【艦これ】雪風「しれぇ!ヘンテコな箱が見つかりました!」 (68)




提督「箱?」

雪風「これです!倉庫を整理してるときに、雪風が見つけました!」

提督「おぉ……たしかに」

提督「なんだかいかにもって感じの、古めかしいデザインの箱だぁ」

雪風「えっへん!」





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提督「こりゃおそらく、そうとう昔の鎮守府で使われていた無線機だな」

雪風「無線機?この変な箱がですか?」

提督「うん、たしか……そうだったと思うが」

雪風「へぇ~!」


雪風「……あ、そうだ!」

雪風「しれぇ!」






雪風「もしよければコレ、雪風が頂いてもいいですか?」

提督「あぁ、とっくの昔に使われなくなったものだし、別にかまわんが……」

雪風「ありがとうございますっ!」

雪風「これが“れとろ感”ってやつですね!雪風、なんだか気に入っちゃいました!」


提督「でも……もう壊れてると思うぞ、これ」

雪風「えっ、そうなんですか!?」

提督「イヤ、露骨にがっかりするなよ……当たり前だろ?」

雪風「しゅん……」






提督「とにかく、今日はもう遅い」

提督「明日は朝から鎮守府の一般公開もあるからな」

提督「いつもみたいに菓子食って夜更かししてないで、さっさと寝ちまいなよ」

雪風「うぅ~……」



……
…………
………………



ネロネロネロ ミナ床トッテ……


雪風「フタヒトサンマル……消灯時間……」

雪風「お菓子よし、懐中電灯よしっ……」


雪風「ごめんなさいしれぇ!夜戦、開始します!」






雪風「しれぇはああ言ってましたけど」

雪風「後生大事、物を大切にすれば……」

雪風「この無線機だってきっと、使えるようになるはずです!」


雪風「今日は夜空が変な曇り方をしているので、あまりいい電波は届かないかもしれませんが……」

雪風「ふだんの演習用の無線機と、これの配線は取り換え済み!」

雪風「あとは適当な“しゅーはすー”に合わせて、雪風がいつもの要領で使ってあげれば……!」






ガチャ


雪風「えっと、昔のものはこうして使うのかな?」


雪風「えー、“しーきゅーしきゅー”!」

雪風「こちら、雪風です!」

雪風「どなたか応答を、どうぞ!」



シーン……



雪風「やっぱり、だめですよね……」






雪風「うんともすんとも言いません……」

雪風「いくらなんでも、壊れちゃったものはどうしようもありませんよね」

雪風「はぁ……」






『……ザ……ッ……』






雪風「この無線機でもし、どこかの知らない人とお話ができたら」

雪風「すっごく素敵だと思ったのに……」



『……ザッ……ザ……』



雪風「……でも、仕方ありませんねっ」

雪風「今夜はホゲモンでもしながらお菓子を食べて、早めに寝まし……」



『……!……ザッ……!』






『……イC…………ハイC.ヒト……ハイ……ト……!』



雪風「へ?」



『……応答…………ぞ!……をど……ぞ!』



雪風「きゃっ!」






雪風「やりました!誰かと繋がったみたいです!」



『……気の……だっ……?』

『たし……我々宛て……波を受信……たと思っ……なぁ……』



雪風「え、ええ、えーと!こ、こちらは“じゅりえっと”、“つー”、“けべっく”――」

雪風「――です、どうぞ!」






『!?』

『ほ……!ホホ、C、タナ……ゼロ、フタ、ロク――』

『ホネ、お……女の子が……を使用し……るのか!?』

『固有略符……聞い……とのない……だが、日本から……か?』

『何に……も驚きだ……ど、……ぞ』



雪風(わぁ……!なんだか、ワクワクしてきちゃいました!)

雪風(でも、雑音がひどくてなんだか聞き取りにくいですねっ)






雪風「えぇーと、そうです!こちらは日本です!」

雪風「何故でしょう、お返事がすごく遅れて聞こえてきますね!どうぞ!」



『そうか、や……内地か!こ……現在、徳山…………田尻沖』

『内地から……う離れて……ないからな』

『同様の……で混線し……るものと思われ……、どうぞ』



雪風「沖?」

雪風(もしかすると……この方は漁師さんか何かでしょうか?)






