シン・ゴジラVSヱヴァンゲリヲン (136)
2020年7月 日本 旧東京駅跡地
巨大な灰色の墓標が、ただ静かにそこにあった。
かつて人々を恐怖と絶望のどん底に突き落とした「それ」は、いまはただ冷たく無機質なオブジェとしてそこに「在る」だけに見えた。
だが、しかし、それは・・・・・・
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第三新東京市 新東京大学 キャンパス内
「バカシンジ!次の講義、代返宜しく!」
「えーまたアスカサボるのかよ!?」
「人聞きの悪いこと言わないでくれる?訓練よ訓練。新しいシミュレーターが本部に納入されたから、早く行って試したいの!
アンタも4限終わったら合流しなさいよ。アンタこそ最近たるんでんじゃないの?びっちりしごいてやるから!」
「う、うん、NERVとの契約は続いてるし、そりゃ訓練大事なのはわかるけど・・・・あの第8使徒以降5年も使徒が現れてないって思うと・・・・」
「だからってサボっていい理由にはならないでしょ!
4年前の、あのゴジラみたいなのが現れないとも限らないし・・・・・・・
あーあんとき2号機を東京に空輸してくれさえすれば、あたしが奴を仕留めたのに!」
「仕方ないわ、エヴァはあくまで使徒迎撃翌用兵器だもの、国連が許可しなかったのよ・・・・・」
「・・・・・エコヒイキ、あんたいきなり横から現れて冷静なつっこみを・・・・・あんたも最近訓練に顔出さないじゃない・・・・」
「わ、わかったよアスカ。訓練にはちゃんと参加する。綾波もくるよね?」
「・・・・・命令があれば参加するわ」
碇シンジ
式波・アスカ・ラングレー
綾波レイ
3名とも今年で20歳。新東京大学の二年生であり、国連特務機関NERVの戦闘要員(一尉待遇)でもある。
3者それぞれに、ここ数年のぬるま湯の平和を退屈しつつも、それなりに謳歌していた。
神奈川 新横浜駅構内
コーヒーショップ内のテレビでは、報道番組が流されていた。
「・・・というわけで4年が経ちましたが、やはりまだ危機は去ったとは言い難いのでしょうか。」
「当然です。ゴジラはあくまで休眠しているだけなのですから・・・・しかも東京のど真ん中で!いつ爆発するかもわからない時限爆弾を抱えているようなものです。」
「では都心部への避難民の一時帰宅というのも・・・・・・」
「とんでもない話です!私個人は米国の主張通り、熱核攻撃で滅却すべきと考えますね!そうしなければ根本的には何も解決しません。第二東京への遷都プランも進んでいるのなら・・・・・・」
テレビの騒々しい議論を背に、席に座っていた男は煙草をふかしていた。
(核で滅却か。そういう簡単な相手ならばいいんだが、な)
煙草を吸いつくすと、男はアタッシェケースを手に席を立った。
第三新東京市
同日夕刻 特務機関NERV本部 トレーニングエリア
「感心ねシンジ君。週一回程度の訓練で、これだけのシンクロ率を維持しているのだから・・・・」
赤木リツコ NERV技術開発部長である。
「本人の努力ってより、もともと持ってる初号機との親和性の高さでしょうね。シミュレーター訓練では相変わらずからっきしだし」
複雑な表情で、葛城ミサトNERV戦術作戦部長(将補待遇)は返した。
「あまりモチベーションが上がってないってことかしら?」
「ちょっちね。まあ5年も生殺しの身分じゃ無理もないし、アスカのようになれなんて無理強いできるわけもないけど・・・・・」
「あー!もうヌルゲーじゃないこれ!訓練になんないっつーの!つぎは2ランク難易度上げてくれる!?」
通信回路にアスカの騒々しい声が入ってきた。
「やっぱり実戦に勝る修業はなしね。はやいとこ使徒でもゴジラでも襲ってきてくれないとー!」
個人用ロッカールームに向かいながら、アスカがいささか物騒なことを口にしたとき、通路の曲がり角から人影が現れた。
「・・・・アンタ誰?」
「初めまして、式波アスカさん、綾波レイさん。僕はこの度配属されたソエド・エヴァA号機パイロット、
荒木ヨウスケといいます」
浅黒い肌、均整の取れた体格の青年であった。
「ソエド・エヴァ・・・・アンタが・・・・」
「お逢いできて光栄です」
差し出された手を、アスカは華麗にスルーした。
「ま、せいぜい足引っ張んないようにすることね」
そう言い残し、ロッカールームのほうへ去っていくアスカ。
意味ありげな笑みを、荒木は浮かべていた。
第二東京仮設首相官邸地下 危機管理センター会議室
巨大不明生物特設災害対策本部 内閣諮問特別会議
(矢口防衛大臣は米国視察のため不在)
「ゴジラ滅却作戦・・・・・これが国連の推す作戦というのかね・・・・・・」
林田内閣総理大臣は、一通りのレクチャーを受けた後、うめいた。
13: 名無しさん@おーぷん 2016/09/09(金)00:21:34 ID:ZVl
「はい、確実に現状の脅威を排するには、このプランしかないと考えます」
力説するのは国連安保理G対策委員会広報部長 小村直樹であった。
「もう一度お尋ねしますが、その方法で本当に核爆発、汚染の範囲を限定できるのでしょうか?」
そう問いかけたのは赤坂官房長官である。
14: 名無しさん@おーぷん 2016/09/09(金)00:23:27 ID:ZVl
「ええ、先ほど申しあげましたように、外径400メートルの超耐熱複合材ドームで目標を密閉したうえで、
内部で爆風のエネルギーのみを制限し、超高熱に特化した核爆発を起こします。
熱線、爆風、放射線等が外部に漏れることは一切ございません。
成功後は汚染等のリスクを一切負うことなく、東京都全体が復興することが可能となるのです。」
おおっ、と感嘆8割、当惑2割のどよめきが起こった。
その反応に、小村が満足げな表情を浮かべたとき、一人のスーツ姿の女性が挙手した。
「あの・・・・安易に外部からの物理攻撃での駆除に踏み切るのは無謀と考えます」
巨災対副本部長(環境省より出向)尾頭ヒロミである
「どこがどう無謀とお考えなのですかな」
小村のにこやかな表情が、若干ひび割れていた。
「ご存知のようにゴジラは体内に熱核エネルギー変換生体器官を擁する未知の生命体です。
体内で核反応を起こせるということは、肉体そのものがそれ相応の卓絶した強靭さを持っているということです。
またゴジラの細胞が有する膨大な~人類の8倍もの~遺伝情報は、私たちの生物学の常識をはるかに逸脱した自己防衛、
自己再生能力を有している可能性が極めて高いと考えます。それらが一体どれほどのものなのかすら判然としない状況で、見切り発車すべきではありません」
「す、数百万度の超高温に耐えられる生物などおるわけがないでしょう。
そもそもこの作戦は明後日にも国連安保理で可決されるであろう、いわば決定事項であるのです!
