仮面ライダー555「それぞれのTIME」 (24)

 <雅人>

  終わりの地平線が見えるような、最後の闘いの場にまみえる戦士達。

  オルフェノクの王とファイズ。

  ホースオルフェノクとカイザ。

  命がけの死闘は、熾烈を極めた。

  彼等の死闘を遮る物は何もない。

  万物を生み出し、万物を抱擁する海。

  オルフェノク、人間共にその定めは死である。


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 「オオ―ッ!」

  地を真二つに切り裂く、アークオルフェノクの剛剣。

  カイザの鋭重な斬撃を全身に浴びてなお、その歩みと

 攻撃を止める事無く進撃を続けるホースオルフェノク。

 「フンッ、セアッ、ハアッ」

  繰り出した斬撃が互いに100を超した時、趨勢が大きく揺らぐ。

  体力と気力が先に尽きたのはカイザだった。

  全身に張り巡らされたダブルストリームの流動回路が激しい

 ホースオルフェノクの剣戟により、オーバーヒート寸前の

 危険な状態になり、そして遂に雅人の身体は屈し始めた。

  灼熱の如き痛みに身を苛まれながら、雅人は愛する者を

 守るために、ただひたすら最強の敵、ホースオルフェノクへと

 斬りかかっていく。

  だが、その剣にはかつてほどの力は宿っていなかった...

 その甘くなった横薙の一閃を捉えたホースオルフェノクは、

 カイザのブレードを毟り取り、己の全力を込め、強化戦士を

 滅多切りにし始めた。

  斬撃とともに思い出される最悪の記憶。

 『うぁあああああ...』

  偽悪的で、誰よりも優しかったギターが得意な青年。

  彼の最後は、カイザの乗ったサイドバッシャーに再度

 自らの利き手を潰され、何度も何度も全身を挽き潰された挙句、

 目の前でもう一人の仲間が殺されるのを成す術なく見つめながら

 青い炎に包まれて灰になった。

 『ゅ、ぅ...すけ...マ、マは...』

  人間とオルフェノクの間に生まれようとする新しい命を

 オルフェノクを絶滅させるための研究の実験体として、

 連れ去ろうとしたカイザ兵団。

  その圧倒的な暴力の前に蹂躙され、殺されてしまった薄幸の少女。

 
  自分の帰る場所を奪い続ける『人間』に彼は憎悪した。


  憎悪して、憎悪して...慟哭して、彼は壊れた。

  
  アークオルフェノクの力を受け入れ、人の心を捨てたのだ。

  涙という弱さと引き換えに手に入れた力は、『悪』という名の

 あとには何も残らない復讐の権化とも言える代物だった。

  憎き人間の悪しき全てを集約した憎んでも憎みきれない悪へ、

 ホースオルフェノクは今まで自分が受けてきた痛み、そして

 カイザと言う鎧をまとった草加雅人によって殺されていった

 オルフェノクの憎悪と恨みを込めて、一撃一撃に致死の威力を

 込めた斬撃を見舞った。

  アークオルフェノクもファイズに対する苛烈なまでの攻撃を

 一切緩める事無く戦局を有利に進めていった。

 「ぐあああああッ!」

  ブレイガン・ブレードモードの斬撃に晒され続けたカイザギアが

 その負荷に耐えることが出来ず、その変身を解いた。

  終わりが見える海岸に初めて勝者と敗者が生まれた。

 

  血と灰に塗れながら、雅人はカイザギアへとにじり寄る。

 「ダハッ!」

  ホースオルフェノクに滅多切りにされた雅人の胸骨の殆どが

 完全に折れ、その内の何本かは肺と心臓に深々と突き刺さっている。

  しかし、激痛が身を苛もうと雅人は足掻くのを止めない。

 (俺はこんなところで、[ピーーー]ない...死んで、たまるか!)

  そうだ、カイザギアに手が届けば...俺はまだ戦える。

  愛する者を最後まで守りきり、彼女を幸せにしなければならない。

 (真理...真理、君は俺を...俺は君を)

  そして、雅人は遂にカイザギアをその手に掴もうとした。

 
  アークオルフェノクと戦っているもう一人の戦士をその

 無機質な瞳で見据えた、忠実なる王の僕は掌に高密度の

 青い炎塊を創造し...、

 「ハァッ!」

  力尽き、カイザギアを掴んだ雅人目掛けて投げつけた。

  雅人は炎に包まれた。

 「グアアアア!」

  その炎は溶岩をも凌駕する熱で雅人の身体を舐めるように貪る。

 「ガアアアア...」

  こんな終わりを俺は望んでなんかいないなぜ俺が死ななければ
 
 ならないオルフェノクが人を襲ういつ真理が襲われるか分からない

 守らなくては戦わなければ守れない真理の為に俺は戦う戦う戦う

 真理真理真理真理真理真理真理真理真理真理真理真理真理真理真理

 
 (俺は、君をこんなにも愛しているのに...遠い、遠すぎるよ)


