………………………………
………………
…
理樹「…………ふぁぁ…」
理樹(手探りで腕時計を探したが見つからなかった。しょうがないので一旦起きて机の置き時計の方を見る)
理樹「なんだ、まだ6時か」
理樹(真人さえもまだ起きていない。今日はいつもよりぐっすり熟睡した気分だったけど気のせいだったらしい)
理樹(よっこらしょと起き上がって熱いシャワーを浴びた。今日も新しい1日の始まりだ)
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朝
食堂
理樹(食堂はいつも通り賑わっていた)
理樹「おはよう」
真人「ういっす」
小毬「理樹くん、真人くん、2人ともともおはようございますっ」
クド「ぐっともーにんえぶりわん!なのですー!」
理樹(しかし、今日はそのいつもいる人の姿が見えなかった)
理樹「あれ?恭介がいないね」
謙吾「ああ、そういえばまだ来てないな。鈴は知ってるか?」
鈴「知らん」
来ヶ谷「恭介氏はいつもどこかでフラフラしてるタイプの人間だ。別段、心配する程でもないだろう」
理樹(恭介のことはその言葉で収まった。それにあとで3年の教室にいって確認すればいいだけの話だ)
理樹「それじゃあいただきます」
理樹(僕が割り箸を割ると真人は既に2杯目のご飯をお代わりしていた)
教室
真人「はあ、また昼休みまで持ちこたえられるか心配だぜ…」
理樹(と、真人が隣の席から呟いた)
理樹「いやいやいや。まるでいつもは持ちこたえてるような言い方しないでよっ」
真人「なんだよ、ちょっとまぶたが閉じてて意識が消えてるだけじゃねえか!そんなケチケチすんなって」
理樹「しておかないと卒業出来なくなるよ…」
理樹(そんないつもの会話をしているとHRが始まった)
キーンコーン
…………………………
教師「今日はここまで」
生徒「起立、礼」
真人「グゥ…」
理樹(1時間目が終わった。真人も寝ていることだし世間話でも聞きがてら恭介の安否を確認するとしよう)
理樹「僕もつくづく暇だなあ…」
理樹(そうして扉に手をかけると後ろから服をつままれた)
理樹「おっとと…」
理樹(引っ張る方からチリンと鈴の音が聞こえた)
鈴「理樹、どこへ行くんだ?」
理樹「どこって恭介の教室だけど。今からちゃんといるか様子を見にいくんだ」
鈴「そうか。あたしも一緒に行っていいか?」
理樹「もちろん」
理樹(やはりなんだかんだ言って鈴も兄を気遣う優しさはある)
廊下
理樹「恭介のクラスってどこだっけ?」
鈴「あー確か一番右端だったな」
理樹「それ本当…?」
鈴「まあ、そこにいる奴に聞くのが手っ取り早いだろ」
理樹「そうだね」
鈴「理樹、行ってくれ」
理樹「やっぱりそこは僕なんだね…鈴もたまには年上の人と話すのもいい経験だと思うよ」
鈴「寮長がいる」
理樹「出来れば知らない人で」
鈴「うーん…知らない人かー…」
理樹「いや、どうやっても知らない人と会った思い出は見つからないと思うよ」
鈴「理樹はうっさいっ。あたしが行けばいいんだろう?」
理樹「お!偉いよ鈴!」
鈴「よ、ようし…」
理樹「…………!!」
理樹(それは前触れもなく突然起きた)
理樹「………あっ……あぁ…!」
鈴「ん?……理樹!」
理樹(気付けば地面に突っ伏していた。そして視界が周りからジワジワと黒ずんでいき、最後には完全な闇となる。僕を呼んでいた鈴の声も比例して遠ざかる)
理樹「……………………」
鈴「理樹!おい起きろ!理樹!」
理樹(なんでなんだ!これとはもう無関係になったんじゃなかったのか)
理樹「…………」
理樹(あの頃の僕の弱さの象徴とも言える強烈な眠気が僕の意識を奥底へと叩きのめす)
理樹「……」
来てたか
………………………………
…………………
…
理樹「…………ひっ!」
理樹(次に僕が目にしたのは真人のベッドの下だった。どうやら僕の部屋らしい)
理樹「ハァ…ハァ…」
理樹(汗の玉が額からこぼれ落ちる。さっき、とても嫌な夢を見たような気がした)
理樹「夢か…」
理樹(夢なんてこの病気の原因となった事件をきっかけに一度も見ていなかった)
理樹「とりあえず起きないと…」
理樹(カーテンから差し込む光によるとまだまだ1日は終わらないことがうかがえた。鈴がここまで運んできてくれたんだろうか)
ちょっと立て込んでた
明日からは本気出す
本気の1に期待乙
シャララエクスタシー聴きながら待ってる
鳴子ハナハレプシー
理樹(時間を確認した。ちょうど昼休みだった。担任にはもう報告がいっているだろうしここは倒れる前用事を果たしつつ教室に戻ろう)
…………………………
棟内1F
ブーッブーッ
理樹(廊下へ差し掛かったところで電話が鳴った。どうやら恭介からのようだ)
理樹「もしもし?」
恭介『もしもし!理樹かっ!』
理樹「うん。どうしたのそんな声を荒げて…」
恭介『い、いやなんでもない…ところで今はどこにいる?さっき真人がお前の部屋を見に行ったが見つからなかったらしい』
理樹「ああ、うん。この通り起きちゃったから学校に行こうと思ってね。今ちょうど恭介のクラスに向かってる」
恭介『なに!俺のクラスだと!?それはダメだ、今は俺がいるかもしれん!』
理樹「かもってなにさ…何か今行ったらまずいの?」
恭介『その通りだ!頼む、今すぐそこを…』
「よう理樹」
理樹「えっ?」
理樹(恭介たちの階に登ろうとすると上から声がかけられた)
恭介「歩きながら電話ってのは感心しないな」
理樹「きょ、恭介!?」
恭介『………っ!!』
恭介「ん、どうした?」
理樹「えっ、いやだって…」
理樹(恭介はたった今…というか現在進行形で僕と通話をしているはずだった。だのに今そこに立っているのは間違いなく恭介。これは一体どういう事だ?)
恭介『……理樹、今会ってるそいつは俺じゃない。今すぐ離れろ』
理樹(電話の方の恭介はとても冷静にそういった)
理樹「えっ?」
恭介「おいおい誰かと俺の話をしてるのか?」
恭介『理樹っ!』
理樹「そうか、分かった。これはイタズラだね?もう、どうやってるのか分からないけど手が混みすぎだよ恭介…」
恭介『ダメだ、話を聞い…』
理樹(僕は電話を切るとポケットに直した)
恭介「イタズラ?なんの?」
理樹「いやだからさっきのだよ。恭介が2人いるっていうドッキリ」
恭介「………2人…」
理樹(その時、少し恭介が真剣に考え込む目つきをしたと思った。しかしすぐ元の普通の顔に戻っていたので気のせいかもしれない)
理樹「まあこれくらいは流石の僕でも騙されないよ…かなりビックリしたけどね」
理樹「ところで恭介はなんで今日の朝来なかったの?」
恭介「今日の朝か…ちょっと野暮用で遅れただけさ。それより俺はお前の方が心配だぜ…急に倒れたんだって?」
理樹「うん……もう起きないと思ってたんだけどやっぱりあれだと思う…」
恭介「アレって?」
理樹「えっ?だ、だから例のほら…眠り病だよ」
恭介「ああ。それか」
理樹(とりあえず気になった事はこれで消えたしあとは適当にワゴンで惣菜パンでも買いに行こう)
本物の恭介は群馬でサンバでも踊ってるのかな?
裏庭
理樹(食堂で食べようかと思ったけどこの時間なら真人たちは既に食べ終わっているだろう。1人で食べるならここの方が人目を気にせず食べれる事が出来る)
理樹「西園さん、今日はもう教室に戻ったのかな…」
ブーッブーッ
理樹(すると携帯がもう一度鳴った)
理樹「もしもし」
恭介『繋がったか!今は無事か!?誰か他にいるのか!』
理樹「誰もいないよ。それより無事ってどういう…」
恭介『ふう……理樹、なんでさっきは電話を切ったんだ』
理樹(向こうは少し怒っているようだった)
理樹「だって恭介のイタズラだと思ったからさ…」
恭介『バカ言え!そんな事出来るわけがないだろ』
理樹「それは……いや、そうだ!分かった!きっと君は恭介の声に似てる他の誰かだ!それなら説明が付くよ!」
理樹(というかむしろそれ以外に方法はないはずだ)
恭介『なに、俺の方が偽物だって?』
理樹「そうだよ。恭介に頼まれてやったの?」
恭介『馬鹿らしいことを言うな。騙せるほど口調も声も似てる俺がいてたまるか!いや、今はいるんだけどな…』
理樹「じゃあ聞くよ?これはごく一部のみんなしか知らない事実だ。まだ中学の頃、真人が特売のプロテインを買いに行ったよね?その時はお一人様一つまでだったんだけど真人はどうやったかのか何個も買って帰った。その驚くべき方法は?」
恭介『腹話術人形で牛とカエルを駆使した』
理樹「なっ……」
理樹(当たっていた。ということは本物なのか…!?)