そのような難癖をつけられる筋合いはありません!」
逆ギレ。としか言いようのない小村の剣幕に、しかし尾頭はわれ関せずの無表情であった。
「ま、まあ事実上の国連の決定事項であるのならば、我々としても協力して後押ししていくという方向でですな・・・・・」
岸谷外務大臣がその場を無理やりに収めにかかった。
ある種の気まずさを包含しつつも会議は作戦決行の方向で収束していき、そしてこの2日後の国連安保理で正式に決議されることとなる。
ゴジラ滅却作戦「イフリート作戦」であった。
第三新東京市 NERV本部 トレーニングエリア
パイロットミーティング
また、最下位だったかぁ・・・・・・
席に着いたシンジはうなだれ・・・・・はしなかった。悔しさも屈辱感もない。
もう訓練でスコアを出せないことに対する感覚がマヒしてしまったのだろうか。
どうやっても、プラスであれマイナスであれ、現状をどうこうしようというエネルギーが湧いてこない・・・・・・・
ちらりとアスカのほうを見やるが、腕組みをしたまま、前を睨むように見つめて黙ったままであった。
綾波も・・・・文庫本に視線を落したままだ。
声高に発言したのは荒木であった
「碇くん!あれはいただけないですよ!
格闘も射撃も鈍すぎる、式波さん、綾波さんもこれでは不安でしょう!」
アスカは怒ったような、レイは淡々とした表情のまま押し黙っていた。
「謝るのではなくて、改善する気はあるのかって話ですよ。聞けば訓練自体にあまり顔を出さないって話じゃないですか。自覚はあるのですか!?
式波さんたちは日々人類を護るという自覚をもって研鑽しているというのに・・・・・・」
悔しさが・・・・・やはり湧いてこない。
頭の中にもやもやした異物があって、思考や感情が妨げられているようだった
「荒木君!」
たまりかねてミサトが割って入った
「問題提起してくれてるのはありがたいけど、パイロットの教育面に関する発言はあなたの領分ではないわ。
以降は慎んでちょうだい。」
「・・・・・はい。了解です・・・・・」
シンジは内心で大きく息をついた。
すこし、もやもやが晴れた気がした。
NERV司令執務室
「ご苦労、加持監察官・・・・・・・・」
NERV副指令、冬月コウゾウは受け取ったアタッシェケースを、執務机の上に置いた。
それを静かに開け、微かに笑みを浮かべるNERV司令 碇ゲンドウ。
「ネルフの切り札・・・・・ですか」
加持の問いに、口元を歪めるゲンドウ。
「手駒の一つだ。いまは少しでも多く揃えておきたい」
「なるほど・・・・・そう言えば、例のゴジラ殲滅作戦ですが・・・・・・」
「我々が関知することではない。」
「でしょうな。ちなみに中国ロシアが安保理でかなりプッシュしたようです・・・・・」
「ほう、初耳だ。」
「・・・・・では、私はこれで。しばらくはこちらで好きにやらせていただきますよ。」
一礼し、踵を返す加持。
同時刻 本部内第8ケイジ
整備されているエヴァは、これまでのものとは明らかに異質なフォルムであった
中世の鎧騎士を思わせる武骨な外観
全身は銀色にカラーリングされていた。
「ソエド(疑似)エヴァ・・・・・これが」
ミサトは腕組みしつつ、それを見上げた。
「ええ、ダミープラグを限定的に操作系に関与させることで、適格者でなくとも操縦できるようにした、
いわば次世代の量産型エヴァよ。暴走のリスクは大幅に減り、
しかもATフィールドも含めた防御性能は格段に向上している・・・・・」
手元のタブレットから目を離さぬまま、リツコは答えた。
「これをここに配備したってことは・・・・使徒の再襲来が近いとみているのかしら?」
「上層部の意図はわかりようもないわね。ゴジラに関してはエヴァは出撃不要ということで終わりそうだけど・・・・・・・」
一週間後 科学技術館屋上 20時
多国籍軍「イフリート作戦」実行部隊作戦本部
巨大な球状のドームが、凍結中のゴジラを完全に閉じ込めた形で聳え立っていた。
「超耐熱ドーム、完全密閉完了!」
「耐爆外殻シールド、展開完了!」
「W334核弾頭、アナログタイマーにてカウントダウン、現在360秒前」
「これであの化け物も完全に死ぬ。そしてわが国連G対策委員会のみが危機を根本的に解決できる存在であると
世界に示すことができる・・・・・・」
防護服姿でほくそ笑むのは小村広報部長であった。
カウントダウンは進行し、ついにテンカウントを切った
「3、2、1・・・・・起爆!!」
ドーム全体がくぐもったような音を響かせ、小刻みに震えた
95秒後、ようやくそれが収まる。
「やった・・・・・・・・か?」
効果測定は気密扉から調査用ロボットを進入させ行う。
その準備が完了した。
そのときであった。
すさまじい地響きが響く。
「なんだ!?何が起きている!!」
「判りません!詳細不明!振動が止まりません」
「ドーム表面に亀裂発生!!」
「ばかな!核爆発に耐える超硬度複合材だぞ!!それ以前になんで・・・・・・」
ドームは激しく鳴動し、そしてついに中心から真っ二つに割れた。
膨大な水蒸気が噴き出し、その中から赤黒い巨体が姿を現す。
確かに傷ついてはいる。血管や筋肉、骨や内臓がところどころ露出している。
が、それらの傷はすさまじい勢いで再生しつつあった。
「ひいいいいいい・・・・ゴ・・・・・ゴ・・・・・ゴジラ・・・・・・・・」
「な、なんという奴だ・・・・・・・・」
「化け物め!!」
ゴジラ、咆哮。
地獄の底から響くような・・・・・・それは日本国が再び、恐怖と絶望に支配される。
その事実を宣告するものであった。
第三新東京市 某所のアパート
彡(゚)(゚)「グビグビ・・・・よっしゃ!!かっ飛ばせええええ北條!!サヨナラや!!」
(´・ω・`)「もーおにいちゃん飲み過ぎだって!」
彡(゚)(゚)「ええんや!!今日勝って首位固めや・・・・ヒック」
不意に、テレビ画面が切り替わる
「ここで臨時ニュースをお伝えします」
彡(゚)(゚)「は!?(威圧)」
「たったいま、都内東京駅跡地にて、凍結されていた巨大不明生物、
いわゆるゴジラが覚醒し、活動を再開したとの情報が入りました。繰り返します・・・・・・・」
彡(゚)(゚)「ファーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
(´・ω・`)「ま、マジかよ・・・・・・・」
急になんだww
まあ、話の都合上エヴァが勝つんでしょうねぇ。
同時刻 第三新東京市 繁華街 フレンチレストラン「グランドアルメ」
屋外テラス席
アスカは大学の友人らに誘われ、20代の会社員男性数名との会食の場にいた。
ようするにエリートサラリーマンたちとのディナー合コンである。
