【モバマスSS】 お題は星の数だけ 12夜目 (197)

こんばんは、今年もお題は星の数だけをどうぞよろしくお願いいたします
今年もたくさんのお題を書きたいと思っています
では、新年一発目のお題は>>3のお題を頂戴します


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1484391701

早耶「今日はPさんと晩御飯」

それでは 早耶「今日はPさんと晩御飯」 でひとつ
短いかもしれまんせんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……

「早耶もご飯くらい作れますよぉ」

プロデューサーさんに煽られて、ついつい口走ってしまった言葉

だって、他の女の子のことばかり褒められたら、こう、なんと言うか……

「へぇ、じゃあ今度ご馳走してもらおうかな」

にやにやと意地の悪い笑みのプロデューサーさん

「わ、わかりましたぁ……じゃあ、明日にでも」

「おう、楽しみにしてるよ」

これは女として負けられない戦いになるような気がします

「お疲れ様でしたぁ」

「急ぎの仕事もないし、寮まで送るぞ?」

せっかくの申し出だけど、やらなきゃいけないことがあるんです

「大丈夫ですよぉ、それじゃあまた明日」

ちひろさんにも挨拶をして、事務所を出たらスマホを取り出して

数回のコールの後に、懐かしいお母さんの声

「もしもし、聞きたいことがあるんだけど」

料理の大先輩、お母さんに男の人を満足させるメニューを聞きださなくちゃ!

「ありがとう、うん、それじゃ」

好きな人でもできたの? なんて言われた時はどきりとしました

けれど、プロデューサーさんを好きになっちゃって……とは流石に言えなくて誤魔化しましたけど

それは置いておいて、色々と聞き出すことが出来ましたぁ

ふむふむ、男の人は肉じゃがと卵焼きが好きみたいですねぇ

さっそくスーパーで食材を調達するとしましょう

えーと、豚肉にジャガイモにニンジンに玉ねぎ、それと白滝

後は卵を買って……うん、少し多めに買っておきましょう

やっぱり練習は大切ですし、それで材料が足りなくなると困りますし……

余ったら他の料理に使えばいいんです! け、経済的な判断だと思いますぅ

お会計の金額にちょっと驚きましたけど、割り切ります

これで準備が整いました、さぁ後は作るだけです!

