まほ「お腹すいた」 (44)
映画公開より前に書き溜めたものなので、ネタバレ無し。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1449992085
SW(シルバーウィーク)。
季節にしては肌寒い気温の中、西住まほは一人布団の中でもんもんとしているのでした…。
まほ「…もう1時か…そろそろ寝ないと…」
まほ「…」
まほ「……」
まほ「……」くぅ~
まほ「…お腹すいた」
まほ「ダメだ、こんな時間に…危険だぞ色々と…」
まほ「寝たら忘れる。寝てしまえ…」
まほ「……」
まほ「……」くぅ~
まほ「ダメだ…お腹がすきすぎて眠れない!」
まほ「最後の戦車道が終わって、みほは自分の道を見つけて、お母様とみほも和解して、SWで実家に帰って…」
まほ「思えば今とても幸せだ。不安材料が何一つない」
まほ「…まさかそれが空腹感に繋がっているのか?気が緩んでいる…と」
まほ「…なんという…私としたことが…」
まほ「……」くぅ
まほ「あぁ…お腹すいた~…」
まほ「……」
まほ「選択肢は三つ」
まほ「一つは我慢を貫き気絶するのを待つ。つまり寝るということ」
まほ「二つ目は、お母様の目を盗んで何か食べに降りる」
まほ「そして三つ目、お母様と菊代さんの目を盗みこっそり外に出てきちんと食べる」
まほ「……遺憾極まりないが…」
まほ「三つ目は論外だな……こんな要塞みたいな家から痕跡残さず夜中に出るなんて私にはできない」
まほ「菊代さんにあっさりバレてお母様共ども失望されてしまうのがオチだろう。恥ずかしいことこの上ない」
まほ「かと言って…今更もう我慢する気にはなれない。寝るという選択肢もナシだ!」
まほ「私の瞳はもう台所にある何かしらの食材にしか向けられていないのだ」
まほ「というわけでお母様の目を盗んで何か食べに降りたいわけだけど…」
まほ「……この任務には共犯者が必要だ」
まほ「私と同じく休暇でここにいる…」
まほ「みほ」ガラッ
みほ「ん?ふぇっお姉ちゃん!?」
みほ「ど、どうしたの?」
まほ「シッ……みほ、寝てた?」
みほ「ううん…電気消して寝ようとしてたところ」
まほ「そう…。みほ、よく聞いて」
みほ「どうしたの?」
まほ「私はこれから…台所に行って、何かを食べる」
みほ「え?こんな時間に?」
まほ「うん」
みほ「そ、そうなんだ」
みほ「お母さん許してくれないんじゃ…」
まほ「分かってる。だからコッソリ行こうと思ってる」
みほ「……いいの?そんなことして」
まほ「ダメよ」
みほ「お、お姉ちゃん…」
まほ「……お腹がすいたんだから、仕方ないでしょう?」
みほ「は、はぁ」
まほ「でもお母様といい、菊代さんといい、この要塞には敵が多すぎる」
みほ「そうだね」
まほ「手伝ってほしい」
みほ「えっ?」
まほ「……」
みほ「…えっと、私が、お姉ちゃんの夜食を食べるお手伝いをする…ってこと?」
まほ「……」くぅ~
まほ「みほ、お願いだ…頼むよ…」
まほ「私はもう熊本ラーメンを食べたすぎて…食べたすぎて…今にも死にそうなんだ」
まほ「いやカレーでもいいんだ!レトルトの…そう、横須賀海軍カレーでもいい!」
まほ「もしかしたらお寿司もあるかもしれない…今日の夕飯の残りがまだあるかもしれない…」
みほ「……微妙に高望みなんだね…」
まほ「それにみほだって夜食を食べられるわよ!?お腹空いてるでしょう!?」
みほ「私は別にお腹空いてないよ」くぅ~
みほ「……」
まほ「……」
みほ「……台所に熊本ラーメン、あるの?」
まほ「…正直言うと…分からない…。でも…」
まほ「……何があるのか分からない…いつだってそうでしょう?」
みほ「そうだね…今ここにこうして私が帰って来られたのも…わからないことだった」
まほ「ええ。それもこれも、戦車道よ」
みほ「……そっか……うん、そうだね!」