「ええすごーい、恩慈英証券なんですかぁ~」
シンジらには間違っても見せないテンションと笑顔を見せるアスカ。
アスカに狙いを定めたらしい向かいの青年が、熱心に口説いてくる。
「どう?この後二人で・・・・・夜景がきれいなとこ知ってるんだ。」
「えーどうしようかなー」
と、アスカのバッグの中のスマホが振動する。
メッセージ画面を一瞥したアスカの表情が一変した。
「ど、どうしたの・・・・・?」
「ごめんなさーい。私急用でいかなきゃならなくなっちゃって~」
相手の青年の顔がやや歪む。
「き、急用なら僕が送っていくよ・・・・・・」
「あー大丈夫だから。」
店舗全体に轟音が響き渡った。
周囲の客たちがどよめく。
国連軍所属のVTOLが、ゆっくりと高度を下げてきた。
すさまじい風圧に、テーブルクロスが吹き上げられ、グラスが床に落ちる。
「みんなごめんねー、弁済請求は特務機関NERV宛てでハイ、ヨロシクゥ!」
おろされた縄梯子に足をかけ、美脚をあらわにしつつもスカートの中を巧みに隠しながらアスカはVTOLの機内へと俊敏に登っていった。
残された青年も、他の若者たちも髪と服をかき乱され、皆一様に口をあんぐりとさせていた。
第二東京 仮設首相官邸危機管理センター
モニターに映し出されたゴジラは、我が物顔でゴーストタウンと化した東京都心を蹂躙していた。
「凍結されていた時より若干大きくなっていないか!?姿形も・・・・・」
泉国土交通大臣の言葉に、巨災対の代表としてこの場にいた尾頭ヒロミが答える。
「はい。推定身長130メートル、また上肢の発達が顕著に見られます。第5形態というほど劇的な進化ではありませんが、
第4,5形態と呼んで差し支えないかと。」
たしかに、かつての細く短い腕が一変し、長く逞しい腕となっていた。
「とんでもないものを目覚めさせてしまった・・・・・・」
文部科学大臣の言葉に、林田首相はうつむき加減に応えた
「わたしがあのような作戦を認めなければ・・・・・・・」
「総理の責任ではありません。国連安保理が決議したことに従ったまでですから。
それよりも、現状にいかに対処するかです。そうであろう?防衛大臣!」
赤坂官房長官の言葉に、矢口防衛大臣は強くうなずく。
「その通りです。現在自衛隊はゴジラの熱線攻撃の届かない遠距離からのMLRSによる攻撃を試みているところです。
まずはわずかでも敵を消耗させ、侵攻を遅らせねば・・・・・」
「しかし、通常兵器では・・・・・」
「もちろん阻止は出来ません。再度凍結させるには新たなプランが必要となりますし、
実現するには動いてもらわねばならぬところがあります。」
「特務機関NERVか・・・・・・」
首相は唸った。
東京都 港区
上空から無数のミサイルが火矢のように降り注ぐ。
それに対しゴジラは背びれから数十条の熱線を放射し、次々とミサイルを払い落とす。
無数の火球が夜空を埋め尽くす。
かろうじて熱線をかいくぐり着弾した数発のミサイルも、ゴジラの皮膚に傷一つつけられない。
NERVメイン発令所
大型スクリーンには進撃し続けるゴジラの姿が映し出されていた。
「ゴジラ、神奈川県に侵入!」
「予測進路上に、第三新東京市が位置しております」
「やはりここのエヴァ・・・・あるいはリリスに感応しておるようだな」
冬月の言葉に、ゲンドウは眼鏡の位置を直しつつ答える。
「ああ。それだけ高度な生命体へと進化しているということだろう。」
「日本政府より、再度エヴァンゲリオン出撃の要請です!」
青葉シゲルからの報告である。
「司令。本部施設及びリリス防衛のためにも、我の総力をもって迎撃すべきと考えます。」
葛城ミサト作戦部長の進言に、ゲンドウはうなずく。
「よかろう。エヴァ稼働全機の出撃を許可する。作戦の委細はパイロット達と詰めてくれたまえ。」
「ありがとうございます!」
ブリーフィングルーム
「日本政府、巨災対から対ゴジラ用の血液凝固剤を提供してもらいました
これをいかにゴジラに経口投与するかが作戦の根幹となります。」
シンジ、アスカ、レイ、荒木の4人に、ミサトは作戦内容をレクチャーする。
結局は血液凝固剤使うのか
「シンジ君、荒木君は特殊耐熱シールドを持ってそれぞれアスカ、レイを援護して。
ゴジラの熱線を防ぎ、射撃で牽制しつつ接近し、レイの零号機がゴジラをホールドし口腔をこじ開ける。
そこへアスカの2号機が凝固剤カプセルを投入して・・・・・。」
「なんとも原始的な作戦ね」
アスカはそう突っ込みはしたが、この作戦しかないということを理解してもいるようだった。
レイは無表情。荒木は自信に満ちた笑み。
>>40 コピペミス 失礼。
シンジは・・・・顔面を蒼白にしてモニターのゴジラの画像を見つめていた。
「では幸運を祈るわ!出撃準備にかかって!」
パイロットたちは立ち上がり、めいめいの機体へと向かう
最後に部屋を出ようとしたシンジを、ミサトが呼び止める。
「シンジ君・・・・・・」
若干目が泳ぎ気味になっているシンジ。
「久々の実戦で怖いのは分かる。勇気が湧かないのも・・・・・
でも、それでも私たちはあなたを信じて託すしかないの。
前にも言ったけど、命を懸けているのはあなただけじゃないわ。
どうかみんなと協力して、やりきってほしい!」
「は、はい・・・・頑張ります」
蒼白な表情のまま、シンジはうなずいた。
「エヴァ全機発進準備!パイロットは各機体のケイジへとリニアレールで移動せよ!」
移動用のリニアカートに乗ろうとするシンジの肩を、荒木が叩いた。
「碇君、大丈夫ですか?無理はしなくていいんですよ?僕の機体は・・・・・」
なにやら耳打ちをする荒木。
360秒後、エヴァンゲリオン零、初、2号機 ソエド・エヴァA号機は5年ぶりの実戦へと出撃した
「迎撃地点は小田原郊外の山岳地帯 各機大型輸送機吊下にて移動せよ!」
4体のエヴァは山岳地帯に、次々と降下していった。
「目標会敵まで推定3分・・・・か」
アスカは周囲の状況を確認しつつ呟く。
「やらなきゃ・・・・やらなきゃ・・・・・」
シンジは初号機の中で、拳を握りしめていた。
「・・・・・来るわ!」
レイの声。
サーチーライトの光の筋の先に黒々とした巨体が浮かび上がる。
「あれが・・・・ゴジラ・・・・」
シンジは息を飲んだ。
「各機、所定のフォーメーションを組んで!」
ミサトの声。
ソエド・エヴァと初号機が、盾を手に前に出る。
零号機がその後方から、ポジトロンライフルを斉射する。
ゴジラの頭部に光線が直撃した。
怒りの咆哮。
背びれが青白く発光し、直後にゴジラの口から放射熱線が放たれた。
熱線は初号機の正面、そのATフィールドをいとも簡単に貫通し、特殊耐熱シールドに直撃した。