「……」

ええと、早耶はご飯を炊いて、肉じゃがと卵焼きを作っていたはずなんですが……

ごくりと唾を飲む早耶の前の広がるのは、まさに未知の領域

真っ黒に染まった肉じゃがと、焦げに焦げた卵焼き

ご飯は上手く炊けたような気がしないでもないですけど……

ちょっと味見してみましょうか

「頂きます」

まずは肉じゃがを一口頂いてみます

恐る恐る箸でじゃがいもを掴み、口の中へ

2回3回と租借をしてみます

もぐもぐ……

ああ、ものすごい醤油の風味ですねぇ

というか、醤油の味しかしません

お肉、玉ねぎ、にんじん、白滝、どれも醤油の味です

醤油漬け? これはもう肉じゃがとよべるものではないみたいですぅ

次は卵焼きです

卵と言えば黄色ですが、この子は真っ黒くろすけです

一縷の希望を胸に箸で一口に切って、口の中へ

きっと、見た目と味は比例しないはずですぅ

もぐもぐ……

「あまっ……」

先ほどの醤油味から真逆の甘さ

スイーツもかくやという甘さに味覚が痺れます

あれ? 早耶は肉じゃがと卵焼きを……

あまりの味の差に、脳が上手く動きません

大丈夫、きっと……きっとご飯なら

見た目だけなら綺麗に炊けている白いご飯を頬張ります

もぐもぐ……

うん、おかゆですね

弱った胃腸に染み渡るような、そんなおかゆを作ることができました

これはこれで美味しいですが、おかずと全然マッチしません

最後の希望のご飯まで……

お母さんの言うとおりに作ったつもりなのに、おかしいですねぇ

いえ、でも失敗は成功の母とも言いますし、回数をこなせばきっと美味しくできるはずです

失敗を次に生かす、良い言葉じゃないですか、早耶は次こそ美味しく作ることができますぅ

反省点を生かして、次のステップへ

何がいけなかったのか、そして、良かったところは伸ばす

まるでレッスンみたいで楽しいですけど、とてもプレッシャーがあります

美味しくない料理をプロデューサーさんに食べてほしくない

早耶が料理できないことを知られたくない

頭の中に浮かんでは消えるプロデューサーさんは、にやにやと笑っていますが気にしません

女は度胸です、ここで引くわけには行かないですぅ

「で、できた……」

何回目か忘れてしまうほど、繰り返して

ようやく納得できるものが出来た時には日付が変わっていました

手は切り傷でぼろぼろで満身創痍です

これで駄目だったら明日はもう……

そんな気持ちを胸に最後の試食をしてみます

もぐもぐ……

うん、お母さんの肉じゃがの味がします

続いて卵焼き

もぐもぐ……

程よく甘くて、焼き加減も良いですね

最後のご飯です

もぐもぐ……

硬めに炊かれた白いご飯がおかずにぴったりですぅ

これならプロデューサーさんもきっと喜んでくれるはず

レッスンの疲れと、料理の疲れとでくたくたになってしまって

後片付けもろくにできないまま次の日の朝を迎えていました

スマホのアラームが鳴った後に急いで着替えて事務所へ向かいます

「ふふ、早耶の料理に美味しいって言って見せますよぉ」

笑顔のつもりでしたけど、プロデューサーさんに怖いと言われてショックを受けました……

「ひ、酷いですぅ」

「冗談だって……すまん、調子に乗った、この通りだ」

抗議する早耶に大人しく頭を下げるプロデューサーさん

何かいつもと違う感じです

「わっ、早耶は別に気にしてないですから……」

なんでしょうこれ、どことなく気まずい雰囲気が漂います

「早耶の料理を食べてくれれば気にしませんよぉ?」

こんなこと言わなくてもこの人は約束を違えないのに

弱気になってしまった早耶は、きっと弱々しく笑ったと思います

プロデューサーさんは少し驚いたあと、こくりと頷きました

「じゃあ、お仕事が終わったら早耶のお部屋まで来てくださいねぇ」

鼓動が早くなるのを誤魔化すように、早口で言って事務所を後にします

事務所のドアを後ろ手に閉めて、廊下に出てから深呼吸

「ふふ、あとはプロデューサーさんに食べてもらうだけ……」

自然とふにゃけてしまう顔を誤魔化しながら、お仕事の現場へと向かいます

集中しないといけないのに、これからの時間で頭がいっぱいだったのは秘密ですぅ

お仕事とは違う事を考えているのに、なぜか順調で

いつも以上の早耶を見せられたような気がします

原動力はきっとプロデューサーさんなんでしょうけど

でも、この気持ちは全然悪くないです、むしろ心地よさを感じるくらい

早耶の手料理を食べたプロデューサーさんはどんな顔を見せてくれるんでしょう?

美味しいって言ってくれるかな? ありがとうって言ってくれるかな?

