【モバマスSS】 お題は星の数だけ 12夜目 (197)

こんばんは、今年もお題は星の数だけをどうぞよろしくお願いいたします
今年もたくさんのお題を書きたいと思っています
では、新年一発目のお題は>>3のお題を頂戴します


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1484391701

日菜子「机の下の妄想」

早耶「今日はPさんと晩御飯」

ゼッケンズで遊園地に行く

それでは 早耶「今日はPさんと晩御飯」 でひとつ
短いかもしれまんせんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……

いつもの

「早耶もご飯くらい作れますよぉ」

プロデューサーさんに煽られて、ついつい口走ってしまった言葉

だって、他の女の子のことばかり褒められたら、こう、なんと言うか……

「へぇ、じゃあ今度ご馳走してもらおうかな」

にやにやと意地の悪い笑みのプロデューサーさん

「わ、わかりましたぁ……じゃあ、明日にでも」

「おう、楽しみにしてるよ」

これは女として負けられない戦いになるような気がします

「お疲れ様でしたぁ」

「急ぎの仕事もないし、寮まで送るぞ?」

せっかくの申し出だけど、やらなきゃいけないことがあるんです

「大丈夫ですよぉ、それじゃあまた明日」

ちひろさんにも挨拶をして、事務所を出たらスマホを取り出して

数回のコールの後に、懐かしいお母さんの声

「もしもし、聞きたいことがあるんだけど」

料理の大先輩、お母さんに男の人を満足させるメニューを聞きださなくちゃ!

「ありがとう、うん、それじゃ」

好きな人でもできたの? なんて言われた時はどきりとしました

けれど、プロデューサーさんを好きになっちゃって……とは流石に言えなくて誤魔化しましたけど

それは置いておいて、色々と聞き出すことが出来ましたぁ

ふむふむ、男の人は肉じゃがと卵焼きが好きみたいですねぇ

さっそくスーパーで食材を調達するとしましょう

えーと、豚肉にジャガイモにニンジンに玉ねぎ、それと白滝

後は卵を買って……うん、少し多めに買っておきましょう

やっぱり練習は大切ですし、それで材料が足りなくなると困りますし……

余ったら他の料理に使えばいいんです! け、経済的な判断だと思いますぅ

お会計の金額にちょっと驚きましたけど、割り切ります

これで準備が整いました、さぁ後は作るだけです!

「……」

ええと、早耶はご飯を炊いて、肉じゃがと卵焼きを作っていたはずなんですが……

ごくりと唾を飲む早耶の前の広がるのは、まさに未知の領域

真っ黒に染まった肉じゃがと、焦げに焦げた卵焼き

ご飯は上手く炊けたような気がしないでもないですけど……

ちょっと味見してみましょうか

「頂きます」

まずは肉じゃがを一口頂いてみます

恐る恐る箸でじゃがいもを掴み、口の中へ

2回3回と租借をしてみます

もぐもぐ……

ああ、ものすごい醤油の風味ですねぇ

というか、醤油の味しかしません

お肉、玉ねぎ、にんじん、白滝、どれも醤油の味です

醤油漬け? これはもう肉じゃがとよべるものではないみたいですぅ

次は卵焼きです

卵と言えば黄色ですが、この子は真っ黒くろすけです

一縷の希望を胸に箸で一口に切って、口の中へ

きっと、見た目と味は比例しないはずですぅ

もぐもぐ……

「あまっ……」

先ほどの醤油味から真逆の甘さ

スイーツもかくやという甘さに味覚が痺れます

あれ? 早耶は肉じゃがと卵焼きを……

あまりの味の差に、脳が上手く動きません

大丈夫、きっと……きっとご飯なら

見た目だけなら綺麗に炊けている白いご飯を頬張ります

もぐもぐ……

うん、おかゆですね

弱った胃腸に染み渡るような、そんなおかゆを作ることができました

これはこれで美味しいですが、おかずと全然マッチしません

最後の希望のご飯まで……

お母さんの言うとおりに作ったつもりなのに、おかしいですねぇ

いえ、でも失敗は成功の母とも言いますし、回数をこなせばきっと美味しくできるはずです

失敗を次に生かす、良い言葉じゃないですか、早耶は次こそ美味しく作ることができますぅ

反省点を生かして、次のステップへ

何がいけなかったのか、そして、良かったところは伸ばす

まるでレッスンみたいで楽しいですけど、とてもプレッシャーがあります

美味しくない料理をプロデューサーさんに食べてほしくない

早耶が料理できないことを知られたくない

頭の中に浮かんでは消えるプロデューサーさんは、にやにやと笑っていますが気にしません

女は度胸です、ここで引くわけには行かないですぅ

「で、できた……」

何回目か忘れてしまうほど、繰り返して

ようやく納得できるものが出来た時には日付が変わっていました

手は切り傷でぼろぼろで満身創痍です

これで駄目だったら明日はもう……

そんな気持ちを胸に最後の試食をしてみます

もぐもぐ……

うん、お母さんの肉じゃがの味がします

続いて卵焼き

もぐもぐ……

程よく甘くて、焼き加減も良いですね

最後のご飯です

もぐもぐ……

硬めに炊かれた白いご飯がおかずにぴったりですぅ

これならプロデューサーさんもきっと喜んでくれるはず

レッスンの疲れと、料理の疲れとでくたくたになってしまって

後片付けもろくにできないまま次の日の朝を迎えていました

スマホのアラームが鳴った後に急いで着替えて事務所へ向かいます

「ふふ、早耶の料理に美味しいって言って見せますよぉ」

笑顔のつもりでしたけど、プロデューサーさんに怖いと言われてショックを受けました……

「ひ、酷いですぅ」

「冗談だって……すまん、調子に乗った、この通りだ」

抗議する早耶に大人しく頭を下げるプロデューサーさん

何かいつもと違う感じです

「わっ、早耶は別に気にしてないですから……」

なんでしょうこれ、どことなく気まずい雰囲気が漂います

「早耶の料理を食べてくれれば気にしませんよぉ?」

こんなこと言わなくてもこの人は約束を違えないのに

弱気になってしまった早耶は、きっと弱々しく笑ったと思います

プロデューサーさんは少し驚いたあと、こくりと頷きました

「じゃあ、お仕事が終わったら早耶のお部屋まで来てくださいねぇ」

鼓動が早くなるのを誤魔化すように、早口で言って事務所を後にします

事務所のドアを後ろ手に閉めて、廊下に出てから深呼吸

「ふふ、あとはプロデューサーさんに食べてもらうだけ……」

自然とふにゃけてしまう顔を誤魔化しながら、お仕事の現場へと向かいます

集中しないといけないのに、これからの時間で頭がいっぱいだったのは秘密ですぅ

お仕事とは違う事を考えているのに、なぜか順調で

いつも以上の早耶を見せられたような気がします

原動力はきっとプロデューサーさんなんでしょうけど

でも、この気持ちは全然悪くないです、むしろ心地よさを感じるくらい

早耶の手料理を食べたプロデューサーさんはどんな顔を見せてくれるんでしょう?

美味しいって言ってくれるかな? ありがとうって言ってくれるかな?

