠く、寧ろ円盤と言った方が近いだろう

「…それは?」
「少し殴られたくらいじゃ壊れない素材で出来てる
 南極の一件以来、「ジャック・オ・ランタン」の力が強化されて余所見してても戦えるようになったからな
 良い機会だし、ハンデして戦ってやろうと」

す、と彼は仮面を被り、軽く御辞儀をするような素振りを見せた
その瞬間、ローゼの背筋が凍てつきそうになったことを、誰が予感しただろうか

「……あの、裂邪さん? それだけはちょっと……」
「ん? 安心しろ、バレそうになったらそれなりの対処はする
 この大会は殺しOKらしいが、不殺を貫くことも約束するよ」
「いえ、そうではなくて―――」
「それじゃ、皆と作戦練ってくる」
「あ、ちょっ、裂邪さん!」

早々に部屋を出て行くその背を見て、深い溜息を吐くローゼ
彼女が抱くは、たった1つの不安

「……また一つ、近付いてゆく……
 ねぇ、貴方は何処まで行ってしまうの? 裂邪さん…」

《お待たせ致しました! 決・勝・戦です!
 遂に『エフェクター』に相応しい最強の契約者が決まります!》

熱い歓声の中、武舞台にスポットライトが照らされる
輝く鮮血の痕が、ここで繰り広げられた数多の戦いを物語っているようだった

《まずはAブロック代表! 貌の無い仮面を被りながらもたった5分で、それも殺人OKのこの大会で1人の死者も出さなかった強者!
 謎多き無貌の少年、ノーフェイス!!》

紹介が終わると、彼は―――裂邪は通路から出て、スポットライトと歓声を浴びる武舞台に上がる
「だっせぇ前振りだな」という呟きは、巻き起こる声に飲まれて消えた

「……ま、今までの連中は寒気がする程弱い奴等ばかりだったからな
 俺に半殺しにされる為にここまで勝ち上がってきた雑魚か、俺と対等に渡り合えるようなそこそこ出来た馬鹿か……
 どちらにせよ、この長過ぎる茶番劇がようやく終わる訳だ」
《そしてBブロック代表! 奇しくもノーフェイスと同じく不殺を貫いて勝ち上がってきた、烏の仮面を被った少年!
 燃え盛る漆黒の翼、紅(クレナイ)グレン!》

「うおおおおおおおおお!!」という雄叫びと共に、翼の生えた火球が裂邪とは反対側の選手入場口から飛び出した
ばさっ!と羽ばたかせてスピードを殺し、火球はゆっくりと武舞台に舞い降りて、気合を込めた一声と共に炎が弾け飛んだ
先程の紹介通り、烏をモデルにしたらしい仮面で目と鼻を覆った少年
背格好から見るに裂邪と同年代くらいだろうか

「じゃじゃああああああああああああああん!!」
「…は?」
「カーッカッカッカ、お前がノーフェイスだな? 俺様は紅グレン!
 お前の試合は観客席で見させて貰ったが、相当に出来る奴だと見た!」
「あぁ、そう」
「しかぁーし!! お前の命運はここまで!
 あの『エフェクター』は俺様が頂く!」

―――何だこの暑苦しい奴は
呆れた裂邪は小さく溜息を吐いた
その直後、試合開始を告げるゴングが響いた

「行くぞ! 『戦天必焼』ォ!!」

先に動いたのはグレンだった
彼の背から黒い翼が生え、羽ばたいて裂邪に急接近すると同時に、燃え盛る炎の拳を振りかぶる

「『シャドーサイス』」

裂邪は己の影から現れた漆黒の鎌を手に取り、グレンを押さえるべく振り下ろした
グレンは空中で身体を捻って脚を烏のそれに変化させ、鋭い爪と鎌の刃をぶつけて火花を散らした

「ひゅー、危ねぇ危ねぇ、今終わっちゃ烏の行水も良いところだぜ」
「……ほう、少しは楽しめるか」

裂邪は爪を弾いてグレンを遠ざけると、
影から2個3個と、黒いスパークを放つ球体がふわりと飛び出し、浮き上がる

「…『シャドーボール』」

球体は真っ直ぐに、グレンへ目掛けて放たれる
対するグレンは大きく飛び上がり回避を試みたが、球体は彼を追尾し続ける
ばちっ、と黒い雷光が邪悪に煌めいた

「本当に少しだけだったな…これで最後(レッツト)だ―――」
「『昇天霹靂』ィ!!」

一瞬の雷光の後、場内に轟くは雷鳴
その刹那の間にグレンを追っていた球体は跡形も無く消滅していた
ただ、漆黒の翼を織りなすグレンが、炎と雷を纏って悠然と降り立とうとしていただけだった

「カッカッカ! お前やっぱすげぇな!
 久しぶりだぜ、こんなにワクワクするような戦いはよぉ!
 ……だが、目隠しなんてしてないで、そろそろ見せてくれねぇか? お前の“本気”を」
「…ウヒヒヒヒヒ……前言撤回、だな
 この戦い……大いに楽しめそうだ!!」

裂邪は俯いて仮面を外し、何処かに投げ捨てた
瞬間、彼の影から夥しい数の黒い腕が伸び、その身体を包み込む
昆虫のような4枚の翅と長い触角、鋭い爪
その両目は、闇に浮かぶ光の如く紅く輝いた

「……影、推参」



   ...To be Continued

(やっべー、まーた『前編』って書くの忘れてた……まいっか)



紅グレンは安直過ぎるって? ハハッ、偽名に決まってんじゃないすか(ぁ
都市伝説は、とりあえず“烏”がヒントになるでしょう
イメージCVは関智一
ぶっちゃけるとウルトラゼロファイトのグレンファイヤー見て思いついた
でもキャラ的には、遊戯王ZEXALⅡのアリトみたいな、
自分の使命とか関係なく、ただ純粋に、強い奴と戦いたいっていう信念の下に動いてるような、そんなキャラ
詳細の半分は後半で発表、かな?

そんな戯言はさておき皆様乙ですの
後々感想書きます

ぐすっ……白目のシャドちゃん可愛くない……

>>495-496
マコマコちゃんマジマコマコ
それより何やら不穏な影が……
黒服さんが無事にマコマコを届けられると良いんだけど
ところで“ABC”と聞くとアンチビームコーティングの方を思い出す(

>>500-505
ジルりんの「うざいにゃあ」が可愛い
そして路樹くんも強ぇ…明日真くんも大した衰えもなさそうで何より
目玉のおっちゃんが一番かわいそう(
そして悲喜、地味にメタ発言www

>>507-508
数少ない硬派な作風の作者現るか!
重苦しい雰囲気とか素敵ですわン
入間さんの今後に超期待かも
時間のシーンが気になるな……

>>509-513
調ちゃん何さらっと犯罪ギリギリの大暴露しちゃってんのwww盗撮ダメゼッタイ!
そしてショタコンだったとは…結婚して下さい(
触手の化物www『エフェクター』恐るべし…否、ナニカちゃん恐るべし
ホントは反省するべきだけど、調ちゃんは可愛いから許しちゃう(

「切り裂きジャックを殺さないで、か・・・」
「無理だろ」
 何か憂うようなアルの呟きをエディはさらりと流した。
 生きて捕らえる事が出来たとして、どのみち死刑は免れないだろう。すでに数えるのも困難なほど殺しを重ねているのだから。
「あの子どもは何らかの事情を知っている、そういう事だな」
「そのあたりはお前さんが探ってくれよ」
 俺は良い身なりしてやがる連中には、口もきいて貰えねぇからな、と皮肉っぽく言い放ち、ジャケットを引っかけて出て行くエディの背に、アルの誰にともない呟きは届かなかった。
「奴に何か理由があるとして・・・誰もを救う事は出来ないのだろうか・・・」

 夕刻、再びホワイトチャペル地区。
「なー、俺こーゆーモンなんだけど」
 町のそこここに立ち客を待つ娼婦に、臨時に支給された警察手帳を持ったエディが軽い調子で声を掛ける。
 娼婦たちはいぶかしみながらも、若くそこそこ見栄えのする容姿を持つエディにさしたる悪い印象は抱かなかったようで、誘いには事欠かなかった。
「悪いな、“そっち”はまた今度にしてくれ」
 もとより今更聞き込みで新しい情報が入るとは思っていない。
 犯人は現場に戻る、とはよく言ったもので、彼自身はあまりそれを信じてはいないものの犯人が他で“獲物”を調達出来る当てがあるかと言えば―
「ねえよな、やっぱり」
 眼前には、黒いドレス姿の少女。手には牛でも解体するような大振りのナイフを携えている。
「殺さないでって、言ったのに」
「切り裂きジャックを殺さないで、か。・・・命乞いは自分の為か、他の誰かの為か?引っかかる物言いじゃねえか」
 少女は何も言わず、ナイフを構えた。
「ガキが相手じゃ気が進まねえが…悪く思うなよ」
 呟くと、エディは銃を取り出した。
 彼の契約する〈伝説〉・・・「魔法の弾丸」
 旧くドイツに伝わる〈伝説〉悪魔から与えられたその弾丸は、射手の望みのままに命中するが、最後の一発、それだけは、必ず悪魔の望むところに当たるという。
「お前に俺が殺せるか?」
 〈伝説〉は自らを造り上げるそれによってしか動けない。
 仮にこの子どもが娼婦たちの惨殺犯であったとして、女しか殺さない、殺せない・・・だろうか?

                 「これは正当防衛です」
こんにちははじめまして。私は武器蔵鞘花(ぶきくらさやか)です。高校一年です。小柄ですが本当です
あ、このゴスロリは私の趣味です。私服なんです
鞘花「ふぅ、この町は都市伝説が多いですからね。気をつけないと。私も契約者であるとはいえ油断大敵です」
しかも有名どころだと倒してもまた現れるそうですから厄介です。特に口裂け女。あれは倒したと思ったら同じ日にまた別の場所で現れたとかいうほどですから要注意です
口裂け女ブームなんてもうとっくに去ったかと思ったのですが…。しかしここは学校町。都市伝説の町ではそんな常識通用しないのでしょう
『やぁそこのお嬢さん』
誰かが紳士的に話しかけてきた。…包帯だらけですけど
鞘花「何です?」
『注射をしてもいいかな?』
そう言って紳士的な包帯男は注射器を私の首筋に突きつけました
鞘花「…か」
『ん?』
鞘花「いったい何を注射してどうするつもりなんですか? 麻薬を注射して生き人形にするつもりですか?
毒薬を注射して[ピーーー]つもりですか? 睡眠薬や媚薬を注射して強姦でもするとか?
増強剤でも使って私を戦闘マシーンに改造するつもりですか? コカインを注射して奴隷にするつもりですか…?
ああ、怖い、怖い怖い怖い怖いですね。何をされるか分かりませんけど、このままでは私は何かをされる…。
首筋に注射器を突きつけられて、注射をしても良いかと脅されて…ああ怖い怖い怖い怖い。怖くて怖くて堪らない! だから―」
『何を言っているのかな?』
鞘花「―――だから、これは正当防衛です」
そう言って私はどこからともなく刀を取り出し注射男を斬ろうとします
『なっ!?』
避けられました。残念です
鞘花「あーあ、日本刀(これ)では駄目でしたか」
『君、何のつもりだ!?』
鞘花「何のつもりって…ああ! どこから日本刀を取り出したかが不思議なんですね? 大丈夫ですよ、心配しなくてもちゃんと種明かししますから!」
私はゴスロリ服の隙間から様々な武器を覗かせます。刀、斧、槍、鎖鎌エトセトラエトセトラ…
鞘花「見ての通り私は暗器使いでして。体中に様々な武器を隠し持っているんですよ」
『暗器使い…? いや、そんなことはどうでもいい! 私が聞きたいのはなぜいきなり刀で斬りつけて来たかだ!』
鞘花「いきなり人の首に注射器を突きつけてきた人が何を言いますか――しかしどちらにしても刀じゃ駄目みたいですね。じゃ、多刀(たくさん)ならどうでしょうかね?
名付けて『一紋多刀(アンサータワー)』!!」
私は袖口から大量の刀剣を出し、注射男に斬りかかります
『ッ! 「注射針千本(サウザンドクター)」ッ!』
なんと、あちらも大量の注射器で迎撃してきました
鞘花「あらあら、これでも駄目ですか。じゃ、槌(これ)ならどうですか? 軽い刃物ならともかく、重くて硬い鈍器なら貴方の注射器ごと頭を叩き潰せますよ…?
食らいなさい、『土竜叩き潰し(ショッキングモール)』!」
私は両腕に巨大ハンマーを抱え叩き潰しにかかります
鞘花「なっ――」
私がハンマーを振りかぶると、いつの間にか目の前に注射男が――
『隙だらけだ』
ぶすり。がら空きだった私の首に注射針が刺さります
鞘花「くっ……!」
『だが上手いな。私としては頚動脈を狙ったつもりなのだが――ギリギリで急所を外したか』
しかし、我慢できない痛みではない。このままハンマーを振り下ろせば……あら?
何故だろう。力が入らない。振りかぶったハンマーを、重量に任せ前方に振り下ろすだけなのに、力が入らない。
身体が言うことを聞かない――否。筋肉が言うことを聞かない!
そのまま私はハンマーの重さに引っ張られ、後ろに倒れてしまいました
鞘花「かららが……あらた、いったい何を……」
舌にまで力が入らない。上手く話すことができません
『何って……注射したのさ。そう、筋弛緩剤をな。さて、これでもう動けないな……
確かにハンマーの破壊力なら私の注射器による防御を貫通できるだろうが……あんな隙が大きい攻撃、
懐ににもぐりこんで素早く打ち込めば怖くない。愚策だったな』
こいつ……意外と強いです! 野良っぽいのに…!
鋭い攻撃は強固な防御に防がれ、動かない防御は力を溜めた破壊の一撃によって崩れ、出が遅い破壊の一撃は素早い攻撃に隙をつかれる。
分かりやすい三竦みですけど(fate/extraを参照です)、それがここまで顕著に現れるなんて!
『さて、と。これで君は抵抗できない。つまり――注射し放題というわけだ!』
注射男が両手に大量の注射器を持ち、向かってくる。普段なら簡単に避けられる速さなのに、身体が動いてくれない!
注射男はどんどん近づいてきます。迫ってきます。這い寄ってきます。どんどん、どんどん、どんどん、どんどん。
『さぁ、薬漬けにしてやろう。これで終わりだ――』
鞘花「ええ、そうれ。……あらたが」
上手く喋れないせいで締まりませんが、注射男が私に止めを刺そうとしたとき、私のゴスロリスカートから88mm機関砲(アハトアハト)が顔を出します
そして、なぜか私のスカートの下にある手が、88㎜を発砲します!
『なっ―――』
勝負は一瞬でした。いくら都市伝説といえども、至近距離からの砲撃には敵いません。(敵うやつもいるかもしれませんが)
『危なかったなぁ、ご主人様。あたしがいなけりゃどうなっていたことか……』
さっき88mmを撃った張本人、私の契約都市伝説のひとつ、『ベッドの下の殺人鬼』が言います
鞘花「ありがろう、これれまら殺られずにすんだわ」
『け、契約者様はいつもこうなんですよ。殺られる前に[ピーーー]と言っておきながら、何かをされるまで攻撃しないし……。
せ、戦闘でも一撃必殺のほうが得意なはずなのに、結構まともに戦っちゃうし……。わ、私たちいつも冷や冷やしてるんですよ……?』
隙間に隠れて影ながら戦いを補佐していた私の契約都市伝説、『隙間女』が言います
鞘花「ごめんらさい。れもわらし、あらたたちのこと信じてるんらから」
『くくく、だったらあたしたちはその信頼に応えないとねぇ』
『ま、まったく……調子いいんですから』
このまま私は二人に体を支えながら、家に帰って養生しました。筋弛緩剤の効果が切れるまで結構かかりました……
ちなみに私はもう一つ、『悪魔の密輸』とも契約しているんですけれど、それはまた別のお話ということで。