駄目、これ以上考えちゃうとにやけちゃう

「早耶? 大丈夫か?」

プロデューサーさんの言葉で、はっと我に返る

「どうしたんだ、ぼーっとして」

「い、いえ」

何だか今日は時間が経つのが早いです

さっきお仕事が終わったと思ったら、もうこんな時間

「ねぇプロデューサーさん? 早耶との約束覚えてますかぁ?」

「ああ、もちろんだよ」

そうですよね、やっぱり貴方は早耶のプロデューサーさんです

「もう寮の近くだけど、寄りたい所とか無かったか?」

優しく聞いてくるプロデューサーさんに首を横に振ります

「はい、準備万端ですぅ」

強い視線を送ると、プロデューサーさんはそれは平然を受け止めて

「そりゃ期待しちゃうな」

わざと、おどけたような表情を見せました

「早耶のお部屋へようこそぉ」

精一杯の笑顔を作ってみましたけど、緊張は全く解けません

むしろ、この2人きりの状況に加速しているみたい

「へぇ、綺麗にしてるんだな」

お邪魔します、と入ってきたプロデューサーさんの第一声がそれでした

「もう……片付けくらいしてますよぉ」

「じゃあ準備してきますから、ちょっと待っててくださいねぇ」

「ああ、色々とごめんな」

短いやりとりの間に、早耶の頭はフル回転しています

肉じゃがをあっためつつ、卵焼きを焼いて

ご飯はタイマーでそろそろ炊き上がるはず

ついでにお味噌汁も作ってと……具はなめことお豆腐にしてみました

「お待たせしましたぁ」

いざ食べてもらうとなると、これで良いのかな? といった気持ちが湧いてきます

もっと上手く作れたら、それこそまゆちゃんや響子ちゃんみたいに作れたら

そんな早耶の不安を、プロデューサーさんはたった一言で吹き飛ばしちゃいます

「おー、美味そうだな」

今まで見たことない笑顔でそんなことを言われてしまうと、こちらはもう何も言えません

ただ、美味しいって言ってもらいたい……その1つだけです

「それじゃ、いただきます」

手を合わせて、いただきますをするプロデューサーさん

お味噌汁に手を伸ばして、ゆっくりと啜っています

どくんどくんと心臓が痛いくらいに早まっていて、頭が真っ白になってしまいそう

手料理を人に食べてもらうのがこんなに緊張するなんて……

「……うん」

プロデューサーさんの一言は短いですが、その顔は笑顔でした

今度は肉じゃがに箸を伸ばすプロデューサーさん

お肉とほろほろに煮えたジャガイモを一緒に口に入れてもぐもぐしています

「なんだか懐かしい味がするな」

ほっとしたのも束の間、ほかほかと湯気を上げるご飯をぐわっと掻き込みました

今回はお水の加減も丁度いいはずです……

「……」

箸が止まってないってことは美味しいってことですよね?

そして、とうとう最後の卵焼きに箸を伸ばして

もぐもぐと租借した後に、ぴたりと動きが止まって……

もしかして甘すぎたのかな? 卵の殻が入ってたのかな?

そんな不安がよぎりますが、どうやらそれは杞憂だったみたいです

物凄い勢いでご飯とおかずを平らげていくプロデューサーさん

見ているこっちが気持ちよくなる食べっぷりです

全てのものが空っぽになるのに数分とかかりませんでした

「ふぅ、ご馳走様」

お茶碗にはご飯粒が1つも残っていません

「お粗末さまでした」

どうしよう、嬉しくて泣いちゃいそう

じわりと視界がぼやけてきます


「後片付けしてきますねぇ」

プロデューサーさんにバレないように顔を隠して片づけをしようとしますが

「いや、食器は俺が洗うから」

「後片付けしてきますねぇ」

プロデューサーさんにバレないように顔を隠して片づけをしようとしますが

「いや、食器は俺が洗うから」

早耶より先に動いたプロデューサーさんにぱっちりと顔を見られてしまいました

「あの、これは……その」

泣き顔を見られて軽くテンパってしまいましたが

「早耶が作ってくれたご飯美味かったよ」

ゆっくりとプロデューサーさんが言葉を続けます

「早耶が嫌じゃなかったら、また……作ってほしい」

「はい、早耶のでよかったらいくらでも」

ぶっきらぼうに言い放つプロデューサーさんの言葉はどこか暖かくて

涙で顔をぐしゃぐしゃにして、早耶は笑って答えました



おしまい

読んでくれた方に感謝を
そして、お題ありがとうございました
少し休憩をもらいますね

それでは再開したいと思います
次のお題は>>84です

ネネさんの妹と加蓮が同じ病室で寝た仲(意味深)だったら

それでは「ネネさんの妹と加蓮が同じ病室で寝た仲(意味深)だった 」でひとつ
短いかもしれまんせんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……