駄目、これ以上考えちゃうとにやけちゃう

「早耶? 大丈夫か?」

プロデューサーさんの言葉で、はっと我に返る

「どうしたんだ、ぼーっとして」

「い、いえ」

何だか今日は時間が経つのが早いです

さっきお仕事が終わったと思ったら、もうこんな時間

「ねぇプロデューサーさん? 早耶との約束覚えてますかぁ?」

「ああ、もちろんだよ」

そうですよね、やっぱり貴方は早耶のプロデューサーさんです

「もう寮の近くだけど、寄りたい所とか無かったか?」

優しく聞いてくるプロデューサーさんに首を横に振ります

「はい、準備万端ですぅ」

強い視線を送ると、プロデューサーさんはそれは平然を受け止めて

「そりゃ期待しちゃうな」

わざと、おどけたような表情を見せました

「早耶のお部屋へようこそぉ」

精一杯の笑顔を作ってみましたけど、緊張は全く解けません

むしろ、この2人きりの状況に加速しているみたい

「へぇ、綺麗にしてるんだな」

お邪魔します、と入ってきたプロデューサーさんの第一声がそれでした

「もう……片付けくらいしてますよぉ」

「じゃあ準備してきますから、ちょっと待っててくださいねぇ」

「ああ、色々とごめんな」

短いやりとりの間に、早耶の頭はフル回転しています

肉じゃがをあっためつつ、卵焼きを焼いて

ご飯はタイマーでそろそろ炊き上がるはず

ついでにお味噌汁も作ってと……具はなめことお豆腐にしてみました

「お待たせしましたぁ」

いざ食べてもらうとなると、これで良いのかな? といった気持ちが湧いてきます

もっと上手く作れたら、それこそまゆちゃんや響子ちゃんみたいに作れたら

そんな早耶の不安を、プロデューサーさんはたった一言で吹き飛ばしちゃいます

「おー、美味そうだな」

今まで見たことない笑顔でそんなことを言われてしまうと、こちらはもう何も言えません

ただ、美味しいって言ってもらいたい……その1つだけです

「それじゃ、いただきます」

手を合わせて、いただきますをするプロデューサーさん

お味噌汁に手を伸ばして、ゆっくりと啜っています

どくんどくんと心臓が痛いくらいに早まっていて、頭が真っ白になってしまいそう

手料理を人に食べてもらうのがこんなに緊張するなんて……

「……うん」

プロデューサーさんの一言は短いですが、その顔は笑顔でした

今度は肉じゃがに箸を伸ばすプロデューサーさん

お肉とほろほろに煮えたジャガイモを一緒に口に入れてもぐもぐしています

「なんだか懐かしい味がするな」

ほっとしたのも束の間、ほかほかと湯気を上げるご飯をぐわっと掻き込みました

今回はお水の加減も丁度いいはずです……

「……」

箸が止まってないってことは美味しいってことですよね?

そして、とうとう最後の卵焼きに箸を伸ばして

もぐもぐと租借した後に、ぴたりと動きが止まって……

もしかして甘すぎたのかな? 卵の殻が入ってたのかな?

そんな不安がよぎりますが、どうやらそれは杞憂だったみたいです

物凄い勢いでご飯とおかずを平らげていくプロデューサーさん

見ているこっちが気持ちよくなる食べっぷりです

咀嚼
租借じゃ他国に貸した土地よ

全てのものが空っぽになるのに数分とかかりませんでした

「ふぅ、ご馳走様」

お茶碗にはご飯粒が1つも残っていません

「お粗末さまでした」

どうしよう、嬉しくて泣いちゃいそう

じわりと視界がぼやけてきます


「後片付けしてきますねぇ」

プロデューサーさんにバレないように顔を隠して片づけをしようとしますが

「いや、食器は俺が洗うから」

「後片付けしてきますねぇ」

プロデューサーさんにバレないように顔を隠して片づけをしようとしますが

「いや、食器は俺が洗うから」

早耶より先に動いたプロデューサーさんにぱっちりと顔を見られてしまいました

「あの、これは……その」

泣き顔を見られて軽くテンパってしまいましたが

「早耶が作ってくれたご飯美味かったよ」

ゆっくりとプロデューサーさんが言葉を続けます

「早耶が嫌じゃなかったら、また……作ってほしい」

「はい、早耶のでよかったらいくらでも」

ぶっきらぼうに言い放つプロデューサーさんの言葉はどこか暖かくて

涙で顔をぐしゃぐしゃにして、早耶は笑って答えました



おしまい

読んでくれた方に感謝を
そして、お題ありがとうございました
少し休憩をもらいますね

乙です

それでは再開します
次のお題は>>40です

アナスタシア「オリオン座だけは見つけられるプロデューサー」

大人組による家庭の味選手権
審査員:Pと仁奈

木場さんとお正月(Pの実家で)

菜々さん飲酒がネットで大炎上

ふじりなとスクーターデート

海水浴で遊泳中に水着が流されて助けを求める楓さん

それでは「木場さんとお正月(Pの実家で) 」でひとつ
短いかもしれまんせんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……

奇跡的にオフになった元日

こりゃ新年からラッキーだなと思ったものの

家にいても暇だしやることねーやと、大きなため息を吐いた時

「私とお正月を過ごしてみたらいいんじゃないか?」

木場さんがカッコいい声で俺にそう言ってきた

少し顔が赤いみたいだけど、風邪気味かな?