                          続く…

sagaし忘れた…ピーーーの部分

『け、契約者様はいつもこうなんですよ。殺られる前に殺ると言っておきながら、何かをされるまで攻撃しないし……。
せ、戦闘でも一撃必殺のほうが得意なはずなのに、結構まともに戦っちゃうし……。わ、私たちいつも冷や冷やしてるんですよ……?』

久しぶりにきたのよね
何だかいっぱい投下されてるのよね
わけが分からないのよね


「市内の高校によ、オート可動するフルスクのプラモを作ってる奴がいるんだとよ」
「オート可動って何か仕込んでんのかよ」
「分からん、とにかくやばい奴らしい」

廊下からの話し声がドップラー効果
それでようやく俺は目を覚ました

もう夕焼け小焼けじゃん
そう言えば何時から寝てたっけか
ホームルームを聞いた覚えはないし
6限でやってた内容もさっぱり思い出せない

まあいいか
よくない気もするが

「帰るか…」

周りを見なくてもクラスに俺一人しかいない事くらい分かるさ
しかし遠藤もひどい奴だな、終わったら終わったで起こしてくれればいいのに

そう思いながら隣の席、遠藤の机のなかに手を突っ込んだ
幾つかケースがあるが一番上のブツを引き出した

 “黒タイツ女子校生をヌルリンベチョベチョ2 「もうやめて…」 眼鏡の奥には優等生の淫らな欲望…”

これは俺を起こさなかった罰として没収じゃ
明日返せばいいだろ
自分の鞄のなかにディスクを投げ込んで、立ち上がる


「凄いんだって、中央高のさー、れっきゅんって子がさー」
「嘘ーそれマジー??」

廊下を行けば大声で話している女子二人とすれ違う
こいつらって同期の美術科の連中だっけ
横目で見やりながら止まらず進む

「そー言えばさー、聞いたー? あの都市伝説のチェンメのー」
「知ってる、あれヤバいんでしょ? 送った子って東高の1年らしいけど、今、行方不明でってんでしょ??」
「東高に友達いるんだけどーその子まだ見つかってないってー、警察にも捜索届出したけどまだだってー」
「マジで? チョーやばくない??」

そんな話が耳に入る
都市伝説はやばいらしい
その話自体はこれまでにも何度か聞いた
何も珍しいことじゃない

下宿先の安アパートの一階は定食屋でしょっちゅう行くんだが
そこのおばちゃんが言うには、この町は元々曰くありの場所だったらしい
実際、変な事件も多い
そんな気がする

変な事件が起きたとき、大抵それはテレビのニュースになることはない
あくまで噂のレベルで耳に入ってくるだけだが、人はこの手の話が大好きらしい
変な事件があったという話を聞くたび、おばちゃんは口癖のように「この町はそろそろ吹っ飛ぶんじゃないかねえ」とか言う
おばちゃんの中だと幾度ともなくこの町は崩壊の危機を迎えているのだ
おばちゃんの中ではな


いつだったか、こんな話を聞いたことがある

この町では都市伝説が実体を持つ
この町では人が都市伝説に巻き込まれる
この町では都市伝説が人に契約を持ち掛けてくる
この町では都市伝説と契約した人が都市伝説と戦っている

そして

都市伝説と戦うたびに強くなる
戦い続けて、一番強くなったそのとき、自分の願いを叶えることができる

そんな話だ
誰から聞いたのかも覚えていない
そんなファンタジーがあってたまるかという話だ

ところで
かくいう俺も都市伝説と契約していたりする
そんなことを言えば、誰もが俺が中二病患者だと見なすだろう

契約の経緯は忘れた
ごめん嘘、本当は大体覚えている
だがあまり話したくない内容だ
契約した都市伝説は「円や図形をフリーハンドで描ける数学教師は教えるのが上手い」という話だ
言っておくが俺は数学教師じゃないし、そもそも数学は得意じゃない
じゃあなんで工業の電気科に進学したんだ、というツッコミは無しで頼む
とにかく俺はこのことを人に話さない
話す必要がなさすぎる

あ、ただ、フリーハンドで描く図形が妙に上手くなった、気はする
ちょっと便利である




プラモデルの人、夢幻泡影の人に土下座orz
内容と実態のずれはあくまで作中の噂レベルでのずれということでorz
お仕置きなら受けるわorz


「ちょっとぉ、いっちゃぁん!」

前から何かが走ってきた
ああ、環希だ
ドタドタ走ってくる環希の頭にはふわふわの猫耳がセットされていた

「こんな時間まで居るんならメールくらいしてよぉ!」
「いや居ねーし、もう帰るし、メールしねーし」
「それより聞いて聞いてー」

環希はいつもこんな感じだ
まず俺の話を聞かない
そして自分の話を始める
大体いつもこんな感じだ

「今日実習で作ったの! 可愛いでしょ! すごいでしょ!」

そう言いながら両手で殴り掛かってきた
モフモフする何かで顔を覆われてしまった

「おいやめろ! [ピーーー]気か!」

両手のそれはまるで猫の手の形
そうか、猫のコスプレ衣装でも作ったか
良かったな

「可愛いでしょー! ンフフ、可愛いでしょー!」


環希はそう言いながら俺の頬を猫の手グローブでボンボン叩く
俺、もう帰っていいかな? お腹も空いたし

「あ、これさ爪も出るんだよ! 見てて見ててー」

猫の手グローブが凶悪な金属音を立てた
すぐ目の前でスチール製と思しき爪がグローブの先から伸び出ていた

「ウルヴァリンか! 俺を[ピーーー]気か!!」
「これ作るの、すっごく大変だったんだよー」

そのドヤ顔がむかつく
俺が怪我したらどうするつもりだ

「本当はねー、声を認識して動くねこちゃんしっぽも作りたかったんだけど無理だったー」

ああそうですか

「だから、今度一緒に作ろうよー、回路とか組んでよいっちゃん、おねがーい!」

気安く俺を巻き込んでるんじゃねえ!!
悪いが環希、俺には家に帰ってアダルティーなドラマを鑑賞するという崇高な宿題があるのだ
お子様のお前には分かるまい

とは言え、環希のことだ
俺がはいと言うまでしつこくまとわりつくだろう
大方、こうして俺の所に来たのも、ねこしっぽとやらを俺に作らせる腹づもりだったんだな?
悪いが俺もそこまで暇じゃないんだ
よって逃げさせてもらう

俺は素早く踵を返し、ダッシュしようとした


その瞬間だ

袖を引っ張られるようにして俺はホールドされてしまった

「おいこら環希離せ!」
「わっわっわっ!」

首だけ捻って睨むと環希は珍妙な顔をしていた

「いっちゃん動かないで!」
「いやお前が俺を離せ」
「猫ちゃんグローブの爪が…いっちゃんの袖に絡んじゃった! このままじゃ制服破けちゃう!」
「は?」
「いっちゃん! 制服脱いで!!」
「は!? やだし! もう帰るし!」

逃げようと身体を動かそうにも
袖が引っ張られる格好になってるので
無理な体勢になって身体が動かせんのだ

「いっちゃん、爪がすっごく絡みこんじゃっててちょっと取れない! ちょっと実習室いこ!」
「おい、なあ、ちょっと…」

無理な体勢になってる俺は環希に腕を引かれる
もうこの状態ではされるがままに歩くしかない

「あの、環希さんちょっと…」
「実習室で爪取ったげるから! あと今日は一緒に帰ろーよ!」

俺はずるずると環希に引っ張られていった



(以下未完)

考えもせずに書いちゃったのよね
環希に「にゃん❤」ってやらせるの忘れたけどしゃーなしなのよね

俺の仕事は殺し屋だ。
組織にとって邪魔だが正々堂々排除できないフリーの契約者を始末することで日々糊口を凌いでいる。
フリーの契約者といっても色々居る。

「あんたがマキア…マキ……マキアマ? まあ良い、牧天喜かな?」

俺の目の前に居る男。
牧天喜、この男は正義感が度を過ぎている。
こういう手合いはどんな組織にとっても煙たいものだ。
こういう手合いはどこかの組織に飼われでもしなければ俺のような人間に殺される。

「誰だお前?」

「否定から入らないなら本人だな」

男の瞳を覗き込む。
俺の契約した「錬金術」の効果は至ってシンプルで、俺の知る限りの化学物質を素材さえ有れば合成させられるというものだ。
目に刻印された魔法陣を相手の脳内に作用させることでそこに神経伝達に用いる化学物質を錬成して相手の思考を変性させる。
理屈にすればそれだけの至ってシンプルな能力だ。
俺の指示をどう解釈したのか男はキッチンのコンロに火をつけてそこに顔面を突っ込む。
データによればこいつは火が弱点の都市伝説と契約しているらしいので、こうすればオシマイの筈だ。
少々焦げ臭くてかなわないが、ここから早々に退散すれば構わないだろう。
俺はそそくさと部屋を出て、そのまま用意してあった車に乗り込む。

「お疲れ様です」

黒服の少女が無機質な表情で車を走らせる。
彼女の名前は天城真希。
俺は彼女の所属する部署を知らないし彼女がどの程度偉いのかも知らない。
ただ俺も彼女も間違いなく、秩序を守るための影に徹している存在だ。

「仕事だしね、気にしないでよマキちゃん」

流れる車外の風景を見てため息をつく。

「憂鬱なのですか?」

「いいや、ただ少し飽きただけだ」

「そうですか……ところで聞きたいのですが貴方は今の仕事に満足していますか?
 僕は組織の汚れ役なんてもうそろそろ勘弁願いたいのですが
 善良な市民も、糞みたいな悪党も、一切の区別なく差別なく殺すなんて僕はやってられません
 自分が組織の道具になっているみたいで、第一私も今誰の指示を聞いて動いているんだか分からないっていうんですからお笑いです」

「俺は気にしてない。俺の興味対象はむしろ今の君の発言かな」

「仕事の愚痴くらい別に構わないでしょうに」

「俺は善人を殺した。悪人も殺した
 能力だけあって権力の無い奴を
 組織のトップとコネを作れなかった運の悪いやつを
 制御しきれない奴らをこれでもかと殺してきた 
 それは俺の殺人であって、君の殺人ではない
 君が気に病む必要はない」

不味い煙草を吸って吐き出す。

「そもそもだ」

「そもそも?」

「俺は人を殺したのかな」

「何を馬鹿なことを言っているのですか
 貴方もついにガタが来てしまったみたいですね
 僕としてはとってもとっても残念ですよ
 貴方にもそろそろ愛着が沸いてきたころだったんですがねえ
 貴方も処分されちゃうんですか?」

「いいや違うよ、考えても見ろ
 俺は確かにあの男の脳内に化学物質を錬成した
 だが奴が死を選んだのは俺の言葉のせいじゃあない
 自らの内部に発生した化学物質と、それによって引き起こされる電流の作用で奴は死を選んだんだ
 俺が関わったことは確かだが、奴の死は奴の脳が決定したことの筈なんだよ」

「いやいや、彼に死の命令を与えたのは貴方でしょう」

「フロイトはタナトスという概念について言及している
 これは誰ものうちに眠る死への願望だ
 俺は結局それを後押ししているに過ぎない
 日常に眠る僅かな不満、不平、怒り、そういったものは攻撃衝動へと繋がり、抑制を失えば自らすら破壊する
 俺がしているのはあくまでタガを外す行いだけ
 タガが最初から外れている人間は相手しきれない
 俺とおまえの仕事が糞みたいな悪党や善良な市民や「行き過ぎた奴ら」ばっかり殺すことになるのも宜なるかなって奴だ
 そもそも俺が操っていたとして他人の心は他人の心だ。それは決して俺のものではない、そいつだけのものだ」
 
「それは言い訳ですね。人間の生命や意思の尊厳を踏みにじっています」

「そうかな?
 人間の生命とはすなわち機械的な有機構造群同士の連鎖的な反応であって
 人間の意志とは超膨大なアルゴリズムの集積だ
 自律的に情報同士を連結して新しいアルゴリズムを形成する点は見事だがそれとて多くは誰かの模倣
 すごい人間は居ても、人間がすごいわけじゃない。戯言だけどね」

「戯言であって欲しいと願います」

「そうか、君はやっぱり良い子だな」

「僕が、ですか?」

「ああ、その通り。ちょっと車を停めて。煙草を買いたいから」

「いいですけど……」

「良い子で待っててくれよ」

と言って俺は彼女の脳を少しだけ操る。
そして車の背後に立つ何人かの黒服と対峙した。

「俺の制御から抜けてくる奴がまだ居たなんてね
 確かあの子に頼んで組織の情報も改ざんしてある筈なんだが」

現在車中で俺の帰りを待つ少女はスーパーハカーと契約している。
彼女の「俺に協力したい気持ち」を少し開放してあげた後に「自らの行いを忘れたい気持ち」を刺激することで俺は組織に別の人間として所属していた。

「都市伝説に対するずば抜けた応用力、冷徹に決断を続ける判断力、戦況を見極めて強者に擦り寄る観察眼
 どれをとってもお前は準一流で、一山いくらの我々のような只の黒服では敵わんよ
 だが組織の情報源が単一だと思うなよ、マキアマキ
 お前のことについてはこちらでも独自に調べている」

黒服達は俺の能力の対策のつもりか、なにか特殊なサングラスをかけているようだ。
だがそんなものは何ら意味を持たない。

「やめてくれ。その名前は嫌いなんだ。勝手に覚えられやすい名前だからね
 そしてまあそのなんだ……お前ら、もう詰みなんだ」

黒服達の顔が真っ赤になっていく。
それぞれ都市伝説持ちらしく何やら頑張っているみたいだがまあ無駄だ。
この辺りには既に高密度の光化学スモッグを合成している。
オゾンでも良かったのだが匂いが気に入らないのでやめた。

「ば、馬鹿な……お前の魔眼の対策はこれで……」

勘違いだよ、馬鹿。
魔眼なんてたいそうなもんじゃあない。
そしてこの後は放っておけば毒殺済みの死体が一丁上がりになる。
だが、それでは面白くない。俺は動けない黒服達と目を合わせて一人一人の神経を変性させていく。
これでまた便利な駒ができた。

「全ての存在は情報無くして動けない
 人も、機械も、つまりその情報を操った者こそが真の勝者だ
 そして人間が情報を操る手段とは……」

俺は彼らの前でにやりと笑う。
そう、それは至ってシンプルな答えだ。
人間にとっての情報、それは電気反応と化学物質。
これを操る力とはすなわち神の力だ。
俺はこの力で趣味に生きるゆとりに満ちた人生を送る予定だ。

「まあ良い。君等に話すことは何もない。職務に励み給え」

俺はそう言って車の中に戻る。
黒服たちは俺に頭を垂れたまま動かない。
邪魔くさかったので指を鳴らすと、彼らはどこかに行ってしまった。

「煙草はどうしたんですか?」

「お気に入りの銘柄が無かった。車出してくれる?」

「はい」

車内に戻るとマキちゃんが待っていた。

「ところで次の仕事のリストは?」

「これですね」

俺は渡されたリストを眺める。
彼女の上司の振りをして作らせたリストだ。
組織の中でも戦闘力に絞って作らせた構成員のリスト。
不明要素が多すぎるが読んでいるだけで胸が高まる。
この瞬間だけは俺が単純な機械じゃないと間違い無く確信できる数少ない瞬間だった。
趣味ってのは人間に尊厳を与える活動なのだ。

