【きんいろモザイク】ふたつのミモザ (67)
1
忍「あれっ?」
アリス「どうしたの?」
忍「カバンがありません」
アリス「えっ!?……って、持ってるよ、シノ」
忍「いえ、これではなく、今日はもうひとつ紙袋を持っていたので……」
忍「多分待ち合わせ場所に置いてきてしまったんですね」
忍「ちょっと取ってきます」
アリス「そうだね、すぐに気づいて良かったよ」
忍「私一人で大丈夫ですから、アリスは先に行っててください」
アリス「うん、じゃあゆっくり歩いてるね」
アリス「ちなみに、何を忘れたの?」
忍「金髪のカツラです!」
アリス「……なんでそんなもの持ってきてるの?」
テクテク
アリス「だいぶ暖かくなってきたなあ」
アリス「今日はアヤもヨーコもカレンも待ち合わせに来ないなんて……」
アリス「暖かくなったからって気がゆるんでるよ」
アリス「シノもわたしが起こさないと全然起きないし……」
アリス「あっ、花が咲いてる。木全体が真っ黄色で」
アリス「2本並んで花が満開だとすごく綺麗だよ」
アリス「……そう言えば去年も見た気がする」
アリス「確か学校行くときに、皆で」
アリス「なんか不思議な感じだよ、去年は皆で見たものが、今日はわたし一人」
アリス「たしかアヤが名前を知ってて」
アリス「えーと、ミモザっていうんだっけ。それで、花言葉は……」
アリス「そう、『秘密の恋』」
~~~~~~~~~~~~~~
1年前
朝
アリス「あっ、花が咲いてるよ」
忍「本当ですね、全然気づきませんでした」
アリス「綺麗だね」
カレン「何て花デス?」
忍「えーと、黄色いので、菜の花ですかね?」
陽子「へー、しの、よく知ってるなー」
綾「全然違うわよ!」
忍「そうなんですか?」
綾「これはミモザね」
忍「綾ちゃんはこういうの良く知ってますもんね」
綾「そうかしら?」
カレン「アヤヤは乙女チックデス」
アリス「うん、花言葉とか詳しそうだよ」
綾「ま、まあ……」
陽子「そうなんだ、じゃあこれの花言葉は?」
綾「えと、ミモザの花言葉は……確か『秘密の恋』ね」
カレン「ほほう、アヤヤにぴったりデスネ」
綾「ちょ、ちょっと、どういう意味よ!」///
カレン「そのまんまの意味デース」
陽子「?」
忍「『秘密の恋』ですか」
忍「確かに綾ちゃんが一番似合う感じがします」
綾「な、なんでよ……」///
忍「陽子ちゃんには全く似合わないですね」
陽子「何だろう、今すごくバカにされた感じがするんだけど」
忍「アリスとカレンは……」
アリス「えっ」ドキ
カレン「私デスカ……?」
忍「金髪が花のように綺麗です」
陽子「秘密の恋どこ行った」
忍「この花、アリスの家のお庭で見たような気がします」
アリス「いや、うちには無いと思うけど……」
忍「そうですか?」
綾「それにしのがイギリスに行ったのって夏だったでしょう?季節が違うんじゃないかしら」
忍「うーん……ですが、アリスの家の庭でこんな金色の花を見たような……」
忍「あっ、あれはアリスの金髪でした」
アリス「シノ……」
カレン「HAHAHA、シノらしいデース」
アリス「ねえシノ」
忍「なんですか?」
アリス「もしかしてシノ、イギリス来たときのこと、あんまり覚えてない?」
忍「そんなことありません!」
忍「幼いアリスの金髪も、アリスのマムの金髪も目に焼き付いていますから」
アリス(やっぱり金髪しか覚えてないんだ……)
忍「あのときはカレンには会えなかったんですよね」
忍「カレンの金髪も見られたらどんなに素敵だったことか……」
綾「別にいいじゃない、今は見れるんだから」
忍「いえ!もはや見るだけでは足りません!」
忍「というわけでカレン、その金髪で私を包んでください!」
カレン「どうしてそうなるデス?」
忍「仕方ありませんね……ではアリスの金髪にします」
アリス「えっ」
忍「髪の長さがアリスでは若干足りませんが……」
忍「アリス……」
アリス「シノ!?なんか怖いよ!」
忍「いえ、大したことはしませんよ。ただアリスを全身で受け止めたいだけです」
アリス「その時点でよく分からないよ!」