雪風「そうですか、分かりました!」

雪風「こうして知らない方と無線をするのは初めてですが、よろしくお願いしますね!どうぞ!」



『少々感……よろしくない……だが、こちらで送信調整を試み……よう』

『どうせ、これは最……宴の後の夢……だからな』

『……前に子供……を聞けて安心し……、よろ……頼む、どうぞ』



雪風「?」

雪風(言っていることがよく分かりません……)

雪風(心なしか、お酒で酔っぱらっているみたいです!)






雪風(えーと、何を話しましょう……えっと……)

雪風(……あ、そうだ!)

雪風「宴ってことは、何か“おめでたいこと”があったのでしょうか?どうぞ!」



『…………』

『……あぁ……うだな』






『幾度となく……を生き……たこのフネとて、生……帰れは……いだろうが』

『お国の……、陛下や……のため、この身を……る』

『これほど……たいことは、他……ないだろうな』



雪風(な、なんだか分かりませんが……)

雪風(とても落ち込んでいる……ようですね)

雪風(雪風のせいでしょうか?どうにかして元気づけてあげなきゃ……!)

雪風(なにか、明るい話題を!)






雪風「そ、そういえば今度、○○に新しい大きなスーパー銭湯ができるそうですね!」

雪風「しれぇが今度、皆で行って来たらどうだって言ってくれています!とても楽しみです!」

雪風「あなたも、お風呂は好きですか?どうぞ!」



『……えっ』

『……し……しれぇ?』



雪風(……あっ)

雪風(司令なんて言葉を使ったら、私が艦娘だってバレてしまいますね!)

雪風(“きみつほご”の関係で、これはよくありません!)






雪風「ゴホン!」

雪風「し、紫麗さんです!親戚のおじさんのなまえです!どうぞ!」



『そ、……か』

『スーパ……湯という言……ど聞いたこ……無いが、やはり入浴施……のか』

『そ……一体、どのよう……ころなのだ?どうぞ』



雪風(スーパー銭湯を知らないなんて、珍しい方ですね!)

雪風「えーと、そうですねー!」

雪風「とても大きなお風呂があって、その他にもサウナとか泡の出るお風呂とかがあって!」

雪風「お風呂あがりに美味しいコーヒー牛乳が飲めるようなところです!どうぞ!」



『……』






『あははっ、やは……れは夢なの……っ』

『そ……うな贅の限……尽くした施……ど、今の疲……た日本にあるは……ない』



雪風(えっ?)



『だが……し本当にそ……施設があ……す……らば』

『海水風……限ら……真水で過ごす我……とって、……も羨ま……話』

『是非と……行っ……たいものだ』



雪風(うぅ……やはり、何か大変なお仕事をされているようですね)






『だが、我とて飯だけ……良い……のを食べ……るぞ』

『先刻の宴に至っ……冷酒も飲めたし』

『コンドビーフ……久方……の白米な……平らげ……だ』

『あれは、ありっ……の贅沢だった』

『かつて、飯にあ……きたくて……に志願した時代……い出すよ、どうぞ』



雪風「へぇ~っ、コンビーフですか!」

雪風「あれ、おいしいですよね!」

雪風「意外と白米ともよく合いますしね!どうぞ!」


雪風(こういう話をしていると、なんだかおなかが空いてきました!)

雪風(お菓子を開けちゃいましょう!)





『……ははは』

『そうだ、やはり君は……夢の世……住人なのか……れぬな』

『そ……、そうか』

『どうぞ』



雪風「モグモグモグ……ふぇ」






雪風「モグモグ……すみません!」

雪風「ちょっとモグモグ……待って下さいモグ……どうぞ!」



『???』

『な、……を食っ……るのだ?』



雪風「はい、マカロンです!」

雪風「最近発売されたばかりのやつです!美味しいです、どうぞ!」






『!?』

『マ……ンだと、な……なんとい……とだ』

『……でも士官しか食べ……ないよう……ロモノを、女の子が……!』



雪風(しかん?)