「えーびーしーでぃーいーえふじーえいちあいじぇいけいえるえむえぬ
 おーぴーきゅーあーるえすてぃーゆー」

「いきなり歌い出さないでくださいよ、僕の気が散ります」

「影遣い、筋肉ダルマ、神に愛された子、正体不明、悪意の天才、異常者、正義の味方、面白いキャラクターには事欠かない
 俺の情報を嗅ぎつけた奴ってのも気になるねえ、そいつは強いのかな」

強い奴との戦いは本当に心躍る。
さてさて次どいつをターゲットにしてやろうか。
本当に本当に楽しみだ。
待っててくれよディアマイベイビー。

勢いで書いた
そしてそれとなく名前を使った方々に土下座
世界観交流キテル……
とおもったけど上手く出来なかったよ

乙でしたー

歌詞はマザーグースのリジーボーデンでしょうか
あれはあれで淡々と狂的でキャラ的にいいスパイスかと思います

ピーキーな能力値の相手に対して強いとか面白いぜこの能力者!
当人に対する評価が準一流ってのもまたそそる要素です

>>673
コメントありがとうございます
ピーキーな能力値というかピーキーな心というか
とにかく極端な相手の方が殺し慣れている変な奴です
準一流は高二病の症状です

メガネをかけて普段より気取った様子のマキちゃんが俺の前に大量のプリントを広げる。

「本田さん、お仕事です」

ちなみに本日の俺の名前は本田書物だ。
マキアマキも好きな名前だったんだが、やはり他人に覚えられやすいのが気に入らなかったのでこの前捨てた。

「今回の討伐対象はテケテケ
 テケテケとは冬の北海道の踏み切りで女性が列車に撥ねられ、上半身と下半身とに切断されたが、あまりの寒さに血管が収縮したために出血が止まり、即死できずに数分間もがき苦しんで死んでいったという。もがき苦しんだ後即死にいたる場合もある。
 この話を聞いた人の所には3日以内に下半身の無い女性の霊が現れる。逃げても、時速100-150キロの高速で追いかけてくるので、追い払う呪文を言えないと恐ろしい目にあうという。またその異様なスピードと動きとは裏腹に、顔は童顔でかわいらしい笑顔を浮かべながら追いかけてくるためその恐ろしさをさらに助長するという。
 多くの場合「女性」とされるが、稀に男性で描写されることもある。
 遺体の下半身だけが見つからなかったため、自分の足を捜しているとのこと。
 以上、wikipedia「テケテケ」の項より抜粋」

そんだけ気取っておいてwikipediaかよ、という言葉を喉のあたりで止める。

「テケテケね、俺みたいな暗部街道まっしぐらの汚れ役な殺し屋を使ってまで仕留めるようなものか?
 土壇場でいかにも主人公体質な男の子と契約して反撃でもされたら致命的な主人公補正の不足により瞬殺されるぞ」

俺はボクっ娘には優しいのでこれくらいにしておいてやろう。

「まあまあこのテケテケは特殊なのです
 組織内部のとある実験の為に使用されていて、通常の個体を遥かに超える戦闘力を有しています」

「ほう、そいつは面白そうだ」

「ふっふっふ、僕がバトルマニアのホンダさんの為にわざわざ取ってきたお仕事なんですからね」

「お駄賃は?」

「すげえ金持ちな部署なので準備費用だけでポンと二十万円くれましたよ」

「パーフェクト、それで美味しいものでも食べに行こう」

「わぁ! 良いんですか?」

「普段迷惑をかけているからお詫びの代わりさ。確か君はステーキが好きだったろう
 中々美味しいステーキハウスを見つけてね」

「ありがとうございます。じゃあ楽しみに待ってますからね」

「ああ、それじゃあ書類をよこしてくれ」

俺はマキちゃんの頭をくしゃくしゃと撫でると情報の整理を開始した。

――――――――――――

「さて、目撃証言によればここだな」

数日後、俺とマキちゃんは旭川市郊外の線路沿いの空き地に車を止めて、テケテケの出現を待っていた。

「はい、今までも列車を転覆させるなどの事故を起こしています
 僕のスーパーハカーによれば既にこの辺りの地方コミュニティでも噂になっているのでさっさと始末しましょう」

「了解だ」

突然マキちゃんが突然咳き込みはじめる。

「おいおい、風邪か?」

「ライノウイルスだかだそうですがまあ僕なら大丈夫ですよ
 どうせ風邪で死ぬ身体でもないし」

「ウイルスねえ……そういや組織の上層部にはウイルス遣いが居るそうだな
 あれもなかなか興味深い、俺の能力って多分ウイルスに通じねえんだよな」

「あぁー、私も暗部専門なので表の方とはあまり交流がありませんが居るとは聞いてますね
 本田さんの錬金術って見えなきゃ使えませんから、見えない敵とかには弱そうですよね」
 
「見えないっていうか、イメージできねえ
 見えないだけなら周りの空気を少しいじれば酸欠にしてやれるんだがウイルスに酸欠なんて無意味だしな
 細菌でも正直きついわ
 サイトカインやインターロイキン、それにウイルスならインターフェロンを合成して免疫系を強烈に働かせてやっとなんとか……かな
 それだって時間稼ぎだし」

ウイルス。
思えば俺の在り方はそれに少し似ている。
組織という巨大な生命体に忍び込み、その遺伝子をいじり、自らの生存のために役立てている。
だがウイルスと違うのは宿主の存続を重視していることだ。
そもそも有名所の致死性ウイルスは進化の生み出した欠陥品だ。
宿主を殺してそこから飛散なんて繰り返していたら自らの存続が危うくなる。
そこまで真剣に対策されずにのんきに生き残るライノウイルスさんを見習うべきだ。
俺みたいな弱者は敵として認識されたならばお終いなのだ。
そうなれば俺じゃあ勝てない一流や超一流どもが俺を始末しに来る。
そういうシステムだ。機械のように、その流れは決して変わらない。
 
「ところで本田さん、来ましたよ」

そう言われて窓の外を眺めると確かにいる。

「あれだな」

「あれですね」

キュラキュラと音を立てて進むセーラー服の少女。
果たしてその下半身はと言えばキャタピラである。
立派な戦車砲まで備え付けてなんというかこう……エロい。
その姿、正しく夜の戦車。

「本田さん、お仕事なんですからあんまり興奮しないでくださいね?」

「こここここここここ、興奮なんてしてないんだからね!」

「もーう、本当にバトル大好きなんですから……」

ごめんなさいお父さんお母さん、俺は汚れてしまったようです。
俺は車から降りて少女のほうまでゆっくりと歩み寄る。
少女も、いやテケテケも俺に気づいたらしく俺の方にゆっくりと近づいてくる。

「ねえお兄ちゃん、私の足はどこ?」

テケテケは俺にそう尋ねる。

「んなもんねえよ」

「……そうなんだ」

テケテケは悲しそうな顔をして俺の方を見つめる。

「じゃあ……」

瞳に殺意が篭る。

「私に、足を頂戴! 奪われた私の大切な足の代わりを!」

砲塔がキュルキュルと音を立てて俺の顔の方を向く。
トップクラスの契約者ならば反応してカウンターをかませる時間が有るのだが悲しいかな俺は戦闘の天才でも達人でもない。

「邪魔な場所は吹き飛ばしてあげる!」

無情の火砲が放たれる……ワケがない。
プスン、と音を立てて砲塔は沈黙する。

「え?」

「お前が下半身に戦闘用小型戦車を取り付けられたテケテケなのは知っている
 だからその小型戦車に使われている金属の一部を酸素と反応させてみた
 ついでに砲弾内部の酸化剤も組成を弄って分解してみたよ
 これで君の酸欠状態の砲塔内部では
 ろくに整備も受けてねえんだから設備も劣化していると踏んでいたがその通りで助かったよ
 じゃなきゃあ君みたいな英雄的な素養の有るキャラクターには負けてたからね」

「う……」

「さよならだ」

下半身の戦車が派手に音を立てる。
さすがに物は丈夫らしく、少女の方だけが黒ひげ危機一発みたいにこちらへ吹き飛んできた。
脳内物質を大量に創りだして反応速度を極限まで上げ、彼女の捨て身の一撃を躱す。
そしてすれ違いざまに瞳を見る。
術式を彼女の脳内に確実に叩きこむ。
俺が身を躱したせいで無様に地面に激突したテケテケに言葉をかける。

「君は憎い、だが何を憎んでいる?
 君が本当に憎んでいるのは君を改造した奴じゃなくて今の醜い君自身じゃないか?
 君が本当に見たくなかったのは君自身、でも君はそれを認めたくなくて、その製造者たる実験者どもを憎んだ
 それも間違ってはいないが逃避にすぎない
 君にはほら、もっと根本的な解決方法が有るはずだ」

テケテケは沈黙する。
そしてしばらくすると自ら手を振り上げ……

「私って本当に馬鹿だったんですね」

「うん、君は本当に愚かだよ」

自らの頭部に振り下ろした。
スイカみたいに爆ぜた頭が夏の夜空へと溶けていく。
幻想的でも儚くも無い風景。
面白くもない仕事である。
俺は車に戻って一息をつく。

「憂鬱なのですか?」

マキちゃんはこちらの顔を心配そうに覗き込む。

「いいや、ただ少し飽きただけだ」

「そういうこと言うと、裏切りを疑われて処分されるのでやめたほうがいいですよ」

「まるでそういう奴が居たみたいな口ぶりだね」

「それはお互いの為に言わないで……あ」

「どうした?」

「本田さん、そういえば貴方なんで僕がステーキ好きだって知っているんですか?
 前に担当した契約者しかそれは知らない筈なのですが……」

それは俺だ。

「ああ、悪いこの前日記読んじゃった。あんな目立つ所においているから勝手に交換日記にしてやろうかと」

「位置変わってると思ったらそういうことだったんですか!?
 女の子の日記覗くなんて最低ですよ!」

「わりいわりい、好きなだけ頼んでいいから許してくれ」

「まあ僕は優しいから許してあげますよ! 僕は天使のようにやさしいですから!」

本当に相手していて飽きない娘だ。
まあそれじゃなきゃわざわざ俺の側に置いたりはしていないのだが。


「てめー、待てですよ」

 生地は光の加減で艶やかな薔薇が浮き上がる繊細なジャンパースカートにシフォンのブラウス。
 ピンク色の頭には総レース張りのつば広のボンネット。その全てが深淵の黒・・・いわゆる、ゴスロリとか云うやつか。
 その珍妙な出で立ちの少女から声を掛けられて、彼、田中書物は黙って立ち止まった。
「てめーと、取引をしたいのですよ」
 取引だと?心当たりのない彼は沈黙する。
「さっき、てめーがそこの店で入手したものですよ」
 ・・・思い出した。
 マキちゃんにたまには何か買ってやろうとした「黒いパピヨン」とやらいう変わった店で、どうした訳か店主の若い女に気に入られて
「貰ってちょうだいな」
 と半ば押しつけられた、石膏像のような噴水のオブジェ。水もきちんと出るそうだ。
 これだけ聞くとなんだか西洋のお屋敷にあるような瀟洒な噴水を思い浮かべそうだが、その水を噴きだしているのがゾウで、そこに蝶々が戯れているという全く意味不明な代物だった。
「対価は払うのですよ。ボクにそれをよこせですよ」
 彼は僕っ娘には優しいと自称している。よってこの訳の分からない少女の申し出を、話だけは聞く気に・・・
「ならねーようですね、プレゼントじゃとーぜんですか」
 そこそこ歴戦の彼には、少女が人の内心を知る能力を持つことを、その台詞が無くても推し量れた。その媒体が、手にしている鏡である事も。
「何が目的だ?」
「おっと」
 少女は彼から瞳を逸らす。既にお見通しと云うわけか。
「もう一度聞くですよ。取引する気は・・・」
 そこまで言い掛けた少女がはっと身を引く。
 彼の忠実な下僕と化した黒服の、光線銃の一撃を避けたのだ。
 ただの小娘にしては反射神経が優れている。もしかして、人間ではない・・・か。結論づければ、彼の行動は早い。
「何が目的でこいつを欲しがる?」
「欲しいからなのですよ!」
 そんな理屈があるか。・・・いや、あるかも知れない。世の中は広いのだ。
 しかし、この噴水に何か・・・もっと言えば、好奇心をそそるようなモノがないとも限らない。
「店から付けてたですよ!」
 怒鳴ってから、少女ははっと口を押さえるが、もう遅い。既に体も硬直したように棒立ちになった。
「それボクが欲しくて狙ってたのに、てめーにはどーせ価値なんて判らねーから、取り引きの振りして持ち逃げしてやるつもりなのですよ!」

 もはや少女の意志とは関係なく次から次へ言葉を紡ぎ出していく。
 脳内物質を変成させて、自白剤に近い成分を作り出すことなど、思いのまま。
 ついでに体も動かないはずだ。随意筋肉への神経伝達は声帯を除き一時的に麻痺している。
 目的を聞きだし、これが興味をそそるようなモノでなければ、対価次第でくれてやってもいい。
 なんたって彼は、自称僕っ娘には優しい男なのだ。
「一見アンティークっぽいけど、実は中国製だって、オーナーさん言ってたですよ!都市伝説なんか欠片も関係ねーですよ!」
 よし、もう一押し。
「対価は、今ボクが持ってる一番可愛い物をくれてやるですよ!」
 ・・・これを言わせた事で、彼は勝ちを確信した。
 少女は顔の筋肉すら動かすことがままならず、操られるままに首から紅水晶で作られた、繊細な薔薇の意匠のネックレスを外して男に手渡す。
 ネックレスを受け取った男は、そっと少女の前に悪趣味な噴水を置く。取引成立だ。
 本当はジャンパースカートでも良かったのだが、マキちゃんに着古しを着せるのも躊躇われたし、ブラウス一枚で放り出すのも何だと思ったので、ネックレスで妥協した。
 ネックレスが彼の手に渡った途端少女は解放され、地面にへたり込む。
「なんで・・・僕を操れたですか」
 目は見てない筈なのに、と納得のいかない様子に、男は黙って少女を指さす。正確には、少女の手鏡を。
「鏡って、ガラスに銀やらなにやら吹き付けたりして作るって、知ってるか」
 鏡を構成する金属に少々悪戯をして、マジックミラーに変えたのだ。ほんの一瞬だったから、気づく暇すら与えなかった。
「くっ・・・完敗なのですよどちくしょー!」
「じゃあな。これに懲りたら持ち逃げなんて企むんじゃないぞ」
 ちょっといい人っぽく締めて、田中書物はその場を去った。
 マキちゃんはネックレスを喜んで受け取り、出所については突っ込まれなかった。物々交換だから、別に後ろ暗いところもなかったが。


幻「ひでー話じゃねーですか!」
貴也「いや、一番酷いのはアナタだから!」



END

以上。ルルルの人に土下座進呈!

