【艦これSS】提督「ごめんな」 (32)

艦これSSです
したらばに書いてたらこちらの方が人が多いと言われたのでこちらへ
テンポが遅いので、ゆっくり見ていってくれれば幸いです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1471605945

泡立つ潮と闇を吸う黒い海水が荒れ狂う中、轟音が双方で鳴り響く

片方には巨大な鉄の船
又片方には蒼い眼光を宿した異形の生物が海水を裂きながら進んでいた

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海兵A「ダメです!ボイラーもやられています!」

海兵B「レーダーも使用不能!」

海兵C「馬鹿か!こんな状況でレーダーなんぞ何の役に立つ!」

艦長「・・・総員退避、艦が沈むか、ボイラーが爆発するか、どちらにせよこの場にいては命は無い」

海兵A「総員退避!繰り返す!総員退避!!」

艦長「また我々の領域を侵すのか、化物よ・・・」

艦長「だが、我々はいずれお前らを打ち倒す方法を編み出し、ここに還り、お前らを殲滅する・・・・・・必ずだ」
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鉄の塊となった艦が沈んだ静寂の中
異形は密かに言った




マ・・・モル・・・クニ・・・ヲ


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海軍区 第三管轄鎮守府 佐世保

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中将「で、今回の生存者は、白河少佐、君を含めて・・・2人だけ、と」

白河「はい」

中将「随分と元気そうだが、君は一つの戦隊を無駄にした戦いだったという自覚はあるのかね」

白河「・・・それは指揮が適切では無かったからではないのでしょうか?」

中将「・・・分かった、君は少々疲れているようだな、別分隊への異動を申し出ておこう」

白河「おべっかなんぞ使わずとも、処分ならばその腰の物を、使われてはいかがですかな?」

中将「貴様・・・!」

白河「ご無礼を、中将 少し疲労が溜まっておりまして 異動の件、喜んでお受けいたします では・・・」

中将「おい!・・・くそ、少し頭が回るからと言ってあんなのを昇進させやがって、上は一体何を・・・」

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白河「・・・・・・勝てないとわかっていて何故挑む・・・!」

白河「・・・奴らを殺さねば、人間に未来はない」

「だいぶ物騒ではあるが、的を射ているな」

白河「だろうな、ここ数年で約7割の制海権を失った、このままでは・・・ん?」

周りを見渡しても誰もいない、音源が見当たらない 幻聴かと下を見てため息を吐いたその時

小人「やあ、海兵さん」

別の形をした異形が、そこにいた

白河「フンッ!!」

蹴りは空を切った

小人「何故蹴ろうとする!?あぶっ!!」

白河「・・・お前らはあいつらの仲間か?」

小人「いや、違うぞ、私は君のみかあぶぅっ!?何故だ!?違うと言っとろうに!」

白河「俺は『あいつら』としか言ってない、なのに何故お前らはそれだけで対象を識別できた?かんけいがあるからだろう?」

小人「確かにワシらはあの化物たちとの関係は無いといえば嘘になる!だが君の敵ではない!これだけは誓おう!!」

白河「・・・分かった、要件だけを言え、その後潰す・・・ん?ワシ『ら』だと?」

小人「ああ、他にもいるぞ、ワシの仲間が」

小人が後ろを振り向くと、向こうは海であるはずの塀を超え、小人たちがぞろぞろと這い上がってきた

小人「・・・さて、そろそろワシらの紹介をしよう 我々は君たちの言葉で言うなら幽霊、魂、それらのようなものじゃ」

白河「で、その幽霊が何のために俺の所に?」

小人「・・・信じるのが随分と速いな」

白河「非日常には慣れてる」

小人「・・・話が早くて助かる、それで、君への要件 あの異形への対抗策だ」

白河「・・・何?」

小人「我々は君たちがあの海上の異形に海を奪われるところを今までに見てきた
   嘆く海兵も 爆撃を恐れる市民 現実を逃避し逃げる将校 全部だ」

白河「・・・仮に、その対抗策とやらがあるとして、何故お前らがそれを知っている
   我々はそこに辿りつけなかった 何年を費やしても」

小人「我々が、異形だからだよ」

白河「・・・・・・」

小人「まずは、あの異形、そして我々が作られた経緯から話そうか」

白河「・・・待て、『作られた』だと?」

小人「そうだ、あやつらと我々はれっきとした人工物だ」

白河「あんな物を・・・どこが、いや誰が・・・?」

小人「アメリカ合衆国だよ」

白河「・・・アメリカはあいつらが出現し始めて真っ先に滅ぼされたんだぞ」

小人「自滅をいうやつだな」

白河「・・・なるほど、謎の兵器を作り、制御しきれずに自爆・・・か」

小人「制御しきれず、と言う部分は合っているが、一部間違いがあるな
   アメリカはあれを兵器としては造ろうとはしていなかった」

白河「あんな物を・・・兵器以外に何として使う」

小人「当初は、魂、霊魂、未知のエネルギー、こういった物の利用ができないか
   という研究だった そして、そういった別の世界・次元に存在する様なエ
   ネルギーを引っ張りだして来るには、相応の濃度の存在する箇所に於いて
   研究する必要があった」

