レンタル妹(オリジナル百合) (125)
※男が出るだけで拒否反応出る人は回れ右
とあるライブ会場
ペラペラ
兄「ひーふーみー、けっこうバイト代入ったな…現金支給って心躍る」
兄友「俺より多くない?」
兄「睡眠返上して働いただけあるわ」
兄友「あんなにバイト嫌だって言ってたのにな」
兄「一ヶ月だけで、しかもこれだけもらえるなら、まあ行かない手はないさ。あー、でもそろそろしんどいわ。楽して金を稼げれたらラッキーなんだけど」
兄友「だなあ。働きたくねえよなあ」
兄「ああ、働きたくねえなあ」
兄友「競馬とか宝くじでどかんと一儲けしてえなあ」
兄「ほんとにそれ」
兄友「そういや、今回のライブで歌ってたミリヤちゃんいるだろ?」
兄「え、誰それ」
兄友「いや、おまえイベントの主役なんですけど」
兄「え、しらね」
兄友「俺もよく知らないけどさ、若い女の子の間で流行ってるんだって」
兄「へえ」
兄友「次のライブのチケットと握手券もらったからやるよ」
ヒョイ
兄「え、いらね」
兄友「はえーよ。ミリヤちゃん本人にもらったんだぞ?」
兄「わー、ありがとー。大事にしまっとくわー」
兄友「使う気ないだろ。おまえ、妹いるだろ? 妹にやれば?」
兄「……」
兄友「はい、やるよ」
兄「ああ、ありがと」
スッ
兄友「もらったな? よし、じゃあ、次のライブも手伝いに来いよ」
兄「はあ?! なんでそうなるんだよ?」
兄友「もらっただろ?」
兄「おまえは、詐欺師か」
兄友「あ、返品不可なんで、じゃ、先に帰るわ!」
ダダダダッ
兄「うおい!」
兄友「アディオス!」
兄「……おまえが、行きたいだけだろう」
チラ
『ミリヤ、スーパーサマーフェス! この夏、全ての少女が進化する!』
兄「……」
兄の家
兄「ただいまー」
妹「お帰り、お兄ちゃん」
兄「あのさ、おまえ」
妹「なに?」
兄「これ、いる?」
ピラッ
妹「……え」
兄「ミリヤって女子高生のライブなんだけど、お前もこういうの疎そうだな」
妹「知ってるわよ。うちの高校の人でしょ」
兄「え、へ、へええ? まじか」
妹「お兄ちゃん、関心なさすぎ。お兄ちゃんの学年だし」
兄「え、ええええ! いや、それは驚いた。お前全然そういう話したことなかったじゃん」
妹「話す機会なかったでしょ。むしろ、なんでそれ聞いたことないか不思議ってか、耳に入れなさすぎ。ほんとお金のことばっかりなんだから」
兄「まあ」
妹「で、それくれるのくれないの」
兄「あ、欲しいの?」
妹「……」コク
兄「2万で仕入れてきたので、1万で売るが、どうだ」
妹「妹から、お金取る気?!」
兄「いるのか、いらんのか」
妹「……ぐ」
兄「俺は別に何の興味もないから、ここでこいつを破り捨てることもできるが」
ピリッ
妹「うわああ?!」
ガシッ
兄「……おいおい、どうした?」
妹「……お金ない」
兄「金がないだと? 金がないなら作ればいい」
妹「バイト禁止なのに、お兄ちゃんみたいに私は不良じゃないのよ!」
兄「兄の労働は、純粋な動機でやっているんだから、何も不良な要素なんてない」
妹「金儲けのどこが純粋なのよ。この金の亡者」
兄「では、このチケットはここで無かったことに」
ピッ
妹「うわああ!!」
ガシッ
兄「このやり取り疲れるから、あと一回だけだぞ」
妹「お金、どうやったら稼げるのか教えて!」
兄「うん?」
妹「だから、どうやったらお金稼げるか教えてよ!」
兄「……お前は、たまに心配になるくらい純粋だな」
妹「はい?」
兄「いいだろう。では、お前の特技を言ってみろ」
妹「家事、勉強」
兄「うむ、女子としては優秀だが、個性のない奴め」
妹「悪かったわね!」
兄「しかし、ちょうど良く荒稼ぎできる物件がある」
妹「……え、エッチなことはちょっと」
兄「実の妹にそんなことさせんわ」
妹「じゃあ、なに?」
兄「お前をレンタルさせる」
妹「……はあ?」
兄「うちのクラス、金持ち女子が多くてさ、この間お前の作った弁当見た時に、お金払うから、作りに来て欲しいって言ってた奴がいんだよ。手始めにそいつから」
妹「や、でも、え、ちょっと冷静になろうよ」
兄「いたって冷静だが」
妹「そ、その間お兄ちゃん自炊しないといけないけど?」
兄「お前が、立派に一人で金を稼げるようになるなら、些細なことさ。一緒に頑張ろうぜ」
妹「なんか、良い話っぽくまとめないでよ」
兄(これが成功すれば、今後1年いい商売になるかもしれん……)
妹「悪いこと考えてる顔してるんですけど」
兄「バカ言え」
妹「……でも、ほんとにそんなことでお金になるの?」
兄「ま、明日学校言った時に聞いてみるわ」
妹「冗談だと思うんだけど」
兄「さあ、どうかな。どっちにしろ、やるかやらないかはおまえが決めること。どれくらいミリヤのライブに行きたいかってことさな」
妹「む……」
兄「……さ、飯作る練習でもするか」
妹「……」
次の日
兄の教室
ポン
女生徒「はい?」
兄「おまえさ、この間うちの妹貸して欲しいって言ってただろ」
女生徒「言った言ったー。ふふ、貸してくれるの? なーんて」
兄「ああ、いいぜ」
女生徒「うそだー」
兄「嘘じゃないよー」
女生徒「ほんとにー?」
兄「マジ。実は、妹が割と本気」
女生徒「なんで?」
兄「とにかく金がいる状況になってしまってな」
女生徒「でも、兄君の妹さんあんなに真面目そうだから、私と正反対だよー。一緒にいて怒らせちゃわないかな」
兄「バイト代がはずめば、何も言うまいさ」
女生徒「それは全然大丈夫だけど」
兄「ちなみに、時給制にして欲しいんだが」
女生徒「じゃあ、1時間あたり1000円かなあ」
兄「よし、それで話通しとくぞ!」
女生徒「うーん、いいのかなあ」
兄「妹を救うと思って頼むよ」
女生徒「まあ、面白そうだしいいよー」
放課後
兄「妹、どうだ。良い稼ぎになるだろ」
妹「なる。なるけど」
女生徒「無理はよくないよ、兄君」
兄「無理なんかさせてないさ。決めるのは妹だ」
妹「……」
兄「ずっとやれなんて言わない」
女生徒「しんどくなったら止めちゃえばいいよー」
妹「一度受けたからには最後までしますよッ」
兄「お、ということは」
妹「やる。ミリヤちゃんのためにも」
女生徒「ミリヤちゃん? それって3年の?」
妹「あ」
兄「うむ、実はな」
妹「そ、それはおいおい自分で言う!」
兄「だそうだ」
女生徒「はーい。私、一人暮らしなの。だから、いつ手伝いにきてもらってもかまわないんだけど」
兄「手始めに、夕飯を作らせてみろよ」
妹「また、勝手に話をすすめるんだから」
女生徒「妹ちゃんがいいなら、今夜さっそく」
妹「……」チラ
兄「……」フリフリ
妹「行きます」
今日はここまで
乙
いい
乙
乙です
信じて送り出した妹が…
乙
女生徒の住むマンション
女生徒「上がって上がって」
妹「お、おっす」
女生徒「おっすって……ふふ」
妹「あ、す、みません。失礼シマス」
女生徒「緊張しないでいいんだよ」
妹(初対面に近い先輩の部屋に来て、緊張しない人はいないと思います!)
妹「は、はあい」
女生徒「冷蔵庫にね、一応昨日買った食材はあるの」
ガチャ
妹「えーっと」
女生徒「野菜が下にあって」
妹「はい」
女生徒「上にお肉とか」
ガラッ
妹(うちの冷蔵庫より大きい。羨ましい)
妹「あれ、これって化粧水ですか? ピーシーズ? ぺぺローション? 聞いたことないですね。外国のですか?」
女生徒「あ……うん」ニコ
妹「?」
女生徒「後で使い方教えてあげるねー」
妹(使い方?)