  ┏━━━━ふっかつのじゅもんを いれてください ━━━━┓
  ┃                                   ┃
  ┃                                   ┃
  ┃http://www29.atwiki.jp/legends/pages/4797.htmlのつづき┃
  ┃                                   ┃
  ┃                                   ┃
  ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 始まりは早かった。
 全くの偶然。たまたま出会った江良井と錨野。
 顔を合わせた瞬間に、それが当たり前であり至極当然ともいうように、お互いに場所も時間も指定したわけでもなく――始まった。
 走り出したのは両者とも同じタイミング。
 勢いを殺さずにそのままぶつかりあう両者。
 二度、三度、四度。肉が肉を打つ音が聞こえ、五度目の音が鳴ってからようやく距離を取るふたり。

「さすが江良井くんだ。あの頃よりも強い」
「……お前もな」
「やれること考えられること全てやった結果さ。『ゲーム脳』奪還に敗れたままで終わるのを由とするほど諦めがいいわけではない。
 いつか、君に会うため、君と戦うため、君を[ピーーー]ため、君を見下ろすため、君に勝つために鍛えたのさ」
「俺ごときのためによくもそこまで無駄な労力をかけることだ」
「君だからこそ、ぼくがこれだけの労力をかけるのさ」

 離れた距離を一足でゼロにし、打ち込む掌底。
 反射的に出した手から伝わる衝撃を感じるや否や衝撃が向かう方向へと身体を流す。
 掌底のダメージは逃がした。だが、わずかに遅れて放たれていた蹴りが錨野の右肩を強く打った。
 賞賛すべきはあえて遅らせた攻撃を放った江良井ではなく、攻撃を受けても眉ひとつ動かさずに反撃を試みた錨野の方であろう。今の江良井の攻撃を食らえば下手な都市伝説であれば再起不能になっていたはずだ。
 都市伝説の力で強化された江良井同様、錨野もまた都市伝説の力で何らかの強化をされているのだろうか。

「〈地獄の帝王〉は呼ばないのかい?」
「お前の敵は俺だ。奴の力を借りる必要はない」
「へえ、ぼくはてっきり呼べないのかと思ってたよ。
 呼べば呼ぶほど寿命を縮める都市伝説――君が己に課した制約は都市伝説の力を十全に使うためではなく、君への身体の負担を減らすためのものだろう?」
「……」
「君の心の器――常人よりも少ないからこそ、常人よりも小さいからこそ、制約を課しているんだろう? 都市伝説に飲まれないために」

 数多の拳を放ち、防ぎながら錨野は笑う。
 江良井は何も答えない。

「あの当時、君の制約は拡大解釈をするために必要なのかと思っていた。雁字搦めに縛りつけ、より強固な力を出せるようにとね。
 君を知る多くの人間は〈組織〉の連中も含めてそう思ってるはずだ。でもね、制約をつけることで契約者の負担も減ることを知ったのさ。
 ぼくの都市伝説の場合はそれほどでもないが、君のような次々と新作が出る類のゲーム系都市伝説なら常に最新版も取り入れなければならないだろう?」
「取り入れる必要はないがな」
「だが君は取り入れている。常に最新版にバージョンアップしている。ナンバリング、外伝問わずに新作が出る度に、だ。
 常人なら、もしくはぼくらなら平気かもしれない。制約をつけざるを得ないにしろ、そこまで強固な――死を絡めるような制約は必要ではないのかもしれない。
 この『学校町』には多重契約者がごまんといるそうだ。彼らなら余裕だろう。何事もなく、君のようにひとつの都市伝説で多くの能力が使えるだろう。
 生命力や寿命を削らずに、心の器にヒビひとつ入れることすらなく、特化した能力をね」
「……」
「さて、君はどうだい? エスタークの契約者、江良井卓くん。エスタークを呼び出す度に君の寿命は――生命は、削られていってるんじゃないのか?」

 一、召喚前に二十面体ダイスを投げ、出た目を「ターン数」として敵に宣言
 一、上記の行動を行なわない場合、契約は強制解除
 一、×ターン以内に斃された場合、契約は強制解除
 一、契約が強制解除された場合、契約者は死亡

 彼がエスタークを呼ぶ際にかけた制約。
 自らの生命を賭けることで「飲まれる」ことを防いでいる。
 ただ、これはあくまでも都市伝説を使う際の制約であり、拡大解釈のものとは違う。
 一般的な契約者はエスタークを召喚する――契約者にとって当たり前のたったそれだけのことだが、江良井にとっては制約が必要なのだ。

 一、ゲーム中で捨てられない物は使用不可
 一、同一の道具装備の複数所持は不可
 一、攻撃系の呪文特技は最大で三メートルの範囲内限定
 一、回復系の呪文特技は最大で一メートルの範囲内限定
 一、補助系の呪文特技は最大で二メートルの範囲内限定

 江良井が拡大解釈をした場合、召喚時ほど制限はないが制約が存在する。
 契約者が都市伝説の能力を使用する場合、多くは拡大解釈という形を取る。
 程度の差はあるが、多くの契約者は拡大解釈の時に身体への負担は少ない。――ただ、江良井卓は数少ない悪い意味での例外であった。
 都市伝説の能力を使用するだけで限界を超えている江良井には当然のごとく拡大解釈の場合でも制約が必要になった。
 唯一の救いは都市伝説の使用であるエスタークの召喚に際して生命をかけた制約をかけたおかげで拡大解釈にはそこまで強固な制約は必要なかったことだ。

「君が能力を使用するのは一対多の時くらいかと思うんだがどうかな? ま、君なら数人相手にひとりで戦いそうな気もするけど」
「……この状況は一対一だ」
「その通り、君が都市伝説にかける制約の意味を解説したからといってどうということはない。――でもね」

 錨野が両掌を合わせる。拝むように。

「以前、君との戦いで制約というものを知ったからこそ、ぼくは知れた。ぼくにもできる、とね」

 合わせた掌をゆっくりと開いていく。
 その中心にくるくると回転しながら板状の何かが現れた。
 鉛色に鈍い輝きを放つそれは、江良井にとっては見慣れたものであり、かつて苦戦したものであった。

「バキュラか……」
「ご名答」

 かつてのシューティングゲームで敵キャラとして登場する『バキュラは256発撃ち込むと撃破できる』と噂が流れた。
 縦回転を繰り返し直進する敵キャラはどう足掻いても破壊不可能ではあるのだが、二百五十五発を越える二百五十六発目を撃ち込めば破壊できるとの噂である。
 当時発刊されていた雑誌にも記載されていたために全国的に広まり、挑戦する者が後を絶たなかった。
 公式で否定されるのみならず、インターネット上に実際に挑戦した人々の動画も数多く出回り、実際に不可能との認識は広まってはいるのだが、ゲーム系の都市伝説として広く流布している。
 二百五十六発撃ち込むと撃破できるとは、二百五十五発撃ち込まれても大丈夫ということ。

「前は出して飛ばすだけだった。でも、君の制約を知ったおかげで様々なバリエーションを生み出すことができた」

 合わさっていた掌が離れるにつれ、バキュラも大きくなり回転も激しさを増す。
 肩幅よりも広く開かれた掌の中で回転するそれは、錨野が軽く押し出すと回転をしながら宙に浮いた。

「大きさも自由自在。こんな風に連続で出すことも」

 ぱん、と掌を閉じて軽く開くと大きさの異なるバキュラが最初に出されたものと同じように宙に浮かび、その回転が止まることはない。
 錨野が手を叩くたびに次々にバキュラが形成されていく。
 数はわずか十前後だが、ひとつひとつの大きさが大きく、江良井の姿がほぼ隠れてしまう。

「勿論、射出も速度も自由自在さ!」

 くるくると回転しつつ高速で飛来するバキュラに、江良井はわずかに後方に下がり、助走をつけて走り出す。
 バキュラと地面のわずかな隙間を滑り込むように疾走。

「甘い!」

 その程度のことは当たり前とでもいうように、江良井の疾走にあわせてバキュラを隙間に飛ばす。

「――メラ」

 指先から放たれた火炎の弾丸がバキュラに命中するも飛散する。
 その都市伝説通りだとすると、二百五十六発を撃ち込まねば砕くことはできない。
 新作が出るたびに増える呪文や特技。全てのシリーズを紐解いても二百五十六発を打ち出す特技は存在しない。

「何だ?」

 錨野の位置からは無数のバキュラに隠れてしまい見えないが、江良井の放った火炎の弾丸がバキュラに当たり飛散したことは江良井の唱えた呪文とわずかに散った炎とバキュラに当たった衝撃音で想像がつく。
 だが、一度撃たれて散った炎はすぐに消える。音も一度きりのはずだ。
 それがどうして二度も三度も――否、それ以上に聞こえてくる?

「江良井くん、何をしている?」

 江良井は答えない。
 ただ、放たれては飛散する火炎の揺らめきと衝撃音が答えるのみだ。
 江良井の放つ魔法はゲームの通り、「呪文を唱える」という行為なしでは決して発動しない――はずだ。
 連続で唱えることはできるかもしれない。だが、それもそう長く続くはずがない。都市伝説で強化された心肺機能があったとしてもだ。

「何をしている!」

 ぱん、と掌を強く叩くと火炎が撃ち込まれているバキュラを除き、無数のバキュラが消えた。
 江良井の指先からは炎の弾が絶え間なく撃ち出されている。
 小声で唱えている様子も新たな能力を使っている様子もない。
 二百五十六発撃ち込まれたのだろう、残っていたバキュラが消滅して初めて江良井は右手を下ろした。

「……何をした?」
「使う、エルフの飲み薬」

 きらきらと身体が光り、呪文によって失われた魔法力の補充が終えた江良井は懐からひとつの機器――mp3プレイヤーを取り出した。

「まさか……」
「そのまさかだ」

 パソコンに自らの声――呪文を取り込み、呪文と呪文のわずかな空白を消す作業を行なった上でリピート再生。
 もしかしたら二百五十六発分、呪文を繋げたのかもしれない。
 声は江良井のもの。使う魔翌力も江良井のもの。魔法が発動しない道理はない。

「お前と対するにあたって、一番の難関はバキュラだった。知っての通り、苦汁を舐めさせられたもんだ」

 だから用意した。
 錨野蝶助が敵対した日に。

「そんな破り方が……?」

 錨野からしてみればわずかな間。
 しかし、江良井にしてみればその間は隙以外の何物でもなかった。
 まさに一瞬で間合いを詰め、がら空きの胸元に一撃。

「……くっ……」

 わずかに後方へそれたおかげで致命傷とはならなかったが、次の行動に反応できる余裕はない。
 それを見逃すほど江良井も甘くはなかった。
 次々に打ち込まれる連撃。
 骨は折られ、肉が抉られる。
 錨野が死を覚悟した瞬間、江良井の追撃が止まった。

「……?」

 かつて、錨野は江良井に言った。
 敵と認識した時点で、老若男女問わず言葉通り赤子でも長年付き合ってきた無二の親友でもこの世にたったひとりの親兄弟でも一切躊躇せず懊悩せず顔色ひとつ変えずに殺せる、と。
 とどめを刺すのに躊躇うはずもない。はっきりと敵対宣言をした以上なおさらだ。
 無論、江良井もとどめを刺すつもりだったし仮に錨野が土下座をしても殺していただろう。
 江良井の視線は錨野を越え、背後に注がれていた。
 錨野の背後――そこには土管が生えていた。

「イイイイイイイイヤヤヤヤッフウウウウウウウウウ!!」

 何の前触れもなく突如生えてきた土管。
 奇声と共に現れたのは――否、飛び出てきたのは。

「イツミー! メールィオオゥ!! マンマミーヤ! イヤッハー!」

 ――バカだった。


避難所にはたまに顔出してましたが。
初めての人はじめまして、お久しぶりの人おひさしぶりです。
前回からどれだけ経ったんだろう?

時間が経ったことには反省。
内容には反省も後悔もしない。
そんなわけで続きでした。


「時間がない、時間がない、時間がない、jkn ¥^o^¥ アババッバババ」

「いっちゃーん、山崎ロールおごってー」

「黙れ環希! 俺は忙しいんだ!!!」

「いっちゃーん、エルチキおごってー」

「黙れ遠藤!! あと気安くいっちゃんゆーな!!! キモいんだよ[ピーーー]!!!!」

「そんな事よりよ、お前、俺の黒タイツJK2知らねぇ?」

「しっ…知らん、知らんぞそんなの!」

「黒タイツJK? 2ってなに?」

「知らん、知らんからな! 俺は何も知らん!!」

「えー、ほんとは知ってるんでしょー? 教えてよー、ねえねえ」(グイグイ

「知らんってば…! おい遠藤!! 自分だけ避難してにやついてんじゃねぇ[ピーーー]ぞ!!」




 今週中に書くのは無理だったよ… アヘッ ¥^θ^¥ アヘッ

>>696
>どちらかといえば女性向けの洋品店にふらりと立ち寄るお兄さん
>なんておしゃれなシチュエーションだと思ったのであんな感じになりました
本田さんのような渋い殿方が常連になって下さいますと店が華やぎます
何が言いたいかというと、せせりと共闘という名目でまたお借りするかもよ!ということでございます

>クロスありがとうございます
こちらこそ、どうもありがとうございましたー

というわけで>>697-699乙でしたー
マキちゃんと本田さんのビジネス以上友情未満な関係良いね!マキちゃんみたいな優しい子に迫られたら堕ちちゃう!

>>702-706
葬儀屋の人お久しぶりですー
緊迫した戦いの筈がwwwwww
このマリオ、敵か味方か気になるぜ!

>>710
がんばれーがんばれー
時間本当に足りないよねー
>>711
店が華やぐってなんか違うwwwwww
そして本田は普段世話になっている相手ならわりと躊躇いなく助けるのでわりとさくさく出していただいて構いません
まあ自分の能力のことについては意図的に歪めた説明を行う可能性が高いですけど


 特に仕事のない日は昼間からダーツバーに入り浸るのが俺の習慣だ。
 黒いパピヨンという洋品店でのショッピングや、ピエロ印のバーガーレストランでのグルメも悪くないがやはりここが一番心が落ち着くのだ。
 前回の仕事から数日後、オフを満喫していた俺の目の前にマキちゃんが現れた。
 今日は私服らしく、普段の黒いスーツと対照的にピンクやホワイトをあしらった女性らしくてポップな服装である。
 ダーツバーには不似合いだが、それを気にする客もこの時間には居ない。
 彼女は俺の使っていたテーブルに座る。

「この前のタコ妊娠の被害者はどうなったんだ?」

 世間話程度のつもりで彼女にそう尋ねた。
 俺の投げたダーツが的に刺さる。

「さあ? 恐らくは『コーラで洗えば大丈夫』と『コーラは骨を溶かす』の多重契約者辺りが処理したのではないかと」

 乾いた口をバーボンで濡らし、次のダーツを的に投げつける。

「ふむ、そんな契約者が組織に居たのか」

 我ながら上手く刺さった。満足だ。

「さあ? 案外今時流行りのアウトソーシングって奴かもしれません」

「ふむふむ、しかし良いのか?」

 近くの椅子に腰掛ける。
 マキちゃんもそれに合わせて腰掛けた。

「何がです?」

「胎児をサンプルとして保存しなくて良いのかって聞いてるんだ
 偶に居るらしいじゃないか、そういう存在に興味を示す研究者が」

 マキちゃんは頬をひきつらせる。
 彼女が頭を手で抑えた後に錠剤のような物を口に含んだので、チェイサーにしようと思っていた水を差し出してやると、彼女はそれを一気に飲み干した。