盾の表面がどろりと溶ける。
初号機エントリープラグ内に、アラートが響き渡る。
「う・・・・・・・」
シンジの脳裏に、第6使徒に狙撃されたときの記憶が蘇った。
と同時に、出撃前に荒木にささやかれた言葉が思い出される
「碇君。無理だと思ったら僕の後方に下がってもいいですよ。僕のソエド・エヴァのATフィールドの効果範囲は、従来機の3倍あります。
フィールドそのものの耐久力も・・・・・要するに僕一人で零号機と2号機双方をカヴァーできるんですよ。葛城将補たちは知らないことですけどね・・・・・」
・・・・・・・・・・・
「うあああああああああああああああああああああ!?」
初号機は盾にしがみついたまま、大きく後ろ歩きで後退する。
「!?シンジ君!?なにしてるの!それじゃアスカが・・・・・」
発令所で伊吹マヤが思わず声を張り上げた。
「あんのバカ・・・・・・・」
ミサトがつぶやく。
熱線は向きを変え、2号機のATフィールドを突き抜け左肩を直撃した。
「ぐ・・・・・ううううううううう」
アスカの左肩周囲のLCLが沸騰する。
アラートがけたたましく鳴り響く。
零号機がゴジラに向けダッシュしながら、ポジトロンライフルを再度撃つ。
ゴジラの頭部に命中し、熱線が逸れる。
「こんちくしょうううううう!!!」
血液凝固剤カプセルを抱え、2号機はゴジラへ向けダッシュした。
零号機もゴジラをホールドすべく、射撃しながら接近する。
次の瞬間 黒く太い何かが鞭のようにしなり、2号機と零号機をなぎ倒した。
「!!」
ゴジラの長大な尻尾であった。
転倒した2体のエヴァに、容赦なくゴジラは熱線を浴びせる。
「ぐううううううううう!!!」
両機のパイロットは苦痛に悶える。
なんとか2号機、零号機が機体を翻し、熱線の範囲から逃れたとき。
ソエド・エヴァが猛然とゴジラにタックルした。
よろめくゴジラ。熱線が途切れた。
「式波さん!カプセルを!」
もはや満身創痍の2号機が、それでも力を振り絞って跳躍し、
ゴジラの口腔に血液凝固剤カプセルをねじ込んだ。
ゴジラは身悶えする。
2号機に殴りかかろうとするが、ソエド・エヴァに両肩を押さえられる。
徐々に体の自由が奪われ、どうにか熱線を吐こうと背びれを発光させ口を開けるが・・・・・・・
その体勢のまま、ゴジラの全身は凍り付いた。
次の瞬間、2号機と零号機は力尽き、がっくりとその場に崩れ落ちた。
そのさまを初号機の中から、シンジは頭を抱え震えながら見ていた。
2時間後 NERV本部ブリーフィングルーム
遅れて部屋に入ってきたアスカは、松葉杖をついたままシンジの正面に進み出ると、強烈なビンタを浴びせた
「ご、ご、ごめん・・・・・アス・・・・・・・・・」
シンジが必死に絞り出した謝罪も、冷然と無視される。
「シンジ君・・・・・これは明らかな敵前逃亡よ。あなたが逃げ出したことで仲間のパイロットの命を危険にさらし、
貴重なエヴァ2体を損傷させた事実は見過ごせないわ。いずれ碇司令から正式な処分が下されるでしょうから、
それまでは本部内の一室で謹慎していてもらいます。」
ミサトの言葉に、シンジは蚊の鳴くような声で、はいと答えた。
左腕を三角巾で吊ったレイは・・・・・・・
一通りのやり取りを見ていた荒木の唇の端に、一瞬、かすかに嗤うような動きが現れたのを見逃さなかった。
これおーぷんであったSSか?
何でこっちに貼ってるの
しょうがないっすよミサトさん、ゴジラ相手にしちゃぁ・・・ねぇ。逃げ出しちゃいますよ
「例の不明生物が凍結されたか・・・・・・・」
「代償として零、2号機が損壊したがな・・・・・・・・」
「イギリス支部より新造の8号機を手配する。ソエド・エヴァと合わせれば戦力的に問題はあるまい。」
「ガフの部屋も予断を許さぬ状況だ、いつ新たな使徒が現れるかもわからぬ」
「それにしても・・・・・厄介なのはゴジラなる不明生物よ」
「うむ・・・・・われらより先にこの星に根付いておった生物。いわば地球生命とも呼ぶべき存在。」
「補完の妨げとなる障害。かのエヴァを用いてでもいずれ完全に滅却せねばなるまい」
NERV本部
「巨大不明生物 ゴジラは、国連特務機関NERVにより再び凍結されました。
本日は、英雄的な活躍でゴジラ凍結に貢献した人型兵器パイロット、荒木ヨウスケ一尉にお越しいただきました!」
テレビで流れているのは民放の人気報道番組である
「ちょっと・・・・いいの?パイロットをマスコミに晒して」
ミサトの当然の問いに、ノートPCから目を離さぬまま、リツコが答える。
「上層部もある程度は宣伝と国連での発言力強化の為に推進したいみたいね。
それに荒木君が自分から申し出たってのも有るみたいよ。」
「荒木君が・・・・あの子ちょっと・・・・・・・」
「それよりも、シンジ君はどうなの?」
「相変わらずふさぎ込んだままよ。自業自得な部分もあるけど、やはりこうなってしまうと可哀想ね。」
「今日中に処分が下るんだったわね・・・・・・」
司令執務室
「初号機パイロット碇シンジ。先の戦闘において敵前逃亡をなし、2号機、零号機およびそのパイロットの生命を危険にさらし、
機体も損壊させた。これは明確な背信行為である。
よってその任を解き、本部および第三新東京市からの退去を命ずる。
なにか言いたいことはあるか?」
「ないです」
ゲンドウの言葉に、シンジはうつむいたまま答えた。
「・・・・・・失礼します。」
踵を返したシンジの背に、ゲンドウの言葉が氷の刃となって刺さった。
「・・・・お前には失望した。」
シンジが去ってから、冬月はゲンドウに語りかける
「今後は一般市民としての生活か・・・・・当然監視はつくが・・・・・
碇、ほんとうによかったのかね」
「使えない者は切り捨てるまでだ。機体も人員も補充する。
零、2号機の修理を急がせろ」
謹慎させられていた部屋で、荷物を整理するシンジ。
そこへ、ノックの音。
「あやな・・・・み?」
「碇君。これ・・・・・さっき作ってみたの」
ラップで包まれたそれは、片手で作ったらしく不格好だったが、暖かかった。
「おに・・・ぎり・・・・・。すごい、ありがとう・・・・・
ごめん。僕なんかに・・・・・・・僕のせいで・・・・・・」
「私は気にしてないわ。5年前、私を助けてくれた。それで充分。」
「・・・・・・・・・」
「さよなら」
レイは部屋を出た。
ドアがばたりと閉まると同時に、どうしようもなくシンジの目に涙が浮かんできた。
首相官邸 危機管理センター
「ゴジラは再び凍結、か。危機は去ったと考えてよいのかな・・・・・・」
林田首相の言葉に、かぶりを振ったのは尾頭ヒロミだった。
「いえ、ゴジラの有する膨大かつ高度な遺伝情報からして、
