【艦これ】磯波「どうしちゃったの? そのカッコ!?」 (24)



磯波「サンタさんだよね?」

江風「……」

磯波「……」

江風「……傷ついた」

磯波「え!ち、違うの!?」

江風「……喜ばしい日とおめかしと、満を持してその後からやって来るは、親友の潔さすら感じる裏切り……」

磯波「ご、ごめんね! でも他に思いつかなくて……」

江風「……ホレ! この頭に付けた、クリスマスの権化みたいな角を見なよ!」

磯波「……トナカイ?」

江風「ん! 大当たり!――そうさ!トナカイさ!」

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磯波「(じゃあ、この紅白の衣装は? 発注ミス?)」

磯波「へ、へぇ~。じゃあ江風ちゃんも、鈴谷さんや漣さんみたいに今夜のパーティで着ていくんだね」

江風「いんや、パーティは普段着だよ」

磯波「着てかないの?」

江風「がっつりラフな格好さ」

磯波「じゃあその浮かれた格好は何のためなの?」

江風「このアホみたいな格好は、深夜に真価を発揮するのさ」

磯波「?」

江風「つまりこのバッチリした格好で、皆の枕元にプレゼントを配ろうって訳さ!」

磯波「へぇ~! サプライズだね!気が利くね江風ちゃん!」

江風「いや~、そう褒めなさんなって! そんな君にもきっと夜更けに気の利くトナカイが来るだろうねぇ!んん!来るだろうねえ!」

磯波「(すごい照れてる……一般的なトナカイさんは多分、サンタさんのお仕事中は外待機だと思うけど……)」


磯波「でも全員に配るの?何十人もいるよ?」

江風「いや、配るのは4,5人だね。」

磯波「え?」

江風「3,4人」

磯波「あ、そんな内々な感じでやるんだね」


江風「全員なんて無理無理」

磯波「それじゃあ、ちょっと不公平になっちゃわないかなあ。貰えた子と貰えなかった子と……」

江風「心配しなさんな! その疑問ならとっくにやっつけちまってるよ」

磯波「どうするの?」

江風「小さい子には配らない!」

磯波「へえ~それなら大丈夫そうだね。誰に配るの?」

江風「ここに候補者の名前を書いた割り箸がある」

磯波「あ、抽選なんだね、江風ちゃん」


磯波「それじゃあ引くね――えいっ!」

江風「一気に3本いくかあ。そういう所が好きだなぁ――ん~?どれどれ?」

磯波「利根さん、秋津洲さん、木曾さん……だね」

江風「よっしゃ! じゃあ早速、何を欲しがってるか3人に聞いてきてくれ!」

磯波「やっぱり見切り発車だったんだね、江風ちゃん」

江風「トナカイの下りで気づくべきだったねぇ」

磯波「百も承知だよ、江風ちゃん――でも、私が訊くの?」

江風「どした?ひょっとしてこの後予定でもある?」


磯波「ううん。だって――江風ちゃん分かるでしょ? 3人ともあんまりお話したことないし……私おしゃべり苦手だし……」

磯波「江風ちゃんが訊いた方が、きっと上手くいくんじゃないかな?」

江風「上手くいくかどうかはじゅーよーじゃない。君がやることに江風は意味を見出したいんだよ。そうだろ?」

磯波「……予定があるの?」

