・すこしだけ重い
・そこそこエロい
・量はやや少なめ
前作に当たる話
ちひろ「それが、一番の幸せなんですから」
ちひろ「それが、一番の幸せなんですから」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404221133/)
時系列ではこの後の話
卯月「プロデューサーさんの、本当の幸せを」
卯月「プロデューサーさんの、本当の幸せを」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440347659/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459882812
一日目
光
「きょ、今日はアタシの番だな。だいじょうぶ、この前みたいなことにはならない、と思うから。
……その、予習というか……練習というか……自習を、えっと……うん」
光は電気を消すと、ためらいがちに服を脱ぎ始めた。
窓から差し込む僅かばかりの街灯の明かりが、膨らみかけた、未成熟な身体を薄闇の中に浮かび上がらせる。
「痛いのはヤだし……でも、それでPと一つになれないのは、もっと嫌だから……」
暗い部屋に衣擦れの音が響く。短パンが肌を滑り落ち、その隣にシャツがぱさりと重なった。細い足首が脱ぎ捨てた短パンから引き抜かれ、下着姿になった光は一歩だけベッドに近づいた。
華奢な首と、壊れてしまいそうな肩。薄い胸を隠す両手。うっすら浮いたあばら骨から腰かけての未熟な曲線は、張りのある尻から小鹿のように引き締まった太股へ続き、しなやかなふくらはぎを通って、愛らしいくるぶしまで流れている。
つぼみだった。開きかけの、だが紛れもない色香を漂わせる、妖しいつぼみ。
光はゆっくりと近づいていく。下着は脱げなかった。恥ずかしいのもあるが、自分の身体をすべて晒け出す勇気がなかった。この家で一番未熟なのは自分だという自覚が、コンプレックスになっていた。見られたくない。大人じゃない自分を見てほしくない。
ベッドに腰かけた男の頭を、かかえこむようにして抱きしめた。こうしていれば何も見えない。一番じゃない自分を見つめられることはない。そう思うとすこしだけほっとした。
「……ひとりで、してたんだ。自分の部屋で、毎晩、Pのことを考えながら……この部屋で誰かを抱いてるPのことを想いながら……何度もしたんだ……でも、するたびに寂しくなった……ひとりは、寂しかった……」
男の髪の毛に鼻先を埋めて、光はささやいた。いい匂いがする。冷え始めた白い肌が、男の体温を感じてゆっくりと熱を帯び始める。羞恥心が溶け、理性が崩れ、頭の奥がしびれていく。熱病のようだった。いや、事実それは病だった。
彼がここにいる。この腕のなかにある。それだけで彼女は熱にうなされる。
届くことなどありえなかった。叶うはずもなかった。願うことしか許されなかった。望み、希い、求め、裏切られ続けた。困ったような笑顔が、戸惑うような言葉が、どこか救いさえ求めるような眼差しが、少女を傷つけた。深く、深く傷つけた。血を流し、涙をこぼし、嗚咽を吐いて、それでもなお想いは消えなかった。焦げ付いた烈情に煤けた、狂おしいまでの恋心は、死ななかった。
「……寂しかったよ……P……P……」
うわごとのように男の名を繰り返しながら、口づけをする。額に。頬に。唇に。想いを乗せてキスマークを付けていく。男のシャツのボタンを外し、はだけさせて、首筋へ、肩口へ、キスをする。夢にまで見た胸板に頬をこすりつけながら胸いっぱいに息を吸い込んで、ただただ幸福を満喫する。
光は陶酔した顔でベルトを外した。男は抵抗しない。彼は自分からはなにもしてこなかったが、そんなことは気にせずパンツをずり下ろした。好ましく思われていないわけではないのは、跳ねるように飛びだしたそれを見ればわかる。
「もうこんなにして……えへへ」
むせかえるような男の匂い。どくどくと脈打ち浮き出した血管と、まだ触ってもいないのに先走りで濡れている亀頭を見て、光は花開くように笑った。嫌われてなどいない。自分は求められている。誰よりも愛しい男に、求められている。幼い妖華の微笑みに、男の竿が強く跳ねた。
「……すけベなんだから」
頬を竿に当てた。張り詰めた熱が肌を通して脳髄をじりじり炙っていく。羞恥心はすでになかった。そこにいるのはあどけない少女の形をした一人の女だ。指先で亀頭を撫でまわし、親指でゆっくり鈴口をこすり上げながら舌を這わせる。目を合わせると男はうめき声を上げた。竿が跳ね、より一層、少女は嫣然と笑う。
「つるっつるだね。ふふっ……あ、そうだ。今度さ、一緒にお風呂入ったら、やってもいいかな?」
肉棒の付け根にキスをしながら、光は首をかしげて見せる。男の性器には一本の陰毛も生えていなかった。剃毛されているのだ、睾丸まで念入りに。
男の陰毛を剃ろうと言い出したのは誰か定かではない。もちろん彼は抵抗感を示したが、もとより逆らえるはずもなかった。このほうが彼女たちにとって具合がいいとなればなおさらだ。
「んふふー」
光はたっぷりと口に含んだ唾液を亀頭に垂らし、ぬるぬるになった竿を根元からしごきあげながら睾丸を丸ごと口に含んだ。毛がないとこういったことがやりやすい。密着感がぜんぜん違ったし、毛が邪魔にならないから行為に集中できた。
じゅるじゅると下品な音を立てて睾丸から口を離し、竿を根元から亀頭まで舐め上げた。男の押し殺した声が耳に心地いい。唾液と先走りでぐちゃぐちゃになったそれはすでに限界まで張り詰めており、立ち上る熱気と臭気で胸がときめくほどだった。光は立ち上がると、男の首に手を回し、ゆっくりと座り込んだ。赤黒い竿が幼い陰唇をなぞり上げ、滲み出た愛液が竿を伝って睾丸まで垂れ落ちる。挿入はせず、光はゆっくりと腰をゆすって、愛液を肉茎に塗りたくった。
しばらくもしないうちに無抵抗だった男の腕が光に伸びる。左腕が彼女の腰をつかんで引き寄せ、右手が張りのある瑞々しいお尻にあてがわれた。今にもわしづかみにしてきそうな男の手と、その指先に秘められた紛れもない情欲を感じ取って、光は顔を上げた。お互いの吐息がかかる距離に、お互いの顔があった。
「どうしたの? もう我慢できない? めちゃくちゃにしたい?」
男が生唾を飲み込んだ。光は男の頭を抱き寄せて、耳たぶを唇で挟んで言う。
「……使って、いいよ?」
それで男のスイッチが切れた。理性がオフになった。あとは先ほどから限界だった獣性だけが男を突き動かす。未熟な尻をわしづかみにして光の体ごと持ち上げ、手を添える必要もないほど屹立した陰茎を、よだれを垂らす幼穴に突き入れる。抵抗はほとんどない。ぴったりと閉じた少女の性器は見せかけだけで、中はとろとろに蕩けていた。悦びに悲鳴が弾ける。男の頭をかき抱く腕に力がこもる。
「ああっ! きた、きたァ! 入ってきたあ!」
男が両手で尻をつかんで膣壁をこすり上げると、光はむせび泣くように声をあげて喉を震わせた。男は言われたとおりに道具でも使うかのような乱雑さで扱うが、光の腰は激しい動きに合わせて巧みにうねった。ついこの間まで痛がっていたのが嘘のような貪り方だった。
剃毛された肌とまだ生えてもいない肌が、先走りと愛液で濡れそぼってぬちゃぬちゃと音を立てる。自分と相手の境界が分からなくなるほどの密着感と一体感が否応なしに官能を高めていく。男が体位を変えた。光をベッドに組み伏せて覆いかぶさる。少女は男の首にすがりつき、両脚を腰に回したまま責めを受けていたが、二度、三度と気をやるころには力なくベッドに横たわり、よだれと嬌声と体液を垂れ流すことしかできなくなっていた。
「ああっ! あっ、あん! ふ、ぁっ! ああッ!」