みほ「行こう!私、戦車道やめないよ!」
熊本の夜食はアベックラーメンってそれ一番言われてるから
http://i.imgur.com/ep4I6dS.jpg
まほ「まず最初の鬼門は階段だ」
まほ「階段を降りた先は和室…つまり菊代さんの寝室があるということ」
みほ「電気はつけられないね」
まほ「ええ…、壁と足元の感覚だけを頼りに進むしかないわ」
まほ「そして廊下を挟んだ反対側の大広間に……お母様がいる」
みほ「台所へは廊下を突き進むしか道はない…」
まほ「この階段をいかに音を立てずに降りて行けるか、そしてお母様がもうすでに寝ているかを素早く確認しなくてはならない」
みほ「もし起きてたらどうするの?」
まほ「……ここに戻るか…突き進むか…ね」
みほ「……分かった」
まほ「…うん、それじゃあ行きましょう」
みほ「こそこそ作戦開始だね」
まほ「パンツァーフォー」
まほ「……」ぎし…
みほ「……」ぎし…
まほ「……」ぎし…
みほ「……」ぎし…
まほ「こんな家、趣もクソもない…」ぎし…
みほ「…笑いそうになるからやめて」ぎし…
まほ「洋風の家ならカーペットがあったかもしれない…」ぎし…
みほ「……お母さん、天蓋付きのベッドで寝るの?」
まほ「フッ……フフッ…」
まほ「……」
まほ「やめて。笑かさないで」ぎし…
みほ「……」ぎし…
まほ「……」ぎし…
みほ「……」ぎし…
まほ「……」ぎし…
みほ「……」ぎし…
まほ「菊代さんがメイドエプロンになるのか…」ぎし…
みほ「ふっひひ」
まほ「……」
みほ「やめて」
まほ「……」ぎし…
みほ「……」ぎし…
まほ「……よし…!なんとか下に辿り着けたぞ…!」
まほ「念のためこの階段前の戸口の鍵を開けておこう…」
みほ「菊代さんは…うん、寝てる。部屋から光は漏れてない」
まほ「お母様は……」
まほ「起き…ている……」
まほ「何やってんだあの人!」
みほ「…本読んでるみたいだね…」
みほ「どうする?」
まほ「……この階段をまた上がる気にはなれん」
みほ「同感」
まほ「それに私は…」
みほ「逃げない…、そうだよね?」
まほ「みほだって。仲間は見捨てない…、でしょう?」
みほ「えへへ、その通り」
まほ「気を抜いちゃダメよ、みほ。この廊下を渡り切るまでは」
みほ「分かってるよ、たった一枚の襖が私たちを守ってる。ここが一番の勝負どころかも」
まほ「行くわよ」
みほ「パンツァーフォー」
まほ「……」そろ
みほ「……」そろ
みほ「…暗い…」そろ
まほ「こっちよ…」ぎゅ
みほ「……」そろ
まほ「……」そろ
まほ「よし…廊下をクリア…あとはこの扉を開ければ…」
みほ「その引き戸重いから慎重にね…」
まほ「…うん…」ゴロゴロ
みほ「お、お姉ちゃん…!」
まほ「……大丈夫…」ゴロ…コロコロ…
まほ「…よし、今よ入って」
みほ「…うんっ」
まほ「ふぅーー…」
みほ「なんとか辿り着けたね!」
まほ「ああ、無事にな」
まほ「でもお母様が起きてるから、急いで探さないと」
みほ「あ、ここにカップ麺あるよ!」
まほ「でかしたぞみほ!」
みほ「白い力もちうどん」
まほ「ラーメンはないの?」
みほ「えっと……うーん…」ガサゴソ
まほ「お湯再沸騰しておくわ。大きな音にならないことを祈って…」
みほ「ラーメンはないみたい…アベックラーメンの一つも…」
まほ「そ、そう……ラーメン…」
みほ「この白い力もちうどんなら3つくらいあるよ」
まほ「仕方ない。レトルトカレーはあるかな…」ガサゴソ
みほ「カレー?」
まほ「カレーうどんにしようと思って」
みほ「あ、いいな。私も欲しい」
まほ「う~…ん…あ、あった。一つだけ…」
みほ「お姉ちゃん食べなよ」
まほ「みほ…。いいや、二人で分けて食べよう。どのみちカップに一袋丸々は入りきらないし。分けた方が量も丁度いい」
みほ「お姉ちゃん…ありがとう!」