白河「・・・オカルトか」

小人「このようなご時世になってもオカルトなどと言うのだな、我々が目の前にいるのに」

白河「まだ俺の幻覚という説も捨てきれん」

小人「・・・話を戻そうか そして、その対象となった箇所 それは、過去の戦場だ
   悔恨、悲哀、憎悪、死後も色濃く残る感情の渦巻く地」

白河「死後の念をも利用しようとは、欲深いことだ」

小人「人事のようだな、同じ人間だろう」

白河「自分は自分だ、他の何でも無い」

小人「・・・そして忌々しいことに研究は成功した そして生まれたのが、私達だ」

白河「それじゃあなんだ、お前らは人造の人間だとでも言うのか?」

小人「いや、我々は人間では無い、あくまで御霊、霊魂のような物だ
    それ故、我々の姿は俗に言われる霊感と呼ばれる者にしか見えない」

白河「・・・じゃあ俺には霊感があると?」

小人「いや、君にはそんな特殊な物はない 我々は自分の意識した人間にだけ姿を見せることが出来る」

白河「・・・少しでも期待した俺がバカだった」

小人「我々を見た研究者達は歓喜した 当初は本当に只新しい物を創り出せたという喜びからの純粋な歓喜だった」

小人「限りなく小さな体に人間と同等の智能、姿を晦ます事ができる我々の生態を生活の中に転用しようと研究者たちは奮起した
    しかし軍人達は当然我々を軍事利用の目的でしか見ていなかった」

白河「・・・・・・・・・・」

小人「軍部は研究所を半強制的に接収・軍事利用し出した」

白河「まあお前らみたいなのが創りだされたらそりゃ目もくらむだろう
    偵察、スパイ、隠密行動には持って来いだ」

小人「そして、我々は悪意を感じ、その軍人たちの前から姿を消した
    すると軍部の奴らは研究者達を使い、新たに我々を創りだそうと試みた 
    研究者たちは今回の成功は一例に過ぎない、何が起きるかわからないと念を押したが、非人道的な脅迫も行われたようで実験は再始動した」

白河「・・・それで?」

小人「結果から言うと成功した、また新たな異形が生み出された・・・・・・・我々とは違った形でな」

白河「おい、まさか・・・」

小人「そう、それが今この海を混沌に貶めているあの黒き異形の招待だ」

白河「何故、お前らのように作り出されなかった?やはり失敗だったのか?」

小人「いや、実験の方法とエネルギーの抽出はうまくいっていた 問題は創り手がすげ変わったことにある」

白河「軍人達のことか?」

小人「そうだ、あのおぞましい異形が生み出された理由にはそれがある」

白河「何故?」

小人「さっき憎悪の力、精神の力と言ったな あれは異形が創造される時のその場にいる者の感情をも糧とする 純粋に技術の発展の為にと願い創造した研究者達からは希望、期待といった陽の力が糧となった」