江風「那珂ちゃんサンのイベントがあって、――決して数合わせって訳じゃないけど――とにかく呼ばれてんだよね。賑やかしで。川内さんに」

磯波「……」

江風「すまんな」

磯波「……分かった! やってみる」

江風「ん! そういうとこだぞぉ!」


磯波「あの、すいません舞風さん」

舞風「うん? なになに?」

磯波「えっと、利根さんを探しているんですけど――どこかで見ませんでしたか?」

舞風「うん、見たよ! さっき食堂で!」

磯波「ありがとうございます!」

食堂



磯波「(……いた! 利根さんしかいないみたい……)」

磯波「(どうしよう……コーヒーにすごいたくさん砂糖入れてる最中だし……今声かけたら失礼かなあ)」

磯波「(あ、どうしよう……今度は一口飲んだ後に、なんとも表現できないような顔で舌を出して咳き込んでる……やっぱり迷惑かなぁ)」

磯波「(ううん! こんな弱気じゃ、いつまで経っても話かけられないし、話しかけよう!)」

磯波「(よし、ここだ! 利根さんがすごいたくさん牛乳を入れてるこの瞬間! この瞬間なら大丈夫!)」

磯波「あ、あの……すみません。今お時間大丈夫でしょうか」

利根「!?」

磯波「(どうしよう……利根さんカップに口をつけたまま固まっちゃった)


磯波「ご、ごめんなさい! 後ろから話かけたら驚きますよね! 本当にごめんなさい!」

利根「……う、うむ! い、いかな我輩と言えども、一心地ついている時分に、背後から不意打ちを食えばこうもなろう」

磯波「ごめんなさい……」

利根「いやいや、ちょっと驚いただけじゃ! ……それより、その……見たのか?」

磯波「えっと……何をでしょうか?」

利根「うむ! いや! 良い! それなら良い! それで、何用じゃ?」

磯波「えっと……(いきなり「今、何が欲しいですか?」なんて聞いても答えづらいよね……どうしよう……えっと……)」

利根「?」

磯波「(そうだ! “今身近にあるものを話題にしろ”って江風ちゃんがくれた本に書いてあったっけ!よぉし……)」

磯波「コーヒーお好きなんですか?」


利根「!? と、当然じゃ!! 朝昼夕と、一日の節目にコーヒーは当然欠かせないものじゃ! 吾輩は……吾輩は……ええっと……」

磯波「(コーヒーと私を交互に見てる……これは……)」

利根「……そう! 飽きないように“あえて”砂糖を入れてみたり、“あえて”牛乳を入れてみたりと、それぞれの味の違いを楽しむほどじゃ!」

磯波「(これは……間違いない……きっと、利根さんは……利根さんが好きなものは……コーヒー!」

磯波「(きっとそうだ! 好きなことをお喋りする時は皆ちょっと饒舌になったり、「!」マークが多くなるような喋り方になる……!)」

磯波「(しかも、このコーヒーに対するこだわり具合……江風ちゃん! 私、掴みました! 『利根さんにはコーヒーを!』」

磯波「あの……ありがとうございます!」グッ

利根「へ?」ポカン

磯波「お聞きしたいことは正にそのことでした! ありがとうございます! それでは失礼します!」ダッ

利根「……征ってしまったか」



磯波「(廊下の向こうに秋津洲さんがいる!……行きます!)