理樹「でも…それじゃあどうやってあの恭介を説明すればいいのさ!」
恭介『説明なら後でいくらでも出来る。だからそろそろ俺の言うことを聞いてくれ』
理樹「言うこと?」
恭介『今すぐ学校を出るんだ。そうしないとお前もただでは済まないだろう』
理樹「ど、どういうこと?」
恭介『いいからいちいち説明させるな!状況をいちいち話してたらまた捕まってしまうかもしれん!連中が本格的に行動を起こす前に離れて欲しいんだ!場所は駅前のネットカフェ、そこで待ち合わせをしよう』
理樹「訳が分からないけどとにかく出ればいいんだね?」
恭介『ああそうだ!クレグレも学校にいる俺には気を付けろ!できるだけ避けて、誰にも気付かれず外へ向かうんだ!』
理樹「恭介に気を付けるって…」
理樹(すると後ろからポンと肩を叩かれた)
恭介「俺がどうしたって?」
理樹「!!」
恭介『どうした?』
理樹(そこには恭介がたった今注意しろと言った人物、そしてそう促したした本人そのものが立っていた)
理樹「き、恭介…」
理樹(改めてびっくりした。こんなのある訳が…)
恭介「おっとまた電話か。理樹も多忙になったもんだな」
恭介『……俺がいるんだな?よし、電話をスピーカーにして俺にも聞かせてくれ。外に出るまではサポートする』
理樹(僕は震える手でボタンを押した。いたずらでもなんでもないと分かった今は目の前の存在が不気味すぎる)
>腹話術人形の牛とカエル
そういやそんなお笑い芸人(?)いたなあ
恭介『押したな?それじゃこう言え『今相手がちょっと手が離せない状況らしいから用件なら聞く』と』
理樹「い、今話してる人が手が離せないみたいなんだ。用件はなに?」
恭介「ああ。ちょっとさっき言ってたことが気になってな」
恭介「あの時俺が2人とか言ってたろ?あの話をもう少し詳しく聞きたくてな」
恭介『おいおい話ちまったのかよ!まあ今はいい。『そのことは後でいいか?今から他の用事があるから電話の相手のこともあるしもう行く』と言え』
理樹「ごめん、それはまた後で話せない?ちょっとこれから用事があるし電話のこともあるから…」
恭介「いや、今聴きたい」
理樹(その気迫は有無を言わせないものがあった。普段の僕なら思わず言うとおりにしていたかもしれない)
恭介『チッ!やるしかねえか…….とりあえず電話の相手が戻ったフリをしろ。そしてさりげなく裏庭を出て校門へ迎え!』
理樹(すこし不安な言葉も聞こえたけど大人しく従う)
理樹「あっ、ごめん!今かかってきた!」
恭介「おう」
理樹「もしもし?うん…うん……」
理樹(できるだけ自然な感じで受け答えをしつつ校門の方へ歩いた。すると当然のように恭介が後ろからピタリとついてくる)
恭介「……………」
恭介『今の後ろの俺は?』
理樹「うん、まだだよ…うん……そう、いる…」
理樹(時々関係のない相槌を打ちつつ答える)
恭介『そうか……ならしょうがない。途中の庭の道に1人しか通れない狭い曲がり角があるだろ?そこまで来たら言ってくれ。一旦切るがすぐに掛け直すからあらかじめマナーモードにしてから素早く応答しろ』
理樹「うん……」
理樹(一体なにをする気なんだろう。とりあえず電話の横に内蔵されているマナーボタンを後ろから見えないように押した)
恭介「…………」
……………………………………
理樹(そろそろ1人の受け答えにも限界を感じてきた。それに恭介が言っていた例の曲がり角もすぐそこまで近づいていた)
ブーッ
理樹「!」
理樹(言われた通りすぐに出た。後ろに気づかれはしなかっただろうか…)
恭介『もしもし、今は?』
理樹「うん…あと数秒で……そうだよ。着く…」
恭介『解った。じゃあその曲がり角のところで少し早歩きで通過して、出た瞬間に全力で校門まで行け。人生を賭けるほどな』
理樹「えっ!?」
恭介『つべこべ言うな。追っかけてくるかもしれねえがそこまでたどり着けば何とかなる。逆に言うと捕まるともう俺でもお前を助けることは出来ないかもしれない…』
理樹(まだ言葉の意味が分からなかった。しかし恭介の言葉の緊迫感は僕の心を焦らせるには充分だった)
理樹「分かった。精一杯やってみるよ…」
理樹(つまり後ろの恭介から全力で逃げろということなんだろう)
理樹(問題の角まで30メートル)
理樹「もうそこだよ」
恭介『オーケー』
理樹(15メートル)
恭介「なあ、どこまで行くんだ?」
理樹(来た。バレないよう早歩きして走る体勢を整えて…………)
理樹「…………っ!!」
理樹(曲がった!急げ!)
ダダダッ
恭介「待てっ!!どこへ行くんだ!」
理樹(携帯を握りながら体が許す限りの全速力を出した)
理樹「君は恭介じゃない!いや、もしかしたらそうかもしれないけど僕はこっちを信じる!」
理樹(走りながらそう叫んだ。そしてどんな言葉が返ってくるかと耳を傾けた。しかし、何も聞こえない)
理樹「はぁ…!はぁ……!」
理樹(ちらりと後ろを振り向いた。振り向かない方が良かったかもしれない)
恭介「……………」
ダダダッ
理樹「なっ!?」
理樹(何故ならあの恭介が、無表情でこちらを追ってきたからだ)
理樹(恭介は悲しんだり、怒ったり、笑ったり、どんな時だってとても分かりやすいく感情を顔に出していた。どんな時でもだ)
理樹(しかし今の恭介は初めて見る。本当に無表情だった。何を考えているのか分からない。僕に怒りや悲しみを抱いてるかどうかすら分からない)
理樹「ふっ……ふっ……!!」
理樹(僕はますます走った。校門まではそう遠くない。しかし、恭介の足音がどんどん近づくのは分かるようになってしまった)
理樹「恭介…っ!なんで…なんでなんだよ!」
恭介「……………」
理樹(何も答えない。今の彼に捕まったらおしまいだ。電話の恭介がそう言っていたからでなく直感が本格的にそう思わせた)
理樹「助けて!………誰か!誰か!」
理樹(しかし人はどこにもいない。喋れば喋るほどスタミナが恐ろしいスピードで消えていくので叫ぶのはやめて走ることに考えの全てを集中させた)
恭介「…………」
理樹(校門が見えた。しかし恭介との距離はもう片足ほどの距離しかなかった。このままだと……)
理樹「ハァハァッ………ううっ……ハァハァッ……!」
ガシッ
理樹「ああっ!」
理樹(ダメだった…とうとう捕まってしまった……)
理樹(もう抗うほどの体力は残されていない。一方の恭介は呼吸が全く乱れていないように感じた)
恭介「……………」
理樹(あくまで何も言わない。急に物言わぬロボットになってしまったかのような……いや、こういう存在に昔見覚えがあったような…)
「理樹ぃーーっ!!」
理樹「!?」
ここで颯爽と現れる時風
理樹(諦めかけたその時、すぐ後ろから僕を呼ぶ声がした)
真人「理樹!!」
理樹「真人!」
理樹(真人が来た!今の状況でこれほど頼りになる友達が果たしているだろうか!)
恭介「!?」
理樹(その時、僕を拘束しようという恭介が初めて後ろを振り向いた。しかしその頃には真人との距離は目と鼻の先だった)
理樹「真人!助けて!」
真人「おう!分かってらぁっ!」
理樹(そのまま真人は両腕で恭介の襟と腕を掴むと、その太い足で恭介の足を払い上半身を思い切り背負った)
理樹「あ、あれは禁断の技、山嵐!?」
真人「そぉうりゃあっ!!」
理樹(そのまま勢いに任せて派手に地面へ叩きつけた。轟音と衝撃が地面から伝わる)
恭介「……ッ!!」
理樹「き、恭介っ!」
理樹(さっきまで逃げていたとは言え、あの投げ方は心配にならざるを得ない)
真人「あれは恭介じゃねえ!今は逃げるぞ理樹!」
理樹「えっ…うあっ!」
理樹(真人は僕を片腕でひょいと起き上がらせるとお姫様抱っこで担ぎ上げられた)
真人「よっしゃあ!後は校門まで進むのみだぜっ!!」
理樹「ちょっ…これはなんか恥ずかしいって!」
理樹(チラリと恭介の方を向いたが、ピクリとも動いていない)
「おーい2人とも!こっちだ!」
理樹(今度は僕らが進むべき方向の先に、またもや聞き慣れた声が聞こえた)
理樹「謙吾!」
謙吾「真人!理樹は俺に任せろ!」
理樹(謙吾は校門の外で自転車に乗っていた)
真人「おう頼んだぜ謙吾の旦那!」
理樹(謙吾の元まで駆けつけると僕はまたもや人形のように扱われてしまった。真人が軽々と自転車の荷台に僕を乗せた)
謙吾「よし、行くぞ!」
理樹(そう言うと謙吾は自転車を漕ぎ始める。この道は駅への方向だ)
真人「おうよ!」
理樹(既に体力を使っているはずなのに真人もそのスピードに引けを取らずに走る)
理樹「………あっ!」
謙吾「どうした!?」
理樹「いや、なんでも…」
理樹(今、学校を去る前に確かに見た。恭介が倒れていた場所には恭介がもう居なかったのだ。そして、代わりにそこにあったのは誰も着ていない制服が1着分、無造作に置かれていた)
商店街
謙吾「ふっ……ふっ……!!」
真人「うぉぉおおお!」
理樹(街を全力で駆け抜けていく。最初は恭介が追ってくるのを逃れるためかと思っていたけど途中から完全にゴールに着くまでの2人の勝負となっていた。僕を巻き込まないでほしい)
理樹「2人ともスピードを落としてよ!もう充分でしょ!?」
謙吾「ふぅふぅ……そ、そういえばそうだな…」
真人「はぁ…はぁ……なんだよやめんのかよ…!まあ目的地には着いたし丁度いいか…」
理樹「えっ?…あ、本当だ」
理樹(横の店を見ると恭介の言っていたらしきネットカフェだった。流れでなんとなく理解していたけどやはり2人も恭介から電話を受けたんだろう)
謙吾「よし、入ろうか理樹。お前はまだ知らないんだってな。ここでなにが起きているのか」
理樹「そ…そうなんだよ!」
真人「ま、それは入ってからゆっくり話そうぜ。俺たちのアジトでな」
理樹(真人がニカッと笑う)
ネットカフェ
カランカラン