「木場さんが良ければいいですけど……うちの家はつまらないですよ?」

「つまらない、か……なに、味わったことのない雰囲気を味わえると思ってね」

ちょっと含みのある言い方をしてから、ウインクを1つ

「わ、わかりました。ちょっと待っててくださいね」

スマホを取り出して、実家へコールする

5回も鳴らないうちに、母親の声が聞こえてきた

『はいはい、お嫁さん見つかった?』

第一声がそれかよ母さん……

「いや、嫁さんじゃないけど、女性を連れて帰省するわ」

『……お父さん!』

少しの沈黙の後、電話越しが騒がしくなる

やれ、あの子が女の人を連れてくるだの、何か弱みでも握ってるんじゃないか? だの

「なぁ……声がでかいから筒抜けだぞ?」

こんなみっともない親子の会話を聞かされている木場さんは暇だろうなぁ

そう思って見てみると、なんだか嬉しそうだった

あちらでぎゃーぎゃーと騒いでいるので、こっそりと通話を切る

「どうやら、良い返事が聞けたみたいだね」

髪をかき上げて木場さんが言う

どうしてこういちいち格好いいのですか貴女は

「貴女も物好きですね……」

これは皮肉のつもりだったのだが

「なに、世の中こんな女ばかりだよ」

冷静に返されてしまった

来る1月1日、新しい年の始まり、ハッピーニューイヤーって感じだ

ああ、久しぶりの正月休み……これを堪能したいのだが、気持ちはそれどころではない

「すまない、待たせてしまったかな」

「おお……」

黒を基調とした、これは振袖か

綺麗な柄が目を引くが、長身の木場さんが着るとどこかまとまって見える

しばらく見とれてしまっていたが、木場さんの声で我に返った

すみません、眠いので寝ます
明日は用事があるので、夕方から夜に再開できたらと思っています

「その、なんだ……そんなに見つめられると少し恥ずかいな」

「すみません、とても似合っていたので」

そっぽを向いた木場さんにそう言うと、何故だが強めのツッコミをいれられた

割と痛いけれど、顔に出ないように我慢する

「じゃあ、そろそろ向かうとしますか」

「うん、よろしく頼むよ」

車で一時間もかからないが、ちょっとしたドライブの始まりだ

「そろそろ着きますよ」

風景がビルより木々の緑が増えたころ、俺の実家が近づいていることを教えてくれる

「わかったよ」

ふぅ、と深呼吸を1つして、木場さんの表情が変わる

「ああ、それと1つお願いがあるのだが」

「何ですか?」

「私のことは真奈美さんと呼んでくれないか」

少し驚いたけれど、了承することにした

家が近づくにつれ、懐かしい風景が見えてくる

「田舎ですけど、良い所ですよ」

田んぼと緑が続く懐かしい道

それほど田舎ではないけれど、やはり不便ではある

「ふふ、君が育った所ならきっと良い所なのだろうね」

ほほ笑む真奈美さんに、少しどきりとした

「到着っと」

家の庭に適当に車を駐める

「さて、いよいよだね」

「到着っと」

家の庭に適当に車を駐める

「さて、いよいよだね」

目線がまるでライブ前みたいにキリッとしている

「そう気負わないでください、うちの両親はきついほうではないですから」

ギラギラとカッコいい視線をふりまく真奈美さんを制する

「すまない、君のご両親に会うと思うと緊張してしまってね」

ははは、と笑う真奈美さんは困ったような緊張したような面持ちだった

車を降りて、トランクから荷物を出していると騒がしい声が聞こえてきた

「お兄、おかえり」

「おじさん? おかえりなさい」

帰省してきた妹とその息子が迎えてくれた

久しぶりにみた甥っ子は身長がとても伸びていた

「久しぶりだな、元気にしてたか?」

甥っ子の頭を撫でながら訪ねると、2人とも笑顔で返事を返してきた

「ふぅん、その人がお兄の良い人?」

ぶふっと真奈美さんが噴出した

「こほんっ、木場真奈美と申します。初めまして」

ゆっくりと丁寧に頭を下げる真奈美さんに、妹がぎょっとした

「ねぇねぇ、あの人アイドルの木場真奈美さんでしょ?」

こそこそと小さな声で妹が聞いて来た

「そうだ、今日はうちでゆっくり過ごしてもらう予定だ」

きゃーきゃーとうるさい妹と、俺にしがみついて離れない甥っ子をなだめながら荷物を降ろした

「ただいまー」

家の中に入ると、ぱたぱたとスリッパの音が聞こえてきた

「あら、おかえりなさい」

母親がにやにやしながら続ける

「この子の母です、初めまして」

「ご丁寧にどうも、木場真奈美と申します」

2人そろって深々とお辞儀をしている

こういう時、当の本人はむず痒く、そして何もできないのだ……

「綺麗な人ね、この子にはもったいないくらい」

にこにこしながらも、真奈美さんを見る目は鋭い

「いいえ、いつも助けれらているばかりで……とても頼りになる人です」

かーちゃんの言葉を受け流すように真奈美さんが笑顔で答える

「そうですか……今日はゆっくりしていってくださいね」

「お世話になります。あ、お手伝いはしますので、何でも仰ってくださいね」

2人の攻防が終わったと思った時、かーちゃんがちょいちょいと手招きしてきた

「あの人は逃がしちゃ駄目だよ?」

……あー、考えておきます

俺と俺にしがみつく甥っ子、妹、かーちゃん、そしてかーちゃん

まるでRPGのパーティーみたいに編隊を組んで居間へと向かう

そして、そこにはラスボス……ではなく、親父が待ち受けていた

「……久しぶりだな」

ハスキーな声と共に、俺に鋭い眼光を向ける親父

「ただいま、元気そうだね」

俺と違ってガタイがいいけど、この人の本質はこうではない



「……ところで、後ろの女性はどなたかな?」

真奈美さんを見つけると、親父の声が少し変わる

「遅くなってしまい申し訳ありません、木場真奈美と申します」

真奈美さんが深々と頭を下げる

「……え? あのアイドルの木場真奈美さん?」

かーちゃんと同じように、ちょいちょいと手招きをされる

「悪いんだけど、後でサインもらえるか話しておいてくんない?」

おいおい、この年でミーハーなのかよアンタ……

かーちゃんが2人いる

俺と俺にしがみつく甥っ子、妹、かーちゃん、そして真奈美さん

まるでRPGのパーティーみたいに編隊を組んで居間へと向かう

そして、そこにはラスボス……ではなく、親父が待ち受けていた

「……久しぶりだな」

ハスキーな声と共に、俺に鋭い眼光を向ける親父

「ただいま、元気そうだね」

俺と違ってガタイがいいけど、この人の本質はこうではない

「私はおせちの準備してくるから、真奈美さんはゆっくりしてて?」

「いえ、お手伝いくらいさせてください」

あら、悪いわね。なんて満更でもない反応をして、かーちゃんと真奈美さんが台所へと消えていく、ついでに妹も

そして取り残された男連中、甥っ子も含む

「……とりあえず飲む?」

一升瓶を見せる親父に頷き、久しぶりに親子で酒を酌み交わすことにした

「いやぁ、父さんドキドキしたわー」

酒を注ぎながら、親父が興奮した面持ちで言う