磯波「あの、こんにちは。秋津洲さん」

秋津洲「……あ、磯波ちゃん、こんにちは!……はぁ~かも」

磯波「(どうしたのかな? ちょっと元気がないみたいだけど……)」

秋津洲「今日は良い天気で良かったかも!」

磯波「そ、そうですね」

秋津洲「はぁ~かも」

磯波「(どうしよう……すごく何か言いたがってる)……あ、あの、何かあったんでしょうか?」

秋津洲「鋭いかも! 実はさっき提督に頼まれて七面鳥を焼いてたの――そしたら、厨房にふらっと来た瑞鶴がやいのやいの言い出して、大変だったかも!」

磯波「へ、へえ……大変でしたね」


秋津洲「顔を赤くさせたり青くさせたりして、わーきゃー言う瑞鶴を、20分くらいかけて秋津洲と翔鶴がなだめて……なんだかどっと疲れたかも」

磯波「お疲れ様でした」ペコリ

秋津洲「ありがと! でも、これからかも! まだまだお料理たくさん作って、それに飾り付けもお手伝いして、パーティをうんと豪勢にしなきゃね!」

磯波「わぁ、腕が鳴りますね! 夜までずっとお忙しいんですか?」

秋津洲「そうかも! 忙しすぎて大艇ちゃんの手も借りたいくらいかも! ……あ! “手”で思い出したかも!」

磯波「あの、どうしたんですか?」

秋津洲「どこかで、方っぽだけの手袋見なかった? どっかに落としちゃったかも~」

磯波「えっと、う~ん……すみません、見ませんでした……」

秋津洲「残念かも~……お気に入りだったのに~……」

磯波「お役に立てなくて、すみません」


秋津洲「ううん、謝らないで! もし何処かで見かけたら教えてほしいかも!」

磯波「はい、分かりました。注意して歩いてみますね」 

秋津洲「ありがとうかも!それじゃね~」

磯波「はい! あの……パーティ、楽しみにしてます!」

磯波「(手袋かぁ……頑張って見つけられたらいいけど……)」

磯波「(最後に見たのが何処かとか、いつ失くしたのかとか聞いておけば良かったなあ……)」

秋津洲「ねえ」

磯波「(木曾さんに聞く前に探してみようかな)」

秋津洲「ねえねえ」

磯波「(でももうあんまり時間もないしどうしよう……)」

秋津洲「聞くかもー!!!」

磯波「きゃあっ!?」


秋津洲「あ、ご、ごめんなさいかも!驚かすつもりはなかったかも!」

磯波「いえ……こちらこそ、ごめんなさい……えっと、なんでしょうか?」

秋津洲「……」

磯波「……あの?」

秋津洲「……磯波ちゃんは時々思い出すことない?」

磯波「えっと……何を……でしょうか?」

秋津洲「……秋津洲も上手く言えないかも。すごく奇妙で、ほとんど忘れちゃった昔の感触……」

秋津洲「あの時、瑞鶴が言ってたことはちんぷんかんぷんかも。でも、意味はちょっと分かってたかも」

磯波「……」

秋津洲「何十年も前に、どこかにしまい込んだまま忘れちゃったものを、何かの拍子に思い出すような感覚……」

秋津洲「でもそれなのに、それが何のことか見当もつかないかも……知りたいのにどこにあるかも思い出せないかも……そういうの磯波ちゃん分かる?」

磯波「……」

秋津洲「でも本当は……」


秋津洲「……ごめんね! せっかくのクリスマスにこんなお話する必要はないかも! 失くした手袋が相当に惜しいだけかも!じゃあね!」

磯波「あの!」

秋津洲「?」

磯波「どこかで見つけたら、お知らせしますね」

秋津洲「……うん! ありがとうかも!」


磯波「(どうしよう……木曾さんは演習に行っちゃったみたい……)」

磯波「(……手袋も見つかってないし……困ったなぁ……)」

江風「……ってな所で、賑やかし担当だった江風が帰ってきたよ~!」

磯波「実は、かくかくしかじかなの」

江風「んなるほど! 一から十まで説明ありがとさん!」

磯波「どうしよう……」

江風「江風も那珂ちゃんサンの応援中に色々案は考えといたし、まあ、あとはプレゼントを買いに行く時に決めればいいよ」

磯波「そんなのでいいのかなぁ……」

江風「いいっていいって! そもそも、その人が本当に欲しいものなんて半日そこらじゃ分かりっこないんだからさ!」

磯波「“今日の一言”だね江風ちゃん」

江風「ぃよぉし! それじゃ、張り切って買い物に行くぜ!」

磯波「何処でお買い物するの?」

江風「コストコ」

磯波「会員だったんだね江風ちゃん」



こうして、私たちは街に出かけました。