「……あのですね」

「からかって悪かった」

「分かってるならいいんです。でもわかってるなら私に頭痛薬を飲ませないで下さい」

「済まないね、次からはなるべく注意するよ」

「偉いですね本田さん、お姉さんはとってもうれしいです」

「あんた幾つだ」

「レディーに年を聞くもんじゃないですよ」

「おやおや、ガールに歳を聞いちゃいけないのか」

「子供扱いしないで下さい」

「オーケー、少なくとも難なくレーザーディスク使いこなしてたから俺よりは年上だもんな」

 マキちゃんの瞳がこちらを睨む。

「…………おい」

 地獄よりなお深い場所から搾り出される声。
 俺はおもわず腰を抜かした。
 そのままわずかに後退り、頭を深く下ろした。
 要するに怖かったのだ。

致命的なミスを発見した為、修正作業を行います

修正完了再投稿

 特に仕事のない日は昼間からダーツバーに入り浸るのが俺の習慣だ。
 黒いパピヨンという洋品店でのショッピングや、ピエロ印のバーガーレストランでのグルメも悪くないがやはりここが一番心が落ち着くのだ。
 前回の仕事から数日後、オフを満喫していた俺の目の前にマキちゃんが現れた。
 今日は私服らしく、普段の黒いスーツと対照的にピンクやホワイトをあしらった女性らしくてポップな服装である。
 ダーツバーには不似合いだが、それを気にする客もこの時間には居ない。
 彼女は俺の使っていたテーブルに座る。

「この前のタコ妊娠の被害者はどうなったんだ?」

 世間話程度のつもりで彼女にそう尋ねた。
 俺の投げたダーツが的に刺さる。

「さあ? 恐らくは『コーラで洗えば大丈夫』と『コーラは骨を溶かす』の多重契約者辺りが処理したのではないかと」

 乾いた口をバーボンで濡らし、次のダーツを的に投げつける。

「ふむ、そんな契約者が組織に居たのか」

 我ながら上手く刺さった。満足だ。

「さあ? 案外今時流行りのアウトソーシングって奴かもしれません」

「ふむふむ、しかし良いのか?」

 近くの椅子に腰掛ける。
 マキちゃんもそれに合わせて腰掛けた。

「何がです?」

「胎児をサンプルとして保存しなくて良いのかって聞いてるんだ
 偶に居るらしいじゃないか、そういう存在に興味を示す研究者が」

 マキちゃんは気まずそうに頬をひきつらせる。
 彼女が頭を手で抑えた後に錠剤のような物を口に含んだので、チェイサーにしようと思っていた水を差し出してやると、彼女はそれを一気に飲み干した。

「……あのですね」

「からかって悪かった」

「分かってるならいいんです。でもわかってるなら僕に頭痛薬を飲ませないで下さい」

「済まないね、次からはなるべく注意するよ」

「偉いですね本田さん、お姉さんはとってもうれしいです」

「あんた幾つだ」

「レディーに年を聞くもんじゃないですよ」

「おやおや、ガールに歳を聞いちゃいけないのか」

「子供扱いしないで下さい」

「オーケー、少なくとも難なくレーザーディスク使いこなしてたから俺よりは年上だもんな」

 マキちゃんの瞳がこちらを睨む。

「…………おい」

 地獄よりなお深い場所から搾り出される声。
 俺はおもわず腰を抜かした。
 そのままわずかに後退り、頭を深く下ろした。
 要するに怖かったのだ。

「申し訳ございませんでした」

 ここのマスターが言っていた。
 女の子相手にはとりあえず謝っておくと面倒が少ないと。

「面をあげよ」

 おずおずと面を上げるとそこでは菩薩のように微笑む少女の顔があった。

「オフの日に何故私が貴方に会いに来たか分かりますか?」

「友だちが居ないからだろ?」

「えっ…………」

 気まずい沈黙。
 え、あれ、もしかして図星だったのか。
 やばい、マキちゃん涙流しながらプルプルしてる。

「や、や、やだなあ僕だって茶飲み友達くらい居ますよ
 別に僕は特別仕事熱心だから担当契約者の様子を見に来ていただけであって特に予定がなかったから普段から貴方が居そうな場所を巡っていただけですし
 そう、本当の本当に心配だったってだけなんですからね?」

 ここのマスターが言っていた。
 できる大人は失敗しない大人ではなく自分の失敗をカバーできる大人である。

「解った。どうやら俺はお前に心配かけっぱなしの駄目な男らしい
 迷惑かけているお詫びに一杯奢るよ
 マスター、彼女にダイキリの甘くした奴を」

 店の奥で静かに新聞を眺めていたマスターに一声かける。
 彼の名前は柊賢。物静かな老人で、こちらにあまり干渉してこないのが良いところだ。
 そして、何も言わずとも俺の飲みたいものを出してくれるのもまた彼の素敵なところである。

「マキちゃん。俺は君の茶飲み友達の代わりにはなれないが、酒飲み友達くらいにならなれるかもしれない」

「……わざわざ甘いのを頼む辺りやっぱり子供扱いしてるじゃないですか」

「おいおい、甘い奴のほうが美味いんだぜ。マスター、俺の分の普通のダイキリも頼むよ」

 注文してすぐにカクテルが二つ運ばれてきた。

「こちらが甘い方になっています」

 甘い方をマキちゃんに差し出す。

「そしてこちらが普通のダイキリです」

 俺には普通のダイキリを差し出す。
 
「ありがとうございます。さてマキちゃん、乾杯とでもいこうか?」

 マキちゃんは俺のグラスをじっと見ている。
 俺は自分のグラスをじっと見る。

「……交換するか?」

「べ、べつに甘い奴にされたからって文句言ったりはしませんよ」

 面倒くさい奴である。

「俺の気分が変わってな、甘いのが飲みたくなった」

「やれやれわがままですね、じゃあ替えてあげますよ」

 俺とマキちゃんはグラスを交換する。
 二人で軽く乾杯した後、グラスに口をつける。

「甘くて爽やかで美味しいですね。これなら甘くしなくても良かったじゃないですか
 それにアルコールっぽいのって好きじゃなかったですけどこれならすっきりしてて飲みやすいです」

「それは重畳」

 カクテルのアルコールを合成して糖分にしたのだから当たり前だ。
 錬金術のちょっとした応用である。

「まだ日も高い、街は静かだし、この後何処かに遊びに行かないか?」

「良いんですか?」

「まあ偶には付き合ってやるさ。どこに行く?」

「そうですね、貴方とだったら……」

 こうやって休日は何事も無く時間は過ぎていく。
 でも、そんな日が有るというのも悪くない。
 俺はそう思うのだ。

暗殺者の休日
わりと優雅な日々を過ごしています
ダーツとか拳銃射撃とかは趣味だから多分長期休暇はハワイかどこかで拳銃をパンパカパンパカ撃ってる

乙です
一人称にこだわる! そんな姿に痺れて憧れます!
意外にノーブルな生活してるよこの暗殺者!
暮らし向きはいいんだな

投下乙です

男を捨てて命を取るか
命を懸けて男を貫くか

こう書くとなんだか深いことを言ってるような気がするのですが気のせいですかそうですか



ところで上の文、最初は「男を守る」って書いたけれど、騎士(♂)と姫(♂)を想像してしまったので表現を変えたんですよ
そしたら今度は「男を貫く(♂)」って想像してしまって、私の脳はもう駄目だと悟りました


「殺したいヤツがいます――」

なんか違うな…

「好きな人が、できました――」

ううん、これもなんか違う…

「殺したいヒトが、できました――」

うーん…


とにかく皆さん乙です
何かで見た四コマのオマージュですが
オマージュ元を忘れてしまったので
心当たりのある人は教えてくださいね


電話さんのメリーと誰でもニコニコ割の契約をして、早二ヵ月

食費がかさんだのは別にいいけど、メリーは僕にイタ電をしてくるようになった

通話もしてないのにいきなり繋がって、「わたしメリー!今アナタの後ろにいるの!」で背後を取られる

そうして僕の脇腹をくすぐってはなさないんだ。一体どこで俺の弱点が脇腹だと知ったんだ…

この名案が浮かんだのはほんの最近だ。メリーがイタ電してきたら早速やってみようと思う



と、こんなことを考えると、僕の携帯が創●のアクエ●オンを歌い始めた

前にカラオケで歌ったヘタクソな奴を着信に設定したのだ

僕に電話かけてくるのなんて家族と宗教勧誘を除けばメリーしかいない

僕は相手を確認した


                 「メリー」


きたこれ! 僕は走りだす! なめんなよメリー!

強制通話になる前にアレを仕掛けるんだ!!

僕はアパートのベランダを乗り越え、アスファルトめがけてダイブした


 「んごっ!! …痛ぅぅぅっ」


着地の衝撃が頭に刺さって鼻に抜け、めっちゃ痛い

だがそんなのは問題じゃない! 空を仰げばいかにも夏真っ盛りって感じだ

入道雲がいい感じに広がってる蒸し暑い昼の午後

計画実行には絶好のお天気じゃねえか!


ブツッ「もしもし、わたしメリー!――」


! つながった!! もはや一刻の猶予もない

僕はそのまま地面に這いつくばった


 「――今、アナタの後ろにいるの――」


今だ!

僕は腰からひねるように空を見上げた

メリーが空から振ってくる


「わーーーーーーっ!! 見ないでよぉーーーーーーーっ!!!」


メリーの聖域、スカートの中身が…見える、見えるぞ!!

アレは黒の紐パンだな!? とんだ淫乱子猫ちゃんだぜ!!


「どいてーーーー! 踏んじゃうよぉ! どいてよぉ!」


メリーがもうすぐそこまで迫ってるけど、僕ぁ満足さ

ブーツの硬いヒールが顔面にめり込む衝撃に意識を持っていかれながら、僕は心の中でシャウトした


               ((我が人生に一片の悔いナシっ!!))


          ニッポンの夏、

                        単発の夏


                 _, -─ァへr-t 、
              ,. ''´ ,/':::':::::::::::::└'´|、
            , "  ,}`::::::,;:'';;'';;';;'';:;,::::.´ス

             /    }:::::::,:''-‐゙:;;:::''゙::::::,ノ 'i,
           i'    >-く(・)゙.ゝ Y'''''''"   ',

             {    `刀リヾ゚´, ; ;、       }
           ',   ,.::';':';::':::::'レ-‐ヘ     . ,!
            'i,  {:;';:'゙::::,;:''゙::::::゙:;;::::゙::.、  /
.              ヽ. ヽ;;,::''::;゙´上 ゙;:::::'':::::,ン′
              ヽ(:::;:::::゙、 山 ,'::::゙,.イ
                  ``''ー-ニ‐''"´

┌┐   ,r‐ゥ ┌┐┌┐  ┌┐ ,r──‐i ┌┐  ┌┐  ,.-─- 、
││ /,/ │<. |  `'ー、_,! │r' ,r‐─┘│ L.......」 | / ,r‐-、 ヽ
││ヽ、ヽ、 │││..r‐、   | {  {.     │ .........  | .{. {    }. }
││. ヽ ヽ. |..│││ ゙ヽ │!、 `‐─┐││  ││ ゙、 `‐-‐' ,ノ
└┘  `ー‐'└┘└┘  └┘ `'''ー─┘└┘  └┘ `'ー--‐''′




かつて、世界を二分する戦争が有った。
原因は、一部の人間が都市伝説の存在を公表し、その圧倒的暴力を背景に世界制服に動き出したことからである。
当然、その事件で起きた情報の流出はすぐに揉み消され、あとはその一部の人間も鎮圧されるだけと思われていた。
しかし、彼らは都市伝説を兵器として世界中のあらゆる場所に売り飛ばしていた。
そうして混乱は連鎖し、世界中に燻っていた火種に着火していく。
考えても見てほしい。
都市伝説の力は入手が容易で、安価で、使用した証拠も見つかりづらく、持ち運びが簡単な超高火力兵器だ。しかも操作に必要な資質を持つ人間は探せばどこにだって居る。兵器として見るなら、都市伝説は使用の為に特別の教育が要らないという利点もある。
これを求めたのは当然ながら今まで都市伝説の恩恵を秘密裏に享受していた大国ばかりではない。
たとえば自治を求める少数民族。
たとえば性急な革新を求める革命家。
たとえば反乱に怯える独裁国家。

そして

世界中に戦乱の嵐が巻き起こった。

近代兵器が通用しなかったかと聞かれれば答えは否だ。
確かにミサイルやマシンガンは都市伝説や契約者に有効だった。
しかしそれでも、無限に湧き上がる心の力を前にして、近代兵器を運用し続ける為に必要な資源は瞬く間に尽きていった。
長きに渡る戦争やテロで地球は荒廃し、一部の契約者の力で大陸の形さえ大きく変わってしまった。
現在西暦3500年。人類は衰退していた。

「名前は?」

抜けるように青い空と海から吹く涼しい風。
活気あふれる街の喧騒の中心では、椅子に座った男の前に長い行列ができていた。
ここは都市伝説国家『ソドム』の傭兵募集所である。
この国はかつて地中海と呼ばれた場所のすぐ近くに有り、契約者の国王が治める封建国家だ。
隣国である人間国家『ヤベシュ・ギレアド』と長く小競り合いが続いており、そのために現在は傭兵を募集している。

「雷堂エル」

そう答えた者はまだ表情に幼さを色濃く残している少年だった。
艶やかな黒い眼と髪、そして黄色の肌はこの辺りでは珍しい東洋系であることを示している。
背中には羽の彫刻が入った剣をぶら下げている。

「解った。とりあえず支度金だ」

テーブルに座った男がリストにエルの名前を書いて金貨の入った袋を彼に渡す。
彼はそれを受け取って中身を確かめる。

「次のやつ!」

「へへっ、オレだオレだ」

エルの後ろに並んでいた男が前に出る。
彼はすれ違いざまにエルの顔を見てニタリと笑った。

「可愛い顔してるじゃねえか。その背中の剣を握るより俺の槍を握ってもらえねえかな」

エルは男の持っていた槍を掴むとその腕に力を込める。
次の瞬間、槍から火花が散り、男は白目を剥いて倒れる。
周囲の人間が小さく悲鳴を上げる。

「ありゃあ契約者か……」

「おっかねえな、あんなガキが契約者かよ」

「お前知らないのか? あのガキここいらじゃあわりと有名だぜ?」

「こちとら流れてきたばかりの傭兵だ。知るわけねえだろ」

「じゃあ教えてやるよ、あいつは……」

人間国家と異なり、都市伝説国家に於いては契約者は迫害の対象にはならない。むしろある種の畏怖や崇敬の対象とさえなっている。多重契約や、神話級の都市伝説との契約が貴族のステータスとして持て囃されている位だ。
当然この国の王も神話級都市伝説『バール』の契約者である。

「エル様、ここに長居しても余計な混乱を招くだけです。帰りましょう」

エルの剣が突然声を発する。
周りの人間はぎょっとした瞳で背中の剣を見つめるがエルはどこ吹く風だ。

「分かっているよ」

剣の忠告通り、エルは彼らには目もくれずに宿屋へと戻る。
ここを経営している老夫婦は行儀にはうるさいが細かいことまで良くしてくれていて、彼はこの宿が気に入っていた。

「お帰りなさい、今日はどこまで?」

店の女将さんが愛想よくエルに尋ねる。

「傭兵の募集をしていたから行ってきた」

「ふぅん、エルちゃんならそんな血なまぐさい仕事なんてしてないで冒険者でもやったら良いのに」

「冒険者は……嫌だ。自分で見つけたものを独り占めにできないから」

「そうかい、うちの宿から有名な冒険者が出てくれれば助かるんだがねえ」

この世界には様々な場所に人類が衰退する以前の機械文明の遺跡が点在している。
戦乱によって破壊される以前に存在した機械文明の品々が残っていて、それらは高値で取引されるのだ。
冒険者はこの遺跡に潜り込んで発掘した品々を売りさばくことで生活している。
勿論、野生化した都市伝説との戦いも有るが、発見した品の一部を上納することと引き換えに身分を国によって保証されており、少なくとも傭兵よりはまともな仕事と見なされる。
冒険者は国の指定した『冒険者の宿』で生活を送ることを定められ、有名な冒険者を泊めている宿には補助金が出る仕組みだ。