忍「アリス~」モフ
忍「はぁ~……幸せです……」
アリス「ちょっとシノ!髪に顔埋めないで!」
アリス(それに、髪の匂い嗅がれちゃう……なんだかそれって……)
忍「きんぱつ……」
アリス「……シノ」
忍「はい?」
アリス(シノはやっぱりいつも通りだよね……)
アリス「もうやめてよ、ほら、早く学校行くよ?」
忍「あっ、待ってくださいアリス」
休み時間
アリス(一人だと暇だよ……)
アリス(ヨーコはアヤに会いに行くって言って、さっさとA組行っちゃったし)
アリス(わたしもついていけばよかったかな)
アリス(そうすればシノに……)
忍「アーリス♪」
アリス「シノ!?」
忍「陽子ちゃんはいないんですか?」
アリス「A組に行ったみたいだけど……会わなかったの?」
忍「うーん、すれ違ったのでしょうか……あまり覚えてないです」
忍「それよりアリスは何をしてたんですか?」
アリス「えっと」
アリス「シノに会いたいな、って思ってたよ」
忍「そうですか、私もです」
忍「アリスにどうしても会いたくなって」
忍「さっきの休み時間は何をしてたんですか?」
アリス「さっき?うーんと……」
忍「アリスと陽子ちゃんがふたりの時って、どんな感じなんでしょう」
アリス「普通に話ししたりだけど……」
アリス「でも、さっきはヨーコ、いなかったよ?A組行ってたんじゃないの?」
忍「そういえば綾ちゃんとカレンがそんなことを言ってたような……」
忍「陽子ちゃんがいないと、ふたりっきりですね」
アリス「えっ、あ……」
アリス(そんなこと言われたらなんか意識しちゃう)
アリス(けど……)
アリス「シノ、教室なんだからクラスメイトがいっぱいだよ……」
アリス(シノとふたりっきりか……)
アリス(……えへへ)
忍「アリス?なんだか顔が赤いですよ?」
アリス「そ、そうかな」
忍「もしかしたら熱でも……」ピト
アリス「!!」
アリス「シ、シノ!近いよ!!」バッ
忍「ダメですよアリス、じっとしてなくちゃ熱があるか分かりません」
アリス「大丈夫だから!」
忍「そうですか……?」
アリス(ドキドキする……顔が熱いよ……)
忍「あっ、そろそろ休み時間終わりですね」
忍「教室戻りますね」
アリス「うん、じゃあね」
忍「……アリス、やっぱり顔が赤いような気がします」
アリス「平気だよ、気にしないで!」
忍「熱っぽかったらすぐ先生に言うんですよ、おうちにはお母さんがいますから迎えに来てもらえますし、それに……」
アリス「もうっ!子ども扱いしないで!」
夜
勇「お風呂沸いたわよ」
忍「はい、お姉ちゃん。アリス先に入りますか?」
忍「それとも……一緒に入ります?」
アリス「え、そ、それは……シノから入って!」///
忍「そうですか……」
勇「あんたたち、そのくだり毎日やってるわよね」
忍「それじゃお風呂入ってきますね」バタン
アリス「いってらっしゃいー」
アリス「……」
アリス(シノ……もう行ったかな)
アリス「シノ……」パタン
アリス(シノのベッド、いい匂い……)
アリス「ハァ……ハァ……んっ……シノ……」
アリス「はぁ……」
アリス(シノはわたしの髪の匂いなんて何とも思わないのかもしれないけど)
アリス(わたしはベッドの匂いだけでこんなに……)
アリス(直接髪の匂いなんて嗅いだらどうなっちゃうかな……)
アリス(本当はお風呂だって一緒に入りたいけど、多分普通じゃいられないから)
アリス(着替えのときもなるべく見ないようにしたりとか……)
アリス(こんなところ、シノに見られでもしたら……)
アリス(もしこの気持ちが知られたら、絶対この家に置いておいてはくれない)
アリス(女の子が好きだなんて)
アリス(シノのこと、変な目で見てるなんて)
アリス(顔が近づいただけで、キスしたいって思ってるだなんて)
アリス(でも……)
アリス(でも、我慢できないよ)
アリス「んっ……」
アリス(……汚しちゃった)
アリス(どうしよう、洗濯物にそのまま出したらバレちゃうかな)
アリス「……シノ」ボソッ
忍「なんですか?」
アリス「っ!?いつからいたの!?」
