俺「どうしてこうなった」(12)

獣さえ滅多に訪れることのない深山。ここに座して幾星霜、今かすかに人の足音がする。
足音の主はどうやらーー

1:フラフラと頼りなげでおぼつかない。何度も止まってはいるが、少しずつこちらに近づいてくる。

2:よく体を操作できているらしい。気配は殺し気味だが、こちらにはその踏みしめる力強さが丸わかりだ。

安価 >>5(ダメだったらその下)

流石に安価遠くないか?
ksk

>>2
これくらいがいいかと思ったけどもう少し近くても良かったか。
まだ不慣れなもので申し訳ない。

2

1

>>5 THX.

足音の主は、ここに来られたことが奇跡というべきか、痩せてやつれ、青白い頬をした青年だった。
髪には艶が無く、目は落ち窪み、消滅を前にした俺よりもっと死人らしかった。
振りまわすことなどできないだろう剣を杖と縋って、震えながら、ただ目ばかりキラキラと輝かせている。

「O, magna nox stellis drace !」

何かこちらに話しかけているがよく分からない。

人と関わったのはもう何千年(自分なりの暦でだ)も前の話、人界の言葉など簡単に変化する。

ただ感情に関してはよく分かる、悪意も敵意もない。興奮と好奇心、そして熱狂をまとった敬意だけがある。

お前は誰だ、と尋ねたくて、だが言葉が通じないことに気づく。

憧れを向けられるのは悪くないものだ、久方ぶりの客人、もてなす為に力ある言葉を紡ぐ。

[WFK QHK]

ごめん、ちょっと訂正

青年「O, magna nox stellis drace !」

何かこちらに話しかけているがよく分からない。

人と関わったのはもう何千年(自分なりの暦でだ)も前の話、人界の言葉など簡単に変化する。

ただ感情に関してはよく分かる、悪意も敵意もない。興奮と好奇心、そして熱狂をまとった敬意のみがある。

お前は一体誰なのだ、尋ねたくて、言葉が通じないことに気づいた。

憧憬を向けられるのも中々快く、ならばそれに応えねばなるまい。力ある言葉を紡ごう。

[WFK QHK]

俺『聞こえているか?』

思い切り上から目線で威厳たっぷりに対応するか、マイクテストでカリスマブレイクするか迷ったが、結局無難な言葉を投げるのに落ち着いた。

青年『は、はい。星夜龍様。これは一体……?』

うわー恥ずかしい。確かに俺の体色は、漆黒の地に白や金銀各色の点が散った特異なものだけれど。

俺『魔力を以って互いの意思疎通を可能にした。見たところ喋るのも辛いだろう、念じるだけでいい、お前は誰で、どうしてここに来たか教えてくれ』

本人に悪意が無くとも、周りによっては良くない状況になることも有りうる。とにかくこんなところまで来た青年の素性を知りたかった。

青年『はい、私の名は、王国の第一王子です。龍退治の勅を受けましたが、あなた様を害する意図はありません』

人界の国家のことなどわからん。わからんが、マジかよ!

俺『俺は退治される程悪いことをした覚えはないのだが』

この世界における龍は、幼少期だけは肉などを結構食べる。
しかし、ある程度成長すれば大気中の魔力を吸収するだけで生きられる様になる。
振るう力こそ強大だが、生態のみを考慮するなら極めて無害な生き物なのだ。

青年改め王子『あなた様が悪だなんてとんでもない、人類に智慧を授けてくださったお方。しかし我が国では、あなた様は人類の無垢を汚した存在なのです』

ああ、黒歴史。初めて人間っぽい存在を見つけた時、テンションが上がって色々やらかしたっけ……

俺『俺はそんなに大層な存在じゃない、だがその国の王子であるお前が俺を崇める様な事を言っていいのか?』

王子『あなた様を尊崇する国々と、我が国は対立関係にあります。敵国の研究ということで、大っぴらでこそありませんが、あなた様に関する資料は王宮に持ち込まれております。私はこっそりそれらを読んで、幼少よりずっと憧れておりました』

俺『』

王子『生まれつき病弱な私にとって、あなた様が巡る世界を書物で読むと、一緒に旅している様な気持ちになれました』

重い、重いよ……。

俺『そうか。……ありがとう。しかし王子が、供もつけずにこんなところに居ていいのか?』

王子『私は正式でこそありませんが、廃嫡されたも同然なのです。じいは一緒に来てくれましたが、どうしてもあなた様にお会いしたくて、途中の宿でこっそり抜け出してしまいました』

注.このSSにBL展開はない。主人公最強展開はあるかも。


王子『死ぬ前に、あなたにお会いできて良かった……』

その意味は見れば分かる、だが俺は問わずにはいられなかった。

俺『どういう意味だ!』

王子『今回の勅は、厄介払いというか、死んでこいという意味でしょう。この身体では公務に耐えられない。母と祖父が亡くなって、後ろ盾が無いとはいえ私の血筋自体は弟よりも高い』

王子『もう自分が長く無いことは分かっています。この勅が無くとも、遠からず私は死ぬでしょう。……だから、どうか泣かないでください。あなた様に泣かれると私が困ってしまう』

冗談めかして告げられて、初めて俺は、自分が王子のことを思っている以上に悲しんでいることに気がついた。

俺『おかしいよな、ほぼ初対面なのにこんなに悲しいなんて。俺も消える間際だから、心が弱っているのかな』

王子『そんな、まさか』

俺『龍の個としての寿命はだいたい一万年。その後は魔力の塊になった肉体を大気に溶かす。俺という意識は消えるだろうけど、それは問題じゃない』

そう、この長い長い生がようやく終わるのだ。怖さを感じないわけではないけど、もう何回も経験したことだ。その後が無くなるだけで。

俺『実はな、俺は元々龍じゃなかったんだ』

俺『最初はーーいやこの話は長くなる、少し待ってくれないか』

王子『どうぞ』

そもそも人里から遠く離れてはいるものの、標高2000m程で、故郷を思わせる温和な気候のこの場所にたどり着くのに、外傷無しで瀕死だというのは何か理由があるはずだ。

[ARF SIBUU]

服に覆われた胴に発疹、貧血、初期だが悪性腫瘍。ヒ素か類似物質による慢性中毒、ヒ素に比べれば少ないが重金属の蓄積も。

[ENSD OP]

王子『……!? 体が楽に?!』

俺『話の途中で死なれてもつまらないからな』

王子『!! ありがとうございます!』

俺『いい。それより俺が消える前に、俺の話を聞いてくれないか』

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