トントン
妹「……あの」
女生徒「なに?」
妹「そこに座ってテレビでも見ててください」
女生徒「何か手伝うことない?」
妹「お給料もらうんですから、大丈夫ですよ」
女生徒「そっか。じゃあ、お願いね」
トタトタ
妹(今頃、お兄ちゃんちゃんとご飯作って食べてるかな)
ザクザク
妹(コロッケなんかで良かったかな。お嬢様のお口に合うかな)
妹「そう言えば、先輩は普段何を食べてるんですか?」
女生徒「私? 私はね、お寿司とか、イタリアンとか、料亭に行くことも多いけど」
妹「……」
女生徒「どうしたの?」
妹「いえ、格差社会を感じてました」
女生徒「料理作れないから、どうしても外食になっちゃうんだよね。だから、妹ちゃんのお弁当が凄く羨ましかったんだよ」
妹「わ、私そんなに上手くできませんよ」
女生徒「そう? そうかなあ」
これはレズですねえ…たまげたなあ
妹「というか、お兄ちゃんはお弁当を見せびらかしてるんですか」
女生徒「そういうわけじゃないよ。先月くらいに、お兄ちゃんにお弁当届けに来たの覚えてる?」
妹「あー、ありましたね」
女生徒「その時に、せっかく作ったのに忘れんな! って怒ってたの聞いてたの。で、妹ちゃんの手作りなんだって微笑ましい気持ちになったんだけど、それがきっかけ」
妹「恥ずかしいです……」
女生徒「小さいお母さんみたいで、可愛かったよ。同じクラスの子も可愛いって言ってたし」
妹「いえいえ、私なんかどうせ、家事と勉強しかとりえのないどこにでもいる普通の女子高生ですよ」
ピー
妹「あ、ご飯炊けました」
女生徒「開ける?」
妹「いーえまだですよ。少し蒸かします」
女生徒「はーい」
妹「ご飯とかあんまり炊かないんですか?」
女生徒「そうねえ、自分で炊いたこと1回くらいしかないかな」
妹「よくそれで一人暮らししようなんて思いましたね。外食ばかりだと、栄養が偏っちゃいますよ」
女生徒「分かってるんだけどねえ。一人で作ろうとすると、気が抜けて作業にならないの」
妹(なんだか、お兄ちゃんみたい)
15分後――
コトッ
妹「はい、できましたよー」
女生徒「わあ美味しそう!」
妹「カボチャコロッケと豚汁なんですけど、お口に合えばいいんですが」
女生徒「私、好き嫌いはあんまりないから大丈夫だよ」
妹「そうですか……」チラ
妹(もう7時30分か。夕飯作ったし、今日の所はこれで)
スクッ
女生徒「あれ、一緒に食べないの?」
妹「え、そこまで図々しいことできませんよッ。先輩が買ってきた食材ですし」
女生徒「そんなこと全然気にしてないよ。一緒に食べようよー」
妹「うーん」
女生徒「お給料、多めに出すから、ね?」
妹「え、お兄ちゃんじゃないんですから……うん、ええっと……はい、食べます」キリ
女生徒「弱いねえ」
カチャカチャ
女生徒「美味しー!」
妹「ありがとうございます…。お兄ちゃんだと、米が固いとか、味が薄いとかっていっつも言うから嬉しいです」
女生徒「小姑みたいなんだ、兄君」
妹「作る人の気持ち、全く分かってないんですよ!」プン
女生徒「兄君は幸せ者だね」
妹「バカなだけです」
パクッ
モグモグ――
女生徒「……」
すんませんねむいのでこここまで
乙
後で使う化粧水の使い方が気になります!
――――
―――
――
妹「ごちそうさまです」
女生徒「お皿は自分で洗うねー」
妹「ああ、いいですよ。夕飯だけ作ってお金もらうの気が引けるし…」
女生徒「うーん、ああ、じゃあ肩揉んであげる」
妹「ええっと」
ワシ
妹「ひょッ」
女生徒「あ、弱い人?」
妹「そういうわけじゃ、いきなりだったんで」
女生徒「こんな感じどう?」
モミモミ
妹「……あ、いい」
女生徒「いっつも、こうやって兄君のお世話してるんでしょ?」
モミモミ
妹「は……はい」
女生徒「頑張り屋さんだなあって思ってたんだ」
モミ――コリコリ
妹「ぅ……そ、そんんッ」
コリコリコリコリ
女生徒「気持ちいい?」
妹「……い、いいです」
女生徒「もっと、気持ち良くして欲しい?」
妹(え……どういうこと)
女生徒「さっきの化粧水使うとね、もっと良くなるよぉ?」
妹「え、あの」
女生徒「まずは制服脱がないとねえ」
シュルシュル
妹「待ってください!? 何してるんですか?!」
女生徒「え、なにって、一人暮らしの女の子の部屋に来てやることって言ったら、一つだよね?」
妹「おやおや!?」
女生徒「逃がさないもん☆」
妹「うううん?!」
バタバタ
女生徒「暴れないでって」
妹「た、助けてッ、お兄ちゃん!」
女生徒「呼んでも誰も来ないぞォ?」ニコ
妹(とんでもないよこの人!?)
妹「ご、ごめんなさい!」
ドンッ
女生徒「きゃ!?」
妹「はあッ…はあッ」
スクッ
妹「お、お邪魔しました!!」
ダダダダダッ――
女生徒「あ、妹ちゃん!!」
兄妹の家
ガチャッ
バン!
妹「はあッ、はあッ、はあッ…ふー」タラ
兄「おわ!? なんだお前汗だくで」
妹「お、お兄ちゃん……」
兄「ん? 金はもらってきたか? ほれ、仲介料は3分の1だぞ。ほれほれ」
妹「もらってない」
兄「なんだと」
妹「あ、あんな人だったなんて聞いてないわよ!」
兄「どんな人だよ」
妹「わ、私、襲われそうになったんですけど、服とか脱がされそうになったんですけど!」
兄「なんだそれ。聞いていないぞ。オプション料金追加だな」
妹「このバカアニキ!!」
ドスッ
兄「ふごおッ!?」
ドサッ
妹「女の人怖い…女の人怖い」ブツブツ
フラフラ
兄「妹!」
妹「なに」
兄「金はちゃんと回収し」
ズドッ
次の日
3年の教室
女生徒「おはよう、兄君」
兄「おはよー」
女生徒「昨日、妹ちゃん怒ってた?」
兄「ああ、怒ったあげく俺に八つ当たりしてきた」
女生徒「そっか。これ、渡しそびれちゃったのと、慰謝料いれといたよー」
パサッ
兄「どれ」
ペラララッ
兄(5万?! 妹、お前どんなオプションを強要されたんだ)
兄「分かった。妹にも伝えておく」
女生徒「当分、私の家には来てくれないかな」
兄「どうかな。あいつも俺と同じ血が流れてるから、金のある場所にいかずにはいられないさ」
女生徒「じゃあ、忘れた頃にまたお願いするね」
兄「分かった」
昼休み
兄「あ、そういや、弁当ないんだった」
兄「購買行くか」
兄(あいつ、家事をボイコットしよってからに)
テクテク―
ダダダダッ!
兄「うん?」
下級生「ど、どいてくださーい!」
兄「……」
兄(積み重なった本が落ちないように走っているのか)
ヒョイッ
下級生「きゃあああ!」
グラグラッ
兄(あ、落ちる)
妹「危ない!」
ガシッ
兄「お、妹」
妹「お、妹じゃない! なんで助けないのよ!」
兄「どいてくださいって言ってたしなあ」
妹「たくッ、大丈夫?」
下級生「は、はいはいッ、ごめんなさいッごめんなさいッ」
妹「あなた、1年生? 一度に運べる量じゃないじゃない」
ドサドサッ
ヒョイ――
妹「どこまで運べばいいの?」
下級生「そ、そんないいですッ」
妹「だーめ」ニコ
下級生「あ……」ドキ
兄(……ほお)ニヤ
数学準備室
妹「ここに仕舞っておけばいいのね?」
下級生「はい」
妹「あっつー」
パタパタ
下級生「……あの」
妹「うん?」
下級生「ありがとうございます!」
妹「いーえ、本来ならあのダメ男が助けるべきだったんだけどね」
下級生「そ、そんなこと。私、上級生の男の人まだ怖くて……助けてもらって嬉しかったです」
妹「たいしたことしてないんだけどね」
下級生「あの、その……」
妹「うん?」
下級生「いえ…」
キンコーンカーンコーン
妹「あっちゃー、予鈴じゃん。ご飯食べた?」
下級生「い、いえまだ」
妹「そっか、これ」
ガサガサッ
スッ
妹「ジャムパンあげる。食べれる?」
下級生「え、はい……あ、ダメですよッもらえません」
妹「いいから」ニコ
下級生「……」ドキドキ
妹「じゃあね」
物陰
兄(……これは使えるカモだな)
兄(ふへへっへへへっ)
ぽこんっ
兄「あいて」
カサっ
兄(なんだ、ゴミか?)