忍「さっきですけど」
アリス「さささっきって、どれくらいさっき!?」
忍「ええと……ちょっと前にお風呂から戻ってきたんですけど」
忍「何やらアリスが取り込み中だったようでして」
アリス「」
アリス(バレちゃった……)
アリス(秘密にしておかなきゃいけないのに)
忍「それで、アリスは何をしてたんですか?」
アリス「何って」
忍「?」
アリス「とぼけないでよ……」
忍「はい?」
アリス(もうダメだ……)
アリス「シノ。ちょっといい?」
忍「どうしたですかアリス、あらたまって」
アリス「ここ、座って?」
忍「ベッドにですか?」トスン
アリス「……シノ」
アリス「何してたか……教えてあげようか」ドン
忍「アリス……?」
アリス「シノはさ、金髪なら誰でもいいのかもしれないけど」
アリス「わたしでもカレンでも……」
忍「アリス?何を言って……」
アリス「シノ……」チュ
忍「んっ……」
アリス「ほらシノ、動かないで。今脱がすから」
忍「あっ、アリス……」
アリス「シノ、可愛いよ」
アリス「わたしはずっとこうしたかったんだよ」
アリス「シノ……」
忍「アリス」
アリス「ふふ、シノ、わたしがいっぱい満足させてあげるから……」
忍「そんな顔、しないでください」
アリス「え……?」
忍「アリスのそんな辛そうな顔、私は見たくありません」
忍「……どうしてそんなに悲しそうなんですか?」
アリス「だって、だって……」
アリス「嫌でしょ、こんなこと、無理やり……」
アリス「わたしなんかに……」
忍「嫌なわけ……ないじゃないですか」
アリス「え……」
忍「本当に嫌だったらこんなことさせません」
忍「そもそも、アリスの力で私を抑え込めるわけないじゃないですか」
アリス「……」
アリス「それは、わたしが金髪だから?」
忍「?」
忍「金髪だと力が弱いんですか?」
アリス「そうじゃなくって!」
アリス「シノがわたしにこんなことされても嫌じゃないっていうのは」
アリス「ただわたしがシノの好きな金髪だから……」
忍「違いますよ」
忍「確かにアリスの金髪は素敵です」
忍「でも、それだけじゃこんなことさせません」
アリス「じゃ、じゃあ」
忍「アリスがアリスだからです」
アリス「……本当?」
忍「はい、本当です」
アリス「じゃあ、シノもひとりの時にはこういうこと……」
忍「それはないですね」
アリス「えー……」
忍「ですが……」ギュ
アリス「シノ?」
忍「2人でなら、してみたいと思います」スッ
アリス「あっ、シノ、そんなところ……」
忍「アリスだってさっき触ったじゃないですか」
アリス「そうだけど、わたしは、その……さっき汚しちゃったし……」
忍「いいえ、アリスは綺麗ですよ」
忍「髪だけじゃありません。身体だって……」サワ
アリス「ひゃっ!」
忍「アリスは敏感ですねー」
忍「ごめんなさいアリス、今までアリスの気持ちに気付いてあげられなくて」
忍「それに私自身の気持ちにも……」サワサワ
アリス「んっ……シノ、ちょっと待って……」
忍「なんですか?」
アリス「いったん触るのやめて、シノ」
アリス「その前に、言わなくちゃダメだから……」
忍「?」
アリス「はっきり伝えたいの」
アリス「シノ。わたし、シノのことが好きだよ」
忍「はい、私もアリスが大好きです」
アリス「良かった……シノに嫌われてたらどうしようか、んひゃあ!」
アリス「だから触るのは……んっ……」
忍「まだダメですか?」
アリス「だめじゃ……ないけど……」
~~~~~~~~~~~~~~
アリス(この1年、何回かそういうこともあったけど)
アリス(あのときが一番ドキドキした気がするよ)
アリス(……って、何考えてんだろう)///
アリス(バレちゃったときは死ぬかと思ったけど)
アリス(でも、ずっと秘密にしてなくて良かった)
アリス(だって……)
忍「追いつきました♪」
アリス「わっ、シノ!?」
忍「あれ、アリス、なんだか顔が赤いですよ?」
アリス「き、気のせいだよ!」
忍「待っていてくれたんですか?先に行ってても良かったのに」
アリス「うーん、そういうわけじゃないけど」
