男「課金ライダー?」 (再) (196)
――教室
男「課金とは……料金を課すること、ね」
友「そ、提供内容の利用に対して金を払うってこったな。今は間違った使われ方してるみたいだけど」
男「日本語って難しいなあ……」
友「俺たち日本人なのにな」
男「あー宿題やめーっ、明日ガリ勉から見せてもらおうぜ」
友「そうすっか、帰ろ帰ろ」
男「おう、ちょっと待ってな……」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1447233869
注意!
※ここからは2014/10/17より関東地方で放送された『男「課金ライダー?」』の再編集したものをお送りいたします
※本放送はこちらからアクセス
男「課金ライダー?」 - SSまとめ速報
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男「課金ライダー?」 2 - SSまとめ速報
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男「課金ライダー?」 3 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444225618/)
――校庭
モブ1「俺、ポイント【ジャンプ】に全部振ったぜ!」
モブ2「おおーっ、いいなそれー」
男「おっ、あいつら全身黒づくめでコスプレ大会か? 学祭近いもんな」
友「ちげーよ」
男「じゃなんなの」
友「黙ってあいつら見てろ……すげーから」
モブ1「飛ぶぞ……【ジャンプ】起動。ほいっ」ピョーン
男「は?」
友「すげーべ?」
男「俺の目がおかしくなけりゃあいつ1m垂直飛びしたぞ!? た、たしかモブ1って文化部だよな? いや運動部だってあんなには飛べな……」
友「いや、プロスポーツ選手だってあんなの無理無理」
男「! 何かタネがあるんだな?」
友「そ、これがそのタネよ。俺のスマホの画面見てみ」ジャーン
男「き、【基本無料! THE戦闘員】?」
友「そ、これが今流行ってるアプリだよ。通称戦闘員アプリ。名前はダサいけど、この内容がすげーんだよ」
男「あ、後はいいや。すごいとは思うが俺別に興味ないし」
友「おいおい、俺がせっかく説明してやろうと思ってるのに」
男「高校生にもなってヒーローごっこはないわ」
友「付き合い悪いなー。お前、せっかく親友が教えようとしてるってのに」
男「お前が説明したいだけだろ?」
友「ぐぬぬ」
男「まあ……さ、大体あのアプリには何か特殊な力で身体能力を大幅に上げたりする仕組みがあるってところだろ」
友「う、当たってる」
男「犬がアプリを使って人間の言葉を喋る時代だし十分あり得る話だわ」
友「まあな……ちぇっ」
男「さあ、さっさと帰るぞ」
――男の家
昨日午後6時頃、〇〇区のコンビニエンスストアに銃を持った男が入り込む強盗事件が起きました。男は店員に銃のようなものを突きつけ「金を出せ」と脅し暴行、現金10万円程を奪い現在も逃走しています。
男は防犯カメラを破壊し、何らかの方法でカメラ内の情報を削除したと見て警察は捜査を進めています。
男の見た目は170cm程のパーカー姿、蜘蛛のようなヘルメットを被って……
男「うわー、こわ。〇〇区って俺の家の近くじゃん。戸締まりしとこ」
犬「メシをくれ、メシを」
男「はいはい」
犬「今日もメシがうまい」 ハグハグ
男「そりゃあ良かったな」
犬「うまいうまいメシがうまい」 ハグハグ
男「犬にアプリつけたらうるさくてたまらん。ろくにオナニーもできん」
犬「うまい、メシが」
男「倒置方かよ」
犬「ところで男、父と母はまだ帰って来ないのか?」
男「帰ってこないよ、もう。もう十年も前の話をいつまで引っ張ってんだ」
犬「わん」
犬「なぜ帰って来ぬのだ」
男「死んだからだよ」
犬「なぜ帰って来ぬのだ」
男「死んだからだってば」
犬「なぜ帰って来、むぎゅ、鼻を摘まむな鼻を」
男「ったく、犬が何しゃべってるのか分かっても、犬が俺が何しゃべってるのか分かんないんじゃ話になんないよな」
男「なんか寂しいからって犬に翻訳アプリなんかつけなきゃ良かったよ」
男「噛み合ってるようで噛み合わない話って独り言みたいで虚しいもんな」
男「あ、また独り言」
ピンポーン
男「はいはーい、こんな時間に回覧板か?」ガチャ
幼馴染「……やあ、男くんよ。入れてはくれんかね」
男「今日は何しに来たんだよ」
幼馴染「メシをな、食いに来たのだ。ほら……私、料理はできないし。あ、それとそのついでに発明品をだな」
男「『そのついで』が本題なんだろ? 仕方ないな、上がれよ。発表会は飯の後な」
幼馴染「わーい」
幼馴染「おい男よ、メシはまだか」
男「お前は犬かよ」
犬「呼んだか?」
男「呼んでない。幼馴染さんよ、来るんなら先に連絡しておいてくれよ」
幼馴染「通信状況が悪くなっていてな、連絡がとれなかったのだ。スマン」
男「一応女子なんだからさ、男みたいな言葉は使うなよ」
幼馴染「スマンな」モグモグ
男「話聞いてんのか? ほら、棒々鶏できたぞ」
幼馴染「わーい」
…
幼馴染「ごちそうさま」
男「お粗末さま」
幼馴染「で、『ついで』の話だ。いつものように聞いてくれるな」
男「しょうがないな、いいよ。好きにしろ」
幼馴染「さっき、私は男に通信状況が悪くて連絡できなかったと言ったな」
男「ああ、言った」
幼馴染「電波の状態が悪かったんだ。アンテナは圏外を示していた。通信障害というやつだな」
男「ああ~、確かに俺も最近そういう時あるわ。何故かアンテナ1本な時とか」
幼馴染「そう、それだ。それなんだ」
男「うん?」
幼馴染「知ってるか、最近電波の状況が悪くなる時間帯があるんだ」
男「そうなのか? 俺、携帯なぞ一々確認してないからわからん」
幼馴染「私がそう言っているのだからそうなのだ」
男「お、おう」
幼馴染「今は午後6時57分。私が男に電話をしようと思ったのが6時3分だ」
男「よく覚えているな」
幼馴染「記録していたのだ。『ある』記録をな」
男「お前はこうと決めたらとことんやっちゃうタイプだもんなぁ……」
幼馴染「えへへ」
男「褒めてはない」
幼馴染「で、だ。男よ、最近この街で起きている連続強盗事件は知っているな?」
男「あー、さっきテレビでやってた……。確かに最近多いよな」
幼馴染「情報によれば強盗が起きる時間帯は大体午後6時前後だそうだな。というのは……」
男「ぇーと、あーと、そりゃあアレか? 『通話の電波の状況が悪い時間帯』と『強盗が発生した時間帯』が何か関係があるんじゃないか、って言いたいんだな?」
幼馴染「そうそれだ! 鋭いな、流石私が認めた最高の助手だ」
男「いや、でもそれだけで決めつけるのは厳しくないか? 電波障害の理由なんて他にも色々あるだろ」
幼馴染「その点も考えた。しかし通信局に問い合わせたところ、電波障害は私達の住んでいる県、街では観測されていなかったのだ」
幼馴染「よってこの電波障害は超局地的なものであると分かった。で、私は他の理由を探す内、この障害が引き起こされる原因を突き止めたのだ!」
幼馴染「見よ!」ジャン!
【基本無料! THE戦闘員】
☆★★★★
基本無料であなたも戦闘員に変身! 最新VRで再現されたモンスターを倒せ! 経験値を割り振ってパワーアップ! ポイントを貯めてガチャで最強のウェポンを手に入れよう! ※一部課金もございます
男「またこれかぁ……」
幼馴染「なんだ男、知っていたのか? ガラケー勢のお前は知らないと思っていたのに……」
男「まあ、な。で、これがさっきの2つとどう関係してくるんだ?」
幼馴染「このアプリの紹介分の少し下を見てみてくれ」
男「ああ……」
注意 ご利用の環境によっては電波状況が悪くなる場合もございます。現在原因を調査中です、ご理解の上ご了承お願い致します。
男「なるほどな。意図的に小さく書かれた注意書きか」
幼馴染「そういうことなのだ」フンス
男「つまり、この電波障害はアプリが起こした物で、犯人はこの変身アプリを使った人間だと言いたいんだな」
幼馴染「ああ、その通り。しかも、1人だけではない」
幼馴染「私もアプリを使って検証してみたが、通信を害するほどの電波の量はたかが知れている」
男「ちりも積もれば……山になる、か」
幼馴染「うむ。小さな妨害電波は大きくなり我が家まで影響を及ぼしているのだ」
男「集団強盗……でもニュースでは1人の男だけでやったように話されていたぞ」
幼馴染「それを調べに行くのだ!」
男「誰が」
幼馴染「私たち以外に誰がいるという!?」
男「いつ!?」
幼馴染「今日はもう犯行時間とはずれている。犯人は現行犯で捕まえる必要がある。と、なると……明日か」
男「ちょっと待て! 素人が強盗を捕まえる!? んなアホな話……」
幼馴染「1日あるじゃあないか、準備と対策はできる。もう現場で事件は起きているのだぞ」
男「調べている時に襲われたらどうする? アプリは身体強化とかいう危ない効果も持ってる。一般人の俺らには武装した相手にどうすることもできないよ……」
幼馴染「できる! 犯人らが私の予想通りあのアプリを使っているものだとしたら、打つ手はあるのだ」
男「それが今回の発明なのか? ……話だけは聞く。けど、もう俺は実験台にはならないぞ」
幼馴染「ダメだ! 今回の発明品も男の為に作っているのだからな!」
幼馴染「今出す、待ってろ」ゴソゴソ
男「そのデカいカバンはどうにもならんのか」
幼馴染「ならん! 待てよ……これか? これだ!」ジャン!
男「べ、ベルトォ?」
幼馴染「否! 対戦闘員アプリ 自己防衛プログラム搭載強化変身鎧骨格展開装置だ! 略して――」
幼馴染「その名も『課金ドライバー』!」
男「アホみたいに長い名前はさておき、ベルトで相手の首でもしめて戦うのか?」
幼馴染「バカッ! 男にはロマンというものはないのか!」
男「こんなゴツすぎベルトにロマンが詰まってるとでも言いたいのか? で、これ何だ?」
幼馴染「……変身ベルトだよ」
男「はぁ?」
幼馴染「目には目を歯には歯を! 戦闘員アプリにはヒーローアプリを! 男には身体を強化している戦闘員アプリに対抗できる力を以って戦ってもらいたいのだ! 変身して、な!」ムフー
男「……」
幼馴染「どうした?」
男「こないだの探偵ごっこの次はヒーローごっこか、と思ってな。正直付き合いきれないぞ、これ」
幼馴染「そ、そんな!」
男「俺はヒーローものはとっくに卒業したんだぜ?」
男「後な、俺には昔みたいにもう誰かを助けられるような力はない。誰も助けられない奴にヒーローは務まらないだろ?」
幼馴染「男……」
男「お前の妄想の中にいる『なんでもできるヒーローな男クン』は元々いないんだよ」
男「ささ、帰った帰った。今日は風呂貸してやんないからな。自分の家で寝ろよ」
幼馴染「や、やめろ! 無理やり追い返すみたいにするな! うぅ……」
男「そんなに性能がいいなら自分で使えばいいだろ? 俺は普通の人間だ、幼馴染みたいに頭は良くないし、運動能力も人並みだ」
幼馴染「男の身長、体重、身体能力を元にして作ったベルトだ! このベルトは男にしか使えないようになってる! だから……」
男「また俺の身体測定やらの情報を学校から盗んだな。通報されたらシャレにならないぞ、やめとけ……」
幼馴染「そうじゃなくて! そうじゃなくて……だ……」
男「もう俺も高校生だ。幼馴染も俺以外の一緒に遊ぶ友だちと遊んだらどうだ?」
幼馴染「そんなのいないッ! 私はただ……男と昔みたいに……」
男「彼氏とか作ったらどうだ? かわいいんだからすぐにd」
幼馴染「バカやろォーーーーーーーーォォォォォォォォォ」
男「!?」
幼馴染「男のバカ、男の三千倍バカ。私はもう怒ったからな、明日は〇〇区のコンビニ『多分痔気分(タブンヂキブン)』に1人で行ってやる! 1人で強盗を捕まえてやる!」
男「あー、勝手にしろ。でも危なくなったら無理すんなよn」
幼馴染「ヤダ!」
幼馴染「ふ、ふんっ! そうだ、私だけだって強盗は倒せる。いいか、男。男が昔なりたかったものに私が先になってやるんだ!」
幼馴染「先をこされたら男はさぞ悔しいだろうなぁ~」
男「はいはい、分かった分かった。俺が今なりたいものは堅実な公務員だよー。あ、あんまり無茶なことはすんなよな」
幼馴染「ぐぅう……男、今に見てろよ! 男が忘れたものを私が絶対に思い出させてやるんだからな!」
男「はいはい。幼馴染こそ明日は学校来いよ。出席日数ヤバくなるぞ」
幼馴染「それとこれとは話がべt」
バタン
幼馴染「あ……」
幼馴染「う……」
幼馴染「男の……馬鹿……」
幼馴染「……」グスッ
…
かぁいいなぁ
――次の日 教室
男「課金とは……」
友「もうやめようぜーこの課題。飽きた」
男「そうもいかない。提出は明日までだし、国語の先生怒ると怖いぞ。授業中にお前と晒しあげられるのはもうイヤだぞ」
友「ガリ勉だってこの問題終わってなかったんだぜ? 皆やってこないよー。最近宿題難しすぎじゃねー?」
男「お前が勉強しなさすぎなんだよ」
友「じゃあお前やってんのかよー」
男「……」
男「帰るか」
友「帰ろ」
――校庭
モブ1「俺たちまだ【N(ノーマル)】ランク戦闘員だしなー」
モブ2「そもそも【アーマー】事態ガチャで出ねーからなー。あ、でもさ。こないだガリ勉の奴が【N】アーマー引いたって言ってたぜ?」
モブ1「マジかよ。【N】でも羨ましいぜ~、ホントに。合成したら【N+(ノーマルプラス)】になるじゃんかぁ~! 先越されるなあ……」
モブ2「俺たち無課金戦闘員だからなぁ……」
友「お、やってるやってる。おーいモブ1ー」
モブ1「お、友じゃんか。アプリの進み具合はどうなってるよ?」
友「それがさぁ~、【魔窟】ステージから――」
モブ1「あぁ、それなら今から【協力プレイ】で――」
男(つ、ついてけねェ……)
男「おい、友。俺先帰るわ」
友「おう、じゃな」
モブ2「――でさぁ。今日の『多分痔気分』に――」
男「!?」
男(昨日、幼馴染が『多分痔気分』へ行くって言っていたな……。まぁ偶然だろ)
友「『オフ会』だろ? 『†蜘蛛†』さんの……行ったことないんだけど、あれってどんな感じなんだ?」
男(クモ? 確か強盗の特徴は『蜘蛛のようなヘルメット』……いや、考え過ぎだな。早く帰ろう)
モブ2「俺今日行くよ。なんか、【N】の【ウェポン】を幾つか持って来たら、【レアガチャチケット】と交換してくれるんだって。『†蜘蛛†』さん良い人だよなー!」
モブ1「『オフ会』行く人にだけ場所を教えてるのかぁ~。俺も行きたいなぁ……。今、【ミニメール】送ったら間に合うかなぁ?」
モブ2「【ミニメール】の締め切りは17:30までになってるから後4分だな」
モブ1「よっしゃ、早く送ろっと」
友「お? 男、まだ帰らないのか?」
男「……ああ」
男「……」
男「なぁ、モブ1、2。俺もその『オフ会』に参加したいんだけどさ……」
友 モブ1 モブ2「!?」
男(考え過ぎだったらそれでいいんだが……そうじゃなかった時は……どうする?)