  炎が雅人の命を吸い取り終わった。

  雅人の身体は奇跡的に、原形をとどめていた。

 「草加ッ!」

  ファイズが、己にとって最も許せない相手が近寄ってくる。

 (おのれ...おのれ、オルフェノクの分際で!)

  これ以上無い程、最悪で皮肉な死がもうすぐ自分の元に訪れる。

 (いやだ、怪物と同じ死に方なんかしたくない...)

 (助けてくれ、誰でもいい。俺に命をくれ...!)

  草加雅人と言う存在と、彼がその短い人生に刻んできた生の証が

 海岸に広がる数多の歴史の残骸の中に還元される時が遂に来た。

 「アア...ガハッ」

  ザラザラとしたものが口の中を満たす。

  自分の身体から流れ出る血液が、次々に灰となる。

  それが、雅人の死への恐怖を否応なしに駆り立てる。

 「何故だ...」

 「守るべきもののない、からっぽの貴様が生き残り――」

 「何故俺が、死ななければならない!」

  縋りつくファイズの身体には、まだ命が満ち溢れていた。

  壊れかけた砂時計の様に、全身から命が零れ落ちていく。

  これが俺の最後?

  何と滑稽で、哀れなのだろうか...。 

 「ガアッ...ハアハア」   
 
  嫌だ、俺は生きる...生きて


  今際の際に、雅人の口から出た最後の言葉は...

  永遠に包まれ、青い炎に燃やし尽くされた。


 
  そして彼は、十年後に突如目覚めた。

  地下帝国バダンによる死者と生者を入れ替える

 『メガ・リバース』装置により草加雅人は自分がこの世に再び

  生を受けることを本能的に理解していた。

  ただ、生と死を反転させることを拒む馬鹿ども、即ちかつて

 自分の仲間であった「仮面ライダー」が世界を救おうと獅子奮迅、

 必死に戦っているのが目に入った。

  そう、奴は薄汚い怪物...ウルフオルフェノクの乾巧だ。

  正義の味方のフリをして555の力を存分に行使し、自分が欲した

 全てを奪い、ぶち壊した許しがたい悪党だ。

  肉体さえあれば、今すぐにロブスターオルフェノクに

 助勢したかったものの、肉体がない自分にはそれができない。

 草加(だが、ほかにやりようはいくらでもある)

  立ち上がった草加雅人はファイズに向かって歩み寄っていった。

 巧「?!」

  懐かしくも、同時に怖気をまとった存在が自分に歩み寄ってくる。

 草加「やぁ。君が生きているのはこの俺のおかげ」

 草加「だったら、俺のために君が死ぬのは当然のことだよなぁ」

  そう、この男には自分の願いや夢がない空っぽのオルフェノクなのだ。
               タニン
  だからこそ、救いようのない化物を救うために自らの命を捨てる

 愚行を犯せるのだ。

  人は常に自分の望みを叶えるために強くなるのだ。

  目的のために全てを利用し、使い潰す雅人にとって

 野心や目的もなく漫然と生きる巧の存在はこの上なく目障りだった。

 まだ木場勇治の方が乾巧に比べれば、利用価値があるだけ好ましく思える。

  最も、奴も生き返れば必ず殺してやる。

  なぜならこの俺を殺した罪は万死に値する。理由はそれだけで十分だ。

 巧「...」

  そんな雅人の内心を知ってか知らずか、仮面ライダー555は背を向けて

 どこかへと走り去っていった。

 雅人「ふっ」

  とりあえず、自分の言葉に巧を縛り付ける呪縛の存在を確かに確かめた

 雅人は音もなく巧の後を追いかけていった。


 <雅人 終>

 <巧>

 ディケイド「シュウは救い出したぞ!」

  仲間の一人が戦いの突破口を開いたことを、喜ぶ反面、その場にいた

 三人のライダーは、それぞれの想いを込め最大の攻撃を繰り出した。

 X「俺達がマシンを破壊するッ!」
 
 ウィザード「HIGH TOUCH」

  巧はその正しさに、何も異を唱えることはできなかった。

  だが、それでも自分の命に価値を見出すことができないまま戦う巧には

 もう一度蘇り、人生をやり直したいという草加雅人の、その本心が

 たとえ邪悪なものだとしても、かつて救えなかったその命を...