忍「あ、綺麗な金色の花が咲いてますね」
忍「まるでアリスの金髪のようです」
アリス「シノ、去年も見たでしょ?それに同じこと言ってたよ」
忍「あ!いいことを思いつきました!見てください」
アリス「かつら?」
忍「はい、こうして二人で金髪で並んでいると、この木みたいじゃないですか?」
アリス「シノ……」
アリス「やっぱりシノに金髪は似合わないよ」
忍「そんな……」
アリス「ねえ、シノ」
忍「なんですか?」
アリス「わたしの正直な気持ちを、何回でも言うよ」
アリス「シノに秘密なんて作りたくないから」
アリス「……シノ、大好きだよ」
2
テクテク
カレン「あれ……?」
カレン「この光景、どこかで見た気がするデス」
カレン「まさか私に予知能力が……!?」
カレン「……まあ毎日通ってる道デスケド」
カレン「思い出しマシタ。去年、この花が咲いてる時に、ここを皆で通りかかったデス」
カレン「アヤヤが花の名前を知ってて……」
カレン「……んー、思い出せないデス」
カレン「でも、花言葉が『秘密の恋』ってことは覚えてるデス」
カレン「まあ、忘れられるわけないデスネ……」
~~~~~~~~~~~~~~
1年前
朝
アリス「あっ、花が咲いてるよ」
忍「本当ですね、全然気づきませんでした」
アリス「綺麗だね」
カレン「何て花デス?」
忍「えーと、黄色いので、菜の花ですかね?」
陽子「へー、しの、よく知ってるなー」
綾「全然違うわよ!」
忍「そうなんですか?」
綾「これはミモザね」
忍「綾ちゃんはこういうの良く知ってますもんね」
綾「そうかしら?」
カレン「アヤヤは乙女チックデス」
アリス「うん、花言葉とか詳しそうだよ」
綾「ま、まあ……」
陽子「そうなんだ、じゃあこれの花言葉は?」
綾「えと、ミモザの花言葉は……確か『秘密の恋』ね」
カレン「ほほう、アヤヤにぴったりデスネ」
綾「ちょ、ちょっと、どういう意味よ!」///
カレン「そのまんまの意味デース」
陽子「?」
忍「『秘密の恋』ですか」
忍「確かに綾ちゃんが一番似合う感じがします」
綾「な、なんでよ……」///
忍「陽子ちゃんには全く似合わないですね」
陽子「何だろう、今すごくバカにされた感じがするんだけど」
忍「アリスとカレンは……」
アリス「えっ」ドキ
カレン「私デスカ……?」
忍「金髪が花のように綺麗です」
陽子「秘密の恋どこ行った」
忍「この花、アリスの家のお庭で見たような気がします」
アリス「いや、うちには無いと思うけど……」
忍「そうですか?」
綾「それにしのがイギリスに行ったのって夏だったでしょう?季節が違うんじゃないかしら」
忍「うーん……ですが、アリスの家の庭でこんな金色の花を見たような……」
忍「あっ、あれはアリスの金髪でした」
アリス「シノ……」
カレン「HAHAHA、シノらしいデース」
アリス「ねえシノ」
忍「なんですか?」
アリス「もしかしてシノ、イギリス来たときのこと、あんまり覚えてない?」
忍「そんなことありません!」
忍「幼いアリスの金髪も、アリスのマムの金髪も目に焼き付いていますから」
忍「あのときはカレンには会えなかったんですよね」
忍「カレンの金髪も見られたらどんなに素敵だったことか……」
綾「別にいいじゃない、今は見れるんだから」
忍「いえ!もはや見るだけでは足りません!」
忍「というわけでカレン、その金髪で私を包んでください!」
カレン「どうしてそうなるデス?」
忍「仕方ありませんね……ではアリスの金髪にします」
アリス「えっ」
陽子「……しのはホントに変わったよな、アリスとカレンが来てから」
カレン「そうなんデスカ?」
綾「中学の頃はもうちょっとぽやーっとしてた感じだったわね」
陽子「確かに人様に髪を触らせろと迫るような子ではなかった」
カレン「ふーん……」
綾「でも意外ね、カレンなら喜んでやってあげそうな気がするわ」
カレン「……ほほう、アヤヤもやって欲しいデス?」
綾「私は別に……」
カレン「やっぱりヨーコの方がいいデスカ?」
綾「なっ……!」
陽子「?」
カレン「……はぁ」