カサカサっ
兄「……」
『――目立つな。ファックユー』
兄「なんじゃこりゃ」
ぽいっ
放課後
妹「友ちゃん、一緒に帰るよ」
友「あれ、バイトはもういいの?」
妹「しーっ」
友「あ、ごめんごめん。内緒だったね」
妹「世の中の美味しい話は、全て疑ってかかるくらいがちょうど良いのよ」
友「ふーん。そっか、よく分からないけど失敗したんだね」
妹「……そうね」グスっ
友「また、いい仕事見つかるって。元気出しなよね」
妹「ええ」
友「あ」
妹「ん?」
デン!
兄「妹よ! 次の仕事だ!」
妹「お兄ちゃん……今度こそ、まともな普通の人でしょうね」
兄「お前の基準がわからんが、まあいたって無害そうな生き物だ。お、それと、これはバイト代だ」
ペラっ
妹「……3000円?! 夕食作って途中で抜け出したのに」
兄「慰謝料込みな。だが、やって良かっただろ?」
妹「そ、そうね。結果良ければ全て良しよ」
友「乗せられてるなあ」
兄「さ、次の依頼人だ! 下級生ちゃん!」
下級生「……は、はい」
妹「あれ、あなた昼間の」
下級生「あ、あのっ、もしよろしければ……私と1日デートしてください!」
妹「友ちゃん、通訳」
友「デートして欲しいって」
妹「そのまんまじゃん!? てか、どういうこと!?」
下級生「ひえっ」
兄「下級生ちゃんは、バイト代として1日で1万円出すと言っている」
妹「……」ごくり
友「やったじゃん、チケットも握手券も一気にゲットできるよ」
妹「だ、だけど……それって、ちょっと援助交際っぽくない?」
兄「先輩と後輩が仲睦まじく遊びに行くだけじゃないか。何を言ってるんだお前は。変態か」
妹「違うわよ!」
兄「後輩の頼みが聞けないってのか」
下級生「あ、あの、無理なら全然……いきなり、迷惑だって分かってましたので、ごめんなさいっ……」ウル
妹「や、やるっ。大丈夫、迷惑とかじゃないから」ワタワタ
兄「では、交渉成立! ほら、連絡先交換して」
妹「いいのかな……これ」
下級生「あ、ありがとうございますっ」ペコ
妹「は、はあ」
ピンはね率とんでもないことになっててワロタ
夜
兄妹の家
風呂場にて
チャポン
妹「安請け合いしちゃったけど」
チャポン
妹「お兄ちゃんの都合の良いように転がされてるのがムカつく」
チャポン
妹「ちょっと疲れちゃったなあ」
ぶくぶくぶく――
兄の部屋
兄「やっぱり、リスクが高くてぼろ儲けできるよりも、リスクが低くてちょこちょこ稼げる方が将来的には安定だよな」
ペラペラ
兄「しかし、このまま固定客を増やしていけば……会費を取ることだってできるんじゃないか?」
兄「ふ……ふふふふははっははははッ!!」
ダンっ
『お兄ちゃん、うるさい!』
兄「……」
兄(妹よ、許してくれ。なんもかんもお金が悪いんや)
兄(男だと完全にどこからどう見ても犯罪だが、女同士なら誤魔化しも効きやすいから楽でいいぜ)
妹の部屋
プルルル
妹「下級生ちゃんだ」
ピっ
妹「はい」
下級生『あ、あの夜遅くにすみません』
妹「いいよ。どうしたの?」
下級生『こ、ここここ』
妹「こ?」
下級生『声が……聞きたくて』
妹「へっ……」
下級生『それだけ……です』
妹(これは、喜ぶ所? それとも引く所?)
妹「ありがと」
下級生『……はぃ』
妹「下級生ちゃん」
下級生『はいっ』
妹「用がないなら切るわね」
下級生『うわわっ、ありますっ』
妹「ぷっ……クスクス」
下級生『か、からかわないでくださいよお』
妹(憎めない子だなあ)
いったんここまで
ノンケ娘へのレズ包囲網好き
レズに目覚め……どうなるだろうww
妹「デートの日?」
下級生『はい……ご都合の良い日でかまいません』
妹「じゃあ、今週の日曜かな」
下級生『か、かしこまりました』
妹(かしこまりました?)
妹「あのね、一つ聞くんだけど……もし、うちのお兄ちゃんに弱みを握られて脅されてるって言うことなら、正直に言って欲しいんだけど」
下級生『ええっ、そ、そんなことありません! わ、私が、頼んだんですっ』
妹「そう? それならいいんだけど。もし、何か辛いことがあったら言ってね」
下級生『は、はい』
妹(先輩にしろ、この子にしろ、たぶんお兄ちゃんに近づきたくて……私を利用してるんだろうなあ。別に実害は無かったからいいけど)
妹「さて、デートどこいこっか?」
下級生『ええと…』
―――
――
―
妹「うんうん、じゃ、正門集合で。おやすみ」
ピっ
妹「あら、もう0時か」
妹「はっ、そう言えば家事ボイコットしてたから洗濯物回してない!」
妹「やばいっ」
タタっ
妹「あ」
ガチャっ
妹「お兄ちゃん!」
兄「……」スヤ
妹「今日洗濯機回した?」
兄「……」スヤ
妹「起きろや!」
ドスっ
兄「はうん!?」
兄「な、なんだ敵襲か!?」
妹「はい?」
兄「夢か」
妹「洗濯物、干した?」
兄「干したさ」
妹「あら、えらい」
兄「兄だって、家事くらいたまにならできるぞ」
妹「仕舞ってはくれないけどね」
兄「うむ」
妹「まあいいけど。所で、お兄ちゃん、あの下級生の子をどうやってだましたの?」
兄「人聞きの悪いことを言うなバカ野郎。俺は、だましてなんてない」
妹「じゃあ、あの子がデートしたいって言ったって言うの?」
兄「言ったさ」
妹(どっちかが嘘を言っているのか、口裏を合わせているのか……)
妹「そう」
兄「彼女、お前のことが好きだって言ってたぞ」
妹「……もう、そうやってからかってばかりなんだから。おやすみ」
トタトタっ
兄「……」
ベランダ
パンパンっ
妹「ねむい……」
カチャカチャ
妹「お兄ちゃんのはもうたたまずに部屋に放り込んでおけばいいか」
ドサっ
妹「……ん?」
妹(今、外に誰かいたような)
妹(気のせいかな)
次の日
2年生の教室
友「……誰かに見られてる?」
妹「うん」
友「誰?」
妹「分かんないから相談してるんでしょ」
友「ストーカー?」
妹「なのかな……昨日の夜と、今朝もなんだけど」
サスサス
友「妹でも怖いんだ」
妹「あ、当たり前でしょ。不気味だし」
友「今日、家まで着いてた方がいい?」
妹「……」コクコク
友「よっぽど怖かったんだね」
3年生の教室
兄「しゃっ、できた」
女生徒「何作ったの?」
兄「ああ、レンタル妹のチラシ。レンタル料は要相談ってね」
女生徒「……兄君、社会に出たらきっと真っ先に消される存在になっちゃうかも」
兄「分かってるさ。今しかできないことだから今やるのだろう?」
女生徒「ふふ」
兄「ちょっと、言ってくるわ」
女生徒「じゃあ、3年生の教室は貼ってあげる」
兄「まじか、助かる」
女生徒「どういたしまして」
今日はここまで
Dirty deeds done dirt cheep
放課後
3年の教室
ペた
女生徒「しょっと」
ぺた
女生徒「まっすぐかな」
ドンっ
女生徒「あ、ごめんねえ」
ミリヤ「……」
女生徒(ミリヤちゃんだ……放課後に学校に残ってるの珍しい)
ミリヤ「……」じっ
女生徒(このチラシ興味あるのかな)
女生徒「チラシいる?」
ミリヤ「……」ふいっ
カツカツカツ――
女生徒(なんなんだろ?)