バスを待っていると、小さな女の子が、両脇に並んで歩くお父さんとお母さんに、交互に喋りかけているのを見かけました。

その子は、今か今かと期待に胸を踊らせている様子でした。


……どういう訳でしょう、その女の子は、その気持ちを誰にも悟られないよう、極力顔や仕草に出さないよう努力しているようでした。

そのなんとも言えない表情が印象に残っていて、見ているこちらがにやけ顔になるようでした。


――女の子がどこまで考えていたのかは、さて置きますが――きっと、お父さんもお母さんも気がついてないことでしょう……きっと。

コストコは1時間を10分に縮める魔窟でした。

江風ちゃんはあっちにうろうろ、こっちにうろうろしては目を輝かせるので、その度にここに来た目的を一から説明しなくちゃいけませんでした。


そんなわけで、買い物はとても時間がかかりました。原因の半分は江風ちゃん。もう半分の原因は、同じような感じにふらふらしていた私です。

……帰って来た頃には夕方でした。


私はその後、鎮守府で開かれるパーティに参加しました。江風ちゃんは疲れてしまったらしく、部屋でお休みしたあとで途中参加でした。

パーティはとても楽しかったです。なんだか絵日記みたいな感想ですが、これが素直な気持ちです。


あっという間に楽しい時間は過ぎて、夜が更けた頃に私たちは「後片付け」と称して、夜の鎮守府を自由に歩き回る口実を得ました。

それから、どうやって利根さんと秋津洲さんと木曾さんの部屋にこっそり忍び込んで、プレゼントを置いたかはここには書けません。




……あんなドアの開け方……どうして、江風ちゃん知ってたんだろう?

翌日



利根「見ろ、筑摩よ! さんたとやらは本当にいたではないか!」

筑摩「あら姉さん、どうしたんですかそのプレゼント箱? ……目が覚めたら、枕元にあった? 素敵ですね! でも誰が……」

筑摩「……いえ、サンタクロースは……、ふふっ。そうですね。……いえ、なんでもありませんよ姉さん。素敵なクリスマスでしたね」

筑摩「中には何が入っているんでしょうね? ……あらまあ」


秋津洲「おはようかも、磯波ちゃん!」

磯波「あ、おはようございます!」

秋津洲「ねえねえ見て見て! 昨日無くしたって言ってた手袋! 見つかったかも!」

磯波「わあ! 良かったですね! どこにあったんですか?」

秋津洲「それがね! 朝起きたらベッドの横にプレゼント箱が置いてあったかも! その中に入ってたかも!」

秋津洲「それでね! 一緒に手紙が入ってて、『第二工廠にて発見。メリークリスマス』って書いてあったかも!」

秋津洲「他にもラッピングされてたものが入ってたの! ほらこれ! 軍手かも! すべり止めいぼいぼ付き軍手かも!」

秋津洲「ほら、工廠って一回外に出るから寒いでしょ?」

秋津洲「だから、大艇ちゃん整備するときは最初からこっちを付けていけばあったかいし、手も汚れないしで、いい事ずくめかも!サンタさんありがとうかも!!」

秋津洲「もちろん、磯波ちゃんも昨日は探してくれてありがとうかも! お礼に、はいこれ! 昨日のケーキとかお菓子とか作ったときに

余った分で、新しくお菓子を作ってみたかも! それじゃね! ありがとうかも~!」


木曾「朝起きたら、プレゼントが置いてあって」

木曾「開けてみたら中に眼帯が入っていた」

木曾「……左目用の」

木曾「……右目にやれなくもない、が」

木曾「デザイン的にやはり左目用だ……」

木曾「……知らんよ。サンタクロースの真似事をしたやつに聞いてくれ」

木曾「え……いや、何でもない。……これを俺にくれたのは、本物のサンタクロースだ」

木曾「本物ってどういう意味って……それは……いや、悪かった。“サンタクロース”だ。単に“サンタクロース”だ」

木曾「……天龍。それはお前にやるよ。……そう、そうだ……多分、サンタクロースは俺とおまえの部屋を勘違いしたんだ」

木曾「……そうだろ?」


磯波「手袋は工廠にあったんだね、江風ちゃん」

江風「……言ったじゃんか。江風は“トナカイ”だって。きっと本当のサンタクロースと仕事の時間がかぶっちまったせいで、江風のプレゼントとごっちゃになったのさ」

磯波「……そっか」

江風「そゆこと」




終わり


江風適当だな~
ポケモンとか他の艦娘のデータとか消して勝手に最初からやり始めそう

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