綾「どうしたの?ため息なんてついて」
陽子「あ、もしかして古文の小テストの勉強してない?」
カレン「!!」
カレン「どうして分かったデス!?」
陽子「え?ほら、私も全然だから」
カレン「Oh! ヨーコもデスカ!それなら心強いデス!」
綾「二人とも」ゴゴゴゴ
カレン「ああっ!堪忍デース!!」
陽子「まあ大丈夫、綾に教えてもらえるからさ」
綾「」///
綾「そ、それで、陽子のクラスは古文何時間目なの?」
陽子「1時間目」
綾「そもそもそれじゃ無理ね」
アリス「もうやめてよ、ほら、早く学校行くよ?」
忍「あっ、待ってくださいアリス」
カレン「……」
陽子「しのとアリス、何の話してたんだろ?なんかアリス怒ってるけど」
綾「さぁ……。私たちも急ぎましょ」
陽子「そうだなー」
休み時間
カレン「ヨーコは大丈夫だったデショウカ……」
綾「カレンは自分の心配しなさいよ」
綾「それに陽子は普段から全然勉強してないもの。無理に決まってるわ」
カレン「辛辣デス!」
綾「いいからちょっとでも勉強しなさい」
綾「……そういえばしのがいないわね」
カレン「C組じゃないデスカ?」
綾「またアリスに会いに行ったのね。しのも勉強してそうにないのに」
カレン「アヤは勉強してるんだし、行けばいいじゃないデスカ」
綾「私がしのに会いに?」
カレン「Non, アヤヤが会いに行くのはヨーコデスヨ」
綾「な、わざわざ陽子に会いに行ったりしないわよ!」///
陽子「綾ー」
綾「!?陽子?」
綾「なんで陽子がうちのクラスに来るのよ!」
陽子「いーじゃん来たって」
綾「……小テスト、どうだった?」
陽子「全然?」
綾「その『できなくて当たり前』みたいな顔やめなさいって」
陽子「まあほら、期末で挽回すれば大丈夫だから」
綾「だからその自信はどっからでてくるのよ」
陽子「ん?だってさー」
陽子「テスト前だったら、今度こそ綾が教えてくれるじゃん?」
陽子「そうすれば綾と一緒にいられるしさ」
綾「……そ、そんなの期待しないで、ちょっとは自分で勉強しなさいよっ!」
陽子「えー」
綾「私だって陽子の勉強に付き合ってばっかいるわけには……」
陽子「綾しか頼れる人いないんだから、テストの時は付き合ってよ」
綾「まったく……」
陽子「あっ、もう戻んなきゃ」
陽子「じゃーねー、次の休み時間も来るから」
綾「えっ、そ、そんなに来なくていいわよ!」
綾「もう、何しに来たのかしら……」
カレン「……」
綾「?」
カレン「アヤヤが羨ましいデス」
綾「え、何?」
カレン「何でもないデス」
綾「そうかしら、何だか……」
忍「何の話をしてるんですか?」
綾「何ってほどでもないけど……」
カレン「さっきまでヨーコが来てたデス」
忍「そうだったんですか」
綾「あれ?しのはC組にいたんじゃないの?」
忍「いえ、私は職員室に行ってたんですが……」
綾「てっきりアリスに会いに行ってたんだと思ってたわ」
忍「それも良いですね。次の休み時間はアリスに会いに行くことにします」
忍「……いえ、休み時間が待ちきれません!やっぱり今すぐにでも……!」
綾「しの!もう授業始まるわよ!」
次の休み時間
忍「さあアリスのところに行きましょう!」タタタ
綾「え、あ、それは……」
カレン「ヨーコがこっちに……って全然聞いてないデス」
綾「行っちゃったわね」
カレン「シノまっしぐらデス」
綾「……」ソワソワ
カレン(そろそろヨーコが来る頃デスネ)
綾「あれ、カレン、どこ行くの?」
カレン「んー、ちょっとトイレデス」
陽子「よーっす」
陽子「あ、カレンどっか行くの?」
カレン「トイレデスヨ」
陽子「ふーん?」
綾「ねえ陽子、カレンの様子、ちょっと変じゃない?」
陽子「そうだった?」
綾「何となくだけど、元気が無いような気がするわ」
綾「変なもの拾って食べでもしたのかしら……」
陽子「扱い酷っ!」
カレン(……別にトイレに行きたいわけでもないデスガ)
カレン(ああ言った以上、行くしかないデス)
ジャー
カレン(トイレ行きたくなくても、トイレに入ると出るのはなんでデショウ?)