まほ「でもカレーは器を使ってレンジにかけるしかないわね。鍋を使うのは論外だし…」
みほ「そうだね…器は一旦部屋に持っていって後日しれっと戻そう」
まほ「…みほらしい案ね。採用」
みほ「あ、お湯できたよ」
まほ「5分か…妙に長いな…。早く食べたい」トポトポトポ
みほ「お腹空いたね~」トポトポトポ
スーッ…トントントン
まほ、みほ「「!」」
みほ「今の音!」
まほ「お母様…!」
みほ「こっちに向かってくる!」
まほ「まずいぞ…どこかに隠れないと!」
みほ「寝る前にトイレに向かってるのかもしれない、台所の影にでも!…」
まほ「いや…いやダメだ危険すぎる!水でも飲みにきてみろ、一発で終いだ」
まほ「……カレーは?」
みほ「あと10秒!」
まほ「よし、切って器ごと持って行こう!」
まほ「勝手口から中庭に抜けるぞ!」
みほ「外に行くの!?」
まほ「…あらかじめ開けておいた戸口…あそこへ抜けられれば…!」
みほ「そっか…!うん!お姉ちゃんお箸は!?」
まほ「みほが頼む!器は私が持つ!」
みほ「わかった!」
まほ「準備はいいな!?行くぞ!」カチャ
みほ「……」ヒタヒタ!
まほ「……」ヒタヒタ!
みほ「…足の指先が冷たい…」ヒタヒタ!
まほ「…手はお皿とカップ麺でアッツアッツだけどな…」ヒタヒタ!
みほ「……」ヒタヒタ!
まほ「……」ヒタヒタ!
みほ「うっ…」ピタ
まほ「この先は…」
みほ「…お母さんの部屋の…」
まほ「……縁側になるわね」
みほ「……や…」ピタ…
まほ「やった……通れた…!」ピタ…
みほ「はぁぁ~……ドキドキした…」
まほ「ここまで来れば一安心だな…あとは部屋に戻るだけ」
みほ「階段側の戸口の鍵、開けておいて良かったね…ほっ」
まほ「ええ…まさか本当に通ることになるとは思わなかったけど」
みほ「…ここは廊下からは死角になってるし」
まほ「ひとまず私の部屋に行こうか」カチャ…
みほ「了解でありますっ」
まほ「ふふ…どこかのワシャワシャみたいな口ぶりだな…」
みほ「あの髪可愛いよね」
まほ「ああ、犬みたいでつい撫でたくなってしまう」
>>21、ミス。
次のレスから正規。
まほ「でもここを通り抜ければ菊代さん側の戸口に辿り着ける」
まほ「覚悟を決めて、行くしかない」ヒタ
みほ「うぅっ…」ヒタヒタ!
まほ「……月明かりがこれほど憎いなんて……」ヒタヒタ!
みほ「お願い…見つからないで…!」ヒタヒタ!
まほ「……頼む…!通させてくれ…!」
みほ「……」ヒタヒタ!
まほ「……」ヒタヒタ!
みほ「……や…」ピタ…
まほ「やった……通れた…!」ピタ…
みほ「はぁぁ~……ドキドキした…」
まほ「ここまで来れば一安心だな…あとは部屋に戻るだけ」
みほ「階段側の戸口の鍵、開けておいて良かったね…ほっ」
まほ「ええ…まさか本当に通ることになるとは思わなかったけど」
みほ「…ここは廊下からは死角になってるし」
まほ「ひとまず私の部屋に行こうか」カチャ…
みほ「了解でありますっ」
まほ「ふふ…どこかのワシャワシャみたいな口ぶりだな…」
みほ「あの髪可愛いよね」
まほ「ああ、犬みたいでつい撫でたくなってしまう」
まほ「と…この階段は慎重に登らないとな……」ぎし…
みほ「最後の砦だね」ぎし…
まほ「……」ぎし…
みほ「……」ぎし…
まほ「……」ぎし…
みほ「……」ぎし…
まほ「…ぷっふふ…」ぎし…
みほ「まだ何も言ってないよ…」ぎし…
まほ「わかってるよ」ぎし…
みほ「……」ぎし…
まほ「……」ぎし…
まほ「到着…」カチャ…
みほ「……ふはぁっ…」
まほ「任務完了だ!部屋なら特に起きてても騒いだりしない限り何も言われることはないだろう」
みほ「ううーん…楽しかっ…た!!」
まほ「ああ…!戦車道以上にスリルがあったかもしれない」
みほ「あはは、そうだね」
まほ「でも本命はここからだぞ…コイツのために命を張ったんだから!」じゃん!