理樹(店内はとても静かだった。全体的に暗いのは寝泊まりする人のためだろうか)
謙吾「理樹、こっちだ」
理樹「えっ?」
理樹(謙吾が遠慮もなく店にズカズカと入っていった。真人もそれに続く)
理樹「いやいやいや!みんなお金払ってから入らないと!」
謙吾「ああー…いや、もう理樹の分の金は払い済みだ」
理樹「えっ、嘘!?」
謙吾「さあ、そんなところに立っていないでこっちに来い」
理樹(店員さんの方を向くが特に気にしていない様子で笑顔を向けるだけだった。いつの間に払ったんだろうか……)
理樹(2人の後を歩くと多人数部屋らしきところで止まった)
謙吾「ここだ」
真人「やれやれ、ここまで来てやっと安心出来るな…」
理樹(僕も2人に習って中に入る)
理樹「な、なにこれっ!?」
謙吾「はっはっはっ!そんな反応をすると思ったぞ。見ての通りだ」
理樹(平たく言うと本来ネットカフェであるべき場所が武器の貯蔵庫と化していた)
理樹「これオモチャだよね…?」
真人「違うんだなこれが…」
理樹(部屋には金属バットから刀らしき物。そして拳銃が隅の方に無造作に置かれていた)
理樹「なんで……こんなものがここに…」
理樹(特に謎だったのが周りのそういうものと決して融和しないような違和感の塊であるボードゲームが中心に置かれていたことだった)
謙吾「全部、俺が揃えた」
理樹「いやそんな自慢げに言われたところで…」
恭介『やっと来たかお前ら!よくここまで帰ってこれた!』
理樹「その声は恭介!?どこにいるのさ!」
恭介『どこって俺はここだ。声の聞こえる方を向いてみろ』
理樹「えっ……」
恭介『見ぃ下げて~ごらん~♪』
理樹(どこかで聞いたことのあるメロディを口ずさむ恭介。大人しくその方へ向いた。中心に置かれた机の端にラジオが置かれていた)
理樹「えっ……ラジオ?」
恭介『正解だ』
理樹「ええー……」
理樹(拍子抜けした。やっと恭介から話を聞けると思ったのに…)
恭介『そうガッカリしたような声を出すな。ちゃんと説明してやるよ』
理樹(僕の気持ちを読んだのか落ち着いた口調でなだめる)
恭介『さあお前らも座れよ』
謙吾「そうだな…さっきは疲れた…」
真人「はい、そうっす、デラックスピザ一枚…」
理樹(隣では既に真人がメニューを頼んでいた)
理樹「うわっ勝手に頼んじゃダメだよ!」
真人「いいんだよ今日は別にこれぐらい」
理樹「いやいや全然答えになってないって…」
恭介『それも俺が代わりに答えてやろう』
理樹「そうだった、じゃあ説明してよ!まずは恭介がなんで2人いたのか?なんでもう一方は僕を捕まえにかかったのか?恭介がなんで出てこないのか?真人がなんでピザを頼むのか!」
恭介『ああ。その前に一つ言っておかなければならないことがある。これから話すことは嘘でもなんでもないということだ。そして話を最後まで聴くことを約束してくれ』
理樹「わ、分かったよ…」
理樹(どうしたものか心の中では少しワクワクしている自分がいる。最近なんだか思考が恭介に似てきてしまった気がする)
恭介『それじゃあ話し始めるとする。最初に言うべき言葉は…そうだな……この世界はもう俺たちの知っている世界ではない』
理樹「はっ?」
続く
乙
NPCか
良スレ期待
恭介『話をしよう。あれはつい昨日のことだった』
…………………………………
……………………
…
朝
食堂
恭介(俺はその日、なんの変化も感じず朝を迎えた。しかし、それは食堂に来てから気付いた)
恭介「一番乗りにしては不自然だな……誰もいない」
恭介(最初は誰かのサプライズかと待ち受けていたが、本当になんの気配も感じない。いや、感じなかったというべきだったな)
「………………」
恭介「ん?」
恭介(とりあえず食券を買いにいこうと考えていると後ろからいつの間にか影が伸びていた)
ガンッ
恭介「ガハッ……!」
恭介(振り向く間もなくその影の持ち主から何か硬い金属のようなもので後頭部を殴られたようだ。流石の俺も対処が出来なかった)
恭介「………………っ…」
「……………………」
恭介(意識が薄らいでいく。相手は終始何も言わず俺の後ろへ立っていた)
恭介(いや、もしかしたらすぐに放っておいて引き上げたかもしれないな。とにかく俺に正体を晒す気が無かったのは確かだった)
恭介(俺はあっという間に意識を失った)
恭介(目を覚ました。といっても何も見えなかったのでその時は本当に覚めたのか分からなかったが…)
恭介「ううっ……」
恭介(そこは真っ暗な闇の世界だった。しかし、変な言い方だがそれでも見覚えがあったんだ。そう、確かここに似たような世界を知っている)
恭介(その答えが出た時は正直頭が痛かったな。何故かと言うとそれは俺たちが昔作り上げた虚構世界、それと現実世界を繋ぐ狭間のことだったからだ)
恭介(本当に参ったよ。訳がわからない…また誰かがアレと似たようなものを作ったのかとな)
恭介(しかしそれなら一つ疑問がある。なんで俺はこんなところにいるんだってな。世界に戻るなら戻る、帰るなら帰るでハッキリするはずだ)
恭介(疑問を浮かべたところで問題は解決しないから俺は早速行動した。どうにかしてお前たちとコンタクトを取ろうとしたんだ)
恭介(いや、あれほど苦労したことは無かったな。なんせラジオの周波数を一つ一つ手探りで合わせるようなもんだからな)
恭介(とにかく繋がることは出来た。通信という形で最初は謙吾に、そのあとは真人、最後に理樹、お前に繋げることが出来た)
恭介(俺はさっそく謙吾に全てを話した。流石は謙吾だな。俺の話を理解して自分も危険な状態であることに気付いた。そして話し合いながらもう一つの結論にたどり着いたんだ)
恭介(ここはもうとっくに現実世界じゃない。誰かが何かを望んで作った偽の世界だとな)
恭介(そして謙吾は偶然もう1人の俺と出会った。謙吾は最初から世界の方がおかしいと気付いていたので何者か問い詰めた。しかしそれがいけなかった)
恭介(もう1人の俺は突然謙吾に襲いかかったんだ。間一髪でカウンターを決めてくれたらしいんだがそれでは謙吾の危険は終わらなかった。なんと周りにいた生徒たちが全員謙吾めがけて捕まえに来たんだ)
恭介(ようやくそこで他の奴らも俺と同じような目に遭ったんだと分かったよ。そうだ、襲われた者は全員ゲームマスターの駒となってしまうんだ)
恭介(それでも俺たちの謙吾は決死の思いで二階から飛び降り、逃走を続けたよ。学校にいては埒が明かないと踏んだ俺たちは学校の外に出ることにした)
恭介(結果それは最良の選択だったようで、一旦追っ手を撒いてしまうともう近くの誰かが謙吾を襲うなんてことはなかった)
恭介(そして街の人に話しかけてみた。…これが理樹の質問に対する答えの一つだな。街の外の人間は何を話しかけてもRPGのような反応で話にならない。ようはNPC(ノンプレイヤーキャラクター)って奴だ)
恭介(このことから少なくともゲームマスターは街全体まで影響を及ぼせず、精々それっぽい形として作り上げることしか出来なかったようだ。どうやら以前の俺たちみたいに何人もいるわけじゃないらしいな)
恭介(さっそく俺たちはここに拠点を作り上げるとお前たちもこの安全地帯に避難させようとした。しかしこうして電話が繋がったのはお前と真人のみだった)
恭介(そこからはほとんど理樹の知っての通りだ。真人が理樹が来るのを予想して校門前で待機して、あとは理樹と奴が来たところを助け出して今に至る)
理樹「そ、それじゃあまた僕らは眠ってしまっているってこと!?」
謙吾「そうだな。場合によっては死ぬ寸前かもしれん」
恭介『少なくとも現実世界での瞬間が今喋っているこちらでは永遠となっていることは確かだ』
真人「でもよぉ、もしかしたら超リアルな俺の夢ってこともあり得るんじゃねえか?俺がたまたま昨日ホラー映画見た影響かもしれねえ」
恭介『へえ、真人も割と哲学的なことを言うんだな。じゃあこれはどうだ?我思うゆえに我あり。だから俺は存在している。もしくは胡蝶の夢。お前が今体験していること自体が現実で、お前が現実だと思っていたあちらこそがお前の妄想だ』
真人「う、うぉぉやめろぉぉ……っ!そんな賢そうな単語ばっかり並べるんじゃねぇぇぇえっ!」
恭介『フッ…たとえ夢だったとしてもお前の脳からこんな言葉がひねり出されるわけがないだろ?だから今がただの夢でないことは確かだ』
理樹「それじゃあさ恭介…今ラジオ越しに喋っているけど本当は……」
恭介『ああ。今後は通信器具を利用しないとお前らとコンタクトを取ることは出来ないだろう。他の連中を見る限り俺がまだここにいられる事自体ラッキーなんだけどな』
理樹「じゃあこれからどうするの?」
恭介『もちろんゲームマスターに直接会って何でこんな事をしているのか聞きに行くんだよ』
理樹「ええーっ!てことはもう一度あの学校に行くの!?」
恭介『それしか方法はない。それに他の連中も助けておきたいからな』
理樹「確かにそれはそうだけど…」
謙吾「まあ安心しろ。何といったってこの俺が付いているからな」
真人「おっと、この逞しい筋肉も忘れてもらっちゃあ困るぜ…?」
理樹(確かに2人が一緒ならさっきのこともあるしとても頼もしく思えた)
恭介『ま、どちらにせよ決行は今すぐってわけじゃない』
理樹「いつなの?」
恭介『もしかしなくても生徒がまとめて敵になるだろうからな。全員が寝静まった夜に行こう』
夕方
恭介『次は謙吾、右手を青』
謙吾「お、お、折れる…!!こんなもん無理に決まってるだろうがぁぁぁああ!恭介ぇぇぇぇえ!!」
理樹「ちょっ!?めちゃくちゃ顔近いって謙吾!!もう少し離れないと危うく一生のトラウマを植えつけられるところだよっ!!」
真人「あっ、デラックスピザもう一枚!」