「はじめまして、栗原ネネです。よろしくお願いします」

黒髪がふわりと舞い、ネネが丁寧にお辞儀をする

新しいアイドルが増えると、やはり皆気になるようで

事務所の皆がきゃーきゃーと騒ぎながら、ネネを質問攻めにしていた

しかし、加蓮だけはその輪に加わることはせずに

「栗原……ネネ……」

俯きながら、ぼそりと呟いた加蓮の声には何か感情が籠っているようだが、俺にはそれを感じ取ることができなかった

「ネネ、そろそろレッスンの準備をしておこうか」

「はいっ、わかりました」

おっとりとした外見ではあるが、なかなかどうして、ネネの身体能力は高い

本人曰く、体には気を付けているとのことで、それがレッスンにも表れているようだ

「では、行ってきます」

「ああ、頑張ってきてな」

手を振り、ネネを見送ると、すれ違いに加蓮が事務所へと入ってきた

「ねぇ、あのネネって子」

「うん? どうした」

いつも通りの加蓮のはずだが、少し違和感を覚えた

「プロデューサーさんから見て、どう?」

真剣な表情で加蓮が俺に問う

これだけ真剣な加蓮も珍しいな、良い意味でネネに刺激されたのだろうか

「そうだなぁ、強い意志を持っている子かな」



「強い意志?」

「ああ、なんでも妹さんの為にアイドルを目指したらしい」

病弱な妹さんを元気づけるためにアイドルを目指す

お涙頂戴みたいな話ではあるが、ネネはそれを明るく話していた

人は誰かの為に動く場合、それが身近であればあるほど強い動機になる

ましてや、可愛い妹のため、姉として妹のためにアイドルになったというネネの言葉は力強く感じた

「そっか、病弱な妹さんね……」

「おい……加蓮?」

それだけ聞くと、加蓮は事務所から静かに出て行った

それからというもの、加蓮はなにかしらネネの近くにいるようになった

ある時は偶然を装い、そしてある時はこっそりとネネを覗き込むように……

ネネもそれに薄々気付いているようだが、決して言葉にはしなかった

加蓮もこのことに対し、深くは話さなかったし、態度に示すこともしなかった

しかし、ある日のことだ。偶然にも同じレッスンが重なった日

ステップ中にもつれたネネが、加蓮に接触した時があった

「あ、すみません」

「……っ!」

頭を下げるネネに、体をふるふると振るわせる加蓮

一触即発かと思ったが、俺の考えは杞憂に終わった

そろそろ寝ます
再開は午後からできたらと考えています

「やっぱり似てる……」

顔を赤くして、どこか蕩けたような表情の加蓮

そして、睨むというよりかは情熱的な視線を送っている

「あ、あの……」

状況がわからず、戸惑った表情のネネ

そして、なんて声をかけていいのかわからない俺

可愛い女の子が2人して見つめあう? この絵面

とても見栄えは良いのだが、このままではいけない

「加蓮、どうしたんだ?」

心なしかさっきより顔が赤く、吐息が荒くなっている

「えっ? あー……ごめん」

急にネネから顔を逸らしたかと思うと

「気分悪いから、ちょっと休憩してくる」

レッスンルームから出て行ってしまう

取り残された俺とネネは、顔を見合わせて首を傾げた

レッスンルームでの接触の件があってから、加蓮が少し変わった

変わったというのはネネに対する行動なのだが

何かこう……今までと違って、距離感が近くなった

やれ、一緒に着替えをしたり、一緒にレッスンを受けるようになった

自分から話かけることも増えて、ネネは嬉しそうな半面、不思議そうな顔を見せるときもある

どういった経緯なのかはわからないが、仲が良いのは良いことだ

このまま何事もなく、切磋琢磨してくれれば良いと思っていた

「ああ、1週間くらい休みたいなぁ」

そんで、温泉行って美味いもん食べるんだ

「ちひろさん、一緒に温泉行きません?」

「行きたいんですけど、当分は無理ですねぇ」

あははと笑い、軽くあしらわれた

「ですよねー」

あー、寂しいと人肌恋しいわ……

あーやる気でない……

気分転換しようと事務所を出てぶらぶらしていたのだが

「何で私を避けるの?」

「いえ、別にそんなことは……」

何だか修羅場を感じさせるセリフが聞こえてきた

「そんなこと言って、今も避けようとしてるじゃん」

「えっと、その……」

あれ? よく聞いたら加蓮とネネの声じゃないか

何してんだあいつら、こんな廊下で

少し速足で、廊下の角を曲がると

「嘘じゃないなら私の目を見て言ってみてよ」

「うぅ……」

加蓮に迫られているネネの姿があった

どことなく甘い香りが漂っているのは気のせいだろうか

「おい2人とも、こんな所でなにしてんだ」

少し強い口調で言うと、こちらをキッと睨みながら加蓮が反論してきた

「プロデューサーさんは黙ってて」

おお、こわ……

出会ったころのような、尖った視線だ

「こんな状況を黙って見過ごせないだろう」

こんなところで何か起こしたら、俺もお前も大変なことになる

「はぁ……別に手を上げたりはしないよ、ね?」

加蓮がネネにそう言うと、ネネがこくりと頷いた

この前も思ったが、俺は何か勘違いしているのだろうか

何かちぐはぐなような、そんな違和感

「2人とも事務所で話を聞こう」

これは良く話を聞く必要がある、そう判断したのだが

「えー……これは2人の問題だし」

「そうかもしれません……」

2人とも頬を赤く染めた

……うん、やっぱり話は聞かせてもらうから

2人から話を聞き始めてから数分

「……」

俺は何も言えなくなった

というか、何て言えばいいのだ

だってさ、加蓮がネネに迫ってたのはまさに文字通りで

加蓮がネネを良い人、じゃなくて好い人にしたいと言うことらしかった

男と付き合っちゃ駄目だから女の子とってこと?