男(幼馴染のやつ今頃コンビニに……。あいつは昔から危険なことに首を突っ込みたくなるタチだったな。俺だって昔はあいつと一緒にそれに巻き込まれて……それが案外楽しくて)
友「お前本気で言ってるのか?」
男「ああ、本気だよ」
モブ2「でもさ……」
男「何時からそのオフ会は始まるんだ?」
モブ2「あ、あ、うん。『集会』は18時頃から始まるんだってさ」
モブ1(こいつ友以外と話してるの初めて見た)
男(昨日は幼馴染に冷たくしちまった。ちゃんと謝らないとな)
友「あのさ、男」
男「なんだよ、止めるなよ。今久しぶりに『やろう!』って感じになってるんだから」
友「いや、さ。行くのはいいんだよ。行くのは。そのなんだかよく分からない気力も伝わる」
友「けどさ、男。落ち着いて聞けよ」
男「ああ、早く言ってくれ……」
友「……」
友「……」
友「お前ガラケーじゃね?」
男「」
モブ1「wwwww」
モブ2「w」
男(忘れていた。うわー、恥ずかし)
男(無理じゃん、アプリ持ってないやつなんて門前払いだろ。俺やっぱり何もできない奴じゃん……うわー、うわー)
男(……あ、そうか。俺も幼馴染のわがままに巻き込まれたかったのか)
男(俺だって……ヒーローに……なりたかったんだ。でも――)
友「まあ、さ。一応この戦闘員アプリはスマートフォン専用のものだからね。ガラケーのお前にゃできないワケよ」
モブ1「変身していなきゃオフ会にもいけないしな」
男「……行かなきゃいけないのに」
友「……おい、どうした?」
男「どうするんだよ俺っ!!」
モブ1(オダギリジョーかよ)
友「……」
友「貸すよ」
男「え?」
友「貸すよ、俺のスマホ。後、俺はオフ会パスな」
男「い、いいのか?」
友「二台あるし」シャキン
モブ1「金持ちの息子は違うわー」
モブ2「さっすが、某会社の重役の息子だなー。2アカウント使ってやってるんだろ? ずりー」
友「気にすんな、男。何か理由があるんだろ? 聞きやしないけどさ。お前が、俺がこの学校に転校して来てから、始めて声かけてくれたお礼、ってところだからさ!」
男「お……おう。ありがとう!」
友「早く行って来いよ、男。オフ会まで30分もないぞ!」
男「あ、ああ! 行ってくる!」
モブ2「俺も行こ」
モブ1「あ……話に夢中で【ミニメール】送ってない……。時間すぎちった。残念だけど、俺もオフ会パスな」
男「じゃあ、行ってくる!」
友「おう! また明日!」
…
――コンビニ脇の空き地
モブ2「なあ男、そろそろ変身しておこうか」
男「どうやって変身するんだ?」
モブ2「えーっと、まず」
モブ2「こうやってスマホを構える」シャキン!
男「構える」シャキン
モブ2「で、ポーズをきめる! ポーズはなんでも良い」ビシッ!
男「ポーズをきめる」ビシ
モブ2「で、こう言うんだ。『アーマー展開』、『変身』!」
男「『アーマー展開』『変身』!」
カッ!
男「うおおおおおっ!?」
…
――コンビニ『多分痔気分』駐車場
モブ2(戦闘員姿)「『†蜘蛛†』さんまだかな……」
男(戦闘員姿)「それにしても集まった奴ら全員戦闘員姿で出席とはな。黒全身タイツの奇妙な集まりだ。こんな変な格好で警察に通報されたりしないのか?」
モブ2(戦闘員姿)「最近はアプリ仲間でのオフ会も多いしね、それはないと思うよ。迂闊に通報すれば逆に警察の人に迷惑がられちゃうよ。俺達はただ遊んでいるだけだからね」
男「うー、皆同じ格好をしてるから見分けがつかないな。こっちがモブ2か?」
戦闘員「は?」
男(戦闘員姿)「あ、すいません。人違いでした」
モブ2「おい! こっちだ! こっち! 話してる途中で話し相手の姿見失うとかどういう目をしてるんだお前は」
男(戦闘員姿)「辺りも暗くなってきたしなぁ……」
男(幼馴染のやつ、どこに隠れてるんだ?)
モブ2(戦闘員姿)「男はさぁ、何でわざわざスマホまで借りてオフ会に参加したがったんだ?」
男(戦闘員姿)「そうだな……何か嫌な予感がして……なんとなく……」
モブ2(戦闘員姿)「嫌な予感かぁ。不安になるなあー。ここ最近コンビニ強盗が多いから巻き込まれないように気をつけなきゃあ……」
ブロロ……
戦闘員「お前らーッ! 『†蜘蛛†』さんが来たぞォーッ! 総員、敬礼ッ!」
「「「「「イーッ!」」」」」
男(戦闘員姿)「い、いーっ……?」
モブ2(戦闘員姿)「ここはノリだよ、ノリ」コソコソ
男(クモとやらの乗ってる車……高そうだな。何の仕事をしてるんだろ?)
ガチャ
ホスト風「や、や。皆ご機嫌うるわしゅー」
男(こ、こいつが『†蜘蛛†』!?)
男(こいつが連続コンビニ強盗……?)
ホスト風「皆よく集まってくれたね。うん、今日も戦闘員諸君は没個性でよろしい。没個性的な方が『バレにくい』」
戦闘員「イーッ!」
ホスト風「うん、うん。今日は俺主催のオフ会に来てくれてありがとー」
男(軽い感じの奴だな。ホスト風で金持ち風なコスチューム、ブランド風な靴にバッグ……趣味悪)
モブ2(戦闘員姿)「おい、男。『†蜘蛛†』さんの話長いらしいから気をつけろよ」コソコソ
男(戦闘員姿)「お、おう」
ホスト風「じゃあ、さ。一言だけ――」
ホスト風「スマートフォンが急速に発達してから早十年。『ラピッドプロトタイピング』の小型化と共に発達したそれは、現在超小型3Dプリンタとしての役割も果たしている」
ホスト風「副産物の『圧縮型超硬度プラスチック』の存在も忘れてはいけないね。これにより、全ての開発環境は新しいステージへ進んだんだ」
ホスト風「アプリも進化を遂げた。欲しい物をダウンロードし、その場でプリントして使うことさえできる。便利な時代だね」
ホスト風「そして、去年! プラスチック基板のプリント化が実現。そこに一つのアプリが生まれた!」
ホスト風「そう、【基本無料! THE戦闘員】だ」
ホスト風「このアプリでゲットできる【ウェポン(本来ゲームで使われる武器)】はこの技術を応用し、作られている。君たちがガチャで得ているのが、その【ウェポン】の使用許可証、または設計書」
ホスト風「この【ウェポン】に使われているプラスチックは生分解性プラスチックだ。しかも、空気中にいる微生物が急速に分解する為、武器として使用できるのは僅か3分程」
男(長い)
ホスト風「まぁ仕方あるまい。何故ならこれは『ゲーム内でホログラムを倒す為だけ』に存在しているものだからね」
ホスト風「所謂『雰囲気作り』武器の形を模したおもちゃだ、効力はさほどない。でも【アーマー】は違う。硬化プラスチックを使ったオーダーメイドのスーツ型防具だ。君たちの全身タイツだって防弾能力があるんだ。これくらいは分かっているね。だから僕はこれを――」
男(長い、話長いぞこいつ)
幼馴染「……」コソコソ
男(あ、あの遠くからジロジロ見てるやあいつは)
男(戦闘員姿)「幼馴染! あ、おい、待て!」
幼馴染「見つかってしまったか! ぐぬ、逃げる!」ダッ
男(戦闘員姿)「おい、俺だよ! 俺! 逃げるな!」ダッ
モブ2(戦闘員姿)「まだ、『†蜘蛛†』さんの話の途中だぞ!」ヒソヒソ
男(戦闘員姿)「待てよ、幼馴染!」ダッ
モブ2(戦闘員姿)「行っちゃった……」
ホスト風「で、僕は某大学の――」
モブ2(男がいなくなったの気づいてないし)
――路地裏
男(戦闘員姿)「俺だってば! 分からんのか!?」グイッ
幼馴染「新手のオレオレ詐欺か貴様はァ!」
男(戦闘員姿)「男だよ、男!」
幼馴染「この不届き者! 今度は男の名を騙るか! こうなったら私がむりやり変身して……」
男(戦闘員姿)「声で分からんのか!」
幼馴染「貴様、戦闘員アプリで変身した者は声に特殊なエフェクトがかかるのを知らないのか! 変身してしまえばみんな声が同じような物になるんだ!」
男(戦闘員姿)「ああ、そうなのか。なら初めから変身解除をしておけば良かったな。『変身解除』!」シュウ……
男「これでどうだ?」
幼馴染「お、男!」
幼馴染「な、何しに来た! ヒーローごっこはやらないんじゃなかったのか?」プイ
男「……ごめん!」
幼馴染「!」
男「昨日は言い過ぎたよ、ごめん。お前は危ないことに頭を突っ込むタイプだからな。これでも心配してるんだよ。だから……助けに来た」
幼馴染「む……」
幼馴染「じゃ、じゃあ……許す」
男(相変わらず許し方がヘタだな……)
ガシャアアアアーンッ!
男 幼馴染「「!?」」
――コンビニ駐車場前
戦闘員1「か、身体が! 身体が勝手に動いて……ッ」
戦闘員2「腕が止まんないよォォ……」
戦闘員3「なんで! なんでだよ! 俺たち、何で……」
「「「何でコンビニを襲っているんだ!?」」」
ホスト風「僕の話は長かったでしょ? ああ、長かったはずだ。あのアイテムを『ローディング』するには時間がかかるからね、少し時間稼ぎをしていたんだ」
戦闘員4「あいつら一体蜘蛛さんに何されたんだ!?」
ホスト風「【SR】マインドコントロール」
戦闘員4「!!」
ホスト風「本当はゲーム内での敵を仲間にするために必要な【ウェポン】だね。少しデータを弄って、対象をアプリを使用する人間に変えたんだ。これをするのに幾らつぎ込んだか……」
ホスト風「これで君たちは自由を奪われ、僕の配下になったのさ」
戦闘員5「あ、あんたもしかして!」
ホスト風「そう僕が噂のコンビニ強盗。本当の姿を見せてあげる……アーマー展開、規制解除、倫理コード解放、『変身』」
カッ!――
蜘蛛男「ふふ。これが僕の本来の姿、というべきかな」
戦闘員6「これが【SR(スーパーレア)】のアーマーなのか……うらやましい。い、いやっ、ゲームデータを違法で改造するなんてゲーマーの風上にも置けないやつ!」
蜘蛛男「僕さぁ、お金は欲しいけど自分の手は汚したくないんだよね。だから変わりに君たちにやってもらってるってワケ」
蜘蛛男「倫理コードがかかっている君たち無課金【N】戦闘員は人を直接攻撃できないからね。利用価値はこれしかないともいう」
蜘蛛男「まぁ、こうして没個性な君たちは顔が割れないワケだし。警察に密告し(チクッ)たら……まぁ、分かるよね?」
蜘蛛男「最後は僕が店員をちょっと脅してレジからお金をもらって終わり。主役は最後に出ればいいさ」
戦闘員5「早く警察を……」
蜘蛛男「待ちなよ戦闘員くん。アプリ起動中電話はできないんだよ? それに、君にはまだやることがある」
蜘蛛男「命令:『そこの陳列棚にあるものを全部盗ってきて』」
戦闘員5「いやだ……やめろ……そ、そうだ変身解除、変身解除さえすれば……!」ギギギ
蜘蛛男「もう君たちの身体は僕の手の中にある。そんなことはもうできないよ」
戦闘員5「う、うわああああああああああ!!」ギギギ
ガシャアーン
うわああああああああああ!
助けてえええっ!
誰かああああああああ!
幼馴染「やはりアプリ使用者が犯人か。ちなみに、この光景は録画済みだ。あの蜘蛛男気づいてはいないだろうが」
男「な、なぁ。幼馴染……」
幼馴染「なんだ?」
男「やっぱり『変身』して戦わなきゃあイカンのか? そもそも警察を呼べば……」
幼馴染「ダメだ、『これ』は警察の手には負えん。私が断言する。奴らに対抗するには男が『変身』しなければいけないのだ」
男「……はあ。今回だけだぞ。これが終わったらお前ももう絶対に危険なことに首突っ込まないこと!」
幼馴染「……さぁ、頼んだぞ男。男が敵の気を逸らしている間、私は従業員を避難させる。後は課金ドライバーのチュートリアルに従ってくれ」
男「ああ、ここまで来たならやってやる! 今日の俺は『ヒーローごっこ』したい気分だ!」ザッ
男「このまま黙って見ていられるかよ!」
――コンビニ内
コンビニ店員「や、やめてくださいっ!」
戦闘員1「ひ」バキッ
コンビニ店員「うわあっ! い、痛いぃ……」ドサッ
戦闘員1「おい……どうすんだよ……俺。人殴っちゃったよ……」
コンビニ店員「う、うぅ……早く警察を呼ばなきゃ……」
蜘蛛男「そうはさせないよ。戦闘員1君、命令:『攻撃→コンビニ店員』」パチン
戦闘員1「や、やめろ! 身体が勝手に【ウェポン】を起動させて……」
『【ウェポン】【N】【ソード】起動シマス』
コンビニ店員「う、あ……こっちに武器を向けないでください……殺さないで……」
蜘蛛男「死にはしないよ。ただ……超硬化プラスチック製の剣で斬られれば……」
蜘蛛男「あ、やっぱり死んじゃうね」
戦闘員1「たのむよ……早く……早く逃げてくれよお……」ジャキン
「待てッ!」
蜘蛛男「!?」
蜘蛛男「誰だ……お前」
――
戦闘員1(良かった……気がそれたおかげで俺の動きが止まった)
コンビニ店員「た、助かった?」
幼馴染「店員さん! こっちだ! 今のうちに早く逃げろ! 店内にいる他の人もだ!」
コンビニ店員「え、あ、はい!」
――
男「……」
蜘蛛男「誰だと聞いているんだッ!!」
男「うるせぇッ! 今何て名乗ろうか少し考えてるんだよッ!」
蜘蛛男「野次馬かな? 近隣に住宅の無いコンビニを狙っていたんだが……仕方ない、君には消えt」
男「『正義の味方』」
蜘蛛男「は?」
男「俺は『正義の味方』。お前のような悪者を倒しに来た」 キリッ
男「そんなところだ」
蜘蛛男「……」
蜘蛛男「…………」
蜘蛛男「………………」
蜘蛛男「は?」
蜘蛛男「あは、あははははははは……」
男「何か可笑しいことでも言ったか?」
蜘蛛男「可笑しいも何も……僕が悪ゥ? はははははははは……」
男「コンビニ強盗が悪じゃなくてなんなんだ!」
蜘蛛男「僕はね、やりたいことがあるんだ。『これ』はその為の資金稼ぎ。『持っている者から奪う』『力が無い者から奪う』これが一番手っ取り早いし――」
蜘蛛男「楽しいんだ。僕、何か可笑しいこと言っているかい?」
蜘蛛男「課金すらできない貧乏人をエサで釣って、代わりにやってもらっているんだ。聞いてよこの悲鳴!」
きゃああああ
ひいいいいいっ
蜘蛛男「これ、『あいつら』がやったんだぜ? 僕の手は汚れない! 店員は命乞いしながら金を出す! 直接手を下さない僕は悪くない!」
蜘蛛男「キモチイイ……」
男「中二病こじらすとこうなるのか」
蜘蛛男「分からなくてもいいよ。偉人は人に理解されないと言うしね。凡人には分かり得ない次元まで来てるんだよ、僕は」
男「もう話す必要すら感じない」
蜘蛛男「同感だね。初対面の相手にここまでコケにされたのは初めてだ。ゲーム内ならブロックすれば終わる話だけど、今回はそうはできないからね……」
「う……あ……男ォ……」ザッ
男「お、お前!」
「助け……て……」
男「ま、まさか」
モブ2(戦闘員姿)「助けてくれよォォォォォォォォォォッ!」
男「モブ2!」
蜘蛛男「処刑人は彼だ。おや、知り合いみたいだね。かわいそうに。でも、しょうがないね。命令:『殺せ』」パチン
モブ2(戦闘員姿)「う……いやだ……やめ……ろ」
男「……」
男(幼馴染がさっき言っていたことを思い出せ……!)