女生徒「ミリヤちゃん?」
ミリヤ「……」
ピタっ
女生徒「何か、用があったんじゃないの?」
ミリヤ「……その女に伝えて」
クルッ
ミリヤ「私より」
女生徒「うん?」
ミリヤ「私より、目立ったら絞め殺すって」
女生徒「えーっと」
ミリヤ「それだけよ」フイッ
カツカツカツ――
女生徒(告白……かな?)
タタタッ
兄「ちーっす、今の誰?」
女生徒「ミリヤちゃんだよ」
兄「あー、あれが。あんな感じだったんだ、可愛いな」
女生徒「伝言もらったから、妹ちゃんに伝えるかは兄君が決めてね」
兄「伝言? なに?」
女生徒「私より、目立ったら絞め殺すって」
兄「は? お前、何言ってんだよ」
女生徒「言ったのは私じゃなくて、ミリヤちゃんだよ」
兄「俺の妹、あいつに何したんだよ」
女生徒「私にもわからないけど……気をつけてねー」
兄「お、おう」
女生徒「じゃあ、私帰るね」
兄「……」
ポリポリ
兄(あ、そういや昨日の紙にもそんなこと書いてたような)
兄(ははーん)
兄(これは、ゆすれるかもしれんな)
兄(まあ、まずは相手の出方を待つか)
兄(やつは良い金ヅルになるに違いない)
兄「飛んで火にいる夏の虫とはこのことだな……ははははッ!!」
ハハハハッ――!!
純粋に兄がクズ過ぎてきつい
兄妹の家の前
友「妹、誰もいないみたいだよ」
妹「ほんとに? ほんとにいない? 電柱の後ろも? そこの、ゴミ集積所の裏も見た?」ビクビク
友「いないって」
妹「よ、よーし」
グイッ
友「そろそろ腕の血が止まりそう」
妹「あ、ごめん」
ぱッ
友「……」
グルグル
妹「ほんと、ありがとう」
友「いいよ。次は、お兄さんに送ってもらったら?」
妹「いやいや。ブラコンじゃないし」
友「私より頼りになると思うけど」
妹「絶対、イヤ。あ、も、もしかして迷惑だった? って、普通に友も怖いって話よねっ」ワタワタ
友「いいんだけど、もし襲われたら非力だしなあって」
妹「お兄ちゃんのバット借りてこようか」
友「おお」
妹「冗談だけどね」
友「そりゃそうだ」
妹「ほんとに、ここまで送ってくれてありがとうね。あ、良かったら、夕飯食べてく?」
友「いいの?」
妹「いいわよ。友、カボチャ嫌いじゃない?」
友「食べれるよ」
妹「良かった。今日は、カボチャハンバーグだからね」
友「主婦してるねえ」
妹「まあ、我が家は共働きだから。クズでダメなお兄ちゃんにご飯を作ってあげられるの私だけだし」
友「前から聞こうと思ってたんだけど、なんでお兄さんあんな金の亡者みたいなのさ」
妹「よく知らない。生まれてすぐに財布に頬をすり寄せたってエピソードが残ってるけど」
友「面白いね」
妹「ドン引きよ」
ガチャ
妹「ただいまー」
友「お邪魔しまーす」
チカッ
友「……」クルッ
妹「どうしたの?」
友(何か、光ったような……)
妹「な、何かやっぱり」
友「ううん」
妹「そっか……良かった」
友(いる……のかな)
バタン――
リビング
兄「ひー、ふー、みー……うっへっへ」
ペラペラ
妹「お兄ちゃん」
兄「へへへッ」
妹「お兄ちゃん!」
兄「はッ……」
友「お邪魔してます」
妹「どうしたの、そんな大金」
兄「あ、んん、これはだな」
妹「盗んだの?」
兄「ば、ばかやろう。そんなことはしない」
妹「ちなみに、ここにいる友は人の嘘を必ず見破れるから」
友(そんな能力一度も開花したことないけど、ここは合わせとこうか)
友「はい」じッ
兄「……ッ」たら
妹「どう、友」
友「お兄さん、嘘、ついてるね」
妹「お兄ちゃん!!」
兄「ち、ちが、つい出来心だったんだ!!」
友(ちょろい血筋なのかな)
兄「ゆ、許せ、妹!! お前の取り分はちゃんと渡すから!」
妹「取り分? なんのこと」
兄「女生徒から、渡されたのが5万なのにって話だろっ」
妹「5万!?」
兄「ああ、5万だよッ、本来ならお前に3万ちょい渡す所、つい出来心で手元に残しちまったんだ!」
妹「な、なんですって!?」
兄「お支払いしますからっ、許してっ!!!」
妹「お兄ちゃん、兄妹だからってやって良いことと悪いことがあるでしょ!?」
兄「はいっはいっ、猛省しますっ」
妹「友、ちょっとお兄ちゃんのバット玄関にあるから持ってきてくれる?」
友「はーい」
兄「ひいいい!?」
妹「お兄ちゃんに選ばせてあげるわ」
兄「ご、ごくり」
妹「バットで頭を殴られたい? 尻に叩きつけられたい? それとも鳩尾に突き刺されたい?」
兄「どれもいやじゃあっ!? どうかお慈悲をおおお」
カランカラン
友「持ってきたよ」
妹「お兄ちゃんの好きなのでいいから」
兄「た、助けてくれええええ!?」
ピンポーン!
兄「えええ……?」
妹「ふえ?」
友「誰か来たみたい」
妹「命拾いしたわね、お兄ちゃん」
兄「ちょ、ちょっと見てきまーすっ!!」
ダダダっ
兄「はあっ……や、やばいやばいどうしようっ」
ガチャ
兄「は、はいどちら様……ん? 下級生?」
下級生「……」
兄「下向いて、どうした?」
下級生「ひどい……先輩のこと信じてたのに」
兄「おーい?」
下級生「先輩、フリーって言いましたよね!?」ポロポロ
兄「あ、あいつはフリーだぞ」
下級生「嘘だ!! だって、あんなに仲の良い人がいたなんて!!」
兄「あ、あの子はただ家が近所ってだけで」
下級生「幼馴染!? 勝てる気がしない!!」
カチャ
妹「なに、騒がしいけど……あれ、下級生ちゃん」
下級生「先輩!」
妹「よく、家の場所知ってたね?」
下級生「ひどいですっ、デートしてくれるって言ったのに!」
妹「え、デートは行くけど」
ヒョイっ
友「どうしたの?」
下級生「なのに、こんな女を家に連れ込むなんて!!!」
ビシっ
友「うん?」
下級生「どうして……こんな酷いことするんですかあ」ポロポロ
妹「……お、お兄ちゃんの彼女とかじゃないよ?」
下級生「知ってますよ! そんなこと!」
妹「ええ、それじゃあ何を」
兄「妹よ、この子はお前に一目惚れしたんだと。それで、デートをしてくれるってなったんだ、お前も気があるんだって嬉しく思ったんだよ」
友「モテモテだねえ、妹」
妹「そ、そうだったの!? 私、てっきりお兄ちゃんが好きだから、まず身内から固めていってるのかとばかり」
下級生「私という存在がありながら、浮気? 許せないです……」
妹「お、落ち着いて?」
友「もしかして、最近妹をストーキングしてたのって、きみ?」
下級生「……いつも見てますよ」ニコ
妹「……ひいい」ゾクっ
兄「と、友……、下級生に言ってくれ、そういう間柄じゃないって」
友「えーっと、私と妹はただの友だちだから、気にしないでよ」
下級生「いつか、そうなるんですよ!!」
妹「滅茶苦茶ねっ」
友「どうしたら、信じてくれるのかな?」
妹「まともに取り合うことないわよ」
下級生「じゃあ、妹先輩のこと好きじゃない、今後、深く付き合うつもりもない! キスなんてもってのほか! って言ってください!」
妹「頭痛い……」
兄「と、友よ……頼む」
友「……ええはあ」
妹「こんなのに付き合うことないわよ」
友「しかしねえ……」
下級生「……ッ」ブルブル
友(言うは易し行うは難し……なーんて)
友「私がそれを言ったとしても、妹がそうじゃなかったら意味ないけどいいの?」
下級生「……」
妹「ちょ、こら、煽らないの!」
下級生「せ、先輩は、私とデートしてくれるって……」
友「じゃあ、デート=好きか聞いたの?」
下級生「う……ァぅ」
友「見苦しいことはよしなよ。それにさ、妹が好きじゃないなんて、死んでも言えないから」
妹「……ッ」カア
下級生「先輩、私……のことどう思って」ジッ
妹「悪いんだけど、特別な感情があるわけじゃないの。ごめんね」
下級生「う……ッ」
ガシッ
友「あ、お兄さんのバットが」
カラカラ
下級生「失恋したああ……ッ」
ブンッ!