今回は凝固剤を早期に体内で無力化してしまう可能性があります。
少なくとも、前回のように長期にわたって凍結できる可能性は低いかと。」
「つまりいつ目覚めてもおかしくないということか・・・・・」
「それにゴジラ以外にも、いわゆる使徒と呼称される巨大生物の問題もあります。
NERVによれば数か月以内に現出の可能性が80%とのこと・・・・・・いずれにせよ自衛隊としても警戒態勢は維持し続ける方針です」
そう言ったのは矢口防衛大臣である。
モニターには小田原近傍で凍結しているゴジラの姿があった。
NERV本部施設近傍
最寄りの駅へ向け、シンジはリュックを背負いながら歩いていた。
と、向かいから黒塗りの高級車が・・・・・・
シンジのそばに来ると一旦停止した。
「あれ~?やっぱそうだ。ワンコくんじゃない?合同演習以来だにゃ。」
一人の若い眼鏡姿の女性が・・・・・ゆうにGカップはあろうかという胸を揺らしながら後部座席から降りてきた
「真希波・・・・さん」
「更迭されたパイロットって君だったんだ・・・・・」
「う、うん・・・・肝心なところで逃げ出しちゃって・・・・・・・
アスカにも綾波にもケガをさせて・・・・・・・
最低なんだ・・・・・・・僕って・・・・・・・・」
真希波・マリ・イラストリアスはシンジの肩に手を置いた。
「ふーん・・・・自分を責め続けていたって、なんにも楽しいことないよ。
今回はこういうことになっちゃったけど、いずれはNERVはまた君を必要とするときが来ると思う。
そのときに、ほんの少し勇気を絞り出せばいいんだにゃ。」
「僕には・・・・・無理だよ・・・・・・」
そういったシンジに、そのときは必ず来るにゃと言い残し、マリは車に戻って走り去っていった。
同日夕刻 NERV司令執務室
「真希波・マリ・イラストリアス一尉の着任を認める。8号機パイロットとしての任務に当たられたし」
「はーい」
「荒木ヨウスケ一尉。先の功績を評価し三佐への昇進とエヴァパイロットユニットリーダーとしての任を与える。」
「ありがとうございます!司令!」
荒木は満面の笑みを浮かべた。
本部内 荒木ヨウスケ私室。
ベッドの上で、荒木は連れ込んだ女性職員を組み敷いていた。
「やめてください・・・・荒木三佐・・・・・・・こんなことが知られたら・・・・」
「ふふふ・・・・・俺を咎められる者は誰もいないさ。
俺はNERV、いや世界最強のパイロット。全人類の英雄だ!!
抱かれるのを誇りにおもえよ。ふふふ・・・・・どうしてほしい?
最強機体として配備されるMark.6も俺がもらう!!」
荒木らの頭上の天井の黒いシミ。それが一瞬蠢いたように見えた。
第三新東京市 繁華街 某所のバー
「シンジ君いなくなって、生活荒れてるんじゃないの?」
リツコの問いに、すでにビールで出来上がってる態でミサトが答えた。
「んなこたぁないわよ。てかシンジ君が来る前は生活できてなかったみたいな言い方やめてくれるぅ?」
「実際そうでしょ・・・・・・」
ミサトが何か反論しかけたとき。
「いよっ、葛城、リッちゃん。ここにいたか・・・・・・・」
「リョウちゃん・・・・・・」
加持であった。
「ちょっと・・・・・あんたさりげなく混ざろうとしてんじゃないわよ」
「つれないねぇ。耳よりな情報もってきたんだがな。2つほど。」
「情報?」
「まずは、碇司令が俺にもってこさせた荷物なんだが・・・・・」
・・・・・・・・・・・
「ちょ・・・・そんなのを持ち込んでどうするつもりなの!?」
「上層部の老人たちに対抗するつもりかもしれんな。いずれにせよ、きな臭さしか感じないな・・・・・」
「で?もうひとつは?」
「あのパイロットの件だがね・・・・・・・」
一週間後 第二東京市郊外
やっぱり、ここが落ち着く・・・・・・
ぼんやりとシンジは、池のほとりに佇んでいた。
もう、戦わなくていいんだ。
自分と・・・・・父さんと向き合う必要も・・・・ない
すべてから解放されたはず・・・・・なのになんだろう、この寂しさは。
かすかに鼻歌が聴こえてきた
ゆっくりと、声のするほうに歩み寄る。
「歌はいいねぇ、歌は心を潤してくれる・・・・・・・・
そうは思わないかい。碇シンジ君。」
銀髪の美しい青年がそこにいた。
「な、なぜ・・・・僕の名を・・・・・・。」
「君と同じ、運命を仕組まれた者だからさ。
僕はカヲル、渚カヲル。」
「よ・・・・・よろしく・・・・渚君」
「カヲルでいいよ。」
「僕も、あの、シンジでいいよ」
「ふふふ。」
ふたりは握手を交わした。
NERV施設内メディカルエリア
療養中のアスカ
その目の前に花束が差し出されていた。
「なんの用?」
荒木であった。
「もちろんお見舞いですよ。エヴァユニットリーダーとしてね。どうです?元気になったら、上官と部下としてお互い深く交わる機会を・・・・・・・」
「どいてくれる?」
アスカはベッドから起きだした。荒木を押しのけ、病室の出口に向かう。
荒木の顔が軽く歪む。
「僕はエヴァパイロット達のトップリーダーですよ?それを無視して・・・・・・」
「あたしは誰の下にもつかない。自分の力で立ち上がって戦う。」
「・・・・・・・・・ッッ」
隣のリハビリルームへと入ったアスカは、苦悶に満ちた、しかし強烈な意思を感じさせる表情でメニューをこなし始めた。
第8ケイジ付近
「クソッ!」
荒木は傍のダストシュートを蹴りつけた。直後に唾を吐く。
俺はお前らの上位者だぞ・・・・・臆病者のクズ碇などとは違うのだ。
トップエリートのこの俺が・・・・・・・・。
ん?
「なんですか綾波一尉。」
「碇君に謝ってください・・・・・・・」
「はあ?なんであんな臆病者に。奴は逃げ出したんですよ!?あなただって奴のせいでケガをしたわけじゃないですか」
「あなたは碇君に嘘の情報を与えた。それに惑わされて碇君はああいう行動にでてしまった。」
「な、なにを証拠に・・・・・・・・」
「証拠ならあるわ。」
ミサトであった。
「前回の戦闘の出撃前、あなたとシンジ君の会話を監視カメラがとらえていました。
口の動きを解析した結果・・・・・・・
ソエド・エヴァのATフィールドの有効範囲が広い。だから自分一人で零号機と2号機をカバーできる。
そう言っていたことが判明しました。
虚偽の情報を同僚パイロットに与え、行動を誤らせた。
この責任は重大よ。」
「ぐっ・・・・・だからって・・・・奴が逃げたことは事実です!」
「そうかもしれないわね。でもあなたがそう仕向けたことも事実だわ。
エヴァ間の連携を崩し、自分一人の手柄を立てやすくするため。
そういう狙いもあったんじゃないの!?」
「だ・・・・だったらどうした!俺が、この俺が実際に戦って功績をあげたことは事実だ!
