君の名は。 もう一度出逢う (17)

君の名は。のssです。
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もう一度出会う


桜の舞う季節は過ぎ、初夏の香りが街中に広がっている。
窓越しに射し込む日の光が眩しく目を射る。
「やっぱ不思議やよねえ」
「ん?何が?」
ふと呟いた三葉に問いかける。

「いやね、うちらってさ付き合い全然長くないやろ?」
あぁなるほどね、と瀧は頷いた。俺と三葉が出会ったのはほんの2,3ヶ月前である。
春には赤の他人であった筈の2人が今は恋人として鼻に触れる程近くにいる。
人の繋がりとは不思議なものだ。


「糸守ではそういう繋がりの事をムスビって言うんやよ」
要は運命やね、と言って三葉は少女のようにくすぐったく笑う。
この3つ年上の彼女が瀧にはたまらなく愛おしい。
触れ合った温もりを離したくなくて傍から抱くように引き寄せた。





きっと三葉は知らない。瀧が時折感じる既視感の事を。
特に昔の話をする時。見た事も無い景色が目の前に広がるのを感じ、あった事も無い人に対し10年来の友人に向ける様な親愛を感じる事を。
そうした時に瀧は体の中に何か欠落して、そのあとに埋める物も無いままの空洞が存在しているのを確かに感じるのだ。

***

車窓から見える景色は次々と後方へ流れていく。
建物も人も地面も全部が投げ捨てられて、気づけば時間が凍りついた山間の景色だけが残されたままであった。


「はじめまして。三葉さんとお付き合いをさせて頂いています。立花瀧と申します」
形通りの挨拶が口をついて出る。
「あらまあ。遠い所までよく来たねぇ」
三葉の婆ちゃんに挨拶しに行きたい。と言い出したのは俺の方だった。


「今日はこの後どうするね?」
「えっと、そうですね、ここに来るまでに色々見れたので、そろそろ宿に戻ろうかと思います。」
「あぁ、そうかい、気をつけないよ」
糸守町の少し端に三葉の婆ちゃんは住んでいた。
5年前、確かに俺はこの街に妄執にも似た感情を抱いていた。
この街には何かがある。実際に訪れれば何かあるかも、と期待しなかった訳はない。
糸守の景色を見る事で失われてた記憶が復活するとか、お助けキャラが現れてヒントを出してくれるとか。そんなフィクションみたく都合の良い事は起こらなかったけれど。




ただ、長い歳月を経て復興を進める街を見ると、少しだけほっとした。




予定していた旅館に着くと食事をすませ、風呂に入り、浴衣に着替えた。
「あーっ!ほんとに旅行やあ!」
三葉は唐突に口を開く。

「どうしたんだよ急に」
「いやあ、ずっと住んでた町もこうして見ると違うもんやなあって。……17年も住んでた町に来るのに、ちゃんと旅行になるもんやなあってね」
「そういうもんかあ」
「そういうもんやよ」

高校の時は何もかも嫌だったのにね、そう言って三葉は薄く笑う。
真冬の渓流みたいに、顔も手も皮膚が透き通る様に青白いのに、頬だけが朱に染まっている。
ほろ甘い体臭が感じられそうなその浴衣姿に目をそらす事が出来なくなってしまった。







やがて、そうする事が自然な気がして、俺は電気を消し、三葉に口づけした。
暗闇の中で静かに衣ずれの音が聞こえた。


***

暗い部屋に射し込む光が眩しい。見ると太陽はすっかり昇りきってしまっている。
まいったなあ、寝過ぎてしまった。チェックアウトの時間には間に合うだろうか。
そんな考えを巡らせてようやく、隣に三葉の姿がない事を確認出来た。


「お連れ様ですか?先に出発された様ですが……」
「あ、そうですか……いえ、すみません」
部屋に三葉の荷物は無く、電話も繋がらない。
一体どうしたというのだろう。

その時、携帯電話が通知音を鳴らす。
画面にはテキストアプリが1つの文を表示している。


『瀧くんへ、どうしても行ってみたい所があります。先に東京へ帰っていてください。勝手ですみません。 三葉』


この文は……、俺も前に似た様な事をした事がある……!
そう、あれは5年前の……

脳の、記憶を司る海馬とかいう部分、その更に奥で何かが弾けた。
なんで! なんでその可能性に気づけなかったのか!