『……はは、はははは……!』



雪風(う、うぅ……)

雪風(お話し中にお菓子を食べたのが、やっぱり良くなかったのでしょうか)


雪風「あ、あの……」

雪風「もし、お気に障るようなことをしたのでしたら……その、ごめんなさいっ」






『あはは……イヤ、怒ってなん……ないさ』

『それ……も、私はと……素晴らしい夢……見ているのだ』

『なん……とて……良い気分だ』



雪風「??」






『この夢は、我々帝……軍の皆……夢見た……理想……!』

『内地……る国民が飢えに苦し……となく、満足……活を送っ……る』

『我々が果た……とのでき……った、理想の日本……姿……っ』


『坊ノ岬……特攻……かう前に、こうい……夢が見られた……うことは』

『幾多……場を惨めに……生き延びた……フネも、やはり最後を迎え……だろう』

『ようやく、先に逝……仲間に会……る』



雪風「え、えっと……?」






『ありが……、夢……界の君……!』

『私は戦……散る前……素晴らしい夢を見るこ……でき……!』



雪風「あ、あのっ」






雪風「先程からなんだか夢、夢とおっしゃられていますけど……」

雪風「これは夢なんかじゃありませんっ」



『!?』



雪風「皆でお風呂に入れるのも」

雪風「ご飯がおいしく食べられるのも」

雪風「そして今、こうやってお話しているのも……」

雪風「全部、本当のことなんです!」



『な……!』






『まさか……』



雪風「……」



『……』

『……ひとつ、聞いて……ろしいか、どうぞ』



雪風「は、はいっ!どうぞ!」






『ついさっきまで、三田尻……甲板……らは雲一つな……綺麗な夕焼……見えた』

『君のいる場……らは、空に何……える?』



雪風(三田尻のあとが、よく聞こえませんでしたっ)

雪風「お、お空ですか?えーと、そうですね!」

雪風「こちらは雲に覆われた、どんよりとした夜空が……」

雪風「……あっ、雲が切れて、綺麗なお月様が見えるようになりました!どうぞ!」






『……そうか』

『……あは、あはははっ!』



雪風(よ、よく笑う人ですね……)