やめてくれ、そんないかつい面でドキドキとか言うの

「俺の担当アイドルなんだよ、美人さんだろ?」

「チョー美人だな」

ぶんぶんと頭を振る親父に少しだけ引いた……

一升瓶が半分ほど空いたころ

台所から、女性陣が帰ってきた

「おまたせ、ってもう始めてるのね……」

かーちゃんが親父に鋭い視線を送っているが俺には関係ないよね、うん

「おお、美味そうだな! ほら、母さんたちも席について」

親父が慌てて女性陣を席につかせた。そして

「えー、今年もよろしくお願いいたします。それと真奈美さん」

「は、はい」

急に名前を呼ばれて、びくりとする真奈美さん

「早く孫の顔を見せ……」

言い切る前にかーちゃんが親父の頭をはたいた

「おほほほ、それは追々ですよね?」

「ええと、はい……」

満更でもなさそうな反応をしないでください、そんなギャップを見せられると俺が大変です

「こほん……では、乾杯」

親父の音頭でそれぞれのグラスを、こちりと当てる

「○○君、改めて今年もよろしく」

「ええ、こちらこそ」

まさか実家で担当アイドルとお正月を過ごすなんて夢にも思わなかった

けれど、胸が弾んでいる自分がいるのも事実だった

―――

――

どれだけ時間が経ったのだろう、そこら中に酒の瓶が転がっている

「わはは、真奈美さんはいける口ですねぇ!」

楽しそうに親父が柱に話しかけている

「お父さんったら、あとでおしおきかしら」

顔色1つ変えず変えない母親に、真奈美さんがお酌をしている

「楽しいご家族がいて、私まで楽しい気分です」

ううん、こんな時に本当に強いのはきっと女性なのだろう

「うー……飲みすぎたかも」

久しぶりの雰囲気に油断してしまったのかもしれない

吐くまではいかないが、視界がゆらりとゆれている

少し外の風に当たろうかと思い、玄関で靴を履いていると、真奈美さんが追いかけてきた

「私も一緒にいいかな?」

「あー……どうぞ」

ぽんこつになってしまった思考回路で、適当な返事を返す

「良い風だ」

「ええ、本当に」

雲1つ無い夜空には月と星が煌めいている

酒で温まった体に夜風が心地よい

「なぁ、○○君」

「なんです?」

真奈美さんのほうへ振り向くと、不意打ちで胸の中へ真奈美さんが体を預けてきた

「どうやら酔ってしまったみたいだ、少しだけ君に寄りかからせてくれ」

良い匂いと真奈美さんの体温にびっくりしてしまったが

「俺でよければいつまでも」

「ふふっ、君はやはり頼りになるな」

顔は見えないけれど、楽しそうな真奈美さんの声

「いやいや、俺も酔ってるんで……お互いで支えあうってのはどうです?」


俺の声を聞いた真奈美さんが、ばっと離れた

「どうしたんです?」

良く見ると、真奈美さんは顔を真っ赤にして、口をぱくぱくとさせている

俺、何か変なこと言ったっけ? ……思い返してみても見当がつかない

「君と私が支えあう……それはそういう意味でいいのかな」

俯き、上目遣いでこちらに視線をやる真奈美さん

「カワイイ……じゃなくて、支えあう……あっ!?」

俺も気付いてしまったのだ、支えあうという意味を

「ち、違うんです! 俺は別にそう意味で……」

「……そうか」

じわりと涙をにじませる真奈美さん

「そう、だよな……こんな女は君にふさわしくない」

くるりと方向を変えて、玄関へと向かう真奈美さんを

「あーもう! めんどくせぇ」

後ろから抱きしめた

「なっ……は、放してくれ!」

俺の腕の中でじたばたと暴れる真奈美さんを、力いっぱい抱きしめる

「うるせぇよ、黙って聞け」

もう酔っぱらっているので自制が全く効かない

「……」

逃れるのを諦めたのか、真奈美さんが大人しくなった

まぁ、いい。こうなったら勢いに任せていってやろうじゃないか

「好きでもない女をわざわざ実家まで呼ぶか?」

俺はそんな面倒なことはしない

「好きでもない女をこんな風に抱きしめるのか?」

担当アイドルだけど、そんなの関係ねぇ! とは声を大にしては言えないけれど……

「好きでもない女を……えーと、やべ、思いつかない」

あー、カッコ悪ぃな……気の利いたセリフも言えやしない

「ふふっ」

けれど、気の利いたセリフは言えないけれど

「君の気持ちは伝わったよ」

好きな女を笑顔にできるなら、それで良い

「ありがとう」

真奈美さんの腕が俺の背中にまわってくる

「君にこんなに想われているなんて知らなかった……」

「あー……言葉が足りなくて申し訳ないっす」

今度あいさんにでもカッコいい言葉を聞いてみるかな

「いいや、君らしい言葉で私は嬉しかったよ」

真奈美さんの抱きしめる力が強くなる

「本当にありがとう……」

「うす……」

ああ、こういう雰囲気に慣れていないからどうしたらいいかわからない!

ちゅーか? ちゅーしたらいいのか! そんなんでいいのか!?

「ま、真奈美さん……」

俺の言葉で察したのか、真奈美さんが顔をあげ、ゆっくりと瞳を閉じた

「ん……」

ここで男を見せずしてどうする! よし、覚悟を決めろ俺

ああ、真奈美さんのまつげって長いんだな

どんどんと近づいていく真奈美さんの顔

そして、しっとりと濡れた唇に俺の唇が重な……



「くしゅんっ!」



突然のくしゃみに2人とも驚いて距離をとる

音がした方へ振り向くと、かーちゃんと親父が申し訳なさそうな顔をしていた

「なにしてんの?」

じとりとした冷たい視線を、両親に向ける

「えーと……いやぁ、なぁ母さん」

「おほほ、後は若い2人に任せましょう、お父さん」

ねー♪ と、2人ともスキップで居間へと消えていった

「すみません、あんな親で……」

「ふふっ、楽しいご両親じゃないか」

それに、と真奈美さんが続ける

「まだまだ夜は長いんだ、2人の時間も……ね?」

綺麗にウィンクをして、俺の腕を引っ張る真奈美さん

大丈夫かな俺……我慢できる自信ないや




おしまい

読んでくれた方に感謝を
そして、お題ありがとうございました
遅くなってしまってすみません……

次のお題の前に、少し休憩をもらいます

それでは再開したいと思います
次のお題は>>84です

柚ちゃんとPさんをくっ付けよう大作戦。あるいはさよならあずきの初恋

他事務所アイドル「何度も所属事務所から叩き潰したのにすぐ這い上がってきて怖い」ほたる「えっと……」

ネネさんの妹と加蓮が同じ病室で寝た仲(意味深)だったら

>>41

志希にゃんの薬でPにデレデレになった紗枝
それをこっそり撮影してた周子
後日、事務所に入るとみんなでその動画で観賞会してた

みくの将来相談

美優「ひと月遅れのクリスマスプレゼント」

142'sの、本人達にとってはおそらく平凡な一日

だった、で止めた方が良かったかな。まあいいや

それでは「ネネさんの妹と加蓮が同じ病室で寝た仲(意味深)だった 」でひとつ
短いかもしれまんせんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……