カレン(……まあそれはどうでもいいとして)
カレン(アヤヤが羨ましいデス、ほんとに……)
カレン(アヤヤがヨーコのことを好きだって皆分かってマス)
カレン(気持ちを隠したりしなくてもいいのはきっと幸せなことデス)
カレン(それに、アヤヤの一番近くにはいつもヨーコがいマス)
カレン(それはシノとアリスも同じ)
カレン(シノの一番近くにはアリスがいつもいて……)
カレン(私じゃないんデス)
カレン(シノの隣にはいつもアリスがいて)
カレン(アリスの隣にはいつもシノがいる)
カレン(ふたりが想い合ってることはハタから見てればすぐに分かりマス)
カレン(……いっそ、さっさと付き合ってくれたほうが楽かもしれマセン)
カレン(そうすれば一生この気持ちを秘密にしておくだけで済むデスカラ)
カレン(伝えようだなんて思わなくなるはずデスカラ)
カレン(私も、シノのことが好きだなんて……)
廊下
忍「あっ、カレン。どこ行ってたんですか?」
カレン「シノ!?」
忍「?」
カレン「……いや、ちょっとビックリしただけデス」
忍「カレンはうちの教室にいたのかと思ってました」
カレン「私はトイレに行ってたデスヨ」
忍「そうなんですか」
忍「じゃあ綾ちゃんと陽子ちゃんがうちの教室にいたってことですね」
忍「C組に行ったら陽子ちゃんがいなかったので」
忍「ふたりっきりだって、アリスと話してたんですよ」
忍「あ、それでアリスがなんだか顔が赤くて」
忍「休み時間の最初は普通だったんですが……」
忍「熱っぽいのかと思ったんですが、熱を測らせてくれなかったんです」
カレン「熱を?」
忍「はい、こう、おでこで……」
忍「アリスは大丈夫だと言ってたんですが、ちょっと心配です」
カレン「……」
忍「カレン?」
カレン「多分、大丈夫だと思いマスヨ」
忍「そうなんですか?」
カレン「ハイ……」
カレン(これを言ったら、多分もう元には戻れマセン)
カレン(シノもアリスも、私も……)
忍「?」
カレン「シノは、どうしてアリスの顔が赤かったか分からないデス?」
忍「はい?ええと……」
カレン「私には分かりマス」
カレン「シノ、ちょっといいデスカ?」ピト
忍「カレン?」
カレン「こうやっておでこをくっつけて、シノはどう感じマシタ?」
忍「どうって……?」
カレン「どうも感じないのは、シノが私のことをどうとも思ってないからデス」
忍「そんなことはありません!カレンは大切な……」
カレン「大切な?」
忍「大切な金髪の友達なんですよ!」
カレン「そうデス。シノにとって私は友達デス。だからどうも感じない……」
カレン「でも、アリスはそうは思ってないってことデスヨ」
忍「確かに私は金髪ではありません……でも心は金髪なはずです!」
カレン「……金髪は今は特に関係ないデス」
忍「てことは、アリスにとって私は友達じゃない……!?」
カレン「まあそういうことデス。ただの友達だとは思ってないんデスヨ」
カレン「アリスはシノを友達以上の存在として見てマス」
忍「そうなんですか……?」
カレン「そうデス。きっと」
カレン「シノはどうデスカ?シノにとってアリスは、ただの友達デスカ?」
忍「私にとって、アリスは……」
忍「アリスは、大切な、大好きな……」
カレン「……あとはシノが考えればいいことデス」
カレン「シノも、アリスをどんな風に好きか、よく考えてみてクダサイ」
カレン「早く教室に戻るデス。授業始まっちゃいマスヨ」
忍「あっ、そうですね、急がないと」
カレン(……顔が熱いデス)
カレン(多分私の顔も赤くなってるんデショウ)
カレン(シノが気付いてなければいいんデスガ)
~~~~~~~~~~~~~~
カレン(そのあとしばらくして、シノとアリスが付き合いだしたという話を聞きマシタ)
カレン(まあそんなことは聞く前から分かり切ってたことデス)
カレン(こうなれば諦めもつくかと思ってたんデスガ……)
カレン「今年も咲いてるんデスネ」
カレン「秘密の恋が終わらないのと一緒デショウカ……」
カレン「誰かに気付いてもらえるだけ、花が羨ましいデス」
おわり
きんモザでこういう切ないssは貴重だから嬉しいね
ん
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