妹「きゃあ?!」
兄「ふんぬ!?」
ガシッ――ジイイインッ
友「ナイスお兄さん!」
兄「いってええ!?」
妹「お兄ちゃん!? こら!」
バシッ
下級生「ッ?!」
パッ――カランカラン!
妹「危ないでしょ!!」
下級生「う……ッ」
友「……」
ヒョイッ
兄「ふーふーッ」ヒリヒリ
友「女の子を弄んだ罰ですね」
兄「……う」
下級生「うええええッ!」ボロボロ
ドサッ
妹「あ……」
今日はここまでです
乙
ひどいメンヘラがいたもんだ
乙
下級生「ごめ……ンッ……なざい……ッ」
妹「あー、もうッ、泣くくらいなら最初からしないの……」
友「はい、ティッシュ」
スッ
下級生「ぐず……ッ」
シュッ
ゴシゴシ
兄「妹よ、デートの話はなかったことになるのか?」
妹「それ今聞く?」
下級生「……ずずッ」チラ
友(あら、まだ諦めてないって顔)
妹「まあ、でもそういう気持ちがあるって分かっちゃったから、安請け合いはもうできないわよ」
下級生「……」シュン
兄「そうか」
下級生「あの、先輩ッ」
妹「なに?」
下級生「ちなみに……どんな人がタイプなんですか」
妹「タイプ? そんなの考えたことないわよ」
下級生「そうですか……」
ゴシッ
兄「少なくとも、ストーキングする癇癪娘は嫌だろうな」
下級生「……ううッ」ぶわッ
妹「傷口えぐることないでしょッ、お兄ちゃんのバカ!」
友(そういう自覚あるんだ)
兄「ところでな」
妹「なに」
兄「さっきからご近所さんの目が気になるので、みなさんいったんお家へ入りませんか? 恐らくこのままでは、俺が痴情のもつれから泣かせてるようにしか見えない」
妹「似たようなものでしょ」
兄「ちがああう!」
下級生「家、入っていいんですか」
兄「え、いいよな、妹」
妹「お兄ちゃんのその懐の広さはどっから来るんだろうね。裏金渡してるんじゃないかと疑いたくなるレベルよ」
兄「してない!ほんと!マジで!そんな目で見ないで!」
友「じゃあ、私もそろそろお暇しようかな」
妹「ちょっと!」
ガシッ
妹(一人にしないで)←アイコンタクト
友(いや、めんどくさそう)←アイコンタクト
妹(ご飯食べて行くって言ったでしょ?)
友(事情が変った)
妹(このままじゃ気まずいから助けてよッ)
友(友だちを巻き込むの?)
妹(友だちだからでしょ?)
友(はあ……)
兄「下級生ちゃんや、とりあえず飯でも食ってけよ」
兄(これでクレーマーになって、悪い噂を流されちゃたまらん)
下級生「はあい……」ズビッ
兄「お前らも入れよ」
妹「あ、うん」
ガシッ
ズルズル――
友「……うええ」
――ズルズル
次の日
2年生の教室
妹「おはよー」
友「おはよー……」
妹「昨日は、下級生ちゃん送ってくれてありがとうね」
友「どういたしまして。ちゃんと話したら、悪い子じゃなかったよ」
妹「そっか」
友「……うん」
妹「友、なんか疲れてる?」
友「妹の家を出てから、川の前を横切る度に身投げしようとするから引き止めるの大変だった」
妹「そ、そうだったんだ」
友「もうやだよ」
妹「ごめんごめん」
同級生「ねえねえ、これって妹さんのこと?」
ピラピラ
妹「え?」
同級生「レンタル妹って書いてあるチラシが置いてあったんだけど」
妹「チラシ!?」
同級生「今月限定! 今なら、妹とあんなことやこんなことが! できることはなんでも請け負います。得意なのは料理と勉強。報酬は要相談。3年兄」
妹「なにこのいかがわしいキャッチコピー……」
友「うわあ」
妹「私が作ったんじゃないからね!?」
同級生「え、じゃあここに書いてあることってほんとなんだ」
妹「わ、あ、え……え、えへ?」
同級生「ちょうど良かった。実はね」
妹(ど、どうしよう、もう十分稼いだっていうのに……あの金の亡者めッ……)
同級生「学校新聞の記事のネタ探してて――」
ガラッ
ミリヤ「ちょっと、待ちなさい!」
妹「え」
同級生「み、ミリヤ先輩!?」
妹(うそッ、ミリヤ先輩ッ?)
ミリヤ「あんた、あたしの忠告を無視するたあ良い度胸ね」
ダンッ
妹(ミリヤ先輩近くで見たの初めて……けっこうちっさい。145.6cm……石ころって曲出してたっけ)
ミリヤ「聞いてる?!」
友「先輩、なんの用ですか?」
スッ
妹「と、友ちょっと」
ミリヤ「用? ありまくりよ! 妹! 私より目立つあんたを潰しにきたの!」
妹「つ、つぶし?」
友「また、変なのがきた……」
妹「変って言わないでよ。可愛いじゃない」
友「……ええ?」
妹「こんなにちっさいのに、ステージでの歌声はすっごく迫力あって、きらきら輝いてるんだから! ミリヤちゃんバカにしないでよね!」
ミリヤ「そうよ!そうよ! って、え?」
妹「あ、あのミリヤちゃん……あ、先輩……サ、サインとかあのもらえたり」モジ
ミリヤ「て、敵に塩は送らぬわ!」
妹「そ、そんなあ」
ミリヤ「と、とにかくこのレンタル妹とかってさっさと中止しなさいよね! それだけよ!」
ダダダダッ
妹「嫌われちゃったのかしら……」
友「ライバル心は燃やしてたみたいだけど」
妹「そんななぜ……あんなに頑張って、彼女のライブと握手チケットを手に入れたのに」
友「あ、もらったんだ」
妹「うん……」
友「握手してくれるといいね」
妹「うーん……」
次の日――
昼休み
3年の教室
兄「もぐもぐ」
タタタッ
兄「うん?」
下級生「先輩!!」
ドゴッ!
兄「ごぶうッ」
下級生「こ、これ」
兄「おま、なんで今タックルしてきたの?」
下級生「ごめんなさいッ」ペコ
兄「で、なによ」
下級生「学校新聞です!」
兄「なにそれ」
下級生「知らないんですか!」
兄「金にならんことは興味ない」
下級生「ここ!」
パンパンッ
兄「我が校のアイドル、知られざる関係か? って、この写真、妹?!」
中々面白いけど兄のクズっぷりは読んでてちょいキツい
とりあえずクズ兄にはたびたび、理不尽な暴力を受けて欲しい
でもクズ兄いなかったら薄味過ぎないか?