みほ「おうどん良い具合!」
まほ「カレーもほら」
みほ「うわーお腹空いた~!」
まほ「外出て体冷えたし早速いただこう!」
みほ「うん!せーのっ」
まほ、みほ「「いただきます!」」
まほ「んんー美味しい!」ズルズル
みほ「楽しかったし美味しいし、最高だよ!」ズルズル
まほ「ああ、今日はこのままここで宴会だ!」
みほ「いぇーい!」
こうしてまほとみほは心行くまで夜食を堪能したのでした。
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翌日。
しほ「昨日夜中にどっちか夜食食べたわね?いえ、あるいは二人とも」
みほ「……」
まほ「……」
しほ「お湯が沸いていたし勝手口の鍵が開いていたわ」
しほ「それにカレーとうどんの香りが廊下にまで漂っていた」
みほ「……」
まほ「……」
しほ「白状しなさい」
知ってた
しほ「犯人は誰?」
みほ「……」
まほ「……」
みほ「ごめんなさい」
しほ「……」
みほ「お姉ちゃんです」
まほ「みほ!?」
みほ「本当は熊本ラーメンが食べたかったって言ってました」
まほ「み、みほだって!聞いたことないうどんの癖に美味しいねって言ってたじゃないか!」
みほ「カレーのせいでうどんの味全然分からなかったけどね!」
まほ「じゃあ一口でも残した!?冷えた体にいいってスープまでズルズルいってたのは誰!?」
みほ「食べ、まし、た!」
まほ「ほら!しかも今度はラーメン食べようねって二回目を示唆してたよね!?」
みほ「今回声をかけてきたのはお姉ちゃんだもん!」
まほ「なんだと!?」
みほ「私寝ようとして電気消してたのに!」
まほ「腹が減ったんだから仕方ないだろう!?」
みほ「子ども!!」
まほ「ボコと同じ姿にするぞ!!」
しほ「やめなさい!!二人とも!!」ダン!
みほ、まほ「「!」」
戦車以外のことはポンコツ姉妹
しほ「……」
しほ「…はぁ」
しほ「あなたたちにそんな一面があったことが意外だわ」
みほ、まほ「「…」」
しほ「……まぁ、夜食くらいでいちいち目くじらを立てるつもりもないわ」
しほ「かろうじて成長期。食べた分は戦車で返しなさい」
しほ「ただし…今回の件を受けて一言言わせてもらうわ」
みほ、まほ「「ゴクリ…」」
しほ「もしまた食べるようなことがあったら、……今度は私に見つからないように食べなさい」
みほ、まほ「「…えっ?」」
しほ「…私に見つからないこと。ちゃんと隠れて楽しみなさい」
しほ「いいわね?」
みほ、まほ「「は…」」
みほ、まほ「「はい」」
しほ「そうね…もしまた見つかったら…」
しほ「肩でも揉んでもらおうかしら……フフ…」
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なんだかんだ言いつつも、しほには今ある家族の形が嬉しかったのでした。
菊代「……」
しかし一番の不幸は……
菊代「私の…」
菊代「私の…白い力もちうどんが……ない…」
菊代「一つもなぁぁぁぁぁいっ!!」
おしまい。
終わりました。
貴重の場所をありがとうございました。
もしまとめサイト様がサイト等にまとめる場合は>>21を抜いて、
>>20、>>23の順でまとめて頂けると有難いです。
読んでくれてありがとうございました。
おつ
はらへったわ
よかった
ほのぼの好き
乙!
乙です
3つあったはずのうどんがひとつもない、
しほさんはうどんとカレーのにおいを嗅いだ……
あっ(察し)
人がもの食ってると自分も食べたくなるからね、しょうがないね
乙
ガルパンSS増えて欲しい
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