魔王「我の本気を見せてくれる!」 (21)
勇者「俺はまどろっこしいのが嫌いでね、一気に決着をつけたい」
勇者「ってことで、いきなり本気でこい、魔王!」
魔王「よかろう。こちらとしても時間がないことだし、我の本気を見せてくれる!」
魔王「そして、地獄で後悔するのだな! 我の本気を引き出したことを!」
側近(魔王様の本気……私も見るのは初めてだ!)
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魔王「カァァッ!」ゴウッ!
側近「魔王様が黄金に輝いている!」
勇者「なんてオーラだ……! これが魔王の本気ッ……!」
魔王「むんっ!」ボコォッ!
勇者「筋肉が膨れ上がった! ただでさえ大きな体がさらに……!」
側近「なんという迫力……! 魔王様はこれほどのパワーを秘めていたのですか!」
魔王「おおおお……」メキメキ…
勇者「魔王の全身に血管が浮かび上がった! おぞましい……!」
側近「いよいよ、これが本気モードということなのでしょうか!?」
魔王「はあっ!」ギンッ!
側近「魔王様の目が赤くなりましたよ!」
勇者「あの、真っ赤な目……見てるだけで委縮してしまいそうだ……!」
魔王「このマントを脱ぐとしよう」バサッ… ズシンッ…
勇者「今まであんな重さのマントを身につけていたのか……!」
側近「今の音から察するに、10トンはありますね。いやはや恐ろしい……」
魔王「ぬぅぅぅぅ……!」ブゥゥゥン…
側近「魔王様の皮膚が赤く染まりました! それにつれて殺気も高まりましたよ!」
勇者「やっとか!? やっと本気になったのか!?」
魔王「朕の本気はまだまだこれからだ」キッ
勇者「一人称が変わった! ――って、まだあるのかっ……!」
側近「まだまだ、ですって!? 冗談でしょう!?」
魔王「ヌオオオオオオオオッ!」ボコメキィッ!!!
勇者「うわぁぁぁっ! 変身した!」
側近「これで終わりですよね!? ね、魔王様!? ね!?」
魔王「朕は普段三割ほどの力しか使ってないが、そのリミッターを解除する!」シャキーン
勇者「潜在能力を全て開放したのか! まだ開放してなかったのか!」
側近「いちいち驚くのも疲れてきましたねえ」
魔王「この“魔剣デビルカリバー”を持つのは、数十年ぶりか」チャキッ
側近「武器! ……そういうのもありましたか」
勇者「最初から装備してればよかったのに……」
魔王「第三の目を……開眼する!」ギョンッ!
勇者「額にもうひとつ目ができて、魔力が増幅された」
側近「さっき変身した時に同時にやっておいてくれって感じですね」
魔王「さらに変身!」シュゥゥゥ…
勇者「お、また変身してスリムになった。デザインもシンプルになった」
側近「まだまだかかりそうなので、コーヒーお持ちしますね」
魔王「うおおおおっ! 禁断の血が目覚めるぞぉぉぉぉぉ!」ゴゴゴゴゴ…
勇者「……」
魔王「This is a pen. My name is Takashi.(愚かな人間よ、覚悟せよ)」
側近「魔王様が英語を話し始めたところで、コーヒーお持ちしました」
勇者「ありがとう」
魔王「人間だの魔界だのもうどうでもいい! 純粋にケリつけようぜ!」ニヤッ
勇者「今度は心がふっきれたみたい。で、いつになったら魔王は本気になるの?」
側近「さぁ……私にも分かりません。あとどれだけかかることやら……」
魔王母「たかし!」ガラッ!
魔王「お母さん!?」ビクッ
魔王母「今日でもう夏休み終わりだよ!? 自由研究は終わったの!?」
魔王「今やってる最中だよぉ!」
魔王母「ならさっさとしな!」
魔王母「通知表にも“たかし君はなかなか本気にならない”って書かれてたんだから!」
魔王「分かったよぉっ!」
魔王「いくぞ、勇者ぁぁぁぁぁっ!」グワッ!
勇者「うああっ! なんだ、このパワーはッ……!?」
勇者「うわぁぁぁぁぁっ……!」
…
……
………
魔界神「お、魔王の自由研究は人間界征服か。やるじゃないか」
魔王「はいっ! 本気を出したらあっという間にできました!」
側近(手っ取り早く本気を出す方法は……やっぱり“追い込まれること”なんですねえ)
おわり
乙
バラモスもゾーマにケツ叩かれたんかな
乙
魔王母が現われた扉が「ガラッ」と開く所が妙にツボった
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