「確かに……そうだよね。でも……うん」

冒険者になった自分を思い浮かべ、エルは困ったような表情を浮かべる。
すると彼の背負っていた剣が光に包まれて女性の姿へと変化する。

「女将さん、困ります。エル様は女将さんに恩義を感じているんですからそのようなことを頼まれては断りきれません」

彼女こそがエルの背負っている剣の正体、都市伝説『サンダーバード』である。

「あら何時の間に」

女性は人間にはあり得ない青い髪をしていた。
雪のように白い肌を幾重にも薄布を重ね着して覆っている。
彼女はその赤い大きな瞳で宿屋の女将を見つめた。
唇を若干尖らせて不機嫌そうではあるが、本当に怒っているようにも見えなかった。
人間で言えば二十歳前後、エルと並べば姉弟に見えなくもない。

「サライ、止めろ。僕の道は僕が決める」

「申し訳ありませんエル様」

「サライちゃんったら本当に過保護ねえ」

女将さんはカラカラと笑う。

「も、申し訳ありません……」

サライも恥ずかしげに俯いてまた剣の姿に戻ってしまった。

「じゃあ部屋で休ませてもらうよ」

「ええ、綺麗にしておいたからゆっくり休んでね」

「ありがとうございます」

エルは部屋に篭って横になり、ゆっくりと眼を閉じた。

翌日、彼は傭兵たちの列の先頭に立っていた。
はるか向こうには人間国家の小城が立っている。
手にあるのは剣ではなく、投石紐。
内側に金属糸を織り込んだ特別製である。

「かかれ!」

攻城兵器を伴って傭兵たちで組織された先鋒が鬨の声と共に城門へと殺到する。
対する城の方は不気味なほど静かだ。
エルが見上げると城壁の上に、自動小銃で武装した兵士が立っていた。
彼は危機を察知して後ろに下がり、即座に能力を発動させ、電磁バリアを貼る。
次の瞬間には彼の居る周囲に大量の銃弾が降り注いだ。
エルの隣に居る兵士は次々チーズのような穴ぼこだらけの姿へと変えられる。
戦意において劣る傭兵たちは他の兵が次々に倒れる様を見てすぐさま逃亡を始めた。
当然、エルも自らに迫る弾丸を逸らしながら迅速に撤退を行う。
そしてすぐに戦場に静寂が訪れる。

「誰か、あの城の門とあの面倒な機械文明の兵器を突破できるものは居らんか。褒美は金貨10。協力して山分けしても良いぞ」

艶やかな緋色の鎧に身を包んだ貴族の女が傭兵たちを見る。
エルは女の目の前に出て、片手を広げた。

「15」

「む?」

いきなり現れた子供に女は困惑する。

「金貨15だ」

「……ああ、お前が噂の子供か
 それは困る。私の晩酌代が無くなるからな。12でどうだ。豪勢に晩飯もつけるぞ」

「じゃあそれでいい」

「では、後はお手並み拝見だ」

エルは静かに頷く。投石紐にバチバチと電流が走った。

「電磁投射!」

エルは投石紐を用いて美しいフォームで鉄球を投げつける。
サンダーバードの力で帯電した投石紐と鉄球が互いに磁力で反発し、単なる投石を超えた勢いで遥か彼方の城門へと、その上の兵士へと、そしてその閂へと突き刺さる。
一撃、また一撃、稲妻を帯びた鉄球が城を揺るがす。
そして十分もしない内に轟音をあげて城壁の一部が崩れ落ちていた。

「随分、風通しが良くなったな」

貴族の女はカラカラと笑う。

「こんなものでいかがでしょうか」

「うむ、悪くない。雷堂と言ったな、今日は休め、これ以上働かれると出す金が無くなる」

一陣の風が吹いて既に意味を失った門が力無く開く。

「さてと、諸君。諸君らの中にこの少年並みの武功を立てようと思う者は?」

その問に応える者は居ない。
既に皆が皆、がら空きとなった城壁に殺到していたのだ。
女は満足そうに笑うと指を鳴らす。
すると男の背後にワイバーンに乗った契約者が三人並ぶ。

「征け、敵の契約者はお前たちに任せた」

三人の契約者達は傭兵たちの後ろに続いて空から城を襲う。

「雷堂エル、約束の金だ」

女は袋をエルに手渡す。
最低限の金は稼いだ。
これ以上戦う理由の無いエルはその様を只々見送った。
その日の内に戦には決着がつき、小城は占拠された。
だが占領軍の中にエル達の姿はない。
彼らは既に川沿いに新しい国へと旅を始めていた。

「このまま川を下っていけば穀倉地帯です。貿易の中心地ですから」

剣状態のサライの言葉はどこか浮かれた調子だ。

「そうか、この辺りまで来ると野生の都市伝説も居ないな。平和なもんだ」

「野生の都市伝説は、街には入れない契約ですからね。近づいても意味が無ければ近づかないでしょう」

人類が大きく衰退した時、一部の知恵を持たない都市伝説は人を絶滅させかけた。
人の感情が都市伝説の力の源であるにも関わらずだ。
そこで、当時の力ある契約者と都市伝説は、人間と都市伝説の間に一つの契約を結んでいる。
これを大契約と呼ぶ。
大契約は人が作った街の中で、都市伝説が人を襲うことを禁止している。
神の名を持つその都市伝説によって規定された契約は、未だに都市伝説全体を縛っている。
人と契約すればその人間を通して町中で暴れることもできるが、契約者の指示に従わなくてはいけない契約を、町中で好き勝手したがる都市伝説がやろうとするわけもない。
無論、契約者が都市伝説を使って町中で乱暴狼藉を働いたことも多々有ったがそれは同じ人間の契約者によって鎮圧されることで秩序を保っていた。

「お腹減ったなあ」

「昨日の晩、ご飯をごちそうになれば良かったじゃないですか」

「そんなことしてみろ、僕は今頃軍の仲間入りだ。こうやって旅をすることもできなくなる」

「別に十年くらい腰を落ち着けてもいいじゃ無いですか。エル様はまだ子供なのですから」

「すぐに大人になる。そして何時か老人にもね。その前に僕は行かなくちゃいけない
 お前の言うアメリカって所にね。そこに行かなきゃ父さんの言っていたことが本当かどうか確かめられない。アメリカ大陸が本当に存在するかどうかを僕は調べるんだ」

「そう言っていただけると私としてはありがたいです。私もアメリカに戻って私の部族の人を救わなくては行けないものですから……」

一人と一振りは今日も旅を続ける。
その先に何が有るかは分からない。
只西へ、その先に互いの目指すものが有ることを信じて。

思い切ってファンタジー世界で話書いてみれば良いんじゃね?
とおもった結果これである
剣が契約機か何かじゃないかなって今思いついた
多分続きはない

「ねー、鈴々花さん」
「何」
「なんで僕、鈴々花さんのお部屋で血を抜かれてるんでしょう、しかも200ccも」
「検体」
「何の?」
「契約が人体に及ぼす影響、特にお前の場合、実体が瞬間移動するプロセス。私は実体が一旦素粒子レベルで分解され、目標地点で再構成されると踏んでいるが、その場合・・・」
「待った!それだと、目標が移動しても正確に座標を特定できる説明がつかないよ。僕はやはり空間歪曲型ワープ航法を挙げたいね!メカニズムを解明したあかつきには、機械化してきじまさん型(タイプ)簡易ワープ装置を開発・・・」
「それは勝手にやれ。ああ、契約者の力の源泉はやはり脳か!ああ、解剖したい、頭部を綺麗に切り開いて、神経細胞の1ミクロンまで残らず解明してみたい!」
「あ、脳と言えば」
 噛み合わない会話を別方向に展開させたのは、鈴々花の黒と青で纏められた部屋には不似合いなようでマッチしている、脳のホルマリン漬け。
 大きさからいって人間か、少なくとも類人猿のものであるそれは、ガラスケースに取り付けられたブルーライトのせいで怪しさ100万倍だが、ふたりともそんな事は気にならない。
「あの脳、人間の?普通の人の部屋にあったらドン引きだけど、鈴々花さんにはよく似合うね」
 墓穴を掘りかねないような褒め方だが、鈴々花は褒められようが貶されようが気にしなかった。
「両親からの預かりもの。大事な脳だから、万難を排しても護れと言われている」
「へー、歴史上の偉人か何か?」
 その時、ぴくりと鈴々花が聞き耳を立てる。
「・・・来た」
「へ?」
 直後、派手な音を立てて窓ガラスが砕け、ひとりの女のシルエットが浮かび上がる。
「おーっほっほっほ!」
 女は黒いスーツを着ていたが、それは所謂「組織の黒服」が纏うようなスーツとは少し違うようだった。
 胸元は派手に開き、そこから覗く豊かな谷間にはプラチナのネックレスが覗いている。
「あれだけ警告してあげてるのに、まだ懲りないの?つるぺたのおじょーちゃん」
 女は挑発するようにことさら胸を揺らして見せた。長いウェーブのかかった金髪とサングラスが相まって、さながらアメリカ映画の女悪役といった雰囲気だ。
「・・・うるさい」
 かすかに鈴々花が気色ばむのがわかる。
(あれ、鈴々花さん、もしかしてコンプレックス?)

「今日こそその『脳』は貰ったわ!」
 叫んで女がベランダから部屋に踏み込み―
 床に長く裾を引いていたカーテンで足を滑らせた。

「ぷぎゃっ!!」

 がつん、という地味だが痛そうな音をたてて、女が動かなくなる。

「これで二十二回目」
 鈴々花が女を引きずってベランダから外へ放り出す。
「これでよし、と」
「いや、よくないでしょ、あの人が死んじゃったら鈴々花さん、犯罪者だよ」
「大丈夫。あの女、青酸カリを打っても、致死量のモルヒネでも死なない。10階から落ちた程度で死ぬものか」
「そういうもんなのかなあ」
 なんだか更に、日常からかけ離れていく気がするなあ。
 現はそんな気分で、女が落ちていった窓の外を眺めた。



投下しましたー。
こっそり「財団B」と僕は小説が書けないの人の設定に相乗りしてしまいましたすみません。
何か不都合等ございましたら遠慮なく罵声を浴びせて下さい

とある人と代理の人乙ですー
絶壁はステータスやん!怒る必要ないやん!
んでも遺伝子組み替えいいですねー、うちも使ってみたいわあ

前回のあらすじ>>547-548

「どーゆー事だか説明しろ」
「どうもこうも、見たままだ」
 裂けたシャツの間からのぞく、簡素だが上質な絹のコルセット。
「マジかよ・・・」
 小うるさく理想主義者の“老紳士”は実は淑女だった・・・アルバート・ルイスの名も、偽名に決まっている。
 女がズボンを穿くことすら有り得ない、女性はか弱く、憂愁に沈み良妻賢母であるべき、このヴィクトリア朝のご時世で!
「婆さんが男装して刑事とか有りなのか」
 まあ、普通なら有り得ない。
 その“有り得ない”を実行できる後ろ盾が彼、いや、彼女にはあるのだろう。
「婆さんとか言うな」
「婆さんだろうが。どこのご婦人だか知らねえが、女が力持ってハバきかすのは〈教会〉だけで充分だぜ、鬱陶しい」
「女だって王にもなれるんだ。刑事になって何が悪い・・・孫がな、今回の事で嫌疑を掛けられていて。私は彼を信じているが、世間は口さがない。放っておけなくなったのだ」
「身分を偽造できるほどの権力者のご婦人なんだから、旦那に任せとけよ」
 エディが白けた瞳を向けると、彼女の表情が沈んだのを見て取れた。
「私は既に未亡人だ・・・「アルバート」は、亡くなった夫の名だ」
 夫の生前はさぞおしどり夫婦だったのだろうその表情に、エディは自らの発言の拙さを少しだけ悔やむ。
「それで、あの子供に心当たりは」
「ない」
「じゃ、あんたの孫はシロか」
「そう思いたい」
 彼女がそう思いたくても、捜査は結局何も進んでいない。
 切り裂きジャックと少女の関連は不明。
「あのガキが犯人なら、あんたの孫は即ちシロ・・・ともいかねえな。何らかの理由で協力してる可能性もある」
「馬鹿な!」
 彼女が叫んだ理由は、エディの想像からは少々ずれていた。
「あんな子供が、殺人!?馬鹿も休み休み―」
「バカはあんただ!」
「男装して刑事の真似事なんかする割に世の中しらねーな!路頭に迷ったあげくに、食うために小銭で何でもするガキなんかごまんと居るんだよ!」
 無性に苛立つ。この女の無知に。
 この女も、きっと家に帰れば女中がいて、上流階級の奥様としての生活を満喫するのだろう。
 そして慈善と称して、貧にあえぐ労働者や小作人達のために寄付やら何やら善人ぶって・・・

(くだらねえ、誰のお陰で、こいつらは!)

 誰のお陰で、こいつらは何不自由ない生活を満喫しているというのか。

「・・・見つけた」

 かすかに潜めたような、ちいさなソプラノの呟きに、エディは我に返る。
「追って来やがったか、畜生」
 背後を振り返り、一瞬言葉を失った。
 銃撃のせいか、裂けたドレスの裾から覗く左足―膝から下が無くなり、片足だけの覚束ない足取りで近づいてくる。
 それでも少女は顔色ひとつ変えるでなく、千切れた足からも血の一滴すら零れない。

「人間じゃねえ・・・」
 人間ではあり得ない。即ち、それは。
「〈伝説〉か!」
 吐き捨てるように呟くと、再び銃を構える。
 とりあえず何の〈伝説〉かはどうでもいい。とにかく動きを止めなくては。残った片方の足をやれば、少なくとも歩くことは出来なくなるだろう。
「エディ・・・」
「ご覧の通りだ。こいつは人間じゃねえ。鉛玉もう一発くらいじゃどうこうならねえ。黙って見てろ」
 「自称アルバート」に背を向けたまま、エディが引き金に指を掛けた。
「その足・・・白磁(ビスク)か。人形が動くたぁどういう〈伝説〉だ?」
「・・・わたしは、わたし。お父さんの子供のエリザベス。それだけ」
「まあいい。お前の身柄、〈教会〉が貰い受ける」
「わたしの・・・お父さんの邪魔をするなら、あなたも[ピーーー]」
「お父さん・・・?」
「親父とやら、もしかしなくても『切り裂きジャック』か・・・そりゃ、捕まえようとする俺達はさぞ邪魔だろうよ、俺達を殺せとでも言われたか」
「あなたが悪いの。お父さんを、捕まえて[ピーーー]んでしょ」
 少女の人形はナイフを振り上げる。

「やめるんだ!」

 次の瞬間。
「・・・・・・?」
 「自称アルバート」が、少女の人形を庇うように抱きすくめていた。
「もう、いい・・・エリザベス・・・と言ったか。もう、やめなさい」
「・・・なあに、あなた」
「エリザベス、君の父親のしていることは、人殺しだ。」
「・・・・・・」
「罪なことなんだ。協力してはいけない。そして、君のお父さんは、罪に見合う罰を受けなければならない」
「・・・・・・」
「・・・私は、君も、君のお父さんも、出来るだけ救いたい。難しいかもしれないが、出来る限り力を貸すから、私を信じて一緒に来てくれないか」
「わたしを・・・お父さんを、救う・・・?」
「ああ」
「いいのかよ、それで」
「ああ」
「・・・お父さん」
 人形の無表情な瞳が、何故か葛藤と闘っているようにエディには見えた。