白い肌は淡い紅色に染まり、汗に濡れそぼち、男を惹きつけて離さない。咲き乱れる幼い妖華を、男は責め続ける。理性はない。後悔もない。そもそも何も考えていない。ただただ雄としての本能に従って目の前の雌を征服する。快感だけを追い求めて腰を打ちつけ続けた。
やがて限界が見えてきた。男が最後の追い込みのために体勢を整えると、光が両手を差し出した。うるみ切った目で見上げてくる。吐き出す息は熱く焼けて、桜色に染まった腹部が呼吸に合わせて上下していた。手を握ると、光はにこっと微笑んだ。
出会った頃と変わらない、年相応のあどけない笑顔に、男の下腹部が強く反応した。膣を持ちあげるような竿の跳ね方に、幼い顔は溶けて崩れ、気付けばそこには妖華の微笑みがあった。両手を握りあったまま腰を突き動かす。男の限界を悟った光の脚が、獲物を捕食するかのように絡みついた。
薄暗い部屋に充満する熱気と体臭を、肌と肌が打ち合う音がかき混ぜている。言葉すら忘れて喘ぎ続けていた光が口を開けた。艶めかしく動く小さな舌と、熱に浮かされた目が求めていた。男は応えた。幼い舌が男の舌と口蓋を必死に舐めまわす。それが引き金だった。限界までこらえていた射精感が弾ける。迸る精液が膣道にぶちまけられ、男は光の身体が跳ねるほどの勢いで腰を叩きこんだ。育ち切っていない子宮口に亀頭をこすりつけ、最後の一滴まで自分を注ぎ込む。
どれほどの間、出していたかわからない。射精が終わっても、光は男の肉茎に残った精液をしごき出そうと、無意識に腰をゆすっていた。完全に男の形になった膣が、ぴったりと密着したままうごめいている。男が口を離すと、光は焦点の定かではない目で男を見上げ、唾液でぬらぬらとした唇をそっと歪ませた。
「きもち、よかった……?」
男は何も言わずに少女の額にキスをして、むしゃぶりついてくる膣腔からずるりと陰茎を引き抜いた。責め続けられて真っ赤に充血した陰唇から、愛液と精液が混ざったものがあふれてくる。ベッドサイドのウェットティッシュでそれを拭こうとした男を手で止めると、光は気だるげに身体を起こして、自分の股の間から出てくるものをぼうっとした目で眺めた。
それから男からウェットティッシュを受け取ると、いそいそと精液やら愛液やらをふき取り、おもむろに男の太股を枕にして、上目遣いでにへっと笑う。
「シャワー浴びたいなあー。でも疲れて動けないなあー」
男はしばらく光のおねだり光線に耐えていたが、小さく息を吐くと彼女の背中と膝の裏に手を入れて、ひょいと抱え上げた。
光はご満悦といった様子で、男の胸板に頬を寄せた。
二日目
美優
「服、脱いでください」
男は言われたとおりに服を脱いだ。ゆらゆらと揺れるアロマキャンドルの火が、均整のとれた男の身体に陰影を作りだす。
美優はいつも通り、男に先に服を脱がせてから、ゆっくりと自分の服を脱ぎ始める。今日は普段着としても使っているミントカラーのカジュアルなワンピースとダメージジーンズだった。薄絹のネグリジェや大胆なカットのベビードールなどよりも、こういった平服のほうが彼は興奮することを、美優は少ない経験から察していた。
ベルトを外してジーンズの前を開く。臍から下腹部までの肌に視線を誘導し、すかさずかがみこんでジーンズを脱ぎつつ、胸の谷間を見せつけた。ジーンズを足から抜く前に、ちょっと顔をあげて悪戯っぽく微笑むのも忘れない。ジーンズを捨てたらゆったりとステップを踏んで、男に背中を向ける。磨き上げた曲線美と肉付きの良いお尻に男の視線が突き刺さるのを感じた。ほとんど紐のようなTバックであればなおさらだった。
ゆったりとしたリズムに緩急をつけて、きゅっとお尻を突き出した。両脚を軽く広げ、両手をくるぶしに当てて前屈する。両脚の間から男を見ると、逸物が鎌首をもたげて半勃ちしていた。それだけでたまらない快感が美優の背筋を走り抜ける。吐き出した溜め息は興奮でかすれていた。上体をゆっくりと起こしつつ、くるぶしにやった手を撫で上げて、艶めかしい脚線を強調する。ふくらはぎから太ももまで指を這わせ、さらに男を挑発するように尻たぶを押し広げた。紐一本でしか隠されていない秘所が露わになる。背中越しに男の荒い息が聞こえてきて、美優は自身が潤ってくるのを感じた。
両手を尻たぶから腰へやり、ワンピースの裾を時間をかけてたくしあげる。ブラは初めから付けていない。お尻から背中へかけての柔肌を徐々に晒していき、そしてたゆまぬ努力で磨き上げた背中を存分にさらした。脱ぎ捨てられたワンピースが床に広がる。揺らめくキャンドルの火が、美優のむき出しになった後ろ姿に影を作った。うなじから肩へ、肩から肩甲骨へ。彫りの深い背筋を通り、たっぷりとしたお尻で膨らんだ稜線は、柔らかいラインを描いて太股からつま先まで滑り落ちていた。
全身を視姦されているのを感じる。肌が火で炙られたように熱い。完成された自分を愛しい男に見つめられ、美優の興奮は最高潮に達していた。だがまだこれで終わりではない。仕上げが残っている。美優はきゅっと唇を引き締めると、ヘアゴムを外した。一つ結びだった髪をさらりと流して振り返る。豊かな乳房がたわむのを感じながら、ほどいた髪の裾をふわりと軽やかに広げる。男と目が合う。彼の股間はまだ触れてさえいないのにだらだらと先走りで濡れていた。女としての自尊心と充足感が美優の中に満ち溢れて、愛液となってこぼれ出す。
Tバックを丁寧に脱ぐ。身体を傾けてたゆんと垂れ下がったたわわな乳房は、下着から足を抜く際に軽く膝が当たるほどだった。美優は湿り気を帯びた紐状の下着を片手に持ったまま、胸を張って背筋を伸ばした。男に自分を見せつける。ぞくぞくとした快感が背中を駆け上がる。肩幅に足を広げると、わずかに開いた秘唇からぽたりと雫が落ちた。美優は自信に満ちた足取りで男に近づくと、手に持った下着を屹立した男の陰茎にひっかけた。屹立した男のそれがぴくぴくともどかしげに反応する。
「……きて?」
男が襲いかかってきた。本当に狼のような獰猛さで、限界まで膨張した陰茎を突き入れてくる。痛みはない。全身に走るそれは快感でしかない。
男が腰を突き動かすたびに声が漏れた。はしたないと思う余裕はない。一突きごとに自分がばらばらになっていくのを美優は感じていた。狂おしいほどの愛しさと、全身を駆け巡る快楽を前に、思考などとうに砕け散っている。記憶さえもはや定かではない。過去も未来も思慮の内にはなく、ただただ悦楽に満たされた今に浸っていた。自分がなくなっていく。悲しみも憎しみも苦しみも消えていく。余計な何もかもがこぼれていって、自分と男だけが世界のすべてになった気がした。
嬉しくて声を上げる。口から涎を垂らし、汗を飛び散らせて、男と一つになる。口づけをして、舌を絡ませて、指を絡ませて、どろどろに溶けて混じり合う。ひたすら互いを求め続け、まぐわい続けた。果てることのない交合。とめどなく溢れる法悦の泉。魂を満たす充足と安寧。男が吼えた。美優の性器をすり潰すように腰をねじ込んでくる。亀頭が降りきった子宮口を抉り、迸る精液をびしゃびしゃと浴びせかけた。美優の意識が一瞬、途絶えた。仰け反った喉から絶頂の嬌声が漏れる。呼吸がうまくできない。全身がわなないていた。
ぽたりぽたりと男の顔から汗が落ちてくる。お互いに肩で息をしていた。じっとりと汗で濡れた肌が、ぴたりとくっつき合っている。あらゆる体液が混ざり合った匂いで頭がくらくらする。美優は震える手で男の頬に手をやった。キスをしてほしいのに、声が上手く出なかった。男はじっと美優を見下ろし、声も出せずに喘ぐ唇を自分の口で塞いだ。
優しいキスだった。この上ない幸福感に満たされながら、もう死んでもいいと美優は思った。
三日目
凛
「はい、これ。……なにって、見ればわかるでしょ。首輪だよ? この前一緒に買いに行った。ハナコのじゃなくて、私の」