理樹(そんなこんなで夜までは暇なので全力で遊んでいた。本番で体力切れにならなきゃいいけど……本当にこんな調子でこの世界のゲームマスターを倒せるのか不安になってきた)
……………………………………
…………………
…
恭介『さて、もうそろそろ消灯の時間だろう。いよいよ作戦開始だな』
真人「そういえば今回は変な作戦名付けねえのか?」
恭介『おっと、忘れていたぜ。それでは各員に告ぐ…』
理樹「いや改めて言わなくても…」
謙吾「ふっ、俺はワクワクしてきたぞ!」
恭介『ゲームマスターを見つけ出し学校の生徒たちを救って元の世界に戻るぞ!作戦名オペレーション・GMバスターズ!ミッションスタートだっ!!』
続く(∵)
乙(∵)
乙です(∵)
恭介『さて、行く前にミッションを説明しよう。今回はこの世界を作ったマスターになんとしてでも接触することだ。なんのために作ったのか分からんが俺を襲った以上、相当危険な願いを持っていると考えてもいいだろう』
謙吾「しかしどうやって見つけるんだ?」
恭介『行ってみないと分からんだろうな。正体が全くつかめないんだから仕方がない』
理樹「犯人の人物像も動機も分からないよ…」
恭介『だが、このまま何も変化がないならそれこそ犯人の行動が説明出来ない。必ず俺たちにアクションを起こしてくれるはずだ』
真人「例えば?」
恭介『敵を送り込んでくるとか』
真人「ダメじゃねーか!」
恭介『ふっ…謙吾が何のためにこれらを集めてきたと思っている?』
理樹(恭介の言うこれらとは武器のことだった。僕らは突入する際に素手では心許ないと謙吾の持ってきた武器をそれぞれ手にしている)
理樹「あんまり使わないようにしたいんだけど……」
謙吾「ああ。逃げ切れると思ったら逃げるのが最善策だ。無理に使う必要もない」
理樹(真人はグローブ、謙吾は木刀、僕は金属バットを持っている)
理樹「なんか僕だけ本気みたいな感じだね…」
謙吾「そんな装備で大丈夫か?もっと軽いのにしなければいざという時に逃げられんかもしれん」
恭介『そうだな。理樹には一番いいのを頼む』
謙吾「ふむ…ならこれしかあるまい」
理樹(謙吾は僕に何かズシリとしたものを渡してくれた)
理樹「こ、これは……」
理樹(部屋の隅でずっと存在感を放っていた物だった)
謙吾「安心しろ、中身はゴム弾だ。……と言っても当たりどころを間違えれば…いや、なんでもない」
理樹「いやいやいや!そこは誤魔化さないでよ!なんで僕だけ拳銃なのさ!!ていうかどっから持ってきたのこれ!?」
恭介『大丈夫だ、どうせ撃つとしてもNPCだろうから問題ない』
理樹「それでも人に向かって撃つのは抵抗あるんだけど…」
真人「やっこさんはこっちには一切容赦しないってことは忘れんなよ理樹」
理樹「そ、それはそうなんだけどさ」
理樹(敵に遭わないよう祈るしかない)
恭介『作戦中は何かあればすぐに俺に電話をしてくれ。そうじゃなくても20分置きには連絡をするように』
理樹(全員が頷く。といっても恭介には見えていないけど)
恭介『よし、それじゃあ出発だっ!!』
理樹(敵地には全員別々の自転車で向かった。消灯時間を狙うだけあって辺りは既に真っ暗だ)
謙吾「ところでなんで恭介を狙ったんだろうな」
理樹(と、謙吾)
理樹「分からない。恭介だけはどうしても消し去っておきたかったのかな?」
真人「それも犯人の手掛かりになるかもしれねえな」
理樹「うん…逆に言えば犯人の目的は恭介がいると困ることだって事だからね」
謙吾「つまり犯人は恭介のことを知っている人物になるな」
理樹「まあそれだけなら恭介は有名だから候補は無数にいるけどね」
真人「言ってる間に着いちまったな」
理樹「うん…」
理樹(今日はそれほど寒くはないのに緊張で手が震える。入ったらもう二度と帰れない気がした)
スタッ
謙吾「よし良いぞ理樹」
理樹「うん。よっとっ」
理樹(とうとう柵を越えた。ここからが本番だ)
恭介『よし、到着したようだな。まずは…』
「あなた達、ここで何をしているの?」
理樹「!!」
理樹(静かな空間から突然凛とした声が響いた)
佳奈多「もう消灯時間は過ぎたわよ?まさか今から学校を出ようって言うんじゃないでしょうね?」
理樹「あ、いや……」
理樹(厄介な人に見つかった!あたふたしていると謙吾が一歩前に出た)
謙吾「実は眠れなくて校内を散歩していたんだ。もうそんな時間だったとは気づかなかった!」
佳奈多「ふうん…」
理樹(3人をジロリと検査するように見る二木さん)
佳奈多「それにしては変なものを持ってるわね」
理樹(幸い僕はポケットに忍ばせていたけど真人と謙吾は隠しようもないのでつけたままだった)
謙吾「俺は練習も兼ねてな」
佳奈多「井ノ原のそのグローブは?」
真人「お、俺は最近ボクシングに目覚めたんだ!打倒モハメドだぜ!」
理樹(雑な言い訳だった)
佳奈多「ま、いいけどね…見回りの用務員さんに見つからないうちに早く帰りなさいよ」
理樹「えっ、見逃してくれるの!?」
理樹(あまりに意外だったのでつい声を張り上げてしまった。てっきり先生に報告するとかなんとか言うかと)
佳奈多「だって私はもう風紀委員じゃないもの」
謙吾「ふむ…鬼の二木佳奈多も丸くなったものだな」
佳奈多「鬼のは余計よ」
謙吾「なにっ、これでも怒らないのかっ」
佳奈多「ああ、そうそう」
理樹「?」
佳奈多「直枝、あなたにはちょっと来てもらいたいの」
理樹「な、なんでっ」
佳奈多「個人的な用よ。すぐに済むから」
理樹「す、すぐってどれくらい?」
佳奈多「すぐはすぐよ。ただ2人きりになりたいだけ」
理樹(謙吾と真人に助けを求めて視線を向ける)
謙吾「すぐに返してくれるって言うんならいいんじゃないか?」
理樹「ええーっ」
理樹(すると今度は二木さんに聞こえないようこう耳打ちした)
謙吾「……それに下手に断って言い争う時間が惜しい。丸いとはいえ二木は頑固だからな。ここは素直に従ってさっさと帰ってもらえ」
理樹「な、なるほど…」
佳奈多「なにを話しているの?」
真人「こっちの話だよ。仕方がねえ、ちょっとだけから貸してやるよ」
佳奈多「ありがと」
理樹(コツコツと靴の音だけが響いている。隣の二木さんは薄暗いのが手伝って何を考えているのか悟れない表情だった)
理樹「二木さん、それで話って?」
佳奈多「もうちょっと進んでから言いたいわ」
理樹(既に真人と謙吾は僕の目からは小さくなっていた。あの2人とは出来るだけ離れたくないんだけど…)
理樹「と、ところでさ…」
佳奈多「なに?」
理樹「二木さん、どうしてこんな時間にまで外にいたの?」
理樹(二木さんがびくっとした。奇妙な表情がちらっとその顔をよぎる。その表情はすぐに消えてしまったけど、そのわずかな一瞬、二木さんの顔はまるで見慣れないものに変貌した)
佳奈多「…………………」
理樹「ふ、二木さん…?」
理樹(何か異質で冷たいものが、ちらりと顔をのぞかせた。その時、二木さんの厳しくも優しい当たり前の外見が消え去ったように見えた。いや、元々なかったのかもしれない)
佳奈多「…………っ」
理樹「えっ、なに?」
理樹(小さくポツリと言葉をこぼしたかと思うといきなり僕の手首を強く掴んできた。とても二木さんが持っていた腕力とは思えない)
理樹「ちょっと!二木さん!?」
理樹(強引にその手を引っ張り、何故か学校の方へと進んでいく二木さん。僕の直感が危険の二文字を叫んでいた)
理樹「どうかしているよ!」
理樹(その手を振り切ろうとした。……が、出来ない。予想以上に力が強くなっていた)
理樹「は、離せ!」
佳奈多「ふふふ…ダメ……ダメよ…」
理樹(既に僕は全力で逃げようとしていた。体を飛ばそうともしたけどビクともしなかった)
理樹「こ、こうなったら……」
理樹(出来るだけ使いたくなかったけど仕方がない。二木さんは明らかに異常だった。大怪我にはなってほしくなかったので足を狙うしかない)
理樹「二木さん…ごめんっ」
理樹(懐から銃を取り出した。何故か使い慣れたような感覚だった。僕はそれを相手に向けて…)
佳奈多「馬鹿ね…本当に馬鹿!」
理樹「なっ!?」
理樹(最終手段が宙を舞った。二木さんが足で銃を高らかと飛ばしたのだ)
理樹「ま、まずい…」
佳奈多「さあ来るの!私と!一緒に!」
理樹(もうダメだと諦めかけたその時だった)
佳奈多「うっ……」
理樹(急に僕を捕まえる手の力がふっと消えた)
理樹「えっ…」
理樹(ドサリと僕に倒れかかる二木さん。その後ろには2人が立っていた)
真人「…たっく早く助けを呼べってのに」
謙吾「くっ…敵とは言え、やはり知り合いの姿をした…それも女に手を出すのは胸が気持ち悪いな」
理樹「謙吾!真人!」
…………………………
謙吾「ああそうだ。二木も既にやられていた」
理樹(謙吾が恭介に報告している)
真人「ほら、お前の武器だろ?」
理樹(活躍しなかった鉄の塊が僕に手に戻った)
理樹「ありがとう真人……」
真人「………そう落ち込むな。きっと二木もどこかで生きてるに違いない」
理樹「でも確証はないよ!」
真人「………そうだな」
理樹(真人の少し悲しいような顔を見て自分が言ったことを後悔し、反省した)
理樹「あ…ごめん……真人に当たってもしょうがないよね…」
理樹(目のやりどころに困り、ベンチに寝かせてある二木さんの方を向いた。するとまた奇妙なことが起きた)
バサッ
理樹「あっ!!」
真人「ん?……なっ…」
理樹(二木さんが消えた。比喩でもなんでもなく手品のようにパッと身体だけが消えたんだ。そこにはさっきまで着ていた制服だけが残った)
すまん今日はここまでだ
乙
使い慣れたってことはさやルートクリア済みの可能性
ふと同業者のスレ見てたら言葉のセンスと人気にジェラシィィィィイイイイ!!!!!明日の予定なんか知るもんか!寝落ちするまで描いてやらぁ!!