「エリザベス!」

 俄に響いた声に、一同がはっと振り向く。
 そこに立っていたのは中年の男。生活というより生きること自体に疲れているようにやつれてはいたが、瞳だけはぎらぎらと殺意に光っていた。
「お父さん・・・」



続く


 黒服さんの車で揺られて学校町に帰ってきた。

 今日は色々と疲れた。僕の知り合いに同人作家をやってる都市伝説がいるんだけど、
 その人にお願いされて今日はイベントの売り子をすることになっていた。コスプレも込みで。
 そしたら今度はコスプレ会場に引っ張り出されて、色んな人に写真を撮られる羽目になった。
 撮られるのって、意外とメンタルをごっそりやられるんだな、と気づいた頃には時遅く、膝が笑うほどくたくたになっていた。
 なんなんだよ、もう。
 ちなみにそのコスプレというのは、何かのキャラクターらしく、セーラー服っぽい衣装に黄色のカツラを被せられた。
 売り子をさせた同人作家曰く、パソコンに歌わせるためのソフトのキャラって話だったけど、よく分からない。
 確かだったのは、僕を取り囲んで写真に撮ってたのが年上のお姉さん達だったってことと、
 みんな目をギラギラさせてとにかく怖かったってことだ。
 正直、ああいうのは本当に苦手だよ。

 何より一番ひどかったのが黒服さんだ。
 いつもは元気いっぱいって感じだけど、無理強いとかはしなさそうな人なんだ。
 だけど今日はイベント会場にまで来て、武器としか思えないようなゴツいカメラを僕に向けてはバッスンバッスン写真を撮ってた。
 黒服さんも目をギンギラさせながら、「視線ください!」とか、「もうちょっと胸張って!」とか、「もっと見下す感じで!」とか、
 とにかくはしゃいでた。
 ちょっと引いちゃったけど、普段の仕事が忙しそうで、休む暇も無いのかな、と思うとちょっと可哀想になったから、
 黒服さんのガス抜きに付き合うつもりで、なるべくリクエストに応えられるように頑張ったみたつもりだ。

 あ、僕は「ミルキーはパパの味が存在する」という都市伝説と契約している。
 いわば、都市伝説と契約した能力者だ。大して役に立ってないけどね。
 覚えてるかな? 大体1年くらい前に「組織」のせいで夏休みの宿題が出来なかったって愚痴をこぼしたんだけど。
 結局あの後、知り合いの協力もあって何とか宿題を終わらせることができた。
 持つべきものは友達だね。
 ちなみに僕を担当していた当時の黒服さんだけど、かなり問題がある人だったということを後から知った。
 裏では結構ブラックなことをしてたみたいで、僕への仕打ちはまだまだ可愛いレベルだったらしい。
 どうやら予算と貴重な物品の使い込みが発覚したらしくて処罰対象になったみたいだけど、
 その時には既に行方を晦ませていたようだ。あいつはバックレたんだ。
 その後、僕の担当は中立派の黒服さんに変更になった。おかっぱ頭のお姉さんだ。
 今までデスクワーク一筋だったみたいで、契約者を受け持つのは僕が始めてらしいけど、
 顔合わせの時に両手を握られて「私生活まで全部サポートしてあげます!!」なんてことを大声で宣言されてしまった。
 かなり恥ずかしかったけど、ちょっぴり、本当にちょっぴり嬉しかったのは秘密だ。

「もう少しで着きますからね!」
 黒服さんの声で我に返った。
 黒服さんはまだ興奮してるっぽい。
 気づけば雨が降り出していた。結構強いな。また台風が発生したとか?

「今、なんか凄い音しなかった?」
「多分、雷ですよ。近くに落ちたのかな? 怖いですね」

 この時の僕は知らなかった。
 家に着いたら、黒服さんが「雷怖い」と言い出して強硬的にお泊りしようとすることを。
 そして、僕と一緒にお風呂に入ってしまうことを。

 いや、本当に知らなかったんだってば。

 終

皆さん乙なのよね
コドクの人は次回クライマックス!という感じだけど非常に怖い予感が…
魔弾の話も久しぶりなのよね、次回2on2か

山崎ロールがどこにも売っていない
大変だ

というわけで急ぐのよね
>>902より少し前の出来事なの


気づけば南区のラブホ街を走っていた
空模様からやばいんじゃないかと思っていたが、やっぱり降り出してきた
しかも土砂降りときた。雨水をたっぷり呑んだ靴が重い

「何なんだよ畜生」

俺を追いかけてくる奴の顔はばっちり覚えた
覚えられないわけがない
体は人間だが顔が羊だ
忘れられるか馬鹿

あいつは体中から放電してきた
静電気とかそういうレベルじゃない
あれは雷かなにかだ

間違いない
あいつは俺を殺しに来ているんだ

「き、来やがった」

路地の闇を突き抜けるようにして、羊人間がダッシュで追ってきた

「クソが!!」

俺は咄嗟に右手をかざした




今、俺の右手はやばい状況だ
今朝方気づけば痣のようなものが出来ていたがその時は気に留めなかった
バイトが終わった頃には手のひら全体を覆うようにどす黒くなっていたんだ

そして信じがたいことに
この右手が今の俺にとって身を守る唯一の手段だった

「来んじゃねぇっ!!」

ダッシュしてくる羊人間に右手を向ける
手のひらから何かが飛び出す手応えとほぼ同時に反動で右手がぶれる
なにか焼ける音と共に香ばしい匂いがただよった
それも一瞬だ、何もかも雨音が掻き消していく

だが、右手から撃ち出されたブツは、羊人間に激突したようだ
頭に当たったらしい、奴は盛大にぶっ転んだ

「っしゃあっ!!」

俺は踵を返して走り出す

何がどうなってるか知らねえが、今はとにかく奴を撒くしかない

正直、今の状況に酷く混乱しているのは、この俺だ

羊人間に追われる理由も分からんが

それ以前にだな、どうして俺の右手から唐翌揚げが飛び出すんだよ!?



以下、続く


チラ裏の葬儀屋の人に愛をこめてorz

なるほど
手から飛び出すのは唐揚げではなく唐翌揚げだったのか


右手を見る
今朝よりも大きくなってる気がする

朝起きたらこうなってたと言うべきなのか
とにかくどす黒い痣のようなものが手のひらに出来ていた

寝てる間にぶつけたのか?
内出血かと思って触ってみたが特に痛みはなかった

「気味悪いな」

今日はバイトがある
バイト先では手袋をするのでお客さんに見られることはないが
とはいえ、この手をバイト先に気にされても困る
コンビニで手袋を買ってから行こう



俺の通う工業高校は西区にある
俺ん家は東区だ。どっちかというと北区に近い
それでバイト先も東区にある
学校から東区までかなり距離があるんだよな
まあいつもの道だから遠いとも感じないが

ただ今日はやばそうだ
予報じゃ晴だったのだが午後から急に曇り空が広がり始めた
あの黒さは絶対に降るよな、今日は傘なんか持ってきてねえよ
ちょっと走った方がいいかもしれない


高校から少し行ったところにコンビニがある
そこで白手袋を買うことにした
なんか高級そうなイメージなんだけど意外と安いんだよな

コンビニで目当ての物を買うとすぐに出た
とっととバイトに行った方がいいよな
冷たい風も吹いてきてるし

外のベンチにはバカップルがいた
両方ともうちの高校の制服だ
男の方は見たことあるな

「いっちゃーん、ファミチキあげるから山崎ロール半分ちょーだーい」
「お前ファミチキとロール一緒に食うのかよ!?」

なんて奴らだ
俺が見てるというのにイチャコラしやがってからに

「はーいいっちゃーん、あーんしてー」
「は!? し、しねーし!!」

見てるこっちが恥ずくなってきた

「リアル爆発しろ」

思わずそんな一人言がもれつつ
俺はバイト先へ走り出す





バイトは喫茶店のウェイターだ
といっても最初思ってたよりお堅い感じの場所じゃなかった
というわけで俺の仕事に関して話すことは特になにも

いや、ある

バイト仲間、まあ向こうの方が先輩なんだが
フルミさんって娘がすごく可愛いんだ
東区の高校に通ってて俺と同じ学年らしい
可憐って言葉はフルミさんのためにあるんじゃないだろうか

彼女と出会えたってことに関して
本当にこのバイトして良かったと思ってます、はい


そして今日もつつがなく仕事は終了した
22時も過ぎた、いつも通り閉店してお疲れ様って感じで更衣室に行こうとした

「住屋くん」

なんとフルミさんから声を掛けられた

「えっあっ、どうかした?」

やべ、どもった


「住屋くん、右手、大丈夫ですか?」

うん?
右手?

「火傷してたみたいですけど」

火傷?
きちんと手袋装着済みの右手を見ても特に変わった所はなく

「ごめんなさい、見間違いかも」

や、待てよ
手袋を外してみる

「何だこれ…!?」

うわあどうなってやがる
手のひらにあったはずの黒い痣が
いつの間にか手首や指先にまで広がっていた

真っ黒じゃねえかよ

「住屋くん…」

その声に気づけばフルミさんが目を見開いている

「…大丈夫ですか?」
「え、あ、ごめん、変なの見せて」

あ、あれ。フルミさんが俺の右手を手に取ったぞ

「…痛く、ないですか?」
「え、痛くはないんだけど。なんか今朝気づいたら、こんなになってたって言うか
 あ、今朝はもうちょっと小さかった気がするって言うか」

フルミさんがもう一方の手で痣を触れてきた
指先で軽く手のひらを撫でられる


「内出血、でしょうか…?」
「多分違うと思うんだけど」

フルミさんが黒ずんだ俺の右手のひらを撫でている
指先で優しく撫でられるのが結構くすぐったい

てか何だこれ
背中までぞくぞくするんですけど!?
ちょっと待て
俺、あのフルミさんに手のひらを撫でられてる?
何だこのシチュエーションは!?

とうとうそこに思い至るとなぜか俺の股間のビーストが、こう、むくむくとですね
耐えろ! 耐えるんだ俺の理性!!

「あ、あの、フルミさん」

声が裏返ってしまった

「え、あっ、ごめんなさい!」

フルミさんも察したらしく、俺の右手をぱっと放した

「本当にごめんなさい! 私ったら…失礼します!」

更衣室へ行ってしまった
何だったんだ、今の
俺は生唾を呑み込まずにはいられなかった



店を出た頃にはもう23時前だった
どうやら雨が降っていたらしく、アスファルトが濡れて所々水たまりになっていた
今もややぱらついているな、急いで帰るか

にしても今日はすごかったな
フルミさんのあんな反応初めて見たぞ
てか俺、フルミさんに手を握られたのよね
あの素敵な感触、二度と忘れん

「あのっ、住屋くんっ!」

後ろから掛かるこの声
急いで振り返る

「フルミさん!?」

彼女は小走りでこっちへやって来た

「あの、さっきは本当にごめんなさい」
「え、あ、気にしなくていいよ。というか、あの、ありがとう」

今日はなんというかツキが回ってるかな!?

「明日病院に行こうと思う。痛くないけど、気味悪いしね」
「それがいいと思います…。それじゃ、あの、お大事に。私は、こっちの道なので。お休みなさい」

隣町方面へと彼女は小走りで行ってしまった。やばい、めっちゃ可愛い


フルミさんが行ってしまった後も、俺はその場に佇んでいた
あんなにフルミさんと近くで話したのは、もしかするとこれが初めてかもしれない

手のひらまで触られてしまった、あの感触を思い出すとたまらない
股間のビーストが再び身をもたげようとしていた
俺の理性よ! 耐える…今はその必要ないか

今は手袋もしていない
街灯のぼんやりした光の下、右手を見てみる
小降りの雨粒が黒くなってしまった手のひらにぱらついた

正直気味悪いが、これのお陰でフルミさんとお話できたと思うと痣に感謝だな
とはいえ、そのままにしておくわけにもいかんだろう
なんだ、時間経過とともに痣が広がってるってことか?

皮膚病か何かだろうか?
触ったらうつる系とか?

いや、それはないだろう、と思いたい
今朝も左手で何度も触ったから、もしそうだったら今頃左手にも何か起きておかしくはないはずだ
今の所、異常なのは右手だけだ

よってフルミさんに感染する危険性はない、と信じたい…

「明日、午前中に病院行こう…」

それが一番だ



「…?」

今、何か聞こえたような

気のせいか?

いや、確かに何か聞こえる

辺りを見回した
職場の喫茶店の灯りは既に消えてるし、周囲に人影は見当たらない
違う、もっと近くから聞こえる
携帯を見てみるがマナーモードのままだ。通話状態とかではない

ふと右手を見てみた
相変わらず広がりまくった痣は黒い

まさかそんな
ゆっくりと顔へ近づけてみる
何か聞こえるぞ

そんな馬鹿な

右手を、耳に、押し付けてみた

【さぁぁぁぁぁて、今回の】

「うわああ!!」


何だ今の!?
俺の、俺の右手が喋っただと!?
そんな馬鹿な話が!?

確かに右手か?
今の声は右手からなのか?
辺りを見回しても、さっきと同じだ。誰もいない


もう一度、右手を耳へ当ててみた

【なんと当社独自開発の技術なのです!
 フィラデルフィア実験によって得られた空間転送技術を改良し、
 画期的な転送方式へとブラッシュアップすることに成功しました!
 これによりいつでもどこでも出来立てアツアツの美味しい唐.揚げをお求め頂けます!
 ※この技術、現在特許出願中の新方式であります!!】

やばい、右手が喋ってる
なんだ、俺は狂ってしまったのか?

【さーらーにー、転送ポートに各種センサーを設置してありまして、
 転送先の状況に応じて温度・速度・食材の種類・部位・その他様々な要素を目的に沿った形で実現し、
 お客様がお求めの唐.揚げをまさに至高のコンディションで食卓へお届けできるのであります!!
 
 『まぁぁぁぁ、すっごぉぉぉぉぉい♪ でもでもぉ、万が一、転送し間違えちゃったり、食べきれない量を転送しちゃったりしたら、どうしましょぉぉぉう??』
 
 ご安心ください!! そういった場合には、勿論! 唐.揚げを取っておいて後で食べるという手もありますが!!
 なんと!! あらかじめ設定して頂ければ、食べ残し・余りの唐.揚げを妖精さんが後処理してくれる処分機能までお付けしました!!】


どういうことだ?
右手が、まるで通販番組のような口調で喋っているのだが
俺は何か悪い電波でも受信しているのだろうか

【さあ、この新製品! 『唐.揚げくん転送ポート』!! 今季イチオシの製品です!!!
 製品に関するお問い合わせは、皆様ご存知の! スロヴェニアン・マニュファクトリーまで!! お気軽に  ポー ポー ポー ポー 】

通販の売り文句的な声を遮るように大きな電子音が鳴った
今度はなんだ?

【キンキューケーホーです。 セーヒンの 50 ヤードイナイに、テキタイセイジッタイのソンザイをカクニンしました
 ホクホクトウに 1 、ゴウケイ 1 です。 スミやかにタイヒされることを、カンコクします。リューイしてください ポー ポー ポー ポー】

右手から手を離した
何だ今のは?
通販口調とは全く違っていた。自動音声っぽかったぞ

もう一度、右手を耳に押し付けてみた
もう右手からは何も聞こえない
手を離した

気のせいか?
いや、はっきりと聞こえたぞ?
幻聴とか?
そうかもしれない、疲れてるだけかも


本当に幻聴なのか?


何か今日は変だぞ
痣は出来てるし、広がるし、その痣から音は聞こえるし

フルミさんとお話できたこと…は、変なことではない、はずだ
バカップルを目撃したのは変なことだ。おう

しっかし何なんだろうな、もう
狂ってしまったのは俺の右手か、俺自身か

もう一度、痣まみれの右手を見た
なんだ?
なにか「来てる」感じがする

気のせいか?
いや、違う。確実になにかが「来て」いる
右手の「奥」、「痣の中」だ。なんだこれ?