「はじめまして、栗原ネネです。よろしくお願いします」

黒髪がふわりと舞い、ネネが丁寧にお辞儀をする

新しいアイドルが増えると、やはり皆気になるようで

事務所の皆がきゃーきゃーと騒ぎながら、ネネを質問攻めにしていた

しかし、加蓮だけはその輪に加わることはせずに

「栗原……ネネ……」

俯きながら、ぼそりと呟いた加蓮の声には何か感情が籠っているようだが、俺にはそれを感じ取ることができなかった

「ネネ、そろそろレッスンの準備をしておこうか」

「はいっ、わかりました」

おっとりとした外見ではあるが、なかなかどうして、ネネの身体能力は高い

本人曰く、体には気を付けているとのことで、それがレッスンにも表れているようだ

「では、行ってきます」

「ああ、頑張ってきてな」

手を振り、ネネを見送ると、すれ違いに加蓮が事務所へと入ってきた

「ねぇ、あのネネって子」

「うん? どうした」

いつも通りの加蓮のはずだが、少し違和感を覚えた

「プロデューサーさんから見て、どう?」

真剣な表情で加蓮が俺に問う

これだけ真剣な加蓮も珍しいな、良い意味でネネに刺激されたのだろうか

「そうだなぁ、強い意志を持っている子かな」



「強い意志?」

「ああ、なんでも妹さんの為にアイドルを目指したらしい」

病弱な妹さんを元気づけるためにアイドルを目指す

お涙頂戴みたいな話ではあるが、ネネはそれを明るく話していた

人は誰かの為に動く場合、それが身近であればあるほど強い動機になる

ましてや、可愛い妹のため、姉として妹のためにアイドルになったというネネの言葉は力強く感じた

「そっか、病弱な妹さんね……」

「おい……加蓮?」

それだけ聞くと、加蓮は事務所から静かに出て行った

それからというもの、加蓮はなにかしらネネの近くにいるようになった

ある時は偶然を装い、そしてある時はこっそりとネネを覗き込むように……

ネネもそれに薄々気付いているようだが、決して言葉にはしなかった

加蓮もこのことに対し、深くは話さなかったし、態度に示すこともしなかった

しかし、ある日のことだ。偶然にも同じレッスンが重なった日

ステップ中にもつれたネネが、加蓮に接触した時があった

「あ、すみません」

「……っ!」

頭を下げるネネに、体をふるふると振るわせる加蓮

一触即発かと思ったが、俺の考えは杞憂に終わった

そろそろ寝ます
再開は午後からできたらと考えています

遅レスだが
>>60 >>62
いずれ「かーちゃん」になる人だから別にいいパターンと、Pの母だから質量のある分身位出せそうパターンの2つ考えた

「やっぱり似てる……」

顔を赤くして、どこか蕩けたような表情の加蓮

そして、睨むというよりかは情熱的な視線を送っている

「あ、あの……」

状況がわからず、戸惑った表情のネネ

そして、なんて声をかけていいのかわからない俺

可愛い女の子が2人して見つめあう? この絵面

とても見栄えは良いのだが、このままではいけない

「加蓮、どうしたんだ?」

心なしかさっきより顔が赤く、吐息が荒くなっている

「えっ? あー……ごめん」

急にネネから顔を逸らしたかと思うと

「気分悪いから、ちょっと休憩してくる」

レッスンルームから出て行ってしまう

取り残された俺とネネは、顔を見合わせて首を傾げた

レッスンルームでの接触の件があってから、加蓮が少し変わった

変わったというのはネネに対する行動なのだが

何かこう……今までと違って、距離感が近くなった

やれ、一緒に着替えをしたり、一緒にレッスンを受けるようになった

自分から話かけることも増えて、ネネは嬉しそうな半面、不思議そうな顔を見せるときもある

どういった経緯なのかはわからないが、仲が良いのは良いことだ

このまま何事もなく、切磋琢磨してくれれば良いと思っていた

「ああ、1週間くらい休みたいなぁ」

そんで、温泉行って美味いもん食べるんだ

「ちひろさん、一緒に温泉行きません?」

「行きたいんですけど、当分は無理ですねぇ」

あははと笑い、軽くあしらわれた

「ですよねー」

あー、寂しいと人肌恋しいわ……

あーやる気でない……

気分転換しようと事務所を出てぶらぶらしていたのだが

「何で私を避けるの?」

「いえ、別にそんなことは……」

何だか修羅場を感じさせるセリフが聞こえてきた

「そんなこと言って、今も避けようとしてるじゃん」

「えっと、その……」

あれ? よく聞いたら加蓮とネネの声じゃないか

何してんだあいつら、こんな廊下で

少し速足で、廊下の角を曲がると

「嘘じゃないなら私の目を見て言ってみてよ」

「うぅ……」

加蓮に迫られているネネの姿があった

どことなく甘い香りが漂っているのは気のせいだろうか

「おい2人とも、こんな所でなにしてんだ」

少し強い口調で言うと、こちらをキッと睨みながら加蓮が反論してきた

「プロデューサーさんは黙ってて」

おお、こわ……

出会ったころのような、尖った視線だ

「こんな状況を黙って見過ごせないだろう」

こんなところで何か起こしたら、俺もお前も大変なことになる

「はぁ……別に手を上げたりはしないよ、ね?」

加蓮がネネにそう言うと、ネネがこくりと頷いた

この前も思ったが、俺は何か勘違いしているのだろうか

何かちぐはぐなような、そんな違和感

「2人とも事務所で話を聞こう」

これは良く話を聞く必要がある、そう判断したのだが

「えー……これは2人の問題だし」

「そうかもしれません……」

2人とも頬を赤く染めた

……うん、やっぱり話は聞かせてもらうから

2人から話を聞き始めてから数分

「……」

俺は何も言えなくなった

というか、何て言えばいいのだ

だってさ、加蓮がネネに迫ってたのはまさに文字通りで

加蓮がネネを良い人、じゃなくて好い人にしたいと言うことらしかった

男と付き合っちゃ駄目だから女の子とってこと?

非生産的すぎるだろ……そんなんなら俺と……失礼

「その、加蓮は本気なのか」

「うん、本気だよ」

加蓮の瞳と言葉には強い意志が宿っている

一緒にテッペンとると約束した時と同じくらいに

「わかった、ネネもそれで良いのか?」

「は、はい……」

拒絶の意思は感じられない、どうやらこれは合意ということで良いだろう

「そうか、わかった」

百合系アイドルとか担当したことねーよ、どうすんだよ

俺の前でイチャイチャしだしたら、俺のストレスがやべーよ」

頭の中で考えがごちゃ混ぜになり、正常な思考ができないなか

加蓮が爆弾とも言える発言をした

「ネネと妹さんと3人で……楽しみだな♪」

「えっ?」

「えっ?」

俺とネネがハトが豆鉄砲食らったような顔になる

「加蓮、どういうことだ?」

はっとした加蓮だが、もう遅い

「やば……き、気のせいじゃない」

ひゅーひゅーと、下手くそな口笛

加蓮曰く、ネネの妹さんとは同じ病室で寝た仲(意味深)らしく

そして、姉であるネネを見てそれを思い出していてもたってもいられなくなったと……

たつもんなんてないのに不思議だなぁ……

それから、ようやく口を割った加蓮はと言うと

「ひっ……」

今はハイライトを消したネネに擦り寄られ、悲鳴を上げている

これ、どうしようか? めんどくせーから放置でいいかな

「プロデューサーさん? 私を置いて、いっちゃうの?」

うるうると瞳を潤ませて、上目遣いでこちらを伺う加蓮

「うん」

ネネが怖いから、もう行きます

「加蓮さん、私がいますからね? 妹じゃなくて私が……」

強く生きろよ、加蓮……

「ま、まって! 怖いから、ね? やさしく……」

そっと事務所の扉を後ろ手で締めた





おしまい

読んでくれた方に感謝を
そして、お題ありがとうございました
次のお題の前に休憩を頂きます

加蓮よ。初めから二股するつもりだったのか?
妹視点だと寝取られたのか浮気されたのか

お待たせしました、それでは再開します
お次のお題は>>118を頂戴します

>>89

>>82

他事務所アイドル「何度も所属事務所ごと叩き潰したのにすぐ這い上がってきて怖い」ほたる「えっと……」

それでは 他事務所アイドル「何度も所属事務所ごと叩き潰したのにすぐ這い上がってきて怖い」ほたる「えっと……」 でひとつ
短いかもしれませんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……

アッキーVSみくにゃん

「よくやった」

「ふん、当然でしょ」

あんな無名アイドルばかりのオーディションは通らいないほうがおかしい

「流石だな、次も期待している」

そう言い残し、プロデューサーが事務所から出て行った

じゃあ、あんたも良い仕事とってきなさいよ……

「白菊ほたるです、よろしくお願いします」

オーディション中に聞いた、1人のアイドルの自己紹介が耳に入る

白菊……ほたる……? 縁起が悪い名前ね

それに雰囲気もどこか暗くて、不気味

顔は不細工じゃないけど私ほどじゃない

何かわからないけど、どうにも引っかかる

後でプロデューサーにどこに所属してるか聞いておこう

「きゃあっ」

スタジオの廊下を曲がった時、誰かとぶつかった

「すみませんっ……って、あんた」

白菊ほたる、なんていう偶然なの

「すみません、すみません」

ぺこぺこと頭を下げる白菊ほたるに、少し虐めたい気持ちが出てきた

「あんた、そんなんでアイドルやっていけんの?」

明るさの微塵もないその顔で

きらきら輝くアイドルなんてできるの?

「えっと、その……」

目尻をさげ、困ったような顔で黙ってしまった

「もういいわ、じゃあね」

こいつ気に食わないわ、今度から潰しましょう

「ねぇ、プロデューサー」

「お前が呼び出すなんて珍しいじゃないか」

私もできればあんたなんて呼びたくないわ

「○○事務所ってところに少し圧力かけてほしいの」

「あそこか、少し睨みを利かせておこう」

「それじゃ、よろしくね」

話を終わりにして、事務所をあとにした

さて、これであの子を見る事もなくなるだろう

1ヶ月もしない間に、例の事務所が潰れたのを知った

ちょっと早すぎる気もするけど、まぁ良いわ

これで私も気分よくお仕事できるってものだし

「~♪」

「随分とご機嫌じゃないか」

……あんたに話しかけられなかったらもっとご機嫌だったのに

夢子よりは新幹みたいなのを想像すればいいのかな

「白菊ほたるです、よろしくお願いします」

……あの時と同じ自己紹介を聞くことになった

白菊ほたる、まだ私の気分を損なわせるの?