『あぁ……マナイ!』

『少……おかしくてね!』

『なんだか、さっきま……を覚悟してい……分が馬鹿馬……くなったのだよ』



雪風「え?」



『……そうか、そ……話を聞いちゃ、まだ当分死……いな』

『内地に残……家族を連……、そのスーパー銭湯とや……も行ってみ……し』

『マカ……も食べさせ……りたいなぁ』






『あり……う君、私にも勇気が湧い……たよ』

『本当に、……がとう』



雪風「はい!なんだかよく分かりませんが!」

雪風「元気になってもらえたのでしたら、“雪風”も嬉しいです!どうぞ!」



『雪……風……!』

『ははっ、本当に奇……因果だな!』






『君の話……、艦の皆にも話……みよう』

『……と、……な勇気……られるは……だ』

『こ……夢でない……証とし……いつか……君に会……たい……だ』



雪風「あわわっ、電波が……」



『あ……こち……よ……聞……なく……』

『ここ……お別……な』



雪風「うぅ~っ、もっとお話をしたかったですが、しかたありませんね!」






『こち……“雪…”より、“…風”……へ』

『君た……未来……幸あれ……!』

『さ……な……』



雪風「はい!そちらの皆さんも、幸運を!」

雪風「さようなら!」






『……ザザッ……』

『プツン』







シーン……


雪風「何も聞こえなくなりました……」

雪風「……不思議な方でしたが」

雪風「お話はとても楽しかったです!」

雪風「また、どこかで会えるといいですねっ」






雪風「ふわぁ……それにしても、眠くなっちゃいました……」

雪風「ふにゃ……おやすみ……なさい……」



……
…………
………………



提督「……」

提督「ゆーきーかーぜー!」

雪風「ひゃっ!」






提督「随分と長く、気持ちよく眠っていたようだねぇ?」

雪風「うぅ……」

提督「こんな日に寝坊とは、だからあれほど夜更かしをするなと」

雪風「ご、ごめんなさい……」

提督「まったくもー……」



提督「……それよりさっきからさぁ、おもしろいお客さんが来てるんだよ」

雪風「へ?」






「なんでも、去る大戦を生き延びた駆逐艦の通信兵だったって爺さんがさ」

「最後の艦隊特攻の際に、変な無線を誰かと交わしたって話をするんだよ」

「へぇ~!」


「私は忙しいから、もしよかったら相手してやってくれよ」

「はい!分かりました!」



fin



本作に出てくる無線知識はすべてハッタリです、ごめんなさい!

ここまで読んで下さった方、楽しく書かせていただきありがとうございました!

おつおつ
面白かった

おつ

いいねぇ、こういうの

乙乙
良かった!


当時の軍人さんも艦これ肯定的どころかやってるって話はいつ聞いても笑いと涙がでる



スレタイだけ見てコトリバコか何かかと戦々恐々してた自分にはいい意味でじんわり来たわ

乙!うちのじーさまは先日神通とケッコンしました

ハコだからエックスなんちゃらかと
実際に雪風に乗って神風特攻するはずだった人達か…
こういうの泣けてくるがいい話だな

よかったな、どうぞ

雪風にはこういった話がよく似合うよなぁ

じんわり涙腺きた
おつ

どっかで見たことがあるような話のキャラを雪風にしてるだけでいい加減ワンパターンだよな

ssなんてそんなもん
これはまだキャラと話が合ってるから良い
何の関係も関連もない癖にとりあえず艦これ使ってるだけのssや使い古されてもはや何番煎じか判らないネタをさも面白いかのように使い続けてるアイマスssより遥かに面白い

ワンパターン(笑)とか言うがじゃあ誰もまだ書いたことないようなネタでお前が書いてくれよ

映画オーロラの彼方にを思い出した。

まあ、確かに通信機ってのを見ただけで、内容と落ちが予想ついたが、俺は好きよ
こういう話

誰しもが想像のつくシンプルな話をド直球で真っ直ぐに書くことを王道というのだ

「王道RPGはもう飽きた」
に飛びつく奴と飛びつかない奴の違いみたいなもんだな

邪道の方が好き

どんな話を書いても大体シェークスピアのパクリになるくらい作品書いてるキチガイって聞いたことある


よいぞ、よいぞ

>>60
シェークスピア回避しても手塚もおるでな

別にパクりでも良いんだけど
今回の話にしたら明石なりの超技術がからんでるわけもなく幸運要素もなくそもそも戦後もいたいけな少女である艦むすが戦い続けている未来は過去の兵士からすれば絶望でしかないよな

いたいけな少女じゃないぞ、最後まで戦い生き残った艦自身やぞ

幸運だから過去と通信できるなんて現象が起きたし
その会話が元で鼓舞され、その駆逐艦・雪風が生き残れたという運命なソレ

自分が過去に何かしら干渉したら、実はそれにより過去の自分が助かっていた
 等というSFものではお馴染みというか鉄板ネタ
(別世界からなにかと遭遇して 冒険が始まるくらいにありふれてる)

そこらへんは公式小説でも色々と違ってたりするからな
艦の生まれ変わりってのと訓練受けた少女がなるってのは前者が瑞鶴主人公の小説で後者が陽炎主人公の小説だっけか

>>66
せやで
あと瑞鳳主人公の小説は人造人間説だった気がする

本家ゲームでなら艦が転生した存在そのもの


>>66
公式の小説というよりは角川が出版した二次創作って感じ
アンソロジーコミックしかり

(完全に巨人だったり)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年11月26日 (土) 19:43:12   ID: AlSqqByx

オーロラの彼方へって映画を思い出した。
あの映画もこんな感じで過去の世界と無線交信してたな。

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