謙吾「……ああ、そうらしい…服は残っている。二木だけが消えた」
理樹(既になんでもありの世界だってことは分かってるけど急な超常現象にはいつでも慣れない)
真人「倒せば消えるなんてまさにゲームの世界だなこりゃ…」
恭介『もしかすると………』
理樹「えっ?」
理樹(恭介の声が聞こえた。携帯をスピーカーにしたようだ)
恭介『いや、なんでもない。確信もないうちに結論へ急ぐのは危険だからな。確認したいんだが理樹は二木にどこへ連れて行かれたんだ?』
理樹「学校…僕らの棟の方だよ」
恭介『そうか、それは良い知らせだ!よし、今から行くべき場所は決まった。学校へ進入しろ』
真人「学校?」
理樹「わざわざ連れて行かれそうになったところへ行くの!?」
恭介『そりゃそうだろ。だって逆に言えば俺たちが目指す敵はそこにいるってことだろ?』
謙吾「なるほど、先手必勝というわけだ」
理樹(この人達は恐れってものとは無縁の世界で生きてきたんだろうか。これでも結構ぴったりくっついて生きてきたつもりなんだけどな)
真人「心配性だな理樹は!」
理樹(肩を力強く叩く真人。その信頼できる言葉に脱力しつつ少し緊張も解けた)
理樹「みんな精神的にノーガード戦法取ってるよね…」
理樹(僕は忍足、他の2人は勇み足で黒幕がいる(かもしれない)場所へ向かった)
理樹「ねえ、学校のどこを探すつもりなの?」
理樹(歩きながら聞いた)
恭介『見つかるまで手当たり次第に探すしかない。もちろん俺たち関係を当たっていくけどな』
「「~~~っ!」」
理樹「はっ!」
謙吾「女子の悲鳴だ!」
真人「あっちから聞こえるぜ!」
理樹(何人かの叫び声が上がった。そう遠くないはずだ、急いで向かった)
笹瀬川「どうされましたの神北さん、鈴さん?早く行きましょう。とっても楽しい場所ですわよ」
取り巻き「「「楽しい場所ですわ!」」」
鈴「小毬ちゃんに近づくな!お前は笹瀬川じゃないっ!!」
小毬「り、鈴ちゃん…」
笹瀬川「あら、心外ですわね…久々にちゃんと名前で呼んでくれたと思ったのに……許せませんわぁ」
理樹「鈴!小毬さん!」
鈴「理樹!お前らも来たか!」
小毬「み、みんなぁ~!」
理樹(自動販売機の前で笹瀬川さんとその取り巻き、鈴と小毬さんが対立していた)
笹瀬川「次から次へと邪魔ばかり…あなた達!やっておしまいっ」
取り巻き「「「お任せください佐々美様!」」」
真人「理樹!こいつらは俺たちがやっておくからお前はあいつを!」
理樹(また知り合いを撃たなければならないのか…と、謙吾がそんな僕の気持ちを汲み取ったのかポンっと頭を撫でて背中を押した)
謙吾「確かに知り合いの姿に似ているかもしれない。だがあいつも所詮はモドキだ。鈴と小毬のために戦え!」
理樹(そういう言い方をされると尻込みは出来なくなった)
理樹「わ、分かった!」
理樹(真人と謙吾が3人を相手している隙を突いて奥にいる小毬さんたちの方へ助けに入った)
鈴「ナイスタイミングだ理樹」
理樹「まあね」
理樹(僕は今度こそまっすぐ『敵』に標準を合わせる。前についている出っ張りと後ろの凹凸を合わせると狙いがまっすぐ飛ぶはずだ。そう誰かに教えてもらったような気がする)
小毬「り、理樹くん!?」
理樹「許してもらう気はないよ。でも、ごめん」
笹瀬川「なにをごちゃごちゃと!楯つくならあなたも一緒に…っ!」
理樹(引き金を絞るように撃った。この方が当たるらしい。これも誰かに教えてもらったことだ)
パンッ
理樹(笹瀬川さんのおでこを見て撃った。イメージとは違った軽い音を鳴らして弾が僕の目線をなぞって走る)
笹瀬川「あっ……」
理樹(倒れた。動かない)
小毬「さ、さーちゃん!」
理樹「ゴム弾だから死ぬことはないはず。でも、気絶するくらいで充分だよ…多分…」
理樹(小毬さんは笹瀬川さんの方へ駆け寄った。さっきまで攫おうとした人とは言え事情を知らない場合は友達が倒れたも同じなんだ)
真人「ぜぇ…ぜぇ…こっちもなんとか片付けたぜ…」
謙吾「どうやら容姿に関係なく全員、それなりの力を持った男とでも思い込まなければならないようだな…」
理樹(取り巻きの子達がお互いを背にしてノビていた)
恭介『よし、良くやった」
鈴「その声は馬鹿兄貴か」
恭介『小毬と鈴か』
理樹「うん。どうやら笹瀬川さんになりすましたNPCに襲われたらしい」
鈴「ああ。眠れないから偶然会った小毬ちゃんと一緒にジュースを買いに行こうと思ったんだ」
恭介『……鈴、今偶然って言ったか』
鈴「そうだ」
恭介『……………』
理樹(恭介が急に変な質問をしたかと思うとだんまりを決め込んでしまった)
恭介『理樹、謙吾、真人、その2人から離れろ』
謙吾「分かった」
理樹(謙吾はあくまで冷静だ。僕も最初は分からなかったけど今は理解出来る。つまり恭介は2人を……)
鈴「……どういうことだ?」
理樹(鈴が笹瀬川さんの様子を気にしつつ恭介に問う)
恭介『すまんが2人とも俺の声に注目してくれ』
小毬「ほえ…?」
恭介『まずは鈴、お前に質問がしたい。俺が最初にお前に与えた猫の名前は?』
鈴「レーニン」
恭介『よし、鈴はいい。鈴は大丈夫だ。こっちへ来い』
鈴「お前…何がしたいんだ」
理樹(鈴が恭介をお前呼ばわりするのはよっぽどふざけてた空気じゃない限り、僕が知っている中では本気で怒っている時のみだ)
理解(つまり、事情は理解していなくても恭介がどういうことを考えているかは薄々気付いているんだろう)
恭介『頼む、怒らないでくれ。俺だって出来る限りこんなことはしたくないんだ』
鈴「……………」
理樹(鈴は黙って僕らの方へ立った。小毬さんだけが自動販売機を背にして立つ形となった)
謙吾「だが恭介…小毬は襲われていたんだぞ?」
恭介『襲うつもりだったのは鈴だけだったかもしれん』
理樹(つまり…つまりは、恭介がなにを言いたいかというと、小毬さんも…その、やられたあとかもしれないということだ)
小毬「ど、どうしたんですか恭介さん…」
理樹(訳がわからないといった感じだった。とても嘘をついているようには見えない)
恭介『鈴、なんでもいい。学校の外で小毬と出かけたりしたろ?その時の2人しか知らないようなことを質問しろ』
鈴「小毬ちゃん。あたしたちが最後に出かけた時お昼はどこで食べた?」
小毬「パンケーキだよね…?鈴ちゃんが生クリームとイチゴので、私がブルーベリーソースのかかったの。2人で半分こして…」
鈴「もう大丈夫だ小毬ちゃん。これでいい?」
恭介『ああ。悪いな』
理樹「ほっ……」
理樹(よかった。小毬さんも鈴も襲われる前で…)
恭介『よし、2人には早速なんでこんな馬鹿げた質問をしなければならなかったのかを話そう』
リトバスssはあのスレ凄いもんなあ
でも>>1ちゃんのssも毎回面白いし好きだよ
制服だけが残ってるってことはその中には下着もあるんじゃないのか?確認しないと
俺はこっちのが好きだよ
長編だと読むのに飽きちゃう僕はこのくらいが好き
リトバスって本当に愛されてる作品だよね
制服だけなくなる展開はよ
お前ら…!ありがとう、その言葉最高に嬉しいぜ!制服だけは無くならねえけど!
恭介『…………という訳だ』
鈴「そんなアホな話あるか!」
理樹「でも見てよ僕のこの銃。こんなのオモチャだと思う?」
鈴「最近のは見分けがつかないらしいからな」
謙吾「だが見ろ俺のこの木刀。竹刀ならまだしもわざわざ俺がこんなもん持ち歩くと思うか?」
鈴「チャンバラにハマったんだろう」
真人「だけど見ろよ俺のこの筋肉。胸もピクピク出来るぜ?」
鈴「真人はアホだからな」
恭介『とにかく信じてもらわなくてもいいから今はこの危険なところから出てほしい。いつ襲われるか分からん』
小毬「鈴ちゃん。よく分からないけど恭介さんの言うこと聞いた方がいいと思うよ?」
鈴「小毬ちゃんがそういうなら…」
理樹(今の会話のサイクルがおかしいと思ったのは僕だけだろうか)
恭介『ありがとう。それじゃあ校門から出て行けば後は襲われる心配はないはずだ。どこかコンビニでも入って暇を潰しておいてくれ』
鈴「あたしも戦う」
恭介『いや、それはダメだ。今回のミッションはあまりに危険すぎる。ここは野郎共に任せてくれ』
真人「本人は参加しないけどな…」
鈴「うーん…」
理樹(それでも行きたそうなのでこう言った)
理樹「小毬さんを置いて一人きりにさせるのはどうなのかな。小毬さんを守るのも役目の一つだと思うよ?」
理樹(この言葉で鈴はやっと首を縦に振ってくれた)
謙吾「それじゃあ校門までは俺が送っていこう。あとは頼んだぞ2人とも」
真人「おう。お前こそ途中で襲われんなよ」
理樹(謙吾に2人を安全地帯まで送ってもらうと、僕らは引き続き棟の方へ向かった)
学校前
理樹「ド、ドアが開いている…」
恭介『誘っているようだな』
真人「案外閉め忘れただけかもしれねえぜ!」
理樹「真人はいいよね。素でそんな考え方が出来て」
真人「へっ、よせやい」
恭介『とにかく行かない手はない。慎重に進んでいこう』
棟1F
理樹(廊下は外以上に薄暗くて隅の方は真っ暗な闇そのものだった)
恭介『ここからは手分けして探そう。真人は俺の教室、理樹は自分の教室を調べてくれ。それが終わったらまた俺に連絡してくれ』
理樹「うん」
真人「おう」
……………………………
棟2F
教室
理樹(僕らの教室を窓越しに覗いた。……特にそれらしいものはない。ここは恭介に連絡しつつさっきの所に戻ろう)
「そーなんですね…」
「うむ。だが君には君の強みがあるはすだ。いざという時には…」
理樹「!!」
理樹(誰かがこちらに近づいてきた!)
「わ、わ、わ!!そそそそこにいるのは誰ですか!?ゴーストさんですか!?ファントムさんですかーっ!?」
「あんなひ弱そうな幽霊がいてたまるか。いざとなれば…」
理樹「た、助けて!」
理樹(勝手に敵に認定されそうな気がした)
「そ、その声は…リキ……ですか?」
「なんだつまらん。なんでこんなところにいるんだ」
理樹「それは僕のセリフだよ…」
クド「あ、あの…私は教室に明日提出するノートを届けようと思ったのですが…その、夜の学校というのは怖くて…」
来ヶ谷「何故か消灯を過ぎても佳奈多君が帰ってこないので私に白羽の矢が立ったという訳だ」
理樹「なるほど…」
来ヶ谷「クドリャフカ君。早速開けて目当ての物を持ち出したまえ」
クド「はいっ」
理樹(様子を見る限り襲われた感じはしない。しかしここは事情を説明して戻ってもらう方がいいだろう)
理樹「ねえ、一旦その手を止めて話を聞いてよ2人とも」
クド「なんですか?」
来ヶ谷「む?」
理樹「実は……」
理樹「……ということなんだけど…」
来ヶ谷「また知らないうちに別の世界にいるだと?まあ、理樹君がそういう類で嘘をつくとは思えんが…」
クド「そっ、その話が本当なら佳奈多さんは!」
理樹「落ち着いてクド。確かに確証は持てないかもしれないけどここから出ることが出来たら全員元に戻れるかもしれないし…」
クド「そ、そうですよね…きっと、帰って来ますよね…すいません取り乱して」
来ヶ谷「その話通りなら我々は今から学校を出ればいいのか?」
理樹「うん。その前に恭介に連絡しなくちゃ」
理樹(リトルバスターズのみんなは恭介を除いて今の所全員襲われていない。葉留佳さんの西園さんは大丈夫だろうか?)