この俺なしにはNERVは戦えない・・・・・」
「そうでもないわ。零号機の修理、および綾波レイの回復は予想より早くなりそうだし、
8号機の戦闘能力はソエド・エヴァと比べても遜色ない。
さらに新鋭機Mark.6の配備とパイロット着任も内定している。もちろんあなたじゃない。
ようするにあなたを更迭してもNERVの戦力にはさほど影響はないのです」
「こ、更迭・・・・・・」
ミサトはタブレットの画像を切り替えた。
そこにはアスカのプライベート写真が数十枚表示されていた。
荒木が何らかの方法で入手したものであることは明らかであった。
「あなた、パイロットや職員、幹部のPCにハッキングを仕掛けていたわね?おもに左翼系、暴露系のマスコミにリークするために・・・・・・それだけじゃない。女性職員たちへの数々のセクハラやそれ以上の暴行の訴えも上がっています。
碇司令が1時間前、あなたの更迭を正式に決定しました。
豊橋支部にて、無期限の謹慎処分とします。
ソエド・エヴァも同地の実験施設で凍結します。」
「・・・・・・・・・・・・・!!!」
ミサトの後方から、屈強なスーツ姿の男性2名が進み出る。
荒木の両肩が押さえられた。
「こ、後悔するぞ!俺というカリスマを・・・・・・このアバズレが!!クソッ!!
流行らせコラ!!」
連行される荒木。その背中のジャケットには黒いシミがでかでかとついていたが、この時点で気にするものは居なかった。
6時間後
荒木は両側を警備兵に挟まれ大型輸送機の座席に座らされていた。
ソエド・エヴァもその輸送機に吊下されている。
屈辱に震える荒木
その目は焦点を失っていた
(俺はトップエリート・・・・・こんな扱いを受けていいはずはない。
NERVの馬鹿どもはみんな死ぬべきだ・・・・・いつか報復してやる・・・・・・
・・・・・・・・
なんだ?体に何か入ってくる感触。
両隣の警備は何もしていない。
なんなんだこれは?
じわじわと・・・・・・力が湧いてくる・・・・・・・
これは・・・・・・悪くない。
それどころか・・・・・・・・・・・・
くくく・・・・最高に気持ちいいぜ!)
「おい!妙な動きを見せるな!!」
両隣の警備兵が肩を押さえようとしたとき、
左右同時に、荒木の裏拳が飛んだ。
その一撃で、警備兵二人の首が直角に折れ曲がった。
あきらかに・・・・・人間の力ではなかった。
「おい!何をしている!」
前方のパイロットの言葉を無視し、荒木は床のハッチをこじ開けた
眼下にぶら下がっているソエド・エヴァに飛び移る。
NERV発令所
「ソ、ソエド・エヴァが起動!輸送機にホールドされたままです!」
「なんですって!?」
マヤの報告に、ミサトは驚愕の叫びをあげた
「バカな・・・・内部電源は0にしてあるはずよ!」
リツコもモニターの数値を何度も見直していた。
「これは・・・・・この反応は・・・・・・分析パターン青、使徒です!」
「!!!!」
ソエド・エヴァが咆哮し、輸送機を空中で破壊する。
そしてATフィールドを翼のように展開し、ゆっくりと降下していった
・・・・・・あらたな悪夢の、始まりであった。
シンゴシCMでしかみたことないがあんな感じに至るところから攻撃してくるのか?
>>89 せやで。本編は3月に出るBDでご覧くだされ。
「ソエド・エヴァ、根府川方面より山岳地帯へ向け進行中」
「第三新東京市到達まで推定1時間!」
「おそらく、なんらかの理由で荒木三佐の肉体に侵食した使徒が、
パイロットともどもソエド・エヴァを乗っ取ってしまったのかと・・・・・今はそうとしか申し上げられません」
リツコの説明に、ゲンドウはうなずいた
「ソエド・エヴァA号機は現時刻を持って破棄。目標を第9使徒と識別する。
8号機は直ちに出撃準備。
零号機は出せるか?」
「ヘイフリックは完了しておりますが、近接格闘戦には不安が残ります。
支援任務なら・・・・・・・」
「よし、では例の特殊装備を持たせろ。テスト中ではあるが、今を置いて使うべき時はない」
「は、はい・・・・・・」
「初号機もダミープラグで起動準備。いかなる手段を用いてでも目標の侵攻を阻止しろ。」
かつてソエド・エヴァであった使徒は、第三新東京市市街へと侵入した。
「俺が・・・・俺こそが至高なのだ・・・・・すべてを破壊して証明する・・・・・・」
荒木は使徒に侵食されつつも、その凶悪な意思はあくまで自身のものとして生きていた。
兵装ビルに据え付けられた砲台、ミサイルランチャーから無数の火箭が殺到するが、
格段に強力となったATフィールドに悉くはじき返される
進撃するソエド・エヴァ=第9使徒に、エヴァ零号機と8号機が立ちはだかる。
零号機はポジトロンライフル、8号機は両手に持ったライフルで攻撃を開始した。
しかし・・・・・
「ATフィールドが硬すぎるにゃあ~」
「ええ、2機がかりでも中和できない・・・・・・・」
!!!
次の瞬間・・・・・・使徒が猛然と跳躍した
8号機に組み付き、首を締め上げる。
「うっ・・・・・ぐううううううう」
マリの首の周囲のLCLが泡立つ・・・・・・・。
「くっ・・・・・特殊装備を!」
零号機の傍の兵装ビルのハッチが開く。
そこから銀色のギミックを、零号機は取り出した。
「全領域兵器 マステマ!!」
マステマの装備の一つ、ガトリングレールガンをぶっ放しながら、零号機は使徒に向けダッシュした。
そして超振動ブレードで使徒の後頭部に斬撃を浴びせる。
一瞬使徒がよろめく。その隙に8号機は相手の腕を払いのけ脱出した。
「モード反転!裏コード、ザ・ビースト!!」
8号機の背中からいくつもの制御棒が突出し、そして装甲の下から筋肉組織が隆起する。
そして、咆哮。
「獣化第二形態・・・・・・・」
リツコがつぶやく。
「うおりゃああああああああああ!!」
第9使徒の重層的なATフィールドをすさまじい勢いで食い破る8号機。
そこへマステマ第3の装備を放つべく、零号機は狙いを定めた
ATフィールドが、すべて破られる。
「N2ミサイル発射!!」
すさまじい閃光と爆風!