――
幼馴染「アプリ使用者が操られている場合、アプリを停止しない限り死んでも動き続ける」
男「ま、まさか……お前、俺に人殺しをさせようってこt」
幼馴染「馬鹿者。男にそうさせない為の『課金ドライバー』だ」
幼馴染「変身した者のスマホはベルトのバックルのように腰に装着されてる」
幼馴染「そこを狙って攻撃するのだ。スマホを破壊すればアプリは停止される訳だから、強制的に変身解除される。洗脳も解除だ」
男「なるほど……ベルトのバックルを破壊だな。よし、次は『課金ドライバー』の使い方を教えてくれ」
幼馴染「これは簡単だ。変身するには単にこれに――」
――
モブ2(戦闘員姿)「アアア……」
男「……モブ2、お前のスマホ。悪いが壊さしてくれ」
蜘蛛男「何をさっきからブツブツと! 戦闘員! 命令:『そこにいる男を殺せ』!」
モブ2(戦闘員姿)「男ォ……」
男「……」
――
幼馴染「男、今幾ら持ってる?」
男「なんだよ、唐突だな。4000円くらいだけどそれがどうかしたのか?」
幼馴染「良かった。それだけ持っていれば『変身』できる。男、実はこのベルト、使うためには金が必要になるのだ」
男「かね?」
幼馴染「そう、金だ。変身一回ごとに100円。安いだろう?」
男「なんで変身するのに金を払わなきゃいけないんだよ!」
幼馴染「これは私の研究資金諸経費になる。ありがたく使わせてもらうからな」
男「ぬぅうう……」
幼馴染「ヒーローに犠牲はつきものだ。これくらい安いものだろう? 後、戦う為には――」
――
男「大丈夫だ、モブ2。俺が助けるからさ……」
モブ2(戦闘員姿)「う、あ、あ、あぁ……無理だ……俺、お前のこと……ころしちゃうよぉ……」
蜘蛛男「助けるゥ? 面白いこと言うね、君。何をするつもりだい?」
男「見せてやるよ」ガチャ
蜘蛛男「ベルト? いや違う。何だあれ……」
男「『課金ドライバー』起動」
ブウウウン…
課金ドライバー「音声認証中……登録者名『男』サマ。ログインシマシタ。『変身』シタイ場合ハ硬貨ヲ入レテクダサイ」
男「はいよ。これで操られた奴らを助けられるんなら安いもんだぜ!」チャリン
課金ドライバー「確認。パスワードヲ音声入力シテクダサイ」
男「……」
男「『アーマー展開』、『使用確認書既読』、パスワード『作戦目的:正義』」
男「……おっと、最後にこれを言わなきゃいけないんだったな」
男「見てろよ、これが最初で最後のヒーローごっこだ! 『変身』ッ!!」
ピピッ
課金ドライバー「初期登録完了シマシタ。アーマー展開、コレヨリ『変身』シマス。ミスト放出」 シュウウウ…
蜘蛛男「君もアプリユーザーか! 変身? フフ、戦闘員達! 変身中の人間は無防備だ、今の内に攻撃しろっ!」
蜘蛛男「早くしろ!」
戦闘員3「ギ、身体が動かな……い」
蜘蛛男「クソ、役立たずめ。僕がやるっ。……な、何? 僕の身体も動かないだと!?」
課金ドライバー「尚、変身中ノ攻撃ハ御法度デス。無理矢理攻撃サレタ方ニハソレナリノ覚悟ヲシテクダサイ」
――
課金ドライバー「ハジメマシテ、男様」
男「シャベッタアア!?」
幼馴染「うむ、課金ドライバーは喋るのだ」
男「その機能いる?」
幼馴染「必須だ。戦闘及び思考補助プログラム。つまり男に助言してくれるプログラム」
課金ドライバー「ハイ。簡単ナ質問デアレバ結論ヲ出ス事モ可能デス」
男「あっそう。ま、余計な口出しとかはいらないから。そこんとこよろしく」
課金ドライバー「承知シマシタ」
――
課金ドライバー「変身完了シマス」プシュウウウ…
男(変身体)「……」
蜘蛛男「なんだよアレ……何のアーマーだ? 【昆虫シリーズ】か? 【植物シリーズ】か? ま、まさか【イベント限定】か!?」
男(変身体)「……おお、これ変身した俺か。案外かっこい、いや、ヒーローとか興味ねーし!」
蜘蛛男「あんなの知らない! 知らないぞ、僕はァ!」
男(変身体)「何うろたえてるんだよ?」
蜘蛛男「想定外のことは嫌いなんだよォッ!」
蜘蛛男「ハァ、ハァ、ハァ……そ、そうだ、【戦闘力測定(スカウタ)】を使おう。見かけ倒しに違いない……」ピッ
『【補助ウェポン】【R】【戦闘力測定(スカウタ)】起動シマス。暫クオ待チクダサイ……』
『結果、相手プレイヤーノ戦闘力ハ――』
蜘蛛男「……」ガタガタガタ
男(変身体)「どうしたんだよ? まさか、お前さ。予想外のことに弱い感じか?」
蜘蛛男「う、う、う、うるさいッ!! なんだよお前はッ! なんでなんでなんでなんでなんでなんで! なんでお前【UR(ウルトラレア)】級の戦闘力を持ってるんだよおおおッ!?」
男(変身体)「それそんなにすごいの」
男(変身体)「なんだよさっきからレアだのウルトラレアだの」
蜘蛛男「レア度を知らないのか!? 新参はこれだから……」
男(変身体)「スーツ名? 名前のことか? 俺は……そうだな。仮面ライダーじゃパクりだし……課金ドライバーで変身したから……えーと」
課金ライダー「俺の名前は『課金ライダー』。語呂重視で考えたから少しダサめなのは気にするな!」
蜘蛛男「課金ライダー……? 知らないぞ、そんなスーツ! と、とにかく戦闘員かかれ!」パチン
戦闘員1「ギ……」ガシャン
戦闘員2「ハァ、ハァ……」ガシャン
戦闘員3「助け……て」ガシャン
課金ライダー「全員剣みたいなのを装備しているんだな。これに対して素手で戦う自信はないぞ。殴り合いのケンカすらしたこと無いんだからさぁ……」
課金ライダー「でも……大丈夫だろ、多分」
蜘蛛男「ほーら、戦闘員隊。こいつを倒したら洗脳を解いてやるよー」
戦闘員達「「「うがああああああああああっ!」」」ガバッ
課金ライダー「かかって来いっ! 全員まとめて、助けてやる!」
――
男「どうやって戦うんだ? 素人の格闘で戦えるような相手じゃないよな」
幼馴染「まあな。課金ドライバーが展開した鎧は堅いが、今の男の素の戦闘力じゃあただの戦闘員にギリギリ勝てるか勝てないかの程度だろう」
男(そんなこと自分でも分かってるけれど、いざ言われると悔しい)グヌヌ
幼馴染「そこで目には目を【ウェポン(武器)】には【ウェポン】ガチャを、なのだ!」フンス
幼馴染「1日1回無料のガチャがあるぞ! それ以降は1回につき500円だ」
男「また金か……」
幼馴染「イヤなら使わなくてもいいんだぞー」ツーン
男「使わせてください」
幼馴染「サービスは他にもある。ログインボーナス、イベントガチャ、招待プレゼントなどなど……追々ドライバーが説明してくれるだろう」
――
戦闘員1のスマホ『【アイアンナックル】装着シマス』ガシャ
戦闘員1「うわああああ身体が勝手にいいいいいい」ボガッ
課金ライダー「ぐッ、痛゛っ!」
蜘蛛男「いいね、いいねえ! 僕は今のうちにコンビニのレジを弄ってくるとしよう。それとカメラを……フフ」スタスタ
課金ライダー「あっ、待て! チクショウ、まずは戦闘員達を倒さなきゃいけないんだな……」
課金ドライバー「1日1回無料ガチャガ回セマス」
モブ2(戦闘員姿)「おい、男! この人数じゃ無理だ! 早く逃げろ! お前が変身しても無理だ!」
課金ドライバー「1日1回無料ガチャガ回セマス」
モブ2(戦闘員姿)「おい、男!」
課金ドライバー「1日1回無料ガチャガ回セマ 課金ライダー「うるせえ! ガチャ引けばいいんだろ!?」
課金ドライバー「ガチャ【ウェポン】ヲ選定シマス。レバーヲ回シテクダサイ」
課金ライダー「分かった分かった。よっこいしょ、と」ガチャ
課金ドライバー「ガチャ結果……【ウェポン】【N】【ロングスピアー】デス。出力シマス」ブウウン
課金ライダー「出たァ! 長い槍! 軽~く倒してやるよ! かかってきな!」ブンブン
戦闘員1「ギイイ!」
課金ライダー「ほぅらよッ! 突きィッ!」ドスッ
戦闘員1「ギ……!?」バチバチ
課金ライダー「スマホを突き壊しただけだよ。洗脳を解くにはこうするしかないんだ、ごめんよ!」
戦闘員1「ギ……あ、り、がとう……」ガクッ
課金ドライバー「スマートフォン破壊確認、アプリ強制終了確認、変身者生存確認」
課金ライダー「よしッ、どんどん行くぜ! かかってこいや!」
「「「「ギギギイ!!」」」
戦闘員2「ぐブッ」バチッ
戦闘員3「がぁッ!」バチバチ…
戦闘員4「こ、こいつ武器のランクが弱いクセに……強い」ガク
課金ライダー「よっしゃ! なかなか喧嘩強いんじゃないの、俺!」
――
幼馴染「ドライバーのアーマーの利点。それは【ウェポン】の適応力」
幼馴染「どんな武器を使っている時にどんな戦い方をすればいいのか課金ドライバーが助言してくれる」
幼馴染「だが、行動するのは自分自身だ。ドライバーは行動方法を提案しているだけ」
幼馴染「これは自転車の補助輪のようなものだ。やり方は自ずと分かってくるだろう」
男「それでも素手での格闘補助機能は無いんだな」
幼馴染「男が【ウェポン】のガチャ引いてくれなかったら金を払わすきっかけが無くなるじゃないk……はっ!」
男「何か聞こえたぞ」
幼馴染「気のせいだ」
――
…
戦闘員2「」
戦闘員3「」
戦闘員4「」
戦闘員5「」
課金ドライバー「残リ1人」
モブ2(戦闘員姿)「ぐ、頭が……痛ぇ、身体が……勝手に引っ張られるんだ……」
課金ライダー「最後はお前か。モブ2……」
モブ2(戦闘員姿)「なぁ、男ォ……どうせ、自分で変身解除もできねェんだ」
モブ2(戦闘員姿)「俺は戦闘員……かっこ良く倒してくれないか……?」
課金ライダー「……分かった! 少し痛いかもしれないが、我慢してくれよ」
モブ2(戦闘員姿)「頼んだ……ぜ? こっちも操られてて手加減……できないからさ」
課金ライダー「……ありがとう」
モブ2のスマホ「【スパイクハンマー】出力シマス」ガシャ
モブ2(戦闘員姿)「うおおおおおおお!」ブンッ!
課金ライダー「ライダー……三段キックッ!」
課金ライダー「1」ドンッ
モブ2(戦闘員姿)「ギィアッ」
課金ライダー「2ィのッ」ガッ
モブ2(戦闘員姿)「グ、ア゛」
課金ライダー「3ァンッ!」ドドッ
モブ2(戦闘員姿)「ギギギ……」バチバチ…
モブ2(戦闘員姿)「ギィアアアアアアアッ!」ドサッ
課金ドライバー「全テノ暴走中ノアプリ、強制終了確認」
課金ドライバー「【ロングスピアー】稼働限界到達。自壊シマス」 シュワ…
課金ライダー「……」
モブ2「う、ぐう……」ヨロッ
課金ライダー「も、モブ2!」
モブ2「やり過ぎだろこれ……」ヨロヨロ
課金ライダー「ご、ごめモブ2「でもさ、男」
課金ライダー「なんだ?」
モブ2「カッコイいよ、お前。学校では一度も話したことなかったし何となく怖いやつだと思ってたけど……やる時はやるってこんな感じなんだな」
課金ライダー「お前それ褒めてんのか!?」
モブ2「頑張れよ、ヒーロー。応援してるからn――」フラッ
課金ライダー「おい!」
モブ2「……」ガクッ
課金ライダー「おい! おい! 死ぬんじゃねえよ! おいってば!」
課金ドライバー「落チ着イテクダサイ。バイタル正常、呼吸確認。眠ッテイルダケデス」
…
課金ライダー「後はあの蜘蛛男さえ倒せば……あ、あれ? いねぇ! 逃げられた!? どこに――」
Trrrr…
課金ライダー「ん? 着信音?」
課金ドライバー「マスターカラ連絡ガ来テイマス。受信シマスカ?」
課金ライダー「うわっ! このベルト電話機能も付いてんのか!」
課金ドライバー「ハイ。コノアーマーハ戦闘員アプリニ干渉サレルコトナク通話デキマスノデ。男様、早ク出タ方ガヨロシイカト」
課金ライダー「ああ、出る出る」 ピッ
幼馴染『こちら幼馴染。男よ、そちらの状況を教えてくれ』
課金ライダー「こっちは戦闘員全員変身解除したぜ」
幼馴染『了解した。なるほど、機能テストはこれで完了だな。私は、コンビニにいた人達を全員避難させ終わったところだ。今はコンビニ隣の空き地にいた。早く来て――うわああっ!?』
課金ライダー「お、おいまさかお前蜘蛛男が……」
幼馴染『そのまさかだ! 大丈夫、心配するな。だから、ぬぅ、がっ、やめッ――』
課金ドライバー「通話終了。通話料金ガ発生イタシマス」
課金ライダー「それはあとで! 空き地へ急ぐぞ!」
課金ドライバー「了解」
※一旦CMです
結構好き
はよ
>>56
気になるなら過去スレ読んでこいよ、ほとんど内容同じだから
結構おもろい
お前を待ってたんだよ!お帰り
※CM開け
――コンビニ脇の空き地
蜘蛛男「ホント、予想外のことばかりで焦るよ。まさか君が――」
課金ライダー「……」
蜘蛛男「――戦闘員を全員倒してしまうだなんて、ね」
幼馴染「むー! むー!」モゴモゴ
蜘蛛男「彼女かい? 避難し遅れたお客を始末しようと思ったんだけどみんな逃げてしまってね。僕の糸で捕まえられたのはこれだけだったんだ」
課金ライダー「幼馴s」
課金ドライバー『男様、今ココデオ二人ノ関係ヲ話サレマスト、逆ニ危険デゴザイマス』
課金ライダー「あ、ああ。そうだな。あっ……!」
蜘蛛男「?」
課金ドライバー『コレハ個人回線。男様ノスーツ内デシカ聞コエナイ設定ニナッテオリマス。ゴ安心ヲ』
蜘蛛男「さて、君を消そうと思っていたんだけど今の段階でそれは難しいみたいだ。君は……正直強い」
課金ライダー「どうすればそこの女の子の解放してくれるんだ!?」
蜘蛛男「うーん、そうだね……」ガチャ
蜘蛛男スマホ「【ウェポン】【R】【スパイダーストリングス】出力シマス」
蜘蛛男「この糸で縛られてもらおうかな!」バシュッ
課金ライダー「う、うわあッ!」
課金ライダー「う、動けない」
蜘蛛男「だろうね。一度熱して柔らかくした超硬度プラスチックを糸状にして射出するのがこの【スパイダーストリングス】だ。ちょっとやそっとの衝撃じゃ壊れないよ」
課金ライダー「う、ぐっ、ぐっ! ダメだ、さっぱり壊れない」
蜘蛛男「だろ? じゃ、君が動けない間に僕はしなきゃならないことがある」
蜘蛛男「えーっと、1、1、0っと」
Trrrr…
蜘蛛男「あ、もしもし? 警察ですか? コンビニ強盗です! はい、はい、なんか変な格好した人です! 今は~えーっとぉ~、隣の空き地で何だか糸でグルグル巻きになってるみたいなんですけどぉ~」
課金ライダー「!」
蜘蛛男「はい、〇〇区の『多分痔気分』です! はい、お願いしまーす」ガチャ
課金ライダー「お、お前まさか!」
蜘蛛男「ま、そういうことだね。今から君には僕の変わりに警察に捕まってもらうよ。君が犯人でないと分かっても……警察は僕には辿りつけないね。時間稼ぎにはなってくれよ」
蜘蛛男「だって今回も防犯カメラのデータは僕が盗んじゃったからさ」
幼馴染「むあー! むあー!(卑怯者! 恥を知れ!)」モゴモゴ
蜘蛛男「じゃ、僕は帰るから。バイバーイ」
ホスト風「~♪」
ブロロロ……
……
課金ライダー「行ってしまった……俺、捕まるのか!?」
幼馴染「むむあ(そこは問題なんかじゃない! あんな奴を町に解き放ってしまったのだぞ!?)」
課金ライダー「ったく、どうすれば……」
課金ドライバー「コンナ時ノ為ノ【アイテム】課金ガチャデゴザイマス」
課金ライダー「分かってるよ。どうにか出来そうなものが入ってるんだろ? 1回500円くらいなんだ。ガチャやってやるよ!」ガチャ
課金ドライバー「了解シマシタ。【ウェポン】ヲ選定シマス」ガチャガチャ…
課金ドライバー「選定結果……【ウェポン】【N】【ソード】」
課金ライダー「コレじゃあ糸は壊せないよな……もう1回回すぞ!」ガチャ
課金ドライバー「選定結果……【ウェポン】【R】【ビッグアックス】」
幼馴染「むむーむむー!(早くしないと警察がここへ来てしまうぞ! 追わねばならんのに!)」
課金ライダー「もう1回だ!」ガチャ
課金ドライバー「選定結果……【補助ウェポン】【N】【ホッパーレッグ】」
課金ライダー「もう1回!」ガチャ
課金ドライバー「選定結果……【ウェポン】【N】【チェーンシールド】」
課金ライダー「……」ガチャ
課金ドライバー「選定結果……【ウェポン】【R】【ツイスター】」
課金ライダー「神経がダルくなってきた」
課金ドライバー「【補助ウェポン】【R】【ヒートボディ】」ガチャ
課金ライダー「はぁ……。もう1回回s幼馴染「んふー!(これだ!)」
課金ライダー「え? なに?」
幼馴染「んふ! んふふ! んふふぉわー!(これを使うのだ! 【ヒートボディ】はアーマーから高熱を発する能力! これを使って超硬度プラスチックを溶かせば!)」
課金ライダー「なに言ってんだかは分からないが、これを使えばいいんだな? ドライバー! これを使う!」
課金ドライバー「了解シマシタ。尚、先程ガチャデ引イタ【ウェポン】ハ出力シナイ場合、ストックスルコトガデキマス。ゴ使用ノ際ハ、ワタクシニオ申シt 課金ライダー「いいから早くしろ!」
課金ドライバー「【ヒートボディ】出力中……」チッ
課金ライダー「おお~、温くなってきた。糸も良い感じで溶けてきたぞ」
幼馴染「んむふ!(私のも溶かしてくれ!)」
課金ライダー「分かった分かった」
課金ライダー「……」ジュウウウ
幼馴染「はぁ。これでやっと喋れ……あっつ!! これあっついぞ!」ジュウウ
課金ライダー「熱いのか!?」
幼馴染「お、男はアーマーで覆われているからいいが、私は生身だ! そもそもプラスチックを溶かす熱だぞ! あっつ! 溶けたプラスチックが服に、服にくっついて!」
課金ライダー「ああ、もう、分かった! その服で火傷する前に服を脱げばいいだろ!?」
幼馴染「バカ! 脱げるか! 恥ずかしい! 痴女じゃないんだぞ私は!」
課金ライダー「面倒だ! 破るぞ!」
幼馴染「バッカやめっr」
ビリィッ!
課金ライダー「……」
幼馴染「……」
課金ライダー「……」
幼馴染「……////」カァァァ
課金ライダー「……」
幼馴染「見るな!」
課金ライダー「……何でブラ付けてないんだ。小さいからか?」
幼馴染「見るな!!」
課金ライダー「……子供体型」ボソッ
幼馴染「冷静に分析するなァァァァァァァァッ!!!」
課金ライダー「ドライバー、変身解除」
課金ドライバー「了解シマシタ。変身解除イタシマス。暫クオ待チクダサイ」シュウウ…
課金ドライバー「変身解除完了シマシタ」シュウウ…
男「……」ジッ
幼馴染「へ?」
男「学ラン上貸す。汗臭いかもしれないけど贅沢言うなよな」 パサ…
幼馴染「あ、ああ!」
男「?」
幼馴染「ありが……とう」
男「ああ。さ、警察が来る前にあの蜘蛛野郎を追わなきゃな」
幼馴染(裸の私を変身解除してまでジッと見るものだから、何かされるのではないかと思ったんだが……違ったか)
――コンビニ前 駐車場
戦闘員達「「「「「「」」」」」」
幼馴染「ふむ……死屍累々とはこのことだな。まぁ、、無理に動かされて疲れて倒れているだけだろうし放っておくとしよう」
男「それで俺はどうやって蜘蛛野郎を追いかければいいんだ?」
幼馴染「【マシン】だ。男専用の【マシン】を使ってヤツを追うしかない!」
男「ま、マシンだって!?」
男「いやぁ、俺も遂にバイク乗りかぁ~楽しみだなあ~」
幼馴染「ん? 男、お前いつの間にバイクの免許など取ったんだ?」
男「いや、取ってないけど。課金ライダーって、ライダーの名前が付くくらいだからバイクくらい乗るだろうと思って……」
幼馴染「お、お前……私が作ったアーマーにそんなダサい名前を付けていたのか……? そ、それは良いとして男よ、免許を持ってない乗り物など乗れる訳ないだろう! 捕まるから!」
男「今更そこ心配するのか……じゃあ何に乗るんだ?」
幼馴染「男、今日は何でここまで来た?」
男「自転車だけど……まさか」
幼馴染「じゃあそれを使うんだな」
男「自転車が専用マシンってそんな」
幼馴染「仮面ライダーも電車に乗ったり車に乗ったりイグアナに乗ったりしてるんだ。課金ライダーは自転車に乗れば良い!」
男「えぇ~……」
幼馴染「どうだ、斬新だろ!」フンス
幼馴染「普通の自転車で行けと言っている訳ではない。男、もう一度変身してくれ」
男「はぁ……色々省略。『変身』」チャリン
課金ドライバー「アーマー展開、コレヨリ『変身』シマス」シュウウ…
……
課金ドライバー「変身完了シマス」シュウウ…
課金ライダー「……で?」
幼馴染「ドライバーに100円を入れて、【リ・コンストラクト】を宣言するんだ(こいつ一気にテンション下がってるな)」
課金ライダー「はいはい。ドライバー、【リ・コンストラクト】っと」
課金ドライバー「【リ・コンストラクト(再構成)】承認。スキャン開始シマス……自転車ヲ発見シマシタ。コチラヲ【リ・コンストラクト(再構成)】シマスカ?」
課金ライダー「あーするする」
課金ドライバー「了解シマシタ……」
自転車<ガチャン
課金ライダー「え?」
自転車<ガシャンガシャン
自転車<ギゴガゴギ
課金ライダー「うお、うおおおおおお!?」
自転車<ガキン
課金ドライバー「【リ・コンストラクト(再構成)】完了シマシタ」
幼馴染「どうだ?」
課金ライダー「すげー……変形した。カッコイ……いやなんでもない」
幼馴染「元々あった自転車(ママチャリ)の骨組みをベースに再構成したマシンだ。最高時速120km、戦闘員アプリ使用者の攻撃や爆発にも耐えることもできる」
課金ライダー「へぇ……。いいな、これ!」
幼馴染「気に入ってもらえて私も嬉しいぞ! さぁ、これに乗ってアイツを追いかけてくれ!」
課金ライダー「よっし、このマシンをかっ飛ばして行ってくるぜ!」
幼馴染「待て、男!」
課金ライダー「なんだよ」
幼馴染「『かっ飛ばす』のはナシだ」
課金ライダー「な、なんでだよ」
幼馴染「道路交通法で『車両』に該当する自転車は標識のないところでも制限時速は60km/h位に抑えて走ってくれ。危険な場合は課金ドライバーが同期しているから自動的にブレーキがかかると思うが……」
幼馴染「それに警察もこちらへ向かって来ているんだ。十分注意してくれ。分かったな?」
課金ライダー「不自由なヒーローもいたもんだな……分かったよ。じゃ、行ってくる」
自転車(変形体)<ブロロ…
課金ドライバー「発進シマス。新規登録ノ為ノマシン名ヲ登録シテクダサイ」
課金ライダー「課金ライダーのマシンだから……『カキンダー』」
幼馴染「却下」
課金ドライバー「却下シマス」
幼馴染「そうだな……課金だから……課金する……課金……charge……そうだ! 『チャージャー』なんてどうだ?」
課金ライダー「なんか中華料理っぽくない?」
課金ドライバー「実ニ良イアイデアデス、マスター。登録完了、『マシンチャージャー』緊急発進シマス」
課金ライダー「俺の意見は聞かないのかよ!」
課金ドライバー「警察ノ予想到着時間ハ後、後5分後。急ギマショウ。自動運転デ発進シマス!」
マシンチャージャー<ブロロロロロロロロロ…
課金ライダー「うわあああああああぁぁぁぁぁ! Gが! Gがかかる!」
――道路
マシンチャージャー<ブロロ…
課金ライダー「自分で漕いでもかなり早いし、意外と楽」
課金ドライバー「『チャージャー』ハ、一応電動自転車ノカテゴリーニ属シテイマスノデ」
課金ライダー「このままパトカーに見つからないように蜘蛛野郎を見つけなきゃあな」
課金ドライバー「マスターガ時間ヲ稼イデイマス。早ク蜘蛛男ヲ確保シテクダサイ」
課金ライダー「分かってます……よォッ!」キコキコ…
マシンチャージャー<ブロロ…
――道路(国道沿い)
高そうな車<ブロロ…
ブロロ……
ホスト風「ふふふ……」
ホスト風「ふ、ふはははははははははは!!」
ホスト風「金、金、金だ! 今回は多いぞ! 20万円だ!」
ホスト風「いやー、奪った奪った。これで最初の14万円、次の9万円、昨日の10万円、今日の20万円……」
ホスト風「ノルマ達成! これで給料も出るし、これで暫くは金に困らないね。『あの人達』も喜ぶだろ」
ブロロロロ……
ホスト風「高飛び費になっちゃいそうだけど……『あの人達』が滞在費も出してくれれば……」
ホスト風「ラスベガスなんかがいいね。パーッと遊びにさ」ブツブツ
ブロロロロロロ……
ホスト風「……」
ブロロロロロロロロロロ……
ホスト風「なんか後ろのバイクうるさくない?」
ブロロロロロロロロロロロ……
ホスト風「……ったく。あ、そうだ。『変身』」
『アーマー展開、【アーマー】【SR】【スパイダー】、『変身』シマス』
ブロロロロロロロロロロロロロ……
蜘蛛男「後ろから来たバイク、乗ってる人ごとバラバラにしt
課金ライダー「バラバラに……何だって!?」
蜘蛛男「お、お前ッ! 並走するな! 危険だろ!」
課金ライダー「現行犯で捕まんなきゃいいんですー」
蜘蛛男「ど、どうやって【スパイダーストリングス】から脱出できた!?」
課金ライダー「そんなこと俺が知るか。おい、蜘蛛野郎。諦めて車から降りろ」ガシッ
蜘蛛男「な、何を言うかと思えば……調子に乗りやがって! あっ、カーブミラー触るな! 僕は君になんか絶対に捕まりやしない!」
高そうな車<ブロロロロ!
課金ライダー「うお、おっと! 急発進させるなよ!! 危ないだろ!」
高そうな車<ブロロ…
課金ライダー「あ、おい!」
課金ライダー「おい! 行っちまうぞ! あの速さで自転車じゃあ追い付けないって!」
課金ドライバー「提案シマス。先程ガチャデ手ニ入レタ【補助ウェポン】【N】【ホッパーレッグ】ヲ使用スルト、アノ車ノ方向マデ『飛ぶ』コトガデキマス」
課金ライダー「あ、ああ! じゃ、それで頼む!」
課金ドライバー「了解。出力シマス。脚部、トランスフォーム」ガシャ…
課金ライダー「よし! 追いかけるぞ! まず自転車から降りて、と――」ダッ
課金ライダー「課金ライダーアアアア……ホップ」ピョン
課金ライダー「ステップ!」トンッ…
課金ライダー「ジャアアアアアアアンプッ!」ピョイーン
課金ライダー「うおおおおおっ」
…
――上空
課金ドライバー「素晴ラシイジャンプデシタ」
課金ライダー「俺……飛んでる。あ、自転車」
マシンチャージャー<マッテー
課金ドライバー「自動運転デ我々ヲ追イカケテ来テクレマス。ゴ安心ヲ」
課金ライダー「すごい良い眺めだな……街が全部見える」
課金ドライバー「私ニ感情ハアリマセンノデ」
課金ライダー「そりゃあもったいない」
課金ドライバー「『もったいない』トハ」
課金ライダー「幼馴染(マスター)に教えてもらわなかったのか?」
課金ドライバー「イエ……」
課金ライダー「そうかあ……」
課金ライダー「……」チラッ
課金ライダー「そういえばさ、ドライバー」
課金ドライバー「ハイ、何デショウ」
課金ライダー「俺……今どの辺りにいる?」
課金ライダー「上空100m程デスネ」
課金ライダー「……もう何があっても驚かないな」
課金ドライバー「チナミニ男様、我々ハ飛ンデイル訳デハアリマセン」
課金ライダー「うん、分かってる、何となく。……落ちてるんだよな、ゆっくりと」
課金ドライバー「後2分程デ【ホッパーレッグ】ノ使用限界ガ発生シマス。私ノ予想デストソノ使用限界時間丁度ニ地面ニ到達スルノデ、身体ノ方ニ負担ガ来ルコトハナイデショウ」
課金ライダー「辛くなきゃそれで良いや。でさ、どこに落ちるんだ?」
課金ドライバー「ソウデスネ……現在我々ガ追跡シテイル車ノ距離ヲ考エテ計測スルト……誤差ノ範囲ハアリマスガ――」
課金ドライバー「――ノ辺リニナリマス。今ナラ修正スルコトモデキマスガ、イカガデショウカ?」
課金ライダー「そりゃあいい。なら、お前が良いと思った方を選ぼう」
課金ドライバー「了解シマシタ」
課金ライダー「よしっ、一泡吹かせてやろうぜ」
課金ドライバー「『一泡』トハ?」
…
――道路
ヒュウ…
高そうな車<ブロロ…
蜘蛛男「クソッ、あんな奴に邪魔されるなんて……。早く連絡しなければ」ピポパ
蜘蛛男「……もしもし『†蜘蛛†』です」
蜘蛛男「はい、成功しました。明日の場所は〇〇区の『多分痔気分』。はい、確認されましたか。ありがとうございます」
蜘蛛男「ええ、はい。知っておられましたか。変な奴に邪魔されまして。はい、同じアプリ使用者だと」
ヒュウウウ…
蜘蛛男「ええ、たった今振り切ったところです。え? 風の音? 僕には聞こえませんが……」
蜘蛛男「はい! はい! ありがとうございます! じゃあ僕の就職も……」
蜘蛛男「……え? ダメ? 経費も降りない!? データ改造費も自己負担!?」
ヒュウウウウウウ…
蜘蛛男「え、ちょっと! 約束が違うじゃないですか!! 振り込みは!? 高飛びは!? 更なる技術提供は!?」
蜘蛛男「な、無し? 全部なし!? 1人に邪魔されたくらいで全部ナシにするって……ちょっとヤダなあ、冗談はヤメてくださいよ! ハハハハ……」
ヒュウウウウウウウウウ…
蜘蛛男「ンンンふざっけんなよオイ!! ……それじゃあ」
蜘蛛男「それじゃあ僕がわざわざこんなことをした意味が……ないじゃないかぁ……」
ヒュウウウウウウウウウウウウウウウ!
蜘蛛男「…………え? 何? 何て言ったんです? ちょっと!? 風の音で聞こえない! あ、切らないで! 切らないでくださいよねえ! ちょっtt ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアア
蜘蛛男「うわあああああああああああッ!?」
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン……
蜘蛛男「……え? 何?」
課金ライダー「……」
蜘蛛男「え? 何で僕の外車がぶっ潰れてるの? え? 何でお前が僕の車のフロント部分に刺さってんの?」
課金ライダー「アーマーとやらを着ていて良かったな、蜘蛛男。俺さ、ここに来るまでドライバーと二人で『もし蜘蛛男がアーマーを着けていなかったら』と心配していたんだ。ともあれ、作戦通り蜘蛛男の車に落下成功だな」
蜘蛛男「え? え?」
課金ドライバー「損害状況ヲ確認シテイマス。暫クオ待チクダサイ……」
課金ドライバー「蜘蛛男様ノ損傷率0パーセント。車ノ損傷率90パーセント。車ハ廃車デスガ、『命は金より価値がある』トマスターモヨク言ッテオリマス」
課金ライダー「良かったな」
蜘蛛男「……」
課金ライダー「大丈夫?」
蜘蛛男「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
課金ドライバー「精神ニ大幅ナ乱レヲ感知シマシタ」
蜘蛛男「うるせえええええええええええええええええええええええええええ死ねえええええええええええええええええええええええええええッ!!」
課金ドライバー「男様、車ガ爆発炎上スルオソレガアリマス。離レマショウ」
課金ライダー「分かった!」 ダッ
――道路側空き地
課金ライダー「蜘蛛男は!?」
課金ドライバー「上デス!」
蜘蛛男「ギイイイイッ!」 グワッ!
課金ライダー「ッ!」ヒョイッ…
蜘蛛男「……よく避けられたねェ。褒めてあげよう。でも、次は……殺すッ!」ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ…
課金ライダー「あ、あいつめっちゃガチャ引いてるぞ! ……お金、大丈夫なのか?」
課金ドライバー「気ヲ付ケテクダサイ! マスター曰ワク『自暴自棄になった奴の金遣いは、寝坊した時の男が作った弁当より荒い』ダソウデス」
課金ライダー「なんてこと教えてんだあいつ!」
蜘蛛男「ひひひ……もう就職先もない、お先真っ暗だ。外車もぶっ壊されて、もう、もう僕は……」
蜘蛛男「『プレミアムガシャ』を回すしかないんだあああああああははははははははははは」ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ…
『ガチャ結果……【ウェポン】【R】【ドデカイバズーカ】×10』
蜘蛛男「いいぞッ! ガチャの結果は僕を裏切らない! よし合成だ!」
課金ライダー「合成? 合成ってなんだ?」
課金ドライバー「同ジ名前トレアリティヲ持ツ【ウェポン】ヲ2枚合体サセテ強クスルコトヲ指シマス」
課金ライダー「2枚合体させれば強くなるのか……ほ~」
蜘蛛スマホ『合成完了。【ウェポン】【R+】【メッチャドデカイバズーカ】×5
蜘蛛男「全弾発射ァ!」
蜘蛛スマホ『了解、発射シマス』
課金ドライバー「熱源反応確認。爆発力ヲ持ツ弾頭ノ発射ガ予想サレマス。破壊力ヲ持ッタ【ウェポン】ガ存在スルトハ!」
課金ライダー「ど、どうすればいいんだ!?」
蜘蛛男「発射発射発射ァ!」ドン! ドン! ドン!
課金ライダー「や、やばい逃げ、うわァァァッ!!」ドォッカァァンッ
課金ドライバー「3弾着弾確認。アーマー損傷率40パーセント。走ッテノ回避ハホボ不可能デス! 次ノ弾頭、来マス!」
蜘蛛男「まだまだ行くよ、発射ァッ!」ドン! ドン!
ヒュルルル…
課金ライダー「爆発に巻き込まれると痛いのな……ドライバー! 何か良い感じのウェポンを頼む!」
課金ドライバー「了解。【ウェポン】【R】【ツイスター】、出力シマス」
課金ライダー「つ、【ツイスター】? ……なんなんだ? どうすればいい!?」
課金ドライバー「手ヲ前ニ出シテ!」
課金ライダー「こうか!?」バッ
課金ドライバー「後ハ待ツダケ! 【ツイスター】ハ竜巻ヲ発生サセル【ウェポン】デス。気流ヲ乱シテ弾頭ヲ無力化スルノデス!」
ゴオオ……!
課金ライダー「お、出た!」
課金ドライバー「デハ、ソノママデオ待チクダサイ」
ゴオオオオオオッ!
蜘蛛男「な、何だよ! 何だよあの竜巻!?(バズーカの弾をこっちに押し返すつもりか! 弾がこっちに向かって来て……・あ、に、逃げられな……ッ)」
蜘蛛男「うわぁぁぁぁぁああああ」ドカァアンッ!
課金ドライバー「弾頭ノ無力化ヲ確認。蜘蛛男様ハ現在竜巻ニ巻キ込マレテイマス。竜巻内デ弾頭二激突! ダメージガ蓄積イマス」
課金ドライバー「【ツイスター】使用限界時間到達。消滅シマス」
蜘蛛男「ハァ……ハァ……」ドサッ
課金ドライバー「蜘蛛男様ノアーマー損傷率80パーセント」
課金ライダー「諦めて警察に出頭しろよ。証拠(幼馴染が取ったカメラ)はあるんだぞ?」
蜘蛛男「う、うぅあ……うぁぁあ……」ジタバタ
課金ライダー「調子に乗って勝ったつもりになったのが運の尽きだな! 正義はな、必ず勝つようになってんの!」
蜘蛛男「そんなわけないッ、僕は悪くない! 僕は今まで真面目に、謙虚に生きてきた! なのに就職先は見つからず底辺バイト生活……お金に困り果てていたんだ(女の子に貢いでもらっていた話はしないでおこう)」
蜘蛛男「なぁ! 同情してくれるだろ!? 僕は仕方なく、仕方なくやってたんだよ! 僕をこうした世間が悪いんだよ! なぁ!」
課金ライダー「……」
蜘蛛男「変身を解くからさぁ……こっちに来て話を聞いてくれよぉ……」
蜘蛛スマホ『変身解除シマス』
ホスト風「なぁ……頼むよぉ。僕は変身解除したんだぞぅ……」
課金ライダー「……」
ホスト風(んなわけあるかカス! 変身解除して抵抗する気がないフリして近くによったところを……ポケットに入っていたナイフで……フフへフフ……)
課金ライダー「……」テクテク
ホスト風「ああああああ……ありがとう! 本当にありがとう……」
課金ライダー「……来たぜ」
ホスト風「じゃ、じゃあ君も変身を解いて――」
課金ライダー「ライダーパーンチ」ボゴッ
ホスト風「ぐふうっ!?」
ホスト風「そ、そんな――」
課金ライダー「ライダーパーンチ」ボゴッ
ホスト風「う、う、おえっ、おえええええええッ」ビチャビチャ
課金ライダー「初めて殴った相手がこんな奴って……どう思う、ドライバー?」
課金ドライバー「ハイ、マスターナラ『最悪だ』ト言ウト私ハ予想シマス」
課金ライダー「もう一発殴っとくか。ライダー……」
…
課金ライダー「ドライバー、変身解除」
課金ドライバー「承知シマシタ」シュウ…
男「おい、ホスト風」
ホスト風「は、は、はひ」フルフル
男「今から警察突き出すから」
ホスト風「そ、そんな!!」
男「なにが『そ、そんな』だ馬鹿野郎! 色んな人を傷付けておいてお前だけトンズラこくつもりかよ! 自分が悪くないってまだ言えるか!?」
ホスト風「ひっ! 言いません言いません! 怯える人間を見たかっただけなんですゥ!」ビクビク
男「……ライダー……キィーック」ドガッ
ホスト風「ひぃっヒィッぃぃい」ビクビク
男「これは、コンビニ荒らされた店員さんとそこにいたお客さんと操られた戦闘員やモブ達の分と、縛られた幼馴染の分の一発」 ドガッ ドガッ
男「最後にもう一発」
ホスト風「も、もう一発は誰の分ですかぁぁぁぁ?」ガクガク
男「俺の分だあああああぁあ ホスト風「ヒィィィヤァァァァァ、あ……」ショワワワ…
課金ドライバー「意識ナシ。気絶シタヨウデス。マスター風ニ言ウナラバ蜘蛛男様ハ『攻撃力は高い癖に防御力は0。むしろマイナス』ナ方ダッタトイウコトデスネ」
男「どういう意味だそれ」
課金ドライバー「『打たれ弱い』タイプトイウコトデス。ア、失禁モシテイマスネ」
ホスト風「」
男「こいつどうやって警察に突き出す?」
課金ドライバー「ソウデスネ……。『戦闘員アプリヲ使ッテ悪事ヲ働イタ男ヲ変身シテ捕マエタ』。チョットコレハ……」
男「色々めんどくさいことになりそうだなぁ……」
課金ドライバー「ショウガナイトハイエ、我々モカナリ手荒ニ捕マエテイマスシ……オヤ、マスターカラ連絡デス」
男「おお、出る出る。もしもし?」
幼馴染『こちら幼馴染。ドライバーから蜘蛛男を倒したと連絡来ているから分かっているぞ。やったな!』
男「ああ! もうこんなのこりごりだからな。これが最後だ。ヒーローごっこは終わりー」
幼馴染『ムゥ……。ああ、コンビニに来た警察には証拠を見せ、奴が逃げていることを教えた。こちらへ向かっている』
男「えぇッ!? じゃあ俺はどうすればいいんだよ!」
幼馴染『『課金ライダー』の存在を知られるのはちょっとまずい。没収されたら嫌だからな。だからその話は黙っててくれ』
男「それはそうするが。幼馴染の撮った映像には俺がバッチリ写って――」
ツー、ツー、ツー
男「おい!」
…
……
パトカー<ウォンウォンウォン…
警察官「そこのー! そこの君ー!」ガチャ
男「は、はい!」
警察官「君が幼馴染ちゃんの友達の男くんだね?」
男「そうです、男です!」
警察官「本当だ……あの外車自爆事故起こしてる? っていうことはそこに倒れてる男が……」
ホスト風「」
男「はい、こいつがコンビニ強盗です。俺が自転車で追っかけてたら、こいつ勝手に事故起こしてて……」
警察官「倒れてたってわけね。うん、あの子が言っていたのと同じだ」
男(よし、これでめんどくさいことにはならないn 警察官「じゃあ署の方までちょっと来てもらおうか」
男「えっ、帰れないんですか」
警察官「調書取んなきゃだからさ。悪いけど……」
男「えっ」
警察官「あ~、スゴいゴッツいベルト付けてるねぇ~。これ今の流行りなの? さ、とりあえずパトカー乗って」
男「えっ」
警察官「ああ! あのホスト風な男と一緒に乗せるワケじゃないよ! もう一台応援来てるから」
男「えっ」
警察官「いや~お手柄だね~、君。明日は有名人だ!」
男「えっ」
男「えっ」
課金ドライバー「ヤレヤレ……」
――次の日 教室
男「……」
友「なんだよ、男。本日のヒーローのクセに元気ないな」
男「今まで目立つことは避けてきたんだ。今日は異常にチヤホヤされて色々と疲れたんだよ……。あ、昨日はスマホ貸してくれてありがとな」
友「いいってことよお! 俺も今日から『コンビニ強盗を捕まえたヒーローにスマホを貸した友人』としての道を歩むことになるのかぁ~。くぅ~w」
男「なんだよ、その道は……」
友「しっかし、戦闘員アプリを悪用した強盗かぁ……。アプリを違法改造していたとは言えおっかないよな~。よく追いかけたよ、男は」
男「あはは……」
――
男(結局昨日は11時頃まで家に帰れなかった)
男(操られていた戦闘員(一部除く)やモブ2達が口裏を合わせてくれていたので、俺が『課金ライダー』でどうのこうのという話はバレなくて済んだ、と思う。課金ライダーはばっちり幼馴染のカメラに映っていただろうが。警察は何も言ってこないしセーフってことにしとこう)
男(モブ2のヤツは……一週間停学処分を受けている。帰りにアイツの家に寄ろうかな)
男(ホスト風は……どうなったかよく分からん。まあ逮捕された。あいつは大学院生で金と就職に困って強盗を働いたとだけニュースでは報じていたけど)
男(戦闘員アプリを開発した某会社は一週間安全確認点検をした後、リニューアルみたいな形で再稼働しているみたいだ)
――
友「帰ろーぜ」
男「ああ」
――幼馴染の家
トゥルルル……
『お留守番サービスに接続s』ピッ
幼馴染「くそぅ……男のヤツ電話に全然出ないぞ」
課金ドライバー「困リマシタネ、マスター。私モ男様ニマダ教エテモライタイコトガ沢山アリマスノニ……」
幼馴染「ああ……困った。困るぞ、男ォ! この街はヒーローの登場を望んでいる! 次の事件が男を待っているのだ!」
幼馴染「私は男がヒーローを辞めることをまだ許した訳ではないぞ! 早く出ろ男ォ! いや、『課金ライダー』!!」トゥルルル…
『お留守番サービスに接z』ブツッ
幼馴染「あ゛あ゛あ゛っ! もう!」
…
――
幼馴染「この戦いはほんの序章にしか過ぎない。これが我々にとっての『第1話』のようなものだった」
男「余計なこと言うな」
幼馴染「こんなオチはどうだ? という提案だ」
――
つづく
※次回 お楽しみに
※>>90と>>91の間
――校庭
友「お、モブ1じゃん」
モブ1「……」
友「元気出せよ~、モブ2も来週には帰って来るんだからさぁ」
モブ1「うん……」
――
男(帰ってネットで調べて分かったことだが、戦闘員アプリが原因となった事件が少し増えてきている)
男(某会社はその原因をアプリの違法改造した者の責任として、アプリの公開も未だに続けている)
男(ま、俺はもう『課金ライダー』じゃないし関係ないことか)
――
男「モブ1、モブ2の家教えてくれよ」
友「みんなで行こうぜ~!」
モブ1「ああ……。うん! 〇〇町の方なんだ! 行くなら早くするべ!」
男「何か買っていってやろうぜ」
友「何買ってく?」
モブ2「そうだなぁ~、アイツが好きなのは――」
……
乙
モブ2居るやんけ!
モブ2ひょっこり出てきててワロタ
※課金ライダー この後すぐ
【シスターツバサのにっき☆ 】
――
きょうツバサの家の近くの「魔のトンネル」で、また車の事故があったみたいですp(´⌒`q)
〇〇町の「魔のトンネル」って知ってますか?
そのトンネルの中でゎ死んだ人の声が聞こえるそぅですよ(°□°;) やだなぁこゎ……
でも、死んだ人の声って気になりません!!!??? たまに亡くなったおじいちゃんの声を聞きたくなる時があるんですよね(ρ_;)
その声に引き寄せられて事故っちゃうのかなあ?
声が聞こえるのは午前0時を過ぎた頃。ちょっと行ってみょうかな? 動画は明日あげます、お楽しみに!
でゎでゎ~☆
――
コメント(753)
カテゴリ:ぅゎさばなし
――教室
友「なぁ、男! 『魔のトン 男「知ってる行かない」
友「……」
男「……」
友「……」
男「……」
友「今晩『魔のト 男「行かない」
友「……」
男「行かない」
友「 男「行かない」
男「そういうの興味ないから」
男「モブらと行きゃあいいじゃないか」
友「ひとくくりにするなよ……いや、アイツらにも断られた。怖いのが嫌なのかね」
男「あのトンネル、事故も多いしな。友も行くのは止めとけよ。夜中だしさ。補導されるぞ?」
友「……わーったよ。行かない行かない行かないヨー」
男(こいつ絶対行くな……)
友「課題の答えも分かんないし帰ろうぜ」
男「ん、そうするか」
友「担任の出す課題ったら毎回難しすぎんだよなー」
――校庭
サッカー部員1「上がれ上がれ!」
サッカー部員2「パース! パスパース! パーs……ナイッシュー!」
サッカー部員3「こっちこっちオアアアーーッ」
男「サッカー部が大会近いんだな。練習にも熱が入ってる」テクテク
友「我が校サッカー部のエースも張り切ってるなー!」
サッカー部エース「よし、フォーメーション確認! 全員集合!」
男「プロからもお呼びがかかってるんだろ? すごいな。俺も何かスポーツ1つでも極めてれば良かったなぁ……」
友「えー、お前だって……あ、クラス委員だ」
男「ホントだ」
クラス委員「あら、男君、友君こんにちは」
男「こんちわ」
友「ちわっす」ドギマギ
クラス委員「今帰るところ?」
男「はい、課題する為に残ってたんですけど(同級生なのにクラス委員には敬語を使いたくなるな……)」
友「分からないから止めたんスよぉ(クラス委員今日も美しいなぁ)」
クラス委員「そう。わたしは文化祭の計画会議だったの。後は生徒会選挙の会議」
男「文化祭かぁ……」
友「生徒会選挙なぁ。俺にはあんまり関係ないイベントっぽいけど」
クラス委員「ふふ、ダメよ、友君。選挙に出馬しないにしてもあなたは有権者の1人。清き一票が学校を変えるの」
友「ふぁ、ふぁい(今の『ダメよ』を脳内音声フォルダに保存しなきゃ……)」
クラス委員「2人共、わたしと帰る道は一緒よね? わたしも付いて行って問題ないかしら?」
男「あ、はい」
友「やったああああああああああああああ(いいっすよ)」
男「友、声と心の声が逆転してる」
――通学路
クラス委員「へぇ……『魔のトンネル』。そんなものがあるの?」
友「そうなんですよ。死んだ人の声が聞こえるっていう……」
クラス委員「不思議ね……。でも面白そう!」
友「でしょ!? クラス委員、今晩俺と一緒に行きませんk クラス委員「ダメ。我が校は21時以降の外出は禁止しているはずよ。生徒手帳確認っ」
友「……」ショボーン
男「クラス委員、友はトラブルメーカーだからどこ行ってもめんどくさいことになりますよ」
友「そ、それを言うならお前だって!」
クラス委員「……ふふ。2人共面白い」クスクス
友「え、あ、その、そうすか? へはは……」 デレデレ
男「あ、ここ俺んちなんでこの辺りで……」
クラス委員「ここが男君の家?」
男「はい。まぁ別に覚えなくてもいいですけど」
友「よし、クラス委員を独り占めだ。早く家に入れよ男(じゃあなー、男。また明日ー)」
男「友、心の声しまえ。ああ、またな」
クラス委員「バイバイ、男君。また明日」テクテク…
――
友「あっ、クラス委員この棺桶のストラップは……」
クラス委員「今友だちの中で流行ってるの。かわいいでしょ?」
友「かっっっっわいいっす!(クラス委員が)」
――
――男の家
犬「うまいうまい飯がうまい。だけどたまには肉も食いたい」ハグハグ…
男「今度な」
幼馴染「……」ツーン
男「何か……怒ってるのか?」
幼馴染「……」ツーン
男「何か悪いことでもしたかな?」
幼馴染「私は見たぞ……男が私の知らない女と帰って来たのを。あれ……誰だ?」ツーン
男「ああ、クラス委員だ。忘れたか? 幼馴染も学校に来た時何回も会っているはずだけど」
幼馴染「私は学校やクラスメートには興味がない! というかなあ! そういう問題ではないのだ!」
男「じゃあどういうことなんだよ」
犬「しょうゆうこと」
男「幼馴染、犬に変なこと教えるな」
幼馴染「と、とにかくっ、浮気だぞ浮気! さいてー」
犬「さいてー」
男「やめろ! そもそも浮気って付き合ってる人がいるのに、違う人といちゃこらすることだろ? そもそも別に俺は……」
幼馴染「……」
幼馴染「…………」ウルッ
幼馴染「………………ぅ」グスッ
男「はい今のナーシ! 今のノーカンノーカン! ……ごめん幼馴染! な! な!」オロオロ
幼馴染「……ゆ゛る゛ざん゛」グスッ…
男「な、何でもするからさ。な?」
幼馴染「……」グスッ
幼馴染「ん?」ハッ――!
幼馴染「今」
幼馴染「なんでもするって――」ニヤ
…
男「もう一度『課金ライダー』をやれだぁ?」
幼馴染「ああ。戦闘員アプリを使った犯罪はテレビなどではあまり報じないものの増加傾向にある。だから……」
男「だからまたヒーローごっこをやれってことかぁ……」
幼馴染「ごっこではない! アーマーやウェポンの強力さは分かっているはずだぞ!?」
男「……確かに。でも」
幼馴染「男に二言は無し、だぞ」
男「ハァ……もう一度。もう一度だけ、な」
幼馴染「何でそんなに乗り気になれないんだ。昔の男なら――」
男「昔の話はしたくない」
男「……幼馴染も分かってるだろ?」
幼馴染「す、すまん。だが私は……男が自信を取り戻してくれると思って……」
男「大きなお世話! もう強盗退治とかはしないぞ……まあ幼馴染が危ない目に会いそうな時なら……考えるが」
幼馴染「むぅ……」
でも金は取る…
ただの守銭奴やんけ
――男の家 リビング
テレビ<「 ※カメラのフラッシュによる点滅で気分が悪くなる場合は、目を休めるなどして対処してください
技術主任『どーもすいませんでした』ペコ
戦闘員アプリに関する事件。今日、某会社の謝罪会見が行われた。しかしアプリ開発責任者の開発主任氏は頭を下げるばかりで、報道陣に詳細な説明をすることはなかった……。
記者『技術主任! 玩具会社である某社の他事業拡大が話題になっておりますが、今後の玩具事業展開の方向性についてお答えください!』
記者『主任! 超硬度プラスチックの危険性を訴える団体についてですが――』
記者『主任!』
記者『主任!』
技術主任『………………チッ』スタスタ
7分にも及ぶ謝罪の後、技術主任がしたのは……舌打ちだけだった。
TVキャスター「いやー最悪ですねー技術主任。某会社のアプリ産業進出は我が国にとって利益をもたらすと同時にこんなことになってしまうとは」
解説員「おもちゃ会社だった某会社は戦闘員アプリの流行と共に経営規模を拡大し続けていますからね。今後の動向に注目していきましょう」
TVキャスター「CM明けた次のコーナーは、現在女子中高生に人気のブロガー『シスターツバサ』に迫ります」 」
男「はい、今晩は麻婆豆腐だぞ。チーズ春巻きもある」コトン
幼馴染「うおぉ! 春巻きだ! じゃあ手を合わせて……」
男「はい」
「「いただきます」」
幼馴染「ごちそうさまでした」
男「お粗末さまでした」
幼馴染「……」ジー
男「……」
幼馴染「……」ジー
男「嘘はつかない。もう一回やるよ、『課金ライダー』」ハァ
幼馴染「うん……」
男「……」
幼馴染「……隣座ってもいいか?」
男「……いいよ」
幼馴染「……」ポスッ
男「……俺は何も変わってないよ」
幼馴染「……少しくっついてもいいか?」
男「ちょっとだけな」
幼馴染「……」ピト…
男「……俺は父さんや母さんがいなくたってもう大丈夫だ」
幼馴染「……」
男「でも、幼馴染。お前だって」
幼馴染「お互い天涯孤独の身だ……私だってもう子供ではない。寂しいなどと言ってはいられない」
幼馴染「でも……」
男「でも?」
幼馴染「今は……もう少しこうさせてくれ」
男「……うん」
…
――深夜 『魔のトンネル』
友「来ちゃった。しかも1人で」
友「暗っ、怖っ。車通り少なっ! で、でも死者の声聞きたいし……」
友「あ、あれ? でも、死者の声って誰の声が聞こえるんだろ……」
友「じいちゃんもばーちゃんも生きてるし……オヤジも母ちゃんも……」
友「俺んち死人いない!?」
友「ああ……失敗した。さっさと帰ろ早く帰ろ。独り言多いし、関係ないけど」
ブロロ…
友「あ、車来た。って、あれは!?」
友「担任の車! やべっ、怒られる。隠れよ」コソコソ
車<ブロロロロ…
友「うわー。見つかったら絶対ぶん殴られる。またはクラスで晒される……」コソコソ
車<ブロロロロロロ…
友「見つかりませんように見つかりませんように」
車<ブロロロロ…
友「あっ、通り過ぎた。良かったぁ」
車<ブロロ…
友「ん? 何か声が……」
ダレカ……
ダレカタスケテ……
タスケテ…タスケテ…
友「え? 誰!? 誰だよ! 誰が喋ってるんだ!?」
車<ブロ……
ダレカ……オネガイ……
タスケテ…
友「これ、もしかして『死人の声』か? すげえ……って違う! やべえ! 怖い……っ!」
タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ
友「ひいいいいいいいいいっ!?」
キキィーッ……グシャァッッ!!
友(後ろからすげえ音が……。あっちは担任が行った方向……まさか担任のやつ事故ったんじゃ。で、でも後ろに何かいたら……)
???「振り向くな」
友「!」ビクッ
友「だ、誰だよ……」
???「私は『魔のトンネル』に住む死者の魂。死人の声を聞かせ、その者を冥界へ誘う。振り向けば貴様も車の中の男のようになるぞ……」
友「じゃ、じゃあ担任は!?」
???「フフフ……フハハハハハハ! さぁ帰るのだ少年よ。振り返らず、ここから立ち去れ!」
友「担任を置いていく訳には!」
???「しつこいヤツだ……。ここに貴様がいては何かと都合が悪いというのに!」
友「なんだよ都合が悪いとかって! 『魔のトンネル』なんて怖くないぞ! ふ、振り向いてやる!」
???「ぬゥ……ならば……」キィィィィィイ……
カエレ……カエレ……
友「なんだよ、この声! 死者の声なんか怖くないんだよ、バーカ!」
カエレ…カエレ…カエレ…
???「怖い怖くないの問題ではない……。その身体は自分の意志に反して勝手に動き出すのだ……ハハハハ」
カエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレ
友「あ、あ、あぁ……や、やめ、やめろォ!」ガクガク
カエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレ
友「ア、ア、ア」
???「帰るのだ、分かったな?」
友「……ハイ」
???「いい子だ。この呪いはトンネルを出て暫くすれば解ける」
友「……」テクテク
???「『魔のトンネル』の恐怖、忘れるなよ。フハハハハハハ!!」
???「行ったか……」
パチパチパチ…
???「む……誰だ?」
技術主任「いやぁぼくだよ、ぼ・く。拍手拍手。いい怖がらせ方だったね」パチパチ…
???「あ、ああ主任でしたか。見ておられたのですね」
技術主任「誰が聞いているか分からない。呼び合うならHN(ハンドルネーム)にしようよ。ね? 『クレバット』の蝙蝠男クン」
蝙蝠男「分かりました、そうしましょう。『元帥』殿」
技術主任「素晴らしいものを見させてもらったよ。まさか自分の能力を使って『都市伝説』を作り上げちゃうとはね」
蝙蝠男「我ながら良い出来かと」
技術主任「『†蜘蛛†』にはホントがっかりさせられたよ。強盗しかできないんだから」ヤレヤレ
技術主任「自分の力を見せつけるにはもっと分かりやすく、陰湿にやらなきゃ」
蝙蝠男「おっしゃる通りで」
技術主任「僕の目的は……日頃の鬱憤を戦闘員アプリを使って晴らしてもらうことだからさ」
蝙蝠男「素晴らしい技術を与えていただき、感謝しております。おかげで毎日が……楽しくて仕方がない」
技術主任「キミのその情報収集力や用意周到さには期待しているんだ。ま、今回のは……少しやり過ぎだとも思うけど」
蝙蝠男「ありがとうございます……」
技術主任「あ、それと」
蝙蝠男「はい?」
技術主任「車の男、殺しちゃダメだよ」
技術主任「たとえそいつがお前に都合の悪い人間でも、ね。キミは能力を使ってトンネルを通った人にトラウマや強い不安感を与えるだけでいいの」
技術主任「死亡事件が起きたら、内部監査が入ってアプリ配信停止になっちゃうから。救急車呼ぶなりして救助呼んでね」
蝙蝠男「……分かっております」
技術主任「くれぐれもバレないように、頼んだよ」
…
――次の日の朝 教室
友「――ということだった」
男「まさかホントに行くとはな」
友「もう行かないよ……世界の知ってはいけない領域に踏み込んだ気分だ……」
男「で、友は意識が朦朧とした後どうなったんだ?」
友「トンネルを出た辺りで意識がハッキリとしてきて、すぐ通報したさ。担任の命に別状はなかったのは良かったよ……」
男「腕と脚を骨折……か。暫くは帰って来ないな」
ガララ
学年主任「おはようございます」
「「「おはようございまーす」」」
学年主任「お前達も知っているとは思うが、担任先生は事故で暫くお休みを取ることになった。これは――」
――
男(『魔のトンネル』に『事故』、『死者の声』か。現実味が無さ過ぎ。この間のコンビニ強盗とはワケが違う)
男(これは例の『アプリ』とは全く関係ないものだと思う。どんなに技術が発達しても、死者の声を発生させるなんてことはできないよな)
男(担任もその声を聞いたんだろうか。それでビビってハンドルを切り損ねたってところか)
男(じゃあ、友の聞いた死者の声は……? 幻聴ってところか?)
――
学年主任「――という訳で代理の講師の方を担任として迎えることになった。どうぞ入ってください」
ガララ
女子たち「「「きゃ~!//////」」」
イケメン講師「皆さんはじめまして! 短い期間だと思うけれどよろしく!」キラッ
学年主任「じゃあここからは若い講師君に任せて……私は職員室に戻ろう」
ガララ…
イケメン講師「担任先生は僕の大学の大先輩にあたります。偶然にも昨日、一緒に食事することになっていて色々とお話したんですけど……。今回のことは本当に残念です」
男(ジャニ〇ズとかそういう系の顔だな。女子が歓声をあげるわけだ)
イケメン講師「僕も担任先生のようにみんなを引っ張っていけるように頑張ります! もう一度改めて、よろしくっ」キラッ
女子たち「「「きゃ~!」」」
友(クラス委員はあんな奴になびかないでくれよ……)
イケメン講師「早速、一時限目を始めよう。まずはレクリエーションからかな? 名前の確認の為に、クラスの皆には自己紹介をしてもらいたいと思うんだけどいいかな?」
女子たち「「「いいで~す!」」」
…
クラス委員「クラス委員です。よろしくお願いします」
パチパチパチパチ…
…
友「俺のクラス委員は絶対に渡さない(友です。よろしくッス)」
\ココロノコエギャクテンシテンゾ/ パチパチパチパチ…
…
男「男でs イケメン講師「キミが男君かぁ! 話は聞いてるよ。よろしくね!」
男「あ、はい」
男(なんだコイツ。テンション高すぎ)
――放課後 教室
男「やっと授業終わった……」フゥ
男(誰もいない教室は落ち着くな。文化祭前だし、大体の運動部は秋の大会に向けての練習がある。この期間は少し好きだな……)
男(しかし、イケメン講師……。聞いてもいないのにペラペラと話すヤツだ。こういうのは苦手だ。キャラ作ってるみたいで)
男「……」
男「あれ? 『誰もいない教室』……ってことは」
男「友がいない」
男「少し探しに行こう」
――職員室前
友「……で……なんですよ……だから……」
学年主任「……う~ん……でもあるし……」
男「お、こんなところにいたのか。おーい、友」
友「あ、男」
男「何やってるんだ?」
友「いや、さ。担任の」
学年主任「おい」
友「担任『先生』の! お見舞いに行きたくてさぁ。学年主任……『先生』に病院の場所を聞いていたんだ」
学年主任「しかしなぁ。一応個人情報でもあるし……それに……」
男「?」
学年主任「いや。しかし……う~ん」
友「お願いしますよ先生~硬いこと言わないで~」
イケメン講師「それなら!」ヒョコ
男 友 学年主任「!?」
イケメン講師「それなら、僕たち教師が彼らの引率をして行く形にすればいいんじゃないでしょうか?」
学年主任「ああ、なるほど。しかし……」
イケメン講師「僕、担任先生の奥さんの電話番号知ってますよ! 確認取ってみてもいいですか?」ピポパ
学年主任「いいですか、って。君、もう電話番号押してるじゃないか」
イケメン講師「あ、もしもし? 僕です。次の土曜日か日曜日なんですけど――」
男「もう日程決めてるし」
イケメン講師「はい、はい! ありがとうございます! では――」
学年主任「……」
イケメン講師「――オッケーみたいですよ!」
友「やったー!」
学年主任「まったく……君の神出鬼没さと空気の読めなさには驚かされるよ」
……
――通学路
男「それにしても変だよなぁ」
友「誰がよ?」
男「お前だよ、友。お見舞いって何さ。担任とは同じ場所に偶然居合わせただけだろ? お前が気にすることはないんじゃないの?」
友「いや、さ……」ハハハ
男「何だよ」
友「そりゃ偶然居合わせただけっちゃあだけなんだけどさ。あの時、訳わかんなくなってたとは言え担任を置いて逃げちゃったから……何となく負い目感じちゃって」
男「負い目、か。はっ! ……お前、さては優しいヤツだな!?」
友「や、やめろよ。通報したのも一般市民の義務を果たしたまでだし、ただ罪滅ぼししたいってだけなんだからさあ」
男「ハハ、謙遜するなって。それに、お前の口から『一般市民の義務』なんて出るとは思わなかったよ」
友「でもさ……」
男「え?」
友「あの幻聴……みたいなのってなんだったんだろ」
男「幻聴?」
友「トンネルで俺に語りかけてきた声。俺はそいつに脅されたんだ。『振り向くと殺すぞ』ってさ」
友「俺はその脅しを無視して振り向こうとした」
友「その時、俺の心の中で『恐怖』が膨れ上がったんだ」
男「恐怖が膨れ上がる? 随分と抽象的なイメージだな」
友「そうとしか言いようが無いんだよ。心が急に不安になってきて、怖くて、動けなくて、胸が苦しくなって、意識がもうろうとしてきて……声が命令した『帰れ』って言葉に逆らえなくなった。で、後は男に話した通り」
友「こんなの現実的でないよな……」
男「そうか?」
友「そうだよ」
男「……ま、気にしすぎんなよ」
友「おう、そうだな。俺も男に少し話せてすっきりした」
男「困ったときはさ。教えてくれよ。話なら聞くから」
友「ありがとな、男!」
男「ああ!」
友「あーあ、じゃあ次の心配するのはお見舞いのことだな! 何持って行こうかなーっと」
男「ここは普通にフルーツで」
友「ケーキだろJK」
男「なら、お菓子の詰め合わせとか――」
……
男(恐怖が膨れ上がる現象、か)
男(少し、少しだけ調べてみようかな……トンネルについて)
――男の家
犬「メシをくれ」
幼馴染「何? ドライバーを貸して欲しいだと?」
男「この際、幼馴染が俺んちに入り浸っているかは聞かない。頼む、貸してくれ」
幼馴染「いいが……何だ、男よ。急にやる気になって。あんなに変身することを拒んでいたじゃないか」
男「……事情が変わったんだ」
幼馴染「『魔のトンネル』」
男「!」ビクッ
幼馴染「やはり、な。男も気づいてしまったか。『魔のトンネル』とやらの正体に」
男「ああ、何となくだが。都市伝説も死者の声も存在しないなら、そのどちらにも匹敵するような力を持っていそうなヤツら……」
幼馴染「『戦闘員アプリ』使用者……」
男「こじつけもいいとこだが、蜘蛛男のことを考えると……なくはない、よな」
幼馴染「ああ」
※一旦CM
CMながいなw
規制に巻き込まれた?
※CM開けます
幼馴染「タブレットを用意してある。これを見てくれ」
男「これは……町の地図か? そしてこの円は……」
幼馴染「ああ、これはこの町の地図。そして、この円は『戦闘員アプリ』を使った際に微量に出る、周囲の電波を阻害する特殊な電波を検知した場所に記されている」
男「便利かよ」
男「円の大きさが範囲、色の濃さがその特殊な電波の強さを表しているんだな? ……これは一際大きい場所があるな」
幼馴染「そこが『魔のトンネル』と呼ばれているトンネルだ。履歴はここ1ヶ月間の累計。日付毎のデータも調べている。例のコンビニと比べても、ここが一番……強い」
男「コンビニ強盗と時期が被っている……。いや、それより前から行動していたのか」
幼馴染「そうだ。それも随分と前から。『魔のトンネル』とやらの正体は、かなり用意周到な計画を建てる人物と推理できる。しかし私の手にかかればこうやって丸裸になってしまうだがな」
男「あれ? でも、トンネルって電波が通りにくいんじゃなかったか?」
幼馴染「その理由はだな。『電波増幅装置』だ」
男「電波増幅装置? そのまんまな名前だけど、アプリ使用者がアプリを使う為にわざわざ設置したのか?」
幼馴染「いや、それはない。このトンネルはこの町の都市開発事業の一部となっている。装置も地下鉄を□□街から繋げる計画の為に、設置されたものだろう」
幼馴染「それとこの装置自体は特別なものではない。どの場所の長めのトンネルにもこの装置は存在している」
幼馴染「後だな……今回、この事件を起こしているのは1人だと考えられる」
男「前みたいに戦闘員を使ってないってのか!?」
幼馴染「ああ。複数犯の場合、反応する円は幾重にも重なって表示される。今回のものはトンネル内部の一端末分の特殊電波をトンネル外部のアンテナが、増幅した状態の電波を受信してるんだ。つまり単独犯ということだな」
男「よほどの自信がなきゃあこんなことできないと思うけど……」
幼馴染「その通り。よほどの自信があるようだ。しかし、被害者がいる以上放ってはおけない。それに、厄介なのはそれだけではない」
幼馴染「――ヤツの反応がトンネルから一歩も外へ動いていないのだ」
男「トンネルから一歩も動いてない!? 協力者が食べ物を運んでいたとか……風呂とかどうするんだ、それ」
幼馴染「マジメに話を聞けっ! 住んでる訳なかろうが」
男「ご、ごめん」
幼馴染「……アプリ使用者は特殊電波の動きを見て大まかな移動場所を探知できる。蜘蛛男の逃走ルートも、課金ドライバーがその方法で調べていた」
幼馴染「しかしだな。今回は違う。トンネル自体には強い反応があるが、その周りには全く反応がない。動いた形跡そのものがないのだ」
幼馴染「男の言うとおり、文字通りトンネルの外へ『出ない(もうトンネルに住んでしまう)』という可能性も大いにあるが、私が予想したものはこれだ」バンッ
男「……」
幼馴染「タブレットを叩いているのだからタブレットに書いてある文字を見てくれ! その為だけに用意したんだから!」ドコミテルンダオマエハッ
男「……『トンネルの中以外でアプリを起動しない』?」
男「ああなるほど。こりゃ簡単だ。そもそも起動しなきゃ足がつかない仕組みになってるからな」
幼馴染「特殊電波単体で使用者自体を識別することはできないからな。調べられないよう気をつけていいたんだろう」
幼馴染「スケープゴートを用意している線も捨てきれないが……まあこんな感じだ」
男「よっぽど自分の正体を知られたくないんだな」
幼馴染「ふん。良いご身分だな。SNSでは『現実世界の人格』と『アカウント自身の人格』を全く別の物と考えて、切り替えている人間がいると聞いたがこれほどまで徹底しているとは……」
男「身バレしないように必死こいて……か」
男「ネットとリアルの区別が付かなかった結果がこれかよ。何が『魔のトンネル』だよ! 怖がっている人がいて、さらに大怪我する人だって出たんだぞ!?」
男「……幼馴染」
幼馴染「分かっている。少し待て」ゴソゴソ
男「そのデカい鞄はいい加減にk 幼馴染「待ってろと言っている……」ゴソゴソ
幼馴染「あったあった! ドライバー! 起きろ! 仕事だぞ!」
課金ドライバー「音声ロック解除。起動シマス。……マスター、オハヨウゴザイマス」
男「おい、ドライバー。話は聞いていたよな」
課金ドライバー「エエ」
男「なんか知らんが悪いことしてる奴がいたって知ったからには見過ごせないんだよ。手伝ってくれるよな?」
課金ドライバー「モチロンデス。ソレガ私ノ役目デスノデ」
男「……今回で最後だぞ」
課金ドライバー「……了解。デハ早速、現場ニ急行シマショウ。外デ『マシンチャージャー』ガ発進準備ヲシテイマス」
男「よし、ドライバーはナビよろしく。幼馴染はどうするんだ?」
幼馴染「私は現場に行っても足手まといになるだけだから……ここで男のバックアップをするよ。それにまだこの件について調べたいこともある」
男「分かった、必要な時は連絡する。泊まってくなら風呂使えよ」
幼馴染「お風呂セットの準備はしてある」フフ
男「はいはい。じゃあな、行ってくる」
課金ドライバー「チョット待ッテクダサイ、男様」
男「……なんだよ」
課金ドライバー「所持金ハ確認サレマシタカ?」
男「……あっ」
課金ドライバー「失礼デスガ現在ノ所持金ハ……?」
男「……700円」
幼馴染「……」ジー
男「忘れてた訳じゃないし、戦う為に使ったからだよ! しょうがないだろ! それ以外は使ってなかったから逆に褒めてほしいくらいだわ!」
男「と、いうか!!」
男「お前の銭ゲバ趣味のせいで俺、金取られまくってるんだけれども!」
男「課金しなくたっていいシステムにしろよ! 幼馴染に金払う関係って一体!」
幼馴染「何を言ってるんだ」
男「へ?」
幼馴染「この課金ドライバーを作るのにいくらかかったと思う」
幼馴染「課金とは価値のある物にそれ相応の対価(料金)を求むこと。この課金ドライバー程の力を使うためにはそれ相応の対価を支払う必要があると思わぬか?」
男「えぇ……まあ確かにこの技術はすごいと思うが」
幼馴染「労力に見合った賃金を要するのが社会ではないのか? 親しき間柄にあってもそこに金銭が絡むのであれば話は別、ということだ」
男「ぬう……正論っぽいな。多分そうでもないんだけど」
幼馴染「だろう?」
男「……まあ、いいか。幼馴染には食費諸々わざわざ出してもらっちゃってるし」
幼馴染「それは男の作る料理が美味いからだ! サービスに応じて対価を払う、これも一種の課金だな!」
課金ドライバー「アノ、痴話喧嘩ハモウ終ワリマシタカ?」
男 幼馴染「「痴話喧嘩じゃないっ!」」
――男の家 ガレージ前
ブロロロ…
課金ドライバー「ストックサレタ【ウェポン】ガ、3ツアリマス。今回ノゴ利用金見積モリトシマシテハ……」
課金ドライバー「『マシンチャージャー』一回ノ使用ニ100円。一回変身サレテ100円……200円デスネ。活動ハ計算上可能デス」
男「ほら! 行ける! 大丈夫だろ?」
男「よし、行ってくるからな! よい……しょっと。マシンチャージャー、発進!」
課金ドライバー「デハイッテマイリマス」
マシンチャージャー<ブロロロロ…
…
幼馴染「男のやつ……大事な時にポカするから心配なんだよなあ……」
――道路
マシンチャージャー<ブロロロロ…
男「チャリ台引いて残金470円……」ゴクゴク
課金ドライバー「ソノ計算ハ間違ッテイマス」
男「いいんだよこれで」ゴクゴク
課金ドライバー「何ヲ飲ンデイルノデスカ?」
男「マウンテンデューだよ」ゴクゴク
課金ドライバー「分カリマシタ。コレガ計算ヲ間違エタ理由デスネ。無駄遣イハイケナイト何度モ言ッタノニ」
男「うるさいよ。もうすぐトンネル着くぞ」
マシンチャージャー<ブロロロロ…
――『魔のトンネル』
チャージャー<ブロロロロ……キキッ
男「自転車はここにおいて、と」
課金ドライバー「警告、路上駐車ハ交通違反デス」
男「車通りも人通りも少ないし平気だって。うん、あまりこっちに来たことなかったんだけど思っていたより普通のトンネルだ。電波増幅装置はどこにあるんだ?」
課金ドライバー「コノトンネルハ、山ノ側面ニ掘ラレテデキテイマス。装置ハ山ノ頂上ニ設置サレテイマス」
課金ドライバー「マサカソレヲ壊シテシマオウダナンテ……思ッテハイマセンヨネ?」
男「よく分かったな」
課金ドライバー「トンデモナイ! 公共事業デ作ラレタ物ヲ破壊スルトイウコトハ、ドウイウコトカ今一度考エテクダサイ。犯罪デスヨ!」
男「あぁ……ごめん。忘れてたよ」
…
男「……11時57分か。そろそろ何か聞こえて来てもいい気がするんだが」
苦しんでいる男「うぅ……あ、熱い、痛いぃ……」
男「人!? 大丈夫ですか!?」
苦しんでいる男「あぁ……あ、あ、あ゛」
男(すごい大怪我だ……。火傷……? これ、まるで……)
苦しんでいる男「……れられた」
男「何ですか?」
苦しんでいる男「逃げられたんです……縺代′襍キ縺……に……」
男「よく聞こえない……だ、誰に?」
苦しんでいる男「……お前だよ、男」
苦しんでいる男「……うぅ、自分の父親の、顔が、分か、らな、いの、か?」
男「!?」
男「や、やめろよ……違う、違うんだよ、違うんだ。そんな、だって、俺は……」
苦しんでいる男「あぁ、そうか。分からないはずだな。だって私の顔が……」
苦しんでいる男「こんなにも爛れているのだからなあ……ハハ、ハハ、なぁ、男……」
幼馴染の父「私も」
幼馴染の母「私も」
男の母「私も」
「「「「お前が助けにこないから 死んでしまったんだよ」」」」
アハハハハハハハハハハハハハ……! アハハハハハハハハハハハハハ……!
男「あ、ああ――」
……
男「あ、あぁ……あ、あ、あ」ガクガク
課金ドライバー「異常検知異常検知! 精神ニ、訂正、脳ニ攻撃ヲ受ケテイマス。回避行動ヲ取ッテクダサイ。警告、回避行動ヲ取ッテクダサイ」
男「ごめんなさい……ごめんなさい……。俺は、俺は誰も……助けられなかった……」ガタガタ
課金ドライバー「回避行動ヲ……。音声ガ届イテイナイヨウデス。敵ノ熱反応モ感知サレマセンデシタ。一体ドコカラ攻撃ヲ!?」
男「ぅ、うぅ……ひっく……俺も父さんと母さんのところに……」
課金ドライバー「ナ、自殺行動ハイケマセン! 回避行動ヲ……回避……ウゥ、自分ガ機械デアルコトガナサケナイ!」
男「……が、ぎ、あ゛」
課金ドライバー「ヤメナサイ! マスターダッタラ、マスターダッタラドンナ行動ヲ取ルカ……」
課金ドライバー「ソウデス! マスターノ声ヲ男様ニ聞カセラレレバ――」
――過去の記憶
男(幼)「おれ、ひーろーになりたい」
男の父(以下 男父)「どうしてだい?」
男(幼)「みんなのことがだいすきだから! みんなをまもるひーろーになるんだ!」
男(幼)「とーさんもかーさんも、おさなちゃんもおさなちゃんのママもパパもみんなだいすきだよ!」
男(幼)「だいすきなみんなをまもるひーろーにぜったいなるよ!」
男父「ははは、男は偉い子だな」
男の父「男は絶対にヒーローになれるよ。みんなを守れるヒーローにね」
男(幼)「やったあ!」
――過去の記憶 ???研究所
男(中学生)「父さん! なんで……なんでラボが燃えてるんだよ!?」
男父「大丈夫、大丈夫だ。落ち着け……」
男「できるわけあるかよ! 幼馴染のママさんも青田さんも……宮本さんも川上さんも南原さんも!」
男「母さんも!」
男「みんな……みんな死んでるんだぞっ!?」
男父「そうか……すまない……全ては僕のせいだ」
男「説明しろよ! 何が会ったんだ――」
男父「教えられない……いや、教えたくないんだ。大丈夫、奴も男や幼馴染ちゃんまで狙わないはず。だから――」
男父「ぐっ……」フラ…
男「父さん!? その傷!」
男父「男……火の手がこっちまで来てる。もう危険だ。幼馴染ちゃんだけでも連れて、早く逃げなさい」
男「父さんは!?」
男父「僕はやり残したことがあるんだ。男とは一緒に……行けない」
男「えっ……でも――」
男父「もう充分お前には助けられたさ。でも僕達の分は今日で任務完了だ」
男父「だって……子どもに守られてばっかりの父親じゃあかっこつかないだろう?」
男「……」
男父「……ありがとう、男。お前は僕の自慢の息子だ」ダッ
男「父さん? おい! どこに行くんだよ! 父さん!――」
…
――過去の記憶 研究所の外
「ポンプ車こっちだ!」
「人がまだいるらしい! しかしダメだ! これでは救助できない!」
「話ができるのは!?」
「研究所が出てきたのはあっちにいる男の子と女の子、二人だけだ!」
男「み、みんな! 今助けに行くからな!」
幼馴染(中学生)「ダメだ男!」グッ
男「離せ! みんなが……まだ生きてる人がいるかも――」
幼馴染「ダメだ!」
男「離してくれ……っ!」ドンッ!
幼馴染「あっ……! いた……っ」ドサ…
男「ご、ごめん。でも――」
幼馴染「ダメだ……男……言っちゃダメだ……」
幼馴染「だって……もう……うっ……だって……みんな……もう、ひぐっ……助からない……!」
男「俺なら……助けられるよ! だって……俺は」
幼馴染「やだ!」
幼馴染「男まで……いなくなったら、私は、私は……うぅぅ……」
男「……」
「研究所が崩れるぞ! 退避ーーっ!」
「救助はもう無理だ! 一度離れるぞ!」
男「俺は……大好きなみんなを……守れなかった……?」
男「俺は……」
…
『おい! 男!』
『起きろ!』
幼馴染『起きろ、男! いつまで寝ているつもりだ!』
――『魔のトンネル』
男「はっ!」
幼馴染『和田アキ子かお前は……』
男「俺は今まで一体何を?」
幼馴染『『魔のトンネル』からの攻撃を受けていたのだ。夢、少し悪い夢を見させられていたのだよ』
男「通りで頭が痛いはずだ。で、死者の声とやらはどこに?」
課金ドライバー「ソレガ……」
男「感知できない?」
課金ドライバー「ハイ。敵ハ確カニコノ場所二イルハズナノデスガ、私ノセンサーガ数分程前カラ原因不明ノ停止シテシマイ……正確ナ位置ガ分カラナイノデス」
幼馴染『……ドライバーの動作を妨害する輩がいるのか』
幼馴染『アプリ内には光学迷彩効果を持った【ウェポン】もある。それを使っているのか視認も難しい』
男「へ、へえ。俺に攻撃して、ドライバーにも妨害行為を行っている、と。これじゃあまるで俺たちが……」
ガシャン
蝙蝠男?「……」ヴィィン…
男「……追い詰められたみたいな……」
蝙蝠男?「……電波攻撃失敗ヲ確認。フェーズ2ヘ移行。対象ヲ補足。攻撃ヲ開始シマス」
男「な、なんだアイツ!? 幼馴染、教えてくれ!」
幼馴染『あ、あいつは……『ドローン』! まさか、死者の声の正体は遠隔操作された機械d……ザッ……ザッ……』ブツン
ツー、ツー、ツー
課金ドライバー「通話ヲ強制終了シマシタ。電話回線ガ繋ガリマセン!」
蝙蝠男?「回線強制切断。範囲内ヲオフラインニ設定シマス」
男「つまりどゆこと!?」
課金ドライバー「ツ、ツマリハ私達ハ現在外部トノ連絡ガ不可能状態デス」
男「要するに!?」
課金ドライバー「孤立無援状態デス!?」
男「最悪だな!!」
蝙蝠男?「……マスターヘ警告送信完了。攻撃対象数1」ガシャン ガシャン
男「どうやら、逃がしちゃくれないようだな」
課金ドライバー「ノ、ヨウデスネ。敵接近。距離100m」
蝙蝠男?「……」ガシャン ガシャン
男「で、ドライバー。『ドローン』って?」
課金ドライバー「『ドローン』トハ、簡単ニ言エバ、人型ノ【ウェポン】デス。人間ノ代ワリニアーマーヲ着テ戦ウタイプノロボットデス。距離70m」
蝙蝠男?「……」ガシャン ガシャン
男「【ウェポン】? 人間じゃないのか?」
課金ドライバー「ハイ。ドローンハ超硬度プラスチック製ノ機械人形。アーマー自体ハ、人ガ装着シタ姿ト同ジナノデ、特殊ナセンサーヲ積ンダ私ノヨウナ機械デナケレバ、見タ目ノ判別ハ難シイカモシレマセンガ。距離30m」
男「そのセンサーが今使えないっていうのは問題だな」
課金ドライバー「返ス言葉モゴザイマセン」
男「で、あいつ強いのか?」
課金ドライバー「カナリ。彼ラハ機械ナノデ人間トハ違イ、自制トイウ概念ガ存在シナイノデ多少ノ無理ガキキマス」
男「……オーケー」
蝙蝠男?「攻撃射程内ニ入リマシタ。攻撃開始シマス」ガチャン
蝙蝠男(ドローン)「一定戦闘力ヲ持ツト予想サレル侵入者ヲ発見。無力化シマス」
課金ドライバー「相手トノ距離3m以内。危険デス、回避行動ヲ取ッテクダサイ」
男「……」
蝙蝠男「攻撃開始」バッ
課金ドライバー「行動予測、空中カラノ打撃。正面デス。回避行動ヲ取ッテクダサイ! 回避行動ヲ取ッテクダサイ! 回避行動ヲ取
男「『課金ドライバー起動』!」チャリンッ
ギュウィィィィイン…
蝙蝠男(ドローン)「原因不明ノフリーズガ発生。原因不明ノフリーズガ発生。動作ガ凍結サレマス。指示ノ再入力ヲ――」
課金ドライバー「音声認承完了。ログイン確認シマシタ。男様……!?」
男「変身準備中は戦闘員アプリが動かなくなるんだろ? なら……こっちにだって策はあるんだ! ギリギリまで引きつけて、フリーズさせた」
男「……おい! よく分かんねーロボット野郎! ご主人様に伝えておけ! コソコソ隠れてないでさっさと出て来いこの卑怯者、ってな!」
蝙蝠男(ドローン)「ギ、ギギ」
課金ドライバー「本日ノパスワードトコールノ入力ヲ!」
男「了解っ。アーマー展開、使用確認書既読、パスワード『その命(アカウント)、神(運営)に返しなさい』」
男「見てろよ、これがお前に見せる最初で最後の『変身』だッ!」
ピピッ
課金ドライバー「アーマー展開開始、コレヨリ変身シマス」シュウウウ…
課金ドライバー「変身完了シマス」シュウウウ…
蝙蝠男(ドローン)「プログラムノ再設定ヲシテクダサイ。プログラムノ再設定ヲシテクダサイ。プログラムノ――」
課金ライダー「ほお、お前も蜘蛛男と同じで応用が効かないタイプか」
課金ライダー「この間合いなら行けるッ、課金ライダー……パァァアンチッ」ガキッ!
蝙蝠男「ガ、ガ……アーマー損傷率20パーセント。本体損傷率ガ、ガガ……プログラムノ再設定ヲシテクダサイ。プログラムノ再設定ヲ……」
課金ライダー「こ、こいつ固いぞ! 拳割れる!」
課金ドライバー「最初ニマスターガ説明シタハズデス。男様ノ身体能力ハ課金ライダーノ鎧ニヨッテ強化サレテイル訳デハナイノデス!」
課金ライダー「うう、でも格闘で倒したいだろ!? 課金したくないし!」
課金ドライバー「デスカラ!」
――???
蝙蝠男「クソッ!」ダンッ!
蝙蝠男「ドローンの攻撃が失敗? そんな馬鹿な!」
蝙蝠男「プログラムの再設定なんかしたら……場所が特定されてしまうじゃないかっ!」ダンッ! ダンッ!
蝙蝠男「誰だ? 誰だ私の計画を邪魔する者は!?」
蝙蝠男「クソッ、クソッ、クソッ! 指令を送って、電波の範囲を調べられたら私の計画は丸潰れだ……」
蝙蝠男「い、いや、そうだ……まだ『あれ』がいる……! ふ、ふは、はははは……」
蝙蝠男「ドローン! プログラム再設定! 再び『対象を無力化』せよ! これなら、例えドローンが破壊されても、電波範囲を特定されても、時間は稼げる!」
???「――先生? 電気消しますよ?」
蝙蝠男「は、はい。今……!」
蝙蝠男「……」
蝙蝠男「ドローン兵を攻撃した奴は誰だ……調べなくては」
蝙蝠男「目撃者は……徹底的に調べて『削除』しなければ」
――『魔のトンネル』
蝙蝠男(ドローン)「……プログラム再設定完了。『対象ヲ無力化』」ガシャン
課金ライダー「ま、また動き出した! おい、ドライバー! お前とやいのやいのしてたらロボットが動き出しちゃったじゃんかよ!」
課金ドライバー「私ハ無実デス。弁護士ヲ呼ンデクダサイ!」
蝙蝠男(ドローン)「攻撃、攻撃。胸部装甲重点……打撃」ガキィンッ!
課金ライダー「ぐァ、ああ゛ッ……」バチィッ
課金ドライバー「アーマー損傷率20パーセント。ドローンノ狙イハ人間ノソレヨリ遥カニ正確デス。次ノ攻撃ニ備エテクダサイ」
課金ライダー「そ、そう言われても……ぐッ、来る!?」
蝙蝠男(ドローン)「回避パターンヲ予測。胸部装甲ニ……打撃」ガッキィィン…
課金ライダー「う、あああああッ!」バチバチッ
課金ドライバー「アーマー損傷率40パーセント。動力部ニ支障ガ出ル可能性ガアリマス! 回避ノ用意ヲ!」
課金ライダー「ど、ドライバー! 1日1回無料ガチャを引かせてくれ!」
課金ドライバー「現在、ネットワークガオフライン設定ニサレテオリマス。ガチャシステムハ現在使用不可デス」
課金ライダー「そ、そんな!」
蝙蝠男(ドローン)「胸部装甲ニ……打g 課金ライダー「ライダァアー……突き飛ばしっ」ググッ…ドンッ!
蝙蝠男(ドローン)「ガ」ゴロンッ
蝙蝠男(ドローン)「ガガガガ」ジタバタジタバタ
課金ライダー「ほら、ドライバーっ! 今のうちに良さそうなウェポンを!」
課金ドライバー「私ハドラエ〇ンデハアリマセン」
課金ライダー「早くっ!」
課金ドライバー「……了解。【ウェポン】【N】【チェーンシールド】 出力シマス」
課金ライダー「鎖付き盾か。ああ、それと……相手が機械なら……手加減しなくていいんだよな!?」
課金ドライバー「元々ストックシテアル【ウェポン】ノデータデアレバ、今ノ所問題無ク出力デキマス」
課金ライダー「知ってる! それより使い方!」
蝙蝠男(ドローン)「ギ、ガ、『対象ヲ無力化』……攻撃再開シマス。跳躍」バッ
課金ライダー「と、飛んだぞあいつ!」
課金ドライバー「空中カラノ攻撃ガ考エラレマス。回避行 課金ライダー「分かってる! ライダー……防御!」ギィンッ
課金ドライバー「男様ノネーミングセンスハ安直過ギマス」
課金ライダー「やかましい」
蝙蝠男(ドローン)「ギ、攻撃失敗。行動パターン修正、次ノ攻撃行動ヘ移行」
課金ライダー「思い通りにはさせないぜ? ライダー……鎖絡め捕り! 巻き取られな!」シュルルッ!
蝙蝠男(ドローン)「ギィ……行動不能行動不能」ギチッ…
蝙蝠男「……一定損傷率ヲ超エマシタ。コレヨリ、防御命令ヲ破棄シ、対象ノ無力化ヲ重点トシタ攻撃ヲ開始シマス。電波攻撃準備用意」
蝙蝠男(ドローン)「……」
課金ライダー「動けない今がチャンスだ! このままトドメを刺してやるよ! ドライバー! 新しいウェポンを!」
課金ドライバー「……」
課金ライダー「ドライバー?」
蝙蝠男(ドローン)「……」キィィィィィィンン
課金ライダー「お、お前! ドライバーに何をした!?」
蝙蝠男(ドローン)「……」キィィィィン…
課金ライダー「おい! ドライバー! お前が動けないとウェポンが!」
課金ドライバー「チ、チャー、ジャー、ヲ、ソウサ、シ、テ」
課金ライダー「チャージャーを操作? 分かった! ドライバーが遠隔操作してたくらいだ! 俺だって気合で!」
蝙蝠男(ドローン)「……」キィィィィン…
課金ドライバー「ガ、ア゛ア゛、ア゛ア゛」バチバチ
課金ライダー「ドライバー!」
課金ライダー「動けチャージャー!」
マシンチャージャー<…
課金ドライバー「グ、ガ、エ、エラーガ発生シマシ、ト、テ、タ、タ、タ……」バチバチ…
課金ライダー「動け! 動け! 動け動け動け動け動け!」
蝙蝠男(ドローン)「対象沈黙確認。コレヨリ…」
課金ライダー「動けえええェーーーーーーッ!!」
蝙蝠男(ドローン)「!?」
マシンチャージャー<!
マシンチャージャー<ブロ、ブロロロロロロォンッ!
課金ライダー「マシンチャージャー、『アタック』!」
マシンチャージャー<グォォォォンッ
蝙蝠男(ドローン)「ヌァッ!」バキィィッ!
蝙蝠男(ドローン)「アーマー損傷率80パーセント超。動力部ガ破損スル恐レガアリマス。カスタマーサポートニ連絡シテクダサイ」バチバチ…
課金ライダー「名付けて……マシンひき逃げアタック!」
マシンチャージャー<ブロロ…
課金ドライバー「再起動中、再起動中……。再起動完了」ィィンッ
課金ライダー「ドライバー!」
課金ドライバー「ハイ! タダイマ戻リマシタ。チャージャーノ動カシ方ヲ数秒デマスタースルトハ、サスガデス男様」
課金ライダー「そこは気合いだよ、気合い」
蝙蝠男(ドローン)「ギ、ギ、最終指令『特攻』。了解シマシタ」バチ…
課金ライダー「もう一度トドメ、行くぞ!」
課金ドライバー「了解。【ウェポン】【R】【ビッグアックス】出力シマス」ブゥゥン…
課金ライダー「で、でっか! 重ッ!? でも……叩き斬るにゃあ丁度良い!」
課金ライダー「来いよ……蝙蝠野郎!」
蝙蝠男(ドローン)「ガ、ガガ、ガガガ!! 特攻シマス、特攻シマス、特攻、特攻」ガガガガガガガガガ!!
課金ドライバー「我々ニ捨テ身ノ体当タリヲシ、自爆スルツモリデス! 最新ノ注意ガ必要デス。タイミングニ合ワセテ攻撃シテクダサイ。先程計測シタ所、最高速度ハ時速240km」
課金ライダー「当たらなきゃいいんだろ? 斧は構えるだけでいい。なら……」
課金ドライバー「カウント開始シマス。9、8、7、6、5、4」
蝙蝠男(ドローン)「グォオオアアアアアアッ!!」ギュウウウウゥッ
課金ドライバー「3」
課金ライダー「……」ゴクリ
課金ドライバー「2」
蝙蝠男(ドローン)「ォォォォォォォォォオオオッ!!」ウウウウウウウウウゥッ
課金ドライバー「1」
蝙蝠男(ドローン)「ガ……」バチバチ
課金ライダー「課金アックス、ダイナミィイィイィックチョップッ!」
カッ!――
…
蝙蝠男(ドローン)「損傷率、100パーセント超、再起、不、不、不n、不能」バチッ、バチッ、バチッ
蝙蝠男(ドローン)「デデデデデデータ送信完了、完了完、完了」バチバチ…
課金ライダー「……」
蝙蝠男(ドローン)「……最後ノ命令ヲ実行シマス」
課金ライダー「な、自爆する気か!?」
課金ドライバー「イエ、モウソノパワーモ残ッテイマセン。攻撃ハ失敗。『彼』ガ最期ニスルコトハ……『全データノ消去』……『自殺』ノヨウナモノデス。足跡ヲ残シテハイケナイトイウマスターノ命令ヲ守ルノデス」
課金ライダー「俺はどうすればいいんだ?」
課金ドライバー「見守ルシカアリマセン」
蝙蝠男(ドローン)「……」ガ、ガ、ガ…
蝙蝠男(ドローン)「完了。アーマー解除シマス……」キュウウ…
ドローン「」
課金ドライバー「ドローンノ沈黙ヲ確認。妨害電波等モ発信停止確認」
課金ライダー「……なぁ、ドライバー」
課金ドライバー「申シ訳アリマセン。今ハ何モ答エルコトガデキマセン」
課金ライダー「……」
課金ドライバー「マスター、コノ気持チハ何ナノデショウ……?」
課金ライダー「よし、帰るか。あ、この壊れた人形は?」
課金ドライバー「……超硬化プラスチックノ特性上、時間ガ経テバ自壊作用ガ働キ6時間以内ニ風化スルデショウ」
課金ドライバー「ドノミチ、コノ損傷状況デハ解析スルコトモデキマセン」
課金ライダー「お、おう。そうか……」
課金ライダー「なんかさ」
課金ドライバー「ハイ」
課金ライダー「かわいそう……だな、こいつ」
課金ドライバー「……ハイ」
…
――男の家 男の部屋
男「ぐごー」Zzz…
幼馴染「ふふ、子供みたいによく寝てる。……しかし」
――
男「だーっ! 大丈夫だって! 少し変な夢見させられてただけだから! 頭に変な機械付けんな!」ジタバタ
幼馴染「大丈夫ではない! 少しジッとしていろ!」
課金ドライバー「マスターノ言ウ通リニシテクダサイ!」
男「んあ~っ!」
――
幼馴染「ドローンが男に発射した超音波または電磁波の効果。ノルアドレナリンなどの過剰分泌作用。それが及ぼした過度なストレスによる幻覚、幻聴症状か。平気そうな顔をしているが脳の負担は計り知れない……」
課金ドライバー「男様ハ、コンナ重傷ヲ負イナガラモ戦ッテイタノデスカ」
幼馴染「ノルアドレナリンは闘争反応を発生させる場合もある。それで何とか乗り切っていたのだろう。しかしな……男は我慢し過ぎる節があるから――」
課金ドライバー「申シ訳アリマセン、マスター。私ガイナガラ……」
幼馴染「いや、ドライバーのした『私(幼馴染)の声を男に聞かせる』という判断は正しかった。気に病むことはないよ」
課金ドライバー「……」
課金ドライバー「ア、アノ、マスター!」
幼馴染「ん? なんだ?」
課金ドライバー「私ニハ本当ニ『感情』ガナイノデショウカ?」
幼馴染「……プログラム段階で私がお前にそんなものを入れた記憶はない。最初に説明したはずだ」
課金ドライバー「ソウ、デスカ……」
幼馴染「ドライバー。人間の『感情』といったものはどこから現れるのだろう」
課金ドライバー「ソレハ脳化学的ニ見レバ大脳皮質ノ 幼馴染「そういう意味ではない」
幼馴染「『心』というものは化学的観点で調べて全て分かってしまうようなものなのだろうか? という話だよ」
幼馴染「一説に意識や自我、一般に人が『心』と呼ぶものをある学者は『錯覚』だと言った」
幼馴染「しかしな、ドライバー。私は常々思うのだ。『人間の脳と全く同じ構成のプログラムを機械にインプットした時、その機械は【感情】を持つのか』とな」
課金ドライバー「……煙ニ巻キマシタネ、マスター」
幼馴染「はは、ドライバーは物をはっきり言うから好きだぞ」
課金ドライバー「……メモリノ消費ガ激シイ1日デシタ。私モ今日ノ所ハ、スリープモードニ移行シテ情報整理ヲシタイト思イマス。ヨロシイデショウカ、マスター」
幼馴染「ああ、いいよ。ドライバーも今日は疲れたはずだ」
課金ドライバー「……私ニハ疲労感トイウ物ハ存在シマセン。私ヲプログラムシタマスターガ一番知ッテイルハズデス」
課金ドライバー「オ休ミナサイ、マスター」キュウウ…
幼馴染「ああ」
幼馴染「……」
幼馴染「プログラムした『つもり』はなかったのだがなぁ……」
幼馴染「ん~。さて、私はもう一仕事するか」ノビーッ
幼馴染(……『戦闘員アプリ』のゲーム専用のものとは思えない規格外の能力。某会社は何をするつもりだ?)カタカタ
幼馴染(事業拡大は公共事業まで。あのトンネルも――)
幼馴染(一玩具会社が手を伸ばしすぎだとは誰も思わんのか)カタカタ
幼馴染「それに、このアプリ使用の特殊電波反応……」カタ…
幼馴染(観測された時間は0時24分。発信元は、男の通う(一応私も在籍していることにはなっているが)『〇〇県立〇〇高校』)
幼馴染(ドローンの持ち主。そして『魔のトンネル』に関する一連の事件の犯人は、この学校の中にいたといことになる。時間帯を考えて絞り込むと……生徒以外の職員)
幼馴染(今回トンネルは"何故か"工事中だった為、防犯カメラは一時撤去されていた。トンネル管理会社などに『課金ライダー』の存在は知られていないはず……いや待て)
幼馴染(あのドローン、頻繁にマスターに連絡を取っていたらしいな。まさか……)
男「ぐかー」Zzz…
幼馴染「……」
幼馴染「撮らせていた……のか? ドローンに……男の姿を……?」
つづく
※応援ありがとう本当にありがとう
後何話あるんだ
全50話くらい今度こそ完結するはずだ
普通に特撮ドラマのノリで見れるな、ワクワクする
50話もあるのかよ・・・(歓喜)
はい
>>171
まさか終わりじゃないよな
まだかしら
※ごめんなさい…今月中に必ず…!
楽しみ
まっとりますぞい
まってる
まだかしら
まつぞい
まだ今月・・・!まだ一ヶ月経っていない・・・!
まだだまだおわらんぞ
ライダーまだか
まだ今月
保守
※ごめんなさい保守させてください…
今度からは新規なんざ捨てて続きから書くんだったな
前回は続きから書いてたのに変に新たに読んでるやつ増やそうなんて欲を出すからこんな事になる
おれはまつぜ
ho
まだか
あ
まだかしら
はよ
二ヶ月だぞ
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