西園は葉留佳のものだったのか...
本当だ
訂正
理樹「ねえ、一旦その手を止めて話を聞いてよ2人とも」
クド「なんですか?」
来ヶ谷「む?」
理樹「実は……」
理樹「……ということなんだけど…」
来ヶ谷「また知らないうちに別の世界にいるだと?まあ、理樹君がそういう類で嘘をつくとは思えんが…」
クド「そっ、その話が本当なら佳奈多さんは!」
理樹「落ち着いてクド。確かに確証は持てないかもしれないけどここから出ることが出来たら全員元に戻れるかもしれないし…」
クド「そ、そうですよね…きっと、帰って来ますよね…すいません取り乱して」
来ヶ谷「その話通りなら我々は今から学校を出ればいいのか?」
理樹「うん。その前に恭介に連絡しなくちゃ」
理樹(リトルバスターズのみんなは恭介を除いて今の所全員襲われていない。葉留佳さんや西園さんは大丈夫だろうか?)
乙!
すまん、ここのところ本当に忙しいから更新が途切れ途切れの更に亀更新になる
恭介『そうか。分かった。それじゃあ2人を連れて校門まで行ってくれ。謙吾に途中で会うかもな』
理樹「うん。それじゃあね」
廊下
理樹(僕を真ん中に3人並んで歩いた。夜の学校はただでさえ怖いところがあるのに本当に危険が迫っていると恐怖が倍増する)
クド「私たちがお力添え出来ないのが申し訳ないのです…」
来ヶ谷「たまには第一線を離れて村人Aに徹する…案外こういうのも好きだよ。私は」
理樹(確かに来ヶ谷さんにも協力してもらったほうが良い気がする。推理力もあるし意外とすぐ解決するかも…)
理樹「ねえ来ヶ谷さん。いつか忘れたけど誰かの探し物を手伝った時ってあるよね」
来ヶ谷「む。そうだったか」
理樹「ほら、あったじゃない。教室で人の本が突然消えたからどこへ行ったんだろうって。あの時のこと覚えてる?」
来ヶ谷「本は突然消えないよ。そうだな…私も記憶は曖昧だがそんなこともあったような気がする。確か……」
来ヶ谷「いじめで隠されたんだったか?」
理樹「えっ……」
理樹(その時、僕は無意識にここから一番近い出口を探していた。逃げなくては、と)
理樹「や、やだな来ヶ谷さん…机から落とした人が届けようと思って机に入れておいたのを忘れてたって話だったじゃない」
理樹(汗が吹き出て、唾を緊張で飲み込んだ。背筋から冷たいものがダラダラ落ちる感覚を味わう)
来ヶ谷「………ああ、そうだったそうだった」
理樹(果たして本当にただ忘れていただけで事実を誤認していただけなんだろうか)
理樹(確証はないがもう1人の僕が違う!と叫ぶ)
理樹(この人は来ヶ谷さんじゃない)
来ヶ谷「それで理樹君は何が言いたいんだ?」
理樹「あ……いや…その…」
理樹(選択を間違えれば僕も隣にいるクドも帰ってこれないだろう)
いっそ捕まってかなたんに会いにいこう
理樹(その時、希望の言葉が横から聞こえた)
クド「わふ……あの…みなさん。お話の腰を折るようで申し訳ないのですが…」
理樹(申し訳なさそうな顔でマントを握るクド)
来ヶ谷「どうした?」
クド「そ、そこのお手洗いにいってもよろしいでしょうか…」
理樹(階段の横にはトイレが備え付けられてあった)
来ヶ谷「そうだな、私もこの機会に済ませておこう。理樹君、君は前で見張っていてくれないか?」
理樹(チャンスはここしかない!)
理樹「うん、分かったよ。クド、帽子とマントは持っておこうか?」
クド「いえ別に…」
理樹「でももし落としてしまったらばっちいでしょ?預かっておくよ」
クド「分かりました。そこまで言うのならお願いしますっ」
理樹(自然な動きでクドの後ろに回ってマントを外しながらトイレに向かう来ヶ谷さんに聞こえないようにこう言った)
理樹「…クド、今から言うことに返事をせず聞いて。来ヶ谷さんがトイレに入って鍵を閉めたのを確認したら静かにここへ戻ってくるんだ」
クド「えっ…それは……」
理樹「お願い」
理樹(小さくも必死な口調が伝わったのかクドも小声で分かりましたと呟いた)
理樹(来ヶ谷さんに続いてクドが入って少ししてから忍び足でクドがこちらに戻ってきた)
クド「あ…あの…来ヶ谷さんはもう入ったと思います…それでもどうして……」
理樹「クド、トイレは我慢出来る?」
クド「は、はい!しばらくは…」
理樹「分かった。それじゃあ学校を出るよ」
理樹(僕はクドの手を引くと、必死に走るのを我慢してその場から離れた)
クド「リキ、どうして来ヶ谷さんを置いていくんですかっ」
理樹(今にも泣きそうな顔でクドが僕の腕を引く。多分、本人もその訳を薄々気付いているんだろう)
理樹「今は黙って逃げるんだクド。武器を持ってる僕でも敵うかどうか…」
理樹(そしてトイレから聞こえないほどまで行くと一気に走った)
ダダダッ
理樹「ハァッ…ハァッ…!」
クド「はっ…はっ…!」
理樹(転けてしまう事などに視野に入れる余裕はなく数段飛ばしで階段を駆け下りた。ここから最初の集合場所までは来ヶ谷さんが気付いた頃にはもう…)
ダンッッ
理樹「!!」
クド「わふっ!?」
理樹(外から何かが落下した音がした。ちょうど僕らが向かう方向からだった)
コツ…コツ…
理樹(我に帰ったと思いきやそこから上履きの上品な音が近づく。こんな綺麗な音を出すのは他には知らない)
理樹「ああ…バカな……」
クド「リ、リキ……」
理樹(廊下の窓から差し込む月明かりで最初に長い足が見えた。次にスカート。そして長い髪の毛を纏った特徴的な髪飾り。僕は最後まで見たくなかった)
コツ…コツ…
来ヶ谷「おいおい、私を置いていってしまうとは随分薄情になったものだな」
理樹(もうすぐで出口だった。しかしそれを塞ぐように現れた来ヶ谷さんに似た『何か』)
クド「く、来ヶ谷さ…!」
理樹「来ヶ谷さんじゃないよクド」
来ヶ谷「はっはっはっ。やはり理樹君。君は……」
来ヶ谷「……いつから?」
理樹(変装がばれたそれは僕に質問した。恐ろしいことに僕はそこから何も読み取ることが出来なかった。空っぽなんだ)
理樹(いつか来ヶ谷さんは僕に自分は感情のないロボットのような存在だと言ったことがあった。しかし、そんなことは無かったと思う。何故ならここに本当に喜怒哀楽という言葉を知らないような物が目の前にいるから)
理樹「話してたら分かるよ。君らは人間になりきれてない!」
来ヶ谷「なりきれていない…か。どうしてそう思うんだ?私だって悲しい場面の時は悲しい顔や悲しい口調になれるし、嬉しい時は嬉しい顔になることが出来る。君を騙せるくらいはね」
理樹「ち、違う…そうじゃないんだ…君たちには他の生き物にはもち合わせることが出来ない人間だけが持てる特別な超能力を持っていない」
来ヶ谷「ふむ。興味深いな。それはなんだ?」
理樹「それは……」
理樹(その時、辺りの静けさを全てぶち壊す荒々しい足音が聞こえた)
「筋肉が通過しまーす!白線の内側までおさがりくださーーいっ!!」
クド「わふー!その声は!」
理樹(とうっと階段の踊り場から一気にジャンプして僕らの後ろに現れたのはゴツい筋肉を持つ熱い男だった)
真人「俺の筋肉を使うかい?」
理樹「真人!」
真人「へっ、よく分かんねえがどうやら来ヶ谷が敵になっちまってるようだな」
理樹(この状況で一番来てほしい人が隣に現れてくれた。あちらもこの登場は意外だったようだ)
来ヶ谷「……お仲間の登場か…」
真人が登場した時の安心感すさまじい
真人「理樹、ここは俺に任せて恭介に連絡してクドを逃せ!」
理樹「でも真人!」
真人「行けよ、こんなヤツ足止めなんて言わず倒しちまってもいいんだろ?」
クド「井ノ原さん…」
理樹「分かった…行こうクド」
来ヶ谷「待て、理樹君だけは逃す訳にはいかない!」
真人「おっとそいつは俺を倒してからにするんだなっ!……って一回言ってみたかったんだよなぁ!」
来ヶ谷「邪魔な筋肉ダルマめ。君が私に一度でも実力で勝てたことがあったか?」
真人「そうそう、多分もうお前は理樹と二度と会わないだろうからさっきあいつが言いそびれてたことを伝えておくぜ」
来ヶ谷「?」
真人「人間だけに許された能力…それはふくらはぎの筋肉だよっ!!」
来ヶ谷「……多分違うんじゃないか?」
真人よそれは死亡フラグだ
プルルルルル
プルルルルル
理樹「うーん、恭介にかからないな…謙吾と話してるのかな?」
クド「はぁ…はぁ…そういえばリキ、さっき言ってた人間だけの超能力ってなんなんですか?」
理樹「そうだね…感情移入のことを言おうとしてたんだ。さっきの真人が助けてくれたように思いやりの心が人間の持つ力だってね」
クド「でもヴェルカやストレルカも思いやりはあります!」
理樹「あはは、そういえばそうだね。結構適当なこと言っちゃったかな」
理樹(そんなことを言っていると反対側の出口に着いた)
真人(ランサー)がアーチャーフラグをたててもうた…
真人、それはアーチャーの言う死亡フラグだ!お前は自害する方だろ!!
真人死亡フラグたっても大丈夫臭がヤバい
確かに真人は自害する方だな
原作のテキストっぽさがすごくあって好きよ
理樹「とりあえず校門まで行こうか」
クド「はいっ」
理樹(元気よく挨拶したクドの後ろに大きな影がさした!)