下級生「なんでこんなことになってるんですか?ねえ?ねえ?」
ググッ
兄「顔にチラシを押し付けながら喋るの止めてください」
下級生「先輩がこんなハレンチなパパラッチに合ってるのも全部、お兄さんが悪いんですよ!?」
グリグリ
兄「わ、わかった悪かった!」
下級生「ミリヤ先輩なんて、アイドルじゃないですかッ……!? 幼馴染よりきつい……」
兄「やー、でもこの子、妹を敵視してるから、下級生ちゃんが考えてるようなことはないと思うけど」
下級生「敵視?」
兄「自分より目立ってきた妹が許せないらしい」
下級生「へえ…」
兄「だから、それをネタに一儲けできないかと思ってるんだが」
下級生「その話、乗ります」
兄「なんだと」
下級生「妹先輩に近づく者はみな等しく許しません」
兄「お、おおなんかよく分からんが心強い! よし、じゃあ作戦を考えよう!」
下級生「はい!」
きゃッきゃッ
女生徒(楽しそうだねえ)
―――
――
―
兄「よし、もう一度確認するぞ。妹を説得するのはたやすい。あいつは、ミリヤのファンみたいだからな。ミリヤが『ホントは仲良くなりたかった。レンタルしたい』って、などと言っておけばよかろう。しかし、ミリヤの方は自分にメリットがないと嫌がるだろうな」
下級生「ですよね……」
兄「だから、どちらがより目立つかを実際に競って見ればいいとそそのかして、妹をレンタルさせればいいんだ。妹がミリヤより地味なのは明白。ミリヤは満足する結果に終わるはずだし、プライドの高そうなミリヤもそれを疑わないだろうから、勝負を断ることもないだろう」
下級生「で、兄先輩はレンタル料がもらえるし、ミリヤ先輩も妹先輩につきまとうこともなくなるってことですね」
兄「まあ上手くいけばの話だが。それに、もしミリヤが妹をいじめたとしてもそれをネタにゆすれる」
下級生「さすが金の外道……」
兄「それほどでも」
下級生「ふふふ……」
兄「ぐへへへ……」
それからしばらくして―――
友の家
ミリヤのライブ前日
妹「……」
ゴロゴロ
妹「……」
ゴロゴロ
友「止まれ」
ゴロゴ――ピタッ
妹「……」
友「ダンゴムシか」
妹「だって、明日ミリヤちゃんのライブだって思ったら落ち着かないのよ」
友「そー」
妹「目の敵にされてるしさ、こっちはむしろ仲良くしたいのに」
友「気難しそうな人だったしね」
妹「ファンですって明日はアピールしないと」
友「どうやって?」
妹「全身グッズつけてくとか」
友「逆に目立っちゃうんじゃない? 普通にしておいた方が無難だと思う」
妹「うー」
どさッ
ライブ当日早朝――
会場
兄友「はよお、兄! もうかりまっか?」
兄「ぼちぼちな」
兄友「ミリヤちゃん見た? 今日の服めっちゃ可愛かった」
兄「あー、そうだな」
兄友「そっけねえ。おまえは相変わらずだな。妹ちゃんも来てんの?」
兄「ああ。あいつミリヤのファンだったよ」
兄友「だっろ? 笑いかけてくれてるだけで天に昇れるわ」
兄(こいつ、いつの間にこんなにどっぷり……沼に)
兄友「さ、設営準備手伝いにいくぞ」ウキウキ
兄「おう」
兄(さて、今日はミリヤの情報収集でもしますか)
兄「ミリヤって、いつからアイドルしてんの」
兄友「お、なんだ興味あるんじゃん!」
バンバン!
兄(いてえ)
兄友「ミリヤちゃんと俺が出会ったのは3年前だ。その頃彼女は路上ライブしてて」
兄「お前との馴れ初めとかどうでもいいから」
兄友「はいはい。で、中1からそういうのしてるらしくって、スカウトされたのは2年前だから当時高1だった」
兄「ほお」
兄友「あの子の両親が俳優さんなんだけどさ、そんなに有名じゃないんだ。テレビで見ても誰も気づかない。ミリヤちゃんはそれが嫌だったらしい。だから、自分はもっと有名になってやるってこの業界に入ってきたってわけ。しかも地道な活動でね」
兄「すげえな」
兄友「そうだよ。まず、そこがカッコいいって思ったんだ。でも、プライドが高すぎるから仕事を選んだり、納得いかないと喧嘩になったり、周りには煙たがられてて、こういう地方の会場でのライブくらいしかまだできてないんだよ。そういう賢くない生き方がいいって言う若い女の子が増えてきて、今はぼちぼち名前が売れ出してるんだけど」
兄「色々あるんだな」
兄友「そうだよ、だから、お前もファンクラブ入ろうぜ」
兄「入らんがな」
兄友「まあ、いい。時間をかけてミリヤ沼に引きずり込んでやるよ」
兄「いいって」
兄友「お前は、なんでそう女に疎いんだよ」
兄「疎いってこともないけど」
兄友「せっかくの高校生活、口を開けば金のことばかりじゃあ、楽しくないぜ。お前の周りにいる女を思い浮かべてみろよ」
兄(……妹、友、女生徒、下級生……ミリヤ)
兄(よく考えたら、妹包囲網ができてやがるな)
兄「ろくな女がいなかったわ」
兄友「残念だ」
兄「ああ」
―――
――
―
ライブ開始――
会場
ミリヤ「みんなー! 今日はありがとー!こうやって、またライブさせてもらえるのもみんなのおかげだから!!」
ミリヤちゃーん!
ミリヤ「今日もみんなにパワー送るから受け取ってね!!」
ワアアアアっ!!
ミリヤ「145.6cm(いしころ)!」
ジャカジャンジャン――
客席
妹「ミリヤちゃーん!!」
ブンブンっ
妹(ああ、でも嫌われてるかと思うと泣けてくる)
妹「はい!はい!はい!はい!」
妹(ミリヤちゃん可愛いなあ)ふにゃ
妹「可愛いよー!!」
『声、ちっさいよー!』
ワアアアアっ!!
ライブ後
握手会
ガヤガヤ
スタッフ「狭いですので、周りの方にご迷惑にならないようにお願いします。こちらの列にお並びください」
妹「はい」
スタッフ「チケット頂きますねー」
妹「ど、どうぞ」
スっ
スタッフ「はい。もうしばらくお待ちください」
妹「……」ドキドキ
妹(うわあ、初めて握手する……)
妹(嫌われちゃう前にしたかったな……)
スタッフ「はい、次の方どうぞ」
男「頑張ってね!」
ミリヤ「ありがとう!」
妹(はっ、汗臭くないかな……。もう一回、スプレーしとく?)
スタッフ「次の方」
妹「は、はい」ワタ
ミリヤ「……」ジ
妹「……」ゴクっ
妹(小さいツインテ可愛い)
ミリヤ「何しに来たの」
妹「握手……です」
ミリヤ「……手」
妹「え」
ミリヤ「握手、しないの?」
妹「し、します」
サっ――ギュ
妹「あ」
ミリヤ「今日はありがとー!」ニコ
妹(……先輩、プロだなあ)ジワ
妹「う……ぐすっ」
ミリヤ「なんで泣くの?」
妹「うれ、しくて」
ゴシゴシ
スタッフ「はい、じゃあ次の方――」
妹「す、すいません…」
タタタタっ
ミリヤ「……」
女子トイレ
妹「は、恥ずかしい。なんで泣いちゃったのよ」
バシャバシャ
妹「あー、赤くなったし、最悪」
妹「これじゃあ、嫌がらせに来たみたいじゃない」
パンパンっ
妹「そう言えば、お兄ちゃん達どこにいるんだろ」
妹「あ!」
妹「手、洗っちゃった……」ガクっ
―――
――
握手会終了
スタッフ「ありがとうございました」
女「ありがとうございますー」ペコ
バタンっ
スタッフ「ミリヤちゃん、お疲れさま。終わったよ」
ミリヤ「ねえ」
スタッフ「なに?」
ミリヤ「敵に塩を送りにくる奴ってどんな気持ちなの」
スタッフ「いきなりだね。誰か知り合いでも来てた? ああ、この間言ってた最近目に付くって子?」
ミリヤ「……」
スタッフ「もしかして、泣かせてた子?」
ミリヤ「人聞き悪い」
スタッフ「ただのファンのエールにしか聞こえなかったよ。ミリヤ、また悪い癖。敵か無関心かで判別しない」
ミリヤ「わ、分かってるわよ」
―――
――
―
『スタッフオンリー』
妹「……ですよね」
妹「私もバイトすれば良かったかな」
妹「はあ」
テクテク
ガチャっ
ミリヤ「……あんた」
妹「あ、わっ……そ、そのおに、兄が今日ここでスタッフのバイトしてて」
ミリヤ「ああ、そう言えば同じ苗字の奴が一人だけいたわね」
妹「ちょっと、顔見て帰ろうかなって、それだけでして」
ミリヤ「ふうん」
妹「し、失礼します」
タタタタっ
ミリヤ「……」
ミリヤ(ただの小娘、平凡で普通で、どこにでもいそうね。そんな子、相手にすることないじゃない)
翌日――
ミリヤのいる教室
先生「おまえらー、来週の中間テスト大丈夫かー?」
ミリヤ「……」
先生「今回平均とれなかった奴は先生と夏休み返上で補習だからな」
ミリヤ「なんですって」
ガタっ
先生「ミリヤ、お前、死ぬ気で勉強しろよ」
ミリヤ「……」
ガタっ
ミリヤ(まずい)
クラスメイト「ミリヤちゃん、良かったら勉強一緒にする?」
ミリヤ「大丈夫、ありがとう」キリっ
クラスメイト「そう? なら、いいんだけど。さすがだね」
ミリヤ(私のバカ、なんで断るの!)