男に黒い首輪を手渡し、凛は顎を上げて白い首を差し出した。服は部屋に入ってきた時から着ていなかった。均整の取れた身体を惜しげもなく晒し、切れ長の目を悪戯っぽく細めている。
「どうしたの? ほら、早く付けてよ。……ふふっ、なにをいまさらためらってるの? 私はプロデューサーのモノなんだから、首輪をするのくらい当然でしょ?」
男は首輪を見つめたまま苦しい表情をしている。戸惑いと、躊躇に満ちた目だった。凛はそんな彼を楽しげに見つめている。
――いつだって、そうだった。好意や愛情を示すと、男はこういう顔をする。
ずっと見つめ続けてきた。自分を支えてくれたその手を。自分を守ってくれたその背中を。自分を勇気づけてくれたその笑顔を。ずっとずっと見つめ続けてきた。だからわかる。男が首輪をつけようとしないのは、性倒錯的なその行為に嫌悪感を抱いているからではない。一人の人間を動物扱いして、その尊厳を貶めることに抵抗があるからではない。むしろ、逆だ。男はそういったことに並はずれた興味と関心を持っていた。強固な理性と自制心の下には、倫理から逸脱した情欲と性衝動が潜んでいることを、ここでの生活で凛は見抜いた。
男は魅力的な人間だった。仕事ができて、気配りができて、情熱的で、思いやりが合って、謙虚で、顔も悪くない。にもかかわらず恋人がいないばかりか、今まで誰とも恋愛をしたことがないという。同性愛者ではないのなら、恋人がいない理由は彼の内面にしかない。凛はその理由をずっと考えてきた。他でもない、自分だけが彼の恋人となるために観察し、推察し、考察し、やがて一つの答えに辿り着いた。
彼はその獣性ゆえに、己を憎悪している。
そう考えるといろいろなことに納得がいった。彼は忌まわしい自分自身に価値を見出していない。だから休日なんていらないし、理不尽な叱責を受けても怒らない。異常といえるほどの数のアイドルを担当しているのに、今まで大した問題もなくやってこれたのは、彼自身が持ち得る時間のすべてをアイドルたちに使っているからだ。
ここでの生活で凛が一番驚いたのは、男の私物だった。趣味である特撮系のアイテム以外に、彼自身の個性が感じられるものが何一つとしてなかった。いや、そもそもその趣味でさえ、呪わしい自分からの変身願望のあらわれなのかもしれない。
男は同業者の中では洒落者で通っていた。アイドルからもお洒落で格好いいプロデューサーだと見られている。事実、彼は安くないスーツをそれこそ十着以上持っていて、ネクタイやネクタイピン、ハンカチや時計、靴にベルトなどの小物も充実させていた。だがそれが彼の趣味ではないことを凛は知っていた。
男がスーツに大枚をはたいているのは、別にそれが生きがいとか道楽だからではない。単純に、アイドルたちのためだった。
まだ凛たちが知名度のない駆け出しだったころ、アイドルを連れて外回りをするとき、男は必ず服を着替えてから営業に出ていた。社用車のなかで何度も待たされたことがある凛は、そのことについて面倒ではないかと問いかけたことがある。だが男は笑ってこう答えた。
『どんなに美味しい料理だって、器がダメだったら台無しなんだ。高級フレンチが紙皿に乗って出てきたらどう思う? その道何十年の寿司職人が握った寿司が、プラスチックのパックに入ってたら幻滅だろ? それと一緒だよ。俺は新人アイドルっていう未知の料理を乗せる皿なんだ。そしてこの業界には似たような料理がいくらでもある。そのいくらでもある中で、少しでも手に取ってみようという気にさせないとダメなんだ。だから俺は、みんなの魅力を引き立たせてくれる服を選ぶ。最初の一口を知ってもらうために、全力を尽くしてるんだ』
それを聞いた凛は、あっけに取られた顔で自分のプロデューサーをまじまじと見つめた。そしてふと気付く。自分と外回りに出るとき、彼はいつも同じスーツを着ていることに。
『ん? ああ、これは凛のためのスーツだからな』
わざわざ買ったのかと聞くと、男は何でもないことのように笑った。
『凛は愛想がないからな。相手が誰でも怯まないし、そこにいるだけで迫力というか貫禄があるから、初対面の相手にはその雰囲気を少し和らげないといけない。他の子のスーツだとそれができないから、仕立ててもらったんだ』
そのとき、申し訳なく思ったことを凛は覚えている。
まだ、アイドルになったばかりのころだった。なりたくてなったわけではなかった。アイドルとか芸能界に憧れていたわけでもなかった。ただ何となく閉塞感を感じていて、毎日が少し息苦しかった。代わり映えのしない日常。いつまでも続く平穏。この先、死ぬまでずっと平和なのかと思うと、心がわけもなく重くなった。何かが変わらないだろうか。何かが起こらないだろうか。そう思っていた矢先のスカウトだった。
だがスカウトを受けたからといって、人生が劇的に変わったわけではなかった。むしろ鬱屈は増した。同じ時期に仲間になった卯月は養成所でずっと努力を続けてきていたし、未央は自分からオーディションに飛び込んで合格した。そんな二人に対して自分はどうだろうか。なんとなく生きてきて、なんとなくアイドルになっただけだった。レッスンは頑張っているつもりだが、卯月とはそもそも土台からして違った。未央の集中力とセンスは素人の凛からみてもずば抜けている。二人と比べて優れた要素が一つもない。そんな自分のためだけに、わざわざスーツを仕立てたという。
その期待が、重くて。応えられない自分が、腹立たしかった。
――私なんかのために、そこまでする必要なんてないのに。
うつむき、そう本音をこぼした凛に、男はこう言った。
『だって悔しいじゃないか。凛はこんなにも素敵な女の子なのに、俺の努力が足りなくて、それを人にわかってもらえないなんてさ』
凛は弾かれたように顔を上げた。男はハンドルを握り、前を向いたまま続ける。
『それと、私なんかって自分を見下げることなんてするな。レッスンが上手くいってないのは知ってる。凛が自分と二人を比べてることもわかってるよ。
卯月は下地ができてるからダンスもボーカルも安定している。身体の軸がぶれないからステップのリズムも正確だ。未央は動きが荒いがそれを補って余りある素質がある。ちょっとしたミスも笑顔一つで取り返す度胸と、それを許される愛嬌も大したものだ。あの二人は方向性こそ違うが、アイドルとしての素晴らしい才能がある。あの二人と比べると、まだ凛は動きも固いし声も伸びも足りてない。
けどな、あの二人とレッスンを続けて弱音の一つも吐かないのは、誰にでもできることじゃない。普通の女の子だったら、ただのレッスンでも一カ月、早ければ数週間であの二人に潰されるんだ。眩しすぎる才能に当てられてな』
男はそこまで言ってから、いったん言葉を切った。ミラーを確認して注意深く車線変更する。
『それに、凛は二人のこと好きだろ?』
――嫌いじゃないだけだよ。
『それで充分だ。普通はな、アイドルになりたいのに、自分よりも明らかに優れた二人のアイドルとレッスンしてれば、卯月と未央の人間性に関係なく嫌いになるもんだ。なにせデビューすれば最大の敵になるんだ。憎むなというほうが無理がある。でも凛はそうじゃない。二人に嫉妬してないし、レッスンにしたって自分の力不足を責めてる。これは大きいことなんだ。
誰が言ったかは覚えてないが、芸事は下手に習うと下手になるってのがある。うちの事務所にもっと金があれば最高のトレーナーをつけられたんだが、無い袖は振れないからな。自主レッスンで磨き合うしかない。凛ならそれができる。二人をまともに見ても潰れずにやっていける。卯月と未央の三人で高め合うことができる』
――でもさ、それ、私が足を引っ張ってるよね。
『まさか。卯月は凛がどんどん上達してるから先輩としてもっと頑張らないとって息まいてたし、未央はレッスンに張りあいが合ってすごく楽しいって言ってたぞ。凛がいるから、二人ともモチベーションが上がるんだ』
――本当?