ヌッ
「お前ら…」
クド「わふーーっ!?」
理樹「うわぁーーーっ!!」
理樹(思わずお互い抱き合って影の方向を振り向く)
「おいそんなに怖がることはないだろ…敵じゃないぞ俺は」
理樹「ってその声は謙吾か…」
謙吾「やれやれ。電話の恭介も笑ってるぞ」
理樹(どうやら恭介と謙吾は通話をしていたようだ)
クド「び、びっくりしました…」
謙吾「今スピーカーにする」
恭介『…ッハッハ!そりゃ夜に謙吾みたいなのに出会ったらそうなるよな』
理樹「まあ状況が状況だからね……ってそれどころじゃないんだ!」
クド「そうですよ!い、井ノ原さんが…!」
恭介『真人が?』
謙吾「……そうか…真人が…」
恭介『…理樹、来ヶ谷はお前だけは逃さないって言ったんだな?』
理樹「うん。そうなんだ…なんだか僕だけが狙われてるような…」
恭介『分かった。とにかく謙吾は悪いがまた能美を送ってやってくれ』
謙吾「了解だ。能美、後ろにぴったりついて来い」
クド「それはいいのですがリキは…」
恭介『理樹には反対側から周ってある場所まで行ってもらいたい』
理樹「ある場所?」
棟1F
廊下
恭介『そこを右に回れ』
理樹「うん…」
理樹(真人達の反対方向に来たおかげで敵どころか人もまったくいなかった)
理樹「恭介はどこに向かってるの…?」
恭介『着いたら分か……いや、お前は忘れているだろうな』
理樹「えっ?」
恭介『ま、会ったら流石に思い出すはずだだろ多分』
理樹「いったい何を言ってるのか…そろそろ教えてくれたっていいじゃない」
恭介『百聞は一見に如かずだ。今どこだ?』
理樹「今?ちょうど1-Aかな」
恭介『よし。その教室に入ってみろ』
理樹「そんなこと言ったって鍵が……あ、空いてる!」
恭介『やっぱりか…』
教室
理樹(教室は特に変わったところがない。恭介は何故ここが空いていると分かったんだろうか)
恭介『ラスボスが誘ってるんだろ。」
理樹(また心を透かしたようなことを言われた。恭介は黒幕が分かったのか?)
恭介『理樹、今から言うことが出来るか?』
理樹「どうせここまで来たらなんでもやるよ」
恭介『じゃあまず教室の机を積み上げてくれ。形はそうだな、ピラミッドでいいはずだ』
理樹「はっ?」
理樹(あれからピラミッドを作るまでに4回は恭介の言うことを聞き直した。しかしその度に恭介は大真面目で『ああ。やってくれ』と言った)
理樹「はあ…はあ……こ、これで!」
ドンッ
ガラッ
理樹「!」
理樹(最後の机を積むと後ろの方から大きな音がした)
恭介『ビンゴ!』
理樹(見ると後ろの真ん中辺りの壁が外れて人が1人ほど通れそうな通路(?)が現れた。なんだかデジャヴを感じる)
理樹「こ、これはいったい…」
恭介『行ってみろ』
理樹「いや、でも…」
恭介『俺の予想じゃその先にラスボスがいるはずだ』
理樹「ほ、本当!?」
理樹(やっと数々の恐怖を用意してきた張本人に会える!)
ガラッ
理樹(と、そこへ教室から誰かが入ってきた気配を感じた)
真人「ぜぇ…ぜぇ…」
理樹「ま、真人!その怪我は!?」
理樹(真人は制服のあちこちが破れて額に傷もついていた)
真人「ちょっと来ヶ谷っぽいやつからな…まあ、大した傷じゃねえぜ…」
理樹「ってことはあの来ヶ谷さんを倒したの!?」
真人「へへっ、まあな!それよりいったいそれはなんなんだ?」
理樹「ああこれ?これは…」
恭介『理樹、真人に何か質問しろ』
理樹(話を中断させて警告する恭介)
理樹「えっ、まさか疑うの!?」
恭介『ずっと一緒じゃなかったやつは信用が出来ない。銃を構えておけ』
理樹「ええー…」
理樹(渋々照準を真人に合わせた)
理樹「じゃあ質問するよ真人?」
真人「おう来な!」
理樹「日本を統一しかけて部下の明智光秀にやられてしまった有名な武士は?」
真人「へっ?織田信長だろ?」
恭介『理樹、撃て。そいつは真人じゃない』
理樹「そうらしいね」
真人「えっ、おい待て待て!正解じゃ…」
パンッ
恭介『さあ今度こそ行くぞ』
理樹「うん…」
理樹(やっぱり本物の真人はやられたか…)
理樹「ううー…結構狭いねここ…」
恭介『もしどこかで引っかかって一生抜けられたくなったら発狂しそうだな』
理樹「そういうのはやめてよ!」
恭介『俺のサポートが心配なのか?』
理樹「今のは嫌がらせっていうんだよ…っておわぁっ!?」
理樹(電話に集中しすぎて前のことを考えていなかった。4足歩行で這っていた右手がすり抜けたかと思うとそのままバランスを崩し、下に落下していた)
ドスンッ
理樹「痛た…」
恭介『大丈夫か?』
理樹「大丈夫、ちょっと頭を打ったけど問題はないよ。それよりここは…」
恭介『なにが見える?』
理樹「ぼんやりとしか見えないな…なんだか周りがコンクリートの箱のような場所だ」
恭介『後ろは?』
理樹「ちょっと広いかな」
理樹(少し目が慣れてきたのかよく見ると少し長方形の大きな仕切りが見える。ドアのようだ)
理樹「とりあえず行ってみようかな…」
恭介『ああ』
理樹(少し痛むお尻を撫でながら立ち上がった。…と、同時だった)
ギィ…
理樹「!!」
理樹(ドアが開いた。ドアの先はここよりもさらに真っ暗のようだ。そんなことを思っていると部屋に床の汚れが見えるほどの明かりもついた)
恭介『気をつけろ。とうとう現れるぞ』
理樹「…………」
理樹(生唾を飲み込んだ。開いたドアの先には人型の影があった)
「………………」
誰だよ
「月夜に悪魔と踊ったことはある?…なんてね」
理樹(女の子の声だった。どこか聞いたことがあるような…)
「やっと会えたわね…あたし、ずっとずっと待ってたわ」
沙耶「……理樹くん」
理樹「!!」
『この学校の生徒か?』
『あなたはここで死ぬのよ』
『墓穴掘った…』
『うんがーーっ!!』
『理樹くんが、キスよけるんだもん!!』
『分かってるわ…みんなが優しいことを…』
『こんなところに、あたしが駆け抜けたかった青春があったからっ…』
理樹「あ……ああああぁっ!!」
沙耶「クスクス…もう、そんなに大声なんか出さなくていいのに」
理樹「嘘だ……君は…」
恭介『聴いておこう。何故お前がここにいる?』
沙耶「やった…ついにあの時の続きに行き着いたわ!」
理樹(彼女の名前は朱鷺戸沙耶。僕がかつて愛したはずのスパイだ)
次回ラスト
乙
真人の判別方法ワロタ
真人にあんな問題が正解できるわけないしね。適切だね
真人なら筋肉さん!とか言いそうだしな、仕方無いな
実はたまたま知っていたというおち
もし本物でも真人だし大丈夫大丈夫
本物ならそもそもゴム弾程度で倒せる筋肉な訳がない
真の筋肉ならゴム弾を弾き飛ばすぜ
恭介『…質問に答えてもらおう』
理樹(恭介の声は明らかにあせっていた。僕と同じことを考えているようだ)
理樹(そう、ありえないんだ。彼女が『今』いるのは)
沙耶「ああごめんなさい。つい嬉しさのあまり言い忘れたわね」
沙耶「これが答えよ」
パンッ
理樹「!」
理樹(沙耶は目にも留まらぬ速さで懐から銃を取り出し、僕の左手の少し先を撃った。つまり、それは僕の携帯だ)
理樹「ああ!恭介っ!」
恭介『ちくしょう撃ちやがったな!だがどうやらまだ話せるようだ……いきなりご挨拶だな』
理樹「………!!」
理樹(携帯の欠けを見て悟った。沙耶の今撃った弾は実弾だと)
沙耶「まさかまだ世界から追い出されてなかったなんてね…流石どこまでもしぶといわ時風は」
理樹「沙耶!本当に今までのは全部沙耶がやったの!?」
沙耶「ええそうよ?その理由は……まあ、今はいっか…」
理樹「い、今はって…?」
沙耶「ごめんなさい理樹くん。この世界は私1人で動かしてるからまだ完成じゃないの。だからリセットするにはいちいちこうしてあなたを殺さなきゃ…」
理樹(そう言いながら沙耶は構えた。彼女の向けた銃口と目が合う)
理樹「やば…っ!!」
パンッ
キュンッ
理樹「ハァ…ハァ…!!沙耶、いきなり僕を撃つなんてどういうつもりなのさ!沙耶もこの世界で襲われちゃったの!?」
沙耶「うわっ、理樹くん避けないでよ…といっても私のパートナーだったんだし当然っちゃ当然か…」
恭介『理樹、朱鷺戸は襲われていないだろう。だが、正気じゃないのは明らかだ!あいつを止めろ!』
理樹「そうするしかなさそうだね…」
沙耶「なに、立ち向かうの?まあそれもいいわねぇ、昔を思い出すわ!」
理樹(そう言ってから一呼吸して、叫んだ)
沙耶「それじゃあ…ゲームスタート!」
パンパンッ
理樹(スタート!と言われたところで僕に隠れる場所はない。さっきも見た通り周りはただのコンクリートであって都合よく遮蔽物が転がっている訳もなく、ただ右へ左へ走って弾を避けるのが精々自分に出来る抵抗だった)
沙耶「どうしたの理樹くん?その右手に持ってる銃はおもちゃなの?」
理樹(確かに鉛弾ではないけど動きを止めるくらいの威力はある。しかし当てられるように狙うには隙が必要だ。ほんの僅かな隙が…)
パンパンッ
理樹「…うっ!」
理樹(腕をかすめた。制服の袖が破けて血がしたたり落ちる。当然そんなことを気にしている余裕はない)
沙耶「よし…っ」
パン…カチッカチッ
沙耶「あっ!」
恭介『弾切れだ!理樹!』
理樹「分かってる!」
理樹(素早くしゃがむと左腕を右腕に乗せて狙いを定めた)
理樹「足を狙えば…っ!」
………カチッ
理樹「……えっ」
理樹(ここぞという時に引いた引き金は虚しい音がした。いつの間にスライドストップを戻していたんだろう…)
理樹「くっ…」
理樹(こうなれば賭けに出るしかなかった)
沙耶「リロードリロード…って!?」
