男「課金ライダー?」 (384)

――教室

男「課金とは……料金を課すること、ね」

友「そ、提供内容の利用に対して金を払うってこったな。今は間違った使われ方してるみたいだけど」

男「日本語って難しいなあ……」

友「俺たち日本人なのにな」

男「あー宿題やめーっ、明日ガリ勉から見せてもらおうぜ」

友「そうすっか、帰ろ帰ろ」

男「おう、ちょっと待ってな……」

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――校庭

モブ1「俺、ポイント【ジャンプ】に全部振ったぜ!」

モブ2「おおーっ、いいなそれー」

男「おっ、あいつら全身黒づくめでコスプレ大会か? 学祭近いもんな」

友「ちげーよ」

男「じゃなんなの」

友「黙ってあいつら見てろ……すげーから」

モブ1「飛ぶぞ……【ジャンプ】起動。ほいっ」ピョーン

男「は?」

友「すげーべ?」

男「俺の目がおかしくなけりゃあいつ1m垂直飛びしてたぞ!? た、たしかモブ1って文化部だよな? いや運動部だってあんなの……」

友「いや、プロスポーツ選手だってあんなの無理無理」

男「! 何かタネがあるんだな?」

友「そ、これがそのタネよ。俺のスマホの画面見てみ」ジャーン

男「き、【基本無料! THE戦闘員】?」

友「そ、これが今流行ってるアプリだよ。名前はダサいけど、この内容がすげーんだよ」

男「あ、後はいいや。俺別に興味ないし」

友「おいおい、俺がせっかく説明してやろうと思ってるのに」

男「高校生にもなってヒーローごっこはないわ」

友「付き合い悪いなー。お前、俺しか友だちいないんだからさー」

男「それはお前もだろ?」

友「ぐぬぬ」

男「まあさ、結局あのアプリには何か特殊な力で身体能力を大幅に上げたりする系のやつってところなんだろ?」

友「う、大体当たってる」

男「犬がアプリで喋る時代だし十分あり得る話だわ」

友「まあな……」

――男の家

昨日午後6時頃、〇〇区のコンビニエンスストアに銃を持った男が入り込む強盗事件が起きました。男は店員に銃を突きつけ「金を出せ」と脅し、現金10万円程を奪い現在も逃走しています。

男は防犯カメラを破壊し、店の防犯カメラのデータを消去した後に逃げたと見て警察は捜査を進めています。

男の見た目は170cm程のパーカー姿、蜘蛛のようなヘルメットを被って……

男「うわー、こわ。〇〇区って俺の家の近くじゃん。戸締まりしとこ」

犬「メシをくれ、メシを」

男「はいはい」

犬「今日もメシがうまい」

男「そりゃあ良かったな」

犬「うまいうまいメシがうまい」

男「犬にアプリつけたらうるさくてたまらん。ろくにオナニーもできん」

犬「うまい、メシが」

男「倒置方かよ」

犬「ところで男、父と母はまだ帰って来ないのか?」

男「帰ってこないよ、もう」

男「お前と来たらメシか父さんと母さんのことしか話せないんだな」

犬「なぜ帰って来ぬのだ」

男「死んだからだよ」

犬「なぜ帰って来ぬのだ」

男「死んだから」

犬「なぜ帰って来、むぎゅ、鼻を摘まむな鼻を」

男「ったく、犬が何しゃべってるのか分かっても、犬が俺が何しゃべってるのか分かんないんじゃ話になんないよな」

男「なんか寂しいからって犬に翻訳アプリつけなきゃ良かったよ」

男「噛み合ってるみたいに話してても虚しいもんな」

ピンポーン

男「はいはーい、こんな時間に回覧板か?」ガチャ

幼馴染「……やあ、男くんよ。入れてはくれんかね」

男「今日は何しに来たんだよ」

幼馴染「メシをな、食いに来たのだ。そのついでに発明品をだな」

男「『そのついで』が本題なんだろ? 仕方ないな、上がれよ」

幼馴染「わーい」

幼馴染「おい男よ、メシはまだか」

男「お前は犬かよ」

犬「呼んだか?」

男「呼んでない。幼馴染さんよ、来るんなら先に連絡しておいてくれよ」

幼馴染「通信状況が悪くなっていてな、連絡がとれなかったのだ。スマン」

男「一応女子なんだから男みたいな言葉は使うなよ」

幼馴染「スマンな」

男「話聞いてんのか? ほら、棒々鶏できたぞ」

幼馴染「わーい」

幼馴染「ごちそうさま」

男「お粗末さま」

幼馴染「で、ついでの話だ。いつものように聞いてくれるな」

男「しょうがないな、いいよ。好きにしろ」

幼馴染「さっき、私は男に通信状況が悪くて連絡できなかったと言ったな」

男「ああ、言った」

幼馴染「電波の状態が悪かったんだ。アンテナは圏外を示している」

男「ああ~、確かに俺も最近そういう時あるわ」

幼馴染「そう、それだ。それなんだ」

男「うん?」

幼馴染「最近電波の状況が悪くなる時間帯があるんだ」

男「そうなのか? 俺、携帯を一々確認してないからわからn」

幼馴染「私がそう言っているのだからそうなのだ」

男「おう……」

幼馴染「今は午後6時57分。私が男に電話をしようと思ったのが6時3分だ」

男「よく覚えているな」

幼馴染「記録していたのだ。『ある』記録をな」

男「お前はこうと決めたらとことんやっちゃうタイプだもんなぁ……」

幼馴染「えへへ」

男「誉めてはない」

幼馴染「で、だ。男よ、最近この街で起きている連続強盗事件は知っているな?」

男「あー、さっきテレビでやってた……。確かに最近多いよな」

幼馴染「情報によれば強盗が起きる時間帯は大体午後6時頃だそうだ。というのは……」

男「ぇーと、あーと、そりゃあアレか? 『通話の電波の状況が悪い時間帯』と『強盗が発生した時間帯』が何か関係を持っているんじゃないか、って言いたいんだな?」

幼馴染「そうそれだ! 鋭いな、流石私の助手だ」

男「いや、でもそれだけで決めつけるのは厳しくないか?」

幼馴染「そう、それだけで決めつけるのは厳しい。そこで私はこの2つの関係を繋ぐもう一つの証拠を見つけたのだ」

幼馴染「見よ!」

【基本無料! THE戦闘員】
☆★★★★

基本無料であなたも戦闘員に変身! 最新ホログラムにより再現されたモンスターを倒せ! 経験値を割り振ってパワーアップ! ポイントを貯めてガチャで最強のウェポンを手に入れよう! ※一部課金もございます

男「またこれかぁ……」

幼馴染「なんだ男、知っていたのか? ガラケーのお前は知らないと思っていたのに……」

男「まあ、な。で、これがさっきの2つとどう関係してくるんだ?」

幼馴染「このアプリの紹介分の少し下を見てみてくれ」

男「ああ……」

ご利用の環境によっては電波状況が悪くなる場合もございます。現在原因を調査中です、ご理解の上ご了承お願い致します。

男「なるほどな」

幼馴染「そういうことなのだ」フンス

男「つまり、犯人はこの変身アプリを使った人間だと言いたいんだな」

幼馴染「ああ、その通り。しかも、1人だけではない」

幼馴染「私もアプリを使って検証してみたが、通信を害するほどの電波の量はたかが知れている」

男「ちりも積もれば……山になる、か」

幼馴染「アプリを使っている人間は1人ではない。小さな妨害電波は大きくなりここまで影響を及ぼしているのだ」

男「集団強盗……でもニュースでは1人の男だけでやったように話されていたぞ」

幼馴染「それを調べに行くのだ!」

男「誰が」

幼馴染「私たち以外に誰がいるという!?」

男「いつ!?」

幼馴染「今日はもう犯行時間とはずれている。しかも、もう外は暗い。と、なると……明日か」

男「ちょっと待て! 心の準備がまだ……」

幼馴染「1日あるじゃあないか。もう事件は起きているのだぞ」

男「調べている時に襲われたらどうする? 一般人の俺らには武装した相手にどうすることもできないよ……」

幼馴染「できる! 犯人らが私の予想通りあのアプリを使っているものだとしたら、打つ手はあるのだ」

男「また変な発明を作ったのか? もう俺は実験台にはならないぞ」

幼馴染「ダメだ! 今回の発明品も男の為に作っているのだからな!」

幼馴染「今出す、待ってろ」ゴソゴソ

男「そのデカいカバンはどうにもならんのか」

幼馴染「ならん! 待てよ……これか? これだ!」ジャン!

男「べ、ベルトォ?」

幼馴染「否! アンチ戦闘員アプリ 自己防衛プログラム搭載強化変身防具展開装置だ! 略して!」

幼馴染「『課金ドライバー』!」

男「アホみたいに長い名前はさておき、ベルトで相手の首でもしめるのか?」

幼馴染「バカッ! 男はロマンというものはないのか!」

男「こんなゴツすぎベルトにロマンが詰まってるとでも言いたいのか?」

幼馴染「……変身ベルトだよ」

男「はぁ?」

幼馴染「目には目を歯には歯を! 戦闘員アプリにはヒーローアプリを! 男には身体を強化している戦闘員アプリに対抗する為に変身して戦ってもらいたいのだ!」

男「……」

幼馴染「どうした?」

男「探偵ごっこの次はヒーローごっこか、と思ってな。正直付き合いきれないぞ、これ」

幼馴染「そ、そんな! 結構乗り気だったじゃないか!」

男「冷めたんだよ。目が覚めたともいう。俺はヒーローものはとっくに卒業したんだぜ?」

男「後な、俺はもう誰も助けられない。誰も助けられない奴にヒーローは勤められないだろ」

幼馴染「男……」

男「ささ、帰った帰った。今日は風呂貸してやんないからな。自分の家で寝ろよ」

幼馴染「や、やめろ! 無理やり追い返すみたいにするな! うぅ……」

男「そんなに性能がいいなら自分で使えばいいだろ? 俺は普通の人間だ、幼馴染みたいに頭は良くないし、運動能力も人並みだ」

幼馴染「男の身長、体重、身体能力を元にして作ったベルトだ! このベルトは男にしか使えないようになってる! だから……」

男「また俺の身体測定やらの情報を学校から盗んだな。通報されたらシャレにならないぞ、やめとけ……」

幼馴染「そうじゃなくて! そうじゃなくて……だ……」

男「もう俺も高校生だ。幼馴染も俺以外の一緒に遊ぶ友だちと遊んだらどうだ?」

幼馴染「そんなのいないッ! 私はただ……男と昔みたいに……」

男「彼氏とか作ったらどうだ? かわいいんだからすぐにd」

幼馴染「バカやろォーーーーーーーーォォォォォォォォォ」

男「!?」

幼馴染「男のバカ、男の三千倍バカ。私はもう怒ったからな、明日は〇〇区のコンビニ『多分痔気分』に1人で行ってやる!」

男「あー、それは勝手にしろ。でも危なくなったら無理すんなよn」

幼馴染「ヤダ!」

幼馴染「そうだ、私だけだって強盗は倒せる。いいか、男。男が昔なりたかったものに私が先になってやるんだ!」

幼馴染「先をこされたら男はさぞ悔しいだろうなぁ~」

男「はいはい、分かった分かった。あんまり無茶なことはすんなよな」

幼馴染「ぐぅう……男、今に見てろよ! 男が忘れたものを私が絶対に思い出させてやるんだからな!」

男「はいはい。幼馴染こそ明日は学校来いよ。出席日数ヤバくなるぞ」

幼馴染「それとこれとは話がべt」

バタン

――次の日 教室

男「課金とは……」

友「もうやめようぜーこの課題。飽きた」

男「そうもいかない。提出は明日までだし、先生怒ると怖いぞ。授業中にお前と晒しあげられるのはもうイヤだぞ」

友「ガリ勉だってこの問題解けないんだぜ? 皆やってこないよー。最近宿題難しすぎじゃねー?」

男「お前が勉強しなさすぎなんだよ」

友「じゃあお前やってんのかよー」

男「……」

男「帰るか」

友「帰ろ」

――校庭

モブ1「俺たちまだ【N(ノーマル)】戦闘員だしなー」

モブ2「そもそも【アーマー】事態ガチャで出ねーからなー。あ、でもさ。こないだガリ勉の奴が【N】引いたって言ってたぜ?」

モブ1「マジかよ。【N】でも羨ましいぜ~、ホントに。合成したら【N+】になるじゃんかぁ~! 先越されるなあ……」

モブ2「俺たち無課金戦闘員だからなぁ……」

友「お、やってるやってる。おーいモブ1ー」

モブ1「お、友じゃんか。アプリの進み具合はどうなってるよ?」

友「それがさぁ~、【魔窟】から――」

モブ1「あぁ、それなら今から【協力プレイ】で――」

男(つ、ついてけねェ……)

男「おい、友。俺先帰るわ」

友「おう、じゃな」

モブ2「――でさぁ。今日の『多分痔気分』に――」

男「!?」

男(昨日、幼馴染が『多分痔気分』へ行くって言っていたな……。まぁ偶然だろ)

友「『集会』だろ? 『†蜘蛛†』さんの……行ったことないんだけど、あれってどんな感じなんだ? オフ会的なことをするのか?」

男(クモ? 確か強盗の特徴は『蜘蛛のようなヘルメット』……いや、考え過ぎだな。早く帰ろう)

モブ2「俺今日行くよ。なんか、【N】の【ウェポン】を幾つか持って来たら、【レアガチャチケット】と交換してくれるんだって。『†蜘蛛†』さん良い人だよなー!」

モブ1「『集会』行く人にだけ場所を教えてるのかぁ~。俺も行きたいなぁ……。今、【ミニメール】送ったら間に合うかなぁ?」

モブ2「【ミニメール】の締め切りは17:30までになってるから後4分だな」

モブ1「よっしゃ、早く送ろっと」

友「お? 男、まだ帰らないのか?」

男「……ああ」

男「……」

男「なぁ、モブ1、2。俺もその『集会』に参加したいんだけどさ……」

友 モブ1 モブ2「!?」

男(考え過ぎだったらそれでいいんだが……そうじゃなかった時は……どうする?)

男(幼馴染のやつ今頃コンビニに……。あいつは昔から危険なことに首を突っ込みたくなるタチだったな。俺だって昔はあいつと一緒にそれに巻き込まれて……それが案外楽しくて)

友「お前本気で言ってるのか?」

男「ああ、本気だよ」

モブ2「でもさ……」

男「何時からその集会は始まるんだ?」

モブ2「あ、あ、うん。『集会』は18時頃から始まるんだってさ」

モブ1(こいつ友以外と話してるの初めて見た)

男(昨日は幼馴染に冷たくしちまった。ちゃんと謝らないとな)

友「あのさ、男」

男「なんだよ、止めるなよ。今久しぶりに『やろう!』って感じになってるんだから」

友「いや、さ。行くのはいいんだよ。行くのは。そのなんだかよく分からない気力も伝わる」

友「けどさ、男。落ち着いて聞けよ」

男「ああ、早く言ってくれ……」

友「……」

友「……」

友「お前ガラケーじゃね?」

男「」

モブ1「wwwww」

モブ2「w」

男(忘れていた。うわー、恥ずかし)

男(無理じゃん、俺やっぱり何もできない奴じゃん……うわー、うわー)

友「まあ、さ。一応この戦闘員アプリはスマートフォン専用のものだからね。ガラケーのお前にゃできないワケよ」

モブ1「変身していなきゃ『集会』にもいけないしな」

男「……行かなきゃないのに」

友「……おい、どうした?」

男「どうするんだよ俺!」

モブ1(オダギリジョーかよ)

友「……」

友「貸すよ」

男「え?」

友「貸すよ、俺のスマホ。後、俺は【集会】パスな」

男「い、いいのか?」

友「二台あるし」シャキン

モブ1「金持ちの息子は違うわー」

モブ2「さっすが、某会社の重役の息子だなー。2アカウント使ってやってるんだろ?」

友「気にすんな、男。何か理由があるんだろ? 聞きやしないけどさ。お前が、俺がこの学校に転校して来てから、始めて声かけてくれたお礼、ってところだからさ!」

男「お……おう。ありがとう!」

友「早く行って来いよ、男。『集会』まで30分もないぞ!」

男「あ、ああ! 行ってくる!」

モブ2「俺も行こ」

モブ1「あ……話に夢中で【ミニメール】送ってない……。残念だけど、俺も『集会』パスな」

男「じゃあ、行ってくる!」

友「おう! また明日!」

友「……」

つづく

――コンビニ『多分痔気分』駐車場

モブ2(戦闘員姿)「『†蜘蛛†』さんまだかな……」

男(戦闘員姿)「それにしても集まった奴ら全員戦闘員姿で出席とはな。奇妙な集まりだ。こんな変な格好で警察に通報されたりしないのか?」

モブ2(戦闘員姿)「最近はアプリ仲間でのオフ会も多いしね、それはないと思うよ」

男「皆同じ格好をしてるから見分けがつかないな。こっちがモブ2か?」

戦闘員「は?」

男(戦闘員姿)「あ、すいません。人違いでした」

モブ2「おい! こっちだ! こっち! 話してる途中で話し相手の姿見失うとかどういう目をしてるんだお前は」

男(戦闘員姿)「辺りも暗くなってきたしなぁ……」

男(幼馴染のやつ、どこに隠れてるんだ?)

モブ2(戦闘員姿)「男はさぁ、何でわざわざスマホまで借りて『集会』に参加したがったんだ?」

男(戦闘員姿)「そうだな……何か嫌な予感がして……なんとなく……」

モブ2(戦闘員姿)「嫌な予感かぁ。不安になるなあー。ここ最近コンビニ強盗が多いから巻き込まれないように気をつけなきゃあ……」

ブロロ……

戦闘員「お前らーッ! 『†蜘蛛†』さんが来たぞォーッ! 総員、敬礼ッ!」

「「「「「イーッ!」」」」」

男(戦闘員姿)「い、いーっ……?」

モブ2(戦闘員姿)「ここはノリだよ、ノリ」コソコソ

男(クモとやらの乗ってる車……高そうだな。何の仕事をしてるんだろ?)

ガチャ

ホスト風「や、や。皆ご機嫌うるわしゅー」

男(こ、こいつが『†蜘蛛†』の正体!?)

ホスト風「皆よく集まってくれたね。うん、今日も戦闘員諸君は没個性でよろしい。没個性出会った方が『バレにくい』」

戦闘員「イーッ!」

ホスト風「うん、うん。今日は俺の『集会』に来てくれてありがとー」

男(軽い感じの奴だな。ホスト風で金持ち風なコスチューム、ブランド風な靴にバッグ、あの佇まいさえ偽物に感じる……)

モブ2(戦闘員姿)「おい、男。『†蜘蛛†』さんの話長いらしいから気をつけろよ」コソコソ

男(戦闘員姿)「お、おう」

ホスト風「じゃあ、さ。一言だけ――」

ホスト風「スマートフォンが急速に発達してから早十年。『ラピッドプロトタイピング』の小型化と共に発達したそれは、現在は超小型3Dプリンタとしての役割も果たしている」

ホスト風「副産物の『圧縮型超硬度プラスチック』の存在も忘れてはいけないね。これにより、全ての開発環境は新しいステージへ進んだんだ」

ホスト風「アプリも進化を遂げた。欲しい物をダウンロードし、その場でプリントして使うことさえできる。便利な時代だね」

ホスト風「そして、去年! プラスチック基板のプリント化が実現。そこに一つのアプリが生まれた!」

ホスト風「そう、【基本無料! THE戦闘員】だ」
ホスト風「このアプリでゲットできる【ウェポン(武器)】はこの技術を応用し、作られている。君たちがガチャで得ているのが、その【ウェポン】の使用許可証、または設計書」

ホスト風「この【ウェポン】に使われているプラスチックは生分解性プラスチックだ。しかも、空気中にいる微生物が急速に分解する為、武器として使用できるのは僅か3分程」

男(長い)

ホスト風「まぁ仕方あるまい。何故ならこれは『ゲーム内でホログラムを倒す為だけ』に存在しているものだからね」

ホスト風「所謂『雰囲気作り』。【アーマー】は違う。硬化プラスチックを使ったオーダーメイドのスーツ型防具だ。これくらいは分かっているね。だから僕はこれを――」

男(長い、話長いぞこいつ)

幼馴染「……」コソコソ

男(戦闘員姿)「いた! あ、おい、待て!」

幼馴染「見つかってしまったか! ぐぬ、逃げる!」ダッ

男(戦闘員姿)「おい、俺だよ! 俺! 逃げるな!」ダッ

モブ2(戦闘員姿)「まだ、『†蜘蛛†』さんの話の途中だぞ!」ヒソヒソ

男(戦闘員姿)「待てよ、幼馴染!」ダッ

モブ2(戦闘員姿)「行っちゃった……」

ホスト風「で、僕は某大学の――」

モブ2(今度は自慢話かよ……男がいなくなったの気づいてないし)

――路地裏

男(戦闘員姿)「俺だってば! 分からんのか!?」グイッ

幼馴染「新手のオレオレ詐欺か貴様はァ!」

男(戦闘員姿)「男だよ、男!」

幼馴染「この不届き者! 今度は男の名を騙るか! こうなったら私が変身して……」

男(戦闘員姿)「声で分からんのか!」

幼馴染「貴様、このアプリで変身した者は声に特殊なエフェクトがかかるのを知らないのか!」

男(戦闘員姿)「ああ、そうなのか。なら初めから変身解除をしておけば良かったな」

男「これでどうだ?」

幼馴染「お、男!」

幼馴染「な、何しに来た! ヒーローごっこはやらないんじゃなかったのか?」

男「……ごめん!」

幼馴染「!」

男「昨日は言い過ぎたよ、ごめん。お前は危ないことに頭を突っ込むタイプだからな。これでも心配してるんだよ」

幼馴染「む……」

幼馴染「……許す」

男(相変わらず許し方がヘタだな……)

ガシャアアアアーンッ!

男 幼馴染「!?」

――コンビニ駐車場前

戦闘員1「か、身体が! 身体が勝手に動いて……ッ」

戦闘員2「腕が止まんないよォォ……」

戦闘員3「なんで! なんでだよ! 俺たち、何で……」

「「「何でコンビニを襲っているんだ!?」」」

ホスト風「僕の話は長かったでしょ? ああ、長かったはずだ。あのアイテムを『ローディング』するには時間がかかるからね、少し時間稼ぎをしていたんだ」

戦闘員4「あいつら一体蜘蛛さんに何されたんだ!?」

ホスト風「【SR】マインドコントロール」

戦闘員4「!!」

ホスト風「本当はゲーム内での敵を洗脳する【ウェポン】だね。少しデータを弄って、戦闘員アプリ使用者に範囲を広げたんだ。これをゲットするのに幾らつぎ込んだか……」

戦闘員5「あ、あんたもしかして!」

ホスト風「そう僕が噂のコンビニ強盗。さて、そろそろ僕の出番かな? ……アーマー展開、規制解除、倫理コード解放、『変身』」

戦闘員6「これが【SR】のアーマーなのか……うらやましい」

蜘蛛男「僕さぁ、お金は欲しいけど自分の手は汚したくないんだよね。だから変わりに君たちにやってもらってるってワケ」

蜘蛛男「倫理コードがかかっている君たち無課金【N】戦闘員は人を直接攻撃できないからね。利用価値はこれしかないともいう」

蜘蛛男「まぁ、こうして没個性な君たちは顔が割れないワケだし。警察に密告し(チクッ)たら……まぁ、分かるよね?」

蜘蛛男「最後は僕が店員に銃を突き付ければ終わり。主役は最後に出ればいいさ」

戦闘員5「早く警察を……」

蜘蛛男「待ちなよ戦闘員くん。君にはまだやることがあるんだよ」

蜘蛛男「さぁ、『そこの陳列棚にあるものを全部盗ってきて』」

戦闘員5「いやだ……やめろ……そ、そうだ変身解除、変身解除さえすれば……!」ギギギ

蜘蛛男「もう君たちの身体は僕の手の中にある。そんなことはもうできないよ」

戦闘員5「う、うわああああああああああ!!」ギギギ

ガシャアーン

うわああああああああああ

助けてえええ

幼馴染「やはりアプリ使用者が犯人か。ちなみに、この光景は録画済みだ。あの蜘蛛男気づいてはいない」

男「な、なぁ。幼馴染……」

幼馴染「なんだ?」

男「やっぱり『変身』して戦わなきゃあイカンのか? そもそも警察を呼べば……」

幼馴染「ダメだ、『これ』は警察の手には負えん。私が判断した。奴らに対抗するには男が『変身』しなければいけないのだ」

男「……今回だけだぞ。これが終わったらお前ももう絶対に危険なことに首突っ込まないこと!」

幼馴染「……さぁ、頼んだぞ男。男が敵の気を逸らしている間、私は従業員を避難させる。後は『チュートリアル』に従ってくれ」

男「ああ、ここまで来たなら行ってやる! 今日の俺は『ヒーローごっこ』したい気分だ!」ザッ

コンビニ店員「や、やめてくださいっ!」

戦闘員1「ひ」バキッ

コンビニ店員「うわあっ!」ドサッ

戦闘員1「おい……どうすんだよ……俺。人殴っちゃったよ……」

コンビニ店員「う、うぅ……早く警察を呼ばなきゃ……」

蜘蛛男「そうはさせないよ。戦闘員1君、ヤりたまえ」パチン

戦闘員1「や、やめろ! 身体が勝手に【ウェポン】を起動させて……」

『【ウェポン】【N】ソード起動シマス』

コンビニ店員「う、あ……こっちに武器を向けないでください……殺さないで……」

戦闘員1「たのむよ……早く……早く逃げてくれよお……」ジャキン

戦闘員1「殺したくないんだよおおおおおおッ!」

男「待てッ!」

蜘蛛男「!?」

蜘蛛男「誰だお前は……」

――

戦闘員1(良かった……動きが止まった……)

コンビニ店員「た、助かった?」

幼馴染「店員さん! こっちだ! 今のうちに早く逃げろ! 店内にいる他の人もだ!」

コンビニ店員「え、あ、はい!」

――

男「……」

蜘蛛男「誰だお前はと聞いているんだッ!!」

男「うるせぇッ! 今何て名乗ろうか少し困ってるんだよッ!」

蜘蛛男「野次馬かな? 近隣に住宅の無いコンビニを狙っていたが、音が大きすぎたか……。仕方ない、君には消えt」

男「『正義の味方』」

蜘蛛男「は?」

男「俺は『正義の味方』。お前のような悪を倒しに来た」

男「そんなところだ」

蜘蛛男「……」

蜘蛛男「…………」

蜘蛛男「………………」

蜘蛛男「は?」

蜘蛛男「あは、あははははははは……」

男「何か可笑しいことでも言ったか?」

蜘蛛男「可笑しいも何も……僕が悪ゥ? はははははははは……」

男「コンビニ強盗が悪じゃなくてなんなんだ!」

蜘蛛男「僕はね、やりたいことがあるんだ。『これ』はその為の資金稼ぎ。『持っている者から奪う』『力が無い者から奪う』これが一番手っ取り早いし――」

蜘蛛男「楽しいんだ。僕、何か可笑しいこと言っているかい?」

蜘蛛男「課金すらできない貧乏人をエサで釣って、代わりにやってもらっているんだ。聞いてよこの悲鳴!」

きゃああああ

ひいいいいいっ

蜘蛛男「これ、『あいつら』がやったんだぜ? 僕の手は汚れない! 店員は命乞いしながら金を出す!」

蜘蛛男「キモチイイ……」

男「狂ってやがる……」

蜘蛛男「分からなくてもいいよ。偉人は人に理解されないと言うしね。凡人には分かり得ない次元まで来てるんだよ、僕は」

男「……もう話す必要すら感じないな」

蜘蛛男「同感だね。初対面の相手にここまでコケにされたのは初めてだ。ゲーム内ならブロックすれば終わる話だけど、今回はそうはできないからね……。さ、おいで」

「う……あ……男ォ……」ザッ

男「お、お前!」

「助け……て……」

男「ま、まさか」

モブ2(戦闘員姿)「助けてくれよォォォォォォォォォォッ!」

男「モブ2!」

蜘蛛男「処刑人は彼だ。おや、知り合いみたいだね。かわいそうに。でも、しょうがないね。さ、早くあの目撃者を処刑するだ」パチン

モブ2(戦闘員姿)「う……いやだ……やめ……ろ」ガシャン

男「……」

男(幼馴染がさっき言っていたことを思い出せ……!)