『思い出してみろ。あの二人、楽しくてしょうがないって顔でレッスンしてるだろ』
――ふふ……そうだね。そうだったよ。
『凛はこれからどんどん伸びる。なにせ二人に一番近いところで、二人のいいところを盗めるんだから』
――そうかな。
『そうだとも。俺なんかが言うのもどうかと思うが、もっと自信を持ってもいいぞ』
――うん、ありがと。
『ああ、けどな、凛。繰り返すけど、お前には愛想がない』
――それは……自覚してる。
『だけどな、笑った顔はお前が一番かわいいよ』
男は前を向いたままそう言った。だから助手席の少女が耳まで顔を赤くしてうつむいたことも知らないし、彼女の心臓がどれほど強く脈打っていたのかも気付かなかった。凛でも照れたりするんだな、という男のぞんざいな認識は、凛がこの瞬間に感じた運命とあまりにもかけ離れていた。
いま思えば、どうして彼がこういう言動ができるのかも凛にはわかる。誤解や曲解を招くような、率直な好意と他者肯定。普通だったら恥ずかしくて言えないような言葉を、彼はさらっと使ってしまう。それは自分のような人間が言ったところで、相手は真剣に受け止めたりなどしないと思っているからだった。
彼にとって彼の存在はひどく軽いものだった。アイドルのために努力するのが義務と考えており、そのために彼自身が支払う時間も労力もすべて無償だと考えている。彼は自己愛から最もかけ離れた人間といえた。故に好意を寄せられると戸惑ってしまう。好きだと言われると困ってしまう。彼自身の認識では、アイドルに対して特別なことは何もしていない。プロデューサーとして当たり前の仕事をしているだけであって、感謝はともかくそれ以上の感情を寄せられる理由が本当にわからない。
アイドルのために昼夜なく働き、余暇をすべて使い、彼女たちを励まし、褒め称え、時には叱り、慰めてきた。手を引いて、背中を押して、ステージに送り出す。一途で、必死で、献身的な、無償の奉仕。彼にとってそれは、やりがいのある、少なくないサラリーが出るボランティアだった。しかし彼の一連の行為は、アイドルたちにとっては無償の愛に他ならなかった。
他人のためにどうしてここまでしてくれるのかという疑問は、自分のためにこんなにも頑張ってくれているという感謝に変わる。ありがとうという気持ちが愛しいという感情に変わるのにそれほど時はかからない。アイドルとプロデューサーという関係で告白などできるわけもなかったが、愛してくれる人に応えたいと思うのが人間だった。愛する人に応えてほしいと思うのが女だった。
彼女たちは彼女たちなりに、プロデューサーに報いろうとした。自分が受け取ってきたものをほんの少しでもいいから返したかった。だが彼から返ってくる反応はどれもおかしなものばかりだった。
彼女たちが想いをほのめかすと、男は戸惑ったり、悩んだり、苦しんだりした。初めはアイドルとプロデューサーだから仕方がないと彼女たちは考えたが、だんだんおかしいと思い始めた。男の言葉も、行動も、すべてが嘘ではないかと疑うようになった。突き放すような態度を取ったり、距離を置いたり、時には拒絶さえした。だがそれでも男の態度は変わらない。自己犠牲的な奉仕は微塵も揺らがない。やがて彼女たちは男の愛が自分が考えているよりも、もっとずっと大きなものだと錯覚するようになった。
この時点で、すでに彼女たちの目は光を失っていたと言っていい。
盲目的な、底なし沼にも似た、一方的な、恋愛感情。
それに男が気付いたのは、相互理解がもはや致命的な段階まで歪んでからだった。だが気付いただけだった。理解できなかった。どうしてなんの価値もない自分などにそんな感情を抱くのか。いや、そもそもそんな感情を抱かせてしまった自分の言動が、プロデューサーとして不適切だったのか。
男は悩んだ末に、辞職を決意した。プロダクションの運営も軌道に乗った以上、自分がいるのはもはや悪影響でしかないと考えた。自分がすでにどれだけ影響を与えたのかも顧みずに、彼女たちの前から去ろうとした。目の見えなくなった彼女たちを闇の中に置き去りにしようとした。その結果が、現状だった。
「――何を迷ってるの?」
首輪をじっと見つめる男に、凛が微笑みかけた。一番かわいいと言ってくれたその笑顔に、男のズボンが膨らんだのを凛は見逃さない。
男の性欲は異常だった。ここでの生活を始めてからしばらく経つが、彼の体力と精力が衰えたことは一日もない。彼から求めてくることは決してないが、毎日一人を相手にするというルールには大人しく従っていたし、一度その気にさえすればただの獣に成り下がる。
男は行き過ぎた情動を抑え込むために自分自身を殺し、仕事に没頭し、立派なプロデューサーを演じることで、けだものじみた性欲に枷をした。アイドルをそういう目で見てしまう自分を抑えてきた。きっと今までそうやって生きてきたのだ。性に目覚めたときから、身近な異性を想像の中で凌辱し穢してしまう自分に自己嫌悪を抱いてきた。それはおそらく大人になっても変わらなかった。
十年以上も続けてきた抑圧と抑制で、男の自己嫌悪はもはや呪いの域に達していた。その呪いを解いてあげたいと凛は思う。自分を好きになることは素晴らしいことなのに、それができないのは悲しいことだ。自分を好きになれれば、自分を信じられる。自分を信じられれば、他人を信じられる。他人を信じられるなら、愛を生みだすことができる。愛を生み出せるなら、幸せになれる。
凛にそれを気付かせてくれたのは、他でもない。プロデューサーだった。
「ねえ、プロデューサー。私、綺麗になったよね。綺麗な子にそういうことしたいって思うのは、悪いことじゃないんだよ。普通だと思う。支配欲とか、独占欲とか、誰だってあるよ。当たり前のことなんじゃないかな? 変じゃないよ。好きだからセックスがしたい。大好きだからいろんなセックスがしたい。私はプロデューサーが好き。一日中していたいくらいに好き。プロデューサーは、どう? 私のこと、好き?
……なんて、ね。答えられないよね。知ってるよ、ちょっと意地悪したくなっただけ。プロデューサーは、わからないんだよね。私を抱きたいから、私が好きなのか。それとも私が好きだから、抱きたいのか。愛情が先なのか、性欲が先なのか、わからないんだよね、プロデューサー。
でもさ、それってキッチリ分けなきゃいけないのかな。好きな人とセックスしたいって言うのは、人間として当たり前の欲求だよね? そこには良いも悪いもないと思うんだ。善と悪を超えたところにある、純粋な気持ちだから。
さわって、ここ。感じる? 私の心臓の鼓動。これが私の気持ち。プロデューサーと一つになりたいっていう、私の気持ち……伝わってるよね? じゃあプロデューサーは、どうかな……?」
凛はぴったりと身体をくっつけると、男の胸に耳を当てた。心地よさそうに目を閉じる。
「……うん、聞こえる。プロデューサーの気持ち。私ね、知ってるよ。プロデューサーはものすごい変態さんで、それを誰にも言わずに隠してきたこと。セックスは汚くて悪いものだと思ってるんだよね。確かに気持ちのないセックスなんてただの暴力でしかない。でも、プロデューサーのここには気持ちがある。私と同じ、好きだから一つになりたいっていう気持ちがあるの。だからおかしくなんかないよ。プロデューサーは間違ってない。男の人がこうなるのは、当たり前のことなんだよ」
男の、ズボンを突き破らんばかりの怒張を撫でて、凛はすこし身体を離した。
「私はプロデューサーに自分の心と向き合ってほしい。自分の気持ちを拒絶してほしくないの。自分を認められないって、とても辛いことだから。だから素直になって、したいことをして。私が受け止めるから。プロデューサーがしたいことなら……全部、受け止められるから」
凛は首を差し出した。男の手が、黒い首輪を細い喉にあてがった。震える指が、苦しくないように、白い肌を傷つけないように、細心の注意を払って首輪を締める。
首輪を嵌められると、凛はぱっと男から離れてベッドに飛び乗った。シーツの上で犬のように四つん這いになり、尻尾の代わりに尻を振る。ぱっくりと開いた陰唇から滲み出る愛液を見せつけながら、凛は熱っぽい目で男を振り返った。
「……わんっ!」
男が破り捨てそうな勢いで服を脱いだ。かつてない大きさに反り返った陰茎を見て、凛の頬がとろける。力強い両手に腰をつかまれて、子宮が期待に震えながら降り始める。先走りでどろどろになった亀頭がぴたりと膣に当てられ、生唾を飲み込む間もなく入ってきた。背骨を貫いて、直接脳髄に突き刺さるような快感。まずい、と思った時には男は腰を振り始めていた。
一突きごとに硬く張り出したエラが愛液をこそぎ落とし、膣壁をすり上げる。かき出された体液がぼたぼたとシーツをシミを作り、潤滑が少なくなった膣が陰茎との強い摩擦で震え始める。今までで一番硬くて、強い。女の本能が求められる悦びにわなないていた。腰を打ち据える音と肉壺をこねくり回す音に耳を犯されながら、凛はだらしなく舌を伸ばして涎を垂らしていた。