理樹(銃を捨て、マガジンを交換している沙耶に目掛けて全力で走った)
沙耶「ど、どういうつもり!?早く死にたいのかしら!」
理樹(リロードが終わりスライドを戻しこちらに向ける。しかしこの距離ならこちらの方が早い)
理樹「うぉぉおおおおおおお!!」
沙耶「や…ちょっ!」
理樹(人生で一番速く走った気がする。とにかく沙耶が引き金を引きかけると同時に彼女に飛び込んだ)
沙耶「きゃああああ!?」
理樹(その勢いで押し倒し、ギリギリのところで腕を押さえつけた。それでも沙耶は撃ったが、もちろん当たるはずがない)
沙耶「離してよ!」
理樹「いやいやいや!そしたら殺されるじゃないかっ!」
理樹(ついでに左手も押さえつけてマウストポジションをとった)
理樹「ね、ねえ沙耶…こんなことするよりも話し合ってからでも遅くないと思うよ?」
理樹(すると、流石に諦めてくれたのか銃を投げた)
沙耶「はぁ……分かったわよ…降参する…」
…………………………
……………
…
理樹(僕らは部屋の隅にちょこんと並んだ。恭介はその2人の前に置かせてもらっている)
沙耶「これは最初から話したほうがいいわね…そう、あたしは確かに恭介くんのお陰で昔に戻ったわ。もしかしたらそれすら死ぬ前の妄想に過ぎないかもしれないけどね」
沙耶「気がついたら子供の姿でベッドに寝ていたわ。そして起き上がるとパパがあたしに『外であの子が遊びに来ているよ』と言ったの。誰か分かる?」
理樹「もしかして……僕?」
沙耶「そう、小さい頃の理樹くんだったの。私は嬉々として誓ったわ。これからは絶対この理樹くんと一緒にいるって」
理樹(改めてそんなことを言われると少し恥ずかしい)
沙耶「でもね。ある日気づいたの…果たしてそうやってあたしが一緒にいた理樹くんはあたしが好きだった理樹くんなのかって」
恭介『つまり、今ここにいる理樹そのもの…あの学園生活を過ごした理樹じゃないと意味がないと』
沙耶「そんな言い方しないでよっ。そりゃ幸福に生きた理樹くんだって素晴らしいものだわ!」
理樹「わ、分かったから本人の前でそんなこと言わないでよっ」
沙耶「っと話がズレたわね…ま、とにかくそういう事よ。だから私はもう一度同じ事を『途中まで』繰り返す事にしたの」
理樹「途中?」
沙耶「そ、途中まで。具体的に言うと私が理樹くんと最後に別れたあの時まで」
恭介『というともう一度お前は事故に巻き込まれて死にかけ、俺たちの世界に潜り込み、拳銃でさよならする手前までを繰り返したっていうのか?』
沙耶「そう。今度はあの世界からゲームオーバーにこそなったけど、ちゃんと意識は残していたわ」
沙耶「あたしにも原理はよく分からないけどとにかく理樹くんと思う一度会いたい一心でね。そしたら今度は恭介くんや理樹くん達の世界に入るんじゃなくて、あたしの世界に恭介くんや理樹くんを引き入れる事に成功した」
恭介『それからどうして俺を追い出そうとした』
沙耶「さっきまでのあたしは正気じゃなかったんでしょうね。理樹くんのことを思うあまり他の人はみんな要らない。あたしと理樹くんがこの世界で永遠に生き続ければそれでいいって思っていたの」
恭介『それがお前がこの世界を作った望みとなっていた訳か』
沙耶「そう。だからまず一番やっかいな恭介くんから消して、その後も巻き込んだ生徒を次々に世界から追い出したわ。もちろんそうした人はみんな朝には起きるけど」
理樹「じゃあみんなもう…」
沙耶「そ、さっきの闘いの間にも学校に残っている人はみんなNPCを使って追い出していったわ。リトルバスターズのみんなはほとんど避難したようだけど」
理樹「ミッション失敗という訳だ」
沙耶「そうなるわね」
沙耶「あたしもそうやって漫画の悪役みたいなことをして理樹くんに理解を得られると思ってなかったわ」
沙耶「だからもう一度この世界で理樹くんの記憶を最初に戻し、あたしとあなた以外がNPCになった世界で今度こそ青春を送ろうと思ったの」
恭介『なかなかぶっ飛んでるな』
沙耶「ふっ……ええそうよ。どうせあたしはそこまで分かっていながらトチ狂って行動に移したにもかかわらず、ゴム弾相手に本物でかかっておきながら、マヌケにも素手で負けて計画が頓挫し、やっと我に返った哀れなポンコツ少女よ!笑いなさいよ、笑えばいいわ!アーッハッハッハって!」
沙耶「アーッハッハッハ!!」
理樹「うわぁ、久しぶりに聞いたなその持ちネタ」
沙耶「誰がネタじゃぁ!」
恭介『ま、とにかくこれで神経張り詰める心配もなくなった訳だ』
理樹「そ、そうだよ…沙耶はどうするの?」
理樹(さっき言っていた話通りなら本物の沙耶は…)
沙耶「そうね……今度こそちゃんと成仏でもしようかしら…なんてね」
恭介『………いや、俺に良い考えがある』
理樹「いい考え?」
恭介『だがこいつはどうなるか分からんからな…ちょっと理樹はどこか外しておいてくれないか?』
理樹「外すも何もどうやってここから出ればいいのかさえ分からないけどね…」
沙耶「~~?」
恭介『~~~~』
沙耶「!!」
理樹(あれからずっと沙耶は恭介と何かを話していた。遠くから眺めるだけだったので内容はまったく分からない)
沙耶「~…~~……」
理樹(すると沙耶がこちらに手招きした。話は終わったんだろうか。何の話をしていたんだろう?)
理樹「話はまとまった?」
沙耶「ええ。言われてびっくりしちゃったけど」
恭介『ああ。なんとかな』
理樹(すると沙耶はどこから持ってきたのか短剣で僕の胸を突き刺した)
沙耶「じゃあバイバイ理樹くん。…楽しかったわ」
理樹(喋る事が出来なかった)
恭介『それじゃまたな朱鷺戸』
沙耶「そうね、時風瞬」
理樹(そこまで聞いてから僕の意識は途切れた)
……………………………………………
……………………
…
なんてとこで終わってるんだ…はよ
終わるつもりが寝落ち
再開
理樹「…………ハッ!!」
理樹(勢いよく起き上がることが出来た。汗で全身びしょ濡れだ)
理樹「ハァ…ハァ……!」
真人「痛てて…ってあれ?起きた…ってことはここ……」
理樹(上から真人の声がする。どうやら最後の沙耶の行動は分からなかったが戻ってきてしまったらしい)
理樹「……………」
理樹(さっきのは夢だったんだろうか…それにしては記憶がハッキリし過ぎているし五感も…)
真人「理樹!無事だったか!?」
理樹「あ…うん」
理樹(たった今ただの夢ではなかったことが分かった)
理樹「真人、僕にもよく分からないけど問題は解決したよ。多分」
真人「なんだよその煮え切らねえ言い方は…」
理樹「いやぁ、僕にもさっぱりなんだ…」
理樹(とにかく僕らは食堂へ向かった。みんなの安否を確認するにはそれが一番手っ取り早い)
食堂
理樹「えーと……うん、全員無事みたいだね」
クド「リキ、井ノ原さん、おはようなのです!」
小毬「ふぁぁ…おはよう~」
来ヶ谷「や、昨夜はお楽しみだったな」
葉留佳「ナニーーッ!今姉御から聞き捨てならない言葉が聞こえやしたぜ!?」
理樹「なんでわざわざ誤解を招きそうな言い方をするのさ!というかもう既に1人なっちゃってるし!」
理樹(よかった。みんないつも通りのようだ)
「ういーす」
理樹「あっ、恭介!」
恭介「おう。なんだかお前らに久々に会った気がするな…」
来ヶ谷「早速で悪いが恭介氏、あれはどういうことだったんだ?」
謙吾「そうだ!結局最後はどうなったんだ!?」
西園「なにかあったのですか?」
恭介「分かった分かった!それもみんな後で話してやるよ。それより今は飯を食おうぜっ」
理樹(全員そんな呑気な恭介の言葉にやれやれと腰を下ろすしかなかった。結局、昨日と変わない朝ご飯が始まった)
………………………………
教室
理樹(それにしても恭介は最後に沙耶と何を話していたんだろう?はぁ、なんかもうちょっと沙耶と喋りたかったなー)
ガラッ
教師「さあお前ら席に着け!今日はなんと転校生が来るぞ!」
ガヤガヤ
真人「おっ、転校生だってよ理樹!どんな筋肉だろうなっ」
理樹「真人の中で筋肉モリモリマッチョマンなのは確定なんだね…」
理樹(その時マナーモードにしていた携帯が鳴った。恭介からのメールだった)
理樹「……?」
理樹(メールを読む)
恭介『なあ理樹。あの世界で奴はタイムマシンで同じ行動して、自力で俺たちの世界まで来たって言ってたよな?なら『昔、事故に巻き込まれなかった場合』の奴がこれまでと同じ行動を繰り返したらどうなると思う?』
理樹「はっ?」
理樹(一瞬書いている意味が分からなかった)
教師「それでは入ってきなさい」
『はいっ!』
ガラッ
生徒たち「「おおー……」」
理樹(周りの男子から感嘆の声が聞こえた。女子だったのか?しかし、そんな中、その転校生を見た時の反応がおかしな2人が現れた)
謙吾「なぁぁぁあ!?」
真人「は、はぁぁああ!?」
理樹「どうしたの2人とも、そんな大声上げ………」
理樹(その声でやっと転校生を見た。そして僕も素直に反応した)
理樹「えっ………えええええええーーっっ!!!」
教師「それでは自己紹介をしなさい」
「分かりました!」
理樹(その女子はチョークをとってカツカツと黒板に自分の名前を書いた)
沙耶「朱鷺戸沙耶です。よろしく!」
終わり
名前、 朱鷺戸沙耶なんだな
本名って明かされてたっけ?
言い忘れてた、乙
面白かった
乙
名前は『あや』じゃなかったかとか、細ぇこたぁいいんだよ!
乙
乙
乙ッ!
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