三葉も胸に空いた空洞を埋めようと必死だったのではないか。
俺が高木や司の、奥寺先輩の話をする時、あいつも胸の中の欠落に痛みを感じていたのだ。

心に火が点いていた。 今すぐ駆け出したい。それはあの日から今日までくすぶり続けた小さな種火であった。
長らく整備されていない道は脆く頼りない。脇から生える木々に邪魔されて満足に進む事も出来ない。
だというのに瀧は走る事をやめられないのだ。

この先に何かある、という妄執にも似た確信だけを頼りに走る。
土くれにメッキをかけただけの過去を確かな物にしたいから走る。
三葉と共に歩む未来を見据えたいから走る。自分と三葉の道はこの先にしかないから。





立花瀧は思う。自分と三葉が出会ったのは偶然なのか?と
偶然な筈はない。だって自分達の間にはこんなにも強い「ムスビ」が感じられるのだから。

***


どれくらい経っただろうか。午後の光は薄れ、あたりには夕暮れの気配が混じり始めている。
山頂へたどり着くとそこには三葉がいた。
疑問はいくつも沸くが、全ての神経を弛緩し、流れの中に身を委ねる。後は勝手に「ムスビ」が俺達を繋げてくれる気がした。

三葉と互いに見つめ合う。2人の視線が十字に絡んで浮いて揺れる。
やがてあたりの色が一段暗くなり、世界の輪郭がぼやけた。
そうして俺達はどちらからともなく呟く。


「カタワレ時だ」




その時一陣の風が吹いた。
それは胸の中で突風に変わり、ひたすらに吹き荒れる。
記憶の奔流が2人をひたし、そして頭をかき乱す。

どこまでも堕ちていく様な、また昇っている様な判然としない浮翌遊感の中で俺達はくるくると廻り続ける。

「最近、何日かにいっぺん、人が変わったようになるよねぇ」
あっ、サヤちんだ!
「まぁ、急激に男ウケは良くなったは、ここんところ」
こっちはテッシー!
よく見ればそこら中に見知った顔が見える。
あそこにはユキちゃん先生、妹の四葉もいる!



「糸を繋げることもムスビ 、人を繋げることもムスビ 、時間が流れることもムスビ 、ぜんぶ 、同じ言葉を使う 」
三葉の婆ちゃんがつげる、浮翌遊感はすでに消えていた。


「よりあつまって形を作り 、捻れて絡まって 、時には戻って 、途切れ 、またつながり 。それが組紐 。それが時間 。それが 、ムスビ 」
川のせせらぎが聞こえる。気づけば懐かしい顔ぶれは消えて、元の景色が戻って来ている。
あたりには俺と三葉だけだ。


「瀧くん」
三葉が自分に言い聞かせるように、確認する様に俺の名を呼ぶ。
「三葉」
大丈夫だ、もう忘れない。








あぁ、記憶を超えて、時間を超えて、感情だけが全てを飛び越えて、
こうしておれ達はもう一度出逢うのだ。

終わりです。
pixivにも投稿したものです。
批評、指摘など、何卒お願いします。

つまらないし文章力もないからもう文章書くのやめた方がいい

つまらないし文章力もないからもう文章書くのやめた方がいい

まずsaga書く位置が違う

文章がつまりすぎてて読みづらい
短いなら短いなりの書き方あると思う

まぁ、ここ事態がそんなに文才ある人が居るわけじゃないし、居ても批評なんてしないから、ここに感想とか求めるのは辞めた方がいいんじゃない?

sagaはメール欄に書くんやで


楽しかったです。
この作品は色々妄想が捗るから二次創作もっと増えろ。

>>12-14のコロコロが酷すぎて笑えない
作品としてはよかったと思う

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