「マリ、レイ!!」
ミサトは叫んだ。
10分後、爆煙が去ったあとに浮かび上がったのは・・・・・
大破した零、8号機と、それらをあざ笑うかのように健在な姿を見せる第9使徒であった。
あんな攻撃するシンゴシにどうやって…
第2東京市 郊外
「巨大生物が現在第三新東京市に進行中 第2東京にも避難準備勧告が出ております。」
広報車が大音量で警報を発していた。
(使徒・・・・・かな・・・・・・
でも、どっちみち僕は乗れないんだ・・・・・・・・・・)
シンジは、ぼんやりと池のほとりを歩いていた。
ふっと気づくと、隣には・・・・・・・
「カヲルくん・・・・・・・」
「行かないのかい、シンジ君。」
「僕は・・・・・乗らない・・・・・・乗れないんだ
みんなの期待を・・・・・裏切って・・・・・・・」
「そうだね・・・・君自身は、みんなに合わす顔がないと考えてるかもしれない。
でも、君を好きな人たちのために、大切に思ってくれる人たちの為に、もう一度立ち上がってもいいんじゃないかな・・・・・・・」
「僕を好きな人なんて・・・・・いるわけが・・・・・・」
「少なくとも・・・・・ここにいるよ。」
カヲルはシンジを抱きしめた
20分後
「でも・・・・・今から第三新東京市に行こうにも・・・・・・」
「心配はいらないよ。」
カヲルが空を指さす。
轟音とともに、VTOLが着陸態勢に入りつつあった。
NERV本部 第3ケイジ
「コアユニット、ダミーを拒絶!」
「だめです、リセットが効きません!」
「続けろ。もう一度334からやり直せ」
ゲンドウも焦燥を隠し切れない。
初号機が、ダミープラグによる起動を受け付けない・・・・・・・・
発令所
「第9使徒、ジオフロント内に侵入!」
「エヴァ初号機起動しません!」
「防御火器群、全力斉射!わずかでもいい、喰い止めて!」
「!?エヴァがリニアレールから出ます!初号機ではありません!」
2号機・・・・・・!!
「アスカ!無茶よ!やめなさい!!」
ミサトがモニターに向け叫ぶ。
2号機は第9使徒の前に立ちはだかる。
「これはこれはアスカ嬢。自分も機体も傷ついているのにどうしようというのですか?」
荒木の嘲笑。
「やかましい!くたばれええええええ!!」
2号機は大型破砕兵器デュアルソーを振りかざし、第9使徒に挑みかかる。
「うおおおおおおおおお!!」
使徒のATフィールドが次々と破られ、ついにデュアルソーの刃はその装甲に達した。
「突き破れえええええええ」
激しく火花が散る。
次の瞬間。
第9使徒の右腕が一薙ぎすると、2号機の右腕が切断される。
「う、ぐああああああああああああああああああああああああ!?」
切断面からエヴァの体液が飛び散る
アスカはなおも反撃しようとするが、2号機は第9使徒に組み敷かれる。
第3ケイジ
初号機は、依然として起動しないままであった。
「なぜだ、なぜ私を拒絶する・・・・・・・ユイ・・・・・・・」
その時であった。
「乗せてください!!」
ゲンドウの眼下の整備用通路から、見上げる人影・・・・・・
「シンジ。なぜそこにいる。」
「父さん!!」
「!?」
「僕は・・・・・・僕は・・・・・エヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジです!!」
ジオフロント内
2号機を完全に押し倒した第9使徒の股間から、太く長い何かが伸びる
それは2号機の胸部から浸透し、エントリープラグの中へ触手となって侵入した。
「くくくく・・・・アスカ嬢。わたしと一つになりませんか?それはとても(以下略」
荒木のみなぎったナニを思わせるそれは、アスカに絡みつく。
「こんちくしょう・・・・・・・」
抵抗しようにもアスカの体には力が入らない。
「くうううううう伝わる!感じますよあなたの・・・・・・・」
「ううううう・・・・・・」
次の瞬間、紫色の巨大な影が飛んできた
「うおおおお!!すべてを斬り裂け!!マゴロクソード!!」
初号機が刃を一閃させ、第9使徒の股間から伸びた触手を両断した!
「おああああああああ!?私の%&#が!!」
「バカシンジ!!還ってきたの!?・・・・ほんとにバカね」
「ごめん、待たせて・・・・・今度はもう逃げない!!
エヴァンゲリオン初号機 F型装備 見参!!」
初号機F型装備は、第9使徒に挑みかかる!
「く・・・・・この私に勝とうなどと・・・・クズの臆病者が・・・・・
身の程を知れ!!」
第9使徒の腕がしなる
初号機の右腕に当たるが、重装甲と増幅されたATフィールドに阻まれる。
「!!」
くらえ!!
マゴロク一閃! 第9使徒の右腕が斬り飛ばされる!
「ぐおおおおおばかなああああああ!?」
初めての苦痛に悶える荒木。
ATフィールドが弱まる
そこへ回復したアスカが大上段から、片腕でデュアルソーを振り下ろす。
第9使徒の頭部が両断され、さらにエントリープラグ付近まで構造物が破断される。
「くらえ!!インパクトボルト!!」
初号機の両肩から、ATフィールドを増幅した指向性電撃が放たれる!!
第9使徒の胸部に直撃し・・・・・・・・・
エントリープラグが完全に潰される。
「ぐぎゃあああああああこんなところでぶべぽぴっ!?」
荒木の肉体が侵食した使徒ごと崩壊していく。
「ごあああああああああ!!!こんな・・・・こんなところで[ピーーー]ん!力を!!もっと力を!!!!!」
NERV司令執務室 特殊金庫
その扉が、内側からガタガタとうごめき、ついには3重の扉が破られた。
飛び出してきたのは金色の球体。
それはすさまじい速度で飛翔しいくつもの隔壁を破ると、ジオフロントの瀕死の第9使徒に激突した。
そして浸透していく。
第9使徒が金色の光に包まれる!!
すさまじいエネルギーのうねり。もはや第9使徒、ソエド・エヴァの面影は全くない。そしておそらく荒木も・・・・・
「まさか・・・・・あれが例の地球外生物!?」
ミサトがつぶやく。
ゲンドウは無言であった。
そしてその巨大な光の塊が・・・・・・・・
「みろ!何か形になっていくぞ!」
誰かが叫んだ。
「パターン青から急激変化・・・・・これは・・・・まったく未知の・・・・・」
マヤは絶句した。
金色に光り輝く、三本首の巨竜が姿を現した・・・・・・・・・・・。
「あれは何なの!!」
ミサトの問いに、いつの間にか発令所にいた加持が答えた。
「超巨大宇宙生物・・・・米国NASAのコードネームは・・・・・・キングギドラだ」
神経をかきむしるような鳴き声。
これまでとは異質な恐怖を、シンジとアスカは感じていた。
小田原近傍 山岳地帯
(´・ω・`)「もーおにいちゃんやばいって!立ち入り禁止区域だよ!?」
彡(゚)(゚)「やばくてもやるんや!ゴジラの細胞、肉片は数千万円単位で売れるんやからな・・・・・」
(´・ω・`)「放射能汚染も、ゴジラの近くだと・・・・・・・」
彡(゚)(゚)「そのために米軍払い下げの防護服着てるんやないか!すでにこいつに20万投資してるんやから、
四の五の言わず・・・・・・お!みつけたで!」
(´・ω・`)「にーちゃん多分それ獣のウンコだよ・・・・・・・」
次の瞬間、どくん!と腹に響く音・・・・・・・
彡(゚)(゚)「!!!?????」
ふと見上げると、巨大な黒い影・・・・・・・・ゴジラの両眼が、くわっと開いた。
そして、すさまじい咆哮!!!