表情も暗いし、声も小っちゃいし、あの時と全然変わってないんじゃない

それに、あの困ったような表情が無性にムカつく

こうなったら、あいつの心が折れるまでやってやるわ

待機室で白菊ほたるにこちらから声をかけた

「まだアイドルやってたんだ」

「あ、はい……」

びくりと体を震わせて、うつむく白菊ほたる

「早く辞めちゃいなよ、そのほうがあんたのためだから」

そう、アンタなんて頑張っても無駄だから

「じゃあね、白菊さん」

ちっ、まただんまりなんて本当にムカつく



このオーディションも私が選ばれた

うん、やっぱり私のほうが皆より優れてる

私のほうがキラキラしてるんだ、そう、私のほうが

でも、頭にこびりついているあの困ったような顔が離れない

プロデューサーには手を打ってもらったし、私だってあいつには負けない

だけど、この嫌な予感はなんなの?

オーディションで白菊ほたるの顔を見る事はなかった

事務所も潰れたみたいだし

これで、とうとうあいつもおしまい

ようやく私の中にこびりついた困ったような顔も忘れられる

そう思って、喜んでいたのも束の間

私の悪い予感は当たってしまった

「白菊ほたるです、よろしくお願いします」

……なんで?

なんでこんなに立ち直れるの? なんで諦めないの?

なんでで笑顔になれるの? ねぇ、なんで?

白菊ほたるはいつもと違う笑顔を見せていて

静かに輝くお月さまのようだった

どれだけ叩き潰してきても、何度も諦めないその姿

正直に言うと、私はきっと怖かったんだろう

その姿勢と、もしかしたらいつかは……

ううん、弱気じゃ駄目! 前を向いていつも通り

今回も私が勝つの、勝ってまた叩きつぶさなきゃいけないの

そう、そうしないとまた白菊ほたるは現れる

ふらふらとした足取りで歩いていると、誰かとぶつかった

まるでいつかのデジャブだ

「きゃあっ」

「……白菊、ほたる」

なんなのこの偶然、アンラッキーとかじゃ済ませられない

「すみません……お怪我はありませんか?」

ちっ、またその表情なの

「ふんっ、私なんて気にしないで良いわ」

「いえ、そういうわけにも……」

近づいて来たので、距離をとる

「あっ……」

「良いって言ってるでしょ」

私もマジになっちゃって、余裕がないのがばれちゃう

「なんで諦めないの?」

ずっと思っていた疑問が、勝手に口からでた

「えっと……」

私の質問に、ゆっくりと白菊ほたるが答える

「諦めなかったらいつか実が結ぶと思うから」

そんなの綺麗ごとじゃないの……

「それに、皆を幸せにできたら凄いと思いませんか?」

私は不幸体質ですけど……とか聞こえたけど

「負けない気持ちで頑張って、少しでも前に進めばいいってプロデューサーさんが言ってました」

「私だってキラキラできるって、そう言ってくれたんです」


――貴女だってそうでしょう?


その一言にどきりとした

あれ? 今の私はキラキラしてるのかな?

白菊ほたるの初めてみる笑顔に、私はきっと困った表情をしているだろう

いつかとはまるで正反対だ

「あ、私そろそろ行かなくちゃ…」

失礼します、と足早で……あ、転んだ

どんどん小さくなっていく背中を見ていると、目の前が滲んできた

ああ、かっこわる……泣くつもりなかったのに

最近の私、キラキラしてなかったのかもしれない

それをあいつの言葉で気付かされるなんて、本当にかっこわる

今回だけは勝ちを譲ってあげる

だけど、もう私は負けない

今度こそ叩き潰してあげる……正々堂々と

さて、たまにはプロデューサーと意見交換でもしてみようかな

勝つためなら変なプライドは邪魔だもの

さぁ、白菊ほたる

今度は私がキラキラしているのを見せてあげるからね



おしまい

読んでくれたかたに感謝を
そしてお題ありがとうございました
今日はここまでとします
最後のお題はまた明日ということで……

お待たせしました、それでは再開します
次のお題を最後とさせてもらいます
お題は>>147です、とびっきりのお題をお願いします

モバマスとホラー映画呪怨のクロスオーバー

トレーナー四姉妹と付き合ってるのがアイドルにバレたP。

144

>>39

この思いをパンに乗せて

それでは「大人組による家庭の味選手権  審査員:Pと仁奈」でひとつ
短いかもしれませんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……