――

幼馴染「アプリ使用者はアプリが停止状態にならない限り死んでも動き続ける」

男「ま、まさか……お前俺に人殺しをさせようってこt」

幼馴染「馬鹿者。男にそうさせない為の『課金ドライバー』だ」

幼馴染「変身した者のスマホは主にベルトのバックルのように腰についている」

幼馴染「腰のスマホを狙って攻撃するのだ。スマホを破壊すれば強制的に変身は解除される」

男「なるほど……。次は『課金ドライバー』の使い方を教えてくれ」

幼馴染「これは簡単だ。変身するには単にこれに――」

――

モブ2(戦闘員姿)「アアア……」ガシャン

男「……モブ2、お前のスマホ。壊さしてくれよな」

男「行くぞ!」

蜘蛛男「何をさっきからブツブツと! 戦闘員! 早く殺れ!」

モブ2(戦闘員姿)「は、はやく、逃げて……」

男「……」

――

幼馴染「男、今幾ら持ってる?」

男「なんだよ、唐突だな。4000円くらいだけどそれがどうかしたのか?」

幼馴染「良かった。それだけ持っていれば『変身』できる。男、実はこのベルト、使うためには金が必要になるのだ」

男「かね?」

幼馴染「そう、金だ。変身一回ごとに100円。安いだろう?」

男「なんで変身するのに金を払わなきゃいけないんだよ!」

幼馴染「これは私の研究資金になる。ありがたく使わせてもらうからな」

男「ぬぅうう……」

幼馴染「ヒーローに犠牲はつきものだ。これくらい安いものだろう? 後、戦う為には――」

――

男「大丈夫だ、モブ2。俺が助けるからさ……」

モブ2(戦闘員姿)「う、あ、あ、あぁ……」

蜘蛛男「助けるゥ? 面白いこと言うね、君。何をするつもりだい? 逃げることはできないと思うけど……」

男「見せてやるよ」ガチャ

蜘蛛男「ベルト? いや違う。何だあれ……」

男「『課金ドライバー』起動」

ブウウウン

課金ドライバー「音声認証中……登録者名『男』サマ。ログインシマシタ。『変身』シタイ場合ハ硬貨ヲ入レテクダサイ」

男「はいよ。これで操られた奴らを助けられるんなら安いもんだぜ!」チャリン

課金ドライバー「硬貨確認。パスワードヲ音声入力シテクダサイ」

男「……」

男「アーマー展開、使用確認書既読、パスワード『作戦目的:正義』」

男「……おっと、最後にこれを言わなきゃいけないんだったな」

男「見てろよ、これが最初で最後のヒーローごっこだ! 『変身』ッ!!」

ピピッ

課金ドライバー「初期登録完了シマシタ。アーマー展開、コレヨリ『変身』シマス」

蜘蛛男「君もアプリユーザーか! 変身? フフ、戦闘員達! 変身中の人間は無防備だ、今の内に殺せっ!」

……

蜘蛛男「早くしろ!」

戦闘員3「ギ、身体が動かな……い」

蜘蛛男「クソ、役立たずめ。僕がやるっ。……な、何ィ? 僕の身体も動かないだと!?」

課金ドライバー「尚、変身中ノ攻撃ハ御法度デス。無理矢理攻撃サレタ方ニハソレナリノ覚悟ヲシテクダサイ」

課金ドライバー「変身完了シマス」シュウウウ

男(変身体)「……」

蜘蛛男「なんだよアレ……何のアーマーだ? 【昆虫シリーズ】か? 【植物シリーズ】か? ま、まさか【イベント限定】か!?」

男(変身体)「……おお、これが俺か。案外かっこい、いや、ヒーローごっこは最後なんだからそういうのはナシ!」

蜘蛛男「あんなの知らない! 知らないぞ、僕はァ!」

男(変身体)「何うろたえてるんだよ?」

蜘蛛男「ハァ、ハァ、ハァ……そ、そうだ、【戦闘力測定(スカウタ)】を使おう。見かけ倒しに違いない……」ピッ

『【補助ウェポン】【R】【戦闘力測定(スカウタ)】起動シマス。暫クオ待チクダサイ……』

『結果、相手プレイヤーノ戦闘力ハ――』

蜘蛛男「……」ガタガタガタ

男「どうしたんだよ? まさか、お前さ。予想外のことに弱い感じか?」

蜘蛛男「う、う、う、うるさいッ!! なんだよお前はッ! なんでなんでなんでなんでなんでなんで! なんでお前【UR】級の戦闘力を持ってるんだよおおおッ!?」

男(変身体)「なんだよさっきからレアだのウルトラレアだの」

蜘蛛男「レア度を知らないのか!? 新参はこれだから……スーツ名も分からないとは」

男(変身体)「スーツ名? 名前のことか? 俺は……そうだな。仮面ライダーじゃパクりだし……課金ドライバーで変身したから……えーと」

課金ライダー「俺は『課金ライダー』。語呂重視で考えたら少しダサくなったのは気にするな!」

蜘蛛男「課金ライダー……? 知らないな、そんなスーツ。だが、とにかく奴も数で押せば倒せるはずだ。戦闘員かかれ!」パチン

戦闘員1「ギ……」ガシャン

戦闘員2「ハァ、ハァ……疲れた」ガシャン

戦闘員3「助け……て」ガシャン

課金ライダー「全員剣みたいなのを装備しているんだな。これに対して素手で戦う自信はないぞ。殴り合いのケンカすらしたこと無いんだからさぁ……」

戦闘員4「こ、こいつさえ殺せばこの呪縛から解き放たれるんだよな……?」ガシャ

戦闘員5「おい! しっかりしろ! 理性を失ったら……」

蜘蛛男「そうだね、考えてやってもいいよ。自分から動いてもらった方が操作処理が少なくて楽だし」

戦闘員6「……すまないそこの人。アンタには悪いが……」

戦闘員6「死んでもらう」ガチャ

『【ウェポン】【N】【クロスボウ】』

課金ライダー「お、おい!」

戦闘員6「うわああああ」バシュンバシュン

課金ライダー「こいつ矢を! ぐっ、当てずっぽうだけど当たったら……絶対痛い!」

戦闘員6「当たれ当たれ当たれぇぇえ」バシュンバシュン

課金ライダー「ぐあッ!」バチッ

戦闘員6「当たったか!?」

課金ライダー「……」

課金ライダー「装甲すげぇ……ぶん殴られた時ぐらい痛ぇけど、左腕を貫通から守ってる……」

戦闘員6「な、なんて硬さだ……」

蜘蛛男「他の戦闘員共! 何ぼさっとしてるんだ! お前らも動け!」

「「「「「ギイイイイイッ!!」」」」」

――

男「どうやって戦うんだ? 素人の格闘で戦えるような相手じゃないよな」

幼馴染「できないことはないが……。ドライバーで展開したアーマーは堅いが、戦闘員アプリと違って個々の能力をポイント毎に振り分ける要素はない」

幼馴染「今の男の素の戦闘力じゃあただの戦闘員にギリギリ勝てるか勝てないかの程度だ」

男(そんなこと自分でも分かってるけれど、いざ言われると悔しい)グヌヌ

幼馴染「そこで目には目を【ウェポン】には【ウェポン】ガチャを、なのだ!」フンス

幼馴染「1日1回無料のガチャがあるぞ! それ以降は1回につき500円だ」

男「また金か……」

幼馴染「イヤなら使わなくてもいいんだぞー」

男「使わせてください」

幼馴染「サービスは他にもある。ログインボーナス、イベントガチャ、招待プレゼントなどなど……追々ドライバーが説明してくれるだろう、多分」

――

『【ウェポン】【R】【アイアンナックル】』ガシャ

戦闘員3「イヤだ、イヤだ、イヤだあああああああ」シュッ

課金ライダー「ぐッ、痛゛っ! さっきの矢と違う!」

蜘蛛男「レアじゃないか。いいね、いいねえ! 僕は今のうちにコンビニのレジを弄ってくるとしよう」スタスタ

課金ライダー「あっ、待て! チクショウ、まずは戦闘員7人を倒さなきゃいけないんだな……」

課金ドライバー「1日1回無料ガチャガ回セマス」

モブ2(戦闘員姿)「おい、男! この人数じゃ無理だ! 早く逃げろ!」

課金ドライバー「1日1回無料ガチャガ回セマス」

モブ2(戦闘員姿)「おい、男!」

課金ドライバー「1日1回無料ガチャガ回セマ課金ライダー「うるせえ! ガチャ引けばいいんだろ!?」

課金ドライバー「ガチャ【ウェポン】ヲ選定シマス。レバーヲ回シテクダサイ」

課金ライダー「分かった分かった。よっこいしょ、と」ガチャ

課金ドライバー「ガチャ結果……【ウェポン】【N】【ロングスピアー】デス。出力シマス」ブウウン

課金ライダー「出たァ! 長い槍! 軽~く回して軽~く倒してやるよ! かかってきな!」ブンブン

戦闘員1「ギイイ!」

課金ライダー「ほぅらよッ! 突きィッ!」トッ

戦闘員1「ギ……!?」バチバチ

課金ライダー「スマホを突き壊しただけだよ。保険とか効くだろうけどごめんよ!」

戦闘員1「ギ……あ、り、がとう……」ガクッ

課金ドライバー「スマートフォン破壊確認、アプリ強制終了確認、変身者生存確認終了」

課金ライダー「よしッ、どんどん行くぜ!」

「「「「ギギギイ!!」」」

課金ライダー「ライダアー……課金槍回し!」ブオン

戦闘員2「ぐブッ」バチッ

戦闘員3「がぁッ!」バチバチ…

戦闘員4「こ、こいつ【N】ランクの武器を使っているクセに……強い!」

――

幼馴染「ドライバーのアーマーの利点。それは【ウェポン】の適応力」

幼馴染「どんな武器を使っている時にどんな戦い方をすればいいのかパターンを自動で選んで行動ができる」

幼馴染「だが、行動するのは自分自身だ。ドライバーは行動方法を提案しているだけ」

幼馴染「これは自転車の補助輪のようなものだ。やり方は自ずと分かってくるだろう」

男「それでも素手での格闘補助機能は無いんだな」

幼馴染「ガチャさせるきっかけが無くなるじゃないk……はっ!」

男「何か聞こえたぞ」

幼馴染「気のせいだ」

――

戦闘員4「無駄なことを! どうせ俺たちに希望はないんだろ!?」

『【ウェポン】【N】【スパイクハンマー】』ガシャ

戦闘員4「これで叩き潰してやる!」

課金ライダー「諦めんなよ! ライダー足払いッ!」ブン

戦闘員4「ぬァ!」ドサッ

課金ライダー「足下注意、転んだ拍子にスマホの画面割っちゃったなんてよく聞く話だよな! 俺ガラケーだから関係ないけど!」

戦闘員4「な、何だとォ……お、俺のスマホ画面が……割れた」ガクッ

課金ドライバー「戦闘員、残リ3体」

戦闘員5「……どうせ、自分で変身解除もできねェんだ」

戦闘員6「うああああああ」バシュンバシュン

戦闘員5「もう精神が疲弊仕切ってる奴もいる。ならいっそのこと……」

モブ2(戦闘員姿)「ああ……」

戦闘員6「悪役らしくやられてやろうじゃないか」

モブ2(戦闘員姿)「頼んだ……ぜ? 男よォ……、手加減は……しない」

課金ライダー「……ありがとう。なら、こっちもそれに応えなきゃいけない、よな?」

課金ライダー「ライダーポイント突き!」トッ

戦闘員5「くっ、あ、ありがとう……」ガクッ

戦闘員6「当たれよ! なんで当たんねェんだあああああああ」バシュンバシュン

課金ライダー「課金スピアー回転バリア! 弾き落とす!」

戦闘員6「うあああああああ……あ、あれ? 矢が、もう……ない?」カチッカチッ

『【クロスボウ】活動限界。自動崩壊シマス』

課金ライダー「これで終わりか? なら……ライダアー……課金スピアー脳天割りッ!」

戦闘員6「ごげッ」ゴキッ

課金ライダー「これで少し頭を冷やしな。ト、ド、メ、の……ライダーポイント突き!」トッ

戦闘員6「う、ああ」バチバチ

課金ライダー「最後はお前か……」

モブ2(戦闘員姿)「もう身体が言うこと聞かないんだ……頼んだぜ……」

モブ2(戦闘員姿)「ギギ、ギ」ガバッ

課金ライダー「ライダー……三段突きッ!」

課金ライダー「1」ドンッ

モブ2(戦闘員姿)「ギィアッ」

課金ライダー「2ィのッ」ガッ

モブ2(戦闘員姿)「グ、ア゛」

課金ライダー「3ァンッ!」ドドッ

モブ2(戦闘員姿)「ギギギ……」バチバチ…

モブ2(戦闘員姿)「ギィアアアアアアアッ」ドサッ

課金ドライバー「全戦闘員7人アプリ強制終了確認、完了」

課金ドライバー「【ロングスピアー】稼働限界到達。自壊シマス」

課金ライダー「……」

モブ2「う、ぐう……」ヨロッ

課金ライダー「も、モブ2!」

モブ2「やり過ぎだろこれ……」ヨロヨロ

課金ライダー「ご、ごめモブ2「でもさ、男」

課金ライダー「なんだ?」

モブ2「カッコイいよ、お前。学校では一度も話したことなかったけどさ。やる時はやるってこんな感じなんだな」

課金ライダー「お前それ褒めてんのか!?」

モブ2「褒めてる褒めてるって! まさにヒーローって感……」フラッ

課金ライダー「おい!」

モブ2「少し疲れただけだよ。無理やり身体を動かされてたんだからな、疲れるよホント……。少し休んだら先帰るわ……」

モブ2「頑張れよ、ヒーロー。……あーあ、俺もこんな風になりたかったなぁ」

モブ2「……」ガクッ

課金ライダー「おい! おい! 死ぬんじゃねえよ! おいってば!」

課金ドライバー「落チ着イテクダサイ。バイタル正常、呼吸確認。眠ッテイルダケデス」

課金ライダー「あの蜘蛛男さえ倒せば……」

課金ドライバー「突然デスガ、マスターカラ連絡ガ来テイマス。受信シマスカ?」

課金ライダー「うわっ! このベルト電話機能も付いてんのか! ああ、出る出る」

幼馴染『こちら幼馴染。男よ、そちらの状況を教えてくれ』

課金ライダー「こっちは戦闘員全員変身解除したぜ」

幼馴染『了解した。なるほど、機能テストはこれで完了だな。私の方は、コンビニにいた人達を全員避難させ終わったところだ。今はコンビニの中にいた。あとは……ん? う、上か! 来い! 私だけでも時間稼ぎぐらいはできる!』

課金ライダー「お、おいまさかお前蜘蛛男と……」

幼馴染『そのまさかだ! 大丈夫、心配するな。だから、ぬぅ、がっ、やめッ――』

課金ドライバー「通話終了。通話料金ガ発生イタシマス」

課金ライダー「それはあとで! コンビニの中へ急ぐぞ!」

課金ドライバー「了解」

――コンビニ内

蜘蛛男「ホント、予想外のことばかりで焦るよ。まさか君が――」

課金ライダー「……」

蜘蛛男「――戦闘員を全員倒してしまうだなんて、ね」

幼馴染「むー! むー!」モゴモゴ

蜘蛛男「彼女かい? 避難し遅れたお客だと思うけど、少しうるさくてね。縛ったんだよ」

課金ライダー「幼馴s」

課金ドライバー『男様、今ココデオ二人ノ関係ヲ話サレマスト、逆ニ危険デゴザイマス』

課金ライダー「あ、ああ。そうだな」

課金ドライバー『コレハ個人回線。男様ノスーツ内デシカ聞コエナイ設定ニナッテオリマス。ゴ安心ヲ』

蜘蛛男「さて、君を消そうと思っていたんだけどそれはやっぱり止めた。案外強いみたいだしね」

課金ライダー「どうすればそこの女の子の解放してくれるんだ!?」

蜘蛛男「うーん、そうだね……」ガチャ

『【ウェポン】【R】【スパイダーストリングス】出力シマス』

蜘蛛男「この糸で縛られてもらおうかな!」バシュッ

課金ライダー「う、うわあッ!」

課金ライダー「う、動けない」

蜘蛛男「だろうね。一度熱して柔らかくした超硬度プラスチックを糸状に射出するのがこの【スパイダーストリングス】だ。ちょっとやそっとの衝撃じゃ壊れないよ」

課金ライダー「う、ぐっ、ぐっ! ダメだ、さっぱり壊れない」

蜘蛛男「だろ? じゃ、君が動けない間に僕はしなきゃならないことがある」

蜘蛛男「えーっと、1、1、0っと」トゥルルルル

蜘蛛男「あ、もしもし? 警察ですか? コンビニ強盗です! はい、はい、仮面の人です! 今は~えーっとぉ~、何だか糸でグルグル巻きになってるみたいなんですけどぉ~」

課金ライダー「!」

蜘蛛男「はい、〇〇区の『多分痔気分』です! はい、お願いしまーす」ガチャ

課金ライダー「お、お前まさか!」

蜘蛛男「ま、そういうことだね。今から君には僕の身代わりになってもらうよ」

幼馴染「むあー!むあー!(卑怯者! 恥を知れ!)」モゴモゴ

蜘蛛男「じゃ、僕は帰って作戦を考え直してくるから。バイバーイ」

ホスト風「~♪」

ブロロロ……

……

課金ライダー「行ってしまった……俺、この格好で捕まるのか!?」

幼馴染「むむあ(そこは問題なんかじゃない! あんな奴を町に解き放ってしまったのだぞ!?)」

課金ライダー「ったく、どうすれば……」

課金ドライバー「コンナ時ノ為ノガチャデゴザイマス」

課金ライダー「分かってるよ。どうにか出来そうなものが入ってるんだろ? 1回500円ガチャやってやるよ!」ガチャ

課金ドライバー「了解シマシタ。【ウェポン】ヲ選定シマス」

課金ドライバー「選定結果……【ウェポン】【N】【ソード】」

課金ライダー「コレじゃあ糸は壊せないよな……もう1回回すぞ!」ガチャ

課金ドライバー「選定結果……【ウェポン】【R】【ビッグアックス】」

幼馴染「むむーむむー!(早くしないと警察がここへ来てしまうぞ!)」

課金ライダー「もう1回だ!」ガチャ

課金ドライバー「選定結果……【補助ウェポン】【N】【ホッパーレッグ】」

課金ライダー「もう1回!」ガチャ

課金ドライバー「選定結果……【ウェポン】【N】【チェーンシールド】」

課金ライダー「……」ガチャ

課金ドライバー「選定結果……【ウェポン】【R】【ツイスター】」

課金ライダー「神経がダルくなってきた」

課金ドライバー「【補助ウェポン】【R】【ヒートボディ】」ガチャ

課金ライダー「はぁ……。もう1回回s幼馴染「んふー!(これだ!)」

課金ライダー「え? なに?」

幼馴染「んふ! んふふ! んふふぉわー!(これを使うのだ! 【ヒートボディ】はアーマーから熱を発する能力! これを使って超硬度プラスチックを溶かせば!)」

課金ライダー「なに言ってんだかは分からないが、これを使えばいいんだな? ドライバー! これを使う!」

課金ドライバー「了解シマシタ。尚、先程ガチャデ引イタ【ウェポン】ハ出力シナイ場合、ストックスルコトガデキマス。ゴ使用ノ際ハ、ワタクシニオ申シt 課金ライダー「いいから早く」

課金ドライバー「【ヒートボディ】出力中……」チッ

課金ライダー「おお~、温くなってきた。糸も良い感じで溶けてきたぞ」

幼馴染「んむふ!(私のも溶かしてくれ!)」

課金ライダー「分かった分かった」

課金ライダー「……」ジュウウウ

幼馴染「はぁ。これでやっと喋れ……あっつ!! これあっついぞ!」ジュウウ

課金ライダー「熱いのか!?」

幼馴染「お、男はアーマーで覆われているからいいが、私は生身だ! そもそもプラスチックを溶かす熱だぞ! あっつ! 溶けたプラスチックが服に、服に!」

課金ライダー「ああ、もう、分かった! その服で火傷する前に服を脱げばいいだろ!?」

幼馴染「バカ! 脱げるか!」

課金ライダー「面倒だ! 破るぞ!」

幼馴染「バッカやめっr」

ビリッ

課金ライダー「……」

幼馴染「……」

課金ライダー「……」

幼馴染「……////」カァァァ

課金ライダー「……」

幼馴染「見るな!」

課金ライダー「……何で付けてないんだ」

幼馴染「見るな!!」

課金ライダー「……子供体型」ボソッ

幼馴染「見るな見るな見るな見るな見るな見るなァァァァァァァァッ!!!」

課金ライダー「ドライバー、変身解除」

課金ドライバー「了解シマシタ。変身解除イタシマス。暫クオ待チクダサイ」シュウウ

幼馴染「ま、まさか男! が、我慢できなくなったのではないだろうな!?」

課金ライダー「そのまさかだよ」シュウウ

幼馴染「わ、わ、や、だ、その、ダメだ! コンビニだぞ! 人が来るかも知れないのだぞ!?」

課金ドライバー「変身解除完了シマシタ」シュウウ…

男「……」

幼馴染「……生娘だぞ。優しくしろy 男「何言ってんだおめー」パサッ

幼馴染「へ?」

男「学ラン上貸す。汗臭いかもしれないけど贅沢言うなよな」

幼馴染「あ、ああ、あああああああああああ!!」

男「?」

幼馴染「ありが……とう」

男「ああ。さ、警察が来る前にあの蜘蛛野郎を追わなきゃな」

――コンビニ前 駐車場

戦闘員1「」

戦闘員2「」

戦闘員3「」

戦闘員4「」

戦闘員5「」

戦闘員6「」

モブ2「」

幼馴染「ふむ……死屍累々とはこのことだな。まぁ、疲れて倒れているだけだろうし放っておくとしよう」

男「それで俺はどうやって蜘蛛野郎を追いかければいいんだ?」

幼馴染「【マシン】だ。男専用の【マシン】を使ってヤツを追うしかない!」

男「ま、マシンだって!?」

男「いやぁ、俺も遂にバイク乗りかぁ~楽しみだなあ~」

幼馴染「ん? 男、お前いつの間にバイクの免許など取ったんだ?」

男「いや、取ってないけど。課金ライダーならバイクくらい乗るだろうと思って……」

幼馴染「お、お前……私が作ったアーマーにそんな名前を付けていたのか……? そ、それは良いとして男よ、免許を持ってない乗り物など乗れる訳ないだろう!」

男「ダメか……。じゃあ何に乗るんだ?」

幼馴染「男、今日は何でここまで来た?」

男「自転車だけど……まさか」

幼馴染「じゃあそれを使うんだな」

男「自転車が専用マシンってそんな」

幼馴染「仮面ライダーも電車に乗ったり車に乗ったりしてるんだ。課金ライダーは自転車に乗れば良い!」

男「えぇ~……」

幼馴染「どうだ、斬新だろ!」フンス

幼馴染「普通の自転車で行けと言っている訳ではない。男、もう一度変身してくれ」

男「はぁ……『変身』」チャリン

課金ドライバー「アーマー展開、コレヨリ『変身』シマス」シュウウ

……

課金ドライバー「変身完了シマス」シュウウ…

課金ライダー「……で?」

幼馴染「ドライバーに100円を入れて、【リ・コンストラクト】を宣言するんだ(こいつ一気にテンション下がってるな)」

課金ライダー「はいはい。ドライバー、【リ・コンストラクト】っと」

課金ドライバー「【リ・コンストラクト(再構成)】承認。スキャン開始シマス……自転車ヲ発見シマシタ。コチラヲ【リ・コンストラクト(再構成)】シマスカ?」

課金ライダー「あーするする」

課金ドライバー「了解シマシタ……」

自転車<ガチャン

課金ライダー「え?」

自転車<ガシャンガシャン

自転車<ギゴガゴギ

課金ライダー「うお、うおおおおおお!?」

自転車<ガキン

課金ドライバー「【リ・コンストラクト(再構成)】完了シマシタ」

幼馴染「どうだ?」

課金ライダー「すげー……変形した。カッコイ……いやなんでもない」

幼馴染「元々あった自転車(ママチャリ)の骨組みをベースに再構成したのだ。最高時速120km、戦闘員アプリ使用者の攻撃や爆発にも耐えることもできる」

課金ライダー「へぇ……。いいな、これ!」

幼馴染「気に入ってもらえて私も嬉しいぞ! さぁ、これに乗ってアイツを追いかけてくれ!」

課金ライダー「よっし、このマシンをかっ飛ばして行ってくるぜ!」

幼馴染「待て、男!」

課金ライダー「なんだよ」

幼馴染「『かっ飛ばす』のはナシだ」

課金ライダー「な、なんでだよ」

幼馴染「道路交通法で『車両』に該当する自転車は標識のないところでも制限時速は60km/h位に抑えて走ってくれ。危険な場合は課金ドライバーが同期しているから自動的にブレーキがかかると思うが……」

幼馴染「それに警察もこちらへ向かって来ているんだ。十分注意してくれ。分かったな?」

課金ライダー「不自由なヒーローもいたもんだな……分かったよ。じゃ、行ってくる」

自転車(変形体)<ブロロ…

課金ドライバー「発進シマス。新規登録ノ為ノマシン名ヲ登録シテクダサイ」

課金ライダー「課金ライダーのマシンだから……『カキンダー』」

幼馴染「却下」

課金ドライバー「却下シマス」

幼馴染「そうだな……課金だから……課金する……課金……charge……そうだ! 『チャージャー』なんてどうだ?」

課金ライダー「なんか中華料理っぽい」

課金ドライバー「実ニ良イアイデアデス、マスター。登録完了、『マシンチャージャー』緊急発進シマス」

課金ライダー「俺の意見は聞かないのかよ!」

課金ドライバー「警察ノ予想到着時間ハ後、5分デス。自動運転デ発進シマス」

マシンチャージャー<ブロロロロロロロロロ…

課金ライダー「うわあああああああぁぁぁぁぁ」

――道路

マシンチャージャー<ブロロ…

課金ライダー「自分で漕いでもかなり早いし、意外と楽」

課金ドライバー「『チャージャー』ハ、一応電動自転車ノカテゴリーニ属シテイマスノデ」

課金ライダー「このままパトカーに見つからないように蜘蛛野郎を見つけなきゃあな」

課金ドライバー「マスターガ時間ヲ稼イデイマス。早ク蜘蛛男ヲ確保シテクダサイ」

課金ライダー「分かってます……よォ!」キコキコ…

マシンチャージャー<ブロロ…

――道路

高そうな車<ブロロ…

ブロロ……

ホスト風「ふふふ……」

ホスト風「ふ、ふはははははははははは!!」

ホスト風「金、金、金だ! 今回は多いぞ! 20万円だ!」

ホスト風「いやー、儲かった儲かった。これで最初の14万円、次の9万円、昨日の10万円、今日の20万円……」

ホスト風「ノルマ達成! これで暫くは金に困らないね」

ブロロロロ……

ホスト風「高飛び費になっちゃいそうだけど……滞在費も出してくれれば……」

ホスト風「ラスベガスなんかがいいね。パーッと遊びにさ」ブツブツ

ブロロロロロロ……

ホスト風「……」

ブロロロロロロロロロロ……

ホスト風「なんか後ろのバイクうるさくない?」

ブロロロロロロロロロロロ……

ホスト風「……ったく。そうだ、高飛びするんなら……」

『アーマー展開、【アーマー】【SR】【スパイダー】、『変身』シマス』

ブロロロロロロロロロロロロロ……

蜘蛛男「後ろから来たバイク、ドライバーごとバラバラにしt 課金ライダー「バラバラに何だって?」

蜘蛛男「お、お前はッ!」

蜘蛛男「ど、どうやって【スパイダーストリングス】から脱出できた!?」

課金ライダー「そんなこと俺が知るか。おい、蜘蛛野郎。諦めて車から降りるんだな」ガシッ

蜘蛛男「な、何を言うかと思えば……調子に乗りやがって! 僕は君になんか絶対に捕まりやしない!」

高そうな車<ブロロロロ!

課金ライダー「うお、おっと! 肩掴んでんのに車急発進するなよ!!」

高そうな車<ブロロ…

課金ライダー「おい! 行っちまうぞ! あれじゃ自転車じゃあ追い付けないって!」

課金ドライバー「私カラ提案デス。先程ガチャデ手ニ入レタ【補助ウェポン】【N】【ホッパーレッグ】ヲ使用スルト、アノ車ノ方向マデ『飛ぶ』コトガデキマス」

課金ライダー「あ、ああ! じゃ、それで頼む!」

課金ドライバー「了解。出力シマス」

課金ライダー「よし! 追いかけるぞ!」ダッ

課金ライダー「課金ライダーアアアア……ホップ」ピョン

課金ライダー「ステップ!」トンッ…

課金ライダー「ジャアアアアアアアンプッ!」ピョイーン

課金ライダー「おおおおおっ」

――上空

課金ドライバー「素晴ラシイジャンプデシタ」

課金ライダー「俺……飛んでる。あ、自転車」

課金ドライバー「自動運転デ我々ヲ追イカケテ来テクレマス。ゴ安心ヲ」

課金ライダー「すごい良い眺めだな……街が全部見える」

課金ドライバー「私ニ美シイトイッタ感情ハアリマセンノデ」

課金ライダー「そりゃあもったいない」

課金ドライバー「『もったいない』トハ」

課金ライダー「幼馴染(マスター)に教えてもらわなかったのか?」

課金ドライバー「イエ……」

課金ライダー「そうかあ……」

課金ライダー「……」チラッ

課金ライダー「そういえばさ、ドライバー」

課金ドライバー「ハイ、何デショウ」

課金ライダー「俺……今どの辺りにいる?」

課金ライダー「上空100m程デスネ」

課金ライダー「……もう何があっても驚かないな」

課金ドライバー「チナミニ男様、我々ハ飛ンデイル訳デハアリマセン」

課金ライダー「うん、分かってる、何となく。……落ちてるんだよな、ゆっくりと」

課金ドライバー「後2分程デ【ホッパーレッグ】ノ使用限界ガ発生シマス。私ノ予想デストソノ使用限界時間丁度ニ地面ニ到達スルノデ、身体ノ方ニ負担ガ来ルコトハナイデショウ」

課金ライダー「辛くなきゃそれで良いや。でさ、どこに落ちるんだ?」

課金ドライバー「ソウデスネ……現在我々ガ追跡シテイル車ノ距離ヲ考エテ計測スルト……。誤差ノ範囲ハアリマスガ――」

課金ドライバー「――ノ辺リニナリマス。今ナラ修正スルコトモデキマスガ、イカガデショウカ?」

課金ライダー「そりゃあいい。なら、ドライバーが提案した方を選ぼう」

課金ドライバー「了解シマシタ」

課金ライダー「よしっ、一泡吹かせてやろうぜ」

課金ドライバー「『一泡』トハ?」

――道路

ヒュウ…

高そうな車<ブロロ…

蜘蛛男「クソッ、あんな奴に邪魔されるなんて……。早く連絡しなければ」ピポパ

蜘蛛男「……もしもし『†蜘蛛†』です」

蜘蛛男「はい、成功しました。明日の場所は〇〇区の『多分痔気分』。はい、確認されましたか。ありがとうございます」

蜘蛛男「ええ、はい。知っておられましたか。変な奴に邪魔されまして。はい、同じアプリ使用者だと」

ヒュウウウ…

蜘蛛男「ええ、たった今振り切ったところです。え? 風の音? 僕には聞こえませんが……」

蜘蛛男「はい! はい! ありがとうございます! じゃあ僕のアプリの企画も……」

蜘蛛男「……え? ダメ?」

ヒュウウウウウウ…

蜘蛛男「え、ちょっと! 約束が違うじゃないですか!! 振り込みは!? 高飛びは!? 僕のアプリは!? 就職は!?」

蜘蛛男「な、無し? 全部なし!? アプリ使用者1人に邪魔されたくらいで全部ナシにするって……。ちょっとヤダなあ、冗談はヤメてくださいよ! ハハハハ……」

ヒュウウウウウウウウウ…

蜘蛛男「ンンンふざっけんなよオイ!! ……それじゃあ」

蜘蛛男「それじゃあ僕がわざわざこんなことをした意味が……ないじゃないかぁ……」

ヒュウウウウウウウウウウウウウウウ!

蜘蛛男「…………え? 何? 何て言ったんです? ちょっと!? 風の音で聞こえない! あ、切らないで! 切らないでくださいよねえ! ちょっtt ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアア

蜘蛛男「うわあああああああああああッ!?」

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン……

蜘蛛男「……え? 何?」

課金ライダー「……」

蜘蛛男「え? 何で僕の外車がぶっ潰れてるの? え?」

課金ライダー「アーマーとやらを着ていて良かったな、蜘蛛男。俺さ、ここに来るまでドライバーと二人で『もし蜘蛛男がアーマーを着けていなかったら』と心配していたんだ」

蜘蛛男「え? え?」

課金ドライバー「損害状況ヲ確認シテイマス。暫クオ待チクダサイ……」

課金ドライバー「蜘蛛男様ノ損傷率0パーセント。車ノ損傷率80パーセント。車ハ廃車デスガ、『命は金より価値がある』トマスターモヨク言ッテオリマス」

課金ライダー「良かったな」

蜘蛛男「……」

課金ライダー「大丈夫?」

蜘蛛男「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

課金ドライバー「精神ニ大幅ナ乱レヲ感知シマシタ」

蜘蛛男「うるせえええええええええええええええええええええええええええ死ねえええええええええええええええええええええええええええッ!!」

課金ドライバー「男様、車ガ爆発炎上スルオソレガアリマス。離レマショウ」

課金ライダー「分かった!」

――道路側空き地

課金ライダー「蜘蛛男は!?」

課金ドライバー「上デス!」

蜘蛛男「ギイイイイッ!」

課金ライダー「ッ!」

蜘蛛男「……よく避けれたねェ。褒めてあげよう。でも、次は……殺すッ!」ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ…

課金ライダー「あ、あいつめっちゃガチャ引いてるぞ! ……大丈夫なのか?」

課金ドライバー「気ヲ付ケテクダサイ! マスター曰ワク『自暴自棄になった奴の金遣いは、寝坊した時の男が作った弁当より荒い』ダソウデス」

課金ライダー「なんてこと教えてんだあいつ!」

蜘蛛男「ひひひ……もう就職先もない、お先真っ暗だ。外車もぶっ壊されて、もう、もう僕は……」

蜘蛛男「『プレミアムガシャ』を回すしかないんだあああああああははははははははははは」ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ…

『ガチャ結果……【ウェポン】【R】【ドデカイバズーカ】×10』

蜘蛛男「いいぞッ! 合成だ!」

課金ライダー「合成? 合成ってなんだ?」

課金ドライバー「同ジ名前トレアリティヲ持ツ【ウェポン】ヲ2枚合体サセテ強クスルコトヲ指シマス」

課金ライダー「2枚合体させれば強くなるのか……ほ~」

『合成完了。【ウェポン】【R+】【メッチャドデカイバズーカ】×5

蜘蛛男「全弾発射ァ!」

『了解、発射シマス』

課金ドライバー「熱源反応確認。爆発力ヲ持ツ弾頭ノ発射ガ予想サレマス」

課金ライダー「ど、どうすればいいんだ!?」

蜘蛛男「発射発射発射ァ!」ドン! ドン! ドン!

課金ライダー「や、やばい逃げ、うわァァァッ!!」ドォッカァァンッ

課金ドライバー「3弾着弾確認。アーマー損傷率40パーセント。走ッテノ回避ハホボ不可能デス! 次ノ弾頭、来マス!」

蜘蛛男「まだまだ行くよ、発射ァッ!」ドン! ドン!

ヒュルルル…

課金ライダー「こ、これ、これは……ドライバー! 何か良い感じのウェポンを頼む!」

課金ドライバー「了解。【ウェポン】【R】【ツイスター】、出力シマス」

課金ライダー「つ、【ツイスター】? 見えないし、武器とかじゃないみたいだけど……なんなんだ? どうすればいい!?」

課金ドライバー「手ヲ前ニ出シテ!」

課金ライダー「こうか!?」バッ

課金ドライバー「後ハ待ツダケ! 【ツイスター】ハ竜巻ヲ発生サセル【ウェポン】デス。気流ヲ乱シテ着弾点ヲズラスノデス!」

ゴオオ……!

課金ライダー「お、出た!」

課金ドライバー「デハソノママオ待チクダサイ」

ゴオオオオオオッ!

蜘蛛男「な、何だよ! 何だよあの竜巻!?(バズーカの弾ごとこっちにまずい! 風圧で逆に吸い寄せられたら逃げられな……ッ)」

蜘蛛男「うわぁぁぁぁぁああああ」

課金ドライバー「弾頭ノ無力化ヲ確認。蜘蛛男様ハ現在竜巻ニ巻キ込マレテイマス」

課金ドライバー「【ツイスター】使用限界時間到達。消滅シマス」

蜘蛛男「ハァ……ハァ……」ドサッ

課金ドライバー「蜘蛛男様ノアーマー損傷率80パーセント」

課金ライダー「諦めて警察に出頭しろよ。証拠(幼馴染が取ったカメラ)はあるんだぞ?」

蜘蛛男「う、うぅあ……うぁぁあ……」ジタバタ

課金ライダー「調子に乗って勝ったつもりになったのが運の尽きだな! 正義はな、必ず勝つ 蜘蛛男「んなわけないだろうがあああああああ」

蜘蛛男「そんなわけないッ! 僕は今まで真面目に、謙虚に生きてきた! なのに就職先は見つからずバイト生活……」

蜘蛛男「なぁ! 同情してくれるだろ!? 僕は仕方なく、仕方なくやったんだよ! なぁ!」

課金ライダー「……」

蜘蛛男「変身を解くからさぁ……こっちに来て話を聞いてくれよぉ……」

『変身解除シマス』

ホスト風「なぁ……頼むよぉ」

課金ライダー「分かったよ……。こっちも変身解除する」

課金ドライバー「本当ニヨロシイノデスカ?」

課金ライダー「早く」

課金ドライバー「了解シマシタ。『変身解除』シマス」シュウウ…

男「……」テクテク

ホスト風「ああああああ……ありがとう! 本当にありがとう……」

ホスト風「……」

ホスト風(んなわけあるかカス! 変身解除して抵抗する気がないフリして近くによったところを……フフへフフ……)

男「来たぜ」

ホスト風「ああ! ありがとう! ありがとう! じゃあ早速……」

男「うん?」

ホスト風「冥土の土産に僕の逃走計画を教えてあげるよ」

ドスッ

男「……」

ホスト風「……」

男「あのさぁ……」

ホスト風「……はい」

男「何刺さったと思う?」

ホスト風「……」

男「ねぇ、何刺さったと『思った』?」

ホスト風「……」ガタガタガタガタ

男「ねぇ」

ホスト風「な、な、な、な、ナイフがあなたの、おな、お腹に」プルプルプルプル

男「ブブー、ハズレ」

ホスト風「う、う、う」ガタガタ…

男「正解は『俺のライダーパンチがお前の腹に突き刺さった』でしたー」

ホスト風「う、う、おえっ、おえええええええッ」ビチャビチャ

男「初めて殴った人がこんな奴って……どう思う、ドライバー?」

課金ドライバー「ハイ、マスターナラ『最悪だ、馬鹿者』ト言ウト私ハ予想シマス」

男「だとよ、おいホスト風」

ホスト風「は、は、はひ」フルフル

男「今から警察突き出すから」

ホスト風「そ、そんな!!」

男「なにが『そ、そんな』だ馬鹿野郎! 色んな人を傷付けておいてお前だけトンズラこくつもりかよ!」

ホスト風「ひっ」

男「……ライダアー……キィーック」ドガッ

ホスト風「ひぃっヒィッぃぃい」ビクビク

男「これは、コンビニ荒らされた店員さんとそこにいたお客さんと操られた戦闘員やモブ達の分と、縛られた幼馴染の分の一発」

ホスト風「も、もう一発はぁぁぁぁ?」ガクガク

男「俺の分だあああああぁあ ホスト風「ヒィィィヤァァァァァ、あ……」ガクッ

課金ドライバー「意識反応ナシ。気絶シタヨウデス。マスター風ニ言ウナラバ蜘蛛男様ハ『攻撃力は高い癖に防御力は0。むしろマイナス』ナ方ダッタトイウコトデスネ」

男「どういう意味だそれ」

ホスト風「」

男「こいつどうやって警察に突き出す?」

課金ドライバー「ソウデスネ……。『戦闘員アプリヲ使ッテ悪事ヲ働イタ男ヲ変身シテ捕マエタ』。チョットコレハ……」

男「色々めんどくさいことになりそうだなぁ……」

課金ドライバー「ショウガナイトハイエ、我々モカナリ手荒ニ捕マエテイマスシ……。オヤ、マスターカラ連絡デス」

男「おお、出る出る」

幼馴染『こちら幼馴染。ドライバーから蜘蛛男を倒したと連絡来ているから分かっているぞ。やったな!』

男「ああ! もうこんなのこりごりだからな。これが最後だ」

幼馴染『ムゥ……。ああ、コンビニに来た警察には証拠を見せ、奴が逃げていることを教えた。こちらへ向かっているはずだ』

男「えぇッ!? ど、どうするんだよ!」

幼馴染『『課金ライダー』の存在を知られるのはちょっとまずい。没収されたら嫌だからな』

幼馴染『幸いコンビニ前の防犯カメラは蜘蛛男に操られた戦闘員が壊していた為、存在は知られていない』

課金ドライバー「マシンチャージャーノナビモ、防犯カメラノ無イ場所ヲ選ンデ進行シテイタノデゴ安心ヲ」

幼馴染『とにかく、私が今から言うことに合わせてくれ』

男「ああ、どういうことに『した』か教えてくれ」

……

……

パトカー<ウォンウォンウォン…

警察官「そこのー! そこの君ー!」ガチャ

男「は、はい!」

警察官「君が幼馴染ちゃんの友達の男くんだね?」

男「そうです、男です!」

警察官「本当だ……あの外車自爆してる。っていうことはそこに倒れてる男が……」

ホスト風「」

男「はい、こいつがコンビニ強盗です。俺が自転車で追っかけてたら、こいつ勝手に事故起こしてて……」

警察官「倒れてたってわけね。うん、あの子が言っていたのと同じだ」

男(よし、これでめんどくさいことにはならないn 警察官「じゃあ署の方までちょっと来てもらおうか」

男「えっ、帰れないんですか」

警察官「調書取んなきゃだからさ。悪いけど……」

男「えっ」

警察官「あ~、スゴいゴッツいベルト付けてるねぇ~。これ今の流行りなの? さ、とりあえずパトカー乗って」

男「えっ」

警察官「ああ! あのホスト風な男と一緒に乗せるワケじゃないよ! もう一台応援来てるから」

男「えっ」

警察官「いや~お手柄だね~、君。明日は有名人だ!」

男「えっ」





男「えっ」

課金ドライバー「ヤレヤレ……」

――次の日 教室

男「……」

友「なんだよ、男。本日のヒーローのクセに元気ないな」

男「今まで目立つことは避けてきたんだ。今日は色々と疲れたんだよ……。あ、昨日はスマホ貸してくれてありがとな」

友「いいってことよお! 俺も今日から『コンビニ強盗を捕まえたヒーローにスマホを貸した友人』としての道を歩むことになるのかぁ~。くぅ~w」

男「なんだよ、その道は……」

友「しっかし、戦闘員アプリを悪用した強盗かぁ……。アプリを違法改造していたとは言えおっかないよな~。よく追いかけたよ、男は」

男「あはは……」

――

男(結局昨日は11時頃まで家に帰れなかった)

男(操られていた戦闘員(一部除く)やモブ2達が口裏を合わせてくれていたので、俺が『課金ライダー』でどうのこうのという話はバレなくて済んだ)

男(モブ2のヤツは……一応警察からのお咎めは無しだったが、学校は一週間停学扱いを受けている。帰りにアイツの家に寄ろうかな)

男(ホスト風は……どうなったかよく分からん。元々、大学院生で金と就職に困って強盗を働いたとニュースでは報じていたけど)

男(戦闘員アプリを開発した某会社は一週間安全確認点検をした後、リニューアルみたいな形で再稼働しているみたいだ。本質は何も変わってないと思うけどな)

――

友「帰ろーぜ」

男「ああ」

――校庭

友「お、モブ2じゃん」

モブ1「……」

友「元気出せよ~、モブ2も来週には帰って来るんだからさぁ」

モブ1「うん……」

――

男(帰ってネットで調べて分かったことだが、戦闘員アプリが原因となった事件が少し増えてきている)

男(某会社はその原因をアプリの違法改造した者の責任として、アプリの公開も続けている)

男(ま、俺はもう『課金ライダー』じゃないし関係ないことか)

――

男「モブ1、モブ2の家教えてくれよ」

友「みんなで行こうぜ~!」

モブ1「ああ……。うん! 〇〇町の方なんだ! 行くなら早くするべ!」

男「何か買っていってやろうぜ」

友「何買ってく?」

モブ2「そうだなぁ~、アイツが好きなのは――」

……

友「お、モブ2じゃん」

友「お、モブ1じゃん」

――幼馴染の家

トゥルルル……

『お留守番サービスに接続s』ピッ

幼馴染「くそぅ……男のヤツ電話に全然出ないぞ」

課金ドライバー「困リマシタネ、マスター。私トシテモ男様ニマダ教エテモライタイコトガ沢山アリマスノニ……」

幼馴染「ああ……困った。困るぞ、男ォ! この街はまだヒーローの登場を望んでいる! 次の事件が男を待っているのだ!」

幼馴染「私は辞めることを許した訳ではないぞ! 早く出ろ男ォ! いや、『課金ライダー』!!」トゥルルル…

『お留守番サービスに接z』ブツッ

幼馴染「あ゛あ゛あ゛っ! もう!」

――

幼馴染「これが我々にとって『第1話』的な話だった。とかいうオチだな、うん」

男「余計なこと言うな」

――

おわり?

ちょーしこいて続ける

ゆっくりしか進まないけど応援よろしく勇気

シスターツバサのにっき☆

――

きょうツバサの家の近くの「魔のトンネル」で、また車の事故があったみたいですp(´⌒`q)

〇〇町の「魔のトンネル」って知ってますか?

そのトンネルの中でゎ死んだ人の声が聞こえるそぅですよ(°□°;) やだなぁこゎ……

でも、死んだ人の声って気になりません!!!??? たまに亡くなったおじいちゃんの声を聞きたくなる時があるんですよね(ρ_;)

その声に引き寄せられて事故っちゃうのかなあ?

声が聞こえるのは午前0時を過ぎた頃。ちょっと行ってみょうかな? 動画は明日あげます、お楽しみに!

でゎでゎ~☆

――
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カテゴリ:ぅゎさばなし

――教室

友「なぁ、男! 『魔のトン 男「知ってる行かない」

友「……」

男「……」

友「……」

男「……」

友「今晩『魔のト 男「行かない」

友「……」

男「行かない」

友「い 男「行かない」

男「モブらと行きゃあいいじゃないか」

友「ひとくくりにするなよ……。いや、アイツらにも断られた。怖いのが嫌なのかね」

男「あのトンネル、事故も多いしな。友も行くのは止めとけよ。夜中だしさ。補導されるぞ?」

友「……わーったよ。行かない行かない行かないヨー」

男(こいつ絶対行くな……)

友「課題の答えも分かんないし帰ろうぜ」

男「ん、そうするか」

友「担任の出す課題ったら毎回難しすぎんだよなー」

――校庭

サッカー部員1「上がれ上がれ!」

サッカー部員2「パース! パスパース! パーs……ナイッシュー!」

サッカー部員3「こっちこっちオアアアーーッ」

男「サッカー部が大会近いんだな。練習にも熱が入ってる」テクテク

友「我が校サッカー部のエースも張り切ってるなー!」

サッカー部エース「よし、フォーメーション確認!」

男「プロからもお呼びがかかってるんだろ? すごいな。俺も何かスポーツ1つでも極めてれば良かったなぁ……」

友「えー、お前だって……あ、クラス委員だ」

男「ホントだ」

クラス委員「あら、男君、友君こんにちは」

男「こんちわ」

友「ちわっす」

クラス委員「今帰るところ?」

男「はい、課題する為に残ってたんですけど(同級生なのにクラス委員には敬語を使いたくなるな……)」

友「分からないから止めたんスよぉ(クラス委員今日も美しいなぁ)」

クラス委員「そう。わたしは文化祭の計画会議だったの。後は生徒会選挙の会議」

男「文化祭かぁ……」

友「生徒会選挙なぁ。俺にはあんまり関係ないイベントっぽいけど」

クラス委員「ダメよ、友君。選挙に出馬しないにしてもあなたは有権者の1人。清き一票が学校を変えるの」

友「ふぁ、ふぁい(今の『ダメよ』を脳内音声フォルダに保存しなきゃ……)」

クラス委員「2人共、わたしと帰る道は一緒よね? わたしも付いて行っても問題ないかしら?」

男「あ、はい」

友「やったああああああああああああああ(いいっすよ)」

男「友、声と心の声が逆転してる」

――通学路

クラス委員「へぇ……『魔のトンネル』。そんなものがあるの?」

友「そうなんですよ。死んだ人の声が聞こえるっていう……」

クラス委員「不思議ね……。でも面白そう!」

友「でしょ!? クラス委員、今晩俺と一緒に行きませんk クラス委員「ダメ。我が校は21時以降の外出は禁止しているはずよ。生徒手帳確認っ」

友「……」ショボーン

男「クラス委員、友はトラブルメーカーだからどこ行ってもめんどくさいことになりますよ」

友「そ、それを言うならお前だって!」

クラス委員「……ふふ。2人共面白い」クスクス

友「え、あ、その、そうすか? へはは……」

男「あ、ここ俺んちなんでお先します」

クラス委員「ここが男君の家?」

男「はい。まぁ別に覚えなくてもいいですけど」

友「よし、クラス委員を独り占めだ。早く家に入れよ男(じゃあなー、男。また明日ー)」

男「友、心の声しまえ。ああ、またな」

クラス委員「バイバイ、男君。また明日」テクテク…

――

友「あっ、クラス委員この棺桶のストラップは……」

クラス委員「今友だちの中で流行ってる『ヴァンパイア娘。』のシリーズなの。かわいいでしょ?」

友「かっっっっわいいっす!(クラス委員が)」

――男の家

バタン

男「ふぅー。やっと学校が終わり、っと」

犬「お帰り。飯だ」

男「はいはい。夕飯な」

幼馴染「お帰り。私にも飯だ」

男「はいはい。お前も夕……ん?」

幼馴染「飯だ」

男「どうやって家に入った。昼飯は弁当箱に入れて、幼馴染の家に置いていったはずだよな」

幼馴染「家には電子ロックを解除して入った。弁当は食べた。おいしかったよ、ありがとう」

男「どういたしまして……じゃないっ! 不法侵入はヤメろ!」

犬「うまいうまい飯がうまい。だけどたまには肉も食いたい」

男「今度な」

幼馴染「……」ツーン

男「何か……怒ってるのか?」

幼馴染「……」ツーン

男「何か悪いことでもしたかな?」

幼馴染「家の前から見ていた。……男が知らない女と帰って来た」ツーン

男「ああ、クラス委員だ。忘れたか? 幼馴染も学校に来た時何回も会っているはずだけど」

幼馴染「私は学校やクラスメートには興味がない! というかな、そういう問題ではないのだ!」

男「じゃあどういうことなんだよ」

犬「しょうゆうこと」

男「幼馴染、犬に変なこと教えるな」

幼馴染「浮気だぞ浮気! さいてー」

犬「さいてー」

男「やめろ! そもそも浮気って付き合ってる人がいるのに、違う人といちゃこらすることだろ? そもそも別に俺は……」

幼馴染「……」

幼馴染「…………」ウルッ

幼馴染「………………ぅ」グスッ

男「はい今のナーシ! 今のノーカンノーカン。……ごめん幼馴染」

幼馴染「……ゆ゛る゛ざん゛」グスッ…

男「な、何でもするからさ。な?」

幼馴染「……」グスッ

幼馴染「ん?」

……

男「もう一度『課金ライダー』をやれだぁ?」

幼馴染「ああ。戦闘員アプリを使った犯罪はテレビなどではあまり報じないものの増加傾向にある。だから……」

男「だからまたヒーローごっこをやれってことかぁ……」

幼馴染「ごっこではない! アーマーやウェポンの強力さは分かっているはずだぞ!?」

男「……確かに」

幼馴染「男に二言は無し、だぞ」

男「ハァ……もう一度。もう一度だけ、な」

幼馴染「何でそんなに乗り気になれないんだ。昔の男なら 男「昔の話はしたくない!!」

男「……幼馴染も分かってるだろ?」

幼馴染「す、すまん。だが私は……男が自信を取り戻してくれると思って……」

男「大きなお世話! あくまで幼馴染が危険な目に会いそうな時にしか変身しないからなっ」

幼馴染「ん……」

――男の家 リビング

テレビ<「

※カメラのフラッシュによる点滅で気分が悪くなる場合は、目を休めるなどして対処してください

技術主任『どーもすいませんでした』ペコ

戦闘員アプリに関する事件の某会社の謝罪会見から数日。アプリ開発責任者の開発主任氏は頭を下げるばかりで、報道陣に何か答える様子はなかった……。

記者『技術主任! アプリの元となった技術者はあなたではないと聞きましたが!』

記者『主任! 超硬度プラスチックを使わない光学【ウェポン】が開発されているとの話が!』

記者『主任!』

記者『主任!』

技術主任『………………チッ』スタスタ

7分にも及ぶ謝罪の後、技術主任がしたのは……舌打ちだけだった。

キャスター「いやー最悪ですねー技術主任。某会社のアプリ産業進出は我が国にとって利益をもたらすと同時にこんなことになってしまうとは」

解説員「おもちゃ会社だった某会社は戦闘員アプリの流行と共に経営規模を拡大し続けていますからね。今後の動向に注目していきましょう」

キャスター「CM明けた次のコーナーは、現在女子高生に人気のブロガー『シスターツバサ』に迫ります」」

男「はい、今晩は麻婆豆腐だぞ。チーズ春巻きもある」コトン

幼馴染「うおぉ! 春巻きだ! じゃあ手を合わせて……」

男「はい」

「「いただきます」」

幼馴染「ごちそうさまでした」

男「お粗末さまでした」

幼馴染「……」ジー

男「……」

幼馴染「……」ジー

男「やるから心配しなくていいから、『課金ライダー』」ハァ

幼馴染「うん……」

男「……」

幼馴染「……隣座ってもいいか?」

男「……いいよ」

幼馴染「……」ポスッ

男「……俺は何も変わってないよ」

幼馴染「……少しくっついてもいいか?」

男「ちょっとだけな」

幼馴染「……」ヒタッ

男「……俺は父さんや母さんがいなくたってもう大丈夫だ」

幼馴染「……」

男「でも、幼馴染。お前だって……」

幼馴染「お互い天涯孤独の身だ……。私だってもう子供ではない。寂しいなどと言ってはいられない」

幼馴染「でも……」

男「でも?」

幼馴染「今は……もう少しこうさせてくれ」ヒタッ

男「……うん」

……

――深夜 『魔のトンネル』

友「来ちゃった。しかも1人で」

友「暗っ、怖っ。車通り少なっ! で、でも死者の声聞きたいし……」

友「あ、あれ? でも、死者の声って誰の声が聞こえるんだろ……」

友「じいちゃんもばーちゃんも生きてるし……オヤジも母ちゃんも……」

友「俺んち死人いない!?」

友「ああ……失敗した。さっさと帰ろ早く帰ろ。独り言多いし、関係ないけど」

ブロロ…

友「あ、車来た。って、あれは!?」

友「担任の車! やべっ、怒られる。隠れよ」コソコソ

車<ブロロロロ…

友「うわー。見つかったら絶対ぶん殴られる。またはクラスで晒される……」コソコソ

車<ブロロロロロロ…

友「見つかりませんように見つかりませんように」

チャン…

車<ブロロロロ…

友「あっ、通り過ぎた。良かったぁ」

ンチャン……

車<ブロロ…

友「ん? 何か声が……」

ケンチャン……

ケンチャン ケンチャン ケンチャン

友「え? 誰!? 誰だよ! 誰が喋ってるんだ!?」

車<ブロ……

ケンチャンケンチャンケンチャンケンチャンケンチャン

友「これ、もしかして『死人の声』か? な、なら早く逃げないと」

ケンチャンケンチャンケンチャンケンチャンケンチャンケンチャン

友「た、助けt キキィーッ……グシャァッッ

友(後ろからすげえ音が……。あっちは担任が行った方向……。まさか事故ったんじゃ。で、でも後ろに何かいたら……)

???「振り向くな」

友「!」ビクッ

友「だ、誰だよ……」

???「私は『魔のトンネル』そのもの。死人の声を聞かせ、その者を冥界へ誘う。振り向けば貴様も車の中の男のようになるぞ……」

友「じゃ、じゃあ担任は!?」

???「フフフ……フハハハハハハ! さぁ帰るのだ少年よ。振り返らず、ここから立ち去れ!」

友「担任を置いていく訳には!」

???「しつこいヤツだ……。ここに貴様がいては何かと都合が悪いというのに!」

友「なんだよ都合が悪いとかって! 『魔のトンネル』なんて怖くないぞ! ふ、振り向いてやる!」

???「ぬゥ……ならば……」キィィィィィイ……

カエレ……カエレ……

友「なんだよ、この声! 死者の声なんか怖くないんだよ、バーカ!」

カエレ…カエレ…カエレ…

???「怖い怖くないの問題ではない……。その身体は自分の意志に反して勝手に動き出すのだ……ハハハハ」

カエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレ

友「あ、あ、あぁ……や、やめ、やめろォ!」ガクガク

カエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレ

友「ア、ア、ア」

???「帰るのだ、分かったな?」

友「……ハイ」


???「いい子だ。この呪いはトンネルを出て暫くすれば解ける」

友「……」テクテク

???「『魔のトンネル』の恐怖、忘れるなよ。フハハハハハハ!!」

???「行ったか……」

パチパチパチ…

???「誰だッ!?」

技術主任「いやぁぼくだよ、ぼ・く。」パチパチ…

???「主任でしたか。見ておられたのですね」

技術主任「誰が聞いているか分からない。呼び合うならHN(ハンドルネーム)にしようよ。ね? 『クレバット』の蝙蝠男クン」

蝙蝠男「分かりました、そうしましょう。『元帥』殿」

技術主任「素晴らしいものを見させてもらったよ。まさか『都市伝説』を作り上げ、それを『名乗る』とはね」

蝙蝠男「我ながら良い出来かと」

技術主任「芸のないコンビニ強盗をした『†蜘蛛†』にはホントがっかりさせられたよ」ヤレヤレ

蝙蝠男「私はヤツとは違います……。必ず『プレゼンテーション』を成功させましょう」

技術主任「ん、よろしいよろしい。じゃ、ぼくは帰るから。キミは適当に救急車呼ぶなり、逃げるなりしてね」

技術主任「キミのその情報収集力や用意周到さには期待しているんだ」

蝙蝠男「ありがとうございます……」

……

主題歌に
High-kame-kiling!(廃課金!)
Jg-karma-kiling!(重課金!)
みたいなのも追加で

鎧武の「got it move(ガイム)」みたいな感じで

上sagaっちゃってすいません

――次の日の朝 教室

友「――ということだった」

男「まさかホントに行くとはな」

友「もう行かないよ……。世界の知ってはいけない領域に踏み込んだ気分だ……」

男「で、友は意識が朦朧とした後どうなったんだ?」

友「トンネルを出た辺りで意識がハッキリとしてきた。すぐ通報したさ。担任の命に別状はなかったのは良かったけど……」

男「腕と脚を骨折……か。暫くは帰って来ないな」

ガララ

学年主任「おはようございます」

「「「おはようございまーす」」」

学年主任「お前らも知っているとは思うが、担任先生は事故で暫くお休みを取ることになった。これは――」

――

男(『魔のトンネル』に『事故』、『死者の声』か。現実味が無さ過ぎだろ。この間のコンビニ強盗とはワケが違う)

男(これは例の『アプリ』とは全く関係ないものだろ。どんなに技術が発達しても、死者の声を発生させるなんてことはできないよな)

男(担任もビビってハンドルを切り損ねたってところか)

男(じゃあ、友の聞いた『魔のトンネル』本人の声は……?)

――

学年主任「――という訳で代理の講師の方を担任として迎えることになった。どうぞ入ってください」

ガララ

女子たち「「「きゃ~!」」」

イケメン講師「皆さんはじめまして! 短い期間だと思うけれどよろしく!」キラッ

学年主任「じゃあここからは若い講師君に任せて……。私は職員室に戻ろう。では」

ガララ…

イケメン講師「担任先生は僕の大学の大先輩にあたります。偶然にも昨日、一緒に食事することになっていて色々とお話したんですけど……。今回のことは本当に残念です」

男(ジャニ〇ズとかそういう系の顔だな。女子が歓声をあげるわけだ)

イケメン講師「僕も担任先生のようにみんなを引っ張っていけるように頑張ります! もう一度改めて、よろしくっ」キラッ

女子たち「「「きゃ~!」」」

友(クラス委員はあんな奴になびかないでくれよ……)

イケメン講師「早速、一時限目を始めよう。まずはレクリエーションからかな? 名前の確認の為に、クラスの皆には自己紹介をしてもらいたいと思うんだけどいいかな?」

女子たち「「「いいで~す!」」」

……

クラス委員「クラス委員です。よろしくお願いします」

パチパチパチパチ…

……

友「俺のクラス委員は絶対に渡さない(友です。よろしくッス)」

\ココロノコエギャクテンシテンゾ/ パチパチパチパチ…

……

男「男でs イケメン講師「キミが男君かぁ! 話は聞いてるよ。よろしくね!」

男「あ、はい」

男(なんだコイツ)

――放課後 教室

男「やっと授業終わった……」フゥ

男(やはり誰もいない教室は落ち着くな。文化祭前だし、大体の運動部は秋の大会に向けての練習がある。この期間は少し好きだな……)

男(しかし、イケメン講師……。聞いてもいないのにペラペラと話すヤツだ。こういうのは苦手だ)

男「……」

男「あれ? 『誰もいない教室』……ってことは」

男「友がいない」

男「少し探しに行こう」

――職員室前

友「……で……なんですよ……だから……」

学年主任「……う~ん……でもあるし……」

男「お、こんなところにいたのか。おーい、友」

友「あ、男」

男「何やってるんだ?」

友「いや、さ。担任の」

学年主任「おい」

友「担任『先生』の! お見舞いに行きたくてさぁ。学年主任……『先生』に病院の場所を聞いていたんだ」

学年主任「しかしなぁ。一応個人情報でもあるし……。それに……」

男「?」

学年主任「いや。しかし……う~ん」

友「お願いしますよ先生~」

イケメン講師「それなら!」ヒョコ

男 友 学年主任「!?」

イケメン講師「それなら、僕たち教師が彼らの引率をして行く形にすればいいんじゃないでしょうか?」

学年主任「ああ、なるほど。しかし……」

イケメン講師「僕、担任先生の奥さんの電話番号知ってますよ! 確認取ってみてもいいですか?」ピポパ

学年主任「いいですか、って。君、もう電話番号押してるじゃないか」

イケメン講師「あ、もしもし? 僕です。次の土曜日か日曜日なんですけど――」

男「もう日程決めてるし」

イケメン講師「はい、はい! ありがとうございます! では――」

学年主任「……」

イケメン講師「――オッケーみたいですよ!」

友「やったー!」

学年主任「まったく……君の神出鬼没さと空気の読めなさには驚かされるよ」

……

――通学路

男「それにしても変だよなぁ」

友「誰がよ?」

男「友だよ、友。お見舞いって何さ。担任とは同じ場所に偶然居合わせただけだろ? お前が気にすることはないんじゃないの?」

友「いや、さ……」ハハハ

男「何だよ」

友「そりゃ偶然居合わせただけっちゃあだけなんだけどさ。あの時、訳わかんなくなってたとは言え担任を置いて行っちゃったから……。何となく負い目感じちゃって」

男「負い目、か。……お前、さては優しいヤツだな!?」

友「や、やめろよ。通報したのも一般市民の義務を果たしたまでだし、ただ罪滅ぼししたいってだけなんだからさあ」

男「ハハ、謙遜するなって。それに、お前の口から『一般市民の義務』なんて出るとは思わなかったよ」

友「し、失礼な! ……でも、俺が見た『魔のトンネル』自体、よく考えてみれば夢みたいなもんだからな……」

男「え?」

友「意識が朦朧としてる時に夢……みたいなものを見たんだ」

男「夢?」

友「何だか怖い感じだったよ。説明はしづらいんだけど……『触れたいけど触れることができない感じ』の夢? みたいな感じだった」

男「『触れたいけど触れることができない感じ』かあ。ずいぶん抽象的なイメージだな。そもそも夢ってもの自体、触れることができそうでできないもんだけど」

友「それ以外の言葉で言い表しようがないんだよ。触れたらいけないとか、自分がダメになるかもしれないみたいな気持ちが流れ込んで来たんだ」

男「『恐怖』とか『畏怖』の類か……」

友「そうそれ! ……きっとそれが、逃げ出す理由を作る為に自分自身が作った幻覚だと思うんだよ」

男「『魔のトンネル』のせいじゃないって意味か?」

友「だって、これは『死者の声』とは違うし……」

男「いや、違くは……ないんじゃないか?」

男「俺の仮説、聞いてくれるか?」

友「あ、ああ」

男「『魔のトンネル』が見せている、または聞かせているのは『死者の声』なんかじゃない」

男「あれが見せていたのは、友の言う『触れたいけど触れることができない感じ』なんだよ!」

友「な、なんだってー!?」

友「ってどういう意味よ」

男「えーと、つまりだな。魔のトンネルが見せているのは、そのトンネルに迷い込んだ人の『触れたいけど触れることができない』と分かっているもの。または、そう発想させる種……のようなもの」

男「言い替えるなら『会いたくても会えない人』、『二度と会えないということが分かっている人』。死者の声を聞いた人はこれが聞こえてきたんじゃないか?」

男「友の場合はそれが違った」

友「俺は近い中の知っている人で、死んだ人がいない」

男「友の方が特殊なケースかもしれないな。この仮説、どうよ」

友「さらに分からん」

男「つまりだなぁ」

――

魔のトンネル「ワハハ~! お前に幻覚やら幻聴やらを見せてやるぞ~」ビビビ

男「わ~」バリバリ

魔のトンネル「どや? 見えてきたやろ?」

男「あれ~『去年死んだ(会えないと分かっている人の声)』おばあちゃんが俺を呼んでるぅ~」

男「『何とも言えない(見たくても見ることのできない)』不安感が具現化して俺を殺しに来る~」

魔のトンネル「ワハハ~!」

――

男「こんな感じだ。分かったか?」

友「なるほど」

男「つまりは! 気にしすぎるなよ! っつー話だ」

友「うん……、そうかも」

男「考え過ぎなんだよ。友は。今の仮説は真面目に考えたヤツだけど」

友「うん、男の気持ちは伝わったよ。ありがとな。はぁ、少し肩の力抜けてきた。あぁ~、こりゃあ都市伝説の成せるワザだな。人間にはできないや」

男「う~ん。出来なくもないだろうが、これができるのは都市伝説級のヤツだろうな」

友「出来なくもないって……誰ができるんだよそんなこと」

男「決まってるだろ? 戦と……」

男「……」

男「……っ!」

友「どした?」

男「超能力者! 悪い超能力者だよ!」

友「いるかよそんなのー。アホらしくて涙出て来たわ……。あーあ、お見舞いに何持って行こうかなーっと」

男「ここは普通にフルーツで」

友「ケーキだろJK」

男「なら、お菓子の詰め合わせとか――」

……

――男の家

犬「メシをくれ」

幼馴染「何? ドライバーを貸して欲しいだと?」

男「この際、何故俺んちに入り浸っているかは聞かない。頼む、貸してくれ」

幼馴染「いいが……。何だ、男よ。急にやる気になって。あんなに『変身』を拒んでいたじゃないか」

男「……」

幼馴染「『魔のトンネル』」

男「!」ビクッ

幼馴染「やはり、な。男も気づいてしまったか。『魔のトンネル』とやらの正体に」

男「ああ、何となくだが。都市伝説も死者の声も存在しないなら、そのどちらにも匹敵するような力を持っていそうなヤツら……」

幼馴染「『戦闘員アプリ』使用者……」

幼馴染「タブレットを用意してある。これを見てくれ」

男「これは……町の地図か? そしてこの円は……」

幼馴染「その通り。これはこの町の地図。そして、この円は『戦闘員アプリ』を使った際に微量に出る、周囲の電波を阻害する特殊な電波を検知した場所に記されている」

男「色の濃さがその特殊な電波の強さを表しているんだな? ……これは一際大きい場所があるな」

幼馴染「『魔のトンネル』だ。履歴はここ1ヶ月間の累計。日付毎のデータも調べている。例のコンビニと比べても、ここが一番だ」

男「コンビニ強盗と時期が被っている……。いや、それより前から行動していたのか!?」

幼馴染「随分と前からだ。『魔のトンネル』とやらの正体は、かなり用意周到な計画を建てる人物と推理できる」

男「あれ? でも、トンネルって電波が通りにくいんじゃなかったか?」

幼馴染「その理由はだな。『電波増幅装置』だ」

男「電波増幅装置? そのまんまな名前だけど、アプリ使用者がアプリを使う為にわざわざ設置したのか?」

幼馴染「いや、それはない。このトンネルはこの町の都市開発の一部となっている。地下鉄を□□街から繋げる計画の為に、設置されたものだろう」

男「こいつも何も知らない戦闘員を操って……」

幼馴染「それもどうだろうな。私には、トンネル内部の特殊電波をトンネル外部のアンテナが、増幅した状態の電波を発信しているように見える。単独犯ということだな」

男「1人? よほどの自信がなきゃあこんなことできないと思うけど……」

幼馴染「被害者が1人出た以上、放ってはおけない。それに、厄介なのはそれだけではない」

幼馴染「――ヤツはトンネルから一歩も外へ出ていないのだ」

男「トンネルから出ず1ヶ月間!? 協力者が食べ物を運んでいたとか……。服とかどうするんだ、それ」

幼馴染「マジメに話を聞けっ!」

男「ご、ごめん」

幼馴染「……アプリ使用者は特殊電波の動きを見て大まかな移動場所を探知できる。蜘蛛男の逃走ルートも、その方法で調べていた」

幼馴染「しかしだな。今回は違う。トンネル自体には強い反応があるが、その周りには全く反応がない」

幼馴染「男の言うとおり、文字通りトンネルの外へ『出ない』という可能性も大いにあるが、私が予想したものはこれだ」バンッ

男「……」

幼馴染「タブレットを叩いているのだからタブレットに書いてある文字を見てくれ! その為だけに用意したんだから!」ドコミテルンダオマエハッ

男「……『トンネルの外以外では変身しない』?」

『トンネルの外以外で変身しない』

『トンネルの中以外で変身しない』

男「よっぽど自分の正体を知られたくないんだな」

幼馴染「ふん。良いご身分だな。SNSでは『現実世界の人格』と『アカウント自身の人格』を全く別の物と考えて、切り替えている人間がいると聞いたがこれほどまで徹底しているとは……」

男「ネットとリアルの区別が付かなかった結果がこれかよ。何が『魔のトンネル』だよ! 怖がっている人がいて、さらに大怪我する人だって出たんだぞ!?」

男「……幼馴染」

幼馴染「分かっている。少し待て」ゴソゴソ

男「そのデカい鞄はいい加減にk 幼馴染「待ってろと言っている……」ゴソゴソ

幼馴染「あったあった! ドライバー! 起きろ! 仕事だぞ!」

課金ドライバー「音声ロック解除。起動シマス。……マスター、オハヨウゴザイマス」

男「……今回で最後だぞ」

課金ドライバー「……了解。デハ早速、現場ニ急行シマショウ。外デ『マシンチャージャー』ガ発進準備ヲシテイマス」

男「よし、ドライバーはナビよろしく。幼馴染はどうするんだ?」

幼馴染「私は現場に行っても足手まといになるだけだから……。ここで男のバックアップをするよ。それにまだ調べることもある……」

男「分かった、必要な時は連絡する。泊まってくなら風呂使えよ」

幼馴染「お風呂セットの準備はしてある」フフ

男「はいはい。じゃあな、行ってくる」

課金ドライバー「チョット待ッテクダサイ、男様」

男「……なんだよ今さら」

課金ドライバー「所持金ハ確認サレマシタカ?」

男「……あっ」

課金ドライバー「失礼デスガ現在ノ所持金ハ……?」

男「……700円」

幼馴染「……」ジー

男「忘れてた訳じゃないし、戦う為に使ったんだよ! しょうがないだろ! それ以外は使ってなかったから逆に褒めてほしいくらいだわ!」

課金ライダー「ストックサレタ【ウェポン】ガ、3ツアリマス。今回ノゴ利用金見積モリトシマシテハ……」

課金ドライバー「『マシンチャージャー』一回ノ使用ニ100円。一回変身サレテ100円……200円デスネ。活動ハ計算上可能デス」

男「ほら! 行ける!」

男「よし、行ってくるからな!」ダダダ…

マシンチャージャー<ブロロロロ…

幼馴染「男のやつ……。大事な時にポカするから心配なんだよなぁ……」

――道路

マシンチャージャー<ブロロロロ…

男「チャリ台引いて残金470円……」ゴクゴク

課金ドライバー「ソノ計算ハ間違ッテイマス」

男「いいんだよこれで」ゴクゴク

課金ドライバー「何ヲ飲ンデイルノデスカ?」

男「マウンテンデュ〇だよ」ゴクゴク

課金ドライバー「分カリマシタ。コレガ計算ヲ間違エタ理由デスネ」

男「うるさいよ。もうすぐトンネル着くぞ」

マシンチャージャー<ブロロロロ…

――『魔のトンネル』

チャージャー<ブロロロロ……キキッ

課金ドライバー「警告、路上駐車ハ交通違反デス」

男「車通りも人通りも少ないし平気だって。うん、思っていたより普通のトンネルだ。電波増幅装置はどこにあるんだ?」

課金ドライバー「コノトンネルハ、山ノ側面ニ掘ラレテデキテイマス。装置ハ山ノ頂上ニ設置サレテイマス」

課金ドライバー「マサカソレヲ壊シテシマオウダナンテ……思ッテハイマセンヨネ?」

男「よく分かったな」

課金ドライバー「トンデモナイ! 公共事業デ作ラレタ物ヲ破壊スルトイウコトハ、ドウイウコトカ一度考エテクダサイ」

男「あぁ……ごめん。倒すことばっかり考えていて忘れていたよ」

……

男「……11時57分か。そろそろ何か聞こえて来てもいい気がするんだが」

苦しんでいる男「うぅ……あ、熱い、痛いぃ……」

男「人!? 大丈夫ですか!?」

苦しんでいる男「あぁ……あ、あ、あ゛」

男(すごい大怪我だ……。火傷……? これ、まるで……)

苦しんでいる男「……れられた」

男「何ですか?」

苦しんでいる男「逃げられたんです……あ゛あぁ……に……」

男「……だ、誰に?」

苦しんでいる男「……お前だよ、男」

苦しんでいる男「……うぅ、自分の父親の、顔が、分か、らな、いの、か?」

男「や、やめろよ……違う、違うんだよ、違うんだ。そんな、だって、俺は……」

苦しんでいる男「あぁ、そうか。分からないはずだな。だって私の顔が……」

苦しんでいる男「こんなにも爛れているのだからなあ……ハハ、ハハ、なぁ、男……」

幼馴染の父「僕も」

幼馴染の母「私も」

男の母「私も」

「「「「お前に殺されたんだよ」」」」

アハハハハハハハハハハハハハ……! アハハハハハハハハハハハハハ……!

……

男「あ、あぁ……あ、あ、あ」ガクガク

課金ドライバー「精神ニ、訂正、脳ニ攻撃ヲ受ケテイマス。回避行動ヲ取ッテクダサイ。警告、回避行動ヲ取ッテクダサイ」

男「ごめんなさい……ごめんなさい……。俺は、俺は誰も……」ガタガタ

課金ドライバー「回避行動ヲ……。音声ガ届イテイナイヨウデス。敵ノ熱反応モ感知サレマセンデシタ。一体ドコカラ攻撃ヲ!?」

男「ぅ、うぅ……ひっく……俺も父さんのところに……」

課金ドライバー「ナ、自殺行動ハイケマセン! 回避行動ヲ……。回避……。ウゥ、自分ガ機械デアルコトガナサケナイ!」

男「舌を噛めば……が、ぎ、あ゛」

課金ドライバー「ヤメナサイ! マスターダッタラ、マスターダッタラドンナ行動ヲ取ルカ……」

課金ドライバー「ソウデス! マスターノ声ヲ男様ニ聞カセレバ!」

――過去の欠片

男(幼)「――さん! 父さんは悪いことをするつもりであれを作った訳じゃないんだ!」

幼馴染(幼)「うんっ!」

――「根拠は?」

男(幼)「あいつは、父さんが仕事で俺たちと遊べないからって遊び相手の為に作ったんだ……」

幼馴染(幼)「私のママだってそんなつもりで『あの子』を作ったわけじゃない!」

――「ほぉ。なるほど。優しいのだな、博士達は」

――「だから私のような者につけ込まれる」ニタァ








幼馴染『起きろ、男! いつまで寝ているつもりだ!?』







――『魔のトンネル』

男「はっ!」

幼馴染『和田アキ子かお前は……』

男「俺は今まで一体何を?」

幼馴染『『魔のトンネル』からの攻撃を受けていたのだ。夢、悪い夢を少し見させられていた』

男「通りで頭が痛いはずだよ。で、『魔のトンネル』はどこに?」

課金ドライバー「ソレガ……」

男「感知できない?」

課金ドライバー「ハイ。コノトンネルノドコカニ『魔のトンネル』ガ居ルコトハ確カデス。デスガ、私ノセンサーガ数分程前カラ反応ヲシナクナッテイルノデス」

幼馴染『アプリの電波は確認できている。アプリ内には光学迷彩効果を持った【ウェポン】もあるのだ。それで男の目もごまかせているのだろう」

幼馴染『しかし、問題はドライバーが居場所を感知できない件だ。アプリは使っているのに肝心の人はいない。男への攻撃が継続されていないということは……。電波攻撃対象をドライバーへ変えたということか?』

男「なるほど、それなら納得がいくな。しかし、これじゃあまるで俺たちが……」

ガシャン

蝙蝠男?「……」ヴィィン…

男「……追い詰められたみたいな……」

蝙蝠男?「……電波攻撃失敗ヲ確認。フェーズ2ヘ移行。対象ヲ補足。攻撃ヲ開始シマス」

男「な、なんだアイツ!? 幼馴染、教えてくれ!」

幼馴染『あ、あいつは……『ドローン』! まさか、ヤツは遠隔操作を……ザッ……ザッ……』ブツン

ツー、ツー、ツー

課金ドライバー「通話ヲ強制終了シマシタ。回線ガ繋ガリマセン!」

蝙蝠男?「回線強制切断。範囲内ヲオフラインニ設定シマス」

蝙蝠男?「……マスターヘ警告送信完了。攻撃対象数1」ガシャン ガシャン

男「どうやら、逃がしちゃくれないようだな」

課金ドライバー「ノ、ヨウデスネ。距離100m」

蝙蝠男?「……」ガシャン ガシャン

男「で、ドライバー。『ドローン』って?」

課金ドライバー「『ドローン』トハ、簡単ニ言エバ、人型ノ【ウェポン】デス。素体ニ、アーマーヲ展開シテ起動シマス。距離70m」

蝙蝠男?「……」ガシャン ガシャン

男「【ウェポン】? 人間じゃないのか?」

課金ドライバー「ハイ。ドローンハ超硬度プラスチック製ノ機械人形。アーマー自体ハ、人ガ装着スル物ト同ジナノデ、特殊ナセンサーヲ積ンダ私ノヨウナ機械デナケレバ、判別ハ難シイカモシレマセンガ。距離30m」

男「そのセンサーが今使えないっていうのは問題だな」

課金ドライバー「返ス言葉モゴザイマセン」

男「で、あいつ強いのか?」

課金ドライバー「カナリ」

男「……オーケー」

蝙蝠男?「攻撃射程内ニ入リマシタ。攻撃開始シマス」ガチャン

蝙蝠男(ドローン)「一定戦闘力ヲ持ツト予想サレル侵入者ヲ発見。無力化シマス」

課金ドライバー「相手トノ距離3m以内。危険デス、回避行動ヲ取ッテクダサイ」

男「……」

蝙蝠男「攻撃開始」バッ

課金ドライバー「行動予測、空中カラノ打撃。正面デス。回避行動ヲ取ッテクダサイ! 回避行動ヲ取ッテクダサイ! 回避行動ヲ取 男「『課金ドライバー起動』!」チャリンッ

ギュウィィィィイン…

蝙蝠男(ドローン)「原因不明ノフリーズガ発生。原因不明ノフリーズガ発生。動作ガ凍結サレマス。プログラムノ再入力ヲ――」

課金ドライバー「音声認承完了。ログイン確認シマシタ。男様……!?」

男「変身準備中は戦闘員アプリが動けなくなるんだろ? なら……こっちにだって策はあるんだ!」

男「……おい! よく分かんねーロボット野郎! ご主人様に伝えておけ! コソコソ隠れてないでさっさと出て来い卑怯者、ってな!」

蝙蝠男(ドローン)「ギ、ギギ」

課金ドライバー「本日ノパスワードトコールノ入力ヲ!」

男「了解っ。アーマー展開、使用確認書既読、パスワード『その命(アカウント)、神(運営)に返しなさい』」

男「見てろよ、これがお前に見せる最初で最後の『変身』だッ!」

ピピッ

課金ドライバー「アーマー展開開始、コレヨリ変身シマス」シュウウウ…

課金ドライバー「変身完了シマス」シュウウウ…

課金ライダー「この間合いなら……」

蝙蝠男(ドローン)「プログラムノ再設定ヲシテクダサイ。プログラムノ再設定ヲシテクダサイ。プログラムノ――」

課金ライダー「行けるッ、課金ライダー……パァァアンチッ」ガキッ!

蝙蝠男「ガ、ガ……アーマー損傷率20パーセント。本体損傷率ガ、ガガ……プログラムノ再設定ヲシテクダサイ。プログラムノ再設定ヲ……」

課金ライダー「痛ッ! こ、こいつ固いぞ!」

課金ドライバー「最初ニマスターガ説明シタハズデス。男様ノ身体能力ハ補正サレテイル訳デハナイノデス!」

課金ライダー「うう、でも格闘で倒したいだろ!?」

課金ドライバー「デスカラ!」

――???

蝙蝠男「クソッ!」ダンッ!

蝙蝠男「ドローンの攻撃が失敗? そんな馬鹿な!」

蝙蝠男「プログラムの再設定なんかしたら……場所が特定されてしまうじゃないかっ!」ダンッ! ダンッ!

蝙蝠男「誰だ? 誰だ私の計画を邪魔する者は!?」

蝙蝠男「クソッ、クソッ、クソッ! 指令を送って、電波の範囲を調べられたら私の計画は丸潰れだ……」

蝙蝠男「い、いや、そうだ……まだ『あれ』がいる……! ふ、ふは、はははは……」

蝙蝠男「ドローン! プログラム再設定! 再び『対象を無力化』せよ! これなら、例えドローンが破壊されても、電波範囲を特定されても、時間は稼げる!」

???「――先生?」

蝙蝠男「は、はい。今……!」

蝙蝠男「……」

蝙蝠男「目撃者は……徹底的に調べて『削除』しなければ」

――『魔のトンネル』

蝙蝠男(ドローン)「……プログラム再設定完了。『対象ヲ無力化』」ガシャン

課金ライダー「ま、また動き出した! おい、ドライバー! お前とやいのやいのしてたらロボットが動き出しちゃったじゃんかよ!」

課金ドライバー「私ハ無実デス。弁護士ヲ呼ンデクダサイ!」

蝙蝠男(ドローン)「攻撃、攻撃。胸部装甲重点……打撃」ガキィンッ!

課金ライダー「ぐァ、ああ゛ッ……」バチィッ

課金ドライバー「アーマー損傷率20パーセント。ドローンノ狙イハ人間ノソレヨリ遥カニ正確デス。次ノ攻撃ニ備エテクダサイ」

課金ライダー「そ、そう言われても……ぐッ、来る!?」

蝙蝠男(ドローン)「回避パターンヲ予測。胸部装甲ニ……打撃」ガッキィィン…

課金ライダー「う、あああああッ!」バチバチッ

課金ドライバー「アーマー損傷率40パーセント。動力部ニ支障ガ出ル可能性ガアリマス! 回避ノ用意ヲ!」

課金ライダー「ど、ドライバー! 1日1回無料ガチャを引かせてくれ!」

課金ドライバー「現在、ネットワークガオフライン設定ニサレテオリマス。ガチャシステムハ現在使用不可デス」

課金ライダー「そ、そんな!」

蝙蝠男(ドローン)「胸部装甲ニ……打g 課金ライダー「ライダァアー……突き飛ばしっ」ググッ…ドンッ!

蝙蝠男(ドローン)「ガ」ゴロンッ

課金ライダー「ほら、ドライバーっ! 今のうちに良さそうなウェポンを!」

課金ドライバー「私ハドラエ〇ンデハアリマセン」

課金ライダー「早くっ!」

課金ドライバー「……了解。【ウェポン】【N】【チェーンシールド】 出力シマス」

課金ライダー「鎖付き盾か。相手が機械なら……手加減しなくていいんだよな!?」

課金ドライバー「元々ストックシテアル【ウェポン】デアレバ、今ノ所問題無ク出力デキマス」

課金ライダー「そんなの気にしてられるかよ! それより使い方!」

蝙蝠男(ドローン)「ギ、ガ、『対象ヲ無力化』……攻撃再開シマス。跳躍」バッ

課金ライダー「と、飛んだぞあいつ!」

課金ドライバー「空中カラノ攻撃ガ考エラレマス。回避行 課金ライダー「分かってる! ライダー……防御!」ギィンッ

課金ドライバー「男様ノネーミングセンスハ安直過ギマス」

課金ライダー「やかましい」

蝙蝠男(ドローン)「ギ、攻撃失敗。行動パターン修正、次ノ攻撃ヘ移行」

課金ライダー「思い通りにはさせないぜ? ライダー……鎖絡め捕り!」シュルルッ!

蝙蝠男(ドローン)「ギィ……行動不能行動不能」ギチッ…

蝙蝠男「……一定損傷率ヲ超エマシタ。コレヨリ、防御命令ヲ破棄シ、対象ノ無力化ヲ重点トシタ攻撃ヲ開始シマス。電波攻撃準備用意」

蝙蝠男(ドローン)「……」

課金ライダー「動けない今がチャンスだ! このままトドメを刺してやるよ! ドライバー! 新しいウェポンを!」

課金ドライバー「……」

課金ライダー「ドライバー?」

蝙蝠男(ドローン)「……」キィィィィィィンン

課金ライダー「お、お前! ドライバーに何をした!?」

蝙蝠男(ドローン)「……」キィィィィン…

課金ライダー「おい! ドライバー! お前が動けないとウェポンが!」

課金ドライバー「チ、チャー、ジャー、ヲ、ソウサ、シ、テ」

課金ライダー「チャージャーを操作? 分かった! ドライバーが遠隔操作してたくらいだ! 俺だって!」

蝙蝠男(ドローン)「……」キィィィィン…

課金ドライバー「ガ、ア゛ア゛、ア゛ア゛」バチバチ

課金ライダー「ドライバー!」

課金ライダー「動けチャージャー!」

マシンチャージャー<…

課金ドライバー「グ、ガ、エ、エラーガ発生シマシ、ト、テ、タ、タ、タ……」バチバチ…

課金ライダー「動け! 動け! 動け動け動け動け動け!」

蝙蝠男(ドローン)「対象沈黙確認。コレヨリ…」

課金ライダー「動けえええェーーーーーーッ!!」

蝙蝠男(ドローン)「!?」

マシンチャージャー<!

マシンチャージャー<ブロ、ブロロロロロロォンッ!

課金ライダー「マシンチャージャー、『アタック』!」

マシンチャージャー<グォォォォンッ

蝙蝠男(ドローン)「ヌァッ!」バキィィッ!

蝙蝠男(ドローン)「アーマー損傷率80パーセント超。動力部ガ破損スル恐レガアリマス。カスタマーサポートニ連絡シテクダサイ」バチバチ…

課金ライダー「名付けて……マシンひき逃げアタック!」

マシンチャージャー<ブロロ…

課金ドライバー「再起動中、再起動中……。再起動完了」ィィンッ

課金ライダー「ドライバー!」

課金ドライバー「ハイ! タダイマ戻リマシタ。チャージャーノ動カシ方ヲ数秒デマスタースルトハ、サスガデス男様」

課金ライダー「そこは気合いだよ、気合い」

蝙蝠男(ドローン)「ギ、ギ、最終指令『特攻』。了解シマシタ」バチ…

課金ライダー「もう一度トドメ、行くぞ!」

課金ドライバー「了解。【ウェポン】【R】【ビッグアックス】出力シマス」ブゥゥン…

課金ライダー「で、でっか! 重ッ!? でも……必殺技には丁度良い!」

課金ライダー「来いよ……蝙蝠野郎!」

蝙蝠男(ドローン)「ガ、ガガ、ガガガ!! 特攻シマス、特攻シマス、特攻、特攻」ガガガガガガガガガ!!

課金ドライバー「我々ニ体当タリシ自爆スルツモリデス! タイミングニ合ワセテ攻撃シテクダサイ。先程計測シタ所、最高速度ハ時速240km」

課金ライダー「当たらなきゃいいんだろ? 斧は構えるだけでいい。なら……」

課金ドライバー「カウント開始シマス。9、8、7、6、5、4」

蝙蝠男(ドローン)「グォオオアアアアアアッ!!」ギュウウウウゥッ

課金ドライバー「3」

課金ライダー「……」ゴクリ

課金ドライバー「2」

蝙蝠男(ドローン)「ォォォォォォォォォオオオッ!!」ウウウウウウウウウゥッ

課金ドライバー「1」





蝙蝠男(ドローン)「ガ……」バチバチ

課金ライダー「課金アックス、ダイナミィイィイィックチョップッ!」

蝙蝠男(ドローン)「損傷率、100パーセント、再起、不、不、不n、不能」バチッ、バチッ、バチッ

蝙蝠男(ドローン)「デデデデデデータ送信完了、完了完、完了」バチバチ…

課金ライダー「……」

蝙蝠男(ドローン)「……最後ノ命令ヲ実行シマス」

課金ライダー「な、自爆する気か!?」

課金ドライバー「イエ、モウソノ力モ残ッテイマセン。攻撃ハ失敗。『彼』ガ最期ニスルコトハ……『全データノ消去』。足跡ヲ残サナイマスターノ教エヲ守ルノデス」

課金ライダー「俺はどうすればいいんだ?」

課金ドライバー「見守ルシカアリマセン」

蝙蝠男(ドローン)「……」ガ、ガ、ガ…

蝙蝠男(ドローン)「完了。アーマー解除シマス……」キュウウ…

ドローン「」

課金ドライバー「ドローンノ沈黙ヲ確認。妨害電波等モ発信停止確認」

課金ライダー「……なぁ、ドライバー」

課金ドライバー「申シ訳アリマセン。今ハ何モ答エルコトガデキマセン」

課金ライダー「……」

課金ドライバー「マスター、コノ気持チハ何ナノデショウ……?」

――男の家 男の部屋

男「ぐごー」Zzz…

幼馴染「ふふ、子供みたいによく寝てる。……しかし」

……

男「だーっ! 大丈夫だって! 少し変な夢見させられてただけだから! 頭に変な機械付けんな!」ジタバタ

幼馴染「大丈夫ではない! 少しジッとしていろ!」

課金ドライバー「マスターノ言ウ通リニシテクダサイ!」

男「んあ~っ!」

……

幼馴染「ドローンが男に発射した超音波または電磁波の効果。ノルアドレナリンなどの過剰分泌。それが及ぼした過度なストレスによる幻覚、幻聴症状か。平気そうな顔をしているが脳の負担は計り知れない……」

課金ドライバー「男様ハ、コンナ重傷ヲ負イナガラモ戦ッテイタノデスカ」

幼馴染「ノルアドレナリンは闘争反応を発生させる場合もある。……男は我慢し過ぎる節があるからな」

課金ドライバー「申シ訳アリマセン、マスター。私ガイナガラ……」

幼馴染「いや、ドライバーのした『私の声を男に聞かせる』という判断は正しかった。気に病むことはないよ」

課金ドライバー「……」

課金ドライバー「ア、アノ、マスター!」

幼馴染「ん? なんだ?」

課金ドライバー「私ニハ本当ニ『感情』ガナイノデショウカ?」

幼馴染「……プログラム段階で私がお前にそんなものを入れた記憶はない。最初に説明したはずだ」

課金ドライバー「ソウ、デスカ……」

幼馴染「ドライバー。人間の『感情』といったものはどこから現れるのだろう」

課金ドライバー「ソレハ脳化学的ニ見レバ大脳皮質ノ 幼馴染「そういう意味ではない」

幼馴染「『心』というものは化学的観点で調べて全て分かってしまうようなものなのだろうか? という話だよ」

幼馴染「私は常々思うのだ。『人間の脳と全く同じ構成のプログラムを機械にインプットした時、その機械は【感情】を持つのか』とな」

課金ドライバー「……煙ニ巻キマシタネ、マスター」

幼馴染「はは、ドライバーは物をはっきり言うから好きだぞ」

課金ドライバー「……メモリノ消費ガ激シイ1日デシタ。私モ今日ノ所ハ、スリープモードニ移行シテ情報整理ヲシタイト思イマス。ヨロシイデショウカ、マスター」

幼馴染「ああ、いいよ。ドライバーも今日は疲れたはずだ」

課金ドライバー「……私ニハ疲労感トイウ物ハ存在シマセン。私ヲプログラムシタマスターガ一番知ッテイルハズデス」

課金ドライバー「オ休ミナサイ、マスター」キュウウ…

幼馴染「ああ」

幼馴染「……」

幼馴染「プログラムした『つもり』はなかったのだがなぁ……」

幼馴染「ん~。さて、私はもう一仕事するか」ノビーッ

幼馴染(……『戦闘員アプリ』のゲーム専用規格外の能力。某会社は何をするつもりだ?)カタカタ

幼馴染(事業拡大は公共事業まで。手を伸ばしすぎだとは誰も思わんのか)カタカタ

幼馴染「それに、このアプリ使用の特殊電波反応……」カタ…

幼馴染(観測された時間は0時24分。発信元は、男の通う(私も在籍していることにはなっているが)『〇〇県立〇〇高校』)

幼馴染(ドローンの持ち主。そして『魔のトンネル』に関する一連の事件の犯人は、この学校の中にいたといことになる)

幼馴染(今回トンネルは工事中の為、防犯カメラは一時撤去されていた。『課金ライダー』の存在は知られて……いや待て)

幼馴染(あのドローン、頻繁にマスターに連絡を取っていたな。まさか……)

男「ぐかー」Zzz…

幼馴染「……」

つづく

亀(バズーカ)更新なので投下中のレスは歓迎。

――放課後の校内廊下

男「……」コソコソ

女子A「イケメン講師先生~」キャピキャピ

女子B「ここ教えて欲しいんですけど」

イケメン講師「いいよ、ちょっと見せてね……えーと」

男「……」コソコソ

女子A「ここがこうで~」キャピキャピ

イケメン講師「そこはね、こうで――」

女子B「なるほど」

男「……」サッ

……

男(我ながら完璧な偵察d 友「男、何やってんだ?」

男「!?」ビクゥッ!

男「お、お、驚かせるなよ」

友「驚かせるなはこっちのセリフだよ。ニンジャごっこか?」

男「違う。ただちょっと……」

友「ちょっと?」

……

――今朝 男の家

男「幼馴染、話ってなんだ?」

幼馴染「昨日私が『魔のトンネル』関連の事件について寝ずに調べた結果を少し話そうと思ってな」

男「何が分かったんだよ」

幼馴染「まずは『魔のトンネル』の被害、主に死者の声を聞いた人の人数だ。男、お前は知っているか?」

男「いや、正確には知らない。クラスでは、声を聞いた奴を1人は知っているけど」

幼馴染「男も入れて31人。その被害者の内、23人は……〇〇高校の関係者だ」

男「マジかよ(その情報をどこで調べたかは聞かないでおこう……)」

幼馴染「そして、昨日確認された『戦闘員アプリ』の電波量。タブレットを見てくれ」

男「おう。……! こ、これって」

幼馴染「そうだ。トンネルに次いで、発信された特殊電波が多かった場所がここ」

男「……俺の通ってる学校だ」

幼馴染「〇〇高校。ドライバーが記録していたドローンの再起動した時間と、高校から特殊電波が発された時間は一致している」

男「『魔のトンネル』は校内にいる人間ってことか!?」

幼馴染「少なくとも私はそう推理した。被害者をよく知る人物が犯人だった、ということだな」

男「……!」

幼馴染「なぁ、男よ。学校の中で怪しい人物とかはいないのか?」

男「『とか』ってなんだよ。この広いようで狭い学校ん中で、怪しい奴がいたらすぐ気づくって」

幼馴染「いないのか? 例えば明らかにクラスで浮いてるヤツとか」

男「強いて言えば俺」

幼馴染「まーたお前はそういうことを言う! 自虐にも程があるぞ! 一周回ってセンスがない」

男「何とでも言え」

幼馴染「まったく……。まぁ、簡単に見つかる訳はないか。漫画なんかではこんな時に『季節はずれの転校生』とか『新任教師』とかいう明らか~に怪しい人物が登場するもんなんだがなぁ……」

男「あ」

幼馴染「なんだ?」

男「そういえばいた。『怪しいヤツ』!」

幼馴染「どんな?」

男「『新任教師』!」

幼馴染「おおっ!」

……

……

友「『ちょっと』どうしたんだよ! 回想してるみたいな顔して」

男「いや、ちょっと……イケメン講師が気になってて……(余計なことは言えないよな)」

友「!?」

男「女子達イケメン講師と何話してるんだ? もうちょっとで聞けそうなんだが……」コソコソ

友「な、なぁ男。何時からだ(気になり始めたのは)?」

男「まぁ、初めて見た時からかな(怪しいと思っていたのは)? あ~、もう少しで聞こえそう」コソコソ

友「そ、そっかぁ~(一目惚れか……)」

男「あ、あれっ? 友、『何時から』って、俺、お前に『あの話(『魔のトンネル』の正体を調べていること)』、話してなんかなかったよな。何で知ってるんだ?」

友「あ、あ、『あの話(男がイケメン講師が気になって(意味深)いること)』!? い、いや、俺は別に聞いてないけどォ!?」

男「ああ、気のせいだったか。バレてなくて良かった……」ホッ

友「お、おう(隠していたかったのか。悪いことしちゃったなぁ)」

男「ところで話はかわるんだけどよ、友」

友「は、はいっ!?」

男「どうかしたのか?」

友「いや……何でも」

男「じゃあ話すぞ。友、お前さ。『魔のトンネル』で意識が朦朧とする前に、何か見たものや聞いたことってあったり……しないか?」

友「はぁ? なんだ、虻から棒に」

男「『藪』だよ。いや、気になることがあってさ」

友「う~ん、と。その辺りかなり曖昧になっているからなぁ。お前のことだから何かあるんだろうけど、あてにしないでくれよな」

男「元よりあてにはしてないが」

……

……

ケンチャン ケンチャン ケンチャン

友「え? 誰!? 誰だよ! 誰が喋ってるんだ!?」

車<ブロ……

ケンチャンケンチャンケンチャンケンチャンケンチャン

友「これ、もしかして『死人の声』か? な、なら早く逃げないと」

ケンチャンケンチャンケンチャンケンチャンケンチャンケンチャン

友「た、助けt キキィーッ……グシャァッッ

……

友「『ケンチャン』なんて誰かを呼ぶ声が聞こえた気がするな。いや、声……というか音声を合成したみたいな感じの。今考えれば変な話だよ。これが『死者の声』っぽいちゃあ、っぽい」

男「……『ケンチャン』? 友の名前じゃないよなぁ?」

友「そういや担任の名前が『ケン』……なんとかって名前だったな。関係ないけど」

男「確かに担任の名前は『ケン』……なんとかだった気がする。名字も覚えてないけど」

友「俺達って案外記憶力無いのな」

男「な」

男(友が聞いた『ケンチャン』と呼ぶ声と、担任の名前『ケン』……なんとか)

男(偶然の一致、と言ってしまえばそこまでだが)

……

男「『魔のトンネル』は校内にいる人間ってことか!?」

幼馴染「少なくとも私はそう推理した。被害者をよく知る人物が犯人だった、ということだな」

男「……!」

……

男「……」

友「なんだよ、また回想してるみたいな顔して」

男「……いや、ちょっとした用事を思い出しただけだ」

友「イケメン講師にか?」

男「そ、そうだけど何で分かったんだ?」

友「友達だから、だろ?」

友「男にだって色々(男がイケメン講師に興味(意味深)があること)あるよな。大丈夫、俺はいつだって男の友達だ!」

男「……ありがとう。ありがとう、友! 俺、アイツの所に行ってくる! 悪いけど先帰っててくれ!」ダッ

友「頑張れよ! このことはモブ達には絶対言わないからな~」

男「何か怪しい言葉が聞こえた気がする」

友「頑張れよ~!」

「先生! 先生!」

イケメン講師「ん? 君は……」

男「……ハァ、ハァ。やっと見つけましたよ、イケメン講師先生」

イケメン講師「なんだ、男くんかぁ。どうしたんだい?」

男「ちょっと……お話したいことがあるんですけど、いいですか?」

イケメン講師「……いいよ。場所を変えよう。『進路相談室』でいいかな?」

男「はい。お願いします」

――進路相談室

男(この部屋で教師と相談ごとなんてしたことなかったな。掃除の時に来るだけだ)

男(進路相談係の教師は今までは担任だったけど、事故を受けてイケメン講師が代理を引き受けているんだな)

イケメン講師「や、男くん。紅茶で良かったかな?」コト…

男「あ、ありがとうございます(絶対飲まないけど)」

イケメン講師「で、話って言うのは……」

男「あ、はい。えーと」

男(こいつが間違いなく怪しいのは確か。俺が『課金ライダー』ということがバレてないなら尚結構。話を聞き出してやる……)

男「先生は担任の大学の時の後輩なんですよね?」

イケメン講師「うん、そうなんだ」

男(話に乗ってきた!)

男「事故の当日も一緒に食事をしていたとか」

イケメン講師「食事なんて堅いものじゃないけどね。居酒屋で、ちょっと。何でそんなこと聞くんだい?」

男「その日の夜のことを話してくれませんか?」

イケメン講師「あの、僕の話は……。いや、話すけどね、話すけどね」

男「……お願いします」

イケメン講師「するから睨まないで!」ビクビク

……

――居酒屋

ガヤガヤ…

イケメン講師「先輩ってこっちに来てから故郷の方には帰って無いんですか?」

担任「いやぁ、帰ってねぇなぁ。カーチャンが死んでからは暫くあっちにゃあ行ってないよ」

芭灯遏慧Cワカ>?オヌM・GfサYス^N曚麈Cv徐・テ

イケメン講師「あ、すいません。余計なこと言っちゃって……」

担任「気にすんな。もう3年も前だ。悲しんでる暇はねェ。俺には大事なかわいい生徒がいるんだからな!」

饗?同QBロ6リワ7&<БDSOKt

担任「寂しくないって言ったら嘘になりますがね。『健ちゃんきばんねげだめだよ!』ってケツを叩いてくれる人はもういないってことですから」

ヨ#@・イチ・c・・l優ト2Iゥ掛挌?/ル・

イケメン講師「でも、先輩が羨ましいですよ。受け持つ生徒がいて。僕なんか非常勤講師止まりですから」ハハハ

担任「難しい話だなぁ。免許を持ってても受け入れ先が無いってことは、俺の時代にはなかった話だし」

イケメン講師「いや、はは……。困りました。僕はずっと講師止まりなのかなぁ」

担任「落ち込むなよ。努力してるのは俺が一番知ってるんだぜ!?」

イケメン講師「先輩! 僕、ボクゥ……うぅっ、うえっ、ぐすっ」

担任「ったく情けねぇなあ。顔はいいのにこれだから……」

イケメン講師「ぐすっ、ひっぐ、う……うっプ、うっ、うっ、おr…」

担任「おいおい、吐くなら便所でしろ便所で」

イケメン講師「うっプ、う゛、はい。ちょっとトイレ行ってきます……」ソソクサ…

担任「……」

担任「さて、本題に入りますか縺溘j縲√ユ繧ュ繧ケ繝医r諢丞峙縺励↑縺」
……

イケメン講師「――で、僕はその後、代行を使って帰った。領収書もあるよ、見るかい?」

男「一応」

イケメン講師「何がしたいんだよ君は……はい、領収書」

男(……本当だ。事故当日の日付、時間も……事故が起きた位に到着してる)

男(アリバイあり。あーあ、予想は外れ。探偵ごっこは振り出しに戻るかぁ)

男「あ、ありがとうございます。じゃあ俺からの話はこれで……」

イケメン講師「ちょっと待って!」

男「はい?」

イケメン講師「え? これで終わりじゃないよね……?」

男「と、言いますと」

イケメン講師「いや、その、君が『話がある』というから僕は進路相談とか授業で聞きたいところがあって……」

男「はい、それはないっす」

イケメン講師「え、じゃあ何で僕は」

男「勘違いというか、気のせいというか、なんか……すいませんでした!」ペコッ

男「じゃ!」

イケメン講師「あ、あの、君、男くん、おいっ」

ガラガラガラ…ピシャン!

イケメン講師「行っちゃった……」

イケメン講師「僕って本当に生徒達に頼られてないんだな。ここまでからかわれて……もう僕は……」

ピーンポーンパーンポーン

学年主任『イケメン講師先生、イケメン講師先生。至急、職員室まで来てください』

イケメン講師「……」

学年主任『繰り返します。イケメン講師先生、至急職員室まで来てください』

イケメン講師「……」

ピーンポーンパーンポーン

イケメン講師「……」

イケメン講師「イカナキャ」

イケメン講師「僕は必要とされている僕は必要とされている僕は必要とされている僕は必要とされている」スタスタ…

ガラガラガラ…ピシャン




















僕は必要とされていない僕は必要とされていない僕は必要とされていない僕は必要とされていない僕は必要とされていない僕は必要とされていない僕は必要とされていない僕は必要とされていない僕は必要とされていない僕は必要とされていない僕は必要とされていない
ボクハヒツヨウトサレテイナイボクハヒツヨウトサレテイナイボクハヒツヨウトサレテイナイボクハヒツヨウトサレテイナイボクハヒツヨウトサレテイナイボクハヒツヨウトサレテイナイボクハヒツヨウトサレテイナイボクハヒツヨウトサレテイナイボクハヒツヨウトサレテイナイ
010101010101010101010101010101…

――男の家

幼馴染「そうか。容疑者はアリバイあり、と」

男「ああ。嘘をつくような余裕も無さそうだしな。でも……」

幼馴染「でも?」

男「なーんか引っかかるんだよな。なーんか」

幼馴染「具体的に言ってくれ、分からない」

男「なんだろうな。あの講師の話に何か隠されているような気がして」

幼馴染「嘘をついていると言いたいのか?」

男「違う。何というかだな……こう……記憶を改竄してるような、そんな感じだ」

幼馴染「ハッ、SFかよ。流石に戦闘員アプリと言えどそれはできないだろう」

男「だよなー?」

男「で、幼馴染の方は何か分かったことはあるのか?」

幼馴染「もちろんだ! 聞いて驚け……」

男「何々?」

――

男「フレイ効果?」

幼馴染「脳にマイクロ波を送るんだ。範囲はトンネル内全域、ドライバーまで及んでいた。この照射能力は【ウェポン】ガチャの中には組み込まれていない」

男「分かったが分からん。じゃあそのしょーしゃそーちとやらは【アーマー】の物だってことだよな」

幼馴染「ああ。かなり改造されてはいるが、似たような能力を持つアーマーは何体か確認されている」

幼馴染「タブレットを見てくれ」

幼馴染「男、お前が見たドローンはアレだろ?」

男「そうそう、これこれ」

――

【アーマー名】No.002 バット(通常形態)

【概要】
蝙蝠型のアーマー。
主な武装は、腹部に設置されたスピーカー。
それによる超音波攻撃。【飛翔形態】への変形(※)、ソナー能力などの特殊技術を備えている。
スピーカーは音楽プレイヤーなどに接続して音楽を再生することもできる。

※飛翔形態には別途の料金が発生します。756円(税込み)

現在キャンペーン中! まとめてガチャをするならこちらがお得です↓

――

男「腹部のスピーカーね。……って弱点書いてあるじゃん! ここを破壊しちゃえばいいんだろ?」

幼馴染「しかし、本人も自分の弱点という物は把握しているはずだ。気をつけねばいかん……」

男「むむ、めんどくせぇ」

幼馴染「正体は分からなくても、常に気をつけ続けろ。ということだ。ほら、いつでも変身できるようにドライバーを持って行け」ガチャ

課金ドライバー「何時デモ変身デキルヨウニシテオクベキデス。生身ノ男様ニハ力ハアリマセンノデ」

男「だからはっきり言われると傷つくんだって! それにこんなデカいベルトどうやって持ってけって言うんだよ!」

幼馴染「付けて行けばいいんじゃないか」

男「目立つんだよ! 正体バレバレじゃないかよ!」

課金ドライバー「マスターガ私ニインプットシタ『仮面ライダー』ノ映像デハ、変身ノ際、変身者ノ方ノ手ニハ何時ノ間ニカ私ノ様ナベルトガ握ラレテイル物デシタガ」

男「それ演出! ……はぁ、分かったよ。鞄に詰めてくから……」

課金ドライバー「暗イノハ嫌イデス。『怖い』デスカラ」

男「怖い?」

課金ドライバー「ア、ア、イエ。何デモアリマセン」

課金ドライバー「……」

幼馴染「ん゛! そうだ、男! もう一つ気をつけねばならないことがあるのを言い忘れていたのだ」

男「なんだそれ?」

幼馴染「実はあの蝙蝠男、電子機器を操る能力も持っているようなのだ」

男「電子機器干渉? そうか。ドローンと戦ってる時、ドライバーが喋らなくなったのも……」

幼馴染「さすが男。その通りだ。音波攻撃で電気系統が故障したのも確かだが、大きなダメージを受けたのはここッ!」ツンッ

課金ドライバー「ヒャウッ! マ、マスター、ヤメテクダサイ。ドコヲ触ッテイルノデス!?」

幼馴染「機械がいっちょ前に感じるな! ……ダメージが大きかったのはここ。スピーカー系統だ」

男「音波を流したり、電子機器を操ったり色々忙しいな」

幼馴染「バットの【アーマー】は格闘能力補正は低く使いにくいと聞いた。ま、器用貧乏ってところだな」

幼馴染「男、明日の予定は?」

男「うん、明日は担任のお見舞いに行くことにしてるんだ」

幼馴染「ふむ……」

男「なんだ? ああ。散歩ならまた今度、な。ごめん」

幼馴染「違う。……心配なんだ。男が」

男「平気だよ、俺は。蝙蝠男はトンネルからは出ないんだろ? 俺の正体が知られている訳でもないし、さ」

幼馴染「犯人は校内の人間である確率が高い」

男「大丈夫だってば」

幼馴染「明日、一緒に病院に行く人は?」

男「友と……教師2人。イケメン講師と学年主任、だけど」

幼馴染「……気をつけろよ、男。相手はどこから襲ってくるかは分からない」

幼馴染「音波攻撃、電子機器干渉を完全に防ぐ手立てはない。我々人間は、今や電子の音の中で暮らし、電子機器を使わねば生きていけない生き物なのだからな」

男(幼馴染は変なところに心配し過ぎなんだよ。大丈夫だって言ってるのに……)

――魔のトンネル

女子A「キャアアアアーッ!!」

女子B「や、やめて、近寄らないで……」

蝙蝠男「フフ、怖いか? 怖いだろう? 恐怖しろ、精神が壊れるまで恐怖し続けるのだ!」

技術主任「今日もいい仕事してるね、『クレバット』。『ツバサ』が貸したドローンを壊したみたいだけどどうしたの?」

蝙蝠男「すいません、『元帥』。少し邪魔が入りまして……」

技術主任「君らしくないね。油断してるんじゃない?」

蝙蝠男「そんなはずはありません! 私の計画は順調、何も問題無いのです!」

技術主任「ふぅ~ん」

女子A「助けて……助けてよぉ……」

女子B「謝るから、謝るから許して……」

技術主任「彼女達には何を聞かせたの?」

女子A「ごめんね、ごめんね……」ガタガタ

蝙蝠男「女子A、彼女の恐怖のタネは小学生時代に彼女が『いきものがかり』だった頃、うっかり潰してしまったクラスで飼っていたモンシロチョウの青虫から生まれました……」

技術主任「へぇ、ちっちゃいね。内容のスケールが」

蝙蝠男「いえ、『元帥』。お言葉ながら違います。恐怖やトラウマというものは、その実際起こった出来事の規模より本人の心の傷が生み出すものです」

蝙蝠男「潰れた青虫の緑色の体液、内蔵の醜さ、うっかりとは言え奪ってしまった命、そしてクラスメート達に責められた時の辛さ」

蝙蝠男「彼女には、青虫を殺したことを責める内容の言葉を聞かせています。声は私が吹き込んだものですが、彼女のトラウマが過去を思い出させ、自分のクラスメートのものに変わっていくでしょう」

技術主任「なるほどね、僕が浅はかだったよ。素晴らしい研究だね」

女子B「う、うあああ……」

蝙蝠男「女子B、彼女には昔、苛めていた我が校の生徒である女子Cの声を。音声は録音『させた』ものをうまく合成して……」

技術主任「いい趣味だねえ、ワクワクしてきたよ。これで上も次の客員幹部の座を考えてくれるかもしれないよ」

蝙蝠男「ありがとうございます!」

技術主任「『彼』にも感謝しないとね」

蝙蝠男「ええ。……『イケメン講師』。彼には指導力はまるでないものの生徒を引きつける力はあるようで……」

蝙蝠男「生徒相手に恐怖を聞き出させるいい駒になってくれました。私が直にするよりよっぽど効果的だ! アハハハハハハハ!!」

技術主任「さて、ぼくはもう次のプレゼンテーターを見に行かなきゃいけないから行くけど……」

蝙蝠男「はい」

技術主任「計画に夢中になるのはいいけど、『一線』は越えないように、ね?」

蝙蝠男「分かっております」

技術主任「期待してるんだからさ。じゃあね~」フリフリ

蝙蝠男「……」

蝙蝠男「私の正体を知った者は……」

――次の日 病院前

男「俺も付いてきて良かったのかなぁ?」

友「いいんじゃね? お前も何か買ってきてるんだろ?」

男「ああ。花をな、少しだけだけど」

友「へぇ~、お前手ェ込んでるな!」

男「買ったものに手も何もあるか。……あれ、そういえば学年主任と講師はまだ病院に着いてないのか?」

友「もうすぐ着くってイケメン講師からはメールが来てるよ。学年主任は講師の車に乗せられて来るみたいだ」

男「ほぉー」

イケメン講師「おはよう、男君、友君」ニコッ

男「おはよざっす(今日も今日とて良い笑顔だ。やっぱりこの)」

友「ざーっす」

男「あ、先生。昨日は色々とすいませんっした」

イケメン講師「……ん?」

男「昨日……」

イケメン講師「昨日? 男君と僕、昨日何かあったかな?」

男「……」

男(あーこれは怒ってる人のパターンだわ。深く言うのはやめとこ)

友「おい男。昨日は結局どうなったんだよ」ヒソヒソ

男(勝手に疑ったのは俺だし。悪いのは俺だからな……)

友「なぁ男ォ」

男「玉砕だよ、玉砕」

友「!?」

イケメン講師「学年主任先生。皆揃っているようですし、そろそろ行きますか?」

学年主任「そうしよう。講師君も失礼の無いように頼むよ。私はこれ以上君にペースを崩されるのはごめんだからね」スタスタ

イケメン講師「は、はいっ!」スタスタ

友「……なぁ、男ォ。今日の帰りラーメン奢るよ」

男「なんで?」

――担任の病室

ピッ、ピッ、ピッ…

男「……えっ!?」

友「……っ! 聞いてた話とちが……」

イケメン講師「そんな……」

学年主任「……」





担任「あぁぁう、ああぁん、あっ、う……」

担任「うっ、うあ、がぁぁあ゛」ジタバタ

担任「あ、うぅぐ」

担任の妻「パパ、生徒さん達と先生方が来てくださったわよ」

担任「う、あ」

担任の妻「皆さんせっかく来ていただいたのにごめんなさいね」

男「担任は……」

担任の妻「命に別状はないわ。怪我も骨折だけ」

友「でも、そ、その、それは……」

イケメン講師「廃人状態じゃないですかァ!!」

学年主任「また空気の読めないことを……」

担任の妻「いいんですよ、先生。『廃人』、だなんてお医者さまにも散々言われたことですから」

担任「う゛、う゛う゛う゛ぅ」

担任の妻「運ばれてきた最初はね、普通だったのよ?」

――

担任の妻「パパ!」

担任の娘「お父さん!」

担任「大丈夫、大丈夫。ちょっとめまいがしてよ、ハンドルきり損ねただけだから」

担任の妻「心配……したんだからっ!」ギュッ

担任「よせやい。看護婦さんたちが見てらぁ……」

――

担任の妻「何が原因かはお医者さまにも分からなかった……。でも、あの人は日に日に――」

――

担任「あ゛あ゛あ゛っ」ダンッ

担任の妻「どうしたのパパ!?」

担任「母ちゃんが母ちゃんが呼んでるんだ母ちゃんがああああ」ダッ

担任の妻「パパ!? どこに行くのっ! ナースさん、ナースさん!」

――

担任の妻「おかしくなって……」

男「あれ、学年主任は?」ヒソヒソ

友「飲み物買ってくるってさ」ヒソヒソ

担任の妻「パパ……いえ、主人に声をかけてやってください」

担任「う、ああ゛、こ、こ、う゛、も゛り゛」

担任の妻「聞こえている、気がするんです。主人も私に何かを伝えたいような、そんな顔をする時があるので……」

男「……担任」

友「担任! 早く元気になって戻って来いよな!」

担任の妻「友くん……よね。最初に主人を見つけて通報してくれたのは」

友「は、はい。……あの、すいませんでした。俺がもっと早く通報してい 担任の妻「ありがとう」

友「はい?」

担任の妻「あなたのおかげで主人の命は助かったわ。今はこんな感じだけれど」

友「……」

担任の妻「時間はかかるかもしれないけど、家族で支えていけばきっと……きっと……今まで通りに……」

友「……担任、早く元気になって学校戻ってきてくれよな」

男「俺も待ってるから……。だから……」

担任「あ、うぅ、ぇ、ん、ぅ、いん……あ゛あ」

担任の妻「うっ……ううっ……」グスッ

イケメン講師「大丈夫ですか奥さん!」

担任の妻「え、ええ大丈夫。大丈夫よ、うぅっ……」

イケメン講師「……」

イケメン講師「先輩! 僕、初めて生徒達を任されました!」

イケメン講師「生徒指導も先輩から受け継いで頑張ってます。見てください!」ゴソゴソ

イケメン講師「ノートです! これに相談しに来た生徒のことを細かくまとめてるんですよ!」

イケメン講師「学年主任先生の添削もあって最近では生徒達も徐々について来てくれるように……」

イケメン講師「うっ、うぅ……先輩……」ポロポロ

友「へぇ、イケメンも結構細かいとこ見てるんだなぁ。学年主任にノート見せながらやってんのか。」ヒソヒソ

男「案外マメだな」

男(このノートは学年主任も見ているんだな……)

――病院 地下電気室

蝙蝠男「これは……見せしめだ」

蝙蝠男(友、私が奴を担任のような廃人にしなかったのは……)

蝙蝠男「ふん、親に感謝するんだな」

蝙蝠男「講師……。ふふ、貴様には職(居場所)を与えてやったのだからもう少し感謝して欲しいものだがな」

蝙蝠男(担任、このままお前はここで生き、ここで死んでもらう。私の正体を知った罪は重い)

蝙蝠男「邪魔者は……あと一人。『課金ライダー』……」

警備員「な、なんだお前はぁッ!?」

蝙蝠男「ふんっ」バキィッ!

警備員「」

蝙蝠男「邪魔をするな」

蝙蝠男「とびきりの恐怖を味わってもらおう。課金ライダー。いや、男」

蝙蝠男「私のように正体を完全に隠しきっていれば良かったのだ。ドローンは変身する貴様の姿を録画していたことまで気づかなかったか。馬鹿な奴」

蝙蝠男「とびきりの恐怖を与える為には、その恐怖に見合った相応の舞台が必要だ。トンネル然り、校内然り……」ガシャ

『ガチャ結果……【ウェポン】【R】【ソニックウェーブ】』

蝙蝠男「いいだろう。この電気室、破壊するのだ!」

『了解、出力シマス』ィィィ…

蝙蝠男「停電を起こし混乱する院内、闇の中紛れて私は奴を……ふ、ふは、はははははは!!」

蝙蝠男「私の正体を知った担任のように壊れてしまえェェーーーーッ!!」

バチン!

――担任の病室

友「な、なんだ?」

男「停電? 病院なんて予備電源があるはずだから、もう少しで……」



……

………

友「着かないな」

男「何があったんだ?」

担任「あ゛、あ゛う゛!!」

担任の妻「どうしたの? パパ!」

ブブブ…

友「おい男、病院なんだから携帯の電源くらい切っておけよな」

男「あれ、電源切ってたと思うんだが……」

課金ドライバー「男様!」

友「?」

イケメン講師「今、男くんの方から声が……」

男(お ま え か)

男「ちょ、ちょっとトイレ行ってくる」ダッ

友「……今日の男おかしくない?」

――トイレ

男「おい」

課金ドライバー「ハイ」

男「そういうのはやめろ」

課金ドライバー「『そういうの』ハ、ドウイウコトヲ指スノデスカ?」

男「あーもういい! どうしたよ!?」

課金ドライバー「戦闘員アプリノ特殊電波ヲキャッチシマシタ。停電モ、アプリ使用者ガ起コシタト見ラレマス」

男「……」

男「そういうのは早く言えよ!」

男「今の状況、どうすればいいと思う?」

課金ドライバー「ソウデスネ。敵ノ目的ハ『挑発』デショウカラ……」

男「挑発? って誰のさ」

課金ドライバー「我々デス。現在、ソノ使用者様ハ病院屋上ニイルト見ラレマス」

男「んな無駄なことを……。ってことは俺らを知ってるヤツか」

男「こういうのは一番恨みを買ってそうなヤツを思い出すんだ」

課金ドライバー「ナルホド。記録シマシタ」

男「ええと……」

男「あ! 『蝙蝠男』! あいつ(ダミー)の本体か!?」

課金ドライバー「ソウトモ考エラレマス。ダミーガ破壊サレタコトノ腹イセデショウカ」

男「しっかしはた迷惑な奴だな。病院が停電すると……」

男「すると……!」

課金ドライバー「病院ノ電力ガ完全ニ停止シタ場合ノ被害ハ……検索中……」

男「いや、いい。なんとなく分かる」

男「……」

男「人が……死ぬ」

――

「逃げろ、男! 火がこちらに回ってくる!」

「幼馴染ちゃんを連れて逃げるんだ!」

――

課金ドライバー「男様。心拍数ガ上昇シテイマス」

男「――あ、あぁ。うん、大丈夫」

課金ドライバー「使用者様ノイル屋上ヘ行カナイノデスカ?」


男「……病院にいる人が死ぬのに行ってられる場合かよ!」

課金ドライバー「ソウイウモノナノデスカ」

男「どうにかして助けたいんだよ! でも一人じゃどうにもd」

課金ドライバー「デキマスガ」

男「は?」

課金ドライバー「私ノ自家発電能力ヲ使ッテ、5時間程デアレバ病院ノ電力ヲ復旧スルコトガデキマスガ」

男「そ、それだ! やってくれ!」

課金ドライバー「了解。デスガ――」

男「いいから早く!」

――病院屋上

蝙蝠男「……」

蝙蝠男「…………」

蝙蝠男「………………」

蝙蝠男「遅いッ!」

――病院内

友「あ、電気付いた」

担任の妻「良かったわ……」

友「男のやつ何やってんだろ」

――病院屋上

男「いやぁごめんごめん」

蝙蝠男「待ちくたびれたぞ、男君。人を待たせるのは失礼だ。予定を狂わせることは万死に値する」

男「何で俺の名前を……」

蝙蝠男「人の話を聞け」

男「教師かお前は。なんなの一体」

蝙蝠男「私の『計画』を壊す者。排除する」

男「中二病か?」

蝙蝠男「電力を回復させたのも君だな。まぁいい。本来の目的は君自身。人質は……この病院にいる人間全員だ。今の私にはそれが出来る『力』がある。先の停電で分かっただろう?」

男「口乾かない?」

蝙蝠男「精神干渉音波が効かない相手となれば気は抜けない」

『【ウェポン】【N(ノーマル)】【ソニックウェイブ】出力シマス』

蝙蝠男「ふんッ!」シュバッ!

男「わわっ!」

蝙蝠男「回避か。それなら……」

『【ウェポン】【N】【ソニックウェイブ】『【ソニックウェイ『【ソニック『【ソニックウェイブ】出力シマス』

蝙蝠男「4発同時ならどうかな?」バシュシュシュシュッ!

男「うわああぁッ!」

ドッ!

蝙蝠男「……やったか」

男「う、ぐ……」

蝙蝠男「ふん、生きていたのか。しぶとい奴め」

男「生身に攻撃するのは反則だろ……。すげーカマイタチ痛ェ……」

蝙蝠男「当たり前だ。私は君を殺しにかかっているのだからな。……何故変身しない」

男「いいだろ!」

――

男「さっき『デスガ』の後なんて言いたかったんだ?」

課金ドライバー「先程ノ放電デ私ノ最長アーマー展開3分マデ短縮サレマス、トオ伝エシタカッタノデス」

男「……マジか」

課金ドライバー「マジデス」

――

男(ウルトラマンって大変だったんだな……。制限のある中、変身所を見極めるなんて……)

男(無理ィッ!)

蝙蝠男「なかなか痛そうな傷だな。……どれ」

『【ウェポン】【N】【サーベル】出力シマス』

蝙蝠男「これで……」

男(屋上にあるものをフルで使って……)

蝙蝠男「ほらぁっ!」ズパッ

男「がァっ!」

蝙蝠男「左腕、痛いか? ソニックウェイブの傷をなぞってみたんだ。いいだろう?」

男「……」

男(死ぬぞこれ。蜘蛛男の時と全然違う……。何が違うんだ?)フラ…

蝙蝠男「もうここまでか?」シュバッ

男「うぐぁ……」

男(何が違うかが分かった。こいつ……)

蝙蝠男「私にとって君は迷惑な存在でしかないのだよ!」ズバァッッ

男「ぃ゛あ゛ッ!」ドサッ

男(……こいつには俺に対して初めから『明確な殺意』があるんだ)

男「あ゛、あ、ぅ……」

蝙蝠男「斬ったのは皮だけではない。肉もだ!」

男「う、ぅ……。こんなことやって何になるんだよ……っ!」

蝙蝠男「スリルが味わえる!!」

蝙蝠男「金、職、家族。それに幾ら恵まれていようと感じることのできない物を私は今味わっているのだよ!」

蝙蝠男「それを邪魔する君は無粋! 実に無粋! 死を持って償ってもらう他ないのだ」

蝙蝠男「しかし、弱い者いじめはつまらない、つまらないなぁ男君。先程の意気込みはどうした。死にたくないのなら早く変身したまえ」

男「な、何言ってんだこいつ……」

蝙蝠男「どちらにしろ私が勝つことに変わりがないのだがねェ!」

男「……」

男(探せ……。探せ。何かあるはずだ……)

蝙蝠男「」ペラペラ

男(こいつが勝手にへらへら喋ってくれてるおかげで時間はある……)

男(……物干し竿。ダメだ、あそこまで遠い)

男(……アンテナ。例外)

男(……貯水タンク。……これだ!)

蝙蝠男「」ペラペラ

男「おいおい。まだ勝利宣言には早いじゃないの?」ムクリ

蝙蝠男「諦めの悪いやつだ。返り討ちに……」

男「それはどうかな? ドライバー起動!」

ブウウウン……

課金ドライバー「了解。『変身』シタイ場合ハ硬貨ヲ入レテクダサ」チャリン

課金ドライバー「……食イ気味ニ硬貨ヲ入レルノハヤメテクダサイ」

男「ごめん。次から気をつける」

課金ドライバー「ソノ言葉、録音シマシタ。硬貨確認。パスワードヲ音声入力シテクダサイ」

男「はいはい。アーマー展開、使用確認書既読、パスワード『その命、神に返しなさい』」

課金ドライバー「承認シマシタ」

男「……このパスワード毎回変わるの?」

課金ドライバー「ハイ。パスワード流出ヲ防グノガ目的デスノデ」

男「蝙蝠野郎よお、自分が今まで何をしたのかしっかり思い出させてやるからな!」

蝙蝠男「思い出す? 口を慎め……ガキが!!」

男「今日の天気は晴れ。にわか雨にご注意しやがれ! 見てろ、俺の最後の『変身』ッ!」

ピピッ

課金ドライバー「コレヨリ『変身』シマス」

シュウウウ…

蝙蝠男「ぬゥッ!」

課金ドライバー「変身完了シマス。制限時間ニ、オ気ヲ付ケクダサイ」シュウウ…

課金ライダー「っしゃ!」ダッ

蝙蝠男「死に方くらいは選ばせてやろう。さて……って何故逃げる!? ま、待て!」

課金ライダー「ほいほいこっちこっち!」

蝙蝠男「馬鹿にするな! ウィング展開しろ!」

「ウィング展開。滑空形態ニアーマーヲ再構築シマス」

蝙蝠男(飛翔体)「逃がさんよ!」バサァッ

課金ライダー「変形した!? 聞いてない聞いてない! 変形なんて聞いてないよ! 何で教えてくれないんだよ!」

課金ドライバー「知ラナイ事ハ、オ教エデキマセン」

【変身限界時間 残リ 02:20:08】

蝙蝠男(飛翔体)「ハハハハハ!」ゴオオオッ

課金ライダー「やだやだやだやだやだよ! なんだあれ、怪獣じゃん! デカいし!」

課金ドライバー「男様、コレカラドウスルオツモリデスカ?」

課金ライダー「今からウェポンを出して、少し上にある貯水タンクをぶっ壊す。1日1回無料ガチャさせてくれ!」

課金ドライバー「了解。【ウェポン】ヲ選定シマス。レバーヲ回シテクダサイ」

蝙蝠男(飛翔体)「遅い、遅いぞ!」ゴオオオオオオオッ

課金ライダー「ねぇこのレバー回す必要ある!? スキップとかできないの!?」

課金ドライバー「デキマセン」

課金ライダー「分かったよ! もう!」ガチャ

課金ドライバー「選定結果……【ウェポン】【N】【アロー】。出力シマス」ヴゥゥン…

【変身限界時間 残リ 01:50:00】

課金ライダー「よっしゃ! これで貯水タンクを撃ち抜く!」

【変身限界時間 残リ 01:13:42】

蝙蝠男(飛翔体)「追いついたぞ! このまま体当たりを食らえッ!」

課金ライダー「させない! ライダー……アーチェリー、的な!」ギリ……バシュッ

【変身限界時間 残リ 01:00:39】

蝙蝠男(飛翔体)「どこに向けて矢を放っているんだ! ふふ、何をやっても無駄だと言……?」

ザバァッ…

蝙蝠男「あ、あ? み、水……?」バチッ バチチッ

課金ライダー「スマホは勿論、アーマーも精密機器。水濡れは致命傷だと思ったってワケよ」

蝙蝠男「ガ、ア……ア゛」

課金ライダー「調子こき過ぎなんだよ。課金ライダーを舐めんな!」

課金ドライバー「蝙蝠男様ノスマートフォンノ内部回路ショートヲ確認シマシタ。変身ヲ維持スル事ハ難シイカト」

課金ライダー「だとよ。……その悪い顔、拝ませてもらおうか」

蝙蝠男「こ、この私が負けるなんて……あ、あぁ」バチバチチッ

課金ドライバー「無駄ナ抵抗ハオヤメクダサイ。男様ハ、アナタガ思ッテイル以上ニ『怒っている』状態デス」

課金ライダー「……」

蝙蝠男「ひ、ひぃッ! あ、だ、誰か、た、助け」

課金ライダー「この期に及んで命乞いかよ……。おい……」

課金ライダー「おい!!」

「――怒れ、悪の大地」

課金ライダー「!?」

課金ドライバー「警告、警告。モウ1人ノアプリ使用者様ノ反応ヲ確認!」

ズズ…

課金ライダー「地震か!? 立ってられない!」

課金ドライバー「地震デハアリマセン。三半規管ヲ狂ワセル音波ヲ感知シマシタ。コレガ……」

蝙蝠男「ひ、ひぃっ!」

課金ライダー「なんだこいつ……っ!」

マンモス男「……」

蝙蝠男「『バロン』様!」

マンモス男「……帰りますよ、『クレバット』」

課金ライダー「お、おい! 待て! 待てったら!」

【変身限界時間 残リ 00:00:00】

課金ドライバー「変身限界時間到達。変身強制解除シマス」シュウウ…

男「あ――」ガクッ

課金ドライバー「男様? イ、イケナイ。呼吸停止、血圧低下。男様! 男様! スイマセン、私ノ内蔵電池モ限界ガ……」

課金ドライバー「セメテ……GPS情報ダケデモマスターニ転送、ヲ……」

課金ドライバー「強制終了シマス。要充電」

プツッ――

――某社 会議室

蝙蝠男「も、申し訳ございません!」

マンモス男「……言いたいことはそれだけですか?」

蝙蝠男「『バロン』様! 私は私の計画を邪魔する輩を排除しようとしたまでで……」

ザリガニ男「『一線』は超えちゃダメって言ったよね?」

蝙蝠男「『元帥』様! いや、しかし……」

蝙蝠女「でもでもっ、たくさんの人の命を危険に晒したのは否めませんよねー☆」

蝙蝠男「『シスターツバサ』様っ!」

蝙蝠女「『様』いらねーつってんだろ」

蝙蝠男「『シスターツバサ』! 申し訳ございません……」

蝙蝠女「あとぉー、ドローン壊した分弁償してくださいね☆ 公務員だから楽勝ですよね?」

蝙蝠男「し、しかし私、先月の課金代で給料が……」

蝙蝠女「楽 勝 で す よ ね ?」

蝙蝠男「はい」

蝙蝠男「もう一度、もう一度チャンスをください! これ以上予定を狂わせることはございません!」

ザリガニ男「……ぼくたちの目的を忘れてないよね?」

蝙蝠男「は、はい! 『愉しい刻を作る』、です」

ザリガニ男「その通り。消費者が我が社の製品を使い、満ち足りた日々を送る為には社員が『何が愉しい』のかを知る必要があるんだ」

ザリガニ男「我が社では新製品『戦闘員アプリ』を使った『愉しみ』を調べる為に、モニターを募集した」

蝙蝠男「それが私……」

蝙蝠女「そう! 普段満ち足りないつまらな~い生活を送っているあなた達に『力』を与えて、『愉しさ』とはどんなものか教えてもらうことにしたの☆」

ザリガニ男「世間体とかしがらみが多い時代だけど、アプリを使って変身したらな~んでもできちゃう」

ザリガニ男「殺人はダメだよ。アプリ開発が中止になるとヤバいから」

蝙蝠男「は、はい!」

ザリガニ男「蜘蛛男みたいに強盗をしてもいい。君みたいに『恐怖』の象徴として恐れられるのもいい」

マンモス男「我々はそれをバックアップする。舞台設営から証拠隠滅まで全て、ね」

蝙蝠女「他にも色々条件はあるんですけどぉ、今回は割愛っ(はぁと」

ザリガニ男「この話、最初にもされたよね?」

蝙蝠男「はい……」

ザリガニ男「次はないからね」

蝙蝠男「……勿論」

ザリガニ男「これが最後だよ?」

マンモス男「暫くは現状維持に努めなさい。しかし、それでも、それでもあの『課金ライダー』を殺したいと思うのなら……これを渡しましょう」

蝙蝠男「シリアルコード……?」

マンモス男「我々も鬼ではありません。『課金ライダー』、脅威は今は小さくても何時かは排除しなければいけない存在」

ザリガニ男「倒せそうな時はこれ使って。これ、自信作だよ」

蝙蝠男「ありがとうございます! 私、これからも某社の力になれるよう――」

ザリガニ男「はい解散」

――

――蝙蝠男が去った後の会議室

ザリガニ男「……ほんとあの蝙蝠は情けない奴だねえ」

「変身解除シマス」シュウウ…

技術主任(ザリガニ男)「職場でもああやってへこへこしてるんだろうね」

技術主任「ぼくはあんな奴とは絶対違う」

技術主任「ぼくは、ぼくは……」

技術主任「天才で最強の無敵なんだァーーーーーーーーーーッ!」

技術主任「……」

技術主任「ふぅ。誰もいない会議室で叫ぶのはキモチいいな」

技術主任「さ、仕事仕事……。あいつ早くシリアルコード使ってくれないかなあー?」

――

つづく

――病室

幼馴染「この馬鹿!」

男「ごめん……」

幼馴染「ごめんで済むか! バカバカバカバカバカバカバカッ!」

幼馴染「この百万倍馬鹿がッ!」

男「大丈夫だって。1日様子見入院なだけだかr 幼馴染「大丈夫なワケあるかバカ!」

幼馴染「病院は停電、男に連絡はとれない。ドライバーから緊急事態発生の連絡が飛んできた時は――」

幼馴染「ホントに死んだかと思った」

男「ごめんって……」

幼馴染「心配した……」

男「……」

幼馴染「私には男しかいないんだぞッ!?」

男「……ごめん」

幼馴染「ごめん以外言うことはないのか!?」

男「……ごめん」

幼馴染「はぁ。……男は自分の命を軽く見過ぎだ」

男「そんなことな 幼馴染「ある」

幼馴染「男を『課金ライダー』にしたのは私だ。課金ドライバーを作ったのも私。結果、男を危険な目に合わせたのも……」

男「ドライバーは今どうしてる?」

幼馴染「充電中だ」

男「じゃあ明日は学校に持って行けるな」

幼馴染「……それは……ダメだ」

男「え!?」

幼馴染「……全て私のせいだ。私は事態を甘く見過ぎていた」

男「な、なに言ってるんだよ今さら」

幼馴染「男にこれ以上怪我を負うようなことがあったら……私は……」

幼馴染「……男、最初に男が言っていたように『課金ライダー』は『ヒーローごっこ』でしか無かったようだ」

男「おい、お前!」

幼馴染「ここまで巻き込んでおいてすまない。……『課金ライダー』はもうやめよう」

男「なっ!」

幼馴染「……男も嫌がっていたことは分かっていたんだ。本当に、ごめん。安心してくれ、もうこんなことは……しないから……」

男「おい! 幼馴染らしくねーぞ!? どうしたんだよ!」

幼馴染「しないから……」

男「……おい」

幼馴染「え……?」

男「ふざけんなよ」

男「まだやれるよ、俺は」

男「確かに最初は嫌々やってたけどな」

幼馴染「だからもう……」

男「俺は凡人だ。ヒーローなんかじゃない」

幼馴染「う……」

男「でも! でも、だ。今目の前に助けたい人がいるなら……絶対助けたい」

男「それが実行できるなら『ヒーローごっこ』上等だ。それでさ、幼馴染」

幼馴染「な、なんだ?」

男「思い出したよ。幼馴染が言ってた『男が忘れたもの』ってやつ」







男「――やるよ、『課金ライダー』」

幼馴染「……」

男「どうした?」

幼馴染「う……」

男「う?」

幼馴染「うっ、ぐすっ、ひくっ、う、うぅ……うぇえ……」

男「どうして泣いてるんだよ! 今いい感じのことを言ったじゃんか!」

幼馴染「うう、やっぱり、男は、私のヒーローだああうああああああんんん」ポロポロ

男「泣かなくたっていいだろ」

幼馴染「だって、だって、男、お前高校に行ってから変わっちゃったんだもおおおおおおおおうわああああんん」ポロポロ

ナース「あらあら」クスクス

男「なんか恥ずかしいからやめろよ……」

幼馴染「だって、だって、昔の男が戻って来てくれて嬉しくてえええええええええあ゛あ゛あ゛あ゛」

男「鼻水出てる鼻水出てる」

幼馴染「……」

男「幼馴染?」

幼馴染「…………吐く」

男「なんで泣きゲロなんかするんだよ! ちょっとま、ま「おえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛」ゲロゲロゲロゲロ

男「あ゛あ゛あ゛あ゛」

ナース「あらあら」クスクス

男「あらあら、じゃねーよ!」

男「ったくもー……ベッドがなんか幼馴染くさい」

幼馴染「すぅ……すぅ……」

男「寝てるし」

幼馴染「んむぁ……男……」

男「ん、なんd……寝言か。夢にまで俺が出るなんて、そんなに遊び友達がいないのか?」

幼馴染「ふぬぅ……」

男「明後日から学校に復帰か。そしたら、あの蝙蝠野郎をとっちめてやらなきゃな」

幼馴染「すぅ……すぅ……」

男「まさかこんなに心配されてるとはな……。頑張ろ」

――

――教室

友「おい、大丈夫かよ」

男「へーきへーき。ちょっと怪我しただけだからさ。入院も大げさなんだよ、周りが騒ぎ過ぎ」

友「騒ぎ過ぎ、じゃないだろ。あれ結構深い切り傷だったぞ!」

男(あぁ、そういえば倒れてる俺を最初に見つけたのって友だったか……)

友「何があったんだよ、トイレで」

男(……ここで『戦ってた』なんて言えないよなぁ)

男「いや、なんか、悪いヤツに絡まれて……」

友「悪いヤツ!? なんでお前がそんな目に合わなきゃなんないのかな! もし顔を覚えてたら教えろよ、見つけ出してボコってやるから」

男「友、喧嘩とかできるの?」

友「いやぜーんぜん。スポーツもからっきし」

男「それでよくボコれると思ったな」

――

――職員室

学年主任「講師君、今日の進路相談の予約をしている生徒は?」

イケメン講師「はい。C組のレイコさんとムラセくん。それと……」

学年主任「それと?」

イケメン講師「今日学校に復帰した男くんです!」

学年主任「男君か……。分かった。ちゃんと私の言った通りに、生徒に聞いているね?」

イケメン講師「はい! やっています!」

学年主任「進学先、就職先、成績に応じて別の道を考えさせるのも教師の仕事だ」

イケメン講師「はい!」

学年主任「勿論、生徒1人1人の性格を知ることも大事だ。そうすれば生徒が抱いている不安感の正体も分かる」

学年主任「生徒が持つ『トラウマ』を調べあげろ」

イケメン講師「はい! 学年主任先生、何から何まで教えていただきありがとうございます」

学年主任「……当然のことだ。『君は私がいなければ何もできないのだからな』」

キィィィ…

イケメン講師「……ハイ」

学年主任「『私の指示があってようやく社会の役に立つ存在になれていることを自覚したまえ』」

ィィィン…

イケメン講師「……ハイ」

学年主任「もう行っていいぞ」

イケメン講師「……ハイ」

学年主任「……」

――

――放課後

友「あー掃除当番やだー」

男「当番変わるか?」

友「いいよ! 病み上がりなんだから安静にしてなって。当番は他の奴に頼むから」

男「結局サボるのかよ」

友「いいだろ。男は放課後何か予定があるのか?」

男「いや、今日はイケメン講師のとこに寄ってから帰る」

友「あっ……」

男「なんだその顔は」

友「お前さ、フられたからってしつこく付きまとうのはやめといた方がいいぞ」

男「……?」

友「え?」

男「は?」



男「ひどい勘違いだな。俺がホモってお前」

友「ち、違ったのか」

男「違うよ! どうしたらそんな間違いするのさ」

友「えーっと」

男「思い出さなくてもいいから! じゃ、ちょっと進路相談室行ってくるっ!」

友「お、おう」

男「あ、それと、お前クラスのみんなに俺がホモとか言って回ってないよな!?」

友「もちのろn……」

友「……」

友「…………」

友「………………」

友「あっ」

男「あっ、って!!」

――教室

友「結局先公に見つかって居残り掃除かよ……」

学年主任「……」

友「あ、学年主任先生。どうかしたんすか?」

学年主任「ああ。今、校内のスピーカー点検の業者が来てね。大きな音が出てしまうかもしれないから、学校中の部屋のスピーカーを消しに回っているんだ」

友「あ、俺も手伝いますよ」

学年主任「そうか。じゃあ手伝ってもらおうか」



友「よし、俺達2年生の分のスピーカーは消せた」

学年主任「ありがとう。他のところも頼むよ」

友「はい」

学年主任「……」

学年主任「……友君。君に……少し聞きたいことがあるんだが……」

友「はい?」

学年主任「男君は……どういう生徒なのかな?」

友「え? う~ん、そう言われると難しいッスね。普通にいい奴だと思いますよ」

学年主任「ずいぶんふわっとした説明だな」

友「そうすか? 他に言うなら……そうだなぁ。自分を大事にしない奴ですかね?」

学年主任「自分を大事にしない……」

友「テロリストとかが来て人質を取ったら、自分の命を捨ててでも戦う、みたいな?」

学年主任「……よく分からないな。他には?」

友「えー、もうないッスよ~。だってアイツ自身、自分のことを話さないタイプだし。昔のこととか……」

学年主任「……なるほど」

――

……

学年主任「これで終わりだ。ありがとう」

友「やっと終わったぁー……って、あれ? 先生、進路相談室のスピーカーは……」

学年主任「あれはいい」

友「え、でも大きい音が出るかもって」

学年主任「あれはいい」

友「でも、あそこには男とイケメン講師が」

キィィィイイ…

学年主任「『君の仕事は終わりだ。部活がないのなら早く家に帰りなさい』」

友「……」

友「……ハイ」スタスタ…


学年主任「……」

――

――進路相談室

イケメン講師「それで……僕に話って?」

男「そうですね……」

男「講師先生、俺に何か隠してませんか?」

イケメン講師「え?」

男「ほら、例えば担任の話とか」

イケメン講師「いや、何を言っているかよく分からないなぁ」

男「……本気で言ってるんですか?」

イケメン講師「うん……。どうしたんだい男くん、藪から棒に」

男「……」

男(忘れたフリをしているとも思えない。だけど……きっとイケメン講師は何かを『持っている』はずだ)

男(それが分かれば蝙蝠男の正体が……)

男「前の日も一緒に飲んでいたんですよね」

イケメン講師「あ、ああ」

男「具体的には何を話していたんですか?」

イケメン講師「ええと、仕事の話を。僕、なかなか教師として本採用されないから……」

ドクンッ

イケメン講師「う゛ッ!?」

男「お、おい! 大丈夫ですか!?」

イケメン講師「うん、頭が急に痛くなっただけ……」

イケメン講師「ああ……その日は先輩と……」

イケメン講師「学年主任先生と……」

男「お!? そんな話、初めて聞きましたよ!?」

イケメン講師「だって……許可されて……ない……か……ら……」

ドクンッ

イケメン講師「う゛あ゛あ゛ッ」ドサッ…

男「先生! おい、先生!」

イケメン講師「あ゛、う、あ……」

イケメン講師「!」ガバッ

イケメン講師「違う! 違うんだ! 僕じゃない!」

男「何の話をしているんだ!」

イケメン講師「僕は、僕はただ教師になりたくて! あんな風になるなんて思わなかったんだ!」

男「あんな風ってどういうことだよ! しっかりしろ!」

イケメン講師「僕が先輩をヤったんじゃないんだ! 誰か! 誰か助けてくれよ! 僕を! もう嫌だ!」

男「あんたが犯人じゃないって分かってるから落ち着けよ! な?」

イケメン講師「こんな花瓶!」ガシャアンッ!

イケメン講師「机も!」バキャッ

男(完全にイっちゃってる……)

イケメン講師「つ、つつつ次はおおまええだだだだだだ」ジリ…

男「な、やめ、やめろよ……おい、先生」

イケメン講師「……」ジリ…

イケメン講師「こ、殺、殺す……違う! 僕じゃない! こここ、ろろす、違うんだ! 身体が勝手に……殺す」ジリ…

男「やめろよ先生! ハサミなんかで人は殺せないぞ!」

イケメン講師「……こ、ころす」ヒュンッ

男「あぶねっ! 聞こえてないのか先生!」

イケメン講師「こ、ころ、ころころころころころころ」ヒュンッ ヒュンッ

男「おい! 生徒殺したらシャレになんねーぞ!」

イケメン講師「こ、ころ、ころ、ころ……」

男(動きが止まった!)

イケメン講師「……」

イケメン講師「……たたた助、け、て」

男「……分かった。後は……任せろ」

イケメン講師「あ、あ、あり、が……と」ドサッ

男「……気を失ったのか。もう喋っていいよ、ドライバー」

課金ドライバー「了解シマシタ」

男「ったく、驚いたよ。急に取り乱して暴れ出すもんだからさ。とりあえず『任せろ』とは言ったものの何の事やら」

課金ドライバー「男様。ドウヤライケメン講師様ノ暴走ハ『急』ナコトデハナカッタヨウデスヨ」

男「どういうことだ?」

課金ドライバー「室内ノ『スピーカー』ニ耳ヲ澄マシテミテクダサイ」

男「お? どれどれ……」

サー……

男「何か聞こえる。例えるなら……『テレビの砂嵐』的なやつ」

課金ドライバー「デジタル放送ニナッテカラ聞カナクナリマシタネ『砂嵐』」

男「お前がなんで知ってるんだよ」

男「これ何の音よ」

課金ドライバー「男様ガ以前『魔のトンネル』デ聞イタ『精神干渉音波』ト同波形ノ音波デス」

男「そう……」

男「……」

男「は!? な、なんて物を聞かせんだお前! また俺おかしく……」

男「あれ、なってない」

課金ドライバー「男様ニハ前回ドローント対決シタ際ノ『耐性』ガデキテイマス。病院屋上デ蝙蝠男様ガ音波攻撃ヲシテコナカッタノモ」

男「そうだったのか、全く分からなかった。……あ! ヤバいぞ。この精神干渉音波が他の教室のスピーカーに流れていたら!」

課金ドライバー「イエ、他ノ教室ノスピーカー電源ハ、講師様ガ暴走ナサル数分前ニ全テ消エテオリマス」

男「俺を、俺だけを狙っていたのか?」

ガラガラガラッ!

学年主任「男! 大きな音がしたと生徒から報告があって来た! 大丈夫か!?」

課金ドライバー「……」

男「学年主任先生この部屋に入っちゃダメだ!」

学年主任「イケメン講師先生が倒れているぞ! 何があったんだ!?」

男「入っちゃダメだって!」

学年主任「何言ってんだ! 人が倒れているのに無視できるか! 入るぞ」タッ

男「おい!」

学年主任「イケメン講師先生! 先生!」ユサユサ

男「おいって! この部屋は……」

学年主任「良かった、気を失っているだけだ」

男「音波が……」

学年主任「よし。男、イケメン講師先生を保健室に連れて行こう。話は後で聞く!」

男「……」

学年主任「おい! 早くしろ!」

男「……その前にさ、学年主任先生。聞きたいことがあるんだけど」

学年主任「なんだ、こんな非常事態に!」

男「あのさ……」







男「何でこの『音波』が流れてる部屋に入って平気なわけ?」

学年主任「何? 音波?」

男「あー、分かってきた。分かってきたぞ。何となく分かって来た」

男「まず、俺を最初から知っていた理由。こりゃ生徒なんだから当たり前だな」

男「んで、学校から発信したアプリの電波よ」

男「『魔のトンネル』の被害者も同じ校内の人間だけ」

男「そういやアンタ、病院が停電した時どこにいた? ずいぶん長~い買い物だったよな?」

学年主任「教師に向かって『アンタ』とは……。ああ、あの停電の時は担任先生の病室近くのトイレにいたよ。最近少し下痢気味でな」

男「偶然だな。俺もそん時トイレにいたよ」

学年主任「……」

課金ドライバー「マスターノ言葉ヲ使用シテ、補足スルナラバ」

――

幼馴染「ドローンが男に発射した超音波または電磁波の効果。ノルアドレナリンなどの過剰分泌。それが及ぼした過度なストレスによる幻覚、幻聴症状か。平気そうな顔をしているが脳の負担は計り知れない……」

――

課金ドライバー「コノ音波攻撃ガ効カナイ人間。ソレハ、男様ノヨウニ『高い精神力で攻撃を破り、耐性を持った』者」

学年主任「……」

男「または、『元々耐性があった』者。『蝙蝠男のデータを使用している者』。言い換えるならば『蝙蝠男の正体』ってこった」

課金ドライバー「イケメン講師様ヲ保健室ニ運ンデドウスルオツモリデスカ? 担任様ノヨウニ心的外傷ヲ与エ、廃人ニスルオツモリデスカ?」

男「そうはさせねーよ、学年主任。違うか。『魔のトンネル』、それと『蝙蝠男』さんよ!」

課金ドライバー「己ノ犯行ヲ認メスマートフォンヲコチラニ渡シテクダサイ」

学年主任「……」

学年主任「……ふっ」

学年主任「は、はははは。はははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」

学年主任「冥土の土産に教えてやろう。そうだ、私が君たちの言うところの『蝙蝠男』。HN(ハンドルネーム).『クレバット』だ!」

男「普通自分のハンドルネーム名乗るか?」

課金ドライバー「コレヲ『痛い大人』ト呼ブノデスカ?」

学年主任「うるさい! 気に入ってるんだよ!」

学年主任「そう。私は知っての通り、教師だ。妻も娘もいる。公務員は給料が良い。わざと生徒の前では『給料は減らされている』と言っているが、家族を養っていく分の金は充分持っていた」

男「自分語りはいいから」

学年主任「聞けバカ!」

学年主任「人はその生活で充分幸せだと言うだろう。だが、私の生活には足りない者があった。それは『刺激』!」

学年主任「そんな時、出会ったのがこの『戦闘員アプリ』。私はこの力を使って生活に『刺激』を得たのだ!」

男「それが『魔のトンネル』か。そんな自分勝手な理由で……」

学年主任「男、君には分からないだろうがな。大人の世界はストレスのみで構築されている。そのはけ口が日本には全くと言って良いほど無い!」

学年主任「私は……いや、大人はなぁ。『自分が安全な場所から誰かを攻撃してやりたい』といつも思っているんだよ!」

男「それを自分勝手だって言ってるんだよ!」ドガッ!

学年主任「ぐぁっ!」ドサァッ…

学年主任「う、うがぁあ……」

男「なんだよ。親父にも殴られたことなかったか?」

学年主任「い、いや。妻に『これ以上の課金はやめて』と日に3、4回はやられている」

男「廃課金じゃねーか!」

学年主任「邪魔が入らんようにするためには、それくらい必要だったのさ……はははははははははははははははは!」

学年主任「邪魔する奴は全員、全員消してやったまでだ! はははははははは!」

学年主任「私の正体を知った担任も!」

……
――居酒屋

ガヤガヤ…

イケメン講師「先輩ってこっちに来てから故郷の方には帰って無いんですか?」

担任「いやぁ、帰ってねぇなぁ。カーチャンが死んでからは暫くあっちにゃあ行ってないよ」

学年主任「よさないか、講師君。空気を読みたまえ」

イケメン講師「あ、すいません。余計なこと言っちゃって……」

担任「気にすんな。もう3年も前だ。悲しんでる暇はねェ。俺には大事なかわいい生徒がいるんだからな!」

学年主任「お寂しいでしょう」

担任「寂しくないって言ったら嘘になりますがね。『健ちゃんきばんねげだめだよ!』ってケツを叩いてくれる人はもういないってことですから」
学年主任「素晴らしい心構えです」

イケメン講師「でも、先輩が羨ましいですよ。受け持つ生徒がいて。僕なんか非常勤講師止まりですから」ハハハ

担任「難しい話だなぁ。免許を持ってても受け入れ先が無いってことは、俺の時代にはなかった話だし」

イケメン講師「いや、はは……。困りました。僕はずっと講師止まりなのかなぁ」

担任「落ち込むなよ。努力してるのは俺が一番知ってるんだぜ!?」

イケメン講師「先輩! 僕、ボクゥ……うぅっ、うえっ、ぐすっ」

担任「ったく情けねぇなあ。顔はいいのにこれだから……」

イケメン講師「ぐすっ、ひっぐ、う……うっプ、うっ、うっ、おr…」

担任「おいおい、吐くなら便所でしろ便所で」

イケメン講師「うっプ、う゛、はい。ちょっとトイレ行ってきます……」ソソクサ…

担任「……」

担任「さて、本題に入りますか。学年主任先生……」

学年主任「本題、とは?」

担任「……生徒の中で広まっている都市伝説『魔のトンネル』」

学年主任「!!」

担任「実は俺も先日こっそり見に生きましてね。……見たんです」

学年主任「あ、あ、そのお、お化けをですか?」

担任「違います。……学年主任先生、あなたを見たんです。あなたが『変身』する瞬間を」

学年主任「そ、そんな。そんなワケありませんよ。まさか化かされたのでは……」

担任「『魔のトンネル』の被害に会った生徒。少し調べてみたら分かったんですよ。被害者生徒、彼らはみんな学年主任先生が『目をつけていた生徒』ですよね?」

学年主任「……」

担任「確かに彼らは少し問題のある生徒かもしれません。だからって……」

学年主任「は、はは、ははは……」

担任「何がおかしいんだ!」ドンッ

学年主任「……何ですか。何なんですか、担任先生。そんなことでさァ……」

担任「そんなこと!?」

学年主任「ちょっとだけ、懲らしめてやった。それだけですよォ……はははは」

担任「な……。彼らみんな、精神的にショックを受けて学校に来られなくなっているんですよ!」

学年主任「いいじゃないですか。どっちみち奴らは落ちこぼれ。どうなったって……」

担任「とにかく。このことは校長先生に報告します。動画も取らせてもらいましたから」

担任「アンタ、最低だよ。教育者として、人間として」

学年主任「……」

担任「何とか言ったらどうなんでs」

ィィイン……

担任「」ドサッ

学年主任「私の正体を知る者は消える。それだけです」

学年主任「これ以上私の予定を狂わせるような人間は……」チラ

イケメン講師「ひぃいっ!」

学年主任「見ていたのですね、イケメン講師先生」

イケメン講師「が、学年主任先生、先輩を今……」

学年主任「ところで先生、『担任』になりたくはないですか?」

イケメン講師「な、なりたい……です、けど……」

学年主任「校長に掛け合いましょう。もうすぐ一学年『空き』ができますから。その代わり……」キィィイイン…

イケメン講師「あ、ああ……」フラ…

学年主任「今のは忘れなさい。その記憶の一部を封印すると共に、私の『駒』になってもらいます」

イケメン講師「……」

イケメン講師「ハイ」

……

……

――『魔のトンネル』

技術主任「今日の獲物はあの車かい? なんだか運転がフラフラしてるみたいだけど」

蝙蝠男(学年主任)「……私の正体を知った男です。消さねば」

技術主任「ふーん。で、どうやって痛めつけるの?」

蝙蝠男「はい。今、車の中の男は、一度私の音波攻撃によって神経が衰弱状態にあります」

蝙蝠男「今は何とか日頃の習慣に倣って本能的に家へ帰ろうと運転しています」

蝙蝠男「奴めは故郷にいる母親を失っている。トラウマとまでは行きませんが、私がこれから見せる『幻覚』は神経衰弱に追い打ちをかけることになるでしょう」

技術主任「そ。じゃあやってみてよ」

――担任の車の中

担任「う、あ」

担任「頭、いてぇ……。今日は飲んでないのに……」

担任(俺はさっきまで学年主任に話をしていたはずなのにいつの間にか……)

担任(『戦闘員アプリ』。あれに一体何ができるっていう……)

……ンチャン

担任「ん?」

ケンチャン

担任「……か、母ちゃ、ん?」

担任の母(幻覚)「そうだよ。健坊の母ちゃんだよ!」

担任「あ゛、あ゛、あ゛」

担任「母ちゃ、母ちゃ」

担任の母(幻覚)「そうだよ。健坊の母ちゃんだよ!」

担任「俺、俺、母ちゃ、母ちゃ」

担任の母(幻覚)「そうだよ。健坊の母ちゃんだよ!」

担任「母ちゃ、母ちゃ、墓参りに行けなくてごめんよ」

担任の母(幻覚)「そうだよ。健坊の母ちゃんだよ!」

担任「母、ちゃ……?」

担任「あっ」

キキィーッ……グシャァッッ

――『魔のトンネル』

キキィーッ……グシャァッッ

技術主任「おみごと」

蝙蝠男「どう見ても前方不注意の自損事故です。我々が禁じられている『殺人行為』の内には入りません」

技術主任「このままほっとくってことかい?」

蝙蝠男「いけませんか? トンネルの壁へ正面から激突。エアバッグがあれどかなりの流血。深夜で人通りも少なく、発見された頃にはもう……」

技術主任「んー。いいよ、認めよう」

蝙蝠男「ありがとうございます。では帰り……」

技術主任「あり? 向こうに誰かいない?」

蝙蝠男「何ッ? ……あれは!」

友(後ろからすげえ音が……。あっちは担任が行った方向? まさか事故ったんじゃ。で、でも後ろに何かいたら……)

蝙蝠男「あれは……『友』! 我が校の生徒です」

技術主任「知ってる」

蝙蝠男「奴が邪魔しに来るとは……消さねb 技術主任「ダメ」

蝙蝠男「え?」

技術主任「ダメって言ってるの。ダメだよ、『彼』をいじめちゃあ。お前が死ぬことになるから」

蝙蝠男「ど、どういうことですか……」

技術主任「ぼく帰るね。『彼』には危害を加えなければいいから。てきとーにおっぱらっちゃってー」スタコラ

蝙蝠男「あ、ちょっ!」

蝙蝠男「予定が狂うのは腹立たしいが仕方ない」バサァッ

友「……」

蝙蝠男「振り向くな」

友「!」

――回想終わり

――進路相談室

課金ドライバー「10レスニ及ブ回想乙デス」

学年主任「やめろ!」

男「つまり、事故は蝙蝠男が意図的に起こしたもので、イケメン講師を操ってターゲットの生徒を調べさせていたのか」

課金ドライバー「一言デ済ミマスネ。回想イリマセン」

学年主任「うるさい! うるさい! そんなに早く死にたいのか!?」

学年主任「分かった。望み通り……アーマー展開、規制解除、倫理コード解放、『変身』ッ!」

『アーマー展開シマス』

蝙蝠男「この場で処刑してやろう。あは、あははははははは!」

男「そっちがその気なら、俺だって……アーマー展開、使用確認書既読、パスワード『バッシャーフィーバー』」

課金ドライバー「ソンナパスワード設定シテイタデショウカ? トニカク、承認シマシタ」

男「これは担任の分と友の分と痛い目にあったみんなの分だ。見てろよ……『変身』!」

課金ドライバー「アーマー展開、コレヨリ『変身』シマス。キバッテ行キマショウ」

課金ライダー「しゃあおらッ!」シュウウ…

蝙蝠男「音を聞いた生徒や教師が来る前に片付けよう。彼らが来たなら私はこう答えるんだ。『イケメン講師先生が戦闘員アプリを使って男君を殺した』」

課金ライダー「……」

蝙蝠男「『講師先生も自殺。私は止めることができなかった』とね!」

「【ウェポン】【N】【ソード】出力シm」

課金ドライバー「男様、蝙蝠男様ノウェポンガ来マス! 気ヲ……」

課金ライダー「待て。様子がおかしい」

「出力シ、シシ」バチッ

蝙蝠男「な、私のスマホの調子が悪いだとぉ!」

課金ライダー「あー。当たり前だわな。だって病院の屋上で貯水タンクの水をモロで浴びたんだもんねー。交換し忘れか?」

蝙蝠男「があ、あ゛、あ……」バチッ、バチッ

課金ライダー「さっきといい今といい爪甘すぎだよ、オッサン」

蝙蝠男「そんな。そんなぁ……」

課金ライダー「テンション上がるとうっかりしちゃうタイプ?」

蝙蝠男「……嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。嫌だぁああああああああああああああああああ!」

蝙蝠男「うがああああああああああああああああ!」

課金ライダー「諦めな。もう詰みだ」

蝙蝠男「まだだ、まだ、まだやれる!」

――

蝙蝠男「シリアルコード……?」

マンモス男「我々も鬼ではありません。『課金ライダー』、脅威は今は小さくても何時かは排除しなければいけない存在」
ザリガニ男「倒せそうな時はこれ使って。これ、自信作だよ」

蝙蝠男「ありがとうございます! 私、これからも某社の力になれるよう
――」

蝙蝠男「このシリアルコードがあれば……きっと!」ピラ

課金ライダー「なんだよ、その紙」

課金ドライバー「コノ数列、『シリアルコード』カト」

蝙蝠男「シリアルコード入力! 2008012708!」

「シ、シシシシシリアルコードカカカ確認」

蝙蝠男「ふ、ふははははは。これさえあれば男を倒せる力が……」

「全能力解放。起動シマス」

課金ライダー「全能力解放だって!?」

蝙蝠男「私はまだ負けてはいない! 貴様はやはりここで……」

「『暴走モード』。出力シマス」

蝙蝠男「な」

蝙蝠男「……あ゛あ゛、が、が、身体がぁ、いい゛痛ァあ、あ゛、が、ぬ゛ば」メキッ

課金ライダー「おい、ドライバー。大きくなってないか、こいつ」

課金ドライバー「ハイ」

課金ライダー「この身体、部屋に収まりきるのか?」

課金ドライバー「無理デス。教室ガ崩壊シマス」

課金ライダー「俺、ここにいて大丈夫?」

課金ドライバー「恐ラク圧死シマス」

課金ライダー「なんで冷静なの?」

課金ドライバー「私、機械デスカラ」

――校庭

ザワザワ

「なんだアレ」

「演劇部?」

「イケメン講師先生抱えてるー」

課金ライダー「はぁ、はぁ。何とか出ることはできた、けど……」

課金ドライバー「3、2、1、来マス!」

ドゴォンッ!

蝙蝠男(暴走体)「グォォォオオオオ!」

「うわァーッ!」

「誰か通報しろよ!」

「あ、ツイッターで呟かなきゃ」

課金ライダー「ありゃあ……怪獣映画か?」

課金ドライバー「怪獣デハアリマセン。アレハ、人間ヲ身体ヲメインフレームトシテ構築サレタ『アーマー』。簡単ニ言ウトデスネ『服を着た人間』デハナク『人間を着た服』ト言ッタ感ジデスネ」

課金ライダー「で、俺はどうすりゃいいのさ!?」

課金ドライバー「コノママデハ中ニイル学年主任様モ死ンデシマイマス。攻撃シ続ケテクダサイ」

課金ライダー「承知!」

蝙蝠男(暴走体)「グォォォオオオオ!」

課金ライダー「死なせねえよアンタは。生きて償え! ドライバー!」

課金ドライバー「了解。『1日1回無料ガチャ』回シマス」ガシャ

課金ドライバー「選定結果…【ウェポン】【N】【マシンガン】。出力シマス」ウィィ…

課金ライダー「おら! 撃つぞ!」ドパラタタ!

蝙蝠男(暴走体)「グォッ! ガァァァアアア!」

課金ドライバー「敵損傷率7%。攻撃ヲ止メナイデクダサイ」

課金ライダー「固いな! もう一回行くぞオラ!」ドパラタタッ!

蝙蝠男(暴走体)「オォォオオォォオ!」

課金ドライバー「損傷率14%!」

課金ライダー「もう弾切れ!」

蝙蝠男(暴走体)「ギィィガガガ……ガチャ、ガガガガガガチャヲガチャニ課金シマスカ? 課金シマスカ? 課金金金金」ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

課金ライダー「バグってるバグってる!」

蝙蝠男(暴走体)「選定結果選定結果選定結果選定結果……」キィィィ…

課金ドライバー「全部デ50個ノ【ウェポン】ガ射出サレマス! 気ヲ付ケテクダサイ!」

蝙蝠男(暴走体)「射出準備……カウントダウン開開開開始開始開始開始」ギュウウ

課金ライダー「武器を射出ってお前……ゲートオブバビロンかよ!」

課金ドライバー「ナンデスカ、ソレハ」

課金ライダー「後で教えるから避け方を教えろよおおおおおっ!」

課金ドライバー「大丈夫デスノデ、ココカラ動カナイデクダサイ」

課金ライダー「こっち攻撃が来るって知ってるのに『動くな』ってこたーないだろ!」

課金ドライバー「従ッテクダサイ」

蝙蝠男(暴走体)「ゴゴゴゴゴゴ5」

課金ライダー「5秒だぞ!」

蝙蝠男(暴走体)「4ンンンンンン」

課金ライダー「ヤバいって!?」

蝙蝠男(暴走体)「321」

課金ライダー「カウント適当だな!」

蝙蝠男(暴走体)「発射」

課金ライダー「あ、これ、死んだわ」

<ブロロロ…

マシンチャージャー<オッス

課金ライダー「あれは俺の自転車!」

蝙蝠男(暴走体)「!?」

マシンチャージャー<タイアタリスルデ ソレッ

蝙蝠男(暴走体)「ガァッ!?」ガキィィィンッ

課金ドライバー「男様、今ノウチニチャージャーニ乗ッテクダサイ」

課金ライダー「分かった! で!?」

課金ドライバー「蝙蝠男様ヲ引キツケテクダサイ」

課金ライダー「分かった!」

課金ライダー「こっちこい!」ブォン!

課金ドライバー「ソノママ引キツケテクダサイ。装甲ノ弱イ部分ヲスキャニングシテイマス」

蝙蝠男(暴走体)「グァアアアア!」ドゴォッ

課金ライダー「ほぉら! 来いよ!」ブォン、ブォン

蝙蝠男(暴走体)「発射シマス発射シマス!」バシュッ

ガガッ

課金ライダー「あぶねっ! ドライバー! スキャニングとやらはまだ終わんねーの!?」

課金ドライバー「現在80%スキャニングガ完了シテイマス。モウ少シ、モウ少シ引キツケテクダサイ」

課金ライダー「分かった、分かったよ! やってやるさ!」ブォンブォンブォン

マシンチャージャー<ヤァッテヤルゼ!

課金ライダー「小学生の時、俺は『自転車とばしの男ちゃん』って呼ばれてたんだ!」ブォン!

課金ドライバー「ソノヨウナ話、マスターカラ伺ッテオリマセンガ」

課金ライダー「うるせー! 行くぞ自転車!」

マシンチャージャー<カットバスゼィ!

「すげー、ドッキリ?」

「東映だよ東映。仮面ライダー知らねーの?」

「早く通報しろよ!」

「オレの呟きリツイート1万超えた!」

「GANTZバイクみたいなのに乗ってるー」

課金ライダー「視線が痛い」ブォンブォン…

蝙蝠男(暴走体)「グォォォオオオオッ!」

課金ドライバー「男様、弱点ノスキャニングガ完了シマシタ。蝙蝠男様ノ弱点ハ『翼の付け根』デス!」

課金ドライバー「『翼の付け根』ハ、『戦闘員アプリ』ガ【ウェポン】ヲ出力スル為ニ必要ナ『超硬度プラスチック出力装置』ヘ繋ガルケーブルガアリマス」

課金ライダー「その動脈を千切れば無力化できるっていうことだな。じゃあトドメを刺してやるとするか! あ、でも俺、次のウェポンガチャをする資金が……」

課金ドライバー「コウイウ時ハ『必殺技』ヲ使イマショウ」

課金ライダー「必殺技?」

課金ドライバー「ソウデス。コノ話ハマスターニシテモライマショウ。オ繋ギシマス」

幼馴染『よう、男。楽しいことしてるようじゃないか』

課金ライダー「いいから早く『必殺技』の話をしてくれよ!」ブォンブォン!

マシンチャージャー<モウモタネェゾ

幼馴染『分かった。『必殺技』は名前の通り相手を必ず倒す技だ。人と戦っている以上、威力の調節が必要だから敵が暴走でもしていない限り使ってはほしくないのだが』

課金ドライバー「私ハ非常事態ト認識シマス。『必殺技』ノ使用許可ヲオ願イシマス」

幼馴染『分かった。まあ最初からそのつもりだったがな』

課金ライダー「どうやれば必殺技だ?」

幼馴染『千円(税込み)』

課金ライダー「は?」

幼馴染『千円(税込み)だ』

課金ライダー「俺、今金がないって言わなかったか、ドライバー」

課金ドライバー「ハイ」

蝙蝠男(暴走体)「グォォォオオオオオオオオオ!!」

課金ライダー「グォォォオオオオオオオオオオオオ!!」

課金ドライバー「何ヲ叫ンデイルノデスカ?」

課金ライダー「払えねぇ! 払えねぇんだよ!」

課金ドライバー「千円(税込み)ガデスカ?」

課金ライダー「お前、俺が幾ら持ってるか分かってるだろ!」

課金ドライバー「470円デス。アッ」

課金ライダー「白々しいな!」

幼馴染『雑費代以外もお金はあるだろ! 払わなければ生き残れないぞ!』

課金ライダー「ダメだよ。飯が食えなくなる。これじゃあガチャも引けやしねぇ……あっ」

幼馴染『どうしたんだ、男』

課金ライダー「なぁ、幼馴染。今晩何食べたい? 何でも作るぞ」

幼馴染『なんだ急に。……そうだな。男が作ったハンバーグが食べたい!』

課金ライダー「分かった。今日は肉屋さんが挽き肉特売って言ってたからな。あ! いや、やっぱりハンバーグは作れないや!」

幼馴染『ど、どういうことだ! ハンバーグないのか!?』

課金ライダー「お金がないんだぁー、残念ながら。だって俺、今からぁー課金しちゃうんだもんなぁ~」

幼馴染『む! むむぅ……』

課金ライダー「あー残念。残念だなぁ。幼馴染にハンバーグ作ってやりたかったけど課金しちゃうからなぁ。いやー残念」

幼馴染『分かった! 今回だけ特別必殺技無料! 初回サービスだぞ! ハンバーグ作れよ!』

課金ドライバー「男様ノ交渉術、素晴ラシイ……」

幼馴染『よし、ドライバー。必殺技をインストールするんだ!』

課金ドライバー「了解」

蝙蝠男(暴走体)「グルルルルルルル……」

課金ライダー「いいね。こっちのオッサンは俺のが欲しいみたいだぜ」

課金ドライバー「ソレデハオ望ミ通リニシテアゲマショウ!」

蝙蝠男(暴走体)「ガアアアアアアッ!」ドッドッドッ…

課金ドライバー「『必殺技』解放シマス」

課金ライダー「ちょうどいい感じに蝙蝠野郎もこっちに向かって来やがった! 対象、ロックオン可能。射程範囲に入った!」

課金ドライバー「『翼の付け根』デス。オ間違イ無ク! チャージャーカラ降リテ上空カラ確認シテミテハイカガデショウ」

課金ライダー「わーってる。ライダァー……ジャンプ!」フワッ

蝙蝠男(暴走体)「ガアアッ」バサッ

課金ドライバー「対象、離陸ヲ確認」

課金ライダー「おー追っかけてきとるきとる。というか、必殺技使うと俺こんなに飛べんのな」

課金ドライバー「必殺技デスカラ」

――上空

課金ドライバー「必殺技ノプランノ説明ヲシマス」

課金ライダー「あらかじめしとけよ」

課金ドライバー「男様ガ飛ンダ瞬間、蝙蝠男様モ後ヲ追イマシタ。現在我々ノ30m程下ヲユックリト昇ッテイルトコロデス」

課金ライダー「ほう」

課金ドライバー「我々ハ現在、最高地点デアル上空百メートルニ到達シテイマス」

課金ライダー「ってことは……後は蜘蛛男の時みたいに落ちればいいってことか」

課金ドライバー「ハイ。狙イヲツケテ『翼の付け根』ダケヲ貫クノデス。照準ハ男様ノマニュアル操作ガ必要トナリマスガ……」

課金ライダー「できるさ」

課金ドライバー「ソノ言葉ヲ待ッテイマシタ。……来マス!」

蝙蝠男(暴走体)「…………ォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

課金ライダー「翼の付け根、翼の付け根……」

課金ライダー「見えた!」

課金ドライバー「修正ハ任セテクダサイ。ブースター調整、コレヨリ降下準備ニ入リマス」

課金ライダー「目標をセンターに入れて青春スイッチ・オンだ!」

課金ドライバー「スレ違イ様ニ蹴リヲ浴ビセルノデス」

蝙蝠男(暴走体)「オオオオオオオオオッ!!」ゴゴゴゴゴゴ

課金ライダー「ライダーァアアアアア…」ググ…

蝙蝠男(暴走体)「オオオオオオオオオオオオオオッ!!」ガガガガガ


課金ライダー「超高速降下ぁぁぁ……」

蝙蝠男(暴走体)「オオオオオオオオオオオオオオオオッ」ドドドドドドドドド

課金ドライバー「今デス!」

課金ライダー「キィイイイイイイイイイイッーーーークッ!!」

――

――校庭

課金ライダー「……」スタッ…

課金ドライバー「……」

「……」

「なんだったんだあれ……」

「リツイート……」

蝙蝠男(暴走体)「……ガ、ガガ。暴走体、解除シマス」バチッ バチチッ

蝙蝠男「……あ、あ、ああ」フラ…

課金ライダー「アンタの負けだ。その正体、校庭にいる生徒達に見せてやりな」

蝙蝠男「や、やめ……」

「スマートフォンガ破損シタ可能性ガアリマス。オ近クノ携帯ショップニオ問イ合ワセクダサイ」

「アプリヲ強制終了シマス」

蝙蝠男「あ……」

学年主任「あぁ……」

「うそだろ」

「あの蝙蝠みたいなのって『戦闘員アプリ』だよな」

「まさか先生が」

「校舎ぶっ壊してたよな」

「俺、あの蝙蝠『魔のトンネル』で見たことある……」

「まさか」

「もしかして」

「あれって」

学年主任「……見るな」

学年主任「見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るなァアアアアアーッ!」

学年主任「うわあああああああああああああああ」

――

――次の日 教室

友「まさか『魔のトンネル』の正体が学年主任とはなぁ」

男「全くだ」

友「『戦闘員アプリ』を使って担任を殺そうとしたんだって」

男「それは知らなかった」

友「なんか、ヒーローが校庭で暴れてる学年主任を倒したんだって」

男「俺も見たかったな」

友「なんか今日の男よそよそしくない?」

男「気のせいだよ」

――

男(あの後、すぐに来た警察に学年主任は捕まった)

男(諦めて洗いざらい白状したみたいで良かった。これで被害にあったみんなも報われ……はしないか)

男(イケメン講師はあの後、学校を去った。学年主任に心の弱さにつけ込まれたことを知りながらも言えなかったんだって)

男(「もう少しがんばってみるよ」って最後に言ってたから大丈夫だろ。イケメンだし)

男(そして担任は……)

担任「よーし、授業始めるぞーッ!」

男(こんな感じで元気になった)

――

男(ドライバーが言うには、担任に作用していた電波や音波関連が破壊されたからなんだと。よく分からん)

男(まだ何かと大変そうだけどリハビリしながら授業やってるよ)

男(ともあれ一件落着ってことでいいかな?)

男(あ、そうそう。『課金ライダー』についてな)

男(やってるよ。それなりにさ)

――

担任「こら男! ぼーっとしてんなよ!」

男「すんません」

男(もう少し病院でおとなしくしてりゃよかったのに……)

――

幼馴染「これが2話、3話ってところだな」

ドライバー「マスター、誰ニ向カッテ話シテイルノデスカ?」

――

おわり?

――男の家

幼馴染「バイト?」

男「バイト」

幼馴染「キロバイトメガバイトの?」

男「お前は俺がデータ容量の話をしているように聞こえたのか?」

幼馴染「いや聞こえないが。バイトを始めるのだろう? これまた何でだ」

男「……」

幼馴染「どうした?」

男「それ本気で言ってるの? 心当たりなし?」

幼馴染「へ?」

男「さーて、今日の夕飯何しよっかなー。幼馴染も食べてくだろ?」

幼馴染「夕飯か!? オムライス食べたいぞ!」

男「あ、そうだ! ピーマンがまだ家に残っていたんだったなー」ボウヨミー

幼馴染「ピ、ピーマン……」

男「今日はピーマンの肉詰めに決定だー」ボウヨミー

幼馴染「……やだっ! ピーマンはいやだ!」

男「用意しよ」ボウヨミー

幼馴染「今日の男、なんだか意地が悪いぞ!」

男「ピーマンくらい今時の子供だって食べられるわ! たまに嫌いな物が出る日があってもいいだろ!」

幼馴染「むむ……」

幼馴染「男の10万倍バカァーッ!」

バカー!

バカー!

バカー…

カー…

――男の部屋

課金ドライバー(ヤレヤレ……)

課金ドライバー(マスターハ私ノシステムノセイデ、男様ノ生活ヲ逼迫サセテシマッテイルコトニ気ヅイテオラレナイヨウデスネ)

課金ドライバー(シカシ、私カラマスターニ意見スルノモ……)

課金ドライバー(コノヨウナ板挟ミナ状態ヲ対処スル場合ハドウスレバ良イノデショウ)

課金ドライバー(マスターハ対人関係ニツイテノプログラミングヲシテイナイノデス)

課金ドライバー(アア、機械デアル自分ガ辛イ!)

犬「腹へった」

課金ドライバー「犬様、ゴ機嫌ヨウ。オ腹ガスイタノデスカ?」

犬「メシをくれ」

課金ドライバー「申シ訳ゴザイマセン。私ハコノ通リ『ベルト型』。手モ足モナイノデ、犬様ニオ食事ヲ提供スルコトガデキナイノデス」

犬「腹へった。腹へった」

課金ドライバー「男様カマスターニ言ッテミテハイカガデショウカ」

犬「腹へった。腹へった」ベロベロ

課金ドライバー「ヒッ! ナ、ナメナイデクダサイ!」

犬「オレサマオマエマルカジリ」ガジガジ

課金ドライバー「カジラナイデクダサイ! ダ、誰カ! 男様! マスター!」

――男の家 リビング

幼馴染「ぬぅ」

男「やっぱり食べられない?」

幼馴染「うぅ」

男「肉の所だけ食べな。後は俺が食うから」

幼馴染「……すまん」

男「俺こそごめんな。意地悪だった」

幼馴染「……せっかく男が作ってくれた」

男「いいよ。無理すんなって。幼馴染が嫌いな物ぐらい知ってるんだから」

幼馴染「うむ……」

――幼馴染の家

幼馴染「なぁドライバー」

課金ドライバー「ナンデスカ、マスター」

幼馴染「ピーマンというのは何故あんなにも苦いのだろう」

課金ドライバー「ピーマンノ苦味ノ由来ニツイテデスカ? ソレハ……」

幼馴染「違う。成分の話をしてるんじゃないんだ」

課金ドライバー「デハ何ノ情報ヲ検索イタシマスカ?」

幼馴染「いや、検索もいらん。ただの独り言だ。気にするな」

課金ドライバー「了解」

幼馴染「……はぁ」

課金ドライバー「……」

幼馴染「なぁドライバー」

課金ドライバー「ナンデショウ」

幼馴染「犬臭くないか?」

課金ドライバー「スミマセン」

――次の日 教室

男「女の子?」

友「そうだよ! 病院に男を探しに来てた子! どんな関係なんだよ!」
男「あ、ああ。幼馴染のことか」

男(そういやこないだ俺が病院の屋上で倒れた時、幼馴染も友に会ったみたいな話してたな)

男「関係? 名前の通りだけど」

友「メタな話はよせ」

男「話せば長くなるような気がするんだけど、いい?」

友「教えて教えて!」

男「俺の親と幼馴染の親が同じ職場でさ。産まれる前からの付き合いなんだよ」

友「へぇー、家族ぐるみの付き合いなんだ」

男「そうなんだよ。……」

友「どうした?」

男「……終わり」

友「短いよ!」

男「ごめん。っていうか友、お前そんなこと聞いてどうするんだ?」

友「いや、可愛いなー、いいなーと思ってさ。男の彼女じゃないと分かったら俺にも可能性はあるな! うんっ!」

男「ま、まぁいいけど……。クラス委員が好きだったんじゃなかったのか?」

友「うん、フられた」

男「フられた!?」

男「……」

男「ということは、お前告白したのか!?」

友「うん、した。して、フられた」

男「ずいぶんあっけらかんとしてるね、お前。告白しただなんて知らなかった」

友「男が入院してた間の話だからな」

男「色々な意味で幸せな奴だ」

友「褒めてんの?」

男「そういうことにしておこう」

――

友「でさー、男。その幼馴染ちゃんはどこの学校に通ってるんだ?」

男「この学校だよ」

友「……冗談はよせって」

男「ホントだって。同学年でこのクラス。そりゃ会ったこたないわな」

男「だって幼馴染は不登校だからな」

友「……」

男「学校来いよ、とは言ってるんだがな。本人の勝手だから強制はしてない」

友「な、なんか聞かなきゃ良かった感じがする」

男(俺が逆に色々と教えられないことが多すぎるんだよ……)

友「じゃあその内、幼馴染ちゃんに会わせてくれよな」

男「分かった分かった。もう帰ろうぜ」

友「そうだな。今日もだべってて宿題は1つも終わらなかったし」

男「何やってんだか」

――通学路

友「バイト? テラバイトギガバイトの?」

男「お前幼馴染と同じこと言ってた」

友「運命を感じる……っ!」

男「そのバイトじゃないって。アルバイト始めるの!」

友「あー、アルバイトね。アルバ……イト?」

男「ちょっと小遣い稼ぎに働くってこと!(金持ちのボンボンはこれだから……)」

友「あーあれ。でも、働くってどこで働くんだ?」

男「あそこの角のパン屋さんで働くんだ。急募出てたからな」

友「学食にも周一で来るパン屋さんか! あのおばちゃんが作るパンはうまいよなぁー」

男「とりあえず頑張ってくるよ」

友「男は手が器用だし、料理も上手だからきっとうまくいくよ! 頑張れ!」

男「おう、ありがと。じゃ、行ってくる」

――パン屋

男「今日からよろしくお願いします!」

パン屋のおばちゃん(以下おばちゃん)「ホントに助かるわぁ。前のバイトの子、やめちゃって困ってたの」

男「そうだったんですか。……で、俺は何をすれば」

おばちゃん「うちの店の営業は午前6時から午後6時まで。ということでもう店は閉めちゃうの」

おばちゃん「男くんには明日出すパンの仕込みをしてほしいのよっ!」

おばちゃん「じっくりパンを発酵させて、朝焼き上げるの」

男「なるほど。パンを作るのは初めてです」

おばちゃん「そうよね! じゃあ我が店の秘伝を教えるからしっかり聞くのよ……!」

男「は、はい!」

――1時間後

おばちゃん「……お前はよくやった」ゴゴゴ

男「……」

おばちゃん「……しかし」ゴゴゴ

男「……」

おばちゃん「……もう」ゴゴゴ

男(引っ張るなー)

おばちゃん「……教えることはない」ゴゴゴ

男「えっ、ないんですか?」

おばちゃん「ないない。ないわよ! 後は発酵させて焼くだけ!」

男「簡単過ぎない?」

おばちゃん「そうかしら? 男くんの覚えが良かっただけじゃないの」

男「案外簡単にあんなおいしいパンができるのにも驚いたけど、おばちゃんがその秘伝をただのアルバイトに教えちゃったのもびっくりですよ!」

おばちゃん「そう? 今までのアルバイトの子達にもそうして来たけど……」

男「みんな!?」

おばちゃん「みんなよ」

男「そんなに簡単に教えちゃっていいんですか?」

おばちゃん「あらー、美味しいものはみんなで食べたいじゃないー!」

男「『食べたいじゃないー!』って……」

おばちゃん「買ってきたおいしいものをみんなで食べるのもいいけど、自分で作ったおいしいものをみんなに振る舞うってのはもっといいわ!」

男「謎理論だな……」

男(いや、でも幼馴染に『おいしい』って言われると嬉しいな。……それか)

男「おばちゃん、あのさ……」

おばちゃん「何かしら?」

――

――閉店後のパン屋

カサ…

カサカサ…

蠍「目的地到達シマシタ。次ノ命令ヲ入力シテクダサイ」

蠍「……」

蠍「了解。キーワード『学校配達分』スキャニングシマス」

蠍「発見。次ノ命令ヲ入力シテクダサイ」

蠍「……」

蠍「了解」

カサカサ…

カサ…

――パン屋のおばちゃんの家

トントン

トントン

おばちゃん「ショウくん? ショウくんいるの?」

おばちゃん「……」

おばちゃん「ドアの前にパン、置いとくわね?」

おばちゃん「あ、牛乳も持って来るわね。お母さん忘れちゃっ……」

ドンドンドン!

おばちゃん「きゃっ」

おばちゃんの息子の声「いらねえつってんだろババア!」

おばちゃんの息子の声「俺を何歳だと思ってんだ! 24だ、24! ショウくんショウくんって気持ち悪いんだよ!」

おばちゃんの息子の声「こんな落ちこぼれで悪かったな! 早くいなくなるからよ、こんな家からさあ!」

おばちゃん「……」

おばちゃん「ごめんなさい……ごめんなさい……」

――

――次の日 男の家

幼馴染「んむ……おはよう、男」

男「おはよう、幼馴染。なぜ俺の家に泊まりこんでいるのかは聞かないでおいてやる」

幼馴染「今日はいつにも増して早起きさんだな」

男「これを作っておいたのさ!」

幼馴染「パン?」

男「幼馴染に食べてもらいたくてな」

幼馴染「私の為に!? それは嬉しいな……」

男「昨日から仕込んでおいたんだ。バイト先で習ったやつ。……おっと、もう学校行かなくちゃ遅れる!」ダッ

幼馴染「朝ご飯はどうする!?」

男「失敗した奴食べたから!」ダッ

幼馴染「おい!」

……

幼馴染「さすがにこのパンの量は……食べきれるかな」

犬「食わせろ」

幼馴染「お前はダメだ」

――教室

友「バイトの調子はどうよ?」

男「まだ一日目だから分かんないけどなぁ~」

友「その顔は楽しかったって顔だな!」

男「分かる?」

友「分かりやすいよ、男の顔」

男「そうか……。ホント楽しかったよ、バイト」

友「バイトって楽しいもんなのかぁ、いいなぁ。家のお手伝いさんに手伝えることがあるか聞いてみるかな」

男(お手伝いさんって……)

友「そういや今日、パン屋が学食に来る日じゃないか?」

男「そうなんだよ。俺が作ったやつも売ってるんだぜ?」

友「昼休み行ってくるか」

――

――昼休み 学食

友「もう並んでるよ、パン屋は人気だよなー」

男「残っていればいいんだけど」

……

男「もう少し、もう少しだ……」

友「もう飽きた」

……

坊主頭「ウス」

男「あ……」

おばちゃん「はい毎度あり! あら男くんごめんねぇ。今の坊主の子の分で売り切れちゃったのよ」

男「なんとぉ」

友「しょんぼりだ」

――教室

友「もっと早くに並べば良かったな」

男「俺たちだってチャイムと同時に教室から出たと思うんだけど……」

友「モブ1は授業中に『腹痛いんでトイレ行ってきます』って言って教室抜け出して並んでるんだと」

男「アリかよ」

友「次はそうしよ。あぁ……いいなぁ坊主頭の奴。パンをあんなうまそうに食ってやがる」

坊主頭「……」モグモグ

男「弁当持って来なかったからなぁ」

友「お前が弁当持ってこないと俺が餓死するんだよ!」

男「自分の弁当を持ってこいよ」

友「パン食べたいよぉ……」

男「パン屋のおばちゃんに作り方習ったから、明日焼いて持って来るよ」

友「今食べたいんだよお。坊主頭に言えばくれるかなぁ……」

男「知ってるやつなの?」

友「あんまり知らない」

男「諦めろ」

――

坊主頭「……」モグモグ

カサ…

坊主頭「……?」モグモグ

カサカサ…

坊主頭「……」モグ…ガリッ

坊主頭「口の中に何か……」ペッ

坊主頭「これは……っ!」

カサカサカサカサ…

蠍「任務成功。データヲ消去シマス」

坊主頭「パ、パン食ってる奴食べるのやめろ!!」

「なんだ急に?」

「どうしたの?」

坊主頭「パンの中に……さ、さ、サソリが、サソリが入ってる!」

ザワザワ…

男「……」

友「おい、男……」

男「……」

友「これ、ヤバくないか?」

男「ど、どういうことだよ。どうなってるんだよ」

友「洒落になんねぇよ……」

男「……」

――

――某社 会議室

マンモス男「……『HN.シスターツバサ』は今回もミーティングに不参加なのですか?」

技術主任「いいじゃん。どうせ3人しかいないんだからさぁ」

マンモス男「いけませんね。規律は守る為にある」

技術主任「おカタいやつは嫌われるよ。カタブツくん今日はなにするの?」

マンモス男「今回の私が担当する【プレゼンテーター】についてです。お手元にある資料をご覧ください」

技術主任「『HN.のぶおぶ』。装着アーマーは【R】【スコーピオン】。あまり強くないアーマーだから改造はしておいたよ」

マンモス男「小型ドローンを単機で生成する能力は画期的なものです」

マンモス男「小型ドローンの偵察、攻撃に関しての動作テストは概ね良好でした」

技術主任「あったりまえだろ! それにしてもあの蠍男の使い道が『アレ』とはねぇ」

マンモス男「ドローンを色々な物、特に食べ物の中に紛れ込ませるなんて考えつきませんよ。普通の人間なら」

技術主任「企業だって最近は色々神経を尖らせているっていうのに、この犯人が『戦闘員アプリ』の使用者って知ったらどうなるんだろ! ヒヒ……」

マンモス男「……(いやらしい男だ)」

技術主任「まさか最初の舞台が『〇〇高校』になるとはね」

マンモス男「……『課金ライダー』のいる学校、ですね」

技術主任「そう! 今回、ドローンを紛れ込ませたのは学校に配達に来るパン屋」

マンモス男「企画書によれば『生徒の買ったパンの中からサソリドローンが飛び出す』と書かれています」

技術主任「『サソリドローンのデータは消去される』という考えが面白いね。データが消えればサソリのおもちゃにしか見えなくなるよ」

マンモス男「大事になればどうなるでしょうね。大企業であれば証拠を隠滅したり、多額の金を積んで黙らせることも可能ですが……」

技術主任「今回のパン屋はただの町のパン屋さん! 信用だけで成り立つ商売は、一つの『噂』で一気に破滅の道へ!」

マンモス男「これは我が企業の商品に『社会的な影響力』があることを世間に知らしめることになるでしょう」

技術主任「課金ライダーは人の命は助けられても、企業の利益は守れない!」

技術主任「パン屋の従業員が路頭に迷い、店主が首を吊る未来をヤツは指を咥えて見ていることしかできないんだ! ギャハハハハハハ!」

マンモス男「……」

――

――放課後 学校

男「なぁ、友」

友「顔色悪いぞ。大丈夫か?」

男「……俺、パン屋行ってくるわ」

友「お、おい」

男「今日もバイトあるし……」

友「案外大事になっちゃってたぞ。先生らも会議してるし、みんなスマホで写真撮ってたし。今日は行かない方が 男「おばちゃんに明日も行くって約束したんだよ!」

友「っ!」ビクッ

男「行ってくる」

友「……おう。無理、すんなよ」

――パン屋

男「こんにちはー」

トゥルルル…

男(いつもこの時間になると学校終わりの学生とか定時帰りのサラリーマンとかがいるはずなんだけど……いない)

トゥルルル…

男「電話、鳴ってる」

ル…

男「あ、止まった」

トゥルルル…

男「またかかってきた。これって一体……」

男「おばちゃーん! 電話が鳴ってますよー!」

トゥルルル…

男「あれ? おばちゃんはどこだ」

トゥルルル…

男「ああうるさいなこの電話は!」

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