兄「妹になりたいんですけど」(27)
兄「なあ、妹」
妹「なに」
兄「どうしてお前は妹なんだろうな」
妹「さあ」
兄「そもそも妹ってなんなんだろう?」
妹「さあ」
兄「お前が妹やってるくらいだから俺もできるってことだよな?」
妹「さあ」
兄「どうやって妹になった?」
妹「気づいたら?」
兄「いつの間にか?」
妹「うん」
兄「手続きとかした?」
妹「いや」
兄「市役所とか行けばなれるかな?」
妹「わからない」
兄「なあ」
妹「なに?」
兄「俺も妹になるわ」
妹「そう」
市役所
兄「妹になりたいんですけど」
職員「こちらは納税課となっておりますので、納税以外のご相談は担当部署の方にお願い致します」
兄「担当部署というと?」
職員「生活安全、生活相談課はあちらです」
兄「妹になりたいんですけど」
職員「なれません」
兄「なぜですか?」
職員「まずは配布した資料をお読みになって下さい」
兄「はい」
職員「先程お話に挙がりました精神に関するご相談は、こちらのマニュアルにも記載されておりません」
職員「よってこちらのご相談窓口ではご回答致しかねます」
兄「えっ」
職員「それとも女性になりたいという性転換に関するご相談ですか?」
兄「なりたくないです」
職員「性同一性障害のご相談ではないと?」
兄「はい」
職員「なぜ妹さんに拘るのか簡潔に説明して頂けますか?」
兄「妹は妹で私が兄というのが理不尽だからです」
職員「そうですか」
兄「どうすれば妹になれますか?」
職員「私にはお答えできません」
兄「なぜですか?」
職員「マニュアルがないからです」
兄「マニュアルがあれば妹になれると?」
職員「有り体に言えば」
兄「市役所に行ったけど妹になれなかったわ」
妹「そうなんだ」
兄「俺が妹になれないならさ……お前が兄になればいんじゃね?」
妹「嫌だよ……」
兄「なして?」
妹「私、お兄ちゃんが好きだからー」
兄「い…妹ォォォ」
妹「えんだあああああああ」
兄「お前の気持ちは嬉しいけど」
妹「いやあああああ……あ?」
兄「ごめん……俺たち兄妹だし……」
妹「私、今日から兄の幼馴染になるわ」
市役所へ
私たちの戦いはこれからだ!
おわり
魔界
魔王「久しいな、勇者よ」
勇者「そうね」
魔王「1年振りか?」
勇者「そうだけど…今は無駄話はいいわ。これが調停の書類よ」
魔王「素っ気ない奴だ。可愛い顔が台無しだな。どれ…」
勇者「……はい、印とサイン…確かに」
魔王「次の更新は10年後か」
魔王「今日はもう遅い、誰かに送らせよう」
勇者「……不要よ。急ぎではないから、今日は泊まっていくわ」
魔王「そうか。では部屋と夕食を用意させよう」
勇者「ありがとう」
魔王「……会いたかったぞ」
勇者「私もよ」
側近「武器と鎧をお預かりします」
勇者「はい」
魔王「積もる話は後にして、まずは飯にしよう」
勇者「ええ」
廊下
側近「時代とはいえ、魔王様が人間風情に情けをかけるとは……」
魔女「それも天敵であるはずの勇者に魔力まで与えて」
側近「悪夢のようだ……」
魔女「兄さまは恋に敗北して争いをやめたのよ。嘆かわしいことにね」
側近「『いつまでも支配思想では世界から淘汰されるだけ……』ですか」
魔女「腑抜けたわよね~。それらしい事言ってるけど結局全部女のためだもん」
側近「勇者のどこがいいんだか……」
魔女「あら、嫉妬?勇者ちゃん美人だもの。私が男なら黙ってないわね」
側近「私たちだって、……かなりレベル高くないですか?」
魔女「いや、わたし妹ですし」
側近「はぁ……」
魔女「失恋どんまーい」
食卓
勇者「美味しい」
魔王「だろ?シェフが腕に縒りを掛けて作った料理だからな」
勇者「変わらないわね、貴方は」
魔王「お前もな」
勇者「私たちが会えるのは精々1年に一度くらい」
勇者「何かのイベントか調停の更新のときだけ」
勇者「……長すぎるよ……」
魔王「それは……」
勇者「わかってる。私が勇者で、貴方が魔王だから」
魔王「人間の希望ともいえる存在が、魔族と親しいなど許されるわけがない……か」
勇者「いっそもう一度貴方が人間界を……」
魔王「それ以上は聞きたくない」
勇者「……ごめんなさい」
勇者「ちょっとナーバスになっているのかも……」
魔王「いいさ。それより……」
魔王「……すまなかった!」
勇者「え?」
魔王「俺の傲慢でお前を不老不死にした。お前に寂しい思いをさせてしまった……」
勇者「……頭を上げてよ。確かに仲間も家族も全員逝ったわ。私は皆とは違う時間を過ごしてる」
勇者「それが辛くないと言えば嘘になる。でもね、私は感謝しているの」
勇者「この身体のお陰で、貴方に会える」
魔王「こんな俺を…まだ慕ってくれるのか……」
勇者「まだじゃない」
勇者「永遠に、私は貴方に恋をしているわ」
側近(壁パン
魔女「勇者ちゃん…健気……」
翌日
調停の儀
魔界と人間界の対立に終止符が打たれて200年が過ぎた。
司会「本日は記念すべき日です。今から200年前の今日、現勇者様が魔王を討ち、不死の力を得ました」
魔族「我が主が人間如きに負けるはずないだろう!」
司会「野次は無視して結構。そして、魔王は勇者様に平伏しました。全面降伏したのです!」
魔女「ムカつくわね、あの人間」
側近「殺っていいですか?」
魔女「ダメよ、我慢なさい」
司会「戦争は人間の勝利に終わります。しかし、その時倒れた魔王に勇者様が情けを掛けました。魔界の存続を許したのです」
司会「勇者様は、魔族を人間界のルールに従わせる現規則を築きました」
司会「魔族が規則を破れば、いつでも魔界を潰せる!そう!魔王殺しの秘剣を勇者様は所有しているのです!」
司会「力を失った魔界を恐れる必要はありません!」
魔女「あの不愉快な演説ってプロパガンダみたいなもん?」
側近「力を失ったって……半刻もあれば大半の街は壊滅させられますよ……」
魔女「あの喋り苛々するわよね」
魔王「人間の精神は弱い。安心が欲しいのだろう」
魔女「兄さま……」
勇者「お待ち下さい!」
魔女「!?」
側近「!?」
魔王「!?」
司会「勇者…様?」
勇者「かつて魔王と剣を交え、私は気付きました。彼の孤独、彼の悲しみに」
司会「えーと?」
勇者「魔王は負けてなどいません!膝をついたのは私なのです!」
司会「なんと!勇者様も一度魔王に負けていたと言うのか!ここからどう反撃するのでしょうね」
魔王「勇者……」
魔女「女って突然感情で動くから怖いのよね」
側近「たしかに」
勇者「反撃なんて……」
魔王「黙れ!」
勇者「え?」
魔王「黙って聞いていれば偉そうに!剣を抜け!勇者よ!」
勇者「えっ?えっ?」
魔王「いくぞ!(場を弁まえろ…こんなとこでいきなりどうした?)」
勇者「くっ!(貴方を悪く言われて…つい堪忍袋が……)」
魔王「しぶとい奴め!(耐性なさすぎだぞ)」
司会「突然戦闘開始に会場騒然!不意打ちとは汚い!魔王汚い!」
勇者「剣を引け!魔王!(……ごめんなさい)」
魔王「断る!(俺のことはいい。あまり心配させるな)」
勇者「てぇぇい!(もう大丈夫です。落ち着きました)」
魔王「ぐおおお!(そうか…よかった)」
魔女「なんという茶番……」
魔王「ふん、我は死なぬ!」
勇者「くっ!私はどうかしていた!魔王め!」
魔王「またしても互角か!」
勇者「決着がつかぬとは!」
司会「決着ならずゥゥゥゥ!これは一体どうしたことだ!完全な互角!膠着状態ぃぃぃ!」
魔王「これまでか…命拾いしたな、人間」
勇者「いつか決着をつけてやる、魔王」
司会「なんということでしょうか!二人は互角!人間界と魔界は均衡状態だったのです!勇者もっと頑張れ!」
魔女「変わり身はや」
側近「もう殺っちゃっていいですよね?」
魔王「お前の命は俺のものだ」
勇者「それはこっちの台詞よ」
司会「握手!握手だ!これは友情の芽生えでしょうか?」
魔族「魔王様…健気……」
夜
魔王「怪我はないか?」
勇者「大丈夫よ。まったく、心配性なんだから///」
魔王「大事なんだよ……お前が。愛してる」
勇者「私もよ///」チュッ
側近(壁ッ!壁ッ!
魔女「アンタさあ?城壊す気?反旗なの?」
側近「魔女様!どうすれば勇者になれますか!?」
魔女「はした金で人間王に魔王退治を依頼されるようなお人好しにでもなれば?」
魔女「おいおい、勇者カモろうぜ!アイツちょろいな!って」
側近「つまりビッチですか?」
魔女「アンタ勇者嫌いでしょ」
側近「魔女様こそ」
魔女「私ブラコンだし」
側近「うわぁ……」
魔女「引かないでよ」
あっ…そこ……突いてぇぇ……
魔女「……外からでも感じる兄ルームの熱気」
側近「勇者ちゃん、いいなぁ///」
魔女「乱入しなさいよ」
側近「できませんよ///」
魔女「ヘタレね~」
側近「そういう問題ですか!?」
魔女「まあ見てなさいよ!」
魔女「兄ぃ!おるかー」ガチャ
側近「え……」
パンパンパン
勇者「あん…っ」
魔王「ふぁ!?い…妹!?な、な、な、なああああ!?…な…何か…用か?」
魔女「来なさい側近」
側近「ちょ……え?」
魔女「兄!側近ちゃんがアンタのせいで欲求不満になってんの!」
魔王「は?」
魔女「ようするに側近ちゃんが乱交したいってさ」
勇者「はぁ…はぁ……こ…こまり…ます……あっ!動いちゃ…や………んっ…」
魔王「……今忙しい。用がないなら後にしろ」
魔女「内心動揺を隠せない兄は照れ隠しをするのだった」
魔王「照れてない!」
勇者「ひゃん!」
魔女「一人も二人も変わらないでしょ。ちょっと側近に突っ込みなさいよ」
魔王「な…なんでやねん!」
魔女「あ?」
魔王「あ、いや」
魔女「兄のソレを側近にブチ込めって言ってんのよ」
勇者「魔王…は…はぁ……はぁ……私の……恋人で…はぁん……」
魔女「ビッチは黙ってて」
側近「あの、魔女様も十分ビッチかと」
魔女「ああん!?私は清純可憐で正統派美少女よ!まだ処女だし」
魔王「」
側近「」
勇者「…んっ……」
魔女「な…なによ?なんか文句でもあるの!?」
魔王「なんかすまん……。俺が構ってやれなかったせいで」
魔女「可哀想な者を見るような目で見んじゃないわよ!」
勇者「出て…る……っ……」ハァハァ
魔王「妹よ、ちょっとそこに正座」
魔女「はーい」
魔王「まったくお前ときたら……。魔族とは言え恥じらいはないのか?」
魔女「だって兄さまは構ってくれないし……」
魔王「側近まで巻き込んで」
側近「いえ…私は…その……」
魔女「側近ちゃんが兄さまと寝たいって言うからよ」
勇者「ダメです!この人は私の恋人です!」
魔女「だからセフレでいいって!側室的な」
魔王「いらぬ」
側近「ですよね……」
魔女「側近ちゃんカワイソー」
魔王「その扱いのほうがキツいわ!」
側近「側室でも自分は///」
勇者「斬ってもいいですか?」
魔女「まー待ちなさいって」
魔女「一回寝てみたらいいじゃない」
魔王「どういう理屈だ」
魔女「今なら私もつけるよ?」
魔王「魔界の危機……」
勇者「魔王は私の!」
魔女「私の兄だし!」
側近「私は側近です!」
魔女「こうなれば兄さまを賭けて勝負よ!」
勇者「望むところです!」
側近「えっ?えっ?」
魔法使い「では実況はこの私、勇者の親友、魔法使いが」
魔王「どっから現れた!?」
女戦士「あたしは勇者に賭けるよ!」
僧侶「私もです」
ピサロ「俺は魔王様に賭けるぜ」
スライム「まおうしゃま、かつ」
魔法使い「はじまりました!魔王争奪戦!」
魔王「もう勝手にしろ」
魔法使い「ルールは簡単!魔王を早くイカせた者が勝者です!」
魔王「はああああ?」
魔法使い「魔王の愛を試すこの戦い!ならば魔王を瞬時に絶頂させてこそ真のラブハンターだァァァ!」
魔王「いや…だから俺は勇者を……」
魔法使い「魔王は誰を選ぶのでしょうか!」
魔王「勇者!だから勇者だって!」
女戦士「チッ!相手が魔族じゃ勇者が不利じゃねーか!」
僧侶「側近さん綺麗ですからね」
魔女「最初は私よ!」
魔王「待て!お前ら少しは人の話を聞け!」
魔女「問答無用!」
魔王「アッー!」
魔法使い「魔女すかさず尻の穴を攻撃!これは痛そうだ!」
女戦士「あれは厳しい戦いになるね」
魔法使い「魔王顔面蒼白ゥゥ!」
魔女「あれ?おかしいな……穴にブチ込むんじゃ?」
側近「あ…穴違いです///」
魔法使い「魔女、痛恨のミス!これは大きな失点だぁぁぁ!」
魔女「兄さまのチンコを逝かせればいいのよね?」
魔女「ハァァァァァァァ!」
ボキッ
魔王「ぎゃああああああああ」
魔法使い「魔女ついに男性器を折ったぁぁぁぁ!」
僧侶「魔女さんもなかなか攻めますね」
女戦士「これはイッたろ」
ピサロ「((((;゜д゜))))ガクガクブルブル」
スライム「まおうしゃま…おいたわしや……」
魔王「ぶくぶくぶく」ガクッ
魔法使い「魔王ko!!勝負あり!」
勇者「えっ」
女戦士「あれが射精か。はじめて見たぜ」
僧侶「射精って気絶のことだったんですね!」
女戦士「旅してるときはあたしたちもよく射精してたよな!」
僧侶「はい!私も回復魔法使いすぎてよく射精しました」
魔法使い「凄い射精だぁ!」
勇者「えっ」
側近「えっ」
魔王「」
勇者「大変!脈がない!誰か救急車を呼んで下さい!」
魔女「逝かせすぎたかしら……」
魔法使い「ここでアクシデント!魔王死亡」
魔女「兄さま…?兄さま!?」
女戦士「おい!本当に死んでるぞ!」
魔女「いやああああああ」
魔女は魔王暗殺の容疑で処刑された。
勇者は3日3晩泣き続け命を絶った。
それから3000年の時が過ぎ――
男「幼馴染とか無理だろ」
妹「だって幼馴染ちゃんとばっかイチャイチャして」
男「俺は幼馴染一筋だってずっと言ってるだろ」
妹「だったら、妹になりたいなんて言わないでよ」
男「ははっ、ちょっとした冗談だよ」
魔王と魔女は再会した。
幼馴染「兄くん、おはよ」
男「ああ、おはよ」
トゥルーエンド
短編集?と思ったらまさかここへ繋がるとは…
オモロかった(´∀`)乙♪
乙
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