「プロデューサー! 今日の晩御飯は何ですか?」

着ぐるみを着た可愛らしい少女が男に話しかけた

「そうだな、今日は寒いからシチューにでもしようか」

プロデューサーと呼ばれた男が少女にほほ笑みかけると

「仁奈、シチュー大好きでごぜーます」

仁奈と呼ばれた少女が、ぴょこりと可愛く跳ねた

それをそっと物陰から覗いている、妙齢の女性が1人

まるで星飛雄馬の姉よろしく、どことなく悲哀を感じさせる

「ああ、できることなら私がお料理を作ってあげたい……」

よよよと目元をハンカチで抑えると、1つにまとめた栗色の髪がふわりと揺れた

「しかし、女性が作る家庭の味ってのも良いもんだよな」

プロデューサーがぼそりとこぼした一言で、この女性に電撃が走る

「かてーのあじ? でごぜーますか?」

少女が首をかしげ、不思議そうな顔で答える

「ああ、お母さんから教わるその家の味だよ」

「おかーさんのあじ……」

何か感じとるものがあるのだろう、少女が俯いてしまう

それに気づいたプロデューサーが、あたふたとしながら

「えっと……うちには料理できる大人組がたくさんいるから、お願いしてみるよ」

「わかったでごぜーます」

まだ暗い顔の少女の手を繋ぎ、プロデューサーと少女は事務所を後にした

事務所から出ていく2人を見ながら、栗色の髪の女性が呟く

「家庭の味……お母さんの味……お母さん? 仁奈ちゃんはお母さんを求めているのね」

どこがどうイコールで繋がってしまったのか、かなり歪曲した答えが出たようだ

「こうなったら早めに動かないといけませんね……」

女性はスマホを取り出すと、SNSのグループに文章を作り一斉送信をした

『仁奈ちゃんが一番気に入った料理を作った人がお母さんになれるそうです』


事務所から出ていく2人を見ながら、栗色の髪の女性が呟く

「家庭の味……お母さんの味……お母さん? 仁奈ちゃんはお母さんを求めているのね」

どこがどうイコールで繋がってしまったのか、かなり歪曲した答えが出たようだ

「こうなったら早めに動かないといけませんね……」

女性はスマホを取り出すと、SNSのグループに文章を作り一斉送信をした


『仁奈ちゃんが一番気に入った料理を作った人がお母さんになれるそうです』


「これでよし……私も作戦を考えないと」

ほほ笑み、小さくガッツポーズをした女性

どうやら、戦いの火種が見事に投下されたようだ

それから1週間ほど後のこと

「プロデューサーさん、お疲れ様です……今日は何か予定はありますか?」

話しかけているのはこの前の栗色の髪の女性

手帳をぺらりとめくり、プロデューサーが答える

「美優さんもお疲れ様です、今日は何の予定もないですね」

それを聞いた女性がにこりと笑う

「でしたら、仁奈ちゃんと一緒にご飯でもいかがですか?」

「ええ、構いませんよ」

火種が大きな炎となり、女の意地とプライドを賭けた戦いが始まろうとしていた

「美優おねーさんがご飯作ってくれるですか?」

少女が嬉しさを隠しきれずに、にこにことしている

「そうよ、でも……これ以上は秘密にしておこうかな」

可愛らしくウインクをした女性に、少女が食らいつく

「教えてほしいでごぜーます」

「あとのお楽しみ♪」

可愛らしい少女と、見目麗しい女性のやりとりに胸が和む

ここが天国か……

成人してるだけならかなりの人数がいるけれども

「プロデューサーさん、こちらです……」

「ここは女子寮ですか? 男子禁制だったはずですが」

プロデューサーと仁奈が連れてこられたのは、プロダクション専用の女子寮だった

「今日だけは特別です、許可も取ってあります」

美優の言葉には随分と力が込められていて、プロデューサーが後ずさりした

「えっと……仁奈ちゃんのためです、はい」

表情の切り替えの早さ、まさにプロである

「では2人とも、どうぞっ」

美優が勢いよくリビングへと続くドアを開く

「こ、これはっ!」

「うわー♪」

そこにはエプロンをつけた、適齢期……じゃなくて、おねーさんアイドル達が待ち受けていた

その貫禄はまるで家事を極めた主婦の様である

「美優さん……」

耳元で呟かれ、美優の顔が一瞬で赤くなる

「は、はひっ! な、なんですか?」

胸が高鳴るのを誤魔化すように、深呼吸をしている

「どういうことか説明してくれますか?」

いまだ状況が飲みこめないプロデューサーと、目を輝かせている仁奈

(そう、これは仁奈ちゃんのためなんだから……)

呼吸を整えた美優が声高らかに宣言する

「今から家庭の味選手権を行いますっ」

「あ、あの……説明になってないんですが」

「かてーのあじ!? おかーさんの味でごぜーますね♪」

プロデューサーの声が仁奈の声でかき消される

「そう、美優おかー……家庭の味ね」

最近、美優さんおかしいじゃないか? とプロデューサーは思ったが口にはしなかった

きっと、仁奈を元気づけようとしてくれているのだと思ったからだ

世の中には知らないほうが良いこともある、なんてよく言ったものだ

「じゃあ早速、一番の方からお願いします」

「ふふっ、私の出番みたいですね」

青と緑の瞳を持つ、長身のスレンダーな女性

ふわりとした髪型でミステリアスな微笑をたたえている

「楓さん? 忙しいでしょうに……」

「いいんですよ、仁奈ちゃんのためですから」

どこか含みがある笑みで、楓と呼ばれた女性が皿を運んできた

「さぁ、私の家庭の味をご賞味あれ♪」

シーザーサラダ、揚げ出し豆腐、そしてほっけ

色とりどりで栄養バランスも良さそうではあるが……

「いただきます」

「いただきますっ!」

2人の声が重なり、一緒にシーザーサラダから箸をつけた

「うん、シーザーサラダだね」

「シーザー……シーサー?」

レタスとベーコン、クルトンが乗ったサラダを綺麗に平らげた


きつね色に上がり、出汁が張られた中に鎮座する揚げ出し豆腐

「楓さん、これ居酒屋の……」

「わ、さくさくでごぜーます」

仁奈が豆腐に箸を入れると、さくりと切れる

「熱いから気を付けてね?」

楓の忠告に、元気よく返事をして、大きく切った揚げ出し豆腐を口の中へ入れた

「あふっ! あふあふ……中はふわふわでやがりますね」

外側と中の食感のギャップ、そして風味が良い出汁ときらりと光る薬味

仁奈の食べる様子を見ていたプロデューサーは、ごくりと喉を鳴らし、揚げ出し豆腐に食らいついた

最後に、綺麗に焼かれ、香ばしい匂いのほっけ

「これ、つまみですよね? 家庭の味じゃ……」

「わぁ、骨がきれーにはがれやがります♪」

骨離れの良いほっけは、ぺりぺりと繋がって骨を取ることができる

そしてなかから出てきたのはしっとりとした白い身

箸で大きくとって、湯気とともに仁奈が咀嚼する

「ごはん、ごはんをくだせー」

酒と合わせるのももちろん良いが、やはり日本人の基本は米だろう

「どうでした? 私の家庭の味」

2人の食器を片付けながら楓が問う

「俺、酒飲んでいいすかね」

「もっと食べて―です……」

これから何人分かを試食するため、一品の大きさはだいぶ控えられている

仁奈は不満げな顔をしているが、それを楓がなだめる

「ふふっ、私のが気に入ったならいつでも作ってあげる」

おそまつさまでした、と楓は2人の前から去っていく

出だしは好調、このまま続いてほしいところだ

「さて、次は私の番だな」

少しハスキーな声で、グラマラスなスタイル

大人の色気たっぷりの、これまた長身の女性

「真奈美さんまで?」

「ああ、面白そうだから参加させてもらったよ」

(美優さんはどうやってこの人たちを集めんたんだ……?)