ミリヤ(や、やっぱり手伝ってって言うのよ、ほら、早く)
キンコーンカーンコーン
先生「日直ー」
ミリヤ(ぐっ)
ガクっ
乙
石ころちゃんかわいい
数学の授業
カッカッ
『a,b,cは定数とし、a<0である。座標平面状に放物線C:y=ax²+bx+cと直線ℓ:y=-x+2がある。
放物線Cは点A(2,0)において,直線ℓに接している。』
先生「ここ宿題だったからできてるな? じゃ、(1)定数a,b,cをaを用いて表すってとこから。この問題やってくれるやつ」
シーン
先生「おらんのか」
ミリヤ「……」ウトウト
先生「じゃあ、ミリヤ」
ミリヤ「……」ウトウト
クラスメイト「ミリヤちゃん」
トントン
ミリヤ「ひゃいッ」
先生「ミリヤ、1番解いて、前の席の奴2番で、その次の奴3番。はい、開始」
ミリヤ「なに、なにが起きてるの」
クラスメイト「ミリヤちゃん、宿題だった所の解答を前に書き写すんだよ」
ミリヤ(そんなのできてるわけないじゃない)
数分後――
ミリヤ「……」ダラダラ
先生「ミリヤ書かないなら、ハウス」
ミリヤ「イエッサ……」
スゴスゴ
先生「ちゃんと勉強しとかないと、お前高校留年するぞ」
ミリヤ「う」
クラスメイト「大丈夫だよ。一緒に頑張ろう?」
ミリヤ(同級生に頼れるわけないじゃない)
ミリヤ(くそッ)
キーンコーンカーンコーン
ミリヤ(疲れた……)グテ
ミリヤ「言葉の意味が全く理解できなかったわね」
ミリヤ「日本語かしら本当に……」
ミリヤ「英語と数学と物理は壊滅的ね」
ミリヤ「今日は、オフだし……図書室で勉強でも……しなくちゃ」
トテテテ――
図書室――
ミリヤ「あんまり使ったことなかったけど、真面目そうなやつらばっかり……」
ミリヤ(げ、妹ッ……あ、なるほどあいつも頭悪い口ね)
ミリヤ(あの女の近くしか空いてない)
ミリヤ(……敵に背を向ける訳にも行かないし、堂々と前に座ってやろうじゃない)
テクテク
ガタッ
ミリヤ「……」
ストン
妹「?!」ぎょッ
ミリヤ「なによ」
妹「い、いえ」
ミリヤ(動揺してるわね。余裕を見せてやるわ)
ミリヤ「この間は、来てくれてありがと」
妹「そんな、ご迷惑じゃないかと思ったんですけど……良かった」ほッ
ミリヤ(なによその顔、騙されないんだから)
ミリヤ「チラシは処分したんでしょうね」
妹「はい。目的はもう果たしたので」
ミリヤ(目的? 何かしら……と、そんなことよりテスト勉強しないと)
ミリヤ「そう」
カチャ
ペラっ
妹「先輩もテスト勉強ですか?」
ミリヤ「まあね。別にしなくてもいいんだけど」
妹「すごいです。私なんか、してないと不安で。趣味が勉強みたいになってて」
ミリヤ「だから、刺激が欲しかったの?」
妹「え、あ、レンタルはそう言うんじゃなくて……」
ミリヤ「いいけど。私より目立たなくなったのなら、別に興味なんてないから」
妹「そうですか……」シュン
ミリヤ(なんでそんな落ち込んだ顔になるのよッ? 意味わかんない子)
カキカキ―――ピタッ
ミリヤ(意味わかんないのは、この問題だけどッ)
ミリヤ「ぬぬ……」
妹「……」
カキカキ
ミリヤ「……」ググッ
妹「……」
カキカキ
ミリヤ「……」ガリ
妹「……」
カキカキ
ミリヤ「……」フッ
ミリヤ(何が分からないのか分からないわ)
―――
――
―
妹(ミリヤ先輩、手が全然動いてない)
妹(もしかして、頭の中で全部解いて、白紙ノートにイメージを描いてるの?)
妹(消しゴムもペンも必要ないわよね……まさかそんなすごいミリヤ先輩)
妹(私もちょっとやってみよう)
コトッ
妹(……えっと、これを代入して、移項して……あ、むりこの時点で覚えれない)
妹(やっぱ書かないとできないか)
カキカキッ
ミリヤ「……う」
バタッ――カキカキ
妹(あれ、飽きちゃったのかな……何か、ノートに)
『なんもかんもわからぬ』
妹「そっちかっ」
ミリヤ「うん?」
ミリヤ「なによ」
妹「先輩、3年生の数学って難しそうですよね」
ミリヤ「べつに」
妹(……強がってる。先輩って、こういう所あるから、ファンがなんだか放っておけない気持ちになるって言うか、この人は自分がついてないといけないみたいな気持ちになると言うか、ダメなのに引っかかる典型的なパターンよね)
ミリヤ「これくらい」
妹「そこ、次はCの両辺を微分したらいいですよ」ニコ
ミリヤ「……はあ?」
妹「ごめんなさい。余計なことを」
ミリヤ「……微分ってどうするんだっけ」
妹(ちょっとやばいかもしれない)
―――
――
―
妹「で、1番そんな感じで、2番はここの式に代入してあげて……大丈夫ですか? ついて来てますか?」
ミリヤ「う……ん……頑張ってるのよ……」ジワ
妹(……なにこれ可愛い)ドキドキ
妹「あ、イメージ図なんですけど」
カキカキ
妹「Cはこんな放物線で、xはこの放物線をこうやって通ってるんです。で、xより上の部分が面積2/3なんですね」
シャッシャッ
ミリヤ「うん」
妹「さっきのここの式より、ここのCをaに書きかえて、この交点の部分をまず求めて……」
妹「……この()の中のこの部分が交点の座標なんです。で、このままだとなんの数字かわかりにくいので、こうやって書き変えて……aは0より小さいってことは負の値なんですけど、この図に書き込むと左側の座標になるんです」
ミリヤ「……なるほど。あんた説明上手いわね。できないけどできる気がしてきた」
妹(良かった)ニコ
妹「ここまでできたら、あとは∫に入れていくだけで……」
ミリヤ「いん……てぐなんとか?」ブワッ
妹「な、泣かないで。このさっきの面積Sを求めることができるんですけど……教科書ちょっと戻ってもらって」
ペラペラッ
妹「これが公式です……解説すると」
ミリヤ「ふんふん……」
―――
――
―
妹「1/6公式を使って……」
ミリヤ「あれ、積分しないの?」
妹「このパターンの問題はこの公式を使うと早いのでオススメです」
カキカキ
妹「……マイナスを()の外に出してあげるて……こうやって解いていくと、aの値が出てくるんです」
カキカキ
ミリヤ「……だはあッ」グテ
妹「頑張りましたね、先輩」
ミリヤ「疲れた……」
妹「問3はどうしますか?」
ミリヤ「……あんた、時間大丈夫なの」
妹「私は、特に」
妹(お兄ちゃんが困るくらいだし)
ミリヤ「夕飯おごるから教えなさい」
妹「はい」ニコ
――――
―――
――
玄関
パタンッ
妹「すっかり遅くなっちゃいましたね」
ミリヤ「そうね」
妹「外も暗くなってる」
トントン
ミリヤ「あんなに勉強したのなんて久しぶり」
妹「そうなんですか。私はやることがないんでいつもあんな感じですよ」
ミリヤ「寂しい人生ね」
妹「確かに」
ミリヤ「それでいいんじゃない、あんたにお似合いよ」
妹「……」
ミリヤ「なによ」
妹「私は、ミリヤ先輩みたいに、ステージで歌って、キラキラできないんです……」
ミリヤ「そりゃ、私は特別よ」
妹「ふふ、だから、先輩のファンになろうって思ったんですよね。私にはないものをもらえるかもしれないって。言ってなかったですけど、レンタル妹を始めたのだって、先輩のライブのチケットと握手会のチケットを購入したくて、その資金集めのためだったんですよ」
ミリヤ「取り入ろうたって」
妹「ホントですよ!」
ガシッ
ミリヤ「ちょ」
妹「私、ホントにミリヤちゃんが好きなんです。歌も、笑顔も、我がままで馬鹿な地も」
ミリヤ「地で悪かったわね!」
妹「す、すみません。でも毎日が急に楽しくなったのは明日が待ち遠しく思えるようになったのは……全部、ミリヤちゃんのおかげなんです」
ミリヤ「だから、あんた握手会の時……」
妹「嬉しかったんです。本気で」
ミリヤ「泣くほど?」ニヤ
妹「泣くほど」ニコ
ミリヤ「そう。なんだ、あんた私のファンだったの」
妹「サインくださいって言ったのに、信じてくれなかったですもんね」