別に、いいのだ。今の自分は犬だ。主人に愛される犬。犬だから理性はない。恥もない。知性もない。醜態を晒して白痴に悶え、はしたない嬌声を上げても構わない。犬は何も考えない。犬はただ主人に尽くし、愛されることだけを望む。これは男の肉欲を肯定し、受け入れるための最も適した形態なのだから、とても自然な姿なのだ。
上体を腕で支えきれなくなってベッドに突っ伏した。男に膣を抉られるたびにシーツに乳首が擦れ、ちりちりとした痺れが全身に走る。ともすれば気をやってしまいそうになるのを耐えた。爪が白くなるほどにシーツを握りしめ、クッションを噛む。男の激しい動きに必死さが混じっていた。もう少しだけ我慢すれば一緒にいける。凛は獣のように唸り声をあげて、今すぐ達しそうな自分をこらえた。頭がおかしくなりそうなほどの快感が、圧縮されていく。全身の感覚と神経が膣内に集中し、そして滾りに滾った精液の放出に合わせて解放された。
「……ああッ! ぁぁぁあああああああ―――――ッ!!!!」
叫んだ。叫ぶことしかできなかった。人間として蓄積してきたものがなにもかも消え去って、剥き出しになった魂が一つに溶けあった。男がぐったりとベッドに手をつく。凛は背中に感じる男の体温で、充足感と解放感と幸福感に満たされた。
呼吸が落ち着いてきても、男の陰茎はまだ入ったままだ。半勃ちのそれを、凛は膣内できゅっと絞った。男が声を漏らす。吐息がうなじにかかる。凛は腰をくゆらせて、柔らかくなった男の男根を下の口でゆっくりねぶった。肉竿はたちまち硬さを取り戻し、愛液と精液でどろどろになった膣を押し広げる。
「んぁ、ぁっ……ぁん……わんっ♪」
男が再び凛の腰をつかんだ。ぬちゃぬちゃと粘つく音が聞こえ始めて、凛は嬉しそうな声で鳴いた。
四日目
ちひろ
「さあプロデューサーさん、検査の時間ですよ」
部屋のドアを開けたちひろは満面の笑みを浮かべていた。ナース服である。コスプレショップにあるような安っぽい生地のものでなく、清潔感を第一とした白いユニフォームは、紛れもなく本職のものだった。小物としてクリップボードも持っている。
「横になって、楽にしててくださいね。じゃあズボン脱いでください」
男は言われたとおりにズボンをずらした。すでに半勃ちの男性器を見たちひろが、舌なめずりをしながら男に近づく。
「あら、もう大きくしちゃってるんですか? ずいぶんとせっかちさんなんですね……くすくす」
小悪魔的な微笑みを浮かべて、ちひろが剥き出しの亀頭に息を吹きかけた。くすぐったそうに跳ねる陰茎を、指一本で愛撫する。根元から裏筋までをナメクジのようなしつこさで何度も往復し、滲み出た先走りをねっとりと塗りつける。刺激としては弱いが、これをずっと目を合わせたままやられるのだからたまらない。ちひろの指が先走りでべとべとになるころには、男の陰茎は開き直ったかのようにそそり立っていた。
「指で撫でられただけでこうなっちゃうなんて……本当に変態なんですね、プロデューサーさん」
ちひろが指を離すと、先走り汁がつぅと糸を引いた。にこやかな笑みに淫靡な陰を潜ませ、ちひろは粘度を確かめるように指をこすり合わせる。それからふと男に視線やり、にちゃにちゃと粘つくそれを口に含んで見せた。
「いつもと同じ、えっちな味ですね」
唾液に濡れた指が亀頭を嬲り、先走り汁を竿全体にまぶす。ちひろは興奮に頬を染め、陰茎をしごき始めた。粘ついた音。白い指が蛇のように絡みつき、根元から先端まで絞り上げた。苦しげに震える鈴口からぷっくりと滲み出たカウパー液を、ちひろは手のひらですくい取ってまた竿に塗りたくる。
「腰、浮いてきてますよ? 気持ちいいんですか? でもまだ出しちゃだめですよ?」
うめき声を上げる男を嗜虐的な目で見つめながら、ちひろは笑みを深めた。右手で男の逸物をしごきつつ、首から提げたナースウォッチで時間を計る。ベッド脇に置かれたクリップボードには、前回の射精までの時間が記入されていた。
「たーっくさん我慢してから出したほうが、気持ちいいんですから。あと五分は耐えてくださいね。……ふふっ、ほらほら、まだですよー? がんばれがんばれ♪」
男の耳元でちひろがささやく。濡れた唇から漏れる吐息は男の耳を炙り、鼓膜に焼け付いた。歯を食いしばる男の様子にちひろはたまらなさそうに溜め息を吐いて、真っ赤な舌でちろちろと耳の形をなぞった。男の首筋に浮かんできた汗も舐めとる。
「うふふっ……興奮しすぎですよ、プロデューサーさん。こんなに反り返っちゃって……亀頭もパンパン。もう漏らしちゃいますか?」
男の呼吸が荒くなってくる。ちひろは彼の頬にキスをして、肉棒をしごく手を止めた。しかし動きは止めない。親指と人差し指でカリ首を絞めると、残りの指と手のひらで亀頭をぴったりと包み込んだ。たおやかな指と柔らかい手でどろどろに濡れた亀頭をゆっくりと責める。男の腰が浮いた。ちひろはさらに手をひねる。ドアノブを回すように亀頭をねじり上げ、男の喉から声をひり出させた。
「もう、そんな切なそうな顔で見ないでください。……もっといじわるしたくなるじゃないですか」
亀頭を散々いじっていた手が、ねじり上げる動きはそのままに竿全体を上下にしごき始めた。顔を真っ赤にした男がちひろを見つめ、弱々しく彼女の名をつぶやいた。懇願するようなその声で絶頂しかけたちひろは、べたべたなった手を逸物から放して男にまたがる。
先にこらえきれなくなったのはちひろのほうだった。荒々しい手つきで下着をずらし、射精寸前でほっぽり出された肉棒を一息に膣内へ挿入する。待ちかねていた快感で背骨が痺れ、膣壁が脈打つ陰茎を締めつけた。
「し、仕方のない人なんですから……っ! こんなに、ッ……ビクビク、させて……ぁん……もう限界みたいですし、しょうがないですよね……」
少しでも動いたら達してしまうことはお互いにわかっていたが、リードしている以上は虚勢を張らざるを得なかった。ちひろは騎乗位のまま呼吸を整えて、ゆっくりと、慎重に男にしなだれかかると、汗ばんだ胸板に両手を当て、耳元でそっとつぶやいた。
「……ぜーんぶ、出してください……ねっ」
膣内で肉棒が震えた。男の腰が跳ねて、膣を押し上げる。耐えに耐えて解き放たれた精液は濁流となってちひろの子宮口に押し寄せ、絶頂に震える膣を満たした。射精の脈動と膣壁の痙攣が呼応し、官能を際限なく高め合う。互いに互いを抱きしめたまま、二人はずっと震えていた。今までになく長い余韻だった。
体位が変わる。抱き合ったままベッドの上で転がって、男が上になった。余韻の抜け切らないちひろの唇を割って、口内に舌を潜り込ませた。口蓋と舌下にある性感帯をざりざりと舌でねぶり、硬度を取り戻した逸物で肉壺をかき混ぜ始める。愛液と精液が泡立ちながら混じり合っていく。絶頂の余韻と、それを塗り潰して肥大化する肉欲の悦び。
攻守が入れ替わった。ちひろの表情にはすでに嗜虐的な色はない。蕩けきったその顔は、子種を注がれることだけを望む、ただの女だった。
五日目
まゆ
「お、お邪魔します」
部屋の扉を開けて、まゆがどこかそわそわとした様子で入ってきた。こういう関係になってからも、まゆだけは以前とあまり変わらないというか、他と比べて『馴れ』がなかった。むしろ二人きりの時はまゆのほうが彼を意識をし過ぎて、ぎこちなくなっているほどだ。
「……やっぱり、変な感じがします」
男の隣に腰掛けて、まゆは独り言のようにつぶやく。
「Pさんとこういう関係になりましたけど、まだ実感がわかないっていうか。まるで夢みたいで……現実離れしてて、信じられなくて。だって少し前までのまゆに、いまはこうなってるんですよって言っても絶対に信じないと思いますし。これが本当のことなのか、時々わからなくなるんです……」
まゆは様子を窺うように男の横顔を見つめた。そしてそこにいる彼が幻ではないか確かめるように、恐る恐る手を伸ばした。触れたから消えてしまうのではないか。夢が終わってしまうのではないか。そんな不安に震える指先が、男の頬に触れた。自分とは違う肌の感触に、まゆはほっと息を吐いた。
「……夢じゃ、ないんですよね」
まゆは男の手をきゅっと握る。目を閉じて、寄り添うように男の肩に頭を預ける。男のぬくもりが、男の匂いが、どうしようもなく彼女を満たしていった。幸せだった。この上ない充足だった。だが満たされれば満たされるほど、不安になる。失ってしまうことが怖くなる。捨てられてしまうことが恐ろしくなった。
彼女自身、この状況の異常さは認識している。上手くいくわけがないと思っていた。プロデューサーを複数人のアイドルで共有するなど、いくらなんでも無理があると。だからこそ彼女はこの状況に加担したともいえる。失敗するとわかっていれば何も怖くなかった。これ以上、事態が悪化することはないとわかっていたから、ほとんど自暴自棄で計画に協力したのだ。
だが、いまはこうなってしまっている。事態は計画通りに推移し、驚くべきことに何の問題もなく事態は進展している。当然の障害として予想されたアイドル同士の軋轢さえなかった。むしろ同じ秘密を共有する者同士、仲が深まったほどだった。
「不思議ですよね。なにもかも順調で、怖いくらいに物事がうまく回ってて。凛ちゃんと未央ちゃんは明らかにアイドルとしてパフォーマンスが上がっていますし、美優さんは今までの儚げな雰囲気のなかに、芯が通ったというか、強さが見えるようになりましたし……留美さんはさらに自信をつけて、出来る女のオーラがビリビリ出てますし……光ちゃんはダンスのキレが全然違いますよね。弾けるような笑顔で、なんでもできるって顔をしてて……まゆも、そうなんです。
モデルのお仕事で、考えることが少なくなりました。ポーズとか、角度とか、照明とか、前はいろいろ気にしてたんですけど、今はそんなこともなくなって……思い返せば、集中出来てなかったんだと思います。自分がどう見えるのか気になって、雑念が入っちゃってたんです。だって、写真はPさんが見るじゃないですか。だからどうしたら一番かわいいまゆをPさんに見てもらえるか、そればかり考えてしまってたんです。そのせいで、何度かカメラマンさんに怒られてしまいましたけど、いまはそんなこともなくなりました」
まゆはプロデューサーの太股に手を置いた。悪戯っぽく笑みを浮かべて、指先でつつっと撫でる。
「……やっぱり、愛されてるっていう実感があるからでしょうか。こうなる前は、不安で不安で仕方がなかったんです。Pさんはまゆのことをアイドルとしてしか見ていないんじゃないかって。女の子としてのまゆなんかなんとも思っていないんじゃないかって。……怖かったんですよ? あのとき、Pさんが辞めるって言ったとき、考えたんです。Pさんにとって『アイドルではない佐久間まゆ』に、どんな価値があるのかって。
まゆは、Pさんがプロデューサーでもなんでもいいんです。PさんはPさんですから。どんなPさんでもまゆは大好きですから、Pさんがお仕事を辞めても付いていけばいいって思いました。でも、アイドルじゃないまゆを、Pさんが好きでいてくれるのかわからなかったんです。Pさんの一番好きなまゆは、きっとアイドルをしているときのまゆだから……アイドルじゃなくなったただのまゆを、Pさんは愛してくれるのかなって……まゆは、Pさんの一番好きなまゆでいたくて……でも、Pさんが辞めちゃったらそばにいられないから……だったら、死ぬしかないって思いました。Pさんが一番好きなまゆのままで死んで、お化けになってPさんのそばにいれば、それでいいかなって。
……ふふ、いま思えばあのときのまゆ、むちゃくちゃなことを言ってましたね。殺すとか、殺してほしいとか。できもしないことを言って、すこしでもPさんの気を引こうとしてたんでしょうか……? 自分のことですけれど、よくわかりません。そんなことをしても何の意味もないのに。Pさん、まゆはこう思うんです。愛っていうのは与えるものなんだって。奪うことなんてできないんです。奪うことで満たされるのは、独占欲とか、支配欲とか、そういう自分の醜い心だけです。愛して、愛されて、初めて人は満たされるって、まゆは思うんです」
男の肩を押してベッドに押し倒した。恥ずかしい気持ちを乗り越えて、馬乗りになって、男の顔を覗き込む。男はすぐに顔をそむけたが、まゆはにっこりと笑った。顔をそむけるのはやましいからだ。男の中に、こんなことをしていてはいけないという気持ちと、これから何をされるのかという期待がある。
まゆは全身をぴったりと男の身体にくっつけて、男の頬にキスをした。そして耳元でそっとささやく。
「……Pさんのこと、まゆでいーっぱいにしてあげますからね……?」
男の股間が反応し、まゆはますます笑みを深めた。首筋を吸いながら両手を裾から滑り込ませ、男の乳首を責める。爪で優しく撫でて、人差し指で転がして、親指ですりつぶす。押し殺した声で喉を震わせる男を見ているだけで昂ってくる。声を上げさせたくてますます激しく責め立てた。
右手をズボンの下へ滑り込ませ、パンツのなかでパンパンになっている亀頭を手で包み込んで、そのまま手首でねじり上げる。カリと裏筋と鈴口をねっとりと愛撫され、男の身体が硬直する。左手で乳首をいじるのも忘れない。粘ついた音がズボンの下から聞こえ出す頃には、まゆの手を膣と認識した男の本能が腰をゆすっていた。
まゆはズボンをずらして肉棒を露出させると、先走りでぬるぬるになった手で竿を軽くしごいた。跳ねまわる男根に愛しそうな視線を向け、指先に付着した先走りをぺろりと舐める。立ち上る匂いと男の味で頭がどうにかなりそうなくらい熱くなった。
まゆは寝そべる様に男の上でうつぶせになり、粘液でてらてらと光る陰茎を太股で挟みこんだ。やわらかな肉に挟まれた肉棒がぬたりと柔肌を汚し、抑えようもない本能が男の腰を突き動かす。張りだした血管が大陰唇を押し割り、膣口をにちゃにちゃと擦った。まゆは声が出そうになるのをこらえて、両手で男の乳首をもてあそぶ。
「ふふっ、ふふふっ……もうイっちゃいそうですねぇ……女の子に乳首を責められて、素股でイっちゃうのってどんな気分ですかぁ?」
すこし重い
すこしってなんだろう……
まゆの言葉責めに男の腰使いが激しくなる。愛液と先走りが混ざる音は、膣を使っている時とほとんど変わらなかった。まゆはうっとりとしながら男の胸板に耳を当てた。自分を乗せたまま激しく脈動する男の肉体と、全身に血を滾らせる力強い鼓動に溜め息をつくと、いきなり男が抱きしめてきた。
「Pさんっ、あ……あんっ!」
悲鳴を上げる間もなく、気付けば体位が入れ替わっていた。自分を見下ろす男の目は完全にけだもののそれだった。男の太い指がまゆの乳房を鷲掴みにし、仕返しとばかりに乳首をつねった。痛みとそれを上回る快感に悲鳴を上げた。肺が空っぽになるまで喉を振り絞り、大きく息をつこうとした瞬間、剛直で膣道をこじ開けられた。パンパンに張った亀頭が子宮口を打ち据える。声を上げようにも息ができなかった。まゆは男の名を呼ぼうとし、口を塞がれた。喘ぐ舌を蹂躙される。鼻だけでは呼吸が追いつかないというのに、男の責め方には容赦がなかった。掘削でもするかのように膣を虐めながら、口腔を乱暴に愛撫する。
まゆは抵抗をやめて受け入れた。求められている。満たされている。この上なく愛されている。意識が朦朧としているのに、押し寄せてくる絶頂感と幸福感だけははっきりと感じ取れる。打ち据えられて、すりつぶされて、こねくり回されて、ただただ声をあげて啼いた。どれほどそうやってつながっていたかわからない。やがて男が止まった。来る、と思った瞬間に膣内に精液が放たれた。絶頂が弾けた。無意識に身体が弓なりに仰け反り、より深い快感を得ようと両脚が男の腰に絡みつく。幸福に打ち震える女性器が一滴でも多くの精子を得ようと陰茎に奉仕する。二つの心臓が一つになって鼓動しているのを感じた。
絶頂感が去れば、後に残っているのは余韻ととめどない喜びだけだった。全身がぐっしょりと濡れている。男の顎から汗が滴となって頬に落ちたが、まゆに嫌悪感はなかった。ただ嬉しかった。しかし男が汗だくということは、振り返ってみれば自分もそうだということである。それはいくらなんでも恥ずかしい。幾度となく肌を重ねても恥ずかしいものは恥ずかしかった。
「……あ、あのっ……Pさん、まゆ、シャワーあびたいです……え? なんでって……それは、いまのまゆは汗くさいから……ひぁ!? も、もうっ……どうして大きくなるんですかぁ……で、ですから、ダメなものはダメで……あっあっあっ!」
六日目
未央
「……これ、使ってみようよ」
そう言って未央がベッドに置いたのは、黒い革のリストバンドだった。左右で一揃いの、縫製も革のなめしも上等なものである。バンド同士をつなぐ鎖も太く、こういったグッズにありがちなチープさは微塵もない。
いかにも本職用といった雰囲気を醸し出しているそのアイテムを前に、男は沈黙した。どこで手に入れたのかと問えば、未央は顔を真っ赤にしてこう答える。
「つ、通販で。……その、プロデューサー、こういうの好きそうだし。わ、私も……興味、あるし」
蚊の鳴くような声だった。男はどう返していいかわからず、じっと拘束具を見下ろしている。未央はある種の不安と期待に満ちた目で男をちらちらと窺っていたが、黙っているとそれだけで気恥ずかしさが高まってきた。じっとしていられなくなって、シャツを脱いだ。動かないのなら動かしてしまえばいいのだ。
下着姿になった未央は、拘束具を男に押しつけると背中を向けた。ブラジャーを外し、それから後ろ手を差し出す。
「……つけてよ」
眩しいばかりの背中に男はめまいを覚えた。瑞々しい肌を押し上げる肩甲骨と、健康的な背筋の起伏が得も言われぬ陰影を描いている。肩からうなじへかけての躍動的な稜線は芸術的で、恥ずかしそうに男を振り返るその横顔は、ただただ魅力的だった。
男は未央の手を取り、細い手首に革を巻いた。白い肌と黒い革のコントラストに、太い鎖がどうしようもない背徳感を演出している。男があっけに取られていると、じゃらりと鎖が鳴った。未央が振り返る。向き直った少女は手を後ろに拘束されているため、たわわに実った乳房を晒すしかなかった。
「な、なんか……すごいドキドキしてきた。腕が動かせないって……へ、変だね……私、こういう趣味はないって思ってたけど」
張りのある乳房の先端は触れてもいないのに硬くしこっている。男がそっと触れると、未央はそれだけで溜め息を漏らす。肌がやんわりと赤く染まっている。紅潮した乳房を軽く愛撫し、指先で肩まで撫で上げた。華奢な両肩を手のひらで覆うように包み込むと、未央が目を閉じる。男は誘蛾灯に誘われる羽虫のように愛らしい唇に口づけをした。ついばむような優しいキスはすぐに互いを貪る激しいものに変わる。舌と舌が絡み合い、唾液が滴り落ちては未央の乳房に垂れていく。
口が離れた。未央は蕩けた目で男の股間を見つめ、そして何を思いついたのか、たまらなく淫蕩な笑みを浮かべて見せた。
「……ね、プロデューサー。ちょっとさ、やってみない? 私の頭をつかんで……お口を使っておちんちんしごくの。イラマチオ……っていうんだっけ。ほら、私いま抵抗できないじゃん? 抵抗できない女の子にさ、そういうヒドいこと……やってみたくない? 喉をじゅぽじゅぽって、してみたくない? ちなみに、未央ちゃんは……そういうの、されてもいいって思ってるんだけどな……?」
男の目の色が変わった。未央の肩をつかむ指に力がこもる。いいのかと視線で問いかけてくる男に対し、未央はベッドに横たわり、大きく口を開けて見せた。濡れた舌先を誘うようにくねらせると、男の顔から迷いが消えた。服を脱ぎ捨て、未央の顔をまたいで膝立ちになる。
「うっわ、すご……興奮しすぎじゃない、プロデューサー? いまにも先走りが垂れてきそうなんだけど……」
屹立した逸物を間近で見て、未央は上ずった声でそう言った。どくどくと脈打つ浅黒い肉棒が、熱気とともに雄の臭いを撒き散らしている。これが入ってくるのだ。喉に。おそらく手加減なしで。いまさらながら怖いと未央は思った。だがそれ以上に期待で胸が躍った。壊されるかもしれないという恐怖感よりも、壊されてしまいたいという願望のほうが強かった。
優しい人だから、壊れたものを捨てるようなことはしない。だからきっと、壊してしまったモノにはもっと優しくしてくれる。たくさん気にかけてくれる。優しい言葉と、あたたかい手のひらを、もっとくれるはずだから。
「あ、ちょっと、ほっぺにこすりつけないでよ……ドキドキするじゃんか、もう……」
我慢できなくなって口を開けた。舌先に触れた亀頭の熱さに驚く間もなく、剛直が入ってくる。男の味と臭いが鼻を突き抜けて頭の奥が熱くなった。喉に挿入される感覚に身体が反射的に反応し、異物を排除しようと喉がえずいた。涙腺から涙が滲み始める。男が腰を止めたので、未央はウインクをすると、男の逸物を一気に呑み込んだ。喉の奥を亀頭が通り抜け、どうしようもない吐き気が込み上げてくるが、快感に歪んだ男の顔と、押し殺した嬌声を聞けば、生理反射などどうでもよくなるほどの多幸感があふれてくる。
男の手に頭をつかまれる。両手の十指が未央の頭皮に食い込み、ペニスが喉からゆっくりと引き抜かれていった。そこでようやく未央は自分が呼吸していなかったことに気付いた。肺が酸素を求めて膨張し、肉棒に押し広げられた喉がぜえぜえと音を立てた。ぼろぼろと涙がこぼれ、男の顔もろくに見えないが、未央は笑って見せた。
「……思いっきり、使っていいからね。たくさん、気持ちよくなってほしいから……」
口を開けた。舌先で男の裏筋を撫でると、逸物が入ってきた。口唇を膣腔に見立てた容赦のない抽送。声を上げる余地などない。咽奥から滲み出た唾液が先走りと混ぜ合わされ、苦鳴を上げるたびに唇の端から泡となってこぼれおちる。息ができない。死ぬかもしれない。そう思うのにとても心地が良い。頭をつかむ指が、いつもより熱く滾る肉竿が、遠くで聞こえる男の荒い吐息が、どうしようもなく自分を求めているのだと思うと、胸が熱くなる。
いまこの時だけとはいえ、自分だけを見て、自分だけを感じて、自分だけを愛してくれている。こんなに嬉しいことなんかなかった。
口をすぼめて陰茎を吸い上げ、限界まで男を受け入れた。浮き出た血管をこそぎ取る様に舌を這わせると、舌の上で怒張が跳ね、膨らんだ亀頭がさらに一回り大きくなった気がした。頭をわしづかみにされて、吐き出される。精液が喉の奥で弾けて食道に押し寄せる。鼻から突き抜ける精臭で頭がくらくらした。長い射精だった。竿がずるりと引き抜かれ、込み上げてきた嘔吐感に耐えきれずに飲みきれなかった精液を吐きだした。
精液と唾液で胸元までぐちゃぐちゃになった。未央は反射的に謝ろうとして、男を見上げた。彼の視線は未央の胸元に釘づけになっている。汗ばんだ紅潮した肌。たっぷりとした乳房の丸みは、吐き出された体液でぬらぬらと照り光っていた。男の指が未央の胸をつかむ。吐き出された精液と唾液をぬりこむように揉みしだき、どろどろになった手でより硬く反り返った陰茎をしごきあげた。
未央はいまだ涙の止まらない目でそそり立つ男根を見つめて、生唾を飲み込んだ。男が太股を撫でると、黙って股を開く。瑞々しい陰唇はとっくの昔に開ききり、淡い色の花びらから蜜を滴らせていた。唾液まみれの亀頭が肉の中に沈み込む。甘い吐息が未央の口から漏れ出て、突き込まれると同時に甲高く跳ねあがった。
「ぷっ、プロデューサ、ッ! は、はげし、――っ、あっ、あっ!」
ぬらぬらと光りながら揺れる胸に突き動かされるように、男は未央の秘所を責め立てる。涎を垂らし、涙を流し、喘ぎ続ける少女の膣を抉り続ける。骨盤をつかむようにして腰を引き寄せ、剛直を膣壁にこすりつける。未央の背中が反り始め、部屋中にねばつく残響に鎖の音が混ざり始める。男は体位を後背位に変えた。柔らかい尻が腰を打ちつけるたびに弾けるように揺れ、その度にしゃらしゃらと鎖が響く。もはや声を上げることしかできない未央が、上体を支えられなくなって顔をクッションに埋めると、男は鎖を引いて身体を起こさせた。
未央が何かを言っているが言葉になっていない。限界が近い男は両腕で未央を抱きしめた。挟まれた乳房が腕と腕の間からはみ出す。男は最後の一突きで未央の身体を持ちあげた。子宮口を押し上げられた少女は絶頂の予感に喉を仰け反らせ、けだもののように鳴いた。男は全身を痙攣させて精を解き放つと、未央を後ろから抱いたままうつぶせに倒れ込んだ。蠕動する膣壁に腰をゆすってペニスをゆすりつけ、最後の一滴まで送り込む。精も魂も尽き果てて、男は未央の横に倒れ込んだ。そのまま二人とも動かない。
立ち昇る汗と淫水と雄の臭いを、疲れ切った二つの呼吸がかき混ぜている。やがて未央が億劫そうに顔を上げて、男を見た。泣き腫らした目で、にへっと笑う。
「……さいこーだった」
嗄れた声で笑う少女を男は抱き寄せた。鎖を解き、レザーバンドを外すと、未央が抱きついてくる。甘えるように男の胸板に顔を寄せ、汗ばんだ額をこすりつけ、そのまま力尽きるように眠りに落ちた。
男は指先で未央の口元をぬぐった。愛らしい唇は幸せそうに弧を描き、安らかな寝息を立て始めている。
七日目
留美
「今日は私が全部するから……貴方は楽にしてて」
ベッドに横たわらせた男の額にキスをして、留美は薄く微笑んだ。服は着ていない。
ほっそりとした指が男の肌を愛しげに撫ぜる。皮膚の下の血管の一本一本まで数えるような、丁寧で情熱的な愛撫。触られてもいない逸物が鎌首をもたげ始め、留美が楽しそうに吐息を弾ませた。
唇で臍を吸い、しっかりとした腹筋から下腹部までついばむようにキスをしていく。丁寧に剃り上げた陰茎の付け根をぐるりと舌でなぞれば、期待に膨らんだ肉竿がぴくりと反応する。留美は立ちきってない男性器を口に含み、舌でねっとりと唾液をまぶしていった。根元まで一気に飲み込んでから唇をすぼめてゆっくりと吸い上げると、口の中で亀頭が張り詰めていく。ものの数分で男のものが怒張した。こうなると半分までしか口に入らない。
留美は男にまたがり、自分の乳房を男の胸板に押しつけて、陰唇で肉竿をねぶりだした。涼しげな美貌に色欲を滲ませて、肉の花弁で亀頭から根元までたっぷりと愛液をこすりつける。
「……ダメよ、目を逸らしたら。じっと私を見て……? そう。私を見つめていて。すこしでも目を閉じたら嫌よ?」
視線を絡み合わせたまま、何度も何度も膣口を往復させる。動きも刺激も緩慢なものだが、それを一〇分、二〇分と続ければ身体の昂りは凄まじいものになる。二人とも肌には珠のような汗が浮かび、吐き出す吐息は焼け付くほどに熱くなっていた。
お互いに昂り合ってきた頃合いを見て、留美が腰を止めた。口づけをする。性衝動に炙られた舌と舌が炎のように絡み合い、快楽がどろどろと溶けあう。それだけで達しそうなほどに高まった身体を何とか抑え、留美は腰を降ろしていった。
「……ゆっくり、入れるから。動いちゃだめだからね? じっと、してて……ッ! ぁっ、は…………ぁ!」
時間をかけて男を受け入れた。うるみ切った膣がゆっくりとこじ開けられる。笠が肉襞を一枚ずつ押し広げてゆく感覚に、全身がわなないた。限界まで高まった身体はわずかな刺激で暴発してしまう。やっとの思いで男をすべて迎え入れる頃には、留美の額には珠のような汗が浮いていた。
「……今日はね、このままずっとつながっているの……貴方か、私か。どちらかの気が狂いそうになるまで、ずっとこうしてつながってるのよ……」
蕩けきった顔で留美が微笑んだ。呼吸に合わせて膣が収縮し、締めつけられた怒張が二度、三度と跳ねる。お互いにじっとしたまま、ゆったりとキスを交わした。男の指先が留美の背中をなぞった。軽い、痺れるような快感が肌を伝い、留美は小さく吐息を漏らす。上気した頬に、悩ましげにひそめられた柳眉。とろりと潤んだ瞳が男を見つめている。いつも怜悧な空気を纏った留美の痴態に当てられて、男の両手が火照った肢体をまさぐり始めた。
産毛を整えるかのような繊細さで、しっとりと濡れた肌を時間をかけて愛撫する。背中から腰へ。お尻から太股へ。膝から脇腹へ。男の指が肋骨のくぼみを通って乳房を撫でる。ゆっくりと上がってくる指が硬くしこった乳首に当たると、留美がすこしだけ甘い声を上げた。指先はそのまま止まることなく乳房から鎖骨を通過し、うなじから頬までを通りすぎ、外耳をなぞると、最後に手櫛で髪を梳いた。
留美は目を閉じて、男に髪を預けた。撫でられた肌が炙られたように熱かった。だがそれ以上に胎が熱を帯びている。時間の感覚はとっくになくなっていて、どれだけの時間、こうして繋がっているか見当もつかない。留美は時計を探して軽く上体を起こした。ぬちゃりと音を立てて愛液が滴り落ち、呼吸が止まりそうなほどの快感がじわじわと押し寄せてくる。達してしまいそうだった。まずいと思って動きを止めても、快感はいっこうに収まらない。壊れた蛇口に水を注がれ続けるコップのように、絶頂感が満ちてくる。
ゆっくりと深呼吸した。全身全霊で快感を制御しようと集中する。しかし押し寄せてきたのは津波だった。全身が震え始める。身体が制御できない。快感がこらえられない。膣が陰茎を絞るように蠕動を始め、それを受けて男が軽く腰を突き上げる。それだけで留美は絶頂しかけた。
「ま、待って……P、ぁっ……あっ、ひう! ……ぅう、ぃ……! っ! ぁ……!」
コップから水があふれ始めた。満ち満ちた快感がこぼれていく。呼吸するたびに身体が絶頂を迎えそうだった。男が抽送を始めた。ゆったりとした動きだが、致命的に深い。一突きごとに狂いそうな快感が背骨を突き抜けて脳まで届き、留美は歯を食いしばって声を押し殺した。全身が性器にでもなってしまったかのような錯覚に留美は激しく戸惑ったが、それは錯覚ではなく事実だった。男に抱きしめられた瞬間、留美は絶頂を迎えた。
反射的に両手で口を抑え込む。手の隙間から獣のようなうめき声が漏れている。動き始めたばかりだというのに男の腰使いはラストスパートだった。突き上げられるたびに絶頂感が身体の芯を打ち抜いていく。男の手が尻肉を鷲掴みにし、身体が浮き上がるほどの勢いで剛直を突き入れた。破裂しそうなほどに膨張した亀頭がゆるみきった子宮を殴打し、その度に留美はくぐもった声を上げた。
声を殺しながら留美は震えていた。頭がおかしくなりそうなくらい気持ちよかった。もう何度果てたかわからないのに、もっともっと欲しいと思っている。男が射精する瞬間を想うだけで頭の奥が熱くなった。留美は男にすがりつき、泣き叫ぶように懇願した。
「お願いだから、イって! 私、もうダメだから! はやくっ! ぜんぶ、ぜんぶっ! ちょうだい!」
男の腕に力がこもった。骨が軋むほど強く抱きすくめられ、限界まで張り詰めた怒張に膣壁を抉り上げられた。留美が男の名を叫ぶ。胎の中で熱が弾けた。絶頂感と幸福感が心と身体を満たしていく。二人は繋がったまま時間をかけて呼吸を整えると、ようやく身体を離した。
留美はほとんど倒れ込むようにして、男の傍に身体を横たえた。先ほどまで自分を抱きしめていた腕を枕にして、男の心臓の上にそっと手を置く。見上げると目が合った。微笑みかけると、男は目を逸らした。留美はくすくすと屈託のない顔で笑う。
お互いに、言葉はない。留美は男の呼吸をじっと聞いていた。ゆったりとしたリズムが安らかな寝息に変わる瞬間が、彼女は好きだった。
留美も目を閉じた。手のひらに感じる鼓動が、たまらなく愛おしくて、泣きそうになる。
「……貴方は、知ってる? 私は、貴方にたくさんのものを貰ったの。喜びも、悲しみも。愛も、憎しみも。
貴方を知らなかったころの私と、貴方を知ったいまの私は、もう何もかも違う。
私は貴方で出来ている。貴方の言葉が、私を作った。何もできなかった私はもういないの。
だからね、いつも思ってるわ。ありがとうって」
留美は愛情をこめて男の胸にキスをした。
「……覚えてるかしら。この前、不安で泣きそうだった私に、貴方が言ってくれたこと。ふふっ……覚えているわけがないわよね。だって貴方、あの時は寝ぼけていたもの」
それは今日と同じように激しく抱き合い、疲れ果て、寄り添って寝た日のことだった。
日も昇らぬ時間にふと目覚めた留美は、寝息を立てる男に寄り添いながら、どうしようもなく冷たくなっていく心に震えていた。
こうなったことを彼女は後悔していない。きっと後悔なんてしない。誰にも言えない、こんなにも幸せな毎日が、いつまでも続いてほしいとただ願っている。だが変わらないものなどない。どんなに祈ろうと時間は巻き戻ったりはしない。
留美は怖くなったのだ。一年が過ぎて、二年が経って、三年目を迎えれば、彼女は二九になる。まだ若いと誰もが言うかもしれない。だがそのころには凛や未央は今よりずっと綺麗になっている。光も、まゆも。どんなに努力しても、もう成長できない留美をよそに、彼女たちはどんどん眩しくなっていく。
そうなったとき、自分はどうなるのか。考えたくもない未来に青ざめた留美は、ぴったりと男にくっついて、震えを止めようとした。男がうっすらと目を開けたのはそんなときだった。
留美は問いかけた。上ずりそうになる声を必死に抑えて、平静を装って、心の中で泣きながら、問いかけた。
――ねえ、P君。あの子たちはこれから先、いまよりもずっと美人になるわ。時間が経つほどに、目が潰れるくらいの眩しい女の子に。ねえ、貴方はその時が来ても、私を抱いてくれる? こんなふうに、愛してくれる? ねえ、P君……教えて。お願い。
それはすでに問いかけではなく懇願だった。すがりついた腕は隠しようがないほど震えていたが、まだ夢の中にいる男はそんな留美の様子には気付かない。男は気の抜けた顔で笑って、留美の頭をぽんぽんと優しい手つきで撫でながら、こうささやいた。
――なに言ってるんですか。眩しさで言えば、留美さんだってほとんど変わらないじゃないですか。きっと何年経ったって、この目には貴女が光って見えてますよ。
励ましではなかった。慰めでもない。真剣さもない。思ったことを口にしただけ。ただ単純に事実を告げるだけの言葉は、なんの抵抗もなく留美の心に入っていって、一番深いところで大切なものになる。この瞬間、留美はこの人を好きになってよかったと心の底から思った。
「すごく嬉しかった。あの日のことは、一生忘れないわ。いいえ、死んでも忘れないから……ふふっ」
男の安らかな寝息を聞きながら、留美は微笑んで、重たくなってきたまぶたを閉じる。
まどろみの中。声には出さず、あの日と同じ言葉をつぶやいた。
――ありがとう、Pさん。大好き。愛してる。
【HAPPY DAYS】
以上です。エロは書いてて楽しいですねぇ。皆さんにも楽しんでいただけたら幸いです。
そしてちひろ大明神さまにおかれましては、此度のシンデレラフェスにおいても、なにとぞこの卑しい微課金勢めにSSRのご加護をお授けくださいますよう篤く篤くお願い申し上げます(祈願)。
そもそも卯月とまゆ(デイリーガチャ)は来てくれたんだから、そろそろ渋谷と本田も来るべきではないでしょうか。
書いてもないのに来てくれた新田さんと諸星さんとユッキ(デイリーガチャ)とカリスマJC(デイリーガチャ)を見習ってくださいお願いします。
……それにしても和久井さんの攻撃力高すぎませんかね。デレステ実装はよ。時子さまも。はよ。
おつ
卯月たちからまた取り返したってことなのか
いやこの後Cu組に拉致られる流れなはず
60ガシャで3人も引いた奴は許してはならない
いいオカズになりそうだ
乙
待ってる
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