白河「なら・・・軍人達が原因というのは・・・」

小人「そう、奴らの心の殆どは私怨、他国に対する憎悪で満たされていた 兵器として創るつもりで居たのだから当然だがな」

白河「それが・・・あいつらの正体・・・」

小人「あとは先程言ったとおりだ、産まれた異形を制御できずに、国家ごと壊滅、今に至る」

白河「待て、あいつらの数は明らかに異常だ、それだけの数が研究所で生み出されたのか?」

小人「いや、奴らは怨念の地・・・悽地と呼ぼう そこに棲みつき、自らの怨念で異形を増やし続けている」

白河「無限に湧き出てくるのはそれが理由か・・・それなら悽地を叩かねば無限に・・・」

小人「そこで本題に戻ろう、奴らへの対抗策だ」

白河「・・・我々もできうる限りのことは試した、だが奴らには効いていないというよりもまず攻撃が届いていない、という感じがした」

小人「いい勘をしている、まさにそのとおりだ 別の場所からのエネルギーで生み出された生物には基本的に此方側からの干渉はできない」

白河「つまり?」

小人「我々も奴らと同じ異形で対抗する」

「アンノウンイ型!!当鎮守府より約16000の距離にて目視発見!
  潜水により接近を許した模様!!電探班は何をやってたんだ!」

 「速度38ktで此方へ向かっています!敵主砲射程圏内!砲撃翌来ます!!」

空を裂く音とともに弾丸が一発、また一発と降り注いでくる

白河「なっ・・・!くそ!何故今!!」

小人「・・・来たか」

小人はそう言うとくるりと後ろを向き、塀に乗り上げ下にいる何者かに声を張り上げる

小人「いけるか!」

   「はい!大丈夫です!やってみせます!」

白河「・・・何だ?そこに誰がいる!?ここは関係者以外立ち入り禁止のはずだぞ、そもそもその向こうは海じゃあ・・・」

塀に身を乗り上げ、大海である筈の下を向くとそこには
鈍い銀色の鉄塊を身に纏った、セーラー服のまた別の形の『異形』が海の上に立っていた

白河「あれは・・・誰だ?いや、何だ?」

小人「彼女こそが、我々の持つ海の異形への対抗策 艦の魂を持ち生を受けし者」

小人「『艦娘』だよ」

白河「艦、娘・・・・・・」

小人「艦の魂を持ち、人と同じ様に感情を持ち、何よりあの海の異形に対抗しうる力を持つ」

白河「あんな小さな女の子が・・・」

小人「・・・また驚かんのだな、明らかに信じられないことだろうに」

白河「・・・驚いてはいる、だがそんな物にでも縋らなければ、我々に未来は、無い」

小人「・・・そうか」

「すいませーん・・・そろそろあれが近付いてきそうなんですが・・・」

少女が割って入るのを躊躇いつつこちらへと口に手を当て通告する

小人「初陣で無理を言ってすまない、頼めるか?」

「はい!やれます!叩いて見せます!」

少女はそう意気込み踵を返すと、異形の方を向き、前傾姿勢を取ると、視界から消えた

白河「なっ・・・!!」

いや、消えたのではない 奥に見える小さな影がそれであろう

白河「何て速さだ!」

小人「彼女が身に付けている装備・・・艦に倣って艤装と呼ぼう 艤装は限りなくあの黒き異形のそれと近い物だ」

白河「・・・目には目を、か」

小人「その通りだ そして彼女自身は我々に近い、奴等と違い知性を持ち、奴らと同じ力をつもの それが艦娘だ」

小人「艦の魂から生を生み出す際に、我々はそれを2つに分ける」

小人「陰陽それぞれの力にだ」

白河「陰と陽・・・」

小人「陰は奴らの力の部分 陽は我等の理性の部分」

小人「それらを完全に分離させることにより、彼女はあの力を制御できる」

白河「しかし、あの巨体だぞ・・・い
くらなんでも・・・」

小人「あのクジラ型の異形は怨念が肥大化したもの、中身はスカスカだ
もちろん個体差はあるがな あれ程度ならば、艦娘1人でも手の打ちようはある」

白河「・・・見せてもらおうか、人類の希望って奴を」

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「砲撃が止みました!!!被害報告を収集しています!!!」

中将「何故砲撃が止んだ!?」

「見張り員から報告!!海上に人影を発見!!イ型はそちらの方へ注
意を向けた模様!

中将「どこのどいつだ!?勝手に魚雷艇を出したのは!」

「いえ!違います!!・・・人間が!海に浮いています!!!」

「人影らしき者が砲撃!!イ型と交戦している模様!!!」

中将「何だと・・・!?」

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「距離・・・約8000・・・いや8500?」

海上を少女が海を足で裂きながら進む

「・・・お願い!当たってぇっ!!!」

ドゴォォォォン!!!!と砲撃音が響く
その弾頭は浅い弧を描き、異形へと着弾する

グ、グオオオオオオオオオオオオオオン!
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白河「効いている!?」

小人「あの弾頭は彼女の意思の力から創り出されたもの、精神の力である異形へと傷を与えられる唯一の兵器だ」

白河「あれなら・・・」
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少女の脚へと装着された魚雷が、イ型の方へと角度を変える

「魚雷、片舷一斉発射よ!」

小ぶりではあるがその中に強大な力を秘める黒い魚雷が、扇状となりイ型に向かう

が、標的はそれを視界に入れると角度を変え、その隙間を縫うように避ける

その瞬間

「急速接近、気付きませんでしたね」

双方の眼前の距離に、それぞれ異形が見えた

イ型はグオオオオオ!!と口を開き応戦しようとする、その時

「遅いです」

イ型は眼前の魚雷発射管、主砲が共にこちらを向いているのを見た

次の瞬間、海に残る異形は片方のみとなった
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白河「1発目の雷撃は囮、肉薄して撃破、か」