 巧(ああ、そうさ、生きていれば...きっと)

 φ「Blade Mode!」  

  最大出力のファイズエッジでXとウィザードの攻撃を弾くファイズ。

 操間「なんの真似だ、ファイズ!」

 巧「死んだ仲間が蘇りかけている。それも悪くないって思えてきた」

 操間「よせ!」

 操間「俺も自分の未練でコヨミを悪の魔法使いとして蘇らせたことがある」

  巧は魔術師と呼ばれるライダーの辿った数奇な旅路の果てを知らない。

  だが、ライダーのうちの一人に人を死から蘇らせるすべを持たせたのなら、

  どうして、こんなにこの世界は残酷なのだろうか... 

 巧「蘇るならなんだっていい!!」

  そうだ、意味なく散ってしまう命の価値しか持ち得なかった人の

 一生は、その無念は一体どこに向かえばいいんだ?

  木場の理想、雅人の幸せ、オルフェノクに待ち受ける最悪の未来。

  それでも、それでも

  夢なき青年は、悪の中に『価値なき者』が縋れる希望があるならば、と...

 神「バカヤロウ!!」

 神「いつまでも死んだものに囚われていては一歩も前に進めないぞ!」

 神「過去を思ってため息をつくより、その先の未来を想え」

  重みのあるその言葉には、しかしそれが巧がたどり着けない場所なのだ

 ということを皮肉なことに敬介は知らなかった。

  無意識のうちに巧はその言葉に正しさを認めながらも、まだ心の中の

 葛藤と戦い続けていた。

 操間「本当に絶望しちまったら、その時は俺があんたの希望になってやるよ」

  それは、絶望を希望に変える魔術師の言葉を以てしても

 巧の心に一抹のわだかまりを残していた。

 雅人「何をしている?」

 雅人「空っぽの君に生きている価値なんてない、早く死んでくれないかな?」

  短い刹那、巧は反芻するように自分が戦う理由を心に求めた。

  神敬介の戦う理由は、子供達の可能性を奪う悪を倒すため。

  操間晴人の戦う理由は、絶望を希望に変えるため。

  なら、自分の戦う理由は...

  巧「空っぽなら、戦うことで埋めてやるよ」

 巧「喜びと悲しみを、一つずつな」

  そうだ、結局俺のできる戦いというのは自分が戦った相手の

 想いを、命を背負いながら、一歩ずつ前に進んでいくことなんだ。

  そうしていつか自分が空っぽでなくなったとき...ようやく、

 自分の得たかった何かが見えてくるはずだ。

  だから、

  巧「その罪は、俺が背負う!」

 5 5 5

 Standing by

 巧「変身ッ!!」

  眩い光が、自分たちに近寄ってきた亡者たちを吹き飛ばす

 雅人「ぐわあああああ!!」

  吹き飛ばされた雅人は、あっけなく雲散霧消した。
 
  そして、バダンの野望もあっけなく潰えたのだった。
  

  全てが終わったあと、乾巧は草加雅人と最後に分かれた海岸にやってきた。

  海の水は、透明で舐めてみるととても塩辛かった。

  何を思うでもなく、何を考えるでもなく巧は一人で歩き続けていた。

  このまま歩き続ければ、辿り着ける場所があるんじゃないかと思える位

 目の前の景色と、青い空は広がっていた。

  いなくなってしまったもの、何もできなかったもの。

  それは、風に吹かれてどこかへと飛んでいってしまう。

  儚い砂と同じように誰の目にも止まらず、誰の心にも留まらない。

  だからこそ、また死を迎えるその時まで仮面ライダーファイズは

 それを想いながら戦い続ける。

  夢と理想の半ばで散っていったかけがえのない二人の仲間に

 想いを馳せ、今日も彼は答えを探し、流離い続ける。

  一筋の涙が頬を伝う。

  久しく泣いていなかった巧は、それを舐めてみた。

 巧「草加...木場...」

  確かに、それは自分がまだ命に溢れている紛れもない証だった。

 <巧 終>

 仮面ライダー三号見てたら無性にファイズのSSが書きたくなって書きました。
  
 次は一週間後にブレイドかアギト勢を書こうと思います。

チョーイイネ‼サイコー‼

オツカーレ
4号ネタかと思ったらライダー大戦だった
しかも良作だった
ブレイドやアギトも期待

これただライダー大戦を焼き回しただけじゃん

商業作品なんだから丸コピするなよ

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