ミリヤ「この学校の奴らにそんなこと言われたことないし」
妹「うそ、それは、抜け駆けしないように牽制し合ってるだけです」
ミリヤ「なによ……それ……いないと思ってたのに」
妹「寂しいこと言わないでくださいよ。会場にもあんなにたくさん来てくださってたじゃないですか」
ミリヤ「うん……そうね」
先生「おーい、お前ら、早く家に帰れよー」
妹「はーい、すいませーん」
――――
―――
――
焼きめし屋
妹「ラーメンの屋台は見たことありますけど、焼き飯の屋台は初めて見ました」
ミリヤ「裏通りあんまり来ないの?」
妹「真面目なので」
ミリヤ「自慢にならないっての。あたしは、小学からの御用達よ」
おっちゃん「ミリヤちゃん、今日は可愛い子連れてきたねえ。安くしとくよー?」
妹「あ、ありがとうございます」
ミリヤ「いつもの2つ」
おっちゃん「あいよー」
妹「いつもの?」
ミリヤ「焼き飯よ。それしか出してないけど」
妹「意外とおっさんくさいんですね」
ミリヤ「そりゃ、おっさん達に囲まれて育ったからね。寒空の下、コンビニ弁当を深夜のコンビニの前で食べながら仕事した時もあったし」
妹「それは迷惑ですね」
ミリヤ「あんたは、将来警官か先生にでもなるがいいわ」
妹「そうなんですよね……お兄ちゃんの世話して、このままずっと家にいて、ミリヤちゃんを追いかけて……私、どこに向かってるんだろうって」
ミリヤ「レンタル妹なんてするくらいなんだから、風俗でもするのかと思ったけど」
妹「しませんよ!」
ミリヤ「ま、今時珍しくないって。誰にも言ってないけど、あたしも軍資金集めるためにちょこっとしてたし」
妹「み、ミリヤ先輩ッ」
おっちゃん「なーに、ゴマ粒くらいしかしてねえよ。マネージャーに見つかって、怒られて散々だったんだからな」
ミリヤ「うっさい! それ、秘密!」
おっちゃん「うおっと」
妹「そっか、良かった」
ミリヤ「ファンに聞かせるような話じゃなかったわね。なんか、あんた話しやすいから……この際だし、ついでに謝っとくけど、悪かったわね。突っかかって」
妹「こうやって、仲良くなれたので結果オーライです」
ミリヤ「そういや学校の後輩なんていなかったし、新鮮。あ、そうだ、あたしもあのレンタルしてみようかしら」
妹「……ふえ?」
ミリヤ「あんた、あたしの妹になりなさいよ」
妹「あ、えっと」
おっちゃん「どっちが妹だよって言ってやんなよお嬢ちゃん」
ミリヤ「なんだとこら!」
妹「その冗談、みたいなもので」
ミリヤ「えー、隣のクラスの女子が夕飯作ってもらったって小耳に挟んだけど。勉強も見てくれるって。来週のテストまでレンタルしたいんだけど」
妹「レンタルなんてしなくても教えますって」
ミリヤ「え、ラッキー! あんた、ほんと妹に欲しいわ!」
ギュッ
妹(私も、ミリヤちゃんみたいなお姉ちゃん欲しい……)
おっちゃん「はい、焼き飯上がったよ」
ドンッ
ドンッ
ミリヤ「サンキュー、頂きます」
妹「……」
妹(すごい量。この小さい体のどこに収まるんだろう)
ミリヤ「ほら、妹、早く食べなさいよ」
妹「はーい」
――――
―――
下級生「どういうことですか」
兄「俺にも分からん」
下級生「二人が仲直りして、かつ、より仲が深まってるじゃないですか!」
兄「失敗だ。作戦は、不発に終わった」
下級生「私のお姉様があああッ」
兄「バカ、今出て行ってもしょうがないだろうが」
下級生「あんなちんちくりんのどこがいいんでしょうね……」
兄「お前とそう変わらんのにな」
下級生「せっかく見つけた生きがいなのに…あ、お兄さんと付き合えば合法的にいつしか家族になれますね?」
兄「うん?」
下級生「付き合ってれば、家に行って妹先輩と一緒にお風呂に入ってなんてこともできますよね?」
兄「ねーよ。俺、恋人はお金だから」
下級生「……」
次の日
2年の教室
友「で、ミリヤ先輩と仲良くなったと」
妹「そうなのよ」
友「罪な女だなあ」
妹「どういうこと」
友「いいえ」
妹「でね、先輩って食べたらすぐ眠くなるらしくて…‥昨日なんて、おぶって帰ったりして、可愛かったんだから、ほんとに……だから、ファンクラブ入ろ?」
友「入らないよ」
妹「えー」
友「一緒にライブ行けってことだよね」
妹「だって、可愛すぎて一人で抑えきれない…語り合いたい」
友「気が向いたらね」
妹「むー」
友「…ぷ」
妹「なによー」
友「退屈しなくて済みそうだね」
妹「確かに……そうね」ニコ
兄の教室
兄「盛者必衰とはこのことだな」フウ
女生徒「なんの話?」
兄「ああ、レンタル妹は廃業だ」
女生徒「ありゃ、残念」
兄「次はどうやって稼ぐかねえ」
女生徒「レンタル兄奴隷とかは?」
兄「なにそれ怖い」
女生徒「冗談だよお」クスクス
兄「笑うなよ超こええよ」
女生徒「言ってなかったけど、私、男女どっちでもいけるんだよね。兄君て、可愛い顔してるよねー」
兄「……奴隷顔?」
女生徒「ふふふッ……」
兄「ご勘弁を!?」
ガタタッ
女生徒「逃げなくてもいいじゃない」
タタタッ
兄「1日5万なら考えてやるぜえええ!」
2年の教室
友「ね、あそこの廊下で全力疾走してるの兄先輩じゃない」
妹「あ、ほんと」
友「平和だねえ」
妹「そうねえ」
友「ね、新しいバイト考えないの?」
妹「もうしないって」
友「見てる分にはけっこう面白かったんだけど」
妹「別にお金なくても……チケットは必要経費ってやつよ? 刺激が欲しかったのも事実だけど、ただ、こうやって友と喋ってるだけでも十分幸せだし」
友「それはどーも」
妹「いーえの」
おわり
AVみたいな題名つけた割にはのんびり終わってしまいましたが
読んでくれてありがとう
乙
化粧水の出番はなしか
>>112
お兄ちゃんがヌルヌルになる予定です
兄がクズすぎるのが残念やな
>>115
お兄ちゃんはお金が大好きなだけで悪気はないんです
むしろここまで金が好きを貫ける部分には好感を持てるね、俺は
それにしてももうちょっと百合百合してくれよなぁ~頼むよ~
>>117
百合男子に対抗して、百合ssに出てくる百合無関心男子を書きたかったので、ちょっと百合百合薄くなりました
すまんな
妹とミリヤ先輩のえっちなシーンはないんです?
>>119
テスト勉強、中間テストを経て二人とも以前より親密になる。
互いに、手を繋いだり身を寄せ合うなど、触れ合う機会も徐々に増えていった。
が、努力も虚しく中間は赤点となってしまうミリヤ先輩。
あれだけ勉強したのに、と妹も呆れてしまう。
妹にバカ呼ばわりされて、逆切れする先輩。結果、二人喧嘩。
夏季補習に結局参加することになったミリヤ先輩。勉強に飽きて、唯一仲良くなった
妹を呼び出し、補習終了後二人で水遊びして仲直り。
やんちゃなミリヤ先輩がプールに服のままで入ろうと提案。
無理矢理に妹も連れて行かれて、二人で先生に見つかるまで遊んだ。
更衣室で、服着替えながら、歌い始めるミリヤ先輩。
それが、あんまり天使過ぎたので、ついロッカーに先輩を押し付ける妹。
唇すれすれまで顔を近づけるけど、途中でへたって未遂。
その日、互いに意識して帰るけど、別れ際に、
ミリヤ先輩から抱き付いてきて背伸びしてキス。
先輩からねだられて、妹も我慢の限界で、
真っ暗闇の路上で嫌がる先輩のをいじってしまう。
腰が砕けた先輩をおぶさって、
先輩の家まで送っていって泊まっていくことに――。
って所まで想像できた。
乙
妹とミリヤちゃんも友達のままかと思ったけど、
くっつきそうでよかったww
>>120
おう詳細に書くんだよあくしろよ
え?マジで終わり?
Rの意味なくね?
>>120
何故ダイジェストで済ませてしまうのか
書きたくなってきたのでおまけスレ立てたよ
レンタル妹 おまけ (オリジナル百合)
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