白河「多少無茶があるが、戦術案にも長けているようだ」

小人「冷静に分析しているな、もっと高翌揚とかそういう気持ちはないのか」

白河「もちろんあるさ、だが彼女らとどう協力して異形に立ち向かうかを考える事が先だ」

小人「・・・君を選んだ私の目は間違っていなかったようだ」

白河「・・・そうだな、そう言えば、そこを聞いていなかった」

白河「なぜ、俺なんだ?なぜ俺に姿を見せ、全てを話した」

小人「・・・・・・・・・」

小人「・・・君から彼奴等への底知れぬ憎悪が感じられたからだ」

白河「・・・・・・」

小人「我々は人の感情から作られた存在だ、他の人間の感情も多少ではあるが読み取ることが出来る」

小人「君を初めて見た時に驚いたよ、肉親を奪われたとしてもここまでの憎悪を人間が出せるものなのか、と」

小人「・・・何故、そこまでの憎悪を持つ」

白河「・・・・・・確かにそうだな、私は彼等に底知れぬ憎悪を抱いている だが、同時に奴等への羨望も持っている」

小人「・・・・・・・・・・・・」

白河「そうだ、俺は奴らに肉親を奪われた 一人残らずだ・・・避難船を襲われた」

白河「絶望したよ、一時は死を考えもした」

白河「そして、ふと思い至った 俺が兵士に志願した理由、それは戦争を無くすことだ この世界はいつも争いでしか争いを止められない、どちらかが滅するまでは終わらない」

白河「あの化物が現れる迄もそうだった 世界中を巻き込んだ大きな争いがあった 俺はそれを止めら
れもせず、又終わらせることも出来なかった」

小人「・・・・・・」

白河「だが、あの化物が出た瞬間から人間は争いをやめた 共通の敵が現れたからだ」

白河「・・・それが憎かった!どれだけ願おうとも終わらせることの出来ない戦争を奴らが一瞬で止めた!終らせた!」

白河「だが俺は兵士だ、争いを終わらせることが責務だ 化物達は戦争を終わらせた 今度は俺が等を殺して戦争を終わらせる それが責務だ」

小人「君もなんとまあ・・・捻れてるな」

白河「変人と言われるのには慣れている」

あれ?深夜と同時進行?

小人「・・・そうだ、君のその憎悪が、尽きぬ憎悪が必要だ 異形との争いは長きに渡るだろう そして想像を絶する絶望をも生むだろう その最中にも、奴等への憎悪を生み続ける意志が」

小人「そうでないと、奴等とは到底渡り合えない」

白河「・・・鬼にでもなる覚悟さ」

笑みを交わし合うと、遠くの水平線の上に、手を上げる人影がちょこんと乗っていた

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「やりました!司令官!」

白河「いや、司令官ではないが・・・」

小人「いや、司令官でいいだろう 君はこれから彼女達を指揮することになるだろうから」

白河「・・・指揮も何も、どう説明するんだ これ」

後ろを振り返ると複数の銃口がこちらを向いていた

中将「その少女を拘束せよ・・・白河少佐、君にも、話を聞かなければならないようだ」

白河「彼女はこの鎮守府を救いました、手荒に扱わないで頂きたい」

中将「君次第だ」

白河「・・・・・・・・・・・・・・・分かりました、同行します」

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中将「・・・それでは、少佐は再びここに呼び出されたわけだが・・・」

白河「・・・・・・」

中将「まず幾つか質問がある 1つは彼女は何者なのか、何よりも軍部の関係者なのか、私の知り得ない兵器の可能性もありうる」

中将「少佐はあれが何かを知っているのか?」

白河「・・・多分お前らを見せた方が話が早いだろう」

中将「何を言ってる?気が狂ったか?」

白河「今から話す事、お目にかける事は全て真実です そして、これら全ては我々人類に仇なす事は無い、と先に理解して頂きたいのですが、よろしいでしょうか」

中将「場合にもよるが・・・まあ、よかろう」

白河「それでは・・・」

白河は何も無い手を差し出す

中将「・・・?何だ?何が・・・なっ」

>>20 はい、コメントで他の方でもやっては?と言われたので、こちらでもと

すると瞬きの間よりも速く、目の前に球体が現れた いや、正確には小さな人形の様な体に球体が乗っているという方が正しいだろうか

中将「・・・お、おぉぉぉぉ・・・ぉん?」

白河「・・・顔が近いです、中将」

中将「お、おお・・・」

驚きを隠せない顔のまま、後ろの椅子にそのまま腰掛ける

中将「少なくともこれがあの化物達と関係しているということだけは、流れから読み取れる、だが・・・」

白河「彼女は、彼等が創り出したものです あの化物たちに対抗しうる存在 艦の魂を持つ者『艦娘』です」

小人(受け売りだな、私の・・・)