非生産的すぎるだろ……そんなんなら俺と……失礼

「その、加蓮は本気なのか」

「うん、本気だよ」

加蓮の瞳と言葉には強い意志が宿っている

一緒にテッペンとると約束した時と同じくらいに

「わかった、ネネもそれで良いのか?」

「は、はい……」

拒絶の意思は感じられない、どうやらこれは合意ということで良いだろう

「そうか、わかった」

百合系アイドルとか担当したことねーよ、どうすんだよ

俺の前でイチャイチャしだしたら、俺のストレスがやべーよ」

頭の中で考えがごちゃ混ぜになり、正常な思考ができないなか

加蓮が爆弾とも言える発言をした

「ネネと妹さんと3人で……楽しみだな♪」

「えっ?」

「えっ?」

俺とネネがハトが豆鉄砲食らったような顔になる

「加蓮、どういうことだ?」

はっとした加蓮だが、もう遅い

「やば……き、気のせいじゃない」

ひゅーひゅーと、下手くそな口笛

加蓮曰く、ネネの妹さんとは同じ病室で寝た仲(意味深)らしく

そして、姉であるネネを見てそれを思い出していてもたってもいられなくなったと……

たつもんなんてないのに不思議だなぁ……

それから、ようやく口を割った加蓮はと言うと

「ひっ……」

今はハイライトを消したネネに擦り寄られ、悲鳴を上げている

これ、どうしようか? めんどくせーから放置でいいかな

「プロデューサーさん? 私を置いて、いっちゃうの?」

うるうると瞳を潤ませて、上目遣いでこちらを伺う加蓮

「うん」

ネネが怖いから、もう行きます

「加蓮さん、私がいますからね? 妹じゃなくて私が……」

強く生きろよ、加蓮……

「ま、まって! 怖いから、ね? やさしく……」

そっと事務所の扉を後ろ手で締めた





おしまい

読んでくれた方に感謝を
そして、お題ありがとうございました
次のお題の前に休憩を頂きます

お待たせしました、それでは再開します
お次のお題は>>118を頂戴します

他事務所アイドル「何度も所属事務所ごと叩き潰したのにすぐ這い上がってきて怖い」ほたる「えっと……」

それでは 他事務所アイドル「何度も所属事務所ごと叩き潰したのにすぐ這い上がってきて怖い」ほたる「えっと……」 でひとつ
短いかもしれませんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……

「よくやった」

「ふん、当然でしょ」

あんな無名アイドルばかりのオーディションは通らいないほうがおかしい

「流石だな、次も期待している」

そう言い残し、プロデューサーが事務所から出て行った

じゃあ、あんたも良い仕事とってきなさいよ……

「白菊ほたるです、よろしくお願いします」

オーディション中に聞いた、1人のアイドルの自己紹介が耳に入る

白菊……ほたる……? 縁起が悪い名前ね

それに雰囲気もどこか暗くて、不気味

顔は不細工じゃないけど私ほどじゃない

何かわからないけど、どうにも引っかかる

後でプロデューサーにどこに所属してるか聞いておこう

「きゃあっ」

スタジオの廊下を曲がった時、誰かとぶつかった

「すみませんっ……って、あんた」

白菊ほたる、なんていう偶然なの

「すみません、すみません」

ぺこぺこと頭を下げる白菊ほたるに、少し虐めたい気持ちが出てきた

「あんた、そんなんでアイドルやっていけんの?」

明るさの微塵もないその顔で

きらきら輝くアイドルなんてできるの?

「えっと、その……」

目尻をさげ、困ったような顔で黙ってしまった

「もういいわ、じゃあね」

こいつ気に食わないわ、今度から潰しましょう

「ねぇ、プロデューサー」

「お前が呼び出すなんて珍しいじゃないか」

私もできればあんたなんて呼びたくないわ

「○○事務所ってところに少し圧力かけてほしいの」

「あそこか、少し睨みを利かせておこう」

「それじゃ、よろしくね」

話を終わりにして、事務所をあとにした

さて、これであの子を見る事もなくなるだろう

1ヶ月もしない間に、例の事務所が潰れたのを知った

ちょっと早すぎる気もするけど、まぁ良いわ

これで私も気分よくお仕事できるってものだし

「~♪」

「随分とご機嫌じゃないか」

……あんたに話しかけられなかったらもっとご機嫌だったのに

「白菊ほたるです、よろしくお願いします」

……あの時と同じ自己紹介を聞くことになった

白菊ほたる、まだ私の気分を損なわせるの?

表情も暗いし、声も小っちゃいし、あの時と全然変わってないんじゃない

それに、あの困ったような表情が無性にムカつく

こうなったら、あいつの心が折れるまでやってやるわ

待機室で白菊ほたるにこちらから声をかけた

「まだアイドルやってたんだ」

「あ、はい……」

びくりと体を震わせて、うつむく白菊ほたる

「早く辞めちゃいなよ、そのほうがあんたのためだから」

そう、アンタなんて頑張っても無駄だから

「じゃあね、白菊さん」

ちっ、まただんまりなんて本当にムカつく



このオーディションも私が選ばれた

うん、やっぱり私のほうが皆より優れてる

私のほうがキラキラしてるんだ、そう、私のほうが

でも、頭にこびりついているあの困ったような顔が離れない

プロデューサーには手を打ってもらったし、私だってあいつには負けない

だけど、この嫌な予感はなんなの?

オーディションで白菊ほたるの顔を見る事はなかった

事務所も潰れたみたいだし

これで、とうとうあいつもおしまい

ようやく私の中にこびりついた困ったような顔も忘れられる

そう思って、喜んでいたのも束の間

私の悪い予感は当たってしまった

「白菊ほたるです、よろしくお願いします」

……なんで?

なんでこんなに立ち直れるの? なんで諦めないの?

なんでで笑顔になれるの? ねぇ、なんで?

白菊ほたるはいつもと違う笑顔を見せていて

静かに輝くお月さまのようだった

どれだけ叩き潰してきても、何度も諦めないその姿

正直に言うと、私はきっと怖かったんだろう

その姿勢と、もしかしたらいつかは……

ううん、弱気じゃ駄目! 前を向いていつも通り

今回も私が勝つの、勝ってまた叩きつぶさなきゃいけないの

そう、そうしないとまた白菊ほたるは現れる

ふらふらとした足取りで歩いていると、誰かとぶつかった

まるでいつかのデジャブだ

「きゃあっ」

「……白菊、ほたる」

なんなのこの偶然、アンラッキーとかじゃ済ませられない

「すみません……お怪我はありませんか?」

ちっ、またその表情なの

「ふんっ、私なんて気にしないで良いわ」

「いえ、そういうわけにも……」

近づいて来たので、距離をとる

「あっ……」

「良いって言ってるでしょ」

私もマジになっちゃって、余裕がないのがばれちゃう

「なんで諦めないの?」

ずっと思っていた疑問が、勝手に口からでた

「えっと……」

私の質問に、ゆっくりと白菊ほたるが答える

「諦めなかったらいつか実が結ぶと思うから」

そんなの綺麗ごとじゃないの……

「それに、皆を幸せにできたら凄いと思いませんか?」

私は不幸体質ですけど……とか聞こえたけど

「負けない気持ちで頑張って、少しでも前に進めばいいってプロデューサーさんが言ってました」

「私だってキラキラできるって、そう言ってくれたんです」


――貴女だってそうでしょう?


その一言にどきりとした

あれ? 今の私はキラキラしてるのかな?

白菊ほたるの初めてみる笑顔に、私はきっと困った表情をしているだろう

いつかとはまるで正反対だ

「あ、私そろそろ行かなくちゃ…」

失礼します、と足早で……あ、転んだ

どんどん小さくなっていく背中を見ていると、目の前が滲んできた

ああ、かっこわる……泣くつもりなかったのに

最近の私、キラキラしてなかったのかもしれない

それをあいつの言葉で気付かされるなんて、本当にかっこわる

今回だけは勝ちを譲ってあげる

だけど、もう私は負けない

今度こそ叩き潰してあげる……正々堂々と

さて、たまにはプロデューサーと意見交換でもしてみようかな

勝つためなら変なプライドは邪魔だもの

さぁ、白菊ほたる

今度は私がキラキラしているのを見せてあげるからね



おしまい

読んでくれたかたに感謝を
そしてお題ありがとうございました
今日はここまでとします
最後のお題はまた明日ということで……

天然かよぉ!

安価下(くだ)したら、じゃなくて
安価下(あんかした)したら、だよ
指定された安価がどうこねくり回しても形にできない場合などに指定された安価の次の安価(つまり下の安価)を拾うこと

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