彡(゚)(゚)「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )」
第三新東京市ジオフロント
インパクトボルトを放つ初号機
しかしそれは金色の鱗にはじき返される。
キングギドラは三つの頭から、強烈な破壊光線を放つ。
それは初号機F型の重装甲をも貫き、エントリープラグ付近を直撃した
「ぐうああああああああああああああ!!??」
血反吐を吐き、悶えるシンジ。
「シンジ君!!」
叫ぶミサト。
そこへマヤが悲鳴交じりの報告をもたらす。
「凍結中のゴジラが覚醒!現在ジオフロントリニアスロープからこちらへ向かっています!!」
「なんですって・・・・・・・・」
「シンジ!!」
アスカは萎えそうな肉体と意思を奮い立たせる。
「モードチェンジ!!コードトリプルセブン!!!」
2号機の全身が隆起し、咆哮する。
すさまじいスピードでキングギドラに飛びかかる2号機。
デュアルソーは・・・・・・キングギドラの体組織にはじき返され、折れた。
「うおおおおおおおおお」
2号機はキングギドラの中央の首に組み付き、締め上げた。
首を激しく左右に振るキングギドラ。
ついに2号機が振るい落される。
地べたに倒れこんだ2号機へ向け、キングギドラが破壊光線をまさに吐こうとしたその時。
青白い熱線が、キングギドラの翼に当たった。
向き直った先には、黒々とした巨体。
「ゴジラ・・・・・・」
ミサトがつぶやいた。
ゴジラは大股でキングギドラのほうへ歩み寄る
そこへ破壊光線が立て続けに叩き込まれる。
ゴジラも負けじと熱線を放つ。
両者の光線が中央で激しくぶつかり合う・・・・・が撃ち合いはキングギドラのほうがやや優勢だった。
よろめき、倒れこむゴジラ。
そこへさらに追い打ちの破壊光線が叩き込まれる。
血しぶきが上がり、ゴジラが苦悶の叫びを上げる。
「ゴジラが・・・・・・地球生命の代表が・・・・・宇宙生命に滅ぼされてしまったら・・・
・・もはや私たちに希望は・・・・・・・」
リツコはうめく。
「ゴジラやサードインパクト以前に、キングギドラによって人類が滅ぼされてしまう・・・・・・」
ミサトは十字架のネックレスを握りしめた。
初号機 エントリープラグ内
体中が痛い
力も入らない・・・・・・
もう僕は死んでしまうのか・・・・・・・・・
お母さん・・・・・・・
「シンジ・・・・・・・・」
声が聞こえる。
まさか・・・・・・・・・
「シンジ・・・・・生きることをあきらめたら駄目よ。
強い意志の力があれば、何度でも立ち上がれるわ。
あなたの大切な人たちを、その未来を護るために・・・・・・・
さあ、もう一度強く念じなさい。私も手伝うわ・・・・・・・」
どくんっ
エヴァ初号機の両眼が赤く光った。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
初号機もシンジの強烈な意思に感応し、咆哮した
「初号機、再起動!」
「暴走?」
「判らない、一体何が、初号機に起きているのか・・・・・・・」
リツコは汗を拭った。
「シンクロ率が、急激に上昇中!300・・・・310・・・・320・・・・・」
「信じられないわ・・・・・・・」
マヤの報告にミサトはうめいた。
立ち上がった初号機に向け、キングギドラが光線を放つ
が、強靭化したATフィールドにはじき返される。
ゴジラも起き上がった。
全身が青白く発光し、全身の筋肉が肥大していく。
首相官邸 危機管理センター
「あれは・・・・・第5形態!?」
尾頭ヒロミである。
初号機 両目から深紅の光線を放つ。
キングギドラのそれと激しくぶつかり合う。
やや初号機が押され気味かと思われたその時
ゴジラからも熱線が放たれた。
これまでより太く、力強い熱線!
はじめて撃ち負け、後ずさりするキングギドラ。
さらにゴジラと初号機は追い打ちをかける。
キングギドラの中央の首に光線が集中し、首が切断された。
たまらず飛翔し、逃れようとするキングギドラ。
初号機、そこでエネルギーを使い果たしたのか暴走状態が解け、活動を停止してしまう。
2号機もパイロットが消耗し戦闘不能状態。
ゴジラは・・・・・・・・・
背びれをかつてない規模で発光させ、上空へ向け、再度渾身の熱線を放つ。
キングギドラの全身が溶け、業火に包まれ・・・・・・・ついに爆発四散した。
咆哮するゴジラ。
「やった・・・・・・」
青葉シゲルがつぶやく
「まだよ、まだゴジラという脅威が残っているわ!」
ミサトが叫ぶ
しかも、稼働できるエヴァはもう・・・・・・・・
「?」
ゴジラ、不意に動きを止める。
そしてなんと・・・・・・・その場で再び凍結してしまった。
首相官邸 危機管理センター
「ど、どういうことだ!?」
林田首相の問いに、尾頭ヒロミが答える
「おそらく臨界点を超えてエネルギーを生成放出したため、生体原子炉の体内冷却が追い付かなくなってしまったのでしょう。
それで本能的に原子炉を緊急停止したために急激に凍結を・・・・・・・」
「なんとか、止まってくれたってことね・・・・・・・」
ミサトは胸をなでおろす。
「ええ、今後NERVはゴジラとリリスという二つの爆弾を抱えることになるけど、当座の危機は去った・・・・・」
リツコは発令所内ということも忘れたのか、煙草に火をつけた。
「今後はゴジラ凍結継続のための方策を、日本政府、巨災対と練らねばならんな。」
冬月の言葉に、ゲンドウは眼鏡の位置を直しつつ、ああと答えた。
ジオフロント内、および第三新東京市市街では、エヴァパイロットの救出作業が始まっていた。
2か月後
第二東京大学 キャンパス内
ベンチにひとり、ぼんやりと座っているシンジ。
そこへ、一人の女子学生が歩み寄る。
「アスカ・・・・・・ケガは治ったの?
あの・・・・・・本当に・・・・・・・・・・」
「あんたはまた戻ってきてきちんと戦った。逃げなかったじゃない。それで充分よ。」
「あ、ありが・・・・とう・・・・・・」
「とはいえ、完全にチャラってのもねー
そうだ!大学前の汐崎ラーメンおごってくれる?おなかすいたし。
コネメガネ、エコヒイキ、あんたたちもくるでしょ?」
「モチのロン」
「命令・・・・・がなくてもそうするわ」
束の間ではあろうが・・・・NERVの若者たちに平和が訪れたようであった。
数日後 南極大陸
巨大な生物が、長大な槍を突き立てられ、ブリザードの中絶命していた。
健在なら第10使徒と呼ばれていたであろうそれを屠ったのは
エヴァンゲリオンMark.6
搭乗者 渚カヲル
「さあ、間もなく約束の時だ 碇シンジ君
今度こそ君だけは 幸せにして見せる」
~完~
このSSまとめへのコメント
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