中将「・・・信じたくはないが、今何よりも大事なのは、実際に少佐、君の言ったとおり彼女が化物を打ち倒したことだ」

白河「現在我々が化物達に打てる手はありません よって、私は彼女、そしてこの彼らの力を借りてあの化物達と闘う事を提案します」

中将「・・・鎮守府内きっての変人と言われていた君の言う事だ、君はいつも天地が引っ繰り返るような案ばかり具申して来たが、まさかここまで来るとは思わなかったよ」

白河「・・・ご考慮を」

中将「・・・・・・厄介祓いにちょうどいいな」

白河「・・・どういう事ですかな?」

中将「白川少佐、貴官を本日付けで当鎮守不所属制海艦隊から除名する」

白河「手に負えないからと言って左遷ですか」

中将「尚、改めて当鎮守府組織下に技術研究局を発足し、当局長として任命する」

白河「・・・・・・」

一瞬目を見開いた白河を、澄ました顔で見つめる

白河「それでは・・・」

中将「私にはそれを理解する事が出来ない、したくも無いがな 少佐自身が出会った異形、自らの手でどうにかしろ だが、私は何の責任も取らん 今日ここで見た事は、何も知らん」

白河「・・・有難うございます」

中将「お前は今から只の技研局長だ、私の元で働く事も無い」

中将「旧海軍の建造物が使われずに保存されている、そこを好きに使え 必要な物は、自力で調達しろ」

白河「ご理解頂き、感謝します」

中将「・・・早く出て行け 彼女も早くここから出せ、最前線の軍事施設に女を長く置いておくわけにもいかん」

白河「・・・失礼します」

ドアを開き、白河は会釈をしながら出て行った

中将「・・・あいつは私の手には負えないな、全く」

中将「どこまで出来るのか、見せて貰おう」

中将「どちらにせよ、人類が生き残らなければ、意味は無い」
.....................................................
白河「・・・・・・・・・・・・・・・」

小人「どうした?黙りこくって」

白河「いや、中将が意外と話せば分かる人物だったというのが意外だ、もっと媚売っておけばよかったか・・・?」

小人「とことん捻じ曲ってるな、君は 彼からは悪意は感じなかった 信用に値する人物としよう」

白河「それよりも、彼女は何処だ?拘束はされて無いと聞いたが・・・」

「ちょっと、困ります・・・止めてください・・・!」

微かに少女の声が聞こえる

「ほー!こんなんなってるのか!」
「恥ずかしいですから!止めてください!」

白河「・・・おいおい」

海兵であろうと思われる男の声と少なからず嫌悪の色を示す少女の声が聞こえる先に向かうと、そこには

「こんな小さいのにちゃんと缶も機関も主砲も緻密に作られてるなあ!」
「いやー!スゲエなあ!これであの化物倒したんか」
「あんまり見られると恥ずかしいから、止めてくださいぃ・・・」

艤装を丹念に観察する海兵と恥ずかしがる少女が居た

白河「残念だったな」

小人「はい」

白河「はいじゃないが」

.....................................................
白河「・・・という事で半ば追い出されるように、この研究所と言っていいのかも怪しい施設を得た訳だが」

白河「・・・・・・」

白河は周りを見渡す

少女、複数の小人、以上

白河「どうしたものか・・・」

「司令官!私に何か出来ることは有りませんか?」

少女が屈託のない笑顔でこちらを向く

白河「そういえば、君にお礼を言っていなかった、化物と戦ってくれてありがとう、助かった ・・・すまない、名前を聞いていなかったな」

「はい!遅くなりましたが自己紹介をさせていただきます!」
吹雪「特Ⅰ型駆逐艦一番艦、吹雪です!よろしくお願いします!」

白河「吹雪・・・旧海軍の艦艇だったな、本当に艦の魂を持っているのか」

小人「疑ってたのか?」

白河「何故女でセーラー服なんだ」

小人「古来から船は女性扱いだ」

白河「服は」

小人「水兵だ」

白河「水兵か」

深夜板とこちらの同時進行になります
深夜板の方を先に更新しますので、どちらの板も見ている方はそちらをどうぞ

私はこちらで楽しみにさせていただきます。
支援

期待

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