「料理が冷める前にめしあがれ」

プロデューサーの考えがまとまらないうちに、湯気が上る皿が二つ運ばれてきた



じゅうじゅうと肉汁がやける音、子供が喜ぶメニュートップ3にははいるであろう

「ハンバーグだー!」

そう、ハンバーグである

きちんと空気抜きをして、丁寧に焼かれたそれは綺麗な形のままこんがりと焼かれている

そして付け合わせとして、ニンジンのグラッセとほうれんそうのバター炒め

「いただきます」

「あ、仁奈も頂きます」

仁奈より先に、プロデューサーが料理に手をつけた

ナイフを入れると、中から肉汁が溢れてくる

それが鉄板に触れると、より香ばしい匂いが嗅覚を刺激する

ソースはこげ茶色をしていて、今の段階ではどんなソースかはわからない

プロデューサーは一口サイズに切り取ったハンバーグを口にいれ、ゆっくりと噛みしめた

ナツメグのおかげで肉の臭みはまったくなく、つなぎはパン粉を牛乳でつけたものを使ったようだ

パサつきやすいハンバーグがしっとりと肉汁たっぷりに焼かれていて、噛むほどに肉の旨みを感じる

子供受けもいいし、男性受けもいい、まさに1度で2度美味しいメニューだ

ごめんなさい
今日はここまでとさせてもらいます
続きは明日の夕方から夜のあたりに書きますので……

「もう1つの皿は……コーンスープか」

深い皿によそられた黄色いスープ、アクセントに刻んだパセリが添えてある

プロデューサーがそれをゆっくりとスプーンで掬い、口に入れる

「甘くて、優しい味ですね」

コーンの自然な甘みとクリーミーな口当たり

こちらも丁寧につくってあるため、コーンの皮が口に当たったりはしない

「はぁ……甘くておいしーです♪」

仁奈も一口飲むと、満足そうな声を漏らした

「うちの家庭の味はどうだった? 気に入ってくれたなら嬉しいな」

仁奈を覗き込むように、真奈美が問う

「美味しかったでごぜーます!」

口の周りを汚し、年相応の笑顔で仁奈が答えた

「俺もいつの間にか平らげちゃいましたよ」

「なに、誉め言葉より嬉しいさ」

2人の空っぽの皿を見て、真奈美がほほ笑んだ

「お次はこの方です」

「とうとうナナの出番ですね☆」

ウサギ耳を頭に付けた小柄の女性

小柄ながら、出るところは出ている永遠の17歳

「仁奈ちゃんとプロデューサーさんに、ウサミン星の家庭の味をご馳走しちゃいます!」

ナナが意気込み、3皿の料理を運んできた

「この料理は何ですか?」

赤茶い色のどろりとした半固形の中にピーナッツがそのまま覗いている

「千葉名物のピーナッツ味噌です、そのままでもご飯のお共にも最適ですよ」

ナナが力説するが、どうも見た目がよろしくない

プロデューサーが半信半疑で一口食べ、目を閉じてゆっくりと咀嚼した

「……あ、これ美味いです。甘じょっぱくて不思議な味わいです」

甘いという単語を聞き、仁奈も箸をつける

「頂きます……ん、デザートみたいなおかずみたいな……不思議ですけどおいしーです」

子供ながらの正直な感想だが、悪い味ではないみたいだ

「次はご飯ものですよ」

差し出されたのは、海苔と卵で巻かれた太巻きである

「具がたくさん入ってるんですね」

かんぴょうやヤマゴボウ、桜でんぶにきゅうりと色とりどりで目を楽しませてくれる

「ふふん、それだけじゃありせんよ! よーく見てください」

ナナに言われ、2人がじいっと目を凝らすと、仁奈がはいっと勢いよく手を上げた

「綺麗な模様になってやがります! これはお花、これは鳥の模様でごぜーます」

お祝いの席などで出される定番の太巻き寿司、1つ1つの食べごたえも十分である

「最後は汁物ですよー」

灰色の団子が入っている澄まし汁、柚の皮が浮かび、爽やかな香りがしている

「これはつみれですか?」

「はい、仁奈ちゃんにわかりやすく言うと、お魚のハンバーグですね」

「おさかなのハンバーグ……」

つみれは大人でも好き嫌いが分かれるので、小さい仁奈はどうかと思うが

「食べてみるでごぜーます」

少し震える箸でつみれを小さく切ると、口のなかへ迷わず放り込んだ

もぐもぐと、きちんと30回ほど噛み、飲みこんだ

「何だか大人の味がしやがります……嫌いじゃいですけど、大きくなったらまた食べてーです」

意外や意外、少し眉をひそめたが、それ以降はゆっくりではあるが完食した

「これは良いですね、出汁も出ていて締めにぴったりな味です」

大人になると、こういう物が美味しく感じるようになる

それが子供時代のお別れなのか、それとも新しい門出なのかはわからないが……

「ごちそうさまでごぜーます! 菜々おねーさんは千葉から来てるんですか?」

仁奈の言葉に、ぎくりとしたナナが急いで言い訳……言い直した

「えっとぉ……ナナのお母さんは千葉の人で、お父さんはウサミン星の人なんです、なんて……」

かなり苦しい言い訳だが、仁奈は「すけーるが大きいお話でやがります」とうんうんと頷いていた

「ナナさん、ご馳走様でした。片付けお願いします」

プロデューサーが助け舟を出すと

「はいっ! ナナのお料理、また食べてくださいね♪」

ナナはとびっきりの笑顔を残していった

「最後は私の家庭の味を……」

そういうと美優が淡いピンク色のエプロンをつける

控えめなフリルがあしらわれ、上品なかわいらしさがある

「私はこの一品だけです」

大きなお椀に盛られているのは、汁物のようだ

一口大にきられた様々な野菜、にんじんにごぼうに大根とネギ、それに鶏肉

それに平べったいパスタのようなものが浮かんでいる

「重くないと思うので、どうぞ食べてみてください」

そろそろお腹いっぱいという2人を考慮しての、あえての一品勝負のようだ

「「いただきます」」

最後の一品という事で、2人同時に箸をつける

綺麗な出汁がとられた椀の中の、パスタのような物を咀嚼して

「ん……これはすいとんですか?」

記憶の中で、これに近い食感、味の物をプロデューサーが挙げる

「似たようなものなんですが……これは、ひっつみという食べ物なんです」

「ひっつみ、でごぜーますか?」

聞きなれない単語に、仁奈が首を傾げた

「はい、小麦粉を水で練った生地をこうやって……」

一口大にちぎり、伸ばしてから鍋の中に入れる美優

「仁奈ちゃんもやってみる?」

「はい! やってみます」

美優から手ほどきを受けて、仁奈が楽しそうにひっつみを鍋の中に入れていく

「楽しいでごぜーます♪」

「ふふ、よかったわ」

顔を見合わせて笑う2人は、まるで母と子のようだった

「具だくさんですが、これならするすると入っていきますね」

「仁奈が作ったのもあるから、おかわりするでごぜーます♪」

出汁をしっかり取っているので、味付けは薄目でもしっかりと味わうことができる

それに、自分が手伝った料理なら尚更美味しく頂けるものだ

数分と経たないうちに2人とも食べ終えてしまった

「「ごちそうさまでした」」

食べ終わる時も2人の声が重なり、満足そうな顔を浮かべている

「残さず食べてもらえて、嬉しいです……」

見事な食べっぷりに美優も自然と顔が綻ぶ

しかし、それも束の間、きりっとした表情を作り

「仁奈ちゃんに、誰がお母さんと感じる料理を作ったか発表してもらいたいと思います」

美優の言葉に仁奈が戸惑った表情を見せる

「美優さん? 仁奈が困っているじゃないですか」

「これは皆さんが望んでいることなの。だから、仁奈ちゃんお願い」

「えっと、仁奈は……仁奈がおかーさんと思える人は……」

大人組の熱い視線を受けながら、仁奈がゆっくりと口を開いた

――家庭の味選手権から少し時間が経過した

「美優おかーさん、これはどうするですか?」

「あっちに運んでおいてね」

仁奈におかーさんと呼ばれ、美優が嬉しそうにほほ笑む

「楓おかーさん、お鍋に手が届かねーです……」

「台所にあるこの台を使ってね、ふふっ」

そして、楓も嬉しそうに仁奈の頭を撫でる

「真奈美おかーさん、これ重てーです!」

「どれ、2人で持っていこうか」

少しだけ真奈美が多く持っているが、その顔はどこか楽しそうだ

「菜々おかーさんは……休憩中ですか?」

「うう……情けないおかーさんを許してください」

仁奈に腰を叩かれている菜々が照れくさそうに笑った

話はまた家庭の味選手権の時に遡る

「仁奈は……たくさんのおかーさんから1人だけなんて選べねーです」

弱々しい仁奈の頬から、一粒の涙が零れた

「おかーさんたちの料理を毎日食べて―です、だから……だからっ」

声にならない叫びをあげる仁奈を、大人組が優しく抱きしめた

「お願いです、仁奈のおかーさんになってくだせー」

小さな少女の願いに、母の顔になった女性たちがほほ笑みながら頷いた



おしまい

これにて、【モバマスSS】お題は星の数だけ 12夜目をお開きとさせて頂きます
今回はなんだが集中して書くことができず、お待たせしてしまってすみませんでした……

では、改めて読んでくれた方に心からの感謝を
そして、たくさんのお題ありがとうございました
また読んで頂く機会があればよろしくお願いします

おっつおっつ
まあ最初の話題であんな事があったから仕方ないね。次から安価下したらどうだろう

>>189 すみません、安価下すってどういう意味です? 

天然かよぉ!

安価下(くだ)したら、じゃなくて
安価下(あんかした)したら、だよ
指定された安価がどうこねくり回しても形にできない場合などに指定された安価の次の安価(つまり下の安価)を拾うこと

そう、荒らしだと分かりきった安価なら無かったことにして下にずらしても本人しか文句言わんよ

なんか問題のある安価あったか?

なるほど、理解しました
皆さんが仰るのもごもっともだと思いますし、気を使って頂いて素直に嬉しいです
ですが、お題シリーズに関しては頂いた安価を書ききりたいと思っています
わがままとは思いますが、またお付き合いください

おっつおっつ

>>193
安価自体は問題なかったよ
安価取った人が雑談スレを荒らしてた人と同一人物で、それについて他の奴が>>1(雑談スレにいた)にNDKしただけ

(あれが原因ってとこは否定しないのね)

(単純に集中できませんでした、言い訳に聞こえてしまうかもしれませんが)

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