思わず左手で右の手首をつかんだ

「うっ」

何かが、右手から弾き出された。反動で右手がぶれる
それは高く空中を飛んだ後、目の前の地面に叩きつけられた
雨によって冷えた空気のなか、揚げ物の匂いが漂う

地面に落ちたそれは、ジュウジュウと音を立てて煙を噴いていた
相当熱いのか、アスファルトを濡らした雨水が湯気を上げている
その物体は…唐揚げのように見えた


「唐揚げ…」

地面に落ちたそれに、顔を近づけてみる

見た目といい、香ばしい匂いといい、これは確かに唐揚げだ

腹の虫が鳴った
そう言えば、昼から何も食ってなかったな
今頃そんなことを思い出す

しかしなんだ、右手から唐揚げが飛び出した、だと?
しかも今回は幻覚でもない。現に、俺の足元には生まれたばかりの唐揚げが転がっている

「は、ははは…」

もう笑うしかない
そうだ、俺は腹が空いてるんだ
もう家に帰ろう
軽く食べて寝るんだ
寝て起きれば、万事元通りだ

俺は歩き出した
腹が減ってるといいことないって言うしな
コンビニにでも寄って何か買い食いでもするかな

不意に立ち止まる
道の前方。何かが立っていた



雨が強くなってきた

前方に立っている奴の姿は、街灯の光のお陰でよく見える

体は人間、頭が羊。あれは被り物だろうか
上半身は裸だった。雨の中で寒くないのか

そう言えば、昔、この町に半裸の筋肉野郎が出没するって話があったな
いや、全裸だったかな

「バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

いきなりだった
唐突に羊野郎が叫び出した
考えてみれば、この時間にこんな格好の奴がいることがおかしい

目の前のこいつは変質者か何かなんじゃないか
俺はびびりながら、とりあえずどっちに逃げようか、なんて考えていると

「バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

二度目の絶叫を上げた
上半身がばちばちと火花を散らしている
土曜洋画劇場のアクション映画に出てくるようなサイボーグみたいだ

頭のどこかが麻痺していた
この状況、アブノーマルだ。そして、危ない


「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」

羊人間がさらに大声で吼えた
俺の方をめっちゃ睨んでる
狙いは俺だよな、だって他に人いないし

羊人間の体から電流が迸っている
これはやばい
反射的に逆方向へ逃げようとした、その時だった

羊人間が爆発した

「うわああああっ!」

気づけば俺は大声を上げて地面に倒れていた
閃光と爆音が俺の目と耳を潰していた
手で顔を庇いながら立ち上がる

何が起きたってんだ?

後ずさって、何かにつまづき、盛大にすっ転んだ

「なんだこれ!?」

脇のブロック塀が破壊されていた
俺は破壊されたブロックの欠片の所為で転んだようだ


何が起きてやがる
この塀はあの羊野郎がやったのか!?

羊野郎の方を見た

羊野郎は体から放電していた
雷のような光が電線を走り、電柱の上部に当たっている

急に電柱が爆発した
コンデンサーを破壊したのか?
羊野郎のあの電流でか!?

「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」

こいつ、キレてるんだろうか
顔はこっちを見ていた

「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」

  敵対性実体の存在を確認しました
  北北東に一、合計一です
  速やかに退避されることを勧告します

「あばっ、ばばっ、ばっばばっ」

変な声が出た
やばい逃げろ

俺は家と逆方向へ逃げ出した


以下、続く
長いな


今回出せなかったけど今後出したい物件
チラ裏に書き込めなかったからここで!
葬儀屋の意見を聞きたいのよね
使ってくれる御仁がいたら是非に


Rendezvous

学校町南区のラブホテル街、「ローペロペコンマ」の近くにある店舗
少女趣味を想起させるメルヒェンチックな外観となっているが、内容は本格的なSM設備が用意された特化型ラブホテル
日頃溜め込んだ欲望を解放するためのマニアックな趣向の淑女紳士御用達の場となっている
一応、他のラブホテルと同じく自動精算・プライバシー配慮を謳っているが
一階にクッキー屋さんが入っているので時間帯によっては非常に気まずい思いをする可能性も大
逆にクッキーを買いに来たお客さんが間違ってラブホテルに迷い込むこともあるとかないとか
ご利用は計画的に

コドクの人乙ですー
郭悪よのう。嫌いじゃないぞ

>>937
どうもです。
所詮は御山の大将なので諸々の魅力に欠けますがこんなのもそれはそれで
悪い意味で人間っぽくて嫌いじゃないです

さて続きをば

 久信を切断しようとしていた手斧の一撃が、鱗が浮かんだ女性の手によって止められた。
「なんだと?!」
 一方的に攻撃を加えていた郭は、自分の一撃が止められるとは予期していなかったのだろう。
驚いた顔で止められた手斧を眺めている。そして、そんな彼を更に驚愕させる事態が起きた。
 斧を押しとどめている二本の腕、それに続いて更に二本の腕が伸びて、手斧の柄の部分を掴んだのだ。
 それだけではなかった。
 追加で、更にもう二本の腕が、今度は未だ手斧に狙われている久信の体を掴んで、彼の体を腕の主の元へと引き寄せた。
 郭の結界を破壊し、また彼の武器を封じて久信を引き寄せた腕の数は都合三対、六本だった。
 そして、それらの腕の主は、
「なんだ、それは……?」
「一体何だと思います?……郭さん?」
 小野修実だった。


   @

 修実のもとに引き寄せられた久信は、驚きで動きを止めている郭を見て、まあ、そういう反応になるだろうと内心で頷く。
 今、郭の前には、先程までダルマ状態で失われていたはずの腕を肩から六本も生やした修実の姿があるはずなのだから。
 郭の口が再び「何だ?」と動く。それに被せるように、修実が告げる。
「郭さん。私、あの封印の中で、たくさんの呪いを受けたんです」
「呪いだと?」
 郭は何を言っているのかいまいち分からない、といった様子で掴まれている手斧から手を離して、新たな手斧を抜いた。
「町の連中の中には呪いに関する都市伝説の契約者はいなかったはずだ!」
 修実をにらみつけて声を荒げる郭を見て、久信は確信した。
 ……あいつは修実姉がどうやってあの封印の中で生き残って、結果的に町を叩き潰したのかを分かっていない。
 先程、郭は弟、つまり久信と一緒になって町を潰したのだろうといった感じの事を言っていた。
 修実がたった1人の手で結界の中の生き物を皆殺しにしたということも、その方法も分かっていないのだ。
それは同時に、今の修実の身に起こっている劇的な変化がどのような原理で起こっているのかも分かっていないということでもある。
 修実は自分がどのような状況にあるのかを説明するように、言葉を連ねていく。
「郭さん。貴方が私を封印した時、貴方は私と一緒にあの時あの町にいた契約者も都市伝説も、それ以外の生き物も、それ以外の生き物も、まとめて封印しましたよね」
「それがどうした」
 郭は手斧を振りかぶって、もう一度唄を口にした。
かごめかごめの唄に合わせて結界が形成され、久信を二本の腕で背からしっかりと抱きしめている修実ごと閉じ込める形で、籠の結界が出現していく。
「後ろの正面――」
「あの時、あの封印の中で生きていた人も、封印が完成する前に死んでしまっていた人も、皆あの籠の中で恨みを抱いて、
その矛先はまず彼らが封印されるきっかけになった半狂乱の私に対して様々な形での攻撃として集中しました」
 語りながら、修実は下半身をもぞりと動かした。
その動きによって、彼女の失われていたはずの下半身が――いつの間にか新たに生えた、蛇そのものの下半身が、結界を殴打して、割り砕いた。
 頼みの結界を砕かれた郭は、上ずった声で修実に詰問する。
「その体はなんだ?! 女相手にはより強力になるはずのかごめかごめの結界を何故そんなに簡単に砕ける?!」
「それは、この体に呪詛が染みついているから、ですよ」

 修実は退こうとしていた郭に、蛇の下半身で這いずって近づいた。
地面を滑るような動きに対して郭が何らかの反応をするよりも早く、修実は郭が持つ手斧を、両腕を、両足を、胴体を。六本の腕でそれぞれ握り、そして絞める。
 割れ砕けて散った結界の代わりに、外からの月の光が窓枠だけとなった窓から入ってくる。
 月光に照らされてはっきりと浮かび上がった修実の姿は、人の上半身に六臂を備え、蛇の下半身を持つ異形のそれだった。
「なんだこれは! 蛇の能力は体に鱗を生やして硬化するのが精一杯だったはずだ。こんな異形の体……都市伝説に呑まれたか!?」
「いいえ」
 修実は冷厳な眼差しで郭を見据え、己の罪業を詠み上げる。
「恨みと怨嗟と呪いと毒気が充満するあの閉じられた籠の中で、私は発狂しかけた頭で向かってくる全てを、生き残るために殺し尽くしたんです。
 そうして私の手によって殺し尽くされた生き物の怨念は、唯一の生者であり、彼らの攻撃の標的だった私に集中して、この身を喰らおうとしました。
 ですが、瀕死だった私は、これらも全て生き残るために喰らい返して利用し、失った血や体の欠損を繋ぎ止めました」
 無理やり口端を曲げたような、痛々しい微笑みを浮かべて、修実は言葉を重ねる。
「そうやって、私は見苦しく、生きようとしたんです」
 絞り出すように言葉を吐き出した修実の腕を久信は強く握りしめる。
 力が入りすぎていた修実の体から少し力が抜け、一息と共に、彼女の言葉が続く。
「感謝します。私にはそれだけのことを為してでも、もう一度会いたいと想って、執着できる人がいたことに気付くことができたのですから」
 一息。
「そして、赦しません。私の大事な人を、久くんを傷つけようとしたことを、私たちに全てを押し付けて逃げようとしたことを」
「殺した者を利用しただと……蛇神憑きに何故そんなことができる……化け物め」
「貴方の封印に巻き込まれて囚われた人たちは皆貴方のこともそう言っていましたよ」
「私が封印をしなくても、あの町の人間は独り残らずお前に殺されていただろう!」
「そうですね。あの時の私は自分の命が尽きるまで、目に映る全てを殺そうとしたでしょう。
あの場で死なずにこうしてまた郭さん、貴方に相まみえることができたのは貴方の封印のおかげでもあります。
その点でも私は貴方に感謝するべき、なのかもしれませんね」
「私の封印が……?」
「ええ、私がこんな体になって生き延びることができたのは貴方が形作った籠の中に出来上がった異界のおかげです」
「異界……?」

 合点がいかない、といった風の郭に修実が応じる。
「蠱毒、という呪術をご存知ですか?」
「巫蠱の類だな。それがいったいなんの関係がある」
「そうですね……では蠱毒を作る方法をご存じでしょうか?」
「作り方だと……?」
 呟く郭。
 久信は蠱毒という呪法について簡単に概要を思い出す。
 毒虫や、動物を箱に閉じ込めて、狭い空間で喰らい合わせ、最後に生き残ったモノを使って呪いを行使する呪術を蠱毒という。
「生き物を一つの閉鎖された空間に詰め込んで、殺し合わせることで作る呪詛。それが蠱毒です。
 まるで私が置かされた状況のようではないですか?」
「まさか……っ」
 半狂乱で蛇を這い回らせた修実と町中にはびこる蛇をまるごと封印するために展開された巨大な結界の内部は、
害意を持つモノたちがひしめきあう悪意の坩堝と化していた。
 その閉鎖された特殊な空間は、蠱毒というある種の異界を、町一つの規模に拡大したものとして機能した。
それが、瀕死の状態であった修実を生かした絡繰りだった。

「状況を元にしてあの場で都市伝説が生まれたのか、町の住人の誰かが蠱毒の都市伝説と契約していたのかは分かりません。
ですが、私は、その呪術の最後の生き残りの生物になったのです」
 蠱毒によって生まれる呪いの中核は、それが犬を使ったものならば犬蠱、蛇を使ったものならば蛇蠱といい、
仮に、もしも仮に人を蠱毒の呪術に使ったのであるのならば、それは人蠱といわれるものとなる。
 蛇蠱として、そして人蠱として、蠱毒化した異界の内部で結実した異形の怪物。
 それが、現在の小野修実の正体だった。
 幽霊船の結界を吹き飛ばすことができたのも、蠱毒の強力な呪詛を利用したからに他ならない。
 今の修実は、それだけの事ができる新たな力を抱えていた。

「これが今の私。
 なんとしても生き残ろうと足掻いて、足掻いて、足掻いた末に全ての毒を平らげて異形と化した化け物。
 蛇蠱にして人蠱でもある、蠱毒の澱――」

 修実は「そうですね」と呟き、自身の今の姿をこう定義した。

「姦姦蛇螺。そう呼んでください」

というわけでこれが修実の正体というか、なれの果てでした。
姦姦蛇螺の扱いは蠱毒で作られた産物といった感じ、都市伝説とは若干出自が違うナニか。という扱いです。
もう少し詳しくはまた次回

検索すれば姦姦蛇螺の怪談は出てくるのでそちらを見てもらうのもまたよしです。
 修実と怪談の内容を比べてもらうのも一興かと

「まったく、近頃の若いもんときたら・・・」
 御年80を越える老婆、金子金子(かねこ かねこ)は不機嫌だった。
 「金子」というさして珍しくもない名字の男に嫁いだばかりに珍名になってしまい、昔はずいぶん親を恨んだものだったが、この歳になるともう気になどならない。
 黙って郵便局の自動ドアをくぐり、ATMで現金振り込みの手続きをする。
 孫が無免許運転で妊婦をはねてしまった。運悪くヤクザの情婦で、多額の治療費と慰謝料と示談金を要求された。払わなければ警察に通報すると脅されている。
 電話の向こうの声が力なく語る。金子は、
「うるさいよ」
 と一言言い捨て、電話を切るとこの郵便局にやってきた。
 金なら、ある。
 一昨年死んだ夫は事業に成功し、巨億とは呼べずとも、十分すぎるほどの遺産を遺してくれた。
 何も心配はない。金は天下の回りものなのだから。

「へっへ、振り込まれてるぜ」
「バカなババァだよな」
 ある都会の片隅で、若者達が顔を寄せ合い、記帳された通帳を眺めていた。
 彼等は言わずと知れた「オレオレ詐欺」の常習犯。
 悪銭はとっとと使うに限るとばかりに金を全て引き出し、ほくほく顔で銀行を出る。
 と、そのとき。

 俄に強風が吹き、彼等の手元から金の入った封筒を舞い上がらせた!

「うわ!」
「やっべ、金!」
「まてよ、オイ!ちきしょー!」

 彼等の叫びなど無視して、紙袋から金は全て飛び出し、風に吹きさらわれていった。

「ふん」
 金子は不機嫌そうに風に吹かれて舞い戻ってきた金を数えていた。
 「金は天下の回りもの」
 金子家に嫁ぎ、「金子 金子」となった彼女にこの都市伝説が近づいてきてからというもの、夫が事業で損失を出しても不思議にそれを上回る収入が入り、夫は成功した。
 その代わりと言うべきか、二人に子供は授からず、金子にはもはや身寄りもない。
 この金も、自分が死んだらどこぞにでも寄付してしまおう。
「騙す相手の下調べくらい、きっちりせんかい、青二才が・・・ああ、まったく。最近の若いもんときたら」
 彼女は名前通り、その名を付けた両親の願い通り、金に困らない生涯を送った。



END

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom