はじめてロックのCDを手にとったのが15歳のとき。
きっかけは、えっと。
母さんの車のラジオから流れた曲にビビッときたからとか、そんな感じだったと思う、タブン。
その曲は英詩だったから、メロディしかわからなかった。あ、“LOVE”とか“NEED”とかだけはわかったけど。
だからCDショップの店員さんに鼻歌を披露して、どのアーティストか教えてもらったんだっけ。
いやぁ~、いま思えば、恥ずかしいことしたかなぁ。お客さん、みぃんな陰でクスクス笑ってたし。
でもね、そのときは洋楽のCDを買うってのが、カッコイイ!ってとにかく心の底から思ったんだ。なんかクラスの他の子よりちょっと背伸びしたみたいでさ。
次の日、学校での開口一番のことば。
ねぇねぇ、ロックっていいよねぇ~! いや~もうフワフワしたポップソングとか聴いてらんないよ~。
……あ、笑うな~! い、いいじゃん、いいじゃん! 私らしいじゃん!
それから、ロックミュージックの雑誌を参考に、ロックっぽい服に袖を通したのが3日後。
お小遣いを溜めてぴかぴかのヘッドホンを買ったのは3ヵ月後。
お年玉と誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントをいっしょくたにさせて、水道橋のお店で「とにかくイカすギターください!」って叫んでギターを買ったのが1年後。
コード抑えらんなくて投げ出したのが1年ぷらす1ヶ月後。ベースとギターは別モノってのに気付いたのがそれから更に3ヵ月後。
それからそれから……。
『346プロ新人アイドルオーディション』の広告をネットで見かけたのが2年後のこと。
17歳、つまり、今年のことっ!
……。
それじゃ、まずは自己紹介してもらえるかな。私と長机を挟んで、どまんなかに座る白髪のおじさんは言った。
私は勢いよく返事してから、パイプ椅子から立ち上がって叫んだ。
「スーパーロックアイドル目指してます、多田李衣菜です!」
ざわ、どよめき。書類に目を落としていたおじさんたちの視線が私に集中した。注目されてる。
おっ、なんかいい感じ♪ ノってきた!
「わたくし、多田李衣菜は、ロックな衣装を着て、身も心もロックなアイドルとしてやっていくと、ここに誓いますっ!」
カンペキにキマった……。目をつむって、感傷に浸る、フリ。顔の角度はばっちり斜め下45度。
いやぁ、ロックだねぇ! 君のような型破りなアイドルをウチは欲しかったんだよ、なんて言葉をまつ。
「……」
あれ、反応がない。かりかりとボールペンが、無機質に書類をひっかく音だけがする。
ひそひそと、小声が耳に届く。ルックスはいいね、キュートな路線だったら案外……、歌唱力次第かな。
れ、れれれ、冷静すぎない!?
わ、私もしかして、おもいっきり空振った?!
途端に恥ずかしさで、身体がかっかと火照ってきた。ど、どどどうしよ、目ぇ開けらんないよ~!
──ずっと黙っているが、君はどう思う? もしかしたら、君の担当になる可能性もあるんだ。
白髪のおじさんの声。その呼びかけに、野太い声が応えた。
「はい、その、多田李衣菜さん、でしたでしょうか」
不意に名前を呼ばれた。おっかなびっくり瞼をもちあげる。
よくよくみれば、おじさんと呼べるほどおじさんじゃない、男の人が私をじっと見つめて、こう言った。
「いい、笑顔です」
これはまだ、346プロが夢と希望に包まれていたころのはなしだ。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1444468531
美波だと思ってたが、李衣菜だったとはな
だりーな!だりーなきた!
・モバマスSS
・お待たせしてすいませんでした 宣言通りCu→Pa→Co
・1作目 卯月「総選挙50位以内に入れないアイドルはクビ…ですか?」
卯月「総選挙50位以内に入れないアイドルはクビ…ですか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429159227/)
2作目 心「総選挙50位以内に入れないアイドルはクビ…ですかぁ☆ってオイ…マジ?」
心「総選挙50位以内に入れないアイドルはクビ…ですかぁ☆ってオイ…マジ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432629853/)
・タイトルと前作から察して、そういう要素があります 苦手な方、むーりぃーな方は気を付けてください
・超ゆっくり進行 長さはたぶん前作前々作と同じくらい あまり期待せず楽しんでいただければ…
・雑談ご自由に
ワイりーなP、無事死亡
超期待
嫁のロシアンルーレット。今回の脱落者は多田李衣菜さんです
にわかが本物になるのか、否か。でも美波の方もすごいギスギスしそう
李衣菜はリアル総選挙の順位は第1回:7位、第2回:34位、第3回:45位、第4回:40位で中間発表では圏外だったという
このシリーズには実にふさわしい人選ですなww
アニメももう終わるしここを次の定住地にしよう
暗く期待
アニメの展開だと武内Pが反乱起こしてたけど
こっちの武内Pは逆らえなかったんだっけ?
待ってた
楽しみにしてます
既にこの雑談の山ww
ある意味人気シリーズだよねこれも
オーディションから数日後、ポストに封筒が届いた。
しみひとつないまっさらな純白の封筒。
手にとると、さらさらした粉が指にぺったり貼りついた。光にあてられると、きれいな七色に輝く粉。
なんだかその封筒は、フクロウかなにかによって魔法の世界から届けられたような、そんな印象を含んでいた。
宙返りする心臓を、なだめながら、おそるおそる閉じられた便箋をひらく。
そこには……。
──あなたは、当社が本年度実施した表記のオーディションに合格したので通知します。なお、これからの手続きについては……。
……。
う……。
「うっひょー!!!」
受かった! 合格した!
居ても立ってもいられなくなって、跳びまわる。心臓の鼓動はさらに高まって、ばくんばくんとバク転を決めつづける。
あぁ、もう私自身がバク転したい気分! できないけど! 学校の友達に手当たり次第に電話をかける。
「これから私はアイドルになるんだよ、スーパーロックなアイドルに! 音楽番組にでて、ギターをかきならして、海外のなんかすっごい有名なミュージシャンと共演するんだよ!」
反応は様々だった。おめでとうって泣いて喜ぶ友達もいれば、まさかみんな冗談でけしかけたのに本当にオーディション受けるなんてって驚く友達もいる。
はやる気持ちを抑えきれずに、スマートホンに向けてまくしたてる。
「それから自分のロックのルーツについてのインタビューなんて受けちゃってさっ、ステージでリーナコールが湧き上がってさっ、あっ、そうだ、武道館でソロライブやりたい、武道館!」
ロックミュージシャンはみんな武道館が夢だっていってた! だから私も夢は武道館! きめた!
ちなみに、武道館は東京にふたつあるっていうのはずっとずっと後に知った。
友達の一人が心配そうに言った。
あ、あの、李衣菜ちゃん、アイドルってどんなものかわかってて受けたんだよね?
「えっ、わかんないけど! でもみんなロックなアイドルって斬新でカッコイイんじゃないのって言ったよね! 李衣菜ならなれるよーって笑ってたよね!」
前例がないことをする、んー、それって最高にロックな気がする!
「あ、歌うのは大丈夫、大丈夫、私けっこう音感良いねって音楽の先生に褒められるし! カラオケ好きだし! ギターだってこれからじゃんじゃんばりばり巧くなるよ!」
電話越しに深いふかい溜息がきこえたのは、きっと気のせいだ!
>なんかすっごい有名なミュージシャン
ここで具体名が出ないのがさすがのにわか
すげぇ…最高にだりーだ…
相変わらず>>1のアイドル再現率がヤバイ、むしろ運営よりなんかリアルでヤバイ
>>17
だからこそこれから辛くなる
やっと来たか!前作からずっと待ってたぞ
待っていたはずなのに来てほしくなかったこの
まあふみふみは大丈夫やし?(白目)
それから……。
「納得できませぇ~ん!」
コワモテのプロデューサーは、おっきな掌を首にあてて「はぁ」と困ったように呻いた。
そうはいっても、方針ですので。バインダーに留められた書類の文字を目で追って、業務的な口調で話すプロデューサー。
まるでレールの上をひたすら進むことが正しいとでもいうような態度をたまに見せる人だった。
「なんで、なんでですかぁ~!」
ホコリかぶったギターも部屋の奥から引っ張り出してきたのに!
雑誌に載ってるロックな衣装にぜぇ~んぶ赤マルつけてきたのに!
最近クルマのCMで流れてるブ、ブリティッシュソング?をカラオケでいっぱい練習してきたのに!
私にいの一番に与えられた衣装は、ひらひらの水色のワンピースだった。
なんでも部署に回す宣伝用の写真を試しに撮影する、らしい。
「こ、こんなの全然ロックじゃないですよぉ~」
駄々をこねる私に、ほとほと困り果てた様子でプロデューサーは首をかしげる。
そりゃカワイイ衣装だって嫌いじゃないけど……それとこれとは話がべーつー!
「プロデューサー、私オーディションで宣言した通りロックなアイドル目指してるんですっ」
「ロックなアイドル、でしょうか……」
「はい、まずはーイケイケなアッパーチューンを歌っちゃってーステージでイェーイとかノってるかーいとか言っちゃってー」
「いぇーい、でしょうか……」
「それからそれから……」
自分が想い描く、好きなことを指を折りながら、ありったけ吐き出す。
全部まるっと私の願望を聞き終えたプロデューサーは、表情を変えずに言った。
「……検討はしてみますが、まずはデビューを目指して着実に階段を昇っていきませんか、それからでも遅くないかと」
うぐ、ぐうの音もでない正論……。
アイドルになれば即ステージにあがって、好きな歌を好きなだけ歌えるんだと思ってた。
でも違った。ファンの目には届かない部分で、ひたすら下積みをしなきゃいけない。
レッスンに営業回り、オーディション、ときには他の娘のヘルプ。握手会なんて仕事もあることだって初めて知った。
私は、アイドルのことをほとんど何も知らずにアイドルになっちゃったんだなぁと、今更ながら呑気に思った。
ま、それもなんだかんだロックかもしれないけど……。
──ふっ、うぐ……やった……やったよぉ……。
ふと、廊下のほうからすすり泣きが聞こえた。ドアは閉まってるから、誰かはわからない。
ま、事務所に知り合いなんてまだ一人もいないんだけどさ。
扉越しの誰か、声からして女の子は、嗚咽を隠すこともなくえづきながら必死に言葉をつなげる。
──オーディション、合格だって……その場で言わ、れた……な、なんかあまりに突然で、ぶわっときちゃって……。
どうやら女の子は電話をしてるみたいだった。
──何度も何度も受けて、落ちて、たまに、ひどいことも言われて、それでも受け続けてやっと、やっとだよ……やっと夢見たアイドルになれる……。
ずず、と鼻水をすする音がきこえる。
元の声色を判別できないほどに涙でしわがれた声は、ひどく不格好だったけれど、私の感情をたしかに揺さぶった。
──346プロ受けて、本当によ、かった。
──大、阪から上京してきて、ほんまによかった……。
泣き声がだんだんと遠ざかっていって、やがて聞こえなくなった。
「……」
そっか、ああいう子もいるんだ。アイドルになりたくてなりたくてなった子。私とはまるで正反対。
……頑張ってほしいな。私とは目指す場所は違っても、いつかあの子がきらめくステージに立てるように、なぁんて。
うん、私だって頑張らなきゃ、いけないよね。
こころの奥で暴れるきかんぼうをなんとか鎮める。
ぐっと拳をにぎって、プロデューサーの顔をまっすぐ見据えて言った。
ロックなアイドルは諦めないけど……。
「……わかりました、まずは着実に、ですね」
はじめて挑戦した撮影は、案外たのしかった。
才能あればだりーなみたいなのでも上に行けるんだよな、他のこの見た後だとちょっと複雑
みくぅ……
初代が心曇らせながら残留、2代目は誇りやらを残しながら去る
さて今回は…?
みくPの人よ。今のうちに覚悟決めとけよ。
はぁとさんの話はすごく良かった。
子供の頃なんでアイドルになりたかったかを思い出すシーンはやっぱりいいものだ。
卯月の話読むの怖いんだけど、面白い?
>>27
後味の悪い、未来も笑顔もないハッピーエンド
みくは進行上成功例か失敗例のどっちかで出てくるだろうな
あぁ怖い怖い
>>27
最悪だけは避けられたが、NG全体がひびわれてしまったバッドよりのメリーバッドエンド。しかも今のタイミングで読むと二重苦を背負うことになる。
わたし読むわ
…折よく連休だし
正直だりーなみたいなタイプが曇るのはつらい(ゲス顔)
現実の総選挙の順位に照らし合わせるならみくもりーなも
とりあえずセーフだが、はてさて
出てくるかわからんが夏樹はさよならになるね
待ってた
期待してる
もういいや。みんなで共有しよう。
卯月の回のちひろのセリフ
「スカウトしてきた子たちに、やっぱり間違いはなかったのかなって」
「それだけに残念だとは思います、下位のアイドルさんには、辞職や移籍を検討してる人も少なからずいるみたいで」
「92位だった早苗さんは、警官に戻るか、なんてボヤいてました」
「でも、みくちゃんなんかは、『346プロには一宿一飯どころじゃない恩があるにゃ、猫の恩返しにゃ』なんてとっても頑張ってくれていて」
志希にゃんは流石のギフテッドだよなあ
はたして輝子は何位になってるやら
そう言えば卯月回の時はまだ早苗さん…
それが今じゃ運営に推されてCDデビューと来たもんだ
むしろ後味悪いのは先に読んどいたほうが
俺は卯月回では卯月よりむしろままゆの方が気になったな
ままゆはヒロインには向いてるけどアイドルには向いてないなぁって
ままゆがアイドルやっても誰も幸せになれそうもないし
>>7
今更だけど、だりーな残留だと思う。で、みくとなつきち脱落させた方がエグい話になる。
おお待ってたよ>>1
楽しみにしてる
私が受けたオーディションの正式名称が『シンデレラプロジェクト』だということを知ったのは、城ヶ崎莉嘉ちゃんと三村かな子ちゃんに控室で会ったとき。
なんでも、「女の子の輝く夢を叶えるためのプロジェクト」だそうで、アイドルの卵たちを幅広いジャンルで活躍できるアイドルに育て上げる事を目標とする。
なんて名目がひっさげられていた。くわえて、14人の枠のメンバーがいるらしい。
莉嘉ちゃんに、なんでいままで知らなかったの~!信じられな~い!なんて散々ツッコまれたけど。
だってさ、ロックなアイドルっていいよねって思ったとき、もう身体がウズウズしちゃって止まんなかったんだ。
私はいつだってそうだった。
まずは自分がイケてると思ったものに向かって突っ走る! こころは数歩うしろから追いついてくる。
山積みになったヘッドホンのコレクションや、買ったのに一回も聴いてなかったりする音楽CDのタワーはその性格の表れともいえる。
……たはは。
ちなみに2人に「ねぇねぇ、それじゃ早速ユニット組んじゃう? ユニット名はそうだなぁ、ロッキングガールなんてどう?」
なんて提案してみたら、かな子ちゃんにクッキーみっつと引き換えにやんわりと否定された。
それから蘭子ちゃんが日傘をさしながら部屋に入ってきて、杏ちゃんがきらりちゃんに引きずられてきて……。
メンバーが着々と増えていくにつれて、私の心はどうしようもなくワクワクした。
未体験だったダンスのレッスンはとっても新鮮だったし、売り込みで色々な現場に連れていかれるのも嫌いじゃなかった。
あたらしいなにかに挑戦するのは、痛快だ。
しらないなにかに触れるのは、愉快だ。
ギターのあたらしいコードを覚えたとき。自分の世界がちょっと広がった感覚がする。
……まだCコードとGコードしか覚えてないけどさ、えへへ。
兎にも角にも、そんな感覚がまいにち、ばんばんと私におしよせてくる。
今まで学校という枠組みでしか生きてこなかった私にとって、アイドル業界はなによりも刺激的だったんだ!
うっひょー!
多田李衣菜、ロックなアイドル目指して日々前進中ですっ。
訂正
×莉嘉ちゃんに、なんでいままで知らなかったの~!信じられな~い!なんて散々ツッコまれたけど。
○莉嘉ちゃんに、なんでいままで知らなかったの~!信じらんな~い!なんて散々ツッコまれたけど。
……。
346プロダクションの敷地を、あらためて見学することになった。
専属のスタッフがいるエステルーム、最近の機器が揃ったトレーニングルーム、大きなおおきな噴水、はずれにある誰かの温もりが残ってた木製のベンチ、。
どれもこれも、目に焼き付けながら、ときには手でぺたぺたと触りながら見て回った。
なんだか本当にシンデレラのお城にきちゃったみたいだ。ついこの間まではフツーのちょっとロックな女子高生だったのに。
あはは、李衣菜ちゃんすっごい目ぇキラキラさせてるー、なんて莉嘉ちゃんに何度もからかわれた。
お昼どきのカフェにも立ち寄った。
満員御礼の席。あたたかい陽だまりに包まれてみんなたのしげに談笑してた。
多分、私が名前を知らないアイドルもたくさんそこにいたと思う。
どれどれ私とロックの話ができそうな子いないかな~なんて探してみる。
まずひときわ目をひいたのが、ちいさな背丈のメイド服の店員さんと、金髪のツインテールの女の子……ん?
いや、前言撤回、よくみれば、うん、金髪のツインテールのお姉さんが視界に入った。
会話が自然と耳にとびこんでくる。
「ナーナちゃんっ♪ 今日も例のヤツ、よろしくぅ」
「だーからー満員のときに居座らないでくださいって言ってるじゃないですかっ」
「ままっ、そう言わずにナナ先輩♪ 昔のユニットのよしみのスウィーティーな後輩のためにひと肌脱いで、あ、肌見せたらやばいか☆」
「ぜんっぜん笑えないですよぉっ! 心ちゃんもちゃんと、お仕事してくださいっ」
「だぁって仕事ないんだからしゃーないだろ☆」
「はぁ、もう……」
「ダーイジョーブ、346プロだって新プロジェクトいくつも立ち上がって調子いいみたいだし、いつか必ずしゅがははブレイクするって☆」
「まぁ、その意気込みはヨシですけど……」
「はぁとはさ、絶対あきらめない☆ 追いつくまで待ってろよ、ナナせーんぱいっ♪」
「はいはい、ナナはずっと信じてますよぉ」
そういえば常務を出すかどうか悩んでたぽいけど決まったんか>>1?
正直常務がどストライクでした
踏んでください マジで
なんとなく立ち止まっていると、ナナちゃんって呼ばれてたメイド服の店員さんがこっちにとてとてと駆け寄ってきた。
お辞儀をひとつして、満面の笑顔を向けられる。私はどうも、と軽く会釈する。
「いらっしゃいませーウサミンカフェにようこそ、ただ今満員ですので少しお待ちいただけますか?」
おーい、ナナちゃん勝手に名前変えちゃダメだって☆なんて笑い声がおきた。
私は頬を人差し指でかきながら応えた。
「あ、いやぁ、なんていうか今日はお客さんとしてきたわけじゃなくて……」
「え?」
「私、ついこないだここにアイドル候補生として来たばっかりなんです、それで見学に、えっと、新プロジェクトってやつ……?」
「ふわぁ、そうなんですかぁ、それでは言い直しましょうね」
ぱん、とてのひらを叩いて、ナナちゃんは満開の笑顔で言った。
「ようこそ、346プロダクションへ! ようこそ、夢と希望の世界へ♪」
とくん、とかすかに鼓動が高まった。カワイイアイドルってのも悪くないかも……。
いやいやいや、流されるなわたしっ!
「はい、ロ、ロックなアイドル目指してます多田李衣菜ですっ、よろしくおねがいしますっ」
「ロックなアイドルですか、いいですねぇ♪ あれ、なんかそんな感じの人がいたような……」
「ほ、ほんとっ?!」
「いなかったような……」
「どっちっ?!」
「いやぁ最近なんだか物忘れが……」
そのとき、プロデューサーのおっきな身体が遠くにみえた。だんだんと近づいてくる。
多田さん、と野太い声ひとつ。時計を気にしながら言う。
「そろそろ集合の時間です、遅刻しています」
「あ、すいません、プロデューサーなんだか見てもみても見足りなくてっ」
「気持ちはわかりますが、時間は厳守です、今後は気をつけてください」
ナナちゃんにかるく挨拶してから、渋々とプロデューサーの背中の数歩後ろをついていく。
「ぷろでゅぅさぁぁぁ、私のロックなアイドルとしてのデビューまだですか」
「プロジェクトは、メンバーが揃ってから本格的に始動します、ロックなアイドルは……検討中です」
「そのメンバーもいつ揃うんですかぁ、プロデューサーは最近スカウトに行ってばっかだし!」
「このあと、また一人顔合わせしてもらいます」
「へぇ、ロックな話題ができる子だといいなぁ、せ、せせせせ、せっくす……ぁんどどら~っぐ、な……」
「……多田さん、そのような発言は今後控えてください」
「いやー私と対等な話題ができる子がいいかな~、アルタナティブとか通じるかなー、あ、私は80'sとかでも全然いけるけどね」
「新メンバーの方のお名前は……」
一拍、呼吸を整えてプロデューサーはいった。
「前川みくさん、です」
このタイトルじゃないならほのぼのしたアニメ前日譚って感じなのに…
前川さんが一番好きなんだけど嫌な予感しかしない
……。
控室の扉をあけると、一匹のネコがいた。種類でいえば……そうだな、三毛猫?
栗色のボブカットにくりくりした瞳。笑ったときにちょこんとのぞく八重歯。背丈は私と同じくらいで小柄。
ぐいぐいとお尻をつきだして、背中と手首をくるりと丸めて、甘ったるい声でそのネコは鳴いた。
「にゃぁ~♪ みくはとぉ~ってもキュートなアイドルになりたいにゃ。それにネコチャンも大好きだからネコ耳ネコシッポつけちゃうでしょー?」
……あ、絶対にロックの話できそうにないな。
「ささっ、早速みんなでネコちゃんの気持ちになっちゃうにゃ♪ にゃあ~」
アーニャちゃんは見よう見まねで前川みくちゃんのポージングを真似する。オー、コーシカですね、とてもカワイイ、カワイイですね?
みりあちゃんと莉嘉ちゃんがけらけら笑いながらみくちゃんのネコ耳やしっぽをさわる。うわーすごーいほんとにネコちゃんだー面白いねー!
前川みくちゃんの視線が私に向いた。
「えっと、多田李衣菜ちゃんだっけ? あなたもネコちゃんになってみるにゃあ♪」
「は、はぁ?! そんなバカみたいなことできるわけないじゃない!」
あ、思わず反射的に……。
前川みくちゃんの細い眉がぴくりと吊り上がった。
「いま、みくのことバカみたいっていったにゃ?!」
「い、いやそういうつもりでいったわけじゃ……」
「ネコちゃんアイドルのなにがおかしいの! そもそもさっき自己紹介のときには黙ってたけどロックなアイドルっていうほうが意味不明にゃ!」
「は、はぁああ?! どこが?!」
「じゃあ具体的にロックなアイドルってどんなのかいってみるにゃ!」
「えっ、ロ、ロックは……ロックだよ!」
「うにゃあぁぁ~、答えになってない~!」
「こ、言葉で説明できないのがロックなんだよ!」
初対面から5分でケンカ。
あぁ、もうこの子とは絶対気が合わないだろうなって思った。
「もうダメ、やってらんない、今日は解散だね~私帰るよ~」
ほ、ほんとに帰っちゃうよ~?
プロデューサーをみると、まーた首に手をあてて私たちをみつめてた。
困ったときや、何か考え事をしてるときの仕草だって気づいたのはうすうすと春が近づいてきたころ。
ああ^~
桜並木が事務所の道にピンク色のカーペットをつくる。
ぽかぽかしたおだやかな陽気に、花の匂いを運ぶやわらかな風。
そんな日に、卯月ちゃん、凛ちゃん、未央ちゃんがやってきた。
そして……。
「シンデレラプロジェクト、ついに始動です」
いよいよ私の目の前にこれから昇るべき階段がひらけた、ような気がした。
……。
それからの日々はあっっっ!……という間だった。
美嘉ちゃんとニュージェレネーションズのライブをみんなで観に行って、ラブライカがデビューして、みくちゃんが立てこもりしちゃったり、
ズッ友だった未央ちゃんがちょっと大変なことになったけど、プロデューサーのおかげでなんとかなって、
それからまさか……みくちゃんとアスタリスクとしてユニットを組むなんてことになるなんて、ねぇ?
……。
寮にはいって、手慣れた手つきで靴を脱ぐ。私の靴箱は右上から二番目、いつのまにかおきまりになった。
すれ違うアイドルのみんなと笑顔で挨拶を交わす。輝子ちゃん、小梅ちゃん、アーニャちゃん。
おもえば、事務所にきたばかりの私には信じられないくらい、知り合いはたくさん増えた。
そして喧嘩ばかりだけど憎めない相方もとなりに。
「ねぇねぇ、李衣菜ちゃん今日の『OωOver!!』、なかなかイケてたでしょ?」みくが屈託のない笑顔を向けてくる。
「そうだねぇ、やっぱり私の挑戦したギターソロが冴えわたってたかなぁ」
「ぜんっっぜん弾けてなかったにゃ! お客さんみんな陰で笑ってたよ?!」
「うそっ?! じ、自分ではいい感じだと思ってたんだけど?」
「……まぁ、そこが李衣菜ちゃんのいいトコかもしれないけどにゃ」溜息混じりのみくの声。
佐久間まゆちゃんとすれ違った。
うふふ、プロデューサーさぁん、愛をたっぷり込めたお夜食を今から届けにいきますねぇ、これからもまゆは、あなたのために頑張りますよぉ。
……なにかヘヴィな独り言が聞こえた気がする。
「……ね、李衣菜ちゃん」
みくの呼びかける声に改めて振り向いた。
「ん?」
「みくね、なんだかんだデビューできて良かった、わがままとか自分勝手なことも随分言っちゃった気もするけど……」
そう言って、みくは大きく一歩、足を踏み出した。
「寮の生活は楽しいしね、ここで思い出もいっぱいできたし、シンデレラプロジェクトが拾ってくれなかったらみくは今ごろ捨てネコちゃんだったにゃぁ」
背中を向けられているから、みくの表情はわからない。
「みくはね、」
不意に振り返って、みくは言った。
トレードマークのちいさな八重歯をちらりとみせて。
「みんなが、346プロがだいすきにゃあ!」
……。
いつのまにか春はおわって、夏がやってきた。
合宿で汗を流して、ライブで涙を流した。
アルバムは積み重なるほどふえた。
気をぬけば、世界が回るスピードに振り落とされてしまいそうだ。
今朝もプロデューサーのアイソのないかおとご対面する。
いまでは、この人の感情のニュアンスくらいはわかるようになったのはちょっとした私の自慢。
なるほどなるほど、今日はなんだかご機嫌みたいですねぇ、プロデューサー。
「多田さん、前川さん、アスタリスクの単独ライブのオファーが決定いたしました」
「ほ、ほんと?!」 ぴったり、ふたりの口調が揃った。
顔を見合わせて、ちょっと気まずそうにするみくと私。
なんだか気恥ずかしくなって、強引に話を進めたくなった。
「な、なんかさ、私たち調子いいじゃん! ミニライブもたくさんできてるしさ!」
イケイケなアッパーチューンを歌っちゃって、ステージでイェーイとかノってるかーいとか言っちゃうのは、もう達成できた!
それから、それから私のやりたいこと……。
あぁもういっぱい、いっぱいある!
こころのなかで膨らむ気持ちを抑えきれずに、言葉が勝手に飛び出る。
「プロデューサー、わたし、これからスーパーロックなアイドルになれるよねっ?!」
私の言葉を聴いて、プロデューサーの肩がかすかに動いた。
「それは検討──」
いつもの首に手を回す仕草をしようとして、途中でやめて……。
それから、出会ったころじゃきっとわからないくらいの微妙な表情の変化だったけど。
プロデューサーは、たしかに微笑んだ。
「……はい、きっと、なれます」
………。
……。
…。
346プロダクション内部から大量のデータが故意に抜き取られた形跡がある、と噂が立ちはじめたのは、
正門の大時計の調子がわるくなった日と不思議と一致していた。
………。
……。
…。
>>54
訂正
×「多田さん、前川さん、アスタリスクの単独ライブのオファーが決定いたしました」
○「多田さん、前川さん、アスタリスクの単独ライブが決定いたしました」
まだか
待機待機
ここからどうなるのかわからないから怖いね(ゲス顔)
……。
ステンレスのケトルからまっしろい湯気がたちこめている。こぽこぽとお湯が沸いた音がする。
ギターをはじくのをやめて、ケトルの持ち主に夜食のミネストローネの準備ができたことを暗に伝える。
おぉい、みくちゃんお湯沸いてるよ、気づいてよ。
みやればみくは、一心不乱にポケットサイズの手帳にシャープペンをはしらせていた。
熱にあてられつづけたケトルは軽快な口笛のような音をたてはじめる。そこでやっとみくは慌てて顔をもちあげて、キッチンのスイッチをぱちんと止める。
つくえに広げられた手帳には、まるっこい文字とネコのマークが、窮屈そうにぴっしり書き込まれていた。
「みくちゃぁん、それ、なに書いてるの?」
「ん、ダンスレッスンのおさらいにお仕事の反省点とでしょー、それに発声方法も寝たら忘れちゃうかもしれないしちゃんとコツをメモしておくの」
「へぇ~相変わらずマジメだなぁ」
「このくらいトーゼンにゃ、李衣菜ちゃんみたいにギターで遊んでるわけにはいかないにゃ」
「あ、遊んでないってば! わ、私だって日々上達してるんだから!」
「そのわりにはさっきからずぅっとおんなじページとにらめっこして、おんなじリフ繰り返してるだけにゃあ」
うぐ、ちゃっかり見られてるし聴かれてるし……。はぁ、ギター教本ってなんでこんな要領得ないのかなー。
読むだけですぐに弾けるようになる! とか、30日で弾き語りできるように! とか誇大広告も甚だしいってば!
……なんだかんだ買っちゃうんだけど。
ネコがプリントされたマグカップが私の目の前にそっとおかれる。
熱々になりすぎたミネストローネをすすると、身体の芯からあったまってくる。
よっし、これをエネルギーにかえてもうひとふんばりしてみますかっ。
「単独ライブまでに、せめてギターソロがちゃんと弾けるよう、間に合うといいなぁ」
「うん、そうだにゃあ、日程が延びたのは残念だけど李衣菜ちゃんにとってはラッキーだったかもね」
「見てろぉ、みくちゃんだってファンにだって、いっぱつぎゃふんと言わせてあげるんだから」
単独ライブは延期になりました、とプロデューサーに伝えられたのは数日まえのことだった。
えっ、延期って、どれくらいですかって尋ねると、額に汗をひとすじ垂らしながら「調整中です」とひとこと。
なんでも、スポンサーが企画からおりたいとの電話が一本かかってきたらしい。それはもう突然で、とりつくしまもなかったとか。
346プロで噂になってることとなにか関係あるのかな。社内のデータがごっそり盗まれちゃったって、そんな大変なこと?
うぅん、むずかしいことはわからないや。でもさ……。
みくは、メガネをかけて手帳にむきなおる。シャープペンを握るまえに、そういえば、とみくは呟いた。
「そういえば、美城会長のね、えっと娘さんだっけ、なんだかね海外から帰国する予定だったんだけど中止になったらしいよ」
「へぇ、そうなんだ、それにしてもみくちゃん、そういう情報どこで仕入れてくるの?」
「いま社内中で噂になってるにゃ、李衣菜ちゃんがうとすぎるだけだと思うにゃ」
「なんだか最近慌ただしいね、ま、ダイジョーブでしょー、プロデューサーがなんとかしてくれるよ」
「……わはー……その能天気っぷり、たまにあやかりたくなるにゃあ……」
でもさ、きっと大丈夫。だって、今まで大変なこと、色々あったけど力を合わせてみぃんな解決してこれたんだから。
プロデューサーだって、ぜったいにロックなアイドルになれるって、太鼓判をおしてくれたんだから。
346プロダクションは夢と希望の世界だってのは、春先にきいた誰かのセリフ。あぁそういえばロックなアイドル、けっきょくみつけられてないなぁ。
来てる!
待ってたあああああああ!!!
仕事がまたひとつ減った。
スマホのカレンダーアプリからチェックをはずす。
すっかりむしくいになった予定表。すこしずつひろがっていく。
レッスンも少なくなった。上層部がめちゃくちゃになってて、トレーナーさんに指示が回りきらないらしい。
最近は、たくさんの知らないスーツ姿のひとが施設内を行き来する。正門のおおきな時計はいまだに直っていなくて、たまにぎしぎしと軋んだ音を鳴らした。
ギターを担いで、どこかしずかで良さげなスポットをさがす。人がいなくて、ゆっくりたっぷり練習できるようなところ。
いやぁー、やっぱりモチベーションのためには場所って大事じゃん? 弦もちょぉっと値段が張るやつに代えたし、今日こそは巧く弾けそうな気がする!
ふと、見知ったスーツ姿のひととすれ違った。プロデューサーだ。どこか神妙な面持ちで書類を睨んでる。
おぉい、プロデューサー、声をかけるとプロデューサーは振り返って多田さん、とぽつりと私の名前をよんだ。
「プロデューサー、最近忙しいみたいだけどへいきー? ご飯たべてるー? 私がなにか作ってあげよっかー?」
「……いえ、ありがとうございます、私は問題ありません」
「そっか、無理しないでね、プロデューサー」
「それより、申し訳ありません……その、最近は活動が滞りがちになってしまっていて」
「ままっ、しょうがないよっ」
プロデューサーの肩をグーでぽんと叩く。喜んだときや気合いをいれるときにするロックな動作。
あ、智絵里ちゃんがコレで怖がっちゃったときいてからはちゃんと力加減はしてる。
「プロデューサー、なんだか大変なことになってるみたいだけど、まさかアスタリスクかいさーん! なんてないよね? いやぁそんなのもう笑えないからさー」
プロデューサーの肩が、びくりと大きく跳ねた。
「……プロデューサー?」
「心配、いりません」
プロデューサーは目を伏せてから、歯をきりりと噛みしめてもう一度
心配、いりません、とだけこたえた。
……。
探し回って、木製のベンチにたどりついた。お昼どきなのに、ここには滅多に人がこない。というか座る人いるのかな?
ギター教本をひろげて、向かってベンチの右側に腰をおろす。見上げると抜けるような青空。うんうん、なんだかいい感じかも♪
肩にかけたストラップをずらす、ふとアスファルトに小さなちいさななにかが転がっているのが目にはいった。
背中をまるめて拾い上げる。三角形のきいろいプラスティック。これは……。
「ピックだ……」
ここでギターを弾いてた人が、いる?
試しにそのピックで弦をはじいてみる、なんだかいつもより調子が良い、気がした。
待ってたよ!
こわいなーやだなー(ゲス顔)
バッドエンドというか絶対良くないことが起きるのに先が気になる
それからしばらくして。
そう、Fコードが押さえらなくて挫折しかけてたころだった。
いつもどおり、朝礼が鳴る30分前には席に到着。
登校したときにコンビニで買った雑誌を机に広げて、ヘッドホンをかける。
へへっ、おたのしみにしてた新譜聴いちゃおっかな。なになに、デジタルリマスター……?
おっ、よくわからないけどスゴそうじゃん! アーティスト名は、に、にるばな?
再生してみる。シンプルだけどちからづよい洋楽ロックサウンド。うんうん、まぁ最近の曲にしてはイケてるんじゃないかな~。
……。
とっぷりと音の海に浸かっていると、ふいに肩をたたかれた。意識が現実に引き戻される。
気づけば、クラスメイトがぐるりと私を取り囲んでいた。私に視線が集中してる。
好奇心をおびた瞳、哀しみにぬれた瞳、後ろめたさをひめた瞳、いろいろな瞳の色。
な、なに?
ヘッドホンをはずして声を出すまえに、哀しそうな瞳の友達は言った。
「あ、あのさ、李衣菜、つらいことあるんなら、いつでも相談していいんだよ?!」
「へっ?」
突然、なにさ。そんな言葉を投げかけられてしまう心当たりを思い浮かべようとする。
べつに、ないけど。みくとは昨日喧嘩したけど、仲直りしたし。お母さんもお父さんもいたって健康だし。
「な、なになに朝からっ?! 私はこのとおり元気だよ!」
「そう、よかったー、李衣菜がたいへんなことに巻き込まれてたらどうしようかと……」
「や、やだなー、どうしたの、急に」
「えっと、李衣菜、もしかしてニュースみてない、の……?」
呆れた表情でスマートホンの画面をつきつけられる。
ニュースサイトのトップ記事に、よく知っている建物の写真が映っていた。
春になると桜の絨毯がしきつめられる舗道、最近ゴキゲンななめな大きな時計、都会の真ん中にそびえ立つ、まるでお城のような……。
『──天下の346プロダクション崩壊』
えっ……?
記事の内容に目をとおす。
内部告発によって明かされた346プロダクションの不正取引、上層部の横領、他企業への圧力行為……。
こ、これって……。
だりーなのだりーなっぷりが半端ない。
故にこれからが怖いねぇ
いくらだりーでもNIRVANAくらい知って…
いや知らないだろうなうん
だがロックはローカルや場末に行ってからが本番というか盛り上がる
──インサンダー取引、多額の違法の献金、損失の隠蔽工作……。
「これって……」
──美城会長をはじめとする役員の処遇は今後……。
「これって……!」
つまり……。
「えっ、なに、どういうこと?」
クラスメイトが盛大にずっこけた。李衣菜ってどうしていつもそうなの、なんて脱力した声。
「だからさ、346プロダクションがヤバいんだって!」
「いやいや、なんとなくヤバいってのはわかったけど……」
「も~呑気すぎだよ李衣菜っ! いやっ、というよりも危機感がなさすぎ、というよりおバカ?! おバカなの?!」
「そ、そんなこといっても私が悪いことしたわけじゃないし……悪さしたのは上の人たちでしょ?」
「まぁ、そうだけどさぁ、どうするの、346プロダクションが潰れる~ってことになったら!」
「えっ、まさかぁ、それはありえないよ、こういうのってさぁ、だいたい大袈裟にかくんだよ、話題性優先でさぁ」
私はこのとき、たしかに危機感なんてこれっぽちも感じてなかった。ほかのアイドルのみんなもそうだった。
いちど346プロダクションの別世界を体験してしまったら、倒産だなんて夢にもおもわない。
たとえば、世界的に有名なテーマパークにだって事件や事故は何度も起こってるけれど、ずっとずっとつづいているし、未来永劫おわりなんてないってことを信じて疑わない。
そこまで話を広げなくても、17年間生きてきたなかで、とりかえしのつかないことだって何度もあったようにおもったけど、けっきょくはいざこざの火種はやがて収束していって、日常に戻っていく。
……わかりやすい例でいえば、みくとの喧嘩とかね。
もう解散だね、なんてお別れしても、不思議と次に会ったときには、とっておきのハンバーグをご馳走してあげてたりするんだ。認めたくない事実だけど。
なにより、原因が私たちアイドルにあるわけじゃない。こどもの私から遠いとおい場所で、地球の裏側でおこってるおとなのいざこざ。
そのくらいの認識だった。
クラスメイトのみんなも退屈な学園生活に刺激がまいこんできて、これさいわいと面白がっているのが半分だった。
好奇心の瞳の色をした友達が、それなら、と前置きしてからいった。
「それなら、佐久間まゆちゃんの件もアレ、じつのところどうなの? マジで気になるぅ~」
「えっ? まゆちゃん? まゆちゃんがどうかしたの?」
「わたしは清廉潔白でみんなのアイドルですよぉって笑顔振りまいてるくせに裏ではあんなことやこんなことしてるんでしょ」
あんなことこんなこといっぱいあるけど…
前のやつ見た感じだとみくの順位低そうだし楽しみ
……。
事務所の廊下はひとの往来が慌ただしくて、どうにも落ち着かせてくれない。
みくからメッセージが届いた。
──まゆちゃんにこないだ会ったけど、元気だったよ。うふふ、落ち込んでなんかいませんよぉ、まゆはプロデューサーさんと約束しましたから(ハートマーク)、だって。
──それ以上はオーラが凄すぎたからつっこんで聞けなかったにゃ。でもいつも通りだったよ。よかったにゃあ(ネコマーク)。
そっか、よかった。
お礼の返信をして、スマホをポケットにねじこんだ。
ネットで大炎上中、超人気アイドル佐久間まゆと担当プロデューサーの熱愛発覚、かぁ……。
「う~~~ん……」
それって、そんなに悪口雑言を浴びせられるようなこと? 活動自粛や記者会見までするようなことなのかなぁ。
騒動はどんどん過熱してって反省して丸坊主にするべきだ! なんて声まであがってるけど……。
好奇心で聞いてきた友達は、こう応えた。
──いやぁ、だってアイドルが恋愛なんて許されるわけないでしょお、兎にも角にも。
プロダクション内では、みんなまゆちゃんの恋のゆくえを応援してたし、プロデューサーはまゆちゃんの歌のエネルギーにもなってた。
私はアイドルの掟とかアイドルはかくあるべきとか、いまだによくわかってないけれど……。
あんなに大切に想える人がいるまゆちゃんは、ちょっとステキだなって思った。ありったけの気持ちを注げる人がいるってさ。
多田李衣菜評でいわせてもらえば、あれもひとつのロックだね~。
朝礼が鳴って、私を囲む円がひろがっていったそのときに、後ろめたさを感じる瞳の友達がさいごに言った。
「ま、李衣菜がいつも通りならそれで万々歳だよ、ほら、なにせアイドル薦めたのって私たちじゃない? なんだか責任感じちゃって」
つづけてその子は、言った。
「薦めたの、間違いだったんじゃないかなぁって思って」
そんなことないよ、って私は笑って応えた。
アイドル部署へ近づくに連れて、廊下の人の密度があがってくる。プロデューサーの姿を探してみたけれど、どこにもいなかった。
はぁーぁ、今日もちひろさんから、お仕事がキャンセルになったこと伝えられるのかなぁ。最近はシンデレラプロジェクトのみんなとも中々会えないし。
……心配ないんだよね、プロデューサー?
これ他のユニットも気になるな。総選挙後のCPについても書いてほしい。
ふと、アイドル部署の扉の近くで立ち止まっている人がいた。
その人にだけ注目したのは、慌ただしい廊下のなかで唯一時間が止まったかのように立っていたからでも、真っ黒のスーツから伸びる手足が枯れ木のように細かったからでもなかった。
スーツの女の人は、とても真剣な表情で、執念さえ感じさせるようなほど、じっと、じいっと、壁に貼られているポスターを凝視していたからだった。
「シンデレラの階段は誰にでも開かれている、か」
ポスターにしるされたことばを読み上げる冷たい声。私に気付いて、視線がこっちへ向いた。
ぞくり、と背筋に寒気がはしった。
ルージュをひいた紅い口元に微笑がうかぶ。あら、と一声。
「こんなところで一般人は迷子はならないだろうし、私のように来賓というわけでもなさそうだし」
視線がつま先から頭のてっぺんまで移動してから、スーツの女の人は言った。
「なるほどなるほど、あなたが346プロダクションのアイドルね」
「あ、えっと、はい……多田李衣菜、です……?」
「ふぅん」
視線がまた蛇のようにぬるりと纏わりつく。思わず視線をそらしたくなるけれど、何故かできない。
スーツの女の人は微笑を崩さずにつづける。
「あなた、いい眼をしてるわね、視たものを歪ませずにそのまま受け入れられるような、とても澄んだ眼」
「へ、へぁっ?」
急にそんなことを言われて思わずマヌケな声がとびだす。
女の人はくすくすと細い指先を口にあてて笑う。
「あら、いきなりごめんなさいね、私ね、ヒトが足掻くところや終わるところを山ほど見てきたから、相手を見ただけでなんとなく人となりがわかるの」
「は、はぁ、ええっと~、その……」
「あなたのその瞳が淀むことがないように気を付けること、ね」
私の返答を聞かずにスーツの女の人は背をむけて、消えていった。
気づけば、ギターを担いだ背中にびっしょりと汗をかいていた。
なん、だろう、今までに出会ったことがないタイプのひと、だ……。
「……」
ふと、窓の外をみると、西の空へと太陽が沈みかけていた。
一日が終わりかけていて、もう夕方にさしかかるころ。
そこで私は……。
>>76
あ、いやそんな長い話じゃなくて、CPのユニットがいくつ生き残って、生き残ったユニットもどんな変化を経たのかをだりーな視点で書いてほしいかな?ってことです。NGは解散秒読みの気がするけど。
>>77
NGは一番最初の卯月でわかったんだが…
前の作品とか読んだことない?
>>78
もちろん読んでるよ。俺が言いたかったのは、総選挙過ぎて再びアイドル活動しても、ユニットメンバー全員ガタガタの状態だとそう遠くないうちに解散しそうだって話。言葉足りなくて申し訳ない。
>>79
なるほど、こっちこそ変に突っ掛かるようなこといってゴメン
まあ確かに笑顔を失った卯月と繰り上げで入れた未央と普通に実力で残った凛のユニットNGのその後って気になるね
バラバラの状態だし解散秒読みか、それとも持ち直したのか…
そうなると前作のはぁと様のあのあとも気になるね
続きが楽しみ
選挙の順位によって、お弁当とかケータリングの食事が違うとかありそう
これほど( いろんな意味で )ドキドキする小説ってないよなぁ。
続き気になる!
1が心変わりして、超絶ハッピーエンドになるとか、ないよね~やっぱり
木製のベンチ。アンプを繋いで、ギターの音をチェックする。んんっと、ここを絞ってぇ、弦の張りを確認してぇ……。
まのびした歪んだ音がだんだんと引き締まってくる。よし、と。
ため息まじりに不親切なギター教本を広げる。
なになに、ひとさし指をかるく曲げて、親指の側面で……。
びよよ~ん。
「……あーもー! 書かれた通りにやってるのになんでさぁ!」
ぜっんぜん弾けないよ! 今日はもう終わりっ! ロックンロールイズデッ~ッド!
やめかけたそのときだった。
口笛がきこえた。
「渋いねぇそれ」
知らない声。顔をもちあげる。
なにより目を惹いたのが、私と似た栗毛色の髪。
……をかきあげてまとめたリーゼント。
「ちょっと貸して」
ギターを指さしてその人は言った。
時刻は夕方。遠くのほうでそれを知らせる時報が鳴る。
そこで、そこで私は……。
夕闇がせまる空を切り裂いて、音の波紋がひろがった。
景色がきらめいた。
心臓がなみうった。
肌があわだった。
Fコードが押さえらなくて挫折しかけてたころだった。
ぬるさとつめたさ、オレンジとブルーが混じり合う夕暮れのころだった。
調子のわるかったなじみの大時計が、まっさらな新品に取り換えられそうなころだった。
首にかけたヘッドホンからは“Destiny”ってワードがきこえた。そのくらいの英語はわかる。
大袈裟かもしれないけど、気恥ずかしいけど、このとき本気で思った。
あさがたの廊下かもしれない、おひるどきのカフェかもしれない、かえりみちの駐輪場かもしれない。
でも、どんなカタチであれ346プロのどこかで、私たちはかならず出会ってたんじゃないかって、ばかみたいに思ったんだ。
……。
「わ、私、多田李衣菜っ、ロックなアイドルめざしてるんだ」
ぜったいにこの人だと思った。この人であってほしいって思った。この人しかありえないと思った。
「ロックなアイドルか! じゃあアタシと一緒だな」
ずっと心の片隅にいた名前も顔もしらないだれか。
「アタシは──」
夕方。そこで私は。
木村夏樹に、出会った。
「ここに先客がいるなんて珍しいなぁ、おっと邪魔しちゃあ悪いよな」
ベンチをこつんと叩く。
「ま、ロックな話なら、いつでも付き合うぜ」
気取らないウィンクをひとつ。木村夏樹、さん?は背を向けて去っていく。
鼓動のボルテージはあがりっぱなしで、どうにもおさまりそうにない。
気づけば、叫んでいた。
「ま、まってっ!」
木村夏樹サンは不思議そうな顔で振り向く。
「あ、あのさっ、私にギターの弾き方、教えてくれないかなっ?!」
ぽかん。口をあける木村夏樹サン。
「おいおい、いくらいつでもっていったって初対面の相手にいきなりそんなこと言われてもだな……」
なんてお願いすればいいんだろう、気の利いたことばなんて考えてもでてこない。
ライブまでにぎゃふんといわせたいヤツがいるとか、教本どおりじゃ私のソウルは伝わり切れないとか、へいへい、私にとってはあなたは初対面じゃないんだぜ~とか……。
あぁーもぉー!
「とにかく好きなんだっ、ロックがっ!!!」
飛び出したこたえは、自分でもおどろくほどシンプルだった。
そのことばをきいた木村夏樹サンは、ひゅぅと口笛をひとつならした。
「なるほどね、ま、アンタのハートは伝わったよ、それじゃちょっと指みせてみ」
え、ゆび、えっと? いいから、と促されて左手をおずおずさしだす。
私の手をじっとみてから、急に吹き出して、それからゆるやかに表情が微笑みに変わっていく。
「オーケー、えっと、だりーなだっけ、明日からここにこいよ」
「た・だ・り・い・な! ……って、え、いま、なんて?」
「教えてやるよ、ギター、好きなんだろ?」
ギターやってると指が「そういう指」になるのかな
スポーツやると手がマメだらけになるけど
>>88
手とか指がカッチカチになる
ここまでアニメと同じか
>>89
マジかー。ギタリストは[田島「チ○コ破裂するっ!」]に困るなぁ…
俺はマメのせいで、指先しか使えないけど、ギタリストより恵まれてる
ところで……アイドルのスキャンダル発覚ってあったっけ……
卯月回で既に起きていたやつ
……。
手帳に書きこむためのペンを握りしめたまま、あんぐり口をあけるみく。
「どうしたの、お尻にドライヤーあてられたみたいなかおして?」
「そ、そ、そんなかおしてないぃ! 李衣菜ちゃんいつのまにそんなギター上達したの?」
「へっへーん、ヒミツの特訓の成果だよっ」
「まぁもともと0,1だったのが3くらいになったってかんじだけど」
「な、なにをー!」
「ま、ロックなんてみくにはこれっぽっちも理解できないけど、この大変な時期に前向きでいるのはいいことだにゃあ」
世間はすでに346プロのゴシップ記事、とくにアイドル部門のもので溢れかえっていたけど、そのほとんどはウソばかりだった。
……。
オレンジの陽だまりがあたりを包むこの時間がなによりのたのしみだった。
学校やレッスンを終えて、あのベンチへ寄り道なしで一直線へ向かう。
だんだんとギターの音色がちかづいてくる。
「なつきちー!」
名前を呼んで手をふれば、よう、だりー、とキャンディを口にくわえた笑顔。
「ね、ねぇねぇっ、なつきちがオススメしたバンドのアルバムさっそく聴いてみたよっ、なんかねこう曲順もバッチリの捨て曲なしでいやぁ~名盤だよね!」
息をととのえる暇もなしに、まくしたてるとなつきちはくっくっくと声を押し殺して笑う。
私はなつきちらしい、このクールな笑い方がすきだった。
「おいおい、そんなに喜んでくれるのは嬉しいけどな、まずは落ち着けよ、だりー」
「だってさっ、なつきちのセンスって私とピッタリっていうの、ロックなアイドル同士シンパシー感じちゃったっていうの、ほらっこれっ」
鞄からCDをとりだす。
瞬間、なつきちの笑顔がそのままピタリとかたまる。
あ、あれ?
「曲順ばっちり? 捨て曲なし? だりー、お前、これ……」
なつきちの肩がふるえる。怒ってるわけじゃなかった。
まるで心の底からの笑いをおさえきれないような……。
「お、まえ、これはな……」
とうとう堪えきれずに、なつきちは爆笑しながら言った。
「ベストアルバムじゃねーか!」
え、えぇ~~~?!
さすが李衣菜
ベストアルバムってあれか、全部引いてる奴違う的なやつか?
〉92
〉71にある、まゆの事か?うさみんとかシュガーハートさんも、若干今回出演してるから、不安なら前作及び前々作を読めば、良いと思うぞ
>>96
安価くらいちゃんとやれよ
ひとしきり笑われたあとに、くしゃくしゃと髪の毛をなぜられる。
まぁいいじゃねぇか、ロックは小難しいことなんて考えずにソウルで聴くもんさ、なんてフォローといっしょに。
なつきちはなんだかんだいって、とってもやさしい。たまに私をからかったりする態度をみせるけど、きまって最後には私を認めてくれる。
それに、ひとつ歳上なだけとは思えないほどに、私よりずっと物知りだったし、なんだってできた。
ベンチに座る私の背中に回って、どれどれ、となつきちの手が伸びてきて私の手とかさなる。
「なつきちっていい匂いするね、香水?」
「ギターに集中しろよ……」
ぐっとなつきちの指先に力がはいるのが、感触として伝わった。
「いいか、女ってのは男にくらべて握力が弱い、だから弦をおさえるのには意識してしっかりおさえなくちゃダメだ」
絶妙な加減。それでいて力の込めかたがブレない。
「かといって力みすぎてもいけないんだけどな、よし、このまま弾いてみ」
熱がほんのりこもった指先がはなれる、弦をはじくと音色が渇いた空気を通り抜けた。
きもちのいいまっすぐな音。全身の毛穴がぶわっとひらいた。
「す、すごい、どれだけやっても歪んだ音だったのに、本じゃわからなかったよ、なつきちは、すごい!」
すごい、だけしかいえないのがくやしい。感動をあますことなくつたえたい。
だって、だってなつきちは本当のほんとに、すごいのだ。
「はは、だりーは呑みこみが早いな、こりゃあアタシも負けてらんないな」
なんだってできるのに、なつきちはけっして驕らないし、自慢もしない。
あぁ、もう、どうしてこんなにクールにふるまえるんだろう。
私がおなじことをやろうとすると、なにカッコつけてんのー、とかいわれるのに!
にゃー。
……んん?
すぐちかくで、鳴き声がした。なんだか毎日のようにきいてる動物の鳴き声。
視線をおとすと、ネコがいた。比喩表現とかじゃなく、ホンモノ。
毛並みがぼさぼさの、真っ白なネコ。私の足元に近寄ってきて、すりすりと頬ずりをしてくる。
「お、こんなところに珍しいなぁ、へい迷子かい、子猫ちゃん」 へい子猫ちゃん、なんて言葉が似合うのはなつきちくらいだと思う。
「な、なんだろ、なんか私のほうになついてるみたいだけど……」
「アタシん家の近くにもモヒカンぽい毛並みの子猫がよくうろついてんだけどさ、触ろうとしたら逃げられるんだよね、だりーお前ってネコになつかれる体質かもしれないぜ」
「え、えぇ~、そんな体質あるの……」
「首輪もないし野良猫かな、ずいぶんと痩せてるみたいだし、どうする? この子」
「あー……そうだね……」
このとき、あたまに思い浮かんだのは、とうぜんあの子しかいない。
「ちょっとさ、専門家に相談してみるよ……」
「専門家?」
漢字を敢えて平仮名表記にして、りーならしさを表現してるのはアリだけど、長々と続いてるとただの池沼の馬鹿にしか見えないな
時間経過と共に成長描写として、どんどん漢字を増やして成長感とシリアルっぽさを出す手法なんだろう
けど、それはもうやり尽くされてる感があるからなぁ…
でもそれだけ効果のある手法
この作者氏が選んだならじっくり読みたい
新作来てたのか。うれしい
確かに池沼臭がするかも。というかこのスレでは最初はまともに喋ってるのに、どんどん知性が失われてるぞ
原作の台詞だともっと普通に喋ってるだろ
なら読まなきゃいいだけの話だろ、気に入らないならそっ閉じしたら?
今のままでも楽しんで読んでる人もいるんだよね
君たちのスレじゃないし>>1が書きたいように書かせたらいいじゃん
横から茶々入れるのはどうなの?
原作通りに書かなきゃいけないルールでもあるの?
これは二次創作なんだよ
そりゃあ二次創作なんだから誰が何書いても自由だよ
けど、反対にこっちも何言っても自由なんだからさ、作者は文句の一つや二つ言われる覚悟はしないと
……で、>>104はどこを縦読みすればいいのかな?
あの程度で縦読みとか言うなんてかわいそうな子
自分の意見を否定されたのが悔しかったんだろ
変なのに粘着されてかわいそうな>>1
まあ実際こんな荒れやすい題材チョイスしてるんだから、作者も批判は覚悟してるだろ
ただ、ひらがな表記が裏目に出て李衣菜が池沼っぽいっていうのはちょっと笑ったww
この李衣菜はそのうち「あひゃひゃー、うふふふー」とか言い出しても違和感ない
褒めるのはOKで批判はNGっていうのなら、こんな所で書いていること自体間違いだと思うの
他人が書き込めないような場所でやれよ
称賛も批判もOKだが、スレの空気を悪くするような書き込みは控えろよ
そもそも読者サイドがなんでそんな俺ルールを展開してるんだよ
作者から直々に宣言あるならともかくとして、勝手にこの意見はOK、これはNGとかそんなん個人的な価値観だろうに
なら読者がいちいち作者にあれこれ口出しをしてそれの言う通りにしなきゃいけないのかよ
○○が変だなとか程度ならまだわかる、けど池沼発言はどうなんだよって
作者のスレなんだから作者がどう書こうが作者の勝手なのを、○○が○○な喋り方で池沼ぽいとか作者を批判してるだけじゃん
そう感じるなら読まなきゃいいだけの話じゃない?
作者が読者の言いなりになっているという風潮
作者なんて池沼みたいなもんだし
我々読者が保護してあげないといけないんだよ
>>116
よう末尾Oの荒らしクン
お前のレスって煽ろうと必死だから超わかりやすいわ
荒らしに反応してはいけない(戒め)
>>1が早く続き書いてくれたら治まると思うの
>>1は荒らしなんか気にせず続きを書いてくれ
このSS面白いんだからさ
この作者の携帯はdocomoだなww
docomoが一人で頑張ってて笑える
>>121
IDってわかるかな?
IDも知らんドコモ君顔真っ赤で草生える
ドヤ顔でブーメラン盛大にぶっ刺さってんぞ
>>122ちゃんや、末尾2ケタをよーく見てごらんなさい
流石にここまで粘着擁護してると、自演と言われてもこっちも何も擁護できんぞ
あ
粘着擁護とかワロタ
ドヤ顔もしてないのにドヤ顔ブーメランとかそれこそブーメランですね
待ってる、待ってるから帰ってきてくれないか…
3か月生存報告無しだったらもう完全放置でしょ
つーか本人もう別のSS書いてるし
もう落としちゃっていいんじゃね
2か月以上意思表示が無かったから、もう書く意思はないんだろう
SS速報VIPに初めて来た方へ
■ SS速報VIPに初めて来た方へ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456407164/)
◆2ヶ月作者の書き込みの無いスレに関して(2ヶ月ルール)
2ヶ月作者の書き込みの無いスレは宣言なしにHTML化されます。
忙しくて書けない、入院やPCの不調等、様々な原因で投下ができないこともあります。
それでも続きを投下したい、完結させたいという方は放置をせず最後の書き込みから2ヶ月以内に書き込んでください。
2ヶ月に一度ではなく少し時間が空いたら書き込み、投下をする意志を表すことをお勧めします。
いわゆる「生存報告」と呼ばれるもので、読者から求められることもあります。
なるべく放置をしないことが一番ですが、やむを得ない場合は上記を参考にしてください。
書く気ないならせめてはやく依頼は出せよとは思う
>>130
出してるよ。仕切り直しするんだってさ。
依頼スレ確認してみな
>>131
なお報告すらしない模様
作者クソじゃん
……。
「う、うにゃあぁぁ~ん、ネコちゃんにゃぁ~ん♪ 李衣菜ちゃんもようやくネコちゃんのカワイさに目覚めたにゃあ~♪ 李衣菜ちゃんも明日からネコミミアイドルにゃ、けってー!」
寮で私と白ネコを出迎えたのは、砂糖吐きそうなくらいの猫なで声。
あらゆる角度から私が抱いている白ネコを覗きこんでくる。
ひとまずみくの提案はおいておこう。
「いや、なんか妙になつかれちゃってさ、放っておくわけにもいかなくて、みくちゃんネコ博士でしょ、こういうときどうすればいいかなぁ?」
「えっへん、まかせなさい! こういう時はまずは動物病院に診てもらうといいにゃ」
「そのあとは?」
「うー里親探しをして、見つかるまでは責任もってここで飼おっか、きっとネコちゃんパワーがみんなを元気付けてくれるにゃあ」
「そっか、ちひろさんのOKでるかなぁ……」
「とりあえず、明日の朝にみくが知り合いのお医者さんに連れていくね、はい、おいでネコちゃん♪」
白ネコはみくの腕の中でにゃあと鳴く。
次の日みくは病院から帰ってきて、大事にしてあげようね、と笑って言った。
寮に住みついた白ネコは、それから人気者として注目の的になった。
……。
「へぇそれはよかったなぁ、きっとだりーにはネコの恩返しがあるぜ」
夕焼けに染まったベンチでギターを弾くなつきちはいつもサマになる、くやしいほどに。
「褒美ってわけじゃないけどな今度ツーリング連れてってやるよ、行きたがってたろ?」
「ほ、ほんと?! じゃあなつきちの家にも行きたいっ! CDいっぱい貸して!」
「あぁ、いいぜ、アタシん家なら爆音アンプもつけて、おもいっきりかき鳴らせるしな」
「……ねね、なつきち」
「ん?」
「なんかさ、私たち青春してるね!」
1日が終わって、夕方から夜がくるまでのあいだに、
事務所のはずれのベンチで思う存分ロックを語りあって、
寮に遊びにいったときは白ネコを撫でる。
そんなゆるい幸せが、いつまでも続くと信じてたんだ。
すいません
私事で恐縮なのですがこのSSを書いてるときにちょっとリアルでえらいことがあってそれ以来軽いスランプに陥っていました
あっちのほうは実は文のリハビリ目的で書いた話なのですがなんだか予想以上の反響をいただきなによりも書ききることの大切さを改めて感じました
ゆっくりかもしれませんが読んでいただいてる方のために再び完結の意志が固まったので身勝手ながらこのスレで続行させていただきます
放置して本当に申し訳ありませんでした。もしまだお付き合いしてくださる方がいましたら一文字でも読んでくだされば幸いです
以後スローペースですが投下に徹します
お疲れ様です
気張らずに自分のペースで書いてくださいな
ゆっくり読んでますよ
このシリーズ嫌いじゃない!
というわけで頑張って!
おつー
面白いから大丈夫だよ!
面白い
作者がんばれ
よかったよかった。信じていれば報われるもんだね
乙
あっちもおもしろかったです
李衣菜のゆるい幸せが~の部分でこのあとどうなるのか怖くて気になる
……。
──よぉ、だりー。今日も時間通りにきたんだな。ちゃんと教えた宿題やってきたか?
いやー、それが昨日寮の子に教えてもらったアクションゲームが面白くてさー。ついつい熱中しちゃったんだよねー。なつきちも今度やってみる? 名前はゼル……。
──お前なにやってんだよ!
……。
──ロックはいいよなぁ。音は差別しない。どんな人間にだって等しく熱狂を与えてくれるんだ。
あー、な、なるほどねぇ。そういう見方もあるかなー。ロ、ロックの神様がいるんだったらきっと太っ腹なんだねー、ってなんで私見て笑うのさー!
──いやいや、お前を見てると本気でそう思えてくるよ。
……。
──そういやカフェの菜々ちゃんっているだろ。あの子ってなんだかロックだよなー。よくわからないけど生き様がなんとなーく、な。
え、えぇ?! なつきちから見ればあれもロックなの?! それじゃあ、あたしもメイド姿とか着てギター弾いたほうがいいかなぁ?
──だりー、お前ってすぐカタチから入ろうとするよな……。ロックはソウルで奏でるもんだぜ。
ソウルかぁ、うーん、ソウルねぇ~。ねぇねぇそれじゃ菜々ちゃんと組んでみたいって思う?
──あぁそれも面白いかもな。お前の相方のみくちゃんだっけ? その4人でユニットってのも最高に楽しいかもしれないよな。
……。
──だりー、ほらチケットやるよ。今度さ、別のプロダクションのやつとライブやるんだ。新曲もやるからこいよな。
ほんとっ?! 行くいく、絶対いくよ! わぁ一番前の席だ。ありがとーなつきち! なんだかなつきちには色々と貰ってばっかりだなぁ。
──ははっ気にすんなよ。アタシとお前の仲だろ。貸し借りなんかないって。そういやお前が聴きたがってたCDも明日もってきてやるよ。
うぅ~なつきち、だいすきだー!
──うわっ、いきなりや、やめろって!
乙
短いけど更新してくれるだけありがたい
乙ー
瑠璃子が染み出してきてますねぇ……
……。
その会話を聞いたのは偶然だった。なつきちがくれたチケットを握りしめて、ライブの会場に向かうときだった。
社長室を通り抜けるときに、あたしがよく知っている野太い声が聞こえてきたから。
それと同時に、ぞぅっと背中をなぜるような冷たい声が聞こえたから、あたしは思わず立ち止まってしまって。
「──というわけで、あなたの担当にも話しておいてね」
「っ……やはり、納得できませんっ! こんな企画、いくらなんでも……!」
「あら、そんな怖い目で睨まないでちょうだい。感謝こそされど恨まれる覚えはないのだけれど」
「……!」
「この部門は元々ね、潰れる予定だったのよ。それを私がわざわざ残そうとしてあげたの。手回しも随分と苦労したのよ」
「ですが、彼女たちは一人一人、シンデレラなんです! 一人一人違う輝きを持っているんです!」
「そう、でもそれを確かめるのはね、状況的にも時間的にも手遅れかも、ね。それに今の346から移籍する子の末路なんてあなたにも予想できるでしょう」
「ですが……!」
「努力が報われない。善人が救われない。恋が実らない。過ちが平然とまかりとおる。それがそもそもあなたのいうシンデレラ達が生きている現実じゃなくて?」
「……」
「ふふ、偽物は目を潰され光を失うか。くるぶしを切り落としてまで血に塗れた栄光を得ようとするか。はたまた、歴史になにも名を残さないただの少女として埋もれていくか」
「っ……それでも!」
「あなたね、昔何人ものアイドルを辞めさせたことがあるそうじゃない。その子たちの二の舞になりたくなければ、まずはあなたの手で守ってあげればどうかしら」
はっと大きく、息を吸い込む音が聞こえた。
「あまりイジメるのも可哀そうだからね、ここまでにしておくけれど。あ、そうそう最後にひとつだけ」
「……」
「あの子ね、気を付けたほうがいいわよ。彼女はね、純度がきわめて高すぎるのよ。純粋ということはそれだけ染まりやすいということ」
「あの子、とは……?」
「さぁ、ね。あなたもプロデューサーなら自分で見つけてみなさい」
靴が床を鳴らす音が近づいてきて、思わずあたしはその場から逃げるように駆け出した。
いま話してたことって、潰れる予定だった部門って私たちのところ、だよね?
これから。
これから一体、なにが起こるの?
……。
もやもやする気持ちを抱えたまま、ライブ会場に到着した。
ちょっと前にリハーサルをしている時間だから見学しにこいよ、というメッセージを受け取って。
その指示通りにまだ観客がいないがらんどうの会場へとつづく階段をくだる。
一歩一歩、階段を下りるごとにスモークのにおいが濃くなって、暗がりに淡い照明がともる。
なつきちにさっきのこと、話すべきかな。なんて答えるんだろう。
なつきちが喋ることはいつも間違いなんてこれっぽちもなくて、とても安心する。
階段を下りきる。
サーチライトが集中する舞台の上に、なつきちはいた。ギターを腰で担ぐ、普段よりとてもでっかくクールに見えるライブのなつきち。
なにか打ち合わせをしているみたいだ。おそらく別のプロダクションの、あぁあれはベースだ、うん。ベースの人と、身振り手振りを交えて言い合っている。
どんなことを話しているか気になって、舞台へ近づく。
近づくにつれて、その顔がなんだか険しいことに気付いた。
眉間にくっと皺をよせて、なにかを叫んでる。あんな顔をするなつきち、初めて見た。
もしかしてあんまり良いことじゃない……? 前方の席までやってきてようやくなつきちの声が聞こえた。
「──どういうことだよ。 いきなり、これっきりにしてくれだなんてっ」
ベースの人は目を合わせずに歯切れの悪そうに答える。
いや、だって上からの方針なんだから仕方ないだろ。346のアイドルとはもう関わるなって。
「……そんなの関係ないだろっ。今までセッションも何回もして、色んなライブハウスも巡って、なのにそんなんで終わっちまうのかよ」
夏樹とやるのは楽しかったよ。でもこっちも事情があるからさ。頼むから、困らせないでくれよ。
そういって、ベースの人は背を向けてなつきちから離れようとした。
「ちょっと待ってくれっ。納得できないって」
……。
あたしはこれから起こる光景を一部始終あますことなく目撃していた。
そして、この光景を私は何度もなんども繰り返し話すことになる。
事故だったんだ。ただの事故であって、責められることなんて何一つないって、いくらだって主張しつづけた。
なつきちが肩を掴んで、引き留めようした。ベースの人がその手を強引に払いのけようとした。足元に散らばったコードを気づかずに踏んだ。
そのはずみでぐらりと、バランスが崩れた。私の方へ向かって数歩、ととと、片足で寄ってきた。1歩。2歩。3歩。
おいっ、というなつきちの叫び声が聞こえた。その場にいたあらゆる人が振り向く。
4歩目。そこにはすでに床がなかった。支えを失った身体が宙に舞う。
時間にすればほんのコンマ何秒かだったけれど、私はその落下する身体が途方もなく長い時間をかけて落ちていくように感じられた。
ごっ、という鈍い音が広いひろい会場に、鳴り響いた。
………。
……。
…。
総選挙で50位以内に入れないアイドルはクビになる、と歪んだ表情で告げられたのはそれからすぐのことだった。
また明日
oh......
夏樹じゃなくてベースが落ちたのか
盛り上がってまいりました…
乙。
やっぱり「前川、アイドル辞めるってよ」ってことか・・・
このままこっちで書いてくれるのね、さぁ雲行きが曇って参りました…
同じ舞台設定でよくここまで前作と違う文体と展開で書けるな
盛り上がってまいりました…
>>147
修正
あたしはこれから起こる光景を一部始終あますことなく目撃していた。
↓
私はこれから起こる光景を一部始終あますことなく目撃していた。
ごっちゃになった
……。
おかしい。なにもかも間違ってる、と思った。
「はぁ……はぁ……!」
目もくらみそうなほど眩しいオレンジを逆光に、いつものベンチに向けて駆ける。
心臓がバクバクして、視界がぐらぐらして、足ががくがくして。
「はぁっ……!」
だって、こんなの理不尽だ。
これしか方法はない、なんて言われたって納得できるわけない。
それでもやるしかない、なんて言われたって理解できるわけ、あるか。
私はどうしようもなく目の前の結果を受け入れたくなかった。
絶対に受け入れたくないだけの理由があった。
中間発表の結果を受け取ってから、今更そんなことをひどく思った私は、みんながいうように救いようがないほど呑気で能天気だ。
私は34位だった。
みくは33位。
偶然にもアスタリクは、ほぼ同票の僅差だった。気を抜かずにやっていけば、問題ない順位だといわれた。
でも。
ベンチがぶれる視界に映った。真っ黒なギターとあざやかな栗毛色がそこにあった。
なつきちはぼんやりと、夕空を見上げていた。
あの事故のせいなのは、あきらかなんだ。
あの事故がなつきちのことを悪くいって、一人だけの責任にして。すごく、すごく悪いタイミングで重なっちゃっただけで。
そうじゃなきゃ、なつきちがこんなことになるはずないんだ。
なつきちが、圏外だなんて。
もう思考をまとめることなんてとてもできずに、わけがわからずに、おかしい、とにかくおかしいよって叫ぶと、なつきちは私の目を穏やかに見つめてひとことだけ呟いた。
「違うね、これはアタシの、器だよ」
「……っ」
ウツワ。なつきちはたった3文字の言葉ですべてを呑みこんだ。
なつきちはいくらだって言い訳できたはずなのに、怒ることだって、悲しむことだって存分にできたはずなのに。
なんでそうなのさ。なつきちはいつもそうだ。
いつだってカッコよくて、レッスンもさっさと要領よく終わらせちゃってさ。
それに、そうやっていっつもいっつも物分りがよくって、すべてを察してくれようとしてくれて、くるしい表情すら見せずになんだって背負って……。
「なんで、そうなのさぁ……!」
溢れ出ては、ぱちんとはじける激情の泡のなかで、あぁ私は心からこの人を尊敬しているんだ、という感情を覚えていた。
なつきちが、あの日ステージであんなに取り乱したのは理由があったらしかった。
渾身の新曲をどうしても、万全な状態で届けたかったから、だと言った。その新曲を披露する機会を失ったのは残念だなぁとなつきちは渇いた笑顔でいった。
「とう骨神経麻痺、だと。咄嗟に手で庇ったから命に別状なかったんだけどな。その代わりに以前のようにベースは弾けないかも知れないってよ」
ギターのコードを、ぴんとひとつ弾いてなつきちは言った。
弦が震えたのは、そのひとつだけで、曲になることはなかった。
「っ……でも、でも、それはなつきちのせいじゃないでしょ!」
「……」
「なつきちは、なにも間違ってないってば!」
「だりー、なにが正しくて、なにが間違っているかなんてな、結局のところ何処の誰にもわからないんだよ」
それだけ言って、なつきちはまた空を見上げた。
あの日から、なつきちは私の前でギターを弾かなくなった。
……。
「ねぇ、この寮ね、別の施設になるみたいだよ」
久々に寮に行くと、みくからそんなことを話された。
「この寮を運営する維持費よりね、これからは一人一人に宿泊費を支給したほうが安上りだから、だって」
「そう、なんだ」
「……ねぇ李衣菜ちゃん、頑張ろうね」
「……そう、だね」
曖昧な気持ちを、曖昧なまま吐きだした。思い出の寮もなくなっちゃって、そこに住んでた友達ともお別れになるかもしれなくて。
なにを糧にすれば明日もまた頑張ろうって気持ちになれるんだろ。みくは一体なにを糧にして、人に頑張ろうなんて言えるんだろう。
ふと、住んでた仲間、というキーワードで思いだした。
「みくちゃん、そういえばあの白ネコどこにいったの?」
「……うぅん、それが突然いなくなっちゃったんだよね」
「えっ、そう、なんだ……」
「ネコちゃんってね、自由気ままだからいつのまにかいなくなっちゃうコトがあるんだよ」
どこかで元気にしてるといいにゃあ、といってみくは手帳を取り出してスケジュールをチェックした。
……。
また明日か明後日
修正
住んでた仲間、というキーワード
↓
住んでた友達、というキーワード
放っておけばどこまでも墜ちていきそうな気分を繋ぎとめていたのは、残されていた時間だけだった。
最終結果まで時間がある。それまでに、なんとかしたかった。なつきちのためになにかできるんじゃないかって。
私にできることはなにかないかと思って、でも結局私には頑張ろうよって励ますこと以外思いつかなくって。
見つけてきたロックのCDを私の方から薦めても、なつきちはありがとな、あとで聴いてみるよ、とほほ笑むだけだった。
こんなんじゃだめだと思った私は、連絡がとてもとりづらくなったプロデューサーを探し出して、廊下で声をかけた。
「ね、ねぇプロデューサー、急にごめん。お願いがあるんだ」
「多田さん、は、はい。なんでしょうか」
なに立ち止まってるんだ。早く来てくれ、電話が鳴ってるんだ、という声を気にしながらも、プロデューサーは私に向き直ってくれた。
ひとつお辞儀をしてから、私は言った。
「あ、あの、私の仕事さ、誰かに回すことってできないの、そういうのなんとかならないの」
私の質問に意表をつかれたのか、プロデューサーはかすかに体を硬直させた。
それは、その、どういった、と言い淀んでいるプロデューサーに向けて言葉をつづける。
「私よりさ、ずっとロックでギターもすっごい巧い人がいるんだ、仕事もすっごいできるし、だからさ私のソロのお仕事でいいから出演させてよ。私はかまわないから」
「……」
プロデューサーは、私の言葉を受けて、顔をしかめさせて首に手をあてる。それから。
「……検討、させてください。努力は、してみます」
そう言って、浅いお辞儀をしてから私に背を向けた。
http://imgur.com/xHpQG15.png
http://imgur.com/1dyupBq.png
http://imgur.com/5S98pW2.png
http://imgur.com/USc1iD7.png
http://imgur.com/NjyUZBc.png
http://imgur.com/ob5S5h7.png
>>162
グロ
……。
「……いいか。頼むから二度とそんなことはするなよ、だりー。もし次そんなことがあったら、許せなくなりそうだ」
ベンチにひびいた声は、物静かなトーンのなかに、確かに有無を言わせない迫力が含まれていた。
びりりと空気がふるえた。じわりと瞳の奥が熱くなる。唇がふるふるして言葉が出てこなかった。
なつきちに本気で怒られたのは、これが初めてだった。
どうしても譲れないもののためなら時には本気で怒ることも人には必要さ、と以前になつきちは私に言った。
だとしたら、私はそれに無遠慮に触れてしまったんだ、と思った。なつきちが譲れないなにかに。
なのになつきちは、あぁいきなり怒ってごめんな、とまた笑顔を浮かべてくれる。
「許せなくなりそうだってのは、だりーのことじゃないぜ。アタシ自身のことだよ。自分で自分が許せなくなりそうだ。さぁ今日はもう帰ってゆっくり休めよ」
そういって、なつきちはまた上手に上手に場を収めてくれようとする。私よりひとつ年上なだけとは思えない大人のなつきち。
だけど。
「わたしは……」
それでも唇から言葉が零れでたのは、きっと私がどうしようもなく子供だったからで。
「わたしはなつきちが目標なんだよっ! ロックなアイドル目指してて、探しててっ、事務所が大変なことになっても、このベンチに来るのが毎回楽しみでっ!」
きっと私にもどうしようもなく譲れないなにかがあったからだ。
「やりたいこと、いっぱいわたしに話してくれたじゃん! こんなつまんない世の中でもロックなアイドルが通用することを証明したいって言ってたじゃんか! それなのにこのまま何もなく呑まれていくなんて私は納得できないよ!」
とめどなく溢れてきた言葉は、ひどくふるえていて不格好だと思った。
それでも止まらなかった。
「なんで、なんで弾かないのさ! ギターまた弾いてよ、なつきちぃ!」
引っかかっていた言葉をすべて吐き出したあとは、胸にぽっかりと穴があいた気分だった。
つかえがなくなった胸の内を埋めていったのは、清々しさというよりも、薄黒い不安だった。
私と違ってなつきちの行動にはすべて意味がきっちりと通っている。だからなつきちがギターを弾かないのにはなにか理由があるということはなんとなく気づいていた。
確認するのをいままで遠ざけていたのは、怖かったからだ。なにかがひっくり返ってしまうんじゃないかっていう漠然とした不安があったからだ。
なつきちは、目をつむってそのまましばらく時間を溶かしてから。
わかった、と一言だけ呟いてから、ピックをきゅっと握った。
おそらく残り4割くらいです
話が予定よりも長くなる悪癖全然治らない…
わかるわ
つい凝っちゃうよな
>>162
消えろ
乙
乙
……。
きぃん、。曲を締めくくる最後のコードをはじいた音が夕空に消えていった。
なつきちの演奏が終わった。待ち望んでいた、その一方で心のどこかでは聴くのを避けていたなつきちのギターの音色。
「……あ、」
ちがう。真っ先に頭に浮かんだ感想は、ちがう、だった。
なつきちの演奏はなんというか、もっとダイナミックで枠に囚われないような大胆さがあって。
自由気ままに音を奏でることの楽しさが滲み出ていて。
音の波に自然と浮かんでくる器用さも繊細さも大胆さも、ぜんぶなつきちをそのまま表しているかのような感動的な迫力があって。
なのに、この演奏は今までのなつきちの音とは決定的にちがっていた。
正体まではわからないけれど、たぶんこれはきっと、わるい方向でちがっている。
気の利いた言葉を必死に吐きだそうと口をぱくぱくさせる私の表情をみてなつきちは察したのか、すかさず会話の先回りをされる。
「さすがだな、だりー。やっぱわかるんだな。音感とか耳の良さには自信あるっていってたもんな」
「あ、いや、その……」
くっくと下を向いて笑うなつきちはなんだかとっても苦しそうだった。
私はこういうときになんて言葉をかければ正解なんだろう。いやいや、なに言ってるの、いつものなつきちのカッコイイ音だったよ、なんてうそをつくか。
たしかにちょっと以前とは変わった部分あるけどそれでもなつきちのギターはすごいよ、なんていかにも気休めっぽい励ましをかけるか。
なにか、なにか言わないと。でも、私にはなつきちのようにこの場をするっとまるく収める方法論が思い浮かばない。
「あっれ~。なにか聴きなれない音がすると思って辿ってみたら、こんな良いお昼寝できそうな場所があったんだにゃあ」
不意に知らない声がして振り返ると、いつのまにか女の子がそばに立っていた。
ゆるいウェーブのかかったくせっ毛をだぼだぼの制服の裾に隠れた手でくりくりと弄る女の子。
私にはもう慣れきった特徴的な口調。こんな語尾つけるひと、一人しかいないと思ってたけど。
イメージでしかないけれどみくが三毛猫だとしたら、この女の子はもうちょっとお上品な、外国のネコのような。
「へ~ギターなんてやってるんだー。うんうんうん、アイドルにも多様性が求められる時代なんだねー」
おつ
まさかの志希にゃんがどう絡むんだ
前から出る伏線張ってたよな
猫口の女の子はぺたりと地べたに座る。私たちのほうを青くてまるい瞳でじいっと見つめてから。
「ちょっとさ、また弾いてみてよ。えっと、そーだそーだせっかくだし上位者からの命令には逆らえないっての使ってみようかな?
でもこのルールって厳密化されてるわけでもないし各人の裁量次第だから有名無実だよねー。
きっと常に順位を意識させるように仕向ける狙いもあるんだろうけどさー。にゃはは」
一口にそこまで言い切って、女の子はささ、弾いてみてよ、と手をひらひらさせて促す。
なつきちは一瞬、眉をひそめたけれど思い直したようにギターをまたぎゅっと握りなおした。
静けさが広がっていた空間にまた音が響く。軽快なロックサウンド。なつきちが今までずっとずっと弾いてきたフレーズ。私が何回も聴いてきたフレーズ。
やっぱり、違和感があった。音もそうだけど、なにより違和感を感じたのは表情だった。なつきちは歯を食いしばって、瞼をきつく閉じてギターを弾いていた。
なつきちは、こんな表情で弾いていなかったはずだ。いつもはもっと笑って……。
「なーるほど」
演奏の途切れめを縫って、微動だもせずひたすら見つめてた猫口猫目の女の子はすいと立ち上がった。
なつきちの前でめいっぱい手を広げる。
「ちょっと貸して、それ。ていうか借りちゃうけどー、わ、ギターにも左利き用ってもあるんだね。まいっか」
「あ、おい……」
戸惑うなつきちからひょいとギターを取り上げて、こんな感じかな、とピックを握る。
すぅと小さく息を吸ってから。
ぎぃん、と高いキーが鳴って。淀みのない動きで指が弦のうえを滑った。あざやかでなめらかな運指。首を小刻みに振りながらリズムをとる女の子。だけどなにかが引っ掛かるような音。
あ、と間の抜けた声が出たのは私の口からだった。
だって、これは。
もしかしてさっきのなつきちの音と全く同じなんじゃな──。そこまで頭をかすめたとき、ぎしっと不協和音がひとつ鳴って演奏が突然中断する。
「あちゃー、見よう見まねじゃこんなもんかー、案外難しいもんだねー、でもいい感じの暇つぶしになったよー、せんきゅーべりまっち♪」
途端に興味がなくなったように、ギターをなつきちに手渡して女の子はくるりと背を向けて去ろうとする。
ぽかんとしてなにも言葉が出なかったのは私もなつきちもきっと一緒で。
と、女の子はぴたりと止まってぴんと人差し指を立てた。
「あ、そうそう。ひとつだけ、まーあたしギターまともに触ったの初めてだから正解かどうかわかんないけど直感でひとつ」
「え……?」
初めて、って。それじゃあ、この子はさっきのなつきちの演奏を見ただけで完璧にコピーした、の?
私が何日も隣で聴いていてもまだまだまともに弾けなかったなつきちの音を、一瞬で。
「おねーさんさぁ、迷いが見えるねぇ。音に迷いが乗ってるよ。なにか悩みながら弾いてるでしょ」
その女の子の指摘は、すとんと私の胸に落ちた。そうだ、きっと違和感の正体はそれで。
「それと、どうして楽しくもないことをわざわざしてるのかにゃあ、義務ってわけでもなさそーだし、んー世の中にはそういう趣味の人もいるんだろうけどあたしにはちょっと理解できないな~
誰のため? なんのため? それともなにかに縛られてるのかな? それまたなんのために?」
つづいた言葉も、思わずそのまま呑みこみそうになって。私は慌てるように否定の言葉を吐き出した。
「……そ、そんなことないよ! なつきちがギターを、ロックを楽しんでないなんて、そんなことない!」
そんなこと、ない。
「ありゃ、んーそっか、不正解だったかー。それは残念無念。にゃはは、ごめんねぇ。あ、そーだそーだ、自己紹介忘れてたね」
右手の指をぜんぶ開いてから。女の子は振り向いて、猫の口で笑った。
「一ノ瀬志希、いちおー今のとこ総選挙は5位。お互い忘れなければ、以後お見知りおきをー」
女の子。志希ちゃんの姿が見えなくなってから思いだす。そういえばみくが言ってた気がする。10位から上は全アイドルの中でも一握りの選ばれた子たちがなれるもので。
そのなかでも、最短でトップの仲間入りをした天才の子がいるって。みくが勝手にライバル視してるっていう猫っぽい子。あの志希って子だったんだ。
って、そんなこと今はどうでもよくてっ!
はっとして。なつきちの方を急いで振り返ると。
「……なるほど、ね」
なつきちは、口元に手のひらをあててなにかを考え込んでいるような仕草をしていた。
乙。このSS1位も最後まで明かされない気がした。
それから勝手に時間が流れていって。
ある日、いやに空気がぬるい日暮れ。
「だりー、話したいことが。いや、話すべきことがある」
初めて髪を下ろすなつきちは初めてギターを持ってこないで、初めての話題をだした。
「こういう世界にいると必ず一度はぶつかる、壁の話さ」
じっとりしたなまあたたかい空気がまとわりついて、肌から離れない日だった。
なつきちは夕空を眺めながら話をつづける。
「色々な人間がいる。その壁にぶちあたったときに越えようと必死で足掻く人間。壁のはるかな高さに諦めて引き返してまう人間、そして」
「志希ちゃん、だっけか。他人が一生かかっても越えられような壁を軽々と乗り越えてしまような天才がいる。他には珍しいタイプで」
「立ちはだっている壁を、壁とすら気づかない人間がいる。そういう奴はな、振り向かずに前だけを見ていればいい」
一瞬。ちらりと、空に向けた目線が私に泳いだ気がした。
「だりー、世の中には何人のロックミュージシャンがいると思う? 何人のアイドルがいると思う? その中の何人が職業としてやっていけてる? 何人が諦めてリタイアしていく?」
答えをいいあぐねて、あう、とか、いや、とか呻く私は、なんだかとてもなさけなくて。
「ま、プロは1割にも満たないだろうな。アタシたちが闘ってる世界ってのは、そういうもんで。表現の世界でやってくってのは本来そういうもんなんだよ。勝つ人間がいるなら、負ける人間ってのはどうしてもでてくる」
「話を聞く感じだとお前の相方のみくちゃんとか、菜々ちゃんはそこらへんをよくよくわかってる」
なんで、そんなことをいきなりいうのさ、なつきち。
なんだかなつきちらしくないよ。
「……だりー、お前は才能あるよ。ロッカーとしてもアイドルとしても。隣でずっと見てきたアタシのお墨付きだ」
えっ?
「お前は気づいてないだろうけどな、その才能は唯一無二のもんだ。大切にしろよ。それを失わなければだりーはどこでも心配ない、な」
なに言ってんのさ。なつきちのほうが私よりずっとギター上手いし曲だって作れるし、なんだってできるし。
「そういうことじゃない。テクニックやスキルなんてそれに比べりゃ些細なもんだ」
「いいか、だりーの最も優れてる才能、それはな」
ぽん、と頭にてのひらを乗せられた。
ギターをたくさん弾いて弾いて、もうマメすらできない細い指で。
「人に思いを伝える力さ」
「どんだけ不格好でも、どんだけ無作法でも、お前は人の心を突き動かすことができるんだ。それが出会ったときから感じてた、アタシの思う多田李衣菜の良いとこさ」
くしゃくしゃと、頭を撫でられた。
「だりー、アタシとお前とのあいだには、いつもロックがあったよな。底抜けにだりーはロックが好きだったよな」
なつきち……?
「だりー、お前は、お前だけは」
頭の上の指先にかすかに力がこもった。
私の指先をやさしく、それでもしっかりと抑えてくれた絶妙な力加減とは程遠い、ぶれきった指先だった。
表情は夕暮れの逆境でよく見えなかった。なつきちの声だけが届いた。
いつもありったけのロックを歌う、どこまでもまっすぐなつきちの声のはずなのに。
私はその声をなんで、うたがう。
「その気持ちを忘れるなよ。ロックをいつまでも好きでいてくれよ」
それじゃあまた明日にベンチへ来いよな、待ってる、といってなつきちはバイクを走らせた。
夜はよく眠れなかった。なまあたたかい温度が、不快な汗を産むせいでどうにも寝苦しい。
携帯にメッセージが届く。みくからだった。
──起きてる? お仕事の打ち合わせしたいんだけど、いいかにゃ?
私はもう寝たということにして、メッセージを返さなかった。みくは仕事の話になるととても細かくて長ったらしい。ノリと勢いでなんとかなるでしょ、という私とはいつも意見がぶつかる。
なつきちの夕方の言葉を思い出した。
みくはアイドルの世界をよくわかってるから、こんないつでもお仕事にやる気があるのかな。それって、どういうこと。
そういえばなつきちとは携帯でほとんどやり取りをしなかったことに気付く。あのベンチで待ち合わせすればいつでも会えたからあまり必要じゃなかったからだ。
みくになんだか悪いと思いつつも試しになつきちにメッセージを送ってみる。
──なつきち、起きてる? 今日のなつきちの言ったことさ、私もよく考えてみるよ。
ぼんやりとした液晶画面にギターのアイコンがうつる。赤のストラトキャスターだ。なつきちのおかげで覚えたこと。
──あのさ、私さ、みんなのなつきちの悪口とか全然気にしてないし。私はなつきちについてくから。ロックなアイドルとしてやってこーよ。
総選挙の終わりまで、なつきちに対して私ができることをなんとか考えつかないと。
なつきちが納得できるような、いちばん、いい形を。
しばらく待っても返信はなかった。もう寝ちゃったのかな。
明日、なつきちに会ったらなにを話そう。
ベッドの脇に置いてあったギターを手繰り寄せて握ると、ひんやりとして汗がすこし引いた。
……。
仕事が終わって夕方になった。仕事中にみくに集中してないといって猫パンチを2発もらったけど気にしないことにした。
ベンチに向かって走る。ギターケースのストラップが肩に食い込んで、すこし痛かったけど構わなかった。
昨日もギターを1時間だけ練習した。ワンフレーズを淀みなく弾けたのは初めてで。我ながらずいぶんと上達したんじゃないかと思う。
そろそろ新しいテクニックを教えてもらってもいい頃なんじゃないかと思う。なつきちは喜ぶかな。なつきちに喜んでもらうために私は弾くんだ。
私が新譜だと勘違いしてたCDは実はすっごい有名なグランジロックの定番だとつっこまれたから今度は別のCDをもってきた。
なつきちは知ってるかな。知ってるんだろうな。そしたらまた別のアルバムをもってくるから。だから。
ロックを楽しんでないなんて、そんなありえないこと、ちゃんと否定してよ。
なんて、そんなことをいちいち考えてる私は、なんだか言い訳がましていやだった。
視界の先にベンチがうつる。私となつきち以外だれも座ってないみたいだから、いつのまにかお尻に合わせて2つの丸い形がうっすらと残ってしまったベンチ。
あ、れ……。
いつも先に待っているはずの姿がなかった。
夕焼けに浮かんでいる見間違えるはずのないシルエット。
不安な気持ちがどんどんとふくらんでいくのを感じた。
きっと、遅刻してるんじゃないかと理由を考えて、不安を打ち消す。
一歩一歩近づいて、辿り着いて。ベンチになにかが乗っていることに気付いた。
私がなつきちに借していたCDの山だった。
その束は、なつきちが一度ここにたしかに来ていたってことを告げていて。
手渡しせずにこんなことをする意味を。なつきちの姿がないってことの意味を私に無理やりに考えさせて。
その想像のすべてが良くない印象を私に与えた。
「なつきち……?」
駐輪場へ行っても、バイクは停まってなかった。
携帯にメッセージを送っても、返ってくることはなかった。
他のアイドルの子に聞いても、だれも姿を見かけていなかった。
夕方を過ぎて、夜になるまで待ってもベンチに来ることはなかった。
ずっとずっと待っても、なつきちは来なかった。
ぼーん、ぼーん。
新品に取り換えられた大時計が、遠くの方でけたたましく鳴る音を何度も聴いた。
……。
そのまま不安な朝がやってきて。
木村夏樹がすべての責任をとってアイドルを辞めた、という報告を受けて。
思った。
私はいままでなにも知らなかっただけなんだ。
本当にとりかえしのつかないことが、どういうものなのか。
かけがえのないものを失うってのが、どういうことなのか。
次の日も、次の日も。当たり前のようになつきちはもうどこにもいなかった。
住んでいたアパートもすでに引き払っていて、荷物はすべて実家に送られていた。携帯は二度と通じることなかった。
ライブハウスを探してもいなくて、お気に入りの楽器店にもいなくて、探せば探すほどなつきちは煙のように消えてしまった、という実感だけが伴った。
あの白ネコのように、突然いなくなった。拭えない悪評をすべてひとりっきりでその身に抱えて。
なんで。なんでさ。
なつきちは、いつだって正しかったじゃないか。
間違ったことなんてなにひとつしてないじゃないか。
ロックを、いつの時代だって負けずに心のままを歌おうとする音楽を、あんなに信じてたなつきちが、なんでこんな仕打ちを受けなきゃいけないのさ。
差別のない音を歌ってたなつきちが、なんでこんな不当な差別を受けた結末で、終わっちゃうのさ。
ロックの神様なんていない。ロックの神様なんて、いない。
仮にいるんだとしたら、なつきちを救わない神様なんて、けちでだいきらいだ。
遅かった。私は勝手に総選挙がおわるまではなんとか猶予があるなんて思って。
おわりが突然くるものだなんてそんな当たり前のことすらわかってなかった。
ありがとうも、ごめんも、さよならも伝えてない。全てが遅すぎた。
私はなつきちに対してなにもできなかったよ。あんなに悩んでたなつきち対してなにも。
あのとき私の手のひらをみたなつきちは、なにを思ったんだろう。どうして私にギターを教えてくれたんだろう。
たしかめたくても、今となってはもうなにもわからない。
エンジンかかってきました
もうちょっとつづきますまた明日か明後日
乙
乙
乙
なつきちに救いあれ
乙です
>>175
夕暮れの逆境
↓
夕暮れの逆光
気付かなかった
あんまりおもしろくない
話の流れ重視だけど無理やり過ぎ
なつきちは一年くらいしたらどっかのライブハウスで話題になってるから……
この>>1に一言
確かにこのSSは物語的には面白いがだからと言って無条件に肯定されるような内容ではないということを自覚して書いて欲しい
何を偉そうに
10年ROMってろ
>>187
くっさ
しゅがはさん総選挙50位入りおめでとう
「ふふっ、あなたには、どうしても叶えたいねがいごとって何か生まれた?」
「もしあるなら、いいわよ、叶えてあげる」
「次の総選挙で、あなたより上の順位の子たち、輿水幸子、一ノ瀬志希、川島瑞樹……そして……」
「初代シンデレラガールズを超えて、あなたが一足しかないガラスの靴を履けたら、ね」
伏線回収なるか
2回目の中間発表。30位。私の順位は上がっていた。
みくは28位。順位を聞いたみくはその場で飛び跳ねそうな勢いで喜んでいた。
「やったぁ! ファンのみんなにちゃーんとみくの頑張りを認めてもらえたんだにゃあ」
アスタリクスクの単独ライブの日程も決定した、と伝えられた。
私たちの順位はとても安定していて50位以下になる可能性はもうないと踏んだプロモーターの判断、らしい。
総選挙の結果によってアイドルの価値が明確になるから、他にとられる前に有用な人材を確保しておくという企業の戦略。
人はそう簡単に人の価値を判断するということに確信をもてないものだから、そのために順位や数字が必要になる。
ましてや自分自身の立ち位置すらも自分でわからない人間もいるから、だからわかりやすく序列を与えてあげるの。
あの女社長の言葉。
この企画のおかげで346プロの業績にも効果が現れてきていて、仕事も私たちによく回ってくるようになった。
待ち望んでいたステージ上でのライブとかロックアルバムのPR活動なんかも舞い込んできた。
ゴキゲンに鼻歌を鳴らすみくにぽす、と肩を叩かれる。
「良かったねぇ、李衣菜ちゃん。ちゃんと単独ライブのためにギターを練習しておくにゃ」
「……」
適当に相槌をうってみくと別れた。
ギターはあの日から一度も触ってないし、ヘッドホンからはなんの音楽も流さなくなった。
あのとき叫んだときに感じた、ぽっかりと胸に穴が開いた感覚はそのまま残っていて。
その大きな穴にはなにも埋まることなくからっぽになっていた。
興味とか情熱とか意欲とか、そういう前向きな感情が穴から漏れだしてるのを止めることができないし、止める気力も沸きあがってこない。
それでもやってくる日常をなんとかこなそうとして。
日常に適応しようとすればするほど、やりきれない思いがどんどん溜まっていく。後悔はこれっぽっちも薄まることなんてない。ただ無気力な気分だけが積み重なっていく。
だってなにもかも無駄だったじゃないか。事務所や寮でみんなと過ごした、アルバムにたくさん残した思い出の日々だって。なつきちと二人で飽きることなくセッションを繰り返した日々だって。
ぜんぶ消えてなくなるものなんだから、いま私が過ごしてる日々にだってなんの意味もないじゃないか。
廊下をぼんやりと歩いていると、壁にぐったりともたれかかっている女の子がいた。
前髪をぴっしりと切りそろえたボブカットの女の子。
たしか、一度共演したことがある、芸歴がとても長い業界の先輩で見習っておけといわれた、名前はたしか。
「そん、などうして……」
岡崎泰葉ちゃん、だ。
顔を真っ青にして、瞳の端に涙を溜めている表情で、泰葉ちゃんはぶつぶつと呟く。
「経験は誰にも負けないはずなのに、芸能界への心持ちだって誰にも負けないはずなのに、厳しさは知っていて挑んだのに、それなのに」
体を支えることができずに、ずるずると背中で壁をこする音がして尻もちをつく。
「圏外、生き残りは絶望的だ、なんて、一体なにがいけないの……」
泰葉ちゃんの奥底から絞り出すような声が、私の体を通り抜けた。
「……」
また積み重なる。
私がたった50しかない枠に、居ても許される理由ってなんだろう。
この子やなつきちがいなくなって、私が残らなきゃならない意味ってあるの。
アイドルがどんなものかすらわからず入ってきた私が、ロックがどんなものかすらあやふやな私が
ロックなアイドルを目指してます、なんて今はもう胸を張って言えない私が、やりたいことって何?
答えを導けない問いかけばかりが私のなかで積み重なっていく。
ここからどう動いていくのか、怖いけど期待
最近IDドコモ君見ないな
作者が自演指摘されて慌てたのかな?
犯崎先輩じゃなかった
喜んでいいのか恐れるべきなのか……
気づけばまたベンチに来てしまっていた。
座るとひんやり冷たい温度が布越しに伝わる。左を振り向いてもなにもない空間だけが広がっている。
もう無駄だとわかってるのに、それでもあの姿を探してしまう。矛盾した行為をする度に、穴から気持ちが漏れだしていくような気分がした。
私は、346プロの日常の光景がだんだんと崩れていくなかで、あの夕焼けから夜がくるまでの時間が何よりも大切だったんだよ。
「どこに行っちゃったのさ、なつきち……」
好きという気持ちだけで、どこまでも進んでいけると思ってた。
ロックが好きで、歌うのが好きで、ダンスもわりと好きで。好きってだけで良くて、理由なんて有耶無耶なままでもやっていけた。
だけど今はもう立ち止まってしまってここから一歩も進むことなんてできない。
なつきちのようにちゃんと意味を通わせて動くなんてできないし、みくのように何故かこんな状況でもやる気が沸き起こるような要因もない。
自分の才能や実力だってよくわからないし、信じることなんてとてもできない。人に思いを伝える力、なんてなつきちは言っていたけどそれがなんの役に立つの。
こんな私に今更できることなんて、あるの。教えてよ、もう誰でもいいから答えを。
「あれ~今日はギター公演やってないのかにゃあ、暇つぶしにきたのに」
ふと聞き覚えのある声がした。一ノ瀬志希ちゃんだ。
たまたま覚えてたからまた来たよー、なんて声がうなだれた頭越しに聞こえる。
「あのおねーさんさぁ、辞めちゃったみたいだねぇ。んー残念だよね。移籍でもするのかなぁ。でもそれはよしておいたほうがいいよねぇ
ねぇ知ってる? 346プロから移籍したアイドルは他所でひどいイジメをうけるって噂。なんだろねー集団心理だよねー。
今まで業界トップの事務所だったしさぁ、きっとルサンチマン的思考、強者への怨恨みたいな感情が産まれるんだねぇきっと。
しかもそんな至強が失墜したとなればストレスの溜まってるアイドルの子らにしてみれば恰好の的なんだろねーよくわかんないけど」
「……」
「あれ、こんな話は興味ないかな。そっかーまぁ独り言だし聞き流してくれてもいいや。なんだか元気ないよーに見える原因はあのおねーさん?」
志希ちゃんのふわ、というあくびの音が聞こえる。それから屈んで、私の顔を覗きこんでくる。
「ふむ、どうやら君にとってあのおねーさんの占めるウェイトはなかなかのものだったみたいだねぇ。
対象喪失反応。無力感や懺悔の念、周囲への拒絶、環境とのズレの感覚、いつまでも幻影を追う、果ては失った対象への同一化まで引き起こす、なんてどっかの本で書いてあったけど」
「……」
「解決法のひとつは時間の経過と、あとはいくつかあったけどなんだったかなぁ、あ、そーだそーだ」
「……」
「いっそ一度きれいさっぱり忘れちゃえば? あたしみたいにさー。あたし矜持とか意志とかそういったものがない特例らしいんだよねー。にゃはは」
それじゃまたねー、という声が聞こえてまた周囲が静かになった。
静けさのなかで、確認するようにぽつりと呟いた。
「忘れ、る……」
乙。ここからみくにゃん圏外まで堕ちるのか・・・
今思うと、卯月も純度の高いアイドルだったんだろうな。だからこそ、今の自分じゃダメだと思ったら持ち味全部捨てて、演技する方を選んだんだろう。
それから私はなるべく思いださないように努力した。もう仕方ないんだって。
過ぎ去った時間はもう取り返すことができないから。いくら願っても届くことなんてないから。
からっぽの部分がたまにじくじくと痛むのも、街でロックの音楽が流れると鼓動が苦しくなるのも、時間が解決してくれるんじゃないかって。
一旦ぜんぶ忘れちゃうことで元通りになるんなら、その方法を選択しようなんて。それが正解だとしたら、試してみようと思った。
「こんにちは、応援、ありがとうございます」
無理やりに笑顔を浮かべる。握手会の仕事。あるべき姿をあてはめる。いつも笑顔で、お客さんに悩みを見せちゃいけない、ただしいアイドルの姿。
隣ではみくが満面の笑顔でファンのみんなにひとりひとり握手する。私はそれを真似しようとした。
長蛇の列。ありがとうございます、を何百回も繰り返して、握手を何百回も繰り返して。
ひとりひとりの顔を見て挨拶して、もしかしたら、なんてことは絶対に思わないようにして。
もしかしたら、このなかに混じってるんじゃないかなんて、思っちゃいけないんだ。
何度もそんな行動と思考を繰り返して、ようやく最後のひとりになった。
「いやぁ李衣菜ちゃん、かわいいよねぇ、ルックスもいいしさぁ、俺の推しメンにしたよ」
「ありがとう、ございます」
私を応援してくれるファンのためにがんばろう、って理由はきっと立派で褒められるものだ。
それらしい理由を付けておけばいつかそれが本心にすり替わって、からっぽも埋まるかもしれない。
握手会の仕事をしている自分なんて少し前までは想像すらしてなかった。
今こうしてアイドルの仕事をしている多田李衣菜は、きっと誰からも責められないし羨ましがられるものなのかもしれない。
なにも間違ってない行為をしているのかもしれない。
「いやぁ、それにしても」
なのに。
目の前のファンの人がなんの影もなく笑った。笑いながら言った。
「以前は佐久間まゆの熱心なファンやってたけどさぁ、あんな恋愛スキャンダルあったでしょ、ほんと裏切られた気分だよ。グッズとか全部燃やしてネットにアップしてやったんだけど」
「……」
「あぁほんとにあんな奴に金注ぎこんで楽しんでた過去が自分でもバカらしいよ。あ、でもいまは李衣菜ちゃんに乗り換えたよ、安心してね」
「……」
なのになんで、こんなどうしようもなく息苦しいんだろう。
「どうして……」
「は……?」
どうして、どうすれば、そんな簡単に大事なことを、大切なひとを忘れることができるの?
どうすればそんな平気で笑い飛ばすことができるの?
「えっ、李衣菜ちゃんいきなり固まっちゃってどうしたの? おいおい困るなぁ、ちゃんとお仕事してよ」
私はやっぱ忘れらんないよ、忘れるなんてできるわけない。
私が間違ってるの、私がおかしいの。なにもかもを捨てきれないんなら、どうすればいいの。
出口がなくてぐるぐる回り続ける自問自答。心の弾力が失われていく感覚。
割り切れない感情だけが処理できずに溜まって、淀んでいく気がした。
あと2~3回の更新で終われれば
長かった
乙
超スーパーすげえ風刺どすばい
期毎に嫁が変わるからな
相変わらずギリギリなとこ攻めてきますね…
リアルのアイドルファンとかはほんとこんな奴いそう
いやアイマスファンにも結構な数いるやろ
赤羽根武内PからSideMまで過剰敵視する層
その部分なのか?
乙です
みくにゃんって圏外まで落ちるか?残りそう
しぶりんと同じくらいの順位だからさ…
>>206
過去スレでな…
ちらっと名前は出てきたけど順位については別に言われてない
346のために頑張ってるとは言われてたけど
おつ
関係ないけど今回しゅがはさんめっちゃ健闘してるよな
義務のような仕事を終わらせて帰り支度を整える。
あれほど望んでたアイドルの活動になんの抑揚も感じてない自分に気づいて、嫌気が差した。
このままだとどんどん嫌いになってく気がする。自分も周りもなにもかも。
だけど負の感情の止め方がわからず、あわせて投げやりな気持ちが膨らんでいく。
手当たり次第に適当に手荷物を放り込んでドアを開けようとした。
「ちょっと待つにゃ」
引き止める声。私は振り返らずにつづく声に耳をかたむける。
「李衣菜ちゃん、最近なんかおかしいよ。お飾りのギターもここのところ持ってきてないし、お仕事だってすぐ帰ろうとするし、ちゃんとライブのための練習してるの?」
「……べつに、なにもないよ」
会話をはやく切り上げたくて当たり障りのない言葉を返す。
みくに相談したとして、なにが解決するんだろう。喧嘩になるのもおっくうだし、慰められるのだってもういらない。
なんの状況も知らないみくに言葉をかけられたところでもまた無駄になるでしょ、という気持ちが色濃かった。
本当はどんなものにもすがりたかった自分がいたけど、必死で否定した。色々かっこ悪くすがった結果が今なんだ。
「346プロがこんなことになって大変な気持ちはわかるよ、でも今はみくたちが張り切らなきゃ、プロデューサーだって頑張ってるし、ネコちゃんは飼い主とお世話になった家をなかなか忘れないのにゃ」
「……」
みくは数えきれないほどのオーディションを受けて、何度も選考から落ちた。一握りの受かる人がいて、その何倍も落ちる人がいるシビアな世界。
どう足掻いてもアイドルになれなかった子たちだってたくさん見てきた。私とみくはなにかもちがう。だからこんな総選挙のなかでも平気でいられるのかな。
でもそれって強さなの? 痛みに慣れちゃっただけじゃないの。あのファンの人みたいに、平然とだれかを忘れちゃう術を身に付けただけじゃないの。
私はなにも知らないからへらへら笑っていられる自分に戻りたくなかった。知っていてなおすべてを開き直って笑えるようなだれかにもなれなかった。
「あ、えと、もしかして反体制がロックだーなんて言うつもりかにゃ、そ、それよりいつもみたくお気楽な李衣菜ちゃんのが似合うよ」
「……」
「っ、李衣菜ちゃん、なにも言わないとわからないよ、李衣菜ちゃんってなに考えてるか全然わかんないんだもん……」
「……」
どろどろした感情から、この一方的な会話をすぐに終わらせる台詞が浮かんだ。
言っちゃダメだって思った。
「ほら李衣菜ちゃん、お得意のロックって、言ってみせ──」
この言葉は言っちゃダメだって、わかってたはずだった。
「っ……みくちゃんなんかに、私のきもちなんてわかるわけないでしょっ!」
……。
なんであんなこと言っちゃったんだろう。
私はなにかを選ぶのにも体力が必要なことを知った。
いやな感情に振り回されて、抵抗することができない。
李衣菜ちゃんらしくって、そんなこといわれても。私の立ち位置なんてもう自分じゃわからない。
教えてくれるのは、数字しかない。30位っていう順位。でもそんな順位に特別な意味があるとは思えなかった。
一番を目指すわけじゃなく、なにかを成し遂げたいわけじゃなく。実感がないまま与えられた数字。
スポットライトが焚かれる。スタンバイおねがいします、というスタッフさんの声がかかる。
ステージでの歌の仕事。リハーサル中のBGMとしてロックのメロディが流される。
とくん、と鼓動が速くなった。夕焼けとベンチを思い出す。聴きたくない。耳をふさぎたくなる。
すいませんこのBGM止めてくれませんか、そう声に出そうとしたけど、できなかった。
目の前にどこか見覚えのある人がいたからだ。
楽器を抱えて。
ジャケットを羽織って。
きっと演奏のために髪をまとめあげて。
この場所にいるはずのない人がいたから、私は喉から音を発することができなかったのだ。
「あれ、346プロのアイドルの子だっけ、夏樹がよく話してた、そっかぁ今日はきみと仕事なんだぁ」
えっと、ごめん名前忘れた、と利き手で頭を掻く動作。すこし遠目からでも楽器の区別はついた。
ベースだ。他のプロダクションの、あの日なつきちとセッションをしようとして足をすべらせて舞台から落ちた人。
「やっぱ346プロとは付き合っとけって言われてさぁ、困るよねぇ、上からの指示でこっちは右往左往しちゃって」
気だるそうな溜息をひとつ吐く。ジャケットを脱いで、かるく手を振って伸びをして、演奏のためにセッティングをする。
あの時かばった利き手には包帯もなにも巻かれていない。なにもなかったかのようにベースを弾こうとする。
理解しきれないまま、私は言った。
「なん、で、麻痺は、もうベースはまともに弾けないんじゃ」
「ん、あぁ。ごめんごめん、あれ大袈裟でさ、本当はちょっとリハビリすればそんな大したことない怪我だったんだよね」
「え、」
「でもさぁ、骨折したわ痛かったわで散々だったでしょ、だからついムカついて言いすぎちゃった部分もあって」
BGMでは軽快なロックが流れていた。
「あの頃は346プロへのバッシングが一番のトレンドだったってのもあるでしょ、上からもあれこれのせられてさ、ほら自分でも命令に断れない部分もあったんだよね」
はじめてロックのCDを手にとったときの、洋楽だった。
「だから、どうすんだよ、一生を台無しにしたじゃんか、取り返しつかないじゃんか、謝れよ、なんて病院で責めちゃって、今思えば悪いことしたよなぁ、夏樹のあんな顔初めて見たし」
その曲は変わらずに“LOVE”とか“NEED”だとかを惜しみなく叫んでいた。
なつきちの言葉を思い出す。ロックはソウルで奏でるもので、真実を歌い続ける、なんて。
「あぁ全部言い切ったらスッキリした、ずっともやもやしてたんだよね。ところで夏樹は元気にしてる?」
なにそれ。笑えてくる。
こんなの嘘っぱちだ。ロックをありったけに信じていたとしても、なにも届かないじゃないか、なにも救わないじゃないか。
愛だとか、必要だとか、運命だとか、どこにもないじゃないか。
「それじゃなんのために、なつきちは……」
「ほとぼりも冷めたしさぁ、ちゃんと今度は謝っとくよ、だから暇になったらアポとってくれない?」
「……けないでよ」
「え、なに?」
「……ふざけるなぁっ……!」
涙がでそうなほどの悔しさが込み上げてきたのに、私はただ喚くだけでどうすることもできなかった。
おおつ
ぼんやりと夜道を歩く。街頭の灯りがちかちかして煩わしい。
仕事を途中でサボったのは初めてのことだった。
思えば、なんで私は今まで律儀に仕事をこなそうとしてたんだろう。こうしていざ放り投げてしまえば、あっけない。
今ごろ多忙を極めてるプロデューサーにも連絡がいってる頃だろうか、みくにはもう知られていてきっと怒ってるにちがいない。
そんなの、どうでもいいよ、とわざと口に出して言った。
胸の穴が広がる感覚がする。じくじくと鈍い痛みがする。いっそなにも感じないほうが楽なのに、そう願ってもだめだった。
「あれ、李衣菜じゃん、こんな夜中になにしてんの?」
肩を叩かれて、振り向いたらクラスメイトの子がいた。
この子の瞳がどんな色をしているのかもうわからない。
朝礼前に取り囲まれた出来事が、どこか他人事のように思えた。
「ねぇねぇ、アイドルの仕事どうなの? じつは私もアイドルになりたかったけどさぁ、可愛くないから無理だったんだよねぇ」
「……」
「李衣菜はいいよねぇ可愛いし、才能あってさ、私はふつーの高校生活のストレスだけでやんなっちゃうよ、もう」
そう言って、クラスメイトの子は辺りをきょろきょろ見回してからバックの底を漁って、小さな長方形の箱を取り出した。
秘密ね、と片目でウィンクしてライターを取り出す。箱から一本の煙草を抜き取って、火を点ける。
はぁたまんない、と笑顔の形をした口元から灰色の煙を吐き出した。
私はその光景をなんにも言えずにただ曖昧な気持ちで見つめていた。
「……」
この子に言われた言葉を思いだす。
アイドル薦めたの、間違いだったんじゃないかなぁ。そんな言葉。
「……間違い、だったのかなやっぱり、私がアイドルになったのって」
聞こえないように呟いた。声にだしてみたらなんだか実感がともなった。
私は結局なんの答えも見つけられないまま。
このとき、もうアイドルを辞めようという考えが頭をよぎった。
煙草をくゆらせながら何か愚痴のようなことをひたすら喋っていたクラスメイトの子が、不意に私に視線を向けた。
灰を指でとんと落として、首をかしげてその子は言った。
「えっ、李衣菜、どうしたのそんなじっと見つめて。もしかしてこれ吸ってみたいとか?」
「……私、は」
ポケットのなかで携帯電話が振動する感触がした。
……。
きてたか
頑張ってくれ
アイドル多田李衣菜が学校の友人と煙草を吸っていた、という噂が画像と共にネットでにわかに広まったのはそれからすぐだった。
写真には、クラスメイトの子が私に煙草を勧めている姿が映っていた。
ネットの書きこみを確認すると、私を批難するたくさんの言葉が目に飛び込んだ。
──多田李衣菜もいよいよロックを勘違いして大変なことをしでかしたな。
──りーなは思慮が浅いからいつかはやると思ってた。
──佐久間まゆに続き裏切られたのは二度目だ、握手会でも態度が悪かったし、炎上させてやろうぜ。
みくからは一切連絡がきてない。もう会うことはないのかな、と思った。いつもの喧嘩とは違って、取り返しのつかないことだと思った。
仮に言い訳したところで、主張したところで、それが通らなかったら、現状が変化しなかったらする意味なんてない。
私はどこでなんの選択をしていればこんなことにならなかったんだろう。わからない。今となってはもうなにもかも手遅れのように思えた。
電話がかかってきた。液晶にはプロデューサー、と記されていた。
この電話に出て、ひとこと、アイドルを辞めるよ、といえば全部終わると思った。
言葉にしてしまったら、きっとぎりぎりで張りつめていたさいごの糸がぷつんと途切れてしまう。
あとは流れに任せれば、責任とか、処遇とかは私じゃない誰かが決めてくれる。散々迷惑かけて、こんな結末、救いようがないなぁ。
また、私がいま立っている街のどこかからロックのメロディが流れていた。
キライ、なメロディ。
「……」
なんて。
私は、心のどこかでは気づいていた。わかってるはずなのに、真っ暗闇に引きずられて、抜け出せない。
嘘なのは、本当はロックじゃないんだ。本当はロックをキライになったわけじゃないんだ。変わっちゃったのは、きっと私のほうで。
本当は、宙ぶらりんのまま、中途半端で、どこにも振り切れず、ひたすら周りをキライになるフリをして、迷惑かけて、なのになにもできないでいる無力な私が。
キライなのはなによりも、私自身なんだ。
──多田さん……。
携帯を耳に当てる。プロデューサーの野太い声を久々に聞いた。
言おう、結論から、すぐに言ってしまおう。だってこれ以上アイドルを続けようとしても、きっと、私には、もう。
「プロデューサー、あの、ごめん、色々あるだろうから、すぐには無理だろうけどさ──」
なにかを見つけることなんて、できない。
「でも、もう私は無理だよ、私さ、もうアイドルを──」
──待ってください。
「えっ?」
──あの噂は、本当に、すべてが真実なのでしょうか? その日に仕事を中断したのにも、なにか理由があったのではないでしょうか。
「……」
──……現状がこうなってしまっているのは、私の責任でもあります。本当はあなたと面と向かって話したいのですが、すぐにはそれもできずに、申し訳ありません。
「……」
──こないだ提案していただいた多田さんと別の方との仕事の件も、一人枠を増やしてもらうという形で粘ってみたのですが、申し訳ありません、力及ばずに……。
「……私、わがままばっかり言って──」
──多田さん、あなたが心から望んで、笑顔でその選択をするのでしたら私に止める権利など最早ありません。ですが。
「……」
──もし、まだひとかけらでも思うところがあるのでしたら、前川さんと会って、対話していただけないでしょうか。
「……みくちゃん、と?」
──私を信用していただけなくても構いません、ですが前川さんのことをあと少しだけ、信じていただけませんか。
「……」
──どうか、それから、選択をしていただけませんか。
夜になってから寮へ向かった。とても冷えた夜だった。
三日月がうすぼんやり浮かんでいて、寮の入り口へつづく道をかすかに照らしている。
一歩一歩、進むごとに、気分がだんだんと沈んでいく気がした。
みくと最後に会ったのは、握手会のとき。あのまま叫んで私は飛び出した。会話はそれっきりだった。
また今からみくと会うのに、会話の用意をなにもしていない。結局、握手会のときの繰り返しになるかもしれない。
あの日から私たちは進展もないまま、むしろ状況は悪化しているのに。
みくが、なんの答えを出して、くれるの。
ここまで進む足を止めなかったのは、プロデューサーがいうように心の奥深くにひとかけらの思うところがあったからかもしれない。
寮の壁をさわるとほんの少しだけ、ここで笑い合っていた頃を思いだせた。だけどこの寮も、もうすぐなくなって消えちゃうんだって思うと、夜がいっそう濃くなった気がした。
かすれて、踏まれて、擦り切れっぱなしの思い出。真っ黒になって見えなくなる。
入口で立ちすくむ。
「……」
暗がりの広がる廊下には誰もいない。アーニャちゃんもまゆちゃんも、小梅ちゃんも。
この暗闇を進んだ先に、なにがあるんだろう。私はこのまま、帰ることもできる。
迷っていた。迷えば迷うほど、深みにハマっていく気がした。必死に蓋をしていた、ネガティブな気持ちがじわりと浮かんでくる。
ふと、右上から二番目の靴箱が視界に飛び込んだ。
そこには“にわかロッカー専用”と落書きがしてあった。いつのまにか付け足されていた、まるっこい文字だった。
また少しだけ過去を思いだして、なぞるように靴をそこに入れた。
このまま、なにもせずにアイドルを終わらせることができたのに、それをしなかったのは、
みくの部屋までなんとか辿り着けたのは、たぶん、何というか、私が自分自身の手でここで残していた思い出のおかげだったんだと思う。
なんだかおかしな話だけれど、私は、多田李衣菜を思いだすように、なんとか動作をこなしていった。
ネコマークの表札が引っ掛けてあるドアがなつかしい。
何度か、浅く深呼吸をしてドアノブに手をかける。
かける言葉をまだなにも持ち合わせてないまま、曖昧な気持ちで体重を前にかけると、ゆっくりとドアが押し開いた。
「みくちゃ──」
震える声で、言いかけた台詞はそこで途切れた。
みくの姿がどこにもなかったからだ。
ピンクを基調とした部屋。ネコのマグカップ、カレンダー、招きネコ、そしてピンで刺さっているロックのポスター。
窓は開かれていて、冷たい風が吹き込んでくる。
みくは、こんな夜遅くに、どこに行ったんだろう。鍵を開けてるってことは、すぐに戻ってくるはずだと思うけど。
ふと、風で揺れているなにかがテーブルに置いてあった。
みくがいつも仕事のためにと書きこんでいる手帳が開かれたまま、そこにあった。
手帳にはまるい文字で、李衣菜ちゃんのばか、とだけ書かれていた。
ぼんやりと、その短い文章を眺めた。
握手会で思わずみくにぶつけた言葉を思い返す。みくちゃんなんかに、私のきもちなんて……。
はらりと、手帳のページがめくれた。
──今日は風の強い日だったから、飛ばされないようにしてあげた。毎日かかさずにお祈りをしてあげる。
「えっ、……」
そこで、私は初めて気づく。
みくが大事に持ち歩いていたポケットサイズの手帳は、日記の役割も兼ねていて。
だれにも明かさない、胸に秘めているまっさらな想いが、綴られているものだった。
がんばれ>>1
乙
休日使って前2作も含めて一気に読んだよ。
続きを心待ちにしてるから、無理せず頑張ってくれ…!
最初の日記は、私の記憶が薄れきって、断片でしか思いだせないくらいの日付から始まっていた。
『346プロのオーディションに合格した。嬉しい。本当に嬉しい。ずっとずっとこの日を夢見てた。
ちっちゃなころからテレビの前で踊るアイドルの子をかじりつくように眺めてた。チャンネルはぜったいにゆずらなかった。
いつかみくもこの人たちみたいにフリフリの衣装で、笑顔を振りまくアイドルになるんだ、そう思わない日は1日だってなかった。
マジメにやっていれば、きっとみくを見てくれる人がいるって信じてた。つらいことだって乗り越えて、ここまできたよ。目指すはトップアイドル!
一番になるためには努力あるのみ。これから毎日、日記をつけることにする、にゃ』
それからきちんと毎日、1日もかかすことなく日記がつけられていた。
ページをいくつかめくる。私の名前が出てくるところで、指が止まった。
『多田李衣菜ちゃん、あの子はほんとにありえない。せっかくのメンバーとの初対面なのに、なにもかもぶち壊し。
なんなの、ロックって。そんなのよりぜぇーったいにネコちゃんアイドルのほうが流行るにゃ。あぁ、もうあの子とは絶対気が合わない』
シンデレラプロジェクトが始まった時や、みくの立てこもりを反省する記述が、まるっこい文字で書かれていく。
なるべく楽しいことを、とすみっこに一言だけ書いてあるページがあって、その通りに日記はつづいていった。
『李衣菜ちゃんとユニットを組むなんて思ってもみなかった。むむむ、まぁ仕方ないのかな。どうやら悪い子じゃなさそうだし、わりとアイドルの才能もあるのかも、この子。
ロックの才能はわからないけどにゃ~(笑) みくが思う李衣菜ちゃんの李衣菜ちゃんらしい才能については調子にのるから、教えてあげない。
それにしても、アイドルって楽しい! シアワセ!』
日記の日付が、346プロのデータが抜き取られた噂が立ちはじめた頃にさしかかる。
『イヤなことは書かないって決めたけどちょっとだけ。すこしだけ、不安になった。346プロはこれからどうなっちゃうんだろう。
単独ライブだってやれるかわからない。こんな状況でも能天気にギターを弾いてる子がうらやましい。こんなこと隣で書いててもどうせニブいから気づかないんだろうけど。
きっと大丈夫、か。まるで根拠のない言葉だったけれどまぁ少しだけ、楽になった、かも』
私がなつきちに会う前に、ギター教本で練習してた頃だった。そういえばそんなことを言った気が、した。
日付は、出会った頃へ。
『最近、李衣菜ちゃんのギターが上達してる気がする。秘密にしてるけど、どこかで特訓してるのはバレバレだ。まぁそれでものせられてあげようかな
ロックはこれっぽっちも興味ないけれど、少なくとも笑顔はアイドルにとって欠かしちゃいけないものだから。李衣菜ちゃんは、合格。
それにしても、もうちょっと指に立派なタコでも作ってからロックがだいすき!なんて叫ぶべし(ネコマーク)』
『李衣菜ちゃんにまゆちゃんのことについて聞かれた。はぁ、事務所がこんな大変なのにいつも通りって李衣菜ちゃんとまゆちゃんくらいだよ』
『にゃああ! 一ノ瀬志希ちゃんに出会ったにゃあ! なにこの子、ネコキャラ被ってるにゃあ! 困ったにゃあ! このままじゃみくのアイデンティティがクライシスにゃあ!』
文章から、作品やキャラクターへの愛情が滲み出ていてとても好きです。無理せず更新してください!楽しみに待ってます
並ぶ文字を眺めていると、ハートマークがちりばめられたページにさしかかった。
『李衣菜ちゃんがネコちゃんを拾ってきた! 真っ白なネコちゃん! 白ネコちゃんは幸運の象徴なのだ。家を守ってくれる、とってもありがたい子なのだ。
みくはネコがだいすき。子供のころ(今も子供だけど)から近所のネコちゃんといっぱい遊んできた。あの頃はネコちゃんたちの言葉がわかったんだよ。
誰も信じてくれないけど。でも、その時の無邪気な気持ちを忘れないように、みくはネコキャラをやってたりする。け、けっして売れるための苦肉の策じゃないにゃ(汗)
とにかくネコちゃんパワーのおかげでみくは今アイドルをやれてるんだよ。明日はこの子を病院に連れていってあげる。今日の日記はこれでおしまい』
……そう、だったんだ。みくがそこまでネコにこだわる理由がわかった。
そんなみくに、バカみたい、なんて私は言っちゃったんだ。ちくり。痛い。胸の奥が痛い。
もう勝手に人の日記を覗くのなんてやめよう、と思ったけれど、それでもめくる指を止められなかった。
ずっと引っ掛かっていた、みくがどんな気持ちで過ごしていたのかを知れるのは、きっとここにしかない。今を逃したら二度とわからなくなる。
ごめん、と心の中で謝ってから、次のページをめくって。
そのまるっこい、だけどかすかにゆがんだ文字を読んで。
まっさきに浮かんだのは、みくの笑顔だった。
『お医者さんに言われた。白ネコちゃんは元々は飼い猫だった。この子は、捨てられたんだ。飼い主に見捨てられて、野良猫の群れにも混じれないでふらふらと彷徨ってたんだ。
もう長くないだろう、って言われた。この子はなにも悪くないのに、どうしてそんなひどいことができるんだろう……──』
浮かんだのは、大事にしてあげようね、ってネコを抱きながらいった、溢れるようなみくの笑顔だった。
『──……寮で飼うことに、決めた。この子はみくとおんなじだ。捨て猫ちゃんで、ぼろぼろになっても、やっと安心できる場所を見つけたんだね。
幸運の白ネコちゃん、みんな(約一名除く)落ち込んでいるから、これから346プロを元気づけてあげてね、守ってあげてね』
『白ネコちゃんがにゃあにゃあしてくれてるおかげで、みんな少しだけ元気を取り戻した気がするんだ。それと、李衣菜ちゃんが寮にくるとちょっとだけみんなが和む。
ギターソロ覚えたから聴いてよー、なんて。当の本人は気づいてないだろうけど、まぁ、猫の手を借りたいくらいの大変な時期に、ノーテンキにただ過ごしてくれてるだけでも、ご利益ってのは案外あるものなのだ。』
『総選挙が始まった。不安だけど、怖いけど、みくはやる。トップアイドルになるために、みくはここまでやってきたんだから。それに346プロには一宿一飯どころじゃない恩があるにゃ
どれだけ変わっちゃっても、Pチャンと、アイドルのみんなと過ごした思い出は、ここにしかないから。白ネコちゃんに猫缶をあげにいく。なんだか最近、あんまり元気がない気がする』
私は、みくを思いだしていた。
総選挙が始まってから、適当に、ないがしろに扱ってしまっていた私のユニットのパートナーを、ゆっくり、ゆっくりと思いだしていた。
『ネコちゃんが』
ある日の日記が、突然そこで途切れていた。
ここで、この先を読まずに帰ることもできた。
ここじゃなくなって、いつだって、私は中断することができた。
『ネコちゃんがいなくなった。ネコが前触れもなく突然、ふっと姿を消す理由。みくは知ってた。
体調の悪さを周りに悟らせないようにする動物だから、中々気づけないことがある。でもすぐにわかった。
お仕事の帰りに、ネコちゃんの気持ちになってこっそりとあの子の姿を探した。路地裏とか、寮の裏のゴミ捨て場とか。明日はお休みだから、一日中探すことにする』
それでも、私はページをめくった。
『ネコちゃんの姿をみつけた。泣いた。いっぱいいっぱい泣いた。ツラいことは書かないって決めたはずなのに。だめみたい。
ひとりぼっちにならないようにしてあげた。すぐには気づかれない場所へ。みんなに話すのは、事務所が落ち着いてからにする。
その代りにこれからみくが毎日、お祈りをしてあげることにした。幸運の白ネコちゃん、これからもここを守ってあげてね』
……。
同じだったんだ、と思った。
失っていたのは、みくも同じだったんだ。
それなのに、私はなにも見てあげられてなくて。
『今日もお祈りしながら、ちょっとだけ泣いた。ちっちゃいころに、近所のネコちゃんに聞かれたことがある。人はどうして涙を流すのかにゃ、って。
人の世の中にはね、大変なことがいっぱいありすぎるから、だから哀しみに溺れちゃわないように、人は涙を流すんだよって、みくは答えたんだっけ。今思えば、ませた子供。
こうも答えた。だけどね、それは明日、笑うためなんだよ、って。
もう哀しむのは、これでおしまいにする。みくは、笑うのだ。ツラいことだって乗り越えて、笑ってみせるのだ。だってみくがテレビの前でみた憧れのアイドルは、いつも笑っていたから』
『ネコが突然、姿を消す理由。教えてくれたことがある。どうか私のために悲しまないで、強く生きて欲しいから、だって。大事にしてくれた人には、弱いところ見せたくないんだよ、だって』
今、気づいた。思いだすのは、笑顔ばかりで。
みくはいつも笑っていた。失っていても、私の前でいつも笑顔だったじゃないか。
それはきっと、ちゃんとしたみくの強さで。それなのに、私はひどいことを言っちゃって。
『李衣菜ちゃんの様子がちょっとおかしい。全く手の焼けるパートナーにゃ。ほんと、なに考えてるのかわかんない。
能天気で、お気楽で、無防備で、にわかで、変な背伸びしてて、カッコつけで。
おばかかと思ったらわりと意表つくとこがあって、ひねくれてるのかと思ったらやけに素直なとこあって、そこがまた無性に生意気に思うときがある。
でもまぁ、そんな李衣菜ちゃんでも、たまには居てくれて役立つとこがあるのだ。こんなこと、悔しいから絶対に本人の前では言ってあげないけど。
李衣菜ちゃんは、なんかほっとけないとこがあるのだ。それが李衣菜ちゃんの李衣菜ちゃんらしい才能だと、みくは思う。みくの相方は、自然に人を惹きつけるなにかがある。
李衣菜ちゃんの周りにはいつも色々なものが集まってくる。あの白ネコちゃんが李衣菜ちゃんを選んだのにも、理由があるんだと思う。動物に好かれる人に、悪い人はいないっていうし、もう少し世話を焼いてあげようかな』
日記がもうすぐ、終わろうとしていた。
『ムカつく。みくのメッセージ、無視されてる。お仕事の打ち合わせだけじゃないのに。仕方ないから、励ましのメッセージも送ってあげようとしてるのに。
あぁもうなんなの。久々にお手製のハンバーグが食べたい、なんて絶対に思ってあげない。直接会ったときにうまく話せるかな、アスタリスク解散!とだけは言わないように気を付けておく』
『みくちゃんなんかに私のきもちなんてわかるわけない、って言われた。なにそれ。もう知らない。みくは李衣菜ちゃんのお母さんじゃないんだけど。もういい。一人でエアギターでもやってにゃ』
『……反省。そんなんじゃないよね』
『お祈りしながら、反省。この子が最期に安らかに眠れたのは、李衣菜ちゃんのおかげなのだ。仕方ないからもうちょっとだけ愛想を尽かさないでおいてあげる』
『李衣菜ちゃんが仕事をサボった、どんな理由でもお仕事を休むのはプロ失格だと思う。思いっきり怒りたいけど、怒れない。
そもそも連絡が繋がらないし、理由を聞いてから怒ることにする。しょうもない理由だったら、許さないから』
『今日は風の強い日だったから、飛ばされないようにしてあげた。毎日かかさずにお祈りをしてあげる』
『一ノ瀬志希ちゃんが教えてくれた。李衣菜ちゃんが悩んでたことについて。木村夏樹チャンのことについて。ごめんね、みくも何も知らなかった。一度ちゃんと話し合おうって思った。
だけど携帯が繋がらない。事務所にも来ない』
『李衣菜ちゃんが、煙草を吸った。信じたくない。けれど写真まであった』
『李衣菜ちゃんのばか』
……。
「……」
日記を読み終えて、瞼をぎゅっと閉じた。歯をきりきりとくいしばって拳をきつく握った。こみあげてくる何かを感じた。久々の感覚だった。
気づくのは、いつだって台無しになってからだ、って思った。言葉はいつだって心の一歩手前だ、って思った。
どれだけ抵抗したって、手を伸ばしたって、届かないことがあって。ここに来るまでに取りこぼしちゃったものがたくさんあって。
闇雲に走っていたら、いつのまにか突き放していたものがあって。一人で後悔をたくさん重ねてきた。今だって後悔してる。
私は苦しみに目を向けてばかりで、こんなに近くで私を思ってくれてた友達がいることに気付かなくて。
とても、後悔してるんだ。こみあげてきた何かが喉までせり上がったときに、体が勝手に立ち上がった。
「……っ!」
私は探さなくちゃいけない。今すぐ、会いにいかなくちゃいけない。
ロックの掛かっていないドアを押し開けて、誰もいない廊下を駆け抜けて。
「……みくっ!」
真夜中にその名前を叫んだ。
……。
今、走っているのは、まぎれもなく私の意志だ。
みくに会わなくちゃいけないと思ってるのは、義務でも責任でもなく、私がそう望んでいるからだ。
だって、私はこんな終わり方じゃいやなんだ。
「みくっ!」
誰に言われたわけでもなく、胸の痛みを引きずったまま、私は無我夢中にみくを探した。
伝えたいことがあるんだ。どうしてもみくに伝えなくちゃいけないことがある。
たとえそれが自己満足だったとしても、自己完結で終わらせちゃいけないんだと思った。
結果的に、なにも伝わらなかったとしても、なにも届かなかったとしても。
それでも伝えることを諦めちゃだめなんだ。
「っ、みくっ!」
世の中からどれだけ理不尽を強いられても、どれだけ間違いだらけだったとしても、
それでも目を背けちゃだめなんだ、耳を塞いじゃだめなんだ、この口で叫び続けなくちゃだめなんだ。
「っ……み、くっ!」
おわりはいつだって突然くるものだから、大切なものはいつか失ってしまうかもしれないから、
だから、ありがとうも、ごめんねも、さよならも、伝えられるうちに全部伝えなくちゃだめなんだ。
「はぁ……ッ……みくっ!」
16ビートで鼓動が刻む。
やっとわかった。私なんだよ。答えは、私が選ばなくちゃならない。
なにが正しくて、なにが間違っているかなんて、何処の誰にもわからないから。
きっと誰も教えてくれないから。
だからこそ、自分自身で絶対に後悔しない道を選び続けなきゃだめなんだ。
私は、この気持ちを二度と忘れない。もう無くしたりなんか、しない。
何十回だって、何百回だって、何千回だって、私は本当の自分の気持ちを伝え続けるよ!
走り回って、探し回って、みくの姿を見つけたのは、24時をとっくに過ぎたころだった。
建物の隙間を抜けていって、人目につかないようなちいさなちいさな草むらにぽつんとお墓のような石が建てられていた。
石の前で、うずくまって手を合わせているみくの後姿があった。
息を吸い込んで、何回も叫び続けた名前を呼んだ。
「みく……」
ぴくりと、みくの背中が震える。
こんな時間までずっと、ここにいた意味に想いを寄せる。
私は自分の声で、ちゃんと伝えなくちゃいけない。
「何しに、来たの」 振り向かずにみくは応える。
「……みく、ごめんね」
「……」
「私、さ、気づいてあげられなかった。嬉しいことだって、悲しいことだって半分こするのが、ユニットなんだよね、そう言ったことあったよね」
「……」
「なのに、なにも見てあげられてなくてごめん、本当にごめん、無視してたメッセージもちゃんと全部読んだから」
「……今さら言ったって、なにもかも遅いよ。李衣菜ちゃん、取り返しのつかないことしちゃったでしょ」
「……」
「みくは、許さないから、もし噂が本当だったら、絶対に許さな──」
「吸ってないんだ」
「えっ、……」
「吸ってないんだ、私は一本も。未成年で煙草なんて、やっぱビビっちゃってさ」
「……っ、なに、それ」
「ごめんね、誰も信じてくれないだろうけど、それでもみくにだけは本当のこと、知ってほしかったから、ここまで探しにきたんだ」
「……」
「今思えば、多分さ、みくのおかげなんだよ」
「……みくの、おかげ?」
「あの時さ、メッセージ送ってきてくれたの、みくだよね。出なくてもわかった。あの時間に連絡してくるの、みくしかいないから」
「……」
「ストップがかかったんだよ、無意識で。みくがこういうの絶対許さないだろうなって」
「、そんなの、当たり前でしょ」
「うん、ありがとう、みく。私、当たり前のこと忘れてた、思いだせてくれたのは、みくだったんだよ」
みくの背中が、かすかに震えているのがわかった。
「こんなこと言っても、何も変わらないかもしれないけどさ、私のことだって、みくはもう嫌いかもしれないけど」
喧嘩ばかりしてきて、お互いに素直に気持ちを伝えられない相手。
でも、今だけは、わだかまりなく伝えられるかなって思った。
「みくも、私にとってかけがえのない、大切な人だから」
見上げると、三日月がまだあった。
キレイだなって思った。
たっぷりと時間を溶かしていく間に、少しずつ胸の痛みが引いていくような感覚がした。
「これから」
みくの震える声が聞こえて視線を戻す。
「これ、から、李衣菜ちゃん、どうするの?」
「……なにも考えてなかった、総選挙まだ、あるよね」
「みくは、絶対に、許さないから」
「……うん、そっか、ごめんね、みくにも迷惑かけるだろうし、やっぱりこんなことになったら続けられな──」
「違うよ。そんなの許さないから」
「えっ?」
「みくだけ本当のこと知っていればいい、とか、そんな独り善がり、認めない、から」
みくは立ち上がって、拳を握って言った。
「証明、してみせてよ。李衣菜ちゃんは正しいって。間違ってないって。いつもみたいに自分の信じたものが、ロックだなんて恥ずかしげもなく言い張ってみせるみたいに……っ!」
みくが振り向く。久々に私たちは顔を合わせた。
みくは、涙を流していた。とめどなく溢れる雫を拭おうともせずに、みくは叫んだ。
「……っ……みんなにちゃんと証明してみせてよっ! っ、このままでなんて、絶対に終わらせないから! それまでっ! ど、こっにも逃げさせないからぁ!」
感情が塞き止められないみくは、ずず、と鼻水をすすった。
みくらしくない、しわがれた声だった。どこか聞き覚えのあるよう、な。
「……ふっ、うぐっ……あー、もー泣かないって決めたのに、つかえが取れたら急に、ほんまに、なんなのっ……!
「……みく」
「っ、だって仕方ないにゃ! 乗り掛かった船にゃ! みくの相方なんだから、嬉しいことも、悲しいことも半分こしてきたんだから……!」
「……みくってさ、感極まるとちょっとだけ関西弁になるんだね」
「っこ、この状況でなに言ってんの!?」
「みく、だったんだね、いまさら気づいた、あの子はみくだったんだ」
そっか、目指す場所は違うと思ってたけど、いつのまにか同じステージに立ってたんだ。
アイドルをなにも知らなかった私の背中をそっと押してくれた子。
いつだって、みくは知らずに私の背中を押してくれていたんだ。
そんなみくに、ありがとうを伝えられた。ごめんねも伝えられた。
さよならは、言わないで済んだ。
……。
「李衣菜ちゃんの、ろくでなし」
「……ロックだけに?」
「……ばーか」
それから私たちは夜が明けるまで、話し合った。
お祈りをして、なつきちのことを打ち明けて、単独ライブが目前に控えてることを思いだして慌てて。
プロデューサーにネットの噂について釈明したいって連絡して、お仕事をサボったとこにちゃんと謝りにいこうと思った。
今からでも取り戻せるものがあるんだとしたら、足掻いてみようと思った。
家に帰ると、乱暴に剥がしたポスターをまた張りなおして、プレーヤーの電源を入れた。
そして、そのままにしていたなつきちに貸したCDの山に手をかけた。
1枚1枚、思い出すようにジャケットを眺めていると。
「あ、れ……?」
知らないジャケットが混じっていることに気付いた。印字のない真っ白なケース。タイトルもなにも書かれていない。
開くと1枚のCDが入っていて、ラベルには、直筆でこう書かれていた。
『新曲 親愛なるロッカーに捧ぐ歌』
「なつきち……?」
それは、私が私らしくいれば、すぐに気づけたものだった。
ヘッドホンを耳に当てて、流れてくるメロディを聴く。
自然と、ひとすじの涙が頬を伝った。
その瞬間、堰をきったように押しとどめていた感情があふれ出して、ぼろぼろ泣いて、あぁ私は結局また戻ってきちゃったんだな、って思った。
15歳の頃の私に。ロックが底抜けが好きだった私に。どれだけ鍵をかけて閉じこもろうとしても、否定しても、私は私だった。多田李衣菜は、多田李衣菜だった。
「なつ、きち、これ名盤だね。一曲しか入ってないけど」
色んなとこを遠回りして、巡りめぐって、結局は……。
私のからっぽを埋めたのは、ネコとロックだった。
…………。
……。
…。
…………。
……。
…。
「……んん」
空を見上げていたら、いつのまにか眠っていて、夢を見てたみたい。
見ていたのは、346プロが夢と希望に包まれていたころのはなし。
そして、私がひとつの歌を手に入れるまでのはなしだ。
ここから先はどうなるかだれにもわからない。
総選挙がもうすぐ終わる。30位からは順位を落とすことになるだろうけど、時期のおかげで私はぎりぎり生き残るだろうって。
みくとは差がつくかも。きっと私のこれからは誰よりも厳しいものになると思う。
やっぱさ、あんまり信じてくれなかったよ、街を歩いてると、喫煙アイドルって指さされちゃった。
でもプロデューサーはそれでも私にアイドルを続けさせようと頑張ってくれてるし、社長は順位がすべて、だってさ。ある意味フェアな人なのかなぁ。
あなたのこれからを思うと、辞めたほうがマシかも、ね、なんてイヤミっぽいこと言われたけど。
だけど私さ、アイドルをもうちょっと続けてみようと思うんだ。
やりたいことができたから。
なつきちのいないこのベンチへの道も、歩き慣れてきた。友達も増えたよ。やっぱり私はネコに好かれる性質みたい。
あ、でもなつきちを忘れたわけじゃないよ。私はやっぱりきみを忘れることも、諦めることもできそうにないから。
次の単独ライブでさ、初披露するよ。テレビ中継もされるんだって。オンエアされるかはわからないけど。
私は、この歌を笑顔で歌い続けるよ。たとえ海の向こうにいたって、どこにいたって、きっと届けてみせるから。
同じ空の下に、私たちはいる。私となつきちの間にはいつもロックがあったよね。だからこの歌が、きっと私たちをまた繋ぐものになるって信じる。
人に思いを伝える力。人を惹きつける力。私は私のそんな才能を、信じてみるよ。
そうそう、噂できいたんだけどさ、シンデレラガールになると、願い事をひとつ叶えてくれるんだって。
私の夢はさ、武道館。そこでアスタリスクとして、ロックザビートとして立つのが私の願い事。
こんなつまんない世の中でもロックなアイドルが通用するって証明してやるぜ、イェーイ。
なんてね。私は歌い続けるから、待ってるから。だからいつでも帰ってきていいよ。
世の中にはちっぽけな私にはどうしようもないことが溢れてて、だけどそれでも真実を歌い続けるのがロックだとしたら、負けずに笑顔を振りまくのがアイドルだとしたら。
私は、もう一度スーパーロックなアイドルを目指してみせるよ。教えてくれたのは、なつきちと、みくなんだ。二つの翼で羽ばたいてみせるっ、なんてうーん、カッコつけすぎかなぁ。
考え事してたら、チューニングが終わった。
息を深く吸い込む。
ねぇ、なつきち、私がこの歌に名前をつけていいかな。
新しくできた友達、一之瀬志希ちゃんに意味を聞いたんだけどさ。
──「誰そ彼」。君たちが会ってた時間帯は朝でもなくて夜でもない、人の顔がわからなくなる時間帯なんだってー。
だからお互いに「誰ですかあなたは」って尋ね合ってたんだって。街灯が発達してなかった頃の名残りだねー。
言い換えれば、相手の存在を確かめ合う時間ともゆー。英語では──。
「……」
私は勝手にこう思ってるんだ。
本当はなつきちは、壁を一人で乗り越えようとしてるんじゃないかって。
だれにもすがらずにたったひとりで。失ったロックを、自力で取り戻そうとしてるんじゃないかって。
だってさ、確かめてみたんだ。少し怖かったけど、確かめてみた。
そしたらさ、置き去りにしていった荷物のなかに。
ギターだけはどこにもなかったじゃないか。
……。
ささやかな祈りをこめて、
私はそっと歌の名前を呟いてから。
それによく似た色のピックを、勢いよく振り下ろした。
世界でたったひとりの
きみに
伝わりますように
case.多田李衣菜 end.
た、誰そ彼……?
最終回特有の後ろでエンディング流れながらのエピローグいいな
トワスカ流れてるの想像してグッときた
リアルでちょっとえらいことになりながらも、もだえ苦しみながらなんとか書き上げました
前作と同じくらいの分量にするつもりだったんですがあまりに長すぎた
次こそ短いです
最後まで読んでくれた方、本当に本当にありがとうございました
乙
貴方の作品の雰囲気、とても好みです。
忙しい中ありがとう...!
誰そ彼(たそかれ)
次回Paアイドル 上位のお話になると思います
おそらく一番ハードモード
リハビリのためしばらく短編投下マンになるのでいつになるかわかりませんが
まだお付き合いしてくださる方いましたらよろしくお願いします
おつおつ、次も楽しみに待ってます
青春ド直球だなぁ…
いい話だった
>>192
×アスタリクスクの単独ライブの日程も決定した、と伝えられた。
↓
○アスタリスクの単独ライブの日程も決定した、と伝えられた。
今度こそhtml依頼だしてきます魂の解放
乙
終始ドロドロかと思ったらまさかの青春ものだった
これはこれでとても良かった
だけど次回がすでに怖い
乙
このシリーズ好き過ぎる。
胃がキリキリするのに目が離せん!
乙ー!
俺はだりなつもみくりーなも両方好きなんだよ!っていう鋼の意思を感じた
スカイハイの3つの扉に例えると、
地獄行き 卯月
天国行き はぁと
現世行き りーな
みたいな感じ?今回はバッドではなかったけど、ハッピーな結末でもないよね
次回はバッドぽいけどww
乙でした
乙、涙目になってしまった
みくもなつきちも曲も絡めてきて相変わらずの手腕
次回作はよはよ
乙。まだまだこれからだりーな!
次はPaで上位となると以前名前の出た美嘉かな?別SS見てるとそろそろ路線変更を迫られるみたいだし。
乙でした。
すごくよかった。次も楽しみにしてます。
乙
Pa上位っていうと、初代栄冠のあの子か…
今回も面白かったわ
おつでした。アスタリスクのみくにゃんはいじらしくて大好きです!
リアルと執筆に挟まれて苦しむ気持ちは少なからず分かります。
どれだけ期間が離れても>>1が投稿したssは楽しんで読ませていただくので、どうか無理だけはしないでください。
乙
もうゆっくりと俺んちが燃える~とか言うのやめる
乙でした
すごいよかった、ロックンロールだった
ドラマやね
おっつん
今回も面白かったよ 乙
超乙
続きがあることを期待する
>>1おつです
すげー泣いた。なつきちが一枚CDを混ぜてて、いつも通りにしてれば気づけてた、の文とか
トワスカ作曲はなつきちで名前はりーなが付けたというのも二次創作らしさ満載で素敵だし
その名付けの誰そ彼のくだりも好きだ。しきにゃんが関わってくるのも最高だ。
シーンや登場人物がその場限りで終わってなくて後に活きてくるのが本当にすごい。
もう何を書いているのかわからなくなってきたのでこれだけは書いておきたい。
作者さん、素敵な話をありがとう。
縦読みワロタ
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません